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1956-03-13 第24回国会 衆議院 外務委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年三月十三日(火曜日)     午前十一時十三分開議  出席委員    委員長 前尾繁三郎君    理事 須磨彌吉郎君 理事 山本 利壽君    理事 穗積 七郎君 理事 松本 七郎君       相川 勝六君    安藤  覺君       伊東 岩男君    大橋 忠一君       菊池 義郎君    高岡 大輔君       辻  政信君    並木 芳雄君       坊  秀男君    山本 勝市君       渡邊 良夫君    田中織之進君       田中 稔男君    戸叶 里子君       細迫 兼光君    森島 守人君       和田 博雄君    岡田 春夫君  出席国務大臣         外 務 大 臣 重光  葵君         国 務 大 臣 高碕達之助君  出席政府委員         外務政務次官  森下 國雄君         外務事務官         (経済局長)  湯川 盛夫君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君         外務事務官         (移住局長)  矢口 麓藏君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   鳩山威一郎君         大蔵事務官         (為替局総務課         長)      佐々木庸一君         厚生事務官         (引揚援護局引         揚課長)    瀬戸新太郎君         専  門  員 佐藤 敏人君     ――――――――――――― 三月十三日  委員芦田均君、池田正之輔君植原悦二郎君、  江崎真澄君、園田直君、松田竹千代君及び坂本  泰良辞任につき、その補欠として辻政信君、  伊東岩男君、安藤覺君、山本勝市君、坊秀男君、  相川勝六君及び田中稔男君が議長指名委員  に選任された。 同 日  委員安藤覺君、伊東岩男君、辻政信君、坊秀男  君及び山本勝市君辞任につき、その補欠として  愛知揆一君池田正之輔君芦田均君、園田直  君及び江崎真澄君が議長指名委員に選任さ  れた。     ――――――――――――― 三月十日  原水爆実験中止に関する陳情書  (第三三七  号)  対中、ソ交渉促進に関する陳情書外一件  (第三三八号)  同  (第三九〇号)  ビルマ賠償に木造船組入れ等に関する陳情書  (第三九一号) を本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国際金融公社への加盟について承認を求めるの  件(条約第一号)  日本国カンボディアとの間の友好条約批准  について承認を求めるの件(条約第二号)     ―――――――――――――
  2. 前尾繁三郎

    前尾委員長 これより会議を開きます。  国際金融公社への加監について承認を求めるの件、日本国カンボディアとの間の友好条約批准について承認を求めるの件を一括して議題といたします。質疑を許します。高岡大輔君。
  3. 高岡大輔

    高岡委員 この前私は重光外務大臣にお聞きしたのでありますが、重光外務大臣は、所管が違ったといいましょうか、あまりはっきりした御答弁がなかったのであります。といいますのは、私は東南アジア経済協力といいましょうか、これを進めていきますには、相当考え日本になければならないと思います。簡単にいいまして、御承知のように、東南アジア各国はそれぞれ五カ年計画でありますとか、六カ年計画というものを持っているのであります。それに対して、日本でも長官のお手元で日本経済五カ年計画というものができております。しかし私はこれを東南アジア規模における経済五カ年計画とでもいいましょうか、そういう計画がございませんと、せっかく国際金融公社日本が入りましても無用の長物を抱くようなことになる、こういう結果に陥ると思うのであります。そこで大臣にお聞きしたいことは、東南アジア規模における日本経済五カ年計画というものがございましたら、一つその構想をお聞かせ願いたい、こう思うのであります。
  4. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 日本経済を自立させますためには、どうしても輸出を振興させなければならないというわけでただいま立案をしているわけであります。しかしながら私個人考えといたしまして、日本経済をほんとうに自立させるということになれば、戦前日本満州台湾朝鮮等に非常に多額の資本を投じまして、その間に一つのつながりを持って日本経済は成り立っておったのであります。今日その満州朝鮮台湾というものが日本勢力圏から取り去られてしまって、これがなくなったということになれば、これはどうしてもこれにかわる経済的の提携のできる相手を見つけなければならぬ、それには何としてもやはり東南アジア人体というものを対象にしなければならぬ、こういうことは当然考えられるわけでありますが、この方の問題につきましては、現存国際情勢から申しましても、また各国に対する国民的感情から申しましても、日本が五カ年計画を立てる上において、こうやるとかああやるとかいう案を立てるということは早計に失するだろう、こう存じまして、ただいままでの五カ年計画には、これはある程度貿易をするというだけの程度にとどめまして、これの投資云々ということについてはまだ考慮していないで方針を立てておったのであります。けれども、御承知のごとく、ビルマ初めフィリピンその他の賠償問題も解決し、対中共その他の関係等にも逐次貿易が好転して参る、こういう状態でありますから、東南アジア各国における経済情勢政治情勢等を考慮いたしまして、今後は逐次この五カ年計画相手国の五カ年計画等を加味いたしまして、これを取り入れて計画を立てていきたい、こういうことで進んでいきたいと存ずるわけなのであります。ここに私の将来における考えにつきましては——私個人としてはまた別途に考えているわけでありますが、政府といたしましての計画は、まだ現在はその程度しか進んでおらない状態でございます。
  5. 高岡大輔

    高岡委員 私がお尋ねしたいことは、はっきりする意味で一例を申しますと、かりに日本東南アジア技術協力とかいろいろのことで米の増産日本協力するとします。そうしますと、現在タイ国チェンマイ地区蓬莱米品種改良意味において蓬莱米を奨励しているのでありますが、こういうことをしますと、相手国日本にのみ求めてきます。もしもこのようにして東南アジアにかりに米作を奨励するとでもいいましょうか、そういうことを考えていった場合に、日本米作は一体どうなるかということを考えますと、むやみに東南アジア諸国日本が米の増産のために協力するということはよほど考えなければならない。かりに考えるとした場合に、日本はそれには対応してどういう農業政策を打ち立てるかということを反射的に考えなければならないと思う。そこで私が考えますのは、東南アジアにおける合弁会社の行き方も、これは大臣承知のように、詳しいことは申し上げませんけれどもイギリスイギリスのように、アメリカアメリカのように、ソ連ソ連のように、それぞれ東南アジアというものに対する経済進出は非常なウエートをもって今進行中であります。しかも各国はそれぞれ国民感情といいましょうか、民族意識といいましょうか、そういったようないろいろな感情から、あまり外国のひもつき投資ということはきらうという面もかなり強いのでありますし、同時に海外貿易ということについては、私はそう前途は明るいものではないと思う。一応東南アジア国々が、自分の国の経済的建国がある程度進みませんと、海外貿易ということはちょっとわれわれとしては見通しがつかないといいましょうか、明るい希望が持てないのではないか。そうすれば結局日本東南アジア経済協力には、もう合弁会社以外にはないのではないか。その合弁会社をやっていきます場合にも、その業種についてはよほど考慮しませんと、ただむやみにやったのでは、日本自分自分の首をくくるようなことになるという点から考えて、やはり日本としては今後東南アジアに対する経済協力の画に一本の計画を持たなければならぬ。むやみやたらにやっていき得ない。同時に私どもがよく聞かされるのでありますけれども海外合弁会社ををする場合、一例をいいますれば、セメント会社に出て行ってどうこうといった場合には、そのセメント会社はせっかく日本内地においてもやはり会社が黒字でいっているのだから、何もあたえて海外まで投資する必要はないのだというけちな考え方といいましょうか、財界人相当そういう点を考えております。そういうことではなかなか日本海外合弁会社で進むということは容易でないと考える。しからばそういう政策政府がバック・アップする、法律的に海外投資を保証するという考え方を持ちませんと、そういう会社は出ていかないというようないろいろのことが考えられると思います。そういう点について大臣はどういう構想を持っていられますか、一つお聞かせ願いたい。
  6. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 これは東南アジア全体を考えましたときに、日本の立場だけを考えて、自分都合のいいようなことをするということだけ考えるということは、大きなあやまちを犯すだろうと思うのであります。いずれにいたしましても相手国々は、現在においては日本よりもいずれも生活程度が低くて、国民一人当り収入少い国でありますから、根本方針といたしましては、日本の力の許す範囲においてその国々協力して、その国々人たち生活を向上せしめて、個人当り収入をふやすということに持っていくということになれば、長短相補うということから相手国がよくなる、近隣諸国がよくなれば日本の国も必ずよくなるという考えを持っていかなければならないかと存ずるわけであります。しかし一方日本として考えますことは、やはり日本計画自身も確実に立てて、その計画を実行するについては、相手国に対してどういうことをやってもらえば日本の方にも都合がよく、また相手国のためにも都合がいいということを考えて、この計画を実行に移さなければならないと思うわけでございます。今日のお話のごとく相手国は米が非常に安くできる、しかしその米を全部持ってくると日本農業は立っていかない、これは非常に大きい問題でありますから、日本農業政策から考えても、そういう場合には、これに対してある程度輸入制限を加えるということも考えなければならないと思いますから、東南アジア全体から考え日本地位考え計画を実行するようにしたいと思います。  また一方海外投資について政府がこれを保証するという問題がありますが、これはある程度の保証はしなければならぬと思っております。しかし民間投資して、投資した結果経済的に成り立たない場合に政府がこれを補償するということは断じて許さるべきことではないと私は存じます。ただ相手団状態あるいは政治的情心によって投資されたものが全部損失になるといった場合に、つまり政治的その他の問題によってこれが損失を生じた場合には、ある程度の補償をすることは考えていかなければならぬことかと存ずるわけであります。これは私の考えをごく率直に申し上げたようなわけであります。
  7. 高岡大輔

    高岡委員 今大臣のおっしゃいました通り日本海外投資をするのでありますけれども目的向う国々生活水準を上げてやることが目的になっている。ただ向う国民生活水準が上ったはね返りとして、この国々日本との貿易が活発になってくるということなのでありまして、日本海外投資は、向う国民生活水準を引き上げた結果が貿易に現われてくるのであって、向う国民生活水準を上げることが第一義であるということはその通りでありますし、そうすべきであると私も思います。今の農業問題でありますけれども、米というものがそういうものであれば、コーヒーであるとか、紅茶であるとか、コショウであるとか、そういうような嗜好品の栽培もありましょうし、あるいはココナット、ジュート綿といったような農産物の奨励といいましょうか、協力ということも考えられる。これは無定見にすべきものではなく、考えていかなければならぬし、漁業問題とか、そういったいろいろな開発等につきましては一つ計画をもっていないと、一部の生産過剰が出たり何かするので、相当問題が生ずるのではないかという気がするのであります。  そこで今大臣が最後におっしゃいました点についてお聞きしたいのであります。日本が何億ですか、十億ですか、投資して、国際金融公社日本が株主として入る以上は、借りることを考えなければならぬのでありますが、この借りる金の使い道を考えておきませんければ、みだりに日本国際金融公社投資することは考えものではないか。従って国際金融公社日本が十億の投資をした場合に、国際金融公社からどれだけの金を借りるか、その金はこういうところに使うのだという一連の計画がありませんと、国際金融公社投資することは少しは考えなくてはならぬと思うのであります。それで国際金融公社の金は海外投資に使うのか、それとも日本投資に使うのかということが第二段的に考えられる。その際に今大臣がお考えになっていらっしゃいます日本経済五カ年計画海外投資をしようとする金額と、大ざっぱでいいが、一体どれくらいのパーセンテージを考えていらっしゃるか、その点も伺いたいと思います。
  8. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 ただいまの国際金融公社が今度できようとしているわけでありますが、これは従前世界開発銀行と同じ性質のもので、これをもっと簡単に取り扱いできるようにしようということで計画されている金融公社であります。さしあたり現在私ども考えておりますことは、日本国内開発に必要な場合にこれを使うのであります。そういうような考えで、これを国際的に使うということはまだ考えていないわけであります。将来はあるいはそういうような方面に持っていくことに相当なるかとも考えるわけであります。  それから五カ年計画対外投資についての御質問でありますが、これは先ほど申し上げました通りに、事務的にどの程度にするということにつきましてはいろいろ試案を練っておりまして、まだこれを発表する時期に到達していないわけであります。できるだけこれは日本経済の許す範囲において投資していきたい。時に日本として考えてみたいと思いますことは、急速に解決いたします賠償の問題であります。この賠償を払いましても、賠償を受けた国はこれに対して、たとえば日本から二千万ドルの賠償をした。これはほとんど役務資本財で持っていくわけであります。その役務資本財を完全に動かすためには、やはりそれと相当するくらいの金が要るわけであります。その金はだれが出すかということになりますと、これは相手国によりましては、なかなかこれだけの金を作ることができない国柄のところもあるし、またあっても人が足りないとかというふうなことがありますから、これについてはできるだけ日本資本あるいは日本技術をもってこれに充当していきたい、こういう私ども考えでございますけれども、これは相手があることであります。相手の方から考えてみると、日本賠償を払う、賠償を払ってこれに便乗してまた侵略をやるのではなかろうか、こういうふうな誤解を抱くのはこれは無理ないことだと思います。過去におきまして日本がやったその結果が残っておる。しからばこれを英米の金を持ってきてそれをやるかということになれば、この国々はようやく今日独立をかち得た国でありまして、従前英米各国の電圧から植民政策において犠牲になった国である。これがまたその国から金を持ってくるということは、またそれを繰り返すのではないか、こういうような感情ということも十分あると存じますから、こういうことはこちらからこういう計画を立てるということを言うのではなくて、相手方がこういうふうにやってくれないか、こういうふうにやってきて初めてこれは円満にいくだろうと存じまして、よほどその点は内部でいろいろ私どもは数字をもって検討はいたしておりますが、これは相手方のあることでありますから、相手方の出次第によってこれをきめなければならぬ、こういう考えで進んでおるわけであります。
  9. 高岡大輔

