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1956-05-19 第24回国会 衆議院 外務委員会 第46号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年五月十九日(土曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 前尾繁三郎君    理事 石坂  繁君 理事 北澤 直吉君    理事 須磨彌吉郎君 理事 高岡 大輔君    理事 山本 利壽君 理事 穗積 七郎君    理事 松本 七郎君       植原悦二郎君    臼井 莊一君       加藤 精三君    加藤 高藏君       菊池 義郎君    重政 誠之君       田中 正巳君    並木 芳雄君       福永 一臣君    福田 篤泰君       古川 丈吉君    森下 國雄君       田中織之進君    田中 稔男君       戸叶 里子君    福田 昌子君       岡田 春夫君  出席国務大臣         外 務 大 臣 重光  葵君         通商産業大臣  石橋 湛山君         国 務 大 臣 船田  中君  出席政府委員         防衛政務次官  永山 忠則君         防衛庁参事官         (長官官房長) 門叶 宗雄君         防衛庁参事官         (防衛局長)  林  一夫君         防衛庁事務官         (装備局長)  小山 雄二君         外務政務次官  森下 國雄君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君         特許庁長官   井上 尚一君  委員外出席者         防衛庁課長         (長官官房法規         課長)     麻生  茂君         通商産業事務官         (重工業局防衛         産業監理長)  金谷栄治郎君         通商産業事務官         (特許庁長官官         房総務部総務課         長)      竹村 礼三君         専  門  員 佐藤 敏人君     ————————————— 五月十九日  委員愛知揆一君伊東隆治君、大橋忠一君、福  田篤泰君及び松本俊一辞任につき、その補欠  として臼井莊一君加藤精三君、加藤高藏君、  田中正巳君及び古川丈吉君が議長指名委員  に選任された。 同日  委員臼井莊一君加藤精三君、加藤高藏君、田  中正巳君及び古川丈吉辞任につき、その補欠  として愛知揆一君伊東隆治君、大橋忠一君、  福田篤泰君及び松木俊一君が議長指名委員  に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  防衛目的のためにする特許権及び技術上の知識  の交流を容易にするための日本国政府とアメリ  カ合衆国政府との間の協定及び議定書締結に  ついて承認を求めるの件(条約第一四号)  日本国フィリピン共和国との間の賠償協定の  批准について承認を求めるの件(条約第一六  号)  国際情勢等に関する件     —————————————
  2. 前尾繁三郎

    前尾委員長 これより会議を開きます。  防衛目的のためにする特許権及び技術上の知識交流を容易にするための日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定及び議定書締結について承認を求めるの件を議題といたします。  質疑を許します。穗積七郎君。
  3. 穗積七郎

    穗積委員 船田防衛庁長官にお尋ねいたします。この協定は言うまでもなく、MSA協定第四条の規定に従って今度の協定が出てきたわけでございますが、これは一体どちらから希望いたしましたか。協定のできたというのはむろん合意の上でございますが、それ以前に一体どちらから希望されてこういう協定を作ることになったのでありますか。
  4. 船田中

    船田国務大臣 これは日本側から要望いたしたものであります。
  5. 穗積七郎

    穗積委員 それでは抽象的でなくて具体的にどういう必要があって、こういう協定を結ぶことになったのか、その動機、原因理由を明確にしていただきたい。
  6. 船田中

    船田国務大臣 わが国防衛関係生産体制というものが、過去十年にわたる空白のために非常におくれております。ことに科学技術、そういう方面においておくれておりますので、わが国自衛体制を整備する上においては、防衛生産方面におきまして、そういう技術上の知識あるいは科学をできるだけ先進国から取り入れるということがきわめて必要でございます。そういうようなことからいたしまして、かような協定を結ぶことによりまして、わが国科学知識の上において、また技術を取り入れる上におきまして、きわめて有利である、かように考えまして、わが方といたしましては、かような要請をいたした、こういうわけであります。
  7. 穗積七郎

    穗積委員 私のお尋ねしたのは、そういう抽象的、観念的なことではございません。言いかえますならば、私の前の質問に対してお答えいただきたいと思いましたのはそういうことではございませんで、先ほど言いましたように、もう少し具体的に明らかにしていただきたいということをお願いしたわけなのです。従ってそれでは不十分でございますから、質問を変えますからお答えをいただきたいのですが、現在日本防衛技術または武器の水準、そういうようなものについて一体どういうものを引き上げるためにこういう協定を結ぶ必要をお感じになりましたか。それを具体的に一つお答えいただきたい。
  8. 船田中

    船田国務大臣 具体的にということでございますが、一、二の例を申し上げますれば、水中聴音機ソーナー装置、あるいは射撃指揮装置、こういったものは向う技術導入することによりまして、相当に日本技術を高め、防衛生産を円満にやっていくことができるようになると存じます。
  9. 穗積七郎

    穗積委員 われわれは技術専門家でありませんから、通俗な言葉で言うと、電波兵器でございますね。おもにそういうことになりますか。
  10. 船田中

    船田国務大臣 大体そういうことでございます。
  11. 穗積七郎

    穗積委員 飛行機はいかがでございますか。
  12. 船田中

    船田国務大臣 飛行機部品につきましてもこういうことはあると思います。ただ私も個々の問題について詳細な技術的な知識を持っておりませんから、ここで詳細具体的に御答弁申し上げる資料を持っておりませんが、大体飛行機部品等につきましては、従来会社関係でやっておりますが、政府の持っておりますライセンスをこちらが無償で使い得る、あるいは民間の持っております技術を、両国政府間の橋を通じてこちらに導入するということになれば、わが国防衛生産の上に稗益するところ少くないと考えます。
  13. 穗積七郎

    穗積委員 私はこまかい部品技術までお尋ねするのではございません。またこういうことを私も一々お尋ねするだけの生産技術についての知識もありませんし、あなたも同様だろうと思う。従って私が聞いておるのは、たとえば電波兵器、たとえば誘導弾、たとえば弾薬、たとえば航空機あるいは戦艦、そういうふうに大きな部門別に特にこの協定によってアメリカ技術導入して、そうして日本の兵力を強化しようとするその部門別だけでもこの際明確にしてもらわぬと、抽象的に日本技術がおくれていると思うから、それを引き上げるためにこういう協定を結ぶのだというようなことでは、その必要性現実性がありませんから、われわれはそれでは納得するわけにはいかないのです。当面というか、あなたの方では六カ年計画をお持ちになっておられるようだが、その程度の具体的な要求といいますか、計画といいますか、そういうものが部門別に示されなければ、この協定の現実的、政治的意味というものを、われわれは把握するわけにはいかぬので、そういう趣旨でそれの判断をするに足るだけの答弁をしてもらわなければ、いやしくもこれは審議を進めるわけにはいかぬのです。そういう趣旨からいって、私の質問の要旨は非常に合理的であると思うのです。ですから、あなたの方も合理的な御答弁をお願いしたいのでございます。
  14. 船田中

    船田国務大臣 この協定を結ぶことにつきましては、この前も申し上げたこと存じますが、繰り返すようになりますが、念のためにもう一ぺん申し上げますと、米国における私有防衛上の技術わが国への流通促進されて、防衛用の向上を期待することができるということが一つ。  それから防衛用装備資材製造方法を受け入れる法的体制、特に国防しの秘密の技術を受け入れる法的体制ができまして、わが国における高度の武器生産が期待し得るようになるであろうということ。  それから第三には、従来若干の図面、設計図その他によりまして、技術士知識提供を受けてきておりますが、この技術上の知識使用することに関しまして、その所有者との法的関係を明らかにするのに困難がございましたが、この協定ができますれば、それらの点を明確にし得るような体制が整備されるということになる利益があると存じます。  第四には、日米相互防衛援助協定に基きまして米国から提供される装備資材に関しましては、近来これらの部品の補給は国内調達に待つ必要ができているので、米国からこれらの部品製法等提供を受け、その生産及び完成をわが国で行うことが容易になるであろうという利益があると存じます。  第五には、米国政府の所有する発明等無償使用することができる。  こういうことでございまして、これは、御承知の通り、一般協定を結びまして、そうして具体的の個々の問題につきましては、さらに今後この協定締結した後におきまして、両国間において十分協議をいたし、話し合いをいたしまして、適当な技術士知識あるいはライセンスを使わしてもらう、こういうことで、いわば両国間の技術導入についての橋をかけるということがこれでできると存じます。従いまして、この協定が結ばれた後におきまして具体的の問題の交渉に入る、こういうことに考えております。
  15. 松本七郎

    松本(七)委員 議事進行について。昨日資料の提出を要求しておきましたが、もし配付されないで、準備だけでもできているのでしたら、答弁の形でしていただいてもけっこうです。
  16. 前尾繁三郎

    前尾委員長 資料要求がきのうあったのです。それを適当な機会にやりますから……。
  17. 穗積七郎

    穗積委員 文書でくれるのですね。
  18. 前尾繁三郎

    前尾委員長 文書でなしに、口頭で……。
  19. 穗積七郎

    穗積委員 防衛庁長官にたびたび答弁をわずらわして恐縮ですが、私の言ているのはそういう抽象的な橋かけの話じゃない。当面この数カ年間に日本は一体どういう部門技術導入しようとしているのか、それを具体的に言っていただきたいのでございます。
  20. 船田中

    船田国務大臣 これはわが方といたしましては、あらゆる装備につきまして、また艦船、飛行機等の将来の出産ということを考えて参りました場合には、先ほど来申し上げておりますように、過去十年近い空白がありましたので、わが方の技術は非常に劣っております。従いまして、こういう橋がかかるということによりまして、技術導入技術上の知識の利用ということが容易になっていく、かように考えます。今までどういう点があったかと申しますと、これは電波兵器にいたしましても、あるいは水中捜音機聴音機とか、あらゆる面において技術導入を要するものが多いのであります。ただ具体的にどういうことがあるかという御質問がありましたので、先ほどソーナーとか、あるいは射撃指揮装置というようなことについてさしあたり技術導入をいたしたい、かように申し上げたのでありますが、それだけに限るわけではございません。
  21. 穗積七郎

    穗積委員 それでは、長官はたびたびお尋ねしても具体的なお答えがないので、局長専門的に研究しておられると思いますから、局長から今のような電波兵器水中捜音機等々、その他全般にわたるということですが、その全般は一体どこまでわたるのですか、どういうことなのか、それを一つ示していただきたい。軍艦はどうだとか、飛行機はどうだとか、弾薬はどうだとか、そういうことを少し説明していただきたい。
  22. 小山雄二

    小山政府委員 具体的にどういうものに関するどういう技術を期待しているかという点につきましては、もちろん従来もいろいろ装備品の供与を要求いたしましたときにも研究いたしておりますし、今後もこの協定によってそういうものを要求する具体的なものについては研究をしまして向う話し合いをするわけでございますが、今長官お答えになりましたように、あらゆる装備品につきましてわが国が現在こなし得る技術というものは、いわば程度が低いわけでございまして、あらゆる兵器についてもうちょっと高い程度技術をどんどん導入して、それを出産に移していくという段階になっておりまして、今具体的に言いますと、ほとんどすべての兵器の名前をあげていかたければならないような格好になるのであります。たとえば一つ飛行機の例で言うと、今飛行機国濃化をやっておりますが、たとえば材料部門金属材料非金属材料部門におきまして承り、今までの取りきめで技術的に国産化し得るものは約七〇%くらいしかないのであります。あとの三〇%は、たとえば材料の中で型押し物で非常に形の複雑のようなものは、国産化し得る技術がまだないわけであります。あるいは合成樹脂の高級なものというようなものにつきまして、これを国産化、地産に移す技術がないわけでありまして、そういうものもこの技術協定によりまして逐次期待していく、それから部品等につきましても、たとえば油圧ポンプとか、車輪の関係その他でもむずかしいものは大体六〇%くらい国産化する計画になっておりまして、あとの四〇%くらいのものは技術的に国産化し得る能力が現在ではないわけであります。さらに飛行機のエンジンそれからいろいろな関係の武装、それから電波関係のものを利用します操法、パイロット・テクニック、こういう関係につきましては、現在の計画ではほとんど全然手がつかないというような実情でありまして、そういうところの技術導入しまして、これを生産化し得る基盤を作って参りたい、こういうのが防衛生産のための装備資材生産援助する、こういう協定目的に現われている関係になろうかと存じます。
  23. 穗積七郎

    穗積委員 まだ納得がいかないので、もう少しこまかく具体的な計画を向きたいのです。このことは、日本防衛増強計画にも関連しておることですし、防衛生産計画にも関係していることですから、おそらくはこれは通産大臣にも、あるいは高碕経企長官にも質問しなければならぬことだと思うのだが、特に防衛庁に関する限り、もう少しそのことについてこまかく伺いたいのです。非常に不親切な御答弁で、万般にわたるなどとそんな抽象的なことでは、どうも納得がいかないのですから、どういう一体計画がおありになるのか。この協定によっては何と何とどういう技術を入れるということは一々書いてございませんから、すべての技術について導入できる可能性はあると考えられますが、可能性の問題ではなく、または相手のあることですから、相手との話し合いの結果について、私は聞くのではなくて、日本独自のそういうような防衛増強計画または防衛生産増強計画を持っておられるのか、そしてこの協定をどういうふうにその場合に使おうとしておられるのかということを実は伺う趣旨でございますから、どうぞもう少し具体的に親切に、お隠しにならないで答えていただきたいと思うのです。そういう質問の要望を持っておりますが、きょうは特に船田大臣がお見えになっておりますから、総括質問ですから、こまかいことについては後に専門事務当局の方から伺うことにして、最初に長官に少しの質問に限ってお尋ねしたいと思います。今の御答弁納得したわけではございませんから、よく覚えておいて下さい。  その次にお尋ねいたしますが、そうなるというと、この協定では兵器の種類、技術の範囲というものは規定してございません。従って特にわれわれが関心を持つのは、原子兵器技術導入するかしないかということ、原子兵器に関する生産国内でやるかやらぬかということ、こういうことが問題になるわけでございますが、これに対しては、今までの数回の質疑応答によって、政府原子兵器は保持し、または生産する意思はないということをおっしゃいました。これは、現在までの鳩山内閣政治方針であるということにすぎないわけです。ですから情勢の理化によって、同じ鳩山内閣、同じ船田防衛庁長官のもとにおかれましても、昨日まではそういう政治方針を持っておったが、情勢の変化に伴って、ここで原子力技術並びにその生産計画しなければならなくなったと言えばそれだけのことであって、この協定は何らこれに抵触するものではございません。従って私は協定協定そのものとして、客観的に合理的に審議しておく必要があると思うので、そうなりますと、今申しましたような原子兵器生産並びに技術導入については、非常な不確定要素しかないわけですね。そう理解してよろしゅうございますか。
  24. 船田中

    船田国務大臣 この協定の第八条の(d)項に「この協定のいかなる規定も、原子力分野における特許権特許出願及び技術上の知識には適用されない。」こういうことが一項目入れてあるのでございまして、これは特にただいま穗積委員もおっしゃられたように、原水爆関係技術については全然触れない。すなわちわが方といたしましては、そういうようなものは持ち込んでももらいたくないし、また今後そういうものを製造するというような研究はしない、こういうことでございまして、今穗積委員の御心配になるようなことは、私は起らないと信じます。
  25. 穗積七郎

