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1956-05-11 第24回国会 衆議院 外務委員会 第42号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年五月十一日(金曜日)     午前十一時三分開議  出席委員    委員長 前尾繁三郎君    理事 石坂  繁君 理事 北澤 直吉君    理事 須磨彌吉郎君 理事 高岡 大輔君    理事 穗積 七郎君 理事 松本 七郎君       伊東 隆治君    植原悦二郎君       大橋 忠一君    菊池 義郎君       並木 芳雄君    福田 篤泰君       大西 正道君    田中 稔男君       戸叶 里子君    細迫 兼光君       森島 守人君    岡田 春夫君  出席国務大臣         外 務 大 臣 重光  葵君  出席政府委員         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君         特許庁長官   井上 尚一君  委員外出席者         防衛庁課長         (長官官房法規         課長)     麻生  茂君         専  門  員 佐藤 敏人君     ――――――――――――― 五月九日  委員江崎真澄君、福永一臣君、松田竹千代君、  大西正道君、田中稔男君、戸叶里子君、福田昌  子君及び和田博雄辞任につき、その補欠とし  て松岡松平君、坊秀男君、横井太郎君、横錢重  吉君、田中武夫君、古屋貞雄君、風見章君及び  有馬輝武君が議長指名委員に選任された。 同 日  委員坊秀男君、松岡松平君、横井太郎君、風見  章君及び古屋貞雄辞任につき、その補欠とし  て福永一臣君、江崎真澄君、松田竹千代君、福  田昌子君及び戸叶里子君が議長指名委員に  選任された。 同月十日  委員有馬輝武君、田中武夫君、福田昌子君及び  横錢重吉辞任につき、その補欠として和田博  雄君、田中稔男君、古屋貞雄君及び大西正道君  が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 五月十日  原水爆実験中止に関する陳情書外十五件  (第六五一  号)  同外一件  (第六九九号)  同  (第七二七号)  対中、ソ交渉促進に関する陳情書外五件  (第六五三号)  同(第六九七号)  同  (第七二五号)  北洋漁業制限措置撤廃に関する陳情書外一件  (第六七二号)  北洋漁業安全操業確立に関する陳情書外二件  (第六七四号)  同外六件(第  七〇六号)  同  (第  七三一号)  対中、ソ交渉促進等に関する陳情書外一件  (第六九  六号)  日、ソ交渉促進に関する陳情書  (第六九八号)  太平洋地域原水爆実験中止に関する陳情書外  二件(第七  〇〇号)  同外一件  (第七二六号) を本委員会参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  防衛目的のためにする特許権及び技術上の知識  の交流を容易にするための日本国政府とアメリ  カ合衆国政府との間の協定及び議定書締結に  ついて承認を求めるの件(条約第一四号)  国際情勢等に関する件     ―――――――――――――
  2. 前尾繁三郎

    前尾委員長 これより会議を開きます。  防衛目的のためにする特許権及び技術上の知識交流を容易にするための日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定及び議定書締結について承認を求めるの件を議題といたします。  質疑を許します。石坂繁君。
  3. 石坂繁

    石坂委員 前会協定内容について逐条的にお伺いしかけて、第二条の点を一部伺ったのでありますが、順次なおお伺いしたいと思います。  この第二条の条文のうちに「単に情報として技術上の知識提供し、」ということがうたってありますが、この意味はどういうふうに解釈すればよろしいのでしょうか。
  4. 下田武三

    下田政府委員 単に情報として技術上の知識提供すると申しますことは、その技術情報を使用するために提供するのではなくて、技術の進歩をお互いに助けるために参考としてこういうことがあるということを知らせたり、あるいは相手側が何かの計画を立てようという場合に、やはり計画立築上参考として知らせるというように、直ちにその技術情報を使用するということ以外に、相手方に提供することを意味するものでございます。
  5. 石坂繁

    石坂委員 なお同条に「その知識内密に知らされたものとして、取り扱い、」こういう言葉がありますが、この意味もあわせて伺っておきたいと思います。なおこの点は防衛秘密としての取扱いということと同じことになるのでしょうか。
  6. 下田武三

    下田政府委員 その点につきましては全然違うわけでございまして、ここで内秘に知らされたものとして取り扱うと申しますことは、主として私法上の保護の問題からでございます。ある技術士知識を持っておるその人の利益保護しようという観点から、内密にするということでございまして、前会御説明いたしました第一条の防衛上の秘密保持の要件、その防衛上の秘密ということは全然別個の観念でございまして、防衛上の秘密ということはセキュリティを加えるという観念でございますが、ここで申します内密にするということは、原文を見ればおわかりになります通り、ディスクローズド・イン・コンフィデンスという言葉を使っておりまして、セキュリティとは全然無関係な、私人利益保護するために設けておく、こういう観念でございます。
  7. 石坂繁

    石坂委員 その技術士知識内密に知らされたのであるかどうかということを、一体一般人はどういうふうにして識別することができるかという問題が出てくるのではないかと思うのであります。と申しますのは、第三条の規定で、こういう内密に知らされた知識と同様のことをわが国国民発明いたしまして、その特許出願等をいたしました場合に、それをどういうふうに一体国内で取り扱われることになりますか。これは特許出願する場合の国民権利義務に大きな影響があることだと思いますが、その点いかがでありますか。
  8. 下田武三

    下田政府委員 第二条の問題として御説明いたしますと、第二条は、一方の政府他方政府に対して内密に知らせるということの規定でございまして、受け取る方は政府でございますから、政府限りで持っておればいいわけでございます。従いまして一般国民とは無関係政府が保持しておられるいう関係でございまして、普通の人が内密であるかどうかということを知ろうか知るまいかという機会が生じないわけであります。
  9. 石坂繁

    石坂委員 その場合に、一般国民は知りませんから特許出願等は自由にできるわけでありますね。
  10. 下田武三

    下田政府委員 それは政府が持っておりまして内密にしておりましても、ほかの国民が全然独立に同じような発明をいたしたというようなときは、これは全然別問題であります。それ以外の場合には、向うの政府内密にしておるものを、こっちの政府がやはり内密にしておるという関係でありますから、政府内密にするという約束に反して他の人に漏らすということはないわけであります。御指摘のような事態は起らないわけであります。
  11. 石坂繁

