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1956-02-23 第24回国会 衆議院 外務委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年二月二十三日(木曜日)     午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 前尾繁三郎君    理事 石坂  繁君 理事 北澤 直吉君    理事 須磨彌吉郎君 理事 山本 利壽君    理事 穗積 七郎君 理解 松本 七郎君       大橋 忠一君    菊池 義郎君       高岡 大輔君    並木 芳雄君       渡邊 良夫君    田中 稔男君       戸叶 里子君    細迫 兼光君       福田 昌子君    森島 守人君       岡田 春夫君  出席国務大臣         国 務 大 臣 船田  中君  出席政府委員         防衛政務次官  永山 忠則君         防衛庁参事官         (長官官房長) 門叶 宗雄君         防衛庁参事官         (防衛局長)  林  一夫君         防衛庁参事官         (装備局長)  久保 龜夫君         外務政務次官  森下 國雄君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君  委員外出席者         外務事務官         (経済局次長) 西山  昭君         専  門  員 佐藤 敏人君     ――――――――――――― 二月二十二日  委員草野一郎平君辞任につき、その補欠として  園田直君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国際情勢等に関する件     ―――――――――――――
  2. 前尾繁三郎

    前尾委員長 これより会議を開きます。  国際情勢等にに関する件について質疑を許します。菊池義郎君。
  3. 菊池義郎

    菊池委員 最近新聞の伝うるところによりますと、伊丹飛行場韓国飛行機が入ってきた、それからさらにまた韓国の母艦が横須賀に入ってきている事実もあります。そういう事態に対しまして、防衛庁といたしまして、これらの軍港や飛行場を使っている米軍に対しまして、何か申し入れをしたのでありますか、そのまま放任しておられたのでありますか、この点ちょっとお伺いしたいと思うのであります。
  4. 船田中

    船田国務大臣 ただいま菊池委員の御質問の問題につきましては、防衛庁関係というよりもむしろ外務省関係と思いますので、今外務省の方に打ち合せをいたしまして答弁申し上げることにいたしたいと思います。
  5. 下田武三

    下田政府委員 これは欧米局でやっております日米合同委員会関係の方でございます。これにつきましては、ずっと前から米国軍艦あるいは飛行機以外の国連軍所属艦船、航空機の日本における入港その他の手続を協議中でございます。大体つい最近の合同委員会で一切の手続について合意ができたと了解しております。  その大筋は、米国国連軍の総司令官を出しておるので、一切米国側の経路を経まして日本側事前通告をいたすことに相なりました。毎月その月の国連軍所属艦船飛行機日本への発着計画というものをその月の前に事前に通報いたします。それは前からわかっておる場合には一月ごとにまとめて通告いたしまして、なお予見されなかった緊急の必要が起った場合には、四十八時間前にやはり米軍を通じて日本政府通告をする、そういう手はずの打ち合せが遂げられたようであります。
  6. 菊池義郎

    菊池委員 そうすると、最近あの韓国飛行機伊丹に来たり韓国軍艦横須賀に入ったりした、これについては日本政府としては何か申し入れをしましたか、そのままに不問に付しておるのですか。
  7. 下田武三

    下田政府委員 これは韓国に限ったわけではないのでありますが、外国軍艦は商船と違いまして、開港されていない港に入る場合には当該国承認を要するわけであります。従いまして日本側としては、日本側事前承認を経ないで勝手に入ってもらっては困るという申し入れをしておって、一方こういう手続で入るなら事前承認を求めてくれということを話し中であったわけであります。その話し中と、一方こういう不規則入港に対する日本側の不承認の意向とを並行して行なっておったわけであります。一たん話し合いがつきましたので、これからは不正規の入港ということはない。日本側としてはもちろん吉田氏との交換公文によりまして、国連決議に基く国連所属国艦船その他の行動に対しては、援助を与える義務を負うておるのでありますから、日本側はこれに協力したいというわけには参りませんが、しかし日本側としては日本側の都合があるので、やぶから棒に入ってこられてば困るので、おのずから規則的な手続というものは国連軍ときめる必要があります。その手続につきまして前から話し合いを行なっておりましたのが、最近妥結に至ったということであります。
  8. 菊池義郎

    菊池委員 ついでに外務省の方にちょっとお伺いしたいのですが、過般ハマーショルド国連事務総長の名前で各国招請状を出しております。それは終戦後各国に対して軍隊が進駐した。軍隊の進駐によって、その国々に国際結婚みたいな生活が営まれまして子供まで生まれた。ところがその進駐軍が国に帰ってしまうと、ほったらかされて、その家内子供を養育することもできないというような、不合理なみじめな状態が発生しますので、これを解消ぜんがために、進駐軍の入っているその国において慰謝料とか、あるいは扶養料とかを請求することができる、もらえるようにしよう、そういう目的で招請状各国に発せられておるということでありますが、これにつきまして日本政府といたしましては、招請に応じましてだれか出すような手はずになっておりますか、どうですか。これは非常にいいことであると私は考えております。
  9. 下田武三

    下田政府委員 御指摘の問題は非常に前から存在する問題でございまして、へーグ国際司法会議というものが、前世紀の終りからずっと続けられております。そこで最初に取り上げております。これは扶養家族に対する扶養義務、これはむろん国内で大部分発生し、履行される義務でございますが、今日の世界においては、それが国際間にわたって、つまり被扶養者扶養義務がある者と違う国に存在するということが非常に多くなって参りまして、御指摘米軍その他NATOの軍でありましても、それぞれ外国に行って暮しておるという事態が非常に多くなっております。これは集団安全保障世界的規模で、世界各地でありますと、将兵外国におって、外国でその土地のむすめさんと結婚関係、あるいは内縁関係というものを生じまして、そうして生まれた子供あるいはその妻に対する扶養義務を履行しようという段には、すでに当の将兵は本国に帰り、あるいは第三の外国に動くという事態が非常に多くなって参りました。そういう場合に、一国内で行われるのでしたら、結局履行しない場合は、裁判所に訴えて裁判に勝てば、いやおうなしに扶養料をもらえるわけですが、国境を分れた場合にどうするかという問題です。つまり裁判手続でもって、外国裁判所もそれに協力して扶養義務を果させるようなふうにしむける。これはどうしてもそういうことにしますと、国際間の協力を必要としますので、そういう協力を実現するということをねらいとしまして、これは実は前から考えられたことでありますが、特に最近はそういう事象が国際間に多くなりましたので、ハマーショルド事務総長も、そういう国際的の措置の実現を促進したいということを言っておるようでございます。これほ日本はへーグ国際司法会議にも参加しておるのでございますので、国連でそういう国際会議が開かれる際には、日本も当然参加しなければならないと考えております。
  10. 菊池義郎

    菊池委員 それからビルマがこのほど日本からの賠償に充てた資本財をやめにして、そのかわりに綿織物を出してもらいたいという要求があるようでございますが、これに対して日本はどういう態度をとられますか。これは重大問題だと思います。
  11. 下田武三

    下田政府委員 これはアジア局長の所管でございまして、私事情をつまびらかにしておりませんので、お答え申し上げられないのでありますが、ただ交渉当時の経緯を申しますと、そういう消費財賠償として払うということには、日本は強く反対しておりまして、そういうことがかりにあるとしましても、日本はこれに容易に応ずべきであると思っております。
  12. 菊池義郎

    菊池委員 それから最近米国は中近東に対する武器禁輸を撤回したばかりでなく、中共との貿易制限緩和のために特定国に対しては、禁輸品の輸出を黙認する主義をとるというようなことであるらしいのです。日本としてこれは乗ずべき機会であると思うのでありますが、これに対してどういう手を打たれるお考えでありますか、お伺いしておきたいと思います。
  13. 下田武三

    下田政府委員 米国内にも中共との貿易制限を撤廃といいますか、緩和すべきであるという意見が最近は確かにあるようでございます。しかし米国政府といたしましては国連決議が撤回されない限り、つまり中共が依然侵略者であるという国際的烙印がとられない限りは、まだ禁輸を緩和すべきではないという公式の意見のようであります。これは先般イーデンが米国に参りましてアイゼンハワーと会いましたときの共同声明でも、極東においてはまだ若干の意見の不一致があるということを率直に書いておりますから、その・意見一致に到達できなかった問題の一つが、やはり中共禁輸緩和の問題であるというように了解しております。
  14. 菊池義郎

    菊池委員 それから小笠原島民が最近は小笠原に帰ることができないという見通しがあるようであります。帰ることは困難であるという見通しに落ちついているようでありますが、これに対して帰らなければ帰れないように、この帰れないことによって生ずる損害を補償するために、アメリカに相当の金を要求する。それを外務省がすでに向うに大使を通じて申し入れておるということでございますが、そのいきさつはどういうふうになっておりますか。
  15. 下田武三

    下田政府委員 小笠原帰島問題につきましては、前からアメリカにいろいろな申し入れをしておりまして、昨年八月ワシントンに重光外務大臣が行かれましたときもこの話を取り上げておられます。またそのあとも取り上げておりますが、また一方福田議員アメリカに行かれまして米国政府関係者等にも会いまして、アメリカでも慎重に今検討しておるようでございます。まだしかし具体的の決定には到達しないようでございますが、国務省、国防省その他関係方面で目下一生懸命に検討しておるようでございます。
  16. 菊池義郎

    菊池委員 これは何とか積極的に急いで下さらぬというと、向うで百姓をやっておった連中が東京に来て生活ができないのです。それで大へんな苦境に陥っておりまして、中には罪を犯して監獄にも入らなければならぬというような者さえも出てきておるような状態でございます。これは人道上のゆゆしき問題であると思うのでありまして、小笠原には防備も何もない、硫黄島にはあるけれども小笠原には軍事基地もなければ防備施設も何もないのであります。そういうところは帰してもよさそうなものであります。軍事施設がない以上は機密があるはずはないと思うのです。硫黄島と小笠原とは距離が大へん離れているのでありますから、そういう点もよく向うに通達されて折衝してもらいたいと思う。おそらく折衝済みではあろうと思いますが、帰れなければ帰れぬようにその補償の金を向う要求するように、これは急いでいただきたいと思うのです。われわれといたしましては少くとも二十億や三十億くらいの金は要求しても差しつかえないと思うのでありますが、大体金の要求についての外務省の見当はどのくらいですか。
  17. 下田武三

    下田政府委員 補償をくれというのは実は末の問題でありまして、まず婦島のラインで参りまして、全部が一ぺんに帰島できなければ、差しつかえないところから順を追うて逐次帰島せしめる、それもだめなら最後補償ということで、三段がまえで折衝をいたしておるようでございます。ただ具体的にどれだけの金額を要求しておるかということは私は存じません。
  18. 菊池義郎

    菊池委員 それは順を追うてでなく両天びんにかけて攻めつけた方が効果的であろう。帰らさなければ帰さないように金を出せ、金を出さなければ早く帰してくれというように両刀使いで言う方が、一番効果的であろうと思うのでありますが、どうでございましょうか。これは御答弁にならなくてようございます。私はこれで終ります。
  19. 前尾繁三郎

  20. 田中稔男

    田中(稔)委員 まず防衛庁長官一つお尋ねします。何でも栃木県出身者兵馬の権を握ったのは足利尊氏とあなたと二人だということを聞いております。自衛隊おもちゃ兵隊ならばあなたが兵馬の権をとられても私ども大して問題にしないが、しかしこれはおもちゃ軍隊ではない、二十万近い実質的な軍隊であります。しかも国民の税金を二千億近くもつぎ込んでおる、こういう軍隊を統率されていくあなたの立場は非常に重大だ。昨日の穗積君に対する御答弁なんかを見ましても、どうも防衛庁の一事務官程度の低調なお話で、国際情勢たんかにつきましても、少しも見識というものをお伺いすることができなかったのです。私はそのことを非常に遺憾といたしまして、また穗積君の質問に対する御答弁は不満でありますので、少し繰り返してみたいと思います。  まず第一に長官は、日本自衛隊仮想敵というものはないのだというふうな御答弁でありました。これは私何度お尋ねしても同じことだろうと思いますから、少し方向を変えましてアメリカの今日の仮想敵国とするものは一体どういう国であるか、これは日本とは関係がありますから、こういうものにつきまして一つ長官の御見解を聞きたいと思います。
  21. 船田中

    船田国務大臣 ただいま田中委員からせっかくのお尋ねでございますが、他国軍事情勢、ことに仮想敵国をどこに持っておるかというようなことについて私から答弁申し上げるということは差し控えたいと存じます。
  22. 田中稔男

    田中(稔)委員 トルーマン前大統領がコンテーンメント・ポリシー、封じ込め政策を唱え、それから現大統領アイゼンハワーがロールバック・ポリシー、巻き返し政策を唱えていることは御承知通りであります。そして最折クレス国務長官ごときは戦争せとぎわ政策を説いております。これはアメリカでも非常に問題になりましたが、とにかくこういうことは世界でも公然たる事実でありまして、こういう政策の対象とするものはどこであるかというようなことは、これは私から申し上げるまでもなくおわかりと思う。やはりソ連とか中国とかいわゆる共産圏諸国と思います。あなたは少くとも鳩山内閣の閣員の一人で、しかも兵馬の大権を持っておられ、これは日本と密接な関係のあるアメリカの問題であります、これにつきましても黙して語らぬという態度では、私あなたが国民に忠なるゆえんじゃないと思うのです。昔は天皇に忠といいました、今日は主権は国民にありますから、あなたはやはり国民に対して忠誠を尽す忠誠心を持たなければならぬ、私は国民代表だ、国民代表としてあなたにこの重大な問題を質問しているときに、しかもだれだってわかっていることです、これに対して答弁を拒否されるというならば、私はあなたの国民に対する忠誠心を疑う。他国のことであろうと何であろうと、そんな遠慮する必要はないと思うのです。しかもあなたはその国と今け共同防衛をやろうとなさっておるのだから、一つはっきり言ってもらいたいと思う。
  23. 船田中

