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重光国務大臣 日ソ漁業交渉の御
質問でございました。今日までの経過を私どもが公けに得ておる
電信報告の資料に基いて申し上げます。
わが方
代表が
交渉地のモスクワに着きましたのは四月二十七日ございました。すぐ翌四月二十八日から先方との接触が始まりました。そして四月二十九日には、すでに第一回の
総会が開かれました。この
総会におきまして、わが方からはわが方の
漁業協定案、
交渉の
目的であります
海難救助協定、その
海難救助に関する
協定案というものをわが方が提出しました。わが方の
漁業協定に対する
草案を提出したのが二十九日であります。
それから五月三日に第二回の
会議が開かれました。その第二回の
会議において、これらの
日本側の提出した
草案については、おのおの
委員会を開いて検討をしよう。検討しようが、さしあたって
ソ連側の気のついたことを言えば、その案には
サケ、
マス漁業に関することになっておるが、それを
漁業一般の調整にしたらよかろうという
意見を
ソ連側が吐きました。
サケ、
マスの
漁業に関することになっておる理由は、御
承知の
ソ連側の公海の
制限案ですが、それには
サケ、
マスということになっておるから、サマ、
マスの
制限案を緩和してもらいたいというのが、こちらの主張でありますから、
サケ、
マスということにこちらの
草案がなっておったのでありますが、これを広くしてもらいたいというので、カニ、
ニシン等その他の問題も入れたいということになったようであります。それからまたどういう水域に、広さにこれを適用するかということも、十分に正確にこれを
規定する必要があるであろうというような
意見がございました。
それから五月四日に至って、
漁業及び
海芦刈委員会が開催されて、
協定案文について審議が進められたということになっております。その
内容は、特筆すべきことを認めません。
五月五日に第二回の
海難委員会がございました。そうして
協定の名前、
前文等について
意見の交換がございました。そしてこの
海難救助の
協定の中には、
日ソ協定国の船だけでなく、第三国の船をもこの
対象に入れたらよかろうということがございまして、そういうふうになった模様でございます。同五月五日にやはり第三回の
総会と書いてありますが、フル・ミーティングがあったわけであります。その
会議においてわが方からも一そう具体的な
文書を出しまして、
ソ連側も同様具体的な案が出たわけであります。その
具体案というのは、
協定に付属する
文書になるわけでございます。いろいろこれが実体的になるわけであります。これはどういうふうに制限するとかいうような
具体案がそこに出ているわけであります。
次は五月八日になります。五月八日になって、わが
河野代表とイシコフ・
ソ連側代表との間に会談が行われております。この会談で注目すべきことは、
ソ連側の方から、かように
漁業及び
海難救助に関する
協定案についてだんだん
意見が一致をしてきつつあるけれども、こういう
協定を
締結することは、戦争状態が終結していない両国の間には適当ではないじゃないかという
意見が表明されたのであります。その他同日に開かれた両
委員会においては、さらに
内容について
意見の交換が進められた模様でございます。
それから翌日の五月九日に至って、正午から約三時間にわたって
河野代表はソ連ブルガーニン首相と会見をしております。プルガーニン首相は、八日にイシコフ
代表が
河野代表に戦争終結前にこれをやることはおかしいじゃないかということを言った、それに関連をして、日ソ国交の回復をやって国交を正常化する前には、
漁業、海難の両
協定は、こしらえることは異存はないけれども、それに効力を発生せしめることはできないという
見解であるということを申しております。なお
漁業問題を解決するためには、主として
河野代表とイシコフ
代表との間において協議してもらいたいということも言っておりました。その詳細は電報
報告に接しておりません。
河野代表が帰ってからその
内容について
説明をするから、詳細の
報告はしない。要するに
漁業、
海難救助町
協定の効力の発生のためには、両国の国交調整が必要であるという
意見を、ブルガーニン首相自身から聞いたということに相なっております。
そこでモスクワでまとめました
漁業協定、
海難救助協定というものの
内容でございます。その
内容については、今日まで断片的の
報告に接しております。その断片的の
報告のうちに重要な点を申して参っておるのでありますが、たとえば適用水域はどういうふうになっておるか、それから適用水域に対する漁船の許可証の発給はどういうことになっておるか、ということについて双方の話し合いがあった模様でございます。その結末は今日まではっきりとまだわかっておりません。むろんこの
