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1956-03-17 第24回国会 衆議院 外務委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年三月十七日(土曜日)     午前十一時七分開議  出席委員    委員長 前尾 繁三郎君    理事 石坂  繁君 理事 北澤 直吉君    理事 須磨彌吉郎君 理事 福永 一臣君    理事 穗積 七郎君 理事 松本 七郎君       相川 勝六君    愛知 揆一君       伊東 隆治君    大橋 忠一君       菊池 義郎君    島村 一郎君       園田  直君    高岡 大輔君       並木 芳雄君    福田 篤泰君       淵上房太郎君    古川 丈吉君       松浦周太郎君    山本 勝市君       田中織之進君    田中 稔男君       戸叶 里子君    福田 昌子君       森島 守人君    岡田 春夫君  出席国務大臣         外 務 大 臣 重光  葵君  出席政府委員         外務政務次官  森下 國雄君         外務省参事官  法眼 晋作君         外務事務官         (アジア局長) 中川  融君         外務事務官         (欧米局長)  千葉  晧君         外務事務官         (経済局長)  湯川 盛夫君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君         外務事務官         (移住局長)  矢口 麓藏君  委員外出席者         専  門  員 佐藤 敏人君     ――――――――――――― 三月十六日  委員小川半次君、辻政信君及び松浦周太郎君辞  任につき、その補欠として愛知揆一君園田直  君及び江崎真澄君が議長指名委員に選任さ  れた。 同月十七日  委員芦田均君、池田正之輔君江崎真澄君、高  岡大輔君及び渡邊良夫君辞任につき、その補欠  として島村一郎君、松浦周太郎君、古川丈吉君、  山本勝市君及び淵上房太郎君が議長指名で委  員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  日本国とカンボディアとの間の友好条約の批准  について承認を求めるの件(条約第二号)  国際情勢等に関する件     ―――――――――――――
  2. 前尾繁三郎

    前尾委員長 これより会議を開きます。  国際情勢等に関する件について質疑を許します。なお理事会の申し合せによりまして、質疑の時間は三十分ときめておりますので、さよう御了承願います。戸叶里子君。
  3. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私は外務大臣がお見えになりましたので、この際、日比賠償について二、三点お伺いしたいと思います。  この前の委員会のときに、外務大臣に、先ごろ鳩山書簡を持って行かれた藤山氏が、どういう内容のものを持って行かれたかということに対して御質問を申し上げました。それに対してはっきりとした答弁をいただけませんで、同時に発表をする、こういうふうに言われたのでございますが、新聞の発表によりますと、藤山氏はすでに飛行場を立ちますときにも、またフィリピンにおきましても、はっきりと言われましたことは、大体先ごろフィリピンから申し込まれました賠償額を承諾したというような内容であるもののような発表をされ、さらにまた貿易拡大についても十分望んで来たい、こういうふうなことを述べられているのでございます。これに対して重光さんは、そういうふうな内容であったということをここではっきりおっしゃっていただけるかどうか、これを伺いたいと思います。
  4. 重光葵

    重光国務大臣 そのときに申し上げました通りに、藤山特使賠償問題一般に対する総理回答を正式に託送いたしました、その通りでございます。託送した文は、向うに渡した後に向うでも内容を大要出したようでございます。また出して差しつかえないことに了解をしておいたのでございます。その以後はむろん申し上げ得るのでございます。こういう内容でございました。   私は日本フィリピン共和国との間の賠償問題の解決方式に関する一九五五年八月十三日付貴簡に対して回答した一九五五年九月三十日付の私の書簡に言及するとともに、わが政府は、貴簡中に述べられ、かつ、その後マニラにおける会談により解明された賠償解決方式基礎として、貴国政府正式交渉に入る用意があること、並びに、右目的のため、わが政府マニラ全権代表を派遣する準備があることを申し述べる光栄を有します。   賠償問題の満足な解決のための両国の努力が成果を上げる見込みがあることは私の欣快とするところであります。   私はここに重ねて閣下に向って敬意を表します。  こういう趣旨のものでございました。それで要点は、つまり今日まで打ち合せしたことを基礎として、賠償交渉をするために正式交渉に入る用意がある、こういうことでございました。
  5. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、昨年フィリピンから申し入れてきました総額八億ドルを基礎として、日本でもこれから交渉に入るのだ、交渉といいますか、もう大体受諾した上に立って今後の技術的な条約作成交渉に入る、こういうふうに了解してよろしいわけでございますか。
  6. 重光葵

    重光国務大臣 大体さようでございます。フィリピンから正式提案があったその大体の内容については御説明を申し上げる機会があったと思いますが、まだございませんか。――それではほかの委員会でございましたか、たびたび申し上げておいたのでそう感じましたが、それは賠償としては五億五千万ドルの賠償を払う、その払う内容方式等正式交渉でこれをきめるわけでございます。それからそのほかに二億五千万ドルの民間借款をやって経済提携をこの機会に進めていこう、こういう趣旨のものでございます。そういう基礎の上に立って、そのワク内で内容についていろいろと先方意向及びわが方の解釈等について内交渉を遂げてきたのでございます。ずいぶん長くかかりました。ここに申しますマニラにおける会談により解明された解決方式というのは、その内交渉の結果のことをいいます。そういうことを基礎として、その土台で一つ正式に取りきめをしよう、こういうことに相なっておるわけでございます。
  7. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そこで総額八億ドルということがきまったわけでございますけれども、最初フィリピン日本との間の賠償は、大野ガルシア案として四億ドルの線がきめられていたと思いますが、突如として鳩山総理が八億ドルをきめられたというその理由は一体どこにあるか、と申しますのは今日日本が他の国に払わなければならない賠償もたくさんございますし、また借款もございますし、そういう面から見ますと、この八億ドルというものは、必ずしも日本の今日の経済状態から見まして少い額ではございません。にもかかわらず、四億ドルから何という理由も私ども知らない間に、八億ドルという線がきめられたというその理由は、どこにございますでしょうか。
  8. 重光葵

