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1956-03-10 第24回国会 衆議院 外務委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年三月十日(土曜日)     午後二時二分開議  出席委員    委員長 前尾繁三郎君    理事 北澤 直吉君 理事 須磨彌吉郎君    理事 福永 一臣君 理事 山本 利壽君    理事 穗積 七郎君 理事 松本 七郎君       相川 勝六君    池田 清志君       江崎 真澄君    大橋 忠一君       加藤 精三君    菊池 義郎君       高村 坂彦君    櫻内 義雄君       高岡 大輔君    並木 芳雄君       福田 篤泰君    松澤 雄藏君       山本 勝市君    渡邊 良夫君       田中織之進君    戸叶 里子君       福田 昌子君    森島 守人君       和田 博雄君    岡田 春夫君  出席国務大臣         外 務 大 臣 重光  葵君  出席政府委員         外務政務次官  森下 國雄君         外務事務官         (大臣官房長) 島津 久大君         外務省参事官  法眼 晋作君         外務事務官         (アジア局長) 中川  融君         外務事務官         (欧米局長)  千葉  皓君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君         外務事務官         (国際協力局         長)      河崎 一郎君         外務事務官         (情報文化局         長)      田中 三男君         外務事務官         (移住局長)  矢口 麓藏君  委員外出席者         専  門  員 佐藤 敏人君     ――――――――――――― 三月九日  委員赤松勇辞任につき、その補欠として坂本  泰良君が議長の指名で委員に選任された。 同月十日  委員芦田均君、池田正之輔君植原悦二郎君、  園田直君、高岡大輔君、並木芳雄君及び松田竹  千代辞任につき、その補欠として相川勝六君、  池田清志君、山本勝市君、松澤雄藏君、加藤精  三君、高村坂彦君及び櫻内義雄君が議長の指命  で委員に選任された。 同日  委員相川勝六君、池田清志君、加藤精三君、高  村坂彦君櫻内義雄君、松澤雄藏君及び山本勝  市君辞任につき、その補欠として芦田均君、池  田正之輔君高岡大輔君、並木芳雄君、松田竹  千代君、園田直君及び植原悦二郎君が議長の指  命で委員に選任された。     ――――――――――――― 三月八日  李ライン問題の解決促進に関する請願(安平鹿  一君紹介)(第一二四二号)  同(井谷正吉紹介)(第一二四三号) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭に関する件  外務公務員法の一部を改正する法律案内閣提  出第三五号)  国際情勢等に関する件     ―――――――――――――
  2. 前尾繁三郎

    前尾委員長 これより会議を開きます。  田中織之進君より緊急質問の申し出がありますので、この際これを許します。田中織之進君。
  3. 田中織之進

    田中(織)委員 せっかく外務大臣がこの委員会出席をいたしましたので、私はまず、去る八日参議院予算委員会におきまして重光外務大臣緑風会中山稲敷委員質問に対して答えました、大東亜戦争が果して侵略戦争であったかどうかという重大な問題に対する外相の考え方を示唆するような答弁が行われたことについて、緊急に質問をいたしたいと思うのであります。  外務大臣は、過ぐる太平洋戦争の際には、戦争指導者の一人として戦争責任を追及せられて、いわゆる東京裁判において戦争犯罪人として有罪であるとの決定をされて、あなたはそれに服罪をいたした責任者の一人でございます。それにもかかわらず、もちろんあなたは太平洋戦争について弁護する考えはないが、この戦争によって東南アジア諸国独立したことについて日本も貢献したと考えておる、こういう意味答弁をされている点は、これは私きわめて重大な意義を持っておると思うのであります。なるほど、太平洋戦争を含めた第二次世界大戦以後に、東南アジア中心といたしまして、これらの従来欧米帝国主義の支配のもとに置かれておったわれわれ、特にアジア有色民族の諸君が、それぞれ独立したことは、これは事実でございます。しかしこのことは、何ら太平洋戦争侵略性を否定するものではないと私は思うのであります。これらの民族は、民族独立の何十年にわたる長い闘争の結果、独立をかち得たのであります。その戦争責任者の一人として国際軍事裁判に服したところの重光外務大臣の、この戦争を合理化するかのごとき意味合いの答弁は――それでなくても、これらの新しく独立いたしました特に東南アジア新興国家においては、日本が再び太平洋戦争当時におけるような侵略主義をとりはしないかということを、きわめて神経過敏に考えておるのであります。また現実憲法に違反した疑いのある再軍備を強化しておるところの日本の現在の内外政治の行き方というものは、これらの諸国民に対して、多大の不安を与えておることもこれまた事実であると思う。そういう情勢のもとにおいて、この外務大臣答弁は、私きわめて重大な発言であり、多分にこれらの諸民族に対して不安の念を与えるものであると思いますので、この際参議院予算委員会における外務大臣発言を、外務大臣はどういう真意であるか、この際明確にしていただくことが、これは外務大臣のためでもあるし、日本の将来の、特に緊密なる提携をしていかなければならない東南アジアその他の新興独立国家との間の友好関係を促進する上においても、重大性を持って参ると思いますので、この際外務大臣発言関連をした太平洋戦争に対する考え方、並びに東南アジアの新しく民族国家として独立した諸国に対する考え方を明確にしていただきたいと思うのであります。
  4. 重光葵

    重光国務大臣 今の御質問は、日本の将来の国際信用のためにも、日本アジアと申しますか、民族主義に対する考え方は、曇りのない考え方を十分に他国に了解をさせる必要があるのであって、過般の私の説明は、その趣旨に沿わぬじゃないか、従ってそれを十分に明らかにすべきである、こういう大体の御趣旨であると思います。私はその趣旨を非常に尊重いたします。まことに私はその通りだと思います。ただし、私の個人の問題をも出されました。これは私あえて個人の問題についてかれこれ申すことを、実は差し控えたいと思いますが、事実として太平洋戦争と申しますか、大東亜戦争に対する関係者として、その大東亜戦争に対する責任を問われておるお前じゃないか、こういうお話がございました。私はどういうところで責任を問われておるかということは、あるいは御研究の結果だろうと思いますが、私が太平洋戦争指導に対して反対をしたということは、実は判決も認めておるのでございます。むしろ、これに関係をした私の行動について裁判所がはっきりと認めてくれておること、事態を明らかにしておることに対して、私は裁判があったことはいい、実はこう今日も思っておるのであります。私の判決については、その点とは別の問題であったということを申し上げます。これは陳弁をする意味ではございません。十分事実を明らかにされることを希望するわけでございます。しかし私は大東亜戦争に対して関係を持った者として、この戦争に対して日本政府がとった政策を合理化しようとは少しも考えておりません。合理化しようとして申したことは少しもございません。ただ私はこの第二次世界戦争のために、その結果としてと言わずとも、第二次世界戦争のあった後において、またそのためにアジア各国民族主義が実現して、アジア各国がここに独立をして出てきたということは、実にうれしいことである。喜ばしいことである。日本戦争に加わったけれども、この点は日本としてせめても満足していい点ではないか、こういうことを申し上げたのです。決して私は日本政策を合理化しようとも思いませんし、また日本政策を是認したということではございません。のみならず、日本政策を私自身は是認しなかったのです。是認しないということをはっきり申し上げました。ただこれが実際侵略戦争と定義すべきものであるかどうかということについては、歴史家判断にまかしてしかるべきもので、今日われわれがその歴史上の判断を下すことは少し行き過ぎであろう。これは是認しない戦争であるけれども、それかといって、これが国際法上どういう種類の戦争に属するかということは、国際法学者もしくは歴史家にまかしていい問題であろう、こう申したのでございます。さようなわけでありますから、この問題について、私は外国誤解を生じるとは思いません。また誤解を生じた傾向もございません。のみならず、アジア民族主義の尊重ということは、私ども役人といたしましても、過去において常に唱道しておったことで、私がどういう意見を持っておったかということは、ずいぶん外国にも知られておりますので、さような誤解はなかったように考えます。しかし御趣旨に従いまして一そうその点を明らかにここに申し述べて、東南アジア、いなアジアアフリカ方面において民族主義が着々実現し得るような国際情勢になり、その実現が行われていることに対して、これは非常に有意義なことであり、国際上喜ぶべきことである。この点については日本政府としてもそういう民族主義に沿うた政策を打ち立ててそうしてこれを進めているのである。こういうことをはっきり申し上げ得ると思います。さようにして万が一にも誤解があったならば、それを解きたいと考えます。以上でございます。
  5. 田中織之進

    田中(織)委員 第二次大戦以後においてアジアの諸地域に、あるいは戦争中、あるいはその戦争以前から民族独立闘争を続けてきた諸民族が新たに独立国家を形成いたしたということは、これはまぎれもない事実でございます。その意味において、ただいまの外務大臣答弁によって、このことと太平洋戦争との直接の関連性というようなものについては、あえてこの戦争を合理化するという立場においてこの民族独立国家の誕生というものを考えないという点は、これは了解のできる点でございますが、ただいま大臣がやはりこの大東亜戦争関係者の一人として裁判を受けたということに関連をいたしまして、太平洋戦争がいかなる戦争であったかということについては、後世の歴史家判断に待つのだという点を述べられたのでありますが、しかし私はこの点は太平洋戦争のいわゆる侵略性というものをやはり率直に認めなければ、たとえば現在すでに解決をいたしている問題でありますけれどもビルマに対する賠償の問題にいたしましても、あるいはこれは次の一般質問において詳しく伺いたいと思いますが、フィリピンに対する賠償の問題にいたしましても(「損害だ」と呼ぶ者あり)これらの問題はやはり太平洋戦争侵略性の結果これらの国に与えた、そこらでお話のありました損害を補償するという建前に立って現に交渉が進められている。一部ビルマとの賠償問題はすでに協定が成立して、賠償支払い実施段階に入っているのであります。インドネシアとの賠償問題も今後解決しなければならぬ問題として出てくるのであります。私はその限りにおいては、現在の日本外務大臣としては、この過ぐる太平洋戦争に対する考え方というものがやはり明確なるものがなければ、この賠償交渉に対する基本的な態度というものはきまらないと思う。あなたはたまたま関係者の一人であったという点もございましょう。私はそういう個人的な関係をこの際追及しようという考えは毛頭ございません。その意味で、当面外務大臣として解決をしなければならない、これらの第二次大戦以後に独立をした新しい民族国家との間にまだ賠償問題が未解決であるだけに、その交渉の基本になる問題であると思いますので、太平洋戦争というものは、これらの新しく独立した国家に対して少くとも大きな迷惑をかけているということは、これはまごうかたなき事実だと思う。その点について太平洋戦争侵略戦争であったか、あるいは自衛戦争であったかというような議論を、私はここで展開しようという考えではございませんが、少くともこれは非常な侵略性をもって、これらの国々に迷惑をかけたことは、まごうかたなき事実だと思うのです。その点について外務大臣はどういうようにお考えになっておるかという点を明確にしていただきたいと思います。
  6. 重光葵

    重光国務大臣 この戦争日本が加わったということは、ほんとうに事実であることは言うを待ちません。そこでその行動一体、今おっしゃる通りに、侵略戦争であったかどうかというようなことの理屈を言うのでないというお話でございました。それで私も理屈は申しません。しかしながら今日日本政府の代表として、賠償まで交渉をしなければならぬ、またしておる現状において、当然のこととしてその根底において、この戦争に至らしめた日本政策を是認するわけには参りません。私ははっきりとこれは悪かった、こう思うのであります。そこでまたその戦争の結果によって、その戦争がいかなる性質のものであったかは別として、これらの国々に非常に迷惑をかけたということも事実であります。その事実をもととして、日本としてでき得るだけの賠償をする、こういう腹をきめておるわけでございます。それは、私は日本人として十分に反省もし、またそのつぐないをしなければならぬ、こう考えておるからこの交渉を進めておるわけでございます。
  7. 穗積七郎

