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1956-02-25 第24回国会 衆議院 外務委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年二月二十五日(土曜日)     午前十時四十三分開議  出席委員    委員長 前尾繁三郎君    理事 石坂  繁君 理事 北澤 直吉君    理事 須磨彌吉郎君 理事 山本 利壽君    理事 穗積 七郎君 理事 松本 七郎君       菊池 義郎君    高岡 大輔君       並木 芳雄君    福田 篤泰君       田中織之進君    細迫 兼光君       森島 守人君    岡田 春夫君  出席政府委員         防衛庁参事官         (経理局長)  北島 武雄君         外務政務次官  森下 國雄君         外務事務官         (大臣官房長) 島津 久大君         外務省参事官  法眼 晋作君         外務事務官         (アジア局長) 中川  融君         外務事務官         (欧米局長)  千葉  皓君         外務事務官         (経済局長)  湯川 盛夫君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君         外務事務官         (国際協力局         長)      河崎 一郎君         外務事務官         (移住局長事務         代理)     石井  喬君  委員外出席者         大蔵事務官         (為替局総務課         長)      佐々木庸一君         専  門  員 佐藤 敏人君     ――――――――――――― 二月二十三日  委員西村榮一君辞任につき、その補欠として田  中織之進君が議長の指名で委員に選任された。 二月二十三日  千九百五十五年五月三十一日に東京署名され  た農産物に関する日本国アメリカ合衆国との  間の協定第三条を改正する議定書締結につい  て承認を求めるの件(条約第八号)  農産物に関する日本国アメリカ合衆国との間  の協定締結について承認を求めるの件(条約  第九号) 同日  ビルマ賠償木造船組入れ一命願山口丈太  郎君紹介)(第九〇八号)  の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  外務公務員法の一部を改正する法律案内閣提  出第三五号)  国際金融公社への加盟について承認を求めるの  件(条約第一号)  日本国とカンボディアとの間の友好条約の批准  について承認を求めるの件(条約第二号)  千九百五十五年五月三十一日に東京署名され  た農産物に関する日本国アメリカ合衆国との  間の協定第三条を改正する議定書締結につい  て承認を求めるの件(条約第八号)  農産物に関する日本国アメリカ合衆国との間  の協定締結について承認を求めるの件(条  約第九号)国際情勢等に関する件     ―――――――――――――
  2. 前尾繁三郎

    前尾委員長 これより会議を開きます。  千九百五十五年五月三十一日に東京署名された農産物に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定第三条を改正する議定書締結について承認を求めるの件、農産物に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件を一括して議題といたします。  政府側より提案理由の説明を求めます。森下外務政務次官
  3. 森下國雄

    森下政府委員 ただいま議題となりました農産物に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件、及び千九百五十五年五月三十一日に署名された農産物に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定第三条を改正する議定書締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  政府は、昨年五月三十一日に東京署名されました農産物に関する日米間の協定に基いて米国余剰農産物購入を取り計らいましたが、その後さらに昨年度のわが国の食糧の生産、消費、輸入等の諸状況について慎重な検討を加えました結果、購入条件について満足な合意に達するならば第二次の協定締結して引き続き米国より農産物購入することが適当であるとの結論に達しましたので、昨年七月より東京において米側との間で非公式な折衝を開始いたしました。その折衝により、日本側購入する農産物品目金額等についてわが方の希望がほぼ入れられる見通しが得られましたので、たまたま九月に河野農林大臣が渡米いたしました際にワシントンにおいて正式に品目金額積立円使用区分等に関する交渉を行なったところ、話し合い妥結を見るに至り、九月三十一日井口在米大使米側代表との間で協定文の仮調印を行いました。しかるに同協定正式署名は、昨年五月の第一次協定第三条に基く第一年度の農産物贈与に関する細目及び第二次協定に伴う第二年度以降の農産物贈与についての両国政府間の話し合い妥結した後に行うこととなっておりましたので、その後東京において贈与に関する取りきめの交渉を鋭意進めて参りましたところ、両政府間で意見一致を見るに至りましたので、去る二月十日私とアリソン米国大使との間で本件協定及び議定書署名を行なった次第であります。  本協定につきましては、(イ)農産物買付総額が六千五百八十万ドルであること、(ロ)買付品目小麦大麦トウモロコシその他の飼料、綿花及び葉タバコであること、(ハ)積立円使用率日本側七五%、米側二五%であり、日本側使用分が、農地開発、森林、畜産等開発電源開発生産性向上等のための借款に使用されること、及び(ニ)贈与について付属交換公文で定めたことの諸点を除いては、第一次協定とほとんど同一であります。  また議定書につきましては、第一次協定第三条によれば、わが国贈与を受ける農産物は、千二百万ドルをこえない小麦及び脱脂粉乳並びに、一百万ドルをこえない綿花となっておりましたが、その後両国政府間の話し合いの結果、綿花分小麦及び粉乳に振り当てることに合意が成立いたしましたので、第一次協定第三条を改正することといたした次第であります。  この協定によりまして、わが国輸入を必要とする小麦大麦トウモロコシ綿花葉タバコ等を六千五百八十万ドルまで円をもって購入することができるほか、その購入によって積み立てられる円資金のうち、ドルに交換された七割、五分、約四千九百万ドルをわが国経済開発のための借款として受けることができ、また第一次協定によって予定されております第一年度の千五百万ドルの贈与に引き続いて、第二年度以降数年間にわたって贈与を受けることにより、わが国児童福祉計画を一段と拡大することができることになるのでありまして、本件協定及び議定書の実施によりわが国が受ける利益は多大のものがあると期待されるのであります。  よって、ここにこの協定締結及び議定書締結について御承認を求める次第であります。何とぞ慎重御審議の上、同件につきすみやかに御承認あらんことを希望いたします。
  4. 前尾繁三郎

    前尾委員長 次に国際情勢等に関する件について質疑を許します。  まず緊急質疑の通告が北鮮帰国問題、小笠原帰島問題に関し、それぞれ岡田春夫君並びに福田篤泰君からありますので、五分間ずつ許すことにいたします。岡田赤夫君
  5. 岡田春夫

    岡田委員 理事諸君のお許しをいただきまして緊急な問題を五分だけ質問したいと思いますが、私の伺うのは平壌会議の問題です。きょうの各紙を通じてみても報道されておりますように、かしねてから平壌において、朝鮮民主主義人民共和国と日本との間で、帰国問題について交渉が進められておりましたけれども、本日の新聞によると、この平壌会談が暗礁に乗り上げて、日本側代表から、流産のほかなしという電報日赤本社に入ったというように伝えられております。このような決裂危機に立って考えてみました場合、もしこれが決裂してしまうとするならば、朝鮮に在留いたしております日本人が、帰ってくることについての見通しが立たないというような結果に終りますだけに、事態はきわめて重大であると考えます。その意味においてこの決裂危機について、政府としてはこれをどのようにお考えになるのか、決裂もやむを得ないとお考えになっているのか、決裂をさせないようにしなければならないとお考えになっているのか、この点についてまずお伺いをいたしたいと思います。
  6. 中川融

    中川(融)政府委員 私からまず経過を御説明いたします。ただいま御質問になりました平壌会談でありますが、これは御承知のように、日本から参りました日赤代表団は、北鮮におる日本人引き揚げ問題について具体的なことを相談するために参ったのであります。向うに参りまして会談を開いてみますと、先方はその問題と、相互条件というのではないけれども、在日朝鮮人北鮮に帰す問題についても、やはり相談をしたいという意向を表明いたしましたために、会談が非常にむずかしくなったのであります。日赤といたしましても、決して人道上の問題について討議することを拒否するという考えではないのでありますけれども、実行不可能なることを約束したり、相談したりすることはできないという趣旨から、この在日朝鮮人問題は、正式議題には取り上げないで、非公式会談でいろいろ私的な意見を交換するということにして、正式の議題としては、北鮮にいる日本人引き揚げ問題だけを取り上げたいということを今まで主張してきておりました。結局その点につきましては、一つの妥協の方式が今までとられてきたのであります。それは、要するに並行的に相談を進めていこう、つまり正式議題を何にするかということは、正式会議において進めると同時に、日本人引き揚げの問題の具体的なことについては、分科会という形でこれを相談していこうということになって話が進んでいたのでありますが、一昨日の正式会談におきまして、北鮮側代表が、どういうことを議題にするかということがまだきまらないうちに、この在日朝鮮人問題等についての共同コミュニケ案というものを先方が出したのであります。従って日赤代表団は、議題がまだきまらないうちに、その議題がきまることを前提としたそういう共同コミュニケ案を出すということは、今までの話し合いと違う、こういうことで、この会議がこういう状況であるのでは、いつまでたっても日本人引き揚げ問題ということが相談できない状況になる、こういう状況であれば、われわれとしてはいつまでもおるわけにいかないから、日本に帰るほかないように思うという趣旨を述べたようであります。その結果、東京日赤本社あてにも電報が参りまして、そういう経過の報告があったわけであります。これについて日赤本社としては、あくまでも今度の使節団の使命は、北鮮にある日本人引き揚げの問題が主眼であったのであるから、その問題はぜひとも何とかし遂げて帰るように、もう一段努力してもらいたいという趣旨電報を、昨晩打ったということを聞いております。なおその際、在日朝鮮人の問題は、両赤十字間のみで話しても、これは結局解決のつかない問題であるから、さらに一段高い国際赤十字の段階において、この問題を討議するということを提案してはどうかということも電報した、かように聞いているのであります。もちろん政府としては、この北鮮引き揚げ問題ということを、ぜひ実現したいという熱意に燃えていることには変りがないのであります。
  7. 岡田春夫

    岡田委員 これは森下政務次官に伺いたいのですが、事情がどのようになっておっても、その結果として決裂するということになると、日本人が帰ってこれないということになります。ですから、ここは事態きわめて重大であるので、こういう決裂危機に立って、決裂してもやむを得ないと考えているのかどうなのか、政府としての意見をもう二度、外務省代表する政務次官としてはっきり伺っておきたいと思います。政務次官一つ答弁を願いたいと思います。
  8. 森下國雄

    森下政府委員 お答え申し上げます。ただいまアジア局長から政府意見を申し上げたように、私といたしましても、この問題を決裂させて帰るというようなことは、絶対に希望いたしておりません。あらゆる努力を傾けてこの問題を解決して帰ることを希望いたしております。
  9. 岡田春夫

    岡田委員 それから、一部伝えられるところによると、決裂をしないにしても、一時葛西団長が帰国をして政府側と打ち合せをする、こういうようなことが伝えられておりますが、そういう事実関係は――これは緊急質問ですからあまり伺う時間がありませんけれども、私はこの重大なときに、団長が一時帰国するということは、適当ではないと考えるのだが、この点についてはいかにお考えになるか。少くともこの危機のさなかにおいて、団長が一時帰ってくるということは適当じゃないと私は考えるのだが、政府としてはこれについてどのようにお考えになっておりますか、これも政務次官に伺いたいと思います。
  10. 森下國雄

    森下政府委員 政府としては、まだそういう引き揚げるということを、正式に聞いておりません。
  11. 岡田春夫

    岡田委員 もしそういうようなことが予測せらるるような場合には、どのようにお考えになりますか。
  12. 森下國雄

    森下政府委員 予測でありますが、そういうことに対しまして、やはり最善の策をとること以外に方法はないと思います。
  13. 岡田春夫

    岡田委員 この一点で終えますが、危機を回避するために、政府としても努力するという言明を伺ったわけでありますが、日本側の公電によると、流産やむなしというようなことが伝えられているのにかかわらず、反面平壌放送によると、分科会においては、すでに日本人の帰国問題について具体的な話し合いが、両者の間において一致を見た、このように実は伝えられているわけであります。従って先ほど中川アジア局長答弁されましたように、二つ会議が並行して行われて、分科会の方で話がまとまったものは、本会議でこれを取り上げて解決をしていく、こういう方式をとっているわけですから、日本人の帰国問題については、分科会ですでに意見一致を見た。そうなると、ここで何とか本会議を開いて話し合いのできる方向に持っていくのが、日本側態度でなければならないと思う。そうでなければ、分科会だけできまっておっても本会議できまらないために、この問題についても妥結に至らないという結果になると思うのでありますが、この点に関連して、分科会ではこのようになってきたのであるから、本会議を続行させられるように、これを日本政府としては努力することが必要だと思う。なぜならば、本会議を一応打ち切るという形をとったのは、いろいろな事情があるにしても、ともかくも日本側の方で打ち切っているわけですから、これを本会議に持ち出して、問題を継続さしていくように努力すべきだと思うのだが、この点はいかがお考えになりますか。私たちは、ぜひこの点について強力に政府が要求されて、実行されるように希望したいと思うのであります。
  14. 中川融

    中川(融)政府委員 日赤本社が昨日打ちました電報というのは、ただいま岡田委員の言われましたような趣旨も含んでおると考えるのでありまして日本人引き揚げ問題をぜひまとめるようにもう一段努力せよ、こういうことを言ってありますので、結局この分科会でもしきまったことがあれば、できるだけ本会議で実を結ばせて話をつけるということに全権団も努力することと考えております。
  15. 岡田春夫

    岡田委員 それは日赤として努力すると思うのじゃなくて、政府がそのようにさせるように努力しなければならないと思うのだが、この点はどうなんだということを伺っているのです。日赤がどうするという問題ではないのです。これは森下さんどうです、お答え下さい。
  16. 中川融

    中川(融)政府委員 御承知のように、政府日赤に訓令はできないのでありまして、日赤日赤として活動しておるのでありまして政府はいろいろ意見を言うだけであります。もちろん政府としてはできるだけ日赤相談して実を結ばせることを希望しておることは変りないのであります。
  17. 穗積七郎

    穗積委員 関連質問ですから、一回だけ簡潔にお尋ねいたしますから、また聞き直さなくてもいいように明瞭にお答えをいただきたいと思います。この問題は言うまでもなく日赤同士話し合いですから、日赤方針意思決定に対して外務省が干渉すべきではないと思う。ただしかしながら実際を見ておりますと、外務省意向というものが日赤意思決定に重大なる影響を与えていることは、われわれは見のがすことはできません。そこで私は、それは日赤がやるとかやらぬということではなくて外務省の御意向や御希望を伺うのですから、そのおつもりでお答えをいただきたいと思う。  第一にお尋ねいたしたいのは、この前からも問題になっておるように、日本人引き揚げ問題を討議してよろしいということを、すでに日赤側から向う電報を打っております。われわれが行って北鮮におる日本人引き揚げ問題いついて話し合いをしたい、それについては日本におる北鮮人の帰国問題についてもあっせん努力する用意があります、そしていわば議題二つにして話し合いをする用意のあることをすでに電報で打っておる。にもかかわらず今度は、在日朝鮮人帰国問題に対しては触れられない態度、口を緘して語らざる態度をとらしめておるのは、外務省がこれを欲しないからでございます。そこで外務省はなぜそういうことを欲しないかといえば、一にかかってまさに南朝鮮、すなわち韓国に対して与える影響考えておられることに尽きると私は思う。そこで私はそういう状況のもとで三つのことについて一括してお尋ねいたします。  まず第一は、この最近の経過について、韓国政府または韓国赤十字社から、外務省または日赤本社に、何らかの意思表示かあるいは壷制するような拘束があったかどうか、その事実をお尋ねいたしたいと思います。もしあったとするならば、関連してそれに対してどういう返事をし、どういう態度政府並びに日赤はおとりになったか、そのことをお伺いいたします。それが第一問。  第二は、これは外務省関係することですから、外務省意向を率直にお尋ねいたしますが、この引き揚げ問題だけでなく、李承晩ラインの問題にしましても、漁業協定の問題にしても、貿易問題にいたしましても、また文化交流問題等にいたしましても、実はすべて韓国の無理解な態度、極端な言葉を使えば気違いじみた態度のために閉塞したままで、無理が通れば道理が引っ込むようなことで、憎まれっ子世にはばかるようなことで日本はこれを許しておる。こういう日本側態度が、かえってこの問題解決のために非常に障害になっていると私は思うのです。そこで保守党の者君は、ここで武力を持ち出せというようなことを時には言われるわけだが、そのような愚劣なことをわれわれは言うのではなくて今日国際外交交渉において、もっとき然たる態度をもって進むべきところに進むへきだ。すなわち北鮮との関係におきまして、人道上の立場で引き揚げ問題を促進することは当りまえのことなんだ。さらに漁、天問題、貿易問題、文化交流、従って日韓関係においては、たといこれ以上おくらしても、現在としては日本は何ら利益として失うところはございません。ですからむしる韓国に対しては、そういうことで臨むべきだと思うが、外務省の最近の情勢判断はどういうことになっておるか、これが二点。  最後に第三点は、これはもとより日赤の人事でございますから、外務省がとやこう言うべきではないが、感想を伺う。今度参りました日赤代表する葛西団長は、われわれの見るところでは、その人柄、ものの考え方や、今度行きまして交渉経過等を見ておりますと、まったく属吏のたぐいであって、何ら日赤人道主義的な国際的な精神というものを理解しない態度でございます。これがむだに机手側に対して誤解を招かしめ、円満弾力性をもって次官が希望されるような交渉が進められる方法や余地があるとわれわれは考えるにかかわらず、これが全くつまらぬことでつまずいて、つまらぬことで決裂しようとしておる。そこでわれわれとしては、こういう人道問題を話し合う代表としては、はなはだしく不適任だと、われわれは国民の一人として感ぜざるを得ない。外務省御所感はどうでございましょうか。この所感を伺っておきたいと思うのです。
  18. 中川融