    穗積委員 これはあなたの方の党内にも、原子兵器を持ち込め、原子兵器生産をやれという趣旨が、相当現在においてすら実は強く主張されておる向きがあるわけです。そこで公式の政策としては今までございませんが、今おっしゃったようにこの協定原子力分野における特許並びに特許出願及び技術上の知識、こういうことでございますが、これは必ずしも強い拘束力にはならぬと思うのですね。従って関連してお尋ねいたしますが、今度の技術協定防衛生産以外の目的のために使うことの可否については、どういう解釈をとっておられますか、それを伺っておきたい。
  26. 下田武三

    下田政府委員 この助走は、表題にもありますように、また前文にもありますように、防衛目的のためにする特許権及び技術上の知識交流を容易にするための協定でございます。従いまして防衛以外の目的技術上の知識交流ということは、この協定目的ではないわけであります。  なおついでに先ほどの点について御説明申しますと、本協定技術導入協定ではございません。他の原因によりまして、つまりMSA協定なりあるいはコマーシャル・コントラクトによって導入された技術保護協定です。ですからこの協定によっていかなる技術が入ってくるかという問題は、この協定とは実は関係のないことでありまして、他の原因によって入ってきた技術上の知識保護協定でございます。そこで第八条の(d)の原子力分野における技術上の知識、これはもう科学技術庁が発足いたしまして、原子力局もありまして、原子力分野における技術上の知識交換ということは、どんどん行われると思います。ただ先般の原子力協定にもございましたように、原子力軍事的目的に利用するということは絶対にしないというのが既定方針でございます。ですから平和目的にのみする技術上の知識交換ということは、当然行われることでありますけれども、この協定はそういう原子力分野における技術上の知識には適用されないということは、日本の学者やあるいは原子力局原子力知識交流をされましても、それにはこの協定保護が及ばないという意味でございます。そういう意味で適用されない。従いまして原子力分野における兵器としての防衛目的のための原子力技術上の知識交流をするかどうかという問題も、この協定とは関係のない問題でありますし、またいかなる分野における技術導入されるかという問題も、実はこの協定とは関係がない。この協定は単なる導入協定にあらずして、保護協定であるという建前をまず明らかにさしていただきたいと思います。
  27. 穗積七郎

    穗積委員 これは私の誤解であったかもしれぬが、この協定によって、こちらの欲する防衛生産のための技術導入あっせんをする義務相互にあるのじゃないですか。
  28. 下田武三

    下田政府委員 協定のねらいは、こういうふうに日本技術導入されればこういうように完全な保護を受けるのである、だから安心して技術をよこしなさいということが言える根拠になるというだけの話であります。
  29. 穗積七郎

    穗積委員 私の質問に答えていただきたいのですが、両国政府は、政府が持ちまたは民間の持っておる特許その他の知識を、日本またはアメリカ防衛生産目的をもってその技術をほしいという場合には、その技術導入できるようなあっせんをし、または提供をする。政府の場合は提供をする。そういうような相互の取りきめになっていやしませんか。そういう内容を持っていないのですか。
  30. 下田武三

    下田政府委員 仰せのようなことは、本協定まくら言葉としては入っております。つまり防衛目的のために、またあるいは防衛生産を向上するというようなことは、実はまくら言葉であって、この協定に基く技術上の知識保護が保障される結果、間接的の効果として、そういうことが生まれることはございますけれども……。
  31. 穗積七郎

    穗積委員 ちょっと待って下さい。促進をすることは明確に書いてありますね。相手要求するものを、すべてこれを提供しなければならないという一方的義務相互に負うものではない。しかしながら促進義務はあると私は解釈しておるのだが、それは違いますか。
  32. 下田武三

    下田政府委員 第一条の第一項だけがそういう趣旨を書いております。つまり特許権防衛目的のための使用を容易にし、かつ、同条に定める技術上の知識私有のものの防衛目的のための流通及び使用を奨励するもの」と、使用を奨励するものとあります。
  33. 穗積七郎

    穗積委員 その前文に千九百五十四年三月八日云々として、「相互防衛援助協定に基く特許権及び技術上の知識交流を容易にし、かつ、促進することにより、云々とありますね。
  34. 下田武三

    下田政府委員 これは協定精神的目的をうたったわけであります。
  35. 穗積七郎

    穗積委員 精神的目的でも、それはお互いにオブリゲーションを持っているじゃありませんか。促進協力義務はあるでしょう。結果については責任を持たないけれども……。
  36. 下田武三

    下田政府委員 具体的の規定を洗いますと、そういう点がちっとも協定内では敷衍されていないのでございます。そこでこのMSAの本源をたどってみますと、第一条が実は導入協定でございます。援助を与えるということで……。ここに引用しております第四条というのは、むしろその保護をねらいとするものであります。そういう保護が全くされるような協定を結ぶということの問題であります。
  37. 穗積七郎

    穗積委員 その前文は一般的な抽象的または精神だといわれるが、今局長が読まれた第一条「技術上の知識私有のものの防衛目的のための流通」とは相互流通だろうと思う。相互国家間の「流通及び使用を奨励するものとする。これはこの協定目的ですね。結果については両国政府義務は持ちませんが、そういう話し合いができることを督励促進する義務はあると思うのです。そういうふうに私はこの協定趣旨を読んだのですが、単なる、もしできたときにはこうやるのだといって、この協定はいわば特許保護協定のようなものでは必ずしも私はないと思うのだ。MSA協定そのものの第四条の精神によって、それを法源としてここに出てきているわけですから、MSA協定そのもの精神というものは、やはりあくまで今のような援助提供協定でございます。単なる保護協定ではございません。ですから両国政府間の防衛生産における特許保護協定というような精神だけでないと思う。むろんそれはありますよ。特許に対しては、この前からいろいろ与党の諸君の間においてすら問題になったほどの深刻な問題があるから、その特許保護規定内容を持っていることは言うまでもないが、同時に単にそれができたならば、そういうような技術並びに知識特許権その他の保護をするという保護協定にとどまるものではなくて、相互間の技術知識流通使用することを督励する、または促進する協定、そういう協定じゃございませんか。私はそういうふうに実は読んで、この協定を理解しておったのだが、あなたのように、そういうものではない、全然それには触れておらぬということになると、これは今までの答弁と相当食い違って参ります。たとえばわが方でこういう技術がほしいのだといった場合に、向うはそれに協力する義務はない、こちらも主張する権利はない。契約ができたならば、保護してやるということだけで、この協定を作ったのじゃないと思うのだ。MSA協定の第四条の規定がそうです。MSA協定第四条の規定はもちろんそうだと思うので、MSA協定そのもの精神MSA協定第四条の精神MSA協定の第四条を受けたこの前文並びに第一条の規定は、単なる契約ができたならばその場合に、相手国の特許権わが国において保護してやるというような単純なる保護規定ではなくて、私は、交流促進をやるという協力規定だというふうにあくまでいまだに解釈して、あなたの御指摘があったにかかわらず、私はそういうふうに協力の趣旨を解釈するものだと思う。この文章にも書いてあるでしょう。「特許権及び技術上の知識交流を容易に」する、交流を容易にすることがむしろこの協定の主眼であって、それをするためには、国内において特許権保護も必要な措置の一つである。相手要求があったならば、その技術をできるだけ——アメリカ政府が持っておるもの、またはアメリカ民間会社が持っておる特許または技術についても、日本防衛庁または防衛生産関係者がそれを要求した場合には、アメリカ政府はなるべくそれが交流できるように督励、あっせんし、協力しよう、協力義務まで、そのすべてが——必ずしも作り上げてやるという結果に対する義務規定ではございませんが、促進協力督励をする、そういうだけの義務は私はこの協定によって生じておるというふうに解釈するが、それは違いますか。そうでないと、外務省の条約局長がそういう解釈をしておられるならば、防衛庁の諸君が今まで、わが方が欲すれば——向う日本にくれてやったらいい、こんな特許権なんか要らなくなった、効果がなくなる前に、それを保護されればべる、というのでくれるのではなくて、こちら側から欲するものは、相当すぐれた技術がもらえるのだ、そういう効力がある、メリットがあると主張してきたのは、全部うそだということになる。どっちですか。
  38. 下田武三

    下田政府委員 私がこの協定自体が技術上の情報の導入協定でないと申し上げましたことは、導入ということ自体が本旨あれば、これはいかなる分野における技術導入するという範囲をまず限定します。それから他方の国の政府が要請したならば、合意する手続に従って導入する。つまり導入自体に関する規定がこの協定の主部分になれば、これは導入協定でございます。そこで確かに仰せのような、先ほど防衛庁長官が橋渡しとおっしゃいましたが、導入自体を規定するのではないけれども、導入が容易になるように援助する、容易にするということは書いてございます。それから援助するということと、そうして援助の結果、もし来ましたならば、それがどういうように保護されるであろうということを保障いたしまして、これもまた容易にする結果を生むわけでございますけれども、あくまでも外部から導入を容易にし、そうして導入されたらこういうような保障があるぞということを言うのが目的でありまして、導入行為自体の規定を定めるということはこの協定目的ではない、そういう意味で私は申し上げたのでございます。
  39. 穗積七郎

    穗積委員 それではもっと具体的にお尋ねしますが、個々技術、たとえば飛行機部品生産、それの特許または技術知識導入したいという場合に、その個々の契約は、これはまた別個の契約になることは当然でございます。しかしながらそういうことを日本防衛庁または防衛庁の指定する防衛生産関係者から、向う側に、アメリカ政府に対して要望した場合には、アメリカ政府の持ちまたは民間の会社の持っておる技術知識を、日本の要望に沿うて、これが交流することを促進あっせんする義務はありませんか。
  40. 下田武三

    下田政府委員 その点は義務はあると言えると思います。つまり日本側がある業者、三菱重工ならそれが、ある技術を、ゼネラル・エレクトリックからもらいたいという場合に、もしアメリカ側で文句を言う場合に、この協定でそういう交流を容易にするということをいっておるじゃないかということ言って、向うの反省を促すという程度のことはできる。そういう意味でそういう程度義務はあると思います。
  41. 穗積七郎

    穗積委員 私の言ったのはそういうことですよ。あなたは、そうじゃなくて単なる保護規定だと言うから、それは話がおかしいぞと言ったのであって、訂正してもらいたい。防衛庁もそれでいいですね。協定の解釈はそういう解釈でよろしゅうございますか。
  42. 船田中

    船田国務大臣 私の答弁申し上げておることも、ただいま穗積委員のおっしゃったような趣旨で申し上げておるのであります。
  43. 穗積七郎

    穗積委員 それでは次に先ほどの本論に戻ってお尋ねいたしますが、こういう場合はどうですか。原子力技術を平和利用の目的をもって向うから導入して、そこで得た日本技術または発明等防衛生産に流用する場合、この場合はこの規定関係しないと思うのです。やろうと思えばこの規定に抵触することなしにそういうことができる、そういうわけでしょう。
  44. 下田武三

    下田政府委員 それを抑えるのはこの協定目的じゃございません。先ほど申しましたように原子力のいかなる面にも非軍事的に、平和的にしか使わないというのは原子力協定の方に表われました精神でありまして、たとい原子力分野における技術上の知識がありましても、この協定による保護は適用されないというのが第八条の目的であります。
  45. 穗積七郎

    穗積委員 だからこういうふうになるわけですよ。原子力技術並びに知識、設備等の導入は、平和利用を目的とするということになっておる。それを受けて、日本原子力基本法は三つの原則を持っておるわけですが、それは国内法ですから簡単に修正されて、そこでそれによって研究された日本原子力に関する知識または技術防衛目的に流用された場合にも、この協定に違反するものではないということですね。それはそういうふうに解釈していいと思うのです。間違いないと思うのですが念のために防衛庁の方に伺っておきたいのです。
  46. 下田武三

    下田政府委員 先ほど御指摘がございましたように、この協定のもう一つのねらいであるところの技術上の情報を入れることを容易にするということも、従って原子力には適用がない、そういうことになるわけであります。
  47. 穗積七郎

    穗積委員 そこはまだ原子力に関してはブランクのままだ。そこで問題は外務省の条約解釈よりは、案は防衛計画防衛生産を具体的に計画されるところの実施機関である防衛庁の態度が問題なわけです。平和利用の名目のもとに入った原子力技術並びに知識防衛生産に流用される場合に、現在の日本条約協定または法律で抵触するものは原子力基本法だけですね。協定上は何らそれを禁止するものはございません。従って言いかえれば原子兵器に関する生産計画というものは条約上ではこれを禁止するものはない、こういうことになるわけですね。
  48. 下田武三

    下田政府委員 日本自体は仰せのように基本法でそういう建前に明らかになっております。それからまたアメリカ国内法も、原子力に使う援助というものは、日本の場合には適用されないことになっておると思います。つまりNATO当事国のように、ああいう特殊な軍事協力をやる国でなければ、水道のもとの線がひねれないことになっておると思います。しかし現在の条約関係から見ますと、原子力協定軍事的目的に使ってはならないという規定があるだけでございます。
  49. 穗積七郎

    穗積委員 その日米間の原子力協定というものは、すなわちアメリカから入るそのときの技術、そのときの施設を直接防衛目的のために使ってはいけないというだけであって、そこから生まれた結果、日本の創造した技術並びに知識の結果というものは日本の自由でございます。われわれそう解釈しておりますが、その解釈で間違いございませんね。
  50. 下田武三

    下田政府委員 条約に関する限りはそうでございます。けれども、原子力基本法に定めのあることは御存じの通りであります。
  51. 穗積七郎

    穗積委員 だから私の言うのは原子力基本法だけだというのです。だから国際協定の上で、日本の得た原子力に関する技術並びに知識原子力生産に流用することを禁止する国際規定というものはない、結果的にはないことになる、これは単に防衛目的をもってアメリカから直接導入することは、この規定の範囲内でないということだけであって、逆に今度は日本が自主的な名目において、原子力生産のために日本の得ている原子力に関する知識並びに技術を使うことを禁止する協定というものは国際的にはない。ただ問題になるのは、その場合に国内法である原子力基本法のあの原則だけだ、こういうことになるのですね、その点をはっきりしておいてもらいたい。
  52. 下田武三

    下田政府委員 それはむしろ当然のことでございまして、この協定に書こうとしましても書く場所がないわけでございますから書かないだけでございます。
  53. 穗積七郎

    穗積委員 それでよろしゅうございます。次にお尋ねいたしますが、防衛目的のために使うということですが、そこから得た知識を、直接ではないが得た知識、またはそれを媒介として得た発明創案等を平和産業利用に使うことは何ら拘束されないと私は解釈しますが、その通りで政府の解釈も間違いないでしょうね。
  54. 下田武三

    下田政府委員 それは仰せの通りでございます。
  55. 穗積七郎

    穗積委員 それから第三国への提供の禁止が個々の契約中には生まれると思いますが、その場合第三国への提供の禁止規定の範囲はどこまでになりましょうか。言いかえますならば、今申しましたような導入いたしましたものを、防衛生産目的をもってアメリカ政府またはアメリカ民同会社から得た特許知識技術等々を媒介として日本で発明された技術知識特許、これらを平和目的をもって第三国にこれを出すということについては、この禁止規定の範囲外だ、自由であるというふうに解釈いたしますが、それでよろしゅうございますか。
  56. 下田武三

