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1956-04-18 第24回国会 衆議院 外務委員会 第34号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年四月十八日(水曜日)     午後一時二十八分開議  出席委員    委員長 前尾繁三郎君    理事 石坂  繁君 理事 北澤 直吉君    理事 須磨彌吉郎君 理事 高岡 大輔君    理事 穗積 七郎君 理事 松本 七郎君       愛知 揆一君    植原悦二郎君       大橋 忠一君    高村 坂彦君       重政 誠之君    鈴木周次郎君       福永 一臣君    坊  秀男君       町村 金五君    松田竹千代君       山本 勝市君    渡邊 良夫君       田中織之進君    田中 稔男君       多賀谷真稔君    西村 力弥君       細迫 兼光君    森島 守人君       岡田 春夫君  出席国務大臣         外 務 大 臣 重光  葵君  出席政府委員         外務政務次官  森下 國雄君         外務省参事官  法眼 晋作君         外務事務官         (経済局長)  湯川 盛夫君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君         外務事務官         (移住局長)  矢口 麓藏君  委員外出席者         外務事務官         (移住局渡航課         長)      遠藤 又男君         専  門  員 佐藤 敏人君     ――――――――――――― 四月十八日  委員江崎真澄君、菊池義郎君、園田直君、並木  芳雄君、福田篤泰君、戸叶里子君及び福田昌子  君辞任につき、その補欠として鈴木周次郎君、  山本勝市君、坊秀男君、高村坂彦君町村金五  君、西村力弥君及び多賀谷真稔君が議長の指名  で委員に選任された。 同日  委員高村坂彦君鈴木周次郎君、坊秀男君、町  村金五君、山本勝市君、多賀谷真稔君及び、西  村力弥辞任につき、その補欠として並木芳雄  君、江崎真澄君、園田直君、福田篤泰君、菊池  義郎君、福田昌子君及び戸叶里子君が議長の指  名で委員に選任された。     ――――――――――――― 四月十七日  原水爆禁止措置に関する請願西村彰一君外三  名紹介)(第一九五七号)  同(原彪君外五名紹介)(第一九五八号)  同(福井順一紹介)(第一九六四号)  太平洋地域原水爆実験禁止に関する請願外二  十八件(淡谷悠藏君外三名紹介)(第一九八四  号)  同外一件(淡谷悠藏紹介)(第一九八五号) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国際金融公社への加盟について承認を求めるの  件(条約第一号)  国際情勢等に関する件     ―――――――――――――
  2. 前尾繁三郎

    前尾委員長 これより会議を開きます。  国際金融公社への加盟について承認を求めるの件を議題といたします。  本件につきましては昨日質疑を終了しておりますので、直ちに討論、採決に移ります。討論の通告があります。順次これを許します。松本七郎君。
  3. 松本七郎

    松本(七)委員 私は日本社会党を代表いたしまして、国際金融公社への加盟反対の意見を述べるものでございます。その理由を概略申し上げたいと思います。  私どもは特に今後低開発地域に対する経済的な援助をいわゆる先進国が行う場合には、できるだけ多くの国が平等の立場に立って、しかもその援助を受ける国の利益立場に立ってこれがなされなければならない。そういう建前から今後の経済協力ということを言えなければならぬと思うのでございますが、ただいま問題になっております国際金融公社協定文そのものからは、私どもがおそれるようなことはそうはっきり出ておらないのでございますけれども、実際のこの国際金融公社ができてからの運用ということを、今までのたとえば世界銀行運営の面などから考えてみますと、ここに相当憂慮すべきことが考えられるのでございます。近くは昨年のベンドン会議においては、日本みずからが十原則というものを掲げて、今後のアジアにおける協力体制という根本方針を打ち出しております。果してこの国際金融公社ができてから、このバンドンの精神にのっとった運営がなされるかどうか、そういう点を今から十分いろいろな問題と関連させて、私どもは検討する必要がある。質疑応答を重ねました中にも、そういう観点からわれわれいろいろと検討してきたのでございますが、にわかに賛成できない問題を相当含んでおるように思うのでございます。  具体的に少しこれらの点を指摘してみますと、私どもが憂慮いたしました、アメリカがこの国際金融公社運営に当っても主導権を握る結果が出てくるのじゃないか。これは世界銀行運営の仕方についても、いろいろ議論がある。あまりにもアメリカ世界政策一環としてこれが考えられておるという見方もあるでしょう。そういう心配は全然ないという見方ももちろんあると思う。けれども今までの世界銀行運営考えてみますと、私どもから見る場合にはアメリカ世界政策尖兵の役を果しておるような点が多分に見られるのでございます。そういう点から、それでは世界銀行と、この国際金融公社というものは全然別なのであって、融資条件その他も違う。従ってこれは全然別個のものだという説もなされるでございましょうけれども、御承知のように世界銀行理事は、そのまま国際金融公社理事を兼ねる。人事がそういうふうに完全に結びついておる場合に、果して世界銀行と全然違った運営が期待できるとは、私どもは思えないのでございます。この世界銀行融資の仕方においても、たとえば日本に対する融資の場合とエジプトアスワン・ダムに対する融資の場合とを考えてみますと、いろいろそこに違う面が現われるような傾向が出てきておる。このエジプトアスワン・ダム協定内容については、まだ秘密になっておりますから公表されていないようでございますけれども、大体予想されているところ、伝えられておるところを見てみますと、米国が第一回分として七千万ドル、その次に一億四百万ドル、それから英国が二千六百万ドル。そのほか世界銀行が一億ドルをこれに融資するといわれておるのでございます。この世界銀行エジプトに二億ドルから融資をするというところに、私は相当アメリカがこの世界銀行を通じて、エジプトに無理な融資をさせておるという動きを感ずるのであります。第一エジプト世界銀行に対して引き受けておる額はわずか四千万ドルです。その四千万ドルの引受額でもって、世界銀行エジプトアスワン・ダムのために二億ドルから融資をするということは、これはよほど政策的な考慮がなければあり得ないことではないかと思う。普通の銀行業務としては、ちょっと常識からは考えられない額でございます。日本世界銀行引受額が二億五千万ドルですが、融資の限度は、一億五千万ドル引き受けながら一億ドルとなっておる。それがエジプトの場合には四千万ドルの引受額でもって、一億ドルから融資を受け得るというわけです。  そういう点から考えてみますと、最近の世界銀行融資の仕方においても、ソビエトの低利な、また長期にわたる融資と対抗して、何らか銀行業務からは考えられないような、政策的な融資というものが行われてきている傾向が十分見られるのでございます。このアスワン・ダムについても、エジプト自身投資は九億ドルですが、世界銀行利率は大体四分六厘から充分くらいの間になっておる。これは日本に対する電力借款を見ましても充分だし、八幡製鉄が四分八分の五というふうになっておるわけです。ところがソビエトの提案しておるところを見ますと、利率は二分二厘で、そうして五十年間の返還または三十年回返還融資をしようという提案をソビエトはしておるわけであります。そういうふうなよその国が有利な条件融資をするということに対抗して、世界銀行そのものが――アメリカ政策的に自分融資をするということをわれわれはとやかく言っておるのではない、一つ世界銀行という、アメリカ一国で運営すべからざる銀行を、政策的にアメリカが特に発育力を持ってこれを運営すること自体を、私どもは問題にしているわけであります。そういうふうないろいろな具体的の例を見ますと、世界銀行運営自体が、何かアメリカ世界政策一環として利用されておるという面を、私どもは指摘せざるを得ないのでございします。  こういう関係から今後、理事などで人事的に人間的に結びついておる国際金融公社が、やはり同じように、このアメリカ世界政策一環として、そうして政府の答弁にもありますように、ましてやこの国際金融公社というものが、民間資本の誘い水の役目をするのだということになりますと、なおこの国際金融公社が、アメリカ政策尖兵になるといち危険を私どもは感ずるのでございます。現に与党委員諸君でも、アメリカがあまり表面に乗り出すのでは、帝国主義的な色彩が強過ぎて警戒される、それだからむしろ日本がその中に立ってやった方が有利だ、というような主張をされる方も現にあるくらいでございます。そのこと自体が――すでにアメリカ表面に乗り出すことは、低開発地域の人々に警戒を与えるということ自体が、アメリカ政策の帝国主義的な性格を物語っておると思うのでございます。  しからばどういうふうな方法で、この低開発地域に対する協力なり融資をすべきであるかということについては、私どもはやはり国際連合で今計画されておりましような国際連合経済開発特別基金、こういうふうな計画中心にして今後やるべきではないか。あらゆる国がこれに参加して、そうして平等な立場をもって低開発地域利益に合うような融資の仕方をやるのが私は妥当だと思うのでございます。元来この国際金融公社自体が、御承知のように米国が音頭をとりましたカラカス宣言という反共宣言賛成南米諸国にさせて、その代償として考案されたといおれておる。そういう点から考えましても、この国際金融公社ができた由来から考えてみましても、その主たる目標は南米諸国にあるのであって、東南アジアやあるいは中近東諸国開発援助は第二義的、つけたし的に考えられておると思われるのでございます。こういう観点から、やはり私は本来の立場から国際連合中心にしたところの、今計画されておるよらな特別基金中心にやった方が、はるかに低開発地域のためにもなるし、また国際的な協力という面からも、その力がはるかに有効であると思うのでございます。せっかく日本バンドン会議であのような上原則を掲げて、そうしてほんとうに平等な互恵の原則でもって相協力していこうという原則を打ち立てた国といたしまして、このような面をもっと積極的に運用すべきである、このような観点から、私どもはこの今回問題になっております国際金融公社協定には反対をせざるを得ないのでございます。(拍手
  4. 前尾繁三郎

  5. 石坂繁

    石坂委員 私は自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題に相なっておりまする国際金融公社への加盟について承認を求めるの件につき、賛意を表するものでございます。  今回設立されようとする国際金融公社は、その目的を主として低開発地域経済開発に置き、国内民間資本と結合いたしまして、生産的民間企業の助成に供せんとするものでございます。わが国が早くから東南アジア諸国との経済協力をその基本政策の一といたしており、現内閣は特に東南アジア経済外交の推進を強く押し出しておるのであります。しかるに今回わが国がこの公社加盟いたすことによりまして、その効果が一そう顕著になりますることは、もはや疑いの余地はないのであります。  ただここで特に要望いたしたいことは、わが国公社投資と関連いたしまして、単に低開発地域経済発展協力するということでなしに、公社投資わが国にも均霑せられ、わが国自身経済開発にも大いに役立たれるように、別段の努力が払われたいということでございます。ひっきょうするに、このことは、わが国経済を一そう強固ならしめるばかりでなく、わが国が一貫してとって参りました東南アジア地域への経済協力、並びに経済開発のための協力を、一段と効果あらしめることにほかならないからでございます。しかし私の遺憾に存じますることは、本協定内容そのもの定款内容をなすものだという当局の御説明ではございますけれども、この定款その他公社活動に関しての細目が、今日まで実はまだ十分はっきりいたしていないことであります。しかしながら、これらのことが決定されまする際には、わが国利益東南アジア諸国利益、及び総体として低開発地域利益を十分に考慮して、公社協定第一条の目的に合致するよう格段の努力が払われるよう、特に要望する次第でございます。  社会党は本協定反対をいたされました。ただいま松本委員反対討論を承ったのでありますが、遺憾ながら私ども賛成することのできない御議論であります。元来この協定に対しましては、東南アジア中立主義陣営、すなわちインド、ビルマセイロン等も、公社に参加するの意思を表明いたしております。しかるにわが国が当初から本協定による公社理事国になることになっておりますし、しかもわが国は、わが国のみならず、ビルマセイロン、タイの三国の利益をも代表することになっておるのであります。この協定反対される社会党の方々は、このわが国地位をも放棄を主張せられる意図でありましょうか、この点私の了解することのできない点であります。しかも私の承知いたすところに誤まりないといたしますれば、社会党は、本公社姉妹関係にあると申しますよりも、むしろこの公社はその補助的活動をなす役割を演ずることになっておりまするが、かの国際復興開発銀行、いわゆる世界銀行協定に対しましては、社会党はさきに賛成をしておられるのであります。しかも本協定に関連する国内法は、大蔵委員会において社会党賛成があり、さらにまた本会議におきまして社会党反対せられずして、本院を通過いたしておるような事情も、すでに御承知の通りであります。これらの大蔵委員会外務委員会ともちろん別個委員会ではありますけれども両者密接不離関係にあるものである。一つには賛成し、今これに反対せられておることにつきましては、社会党のいろいろな内部の事情もあることではありましょう   〔「自分のことを言え」と呼び、その他発言する者あり〕
  6. 前尾繁三郎