    中川(融)政府委員 第一の御質問でありますが、韓国政府がどういう態度をとっておるかということでありますが、これは日本が前途何らかの形において、たといどのような機関がするのであろうとも、北鮮関係を持つ、交通する、話し合いをするということには、一貫して反対という態度をとっておるのでありまして、今回日赤代表北鮮に行くという話が出ました際にも、韓国側からは、そういうことは一切自分らとしては承認できない、これから起きる結果については、全部日本政府が責任を負うべきであるというようなことを言ってきておるのであります。日本側といたしましては、決してこの韓国態度に遠慮をして、北鮮における、あるいは日本における朝鮮人の帰国問題を討議するということについて外務省が難色を、示しておるというわけではないのでありまして、これは、人道上の問題である北鮮からの日本人引き揚げを、いかに支障なく実施するかという意味合いから、日本政府としては慎重な態度をとっておるのでありましてその意向日赤にも伝えておるのであります。それは日本人引き揚げということが、今回の話し合いの結果として起るわけでありますが、その際にいわゆる李ラインの中を船が通るわけでありますが、その際の安全の問題といたしましてこれがただいま日本にいる朝鮮人北鮮帰国問題等を議する場合には、その点において韓国側態度について疑念を持たざるを得ないのであります。これは韓国側が初めから弾い態度をとっておりますが、全くの日本人引き揚げ問題だけであるということであれば、韓国側も特にこれに対しているいろの妨害をするということはないであろうとわれわれは観測しておるのであります。もっぱらこの北鮮にいる日本人引き揚げ問題を円滑に実施するという趣旨から、われわれは心配しておるのでございます。  なお葛西団長人柄につきましては、われわれは非常な敬意を払っておるのでありまして、目下の交渉が非常にむずかしいというのは、やはり日赤といたしましては、実行不可能な約束を先方とするというようなことは、とるべき態度でないという見地から出ておるのであろうと私どもは推察しておるのであります。葛西団長に対して不信任その他の考えは全然持っておりません。
  19. 穗積七郎

    穗積委員 韓国赤十字社から何か言ってきていますか。
  20. 中川融

    中川(融)政府委員 韓国赤十字社からは何も言ってきておりません。
  21. 前尾繁三郎

  22. 福田篤泰

    福田(篤)委員 緊急にして重要な問題を結論的にお尋ねいたします。  本会議ですでに満場一致で採択せられ、さらにまたわが党におきましても本一月に党議としてきまったいわゆる小笠原島民の帰島問題、これは来月の重大なダレス長官来訪を期にしまして、日米会談において、当然重要な一日も早く解決しなければならない問題として取上げられると思いますが、この点についてお伺いいたします。
  23. 中川融

    中川(融)政府委員 小笠原旧住民の方々を小笠原にお帰しするという問題は、政府が前から非常な力を尽して努力しておるとこるでありまして、あらゆる機会をとらえましてこれをさらに推進するという方針変りないのであります。もちろん御質問になりましたような機会はぜひ利用したいと考えております。
  24. 福田篤泰

    福田(篤)委員 先般同僚の菊池委員質問に対しまして下田条約局長答弁が一部誤まり伝えられておりますので、ここで緊急質問をしたいと思います。というのはまず三つ考えです。  第一は島民を全部帰したい。無理ならば一部帰したい。さらにはどうしてもだめならば賠償を取りたい、私はそういう意思政府に全然ないと思うのでありますが、この点をはっきりと強硬にして一貫した御答弁をいただきたい。というのは、御承知の通りかつての岡崎・ラドフォードの三者会談のとき、アメリカ側提案として、金でこれを済まそうとしたことがある。そのとき局民は全部金で島は売れないというのでけったことは御承知の通りであります。私は昨年十月現地で国務省の方と下折衝しましたときにも、これについては十分腹のあることは確かめてきております。しかし帰島しようにも島に帰れない場合、不幸にしておそくなった場合でも、当然特損法に準じ、われわれの請求権があることを確信しております。従ってもし帰れない場合は、賠償にするというのはアメリカの一部の不見識の者の策に陥るものであります。賠償は、帰ろうが帰るまいが当然要求しますが、日本人の要求としては、第一義的に島に帰す。しかも今月の初めに行われました国防省と国務省の会談におきましても、長時間いろいろ論議せられたと承わっておりまして結論が出ていない。もう一歩というとこるです。この大事なときに帰れなければ金を取って済ますのだということがもし誤まり伝えられたならば、日本の損失はかり知れざるものがある。この重大な現段階において交渉中の問題ですから、この点政府としてはっきりおきめになる前に御答弁いただきたい。
  25. 下田武三

    下田政府委員 私の御説明から起りました誤解でございますので、まず私から釈明をさしていただきまして、そのあとで具体的の交渉内容につきまして、アジア局長から御説明いただきたいと思います。先般の委員会菊池委員から帰島問題の交渉について御質問がございまして、もちろん日本政府として、は、かねてから非常な努力を払って、帰島の実現に努力しておるわけでございますが、もし令部の人間が一ぺんに帰ることがむずかしいなら、グループ・バイ・グループで順を追って、帰るということでも早く実現してもらいたいという方針交渉しておるということを申しました。そうしましたら菊池委員から重ねて、しかしなかなか帰島が実現しないうちには、関係者は非常な困窮の状態に陥っている者もある。そういう困窮者に対して何らかの補償を要求することはしないのかという御質問が重ねてございましたので、今その補償の要求もいたしておるのである、そういうようにお答えしましたのでありまして補償さえもらえば、帰島の方はどうでもいいというような意思は毛頭ないわけであります。あくまでも第一の要求は帰島自体である。また帰島がおくれるためのその間の困窮者に対する補償ということも、同時に取り上げて折衝しておるという趣旨で申し上げたわけであります。
  26. 中川融

    中川(融)政府委員 住民の方がお帰りになる問題と、それから補償の問題とは全然別個の問題でございます。性質の違う問題でありましてこれとどっちかうまくいかなかったらどっちという趣旨のものでは決してないのでありましてこれは並行的に先方交渉すべき問題であると考えておりまして、交渉の段階等につきましては、住民をお帰しすることが一番大事なことでありますので、それに支障のないような方法をいろいろ考慮しながら、補償の問題を別途進めておるわけであります。
  27. 前尾繁三郎

    前尾委員長 緊急質問はその程度にし、まして次に移ります。並木芳雄君。
  28. 並木芳雄

    ○並木委員 最初にこの前質問して答弁が残っておる、北海道に落されたソ連の気球について下田局長に質問いたしておきます。先般来ソ連からの気球が北海道に落されたという報道があったのですが、政府はそれを調査するということでございます。すでに数日たちますので調査ができておると思いますが、果してソ連の気球が日本に落ちてきた事実があるのかどうか、またその事実があるとするならば、日本政府はこれに対してどういう措置をとろうとするのか、答弁を願いたいと思います。
  29. 法眼晋作

    ○法眼政府委員 お答えいたします。これは調べましたところが、その上に書いてある文字によりましてロシヤ文字がありました。これはソ連製のものであることが大体間違いないことがわかりました。実はここべ写真を持って参りませんでしたけれども、写真もとってございます。しかしこれはいかなる性質のものであるかということにつきましては、目下これを関係方面と検討中でございます。これは長さ、幅員ともに一メートル以上ではないかと考えております。
  30. 並木芳雄

    ○並木委員 幾つですか。
  31. 法眼晋作

    ○法眼政府委員 二つ落ちました。いかなる性質のものであるかということ好調べております。
  32. 並木芳雄

    ○並木委員 これに対して政府としては放置しておいてはいけないと思いますので、やはり先方の国へ何らかの申し出をする必要があると思いますが、いかがでしょうか。
  33. 法眼晋作

    ○法眼政府委員 この点は風船玉の性質を調べております。慎重研究いたしてからお答えいたしたいと思います。
  34. 並木芳雄

    ○並木委員 次に先ほど岡田委員から日本人北鮮からの引き揚げについて質問がありましたが、私は中共からの引き揚げについて聞いておきたいと思います。ゼネヴァの田付総領事を通じて交渉をしておりました中共の引き揚げの問題ですが、いわゆる中共からの日本政府あての書簡問題でこの話がとぎれてしまって、本来の引き揚げ問題は遠ざかっておるように感じております。そこで私はぜひこの機会にお伺いしたいのですけれども、あの書簡問題を契機として中共からの引き揚げの問題はそごを来たしてしまったのであるかどうか、その点をあわせてお聞きしたいと思います。
  35. 中川融

    中川(融)政府委員 中共からの引き揚げ問題は、日本政府といたしましては中共政府と直接ジュネーヴにおいて話し合いをするという方針で進んでおるのでありますが、御承知のように先方はこの問題は民間団体レベルですでに話がついておるので、そのルートでやればよいのであるという態度をとっておるのであります。従ってジュネーヴでの話が一応停頓いたしましても、それによって引き揚げの問題がおくれる、あるいは停頓したというふうには必ずしも見れないのではないかと思っております。最近引き揚げがございませんが、これは今北鮮に行っております日赤葛西団長が帰る際に、北京で先方意向をさらに聞いてくるという手はずになっておるのであります。何とかわれわれとしても朗報が入るのではないかと考えております。
  36. 並木芳雄

    ○並木委員 それは新たなる事態が出て参りました。きょう聞いてそれならばまた帰る道が開かれるという曙光を見出したのですけれども、そうすると、中共政府でしばしば言っている、日本との間で国交を正常化したいという書簡があるなしにかかわらず、民間団体の間の交渉引き揚げの方は切り離して実現できる見通しである、こういうふうに了解されますが、その通りでございますか。
  37. 中川融

    中川(融)政府委員 実際問題としてさようなことになっておると考えております。
  38. 並木芳雄

    ○並木委員 それは非常にけっこうでございます。それとともに前に園田政務次官のときに、日本政府としても中共からの引き揚げの問題については、場合によっては政府代表を派遣してもよろしいという、言明がございました。従ってそれは現在も政府部内で生きておると思いますが、何か特別の政府からの使節あるいは代表を派遣する御意思はございませんか、中共の引き揚げの問題の交渉についてであります。
  39. 中川融

    中川(融)政府委員 ただいま御説明いたしましたように、日本側といたしましては、これを政府レベルで話してもよいというので、わが方のジュネーヴの総領事が先方のジュネーヴの総領事と話しておるのでありますが、先方はそういう方式を在留日本人引き揚げ問題については別に考えなくてもよい、民間レベルで話ができるという態度をとっておるのであります。そういう際に日本からまた中共自体に政府の使節を派遣して、引き揚げ問題を検討するということは、ただいま考えていないのであります。
  40. 並木芳雄

    ○並木委員 とにかくこの問題は非常に重要ですから、民間団体の間で交渉が開かれ、そうして進捗するものであるならば非常にけっこうだと思いますから、政府としても特段の努力を払っていただきたいと思います。それについて、きのうの新聞でございましたか、今度は逆に駐日ソ連代表部の要員が全部日本から引き揚げるという、総引き揚げの説が報ぜられております。これは日ソ交渉の成り行きともからみ、何らか日ソ交渉を好転せしむるために一斉退場、総引き揚げをやるのではないかというところまで書かれておるのでございますが、こういう気配があるとするならば、政府としても当然その情報をキャッチしておると思います。この点について御報告をいただきたいと思います。
  41. 法眼晋作

    ○法眼政府委員 御承知のごとく、いわゆるソ連の代表部なるものは対日理事会に派遣されましたものであったのでございます。これが講和発効とともに当然消滅すべきものでありまして、消滅したのであります。ただその人たちがおることを黙認しておるという状況でございまして、これは私人でございます。従いましてこういう私人がいつ帰るか帰らないかということにつきましては、これはその当該の方々の実は御自由と申しますか、お帰りになることにつきましては、別に抑制すべき性質のものではない、こう理解しております。お話しのようないろいろなうわさにつきましては、世上いろいろうわさバ行われておるということは承知いたしておりますけれども、さしあたっては特別に深くせんさくすべき性質のものではない、こう考えております。言うまでもなく、日ソ交渉はロンドンで両全権の間で行われておりまして、これが唯一のチャンネルであるということは、しばしば御説明いたした通りでありすます。
  42. 並木芳雄

    ○並木委員 ソ連代表部全員が私人であるというならば、これは単なる外国人ということになりますから、当然いろいろの法令に従って外国人としての手続――登録とか、いろいろの手続があります。そういう手続を踏んでおると思いますけれども、そうなっておりますか。
  43. 法眼晋作

    ○法眼政府委員 先ほど御説明申し上げましたように、これは元対日理事会に派遣されておりました代表であったわけでございます。それが消滅いたしましたあとは、いろいろ過去において先例があることでございますから、そのままに放置して従来やっておったようなやり方を実は単に黙って認めておるという事実状態でございます。従いまして性質は私人でございますけれども、従来対日理事会に派遣されておったときに持っておった関係をそのまま放置してある、そういうことでございます。
  44. 並木芳雄

    ○並木委員 どうも、独立はしたけれども、こういうあいまいにして私どもには理解に苦しむようなステータスが多いので困っております。そのもう一つの例は日本におります元の台湾人であります。実はごく最近台湾共和国臨時国民議会、その議長の郭泰成さんという人から案内状をいただきました。それを見ましたところ、台湾の二・二八革命第九周年記念会及び台湾共和国臨時政府成立、大統領、副大統領の就任式並びに祝賀会を左記により開催いたしますから、万障お繰り合せの上御出席相なりたい、こういう招待状であります。そして二月二十八日の午後二時から五時までやるということであります。それでお伺いするのですけれども、元の台湾人は平和条約で新しい中華民国の国民になっておるはずだと思うのです。それはその通りであるかどうか。するとそれらの人は当然外国人として日本でやはり諸般の手続を踏んでおると思いますけれども、その点はどうなっておるのか。日本は中兼民国との間で平和条約を結んでこれを承認しております。その独立を認めておる国の国民が当の日本におって、そうしてこういう独立運動だけではなく、すでに大統領就任式というのですから相当なものであろうと思うのです。そうしてその祝賀会をやるというのですから、これは単なる独立運動に奔走しておるという程度とははるかに違っていわばここで独立国家を作ろう、こういう式なんですから、政府としてもこれに無関心ではあり得ないと思いますから、その見解を聞いておきたいのでございます。ことにこういう場合の取扱いについては、国際間においても何らかの国際法あるいは取りきめ、国際慣習などがあるはずでございますので、あわせて答弁していただきたいと思います。
  45. 中川融

    中川(融)政府委員 旧台湾に本籍がありました方々が、日華平和条約発効とともに中華民国籍になったと認められておるという点は、ただいまの御指摘の通りであります。従って日本におる台湾出身の方々は中華民国人であるということになっており、従って外国人の取扱いを受けておるわけであります。台湾独立運動というものが最近いろいろ新聞紙上その他表に出てきてお出るのであります。日本政府としては国民政府と正式国交関係にありますので、その国民政府と両立し得ない台湾独立政府を作るという問題は、日本政府としても無関心ではないのであります。これについてはこのようなことが国内において行われておるということには非常に迷惑を感じております。しかしながらそれではこれを今すぐ禁止というか、集会を禁止するということができるかと申しますと、なかなか現在の法規上はこれがむずかしいのでありまして、ただいま御指摘になりましたような二十八日に祝典をするという問題につきましても、いろいろ治安当局、警察当局とも相談しておるのでありますが、法規上はなかなかこれが禁止ということはむずかしいということになっておるのであります。しかしながらぜひこのような事態は国民政府との関係もあり、阻止したいと考えまして政府はこの運動しておる人たちに来てもらいまして、こういうことをするのは非常に困るということで説得をいたしております。しかしなかなかその説得も法的根拠がございませんので、先方が聞くという段階まで至ってないのであります。できるだけそういうことは阻止したいと考えております。なお、では今のそういう運動がどの程度の限度まで達したならば、日本政府として法的措置をとり得るかということになりますと、やはりこれが直接台湾にあります国民政府をくつがえすというような意味で、何か実際的な措置をとる。たとえばここで兵隊を集めて向うに進撃する態勢をとるとか、具体的に、現実に国民政府の転覆のような行動をとるおそれがあるという場合には、それは日本政府として法規上の処置をとり得るのではないかと考えております。今のところは勧告でこれを阻止することにできるだけ努力するということが、なし得る限度というふうに考えます。
  46. 並木芳雄