    下田政府委員 この協定には、アメリカから受けた技術情報を第三国に流してはならぬというような規定は全然ございません。もっともMSA協定の場合には、相手国の同意なくして他に流してはいけないということはございますが、この協定にはございません。
  57. 穗積七郎

    穗積委員 そうすると輸出は自由なわけですね、いかなる目的をもっても。
  58. 麻生茂

    ○麻生説明員 それはパテントなりあるいは技術上の情報を得る場合の契約があるわけでありますから、契約によって規律されるようになるだろうと思います。
  59. 穗積七郎

    穗積委員 契約でされる場合は、それを直接すぐそのまま第三国に平和または防衛目的をもって、たとえば中国に出すというようなこと、またはフィリピンに出すというようなことは、それはその契約は直接これを禁止する拘束力を持ちましょう。私の申しておるのはそうではなくて、さきに原子力の問題について引例いたしましたごとく、アメリカから防衛目的をもって直接導入いたしました技術特許、それは今申しました通り、その契約においてはそれを直接第二国に出してはいかぬという契約、禁止規定がつくと思うのです。しかしながらそれを媒介として、日本で創造と称して得られました知識または技術特許等々を第三国に平和利用の目的をもって、または防衛生産目的をもって輸出することは、これはその協定の禁止規定に抵触するものではない、すなわち禁止外の問題に属すると私は解釈をいたしますが、そういう解釈で当然よいと思うが、念のために伺っておきたいのだが、よろしゅうございましょうか。
  60. 麻生茂

    ○麻生説明員 結局、先ほど申し上げましたように、そのパテントなり、あるいは技術上の情報を使う場合の条件によって規律されるものだと私は思います。それによって、債務不履行の問題も出てくることだと思います。またその相手国にパテントが設定されておる場合において、輸出される相手国内におけるパテントの侵害という問題もいるいろ起り得るかもしれませんが、この協定自身では、別にそれには触れていないわけであります。
  61. 穗積七郎

    穗積委員 そういうふうに問題をそらさないで、まっ正面から答えていただきたい。私の言う意味は、もらったそのままのパテントなり技術そのものを、導入した直後すぐそのまま第三国へ出すということは、おそらくあらゆるケース・バイ・ケースの契約において禁止されるでしょう。ところがそれを媒介として日本において創造し、または発明をし、あるいは創案をする場合がございましょう。そうなれば、それはこの禁止規定契約以外の、もうすでに独立した日本自身のものであって、アメリカ提供したものではないということになるから、そのものはもうすでに禁止規定外の問題であって、それをステップとして出た新しい発明、創案、特許等は、自由に輸出ができるわけですか。
  62. 下田武三

    下田政府委員 それは当然でございます。つまり、もとの技術上の知識を土台にした新たな発明、また新たな特許——実用新案も含みますが、その新たな発明をしたものの自由にできるのであります。
  63. 穗積七郎

    穗積委員 それが新たなものであるか、新たなものでないかは、日本特許庁の審査決定によるわけであってアメリカの制肘は受けませんね。
  64. 井上尚一

    ○井上政府委員 仰せの通りでございます。
  65. 穗積七郎

    穗積委員 そこで次にお尋ねいたしますが、技術導入の範囲並びに内容についてでございます。これは長官にお尋ねした方がよかろうと思うのだが、たとえばさっきおっしゃったように、日本技術または発明の知識、水準というものが、非常に立ちおくれておるというので、斬新なる高度なる技術並びに知識を得たいというのが、この協定目的のようでございますが、その場合に、たとえば電波兵器誘導弾、航空機等について、アメリカが持っておると思われるあの知識、あの特許がほしいといった場合には、先ほど条約局長との質疑応答で明瞭になっていると思いますが、この協定がございましても、日本の欲するものが必ずしも得られるものではない。相手が同意をしなければできない。従ってあなた方が今まで説明されたような世界一流の水準に達した斬新なる技術または知識は、必ずしも導入されるとは、何らの協定において保障されておらぬ、こう解釈すべきだと思いますが、いかかでございますか。これが協定の解釈について一点。  それから第二にお尋ねしたいのは、そういうことになれば、あなた方はこの立ちおくれをこの協定によって急速に引き上げて、世界一流の水準にまで知識並びに技術を引き上げるのだとおっしゃいますが、それができるという見通しがどこにありますか、その見通しを伺いたい。これは政治上の問題でございます。二つに分けて御答弁願いたい。
  66. 船田中

    船田国務大臣 先ほど来申し上げましたように、個々の問題については、さらに話し合いをしなければならぬ、こういうことになると思います。しかしこの協定ができたから、すぐに日本技術が世界の水準を越すようなりっぱなものに飛び上っていくだろうということは、これはそう簡単にはできないことでのります。しかしこういう橋がかかる、そしてそういう技術上の知識の秘密も保護されるということになれば、高度の技術知識導入されることが容易になるということにはなると思います。
  67. 穗積七郎

    穗積委員 すなわち、どこまで以上のものはやってはいかぬと書いてないのでありますから、その可能性はございます。可能性はございますが、現実性の問題についてはやはりアメリカの中古の技術しか得られない、こういうことになるわけですね。そういうこともわれわれはおそれるのだが、そうではないということを確証されるだけの自信があるならば、具体的な根拠をもって説明していただきたい。どういう話し合いが、今まで行われておるのか。
  68. 林一夫

    ○林(一)政府委員 装備につきまして、先ほど装備局長から答弁がありましたように、現在わが国技術水準というものはそう高いものではないのであります。今後いいものをもらって、それによっていいものを作っていくという方針であるのであります。その場合、今御質問趣旨の中にあったように、かけ離れたいいものをもらって、果してわが国技術水準でこなせるかどうかという問題も起るのであります。もちろんわが国技術水準その他いろいろの状況を判断いたしましてさらに高度のものをもらって、それを作るということになるわけであります。
  69. 穗積七郎

    穗積委員 そうすると、大体協定によってアメリカの中古技術でもまことにありがとうございますという協定だとわれわれは理解して参ります。そうしてそういう認識に立ってこの協定に対する態度をきめたいと思います。  次にお尋ねいたしますが、この協定は言うまでもなく相互協定になっておりまして、アメリカからのみ一方的に日本提供するのではなくて、こちら側からも提供する可能性義務を持っておるわけですが、具体的に一体どういうものがございますか、また考えられますか。
  70. 林一夫

    ○林(一)政府委員 そのような義務はございませんが、現在のところそのような具体的なものは予想されません。
  71. 穗積七郎

    穗積委員 それでだんだん明瞭になって参りました。そこで船田長官にお尋ねいたします。というのは、あなた自身もそういうお考えをお持ちになっておるようですし、それからあなたの属するところの自民党並びに鳩山内閣も、常に独立のためということを言っておられました。すなわち現在日本アメリカの軍隊によって占領されておる。こういうことは独立国としてまことに残念なことであるから、自分の国の防衛は自分でやりたい。自分の国の軍隊はアメリカの植民地軍でないようにしなければならぬ。すなわち独立国のようにしなければならぬというのが、あなた方の趣旨である。日本防衛計画を増強し、日本生産力を高度なものにすることは、アメリカがこの国から去ってもらうためである。そうして日本の軍隊はアメリカ軍の一部ではない。そういうことがあなた方の今までうたってきた表看板でございます。しかしながら日本のこれから作ろうとする兵力増強計画防衛生産計画、その日本にとってありがたい第一流の——向うにはセコハンだが、そのありがたいもののすべての技術は、ほとんどアメリカにたよっておるということならば、日本武器の秘密というものは、アメリカに対しては完全に永久にないということですね。そういう結果になる。(「一部分だ」と呼ぶ者あり)一部分であっても、それは近代のような科学兵器時代になりますと、最高のトップのところが——兵隊の歩く歩調とか、部隊の間隔とか、訓練の仕方とか、突撃の方法とか、そんなものは今おっしゃったように、アメリカから習っておるのだが、そういうものはやがて独立できるかもしれませんが、日本技術科学兵器並びに戦術等は、アメリカから独立するものではございません。何ら意味をなすものではない。すなわち、近代的な科学兵器時代におきましては、その国の武器並びに技術が、すべての国に対して秘密が保持される独創的なものがなければ、日本の軍隊の武器並びにその性能、その生産技術程度生産力ならびにその作戦等は、たといアメリカの兵隊が帰ったと仮定いたしましても——帰るとは私は考えないが、帰ったと仮定してみましてもアメリカから何ら独立するものではございません。これははなはだしく矛盾するものである。それに対しては一体どういうお考えを持っておられますか、国民をごまかすことなしに、納得のいくような説明をしてごらんなさい、できない。できないでしょう。
  72. 船田中

    船田国務大臣 先ほど穗積委員も仰せられたように、われわれは国際関係におきましては、自由主義国家群と協力をするということを第一義的に考えております。ことに日本アメリカとは、御承知の通り国土の防衛ということにつきまして、アメリカの協力を得て日本の国土の防衛をいたしておるのでございます。従いまして日米関係というものはお互いに信頼し、きわめて強力な協力的な関係にあることは言うまでもありません。しかしながら、だからといってわが国の自主性を失っておるものではございませんで、わが国の国力、国情に相応する最小限度の自衛体制を整備いたしましてそしてアメリカの駐留軍には漸次撤退してもらうような基礎を作るということに今せっかく努力をいたしておる、こういうわけでございます。ただ今日におきまして、わが国はただいまお話のありましたような国家の機密というものを保護する規定は何もございません。ただMSA関係において米軍から供与される兵器、艦船等の装備品につきましての機密の保護ということはございますが、今日わが国におきましては、何ら国家機密の保護というようなものはございません。従ってただいま御指摘のように防衛上の生産につきましても、たといそれがわが国において非常な高度なものでございましても、それを保護するという方法は今日のところはございません。しかし穗積委員が今御指摘になりましたようにわが国は決してアメリカの従属国でもなければ、またわが自衛隊はアメリカの傭兵でもございません。これは日本の国土防衛のための自衛隊でございます。
  73. 穗積七郎

    穗積委員 それを守るという言葉でいつもお繰り返しになりますが、それは頭隠して尻隠さずで、すべて日本は独自性を持っておらぬということでございましてアメリカの欲する程度の中古技術しか与えない、そしてまたアメリカ軍の、何といいますか、補助部隊としての程度技術並びに兵力編成、そういうものが要求される。しかも語るに落ちるで、あなた方が常に言うことは、日本日本だけで守るのではない、集団安全保障、すなわち具体的に言うならばSEATOでございましょう、アメリカ、南朝鮮、台湾、それから東南アジアのSEATO参加国、こういうものに参加して、何といいますか足軽的な役割を果そう、こういうことなのですから、それを独立軍などと言うのは実に欺瞞もはなはだしいと思うのです。特にその軍の武器の中枢をなします高度の——世界的には高度ではないが、高度とあなた方は考えるその日本技術は、全部アメリカに握られておるということで、何で一体独立軍と言えましょうか、今の御説明ではわれわれはさっぱり納得がいかない。これはどういうふうにされるおつもりでございますか。
  74. 前尾繁三郎

    前尾委員長 穗積君、防衛長官お急ぎだから、早く済ましてやってもらいたい。もうそんなにないですか。
  75. 穗積七郎

    穗積委員 あります。長官何とかおっしゃい。
  76. 船田中

    船田国務大臣 今の御質問は、先ほどお答え申し上げたことと同じことになります。
  77. 穗積七郎

    穗積委員 先ほどおっしゃる通りでございましょう。はなはだどうもわれわれは遺憾の意を表さざるを得ない。  それから最後に、長官はお急ぎのようでございますから長官に対する質問だけ先にして、こまかいことはあと事務当局の方にお尋ねしたいのですが、最後にお尋ねしたいのは日本武器輸出の問題でございます。これは最近も他の国から日本武器の輸出を要望し、または日本の財界あるいは政界の一部にも、この輸出をしようとする向きもあるわけですが、これに対しては一体防衛庁長官はどういうお考えと、どういう態度をおとりになっておられますか、それを伺っておきたいと思います。
  78. 船田中

    船田国務大臣 この武器の輸出につきましては、これはその武器の種類によりまして非常に違うと思いますが、私どもといたしましては、防衛庁として特に輸出についての意見を持っておりません。これは国際情勢また通産関係生産事業、そういうことに関係いたしますことでございます。ことに国際関係というものを十分考えていたさなければなりませんから、これらは政府として——主としてこれは外務省の関係になろうと思いますが、外務省、通産省ともよく協議をいたして参りたいと思いますが、私どもといたしましては、特に武器輸出というようなことを今考えてはおりません。
  79. 穗積七郎

    穗積委員 しかし私はこういうふうに思うのですよ。アメリカの今の経済状態を見ましても軍需生産が戦争がないために、戦争が遠のきつつあるために過剰生産段階に入っておる、重工業または、軍需産業を中心としていわば非常な不況的情勢に入りつつあるわけです。ところで日本アメリカ要求に従って兵力を増強する、その兵力を維持するための軍需生産を始めるということになりますと、それ自身は常に独立の意思を持って動き出すものです。軍隊とか経済というものはそういうものなのです。これはもう今までの日本の過去の経験から見ましてもそうでしょう。従ってそうなりますとその軍需産業というものは、自分の採算を保つためには戦争を欲するか、戦争がどうしてもしかけられないという場合においては武器の輸出を考える。これはもう当然の経済論理として出てくるのです。従ってこういう技術導入して、そうして日本国内において軍需生産を増強せしめようということになれば、その問題を常に考えなければなりません。場合によりますと、この重工業並びに軍需産業の意思が政治の意思を決定することすら出てくるのです。特に資本主義国においては、そういうことは顕著でございましょう。従ってむしろ今はまだこれから産むところの乳飲み子でございますが、それがやがて独立いたしますとそれを保育いたしました親、すなわち政府防衛庁、通産省または外務省を乗り越えて、それ以上の強大なる意思を持つようになってその政府の政策を左右する、リードする結果になることは、資本主義国の過去の例から見ましても、現在のアメリカ情勢から見ましても明瞭であります。特に日本においては、市場の狭い国でございますから戦争を欲するか、戦争によってその軍需産業、重工業の繁栄を望むか、それがどうしても無理でできない場合においては、少くとも輸出はしたい、自分の国は戦争をしないが、第三国で戦争の起ることをむしろ要望する、それが金もうけになるという論理は、これはもうしごく明瞭なことである。   〔発言する者多し〕
  80. 前尾繁三郎

    前尾委員長 静粛に願います。
  81. 穗積七郎

    穗積委員 国際情勢は違いますが、そういう意味で私は実はこの問題に関連して外務大臣には質問をいたしましたが、きょうは、その問題について防衛長官質問するのは初めてで、通産大臣にはまだ質問しておりません。ですから、この技術導入に伴って日本の軍需生産計画というものを持つときに、われわれは深刻にこの問題を考えておかなければならないのですから、それは通産省、外務省の問題だというふうに簡単にお考えにならないで、一つもう少し責任のある答弁をわずらわしたいと思うのです。従って、そういう私の懸念することは単なる杞憂ではない、非常に客観的な論理にのっとっておるものであることをあなたも認識して、そして明確な答弁をしてもらいたいのです。
  82. 船田中

