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1956-04-18 第24回国会 衆議院 外務委員会 第34号
公式Web版
会議録情報
0
昭和三十一年四月十八日(水曜日) 午後一時二十八分
開議
出席委員
委員長
前尾繁三郎
君
理事
石坂
繁君
理事
北澤
直吉
君
理事
須磨彌吉郎君
理事
高岡 大輔君
理事
穗積
七郎
君
理事
松本
七郎
君 愛知 揆一君
植原悦二郎
君 大橋 忠一君
高村
坂彦君
重政 誠之君
鈴木周次郎
君 福永 一臣君 坊
秀男
君
町村
金五君
松田竹千代
君
山本
勝市君 渡邊 良夫君 田中織之進君 田中
稔男
君 多
賀谷真稔
君
西村
力弥
君
細迫
兼光君 森島 守人君
岡田
春夫
君
出席国務大臣
外 務 大 臣 重光 葵君
出席政府委員
外務政務次官
森下 國雄君
外務省参事官
法眼 晋作君
外務事務官
(
経済局長
) 湯川 盛夫君
外務事務官
(
条約局長
) 下田 武三君
外務事務官
(
移住局長
) 矢口
麓藏
君
委員外
の
出席者
外務事務官
(
移住局渡航課
長) 遠藤 又男君 専 門 員 佐藤 敏人君 ――
―――――――――――
四月十八日
委員江崎真澄
君、
菊池義郎
君、
園田直
君、
並木
芳雄
君、
福田篤泰
君、
戸叶里子
君及び
福田昌子
君
辞任
につき、その
補欠
として
鈴木周次郎
君、
山本勝
市君、
坊秀男
君、
高村坂彦君
、
町村金
五 君、
西村力弥
君及び多
賀谷真稔
君が
議長
の指名 で
委員
に選任された。 同日
委員高村坂彦君
、
鈴木周次郎
君、
坊秀男
君、町
村金
五君、
山本勝
市君、多
賀谷真稔
君及び、西
村力弥
君
辞任
につき、その
補欠
として
並木芳雄
君、
江崎真澄
君、
園田直
君、
福田篤泰
君、
菊池
義郎
君、
福田昌子
君及び
戸叶里子
君が
議長
の指 名で
委員
に選任された。 ――
―――――――――――
四月十七日
原水爆禁止措置
に関する
請願
(
西村彰一
君外三 名
紹介
)(第一九五七号) 同(
原彪
君外五名
紹介
)(第一九五八号) 同(
福井順一
君
紹介
)(第一九六四号)
太平洋地域
の
原水爆実験禁止
に関する
請願外
二 十八件(
淡谷悠藏
君外三名
紹介
)(第一九八四 号) 同外一件(
淡谷悠藏
君
紹介
)(第一九八五号) の審査を本
委員会
に付託された。 ――
―――――――――――
本日の
会議
に付した案件
国際金融公社
への
加盟
について
承認
を求めるの 件(
条約
第一号)
国際情勢等
に関する件 ――
―――――――――――
前尾繁三郎
1
○
前尾委員長
これより
会議
を開きます。
国際金融公社
への
加盟
について
承認
を求めるの件を
議題
といたします。
本件
につきましては昨日
質疑
を終了しておりますので、直ちに
討論
、採決に移ります。
討論
の通告があります。順次これを許します。
松本七郎
君。
松本七郎
2
○
松本
(七)
委員
私は
日本社会党
を代表いたしまして、
国際金融公社
への
加盟
に
反対
の意見を述べるものでございます。その
理由
を概略申し上げたいと思います。 私
ども
は特に今後低
開発地域
に対する
経済
的な
援助
をいわゆる
先進国
が行う場合には、できるだけ多くの国が平等の
立場
に立って、しかもその
援助
を受ける国の
利益
の
立場
に立ってこれがなされなければならない。そういう建前から今後の
経済協力
ということを言えなければならぬと思うのでございますが、ただいま問題になっております
国際金融公社
の
協定文そのもの
からは、私
ども
がおそれるようなことはそうはっきり出ておらないのでございますけれ
ども
、実際のこの
国際金融公社
ができてからの運用ということを、今までのたとえば
世界銀行
の
運営
の面などから
考え
てみますと、ここに相当憂慮すべきことが
考え
られるのでございます。近くは昨年の
ベンドン会議
においては、
日本
みずからが十
原則
というものを掲げて、今後のアジアにおける
協力体制
という
根本方針
を打ち出しております。果してこの
国際金融公社
ができてから、この
バンドン
の精神にのっとった
運営
がなされるかどうか、そういう点を今から十分いろいろな問題と関連させて、私
ども
は検討する必要がある。
質疑応答
を重ねました中にも、そういう
観点
からわれわれいろいろと検討してきたのでございますが、にわかに
賛成
できない問題を相当含んでおるように思うのでございます。 具体的に少しこれらの点を指摘してみますと、私
ども
が憂慮いたしました、
アメリカ
がこの
国際金融公社
の
運営
に当っても
主導権
を握る結果が出てくるのじゃないか。これは
世界銀行
の
運営
の仕方についても、いろいろ
議論
がある。あまりにも
アメリカ
の
世界政策
の
一環
としてこれが
考え
られておるという
見方
もあるでしょう。そういう心配は全然ないという
見方
ももちろんあると思う。けれ
ども
今までの
世界銀行
の
運営
を
考え
てみますと、私
ども
から見る場合には
アメリカ
の
世界政策
の
尖兵
の役を果しておるような点が多分に見られるのでございます。そういう点から、それでは
世界銀行
と、この
国際金融公社
というものは全然別なのであって、
融資
の
条件
その他も違う。従ってこれは全然
別個
のものだという説もなされるでございましょうけれ
ども
、御
承知
のように
世界銀行
の
理事
は、そのまま
国際金融公社
の
理事
を兼ねる。人事がそういうふうに完全に結びついておる場合に、果して
世界銀行
と全然違った
運営
が期待できるとは、私
ども
は思えないのでございます。この
世界銀行
の
融資
の仕方においても、たとえば
日本
に対する
融資
の場合と
エジプト
の
アスワン・ダム
に対する
融資
の場合とを
考え
てみますと、いろいろそこに違う面が現われるような
傾向
が出てきておる。この
エジプト
の
アスワン・ダム
の
協定
の
内容
については、まだ秘密になっておりますから公表されていないようでございますけれ
ども
、大体予想されているところ、伝えられておるところを見てみますと、
米国
が第一回分として七千万ドル、その次に一億四百万ドル、それから英国が二千六百万ドル。そのほか
世界銀行
が一億ドルをこれに
融資
するといわれておるのでございます。この
世界銀行
が
エジプト
に二億ドルから
融資
をするというところに、私は相当
アメリカ
がこの
世界銀行
を通じて、
エジプト
に無理な
融資
をさせておるという動きを感ずるのであります。第一
エジプト
が
世界銀行
に対して引き受けておる額はわずか四千万ドルです。その四千万ドルの
引受額
でもって、
世界銀行
が
エジプト
の
アスワン・ダム
のために二億ドルから
融資
をするということは、これはよほど
政策
的な考慮がなければあり得ないことではないかと思う。普通の
銀行業務
としては、ちょっと常識からは
考え
られない額でございます。
日本
は
世界銀行
の
引受額
が二億五千万ドルですが、
融資
の限度は、一億五千万ドル引き受けながら一億ドルとなっておる。それが
エジプト
の場合には四千万ドルの
引受額
でもって、一億ドルから
融資
を受け得るというわけです。 そういう点から
考え
てみますと、最近の
世界銀行
の
融資
の仕方においても、
ソビエト
の低利な、また長期にわたる
融資
と対抗して、何らか
銀行業務
からは
考え
られないような、
政策
的な
融資
というものが行われてきている
傾向
が十分見られるのでございます。この
アスワン・ダム
についても、
エジプト自身
の
投資
は九億ドルですが、
世界銀行
の
利率
は大体四分六厘から充分くらいの間になっておる。これは
日本
に対する
電力借款
を見ましても充分だし、
八幡製鉄
が四分八分の五というふうになっておるわけです。ところが
ソビエト
の提案しておるところを見ますと、
利率
は二分二厘で、そうして五十年間の
返還
または三十年
回返還
で
融資
をしようという提案を
ソビエト
はしておるわけであります。そういうふうなよその国が有利な
条件
で
融資
をするということに対抗して、
世界銀行そのもの
が――
アメリカ
が
政策
的に
自分
で
融資
をするということをわれわれはとやかく言っておるのではない、
一つ
の
世界銀行
という、
アメリカ
一国で
運営
すべからざる
銀行
を、
政策
的に
アメリカ
が特に
発育力
を持ってこれを
運営
すること
自体
を、私
ども
は問題にしているわけであります。そういうふうないろいろな具体的の例を見ますと、
世界銀行
の
運営自体
が、何か
アメリカ
の
世界政策
の
一環
として利用されておるという面を、私
ども
は指摘せざるを得ないのでございします。 こういう
関係
から今後、
理事
などで人事的に人間的に結びついておる
国際金融公社
が、やはり同じように、この
アメリカ
の
世界政策
の
一環
として、そうして
政府
の答弁にもありますように、ましてやこの
国際金融公社
というものが、
民間
の
資本
の誘い水の役目をするのだということになりますと、なおこの
国際金融公社
が、
アメリカ
の
政策
の
尖兵
になるといち危険を私
ども
は感ずるのでございます。現に
与党
の
委員
の
諸君
でも、
アメリカ
があまり
表面
に乗り出すのでは、帝国主義的な色彩が強過ぎて警戒される、それだからむしろ
日本
がその中に立ってやった方が有利だ、というような主張をされる方も現にあるくらいでございます。そのこと
自体
が――すでに
アメリカ
が
表面
に乗り出すことは、低
開発地域
の人々に警戒を与えるということ
自体
が、
アメリカ
の
政策
の帝国主義的な
性格
を物語っておると思うのでございます。 しからばどういうふうな方法で、この低
開発地域
に対する
協力
なり
融資
をすべきであるかということについては、私
ども
はやはり
国際連合
で今
計画
されておりましような
国際連合経済開発特別基金
、こういうふうな
計画
を
中心
にして今後やるべきではないか。あらゆる国がこれに参加して、そうして平等な
立場
をもって低
開発地域
の
利益
に合うような
融資
の仕方をやるのが私は妥当だと思うのでございます。元来この
国際金融公社自体
が、御
承知
のように
米国
が音頭をとりました
カラカス宣言
という
反共宣言
の
賛成
を
南米諸国
にさせて、その
代償
として考案されたといおれておる。そういう点から
考え
ましても、この
国際金融公社
ができた由来から
考え
てみましても、その主たる目標は
南米諸国
にあるのであって、
東南アジア
やあるいは
中近東諸国
の
開発援助
は第二義的、つけたし的に
考え
られておると思われるのでございます。こういう
観点
から、やはり私は本来の
立場
から
国際連合
を
中心
にしたところの、今
計画
されておるよらな
特別基金
を
中心
にやった方が、はるかに低
開発地域
のためにもなるし、また国際的な
協力
という面からも、その力がはるかに有効であると思うのでございます。せっかく
日本
が
バンドン会議
であのような上
原則
を掲げて、そうして
ほんとう
に平等な互恵の
原則
でもって相
協力
していこうという
原則
を打ち立てた国といたしまして、このような面をもっと積極的に運用すべきである、このような
観点
から、私
ども
はこの今回問題になっております
国際金融公社
の
協定
には
反対
をせざるを得ないのでございます。(
拍手
)
前尾繁三郎
3
○
前尾委員長
石坂繁
君。
石坂繁
4
○
石坂委員
私は自由民主党を代表いたしまして、ただいま
議題
に相なっておりまする
国際金融公社
への
加盟
について
承認
を求めるの件につき、
賛意
を表するものでございます。 今回設立されようとする
国際金融公社
は、その
目的
を主として低
開発地域
の
経済開発
に置き、
国内
の
民間資本
と結合いたしまして、
生産的民間企業
の助成に供せんとするものでございます。
わが国
が早くから
東南アジア諸国
との
経済協力
をその
基本政策
の一といたしており、現
内閣
は特に
東南アジア経済外交
の推進を強く押し出しておるのであります。しかるに今回
わが国
がこの
公社
に
加盟
いたすことによりまして、その効果が一そう顕著になりますることは、もはや疑いの余地はないのであります。 ただここで特に要望いたしたいことは、
わが国
が
公社
の
投資
と関連いたしまして、単に低
開発地域
の
経済発展
に
協力
するということでなしに、
公社
の
投資
が
わが国
にも均霑せられ、
わが国自身
の
経済開発
にも大いに役立たれるように、別段の
努力
が払われたいということでございます。ひっきょうするに、このことは、
わが国
の
経済
を一そう強固ならしめるばかりでなく、
わが国
が一貫してとって参りました
東南アジア地域
への
経済協力
、並びに
経済開発
のための
協力
を、一段と効果あらしめることにほかならないからでございます。しかし私の遺憾に存じますることは、本
協定
の
内容そのもの
が
定款
の
内容
をなすものだという当局の御説明ではございますけれ
ども
、この
定款
その他
公社
の
活動
に関しての細目が、今日まで実はまだ十分はっきりいたしていないことであります。しかしながら、これらのことが決定されまする際には、
わが国
の
利益
、
東南アジア諸国
の
利益
、及び総体として低
開発地域
の
利益
を十分に考慮して、
公社協定
第一条の
目的
に合致するよう格段の
努力
が払われるよう、特に要望する次第でございます。
社会党
は本
協定
に
反対
をいたされました。ただいま
松本委員
の
反対
の
討論
を承ったのでありますが、遺憾ながら私
ども
の
賛成
することのできない御
議論
であります。元来この
協定
