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1956-04-07 第24回国会 衆議院 外務委員会 第29号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年四月七日(土曜日)     午前十一時十一分開議  出席委員    委員長 前尾繁三郎君    理事 石坂  繁君 理事 須磨彌吉郎君    理事 高岡 大輔君 理事 穗積 七郎君    理事 松本 七郎君       植原悦二郎君    大橋 忠一君       菊池 義郎君    重政 誠之君       並木 芳雄君    福永 一臣君       福田 篤泰君    田中織之進君       田中 稔男君    戸叶 里子君       福田 昌子君    細迫 兼光君       森島 守人君    和田 博雄君       岡田 春夫君  出席国務大臣         国 務 大 臣 高碕達之助君  出席政府委員         外務政務次官  森下 國雄君         外務事務官         (経済局長)  湯川 盛夫君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君  委員以外の出席者         総理府事務官         (経済企画庁長         官官房経済協力         室長)     佐瀬 六郎君         大蔵事務官         (為替局総務課         長)      佐々木庸一君         専  門  員 佐藤 敏人君     ————————————— 四月六日  委員田中織之進君辞任につき、その補欠として  竹谷源太郎君が議長指名委員に選任された。 同月七日  委員竹谷源太郎辞任につき、その補欠として  田中織之進君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際金融公社への加盟について承認を求めるの  件(条約第一号)     —————————————
  2. 前尾繁三郎

    前尾委員長 これより会議を開きます。  国際金融公社への加盟について承認を求めるの件を議題といたし、質疑を許上ます。穗積七郎君。
  3. 穗積七郎

    穗積委員 高碕長官に、本協定との関連において質問を申し上げたい思ます。  まず第一に、国際金融公社を通じて対外投資協力するだけでなくて、日本自身といたしまして、対外投査に対する計画が、今まで特にあなたを中心として石橋、一萬田等経済相との問になされ、またその構想については、アメリカの幹部にも話をされて、向うの意向も求められたというようにわれわれは承知しておるのですが、こういう、他のものに引きずられるといいますか、誘いによってやるのではなくて、日本経済立場に立った、自主的な、政府計画的な対外投資計画方針がなければならぬと思うのです。それについて、その後の状況を率直にお話をいただきたいと思います。
  4. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 御承知のように、昨年日本輸出貿易は、われわれの予想しておりましたよりも急速に進歩をしたのでありますけれども、これは必ずしも日本状況がよかったということだけではなくて、世界の景気がよかったためにああいう結果になったのでありますが、これをいつまでも望むことはできないから、どうしても新しい方策を講じて、輸出を振興していかなければわが国の経済が自立できないということから、今後の経済的外交を促進していきたいということが、今後の経済自立計画に対する重要な点だと存ずるわけであります。その意味におきまして、今後の輸出は、できるだけプラント輸出というものに重点を置きたい。そうしてブラント輸出すると同時に、ある程度投資をし、ある程度人間も送るということをやっていきたいと思っておるわけでありますが、いろいろ検討いたしてみますと、大体フィリピンから東南アジアにかけましての一年の彼らの計画を見ますと、約四十四億ドルくらいずつ計画を立てているようであります。これは最近にその数字の内容がわかりましたから差し上げたいと思います。けさようやくできました。それからトルコを初め、中近東におきましては、大体一年に六億四千万ドルくらいの開発計画をするということになっております。それからメキシコ、アルゼンチンブラジル中南米等におきましては、約八億二千万ドルくらいの一年の計画を立てる。合計いたしますと、日本よりも未開発の国におきましては、相当大きな計画を立てるということになっておりますから、それに順応して日本機械類輸出し、それに応じてプラント輸出をしようじゃないかというのが目的なのでございますが、従前から見ますと、その国は、いずれも資本が不足しておることでありますから、相当に外資を持ってこなければならぬという建前でございますが、かりに東南アジアだけで申し上げますと、今までどのくらいの外資を持ってきておるかということを概算してみますと、開発用として二十二億ドルくらいの外資を使用しておるわけであります。これは東南アジアだけであります。(「何年間ですか」と呼ぶ者あり)現在までにです。(「戦後ですね」と呼ぶ者あり)そうです。戦後開発用としてこれだけの外資を持ってきているわけであります。その中を見てみますと、コロンボ・プランでそのうち十一億ドルくらい持ってきている。それから世界銀行から二億七千万ドルくらい持ってきている。アメリカ輸出入銀行から七億ドル待ってきている。ソ連からは約一億ドルを持ってきている。こういう状態になっておりまして、これを受け入れる国といたしましては、できるだけひもつきでないということ、できるだけ低金利条件のいいものでなければならぬということを今各国ともねらっているわけであります。そういうこともわれわれは頭に置いていかなければならぬという考えであります。そこでいろいろの点から考慮いたしまして、日本といたしますれば、ベンディングになっております賠償問題をいっときも早く解決すると同時に、日本の持っている工業力によって、プラント輸出し、技術、特に熟練工を持っていくことが一番必要であります。現在、ドイツアメリカを初め各国ともプラント輸出をしておりまして、投資もいたし、いろいろなことをやっておりますが、一番不足しているのはこの熟練した技術者であります。御承知のように、ヨーロッパ方面では完全雇用を実現しているというような工合で人が足りないということでありますが、それにつけ加えて、日本のいい技術者を持っていくということを付加していきたいという考えでございます。ただ日本とすれば、機械はある程度長期で、場合によればある程度投資もするとかいうようなことも考えられるが、金を持っていくことは、日本現状ではなかなか許されない状況でありますが、といって全然出さぬわけにもいかないから、できるだけ日本の力で資本機械人間も出していきたいと思っておりますが、これのできないところだけは、やはり外国の力を借りていかなければならぬということで研究をしたいと思っております。ところが外国の力を借りますと、その国々に応じて国民的感情がありますから、ある国ではアメリカ資本はいやだ、ある国ではアメリカ資本でもいいといういろいろな考え方がありますから、その点もよく考慮しなければならぬ。そういうことで問題は単純に解決できないのであります。いろいろ各国実情等を検討いたしておりますが、この各国実情を検討いたします上において、一番有力なる材料になるものは何だということになりますと、今中南米ブラジル及びアルゼンチンにおいて、ドイツだとかイタリア方面が、今日本のやらんとしている方法と同じような方法で、過去においてプラント輸出をし、あるいは長期投資をしておりますから、その条件状況等をいろいろ検討いたしました結果が、ようやくきょう印刷にできたようなわけであります。これはこの間和田先生お話もあったものでありますから、御検討願う上においてできるだけ広く配付して御検討願いたと思っているわけであります。以上私の考えましたことを率直に申し上げたわけでありますが、これは政府全体といたしましてはまだよく連絡もとれていないようでありますから、こういう点を基礎といたしまして、大蔵省なり外務省なり通産省なりと打ち合せをしていきたいと存ずるわけであります。
  5. 穗積七郎

