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1956-04-25 第24回国会 衆議院 外務委員会 第36号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年四月二十五日(水曜日)    午前十一時開議  出席委員    委員長 前尾繁三郎君    理事 石坂  繁君 理事 北澤 直吉君    理事 須磨彌吉郎君 理事 高岡 大輔君    理事 山本 利壽君 理事 穗積 七郎君    理事 松本 七郎君       愛知 揆一君    伊東 隆治君       大橋 忠一君    菊池 義郎君       重政 誠之君    並木 芳雄君       松田竹千代君    森下 國雄君       大西 正道君    田中織之進君       田中 稔男君    戸叶 里子君       福田 昌子君    細迫 兼光君       森島 守人君    和田 博雄君       岡田 春夫君  出席国務大臣         外 務 大 臣 重光  葵君         国 務 大 臣 高碕達之助君  出席政府委員         法制局長官   林  修三君         外務政務次官  森下 國雄君         外務事務官         (経済局長)  湯川 盛夫君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君         外務事務官         (移住局長)  矢口 麓藏君         水産庁次長   岡井 正男君  委員外出席者         外務事務官         (経済局第三課         長)      吉良 秀通君         農林事務官         (大臣官房企画         室長)     松岡  亮君         農林事務官         (食糧庁業務第         二部輸入計画課         長)      丹羽雅次郎君         専  門  員 佐藤 敏人君     ――――――――――――― 四月二十四日  委員岡田春夫辞任につき、その補欠として石  野久男君が議長指名委員に選任された。 同月二十五日  委員石野久男辞任につき、その補欠として岡  田春夫君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 四月二十四日  太平洋地域原水爆実験禁止に関する請願(西  村彰一紹介)(第二一一五号)  同外二十件(北山愛郎紹介)(第二一三四  号)  北洋漁業漁獲水域現状維持に関する請願(村  松久義君外二名紹介)(第二一二三号) の審査を委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  千九百五十五年五月三十一日に東京で署名され  た農産物に関する日本国アメリカ合衆国との  間の協定第三条を改正する議定書締結につい  て承認を求めるの件(条約第八号)  農産物に関する日本国アメリカ合衆国との間  の協定締結について承認を求めるの件(条約  第九号)  国際情勢等に関する件     ―――――――――――――
  2. 前尾繁三郎

    前尾委員長 これより会議を開きます。  千九百五十五年五月三十一日に東京で署名された農産物に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定第三条を改正する義定書締結について承認を求めるの件、農産物に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件を議題といたします。質疑を許します。大橋忠一君。
  3. 大橋忠一

    大橋(忠)委員 農林当局にお尋ねいたしますが、私は現在農村の非常に土地の悪いところに住んでおりますが、前には耕作しておったところが、耕作せずに草のはえたままほってある土地が、非常に目につくようになったのであります。それから汽車に乗って車窓から外を見ましても、いわゆる二毛作しておる面積が非常に減ったように考えるのでありますが、この事実をお認めであるかどうか。そうして、こういうような現象が起ってきたのは、おそらく農産物価格というものが比較的に安いがために、耕しても引き合わない、勘定に合わぬ、こういうようなところも私は原因であろうと思うのであります。以前は荒れ地まで耕して食糧をどしどし作っておった。ところがこのごろは既耕地まで荒れ地に返りつつある、二毛作が非常に減ったというような工合になっている。そこで農産物と他の物価との比率というものが、農産物に非常に不利になっているということを、数字的にもしおわかりであったら知らせていただきたいと思うのであります。われわれ農村出身議員としては、こういう放棄するような状態は非常に困ると思う。こういう現象が起って、農村不満が次第に高まりつつあるような現勢は、われわれ保守党議員にとっては憂慮にたえない現状であります。そうしてこれはある点におきましてこの余剰農産物関係があると思いますので質問いたしますが、わかっておったならば、右の点についてお答えを願いたいと思います。
  4. 松岡亮

    松岡説明員 ただいまの御質問は、耕作放棄現象がふえておる、それから二毛作地裏作を行わないままに放擲されている面積がふえているのではないかといことからの御質問でありますが、まずその点について申し上げますと、全国的に見まして耕作放棄という現象が、零細農の面におきまして若干ないことはないのでございますけれども、それが全体として農地作付面積が減るというほどの現象になっていないのであります。また裏作の方につきましても、そういうことは全国的な統計の面から申し上げますと、二毛作が最近特に減少しているということは見られないのであります。むしろ土地改良を実施いたしましたあと、従来単作しかできなかったものが、裏作も可能になったという土地の増加が見られるものでありまして、全体といたしましてはそう見てはいないわけであります。  しからば農産物価格が低過ぎるのでははないかという御質問でございますが、これにつきましては、御承知のごとく、米、麦等につきましては、それぞれ法律に基づきまして、一般物価、具体的に申し上げますならば、農家購入いたしますいろいろな商品の価格との均衡が保持できますように、同時に、農家生産をするについていろいろとかかるコスト、生産費との均衡を参酌いたしましてパリテイ指数を決定いたしておりますので、現在得に農産物価格一般物価に比較して、従来より不利になっておるということは考えられないのであります。またアメリカから輸入されます余剰農産物の結果といたしまして、農産物価格が押さえられていはしないかという点がございますが、これにつきましても、一応問題になります米、麦等につきましては、輸入農作物との関係価格の面に置きましても遮断されております。食糧監理特別会計において一手に買い上げて、国内事情によって価格水準を定めておりますので、直接に余剰農産物影響として米麦価格が引き下げられるということは無いわけであります。
  5. 大橋忠一

    大橋(忠)委員 私も実は少しであるけれども農業をやっておるのでありまして、豆を作って売るのでありますが、今年のごときは非常に安くて売れないという現状であります。物が非常に豊富過ぎる場合は、テクニカルな値段というものが公定されておっても、現実マーケットに行きますと非常にたたかれるのであります。奪い合って買う場合と、いやいや買う場合とでは、非常に大きな値段の開きがある。私はそういうような点で、農家はオフィシャルの数字とは違って、現実には非常に苦しいのではないかと思う。そうして農村方面でもとにかく経済的に行き詰まっているという声が非常に高いのであります。そこで彼らは何とかしてもっともうかる仕手を見つけたいというので、いろいろあさり歩いている事実があるのであります。ことに私が住んでおりまするところは非常に土地の悪いところでありまして、そういう値段関係上少しでも引き合わないと直ちに耕地を放棄するという現象が起る。この点非常に敏感なところであります。現実私は見てきておりまして、耕しておるができの悪いところは現に放棄しておる。従ってこういうような原因によって、オフィシャルな値段においては下っていなくても、他の物価とつり合いがとれておっても、現実の問題としては、農産物が非常に豊富であるがためにたたかれて、それがため農村は非常に不利なる情勢にあるように私は思うのであります。この点についてどういうお考えでございますか。
  6. 松岡亮

    松岡説明員 ただいま具体的な例をもってご指摘になりましたが、元来日本農家現金収入は、米麦を合せますと大体六制くらいを占めておるかと存じますが、その農家収入の大宗を占めております米麦及び繭につきまして、相当に国家のコントロールがありまして、大体安定的に推移いたしておるのでございます。御指摘になりました豆はおそらく大豆あるいは小笠をさしておられると存じますが、大豆につきましては若干変動がございます。特に最近におきまして、これは余剰農産物には関係ございませんが、中共大豆がかなり安く入るようになりまして、市価に若干の影響があったようでございます。これに対しましては、現在のところ、農産物価格安定法大豆を入れるという改正法律案が、農林水産委員会の方で御審議中でございますが、それとは別に、現在行われております外貨割当制度の運用によりまして、ある程度国内農産物価格に悪影響を与えることを防ぐようにいたしております。たとえば最近におきましては大豆価格が若干下りぎみでございましたので、三十年度の外貨予算のうち、保留しておりました分につきましては一時たな上げをいたしまして、大豆輸入をストップしておったようでございます。そういうような関係で、大豆価格も若干持ち直しておるという事情もございます。そのように現在与えられております手段をできるだけ活用いたしまして、外国農産物が低廉に大量に輸入される結果として、国内農業が圧迫されることのないように、万全の措置をとっておる次第でございます。
  7. 大橋忠一

    大橋(忠)委員 正確なことは知りませんが、ことに小麦値段は、いなかで十六貫俵が大体二千二百円というような値段を呼んでいるようですが、これに対して大麦は、十二貫俵、しかも皮つきで千二、三百円というような値段だと了解しております。そうすると、現実問題として小麦を作るというのは引き合わないのです。収量が非常に少い上に耕作の上からいっても困難だ。ところが麦を作る場合には事実上いろいろな麦を作らないと、土地が非常に荒れてしまう。ことし大麦を作ったら来年は小麦を作る、ことし小麦を作ったら来年は裸麦を作るというふうに変えていかぬと、土地が萎縮してしまってできない。そういうようなわけで、いろいろ輪作する上におきまして、小麦値段というものが、その本質的な価値において大麦より非常に割が悪い。これはお百姓が全部一様に言うのでありまして、私も実際やってみて小麦値段のきめ方が少し低いのじゃないか、こういうように思うのですが、この点はどういうふうにお考えですか。
  8. 松岡亮

    松岡説明員 ちょっと手元に詳細な価格算定の資料を持ち合せておりませんが、小麦にいたしましても大麦にいたしましても、一応これは流通取引において成立する価格で取引されるのでございますが、現在におききましては、食糧管理法によりまして、一種価格支持政府が行なっておるわけであります。その支持価格水準全国一本にきめられるのでございまして、その結果といたしまして、これは地方により、また土地によって、若干収益に相違があることは否定できないのであります。従いまして場所によっては、ほかの土地に比べますれば、小麦は若干不利だというようなことのあることは推定できるのでございますが、小麦大麦価格はいずれも一本にきまっておりますので、そこに全国津々浦々において当てはまるような合理的な小麦大麦との比価を決定することは困難でございます。一応最近におきまして戦前、戦時中、終戦後の小麦大麦との比価等を参酌いたしまして決定いたしておりますので、若干地方的の凹凸はあるかと存じますけれども、現在のところ、比較的穏当にさまっておるのではないか、かように考えるのでございます。
  9. 大橋忠一

    大橋(忠)委員 小麦値段が、現実にそういうものを生産した目から見ますと、またお百姓意見でも割安であるということをもう少しお調べになっていただきたい。これはお百姓全般の声だろうと思うのであります。これは日本食糧自給上、パンが非常にふえておる現状において、むしろ小麦なんかどしどし作る必要がある。そこで結局日本における余剰農産物小麦売り渡し値段を少し上げれば、直ちに小麦値段がこれにつれて上ってくるのだから、もう少し小麦値段を上げて、そうして小麦農村でもどしどし作って引き合うようにすることが必要じゃないかということを、私は農村におって特に感ずるのであります。農村では余剰農産物がどんどん入ってくるものだからこんなに安いんだということで、農村疲弊困憊原因余剰農産物に置く、またそういうふうに宣伝する者もあるのです。そこで私は外国のフリー・マーケットにおいて買わなければならぬものを結局余剰農産物という形で買うだけで、姿が変るだけで実質は同じことである。従って余剰農産物をどんどん買うがゆえに、小麦値段が下るのじゃないということを知らせる意味においても、もう少し内地産の小麦値段を引き上げることを考慮されたい。そのことがつまり余剰農産物に対する農村誤解を解く一つの方途にもなる、こういうふうに思っておりますが、どうでありましょうか。
  10. 松岡亮

    松岡説明員 小麦価格が割安であるかどうかという点につきましては、なお米価審議会等もございますし、各方面の御意見等も承わって、適切な価格水準をきめるように持っていくべきであろうと存じますが、御指摘余剰農産物が入れられるために、小麦価格が押えられるのだという点については、全くお話のように宣伝の結果もあるかと存じますが、全然事実と反することでございます。御承知のごとく、余剰農産物輸入される小麦の最は、国内で不足しておる分についてのみ輸入されておるのでございます。その分につきましては食糧管理特別会計におきまして管理いたしまして、国内価格との関係は一応別になっております。従って直接に国内小麦価格に対して、余剰農産物が何らかそれを抑制するような作用を持つということはないものと存じます。
  11. 大橋忠一

