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1956-02-22 第24回国会 衆議院 外務委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年二月二十二日(水曜日)    午前十時三十六分開議  出席委員    委員長 前尾繁三郎君    理事 石坂  繁君 理事 北澤 直吉君    理事 須磨彌吉郎君 理事 福永 一臣君    理事 山本 利壽君 理事 穗積 七郎君       菊池 義郎君    高岡 大輔君       大西 正道君    田中織之進君       田中 稔男君    細迫 兼光君       森島 守人君    岡田 春夫君  出席国務大臣         国 務 大 臣 船田  中君  出席政府委員         防衛庁参事官         (防衛局長)  林  一夫君         防衛庁参事官         (装備局長)  久保 龜夫君         外務政務次官  森下 國雄君         外務事務官         (大臣官房長) 島津 久大君         外務事務官         (大臣官房会計         課長)     中川  進君         外務省参事官  法眼 晋作君         外務事務官         (アジア局長) 中川  融君         外務事務官         (欧米局長)  千葉  皓君         外務事務官         (経済局長)  湯川 盛夫君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君         外務事務官         (国際協力局         長)      河崎 一郎君         外務事務官         (情報文化局         長)      田中 三男君  委員外出席者         大蔵事務官         (主税局税関部         長)      山下 武利君         大蔵事務官         (管財局特殊清         算課長)    岩動 道行君         大蔵事務官         (為替局管理課         長)      江上 龍彦君         専  門  員 佐藤 敏人君     ————————————— 二月二十二日  委員田中織之進君辞任につき、その補欠として  西村榮一君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  在外公館名称及び位置を定める法律等の一部  を改正する法律案内閣提出第二八号)  外務公務員法の一部を改正する法律案内閣提  出第三五号)  国際金融公社への加盟について承認を求めるの  件(条約第一号)  日本国カンボディアとの間の友好条約批准  について承認を求めるの件(条約第二号)  国際情勢等に関する件     —————————————
  2. 前尾繁三郎

    前尾委員長 これより会議を開きます。  在外公館名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案外務公務員法の一部を改正する法律案国際金融公社への加盟について承認を求めるの件、日本国カンボディアとの間の友好条約批准について承認を求めるの件を一括して議題といたします。  便宜まず最初在外公館名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案について質疑の通告があります。それを片づけて順次その他の議題に移ることといたします。穗積七郎君。
  3. 穗積七郎

    穗積委員 在外公館名称並びに設置についてちょっとお尋ねしたいと思います。こういう問題は客観的に考えてみまして、その地の実情から見てそういう名称公館を置くことが適当であるか、やや適当を失するかという適、不適の程度の問題だと思うのです。従って私は今度設置される特にAA地区各国実情というものをつぶさに視察いたしたこともありませんから多くの質問をいたしませんが、このほかにわれわれが書物の上で考えてみても、まだほかに公館設置することが適当であると患われるような地区があるように思うのであります。これではごく少い地区でありますし、おそらくは予算関係もあると思うのだが、最初外務省が立案された新年度在外公館の引き上げまたは新設地区計画というものを説明してもらいたい。そうしてそれが、私の想像では、おそらくは大蔵省との予算折衝の過程においてこういうふうにしぼられてきたと思うのだが、どういう理由によってこういうふうにしぼられてきたのか、その客観性が果してあるのかどうか、妥当性があるのかどうか、その間の経緯を説明してもらいたいと思うのです。これが第一点のお尋ねです。  それからもう一つは、そういう予算ワクがきめられた場合においても、兼任の形で他の設置を考慮すべき適当な地域があるのじゃないか、そういうことで考えれば予算の窮屈なワクの中においてもこのほかに看板を掲げる可能性があり、またそれをやった方が日本の経済的、文化的な交流の利益のためにいいのではないかと思われるところがあるのではないかと思う。そういうことをそちらから一つ積極的に率直に説明をしてわれわれに了解を求めてもらいたいと思います。
  4. 島津久大