    高岡委員 そうするとただいま議題になっております国際金融公社の金は、日本国内目的としたものだけだ、現在のところはこれだけだという解釈をしてよろしゅうございますか。
  10. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 私はただいまそういう考えでおるわけであります。
  11. 前尾繁三郎

  12. 穗積七郎

    穗積委員 高碕長官にちょっと前もって申し上げておきますが、きょうは日本カンボジアとの友好協定、それからもう一つ国際金融公社に対する日本の参加の問題が二つ議題になっておるわけです。それで便宜上両方にまたがって、関連して大臣にぜひ経済外交国内経済計画ももとよりでございますが、国際関係に立つ関係から経済外交的な観点もわれわれは考えなければならないので、そういう意味で総括約な質問をいたしたいと思いますから、あらかじめそのおつもりでお答えをいただきたいと思います。  まず第一にお尋ねしたいのは、このカンボジアとの友好協定でございますが、この協定はまことに簡単なもので、御承知通り六条から成っておりします。しかも向うの態度は初めて独立して、そして日本に対して非常な友好期待を持って臨んできておることも御承知通りであります。ところでわれわれがおそれますことは、日本経済方針または外交方針が、つまり経済計画に裏づけられました外交方針が、かつての満州進出のような移民計画を立てたり、資本投資計画を立てますと、これは一カンボジア期待を裏切るのみならず、東南アジア全体にわたりまする影響も深刻でございますから、そういう点の疑点について私はお尋ねするわけですから、一つ率直にお答えいただきたい。これはあなたに対して、実は前に置いて何でございますが、今の鳩山内閣の中で、まあバンドン精神というものを最も理解しておる一人はあなたではないかと実は私は思うのです。あなたみずからが昨年のバンドン会議には政府の代表として御出席になって、そうして平和五原則の問題に対しては非常に深い理解を持って平和の提案をされた。ところで今度のこのカンボジアとの協定は、向う側は、前のこの委員会の審議でも問題になりましたが、実は平和五原則を認めて、しかも外交政策中立政策をとりながら日本との友好関係を深めることに非常な期待を持っておるわけですが、それに対して高碕長官のこの平和相互方針に対しまする御信念を最初に承わっておきたいと思います。
  13. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 もちろんカンボジア国におきましても、またそのほかの国国にいたしましても、バンドン会議でやられました平和原則というものについては、これは根本におきまして国際連合がいっておる平和原則とほとんど変らない点があるわけでありますから、この点は十分われわれは認め、この国際的の平和ということ、この平和原則ということを主体としてこれは話を進めるべきものだ、こう存じております。
  14. 穗積七郎

    穗積委員 御答弁はけっこうでございますが、問題は、平和相互主義ということを言葉の上で認めましても、実際問題になりますのは、特に経済政策が非常な搾取主義に立って参りますと、今おっしゃいました平和相互主義というものが全く羊頭狗肉の結果になるわけでございますから、そこであなたのお考えを承わりたいが、この第四条で両国間の経済的、財政的、技術的及び文化的協力関係を強化することを目的とする諸協定を結ぶということになっております。もとより現在の段階におきましてはカンボジア経済開発段階というものは、失礼な言い分ですが、まだまだあまり高い地位にない。また経済力が弱いので、この第五条に予定されております移民を送り出すということが当面の日本カンボジアとの間の問題になろうと思いますが、しかしながら将来かの国も経済開発をやりたい、われわれも東南アジア地域全体にわたってその一つとしてのカンボジア経済開発技術経済的な協力をしたい、こういうことで第四条が規定されておるわけでございますから、従って特に経済技術に対しまする協定については、日本経済計画と即応してこれは考えなければならない。もうすでにこの協定を結ぶときにそういうことがお互いの間に考えられておるわけですね。従って来年からどういう計画でどれだけの、たとえばプラント輸出をするとか、あるいは技術者を送るとか、あるいは資本の投下をして援助をするとかいうような計画がないにいたしましても、基本的な原則的な考え方というものは日本側にもなければならぬと思うのだが、そういう意味ではあなたは外務大臣よりはむしろ担当の責任大臣であるといって差しつかえないので、そこでこの問題を一体どういうふうに考えて準備を進めておられるのか、その基本的な考え方と御方針について具体的に御説明をいただきたいと思うのです。
  15. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 経済提携をして日本経済がある程度よくなる、先方もよくしてこっちもよくするということは、ことれは経済上の問題でありますが、一方私は日本の人口問題という点から考えまして、この移民を出すということは、非常に重要な一つ政策だと存じておるわけなのであります。移民を出すということになりますと、移民というものは日本相当技術のいい人を優先して相手方へ渡す、そしてその人は日本の国を考えるよりも、むしろ移住した先のために尽す、この根本方針でなければならぬかと存じまして、従前のごとく、こいつはどうもあまりよくないから南米へでもやっておこうじゃないか、こいつはよくないから満州でもやれ、こういうふうな考え方は私は根本において改めなければならぬ点だと存ずるわけなのでございまして、幸いに日本に若き人で非常な技術も優秀な、勤労意欲に燃えた人で職を得られないで困っている人がある。こういう人たちを、日本自分の娘を嫁にやる、相手国へそれをとつがすという考えでやる。それには裸一貫でやって、向うへ行ってかせいで金を送れというようなけちなことを考えてはいけないので、嫁に行った以上は相手の国のためによく尽せ、それでたんす長持一つも持たしてやるという考えで、移住さしていこうじゃないかというのが、私ども根本方針でございます。
  16. 穗積七郎

    穗積委員 それから経済並びに技術協定についてのお考えは……。
  17. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 経済及び技術協定につきましては、これは慎重に検討いたしたいこ患いますが、根本方針といたしますれば、相手国はまだ未開発の地が多いのでありますから、かりに農業開発にいたしましても、地下資源開発にいたしましても、そういう点を個々によく調べまして、そして相手の国がどうすればよくなるかということを考えて、日本の国からはできるだけ長期にわたって、できるだけ低金利の機械なり設備を提供する。同時に、移民が行って、その人たちがその機械をもってその国の開発に従事する、こういう方針で進んでいきたい、こう思うわけでございます。
  18. 穗積七郎

    穗積委員 長官考えは、いわば従来の難民的な移民政策でなくて、技術経済的な移民方針だということでしょうが、そうなりますと、移民に対する政府経済的援助だけでなくて、かの地においてそういう技術的な経営の基礎を作るためには、やはり技術または経済資本援助というものが必要だと思う。その場合に、基本的にお伺いしたいのは、これは一カンボジア問題だけでなくて、今度フィリピンに対する民間借款の問題も、二億五千万ドルという莫大なものが約束されようとしてわれわれを不安に陥れておるわけですが、そういう場合でも、民間資金が勝手に自由の原則に従って出ていく、コマーシャル・ベースに従ってのみ出ることのできる民間資金進出にまかせておくというよりは、むしろ輸出銀行なり、あるいは政府資金輸出銀行を通ずるなり、いずれにいたしましても、政府並びにその下にあります公的機関がその資本進出についてある程度向うに対しても責任を持ち、国内民間資本が出る場合にもその損失の補償をする。すなわち、言いかえれば、政府責任によって公的な性格を持った資本並びに技術進出というものが考えられても——もうすでにフィリピンとの間ではそういう話をしておられるわけですから、従って、カンボジアの場合におきましても同様な方式が考えられるわけですが、そういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  19. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 先ほどお答え申し上げました通りに、日本資本進出してそれが損がいったという場合に、政府責任を持つということはできないと思っております。けれども、その国の国際的の情勢というか、政局の変動が遡りましてこれが大きな打撃を受けたといった場合には、ある程度の補償をする方法を講じなければ民間資本は行かないかと思っております。かつ、フィリピンの場合におきましては、多少私ども研究いたしておりますことは、現在におきましても、フィリピン地下資源開発ということは、これは日本として欠くべからざるものでありまして、日本は現在鉄鉱石がないという場合に、フィリピンの鉄鉱石を完全に開発すれば日本としても非常に有利であるし、またフィリピンのためにも有利である。また現在におきましては、あのラワン材を持ってきて日本でこれを加工して日本貿易を増進するということもあり、また砂の問題等もあるのでありますから、これは自然民間投資にまかしておいても相当投資ができる、こう思っておるわけであります。しかしながら、二億五千万ドルというものにつきましては、政府は少くもそれをじゃましない。そうして、これに対しては徳義的にできるだけ投資をしやすいように促進をしていこうじゃないか。けれども、これに対しては責任がある、政府責任を持ってやるということは、これは果し得ないことだと存じております。またカンボジアにつきましては、ただいま逐次調査団を送りまして検討いたしておるわけでありますが、これは主として中小工業、小さな消費物資を作る方面の投資を逐次やっていこうじゃないか。これにつきましては、できるだけ日本の中小工業者に行ってもらいたいと思っておりますが、大工業の方にはある程度投資をするという資力があるわけであります。中小工業が移住するということになれば、これはなかなかそれだけの余裕の資金を持たないわけでありますから、少い金でもこれはある程度進出してもらわなければならぬ、こういった場合にはケース・バイ・ケースに応じて政府はある程度方針を講じていかなければならぬことか、とこう存じております。
  20. 穗積七郎