    石坂委員 漏らさなくても発明をする場合は考えられると思うのですが。
  12. 下田武三

    下田政府委員 仰せの通り独立発明するということはあり得るわけでございまして、その場合には技術情報がもし特許権になっておりますならば、あるいは特許出願をしておるというようなことがございますと、これは特許法によりまして先願主義になります。でございますから政府の持っておる秘密情報がまだ特許権になっていないという場合には、私人独立発明したものを先に特許出願いたしますと、そちらの方がやはり優先的に勝つということに相なります。
  13. 石坂繁

    石坂委員 先ほどの御説明で、この内密にされたものの通報政府から政府に対してやる、こういう御説明でありましたが、政府から政府通報するといたしましても、具体的にその通報を出す当該政府の係といいますか担当の官庁があろうと思いますが、日本の国内的に申しますと、それは特許庁が受けるのか、あるいは防衛庁が受けるのか、あるいは外務省が受けるのか、どういうことになりますか。
  14. 下田武三

    下田政府委員 この協定防衛目的のために全体が締結されておるものでございますから、この内密にされたる情報というのは、防衛関係意味内密ではございませんにいたしましても、直接に受け取るのはやはり防衛庁と相なると思います。
  15. 石坂繁

    石坂委員 第三条、「特許出願対象たる発明」云々という言葉がありますが、それを秘密に保持するというのは一体どういうことになりますか。わが国にこういう特許出願対象となったものを秘密に保持するというような国内制度がありますかどうですか。あるいは他の目でもこういう同様の取扱いを受けておる国がありますかどうですか。
  16. 下田武三

    下田政府委員 わが国は戦前は秘密特許制度がございまして、陸海軍の国防上の秘密に必要のあると認めるものは全然知らされないで、特許庁にただ隠されておるという状態であったのでございますが、御承知のように占領中に全部そういう制度が解消を命ぜられまして、それ以後はもう秘密特許制度は全然ないということに相なっております。しかしアメリカを初め多くの国は秘密特許等秘密制度を持っておりまして、ただ米国のはまた特有でございまして、厳密に申しますと秘密特許ではないのでございます。政府がこの発明防衛上非常に役に立つ発明であると考えますと、アメリカ政府はその私人から権利を譲り受けまして、そしてそういう防衛上役に立つ秘密発明というものは、すべて米国政府の手に移してしまうのでございます。今度のこの協定の第三条の規定は、アメリカ政府がそのようにして米国政府の千に移した秘密発明日本政府提供しようという場合の規定でございます。そこで秘密特許制度の廃止をいたしました日本といたしましては、何らかの取りきめをいたしませんことには、その米国秘密に持っております発明技術上の知識というものの保護ができないわけでございます。そこでこの第三条に関連いたしまして、詳しくまた附属議定書規定いたしておるのでありますが、要するに日本でもアメリカ扱いを受けておると同じような扱い技術士知識に与えようということでございます。本来特許技術の発達のために考えられた制度でございまして、特許出願がありますと、その出願者権利保護すると同時に、その出願公告をいたしまして、広く一般人にこういう発明があるということを知らせまして、その発明を土台にしてまた新たなる発明を積み重ねていこうという制度でございますけれども、この場合には、アメリカ制度にならいまして、そういう出願がありましても特許公報公告をいたさないということにいたしたわけであります。特許公報公告をいたさないのでありますから、いつまでたちましても特許権は与えられないわけであります。そういうようにして異例の措置をとったことにしたわけであります。
  17. 石坂繁

    石坂委員 第四条に入りますが、この第四条には所有者明示または黙示同意なしに使用された場合の規定が(a)の(ii)に出ておるようでありますが、一体こういう場合があり得ますかどうか、私ははなはだ疑問に思っておるわけです。その点と、なおさような場合におきまして、補償責任分担ということが第四条の(a)の(ii)にうたわれておるようでありますが、もし技術士知識所有者同意なしにこれを使用いたしたといたしますれば、これは一つ権利侵害不法行為ということになると私は思います。結局第四条のこの規定は、国内的にいいますと民法七百九条の不法行為に対する損害賠償規定をなしたものであるかどうか、本文では補償という言葉を使い、コンペンセーションという言葉が使ってあるようでありますが、不法行為の場合であるとするならば、損害賠償ということにならなければならぬと思います。これに類似の問題は、先般水爆の実験の問題につきまして、当委員会におきましても不法行為になるかどうかということにつきまして、いろいろ談論がかわされておることは御承知通りでありますが、私は、この場合においては、当然不法行為としての損害賠償規定だ、こういうふうに理解すべきではないかと思います。そうしなければ私有の権利者保護に十分でないい、欠くるところがあるのではないか。補償という場合と——不法行為に対する損害賠償ということになると、当然にこちらの方から請求できるということになりますが、これについてどういうふうな見解を持っておられるか。
  18. 下田武三

    下田政府委員 第四条の規定は、技術上の知識提供するという提供行為についての規定ではないわけでございまして、提供するということはこの協定の他の条項にあるわけでございます。でございますから、御指摘のように所有者同意があるかないかを問わず、そういうことが書いてありますと、いかにも個人の所有権侵害しまして、無理やりに提供させるというようにとられますが、実は提供自体は本協定の他の条項によるのでありまして、提供された場合において、ただその補償の面だけを規定いたしましたのが第四条でございます。従いまして、第四条の(a)と(b)と二項がございますが、(a)は提供行為政府を通じて行われた場合ございます。(b)はその国民相手国政府に直接提供した場合でございます。その提供原因は第四条以外の条項によって生じておるわけでございます。   〔委員長退席高岡委員長代理着席〕 そうして(a)の場合におきましては、つまりアメリカ側がその知識所有者補償金を払っておる場合に、他の原因によりまして日本政府にその情報が伝達された場合には、この一たんアメリカ政府米国人所有者に払いました補償金日米両国政府でどういうように分担すべきかということを規定いたしたのでございます。この補償責任分担に関しまして、後に問題になります技術財産委員会等で討議いたしまして、政府にこういうように補償責任分担されたらよろしいでしょうという勧告をいたす場合もございます。また技術財産委員会にかけることなく、政府間で初めから取りきめを結んで、このように補償責任分担しようという取りきめをいたす場合もございます。要するに提供行為自体はこの条では問題にいたすのではなくて、ただ補償責任分担について規定いたしましたのが(a)項の規定でございます。それから(b)項の方は、アメリカのたとえば、ゼネラルエレクトリックとかいう国民または私立会社が、日本政府の要請によって技術提供した場合、その場合における補償の問題を規定したものでございます。その場合には、日本はその国内法令、つまり日本自身民法商法等日本法令に基きまして、日本所有者であったならばこういう補償をするであろうというところの補償を、ゼネラルエレクトリックなり、あるいはアメリカ私人に与えればいい、ここに迅速かつ正当なと書いてございますが、あまりおくらせてはならないことにはなりますけれども、日本政府としては日本民法商法に従って、あたかも日本人に払うと同じ補償をしてやればいい、そういうことに相なっておりますので、御指摘のような不法行為に対する損害賠償責任ということよりも、普通の契約に基く補償、そういう観念でございます。
  19. 石坂繁

