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1956-04-28 第24回国会 衆議院 外務委員会 第37号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年四月二十八日(土曜日)    午前十一時二十五分開議  出席委員    委員長 前尾繁三郎君    理事 石坂  繁君 理事 北澤 直吉君    理事 須磨彌吉郎君 理事 高岡 大輔君    理事 山本 利壽君 理事 穗積 七郎君       愛知 揆一君    伊東 隆治君       植原悦二郎君    大橋 忠一君       重政 誠之君    並木 芳雄君       福永 一臣君    松田竹千代君       森下 國雄君    田中織之進君       細迫 兼光君    岡田 春夫君  出席政府委員         外務政務次官  森下 國雄君         外務事務官         (経済局長)  湯川 盛夫君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君         通商産業事務官         (繊維局長)  小室 恒夫君  委員外出席者         文部事務官         (管理局学校給         食課長)    宮川 孝夫君         農林事務官         (大臣官房企画         室長)     松岡  亮君         農林事務官         (食糧庁業務第         二部輸入計画課         長)      丹羽雅次郎君         通商産業事務官 小松  榮君         専  門  員 佐藤 敏人君     ————————————— 四月二十七日  委員森島守人君辞任につき、その補欠として勝  間田清一君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  千九百五十五年五月三十一日に東京で署名され  た農産物に関する日本国アメリカ合衆国との  間の協定第三条を改正する議定書締結につい  て承認を求めるの件(条約第八号)  農産物に関する日本国アメリカ合衆国との間  の協定締結について承認を求めるの件(条約  第九号)     —————————————
  2. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 これより会議を開きます。  千九百五十五年五月三十一日に東京で署名された農産物に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定第三条を改正する議定書締結について承認を求めるの件、農産物に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件を議題といたします。  質疑を許します。愛知揆一君
  3. 愛知揆一

    愛知委員 いわゆる余剰農産物の買い入れの協定については、実は一昨年初めてこの話が起りましたときに、私自身がその衝に当りました関係から、今回第二回の協定が成立して、その承認を国会に求められることになりましたことは、私としても非常に感慨深いことでございます。そこで、私がこの余剰農産物の問題についてあらためて政府見解をただすというほどのこともございませんが、一応私の考え方を御披露して、そういう線で今後も考えられるのかどうかという点を中心にしてお尋ねをいたしたいと思うわけであります。  まず第一に、いわゆる余剰農産物という余剰という言葉が通例使われますために、国民の間にこの問題について相当誤解を起すおそれがあり、また今後もその誤解が残るおそれがあるかと思います。その点は私の理解するところでは、わが国としてどうしても外国に依存しなければならないものを買うのであるということが第一であり、しかもその買う分量については、いわゆる通常輸入量のワクの外に、そのときの状況において買わざるを得ないものを買うのであるということが、第一に明白にされなければならない点であると思うのであります。  それからそれに関連して価格の点については、もちろん世界の普通の市場価格より超過するものではないということが、同時にその中心点でなければならないと思います。  それからその次には決済条件その他について、できるだけ有利なものでなければならない、通常輸入においては予想されないような、できるだけ有利な条件でなければならないということが、第三に中心にならなければならぬ点であると思うのであります。すなわちでき得るならば、いわゆる贈与の分が多ければ多いに越したことはありませんし、また支払いをするとするならば、たとえば円貨支払いをする、あるいは外貨を使わない、あるいはまたさらに進んで円貨支払いにいたしましても、これをできるだけ長期に引き延ばしてその間これを積み立てておいて、たとえば日本の農地の開発というような有効な事業に、これが使えるようにしなければならぬというような点が中心点であって、これらの点について国民が納得できるようなものでありとするならば、私はこういう協定は、たとい抽象的にアメリカの余った物を買うのだとか買わないのだとかいうような議論のあるなしにかかわらず、自主的にこうこう、こういうようなわが国にとって有利な条件があるのではないか、また実際有効であるということが明確にされるならば、私はこの余剰農産物協定について、もっと国民的な関心が強くなり、またその内容を正確に理解することによって、この問題に対する正確な世論の判断というものができると思うのであります。  そういうふうに考えますので、長々と申しましたが、私の今申しましたような基本的な考え方が正しいのであるか、またこれが今回の承認を求められているところの協定の上において、どういうふうになっているかということを、もう一度明確にしていただくことが適当ではないか、こういうふうに考えるわけであります。
  4. 下田武三

    下田政府委員 ただいまの仰せは、私ども政府当局といたしましても、御同感に思っておるものでございまして、愛知先生がかつてみずから御関係になりました時代のことと、基本的には全く同じ考えを踏襲いたして、アメリカ側交渉いたしまして、今次の協定はできておるわけでございます。  第一に余剰農産物ということが頻繁に言われまして、国民誤解を与えておりはしないかという点、これもまことに御同感でございまして、日本側といたしましても、何も要らないようなものを買っておるわけではありませんで、日本食糧の二割を外国に仰がなければならないという、その必要とするところの輸入食糧の一部を、この協定によるアメリカ農産物に依存しておる、決して必要以外のものを買うのではないという点、この点はこの協定自体の表題に、「農産物に関する」協定といたしまして、「余剰」という字は全然使わないということにいたしましたのも、そういう点を明らかにいたしたいからでございます。  第二に価格の点でございますが、これも世上非常に高いものを買わされておるようなことを言っておりますが、これはまことに事実に反するのでございまして、先般も経済局長から御説明がありましたように、昨年の第一次協定実績から比べましても、小麦、大麦、米——本年は米を買っておりませんが、実績において通常市場価格よりも安く買っておることは、すでに御説明申し上げた通りでございます。  第三に決済の点、これも仰せのように贈与が多ければ多いほどいいわけでございますが、今回の協定におきましては贈与を一応協定から除きまして、別に交換公文贈与のことをきめております。これはこの協定がイニシアルされましたのが——河野農林大臣が昨年の秋に行かれまして話がきまりましたときは、協定自体事項について確定いたしましたので、とりあえず贈与以外の事項についてイニシアルされたので、そのイニシアルされた案文に基きましてこの協定ができたわけでありますが、その後交渉いたしました結果贈与についての話がまとまりまして、協定は一年限りのものでございますが、贈与につきましては明年度以降のことにも触れておりますので、期間の点が協定と違う点もございまして、別の交換公文にいたした次第でございます。またこの決済の方法といたしまして円貨をもって買い付ける、そして他面日本側長期借款といたしまして毎年日本側の七〇%、これを本年度におきましては七五%に増加して、日本経済開発その他有効な目的に使用するという点も、従来の考え方をそのまま踏襲いたしておるのでございまして、御指摘の諸点は、基本には全く従来の考えをそのまま踏襲しており、さらに改善された点もあろうと考えておるわけでございます。
  5. 愛知揆一