に対しましては、
東南アジア
の
中立主義陣営
、すなわちインド、
ビルマ
、
セイロン等
も、
公社
に参加するの
意思
を表明いたしております。しかるに
わが国
が当初から本
協定
による
公社
の
理事国
になることになっておりますし、しかも
わが国
は、
わが国
のみならず、
ビルマ
、
セイロン
、タイの三国の
利益
をも代表することになっておるのであります。この
協定
に
反対
される
社会党
の方々は、この
わが国
の
地位
をも放棄を主張せられる意図でありましょうか、この点私の了解することのできない点であります。しかも私の
承知
いたすところに誤まりないといたしますれば、
社会党
は、本
公社
と
姉妹関係
にあると申しますよりも、むしろこの
公社
はその
補助的活動
をなす
役割
を演ずることになっておりまするが、かの
国際復興開発銀行
、いわゆる
世界銀行
の
協定
に対しましては、
社会党
はさきに
賛成
をしておられるのであります。しかも本
協定
に関連する
国内法
は、
大蔵委員会
において
社会党
の
賛成
があり、さらにまた本
会議
におきまして
社会党
も
反対
せられずして、本院を通過いたしておるような
事情
も、すでに御
承知
の通りであります。これらの
大蔵委員会
と
外務委員会
ともちろん
別個
の
委員会
ではありますけれ
ども
、
両者密接不離
の
関係
にあるものである。
一つ
には
賛成
し、今これに
反対
せられておることにつきましては、
社会党
のいろいろな内部の
事情
もあることではありましょう 〔「
自分
のことを言え」と呼び、その他発言する者あり〕
前尾繁三郎
5
○
前尾委員長
静粛に願います。
石坂繁
6
○
石坂委員
私
ども
のとやかく申し上げる筋合いでもないと存じますが、この首尾一貫せざる
社会党
の
態度
に対しては、われわれは了解することのできない点であります。 私
ども
は右申し上げましたような
事情
によりまして、いわゆる
ひも
のつかない
経済援助
という
意味
におきまして、この
公社
の
活動
が重要かつ有利であると確信いたしまして、
本件
の
加盟
につきまして、
賛意
を表する次第でございます。(打手)
前尾繁三郎
7
○
前尾委員長
岡田春夫
君。
岡田春夫
8
○
岡田委員
私も本
協定
に対しては
反対
をいたします。先ほど
松本委員
から詳細に
反対
の原由を
お話
しになりましたので、私は重ねて重複は避けたいと思います。 大体この
国際金融公社
というものができた
おい立ち
は、先ほ
ども
お話
もあったように、一九五四年の三月に
カラカス
において、
中南米
の
会議
が行われて、この
中南米
の
会議
で、
アメリカ
が
反共宣言
をするその
代償
として、
東南アジア
に対して
アメリカ
が
投資
をすることに比べて、
中南米
に対する
投資
がきわめて少いという
中南米諸国
の不満を押えるために、
IFC
というものを作るということを誓約し、それに基いて作られたという
IFC
の
性格
がある。しかもその後の
おい立ち
を見ると、きのらの
委員会
の
質問等
を通じてだんだん明らかになって参りましたことは、
加盟
を約束しておる国は五十四カ国、これは約束しておるというよりも、この
公社法
ができる
おい立ち
から見て、
世界銀行
に
加盟
しておる国はすべての国がこれに
加盟
するという
意味
で、五十四カ国が
加盟
するということになっておるが、今日までに
加盟
を正式に
承認
したものはわずかに十四カ国しかない。しかもいわゆる
台湾政府
においてもこれを
反対
する、あるいはその他の数カ国が正式にこれに
加盟
することを拒否するという
態度
にまでなってきておる。従って事実本日がこれに
加盟
しても、ただいますぐにこの
IFC
が発足して
運営
される見通しがつかないという現状であります。このような
状態
になっているときに、
日本
がなぜに急いでこれに
加盟
しなければならないか。私
たち
はこの点から
考え
ても
反対
しなければならない
理由
がある。 それは
根本
を顧みてみるならば、最近の
東南アジア
あるいは
アラブ諸国
の
状態
を皆さんがお
考え
になれば、はっきりおわかりになるはずだ。最近は
東南アジア
において、
ソビエト
の
経済協力
がどんどん進んでいる一方、
アメリカ
の
経済援助政策
というものがどんどんと孤立している。なぜこのように
アメリカ
が孤立しつつあるかということは、言うまでもなく
東南アジア並び
に
アラブ諸国
は、今までの長い間の
植民地
的なくびきから脱して、みずから
独立
の
方向
に進みつつある。
独立
の
方向
に進むときには、その国の
経済体制
というものは、それぞれその国独自の自主的な
経済計画
を立てて、その
経済計画
に基いて
発展
をはかりつつある。そのためには、その
経済発展
のために役に立つよらな
経済
の
援助
または
協力
であるならば、喜んでこれらの
諸国
はこれを受け入れるであろうけれ
ども
、逆にその
援助
がその
独立
の
発展
を制約したり、あるいはそれを押えつけるような形になるようなものであるならば、これらの
国々
は断固としてこれを峻拒する。その最もいい例は、最近の
セイロン
の
態度
である。
セイロン
では、コテラワラの前
内閣
は、この間の選挙において明らかに敗北をした。もはや見る影もなくなっている。そらして
セイロン
の新政権は、新たに
平和地域
の拡大の
立場
に立って、
セイロン
の
独立
のために
努力
すると言っている。あるいはシンガポールの首相においても、大体同様の趣旨の
独立
の
意思表示
を明らかにしつつある。このような
状態
から見て、
アメリカ
が意図しているよらな
経済援助
という形は、だんだんと孤立せざるを得ない結果になっている。それはなぜかというならば、
アメリカ
の
経済援助
の形というものは、
アメリカ
の
国際独占資本
の
資本輸出
の形において行われるからである。この
国際独占資本
の
輸出
に対して、これらの従来
植民地
であった
後進国
が、反撃を与えざるを得ない
状態
になっているのである。
世界銀行
の場合においては、その
国自体
が
資本
の
輸出
をして、
アメリカ
の帝国主義的な
国際独占資本
の
資本輸出
をはかろうとしたけれ
ども
、今度の
IFC
の場合においては、
国家独占資本
の
資本
の力において、それぞれの
個別資本
が、これらの
後進地域
において
資本
の
輸出
を容易ならしめるための道を開く
役割
を果しているのであって、本質的には何ら変りのない
アメリカ
の帝国主義的な
資本
の
輸出
の形をとっている。この点において、これらの
国々
は絶対に
IFC
を支持しないということが明らかになっている。ですから、せっかく言っているにもかかわらず、五十四カ国のうちでいまだに十四カ国しかこれに
加盟
の
意思表示
をしない。これを拒否するという国も現われつつあるのであります。こういう点から見ても、
日本
の国がこの
IFC
に
加盟
するということは、むだであるばかりでなく、有害であると
考え
ている。それはなぜかというならば、このような形で
日本
の国が
東南ア諸国
に対して
資本
を
輸出
し、
東南ア
の
開発
に
協力
するといっても、
東南ア
の
諸国
の
立場
からいうならば、
アメリカ独占資本
の手先の
役割
を
日本
の国が果しつつあると
考え
るからである。その限りにおいては、これは
プラス
になるどころか、
アメリカ
の
ひもつき
である
日本
の国が、このような形で
アメリカ
の
肩がわり
として出てくるのであろうという結果を招くことによって、この
金融公社
に
加盟
することは、
日本
の国の将来のために、かえって逆の結果になるのじゃないかということを
考え
て
反対
しなければならないというのであります。 第二の点は、これも
松本委員
からるる
お話
があったのであります。
委員会
の席上においても、私からもいろいろ
質問
をして参りましたが、
日本
の国が
東南ア
の
諸国
と
経済協力
をするためには、このような
IFC
の
機関
を通ずるのではなくて、すでに国連の第十総会において決定されておる
SUNFED
の
機関
を通じて行うのが私は正しいと思う。明日は
バンドン会議
の満一周年の日である。この記念すべき満一周年の日、
バンドン会議
で決定されたことを
外務大臣
も思い出していただきたい。
バンドン会議
の
最終コミュニケ
においては、
SUNFED
に対しては、
日本
は全面的に支持するということを決定している。そうして
バンドン会議
に参加したあらゆる国は、この
SUNFED
を通じて
経済開発
のために
協力
をしようではないかと言っている。
SUNFED
は、ちなみに申し上げておきますけれ
ども
、
資本金
としては二億五千万ドルであります。
IFC
の場合においては一億ドルであります。こういう点から
考え
ても、
出資
の額から
考え
ても、
東南アジア
においてこれを歓迎するのは当然である。しかも先ほど申し上げたように、
出資国
、
加盟国
が
IFC
の場合においてだんだんと減ってくるということになるならば、逆にひっくり返して言うならば、
出資
をすでに決定をし、独占的な
地位
に立っている
アメリカ
の
IFC
の
出資
上における割合というか、その
独占率
ということもますます強くならざるを得ない。このようなことになってくると、ますます
東南アジア
の
諸国
、
アラブ
の
諸国
から、この
IFC
の受け入れられることを拒否される
状態
が強くなってくるだろうと思います。
理事国
になったから名誉であるということを先ほど言われたけれ
ども
、このような今や前途きわめて暗いこの
金融機関
に対して、
日本
がいかに
理事国
になっても、これは
日本
の
東南アジア
との
経済協力
のために
プラス
にならぬばかりではなくして、むしろ笑われ者の結果になるのではないかという点を私は憂慮する。
IFC
にこれだけの
出資
をするくらいならば、
SUNFED
を早く作って、
SUNFED
の中で正しい
経済協力
を進めるべきであると私
たち
は
考え
ております。
日本
の金にしても十億円の金です。この十億円の金を
アメリカ
の
ひもつき
のために使うなどということはやめてもらいたい。それよりも、
ほんとう
に
日本
の
経済発展
を
考え
るならば、正しい
意味
における
経済協力
の形がすでに高
碕国務大臣
も出席して満場一致できまっているこの
バンドン会議
の
SUNFED
に切りかえるという形を、ぜひとも
政府
並びに
与党
の
諸君
がお
考え
を願いたいと思います。 私はまだいろいろな点で申し上げたい点もありますけれ
ども
、要するに
IFC
のこの
条約
は、
表面
から見ればきれいではあるけれ
ども
、その中身には
アメリカ独占資本
のあくなき野望が隠されているものとして、どうしても私は
賛成
ができないのであります。その
意味
において、私は以上申し上げた
反対
の
理由
を申し上げて
討論
といたす次第でございます。(
拍手
)
前尾繁三郎
9
○
前尾委員長
これにて
討論
は終局いたしました。 これより採決いたします。
国際金融公社
への
加盟
について
承認
を求めるの件を
承認
すべきものと議決するに
賛成
の
諸君
の
起立
を求めます。 〔
賛成者起立
〕
前尾繁三郎
10
○
前尾委員長
起立
多数。よって
本件
は
承認
するに決しました。(
拍手
) なお
本件
に関する
委員会報告書
の作成につきましては、
委員長
に御一任願いたいと存じますが、御
異議
ありませんか。 〔「
異議
なし」と呼ぶ者あり〕
前尾繁三郎
11
○
前尾委員長
御
異議
がなければさように決定いたします。
前尾繁三郎
12
○
前尾委員長
これより
国際情勢等
に関する件について
質疑
を許します。ただし
外務大臣
は三時十五分にはぜひともここを出なければならぬ所用がありますので、大体一人十五分程度の御
質問
に願います。
北澤直吉
君。
北澤直吉
13
○
北澤委員
私は、
アメリカ
における
繊維製品
の
販売制限
の問題につきまして、
アメリカ側
から
日本
に回答が参りましたこの問題について、簡単に御
質問
申し上げたいと思います。
アメリカ
のサウス・カロライナ州、アラバマ州におきまして州法を作りまして、そして
日本
の
繊維製品
を取り扱う小売り、卸の店は、
日本
品を販売しておるという表示をしなければならぬ、こういう州法が二つの州におきまして、州のガヴァナーの署名を得て成立したわけであります。これは御
承知
のように日米通商航海
条約
第十六条の違反であります。これにつきまして
日本
政府
から
アメリカ
の方に通商
条約
違反であるということで抗議をしたのに対しまして、今回
アメリカ
からよこされました回答を見ますと、この州法が通商
条約
違反であるかどうかは、
アメリカ
の国の建前からして、これは
アメリカ
の最高裁判所が決定をする権利がある、すなわちその州法が
アメリカ
の憲法違反で、効力があるかないかは、これは
アメリカ
の行
政府
の関与すべきところでなくして、
アメリカ
の最高裁判所の決定にまかせなければならない、こういうふうな返事のようでございます。もちろん
アメリカ
は御
承知
のように連邦制でありまして、州で作った法律が
アメリカ
の憲法なり
条約
なりに違反するかどうかということは、これは最筒裁判所が決定するわけでありますが、しかしながらその最高裁判所の決定がどうなろうと、今度の州法は通商
条約
違反で、無効であります。通商
条約
には違反しないからして有効であるという最高裁判所の判決のいかんにかかわらず、これは
アメリカ
合衆国として、連邦
政府
としましては、当然通商
条約
違反として
日本
に責任を負うべき問題であると私は思うのであります。現に日米通商航海
条約
の第二十四条におきましても、「この
条約