    ○並木委員 今何人くらいおりますか。
  47. 中川融

    中川(融)政府委員 旧台湾関係の人は、たしか四が人くらいおると思います。
  48. 並木芳雄

    ○並木委員 中華民国政府からは何かこの点について日本政府に申し入れがございましたか。
  49. 中川融

    中川(融)政府委員 中華民国政府からは数次にわたりまして口頭及び文書をもって、このような運動は中華国交に害があるから、ぜひこれを阻止するように努力してもらいたいという申し出が来ております。
  50. 並木芳雄

    ○並木委員 台湾の島の中においても、こういう運動はやはり相当盛んになってきているのでしょうか、向う事情はどうですか。
  51. 中川融

    中川(融)政府委員 台湾内部においては、このような運動で力のあるものはないと承知しております。
  52. 並木芳雄

    ○並木委員 条約局長、国際法上の何か答弁がありましたら、今の点についてつけ加えて下さい。
  53. 下田武三

    下田政府委員 アジア局長がその点もお答えになりましたが、つまり一国は自国内で行われた他国政府の転覆について阻止する義務があるかどうかという問題でありますが、中川局長がお答えしましたように、それが軍隊の募集であるとか、あるいは武器の収集というような、実力を持って転覆の目的を達するというような具体的な動きになりますまでは、国際法上もそれを阻止する義務がないと考えております。  もう一つ国際法上の問題になりますのは、犯罪人引き渡しの問題でありますが、これは政治犯罪人でありましたならば引き渡さないでいいという原則があります。現在の独立運動者を台湾政府がいわゆる政治的犯罪人として考えておるかどうかという点は、まだそこまではいっていないのではないか。引渡し要求等も台湾政府から来ておりませんので、これもまだ現実の国際法上の問題とはなっておらない次第であります。
  54. 並木芳雄

    ○並木委員 あと質問があるのでしょうね。――それじゃもう一つだけお伺いします。  それはアメリカの原水爆実験です。われわれの悲願にもかかわらず、アメリカは来月の末ごろから再びエニウエトクで実験を数回にわたりやると報ぜられております。今度やる場合には、当然日本政府に事前に通告するという約束でありますから、すでにその申し入れがあったかと存じます。私は特にお伺いしたいのは、今度あれほど国会でも決議し、政府が申し入れても、どうしても今回の実験をやめることができないのであるとするならば、どうしても仕方がないとするならば、今度は日本からも私は代表を派遣してオブザーバーの申し入れを政府はすべきだ、こういう感じを持っておるので質問するのでございますが、事前通告について何かございますか。
  55. 千葉皓

    ○千葉政府委員 お答えいたします。まだ日本政府からいたしました申し入れに対して正式の回答はございません。
  56. 並木芳雄

    ○並木委員 そうすると、来月の末ごろから数回にわたってやるという実験の予告通告はまだないというわけですか、それについてお伺いしたい。
  57. 千葉皓

    ○千葉政府委員 たしか昨年末であったと思いますけれども、一たんこの春のそういう一連の実験をするという意味の先方の公表がありました。そのことはそのことでありますが、その後そのことにつきまして、事前通告その他を要請する申し入れをいたしました。その申し入れに対しては、まだ回答がないわけです。
  58. 並木芳雄

    ○並木委員 今度決議が新たになされ、もろもろの申し入れが行われたことについては、あらためて事前の通告を必要とするというふうにわれわれは了解しておるのでありますけれども、その昨年の通告がまだ生きているというふうに政府考えておるのですか、あらためて通告がなければいけないというふうに考えておりますか。
  59. 千葉皓

    ○千葉政府委員 前広に通告をしてくれるようにと申し入れしたわけでありまして、そういう申し入れがあることを期待いたしております。
  60. 並木芳雄

    ○並木委員 どうしても実験をやるのだったらば、私は今度こそは日本からもだれか派遣すべきだと思うのです。向うでそういうことを言っているのですから。学者を幾人か、それから国際連合の関係諸国の間から代表を数名招聘して、この実験に立ち合せてもよろしいということを計画を立てておるのでありますから、進んで政府はこの際アメリカに申し入れをすべきである、こういうふうに私は感じております。
  61. 千葉皓

    ○千葉政府委員 ただいまのようなことにつきまして新聞報道がありますたことは承知しておりますが、アメリカ側から何らそういうことについて正式に意思表示がございませんので、まだそういうことについて考えておりません。
  62. 並木芳雄

    ○並木委員 私次官にお伺いしたいのですけれども、まだ今の段階ではそれはその通りだと思います。しかしそういう報道があるのですから、この際政府はそれをお考えになって、アメリカに申し入れをした方がいいと思うのです。また被害を受けたら大へんでございますし、現場を見ることは私は非常に必要なことだと思う。ですから国連加盟の数カ国に対してそういう招請をするなら、当然日本に対してもするようにこちらから積極的に申し入れをした方がいいと思う。
  63. 森下國雄

    森下政府委員 仰せの通り重要なことでございますので、このことは取り急ぎ研究して、処置を講じたいと思います。
  64. 前尾繁三郎

    前尾委員長 森島守人君。
  65. 森島守人

    ○森島委員 私はこの委員会で前後二回にわたってこの問題について質問をいたしました。しかし両回とも委員会の散会直前で五、六分の時間しか与えられなかったので、きょうは政務次官下田条約局長も法眼参事官もおられますので、御質問したい。いずれ私は外務大臣及び総理大臣の出席を求めて、御両人立ち会いの上で御質問をするつもりです。その前提として御質問いたします。政治的なことは私は大臣に御質問いたします。  第一にお伺いしたいのは、前回の委員会でも私は明らかに申しました。下田条約局長はクーリールというものと千島とは見解を異にしている、一致していない、全然別個の問題だということをはっきりこの委員会で明言しておられます。この見解は、政務次官としては政府代表して政府の公的なる立場を表明したものと了解してよろしいかどうか、この点を念のために伺っておきたい。
  66. 森下國雄

    森下政府委員 さようでございます。
  67. 森島守人

    ○森島委員 そういたしますと、私前回も指摘したのでございますが、日本の平和条約日本語の訳の中には、千島列島という字を特に明記しております。英文やその他にはクーリール・アイランドとなっております。クーリールと千島列島が全然別個のものであるという政府の御答弁でありますならば、私は日本語に使っている千島列島というものは誤訳であるか、あるいは誤訳をアメリカ側から提示され、誤訳をそのまま政府として受け入れているものと解釈せざるを得ないのでございます。この点に関する見解を念のためさらに政務次官から表明していただきたい。
  68. 下田武三

    下田政府委員 まず私から御説明したいと思うのですが、クーリールと千島というのは全然別個のものだとは申しておりません。クーリールというのはあそこの先住民の土語でございます。日本の千島というのは、たくさん島があるから千の島と書いてあるわけであります。クーリールというのは千の島という意味じゃございません。何という意味でございますか忘れましたが、全然違った意味の言葉であります。それがたまたま同じ方面に位置する島々でありますので、慣習的にロシヤ人等はあれをクーリールと言い、日本人は千島と育っておったわけであります。そこで大部分の島は一致するわけでございますが、元来慣習的に使ってきた言葉でありますから、それではどの島が千島であるか、どれとどの島がクーリールであるかという、両方ぴったり合ったデフィニションがないということであります。大部分は両方の言葉でカバーされておりますけれども、その正確なデフィニションはないということで使っております。唯一の正確な条約上のデフィニションは、一八七五年の日露間の条約であるということも先般お答え申し上げた通りであります。
  69. 森島守人

    ○森島委員 政務次官から御答弁はありませんか。
  70. 森下國雄

    森下政府委員 その通りでございます。
  71. 森島守人

    ○森島委員 下田条約局長ともあろう人が、はなはだ詭弁めいた御答弁で私は驚き入ったのです。あなたは議事録にはっきり言っている。その議半録を一々読んでもいいのですけれども、ここでも「クーリールと千島が一致するという見解は一つもないのであります。」、こう言っております。それからもう一つは、「大体日本語の千島とクーリールという言葉はちっとも一致するとは感じていないのでございます。」、そこで私は詭弁だと思うのです。樺太千島交換条約をごらんになりますと「クリル」という字を使って、そのもとにすなわち第一は何の島、第二は何の島というふうにして十八の局の名前を列挙して明記しておると私は思っております。これほど明治初年の外交官ですら、クーリールの範囲を明確にするためにわざわざ注釈的に入れておるのを、一致した見解でないからとかいうことを御承知のままで、条約の翻訳文にクーリールを千島と、観念の違った字をお用いになっておる。私はこれは外務事務当局といたしましては非常に大きな失態を来たしておる、こう信ぜざるを得ないのでございます。この点に対して条約局長は、前の条約局長のやったことだからとお逃げになるかもしれませんが、外務省全体としては非常に重要な問題であると思う。この点に対する御見解を政務次官から政府代表して、責任のある御答弁を求めたいと思います。
  72. 下田武三

    下田政府委員 私から……。
  73. 森島守人

    ○森島委員 条約局長でない、政務次官から……。
  74. 森下國雄

    森下政府委員 条約局長から説明いたさせまして、あとから御答弁いたします。
  75. 下田武三

    下田政府委員 そのようにあいまいなクーリールという言葉を、平和条約日本文のテキストで千島という用語で訳したことは、まことに任務当局として不用意ではないかというおしかりでございますが、ごもっともなおしかりだと思うのでございます。しかし、しからばクーリールをほかの字に訳し得たかと申しますと、やはり慣習的に同じ方面の島々をさす言葉として千島という言葉があるのでございますから、慣習的な意味で訳をしたと私どもは了解するのでございます。平和条約の他の領土条項を見ますと、南方ですと北緯二十九度以南の島というようにぴったり出ております。千島につきましては御承知のようにどの島というようにデフィニションができないために、あいまいなクーリールまたは千島という言葉を使い、そして会議の際に吉田全権がその島の範囲につきましての日本側の見解を述べまして、そして公式議事録に記入してもらう、そして一切の地理的範囲の決定を将来にまかすという措置をとっておるのであります。   〔「語源の問題じゃない、境界線はどうなんだ」と呼ぶ者あり〕
  76. 森島守人

    ○森島委員 政務次官、御答弁願います。
  77. 森下國雄

    森下政府委員 下田条約局長の説明した通りでございます。   〔発言する者多し〕
  78. 前尾繁三郎

    前尾委員長 静粛に願います。
  79. 森島守人

    ○森島委員 そういたしますれば私から重ねてお尋ねしたいのですが、何ゆえにクーリールならクーリールとはっきり日本文にお書きになって、今お話しになったような誤解を避ける措置をとらなかったか。事務当局としても大臣としても、その政治的責任はきわめて大きいものだ、私はただでは済ませぬ問題であると思っておる。その点についてはいかがでありますか。
  80. 下田武三

    下田政府委員 作から条約日本語を作るときには、もしその横文字に該当する日本語があるならなるたけ日本語を使うべきだということは、枢密院に条約がかかっておった時代からのことで、かたかなでそのままの音訳を羅列しまして、しかられたこともずいぶんございますので、国会で条約の御審議を願うようになりましてからも、それに該当し、もしくは近い日本語が慣習的にありましたらやはり日本語を使うという従来の方針に従ったものと思います。他の問題でもペスカドールとかあるいはボーニン・アイランドという語は、やはりみなそれに該当する日本語がございますので、全部日本語で書いてある、そういう考えで当時使われたと存じております。
  81. 森島守人

    ○森島委員 この問題は日本の領土を決する上において、最も重大なる関係を持っておるものであります。その重大なる問題を決定する条約を翻訳する上において慣習的にやったということでは、私は外務省の事務当局の責任は果せないと思う。現に私が指摘いたしました千島・樺太の交換条約には、クーリールという字を使った先例があるではございませんか。あなたは慣習的にやった、そういうことで事務当局の責任がのがれますか、この点に対する明確なる御答弁を願いたい。
  82. 下田武三

    下田政府委員 一八七五年当時におきましては、まだ千島という言葉は慣習的にクーリールの訳語であるという慣習がおそらく成立していなかったのであろうと思います。自後四分の三世紀を経まして、ただいま千島という言葉も慣習的にあの方面の島をさすということになっておりますので使われたと思うのでございます。ただ範囲が不明確なのになぜ不用意に使ったかというおしかりでございますが、この点は実は日本政府の責任ではないのでございます。千島のデフィニションをはっきりきめてもらったら、もちろんこの領土問題は起っておりません。一に連合国の意見の不一致のために、南方のように北緯何度、幾らということができなかったことは連合国側の責任でありまして、あいまいであるのは日本政府の責任ではごうもないわけであります。
  83. 森島守人

    ○森島委員 今のような詭弁を繰り返されるなら、私はこの平和条約日本の国会において審議されたときの議事録を引用します。これは北澤君もこれを承認せざるを得ない生きた証人です。西村元の条約局長――あなたの前任と思いますが、西村熊雄君は「条約にある千島列島の範囲については、北千島と南千島の両者を含むと考えております。」こうはつきり申されております。それから「なお歯舞と色丹島が千島に含まれないことは、アメリカ外務当局も明言されました。」、逆に申しますれば、南千島は千島に入っておるのだという日本政府の見解をそのままアメリカ政府が是認し、これに同意しておった、こう申し上げて差しつかえないのだろうと私は思うのであります。次に、これは草葉政府委員が十月二十日の会議で言っておられます。前略をいたしまして、「しかし連合国の中における話し合い等があった点にかんがみまして、これが今回の条約において、日本が主権を放棄するという結論に相なった次条であります。」日本が主権を放棄する。そのあとに続けて沿革的なことを言っておられます。これらを見ましても、私は当時の日本政府といたしましては、南千島は南樺太、北千島と同様に、主権を放棄しておったということは明白なる事実であると思います。それだからこそ私は、当時の連合国間における交渉のいきさつ、それからヤルタ協定当時における連合国側のいきさつ等につきまして、資料の提供を政府に求めたのであります。日本側の方はここに資料がありますが、私はどうせ重光大臣にもっと詳しくやるつもりなんです。  ついでに法眼参事官に一つ伺いますが、先ほど私が要求した資料の御提出を、重光さんに要求されたんだから重光大臣が出るまで一つ待ってほしいというお話でございました。そしてきょう用意しておられると付しておられました。何ゆえに、十日間になるか二週間になるかわからぬ重光さんの出席を待ってこの資料を出されんとされるのか、その真意を伺いたい。
  84. 法眼晋作

    ○法眼政府委員 お答えいたします。私が申し上げたのは、森島委員がこの前の会議におきましても重光大臣に資料を求められましたので、事務当局としては用意をいたしておりますけれども、相なるべくは大臣が出られたときにそれを提出いたしまして、その資料についているいろ御質問もあると思いますから、それの方がいいと思ったから申し上げたのでございます。
  85. 森島守人

    ○森島委員 それならあなたの真意はわかりました。しかしわれわれといたしましては、最も重大な7問題をこの委員会において審議しておる。資料は一日も、一刻も早くお出しを願った方がいいので、今お話しの通り御準備がで)、ておるといたしましたら、今日お出しを願います。なおこの点は前回の委員会会において下田局長にも特にお願いをしておいたのであります。  次に私は……。   〔「さっきの答弁」と呼ぶ者あり〕
  86. 下田武三

    下田政府委員 西村前局長の、千島には南千舟は含まれるという答弁を御利用になりましたが、その場合の千島は、むろん慣習的に使われておる千島には南千島が入るという趣旨で答えられたと思います。そしてこれは先ほど来申し上げましたように、千島の範囲につきましてはまだ連合国間で決定がないのでございますから、日本の一局長がそういう見解を示しても、それでもって連合国側のなにを支配することはできないわけでありまして、すべては今後の折衝に待つわけでございます。
  87. 森島守人

    ○森島委員 それは驚き入った詭弁です。それで条約局長の職務が、果してまじめに真剣に履行できるかということを私は伺いたい。まことに不誠意きわまる答弁です。しかし私は一歩譲りましてこれが慣習的に認められておったということを西村局長が言っておるのですから、これも議事録をすっかり読んで、大臣にも十分な準備をして一つこの席へ出ていただきたいということをお伝え願いたい。西村君はロシヤにやったとは言いません。しかし日本が放棄したとはっきり言っておる。それと連合国側できめる、きめぬというのは別個の問題だ。日本が放棄したか放棄しないかということを、あなたははっきり答えていただきたい。
  88. 下田武三

    下田政府委員 放棄すると申しましても、これは条約の規定の実施の問題でございますから、日本が勝手に範囲をきめてこれだけは放棄すると言って、それで済む問題ではございません。放棄する範囲が、実はまだデフィニションができていないので、将来の交渉できめられることでございます。
  89. 森島守人