    愛知委員 それで大体基本的な点は明確になると思うのでありますが、基体的な一、二の問題について、こういう点は日本として不利なのではないかというような点が、世上往々問題になっておるようでありますから、それらの点について一、二伺いたいと思うのであります。  実は昨日でありましたか、農林水産委員会との合同審査会等で問題になって、あるいは重複するかもしれませんが、伺いたい第一点は綿花の問題であります。これはいわゆる通常輸入量というものが六十七万五千俵だかになっておるはずでありまして、これを越える十万俵について買付をするということになっておるようでありますが、申すまでもなく綿花アメリカ価格が最近非常に暴騰しておる、従って通常輸入量すらも通常の方式をもってしては買えないのではないか。しかりとすれば先ほどからの基本的な構想からいいましても、自余のいわゆる農産物協定による十万俵というものが、果して買い得る状態になるかどうか、この点は非常に問題だと思うのです。これは農林省の方にお伺いすることかもしれませんが、一応見解を伺っておきたいと思います。
  6. 湯川盛夫

    湯川政府委員 アメリカ綿花が今般の国際市価より高いということはお話通りでございますが、この点については何とかもっと値下げしてくれということを、たびたび日本としても交渉しております。ことしの一月に短繊維百万俵までは、輸出については国際入札価格でやるということになって、この点はだいぶ下ったのであります。なおさらに八月以降は短繊維についても制限を設けず、また長繊維にも同じような制度を行う、こういう意図を公表しましたので、そういう点では将来は下って、大体国際市価になると思います。ただ現在はまだ高いので、なかなか通常輸入量として一応考えられております額が一ぱいになるかどうかという点については、ある程度の困難が感ぜられます。まあ、これはできるだけ努力をして、どうしてもだめだというときには、あとの十万俵の点についてどうするか、何とか解決策はないかということで、また話をしてみるということになるかと思います。
  7. 愛知揆一

    愛知委員 実はその点について、その反対立場に立つ方の人から、反対のための反対をかりに言ってみると、政府としては、アメリカ政府努力をして綿の価格についてもできるだけ安い価格で売るようにいたしましょう、こうは言っておるけれども、アメリカのたとえば農林省がどう言おうとも、実際の綿の価格というものはそういうことではきまるものではないので、実際上の問題としては、これだけのものは買えないのではないか。しかりとすれば、これは努力をしてもらって買うようにいたしますということで一応話は通るけれども、ところが農産物協定に基いて、農産物の何という名前でしたか、特別会計を作ってあって、すでにこれによる積立金の七五%相当額ですか、これはいろいろのものに使うことになるということで、予算上も期待というよりも既定の事実になっておる、そうするとこういう既定の事実がそれによってできなくなるのではないか。そういうときに政府は一体どういう態度で、どういうように処理をするのか、こういう点も問題にしようと思えばなるのですが、その点についてはどういうように考えておられますか。
  8. 湯川盛夫

    湯川政府委員 通常輸入量として考えられておる分があるいは完遂できないかもしれない、これはもっともアメリカの場合には綿花借款というようなものもございますので、そういう点では金利その他でもってある程度買えますし、それからまた将来先行きが安くなるということで幾らか安くなるかもしれない、それからまた従来取引関係ということもありますから、品質その他の点等もあって、ある程度は買うことになるかと思います。しかしどうしても一ぱいにならなかったという場合には、こちらのいろいろな事情もあるわけですし、向うも高いものを買えというのが相当無理な要求だということはわかるわけですから、そこで十分話をして何とか解決策を見出す、今のところこういう考えでおります。
  9. 愛知揆一

    愛知委員 その点についての予算との関連の問題等については、また別に伺うことがあるかもしれませんが、それは一応留保しておきます。  その次に、やはりこの協定について問題とし得る点というものがつあると思いますが、それは第一回の協定承認の際にも相当問題になった点でありまして、この協定の第五条と思うのであります。この節五条の返済の規定についていろいろここに条件が出ておりますが、これはいわゆるドル約款付債務というふうに法律上解すべきものでありましょうか、その点をまず伺いたい。
  10. 湯川盛夫