    穗積委員 次にこの前岡田委員からもちょっと指摘されたわけですが、特に日本経済にとって一番重要であります東南アジアに対するソビエト側経済援助です。これは経済企画庁のお考えは、大体率直にありのままの事実を認めるという態度、あるいはそれに近い態度のように好意的に見ているのだが、その場合に、今も大臣から報告がありましたが、ソビエトからの今までの経済援助関係というのは非常に少いわけですけそども、これを曲線にして将来を判断いたしますと、非常に伸びるのではないかというふうに考えられるのです。そこで実は今まで日本のこういう対外援助問題については、特に世界銀行とか今度の公社とか、アメリカルートに便乗するといっては言葉が悪いかもしらぬが、とにかくアメリカの線に沿うていくという考え方であったわけですが、特に東南アジアがいわゆる資本主義陣営だということで、それの方が安易であり、効果的であるという考え方が、惰性として日本政府の中にもあったと思うのでありますが、しかし現在量は少くても、最近のソビエト経済外交というものは至るところで成功をしておる。東南アジア中近東等に対しましての経済関係というものもこれから促進される。しかもその方式は、経済企画庁自身も見ておられるように、政治的な軍事的なひもつきでない、また経済的に見るならば、金利期間等においてアメリカ側よりむしろ有利であるというようなことになりますと、今までの日本東南アジアに対します対外的な援助協力方式が、政治的に言うならばアメリカルートに沿っていく、それからまた考え方もその線に沿っていくというようなことではいけないので、この際基本的に一ぺん東南アジア中近東、つまりアジアアラブ地区全体に対する経済開発については考え直すべき段階にきているのじゃないか。もとより今までありました世界銀行を通じての協力というものは、政府がおやりになっておられる立場はわかっておりますから、われわれならば別でございましょうが、あなた方の立場に立って、すぐこれを拒否しろとかあるいは打ち切れとか、そういうことを言うのじゃなくて、現状現状として、将来の積極的な計画というものは、やはり独自な計画をここで考えるべきではないかということを、実は私は基本的に感ずるわけでございます。それに対して実はあなたが御同席で伺いたいと思ったが、アメリカ一辺倒であるといわれる重光外務大臣ですら、最近の中近東東南アジア等におけるソビエト成功なんかを見て、これは日本としてその対外経済協力の線については、独自な基本的のものを考え直さなければいかぬように思う、その線に沿って計画も立てるべきだというふうな考え方を、まあ重光さんにすれば上出来だったと思うのですが、率直にこの前言われたわけです。そこであなたに対しては、これはもとよりあなたのことですから、重光さんですら理解したこの基本方針の再検討については、当然御理解がいただけると思いますが、あとの議論を進めるために、以上のことを、繰り返しになりますか一ぺん申し上げて、そうしてこれに対するあなたのお考えを伺っておきたいと思うのです。
  6. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 純経済的立掛から申しますれば、これはアメリカだとかヨーロッパだとかソ連だということを論じないで、一番経済的に有利で長期でこれを低金利で貸してくれる、しかもこれには何らひももつかず、これの支払い条件等も楽な方がいいと思っておりますが、ただいままでソ連中近東に申し出ております条件等を検討いたしますと、金利は低い、それから期限は長い、また支払い条件等もその土地の産物をもってとる、こういうふうなことになっておりますから、その点からいうと、アメリカ資本を持ってくるよりも非常に楽なように私は観察するのでありますが、これがどの程度真実性があるかということにつきましては、私どもはその現状を、ほんとう数字を把握することはできないのであります。これも私は信じませんけれども、悪い報告を見ますと、インド製鉄工場のごときは約百万トンの計画でありまして、これを私どもが見積りましたときに、大体六千万ドルくらいでできるという予定でおりましたが、今度ソ連の見積りは約一億ドル近くになっておる。その設計等は、満州で私どもが出した設計そのままを使っておる、こういうことでインドはそれを喜んでいない、こういうことを言う人がおりますが、これがほんとうかどうかわかりませんが、現状は把握することができないのでありますから、それは一に技術援助を受ける国との契約をよく見た上でなければ、私どもは判断はできないと思っております。しかし御説のごとく、経済的に見ましてできるだけ有利な支払いやすい方面のものを受け入れるのは当然でありますから、そういうものとやはり提携するということも考えていかなければならぬか、こう思っております。特に日本といたしましてはやはりソ連と同じような工合に、将来日本の食糧なり原料なりがきつくなりますから、そういうものを日本投資に対して支払ってくれるということになりますと、ソ連が出しておるような条件をわれわれが出すことができるというようなことを考えておるわけであります。
  7. 前尾繁三郎

    前尾委員長 穗積君、簡潔に願います。
  8. 穗積七郎

    穗積委員 実は委員長から、大臣の時間がないからというので御催促でございます。それからなお私のあとに私の方の田中和田委員からもあなたに対して、ぜひ質問をしたいということで通告いたしておりますから、実は私はもう少し関連してお尋ねしたいことが多いのですけれども最後に一点だけお尋ねいたします。対外投資計画について国際金融公社との関連世界銀行との関連ルートを通じての対外投資東南アジア中南米に対するそういうものについては独自のものを考えるということについて、先ほど基本構想だけは伺ったが、その方策はこれからだということでありますが、そこでそれとの関連において最後大臣にお尋ねしたいのは、やはりアジア経済開発というものは、その年度別貿易によってのみやっていく、しかもそれは国際経済相手国開発計画または好景気等によって左右されて非常にランダムというか、フラクチユエーションが多いわけですね。コンスタント社会主義経済のようにいきません。そこでアジアの立ちおくれた経済開発と独立のためには、経済的な意味におけるアジア経済会議といいますか、そういうようなものを、アジアだけの一つの自主的な連絡なり協議というものが必要だと思うのです。これはバンドン会議その他でも経済問題については討議されるわけですが、経済問題というのは、やはり相当コンスタントに、スタンディングに、しかも計画的に長期にわたって各自国経済計画というものを考えて、アジア全体の経済調和等考えなければなりませんから、そういう意味でこういうものを政府が積極的に提案され、そうしてこれを政治的なことをすぐ外務省はお考えになりがちでございますが、そういうことを考えないで、そういうアジアのための互恵平等による相互援助、それは貿易だけでなくて産業開発技術提携等を含みますが、そういうアジア経済会議といいますか、これは何も固定した言葉ではございませんが、そういうものを一つ考えになって、しかも積極的に進められるお考えを、特に今の政府の中であなたなんかは積極的にそういうことを考えていただくべきであり、いただける良識を持っておられるとわれわれは期待するのだが、大臣はそういうお考えはお持ちにならぬかどうか、一つこの際伺っておきたい。そうして同時に、できるならばそれを実現ができるように政治的に少し進めてもらいたいと思のですが、御構想を伺っておきたいと思うのです。
  9. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 ただいまさしあたってそれまでは考えておりませんが、今御説のような会議は私は非常にいいことだと思っておりますが、まだ賠償問題も解決していないときに、日本各国に呼びかけてやるのは時期が尚早だ。やはり今日の私ども考えでは、ブラジルと西独が結んでおるような合同的な開発委員会各国ごとに開く。たとえばビルマとの賠償問題が開かれたからこれを開くとか、あるいはカンボジアと開くとか、こういうふうなことを考えて、逐次今のお話のそういう問題に入っていきたいと思っております。
  10. 前尾繁三郎

  11. 田中稔男

    田中(稔)委員 きょうの日本経済を見ますと、最近アメリカの方から話がありました余剰農産物買付の交渉を政府が断わることに内定しているということですが、これは御存じのごとくアメリカから余剰農産物日本に入れて、その代金の円を積み立てておいて、その円資金アメリカが利用して東南アジアに対するいろいろな援助物資日本で調進する、こういう三角関係経済でありますが、このことについての経緯をお伺いしたい。
  12. 湯川盛夫

    湯川政府委員 お答え申し上げます。ただい京のお話MSA法の四百二条による農産物の買い入れのお話でございます。これは別にアメリカ側から正式に提案があったものではございません。ただこういう方法による買付もできるのだ、日本で興味があるかどうかという内意を非公式に開いて参ったのでございます。それで私どもとしてはいろいろ研究いたしましたが、なるほどドルを使わないで農産物を買えるという利益もございますが、しかし他方、日本のノーマル・エキスポートにあるいは悪い影響があるかもしれない、それから船舶条項という例の米船を五〇%使うといったような点はやはり不利益な点である、こういう利益不利益を勘案して、これはどちらかといえば消極的な意見とならざるを得ない、一応今までの段階ではそういう研究になっております。まだ最終的な結論は出ておりませんが、今まで各省で研究したところでは、今後のMSA法四百二条による買付には、消極的な結論に大体なるはずでございます。
  13. 田中稔男