    船田国務大臣 中共国連決議によって侵略国であると決定がなされたということは、先ほど条約局長からもお話がございましたが、だからといって日本が直ちに仮想敵国中共に置くとか、あるいけその他の特定の国を予想して日本防衛体制を整備するというようなことは今日は考えておりません。またアメリカ合衆国がどういう軍事企図を持っておるかということについては、これは先ほども申し上げました通り、私としてここにその問題をはっきり申し上げるということは決して適当ではないと存じますので、私は御遠慮申し上げておる次第であります。
  24. 田中稔男

    田中(稔)委員 全くそれは不誠意きわまる答弁です。とにかく二十万近い日本自衛隊隊員諸君は――私はもちろん自衛隊は反対であります。しかし現在入っている隊員諸君は、やはり彼らなりに愛国心を持っていると思うのです。彼らに一体何のためにだれを相手として戦わなければならぬということについてはっきりした認識がないと、これはまた自衛隊としても成り立たないと思います。防衛庁長官がそういうことでは私は全く困る。しかしこれ以上質問いたしましても御答弁には変りはないだろうと思う。  そこで私は次にお尋ねいたしたいのですが、今中共侵略ということをおっしゃった。おそらくこれは朝鮮戦争のことだろうと思います。そこで、実は穗積委員の質何に答えて、昨日も朝鮮戦争あるいはインドシナ戦争、こういうことを共産圏諸国侵略の事例として指摘された。私はこれには異論がある。これはアメリカ国際的なマス・コミュニケーションにあなたがだまされておる。私はここでむしろ私の発言を記録にとどめておいていただくことが何か意義があると思いますから少し申し上げてみたいが、朝鮮戦争にしても、あるいはインドシナ戦争にしても、これはむしろアメリカ側というより、直接には韓国でありあるいはフランスでありますが、この背後にアメリカがあってそうしてこういう戦争は起されたのだ、という見方世界に行われている。しかもいろいろな事情を検討いたしますと、むしろその方が正しいのじゃないかと私は思う。朝鮮戦争ごときは、御承知通り一九五〇年六月二十五日に勃発したのでございますが、その前の月の五月の末には韓国において総選挙がありまして李承晩の与党が敗北いたしました。北鮮の方からは朝鮮平和的統一の呼びかけが起き、それが序国国民の間にずっと浸透しておった。さらにまたその前年一九四九年の十月には中華人民共和国が成立した。そうしてあの朝鮮戦争が起った。一九五〇年の七月には北京政府台湾解放する予定でありました。アメリカの当時の国務長官台湾を放棄するというような、声明を発した、こういう状態であったのであります。この際何とか北鮮打撃を加え、新しく誕生したばかりの中華人民共和国打撃を加えなければ、極東におけるアメリカの勢力というものは失墜するであろう、こういう事情にあったのであります。時あたかも六月の中旬にはマッカーサー元帥のところで、来朝しておりましたダレス国務長官ブラッドレー統合参謀本部議長ジョンソン国防長官、こういうアメリカ巨頭が落ち合いまして、四人でいろいろ協議しておりますことはあの当時の歴史の事実であります。ダレス国務長官ごときは、韓国に参りまして、三十八度線の韓国側の最前線のざんごうに行って韓国の若い兵隊の肩をたたき、しっかりやれ――その後朝鮮問題が国連で問題になりましたときは、当時のソ連マリク代表は、ダレス国務長官は三十八度線のざんごうにスミレを探しに行ったのかという皮肉な質問をいたしました。また韓国国会に臨みましては、韓国国会議員を前にして、韓国を見捨てないということを約束し、李承晩にしっかりやれと激励して帰っておる。こういうようないろいろな事情、さらにまたアメリカの良心的なジャーナリストでありますストーンのれいた「ヒドン・ヒストリー・オブ・ザ・コーリアン・ウォー」というようなもの、あるいはまたジョン・ガンサーが書きました「マッカーサーの謎」というような本を見ても、その中にありますエピソードから考えましても、私どもはむしろこの朝鮮戦争は、アメリカひもつきでたくまれた戦争である。李承晩が踊ったんだ。李承晩はその当時から北鮮平和統一の呼びかけに対しまして、逆に武力統一北進統一ということを盛んに言っておる。今日も言っておる。こういうふうな見方もあり、また私どもいろいろなその当時の歴史的な事実から考えまして、むしろこの方が正しいじゃないか。だってたれが考えても、北鮮があの場合戦争して何も利益はしない。むしろ平和のうちに共和国建設をどんどん進めていくこと、北鮮建設が進み、新たに誕生した中華人民共和国建設が平和的に進むならば、李承晩が困り、蒋介石が困り、アメリカが困る、こういう事情にあった。こういうふうな問題を、ただアメリカがそう言うからというので聞くのでなく、もう少ししっかり勉強してもらいたい。またインドシナ戦争に至ってはこれは全くあなたの見解は時代おくれだ。インドシナ戦争とは何かというと、ホーチミンというヴェトナムの民族の英雄が、数百年にわたるフランス国主義の支配を脱して、民族解放をしてやるといって立ち上った。ところがフランス帝国主義武力によってこれを抑えようとした。だからこれに対抗するために実力で立ち上った。だから、もしホーチミンのこの民族解放国争をあなたが否認するなら、それは大東亜共栄圏的な思想をあなたはまだ持っておるという考えなんだ。今日はインドシナと同じような事態は至るところにある。きのうもおっしゃったマレーの事態もそうだ。それだけじゃない。形式的に独立いたしましたインドにしましても、まだゴア問題がある。インドネシアにしましても、オランダとの関係がまだ残っておる。中東、近東至るところそういう事態だ。この場合にホーチミンだとかなんとかいう民族解放立場に立ってものを考えるのか、それともホーチミンを弾圧し、武力で抑圧したフランス帝国主義立場を支持しているのか、さらにまたフランス国主義は、もうホーチミンとの戦争ほいやだ、いやだ、これはやめよう、軍隊を引き揚げようとするのに、アメリカ戦争の継続を命じ、武器弾薬を送りつける、後には小型原子爆弾でも一つジャングル戦争に使おうかといったくらいでありまして、フランス帝国主義アメリカ帝国主義立場に立ってものを考えるのか。これはあなたにとって一つの試金石でありますけれども、どうもきのうの話によりますと、インドシナ戦争に対する考え方は時代おくれであり、帝国主義的な考え方である。私は防衛庁長官は今日日本政治家としてよほど反省しなければならぬと思う。この反省が徹底していないから昨日穗積委員質問に対しましても、太平洋戦争、いわゆる大東亜戦争侵略戦争であったという事実について答弁を回避された。何でも内閣委員会の方では、憲法調査会法案提案者として山崎巖氏が、委員質問に対して、太平洋戦争はこれは明らかに自衛戦争じゃなかったということを言っておる。初めは自衛戦争であったが、後にはそうでたくなったというようなあいまいな答弁をしておりましたが、委員の方から何回も追及されますと、とうとういや、それは自衛戦争ではありませんでしたと、こうはっきり答弁している。私ども今日日本政治家として国内的に国際的に行動いたします場合には、われわれの過去にやったこの太平洋戦争満州事変からずっと引き続いた侵略戦争を、はっきしり侵略戦争であった。これは自衛戦争ではなかったということを認め、その反省の上に再出発しなければいかぬと思う。もしあなたが、太平洋戦争はあれは自衛戦争であった、侵略戦争でなかったなどとここでおっしゃるならば、インドネシアから、ビルマから、インドから、アジア全域の諸民族が憤激すると思う。憤激して、日本賠償問題にしても貿易問題にしても、非常に大きな支障を生ずると思うのです。だから私は、この点につきましてははっきりした御答弁を促したい。日本満州事変以来やりましたところの戦争最後太平洋戦争になったこの戦争というものは、日本側からの侵略戦争であった、決して自衛戦争でなかったという事実を長官はお認めになるかどうか、はっきりした御答弁を願いたい。
  25. 船田中

    船田国務大臣 わが国の防衛体制を整備するということにつきましては、作品来答弁申し上げておりますように今日の司際情勢――一方には非常に緩和されたというようにいわれておりますけれども、しかし昨年のできごとを見ましても、七月十八百のジュネーヴの巨頭会談の状況では大へん緩和されたように見えますけれども、しかし後半に至りまして必ずしもその通りには行っておりません。また過去数年にあるいは戦争終了後における諸外国国際情勢、ことに極東における情勢等を見ましたときに、まだ部分戦争なり、また冷戦というものが全然なくなったと安心することはできないのでありまして、われわれは独立国としての誇りを持ち、わが国の独立と平和を守り、国土を防衛するためには、国力及び国情に沿う最小限度の防衛体制を整備するということが絶対に必要である、かように考えまして政府防衛体制を膚荒整備しつつある、こういうことでございます。  過去の満州事変あるいはシナ事変、太平洋戦争というものが果して侵略戦争であったか、あるいは日本自衛のためにやったのであるか、こういうことにつきましては、私はこれは後世の公正なる歴史家の判断に待つべきものでありまして、過去のわが国のやり方について、悪い点はもちろん私は反省すべきであると思います。しかしながらわれわれの先輩、祖先のやったことがみな悪いことであったというふうには、私は考えておりません。反町すべきものは反省しますけれども、しかし何もかにもわれわれの過去の歴史というものはみな聞違っておった、あるいは日本は悪いことばかりしたのだ、そういうような考え方は、私は絶対に持っておらないのであります。
  26. 田中稔男

    田中(稔)委員 今のは私の質問を故意に誤解するような、そういう答弁だと思います。私だって日本人が過去においてやったことを、何もかにも悪いなどと言っていやしない。ただ満州事変あるいはシナ事変、それから太平洋戦争、こういう一連の戦争政策、これが間違っておったということをお認めになるかどうか、もう一度答えていただきたい。
  27. 船田中

    船田国務大臣 過去のわが国のやり方について反省すべきものがあることはあると思います。ですからそれは反省すべきであると思います。しかしながら先ほど来申し上げております通りに、太平洋戦争が果して正義の戦争であったかどうかということは、後世の賢明なる史家の判断に待つ以外に道ぶないと思います。
  28. 田中稔男

    田中(稔)委員 これは歴史の問題ではないのですよ。日本国会の衆議院の外務委員会で、一九五六年の二月の二十三日に私は聞いておるのです。これはそんな後世の史家を待つような話でたくて、しかも私はここに国民の代表としてしかも私はさらに私のずっと背後にある数億のアジア諸民族、これが日本戦争政策のために大きな被害を受けたのでありますが、こういう諸民族の著、え方などを参酌して聞いておる。それでここにテレビでもあって、インドの農民もインドネシアの農民も、あるいはビルマの労働者も、ここで私どものやっていることをテレビジョンでみんなが見たら、あなたの発言を聞いてみな驚くだろうと思う。そんなことであったら賠償問題たんか問題にならぬ。あなたは八億もフィリピンに賠償するとかなんとか行っておりますが、あなたは太平洋戦争というものは政府としては悪かったことがわからぬのだ、後世の史家の判断を待って賠償問題を解決しようということであれば、百年か二百年後に賠償問題を解決するということになる。そんなことをアジアの人が聞いたら、私はびっくりするだろうと思う。幸いテレビがない、全アジア的規模において見えないからいいが、あなたの発言をその通り速記にして各国語に訳してこれを伝えたら、私は大へんなことになると思う。もう一ぺん、いい訂正の機会ですから、あなたはほんとうに太平洋戦争というものは侵略的なものでなかったか、また侵略的なものであったかどうかは今私にはわからぬから、後世の中家の見解の定まるときをとうという御答弁に間違 いないかどうか、私は確かめておきます。
  29. 船田中

    船田国務大臣 過去の誤まりのうちにおいて、反省すべきものは十分反省していかなければならぬと存じます。しかし何もかにも日本が悪いことをしたというふうには、私は考えません。
  30. 田中稔男

    田中(稔)委員 反省するとおっしゃったが、何を反省しますか。過去にやったうち反省すべきものは反省するとおっしゃったが、それでは太平洋戦争で、日本として反省すべきものはどういうことを反省しますか、具体的に言っていただきたい。
  31. 船田中

    船田国務大臣 たびたび申し上げております通り、悪かったと思うところは反省したらいいのでありまして、それによりまして今後諸外国との友好関係を進めていくという方向に進んでいけば私はよろしいと思います。田中委員極東における諸外国が、日本を非常に恨んでいるようにばかりおっしゃっておられたのでありますけれども、私の経験では必ずしもそうではないと思います。日本のやったところでいいところもずいぶん――東アの諸国民からあこがれをもって迎えられておるものも決して少くございません。
  32. 田中稔男