    ○森島委員 私は放棄したかせぬかをはっきりするために資料の提出を要求しておる。アメリカとしては、一応日本が放棄したという見解をとっているにきまっている。これは北澤君のを引いてもいいんですよ。北澤君は、「ダレス代表は講和会議におきまして、歯舞諸島は千島列島には包含せられないとするのが米国意見である、」と言っておられる。これは南千島には言及がないけれども、反対から言えば、歯舞だけが入っておるので、あとは入らぬと解釈するということは、賢明なる北澤君はお認めになると思う。  私は政務次官にお聞きしたいのですが、こうなりますと、下田君のおっしゃった千島とクーリールとが別個のものであるという見解が正しいのか、また同様なものであるという前提のもとに、南千島を樺太、千島とともに放棄したという答弁をしておる西村君の見解が正しいのか、外務省内におきまして両方全く食い違った見解が行われておる。しかも重光さんは外交の継続性とか、統一性ということに非常に重きを置いておる。しかし三年半のうちに、日本の運命を決するといっていい重大な問題、この問題に対して政府の見解が根本からひっくり返るようでは、国民は外務省に対して絶対の信頼を置くことはできません。こんな外務省に今後の外交の運用をまかすことはできぬのは当然だろうと私は思う。西村君の説が正しいか、あるいは下田君の説が正しいか、どっちかでなければならぬ。政務次官は一体どうお考えになるか、この点について政府代表して、明確なる御答弁をしていただきたい。
  90. 森下國雄

    森下政府委員 お答え申し上げます。少しも食い違ってはおらないと思います。
  91. 森島守人

    ○森島委員 私は非常に食い違っておると思う。これはいう詭弁です。議会を愚弄するもはなはだしい。私は入っておるか、入っておらないか、歴史的な沿革的な点は、これを承認するにやぶさかでありません。しかしその歴史的な事実を承知しておって、放棄したから、吉田さんは、もとはこういうふうになっておりましたということを演説が一方的に言っておる。しかももし入っていないということで、日本の主張がそこにあったといたしましたならば、講和会議の当時において吉田さんはただ演説で言いっぱなしをするということをしないで、責任ある全権なんですから、留保の正式な手続をとるべきだと思う。実は翻訳にいたしましても、私は下田君と意見を異にしておる。習慣的にあったからやった、澎湖島はどうだ、小笠原はどうだと言っておるが、小笠原や澎湖島については別に境界線について異論はない。疑問のあった千島、いわゆるクーリールこそ問題が起り得るのだから、日本政府の見解を明らかにするためには、平和条約の翻説においてもクーリールという字をそのままお使いになるべきであったと思う。この点について外務省の事務当局は非常な大きい責任がある。失態である。西村君は条約局長としてわざわざサンフランシスコまで出かけておる。私は先生がどうだということについてはあえて容豫する権限もないかもしれないが、外務省の事務当局としても、そんな大きなあやまちを犯した西村大使を即時召喚して、これに辞職を要求する、あなた方の見解が正しいとしての前提なら、これに辞職を要求するというのが、政府としての立場じゃないか、責任じゃないかと私は思うのです。この点を一つ明らかに御見解を伺いたい。きょう見解の発表ができなかったら、大臣と御相談になってよるしい。その上で政務次官から私に明確な答弁を求めます。
  92. 下田武三

    下田政府委員 西村前局長がもし今日ここにおりますとしたら、私と同じことを申したと思います。つまり段階が違います。今日はその範囲の不明確な千島の範囲を明確化しようという段階に進んでおるわけであります。まず日ソ間で話をつけて、そうしてさらに必要があれば国際的な措置に出る。そういう場合に慣習的に用いられた千島なる言葉を、今度は条約規定をもって明確に、どの島どの島ということをきめんとしつつあるのが今日の段階であります。そこで慣習的に千島ということの範囲がきまっていないとすれば、今日本側日本側の資料によって、それを日本の主張に沿った線できめたいということであります。西村全権が数年前に答えられました段階では、ただ慣習的に使われた千島というものに南千島が入るか入らぬかという、その点だけの、言葉の問題として言われたのであります。その範囲を決定しようという現実段階に差しかかった今日とは、情勢が違うわけであります。
  93. 森島守人

    ○森島委員 私は条約論からいたしまして、今条約局長の述べたような見解には絶対に賛成ができません。今北澤君が申しましたが、日本に有利にする、南樺太や千島についてはこれを終局的に日本にお返し願いたいということは、わが党も主張しております。ただし私は南千島につきましては、政府当局並びに自民党の諸君と見解を異にしておる。その条件、時期等につきましては検討すべきものだ。政府ではやたらに沿革上、歴史上の事実のみをあげて、南千島は入っていないのだ、こういうふうな見解をとっておる。しかしわれわれといたしましては、あらゆる角度から見て、国際信用の上から、国際的な大局の上から、最も公平なる取扱いをすべきが日本の立場である。日本人として火事場どろぼうをやるような考えでやっておるのではない。そこで私は議会の議事録も重要なる問題を決定すべき資料でありますから、き、ようここに引用したのであります。また講和会議、サンフランシスコの平和条約会議当時におけるいきさつも、非常に重要な資料であります。そこで下田君にもこの資料の提出を求めた。下田君は、何かパンフレットがありましたね、あのパンフレットの中にみな出ておるからということをおっしゃいますが、私はあれで尽きるものではないと思います。まだほかに材料があると記憶しておる。あれでは米国の全権は、歯舞だけは含まないのだという見解を示したということが出ておりますけれども、グレス長官は、歯舞以外の色丹に言及されたこともあったように記憶しております。あのパンフレットに載っておる材料だけでは私は不十分である、こう思いますので、はなはだお手数ではありますが、もう一応全部の書類に目を通していただいて、関係のある資料は全部御提出を願いたい、こう思うのでございます。  私は次に政務次官に御答弁を願いたい。最終的でなくてもよろしいのでございますが、こういうふうな重大なる失態をした――あなた方の見解からいえば失態をしておる――大使がおったといたしますれば、これに対してどんな御措置をおとりになるか、一つ答弁願いたい。
  94. 森下國雄

    森下政府委員 私の見解は少しも違っていないという見解でございますから、仮定においてそれを処置するとか処置しないとかいう問題ではないと思います。お答えの限りではないと思います。
  95. 森島守人

    ○森島委員 非常に言いのがれをして不親切な御答弁があった。これが違っていないということは絶対にあり得ない。違っている。違っているということを下田局長は言っておる。それから西村君が言ったのは、南樺太と千島に包含されておるそれを日本が放棄したのだ、こうはっきり明言しておる。議事録を見てお答えを願いたい。重光さんは外交の統一性とか継続性とかいうことを言っておる。外交の統一性、継続性は非常にけっこうであります。そのためには一つの前提条件がある。前提条件というのは、日本の外交が公正なものであるということであります。たとえば例を引きますが、東条さんの戦時外交には国会の人はみんな賛成したらしい。今にしてみれば、私は東条外交のこときは国会としては支持し得ない。これは明らかであります。そうしますれば、あなた方のやっている外交があらゆる点から見て内外両様の情勢から見て正しいという確信があるならば、野党といえどもこれを支持することはやぶさかでない。外務省のやっていることはやたらに歴史的な沿革的のことのみを言って、御要求した資料でもその点だけを示すものを一方的に出してへんぱである。世論調査を見ましても、私は外務省がこの間のいきさつを明らかにしないところに、世論調査の結果が出ていると思う。早期妥結をしようというようなことについては大半賛成だ、そこに持ってきて南千島を持ち出す、これはほしい。われわれもほしいことはほしい。しかしこれにはおのずから三年半前にやった平和条約のいきさつ、ヤルタ協定――これは日本は拘束されておりませんが、アメリカもイギリスもロシヤもこれに拘束されている。これは明らかである。そうすればアメリカの立場というものはどうなるだろうかということは明らかだろうと思います。二、三日前の新聞でもアメリカの情報を伝えている。アメリカはこれには積極的ではない、それを積極的にいいものでも引き出そうとしてアメリカに交渉をした、ところが色けのない返事があったというところに、法眼君が資料の提出を一週間もおくらそうとしている魂胆があるのではないかと私は疑わざるを得ない。君が一生懸命にやっていることは認めますが、そう疑わざるを得ない。これはきょう即日お出しを願いたい。もう一つヤルタ協定関係があるといたしますならば、私はイギリスに対してもこの間のいきさつを明らかにする何らかの交渉をされる必要があるのではないかと思うが、イギリスと何らか御交渉になったことがありますか。
  96. 法眼晋作

    ○法眼政府委員 ただいまの資料の問題でございますが、昨日提出を御要求されておりますけれども、私はここに参る前に若干の事務的な印刷の誤まりを発見いたしましたので、今やり直させております。従いましてこれは来週の本委員会まで延期を願いたいと思います。
  97. 森島守人

    ○森島委員 これは非常に驚き入ったことです。いつでも用意しておりますからお出しいたしますが、重光さんに要求されたから、重光さんが出席した折まで延ばしてくれぬかというあなたのさきの回答であった。しかるに今は印刷に誤まりがあった。そうなると、政府の立場を有利にするために何らかの訂正をしたり、ごまかしたりしているのではないかとさえ疑わざるを得ない。誤まりがあるのなら、それの訂正のために何日かかりますか、どういう長い往復文書ですか、それを一つお聞きしたい。
  98. 法眼晋作

    ○法眼政府委員 私が先ほど申し上げたことと今申し上げたこととは矛盾するわけではありません。資料は用意してありましたけれども、それは大臣が御出席になったときにお渡しして御質問を願ったらいいと思ってそう申し上げた。ところがその用意した資料にクレリカル・ミステークを発見したものですから、これを訂正さしているのであります。従いましてこれは言を左右にして御推測のようなことをやっているわけではありません。
  99. 松本七郎

    ○松本(七)委員 議事進行について。この前から森島君からしきりに資料の提出を要求されている。委員会を開くたびに政府委員と森島さんと資料のことで……。
  100. 前尾繁三郎

    前尾委員長 それは別個に理事会でやりましょう。
  101. 松本七郎

    ○松本(七)委員 これは委員長を通じて政府当局に要求すべき建前になっている。委員長がもっとふだん催促して、すみやかに提出してもらうようにしてもらわなければいけない。一々委員会々々々といって待ってたらだめですよ。委員長の職責なんだから、ほんとうは委員長がやらなければならない。一々理事会にそんなことを諮っていてどうしますか。どんどん自分でやってもらわなければ……。
  102. 森島守人

    ○森島委員 私は議会は二度目か、三度目でしろうとです。手続を十分知らぬところもございましたので、みなに御迷惑かけましたことをおわびいたします。私はここに正式に委員長を通じて、資料御提出を要求いたします。今法眼君が言われたように、来週のきょうというと一週間ですが、クレリカル・ミステークを直すのに、そんなに時間がかかりましょうか。私は大臣の出席を待たずに、重要な問題ですから、予備的な審議を行うのも、この委員会の任務と思いますので、一日も早くお出し願いたい。
  103. 法眼晋作

    ○法眼政府委員 それでは、来週できるだけ早く提出いたしたいと思います。
  104. 森島守人

    ○森島委員 もう一つ、イギリスに御交渉なさったことは……。
  105. 法眼晋作

    ○法眼政府委員 この点につきましては、関係国のいろいろな見解を求めたことが、過去においてございます。
  106. 森島守人

    ○森島委員 私は、日時は忘れましたが、日ソ交渉が始まってから、今回初めてアメリカの見解と申しますか、アメリカに問い合せを出されたということを承知しております。またこれに対して返事が来ておるということも承知しております。従来しばしば関係国に対して問い合せしたと、今御答弁されたように承わりましたが、そういたしますと、これは事態をはっきりさせる上になおさらけっこうですから、委員長を通じまして、関係国全部の往復文書を御提出願いたいと思います。
  107. 法眼晋作

    ○法眼政府委員 これは、この前に大臣から資料御提出の要求があったときにお答えしておきました通りでありまして、関係国との文書の往復その他の意見の交換は、やはり関係国の発表そのものに対する同意を求めなければならないことが国際慣例でございます。その点をはっきりいたしましてから、提出し得べきものは提出いたしたい、こう考えます。
  108. 森島守人

    ○森島委員 時間はいいのですか。
  109. 前尾繁三郎

    前尾委員長 実は防衛庁が来て待っておりますから、できるだけ早くお願いいたします。
  110. 森島守人

    ○森島委員 では最後に一つお伺いしたいのですが、下田条約局長は、この間国際司法裁判所に対する提訴の問題について、ソ連側は、国際会議の開催すら同意しなかった、国際司法裁判所に提訴しても、同意を求めることは困難だろうとの御見解を私の質問に対してお述べになったが、ソ連側から、国際会議開催説に対する何らかのお答えがありましたかどうか。私はあなたの答弁からすれば、南樺太と千島の問題について、国際会議を開くということを松本君が申し入れたろうと思います。それに対する回答が外務省に到達していると思いますので、この点を明らかにしていただきたい。
  111. 下田武三

    下田政府委員 交渉中の条約の内容に関します問題でございますので、どういう問題についてということをはっきり申し上げられないのは、非常に残念でございますが、ただソ連側が国際的解決、または国際司法裁判所による解決というものに対して、非常に回避的態度であるという印象を私どもは得ております。
  112. 森島守人

    ○森島委員 私は、これは提訴いたしましても、ソ連側が応諾しないことは推察するに困難ではございません。しかし提訴の道は、ただにソ連を相手に開かれておるというにはとどまらぬ。これは関係列国、連合国全部に開かれている。アメリカを相手にしても、イギリスを相手にしても……。また今北澤君が指摘したように、条約の内容に疑問があるのだということだが、それを今日まで一回もやったことがない。今になって領土の帰属の点が明確でないということで、日本がソ連に対して申し入れをしているが、私は今日までに至る期間において、国際司法裁判所に提訴する道が開かれておったと思うが、なぜこの点をないがしろにしてきたかという点を、一つ明らかにしていただきたいと思います。
  113. 下田武三

    下田政府委員 この国際司法裁判所に提訴するためには、関係国問に紛争が存在することが前提なのであります。たとえば日本とアメリカとの間に、南千島を日本に返せ、いや返さぬという紛争は実はないのでありまして、むしろ連合国側では日本側に同情的でありますから、紛争の生じようがない。そうしますと、結局紛争が生ずる可能性があるのは、日ソ関係のことに相なるのですが、それは先方が、一般的に申しまして、そういう解決には非常に回避的な態度だという印象を受けております。
  114. 森島守人

    ○森島委員 最後に、アメリカとの間に紛争がないとおっしゃいますが、それはないのが当りまえです。アメリカは、南千島を放棄したという解釈をとっているから、紛争が起きる余地はない。むしろダレスさんは、歯舞だけは北海道の一部だ、日本の領土だということを言っているので、色丹から北は全部ソ連の領土だというふうにも解釈できる。これは、あなたの示されたパンフレットの中にも明らかに出ている。そういたしますれば、アメリカの間には紛争はあり得ないと私は思う。しかしあなたの方では、アメリカは何ら私らの見解に疑点は持っていないと言われるが、日本外務省としてはそれに異説をとっている。紛争というものは、別に竹島を中心にしてばちばちやったとかいうことじゃない。法律上の見解について意見の不一致があれば、これは紛争という。従って、これらの問題は今日まで明らかになっていない。あなたの説によると明らかであるが……。明らかになっていない以上は、これを国際司法裁判所に提訴するというのは、日本政府のとるべき当然のことであります。私は責任の懈怠であり、義務の懈怠である、こう解釈せざるを得ないのであります。  時間もありませんし、次の質問者もおられるようでありますから、私はこの程度でやめて、いずれ総理大臣、外務大臣の出席を求めた上で、さらに質問することを留保しておきます。
  115. 前尾繁三郎

  116. 穗積七郎

    穗積委員 実は私は、最近アイゼンハワーが提案しておりますウランの、あれは二三五でございましたか、これを大量に、日本を含む外国に貸与または売りたいという提案がなされたのに対して、実は日本側方針を伺いたいと思ったのです。それからもう一つは、防衛庁長官に出ていただいてやはりアメリカが計画しております武器開発援助計画といいますか、この前問題にしました日米間の、技術協定以外に、新しく、そういう計画を持って日本がこれに応ずるのか応じないのか、そういうことについて実はお尋ねしたいと思いましたが、時間が非常におそくなりましたし、それから船田長官の御出席もありませんから、あとで御出席になったら伺いますが、先にちょっと、防衛庁の北島局長がお見えになって、先ほどからお待ちのようでございますから、あなたの方の御所管の、豊川の自衛隊の拡張計画の問題についてちょっとお尋ねしたいのです。  と申しますのは、もう局長も御存じだと思いますが、地元の市会は、この拡張計画に反対決議をいたしましてすでに防衛庁、大蔵省等に陳情しているはずでございます。最近になりましてまたそういう問題が出たので、その決議を確認いたしました決議をしてそしてさらに防衛庁の方へも意見を伝えていると思いますし、それから大蔵省並びに名古屋の財務局にもそのことを伝えているわけですが、そういう事情の中で、今防衛庁が考えておられます自衛隊の拡張計画または増設計画というものを、最初に率直に御発表いただいてそれから御質問いたしたいと思います。
  117. 北島武雄