    石坂委員 その点がどうも十分納得がいかないのですが、第四条の(a)の二項には、単に情報提供ということでなしに、使用するという場合のことを書いてある。それが所有者明示または黙示同意なしに使用された場合には、当然その所有者権利侵害、国内法的に申しますならば、民法七百九条を適用した損害賠償の問題が発生し得ると思いますが、重ねてこの点についての御見解を承わりたい。
  20. 下田武三

    下田政府委員 たとえば緊急事態の場合を考えてみますと、契約でカバーされておりませんような緊急事態契約ではこういう目的のために使用するというようなことがきめてありましては緊急事態の場合に全然契約のカバーしてないような使用をする、そういうような場合には、やはり損害賠償責任の問題も入って参ります。そうしてその損害賠償責任の問題も、日本民法一般原則によって処理する、そういうことに相なります。
  21. 石坂繁

    石坂委員 その補償の場合に支払う金は、円払いでやるのか、ドル払いでやるのか、その点一つ……。
  22. 下田武三

    下田政府委員 これは円でいいわけでございます。そうして、円で受けました補償アメリカ人が本国へ送金したいというような場合には、やはり普通の送金の場合と同じように、為替管理法その他の日本法令の適用に従って行うということに相なるわけでございます。
  23. 石坂繁

    石坂委員 第五条でありますが、第五条の規定は、こういうような技術上の知識について、他方の国に無断で使用させる、こういう意味でしょうか。あるいはまた無断で使用させるという場合に、有償で使用させるか、無償で使用させるか。   もう一点、ついでに第五条関係でお伺いしておきますが、こういうような技術士の保養について、「確立された利益」という言葉を使ってありますが、かような場合に私人の確立された利益ということがあり得るかどうか、その点はどうですか。
  24. 下田武三

    下田政府委員 防衛庁の方から…。
  25. 麻生茂

    麻生説明員 第五条は、両政府間におきまして、他方政府が所有しており、ますような技術士知識あるいは発明を、防衛目的のために使用する、いうことがきまりました場合に、その使用する場合の条件は無償であるという意味でありまして、この規定によって相手国政府無断で使用させるという権利を設定したものとは解釈しておりません。  それから、先ほどの御質問にありました「確立された利益」と申しますのは、たとえば共有関係のような場合が一応考えられるだろうと思います。その発明について共有者がございまして、たとえば米国政府と、そういう例があるかどうかわかりませんが、仮定の例といたしまして、ゼネラルエレクトリック共有している発明についての特許をしておりまして、日本政府に貸すことについては、たとえばゼネラル会社はその特許の実施については承諾を与える。しかし応分の報酬はもらいたいという場合があり得るだろうと思います。そういう場合、政府のその発明についての持ち分と申しますか、そういうものについてはただと思いますが、ゼネラルエレクトリック会社のそれに対する利益というものは、考えてやらなければならないというような問題が起り得ると思います。
  26. 石坂繁

    石坂委員 第六条、技術林産委員会規定があるのでありますが、これはどういう人が任命されることが予想されておるのか。なおこの条文によりますと、「委員各一人(各二人以上とすることができる。)」という規定があるのであります。これは一人にするのか、あるいは二名以上にされるのか、あるいはこの委員会はどこにおかれるのか、またその費用はどういうふうにして支弁されるか、こういうことをお伺いしておきたいと思います。
  27. 下田武三

    下田政府委員 技術財産委員会には「各一人(各二人以上とすることができる。)」とございますが、ただいまのところ二人以上とするように大体考えておりまして、どういう人が委員になるかにつきましては、これはやはりたとえば防衛目的のためにする特許関係の仕事でございますので、特許庁及び防衛庁の方に委員になっていただく方がいいと考えております。委員会をどこに設けるのかというお問いでございますが、これはおそらく東京に設置されることになると思います。また委員会の経費はどういうように支弁されるかという点でございますが、これは委員会を設ける場合も、結局防衛庁なり特許庁なりの庁舎内で場所を提供していただきまして、そこで会合する。また委員には公務員たる特許庁防衛庁適任者にお願いするわけでございますから、別に報酬等の問題も起らないわけでございまして、結局委員会の準備のために使う紙であるとか、鉛筆であるとか等は、関係庁庁費でまかない得るわけでございますので、特別にこの委員会のための予算措置ということは必要ないと考えております。
  28. 石坂繁

    石坂委員 第七条(b)の末項に「支払及び裁定の額を評価すること。」とありまして、ペイメンツ、アウォーズ、こういうふうな言葉を使ってあるようでありますが、この両者の区別が私はわからないのでありますが……。
  29. 下田武三

    下田政府委員 支払いと申しますのは、契約によりまして、ロイアリティを払うというような、合意に基く一定額支払い、あるいは一台作った場合にはどういう率で払うというような 定率の支払いということを意味するわけでございます。裁定と申しますのは、先ほど申しましたような第四条のような場合、その他そういう契約上の基礎に基いて一定額または一定率を払うということではなしに、緊急目的所有者同意を得るいとまなくして使用した、先ほど御指摘損害賠償の請求を受けたような場合、そういう場合に裁定いたしまして、当事者の意思に基かないで、上から裁定いたしまして、この額をお払いなさいといって払う場合、それが裁定でございます。
  30. 石坂繁

    石坂委員 大体よろしゅうございます。   〔「休憩々々」と呼ぶ者あり〕
  31. 高岡大輔

    高岡委員長代理 暫時休憩いたします。    午前十一時三十分休憩      ————◇—————    午後零時八分開会
  32. 高岡大輔

    高岡委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  国際情勢等に関する件についての質疑を許します。松本七郎君。
  33. 松本七郎

    松本(七)委員 日ソ交渉に関しまして、特に漁業交渉を中心にして急転面下妥結したということが新聞に報道されておるのでありますが、まだ新聞の報道もいろいろまちまちであって、はっきりつかめないところもございます。従いまして今まで河野代表から報告のあった範囲で、質問に入る前に外務大臣の方からできるだけ詳細の御報告をお願いしたいと思います。
  34. 重光葵