    田中(稔)委員 重光外相お話しになりましたように、政府東南アジア開発援助計画をいろいろ研究しておる、また研究でなくても、今までも吉田前首相が、アメリカから十億ドルかの金を東南アジアに出させて、今度はその開発協力することによって日本の繁栄をはかろうということを提案されている。これは問題にされなかった。それから、最近ジョンストンが参りました際も、ジョンストン構想というものが伝えられ、一萬田蔵相ジョンストンをたびたびたずねて話をされ、一萬田構想というものが伝えられております。こういう考え方は、一貫して結局アメリカ資金やいろいろな経済力に便乗して東南アジアに進出しようという計画なのです。これはいわば、アメリカ日本東南アジア三角関係です。ところが、アメリカ東南アジアに対して行います援助は、第一には軍事援助、第二には軍事的な性格を持った経済援助ともいうべき防衛援助、さらにまた普通の経済援助というものもありますが、最後の普通の経済援助というものさえいろいろな条件ひもがついておる。今お話があったように、農産物を売る場合にもアメリカの船を使えとかなんとかいろいろな条件がついておる。こういうわけで、軍事援助防御援助はもとよりでありますが、普通の経済援助についてさえ、アメリカ側のいろいろなひもがついている。政治的にも経済的にもついている。これが東南アジアにおいては問題になっておる。一方ソ連側援助は実際においてそういう一切のひもがないということで歓迎されておる。これは岡田穗積委員からもたびたび指摘された通りであります。私どもとしては、純粋にコマーシャル・ベースに乗る経済的な援助ならぱ、それはアメリカからであろうとソ連からであろうと、どこでもいいわけです。そしてまた日本がこれと協力することは少しも差しつかえない。しかしながら、アメリカ一つ世界政策アジア政策があって、そういうひもつき援助である。そこで、これに便乗して日本東南アジアに進出するという行き方は、何といってもまずい結果になると思います。長官バンドン会議にも行かれて、いわゆるバンドン精神を体得されたと思います。バンドンにおいて決定されました十原則の中にも、第九に相互利益協力の促進ということがあります。こういう原則は、今のアメリカ式ひもつき援助を私は意味していないと思う。アジアの内からであろうとアジアの外からであろうと、ほんとうに無条件後進国開発ということを意味しておるのだと思います。こういう、吉田さんから今までずっと伝統的に問題になっておりますアメリカ日本東南アジア三角関係における開発援助という構想について、長官はどういう御所見を持っておられますか。今穗積君の質問に対しましても御意見の一端は披瀝されましたけれども、私の質問に対して一つ詳細に根本的な御見解を御開陳願えれば幸いだと思います。
  14. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 バンドン会議は、御承知のごとく、アジアアフリカ緒国は、過去においていろいろ英米各国からの圧迫を受けておった、これが独立したというわけで、各国が力を合せてお互いにやろうじゃないかというのが根本の精神でありまして、その意味から申しますと、お互いが力を合せて仕事ができれば、これはそうやるのがほんとう目的であります。アジアアフリカ各国では、原料、未開発の資源をたくさん持っておりますが、不足しているのが資本である、その資本をどうして得るかが問題になってきているわけです。その中に入りまして、日本といたしましては、一番持っているものは技術人間である、これは供給できるが、資本はどうして得るかということになりますと、国際連合によって、その機関として一つ新しい金融機関を作ろうじゃないかという結果になっていることは御承知通りであります。それのために今は進みつつありますが、それに至るまでの問といたしまして、それでは一番金を持っている国はどこだ、資本がどこに一番潤沢にいっているかといえば、アメリカに金が流れていっている。なるべく何らのひものつかない条件でこれを持っていくということは、資本を得る上におきましては一番近道だろう、こういうわけなのでありますが、御説のごとく、各自の力が強くなってお互いに力を合せて、ヨーロッパにおけるシューマン・プランのようなものができることになれば、必ずしもアメリカの力を借りる必要はないが、今日はこれを借りた方が開発が早くできるだろう、こういうことでやっておるような次第であります。
  15. 田中稔男

    田中(稔)委員 今の長官の御答弁で、私は御見解としてはどうもプアーな感じがします。その資金が足らぬというお話もありますが、ソ連なんかがアジアアフリカ諸国援助しております場合にも、援助というよりも貿易という性格で大体ただで黙ってくれるということはない。アメリカの方は贈与というものがあるようでありますが、大体贈与するということはいいようで悪いのです。贈与を受けるとある意味のインフェリオリテイ・コンプレックスを感じるわけだから、平等互恵という立場バンドン会議原則にも掲げているのでありますが、中国あたりでは盛んに言っておりますが、平等互恵でいきたい。貧国、小国といえども平等互恵立場援助を受けたい。そうするとどういうことになるかというと、借款を受けても、その返済は長期にわたり、いろいろな自国産物で決済していくというやり方ですね。長期にわたる貿易になるわけですが、そういう方式考えるならば、アジアアフリカにおいて私は今おっしゃるようないろいろな障害は克服され得ると思うのです。その点アメリカなんかは余剰農産物アジアに売りつける。アジアにじかに売りつけることができなければ、日本を介して結局売りつけるということになるのであります。それからまた綿なら綿にしましても、エジプトやパキスタンあたりには綿がたくさんあって処分に困っている。そういう場合にアメリカは、余剰綿花パキスタンに売りつけようと委託加工日本にやらしておる。ところがソ連は、現在アジアアフリカ後進国特産物を積極的に買い付けてやろうということをやっている。つまりインドビライ製鉄所の建設を引き受けてやってやり、インドからインド産物長期にわたって買ってやる、あるいはまたエジプトにおけるアスワン・ハイ・ダムの建設に対する協力もする。それに対する決済をエジプトの綿花などのほかに米というもので決済していく、こういうわけでありまして、ただでくれてやって、恩恵がましいことを言うのじゃない。そうしますと相手もこれを受ける。しかしながら払うといったって外貨はない。それからまた工業製品はないのでありますから、とにかく自分らの持っているもの、自分らでできるものを持っていく。これはビルマの場合も米を買ってやる。ビルマはたくさんの米を手持ちして困っておる。日本だってアメリカから余剰農産物を買いながら、ビルマから買付を手控えるということになりますので、ビルマも日本に対しては非常に不満を持っておるのに、それを今度は中国とかあるいはソ連がどんどん買い上げてくれるというようなことになりますので、ビルマとソ連とのそういう経済協力関係が非常にうまくいっているわけです。だから日本もこの際そういうふうな考えをもって、たとえばアメリカあたりから余剰農産物を買うということは一切やめて、日本の食糧不足分はみな東南アジア諸国から輸入する、あるいはまた米綿を買うのを全部やめる必要はなくても、やはり制限して、パキスタンやエジプトから綿をよけい買い付ける、こういうふうな方針援助よりむしろ貿易という考えでやりまして、日本技術を持っていく、あるいはその技術料をそういう形で決済する、あるいはまた日本の重工業の製品をどんどん持っていく、こういうことをやるとよほど大幅に可能になると思う。だからアメリカ式方式でなく、ソ連式の方式なり考え方アジアに臨むならば、私は非常にいいのじゃないかと思いますが、こういうことについてどうお考えになりますか。
  16. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 昨年及び一昨年来、あるテンポラリーの政策として余剰農産物を受け入れたことは事実でありますが、ただいまのお説のごとく日本といたしますれば、将来国民生産の少くとも二%ないし一四%くらいは、外国原料を食糧その他の材料で輸入しなければならぬという立場におります関係上、今後の海外投資なりにつきましては、食糧その他の材料をその投資した国から得るということで回収する道を講ずるようにする。現在ソ連のやっております方法は、おそらくソ連よりは日本の方がやりやすいと思っているわけでありまして、この方式は今後当然とっていくべきものだと考えております。
  17. 田中稔男

    田中(稔)委員 東南アジア東南アジアということがよく言われますが、結局われわれとしては一衣帯水のところにある中国の資源なり市場というものが、日本経済にとって非常に重要なものだと思う。ところが中国との政治的な関係が正常化されないので、政府は中国をよけて東南アジアの方にいくということを考える。わが党はもちろん早く中国と国交を回復して、日本の中国貿易を盛んにしなければならぬと思うのでありますが、東南アジアだけでなく、中国、さらにソ連というような国々との経済交流が盛んになりますれば、日本としても大きなプラスになります。この際関連してでありますが、中国との今後の貿易その他経済交流に対して、長官の御意見を伺いたいと思います。具体的な例で申しますと、たとえば日本の製鉄、今日アメリカあたりから鉄鉱石や粘結炭をたくさん入れている。もちろんインド、フィリピンあたりからも鉄鉱石その他を入れております。インドやフィリピンあたりからも入れるのは、今申しましたような理由でけっこうだと思いますが、アメリカあたりから鉄鉱石や粘結炭を入れるということは、今日海上運賃が高くなっておりますから、非常に原料高になるわけでありますから、早く中国の製鉄資源を利用するということが、日本の製鉄工業を有利にするゆえんだと思う。こういう面からも早く国交を回復しなければならぬと思うのでありますが、そういうふうな具体的な事情をお考えになって、中国貿易に対する長官の御意見を伺いたいのでございます。
  18. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 歴史的に考え、地理的に考えて、当然中国との貿易関係は、一日も早くこれが回復することを、われわれは念願してやまないのであります。特に製鉄工業のごときは、あの海南島の鉄鉱石にいたしましても、開らん炭にいたしましても、また密山、鶴岡の粘結炭にいたしましても、これを持ってくることは、両国のために非常にいいことだと思いまして、一日も早く国交が回復されんことを希望する次第でございます。
  19. 田中稔男