    大橋(忠)委員 余剰農産物というものが農産物価格を抑えて、農村が困るのはこれがためだ、これが余剰農産物に関連してわれわれが一番注意を払わなければならぬ要点であろうと思います。この点について農民誤解を起さないような措置を講ずる必要がある。そしてまた農産物価格をきめるのに、生産量をもとにしてきめると同時に、他の物価、あるいは労銀、特に農村で使う肥料だけでなく、その他の日用品というものの物価との比率をよく考えて私はきめる必要があると思うのであります。それはむろん現在やっておられるだろうと思いますが、そういうふうにやっておられますか、どういうふうにしてきめておられるのですか、ちょっと説明願いたい。
  12. 松岡亮

    松岡説明員 まず生産物との関係でありますが、これは農林省で麦の生産費調査を実施しておりまして、毎年価格を決定いたします際に十分参酌いたしておるのでございます。これは相当応範な規模において調査をいたしておりますので、他のいろいろな事例調査に比べますならば、かなり信用し得る材料であろうかと思います。また農家購入いたします資材、特に今お話のございました日用品との価格関係でありますが、これにつきましては、御承知農業パリティ指数は、農家購入する生産資材はもちろんのこと、いろいろな繊維製品であるとか、あるいは日常の生活用品等価格との均衡を維持するため物価指数でございます。パリティ指数との均衡を維持することによって、小麦価格一般の日用品価格とのバランスを保持するように努めておるのでございます。
  13. 大橋忠一

    大橋(忠)委員 農産物が非常に少いときには、つまりオフィシャルな価格よりも非常に高くやみその他いろいろなルートがある。ところがこれが非常に豊富なときには、オフィシャルな価格よりも安くなる。やみその他はことに下ってくる。そこに今農村不平が非常にあるのであります。そこでこの点も勘案されて、農村の利害を代表しておられる農林省においては、ただ単にパリティ計算とかいろいろなテクニカルな計算方法によらずに――今までの農村が非常によかった主たる原因やみです。これが豊富なためになくなってきた。それで急激に困ってきた。そこに農村不平というものが非常にある。それでそういう点も一つ考え農産物価格をきめなくちゃいかぬ。やみばかり考えてきめるというわけにはいきませんが、その事実をちゃんと頭に置いてみのあるきめ方をしなくてはいかぬ。大体やみで一時農村の景気が非常によかった。それがため農村生活水準が非常に高まってしまった。ところがそのやみがなくなって急激に下ったというところに、私は農村不満が非常にあると思う。そこでこの点を勘案して農産物価格をきめるということと、もう一つは、日本という国は、貿易で立っておる国ではあるが、同時に食糧増産食糧自給態勢まではいかないが、やはりでき得る限り日本食糧をまかなう、従って農業政策によって、荒れ地が開かれて遊んでいる土地がどんどん耕されるというような意欲を、農民に起させるような農村政策をとってもらう必要があると思う。ところが余剰農産物というものを、きわめて安いものを安易に日本に入れて、そして政府はそのマージンを取って高く売り出す。同時にそれは借款だからその見返り資金を利用して建築をするということは非常に楽であり、かついかにも便利である。かるがゆえにそういう方向へ重点がいって、そして食糧増産という点に注意が払われないということになってはおもしろくない。やはり少しでも日本で作ればそれだけ外国から買うのは減る。少しでも作って少しでも外国から食糧を買う必要がないようにするということが、私は必要だろうと思うのであります。余剰農催物をどんどん安易に日本に入れて、そうして見返り資金にして、その金をどんどん使うというこういうやり方にあんまりだより過ぎると、どうしても食糧増産の方がおろそかになる。私はその点について農林省の根本的な腹を一つお聞きしたい、こう思うのです。
  14. 松岡亮

    松岡説明員 まことにごもっともなお話でございまして、まず第一点のやみ収入が減りつつあるので農家経済が窮迫化し、生活水準が下りつつあるという点でございますが、もちろんやみ収入ということを、公定価格を決定いたします際に、そのまま直接に採用するわけには参らぬのでありますけれども、現実農家経済というものについては、常に注意を払っております。たとえば二十八年のような全国的に大災害あるいは冷害のありました年のごときは例外でございますが、大体において終戦農家生活水準に上りつつある。最近においても特に下るような傾向は見られないのでございます。これは要するに価格をきめるという際におきましても、農家経済を全体として勘案しつつきめておることも確かにある、かように存ずるのでございます。  第二点の食糧増産でございますが、これも御指摘のように農林省といたしましても、最も重点を置いて実行いたしておる施策でございますが、特に最近におきましては、経済五カ年計画の一環といたしまして、千三百万石の増産昭和三十五年度までに達成するという政府の方針がきめられまして、それに伴って逐次増産量を増していくという努力をいたしておるのでございます。もちろん千三百万石を昭和三十五年度までに増産いたしましても、食糧輸入を全然なくする、完全に自給するというところには、とうていいきかねるのでございますが、人口が増加し、農地がつぶれましても、輸入をふやすことはないという程度の、自給度向上は可能であろう、こういう見込みでせっかく努力いたしておる次第でございます。
  15. 前尾繁三郎

  16. 松本七郎

    松本(七)委員 大臣に御答弁願いたいことはだいぶありますが、大臣がお見えになりませんから、それまで事務当局に御質問いたします。  第一回の協定輸入しました農産物小麦大麦、それから米、綿花葉タバコ購入価格と、それから国際市場価格との比較をお知らせ願いたいと思います。
  17. 松岡亮

    松岡説明員 第一次協定によりまして買い付けました余剰農産物価格と、それ以外の輸入農産物価格を比較して申し上げますが、まず小麦余剰農産物の分がF〇Bで五十九、ドル、それ以外のものはカナダが六十五ドル、オーストラリアが六十ドル、こうなっております。大麦余剰農産物が五十ドル、それから余剰農産物以外で輸入されたものがカナダは五十四ドル、アメリカが五十一ドルでございます。次に米について申し上げますと、余剰農産物で買い付けたものが百四十三ドル、それ以外に買い付けたもの、これはタイでございますが、百四十四ドルでございます。いずれもトン当りFOB価格でございます。
  18. 吉良秀通

    吉良説明員 ただいま御賛同になりました葉タバコ綿花の件でございますが、棄タバコにつきましてはアメリカ黄色種バーレ一種を買っておりますが、黄色種につきましては百ポンド当りCアンドEで八十二ドル六十二セント、バーレ一種で六十八ドル四セント、平均七十八ドル八十セント、こういうことになっております。それから御参考までに通常輸入の方は、今黄色種だけを通常輸入でやっておるのでございますが、百ボンド当りCアンドFで八十四ドル、これは二十九年度でありまして、三十年は通常輸入の分が八十七ドル六十五セント。綿花につきましては実際の買付価格はコマーシャル・ベースでありますので、十分にはわからないのでありますが、三十年におきます米綿平均市場価格、これで買っておると思うわけでありますが、ストリクト・ミドル、一インチ十六万分の一、これをとって申し上げますと、平均四十一・六九セントという値段で買っております。御承知通り通常輸入協定によります購入とは同じであります。
  19. 松本七郎

    松本(七)委員 それからアメリカ船で輸送した数量とその運賃、それから日本船で運送した数量運賃を伺いたい。
  20. 松岡亮

    松岡説明員 農林省の方から小麦大麦、米について申し上げます。小麦日本船と第三川船で運んだ場合のレートはトン当り十ドル七十七セント、米船で運んだ場合は十五ドル、十八セント。大麦日本船及び第三国船の場合はトン当り十一ドル六十セント、米船は十六ドル三十七セント。米は日本船第三国船の場合は約二十一ドル五十セント、米船の場合は二十四ドル五十セント、かようになっております。数量は半々に運んでおります。
  21. 松本七郎

    松本(七)委員 それからアメリカ使用した三〇%の使途日本使用した七〇%の使途、及びその内容が詳細わかれば……。大体その使途を伺いたい。
  22. 吉良秀通

    吉良説明員 第一次協定におきます米側円資金使用につきまして、アメリカ側でもいろいろ計画を練っておるようでございますが、その計画の概要は、今のところはっきりわかっておりますのは、農産物市場開拓という項目に属しますうちで、綿花使用市場開拓開発計画といたしまして、アメリカ綿花協会――ナショナル・コットン・カウンシルと日本綿業振興会との間にできておる計画、これだけがはっきりきまったのでありまして、あとアメリカ側でもいろいろ考えておるようでございますが、まだきまっておりません。ただ概略どういうふうなことを考えておるかと申し上げますと、粉食奨励ために使うことと、それからそれにも関係はもちろんあるのでございますが、製パン技術向上とか、それから食生活の改良、新しい製品小麦なんかを使いました新しい食品の研究だとか、それから小麦粉の栄養に関する研究、こういうふうなもの。それからアメリカバージニア葉を使いましたたばこの市場の拡張のためのいろいろな宣伝計画、こういうふうないろいろなものを考えておるようでございますが、まだ具体化してはおりません。まだそういうふうな状況でございまして、そのほかのあれにつきましても、まだ具体的にきまっておらないのでございます。  その次には日本側円資金使用計画でございますが、円資金の積み立て状況及び使用状況につきまして概略申し上げますと、三月三十一日、年度末現在、協定に基きまして日本銀行に積み立てられました円資金は、約二百七十億六千八百万円でございますが、近日中には予定総額のほとんどが積み立てられると予想しております。そのうち日本側に対しまして、借款分としては約八十九億一千四百万円が電源開発及び農業開発用として支出されましたので、現在の日銀積立金は約九十一億五千万円となっております。日銀より支出されました分、電源開発用には百七十億六千万、農業開発機械公団に十一億三千六百万、愛知用水公団に六億三千万、生産性本部に一億四千万、大体こういうふうになっております。
  23. 穗積七郎

    穗積委員 先ほどからわれわれも質問したとい思っておったことを松本君からいろいろ質問されて、今まで報告を願ったのだが、その実績は当然事前に資料として出すべき性質のものなのですよ。それは委員長におかれても当然同感だろうと思う。きょうのやつをちゃんと整理して、関係資料を全部出していただくようにお取り計らいをお願いいたします。よろしいですか。
  24. 前尾繁三郎

    前尾委員長 はい。
  25. 松本七郎

    松本(七)委員 この第三条によりますと、この協定によって購入した農産物は、両国政府の合意がない限り輸出できないことになっているわけですね。そればかりではなしに、非友好国には出せない一隅規定があるわけですが、この非友好国というのは、具体的にはおそらくソビエトや中国あるいは東欧諸国をさすのだろうと思いますが、一体具体的にはどういう国を言うのですか。
  26. 下田武三

    ○下田政府委員 この条項は従来の協定にも同じものがございましたが、仰せの通りソビエト、中共等共産陣営の国々を言うのでございます。
  27. 松本七郎

    松本(七)委員 一口に共産陣営の国々と言いますけれども、具体的に言うとどことどこですか。全部あげて下さい。
  28. 下田武三

    ○下田政府委員 これはアメリカ国内法たる農産物貿易の促進及び援助に関する法律の第百七条に掲げておりまして、「ソヴィエト社会主義共和国連邦又はその他の国若しくは地域で世界共産主義運動を統制している外国政府又は機関の支配又は統制を受けているもの」、すなわちソ連及びソ連圏諸国というようになっております。従いまして現在いわゆる共産主義諸国と認められております国々、ソ連、中共、ポーランド、チェコ、ハンガリー、アルバニア、ブルガリア、ルーマニア等はいずれも入ると思われます。
  29. 松本七郎

    松本(七)委員 そうすると、アメリカ国内法で今後その国々を共産圏と認める場合には、どんどん追加していくということになりますか。
  30. 下田武三

    ○下田政府委員 もう共産諸国と認められる国の範囲は世界的に確定しておりますから、新たな国がどんどん入ってくるということはないと思います。     ―――――――――――――
  31. 前尾繁三郎