    重光国務大臣 日ソ漁業交渉の御質問でございました。今日までの経過を私どもが公けに得ておる電信報告の資料に基いて申し上げます。  わが方代表交渉地のモスクワに着きましたのは四月二十七日ございました。すぐ翌四月二十八日から先方との接触が始まりました。そして四月二十九日には、すでに第一回の総会が開かれました。この総会におきまして、わが方からはわが方の漁業協定案交渉目的であります海難救助協定、その海難救助に関する協定案というものをわが方が提出しました。わが方の漁業協定に対する草案を提出したのが二十九日であります。  それから五月三日に第二回の会議が開かれました。その第二回の会議において、これらの日本側の提出した草案については、おのおの委員会を開いて検討をしよう。検討しようが、さしあたってソ連側の気のついたことを言えば、その案にはサケマス漁業に関することになっておるが、それを漁業一般の調整にしたらよかろうという意見ソ連側が吐きました。サケマス漁業に関することになっておる理由は、御承知ソ連側の公海の制限案ですが、それにはサケマスということになっておるから、サマ、マス制限案を緩和してもらいたいというのが、こちらの主張でありますから、サケマスということにこちらの草案がなっておったのでありますが、これを広くしてもらいたいというので、カニ、ニシン等その他の問題も入れたいということになったようであります。それからまたどういう水域に、広さにこれを適用するかということも、十分に正確にこれを規定する必要があるであろうというような意見がございました。  それから五月四日に至って、漁業及び海芦刈委員会が開催されて、協定案文について審議が進められたということになっております。その内容は、特筆すべきことを認めません。  五月五日に第二回の海難委員会がございました。そうして協定の名前、前文等について意見の交換がございました。そしてこの海難救助協定の中には、日ソ協定国の船だけでなく、第三国の船をもこの対象に入れたらよかろうということがございまして、そういうふうになった模様でございます。同五月五日にやはり第三回の総会と書いてありますが、フル・ミーティングがあったわけであります。その会議においてわが方からも一そう具体的な文書を出しまして、ソ連側も同様具体的な案が出たわけであります。その具体案というのは、協定に付属する文書になるわけでございます。いろいろこれが実体的になるわけであります。これはどういうふうに制限するとかいうような具体案がそこに出ているわけであります。  次は五月八日になります。五月八日になって、わが河野代表とイシコフ・ソ連側代表との間に会談が行われております。この会談で注目すべきことは、ソ連側の方から、かように漁業及び海難救助に関する協定案についてだんだん意見が一致をしてきつつあるけれども、こういう協定締結することは、戦争状態が終結していない両国の間には適当ではないじゃないかという意見が表明されたのであります。その他同日に開かれた両委員会においては、さらに内容について意見の交換が進められた模様でございます。  それから翌日の五月九日に至って、正午から約三時間にわたって河野代表はソ連ブルガーニン首相と会見をしております。プルガーニン首相は、八日にイシコフ代表河野代表に戦争終結前にこれをやることはおかしいじゃないかということを言った、それに関連をして、日ソ国交の回復をやって国交を正常化する前には、漁業、海難の両協定は、こしらえることは異存はないけれども、それに効力を発生せしめることはできないという見解であるということを申しております。なお漁業問題を解決するためには、主として河野代表とイシコフ代表との間において協議してもらいたいということも言っておりました。その詳細は電報報告に接しておりません。河野代表が帰ってからその内容について説明をするから、詳細の報告はしない。要するに漁業海難救助協定の効力の発生のためには、両国の国交調整が必要であるという意見を、ブルガーニン首相自身から聞いたということに相なっております。  そこでモスクワでまとめました漁業協定海難救助協定というものの内容でございます。その内容については、今日まで断片的の報告に接しております。その断片的の報告のうちに重要な点を申して参っておるのでありますが、たとえば適用水域はどういうふうになっておるか、それから適用水域に対する漁船の許可証の発給はどういうことになっておるか、ということについて双方の話し合いがあった模様でございます。その結末は今日まではっきりとまだわかっておりません。むろんこの条約の中には、条約の効力発効の条件は、日ソ平和条約の発効にかからしめておるというようなことが、ソ連の提案の原案にはございますので、協定の効力発生は国交回復後にしたいということが、協定の中にあるものと想像されます。  それからまた附属書において規制を受ける魚類の問題については、初めに申し上げました通りサケマスの問題のほかに、カニだとかニシンだとか、その他の魚類も増しているということも事実のようでございます。それから漁獲の数量ございますが、数量はまだそういう状態でありますから、はっきりどうなっておるかということがわかりませんが、サケマスの総漁獲高は、協定実施の第一年においては、ソ連側の提案は日本に許すのは五十万ツェントネル、すなわち二千五百万尾であったということは最初の提案として……(穗積委員「それは日本分だけですか、二千五百万尾というのは。それは明確ですか。」と呼ぶ)いや両方の協定水域全体です。(穗積委員「最初のやつは。」と呼ぶ)そうでございます。それは初めの案です。これがどうなったかということが、今日まだ正確にわかっていないということを申し上げるために申し上げたのです。そういう状態でございます。  それから海難救助協定は大体わかっておりますが、実はそれはあまり大きな問題が中に入っておらないので、これはまたあとでしましょう。  漁業の問題についてはっきりしたことはまだわかっておりません。おらない事情もまた申し上げますが、いずれにしても漁業協定は国交の正常化ということに条件がかかっていることになります。この旧交正常化をどうするかということは、この条約を調印するときに交換公文をやるということに了解がついているように見えます。その交換公文は、日ソ国交調整の交渉は七月三十一日までに始めることに相なっているようであります。漁業協定の効力発生は、日ソ国交の正常化ということを効力発生の条件にしているようであります。調印する場合においては、交渉を七月三十一日までに始めるのだということに対しても同意を与える文書があるようであります。  そこで漁業条約はそういうことによって進んで参ったのでありますが、それならばさしあたっての本年の漁業は一体どうするのかというようなことが、また非常に当面の問題になるので、これを注意しておったのであります。まだこれも結末的にはわかっておりません。その間に協定はそういうことで進んでいくのだ、本年の漁業については暫定的に一つ話し合いをしようではないかということも断片的にきておりますから、あるいはそういう話し合いがもったのかもしれません。そうしてそういう文書ができておるのかもしれませんし、またそういうことは漁業協定の中における条文によって処理せられておるのかもしれません。そうなると暫定協定はないということになる。いずれにしてもそういうことは、いずれかの形式によって明らかにせられていることと想像せられます。この協定は大体のことはまとまったということは新聞情報にもある通りで、それは事実のようでございますが、最終的にまとまったものはいかなるものであるかということを知る必要はむろんあるので、これを督促して送ってもらうことになっております。むろん交渉はロシア語と日本語でやられておる。協定の文面もそういうことになっておる。条約文を正確に記述して、さらにこれを東京まで電送するのに時間がかかります。協定文は大体昨日はできておる模様でございます。そこで夜通しで送る計画でございますが、現在までそろいません。そろいました上は、その内容については少くとも正確に一般にわかるようにしなければならぬ、こう心得ております。そういう考えを持って進めておりますが、まだ全文がそろっていない。(「きょう中に来るのですか」と呼ぶ者あり)それは予測できぬです。  そういうわけで、この問題は単に漁業をことしやるとか来年やるとかいう問題以上に、日ソの根本問題にかかっておるということは今のことではっきりして参りました。そこでこれは十分検討しなければならぬ問題であります。これにどう調印するかということは重要な問題でありますから、いろいろその問題だけについても往復をしたのであります。それで政府承認を少くとも条件として調印するということは当然のことだと思います。しかし政府がこれを承認することは、全部の資料を入手した上で、的確な資料に基いてこれを判断いたさなければなりません。そこで今資料を電送させておるわけであります。それがいつそろうかということは今申したように言えませんが、最大の努力をしてすみやかにこれをそろえて、そして政府はむろんのこと十分ご検討願うような手段に出たい、こう先ほどか申し上げおるのであります。さようなわけでありますから、この問題について的確に明らかになりました上は、どうぞ十分に本委員会でも御意見を御披露願って審議を進めてほしいと思っております。
  35. 松本七郎