    田中(稔)委員 最後岡田君が要求した後進地域における東西援助攻勢の本質、これを全員に御配付願いたいと思います。
  20. 前尾繁三郎

    前尾委員長 和田博雄君。
  21. 和田博雄

    和田委員 だいぶ私が聞きたいと思っておりました点を同僚委員から質疑をされましたので、あまりダブらない程度で一、二の点だけを聞いておきたいと思います。  結局東南アジア、おくれた低開発地域の開発で一番問題になるのは、やはり資本の形成率の問題だと思うのです。それで東南アジア資本の形成率はどの程度なものですか、それを一つ。これは事務当局の方でもけっこうです。これは各国によって相当違うと思うのですが、一番簡単な材料のある点からいえば、エカフェ地域だけでもいいですが、資本の形成率がどの程度になっているか。それからたとえば国民の消費水準をかりに一%か二%上げようとすればその国として一体どの程度の資本の形成をやらなければならないか。国民所得の中から一体何パーセントくらいの貯蓄というものが資本形成に回されなければならぬかといったようなことは、やはり非常に必要だと思うのですから、どういうような数字になっておるのか、わかっていたらお知らせいただきたいと思います。
  22. 佐瀬六郎

    ○佐瀬説明員 御答弁申します。最近の資料を見ますと、国別によって非常に違っておりますが、七、八%から高いところは十数%くらいの間にあるようであります。インドのこときは、第一次五カ年計画ではたしか七%くらいを見込んでおったようでありますが、今度の第二次五カ年計画では一〇%以上を必要とするというふうに聞いております。
  23. 和田博雄

    和田委員 私の聞いておるのは、インドや何かの五カ年計画の一種の希望的な数字じゃないのです。現実にどうかということです。計画を立てる場合、インドの第一次五カ年計画では今おっしゃったように、約七、八%、あるいは九%くらいの形成率を見込んでおったと思いますが、現実にはそれよりもっと低いのじゃないかと思うのです。だからそこにやはり計画的な数字と実際の数字とはだいぶ違うのじゃないかと思うのです。もっと低いのじゃないでしょうか。
  24. 佐瀬六郎

    ○佐瀬説明員 ただいまのお話のございましたインドの点につきましては、非常に農業増産に重点を置いておりまして、天候に恵まれた関係もありまして、大体その国民生産の伸びが年平均三%くらい行っております。そういう計画の特性と天候に恵まれた点から見まして、予定通りそういう点は行っておるというふうに聞いております。ただ全般的に見ますと、資本形成の率は非常に低いということが言えると思います。
  25. 和田博雄

    和田委員 去年のインドの五カ年計画は、今言ったように非常に特殊の事情があって特別だと思うのですが、そういう議論はやめて、一つ材料をあとからでいいですからお出しを願いたいと思います。やはり一番問題になるのは、東南アジア経済開発と言っても、非常に生活水準が低いと思うのです。消費水準も同時に低い。従って貯蓄の率も低い。従って資本の形成ということは非常に困難だ。従って投資に向ける資金もその国の力としてはあまりない、生産も上らない、人口はふえてくるというので、そういういわゆる悪循環がしょっちゅう出てくると思うのです。それをどう断ち切るかということが、やはり問題の本質だと思うのです。この前の委員会のときに、日本政府としまして、少くも東南アジア開発については、政府としては新たな構想で具体的な案を立てたいということであったのですが、重光さんはそれだけのことを言って、具体的にはまだ何もきまっていないというのですが、今穗積君が私の聞きたい点に触れたのですが、結局日本として、今高碕さんがおっしゃったように、東南アジアの国というのはそれぞれ違うわけですから、長期開発という問題になってくれば、それぞれの国の長期開発計画日本開発計画というものと調整をとっていく以外に道はないと思います。それが一つアジア経済会議なら経済会議という形で開かれて、そこで一つの大きなスタッフを持って総合的な開発計画が出てくれば、これも一つの行き方だと思うのです。それができない間は、やはり個別的にやっていく以外には、具体的に成果を上げる道はないと思うのですが、そういうような操作というものを日本政府としてやろうとする意欲があるのか。それからまた、せっかくこの間高碕さんがお作りになった日本経済六カ年計画ですが、この日本の六カ年計画も、見方によってはやはり一種の開発計画だと思うのです。自立経済完全雇用ということを目標にしているけれども、やはり国内の産業を開発してそれぞれの産業を興していくという意味で、投資計画でもあり開発計画でもある。そういう意味においてアジアのそれぞれの国の経済開発計画というものをそのときに考えてやったのか、考えてやらないのか。関連がないように私どもには思われる。そういうことを何度やっても、そのときの政府東南アジア経済開発を言っても、経済開発が地につかない。そこへこういうような国際金融公社みたいな、ぼこっと何らの関係のない、その背後において実質的な計画を持たない一つのものに、ただ投資の金、外貨を使っていくという行き方か、今の日本経済の現実から言っても、将来から言っても果していいのか思いのか、私はこれは非常にマイナスだと思うのですが、そういう点についてやはりはっきりした長官のお考えを聞いておきたいというのが一点です。もう一つは、短期的に見まして、私はやはり東南アジア開発をやらなければならぬということはあなたと同意見です、賠償を早く解決するという前提はありますが……。それを除いても、やはり短期で見れば、これは田中君の今言ったように、日本東南アジアの国々の唯一の輸出の商品であるビルマ、タイなら米というものを、日本貿易の面で買っていく。賠償のまだきまっていないところがたくさんあるのですが、賠償のきまっているところは賠償と、それから農業国の唯一の輸出商品であるものを、日本貿易によって買うということを中心にして、東南アジア開発考えていくという行き方を勇敢にとらるべきではないかと思うのですが、そういう点はどうなのでし、一うか、一つお聞かせ願いたい。  もう一つ国際金融公社というものは、これは確かめておきたいと思うのですが、直接決して日本投資されるものではない。日本の国内における投資には何も関係がない。ただ、たまたま中南米とかどこかにおる日本人に多少の役に立つというくらいであって、これは岡田君の指摘したように、東南アジアには関係なし、むしろ中南米が大部分のものであるというのは私もそうだと思うのですが、その点を最後に確かめて、この三つの点について簡単でけっこうですから御答弁願いたい。
  26. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 第一の問題につきましては、御承知のごとく、戦前日本は満州、朝鮮、台湾等と計画を一本にして立てておったわけでありますから、いろいろ見る人によって違うわけですけれども、この方面には私少くとも米金にして百億ドルの投資をしておった、こう見ておるわけであります。それによって日本経済のつながりをとってやっておったから、日本経済は相当充実された。ところが日本経済五カ年計画を立てます上において、実は私は和田さんに言われて感じたのではありませんが、その考え方は昨年八月から私は考え出したわけであります。日本経済自立の長期計画というものは、とても日本だけでは立つべきものじゃない。どうしても東南アジア関係の五カ年計画なんかと一緒に関連して立てなければいかぬ、こういうようなことを感じまして、昨年来東南アジア諸国の計画経済関連性をとろうということについて、今検討している最中であるわけでありますが、これは私はお説と全然一致しているわけであります。  第二に、日本東南アジアとの関係につきましては、農産物というお話がございましたが、私は、農産物だけでなくて工業原料というものにつきましてこれらをよほど重要に考えていかなければならぬ。こういうような点から、農産物及び工業原料をもって、日本投資なり日本貿易なりの関係の収支をつけるということに重点を世くべきものだと私は存じております。  第三の今度できますIFCの問題でございますが、これは私はその後いろいろ検討をやっておるわけなのでございまして、やはりこれは日本に持ってくるというよりも、日本の海外におけり発展と、今度東南アジアにおきまして投資をするというふうな場合にはこれとつながりを持っていくとか、あるいは現在お話のごとく、中南米に重点を置きたがるかもしれませんが、私は和田さんのような考えでありませんで、少くとも東南アジアにも相当投資せしめる。それには日本投資するときにこれと一緒にやってもらって、日本目的を貫徹するのによく協力し得るようにこれを利用していきたい、こう存じております。
  27. 和田博雄

