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1956-05-09 第24回国会 衆議院 外務委員会 第41号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年五月九日(水曜日)    午前十時五十一分開議  出席委員    委員長 前尾繁三郎君    理事 石坂  繁君 理事 北澤 直吉君    理事 須磨彌吉郎君 理事 高岡 大輔君    理事 穗積 七郎君 理事 松本 七郎君       愛知 揆一君    伊東 隆治君       植原悦二郎君    大橋 忠一君       菊池 義郎君    重政 誠之君       福田 篤泰君    坊  秀男君       松岡 松平君    横井 太郎君       有馬 輝武君    田中織之進君       田中 武夫君    田中 稔男君       戸叶 里子君    福田 昌子君       森島 守人君    横錢 重吉君       岡田春夫君  出席国務大臣         外 務 大 臣 重光  葵君         国 務 大 臣 船田  中君  出席政府委員         防衛庁参事官         (防衛局長)  林  一夫君         防衛庁参事官         (装備局長)  小山 雄二君         外務政務次官  森下 國雄君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君         外務事務官         (情報文化局         長)      田中 三男君  委員外出席者         外務事務官         (移住局渡航課         長)      遠藤 又男君         農林事務官         (農地局管理部         拓植課長)   酒折 武弘君         通商産業事務官         (特許庁長官官         房総務部総務課         長)      竹村 礼三君         専  門  員 佐藤 敏人君     ————————————— 五月八日  委員中山榮一君及び早稻田柳右エ門君辞任につ  き、その補欠として渡邊良夫君及び福永一臣君  が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  防衛目的のためにする特許権及び技術士知識  の交流を容易にするための日本国政府とアメリ  カ合衆国政府との間の協定及び議定書締結に  ついて承認を求めるの件(条約第一四号)  国際情勢等に関する件     —————————————
  2. 前尾繁三郎

    前尾委員長 これより会議を開きます。  防衛目的のためにする特許権及び技術上の知識交流を、容易にするための日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定及び議定書締結について承認を求めるの件を議題といたし質疑を許します。石坂繁君。
  3. 石坂繁

    石坂委員 日米間の防衛関係は、日本アメリカとの平和条約はもちろん、日米安全保障条約日米行政協定日米相互防衛援助協定等の基本的の関係が前提となっておると存じますが私はこれらの問題のこの後改正する点もあろうかと思いますけれども、それらの問題並びに本協定に関連した政治問題をしばらく離れまして、直接本協定について若干の質問をいたしたいと思います。  この協定説明にもあります通りに、日米相互防衛援助協定第四条の合意に基く取りきめが今回作成されたことになるのでありますが、この日米相互防衛援助協定ができたのは二十九年の三月の八日であります。従ってこの防衛援助協定が成立いたします当時から、この取りきめの作成は当然予見されておったことであります。二十九年三月八日に日米相互防衛援助協定ができておるのに、本協定が今日までおくれて参ったというのは、どういう事情でおくれて参ったのか、この点を伺いたい。
  4. 下田武三

    下田政府委員 仰せ通りこの協定MSA協定締結の際にすでに予見せられておったものでございますが、MSA協定が二十九年の三月に調印されまして直ちにこの交渉に入ったわけではございませんで、同年秋、十月ごろだったと思いますが、そのころから交渉を始めまして今春妥結に至ったわけで、確かに仰せのように一年半もかかったわけでございますが、その原因は別に大した理由はないのでございます。要するに特許制度に関します日本アメリカの間の法律制度というものが非常に異なっておりますので、両国国内法制の建前の相違をいかに調節するかという技術的の原因がございましたために、多少の時日を要したわけでございますが、幸いにしましてこの異なれる法制の調整という困難な仕事が円満に解決いたしましたので、今春調印を見たわけでございまして、政治的な重要性からくる困難と申しますよりも、主として事務的、技術的な理由によりまして相当の年月を要した次第でございます。
  5. 石坂繁

    石坂委員 この協定がおくれた事情は、ただいまの局長の御答弁によりまして了承いたしたのであります。しからば、この協定締結によりましてわが方といたしましては、どういう利益を受けることになるか、つまり日本側のねらいはどういうところにあるか、それを明らかにしていただきたい。
  6. 船田中

    船田国務大臣 この協定によってわが国がどういう利益を受けるかということにつきましてお答え申し上げます。  第一には、米国における私有の防衛上の技術わが国への流通が促進され、防衛生産向上を期待することができるということであります。  第二には、防衛用装備資材製造方法を受け入れる法的体制、特に国防上の秘密技術を受け入れる法的体制ができまして、わが国における高度の武器の生産が期待できるようになるということでございます。  第三には、従来若干の図面、設計図その他によりまして、技術上の知識提供を受けてきましたが、この技術上の知識を使用することに出して、その所有者との法律関係を明らかにするのに困難があったのでありますが、この協定によりまして、それらの点を明確にし得るような体制が整備されることとなる、こういうことがございます。  第四には、日米相互防衛援助協定に基きまして米国から提供される装備資材に関しては、近ごろこれらの部品の補給は国内調達に待つ必要ができておるのでありまして、米国からこれらの部品製法等提供を受け、その生産及び完成をわが国で行うことが容易になるという利益がございます。  第五に、米国政府の所有する発明等を無償でわが方が使用し得る、こういう利益があるわけでございます。
  7. 石坂繁

    石坂委員 ただいま防衛庁長官の御答弁の中に、この協定によってわが国防衛生産向上を期待することができる、こういうお話があったのであります。ところで本協定第一条には「防衛生産を不当に制限し、」と防衛生産という言葉が明らかに使われております。しかるに協定全文及び議定書を読んでみましても、その防衛生産内容が明確でないのであります。従ってこれを審議するに当りましては、この防衛生産、つまり将来わが国防衛生産利益を得ることが期待されるという、本条約についての防衛生産範囲を、明確にいたしておく必要があると思いますが、この点について重ねて大臣の御答弁を伺いたい。
  8. 船田中

    船田国務大臣 すでに御審議を願いましたものの中では、たとえばジェットエンジンのT33AあるいはF86Fというような練習機もしくは実用機につきまして、生産協定を今まで個々にやってきております。ところがこの協定ができますれば、そういう生産につきまして、今まで一々ライセンスあるいはロイアルティというようなものにつきまして協定しなければならなかった個々の問題が、もっとより容易にわが国にそういう技術上の知識あるいは特許発明というふうなものを導入することができますから、従ってわが国において将来ジェットエンジン飛行機を作るという生産の上に利益を得ることになる、かように考えられるのでございます。  なおわが方の防衛体制を整備するにつきましては、これもこの前申し上げたと思いますが、なるべくわが方の生産力によって、防衛関係兵器、艦船、飛行機等もだんだん国産していくようにしたい、そうでなければ、ただ既製品の供与を受けるというだけでは、日本のほんとうの防衛力というものはできませんので、できるだけみずからの力によりまして、わが国防衛することのできるような生産体制を整えていきたい、こういうような方針を立てて、また努力をいたしておるわけでございまして、その一環としてこの技術協定相当に役立ち得ると考えておる次第でございます。
  9. 石坂繁

    石坂委員 今御答弁になりましたような種類技術だけであるのか、あるいはそのほかに期待される技術というものがあるかどうか、なお重ねてこの点をお伺いしたい。
  10. 船田中

    船田国務大臣 私も技術専門家でないものですから、詳しく御説明申し上げかねますが、なお足らないところは装備局長あるいは防衛局長から御説明申し上げることにいたしますが、そのほかレーダーにいたしましても、ソーナーとかガイデッド・ミッシルとかいうような新鋭兵器につきまして、その技術わが国においては過去十年の間ほとんど空白になっておったものが多いのでありまして、ただわずかに艦艇の建造とかあるいは通信機材製造ということにつきましては、これは生産技術もあり、また生産工場も残っておりましたから、その活用によりまして現に国産のものができつつあります。しかしその他のものにつきましては、敗戦によりましてほとんどそういう点は全部破壊され、あるいはなくなってしまっております。従いまして遺憾ながらよその国に比較いたしますと、日本防衛関係生産技術知識あるいは施設というものは、非常におくれをとっております。従ってそのおくれを回復する意味におきまして、こういうようなものが必要になってくる、そういう次第でございます。
  11. 石坂繁

    石坂委員 この協定締結に伴いまして、予算的の措置が必要であろうと思います。現に協定第四条には、技術上の知識所有者に対する補償の規定があります。なお第六条には、技術財産委員会が設けられるとなっておりますが、この費用も必要であろうと思われますし、第七条の(b)に「防衛目的のため提供された特許権及び技術士知識の使用から生ずる支払及び裁定の額を評価すること。」こういう文言がうたわれておるのであります。これらの内容につきましては、後刻だんだんお伺いいたしますが、かような点からいたしましても、予算的の措置が必要であろうと思われるのであります。果してしからば予算的の措置がすでに講ぜられておるのかどうか、これを念のためにお伺いしたい。
  12. 船田中

    船田国務大臣 この協定を実施いたしますために、特に防衛庁として、予算的措置をとらなければならぬということはないのでございます。先ほど申し上げました飛行機生産というようなことにつきましても、今おあげになりましたような予算関係の問題は、購入費としてその中に含まれますから、従いまして政府として、すなわち防衛庁としての予算的措置の必要はないわけでございます。またその措置をとっておりません。
  13. 石坂繁

    石坂委員 予算関係と同時に、この協定締結に伴いまして、国内立法的措置を必要とするであろうと思う。先ほど条約局長の御答弁によりましても、本協定締結がおくれたのは、さような特許権等国内法の調節についての事務的のことでおくれた、こういうふうなことが御答弁の中にあったようであります。私もこの協定を見まして、国内特許権なりあるいはその他の立法的措置が必要であるように思われるのでありますが、それに対しましていかなる御用意があるか、伺っておきたい。
  14. 下田武三

    下田政府委員 技術的な原因締結がおくれたと申し上げましたが、実は日本法制をいじくらないで済ますために、多少の困難があったわけでございまして、もとより本協定は、この締結に伴いまして何らの日本側に対する立法の義務を課すものではございません。しかし協定内容いかんによりましては、あるいは国内法制を改めなければならない可能性も生じたわけでございますが幸いにしてそのことなく済むことができたわけでございます。幸いにいたしまして特許法には第三十三条に、特許に関しまして条約またはこれに準ずるものに別段の定めがある場合にはその規定に従うという、便利な法律規定がございますので、この協定に伴いまして特殊な扱いといたしましては、アメリカ政府が保持しておる秘密特許、その他の特許になる前の技術情報日本によこしました場合には、日本側特許公報に載せて公表するという成規手続をとらないという特殊の取扱いをしなければならないわけでありますが、その特殊な取扱い法律をいじくることなく、先ほど申しました特許法第三十三条の規定に従いまして、この議定書がそのまま同時に国内法と同じ効果を持つことに相なりますので、結局立法措置は何らとる必要はないということに相なったわけでございます。
  15. 石坂繁