    田中(稔)委員 私も戦時中ジャワ、ボルネオに二年も行っておったのですからそれはよく知っておる。たとえば戦戸の副産物として個人的に恩義を感じたりした者もあります。それから戦争で金もうけした民族資本家だっておりますが、そういうことではない。全体としての戦争政策、これがよかったか懸かったかの問題です。しかし今のように幾ら質問しましても少しも満足な答弁ができない、不誠意きわまるものでありますから、これ以上追及してもむだでありますからやめます。  その次にお尋ねしたいのは、きあうこれもおっしゃっておりましたが、自民党の防衛政策をやっていく、そして自衛隊もだんだん増強していく、そうすると駐留無の撤退を期待することができる、こういうふうなお話をいともたやすく言われたのでありますけれども、私どもはそうけ思わないのです。またアメリカとしましても簡単にそう考えていない。ことにまた沖繩であるとか、小笠原であるとか――小笠原についてはあまりむずかしいことはないでしょうが、沖繩についてだけにいたしましても、これは極東におけるジブラルタルであり、マルタである。これは大へんな基地だ。しかもますますこれを増強しつつある。こういうものを返すということはなかなかない。だから自民党の防衛政策をやって自衛隊を増強すれば、アメリカ兵隊が帰る、アメリカの産地もたくなるというようなことを、一体お考えになっているかどうか、御答弁願いたいと思います。
  33. 船田中

    船田国務大臣 自衛隊が増強されまして、わが国の国力及び国情に沿うような自衛体制が整備されるということになりますれば、これは外国駐留軍の撤退の基礎になると存じます。しかし予算委員会あるいはその他の委員会におきましても申し上げておりますように、防衛庁が持っております現在の試案が完成したら、必ず撤退するかと言われれば、必ずしも撤退とは相一致するものではない。米軍の撤退は、日本アメリカとの合意によって撤退するのでありますが、今はまだその時期には達しておらない。国際情勢ともよく見合っていかなければならないのでありますから、ある程度の自衛体制が整備されたから、必ずそれに見合って米軍が撤退するということは、申し上げかねることを繰り返して申し上げます。
  34. 田中稔男

    田中(稔)委員 今度は、技術協定ができまして、いろいろ高度な技術を取り入れた兵器が生産されるようになりますが、この兵器は、日本自衛隊の装備としてだけ使われるのでありますか、それとも兵器を大冠に生産しまして、一部はアジア諸国に売り出すというようなことも考えられますか、どうですか。
  35. 船田中

    船田国務大臣 この問題につきましても、昨日穗積委員の御質問にお答え申し上げておきました通りに、わが国といたしましては、終戦後十年余にわたる空白がありますので、防衛生産については非常におくれております。特に技術方面においては、非常におくれております。従いまして、今お示しのような協定が成立いたしますれば、日本の防衛生産に寄与するところが非常に多いと存じます。しかしそれを導入することによりまして、防衛生産が進んで、これから先、友好国に武器を輸出するかどうかということは、直接この問題とは関連のないことでありまして、これは別個に考えていくべきことと存じます。
  36. 田中稔男

    田中(稔)委員 別個に考えるにしても、あなたは、日本で最新式の優秀な兵器を作った場合、これをアジアの諸国に輸出するというようなことが、望ましいとお考えでありますか。
  37. 船田中

    船田国務大臣 現在は、さようには考えておりません。そういう計画を持っておりません。
  38. 田中稔男

    田中(稔)委員 このくらいにしますが、最後に締めくくりとして一つお聞きしたいのは、アメリカ仮想敵国が、いわゆる共産圏諸国であることは、これは明らかであります。そうしてクレス長官は、この間戦争せとぎわ政策というようなことを唱えたことも御承知通りであります。私は、それはなかなか世界戦争というような大きな戦争は起らぬと思う。しかし今おっしゃったように、局地戦争は起る可能性は十分にある。実はそういう局地戦争朝鮮戦争とかインドシナ戦争、そういうものが起らなければ、やはりアメリカの膨張した軍需産業の製品のはけ口がない。だから戦争は起る。現にアイゼンハワーの内閣というものは、国防長官のウィルソンは、御承知通り、ゼネラル・モー夕ース株式会社の前の社長であった。そのほか十七人の主要閣僚というものは、あるいはモルガン財閥、あるいはロックフェラー財閥、あるいはデュポン財閥である。そういう財閥のみなそうそうたる指導者でございますから、アイゼンハワー内閣のことを、十七人の億万長者の内閣とトルーマンが言っていることは御承知通りでありますが、こういうわけで局地戦争が起ると思います。その起るのは、アメリカ立場側から起る。だからアメリカがいよいよそういう局地戦争にしても、あるいはかりに共産圏諸国を相手とした本格的な世界戦争も起らないこともないと考えられますが、万々一そういう世界戦争を引き起した場合、日本自衛隊は、アメリカの要請があったら、この戦争アメリカとともに戦うかどうか。これは必ず義務づけられる。そのための日米安全保障条約であり、MSA協定であります。だから必ずそうなる。あなたがどんなに拒否しようと、そうなるように今の日本の外交防衛政策は全部組み立てられております。それだから私どもは、これがアメリカ一辺倒の外交政策の非常に危険な点だと言って国民に警告し、政府と戦っていることは御承知通りであります。そうなるのであります。なるのでありますが、ここで一つお聞きしておきますのは、そういう場合を仮定して、あなたは日本自衛隊にそういう協力をさせる考えであるか、できないにしても、あなたはさせないとここではっきり言明されるか、一つ答弁願います。
  39. 船田中

    船田国務大臣 自衛隊は、日本の平和と独を守り、国土を直接、間接の侵略に対して防衛する、こういう性格を持ち、その任務を持っていることは御承知通りであります。アメリカが、果して侵略戦争を起すかどうかということは、私はさように信じません。もし大戦争が起ったときにどうするかということにつきましては、今これに対してどうという具体的の計画は何ら持ってはおりません。これについて仮想をして、どうするこうするということは、ちょっと答弁申し上げかねます。
  40. 田中稔男

    田中(稔)委員 そうすると、あるいはもう一ぺん朝鮮戦争が起ったりするような場合、あるいは台湾問題で、あそこで局地戦争が起ったような場合、こういう場合についてはどうですか。ごの場合に、アメリカの要請があって日本自衛隊を繰り出すというようなことについては、これは絶対にそういうことはないと御等分できますか。
  41. 船田中

    船田国務大臣 現行憲法の許す範囲内におきまして、自衛隊は行動するということになります。
  42. 前尾繁三郎

    前尾委員長 岡田春夫君。
  43. 岡田春夫

    ○岡田委員 私も二、三お伺いしたいのですが、その前に、今田中君から御質問になりました点で非常に不明確な点を、二、三伺っておきたいと思います。これは重大問題ですが、大東亜戦争侵略性があるかないかということは、後世の史家が見なければわからない、悪い点があったならば、それについては反付しよう、こういう意味の御答弁があったように私記憶いたしております。そこでまず第一にお伺いしたい点は、大東亜戦争には侵略性はあったとお考えになるか、なかったとお考えになるか、この点を伺いたいと思います。
  44. 船田中

    船田国務大臣 これは、先ほど来たびたび答弁申し上げておりますように、日本のやり方が全部悪かったとは私は考えておりません。
  45. 岡田春夫

    ○岡田委員 私の伺っておるのは、大東亜戦争日本のやったことの中に、あるいはあなたの御判断としてはいい点もあったとお考えになるかもしれない、しかし私はいい点があった悪い点があったということを伺っておるのじゃなくて、大東亜戦争には侵略性があったのかないのか、この点を伺いたい。
  46. 船田中

    船田国務大臣 それは先ほど来たびたび申した通り、公正な史家の判断に待つ以外に道はないと思います。
  47. 岡田春夫

    ○岡田委員 それではあなたは降伏文書に基いてポツダム宣言をお認めになりますかどうですか。
  48. 船田中

    船田国務大臣 これは公式に認めておるのでありますから、その点は十分認めます。
  49. 岡田春夫

    ○岡田委員 降伏文書に基くポツダム宣言をお認めになるとするならば、この中に日本の問題について「世界征服ノ挙ニ出ヅルノ過誤ヲ犯サシメタル者ノ権力及勢力ハ永久二除去セラレザルへカラズ」と書いてあるじゃないですか。日本戦争は帝国主義戦争であり、侵略戦府だということが書いてあるじゃありませんか、これはお認めにならないのですか。
  50. 船田中

    船田国務大臣 そういうことが書いてあることは承知しております。
  51. 岡田春夫

    ○岡田委員 あなたはポツダム宣言をお認めになるならば、これもお認めになるということになるのではありませんか。
  52. 船田中

    船田国務大臣 ポツダム宣言は認めておりますし、ポツダム宣言にそう書いてあることは知っております。
  53. 岡田春夫

    ○岡田委員 知っておるのじゃなくて、ポツダム宣言を認めておるならこれも認めることになるのじゃありませんか。知っておるのじゃないでしょう。お認めになったということでしょう。
  54. 船田中

    船田国務大臣 ポツダム宣言に書いてあることを知っております。
  55. 岡田春夫

    ○岡田委員 そういう官僚的な答弁はよしてもらいたい。ポツダム宣言を認めながら、侵略性というものを知っておってこれを認めるのでもなく、ただ知っておるというような、防衛庁長官としてそういう官僚的な答弁をされることは、国民だれが聞いても――ここにも傍聴人がたくさんおりますが、だれが聞いても笑っておりますよ。ポツダム宣言は認めておる、この中の文章として書いてあることは認めるとも認めないとも言わない、それは知っておる、これじゃ子供の話みたいなものだ。ポツダム宣言をを認めるならこれも認めておるということです。そういうことじゃありませんか。あなた自身が公正な冷静な御判断をされるために念のためにもう一度伺っておきます。
  56. 船田中

    船田国務大臣 太平洋戦争が果して侵略戦争であるかどうか、そういうようなことの価値判断は、将来史家の公正な判断に待つ以外にない、かように私は思います。
  57. 岡田春夫

    ○岡田委員 では私の質問する時間がなくなりますから、この問題はよしましょう。  もう一つ伺いますけれども、先ほど防衛生産は他国に比べておくれておる、こういうように答弁になりました。それは一体どの国に比べておくれておるということをおっしゃったのか、たとえば小さな国に比べたら日本の方が進んでおると思います。どの国と比べておくれておるとおっしゃったのか。
  58. 船田中

    船田国務大臣 とにかく終戦後十年の空白がありますから、防衛生産ということについては非常によその国に比べて――よその国と申しますのは、欧米における普通のわれわれの知っておる多数の国でございます。
  59. 岡田春夫

    ○岡田委員 知っておる多数の国と言われたって、あなたの知っているのはアメリカだけかもしれないけれども、知っている国はインドネシアもあるだろうし、セイロンもあるだろうし、セイロンと比べたら日本の方がおくれているとも言えないだろうし、知っている国というような抽象的なお話ではなくて、あなたはほかの国に比べておくれているとおっしゃるのだから、どの国に比べておくれているとおっしゃっているのですか。知っている国はまさか二つか三つしかないというわけではないだろうと思うのだが。
  60. 船田中

    船田国務大臣 先ほど御答弁申し上げている通りであります。
  61. 岡田春夫

    ○岡田委員 どうも事務、官僚と質疑応答をやっているようでつまらないから、私は続いて本論に戻ります。  昨日の新聞によりますと、日米技術協定を受け入れる前に日本の国は武器開発援助計画を受け入れることについて、防衛庁は在日米軍の軍事顧問団に正式の申し入れを行なった、この意味のことが報道されておりますが、この点は事実でございますか。
  62. 船田中

    船田国務大臣 在日顧問団に申し入れているということはございません。ただ情報を聞いておるという程度でございます。
  63. 岡田春夫

    ○岡田委員 この受け入れをしてはどうかということを昨年の春、日本外務省アメリカの大使館から申し入れがあったと言っておるのでありますが、条約局百長、御存じだろうと思いますが、この経過をお話し願いたい。
  64. 下田武三

    下田政府委員 ただいま防衡庁長官お話しになりましたように、これは政府として受け入れる方針をきめて交渉をやっておるというような段階ではございません。アメリカからいろいろな部面において情報をもらうことはございます。しかし日本としましてはこの情報を検討するということは、外務省として当然なさなければならないことであります。またそのような計画が防衛関係のものの情報でありましたならば、その情報を防衛庁にお回しします。防衛庁におかれましては防衛の角度からその情報を当然検討なさると思います。要するに情報をただいま研究をしておるという段階でございます。
  65. 岡田春夫

    ○岡田委員 条約局長は横を回いておったから知らなかったのでしょうが、私はそんなことを陶いているのではない。アメリカから去年の春に武器開発援助計画というものを日本の国が受け入れてはどうかという申し入れが、正式にアメリカの大使館を通じて外務省にあったのではないか、こういう事実があったかどうかということを伺っているので、その問題とは違いますからもう一回……。
  66. 下田武三

    下田政府委員 正式の申し入れでも何でもございません。ごく下のレベルの者が、アメリカとNATOの間ではこういうようなものが今考えられておるというので、それではその情報を日本にも回そうということで、そういう情報をもらったということはございます。
  67. 岡田春夫