の解釈又は適用に関する両締約国の間の紛争で外交交渉により満足に調整されないものは、両締約国が何らかの平和的手段による解決について合意しなかったときは、国際司法裁判所に付託するものとする。」こういうわけでありまして、そういう通商
条約
の解釈、特に今申しました通商
条約
の内国民待遇、あるいは最恵国待遇について、
アメリカ
の州法がこれに違反であるかどうかという解釈の問題につきましては、これは最終的には国際司法裁判所に付託するものとする、こういうふうに書いてあるのであります。従いまして、この
条約
の解釈は
アメリカ
の最高裁判所がこれを解釈するのだというふうな趣旨の回答は、私
ども
はちょっと納得ができないのであります。やはり私
ども
は、
アメリカ
の
国内
的にその州法が有効か無効かは、これは最高裁判所が決定する
地位
にあると思うのでありますが、
日本
に対する
関係
におきましては、明らかにこれは通商
条約
違反であって、従って
アメリカ
合衆国
政府
といたしましては、
条約
違反として
日本
に責任を負うべきものだ、こういうふうに
考え
るのでありますが、その点について大臣のお
考え
を伺いたい。
重光葵
14
○重光国務大臣 この問題が
米国
に起りましたことは、われわれは実に残念に思っております。そして
日本
政府
といたしましては、この問題が
条約
違反の疑いがある、こういうことの
立場
をとって抗議もいたし、
アメリカ
政府
の善処を促しておる状況であります。
アメリカ
政府
もこういうことが起ったことを決して是認をいたしておりません。ひとしく遺憾に思って、そして
日本
政府
の言い分を十分に考慮して善処を約し、かつまた善処しつつあるのが現状であります。そうでありますから、実際問題としては、その
アメリカ
政府
の友好的な措置に信頼をして、事態の推移をしばらく見ることが適当であろうかと
考え
ております。しかし理屈として
立場
としてこれを申せば、
日本
側の
立場
は
条約
の規定によってこれまでとっておる
立場
を十分に主張していかなければならぬ、こう
考え
ております。
米国
側がさしあたりその
条約
違反であるかいなかの決定は、
米国
の
国内
問題としては最高裁判所の判決による、こういうことを言ったのは、
国内
問題としてそれはそらであろうと思います。しかしそれとお活の通り国際問題としての
立場
は、また両国の折衝によって
条約
の規定の通りに進むべきであるのは当然のことであります。従いまして
日本
は
米国
の
国内
問題がどらあろうとも、約束通りに、また
条約
に規定する通りに、
日本
の
立場
をとっていくことが正当であろうと
考え
ます。ただ、先ほど申しましたように、実際問題としては、この問題はきわめて実際的に取り扱うことが
利益
に沿うわけでありますから、
米国
側の好意ある処置に信頼をして、事態の推移をしばらく待っておるということが一番適当ではないか、また穏当ではないかと
考え
る次第であります。
北澤直吉
15
○
北澤委員
私も大臣の御答弁のように、せっかく
米国
政府
におきまして好意を持って友好的にこの問題を処理しておる、現にサウス・カロライナ州及びアラバマ州当局にも、合衆国
政府
として注意を喚起しておるということでありまして、その点はわかります。また大臣のおっしゃるように、当分事態の推移を見るということも適当であると思います。ただ問題は御
承知
のように、合衆国
政府
におきましても、
日本
の
経済
の自立ということにつきましては、非常に市大な関心を持っておる。しかも最近は従来のように
援助
によらず、
日本
の貿易の拡大によって
日本
の
経済
自立に対して
協力
しよう、
援助
にあらずして貿易によって
日本
の
経済
を進展するのに
協力
しよう、こういうように方針が変っておる。ことしの正月のアイゼンハワー大統領の年頭教書を見ましても、自由
諸国
の間の貿易の増進、インヴェストメントの増進という点は相当強調されておるわけでありまして、
米国
政府
は
日本
の
経済
自立の達成という点から、
日本
の貿易拡大につきましては、現に
協力
しております。現に
日本
のガット加入とかその他におきまする
日本
の貿易拡大の面については、
協力
しておるのでありますが、今度の
アメリカ
のアラバマ州、サウス・カロライナ州のやり方は、合衆国
政府
の方針に反しておる方針と思うのであります。結局問題は、ことし大統領選挙がありますので、あの方面におきまする繊維業者が、
日本
品との競争の
関係
からこういうような法律を作って、州のガヴァナーもしぶしぶこれに署名しておる、こういうような選挙を控えての
事情
はわからぬわけでもないのでありますが、これは明らかに通商
条約
違反であります。通商
条約
の第十六条、それからまた第二十二条を見ますと、要するに
日本
品は
アメリカ
におきまして内国民待遇、それから最恵国待遇を受ける。「「内国民待遇」とは、一締約国の領域内で与えられる待遇で、当該締約国のそれぞれ国民、会社、産品、船舶又はその他の対象が同様の場合にその領域内で与えられる待遇よりも不利でないものをいう。」「「最恵国待遇」とは、一締約国の領域内で与えられる」云々と書いてありますが、
日本
の
繊維製品
を販売する店に限って
日本
品を売っておるということを表示することは、明らかに内国民待遇に反し、最恵国待遇にも反すると思うのでありまして、これはだれが見ましても、今度のアラバマ州の州法それからサウス・カロライナ州の州法は、一目瞭然これは日米通商
条約
違反であります。でありますから、これは今後事態の推移を見るということもけっこうでありますが、どうも
アメリカ
政府
の回答を見ますと、いかにも行
政府
としてはこれをなかなか処置しにくいというふうに、責任を最高裁判所に転嫁しているような向きがありますので、この点は非常に理解できないのであります。大臣の御答弁のように、この州法が
アメリカ
の憲法違反であって、法律の効力があるかないかという問題は最高裁判所の権限でございますが、その最高裁判所の判決いかんにかかわらず、この州法が通商
条約
違反として、合衆国
政府
が
日本
に対して責任を負うべきであるという点は、これははっきりしていると思います。その点だけをもう一ぺん大臣に伺って、私の
質問
を終ります。
重光葵
16
○重光国務大臣 その点については、先ほど私が申し上げた通りの意見を持っております。
アメリカ
の
国内
の問題と
日本
との
関係
の問題というのは、おのずから別の問題でありまして、
日本
は
アメリカ
との
関係
を
条約
上の明文によって主張しなければならぬ、こう
考え
ております。しかし実際の取扱いといたしましては、先ほど申し上げましたような
考え
方を持っていくことが、一番
利益
を擁護する上において適当なやり方じゃないか、こう申しておるわけでございます。さようなわけでありますから、今述べられた御趣旨は十分に頭に取り入れて将来進んでいきたい、こういうふうに
考え
ております。
松田竹千代
17
○松田(竹)
委員
関連してちょっと伺いたい。今の
日本
の繊維に対する制限法律、この問題は
アメリカ
で蔓延する憂いは今のところは見えておらぬか。
アメリカ
にも変な議員がおって、選挙区のメーカーから頼まれると、国全体のことを
考え
ないでいろいろ踊る
傾向
もあるのであります。またふえないという様子であるならば、確かな根拠はあるのでありますか、その点まず伺いたい。大臣お聞きになっておらなかったようでありますから、ほかの方でもよろしい。
湯川盛夫
18
○湯川
政府
委員
さしあたり、ほかの州にこれ以上蔓延するおそれはないかという御
質問
のようでございますが、ただいまのところアラバマ州以外にさらにもっと広がる見込みはないようでございます。といいますのは、大体南部諸州の州議会が終りまして、こういう法案を議する機会がほかの州ではございませんので、さしあたりほかの州にすぐ同様の法案が広まるというようなことはないと
考え
ます。
松田竹千代
19
○松田(竹)
委員
私はそれはやや甘い
見方
に過ぎはせぬかということをおそれる。私も大阪出身でありますので、始終こういう問題に触れておる。今から一年半も前から、こういうおそれの曙光が出てきておった。それらの問題について私は米人から注意を受けて、
日本
の繊維が急激な
輸出
の伸び方をしないように、また値段についてもダンピングと思われるような安い値段で出さぬように、よいものを出すように、特に注意をしてくれということで、私はその問題で通産当局にもしばしば会って注意を促してきているようなわけでありまして、平素から私はこの問題についてはインタレストを持って、そうした問題が起らぬように市前工作を
自分
としてはやって参り、また機会あるごとにその運動をやっている。私が
考え
るのに、
アメリカ
の日貨排斥の従来の経験から見ましても、一カ所で起ると蔓延する
傾向
がある。そしてそれが広まって取り返しがつかぬようになってきている。だからこういう問題が起った場合には、いな起る前にその蔓延する危険がないように工作をすべきではないか、単なるロビー・ワークではなしに、
日本
の出先使臣は直ちにそれらの州の
事情
を知って、議員を通じ、またメーカーを通じ、特に事前にこれらに対してそんな問題が起らないようにやるべきである。なぜならばこれは当然のことであって、
日本
の対
アメリカ
貿易は非常な逆調にあり、
政府
の方針としては大体
日本
の品物をどんどん売っていくように努めているようでありますけれ
ども
、
アメリカ
は州ごとに別な
独立
の法律を持っておって厄介な点があるのです。だから起りそうなところに事前に特別な工作を施すということで、きわめて安易にこれらの問題を防ぎ得るのであります。私は
アメリカ
のような国であのチャイナ・ロビーの
活動
を見て驚いたのでありますが、
努力
すれば幾らでもできる、話せばわかる人が
アメリカ
には多いのですから、そうした工作をなぜもっと力を入れてやらないかということを
考え
る。この点はいかがでございますか。
重光葵
20
○重光国務大臣
お話
のその点は私は申すまでもないことだと思います。それがために外務省の出先
機関
もあり、また出先
機関
の苦心も存するのであります。この問題は外交
機関
の怠慢によって起ったのであるといって責められても、私はそれに対して少しもどうというわけではございません。しかしこういうことが起ったから、何もその措置をとらなかったのだとすぐ結論されることには、私は承服することができません。従来の経験からいっても、移民問題で御
承知
の通り手を焼いている。それがとうとうああいうことになってきている。あれは非常に機微な問題であって、
一つ
のところに起ればまたそれが他のところに波及するような
傾向
にあることをよく知ってこれを処理しなければならぬということは、これは全く御同感であります。でありますから、こういう気配が見えるやいなや
アメリカ側
に対していろいろ注意を促し、必要な予防措置をとることはむろんのことでありますが、さらにまた
日本
側においても、
繊維製品
についてあまりに急激な
輸出
などによって向うを刺激することは避け、業者
たち
が自制するというところまでいって、そのためにかような悪化する空気はある程度防ぎ得たと私は思っております。しかしそれにもかかわらずこういうことが起ったのであります。こういうことが起ったのは
お話
の通り選挙を控えてのこともございましょう、また
アメリカ
は自由な国でありますから、
国内
におけるいろいろな
事情
もございましょう。遺憾ながらここに来た。ここに来たとすれば、これに対してわが方の正当な
立場
を十分に主張しなければならぬ。しかし相手の
政府
が非常に誠意を持って、いろいろ処置をしてくれておるのでありますから、これにはまた十分信頼をして、そうしてその結果の現われるように仕向けることが今日いいと思っておるわけであります。
松田竹千代
21
○松田(竹)
委員
外務大臣
のおっしゃる、つまりこうした問題が起った今日、今のところは
アメリカ
政府
当局のやることをしばらく見ていくことがよろしいのだということは、私は了承している。それはそれよりほかにないと思います。ただこうした問題が広がらぬように、また新たにほかの問題でも起らぬようにするために、事前の工作にもっと
努力
してもらいたいということなのです。
アメリカ
と
日本
の貿易は、
アメリカ
は
日本
の繊維が少しばかり入ったって、そう文句を言う筋合いのものじゃない。なぜならば
アメリカ
の全生産に対して
日本
の対米
輸出
はわずかに一・五%に満たないのです。ものの数でないとも言えるくらいの程度である。しかもそれは
アメリカ
国内
でみな消費しているのじゃない。そのうちの相当部門がカナダへも行き、
中南米
の方へも新たに染色し、さらにプリントして、加工して送り出されている。それによって
アメリカ
の商人が銭もうけしている。また安いものを、
日本
でダンピングしたようなものを
アメリカ
の商人が来て買い取っていく。そういうときには
アメリカ側
でむしろ注意をして、そういうものを統制してもらいたいとさえわれわれは思う。そういう
事情
でありますので、そんなに
アメリカ
がぎゃあぎゃあ言うほどの問題ではないと思う。またこれが
日本
国内
で統制をしながら、しかも良質のものを出すように努めていきさえすれば、相当伸びたって
アメリカ
で少しも文句は起らない、これは私断言できます。百に対して一・五までの品物でありますから、そう問題は起らない、ただときどきどかっと相当のものが行くために、マーケットを刺激して困るというのが向うの理屈であります。それはさもあろう。ですから私はそういう危険のあるようなところにはうまく事前に了解を求め、商人にもいろいろ了解を求めていくような手を尽すことを、十分にやってもらいたいといちのが私の趣旨なのです。
重光葵
22
○重光国務大臣 それは少しも異存はございません。われわれは出先
機関
を督励して、ただ
努力