    和田委員 第二の点ですが、工業原料日本に入れていくことは必要なのです。しかしそれは現地で相当開発計画ができ上った上でなければできない。長期の問題としては私は何もそれを否定しない。ただ短期的に見た場合には、何といってもビルマなどは米でほとんど経済が成り立っている。八〇%くらいはそうだ。タイもそうだ。その他の国でもたとえばゴムならゴム、すずならすずといった——すずはちょっと違いますが、農産物一つの商品にほとんどその国の経済がよっているのが大体実情なんですよ。そういうときに、日本として一番手っとり早いことをいえば、米なら米を買っているのですから、やはりそこから集中的に買っていくという形で、たとえばアメリカから米を買うというようなばかなことはやめていくということで、そこへ腹を据えてきちんとやらない限りは、私はいろいろこまかいことをやってみても短期的にはだめだと思うのです。長期的にはあなたのおっしゃるように、投資することによってだんだん開発していけば工業原料も手に入りましょう。しかしせっかく日本として賠償をやってみても、今のビルマの現状を見るとどうでしょう。日本というものはビルマの市場からはほとんどオミットされているような格好にだんだんなっていく。またそれが現実なのです。ですから端的にいえば、そこの国の重要な農産物、そういう経済の中心の商品で、日本で買えるものは買っていくという経済方針貿易方針をとっていかぬといけないと思うのですが、その点もう一度御再考願いたいと思う。
  28. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 農産物で決済してもらうということが一番手っとり早い問題で、現実の問題としては一番楽だと思っておりますが、それだけでは私はいかぬと思っております。逐次投資をすれば、その投資の回収は工業原料を入れるということに持っていきたいと思います。
  29. 田中織之進

    田中(織)委員 ただいま和田さんからお伺いをした第三の点ですが、今度の国際金融公社日本が参加することによって日本は直接この協定の低開発地域ということにならない、その意味日本は直接この公社からの投資を受けるということはないのだ、これはこの前高碕さんがこの委員会へ見えられたときにもその点を申されたのであります。そういうことが明確になって金融公社加盟するということであれば、これはまた私は意味があると思うのですが、ところがこれの提案説明によりますと、「わが国の生産的民間企業についても上がるべき条件を備えた場合には公社から融資を仰ぐこともできることとなるわけであります。」ということが書いてある。これは高碕さんの所管ではないかもしれないのですが、一般国民、またわれわれの委員会においても、何か国際金融公社加盟することによって、日本にもちょうど世界銀行から投資を受けられるような形で受けられるのだ、こういうふうな意味合いにとれるのですけれども、その点がちょっと明確でない。日本は直接は低開発地域には当らないので投資は受けられない、国際的な経済援助の一環に日本もこの公社加盟することによって参加する。また今和田さんから指摘いたしましたように、主として中南米になるかもしれませんが、たとえばカンボジアにおけるような関係で今後東南アジア日本人が開発に従事する場合に、その関係を通じて東南アジアへも当然金融公社からの投資というものが考えられるのですが、そういう効果だけなのか、その点を明確にしていただきたいと思うのです。
  30. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 日本への投資は不可能だということはうたっていないわけで、可能性がないというわけじゃありません。どうしても日本が必要だということになれば交渉し得ると思っております。大体におきまして後進国ということが主体になっておりますので、日本後進国かもしれませんから、これはとりようによっては日本にも持ってこられる、こう思います。  それからお話のカンボジアはどうかということでありますが、これは中南米に重点を置くかというと必ずしもそうではありません。そういうことから出発いたしましたが、これは別途にできた銀行でございます。ただ東南アジアの方でも加盟国でないところには投資することは困ると思っております。加盟国だけがこの恩恵を受けることになっております。
  31. 田中織之進

    田中(織)委員 これはこの前も与党の山本利壽委員から指摘されたのですが、後進国あるいは低開発地域ということについての解釈が明確でないわけです。それと国際金融公社日本と何カ国かが参加して初めてこれができ上る、また投資計画等は公社が正式に発是をしたときに立てられることになるので、そのときには今高碕長官が言われたように、日本も入り得る可能性等も全然ないことはないと思うのですけれども、しかし現在の段階においては、日本はこの協定にいう低開発地域という中には入らないということになれば、少くとも日本本国にはこの国際金融公社が発足した場合にも投資は受けられないのじゃないか、その点は私ははっきりしておるのではないかと思うのです。こういう協定に参加して少からぬ外貨を投資するということになれば、この点の政府側の見解を明確にしていかなければならぬと思うのですが、いかがですか。
  32. 湯川盛夫

    湯川政府委員 金融公社協定の条文でその点は割合にはっきりしておると思いますが、まず第一条で「公社は、加盟国特に低開発地域における生産的民間企業の成長を助長する」とございます。これは原文の英文の方を見ますと、メンバー・カントリーズとあります。ですから加盟国は全部一応そういう資格はあるわけであります。ただ特に低開発地域に重点を置く、この重点を置くことがはっきりしておるわけであります。また第三条の「融資業務」を見ますと、「公社は、加盟国の領域内の生産的民間企業に対し資金を投下することができる。」だから加盟国は全部資格がある。(「条文の解釈を聞いているのじゃなくて、現実の見通しを聞いているんです」と呼ぶ者あり)見通しにつきましては、重点を置くのは低開発地域ということになっておりますから、低開発地域とみんなが考える所に重点を置くことが考えられます。日本への可能性が排除されているということは少しもないと思います。
  33. 岡田春夫

    岡田委員 和田委員質問にちょっと関連して伺っておきたいのです。先ほど和田委員お話で私も同感なのですけれども日本の自立五カ年計画を立てるのに当って、特に近隣諸国の開発計画関連をした五カ年計画を立てなければ意味がないのじゃないか。まあ意味が全然ないことはないとしても、計画の実行について問題が起るのではないかというお話があったと思いますが、これは私は全く同感なのです。ところが自立五カ年計画は事実において関連を持って作られたものではない。特に貿易面においては、自立五カ年計画の前提条件としては、貿易はこのまま続く、競争は激化するけれども貿易の状態はこのままであろうという前提に立って、コンスタントのものにして立てた自立五カ年計画である。これは別な委員会で私大臣にお伺いしたわけでありますけれども、そういう点から実は再検討せざるを得ないところに追い込まれて、たしか先月から経済審議会の方で再検討していられるはずであります。この再検討をすると、自立五カ年計画は全面的に変ってくるのじゃないか、そういうように私は考えざるを得ないと思う。これは経企長官の担当でありますだけに、その点が全面的に変ってくる。とするならば、もう一つ問題になってくるのは、今年度の予算を立てるに当って、自立五カ年計画はその基礎になっているということになるとすれば、今年度の予算も全面的に変ってこざるを得ない、補正予算を出さざるを得ないということになってくるのではないか、という点が伺いたい一点。  第二の点は、このIFCに関連して、IFCというのは自立五カ年計画と全然関連なしに実は作られているのじゃないか。とすると、東南アジア諸国あるいはエカフェの関係の諸国、これらの関係の諸国に幾らかでも投資援助しようという、それによって日本の対外的な発展を期するというか、そういう発展の仕方がいいか悪いかは私たちにも意見はありますけれども、仕方に対しては、単なる腰だめで、幾らかでもましなのじゃないかという程度のものにすぎないのじゃないか。特にこれは中南米が対象になっているということを私は考えておりますが、そういう意味では、東南アジアに対する日本の進出というか、そういう経済援助に対してもIFCはあまり力を持たない、大した期待ができないということになるのではないか、という点が第二の点です。  第三の点は、ここにエカフェの年次報告を持ってきているのですが、これを見ても、世界銀行が融資しているのは、エカフェ関係だけでたった一一%なのです。しかもこれはあとで申し上げますが、借款承認額が一一%であって、おそらくお出しになる資料は借款承認額じゃないかと思う。実際の支出額というのは一一%じゃないのです。七%です。しかもこの七%の中から、日本その他を除いてみると、きわめてりょうりょうたるもので、世界銀行のいわゆる借款額というものは問題にならない。その問題にならない状態の原因については、実はいろいろある。たとえば国のひもをつけるとか、いろいろあるのですが、親会社であるところの世界銀行がこんな程度であれば、逆に言うと、このIFCも東南アジアに対してはほとんど問題にならない状態ではないかということが裏づけられることになるし、またもし世界銀行の方でこの七%をたとえば二〇%にすれば、これはIFCを別に作らなくとも、けっこうやれるのじゃないか、こういうことも言えると思う。そういう点からいっても、IFCは日本にとってはむしろあってもなきがごとく、意味のないものになってしまうし、これを通じてアメリカひもをつけられるだけで、東南アジアの諸国から排撃されるのがせいぜい関の山で終るであろうという見通しを持っておるが、世界銀行との関係から見て、大臣見解一つ承わっておきたい。
  34. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 この経済五カ年計画は、隣国の五カ年計画関連性を持たせる上において、これをやれば変るのではないか、こういう御意見でございますが、これは目標は断じて変りません。五年後の目標はちゃんときめておりますから、変りません。ただ実行に当りまして、これは相当変えていかなければならぬと存じます。また本年度の予算等につきましては、隣国との経済関係のつながりがあっても、これを変えることはできませんが、本年度の予算は、五カ年計画の初年度でありまして、これが基礎になったということでございますので、変える必要はないと存じます。しかし来年度、再来年度の予算につきましては、隣国との五カ年計画のつながりによって、変えなければならぬと存じまして、これは今大いに検討いたしておるわけでございます。  IFCの問題につきましては、いろいろ御意見がありますが、世界銀行の方の問題は、従前はやはりヨーロッパに厚く、その次に中南米、その次が東南ということになっておりますが、二月の統計によりますと、確かに貸したものはアジアに対しては一四%ということになっておりまして、だんだんアジアの方に千点が置かれるようでございますから、その意味におきまして、IFCも、岡田さんの御心配の中南米だけに偏しないように、こっちへ持ってくるかいなやということは、日本の腕によることだから、その腕によりをかけてやりたいと思っておりますので、御安心いたいと思います。
  35. 穗積七郎