    穗積委員 外務大臣関連してちょっとお尋ねいたしたい。問題は、あなたは今大東亜戦争――私は満州事変以後の継続した戦争全体を含んで話をしたいと思いますが、大東亜戦争が果していかなる戦争であったかということに対しては、これは後世の歴史家決定するところであって、私自身には国際法上どういう性格戦争であったか判断がつかない。こういうことを――私はあなたのあげ足をとって、そうして言わぬでもいいことを言うのではございません。と申しますのは、なぜこの問題を明確にする必要があるかといえば、学者解釈学者解釈歴史家解釈歴史家解釈として重要であることは言うまでもありませんが、それよりもさらに重要なことは、世界政治家現実に起きた戦争そのものを、どういう性格戦争であるかということをどういうふうに規定するかということが、これが最も重要な問題でございます。御承知の通り国連理事会は、侵略戦争が行われましたときには、それに対して具体的な措置をとる義務を持っております。しかしながら、そこに一点抜け穴がございます。それは何かというなら、自衛戦争であるならばこの限りでないということになっておる。このことが実は非常に重要な問題であって、自衛権すなわち自衛戦争と、そうでない戦争すなわちいわば侵略性を持った戦争との区別が、一体学者決定やあるいは後世の歴史家決定によってその問題がどう解釈されても、それによる問題が実害を伴うか伴わないかということについては、これは時の当事者である各国政治家が、この戦争をどう解釈するかということによって、平和並びに人民の幸福に対して甚大な影響を持つわけでございます。ですからこの点について私は、くどいようでございますが、外務大臣考えを承わっておきたい。  それからさらに一点。先ほど田中委員からも話がありましたが、日本は現に明らかに憲法が制定されました当時の解釈なり精神をじゅうりんいたしまして、やみの軍隊を公然と持っておる。日本では自衛隊といっておりますが、外国はすべてこれを軍隊といっております。そういうことをやり、それも一体基本的な、法律的な根拠はどこにあるかといえば、自衛権に嗣いでおられる。しかもその軍隊行動について、どこまでが一体自衛行為であり、どこから先が戦争行為になるかということに対しては、先般来あなたやあるいはさらに内閣責任者であります鳩山さんは、敵の基地すら攻撃をするというような発言をするようになっております。その根拠がどこにあるかといえば、すべて自衛権自衛行為ということにその根拠を求めておられるわけであります。従って自衛権並び自衛行為侵略戦争との区別をどこでつけるかということは、これはわが国にとっても大事なことであるとともに、あるいはわが国に対して侵略性を持っておる国に対しても大事であるし、わが国の後世の政治家侵略性をもって臨まんとするかもしれない東南アジアの諸民族に対しても、重要な意味を持っておりますから、従ってその自衛性ということについての、自衛権並び自衛行為ということに対しての見解を、政治家自身責任のある見解として、私どもは後世の歴史家学者判断を待つまでもなく、明確にすべき必要を痛感する次第でございます。そういう趣旨で、あなたが今までもいろいろな、日本自衛隊の増強またはその行動について予測される点に対する質問に対してお答えになった答弁の中にも、われわれから見るならば、自衛または自衛行為限界を割った解釈を平気でなさっておられる。憲法に対してもしかりでございます。ましてそういう危険を感ずるときでございますから、今まで行われました具体的事実であった満州事変以来の、昭和二十年までの戦争性格というものをどう理解するかということは、今後の日本自衛隊並びにその軍隊行動を規定することにとって、非常に重要であると思いますから、私はただいまの答弁では満足するわけに参りません。従ってあなたがどういうわけで一体東亜戦争国際法上の性格をあいまいにされるのか、その政治的意図を非常に疑いをもって見ざるを得ないのですから、この際あなたのためにも、一つ明確に答弁をしていただきたいと思うのでございます。
  8. 重光葵

    重光国務大臣 私は少しも不明確な態度をとろうとは考えません。この点ははっきり申し上げておきます。私は大東亜戦争を是認いたしません。政策として誤っておる、こう考えます。しかし今これが一体国際法上の侵略戦争であったかないかということは、私は今日それを私の口から申し上げるのは行き過ぎだと考えます。これらの行動をなした責任は私は是認しないです。そういうような政策をとるということは、将来やっちゃならぬと考えます。(穗積委員「現にあなたは解釈がだんだん変ってきているじゃないですか、自衛行為についても」と呼ぶ)だから、その次の、どういう行為自衛というかということは、他の機会に申した通り国際法上きまっておらないということを申しております。私もずいぶん検討してみました。自衛権行使ということ、国際自衛ということは、いろいろ説はございます。説はございますが、これがどういうはっきりした説かということはきまっていない。ここに非常に困難があります。ここに困難があります。そうでありますから私は、これを運用する政策を非常に注意しなければいかぬと思います。私は、これまたたびたび申し上げた通りに、さような自衛権行使というものは、最小限度にこれを局限しなければいかぬ、こう考えております。この自衛権行使は、アメリカもずいぶん説明をいたしております。私はアメリカ自衛権行使説明などは、あまりに大きいので実は驚いております。私はさようなことは政策としてとるべきことじゃない、これはあくまで最小限度に局限しなければならぬ、こういう考えを持っております。さようなわけでありますから、日本の過去の行動についても、私はこれを是認しないわけでございます。しかしそれがたとえば東京裁判においても、いろいろ、多数意見もあり、少数意見もある。そういう問題について私が今日こうであるということをはっきり申し上げるのは、ちょっと行き過ぎであろう。しかし私としてはこれを是認するわけにはいかぬということ、こういうことをはっきり申し上げることは私にもできます。   〔穗積委員あと一問」と呼び、その他発言する者多し〕
  9. 前尾繁三郎

    前尾委員長 穗積君、関連ですから一問だけでいいでしょう。   〔発言する者多し〕
  10. 前尾繁三郎

    前尾委員長 穗積君、発言を許していませんよ。   〔「理事会を開け」と呼びその他発言する者多し〕
  11. 前尾繁三郎

    前尾委員長 それではあと一間だけ、簡単に願います。
  12. 穗積七郎

    穗積委員 今の大臣のお言葉は問題を持ち回って私の質問に対するお答えになっておりません。大東亜戦争政策については反対であったとおっしゃいますが、大東亜戦争当時の関係者で、これに対して反対意見を持っておった者の中に二つ根拠があったと思う。一つはその侵略性についてであります。一つはその戦争勝ち目がないから、不利だからやらない、勝ち目のある戦争ならやってもよろしい。ところがアメリカを相手にしてやったのでは勝ち目がない、とてもかなわない、だから時期を延ばそう、やめたらどうかというものである。この二つ意見があった。そこが重大なのです。そういう意味でその点をはっきりしてもらいたいと思うのです。一体あなたはどういう理由によって、大東亜戦争の継続に賛成しがたい考えをお持ちになったのか、そのいずれであったかをお尋ねしたい。  次にもう一点は自衛権限界についてであります。大東亜戦争に対する解釈はしばらくおくとして、国連憲章の中で、侵略戦争が行われましたときには安全保障理事国がそれに対して具体的な措置をとる義務を持っておりますが、そのときには侵略性を持っておるものに対して措置をとるといって、自衛行為の場合においては、それに対して理事国は具体的な措置をとらなくても済むという抜け穴になっている。そこで国際法上の解釈で、この自衛行為とそうでないものとの限界を明確にしておかなければ、これは死文になるのであります。一方的に勝手に解釈をして、ここまでもここまでもということになり、敵の首府まで攻撃しても自衛行為だというように発展してくる、あるいは敵国のみならず、関係国、友好国まで爆撃し侵略するというように、自衛権解釈が勝手に広がっていけば、国連憲章安保理事国具体的措置に対する解釈は全く死文になるわけでございます。従いましてわれわれとしては、すべての関係国政治家が、自衛行為に対する限界をはっきりしておかなければならないと思うので、大東亜戦争に対する解釈とは別に、自衛行為限界はどこにあるのだ、どこから先が自衛行為でないか、その客観的な、理論的な根拠を聞きたい。あなたは今日日本の平和と人民の幸福を担当する重要な地位にある外務大臣でありますから、外務大臣責任地位において、どういう解釈をしておられるかを私は伺いたいのであります。二点お答えいただきたい。
  13. 重光葵

    重光国務大臣 私が日本戦争加入反対いたしました理由は、この政策が第一に国家の利益に反しておると判断したからでございます。その理由は抽象的なものもございますし、具体的な理由もございます。すべての問題を総合して日本としてそういう政策に突き進むべきでない、こう判断したからでございます。  第二の問題、自衛権行使侵略戦争でなくて、自衛権行使ならば国際連合は認めるのだ、そこで自衛権を勝手に広げていったらどこまでいくかしらぬ、これはお話通りで、これが最も国際間で非常に大きな問題になっておる。そこでこれが問題であるので、それでは自衛権であるかないかということをどこできめるかというと、それは今日きめる条文はない、ないけれども、これは国際連合中心とする世界世論と申しますか、世界各国意見によってきまります。そこで自衛権のような形をしてずるずるいった場合でも、これは自衛権でない、こういうような世界世論になっていき、国際連合国家の大部分がそういう工合に判断する場合において、私ははっきり国際連合としてチェックできる、こう思います。またそれが国際連合趣旨であると私は解釈いたしております。しかし自衛権ということが、たとえばその自衛権行使する国家解釈によって大体きめられるものであるというふうに今なっておりますけれども一体自衛権行使をしようという国はどこに目安を置かなければならぬかというと、自衛の意義をきわめて私は厳格に解釈をして行動をしなければ、世界世論に抗することができないことである、こういう意見でありまして、私もそう考えておる次第でございます。   〔「関連質問をやらせろ」「あとでやれ」と呼びその他発言する者多し〕
  14. 前尾繁三郎

    前尾委員長 それでは岡田春夫君。関連質問ですから、そのつもりで簡単にして下さい。
  15. 岡田春夫

    ○岡田委員 委員長並びに理事の諸君が簡単にというお話ですから、いろいろ伺いたいのですけれども省略いたします。ただ先ほどの大臣答弁では私は納得できないから伺いたいわけです。と申しますのは、先ほど田中織之進君が言われたような東南アジア諸国に対する態度としても、この基本の問題は大東亜戦争侵略戦争であるかないか、この点が一番重要な問題だと思う。ところが大臣答弁によると、大東亜戦争は悪かったのであるけれども侵略性については後世の歴史家あるいは国際法学者に聞かなければならないと言っている。私はこれは誤まりだと思う。なぜ誤まりかというと、あなた御自身が降伏文書に調印された、そして明らかにポツダム宣言を忠実に履行するためにこの降伏文書に調印をされた。それでこのポツダム宣言の中に何と書いてあるか、はつきり書いてあるじゃないか。その六に「日本国国民ヲ欺瞞シ之ヲシテ世界征服ノ挙ニ出ヅルノ過誤ヲ犯サシメタル者ノ権力及勢力ハ永久ニ除去セラレザルベカラズ」と書いてある。ここに侵略戦争の意義が明確に規定されている。しかもそればかりではない。あなた自身が極東裁判を受けた。そこでこの極東国際軍事裁判所条例をごらんなさい。これをごらんになればはっきり書いてあるじゃありませんか。第五条の(イ)に、「平和に対する罪即ち、宣戦を布告せる又は布告せざる侵略戦争、」と書いてあるじゃないか。侵略戦争とここに明文化しているじゃありませんか。不服だったならば、なぜそのときに反対をしなかったか。これはポツダム宣言に基いて裁判所条例ができたのじゃないか。このポツダム宣言並びに降伏文書にあなた自身が調印されているじゃないか。これに調印して、これを認めておきながら、この戦争において侵略性はないとかあるとかいうことをここで言うことは、明らかに欺瞞だと私は思う。こういう点からいって、あなた自身が明らかに降伏文書に調印された責任者として、侵略戦争であると断定した降伏文書に対して調印をして、今になってそれは知らないというようなことは、その当時において著しくそれと違うのであるとするならば、あなた自身が卑怯者であったか、あるいはそうでないとするならば、今まで侵略戦争の事実をごまかしていて、今になってから侵略戦争でありませんでしたかどうかわかりませんといって、ごまかすつもりか、どちらかであると言わざるを得ない。だから私は了解できないと言っている。この点をもう一度はっきり御答弁願っておきたいと思います。
  16. 重光葵