    ○北島政府委員 豊川部隊の施設拡張計画について御質問でございますが、この計画は、現在の豊川部隊の西続きのところにまず施設資材の修理工場を設けたいというのが第一点であります。それから北方の旧海軍の弾薬庫のありました敷地を豊川部隊の弾薬庫として使用いたしたい、これが第二点でございます。  第一の施設資材の修理工場は、現在部隊の各種の施設機械を修理いたします場合におきましては、関東の古河に持って参りましてそこで修理いたしておりましたが、遠隔の地でございますので非常に効率が上りません。そこで豊川部隊といたしましてもぜひ隣接の土地に施設資材の修理工場を建設したいという計画を立てておるのであります。これに要する敷地を大体約一万五千坪と考えております。  第二の弾薬庫の点が地元で一番御反対のようでございますが、豊川部隊の弾薬庫は現在御承知のように部隊の西、やや北寄りのところにございます。昔の旧海軍工廠時代の建物二棟を使いまして弾薬庫として使用いたしておるのでございます。これを整備する必要があるわけなのでありますが、ただその土地は地元でお考えになっておりますように、工場誘致計画等から考えますと、どうもその場所でない方がよさそうでありますし、それからまた整備いたす場合におきましては、もとございました旧海軍の弾薬庫には土塁その他がございますし、これをそのまま使用いたしました方が経費が効率化されますので、両方あわせ考えまして、北方の旧海軍の弾薬庫の土地約四万坪を予定いたしております。そしてそこに移転いたしたい、こういう計画を立てております。
  118. 穗積七郎

    穗積委員 その計画の旧海軍の弾薬庫の位置は、現在ある弾薬庫の東北の方向に当るのでございましょうか。
  119. 北島武雄

    ○北島政府委員 さようでございます。具体的に申しますと、名古屋大学の空電研究所がございますが、それの東方の地区でございます。
  120. 穗積七郎

    穗積委員 すなわち自衛隊が現在あります道を隔ててすぐ北西といいますか、道路の反対側の地区で、これが四〃坪ですね。その計画は今出されております三十一年度予算内の期間に実行する御予定で計画されておるわけですか。
  121. 北島武雄

    ○北島政府委員 三十一年度予算によりまして施行いたしたいつもりで計画いたしております。
  122. 穗積七郎

    穗積委員 そこでちょっとお尋ねいたしたいのは、この弾薬庫でございますが、既設の弾薬庫を実は今おっしった地点に移されて、それから修理工場はこれから弾薬庫を持っていこうとする地帯の地続きになりますね。その位置はどこになりますか。
  123. 北島武雄

    ○北島政府委員 施設資材の修理工場として予定いたします土地は、豊川の部隊の道路を隔てたすぐ西側のところであります。従いまして弾薬庫の土地とは間が離れております。
  124. 穗積七郎

    穗積委員 南側でございますね。
  125. 北島武雄

    ○北島政府委員 弾薬庫から申しますと、南側に当ります。
  126. 穗積七郎

    穗積委員 そこでまず第一にお尋ねしたいのは、そういうふうに金をかけて弾薬庫の位置を移される必要は一体どういうところにあるのでしょうか。つまりそこに貯蔵いたします弾薬の性能または内容が従来よりは変って、その危険物から守るためには、新しい施設なり場所を必要とするという意味も考えられるわけです。その移される理由は、経済的または技術的、あるいは今私が申しましたような貯蔵物の性能、内容等が変るとかいろいろあろうかと推測されますが、おかえになろうとする理由をすべて一括して御説明いただきたいと思います。
  127. 北島武雄

    ○北島政府委員 別に弾薬の種類が違うわけではございません。ただ現在弾薬庫として臨時に使用いたしております建物は、九十二坪の建物一棟、百坪の建物一棟で、背の油脂倉でございます。これは実は弾薬庫の構造といたしましては必ずしも適当でないのでありまして、周囲に保安地帯を設けなければなりません。そういうことを考えますと、現在の弾薬庫の修理をし、かつ付近に若干の保安地帯を設けるということになりますと、これは市の御計画なさっております工場地帯の御計画と多少そごするような感もいたします。かつ、かたがたその場所におきまして現在の建物等を改修いたしますより、経費の面から申しましても、昔海軍が使っておりました弾薬庫一その位置においてそのまま使用する方が設備として完璧でございますので、ここを修理して使用したい、こういう計画でございます。
  128. 穗積七郎

    穗積委員 それはわかりました。それでは現在使用中の弾薬庫では不適当だ、問題は場所の問題になるわけですが、これは御承知のように従来の海軍工廠跡で、そうして将来この地区は工場栃致、しかも平和産業の工場誘致を考えておるわけです。そういう地帯でございますから、そこへ弾薬庫を置くということは不適当だとわれわれは思うので、この旧工廠敷地以外の地域へ弾藥庫というようなものは出してもらいたいのだが、そういう変更の御方針はございませんか。
  129. 北島武雄

    ○北島政府委員 予算の面から申しましても、新しく付近の民地を買収するということは非常に困難でございまして、現在の国有財産で昔海軍の弾薬庫として使用いたしましたところを使用いたします方が経済的でございますので、旧海軍工廠を使用いたしたい、こういう計画でございます。
  130. 穗積七郎

    穗積委員 名古屋屋財務局の局長の意向を聞いてみますと、やっぱり弾薬庫は外へ出してもらいたい、それはあの施設を一括して総合的に経済開発のために使うという考え方からすれば、自衛隊関係の用地を拡張することも、またその弾薬庫を敷地の中へ持ってくることも賛成をしないという意向を市当局に発表しておるという通知をわれわれは受けておるわけですが、大蔵省との御折衝は一体どういうふうになっておりますか。
  131. 北島武雄

    ○北島政府委員 これは大蔵省におきましても、防衛庁と地元の間におきまして円満に話し合いがつけば、おそらくあえて御異議は唱えないのではないか。ただ現在におきまして地元で弾薬庫設置につきまして御反対がございますので、大蔵省としては今賛成いたしかねる、こういう状況であろうと思います。
  132. 穗積七郎

    穗積委員 そこでさらにお尋ねしたいのは、地元は、あなたが行ってごらんになったかどうかしれませんが、あそこは先ほど言いましたように旧海軍工廠ができて、そこで周囲の農村地帯の四カ町村を一緒にして豊川市というものを作って、これが焼けてたたかれて、あと残ったのは貧弱町村のみが名目的に豊川という市を作っているばかりで、経済的にも全く困窮して禁治産者の状態になっておる。自治庁もそこまで手が出なくて最もはなはだしい財政的な赤字市として、これをどうしようかということで苦慮しておるのであります。そこで地元の者といたしましては、われわれも同様の考え方ですが、どうしてもこれは工場誘致をして、工業生産力をここに興さなければいけないと考えておるわけですが、そのときに、今まで一番障害になりましたのは、第一に東海地区は電力が足りないということ、あっても高いということ、第二は、工業用水が不十分だということであったわけです。それをやろうとすれば非常なコスト高になる。その他の生産に必要な資材等は非常に安い。労働力についても同様な状態でございます。ところが、あの奥地に今度佐久間ダムができまして、ことしから発電をいたします。そしてこの東海地区で少くとも五〇%以上の司力を使うことになる。さらに農林省の計画で、農業用水、工業用水のための宇連ダムの建設工事がほぼ完了いたしましてこれから水を導きます水路を作ることになっております。そうなりますと、今までの工業開発のための基礎的な悪条件が全く逆伝して、電力と工業用水ともにそろって、ことしからやっと有利な状態になってくるわけなんです。そういう状態のときに、地方の経済状態や市民の生活とを無視して、便宜的だから、国有であるから、安いからという理由で、この拡張をお考えになることは、われわれとしてははなはだ不適当だと思うので、ぜひ考慮していただきたいと思うのです。そういうことを頭の中へ入れていただきたい。今申します通りに、地元の諸君は、特に弾薬庫の問題については、四万坪の敷地を使うという問題だけではなくて非常に危険になってきて、あとの産業開発のために悪条件の一つになるから、場外に持っていってもらいたい――第一の希望はやめてもらいたい、第二の希望は場外へ持っていってもらいたい、こういうことでしょうが、そうなりましたときた、自衛隊としては、地元の者との話し合いについて、一体どういう態度をおとりになっておるのか。今までアメリカの要求する基地拡張につきましては、これは日米行政協定によって義務づけられておるものだから、政府は親心をもって考えようと思っても考えられないのだということだが、今度はそういう問題はありません。国際的な義務はありませんから、政府の親心というもので国民と話し合いをすれば、どうでも自由に計画は変更できるわけです。アメリカの要求する基地拡張ですら、政府は地元との話し合い、納得ずくなくしてこれを権力をもって強行することは避けたい、しないつもりだという答弁をされておるわけだから、まして今度のような場合においては、十分納得ずくでやってもらうべきだとわれわれは考えるのだが、その点についての当局の態度なり心がまえをこの際伺っておきたいと思うのです。
  133. 北島武雄

    ○北島政府委員 部隊と弾薬庫といたしましては、部隊の敷地内あるいはまた敷地が狭い場合にはその隣地ということが原則であります。これは弾薬の性質上そうあるべきでありまして、部隊から遠いところに弾薬庫を設けることはきわめて不適当なのであります。そこで防衛庁といたしましても、現在の弾薬庫そのままの位置において補修するよりも、地元の御便宜をあわせ考え、かつまた予算の効率的使用の見地から申しましても、さきに海軍が弾薬庫として使用いたしました地域を使用いたす方がお互いのためによいのではなかろうか、こう考えまして計画いたしている次第であります。実はこの問題につきまして、私は現地に参ったことがないのでありますが、一、二回地元の方の陳情を受けたことがあります。地元の方々も、豊川に施設部隊ができて大へんありがたいのだ、市の発展のために大へんありがたい、が、しかし、でき得べくんば、市としてはさらに工業地帯として活用したい、この点を考えてもらいたいというきわめて穏健なお話でありました。私どもといたしましても、市の立場は十分わかりますが、現在の弾薬庫をそのままの位置において整備いたしますよりも、やはり昔海軍が弾薬庫として使用いたしましたものを使用いたした方が、お互いのためによろしいのではなかろうか、こういうふうに考えて計画いたしているわけであります。もちろん防衛庁といたしましてこれを押しつけるというようなつもりはございません。防衛庁におきまして施設を整備する場合におきましては、十分地元と話し合って今まで納付ずくでいたしております。本件につきましても地元の御協力を仰ぎたいと思いまして、防衛庁といたしましてはさらに御協議いたしたいと思っております。そういうことを十分お話し申し上げて、やむを得ないということになりますればこれは納得いただけるではないか、こういうふうに期待いたしております。
  134. 穗積七郎

    穗積委員 あなたのちょっと誤解ですから申し上げておきます。地元は施設部隊が来て歓迎しているとおっしゃいますが、実は今言ったように焼け野が原で、工場がほしいと一生懸命やっておったのですが、それがうまくいかなかった。日平産業がやっておったのです。そこに持ってきて、農村がこの二、三年来購買力が落ちたりしたことがありまして、そこに兵隊が来れば多少購買力が増しはしないかというので、あの豊川駅の近くの商店街の諸君が、兵隊の小づかいかせぎで多少行き詰まってきた商売がよくなりはしないかということで、焼け野が原よりは、兵隊でもよいから来てもらつた方が、多少小づかい銭が落ちるであろうという意味で、実は歓迎する空気が一部にあったことは事実です。総合的に経済開発考え、良心的に考えている市会の諸君とか、あるいは商工会議所の諸君、あるいは一般の市民諸君――この地方は非常に潜在失業者が多いのです。そういう諸君がそんな考え方でいるとお考えになるとこれは誤解でございます。東京までやって来れないような失業者もおるのですから、その方々の声を聞きに――私が一ぺん案内いたしますから、聞き直していただきたいと思うのです。だからその誤解は解いていただきたい。  それから納得できなくてはやらないということについては了解いたしました。そこでちょっとお尋ねいたしたいのです。これがさらに施設を拡張するとか、あるいはまた練兵場を何万坪に拡張するとか、そういう拡張計画のワンステップになるではないかと地元の諸君は非常に心配しているわけです。そのことについて一つ率直にこの際御方針を伺っておきたいと思うのです。
  135. 北島武雄

    ○北島政府委員 豊川の部隊につきましては、ただいま申し上げた計画以外現在のところございません。防衛庁といたしましても、やはり地元と共存共栄の建前であくまでも行くべきであります。ただお互いの立場をよく話し合って納得ずくでいくという方針を従来からとっております。今後もその方針変りはございません。具体的に豊川の問題につきましては、ただいまの施設資材の修理工場、弾薬庫の問題以外に、現在、将来拡張いたしていくものはございません。
  136. 前尾繁三郎

    前尾委員長 これにて暫時休憩いたします。  午後一時半より再開いたします。    午後零時三十九分休憩      ――――◇―――――    午後一時五十五分開議
  137. 前尾繁三郎

    前尾委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  外務公務員法の一部を改正する法律案国際金融公社への加盟について承認を求めるの件、日本国とカンボディアとの問の友好条約の批准について承認を求めるの件を一括議題といたします。  質疑を許しますが、進行の都合上、最初外務公務員法の一部を改正する法律案について質疑をしていただきたいと思っております。北澤直吉君。
  138. 北澤直吉

    ○北澤委員 私は外務公務員法の一部を改正する法律案につきまして、二、三の点についてお尋ねをしたいと思います。  まず最初に国会法第三十九条の規定について、お尋ねしたいと思います。これによると、「議員は、内閣総理大臣とその他の国務大臣、内閣官房長官、内閣官房副長官、政務次官及び別に法律で定めた場合を除いては、その任期中国若しくは地方公共団体の公務員又は公共企業体の役員若しくは職員と兼ねることができない。」こういうふうになっております。私どものこれに対する解釈は、国会議員はここに列記してありまする内閣総理大臣、国務大臣、官房長官、それから特に法律に定めた場合を除いては、公務員と兼任はできないという原則をきめたものと思います。この条の但書におきまして、「但し、両議院一致の議決に基き、その任期中内閣行政各部における各種の委員、顧問、参与その他これらに準ずる職に就く場合は、この限りでない。」このただし書きは、一般普通の公務員でなく、各種の委員、顧問、参与というように無定置の勤務義務を負わない――普通の一般公務員は無定量の勤務義務を負うのでありますが、そういう無定堆の勤務義務を負わない各省における委員とか顧問とか参与とか、こういうものについては、両院の議決のある場合にはその職につくことができる、こういうわけでありまして、私は無定量の勤務義務を負う官吏は、この三十九条の前項に列記された職及び特に法律に定めた場合を除いては兼務できない、こういうことを規定したものと思いますが、まず子、の点について伺います。
  139. 島津久大

    ○島津政府委員 ただいま御意見の点は、われわれもかねて研究いたしておりましたところでございまして、法理論上はそういうような解釈もできると考えられます。今日までの結論といたしましては、全権委員あるいは政府代表というようなものも、この但書で読んで、その解釈で実行しているような状況でございます。
  140. 北澤直吉

    ○北澤委員 従来はそういう扱いをしておったようでありますが、昭和二十七年に外務公務員法というものが制定されて、全権委員とかあるいは政府代表、今度加えようとする特派大使というものは、これはりっぱに外務公務員であるということを規定してある。外務公務員であると規定しておると同時に、その在任中は職務に専念する義務あるいは上司に忠実なる義務とか、いろいろ義務を課しておるのであります。そういうふうに全権委員なり政府代表なり特派大使というものが、外務公務員法によって明らかに公務員である、こう規定されるようになった今日におきましては、私どもはこのただし書きによって両院の議決によって、そういうふうにりっぱに外務公務員と規定されたものに、国会議員がなれるかどうかということについて疑問を持つのでありますが、その点はどうですか。
  141. 島津久大

    ○島津政府委員 先ほど申し上げましたように、理論的に考えますと、多少の疑問があることは事実でございます。ただ今日までそういうような慣行でやっておったということでございます。
  142. 北澤直吉

    ○北澤委員 この五十九条のただし書きによりまする各省行政各部における委員、顧問、参与、これは大した権限はないと思うのであります。たとえば厚生省における社会保障制度審議委員とか、そういうふうなものでありまして、そういうものならば、これは両院の議決があれば兼任していいと思うのでありますが、全権委員とか政府代表とか特派大使というものは全権委任状を持って、あるいは陛下の信任状を持っていくという非常に大きな権限を持っておるものを、顧問、参与その他これに準ずる職員と、こういうふうなことで解釈することは少し無理ではないか。各省におきます委員とか、そういうものならばいいのでありますが、とにかく両国の間に条約を調印する、全権委任状を持っている全権委員あるいは政府代表、そういうふうな至大なる権限を持っていく外務公務員を、顧問、参与あるいはこれに準ずる職員、こういうものと同じに扱うということは、どうも私は法律上の建前として無理なのではないか、こういうふうに思うのでありますが、その点はどうでしょうか。
  143. 島津久大

    ○島津政府委員 将来の問題といたしまして十分研究をいたしたいと思います。
  144. 北澤直吉

    ○北澤委員 政府はこの全権委員とか、あるいは政府代表あるいは今度特派大供でありますか、そういう公務員は、その在任中は普通の一般公務員と同じように、やはり無定量の勤務義務を負う、こういうふうに解釈していいわけでありますかどうか。ここに職務に専念する義務とありますから、これは無定量の勤務義務を負う、こう解釈せねばいかぬと思うのでありますが、その点はどうでしょうか。
  145. 島津久大