の足らざるところをおそれてやっておるつもりでありますし、またそういう気持でやります。それについては少しも異存はございません。しかし今言われる通りに、これは
アメリカ
の生産力の何%であるから理屈上そういう運動の起るわけはない、こう断言をされますが、それが起ったのであります。一%何ぼであるかもしれぬけれ
ども
それにアフェクトされる商売人は非常に神経を刺激されたと見えます。だからそういうことに対して、十分の手当をするなり
努力
をするなりすべきだという
議論
は、私もその通りだと思います。しかしながら、それだから理屈上起り得べからざることだからというだけでは安心はできぬわけであります。こういう工合に起ってきたのでありますから……。それでこれは非常に
努力
をしなければならぬ、そういう点は
お話
の通りだと思う。ただ今後起るかもしれないから甘く見るな、それはその通り甘く見ることはよくないと思いますが、しかしこれからそれがどんどん波及するおそれがあるかというと、出先の報告なんか集めてみますと、まあこれで一段落ではないか、こういうことを言ってきておりますから、それはその通りに申し上げても少しも差しつかえないと思うのであります。
前尾繁三郎
23
○
前尾委員長
松木
七郎
君。
松本七郎
24
○
松本
(七)
委員
まず日ソの漁業交渉の問題ですが、
政府
は今度の漁業交渉を日ソの国交回復の交渉とは全然
関係
ない、こういうことを再々ことさら声を大にして言われておるのですが、その気持というものが私にはわからない。元来
政府
は日ソの国交回復をやろう、しかも早期国交回復をやろうという公約をして、そうして今交渉をやっておる。これは決裂ではないと
政府
で言われておるくらい休止
状態
なのです。ですからことさらこれと
関係
ないと言われなくても、場合によってはさらに再開の機会をつかみたい、そういうことを言うことによって両国の間の友好的な気分というものはむしろ増すのですから、それをこの漁業交渉をやるに当って国交回復の交渉とは全然
関係
ないのだ、なぜそういうふうな形でわざわざ声明して、この漁業交渉に乗り込んだのか、その気持が私にはわからないのです。
重光葵
25
○重光国務大臣 私はこれは事実を事実として
お話
しなければならないと思うのですが、
政府
が漁業交渉をやるから日ソ国交の回復をしたくないのだ、そういうようなことは一度も言ったことはございません。しかしながら日ソの国交回復の交渉は、これは詳細私が報告をし、また御
討論
にもなったことで十分わかっておる通りの
事情
で自然休会になっておるということは御
承知
の通りであります。そこで日ソ国交の正常化をする交渉が自然休会になったから、さしあたって必要な漁業問題について
別個
に取り上げる、こういうことになったのでありますから、これは
別個
の問題として取り上げるというのが当然のことではないかと思うのです。
別個
の問題として取り上げる
事情
がよくわかりながら、これをぜひ国交の問題にひっかけてやらないかというのが僕にはわからない。それはどういうことなのでしょうか。私は漁業問題は
別個
の問題であるからこれは
別個
に解決して、これがまた
一つ
のいい影響を全局に与えることを希望しておるということを申し上げてきておるのであります。だからそれとこれとは、今交渉がそういういきざつになっておるので、それをごっちゃにして話し合いを進めることは、かえって紛淆を来たすゆえんであって、
一つ
端から片づけて、漁業問題は
別個
の問題として日ソの問に紛争の起らないようにすることが、まずやるべき方法だと
考え
るのであります。それをすぐ国交の問題に展開しようということは、今
考え
ればかえって漁業問題というものが紛淆して解決を見ない、こういうことにもなり得るわけであります。これは
別個
の問題として交渉に応じたわけであります。向うもしようという、こっちもそう申し入れた、だからそれをまっすぐやったらよかろう、こう
考え
ておるのであります。
松本七郎
26
○
松本
(七)
委員
しからば河野農林大臣が向うに行って漁業交渉を始めたとする。その場合に
ソビエト
側が何らかの形で、やはり国交回復というものと結びつけたいという意向を表明した場合には、一切漁業交渉に関する限りはそういう話はしない、こう断わるのですか。
重光葵
27
○重光国務大臣 それはどういうことでありますか、ソ連がそういうことでも持ち出そうということを、何かの方法で御存じのような口吻でもありますが、一体そういうことを……(「冗談じゃない、そんなことは言っていない」と呼ぶ者あり)いやそういうふうに聞えるというのです。今向うはこういうことについて話し合いをしようというのだから、話し合いをしたらどうであろうか、
日本
も日ソの
関係
、漁業問題の
関係
については紛争が起らぬようにしたいのだ、こう申し入れた。それはけっこうだと向うが言ってきた。これは私は非常にいい徴候だと思う。それをそのまま信用すれば、その問題について話し合いを進めていくのに違いないと思います。ですからそれをやっていったらいいと思う。その問題を解決するために交渉を開き、結末をつけてしかるべきものだと私は
考え
ております。
松本七郎
28
○
松本
(七)
委員
その点は後ほどまた同僚の
穗積
委員
から詳細に
質問
があると思いますが、別な点としまして、河野農林大臣はしからば、かりに公式の席ではそういう話はしないとしても、非公式に何らかの形で、行き詰まり、休止
状態
にある日ソ国交回復の問題について、話し合う意図が
政府
として持たれておるのか、全然そういう話は非公式にもやってはならぬという方針で臨まれるのか、この点をお伺いいたします。
重光葵
29
○重光国務大臣 日ソ国交回復の問題を話すために交渉をやっておったものはロンドン交渉であって、そのためにやっておったのは
松本
全権でございます。そしてまだその任務は解消いたしておるわけではございません。その交渉が再開する場合においては、直ちに
松本
君はどこへでも参る姿勢をとっております。河野農林大臣が
政府
代表として行くのは、御
承知
の通りに公海における漁業の制限という問題から起った漁業問題に関する日ソの
関係
を調整したい、公海における漁獲の問題について紛争が起らぬように話し合いをしたい、こういうことが
目的
であります。それで行くつもりであります。
松本七郎
30
○
松本
(七)
委員
それじゃ答弁になっていない。河野農林大臣はなるほど今度の漁業交渉で行かれる。けれ
ども
日ソ早期国交回復を公約した鳩山
内閣
の国務大臣である、閣僚なんである。それだからたまたま閣僚である以上は、この機会に非公式に何らかの形で、全権とは別に
内閣
として、また重光
外務大臣
は、時期を見て国交回復の交渉の再開をやるのだと言っておられるのですから、そういう機会に
一つ
この国交回復の問題についても非公式に話し合われるということは、
内閣
として当然なことだと思う。むしろ国民に対する責任だと思うのです。それを、そういう国交の回復の問題は今
議題
になっていることじゃない、漁業が主題だから一切触れないのだという
態度
で行かれるのか、あるいはそういう機会に非公式に何らかの話し合いもして差しつかえないという
態度
で派遣をされるのかという点を聞いておるのです。
重光葵
31
○重光国務大臣 今
お話
を伺えば、この機会に非公式でも
一つ
いろいろなことについて、意見の交換をさせてみた方がいいじゃないかというお
考え
を言われるようでありますが、そうであればそれは御意見であります。しかし河野
政府
代表の使命は今申した通りであります。それを遂行するために行くのでありますから、それで御
承知
を願いたい。
政府
としてはそういう
考え
方でやる。そこでもしそういうことが御意見であるならば、それも
一つ
の参考にしなければならぬことだ、本人にもそれを伝えることが適当であろうと思います。しかしそれは御意見であります。
政府
の
立場
としてはこれまで申し上げた通りの
立場
で参るわけでございます。それでどうぞ御了承を願いたいと思います。
松本七郎
32
○
松本
(七)
委員
それから漁業界では、もしこの交渉が長引いて出漁する時期が切迫しても、大国だからそうむちゃなことはすまい、いわゆる強行出漁、そういうことをやってもよかろうというような意見さえ出ておるようでございますが、
内閣
としてはこれを放置しておくわけにはいかないと思います。強行出漁のような事態が切迫した場合に、
政府
としてはどういうように対処される御方針でありますか。
重光葵
33
○重光国務大臣 この問題は、公海に対する出漁ということは当然でき得る建前を
日本
側がとっておることは御
承知
の通りでございます。しかしながら今その問題について故障が起ってきたと申しますか、起らんとする形勢にあると崩しますか、それがために今その故障のないように話し合いをするという
目的
を持って代表が行きつつあるわけでありまして、二十一日に出発をするというのでありますから、間もなく向うに着いて話し合いに入るわけであります。それと相見合ってせっかく話し合いをするのだから、紛争の起るような
態度
ですべてやるということは向うもやらぬということで、ロンドンの正式の
会議
では言っております。
松本
全権とマリク全権との間の話し合いは、そういう公海における漁獲の問題等について、紛争の起らぬように
努力
をするということをはっきり話し合いをしております。ただしその談判の結末はつかなかったのでありますが、向うもそう言っておるようなわけで、こちらもむろんそういうふうな
態度
をとらなければならぬ、そこに実際的方法といたしましては、いろいろ考慮をしなければならぬ点もあろうかと思います。それは交渉の進むに従って水産当局も十分に考慮することだ、こう
考え
ております。私といたしましては、建前は建前として、でき得るだけ交渉の
目的
に沿うように進んでいきたい、こういうふうに申し上げるほかございません。
松本七郎
34
○
松本
(七)
委員
そうすると漁業交渉の継続中は出漁しても心配はあるまい、不測の事態は生ずまいという御観測でしょうか。
重光葵
35
○重光国務大臣 不測の事態は起らないようにできるだけ処置をとりたい、こういう
考え
方でございます。
松本七郎
36
○
松本
(七)
委員
それから一般的な漁業
協定
ができた場合、これの法的な効果については外務省の結論というものがこの間新聞に出ておりました。いずれこれはまた下田
条約局長
と別の機会にゆっくり
質問
したいと思いますが、大臣にお伺いしておきたいのは、一般漁業
協定
ができた場合、これは全面的な国交回復ということにはならないにしても、いわゆる部分的な国交回復ということには当然なるのだと思いますが、大臣の御見解はいかがですか。
重光葵
37
○重光国務大臣 私は部分的な国交回復とか、全面的な国交回復とかいうものを、どう区別するかということをよく存じておりません。私はいずれにしても国交回復は
一つ
の問題だと思っております。そうしてある特殊の問題について話し合いをしても、それは全般的の国交回復ということにはならぬ、こう思っております。いわんや日ソの
関係
は、国交回復をするのは平和
条約
をこしらえて、重要な案件を処理して、国交回復をしようということに
意思
が合致して、今日まで交渉を進めてきたのでありますから、特殊の問題だけについて国交回復の結果にはならぬ、こう解釈をいたしております。
松本七郎
38
○
松本
(七)
委員
そうすると一般漁業
協定
ができて、たとえば調査事務所のようなものがどこかにできる。鳩山総理大臣はそれは当然なことだろう、新聞によると岸幹事長もそれは認めていいだろうという談話を発表しておられますが、そういう事務所でもできるということになると、少くとも漁業の面に関する限りは私は部分的な国交口優だと思うのですが、そういうものができてもなお国交回復の一部とは認められないということになるのでしょうか。
重光葵
39
○重光国務大臣 新聞記事を引用されておりましたが、これは私もどういう趣旨であったかということを聞いてみましたが、総理としてまた
政府
の方針として、きようなことを交渉の事前に当って言ったことはないということであります。そこでそのことについては私はそういう説明によってよく了解をしておるわけであります。そこでどういう交渉の
内容
があるかということは、向うがどういうことを言うか交渉してみなければわかりません。しかし今そこでどういう取りきめができるかということも今日予見することはできません。予見することができるのは、公海における漁獲の問題について合意ができることを予期しておるのであります。その予見し得る範囲内において、これは特殊のことであって、今国交回復というようなことに直接解釈ができるものじゃない、こう私は申し上げておるわけであります。
松本七郎
40
○
松本
(七)
委員
その点はさらにまた他の議員から詳しくやっていただかなければならぬと思うのですが、最後に、
外務大臣
はしきりに日ソの国交回復の問題で、これは時期を見てまたやるのだ、こういうことを参議院の答弁でも言われておるのですが、時期を見てやるといっても、どういうときをその時期とされるのか、そこのところを少し伺っておきたいのです。
一つ
は
考え
られることは、
ソビエト
側が今まで主張してきたことをさらにある程度譲歩するときを、国交回復交渉の再開の時期と認められるのか、あるいは御
承知
のように自民党の中にも相当いろいろな意見があるようでございます。その党内の意見のまとまったときを時期と見られるのか、この点が私
ども
にはあいまいでさっぱりわからない。(「まとまっている」と呼ぶ者あり)まとまっているならまとまっていると
外務大臣
から答えていただきたい。それが
一つ
。それからもう
一つ
の問題は、これは以前から
外務大臣
にお伺いしょうと思いながらその時期がなかったのですが、最近自民党の総務会その他で中共の渡航の問題に制限を加える、何か法的な措置も加えるかのように伝わっておるのです。今いろいろ向うから招待されて。パスポートを待っておる人々も、そういう動きで非常に心配しておるわけです。一体