    ○岡田委員 正式ではないにしても、そういう申し入れがあったということになりますね。
  68. 下田武三

    下田政府委員 これは申し入れではございません。情報の供与でございます。
  69. 岡田春夫

    ○岡田委員 それじゃ伺いますが、技術協定と武器開発援助計画との違いというものは、一体どういう点でありますか。
  70. 下田武三

    下田政府委員 これはまるで、違います。技術協定は、防衛庁長官がおっしゃいますように、戦後十年以上空白がございました技術の立ちおくれを取り戻すために、日本のほしい技術情報をもらうということになっております。その計画というのは、アメリカとNATOの諸国との間で考えられておりますのは、技術をもらうということでなくて、ミューチュアル・ウェポン・ディヴェロップメントプログラムですか、共同防衛にある関係国がお互いに武器の改良開発をはかるというプログラムであります。片方は紙の上の資料であり、片方は現実の生産過程に入る、プロセスの問題であります。
  71. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは防衛庁長官に伺いますが、今説明されたような開発援助計画が、技術協定の前段としてそういう受け入れ態勢を作ってから、技術協定を受け入れられるのか、その関係はどのようになりますか。
  72. 船田中

    船田国務大臣 これは両者の関係はないのであります。
  73. 岡田春夫

    ○岡田委員 そうすると両者の関係がないとするならば、技術協定も開発援助計画も、もし日本防衛庁として向うの情報としてこれを認めるならば受け入れようという考えで両方の交渉を進めておいでになるわけでございますか。
  74. 船田中

    船田国務大臣 技術協定の方は交渉を進めるというところまで進んできておりますが、一方の開発援助計画の方につきましては、先ほど下旧条約局長から御説明申しましたように、情報の供与を受けておるというところでございましてまだこれを交渉するとかなんとかいう段階まで進んでおらないのであります。
  75. 岡田春夫

    ○岡田委員 情報の供与というが、あなたは大体援助計画というのは御存じだろうと思いますが、それじゃ援助計画の内容について伺いたいと思うのですけれども、この援助計画というのは単なる技術の援助いわゆるミュチューアル・ウェポンディヴェロッブメントプログラム、この問題は技術についての相互的な武器の計画を取り扱うというのではなくて、資金の面における援助もこの計画の中には入っているわけですが、資金の面の援助についても日本が必要があればやろうというお考えかどうですか。
  76. 船田中

    船田国務大臣 私の聞いておりますところでは、これは工としてNATOの関係でございますが、援助を受けたいという国のいいアイデアがあったときに、そのアイデアを実現するためにあるいは試作とかその他の費用を資金的に援助しようという計画がある、こういうことを聞いておるのであります。
  77. 岡田春夫

    ○岡田委員 それじゃ新聞で伝えられるように、日本防衛庁としては中型特車いわゆる戦車それから魚雷、固形ロケット燃料こういうようなものを、この計画に基いてアメリカ政府に要請をしていると伝えられているのだが、こういう事実はないのですか、どうなんですか。
  78. 船田中

    船田国務大臣 新聞に伝えられておるような事実には進んでおりません。
  79. 岡田春夫

    ○岡田委員 そういうお考えはあるのでありますか。
  80. 船田中

    船田国務大臣 もしできればそういうことが援助を受けられれば大へんけっこうだと思いますが、今のところはまだそこまで進んでおらないのであります。
  81. 岡田春夫

    ○岡田委員 あなたの御判断としてはいかがでございますか。受け入れられれば受けたいというお考えでございますか。
  82. 船田中

    船田国務大臣 日本人の頭も非常に進んでおりますから、いろいろなそういう兵器あるいは飛行機艦船等についての改良のアイデアを持っているものはあります。ですからそういうものについてこれを試作をするとか、あるいはさらに本格的な製作を進めるということができれば、わが国の防衛体制を整備する上において非常にいいと考えております。ですからアメリカの方で、日本の負担なしにこういうことができるようになれば大へんけっこうと思いますので、情報を今集めておるという段階であります。
  83. 岡田春夫

    ○岡田委員 これはあなたはちょっとお考え違いがあるのじゃないかというように考えるのだが、資金があれするのですから日本の負担なしにやるのかもわかりません。しかしこの計画というのは日本に工場を作るわけです。そしてその工場の所有権なり製造権というものはアメリカが握ってしまうのです。ですからたとえば三菱重工なら三菱重工に魚雷を作らせる、その魚雷を作らせる限りにおいて、魚雷を作る製造権についてはアメリカは独占するわけです。なるほどそういう限りにおいてアメリカの金でそれをやるのだからいいじゃないかという問題なんですが、このこと自体日本の産業というものがそういう形でアメリカひもつきになっていく、こういうことが問題なんです。従って私はアメリカの金がやってもらうのだからいいじゃないかということにはならない。すなわち日本の産業自体がこういう面を通じてもアメリカに支配されていく、この点が問題だと言っているのです。あなたのお考えはちょっと違うのじゃないかと思うのですが、もう一度御答弁を願いたい。
  84. 船田中

    船田国務大臣 岡田委員はどこからそういう情報を獲得されたか私知りませんけれども、私らの伺っておるところではさような具体的なところまではまだ何も進んでおりません。従いまして今せっかくアメリカから情報を集めつつあるという段階でございます。
  85. 岡田春夫

    ○岡田委員 どこから聞いたかわからないけれどもというのは、あなた自身ちょっと不勉強だと思うのですが、これはアメリカのMSA法に耀くNATOの一つの計画というのがあるのです。その計画に辛いて日本に適用されるのです。それ以外のことをやるのではないのです。単にアメリカ朝鮮戦争で使った古兵器を自衛隊に今までよこしたように日本に押しつけてくるのと違うのです。今度はこれは日本で新たに作らせるという体制である、こういう格好でやっていく、なぜ私が知っているかというと、そういう意味でも知っているし、しかもこの問題は去年の外務委員会でもちょっと触れているのです。ですから私は知っているわけなのです。そういうような支配体制になるのであるならば、あなたはそれは賛成なのか反対なのか。
  86. 船田中

    船田国務大臣 私はそういうところに行くかどうかということについては、まだはっきりした情報を得ておりません。私はどこまでも日本が自主性を持って防衛体制を整備するように努めていきたいと考えております。
  87. 岡田春夫

    ○岡田委員 それを御存じにならないとするならば著しく不勉強とわざるを得ない。それはMSA法をごらんになればおわかりの通りですよ。NATOにおける計画をごらんになればその通りですよ。そういう点をあなたは御存じにならないというのならば、ただ単にアメリカから魚雷やそういうロケット燃料をもらうために交渉なさっているのですか、サウンドされているのですか、一体何を交渉されているのです。
  88. 船田中

    船田国務大臣 どういう方法でどういうルートをとってどういうような条件でやるかというようなことについては、これはアメリカの責任者から直接情報を得なければこちらの対策は立ちません。従ってアメリカから情報を得つつある、こういう状況であります。
  89. 岡田春夫

    ○岡田委員 私が先ほど申し上げたような、支配されるような生産方式であるならばあなたは御賛成でございますか、反対でございますか。
  90. 船田中

    船田国務大臣 日本はどこまでも自主性を持って防衛生産をすることができるようにしていきたいと考えております。
  91. 岡田春夫

    ○岡田委員 あまりやってもどうもいつまでも官僚式答弁しか伺えないから論題を変えます。  この前、二月十一日に私は防衛長官に来ていただいて御質問を申し上げたのですが、アメリカ日本にある華地についてごの基地の性格はどういうものであるか、こういう点について御質問をいたしました。電光外務大臣は予算委員会においてこれは日本の基地である、ところが船田防衛長官は当初は私の質問に答えて、これは安保条約、行政協定に基いてきめられたところのアメリカの基地であります。こういう答弁をされた。そこで私はそれに続いてあなたはアメリカの基地だと言っているが、重光外務大臣日本の基地だと言っているじゃないか、話が違うじゃないか、こういう点を追及いたしました。ところが今度は言葉を変えまして、いやそれは同じことであります。安保条約に基いて共同の防衛の責任があるから、共同の防衛のために、共同の目的で、共同の培地でございます。こういう意味の御答弁があったように記憶いたしておりますが、このホをあらためてもう一度伺っておきたいと思います。この点はいかがでございましょう。
  92. 船田中

    船田国務大臣 今最後お話しになりましたように、日米共同で日本を防衛しておるのでありますから、その共同防衛のための、日本を防衛する基地であります。
  93. 岡田春夫

    ○岡田委員 日本共同防衛するための日本の基地である、一応わかったようなわからないような答弁ですが、それはいいとして、それでは共同防衛のためには基地におけるいろいろな問題について、常時日本側アメリカ側との間に交渉があるのですか、連絡があるのですか、どうなんですか。
  94. 船田中

    船田国務大臣 連絡は十分持っております。
  95. 岡田春夫

    ○岡田委員 基地の中でアメリカにいろいろな変化があった場合においても、そういう連絡は日本にございますか。
  96. 船田中

    船田国務大臣 アメリカ軍の使っております基地の中でわが方に関係のあります分につきましては、アメリカから常に連絡をして参ります。
  97. 岡田春夫

    ○岡田委員 それは全部関係あると思うのです。先ほどあなたが御答弁されたように、共同防衛のために日本にある基地なんだから、日本関係あることは全部関係がある。日本関係ないことはありますか、どうなんですか。私は全部関係があると思う。あなたの御答弁を聞いておると、関係のないことがあるようですが、全部関係があるのではありませんか。そういう場合、全部関係があるとするならば、一々アメリカの軍の移動その他については、これは全部連絡があると解釈すべきであると思うが、この点はいかがでしょうか。
  98. 船田中

    船田国務大臣 行政協定によりますと、アメリカの軍の移動あるいは艦船、兵器の移動について一々こちらが情報を受けるという規定にはなっておりません。しかし好意的に大体においては通報を受けております。
  99. 岡田春夫

    ○岡田委員 共同防御というものを一応認めたとして――私は認めませんけれども、一応認めたものとしても、共同で防衛するのですから、日本にある基地の共同で防衛する片一方であるアメリカ軍隊が、基地内において大きな移動をする、変化があった、こういう場合には連絡するのは当りまえなのです。たとえば例をあげて言いますと、日本の基地にアメリカ軍隊が全部いない、こういう場合に何か事態が起ったとするならば、共同の防衛という条約の目的を達せられないことになる。ですから、一切がっさいそういう問題について連絡、通報があるべきものであると私は考えるのだが、この点は全部連絡があるというようにただいま御答弁があったように感じましたが、もう一度確認をいたしておきたいと思います。
  100. 林一夫

    ○林(一)政府委員 先ほど長官からお話がありましたように、米軍の基地は日米共同防衛のための米軍の基地でございます。その米軍の基地にありますところの部隊の動き、編成、配置というようなことにつきましては、やはり機密になっておりまして、それは公表はいたしておりません。ただ公表する二、三日前に、公表するから事前にこの点だけは連絡するという好意的な連絡はありますが、こういう部隊の動きについて全面的に日本側に連絡があるというようなことはないのであります。
  101. 岡田春夫

    ○岡田委員 しかし共同防衛の見地から見れば、それはどの飛行機が何台来たとかいうようなことは別として、大部隊が移動するような場合には、これは公表されないにしても、当然日本防衛庁なり政府に対してこれは何らかの連絡があるものと私は解釈すべきだと思う。これが共同防衛の見地です。これはそうだと思いますが、その点はいかがですか。
  102. 林一夫

    ○林(一)政府委員 おっしゃる通り、部隊の移動については事前に好意的な連絡、公表前に事前に連絡がございます。
  103. 岡田春夫

    ○岡田委員 連絡があるとするならば、この間SEATOの合同演習といわれるバンコックの近くでSEATO関係の諸国が演習をやったのですが、そのときに日本から相当大部隊のアメリカ駐留軍が動いております。あなたも御承知のように、横須賀からは海軍の旗艦であるプリストン号が出港しております。それから空軍関係では九州のほとんどの空軍が動いております。こういうことについて事前に連絡ございましたか。
  104. 林一夫

    ○林(一)政府委員 その際には連絡はなかったと記憶しております。
  105. 岡田春夫

    ○岡田委員 それはどういうわけで連絡がなかったですか。
  106. 林一夫

    ○林(一)政府委員 これは日本の防衛のためではないのでございまして、SEATOの関係の演習に関することでございますから連絡がなかったのでございます。
  107. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは、SEATOの演習だから日本関係はないことは一応わかったのであります。しかしそのSEATOの演習に日本共同防衛のための軍隊が動いたんだから、そういうことによって共同防衛の目的が達せられないことになる。先ほどあなたは部隊の移動については連絡があるという話をされておる。それならば、井同防衛の目的が達せられないという意味からも、こた部隊の移動ということについては必ず事前の連絡があるということからいっても、なぜ連絡がなかったですか。連絡がないのになぜあなた方は黙っておったのですか。
  108. 林一夫

    ○林(一)政府委員 ただいま申し上げましたように、日本防衛のための移動あるいは配置というような場合においては、事前に好意的な連絡があるのでございます。SEATOの関係の分は、これは直接に日本の防衛のためというわけではないのでありまして事前の連絡がなかったのであります。
  109. 岡田春夫