    重光国務大臣 私は、今のように私から言うと誤解されることをきわめて遺憾に存じます。私は決してごまかそうともなんとも思っておりません。この戦争を遺憾なものとして、日本のやったことを少しも是認はいたしません。  それから今ポツダム宣言云々の問題がございました。ポツダム宣言にそういう字句があることも承知いたしております。しかしながら、これがまた法理論になれば、ポツダム宣言をいかに解するかということも、もう少し掘り下げて議論をしなければならないけれども、大局論として、戦争に勝った方面の連合国側がおっしゃるようなそういう意見を持っておったということは、これは争うことはできません。これは私も認めなければなりません。それでありますから、戦後の経営に非常に苦心をして、日本の真意を了解せしめることに努力しなければならぬと思っておるわけであります。しかし東京裁判それ自身とか東京裁判所条例のことを言われましたが、東京裁判それ自身反対しておる判事もあるのでございますから、それらのことは、私はそういう専門家にまかしていいのではないか、賠償等を払う場合には、この戦争を是認しないという立場から十分に良心的にできる、こう思っておるのでございます。
  17. 田中織之進

    田中(織)委員 私最初に参議院における外務大臣発言関連して緊急質問をした立場において最後に大臣に一言お伺いいたしたい。  それは、先ほど来の外務大臣答弁によりますと、太平洋戦争は、最後には参加国は相当たくさんございました。しかし問題は、外務大臣もこの太平洋戦争日本が参加したことが間違いであった、こういう解釈をとっておられるようでありますけれども、われわれの理解するところ、またただいま岡田委員が指摘しましたこの戦争の終結に当って日本が認めたところの事実からいたしますならば、これはやはり日本がしかけた戦争であるというところにまで、やはり大臣はいま一歩つき進めた考え方を持っていただかなければならぬ。これは今後のいろいろの外交交渉にも関連を持ってくる問題でありますから、その点は、日本がだれかほかの国が始めた戦争に参加したというのではなくて、ビルマに対しましても、フィリピンに対しましても、インドネシアに対しましても、日本が少くとも進攻作戦をとったということは、これは自衛のためであったどうかは別問題といたしましても事実です。俗に今言われておるように勝てば官軍負ければ賊軍として取り扱われたのでは仕方がないのじゃないか、こういう考え方は、私は間違いだと思うのです。   〔「ソ連はどうした」と呼びその他発言する者多し〕
  18. 前尾繁三郎

    前尾委員長 静粛に願います。
  19. 田中織之進

    田中(織)委員 もちろんこの侵略性について今これを認めるという問題は、賠償交渉等が未解決である場合に、それをはっきり打ち出すことがどうかということについて特に現在の外務大臣であるだけに配慮しておる事情は私も理解できます。しかしそれはそれとして、やはりこの戦争の本質に対して日本はやはり責任のある立場にあるのですから、これは明確にして、賠償交渉に対しては日本の現在の経済力あるいは今後日本の経済的に発展していかなければならぬ過程、そういうものについて率直に話し合えばこれは解決する問題だ。従って俗に言われるような勝てば官軍負ければ賊軍扱いにされたのだ、今になれば、あれは一方的な押しつけだった、こういう態度は、少くとも日本民族日本国家というものが永続しておる限りにおいて、戦争終結後わずか十年足らすでそういう勝手なことを日本の国会で論議するということは、私はやはり許されないことだと思う。この点はやはり貫いていくべきだ。しかもそういう正しい反省の上に立った新生日本としての行き方を世界の各国家民族に理解せしめる方向をとっていかなければならぬ。しかもこの点について大臣にお伺いをいたしたいのは、かりにポツダム宣言は一方的な押しつけである、そしてそういうものに基いてできたとするならば、サンフランシスコ講和条約というものについても、これは押しつけであったのだということで正当な理由があるならば――沖縄の問題にいたしましても、日ソ交渉で問題になっておる千島の問題にいたしましても、樺太の問題にいたしましてもまだ未解決である。そういう意味においてこの条約の改訂の交渉も今後日本が正しい理由がつけられるならば、私は提起しなければならぬ問題だと思う。そこでこれは間違いは間違いであったということを正しく認めるという仁場に立って今後あなたは、サンフランシスコ条約あるいはそれに付随してできておる安保条約の問題にいたしましても、当然その立場に立ってこそ初めて条約改訂のきっかけというものが生まれるのだと私はかように考えておる。その意味から見て、日本民族国家というものは永久性を持っておるのでありますから――それはソ連に対しても同じことです。当面われわれはアメリカとの関係において、日本が特別な外交関係にあるから、この関係を申し上げておるだけの問題でありますが、これは当然そういう立場に立って進めなければならないと私は考えておるのであります。この点に対する外務大臣の御所見を伺って、私の質問を終ります。
  20. 重光葵

    重光国務大臣 その点については、私は最初に申し上げた通り考え方を持っております。今のるるお話の点は、御趣旨において私もきわめて御同感でございます。勝てば官軍、負ければ賊という考えではいけない。終始一貫した考えを持っていなければいかぬ。私はその通りだと思う。そこで日本としても過去の戦争を是認するということはよくないと思うのです。それについてすべての施策を進めていくということは当然である。そこで私はその態度を持って進んでおるわけでございます。     ―――――――――――――
  21. 前尾繁三郎

    前尾委員長 次に外務公務員法の一部を改正する法律案、及び本案に対する北澤直吉君外四名提出の修正案を議題といたします。  本案につきましてはすでに質疑を終了いたしておりますので、これより原案及び修正案を一括して討論に付します。穗積七郎君。
  22. 穗積七郎

    穗積委員 私は社会党を代表いたしまして、ただいま議題となりました外務公務員法の一部を改正する法律案、並びに自民党からお出しになった修正案について賛成の意見を明らかにいたしたいと思います。  ただここで私は申し上げておきたいことは、今度のこの法律の要旨は、特派大使を明記して、特派大使を外国に派遣するときは、従来の役人以外の者でも公務員として取り扱っていくということで、ややそこに合理性がございます。ところがわれわれがここで心配して政府当局に特に強く要望いたしておきたいことは、この制度によって乱用が行われることについてでございます。特に国会議員についての乱用を最も私どもはおそれるものでございまて、たとえば先般参議院の堀木鎌三君が南米へ特派大使として、これの考え方で実は派遣をされたわけでございます。こういうことがややともすれば党内の人事政策、あるいはまた与党内の選挙対策等に乱用されることがこれから出て参りますと、これはかえって一面この制度を明確化したことが利点である反面、非常なマイナスが起きることでございます。特にわれわれは実はどういうわけでここで討論をして、そのことを明らかにしておかなければならないかということを申し上げましたのは、本法案が政府提案としてこの委員会にかかりました後に、自民党は実は国会法三十九条によって国会議員を特派大使として派遣する場合には、両院の一致した決議を必要とするという規定を無視して、これを打ち消すような修正案、すなわち休会中には実は両院議員の賛成の議決を得ることができないのでそれをはずしていくという理由によって、そして院議によらずして議員の中から特派大使を指名し派遣することができるような修正案を用意されたので、われわれの当初から心配いたしましたことが、必ずしも杞憂ではないということを強く感じた次第でございます。そのことを実は正式な速記録を残しました委員会の審議ではございませんでしたが、われわれは理事会を通じまして与党の諸君に痛烈なる反省を求めた次第でございます。そういたしましたら与党の諸君の中にも良識を持った人がお見えになると見えて、ここに正式に提案されました修正案は、両議院一致の議決を得なければならないということを明記される修正案に変えてこられた。これは保守党の中でもいささか党利党略のみならず、やはり野党の言うことも理の通ったことは、耳を傾けなければならないという良識の人がかすかにおったことに、われわれは敬意を表する次第でございますが、そういういきさつもありましたので、政府におかれましてはこれが乱用にならないように、または与党の多数に、さっきからの空気を見ておるとそうだが、多数の威力に屈して、そうして議員の党利党略、党内の人事政策のためにこの制度が乱用されないことを厳に忠告いたしまして、私の賛成の趣旨とする次第でございます。
  23. 前尾繁三郎

    前尾委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採決に入るのでありますが、採決の順序について申し上げますと、まず北澤直吉君外四名より提出されました本案に陶する修正案について採決し、次いで原案に対する採決を行うことといたします。  それではまず修正案について採決いたします。北澤直吉君外四名提出の修正案を可決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  24. 前尾繁三郎

    前尾委員長 御異議なしと認めます。よって本修正案は可決せられました。  次にただいまの修正部分を除く原案について採決いたします。修正部分を除く原案を可決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  25. 前尾繁三郎

    前尾委員長 御異議なしと認めます。よって修正部分を除く原案は可決せられました。  これにて本案は修正議決せられました。  なお本案に関する報告書の作成につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  26. 前尾繁三郎

    前尾委員長 御異議がなければさように決定いたします。     ―――――――――――――
  27. 前尾繁三郎

    前尾委員長 次に国際情勢等に関する件について質疑を許します。その前に外務大臣より発言を求められておりますのでこれを許します。重光外務大臣
  28. 重光葵

    重光国務大臣 原水爆実験禁止の国会の御決議はさっそく関係国政府に申し入れたのでございますが、それに対する英国政府の回答が参りましたからここで御報告を申し上げます。読み上げます。   英国政府は、日本国国会の両決議を慎重に検討した。英国政府は、原子兵器を既に製作し且つ実験しており、また一九五五年の国防白書において、あらゆる角度から熟慮した結果、核兵器の発達および生産を計るのが英国政府義務であると考える旨を述べている。英国政府は、英国およびその同盟国が核兵器を所有することが侵略と大規模の戦争の発生を防止するため主要な要素であると考えるものである。   実験は、これら兵器の発達過程における不可欠の部分に外ならない。   英国総理大臣は、二月十三日下院において、英、米両国政府とも原水爆の現在程度の実験が人間に与える放射能の量は、天然の原因による放射能の量に比較して、とるに足らぬ程少いものであると確信している旨述べている。しかも核兵器の実験が今日安全に実施しうるようになったことは、英国政府の満足とするところである。今後の実験に際しては、責任ある英当局において人命財産に対するいかなる被害をも回遊するため可能なあらゆる手段を講ずること勿論である。これは訳文でありますが、こういう返事が参りました。このことを御報告申し上げます。(「アメリカのやつもついでに発表して下さい」と呼ぶ者あり)アメリカのやつはまだ参っておりません。(「日本政府に来ておると言ったよ」と呼ぶ者あり)来ましたらまた……。
  29. 松本七郎

    ○松本(七)委員 いずれ質問は一般情勢で同僚委員からまた詳しく出ると思いますけれども、ちょっと事務的なことで伺っておきたいのは、政府が米英ソに伝えられたときに、はっきり回答を求められておらないようにアメリカ側では言っておるのですが、ただ通知だけされたのですか、それとも回答を明確に求めてやられたのですか。
  30. 重光葵