    石坂委員 国内立法措置は必要がないというお話でありますけれども、条約によって国内的の規律をするということは、やはり立法措置を必要とするのではないかと私は考えるのであります。ことに日本特許法は、出願をすれば公告することになっておる。ところがこの協定が結ばれるということになりますと、それが公告できないというようなことに条約自体はなっておるようでありますが、それと特許法公開主義をとっておるという点とは矛盾はいたしませんでしょうか。条約局長の御答弁は、この協定及び議定書の取りきめだけで、国内的には万全が期せられるという御趣旨のように承わったのでありますが、この点は私は了解できないのでありまして、今の特許法との矛盾という点について、なお御説明を願いたい。
  16. 下田武三

    下田政府委員 ごもっともでございますが、同様の事例はほかの法律にもあるのでございまして、財政法あるいは関税法等におきまして、条約あるいは国際慣例に基きまして別段の定めがある場合にはそれに従うということに相なっております。そこでその別段の定め内容でございますが、一般的にすべての特許あるいはすべての技術情報について、特殊の措置をとらなければならないということに相なりますと、これはもう特例とは言いがたいわけであります。ところが今度の場合には、アメリカ政府秘密に保持している特別の、ある種類技術情報だけについて、特殊の取扱いをいたすわけでございますから、一般的例外とは申し得ません。特殊の場合に、まさに特許法三十三条が規定しておると同じような特例定めるわけでございますから、これによって法律的には差しつかえないのではないかと考えておる次第でございます。
  17. 石坂繁

    石坂委員 どうもその点が、私は十分に納得ができないのでありますが、米国秘密にされておる技術情報をもらった場合に、わが国特許法を改正して、秘密特許制度を作る必要が私はあるように思う。なおまた別に日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法、こういう法律自然改正の必要があるのではないかと考えるのであります。くどいようでありますけれども、なおもう一度その点に対する御見解を伺います。
  18. 下田武三

    下田政府委員 私の御説明が足りませんでしたら、特許庁の方から御説明があると思いますが、先ほど申し上げましたように、いかなる法律特例の場合でも、一般的な例外定める場合には、立法措置を講ずるのが正道だろうと私は思います。ところが技術情報あるいは特許の全般についてでなくて、ある特殊のものだけについての特例定める場合でございますから、特許法三十三条の特例法に従いましてやることが可能であり、また従来の例に徴しましても、むしろ正規の慣例に従ったものと言えるのではないかと思います。  なお御質問の後段の、秘密保護法との関係につきましては、本協定に申します秘密と、秘密保護法にいう秘密というのは、全然別個の観念でございます。本協定に申します秘密というのは、特許権者あるいは技術情報所有者の私の権利を保護するというコンフィデンスの問題であります。ところが防衛秘密の方はセキュリティ・リクワイアメントに基くものでございますので、保護しようとする動機目的が違うわけでございまして、この協定締結に従いまして、防衛秘密保護法を改正しようという必要は全然起らない次第でございます。
  19. 竹村礼三

    竹村説明員 ただいまの御質問でございますが、この特許法第三十三条に基きまして、この協定三条なり議定書が出ておるわけでございます。従いまして、その範囲内で特許法の一部特例になっておるわけでございます。一部特例になっておると申しますのは、ただいま条約局長からもお話がございましたように、特定アメリカ秘密になっております出願に関するものが、日本特許出願があった場合、そういう特定のまれな事例を予想いたしております関係で、この条約議定書によったわけでございます。なおもう一つこれはいろいろこの特許の問題は手続関係が非常にやっかいなといいますか、中心になっておる折でございますので、アメリカ側との間で内容を十分に腹を合せておくと申しますか、了解をとっておかなければあと手続が進まないという意味で、実はこの協定の中に織り込んだ次第でございます。  なおあとの御質問でございますが、これのみならず、さらに広い秘密特許制度というものが必要になるのじゃなかろうか。こういう御質問かと思いますが、この問題は本MDA協定に基きます問題といたしましては、この協定で私たち十分だと現在のところ考えておるわけでございます。将来の問題が起りましたときには、これまた別途考慮すべきことであろうと思います。現在ではさように考えております。
  20. 石坂繁

    石坂委員 私の以下の質問は、主として条約局長に対してでありますから、長官に対してはもうよろしゅうございます。  第一条の関係先ほど防衛生産ということは伺いました。この第一条第二項に「防衛上の秘密保持要件に反してはならず、」こういう言葉が使ってあります。そこで「防衛上の秘密保持要件」というのは、一体どういう条件わが国の場合においてあるか、これをお伺いいたします。
  21. 下田武三

    下田政府委員 第一条に申します「防衛上の秘密保持要件」と申しますのは、別に特殊の意味があるわけではございません。日米両国のそれぞれにおきまして、法律上あるいは行政上いろいろな定めがございます。そういう定めに反しないでやらなければならないということでございまして、日本の方でも法律といたしましては防衛秘密保護法もございますし、また防衛庁におかれましてもいろいろな規則なり内規なりをお定めになっておられると思いますが、そういう法律上及び行政上の定めに即応して行う、そういう趣旨でございます。
  22. 石坂繁

    石坂委員 第二条に、「技術上の知識」という言葉が出ております。そうしてこれは第八条に一応その定義をうたってありますが、それだけではこの内容は必ずしも明確でないのであります。それを具体的にお伺いいたしたい。なおまた第八条に「入手することができないもの」こういう言葉を使ってありますが、これまたきわめてばく然といたしておるのでありまして、技術上の専門家ならば特別でありますけれども、技術上の専門家が知り得るような知識であるかどうか。この「技術上の知識」ということと「一般に入手することができない」というその具体的の内容をお示しを願いたい。
  23. 下田武三

    下田政府委員 「技術上の知識」と申します言葉は、別にテクニカル・タームではないわけでございまして、ごく一般に使う言葉でございますが、本協定において使う場合にはどういうことを意味するかということを規定してかからなければなりませんので、第八条にその定義を設けたわけでございます。第八条におきましては、その知識を持っている者あるいはその知識を持っている者と特殊な関係にある者、と申しますことは、その知識を考え出すに当って、共同して作業した者とかあるいはその人の承継者でありますとか、そういう個人的な特殊な関係にある者が自分で考え出したという点、それから、その人が自分で考え出して、しかもその知識は公知となっていない、一般には知らされていないということその二つがどうしてもこの協定では大事な条件でございます。なぜかと申しますと、もともとこの協定の本旨は、そういう知識の所治者の権利を保護しようというところが目的でございますから、その権利を保護しようという観点から申しますと、先ほど申し上げました二つ要件が必要に相なってくるわけでございまして、従いまして一般的な用語であります「技術上の知識」という言葉に対しまして、本協定目的に照らしました定義を与えた次第でございます。
  24. 前尾繁三郎

    前尾委員長 石坂君、質疑中で恐縮ですけれども、外務大臣が来られましたので、国際情勢に切りかえて、そしてあなたの質問は、それが済んだあとでやってもらうことにしたいと思います。
  25. 石坂繁

    石坂委員 けっこうです。     —————————————
  26. 前尾繁三郎

    前尾委員長 それでは国際情勢等に関する件について質疑を許します。緊急質疑が出ておりますから、それを許します。穗積七郎君。
  27. 穗積七郎

    穗積委員 質問に入る前にちょっとお尋ねしますが、この前からお願いしておった旅券制限閣議決定を発表していただきたい。
  28. 重光葵

    重光国務大臣 その問題についてお答えを申し上げます。  最近国交未回復の共産圏諸国への渡航希望者数相当増加してきているが、渡航によって著しくかつ直接にわが国利益の害されることがあってはならぬので、政府としては旅券法運用事務上の便宜として、おおむね渡航許可を与えるのが適当であると考えられる場合及びおおむね渡航を認めないのが適当であると考えられる場合を列挙した取扱い上の参考要領を作り、閣議了解を経た次第である。  もとよりこの要領は、渡航許可許可決定するについての絶対の準則ではなく、渡航許可許可個々申請に応じ、旅券法の条文に照らして判断されるものであり、個々申請旅券法第十三条第一項第五号の規定に該当すると認められるときは法務大臣と協議の上、この旨決定されるものである。このように、今回閣議了解を経た件は、純然たる執務上の参考要領にすぎないものであり、これを公表することは、かえってそれが渡航許可許可決定するについての絶対的な準則で、るかのような誤解を生ずるおそれがある。従って、この要領は公表さるべき性格のものでないと考えますので、本文の公表はいたしません。
  29. 穗積七郎

    穗積委員 公表しないというのは、約束が違うのです。これは不当な取扱いだと思うのですが、どういうわけですか。
  30. 重光葵

    重光国務大臣 私は、公表するということを申し上げたことはございません。相談をしてみて、そうしてできるだけ御希望に沿いたい、こう申し上げました。私もその努力をいたしました。関係の向きにすべて相談をして、決定をいたしましたことに従いまして今御答弁を申し上げたわけでございます。そこで執務参考要領でありますから公表することは避けます、あくまで既定の法規の精神によってこれを取り扱う、こういうことを申し上げたわけでございます。
  31. 穗積七郎

    穗積委員 今の釈明といいますか、発表しないということの弁明ですね、それは二つのことが含まれていると思います。一つは、執務準則として列挙的にどういうものかとにかくきめたということは明瞭になっておるわけであります。しかし第二点としては、それはむしろ発表しない方がいいのだという二つ意味を含んでおるわけですが、そこで私は発表しないことの動機納得がいかない。動機いかんにかかわらず発表しないということは不当、たと私は思うのです。従ってまず発表しないという今の弁明についての含みといいますか、動機について最切にお尋ねしたい。それはどういうことをきめたということは、この前私がこういうことをきめられたようだが、大体当らずといえども遠からざることではないかと言ったら、大体そうだといったふうな式の御答弁があって肯定をされたわけです。にもかかわらずそれをもし発表してしまって、法律ではなく、執務準則であるが、しかしそれが固定されて、そうしてそれによって不当な制限をするような結果になってはいけないから、むしろどちらかといえば、なるべく制限しないようにする。旅券法精神に従って、原則としては自由であるべきものを、特に著しく国益を害するおそれがあるということが明瞭に客観的に証明できるような場合においては、外務大臣の裁量においてこれを許可しないことができるということになっておるのは、それは例外であって、原則は自由の原則の精神によっておると私は思うのです。その自由であるべきことを制限しない、または縮小しない、そういうことのためには、発表してしまって動きがとれないようにするよりも、発表しないでおいた方がいいという趣旨で発一表なさらないと御決定になったのか。あるいはまた逆に言えば、発表しないことによって、一体何が何だかわからないけれども、自由裁量の範囲を拡大して、そして世間からは、制限をしたことに対して、どういう理由だということで追及されたと遂に、法の精神と反するような制限準則を持っておるということで、あげ足をとられては困るから、少くともこれを発表しないのだ。そうして結論からいえば、そういう動機によって発表しないということになれば、不当なる理由、不明瞭なる理由によって不当に制限が加重される、こういう結果になるわけですが、一体どちらの動機で発表なされないのですか。今の弁明を伺いますと、どっちにもとれるような非常にあいまいもこたる外務大臣一流の文章になっておりますが、この際その発表しない動機がいずれであるか明瞭にしていただきたいのです。
  32. 重光葵