    湯川政府委員 ドルクローズは、日本が借りた円を米側返済するときに、借りた当時と同額の円ではなしに、借りた当時の円ドル等価額に相当する円を返済するという、正確にはドル価値条項というべきものであります。第一次協定交渉の際に、御承知の通りわが方としては、当初本件国内で行う円貨借款であるから、当然借款時の円貨額元利合計返済すれば足りると考えていたわけでありますが、米側では貸し付けた金額の実質的価値が下らないようにすることは、米国納税者に対する責務であるということで、現地通貨借款には他の各国に対しても律にドルクローズを付しておる。日本にだけ特例を設けるわけにはいかないという強い態度であることが判明したわけであります。しかしわが国ととしては国内での円貨借款であり、国内返済するものである、また本件借款ドルクローズを認めるときは、非居住者国内への預金の対ドル価値維持条項というような問題に先例として採用される可能性も出てくる、そういういろいろな不都合な点が予想されましたので、これを認めるわけにいかないという立場をとったわけです。そこでわが方としましては、ドル借款としたならば、借りたときと等価ドル返済することは当然である、ドルを借りる以上はドル価値維持という問題は生じないので、本件借款ドル借款返済ということで進むことにしまして、米側も了承したわけでございます。そういうわけでありますから、ドル借款である、従ってドルで返す、ただしこちらが円貨で返したいというときは、それもできるというふうになっております。ことしも同じ形式でございます。
  11. 愛知揆一

    愛知委員 ただいま御説明がありましたように、実は昨年の秋に最初にこの種の問題が日米両国間で話し合いに出ましたときには、日本側としては当然円借款でよろしいものということで、その当時の交渉においては実はほんとうに書いたものでイニシャルしたものこそないけれども、こういうふうな問題が起るとは予想しなかったわけであります。その点は今でも私は非常に残念に思うのでありまして、協定ができることになったころからこの、ドルクローズが非常に問題になって、ついに日本側が押し切られざるを得なかったということは非常に遺憾なのであります。ただいま御説明もあったように、その当時の状況からすると、日本との話が始まった以降に、パキスタンとかブラジルとか、そのほかの国との間に協定の話が出て、その方が全部この種の約款をつけるから、日本もそのようにしてくれというような経緯があったようにその後承わりましたので、これはやむを得なかったかと思うのでありますが、しかしやはり私の見解は別問題として、冒頭に申しましたように、国民としてこの協定ほんとうにいいのだということをはっきりわかってもらうためには、諸外国との関係、あるいはこのドル約款がついておるような格好にはなっておるけれども、これがわが国においては現在の状況下において、相当有利な取りきめなのだということが、もう少しはっきり国民にわかってもらえるような説明が必要ではないかと思うのであります。そういう観点からもう少しお尋ねをして問題を明らかにしたいと思うのでありますが、ただいまもお答えがありましたように、これは元利払いをそのときどきの状況によって、たとえば日本側ドル資金が相当ふんだんにあるというようなときは安い条件、すなわち三分というような金利でもって払える、しかし次の年に外貨事情が悪いというようなときには円で払える、またその次の年はドルで払おうと思えば払えるのだというふうな運用の中とりがあるのかどうか、またそこのところは必ずしも約定上はっきりしたことがないにしても、アメリカ側との話し合いでそういうふうな運用が許されるものであるのかどうか、そういう点はどうなのでありましょうか。
  12. 湯川盛夫

    湯川政府委員 ただいまの点については、おっしゃった通りでございまして、わが国経済事情のいかんによって、日本側単独選択円払いもできる、ドルで返せば利子は三分、円で返せば四分、どちらでもこちらの選択でそれはできるというふうになっております。
  13. 愛知揆一

    愛知委員 その点を条文の上で明確にしていただきたいと思うのです。条文の解釈の問題としてでもよろしゅうございます。
  14. 下田武三

    下田政府委員 この点につきましては、第五条の1の(5)で「いずれの支払日においても、日本国政府単独選択により日本一で行うことができるものとし、」この「いずれの支払日においても、」というところでその含みを持たしてあるつもりでございます。
  15. 愛知揆一

    愛知委員 その点はよくわかりました。  それからもう一つ、やはりこの問題に関連してこういうふうな疑問を言う人があるのであります。それは、円あるいはドルでというこの点については、日本側に完全な選択権がある。これはただいまお話通り約定上でも明確になっておる。しかしながらドルで返す場合は三分であって、円で返す場合は四分である、こういうふうな通貨の別建によって条件が違うということを、両国間の約定において明確にするというようなことは、事例があまりないことであって、これだけ円の方がディスクリミネートされておるのだ、これは屈辱的ではないか、あるいは円の価値というものに対しての信頼をそこなうものではないか、こういうことを言う人がありますが、それに対してはどういう説明になるのでありましょうか。
  16. 湯川盛夫

    湯川政府委員 先ほども申し上げましたように、アメリカ側としてはアメリカ納税者に対する責任のために、ドル価値維持条項をつけたいというのでありましたが、結局日本側のいろいろな要望をいれて、トル借款ドル返済ということになったわけであります。しかし日本側では、日本側単独選択によって円で払うこともできる、こういう希望を述べて、それがいれられたわけであります。その際に円で払う場合には四%ということで妥結をしたわけでありまして、当時の情勢としてはやむを得なかったのじゃないかと思います。
  17. 愛知揆一

    愛知委員 もう一歩突っ込んで言えば、たとえばブラジルとの間ではこういう協定になっている、あるいはパキスタンとの間ではこういう協定になっているのだ、それに比べてみれば、今の国際情勢のもとにおいて、あるいは当時の協定をやるその状況のもとにおいては、日本側としてはまずまずこれをもって有利としなければならぬのではないか、こういうことも言えるのではないかと思うのですが、もしそういうふうな説明ができるとすれば、諸外国アメリカとの間の協定において、同種のことがどういうふうな約定になっているか、このことを明確にされると、私は政府立場もやりよくなるのじゃないかと思うのですが、その点はもしわかりましたら、お答え願いたいと思います。
  18. 下田武三