    重光国務大臣 今お話のありましたことはおそらく米国から来ました新聞情報によってのお話だと思います。あれはUPでしたか何でしたかそういうふうにあります。そこですぐ調べてみました。前大使がみずからこれを申し入れて、そして国会の決議を全文そのまま向うに渡して、日本政府としてもかねがねこれと同じ考えを持っておるのであるから、この要望を達してもらいたいということを熱心に申し入れたのでございます。そして回答を促したのでございます。さようなわけでありますから、実際はただ国会の決議を郵便で送ったというようなことではないのでありまして、ずいぶん丁重にこれを取り扱って向うに申し入れたことは事実である。一部の新聞の情報はどういうものかその点を明らかにしていないことが残念でありますが、そういうことであります。いずれ回答が来るだろうと思いますから、そのときは申し上げることにいたします。
  31. 福田昌子

    福田(昌)委員 関連してちょっとお尋ねしたいのです。英国政府の回答文をきょう御配付いただきましたが、日本の国会の両決議を英国側に伝えたというお話でございますが、そのお伝えいただきました決議のほかに外務省はどういう文面を添えて英国及びアメリカ、ソ連にこの禁止決議に対する回答を求められたのか、その文面を知らせていただきたいと思うのであります。
  32. 重光葵

    重光国務大臣 これは大使がその決議を持って、そしてこういう決議が国会にあった、そしてこの決議は、日本政府も当然同じ考えを持っておるのであるから、この決議の趣旨をあくまで実現したいのだ、それに対してイギリス政府もそれに応ずる返事をできるだけしてもらいたい、こういうことを申し込んだのでございます。
  33. 福田昌子

    福田(昌)委員 あとでいろいろと詳しくお事ねさせていただきたいと思いますが、一点だけ少しよくわかりませんので重ねてお尋ねいたします。ただいま大使がお持ちになりましたというのは、これは決議文だけをお持ちになられまして、それ以外のことは口頭でお話しになられた、こういうことでございましょうか。それはアメリカやソ連の方はどういうことであったのでしょうか。
  34. 重光葵

    重光国務大臣 これはさような問題を取り扱う外交上の大体常規であります。さようにするのが一番丁重でございますから、さようにいたしたのでございます。
  35. 森島守人

    ○森島委員 ただいま御答弁がございましたが、このような重要な問題につきましては、文書を用意するとともに、文書に間逆しまして出先大使が日本政府並びに国会の決議を十分に説明するのが私は慣例だと思います。その点はどういうふうにお取り計らいになりましたか。
  36. 重光葵

    重光国務大臣 さらに確かめましたところが、そういうことを文書にもしたためてさらに口頭をもってよく説明しておるようでございます。
  37. 森島守人

    ○森島委員 文書でお出しになりましたならば、これはもうパラフレーズでけっこうですから、これも一括して英国の回答と同様に資料として御提出にならんことを、委員長を通じて私御要求いたします。
  38. 前尾繁三郎

    前尾委員長 ではそのように申し伝えます。
  39. 重光葵

    重光国務大臣 ちょっと御答弁いたします。それは委員長を通じての申し出でございますから、委員長お話によって私の方もできるだけ御希望に沿うことにいたします。もっとも外交文書でありますから、相手方の何も要しますので、それらの手続をしなければならぬことを御了承願います。
  40. 森島守人

    ○森島委員 このイギリスの回答は幾日付で参りましたか。日付は書いてないのですか。
  41. 法眼晋作

    ○法眼政府委員 イギリスの回答は三月七日でございます。
  42. 森島守人

    ○森島委員 接受されたのは昨日でございますか。
  43. 法眼晋作

    ○法眼政府委員 これは先方の理由で発表を十日まで待ってもらいたいということがございましたので、それに話し合いの問題でございますから、本日まで発表を待ったわけであります。
  44. 前尾繁三郎

    前尾委員長 それでは質疑に移りますが、質疑の通告が多数ありますから各委員十五分程度におまとめ願います。田中織之進君。
  45. 田中織之進

    田中(織)委員 私、四月二十日から開始せられる、ただいま問題になっておるアメリカの原水爆実験の問題に関連して伺いたいと思うのです。いろいろ伺いたい問題がありますが、持ち時間十五分ということでありますので、できるだけ重点的に伺いますから、大臣も問題の核心に触れて率直にお答えを願いたいと思うのです。  ただいま国会の決議に対する英国政府の回答文が発表せられたのでありますが、この間の取扱い上の質疑がございましたので重複を避けます。先般、三月一日だったと思いますが、四月二十日から八月の末まで四カ月間にわたって長期の実験を行うというアメリカ原子力委員会の発表があった。その直後開かれた本委員会において、二月二十一日にアメリカ側から回答があった、その回答を、原子力委員会の四月二十日から実施するという発表があるまで日本政府の方では発表にならなかったということを聞いた。この点は、当時関係の局部長には御質問を申し上げたのでありますが、われわれ国民といたしましてきわめて納得のいかない問題でございます。少くとも二月二十一日にアメリカ側から、原水爆の実験に関する日本政府からの申し入れに対して回答があったら、国会がこの問題を国民の総意を代表して、衆参若干の趣きは違いますけれども、この中止方の決議をいたしておって、アメリカ側からどういう回答があるかということを刮目して待っておるときに、十日間にわたってこれを外務省が握り込んだという点はわれわれ全く理解できない。たしか三月一日だったと思いますが、原子力委員会の発表まで、なぜこの回答を日本政府が国民に明らかにしなかったかという理由並びにこの二月二十一日の回答なるものは、先般の国会の決議で米政府に申し入れたことに対する回答なのであるか。かりにその回答でない――それはただいまの外務大臣答弁では、国会の決議に対する米側からの回答はまだないというふうにも申されたのでありますが、それであるとすれば、先般の委員会大臣も言明された、実験を行うということが伝えられたことに対する事前の予告であるとか、あるいは予防的措置だということで外務大臣が行政的な立場で申し入れたことに対する回答だと理解できるのでありますが、この際その二月二十一日の回答の内容がどういうものであるかということをも同時に発表していただきたいと思います。
  46. 重光葵

    重光国務大臣 それでは、そのことで私が取り扱ったところを御説明いたします。アメリカ側から、また原水爆の実験をやるかもしれぬということが、その日付はよく存じませんが、かなり前にございました。かなり前にございまして、また実験をやられてはたまらないという関係で、実はそういう新聞情報があるがほんとうかというと、そういうことになるかもしれぬというような向うの何がありまして、私はそういう何がほんとうにあるのだと思って、それでは困る、これは前の例もあるし、日本は原水爆の実験なんということは実はやめてもらいたいのだという意思表示をいたしたのでございます。いたしたのでございますが、その後において、アメリカの方でやはり原水爆の実験をやるのだということがいよいよ明らかになりました。明らかになりましたから、原水爆の実験をいよいよやるということになれば、これは争いになれば今とめることは非常に困難であると私は判定をしました。それはなぜ困難であるかというと、原水爆をさようなところでやることに対する禁止的な国際法に今なっていない。法律関係がそういう工合になっておるのと、また国際情勢からいうと、あちらも実験、こちらも実験というような状態になっておるから、なかなかこれはむずかしい。そうであるならば、今さようなことについてアメリカ政府と議論をやるよりも、私としては日本関係者の利害を擁護することが一番必要であると考えて、もしそういうことをやるならば、あくまで一つ予防措置をとってもらいたい、被害のないようにしてもらいたい、また万一被害があったならば、それに対する補償も考えてもらいたい、こういうことを申し出たのでございます。それに対する返事がさっき言われた返事のようでございます。  それで、その場にすぐ発表されなかったが、一体不親切じゃないか、こういう趣旨の御発言でございます。私もその点はすぐ発表することがいいと考えました。考えましたけれども、これは向うの同等でございますので、向うの都合も聞かなければなりません。こういう問題については、日本側の都合もむろんのことでございますが、向うの都合も聞かなければなりません。そこで向うとこちらと合意した日に発表いたしたのでございます。これは向うの回答でございますから、向うが発表することによって日本側もそれを発表し、周知するということに取り扱ったわけでございます。そこで発表する前に、むろん政府部内ではそういうことは機密の取扱いにおいていろいろ検討しておったことは当然のことでございます。さようなわけで、それは従来の原子爆弾の実験の、そういうような点からきた外交交渉の経過でございます。ただ、先ほどからの問題になっておる国会の決議に対する問題は別口でございます。それに対する正式の返事はまだ来ておらないことを先ほど申し上げたのでございます。
  47. 田中織之進

    田中(織)委員 こういう実験の時期の予告、できるだけ早い機会における予告、あるいは予防的な処置、あるいは万一損実が起った場合の補償という三点について、外務当局が行政的な立場でやられたことは、一応実験が行われるものだという前提に立っておる。そういうことではいけないのではないかということは、先般も同僚委員から大臣に申し上げた通りであります。私はただいまの大臣答弁を伺っておっても、これは、今まだ原水爆の実験を禁止するという国際法規がない以上、やめてもらいたいということをアメリカとの間で論争をしていても効果はないので、結局アメリカがやるならやるでいたし方がないから、万一やった場合の関係者の被害を最小限度に食いとめるための、また万一被害があった場合の補償というようなことを考えることの方が適切ではないかという考え方で、今日もなおアメリカと折衝されておるように私は受け取ったのでありますが、これは大臣、実は衆参両院の決議をよく読んでいただければ、そういう態度ではいけないと思うのです。事務当局の考え方とすれば、そういう形式的な解釈はできるかもしれません。なるほど衆議院の決議は、すみやかに国際法規が成立するように政府に努力しろ、また関係各国、米、英、ソに対してこの国会の決議を伝達しろということを書いております。しかしこれも社会党の案と自民党の案と両者を調整してまとまったものでございますので、こういう形になったわけでありますが、私の方から出したものは、やはり具体的な実験中止の処置をとらしめるように、政府が積極的に行動を起すようにやってもらいたい、ただ単なる国会の決議の伝達だけではいけないという趣旨のものであったのでありますが、これは共同提案になりました関係から、こういう決議になったことはやむを得ないことだと私は思います。しかし、同時に行われた参院議の決議は、衆議院の決議とは趣きを異にいたしまして、国際法規ができる以前においても、何とかしてこの実験を中止せしめるような処置を講ずるように、政府に努力しろという意味の決議がなされておるのであります。そういう意味から見て、二月二十一日に参りました回答は、国会の決議に対する答えでないということも明確になりましたし、それから昨日の夕刊でありますか、ワシントン特電として水爆実験に対する米官辺筋の意向が外電で報じられてきておるのには、日本の国会の禁止決議はきわめて不明確であるということも指摘されておると思うのであります。国会の決議は、なるほど特に衆議院関係の決議は、そういう意味で国会の決議したことを伝達しろということであり、受け取った方では、この決議のねらいがどこにあるかを明確に判断しかねるというような点が多少あったことも、私はやむを得ないかと思うのでありますが、少くとも参議院の決議は、事前の処置を明確にとることを要請しておるのであります。そこで、くどくどしく私は今までの経過を申し上げませんが、日本の禁止決議というものを、アメリカ側では、三月一日に発表した、四月二十日から行おうとしておる水爆実験そのものずばりを中止してもらいたいという要請だというふうには受け取っていないようなきらいがあるわけであります。  そこで一つ大臣に率直にお答えを願いたいと思うのでありますが、三月一日のアメリカ原子力委員会の、四月二十日から八月の末まで行われるという発表がありましてから、これは国会の決議の趣旨を体して当然行動すべきでありますが、あるいは外務省独自の立場からも、さきに伝達したように国会もこういうように決議をしておる状況だから、何とかこの実験を中止してもらいたいということを、重ねて米政府に対して申し入れをした事実があるかどうか、この点をお答え願いたいと思います。
  48. 重光葵