    穗積委員 先ほど総括的なことについてお尋ねいたしましたが、あと二、三の点について局長に御答弁をわずらわしたいと思うのです。第一は、貸付の条件について御説明をいただきたいと思います。
  36. 湯川盛夫

    湯川政府委員 貸付条件については、いつぞや世界銀行と違う点について申し上げましたが、それは関係加盟国の政府の保証なしにできる、また世界銀行のように確定利付のものでなくてもいい。そういうことでだいぶ世界銀行より貸付条件が緩和されている。こういう御説明をいたしましたが、そのほかに何かお尋ねの点がございますか。
  37. 穗積七郎

    穗積委員 貸付条件というものは、世界銀行との差だけをお尋ねしたのではございません。また政府の保証ということだけが条件ではございません。ですから貸付条件の全般にわたって御説明をいただきたいと思います。
  38. 湯川盛夫

    湯川政府委員 具体的な詳細の基準はこの公社が発足しますと、オペレーショナル・レギュレーションというものができまして、それにいろいろな幕準が定められることになっております。
  39. 穗積七郎

    穗積委員 今度の貸付対象は、政府を通じてではなくて直接各民間企業になると思いますが、そういたしますと、今おっしゃったように、今のあと機関ができてからそこで決定するということですが、そうすると大体推測としては、世界銀行の場合と同じように類推解釈してよろしゅうございますか。私お尋ねしているのはこまかくお尋ねしているのです。さらに具体的に企業について資格が問題になると思うのです。日本の国内における貸付の場合におきましても、銀行融資であるとか、あるいはその他の中小企業金融公庫であるとか、あるいはまた農林水産金庫等において条件が違う、違うけれどもその場合においても、企業について一定の基準というものが対象になる。あと金利とか期間とか保証とか、それから返済の方法とか、それから企業に対する監督の条件、そういうような問題がいろいろ出てくると思うのですが、そういうのを少し具体的に詳細にわたって——これじゃどうなっておるかわからない。一切が機関ができてからきまるということになりますと、機関の意思に対するへゲモニーの問題が問題になってくる。ですからさっき私が心配したようにいろいろの点をお尋ねすると、高碕長官は、おもに理事会になると思いますが、理事会においてがんばるとか主張するとか言っておられますが、その場合にも基準なしではこれは問題になりません。各銀行においても、役所で補助金一つ出すについても内規といいますか、そういう一定の客観的な基準がなければ、ある一人の人の非常に独裁的な判断により、あるいはまたランダムな情実によって金を出したり引き揚げたりするということになりますから、いわば貸付内規といいますか、そういうような客観的な基準が一応なければならぬ。それがないとするならば、一体政府はどういうふうに理解しておられるのか、日本政府の解釈です。だからそれらについて、こまかくまず貸付を受ける資格のある企業体の、種類ではなくて企業の内容について問題があると思うのです。それから貸付申請が出た場合に、それの審査基準というものがあるだろうと思うのですが、そんなものがなくて、理事会で主観的な判断によってそのときそのとき、ケース・バイ・ケースで決定していくのか、そういうことをお尋ねしているわけでございまして、世界銀行との貸付条件の差をお尋ねしているのではありませんので、従ってその点については具体的かつ詳細にお答えをいただきたい。もしそういう明確なものがこの協定を結ぶ場合になかったとするならば、日本側はどういうふうに考えて、今後どういう基準で主張するつもりかという点をおっしゃっていただきたいと思うのです。
  40. 湯川盛夫

    湯川政府委員 この貸付基準は、先ほどお話しましたように、公社が発足後オペレーショナル・レギュレーションというものを作りまして、それによって具体的にきまるわけでございます。しかし世界銀行と違う点は、これはもちろんそこに織り込まれております。それからどういう企業に融資するか、これは民間的生産企業というふうになっておりますが、そういった点ももう少し具体的になるのじゃないかと思います。大体そういった世界銀行性格の違う点を除いては、世界銀行のいろいろな基準といったものが、やはり一応の基準になっていくのだろうと予想しております。ただどうせこれは理事会で審議があるはずでございますが、日本加盟すれば理事が出るわけでございますから、日本意見というものは十分そこで反映させることができると思います。
  41. 穗積七郎

    穗積委員 それでは具体的にお尋ねしますが、その企業の種類はここに一応概括的に書いてあるわけですね。ですから大体わかりますが、そのときに民間企業ということになりますと、資本額がどれだけであるとか、従業員がどれだけであるとか、あるいは機械設備がどうであるとか、それからその経常の固定資本と流動資本とのバランスがどうなっておるとか、その企業の将来の経営上の見通しがどうであるとか、そういうような規模並びに経営内容というものが、貸付をするかしないかの基準の問題になると思うのです。しかも日本の場合は、借りられる方じゃなくて貸せる方でございますから、出資者の立場考えなければならぬでしょう。つまりあなた方は銀行になるわけです。日本の代表は銀行の貸付係の位費になるわけです。それに対して今までの世界銀行の貸付実績等を勘案いたしまして、どうお考えになっているのか。どうきまるかということは、他の国の代表者の意見によって理事会で討議されることですから、理事会全体を代表する御意見は伺えなくとも、理事会の中に参加して、日本が出資者として貸付者の一人になるわけですから、日本側は一体どう考えているか。低開発地域に対する考え方といえは、資本が焦げついたり、または企業を不当にコントロールしてみたり、いろいろなことが出ますから、日本代表として発言する場合の基準というものが一応なけれ、ばならないと思うのです。ですから今までの世界銀行の貸付実績と照らし合せながら、一体政府はこの場合どう考えておられるかということを、こまかくお尋ねしたいのであります。そこで、まず節一に企業の選択について、貸付中心のございましたものに対して、どういう基準をお持ちになっていらっしゃるかということをお尋ねします。
  42. 湯川盛夫