    ○岡田委員 おかしいじゃありませんか。私さっきから聞いておるのですよ。日本の中でこれをやっておるならまた別だ。だけれども日本の基地におる軍隊がバンコックへ行っておるのですよ。その限りにおいて、日本の基地にはアメリカ軍隊はそのときはいないでしょう。いないとするならば、そのときには共同防衛という目的は達せられないでしょう。それでは、この点共同防衛の目的が達せられたことになるのかどうか。共同防衛の目的というものは、お互いに共同しておるということにおいて防衛できるでしょう。だから、そういう場合に事前に連絡があったのではないかと私は聞いておる。しかも相当の部隊が移動しておるのです。相当の部隊の移動をする場合には連絡があるとあなたさっき言っておる。今度の場合にだけ連絡がない。部隊の移動というものは、日本国内で立川の基地から千歳の基地に動いたということだけが移動ではない。外国に行くのも移動なんですよ。
  110. 林一夫

    ○林(一)政府委員 SEATOの部隊の移動につきましては、これは先ほど申しましたように、直接日本の防衛のためではないのであります。また臨時的な移動でございまして、連絡はなかったものと考えておる。私が先ほど申し上げました事前の連絡があると申しますのは、たとえば日本から撤退する場合、あるいは配置がえがあるというふうな場合には、公表する前に事前に連絡がある、こう申し上げたのであります。一般に公表しないような機密な事項は、これはやはり軍の機密に属しまして、連絡はないのでございます。
  111. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは言葉をかえて言いますが、こういう事実はあなた御存じでございますか、SEATOの演習に日本に駐留しておるアメリカ軍隊がずいぶん移動したという事実は御存じでありますか、どうですか。
  112. 林一夫

    ○林(一)政府委員 よく存じておりません。
  113. 岡田春夫

    ○岡田委員 御存じないですか。新聞を見ていないですか。新聞に写真まで出ていますよ。日本から到着したヘリコプターからおりたんだという写真まで出ておりますが、新聞を見ないですか。
  114. 林一夫

    ○林(一)政府委員 その程度のことはわかっておりますが、どのくらいの部隊がどのような編成で行ったというようなことについては、全然存じておりません。
  115. 岡田春夫

    ○岡田委員 そういう点は、私は部隊の編成とか人数とかいうことを言っておりません。しかし日本にいる部隊からそういうものが参加して行った事実を御存じかどうかということを伺ったのですが、そういう点は確認されておりますか、どうですか。
  116. 林一夫

    ○林(一)政府委員 新聞に載っておる程度のことは伺っております。
  117. 岡田春夫

    ○岡田委員 しかし新用だけ見て、あなたは、いわゆる共同防衛日本側の責任者である防衛庁がそういうことを確認する必要はないとお考えになっておるか。そういうことがあったのかなあとお考えになって感心しておられるのか。一体どうなんですか。
  118. 林一夫

    ○林(一)政府委員 そのような臨時的な移動については、先ほど申しましたように事前の連絡もございませんししまずものですから、一々そういうような場合にこちらから特に照会して確認するというようなことはいたしておらないのでございます。向うから連絡のありますのは、先ほど申しましたように、撤退するとか他の地方に移駐するとかいう場合に、公表する前に事前に連絡があるという程度であります。
  119. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは何も御存じないので私が言いましょう。九州の基地が全部それに使われている、九州のアメリカの培地から、SEATOの合同演習に参加するために飛んで行って、バンコックにおりるための訓線をやったのです。こういう事実をあなたは御存じでありますか。
  120. 林一夫

    ○林(一)政府委員 その点は確認はいたしておりません。
  121. 岡田春夫

    ○岡田委員 確認はともかくとして、あなたは知っていますか、知りませんか。
  122. 林一夫

    ○林(一)政府委員 存じておりません。
  123. 岡田春夫

    ○岡田委員 存じてないのですか。新聞に書いてありますよ。それとも新聞を見てないのですか。新聞にあったっても知らないという話があるかというのです。事実使われているのです。それでは例を変えて言いましょう。アメリカがソビエトへ九州の基地から原子爆弾を持って飛んで行ったとする。それもわれわれに関係はないから知りませんと言っても、それによって戦争が起って、それの報復にソビエトが爆弾を落す。どこへ落すのだ。九州の基地へ落すのじゃありませんか。そういうことが一体共同防衛の、日本の防衛のための防衛当局の仕事になりますか。アメリカ軍隊がどのように動いているか、共同防衛の目的的で日本にいるなら、共同防衛の目的のためにいるアメリカ軍隊がどこへ移動をしたということを知らないでは防衛当局として怠慢じゃありませんか。そういう点はどこへ動いたか知りませんし、確認はしておりません、聞いたこともありません、こっちから尋ねに行ったこともありません。これで一体共同防衛ができるかというのですよ。これは一体どうなんです。
  124. 林一夫

    ○林(一)政府委員 先ほど申しましたように、臨時的に一時他地方に演習のために出発するというようなことは、一々確認はいたしておらないのであります。恒常的な変化というか、部隊の他地区べの移駐とか撤退とかいうようなことにつきましては、十分に承知しておるのであります。演習の目的のためにどこの基地からどのくらい行ったというようなことは確認はいたしていないのであります。
  125. 岡田春夫

    ○岡田委員 あまり同じ問題にばかりこだわっていてもいかぬからやめますが、私はどこの部隊がどこに行ったか聞いてくれと言っていない。あなた自身は、防衛庁の担当者として、少くともSEATOの合同演習に日本にいるアメリカ軍隊が参加しているかどうかということを確認する義務があると思う。そういう義務があるのかないのか、その点からまずお答えしていただきたいのです。
  126. 林一夫

    ○林(一)政府委員 できるだけ情報を集めてそのようなことは確認する必要があると存じます。この点確認していなかったのは、いささか手落ちがあるかと存じますが、このようなことはしょっちゅうあるのであります。臨時の移動はしょっちゅうあるのであります。このような点はできるだけ情報によって確認したいというわけで努力しております。
  127. 岡田春夫

    ○岡田委員 こういうことは往々あるということそれ自体が、アメリカ日本が支配されているということ、従属国になっているということを意味しておる。こういうことが始終あって、アメリカ軍隊日本の主権である日本領土の上で勝手なまねをしたり、勝手にあっちこっち飛んでいることについて往々連絡がないというそのこと自体が、アメリカに従属しているということを意味しておるのではないか。これはあなた自身が言っておるのです。
  128. 林一夫

    ○林(一)政府委員 往々あると申しますのは、たとえば国内でも演習をやっておりますから、このような臨時的な移動は往々あるのであります。そのたびに連絡があるわけではない。わが方としては、十分そのようなことは確認するように努力いたしておる。
  129. 岡田春夫

    ○岡田委員 このSEATOの問題について、今後確認されるための御努力なり、確認をするための交渉をされますか、いかがですか。
  130. 林一夫

    ○林(一)政府委員 できるだけ情報を集めて調べたいと思います。
  131. 岡田春夫

    ○岡田委員 アメリカ駐留軍の顧問団なりアメリカ大使館なりに行ったら、新聞記者から情報を集めなくてもすぐわかる。そういう交渉をするかということです。
  132. 林一夫

    ○林(一)政府委員 情報と申しますのは、もちろんアメリカ側の情報も入っております。アメリカ側の情報もいただいて十分確認いたしたいと思います。
  133. 岡田春夫

    ○岡田委員 それではこの点は防衛庁長官に再度確認をしておきたいと思います。局長の答弁だけでは私は納得ができません。なぜこのSEATOの演習に対し、日本におるアメリカ軍隊が参加したかということです。情報という言葉に譲りましょう。情報をとるために、アメリカ関係当局に話し合いをされるお考えがあるかどうか、この点を伺いたい。
  134. 船田中

    船田国務大臣 SEATOの演者の問題につきましては、わが方としても十分参考になることでありますから、よくアメリカ顧問団とも折衝をいたしましてその情報は確認いたしておきたいと思います。
  135. 岡田春夫

    ○岡田委員 その確認の場合に、九州基地から出発してあの演習に参加しているが、こういう方式をとられたという点も御確認願えますか、情報を集められるかどうか。この点重要な点ですから、もう一度大臣から伺っておきたい。
  136. 船田中

    船田国務大臣 九州共地から出発したというだけのことで、その九州基地をSEATOの演習の目的に使ったとうことにはならぬと存じますが それらの点も含めてよく顧問団から事情を伺うことにいたしましょう。
  137. 岡田春夫

    ○岡田委員 最後に一点。先ほど足利尊氏級に言われたが、尊氏級のお話を一点伺っておきたい。私の記憶によれば、あなたは防衛庁長官になられて、故郷の宇都宮ににしきを飾って帰られたわけだが、その帰られたときには、防衛庁長官として防衛庁のヘリコプターを使って行かれた。これはいいと思います。ヘリコプターを使って行ったのはいいが、このヘリコプターの着いたところは一体どこかというと、自衝隊のための演習地なり、自衛隊の中なりではなくて、ある学校の庭に到着をさせたという話があるが、このことは防衛庁法から考えて、防衛庁長官としての職務から考えて、そういうことがいいのか、この点を最後に伺っておきたい。
  138. 船田中

    船田国務大臣 私が就任後間もなく私が理事長をしております学校法人作新学院の校庭にヘリコプターでおりて、そこに集まっている多数の学校の児童生徒及び宇都宮市民にこれを見せたということは事実であります。私はその程度のことをやったから、職務上怠慢とかあるいは職務を冒涜しているというふうには考えておりません。これによりましてヘリコプターというものがどういうものであるか、また、多数の小さな児輩、生徒、学生及び市民が、それに非常な興味を持っておりましたので、それを見せてやったことを決して悪いことだとは私は思っておりません。
  139. 岡田春夫

    ○岡田委員 興味を持ったのは、ヘリコプターよりも、防衛庁長官におなりになった船田さんがそれからおりるところに興味があったのではないかと思う。それでにしきを飾ろうと思って、特にあなたがあなた自身の経営する学校にお帰りになったから、まさに興味百三十パーセントが百五十パーセントであったろうと私は思う。まさに効果も百パーセントを越えたであろうと思う。しかしそのことは防衛庁長官の仕事ではないのではないか。私はもう一度伺って終りにいたします。
  140. 船田中

    船田国務大臣 これについてのよしあしの御判断は御質問者におまかせいたします。
  141. 前尾繁三郎

    前尾委員長 松本七郎君。
  142. 松本七郎

    ○松本(七)委員 外交問題は、特に日本のように日米共同防衛立場をとっておる以上は、アメリカ外交政策及び防衛政策、そういうことと非常に関係が深くなってくると思います。私ども、もちろんアメリカの外交政策、特に極東における防衛上のいろいろな政策についているいる批判的な意見を持っておるわけでありますが、今日の日本立場において特に防衛の責任者である長官がどういう考え方をしておられるかということが、今後の品木の外交にも非常に大きな影響があるので、そういへ意味で私は二、三の点をこの機会にお伺いをしておきたいと思います。  まず最初に事務的なことでございますが、政府で防衛上のいろいろな問題を協議され、あるいは外交上の外国の情報だとかそういうことを検討される場合に、特に外務大臣と防衛長官がどの程度これらの外交問題なり防衛上の問題の情報の交換をされて協議をされておるのか、たとえば経済閣僚というようなことが常識的に言われておる。いろいろな経済問題は外国との関係もありますし、比較上の問題、国内の通商上の問題、財政上の問題、そういう問題でいろいろ協議を進められるのだろうと思いますが、今日の外交では、特に日本の場合は防衛長官考え方というものが非常に大きな要素になる。そういう意味でどの程度の外務大臣との連絡をされておるか、定期的にいろいろな情報を持ち寄ってお話し合いをされておるのか、それとも閣議の席上で交換される程度か、あるいは何か防衛長官自身の御判断によって、こういうことは外務大臣の耳にも入れねばなるまいということで、そのつどやられるか、何か定期的にやられておるか、そういう点を少しお話し願いたい。
  143. 船田中

    船田国務大臣 ただいま松本委員から御指摘のありましたように、防衛問題につきましては、外交問題と最も深い関係を持っておりますので、外務大臣とは常に緊密な連絡をとっております。なお事務当局も常に連絡をいたしまして、お互いに情報を交換いたしまして誤まりのないように期しておる次第であります。
  144. 松本七郎

    ○松本(七)委員 それで定期的に何か日を定めて連絡されておりますか、それとも大臣同士でそのつどやられておりますか。
  145. 船田中

    船田国務大臣 外務大臣とほとんど毎正連絡をとっております。
  146. 松本七郎

    ○松本(七)委員 先ほど田中委員質問に対する御答弁だったと思いますが、朝鮮動乱だとかあるいは仏印戦争、そういうふうなだいぶ古いことをお話しになったのですが、そのときに、昨年の七月ジュネーヴ会議のころはだいぶ情勢がよくなったが、その後また冷戦が少しひどくなったようだというお言葉もあったようであります。この見解は外務大臣と一致しておると思いますが、そこでお伺いしたいのは、これは実はアメリカ考え方なり政策が、私どもは特に極東において大きな影響があると思いまして、いろいろ検討しておるわけであります。それに対して日本としてどういう考え方で臨むかということが一つの大事なことになりますので、特にこれは防衛長官考え方をお伺いしたいのですが、本年のアイゼンハワーの年頭一般教書で、アイゼンハワーはこういうことを言っておる。自由諸国に対する共産党の戦術は、暴力と暴力の脅威に依存しようとする態度から変ってきたというのです。どういうふうに変ってきたかというと、暴力と暴力の脅威に依存しようとする態度から、分割、誘惑及び欺瞞的行動に依存するように重点を移してきている、われわれはこの明瞭ではないが危険な脅威を生ずる戦術に対処する準備が必要である、こういえ、ことを言っている。これがやはり私は日米の共同防御の上から、ものの考え方として非常に影響してくると思うのですが、防衛長官はこの考え方に同意されますでしょうか。
  147. 船田中