    穗積委員 大へんよい御意見だと思うのです。そこで、ちょっと今大臣からお話があったので、私もその問題に触れたいと思っておったのだが、たとえばカンボジアなんかはもとよりでございますが、そのほかインド地区に至るまで、むしろ近代的な機械工業その他化学工業というようなものの進出考えることは非常に将来のことであって、眼前では、失礼な言い分ですが、日本における家内工業的な機械または技術、これが向う経済開発のために必要とする多くのパーセンテージを占めるのではないかと思う。それに対しては、今言われたように、政府責任を持たないけれども援助をするというような考えでございますが、その方式については、移民の問題と関連をして、日本自身がかの地の経済事情をよく調べた上で、こういうことをやってやった方がよい、すなわち、向う経済計画を自発的に行われているだろうと思うが、それに対しても、日本移民というルートを通じて、かつての日本の産業発達の歴史の経験から見て、こういう方式がよいというように考えて、そしてそれを向う計画と、それから日本民間の個々の中小企業者との取引、話し合いにまかせることなしに、政府がやはり全体としてそういうサゼスチョンを与えていくというような積極的な好意的な態度が私は必要だと思うのです。そうなりますと、私の質問は二点でございます。経済企画庁または外務省、大蔵省、通産省と各関係者の間で連絡を持って、どこが主体となるかは別でございますが、そういう計画をあなた自身お考えになりますかどうか。またそれを実行する場合には今言ったように、政府が直接責任を持って政府資金を全面的に百パーセント出してやるということではなくして、協力援助する、その中間のようなものでございます。民間の全く自由な対外援助と中間的なことを今度のフィリピンの場合でも考えて、われわれの考えでは、より多く政府責任を持っていいと思うが、その方式を考える。そうなると、今言ったような計画政府自身が考えるということが一点。もう一つは、今度は第二点の質問として、その場合において、大商社であるならば海外情報を取り、またかの地に技術者を派遣して経済事情調査をやり、話をするということもできますが、日本の家内工業的な段階にある中小企業、これはそういう力がないわけです。また金もないわけです。それに対して、政府は、中小企業の共同化といいますか、そういうような方式を考えてそういう対外援助をお考えになるかどうか。これが第二点の質問。第三点は、今度はそういう形で進出した場合に、日本資本家または政府のかの地の産業開発に対する発言権の問題でございます。フィリピンとのあの対外借款のあれを見ますと、われわれの仄聞するところでは、これは大臣が来たらまたこの委員会で問題になると思うのだが、それは別として、われわれの知れるところでは、その対外借款として資本または資材、技術が出たときに、そうして向うの自主的な計画民間または政府計画によって行われる場合に、日本政府並びに日本資本家は一体どういう発言権を持つかということ、これが一つの重点だと私は思うのです。それに対してこの日本責任者であるあなたは、対外援助に出て参りました資本を通じて、かの地の経営の内容に対して一体どういう発言の形をとることがいいか、そのことについてのあなたの基本的な考え方をこの際伺っておきたいと思うのです。その三点について逐次お答えをいただきたいと思います。
  21. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 大資本で大企業をやるということになりますと、その企業者自体がすべての機関を持っていることでありますから、これにつきましては政府はもうあれやこれやということを言わずに、大体その責任者をもって、お前の責任でやれ、こういうことにして、政府はこれをじゃましない方針でいきたい、こう思っております。中小工業につきましては、政府としてはよほど考えていかなければならぬ、と思いますことは、現にビルマあたりからは小さな工業へ来てくれろと言ってきている。それは資本金とすればわずか八十万円かそこらのものなのでありますから、大設備を持っていくということになると、これは輸出入銀行の金融を受けるということになると保証が要る。保証をするということはだれもできない、こういうことで実行できない、こういうふうな実例があるわけであります。現在非常に窮迫しておる、また希望しておるものは、むしろ大企業よりも中小企業が多いのでありますから、どうしても中小企業の団体を、つまり国内におけるこの団体の力を強化していただいて、その強化したるものを主体として、そしてその団体を通じて政府はある程度の助成をするとか、あるいは保護をするということにして、中小工業が現在の状態でも楽にいけるように、資本の金額にある心皮の制限を加えて、たとえば五十万円以下とかあるいは百か日以下の企業ということで一つ考えてみたいと思って、実は私自身の試案を練っておるようなわけであります。
  22. 穗積七郎

    穗積委員 あとの発言権はどうなりますか。投資した向うの企業に対する日本政府または出資者の発言権の形式については、もし政府がそれに意見を持っておる場合——完全な民間投資ならばいいのです。そうでない場合に、たとえば輸出入銀行の資金を投入した場合、その場合におけるかの企業に対する日本資本の発言権、それはどういうふうにしたらいいか。これは実は非常に重要な問題ではないか、いわばやりようによっては帝国主義的な進出になって、資本を通じてかの地の経済を支配するというような不安を与える結果にもなりますし、それから文字通りここの協定にあるように、ほんとうに平和な相互主義によって友好的な関係でできる場合もあるし、そのかなめの一つはこの発言権の問題であると思うのです。それに対する大臣のお考え方を伺っておきたいと思います。
  23. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 フィリピンの方は、現在におきましては海外資本を持って経営する事業については、フィリピン人が少くも五五%あるいは六〇%のマジョリティを持つというような原則になっております。そういうふうなことで今度日本が経営に参加いたしますにつきましても、フィリピンの事業自体を日本人がマジョリティをもって経営することはできない状態になっておるわけなのでありますが、政府といたしましてはそういうふうな問題につきましては、一にやはり大きな事業は経営者自体の責任においてこれを解決せしめるというふうにいたしまして、経営者がそれじゃどうも不安だということになれば投資もできないということに相なりましょうが、この点は大企業は経営者自身の責任でやっていただくということにしますが、中小工業につきましては……(穗積委員「または政府資金が動員された場合」と呼ぶ)政府資金がこれに動員された場合は、動員する前に相手国政府とよく話をつけて、それで政府の金を持っていくとかいうこともよく話をし合って、そうしてそれによって将来これが不当に圧迫を加えられるといった場合につきましては、相当政府は発言のできるようにしておきたい、こう存じます。
  24. 前尾繁三郎

    前尾委員長 十二時に長官は外人と会う約束をされているようですから……。
  25. 和田博雄

    ○和田委員 今の長官の中小工業を持っていくという考え方は成り立つと思うのですが、具体的にカンボジア相手にした場合は一体どういうものを持っていく予定ですか。たとえばカンボジアとの間に今農業移民を送ることになっているが、その農業移民のほかに工業的なものを狩っていく場合に、工業移民という言業はあまり使いたくないのですが、工犬を中小企業を持っていこうとする場合には、一体どういうものを持っていけるかということについて、具体的に中小工業としては何だろうか、それを一つ考えがあったらお聞かせ願いたい。やはり具体的に考えてみないといけない。理論としてはそういうことはいいと思うのです。今おっしゃったビルマとかフィリピンとかいうところは、それはある程度成り立ち得る考えだと思うのですが、カンボジアのような場合はほとんど農業国と言っていいと私は思うのです。僕はあまりカンボジアのことは知らないのですが、何かそういう具体的なものをお考えになっていれば聞かしていただきたい。
  26. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 実は私もカンボジアのことはあまり知らないので、具体的な案が立たないのでありますが、私はあまり大きな仕事ではなくて、日用品を作る——今輸出しておるような日用品を作るようなものを持っていきたい、こう思っております。それがために今調査員を出しておるわけであります。
  27. 和田博雄

    ○和田委員 カンボジアは大体農業国で、大部分は米と、トウモロコシがやはり農産物としては一番多いと思うのです。それから綿花が多少あるわけであります。そういうふうなことを考えると、日本から持っていく中小企業というものは比較的限られたものになっていくし、カンボジア自身の国民の要求が一体どの辺にあるかということも相当はっきりつかまないと、なかなか具体的にはいかない感じもするのですが、そういう点は外務省の方で多少具体的に考えたことがあるのかどうか。これは大臣に聞くのは無理な注文かもしれないので、事務当局の方でもしも調べたものがあれば、この点一つ聞かしてもらいたい。
  28. 下田武三

    ○下田政府委員 先般矢口移住局長が参りまして先方の話をお聞きしたところでは、先方は仰せの通りやはり日用品工業等を希望しております。たとえば衣料品工業でありますとか石けん工場を作ってくれとか、あるいはお百姓さんの使う簡単な農機具の工場だとか、向うの日常生活に役に立つ中小企業の移民を欲しておるようでございます。
  29. 和田博雄

    ○和田委員 またあとでお尋ねします。
  30. 穗積七郎

    穗積委員 私はまだ高碕長官に今言ったような総括的なお尋ねをしたい点が残っておりますが、今秘書官からの御連絡によると、十二時から公用がおありになるそうですから、一ぺんお帰りいただいて——ほかの方の御質問があれはそれを済ましてお帰りいただいて、私のあなたに対する質問は留保しておきますから、次の出席を確約しておいてもらいたい。
  31. 前尾繁三郎

    前尾委員長 岡田春夫君。
  32. 岡田春夫

    ○岡田委員 私も実はもう少し伺いたいのですが、一つだけ伺っておきたいと思います。この間ジョンストンというアメリカの映画屋が来まして、映画屋なのにえらい政治性を発揮するようなことを盛んに言って、ジョンストンが東南アジア開発計画を具体的に提示して、これに対して日本政府側では一萬田大蔵大臣、それから高碕長官のお二方があれに非常に賛意を表されておったように新聞では拝見いたしました。賛意を表された限りにおいて、何か具体的な内容を御存じになるのだろうと私は思いますが、あれはどういう内容になっているのですか、賛意を表された理由等について、この点だけ伺っておきたいと思います。
  33. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 私はジョンストンが参りまして二回ちょっと会ったのですが、彼があの構想を発表したのは商工会議所の会議で発表したのであります。発表後につきましては、私は会っていないのでありまして、どういう内容か詳しく存じませんが、大体のことは新聞に書いてある通りだと思いますが、私がむしろジョンストンに話したことは、日本賠償を払うということになっている。しかし先ほど申しました通りに、相手国に金がなくて困るのだ。そういう場合はどこからか金が欲しいのだが、アメリカから持っていくと、どうもお前らのひもつきの金が入ってきて、相手国は非常に警戒する、こういう状態だから、何かそういうふうなことでないような方法があるだろうか、こういうことを考えてくれないか、こういう話をした。これが事実なのでございます。
  34. 岡田春夫

    ○岡田委員 私はその点だけですが、今大臣率直にお話しになったように、アメリカのいわゆるひもつき資本輸出をやる、この資本輸出が、最近のいわゆるアジア・アラブの諸国においては、だんだん人気が下ってきて、一方においてはソビエトの経済援助というものが行われている。こうなってくると、アメリカ資本輸出がだんだん困難になってくる。そのためにその肩がわりとして、言葉をかえて言うならば、アメリカの尖兵として資本輸出をさせられる状態になってきているということは、言葉をかえて言うならば、アメリカひもつきのもとにおいて、日本ひもつきがまた行われる、こういう形になってくるのではないか。こういう形になってくると、おそらくアメリカ資本なら要らぬ。先ほどの大臣の言われたように、それじゃ日本資本は要るかというと、そうはどっこいいかないと思うのですよ。アメリカのひものついている日本資本であるならば、それも要りません。そういう形で、それを通じて東南アジア諸国並びにアジア・アラブ諸国にとっては、明らかにアメリカひもつきの役付を日本が果していくという意味で、今後経済開発その他の問題において、いろいろな困難が出てくるのではないか。そういう意味では、あの構想に対しても相当慎重な態度が望ましいと私は考えておるわけです。そういう意味でこの点だけを伺っておきたいと思いまして、十分慎重な考慮の上にあの構想についても政府としては態度をきめていただきたい、こういうように私考えておりますものですから、その点だけを申し上げておきたいと思います。
  35. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 先ほど高岡さんの御質問に対して、私は国際金融公社というものの金は、日本開発に使いたい、こういう方針でおるのでありますが、これは多少疑問なようであります。後進国の開発のために使うということが前提になっております。日本は後進国でないということを認めております。こういうことなので、日本がこの金を借りて後進国の開発に使うならばいいが、日本自身が使うということについては、まだ多少疑問があるというようでありますから、それを訂正いたしますから、さよう御了承願いたいと思います。
  36. 高岡大輔