    重光国務大臣 その点はごもっともな御質問でございますが、その御質問には実は先ほど私はるるお答えをしておいたつもりでございます。さらに詳しく申し上げますならば、外交当局といたしましては、この国会の決議をむろん字句を変えるわけには参りません。この通りに向うには国会の決議があったということを申し入れざるを得ません。衆議院の決議と参議院の決議において若干の字句の相違があるということも、これはその通りでございます。その通りでございますが、これを変えるわけには外交当局としては参りませんので、この通りに申し入れたのでございます。しかしこれは国会の決議として申し入れたのであって、それでは政府考えはどうであるかというと、政府考えは、今お話趣旨でこういう原水爆の実験はしてもらいたくないのだ、やめてもらいたいのだ、そういう趣旨であるのだ、いわんや国会でこういうような決議が――この国会の決議もその趣旨であるのであって、これはつまり日本国民の考え方といっても少くも過言でないのだから、その趣旨に沿うてもらいたい、こういうふうに申したのでございます。イギリス側では先ほど返事が参りましたということを御報告を申し上げた通りであります。
  49. 前尾繁三郎

    前尾委員長 もう時間ですから……。
  50. 田中織之進

    田中(織)委員 時間が参ったようでありますから、これで私の質疑を打ち切りますが、大臣に重ねてお伺いをいたしたいのは、大臣御病気等で出席ができなかった委員会で、千葉欧米局長なり下田条約局長あるいは中川アジア局長との間に、われわれはこの問題で相当質疑応答を重ねております。そこで特にわれわれ国会で決議をした立場、これは国民全体の要望であるという建前で、私が今申しましたように四月の二十日実験が開始に至りますまでの間、日本政府としてアメリカ側に要請するのは、この実験は実施されてもやむを得ないのだ、こういう建前ではなくて、たび重なる被害を受けた国民として、ぜひともこれを中止してもらいたいのだという立場に立って、米政府に対し、また世界世論に対し働きかけをしなければならない、こういうことを申し上げたことに対して千葉欧米局長は、そのために有効適切な処置を考えて、考えがまとまれば実施するという点を言明になっておるのです。それからもうだいぶんたちますので、こういうような外電等の関係から見ましても、四月二十日から実施される問題について、補償の問題であるとか、あるいは危険区域の縮小であるとかいうような問題ではなくて、実験そのものを何とか中止してもらう方法はないかということについて、重ねて努力しなければならぬと私は思うのであります。そのことについて、大臣とじて、省内の意見をどういうように取りまとめられておるかという点が一点。  その一つの方法といたしまして、この間の国会の決議は国連にも申し入れをされておるようであります。しかしもう一つの問題としては、ヴァチカンのローマ法王が昨年のクリスマスにおけるメッセージにおいても、やはり原水爆の実験、使用禁止を宗教の立場から表明されておるわけです。ヴァチカン大使もおることでありますから、当面世界が注目しておるこの四月二十日からの大規模な長期の水爆実験の中止について、ローマ法王を動かすことも一つの方法だと思うのでありますが、そういう御準備があるかどうか。それから、それはアメリカ側も予期しておるようでありますが、ちょうど来たる十八日にはアメリカの国務長官のダレス氏が日本へ参る予定のようであります。そのダレス氏の来日の際に、外務大臣は、日本国民のこの切なる要望、これを何とか中止してもらうことについて直接申し入れをするお考えであるかどうか。  それから第三点の問題は、これを中止してもらうということから一歩も退いてはならない。従って少くとも今補償の問題に触れることは、この実験が実施されることを認めるという前提の上に立っての議論だということになりますから――本日は時間もありませんから補償の問題には私は触れません。しかしながら、かりに今度の実験を実行した場合に起る被害に対しても、アメリカ側の意向として表明されているところによると、見舞金というような形で、何ら義務的な補償という形は考えてないのだということであります。私は、これは補償の問題ではなくて、かりにこの間からの議論からいたしますと、結局われわれはこの実験を中止してもらいたいという最大の理由は、いわゆる実定国際法規の解釈の上から申しますならば、これは国際法で認めておる公海自由の原則を犯すものである。従って公海の自由を犯した場合には、当然そこには義務的な補償の問題も生じてくるわけなのです。われわれの実験を中止してもらいたいということは、人道的な立場からのものももちろんございますけれども、現行の国際法規の上でもこの点が公海自由の原則を長期にわたって犯すことになるという一つの有力なる論拠があるのであります。そういう建前から補償の問題も起った場合に補償をどうしてくれるかという問題でなくて、これは公海自由を妨げるものであるから中止してもらいたいという論拠で、ダレス氏の来朝を機会に申し入れなり、あるいは米政府との実験が開始せられる瞬間に至りますまで努力を続けるべきだ、私はかように考えるのでありますが、この二点に対する大臣の御見解を伺っておきたいと思います。
  51. 重光葵

    重光国務大臣 今原水爆の実験があった場合にどうするという事後処置についていろいろ交渉するということはしばらく別として、そういうことのないようにすべきではないかというのが大きな骨子の御質問であります。確かにその通りであります。そういうようにやらなければならぬ。しかし私が説明を申し上げた点で御了解をいただき得るだろうと思いますことは、原水爆実験の禁止ということが公海自由の原則の上から言っても、また委任統治の条約上の関係から言っても、そういう実験をしてはならぬということがはっきり確立をしておらない、そこに非常に主張の弱い点があるということを申し上げたことは御了承を得ただろうと思います。そうでありますから一体委任統治の関係から言ってみても、また公海自由の原則から言ってみても、その他人道問題等々から言ってみて、こういうことは国際法上禁じらるべきものであるという国際法の原則を打ち立てるように進めていくことが一番必要だと思います。そこでそういうことの目的を達するのにはよほど努力を要し、そうして相当長時間を要する、国際連合あたりで取り上げていろいろ議論をするということは一番必要だと考えます。国会の決議もそこで非常に役に立つのであります。これを前にかざして今やっておるわけであります。しかしこれがすぐ間に合ってこの次の四月の実験は取りやめるようにする、右から左にそうなるのだというように今考え、また見通しをつけることは私としては実際上できません。しかしながらさような主張が漸次世界的に重きをなしてきて、今いろいろなところに反響を与えておるということは事実でございますから、漸次時をもってそういう議論が正論として取り扱われるようになると思います。それはいつかということは申し上げられませんけれども国際法の立法論でありますから私は長い時間を要すると思います。ヴァチカンの問題もありましたが、もちろんこれも考慮に入れなければなりません。これと宗教上の関係も十分検討して処置しなければなりません。そしてヴァチカン方面の議論が非常に有力にこれを支持し得ることと思われるのでございます。さようなことは米国政府に申し入れておるわけでございますから、ダレス長官が来れば話の機会を見てこういうことも十分先方に要請をしてみたい、こうは思っております。これをどういうふうにやろうかということは今考えておるわけでございます。
  52. 前尾繁三郎

    前尾委員長 福田篤泰君。
  53. 福田篤泰

    福田(篤)委員 時間がありませんから具体的な問題を具体的に質問いたしますから、簡潔に具体的に御答弁いただきます。  まず第一に賠償問題でございます。きょうの午前のUP電を見ますと、マニラ・クロニクルがあさっての月曜日の日本時間十二時に鳩山書簡を同時発表するというようなことを伝えてきております。また小沢課長もきょうの夜の飛行機でマニラに行かれるということ符合いたしまして、この説がいろいろうわさとして飛んでおるわけですが、これは事実かどうか、いろいろな情勢判断からおそらく間違いではないかと思うのでありますが、この点について具体的にお答えいただきたい。
  54. 重光葵

    重光国務大臣 その間の事情は大体福田君において御存じかと思いますが、はっきり簡潔にお答えいたします。そういうマニラ電は根拠のないことでございます。根拠のないことでございますが、この賠償問題は、少しでも早く促進をして、そうして故障の入らぬように進めていきたいと思って今せっかく努力中であることは十分申し上げられることでございます。
  55. 福田篤泰

    福田(篤)委員 ただいま配付いたしていただきました英国の回答がありますが、これはぜひ各委員に原文も添えていただきたいと思います。といいますのは、今御説明によりますと、七日に接受されてすでに三日たっておりまして、従って外務省の事務当局でもおそらく精密に御検討が済んでおりましょうから簡単にお伺いいたしますが、私どもがこれを拝見して少くとも二つの点で非常に不可解な点がございます。一つは第一ページの最後の行の「とるに足らぬ程少い」これはどういう原語でありますかわかりませんが、そういう表現と、それから第二ページの最初の行の今日安全に実施し得ることは満足と思うというこの二点であります。私はこの回答を受け取ったままにしておりますれば、この回答をわれわれが認めたことになる、どうしてもこの二点を各専門家としっかりと検討されまして、これに対する日本政府見解をさらにまた伝える必要があると思う。これは国民に対する義務であると思いますが、三日間もたっておりますからおそらく外務当局も一応の見解をお持ちだろうと思いますが、この点については、これは英国の言う通りであるか、満足すべきものであるか、あるいはこれは日本側の見解と違う、従って再び英国に対してわが方から、その点についてただす必要があるかどうか、その点についてお伺いいたします。
  56. 重光葵

    重光国務大臣 むろんかような問題について相当立場を異にしておる両政府の間における往復文書でありますから、こちらの言う通りに向うの意見が反射をして返ってくるということは、これはないことは御存じの通りであります。そこで意見の差はあるということになるわけでございます。しかしこの文書についてお話通りにいろいろ専門の知識を要することもございます。そこで今日まで十分その意を検討いたしまして、そして今御指摘のような点等、またそのほかにもあるようでございますが、それを検討いたしまして、向うの意向もさらに問い合せをしておるところでございます。さようないろいろなことの検討を経て最後の場合でないと十分な判断もできかねるわけでございます。
  57. 福田篤泰

    福田(篤)委員 今の御答弁でやはり疑義はしっかりただして、場合によってはこれに対する日本政府見解をまた向うに伝えるということを伺って安心したのでありますが、そういう場合には必ず本委員会に御相談いただくようにお願いします。  同時に新聞のことでありますが、ソ連がこの問題について最高会議にかけるというようなことが報道に出ておりますが、それについ日本政府は正式に通告を受けられたか、あるいはこの点について確かめられたか、いずれであるか一つ答弁いただきたい。
  58. 重光葵

    重光国務大臣 ソ連の方からはまだ何も回答がございませんが、これに関連してソ連の中央委員会で何か発言があったということは、新聞情報として承知をいたしております。正式の通報はまだ受けておりません。
  59. 前尾繁三郎