    前尾委員長 それでは議題を変えまして、国際情勢等に関する件について質疑を許します。穗積七郎君。
  32. 穗積七郎

    穗積委員 重光外務大臣は久しく御出席がなかったので、一般国際情勢と申しましても、一般ではなくて、特殊な緊急な問題が累積いたしております。そこで私がちょっと拾ってみただけでも、緊急にまずお尋ねしたい、この委員会としてぜひ外務省の方針を明らかにしてもらわなければならぬと思われるものが、まず第一に共産圏への旅券の制限の問題、第二が、シリアヘの武器輸出については、あなたはこの前はやらないつもりだということをおっしゃいましたが、その後新聞その他の報道するところによると、三菱重工その他が外務省に運動した結果、外務省の首脳部会談でだんだんこれを緩和したい空気があるようだということが報道されて、これは重大な報道でございますから、その問題、続いて日比賠償が最終段階に至りまして、近く全権を決定せられるようですが、これに関する問題、それから河野代表がいよいよきょうあすあたりにモスクワへ着いて、両三日の間にいよいよ向うと交渉されるようですが、その後向う側からもいろいろな情報があるようですし、日本国内におきましても、日ソ出漁企業組合の代表者植田何がし氏に対する出漁許可の問題等が報道されております。さらにもう一つは、けさの新聞によりよすと、外務省は郵政省と打ち合せをして、日中間において郵便の問題について政府間における取りきめをしたいというような問題が提起されておるわけでございます。  そこで、これらの問題に対して、他に関連して質問を希望しておられる方が多数あろうと思うから、委員会審議を円滑にするために、以上申し述べました五つの問題に対して、これはことごとく重要かつ緊急な問題でございますから、まず総括的にすべてにわたって――そのほかあなたの方で報告したいこともおありになるかもしれぬから、最初に外務省の方針を一括して報告していただいて、しかる後に順次質問をしていきたいと思いますから、そのように一つ虚心たんかいに協力していただきたいと思うのです。
  33. 重光葵

    ○重光国務大臣 虚心たんかいに御協力を願いたいのはこちらの願いでございます。どうぞよろしくお願いをいたします。  外務省の方針を一々言えということでございますが、大体もう申し上げておる通りでございます。従来申し上げておる通りの方針で進んでおります。  旅券の査証をする問題は、外務省としての方針は従来申し上げておるわけでございますが、繰り返して申し上げます。それは、旅券の査証をするという法律上の権限は外務大臣にございます。しかしながら、これはたびたびこの席で御議論になっておる通りに、旅行の自由ということは十分に、ある意味において最大限に認めなければならない。そこで査証の権限を運用する場合においても、そういう考えでもって運用しなければなりません。しかしながらその権限のある以上は、無制限にというわけには参りません。そこで国交の現状、国際関係を見、国内的にも考慮することがございましょう。いろいろなことを考慮して、できるだけ旅行の自由という考え方を盛り込んだ方針が政府になければ、最近のように非常にたくさんな数になりますと、それを審査する方針がなければ、事務当局において審査するということに非常に困難を感じますから、その大体の方針を立てて、それによって個々の場合を審査して、査証を出す出さぬということをきめることが一番便宜であろう、旅行者にとっても便宜であろう。これは査証を全部出すということなら問題ございません。また全部出さぬというなら、これも簡単であります。しかしそうは参らないので、いろいろ審査をする、考慮する大よその標準というものをきめる必要があると思います。(穗積委員「最近きめられたその標準をお示し下さい。」と呼ぶ)これは政府の内部の、内規は公けに発表するのはいかがと思います。で、その都度々々大体――これは外部に対する法規ではございません、心得でございますから、その政府内部の取扱いの心得は、私は発表することは穏当でないと考えております。(穗積委員「秘密にするその理由は。」と呼ぶ)これは政府の内部の内規でございますから……(「理由はないじゃないか」「内規だから……」と呼ぶ者あり)そういう理由でございます。そういう理由で全部発表するというわけに参りません。  それから次はシリアの武器の問題でございます。シリアの武器の問題については、武器を輸出するということは、私はこの前に、こういう問題は慎重にしないといかぬと思います。しかし問題は、完成した武器とか材料とかいうのは、専門的に言えば、どこまでが完成とかどこまでが材料ということになりましょう。しかし材料を売るということは別として、完成した武器を売るという話はないように承知いたしております。そこでこういうことは――武器を売るということは慎重にしなければならぬという御趣旨には同感でございます、こうお答えいたしております。なお向うからどういう商談の持ち込みがあったかという一々のことは、実は私は存じませんから申し上げられません。しかしこういう問題については、御趣旨のようにきわめて慎重な態度で取り扱っておるということは、はっきり申し上げることができます。さらにまた、そういう同じような意味のことを繰り返して申しております。  その後この問題はいろいろ新聞にも書かれたのでございますが、私のさようなお答えは、その通りに外務省でやっております。またその通り取り扱うつもりでございます。  それから幹部会で云々ということがございましたが、これは幹部会にこの問題が出たかもしれませんが、むろん幹部会なるものの内容は外部に出るわけもございませんし、また出たわけではございません。幹部会はいろいろな議論があっても、それは私の申し上げた趣旨によって動くのであります。また動かなければならぬことは当然でございます。その問題について、どういうことがあったかということは、面会申し上げました通りに私よく心得ておりませんから、一々のことはまた別によく取り調べるなり、また係の者からでも申し上げることにいたします。  それから日比賠償のことでございます。日比賠償のことはこれまたたびたび御説明申し上げた筋で進んでおります。どの程度まで申し上げましたか、この前はいよいよ取りきめ案文の起草を交渉する段取りになっておるというところまでは、お話いたしておると思います。その取りきめ案文の起草の交渉が進んで参りまして、その途中において藤山特使も帰ってみえましていろいろ打ち合せをして、そしてまた帰任と申しますか向うへ行ったわけでございますが、それによってさらに交渉は進捗をいたしまして、昨今は大体最後の会談に達したとこう言ってもいい状況にあります。これは私は衆議院には多分明日、日比賠償問題に関する最初からの経過の報告をいたす考えを持っております。大体取りきめの見込みが十分につきました上は――今日はまだ最後までは参っておりませんが、明日あたり報告をいたしたいと考えておることは申した通りでありますが、その上はまた調印のための全権団もすぐ組織いたしまして、遅滞なく派遣をするように相なるだろう、こういう状態でございます。(穗積委員「いつきめるのですか。」と呼ぶ)いつきめるということはまだはっきり申し上げられません。報告の段取りに至ったらばすみやかに決定の順序になるだろう、こう思っております。(穗積委員「今国会に出すつもりですか。」と呼ぶ)全権の任命は出さなければならぬのです。これは成規の通りに取り扱います。必要な手続をとらなければなりません。(穗積委員協定そのものは今国会に間に合うつもりでやるのですか。」と呼ぶ)なるべくすみやかに、今やっております。  それから漁業交渉のことをお話でしたが、漁業交渉はまだ始まっておりません。今政府代表を派遣して途中にあることを申し上げます。いずれ不日モスクワで始まることと思います。  それから日中間の郵便取りきめの問題というのは、郵政省当局で事務的に検討はしておるようでありますが、まだ政府としては何らこれを検討いたしておらない、方針は決定しておらない、こういう状況でございます。(穗積委員「やるつもりですか。」と呼ぶ)今検討しておりますから、その上で決定をいたします。
  34. 穗積七郎

    穗積委員 はなはだどうも不十分なお答えで、われわれ満足するわけにいかぬのですが、そこで順次お尋ねしますが、まず渡航問題についてのお話から伺いたいのであります。これは言うまでもなく、国民の旅行自由の基本的な権利に関する制限でございます。従って外交交渉の問題ではなくて、国民の権利に直接関係のあることですから、内規であっても当然公表して、そしてすべての旅行を希望する国民に、あらかじめその基準を示して、そごなきを期するのが当然の政府措置だと私は思うのです。百歩譲ってそれを発表する義務は法律上ないといたしましても、もし利害関係者から一体どういう基準によって選考しておられるのかその選考は言うまでもなく時の政府の主観的な考え方、時の係官の主観的な判断によって不公平であってはなりませんから、当然客観的な基準というものがなければならない。そのときに利害関係を持つ国民からそれを明らかにしてもらいたいというならば、そのときは当然明らかにすべきであって、秘密にすべき理由は何らない、秘密にすることによって、かえって私は民主主義政治の基本精神を破壊するものだと思うのですが、大臣は一体どういうふうにお考えになっておられるか、その点をまず第一にお尋ねしておきたいと思います。
  35. 重光葵

    ○重光国務大臣 御趣旨の点は私もその通りに考えております。そういうふうに考えなければならないと思います。しかしながらこれはどういうものを政府考えておるかということを今日の場合に全部発表する――それは法規でも何でもないのでありますから、これは政府の時と場合の考え方で相当変更と言ってはなんでございますけれども、裁量の余地もあろうかと思います。さような問題について、あまりはっきりとこれを法規的に出してしまうのもかえってよくないと思います。(「出すべき義務がある」と呼ぶ者あり)政府には義務はないと思います。義務はないけれども、義務がなければ何もやらぬでもいいというようには考えません。時によって政府考え方を説明することはいいことだろうと思いますが、今これをこういうことであるといって発表して、それがまた非常に固着するようなことであっては、運用上いいとは申し上げられません。ですからこれは発表することは私はしない方がいいと思います。個々の場合においては十分に説明をする必要があると考えております。
  36. 穗積七郎

    穗積委員 あなたがそういうふうにお避けになるなら、私から説明を申し上げてみましょう。それは従来、特に中国でございますが、中国から国会議員その他の友好関係の人々に招待があって、渡航希望者が非常に多かった。ところが最近になりまして、地方自治体の理事者または議員その他の関係者に、各府県にわたり多数の招待がある。たとえば全国的な組織を持つ青年団協議会に対しても招待がある。その招待に対して非常に多くの各府県、市町村または各青年団関係の諸君から渡航希望がどんどん出てきておる。そこで、政府というよりはむしろ与党の諸君が、従来のように社会党または革新系の者だけであるならばまだしもであるが、自がたちの選挙地盤だと思われるところの保守党の理事者または議員たちが、好んで向うへ行って見聞を広めようとする傾向になるというと、目をおおうて、世界に対する認識をくらまして、わが党の政策を納得さしていこうという考え方が根本的にくつがえされる結果になる。そのことをおそれて急速何とか理屈をつけてやろうとしたことは明瞭でございますし、そういう判断するだけの客観性を持っております。いわば一党の利益、時の政府の利益を守るために、そういうような基本的な人権に対して制約を加えるということは、はなはだしく不当である。しかもそのきまったといわれるものを、あなたは不当にも発表なさいませんが、われわれの用いておるところでは、まず第一に、外交上支障のある者、それから国会議員、地方議員並びに公務員の渡航制限、第三は共産主義の政治運動に利用される危険のあるもの、そういうような内容を持ったものが、最近内規として取りきめられたようであります。われわれも実は直接の利害関係者でございますから、これからの渡航方針についてわれわれの態度をきめなければなりません。方針をきめなければならない。そこで、新聞発表になりました今申しました三項目が、今度きめられた内規であると理解してよろしゅうございますか。それが間違いであるかどうか、その点を教えていただきたい。
  37. 重光葵

    ○重光国務大臣 大体そういうようなことを考えておるようであります。そこで、それじゃどうしてそういうことを全部許さないか。全部許すということになれば、外務省じゃ手数も何もかかりません。ところが、いろいろな関係で渡航に対して旅券の査証を制限する権限を持っておる。その権限を放棄するわけにも参りません。そこで、これは相手が共産国である。共産国の政策がどういうことになっておるかというと、できるだけたくさんの人間を招待して、いろいろ共産主義の宣伝もありましょうし、また政策上の有利な宣伝をするという政策を立てておることが発表されております。何もそういうことをすることを悪いとは言いませんが、日本は共産国でないのでございますから、そこにいろいろ考慮しなければならないことがあるということになるのであって、政策的にも外交的にも、そういう招待に――向うの考え方がそうである場合に、全部それに応ずるということは考えものである、これは自制すべきものであるということを考えるのは当然のことだろうと思います。そういうようなわけでお話のようなことにもなるわけであります。
  38. 穗積七郎