政府
として何らかの法的制限を加える御
意思
があるのか。もしあるとすれば国交が回復しておらないという
理由
でされるのか、あるいは相手がいわゆる共産圏だということでされるのか、どういう根拠でこれをされるのか、その点を二つだけ伺っておきたいと思います。
重光葵
41
○重光国務大臣 日ソの問題から中共の渡航の問題に触れられたのでありますが、前の御
質問
のいかなる時期に国交を回復するか。それはなかなか重要な問題でありまして、そういうような点は
一つ
十分に検討して、やはりこの席もしくはその他の機会において、十分あなた方の御意見も伺って、そして進めていきたいと
考え
ます。ただ今言われることは、この際が一番そういう時期じゃないか、こう言われれば、私はまだそこまで至っておらぬ、こう今申し上げ得るのでありますが、それでは一体いつ時期がくるのか、説明しろ、こう言われれば、私は少し無理な御
質問
だと思うのです。十分
一つ
検討して、手落ちのないようにやっていかなければならぬと思います。 それから中共の問題は、
政府
といたしましては――中共は御
承知
の通り六産国であります。
日本
は共産国ではございません。そこでむろん共産主義のいろいろな
関係
も考慮しなければなりません。そうして国交のない国であることも、これまた確かでございます。そうでありますから、政治的にこれを利用するというようなことにされては工合が悪いと思います。これには少しもだれも御異存のないことだと私は思いますが、しかしそれかといって人の往復を規制をするということは、私は行き過ぎると思うのです。これはみんなそういうことはおのおの自制をしていくべき問題であって、法律できめてしまうべき問題ではない、こう
考え
ておりますが、意見は言いたいと思っております。あまりそれは行き過ぎるじゃないか、大挙して明らかに宣伝に乗るようなことは、少し自制しようじゃないかということは私は言い得ると思います。しかしそれは規則をこしらえてやろうということとはおのずから違うものである、こう
考え
ております。
前尾繁三郎
42
○
前尾委員長
穗積
七郎
君。
穗積七郎
43
○
穗積
委員
きょうは時間がありませんから、緊急な問題二、三について御
質問
いたしますから、簡潔にお答えいただきたい。大体
質問
時間を見ておりますと、あなたが持って回ったようなことを長く言われるものだから、ついわれわれの
質問
時間が食われてしまって、こま切れになってしまいますから、要点だけを結論的にお答えいただきたい。 まず第一には日ソ漁業交渉についてでございますが、一般的な両国の国交回復問題については、松木
委員
から今
質問
がありまして、まだお尋ねしたい点はありますけれ
ども
、日ソ漁業交渉のみについて簡潔にお尋ねいたします。今までこの交渉に当るという
政府
の
態度
を決定いたしましてから、見受けておりますと、
外務大臣
は特に両国の漁業本
協定
を結ぶことについては非常に消極的であるし、むしろこれを避けたいという意向が明瞭でございますが、もしそうであるとするならば、本
協定
をあえて避けようとされる
理由
は、一体どこにあるのでございますか。われわれにはさっぱり了解することができないのですが、率直に
一つ
お答えをいただきたいと思います。
重光葵
44
○重光国務大臣 さようなむずかしい問題を出して、簡単に答えろ、こういうことでありますが、御
質問
はきわめて長く、これはどういう御趣旨か。そこに何らかなにがあれば私は
考え
ていかなければならぬ。しかし私は御趣旨に沿うように、なるべく簡単にやります。本
協定
と言われるが、漁業本
協定
とはそれじゃいかなることか、私はこう御
質問
いたします。
穗積七郎
45
○
穗積
委員
こういうことです。先般、今年度の両国間の
協定
もできず、国交も回復しないので、やむを得ず魚族保護の
立場
から、五月十五日から四カ月間、区域はこれだけ、尾数はこれだけの漁業制限を臨時措置としてしたわけですね。その問題に対して、それを解除してもらいたいというのが、こちら側の要求でございますが、それ以外の、両国間の
政府
によって両国間の漁業問題、海難救助の問題等々、すべてを含む問題について、
政府
間の恒久的な
協定
を結ぶということでございます。すなわち今年度の臨時措置以外の基本的な問題について
協定
を結ぶということを、私は本交渉として言っているのでありまして、この間とりました向うの行政措置を緩和せしめる交渉をするだげではなく、両国間の未解決の漁業問題について基本的な話し合いをして、それに対する恒久的な
協定
を結ぶ、こういう
意味
でございます。
重光葵
46
○重光国務大臣 今申し上げる通りに、公海の漁獲に対する制限があったからこれを全部除いてもらおうというのは、これは理想であります。しかしそれについて
日本
側も無理のないところならば話し合いをしよう、魚族保護の見地、海難救助のことについて話し合いをしよう、こういうのであります。それに対する取りきめができることを期待しておるのであります。それを漁業
協定
を言われるならば、それは当然いいことであります。魚族保護の問題は佳木的の
協定
であると言われるならば、それもいいことであります。しかしながら漁業
協定
、漁業
協定
と普通言われておるのが、戦争前に
日本
がソ連に対して毎年やっておったような漁業
協定
を頭のどこかに置いて、それに類似したようなものを漁業
協定
と言うならば、これは全然時代が違って、
日本
はそういう権利を持っていないのでありますから、そこで公海における漁業の制限について話し合いをしょう、こういうわけであります。私はその
意味
において
協定
を結ぶことに消極的であるとかいうようなことは
一つ
もございません。むしろ積極的であることを申し上げます。
穗積七郎
47
○
穗積
委員
そうであるならば、この問題は複雑怪奇な問題ではなくて、もうすでに両者の主張並びに問題点は明確であります。しかも閣僚の中の有力な大臣が行く。その場合、しかも時期は来月の十五日までにできるならば解決しなければならぬという時間的な制約もあるのに、なぜ一体
協定
締結を可能ならしめるような全権委任状をお持たせにならないのでございましょうか。
重光葵
48
○重光国務大臣 それは全権委任状を何時でも出す用意ができております。交渉をまずやるという建前でこれはやります。日比賠償の問題についても、
政府
代表ということで全権委任状を持たせないで今交渉を進めておることは御存じの通りであります。いよいよ調印というときになったら全権委任状を出します。
穗積七郎
49
○
穗積
委員
政府
が、今申しましたような急迫緊急な問題で、しかも時間的な制約もある、問題点も大体しぼられて明瞭であり、しかも漁業
協定
を結ぶことにやぶさかでないという積極的な
態度
を、言葉通りにおとりになるとするならば、当然事前に全権委任状を持たせる、そのために国会の
承認
を求めてやるべきだと思う。にもかかわらずそれをおやりにならぬということは、これは
一つ
は、河野代表に対して本年度の向うの臨時行政措置に対する緩和の交渉のみさせたいというあなたの実に消極的なるこの
態度
が
理由
の
一つ
。もう
一つ
は、河野全権を出すということに対して国会
承認
を求めるならば、彼を取り巻きます汚職問題その他があって、国会において相当紛糾することを予想された。その二つの
理由
が、あなたがこの全権委任状を出し渋った
理由
であると私は思う。そうであるならばそうであると、はっきり正直にお答えになったらいかがでございましょうか。
重光葵
50
○重光国務大臣 私は、この問題について正直だとか不正直だということでは、はなはだお答えをしにくいのであります。私はありのままを答えております。交渉をして、そうして全権委任状は一日、二日で向うに届くように、必要があればちゃんとやります。これは少しも手落ちのないように措置いたしておることを申し上げます。 それから議会の
関係
は、私は、議会に御相談することは当然のことでありますから、すべきことはいたすつもりであります。
穗積七郎
51
○
穗積
委員
御答弁不十分でございますが、時間がありませんから、前へ進みます。 十七日の参議院
外務委員会
において、十六日モスクワから発表されましたソ連側の今度の漁業交渉に関する南明、本
協定
を結んで、それが実施された後に本年度とった漁業制限の措置については
ソビエト
側が処置をするということに対して、あなたはこの発表の解釈を、これは本
協定
の交渉と並行して今年度の暫定的な行政措置に対する交渉も可能なりと解釈しておられるようですが、これは全く国民を欺瞞するものだと思うのです。明らかに向う側の
態度
は、本
協定
を結ぶことを先議する、それを先議して、そうしてそれが確定実施された後に、初めて今年度とった制限措置に対して、しかも協議をするのではなくして、一方的に
ソビエト
政府
が善処する、こういう文章に解釈して国民に説明さるべきだと思うが、あなたはそうではなくて、あえて曲解しておられるように思うので、この点は
一つ
注意を申し上げておきたいと思うのであります。御所見いかがでありますか。
重光葵
52
○重光国務大臣 御親切な注意ならばありがたく拝承いたしますが、今のような虚偽の何とかというのは少し……(
穗積
委員
「虚偽とは言いません、曲解です。」と呼ぶ)いや、曲解はいたしておりません。ここにロシヤ文もありますし、訳文もありますから、あなたは、れを
一つ
十分読んで解釈をして、また私に誤まりがあるならば、これは訂正することに少しもやぶさかではございません。木
協定
木
協定
と言われるが、本
協定
なんということは小しもありません。この
協定
が成立して、つまり話し合いをしてみて、その話し合いが成立した後に、ソ連としては
自分
のやったことに変える必要があるならば、その後に変える、こういうことが書いれてあります。それはその通りに私は説明をしました。そうしてその
協定
が、あるいはある
意味
において恒久的な
協定
とならずして、暫定的の
協定
になることがあり得ると私は申しておる。
穗積七郎
53
○
穗積
委員
あなたの言う暫定的な
協定
というようなことは向うは
考え
ておりませんよ。そういう
意味
ではない。
重光葵
54
○重光国務大臣 あなたはソ進の意向を十分御
承知
の上でおっしゃるのだろうと思いますけれ
ども
、しかしそれはわかりません。私も戦争前に漁業
協定
をずいぶん結びました。結局暫定
協定
をして一年々々ずったためもございます。だからそれはあり得ることです。あり得ることですが、取りきめはしよう、こういうのであるから取りきめをしたらよかろうと思う。そうして取りきめをした上で、向うが変えるべきことは
国内
的に変えなければならぬ、これは当然のことであります。
穗積七郎
55
○
穗積
委員
これに対する解釈は、あなたは時間がないから、あと事務当局の方にお尋ねすることにして次に進みますが、最近イスラエル、シリア等が
日本
から武器弾薬を買いたいという動きがあるようです。これは時間がありませんから、私の意見は申し述べませんが、これに売ることを許可する、または特許品だという名目によって
アメリカ
の許可を
条件
としておるかもしれぬが、
アメリカ
が許可しようがしまいが、
日本
政府
の独自な判断においてこういう武器を他国に売りつけて、しかも武力による国際紛争が起きようとしている危険なところへさらに爆弾を投下するようなことは、
日本
の外交
政策
としてはなはだ間違ったことであると思うが、念のために外務省の御意見を伺っておきたいのです。
重光葵
56
○重光国務大臣 今中近東のイスラエル、シリアの問題になっておるのでございますが、完成した兵器を売るような話はないそうであります。しかしそれはそれにしておいて、今言われておる全体の大きな
政策
問題ですが、私は
お話
の趣旨はきわめて御同感でございます。こういう問題は慎重にしないといかぬと思います。しかし問題は、完成した武器とか材料とかいうのは、専門的に言えば、どこまでが完成とかどこまでが材料ということになりましょう。しかし材料を売るということは別として、完成した武器を売るという話はないそうであります。そこでこういうことは慎重にしなければならぬという御趣旨は同感でございます。ごく簡単にお答えいたします。
穗積七郎
57
○
穗積
委員
われわれの聞いているところでは弾薬、弾丸、火薬。これは完成品ですよ。この最近の動きはないのですか。
重光葵
58
○重光国務大臣 向うからどういう商談の持ち込みがあったかという一々のことは、実は私自身は存じませんから申し上げられません。それは
関係
の係の者から申し上げて差しつかえございません。しかしそういう問題については御趣旨のようにきわめて慎重な
態度
で取り扱っておるということは、はっきり申し上げることができます。
穗積七郎
59
○
穗積
委員
それでは本日の新聞に報道されております
日本
のそういう業者が場合によれば売りたいという希望を持って、外務省を通じて
アメリカ
政府
にこの砲弾、弾薬を売ってもいいかということをなぜ許可を求められたのでしょうか。そこで
アメリカ
政府
から差しつかえないという返事があったということを外務省を通じて業者に伝えておるようですが、その事実はございませんか、ありますか。重大な問題ですよ。あなたがおっしゃるように初めからそういう動きがあるなしにかかわらず、この問題は重大な問題であるし、
日本
の平和外交
政策
としてはこれは好ましからざることであるというふうにお
考え
になっておるとするならば、そういう予備的な行為すら私はあり得べからざることだと思う。
重光葵
60
○重光国務大臣 今聞くところによりますと、パテントの
関係
や技術的
関係
で、
関係
国と話をしたことがあるそうでございます。けれ
ども
全体の問題としては、今のような趣旨で慎重にこの問題を取り扱うということを申し上げたわけでありします。
穗積七郎
61
○
穗積
委員
ちょっと不十分ですからあとで法眼参事官に具体的にお尋ねいたします。 最後に大臣にもう一点だけお尋ねしたい。それは先ほど