    ○島津政府委員 ただいまの御解釈の通りであります。
  146. 北澤直吉

    ○北澤委員 そうしますと、私はやはりこの国会法第三十九条の原則を、その筋を通すためには、――この全権委員なりあるいは政府代表なり特派大使というものを、この三十九条のただし書きによってやることは、不可能ではないと思いますけれども、法の建前から申しまして、先ほど申しましたような、国会議員は一般公務員と兼任しない、こういう原則を貫くためには、どうしてもこれはやはり第三十九条の前段に、「別に法律に定めた場合を除いては、」とありますから、これによって、法律によって規定する以外は、どうも今のような無理を避けることはできないと思うのでありますが、そういう点は政府はそういうようにお考えであるかどうか、伺いたい。
  147. 島津久大

    ○島津政府委員 先ほども申しますように、御意見の点は十分拝承いたしまして研究をいたしたいと思います。
  148. 前尾繁三郎

    前尾委員長 松本七郎君。
  149. 松本七郎

    ○松本(七)委員 この提案理由の説明によりますと、特派大使の制度は世界各国においてとられておる、そういうわけで、わが国においても特派大使の制度を法律上明白に規定した方がいいと考える、とこういうふうに説明されておるのですが、今外国ではどういうところ・がこの特派大使の制度をとっておりますか。
  150. 島津久大

    ○島津政府委員 昨年の二月、ウルグアイの執政協議会議長、これは大統領に相当するものだそうでございますが、その就任式の場合の例をとりますと、非常にたくさんございますが、西独、アルゼンチン、ベルギー、ボリビア、ブラジル、カナダ、コロンビア、コスタリカ、キューバ、チェコスロバキア、チリー、中華民国、デンマーク、 エクアドル、エジプト、エルサルヴァドル、スペイン、アメリカ、フィンランド、フランス、英国、ギリシャ、インド、イスラエル、イタリア、レバノン、ニカラグア、ノールエー、オランダ、パナマ、パラグァイ、ペルー、、ヴァチカン、スウェーデン、トルコ、ソ連、ユーゴスラビア、そういう国が、特派大使の制度がありまして、それを活用しておるようでございます。
  151. 松本七郎

    ○松本(七)委員 それらの国は、みな法律で規定しておるのでございますか。
  152. 島津久大

    ○島津政府委員 その形式は必ずしもはっきりいたしておりません。
  153. 松本七郎

    ○松本(七)委員 その設置の真意ですね。たとえばこの前の三木武夫さんが方々回った、ああいう場合に、これを特派大使のような資格で行った方がいいというようなことも考えられておるのでしょうか。
  154. 島津久大

    ○島津政府委員 あの場合が該当いたしますかどうか、これは円匙もあることと思いますが、この制度を考えました主たる原因は、やはり儀礼上の問題がおもでございます。そのほかに交渉、あるいは条約に調印するとか何とか、そういうことは御承知の通り全権あるいは政府代表という制度の方で処理できるわけでございます。しかし儀礼的な特派大使のほかにも、もちろん親善使節とかなんとかというものがあるかと思いますが、三木さんの場合が該当いたしますかどうですか、これはそのときの運用次第でございます。
  155. 松本七郎

    ○松本(七)委員 差し迫って、何か近くそういう特派大使を派遣する必要でも予想されますか。
  156. 島津久大

    ○島津政府委員 ただいまのところ今年中に大使派遣が予想されます行事といたしましては、次の諸国の大統領の就任式典が考えられておるのであります。現実に出しょ一すかどうかは別といたしましてペルー、ボリビアなどでは大体この夏ごろに式典が行われるらしいのでございます。
  157. 松本七郎

    ○松本(七)委員 さっき、制度はいろいろその国によってやり方が違うと言われたのですが、法制上規定している国がおわかりでしたら、ちょっと知らせていただきたい。
  158. 島津久大

    ○島津政府委員 ただいま資料を手元に持っておりませんので、調査いたしまして、お答えいたします。
  159. 松本七郎

    ○松本(七)委員 この特派大使は、政府職員もやはりなれるのでございますか。
  160. 島津久大

    ○島津政府委員 対象には別に制限はございませんので、政府職員もなれると考えております。
  161. 松本七郎

    ○松本(七)委員 それから特派大使が任命されておるは給与はありますか。
  162. 島津久大

    ○島津政府委員 給与はございません。旅行に必要な旅費、目当、そういうものは出るわけでありますが、いわゆる本俸というものは出ないわけでございます。
  163. 松本七郎

    ○松本(七)委員 そうするとその費用は外務省の予算ですか、それとも大蔵省になるわけですか。
  164. 島津久大

    ○島津政府委員 外務省所管の旅費ということになります。
  165. 松本七郎

    ○松本(七)委員 そうすると当然予算措置が必要になるわけですが、政府として年間どのくらいを今予定されておりますか。
  166. 島津久大

    ○島津政府委員 ただいまちょっと正確な数字を持っておりませんが、外務省所管の外国旅費が千八百万円ほどございまして大体その中でまかなうことになります。使節を何人くらいというはっきりした予定はただいまのところございません。
  167. 前尾繁三郎

    前尾委員長 高岡大輔君。
  168. 高岡大輔

    ○高岡委員 ちょっとお伺いしたいのですが、先ほどから聞いておりますと、何か国際儀式の場合だけを予定していらっしやるようでありますし、それから特派大使としては国会法云々ということで、結局国会議員を対象にしていらっしゃるようでありますが、民間人の起用といいましょうか、民間人でもなれるのですか、その点お伺いします。
  169. 島津久大

    ○島津政府委員 これは先ほど申しました通り別に制限がない一わけでございまして、だれでも広く適当な方を選定いたすわけでございます。
  170. 高岡大輔

    ○高岡委員 特派大使を出します場合の対象は、国際儀式とでもいいましょうか、ただそういうことだけが対象なのでありましょうか。それとも今後私は東南アジア諸国にかなりスケールの大きな合弁会社ができることを予想し得るのでありますが、そういう合弁会社ができるような際に、その折衝のために財界人がそのある一定期間特派大使としてそこへ出ていくというようなことは、この中にお考えになっていらっしゃるのでしょうか。この点をお伺いいたします。私の申し上げている意味がおわかりにならぬのならもう一度繰り返しますが、最近問題になっていますのは、インドにおけるルールケラーの鉄鉱石開発の問題だと思います。これは相当大規模な計画でありますが、そういうものを折衝します場合に、外務省の力では専門が違うからこれはどうも苦手だ。そうかといって民間からいろいろ出したとこるで、肩書きがなければなかなか大統領とかあるいは関係閣僚と対等で交渉するわけにいかないというような意味から、その道の権威者というか、財界人というか、そういう民間人を特に特派大使としてその折衝に当らせるというようなことが、この改正の中に含まれるかどうかという点であります。
  171. 島津久大

    ○島津政府委員 ただいま御指摘の合弁会社その他経済的な重要な話し合いをする場合に、肩書きが必要じゃないかという御質問でございますが、これがちょうどこの特派大使に該当いたしますかどうですか。ちょっと私もその点はっきりいたさないのであります。もともとこの特派大使の制度は、先ほどから申しますように儀礼的な面と、あるいは臨時的、あるいは親善使節といったような場合に予想されるのでございます。従いましてまた同時に公的な外交的な交渉ということになりますと、むしろ全権とか政府代長というような名称の方が適当ではないかと思われますので、ただいまのお話のような合弁会社その他経済上の打合せが公的なものじゃない場合には、ちょっと無理ではないかというような気もいたすのでございます。しかしこれは国際的に見まして大使の名称を与えるのが適当であるという理由がつきますならば、必ずしも排除すべきことではないと思います。
  172. 高岡大輔

    ○高岡委員 今どうもルールケラーの鉄鉱石開発などという具体的な一とを言ったからちょっと官房長あれでしょうが、かりに口比賠償は今進行中でありますからいいとしまして、あるいは予想されますことは、この五月ごろからインドネシアとの賠償問題が議題に上るだろうと思います。そういう場合に、この賠償にはいろいろと御承知のように貿易じりとでも言いますか、一億九千万ドルのこげつきとでも称するものもありますし、その金をどうやってこれをからみ合せて有利に持っていったらよいかというような、交渉そのものには単なる技術とでも言いましょうか、そういうものでなく経済的な考慮が非常に必要な面がたくさん出て参ります。そういったような場合に、いわゆる民間人を特派大使にできるかどうかという答弁でけっこうであります。特派大使の幅を一つ広げていただきたい。
  173. 島津久大

    ○島津政府委員 幅を広くして差しつかえないと考えます。ただ、いまのお話のような場合にも、もちろん特派大使を派遣し得ると思います。ただ話し合いが相当具体的になりますと、全権あるいは政府代表という方が適当な場合もあるかもしれませんが、それより以前に予備的な話をするとかいうような場合には当然考えられると思います。
  174. 高岡大輔

    ○高岡委員 今のインドネシアの場合に、具体的になって恐縮なんでありますけれども、ここは御承知のように国交は調整されておりませんので、ジャカルタにあるのは総領事館でありまして、しかも今の倭島さんは公使として行っておるわけで、重要な折衝をする場合には、どうしても大使級が必要だという気がするのでありますが、そういう場合に大使としてやるのですか。具体的に申し上げまして、インドネシアの場合にはこっちから特派大使が出せるかどうか、そういう点は国際法の問題でありましたら下田さんから御答弁になってもけっこうであります。
  175. 島津久大

    ○島津政府委員 先方といたしまして異存がない場合は当然できると存じます。
  176. 高岡大輔

    ○高岡委員 もう一点だけ今の全権大使と特派大使の性格の違いを御説明願いたいと思います。
  177. 島津久大

    ○島津政府委員 全権大使の場合は恒久的な職でございまして認証官でございます。特派大使の場合は臨時的なものでございます。特別職ではございますが認証官ではないのでございます。
  178. 北澤直吉

    ○北澤委員 この外務公務員法の問題についてもう一点伺いたいのは、私どもの考えでは国会議員も全権委員政府代表それからまた特派大使というものになれろというふうに、外務公務員法に法律をもって規定した方がよろしいというのが私の見解ですが、諸外国に国会議員がそういう特派大使、あるいは全権委員、あるいは政府代表というものになり得るということを規定した先例があるかどうか。私の記憶では、フランスではある年限を限って、国会議員は当然普通の大使にもなれるというふうな先例があるように思いますが、各国の先例についてちょっと……。
  179. 島津久大

    ○島津政府委員 その点はただいま、調査をしておりますので、数日のうちにわかると思います。整いましたならば、提出をいたします。
  180. 森島守人

    ○森島委員 今高岡委員から、範囲を、広げたらというお話がありましたが、私非常に同感なのです。質問するつもりではなかったのですが、その点に関連しまして……。大正六年に、特派大使という字を使ってあったかどうかは忘れましたが、大使や公使を臨時に重要な国務を処理させるために任命できるという、勅令でございましたか、あったと思います。これに基いて当時の石井菊次郎さんが貴族院議員だったけれども、アメリカへ行かれて、石井・ランシング協定締結に当られたわけです。またシベリアには加藤恒忠という方が特命全権大使として臨時に派遣せられた。この勅令はすでに効力を失っていますが、そういうふうな前例もありますので、私は何とかして範囲を広くするようにお考えになっていただきたい、こう要望いたします。
  181. 島津久大

    ○島津政府委員 戦前は、ただいまお話がございましたように、特命全権大使を臨時的に特派大使として、必要な機関、必要な個所に派遣をされておったようでございます。これがいわゆる戦前の特派大使でありますが、今回の案は特命全権大使ではございませんので、かえってその点は範囲を広げたことになるかと思います。
  182. 並木芳雄

    ○並木委員 英語では何と言いますか。
  183. 島津久大

    ○島津政府委員 アンバサダー・オブ・スペシャル・ミッションであります。
  184. 並木芳雄

    ○並木委員 それで万国通用しますか。われわれ日本人の間では了解するけれども、ジス・イズ・アンバサダーオブ・スペシャル・ミッションと言って、向うでは何だかわからないというのでは困るが、そのスペシャル・ミッションということで通用しますか。たとえばダレス氏が来ますね。ダレス氏もやはりアンバサダー・オブ・スペシャル・ミッションですか。
  185. 島津久大

    ○島津政府委員 国際慣行でございますから、通用しないわけはございません。ただ町の人全部が……。   〔笑声、「いい洋服を着ていけば大   丈夫だ」と呼ぶ者あり〕
  186. 並木芳雄

    ○並木委員 そこまでの名答弁をいただいてありがとうございました。ただ、治外法権とかいろいろあるでし三う。その場合に、何だ、この大使はというような扱いを受ける心配はないか、それをはっきりしていただきたい。
  187. 島津久大

    ○島津政府委員 特権も当然伴います。
  188. 前尾繁三郎

    前尾委員長 外務公務員法に関しては、ほかに御質問はないようでありますから、次に日本・カンボジア間の友好条約について、御質問願います。石坂繁君。
  189. 石坂繁

    ○石坂委員 日本・カンボジア間の友好条約は、大へんけっこうなことだと思いますが、この内容を見ますと、同国間に文化、経済、技術等の協定締結するために交渉を開始するという規定がある。そこでまず私が伺いたいのに、カンボジアと日本との経済関係の取りきめがないようであります。巷間カンボジアの都市建設に日本が参画するとか、その他いろいろ伝えられておりますが、この協定のできました当博、両国間に経済の問題についてどの程度の取りきめが話し合いになっておるか、まずそれを承わっておきます。
  190. 下田武三

    下田政府委員 この条約締結交渉をいたします際に、それと並行いたしまして通商関係の問題を討議したことは事実でございますが、ただその問題につきましては、協定または取りきめ等の締結という段階までは進まなかったのでございます。そこでこの協定中におきとまして、経済的、財政的その他の関係を強化することを目的とする諸規定を締結するため、交渉を開始するものとする、いわゆる交渉をしようという予約をいたすにとどめた次第でございます。現実にまだ取りきめ協定等はできていない次第でございます。
  191. 石坂繁

    ○石坂委員 その点に関しての外務省の現在の構想はある程度練られておるかどうか、その点を伺場いたい。  なお先般新聞紙上伝えますところによるとアジア協会会の副会長が近く向うに実地検丘に行かれるとかいうことを書いておりますが、それらについての外務省との関係なり、了解事項がどの程度進んでおりますか。
  192. 中川融

    中川(融)政府委員 ただいま御質問のあとの問題について、私からお答え申し上げますが、カンボジアの百札が先般参りました際に、こちらに提起いたしました問題の一つといたしまして、カンボジアの今の首府であるプノンペンから約百キロ南の方に新しい都市を建設したいという話があったのであります。その新しい都市は、今の首府のプノンペンが暑いところでありますので、比較的山地のここに都市を建設いたしまして、暑い時期に首府がそこへ移るということと同時に、また広く外国からの観光客等を招いて、そこに非常に快適に暮せるような都市を一つ建設したい、そのためのいろいろな計画を日本にやってもらいたい、またそのためには相当の金も要るわけでありますが、たとえば水道施設を作らすとか、その他道路の専用権を認めるとか、いるいるの特権を日本に与えることによって、そういう資金も一つ日本から融通してもらえないかというような話がありまして、これにつきましては日本もカンボジアとの経済協力を増すという意味で、できるだけの御努力をしたいということを申したのでありますが、何と申しましても、現地の実情がわかりませんので、ここに調査団を派遣いたしまして、現地の実情をまず調査しょうということになったのであります。その意味の調査団を、ただいま御指摘になりましたアジア協会の副会長の岩田さんを団長にお願いいたしまして、岩田団長のもとにいろいろの専門家をつけまして大体八人になるかと思いますが、八人のグループを作りまして、ごく近く現地に参りまして、調査をしたいというふうに考えております。その経費等は、これはこの事柄の性質にもかんがみまして、政府が支出したい、かように考えております。
  193. 湯川盛夫

    ○湯川政府委員 カンボジアとの貿易協定の問題についてお答えいたします。今までカンボジアとの協定は、自仏貿易協定という協定のワク内で行われておりましたが、今はカンボジアもすでに政治的にも経済的にも独立いたしましたので、両国間の貿易について日仏貿易支払協定に拘束されずに、別にカンボジアと日本との間に貿易支払協定締結したいというのが向う希望でありまして、昨年十二月カンボジア国の首相が来日したときにもそういう話が出ましたが、そのときは時間が短かったので十分討議する余裕がございませんでしたが、近くこの点について両国間で話し合おうということになっております。
  194. 石坂繁

    ○石坂委員 次に移民の関係でお伺いいたしたいのですが、あの協定が発表されました当時、カンボジアに対する移民の問題はずいぶん世間に大きく取り上げられておったのであります。私どもも外務省に予算要求の際にも大体外務省の構想は伺っておるのでありますが、その外務省の予算折衝当時の構想のあの案でもなかなか容易なことではないと思っております。もっともこれに対しましては、ただいま矢口局長が現地に調査に行っておられますので私どももその調査の報告を待ってなお具体的に伺いたいと思いますが、現在のところ昭和三十一年度、これから来年度のカンボジア移民というものが早急に発足できるかどうか、どの程度に移住局ではお考えになっておりますか、一応それを伺っておきたい。
  195. 石井喬