    前尾委員長 静粛に願います。
  7. 石坂繁

    石坂委員 私どものとやかく申し上げる筋合いでもないと存じますが、この首尾一貫せざる社会党態度に対しては、われわれは了解することのできない点であります。  私どもは右申し上げましたような事情によりまして、いわゆるひものつかない経済援助という意味におきまして、この公社活動が重要かつ有利であると確信いたしまして、本件加盟につきまして、賛意を表する次第でございます。(打手)
  8. 前尾繁三郎

  9. 岡田春夫

    岡田委員 私も本協定に対しては反対をいたします。先ほど松本委員から詳細に反対の原由をお話しになりましたので、私は重ねて重複は避けたいと思います。  大体この国際金融公社というものができたおい立ちは、先ほどもお話もあったように、一九五四年の三月にカラカスにおいて、中南米会議が行われて、この中南米会議で、アメリカ反共宣言をするその代償として、東南アジアに対してアメリカ投資をすることに比べて、中南米に対する投資がきわめて少いという中南米諸国の不満を押えるために、IFCというものを作るということを誓約し、それに基いて作られたというIFC性格がある。しかもその後のおい立ちを見ると、きのらの委員会質問等を通じてだんだん明らかになって参りましたことは、加盟を約束しておる国は五十四カ国、これは約束しておるというよりも、この公社法ができるおい立ちから見て、世界銀行加盟しておる国はすべての国がこれに加盟するという意味で、五十四カ国が加盟するということになっておるが、今日までに加盟を正式に承認したものはわずかに十四カ国しかない。しかもいわゆる台湾政府においてもこれを反対する、あるいはその他の数カ国が正式にこれに加盟することを拒否するという態度にまでなってきておる。従って事実本日がこれに加盟しても、ただいますぐにこのIFCが発足して運営される見通しがつかないという現状であります。このような状態になっているときに、日本がなぜに急いでこれに加盟しなければならないか。私たちはこの点から考えても反対しなければならない理由がある。  それは根本を顧みてみるならば、最近の東南アジアあるいはアラブ諸国状態を皆さんがお考えになれば、はっきりおわかりになるはずだ。最近は東南アジアにおいて、ソビエト経済協力がどんどん進んでいる一方、アメリカ経済援助政策というものがどんどんと孤立している。なぜこのようにアメリカが孤立しつつあるかということは、言うまでもなく東南アジア並びアラブ諸国は、今までの長い間の植民地的なくびきから脱して、みずから独立方向に進みつつある。独立方向に進むときには、その国の経済体制というものは、それぞれその国独自の自主的な経済計画を立てて、その経済計画に基いて発展をはかりつつある。そのためには、その経済発展のために役に立つよらな経済援助または協力であるならば、喜んでこれらの諸国はこれを受け入れるであろうけれども、逆にその援助がその独立発展を制約したり、あるいはそれを押えつけるような形になるようなものであるならば、これらの国々は断固としてこれを峻拒する。その最もいい例は、最近のセイロン態度である。セイロンでは、コテラワラの前内閣は、この間の選挙において明らかに敗北をした。もはや見る影もなくなっている。そらしてセイロンの新政権は、新たに平和地域の拡大の立場に立って、セイロン独立のために努力すると言っている。あるいはシンガポールの首相においても、大体同様の趣旨の独立意思表示を明らかにしつつある。このような状態から見て、アメリカが意図しているよらな経済援助という形は、だんだんと孤立せざるを得ない結果になっている。それはなぜかというならば、アメリカ経済援助の形というものは、アメリカ国際独占資本資本輸出の形において行われるからである。この国際独占資本輸出に対して、これらの従来植民地であった後進国が、反撃を与えざるを得ない状態になっているのである。世界銀行の場合においては、その国自体資本輸出をして、アメリカの帝国主義的な国際独占資本資本輸出をはかろうとしたけれども、今度のIFCの場合においては、国家独占資本資本の力において、それぞれの個別資本が、これらの後進地域において資本輸出を容易ならしめるための道を開く役割を果しているのであって、本質的には何ら変りのないアメリカの帝国主義的な資本輸出の形をとっている。この点において、これらの国々は絶対にIFCを支持しないということが明らかになっている。ですから、せっかく言っているにもかかわらず、五十四カ国のうちでいまだに十四カ国しかこれに加盟意思表示をしない。これを拒否するという国も現われつつあるのであります。こういう点から見ても、日本の国がこのIFC加盟するということは、むだであるばかりでなく、有害であると考えている。それはなぜかというならば、このような形で日本の国が東南ア諸国に対して資本輸出し、東南ア開発協力するといっても、東南ア諸国立場からいうならば、アメリカ独占資本の手先の役割日本の国が果しつつあると考えるからである。その限りにおいては、これはプラスになるどころか、アメリカひもつきである日本の国が、このような形でアメリカ肩がわりとして出てくるのであろうという結果を招くことによって、この金融公社加盟することは、日本の国の将来のために、かえって逆の結果になるのじゃないかということを考え反対しなければならないというのであります。  第二の点は、これも松本委員からるるお話があったのであります。委員会の席上においても、私からもいろいろ質問をして参りましたが、日本の国が東南ア諸国経済協力をするためには、このようなIFC機関を通ずるのではなくて、すでに国連の第十総会において決定されておるSUNFED機関を通じて行うのが私は正しいと思う。明日はバンドン会議の満一周年の日である。この記念すべき満一周年の日、バンドン会議で決定されたことを外務大臣も思い出していただきたい。バンドン会議最終コミュニケにおいては、SUNFEDに対しては、日本は全面的に支持するということを決定している。そうしてバンドン会議に参加したあらゆる国は、このSUNFEDを通じて経済開発のために協力をしようではないかと言っている。SUNFEDは、ちなみに申し上げておきますけれども資本金としては二億五千万ドルであります。IFCの場合においては一億ドルであります。こういう点から考えても、出資の額から考えても、東南アジアにおいてこれを歓迎するのは当然である。しかも先ほど申し上げたように、出資国加盟国IFCの場合においてだんだんと減ってくるということになるならば、逆にひっくり返して言うならば、出資をすでに決定をし、独占的な地位に立っているアメリカIFC出資上における割合というか、その独占率ということもますます強くならざるを得ない。このようなことになってくると、ますます東南アジア諸国アラブ諸国から、このIFCの受け入れられることを拒否される状態が強くなってくるだろうと思います。理事国になったから名誉であるということを先ほど言われたけれども、このような今や前途きわめて暗いこの金融機関に対して、日本がいかに理事国になっても、これは日本東南アジアとの経済協力のためにプラスにならぬばかりではなくして、むしろ笑われ者の結果になるのではないかという点を私は憂慮する。IFCにこれだけの出資をするくらいならば、SUNFEDを早く作って、SUNFEDの中で正しい経済協力を進めるべきであると私たち考えております。日本の金にしても十億円の金です。この十億円の金をアメリカひもつきのために使うなどということはやめてもらいたい。それよりも、ほんとう日本経済発展考えるならば、正しい意味における経済協力の形がすでに高碕国務大臣も出席して満場一致できまっているこのバンドン会議SUNFEDに切りかえるという形を、ぜひとも政府並びに与党諸君がお考えを願いたいと思います。  私はまだいろいろな点で申し上げたい点もありますけれども、要するにIFCのこの条約は、表面から見ればきれいではあるけれども、その中身にはアメリカ独占資本のあくなき野望が隠されているものとして、どうしても私は賛成ができないのであります。その意味において、私は以上申し上げた反対理由を申し上げて討論といたす次第でございます。(拍手
  10. 前尾繁三郎

    前尾委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採決いたします。国際金融公社への加盟について承認を求めるの件を承認すべきものと議決するに賛成諸君起立を求めます。   〔賛成者起立
  11. 前尾繁三郎

    前尾委員長 起立多数。よって本件承認するに決しました。(拍手)  なお本件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  12. 前尾繁三郎

    前尾委員長 御異議がなければさように決定いたします。
  13. 前尾繁三郎

    前尾委員長 これより国際情勢等に関する件について質疑を許します。ただし外務大臣は三時十五分にはぜひともここを出なければならぬ所用がありますので、大体一人十五分程度の御質問に願います。北澤直吉君。
  14. 北澤直吉

    北澤委員 私は、アメリカにおける繊維製品販売制限の問題につきまして、アメリカ側から日本に回答が参りましたこの問題について、簡単に御質問申し上げたいと思います。  アメリカのサウス・カロライナ州、アラバマ州におきまして州法を作りまして、そして日本繊維製品を取り扱う小売り、卸の店は、日本品を販売しておるという表示をしなければならぬ、こういう州法が二つの州におきまして、州のガヴァナーの署名を得て成立したわけであります。これは御承知のように日米通商航海条約第十六条の違反であります。これにつきまして日本政府からアメリカの方に通商条約違反であるということで抗議をしたのに対しまして、今回アメリカからよこされました回答を見ますと、この州法が通商条約違反であるかどうかは、アメリカの国の建前からして、これはアメリカの最高裁判所が決定をする権利がある、すなわちその州法がアメリカの憲法違反で、効力があるかないかは、これはアメリカの行政府の関与すべきところでなくして、アメリカの最高裁判所の決定にまかせなければならない、こういうふうな返事のようでございます。もちろんアメリカは御承知のように連邦制でありまして、州で作った法律がアメリカの憲法なり条約なりに違反するかどうかということは、これは最筒裁判所が決定するわけでありますが、しかしながらその最高裁判所の決定がどうなろうと、今度の州法は通商条約違反で、無効であります。通商条約には違反しないからして有効であるという最高裁判所の判決のいかんにかかわらず、これはアメリカ合衆国として、連邦政府としましては、当然通商条約違反として日本に責任を負うべき問題であると私は思うのであります。現に日米通商航海条約の第二十四条におきましても、「この条約の解釈又は適用に関する両締約国の間の紛争で外交交渉により満足に調整されないものは、両締約国が何らかの平和的手段による解決について合意しなかったときは、国際司法裁判所に付託するものとする。」こういうわけでありまして、そういう通商条約の解釈、特に今申しました通商条約の内国民待遇、あるいは最恵国待遇について、アメリカの州法がこれに違反であるかどうかという解釈の問題につきましては、これは最終的には国際司法裁判所に付託するものとする、こういうふうに書いてあるのであります。従いまして、この条約の解釈はアメリカの最高裁判所がこれを解釈するのだというふうな趣旨の回答は、私どもはちょっと納得ができないのであります。やはり私どもは、アメリカ国内的にその州法が有効か無効かは、これは最高裁判所が決定する地位にあると思うのでありますが、日本に対する関係におきましては、明らかにこれは通商条約違反であって、従ってアメリカ合衆国政府といたしましては、条約違反として日本に責任を負うべきものだ、こういうふうに考えるのでありますが、その点について大臣のお考えを伺いたい。
  15. 重光葵

    ○重光国務大臣 この問題が米国に起りましたことは、われわれは実に残念に思っております。そして日本政府といたしましては、この問題が条約違反の疑いがある、こういうことの立場をとって抗議もいたし、アメリカ政府の善処を促しておる状況であります。アメリカ政府もこういうことが起ったことを決して是認をいたしておりません。ひとしく遺憾に思って、そして日本政府の言い分を十分に考慮して善処を約し、かつまた善処しつつあるのが現状であります。そうでありますから、実際問題としては、そのアメリカ政府の友好的な措置に信頼をして、事態の推移をしばらく見ることが適当であろうかと考えております。しかし理屈として立場としてこれを申せば、日本側の立場条約の規定によってこれまでとっておる立場を十分に主張していかなければならぬ、こう考えております。米国側がさしあたりその条約違反であるかいなかの決定は、米国国内問題としては最高裁判所の判決による、こういうことを言ったのは、国内問題としてそれはそらであろうと思います。しかしそれとお活の通り国際問題としての立場は、また両国の折衝によって条約の規定の通りに進むべきであるのは当然のことであります。従いまして日本米国国内問題がどらあろうとも、約束通りに、また条約に規定する通りに、日本立場をとっていくことが正当であろうと考えます。ただ、先ほど申しましたように、実際問題としては、この問題はきわめて実際的に取り扱うことが利益に沿うわけでありますから、米国側の好意ある処置に信頼をして、事態の推移をしばらく待っておるということが一番適当ではないか、また穏当ではないかと考える次第であります。
  16. 北澤直吉