    下田政府委員 その点はアメリカ農産物貿易の促進及び援助に関する法律の第一章に、どこの国に対しても画一的の条件とするということが規定されております。従いまして日本だけでなく、同様な貸付によって同様なことをやります国に対しては、全く均一に規定されておるのでございます。そうして経済局長の御説明にもありましたが、アメリカ側といたしましては、現地通貨を受け取る場合には、おのずからその使用地域が限定されて参りますし、またドルに直そうとすれば、手数料等も払わなければならないというような点から見まして、この一分程度の差をつけるということは、アメリカとしてはやむを得ない事情かと思います。
  19. 愛知揆一

    愛知委員 この農産物協定についてもう一つ伺っておきたいと思いますのは、大体、ただいま伺ったことでも、事態は相当明らかになってきておりますが、何分にも一昨年最初にこういったような問題が提起せられた当時とは、いろいろの点で情勢も違ってきておる現在の状態において、今後この種の話し合いが起りました場合に、日本側としてはどういうふうな態度で応酬されるつもりであるか。こうい点については政治的な大きな問題でありましょうが、同時に事務的にもこれは相当がっちりかまえをしなければならない問題であるとも思うのです。今後来年、再来年引き続いてアメリカ農産物余剰であるということは、まずまず間違いない事実だと思うのでありますが、そういう情勢において、今後どういうふうな態度で進めるかという点について事務当局のお考えを伺っておきたい。
  20. 湯川盛夫

    湯川政府委員 明年度同じような協定を結ぶかどうかということについての方針というものは、現在の段階ではそういうはっきりしたものはきまっておるわけではございませんが、しかし全体的に考えて、やはり日本の利益になるという場合には結ぶということに相なると思います。
  21. 愛知揆一

    愛知委員 その点については、これもまた外務大臣その他の大臣にお伺いすることにして、留保しておきたいと思います。それからこの際、これも大臣に伺いたいところでありますけれども、ちょうど時間も余っておるようですから、私は問題を提起して、事務当局の御意見を伺っておきたいと思う点が二、三あるのであります。その一つは、フィリピン賠償問題などもいよいよ大詰めに来たようでありますが、それに関連して賠償なりあるいは対外的な債務処理問題等は、一たん話約定によってきまった場合には、これを適切に約束通り誠意を尽して、きちっと実行することが絶対に必要なことである。これはわが国国際信義を確保する上からはもちろんのことでありますが、そのほかいろいろな点から見て、この点は絶対に必要なことだと私は思うのであります。ところが、たとえば賠償処理進行に伴い、あるいはまたいわゆる経済協力というようなものの進展に伴って、現地の、たとえばフィリピンにしろビルマにしろ、あるいはその他の国々にいたしましても、日本側賠償受け入れ態勢あるいは経済協力進行態勢途上において、一つ問題になる点は、いわゆる現地通貨の調達ということが非常に大きな問題であると思うのであります。そういう点についての事務的な仕組みなり運用なりということが、がっちり組み立てられておりませんと、政治的にいかによいことができ、あるいはりっぱな条約ができましても、その実行途上において非常に裏切られる、日本に対する不信を招くようなことになって、きわめておもしろからざる現象を生ずることもあるのではなかろうかと思います。私は、そういう事態が現に起っているかどうかということは別問題として、フィリピンとの賠償条約も不日調印を予想されるようになっている今日の状想において、特にこういう点について政府側として十分な研究と体例を確立されることが必要であると思うのであります。私はかねがねそのことを痛切に感じておりましたところが、数日前の新聞の報道にこういうことが出ておりましたので、ある意味においては興味のある問題だと思ったのであります。それはほかでもありませんが、こういうことであります。政府筋によれば、米国政府わが国賠慣処理とにらみ合わせて、東南アジアに対するICA援助計画賠償計画との重複を避けること、それから援助見返り資金賠償実行に必要な現地側運転資金として使うことも認めるということなどを考えておる模様である、こういう記事であります。そうしてそれに対する解説として、同筋は、すなわち日本政府筋は、さきにダレス国務長官が日本賠償解決を側面から助けるような手だてを検討していると言明したことに関連して、こういうような考え方アメリカ側から出てきたのではなかろうか、そうしてわが国の東南アジア賠償特別円債務などの早期解決に役立たせるように考えているのではなかろうか。こういうふうな記事が出ておりますが、これについてどういうような経緯になっておりますか、伺いたいと思うのであります。
  22. 湯川盛夫

    湯川政府委員 私は直接その問題を所管いたしておりませんので、こまかい点は知りませんが、先般ダレス国務長官、ロバートソン国務次官補の一行が見えました際に、東南アジア経済協力の問題の話が非常に出たということは承知しております。そうして日本賠償、これは受け取る側から見れば、必ずしもわれわれと同じ見解にならないかもしれませんが、しかしこれは事実においては、結局、一種の資金的援助ということになると思います。そこでいろいろなキャピタル・グッズを出して、それが、ただいまお話のありましたように、現地通貨の不足のために、そのままたなざらしになって動かないというようなことは、われわれとしても本意でないし、また受け取る国のためにも惜しいことである。一方アメリカはいろいろICAその他で援助をしております。どうせ援助をするならば、われわれの方の賠償というふうなものとそれがうまく調整されて、そして経済開発の効果が上るようにしたらばよいじゃないか、こういう考えが出てくるのは当然でありまして、ただいまの新聞の記事がどの程度そういうふうに進んでおるか、はっきりしたことは知りませんが、大きなラインとしては、アメリカ援助も一そう効果が上り、日本賠償もそういった現地通貨の不足等のことで困難に逢着するというのが、今のアメリカ援助とうまく調整されれば、非常に経済開発の効果が上るのじゃないか、そういう趣旨であるとすれば、それは大へんいいことだと思います。
  23. 愛知揆一