    重光国務大臣 これは交渉経過を申し上げなければ、実際そういう点に御納得いただくことが困難だろうと思います。大野ガルシア協定というのがあったことは御承知通りでございます。これは十カ年で四億ドルを支払うということでありますが、それができないときは二十カ年にするという相談をする余地を残しております。またその賠償目的として、フィリピンがこれを利用する場合においては、十億ドルの価値を持っておるように一つ仕向けていこうという意向も表示されておりました。そこで大野ガルシア協定では受諾はできないということで、向う御破算にしてしまったわけでございます。そのなにはしばらく別といたしまして、そこで賠償問題を解決するには、新たな解決方式を発見したければならぬというのが向う立場でございます。日本としてはこれをそのまま向う希望通りに受け入れたわけではございませんが、しかし賠償問題を解決するためには、大野ガルシア協定御破算になった以上は、別の方式でいくよりほかに道はございません。しかし日本側としてはやっぱり四億ドルが日本の適度な賠償総額でおる。四億ドルで三千五百万ドルの年額支払いということを固執して出発したのでございます。そして向うは手取は十億ドルだから十億ドルということを言うわけであります。しかしこれはそういっておっても解決方法はどうしてもできません。そこで先方は、自分は手取りは十億ドルにする、初めからその権利があると考えておるのだが、まあ八億ドルくらい、こういうことにきたわけでございます。向うもそれだけの誠意を示してくれた。しかし日本側としては、八億ドルといってもこちらの考えたよりも倍額でございますから、なかなかそういうことはできないというので――話は少し前後するかもしれませんが、まあ日本側も五億ドルの線を一つ最後的に出そうというわけで、ほんの内交渉でございますがこういうことを言い出してみたのでございます。それでも向うはなかなか承知がならぬのでございます。そこで結局向うは、八億ドルとしてもそのうちの一億五千万ドルは、民間借款政府の義務のつかぬもので一つなにしていこうという話がございました。これは向うの非常な譲歩でございます。それで実際額といたしましては五億五千万ドルはどうしても出してもらわなければいかぬということなのであります。あと経済協力民商借款で、従来もそういうことはあったのでありますが、それは一つ政府責任の伴わないものでいこう、こういうような話し合いになったのでございます。そこで最後にその五億五千万ドルの賠償額を認めるかどうかということが非常に問題となったのでありますが、それならばフィリピン最後的に満足するというマグサイサイの正式の提案がありまして、その内容その他について打ち合せをした結果といたしまして、そういうことに相なったわけでございます。これはむろん日本側として喜んでその額を支出するというものでは決してございません。何とかしてこの問題をまとめて、将来南方における平和旧交を進めていきたいという気持がずいぶん強く動いた結果といたしまして、将来フィリピンとの国交回復経済関係の増進ということを目ざすために妥協をしたわけでございます。決して満足してしたわけではございませんが、そういう成り行きで五億五千万ドルの額が出てきたわけでございます。先方といたしましてはそれに一億五千万ドルの民間借款があるじゃないかということは、これは国内的の一つのなにになります。それは外交交渉としての妥協でございますから、いろいろな、向う都合のいいようにこっちの都合のいいようにというので、そこまできたわけでございます。五億五千万ドルはこれを大体二十カ年に支払うということになって募ります。
  9. 戸叶里子

    ○戸叶委員 いろいろの交渉の結果、平和回復という意味から、こういう線が出たというふうな御弁解がございましたけれども、日本国民の側に立って見ますならば、これは決して少い額ではないということを非常に心配するものでございます。ただいま五億五千万ドルと一億五千万ドルの民間借款というふうに分けてお話しになりました。その、五億五千万ドルの問題等もいろいろございますが、これはあとから御質問申し上げることにいたしますが、この三億五千万ドルの民間借款と申しましても、これは純然たる商業ベース民間借款でいき得るものであるかどうか、これを私どもは非常に心配するものでございます。それは先ごろタイとの特別円の百返還に関係ある経済協力協定日本は結んでおりますが、日本ではこれをはっきり借款と認めておるのにかかわらず、タイの方ではそれを借款と認めておりません。そこでいろいろな問題が起きまして、タイの方ではあるいは国際司法裁判所に提訴するというようなことまで言われているかに附いております。こういうような問題が起らないということを、私、果して政府で保証できるかどうか、この点を協定の中にはっきりお入れになるかどうかということを伺うと同時に、これはタイの問題にも関係がありますので、タイ特別円に対しては、日本としてはあくまでこれを借款として突つぱられる、こういうふうに了承していいかどうか、これを伺いたいと思います。
  10. 重光葵

    重光国務大臣 タイの問題でいろいろ先方との話し合いがあることは事実でございます。タイの問題は、はっきりとその取りきめの中に書いてあることでありますから、その取りきめの通りにやって差しつかえないと思います。それを変えるということになれば、これはまた今後話し合いの上で変えなければなりません。  しかしそれとフィリピンの問題とは全然別個の関係でありまして違います。そこで、フィリピンとの関係は、その点においても誤解のないようにきわめて明確にしなければならぬので、それは内交渉においてはっきり誤解のないようにできておるつもりでございます。そうしてそれが正式の取りきめになってくるように取り計らっておるわけでございます。
  11. 戸叶里子

    ○戸叶委員 もう一点、非常に大きな問題でございますが、この協定取りきめに当りまして、藤山氏も言われておりますように、貿易拡大を望まれる、こういうことが言われておりますが、今日フィリピンアメリカとの貿易は非常に盛んであって、そうしてベル・アクトによってアメリカフィリピンにおいて占める貿易の割合が八〇%あるのに、日本はわずか八%しかないというような状態であるのが一点と、もう一つは、現在の日比通商協定によりますと、日本は大体五千万ドルのフィリピンへの輸出ということが押えられておると思います。この二つのことがじゃまをいたしまして、果して貿易拡大ということが可能であるかどうか、この点をお伺いしたいと思います。
  12. 重光葵