    重光国務大臣 発表しない結論に至りましたことは、今申し上げた通りであります。(穗積委員「申し上げた言葉がわからぬ。不明瞭である。」と呼ぶ)不明瞭ではございません。きわめて明瞭に申し上げております。意見は御勝手です。これはしようがない。意見は御勝手でございます。今二つ理由をあげられたが、私はこの問題を、法規の精神に違ったように窮屈にするためだという動機は、少しもございません。これは個々の問題について審査すべきことが順当であり、そうしなければならぬと思います。それだから、個々の問題について審議して、法の規定によってこれをやる。その場合において、いろいろなことについて執務の参考資料として基準を設けることは、これはでき得ると思います。しかしそれがために法規の精神を曲げることはできませんから、その法規の精神によってあくまで個々の問題について審議をする、こういうように考えます。(穗積委員質問に答えて下さい。どうしてそういうことを発表しないのですか。」と呼ぶ)だから質問に答えておるじゃありませんか。窮屈にするためにやるのではないということは、はっきり言っているわけです。
  33. 穗積七郎

    穗積委員 それでは十三条一項五号、あくまでそれを拡大解釈をしたり、それにプラス・アルファの制限を加えないという意味で発表しないということでございますか。すなわち、申し合せか何か知らぬが、閣議の了解事項なるものは、これはあまり重いウェートを置かないのだという意味で発表しないという趣旨なのか、どちらなのですか。第一、今のあなたの発表しないという動機は、私にはさっぱりわからぬ。あなたは明瞭だとおっしゃいますが、私の明晰なる頭脳をもってしても(笑声)あなたの御釈明では、どっちに動機があるのかさっぱりわからぬ。まして一般の国民がそんな文章を示されたって、わかるはずはないですよ。
  34. 重光葵

    重光国務大臣 非常にわからぬとおっしゃるが、私は今のお話がさっぱりわからぬ。これは一つまっすぐおとり下さい。あなたの明晰な頭脳をもってしても、はなはだ済まないことなんですが、質問要領を得ない。そういうことで私はこの法規を不当に厳格に解釈してやるようなことがあってはならぬと思います。しかしそれは個々の問題について判断をしなければわかりません。その個々の問題について判断する場合に、いろいろな執務の参考として基準をこしらえるということは、少しも差しつかえない。しかしそれは今発表するということをする必要はない。またしない方がいいと申し上げておるのであります。法規の命ずる通りにやるのです。
  35. 穗積七郎

    穗積委員 あなたは発表する方がいいと思ったから、その御希望に沿うとおっしゃったのじゃないですか。その意味では発表すべきものだとあなたは考えたのでしょう。
  36. 重光葵

    重光国務大臣 それはこの委員会であなた方の御希望があるならできるだけ沿いたい、私は原則的にそういう考えを持っておるのであります。しかしながら全部相談の結果、これはこういう工合にした方がいいという決定で、その結果をお話しておるわけでありますから、それが不当な決定であるという御意見は、これは立場々々で御意見としては私はあり得ると思います。しかし私の言うことがわからぬということならば、これは少し私はおかしい、この通り私は考えておるのであります。それでその点については私は十分御批判は伺いたいと思います。しかし私の今の説明はそうでありますから、それはその通りにお聞き下さることを希望するわけであります。
  37. 田中稔男

    田中(稔)委員 関連して。海外渡航の自由は、御承知の通り憲法によって保障された基本的人権の一つでありますが、これを旅券法によって制限している。このことも非常に重大なことです。それをその旅券法の条文の解釈に相当するそういう執務準則を作られたということがさらに重大な問題ですが、そういう基本的人権を制約するような重大事項を、秘密のまま国民に公表しないなんということは大へんなことだと思いますが、そういう執務上のいろいろな要領や何かを、国民に秘密にしておいていいといったふうに大臣はお考えになりますか。
  38. 重光葵

    重光国務大臣 私は執務の参考資料を全部公開しなければならぬということはないと思います。(「聞かれたら隠す理由もないな」と呼ぶ者あり)だからできるだけ公開をした方がいいとも一般的に考えます。しかしそれは原則的な考え方であって、どうしなければならぬということは、私は法規的に出てこないと思います。それで私はそういう考えをもって相談してみまして、そうしてかような結論に達したということを今御報告申し上げておるわけであります。そうして憲法上そういう人権の自由があるということはその通りでございます。それは十分に考慮しなければならぬと思います。しかし旅券法という法律があるということも、これは悪法のもとにあるのでございます。だからその与えられておる裁量権を公正に行使するということが、絶対に必要であると思います。さような意味でもってこの旅券法の実行をやるつもりでございます。それに反することのないように注意をいたす考えでございます。
  39. 田中稔男

    田中(稔)委員 旅券法の第十三条に渡航の自由を制限する規定があるのですが、これは何も共産圏を対象にしたものじゃないと思います。それだからそれの解釈としてそういう準則をお作りになるということは、共産圏に対する渡航の自由を、必要以上に制約するという政治的な含みが何かあるのじゃないかと思うのですが、まず条文の解釈を伺いたいと思います。
  40. 重光葵

    重光国務大臣 私は共産圏とかなんとかいうことじゃありませんけれども、しかし日本が共産国でないということははっきりいたしております。それだからそういうことについて共産党の策動がこのことによってなされるということならば、これも考慮しなければなりますまい。しかしそれはそういうことだから、何もカテゴリカルに言うわけじゃありません。しかしそれはそういうことについて考慮を払わなければならぬということもまた事実であろうと考えます。しかしそれは個々の場合について私は考慮したい。
  41. 田中稔男

    田中(稔)委員 外務大臣は私の質問を取り違えているのだが、外務大臣が今読み上げられた文書には「国交未回復の共産圏諸国」というふうに書かれておるのです。だから執務要領共産圏諸国だけを対象にしておることは明らかでありますが、旅券法十三条の規定において問題になっているのは、何も特定共産圏諸国ということじゃないわけです。その点が食い違い炉あるわけです。特に共産圏諸国だけを対象にするという点において、今日の平和的共存の時代に、どうも私は日本の外務省のセンスは非常にずれておると思うのですが、どうですか。
  42. 重光葵

    重光国務大臣 私は今のずれておるとか、ずれてないとかいうお話は、実は大きな政治問題だと思います。今世界は動きつつあるのであります。すべてのことはその動きつつある情勢をよく考えなければならぬということは、私は当然のことだと思います。しかしまたこれは過去のいろいろないきさつも十分に考えなければならぬ。そこで私はこういうことについては、個々の問題について動きつつある情勢も考えて取り扱わなければならぬ、こう考えます。しかしその根本は、憲法はむろんのこと、法規の精神にたがわないように慎重に取り扱わなければならぬということは当然のことであります。私はそう考えてやろうと思います。
  43. 岡田春夫

    ○岡田委員 関連して二、三伺いますが、まず第一に、外務大臣にはこれはどうしても私は強くあなた自身の言葉に対して責任を感じてもらわなければならないと思います。と申しますことは、この前穂積君が、この内規について発表してもらいたい、こういうことについていろいろ質問をいたしました。これに対してその当時の委員会は一時混乱を起した。どういうわけで混乱を起したかというと、松本七郎君から、正式に国会法の規定に基く政府側のいわゆる閣議の決定事項を資料として提出をしてもらいたいという動議が出された。この動議が出されたと遂に、委員長が一この動議を採択することについて、委員長取扱いについてもこれは実は疑義があるのですが、その当時疑義のある点については、一応これは委員会の運営のためにわれわれは遠慮したのですが、動議が出されたということについて休憩が行われて、この休憩最中に、与党側の委員から、この内規を何とか出させるようにするから、この動議は撤画してもらいたい、こういう点が出されて、その申し合せの上に立って再開をして、動議は撤回するが、そのかわりあなた自身は内規の内容を発表しますという意味答弁をされておる。うそだと思ったら、速記録を読んでみなさい。ここに速記録がありますよ。そういう意味でわれわれは道義的にあなたに対して——われわれは野党側の委員ですけれども、今までの委員会の運営からいって、外務大臣はそう道義に反するようなことはやっておらないとわれわれは信じて来たのです。ところが今日に至って発表できないということを、言うならば、あなたのとっている行為は明らかに背信行為だと言わざるを得ない。動議を撤回すれば出しましょうと言うから、われわれはその道義的な態度に信頼して、撤回したのじゃありませんか。それにもかかわらず、今になってわけのわからないような、少くともあなたがべらべらっと読んだやつは、だれに見せてもわけがわからないですよ。あなた自身はわかるかもしれぬが、ほかの人にはわからない。そういうようなわけのわからないものを出して、あなた自身平然としてやっている態度は、われわれにはわからない。あなた自身は、そういうように国会を軽視し、じゅうりんしてもかまわないというのですか。あなた自身は、こういう背信行為を速記録の上に残してもいいというのですか。あなた自身があのときほんとうにお出しになるという心境であったならば、そういう背信行為をしないで、もっとはっきりした態度を示していただきたいと思う。あなた自身の力がなくて出せないなら、出せないとおっしゃいよ。そうじゃなくて、別にほかの理由があるからというなら、あるとおっしゃったらいいじゃありませんか。明らかにあなた自身は委員会を裏切っている行為をやっているじゃありませんか。この点についてはいかがですか。
  44. 重光葵

    重光国務大臣 そう大きな声を出さないでも、私は十分に御意見は伺いますから、どうか一つ……。そこで背信行為と言われるが、私は、それはそうじゃない、それを承認するわけには参りません。私はでき得るだけあなた方の御希望に沿いたいと思いました。思いましたが、私の答弁は速記録にあるはずでございます、これは私一存では参りませんから、政府で協議を尽した上で御答弁をいたしましょう、こう言って私は引き下ったつもりでございます。不幸にしてこの答弁はあなた方の御希望には沿い得ないことになりました。この点は、私個人としては御希望に沿いたいと思いましたけれども、そうはいきませんでした。そこではっきりとそのように相談の結果きまったことを御答弁したわけでございます。そうだから私はそれが背信行為だということは了承するわけには参りません。私は、この前のお約束通り、これを審議して、その決定お話ししたわけでございます。
  45. 岡田春夫

    ○岡田委員 私が背信行為だと言ったのは、与党側とあなた方の話し合いの上で、動議を撤回させた。動議を撤回する理由としては、あなたに何らかの形でその内規というものを公表するということの意味のことを言わせるからということで、それに基いて野党側は動議を撤回した。動議を撤回させておいて、今になって発表しないということになったら、あなたは明らかに背信行為じゃありませんか。これは背信行為じゃないのですか。そのときはうまいこと言ってごまかして、あとになって言わない。これは明らかに詐欺、窃盗、背信行為のたぐいだよ。これは違いますか。これは明らかに人をだましている行為ですよ。これは背信行為じゃありませんか。初めにおいては、あなたは出すからやめてくれ、やめてしまったら、おれは知らねえぞというのは、明らかに背信行為じゃありませんか。違うのですか、何ですか。あなた自身はそうじゃありませんか。
  46. 重光葵