    松本(七)委員 大体の検討はつきましたが、少し伺っておきたいのは、今の御報告の中で一番大事な点、つまり国交回復が効力発生の条件になっておるという点ですが、われわれの知っておるところでは、河野さんが代表として行くときは、政府から漁業問題に限るというワクをはめられて行ったわけです。けれども現実には、漁業問題に限るといってもそれと関連して当然そこに行かざるを得なくなったわけでしょう。しかし政府がいやしくも閣僚である代表にそういうワクをはめた以上は、やはりそういう見通しの上に必要があってはめたことであろうと思う。そうすると、そういう漁業問題と関連して、これは国交回復と必然に結びつかなければならぬという事態になった以上、河野全権としても当然これは余裕をもって事前に政府にその意向を伝えただろうと思うのです。ところが、どうも伝えてやったものか、あるいは河野さんが大局的な判断において、これはもうそういうワク縛られておったのでは、解決不可能だという見通しの上で、話し合いに応じたとも想像されるのです。そうなれば、政府としても当然事後承諾——必要を感じてワクをはめたが、そういう事態を認めてワクをはずすというか、そういうことと関連することは漁業問題解決上からやむを得ない措置であった、こういうように考えられるのかどうか、そこをまず伺っておきたい。
  36. 重光葵

    重光国務大臣 その点は、前に御説明をいたした通りに、この交渉はロンドンにおける国交調整の全般的の交渉が行き詰まった。その後にソ連は一方的に公海における漁獲の制限措置を発表した、そこで、この漁獲の問題について話し合いをして、双方合意の上で公海における問題を処理した方がいい、これは魚族の保護を主として問題としておった、それから海難救助の問題、こういうことで交渉が始まったわけでありますから、当然のこととして交渉はこういう題目に限られるということであったのであります。そこで、国交調整の問題は、ロンドン交渉で一時休憩になっておりますけれども、これはその筋でやるのが当然であるという考え方で進んで参ったのであります。  ところが、漁業問題について話し合いをいたした結果、光力の意向としては、国交の調整が必要であるという意見が出てきたのでありますから、それを代表として向うに聞くことは何ら差しつかえのないことでございます。それを聞きまして、それについて、交渉したわけではありませんけれども、漁業問題とこれが関連をしたことを認めざるないことになっておるのであります。それについて、それじゃ一体政府の予期以上のことじゃないか、その通りであります。政府の予期以上のことなのだから、交渉漁業問題を交渉する、しかしながら関連をしておるということは、これは考慮して何も差しつかえないことであります。どう考慮するかということはおのずから別問題であります。(「結んだらいいじゃないか」と呼ぶ者あり)結ぶか結ばぬか考える。そういう事態になっておるということを私は御説明するわけであります。
  37. 松本七郎

    松本(七)委員 まだたくさんありますが、われわれの方の委員からたくさん質問をされますから、私はもうちょっとだけにとどめたいと思います。  もう一つは、伝えられるところによると、ソビエト側は団交回復を条件にしてこれは発効する。その国交回復の方式は、日本側も平和条約方式、ソビエト側も平和条約方式で行こうと言っておるのだから、その点では一致しておるのだ、だから平和条約方式で行くことは間違いないのだ、こう繰り返し繰り返し外務大臣は当委員会では今まで説明されてきたわけです。私どもは、将来はソビエトの方では平和条約方式をやめて、アデナウアー方式に切りかえてくるかもしれないということを指摘しておった。ところが今日の新聞報道によりますと、あるいはその方式はいずれでもいいということを、ソビエト側は言っておるように報道しておるのですが、この点はどうか。それからもしいずれでもいいということになった場合には、あくまでも日本側としては平和条約方式を固執されるつもりかどうか。それからもう一つもっと大事な点は、ソビエト側は講和条約を条件にしておるのですから、どうしてもこれを妥結しなければ漁業問題が解決しない、こういうことになってくる。そうすると講和条約交渉、国交交渉の方は、領土問題で行き詰まった形になっておったのですから、どうしてもこの領土問題を何とか解決しなければならぬ事態に立ち至ったわけです。新聞報道によりますと、ブルガーニン首相もはっきりと歯舞、色丹以上のものは譲歩できないという強硬な態度を示した言われておりますけれども、そうなると、自由民主党の外交政策である領土問題、南千島まで獲得しなければ妥結しないという合同後打ち出されたところの基本的な政策を、今日の事態でこれを妥結するためには当然訂正しなければならなくなると思いますが、この点どういうふうに調整されるおつもりか、これを伺います。
  38. 重光葵