    重光国務大臣 賠償協定を結んで平和関係を樹立する道を開くということの経済方面への影響は、むろん直接貿易を増進して経済関係を密接にして、双方経済上の利益をはかる、こういうことにあることは御推察にかたくありません。そこでそういう考え方をもって賠償交渉をやってきたのでございます。これは日本だけではございません、向うもそういう考え方を持っておる。そこで将来賠償問題が解決すれば、貿易も非常に増進する、またさせようじゃないかということできておるわけでございます。またそうなるだろうと思います。アメリカ関係は、特にフィリピンとの間には特殊の関係を持っておりますから、アメリカフィリピンとの経済関係も密接であることは事実でございます。しかし日本フィリピンとの関係は、この賠償交渉がまとまらない前においても、賠償交渉をしておる最近数年の間に、両方関係が将来はだんだんよくなるであろうという予想もありまして、貿易は非常に飛躍的に進んでおります。大蔵省の通関統計によりますと、ここには一九五一年から今日までございます。しかし五三年ごろから申し上げますれば、輸出が、五三年には二千七百万ドル、その次の年はこれが三千百万ドルに増しております。五五年にいきますとそれが五千二百万ドルくらいに飛躍しております。輸入も六千二百万ドル、六千七百万ドル、八千八百万ドルとこういう工合に進んでおります。これは将来もいろいろそういう方面についてこまかな配慮はいたさなければなりません。貿易協定も結んでいかなければなりません。しかしこれは賠償協定などが済みますと、その方向にまた取りきめもいたすという段取りになって参りますから、その趨勢を助けていくだろうと予想するのは当然のことだと思います。そうしまして、できるだけ助長していきたい、こういう考えをもって進んでおるわけであります。
  13. 前尾繁三郎

  14. 松本七郎

    松本(七)委員 大臣の病気がなおられてから初めての私の質問でございますので、いろいろ問題がたくさんございますが、きょうは日ソ交渉について伺いたいと思います。日ソ交渉もいよいよ重大な段階にきたようでございますが、先般の参議院における外相の答弁を聞いておりますと、何かここらでしばらく中断して、松本全権も帰国されるのではないか、というようなことでございますが、何か格別の請訓が松本全権からあったのか、またこれをしばらく中止して、長期にわたる見通しを持っておられるのか、この点をまずお伺いしたいと思います。
  15. 重光葵

    重光国務大臣 日ソ交渉はロンドンで再開されました以後、大体順調に進んでおります。御承知通りに一番むずかしい問題は、何といっても領土関係する問題でございます。そこで両方ともその問題よりも領土問題以外の問題を先に片づけようじゃないかという考え方で進んできたようでございます。領土問題以外の問題と申しますのは、内政干渉の問題であるとか、賠償請求権を放棄する問題であるとか、通商の問題、漁業の問題、戦前の条約をどうするかというような問題がございました。そこでそういう問題は順調に進んで参りました。ただ見込みの今日までつかないのは領土権関係する問題でございます。これは双方主張――先方主張も曲げるような様子は見えません。また日本側日本側主張を曲げるわけには参らないのでございますから、その点が困難でございます。その困難がそこにあることがはっきりした後にどうなりますか、向う意向もありましょうし、こっちの意向もありましょう。今その先を予想することはできませんが、われわれ日本側としては、日本側の公正な主張がなお今後も先方によって認められて、この交渉が妥結することを希望せざるを得ないのでございます。ただそれならば今日の状況はどうかと申し上げれば、向う領土関係するすべての問題について、日本側意向をくむ模様がまだ見えない、こういうことを申し上げても差しつかえないと思います。そういう状況でございます。
  16. 松本七郎

    松本(七)委員 結局大臣方針は、領土に関して日本主張が認められるまでがんばるというふうにとれるのでございますが、こうなると元来鳩山内閣は選挙当時から、日ソ早期国交回復ということを大きく公約に打ち出して誕生しておるのです。それに関する限りは、国民の相当広い範囲が、この鳩山内閣に大きな期待を持っておると私は思うのでございます。それが昨年六月から今日まで、まだ領土問題がひっかかって妥結できない。しかも大臣方針では、今後日本主張が認められるまで、まだがんばるのだということになりますと、これは大臣気持はどうであれ、結果においてはこの早期国交回復ということを裏切った結果になる。これは内閣全体としては大きな責任であると思うのでありますが、この点いかにお感じになりますか。
  17. 重光葵

    重光国務大臣 かような重要な対外問題、外国を相手にする問題が、いかなる場合においても自分の思う通りになるということを、内外に対して約束するわけには参りません。ただ問題はこういう意向である、こういう方針であるということははっきり申し上げられます。そこで鳩山内閣の指示しておるところは世界の平和のためにも、少しでも戦争の跡片づけをしなければならぬ、こういう見地に立って、日ソ交渉もこれを妥結したいという考え方でもって出発したことは、これは無論そうでございます。しかしそれが先方条件をすべてのみ込んで妥結をするという意味ではなかったことも、また御承知通りであります。そこで今日われわれの見るところでは、国民的要望というものは、ある日本主張に対しては十分これを実現した上で国交正常化をはかるべきだ、こういうふうになっておると感じておるわけでございます。それは交渉経過においても、そういうふうなことで条件が整えば、国交回復しようじゃないかという話し合いになっております。ソ連側もそういことで今日まで平和条約の案文を討議してきたという経過があります。そこでそういうふうに考えて進んでおるのでありまして、この上もわが方の正当な主張はいれてもらいたい、こういう態度をとっておることは御承知通りでございます。その経過は先ほど申し上げる通りに、困難な問題は最後にしても、すべてを一つできるだけまとめ上げていきたいという交渉ぶりで今日まで進んでおる、こう申し上げておるのでございます。
  18. 松本七郎