    重光国務大臣 私は今のお言葉に対して、同じ言葉をもって答えることは差し控えますが、私は政府の間において相談して、相談の結果を御答弁いたそう、こういった約束を実行したのでありますから、背信行為でも何でもありません。いわんや詐欺でも窃盗でも強盗でもねいと思います。
  47. 松本七郎

    ○松本(七)委員 議事進行。委員長に申し上げますが、私は一般情勢でこの問題を当然取り上げるつもりでいたのですが、今緊急質問に入りましたから、ここで一つあらためてその資料提出ということについて、この委員会で決議をしていただくことを動議として出します。その趣旨をよく与党の議員も聞いていただきたい。後ほどまたこの問題をあらためて外務大臣には十分私は質問することはあるのです。  先ほど外務大臣説明では執務上ということをしきりに言われる。いかにも軽く聞えるのです。けれども御承知のように、新聞にちょっと書かれた内容を見ても、あるいは穗積委員から指摘されたようなことからいっても、外務大臣執務上の参考だと軽く言われるその内容を想像すると、相当これは問題になることがまっていると想像されるのです。たとえば旅券法に基いてはどうしても日本国の利益の上からおもしろくない場合には、個々にこれを渡航制限することを建前としていろわけです。それにもかかわらず今度の伝えられる基準によれば、公務員であるというような身分によって、あるいは先方の招聘国がまるがかえである、費用向う持ちである、そういうふうな般的な条件を一括して制限する基準にしようとしておるわけです。その内容は発表されないと言われるから、そこの御返事はいただけないかもしれないけれども、現に今役所では、そういうふうな次官会議できめ、閣僚会議できまったところのその基準なるものを十分考慮して、いろいろ調査もやっておるし、現にその制限をやっておるのです。だから——これからが大事血のですが、われわれはそういうことを政府がやっておること自体が憲法に合っておるかどうか、あるいは旅券法に合致しておるかどうかということを判断しなければならない。そうすると、次から次に制限されて、その基準に従って許可されないものがたくさん出てきた場合に、私どもはたとえば渡航課長なら渡航課長のところに行って、その理由を聞く。この基準は公表されておらないけれども、あるいは執務上のことですから渡航課長はそれを知っておられるかもしれないけれども、公表しない建前をとっている以上は、これを説明することができないのです。これは次官会議なり閣僚会議決定によって制限せざるを得ないのだ、こういう答弁しかできないわけです。こうなると私どもは、さらに局長なり次官なりあるいは大臣なりに、ケース・バイ・ケースで一々その理由を聞きに来なければならぬということに実際上はなると思います。私どもはそういう繁雑をもちろんいとうものではございませんが、こうして考えてきますと、私どもは、これはどうも憲法上もおかしい、違憲の疑いがあるということにねれば、個々の場合を取り上げてあるいは行政訴訟も起さなければならぬというときがあるかもしれぬ。けれども行政訴訟を起そうという場合にわれわれが起すべきか起すべからざるかということを判断するのに、政府が言う実際に運営するその執務上の参考にしておるという共平なるものを公表していただかないことにはわれわれ国会議員として、その行政府のやり方が違憲であるか、行き過ぎであるか、あるいは旅券法に合致しておるかということを、判断する材料がないじゃないですか。ですから行政府の立場はどうであろうとも、われわれ立法府の者としては、当然今度の基準というものはいかに行政府あるいは大臣としては執務上の参考であるというものであったにしても、われわれとしてはそういうふうに軽く扱うことはできないのです。国会議員としてこれはどうしてもできない。だからおそらく与党の議員諸君もこの趣旨からすれば、当然その真率なるものの公表を要求されるか、少くともこの外務委員会にそれを発表する要求に対しては、全面的に賛成していただけるものと私は確信するのです。(「与党反対」と呼ぶ者あり)反対するのだったら自分の審議権を放棄するようねむのだ。だから動議として出します。反対されるのなら、なおさら議事録にはっきりとどめておく必要がある。皆さんが反対されたということを議事録にとどめる必要がありますので、私はあらためて委員長にこれを要求しますから、その決定一つしていただきたい。もし反対される者があれば採決をされてでもここに明確にしていただきたいのであります。
  48. 前尾繁三郎

    前尾委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  49. 前尾繁三郎

    前尾委員長 速記を始めて。  では休憩いたします。    午前十一時五十五分休憩      ————◇—————    午後零時六分開議
  50. 前尾繁三郎

    前尾委員長 それでは休憩前に引き続き再開いたします。  松本七郎君の動議について議事を進めます。  本動議について討論の通告がありますので、これを許します。北澤直吉君。
  51. 北澤直吉

    ○北澤委員 ただいま松本委員から、過般政府においてきめられた渡航制限に関する執務心得と申しますか、それを発表せよとの動議が提出されたのでありますが私はこれに対して反対の意見を表明するものであります。  海外渡航については、御承知のように旅券法が制定されておりましてその旅券法の第十三条第一項第五号に、外務大臣において著しくかつ直接に日本国の利益または公安を害する行為を行うおそれがあると認めるに足りる相当理由があるものに対しては、旅券の発行を停止してよろしい、こういう規定があるわけであります。従来外務大臣はこの規定に従ってそのつど旅券の発行の申請に対しては、ある場合には許可をし、ある場合には許可をしないという措置をとって参ったわけであります。この問題はいろいろ問題がありまして、また政府部内でもこの問題は各省に関係がありますので、この旅券法の規則に従って旅券の発給を停止する場合の一応の心得と申しますかそういうものを政府部内で確定しておくことが必要である、こういう見地から、過般政府におきましても、この旅券の発行を停止する場合の心得について、一応の決定をしたと私は思うのであります。松本委員はこの決定がいかにも想法に違反し、あるいは旅券法に違反するものであるからして、そういうものはぜひ公表しろ、こういうふうな要求でありますけれども、今申し上げました一応の決定は、外務大臣が旅券の発行を停止する場合にそれを考える一応の基準でありまして、外務省といたしましては常に旅券の申請があるたびごとにケース・バイケースによって、その旅券の申請に対してある場合には許可し、ある場合には許可をしない、こういう建前であるのであります。問題はそういうふうに外務省が旅券の発行を停止した場合、それが旅券法に違反する場合におきましては、別に行政訴訟の道があるのでありまして、現にかつて松本治一郎氏が中共に旅行したいということで旅券の発給を外務省に請求し、外務大臣がそれを停止した。それについて松本治一郎氏は訴訟を起した。結局政府が勝って松本治一郎氏は負けたのでありますが、問題は旅券法第十三条第一項第五号の規定の解釈に関する問題であって、結局政府のとった措置は正しいということになったわけであります。そういうことで、もし政府のとった措置が憲法に違反し、旅券法違反であると認めた場合には、行政訴訟を起して裁判書で争うべきであります。法律の解釈でありますので、これは結局最高の司法権を持っております裁判所で争うべきであると私は思うのであります。問題は、こういうふうな旅券の発給に対する一応の心得を発表しろという要求は、要求としていいのでありますが、この点については先般来この外務委員会におきまして、法制局長官その他を呼びまして、詳しく野党の委員からも質問したわけであります。これに対して法制局長官は、こういうふうな内規は、国会の要求があっても必ずしむこれを出す必要がないのだという、はっきりした答弁をしているわけであります。私どももこの法制局長官の政府を代表する答弁については賛成であります。松本委員は、国会が国政調査のための資料を要求する場合におきましては、必ず政府はそれを出さなければならないというような主張をされておるのでありますが、国には国の機密があり、国家の機密、外交の機密がありますので、そういう国の機密に関係する場合におきましては、必ずしも国会に出す必要はないと私どもは考えております。そういう点から考えまして、私は松本委員のただいまの動議に対しましては反対をするものであります。
  52. 前尾繁三郎

  53. 穗積七郎

    穗積委員 私はただいまの動機に賛成をいたすものでございます。実は今北澤委員の反対の討論を伺って驚きにたえないのでございます。大体、今度の閣議のとりきめというのは、すでに今までの質疑で明瞭になっておりますように、外交上支障があると思われる者、公務員、国会議員、地方議員、それから第三には共産主義の思想または政治宣伝が行われるおそれのある場合、または利用されるおそれのある場合というのが、大体のとりきめの内容であるようでありますことはこれはわれわれがこういうふうに推測いたしておりますが間違い炉ないかと言ったら、大体その通りだというような外務大臣の御答弁もございました。もしこれがそうであるとするならば、これは明らかに憲法並びに旅券法の基本精神を侵すものでございます。  元来、旅券の問題につきましては、性別、宗教、思想等に拘泥することなく、また相手国の国に差別をすることなしに、基本的には自由であるべきものでございますが、その趣旨を体した旅券法は十三条第一項五号におきまして、著しく国益に反する、または公安を害するおそれがあることが客観的に証明のできるような者だけを、除外例としてこれを認めておるのでございます。従ってこういう制限規定は明確なる、だれが見ても間違いのない、すなわち係官または時の政府、または外務大臣の主観によって左右されることのないような列挙かつ明確なるものでなければならぬのでございます。ところが先般閣議でとりきめられたと称せられます三つの制限事項なるものは、これはもう明らかにこの基本精神並びに法律規定を侵害するものでございます。これはもう疑う余地がないと思う。すなわち非常にばく然としておるようでございますから、従ってある場合においては、縮小解釈の可能性もありますが、他の場合におきましては、これが拡大解釈をされるおそれのあることは、前々からこの委員会において、われわれが外務大臣に注意をいたしたところでございます。  本来このことが出て参りましたのは、明らかに最近になりまして共産主義者百の経済建設または政治方針に対して、今までとびらを閉ざされておりました日本国民炉、世界の情勢に立ちおくれないために、またはこれらの社会主義建設に対して、目を見開く必要があるというので、ほうはいとしてこれらの国に対する渡航視察の要望が強く出てきたわけでございます。そこで、今共産主義に対してまたは社会主義思想に対してはなはだしく無知であり、または曲解を持っておられる自由民主党の一部の諸君が、共産主義に対する不当なる恐怖心を起されまして、そうして鎖国令をしこうという、多数のいわば暴力でございますが、多数にものを言わしめて、法律をも曲げるような鎖国政策をとる、ちょうど豊臣または徳川政権が樹立されましたときに、国益の名によって、実はみずからの政権を維持するために、暮府政権を維持するために、国民に見てはいけない、聞いてはいけない、しゃベってはいけないという、その鎖口政策をとって、それがいかにも国益に合致するがごとき錯覚を起さしめて、鎖国政策を三百年とって参りました結果は、一体どうでございましたか。これに類するような驚くべき政策が、今日自民党を中心とする鳩山内閣によってとられておるのでございます。その驚くべき時代錯誤的な鎖国政策を、ある意味において合理化するために、さきに言ったような三つの制限規定をなすったのです。  これは今申しました通りに、非常に基本的に旅券法精神並びにその規定を侵害するものである。従ってこれを基準とする行政措置は明らかに違法処分でございます。違法処分になるおそれがあるとわれわれは考えますから、従ってそういう違法処分が行われる危険があるということをわれわれは察知して、その場合に、そのことなからしめるために、国会の調査権を発動して、そうして国会の名において行政府であります政府に対して、その内規なるものを明示せしめる、しかもこれは今北澤委員によりますと、外交上の秘密事項であるかのごとくでありますが、秘密事項ではございません。そうであるとは大臣すらも言っていないし、客観的にも秘密事項に属すべき性質のものではない。旅券法第十三条第一項第五号の今申しました制限規定の解釈の基準として決定されたものでございますから、これは明らかに国内法の取りきめであるし、そのことは面接かつすべて日本国民の基本的権利関係する規定でございます。もしその内容が正当であるという自信をお持ちになるならば、なぜ一体旅券法を改正法律案として国会にお出しになりませんか。従ってそういうものではないといってお出しにならないところには、あなた方が非常に狡猾なる精神をもって、いわゆる不当なる内規によって旅行を不当に制限しようという腹があるか、しからずんばその不当の決定に対して、これは明らかに不当であるというやましい心があるから、これは発表するわけにはいかないから、法律案としては世間に出せたものではない、しかも内規として決定したものに対しても、これはお恥かしくて出せないという、不当なる制限をするこのような規定の取りきめは恥かしくて世間に出せないという二点によって発表されないものだとわれわれは思う。  われわれから見るならば、旅券法を侵害するものである。従って国民の基本的権利を侵害するものである。それは何ら外交上の機密に属すべき性質のものではございませんから、従って今の動議に対しましては、当然われわれは賛成をいたします。与党の諸君も今からでもおそくはありませんから、考えを翻されまして、全会一致賛成されんことを希望いたしまして、私の賛成の討論といたします。(拍手)
  54. 前尾繁三郎