    重光国務大臣 そういうことは何もきまっておりません。これから検討しなければならぬと思います。それから大体今言われました筋合いは、私はその通りだろうと思います。それでこれから先方の——先方と申しますか、モスクワ交渉の今日までの結果を正確にすべて資料を集めまして——今まだ来ていないということを申し上げましたが、これが来るのを待ってそうして検討いたしたいと考えております。
  39. 高岡大輔

    高岡委員長代理 岡田春夫君。
  40. 岡田春夫

    ○岡田委員 だいぶ今詳細に御答弁があったので、今までのところについてはある程度わかって参りました。しかしそれかけでは十分わかったというわけではないので、いずれ公文書も来るだろうと思いますから、電文によるその公文書を見てから御発表いただきまして、いろいろまた伺いたいと思います。  今の御答弁の関係の中だけで伺いたいのでありますが、第一点は、漁業協定と附属書というものが結ばれるような状態になってきている。それから海難救助の問題についても協定が結ばれるようになってきている。大体後段の方の海難救助の問題についても、これはほとんど異議はないらしいというような御答弁であったように私記憶いたしておりますが、この二つの協定は、いわゆる国会の承認を要すべき条約であると私は考えるのだが、この点についてはいかがお考えになりますか。
  41. 重光葵

    重光国務大臣 むろんそういう工合に考えております。
  42. 岡田春夫

    ○岡田委員 とするならば、国会の承認を経て当然これは批准すべきものという意味に理解してもよろしゅうございますか。
  43. 重光葵

    重光国務大臣 形式上はどうなりますか、私は当然国会の御承認を得べきものであると今日のところ心得ております。
  44. 岡田春夫

    ○岡田委員 ちょっと明確に伺いたいのです。国会の承認を得べきものというのは、憲法並びに国会法の規定に 基く国会の承認を得べきものという意味を私は伺っているわけです。だからそういう意味での国会の承認を得べきものと私は考えるのです。と申しますことは、日本アメリカ、カナダとの漁業協定の場合においても国会の承認を得ておりますから、それと同じ条約として国会の承認を得、それに基いて批准をとらなければならないものというように私は考えるのだが、そういう意味のものであるかどうかということを伺っているわけです。
  45. 重光葵

    重光国務大臣 大体そう考えております。
  46. 岡田春夫

    ○岡田委員 そうすると、それは明らかに二国間の条約という考え方でいかなければならないと考えております。そうなると、この二国間の条約河野代表が向うで調印をされる場合において、調印に対する委任は、先ほどの御答弁によると、何か条件付の委任を与えたのであって、全権委任を与えたのではないというような印象に私は聞いたわけでありますが、こういう点については、条件付の委任状、であったのか、どうなっておるのでありますか。
  47. 重光葵

    重光国務大臣 それはかような場合において委任状を出す場合における外交上の手続を御研究になれば、すぐわかることであると思います。政府承認を条件として調印する場合、そうでなくあらかじめ政府承認を得て調印する場合、これがあることは当然であります。今日まで文革の全文もわからないものについて調印をする場合においては、政府承認が条件になることは当然のことだろうと思います。さような調印をするわけであります。それで政府は、もし調印されても、あとから十分これを審議していかなければならぬ順序になるわけであります。
  48. 岡田春夫

    ○岡田委員 そうすると、条件付の委任状、政府承認を条件とする委任状を送られたのだということに対して、昨日の夕方、全権委任状を送ってもらいたいという請訓が重ねてあったと私は附いておるのですが、この点はどうですか、事実がありますか。
  49. 重光葵

    重光国務大臣 私は内部でどうあった、こうあったということを申し上げ、また質問するのはおかしいと思う。(岡田委員「経過を聞いているのに何がおかしい。」と呼ぶ)おかしいというのは、政府承認を条件として全権委任状を出しておる、それを督促したとか督促しないとか——それはずいぶん往復しております。どういう種類のものをどう扱ったらいいかということを向うの事情も聞き合せてやっております。それを一々督促したことがあるかないかというようなこと、それはおかしい。
  50. 岡田春夫

    ○岡田委員 おかしくないじゃないですか。どうしておかしい。新聞にも出ているじゃありませんか。河野代表から政府承認の条件付委任状では困る、全権委任状を送ってくれという請訓が出ているという事実が出ているから私は伺っているのだし、しかもおかしいというのはもう一つある。政府代表として河野代表が行っているのに、政府承認するかしないかわからないから、そういう点については留保をして調印しろというようなことを政府代表が言われたらどうですか、おかしいじゃありませんか。そういう意味で私はおかしいと言ている。どうしてこういうことを聞いてはいけないのか。こんなのは国交上の問題で、外務委員会で開くのは当りまえじゃありませんか。
  51. 重光葵

    重光国務大臣 私がおかしいと申し上げますのは、それは当然なことで、今外交問題で条約交渉をやるときに、アド・レフェレンダム、すなわち承認を条件として調印するということは普通のことであります。それはそうやります。特に条文なんぞは、この議会でも一字一句非常にやかましいことは御承知通りであります。これを十分見届けないでやるというわけにはいきませんから、その手続を経ておるわけであります。そういう手続をとることについて、いろいろ往復のあったことは事実でありますが、新聞がどうあるということで、私はそれがほんとうだとかうそだということは必要のないことのように思うが、どうして必要があるのですか。
  52. 岡田春夫

    ○岡田委員 それこそおかしい話です。あなたはきょう閣議とかいろいろは会合をやられたのは、全権委任状を出すか出さぬかということを相談されたのでしょう。条件付きの政府の承諾の問題についての委任状を出すか出さないか、こんな問題はもうとっくに出したのでしょう。きょう閣議でやったのは、全権委任状の問題でやったのでしょう。何でやったかというと、きのう請訓があったからやったのではありませんか。請訓はないのですか、ないならないとおっしゃったらいいじゃありませんか。
  53. 重光葵

    重光国務大臣 ない、ない。そんなことについて閣議をやったというのは、どこからどう聞かれたか知らぬが、そういう事実はございません。私はきょうは、大体ここで御説明したと同じような趣旨で、閣議で今日までの状況を詳しく報告しました。それだけです。
  54. 岡田春夫