    北澤委員 私も大臣の御答弁のように、せっかく米国政府におきまして好意を持って友好的にこの問題を処理しておる、現にサウス・カロライナ州及びアラバマ州当局にも、合衆国政府として注意を喚起しておるということでありまして、その点はわかります。また大臣のおっしゃるように、当分事態の推移を見るということも適当であると思います。ただ問題は御承知のように、合衆国政府におきましても、日本経済の自立ということにつきましては、非常に市大な関心を持っておる。しかも最近は従来のように援助によらず、日本の貿易の拡大によって日本経済自立に対して協力しよう、援助にあらずして貿易によって日本経済を進展するのに協力しよう、こういうように方針が変っておる。ことしの正月のアイゼンハワー大統領の年頭教書を見ましても、自由諸国の間の貿易の増進、インヴェストメントの増進という点は相当強調されておるわけでありまして、米国政府日本経済自立の達成という点から、日本の貿易拡大につきましては、現に協力しております。現に日本のガット加入とかその他におきまする日本の貿易拡大の面については、協力しておるのでありますが、今度のアメリカのアラバマ州、サウス・カロライナ州のやり方は、合衆国政府の方針に反しておる方針と思うのであります。結局問題は、ことし大統領選挙がありますので、あの方面におきまする繊維業者が、日本品との競争の関係からこういうような法律を作って、州のガヴァナーもしぶしぶこれに署名しておる、こういうような選挙を控えての事情はわからぬわけでもないのでありますが、これは明らかに通商条約違反であります。通商条約の第十六条、それからまた第二十二条を見ますと、要するに日本品はアメリカにおきまして内国民待遇、それから最恵国待遇を受ける。「「内国民待遇」とは、一締約国の領域内で与えられる待遇で、当該締約国のそれぞれ国民、会社、産品、船舶又はその他の対象が同様の場合にその領域内で与えられる待遇よりも不利でないものをいう。」「「最恵国待遇」とは、一締約国の領域内で与えられる」云々と書いてありますが、日本繊維製品を販売する店に限って日本品を売っておるということを表示することは、明らかに内国民待遇に反し、最恵国待遇にも反すると思うのでありまして、これはだれが見ましても、今度のアラバマ州の州法それからサウス・カロライナ州の州法は、一目瞭然これは日米通商条約違反であります。でありますから、これは今後事態の推移を見るということもけっこうでありますが、どうもアメリカ政府の回答を見ますと、いかにも行政府としてはこれをなかなか処置しにくいというふうに、責任を最高裁判所に転嫁しているような向きがありますので、この点は非常に理解できないのであります。大臣の御答弁のように、この州法がアメリカの憲法違反であって、法律の効力があるかないかという問題は最高裁判所の権限でございますが、その最高裁判所の判決いかんにかかわらず、この州法が通商条約違反として、合衆国政府日本に対して責任を負うべきであるという点は、これははっきりしていると思います。その点だけをもう一ぺん大臣に伺って、私の質問を終ります。
  17. 重光葵

    ○重光国務大臣 その点については、先ほど私が申し上げた通りの意見を持っております。アメリカ国内の問題と日本との関係の問題というのは、おのずから別の問題でありまして、日本アメリカとの関係条約上の明文によって主張しなければならぬ、こう考えております。しかし実際の取扱いといたしましては、先ほど申し上げましたような考え方を持っていくことが、一番利益を擁護する上において適当なやり方じゃないか、こう申しておるわけでございます。さようなわけでありますから、今述べられた御趣旨は十分に頭に取り入れて将来進んでいきたい、こういうふうに考えております。
  18. 松田竹千代

    ○松田(竹)委員 関連してちょっと伺いたい。今の日本の繊維に対する制限法律、この問題はアメリカで蔓延する憂いは今のところは見えておらぬか。アメリカにも変な議員がおって、選挙区のメーカーから頼まれると、国全体のことを考えないでいろいろ踊る傾向もあるのであります。またふえないという様子であるならば、確かな根拠はあるのでありますか、その点まず伺いたい。大臣お聞きになっておらなかったようでありますから、ほかの方でもよろしい。
  19. 湯川盛夫

    ○湯川政府委員 さしあたり、ほかの州にこれ以上蔓延するおそれはないかという御質問のようでございますが、ただいまのところアラバマ州以外にさらにもっと広がる見込みはないようでございます。といいますのは、大体南部諸州の州議会が終りまして、こういう法案を議する機会がほかの州ではございませんので、さしあたりほかの州にすぐ同様の法案が広まるというようなことはないと考えます。
  20. 松田竹千代

    ○松田(竹)委員 私はそれはやや甘い見方に過ぎはせぬかということをおそれる。私も大阪出身でありますので、始終こういう問題に触れておる。今から一年半も前から、こういうおそれの曙光が出てきておった。それらの問題について私は米人から注意を受けて、日本の繊維が急激な輸出の伸び方をしないように、また値段についてもダンピングと思われるような安い値段で出さぬように、よいものを出すように、特に注意をしてくれということで、私はその問題で通産当局にもしばしば会って注意を促してきているようなわけでありまして、平素から私はこの問題についてはインタレストを持って、そうした問題が起らぬように市前工作を自分としてはやって参り、また機会あるごとにその運動をやっている。私が考えるのに、アメリカの日貨排斥の従来の経験から見ましても、一カ所で起ると蔓延する傾向がある。そしてそれが広まって取り返しがつかぬようになってきている。だからこういう問題が起った場合には、いな起る前にその蔓延する危険がないように工作をすべきではないか、単なるロビー・ワークではなしに、日本の出先使臣は直ちにそれらの州の事情を知って、議員を通じ、またメーカーを通じ、特に事前にこれらに対してそんな問題が起らないようにやるべきである。なぜならばこれは当然のことであって、日本の対アメリカ貿易は非常な逆調にあり、政府の方針としては大体日本の品物をどんどん売っていくように努めているようでありますけれどもアメリカは州ごとに別な独立の法律を持っておって厄介な点があるのです。だから起りそうなところに事前に特別な工作を施すということで、きわめて安易にこれらの問題を防ぎ得るのであります。私はアメリカのような国であのチャイナ・ロビーの活動を見て驚いたのでありますが、努力すれば幾らでもできる、話せばわかる人がアメリカには多いのですから、そうした工作をなぜもっと力を入れてやらないかということを考える。この点はいかがでございますか。
  21. 重光葵

    ○重光国務大臣 お話のその点は私は申すまでもないことだと思います。それがために外務省の出先機関もあり、また出先機関の苦心も存するのであります。この問題は外交機関の怠慢によって起ったのであるといって責められても、私はそれに対して少しもどうというわけではございません。しかしこういうことが起ったから、何もその措置をとらなかったのだとすぐ結論されることには、私は承服することができません。従来の経験からいっても、移民問題で御承知の通り手を焼いている。それがとうとうああいうことになってきている。あれは非常に機微な問題であって、一つのところに起ればまたそれが他のところに波及するような傾向にあることをよく知ってこれを処理しなければならぬということは、これは全く御同感であります。でありますから、こういう気配が見えるやいなやアメリカ側に対していろいろ注意を促し、必要な予防措置をとることはむろんのことでありますが、さらにまた日本側においても、繊維製品についてあまりに急激な輸出などによって向うを刺激することは避け、業者たちが自制するというところまでいって、そのためにかような悪化する空気はある程度防ぎ得たと私は思っております。しかしそれにもかかわらずこういうことが起ったのであります。こういうことが起ったのはお話の通り選挙を控えてのこともございましょう、またアメリカは自由な国でありますから、国内におけるいろいろな事情もございましょう。遺憾ながらここに来た。ここに来たとすれば、これに対してわが方の正当な立場を十分に主張しなければならぬ。しかし相手の政府が非常に誠意を持って、いろいろ処置をしてくれておるのでありますから、これにはまた十分信頼をして、そうしてその結果の現われるように仕向けることが今日いいと思っておるわけであります。
  22. 松田竹千代

    ○松田(竹)委員 外務大臣のおっしゃる、つまりこうした問題が起った今日、今のところはアメリカ政府当局のやることをしばらく見ていくことがよろしいのだということは、私は了承している。それはそれよりほかにないと思います。ただこうした問題が広がらぬように、また新たにほかの問題でも起らぬようにするために、事前の工作にもっと努力してもらいたいということなのです。アメリカ日本の貿易は、アメリカ日本の繊維が少しばかり入ったって、そう文句を言う筋合いのものじゃない。なぜならばアメリカの全生産に対して日本の対米輸出はわずかに一・五%に満たないのです。ものの数でないとも言えるくらいの程度である。しかもそれはアメリカ国内でみな消費しているのじゃない。そのうちの相当部門がカナダへも行き、中南米の方へも新たに染色し、さらにプリントして、加工して送り出されている。それによってアメリカの商人が銭もうけしている。また安いものを、日本でダンピングしたようなものをアメリカの商人が来て買い取っていく。そういうときにはアメリカ側でむしろ注意をして、そういうものを統制してもらいたいとさえわれわれは思う。そういう事情でありますので、そんなにアメリカがぎゃあぎゃあ言うほどの問題ではないと思う。またこれが日本国内で統制をしながら、しかも良質のものを出すように努めていきさえすれば、相当伸びたってアメリカで少しも文句は起らない、これは私断言できます。百に対して一・五までの品物でありますから、そう問題は起らない、ただときどきどかっと相当のものが行くために、マーケットを刺激して困るというのが向うの理屈であります。それはさもあろう。ですから私はそういう危険のあるようなところにはうまく事前に了解を求め、商人にもいろいろ了解を求めていくような手を尽すことを、十分にやってもらいたいといちのが私の趣旨なのです。
  23. 重光葵

    ○重光国務大臣 それは少しも異存はございません。われわれは出先機関を督励して、ただ努力の足らざるところをおそれてやっておるつもりでありますし、またそういう気持でやります。それについては少しも異存はございません。しかし今言われる通りに、これはアメリカの生産力の何%であるから理屈上そういう運動の起るわけはない、こう断言をされますが、それが起ったのであります。一%何ぼであるかもしれぬけれどもそれにアフェクトされる商売人は非常に神経を刺激されたと見えます。だからそういうことに対して、十分の手当をするなり努力をするなりすべきだという議論は、私もその通りだと思います。しかしながら、それだから理屈上起り得べからざることだからというだけでは安心はできぬわけであります。こういう工合に起ってきたのでありますから……。それでこれは非常に努力をしなければならぬ、そういう点はお話の通りだと思う。ただ今後起るかもしれないから甘く見るな、それはその通り甘く見ることはよくないと思いますが、しかしこれからそれがどんどん波及するおそれがあるかというと、出先の報告なんか集めてみますと、まあこれで一段落ではないか、こういうことを言ってきておりますから、それはその通りに申し上げても少しも差しつかえないと思うのであります。
  24. 前尾繁三郎

    前尾委員長 松木七郎君。
  25. 松本七郎

    松本(七)委員 まず日ソの漁業交渉の問題ですが、政府は今度の漁業交渉を日ソの国交回復の交渉とは全然関係ない、こういうことを再々ことさら声を大にして言われておるのですが、その気持というものが私にはわからない。元来政府は日ソの国交回復をやろう、しかも早期国交回復をやろうという公約をして、そうして今交渉をやっておる。これは決裂ではないと政府で言われておるくらい休止状態なのです。ですからことさらこれと関係ないと言われなくても、場合によってはさらに再開の機会をつかみたい、そういうことを言うことによって両国の間の友好的な気分というものはむしろ増すのですから、それをこの漁業交渉をやるに当って国交回復の交渉とは全然関係ないのだ、なぜそういうふうな形でわざわざ声明して、この漁業交渉に乗り込んだのか、その気持が私にはわからないのです。
  26. 重光葵