    前尾委員長 森島守人君。
  60. 森島守人

    ○森島委員 きょう国後、択捉の対米照会に対する往復文書の翻訳をいただきましたが、これにつきましてこの同法眼参事官にお問いしたのですが、単に米国のみならず関係諸国に対しても御照会になったろうということを申し上げましたら、法眼参事官は関係諸国に対しても問い合せたということを御答弁をなさっておるのでございます。関係諸国と申しましても、ヤルタ協定ですとソ連と英国、平和条約の関係になりますと、どこの国をおさしになったのか、私存じません。これらの回答をも、本問題を論議する上において重要なる資料だと思いますので、御提出を願いたいのでございます。これにつきましても、法眼参事官は、外交慣例の上からいって、関係諸国との間に話し合いをして、その上で提出するという御答弁をなさっておるのでございますから、右の手続が済み次第本委員会に御提出あらんことをまず第一に希望しておきます。  この回答につきましても、私はこまかいことを言うのはいやなのですが、実は下田条約局長は極秘電報だから出せぬのだとおっしゃいましたけれども大臣はさすがに大局をよくおつかまえになって、私の言ったことはもっともである、これは提出するようにしようということで御提出になったわけでありますが、これも実は非常におくれておる。先週の土曜日には出すというお答えであった。これに対して私は、提出する上にもさしてめんどうはないのだから、もっと早く出してくれぬかということを申し上げましたら、これは出そう、こういうことになった。資料を御提出なさる上において、今後迅速にお取り計らいになるよう私はまず希望しておきます。  そこで全部の質問が終えるか、終えぬか私存じません。私の問わんとするところは、南千島の問題であります。この問題につきましては、前後二回にわたって政務次官並びに事務当局との間で意見を交換いたしましたが、この意見交換の結果に基いて大臣に御質問申し上げよう、こういう次第なのでございます。われわれといたしましても、南千島がほんとうに日本に返ってくるなら、これはむろん賛成します。しかし私は歯舞、色丹と南千島とを取り扱う上において、いささか違いがあるのじゃないか、こういうふうな点を私は考えておりましたので、この前も大臣に御質問申し上げた。外務省は一八七五年のあの樺太、千島の交換条約を基礎として、歴史的、沿革的な理由に基いて、これはロシヤの領土ではなかった、歴史上何ら問題はなかったのだという御見解をとっておられるようであります。私はこれに対しまして多少異論を持っておる。いやしくもサンフランシスコの講和会議日本が放棄するということを決定しました以上は、サンフランシスコ講和会議当時の情勢判断すべきものではなかろうか、これが一点であります。それから地理的名称として、日本では色丹までも明治十八年以来千島列島の中に包含されておる。私はサンフランシスコ講和条約当時の状況で判断いたしますと、これも地理的名称としては一応入っておるのだという御解釈をとるということが正しいのではないか、これらのすべての条件を勘案いたしましてこの問題を論議することが適当である、単に歴史的、沿革的の点のみに立論の根拠を置くことは弱いのではないか、こういうふうに考えておるのでございます。その前提のもとに立って、サンフランシスコの平和会議当時における日本側の立場というものは、私が入手し得る範囲の資料によりますれば、これは平和会議、平和条約を国会の委員会で論議したときにおける吉田内閣、その当時の日本政府見解国際的に公的なものである、こう私は断定せざるを得ないと思うのでありますが、これは大臣も別に御異論はないと思います。念のために伺っておきたいのであります。
  61. 重光葵

    重光国務大臣 この問題はずいぶんと国会の各委員会のみならず本会議においても議論のあった重要な点だと思います。そこで今御配付を申し上げましたアメリカ意見がどうであったか、これは御参考のために出しておるわけでございますが、それのゆえんも、サンフランシスコ条約をどう解釈すべきかということに関連を持つからこういうことをとったわけでございます。そこでサンフランシスコ条約を和んだときの日本の当事者の説明等も、これは非常に参考になることは当然でございます。しかしサンフランシスコ条約において吉田総理が今問題になっておる島々についてある種の日本の主張をしておることもあるのであります。そこでこれを今日、そうだからサンフランシスコ条約によって日本がはっきりとこれを放棄したものであるという立論は、私は立ち得ないように思います。のみならず、この南千島の二つの局が地理的にも最もわが本土に接近しておって、そして今最もやかましい民族主義からいっても、ここに一万人以上もの日本人だけが住んでおる、漁業に従事しておる、そういうことも相当考えなければならぬと私は思う。さようなことを勘案して、これは歴史日本の本土と同様な、本土に属しておる島であるということが争われなかったのでありますから、今回いよいよ戦争後の結末をつけようとするこの領土問題において、日本側としてこれを主張するのは私は当然なことだと実は信じておるのでございます。そこでこれは正当な主張だと信じますから、あくまで主張をして差しつかえないのじゃないか、またそうすべきが国家、国民に対する政府義務ではないかと思ってやっておるわけでございます。そういうことを主張することは、かような文書によりましても無理は少しもない、こういう立論に立っておるわけでございます。それからなおいろいろな問題について資料を出せということは、せいぜい御希望に沿うように努力はいたします。
  62. 森島守人

    ○森島委員 政治上の問題の取扱い方につきましては、昨日もソ連との間に交渉があったようであります。いずれそれらの経過を見ました上で、私は日ソ交渉の政治的な取り運びという点については、別個の機会に論議をしたいと思っておりますが、さらに一点私が伺いたいのは、電光外務大臣は外交の統一性だとか継続性ということを常におっしゃっております。もし日本の主張がサンフランシスコ講和会議から三、四年を経た今日、根本的に異なるということになりますれば、果して国際的な信用を博し得るかどうか、私はこの点が非常に重大だと思う。私の見解をもっていたしますれば、サンフランシスコの講和会議のときには、日本は確かに南千島をも含んで千島、南樺太等を放棄したのだということを国会においてはっきり申されておる。それを今度はこれをも返してくれ――返してくれというのも決して悪いことではありませんが、このサンフランシスコの平和会議当時における日本意見を全然くつがえして、全く百八十度の転換をした主張をすることが、日本国際的信用を維持する上に、また外交の統一性、継続性を維持する上において有利であるとお考えになるか、不利とお考えになるか、この点についても御所見を伺っておきたいのでございます。
  63. 重光葵

    重光国務大臣 外交の継続性の問題に、この問題を関連せしめての御議論でございます。私はこれに対しては御同意を申し上げるわけには参りません。第一点はサンフランシスコ条約において、今あなたの言われるように、これが日本がはっきり放棄したものであると仮定しても――現にアメリカはそうは解釈しておらぬのでありますが、それをそう仮定しても、ロシヤに対して放棄したものでないということははっきりいたしております。ロシヤに対しては今度はどうその帰属を定めようかという交渉をしておるわけでありまして、これと交渉いたしまして何にも差しつかえない、またしなければ国交の正常化ということはできません。戦争後における領土の問題をはっきりせしめなければ外交はできません。それはそれで明らかであります。いわんやサンフランシスコ条約において日本の固有の領土を放棄したということはだれもはっきりしておらぬのであります。それから日本はそういうことはしていない、放棄してはいないという主張に立っておるわけでありまして、これは私は何も外交の継続性と矛盾はないように思います。無理にそういう工合に日本が放棄したのだから、もうロシヤの言う通りにしろといったって、ロシヤの言う通りをうのみにする必要はないように私は思います。
  64. 森島守人

    ○森島委員 その点になりますと、私は議論の分れ目だと思う。私ははっきりと重光外務大臣に申し上げますが、私はここにサンフランシスコの講和条約が国会で審議された当時の議事録を持ってきております。これを見ますと、はっきりとロシヤに放棄したのではない、これは講和会議では確かにロシヤに放棄するということは言ってないことは当然であります。それは政治論として、別個に取り扱いますが、これは二十六年十月十九日の特別委員会の席上で吉田さんが申しております。「吉田国務大臣千島列島の件につきましては、外務省としては終戦以来研究いたして、日本見解は米国政府に早くすでに申入れてあります。」こう申しておられる。この点から考えますと、平和条約に至るまでの経過のうちにおいて、日本アメリカの間で千島はどこに属するかということについて相当の往復のあったことは、これは推察するにかたくないのであります。このことにつきましては、後段においても吉田総理は言っておる。それからそれに引き続きまして、「これは後に政府委員をしてお答えをいたさせますが、その範囲については多分米国政府としては日本の主優を入れて、いわゆる千島列島なるものの範囲もきめておろうと思います。しさいのことは政府委員から答弁いたさせます。」という発言をしておられます。この吉田総理の発言を受けて西村条約局長が引き続き「条約にある千島列島の範囲については、北千島と南千舟の両者を含むと考えております。」そうしてその後に歴史的のことに付言されておるのであります。これが一つです。  もう一つはやはり条約局長は高倉定助委員質問に答えて、高倉定助委員は「この条約は」、――これは平和条約のことをさしておると思いますが、「この条約は全世界に認められた国際的の公文書でありますので、外務当局がこのクリル群島というものと、千島列島というものの翻訳をどういうふうに考えておられるか、もう少し詳しく御説明を願いたいと思います。」こう問うたのに対して、西村条約局長は「平和条約は一九五一年九月に調印いたされたものであります。従ってこの条約にいう千島がいずれの地域をさすかという判定は、現在に立って判定すべきだと考えます。」「この条約に千島とあるのは、北千島及び南千島を含む意味であると解釈しております。但し両地域について、歴史的に全然違った事態であるという政府考え方は、将来もかえませんということを御答弁申し上げた次第であります。」こう言っておられるのでございます。そこで吉田さんは講和会議における演説の中において、歯舞、色丹のみならず南千島の問題についても発言をされました。しかしその発言の内容は、要するにこれらの島が日本固有の領土であったということを歴史的に説明せられたにとどまっておるのであります。これに対して明確に留保をするというふうな法的効力を有する措置をとっておらないのであります。このほかにももう一つ吉田総理大臣は「この問題は」――南千島ですが、「日本政府と総司令部の間にしばしば文書往復を重ねて来ておるので、従って米国政府としても日本政府の主張は明らかであると考えます」ということを言っておられるのであります。そういたしますと、これらの公的な記録を基礎として考えますときには、どうしても米国と日本との岡に数次の往復があって、その結果南千島を北千島に包含するのだということに了解がついておったものと確信するのです。これらの関係文書は必ず外務省の記録中にあると思う。非常に重要な問題ですから、これらの往復文吉をも委員長を通じて提出せられるように私は希望いたします。この点に附する現政府解釈と吉田内閣時代の解釈とが全然異なっておるという点についてはいかようにお考えか、これが私が先ほど申しました国際信用を維持する上において、この重大な領土問題に関する主張を三、四年の間に変えてよいか。また外交の統一性という点も、この点は非常に重要な関係を持っておる、こう私は断定いたすゆえんなのであります。大臣より御所見を承わりますれば幸いであります。
  65. 重光葵

    重光国務大臣 私はその文書の解釈についても、必ずしも今あなたの解釈に同意するわけには参りません。治そらくそういうようなことに立脚してソ連もいろいろ考えて主張をしておるのだろうと考えます。しかしそのときの政府考え方というのが、たとい今あなたの解釈しておる通りであるとしても、私はそれに異論を持つのでありますが、あるとしてもこれはその問題について一番利害関係を持ち、条約の当事者であるアメリカ意見など十分当時の事情を聞かなければなりません。その聞いた結果がかようなものであるとするならば、それに基いて考え国際的には少しも差しつかえないのじゃないか。それからまた吉田総理もはっきりと南千島が日本の固有の領土であるということを指摘しておるのでありますから、日本の意向というものはその当時から明らかであった、こう考えるのであります。しかしこれはどういうものか、幾ら議論を往復してみても実はあまり有益でもないように考えますが、御議論は伺うことにして、私の議論も一応御了承願いたい。
  66. 森島守人

    ○森島委員 時間がありませんから私は次会に続いて御質問申し上げることにしたいのですが、その前に一つ大臣に平和条約を討議された当時の記録をすっかりお読みになっていただきたい。大臣は記録を持っておられませんから、そういう逃げ口上をやられるのは当りまえだ。私はここではっきり記録に基いて討論を進めているのです。大臣もその点をお含みおき願いたい。
  67. 重光葵