    愛知委員 それからこれも事務的に伺いたいのでありますが、対外的な経済問題の処理の中で、懸案になっておるものが、相当たくさんあるように思いますが、その中でアメリカとの関係においていわゆるガリオアの処理の問題、この問題についてはいろいろの意見があることは別といたしまして、やはり西ドイツの例に見ましても、あるいはその他のいろいろの関係から見ましても、ある程度の切り詰められた条件の中においては、これの処理をむしろ促進した方がいいのではなかろうかというふうに私は考えるのであります。もちろんこれは日本の現在の国力、その他の関係を十分に見合せなければなりませんが、やはり俗な言葉で言えば、相当思い切って割り引いてくれるものならば、快くそれに応じて、むしろ大きな問題の促進への一つの跳躍台にするという考え方の方が、私は大局的ではないかと思うのであります。最近この問題については一向論議されることを聞きませんが、どういうふうなことになっておりますか、もし事務的な折衝その他について伺うべきことがあれば、この際伺っておきたい。
  24. 下田武三

    下田政府委員 事務当局といたしましても、ただいまお示しの御意見に対しましては、全く同感考えておるものでございまして、こういう債務がある以上は、やはりすみやかに処理する、そうして先方にも相当の決断を求めた上で処理すべきであるという考えでございますが、何分にもフィリピン賠償は今般片づくことになりましたが、他の戦後の日本の支払うべき問題がいろいろございますために、ガリオアの問題も進捗いたしておりません。幸いアメリカの方からも、最近はあまり催促を受けていないような状態でございまして、昨秋の折衝以後実は両国政府当局間に何らの折衝が行われていないという現状でございます。しかし最近賠償も片づきますと、外務省といたしましては関係省と御相談いたしまして、ガリオアの方にも早く着手したいと考えておる次第でございます。
  25. 愛知揆一

    愛知委員 それからその次にやはり同種の問題でありますが、これもいずれ外務大臣にはっきりした態度を伺わなければならぬと思っておりますが、タイ国との間の特別円の問題について一言伺いたいわけであります。  このタイ国とわが国との間のいわゆる特別円の決済に関する協定については、すでに前国会でありましたか、国会の承認も正式に得ておるわけであります。ところが今年になりまして、あるいは昨年の暮れからでありますか、たとえばタイ国の外務大臣日本に来日された。そのときにいろいろとタイ側の希望もあったようでありますが、その後外務大臣がタイ国に帰国せられてしばらくしてから、日本との間の特別円の協定の問題について、非常に自分らとしては不満な点が多いというようなところから、当時のある新聞の報道において、本件を国際司法裁判所でありますか、それに提訴して処理をしてもらうのだというようなことを、ワン・ワイタヤコン外務大臣が言明したというふうな報道を見たことがございます。ところが本件については、その後具体的な実行が行われているという何らの報道も見ませんし、また政府からの説明もないわけであります。そういう状態が続きますと、これについてはうまくいってないのじゃなかろうかという割り切れないような感じだけがもやもや残りまして、こういう状態を長く続けていくことは、どうも両国のために不得策ではなかろうかと私は考えるのであります。たまたまタイ国に対するわが国の大使も最近更迭されて、新大使渋沢君が近々に赴任されるように聞いておるのでありますが、一つ政府としてはこの際特別円の問題などについても、具体的に、単に条約上の約束ができたからというだけで安心して、あるいはさらに率直に申しますならば、ほうっておかないで、約束した以上はどんどん実行ができて、タイの人たちにも喜ばれるように、なるほどこれで日タイ間の協定約定通り実現の緒についたという格好がとれるように処理するために、たまたま新しい大使が赴任されるような今日の事態において、一つ外務省が中心になって、おそらくは政府部内におきましてもいろいろと議論があろうかと思うのでありますが、大所高所からこの日タイ特別円協定がスムーズに動き出すような処置を、この際考えられることが絶対に私は必要かと思うのであります。この点は実は外務大臣に特に伺いたいと思ったのでありますが、おいでになりませんから、かわってお答えを願いたいと思います。
  26. 下田武三

    下田政府委員 タイの特別円問題の処理に関します協定は、実は仰せのように遺憾ながら問題が起っていることは事実でございます。あの協定締結されました事情考えてみますと、ワン・ワイタヤコン殿下はやはり何か早くおみやげを持って帰りたかったという事情、それからもう一つは、五十四億の方の第一回の現金の支払いを早くしてもらいたいという、向うも急いだ事情がございまして、きわめて短時日に、飛行機が立つ前の日に大急ぎでできたという、非常に拙速をとうとんでできた協定でございますために、どうもただいま振り返ってみますと、細目まではっきりした打ち合せができていなかったという点は、私どもも隠せない事実と存ずるのであります。まことに遺憾なことでございますが、当時の事情としてはやむを得なかったのでございます。  そこで、タイの方では国際司法裁判所に出すというようなことも言っておりますが、これは話の真意でないと思います。日タイ間の間柄でございますから、何とか友好的に話をつけて協定でできていない細目の点を、友好的に早く打ち合せをして解決することが、仰せ通り必要だと存じます。何しろ借款でございます。グラント、贈与ではないのでございますから、たとい裁判で法律的見地から申しましても、タイ側にとってはそう歩のある話ではないわけでございますから、友好的に一つ協定ができたときにきまらない細目を打ち合せるという問題の取り上げ方ですみやかに話をしたいと存じております。仰せのように新大使も参りますので、ただいま新大使は赴任いたしておりませんが、これについての解決案を今練っておる次第でございまして、すみやかに解決いたしたいと存じております。
  27. 愛知揆一