松本
君からもお尋ねがありました、最近の
日本
の旅行者に対するパスポートの制限の問題でございますが、元来旅行というものは自由であるべきなのです。旅券法の積神というものはそういうことなのです。それを何か
政府
が許可権を握って、そして許可をしないのが
原則
であるかのごとく、そういうような
態度
をとることは、旅券法並びに憲法の自由権の基本的な解釈において間違っております。そうしてその後聞いておるというと党内
事情
もあって、外務省というよりはむしろ党内
事情
に動かされてこれをきめ切れない。従ってパスポートを要請しておる者も、われわれの見ました資料でも非常に膨大なものがここに山積してしまっておるということです。それで最近聞くというと、
関係
事務当局の問において、一応客観性を持たせなければいかぬだろうということで、客観的な基準を話し合っておられるようでございますが、それができたとするならば、どういう基準によってそれをおきめになろうとするのか。先ほどあなたは政治的に利用される危険のある場合には考慮すべきだということは、これは
一つ
の標準として言われたのだと思う。それだけでございますか、いかがでございましょうか。もう少し合理的な客観的な、そして具体的な基本方針を
一つ
示していただきたいと思うのです。
重光葵
62
○重光国務大臣 法律または憲法の精神によって、旅行の自由ということは認めなければならぬということはその通りだと思います。その通りであるとともにまた旅券を発行する場合において、発行するかしないかという権限がどこにあるかということもまた法律のきめるところでありますから、それはそれによってやるがいいと
考え
ます。それならば今までどういうふうに
考え
ておるかというと、先ほど申しました通りに、また今申された通りに、政治上利用されるようなことにやるということは、双方の点から
考え
てみても、あまりよくないことだから、それはやらぬ方がよかろうということが従来頭にありました。そこでそれを申し上げたわけでございます。はっきりと法規的にこれを律することが適当ではなかろうと私は
考え
ておる点も、申し上げておる通りであります。しかしながら取扱いの標準をどういう工合にするかということを検討して、
政府
部内で
考え
るということもまたこれは必要であろうと
考え
ます。それが具体化して参りましたならば、大よそのことは発表してもいいのじゃないかと私は
考え
ております。
穗積七郎
63
○
穗積
委員
発表したければならぬ。発表する義務があります。基本的な人権に関することですよ。外交問題ではありません、交渉問題と違いますから、政治的に利用される危険がある云々というようなばく然とした幅の広いというか、ある
意味
では緩和のように見えてある
意味
では最もきびしいそういうきめ方というものは不当きわまります。こういう基本的人権に関するものは、刑法における罰則規定のごとき列挙主義であって、しかも実に疑いの余地のない、
政府
がかわり、またはそれを取り扱う行政官の思想的または政治的
立場
というものを乗り越えて、それに左右されることなしに客観的に、だれがやっても不公平、へんぱがないような取りきめをすべきことであって、政治的に利用されるなんというようなばく然としたきめ方で基本的人権をやるということは、治安維持法の最初の条文より以上に、私は基本的人権を弾圧するものだと思うのです。そういうばく然としたものではわれわれ納得することができません。旅行の自由というものは国民の権利です。それを
政府
が
自分
の政治的な
立場
、思想的な
立場
あるいはそのときの
国内
政治情勢から見て、わが党わが
内閣
に不利であるというような
観点
から、政治的に利用されるおそれがあるなんというばく然としたもので、こういう基本的人権を一方的に
政府
がこれを取り締ったり制限をしたり、そんなばかばかしいことは、封建社会においてでなければ
考え
られないことでございます。ですからもう少し明確な
条件
を示していただきたい。
重光葵
64
○重光国務大臣 御答弁は先ほどの通りでございます。基本的人権の尊重をしなければならぬというそれは私は全然御同感、その通りであります。しかし許可権が
政府
にあるということも……(
穗積
委員
「法律の命ずるところによってだよ。」と呼ぶ)それだから、法律の命ずるところによって、基本的人権を尊重しつつやらなければならぬ……(
穗積
委員
「勝手なことをやるからいかぬ。」と呼ぶ)勝手なことをやるということはだれも言いはしない。基本的人権を尊重しなければならぬと言っておる。しかし許可権はあるのであります。それだからそれは同じことを
議論
しておるように思う。
穗積七郎
65
○
穗積
委員
なぜ許可しないのです。今までの例から見て当然用さるべき性質のものが、なぜこのように山積しているのです。
重光葵
66
○重光国務大臣 それは検討すべきだというのです。
穗積七郎
67
○
穗積
委員
どういうことで検討しているのですか。――それじゃ時間がありませんから私の大臣に対する
質問
は一応打ち切ります。
前尾繁三郎
68
○
前尾委員長
岡田
君。
岡田春夫
69
○
岡田委員
大臣に伺いますが、さっきの重要な点で、あなたの御意見を一点伺いたい点は、鳩山総理が大阪において、日ソ交渉の今度の漁業問題について必要がある場合には、漁業の調査
機関
あるいはそういう事務所を設けてもいい、こういうように言ったというのであるが、これについては大臣はどうなんですか。
賛成
なのですか、
反対
なのですか。
重光葵
70
○重光国務大臣 それは
一つ
出てきた場合に十分に
考え
ようと思っております。
岡田春夫
71
○
岡田委員
あなたは
反対
されたということを新聞に伝えられておるが、あなたは
反対
された事実があるのですか。
重光葵
72
○重光国務大臣 私は交渉の上で
考え
よう、こう思っております。
岡田春夫
73
○
岡田委員
先ほどの
お話
を伺っておると、交渉前にこういうことを言うのは適当じゃない、こういう点を言われました。しかし
外務大臣
が今度は、そういうものを設けるのは今あまり
賛成
できないということを、あなたが新聞の上で言っているのだが、そういうことも交渉のじゃまになるのじゃないか、そういう点をお
考え
になりませんか。
重光葵
74
○重光国務大臣 それはちょうど
プラス
・マイナスでいいと思います。
岡田春夫
75
○
岡田委員
プラス
・マイナスでいいというようなことは、
日本
の外務省がいかにふらふらしているかということを表わしている。あなたの
政策
と鳩山総理大臣の外交
政策
とが、全然違うということを暴露している。そういうことは、
プラス
・マイナスでよろしいなんということが国際的に聞えてごらんなきい。笑われますよ。笑われるのはだれだ。
外務大臣
が笑われるだけですよ。それでもいいですか。
重光葵
76
○重光国務大臣 私はあまり笑われないと思っています。それは交渉の前に、
内容
について責任者が、
外務大臣
がいろいろ言うわけにいかぬ。
岡田春夫
77
○
岡田委員
総理大臣は言ってもいいのですか。そこで私伺いますが、先ほど
松本委員
の
質問
に関連して、一般的な漁業
協定
が結ばれるというようなことになれば、これは制限された
意味
でも国交回復になるのではないか。こういう点について明確な実は御答弁がない。これは国交回復にならないのではないかというような節の御答弁があったようですが、そういう
意味
ですか、どうなのですか。
重光葵
78
○重光国務大臣 幾ら説明しても了解しない、しないと言われるわけですが、私のなには先ほど申した通りであります。特殊の問題について
協定
が、取りきめがあっても、それは全般的な国交回復にならない、こう申しております。それを何度言ったらわかるのか。
岡田春夫
79
○
岡田委員
何度言ってもわからないのかとおっしゃるから、私は聞いているんだ。というのは、この前こう言っているじゃありませんか。日中の貿易問題その他について、領事を置いてもいいということをその当時鳩山総理大臣は言った。ところがあなたの方は、領事を置くのは困ると言った。代表部を置く程度ならばという話も出た。鳩山総理大臣は、代表部ならば置いてもいいじゃないかと言ったのだが、これについて保守的な外務省は、代表部を置いてもいいが、外交特権を設けるわけにいかない。その
理由
として、そういうことをやったら、国交回復が事実上できてしまうからだと言った。今度の場合だって、漁業事務所その他を置いたならば、事実上の国交回復の形になるじゃありませんか。あなたの言っているあのときとこのときと論拠が違うからだ。だから私は言っている。あの場合においては、代表部その他のものを貫いたならば、国交回復になるのだ。だから
反対
だ。今度の場合は、漁業代表部を設けたらば、当然その裏返しの言葉として、事実上の国交回復というものを認めたことになるのじゃないか。あなた自身が論理矛盾、きか立ちしている論拠を持っているから、そういうことになる。
重光葵
80
○重光国務大臣 どうもさか立ちしているのは私じゃないような気持がします。そこで調査部か何か知りませんが、そういうものを設けるのはどこからどういうあれで……(
岡田委員
「
日本
の新聞に書いてある。」と呼ぶ)
日本
の新聞に出たから、それが交渉の上でどうこうというわけじゃない。それでいかにもそういうものを置いて国交回復である、こう言いたいという御
議論
をしきりにやっているようだが、それはそういうわけにはいきませんと言っているだけの話です。(
岡田委員
「なぜいかぬ、日中の場合と法的効果は同じじゃないか」と呼ぶ)同じじゃない。そこがおかしなところである……(
岡田委員
「違うなら言ってごらんなさい。」と呼ぶ)日中の場合は、なぜ違うかというと、中国を論ずるときには、
日本
は中国
政府
を
承認
している。だから中華人民共和国かなんか知らぬけれ
ども
、
承認
することはできぬから、そこの問題が困難である、こう言っている……(
岡田委員
「形式的なことを言うからいかぬ」と呼ぶ)形式的なことではない。そういうことがわからぬからきか立ちしているんだ。
岡田春夫
81
○
岡田委員
まだあるけれ
ども
、留保します。
穗積七郎
82
○
穗積
委員
ちょっと下田
条約局長
にお尋ねしますが、まだ国交が回復していない国と国との
政府
間において、漁業
協定
なり貿易
協定
なりが正式に締結された場合には、これは黙示上の国交回復になる。少くとも戦争
状態
終結の
状態
はお互いに黙認した結果になると解釈するのが、私は国際法解釈の当然な論理であると
考え
ますが、
条約局長
の一般的な
条約
に対する解釈について御見解を伺いたいのでございます。
下田武三
83
○下田
政府
委員
かりにソ連と
日本
の間に漁業
条約
が締結されましても、国交回復には全然ならないと思います。当下国が特別のそういう合意をすれば別でございますけれ
ども
、現在のところ、日ソ両国と毛平和
条約
発効の日をもって国交回復の日とするということに了解ができておりますから、この了解を変更しない限りは、そうならないと思います。 そこでもう
一つ
問題が、国交回復とは全然
別個
の問題である戦争
状態
終結の問題ということになりますと、これは全然別のことでございまして、たとえば
日本
とインドとの間には戦争
状態
の終結に関する交換公文をやって、そのあとでまた国交回復というのはディプロマティック・リレーションズの回復でありますが、二つの交換公文をやっておるように、これは全然
別個
の問題でございます。そこで戦争
状態
の方は日ソ間でどうなるかと申しますと、これは現にパチパチをやっておる戦争
状態
の場合でも、部分的に戦争
状態
をちょっと終止する。たとえば捕虜や傷病者の交換をするために使いをやったり、あるいは
協定
すら結ぶということもございます。その限りにおいて、その分野においては戦争中でありながら戦争
状態
を一時終止させるということもございます。そこで漁業
協定
ができますと、戦争
状態
は、漁業に関する限りは部分的に終結したということになると思います。つまり現在はパチパチがあるわけでもなくて、紙の上の戦争
状態
だけでございます。この紙の上の戦争
状態
も、漁業に関する限りは終結した。従って公海において
日本
の船とソ連の船とが出合いましても、これはもはや敵、味方の船じゃない。漁業に関しては
協定
があって、その
協定
のもとでお互いに漁業に従事しておる船がやったということでございますから、戦争
状態
の方は、漁業に関する限りは、この問題に限って戦争
状態
は終止するということが言えると思います。
穗積七郎
84
○
穗積
委員
国交回復の問題は、日ソ間の具体的な例においては講和
条約
でいこう。たとえば戦争
状態
終結宣言とか、いわゆるアデナウアー方式とか、そういうのでなくて、本格的な講和
条約
、平和
条約
締結の方式をもっていこう、こういう話し合いで今まで進んできておったわけです。ところがそれが行き詰まっておる
状態
において変則になってきたわけですね。お互いにそういう合意の上でそういう
目的
でやっていたのだが、できればいいのだができなかったという場合に、時間的にそれより以前に、今言いましたような個別の
条約
をどんどん積み重ねてでき上っていく。そうすると、一体国交回復という時期はいつからあとと判断するかという問題が出てくると思うのです。すなわち暫定的または部分的というような言葉が使われてくると思いますが、いずれにしても両国の国交回復というものは、抽象的、精神的な問題だけではなくて、具体的に貿易なり人の往来なり、あるいはまた漁業の問題なり、そういういろいろな他の問題が積み重なって、それのアッセンブルされたものが国交全般になるわけであって、国交というものは単に抽象的なものでなく、具体的な
一つ
一つ
の実益と
内容
を持っておるわけです。そういうものがどんどん積み重ねられてくる、漁業
協定
の次には貿易
協定
ができる、あるいは通商航海
条約
が結ばれる、あるいはまた捕虜に関する釈放の