    船田国務大臣 防衛の責任者といたしましては、先ほど来申し上げておりますように、日本の国力、国情に相応する最小限度の自衛体制を整備することに専念いたしておるのでございまして、よその国に侵略をするような、あるいはそういうおそれのあるような軍備を整えるというようなことは毛頭考えておりません。従いまして、技術導入がこの協定締結によって容易になったからといってただいま穗積委員の御心配になるような段階に進むことは絶対にないと私は信じております。
  83. 穗積七郎

    穗積委員 それじゃ具体的に今日の問題としてお尋ねしておきますが、シリアとイスラエルから武器を輸出してもらいたいという強い要望がある。これは外務省がやや世間をはばかってこの問題については慎重に考えなければならぬというので、反対はしないが慎重だというので、やや時間的に抑えておる。ところが三菱を初めとする軍需生産の諸君、重工業生産の諸君は、まず通産省に強く、要望をして、そしてイスラエル並びにシリアに武器輸出をしたいということで強い働きかけをしている事実を、あなたも御存じでしょう。  そこで、防衛長官に伺いたい。ということは、武器輸出を三菱その他の財界の強い要求によって——ひもつきの内閣であるから、そういうことの要求に応ずる危険性は非常に多いのだが、そこで武器輸出をしたとすれば、そのことによって、国際的には、日本防衛庁並びにその指揮するところの軍隊の侵略的性格というものを客観的に判断されます。さらに防衛庁を中心にして計画しているところの日本の軍需生産の性格なり方針というものが、それによって客観的に証明されるわけなのです。今日のシリア並びにイスラエルに対する武器輸出が、一体どういう国際的な影響、外交上の影響を持つかということは、私はここではちょうちょう申し上げません。あなたもこのことは御承知でしょう。だから抽象的でなくて、今日の事態において、今日の三菱を中心とする財界の要望、今日のシリアとイスラエルを中心とする中近東の国際情勢を判断されて、この輸出にあなたは賛成されますか反対されますか、その意思を具体的にはっきり伺っておきたい。
  84. 船田中

    船田国務大臣 この問題につきましては、私は事実をよく承知いたしておりませんから、ここでそれについていいとか悪いとかいうことを軽率にお答えするわけには参りません。
  85. 穗積七郎

    穗積委員 そんな逃げ口上じゃわれわれは納得できない。あなたの考えを聞きたいのです。そんな、聞いておるとか聞いておらぬとかいうことじゃないのですよ。シリア並びにイスラエルを中心とする中近東の国際情勢からながめて、この際武器輸出をすることが適当であると思うかどうかということを聞いている。そんな判断がつかぬで、あなたは軍隊の指揮なんかできますか、長官として。(「所管大臣じゃないよ」と呼ぶ者あり)これは軍隊の性格に関係することなんです。防衛生産計画関係することです。だから聞いている。所管大臣でないというなら、通産大臣を今後軍隊の所管大臣としようじゃないか。武器生産じゃないか。それが答えられぬなら、あなたはこの協定を審議する資格はありませんから、所管を通産省に変えて下さい。そういうことですよ。(「それは無理だよ」と呼び、その他発言する者あり)今日のシリア、イスラエルに対する武器輸出について、日本防衛長官が、態度がきまらないなんという、そんなばかな話はありません。将来のことではない、今日のことです。どうですか。
  86. 船田中

    船田国務大臣 先ほどお答え申し上げましたように、私はその事実を承知いたしておりませんから、従って外務省、通産省の責任者と、十分その事実を確かめました上において適当な措置を講じていきたいと思います。
  87. 穗積七郎

    穗積委員 それでは最後にちょっと申し上げておきますが、この問題は重要な問題であるし、今日の問題である。あなたの責任の問題でもあるから、ぜひ答弁していただきたい。それは外務大臣や通産大臣、総理大臣に御相談の上でけっこうですが、答弁をしていただいた上でないと、この協定の審議はできないと思いますから、さようにお心得下さい。
  88. 船田中

    船田国務大臣 国際紛争の渦中に投ずるというようなことは、私は日本としては絶対になすべきではない、こういう大前提に立ちまして善処して参りたいと存じます。
  89. 田中稔男

    田中(稔)委員 防衛生産ということか平気で言われておるのですが、実は私基本的な疑問を持つのであります。と申しますのは、憲法第九条では、戦争を放棄し、軍備を禁止した規定が明記されておりますが、軍備と申しましても、これは兵員だけの問題じゃない、青年の血潮だけの問題じゃない。どうしてもやはり兵器装備というような物質的な条件が伴わなければ、軍備というものは成立しないことは明らかであります。そうなりますと、憲法第九条の建前から申しますと、これはどうしても防衛生産も禁止されてお参る、こういうふうに解釈しなければならぬ。これは新憲法の制定当時の議会における審議においても、そういう解釈が当然の解釈であった。文理解釈としてでなく、精神解釈として当然そうだというふうに意見が一致しておったということを聞いておるのであります。ところが最近は防衛生産ということが何の疑問もなく言われておる。しかもこれが国内の需要にこたえるだけでなく、今穗積委員質問されましたように、輸出産業としての防衛産業という考え方がある。現にアメリカの手によりまして、域外買付というような形で、どんどん日本兵器弾薬が朝鮮その他に出ていっておることは、周知の事案である。シリア、イスラエルに対してもそういう動きがあります。こうなりますと、結局どうなるかというと、日本が兵力を海外に派遣するという問題と並行して、今度は兵器弾薬をどんどん海外——海外と申しましても、この場合はアジアでありますが、アジアの諸国に送り出す。つまりアジアの兵器廠としての日本というような構想がだんだんとクローズ・アップされてくるわけであります。それでそういうことにつきまして、私は非常に平和に関心を持つ者として不安を感ずる次第でありますが、防衛長官から、現行の平和憲法のもとにおいて、一体防衛生産なんというものは許されることかどうか、このことにつきまして御所見を伺いたい。
  90. 船田中

    船田国務大臣 憲法第九条は、日本の自衛権を否認しておりません。従って自衛権行使のために必要最小限度の防衛生産をするということは、当然憲法九条の禁止するところではない、私はかように考えております。
  91. 田中稔男

    田中(稔)委員 憲法第九条においては、自衛戦争といえどもこれは行えないことになっておるというのが、吉田前首相の解釈でありました。ところで兵器のごときは、一体自衛の目的に使われるか侵略の目的に使われるかということは、これこそけじめがつかぬことでありまして、しかもまた兵器と申しましても、だんだん高度の兵器生産されてくる。もちろんアメリカの方から見ますならばこれは中古兵器でしょうけれども、日本としましてはだんだん、高度の兵器ができてくる。原子兵器を除いて電波兵器から何から生産しますとすると、やがてはやはり非常に高度の兵器が作られる。こういう兵器は、単に自衛の目的のためにその使用が制限されるというような性質のものではないのでありますから、やはり憲法の平和の精神を貫くためには、もう軍備はやらない、従って防衛生産もやらないという基本方針を確立しなければ、現行憲法の精神を守れないと思いますが、それにつきましての御意見はどうでありましょうか。
  92. 船田中

    船田国務大臣 先ほど申し上げましたように、憲法第九条は自衛権を否認いたしておりませんから自衛の行動をし得る、すなわち自衛体制を整備するということのために防衛生産をやることは憲法に違反するものではない、かように信じます。
  93. 田中稔男

    田中(稔)委員 それでは次に伺いますが、防衛長官日本の軍隊の海外派兵という問題についてはどうお考えですか。これはできますか、できませんか。
  94. 船田中

    船田国務大臣 政府は海外派兵というようなことは考えておりません。
  95. 田中稔男

    田中(稔)委員 それでは兵員の海外派兵ができないときに、兵器弾薬の海外派遣——輸出というものは海外派遣ですから、そういうことを認めてよろしいとお考えになりますか。
  96. 船田中

    船田国務大臣 海外派兵と防衛生産でできたものを輸出するということは別だと思います。
  97. 前尾繁三郎

    前尾委員長 岡田春夫君。
  98. 岡田春夫

    ○岡田委員 ちょっとその点はおかしいと思う。防衛生産というものも日本の自衛力の範囲内においてのみ許される、そういう解釈であるから、防衛生産をすることはその限度内においてのみかまわないものである、こういう御解釈であるという御答弁ですね。
  99. 船田中

    船田国務大臣 わが国において今防衛生産をやるということは、結局自衛体制を整備するという趣旨においてやっておるわけでありますから、その自衛体制を整備するということのために防衛生産をすることは憲法違反ではない、かように申したわけであります。
  100. 岡田春夫

    ○岡田委員 ですから私の伺っているのは、その防衛生産生産された品物は日本の自衛の目的のために使われるという意味において、その限りにおいて防衛生産は問題ではないということをあなたは御答弁になったとするならば、その製品が外国に輸出されるということは、憲法上の規定に反するという結果になるのではないか、こういうことを伺っているわけです。おそらく田中稔男君の伺っていることもそういうことです。その点はどのようにお考えになりますか。
  101. 船田中

    船田国務大臣 防衛生産生産品を海外に輸出するということは、それ自体は憲法九条の違反にはならぬだろうと思います。
  102. 岡田春夫

    ○岡田委員 しかし防衛生産の存立の基礎というものは、あなたの御答弁を伺っていると、日本の自衛力のためにのみあり得るのであるから、そういう意味での防衛生産は許されているという解釈である。そういう解釈はわれわれはほんとうはとらない解釈なのです。憲法第九条に規定されているのは、防衛生産自身もいわゆるポテンシャル・パワーとして許されておらないとわれわれは解釈しているのだが、あなた方の解釈によると、そのポテンシャル・パワーというものは日本の自衛力を維持するためにのみ許されて、その限りにおいてのみ防衛生産は許される、こういう解釈以外の解釈はないと思う。ところがその自衛目的以外のために生産されるような、そういう製品がもし外国に事実輸出されたとするならば、それは第九条の規定を越えたことにならないか、そういうことを伺っておるわけです。当然そういうことになりませんか。
  103. 船田中

    船田国務大臣 この生産の問題は、憲法九条の禁止する戦力ということの中には入らないと思います。
  104. 岡田春夫

    ○岡田委員 ですから、生産それ自体を言っているのじゃない。さっきから問題になっているのは、防衛生産が問題になっている。しかし、このことは田中委員に関連して伺ったことですから、次に私の伺いたい点を二、三伺って参ります。  今月のたしか十日に、アメリカの国防次官であるロバートソンという人が来て、あなたは会見をされたはずですが、そのときにあなたは、国防会議構成法案が成立したならば日本で長期防衛計画を作成したい、これについて何分アメリカ側から援助をしてもらいたい、こういうことを申し入れたと伝えられておりますが、そういう事実はございますか。
  105. 船田中

    船田国務大臣 これは相手方の了解を得なければそのときの話の全貌をここにはっきり申し上げることはできません。しかし、私の方から申しましたのは、国防会議法案が今国会にかかっておる、その国防会議が設立された後においては長期防衛計画も立てていきたいと思う。それにつきましては米側から多くの供与兵器装備品をもらわなければならぬが、そういうときにはいずれ具体的にお話いたしますからどうぞよろしくという程度のことは申しました。
  106. 岡田春夫

    ○岡田委員 その長期防衛計画というのはいわゆる今の六カ年計画意味しているのですか、その他のものを意味しているのですか。
  107. 船田中

    船田国務大臣 私のそのときに考えておりましたのは、従来防衛庁が試案として持っておりまするいわゆる防衛六カ年計画を考えておりました。
  108. 岡田春夫

    ○岡田委員 この防衛六カ年計画が完成されるためには、現在ここで審議になっております技術協定との関連において、いろいろな、現在よりもやや高度な技術アメリカから入れて、それを国内生産の面において防衛六カ年計画を達成していこう、こういうお考えのもとに六カ年計画は作られるものでありますか。
  109. 船田中

    船田国務大臣 防衛六カ年計画を立てるにつきまして、防衛生産ということももちろん基礎的な大きな要素として考えていかなければなりません。その防衛生産を育成強化して参りますためには、先ほど来問題になっております技術協定のようなものができまして、そしてアメリカ側からの技術導入あるいは技術上の知識導入することが容易になるということが、日本防衛体制を作る上において非常にいいことであると考えております。
  110. 岡田春夫

    ○岡田委員 最近新聞の報ずるところによると、防衛六カ年計画を根本的に再検討しなければならなくなってきた。その原因の最も大きな一つは、アメリカから日本に譲り渡されるいろいろな兵器が予定通り入っておらないということ。たとえばP2V対潜機というのですか、こういう飛行機があるそうですが、こういう飛行機は三十年度中に二十四機入ることになっておった。ところがいまだに二機しか入っておらないという事実から見ても、これが事実なら六カ年計画は、予算の面から見ても、計画の遂行の面から見ても、現在のところ不可能になってきたということをわれわれ伝え聞いておるのでありますが、そういう事実はございませんか。
  111. 船田中

    船田国務大臣 対潜哨戒機のP2V、いわゆるネプチューンという飛行機は、こちらの期待した時期に、期待しただけの機数が入っていないということは事実でございます。しかしこれにつきましては、その後米側とも折衝をいたしまして、漸次入ってくるようなことになりつつあるのでございまして、この時期的のズレがあったということによりまして、日本防衛計画が根本的に改訂をしなければならぬという段階には達しておらないのであります。
  112. 岡田春夫

    ○岡田委員 国内生産の面においてもF86Fとかその他の国内生産飛行機のコストは非常に高くつく。そのために予算面からも、六カ年計画の遂行が困難であるという事情も聞いておりますが、この点はいかがでございますか。
  113. 船田中

    船田国務大臣 ジェット・エンジンのT33A、F86F、それらの生産につきましては第一次、第二次とも日米の間に協定ができまして、すでに民間会社に注文も出しております。だんだん日本の国産品をもって充当する割合が多くなって参ります。従いまして飛行機全部完成機を供与されておるときと今日とにおいては、その点において、経費の上においても多少は違います。しかし日本防衛生産がだんだん進んで、そしてアメリカから供与された兵器、艦船等の部品はなるべく日本でこれを補修し、また改善をしていくということに進んでいくことが、日本防衛体制を整備する上において、きわめて大切なことと考えまして、そういう方向に進めようとして、今努力はいたしております。しかしそのために今まで持っておりました防衛庁試案の六カ年計画がどの程度に改訂を要するかということにつきましては、今後十分検討をいたしませんと、今のところこれにつきましてどれだけの改訂を要するということを具体的に申し上げるわけには参りません。しかし大きな改訂を要するとは、私は今のところ考えておりません。
  114. 岡田春夫

    ○岡田委員 そうすると、ともかくも現在の防衛六カ年計画の試案は、ある程度の改訂をするにしても、大きな改訂はないと思う、大体こういう御答弁だったと思うのですが、その防衛六カ年計画の骨子がすでにあると思うのです。その防衛六カ年計画の骨子を発表いただきたいと思いますが、いかがでございますか。
  115. 船田中