    松本(七)委員 鳩山総理大臣がしきりに言われるように、日ソ国交回復ということの一番大きな意義は、やはり世界の平和とアジアの平和に、この回復が大きく貢献する一つの第一歩になるという点に、やはりあると思う。それだからこそ日本国民もこの鳩山内閣の日ソ国交回復方針に大きく支持を与えたのだと私は思います。その懸案といわれる問題の中で、領土問題についてなかなか意見が一致しないと言われますけれども、すべて交渉はやはり合理的でなければならぬ。そういうわけでこの領土問題については今まで委員会でもしきりに――特に南千島の問題については議論がなされてきた。政府答弁でも、結局はこの南千島の問題はサンフランシスコ条約によっても、はっきりした確定的な定義が下されなかった。その責任はむしろ連合国にあるのだ、こういう答弁条約局長はされておるのであります。そこで政府も御承知のように対米照会をされて、その米国からの回答でも、この問題については国際会議にゆだねるのがいいだろう。また国際司法裁判所に付託することができるというのが米国の見解である。こういうことを言ってきておるくらいで、これは結局千岳については、連合国の間で確定的な解釈決定を下されておらないという明らかな証拠だと思います。そういうふうに連合国の中ではっきり決定しておらない領土問題を、連合国の一国であるにすぎないソビエトとの国交回復交渉の中心問題として、これが解決しなければどこまでもがんばるのだというのは、すでに理屈に合わないと思う。連合国にまかされて最終的には国際会議でなければきまらないように、あいまいにされておる問題を取り上げて、そうして日ソ二国間の交渉の中心問題、これがきまらなければ妥結しないというような理屈は立ち得ないと思うのでございます。だから結局今の政府やり方を見ておりますと、政府意図はどうであるにしろ、結果からいえばこれは国民を欺瞞するものだ。これは内閣延命策です。国民が要望しており、そして平和のためには必要だといって国民が支持しておる日ソ交渉ができるような言明をしばしば与えて、そして外務大臣は二十回のソビエトの共産党の大会後、何らか日本に有利な決定がなされるのではないかというような発言もされる。こうしてもうできるかできるかというような希望をつなぎながら、あくまでこの交渉を引き延ばそうというような意図がわれわれには明らかに見えるのでございます。これは結果から見れば、私は内閣延命策だという疑いを持たざるを得ない。国民希望するところを、えさを見せながら実際にはこの交渉を引き延ばして、難題をふっかけて、いわばゆすり外交みたいなやり方をやって、この交渉を引き延ばす意図が明らかに見えるのです。その点はどうでございましょう。大体合理的でない。連合国できまっておらないと政府答弁しながら、そのきまっておらない問題をひっさげて、これが解決しなければ交渉はできないのだ、責任ソビエトにあるのだというような言い分をされること自体が、不合理であると思うのですが、いかがでございますか。
  19. 重光葵

    重光国務大臣 私は日ソ国交正常化するということは、世界の大局的の見地から非常に重要なことであって、日本はぜひ着手をいたしたい、こういう見地のもとに着手をしたのでございます。むろん着手した以上は、その方向に向って努力しなければなりません。しかしそれだからといって、日本主張すべきことも主張しないということは、将来の国交回復後の両国関係のためにもよくないと思います。十分に正当な主張主張し、また日本立場を貫徹してこそ、りっぱに両方国交正常化ができると思う。特に領土問題のごとき、地理的にも歴史的にも非常に考えなければいかぬ。国民感情も考えなければいかぬ。それらを正当に判断して、これを正当に要求するということは、やらなければならぬことだと思うのであります。何も権利のないものを要求するとかなんとかいうことでも何でもございません。またアメリカもそれを当然のことであるというふうに考えておるわけでありますから、今まで条約のないソ連条約を結ぼうという際に、十分明らかにするということは、何もゆすり外交でも何でもない。今日の日本ソ連をゆするだけの心もなければ、意思もなければ、また実力もない。そんなことをするわけじゃない。正々堂々と主張すべきことは主張して、できなければまたこれができるまで待つという忍耐力もなければ、私はこういう問題はできぬと思う。性急にやらなければならぬことであるのだ、何もかも向うの言うことを聞け、それでなければお前の責任だ、こう言われるのは、私は国民考え方じゃないと思う。
  20. 前尾繁三郎

    前尾委員長 松本君、時間が参りました。
  21. 松本七郎

    松本(七)委員 今重要な問題を発言しておりますから、もう少し……。主張すべきことを主張してはいかぬということを言っておるのではない。大体下田条約局長答弁によっても、この領土問題は最終的な決定がなされておらない、その責任連合国にあるのだ、けれどもその日本主張をまずソビエトに対してこの交渉で持ち出して、日本意図というものを明らかにするだけである、こういうことを言っておられる。だからそういう最終決定は、結局連合国の一致した意見がなければ最終決定はできないような問題を、最後まで自分の言う通りにならなければ、妥結しないという方針交渉に臨まれるその態度を問題にしておるのです。一応主張するのはいいでしょう。けれども今までになっても一致しない、なお一致するまでこれをがんばられるのか、それともそういうふうに最終決定は、連合国決定にまかせなければならないようなあいまい現状の領土問題は、適当なところでこれはたな上げにして、国交回復という大きなことをやられる意思があるのかどうかを、この際聞いておるわけです。
  22. 重光葵

    重光国務大臣 私は日ソ交渉については、結局は終局的の考えとしていろいろ御審議を願わなければならぬと思いますので、十分に一つ御議論を願いたいと思います。しかしながら私は日本の正当と信ずるところを主張すべきをたな上げにするという議論はまだ早いと思います。それからまた連合国にまかせればいいのだというアメリカ考え方じゃないのであります。御承知のようにサンフランシスコ条約は、これについて疑問のある場合には、国際司法裁判所に移すという条項がありますから、それによって国際司法裁判所に移し得る問題だといっておるのです。この問題は、今までのところはヤルタ会談でも、何もソ連との間に具体的に取り上げられておらない問題である、こういうことを言っておる。しかりとするならば、日本ソ連との間に平和関係回復して条約をこしらえる場合に、この問題を取り上げて、日本主張はこうであるということは十分言って差しつかえない、それが悪いことは私は少しもないと思う。しかしそれが将来どういうところで妥協するかということは、これまた国民的の考え方を総合して判断しなければならぬことは当然のことであります。しかし私は、妥協は国際的には一方的ばかりに考えるわけにはいかぬと思う。しかしそれは妥協案ができてきたときに話をすれば、それも一つの考慮する方法でございましょうけれども、今日はこちらばかりたな上げをしてこれをまとめたらいいじゃないかという議論は、私はどうしても日本の要求として出てこないのであります。これは十分日本主張をして、その結果を自然につけるようにするよりほかにしょうがない、こう考えております。     ―――――――――――――
  23. 前尾繁三郎