    船田国務大臣 アイゼンハワーが今御指摘のように演説をされたというようなことも新聞で承知いたしております。大体この国際情勢一般を見渡しましたときに、いわゆる原水爆をもってする第三次世界大戦というようなものが、近い将来に起るというふうには私考えませんが、しかしさればといって部分戦争なり、冷戦なりが終ってしまって、直接もしくは間接の侵略が全然なくなったというふうには考えておりません。そういう意味におきましては、ただいま御指摘のように大体において今日の国際情勢がなっているのではなかろうかと私は見ております。
  148. 松本七郎

    ○松本(七)委員 その場合私のお伺いしたいのは、たとえばどういうものをもって分割だとか誘惑だとかあるいは欺瞞的な行動だと見られるか、具体的な例がございました、一つ指摘願いたい。
  149. 船田中

    船田国務大臣 アイゼンハワーのあげられたことについて、私が一々その資料的なことを申し上げることはちょっとできませんから、どうぞその点は御容赦を願います。
  150. 松本七郎

    ○松本(七)委員 アイゼンハワーがどういうことをもとにして言ったかを聞いているのではないのです。そういうことを支持せられているなら、日本政府としてこういう事実もあるから、この考え方は支持できるということがなければならぬ。日本政府としてどういう具体的な事実を示され得るかということを聞いている。
  151. 船田中

    船田国務大臣 独立国であります以上は、どうしてもやはりその国を守り得るだけの最小限度の自衛体制を整えておくことが必要である。それができない、すなわち真空状態になると、直接なり間接なりの侵略が起ってくるのではないか、かように考えます。これは過去の歴史から見ましてそういう事実があります。これはまことに不幸なことでありますが、事実そういうことが行われておりますので、それらの事情をよく見まして、わが国としてはやはり独立を守り、平和を維持するために最小限度の防衛体制を整備していきたい、かように考えるのであります。
  152. 松本七郎

    ○松本(七)委員 そうすると、今当面具体的なこういう欺瞞的行為があるから対処しなければならぬというのではなしに、全般的に独立国家であるから一つ員術体制だけは作った方がいい、こういうお考えだと了解してよろしゅうございますか。
  153. 船田中

    船田国務大臣 今大体御指摘のように、過去のいろいろな事実に徴しまして平和は、ただ口先ばかりで平和を言したからといって、それで平和が実現するものとは私は考えません。やはり平和を守るだけの防衛体制がなければ平和は守れぬ。これは賢明なる松本委員承知通り、永世中立を唱えておりますスイスにいたしましても、北の方のスエーデンにいたしましても、やはり最小限度の防衛体制を持っております。その防衛体制があればこそ、私はあの中立が維持でき、あるいは独立が保てたものと考えますので、それらの諸国の過去の歴史というものをよく見まして、そうしてわが国の国情と国力に相応する防衛体制を整備していきたい、こういう考えを持っている次第であります。
  154. 松本七郎

    ○松本(七)委員 今独立というお言葉がございましたので、ちょっとその点をお伺いしておきたいのですが、実は私ども考えでは、今日本国民はやや独立の幻想にとりつかれておるように思います。鳩山総理大臣もやはり、独立国であるから独立国らしい憲法に変えたい、こういうことをしきりに言われるわけであります。ところが独立ということになると、これはわれわれから言えば、一種の独立の幻想であって、ほんとうの独立はまだ獲得していない、こういう見方をするわけです。これは見方によっていろいろ違うわけであります。防衛庁長官は特に、防衛上アメリカ側などと接触が一番多いわけですから、この点は一番身近に感じられると思うのでございますが、サンフランシスコ条約で形式的な独立国になったから、これはもう独立国家だ、こう防衛庁長官考えられるのでしょうか、それとも共同防衛ということは合意の上であっても、やはりいろいろの制約を受けておる、こういう制約を受けておる岡はまだほんとうの自主的な独立をかち得ていない、こういうような判断をされるでしょう、どっちでしょうか。
  155. 船田中

    船田国務大臣 サンフランシスコの平和条約によって、とにかく日本が主権国家になったということでありますから、従って私は日本は独立国家になった、こういうふうに考えるのであります。しかし今松木委員の御指摘になりましたように、百分の力でほんとうに自分の国を守って、ほんとうのいわゆる不覇独立というような強い意味において、どこの国にも依存しないというような意味においての独立国と言えば、これはおそらく世界アメリカソ連、イギリス、フランスぐらいの国しかないのではなかろうかと思います。大体そういうふうに考えております。
  156. 松本七郎

    ○松本(七)委員 それから防衛庁長官はSEATOに対してどのように考えておられるでしょうか、それが極東の平和維持に役立つものと考えられますか、また日本の独立にとって有利なものとお考えになるでしょうか。
  157. 船田中

    船田国務大臣 SEATOは、やはり西太平洋における平和を維持するためには、役立つものと存じます。
  158. 松本七郎

    ○松本(七)委員 これはなかなか問題が多いと思うのです。たとえば、御承知のように、NATOに対してはソビエトは非常に疑惑の目をもって警戒しておるのです。特にあのパリ協定によって、西ドイツが当然軍事機構の中に結びつけられることがきめられる。そうして予想される統一ドイツのことをすでにいろいろきめているわけですね。今の西ドイツと同じような憲法を作ることをきめてみたり、あるいは欧州共同体の中にこれを入れることをきめてみたり、そういうことをやられるがために、ソビエト側から見れば、当然これは本質的にソビエトに対する軍事ブロックにすでに統一ドイツを入れようとしておる、こういう疑惑の目が生まれてくるのは私は当然だと思うのですが、あの欧州における安全保障、平和の維持という点から見て、パリ協定というものをどのようにお考えになりますか。
  159. 船田中

    船田国務大臣 これはむしろ外務省の方々から答弁申し上げた方がいいかと思いますが、私見を申し上げますれば、やはりパリ協定というものが、ヨーロッパの集団安全保障のために必要であったから、一昨年の十一日月にできたものと思います。またそのためにヨーロッパの平和が保たれるというふうに私自身としては考えております。
  160. 松本七郎

    ○松本(七)委員 そうすると、将来SEATOにも日本協力した方がいいと考えられますか。
  161. 船田中

    船田国務大臣 現在の憲法のもとにおいては、日本は、御承知通り、海外派兵というようなことはできません。従って今日本がSEATOに参加するというようなことは考えておらないと思いますが、この問題につきましては、むしろ外務大臣から御説明申し上げる方が適当と存じます。
  162. 松本七郎

    ○松本(七)委員 これは私は最初に申しますように、防衛の立場とそれから外交ということは密接に関係しますので、特に防衛庁長官意見を私は今伺っておるわけです。外務大臣にももちろんお伺いします。  そこで今鳩山内閣及び自民党は憲法改正の問題に取り組もうとしておるわけですが、防衛庁長官としては、しからばこの海外派兵を自由にできるような規定に憲法を改めた方がいいとお考えになりますか。
  163. 船田中

    船田国務大臣 防衛の責任者の立場から申しますれば、日本が国力国情に机応ずる最小限度の自衛軍備を持ち得るようになることを希望いたしております。このSEATOに加盟するか、あるいは海外に派兵するようにすることがいいかどうかということは、これは外交的な大きな国策として別途に考えていかなくてはたらないと思います。
  164. 松本七郎

    ○松本(七)委員 そうすると、現在では長官としてはいずれとも判断ができないとと言われるわけでありますか。
  165. 船田中

    船田国務大臣 海外派兵というようなことは、今日考えておりません。
  166. 松本七郎

    ○松本(七)委員 今日ではない。今の憲法ではできないと先ほど言われるから、それじゃ憲法改正を予想して、改正する場合に、海外派兵ができるような憲法に改めた方がいいか、やはり改正する場合には、派兵だけは禁じた規定を明確に残した方がいいか、それをお聞きしているのです。
  167. 船田中

    船田国務大臣 それらの点は、憲法調査会におきまして、十分検討をして、適当な結論を出すことがいいと思います。国民の世論ということも十分反映させた憲法改正案を検討する必要があると思います。
  168. 松本七郎

    ○松本(七)委員 もちろんそうなんですけれども、今の防衛庁長官としてどういう御意見を持っておられるかを聞いておるわけです。
  169. 船田中

    船田国務大臣 憲法調査会におきまして十分検討することがいいと思います。
  170. 松本七郎

    ○松本(七)委員 防衛庁長官としての御意見を言えないということだと了解しておきます。  それからもう一つ伺っておきたいのですが、この間原水爆の実験禁止の決議をして政府各国にそれを伝達されたわけです。今の政府並びに自民党は中立政策というものはとっておらないわけなのですが、社会党の方では以前から外交政策上も中立ということを打ち出しておるわけです。最近ソ連で原爆の実験をしてから、これの灰その他を欧州諸国でもいろいろ検討した結果、今までNATOに加盟している諸国、つまり早く言ってみれば、アメリカの陣営と非常にしっかり結びついている諸国においても、少くとも原水爆に関する限りは、一つ中立的な行き方をしなければえらいことになるというよような空気がだんだん強くなっておる。こういう点は原爆の被害国である日本としては大いに考えてみる余地があるのではないか。ただ自民党の方では中立政策は一切ごめんだ、社会党の方は中立がいい、ただこう対立しているばかりでなく、どこか一致する点があれば、現実的にはやはり少しでもいいことならば、お互いに協力するという点を見つけるべきだと思う。そういう点から最近NATOに加盟しておる諸国の動きというものは、日本に非常に参考になると思う。とにかくあのソ連の実験以来、原水爆に関する限りは、一つ中立の線で多くの国が一致しようというような動きが、NATO加盟国にさえ起っておる。日本の場合にもそういうふうな政策はとれないものだろうかと私は考えておるのですが、大臣の御見解はどうでございましょうか。
  171. 船田中

    船田国務大臣 日本が東西両陣営のどちらにも属さないで、ほんとうに中立を守っていくだけの実力のあるりっぱな独立国になることを私は希望いたしております。しかし現状におきましては遺憾ながらそれはできないのではないか。従いまして先般も答弁申し上げたように、わが国といたしましては、独立国になった以上、何とか国力に相応する最小限度の防衛体制を整備したいと考えておるのでありましてそのためにはアメリカを初め自由主義諸国家との協力関係を緊密にいたしまして、経済の上においても自立が達成でき、また最小限度の防衛体制を持ってほんとうに独立国としての実力を備えていくことがまず必要である。その上においてほんとうに中立を守し得る体制が整ったならば中立を守ることがよかろうと思います。現状においてはなかなかそれはできかねるというように考える。従って無防衛中立論というものは今日はとるべきではないと申し上げた次第であります。
  172. 松本七郎

    ○松本(七)委員 まだだいぶありますが、時間もたっておりますから、もう一つだけ伺います。先般来牧野法相が治安立法を特にやろうということを言われておる。これには閣僚の方でだいぶ賛成される方があったということです。防衛庁長官は現在特に治安立法の必要を認められるでしょうか。
  173. 船田中

    船田国務大臣 その治安立法の内容にもよりますが、私は、現状においてはそれほど差し迫った問題ではないと存じます。現在の警察力あるいはその他の治安に関する法令を適用することによりまして、十分治安を維持し得るのではないかと存じます。
  174. 前尾繁三郎

    前尾委員長 山本利壽君。
  175. 山本利壽

    ○山本(利)委員 先ほど岡田委員の御質問の中に、ポツダム宣言に関することがございまして、その防衛庁長官の御答弁あれこれから、ひょっとしてポツダム宣言が、今回の太平洋戦争侵略戦争であるし規定したものであると決定づけるように、質問者の方においてあるいは傍聴者の方において考えられるようなことになりますと、今後の議会のいるいるな論議の際において、非常に市大な問題になると考えますので、私の見解を申し述べて長官及び外務省条約局長の御答弁をいただきたいと思うのであります。  こういう宣言を作りますときに、戦勝国側といたしましては、自分たちの方を正当づけるために、今度の太平洋戦争侵略戦争であったと言いたかったでありましょう。けれどもこの宣言そのものの中には、太平洋戦争侵略戦争であるとは決定づけられていないと思います。そういうことは十貫いてないと思う。ことに先ほど岡田委員は、「日本国民を一欺瞞シ之ヲシテ世界征服ノ挙二出ヅルノ過誤ヲ犯サシメタル者ノ権力及勢力ハ永久ニ除去セラレザルへカラズ」この項目を引いてそうではないかと詰め寄られたのでありまして、この点について防衛庁長官の御答弁がはっきりしていなかったように私は思う。それは防衛庁長官としてははっきりしていらっしやるのでありましょうけれども、聞く方の者からいってそういうふうに思ったからあえてこの問題を繰り返したのであります。この指摘された条項にいたしましても、今度の戦争全体が侵略戦争だと言っているのではない。防衛庁長官が、あの中には悪い部分もあったと言われたが、ちょうどそこへ当てはまるのであって、そういう過誤を犯さしめたるものもあるからそのあるものは除去するという意味で、防衛庁長官の初めの御答弁と食い違っていると考える。最後に結論的におっしゃったのが、何だか理論はないが、自分だけで逃げたといったような感じを聞いた方に与えたのではないかと思うから聞くのでありますが、ポツダム宣言そのものは、大東亜戦争侵略戦争だと全面的にそういう字句を使っていない。全体的に向うが勝手に解釈するのは別でありますが、それは水かけ論でありますから一向差しつかえありません。だから、そういう決定的な文字はないということと、今指摘されたる部分は、そういう者の権力及び勢力は永久に除去すべきだというこのことについて日本承認したのだと私は解釈いたします。長官もその通りであろうと思うのですが、いかかでありましょうか。
  176. 船田中