    重光国務大臣 あなたも同じように正確に御判断を願いたい。
  68. 森島守人

    ○森島委員 それは私もやります。大臣の方もこれに基いてはっきり御研究おき願って、次会に質問を継続いたすことにいたします。
  69. 下田武三

    ○下田政府委員 ただいま議事録を読んで御引用になりました占領時代から日本政府の出した資料、その資料は実は私が作ったのでありまして、当時から一貫して変りないのでございますが、日本政府のねらいは、桑港会議で歯舞、色丹、南千島等固有の日本の領土であったものは明確に日本の領土に残してもらうような定義を得ることをねらいとしておったわけでございます。そのために占領中から歯舞、色丹初め領土問題だけにつきまして七冊の、民族的にも歴史的にも地理的にも経済的にも、あらゆる角度からの検討をいたしました資料を準備いたしまして、アメリカに出したのであります。なぜかと申しますと、来たるべき講和会議において日本は敗戦国として大きな発言権を行使できない、そうだとするとアメリカ政府日本政府の立場にかわってそういう歴史的の事実を知っておいてもらわなければいけないという見地から出したのであります。それでしかし御承知のように講和会議では、日本政府の希望するような北方領土の定義は下されませんでした。そのかわり日本政府の希望するような定義は下されませんでしたが、他のいかなる定義も下されなかったのであります。そこで吉田総理は桑港会議の席上、南千島につきましてはそれが日本の固有の領土であるということを明言せられておる。記録にとどめる措置をとられたのであります。と申しますのは、将来やがて北方領域のいかなるものを譲渡せしめ、いかなるものを日本に残すかということが国際的にきまる段階になるだろう。日本の希望する定義は下されないとすれば、少くとも将来に対する足がかりだけは、残しておこうということで吉田総理は発言されたわけであります。まさに私どもが当時予想いたしましたように、今日におきましてはその桑港条約の定義は下されてないために、今それをはっきりしようという試みが直接ソ連との間に行われておる。そこでそうであるとなりますと、その占領当時から出しておった日本政府見解、また講和会議に当りまして吉田総理が述べられた見解、それを足がかりとして最も有利な態勢に努力するというのが私どもの立場でありまして、その点におきましては、当時からも一貫いたしておるのであります。
  70. 森島守人

    ○森島委員 私は一問だけ。今いろいろ御答弁がありましたが、私は納得することができない。これは当時の吉田全権の命を受けた西村局長が公的な意見として、はっきり南千島も北千島も入っているのだということを言っており、これ以上に見のがすべからざる意見というものはあり得ないと私は思う。その後政府はこの見解があるにもかかわらず、御見解を変えて新たに交渉されるとおっしゃるのなら私は納得する気にもなるのですが、いずれこの点は追って機会を見まして、私はあえて政府態度を攻撃するのじゃない、国際的な信用を維持する大きい見地から公正にさばかなければいかぬ、こういうことで私は考えておる。従って私は政治的な論議としてはまた別個の観点から論議を進めたいと思いますが、当時の事実を明らかにするという趣旨で私は発言いたしましたので、この点もお含みおき下さいますようお願いいたします。
  71. 前尾繁三郎

    前尾委員長 岡田春夫君。
  72. 岡田春夫

    ○岡田委員 大臣だいぶお疲れのようですけれども、十五分だけ私も伺いたいと思います。いろいろ問題があるのです。十五分しか許してもらえないのですが、問題はたくさんあるのだが、今一番大きな問題はというと、先ほどからだいぶ問題になりました原水爆実験の問題が日本の国民にとって一番重大な問題だと思います。従ってこの問題についてもう一度伺って参りたいと思いますが、あらためて申し上げるまでもないのですが、参議院で今度の実験もやらないようにあらゆる有効な措置をとるようにという議決をいたしました。私は国会のこのような態度は国民の要望を明らかに反映したものだと思う。そしてまた、憲法上の法律論議というのもどうかと思うけれども、やはり国会で議決したということは最高の国の決定であるわけでありますから、この決定に従って政府態度をきめていただかなければならないと私は考える。しかもそのように実験を禁止しろと言っておる意味は私はきわめて重大だと思う。これは大臣も御承知だろうと思うのですが、今度の実験に当っては、一昨年の実験よりももっと大きな破壊力の原水爆を使う危険性が向うの発表によってもあるようです。われわれがいろいろ前後の事情を話していると長くなりますから省略いたしますが、五十メガトンの爆発力を持つものを使う場合があり得るということが想定されている。五十メガトンを使うということになると広島の爆弾の二千五百倍の爆発力を持っておる。一発で日本が大体死滅するであろうと言われている。これほどおそろしい爆弾であるからこそ国民は反対している。そこで私はどうしてもこの際外務大臣にとっくり御意見を伺いたいことは、これほどおそろしいものであるから、アメリカ日本の国が言ってもどうしても実験するだろうからと言って、半ばあきらめた態度交渉するのではなくて、あくまでもこの実験はやめてもらいたいという意味でのあらゆる努力をやってもらいたいということです。三月七日の参議院会議において曽祢益君の質問に対して、あなた並びに総理大臣は、あらゆる形で実験をやらないように努力をいたしますという答弁もされております。私はその善意を信じます。あらゆる努力をしてやってもらいたい。しかもその機会は私はあると思う。きょうの新聞を見ると大臣もおそらく御存じのように、スタッセンは軍縮の場合においては、空中査察を許すならば原水爆の実験の制限についても、十分考慮する余地はあると言っておる。それからソビエトは共産党の大会において、アメリカが天験しないならばソビエトもやらなくてよろしいということも言っておる。こういう情勢になっているのですから、このときこそ一本の国は、はっきりとした態度交渉してもらいたい。その意味では、今度ダレスが来るわけだが、そのときに大臣はダレスに交渉をされると言っておるが、その交渉態度は、どのような態度でおやりになるのか、実験はあくまで禁止しろという態度で御交渉になるのであるか、あるいは昨日の新聞報道等によると、アメリカ関係筋では、場所を変えろという問題についてならば、ダレスは相談に乗るかもしれないというようなことを、向うで非公式に発表しているという。こういうような態度について交渉になるのか、あるいは一月の二十日に外務大臣が向うに申し入れをされたという事前措置並びにその他二点に対する点を基礎にして交渉になるのか、このダレスに対する交渉の基本的な態度、これは国民が一番関心を持っている最も重大な問題ですから、この際率直にお話を伺いたいと思います。
  73. 重光葵

    重光国務大臣 今お話の問題は、原水爆実験に対する根本的方針に関する問題でございます。このことについては私は繰り返し繰り返し申し上げておるのだから、それによって御了承を得たいと思います。しかし御質問がありましたからまた私は繰り返して申し上げます。それは国会で御決議になった字句は衆参両院とも違います。字句は違いますけれども、精神は国民的に現われた精神で、これは同じだと思います。それを政府が身につけて交渉をしよう、またしつつあるということをるる申し上げ、またそのような意向をはっきりさせておるわけであります。私は一々だれに、どういう話を――たとえば出先の大使がどうしたかということを一々申し上げることは、記憶もしておりませんが、ずいぶんそれは手数を尽しております。さてさような何がだんだんと、何と申しますか利子を生んで、そうして今日ではよほどその空気が世界的にできております。インドのメノン大使の態度も私は非常に関係があることを知っております。それからまたスタッセンのきょうの何などもそこまで狭められるようにだんだんなってきておる。ソ連の態度は、これはまあ米国に対する対抗的の、作戦的の何もあるかもしれませんが、日本の立場からいえば、これもまた一つの前進だと思っておる。これらは私はいわばそういうすべての努力の反映がだいぶんある――だいぶんと申しますのは、私はきわめて謙遜的意味で申し上げる、すべてとは申し上げません。しかしながらそういうことにだんだんなっておる。しかしそれは国際法各国の承認した結論をそこにつけるためにやらなければならぬ、これは大きな政策の遂行であります。それはやらなければならぬ。しかしそれだけでいつまでも待っておって、その間に実験されては困ると思う。それについても政府は手を打たなければならぬということは、私は当然政府責任だと思う。そこで予防措置をとってもらわなければならぬ、補償もしてもらわなければならぬ。そこでいつまでもこういう議論ばかりして、その議論を経た後に補償をとる。それは理屈はそういう国際法の法律関係が設定されれば、そこに補償のベーシスができます。それは私は待ってはおれないのです。去年も慰謝料で満足したのは不都合だという御議論がありましたが、実は私も不満足であります。不満足でありますけれども一体そういうものは国際的にしてはならぬ、禁止したのであるということがはっきり出てこない以上は、なかなかこれは双方ともやはり思いやって一番こちらのたえ得るところでやるよりほかに実はしようがございません。従って満足ではなかった、しかし今後もそういうような国際的な基礎を作るために最善を尽すということは当然のことであります。
  74. 岡田春夫

    ○岡田委員 ただいまの御答弁を伺っていると、ダレス氏に交渉をする態度というものは、あくまでも国会の議決に基いて、実験もやめてもらう、この態度に立って日本重光外務大臣交渉するのであると私は解釈して間違いないと思いますが、その点をもう一度伺っておきたいと思う。  第二の点は、インドのメノン代表が、この問題については国際司法裁判所に提訴する、このように言っております。これについても、日本政府は重大関心を持って対処していかなければならないと思うのだが、このメノン代表の態度について、日本の外務省はこれを支持されますかどうですか。  第三点は、ソビエトにおいても日本の国会の議決について、ソビエトの最高会議の外交委員会で審議をしておるそうです。これはイズヴェスチアという新聞に載っておりますが、こういう点について何か外務省にその間の連絡があったかどうか、この三点を伺っておきたい。
  75. 重光葵

    重光国務大臣 今お話の第一点の、どういう方針でもってやるかということは、これは繰り返し繰り返し申し上げておりますから、前の通りで御承知を願いたい。  第二の、メノン氏のことですが、これは外交機関としてはきわめて重大な関心を持ってそれを見ております。ただこれは国際司法裁判所にインドがこれを提起するという、そういう事態をはっきり見届けなければ、どう日本がこれにアクトするかということは、これは検討の上でなければ今すぐにきめるわけにいきません。重大な関心を持って見ております。そして、それについても日本側の根本方針に助成的になるように努力したいと思っております。  それからソ連の問題は、そういうことを情報で承知いたしております。ソ連からは何もまだ返事は参っておりません。
  76. 岡田春夫

    ○岡田委員 大臣が病気で休んでおられる間に、千葉さんその他でだいぶ問題になったことがある。それは三月三日です。三月三日というのは、御承知のようにこのAEC、アメリカ原子力委員会の公示があった次の日なのです。次の日にここで非常な論議がありました。ところが六日、八日の外電の伝えるところによると、こういうことが発表されております。どういうことが発表されておるかというと、原水爆禁止の問題に関連して、日本の大使館は、アメリカ当局と事前通告並びにその他二点についての打ち合せを非公式に行なったという旨のことが六日、八日二回にわたり行われております。こういう事実が一体あったのかどうか。そしてそういう事実をほんとうにやっておるなら、どういう内容で交渉されたのか。それから本省から何らかの訓令が行われたものであるかどうか。この点を伺っておきたい。私がなぜこれを伺うかというと、この間も千葉局長に対して、国会のわれわれの質問というのは、そのような事前通告その他について再度申し入れをするよりも、この際は実験の禁止について、国会の議決が最高の決議機関であるから、この禁止をもう一度出すべきではないか、こういう点を強くわれわれは要求しておるわけです。それに対して外務省当局としては、その点についてはやるように慎重に考慮いたします、こう答えておる。ところがそういうように答えているにもかかわらず、一方におきまして日本の外務省で訓令を行なって、そのような御交渉が行われた事実があるのかどうか。それに基いて一昨日八日の夕刊の補償の問題が回答として出てきておるわけです。そういうようにわれわれは受け取っておるのですが、この間の事情をもう少し詳細に伺いたいと思います。
  77. 重光葵

