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穗積委員 私はただいまの
動機に賛成をいたすものでございます。実は今北澤
委員の反対の討論を伺って驚きにたえないのでございます。大体、今度の閣議のとりきめというのは、すでに今までの
質疑で明瞭になっておりますように、外交上支障があると思われる者、公務員、国
会議員、地方議員、それから第三には共産主義の思想または政治宣伝が行われるおそれのある場合、または利用されるおそれのある場合というのが、大体のとりきめの
内容であるようでありますことはこれはわれわれがこういうふうに推測いたしておりますが間違い炉ないかと言ったら、大体その
通りだというような
外務大臣の御
答弁もございました。もしこれがそうであるとするならば、これは明らかに憲法並びに
旅券法の基本
精神を侵すものでございます。
元来、旅券の問題につきましては、性別、宗教、思想等に拘泥することなく、また相手国の国に差別をすることなしに、基本的には自由であるべきものでございますが、その
趣旨を体した
旅券法は十三条第一項五号におきまして、著しく国益に反する、または公安を害するおそれがあることが客観的に証明のできるような者だけを、除外例としてこれを認めておるのでございます。従ってこういう
制限規定は明確なる、だれが見ても間違いのない、すなわち係官または時の
政府、または
外務大臣の主観によって左右されることのないような列挙かつ明確なるものでなければならぬのでございます。ところが先般閣議でとりきめられたと称せられます三つの
制限事項なるものは、これはもう明らかにこの基本
精神並びに
法律の
規定を侵害するものでございます。これはもう疑う余地がないと思う。すなわち非常にばく然としておるようでございますから、従ってある場合においては、縮小解釈の
可能性もありますが、他の場合におきましては、これが拡大解釈をされるおそれのあることは、前々からこの
委員会において、われわれが
外務大臣に注意をいたしたところでございます。
本来このことが出て参りましたのは、明らかに最近になりまして共産主義者百の経済建設または政治方針に対して、今までとびらを閉ざされておりました
日本国民炉、世界の情勢に立ちおくれないために、またはこれらの社会主義建設に対して、目を見開く必要があるというので、ほうはいとしてこれらの国に対する
渡航視察の要望が強く出てきたわけでございます。そこで、今共産主義に対してまたは社会主義思想に対してはなはだしく無知であり、または曲解を持っておられる自由民主党の一部の諸君が、共産主義に対する不当なる恐怖心を起されまして、そうして鎖国令をしこうという、多数のいわば暴力でございますが、多数にものを言わしめて、
法律をも曲げるような鎖国政策をとる、ちょうど豊臣または徳川政権が樹立されましたときに、国益の名によって、実はみずからの政権を維持するために、暮府政権を維持するために、国民に見てはいけない、聞いてはいけない、しゃベってはいけないという、その鎖口政策をとって、それがいかにも国益に合致するがごとき錯覚を起さしめて、鎖国政策を三百年とって参りました結果は、一体どうでございましたか。これに類するような驚くべき政策が、今日自民党を中心とする鳩山内閣によってとられておるのでございます。その驚くべき時代錯誤的な鎖国政策を、ある
意味において合理化するために、さきに言ったような三つの
制限規定をなすったのです。
これは今申しました
通りに、非常に基本的に
旅券法の
精神並びにその
規定を侵害するものである。従ってこれを基準とする
行政措置は明らかに違法処分でございます。違法処分になるおそれがあるとわれわれは考えますから、従ってそういう違法処分が行われる危険があるということをわれわれは察知して、その場合に、そのことなからしめるために、国会の調査権を発動して、そうして国会の名において行
政府であります
政府に対して、その内規なるものを明示せしめる、しかもこれは今北澤
委員によりますと、外交上の
秘密事項であるかのごとくでありますが、
秘密事項ではございません。そうであるとは
大臣すらも言っていないし、客観的にも
秘密事項に属すべき性質のものではない。
旅券法第十三条第一項第五号の今申しました
制限規定の解釈の基準として
決定されたものでございますから、これは明らかに
国内法の取りきめであるし、そのことは面接かつすべて
日本国民の基本的
権利に
関係する
規定でございます。もしその
内容が正当であるという自信をお持ちになるならば、なぜ一体
旅券法を改正
法律案として国会にお出しになりませんか。従ってそういうものではないといってお出しにならないところには、あなた方が非常に狡猾なる
精神をもって、いわゆる不当なる内規によって旅行を不当に
制限しようという腹があるか、しからずんばその不当の
決定に対して、これは明らかに不当であるというやましい心があるから、これは発表するわけにはいかないから、
法律案としては世間に出せたものではない、しかも内規として
決定したものに対しても、これはお恥かしくて出せないという、不当なる
制限をするこのような
規定の取りきめは恥かしくて世間に出せないという二点によって発表されないものだとわれわれは思う。
われわれから見るならば、
旅券法を侵害するものである。従って国民の基本的
権利を侵害するものである。それは何ら外交上の機密に属すべき性質のものではございませんから、従って今の動議に対しましては、当然われわれは賛成をいたします。与党の諸君も今からでもおそくはありませんから、考えを翻されまして、全会一致賛成されんことを
希望いたしまして、私の賛成の討論といたします。(拍手)