    高岡委員 カンボジア移民に対する予算の裏づけをちょっと聞きたいのですが、外務省の方ではカンボジアに対する移民をすることは、矢口局長みずからがカンボジアに行かれて、いろいろ打ち合せてこられました。ところが外務省の予算を見ますというと、実にわずかな金額でありまして、昨年から比べますと、移住者の渡航費貸付金という項だけを見てみましても、昨年よりことしふえましたのは、わずかに三千二百万円そこそこでございます。ところがそうなりますと、逆算とでもいいましょうか、すれば、この三千二百万そこそこの金は、去年はカンボジア移民はなかったのでありますから、ことし使うのは中南米等も含まれているので、新たにカンボジアにするのは、たった三千二百万円という解釈も一応は成り立つと思います。それとも中南米の方をうんと減らしてカンボジアの方にうんと金を回すということになりますのか、その点は私にはわかりませんけれども、その点を明らかにしていただきたい。  それからカンボジア移民と一概に言いますけれどもカンボジア移民に最も必慶なことは医療施設であります。医療施設が特に東南アジア諸国には一番大事なのであります。これなくして、いろいろと政府の施策を今までお考えになっていっしゃるのをそのまま進めて参りますと、これはいろいろな意味で誤解を生じ、また所期の目的が達せられない場合が出てくる危険性が多分にあるのであります。そういう意味から、どうしても医療施設の十分なものをやりまして、こちらから移住して行きました人の保健に十分に力をいたすことは当然でありましようが、さらに一歩を進めまして、向う国民の保健にも十分に貢献しなくちゃいけないと思います。そういう施設費がこれには全然ないのでありますが、そういう点は、仄聞するところによりますと、大蔵省は予備費から出すというようなことをおっしゃっておりますが、そういうことでなく、相当具体的にもう話が進んできたのでありますから、この際大蔵省としてどの程度の金額を予定されているのか、その点をお伺いしたい。
  37. 鳩山威一郎

    ○鳩山説明員 移住関係の予算の増加の割合が非常に少い、こうおっしゃるのでありますが、予算全体といたしましては、なお前年度に対しまして約一億一千万円ばかりの増加でございます。その中で移住の渡航者の貸付金としては、約、三千万円の増加であります。これは実は三十年度の予算におきまして、移住の渡航者の貸付金は、私どもの見通しでは約一億八千万円ばかり繰り越しが生ずる、こういう見込みでございます。これは中南米の移住が政府の予想通り進捗していないということが一点、それから旅費の船賃でございますが、船賃は、外務省が船会社の方と鋭意折衝されまして、一人当りについて約六千円ばかり値引きが成立したのであります。その二つの事情から今年の予算は一億八千万円ばかり小るのであります。この金の措置につきましては、先般の予算の補正の際に繰り越し明許を得まして、これは三十一年度においても使用でき得るように措置をしたのであります。従いまして渡航者の貸付金の総額といたしましては、この一億八千万と、今度ふえます三千万、合計いたしまして約二億一千かばかりの増加というふうになっているのでありまして、これをもって来年度の中南米移住、カンボジアの移住等をまかなって参りたい、こう考えているのでございます。  なおカンボジアの移住といたしましては、一応約二千名程度を送る場合を想定いたしまして、七千二百万円を計上してございます。ただこの場合に、私どもといたしましても、先般のこの委員会で御説明申し上げたように、カンボジアの移住につきましては、まず先方の事情調査を詳細に行うことが先決でございまして、これとともに、先方国と移住の受け入れ条件につきまして話し合いを行う、こういうことがまず第一に必要でございます。その話し合いの結果に基きまして、日本としてどういうような施設をするということがきまるのでありまして、その話し合いのきまらない先に、日本がこういう施設をするというのは、ちょっと私どもとしては予算上計上しにくいというふうに考えたのであります。そういうお話し合いがきまった上で、これらの予算の弾力的な使用をはかって参りたい、こう考えております。
  38. 岡田春夫

    ○岡田委員 関連して。これはこの間委員会主計官答弁をしたので、私は調べたのですよ。調べてみたら、あなたの言っているのとは違うのです。違うというのは、ことしの繰越金一億八千万というこの金は、カンボジアに使えないはずですよ。これはカンボジアに使えるのじゃなくて、繰り越しの明許を得ているというのは、中南米の方にこれは来年繰り越して使います、これはことしのうちに出せないのだから——たしか人数は千五百名です。千五百名分のこれはことしの年度内においては中南米に行けないのだから、来年度になってからこれはやるのです、それで繰り返しをして下さいといって、国会の承認をとっている、ですから、もしこれを中南米の方にやらないでカンボジアにこの金を使うのだとするならば、あなたそれは国会の承認をもう一回得なければならないですよ。それを国会の承認を得ないでそういうようにやれるというふうにあなたが言われるとするならば、これは財政法並びに国会法違反だと思う。そういうことじゃなくて、カンボジア関係の施設費というものは、現在においてはこの分から出せないので、予備費の方から出すならば出すという方法しかないはずです。ですから、この意はもう一回はっきり御答弁を願っておきたいと思います。私は調べてあるのです。
  39. 鳩山威一郎

    ○鳩山説明員 その問題につきましては、先刻もお答え申し上げたのでありますが、一応その移住渡航者貸付金というのは、三十年度は中南米の移住渡航者だけでございます。三十一年度につきましては、カンボジアも含めて計上しておるわけでございます。その渡航者貸付金といたしまして五億四千六百万円を三十一年度に計上してございますが、この内訳の使用につきましては、これはそのときの情勢に応じまして、中南米に幾ら、カンボジアに幾らという程度の振り分け方につきましては、これは国会の御承認を得た後におきましても、その程度の振り分けにつきましては、行政府限りでできるというふうに私どもは解釈しておるのでございます。国会にお出しした内訳通りに予算の金は使うべきだとは存じますが、その辺の、中南米に幾ら、カンボジアに幾らというような点につきましては、実行面におきまして、どうしてもカンボジアに出さなければならぬ、一方来年度において中南米の方が余るというような事態が参りましたような場合におきましては、行政府限りの措置といたしまして、カンボジアの方に使わしていただくということは、当然許されるというふうに、私どもは解釈しておるのであります。国会の議決科目でありますところの項の金額の範囲内におきまして、適宜の流用措置というものは、財政法上許されるというふうに私どもは解釈いたしております。
  40. 岡田春夫

    ○岡田委員 では私別な角度から、これはあとで大臣が来てからもう一度やろうと思っていたのですが、いいですか、今度の予算の費目としては、三十一年度、中南米には五千五百名、三十年度千五百名、合せて七千名、カンボジア二千名、これだけの予算が組んであるわけですね。とすれば中南米に五千五百並びに千五百、合せて七千、これが全部出てしまったとするならば、カンボジアの予算は施設費をどこから出すのですか。その場合にあなたはここから出すと言ったって、出しようがないではありませんか。
  41. 鳩山威一郎

    ○鳩山説明員 先般ここでも申し上げました通り、この第一段といたしまして、三十一年度に計上した予算の範囲内におきまして、かりに中南米の方が余りました場合にはカンボジアの方にも使わせていただく、なお先方との話し合った条件のもとにおきまして、どうしても足りないというときにおきましては、予備費の使用も考えるのだ、こういうふうに御答弁申しあげたのでありまして、来年度予備費は絶対出さないのだというようなことを申し上げたのではない。先般移住局長が御答弁になりましたのは、来年カンボジアにつきましていろいろな施設とか何かが出た場合には、予備費を出すということのもとにおいて大蔵省との話し合いをしたのだというふうにおっしゃったのでありますから、私がただ苦干技術的に敷衍をいたしたのでありまして、その前の段階にやはり来年度に計上した予算の範囲内でやりくりのできる面は一応それを考えた上で、どうしても足りない分は予備費を考えるというふうに御説明いたしたのであります。中南米移住が来年度七千名どんどん出たというような場合におきましては、そちらの方としては余裕がなくなる、従ってそういう状況になりました場合には予備費を使う、こういうふうに御了承願いたいと思います。
  42. 高岡大輔

    高岡委員 ただいま議題となっておりますのはカンボジアの問題でありますから、カンボジアのことを聞くのでありますが、カンボジアに対する移民の場合と中南米に対する移民の場合とでは、性質が相当違っておりますことは、主計局も御存じだと思います。ここに移住局長がいらっしゃればその点がはっきりしてくるのでありますが、これは私が言わなくても主計官も大ていおわかりだろうと思います。従って中南米の移民の場合よりはカンボジア移民の場合は、一人当りの金額が多分にかさばると思う。農機具の世話から何から一切でありますから大へん違ってくるのでありますが、一体一人についてどれくらいの見当を考えていらっしゃるのか、その点をお伺いいたします。
  43. 鳩山威一郎

    ○鳩山説明員 この予算に計上いたしてごさいますのは、一応カンボジアの渡航者の貸付金その他調査費でありまして、先ほど申しましたように、調査をいたしましてカンボジア政府とり交渉ができまして、こういった条件のもとにこういったふうにやるということがきまるのでございます。そういうお話し合いができませんと、一人当りどの程度ということは今申し上げられないのであります。
  44. 高岡大輔

    高岡委員 これは外務省との連絡がうまくついていないのではないですか。外務省の方ではもう相当話し合いが進んで、今も話のありましたように、大体三十一年度には二千人ほどカンボジアに移住をすることになっているのでありますから、そう想像といいましょうか、雲をつかむような話ではないのです。現在は相当進んでいるのです。だからここで大体一人当りはこれくらいになるんだということをおっしゃれば、それにかける二千倍で幾ら要るということの金額が出て参ります。その金額をどこから出すのだということがはっきりしませんと、これは外務省当局の肩を持つようですけれどもカンボジアと交渉しても金の出場がないということになってくると、せっかくカンボジアと約束しても、これはから手形になる。だから大蔵省としては、その点はそういつまでも架空の事実を前提としたような話ではなくて、もう少し大蔵省としての態度をはっきりしていただきませんければ、せっかくカンボジアとの友好条約を結び、移民をこれから何千人やる——しかもそれにはジュートを作らせるとかあるいは紬を作らせるとかいうようなことが、大体構想ができて局長が帰っておられるのですから、この辺で一人幾らくらいかかるだろうか、農機具の代金としてはこれくらい、渡航費としてはこれくらい、しかもこれはあまり人間のいないところへ入るのですから、一カ年分の食糧費といいましょうか、生活必需品の金額はどれくらいということの見積りができないうちに、カンボジア友好条約を結んでも、しまいに日本の大蔵省からの金が出ないということになってくれば、ただ単に日本移住局長がから手形を出しただけでは済まないですよ。両国の国際関係にまで波及することでありますから、今のところで大蔵省がそんなにあやふやな答弁では、おかしなことになるような気がするのでありますが、もう二度この点重ねてお伺いいたしたいと思います。
  45. 鳩山威一郎

    ○鳩山説明員 先般矢口移住局長、それから後藤事務官等が帰られましてからまだ早々でございまして、目下外務省の幹部の方で、いろいろ御相談中と私どもは承わっておるのでございます。そういう状況でございまして、日本政府といたしまして、どういう態度をとるかということは、まだ正確なことを申し上げる段階に立ち至っておらないのであります。従いまして、近々のうちにあるいは決定いたすかも存じませんが、今日までのところは、まだそういった状況でございます。現地の事情につきまして、矢口移住局長から、先般の委員会のときにいろいろ御答弁もございましたが、そのあとで外務省の幹部でいろいろ御相談があったというような状況でございます。まだ実際のところそういう状況でございます。
  46. 高岡大輔

    高岡委員 もう一点お伺いいたしますが、今のお話では、外務当局の方で今協議を進めておられるので、従って大蔵省としては今のところ何とも計算のしようがないとおっしゃっておりますが、先ほどから明らかになりましたことは、もうほとんど中南米の移民で金が一ぱい一ぱいだということになってくれば、ここに新たに生じてきたカンボジアへの移民というものは、これは新たでありますから、過般衆議院を通過いたしました予算に出ていなくても、仕方はないが、今日となっては予備費から出すよりほかないと思いますが、予備費から出すということがはっきりしなければ、どうもこの条約をわれわれは承認するわけに参らない。従って、金額ばしばらくおくとしましても、どこからその金を出すかということを、大蔵当局としてここではっきりおっしゃっていただきたい。  それからもう一つあわせてお伺いしたいことは、キリロムの避暑地開発の問題があります。これに対する経費というのは、これも大蔵省で考えていらっしゃるかどうか。たしか二、三日前でありますか、アジア協会の岩田専務が飛行機で立たれたはずであります。これはどういう構想でおられるかわかりませんけれども、八キロ四方の開発でありますから、そう金はかからないと思いますが、その金は一体どこから出すつもりでありますか。これは民間資本でやるのか、それとも政府から出すのか、政府が出すとすれば、どの費目から出すのかという二点を明らかにしていただきたい。
  47. 鳩山威一郎