    穗積委員 政府の政治的な考えや利益というものは、これは主観的に御判断になるでしょうが、しかしながら、あなた方が多数を取って政権を持って、今度は執行府を構成している以上は、法律の基準でやらなければなりません。そうなると、憲法の規定並びに旅券法の規定によってのみ、裁量権の範囲というもの、自由の範囲というものが決定されるわけです。政府の行政処分に対する裁量の余地、幅というものは、憲法の規定、並びにこの場合には旅券法の規定によってのみ、その範囲がきまるわけでしょう。ところが今度きめられましたものは――これは明らかに憲法の基本的精神を逸脱するのみならず、旅券法にいう、十三条の、著しく国益を害するおそれのあることが客観的に明らかである場合、そういう場合においてのみこれを制限することができる。もう一つは、裁判の係属中の関係者、それになって非常に列挙的といいますか、制限規定になっております。そうすると、今度おきめになった三つの条件というものは、この旅券法の十三条の除外例の規定に明らかに違反するものだとわれわれは思う。そうなると、ちょうど徳川幕府がキリスト教はおそるべき邪宗であるということで、人の血を吸うような邪宗であるといって国民をたぶらかして、目をおおって鎖国政策をとったそれと全く同じ政策であって、今の共産主義に対するあなた方の認識不足、無理解または恐怖心、ノイローゼ、これによって時の政府の地位を一方的に守るために、旅券法を無視し、憲法の基本的な精神を逸脱して、そういうような内規によって行政処分をされることは、これは明らかに私は違法行為だと思う。個々の事件が起きた場合においてこれを職権乱用によって――これは当然裁判の成立し得る問題だと思うのです。あなたは一体どうお考えになりますか。のみならず、あなたの今の説明を聞いておると、共産主義国が招待の予算を組み、そうして国内の実情並びに思想を見せるためにお客さんを呼ぶのだというようなことを言っているから、これは危険きわまるというふうにおっしゃいますが、終戦後、世界各国の予算として、外国のお客さんを招待して自国を紹介し、自国の考え方を相手にも知らしめる、またこちらからも行って、そうして十分見、かつ聞くというのは当然の文化費です。文化費の中に当然組まるべき性質のものであって、そういうことであるならば、日本の現在の政治、並びにあなたの請うところの思想に対して自信があるのならば――正しいという自信があり、向うがやるならば、むしろこっちも予算を組んでどんどん招待して向うの若い連中に、あるいは認識の足りない諸君に認識せしめるというような積極的政策をとるべきであって、まるでサザエがふたをしめるような鎖国政策なんかはとるべきものではない。しかも、今申しました通りに、憲法の基本精神並びに旅券法の制限規定を、明らかに逸脱するような違法処分をなすっておられる。それに対してもっと明確に説明していただかなければ、われわれは納得するわけに参りません。
  39. 重光葵

    ○重光国務大臣 この問題は、今までの私の説明を繰り返して申し上げる以外特殊の説明はございません。おそらくこれについて御納得を十分得られることは非常に困難であろうかと考えます。それは違った考えのもとに議論が出発しておるように思います。私は、これをやったから鎖国だとか徳川幕府だとかいうのは、そういうことにはどうしても考えが及びません。それからまた大いに外国が文化を紹介するために人を招待する、これは勝手です。それは共産国であろうがどこの国であろうが、外国の方針によってやることは勝手であります。しかしまたそれに応ずるかどうかということも勝手でございます。それからまた……(穗積委員「あなたの勝手じゃない、国民の勝手だ。」と呼ぶ)国民の勝手です。国民の、国の利益ということがちゃんと書いてある。それに、その解釈はそうじゃない、お前の考えておるのは国の利益に反するじゃないかというようなあなた方の御議論であります。私はそうではない、国の利益に反しないとこう申し上げておるのであります。だからそういうことになってくると、どうも……(「職権の乱用だ」と呼ぶ者あり)職権の乱用ではございません。はっきりと法律に書いてあるところによって、国会によってやっておるのであります。そこで私はこの点の趣旨は、そういうことは、できるだけ旅行の自由等の精神を考えて、これを運用すべきだということについては、私もそう考えます。考えますが、しかし職権を放棄することもできません。けれども大よそのところをもってやっていく。そうしてそれはときどきにはまた状況の変化にもよって変り得ることとは考えますが、今は大体こういうふうにしてやろうじゃないか、またやるべきであるということは当然のことだと私は考えております。
  40. 穗積七郎

    穗積委員 それではあなたに端的にお尋ねします。今までは旅券法十三条によって制限するものは制限規定としてあった。それで今までやってきたでしょう。それにもかかわらず今までも何らかの内規はあったのです。一応の基準を持ってやっておられたと思う。不公平で勝手に、ランダムにやるべき性質のことではありませんから、それに加えて今度の決定をするということになるのは、今まで許可をいたしました旅行者、それが十三条にいうところの著しく国益を害するという事実があったならば、そこで考えなければならないということになってくるわけです。それではお尋ねしますが、今まであなた方がこういう基準を新たに設けないで許可された旅行者が、著しく国益を害したような事実がありますかどうか。それを具体的にお示しを願いたい。そんな実害なんかありません。実益のみあります。
  41. 重光葵

    ○重光国務大臣 その一々についてそういう事実があるとかなかったとかいうことは、私はここで申し上げる用意ほございません。用意はございませんが、これだけは事実です。従来は旅行の数が非常に少うございました。少うございましたからこれは取扱いがしよりございました。最近に至って非常にたくさんな数になったことは御承知の通りであります。これは何とかしなければいかぬということになるのは、当然だと私は考えております。
  42. 穗積七郎

    穗積委員 それでは一体今までのもりが実害があったと総括的にお考えになるわけですね、そうですが。
  43. 重光葵

    ○重光国務大臣 それはそういうふうに見られるものもあっただろうと思います。そういうことをすべて包括して、そうして今度は何百人も大挙していくというようなこととは、少し行き過ぎておりはせぬかと私は考えております。
  44. 穗積七郎

    穗積委員 法律旅行に当って行政処分する場合に内規を持たれることは、これは当然なことでございます。当然なことですが、その場合には、さっき言ったように法の規定または精神を逸脱したり、じゅうりんしてはいけないこいうことが明らかなる条件でございます。旅券法十三条の制限規定というものは、明らかに列挙かつ制限規定となって、その制限は最小限度にとどめなければならぬという精神によって規正されております。ところが今度のその内規なるものはどうかというと、外交上支障のある者、または国会議員、地方議員並びに公務員、さらに共産主義運動に利用されるようなおそれのある者ということが――これは一面から見れば非常にばく然としたゆるやかな制限規定のように見えますけれども、しかしこれは抽象的であるだけに、非常に拡大解釈される危険がある。かつて悪法中の悪法といわれました戦時中の治安維持法におきましても、その目的の中には明確に一応書いてあった。ところが今度の内規なるものは、すなわち国民の権利を直接制限するところの内規なるものは、はなはだしく抽象的であって、主観的に判断するならば、どこまででも拡大解釈されて、全くの鎖国状態にまで持っていける。そうして時の政府、時の与党に対して不利益であるというような者に対しては、国の利益に反するということに肩がわりをして、これを禁止することが一方的にできるというようなことは――そういう内規をきめられるにしても、もっと制限列挙主義でいくべきであって、基本法であります旅券法そのものの制限規定というものは、列挙制限、最小限度の制限規定になっておるわけですが、それをはなはだしく逸脱して、今言ったようなばく然としたどこまででも拡大解釈できるような内規というものは、本法の立法精神に明らかに反するものだと私どもは強く主張せざるを得ませんが、一体あなたの法律解釈はどういうことでございますか。
  45. 岡田春夫

    岡田委員 議事進行。ただいまの問題は法律上の解釈としてもきわめて重大な問題です。ですからこの前の委員会から法制局の長官の出席を求めているのですが、法制局長官はいまだに出席をしておりません。従って長官を呼んでその法律解釈を厳密にして、ただいまの重光外務大臣のようないいかげんな法律解釈では、われわれは納得できないのであるから、この点は明らかにしてもらわなければならないと思うので、穂積君の質問を続ける意味においても、すみやかに法制局長官の出席を要求していただきたいと思います。
  46. 前尾繁三郎

    前尾委員長 要求はしているのですが……。   〔発言する者あり〕
  47. 前尾繁三郎

    前尾委員長 発言を許してありません。――穂積君ほかの質問を続けて下さい。
  48. 穗積七郎

    穗積委員 今の答弁をして下さい。
  49. 重光葵

    ○重光国務大臣 今法制局長官を呼んでいるから……。
  50. 穗積七郎

    穗積委員 大臣大臣として意見を述べて下さい。
  51. 重光葵

    ○重光国務大臣 この条文解釈は、「外務大臣において、著しく且つ直接に日本国の利益又は公安を害する行為を行う虞があると認めるに足りる相当の理由がある者」とあります。だからこういうことはできるだけ局限して考えるべきであるということは、私はその通りに考えます。しかしながらこういうことを認めて悪いということはないと思います。認めてそれがすぐ国民の権利にどう響くかということは、これは個々の場合を検討しなければならぬ。検討しなければならぬが、それを検討して決定することができるとここにはちゃんとあるのだからやっていい、こう思うのです。そしてその場合においては、かような考え方でもって進むということは、ばく然とも何ともしていないと思います。
  52. 松本七郎

    松本(七)委員 議事進行。外務大臣に私は要求したいのですが、先ほどから問題になっている内規の問題です。行政府がやることを内規を作ってやることは、これは旅券法に基いたものであって、憲法にも違反しないとそちらは考えておられるかもしれませんが、憲法違反の疑いがあるとして問題になった以上は、少くとも国会でその内規を発表していただかなければ、憲法違反かどうか判断することができないじゃないですか。(「そんな必要はないよ」と呼ぶ者あり)そんな必要がないとは、自分から審蔵権を放棄するのか。私は委員長にも要求しなければならないが、これは立法府であると同時に、監督する責任を持っておるのだから、われわれはその内規が全然問題にならないときならいいですよ、内規を発表しないというならそれは黙認できるけれども、少くともそこに何らかの問題が起り得ると考えて、予想して問題にする以上は、その判断の材料を提供してもらわなければ、われわれ判断のしょうがないじゃないか。いやしくもわれわれから要求した以上は、この作られた内容を発表される義務があると思う。委員長からも大臣に私は要求すべきだと思う。内閣に要求すべきだと思う。当然なことですよ。それをもしも外務大臣が拒否されるのだったら、三度不信任案は出せないから、しょうがない、解任要求を総理大臣にしなければならぬ。当然それは義務ですよ、今発表して下さい。直ちに発表してもらわなければ困る。審議できないじゃないか。当然ですよ。
  53. 重光葵

    ○重光国務大臣 それは委員として発表すべきものだということを御発言になるのは自由です。どうぞ御発言はして下さい。しかしながらそれにその通りだと申し上げかねても、これはこちらの自由であります。(「義務があると育っているんだ」と呼ぶ者あり)私は義務がないと思います。そこで私はそういう御意見をもう一ぺんよく相談をしてみますことは、少しも差しつかえはございません。これは実は外務省だけの問題じゃございません。それは内閣全部の各方面の何によって決定したことでございますから、よく相談をして申し上げたいと思います。
  54. 穗積七郎