    湯川政府委員 ただいまの、民間企業というのは何をいうのかということについては、まだ公社発足前でもありますし、確定したあれもないわけでありますが、一応、出費の過半数が民間資本でやっておる、資本構成土民間に運営権の存するようなものを意味するという点児が多数でございます。いろいろな詳細のことは、今後のオベレーショナル・レギュレーションできまるわけであります。それで企業の種類とか開発計画との関係、あるいはその企業の成功の可能性、償還の見込み、資金状況、民間資本導入の見込み、それから国内法との関係、こういったような点がきまるわけでございます。われわれとしてはなるべく東南アジア等にこれが利用されるような線にまとまるように希望しておるわけでございます。
  43. 穗積七郎

    穗積委員 非常にばく然としたお答えです。あなたは、国民の金を預かって、貴重な外貨をやるのに、人の金だと思って簡単に考えているのか知らないが、貸せることになればもっと真剣に考えなければいけない。最近国内においては五万の金を借りるのにも、貸す方では焦げつきはしないかと思って、非常な調査をしたり深刻な一定の腹がまえを持って臨むわけですが、今の御答弁では、せっかく出しました日本投資をどこでどう使われるのか、その結果どうなるのか、さっぱりたよりないと私は率直に思うわけです。あなたがこのコーポレーションの日本代表となられるということを私は言っているわけではないが、こういう協定に参加する以上は、協定を結ぶ以上は、そのつもりで、その腹がまえというものがなくてはならぬと思うのです。ですから私ども満足するわけにいかぬが、今ここでそうこまかいことまでは申しかねるということでしたならば、企業の選択についてはせっかく御検討いただきたいと思います。  次にお尋ねしますが、貸付条件の中で保証または担保についてはどういうふうに考えておられるか、また可能性がありますか、それを伺いたいのでございます。
  44. 湯川盛夫

    湯川政府委員 政府保証が要らないということはきまっておりますが、やはり通常の民間資本の借り入れの場合と大同小異になっております。
  45. 穗積七郎

    穗積委員 そうすると担保は取るわけでございますね。
  46. 湯川盛夫

    湯川政府委員 そういう点もまだきまっておりませんが、取る場合もあり、あるいは取らない場合もあるわけでございます。
  47. 穗積七郎

    穗積委員 次にお尋ねいたします。貸付期間でございますが、これは産業によって種類が雇うと思う。工業の場合と農業の場合と、商業の場合と迷うと思いますが、大体低開発地域ですから、軽べつするわけではございませんが、原始産業開発が多かろうと思うのです。そういうことになりますと非常に長期な貸付になるわけでございましょうね、実際は。
  48. 湯川盛夫

    湯川政府委員 工業的なものがやはり中心になるかと思いますが、割合に長いものになるわけでございます。
  49. 穗積七郎

    穗積委員 次にお尋ねしますが、貸付いたしました後に、この公社のその企業に対する監督、発言権はどういうことになりますか。
  50. 湯川盛夫

    湯川政府委員 公社は自分で株を持たないのでありますから、株主としての発言権、監督権というようなものはございません。
  51. 穗積七郎

    穗積委員 まあ民間銀行が民間企業に貸付いたしました場合でも、これはもとよりその会社に対して株を持っておれば、株主の発言権としてその会社をコントロールするという場合もございましょうが、単なる出資はしないけれども、融資はしておるというような場合におきましても、その会社経営がうまくいくように、預かった金を貸したわけでありますから、その金が焦げつかないような操作というものは、事実上はあり得るわけですね。この場合はそういうことは全然ないわけですか。
  52. 湯川盛夫

    湯川政府委員 この公社は自分で株を持たず、また直接経営に参加しないというのが原則でありますが、ただ条文で申しますと、第三条の第四項に「利益の保護」という規定がございまして、これは「公社のいずれかの投資に対する債務不履行が現に生じ、又は生ずるおそれのある場合、その投資が行われた企業の支払不能が現に生じ、又は生ずるおそれのある場合その他その投資が危険にさらされるおそれがあると公社が認める場合において、公社が、公社利益の保護のため、必要と認める措置を執り、及び必要と認める権利を行使することを妨げるものではない。」こういった例外的な場合には、公社が自分で行動を発動するということは予想されます。
  53. 穗積七郎

    穗積委員 今あなたがお読み下さった条文は私も読んでおりますが、その場合における発言権はどういうことでございますかということです。
  54. 湯川盛夫

    湯川政府委員 いろいろお尋ねの点、どうもまだ詳細きまっておりませんし、また今後審議する原案もできておるわけでございませんので、あまりはっきりお答えできないのでございますが、ただ私どもとして今の規定から予想されますことは、債務不履行を生じたり、そういうおそれがあるという場合には、株式の取得とか、あるいは経営の参加、生産の参加、株式の転換、そういったようなこともやれるのではないかと考えております。
  55. 穗積七郎

    穗積委員 その点については実はこういうことなのです。それでは原則だけ政府考えをお尋ねいたしましょう。ということは、実はまず第一に、選択する場合にその事業計画というものを基礎にすることは当然でございますね。たとえば今度愛知用水その他で金を借りる場合でも、その事業計画に対して、こちらから出したものに対して、貸付側から相当のサゼストをする。そのサゼスチョンが実は非常な計画変更を要求するような場合も強く出てくるわけです。また貸し付けた後において、資本の運用方法が果して貸付申請の場合における用途に使われるかどうか、貸付申請の場合にうたわれた効果を持つような方法で利用されておるかどうか、それらの点が出てくる。さらにその企業がうまくいけばよろしいが、多少経営が困難になり、また赤字を出すということになると、この規定に事前にすでにおそれがあるということをちゃんとうたってあるのですから、おそれがあると称して、投資企業に対して、出資国は株主としての発言権は持っていないが、この場合におけるように事実上の強いコントロールをし得る可能性はある。このことについては、出資者の立場からいけば、この監督を強くやることが貸付資本の安全性を確保するためには必要である。ところが逆に受ける方からいきますと、それをあまり強くされますと、それによって資本支配を受けるわけですね。しかもその資本支配の場合には、出資国は政府でございますから、非常な政治的意図をもって行われる可能性もあるわけですね。そういう点は、極端な言葉でいえば、資本を通じて植民地化すると考えられるということになりますから、従ってその関係はうらはらになるわけですね。その点私は非常に大事だと思うのですよ。日本は出資者の一人なんです。だからそういう点では出資いたしましたもののほんの一部であっても、出資金が焦げつかないように、不当に使用されないように、貸付を監督しなければならない。しかし逆に監督強化の方針でいきますと、さっき言いましたような、場合によれば経済的な面たけでなくて、政治的なコントロールすら加えられる危険が出てくる。その面については、一体政府は出資者の一人として、参加者の一人として、どういうようにお考えになっておられるのか、その基本的な考え方を伺いたいのです。これはさっき申しましたように、世界銀行の今までのやり方等を見て、それとの勘案をして、政府はどういう感想なり所見を持っておられるか。こまかいことがわからなければ、そういうような基本原則についてのお答えでもけっこうでございます。
  56. 湯川盛夫

    湯川政府委員 この公社は、世界銀行に比べれば、政府保証も要らないで借りてもよいし、いろいろな点で貸付条件は緩和されておりますが、そうかといって、どんな場合になってもそれはもう損をしたら損をしたまでというわけにもいかないので、結局そういう点である程度の妥協というものもなされておるわけであります。結局各国で相談してこのくらいのところに妥協がついた。従ってこれはやはりそういう利益の保護ということをある程度見ざるを得ないだろう、こういうように思います。
  57. 穗積七郎

    穗積委員 大へんあいまいなことでありますが、そういう点については今までの私ども質問で、こういうものの運営について、むしろ私はアメリカを中心とする経済支配というか、コントロールが行われるということを実は懸念するわけでございますから、一つ民主的に運営されるように日本政府態度といいますか、基本方針をはっきり持たれることを強く要望いたして、次に移ります。  この公社を通じて民間投資が行われますと、つまり公社世界銀行または公社を通じないで外国投資が行われる、日本でも東南アジアなんかについてはあり得ますね。もう一つはその国または外国の民間投資が行われる、すなわち民間投資とこの公社投資と競合する場合がありますね。特に有利な産業または有利な企業についての投資には、そういう場合があり得ると思うのですが、その点についてはどういう調整をされることになりますか、その点を伺いたいと思うのです。
  58. 湯川盛夫