    愛知委員 それではほかに質問があるようですから、一応これでやめます。
  28. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 ただいま愛知委員からタイ特別円についての御質問がありましたので、関連して一言だけ伺っておきたいと思うのであります。いろいろタイ国に来征される人たちの話を聞きますと、このタイ特別円の取り扱いに関する誤解もしくは推測等のために、あれほど関係のよい——日タイ関係というものは非常にいいわけでございますが、その間において、日本の公式任務を帯びた人たちに対する取り扱い等について、差別的なことも起っておるというような報道並びに実話を聞いておる次第で、私はまことに遺憾にたえないのでございます。ことにワン・ワイタヤコン外相がこちらにお見えになったときは、私も会う機会があって、よく話を聞いたり申したりしたのでありますが、今問題になっておる特別円という関係はもちろんございます。これはいろいろ今お答えのような拙速等による事情もありましょうけれども、日タイ間の関係という大局からこれを解決していくことがより必要なことである。渋沢大使が新しく赴任される際でありますから、この機会におきまして、何か大局からした解決の具体案を渋沢大使が持っていくということがきわめて必要なことである。時に日比賠償の解決等も目捷の間にあり、またインドネシアとの賠償の問題もそろそろうわさに上っておるような時でございますから、特に私はこのことが必要だと思います。外務当局におかれましては、渋沢大使の赴任に当って、具体的な案はもちろんでございますが、特に大局上その誤解を解くような方法を、私は今具体的には何も考えが浮びませんが、一つ考え願って、ぜひともそれをおやり願いたいと希望を申し上げる次第でございます。
  29. 松田竹千代

    ○松田(竹)委員 先刻愛知委員から、ガリオア、イロアの問題が出ましたが、これに関連して、私は御注意というか御質問というか申し上げてみたいと思います。私は、あの二十億ドルの金は、日本国民としては、あの当時もらったものであるという印象を深くしておるのであります。しかるに予算総会において、吉田総理から、これは債務考えるかもらったものと考えておるのかという質問に対して、債務考えるという答弁があった。これは当時の日本国民の印象からいうと、全く異様な答弁であったということが考えられる。先年デューイ氏が日本に来たときに、日米協会において大演説をぶって、戦勝国が戦敗国に対して二十億ドルという莫大な金、物を与えたという事例はどこにあるかといって大みえを切ったのを、私ははっきりと覚えております。そこで私は、去年アメリカへ行ったときに、名前は申し上げられませんけれども、国務省の有力な人と、その人のうちで長く話をした。一体あの問題をどう解決すべきかということで、ずいぶん突っ込んで深く話し合いをしたことがあるのであります。そのときにも、私は、日本国民はあれはもうもらったものだと思っている、デューイ氏のあの大みえから考えてみましても、当時アメリカがあの物資を日本へ持ってきて救助に使ったときには、決して将来あれを取り立てるというような考えは、毛頭あったものでないと考えると、その点を申したのです。一体どういうふうな処理の仕方があるかといって私はずいぶんいろいろと話したが、これはやっぱり債務と言ったのだから、日本国民の潔癖性から考えると、債務考えて当然これを処理しなければならないのであるが、どう処理するか、この金は、半分くらい払っても、やはりアメリカへ持って帰るのではなくして、福祉卒業か何かで日本で使うというような考え方でいくよりほかないということを申されたのであります。これは相当有力な人なのでありますが、そういうことより処理の方法がない、それが最も適当だと思う。もともと日本の救済に使ったもので、今日はともかく、アメリカもその当時はそういう気持でおったことは確かである。これの処理を急ぐがよいという考え方はあの人にもあるようで、どう処理するがよいか、そういう事情を十分明らかにしてこの問題の処理に当るべきであろうと私は考えるのであります。これは私が直接みずから触れた事柄でありますので申し上げて、御参考に供したいと思うのであります。
  30. 下田武三

    下田政府委員 非常に私どもに参考になるお話を伺わせていただきましてありがたく思うのでありますが、法律的に言いますと、占領中からもそうでありますが、特に日本の独立に際してのサンフランシスコ平和条約の際に、アメリカ側は、直接の軍事費に限って請求権を放棄するという規定をいたしました。もちろんその裏におきましては、占領の結果日本の民生を助けるために要した費用は、請求権を放棄しないという趣旨の規定を日本は受諾いたしておりまして、法律的に言いますと、全部もうやめてくれというようなことはとうてい言えないわけであります。仰せのように、アメリカとしても全額返済を求める気持はございません。ドイツの例によりましても、半分はおろか三分の一くらいに差し引いているわけでございますから、日本の場合も少くもドイツと同程度に差し引いてもらいまして、残りの支払いにつきましても、できるだけ長期に有利な返済条件返済するということ、また、ただいま仰せのように、それをアメリカに引き揚げないで、何らかの形で日本経済に役立つような面に利用してもりうということも日本側の希望でございますが、最後の日本側の持っていかないでくれということは、実はセッツルメントができてからあとの話でございまして、それをいたします前に初めからそういうことで持ち出しますのは——アメリカ側にも日本に有利な考えを持っている人もおりますが、米国政府としては、この金は納税者から出たものであるから、そう気前よく考えられないという点もございますので、できるだけ少額にしぼりまして、そうして返済条件を有利にいたしまして、セッツルメントができましたらまたそのあとで第二段の問題として、それを両国の役に立つようにするという問題も発生し得ると思います。ただいままでのところ日本側は大体そういう考えアメリカ側と話をして参ったのであります。
  31. 松田竹千代