    前尾委員長 次に日本国とカンボディアとの間の友好条約の批准について承認を求めるの件を議題といたします。質疑を許します。森島守人君。
  24. 森島守人

    ○森島委員 簡単に御質問いたします。重要な点は質問済みですから、ただ一点だけ私のお伺いしたいのは、この間この委員会で、矢口局長の御説明にあったと思いますが、教育の問題に関してでございます。矢口局長は多分今のところは教師等の問題を考慮する必要はないだろう。しかし追って学校等の問題も考慮しなければならぬ時期がくるだろうということを、御答弁になったと私は記憶しておるのでございます。この問題は、私はカンボジアの同化政策の点から考えますと、非常に重要な問題であると思います。ブラジルあるいは北米等におきまして、しばしば日本人学校問題というものを起して、これが移民のために、不利益なる影響を来たしておることは、大橋君なんかもよく知っておられる、こう存じておるのであります。私は将来カンボジアに日本の移民を送ります上に、将来とも日本人学校を設けて日本語教育をやるというような政策は、同化政策の上から不利であると考えておるのでございますが、この点に関しまして、大臣の率直なる御意見を伺いたいと思います。
  25. 重光葵

    重光国務大臣 カンボジア移民をやるときに、向うに学校を建てたり何かするということは、考えものじゃないかということは、私はお考えの基礎においては全然御同感であります。つまり送る以上は、その国に十分適合するようにやる。日米関係の移民の問題の例をたどればこれは明らかなことだ、間違いないことだと思います。しかしおそらくその間に合いの手もあろうかと思います。広漠たるところに日本人だけおって、子供に対する教育のことも考えてやらなければならぬ。それはさしあたり日本人仲間で教育をするというような実際的な問題もあろうかと思います。そういうことは実際的に解決するということでよかろうと私は考えるのでございます。ただ根本としてはお話の通りの頭でいくことがいいように考えます。
  26. 前尾繁三郎

    前尾委員長 穗穂七郎君。
  27. 穗積七郎

    穗積委員 大臣にお伺いします。第四条に、「両国間の経済的、財政的、技術的及び文化的協力関係を強化することを目的とする諸協定を締結するため、」云々とありますが、この協定についての具体的な御構想と状況を御報告いただきたいと思います。
  28. 重光葵

    重光国務大臣 この問題は、主として今後やらなければならぬ問題であるわけです。その構想と申しましても、これは交渉の腹案でございますから、今カンボジアに対して、こういう構想であるということを申し上げるわけには参りません。しかしながら大体の点においては、その他の国々とこういう方面について交渉してきたその内容が、非常に大きな参考になるので、それを参考にして進んでいく、こういうふうに御了承を得て差しつかえないように思います。
  29. 穗積七郎

    穗積委員 大体いつごろを目途としておられますか。
  30. 重光葵

    重光国務大臣 これは実はいつごろまでにやりたいとか、またやらなければならぬということもございません。やりたいということもまだはっきりは予定いたしておりませんが、でき得るだけこれも次から次に交渉して進んでいきたいと考えております。
  31. 穗積七郎

    穗積委員 向うからは、この協定を結ぶ当時、またはその後何か意思表示はございませんか。
  32. 重光葵

    重光国務大臣 貿易の点はなるべくすみやかにやろうと言って、ぼつぼつ話をいたしておりますが、その他の問題について、特にそういう時期の問題についての話し合いはございません。
  33. 穗積七郎

    穗積委員 そうすると、それは貿易協定、または通商航海条約というような性質のものですか。
  34. 重光葵

    重光国務大臣 それは貿易協定でございます。
  35. 穗積七郎

    穗積委員 それから、それはおそらくこの第四条の中の「経済的」ということの意味しているものの一つだと思うのですが、そうすると財政的というのはどういう趣旨でこれをやるのか、その具体的な内容をお示し下さい。
  36. 重光葵

    重光国務大臣 財政的と概括的に言っておる中には、たとえば支払協定をどうするということとか、将来また金融関係、融資関係などが話に上るかもしれませんが、そういうことを意味しておるのでございます。
  37. 穗積七郎

    穗積委員 それから続いてはその次の技術協定でございます。矢口局長は向うを、つぶさにであるかどうか知らぬが、とにかく見てこられて、そして多少の話をしてこられたようですが、この間からその報告を伺いましても、あまり高度な工業開発という段階ではなくて、日用品を中心とした家内工業的な段階から出発する可能性がある、そういう要望もあったということでございますが、その場合に具体的な技術協定の問題が出てくると思うのです。民間同士が、おれの会社でたとえばトマトのジュースを作る機械を送ってやろうというような問題が出てきたときには、それに対する技術援助――技術者を送って技術指導をするというようなことは、その場合における貿易の取引の中へ入れておやりになるつもりか。こういう意味では日本よりも後進国でございますし、しかもその実力からいきましても、日本に比べるとまだひ弱い国ですから、一条並びに二条の精神を生かすためには、やはりそういう技術指導といってはちょっと言葉が過ぎますけれども、技術援助について具体的な交渉が始まります前に、技術協定ということをここにうたっておる以上は、一般的な、国と国との間で責任をもって、しかも計画的に互恵平等の精神に立って、積極的に援助するという申し合せをしてかかるのが、私は順当だろうと思います。今おっしゃる通り、移民だけでなくて貿易がすぐ始まりましょう。貿易に対する協定向うも要望し妥当と思っておる。これは当然だと思う。そうすると、それに関連してすぐ技術協定の問題が出てくると思うのだが、そういう場合には、こちらの会社と向う政府または会社間の個々の契約にまかせることなしに、やはり私は政府の間で事前に原則とワクをきめて、積極的にこれに対する努力をして、そうしてこの親日的な平和を愛する国の期待にそむかないようにすべきだと私は思うのだが、これは積極的に向うから話がなくてもおやりになったらいかがですか。御所見を伺いたい。
  38. 重光葵

    重光国務大臣 私も今お話の御趣旨のように考えております。そういう工合にしてやる、政府政府といいますか、国家と国家としてやって、そうして技術問題については民間の方と話合いも実際問題としては起りましょう。そういうようなことを適当に指導もし、助成もする、こういうことがよいと考えております。
  39. 前尾繁三郎

    前尾委員長 福田昌子君。
  40. 福田昌子

    福田(昌)委員 簡単に質問さしていただきます。四条と五条の関係でございますが、移民問題がこの条約の中に入っておることは非常にけっこうなことだと思いますが、移民の全貌について、どうもせっかくこれだけの移民構想というものをお考え願えるのでしたら、少し具体的な点について聞かせていただけたらと思います。そういう意味で移民と、第四条の「両国間の経済的、財政的、技術的及び文化的協力関係」というものは、からみ合せてお進めいただくのでございましょうか。それとも移民だけは別個な線からお考えになっておられるのでしょうか。この点まずお伺いしておきます。
  41. 重光葵