    穗積委員 それでは私は国会議員の資格において、そういう内規を発表することを政府に要求いたします。質問なしに要求いたします。従ってもし発表できないならば、発表できない正当な理由を付して文書をもって一つお答えをしていただきたい。そして続いてその他のことについてお尋ねいたしますが、今あなたが言われた十三条第一項第五号では、制限が大きく行われております。著しく国の利益を害する、または公安に支障を来たす、それからもう一つ大きな制限は、そのことを認めるに足る相当な理由がある、客観的なる理由がなければならない。単なる主観的な、しかもランダムな判断ではいけないのであって、客観的な理由がなければいけないということがちゃんと明記してある。それに今度おきめになったというところのさっきの三つの条件というものは、非常にこれはばく然とした政治的な理由によるものであって、これは明らかに逸脱するものだと思うのです。そういうことで一体どうして正当なる職権を行うことができましょうか。もう一ぺんあなたのお考えを聞きたい。さらにもう一点申し上げておくならば、各省が持っております、外務省だけではなくて行政府が持っております許可事項に対する内規というものがあります。そのときに発表したり、または発表しなくても、利害関係者が一体どういう基準によってやっておられるかというならば、大体の場合において、われわれの経験によるならば、各省とも快く一応こういう客観的な基準によって公平にやっておりますという、その内規はお隠しにならないで示すのが通例になっておる。まして最も民主的でなければならない外務省が、そのきめた問題を発表できない。そうしてまたその内規たるや、今おっしゃるところによれば、非常に十三条三項五号の規定を逸脱した、法の精神を無視したようなことをおきめになっておられる。これは明らかに逸脱じゃありませんか。この五号をもう一ぺんよく読んでもらいたい。「著しく」という形容詞がついております。「認めるに足りる相当の理由」がなければならない。客観的なだれも納得できるような相当の理由がなければならぬということが書いてある。主観的にまかされてはおりません。どうですか。
  55. 重光葵

    ○重光国務大臣 この解釈問題は、私はよほど差異があるように感じます。しかしお話の点は御意見が多いのでありますから、その御意見を十分に参考にしなければならぬと私は思います。しかしここに書いてあることを逸脱しているのだという結論は、私はどうしても認めるわけには参りません。そう御認定になることは、少し行き過ぎじゃないかと思います。(「逸脱してないというなら出したらいいじゃないか」「そんなに確信があるなら出したらいいじゃないか」と呼ぶ者あり)確信かあっても出さなければならぬということはない。そんな理屈がどこにありますか。(「国会に出すのは義務ですよ」と呼ぶ者あり)そんな横っちょの議論をしたってしょうがない。今穂積君は出すことを要求する、こう言われている。要求だから、私も相談をして御返事をしましょう、こう言っている。
  56. 松本七郎

    松本(七)委員 それはそういう資料がなくて、逸脱しているとかしていないとかやってみたって何にもなりゃしない。だから内規をすみやかにここに提出してもらうように委員長から要求して下さい。動議として出すから、採決して下さい。
  57. 前尾繁三郎

    前尾委員長 ちょっと理事会を開いててやりましょう。暫時休憩します。    午後零時三十八分休憩します。      ――――◇―――――    午後零時五十三分開議
  58. 前尾繁三郎

    前尾委員長 休憩前に引き続き再開いたします。
  59. 穗積七郎

    穗積委員 先ほどの旅券制限の問題については非常に重要でございますから、そこで同僚の松本委員から、委員会として政府に決定した内規の発表を要求する動議を出されたわけでございますが、私の希望では、私は先ほど外務大臣に資料をみずから進んで発表されることを要求いたしておきました。従って外務大臣においては、各閣僚の了解事項になっておるから、今日ただいますぐ発表はできないにいたしましても、相談をした上で、すみやかに発表するように御答弁をいただくならば、この動議を撤回していただきたい、そういう取扱いにした方が私は政府と国会との運営上、好ましいと思うのですが大臣の御所見を伺っておきたいと思うのです。
  60. 重光葵

    ○重光国務大臣 御趣旨のあるところは私よく了解いたしましたから、御趣旨にできるだけ沿うように努力をいたしてみましょう、そしてほかにも相談をいたしてみることにいたします。
  61. 松本七郎

    松本(七)委員 ただいまの大臣の御答弁、多少物足りないものがございますけれども、できるだけわれわれの希望に沿うように提出していただけるものと期待いたしまして、先ほどの動議は撤回いたします。
  62. 穗積七郎

    穗積委員 実は私、きょう大きな問題を五つやって、ことごとく大臣からの説明が不十分で納得いかない。しかしきょうは他の委員大臣に対する質問もありますから、私は最後に一点だけ質問して、他の問題については次の機会^に留保いたしておきたいと思います。それは実は日ソ漁業交渉に関することでございますが、大体向う側の態度は明らかになっておるわけです。それらについても実はお尋ねしたいが、きょうはごく具体的な問題についてのみ、一点お尋ねして、他の問題は次に譲りたいと思います。  それはちょうど高碕農林大臣代理もお見えになりましたから、両大臣にお尋ねいたしますが、実は日本側では漁業問題に対する交渉にモスクワで入ったならば、協定が妥結しないでも五月十五日以後の操業制限については実行しない、むしろ緩和したままでいくだろうという希望を持っておられるようだが、最近の外電その他の報道によりますと、これは必ずしも政府側の希望通りにはいくまいと思う。そこでそれに対する基本方針も伺いたいが、ここで一点伺っておきたいことは、日ソ出漁企業組合というものが最近できて、責任者は植田一信という人ですが、この人に対してソビエト政府漁業大臣からドムニッキー氏を通じて、正式に出漁許可の許可証が渡された事実があるようでございます。そうなるとこれを日本政府としては一体どういうふうにお取り扱いになるつもりであるのか、向うの許可があったならばこの企業組合に限らず、他の独航船その他に対して向うの条件をつけた出漁許可証が来たとするならば、それで自由に出漁を許すのか、あるいはソビエト政府側からの許可証があっただけではいけないので、日本政府としてはたとい向う側の許可証があったとしても、これを出漁せしめない方針であるのかどうか、その方針を一つ伺っておきたい。これは両大臣から御答弁をいただきたいと思います。
  63. 重光葵

    ○重光国務大臣 日本漁船の出漁いかんは、日本側において決定するのが筋だと思います。そこで許可証があるような場合には、これはむろん参考にはなりますけれども、それがすべての条件を満たしたものだというわけにはいくまいと考えます。
  64. 穗積七郎

    穗積委員 高碕大臣はどうでしょうか。今度の許可証に対して、それに日本政府として許可をなさるつもりでございますか。日ソ出漁企業組合に対する許可証のことです。
  65. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 現在御承知のごとくソ連側は魚族の繁殖保護ということから、なるべく漁獲高を制限しよう、こういうことを希望されていることは事実であります。これがために農林大臣はモスクワに参りまして、その交渉をしている最中であります。従いまして現在許可している者すらも、どういう方法で制限をするかということを当然考えなければならぬ点だと思っておりますときに、日本国民が、かりにソ連から許可があったからといって、今日以上に漁船の数をふやすということにつきましては、現在折衝中の段階におきましては許可しない方針で進みたいと存じます。
  66. 前尾繁三郎

  67. 岡田春夫

    岡田委員 私も旅券の問題について伺いたいのですが、その前にきわめて緊急の問題がありますので 一つぜひ大臣にお伺いいたしたいと思います。それはきょうの午前までの状態では、日本のある某所に入った電報によりますと、河野農林大臣はパリを出発いたしておりません。今までの予定によりますと、農林大臣はきょうまたはあしたのうちに、パリからモスクワに到着しなければならないにもかかわらず、いまだ出発しておらないということが電報で入っております。しかもこのように出発しておらないという事情については、二十二日にマリク全権から西大使に対して何らかの申し入れが行われて、これに対して西大使側からまたマリク全権に対しての往復折衝が行われた。この問題で河野政府代表は日本側にこの点についての詳細の照会を行なって、その返電がいまだ行われておらないために、出発を見合せなければならないという事態になっていると私は聞いております。しかもこの点については、一部の話によると、重光外務大臣がこの回答を延期さしているというような点も伝わっているのであります。二十二日マリク全権からの申し入れ、あるいは今日まで河野政府代表が出発できなかったという事情、こういう点について詳細御答弁をいただきたいと思います。
  68. 重光葵

    ○重光国務大臣 今日までのところ河野代表が旅行を延期するという事情はございません。ソ連との間においていろいろなことについて往復はございます。その往復のうちにはソ連の意向を十分に明確ならしめることの必要であるものもございます。往復をいたしておりますが、それは、漁業の問題の交渉はモスクワでやることになっておるのでありますから、何ら旅行を延期する状態になっておらないことを申し上げます。
  69. 岡田春夫

    岡田委員 そうすると、マリク全権を通じて日本側に対してそういう申し入れがあったという事実はお認めになるのですかどうなのですか。それから時間がありませんからまとめて伺いますが第二の点は、河野代表からこの点について付らかの請訓を求めるような向うからの紹会があったはずでありますが、この事実があったのかどうか、この点を伺いたいと思います。
  70. 重光葵

    ○重光国務大臣 往復はしょっちゅうやっております。やっておりますが、どういうことがいつ何どきあったということは、私は今申し上げる自由を持ちません。
  71. 岡田春夫

    岡田委員 しかし河野政府代表が出発できないということがその理由であるとするならば、日本側として何らかの態度を明らかにしなければならないと思うわけです。漁業交渉は一日も早く進めなければならない。それにもかかわらず、日本の外務省の態度、日本政府の態度がきまっておらないために、政府代表がハリにおりながらも出発できないという事情があるなら、これは明らかにあなたの責任だと思う。こういうような事情があるのではありませんかということを私は伺っているわけです。この点が第一点。  第二の点は、マリク全権からの申し入れの内容について、今まで相当この委員会においてもいろいろあなたから御答弁をいただいておりますので、差しつかえない限りにおいて御答弁をいただきたいと思います。
  72. 重光葵

    ○重光国務大臣 先ほど申し上げました通りに、そういう旅行を延期しなければならぬ事由がないと申し上げております。そういう状況でございます。  それからどういう申し入れがあったか、これはいろいろ報道はありましょうが、今私の申すことは、いろいろ往復をしておることは事実でございます、事実でございますが、その内容を申し上げる自由を持たない、こうお答えをいたしておるわけでございます。この漁業交渉はなるべく早く開いて、そして満足な結果に達するように努力をしたいということはその通りであります。なるべく早くやらなければなりません。
  73. 岡田春夫

    岡田委員 そこでこれは重大だから伺っておくのですが、モスクワで会談をやるということは、両国の間で合意に達したのでございましょう。この点が第一点。それから第二の点は、モスクワにおいて会議を行うという合意に達したならば、その後においてソビエト側から何らかの新たなる提案があったのではありませんかということ、二十二日のマリク全権を通じての日本に対する申し入れというのは、新たなる提案ではないのか、その点を伺っているのです。
  74. 重光葵

    ○重光国務大臣 そのような一般的なことについてはむろんお話もできます……(岡田委員「新たな提案と違いますか。」と呼ぶ)それは漁業交渉をやりたいと私が説明した通りに、魚族保護の問題、難破船の問題について、つまり漁業の制限に関する問題について話し合いをしたいということを申し入れて、向うの同意を得たのであります。そのために向うの意見をもいれてモスクワで交渉をやるということで、まさに始まらんとしているわけでございます。そしてそういうことに進めていくのについて、何も故障はございませんということをはっきり申し上げております。
  75. 岡田春夫

    岡田委員 もう一点だけこの問題について伺っておきますが、日本の外務省、本省側としては、河野代表がきょう立てないということ、かような支障を起すようなことについては、そういう事情はないのだというお話ですが、河野代表が現実にきょう出発できなかったとするならば、河野代表側の何らかの事情に基いて出発しないのだ、出発しないのは河野代表が悪いのだ、こういうようにあなたは御答弁になったというように解釈してもよろしいかどうか伺いたい。
  76. 重光葵

    ○重光国務大臣 そういうことはだれの責任であるとかなんとかいうことは、私は起らぬと思う。それは最善を尽すためにしょっちゅう打ち合せは今申し上げたようにいたしております。そして最善を尽してなるべく早く着けるように日本側は努力し、またソビエト側からもそれを阻止するような何もなかった、旅券の査証も適当にできる、便宜も与えてくれているのでありますから、行くだろう、こういうわけです。一日、二日の延期は何かの故障であるかもしれませんけれども、それは別に全体に少しも影響するようなものではないということを私は申し上げているのです。
  77. 岡田春夫