  55. 岡田春夫

    ○岡田委員 私はただいまの動議に賛成をいたします。先ほどから問題になっておりますことは、ただいま穂積君からも申し上げましたように、旅券法の第十三条第一項第五号に関連いたしまして、それに伴う行政措置内容を行うものとして、開帳の決定が行われたわけでございますが、そこでわれわれとしては、国会が立法機関として、この行政措置が果して立法上憲法に違反しているものであるかどうか、あるいは旅券法法律精神に違反しているものであるかどうかということを判断することは、国会議員としての任務でなければならない。国会法に規定され、あるいは憲法に規定されている国政審議の権利の当然の行使として行わなければならないことであると考えて、われわれは要求をしたのであります。  そこで、第十三条の一項五号というのは、先ほど外務大臣も言われたように、「著しく且つ直接に日本国の利益又は公安を害する行為を行う虞があると認めるに足りる相当理由がある者」、こういうようになっております。このことは一体何を意味しているかというと、著しくかつ直接に日本国の利益または公安を害する行為という、ここまでの行為というのは、これは旅券法が出されました当時の国会において、再三審議をされておりますが、こういう行為というものは、大よそ日本国内においては法律上犯罪行為として規定されているものという、このような明確な答弁があったわけであります。こういう行為である、こういう行為をやるおそれのある、しかも相当理由のある者、こういうことの法解釈がはっきりと行われているわけであります。  大体法治国の日本としては、日本の国民に対して何らかの差別行為やあるいは制限を行う場合においては、これは法律において、こういうことをやるならばこれに対する制限を行う、こういうことの差別を行うというのが建前である。ところが今度閣議で決定されようとしていることは、このような第五号の精神から逸脱する危険のある幾多の事項を決定しようとしているわけです。ですから、この危険のあるところの閣議の決定事項を明らかにして、ほんとうに政府並びに与党が自信があるならば、第五号の精神とは反しません、第五号の基準とは反しませんということで、むしろ進んで閣議決定内容を明らかにすべきである。それにもかかわらず、今のところこれを出さないでごまかしていこうとしているのは、みずから顧みて、自分たち自身もこの法律に違反しているのではないかというおそれを持っていることを現わしている。しかも国民に対してこれを明らかにしないということは、国民が持っている基本的権利であるところの渡航の自由、憲法の二十二条に規定されている渡航の自由というものに対して、政府が勝手にこれを制限しようとするファシスト的な思想の現われだと言わざるを得ないわけです。  私たちは、そういう意味においても、われわれが国会法の正式の手続を通じてここに閣議決定内容の提出を要求することは、われわれ立法権に参加する者としての当然の権利であり、政府はそれに対する義務があると考えておるが、いろいろ申し上げるまでもなく、穗積委員から詳細にお話がありましたので、私は賛成の趣旨を簡単にいたしますけれども、こういう点から申しましても、私はこの動議は当然与党の諸君も賛成をされて、政府自身がこの閣議の決定事項、内規を提出されることを期待をいたしまして、私の賛成の討論を終ります。
  56. 前尾繁三郎

    前尾委員長 これにて討論は終局いたしました。  採決いたします。本動議に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  57. 前尾繁三郎

    前尾委員長 起立少数。よって本動議は否決せらたました。  それでは、先ほどの質疑を継続いたします。穗積七郎君。
  58. 穗積七郎

    穗積委員 実は旅券法の問題は、すなおに簡単に解決できると思って、念のために発表を促したわけですが、どうもわれわれの期待に反したような取扱いをされたので、思わぬ時間をとりましたが、きょうは時間がありませんので、私はあと一つの問題についてだけお尋ねしたい。  それは特に緊急を要するからでございますが、今モスクワで河野政府代表がイシコフ漁業相と漁業協定の問題について交渉をしておる。そこでそれについて外務大臣に率直にお尋ねしたいのですが、まず最初にお尋ねしたいのは、河野代表はいわゆる暫定漁業協定締結したいという趣旨で請訓をしてこられたようでありますが、それについては外務大臣は御依存ございませんかどうか、まず第一にそれからお伺いしたいと思います。
  59. 重光葵

    重光国務大臣 モスクワで漁業問題について交渉をいたしておりますことは御承知の通りであります。その交渉案件は、公海における漁業の制限に対することについて話し合いをしたいというので、漁業の全般の問題について話し合いをしておるわけでございます。しかし交渉が長引く場合においては、さしあたって必要である本年の漁業ということについても処置をいたさなければなりません。そこでその意味におけるさしあたっての処置という意味で暫定協定だということが言われておると思います。実は暫定協定云々ということについては、交渉の状況については報告を得ておりません。しかしそういう意味だろうと解釈をいたしております。またそういうような意味であるならば、向うの状況に応じて、日本の漁業の——少くとも今年さしあたっての漁業を救済するということもやったらいいと考えております。これは交渉に当っておる政府代表の考え方を、また交渉の模様を十分承知した上で政府の考えは決定いたしたいと思いますが、大体さようなことじゃなかろうかと考えております。交渉内容については、むろん私は詳細にこれを申し上げる自由を持ちませんが、大体の考え方はそういっておることを申し上げておきます。
  60. 穗積七郎

    穗積委員 河野代表から協定調印のできる全権委任状をもらいたいという要請が来ておるようだが、これはお出しになりますかどうですか。
  61. 重光葵

    重光国務大臣 その点については、これも一度ならず御説明したと思います。協定ができまして調印をする段取りになりますれば、全権委任状を出すことの手はずはいつでも整いますし、またすぐ出せます。まだそこまでいっていないということを申し上げてお答えといたします。
  62. 穗積七郎

    穗積委員 われわれが報道として聞いておるところによると、漁族保護の問題と、それから海難救助の問題について大体話し合いがつく見通しがついたから、協力を結んで帰りたいという趣旨で、河野代表から全権委任状の要請があったようにわれわれ聞いておる。そこで伺いたいのは、必要があれば出すということですが、それはこういう意味でございますか。その二つのことに関しては——国交回復については河野代表が交渉をすることは差し控えるとして、漁業問題については、交渉し、話をきめることを、何といいますか、許可したわけですね、代表に対して。その範囲内における協定を結ぼうと言ってきておるときに、その結ばれるであろうところの、相互の合意に達した協定内容を見てからでなければ全権委任状はお出しにならない、こういうつもりでございますか、一括して委任をして、代表の要請に従って全権委任状を出すわけでございますか、いずれでございますか。
  63. 重光葵

    重光国務大臣 それは結局同じことだろうと思います。協定ができて調印をする段取りになれば、いつでも出すように用意はいたします。むろん協定文について政府承認があって、初めて調印の段取りになることは、これは普通の交渉の場合と変りはございません。
  64. 穗積七郎

    穗積委員 私の聞いておるのは、むろんそうですが、はっきりこちらへ請訓として合意に達した協定内容政府によこして、政府で検討した上で、これなら差しつかえないという最終的か判断があった後に、全権委任状をお出しになるつもりであるのか、そうではなくて結ぶときには事前に通告をして、内容の承諾を求めた上で調印をしてもらいたいという条件はつきますが、河野代表の要請に従って事前に委任状はお送りになるつもりでございますか、どちらかということを聞いておるのです。
  65. 重光葵

    重光国務大臣 それはもう、毎日向うの発展は詳細に往復をいたしております。もうこれで調印の運びに至るということは、すぐ判断がつきますから、その判断によってやるわけでございます。
  66. 穗積七郎

    穗積委員 それではお尋ねいたしますが、もうすでにこの事態は最終的な段階にまで来ておるように見受けるから、内容についてちょっとお呼ねしたいのだが、協定を結ぶ協定の基本的な立場がソビエト側の制限方式、これを認めること。もしこれを認めるとすれば向うが許可を与える行政措置としての行政処分は、向う側の政府がやるわけでございますね。ソビエトの漁船のみならず日本の漁船に対しても、許可発給はソビエト政府の機関がやるわけですね。そうなると当然想像されますことは、そういう漁業官といいますか漁業代表部というものを、便宜上東京に置いて——一々モスクワにこの許可を求める申請をするというようなことは煩にたえませんから、政府の機関を東京またはその他の日本国内に駐在せしめて、その機関を通じて日本の業者に許可発給をやるというような内容が当然考えられるわけ、でございますが、そういう場台でも、大体そういう内容を含む協定に対して政府は賛成されるつもりであるかどうか、伺っておきたいと思うのです。
  67. 重光葵

    重光国務大臣 それは交渉の題目であろうと思います。公海における漁業の制限をどうするかという双方の合意がなければなりません。その双方の合意があれば、おのおの自国の船にその国の主権がございますから、その主権の運用によってやる。また双方合意でやらなければならぬようなことは、これは交渉協定文の趣旨に従ってやらなければならぬと思います。しかしこれらのことは、まだ何と申しますか、理論の説明になります。またそういう内容の詳細のことは具体化いたしておりません。
  68. 穗積七郎

    穗積委員 具体化しておらぬとおっしゃるが、もうほとんど具体的に話が進められておる。だから協定のための全権委任状がほしい、こう言ってきておるわけです。ですから問題は、尾数の問題とか制限をする水域の問題とか、そういうことよりはもっと基本的な原則の問題でございます。すなわち制限を認めるその場合に三つの方式があり得ると思うのですね。一つは、おのおの自国の出漁については、自国政府が自主的に制限をやるという場合日本漁船に対しては日本政府がやる、ソビエトの出漁に対してはソビエト政府がやる、これが一つ。それからもう一つは、すべてソビエト政府が意思を加えて許可を出すというのが第二。第三は、両者が名前はどうでもよろしいが、合同の委員会のようなものを設けて、そこで両者討議して合意の上でこの両国に対する出漁の許可を出すこういうような方式があり得ると思うのだが、日本政府としてはそのいずれを希望しておられるのか、それを伺いたいのです。
  69. 重光葵