    ○重光国務大臣 私はこれは事実を事実としてお話しなければならないと思うのですが、政府が漁業交渉をやるから日ソ国交の回復をしたくないのだ、そういうようなことは一度も言ったことはございません。しかしながら日ソの国交回復の交渉は、これは詳細私が報告をし、また御討論にもなったことで十分わかっておる通りの事情で自然休会になっておるということは御承知の通りであります。そこで日ソ国交の正常化をする交渉が自然休会になったから、さしあたって必要な漁業問題について別個に取り上げる、こういうことになったのでありますから、これは別個の問題として取り上げるというのが当然のことではないかと思うのです。別個の問題として取り上げる事情がよくわかりながら、これをぜひ国交の問題にひっかけてやらないかというのが僕にはわからない。それはどういうことなのでしょうか。私は漁業問題は別個の問題であるからこれは別個に解決して、これがまた一つのいい影響を全局に与えることを希望しておるということを申し上げてきておるのであります。だからそれとこれとは、今交渉がそういういきざつになっておるので、それをごっちゃにして話し合いを進めることは、かえって紛淆を来たすゆえんであって、一つ端から片づけて、漁業問題は別個の問題として日ソの問に紛争の起らないようにすることが、まずやるべき方法だと考えるのであります。それをすぐ国交の問題に展開しようということは、今考えればかえって漁業問題というものが紛淆して解決を見ない、こういうことにもなり得るわけであります。これは別個の問題として交渉に応じたわけであります。向うもしようという、こっちもそう申し入れた、だからそれをまっすぐやったらよかろう、こう考えておるのであります。
  27. 松本七郎

    松本(七)委員 しからば河野農林大臣が向うに行って漁業交渉を始めたとする。その場合にソビエト側が何らかの形で、やはり国交回復というものと結びつけたいという意向を表明した場合には、一切漁業交渉に関する限りはそういう話はしない、こう断わるのですか。
  28. 重光葵

    ○重光国務大臣 それはどういうことでありますか、ソ連がそういうことでも持ち出そうということを、何かの方法で御存じのような口吻でもありますが、一体そういうことを……(「冗談じゃない、そんなことは言っていない」と呼ぶ者あり)いやそういうふうに聞えるというのです。今向うはこういうことについて話し合いをしようというのだから、話し合いをしたらどうであろうか、日本も日ソの関係、漁業問題の関係については紛争が起らぬようにしたいのだ、こう申し入れた。それはけっこうだと向うが言ってきた。これは私は非常にいい徴候だと思う。それをそのまま信用すれば、その問題について話し合いを進めていくのに違いないと思います。ですからそれをやっていったらいいと思う。その問題を解決するために交渉を開き、結末をつけてしかるべきものだと私は考えております。
  29. 松本七郎

    松本(七)委員 その点は後ほどまた同僚の穗積委員から詳細に質問があると思いますが、別な点としまして、河野農林大臣はしからば、かりに公式の席ではそういう話はしないとしても、非公式に何らかの形で、行き詰まり、休止状態にある日ソ国交回復の問題について、話し合う意図が政府として持たれておるのか、全然そういう話は非公式にもやってはならぬという方針で臨まれるのか、この点をお伺いいたします。
  30. 重光葵

    ○重光国務大臣 日ソ国交回復の問題を話すために交渉をやっておったものはロンドン交渉であって、そのためにやっておったのは松本全権でございます。そしてまだその任務は解消いたしておるわけではございません。その交渉が再開する場合においては、直ちに松本君はどこへでも参る姿勢をとっております。河野農林大臣が政府代表として行くのは、御承知の通りに公海における漁業の制限という問題から起った漁業問題に関する日ソの関係を調整したい、公海における漁獲の問題について紛争が起らぬように話し合いをしたい、こういうことが目的であります。それで行くつもりであります。
  31. 松本七郎

    松本(七)委員 それじゃ答弁になっていない。河野農林大臣はなるほど今度の漁業交渉で行かれる。けれども日ソ早期国交回復を公約した鳩山内閣の国務大臣である、閣僚なんである。それだからたまたま閣僚である以上は、この機会に非公式に何らかの形で、全権とは別に内閣として、また重光外務大臣は、時期を見て国交回復の交渉の再開をやるのだと言っておられるのですから、そういう機会に一つこの国交回復の問題についても非公式に話し合われるということは、内閣として当然なことだと思う。むしろ国民に対する責任だと思うのです。それを、そういう国交の回復の問題は今議題になっていることじゃない、漁業が主題だから一切触れないのだという態度で行かれるのか、あるいはそういう機会に非公式に何らかの話し合いもして差しつかえないという態度で派遣をされるのかという点を聞いておるのです。
  32. 重光葵

    ○重光国務大臣 今お話を伺えば、この機会に非公式でも一ついろいろなことについて、意見の交換をさせてみた方がいいじゃないかというお考えを言われるようでありますが、そうであればそれは御意見であります。しかし河野政府代表の使命は今申した通りであります。それを遂行するために行くのでありますから、それで御承知を願いたい。政府としてはそういう考え方でやる。そこでもしそういうことが御意見であるならば、それも一つの参考にしなければならぬことだ、本人にもそれを伝えることが適当であろうと思います。しかしそれは御意見であります。政府立場としてはこれまで申し上げた通りの立場で参るわけでございます。それでどうぞ御了承を願いたいと思います。
  33. 松本七郎

    松本(七)委員 それから漁業界では、もしこの交渉が長引いて出漁する時期が切迫しても、大国だからそうむちゃなことはすまい、いわゆる強行出漁、そういうことをやってもよかろうというような意見さえ出ておるようでございますが、内閣としてはこれを放置しておくわけにはいかないと思います。強行出漁のような事態が切迫した場合に、政府としてはどういうように対処される御方針でありますか。
  34. 重光葵

    ○重光国務大臣 この問題は、公海に対する出漁ということは当然でき得る建前を日本側がとっておることは御承知の通りでございます。しかしながら今その問題について故障が起ってきたと申しますか、起らんとする形勢にあると崩しますか、それがために今その故障のないように話し合いをするという目的を持って代表が行きつつあるわけでありまして、二十一日に出発をするというのでありますから、間もなく向うに着いて話し合いに入るわけであります。それと相見合ってせっかく話し合いをするのだから、紛争の起るような態度ですべてやるということは向うもやらぬということで、ロンドンの正式の会議では言っております。松本全権とマリク全権との間の話し合いは、そういう公海における漁獲の問題等について、紛争の起らぬように努力をするということをはっきり話し合いをしております。ただしその談判の結末はつかなかったのでありますが、向うもそう言っておるようなわけで、こちらもむろんそういうふうな態度をとらなければならぬ、そこに実際的方法といたしましては、いろいろ考慮をしなければならぬ点もあろうかと思います。それは交渉の進むに従って水産当局も十分に考慮することだ、こう考えております。私といたしましては、建前は建前として、でき得るだけ交渉の目的に沿うように進んでいきたい、こういうふうに申し上げるほかございません。
  35. 松本七郎

    松本(七)委員 そうすると漁業交渉の継続中は出漁しても心配はあるまい、不測の事態は生ずまいという御観測でしょうか。
  36. 重光葵

    ○重光国務大臣 不測の事態は起らないようにできるだけ処置をとりたい、こういう考え方でございます。
  37. 松本七郎

    松本(七)委員 それから一般的な漁業協定ができた場合、これの法的な効果については外務省の結論というものがこの間新聞に出ておりました。いずれこれはまた下田条約局長と別の機会にゆっくり質問したいと思いますが、大臣にお伺いしておきたいのは、一般漁業協定ができた場合、これは全面的な国交回復ということにはならないにしても、いわゆる部分的な国交回復ということには当然なるのだと思いますが、大臣の御見解はいかがですか。
  38. 重光葵

    ○重光国務大臣 私は部分的な国交回復とか、全面的な国交回復とかいうものを、どう区別するかということをよく存じておりません。私はいずれにしても国交回復は一つの問題だと思っております。そうしてある特殊の問題について話し合いをしても、それは全般的の国交回復ということにはならぬ、こう思っております。いわんや日ソの関係は、国交回復をするのは平和条約をこしらえて、重要な案件を処理して、国交回復をしようということに意思が合致して、今日まで交渉を進めてきたのでありますから、特殊の問題だけについて国交回復の結果にはならぬ、こう解釈をいたしております。
  39. 松本七郎

    松本(七)委員 そうすると一般漁業協定ができて、たとえば調査事務所のようなものがどこかにできる。鳩山総理大臣はそれは当然なことだろう、新聞によると岸幹事長もそれは認めていいだろうという談話を発表しておられますが、そういう事務所でもできるということになると、少くとも漁業の面に関する限りは私は部分的な国交口優だと思うのですが、そういうものができてもなお国交回復の一部とは認められないということになるのでしょうか。
  40. 重光葵

    ○重光国務大臣 新聞記事を引用されておりましたが、これは私もどういう趣旨であったかということを聞いてみましたが、総理としてまた政府の方針として、きようなことを交渉の事前に当って言ったことはないということであります。そこでそのことについては私はそういう説明によってよく了解をしておるわけであります。そこでどういう交渉の内容があるかということは、向うがどういうことを言うか交渉してみなければわかりません。しかし今そこでどういう取りきめができるかということも今日予見することはできません。予見することができるのは、公海における漁獲の問題について合意ができることを予期しておるのであります。その予見し得る範囲内において、これは特殊のことであって、今国交回復というようなことに直接解釈ができるものじゃない、こう私は申し上げておるわけであります。
  41. 松本七郎

    松本(七)委員 その点はさらにまた他の議員から詳しくやっていただかなければならぬと思うのですが、最後に、外務大臣はしきりに日ソの国交回復の問題で、これは時期を見てまたやるのだ、こういうことを参議院の答弁でも言われておるのですが、時期を見てやるといっても、どういうときをその時期とされるのか、そこのところを少し伺っておきたいのです。一つ考えられることは、ソビエト側が今まで主張してきたことをさらにある程度譲歩するときを、国交回復交渉の再開の時期と認められるのか、あるいは御承知のように自民党の中にも相当いろいろな意見があるようでございます。その党内の意見のまとまったときを時期と見られるのか、この点が私どもにはあいまいでさっぱりわからない。(「まとまっている」と呼ぶ者あり)まとまっているならまとまっていると外務大臣から答えていただきたい。それが一つ。それからもう一つの問題は、これは以前から外務大臣にお伺いしょうと思いながらその時期がなかったのですが、最近自民党の総務会その他で中共の渡航の問題に制限を加える、何か法的な措置も加えるかのように伝わっておるのです。今いろいろ向うから招待されて。パスポートを待っておる人々も、そういう動きで非常に心配しておるわけです。一体政府として何らかの法的制限を加える御意思があるのか。もしあるとすれば国交が回復しておらないという理由でされるのか、あるいは相手がいわゆる共産圏だということでされるのか、どういう根拠でこれをされるのか、その点を二つだけ伺っておきたいと思います。
  42. 重光葵

    ○重光国務大臣 日ソの問題から中共の渡航の問題に触れられたのでありますが、前の御質問のいかなる時期に国交を回復するか。それはなかなか重要な問題でありまして、そういうような点は一つ十分に検討して、やはりこの席もしくはその他の機会において、十分あなた方の御意見も伺って、そして進めていきたいと考えます。ただ今言われることは、この際が一番そういう時期じゃないか、こう言われれば、私はまだそこまで至っておらぬ、こう今申し上げ得るのでありますが、それでは一体いつ時期がくるのか、説明しろ、こう言われれば、私は少し無理な御質問だと思うのです。十分一つ検討して、手落ちのないようにやっていかなければならぬと思います。  それから中共の問題は、政府といたしましては――中共は御承知の通り六産国であります。日本は共産国ではございません。そこでむろん共産主義のいろいろな関係も考慮しなければなりません。そうして国交のない国であることも、これまた確かでございます。そうでありますから、政治的にこれを利用するというようなことにされては工合が悪いと思います。これには少しもだれも御異存のないことだと私は思いますが、しかしそれかといって人の往復を規制をするということは、私は行き過ぎると思うのです。これはみんなそういうことはおのおの自制をしていくべき問題であって、法律できめてしまうべき問題ではない、こう考えておりますが、意見は言いたいと思っております。あまりそれは行き過ぎるじゃないか、大挙して明らかに宣伝に乗るようなことは、少し自制しようじゃないかということは私は言い得ると思います。しかしそれは規則をこしらえてやろうということとはおのずから違うものである、こう考えております。
  43. 前尾繁三郎