    重光国務大臣 御質問趣旨はどういうことでございますか。この経済的の貿易方面は進めなければなりません。これは移民のことに関係を持つことも当然のことでございます。それも考慮しつつ進めなければならぬと思います。  それから技術移民とか工業移民、こういうものはやはり先方と話合いをしながら先方意向を十分尊重して、意向を十分聞いた上で、こちらとしてもそれ全部に応ずるということもなかなか困難なところもあると思います。たとえばこの前問題になりました男と女の比例のごときことも、やはり十分に一つ話し合いをしないと、あとから問題が起りますから、それには相当な時間を要すると考えております。
  42. 福田昌子

    福田(昌)委員 御説明いただきましたことはこういうことなんでございますか。移民は移民として進めておるけれども、その移民をさらに工夫移民とか技術移民というようなものともからみ合せて考えておる。単なる労働移民だけではない、こういう御説明でございますね。  さらに重ねてお尋ねさしていただきたいと思いますが、この移民というのは日本側から先方に御要望になった移民でございますか。それとも先方も移民を交換しようという意味でお話があったのでございますか。その点を伺います。
  43. 重光葵

    重光国務大臣 移民を出したい出したいと日本側からだけ言ったわけでは決してございません。向う希望が十分ありまして、その希望に応ずるという意味で合意したわけでございます。
  44. 福田昌子

    福田(昌)委員 そういたしますと、第五条から申しますと、先方からも日本に移民というものはあり得るということになりますが、先方から日本に対する移民の申し出もあるのですか。
  45. 重光葵

    重光国務大臣 そういうことに、向うからこちらにも移民を出すということにもなりましょうか、少くとも実際はそういうことは問題はないと思います。
  46. 福田昌子

    福田(昌)委員 財政的、技術的、文化的な協力関係と関連させて、移民をお進め願うようにぜひお願い申し上げたいと思うのでありますが、その一つの方法として、たとえば工場を建設するとか、あるいはまた一番文化工作として友好関係を深めるためには、病院を作るとかいうようなことは非常に必要な方法だと思いますが、そういう具体的な方法について、すでに何か御検討中であるかどうか、この点をお尋ねしたい。
  47. 重光葵

    重光国務大臣 そういうようなことは準備行為としていろいろ検討はいたしております。むろんお話のような病院のことも考えなければなりません。こういうようなことは先方との細目の話し合いによって十分検討をいたすことになるわけであります。
  48. 前尾繁三郎

  49. 松本七郎

    松本(七)委員 カンボジアが非常にわが国に対して友好的だということであります。またその証拠として、賠償請求権まで放棄しておるというようなことは、非常にけっこうなことだと思うのでありますが、これにはやはり日本としても、積極的にこのカンボジアの友好に報いる道がなければならぬと思うのです。この間から委員会でもるる議論になりました、昔のような出かせぎ根性ではいけない、移民をやるにしても、そういうことではいけないというようなことも話に出たのですが、もちろんそういうことも必要だと思う。けれどもカンボジア初め東南アジア諸国の友好に報いるには、やはり日本の基本的な外交方針というものが中心となってこなければならぬ。そこで外務大臣はカンボジアの友好にはどういう気持で臨もうとされておるか、その気持と、何か具体的な御構想でもありましたら、お伺いしたいと思います。
  50. 重光葵

    重光国務大臣 私は御趣旨には全然御同感でございます。そういうふうにいかなければならぬと思います。カンボジアも、日本が一世紀ほど前から国を開いて大いに国を興してきた、これにならいたいというので一生懸命になっているような状況でございますから、よくその立場を認めて、十分平等対等な考え方をもって、カンボジア自身の発展に貢献することに持っていかなければならぬと思います。後進国呼ばわりなどはもってのほかのことだと考えております。そういうような気持双方の利益を進めていかなければならぬと思っております。そういうことのために、まず第一に永久の平和及び永続続性のある友好関係を維持するこの条約を早く成立せしめて、その他の問題に着々及んでいくのが、日本やり方でなければならぬと考えておるわけでございます。どうぞよろしくお願いいたします。
  51. 松本七郎

    松本(七)委員 平等対等な立場で臨むことは非常に大事なことで、それでこの条約も作ろうという趣旨のようですが、この条約に慕いて今後実際に関係を密にしていくのですから、条約に書いてあることを実際にこれから実行していくことにおいて問題があると思います。平等な立場といっても、形式的には平等になっておるけれども、実際には後進国に非常に重荷になって、日本の利益になるというようなこともあり得る。昔はあった。そういう点から、日本は今後ほんとうに平等互恵の立場に立って、今後は関係を深めていかなければならぬと思う。そういう点からお伺いすることはたくさんありますが、時間もありませんのでしぼっていきたいと思いますけれども、御承知のように、カンボジアはSEATOに入ることを拒否している。こういう点から考えて、アメリカアジア外交というものについて、大きく日本も再検討を要する時期ではないかと思う。そういうことを要請するには、日本が一番いい立場に立っている国だと思いますが、御承知のように、ソビエトにしても、ビルマその他の国との経済的な交流は非常に盛んになってきている。全くの平等な立場に立った経済援助がどんどん盛んになってくる。アメリカソ連との経済援助競争とまでいわれるように今日はなってきているわけです。こういうような状態が今後だんだん進展すると、東南アジア諸国は、その経済援助のやり方というものを客観的に評価してくると思う。そういう時期に入ってきた今日、アメリカが依然として力の立場に立った外交方針を固執していることは、決してアジア全体に対して得策ではないと思う。こういう点から、カンボジアその他の国と日本がほんとうに親善関係を維持し、強化していこうという立場を貫くならば、このアメリカの力外交というものは、日本はもっと批判する立場に立っていいのではないか。こういう点について外務大臣の御意見を伺っておきたいと思います。
  52. 重光葵

    重光国務大臣 この条約日本とカンボジアとの条約でございまして、日本とカンボジアの関係を規律しようということでございます。それはあくまで、平等互恵の考え方をもって進めていきたいというのでございまして、これには何も問題はございません。ただアメリカがどういう関係を持っているか、その批判に至りましては、今御批判はございましたが、その御批判の趣旨について、私は全部ここで同意を申し上げかねるのでございますが、これはやはり平等互恵の関係においてすべて処理するという大方針は、各国とも当然の政策でなければならぬと考えます。それでありますから、さような考えをもって接触したいと考えているわけであります。
  53. 穗積七郎