    重光国務大臣 たとえば向うの新聞、通信を確定的の事実であるということによっての御立論はお避け願いたいと思います。たとえば協定ができたから向うから全権委任状を要求したのだと言われますが、そうではないのです。私さっきから御説明している通り、打ち合せをして全権委任状が必要なときには何どきでも出す用意をしている、こう申しているわけであります。今言われるような問題は、あるいは交渉一つの題目になるかもしれないが、具体的にはまだそこまで発展していないということを私は申し上げているのです。それだからその発展していない交渉の題目に関することについて政府はどう考えているかという答弁を申し上げることはそれはで逆ないことでございます。
  70. 穗積七郎

    穗積委員 それでは現在までに河野代表から全権委任状の要請がなかったとおっしやるのですか。
  71. 重光葵

    重光国務大臣 正確に申し上げれば、ありません。ありませんけれども、どういう往復があったかということは申し上げるわけにはいきません。しかしいつでも出し得る状況に準備している、こういうことは申し上げられます。それだからそれでもって御質問の何は解消するだろうと思っております。
  72. 穗積七郎

    穗積委員 河野代表から来た要請が正式文書であるかどうか、それは別として、もらいたいという意思表示が何らかの、プライベート・レターであるかどうか知りませんが、どういう形にしろ意思表示のあったことは事実のようにわれわれは推測し、聞いているのです。しかしあなたが今そういうものはないとおっしゃるならばそれっきりのことであって、大臣は聞いておらぬと言うならそれまでのことですが、しかし出漁の時期もすでに迫っている。それから河野代表の滞在日時もすでに迫っております。そして日本時間できょうの夕方にはブルガーニン、フルシチョフとの会談をするというような段階にもうすでに来ているわけです。この会談は必ずしも漁業問題だけではございませんでしょう。しかしながら漁業問題に対する交渉の大体のお互いの意の存するところ並びに段階から言うならば、すでにもう最終段階にまで来ているということはこれは客観的に見て明瞭だと思うのです。その時期に当って、今の制限を認めるか認めぬか、制限をやる場合においては、ソビエト政府がやるのか、自国方式でいくのか、協議会方式でいくのかというようなことに対して、日本政府としては、相手方の意図は別といたしまして、どういう方針で行くべきであるというようなことは、外務大臣やあるいは河野全権がすでに腹の中にそういう成案がないなんということは、考えられないことなのです。そういうことはお隠しにならなくても何ら支障のないことだし、国に益するところがないことでありますから、この際天下に明瞭にして、そうして関係業者なりあるいは日本国民の不安を一掃した方がよろしいと思う。そういう段階に来ておると私は思いますから、もう一度くどいようですがお尋ねしたいのでございます。
  73. 重光葵

    重光国務大臣 私もくどいかもしれませんが同じことを申し上げます。それはそういう問題が交渉の題目になるかもしれません。まだ具体的にそういうことについて報告を得ていないということを申し上げておるのであります。ただいまこういう場合にはこういうようにすべきであるとかいうその検討は、これはいやしくもゆるがせにしてはなりません。今許可の問題がありましたが、私はこれは一般的に言えば、日本の主権の運用は十分に確保したい、こう思っております。しかしそれは今空論であります。議論であります。そこでこれが問題になりましたときに議論が起ってきます。そうしてまたこれを処理しなければなりません。まだそういうことになっていないということを今申し上げておるのであります。だから全権委任状の発行の問題は、私としては漁期が迫っておるのでありますから一日もすみやかにその時期のくることを希望して、そうしてその用意はいたしております。しかしそれは必要なときに何どきでも出せば事足りることなのであって事務上はそう取り扱うのが当然だと考えております。
  74. 穗積七郎

    穗積委員 簡単にお尋ねしますがそれでは全権委任状をお出しになる時期についてのめどはまだございませんか。
  75. 重光葵

    重光国務大臣 いやまだめどはございません。まだめどはございませんが、これはいつでも出します。そういうめどができればすぐ出します。これは早いことを希望いたしております。
  76. 穗積七郎

    穗積委員 それでは関連してちょっとお尋ねしますが、ドムニッキー氏が今度帰国する。それにかわって公使の資格のあるチフヴィンスキー氏が近く入国するということで、入国の許可の要請があって、それに対して日本政府はその許可に応諾を与えたということが報道されておりますが、これは事実でございますか。それが事実とすれば、続いて時間がありませんからお尋ねいたしておきますが、入国に対する条件を付しておりますか、どういうことでございますか。それを一括してお答えいただきたい。
  77. 重光葵

    重光国務大臣 それは大体事実でございます。私はこの漁業問題は、日本の漁業者にとって極端に申しますれば死活の問題だと思います。この漁業問題はあらゆる努力をして交渉を成立せしめるということが必要だと考えております。従いまして、わが方においても先方の要望は最大限度にいれていって、そうして漁業交渉も成立するように努力をいたしたい。その努力一つとして、——ドムニッキー氏が漁業問題の非常にオーソリティだそうです。これが帰国をしてこの漁業問題に努力をしたい、こういうことでございますから、これは私はそれに対して便宜を与えるということは当然であろうと思いまして、不在中その代理をこちらによこしたい、こういうことは大きな主義の問題に影響を与えずして、そうして今までドムニッキー氏もここにおったのでありますからこの入国を認めるということが私はいい影響を与えると思ってその取り計らっておるわけであります。これはやっぱり漁業問題を少しでも成立せしめたいという努力の一部分として、私はそういうことにすることが当然だと考えたわけでございます。
  78. 穗積七郎

    穗積委員 その資格その他についての条件はございますか、ございませんか。
  79. 重光葵

    重光国務大臣 代理です。代理で不在中こちらに来たい、こういうことでございますから、これは私は穏当なことだと考えました。
  80. 穗積七郎

    穗積委員 続いてお尋ねしますが、漁業官を二、三、同時に日本に入国せしめたいというような意向を持っておるようだが、向う側から正式にそういう要請があったならばこれを許可されるつもりでございますかどうか。
  81. 重光葵

    重光国務大臣 そういうことが報道されております。これがもし向うの意向として交渉の題目になるならば、交渉の題目としてこれは討議また審議を経なければならない問題だ、こう考えております。
  82. 穗積七郎

    穗積委員 それは正式な要請があった場合には許可しても差しつかえないというお考えと理解してよろしゅうございますか。
  83. 重光葵

    重光国務大臣 交渉の題目でありますから、その交渉によってこれは決定すべきことでありますから、それによって決定します。
  84. 穗積七郎

    穗積委員 もう一ぺん、ちょっと内容に返りますが、先ほどの制限方式の問題と関連して択捉、国後その他の島における沿海漁業、一体領海をどれだけにするかということも、これは彼とわれとの間で意見が食い違っておりますが、さらにたとえばそれらの島々に対して日本の出漁の漁船が停泊し、または荷揚げをすること、そういうような二つの場合が考えられるわけですね。そういう場合で、沿海の漁業をする場合に関連した取りきめ、交渉ですね。それからもう一つは、その島に日本漁船が停泊したり寄港したり上陸、荷揚げをしたり、そういうようなことの協定内容がもし出てきた場合においては、非常に領土問題と関連してデリケートだと思いますが、政府は一体その問題に対してはどういうふうに対処されるおつもりであるか。順を追うて一括して——これでやめますから、もう一ぺん聞かぬでも済むように、まず領海の問題と沿海漁業のカニその他の制限の問題、それからこれらの島に対する日本漁船の寄港または停泊または給油の自由、あるいはまた荷揚げの自由、こういうようなものが協定内容として向うから提案された場合、そういうような内容を含む協定に賛成をされるつもりであるかどうか、その点をお伺いしたいと思うのです。その場合には言うまでもなく択捉、国後等の諸島については、これは前提としてはりソビエト領であるという前提に立って交渉が進められる可能性は、現在の段階においては、そういう問題を提案する以上は明瞭でございましょう。そういうことと関連いたしますから、どうぞそれらをお含みの上で御答弁をいただきたいと思います。
  85. 重光葵

    重光国務大臣 領土の問題について日本側の主張は、これはもう御存じの通りであります。これは今係争の地域におけるソ連の領土権を認めるわけには参りません。そこでいろいろな便宜の方法について交渉のときに議題になることは考えられます。それはそのときに日本側としては日本側利益に沿うように考えて交渉を進めていきたい、こう思います。しかしそういう問題の一々について今出ておるお話のような点が必ずしも議題になっておるということではございません。それは議題となれば、そういうことは取り扱われることだと思います。それは当然のことであります。
  86. 穗積七郎

    穗積委員 私の聞いたのは領土権の問題に関連はいたしますが、今度の協定は国交回復までの短期な協定だ。それによってあとの国交回復のための平和条約内容を拘束されないものだ。または漁業の一般協定といいますか、向う側が提案しているような五年、十年以上の長期にわたる本格的な協定内容とは一応切り離して、今年度に限る暫定協定という言葉が非常に不正確な言葉で、私はむしろ内容によっては、時間的には短期な協定であるけれども、それは明らかに漁業協定にほかねらない、同様な効力を持つものだと解釈するわけですが、いずれにしてもその効力の期限についての制約があるし、内容についても、あとの長期にわたって結ぶ漁業協定、または両国間の平和条約内容に必ずしも拘束されないで、今年度の漁ろうの、何といいますか、話し合いとして、協議としてだけの内容、幅はその幅であり、時間も今年度に限るということで話をするならば、この領土問題は、講和条約の領土条項の中で本格的に決定して、初めて最終的な決定になるわけでございますが、そうではなくて、今年度の漁業をするための便宜のために、この鳥における取扱いは、日本のものではない、または永久的にソビエトのものであると主張するわけじゃないが、暫定的にとにかくソビエトのものであるという前提に立って、そういうような漁業の協定が行われ、漁ろうの協定が行われるというようなものが提案された場合においては、領土の問題については、そういうふうな暫定的な取扱いとして対処されるつもりであるか、それが永久的に領土権を拘束するものであるということで、警戒してこれを避けられるつもりであるか、どちらであるかということを、私は実は伺っているのですが、そういう関連性において今の問題に対する外務大臣のお考えを聞きたいのです。
  87. 重光葵

    重光国務大臣 暫定協定と言われると、暫定協定と私の方から言ったことはございません。(穗積委員「だから私もいわゆると言った。」と呼ぶ)だから暫定協定とはどういうものであるかということは、私は言う場側に立っておりません。おりませんけれども、話をしてみてどういうところで、たとえば長い間のことはむずかしいから、ことしの漁業のことに関して、一つこれだけを折り合おうじゃないかということになるかもしれません。私はそういうようなことならば、それを暫定協定と言っても差しつかえないと思います。これは過去においてわれわれも漁業協定をたびたび結びましたが、大体その年々のことは暫定と、こう言っておりますから、それでよかろうかと思います。そうなると、領土権の問題などもいわばたな上げして、実際的のいろいろな取りきめ、実際的の話し合いをしなければならぬと思います。それだから、そういうことは実際的にやっていって差しつかえないように私は思います。それは向うで、交渉の発展次第によってそういうことも考えなければならぬかと、こう考えております。
  88. 北澤直吉