    船田国務大臣 これは予算委員会、内閣委員会、その他のあらゆる機会に申し上げておりますように、昭和三十五年度、最終年度において達成する目標は、しばしば申し上げておるようにきまっておりますが、しかしその三十二年以降三十五年度にどういう年次計画でやるか、あるいは最終目標として達成する保有すべき艦船、飛行機の種類等についてはまだきまっておりませんので、従ってその詳しい内容をここに御説明申し上げるという段階に達しておりません。
  116. 岡田春夫

    ○岡田委員 きまっておらないといっても、一応試案としてはきまっているのでしょう、案はあるのでしょう。
  117. 船田中

    船田国務大臣 最終目標を申し上げているだけでございまして、その内容についてはまだ具体的にきまっておりません。
  118. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは先ほど私が伺ったように、いわゆる対潜飛行機ですか、P2V対潜機というような飛行機は、三十年度に二十四機入れるというようなことも目標としてなかったのでありますか、どうなんですか。
  119. 船田中

    船田国務大臣 三十年度の計画としては、対潜哨戒機P2V二十四機の供与を受けたいという案がございました。
  120. 岡田春夫

    ○岡田委員 そうすると三十年度の計画は一応はあった、こういう意味でございますか。これは一つの例として対潜哨戒機をあげたわけであります。
  121. 林一夫

    ○林(一)政府委員 P2Vの問題についてお尋ねがありましたので、その点についてお答えいたします。これはおっしゃるように二十四機を予定しておったのでありますが、これが予定通りに入りませんで、現在は六機入っております。将来どうなるかということははっきりわかりませんが、先ほど長官から御答弁があったように、ただ期待ができるという見込みがあるのであります。  さらに六カ年計画と機数の問題についてお話があったと思いますが、この六カ年計画は先ほど長官がお話しになりましたように、三十五年度の計画は再々申し上げているのでありますが、その内訳についてもどういう艦艇を持つとか、あるいはどういう機種を持つとかいう具体的案はないのであります。いろいろそういう点を検討いたしております。従ってP2Vは六カ年計画の中でどういうように考えているかということは検討中で、まだはっきりいたしておりません。
  122. 岡田春夫

    ○岡田委員 また技術協定の問題に戻りますが、技術協定によると、原子力を利用する点についての特許、こういう点は認めないということになっているのですが、これは防衛庁としては今後自衛力を強化するために原子力を使うような軍備の体制というものを考えているのではないか、いわゆる原子力兵器というものを利用するような軍隊の整備というものを考えているのではないかと考えるのですが、この技術協定の場合において原子力、あるいは原子兵器の点についての技術のいわゆる貸与のないということについてはどのように考えておりますか。
  123. 船田中

    船田国務大臣 これは先ほど御答弁申し上げましたように、自衛隊が原水爆を持つというようなことは全然考えておりません。
  124. 岡田春夫

    ○岡田委員 考えておらないとするならば、あなたの方の防衛庁の中に技術研究所というのがありますね。この技術研究所の第一部の中に原子力班というものがあるのだが、あれはどういうことをするのでありますか。
  125. 小山雄二

    小山政府委員 今御指摘の通り第一部にそういう班がございますが、これは原子力被害に対する研究でございます。
  126. 岡田春夫

    ○岡田委員 それだけではないでしょう。防衛六カ年計画が達成されるころには、日本の潜水艦を原子力潜水艦にするという目標で研究をやっているじゃありませんか。そういう事実があるではありませんか。
  127. 小山雄二

    小山政府委員 そういう事実はございません。
  128. 岡田春夫

    ○岡田委員 じゃもう一つ伺いましょう。北海道で上村空幕長がF86Fには原子力兵器が十数個積み得るということを発表しているのだが、あの事実はいかがでございましょうか。
  129. 船田中

    船田国務大臣 上村空幕長はさようなことは申しておりません。これはその当時空幕長がそういうことを言ったじゃないかということで、参議院の予算員会において問題になりまして、従って私直接上村空幕長を呼びまして確かめたのでございますが、今岡田委員の御指摘になったような意味において申したことはございません。
  130. 岡田春夫

    ○岡田委員 それは参議院でわれわれ労農党の木村禧八郎君が聞いたのですが、それ以前に私もあなたに聞いておるのです。そのときにあなたは答弁しなかった。あなたはそういうことは知りませんと言って答弁しなかった。あなたがそういう意味でないというなら、どういう意味で言ったのですか。F86Fには原爆が積めるということを言っておることだけは事実なのです。うそだと思ったらあのとき記者団会見をやった連中がいるのだから、私ははっきり申し上げてもいいですよ。事実上村空幕長というのがこれは言っているのだから。そういう意味で言ったのでなかったら、どういう意味で言ったのですか。あなたはそういう意味で言ったのではないというのだが……。
  131. 船田中

    船田国務大臣 私の上村空幕長から聞きましたところによりますと、新聞記者諸君からいろいろ原爆についての質問あるいはF86Fの性能等について質問があったそうです。そのときに原爆はだんだん小型になりつつある。従ってF86Fも、これはその目方の点から言えば積めないことはないのだ。しかし日本に来ておるF86Fは、原爆を積むような装置も何も全然ないからそれには積めない、こういうことを申しておるのでありまして、主として目方、それから形式、そういう点について説明をした。それがだいぶ誤まり伝えられたのではないか。私はそのとき上村幕僚長からその詳細な報告を聞きましてそういう感じを持っている。従ってその意味のことを木村委員にも答弁しておった次第であります。
  132. 前尾繁三郎

    前尾委員長 岡田君、技術協定の問題を……。
  133. 岡田春夫

    ○岡田委員 もちろん技術協定関係していますよ、どういうように関係しないというのですか、委員長、伺いましょう。
  134. 前尾繁三郎

    前尾委員長 できるだけ簡潔に願います。
  135. 岡田春夫

    ○岡田委員 それじゃ伺いますが、関係があるから私伺っているのだが、いわゆる技術協定日本防衛庁の内部の機構として関係のあるのは技術研究所だと思う。この技術研究所では、防衛六カ年計画関係して五カ年にわたる技術研究の大体のテーマを三月の末に作ったというように私は伝え聞いておりますが、そういうようなテーマあるいは研究の課題といいますか、目標といいますか、あるいは研究体制といいますか、こういうものを三月中に技研が方針を決定されたというふうに聞いておりますが、こういう点はいかがですか。
  136. 小山雄二

    小山政府委員 そういうものをきめておりません。毎年度業務計画的なものをきめて参っておりますが、ただものによりまして非常に長期的な関係研究を要するようなものにつきましては、個別的に長期的な研究のスケジュールは考えておりますが、全般につきまして六カ年計画と合せてそのような計画はきめておりません。
  137. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは伺いますが、相当長期にわたるような研究の目標は相当できているように私聞いております。どういうものを長期にわたる目標としてやっておられるか、こういう点を伺いたいと思うのですが、たとえば三十五トン戦車の問題とか、これは陸幕の関係ですね。あるいはロケット弾の問題あるいは潜水艦の試作、ジェット機の研究、たとえばF86Fからもっと発展さしたものとか、それからGMの研究、こういうただいま例をあげて申し上げたようなものの研究はやっているのではありませんか、どうなのですか。
  138. 小山雄二

    小山政府委員 やっております。
  139. 岡田春夫

    ○岡田委員 じゃあこれは相当長期のものですね。ことし限りのものではないでしょう。
  140. 小山雄二

    小山政府委員 長期的のものでございまして、個別的にあるものは三年のものもありますけれども、四年のものもあります。
  141. 岡田春夫

    ○岡田委員 誘導弾関係については、これはスイスの誘導弾の例だけを中心にしておるのでありますか。アメリカ誘導弾のいろいろな研究を参考にしているのでありますか。これは先ほどから委員長から注意を受けておりますように、技術協定に関する限り私は伺っておるのです。アメリカ関係でこういうパテントを入れてこなければならない問題が出てくるように思うので伺っている。
  142. 小山雄二

    小山政府委員 誘導飛翔体の問題につきましては、ことしの予算並びに国庫債務負担行為におきまして、スイスのエリコン社のものを一通り、これは現物について研究するという意味におきまして購入することになっております。予算上そういうことになっております。ただそれは結局究極の目的は、それはほかに文献その他も各国から集めまして、現物の見本としてやって、将来は爆撃機要撃用のそういうものを日本で作って参る、試作して参るというところまで持っていく意味でありまして、そのスイスのものは研究の中の現物の研究という意味でございます。ただ諸外国その他では文献その他がまだ十分入ってこない、なかなか手に入れにくいという問題がございますが、研究としては全部を対象にして研究しております。
  143. 岡田春夫

    ○岡田委員 アメリカのナイキを入れるお考えはあるのじゃありませんか。
  144. 小山雄二

    小山政府委員 これはこの技術協定によりまして、これができましたあと技術の供与の問題になるわけでございます。われわれとしましてはできればそういうものを入れて、現物について研究してみたいというような希望は抽象的には持っておりますが、今後の交渉その他の問題にかかると思います。
  145. 岡田春夫

    ○岡田委員 たとえば日本防衛庁としてはナイキを入れたい、こういうことになるわけですね。それからスイスのエリコンのものを入れる、両方入れて研究した結果、大体同じような技術程度、一致した点やいろいろな点が出てくるのではないかと思う。そういう点でナイキを入れたことによって日米技術協定の制約を受ける。ところが同じ点の研究、そういうようなものがあって日本側としてはスイスのエリコンによってそのような技術研究をすることによって、日本の独自の試作品を作るというようなことになってくると、その点に関する限り日米技術協定の制約を受けないわけですね。そうすると二つの兵器で同じ点については、日本側は当然日米技術協定の制約を受けるというような点は、いろいろな点で制約を受けるので不利でありましょうから、スイスの面におけるいわゆるエリコンによるところの技術、そちらの方をとって今後の研究を進めるという自由が与えられると私は考えるのです。これはさっきからいろいろな答弁を聞いておってもそういう自由が与えられると思いますが、その点はいかがでございますか。
  146. 小山雄二

    小山政府委員 スイスのものから来るものは全然技術協定関係はないと思います。
  147. 岡田春夫

    ○岡田委員 それから最後に誘導弾関係で伺っておきます。誘導弾日本で作りたいという考えだというように先ほど御答弁があったようですが、たとえば日本が作る誘導弾の基礎になっておるアメリカのナイキ、これなんかにしても、アメリカの要撃あるいは防衛上のために作られたものじゃない。これは敵地を攻撃するための攻撃用の武器であると考える。それを参考にして作る日本誘導弾というものは、当然攻撃用の武器だと思うのだが、この点はいかがお考えになりますか、これは大臣からお答え願います。
  148. 船田中

    船田国務大臣 エリコンあるいはナイキというものは、地上から侵入してくる飛行機を撃退するということを主たる任務といたしておりますから、これは攻撃的の武器ではなくして防衛的なものであるというふうに考えております。
  149. 岡田春夫

    ○岡田委員 そうすると、先ほど要撃上のというお話があったので、あくまで敵地を攻撃するものではないものを作るのだというふうに解釈してよろしいわけですね。
  150. 船田中

    船田国務大臣 その通りでございます。
  151. 前尾繁三郎

    前尾委員長 それでは田中君の船田長官に対する質問を先に……。
  152. 田中稔男

    田中(稔)委員 それでは本協定がかりに成立いたしますと、その効果としてやはり技術上の知識防衛目的のためにどんどん導入されると思います。そうしますとこれはMSAに伴う秘密保護法の対象になるそういう技術士の秘密がだんだんふえるわけです。私どもはこの秘密保証は基本的人権を侵害するという意味において、非常に強く反対してきたのでありますが、そういう結果になりますと、ますます基本的人権が侵害されるというわけであります。今この機会にちょっとお尋ねしたいと思いますが、MSAに伴う秘密保護法によって罰せられた事件というようなものは、一体法の制定以後今までにどの程度ありますか、わかっておりましたら、その件数あるいはその犯罪の種類、そういうことにつきまして御報告願いたいと思います。
  153. 林一夫

    ○林(一)政府委員 ただいま御質問のような事例は一つもございません。
  154. 田中稔男

    田中(稔)委員 今まではなくとも、今度の新協定の結果、防衛上の技術知識導入されて、非常に高度な兵器に関する知識が入ってきますと、勢い秘密保護法違反の事件が多くなると思いますが、防衛長官はどういうお見込みでありますか。
  155. 船田中

    船田国務大臣 この協定ができたからにわかに事犯がふえるというようなことは考えておりません。
  156. 田中稔男

    田中(稔)委員 それでこの協定の第四条によって、アメリカから技術上の知識導入される場合に、その特許料というようなものについては支払いが保障されるというような効果を生ずるわけです。しかもその技術たるや、先ほどからも問題になっておりますように中古技術であります。アメリカの軍需会社ではもう必要でない、そういうような中古の技術日本導入してその特許料を日本が高価に支払う、しかもそれをこの協定において政府が補償する、こういうふうなことになります。こういうことは結局商い特許料を払うことになりまして、これは日本としてはやはり外貨の上から非常に問題でありますし、結局アメリカの軍需生産をやる大きな独占資本の利益に奉仕するという結果になると思いますが、そういうことについて防衛長官はどういうふうにお考えですか。
  157. 船田中

    船田国務大臣 この協定によりまして政府の持っておる特許無償でこちらが使い得るということになり、民間の持っておりますものにつきましては個々の契約によってきまることでございますから、従って今御指摘のように役に立たない技術上の知識あるいは特許でありましたならば、そういうものを導入する必要はないわけです。今の御懸念のような点は私はなかろうと思います。
  158. 岡田春夫

    ○岡田委員 これは重要な問題ですから重ねて伺っておきますが、防衛庁技術研究所の中に原子力班という研究機関がある、これは事実なのです。先ほどの局長答弁を聞いておると、これは人体に関する影響を調べておるのだという答弁です。ところが人体に関する影響なんか防衛庁研究する必要はないでしょう。それは医者がやればよい。何で防衛庁がそんなものを研究するのか、今後原子力兵器をやるための研究の初歩の段階として研究しておるのでしょう。現在五人いるでしょう。その研究所の所員はどういう人たちがやっておるのですか、医者がやっておるのですか、どういう人たちによってやられておるのですか、長官御存じならこの点はっきりお答え下さい。
  159. 船田中

    船田国務大臣 原子力の被害に対する防衛防除というようなことの研究でございます。
  160. 岡田春夫

    ○岡田委員 それはお医者さんですか何ですか。
  161. 船田中

    船田国務大臣 これは資材関係専門家もおり、またお医者も中におります。
  162. 岡田春夫

    ○岡田委員 何人おりますか。
  163. 小山雄二

    小山政府委員 今正確な資料を持っておりませんが、大体五人くらいおります。
  164. 岡田春夫

    ○岡田委員 それじゃ人体の影響ということではなくて、防衛上の見地から、いわゆる再軍備上の見地から見て原子力研究をやっておるのでしょうか。その人体の影響だけでなくて、今後原子兵器をどういうふうに使うかということを研究しておるのでしょう。大臣、そうじゃありませんか。
  165. 船田中