    岡田委員 私の聞いているのは違うのです。私のさっきから伺っていることは、ハリにおいて請訓を待つために出発できないでいるというようにわれわれの方に情報が入っている。向うから請訓してきたのだが、それに対して回答しないために出発できないでいる。そういう事情があるのではないかということを伺っているのです。そういう事情がないというならない、そういう事情があるならあるとおっしゃればいいので、その点を明らかにしてくれということをさっきから言っているのです。
  78. 重光葵

    ○重光国務大臣 それは先ほどから申し上げている通りに、そういう事情はないということを申し上げているわけです。
  79. 岡田春夫

    岡田委員 それではこの問題はまたあとでやることにしまして、林長官も見えましたから、旅券法の問題について長官に伺いたいと思います。  先ほど穗積委員と外務大臣との間でいろいろ論議がかわされましたが、その中で非常に問題になりました点は、旅券法の今度きめられた内規を発表するのかどうかという点が問題になったわけですが、旅券法の十三条第一項の五号というのは、外務大臣が旅券の発給制限する場合の基準になっていると思う。これは法律問題としてあなたに伺うのですが、基準というものがきまっている。ところがこの基準を逸脱する、あるいは反するような内規が行政上の措置としてきめられたような場合においては、これは明らかに法律違反であろうと考えるのだが、この原則的な問題から伺って参りたいと思います。
  80. 林修三

    ○林(修)政府委員 ただいまの御質問でございますが、旅券法十三条第一項には外務大臣が旅券の発給を拒否できる場合が列記してあるわけであります。これが今おっしゃったように、外務大臣がそういう行政行為をし得る基準になっております。外務大臣の行政処分はもちろんこの法律に従って行われるべきものでありまして、かりに内部において取扱い基準をきめても、そういうものはそういう法律の範囲を逸脱すべきものでないということは、これはおっしゃる通り当然のことだと思います。ただ具体的にある行政処分が法律違反になるかどうかは、行政処分が行われた場合に、それが法律に反し出て行われたかどうか、これによってある行政処分ができるかどうかが問題になると思います。
  81. 前尾繁三郎

    前尾委員長 岡田君、外務大臣に対する質問を早くやって下さい。長官はあとに残ってもらうから……。
  82. 岡田春夫

    岡田委員 それじゃ大臣に伺いましょう。大臣は先ほど、内規というものはきまったというお話ですが、これはいつきまったのですか。そしてきまって以降外務省においては、その内規に基いて現在渡航問題を処理されているのかどうか、こういう点を伺いたいと思います。
  83. 重光葵

    ○重光国務大臣 大よその基準をきめまして、その基準のきまった以後は、それによってやっておるわけであります。日にちははっきりしませんが、その基準のきまったのはごく最近のことでございます。
  84. 岡田春夫

    岡田委員 とすると、現在は実施されているわけですね。
  85. 重光葵

    ○重光国務大臣 その標準によって実際は行おう、こういうことであります。
  86. 岡田春夫

    岡田委員 実施されているものとするならば、これは法律問題に関連するから、大臣にもう少しここにおってもらわなければいけないと私は言っているのですが、四民の権利を制限するような規定がもしあったとするならば、そういうものを今内規としてきめたのだ、こういうお寿なのだが、これは私は明らかに行政権の乱用になると思う。ということは、この旅券法ができたいきさつから考えるならば、旅券法ができるときにも林長官は、その当時法務府におられたはずだ。そうですね。おられて、そしてあなたはこれについていろいろ答弁をしている。答弁の内容については、速記録にはっきり出ている。この解釈で私はいくべきだと思う。旅券法が変らない限りにおいては……。林長官に伺いたいのだが、あなたがあの当時において答弁された解釈と違う解釈が旅券法について行われるということであるならば、これは法律の改正をやるなら別ですが、あの法律については、当然当時の解釈は現在も生きていると考えるのだが、この点は林長官はどのようにお考えになりますか。
  87. 林修三

    ○林(修)政府委員 旅券法十三条第一項第五号につきましては、この旅券法制定の際にいろいろ御議論がございました。私もその当時法務府の法制意見第二局長をやっておりまして、ここで答弁したことがございます。そのとき答弁いたしましたことは、実は速記録をお読みになったそうでございますが、その際の私の速記録全体をお読み下さるならばわかると思いますが、当時黒田議員からいろいろの例をあげての御質問でございましたから、私も多少具体的な例をあげてお答えをしておるわけでございまして、私のお答えした趣旨は、あそこであげました例が、この全部に当るということは申し上げておらないわけでございます。法律にはあくまで著しくかつ直接に日本国の利益または公安を害する行為に該当するおそれがある場合には、旅券の発給を拒否することができると書いてあります。この法律の規定の文言に従って解釈せらるべきものだと思います。私が特例としてあげなかったことであっても、この法律の条文に明らかに該当する事実があれば、もちろんこれはこの法律の条文に従って、旅券の発給を拒否することができる場合もある、抽象的にはこういうことが言えると思います。
  88. 岡田春夫

    岡田委員 大臣大へんお急ぎのようでありますから、それでは具体的に伺いますが、先ほどもいろいろ御答弁の中であったように、メーデーのために渡航を希望している者がある。あるいは青年団の関係で渡航を希望している者もおるが、こういう人たちは現在どのように扱われておりますか。特にメーデーの問題は、来月の一日に行われるわけですから、旅券の発給が今日なければ、もはや行けないことになってしまうわけです。これをどのように処理をされたのか、その点が第一点。第二の点は、もしそれに対して旅券を発給しない、全体に対して発給しないという事実がおありになるならば、どういう理由で発給されないのか、その理由をはっきりとお答えいただきたい。内規の何条に該当するという点まで伺えるならなおけっこうでありますが、どういう理由でこれは発給されないのか、この点を伺っておきたい。
  89. 重光葵

    ○重光国務大臣 そのメーデーに行く人とかその他のことは、今その担当者によって検討中でございます。私のところに今その判断を打ち込んではおりませんが、検討中でございます。それによってはっきりとその決定が行われることだと、こう思っております。
  90. 岡田春夫

    岡田委員 あなたの方で検討しておられるということならば、渡航の目的は、メーデーに出たいという一定の事実を目的として渡航の申請が出ている。しかも今日は二十五日です。あと五日しかない。だからあと五日間に、この渡航に対して発給するのかしないのか、こういう点をおきめになることができるのですかどうですか。少くとも一日までに間に合うならば、国民の権利であるところの渡航の自由を要求したことに対して、政府はその権利を保障したことになる。しかし審議中であるとか研究中であるとかいう口実のもとに、そういう名目に立って旅券の発給を、一日に到着しないような形において出しても、これは明らかに国民の権利を制限する結果になると思う。この点からいっても、渡航の自由というものを政府自身が制限し、違憲性を持っている行為を行なっていると私は考える。それから、もし日にちを延ばしておいてこれを発給しないとするならば、これは明らかに渡航の自由である国民の権利を外務省が制限することになるのだが、大体いつごろきめられるのか、そして渡航の発給をしない、こういうお考えであるのかどうであるか、その点について伺っておきたいと思います。
  91. 重光葵

    ○重光国務大臣 今申し上げる通りそれを今検討しているのです。
  92. 岡田春夫

    岡田委員 ですから、それが間に合うのですか間に合わないのですか。
  93. 重光葵

    ○重光国務大臣 間に合わせるようにきるだけやっている、こういうわけであります。そうでありますから、それ以上に今はっきり申し上げるわけにはいきませんが、できるだけ早くやろうとして検討しているのであります。
  94. 岡田春夫

    岡田委員 あなたはさっき穗積委員質問に答えて、今度内規をきめるのについてはいろいろな判断、特に政治的な判断に基いて、たとえば、今国交の回復を交渉中の国に対して、勝手にやるのは困るというようなことを考えておるのだとか、それから相手の国に、明らかに政治的に利用されるようなことについては、発給は考えなければならないのだとか、こういう点を御答弁になったが、これは事実ですね。そういうことが内規の内容の中に、一つでも二つでも入っておりますか。重光国務大臣それはその個々の場合において、そういう頭をもってこれを判断しようと思っております。岡田委員 私の伺っているのはそうじゃない。たとえば例をあげて言いましょう。政治的に相手の国に利用されるというようなことを、あなた自身が切断できるような場合には、発給を制限するという、そういう意味のことが、内規に書いてありますのかどうかということを聞いているのです。
  95. 重光葵

    ○重光国務大臣 それは私ははっきり記憶しませんが、そういうことははっきり書いてないと思います。ないと思いますが、私はそういうことは、十三条の第一項五号によって見ても、はっきりその通りにしたらいいと思います。ほんとうに日本の国の利益や公安を害するおそれがあるものということに判断をするかしないかが問題でありますから、それによってきめたい、こういうわけであります。
  96. 岡田春夫

    岡田委員 私の言っているのは、たとえばそういう公安を害するような行為ということの中に、あなたが先ほど言われたように、外交交渉をしている間に、どんどんやってじゃまになったら困るとか、それから政治的に利用されるというようなことで行くということは困るとか、そういうことが今の五号の行為、公安を害する、利益を害するという行為の中に入っているとあなたはお考えになるかどうかということを伺っているのですよ。
  97. 重光葵

    ○重光国務大臣 私は先ほど申し上げた通りに、そういうことが入り得ることがあると思います。あると思いますが、しかしそれはその個々の場合について、慎重に検討しなければならぬ問題だと考えております。
  98. 松本七郎

    松本(七)委員 基準の問題はいずれ内規を発表していただくかどうか、もし発表していただくならそれによって論議しなければならぬと思いますが、それはあとへ譲りまして、今緊急なのがありますからそれを一つだけ伺っておきたい。今懸案になっておる大阪あるいは千葉、三重、そういうところはだいぶ前からの問題で、しかもみんな準備をしてずいぶん長くとめられたわけですね。ですから少くともこれくらいは、今度新たに作った基準外として、一応全部旅券を発行されるのが至当じゃないかと私は思うのですが、そういう特別な措置をこれらについておとりになる御意思はございませんでしょうか。
  99. 重光葵

    ○重光国務大臣 それは検討すべき機関において十分検討したらよかろうと思っております。そうであるから特別に今この席でそれはよろしいのだと私から申し上げるわけには参りません。
  100. 松本七郎

    松本(七)委員 その特別の機関というのはどこですか。
  101. 重光葵

    ○重光国務大臣 政府部内において渡航の問題を考慮する機関でございます。今では大体次官の会議でこれを決定いたしております。
  102. 松本七郎

    松本(七)委員 それからもう一つ緊急の問題は、さっき穂積さんですか岡田さんですかが指摘しておりました河野さんの問題です。これについて私どもの聞いたところによりますと、何か元の代表部のドミニッキー氏を本国に呼び返して、そのかわり漁業の専門家を日本に置きたい、その同意を求めてきた、その返事によって河野さんの交渉が始まるかどうかがきまるというふうに察せられる筋があるのです。そういう問題が起っておるのでしょうか。
  103. 重光葵

    ○重光国務大臣 そういう問題についていろいろ報道があるようでございます。あるようでございますが、どういう問題が今起っておるかというその内容については、私はここで申し上げられないと先ほどから申しております。しかし一般的なことは申し上げられます。漁業問題は日ソの合意によってモスクワでやることになっております。そこでわが方の代表も今まさにモスクワに到着せんとしておるのでありますから、その筋でこれは進めてやるわけであります。東京で漁業の問題を交渉することはないわけでございます。
  104. 岡田春夫

    岡田委員 高碕さんも大へんお待ちのようですけれども、林長官に今の問題でもう少し聞いておきたいので、高碕さんにはもう少しお待ちをいただきたいと思います。  先ほどあなたは重光外務大臣に入れ知恵をしておったようだが、その入れ知恵をしている話が一つだけ私聞えたのです。それは何かというと、十三条の五号、あの基準に基いて、これは何らかのいわゆる犯罪行為を犯さないような事項についても、たとえば――もっと別な言葉で言いましょう。さっき重光外務大臣の言った言葉の通りに言いましょう。というのは、たとえば相手の国で政治的にこれを利用する危険があるとか、あるいはこれが渡航することによって宣伝の材料にされるとか、国交の関係でこれを害するというような危険があるという場合には、十三条の五号に基いて旅券の発給を制限し得ると外務大臣は答弁したのだが、こういうように答弁するようにあなたは入れ知恵をしておったのだが、その解釈は間違いありませんかどうですか。
  105. 林修三