  44. 穗積七郎

    穗積委員 きょうは時間がありませんから、緊急な問題二、三について御質問いたしますから、簡潔にお答えいただきたい。大体質問時間を見ておりますと、あなたが持って回ったようなことを長く言われるものだから、ついわれわれの質問時間が食われてしまって、こま切れになってしまいますから、要点だけを結論的にお答えいただきたい。  まず第一には日ソ漁業交渉についてでございますが、一般的な両国の国交回復問題については、松木委員から今質問がありまして、まだお尋ねしたい点はありますけれども、日ソ漁業交渉のみについて簡潔にお尋ねいたします。今までこの交渉に当るという政府態度を決定いたしましてから、見受けておりますと、外務大臣は特に両国の漁業本協定を結ぶことについては非常に消極的であるし、むしろこれを避けたいという意向が明瞭でございますが、もしそうであるとするならば、本協定をあえて避けようとされる理由は、一体どこにあるのでございますか。われわれにはさっぱり了解することができないのですが、率直に一つお答えをいただきたいと思います。
  45. 重光葵

    ○重光国務大臣 さようなむずかしい問題を出して、簡単に答えろ、こういうことでありますが、御質問はきわめて長く、これはどういう御趣旨か。そこに何らかなにがあれば私は考えていかなければならぬ。しかし私は御趣旨に沿うように、なるべく簡単にやります。本協定と言われるが、漁業本協定とはそれじゃいかなることか、私はこう御質問いたします。
  46. 穗積七郎

    穗積委員 こういうことです。先般、今年度の両国間の協定もできず、国交も回復しないので、やむを得ず魚族保護の立場から、五月十五日から四カ月間、区域はこれだけ、尾数はこれだけの漁業制限を臨時措置としてしたわけですね。その問題に対して、それを解除してもらいたいというのが、こちら側の要求でございますが、それ以外の、両国間の政府によって両国間の漁業問題、海難救助の問題等々、すべてを含む問題について、政府間の恒久的な協定を結ぶということでございます。すなわち今年度の臨時措置以外の基本的な問題について協定を結ぶということを、私は本交渉として言っているのでありまして、この間とりました向うの行政措置を緩和せしめる交渉をするだげではなく、両国間の未解決の漁業問題について基本的な話し合いをして、それに対する恒久的な協定を結ぶ、こういう意味でございます。
  47. 重光葵

    ○重光国務大臣 今申し上げる通りに、公海の漁獲に対する制限があったからこれを全部除いてもらおうというのは、これは理想であります。しかしそれについて日本側も無理のないところならば話し合いをしよう、魚族保護の見地、海難救助のことについて話し合いをしよう、こういうのであります。それに対する取りきめができることを期待しておるのであります。それを漁業協定を言われるならば、それは当然いいことであります。魚族保護の問題は佳木的の協定であると言われるならば、それもいいことであります。しかしながら漁業協定、漁業協定と普通言われておるのが、戦争前に日本がソ連に対して毎年やっておったような漁業協定を頭のどこかに置いて、それに類似したようなものを漁業協定と言うならば、これは全然時代が違って、日本はそういう権利を持っていないのでありますから、そこで公海における漁業の制限について話し合いをしょう、こういうわけであります。私はその意味において協定を結ぶことに消極的であるとかいうようなことは一つもございません。むしろ積極的であることを申し上げます。
  48. 穗積七郎

    穗積委員 そうであるならば、この問題は複雑怪奇な問題ではなくて、もうすでに両者の主張並びに問題点は明確であります。しかも閣僚の中の有力な大臣が行く。その場合、しかも時期は来月の十五日までにできるならば解決しなければならぬという時間的な制約もあるのに、なぜ一体協定締結を可能ならしめるような全権委任状をお持たせにならないのでございましょうか。
  49. 重光葵

    ○重光国務大臣 それは全権委任状を何時でも出す用意ができております。交渉をまずやるという建前でこれはやります。日比賠償の問題についても、政府代表ということで全権委任状を持たせないで今交渉を進めておることは御存じの通りであります。いよいよ調印というときになったら全権委任状を出します。
  50. 穗積七郎

    穗積委員 政府が、今申しましたような急迫緊急な問題で、しかも時間的な制約もある、問題点も大体しぼられて明瞭であり、しかも漁業協定を結ぶことにやぶさかでないという積極的な態度を、言葉通りにおとりになるとするならば、当然事前に全権委任状を持たせる、そのために国会の承認を求めてやるべきだと思う。にもかかわらずそれをおやりにならぬということは、これは一つは、河野代表に対して本年度の向うの臨時行政措置に対する緩和の交渉のみさせたいというあなたの実に消極的なるこの態度理由一つ。もう一つは、河野全権を出すということに対して国会承認を求めるならば、彼を取り巻きます汚職問題その他があって、国会において相当紛糾することを予想された。その二つの理由が、あなたがこの全権委任状を出し渋った理由であると私は思う。そうであるならばそうであると、はっきり正直にお答えになったらいかがでございましょうか。
  51. 重光葵

    ○重光国務大臣 私は、この問題について正直だとか不正直だということでは、はなはだお答えをしにくいのであります。私はありのままを答えております。交渉をして、そうして全権委任状は一日、二日で向うに届くように、必要があればちゃんとやります。これは少しも手落ちのないように措置いたしておることを申し上げます。  それから議会の関係は、私は、議会に御相談することは当然のことでありますから、すべきことはいたすつもりであります。
  52. 穗積七郎

    穗積委員 御答弁不十分でございますが、時間がありませんから、前へ進みます。  十七日の参議院外務委員会において、十六日モスクワから発表されましたソ連側の今度の漁業交渉に関する南明、本協定を結んで、それが実施された後に本年度とった漁業制限の措置についてはソビエト側が処置をするということに対して、あなたはこの発表の解釈を、これは本協定の交渉と並行して今年度の暫定的な行政措置に対する交渉も可能なりと解釈しておられるようですが、これは全く国民を欺瞞するものだと思うのです。明らかに向う側の態度は、本協定を結ぶことを先議する、それを先議して、そうしてそれが確定実施された後に、初めて今年度とった制限措置に対して、しかも協議をするのではなくして、一方的にソビエト政府が善処する、こういう文章に解釈して国民に説明さるべきだと思うが、あなたはそうではなくて、あえて曲解しておられるように思うので、この点は一つ注意を申し上げておきたいと思うのであります。御所見いかがでありますか。
  53. 重光葵

    ○重光国務大臣 御親切な注意ならばありがたく拝承いたしますが、今のような虚偽の何とかというのは少し……(穗積委員「虚偽とは言いません、曲解です。」と呼ぶ)いや、曲解はいたしておりません。ここにロシヤ文もありますし、訳文もありますから、あなたは、れを一つ十分読んで解釈をして、また私に誤まりがあるならば、これは訂正することに少しもやぶさかではございません。木協定協定と言われるが、本協定なんということは小しもありません。この協定が成立して、つまり話し合いをしてみて、その話し合いが成立した後に、ソ連としては自分のやったことに変える必要があるならば、その後に変える、こういうことが書いれてあります。それはその通りに私は説明をしました。そうしてその協定が、あるいはある意味において恒久的な協定とならずして、暫定的の協定になることがあり得ると私は申しておる。
  54. 穗積七郎

    穗積委員 あなたの言う暫定的な協定というようなことは向うは考えておりませんよ。そういう意味ではない。
  55. 重光葵

    ○重光国務大臣 あなたはソ進の意向を十分御承知の上でおっしゃるのだろうと思いますけれども、しかしそれはわかりません。私も戦争前に漁業協定をずいぶん結びました。結局暫定協定をして一年々々ずったためもございます。だからそれはあり得ることです。あり得ることですが、取りきめはしよう、こういうのであるから取りきめをしたらよかろうと思う。そうして取りきめをした上で、向うが変えるべきことは国内的に変えなければならぬ、これは当然のことであります。
  56. 穗積七郎

    穗積委員 これに対する解釈は、あなたは時間がないから、あと事務当局の方にお尋ねすることにして次に進みますが、最近イスラエル、シリア等が日本から武器弾薬を買いたいという動きがあるようです。これは時間がありませんから、私の意見は申し述べませんが、これに売ることを許可する、または特許品だという名目によってアメリカの許可を条件としておるかもしれぬが、アメリカが許可しようがしまいが、日本政府の独自な判断においてこういう武器を他国に売りつけて、しかも武力による国際紛争が起きようとしている危険なところへさらに爆弾を投下するようなことは、日本の外交政策としてはなはだ間違ったことであると思うが、念のために外務省の御意見を伺っておきたいのです。
  57. 重光葵

    ○重光国務大臣 今中近東のイスラエル、シリアの問題になっておるのでございますが、完成した兵器を売るような話はないそうであります。しかしそれはそれにしておいて、今言われておる全体の大きな政策問題ですが、私はお話の趣旨はきわめて御同感でございます。こういう問題は慎重にしないといかぬと思います。しかし問題は、完成した武器とか材料とかいうのは、専門的に言えば、どこまでが完成とかどこまでが材料ということになりましょう。しかし材料を売るということは別として、完成した武器を売るという話はないそうであります。そこでこういうことは慎重にしなければならぬという御趣旨は同感でございます。ごく簡単にお答えいたします。
  58. 穗積七郎

    穗積委員 われわれの聞いているところでは弾薬、弾丸、火薬。これは完成品ですよ。この最近の動きはないのですか。
  59. 重光葵

    ○重光国務大臣 向うからどういう商談の持ち込みがあったかという一々のことは、実は私自身は存じませんから申し上げられません。それは関係の係の者から申し上げて差しつかえございません。しかしそういう問題については御趣旨のようにきわめて慎重な態度で取り扱っておるということは、はっきり申し上げることができます。
  60. 穗積七郎

    穗積委員 それでは本日の新聞に報道されております日本のそういう業者が場合によれば売りたいという希望を持って、外務省を通じてアメリカ政府にこの砲弾、弾薬を売ってもいいかということをなぜ許可を求められたのでしょうか。そこでアメリカ政府から差しつかえないという返事があったということを外務省を通じて業者に伝えておるようですが、その事実はございませんか、ありますか。重大な問題ですよ。あなたがおっしゃるように初めからそういう動きがあるなしにかかわらず、この問題は重大な問題であるし、日本の平和外交政策としてはこれは好ましからざることであるというふうにお考えになっておるとするならば、そういう予備的な行為すら私はあり得べからざることだと思う。
  61. 重光葵

    ○重光国務大臣 今聞くところによりますと、パテントの関係や技術的関係で、関係国と話をしたことがあるそうでございます。けれども全体の問題としては、今のような趣旨で慎重にこの問題を取り扱うということを申し上げたわけでありします。
  62. 穗積七郎

    穗積委員 ちょっと不十分ですからあとで法眼参事官に具体的にお尋ねいたします。  最後に大臣にもう一点だけお尋ねしたい。それは先ほど松本君からもお尋ねがありました、最近の日本の旅行者に対するパスポートの制限の問題でございますが、元来旅行というものは自由であるべきなのです。旅券法の積神というものはそういうことなのです。それを何か政府が許可権を握って、そして許可をしないのが原則であるかのごとく、そういうような態度をとることは、旅券法並びに憲法の自由権の基本的な解釈において間違っております。そうしてその後聞いておるというと党内事情もあって、外務省というよりはむしろ党内事情に動かされてこれをきめ切れない。従ってパスポートを要請しておる者も、われわれの見ました資料でも非常に膨大なものがここに山積してしまっておるということです。それで最近聞くというと、関係事務当局の問において、一応客観性を持たせなければいかぬだろうということで、客観的な基準を話し合っておられるようでございますが、それができたとするならば、どういう基準によってそれをおきめになろうとするのか。先ほどあなたは政治的に利用される危険のある場合には考慮すべきだということは、これは一つの標準として言われたのだと思う。それだけでございますか、いかがでございましょうか。もう少し合理的な客観的な、そして具体的な基本方針を一つ示していただきたいと思うのです。
  63. 重光葵