    船田国務大臣 そういうことは絶対にございません。
  166. 岡田春夫

    ○岡田委員 もしそういう事実がある場合には、防衛庁としてはどのようにお考えになりますか。今後ともそういうことは絶対認めませんか。
  167. 船田中

    船田国務大臣 自衛隊が原水爆を持つというようなことは全然考えておりません。
  168. 岡田春夫

    ○岡田委員 その点は明確にしておいていただかなければならない。防衛庁の中に原子力班という研究機関がもうすでにできている。しかももう一つ大臣に伺っておきますが、防衛六カ年計画が達成されるころまでに、日本国内で潜水艦を原子力潜水艦に切りかえるための準備を進めているという事実が上っている。こういう事実はないならないと大臣からはっきりおっしゃって下さい。
  169. 船田中

    船田国務大臣 事実ございません。
  170. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは船田長官の分はいいです。  石橋さんお見えになりましたが、私だけでなく、いろいろ伺う人もおられるようですし、先ほどの委員長との話し合いで、兵器輸出の関係はきょうは私は遠慮し、もっぱら技術協定に直接関係のある面だけ伺うということにしてありますから、兵器輸出については、またあとで国際情勢のときにいろいろ伺いたいと思います。  この技術協定に関連して、この前からだいぶ品題になっている点はこういう点なのです。アメリカからいろいろな技術の供与を受ける。ところがその技術を、従来日本特許法によると公開主義なのですが、アメリカ特許に関しては、この公開主義に制限を加えて非公開にする。そうすると、日本の国民の中でいわゆる発明、発見が行われてその発明、発見がたまたま同じものであった場合において、それは善意の第三者であるところの日本の発明発見家はそれを知らないで公開する場合があり得るわけです。そうすると日本特許法の中で、アメリカ特許に関する場合については制限があるわけですが、それはわからないのですから、そういうことと抵触することによって、そういう同じものが公開されたことに対して、秘密保護法の適用を受けるという答弁防衛庁からあったわけです。それが事実であるかどうかということを調べるために、秘密保護法によってこれを調べると答弁している。そうなってくると、日本の善意の第三者であり、日本のためにやろうとしている日本の発明発見家は、常に秘密保護法の対象として、極端に言えば容疑者として扱われるような危険性が出てくるわけです。こういう点から考えて、この日米技術協定日本の発明、発見を保護するということにはならないじゃないか、こういう点について、大臣としてはどのようにして日本の発明、発見を保護するというお考えをお持ちになっているか、この点をまずはっきり伺いたいということなのです。
  171. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 将来どういうものが入ってくるかということは、今のところわかりませんが、今私が想像しているところでは、秘密にしなければならぬのは相当高度の兵器に関するものでございます。そしてアメリカ自体ももう秘密にしているものであります。ですから、そのアメリカの高度の兵器に関する技術日本で必要があって導入された場合に、それを秘密にすることは、直接には日本に損害を与えない。それからたまたま日本人の中に同じ発明をする人があるとしても、おそらくそういう場合には、いきなりそれを発表することはないと思うのです。それは必ず特許関係になりますから、特許庁に相談されるものと思いますから、十分その辺の調整はつくものと思います。おっしゃるように、いきなりそれが発表され使われて、そうして秘密保護法で処罰されるというようなケースは、事実問題としては起らない、かように考えております。
  172. 岡田春夫

    ○岡田委員 その事実問題の扱いとしては、あなたのお話はよくわかりますが、その発明、発見というものは、日本の国民の権限としてあるわけです。そうすると、その人がたとえば特許庁の方に話があって、これは同じものだから、あなた遠慮してくれないかと言われたって、おれの研究だからおれは発表する自由があると言って発表する自由、発表する権利を持っていると私は思うのだが、その点はいかがでございますか。
  173. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 そういうふうに主張される人があれば、それは一応そういうことになりましょう。しかしこれは先ほど申しましたように、非常に高度な兵器に関する研究でありますから、今の状況で、日本も将来大へんな兵器研究するようにならぬとは言えませんし、そういう時期が来れば別問題でありますけれども、現状においては、私どもの取扱いとしては、そういう高度の兵器研究をして秘密保護法と抵触するようなものが、日本に今すぐに出てくるとは思いません。ただあるのは、戦時中等にできたあるアイデアの程度のもので相当いいものがあるようであります。これはアメリカあたりでもかなり尊重しているようでありますが、これもただアイデアの程度でありまして、実現されておるものは今のところはない、今後においても、当分そういうものは出てこない、かように考えております。
  174. 岡田春夫

    ○岡田委員 高度のものもたしか入ってくると思うのです。しかし今度の技術協定によって入ってくるものは、高度のものばかりとは言えないのです。たとえばF86Fという一台の飛行機を作るのに、パテントが一万種類もあるというのです。日本の国民をそうばかにしてはいけないと思うのだが、その一万種類もあるパテントの中には、日本だって独自に作れるような研究があるわけです。そういう研究がたまたま出てきた場合に、何も高度で、日本の現在の技術陣容でできないものじゃありません。そういうものが出てきた場合に、日本特許は自分の発明を守るため、そればかりじゃないのですよ。話し合いで解決ができない場合がある。こういう特許アメリカの制約を受けないで、自分で研究したのであるから、これは自分としてはどんどん発売するのだ——。これは商売になってくるわけですからね。そうした場合に、この日本の発明家は、決して簡単に折れないで、特許庁が何と言おうと出すのだ、おれの独自の研究で出すのだと言った場合には、これを押えるところの法律的な権限は何もないはずである。これをどんどん発売するところの権利は日本の国民に与えられている。  それからもう一つ、逆にアメリカ側から言うならば、日本が独自で考えたにせよ何にせよ、それと同じもの、秘密として日米協定によって抑えられていたものがどんどん出されていく、そうするとアメリカの方は秘密保護法を適用してもらいたいと言うでしょう。その場合にどうするかというのです。私の伺っているのはこういう意味なのです。実際の問題として石橋長官は、相当高度なものだから、実際にはないだろうというお考えだけれども、実際に往々にしてあり得る問題なのです。あり得る問題だから、現実の問題としてこういう場合にどうするのだということを伺っている。この前までは特許庁長官がいろいろ答弁をしておったけれども、この問題は日本の国民の権利義務に関する点で、重要ですから、大臣として特にお答えを願って、今後の方針をはっきりしておいていただきたいという意味で私は大臣に来ていただいたわけです。決してそんなむずかしい問題じゃないのであります。
  175. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 具体的の問題については、特許庁の長官等の専門家からお答えした方が適当と思います。ただ、今お話の点は、秘密ということはあらゆる場合にいいことではありませんから、おもしろくないに違いありませんが、これはやむを得ないだろう、また日本にとってそう実害はあるまいということで、よろしいと考えております理由は、先ほど申しましたことを繰り返すことになりますが、とにかくアメリカ自体が秘密にしているものなのです。アメリカでもそうむちゃくちゃに秘密にされたら、これはほかの発明家がみな苦情を言うべきはずのものが、あるものは秘密にされておる。その部分だけが日本に入った場合に、日本義務向うと同じ歩調をとろうというだけでありますから、私はそれは非常に限られたものと考えます。ことに兵器に関する問題ですから、日本でそういうものが特に発明されて、日本人の権利に非常な障害を起すということは、実際上起らないだろう、こういう大体の判断をしておるわけであります。それ以上の具体的のことは、なお専門研究しております特許庁の方からお答えいたします。
  176. 岡田春夫

    ○岡田委員 もう一点大臣に伺っておきたいのですが、そういう場合に日本の発明家の創意工夫というものは、日本政府としては守らなければならないのですね、これは言うまでもないわけですね。そうするならば、たまたまそういう事実があった場合に、秘密保護法の適用をするというようなことは、かりそめにも考えるべきではないと私は考えるのですが、そういうことによって押えて、容疑者にするかのごとき態度をとるということは、断じて許さるべきではないと私は考えるのだが、この点大臣いかがでございますか。
  177. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 それはおっしゃるまでもなく、日本人自身の発明をそういうことで抑えるということは、これはよろしくないことでありますから、できるだけないようにする。しかしさっき申しますように、それがいきなり発明者が危険にさらされるようなことは事実問題で、これはみんな特許関係することで、いずれ特許庁の審査を経るということなのでありますから、その場合に適切に処理すれば、御心配のようなことは事実上起らない、かように考えております。
  178. 岡田春夫

    ○岡田委員 しかし実情論だけではいかない世の中ですから、これは十分御注意を願わなければならぬ。しかもこういうことを通じて、日本の発明、発見までがアメリカに押えられるという危険性が非常にあるわけですから、これは十分御注意を願いたいと考えているわけです。  もう一点は、先ほどちょっと問題になったのですが、われわれの憲法の解釈によると、第九条によっては、いわゆる自衛力というものも、防衛生産というものも憲法違反じゃないかという解釈をとっている。ところが先ほど船田長官答弁によると、自衛力のためにその限界内においての防衛生産は許される、こういう答弁がありました。そうすると、自衛力の限界内における防衛生産でできた生産物である兵器、これが外国に輸出されるということになれば、これは船田長官の憲法解釈によってしても、外国に兵器を輸出するということは、防衛目的日本の自衛目的のためではないのでありますから、その限りにおいては憲法違反であると解釈せざるを得ないと思うのだが、この点はいかがでございますか。
  179. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 憲法論は私不得手でありますから、これは他の方にお願いいたしますが、私はこう考えております。  これは自衛隊がある限りはやはり防衛生産というものは要るだろうと思います。これが否定される場合は別ですけれども、これがなければおもちゃの兵隊になってしまいますから、とにかく防衛生産というものは、要るだろう、こう思いますことと、それから輸出する場合は、これは商品ですから、兵器として輸出するというよりは、商売で輸出するということであります。ただしこれは同じ商品であっても、ある程度世間でにらまれますから、たとえばシリアに何を輸出するというような、特にその場所が国際関係上紛争でも起しているようなところであると、これは特別の考慮をしなければならぬ、かように考えております。
  180. 前尾繁三郎

    前尾委員長 それでは先日の資料の報告を願います。井上特許庁長官
  181. 井上尚一

    ○井上政府委員 きのう松本委員からの、外国人が日本に有する特許に対する実施料の支払い、これの国別の状況はどうなっておるかという御質問につきまして、数字について申し上げます。  きのう申しました通り、昭和三十年におきまする特許に対する実施料の日本から外国に対する支払いの合計額は千四百万ドルと申しましたが、これは正確に申しますと千四百七十六万八千ドルという数字であります。これ以外に特許権ではございませんで、外国のノー・ハウに対しましてのこちらの報酬といいますか、これが全部で約二百万ドル、合計しまして千六百八十万ドル見当であります。この千六百八十万ドルの分を国別に申しますと、米国が一千七十八万ドル、西独が二百九十万ドル、英国が七十九万ドル、デンマークが六十五万ドル、スイスが六十万ドル、イタリアが三十九万ドル、フランスが二十七万ドル、スウェーデンが十一万ドル、オランダが十万ドル、以上ノー・ハウに対する報酬中には、外国からの技術者招聘に要しました費用なんかも含んでおります。大体以上であります。
  182. 岡田春夫

    ○岡田委員 これで終りますが、最後に一点石橋さんに伺います。先ほど兵器は商品だから輸出してもいいじゃないかというのですが、商品でないものがありますか。あなたそんなことを言われるなら、たとえば日本で原爆を作って外国に出したら商品でしょう。そうじゃありませんか。原爆を作っていいじゃないかということにはなりませんか。あなたの御解釈はそれと同じことじゃありませんか。兵器だってこれから日本国内で研究しようとしている。さっき防衛庁誘導弾まで作ると言っているのです。それから原子力研究もやっているのです。そうなるとそこでできた品物は商品ですよ。商品だから何を出してもいいなんて言ったら、憲法なんかはあったものじゃありませんよ。こういう点については商品だからという御解釈だけでは私は納得はできません。しかしこの兵器輸出の関係は、私はきょう触れないということを委員長に約束いたしましたので、この次の外務委員会には必ずこの兵器輸出の関係について伺いますから、御出席を願いたいと思います。いろいろな点で石橋さんに伺いたい点が実はあるわけですが、私はこれだけで留保しておきます。
  183. 前尾繁三郎

  184. 穗積七郎

    穗積委員 実は直接この協定関係がないのですが、この協定に従って日本でいわゆる防衛生産が助長されるわけです。そういう計画を持つわけです。そうしてそこでできたものを外国に輸出する。技術そのものではございません。それについてははっきり質疑いたしました。あなたに特にお尋ねしたいと思ったのは武器輸出の問題です。完成品または未完成品ですが、特に最近イスラエル、シリア等から要望もあり、それから日本の業界、特に三菱を中心とする業界でそれを出したいという意向もあるようです。それはこの前外務大臣にお尋ねいたしましたら、国際外交上影響があるからそういうことについては慎重にやりたいというので、やるとも言わず反対とも言われな  い。まあ慎重に取り扱っていきたいという重光さんの非常に慎重なる御答弁でありました。そこで心配になりましたからさっき船田防衛庁長官にお尋ねしたのです。これは特に通産省関係のことでもあるというので、比重を通産省におかけになっている。そうなると私ども心配になるのは、いささか理屈を言うようですが、初めは軍隊にしましても、それから防衛産業にしましても、保育をする、ナーシングをしている間は、これは自分の子供だから自分の思う通りになる。ところがこれがだんだん成長してきますと、すでにナース以上の力を持つ。すなわち逆に政府以上の能力なり独自の意思を持つようになって、ひとり歩きをするだけでなしに、さらに育ての親を左右するようになる。従って特に日本のように国内市場も狭いし、そのほかの市場も非常に限られている重工業並びに軍需産業にあっては、そういうようにだんだん成長して参りますと、もう現に成長しなくても、だんだん戦争を欲するか、輸出を欲するか、こういうことにならざるを得ないと思うのです。これは今これからやろうとするときの計画者であるあなた方の意思とはまた別途の意思を持つ。これが客観的な論理だと思うのです。そういう意味でそれに対しては、単に輸出の商品である、重工業なり軍需産業もまた輸出産業の資格を持ち得るのだというような面でお考えにならないで、より重要なことは、外交と戦争の問題と結び合せて、むしろその問題については輸出計画なり許可を考えていただかなければならぬ。そういう趣旨でまず当面としてはイスラエル、シリアに対する兵器輸出に対して、政府の一部では慎重論があり、また党内の一部では非常な促進論があり、それからそういう空気でまだ決定しておられないようだが、業界からは強い要望もあるようにわれわれは聞いておるわけです。そういうことですから、通産大臣としてこの問題をどういうふうに処理されるおつもりであるか、その基本方針を伺いたい、それが一点。  第二点としては、今申しましたように、初め作るときの親は、武器輸出をどんどんさせて、武器輸出をもって国際情勢に介入していくことは考えておらぬから心配するなとおっしゃっても、これに対する客観的な、具体的な措置をとっておられないと、その当時の設立者の意思とは別個な意思が独立して危険な方向へ動く危険がありますから、従ってそういう心配がないということのためには、あなたや重光さんの主観的なお気持だけではなくて具体的な措置が必要だと私は思うのです。だからそういう二点について安心のできるような御答弁をしていただきたい。そういうことを期待いたします。いかがでございましょうか。
  185. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 第一の当面シリア等へある種の武器輸出の話は、これは新聞などには大きく出たようでありますが、私どもはまだその当事者から何らの相談を受けておらない。三菱がこれに関係しておって、三菱が作っておるアメリカの企画による砲弾か何か知りませんが、それを輸出したいというので、アメリカ側に何らかの折衝をした、これは技術上の最初の提携の約束によって相談したのかと思います。それだけであります。通産省へもそれを輸出したいから何とかしてくれという話は全然来てない。これが一つと、それから貿易でありますから、貿易に入ってくるときには武器であろうと何であろうと商品になりますけれども、しかしながら商品としてもあまり好もしい商品じゃございませんから、これはそう奨励するつもりはありません。それから現在のシリア等の問題は、問題になりましたときには、外務省と十分話し合いをしましてこれによってわずかばかりの砲弾か何かを輸出して、それで国際関係を悪化する、あるいはあそこはほかの貿易も日本はありますから、相手国を刺激してその貿易の方を妨げるということも好ましくありませんから、通産省としては、非常に厳重に、なるべくなら武器などは輸出したくない、こういう立場で行きたいと思います。将来の問題につきましてはなかなか大きな問題で、わかりませんが、さっき申しましたように、日本として現状においてもなかなか武器生産はできないのです。もう少しやらなくちゃ困るなと思うほどできないのです。それは実際国内の自衛隊そのものが確立しなければ、国内に需要がない武器などはとても話にならない。初めから輸出を目的にして武器を作るなどということは不可能な話です。ですから、もし防衛生産を確立するとすれば、国内の需要を相当興さなければなりませんが、これは実際少々でありますから、実は産業として成り立たないというような状況でございます。むろん輸出を目的にして防衛生産を興すというような考えは全然持っておりません。現在の政府の方針あるいは国民の感情から申しても、そういうことは成り立たないと私は考えております。
  186. 穗積七郎