条約の中には、
条約の効力発効の条件は、日ソ平和
条約の発効にかからしめておるというようなことが、ソ連の提案の原案にはございますので、
協定の効力発生は国交回復後にしたいということが、
協定の中にあるものと想像されます。
それからまた附属書において規制を受ける魚類の問題については、初めに申し上げました
通り、
サケ、
マスの問題のほかに、カニだとかニシンだとか、その他の魚類も増しているということも事実のようでございます。それから漁獲の数量ございますが、数量はまだそういう状態でありますから、はっきりどうなっておるかということがわかりませんが、
サケ、
マスの総漁獲高は、
協定実施の第一年においては、
ソ連側の提案は
日本に許すのは五十万ツェントネル、すなわち二千五百万尾であったということは最初の提案として……(
穗積委員「それは
日本分だけですか、二千五百万尾というのは。それは明確ですか。」と呼ぶ)いや両方の
協定水域全体です。(
穗積委員「最初のやつは。」と呼ぶ)そうでございます。それは初めの案です。これがどうなったかということが、今日まだ正確にわかっていないということを申し上げるために申し上げたのです。そういう状態でございます。
それから
海難救助の
協定は大体わかっておりますが、実はそれはあまり大きな問題が中に入っておらないので、これはまたあとでしましょう。
漁業の問題についてはっきりしたことはまだわかっておりません。おらない事情もまた申し上げますが、いずれにしても
漁業協定は国交の正常化ということに条件がかかっていることになります。この旧交正常化をどうするかということは、この
条約を調印するときに交換公文をやるということに了解がついているように見えます。その交換公文は、日ソ国交調整の
交渉は七月三十一日までに始めることに相なっているようであります。
漁業協定の効力発生は、日ソ国交の正常化ということを効力発生の条件にしているようであります。調印する場合においては、
交渉を七月三十一日までに始めるのだということに対しても
同意を与える
文書があるようであります。
そこで
漁業条約はそういうことによって進んで参ったのでありますが、それならばさしあたっての本年の
漁業は一体どうするのかというようなことが、また非常に当面の問題になるので、これを注意しておったのであります。まだこれも結末的にはわかっておりません。その間に
協定はそういうことで進んでいくのだ、本年の
漁業については暫定的に
一つ話し合いをしようではないかということも断片的にきておりますから、あるいはそういう話し合いがもったのかもしれません。そうしてそういう
文書ができておるのかもしれませんし、またそういうことは
漁業協定の中における
条文によって処理せられておるのかもしれません。そうなると暫定
協定はないということになる。いずれにしてもそういうことは、いずれかの形式によって明らかにせられていることと想像せられます。この
協定は大体のことはまとまったということは
新聞情報にもある
通りで、それは事実のようでございますが、最終的にまとまったものはいかなるものであるかということを知る必要はむろんあるので、これを督促して送ってもらうことになっております。むろん
交渉はロシア語と
日本語でやられておる。
協定の文面もそういうことになっておる。
条約文を正確に記述して、さらにこれを東京まで電送するのに時間がかかります。
協定文は大体昨日はできておる模様でございます。そこで夜通しで送る
計画でございますが、現在までそろいません。そろいました上は、その
内容については少くとも正確に一般にわかるようにしなければならぬ、こう心得ております。そういう考えを持って進めておりますが、まだ全文がそろっていない。(「きょう中に来るのですか」と呼ぶ者あり)それは予測できぬです。
そういうわけで、この問題は単に
漁業をことしやるとか来年やるとかいう問題以上に、日ソの根本問題にかかっておるということは今のことではっきりして参りました。そこでこれは十分検討しなければならぬ問題であります。これにどう調印するかということは重要な問題でありますから、いろいろその問題だけについても往復をしたのであります。それで
政府の
承認を少くとも条件として調印するということは当然のことだと思います。しかし
政府がこれを
承認することは、全部の資料を入手した上で、的確な資料に基いてこれを判断いたさなければなりません。そこで今資料を電送させておるわけであります。それがいつそろうかということは今申したように言えませんが、最大の努力をしてすみやかにこれをそろえて、そして
政府はむろんのこと十分ご検討願うような手段に出たい、こう先ほどか申し上げおるのであります。さようなわけでありますから、この問題について的確に明らかになりました上は、どうぞ十分に本
委員会でも御
意見を御披露願って審議を進めてほしいと思っております。