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田中(稔)
委員 私は
日本社会党を代表して、本
協定に反対の討論を行いたいと思います。(拍手)
わが党は
MSA協定そのものに反対いたしましたので、その論理的な帰結として、当然に本
協定にも反対するわけであります。
質問の際にもいろいろ申し上げましたが、現行の憲法第九条の
精神解釈としては
防衛生産も禁止されておる、こういうふうに解釈するものであります。原子弾頭をつけた大陸間
誘導弾というようなものがすでに製作されておる今日であります。これは全く無人
兵器であります。だからある
意味においては今日は無人
兵器の時代に入った。だから軍備を禁止するという憲法の建前を貫くためには、ただ兵員を問題にするだけでは足りないのでありまして、どうしてもやはりその軍備の物的な基礎になりますところの
兵器の
生産ということも禁止されていなければならぬと思うのであります。だから
防衛生産という現象が何の疑いもなく口にされておるという現象が、私は非常に奇怪なことであると思う。さらに輸出廃業としての
防衛産業というようなこともよく言われる。元大蔵大臣をしておりました、また
通産大臣をしておりました自民党の池田勇人君のごときも、そういうことを非常に強調しておる。そうして現に
アメリカの域外の買付によりまして、
日本で
生産されました
兵器弾薬は、あるいは朝鮮、あるいはインドシナ、アジアの各国に送り出されまして、それらの諸国の内乱を激化するために
使用されておる。また最近はシリア、イスラエル
方面から
日本の
兵器の買付の話があります。どの
程度これが商談として具体化しているか私は詳細は存じませんけれども、
日本の軍需
生産の会社の一部には、やはり商談に応じて大いに売り込もうというような考えもあるのであります。こういうことが
個々の商社の商取引として考えられている間はまだいいのでありますが、私のおそれるのは、
アメリカが
日本を共産圏諸国に対する侵略の基地として築き上げるだけでなく、
日本をアジアにおける
兵器廠として育成しよう、そして
日本の、アジアにおいてただ
一つの工業国としての工業能力を軍需
生産の方に向けよう、こういう意図があるのでありまして、池田勇人君のような人がまた
通産大臣になりましたら、石橋さんと違って、
アメリカの意図に乗って
日本の産業の重点を
防衛生産に置くというようなことにでもなり、その結果できた
兵器、
弾薬を大いにアジア諸国に売り出してもうけようというようなことになりましたならば、これはまた大へんなことになると思う。
そういう
意味で、私どもは
アメリカから
防衛目的のために
特許権や
技術上の
知識を
導入することには絶対反対であります。先ほど
条約局長は、本
協定は
導入協定でなくて、ただ
導入された
特許権だとか
技術士の
知識を
保護するための
協定だと言われました。しかしこの
協定はその効果においては結局
導入を容易ならしめ、やはり
導入を
促進することになるのでありますから、私はそれは同じことだと思う。
保護協定であると同時に
導入協定になると思う。その
意味において
防衛生産そのものに反対するわが党の立場からこの
協定には絶対反対であります。
さらに少しこまかいことを申しますと、F86、T33だとかいうジェット機は、現在
部品を
アメリカから入れて組み立てているのでありますが、いずれは
日本で
部品を
生産し、完成品を
日本で作ることを考えられておりますが、そうなります場合に本
協定の適用が考えられるわけであります。ところがこういうジェット機はもうすでに
アメリカでは中古品、時代おくれであります。前に朝鮮戦争で使い古した大砲などをたくさん
日本にくれたことがあります、またフリゲート艦なども
アメリカからくれておりました。これはひどいものでありましたが、
日本の自衛隊がだんだん
装備が高度化して、F86、T33というものをよこすようになったのであります。しかしどこまでいきましても、結局
アメリカから見れば中古品、二流品で
装備されるというわけであります。しかもそういうような中古品、あるいはそれを
生産するための中古
技術というものが、
日本といたしましては当面とにかく必要だという立場から、その
アメリカの中古
技術を
保護する、また中古
技術を入れるために、高い
使用料、
特許料を支払う、こういうことになりますと、結局
アメリカの軍需
生産をやります独占資本、
つまり死の商人の
利益をわれわれが守ってやる、それに奉仕するようなことになって、
日本としては私は国益を損する、こう思うのです。そうまでしてわれわれは
日本において
防衛生産をする必要はない。しかもまた、そういうことのために
日本の
技術の発達が阻害されるというような結果にもなりますので、そういうことについては先ほど岡田
委員の
質問のときにも詳細に述べられたところであります。そういうことになるなら、
日本の
科学技術の発展の上から非常に憂うべき結果をもたらすと私は思うのであります。
さらにまた、
MSAに伴う秘密
保護法というのがあります。今日までこの秘密
保護法によりまして処罰された事犯はないということでありましたが、しかし、今後本
協定によりまして
特許権だとか
技術士の
知識が盛んに
導入される、しかもそれが秘密を伴うということになりました場合には、その秘密をあばいたというようなことのために、今度は秘密
保護法の適用を受けて処罰されるというふうな事件がたくさん生ずるだろうと思うのです。今日の
日本におきまして、民主化に対する逆コースというものが非常に顕著ではありますけれども、しかしなおわれわれが比較的明るい気持で生活できますのは、
日本の
国内にあまり秘密のベールがないからであります。ところが、すでに秘密
保護法が制定されておる。これが本
協定の実施に伴いましてますます強められる方向に改悪される危険があるだろうと考える。この想像は決して根拠がないものではないと思う。一体一国の秘密というのはどこから始まるかというと、
防衛から始まる。軍隊があると、軍隊に伴って軍機というものができる。軍機を守るために、今度はそれに関連しまして、国民に対して秘密の厚いベールでずっとおおわれるというようなことになります。そうなりますと、まだ民主主義が
日本においてそれほど根深く確立されていないときに、非常に厚い秘密のとびらがたれられるならば、民主主義なんというものは二葉にして枯れてしまう危険がある。しかも今日の
政府がやっております政治の方向というものは、全く民主主義に対する逆コースでありますから、その際に特にそういう憂慮を深くするものであります。
こういうふうなことをいろいろ考えまして、私どもはこの
協定に対しまして反対の意思を表明するものであります。
私の討論を終ります。(拍手)