    ○岡田委員 わかりました。それではこの点はあとで伺いましょう。きょうはやりません。それじゃともかくも、そういう政府承認に基いた条件をつけた委任状が出された、それに基いて河野代表は調印をしてくるわけです。まあしてくる場合もあるわけですが、してこないかもしれない。おそらくしてくるだろうと私は想像するのだが、その場合に先ほどあなたの御答弁等を伺っていると、この協定の中には、国交回復を前提としておって、この協定が発効になるのは国交回復のときだ、平和条約の批准されたときだ、こういう意味のことが文書の中にあるのでありますか、どうなのですか。
  55. 重光葵

    重光国務大臣 それは先ほど説明したうちの重要事項であります。あるのであります。
  56. 岡田春夫

    ○岡田委員 それがあるとするならば、もしこの協定河野代表が向うで調印されて日本に帰ってこられて、それの詳細が閣議に報告をされて、政府がこれを承認して、国会の承認を得て批准することになると、この協定は事実上の国交回復を意味することにはなりませんか、どうですか。
  57. 重光葵

    重光国務大臣 それはわかりません。
  58. 岡田春夫

    ○岡田委員 どうしてわからないのですか。
  59. 重光葵

    重光国務大臣 何となれば、どういうふうな文章で書いてあるかということを詳細に検討しなければ、事実上の国交が調印と同時に始まるのである、こういうことは今断言はできません。しかしながらそういう点は、重要なそういうことに関連をいたしておりますから、この問題は重要な問題として、私は各方面に検討を願っておるわけであります。
  60. 岡田春夫

    ○岡田委員 皆さんお待ちですから、これで終りますが、最後の点は、国交回復の問題については、七月までに国交回復の交渉をやるというような話がだいぶ出ておりますが、きょうの閣議においては、そういう問題について何かお話が出ましたのですか、どうなのでありますか。そういう点を最後に伺って、あとの点はほかの人がお待ちですから留保いたします。
  61. 重光葵

    重光国務大臣 閣議の内容は申し上げるわけには参りません。しかしながら今の国交回復の点は、先ほど御説明をいたしました通りに、国交回復は協定の効力発効の条件になっておるということを御説明申し上げましたその通りであります。そうして国交回復の交渉を、七月三十一日までに始めてもらいたいということがあるようでございます。これも正確な文官が参りましたときに、はっきりと……(岡田委員「三十一日までにやってもらいたい……。」と呼ぶ)三十一日までに国交回復の交渉を始めたい、こういうことなのです。向うからそれは何でも交換公文になるらしい。それがやっぱりそのときに調印されるのでしょう。そうするとその義務を負うわけで、それは重要なことになる。それが直ちに国交回復になるということは、今わからないわけなのであります。
  62. 森島守人

    ○森島委員 私ただいま岡田君の質問に関連しまして一、二点お伺いしたいのです。  第一には、交渉開始以来外務省へ、正確なる情報が来ていない。今大臣の説明を聞いてみましても、こういうふうな模様だとか、こうらしいとかいうことでは、大臣の責任は果されないのじゃないか、もっと河野さんに正確なる情報を即刻送れという訓令をお出しになることはできなかったのですか、この点を私は伺いたい。
  63. 重光葵

    重光国務大臣 私の申し上げたことは、正確なる情報に基いて申し上げているのであります。しかし交渉はどんどん動いてくるのでありますから、動いてきたときにどういうことになったかということを突きとめることは、それこそ最後の文書が来なければできませんことは御存じの通りであります。しかしながら大体の報告の経緯によって、こういう工合になった模様だということを判断して差つかえない。私はそれだけの判断をして、こうだと思うから申し上げておるわけなので、最後の文書が全部入ってからこうだと言っていいのなら簡単ですけれども、それは御参考のために、私はそういうふうなことでできるだけ詳しく申し上げたつもりであります。
  64. 森島守人

    ○森島委員 私は、従来の外務省の交渉のやり方からいたしますと、そんなにぼやけた、非常に疑問になるような情報が来るものじゃないと思う。私は大臣と所見を異にしますが、もっとそのつど的確なる情報が来て、そして最後に締めくくりの応報が来るということを私ども承知しております。  そこでもう一点伺いたいのは、アド・レフェレンダムで調印してよろしいという訓令は、すでにお出しになったのでございますか。
  65. 重光葵

    重光国務大臣 それはそうでございます。
  66. 森島守人

    ○森島委員 普通の交渉のときには、これは内容もわかって、閣議それから政党等においても慎重に審議をされた後に、調印しろ、こう行くのが当りまえで、今度のようなやり方は私はきわめて異例だと思う。これは大臣も御同感だろうと思いますが、特にアド・レフェレンダムで調印すべき特別に急迫した事情が内外ともに何かあるのでございますが、これを具体的に御説明願いたいのです。   〔高岡委員長代理退席、委員長着席〕
  67. 重光葵

    重光国務大臣 この問題は急迫した事情があるということは想像にかたくないことであります。これは一本の漁業問題が今切迫しております。どんどん船が出ておるような状況であります。だから少しでも早く漁獲のできるようにしむけていかなければなりません。急迫をいたしております。今私が御説明したような点を数えても、非常に重大な問題がたくさんある。しかしながら、これについて的確な資料がなくしては、政府は判断を最終的に下すことはできません。中間的にはいろいろ私も報告しておるし、また考えもいたしておるわけであります。しかる上は急迫な事情にかんがみて、政府承認を条件として調印しなければならぬという事態が起ってくることはあり得ることでございます。それは過去の例によってあまりそういうことはないじゃないか。私もそういう例がたくさんあるということは、あるかもしれませんけれども、あまり知りません。それはそうでございましょう。しかしながら政府があとか承認を与える十分審議をする余裕を持っておる場合においては、これはまたやむを得ないことだと思います。そういうわけでさような処置をいたしたわけであります。
  68. 森島守人

    ○森島委員 出漁の急迫した事情は私もよく了承しておるのですが、しかし一応調印されたということになれば、日本政府としてはこれに伴って少くとも道義的な責任が生ずると私は思う。これの例は、フィリピンの大野・ガルシア協定がけ飛ばされたという例もありますけれども、私は日ソの国交回復、それから交渉再開というふうな問題に関連しまして、政府は大きな責任を感ぜざるを得ぬと思う。この点については、あとからゆっくり審議して態度をきめるのだというさっきの御説明でございましたけれども、大臣としては相当な覚悟がなければならぬと思う。河野さんは訓令以上のことをやっておる。これはやむを得なかったといたしましても、私は大臣としては相当な御決心をされる時期にすでに到達している、こう思うのでございます。私たちの立場からいたしますれば、日ソ国交調整、国交回復のために一つ身をなげうってやっていただくという御決心をされることを切望いたしまして、私の質問を打ち切ります。
  69. 戸叶里子

