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矢口説明員 お答え申し上げます。
現地の
状況と申されますと、今度私
ら一行が
向うに参りましての
話し合いの大筋だと判断いたしますので、その点の
概略を申し上げさせていただきます。
まず私
ら一行が
カンボジアに参りました
趣旨は、去年の暮れに
シアヌーク首相を首班とするミッションが参りまして、その
節友好条約を結びましたことは御
承知の
通りでありますが、そのときに第五条に
移住のことをうたっておりましたが、そのうたい方もきわめて大きな筋だけの
話し合いでございまして、一切の詳細は
現地において、すなわち
カンボジアの
首府プノンペンにおいて打ち合せをする、こういう
約束でございます。その
約束に塞ぎまして私ら三名が
向うに参りまして、
現地の
吉岡大使を
顧問として
話し合いをしたのでありますが、大きな筋は、まず
カンボジア側のねらいは、
日本に対して要求したいことは
経済開発であり、もう
一つは
人種といいますか、民族の改良といいますか、
混淆といいますか、そういったものに大きなねらいがあることを知ったのであります。
まず
経済開発の点から申し上げますと、ただに
農業だけではなくて、
水産業、林業、
各種の
製造工業、その
方面について
日本側の協力を得たいというのであります。入れる人間の数は、一年間に一万人、五年間に五万人、これは
農業だけじゃございません。あらゆるいわゆる
企業移住者を入れましての数でありますが、そういったワクを設けてあるのであります。五年から先は追ってそのとき
考える、こういうわけであります。
それから
農業のことについてもう少し敷衍いたしますと、
向うの提案しておりますのは、約十一個所ばかり国の中央にあるいは辺境にサゼストしておりまして、そこに適宜集団的に入ってもらってもけっこうである。当初は
分散主義を希望しておりましたけれ
ども、これは
同化ということを
目標としております
関係上、
分散主義を主張しておりましたけれ
ども、会談の
最終段階におきましては、いわゆる集団的な
移住もけっこうである、こういう
工合になったのであります。
それから
水産業その他の
各種の
製造工業につきましては、
日本側の技術と
資本を導入いたしたい。
資本金につきましては、
向う側が五一%、
日本側が四九%という比率によってやってもらいたい。
向うにそういう法規がございますので、そういう結果に相なるのであります。
それからそれについての便宜といいますか、これは主として
農業関係のことを言っているのでありますが、持ってくるところのいわゆる
機械器共については、
無税通関をやる
考えであるというような
方針とのことであります。
次に第三の
人種の
混淆ということにつきましては、一日も早く
同化をしてもらいたい。ねらいは
同化問題であります。
同化をしてもらいたい。そのためには
現地の
女性と婚姻することを強く要望するというわけでございまして、
向う側の要望は
女性が二割で
男性が八割、特に独身の
男性を歓迎するというわけであります。この点につきましては、
日本側に非常な
異議がございまして、まだ妥結に至っておりませんので、今後の
折衝に待つことにしてあります。
これが大きな筋道でございまして、われわれといたしますと、
日本側から見ますと、大きな点は
受け入れ施設をどうするかということになるのであります。これは
向うの腹の底に寝ておりますことは、
賠償請求権も放棄したことでもあり、
かたがた建国早々で一年何がししかなっておりませんので、財政的にもきわめて貧弱な
状態でありまして、主として
アメリカとフランスの援助によって国をまかなっておるような
状態でありますので、そういったふうな
施設に要する金を
向う側に出させるということは、
相当の無理があるのであります。種々
折衝いたしましたけれ
ども、結局そういうことなのでありまして、大
部分は
日本側で
負担しなければ、これが実行できないというような
状態にあるのであります。御
承知の
通り日本から
カンボジアまでの
旅費は
日本側で持つことになっておりまして、すでに二千名分の
旅費は大蔵省との
話し合いによりまして、御了解を得まして、とっておるのでございますが、それから港から
入植地までの一費用は
先方が持つ。それから三年間は免税にする。
各種の税金から免がれる。それから家を建てる材木その他は
向うが提供するというくらいが
向うの
負担でございまして、
自余の分は
日本側負担ということに相なるのであります。でありまして、これを
中南米のそれに比較いたしますと、その点において不利がございます。
中南米におきましては、御存じのことと思いますが、
原則といたしまして、
受け入れ施設の大
部分は
先方が持つ、
受け入れ国が持つことになっておりますが、
カンボジアの場合におきましては、今言ったような事情によって、
先方が持ち得ないということになりますと、
本件計画を実行するためには、どうしても
日本側がこれを持たなければならぬという結論が出るのでございます。
ただどの点がしからば
中南米よりプラスであるかということを
考えてみますと、第一には非常に親日的でございまして、
日本人を兄弟以上に見るという
言葉を使っておりましたけれ
ども、確かにそういったような空気でございますので、
一つは
日本人を兄貴とし、師匠として建国したいという熱意に燃えている。従って
移住者にとってはその点は住みやすいということ。それから
中南米は主として
農業でありますが、
各種の
工業何でもけっこうだから、あらゆる
企業が入ってくることを歓迎するという点が、
中南米のそれよりもまさっているのじゃないかと思われます。
しからば
施設費はどういう
施設に要するかと申し上げますと、それはとりあえずは
道路のことや井戸のことや、それよりも
マラリアに対する
措置を講じなければいけませんので、そういったふうの金、それから一年間の
生活費、これはもちろん個人がそれくらいの能力は持つ、だろうと思いますけれ
ども、そういったところに
施設費が要るわけであります。しからば
本件を将来どうするかということにつきましての
関係を申し上げさしていただきますと、これは単に
カンボジアだけの問題ではなくして、
東南アジア全般に対する
一つのモデル・ケースでございまして、もし
本件がうまく進展した場合におきましては、
自余の国、たとえばボルネオでも、あるいはニューギニアでも、またスマトラでも、未開の大原野がございますので、そういった国にも非常な好影響を及ぼすのじゃないか。もう
一つは、各
公館長の話を聞いてみましても、隣のヴェトナムにおきましても、ラオスあるいは
タイランドにおきましても、
本件実施に非常な関心を持っている。豪州、フィリピンまたしかりでありますが、そういったように、ただに
カンボジアだけの問題ではございませんので、この
計画がうまくいった場合には、
自余の国家に及ぼすところの影響が大であるということ、そういう
関係で、単に
移住問題とか
経済開発とかいう問題を離れて、大きな
一つの
政治問題として
本件は取り扱うべきじゃないかということを、私
ら向うに参ったものが思ったような次第であります。
また御質問によって申し上げることといたしまして、一応
概略のところを御報告申し上げます。