    ○鳩山説明員 最初の方の、本協定と移住計画との関係でございますが、移住につきまして、非常にこまかい細目が両国の間できっぱりきまりませんと、この協定はお通しになることができぬ、こういうことでございますが、本協定が御承認になりましてから、そういった移住の細目なども両君の間でできると思います。(「細目のことを言っているのじゃない」と呼ぶ者あり)そういう細目がきまりまして後でなければ、どういった予算措置をとるか、こういうことを申し上げることは適当でないというのが、私ども考えでございます。先ほどから、話し合いができましたならば、その話し合いに従いまして必要な措置を講じていきたいと申しましたが、その措置の講じ方といたしましては、中南米移住との相関におきまして、これはなるほど七千名以上の中南米の移住ができれば足りませんが、そうでない場合においては、そちらで弾力的に考えまして、なお予備費の使用等も考えて参りたい、こういうことでございます。  それから第二番目のキリロムの問題につきましては、これは目下調査団が参ったところでございまして、その帰朝報告等があってから、これをどうするかという態度がきまると存じますが、私どもの予想といたしましては、あの話は一応民間ベースで投資が行われるのじゃないかというふうに観測をいたしているのでございますが、それにつきましては、なお輸出入銀行あるいは今回御審議中の輸出保険法の改正がございますが、そういった制度に乗せまして、民間ベースの投資考えていくというようなことになるのじゃないか、こう考えております。従いまして、一般会計から直接そういった金が出るということはないというふうに御了承願います。
  48. 高岡大輔

    高岡委員 今の主計官の御答弁は、ちょっと私のお尋ねしたことを考え違いしていらっしゃるようであります。私は何も、日本の外務当局とカンボジアとの細目協定がきまらないうちは云云というようなことは話していない。細目協定は、いずれ今度の条約批准され、交渉が進められた上でありましょうが、およその金額というものは、大体見当がつくと思います。そのおよその金額を、それじゃどこから出すのだという大蔵省の腹がきまりませんと、これは外務省としても、友好条約は結んだが、いつまでもそれを実行し得ないということになってくれば、今度は外務省としてその立場上困るじゃないかという気がするのでありますが、その点なのです。だから大蔵省の気がまえを一つお聞きしたいのです。ただ中南米への移民カンボジアへの移民の場合とは、相当金額は違っておりますよ、それは承知だ、こういうことですから、それを承知の上でしかも大体二千人ということなのだから、その二千人にかけた金額というものは予備費から出すとか、そういう大まかな御答弁でけっこうですから伺いたい。  それからもう一つ、これは私の聞き違いか知りませんけれども、中南米に何千名出すという計画だけれども、あるいはそれがその通りいかないかもしれないということになってきますと、外務省の計画というのはずさんであり、当てにならないということを意味するような気がします。そうなってきますと、これはおかしなことでありまして、大蔵省と外務省とどっちが正しいのか、そういう点が——それはちっとやそっとの差はよろしゅうございますが、他にうんと転用できるほどの金額が余るというようなことになってくれば、どっちかが非常に不安定だということに解釈せざるを得ないのでありますが、その点も一つ答弁を願いたい。
  49. 下田武三

    ○下田政府委員 ただいま御審議を願っております友好条約と移住問題との関係については、本協定の第五条で、移住者であって、両国の共通の利益に合致すると認められたときは、できる限り便宜を供与するということが、移住に関する唯一の規定でございます。従いまして、実際は日本からカンボジアへの移住でありまして、この協定の五条によって便宜を与えるのはカンボジアの方でございますから、この協定が御承認を得て批准された上で、初めてカンボジアとしては日本の移住者に対して便宜を供与する義務を生ずるわけでございます。これが先決問題でございます。従いまして、鳩山主計官がおっしゃいましたように、向う日本側に便宜を与えるという義務が発生してからすべてのことは始まるわけでございます。矢口局長が参りましたのは、ごく大前提としての問題だけでございます。先般矢口局長が御説明申し上げましたように、男ばかりでは困るので、二〇%まで女にするとか、あるいは家を建てる材木の伐採権を与えるとか、それから大きな費用の分担でございますが、日本から向うに行くまでは日本側が持つが、向うに漕いでから入植地までは向う側が持つとか、一番初めの大前提のところだけをきめたのでございまして、それは第一陣でございます。これから第二陣、第三陣と現地に参りまして、その上で移民協定が締結されることになると思います。そうしますと、移民協定につきましてまた国会の御承認を仰ぐ必要が生ずるかもしれないと思っております。これは内容にもよりますが……。でございますから、予算関係がきまりませんと発効し得ないのは、この次にできるべき移民協定でございまして、本協定自体はただカンボジア側の便宜を供与する義務さえ発成させれば、それで目的を速成するわけでございますから、その点予算関係のいかんにかかわりませずこの協定は御審議を願いたいと思います。
  50. 岡田春夫

    ○岡田委員 それはおかしい。予算措置を講ずるということははっきりしておいてもらわないと……。実際問題として一人三万円で二千人の旅費はあるのですよ。ところがこっちから向うへ行って、たとえば中南米の場合には旅費以外に小づかいとかなんとかパー・ヘッドで七万円になっているのです。ところがカンボジアの場合に関しては旅費だけしかないのです。当然これは予算措置をとらなければならない。当然予算措置をとらねばならないのならば、一体大蔵省の予算のどこから出すか、その基本の方針を聞いているわけです。それは細目協定をきめる前の問題です。これを組まないならばこの条約それ自体が結べないということです。予算措置を講じますという話になったら初めて事実上移民ができることになるのだから……。高岡君はそれ以前の問題を今聞いているわけです。下田さんの意見も私は一応聞かなければならない点があると思うのだが、その金額が何ぼになるか、五千万円になるか六千万円になるかあるいは三億になるか、それは細目協定がなければ出せないでしょう。あるいはまた具体的な問題になってこなければ出せないでしょう。予算措置を講じますということを言ってもらわなければ、実際問題として移民ができないのです。移民ができないからその予算措置はどこから講ずるのだということを、さっきから大蔵省の主計官に聞いているわけです。だからあなたの御答弁とは違うわけです。そういうことなんです。あなたは主管局じゃないから、あなたの御答弁を私は伺わなくてよろしい。この問題は大臣の来るまで待つことにして、それまで暫時休憩しようじゃありませんか。
  51. 下田武三

    ○下田政府委員 お言葉でございますが、私ども外務省が大蔵省に経費の支出をお願いいたしますこれは常道でございますが、どだい積算の基礎がはじき出せないような経費を初めから予算に計上して下さいということは申せないわけであります。でございますから、主計官も予備費から出すということは言っておられるわけです。予備費の使用は、全然予想もしなかった必要の経費の場合と予想はされても積算の基礎がはじき出せない場合と両方あると思うのです。今度はまさに後者の場合でございまして、第二陣、第三陣の現地視察団が参りましてこまかい取りきめができましたならば、そこでりっぱな積算の基礎が出るわけでございますから、その上で大蔵省の言っておられますように、既計上分に余裕が生ずればまずそれから、それが足らなければ予備費からということで、もう大蔵省の態度は、私どもそれだけ伺っておれば実は外務省としては十分だと存じております。
  52. 田中織之進

    田中(織)委員 ちょっとその点は……。なるほど細目の協定ができなければ予算に基いて支出することは不可能なのです。従って、その場合には、下田さんが今御答弁になったように、第一に急な場合には予備金から支出する。それから予備金がない場合には補正予算等の臨時的な措置を講じなければこれはならないわけであります。それだから、その基本的なそういうことが出て予算上の支出をしなければならぬときにはそういり措置をとるということを、現在この委員会でどうして大蔵省の方はお答えすることができないのですか。それともう一つ、なるほどこれから向うとどの程度の便宜を与えるかということの交渉をなさなければならないことはわかりますが、カンボジアに二千人、これは志望者を募集しなければならぬ。一体外務省は現在考えて、また現在までの調査の関係で、この二千人を向うへ移住させて、この友好条約の趣旨に沿って十分両国の友好親善に役立って、またかの地の開発をやる。そのためには、少くとも一人当り幾らくらいの経費がかかる。このことは外務省が、そのうちのどれだけの部分を向うに負担してもらうか——できるだけ多く負担してもらうということも今後の交渉によるわけです。しかし、向うはこの限度しか負担することができないということになれば、残りを、結局この友好条約移民を出すという約束ができるわけでありますから、日本政府の方でめんどうを見なければならぬわけです。その意味で、予算の積算の基礎までは、まだ向うとの交渉で向うの負担してくれる部分が確定しませんからわかりませんけれども大体カンボジア移民については、一人どの程度の経費がなければ、この移住の目的が達しないということについての大まかな構想の数字が出てこなければ、向うへどの程度まで負担してくれということの具体的な交渉をする基礎にはならない、基礎がないことになるので、その点はすでに外務省で、積算の基礎となるべき——今度の移民向う移民としての目的を果すためには、大体どの程度の経費がかかるだろう、向うへ送るところまでは全部日本責任を持つから、今後どの部分できればあなたの方で持って下さい、あるいはそのうちのこの部分だけは自分の方でできないから日本の方で負担してくれという話し合いになるかもしれない。その点について積算の基礎の前提となるべきもの、今度の移民は一人当り大体どの程度の経費になるのか。これは前々から言われているように、中南米のように受け入れ国であらゆる施設を整えられておるのとは事情が違うわけです。大まかに言って、やはり中南米の移民に何倍かするところの経費がかかるわけです。その経費は今後の交渉で、また友好条約の五条でありますかに従って、向うは便宜を供与することが、条約承認されれば義務づけられてくるわけですから、向うが持ってもらえるものだという期待を持っている。その交渉の前提になるものですから、大体一人当りどの程度の費用がかかるかということについて大まかな見通しを持っているか。これは予算の積算の基礎の前提になる問題ですから、その点一つ外務省側からお答えを願いたいと思います。
  53. 下田武三

    ○下田政府委員 実は仰せになります大まかな積算の基礎すら出ないのでございます。南米でございますと、ブラジルで一人当りの入植完了まで幾らかかるかというところから類推して、あるいはボリビア、ドミニカへ移民するという場合も、大よその状態がわかるわけでございます。またボリビア、アルゼンチンその他のところも仰せのように相当入植者に対する経費の分担を向うがしてくれますが、今度の場合は何分東南アジアに出します最初の移民でございますので、先般も矢口局長が申しましたように、日本人が北海道に入植する場合に一人当り平均二十万円かかるといたしますと、外国に、しかも不便なところに行くのだからその倍かかるか三倍かかるか、あるいは案外そんなにかからないでも済むのか、そういったことが初めての経験でございますので、ほんとうに大まかなところも出しかねるというのが実情なのでございます。現地へ参りますともう少しわかって参ると思うのでございますが、その点は事実そういう状態でございまして、従って大蔵省とされましても予算をお作りになる際に、ほんとうに雲をつかむようなものでお困りになっておられるという点は、私どもも了解できるわけであります。
  54. 高岡大輔

    高岡委員 今の下田条約局長のおっしゃったことはよくわかります。それは順序としてなるほどそうでございますけれども、私が言いますことは、かりに二千人としましょうか、そうして今おっしゃいましたような北海道で二十万円で、二倍かかるか三倍かかるか見当がつかないが、かりに二倍半としても五十万かかる。そうしますと十億の金がかかります。十億の金ということはよほど腹をきめませんと、なかなか容易な数字ではありません。従ってそういう十億もかかるということは、あるいは十億か九億だかわかりませんけれども相当金額がかかるのだとすれば、大体その場合には手術費から出すのかどこから出すか、いわゆる大まかな腹ができていなくちゃならない。そこを私が聞いているのでありまして、一人どれくらいかかるかというようなこまかい具体的な問題は、これからの交渉の結果によってはっきりするのではないかと思いますから、そういうことを私はお尋ねしておるわけではございません。ただ大蔵省当局にお聞きすることは、なまやさしい金ではないから今からよほど腹をきめてかからないといけない問題だ。その相当金額の何億という金は、一体大蔵省としてはどこから出すのだということを聞いているのですから、この辺をもっと御検討願いたい。
  55. 前尾繁三郎