    ○重光国務大臣 法律または憲法の精神によって、旅行の自由ということは認めなければならぬということはその通りだと思います。その通りであるとともにまた旅券を発行する場合において、発行するかしないかという権限がどこにあるかということもまた法律のきめるところでありますから、それはそれによってやるがいいと考えます。それならば今までどういうふうに考えておるかというと、先ほど申しました通りに、また今申された通りに、政治上利用されるようなことにやるということは、双方の点から考えてみても、あまりよくないことだから、それはやらぬ方がよかろうということが従来頭にありました。そこでそれを申し上げたわけでございます。はっきりと法規的にこれを律することが適当ではなかろうと私は考えておる点も、申し上げておる通りであります。しかしながら取扱いの標準をどういう工合にするかということを検討して、政府部内で考えるということもまたこれは必要であろうと考えます。それが具体化して参りましたならば、大よそのことは発表してもいいのじゃないかと私は考えております。
  64. 穗積七郎

    穗積委員 発表したければならぬ。発表する義務があります。基本的な人権に関することですよ。外交問題ではありません、交渉問題と違いますから、政治的に利用される危険がある云々というようなばく然とした幅の広いというか、ある意味では緩和のように見えてある意味では最もきびしいそういうきめ方というものは不当きわまります。こういう基本的人権に関するものは、刑法における罰則規定のごとき列挙主義であって、しかも実に疑いの余地のない、政府がかわり、またはそれを取り扱う行政官の思想的または政治的立場というものを乗り越えて、それに左右されることなしに客観的に、だれがやっても不公平、へんぱがないような取りきめをすべきことであって、政治的に利用されるなんというようなばく然としたきめ方で基本的人権をやるということは、治安維持法の最初の条文より以上に、私は基本的人権を弾圧するものだと思うのです。そういうばく然としたものではわれわれ納得することができません。旅行の自由というものは国民の権利です。それを政府自分の政治的な立場、思想的な立場あるいはそのときの国内政治情勢から見て、わが党わが内閣に不利であるというような観点から、政治的に利用されるおそれがあるなんというばく然としたもので、こういう基本的人権を一方的に政府がこれを取り締ったり制限をしたり、そんなばかばかしいことは、封建社会においてでなければ考えられないことでございます。ですからもう少し明確な条件を示していただきたい。
  65. 重光葵

    ○重光国務大臣 御答弁は先ほどの通りでございます。基本的人権の尊重をしなければならぬというそれは私は全然御同感、その通りであります。しかし許可権が政府にあるということも……(穗積委員「法律の命ずるところによってだよ。」と呼ぶ)それだから、法律の命ずるところによって、基本的人権を尊重しつつやらなければならぬ……(穗積委員「勝手なことをやるからいかぬ。」と呼ぶ)勝手なことをやるということはだれも言いはしない。基本的人権を尊重しなければならぬと言っておる。しかし許可権はあるのであります。それだからそれは同じことを議論しておるように思う。
  66. 穗積七郎

    穗積委員 なぜ許可しないのです。今までの例から見て当然用さるべき性質のものが、なぜこのように山積しているのです。
  67. 重光葵

    ○重光国務大臣 それは検討すべきだというのです。
  68. 穗積七郎

    穗積委員 どういうことで検討しているのですか。――それじゃ時間がありませんから私の大臣に対する質問は一応打ち切ります。
  69. 前尾繁三郎

  70. 岡田春夫

    岡田委員 大臣に伺いますが、さっきの重要な点で、あなたの御意見を一点伺いたい点は、鳩山総理が大阪において、日ソ交渉の今度の漁業問題について必要がある場合には、漁業の調査機関あるいはそういう事務所を設けてもいい、こういうように言ったというのであるが、これについては大臣はどうなんですか。賛成なのですか、反対なのですか。
  71. 重光葵

    ○重光国務大臣 それは一つ出てきた場合に十分に考えようと思っております。
  72. 岡田春夫

    岡田委員 あなたは反対されたということを新聞に伝えられておるが、あなたは反対された事実があるのですか。
  73. 重光葵

    ○重光国務大臣 私は交渉の上で考えよう、こう思っております。
  74. 岡田春夫

    岡田委員 先ほどのお話を伺っておると、交渉前にこういうことを言うのは適当じゃない、こういう点を言われました。しかし外務大臣が今度は、そういうものを設けるのは今あまり賛成できないということを、あなたが新聞の上で言っているのだが、そういうことも交渉のじゃまになるのじゃないか、そういう点をお考えになりませんか。
  75. 重光葵

    ○重光国務大臣 それはちょうどプラス・マイナスでいいと思います。
  76. 岡田春夫

    岡田委員 プラス・マイナスでいいというようなことは、日本の外務省がいかにふらふらしているかということを表わしている。あなたの政策と鳩山総理大臣の外交政策とが、全然違うということを暴露している。そういうことは、プラス・マイナスでよろしいなんということが国際的に聞えてごらんなきい。笑われますよ。笑われるのはだれだ。外務大臣が笑われるだけですよ。それでもいいですか。
  77. 重光葵

    ○重光国務大臣 私はあまり笑われないと思っています。それは交渉の前に、内容について責任者が、外務大臣がいろいろ言うわけにいかぬ。
  78. 岡田春夫

    岡田委員 総理大臣は言ってもいいのですか。そこで私伺いますが、先ほど松本委員質問に関連して、一般的な漁業協定が結ばれるというようなことになれば、これは制限された意味でも国交回復になるのではないか。こういう点について明確な実は御答弁がない。これは国交回復にならないのではないかというような節の御答弁があったようですが、そういう意味ですか、どうなのですか。
  79. 重光葵

    ○重光国務大臣 幾ら説明しても了解しない、しないと言われるわけですが、私のなには先ほど申した通りであります。特殊の問題について協定が、取りきめがあっても、それは全般的な国交回復にならない、こう申しております。それを何度言ったらわかるのか。
  80. 岡田春夫

    岡田委員 何度言ってもわからないのかとおっしゃるから、私は聞いているんだ。というのは、この前こう言っているじゃありませんか。日中の貿易問題その他について、領事を置いてもいいということをその当時鳩山総理大臣は言った。ところがあなたの方は、領事を置くのは困ると言った。代表部を置く程度ならばという話も出た。鳩山総理大臣は、代表部ならば置いてもいいじゃないかと言ったのだが、これについて保守的な外務省は、代表部を置いてもいいが、外交特権を設けるわけにいかない。その理由として、そういうことをやったら、国交回復が事実上できてしまうからだと言った。今度の場合だって、漁業事務所その他を置いたならば、事実上の国交回復の形になるじゃありませんか。あなたの言っているあのときとこのときと論拠が違うからだ。だから私は言っている。あの場合においては、代表部その他のものを貫いたならば、国交回復になるのだ。だから反対だ。今度の場合は、漁業代表部を設けたらば、当然その裏返しの言葉として、事実上の国交回復というものを認めたことになるのじゃないか。あなた自身が論理矛盾、きか立ちしている論拠を持っているから、そういうことになる。
  81. 重光葵

    ○重光国務大臣 どうもさか立ちしているのは私じゃないような気持がします。そこで調査部か何か知りませんが、そういうものを設けるのはどこからどういうあれで……(岡田委員日本の新聞に書いてある。」と呼ぶ)日本の新聞に出たから、それが交渉の上でどうこうというわけじゃない。それでいかにもそういうものを置いて国交回復である、こう言いたいという御議論をしきりにやっているようだが、それはそういうわけにはいきませんと言っているだけの話です。(岡田委員「なぜいかぬ、日中の場合と法的効果は同じじゃないか」と呼ぶ)同じじゃない。そこがおかしなところである……(岡田委員「違うなら言ってごらんなさい。」と呼ぶ)日中の場合は、なぜ違うかというと、中国を論ずるときには、日本は中国政府承認している。だから中華人民共和国かなんか知らぬけれども承認することはできぬから、そこの問題が困難である、こう言っている……(岡田委員「形式的なことを言うからいかぬ」と呼ぶ)形式的なことではない。そういうことがわからぬからきか立ちしているんだ。
  82. 岡田春夫

    岡田委員 まだあるけれども、留保します。
  83. 穗積七郎

    穗積委員 ちょっと下田条約局長にお尋ねしますが、まだ国交が回復していない国と国との政府間において、漁業協定なり貿易協定なりが正式に締結された場合には、これは黙示上の国交回復になる。少くとも戦争状態終結の状態はお互いに黙認した結果になると解釈するのが、私は国際法解釈の当然な論理であると考えますが、条約局長の一般的な条約に対する解釈について御見解を伺いたいのでございます。
  84. 下田武三

    ○下田政府委員 かりにソ連と日本の間に漁業条約が締結されましても、国交回復には全然ならないと思います。当下国が特別のそういう合意をすれば別でございますけれども、現在のところ、日ソ両国と毛平和条約発効の日をもって国交回復の日とするということに了解ができておりますから、この了解を変更しない限りは、そうならないと思います。  そこでもう一つ問題が、国交回復とは全然別個の問題である戦争状態終結の問題ということになりますと、これは全然別のことでございまして、たとえば日本とインドとの間には戦争状態の終結に関する交換公文をやって、そのあとでまた国交回復というのはディプロマティック・リレーションズの回復でありますが、二つの交換公文をやっておるように、これは全然別個の問題でございます。そこで戦争状態の方は日ソ間でどうなるかと申しますと、これは現にパチパチをやっておる戦争状態の場合でも、部分的に戦争状態をちょっと終止する。たとえば捕虜や傷病者の交換をするために使いをやったり、あるいは協定すら結ぶということもございます。その限りにおいて、その分野においては戦争中でありながら戦争状態を一時終止させるということもございます。そこで漁業協定ができますと、戦争状態は、漁業に関する限りは部分的に終結したということになると思います。つまり現在はパチパチがあるわけでもなくて、紙の上の戦争状態だけでございます。この紙の上の戦争状態も、漁業に関する限りは終結した。従って公海において日本の船とソ連の船とが出合いましても、これはもはや敵、味方の船じゃない。漁業に関しては協定があって、その協定のもとでお互いに漁業に従事しておる船がやったということでございますから、戦争状態の方は、漁業に関する限りは、この問題に限って戦争状態は終止するということが言えると思います。
  85. 穗積七郎

    穗積委員 国交回復の問題は、日ソ間の具体的な例においては講和条約でいこう。たとえば戦争状態終結宣言とか、いわゆるアデナウアー方式とか、そういうのでなくて、本格的な講和条約、平和条約締結の方式をもっていこう、こういう話し合いで今まで進んできておったわけです。ところがそれが行き詰まっておる状態において変則になってきたわけですね。お互いにそういう合意の上でそういう目的でやっていたのだが、できればいいのだができなかったという場合に、時間的にそれより以前に、今言いましたような個別の条約をどんどん積み重ねてでき上っていく。そうすると、一体国交回復という時期はいつからあとと判断するかという問題が出てくると思うのです。すなわち暫定的または部分的というような言葉が使われてくると思いますが、いずれにしても両国の国交回復というものは、抽象的、精神的な問題だけではなくて、具体的に貿易なり人の往来なり、あるいはまた漁業の問題なり、そういういろいろな他の問題が積み重なって、それのアッセンブルされたものが国交全般になるわけであって、国交というものは単に抽象的なものでなく、具体的な一つ一つの実益と内容を持っておるわけです。そういうものがどんどん積み重ねられてくる、漁業協定の次には貿易協定ができる、あるいは通商航海条約が結ばれる、あるいはまた捕虜に関する釈放の協定が結ばれる、そういうような形でいったならば、一体いつが国交回復になり、いつからをもって国交回復と言われるわけですか。ある意味における国交回復ではございませんか。第一番の漁業協定だけが締結された場合におきましても、これはもう少くとも、両国間における戦争状態は終結された。漁業関係においてのみ戦争状態が終結されたという考え方ではなくて、そういうことを相手国の政府承認し、相手国との間において友好、協力関係をやろうという基本的全般的な態度に立って、初めて漁業協定というものがその一角として生まれてくるわけでございますから、それから演繹いたしますならば、その基本的な両国間の態度というものは、戦争状態を終結して、明らかに国交回復を意図し、その第一歩を踏み出した、こう解釈して私は差しつかえないと思う。またそう解釈しなければ、論理上はなはだしぐ矛盾しておる。今度の日ソ間の問題においては、それは平和条約をもってばっさりときれいに行きましょう、戦争状態終結宣言とか、あるいは個別的な単独協定を結んで積み重ねていこうというのではなくて、一ぺんきれいさっぱりと行きましょうということで申し合せておっただけのことで、国交回復への道としてはそれも一つの方法である。だからそれは一体どういうふうに解釈なさるのか。私の論理の方がどうも客観性があるように思いますが、いかがでございましょう。
  86. 下田武三