    穗積委員 こまかいことはきょうは委員会の情勢からあまり適当でないと思うので、ただ最後にあなたの決意を促して、念を押しておきたいのは、この協定によって起るあなたの御所管の日本特許権保護の問題でございますが、これについて一つ万全の処置をおとりになって、法律上の問題だけでなくて行政処分にも関係することでありますから、その点についてはあなたの御信念をこの際伺っておきたいと思うのです。こまかいことはすでに今までの審議で事務当局の方からもいろいろ伺いましたが、大臣の総括的な御決意を、日本特許権保護に関して表明をしておいていただきたい。
  187. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 先ほども申しましたように、実際問題としては、何の支障を起さないと信じておりますが、しかしむろん日本人の発明の奨励ということはぜひ必要でありますから、その点はお話のあるまでもなく、日本特許権あるいは発明の奨励ということについては、万全の処置を講じたいと思っております。
  188. 田中稔男

    田中(稔)委員 一点だけ通産大臣にお尋ねしたいと思います。今、穗積委員の御質問に答えて、武器弾薬というようなものは好ましい商品とは思わない、その輸出を奨励するというようなことはしたくないという御答弁でありました。私は非常にいい御答弁だと思います。私はその点についていろいろお伺いしようと思いましたが、その御答弁があれば、私はそれでいいと思います。いいと思いますが、大きな問題でありますから、関連をいたしまして、お尋ねしたい。  というのは、御承知のごとく、現行憲法第九条では、戦争を放棄し、軍備を禁止するということを明文に書いてあるわけでありますが、軍備と申しましても、ただ兵員の問題だけではないと思うんです。兵員の問題と同時に、兵器装備の問題が伴わなければ、軍備は成り立たないと思う。しかも今日は高度に発達した兵器では、原子弾頭をつけた大陸間誘導弾というようなものができているそうでありまして、これは全く無人兵器なのです。今日は、ある意味においては、無人兵器の時代なのです。だからどんなに兵隊の方を押えましても、そういう高度に発達した兵器さえあれば、どんな侵略でもできるということになるわけですから、今日は、丘員の問題よりも、むしろ兵器装備の問題の方が、再軍備するかしないかということを決定する上においては重要だと私は思うわけです。ところが憲法の九条にはそういうことは書いてないものだから、防衛生産防衛生産といって今日少しの疑いもなくこういうことが行われ、しかもこの防衛生産がだんだん高度の兵器を作るようになる。ここに大きな抜け穴があるわけです。実は現行憲法制定の際にいろいる議論があったそうでありまして、防衛生産も禁止するというのがこの九条の精神であるということだったそうであります。そうだとしますと、あなたは、おれは通産大臣だから、生産だけやっておればよろしい、商売だけやっておればよろしいということで、憲法の解釈なんかについては関知しないとおっしゃられればそれきりでありますけれども、あなたは将来はあるいは総理大臣になられるかもしれません、ある意味においてはそのメンタルニアストにもなるわけでございますから、そういった場合に憲法をどう御解釈なさいますか。防衛生産ということは現在の憲法第九条の精神解釈としては禁止されていると思う。その点についての御答弁一つ聞きたいと思います。その上で総理として推薦するかしないかをわれわれはきめなければならない。
  189. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 しろうとがうっかり憲法論をやりますとしくじりますから、そういうことには触れたくないのでありますが、しかし防衛生産防衛一般と切り離されたものとは思いません。だから憲法第九条にも関係があると私は思います。とにかく防衛力を持つ限りは防衛生産が必要である。しかしながらこれは、ほんとうは私の個人的意見を述べれば、防衛生産を大いに伸ばして、武器は精鋭なものがいいと思うのです。最近の例の誘導弾なんぞの写真を見ましても、そんなえらいものじゃないのです。遠くの敵を侵略するというほどの偉力があるものとは思いませんが、防衛上には確かに役に立つだろうと思う節が多少ございます。なるべく人命を損せずに防衛する、なるべく人手を使わずに防衛するということで、これは機械、武器というものは相当りっぱなものを持っておる方がいいと思います。これは私の個人的な意見になりますから、これでどうこうということではありませんが、私の所管に直接関係すれば、さっき申しましたように、そういうものを輸出をしよう、輸出産業の中軸を防衛産業でやろうなどということは考えておりません。
  190. 田中稔男

    田中(稔)委員 もう一点。そこでこの現行憲法の第九条においては、自衛戦争は禁止されていないという解釈があるわけです。政府はそういう解釈です。でありますから、自衛のためならば敵の基地を侵略してもよろしいと言われる総理もあるし、それからまた自衛のための軍隊なら、どんなに高度の装備を持った軍隊を持ってもよろしいというような議論にも発展するわけですね。ところが吉田前首相のごときは、逆に自衛戦争もこの第九条は禁止しておるというような御答弁もずっと前にはあったわけです。(「それは古い」と呼ぶ者あり)古いと言ったってそういうことがあった。そこでお尋ねしたいのだが、かりに第九条は自衛のための軍隊、自衛のための戦争は容認しておるとしましても、常識としておのずから限度があると思うのです。だから兵器装備のごときもだんだん高度化していって、原子兵器なり電波兵器まで装備するということになりますと、ちょっと常識として自衛の軍隊とは言えないわけです。そういうことについて通産大臣の所感としては、兵器生産防衛生産をやられていく場合に、そんな無限に高度な兵器生産をやってよろしいと日本の憲法の立場からお考えになっておるかどうか、その点を一つお伺いいたします。
  191. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 これは私からお答えするのは少しおかしいと思うのですが、しかしこれはさっき申し上げましたように、防衛をする場合には、昔のように小銃をかついだ兵隊ではできないだろうと思います。ですから相当高度の丘器を持つ必要は防衛上確かにあると思います。(「無限」と呼ぶ者あり)無限ということはわかりませんが、これは世界の進運に従って、それにおくれないだけの科学的な兵器を持つということは、必要であろうと私個人としては考えます。
  192. 前尾繁三郎

    前尾委員長 これにて本件に関する質疑は終了いたしました。  これより討論に入ります。討論の通告があります。順次これを許します。  田中稔男君。
  193. 田中稔男

    田中(稔)委員 私は日本社会党を代表して、本協定に反対の討論を行いたいと思います。(拍手)  わが党はMSA協定そのものに反対いたしましたので、その論理的な帰結として、当然に本協定にも反対するわけであります。質問の際にもいろいろ申し上げましたが、現行の憲法第九条の精神解釈としては防衛生産も禁止されておる、こういうふうに解釈するものであります。原子弾頭をつけた大陸間誘導弾というようなものがすでに製作されておる今日であります。これは全く無人兵器であります。だからある意味においては今日は無人兵器の時代に入った。だから軍備を禁止するという憲法の建前を貫くためには、ただ兵員を問題にするだけでは足りないのでありまして、どうしてもやはりその軍備の物的な基礎になりますところの兵器生産ということも禁止されていなければならぬと思うのであります。だから防衛生産という現象が何の疑いもなく口にされておるという現象が、私は非常に奇怪なことであると思う。さらに輸出廃業としての防衛産業というようなこともよく言われる。元大蔵大臣をしておりました、また通産大臣をしておりました自民党の池田勇人君のごときも、そういうことを非常に強調しておる。そうして現にアメリカの域外の買付によりまして、日本生産されました兵器弾薬は、あるいは朝鮮、あるいはインドシナ、アジアの各国に送り出されまして、それらの諸国の内乱を激化するために使用されておる。また最近はシリア、イスラエル方面から日本兵器の買付の話があります。どの程度これが商談として具体化しているか私は詳細は存じませんけれども、日本の軍需生産の会社の一部には、やはり商談に応じて大いに売り込もうというような考えもあるのであります。こういうことが個々の商社の商取引として考えられている間はまだいいのでありますが、私のおそれるのは、アメリカ日本を共産圏諸国に対する侵略の基地として築き上げるだけでなく、日本をアジアにおける兵器廠として育成しよう、そして日本の、アジアにおいてただ一つの工業国としての工業能力を軍需生産の方に向けよう、こういう意図があるのでありまして、池田勇人君のような人がまた通産大臣になりましたら、石橋さんと違って、アメリカの意図に乗って日本の産業の重点を防衛生産に置くというようなことにでもなり、その結果できた兵器弾薬を大いにアジア諸国に売り出してもうけようというようなことになりましたならば、これはまた大へんなことになると思う。  そういう意味で、私どもはアメリカから防衛目的のために特許権技術上の知識導入することには絶対反対であります。先ほど条約局長は、本協定導入協定でなくて、ただ導入された特許権だとか技術士知識保護するための協定だと言われました。しかしこの協定はその効果においては結局導入を容易ならしめ、やはり導入促進することになるのでありますから、私はそれは同じことだと思う。保護協定であると同時に導入協定になると思う。その意味において防衛生産そのものに反対するわが党の立場からこの協定には絶対反対であります。  さらに少しこまかいことを申しますと、F86、T33だとかいうジェット機は、現在部品アメリカから入れて組み立てているのでありますが、いずれは日本部品生産し、完成品を日本で作ることを考えられておりますが、そうなります場合に本協定の適用が考えられるわけであります。ところがこういうジェット機はもうすでにアメリカでは中古品、時代おくれであります。前に朝鮮戦争で使い古した大砲などをたくさん日本にくれたことがあります、またフリゲート艦などもアメリカからくれておりました。これはひどいものでありましたが、日本の自衛隊がだんだん装備が高度化して、F86、T33というものをよこすようになったのであります。しかしどこまでいきましても、結局アメリカから見れば中古品、二流品で装備されるというわけであります。しかもそういうような中古品、あるいはそれを生産するための中古技術というものが、日本といたしましては当面とにかく必要だという立場から、そのアメリカの中古技術保護する、また中古技術を入れるために、高い使用料、特許料を支払う、こういうことになりますと、結局アメリカの軍需生産をやります独占資本、つまり死の商人の利益をわれわれが守ってやる、それに奉仕するようなことになって、日本としては私は国益を損する、こう思うのです。そうまでしてわれわれは日本において防衛生産をする必要はない。しかもまた、そういうことのために日本技術の発達が阻害されるというような結果にもなりますので、そういうことについては先ほど岡田委員質問のときにも詳細に述べられたところであります。そういうことになるなら、日本科学技術の発展の上から非常に憂うべき結果をもたらすと私は思うのであります。  さらにまた、MSAに伴う秘密保護法というのがあります。今日までこの秘密保護法によりまして処罰された事犯はないということでありましたが、しかし、今後本協定によりまして特許権だとか技術士知識が盛んに導入される、しかもそれが秘密を伴うということになりました場合には、その秘密をあばいたというようなことのために、今度は秘密保護法の適用を受けて処罰されるというふうな事件がたくさん生ずるだろうと思うのです。今日の日本におきまして、民主化に対する逆コースというものが非常に顕著ではありますけれども、しかしなおわれわれが比較的明るい気持で生活できますのは、日本国内にあまり秘密のベールがないからであります。ところが、すでに秘密保護法が制定されておる。これが本協定の実施に伴いましてますます強められる方向に改悪される危険があるだろうと考える。この想像は決して根拠がないものではないと思う。一体一国の秘密というのはどこから始まるかというと、防衛から始まる。軍隊があると、軍隊に伴って軍機というものができる。軍機を守るために、今度はそれに関連しまして、国民に対して秘密の厚いベールでずっとおおわれるというようなことになります。そうなりますと、まだ民主主義が日本においてそれほど根深く確立されていないときに、非常に厚い秘密のとびらがたれられるならば、民主主義なんというものは二葉にして枯れてしまう危険がある。しかも今日の政府がやっております政治の方向というものは、全く民主主義に対する逆コースでありますから、その際に特にそういう憂慮を深くするものであります。  こういうふうなことをいろいろ考えまして、私どもはこの協定に対しまして反対の意思を表明するものであります。  私の討論を終ります。(拍手)
  194. 前尾繁三郎