    ○石井(喬)政府委員 ただいまお話のございましたように、現在矢口税住局長が向うで具体的な話をいたしております。その結果によりませんと何とも申し上げかねますが、ただ申し上げることのできますことは、カンボジアも国が始まりまし、て早々でございまして、なかなか財政的にも十分の余裕がないと考えられます。従いまして中南米諸国とは違いまして、もしここに日本から移住者を送るということになりますれば、日本側から相当の資金を持っていかなければならないのではないか。いろいろな基本的な建設事業からして日本側が負担してやっていかなければならないのじゃないか。そういうことになりますと、これは内地の開拓でもそうでございますように非常な資金がかかると思いますので、そういった面からの制約もあるのじやないか。それから現地におきましては何分にもまだ開拓の進んでいないところでございますから、まず医療対策から考えていかなければならないというようなことがございます。はっきりした数字等は申し上げかねますが、私どもは大量に三十一年度からやることは非常にむずかしいのではないか、むしろ向うとの話し合いの結果にもよりますが、着実に少いところから始めていった方が将来のためにいいのではないか、こういうふうに思っております。
  196. 石坂繁

    ○石坂委員 局長の調査の結果を待って具体的な計画を立てるのだという御答弁趣旨はごもっともだと思います。そこで私どももその報告を得ました上で、なお具体的に掘り下げているいろ伺いたいと思います。きょうはこの程度にいたします。
  197. 前尾繁三郎

  198. 岡田春夫

    岡田委員 私もきょうは要点だけ伺います。まず条約局長から伺いたいのですけれども、私の知っている限りでは、友好条約という単独の条約を国交回復の形で締結したような例はこれ以外にないように記憶しているのですが、こういう形をとって国交回復の形を行なった特別の理由があるわけだろうと思いますけれども、そういう理由についてまず伺いたいと思います。
  199. 下田武三

    下田政府委員 この協定は、この締結によりましてカンボジアとの国交関係を開くということを別に目的といたしておるわけではございません。御承知のようにカンボジアは旧仏印三国の一つといたしまして桑港条約の当事国になっておりますから、桑港条約の発効のときをもってすでに国交は回復されておるわけでありまして、そのすでに国交が回復せられた上の基礎に立って、さらに友好関係を増進しようということを目的としておるわけでございます。このような基本的な重要事項のみを拾いまして友好条約として締結しました例は、昭和五年のアフガニスタンとの間の修好条約、昭和十四年のイランとの間の修好条約等の例がございます。
  200. 岡田春夫

    岡田委員 私、ちょっと記憶違いをしておりました。まさに桑港条約のときの当事国の一つでありますから国交回復があったわけですが、戦後においてはこれが初めてであるわけなのです。戦後において初めてのこの条約を、特別に結ばなければならなかった何か特別な理由があるのだとするならば、その理由はどういう理由があるのか、この点を伺いたいと思います。
  201. 中川融

    中川(融)政府委員 御指摘のように戦後日本といたしまして、日本と連合諸国との友好関係をできるだけ持っていきたいと考えております際に、どうしてカンボジアとだけ友好条約を特に作ったかという点でございます。これは東南アジアにいろいろ多くの国がございますが、その中でもことにカンボジアは日本にいち早く親愛の情を示してくれておるのでありまして、御承知のように一昨年末は進んで賠償上の権利を放棄すると言っておるのでございまして、また平和条約十六条に丸きまして中立国財産――中立国にある日本の財産の分配の権利と申しますか、分配によって得た金も日本赤十字に進んで寄付した、また今回は日本の移民も引き受けたいというように、甘木に対して非常に親愛の情を小してくれておる国でありますので、ことにその最も有力な人物でありますシアヌーク首相が日本に来られるということになりましたので、この機会日本の方でもぜひカンボジアの親愛の情に報いる措置をとりたいということを考えたのであります。その一番よい方法といたしましてこの友好条約というものを特に作りまして、日本の方からもまたカンボジアに対して非常に親愛の情を持っておるということを示したいということから、この友好条約というのをカンボジア首相の来られます際に調印するという運びに至った次第でございます。
  202. 岡田春夫

    岡田委員 そうしますと東南アジアの他の国においてもこのような友好関係を持続したい、条約締結したい、こういう希望が且体的にあった場合には、大体このような条約の要旨によってこれを締結される御意思がありますかどうですか。
  203. 中川融

    中川(融)政府委員 東南アジア諸国との間にはできるだけ友好関係を結びたいと考えておりますので、このような申し出があります際は、もちろん日本側としてもできるだけ欣然とこういう申し出に従いましてこれを考慮したいと考えておるのであります。もっとも友好条約というものは具体的な内容の面は非常に少いものでございますので、国によりましては友好条約締結するよりも、もっと具体的な内容のことを掘り下げていく方がこの際適当というものもあるのでありまして、事情がいろいろ変ることはありましょうが、精神におきましてはただいま岡田委員の御指摘の通りに考えております。
  204. 岡田春夫

    岡田委員 東南アジアの点はわかりましたが、それでは東南アジアを除いたアジアアフリカ諸国――中近東とか、それらの地域についてはどのようにお考えになりますか。
  205. 中川融

    中川(融)政府委員 両国間の親善関係を増すという意味におきましては、単に条約を作るということだけでは十分ではないのでありまして今度のカンボジアとの場合におきましては、条約を結ぶに十分な理由がある実質がすでにあるのであります。従いましていずれの国とも形式的な友好条約を結ぶという趣旨ではないのであります。友好の実質が十分ある場合はそれを進めていきたいということで、友好条約のようなものを作ることはけっこうなことであると考えます。
  206. 岡田春夫

    岡田委員 それでは具体的に伺います。今のお話ですと、従来の友好関係があるということですから、焼山に言って国交回復のないとこるはお話にならない。それはその通りです。それでは具体的に伺えば、インドとの間にこのような条約を具体的に結ばれる意思向うから出てきたような場合には、いかがでございますか。
  207. 中川融

    中川(融)政府委員 インドとの間に友好関係を増進したいということは、政府といたしましても最も熱心に考えております。しかしながらインドとの間にはすでに平和条約、サンフランシスコの平和条約とは違いまして、単独に平和条約ができておるのでありまして、その平和条約にいろいろな実質的規定がすでに入っております。従いまして必ずしもこの際さらに友好条約というような種類のものを結ぶことが必要かつ適当であるか。むしろ、今度文化協定を結ぼうとしておりますが、文化協定であるとかそのほかいろいろ具体的な問題について友好関係を進める意味の協定をそれぞれ作ることがとるべき策ではないか、かように考えております。
  208. 岡田春夫

    岡田委員 ですから私伺っているのですが、日本とインドとの条約は昭和二十七年六月九日に署名されて、批准は七月八日にされておる。この条約の条文を見ると、第二条にいわゆる年忘国待遇の問題について具体的な取りきめが書いてあります。この取りきめによると、経済関係締結、最恵国待遇その他の問題について、四年間という期限をきめて条約を取り結ぶことになっているわけです。そうすると二十七年から見ると、ことしは四年目になっている。しかも七月ですからあと五カ月しかないのですが、この最恵国待遇が七月になると失効になるわけです。この条約の期限通りにいくと、これについて何らかの交渉をされておらなければならないと思うのだが、これについて何か交渉を進めておられるのか、一体これに対してどういうようになっているのか、この点を伺いたい。
  209. 湯川盛夫

    ○湯川政府委員 日印平和条約の第二条はただいまおっしゃった通りでありますが、われわれとしてはもちろんそういった効力が延長されれば望ましいことと考えております。先方がどういうふうに考えているかという問題でありますが、今までのところでは先方ではこの延長を好まないというような意向でありますので、いろいろ話し合っておりますが、何か適当な方法考えたい、こう思っております。
  210. 岡田春夫

    岡田委員 好まないという事情 どういう理由なのですか、その点を伺いたい。
  211. 湯川盛夫

    ○湯川政府委員 好まないということは、通商上の問題について相互に最恵国待遇を与える、そういった今までの約束を今後とも引き続き続けるということは希望しないということであります。
  212. 岡田春夫

    岡田委員 それだったら漢字を学校の生徒がどういう意味ですかと言ったら、別の言葉で教えるようなもので、湯川さんには何だけれども、もっと具体的な理由がなくちゃ……。
  213. 湯川盛夫

    ○湯川政府委員 現在インド政府は実際上最恵国待遇を与えているわけですが、日本品がインドの市場に将来非常な勢いで入ってくるといったような場合には、先方としてはこれを抑制する措置をとる余地を残しておきたい、そういう措置をとれないというふうな先にわたっての約束はしたくない、こういうことであります。
  214. 岡田春夫

    岡田委員 とすると、インドから見れば、日本のそういう貿易上の問題については、インドの産業の発展のためにはむしろこれは妨害になるのではないか、インドの国内市場が日本商品によって荒されるのではないか、そういう理由に基いて最恵国待遇はこの際一時停止しよう、こう考えておるのだ、こういう意味でないかと私は見ておるが、そこで問題になってくるのは、インドの場合についてもこういう考えが出てきておる。東南アジア諸国においても日本のいろいろな商品がどんどん入ってくると、それぞれの国の産業が、国内市場を荒されて、それによってやっていけないからといって最恵国待遇はとらないようにしたい、こういう考え方が東南アジア諸国からどんどん出てくるのじゃないか、こういう点が問題になるのじゃないかという点が一つの問題。  第二の問題は、そういう日本の商品がどんどん入ってくることについては、インドの国内あたりではどのようにこれを理解しているか、たとえば日本の商品は戦争前から言われたように、ソーシャルダンピングで、労賃を値切ることによって今度鳩山内閣が春季闘争に気違いじみた弾圧をしようとしておるのと同じように、このような気違いじみた弾圧によって、低貸金を維持することによって日本商品をどんどん押しつけよう、こういうことに対してはインド政府としては好まない、しこうして国内市場を攪乱されることを好まない、こういう理由に基いて最恵国待遇は結ばないのではないか、こういう理由があるのではないかと思うのだが、こういう点についてはいかなる情報をおとりになっておるか、この二点についてお伺いしたい。
  215. 湯川盛夫

    ○湯川政府委員 ただいまおっしゃったあとの問題につきましては、別に日本商品がタンピングである、こういったことを言っておるのではないようであります。ただ可能性として、将来どんどん入ってきに場合には、やはり自分らとしての一種の防衛策をとる余地を残しておきたいということだと思います。  初めの方の東南アジア諸国につきましては、これはインドネシアとか、ビルマとか、セイロンとか、パキスタンとか、そういった国は日本のガット加盟に際して無条件にサポートしてくれておりますから、ガットの適用がありまして、そうむやみな抑制措置はとれないし、またとる意思もないと思います。インドの場合にはガットの三十五条を発動しておりますので、これは問題があろうかと思います。
  216. 岡田春夫

    岡田委員 こちらに戻りますが、カンボジア条約は、先ほど石坂さんから御質問のあった点ですが、経済的、財政的、技術的、文化的協力関係を強化する、こういう面については今の最恵国待遇を含めてこの点の交渉をされるお考えであるかどうか、こういう点についても伺っておきたいと思います。
  217. 下田武三

    下田政府委員 第四条の規定は直接最恵国待遇と関係のない問題でございまして、これはむしろ日本とカンボジア間の特殊な親密な関係に基きまして第三国とは違う特殊な協力関係を設定しようという目的の協定を予想しておるわけであります。
  218. 岡田春夫

    岡田委員 特殊な協力関係というと、これはお互いに対等な協力関係ということを意味しますか、いかがですか。
  219. 下田武三

    下田政府委員 もちろん対等な独立国間の関係でございます。ただ財政的の協力と申しますとたとえば向う開発事業をする際には、日本の方で融資するとかあるいは技術の援助をやるとか、そういうことになりますの、で、協定の建前は相互的でありましても、実際的には日本の方が先進国でございますから、日本の方が援助を与えるという関係になることはやむを得ないと思います。
  220. 岡田春夫

    岡田委員 そういう援助の関係を州立関係において行われるのだろうと思います。そこで少し問題を進めますが、私はここで申し上げたいのは、この友好条約というのは少くともカンボジアの国にとっては、日本の国がどう考えておるにせよ、これは一つの政治的な理念に立っての条約締結であると私は考える。それはなぜな心ば、第二条を読んでみると、締約国の七権、独立及び領土の保全、そのあとにはいかなる紛争も平和的手段によって解決することを約束すると書いてある。それから先ほどの第四条における経済的な相互関係、これらのものを具体的に別な角度から考えると、これは平和五原則がそのまま生かされておるわけであります。すなわち主権と領土の保全、これを相互に保全して認め合うということが、平和五原則の第一の主権と領土の尊重、第二の相互不可侵に当る。それから第三の原則の相互内政不干渉は独立という言葉で表われておる。第四は互恵平等、これは第四条に当る。第五の平和的共存は第一条に当る。すなわち日本とカンボジアの間に平和五原則に基く友好条約が結ばれた、このようにカンボジアは考えておるし、またその歴然たる証拠としては、先日毛沢東主席とカンボジアのシアヌーク首相との間において、平和五原則についての協定の取りきめが行われたことを見てもこれは明らかであります。こういう点から考えて、日本政府としてはカンボジアの考えている平和五原則をこの際全面的に認めてこの条約を結んだことになるのであるが、そういう考え方を全面的に了承されたものと考えてよろしいのでありますか。
  221. 中川融

    中川(融)政府委員 この友好条約を結びます際に、ただいま御指摘になりました平和三原則というものを特に考えまして、それをこれに入れたというような事実はないのであります。結果的に見ますれば、今の五つの原則が入っておるというふうに解釈されることもあるいはできようかと思いますが、これは別に今の平和三原則というものに特に関連を持たしめて締結したというふうには、われわれとしては考えていないのであります。
  222. 岡田春夫

    岡田委員 あなたの方はそう考えていなくても、カンボジアはそういうふうに考えておるかもしれぬ。カンボジアがそういうふうに考えておった場合には、あなたの方が知っておると知っておらないにかかわらず、日本の国がカンボジアの平和三原則を認めた、こういう結果になるのだが、この点はそうだと思いますが、いかがですかというのです。
  223. 中川融

    中川(融)政府委員 交渉の過程なり、あるいは現在までにおきましてカンボジアの方でそういう考えを持っていたのだという事実は聞いたことはないのでございます。
  224. 岡田春夫

    岡田委員 言葉に表わさないでも、思想としてこのような思想が具体化されておるのだと私は考えます。その思想をお認めになったということになるのではないかということ、です。
  225. 下田武三

    下田政府委員 カンボジアと交渉します際に、日本側が国連憲章の原則、これはすなわち戦後の日本の対外方針の原則と合致するものでありますけれども、国連憲章、特に第二条の規定、これを念願に入れまして実は日本側から原案を出したのでありますから、向う側から出した五原則を認めたというのは交渉の経緯に合致しないのであって、日本側の思想に向う側が共鳴してできた、そういうことでございます。
  226. 岡田春夫

    岡田委員 日本側が言ったのならば、私はますます興味深いことだと思う。日本側でさえ平和五原則を認めざるを得なくなっておるということだと思う。だから平和五原則は決して無理なことではない。重光外務大臣も条約局長もそうだし、そのほかの局長もどうも平和五原則はにおいが好かない。平和十原則ならばまだいいけれどもというような話もあるが、それはともかくとして平和三原則の思想は日本政府でさえ提案せざるを得なくなっているというこの事実を、皆さん方忘れないでいただきたいと思う。これは答弁をしてもらわなくてもけっこうです。答弁したかったら答弁していただいてもけっこうですが……。とにかく平和五原則のこのような形がカンボジアにも現われつつある。  そこでもう一つ伺っておきたいのですが、平和五原則には賛成ですか、反対ですか。
  227. 中川融

    中川(融)政府委員 あの各項目については、大臣も前から言っておりますが、決して反対ではなく賛成であります。しかしながらあの項目に限定するということは、どうも意味がわからないというのがわれわれの考え方であります。もっといい理屈がほかにもあるだろうというのが、われわれの考えであります。
  228. 岡田春夫

    岡田委員 理屈のいいことがあるというのはどういうことですか。それ以外のいいものといっても私はないと思うのです。これは実はバンドン会議の平和五原則と平和十原則と比べてわかったのですが、平和十原則と平和三原則は変りはないのです。ただ言葉が違うだけです。五つの原則に上いたものを幾つかに細分化して十原則にしただけであって、私は別にいいものがあろうとは思えないのです。五原則の理想それ自体がすべてであって、それ以外のものはないと私は考える。もしそれ以外のものがおありならそれをお見せいただきたい。
  229. 中川融

    中川(融)政府委員 数を幾つにするかということにはそう拘泥する必要はないと考えておるのでありましてバンドン会議提案いたしました十項目というのは、いずれも非常にいいことであり、われわれとしては、ぜひ国際社会において現夫に実現したいと考えておることを提案したのでありまして、数は五つでなくても、十でも十五でも、その点については別にこだわる考えはないのであります。
  230. 岡田春夫