    船田国務大臣 ただいま山本委員の仰せられる通りでありまして、大東亜戦争そのもの、太平洋戦争そのものが侵略戦争だということをこのポツダム宣言が宣言したものではない。われわれといたしましては、過去の誤まりは反省しこれを矯正していかなければなりませんが、しかし大東亜戦争太平洋戦争そのものが全部侵略戦争であって、日本人のやったことは皆悪いのだというようなふうには考えておりませんし、そういう趣旨を申し上げた次第であります。
  177. 下田武三

    下田政府委員 御承知のように、ポツダム宣言は、連合国側が一方的に起草しました文書でございます。そこに述べられておる見解は、連合国側の見解そのものであります。日本はその宣言の作成に参加したわけでもないので、日本側見解は全然入れられておりません。ただ日本側といたしましては、ポツダム宣言の条件をやはり受諾したわけであります。ポツダム宣言には連合国側の見解を述べました前文と、「吾等ノ条件八九ノ如シ」と掲げる具体的な条件がございます。その条件を受諾した直接の文書は降伏文書でございます。降伏文書には日本も署名いたしました。これは日本をオミットした文書でございますが、降伏文書になりますと、そういうような侵略とかなんとかいう色彩の連合国側の見解は入っておりません。はだかでその条件を受諾させるというものでございます。従いまして日本がポツダム宣言を受諾しましたことは、ポツダム宣言の中身をなすこれこれの条件を受諾したのであって、その条件を述べる過程において書いてあります連合国側の見解は、これは日本が賛成するとか反対するとかいう問題ではなく、向うの一方的な見解を述べている、そう考えてよいと思います。
  178. 山本利壽

    ○山本(利)委員 この問題は幾ら論議いたしましても水かけ論になると思いますし、きょうの質問の本義を何でございますから、日を改めてそれぞれの意見を聞くことにいたします。  私の防衛庁長官にお伺いしたいことは、北鮮におります日本人を何とか早く帰してやりたいということ、及び日本におります朝鮮人を一人でも多く帰してやりたいことについてで、これは彼らに対する人道的な考えばかりでなしに、日本の社会情勢からいっても、朝鮮人を一人でも多く朝鮮に帰すということがよいという立場から、われわれはこの問題について超党派的に話を進めるのでありますが、そのためには輸送する場合に赤十字社の船を使ってはどうか、その方が安全ではないかという質問をいたしましたところが、李承晩政権の態度から見て、必ずしも百パーセント安全だということは保証できないということであります。この赤十字のマークをつけた船でも安全でないということは、私は国際平和の上から見てまことに遺憾しごくなことだと考えますが、日本自衛力の強化ということは、これが戦争に使われては困るということは国民全部が思っておる。けれども日本が独立国家として平和的な活動をする場合において、これはぜひ自衛のために役立ってもらいたいと考えるのでありますが、こういう際にもし赤十字社のマークをつけて日本からの朝鮮人が向うべ送られ、あるいは向うにおる日本人が日本へ帰還するような場合に、万一の場合をおもんぱかってこれを護衛してやるということは国民も喜ぶことであり、当然のことであるように私は思うのですが、そういう際においてはもし外務当月その他関係当局から要請がありましたら、日本の海上自衛隊といいますか、そういう方面の協力を得て無事に送還するように援護していただけるかどうか、そういう万一のときにはトラブルが起るから、そういう少しでもトラブルの起ることはごめんで、まだ日本自衛隊はただ自衛隊の制服をつけてあっちこっちしておればそれでいいという程度のものであるのか、この点について一つ長官の御答弁をいただきたい。
  179. 船田中

    船田国務大臣 海上の安全保障につきましては、御承知通り海上保安庁が第一線の責任者になっておりまして、もし海上保安庁の要請があれば海上自衛隊もこれに協力するということになっております。ただ御指摘のような場合において海上自衛隊が出ていくというようなことが果していいかどうか、それらの点につきましては海上保安庁なり、また特に外務省その他関係者の間において十分具体的の事実につきまして協議をした上でないとはっきりしたことは申しげかねますが、原則としては第一線に海上保安庁、そうしてその力で足りないときは自衛隊が御協力を申し上げるということになっておるわけであります。
  180. 山本利壽

    ○山本(利)委員 御趣旨はよくわかりましたが、長官御自身としては今の北鮮におるところの日本人を帰す場合、あるいは日本におる朝鮮人を帰す場合、しかもそれが赤十字のマークをつけた船で帰すよう場合には、国内の各方面の要請があるならば進んでこれを援護してやるべきだとお考えになりまずかどうか、もう一ぺんその点をお尋ねして私の質問を終ります。
  181. 船田中

    船田国務大臣 韓国及び北鮮との関係国際間の非常に微妙な問題がございますので、この点につきましては外務当局の慎重な御検討によりまして、判断をしていかたければなぬことと思いますので、今ここでそれがいいかどうかということについて、直ちに私から明答申し上げるということは差し控えたいと思いますので御了承願います。
  182. 田中稔男

    田中(稔)委員 私は実は外務大臣にお尋ねしたいと思いますが、今御病気中でありますので、政務次官にかわって御答弁願いたいと思います。  第一点は二月二十一日に経団連の臨時総会が開かれましたが、その総会の直後において新会長となられた石坂泰三氏が記者会見をして抱負を語っておられます。その中で中国との善隣関係の回復及び日中貿易の重要性について非常に強調をされておるのであります。経団連と申しますとこれは日本の財界の総本山でありまして、労働組合の方の総評に匹敵する団体でございます。その新会長が就任直後こういうふうなことを言われたことで、その意義は私はきわめて重大だと思う。日本の輸出貿易は近年非常に好調を続けておりますけれどもアメリカにしましてもイギリスにしましても景気後退のきざしがすでに現われておる。だからこういうふうに世界の好況に依存している日本貿易というものはこれがいつはね返ってこないとも限らない。こういう心配は財界関係者の胸奥に非常に深く私はあると思う。そういうわけで私は石坂新会長の発言はやはり財界の意向を反映して非常に真剣なものだと思うのであります。なおこの間成立いたしました日中輸出入組合、こういうもので今度第四次の貿易協定を結ぼうとしており、その準備のために年間の貿易計画について作業をやっている。新聞に発表されたところを見ますと、実績本位でいっても次年度は大体往復一億八千万ドルくらいにはなる。これに国内の需給関係を適当に措置いたしますならば、二億四千万ドルくらいには達するであろう。さらにまたココムの禁輸が解除される、あるいはまた大幅な特認が行われるという場合を想定いたしますと、さしずめ三億ドルくらいの貿易額には達するであろう。こういうふうな数字をあげておるのであります。そうするとこれは相当な数字であります。それにしましても戦前の対華貿易から見ますと、これはまだ非常にわずかなものでありますけれども、御承知ごとく中国はソ連とともに大建設をやっておりまして現在は輸出を禁止されておりますが、日本の重化学工業の製品が自由に出るということになりますとこれは幾らでも出る、だからこういう数字は私はたちまちにして突破すると思うのであります。実は日中貿易につきましては民間でいろいろ奔走し、参りました。日中貿易議員連盟というものも超党派的にできております。政務次官と同じ党派の池田正之輔君その他も中国に行ったり何かしてやってきた。ところが今まで財界の大きいところが動かなかった。むしろ中小企業、中小商社的の動きにとどまっておったのでありますが、いよいよ財界の総本山が動いておるのです。国民はもとよりこれは歓迎する。労働組合はもちろん大歓迎。こうなりますと日本国民はこぞって中国貿易の拡大を要望しておるわけです。二大政党の対立で、社会党はもちろん国民の与望を代表して戦っておる。だから結局問題は政府と与党の態度いかんである。実は、この間ある人が言っておりましたが、与党で大物であります芦田均さんというような人は、自分の選挙区で中国貿易はやってはいかぬ、中国貿易をやると、安くていい米が中国からたくさん入ってきて、日本の百姓はたちまち困るというような子供だましの話をしておりましたが、与党にもそういう人ばかりじゃないと思う。池田正之輔氏とか、北村徳太郎さんのような人もありますが、こういう財界の総本山である経団連の会長が重大な発言をされた場合、外務省はどうこれをお考えになるか、御答弁を願いたい。
  183. 森下國雄

    ○森下政府委員 御承知のように、中兵貿易につきましては、政府は自由諸国と協調を保ちながら、でき得る限りの努力をいたして、輸出の増進に努めて参っておるのであります。従って現に今仰せのごとくその実績も年々だんだんとふえて参っております。石坂氏の行われたことは実は私新聞で拝見いたしただけでございますが、おそらく石坂氏の趣旨は、自由諸国との協調の範囲をできるだけ努力してその範囲内で進めるということであろう、かように考えております。従ってそういうことでありまする石坂氏の言われた言葉に対しては同感であることを申し上げます。
  184. 田中稔男

    田中(稔)委員 第三次貿易協定ができました際に、鳩山内閣日本側関係者に対しまして、この協定の履行については支持と協力を約束されたのであります。これは半分公文書みたいな形で中国側の代表者にも渡されたのである。中国側の代表は、この書簡に相当の重要件を置いて協定の履行を期待しておるのであります。ところがどうもその実があがらない。しかしながらその貿易協定の中にあります見本市開催のことにつきましては事柄が事柄でありますから、中国側から去年代表が参りまして、中国の見本市を東京と大阪に開催いたしましたが、ある程度の政府の御協力があって、ことに東京の開所式に際しましては高碕長官も見えて非常にりっぱなあいさつをされ、そのほかあれを見に行った方が閣僚にもたくさんあります。そういうわけで中国の見本市は東京、大阪で非常な成功表に終ったのでありますが、協定に基きまして、今度は日本側から――実はこの春でありましたが、これが延びましてことしの秋向うに参りまして、北京及び上海で見本市をやろう、こういうことに今なっておる、それで関係者は盛んに動いておりますが、政府はこれについては協力なさる御意向がもちろんあると思いますが、政務次官の御答弁を願いたい。
  185. 森下國雄

    ○森下政府委員 御承知のようにココムの制約を受けておりますので、禁輸品を見本市に持って参りまして出すことはなかなかむずかしい問題でございます。現在の階段ではココムの拘束の範囲でないものはできましょうけれども禁輸品を出すことは今の段階では非常にむずかしい、かように考えております。
  186. 田中稔男

    田中(稔)委員 今の御答弁に関連することでありますが、見本市を中国で開催するために日本から数名の代表が最近渡華することになっております。その先発隊として国際貿易促進協会の関係者の田尻愛義という人が香港に参っております。そのあと団長の宿谷氏その他が二十八日に出発することになっております。ところが実は田尻氏が出発するに当りまして、代表団を代表して外務大臣に対して誓約書を入れておることは、きょうの日経新聞なんかにもすでに明らかであります。その誓約書の文書はこうなっております。     誓約書   小生等今般北京・上海日本商品展覧会開催準備のため中共に渡航するにつきましては、対中共禁輸品目の出品に関しては、今後政府より許可すべき意向が正式に示されない限り、中共側主催者と話合わず、かつ、右につき先方になんらコミットしないことを約束します。   昭和三十一年二月十七日    日本国際貿易促進協会      常任委員  宿谷 栄一      同     田尻 愛義      委員    森井 庄内      展覧会理事 片岡  峻      職員    森田 尭丸     右代表    田尻 愛義    外務大臣 重光葵殿 こういうふうな誓約書を門脇事務次官が田尻氏からとられたそうであります。この御趣旨は政府側として一応もっとものようでありますけれども、何も禁輸物資を輸出するというのじゃない、これを展示するだけなのであります。しかも日本がアジアにおける工業国として重化学工業方面に非常にすぐれておる。そのためにこそ中国は日本から建設資材を輸入したいと考えておる。もしこういうふうなものが展示できないということになるならば――工業の原材料なんかは中国にいろいろありますが、日本には大したものはない、それで大体見本市を開催する意味がほとんどなくなる。でありますから、ココムの禁輸品目ではありましても、輸出するのじゃないのですから、しかもイーデンがワシントンにアイゼンハワーをたずねまして会談をいたしました際の重要な項目として、中国貿易緩和の話が出ておる。なるほどそこでは何も見るべき成果は上らなかったようでありますけれども、それは全体的にぐっと情勢が緩和される一つの機会である、今後は機会あるごとにそういう緩和の努力が行われることは有望だと思います。だから日本もイギリスに負けていないで大いに努力すべきでありますが、そういう努力を初めから放棄するような態度でこの見本市開催に臨む、しかもこういう女郎の証文か何かのような誓約書を取ることはきわめて不見識であると思うのであります。田尻氏が信用されていなければ仕方ありませんけれども、こういうような誓約三は破棄されてしかるべきだと思いますが、外務省の御見解はどうでありますか。
  187. 森下國雄

