○
田中(織)
委員 時間が参ったようでありますから、これで私の質疑を打ち切りますが、
大臣に重ねてお伺いをいたしたいのは、
大臣御病気等で
出席ができなかった
委員会で、千葉
欧米局長なり下田
条約局長あるいは中川
アジア局長との間に、われわれはこの問題で相当質疑応答を重ねております。そこで特にわれわれ国会で決議をした立場、これは国民全体の要望であるという建前で、私が今申しましたように四月の二十日実験が開始に至りますまでの間、
日本政府として
アメリカ側に要請するのは、この実験は実施されてもやむを得ないのだ、こういう建前ではなくて、たび重なる被害を受けた国民として、ぜひともこれを中止してもらいたいのだという立場に立って、米
政府に対し、また
世界の
世論に対し働きかけをしなければならない、こういうことを申し上げたことに対して千葉
欧米局長は、そのために有効適切な処置を
考えて、
考えがまとまれば実施するという点を言明になっておるのです。それからもうだいぶんたちますので、こういうような外電等の
関係から見ましても、四月二十日から実施される問題について、補償の問題であるとか、あるいは危険区域の縮小であるとかいうような問題ではなくて、実験そのものを何とか中止してもらう方法はないかということについて、重ねて努力しなければならぬと私は思うのであります。そのことについて、
大臣とじて、省内の
意見をどういうように取りまとめられておるかという点が一点。
その
一つの方法といたしまして、この間の国会の決議は
国連にも申し入れをされておるようであります。しかしもう
一つの問題としては、ヴァチカンのローマ法王が昨年のクリスマスにおけるメッセージにおいても、やはり原水爆の実験、使用禁止を宗教の立場から表明されておるわけです。ヴァチカン大使もおることでありますから、当面
世界が注目しておるこの四月二十日からの大規模な長期の水爆実験の中止について、ローマ法王を動かすことも
一つの方法だと思うのでありますが、そういう御準備があるかどうか。それから、それは
アメリカ側も予期しておるようでありますが、ちょうど来たる十八日には
アメリカの国務長官のダレス氏が
日本へ参る予定のようであります。そのダレス氏の来日の際に、
外務大臣は、
日本国民のこの切なる要望、これを何とか中止してもらうことについて直接申し入れをするお
考えであるかどうか。
それから第三点の問題は、これを中止してもらうということから一歩も退いてはならない。従って少くとも今補償の問題に触れることは、この実験が実施されることを認めるという前提の上に立っての議論だということになりますから――本日は時間もありませんから補償の問題には私は触れません。しかしながら、かりに今度の実験を実行した場合に起る被害に対しても、
アメリカ側の意向として表明されているところによると、見舞金というような形で、何ら
義務的な補償という形は
考えてないのだということであります。私は、これは補償の問題ではなくて、かりにこの間からの議論からいたしますと、結局われわれはこの実験を中止してもらいたいという最大の
理由は、いわゆる実定
国際法規の
解釈の上から申しますならば、これは
国際法で認めておる公海自由の原則を犯すものである。従って公海の自由を犯した場合には、当然そこには
義務的な補償の問題も生じてくるわけなのです。われわれの実験を中止してもらいたいということは、人道的な立場からのものももちろんございますけれ
ども、現行の
国際法規の上でもこの点が公海自由の原則を長期にわたって犯すことになるという
一つの有力なる論拠があるのであります。そういう建前から補償の問題も起った場合に補償をどうしてくれるかという問題でなくて、これは公海自由を妨げるものであるから中止してもらいたいという論拠で、ダレス氏の来朝を機会に申し入れなり、あるいは米
政府との実験が開始せられる瞬間に至りますまで努力を続けるべきだ、私はかように
考えるのでありますが、この二点に対する
大臣の御
見解を伺っておきたいと思います。