協定
が結ばれる、そういうような形でいったならば、一体いつが国交回復になり、いつからをもって国交回復と言われるわけですか。ある
意味
における国交回復ではございませんか。第一番の漁業
協定
だけが締結された場合におきましても、これはもう少くとも、両国間における戦争
状態
は終結された。漁業
関係
においてのみ戦争
状態
が終結されたという
考え
方ではなくて、そういうことを相手国の
政府
も
承認
し、相手国との間において友好、
協力
の
関係
をやろうという基本的全般的な
態度
に立って、初めて漁業
協定
というものがその一角として生まれてくるわけでございますから、それから演繹いたしますならば、その基本的な両国間の
態度
というものは、戦争
状態
を終結して、明らかに国交回復を意図し、その第一歩を踏み出した、こう解釈して私は差しつかえないと思う。またそう解釈しなければ、論理上はなはだしぐ矛盾しておる。今度の日ソ間の問題においては、それは平和
条約
をもってばっさりときれいに行きましょう、戦争
状態
終結宣言とか、あるいは個別的な単独
協定
を結んで積み重ねていこうというのではなくて、一ぺんきれいさっぱりと行きましょうということで申し合せておっただけのことで、国交回復への道としてはそれも
一つ
の方法である。だからそれは一体どういうふうに解釈なさるのか。私の論理の方がどうも客観性があるように思いますが、いかがでございましょう。
下田武三
85
○下田
政府
委員
国交ということは何かと申しますと、これは御
承知
のように英語ではノーマル・ディプロマティック・リレーションズと言っておるわけでございますから、普通は大公使を交換するとか、あるいは大公使が行くまでの間は第三国における大公使が話し合うとか、あるいは直接外交
機関
同士で、電報なり文書なりで外交上のおつき合いを始めるということが国交回復でございます。でございますからそういうことの明確な
意思表示
がなければ国交は始まりません。
日本
も平和
条約
の当事国以外とは一々国交回復に関すろ交換公文なり何なりをもって、今度の戦争のあと国交回復をしたのでございますから、そういう明確な
意思
の合致がなければ、国交回復ということは起り得ないわけでございます。それまでに漁業なら漁業の問題で交渉が起るということは、デ・ファクトの、事実上の交渉が起るわけでありまして、これ
自体
は国交回復でも何でもないわけでございます。
穗積七郎
86
○
穗積
委員
御答弁不十分で、もう少し実は伺いたいのですが、ほかに
質問
者もございますし、私
ども
も四時から予定しております用務がございますから簡潔にいたしますが、実はさっき
岡田委員
もちょっと触れられたと思うが、日中間においては貿易をどんどん促進しよう、総理大臣みずからがそれに支持と
協力
を与えようという
態度
をとった。ところがその方法については、両国
政府
間で貿易
協定
または通商航海
条約
というようなものを結ぶことは、事実上の国交回復になるからそれはできないのだ、だから当分の間は相手側は
政府
であっても、こちら側は
民間
で結んでもらいたい、いわゆる
民間
協定
にしてもらいたい、それに対して間接的に
政府
が
協力
する、支持を与えるという間接方式の形をとったわけです。その問題の所在点は、両国の
利益
のために他に先んじて貿易そのものを早くやりたい。漁業についてもそうです。そういうことであったが、それをやると国交回復しなる。さらに今度は
民間
協定
で結ばれました貿易代表部を置く場合に、それに、外交官とは存わないけれ
ども
、外交官に準ずるような最大限の特権を与えてもらいたいということに対しても、これを認めることになると、国交回復の事実上の積み重ねになるからというので、これを拒否してこられた。その論理とはなはだしく矛盾するわけです。その点を注意を申し上げておいて
条約局長
の再考を促しておきたいのでございます。それ以上の問答は次の機会にいたしたいと思います。 法眼参事官にお尋ねいたしたいと思いますが、先ほど私がお尋ねいたしましたイスラエルまたはシリアからの武器または弾薬、現在われわれの聞いておるところでは弾薬がおもなようでございますが、これらに対する事案上の動きが相当あったのじゃございませんか。その事実をもう少し明確にしていただきたい。できるならばあなたは責任者として、先ほど重光
外務大臣
が言われたように、この問題は単なる商売の問題ではなくて、非常に外交上の重大な
意味
を持っておるものであるということで慎重にしたければならない、むしろこれを許可すべきでないという御意向が明らかにされたわけですが、そういうことでありますならば、これから今まで起きたことの報告をしてもらって、それからこの二国のみならず、他の国からもいろいろの動きがあろうと思うが、そういうものに対して、一体これからどういうふうに処置されるつもりであるか、その二点についてお尋ねいたしておきたいと思います。
法眼晋作
87
○法眼
政府
委員
お答えいたします。この問題はかつてイスラエルの武器輸入団と称するものが来たという点に関連いたしまして、当
委員会
におきまして、いろいろの方から御
質問
がございました当時、御説明申し上げた通りでございます。その説明がこの問題に対してもまた当てはまるわけでありまして、
日本
はいかなる国に対しても公平な
立場
をとるわけであります。従って今回取り上げておる問題に対しましても、先ほど大臣が答弁されたようなことと同じ
立場
をとるわけでございます。ただいろいろなものが来て、いろいろな方面で商談を進めておるということにつきましては、これを逐一われわれは知るわけにはいきませんので、当時イスラエルの場合につきましても、御答弁申し上げましたように、そういうことから武器といわず、いろいろな商談が進んでいくのでありますから、これは向うから来れば広く
日本
のその方面と折衝するがよろしいということは言うまでもないわけでございます。ただ武器というようなことになって参りますと、これはおそらくは許可品目という
関係
から官の許可を得なければなりませんから、われわれはこれを知り得るというわけでございます。それからその後どういう処置をとるかということにつきましては、先ほど大臣から御説明申し上げた通りであります。
穗積七郎
88
○
穗積
委員
先ほど基本方針が明らかにされたので、われわれも当然と思いながら、いささか安心したわけですが、そうでありますならば、たとえば今度の三菱商事は、
アメリカ
の特許品――パテントの品物でもあるというので、事前に
アメリカ
政府
の意向を聞いてみたということであるならば、これは直接
政府
の責任でもなければ、場合によれば勝手に聞くのですから、
政府
の関知せざる場合もございましょう。ところが今度われわれが聞いておるところでは、外務省を通じて向うに聞き、外務省を通じて向うから返事があった。そうなると、すぐこれで商売を許可するという
意味
ではないけれ
ども
、場合によるならば許可してもいい、これは禁止はしない、少くともはっきり禁止しておるのではないということだけは、外務省の
態度
として推測されるわけですが、そういう誤解を招きますから、こういう措置は私は不適当だと思う。ですから今までのことについては、必ずしも私は責任をこれ以上追及はいたしませんが、こういうような
政府
の意向について疑いを持たしめたり、または特に
関係
諸国
、イスラエルにいたしましても、武器を使って戦争しようとしておる相手国、シリアにしても同様でしょう。それらの国は
日本
外務省のこういう措置に対しては、実ははなはだしく疑惑と不快の感を持つことは当然だと思うのです。そういう点もございますから、今後は
一つ
慎重にしていただきたいと思いますが、そういうふうに希望通りに措置していただけるものと理解してよろしゅうございますかどうか、念のためにもう一ぺん確認しておきたいと思います。
法眼晋作
89
○法眼
政府
委員
お答えいたします。
アメリカ
の意見を聞いたということにつきまして、私は実は詳しくはまだ報告を受けていないので、ここで確定的に申し上げることはできないのであります。思うに、規格であるとか特許であるとかいう問題は、武器に使う場合もありましょうけれ
ども
、これは武器のみならず、同じことがほかへ使われるということもあり得ようかと思いますので、そういう
関係
から問題が起ったのではなかろうかと推測しております。しかしこれはよく調べまして、事実を確定次第お答えしようかと思います。
松本七郎
90
○
松本
(七)
委員
先ほどの
穗積
さんの
質問
に関連して下田さんにお伺いしたいのですが、この前四月十二日の読売新聞の夕刊ですが、「漁業
協定
できても国交回復にならぬ外務省で結論」としてここに報道されたのです。一々読むと長くなりますから全部は読みませんが、「戦争
状態
が消滅し国交回復の法律的効果が生れるということは今回の場合はありえない。何故ならば現在の日ソ両国間の
松本
、マリク両全権の間で国交回復のための平和
条約
締結のための交渉が継続されているのであり、とくに両全権の間には
条約
甲案上の懸案解決の後に国交回復を行うとの合意が成立している。」これは外務省の意見として間違いありませんか。
下田武三
91
○下田
政府
委員
間違いございません。
松本七郎
92
○
松本
(七)
委員
そうするとこの合意が成立しているというのは、一体何を根拠にしてそういうことが一えるのですか。
下田武三
93
○下田
政府
委員
合意は、紙ではないのでございますけれ
ども
、日ソ国交調整に関するごく初期に、実はソ側の方から意外にも早く、種々の懸案解決に関するソ側の意図を盛った平和
条約
案が提唱されまして、いわゆるアデナウアー方式でなくて、両国の懸案解決条項を網羅的に規定したところの平和
条約
でいこう、つまり完全なる平和
条約
方式ということを実は向うの方から言ってきて、わが方ももとよりそれに異存がないので、交渉の初期から実はその建前で進んできたわけであります。
松本七郎
94
○
松本
(七)
委員
そうすると、その点についてはイニシアリングでもなされてあるのですか。
下田武三
95
○下田
政府
委員
別に文書はございません。交渉の過程における両国間の……。 〔「交渉の方法の問題だ」と呼ぶ者あり〕
松本七郎
96
○
松本
(七)
委員
それは交渉の間においてこういうことでやろうという単なる話であって、私は合意が成立したという表現は不当だと思う。もしもイニシアリングをつけて両全権の間に文書でしたとしても、こういう問題は国会で最終的に
承認
しない限りは、合意が成立したということは言えないと思う。そういう表現は非常に行き過ぎの言葉だと思う。
下田武三
97
○下田
政府
委員
国家間の合意は、
条約
とか
協定
になる合意はむしろ少いのでありまして、交渉の過程において一歩一歩合意を積み重ねて、それであらゆる点についての合意が成立した場合に、初めてそれを文書にしまして
条約
ができるわけなのであります。これは交渉の段階における基本的な合意でございます。
岡田春夫
98
○
岡田委員
関連して。それは
条約
上の問題ですが、結局たとえば原子力
協定
の場合でも、仮調印をするということのいわゆる合意に到達したということは、イニシアルして初めて客観的に成立することなのであって、申し合せなり口での話し合いが、合意に達したという法的な客観的な
意味
をなしているとは私は
考え
られない。これはなるほどあなたのおっしゃるように、話し合いを進める場合において合意の話はあるでしょう。これは交渉の方法なのであって、合意に到達したということを少くとも文章上で明らかにした限りにおいて、何らかの客観的な法的な裏づけがあった場合に、初めてそういう表現を使い得る。たとえばマリクと
松本
全権が、あしたは
一つ
うまくやれば全部きめてしまいましょうか、ああそうですね、きめましょうと言ったときに、あなたの言い方からいうならばこれも合意だ。けれ
ども
あしたになったらまだ全然きまらない、これは合意じゃないですよ。口の話の上で、あしたはきめましょう、
賛成
ですね、これもあなたの論拠から言うならば合意です。ところが今のあなたの話を聞いていると、初めのうちに平和
条約
の線でいきましょうという、こういう交渉方法についての進め方についての話し合いに合意があったというだけであって、これ
自体
は決してそういう問題について完全な合意に到達したということではない。これは方法の問題なのです。それはどうしてかといったら今言ったでしょう。あしたきめましょう、ああそうですね、きめましょう、それと同じことじゃないですか。これは交渉の方法の問題です。こういうように外務省の正式見解として発表する限りにおいて、合意に到達したというのは、何らかの客観的な法的な裏づけがない限りにおいて――それがなしにこれが書かれておるとするならば、これはいかに意識的に、何らか
日本
の外務省の
立場
を強弁するがために言わんとしておるにほかならぬと私は思う。どうですか。
下田武三
99
○下田
政府
委員
法的の合意というつまり
条約
式の合意ではないことは明らかであります。しかし交渉の過程において方式の問題というのは一番基本的な問題でございます。出発点です。ですから交渉方式について両国の合意と言って悪ければ意見が一致したということであります。
穗積七郎
100
○
穗積
委員
その問題は、まだ問題が残っておると思うから、やっていただきたいし、私もやりたいと思うが、私は先に言ったように時間があるしするので、矢口局長に、さっきのパスポート許可の問題に対しての自民党の中から出てきた意見で、この前いつでしたか口付ははっきり記憶しませんが、閣僚
会議
で実はそういう申し合せがなされたか決議になったか知りませんが、そういうことから一ぺんあの線に沿って、基本的な
条件
をきめようというような空気になったようです。それに対してもう少し具体的な御報告を
一つ
最初にしていただきたいと思うのです。
矢口麓藏
101
○矢口
政府
委員
基本的な
条件