    穗積委員 矢口局長に一点だけお尋ねいたします。この前与党の諸君が不熱心で定足を欠いたために、途中で答弁が切れているのですが、それは何かといいますと、昨年通りました移住会社、これがその後どうなっているかということを伺ったのだが、われわれが懸念することは、せっかく移民行政については外務省一本にいたしまして、そしてこれを総合的に、しかも強力にやってもらいたいという趣旨でやったのだが、その一つの政策として移住会社法案が通ったわけですね。ところが心配するのは、その後この会社が、当局並びに政府の指導が不熱心のために開府休業のようなことになって、さっぱり役に立たぬのじゃないかということを心配しておるわけですから、そのことを説明してもらって、そして同時にその移住会社が、このカンボジアに対する移民に対して、一体どういう具体的な協力といいますか、作用をなし得るかということを、一点明確にしておいていただきたい。
  54. 矢口麓藏

    ○矢口政府委員 簡単にお答え申し上げます。開店休業ではございません。まず第一に現地の情勢を視察しませんと、いかにして投融資するかわからぬものでございますから、官民合同の調査団を送りまして、官の方が帰って参りました。民の方も来たる二十二日に全部引き揚げて参ります。それに基きまして方針がきまりましてから投融資を実施することに相なっております。  それから一方米銀から借りる金は、この二十七日にいよいよ借款いたすことにきまりまして、調印式が二十七日に行われます。今年度は百五十万ドルとりあえず借ります。来年度はまた三百万ドル、それ以上になるかもしれませんが、そういうわけでございまして、開店休業じゃありません。いよいよ勇躍の段階に達しましたので、御安心願います。  次に、カンボジアに対する……(穗積委員「その次は五百万ドルと言ったじゃないか」と呼ぶ)それは一ぺんで借りるわけじゃありませんで、ちびちび借りるわけであります。最初に借りる金が三百万ドルという計算でございます。  カンボジアに対する関係でございますが、今の方針といたしまして、株式会社でもありますので、初期の定着に要する資金は移住会社から融通しないことになっております。従いまして、カンボジアにかりに移民を送りましたときに要するところの諸般の費用というものは、移住会社から出ません。これは南米なんかに行くとしますれば、政府の補助金という形で支出してもらわなければだめだ、こう考えております。ただしいよいよ仕事が始まりまして、いわゆる採算のとれる仕事に相なりましたならば、カンボジアと言わず中南米と言わず、何ら区別はございませんから、投融資することに相なると考えております。
  55. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 ちょっと一言だけ。カンボジアという国は、戦前から非常な親日の国でありまして、今度こういう状態になったことは慶賀にたえぬのであります。これは今ここにおられる山本君の話によりますと、吉岡大使という人は非常に正直な人だそうであります。私が長年異民族との接触によって得た一つの感じは、絶対に正直な人間じゃないと信用しないのであります。従って今後この大事なカンボジアとの交渉をやるに当っては、絶対正面であるということこそ私は根本であると思う。従ってカンボジアにやる人を選ばれるについては、一つこの絶対正直であり、まじめであるという人間を送っていただきたい。こういうふうに考えて、希望を申し上げておきます。
  56. 前尾繁三郎

    前尾委員長 これにて本件に関する質疑は終了いたしました。  これより討論に入ります。討論の通告がありますので、順次これを許します。穗積七郎君。
  57. 穗積七郎

    穗積委員 私は日本社会党を代表して、この両国間の友好条約に対して賛成の意見を表明せんとするものでございます。  今まで幾たびか質問の中でお互いに明らかにいたしましたように、カンボジアは初めて独立をし、しかも領土並びに人口、資源あるいは経済力等いまだ弱小とはいえども、新しい平和の精神に立ち、いわゆるバンドン精神、アジア独立の精神に立って、日本に対しては非常な期待を持って、友好的な態度で臨んで、その結果がこの条約になったわけでございますから、その期待を裏切ることのないようにすることが眼目だと思う。  この条約内容を見ますと、まず第一は、第一条または第二条における永久平和を維持すること、それから両国の主権、独立、領土の保全を尊重すること、そうしてすべてが相互平和主義に立ってものを処理していく、こういうことが第一の柱になる。第二には、第四条で言っております両国間の経済的、財政的、技術的、文化的な交流を行なって、そうして相互の利益を増していきたい。そうして、そういう協定がすべて両国民の生活の向上になるということを願っておることが第二の柱でございます。第三は、次の条に明確にされております。まず第一に、おもに日本からのかの国に対する移民の問題、これが三本の柱になっておると思うのですが、実はこのことは書いた通りでありますならば、まことにけっこうでございますが、ただいまの日本の保守党の政府のお考えの中に、ときには、再び、日本を再軍備によって、武力を背景とするアジア外交を展開するのではないか、またアジアにおける比較的強力なる資本と技術を背景として、再び古い植民地政策を実質的にはとろうとする危険があるのではないか、またさらに進んでは、移民の問題につきましては、かつて満州に行なったような、そういう移民を再びやるのではないかということが、アジアの一部において、内外において、心配されておるところでございますから、こういう点については、この文字に書いてある通りの精神で、そして積極的、総合的な援助の条約が、実際に実現するように努力すべきことが私は眼目だと思う。そうしてそのことによって、かの国の政府並びに国民の期待を裏切らないようにすることが、実は最も重要である。アジア外交政策の中において、これが他に及ぼす影響も考えてみますならば、非常な重要な一つの問題になろうと思うのです。この委員会においても、質問を通じて、幾多の委員から出、また政府もそのことを答弁されましたように、単に日本とカンボジア両国間に限る問題ではなくて、このカンボジアにおきまする経済または技術、文化の交流と援助関係、さらに移民関係というものが、アジア全体、東南アジア全体における一つのこういう平和的な経済外交の拠点になるというふうな実績を、事実の上に実を結ばせることが、私は一番必要だと思うので、この点を特に力説いたしまして、私はこの条約に賛成をするものでございます。  そこで最後に、そういう趣旨によって、従ってこのことはもう申すまでもありませんが、こういう理由を付しまして、実はこの条約を結ぶに当って、政府に対して、日本社会党と労農党との共同提案で要望決議案を提案いたしたいと思うのでございます。理由は今申しました通りでございますから、その案文をここで朗読いたしますので、どうぞそういう精神に立っておられるべき与党の諸君も、全員一つ双手をあげて賛成をしていただきたい。案文を朗読いたします。    日本国とカンボジアとの間の友好条約の批准について承認を求めるの件について承認を与えるに際して政府に対する要望決議   本条約に含まれている友好精神は、各国間における平和友好関係の基本原則である。   政府は本条約を締結するに当り、本条約第一条並びに第二条の基本政策を誠実に遵守し、両国いずれの国も差別することなくこの政策を基調とし、移民に関しては将来両国民の友好を深め、新たなる親善関係基礎となるよう十分な考慮を払い、かつまたこれが実現のために、すみやかに予算措置を初め万全の措置をとるよう強く要望する。  以上であります。
  58. 前尾繁三郎