    重光国務大臣 本問題に対する日米交渉の経緯は、私は繰り返してお話した通りであります。今の問題は、どういう非公式の連絡をしたということは、一々実は知りません。知りませんけれども、外交機関は絶えず連絡をいたしております。その片りんがいろいろあり、また新聞情報等において必ずしも正確でなく伝えられるということは、ほとんど引き続き連日行われておるような状況でございます。だからそれを一々引っぱり出されて――私はそうじやないと思うのです。私どもはあくまで院議で決定した趣旨を尊重してやりたい、またやっておるということを繰り返し申し上げておるのでありますが、そういう新聞情報がどうあるかということについてよりも、私どもの気持を一つ尊重していただくことに願いたいと思います。私どもも御趣旨はよくわかりますから、その趣旨によって、できるだけの努力をいたしたいと考えるのでございます。
  78. 岡田春夫

    ○岡田委員 この点は、大臣あるいは御存じないかもしれないけれども、そういう点は重大ですからあとで――もちろん大臣の気持もわからないわけではありません。しかしその関係一つお調べを願っておきたいと思います。  それから時間がありませんので、これを最後にいたしますが、ダレス長官が日本に来る。これについて外務大臣交渉する。原水爆の問題についての交渉をされることは、私先ほどのお話でわかりましたが、それ以外にどういう問題について交渉されるのですか。たとえば伝えられるところによると、ココムの緩和についても交渉するとかあるいは小笠原の返還の問題についても交渉するとか、あるいはまたその他日米の共同防衛の問題についても交渉する、これはあるいはダレス長官ではなくて、ロバートソンに交渉するというようなことになるのかもしれませんが、この点についても、問題点だけでもこの際明らかにしておいていただきたいと私は思います。  それから、次にもう一つ、これは外交政策上の重要な問題だと私は思うので、ぜひ伺っておきたいのです。ソビエトの共産党大会以来、平和共存の問題、経済援助の問題、こういう面がますます強くなってきておる。それに基いて半面アジア・アラブの諸国においても、ソビエトからも経済援助を受けようという考え方が強く出てきておる。たとえばパキスタンはSEATOにも加盟している、バグダード条約にも加盟しておる、従来はアメリカ関係の国といわれておったものまでが、経済援助の交渉に参加するようになってきている。その他の国もたくさんありますが、きょうは時間の関係で省略します。ことにアジア・アラブの諸国情勢というものは大きく変ってきている。そこで日本アジア・アラブに対する外交政策の基本についても、この際再検討する機会に迫られているのではないかと私は考えます。こういう点の理由はいろいろときょうは申し上げません。これはいずれまた機会を得たいと思いますが、この点を再検討するために、アジア・アラブ諸国の国内の情勢を、日本の外務省としてもう少し詳しく調べられて再検討されるお考えがあるかどうか、こういう点についても最後の点として伺っておきたい。
  79. 重光葵

    重光国務大臣 ダレス長官が十八日に見えます。これは短期間でございます。実はあまり短期間であることを私は遺憾とするものでありますけれども、その間をできるだけ利用して、私も意見の交換をしていきたい、こう考えております。今、意見交換をする内容の具体的な、どういう項目にするかということは、ここで私申し上げることを差し控えたいと思います。これはこの席等でいろいろ出た問題等もできるだけ頭に入れて、そうして十分に利用したい、こう考えておりますが、これは実は私病気の関係もございまして、まだそれをどう配列するかということも十分にいたしておりません。手落ちなくやりたいということだけ心がけております。  それから次にアジア・アラブの問題ですが、これは非常に大きな問題であります。これは今差し迫った時間に論議しようという気持は少しもない。結論的にこれを申し上げれば、私は何も再検討する必要はないと思います。(岡田委員「どうしてですか」と呼ぶ)理由は、日本アジア・アラブについてどうしておるかというと、これは平和外交で、民族主義を重んじて、そうしてこれらの国々の将来の発展を希望し、それに寄与したいという全体の方針をもって進んでおりますから、それによって進んでいきたいと考えるのであります。これはしかし全体の問題である。ただそれを行う一々の政策の実施とか作戦に至りましては、それは始終再検討しなければいかぬ。ソ連がこういう工合になったからというてびっくりぎょうてんして全然政策を変えるというような必要はない。しかしながら、ソ連の政策もよく検討し、アメリカ、イギリスの政策も検討して、絶えずそれに対応していくという措置は、これは必要であり、いつも再検討しなければならぬ。しかし根本においては、私はその大きな方針をあくまでも遂行していきたい、こう思っております。しかしこれは御質問に対する返答として十分でないかもしれませんが、また次の機会に……。
  80. 岡田春夫

    ○岡田委員 私はきわめて温厚篤実に質問しておるのだが、親切に答弁をしてもらわぬと、ついまた高まってくるのですが、一点だけ伺っておきたい。  ダレスとの交渉において、やはり日本で大きな問題の一つになっておるのはココムの緩和の問題です。この問題くらいは、まだ検討中であるなどというような話じゃなくて、ココムの問題をやろうというくらいの話があっても、私は決して野党の得する問題でもないと思いますから、一つこの際外務委員会の立場として、外務大臣、主管大臣として、ずばりと言っていただきたいと思います。  それからアジア・アラブの問題は、あとで別の機会に伺いたいと思います。
  81. 重光葵

    重光国務大臣 お答えいたします。私は、あまり場当り的のことは一切慎しんでいかなければならぬと思っておりますが、ココムの問題なんかは重大な関心事であるということは、よく了解いたしております。しかし、それをどういうふうに話をするかということを今申し上げるのはいかがかと思っております。
  82. 戸叶里子

    戸叶委員 ちょっと関連して。私の質疑はこの次にいたしますが、先ほどの岡田委員質問関連いたしまして一点だけお伺いしたいと思います。  先ほどから原水爆の実験禁止の問題が出ておりますが、重光外務大臣も、国民の悲願を達成させるために一生懸命努力しておるというような御返事でありましたので、私も多少安心はいたしましたけれども、実際の問題として、この国をあげての悲願というものは、なかなか達せられそうもないような状態に伺っております。そうなって参りますと、日本の国民は全く絶望いたしまして、政治に対しても外交に対しても、どうしてよいかわからないというような気持になりはしないかと思います。そこで、この国民の悲願をも達することができないというような立場に立って、一体今後どんな外交方針をもってアメリカにお臨みになろうとするのか、日本国民の悲願を達せられるような方法をどういうふうにしてお考えになっておられるか、この点だけを承わりたいと思います。  それからもう一点、時間を節約いたすために続けて伺いたいと思いますが、この日本の国民の国をあげての悲願というものが、一体アメリカの新聞にどの程度に載せられておるか、またその反響というものを外務省はお調べになったかどうか。これは世論を動かすという意味で必要なことですから、またアメリカの中にもこういう問題は禁止すべきであるという声があると思うので、この点を伺いたいと思います。
  83. 重光葵

    重光国務大臣 私は、これが国民の悲願であるというお話は繰り返し繰り返し伺いますし、私も述べておる通りであります。しかしながら、国民の悲願であるから右から左にこれが達せられるという状態でないということ、困難な問題であるということは、これまた繰り返し繰り返し私は申し上げておるわけでございます。しかし困難な問題であるからといってそれでまかり下って悲観をする必要は少しもないと思います。これが正当な主張である以上は、十分に達成するようにあらゆる努力をそれこそ何年かかってもやるべきだと思う。私は案外早くこれはいくかもしれぬと思う。国際連合あたりも動いてきつつある。これは日本の努力の結果だ、こういうふうに言いたいくらいでございます。そこでその点はお答えになっていると思います。  アメリカの国内にどう反映したかということは、一々は調べてはおりませんが、外務省には十分調べてあります。しかし、この問題についてアメリカ側において相当な反響を与えたと私は思っております。またそれは確かだと思っております。たとえばスタッセンの意見のごときも、それからまたメノンの意見にしたって、やっぱりアメリカあたりのそれに対する反映が影響しているのでありますから、さようなことで、決して私はこの問題については、困難なことではありますが、悲観をする必要はないと考えております。
  84. 福田昌子

    福田(昌)委員 私の質問はこの次にさせていただきたいと思っておりますけれども関連してちょっと一点だけお尋ねさせていただきます。今外務大臣が原爆実験禁止の問題について非常にお骨折りいただいておりますことは、大へんよくわかりまして、私どもも非常に感謝をいたしておりますが、ただどういう形の御努力をお願いしておるのかという点で、どうも私ども十分納得できない点があるように思えるのでございます。大へん恐縮でございますが、どういう形で努力をしておるのだということを、具体的にもう少し突っ込んで御説明願えたらと思います。私どもは小さな御努力もお願いいたしたいし、大きな国際的な御努力もぜひお願い申し上げたいと思っておるところでございます。大きくは、やっぱり国際司法裁判所に御提訴願うというようなことも、問題としてお取り上げいただきたいと思うのでございますが、これについては、この前のときの外務委員会では、条約局長国際司法裁判所には提訴する時期でないという御答弁がございました。そういう外務省首脳部の、と言えるかどうかそれは存じませんが、重光外務大臣も同長さんの御答弁と御同様にお考えになっておられるのかどうかという点。  さらにはまた条約局長は、早く実験禁止をさせるということは非常に困難であるが、それを急げば自衛隊でも出動させなければならないというようなお話をちょっとされておったことがございます。こういうような力関係を持ち出してしなければ、この原爆の実験禁止は困難であると外務大臣はお考えになっておられるかどうか、この二つの点にしぼって、きょうは御答弁をいただきたいと思います。
  85. 重光葵

    重光国務大臣 この問題についてできるだけの努力をいたそう、またいたしておると私は申し上げてきております。それじゃ、一体いつ、どういうことをどうしたか、それでなければ納得いかぬと言われますが、これは少し御無理な御要求だと思います。これはあらゆる機会をとらえての外交機関の活動も必要があります。それから東京においては、外務省と他国の代表者との関係もあります。国際連合においては、国際連合の機関に対する働きかけもございます。さようなことですべて、何と申しますか、総合的に進めていかなければならぬので、それを各機関が常に連絡をしてやっておる、こう申し上げて差しつかえないのでございますから、それで一つ御了承を願わないと、いつどういうことをして、どういう文書で、口頭でどうしたかということを一々ここで申し上げることは、私は少し行き過ぎと申しますか、それはお許しを願いたいと思います。これはまた外交に任ずる者のおのずからの職掌、分野もございますから、それは十分果したいと考えております。  国際司法裁判所に日本が提訴することが果していいか悪いかということは、まだ私はこれは決定することはできません。第一、インドが果してこの問題にどういう態度をとるとかいうことは、まだ終局的に報告に接しておりません。さようなことを十分に突きとめた上でなければ、どういう工合になるか、またその上でも、こういうものは、やる以上はやぶへびにならぬようにしなければならぬし、そう簡単には参りません。そこで十分に一つ検討をして、手落ちのないようにいたしたい、これは先ほど申し上げた通りであります。     ―――――――――――――
  86. 前尾繁三郎

    前尾委員長 この際参考人招致の件についてお諮りいたします。原水爆実験に関する問題について、学界その他より参考人を招致し、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  87. 前尾繁三郎

    前尾委員長 御異議がなければ、さように決定いたします。  なお、参考人の人選及び招致の期日等につきましては、理事会に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  88. 前尾繁三郎

    前尾委員長 御異議がなければ、さように決定いたします。  次会は公報をもってお知らせいたします。本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十八分散会