    湯川政府委員 純然たる民間投資だけで十分利益が上るといった場合には、私は民間投資だけでその企業を始めるだろうと思います。ただ民間投資だけでは十分集集らない、しかし公社援助をすればできるといったものを助長するのが公社の任務でありますから、おのずからそこへいくのじゃないかというふうに思います。
  59. 穗積七郎

    穗積委員 そうすると民間投資優先の考え方であって、それでは足らない場合に、この公社資金をもってバック・アップするという原則と了解してよろしゅうございますね。
  60. 湯川盛夫

    湯川政府委員 その通りでございます。これは条文にもはっきりしております。
  61. 穗積七郎

    穗積委員 あと二点だけお尋ねして簡潔に終るようにいたしたいと思いますが、この運営並びに意思決定の機関がいろいろございますが、この機関の中で日本が占める地位、発言権はどういうことになりますか。
  62. 湯川盛夫

    湯川政府委員 この機関の職員は世界銀行の——理事会が非常に重要だと思うのですが、理事世界銀行理事が兼ねるわけでございますが、日本はただいま湯本理事がそちらの理事をやっておられますので、日本が入りますればその理事も兼ねられるわけであります。
  63. 穗積七郎

    穗積委員 常任理事会はございますね、ございませんか。
  64. 湯川盛夫

    湯川政府委員 先ほどあまり簡単でございましたのでもう少し詳しくお答えいたします。最高の意思決定機関としては総務会というのがございまして、特に重要な問題、新加盟国を認めるといったような問題は総務会で決定します。各加盟国の総務は世界銀行に出ている総務が兼任する、従って世界銀行の場合日本は大蔵大臣が総務になっておりますので、当然公社の総務にもなるわけであります。それから執行機関としては理事会、これも世界銀行理事公社理事を兼任するというふうになっております。ただしその理事が代表している国が公社に入らぬ場合にはそれはなりません。日本の場合は、日本理事日本、セイロン、ビルマ、タイの四カ国を代表しておりますので、その四カ国のうちの一国が公社加盟すればその点で入れる。だから日本が入ればもちろん入れます。今申し上げたセイロン、ビルマ、タイ、三カ国のうちの一国が入ってもなれる。理事会の議長世界銀行の総裁が兼任する、大体そうなっております。そしてビルマ、セイロン、タイいずれも加入の意思表示をしておりますから、そういう関係で日本理事は入れると思います。
  65. 穗積七郎

    穗積委員 そうすると総務には日本は、だれがなるわけですか。
  66. 湯川盛夫

    湯川政府委員 日本世界銀行に出ている総務は大蔵大臣ということになっております。理事は湯本理事です。
  67. 穗積七郎

    穗積委員 兼ねるわけですか。
  68. 湯川盛夫

    湯川政府委員 兼ねるわけです。
  69. 穗積七郎

    穗積委員 それから執行機関として理事会が非常に重要だと思うのですが、これは理事全部がスタンディングに一カ所におって運営するわけですか。
  70. 湯川盛夫

    湯川政府委員 一カ所におって運営するわけであります。理事は現はワシントンに各国理事全部集まっております。常駐機関です。
  71. 穗積七郎

    穗積委員 それではその中で特殊なたとえば常任理事会とかいうものが選出されて、それが執行機関の中のさらに中心の機関を構成するというようなことはございますか。
  72. 湯川盛夫

    湯川政府委員 現在世界銀行理事は十六名でございます。そのうち任命理事というのが五名、選任理事が十一名ということになっております。
  73. 穗積七郎

    穗積委員 前の理事はどういうのですか、名ばかりの理事ということですか。
  74. 湯川盛夫

    湯川政府委員 これは出資の大きな国の理事が任命されているわけです。
  75. 穗積七郎

    穗積委員 どっちが発言権が強いのか。両方とも……。
  76. 湯川盛夫

    湯川政府委員 これはその任命理事だけがインナー・キャビネット式のものを構成してきめるということはないわけであります。理事会としてはみな平等であります。
  77. 穗積七郎

    穗積委員 日本はどうですか。
  78. 湯川盛夫

    湯川政府委員 日本は選任理事であります。先ほど申し上げましたように、ビルマ、タイ、セイロン、日本とこの四国が推して当選したわけであります。
  79. 穗積七郎

    穗積委員 第二条でございますが、株式の買い占めについてちょっとお尋ねしたいのですが、これは何か制限規定というものはあるのですか。
  80. 湯川盛夫

    湯川政府委員 これは公社の株だと思いますが、十万株に分ける、一株千ドルです。
  81. 穗積七郎

    穗積委員 つまり逆を言えば譲渡売買のことです。譲渡売買についての制限または条件
  82. 湯川盛夫

    湯川政府委員 これは引き受けた株式は譲渡できません。
  83. 穗積七郎

    穗積委員 そうすると買い占め、独占というようなことはあり得ないわけですね。譲渡禁止株になっているわけですか。
  84. 湯川盛夫

    湯川政府委員 あり得ません。それはこの条文でいいますと第二条の第五項に、「株式を譲渡し、及び担保に供することに対する制限」「株式は、方法のいかんを問わず担保に供してはならず、また公社に対してのみ譲渡することができるものとする。」とありますから勝手に譲渡することができないことになっております。
  85. 穗積七郎

    穗積委員 それでちょっとお尋ねするが、公社に譲渡した場合でも、公社が持っているのじゃなくて、加盟各国が株は分担しておるわけでしょう。ですからその場合と、それからもう一つお尋ねしたいと思っておったのですが、増資の場合の新株の割当基準、平たく言えば引き受け基準ですね。それからすでに出資国が公社に譲渡した場合の株式の割当または帰属ですね。
  86. 湯川盛夫

    湯川政府委員 この協定に加盟しますのは、それだけの株を引き受けて入るのでありまして、公社に譲渡することは、たとえば減資するとか、脱退するとかいう以外にめったにないわけであります。また増資のことにつきましては、第二条の二項の(b)に書いてございますが、「各加盟国は、公社が決定する条件に基いて、それまでに引き受けた株式が公社の総株式資本に対する割合と同一の割合で増加株式を引き受ける適当な機会を与えられなければならない。ただし、加盟国は、増加資本のいかなる部分をも引き受ける義務を負うものではない。」こうなっております。
  87. 穗積七郎

    穗積委員 ですから増資株と、それから第五項で公社へ譲渡の自由が認められておるわけですから、その場合その株式引き受けの義務はないということになりますから、両方とも欲するところに従って取得ができるわけでしょう。そうなりますと、公社ができたときの資本、持ち株の比率、パーセンテージに変化が生じて、ある一国が多くなる、ある一国は少くなるという変化が生ずる可能性が、この二つの規定からありますね。そうすると一般市場には出ていないけれども、買い占めようと思えば買い占められる可能性はある。
  88. 湯川盛夫

    湯川政府委員 現在の各国の比率というものが固定的で、絶対に動かないものということは、断定できないかと思いますけれども、しかしそういった場合には、公社がそういう条件を決定するわけであります。公社のきめた条件で変化が起ることはあり得ると思います。
  89. 穗積七郎

    穗積委員 最後にお尋ねしたいのは、脱退の自由と脱退した場合の脱退国の株式の処分です。
  90. 湯川盛夫

    湯川政府委員 脱退はもちろん自由にできるわけであります。その場合初めに出資した株式資本の買い戻しというようなことにつきましては、かなり詳しいことが書いてございます。第五条の第四項「加盟国でなくなった政府の権利及び義務」ここに「いずれかの政府加盟国でなくなったときも、同政府は、公社に対し支払うべきすべての金額について引き続き支払の義務を負うものとする。」それからその(b)に「公社及び同政府は」「事情に適応した条件による同政府保有の株式資本の買いもどしを約定することができる。その約定は、他の事項とともに、同政府公社に対するすべての債務の最終的決済について規定することができる。」そのほか(c)以下こまかく書いてあります。これ以上のことはさまっておりません。
  91. 穗積七郎

    穗積委員 それらは理事会できめるわけでございましょうが、総会並びに理事会の意思決定はすべて多数決、多数決の場合は過半数ですか。そういう意思決定の規則はどうなっておりますか。
  92. 湯川盛夫

    湯川政府委員 特別の規定がある場合のほかは過半数できめます。
  93. 前尾繁三郎

    前尾委員長 次会は公報をもってお知らせいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時三分散会