    ○北澤委員 関連して二点だけ伺いたいのですが、日ソ両国間の漁業交渉につきましては、ただいま外務大臣からのお話を伺って大体の考えがわかったのですが、一つ念のために政府の考えをはっきりさせていただくという意味で、二点だけ伺いたいと思います。  第一点は、先ほども穗積委員から御質問のあった問題でありますが、ドムニッキー氏の代理者を日本に入国を認める、この問題であります。外務大臣のお答えによりますと、ドムニッキー氏の代理者というわけでありますからして、従来ドムニッキー氏がやっておったと同じような地位を認めて、その代理者の入口を認めるということでありますが、この問題につきましては、前々から外務大臣は、ドムニッキー氏の後任者、代理者を入れる場合におきましては、ソ連の代表としての資格は認めない。それからもう一点は、麻布にありますソ連代表部、これは認めない。こういう条件のもとで、ドムニッキー氏の代理者としてのチフヴィンスキー氏ですか、その人の入国を認める。こういうふうに私どもは了解しているのでありますが、私どもの、邪推ではないと思うのでありますけれども、想像するところによりますと、ソ連側の意向は、ドムニッキー氏の後任者を入れて、この人は公使の資格を持ってくるということでありますが、私どもは、ソ連の方におきまして、どこまでもチフヴィンスキー氏をソ連の代表としての資格を日本に認めさせて、そしてなしくずしと申しますか、それによって日ソの国交回復をだんだん実現する。そういう立場から、このドムニッキー氏の代理者に、公式にソ連代表の資格を認めさせるという点にソ連側は重点を置いている、こう思うのでありますが、この機会に念のために伺いたいのでありますけれども、政府におきましては、どこまでもこのチフヴィンスキー氏はドムニッキー氏の代理者であって、決してソ連の代表でもなく、また麻布のソ連代表部を正式にソ連の代表部として認めない、こういうわけで入国を認めるのでありますか、この際はっきりと承わりたいと思います。
  89. 重光葵

    重光国務大臣 ソ連のドムニッキー氏の代理者を入れるということが、どういう資格であるかということは、これは法律的に議論をしてみ、また政策的に議論してみると、非常に議論が分れるところがあると思います。日本の立場は、ソ連とは国交を回復していないのだ、国交を回復するのは、平和条約締結して国交を回復するのだ、これは終始一貫しております。そうでございますから、ドムニッキー氏がおって、やっぱりいろいろ活動はしているわけですが、これはソ連の正式の代表者として認めているわけじゃ少しもございません。それからまたその代理者を入れても、その代理者が向うの国内でどういう資格を持っていましても、日本に代理者として入ってきて、そしてソ連の代表者としてこれを認めて、国交を回復すると同じようなふうに考えられることは、これはできないことでございます。そうでありますから、そういうことは入国の手続のときにはっきりさせております。しかしながらドムニッキー氏が出国をする、その不在中に、一時的に代理者を置くために来る人を一人用せしめる、こういうことは私は何といっても日本側としては、やっぱりソ連に対するある意味の譲歩だと思います。しかしこれは、今も申し上げました通りに、はっきりとこちらの態度を明瞭にした上で、それだけの便宜をはかるということは、漁業交渉の進捗のためにもこれは必要であり、大いに努力をしている一端であろうかと考えますので、私はその程度は適当であろう、こう御答弁申し上げたわけでございます。しかし御心配の、これが日本の全局の建前を変えるものであるということのないことを、念を押して手続をとっているわけであります。さようなわけでありますから、一つ御了承願いたいと考えます。
  90. 北澤直吉

    ○北澤委員 このドムニッキー氏の代理者の入国につきましての外務大臣のお考え、政府の意のあるところは大体了承したわけでありますが、一つこの問題はぜひ、この扱いいかんによっては日ソの全局に大きな影響がある問題でありますから、今後ともこのチフヴィンスキー氏はドムニッキー氏の代理者だけである、日本としましてはソ連代表としての資格を認めては相ならぬし、また麻布のソ連代表部に対して、ソ連代表部としての資格は絶対に認めない、今後もさような方針を堅持されんことを希望するわけであります。  もう一点伺いたいのは、先ほどもお話がありましたが、本年度の出漁に対するさしあたりの暫定的な日ソ間の協定でございますが、根本的な問題は一応別としまして、本年度の出漁についての日ソ間にある程度の合意を見るということは、これは大臣お話のように、ぜひ必要なことだと思うのであります。そこで問題は、本年の出漁に関連しまして、制限区域をどうするか、あるいはソ連の発表しましたように、漁獲の制限量を二千五百万尾にするか、あるいはそれよりもっと上回るようにするかという問題、それからまたソ連は、日本の漁船に対しても一々ソ連政府許可をすることを主張しておるようであります。新聞報道などによりますと、モスクワにおきましても、ソ連側におきましては、この制限区域における日本船の漁獲については、どこまでもソ連政府がこれを許可するという態度を非常に強く主張しておるようであります。そのために、あるいは日本に漁業担当の役人を派遣したいというふうなことになると思うのであります。これは先ほどの外務大臣お話で大体は尽きておると思うのでありますが、公海における日本の漁船に対する主権は、これは日本が持っておるわけであります。従って公海で漁業をする日本漁船について、ソ連政府許可を与えるということは、これは日本の主権の侵害であり、日本の内政干渉だろうと思うのであります。従ってさしあたりの問題として制限区域の問題がきまり、漁獲量の制限がきまりますならば、その範囲内においての日本漁船に対する許可は、これは日本政府が自主的に許可を与えるべきものでありまして、絶対にソ連政府許可権の行使ということを私は認めてはならぬと思うのです。特にソ連の漁業担当官が日本に参りまして、日本の漁船に対して許可をするということは、ほんとうに日本の主権の侵害だと思うのであります。またこの許可権を縦横にあやつって、日本の漁業者をソ連の意のままにあやつるというようなことになりましては、私は大へんなことになると思うのでありまして、どうぞ一つ政府におかれましては、今度の本年の出漁に関する暫定協定についても、ある程度の制限区域、ある程度の漁獲制限というものは、これは暫定的に認めてもやむを得ないと思うのでありますが、その範囲における日本漁船に対する許可は、どこまでも日本政府許可をするということ、それからソ連の漁業担当官が日本に来て、許可権という行政行為を日本でやるということは、まさしく日本の主権の侵害であると思うのであります。一つその点につきましては、もう一ぺん政府の態度を大臣からはっきりお示し願いたいと思うのであります。
  91. 重光葵

    重光国務大臣 私は理屈はその通りだと思います。そういう建前をもって、その立場において交渉を進めなければならぬと思っております。ただ問題は、交渉した結果、向うも主権々々といって言いたい点がずいぶんあるかもしれません。たとえば向うが領海を主張しておる中はおれの主権だということもあるかと思います。そこでやはりその点は、話し合いの結果、双方便宜のように共同してやり得る範囲がどこにあるかということを探し出さなければならぬと思います。こちらはあくまでも今お話通りの理屈は堅持しなければならぬと思います。その上は話し合いで、どういう実際的の方法があるかということも、また交渉の上で編み出さなければならぬように考えます。かようなことで、私はこの漁業問題から来る問題は、今の代表部の問題も御指摘がございましたし、それから今のような主権の問題、これは非常に意味の重大な問題だと思います。それからまたさらに今後の日ソ関係について波及するところの多い問題だと考えます。従いましてこういうことについては、これはお願いになりますが、与党も野党も十分に一つその点を検討していただいて、そして御意見も聞かしていただきたい、こう考えるのでありますが、今の御指摘の二つの点については、私はそう考えて処置をいたしております。御趣旨のあるところは、私どものやっておることと同様であるように考えます。
  92. 松本七郎

    ○松本(七)委員 関連して。私は一般質問をやる予定になっておるのに、緊急質問が長引いたので、結局一般質問はやれないだろうと思うのですが、今の緊急質問で取り上げられた問題に関連して漁業問題と渡航問題を少しだけ質問したいと思います。大臣はさっき穗積委員質問に対する答弁で、ドムニッキー氏が漁業の問題で本国に帰っておる間の代理としてほかの者が来るのだ、こういうふうに言われたのですが、その点はソビエト側からも西大使を通じて、はっきり、ドムニッキー氏が一時帰国するから、その間の代理だということを向うから言ってきておるのでしょうか。
  93. 重光葵

    重光国務大臣 その通りです。それに応じたのです。
  94. 松本七郎

    ○松本(七)委員 そうすると期間については、大体どのくらいの期間だということをつけているのでしょうか。
  95. 重光葵

    重光国務大臣 それは一時的にいない間ということでありますから、何日から何日まで以内ということを言ってきたわけじゃございません。
  96. 松本七郎

    ○松本(七)委員 はっきりそう期限を切ってないにしても、ドムニッキー氏がまたこっちに戻って来るということは前提になっておるのでしょうか。はっきりそういうことが明記してあるのかどうか。
  97. 重光葵

    重光国務大臣 不在中とありますから、そう了解しております。
  98. 松本七郎

    ○松本(七)委員 大臣はそう了解されておっても、いつまでも戻ってこないで、そして不在中といっても、ほとんど無期限にかわっておるということもあり得るので、その点は不明確なままかどうかということを聞いているのです。
  99. 重光葵

    重光国務大臣 一時的と申しますから、そういうことではないと思います。私は正面通り、正直に何もかもとっております。何か裏面のことを御承知のことでもあるならば、それを伺っても差しつかえありません。
  100. 松本七郎

    ○松本(七)委員 それからもう一つは、これも先ほど、漁業担当官の問題は、モスクワにおける漁業交渉で取り上げれば、そこで問題になるのだと言われたのですが私どもの承知しているところでは、西大使を通じて、ドムニッキー氏の帰国の問題とそれから漁業担当官の問題と両方来ておったと思うのですが、日本政府としてはこれを切り離して、漁業担当官のことは漁業交渉で話す、ドムニッキー氏交代の問題は別個に政府が西大使を通じて返事をしたのですか。
  101. 重光葵

    重光国務大臣 漁業担当官の問題は、漁業交渉の結果、将来どういう工合に漁業をやるかということがきまらなければ、その職務も必要の有無もわかりません。これは漁業交渉の問題だと思いますから、漁業交渉でやってもらいたいこう返事をして、必要があるならば漁業交渉で出してもらいた、これが筋だと思います。しかしドムニッキー氏の問題はさしあたっての問題でありますから、それは一時代理者を入れることは日本側も便宜を与えよう、こういうことでこれは処理したのでございます。向うとの交渉でございますから、ロンドンで申し入れがありましたから、ロンドンで返事をしたのであります。
  102. 松本七郎