    ○森下政府委員 この見本市に対しまして出品物を、たとえばそのものが禁輸品であっても、持ち帰ればいいじゃないか、こういう御意見でございますが、これはココムの先例がありまして、今の段階では、そういうものを持ち帰るにいたしましても、見通しから見て、そういうことができるかどうか、きわめてそれは乏しいことのように私は聞き及んでおりますが、詳細なことは経済局の次長が来ておりますから、次長から申し上げます。
  188. 西山昭

    ○西山説明員 政務次官から説明がありましたように、ココムの先例におきましては、禁輸品の出品も問題になりまして、これを出品しないことになった事例がございます。先ほど、現在の段階においてはかりに禁輸品で、現実に輸出ができないものでありましても、国力の関係その他から、日本の工業力をよく認識してもらうために出品をするということには、積極的な意義があるのではないかという御指摘がありました。私もそのように考えております。その意義は多分にあると思いますが、現実の問題としまして、輸出できない商品を現在持って参りまして、他方国際協調のワク内で、国際的な先ほど申し上げましたような一応の取りきめもございますので、全般を考慮しまして今日の段階におきましては、禁輸品の展示をする積極的な時期に達していないと考えておる次第でございます。
  189. 田中稔男

    田中(稔)委員 どうもそれでは不満足であります。たとえば先例があるフランスの先例だと思いますが、先例があったからといって、今の国際情勢はぐっと変って中国貿易緩和の希望は非常に大きくなっております。そういう際に政府としては、代表にこんなものを――話し合いもしない、実際出品するかどうかはまたあとの問題になりますが、そういうことについて話し合いもしないというような、こういう箝口令をあらかじめしくなんというのは、これはあまりにも中国貿易に対する熱意が足りない。また逆に申しますと、アメリカ禁輸政策に対して、あまりにどうも腰が弱いと思うのであります。もう一度申しますと、こういうふうなものを破棄される御意向はありませんか。
  190. 森下國雄

    ○森下政府委員 これを一方的に破棄するということはなかなか容易ならざることだと思いますが、これを広げることに対して努力をするということは、今後一そう骨折って参りたいと存じます。
  191. 田中稔男

    田中(稔)委員 この誓約書は一体どういう効果があるのですか。これは公文書というわけじゃないでしょう。何ですか。一体どういう効力があるのですか。
  192. 西山昭

    ○西山説明員 これはお互いの意思を疎通します了解という工合に考えております。
  193. 前尾繁三郎

    前尾委員長 森島守人君。
  194. 森島守人

    ○森島委員 私は実は重光外務大臣の出席を得まして、南千島の問題をもっと深く掘り下げて御質問したかったのでありますが、御出席がありませんし、それから韓国の問題等についても、私はもっと御代見を聞きたかったのでありますが、きょうは関係政府当局がおいでにならぬので、南千池川勇人 三本武夫 太平正芳 鈴本善幸 小曽根康弘の問題につきまして、いま一応技術的な点から、次官並びに条約局長の御意見を伺いたい。  第一に私が申し上げたいのは、資料の御配付がございました。この資料というのは、サンフランシスコの講和会議における吉田全権の発言でございます。南千島とか歯舞、色丹は日本の領土であるという主張をしておられます。この分だけ配付を受けた。外務省としては、岡田委員が発言の末尾において、その分を資料として提出願いたいということを言っておられますので、本務的にお取扱いになったと思いますが、この岡田委員の発言を全部見ますと、サンフランシスコの講和会議において、南千島が北千島に包含されておったかどうかという点を明らかにするという御趣旨だと私は了解しております。単に吉田全権の発言のみならず、アメリカ全権の発言等すべての資料を一括してお出し願いたい。一方的に出されるのは、いかにも政府のやっていることはいいのだぞということを印象づけるような作為があるのじゃないかと私は思いますから、こういう点の誤解を避ける上におきましても、全部一括して資料をお出し願いたいということを冒頭においてお願いしておきます。(「ソ連の方の資料も」と呼ぶ者あり)ソ連も、アメリカもイギリスも、関係国全部……。  その次に私伺いたいのは、二月十一日の議事録で、条約局長は非常に重大な発言をやっておられる。一々読む時間がありませんが、「大体日本語の千島とクーリールという言葉とはちっとも一致するとは感じていないのでございます。偶然訳語にクーリールのことを千島と訳した条約もございます。けれども、」ということで、「クーリールと千島が一致するという見解一つもないのであります。」こう発言せられておるのであります。私はこの、偶然に千島と訳した条約があったら一つお示し願いたいと思います。
  195. 下田武三

    下田政府委員 先ほどの資料の点につきましては、実はこれは外務省が御協力して作られたのでございますが、国会御自体におかれまして、非常にいい資料ができておるのです。私も実は国会の御資料を拝借しておるのですが、領土問題のみならず、日ソ交渉に関連するあらゆる重要問題についての資料の集大成ができておりますので、外務省から出しましても、結局この中の部分的なものを出すことになりますので、そてれにおより願いたいのです。またソ連側も結局この中にある資料だけを引用して、自分の方の主張を構成しておるわけでございます。それ以外にはないのであります。(「本の名前をちょっと……」と呼ぶ者あり)国立国会図書館の立法考査局政治部でお作りになりました「日ソ国交調整問題基礎資料集」という本でございます。  クーリールという字を千島と訳しましたのは、明治の前でございますが、一八五五年の条約が一番初めだと私思います。結局その一番初めにわれわれの祖先が訳したときに、そういう訳し方をしたのが先例になりまして行われておる。しかもその条約自体では、そのクーリールというものの範囲を、得撫より北の十八島と意識して使っておった。ですから桑港条約で、今度は十八島でなくて、国後、択捉、歯舞、色丹も含めた新しい用語でクーリールを使ったのだ、つまり今までのクーリールより広い範囲で使ったのだ、というような決定をした証拠は全然ないのです。従いましてクーリールの範囲は、この前も申し上げましたように、オーブン・ツー・クェスチェンです。まだ幾らでも争われる問題です。日本側日本の資料をもととして争うことはこれは自由なりというのが、連合国側の見解であります。
  196. 森島守人

    ○森島委員 私はその点が非常に重要な問題だと思うのです。サンフランシスコの講和条約自身において、外務省が千島列島と訳しておられる。当時日本では色丹から以北は全部千島国の管轄に属しておる、そうすると当事者のロシアあるいは英米においても、その日本の行政区域基礎にいたしまして千島というものの範囲を決定することはきわめてあり得ることであります。私は最も常識的な解釈である、こう思うのであります。その点はいずれまた重光さんに質問することにいたしますが、同時に私は、この講和条約は正文は日本語でなかったと思っております。その点で多少宥恕すべき余地はございますが、これを千島列島と訳されたについては、外務当局の政治的責任は非常に大きいと思うのでございまして、この点に対する政務次官の明確なる御答弁を願います。
  197. 森下國雄

    ○森下政府委員 ただいまのこの問題は、従来の条約の先例をただ使っただけてある、かように私は考えます。
  198. 森島守人

    ○森島委員 それでは私、一つ先例を差し出します。それは今下田君が言われた材料の中にあるのです。読み上げますからゆっくり聞いて下さい。偶然使ったという点について条約の存在を私は知らぬので、それで下田さんに特にお聞きしたのですけれども、実は樺太千島交換条約におきましては、今条約局長から御指摘のありました通り「「クリル」群島即チ」としまして、すべての島の名前を列挙しております。こういう実例があるにもかかわらず、サンフランシスコの講和条約において千島列島と簡単に従来の慣習を採用したのだという御答弁では、私は満足できない。ほかのやつも引用いたします。その当時、私が重光さんに対する質問のうち、指摘しておきました通り、千島列島という地理的名称が歯舞諸島を含むかどうかについて若干の質問がありました。歯舞を含まないということが合衆国の見解でありますというふうに、アメリカはその見解をきわめて明白に表示しております。これを裏から申しますれば、明治十八年以来行政管轄上千島列島の中に入っておる、色丹は含んでおるのだと解釈をせざるを得ないと私は思うのであります。そういたしますれば、今問題になっております南千島は当然千島列島の中に包含せられるというのが、いかなる人の常識をもりても査定すべからざる解釈であると私は思うのであります。その点について、従来の慣習がどうだということでは御答弁になりません。しかも事は日本の領土に関する最も重大な問題、しかも条約であります。一片の手紙のやり取りなんかで済むものではございません。この点を政務次官はどうお考えになるか。慣習だけの、字の使い方でいいのだというのを、政府の最終的の御答弁として承わってよろしゅうございますか。
  199. 下田武三

    下田政府委員 先ほどの御答弁中、ちょっと間違いがございましたので訂正させていただきます。クーリールを千島と訳した最初の先例が一八五五年と申しましたが、これは七五年の交換条約の方で、一番初めの五五年の条約では、これはもっとも日本語の原文がなかったのでございますけれども、クーリールとかたかなで訳しております。この点は訂正しておきます。
  200. 森島守人

    ○森島委員 もう一点、今政務次官に政府を代表した権威ある御答弁を求めておるのですが、その点について御意見の御発表を願います。
  201. 森下國雄

    ○森下政府委員 これは連合国側の意見の一致ができなかったのですから、これはこれから先例で使っても私は差しつかえないと思います。
  202. 森島守人

    ○森島委員 そうでない、慣習は私が今指摘した通りです。しかしアメリカ側では、千島列島の中には南千島も含んでいるという解釈を一応とっておる。そしてもう一つ申し上げますが、もし将来疑問点がありました場合には、国際司法裁判所に訴える道も条約の第一十二条かで開かれております。しかし政府は今日まで、講和条約締結以来数年間、この問題を放置しております。何らとるべき措置をとってなかった。この点も政府の非常な手落ちだ。しかも日ソ交渉が始まってから、初めてこういうような点に気がついたかっかぬか知りませんが、重光外務大臣アメリカに行っておる留守中に――重光さんが握っておったのです。法眼参事官が南千島を含まぬのだという意見を出したことは事実なんです。それを重光さんは握っておった。重光さんとしては南千島を含んでおるのだという見解をとっておったにきまっている。それの決定をしないまま重光さんはアメリカに旅行したのだ。それの留守中に谷君がそれを鳩山さんのところに持っていって、どう説明したか私は知りません、非常に弁舌さわやかな――どういう説明をしたか知りませんが、鳩山さんがこれに判を押して、訓令が新たにロンドンに発せられたというのが偽わらざる事実です。これは私、証拠なら幾らも出します。偽わらざる、実です。こういうふうに政府態度も終始一貫してない。私のお聞きしたいのけ、果して国際司法裁判所に出す等の措置をおとりになったかいなか。私から言わしむれば、ロシヤと交渉する場合、まず国際司法裁判所に提訴するという方法をとるのが道じゃないか、私はそう思いますが、この点に関する御見解を承わりたい。
  203. 下田武三

    下田政府委員 昨年の八月の訓令は従来南樺太、全千島までの返還を要求しておりました日本政府態度を、ちょうど半分に譲歩したわけでございます。その譲歩の訓令が八月に出たということは事実でございます。そこで譲歩した線で、ただいままで南千島までの返還を要求しております。しかしこれは日ソ同で話がつかない場合には国際的解決、その中にはむろん司法裁判というものも含まれますけれども国際的の解決でやるのも一つの方法だと思いますが、しかしこれはソ連国際的解決はきわめて望めないと私は思う。現在でも日本の譲歩しました北千島、南樺太については国際的解決でいこうといっておるのに対して、ソ連はまだそれを反対しておるような状態でありまして、国際司法裁判所でもソ連は自国の判平は一人しかおらぬ、共産圏側からもう一人おりますけれども、やはり少数の場面でありますので、ソ連としてはやはりおそらく司法裁判、町に出すことをなかなか同意しないのではないかというのがわれわれの見通しでございます。
  204. 森島守人

    ○森島委員 時間がありませんので、この点に関連して最後に一問だけ。  私が非常に重要だと思うのは、この間重光さんに御要求して、下田君は、極秘電報だからお出しできません、重光さんはごもっともでございますといこことで、資料として御提出を願った。この南千島のいきさつに関するヤルタ協定と、サンフランシスコ条約当時における米国日本との関係を明らかにするために、日本があとから、おそるおそるでしょう、アメリカの意向はどうだということをお聞きになった、その電報の往復の写しを、この次の土曜日の委員会までにお出し願いたい。
  205. 下田武三

    下田政府委員 電報の写しという形で御提出できますかどうかわかりませんが、なるべくその実質をそのまま……。
  206. 森島守人

    ○森島委員 実は法眼君はどうでありましょうと言うから、重光さんが早く出てくると思うから、重光さんのときに出してくれと言いましたが、こう問題が展開してくると、なるべく早く質問を継続したいのですから、土曜日までにお出し願いたい。電報は往復にして下さい。それはできるはずです。ただ作文を作って出すのでは、私は満足いたしません。こっちから照会した要点はどの点とどの点、向うから来た点はどの点とどの点――この点に関する松本全権の私らの党へ来ての御説明と、あなたの御説明とどうも食い違っておるように私は信じておりますから、その点偽わりなくお出し願いたい。これは重要問題です。
  207. 前尾繁三郎

    前尾委員長 次会は公報をもってお知らせいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時二十分散会