    戸叶委員 関連して二点だけ伺いたいと思います。今の大臣の御説明によりましても、漁業協定海難救助協定の両協定の発効は、国交回復後というふうになっているということをお述べになりまして、大体その線で調印が行われると思われますけれども、一体いつごろから国交回復を再開される考えをお待ちになっていられるのかこの点を伺いたいと思います。
  70. 重光葵

    重光国務大臣 その点はまだ何も申し上げられません。
  71. 戸叶里子

    戸叶委員 すでに七月三十一日までというふうに大体向うの方は期限を切ってきているようですけれども、おっしゃれないというのは、きまっているけれども発表できないというお気持ですか、それとも全然まだきまっていないというふうな御答弁なのでしょうか。
  72. 重光葵

    重光国務大臣 これはもうこの協定に調印するかどうかということから審議しなければなりませんから、そこまで審議が進んでいないことは当然おわかりのことだと思います。
  73. 戸叶里子

    戸叶委員 私はここまで来たならば一日も早く調印なさるべきであると思う。こう考えますし、大体の腹は調印するべきというふうにおきまりになっているのではないかと思いますけれども、はっきりそうおっしゃいませんので、それではこの問題はあとから伺うことにしたいと思います。  次に伺いたいことは、今日国民がだれでも望んでおりますことは、いろいろな問題がございますが、やはり抑留者の方々を一日も早く帰してほしいということだと思います。ソ連側は国交回復後全部帰すと言っております。従って国交回復がなればすぐにでも帰されると思いますが、先ごろの新聞報道によりますと、河野全権がソ連側と話し合って、一部帰還させるというようなことが発表されておりました。このことはどういう方々を帰されるのであるのか、この辺のことがおわかりになりましたらお話を願いたいと思います。
  74. 重光葵

    重光国務大臣 抑留者の帰還の問題は、御承知通りにこれはほんとうに一日もすみやかに実現したいと思っておる問題でございます。河野代表もその問題を先方には十分伝えたことと思っております。今日までどれだけの釈放送還があったかということは、はっきりこれも来ておりません。公報は参っておりません。ただ一、二の人が釈放されたという名前が来ておるようでございます。これは山田大将は健康の許すやいなや釈放帰還の手続をとるということが、モスクワのニュース・サービスの速報に出ております。事実だろうと思います。
  75. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、少数の人の帰還が許されたというのは、今のところ山田大将のことだけでございますか。
  76. 重光葵

    重光国務大臣 私の知っているのはさようでございます。
  77. 前尾繁三郎

    前尾委員長 並木芳雄君。
  78. 並木芳雄

    ○並木委員 私大臣にお尋ねしたいのは暫定的の条件についてであります。先ほどから大臣の御報告を聞いておりますと、非常に重大な要素を含んでおるこの協定の案に対して、河野代表に調印をしてもよろしいという権限を与えておる。普通ならばこういう大きな問題は、当然事前に十分外務省としても検討して、慎重なる態度をとるべきにかかわらず、調印の権限を与えたということは、私は実質的には本年度の漁業をどうするか、つまり暫定的の措置について十分大臣が得るところがあるという確信があっての結果であろう、こう信ずるのでございます。あなたがさっきの御説明の中では、この点ごく簡単に触れられただけでございますので、本年度の漁業というものはどうなるのか、これについて一番大事な点でありますから、もう少し詳しく知りたいのであります。
  79. 重光葵

    重光国務大臣 その点も報告を得次第御報告を申し上げます。
  80. 並木芳雄

    ○並木委員 何らかの手がかりとなるものはないのですか、全然ないのですか、大臣。大体の見通しとしては本年度は出漁して大丈夫であるというようなある程度の確信が、私は大臣におありであろうと思うのです。いかがでしょう。
  81. 重光葵

    重光国務大臣 こういう協定が成立すれば私は大丈夫だろう、こう思っております。
  82. 並木芳雄

    ○並木委員 その程度ですとちょっと心細いのです。まあ大丈夫だろうとわれわれも確信したいのですけれども、それにもかかわらず大事な点があるから、そのあとの残る大きな問題、つまり効力発生の問題などに対しても、大臣としては、本来ならばもっと慎重たるべきところであると思うのですけれども、河野代表に調印の権限を与えたというふうにわれわれは了解できるわけです。そうでないと、ちょっとそこのバランスがとれてこない。何となれば、この漁業協定に対してソ連の方で国交正常化ということをどうしてあんなにしつこく言ってくるのか、わからなくなってくるのです。普通ならば、平和条約締結されて国交が回復して後、通商条約とかあるいは漁業協定というものができるでしょう。しかし私は必ずしも平和状態が回復しなくても、そういう協定を結ぶことはできるのじゃないか、そういう先例もあるのではないかと思うのです。それにもかかわらず、ソ連がこの点をイシコフ代表にしてもブルガーニン首相にしても、しつこいほど言ってくるということは、やはり考えたくはないけれども、国交回復の材料として漁業問題をひっくるめてくるというふうに、とれないこともなくはないではないか。私自身はソ連との国交回復を促進する方の熱意を持っておる者の一人として、なるべくそういうふうに考えたくないという気持は持っておるのですけれども、一方においては、領土問題などをあと回しにしても日ソ国交回復を急ぐことは、危険であるということを強く主張する人々もあるのですから、そういう人々の主張に耳を傾けるときに、どうも今度ソ連が国交正常化ということを条件にしてきたことは受け取りにくい。ほんとうに漁業問題を純粋に取り上げて相談をしたいというならば、何も国交回復を得たなくても、適当の時期に効力を発生させることもできるのではないかと思うのですが、これは国際賠償上やはり二国間の条約は、平和状態が回復しなければできないものでしょうか。例外的にそういう状態にならなくても、漁業協定のごときものは効力を発生することができるのではないかと思うのですが、この点はいかがでしょう。
  83. 重光葵

    重光国務大臣 国交調整がなくても、漁業問題などについて協定ができるという考え方を持って始めたのです。ソ連は国交回復を必要とするということに主張をしてきたことは、先ほど申した通りであります。ソ連の考え方に対する御批判は、これはまた御自由でありますけれども、事実はそういうことです。
  84. 並木芳雄

    ○並木委員 それではもう少しわかってから質問いたします。
  85. 前尾繁三郎

    前尾委員長 次会は公報をもってお知らせいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時十四分散会