    ○松本(七)委員 それから先ほど北澤さんの指摘された問題とちょうどこれは逆の立場になるのですけれども、今の漁業担当官の問題はモスクワにおける漁業交渉で、問題が出たらそこで協蔵するということを言われましたが、その問題にすでに出ておりますでしょうか。
  103. 重光葵

    重光国務大臣 まだそこまで参っておらぬようでございます。
  104. 松本七郎

    ○松本(七)委員 これは先ほど北澤さんの指摘された、ソビエト側はいわゆる許可方式というものを堅持しておるし、また今後もするだろうと予測されるのですが、そうなると、この漁業協定がすみやかにできればいいのですけれども、これが長引いてなかなかできないと、もうすでに日本側は出漁しているのですからソビエト側では——それは北澤さんは主権の侵害とかいろいろ理屈はあるだろうと思いますが、それを主張しておっても、実際はこっちはどんどん漁業を進めなければならぬ。ソビエトの方はあくまでも許可方式でいくのだ、こういうような態度で臨んできた場合に漁業担当官を置きたいというのを、今北澤さんの言われるような理屈を固執して、もしも漁業担当官を置かないということになると、実際には出漁しても向う側の立場と衝突をして二千五百万尾の制限内でも漁獲ができないという事態が私は起ると思うのです。そういう可能性をやはり十分お互いに考え、そうして相談をしないと、さっき大臣の言われた、これは与野党ともに非常に重要な問題たから真剣に考えたいと言われる、その気持は十分にわかるのですが、そういう問題を考える場合に、やはり現実にどういう事態、それからソビエトが現実にどういう立場をとるかという事態を現実にあわせ考える必要がある。その点私どもは非常に現実問題として憂慮しておるのですが、その点のお見通しはどうですか。
  105. 重光葵

    重光国務大臣 そういう点はむろんいろいろ検討してやらなければならぬと思います。しかしこれは御意見であるのかないのかわかりませんけれども、それならば、ソ連の言う通りに、漁業担当官でも何でも早く手回しよく承諾して、日本に入れてやったらいいじゃないかという御議論であるならば、それはそうはいかぬと思います。一つ十分日本日本の立場を、また希望なり要求なりを持ち出して話をしてみたらいいと思います。その上でやる。それで問題は今非常に漁期も迫っておるから、早くやってもらいたい。私はソ連側においても早く問題を処理したいという希望はあると思っております。そうして日本側においてもできるだけの手はずをきめて交渉を進めていったらよかろう、それならば何もかも向うの言う通りにしろという御意思ではないと思います。私はそうしていきたいと思います。
  106. 松本七郎

    ○松本(七)委員 菊池委員質問がこれについてあるらしいから、ちょっと譲って私そのあと渡航問題をちょっと緊急性がありますから、質問したいと思います。
  107. 菊池義郎

    ○菊池委員 先ほど北澤君も言われましたが、交渉はどこまでも議論によって決すべきで、いたずらに媚態を呈しても向うは言うことを聞く連中でないということを、私はソ連へ参りましてから痛感したのでございます。われわれがモスクワにおりますときに、ソ連に西ドイツの代表が乗り込んできて、全くけんかにひとしい激論をやって、貴様たちそんなことを言うなら、われわれは帰ってしまうといって、ドイツから飛行機を取り寄せ帰ろうとした。そうすると、あべこべに今度はソ連の方で、拝み倒してしばらく待ってくれというわけで、曲りなりにも大使の交換、戦犯の送還という取りきめもできたわけでありますが、いたずらに媚態を呈して、理屈を抜きにして拝み倒そうとするようなことでは、とても向うは言うことを聞かぬと思います。  そこで私は伺いたいが日本はどこまでも公海自由の原則をたてにとってなぜ突っぱらぬか。向うとしては戦争状態の継続というようなことで力をもって公海を制限しようというふうに考えているかもしれぬが、日本の外務省としては、向うのそういったような態度に対しまして、どういう考えをもって向うに当られるのでありますか。それが交渉の根本になると思いますが、そういう点について大臣の御意向を伺いたいと思います。われわれとしてはどこまでも公海自由の、原則をたてにとって、あくまでも議論によって決すべきであろうと思う。そうしてそれをどしどし公開すべきであると思う。日本の意見は正しい、向うのやることは間違っておるということを、はっきりと世間に問うべきであると思う。
  108. 重光葵

    重光国務大臣 公海自由の原則はあくまでも主張したいと思います。ただ問題は、公海においても魚族の保護は日本は不賛成ではございません。さような点において公海に関する話し合いが具体化することを希望いたしております。
  109. 菊池義郎

    ○菊池委員 公海自由の原則をたてにとるならば、日本の主張は通らなければならぬわけであります。それでこの原則をあくまでもたてにとって強く突っぱれば、必ず向うは折れて出ると私は考えているのです。それをただ向うの鼻息をうかがって、この原則を日本が捨てるようなことがあっては、この交渉はとうていうまくいかぬと私は考えております。それで農林大臣にも私は出るときに言いましたが、した手に出たらだめだ、どこまでも徹底的に議論でもって、ぐうの音も出ないまでにたたきつけてやれ、その上でなければ、日本の主張は絶対に通らぬと言ってやりましたが、外務省としてはその腹がはっきりと固まっているかどうか。そういう点をはっきり伺っておかないと、心配でたまらぬ。
  110. 重光葵

    重光国務大臣 この交渉は、外務省が当面の責任を持っておりますが、外務省だけの問題ではございません。外務省といたしましては、あくまでも理論により公海自由の原則を貫きたい、こういう方針でもって進んでおります。どうか、日本国家の外交でありますから、その意味において十分にそういう点も御検討を願っていきたい、こう考えるのであります。
  111. 菊池義郎

    ○菊池委員 向うの漁業大臣は、われわれは向うで二時間ばかり話し合ってて、非常にもののわかるいい男だと思っておったのでありますが結局指図下るのは伺うの共産党の首脳部でございますから、向うの漁業大臣の独断でもいかぬと思いますが、今までの交渉の経緯を見ると、まことに情ない行き詰まったような状態であります。外務省としてはもっと農林大臣を、日本の代表のしり押しをしていただかぬと、あれではとてもだめだと思います。どうも向うの力に屈して、戦勝国だからしようがないといったようなあきらめの態度ではとても日本の主張は通らぬとわれわれは考える。
  112. 重光葵

    重光国務大臣 できるだけ政府代表と共同して、かつまた鞭撻して、そうして目的を達したいと考えます。
  113. 松本七郎

    ○松本(七)委員 旅券の問題ですが、御承知のように、公務員関係は今までだいぶ前から旅券申請をやって全部ストップを食っておった。その当時は、近く内閣で新しく基準ができるから、それまで待ってくれということだった。それから今度は内閣から、いよいよさっき問題になった大臣が言われるところの執務上の参考という基準が出たわけでしょう。そうすると、長い間待っておった公務員関係——私どももしょっちゅう外務省へ行っているのですよ。そして一体出してもらえるのかどうかということを個々に聞くわけです。ここに渡航課長さんがおられますけれども、渡航課長としては、なるほど新しく基準はできました、しかし次官会議でその基準に照らし合せてきめるだけであってその内容を、先ほど大臣が御方針をお述べになったようなことで公表してない以上は、それを一々説明することはできないわけです。そうすると、一体どこへ持っていったら説明してもらえるのですか。一応窓口は渡航課長でしょう、けれども、渡航課長としては今言うような立場から説明が十分できない、納得できねいものがある。局長説明を聞くとやはりわからない、次官でもわからない。これからたくさん問題が出てくると思うのですが、これは国民の権利といたしまして、その理由をはっきり個々にケース・バイ・ケースに説明していただかなければならぬと思う。その基準を大臣に示していただいて、それをわれわれが判定しておれば、こういうことで無理だという説明もできますけれども、先ほどあなたの言われるような立場から説明されておらないのですから、われわれ見当がつかない。とどのつまりは、責任者である大臣のところにでも個々に持っていって説明を聞く以外に、渡航しようとする人は納得できないと思うのです。これから一々大臣はその答弁の責任者となっていただくことができますか。それを聞いておかないと、われわれはたくさんの問題をかかえてこの解決をしようとしているのに、時間ばかりかかってどうにもならない、むだ足を踏まなければならない。どこへ持っていったら具体的なはっきりした説明を聞くことができるのか、この際大臣に伺っておきたい。
  114. 重光葵

    重光国務大臣 この執務参考の内規の問題は先ほどの通りでございます。そこで、個々の問題ついて判断をしてやるのでございますが、個々の問題の判断をつけるのにはいろいろ機関を経てつけます。私が一人でワン・マンでやっているわけでも何でもございませんいろいろな機、関を経て考慮してやるのであります。そしてこれが決定をいたします。決定をいたしましたときにはできるだけ納得のいくように説明することに努めます。しかしながら、納得がいかぬといってあなたと私とがこの問題について幾ら議論をしたって結末がつきはしない。納得がいかぬからお前けしからぬと言われると議論になるが、しかし私は納得のいくように説明はあるいはできないかもしれぬ、かもしれぬけれども、あらゆる努力をして納得のいくように努力をしようということだけは私申し上げます。
  115. 松本七郎

    ○松本(七)委員 どこで説明をしてもらえるのですか。
  116. 重光葵

    重光国務大臣 係官がいる……。
  117. 松本七郎

    ○松本(七)委員 渡航課長でいいですか。渡航課長でやる場合に——それでは大臣にお伺いしますが、これは幾らか具体的になったところでせいぜい公務員という身分の問題、それから先方からまるがかえであるという問題、そういうことはすでにもう方々で言われているのです。私もこの間関係のもので文部省その他回ったのですが、そこでもそう言っている。今度きまったあれで、公務員であるということとまるがかえであるということでは絶対にだめだという。もしこれが絶対にだめだという方針をきめたのだとすれば、これは大問題です。そういう説明以上に詳しい御説明がそれではこれからしていただけますか。渡航課長さんから……。
  118. 重光葵

    重光国務大臣 今申し上げた通りに、できるだけ行なっていくように説明いたすように努力をいたします。
  119. 松本七郎

    ○松本(七)委員 今まではそういう非常にばく然とした全部の賀正が大臣なり次官会議にあるがごとき説明しか得られなかったのです。だから、はっきり外務省として、担当省として、また責任ある外務大臣から、今後は具体的に相当評しい説明をしてもらえるように指示を与えていただくよう約束をしていただきたい。
  120. 重光葵

    重光国務大臣 その約束はできません。
  121. 松本七郎

    ○松本(七)委員 そんなばかなことがありますか。
  122. 重光葵

    重光国務大臣 ばかなことというて、何がばかなことです。
  123. 松本七郎

    ○松本(七)委員 国民の権利義務に関係のあることを説明しないというのは何ですか。
  124. 重光葵

    重光国務大臣 これは法規によってやるのであります。法規の精神を尊重してやるのであります。そうして、その法規の精神がどこにあるかということによって判断をします。その判断をしましたことについてはできるだけの説明を与えます。しかし、その判断の権限は法規によってきまっておるわけであります。
  125. 前尾繁三郎

    前尾委員長 次会は公報をもってお知らせいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時二十六分散会