    前尾委員長 ちょっと田中君の要求で、厚生省引揚援護局の引揚課長がせっかく見えていますから田中君続けて下さい。   〔「だめだ、だめだ、話が違うじゃないか、十一時半に大臣が来るというのに十二時半になっても来ないじゃないか」と呼びその他発言する者あり〕
  56. 田中織之進

    田中(織)委員 本日の委員会出席する予定の大蔵大臣外務大臣がまだお見えにならぬようでありますが、私の質問中にお見えにならぬようなことがあれば、そういうことは結局委員長の方で期待せられておる本案に対する質疑がいたずらにおくれるばかりなのです。そういう意味政府側としては委員会の審査に積極的に協力してもらわなければ、いつまでたっても案件は上りませんから、その点あらかじめ警告しておきます。  そこで私はこのカンボディアとの友好条約、特に三十一年度にカンボディアに二千名の移民を新たに送り出そうとしておるこの友好条約に関連をいたしまして、実はこのカンボディアを含めたいわゆるる旧仏領インドシナ——カンボディア、ヴェトナム、ラオス、この三国に現在なお多数の日本人が残留しておるという事実をわれわれは伺っておるのであります。そこで厚生省の関係官の出席を特に願っておるのでありますが、現在このカンボディア、ラオス、ヴェトナムの旧仏印に残留しておる日本人は何名おり、その人は現在どういう状況にあるかということについて、引き揚げ担当の厚生省としてどういうような御調査をなされておるか、この点をまず承わりたいと思います。
  57. 瀬戸新太郎

    ○瀬戸説明員 旧仏印のこの三地域には、今新しいのがちょっと間に合いませんので少し古い資料でございますが、三十年七月一日現在で五百九十四名の未帰還者がございます。このうち二十二名が未復員者ということになっておりまして、そのほかの差し引きました五百七十二名は部隊がこちらに帰還いたします際、御当人の希望等によりまして残留した方々が大部分でありまして、この方々は現地復員ということで処理されておるわけであります。それでこの方々の詳細な調査につきましては、通信あるいは時折帰って参ります復員者の方々等から状況を承わって調査を進めておる状況でございます。
  58. 田中織之進

    田中(織)委員 その五百九十四名の仏印三国の内訳はどういうことでありますか。
  59. 瀬戸新太郎

    ○瀬戸説明員 実は新しい数字を今千葉の未帰還調査部の方でやっておりますので、それに電話をして問い合せておったのですが、地区ごとの数字は今間に合いませんが、大半はヴェトナムになっておるというふうに考えます。
  60. 田中織之進

    田中(織)委員 そういうずさんな調査では私はいけないと思う。私の方にある資料によりますと、少くともカンボジアになお二百数十名、南ヴェトナムに百四十名、北ヴェトナムの方には、これは数字はまだはっきりつかめないが、少くとも三百各以上の日本人がおる、こういうことでございます。これは昨年でありましたか、ヴェトナム関係から七十六名が一たん中共地区へ引き揚げまして、中共地区からの引揚者と一緒になって日本へ帰られた事実があると思うのでありますが、この関係人たち等について、現地に残留しておる、これはヴェトナムもありますが、状況等については、厚生省として向うにおる残留邦人の数並びに現在どういう状況にあるかということについてお調べになったことがあるかどうか。なおただいまの御答弁によりますと、七月一日現在の五百九十四名のうち二十二名を除いた五百七十二名は、部隊が地域を引き揚げるときに、いわゆる現地召集解除になって、現地復員をしたような状況にあるということまで調査されておるということになれば、現地で復員をした人たちは、現在どういう状況にあるか、お調べになっておることと思いますので、その状況をできるだけ詳細御答弁を願いたい。
  61. 瀬戸新太郎

    ○瀬戸説明員 連絡が間に合いませんのでまことに恐縮でございますが、これは実は未帰還調査部の方で調査しておりまして、その方では今お話のような事柄については十分調査いたしておると思うのでありますが、未帰還調査部へ連絡いたしまして、あとから詳細を申し上げることにいたします。
  62. 田中織之進

    田中(織)委員 これは当面二千名の移民を送り出そうというのはカンボジアでありますが、私の調べたところによりましても、カンボジアに約二百五、六十人なお日本人がおる。こういう人たち日本への引き揚げを希望しているということが、ヴェトナム関係の引揚者その他を通じて、私らの方へそういう連絡が参っておるのであります。向うにおる日本人が引き揚げを希望しておる。またその留守家族が、今引揚課長の御説明のように、厚生省のつかんでおる五百九十四名のうちから二十二名を除いた五百七十二名は、現地召集解除者だということで、いわゆる未帰還者の留守家族に対する援護も実は受けられていないところに、これは引き揚げ問題の未解決の問題として非常に大きな問題があると私は思うのです。そういう関係から見て、未帰還調査部の方でなければ詳細な数字がわからぬということでございますから、私はこれ以上の質問はいずれ次の機会に譲りますが、外務大臣もお聞き下さったと思いますけれども、このカンボジアとの友好条約で二千人から新しい移民を送り出そうとするカンボジアに、私らの調査では——厚生省の政府側の調査はまだカンボジアに何人日本人が残留しておるかわからぬのでありますけれども、私らの調査では少くとも二百五、六十名というものが残留しておって、しかもこれは内地への帰還を希望しておる。そういうところに果して二千人の大竜の移民をわれわれが送り出せるかどうかというところが、現地の事情を私らも存じないだけに非常に不安に考えるわけです。そういう意味でこの点については、向うに残留しておる邦人の数並びに状況がどういうことになっているかということを、この友好条約の締結のために、この前移住局長向うへ行ってこられたようでありますが、第二次、第三次とさらに移民の細目調査のための調査団が参るということになれば、その機会に私はできるだけの調査をしていただかなければならないと思いますので、その点を一つ強くこの際要望しておきたいと思います。  それからなお引揚課長もお見えになりましたので伺いますが、この二十二名は未帰還者ということで、その留守家族は当然未帰還者の留守家族援護法が適用されていると思いますが、あとの厚生省がつかんでおられる五百七十二名は、現地で召集解除になったのだという根拠が一体どこにあるのか。私のところへ、実はヴェトナム関係から引き揚げて参った方たちでありますけれども、三月の七日に参りまして、援護局の方へは一月五日付で資料を出した。それは一口に申しますと、現地で召集解除になったのだ、こういうことなのです。これは山口県の岩国市大字錦見一四九八の明石晃、一般邦人としての身分決定に対する異議、ここで私のところで持っているだけでも三通きております。いわゆる現地で召集解除になったのだということで、中共を通じて日本へ帰ってきたけれども、引揚者としての何らの——国が一般の、たとえばソビエト、中国、満州朝鮮、樺太、今の引揚援護法の適用されている地域の人たちと同じように赤紙で召集されて現地に参りまして、部隊が引き揚げるときに連絡がつかなくて、そのまま向うにとどまらざるを得なくなって、現在なお内地への帰還を希望している、こういう人たちの留守家族については、国として何らの援護を与えない。私はこれは全く片手落ちなことだと思う。五百七十二名については、現地の部隊が引き揚げるときに現地で召集解除ということになったのだという先ほどの御答弁がありましたが、それは一体どういう根拠に基いてそういう認定をされたのか。私察するに、この明石品君だとかあるいは南忠男君だとかいう諸君が、援護局へ、そういう現地召集解除されたという取扱いは事実に違いないという形で、これは私は異議の申請をしているのだと思う。こういう人たちについては、カンボジアもラオスもヴェトナムもそうでありますが、なお今ビルマへ遺骨の調査団が行っておりますけれども、一昨々年私がビルマへ参りましたときにも、ビルマの奥地にはなお日本の旧軍人が相当おるのではないかと思いましたが、ビルマからの未帰還者の留守家族も私は相当全国にあると思う。それからこれはついに本年の一月自殺をしてしまったのでありますが、フィリピンにおきましても、日本の准人で敗戦の事実を知らずになお山の中へひそんでいるというような人たちがいるわけなのです。これは小野田種次郎といって、お父さんは和歌山県の県会議員をしておりました。召集されて、終戦当時には少尉くらいの階級であったわけでありますが、ついに出てきたのでありますが、フィリピン軍に捕虜としての扱いを受けることはということで、十年後に一旦フィリピン軍につかまるまで生き延びていて、実は自殺をしたという悲劇を生んでいるのであります。なお時折の新聞には、こういうふうに奥地にひそんでおって帰ってくるのは、ぼつりぼつりではありますけれども、私はあると思う。ところが何らか虫の知らせというのかそういうことで、むすこは生きているということで、家族は現在やはりなお子供の生きておることを信じて留守を守っておるのでありますが、そういう人たちには先ほど申しました中国、それから満州、樺太、朝鮮、ソビエト、これらを除いた地域には引揚げ援護の、いわゆる留守家族に対する援護法が適用されないでおるということは、私は一つの法の欠陥だと思う。その意味で、たまたまカンボジアの問題に関連して私はお伺いするのでありますが、特別委員会もあるわけでありますから、いずれあらためて特別委員会にも、私は委員を交代してもらって出て参りますけれども、こういうことが現実にあるにもかかわらず、一片の、軍からの連絡かどうか知りませんが、現地で召集解除になったのだからということで、厚生省が、それぞれ引き揚げて来た人たちから異議の申し立てが出ておるのをそのままにしておるということはいけないことだと思う。この点については今後どういうように取扱いをされるのであるか。田辺援護局長が外国へ行っておるようでありますし、引揚課長では責任の立場にないというならば、私の質問の趣旨を伝えていただいて、厚生大臣から責任のある御答弁をいただきたいと思うのです。引揚者全般も非常に気の毒な立場にありますけれども、こういう残留者や、また戦後十年、十一年に帰ってくる人たちの立場を考えれば、まことに同情すべきものがあると思いますので、この際引揚課長としてこれらの法の欠陥その他についてどういうようにお考えになっておるか、御答弁をわずらわしたいと思います。
  63. 瀬戸新太郎

    ○瀬戸説明員 この未帰還者留守家族等援護法が制定されます際の現地からの復員あるいは情報等に基きまして、南方諸地域は大体これらの方は御当人の意思でお残りになったというように考えられまして、法律の適用の範囲から除外されておるのであります。それでただいまお示しのように実は七十一名帰って参りました際も、私どもはその状況を承わっておるわけであります。それで個々の事例を拝聴いたしますと、ソ連あるいは中共地域で抑留されておった者と全く違わないような状態にあるものがあるように承わるのであります。これらの者につきましてはお示しの通りソ連あるいは中共地域におります者と何らその境遇は違わないのでありますから、これはやはり不均衡ということになりますし、何らかの措置を講じなければいけないということで、それらの地域におきますところの実態を十分把握いたしまして救済措置を講じたいと考えまして、今調査を進めておる状況でございます。
  64. 岡田春夫