    前尾委員長 並木芳雄君。
  195. 並木芳雄

    ○並木委員 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となっておりますいわゆる技術協定、正式に申しますと、防衛目的のためにする特許権及び技術上の知識交流を容易にするための日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定及び議定書締結について承認を求めるの件、これに賛成する討論をいたしたいと思います。  この協定は今事新しく出てきたものではございません。いわゆるMSA協定を結ぶときに、その第四条に源を発せられておるものでございます。MSA協定の第四条では「両政府は、いずれか一方の政府の要請があったときは、防衛のための工業所有権及び技術士知識交換の方法及び条件を規定する適当な取極であって、その交換促進するとともに、私人の利益保護し及び秘密の保持を図るものを作成するものとする。」という旨が表示されておるのであります。ですから、この協定是か非かの討論をするということは、結局MSA協定是か非かの討論をしたときにこれはさかのぼるものでございます。私どもはMSA協定に賛意を表しておりますので、その中に源を発するところの、すなわち、第四条によって出てきたところのこのたびのこの技術協定はあまりに当然なものであり、少しも事新しく取り立てて言うべきものでないということをまず申し上げたいのであります。  ことにMSA協定の第一条では、アメリカ政府から装備とか資材、役務その他の援助提供されることになっておりますが、その提供された装備に関するいわゆる防衛秘密というものは、すでに秘密保護法ができておるのであります。しかしながら、いわゆる技術士知識あるいは特許権、そういうものに対しては、いまだこれを保護する法律ができておりません。そういう法律を作るためにもこの母体となる協定を結ぶことが必要なのであります。われわれは、この協定を結ぶことによって、アメリカ防衛装備資材の製法、用法などの導入、及びその結果としてわが防衛力の強化と防衛産業の育成を期待することができる、これは一大飛躍的進歩であると言わなければならないと思うのであります  結局、この協定に反対の立場に立つものは、日本防衛力を不必要なものとしている根拠にあるものでありますから、自衛力増強反対、憲法九条によって再軍備は禁止されているというような論点に立つならば、いわゆる坊主憎けりゃけさまで憎いのであって、もちろんMSA協定も反対、それから出てくるこの協定にも反対ということになるわけであります。ですから、それはそれとして私は理論が一貫していると思うのです。しかし、私どもは、自衛力というものは、漸増していってみずからの国の防衛だけはせめて日本の力でやりたい、こういう自主独立の精神に燃えているものでございますから、そのワン・ステップとしてこの協定というものがぜひ必要だと思うのです。これによって高度のいわゆる技術、そういうものの導入されることを願ってやみません。  まことに残念ながら、今のところ日本防衛産業というものは、はなはだ程度が低くして、アメリカにこちらから導入さしてやるような技術の持ち合せがないということは遺憾でございます。従って、当面はアメリカの方から技術導入をすることになるのはやむを得ないと思いますが、将来は、日本としても優秀なる技術、そういうものを発達せしめて、そうしてほんとうにこれが双務協定である実を遺憾なく発揮していきたい、こういうような意欲を持っているものであります。従って、この協定は、まず伸びんと欲するものは屈せよではありませんけれども、何分にも経済力の弱い日本としては漸次自衛力を増強していく以外ないのであって、しばらくはアメリカ援助を求めなければならない。これは日米の安全保障協定精神によっても、またMSA協定精神によっても残念ながらやむを得ない状況だと思っているのであります。ですから、このたびのこの協定アメリカから押しつけてきたものではございません。日本からむしろ進んでMSA協定四条に基くこの協定を結んで、そうして一日も早く先方のよき技術導入していきたい、こういう点から見ても、決してアメリカのいわゆる下請機関というようなものでない、もっと自主性を持っているものであるということを申し上げることができると思います。あるいはアメリカから来るものはセコハンかもしれません。これも残念です。これは社会党さんから御指摘になられるかもしれません。われわれは中古品だとか廃品などのようなものを押しつけられることは望みません。これも先ほど申し上げました通り、漸次凌駕していく以外はないのでありまして、三流から二流へ、二流から一流へと進んでいくところに、われわれの目標があるのでございますから、その目標に向って進む一里塚であるという点において、この協定に対して私は賛意を表するものでございます。(拍手)
  196. 前尾繁三郎

    前尾委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採決いたします。防衛目的のためにする特許権及び技術上の知識交流を容易にするための日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定及び議定書締結について承認を求めるの件を承認すべきものと議決するに賛成の諸君の起立を願います。   〔賛成者起立〕
  197. 前尾繁三郎

    前尾委員長 起立多数。よって本件は承認するに決しました。  なお本件に関する報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  198. 前尾繁三郎

    前尾委員長 御異議がなければさように決定いたします。     —————————————
  199. 前尾繁三郎

    前尾委員長 この際参考人招致の件についてお諮りいたします。ただいま当委員会において審議中の日本国フィリピン共和国との間の賠償協定の批准について承認を求めるの件につきまして、学界、経済界等より参考人を招致し、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  200. 前尾繁三郎

    前尾委員長 御異議がなければさように決定をいたします。  なお参考人の人選、招致の日時につきましては、委員長及び理事に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  201. 前尾繁三郎

    前尾委員長 御異議がなければさように決定いたします。     —————————————
  202. 前尾繁三郎

    前尾委員長 なお外務大臣に対する質疑があるそうでありますから、これを許します。戸叶里子君。
  203. 戸叶里子

    戸叶委員 外務大臣がお見えになっておられますので、大切なことですからこの際伺っておきたいと思います。それは去る十六日に黒潮丸が拿捕されました。このことに対しまして、外務省として一体どういうような方法を講じられたかを伺いたいと思います。それはなぜかと申しますと、せっかく河野代表がソ連へ行かれまして、本年度の出漁の問題等で話し合いをつけてこられたにもかかわらず、政府の手続の怠慢あるいは話の行き違い等から、こういうような問題がまた起きるといけないと思いますので、この点はっきり確かめておきたい。
  204. 重光葵

    ○重光国務大臣 その問題につきましては、今水産庁と外務省との間で検討いたしております。と申しますのは、むろんこれは河野代表とも連絡してやっておることでございます。そしてこれに対してどういう処置をとるかという決定にはまだ立ち至っておりませんが、十分この問題を解決するように努力をいたしたい、こう考えております。大体においていろいろな点も考えてみますと、その間に行き違いもあるのではないかというふうにも見られます。すべて事実を明らかにした上で処置いたしたい、こういうふうになっております。
  205. 戸叶里子

    戸叶委員 十六日からだいぶ日がたっておりますけれども、事実を明らかに、どういうふうな方法でやっていらっしゃるのですか。ソ連側に問いただすとか、あるいはどういうふうな方法でやっていらっしゃるのですか。
  206. 重光葵

    ○重光国務大臣 今申したような方法で、これは水産関係でございますから、水産庁と連絡をして努力いたしておるわけでございます。
  207. 戸叶里子

    戸叶委員 今度の行き違いは、外務大臣としてお考えになるのはどういうところにあったとお思いになるのですか。制限水域の中へ入るための許可証を持っておらなかったというところにあるとお考えになるかどうか、この点をお伺いいたします。
  208. 重光葵

    ○重光国務大臣 それらの点を今調査をいたしておる次第でございます。
  209. 戸叶里子

    戸叶委員 それでは伺いますが、河野代表がことしの出漁に対しては、ソ連との話し合いが大体制限水域の問題と、それから日本側からの許可証を持って、そしてさらにソ連からそれに裏書きをしてもらうような必要があるということと、それからこの漁獲最の問題、こういう三つの点で今年度の出漁の話し合いがついた。こういうふうに私どもは新聞その他でわかっておりますけれども、この点はいかがでございましょうか、念のためにもう一度伺っておきたいと思います。
  210. 重光葵

    ○重光国務大臣 大体水域は、お話のようにソ連側で言っておった水域のようでございます。それから漁獲量もお話のように私どもも了解いたしております。その他のことについては話し合いは大体そういうことであったと思っております。その他のことについては特に報告に接しておりません。
  211. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、今度の黒潮丸の捕獲された理由は、やはり許可証を持っていなかったためと見るのが妥当ではないかと思いますが、この点はいかがでございますか。
  212. 重光葵

    ○重光国務大臣 目下調査中であることを先ほど申した通りであります。
  213. 戸叶里子

    戸叶委員 河野代表が来られるまでは、あとの出漁を一応とめておおきになるのでしょうか。それとも河野代表は二十五日までに帰られないようですけれども、その前に出漁を許されるのでしょうか。この点をお伺いいたします。
  214. 重光葵

    ○重光国務大臣 その点は水産庁と、つまり農林省と十分打ち合せをしなければなりません。私一人で確定的なことは申されませんが、大体差しつかえないと認められるものは、十分にその前でも出漁して差しつかえないようにいたしたいとは考えておりますが、今相談をしなければなりません。
  215. 戸叶里子

    戸叶委員 出漁させる場合には、やはり許可証を出した上で出漁されないと、また問題を起すようなこともあると思いますけれども、この点についてはいかがお考えになりますか。
  216. 重光葵

    ○重光国務大臣 その点は当局者である水産庁側とよく打ち合せをいたしてやりたいと考えております。
  217. 戸叶里子

    戸叶委員 それではこの次水産庁と一緒に伺いたいと思います。
  218. 前尾繁三郎

  219. 田中稔男

    田中(稔)委員 新聞によりますと、鳩山総理は必要があるならばモスクワや北京に出かけて、そうして日ソ、日中の国交回復の交渉の任に当ってもいい、こういう趣旨の言明があったようであります。重光外相としてはそういう首相の御答弁に対してどういうふうにお考えになりますか。
  220. 重光葵

    ○重光国務大臣 私もけさほどそれを新聞の議会記事として承知をいたしております。十分総理の意見をも確かめました上で、私の御答弁をいたすことにいたします。
  221. 田中稔男

    田中(稔)委員 今は飛行機が非常に発達しましたので、昔と違って一国の総理や外務大臣がもう自由自在に国と国との間を飛び回っているようなわけで、ことにダレス長官なんかしょっちゅう世界を回っていることは御承知の通りです。重光さんもこの前はアメリカに行かれましたから、私は一つ総理でなくとも、総理は御不自由な点もありまするし、重光さんも幾らか御不自ですけれども、それでも一つ外務大臣として積極的にソ連や中国に乗り出していこうというようなお考えはありませんか、お尋ねいたします。
  222. 重光葵

    ○重光国務大臣 お話の点を十分考慮いたさなければ御返事はできません。が、むろん外務大臣であろうがだれであろうが、今そういう旅行に便利な時代でありますから、労をいとうべきものではないということは重々承知をしております。十分考慮をしてそういうことに処したいと思います。
  223. 田中稔男

    田中(稔)委員 河野農相がモスクワへ行かれた、その場合これは問題が漁業交渉だというので所管大臣ということで行かれたと思うのでありますが、結果を見ればやはりこれは日ソの国交回復にも問題が発展しておるわけであります。そのことは当初から予想されたことなのであります。聞くところによれば、河野農村に対しては漁業問題以外絶対にタッチしてはいかぬということを何か言い含められたということを聞きましたけれども、そういうことはとてもできないことであります。そういう予想があったとすれば、河野農相がモスクワへ行くのは筋違いであって、やはり外交全般について政府の責任の地位にあるあなたが私は行かるべきだったと思うのであります。それが行かれなかったのは、交渉がなかなかむずかしいというので、責任を転嫁されたとも私は見られるし、またいろいろな党内の事情もあったと思いますが、そのことにつきまして率直な御所見を承わりたい。外交のことに責任があるあなたがおいでにならぬで、河野農相が出かけていき、しかも結果においては国交回復に重大な関連のある話し合いをされておる、ブルガーニン首相にも会われておる。そういうことは結果として見ればどうもあなたの失態ではないかと私は思っておりますが、その御所見を承わりたいと思います。
  224. 重光葵

    ○重光国務大臣 この点は前に明確に御答弁しておる通りに、漁業問題について、漁業に責任を持っておる閣僚が出たというわけでございまして、むろん私が出ていくことも差しつかえはございません。私が漁業の問題をやれないということもないわけでございます。しかし御承知の通り、一般日ソの関係はロンドン交渉でやっておりました。そこで特別の問題については特別の関係を持ち、知識を持っておる者が行くことがいいという関係で、今まで通りの処置になったことは御承知の通りであります。
  225. 田中稔男

    田中(稔)委員 最後に、これは直間でなく御要望として申し上げます。新聞ではあるいは外務大臣がかわるのじゃないかというような下馬評、評判もいろいろあります。しかしこれは単なる世上のうわさだと思うので、現在外務大臣としてのその職にあるあなたでありますから——最近の新聞報道でありますが、重光外相もいよいよ日ソの国交回復について踏み切られたというようなことを書いております。今まで日ソの国交回復については、あなたは総理の方針に対して幾らかじゃまされるような、消極的な態度を常にとっておられた、こういうふうな世評が一般に行われておる。私どももそういうことについてたびたびお尋ねしましたけれども、いよいよあなたもこの際日ソの国交を周期に回復すべしという御意見におなりになったということでありますから、私はこれは非常に国のためにけっこうなことだと思います。でありますから、この際あなたが外務大臣であられる間に早く日ソの国交の回復を実現して、あなたの外相としての一つの業績にもしていただきたいと思いますから、必要ならばモスクワにも飛んでいっていただきたい。総理と御一緒でもよろしい、あなた一人でもよろしいが、そのくらいの勇気を出していただきますことを切にお願いいたす次第であります。一言要望いたしておきます。
  226. 菊池義郎

    ○菊池委員 関連して。昨日政務次官や局長にもお伺いいたしまして御答弁を得ませんでございましたが、河野全権は与えられた権限の範囲を逸脱したといいますか、一般の平和交渉に関することをかれこれ一時間半にわたってブルガーニンと話しておるのでございます。これはわれわれといたしましては、大いにやるべし、与えられた権限外の話も日ソ交渉の端緒を開くためにはちっとも差しつかえない。そういう意味におきまして河野代表の権限の逸脱、こういうことはちっとも差しつかえないと思うのでありますが、外務大臣といたしましては、こういう点を是認せられてよろしいと思うのでありますが、これについて御意見を承わっておきたいと思います。
  227. 重光葵

    ○重光国務大臣 政府代表を派遣する場合任務ははっきりきめております。それに関連をしていろいろ話が出ることも、これはあり得ることでありますから、よくその御報告を聞いてみたい、こう今思っておるわけであります。
  228. 菊池義郎

    ○菊池委員 それから河野代表はブルガーニンから領土問題についてもいろいろと話をされ、南千島のごときは当然にソ連領土であるべきであると言われて一言の答弁もしないのでありますが、こういう点について大臣と河野代表と領土問題についても何か話し合いがあったのでございましょうか、どうでしょうか。
  229. 重光葵

    ○重光国務大臣 領土問題は御承知の通りロンドン交渉でずっとやってきたのであります。そしてまたこれに対して政府の方針また与党の方針あるいはまた反対党の方針の大体は御存じの通りでございます。
  230. 菊池義郎

    ○菊池委員 それからこれもきのう答弁が得られませんでございましたが、ソ連との国交が回復した後において一たん結びました漁業条約を、アメリカ、カナダ、日本、ソ連、四カ国の会議に移して日本に有利なようにこれを改めることができないものか、われわれはそういう構想を持っておるのでありますが、外務大臣はこれに対してどういうお考えでございましょうか。御意見を伺っておきたい。
  231. 重光葵

    ○重光国務大臣 漁業問題について関係国との間の調整をしなければならぬことは当然のことでございます。そういうことが機会あるごとに行われておるわけでございますから、今特に日本アメリカ、カナダとの間に特別の問題について話し合いをするという、案を持っておるわけではございません。
  232. 菊池義郎

    ○菊池委員 これからの平和交渉は、われわれは日本でやるべきだと考えておるのでありますが、大臣はやはりロンドンを選ばれるおつもりでありますか。それから全権は松本君にきめるおつもりでございますか。
  233. 重光葵

    ○重光国務大臣 事態の発展するに従って、そういうこともよく考えてみ  たいと考えております。
  234. 前尾繁三郎

    前尾委員長 次会は公報をもってお知らせいたします。  本日はこれにて散会いたします。   午後一時四十分散会      ————◇—————