    岡田委員 移民の問題が出ておりますので、移民の問題について伺いたいのですが、私の記憶しておる限りでは、ことしはとりあえず二千家族を移民させるという計画を持っていかれておるようです。きょうの朝日新聞によると大体向う政府側においても二千家族を受け入れるというような態勢になってきたようにAP電は伝えております。そこでこのことについて何か移住局長から中間の報告でもありましたか、この点を伺いたい。
  231. 石井喬

    ○石井(喬)政府委員 けさの新聞に出ておりましたが、私どものところにはまだ報告はきておりません。私どものところにきております報告は、向う側もいろいろ浜車に考えておりまして、もう少し時間がほしいということを言ってきたという報告だけであります。
  232. 岡田春夫

    岡田委員 今度の移住局長の細目上の話し合いで二千家族の移民がもし可能になれば、その予算措置は講じてありますか。
  233. 石井喬

    ○石井(喬)政府委員 大蔵省とこの前の予算折衝の際にいろいろ話し合いをいたしましたが、とりあえず二千人分の渡航費、それからそれを世話いたしますための人件費その他の事務費を見てございます。しかしこれだけではとてもできませんので、もし具体的に計画がきまれば、そのときはまた別に相談しようということになっております。
  234. 岡田春夫

    岡田委員 従来南米方面の移民の場合にけ、移民じゃなくて棄民だということで、ただやってしまえばいいのだという形で行われた。今度の場合には……(「今度は違う」と呼ぶ者あり)今ここで違う違うと雑言を言っている人がいるのですが、確かにこの雑言のお説の通りに違わなければならないと思うのです。違わなければならないとすれば、どういうように具体的に違ったような措置を講ぜられるか、その点を伺いたい。
  235. 石井喬

    ○石井(喬)政府委員 南米方面に送りましたものが棄民である、向うに出してあとは何も世話をしていないということは、昨年あたりよく新聞で散見したのでありますが、私が見て参りまして、必ずしもそうばかりとも言えないというふうに考えております。しかし今後いたします場合には、カンボジア移民をもし出すといたしますれば、基本的に違いますことは、中南米諸国、たとえばブラジル等におきましては、足りないながらも相当基本的な施設を向う側でやってくれております。たとえば道路を作るとか、収容所を作るとか、測量するというようなことを全部向うでやってくれておりますが、カンボジアの場合には、まだそういうことをやった経験もありませんし、おそらく財政的にもそれだけの余裕がないと思いますので、そういう基本的な施設から、日本側が相当部分負担していかなければならないじゃないかというふうに考えております。従って、その点がまるで違ったものになるだろうというふうに考えております。
  236. 岡田春夫

    岡田委員 まるで違ったものになるだけに、予算措置が重要になってくるのではないかと思う。具体的にいうと、ただ人間が行くだけではなくて、向うでいろいろな施設もしなければならない、あるいは農業機械なんかにしても持っていかなければならない、こういう問題についてまで大蔵省と予算上の話し合いができておるのかどうか。それができていないとするならば、南米と同じような結果に終ってしまうのではないか、こういうことが考えられるわけです。ですから、その予算晦においてはどうなっておりますか。
  237. 石井喬

    ○石井(喬)政府委員 予算の折衝をいたします際に、私の方も現地の調査が全然できておりませんので、一体どこに、れだけの施設をするということが計算ができません。一応パー・ヘッドにいたしまして、二十万円ということで大蔵省に予算請求をいたした次第であります。これは、内地の開拓に比べますとまだまだ、だいぶ少いのでありますが、何も基本的な資料がございませんから、とりあえず二十万円ということで折衝いたしました。ところが具体的に話を進めて参ります際に、それでは二十万円の内訳を出してくれということになりますと、私どもの方では全然そういうものができません。ある程度のことは、もちろんお話がございましたように、機械が要るとか道路を作らなければならぬとか、そういうような項目はわかるのでございますが、しからば道路はどこからどこまで作る、それが何キロになって幾らかかる、いうような資料が全然できませんから、結局そういうことでは予算面に上げることはできません。私どもは向うに参りましてただいままでいろいろ交渉しておる段階でありますが、交渉が終れば、今度は具体的に調査しなければなりません。そこで、そういうようなもののあれを考えてみますと、来年度果してどこまでできるかということについて、まだ十分な自信を持っておりません。二千人というのも、一応渡航費をそれだけ出しておこうというのにすぎないものであります。従いまして、いよいよ何人ぐらいどこに入るという益し合いができたならば、そのときはまた別に考え直そうということになっておりまして、予算面にはそういうものは何も上っておりません。先ほど申し上げたように、渡航費と、向うに参りまして世話をする人々の多少の事務費、それから調査費、これだけでございます。
  238. 岡田春夫

    岡田委員 こういう点も実はもう少しこまかくいろいろ伺いたいのであります。たとえばそういう現地をどういうふうにして調査するのか。具体的にいえば、調査団を派遣するのかどうか。そうして、調査団を派遣してそれに対する具体的な見通しが立ったならば――御承知のように五月からあそこは雨季に入り、九月一ぱいは雨季である。そうすると、こちらは秋から冬にかけてでなければ移民が実際問題としてできない。こういうような具体的な移民の時期などについても伺いたいと思うのですが、きょうはむしろ総括的な点だけを伺って終りにしたいと思いますが、ただ一点だけ、単に移民問題ばかりに限らず、経済関係においても、あらゆる面でくれぐれも外務省として御注意を願いたいことは、何か、劣等国に日本の国が行って世話をしてやるのだというような考え方で、今度の友好条約を通じて植民地的な支配をここで再現しようというような考えがあるとするならば、ガンボジアの条約がせっかく友好条約であっても、これは日本にとっては友好であっても向うにとっては友好にはならない、従属国の形になってしまうのであるから、この点はくれぐれも御注意を願っておかなければならないと思うのです。先ほど御答弁を伺っていると、都市の建設などというような話もありましたが、そういう都市の建設等を通じてわれわれが危険性を感ずることは、都市を作れば必ず工場を作り商店を作る。それを通じてカンボジアを、いわゆる原住民であるというような形で資本主義的に支配していくというような形では、これではほんとうに相互主義に基いた平等の関係ができてこないと思いますので、これはくれぐれも御注意を願っておきたいと思います。  きょうは、私は、総括的な質問でこれだけにしておきます。最後の点は希望ですから、答弁したくなかったらしなくてもよろしい。
  239. 中川融

    中川(融)政府委員 ただいま岡田委員の御指摘になられましたところの、友好条約の運営に当ってカンボジアを従属国のように扱うものであってはいかぬというお話でございますが、そういう考えは毛頭ないのでございまして、あくまでも平等の二つの国の間の親等関係を増進するための協定であります。またそういう意味で運労していくことは当然でありまして、われわれといたしましては、先方希望に基きまして、できるだけの協力をこれにいたしたいという趣旨にほかならないの、でございます。
  240. 前尾繁三郎

    前尾委員長 松本七郎君。
  241. 松本七郎

    ○松本(七)委員 カンボジアと関連して少しお伺いしておきたいと思うのですが、カンボジアとラオスとの関係は現在どういうふうになっているかということと、それとあわせてラオスの最近の国内情勢等を少し御説明願いたいと思います。
  242. 中川融

    中川(融)政府委員 カンボジアとラオスとの関係でございますが、これはいわゆるインドシナ三国と申しましても、相互の関係は、交通その他の関係もあり、決して、密接な不可分な関係にあるとか、あるいは非常に緊密な関係にあるというような状況ではないようであります。たとえばラオスの問題でありますが、ラオスはカンボジアの隣国でありますが、カンボジアから行きますよりは、タイから行った方がはるかに便利な国であります。従って、カンボジアとラオスとの間に直接どういう関係があるかということは、一言にしていえば、そう深い関係はないということが言えると思います。  それからラオスの国内情勢ですが、ラオスの情勢は、結局問題はホーチミンの方からの影響がどの程度ラオスに入るかということが問題でございます。これは、前々からラオスの一部には共産軍の勢力が入っておりまして、政府がこれに対しているいろ討伐等をやっておりますが、まだ平定するには至らないという状況であります。最近の情報によりましても、やはりこの共産軍が相当蠢動しているという状況にあるようでございます。なお、経済開発等につきましては、ラオスも一生懸命経済の再建に尽力しているようでありまして、外国等の援助も得まして、これの近代化ということに努めているようにわれわれは見ております。
  243. 松本七郎

    ○松本(七)委員 それからヴェトナムの賠償問題ですが、南ヴェトナムがフランスとの結びつきを断ち切って、ジュネーヴの決定などにも拘束されないということを言っているのですが、そうすると、従来フランスと交渉しておったものを、あらためて今度は賠償については、南ヴェトナムと交渉しなければならなくなるのだろうが、その関係はどうですか。
  244. 中川融

    中川(融)政府委員 インドシナに関する賠償問題は、サンフランシスコ平和条約を作ります際に、インドシナの三国がいずれも当事国としてこれに調印いたしました関係上、フランスには賠償請求権がなくて、インドシナ三国に賠償請求の権利があるという解釈になっておるのであります。従いましてヴェトナムにつきましても賠償問題があるわけであります。これは約三年前に中間賠償といたしまして、二百二十五万ドルに及ぶ沈船引き揚げをしようという約束の仮調印までしたのでありますが、その後先方の国内事情から、これは正式調印を見るに至っていないのであります。一方最近国内情勢が相当固まって参りました関係から、現在ヴェトナムのゴ・ディンディエム政権は、日本に対して賠償問題を一つこの際相談しようじゃないかという申し入れをしてきておるのであります。日本としても賠償問題は誠意をもって片づけたいという考えから、交渉自体には異存はないということで、最近これについての新たな――まだ第一段階の程度でございますが、ある程度の話が非公式に先方と行われておるのであります。
  245. 松本七郎

    ○松本(七)委員 そうすると北ヴェトナムの方はどうでございますか。
  246. 中川融

    中川(融)政府委員 ホーチミン政権と日本とは何らの関係もないのでございまして北ヴェトナムと日本話し合いその他はやっていないのであります。
  247. 松本七郎

    ○松本(七)委員 それからこの第三条の規定の仕方なんですが、最恵国の外交代表云々ですね。これはその特権及び免除を享有するという規定が普通だと思うのですが、ここにわざわざ「相互主義に基いて、」という言葉を挿入したのは、特別に何か理由があるのでしょうか。
  248. 下田武三

    下田政府委員 「相互主義に基いて、」と入れる方がむしろ先例に従ったわけなのでございまして、最恵国、つまりフランスの外交官に対して日本側はこういう特権を与えておるといたしますと、ヴェトナムの外交官は自分の方にもフランスと同じような待遇を与えてもらいたい、特権を認めてもらいたいという要求があったといたしますと、それもいいけれども、それではカンボジアで日本の外交官はそれと同じ待遇を受けておるかどうかという点を調べまして、カンボジアでそれと同じ待遇を受けることになるなら、それでは日本でも与えよう。つまりカンボジアにおいて日本の外交官が受ける待遇のいかんを問わず、フランスにおける最もいい待遇を受けておる外国の外交官並みの毎週を与えるということは、無条件の最恵国待遇であります。そういう無条件な特権は認めないのが普通でありまして、まず相手国でそれじゃそれと同じことをわが方に与えるかどうかという点を見きわめました上で、相互的に与えるという建前がむしろ先例でございまして、その先例に従ったわけであります。
  249. 松本七郎

    ○松本(七)委員 そうすると相互主義ということをここに特にうたったのは、必ずしもカンボジアに対してだけではないですね。どういう国に対する例がございますか。
  250. 下田武三

    下田政府委員 この協定で相互主義というのは、日本とカンボジアだけのことを言っておるのであります。先例といたしましては、先ほど申しましたような、日本とイランとの間の修好条約でも同じようになっております。相互条件のもとに特権免除を享有すべしとなっております。
  251. 松本七郎

    ○松本(七)委員 それからさっき問題が出ました経済交流のことですが、これは今後なお交渉されるのでしょうけれども、四条に今交渉を開始するという規定があるだけにとどまっておるのですが、なぜこの協定の中に、せめて暫定的に最恵国待遇の規定でも入れなかったのか。将来通商航海条約なりあるいは通商協定を結ぶ、その交渉をするとしても、一応この協定で最恵国待遇くらいの規定はしてもよかったのではないかと思われるのですが、どうですか。
  252. 下田武三

    下田政府委員 一応最恵国待遇の規定を入れますことができますと、わが方といたしましてけまことに好都合たのでございますが、カンボジア側は何もそれをいかぬとは言っておるわけではないのでございますが、まだそういういろいろな条件についての話し合いができない前に、まっ先に最恵国待隅を日本に与えるというには、やはり独立後日なお浅いカンボジアといたしましては、多少ちゅうちょを感じておるようでございます。それほど心配なしに無条件の最恵国待遇をまつ先に供与するという気持では先方はないようでございます。
  253. 松本七郎

    ○松本(七)委員 それから第五条、これは条文解釈においては、カンボジア人も希望すればわが国に移住することができる、そういう解釈が正しいと思うが、どうですか。
  254. 下田武三

    下田政府委員 文字の上からはその通りでございますが、カンボジア人が日本に移住することを希望しまして、その移住がカンボジアのみならず、日本にとっても、両国の共通の利益をもたらす場合でございますならば、やはり日本側としては便宜をはからたければならない、そう考えております。
  255. 前尾繁三郎

  256. 穗積七郎

    穗積委員 私は政治的なことをお伺いしたいのですが、本日は大臣、政務次官もおられないから、この次にします。
  257. 前尾繁三郎

    前尾委員長 それでは日本国とカンボジア問の友好条約については質疑が今日はないようでありますから、今日はこの程度にいたします。
  258. 前尾繁三郎

    前尾委員長 次に国際金融公社協定の方に移ります。北澤君。
  259. 北澤直吉

    ○北澤委員 きょうは資料の要求だけをいたしたいと思います。最近数年間でけっこうですが、東南アジア、中近東、それから中南米に日本の民間資本がどれくらい行っておるか、その実績。それからここ数年間、日本に入っておる外国の民間資本はどれくらいであのるか、その資料を一つ御提出願いたいと思います。
  260. 高岡大輔

    ○高岡委員 この次のときでけっこうでありますからお願いしたいことは、この国際金融公社に十億円投資する以上は、使い道を考えなければならぬと思いますが、それをどこにどういうふうに使うかという計画がございましたら、その計画書を御提出願いたいと思います。もう一つは、今御承知のようにコロンボ計画に対する予算も外務省として出ております。そのほかに後進国経済開発技術援助拡大計画拠出金でございますか、そういう金もあるようでありますが、その金のほかに、甘木はどれだけこの金を借りての使い道を考えていらっしゃるか、そういう点の計画がございましたら、その計画書を一つ御提出願いたいと思います。さらに、この次には経済企画庁ないしは通産省の責任者の御出席を願いたいと思います。
  261. 穗積七郎

    穗積委員 今対外投資の計画の話がありましたが、この条約と関達する国内の立法措置がありましたら、あるいは大蔵妻女会に出ているかもしれませんが、それを一つ提出してもらいたいと思います。
  262. 湯川盛夫

    ○湯川政府委員 いろいろなおっしゃった資料を用意いたしますが、ただいま高岡さんからお話のありました計画というのは、この金融公社に入った場合に日本としてこれをどういうふうに利用するかという針画でございますか。――これにつきましては、まだ金融公社そのものも発足いたしておりませんし、あまり具体的の計画というものはございませんけれども、大体どういうことに使うかといったようなものならばこの次までに整えます。
  263. 穗積七郎

    穗積委員 もう一つ、さっきの高岡さんの要求がそういうふうに局限されておるとすれば、重ねてちょっとお願いしておきたいのでありますが、この協定が成立することを予定しなくても、これと関連なしに、日本の全体の対外投資の計画書、それから今までの実績――これは北澤委員からさっき御要求がありましたが、それから将来における計画、それを全部出していただきしたいと思います。
  264. 佐々木庸一

    ○佐々木説明員 穗積委員の御要求になりましたのは国としての計画でございますか。
  265. 穗積七郎

    穗積委員 そうです。
  266. 佐々木庸一

    ○佐々木説明員 それは作られていないのであります。民間でどういう計画があるかというものは一応集まっておりますが、国としての計画というものはないと思っております。
  267. 穗積七郎

    穗積委員 さっき私が申しましたのは、今まで政府の投資があればそれよお願いするし、それから民間の投資の過去の実績をお願いしたわけであります。さらにそれに続いて団、民間を問わず計画がわかっておったら全部知へせてもらいたいと思います。
  268. 北澤直吉

    ○北澤委員 さっきの資料に関連いしまして、これは東南アジアだけに限ってけっこうでありますが、東南アジアに対する各国の政府資金による羽済援助、それから民間資本がどういうふうに入っておるか、各国のものがわかりましたら一つお願いいたします。
  269. 前尾繁三郎

    前尾委員長 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。午後三時二十六分散会