    ○松田(竹)委員 ただいまのお考えは私どもとちょっと考えが違うのですがね。これはやはり当時のアメリカ政府のみならず、国民日本国の窮状を救済するということで、与えるという気持が主でこれは持ってきたものであるということを深く考えることが、むしろ当時のアメリカの好意に対して報いるゆえんであると私は考える。でありますから少くとも負けてくれというようなことを強く初めから言うこと自体が、私どもの考え方と違うのでありまして、それは向うの最初の意図に反することである。そういうことではないので、これは全額払ってもいい、ただそれは日本国内の民生の安定のために、あるいは福祉事業のために使うということでやることこそが、私はアメリカの当時の人々の意にこたえるゆえんであると考えるのであります。そこのところが日本の場合は違うのであるが、それは一つ何とか考え直してもらいたいと私は思う。
  32. 下田武三

    下田政府委員 その点はそういう意見を持っておるアメリカ人がおることは事実だと存じますが、少くもアメリカ政府の公式の見解としては、あれは全部日本贈与したものとは考えておらないわけでございます。
  33. 北澤直吉

    ○北澤委員 今の問題に関連して、一つ明らかにしておいてもらいたい点があるのです。それは今のガリオアの援助資金が、日本として債務であるかどうか、その法律上の地位についての問題ですが、ただいま条約局長の答弁では、平和条約の規定にアメリカ日本で使った軍事費についてはもちろん請求しないというふうなことが若いてある。従ってその裏の解釈としては、経済援助に使ったものは請求する、こういう話でありますが、私の記憶では例の阿波丸の請求権を放棄したあの交換公文のあとに、いわゆる政府は、占領中にアメリカが使ったこういう金は、日本債務であるというふうに書いてあるのでありますが、そういうことは平和条約によってその効力がなかったのであるかどうか。あるいは平和条約の規定いかんにかかわらず、阿波丸の請求権放棄に関する交換公文、これは今でも効力を持っておるかどうか、その点を一つお伺いします。
  34. 下田武三

    下田政府委員 御指摘のように、阿波丸の請求権の解決に関します日米協定におきましても、附属文書で日本側はあれが債務であるということで確認いたしておるわけであります。その上に平和条約先ほど申しました規定がございますので、法律的には日本側としては全部差引けということは言えない立場に、つまり日本が独立を回復したときに、そういう法律的地位に置かれておったというのが事実であります。
  35. 伊東隆治

    ○伊東(隆)委員 私質問ではありませんが、一つの例を申し上げたいと思いますことは、奄美大高が米軍管轄下にありましたときに、ガリオア物資約三億余にわたり与えたか、貸し付けたものがあります。それから復金の借金が三億余、合せて六億余、七億に達するものがある。昨年の二月でしたか、米国政府の債権というようなものを日本政府にこれを移譲した取りきめがあることは御承知の通りでありますが、そういうふうで、とにかく日本政府が債権を肩がわりした形なのです。そこで大蔵省といろいろ相談しましたところが、やはり米国政府の趣旨は、奄美大島の民生のためにこれは貸し付けたのである、あるいはくれたのであるから、そういうふうに使ってもらいたいということを私特に主張いたしまして、特別に許してもらったことは御承知の通りだと思います。信用保証協会というものを作って、それに三億円、また借りた三億円も奄美大島の民生のためにのみこれを使うという事例がありますから、ただいま松田議員のおっしゃるようにこれは日本に貸したのかあるいはくれたのか、どっちかいずれにしましても、日本の民生のためにこれを使うという事例は、すでに奄美大島においてこれが見られるのでありますから、一つさっきの御意見もありますけれども、松田議員のおっしゃることは私も全面的に支持いたしたいと思います。
  36. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 大橋忠一君。
  37. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 少し小さい問題でありますが、飼料を今度六百四十万ドルほど買われることになって、これは非常にけっこうなことであると思うのでありますが、御承知の通り飼料需給安定法に基く予算が六十億ですか、ことしは幾らかあるのでありますが、この飼料需給安定法に基く飼料買付予算、これと余剰農産物協定によって買う六百四十万ドル借款とはどういうような関係になるのでありますか、御説明を願います。
  38. 松岡亮

    ○松岡説明員 食糧管理特別会計におきまして、この六百四十万ドルのえさ、つまりトウモロコシとか、飼料用小麦でございますが、そういうものを買い付ける予定でございます。そのための予算を組んでおるのでございます。
  39. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 そうではない。飼料需給安定法に基く別な予算があるでしょう。
  40. 松岡亮

    ○松岡説明員 今飼料需給安定法に基くものと、この余剰農産物協定に基きまして買い付けるものとの詳細な区別した予算は手元にございませんが、飼料需給安定法に基きまして買い上げるものはふすま、これは輸入物も国内物もございます。それから大豆、こういうものでございます。そのほかこの協定に基いて買い上げますものはトウモロコシ、飼料用小麦、これはいずれも食糧管理特別会計予算に計上しておるものでございます。
  41. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 そうすると、飼料需給安定法に基いて買い付ける予算というものと、今度の余剰農産物で買う予算は全然別個のものなのですか。飼料需給安定法の予算は今度の余剰農産物買付予算と全然別個のもので、やはり今まで通り需給の調整のために必要な場合は、それだけの予算を使って買っていいのかどうなのですか。どういうふうになっているのですか。
  42. 松岡亮

    ○松岡説明員 それは食糧管理特別会計の同じ項の中に計上してございます。従いまして一本の予算と申し上げることができます。
  43. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 飼料需給安定法の方の予算と、これが一緒になってしまうのですか……。
  44. 松岡亮