    ○林(修)政府委員 この第十三条の第一項第五号は今御指摘にあったように「外務大臣において、著しく且つ直接に日本国の利益又は公安を害する行為を行う虞があると認めるに足りる相当の理由がある者」こう書いてございます。従いまして明らかにその人が渡航することによって、日本国の利益または公安を害するような事態の発生が予期される、こういう場合にはこの第五号に当るだろう、これは文字通り解釈いたしましてその通りになるわけであります。この前私が二十六年でございましたか、御答弁したときには、犯罪行為的なもの、あるいは犯罪行為に準ずるものをあげての例として御答弁いたしておりますが、普通の場合にはもちろんこういうことが代表的なことだと考えます。しかしながらやはり渡航先の外国国内情勢あるいは国際的情勢によって、その渡航先と両方の相関関係におきまして、それ以外の行為におきましても、ただいま御指摘のあったような行為が日本国の利益を著しく直接に害するというふうに認められる場合もあり得ると思います。側々の一ケースによってはあり得ると思います。あり得る場合にはこの法律の規定を適用することも違法ではない、かように考えております。
  106. 岡田春夫

    岡田委員 こういう点を一々ほじくり出して伺うのはどうかと思いますが、原則的な問題から入っていかないとわからないと思いますが、日本は法治国の建前として罪刑法定主義の原則に立っておりますね。法律があって、その法律を犯すならば、これは罰せられる、こういう法律の趣旨の通りにならない限りにおいては、この人の身分は保障されておる。こういう制限をしておるのであるからこそお前に対しては、たとえば岡田なら岡田に対しては身分上の制限を加える、こういうような法律上の保障があって日本の国民は生活しておるわけです。そういう点は当りまえのことです。そういう法律上の規定外のことで国の利益を害する行為というのが何かあるのですか。
  107. 林修三

    ○林(修)政府委員 国の利益あるいは公安を害する行為はいろいろのタイプが予想されます。そのうちの、特別にそれが国の公益を害すると思われる場合には、これは犯罪行為として処罰されるわけであります。しかし犯罪行為として処罰されない行為がすべて国の利益に反しないかというと、必ずしも逆は成立しないと思います。国の利益を与する行為であっても、その中で特別に犯罪として処罰すべき価値判断に当るものは犯罪として処罰できますが、それ以外の行為でもいろいろの関係において国の利益に反する行為があり得ると思うわけであります。この渡航の問題につきましては、ある者が外国に渡航することを認めるということに対しての制限として、国の利益に反するということが許されるかどうかということでございます。これはやはり外国との関係においては、国の利益ということが公共の福祉という重大なる理由がある。そういうわけで、ある行為が国の利益に反する場合には渡航の制限ができる。しかしそれを国内において犯罪として処罰するかどうか、これはまた別個の観点から行わるべきだ、かように考えます。
  108. 岡田春夫

    岡田委員 法制局長官ともあろう人がそういうことを言うなら、私は伺いたいと思うのですが、日本国の利益または公安を害する行為、こういう行為というものは――日本の利益を害する、公安を害する行為については法律できめられていなければならない。こういう行為については、国民にとってはこれが利益になるのだとか不利益になるのだとかいうことがわからない場合がたくさんあるのではないですか。善意の国民は、公安を害するということを知らないで、そういう行為をすることがたくさんあるのではありませんか。そういう点は政府が勝手に判断して、これは行為である、それでいいのだというお考えですか、そうすると法律は全部否定して、法律にないことでも勝手に政府の判断で、これは公安を害するのだ、こう言えるのだという解釈をあなたはされるというのですか。それならそれでいい。それならそうとおっしゃい。そうでないならそうでないとおっしゃい。
  109. 林修三

    ○林(修)政府委員 旅券法には、明らかに「日本国の利益又は公安を害する行為を行う虞」とあります。この解釈の問題でございますが、これが日本国内において犯罪行為として処罰されるものにしか当らないということには、当然私はならないと思うわけであります。これはおのおの法律の立法趣旨から判断して考えるべきことでございまして、ここにおいて、日本国の利益または公安を害する行為については旅券の発給を制限することが、やはり日本全体の公共の福祉上必要なことであり、やむを得ないことである、こういう判断で法律の規定ができておるものと思います。この法律の規定は、この文字によって解釈さるべきものであります。もちろん一政府当局が勝手に判断をすべきものではございません。この文字に当るかどうか、客観的、合理的な理由があって初めてそれは判断さるべきものでございます。しかし同時にその行為が国内において犯罪に当るかどうかということとは、必ずしも直接には結びついておらないということを申し上げたわけであります。
  110. 岡田春夫

    岡田委員 それではあなたが二十六年に言っておられたことはうそなわけですか。具体的な例をあげて申し上げますれば、その当時の法務総裁は大橋法務総裁だった。あなたもそのときに一緒におって答弁を聞いておる。そのときの答弁にこういうことを言っています。聞いておいて下さい。そして大橋法務総裁が言ったことに対して、あなたは別に反論も出しておらない。同じ趣旨のことを言っておる。「「著しく且つ直接に日本国の利益又は公安を害する行為」でございますから、これは原則としては犯罪になるものに限るだろうと思います。」という大橋法務総裁の答弁に対して、黒田委員は、「わが国の法律で犯罪行為と定められておる行為の中の何らかの行為に該当するものでなければならぬ。このことも議論のないところと思いますが、念のために簡単にお答え願います。」大橋法務大臣は「そういうふうに考えます。」ここまで言っておる。いいですか。それに対してあなたはこう言っているじゃないか。このように厳重な規定、すなわち「著しく」とか「直接に」とか「相当」とかいう言葉を使ったのは、「立法技術的には相当具体的にここに書いたつもりでございまして、これだけの条件があれば、やはり相当判断は慎重を期せられます」ここまで言っておる。つまりこのような趣旨で作ったのであるから、国民の権利というものを保障するために、できるだけ慎重にやらなければならないし、この制限は厳重な――という意味は狭いという意味ですが、そういう意味で判断すべきものである。「従来よりも人権の保障をはっきりさせる意味でこのように書いたのでございます。」とまで言っておる。それなのに、今になってそういう解釈とは違って、その判断は別個にできるのだとか適当にやれるのだとか言われる。それならば、法律に制限されておらないような国を害するような行為があるなら、どういう行為を言うのですか。犯罪ばかりじゃありませんよ。国を害するあるいは国の利益に反する行為については、やってはいけないということが法律によってきめられているはずです。そうでなければ国民は安心して行動ができません。どこまでやったら考案を害するのだか、どこまでやったら利益を害するのだかわからぬじゃありませんか。そういう国を害するような行為については、法律で犯罪として懲役何年になるとかなんとかいうことを書かないにしても、法律でこういうことをしてはいけませんということをきめてあるのがいわゆる法治国の原則じゃありませんか。そうでない、法律できめておらないような行為があるということをあなたがお認めになるなら、一体だれがそういう行為は国、害するものだという判断をするのですか。
  111. 林修三

    ○林(修)政府委員 一般的に申しまして、国内問題といたしまして国の公安を害するような行為につきましては、おそらく法律で規制をするわけで、それに基いて犯罪として処罰する場合が多いと思います。しかしこの場合は、法律の規定はここに文字通り書いてございます通り、日本円の利益または公安を害する行為を行うおそれがあるかどうか、これはやはり旅券を発給するという問題と関連してのものでございまして、その者が外国に渡航した場合においてどういう行為をするであろうか、その行為が果して日本の国の利益に反するようなことになるかどうかということを、これは絶対に排除しておるということにはならないわけです。この文字に客観的に合理的に当る範囲においては、私はそういう場合があり得るということを申し上げたわけであります。この旅券法の規定は昔の旅券規則のように政府に勝手な判断を与えておるものではございません。当然この法律の制約によって合理的に客観的に運用すべきものでありまして、そのことは間違いないわけでございます。それはそれといたしましても、この第五号の文字に当る場合においてはこれは制限できる、こういうことは法律の解釈として言わざるを得ない。当るか当らないかという判断が問題になるわけでありますが、もちろんここでは外務大臣が法務大臣と協議してきめることになっておりまして、その外務大臣の行為が法律に違反して行われるかどうかということについては、もちろん法律に違反して行われ、その判断が著しく公正を欠いて問題があれば、それを是正する方法もあるわけであります。もちろん外務大臣の判断は合理的に客観的に判断されるべきものと、かように考えます。
  112. 岡田春夫

    岡田委員 大へんお急ぎのようですから簡単に伺いますが、それでは法律の定めがある以外の行為で、日本国の利益または公安を害するような行為があるのか、いわゆる法の解釈として伺っておるのですが、法治国の日本でそういう行為がありますか、あるなら具体的に一つの例でけっこうですから、その例をお話し下さい。この十三条五号では、「日本国の利益又は公安を害する行為」と特にこれは限定しておる。「著しく且つ直接に」という制限を加えておる。とすれば、ここに書かれておる行為というものは、明らかに何らかの法律上の規定があるような行為でなければ、国民はそんなことを自分で勝手に判断できるなんといったって通りません。直接関係がある、著しく関係がある行為といっておるから、何らかのいわゆる刑司法令に該当するものであるといわざるを得ないじゃありませんか。そうじゃないと解釈されるのですか。
  113. 林修三

    ○林(修)政府委員 先ほども申し上げました通りに、刑罰法令の適用のある行為は、もちろんこれに該当する場合が多かろうと思います。しかし必ずしもそれに限定さるべきものじゃない。この文字で解釈し得る範囲において、著しくということはもちろん非常に顕著であるということであります。直接ということはその人の行為によって直接にそういうことがもたらされる。そういうことが予測される場合だと思います。そういうようなおそれでありますから、そういうことが予測されるということが入る。それから利益または公安を害する行為、これはどういうものがあるかといわれると、これはまたここで申し上げますとそれだけだというふうにとられても困ると思いますが、例を申し上げろというお話でございます。これは犯罪行為に当らないような場合でも、たとえば外国に行って外国だけの宣伝日本に持ち込むということが予測される。こういうことが日本国の利益に反する場合があり得るだろう、しかしそれは必ずしも日本国内において犯罪行為として処罰されないこともあり得ると思います。そういうことをさせるために渡航を認めるかどうかということは、これは渡航に対する制約ということの価値判断できめ得ることだ、それが旅券法できめてある、こういうことであります。
  114. 岡田春夫

    岡田委員 外国宣伝国内でするというのが国の害になるというのはだれが判断するのですか。そういうことを言うのは、憲法に許された思想の自由というものを侵害しておるということを、あなたは法制局長官としてお認めにならないのですか。
  115. 林修三

    ○林(修)政府委員 そういう思想の自由をこれは制限しておるものでも何でもございません。思想の自由は制限しておるわけではないのでございます。これは渡航の自由、渡航についての判断、日本国の全体の利益からいいか悪いかという判断をする余地をこの法律の規定は与えているもの、またそういうことが公共の福祉の必要の制約として認められておるもの、かように考えられて規定されておるものと思うのであります。先ほどから申し上げましたように、そういう制約を、外務大臣が主観的な考えによってもちろん制限できるものではありません。客観的、合理的に判断し得る基準を考えて、客観的、合理的に納得できる基準によって判断すべきものと思います。こういう趣旨は裁判所においても認められておることだと思います。
  116. 岡田春夫

    岡田委員 もう一点で終りますが、ますます重大になって参りました憲法の十九条の思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。こういう点はあなたははっきり知っておられると思うし、これは基本的な権利なのです。それをあなたは、外国に行っていろいろなことを聞いて、日本の国に帰ってきてそれを宣伝することはそ国の利益を評する行為に該当するのだという例として今あげられましたね。これは間違いなくあげられたですね。あげられたならあげられたとおっしゃい。それならそれでまた私は伺わなければならない。きょうでなくても具体的に伺いましょう。そしてそういう国の利益を害するものであるとあなたが判断した、これは憲法の十九条を侵害しても国の利益を害する行為であるとして、この十三条の五号に該当するものだということをあなたが考えるならば、それならそれでもよろしい。これは一体だれが判断する、国ではない、だれが判断する。
  117. 林修三