    ○岡田委員 大臣に伺いますが、きょうは与党も野党もそろってめずらしく外務省の応援演説をやっているのですよ。それなのに大臣は十一時半という約束が一時間半もおくれて来られるということは非常にわれわれ残念だと思う。それだけにきょうは大蔵省からだいぶあなたの方がなめられているのですから、鳩山総理の御曹子だからといってそこにいる主計官に遠慮をしないで、外務省の権威のためにもはっきり答えてもらわなければ、われわれ応援演説をやったって張り合いがない。だからはっきり答えてもらいたいと思うのです。  今まで問題になっておった点は、カンボディア友好条約の第五条にあるいわゆる移民の問題です。移民の問題について今までの経過を簡単に申し上げますが、ことしの予算の中では移民関係の予算が幾らかふえているわけです。ふえてはいるのだが、その内容を調べると、中南米の関係が、去年の分を合せて七千名、そのうちで去年の分は千五百名です。これを合せて七千名ある。それからカンボジア関係は二千名あるわけです。その分の予算が組まれている。ところが大臣、この点が重要なのだが、施設費並びに事業費については中南米の関係の予算は組まれているけれどもカンボジア関係については調査費だけが約四百七十万円とちょっこりついているわけです。そうすると、もし友好条約を進める場合において実際に二千名出すとするならば、施設費が全然出ていないとするなら、これは日本の立場として出すわけにいかない。この予算を一体どこから出すのだという点をさっきから鳩山主計官に聞いているわけです。ところが主計官のさっきからの話を聞いていると、三十年度の千五百名分の中でこれが余ればそっちへ回したいとかなんとかというあまりはっきりした返事が出てこないわけです。私はこの友好条約を結んだ限りにおいては、昔のようないわゆる難民を送り出すとか、棄民のような格好でやってしまうというような政策なら絶対反対しなければならない。そこで、それに相応した予算措置を当然講じなければならぬと思う。そこで、これは予備費で出すか、新しい追加予算で出すか知らないけれども、ともかく外務大臣は副総理大臣の立場にもあるわけでありますから、この際はっきり予備費なら予備費から出すという、そういう施設費をどうしても出すのだということの言明をいただいておかなければ、この友好条約をわれわれとしても審議するわけにいかぬ。というのは、あの友好条約の精神からいっても、何か移民を難民のようにして棄ててしまうのだ、こういうようなことでやるとするならば、友好条約との関係からいっても、はなはだしくその精神に沿わないことになるわけですから、この点はどうしてもはっきりしていただかなければならないと思って、さっきから与党の高岡さん初めわれわれみんなで聞いておるわけです。そういう経過があるのですから、そのおつもりでまず話をお聞き願いたいと思いますが、第一点として御昼聞いたしますもう一つ大きな問題は、もう一回調査団を出すのだから、調査団を出してみなければ予算措置を講ずるか、講じないかわからないのだ、こういうようなことも言っておるわけです。しかし私はもしこういうことをしたならば、相手国であるカンボジアに対して非常に失礼なことになると思う。ということは、少くともこの友好条約に基いて、ことしは移民をいたしますという方針をきめたあとで、具体的に何人出すとか、いつごろ出すとか、こういうことの調査に行くならわかるのですけれども移民をするのだかしないのだかわからないけれども、もう一度調査に行くのだ、こういうようなやり方だとするならば、カンボジアの方では日本という国はずいぶん失礼な国だと思うでしょう。だから今度調査をやる前に、少くとも外務省の方針としては、年内にカンボジアに対して移民をするという態度をはっきりきめて、閣内においても政府としての態度をきめてから、調査団を出すべきであると私は考えるのですが、この点は外務大臣いかがお考えになっておりますか。もう一回調査をやってからやるのか、やらないのかきめるというのですか、どうなのですか。ことしやるという外務省の方針なのですか。この点をまず伺っておきたいと思います。
  65. 重光葵

    重光国務大臣 私今まで参議院の予算委員会におりました。応援演説を聞くことができませんではなはだ残念でした。ところが今予算の問題でお話がございましたが、私はこの条約を調印するに当りましては、この条約の趣旨を十分に日本は履行する意思のあることを確認をいたしまして、もちろん閣議の決定を経ましてこれを調印いたしたわけでございます。そこで第五条にはこうあります。「各締約国は、」というのはカンボジア日本でありますが「自国の領域へ移住することを希望する他方の締約国の国民に対し、その移住が両国の共通の利益をもたらすと認めたときは、できる限りの便宜を供与することに努力するものとする。」、こうあります。これが今のお話の焦点になるところだと思います。私はこれをこの通りに履行しよう、こう考えて調印をいたしたのでございます。また向うもそういう履行の意思を持っておると思っております。これを履行するためにどういうふうな予算措置が必要であるかということにつきましては、今いろいろお話がございましたが、調査団等をやって、向うもいろいろ詳しい意見を持っておりますから、それを十分に現地について突きとめた上で、私はそういう必要な処置を日本とし便宜を供与することに努力する、これは受け入れのことを主として書いてありますから、日本もそれは同じ線に沿って努力して差しつかえないのだと思います。それだから調査団などをもって——現地の事情は事実上困難な点がずいぶんございます。だからそういう問題を十分調査して、どういう工合に実際的にこれを解決していくかということを考案しなければならない。そういうことを今後進めていって——私は時日は相当かかると思いますが、その上でもしはっきりした計画ができたときには、政府はそれを遂行するようにやらなければならぬ、こう考えておるのであります。
  66. 岡田春夫

    ○岡田委員 大臣、率直に言いますと、それはおかしいのですよ。旅費はカンボジアの分二千名分とってある。ことしの予算に二千名分とってあるということは、これは年度内にやらなくてはならないのですよ。やるという予定は立てているわけです。その二千名の旅費、一人当り三万円ずつの金があるわけです。ところが三万円だけ持って、ただ行くわけにはいかない。カンボジアの場合、たとえば農機具を持っていくとか、向うに行って生活に困らないような経費、こういうものの予算的な措置がないわけです。だからわれわれはおかしいと言っているわけなのです。二千名分の予算を取ってあるなら、できれば何とか年度内にやりたいというのが政府方針だろうと思う。とすればそれに必要な予算をどこから出すのか、予備費から出すのか追加予算でやるのか、そういう方針が出てこなければ、実際に行くのだか行かないのだかわからないというところに二千名分の予算も要らないわけですよ。だから少くとも今の方針としては、向うへ二千名移民をするという基本方針政府として立っているということが第一。立っているならば、金額が三億円になるか一億円になるか、これは調査してみなければわからぬでしょう。わからないだろうが、額の幾らは別としても、その移民人たちのいろいろな施設費は組まなければならない、こういうことだけは事実でしょう。だからそういう点について、予備費から出すなら出すとおっしゃい。金額が幾らであるかわかりませんよ。五千万円であるか、これは調査してみなければわからない。そこで私の伺いたいのは、外務省としてはことし二千名の旅費を組んであるのですから出します。それについては、それに関連する施設費を予備費の方について出すように話合いがしてあるということを、先ほど鳩山主計官も言っているから、この予備費の方から出すということを言ってもらわなければ、この条約が実際に遂行できないことになる、こう言っているわけなのです。ですからもう一度こういう点について、はっきりした答弁を願いたいと思う。
  67. 重光葵

    重光国務大臣 私ははっきりとこの条約は遂行しなければならぬ、遂行する決心を持っておる、しかしその条約を遂行する予備的の行動として、たとえばさしあたり二千名をどうするとかなんかという考案があるかもしれません。そういうことはよく説明をしましょう。
  68. 高岡大輔

    高岡委員 これはあまりこまかいことで、大臣御存じないことだと思うのですけれども、今岡田委員がおっしゃいましたように金の面では、せっかくカンボジア友好条約を結んでも実行ができないような金額しかここに出てこないわけです。しかもカンボジア国には、大臣おいでになったことはありませんでしょうからわかりませんでしょうが、想像からして下さいましても、内地人が北海道へ移住するにしても二十万円はかかる、だからカンボジアへ行った場合には二倍か三倍はかかるだろうというのが、あなたの所管の移住局の大体の御意向のようであります。かりに二倍半として五十万円かかるとしますと、二千人でございますから計算すればすぐわかる。十億という金が出て参ります。こうなりますとこれはわずかな金でございませんから、相当予算措置を講じなくちゃいかぬ。あらかじめそれだけのものを講じないと第二陣、第三陣と今後の施策をなさるにしても、腹がまえができておりませんと、さっき岡田委員のおっしゃったように、行ってみてどうもそう金がかかるのだったらやめてしまうというようなことであれば交渉が変になる。だからこまかい点はなるほど今後の調査により、あるいは折衝によってきまりましょうからわかりませんが、詳しい点はまだはっきりしませんと言うけれども、大づもり何億とかかる仕事でありますから、一応腹がまえはきめなくちゃいけない。すなわち予備費からその金は出すようになっておるとか出す方針だとかいう、方針だけでも一つお聞かせを願いたい。  それからなお私が考えますことは、かりに向うに参りまして米を作る、もしも日本人二千人が行きまして全部米作りをするようなことになりますと、これは大へんなことなのでありまして、どっちかといえば、これは私一個人考えでありますけれども、あそこは御承知のように米綿の原産地であります。米綿というものはカンボジアの綿を移植したのが現在の米綿でありますから、綿の昔からの産地であります。だからあそこで綿を栽培するとか、あるいは最近御承知のように、東パキスタンに今までジュートがあったのでありますけれども、その工場はインド連邦のカルカッタにある、この両方がうまくいっていないものですから、東パキスタンすなわちイラワジ川の流域に今まで栽培しておりましたジュートというものは、カルカッタの方へちっとも来ないといったようなことで、今の世界的なジュートというものは片ちんばの状態です。そこへ持ってきてカンボジアで消費しますジュート製品、すなわちガンニーバッグの消費量というものも非常に大きいのであります。また地床からいいましても、ブラマブトラ川流域と今のメコン川の流域というものは非常に似通っておりますので、あるいはジュートを栽培したらここはうまくいくかもしれない。そうしますと綿を作ったりジュートを作ったりしますと、それの製品加工のいわゆる中小企業が日本から出かけていけるといったようないろいろな面に関連していきますので、これはよほど慎重にといいましょうか、深く掘り下げた計画カンボジア移民考えなければいけないということになってきますと同時に、もう一つこれにつけ加えなければいけないことは、今、日本が善隣友好でありますとか、いや文化協定を結んでどうこうといいますけれども、最も現実的でしかも近代的とでもいいましょうか、友好関係を増進しておるのは医療施設を日本向うに出すことだ、こう私は常に考えるのであります。ただ単に日本移民向うに行ってその日本人の医療を見るというだけではなくして、向うの国の人の病気もなおしてやる、それが一番近代的といいましょうか、現実に即した善隣友好の大きな行き方であろうと私は思うのであります。そうしますと、そういうことも東南アジア全体に将来移民をどんどんお願いしている最初の一つの型でございますので、カンボジアに対しては万全の策を講じて進まなくちゃいけない、そういうことをあれやこれやと考えてみますと、なまやさしい金でございませんから、詳しい細目協定は将来としても、大づもりの大まかな予算措置というものは、今のうちに大臣の腹の中になくちゃいけないのじゃないか。その予算措置をしますのに、今岡田委員の言われたように、相当これは大きな金額だから予備費だけからは出せないぞ、そうするとことしの八−十月ごろには臨時国会を開いて補正予算を組まなくちゃいけないのだというところまで考えていかないと、せっかくカンボジア友好条約を結んでも、思う通りにはいかないのではないか。ここで失敗しますと、将来東南アジアの諸国、たとえて申しますと、ボルネオの森林開発日本が出かけるというようなことまで考えていきます場合、このたびはほんとうに気をつけていかないとだめだ、こういう意味で予算措置のことが問題になると思います。
  69. 重光葵

    重光国務大臣 今の御意見は全然そういかなくちゃならないと考えておりまして、これはよほど慎重かつまた光を考えていかなければならない。ここで失敗したらほんとうに取り返しがつきません。また妙な誤解を外国に与えたならば、日本の液面アジアの発展そのものにも挫折を来たします。でありますから、これはほんとうを言えば、今のお話の通りに十分慎重にやって、実は銭金にはかえられぬ大きな問題がここに含まれております。のみならず条約そのものの遂行ということになりますれば、条約を一たんこしらえた以上は、その遂行はあくまでも日本としてやらなければならぬと思います。ただ条約遂行の何で、予算措置までいくのにはいろいろ調査をし、また見積りをしたり詳細な手続が要ると思います。これらをして、いよいよ予算措置が条約遂行のために要るのだというときになったらやらなければならない。それはどういう方法でやり得るかということは、大蔵当局もよほど研究をしていただかなければならぬのです。それはやらなければならぬ。それをやらなければ条約の遂行はできぬということになるのだから、やらなければならぬのは当然のことだと思います。私ははっきり申し上げて差しつかえないと思います。しかしそれならば今日この条約の御審議に際して、こういうふうな詳細の何を何億要ると考えて、それはこうやるのだということは、まだ私は早い時期でありますから十分調査をして、その時期がきたときには今の御趣旨によって十分に動きたいと考えております。
  70. 岡田春夫