    ○松岡説明員 さようでございます。
  45. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 そうすると、飼料需給安定法に基く予算が六十億あるとする、そうして今度のやつが三十何億というものがこれによって買い付ける。そうすると六十億の飼料需給安定法に基く予算がそれだけ減るわけなのですね。
  46. 松岡亮

    ○松岡説明員 別に減るわけではございません。当初から両方の見積りを入れて予算を計上しております。
  47. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 トウモロコシでありますが、これの値段が最近日本で非常に高くなったというのは、アメリカあたりで買おうと思ってもなかなか値段が高くて買えない。去年あたりはわざわざアルゼンチンあたりから買っておって、船賃が高くなるので非常に高い、つまりアメリカから買えなかったからである。ところがこういう余剰農産物協定ができるところを見ると、これは最近のアメリカにおけるトウモロコシの値段が下ってきている。合理的の条件で買い得るようになった何か事情の変更があったのでありますか、その点をお伺いしたい。
  48. 松岡亮

    ○松岡説明員 御承知のように国内における飼料需給がやや窮屈な場合が多うございまして、えさの価格が高騰しがちでございます。そのために飼料需給安定法が制定されたわけであります。安い飼料、たとえばトウモロコシのようなものをできるだけ輸入するということの必要なことは御指摘の通りでございますが、今度そういうものを余剰農産物協定で入れるということになりましたのは、今回初めてアメリカにおいてそういうものの輸出が可能になり、日本側としてもアメリカから輸入できるようになった、そういう特別事情の変更があったものではないと思います。日本側から今度はトウモロコシを協定に入れてもらいたい、こういう趣旨で交渉して入れたであります。
  49. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 問題はトウモロコシの値段ですが、相当アメリカでは高いと聞いておるのです。その高いものをこの余剰農産物協定によって日本で買い入れ、これを需要者に売る場合にどういうふうにして売りますか。売り方、この払い下げの方法はどういうふうにしてやられますか。
  50. 松岡亮

    ○松岡説明員 まず米国産のトウモロコシの値段でございますが、最近やや低下ぎみであります。それを申し上げておく必要があると思いますが、それを国内輸入した場合に、食糧管理特別会計で買い上げまして、それを払い下げる場合には入札によりまして払い下げておるわけであります。
  51. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 入札ですが、今までの飼料の入札だと実需団体に直接いかない、中間的なものに入札をさせる。たとえばマニトバ小麦のごときものは中間的なものに入札する結果、それが横へ流れている。飼料だから非常に安いものだ。そうしてそれが鳥のえさにならずに人間のえさになってしまう。それがために飼料というものは一向安くならぬ。ところが今度のトウモロコシあるいはふすま、そういうものをこの協定によって輸入しても、中間的なものでそれを入札するということになると、ふすまにしてもあるいはトウモロコシにしても、アルコール製造とかあるいはみそたまり製造の方に流れていく、そうすると日本の飼料の足しにならない。そこで日本の畜産界においては、直接これを実需団体に対して、現実のほんとう外国から輸入したままの価格で割り当ててもらいたいという要望が非常に強いのですが、今までのような制度で中間的の団体にこれを入札によって払い下げるということでは、飼料にならずに他の方に流れてしまうおそれが非常にある。この点はどういうふうにお考えですか。
  52. 松岡亮

    ○松岡説明員 私も直接担当をいたしておりませんので、詳細な事情を申し上げるわけに参りませんが、確かに、輸入いたしました飼料用のトウモロコシあるいはコウリャン等につきまして、場合によりアルコール等の方に横流れするというような事情があるということを聞いておるのであります。農林省といたしましても、そういうことのないように厳重に検討を加えておるはずでございます。
  53. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 現に養鶏用に輸入いたしましたマニトバ小麦のごときは、全部それがえさに回らずして粉屋に回ってしまっている。それがために飼料が一向安くならないというので、小麦に色をつける、あるいはそれを砕いて払い下げているというようなことで非常にもめておった。そうしてせっかく今度これを余剰農産物協定によって輸入しても、これをそういう中間搾取団体に払い下げるということになると、非常にその効果が減ってしまう。これは畜産局長がおられないとわからぬかもしれないが、この点をもう少しはっきりしてもらわぬと、せっかくの輸入が何にもならなくなる。農林大臣がよく御存じですから、帰ってこられたらこういう質問があったということを言われて、厳重に一つ考えてもらいたい。
  54. 松岡亮

    ○松岡説明員 、どうも実情を私もよく存じませんので申しわけないのですが、ただいまのマニトバ小麦等につきましては、着色するという方法で横流れを防止するというようなことも研究いたしまして、できるだけそのようなことのないようにいたします。畜産局長にもよくお話しいたします。
  55. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 トウモロコシその他としてあるのですが、その他の中には何を考えておられるのですか。今言ったマニトバ小麦であるとかふすま——ふすまなんかを去年は非常にたくさん緊急的に輸入したでしょう。何を考えておられるのですか。
  56. 松岡亮

    ○松岡説明員 トウモロコシのほかに飼料用の小麦、場合によりましてはコウリャン等も非常に値が安いとか、国内事情でどうしても必要であるというような場合は、コウリャン等も入れる場合もあり得るのでございます。その辺ははっきりと内訳はきめてございません。
  57. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 われわれの関心を持つのは横流れです。これを厳重に取り締って実需団体、地方の実際それを使用する団体に直接いくようなふうに一つ考えてもらいたい、これをお願いして私の質問を終ります。
  58. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 次会は公報をもってお知らせいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時四十分散会