というものを申せというような御指示でありますが、今までの経緯を率直に申し上げる自由を私が持たないことをはなはだ残念に存じます。これは上司並びに上の方の意向によりまして、当分の間秘にしておけという指令がございますものですから、はなはだ恐縮ですが申し上げるわけにいかないのであります。ただどうなっておるかというような大体の流れは、私は申し上げる自由があると思いますので、それでよろしゅうございましたら、申し上げさせていただきます。 実は最近中共並びにソ連方面への渡航希望者が相当ふえて参りまして、最近われわれが受理しております数でも約二有名前後に相なっています。二百名ちょっと欠けております。もし詳細を御希望でしたら
お話
し申し上げますが、そういうふうに非常にふえて参りまして、どうも旅券法の趣旨に合致しないのではないかというような意見が上司の方からございまして、それでもう少し渡航の
条件
といいますか、ただいま
お話
のお言葉によりますと、基本的な
条件
をきめてはというような意見がございまして、それで御推察の通り
政府
部内、閣僚
会議
、それから事務当局との間でそういったふうなものを今作りつつある途中であります。でありますから、結論は今までよりも制限的な
方向
に向うということは申し上げ得ると思います。
穗積七郎
102
○
穗積
委員
だからその経過報告でもできませんか。事務当局の間で話し合っておる中間報告でもできませんか。
矢口麓藏
103
○矢口
政府
委員
その話し合いといいますか基準といいますか、制限の
内容
を申し上げろということでございますならば、先ほど申し上げました通り、私遺憾ながらその自由を持ち合せておりませんので、
内容
には触れるわけにいかないと思います。
穗積七郎
104
○
穗積
委員
矢口局長に申し上げるまでもありませんが、この際注意を喚起しておきたいと思うのです。というのは、行
政府
の事務当局というものは、法律によってのみ動くものであって、従ってそのときの
政府
がどうであろうと、そのときの大臣の
考え
方がどうであろうと、または
与党
の中でいろいろな政治的な勝手な要望や解釈があろうと、やはりあくまで法律の精神と法律の明確なる条文に従って、これを正しく解釈して、その通り実行すべきものなのです。ですから今言うたような
議論
が――私は旅券法の基本精神と条文を無視するような、これを圧殺するような意見すら、実は
与党
の内部に出ていることを仄聞して、私ははなはだ遺憾に思っておるのです。ですからその場合におきましては、事務当局でどうせ案を作らなければならぬ。そこでもし誤まった命令が出るならば、これは正義に立つ事務当局としては、そのような要望は拒否すべきものである。その基準はあくまで国会で作られましたこの法律に根拠を置くわけでございます。従ってこれから審議されるということでありますならば、あなたのお
立場
もありますから、今日はこれ以上深追いをして追及することを差し控えまして、早くそれがわれわれに示されることを期待いたしますが、その場合におきましては、あくまで主観的なばく然としたそういうようなものでこれを規制すべきものではなくて、明瞭に旅券法に根拠を置いた合理的なものでなければならぬということを、私は特に第一点として注意を申し上げたい。 第二は旅行者の
目的
でございますが、たとえば近く出て参りますメーデーの招待のごときは、五月一日までにかの地へ着かなければ
意味
がないのです。そういうような時間的な制限を受けました旅行等については、そういうような上司云々などというようなことでこの問題を拒否して、そうしてむしろ法を曲げて、法を圧殺して、そして旅行者の基本的な自由権を侵害するというようなことは、これは私は職権の乱用だと思うのです。その時間の問題等毛第二の御注意として申し上げて、あなたの良識と正義によって
一つ
善処していただくことを強く要望いたしますとともに、この問題は外務省のあなたや遠藤課長の手元だけではなくて、各
関係
省との間の打ち合せ等もありましょうから、事務当局の方にも
外務委員会
で強くその要望が出たことをお伝えしていただいて――これは
与党
野党、多数少数の問題ではございません。正論だと思いますから、
一つ
その信念に立って、あなたの御意見としてもつけ加えてお伝えいただいて、誤まりなきを期していただきたいということを強く要望いたしますが、そういう基本的な鮮度についてのあなたの御所見はいかがでございましょうか、お尋ねいたしたいと思います。
矢口麓藏
105
○矢口
政府
委員
第一の点は全く同感でございまして、もちろん制限事項を設けるにいたしましても、先ほど重光大臣から答弁がありましたように、法律の命ずるところに従いまして、その範囲内において取扱いの標準をきめるべきものだと信じております。 それから第一点のメーデーに間に合うようにということにつきましては、これは旅券発給技術の問題でありますが、極力その線に沿うように現に処理してございます。でありますから、メーデー
関係
のものを出してもいいという基準がきまりますれば、旅券の発給は時間的に間に合うように、特別の措置を講じつつあるということをお伝え申し上げます。 第三点の各
関係
軍務的に伝達しろということにつきましては、機会あるたびによくその趣旨をお伝えいたしたいと思います。
森島守人
106
○森島
委員
条約局長
にお伺いしたいのですが、河野さんが二十一日に出発して行くということは先ほど
お話
の通りですが、河野さんは国務大臣であるとともに議員です。議員が
政府
代表として行く場合には、両院の一致した議決が必要だと私は信じておりますが、いかがでしょうか。
下田武三
107
○下田
政府
委員
国会法のことでございまして、私権威を持って御答弁する
立場
にもまたないと思うのでございますが、ただ国務大臣になられますと、包括的に所管事項についてはいろいろの行動をおとりになることを、法律ですでに認められているのではないかと思うのであります。従いまして農林大臣の所管であられる漁業の問題について外国と話をされるということも、すでに農林大臣に任命されたことによって当然包括されているのではないかというように存じます。
森島守人
108
○森島
委員
その点につきましては、やはり外務省員として行かれる――そうなりますと、外務省としても
関係
があると思うので、もし国務大臣あるいは農林大臣として――所管が違うから私は最後的な回答は求めないつもりですけれ
ども
、お
考え
願いたいのは、農林大臣として行く場合には、何らそういう制限を受けないのだという法的な根拠がなければならないと私は思う。この点も外務省としては手抜かりのないように措置をなされることを希望しますから、大臣にお伝え下すって、国務大臣として自由に行けるのだというなら、その法的な根拠を明らかにして、問題の起らぬようにするのが外務省としてとるべき措置だと私は
考え
るのです。
岡田春夫
109
○
岡田委員
今の問題は
条約局長
と
お話
をしてもしようがありませんが、
条約局長
に
一つ
お聞きいただいておきたいと思うのは、国会法では国
会議
員が長い間休むという場合には、請暇を求めなければならない、そういう点からも問題があるわけです。そういう
意味
ですから、この点はこれ以上申し上げません。 それから法眼参事官に伺いますが、せっかく重大な使命をお持ちになって近いうちに御出発になるのですから、行かれる前にこういうことを申し上げるのは、あるいははなはだ失礼かもしれません。心に残ることかもしれないけれ
ども
、はっきりしていただきたい点は、実は先ほどの兵器
輸出
の問題です。この前私の
質問
に答えてあなたはイスラエルから来ているのは軍人ではないということをはっきり御答弁になったように記価していますが、これはもう間違いないとあなたお
考え
になっておりますかどうか、その点お伺いいたしたい。
法眼晋作
110
○法眼
政府
委員
当時調べてさらにもう一回御返事すると申し上げておいたのいありますが、御返事申し上げるその機会がなくて今日に至ったのでありますが、これはやはり入国管理手続、旅券面その他から推して、これは軍人ではない、こう申し上げているわけであります。ただしそれがイスラエルの
国内
でどういうことになっているかということは、どうも知る由がないことでございますので、われわれは羽田で向うが申告されたことによって、これは軍人ではないということを判定しておるわけであります。
岡田春夫
111
○
岡田委員
それでは現在のところは間違いないとお
考え
になっておるのですか。これがもし違っておったら、あなたはどうなされますか。
法眼晋作
112
○法眼
政府
委員
われわれは、現在の公けの手段でもって知ったところに従って、そう申し上げているわけでありまして、これはしかしイスラエルへ照会する手もありましょうし、本人の身分を確かある方法もあるでしょうが、それは今まではやっておらないので、向うが申告した旅券面に従ってシビリリンである、こう申し上げているわけであります。
岡田春夫
113
○
岡田委員
それだから私伺っているのですが、同じ役所の中で、この人は軍人であるということを証明させようと思ったら、私は今でもできるのです。その人に来てもらえば……。現実に通産省に入ってきたときには、陸軍中佐の正式の軍服を着て入ってきている。二名ですよ。名前はあなたに申し上げた通りですから、御存じでしょうが、これは軍人なのです。明らかに陸平中佐です。こういう事実がもしあった場合には、あなたのお調べになったのは誤まりであったとお
考え
にならなければならぬと思うのですが、この点いかがでしょう。
法眼晋作
114
○法眼
政府
委員
しかし私は、旅券面その他によって、羽田の入国管理当局から報告を受けて、その旅券面ではシビリアンだ、こう申し上げているわけであります。従ってその人
たち
が
国内
でどういう服装をして歩いておったかということについては、私は実は調べが及ばないというのが事実であります。
岡田春夫
115
○
岡田委員
これはあなたは行かれる前に、お忙しいでしょうけれ
ども
お調べ下さい。これはあなたがおられなくとも、外務省として正式に答えていただかなければならぬ。参事官がおられなければ、だれか適当な人にお答えいただいてもけっこうです。ということは、もしシビリアンなのに軍服を着て入ってきたというなら、これまた問題だろうと思う。問題だというのは、軍人の扱いとして通産省が扱っているのだから……。それからまた逆に軍人であるにもかかわらず、法的にシビリアンとしての手続をしたというのは、これまた問題だと思います。だからそういう点からいって、はっきりしていただかなければならない。 そこでもう一点伺いますが、あなたは兵器
関係
のことを、あるいはおやりになっているなら御存じだろうと思うが、むしろ
条約局長
の方が御存じかと思いますけれ
ども
、ことしの二月に、イスラエルから軍人が来るからよろしくあっせんをしてくれということが、
日本
の外務省にきているはずです。正式公文書がイスラエルの
政府
からきているはずです。御存じありませんかどうですか。
法眼晋作
116
○法眼
政府
委員
それは私はちょっと全部を記憶しておりませんけれ
ども
、どういう文書を、どういうふうにして御存じになったのでしょうか、ちょっと参考のために……。
岡田春夫
117
○
岡田委員
それは私がここで言う限りのことじゃない。そういう点がもしおわかりにならなかったならば、あなたはお立ちになるならあれですから、外務省の
政府
委員
あるいは説明員から、あなたがおいでにならなくても、外務省としてはっきりお調べの上で御報告願いたいと思うのですが、この二人は正式の軍人である。それからこの人が来る前に、たしか二月か一月の末ですが、イスラエル
政府
から正式に
日本
の外務省に――イスラエルは大使館か公使館か知らぬが、これを通じて、
日本
の外務省に、軍人が来て兵器の
輸出
についていろいろやりますから、あっせんを願うという書面、たしか書面のはずですがきております。これをお調べ願って、適当な機会に御答弁願いたいと思います。
法眼晋作
118
○法眼
政府
委員
御指摘の点は、調べてできる限り御返事をしたいと思います。ただしこれは二十一日までに間に合わないかもしれませんから、その節は
関係
の課長その他をして説明をさせます。ただし、繰り返して申し上げますけれ
ども
、われわれのところは先方の申告によって実は判断をしているのでございまして、その人
たち
がいかなる服装で、またいかなる
意味
合いで
国内
で動いているかということは、実はわれわれは調べが及ばぬ、こういう状況でございます。それからまたあっせんの文書その他については、実は私は
承知
しないので、これは調べてみますけれ
ども
、調べやすいために、たとえばどういうふうであるという、そういうヒントでも得られれば大へん幸いだと思います。
岡田春夫
119
○
岡田委員
それでは、あまりそういうようにないしょにされるなら、ほかの役所に具体的にその書類がきていることも、あなたがおられる間に、はっきりお知らせしてもいいと思います。そのきている書類を見れば、あなたは認めざるを得ないわけですから、そういう方法を講じてもいいと思います。しかしあなた自身どうやったらわかるか、そんなことを言わなくても、調べればわかりますよ。そんなことは……。
法眼晋作
120
○法眼
政府
委員
だから、調べて御返事すると申し上げております。
岡田春夫
121
○
岡田委員
どういう方法で、どういう書面がなどということを
お話
しにならないで、むしろあなたはおわかりの通りですからね。この出題は私は実は系統的にずっと調べてある問題です。それでこの問題はイスラエルの問題だけで済まない問題です。レバノンも来ている。シリアも来ている。その他もたくさん来ております。なぜこのように来ているかということについても、
理由
があるわけです。だから、そういう点はきょうばいたしません。いたしませんが、十分お調べいただくように希望いたして終っておきます。
前尾繁三郎
122
○
前尾委員長
次会は公報をもってお知らせいたします。 本日はこれにて散会いたします。 午後三時五十六分散会