    ○下田政府委員 国交ということは何かと申しますと、これは御承知のように英語ではノーマル・ディプロマティック・リレーションズと言っておるわけでございますから、普通は大公使を交換するとか、あるいは大公使が行くまでの間は第三国における大公使が話し合うとか、あるいは直接外交機関同士で、電報なり文書なりで外交上のおつき合いを始めるということが国交回復でございます。でございますからそういうことの明確な意思表示がなければ国交は始まりません。日本も平和条約の当事国以外とは一々国交回復に関すろ交換公文なり何なりをもって、今度の戦争のあと国交回復をしたのでございますから、そういう明確な意思の合致がなければ、国交回復ということは起り得ないわけでございます。それまでに漁業なら漁業の問題で交渉が起るということは、デ・ファクトの、事実上の交渉が起るわけでありまして、これ自体は国交回復でも何でもないわけでございます。
  87. 穗積七郎

    穗積委員 御答弁不十分で、もう少し実は伺いたいのですが、ほかに質問者もございますし、私どもも四時から予定しております用務がございますから簡潔にいたしますが、実はさっき岡田委員もちょっと触れられたと思うが、日中間においては貿易をどんどん促進しよう、総理大臣みずからがそれに支持と協力を与えようという態度をとった。ところがその方法については、両国政府間で貿易協定または通商航海条約というようなものを結ぶことは、事実上の国交回復になるからそれはできないのだ、だから当分の間は相手側は政府であっても、こちら側は民間で結んでもらいたい、いわゆる民間協定にしてもらいたい、それに対して間接的に政府協力する、支持を与えるという間接方式の形をとったわけです。その問題の所在点は、両国の利益のために他に先んじて貿易そのものを早くやりたい。漁業についてもそうです。そういうことであったが、それをやると国交回復しなる。さらに今度は民間協定で結ばれました貿易代表部を置く場合に、それに、外交官とは存わないけれども、外交官に準ずるような最大限の特権を与えてもらいたいということに対しても、これを認めることになると、国交回復の事実上の積み重ねになるからというので、これを拒否してこられた。その論理とはなはだしく矛盾するわけです。その点を注意を申し上げておいて条約局長の再考を促しておきたいのでございます。それ以上の問答は次の機会にいたしたいと思います。  法眼参事官にお尋ねいたしたいと思いますが、先ほど私がお尋ねいたしましたイスラエルまたはシリアからの武器または弾薬、現在われわれの聞いておるところでは弾薬がおもなようでございますが、これらに対する事案上の動きが相当あったのじゃございませんか。その事実をもう少し明確にしていただきたい。できるならばあなたは責任者として、先ほど重光外務大臣が言われたように、この問題は単なる商売の問題ではなくて、非常に外交上の重大な意味を持っておるものであるということで慎重にしたければならない、むしろこれを許可すべきでないという御意向が明らかにされたわけですが、そういうことでありますならば、これから今まで起きたことの報告をしてもらって、それからこの二国のみならず、他の国からもいろいろの動きがあろうと思うが、そういうものに対して、一体これからどういうふうに処置されるつもりであるか、その二点についてお尋ねいたしておきたいと思います。
  88. 法眼晋作

    ○法眼政府委員 お答えいたします。この問題はかつてイスラエルの武器輸入団と称するものが来たという点に関連いたしまして、当委員会におきまして、いろいろの方から御質問がございました当時、御説明申し上げた通りでございます。その説明がこの問題に対してもまた当てはまるわけでありまして、日本はいかなる国に対しても公平な立場をとるわけであります。従って今回取り上げておる問題に対しましても、先ほど大臣が答弁されたようなことと同じ立場をとるわけでございます。ただいろいろなものが来て、いろいろな方面で商談を進めておるということにつきましては、これを逐一われわれは知るわけにはいきませんので、当時イスラエルの場合につきましても、御答弁申し上げましたように、そういうことから武器といわず、いろいろな商談が進んでいくのでありますから、これは向うから来れば広く日本のその方面と折衝するがよろしいということは言うまでもないわけでございます。ただ武器というようなことになって参りますと、これはおそらくは許可品目という関係から官の許可を得なければなりませんから、われわれはこれを知り得るというわけでございます。それからその後どういう処置をとるかということにつきましては、先ほど大臣から御説明申し上げた通りであります。
  89. 穗積七郎

    穗積委員 先ほど基本方針が明らかにされたので、われわれも当然と思いながら、いささか安心したわけですが、そうでありますならば、たとえば今度の三菱商事は、アメリカの特許品――パテントの品物でもあるというので、事前にアメリカ政府の意向を聞いてみたということであるならば、これは直接政府の責任でもなければ、場合によれば勝手に聞くのですから、政府の関知せざる場合もございましょう。ところが今度われわれが聞いておるところでは、外務省を通じて向うに聞き、外務省を通じて向うから返事があった。そうなると、すぐこれで商売を許可するという意味ではないけれども、場合によるならば許可してもいい、これは禁止はしない、少くともはっきり禁止しておるのではないということだけは、外務省の態度として推測されるわけですが、そういう誤解を招きますから、こういう措置は私は不適当だと思う。ですから今までのことについては、必ずしも私は責任をこれ以上追及はいたしませんが、こういうような政府の意向について疑いを持たしめたり、または特に関係諸国、イスラエルにいたしましても、武器を使って戦争しようとしておる相手国、シリアにしても同様でしょう。それらの国は日本外務省のこういう措置に対しては、実ははなはだしく疑惑と不快の感を持つことは当然だと思うのです。そういう点もございますから、今後は一つ慎重にしていただきたいと思いますが、そういうふうに希望通りに措置していただけるものと理解してよろしゅうございますかどうか、念のためにもう一ぺん確認しておきたいと思います。
  90. 法眼晋作

    ○法眼政府委員 お答えいたします。アメリカの意見を聞いたということにつきまして、私は実は詳しくはまだ報告を受けていないので、ここで確定的に申し上げることはできないのであります。思うに、規格であるとか特許であるとかいう問題は、武器に使う場合もありましょうけれども、これは武器のみならず、同じことがほかへ使われるということもあり得ようかと思いますので、そういう関係から問題が起ったのではなかろうかと推測しております。しかしこれはよく調べまして、事実を確定次第お答えしようかと思います。
  91. 松本七郎

    松本(七)委員 先ほどの穗積さんの質問に関連して下田さんにお伺いしたいのですが、この前四月十二日の読売新聞の夕刊ですが、「漁業協定できても国交回復にならぬ外務省で結論」としてここに報道されたのです。一々読むと長くなりますから全部は読みませんが、「戦争状態が消滅し国交回復の法律的効果が生れるということは今回の場合はありえない。何故ならば現在の日ソ両国間の松本、マリク両全権の間で国交回復のための平和条約締結のための交渉が継続されているのであり、とくに両全権の間には条約甲案上の懸案解決の後に国交回復を行うとの合意が成立している。」これは外務省の意見として間違いありませんか。
  92. 下田武三

    ○下田政府委員 間違いございません。
  93. 松本七郎

    松本(七)委員 そうするとこの合意が成立しているというのは、一体何を根拠にしてそういうことが一えるのですか。
  94. 下田武三

    ○下田政府委員 合意は、紙ではないのでございますけれども、日ソ国交調整に関するごく初期に、実はソ側の方から意外にも早く、種々の懸案解決に関するソ側の意図を盛った平和条約案が提唱されまして、いわゆるアデナウアー方式でなくて、両国の懸案解決条項を網羅的に規定したところの平和条約でいこう、つまり完全なる平和条約方式ということを実は向うの方から言ってきて、わが方ももとよりそれに異存がないので、交渉の初期から実はその建前で進んできたわけであります。
  95. 松本七郎

    松本(七)委員 そうすると、その点についてはイニシアリングでもなされてあるのですか。
  96. 下田武三

    ○下田政府委員 別に文書はございません。交渉の過程における両国間の……。   〔「交渉の方法の問題だ」と呼ぶ者あり〕
  97. 松本七郎

    松本(七)委員 それは交渉の間においてこういうことでやろうという単なる話であって、私は合意が成立したという表現は不当だと思う。もしもイニシアリングをつけて両全権の間に文書でしたとしても、こういう問題は国会で最終的に承認しない限りは、合意が成立したということは言えないと思う。そういう表現は非常に行き過ぎの言葉だと思う。
  98. 下田武三

    ○下田政府委員 国家間の合意は、条約とか協定になる合意はむしろ少いのでありまして、交渉の過程において一歩一歩合意を積み重ねて、それであらゆる点についての合意が成立した場合に、初めてそれを文書にしまして条約ができるわけなのであります。これは交渉の段階における基本的な合意でございます。
  99. 岡田春夫

    岡田委員 関連して。それは条約上の問題ですが、結局たとえば原子力協定の場合でも、仮調印をするということのいわゆる合意に到達したということは、イニシアルして初めて客観的に成立することなのであって、申し合せなり口での話し合いが、合意に達したという法的な客観的な意味をなしているとは私は考えられない。これはなるほどあなたのおっしゃるように、話し合いを進める場合において合意の話はあるでしょう。これは交渉の方法なのであって、合意に到達したということを少くとも文章上で明らかにした限りにおいて、何らかの客観的な法的な裏づけがあった場合に、初めてそういう表現を使い得る。たとえばマリクと松本全権が、あしたは一つうまくやれば全部きめてしまいましょうか、ああそうですね、きめましょうと言ったときに、あなたの言い方からいうならばこれも合意だ。けれどもあしたになったらまだ全然きまらない、これは合意じゃないですよ。口の話の上で、あしたはきめましょう、賛成ですね、これもあなたの論拠から言うならば合意です。ところが今のあなたの話を聞いていると、初めのうちに平和条約の線でいきましょうという、こういう交渉方法についての進め方についての話し合いに合意があったというだけであって、これ自体は決してそういう問題について完全な合意に到達したということではない。これは方法の問題なのです。それはどうしてかといったら今言ったでしょう。あしたきめましょう、ああそうですね、きめましょう、それと同じことじゃないですか。これは交渉の方法の問題です。こういうように外務省の正式見解として発表する限りにおいて、合意に到達したというのは、何らかの客観的な法的な裏づけがない限りにおいて――それがなしにこれが書かれておるとするならば、これはいかに意識的に、何らか日本の外務省の立場を強弁するがために言わんとしておるにほかならぬと私は思う。どうですか。
  100. 下田武三

    ○下田政府委員 法的の合意というつまり条約式の合意ではないことは明らかであります。しかし交渉の過程において方式の問題というのは一番基本的な問題でございます。出発点です。ですから交渉方式について両国の合意と言って悪ければ意見が一致したということであります。
  101. 穗積七郎

    穗積委員 その問題は、まだ問題が残っておると思うから、やっていただきたいし、私もやりたいと思うが、私は先に言ったように時間があるしするので、矢口局長に、さっきのパスポート許可の問題に対しての自民党の中から出てきた意見で、この前いつでしたか口付ははっきり記憶しませんが、閣僚会議で実はそういう申し合せがなされたか決議になったか知りませんが、そういうことから一ぺんあの線に沿って、基本的な条件をきめようというような空気になったようです。それに対してもう少し具体的な御報告を一つ最初にしていただきたいと思うのです。
  102. 矢口麓藏