    ○岡田委員 大臣の気持はだいぶわかってきましたが、これは条約を遂行する、しかもいつするかということが問題になっているわけですね。いつするかということは、ことしの予算の中には二千人分を組んでいるということははっきりしているわけです。しかもそれはおそらくカンボジアの国でも知っていると思います。従ってことしのうちに何とか二千名なら二千名の者をやりたいという外務省の方針があるのでなければならないと思う。そういうように私は今のお話を承わって間違いないのであろうと確認したいと思うのだが、年内にどうしても二千人やりたいのだ、そういうつもりで準備をしているというように、ただいまの大臣の御答弁を解釈していいのではないかと思う。その点が一点。  第二点は、大臣がおられなかったときに、私は二、三度聞いているのですが、御承知カンボジアという国は、今度平和五原則を中華人民共和国と結び、またSEATOに対しても加盟しないような態度をはっきりしてきた。こういう態度になってくると、日本の国の政策カンボジアの国の政策とは、だいぶ考え方において食い違いが出ているわけです。やはり今度の移民二千名を出すに当っては、向うの国に行くのですから、向うの国のそのような政策に当てはまったような移民の仕方をしなければいかぬではないか。こういう点も私は非常に心配をしているわけです。何か新しい満州をあそこに作るのだというような考え方で行かれるのではいかぬと思う。東南アジアにおける連帯関係をこれによって作っていくのだという考え方でやっていただきたいということを、再三大臣のおられなかったときに、局長その他の人々に対して質問をしておったわけですが、こういう点についても、カンボジアにことし出すのだというこの大方針に基いて、大臣は出すについての内容といいますか、その政策をどういうふうに考えておられるか。特に相手国との関係においてどういうふうに考えておられるか。これが第二点。  第三点は、新聞の伝えるところによると、向うでは一万人よこせと言っている。ところが今のところ日本の国の予算措置としては二千名しか組んでいない。このままの状態ならば二千名も行けないかもしれないような状態ではないかということを心配している。そこで私の申し上げたいのは、先ほどから高岡さんも再三言われているように、向うの国の実情をあらゆる方法でできるだけ紹介して、移民に行く人たちも、向うの国は暑いので困るではないかといってひるまぬように、向うはこうなんだと正しい実情を知らしてやらなければならぬということだ。それにはいろいろな方法があると思います。そういう点についても、金を使ってどんどん積極的に日本国内における啓蒙宣伝をやって移民をしていかなければ、二千名の確保も困難ではないかと私は考える。こういう点についてもどのような努力をされるか。きょうはさっき申し上げたように、私はほんとうに大臣の応援演説をやっているのですよ。(笑声)その応援演説に対して期待にこたえるような答弁をしなければ、今度は応援演説をやめてまた責めますぜ。(笑声)
  71. 重光葵

    重光国務大臣 あまりおどかさないで願います。(笑声)お話の通り二千名すらも容易なことではないと思いますけれども向う移民を歓迎するというときに、それは困難だからこちらは引っ込むということは、政策としてよくないと思います。その好意を受けて、できるだけの努力をしようという意味でもってこの条約をこしらえるということは、日本の現状として当然いいことだと考えてやったことであります。そこで二千人をどうしてやるかということをお問ひになるのは、お問ひになることが正しいと思います。そういう点まで一々お答えすることは、私の能力上できないことをはなはだ遺憾といたしますけれども、これはでき得るだけ先方と話し合いをして、先方の希望する点にもできるだけ日本はミートしてやらなければならぬ問題と思います。それでさしあたりそれだけの数について予算に出してきたことと思いますが、これは向うと話し合いをした上で十分具体案ができましたときには、この条約の趣旨によって、これができるように十分一つやらなければならぬ問題だということをさらに申し上げたいと思います。(岡田委員「年内にやるわけでしょう」と呼ぶ)もちろんやりたいけれども、それをやり得るかどうかということは今申し上げるわけにはいかない。(岡田委員「こまかい問題は別だ、大方針だけ聞いている」と呼ぶ)大方針はできるだけ早くやりたいということでありますけれども、それは今いつということは申し上げられない。今の高岡委員の御趣旨によっても容易なものではない。しかしそれだからといって逃げ腰になっているのではないかといえば、そんなことはありません。また満州移民などというふうには全然考えておりません。  そこで平和五原則の問題が出ましたが、なるほど向うのシアヌーク総理が中共に行かれたときのことが新聞に出ました。それはどういう事情であるか、どういう真意であるかということは、普通の情報は持っておりますけれども、十分には突きとめておりません、平和五原則というのも表面の文字通りならばこれはけっこうなことばかりです。これはそのときずいぶん議論を尽しました。しかしこれが共産主義の宣伝的の言葉であるとするならば、むろん考えなければなりません。日本といたしましてはそんなことであまり政治的のことに深く介入する必要は、私は移民の問題に関する限りはないように考えます。これはそういう政治の問題とは離れて、そして純粋な移民の問題、もしくは経済的の移民の問題として取り扱って差しつかえないのじゃないか、こう思うのであります。国内の啓蒙宣伝は先ほど言った通りであります。
  72. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 私は南米移民をやっておったのですが、境地に行ってみると、向うの契約労働なんというものは奴隷のようにひどい状態です。それが今日のように発展をしたのですが、あれだけの人が向うに残った一つの原因は、一ぺん行ってしまうと距離の関係で遠くてなかなか帰れない。旅費がかかったりいろいろな理由で帰れなくなってしまったから、やむを得ずあそこに残ったという人が相当おる。ところがカンボジアは近いのですからすぐ帰れるのです。従ってこれを送るに当っては、やはりよほどよく調査をしてやられないと、二千人の予算を取ったからこれを無理をしてでも送るというようなやり方をしますと、私は必ず失敗するだろうと思う。従って本来からいうと、本年度は調査費を取られる、そして徹底的に調査をして計画を立てられる。その費用を取るべきであったのに、今年直ちに二千人送るというような印象を与えるということは、少し早まっておりはしないか、こういう感じを持っておる。  それから第二の点は、東南アジアの方面に送った移民は、フィリピンのダバオと北ボルネオのタワオでありますが、ダバオの移民が非常に成功したというのは、あそこに太田興業の経営によるマニラ麻という特産物があった。その特産物があったがために、沖縄方面の人を中心にして二万数千の人があそこに定住するに至ったことは御承知通りなのです。従って熱帯方面の移民で何も特産物がない場合は必ず失敗するのです。そこで私はこの調査に当っては、今高岡君が言われたジュートならジュートというものを作れば、インドのジュートに負けないようなもの、その他特産物としては何が適当であるかということを調査されることが、私は一番の眼目であろうと思っております。特産物のないところは、ああいった暑い所では絶対に移民は成り立ちません。この点についてどういうふうにお考えになっておるか。  第三の点は高岡君もすでに指摘されたように医者であります。ビルマにおきましては戦前に相当医者が発展しておりまして、かつビルマ人の間にも非常に好評を博しております。従って来雨アジア方面はボルネオにいたしましてもどこにいたしましても日本の医者を非常に歓迎いたします。というのは白人の医者では暑くて住み切れない。従って白人の医者は成り立ちません。土地の医者もまだ非常に幼稚な段階ですから、ちょうど日本の医者が一番適当であり歓迎せられる状態なのであります。従ってどうしても医療施設を持っていく、医者を持っていくということが私は最大の問題であろうと思う。ところがカンボジアはどうなっておるか知りませんが、たとえば蘭印の方は医者になるためには向うの言葉で試験を受ける、あるいは向うの大学を出て資格がないとなかなかなれないのであります。ビルマの方はそういうことに関係なくできたから医者が発展したのであります。カンボジアは医者の規則がどういうふうになっておるか知りませんが、こういう点についてもやはりカンボジア政府と、日本の医者が行って開業し得るように交渉せられることが必要である。これにつきまして私は先日総務会において科学技術庁設置法案というものができますときに提議いたしまして、台湾にあった熱帯医学研究所というものがつぶれたのだからそういうものを中心にして一つ熱帯医学研究所を作ってもらいたい、そうしてその医学研究所で熱帯衛生を研究すると同時に、お医者さんをそこで一応南方の状態、実情について訓練して、熱帯医学研究所の訓練を経たお医者さんを向うに送るというようにしたらいいだろうということを申しましたところが、総務会の非常な共鳴を得ました。そして今度特別委員会において遠からずまた会合をやるそうであります。これは矢口局長にも案を作っていただくように私は頼んでおいたのでありますが、ドイツにおいても東部アフリカに研究所を持っておった。ハンブルグに相当大きな熱帯医学研究所がありました。私は日本においても熱帯医学研究所、衛生研究所を作るのがぜひ必要だろうと思います。どうかこの点について一つ御共鳴を得て、ぜひ来年度の予算にはそういうものができ上るように、これは厚生省と共管でよろしいですから御支援を願いたいと思うのですが、この点についてどういうお考えを持っておられますか伺いたい。
  73. 重光葵

    重光国務大臣 御趣旨は私は全然同感です。日本のやり方としてはさような用意周到な、かつまた深い調査を持ってすべてやっていかなければならぬ。これは大体私は従来ともそう考えておるのでございまして、ドイツの委任統治地を日本が第一次戦争のときに占領しましたが、ああいうところに大したものを、研究船などを出して非常な深い調査研究をやっておったことが、ドイツの大きな経済上の発展に寄与いたしましたことは、隠れもない事実でございます。私はそういうやり方がいいのじゃないかと思う。ただ非常に困るのは、日本は財政上その他に余裕のない窮屈な国でありますから、思う通りにすべてがいかぬということがあるのでございますが、御趣旨は私も同感で、及ばずながら努力をいたします。
  74. 高岡大輔

    高岡委員 関連質問が次から次に出ましたので、最後にお伺いしたいのですが、私はこのたびのカンボジア移民はさっきから申しますように非常に重大な意義を持っておりますので、この移民はどういう人に向うに行ってもらうかという点から考えまして、私は最も適当な人は、農林高等学校卒業者が最も適任者だということを考えております。といいますことは、向うでは男の優秀な独身者がほしいというのでありますから、今まで日本農業をしておるといっても、今の義務教育だけしか出てないという者でありますと、これらの人は、とかく向う国民生活水準にまで下る危険性があります。従いまして、多少字間といいましょうか、その道に対するプライドを持った農林高等学校卒業生のような地位といいましょうか、考え方を持ったものを重点にして移住を考えるということが、私は最も適当でないかという考え方をするのでありますが、そういう点はあるいは大胆よりも局長さんの方がよろしいかとも思いますけれども政府当局のお考えをお陶きしたいと思います。  同時に、先はどから言いましたことの結論とでもいいましょうか、カンボジアに対していろいろ折衝をなさるのと同じ比重をもって、一つ国内の大蔵省にも十分折衝していただきたい。この問題がスムーズに進展して参りますように特にお願い申し上げておきたいと思います。  つけ加えて申し上げますことは、今大橋委員もおっしゃいましたように、医療施設というものをこの際相当大きなウエイトをもってやっていただきたいという一事であります。
  75. 矢口麓藏

    ○矢口政府委員 簡単にお答え申し上げます。第一の高等教育を受けた者を送り出すことは、具体的にどういう者を送り出しますか、募集選考の方法をまだきめてありませんが、その趣旨にかんがみましてまことに御同感でありますので、ぜひそういった線に従いまして措置いたしたいと思います。  次に大蔵省との折衝の件につきましては、本件がなるかならぬかは主としてこの点にかかりますので、事務当局におきましても、大臣の指示を受けまして極力努力いたします。  医療施設につきましては、先ほど申し上げましたように全く同感でありまして、これをまず先行させたいというかたい決意を持っております。
  76. 前尾繁三郎

    前尾委員長 次会は公報をもってお知らせいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時四十四分散会