    前尾委員長 北澤直吉君。
  59. 北澤直吉

    ○北澤委員 私はただいま議題となりました日本国とカンボディアとの間の友好条約の批准について承認を求めるの件につきまして、自由民主党を代表して賛成の意を表せんとするものであります。  日本が国際連合憲章に盛られた原則に基いて、世界の万邦と友好関係を維持すること、並びに日本アジアに国をなしております関係上、東南アジア諸国との間に善隣友好関係を進めますことは、日本国の不動の国是であります。これに対しましてカンボジア国におきましては、独立以来わが日本に対しまして特に友好の態度を示され、あるいは賠償請求権を放棄する、あるいはまた日本からの移民の受け入れについて好意的の態度を示す、こういうふうにいろいろの面におきまして、わが日本に対して友好的態度を示して参ったわけであります。こういうふうなわけで、日本とカンボジアとの関係は、従来におきましても特に親密の関係が深かったのでありますが、今般日本国とカンボジア国との間に友好条約を締結しまして、すでにある両国間の親善関係をさらに強化し、そうして日本の善隣外交につきまして、具体的な足場をカンボジアに作る、こういうことは日本国としまして、まことに時宜を得た措置であると私は思うのであります。そういう点から、私どもは今回の日本国とカンボジア間の友好条約に賛成いたすわけであります。  次に先ほど社会党の穗積委員は、日本の保守党政府は武力によって東南アジアを押えよう、こういうふうな方針をとっておるかのような発言をされたのでありますが、これは全然決まりでありまして、日本は現に武力は持っておりません。しかも終戦以来平和外交を基本として、世界の各国特に東南アジア諸国との善隣関係を進めようという態度をとって参ったのであります。穗積委員の発言は、全然間違いであるということを強調したいのであります。  それから先ほど穗積委員から提案されました政府に対する要望決議でありますが、私どももこの要望につきましては賛成であります。簡単でありますが、以上をもって私の賛成討論を終ります。
  60. 前尾繁三郎

    前尾委員長 岡田春夫君。
  61. 岡田春夫

    ○岡田委員 私も簡単に討論をさせていただきますが、この条約についてはわれわれ労農党も賛成であります。  再三先ほどから皆さんの賛同がありましたように、そしてまた討論もありましたように、この条約の精神は平和五原則の立場に立って結ばれている。これはカンボジアのシアヌーク首相が中華人民共和国に行った際に、平和五原則に基くところの協定を結んでいることによっても明らかである。そうしてまたSEATOに加盟することを拒否するということにおいても、いわゆる向米一辺倒の政策にカンボジアという国は反対しております。それだけにこの条約を実施するためには、日本政府並びに外務省がとって参りました向米一辺倒の政策というものを、この機会に改めていってもらわなければならないと思います。そうして新たなる平和のための友好関係を、アジアの国国と結んでいくことを強く私は望みたいと考えております。  第二の点は先ほどからも移民の問題その他についていろいろ話が出ておりますが、ともすると日本の今までの支配階級の考えていることは、東南アジアの国に新しい満州を作るような幻想にとらわれて、そのような条約を結び、この条約を通じてそのような考え方に陥る危険性が非常にあるのであります。これだけにこの条約に結ばれている友好関係の精神に基いて、新満州を作るというような思想をあくまでも払拭していただかなければならない。実行の面において、このような点について十分な注意が肝要であると私は考えております。  第三の点は、移民の問題で再三話が出ておりますけれども、移民の問題についても、今までのように単に食えなくなった者を外国へ吐き出してしまうというような政策ではなくて、カンボジアに対する移民については十分な予算措置を講じて、そうして両国間の友好関係の樹立できるような努力が、ぜひとも必要であると私は考えているのであります。先ほどからうしろの方でだいぶいろいろ言っておりますけれども、これは条約並びにその予算の内容を御存じないからこう言っているのであって、実はこの間までの質問によって明らかになって参りましたことは、カンボジアに対する移民の経費というものは、一人当り三万円の旅費しか組んでおらない。旅費だけで、あと向うへ行ってどうでもしろというような、こういうような措置をしか実際に予算面においては組んでいないのである。ところが今までの政府答弁その他を聞くと、大体一人当り四十万円ないし五十万円の経費がかかるであろうと言われておるのに、この予算措置が講じられておらない。それだけにこの要望決議の重要性があるということを、先ほどからヤジっておられる方々も蒙を開いたわけですから、十分御認識をいただきまして、そういう意味でこの要望決議を与党の諸君も幸いにして賛成をされるようでありますから、政府は忠実に実行されんことを私は希望いたしまして、賛成の討論を終ります。
  62. 前尾繁三郎

    前尾委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採決いたします。日本国とカンボディアとの間の友好条約の批准について承認を求めるの件を承認すべきものと議決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  63. 前尾繁三郎

    前尾委員長 御異議なしと認めます。よって本件は、承認するに決しました。  なおただいまの討論中、穗積七郎君より本件に関し要望決議が提出されましたので、本決議について採決いたします。穗積七郎君より提出された要望決議を可決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  64. 前尾繁三郎

    前尾委員長 御異議なしと認めます。よって本決議は可決されました。  なお本件に関する報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  65. 前尾繁三郎

    前尾委員長 御異議なければさよう決定いたします。  次会は公報をもってお知らせいたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後零時三十分散会