    ○矢口政府委員 基本的な条件というものを申せというような御指示でありますが、今までの経緯を率直に申し上げる自由を私が持たないことをはなはだ残念に存じます。これは上司並びに上の方の意向によりまして、当分の間秘にしておけという指令がございますものですから、はなはだ恐縮ですが申し上げるわけにいかないのであります。ただどうなっておるかというような大体の流れは、私は申し上げる自由があると思いますので、それでよろしゅうございましたら、申し上げさせていただきます。  実は最近中共並びにソ連方面への渡航希望者が相当ふえて参りまして、最近われわれが受理しております数でも約二有名前後に相なっています。二百名ちょっと欠けております。もし詳細を御希望でしたらお話し申し上げますが、そういうふうに非常にふえて参りまして、どうも旅券法の趣旨に合致しないのではないかというような意見が上司の方からございまして、それでもう少し渡航の条件といいますか、ただいまお話のお言葉によりますと、基本的な条件をきめてはというような意見がございまして、それで御推察の通り政府部内、閣僚会議、それから事務当局との間でそういったふうなものを今作りつつある途中であります。でありますから、結論は今までよりも制限的な方向に向うということは申し上げ得ると思います。
  103. 穗積七郎

    穗積委員 だからその経過報告でもできませんか。事務当局の間で話し合っておる中間報告でもできませんか。
  104. 矢口麓藏

    ○矢口政府委員 その話し合いといいますか基準といいますか、制限の内容を申し上げろということでございますならば、先ほど申し上げました通り、私遺憾ながらその自由を持ち合せておりませんので、内容には触れるわけにいかないと思います。
  105. 穗積七郎

    穗積委員 矢口局長に申し上げるまでもありませんが、この際注意を喚起しておきたいと思うのです。というのは、行政府の事務当局というものは、法律によってのみ動くものであって、従ってそのときの政府がどうであろうと、そのときの大臣の考え方がどうであろうと、または与党の中でいろいろな政治的な勝手な要望や解釈があろうと、やはりあくまで法律の精神と法律の明確なる条文に従って、これを正しく解釈して、その通り実行すべきものなのです。ですから今言うたような議論が――私は旅券法の基本精神と条文を無視するような、これを圧殺するような意見すら、実は与党の内部に出ていることを仄聞して、私ははなはだ遺憾に思っておるのです。ですからその場合におきましては、事務当局でどうせ案を作らなければならぬ。そこでもし誤まった命令が出るならば、これは正義に立つ事務当局としては、そのような要望は拒否すべきものである。その基準はあくまで国会で作られましたこの法律に根拠を置くわけでございます。従ってこれから審議されるということでありますならば、あなたのお立場もありますから、今日はこれ以上深追いをして追及することを差し控えまして、早くそれがわれわれに示されることを期待いたしますが、その場合におきましては、あくまで主観的なばく然としたそういうようなものでこれを規制すべきものではなくて、明瞭に旅券法に根拠を置いた合理的なものでなければならぬということを、私は特に第一点として注意を申し上げたい。  第二は旅行者の目的でございますが、たとえば近く出て参りますメーデーの招待のごときは、五月一日までにかの地へ着かなければ意味がないのです。そういうような時間的な制限を受けました旅行等については、そういうような上司云々などというようなことでこの問題を拒否して、そうしてむしろ法を曲げて、法を圧殺して、そして旅行者の基本的な自由権を侵害するというようなことは、これは私は職権の乱用だと思うのです。その時間の問題等毛第二の御注意として申し上げて、あなたの良識と正義によって一つ善処していただくことを強く要望いたしますとともに、この問題は外務省のあなたや遠藤課長の手元だけではなくて、各関係省との間の打ち合せ等もありましょうから、事務当局の方にも外務委員会で強くその要望が出たことをお伝えしていただいて――これは与党野党、多数少数の問題ではございません。正論だと思いますから、一つその信念に立って、あなたの御意見としてもつけ加えてお伝えいただいて、誤まりなきを期していただきたいということを強く要望いたしますが、そういう基本的な鮮度についてのあなたの御所見はいかがでございましょうか、お尋ねいたしたいと思います。
  106. 矢口麓藏

    ○矢口政府委員 第一の点は全く同感でございまして、もちろん制限事項を設けるにいたしましても、先ほど重光大臣から答弁がありましたように、法律の命ずるところに従いまして、その範囲内において取扱いの標準をきめるべきものだと信じております。  それから第一点のメーデーに間に合うようにということにつきましては、これは旅券発給技術の問題でありますが、極力その線に沿うように現に処理してございます。でありますから、メーデー関係のものを出してもいいという基準がきまりますれば、旅券の発給は時間的に間に合うように、特別の措置を講じつつあるということをお伝え申し上げます。  第三点の各関係軍務的に伝達しろということにつきましては、機会あるたびによくその趣旨をお伝えいたしたいと思います。
  107. 森島守人

    ○森島委員 条約局長にお伺いしたいのですが、河野さんが二十一日に出発して行くということは先ほどお話の通りですが、河野さんは国務大臣であるとともに議員です。議員が政府代表として行く場合には、両院の一致した議決が必要だと私は信じておりますが、いかがでしょうか。
  108. 下田武三

    ○下田政府委員 国会法のことでございまして、私権威を持って御答弁する立場にもまたないと思うのでございますが、ただ国務大臣になられますと、包括的に所管事項についてはいろいろの行動をおとりになることを、法律ですでに認められているのではないかと思うのであります。従いまして農林大臣の所管であられる漁業の問題について外国と話をされるということも、すでに農林大臣に任命されたことによって当然包括されているのではないかというように存じます。
  109. 森島守人

    ○森島委員 その点につきましては、やはり外務省員として行かれる――そうなりますと、外務省としても関係があると思うので、もし国務大臣あるいは農林大臣として――所管が違うから私は最後的な回答は求めないつもりですけれども、お考え願いたいのは、農林大臣として行く場合には、何らそういう制限を受けないのだという法的な根拠がなければならないと私は思う。この点も外務省としては手抜かりのないように措置をなされることを希望しますから、大臣にお伝え下すって、国務大臣として自由に行けるのだというなら、その法的な根拠を明らかにして、問題の起らぬようにするのが外務省としてとるべき措置だと私は考えるのです。
  110. 岡田春夫

    岡田委員 今の問題は条約局長お話をしてもしようがありませんが、条約局長一つお聞きいただいておきたいと思うのは、国会法では国会議員が長い間休むという場合には、請暇を求めなければならない、そういう点からも問題があるわけです。そういう意味ですから、この点はこれ以上申し上げません。  それから法眼参事官に伺いますが、せっかく重大な使命をお持ちになって近いうちに御出発になるのですから、行かれる前にこういうことを申し上げるのは、あるいははなはだ失礼かもしれません。心に残ることかもしれないけれども、はっきりしていただきたい点は、実は先ほどの兵器輸出の問題です。この前私の質問に答えてあなたはイスラエルから来ているのは軍人ではないということをはっきり御答弁になったように記価していますが、これはもう間違いないとあなたお考えになっておりますかどうか、その点お伺いいたしたい。
  111. 法眼晋作

    ○法眼政府委員 当時調べてさらにもう一回御返事すると申し上げておいたのいありますが、御返事申し上げるその機会がなくて今日に至ったのでありますが、これはやはり入国管理手続、旅券面その他から推して、これは軍人ではない、こう申し上げているわけであります。ただしそれがイスラエルの国内でどういうことになっているかということは、どうも知る由がないことでございますので、われわれは羽田で向うが申告されたことによって、これは軍人ではないということを判定しておるわけであります。
  112. 岡田春夫

    岡田委員 それでは現在のところは間違いないとお考えになっておるのですか。これがもし違っておったら、あなたはどうなされますか。
  113. 法眼晋作

    ○法眼政府委員 われわれは、現在の公けの手段でもって知ったところに従って、そう申し上げているわけでありまして、これはしかしイスラエルへ照会する手もありましょうし、本人の身分を確かある方法もあるでしょうが、それは今まではやっておらないので、向うが申告した旅券面に従ってシビリリンである、こう申し上げているわけであります。
  114. 岡田春夫

    岡田委員 それだから私伺っているのですが、同じ役所の中で、この人は軍人であるということを証明させようと思ったら、私は今でもできるのです。その人に来てもらえば……。現実に通産省に入ってきたときには、陸軍中佐の正式の軍服を着て入ってきている。二名ですよ。名前はあなたに申し上げた通りですから、御存じでしょうが、これは軍人なのです。明らかに陸平中佐です。こういう事実がもしあった場合には、あなたのお調べになったのは誤まりであったとお考えにならなければならぬと思うのですが、この点いかがでしょう。
  115. 法眼晋作

    ○法眼政府委員 しかし私は、旅券面その他によって、羽田の入国管理当局から報告を受けて、その旅券面ではシビリアンだ、こう申し上げているわけであります。従ってその人たち国内でどういう服装をして歩いておったかということについては、私は実は調べが及ばないというのが事実であります。
  116. 岡田春夫

    岡田委員 これはあなたは行かれる前に、お忙しいでしょうけれどもお調べ下さい。これはあなたがおられなくとも、外務省として正式に答えていただかなければならぬ。参事官がおられなければ、だれか適当な人にお答えいただいてもけっこうです。ということは、もしシビリアンなのに軍服を着て入ってきたというなら、これまた問題だろうと思う。問題だというのは、軍人の扱いとして通産省が扱っているのだから……。それからまた逆に軍人であるにもかかわらず、法的にシビリアンとしての手続をしたというのは、これまた問題だと思います。だからそういう点からいって、はっきりしていただかなければならない。  そこでもう一点伺いますが、あなたは兵器関係のことを、あるいはおやりになっているなら御存じだろうと思うが、むしろ条約局長の方が御存じかと思いますけれども、ことしの二月に、イスラエルから軍人が来るからよろしくあっせんをしてくれということが、日本の外務省にきているはずです。正式公文書がイスラエルの政府からきているはずです。御存じありませんかどうですか。
  117. 法眼晋作

    ○法眼政府委員 それは私はちょっと全部を記憶しておりませんけれども、どういう文書を、どういうふうにして御存じになったのでしょうか、ちょっと参考のために……。
  118. 岡田春夫

    岡田委員 それは私がここで言う限りのことじゃない。そういう点がもしおわかりにならなかったならば、あなたはお立ちになるならあれですから、外務省の政府委員あるいは説明員から、あなたがおいでにならなくても、外務省としてはっきりお調べの上で御報告願いたいと思うのですが、この二人は正式の軍人である。それからこの人が来る前に、たしか二月か一月の末ですが、イスラエル政府から正式に日本の外務省に――イスラエルは大使館か公使館か知らぬが、これを通じて、日本の外務省に、軍人が来て兵器の輸出についていろいろやりますから、あっせんを願うという書面、たしか書面のはずですがきております。これをお調べ願って、適当な機会に御答弁願いたいと思います。
  119. 法眼晋作

    ○法眼政府委員 御指摘の点は、調べてできる限り御返事をしたいと思います。ただしこれは二十一日までに間に合わないかもしれませんから、その節は関係の課長その他をして説明をさせます。ただし、繰り返して申し上げますけれども、われわれのところは先方の申告によって実は判断をしているのでございまして、その人たちがいかなる服装で、またいかなる意味合いで国内で動いているかということは、実はわれわれは調べが及ばぬ、こういう状況でございます。それからまたあっせんの文書その他については、実は私は承知しないので、これは調べてみますけれども、調べやすいために、たとえばどういうふうであるという、そういうヒントでも得られれば大へん幸いだと思います。
  120. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、あまりそういうようにないしょにされるなら、ほかの役所に具体的にその書類がきていることも、あなたがおられる間に、はっきりお知らせしてもいいと思います。そのきている書類を見れば、あなたは認めざるを得ないわけですから、そういう方法を講じてもいいと思います。しかしあなた自身どうやったらわかるか、そんなことを言わなくても、調べればわかりますよ。そんなことは……。
  121. 法眼晋作

    ○法眼政府委員 だから、調べて御返事すると申し上げております。
  122. 岡田春夫

    岡田委員 どういう方法で、どういう書面がなどということをお話しにならないで、むしろあなたはおわかりの通りですからね。この出題は私は実は系統的にずっと調べてある問題です。それでこの問題はイスラエルの問題だけで済まない問題です。レバノンも来ている。シリアも来ている。その他もたくさん来ております。なぜこのように来ているかということについても、理由があるわけです。だから、そういう点はきょうばいたしません。いたしませんが、十分お調べいただくように希望いたして終っておきます。
  123. 前尾繁三郎

    前尾委員長 次会は公報をもってお知らせいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十六分散会