    ○林(修)政府委員 これは思想及び良心の自由を侵害しておる規定では決してないと思います。思想、良心の自由を制限する趣旨できめられたものでもないと存じておるのでございます。結局これはその渡航が外国との関係において日本の利益になるかならぬか、こういうことからの判断がここで与えられておる、かように考えるわけでございます。もちろん一党の利益とかなんとかいうことで判断すべきものでない。先ほど申し上げましたように、この法律の形式からいえば、外務大臣がそういうことを理由があるかどうかということを判断いたすわけでございますが、その判定が合理的客観的に行われなければならないということは、先ほどから何回も申し上げた通りであります。
  118. 岡田春夫

    岡田委員 私はそういう旅券法の問題を聞いておるのじゃないのです。いいですか、あなたは例として外国のものを見て日本に帰ってきて宣伝するというようなことは、国の利益または公安を害する行為に該当するのだということをさっき答弁しておるでしょう。速記録を見なさいよ。きょうは私もう松本君に譲らなければならないからやめますけれども、あなたはそういうふうに答弁しておるじゃないか。そのこと自体が憲法の十九条に該当するのじゃないかということを私は聞いておるのです。しかも害すると判断するのはだれか、政府が判断するということになれば、これはあなたは東条時代の思想ですよ。いわゆる思想の統制、ナチスの思想です。しかもそればかりではない。そうでないということをあなたはこの前二十六年の委員会で言っておるじゃないか。そのときの政府に従って、まるでそのときの御主人がだれでもいいようなパン助的なそういう答弁はやめてもらいたい。
  119. 林修三

    ○林(修)政府委員 先ほどから何回もお答えしております通りに、旅券法というものは、外国に渡航する場合の旅券の発給と関連しての問題でございます。もちろん外国の思想を日本宣伝することは、これは何ら良心の自由、思想の自由ということを制限されるべきことではありません。私はそういうことを言ったのではございません。そういうことは、外国に旅行することの関連においてそういうことに当る場合があるかもしれません。そういうことを育ったわけであります。国内においてそういうことを言うことは、公安を害する、あるいは利益を害することだということを言ったわけではございません。その点は御了承願いたいと思います。
  120. 岡田春夫

    岡田委員 それでは留保します。あとでまた長官に来てもらいます。
  121. 前尾繁三郎

  122. 松本七郎

    松本(七)委員 高碕長官にお伺いしたいのですが、時間が大へんおそくなりましたから要点だけかいつまんで申し上げます。  第一は、さっき穂積さんからちょっと指摘された問題ですが、日露漁業の問題について、先般日ソ出漁企業組合ですか、これが元ソ連代表部のチャソブニコフを通じて特別に出漁許可を受けた、しかしさっきの御答弁にもありましたように、このソ連代表部から直接許可があっても出漁は認めない方針だ、こういうことを長官は新聞にも発表されておるのですが、一体ソ連代表部から許可があったという事実については、確認をされたのでしょうかどうでしょうか。その点を一つお伺いしたい。
  123. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 ただいま取り調べております範囲におきましては、ソ連代表部から植田さんに対して許可があったということは確認いたしておりません。取調べ中でございます。
  124. 松本七郎

    松本(七)委員 そうするとどういうのでしょうか。その企業組合がそういうことを発表したについては、どういういきさつからそういう間違いが起っているのでしょうか。日ソ出漁企業組合というもののおい立ち、現在の状態等をおわかりでございましょうか。
  125. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 日ソ出漁企業組合という名前の代表者に植田何がしがなっておられるのですが、そういう組合はいまだかつて日本に存在していないのであります。まだ出願もされていないようであります。
  126. 松本七郎

    松本(七)委員 そうすると新聞によると、何かチャソブニコフを通じて、ソ連の漁業大臣の許可がきたように書いてありますが、その点はどういうふうにして政府としては調べられたのでしょうか。代表部に直接問い合せられて、チャソブニコフからそういう事実のないことを確かめられたのでしょうか。
  127. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 政府はまだこちらの代表部を認めておりませんから直接交渉いたしませんが、現在この問題のためにソ連に行かんとしておる河野代表に向いまして、こういううわさがあるが、これはほんとうかどうかということを調べてくれということを、今申し出ているわけなのでございます。
  128. 松本七郎

    松本(七)委員 そうすると元ソ連代表部について確かめられたのではなしに、河野さんを通じて本国に確かめられたということですか。そうするとこっちの代表部と企業組合との関係は確かめられる必要があるのではないでしょうか。それは何か方法はないでしょうか。
  129. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 それは現在におきましては、ソ連代表部に政府が直接当るということはありませんが、国内的にそういう組合があるかないかということを調べますと、これはないということがはっきりいたしております。従いまして、私は現在におきましては、ソ連代表部からはっきりそういう許可を出したということは、まだ認めていないわけなのでございます。
  130. 松本七郎

    松本(七)委員 その事実の確認がどうもまだはっきりしてないようですが、かりにさっきの御答弁のように、ソビエトの方は許可を与えたということになっても、日本としてはこれは許可できないという御方針ですね。それはどういう法的根拠で不許可ができるのでしょうか。相手がソビエトであって、そのソビエトの許可ということでは認められないという理由で、これを許可されないのでしょうか。それとも他の理由でもってこれを許可されないのか、その点伺いたい。
  131. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 北洋漁業につきまして、つまり沖合い漁業につきましては、政府は許可方針をとりまして、許可事業といたしているわけでございます。それが現在におきましてはソ連の申し出によりまして、ある程度の制限をしなければならぬという事実に撞着しているわけであります、これは時期的あるいは数量的あるいは漁場というものについて協議をするということのために、せっかくソ連の申し出によりまして日本の代表が行ったわけなのであります。そういう場合に、ある程度の制限をしなければならぬというときに、新しいものに対してこれを許可するということは、この交渉中においては慎まなければならぬ、こう考えております。そういう意味におきましてこれは許可しない方針であります。
  132. 松本七郎

    松本(七)委員 その出漁許可にもやはり大体の基準があると思うのです。その基準の中でそういったことを不許可の理由にすることができるでしょうか。それはどういうふうな点からできるのでしょうか。
  133. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 今後の問題につきましては、これは常識的に考えていろいろな理由がございましょうが、今の法律的な根拠につきましては政府委員からお答え申し上げます。
  134. 岡井正男

    ○岡井政府委員 大体本年の許可方針は、すでに国会でも論議されたときに、河野大臣あるいは政府委員からそれぞれお答え申し上げたのでございますが、べーリングの方面に対しては十二船団、それと西カムチャッカに対しては七船団を許可するという方針をもちまして、すでにそれに付属する独航船も総計約五百隻許可をするという運びに相なりまして、べーリングに対する十二船団分につきましては、すでに事務的に許可を終了いたしました。従いまして、先ほど高碕大臣からお答え申し上げましたように、日本国としては一定の基準方針のもとにすでに許可した上に、さらに別に許可をするというような余地もなく、国際情勢から見ましても、そういうような幅は毛頭ないということに相なります。母船の許可につきましては、技術的にあるいは従来の経験その他万般を考えまして、適当な船団を許可するし、独航船につきましては、水産庁が多年沿岸の保護のために、いわゆる底びき漁業を整理、転換せしむるために、そういうふうな該当の府県に対して従来の実績を勘東してそういうところへ許可をする。なお昨年からは知事許可の小さな鮭鱒漁業の整理、転換にもやはりそれを引き当てに許可をする、こういうふうな二つの目安を持ちまして実績府県に割り当てて、府県の推薦を待って適当に選考して許可をしてきた次第でございます。
  135. 松本七郎

    松本(七)委員 それからもう一つの問題は、アメリカ日本の綿製品の不買運動というか、禁止の問題です。この問題は外務省の方ではアリソン大使を通じたり、その他の方法でそれの不当を抗議の形で手を打っておるとは思いますけれども、私はそういうやり方だけでは、この問題は解決できないと思います。やはり日本経済の企画という面から、この問題は根本的に考えていかなければならないのではないか。現内閣が日米協力を建前にしておるのはこれはけっこうなことなのですけれども、名ばかり協力であって、ああいうやり方を改めさせないならば、これはほんとの協力はできないと思う。だいぶん前にアメリカ綿花輸入の問題では、ずいぶん各党で問題になったことがあります。そのときに、たしかあれは小坂善太郎さんだったと思うのですが、ラジオの討論会で、アメリカの要求をある程度聞かなければ綿花が買えないのだ、米綿が買えなくて日本が困るのだということを言われて、業界では物笑いになったことがある。これは米綿が買えないのではない、買わなければ買わないでほかから幾らも買うところはあるのです。むしろアメリカの方が日本から米綿を買ってもらいたい立場にあるのです。現に一億二千万ドル日本は買っておる。そういうような立場にありながら、その製品である綿製品だけを買わないとかなんとかいうのは、はなはだ不届き千万である。大統領自身が、こういうことでは日米間の関係が悪くなるといって警告を発しておるくらいです。けれども、大統領が幾ら警告を発しても、アメリカの業界というものはなかなかそう簡単に動くものではないと思う。ましてや日本が大使を通じて抗議をしてみても、向うの利害関係にメスをふるわなければ、改めさせることはなかなかむずかしいと思う。だから日本経済企画の面から考えましても、この際アメリカの綿を他の国の綿に切りかえるというようなことをやる必要があるのではなかろうか。単なる外交折衝という面ばかりではなしに、日本経済の自立という面から考えても、この点は今後真剣に取り組まなければならぬ問題になると思うのでありますが、この点についての企画庁長官としての御意見を伺っておきたい。
  136. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お説のごとく、アメリカ政府といたしましては、日本経済とのつながり上を考えて、こういうことをアメリカにおいてやることは不当であるということは相当認めておるわけであります。御承知のようにアメリカは各州ごとにそれぞれ発言力を持っておるわけでありまして、特にこの綿製品の消費の州におきましては、従前において三ドル近くで売れておったものが、日本製品が来て一ドルという安いものになってしまった、これは商売の非常な妨害になるということで動き出したわけでありますが、これをああいうふうな排斥の仕方をするということにつきましては、明らかに国際的の取引の信義を侵害するものと思います。よって政府自身はこれに対する抗議を申し込んでおるわけでありますが、これは何としてもその地方々々におきましては、こういう事実が今後起るものだということを覚悟してかからなければならぬ。それがためには、かりにテキサスというふうなああいう方面でこういうふうな排斥が起れば、これはお前の田の綿花を一年に一億二千万ドルも買ってやっておるじゃないか、そういうことをなぜするのだといえば、すぐ響きますが、不幸にして綿花の栽培地でない方面が、逐次ああいうふうな排斥運動をやっておるわけでありますから、この問題に対しては、政府におきましても、一面におきましてはアメリカに対して商取引土の信義を侵害するという点から抗議を申し込みますと同時に、国内製品におきましても、これにある程度の制限を加えまして、相当いい物を、そうして乱売しないという――各自がむやみに競争した結果だんだん値を安くしたということが、一つの理由になっておるようでありますから、そういうことのないように政府一つ方針をとっていきたい、こういう所存で進んでおるわけなのでありますが、大体今日におきましては綿花アメリカから日本が買うということは、バイヤーのマーケットになっておりますから、買ってやらないということになれば、これはアメリカに対する相当大きなショックになるだろう、こう存じますから、その点も一つは必要だと思いますが、今日はまだそこまでの話をする必要はない、こういうふうに考えております。
  137. 松本七郎

    松本(七)委員 いざとなったらその手を打つ覚悟は持っておられるのですか。
  138. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 対アメリカだけではありませんで、対外的の貿易を伸展いたしますにつきましては、今日はそういうことをどうしても実行しなければならぬ、お互いが共存共栄でやるということになれば、そういう問題は当然考慮していくべきものだと存じます。
  139. 前尾繁三郎

    前尾委員長 次会は公報をもってお知らせいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時五十八分散会