    島津政府委員 最後的には今回提案になりましたような公使館、領事館の新設にとどまっておりますが、その間におきまして部内で研究いたしました段階では、新設をいたしたいという個所が四十個所くらい出ております。一一記憶はいたしておりませんが、これはごく率直に申しまして関係局課から出て参りました希望でございます。それをいろいろ研究いたしまして、大蔵省と相談をいたしましたときの数が十四館でございます。その十四館につきまして財政上の見地その他から種々折衝いたしまして、その最後的な結論が今回提案いたしたような程度になっておるわけでございます。これは、一つ公館設置いたしますと当然館長館員に関する人件費が伴って参りますし、その間の運営に必要なあらゆる経費が出て参るわけでございます。私たち外務省だけの立場から申しますと、それこそ四十でも五十でもまだ足りないくらいに考えておりますが、国全体の財政上の見地ともにらみ合せまして、結局そのようになった次第でございます。  東南アジア地域公館新設にもう少し重点を置いたらどうかというような御質問が先般来ございまして、その当時もお答えをいたしたのでございますが、よその国のことばかり出してどうかと思いますが、これは一例でございます。よその国で在外公館をどの程度持っておるかというのをちょっと御参考までに申し上げておきますが、アメリカ在外公館の数が二百七十一舘、イギリスが四百五十三館、フランスが二百二十七館、ドイツが百三十四舘、イタリアが三百五十館、スペインが百四十舘、インドもすでに九十五舘というところまで来ております。それに対しまして日本は八十という程度でございます。人員もまた非常に貧弱でございます。しかしこれは外交再開後まだ日も浅いことでございますので、漸次増舘をいたしていくほかはないという程度であります。  それから人員は、アメリカが六千五百七十三人、英国が千八百七十一人、フランスが九百四十九人、ドイツが二千六百一人、イタリアが九百七十人、インドが六百人、スペインが四百十四人、日本が五百十二人でございます。  それから先ほど申しましたような事情で、新設予算がとれませんところで、しかも何とか国交を開きたいというところが今回の法律上だけで設置するということになった個所でございます。すなわちハイチの公使館、エクアドル公使舘、サウジ・アラビアの公使館、ジョルダンの公使舘、スーダンの公使舘、こういうものは予算の手当がございませんので、まず兼任国交を回復して、国交を設定いたしまして随時出張して事務を処理するということを考えております。
  5. 穗積七郎

    穗積委員 今尋ねた中で初めの四十館をだんだんしぼっていって、しぼった結果を重要度に従ってランキング外務省でつけていったと思いますが、ナンバー一からナンバー四十までナンバーをつけていったとすれば、最後に生き残った公館外務省の判断によるナンバー通りにいっておりますか、あるいは必ずしもそうではなくて、他の政治的または因縁情実等がからんで、外務省から見れば必ずしも重要でないものが上の方へ入ってみたり、学生でいえば不正入学というようなものが多少あったのではないかと思うのです、あり得るのですよ。日本政党政治性が低いからで、官僚の諸君は客観性を持っておるということが政党よりはややすぐれたところなのですが、そういう点はむしろ抹殺して不正入学が行われたのではないかということをときどきわれわれ予算の編成については心配するのだが、率直に一つ官房長おっしゃって下さい。外務省重要度で作ったランキング通りに通ったか通らなかったか。通らないなら通らないで、われわれはものを公平客観的に見る能力を持っておりますから、ものは早く通らすように努力をしなければならないから包み隠さずに言って下さい、不正入学があったかどうか。
  6. 島津久大

    島津政府委員 四十何カ所から十四館にしぼりましたときにはいろいろな要素がございまして、また相手国事情もございますものですから一から四十まではっきりした順序は実はつけていなかったわけでございます。十四までしぼりましたが、この十四の中も一から十四まで序列は正確につけられなかったようなわけであります。これは実はつけたいことはつけたいのですが、いろいろな要素がございまして、十四のうちで結局五館にしぼったのでございます。これは大体われわれが希望しておるところが通っております。不正入学と称すべきものはございません。
  7. 穗積七郎

    穗積委員 あと外務省ランキングからいけばぜひ通したいと思ったのは幾つあったのですか。さっきの四十館というのは関係局課から出てきたものをそのままうのみにしたもので、十四にしぼったのは大蔵省がしぼったのであって外務省がしぼったのではない、だから生き残ったものは……。
  8. 島津久大

    島津政府委員 十四は外務省でしぼった数でございます。その中の序列はつけておりません。
  9. 穗積七郎

    穗積委員 五つ残すとすれば完全にその妥当性は欠いていないということですね。
  10. 島津久大

    島津政府委員 そういうことです。
  11. 穗積七郎

    穗積委員 あとはあまり急ぐ必要はないということですね。予算の許す範囲内でやっていいことであって、特に五の中で同等のランキングにあったものがあと八つか九つ漏れたということではなくて、大体主観的に言えば満足しているということなのでしょうから、あとはあまり急ぐ必要はないということですね。
  12. 島津久大

    島津政府委員 それはまた別問題でございまして、毎年……。
  13. 穗積七郎

    穗積委員 ランキング重要度を私は聞いているのですよ。四十の中のランキングを必ずしもっけなかったとおっしゃるけれども、それにしても官房の手元で審査をして——省内においても主観的にはランキングはつきますよ、われわれがあらゆる要求を出すときでもそうです。労働争議要求だってどうしても通さなければ困るものと、これは便乗しておけというものとがある。ものにはランキングがちゃんとありますよ。だからモスト・インポータントだけのを出して生き残ったので満足しておる、こういうことならば次の六番目から十四までは大体それほど必要ではない。次の重要性を持ったものだということだから、予算に無理をして通す必要はないという結論になるのか、こぼれましたあとの九つも、大体重要度においては生き残った五つと何ら区別なしに同様の重要性外務省としては認識しておられるのかどうか、それを聞いておるのです。
  14. 島津久大

    島津政府委員 今最後のお言葉でよくわかりましたが、一から十四まで正確な順位は実はつけられなかった実情でございまして、ですからできるだけ何とかこの十四館全部そろえて入れてもらいたいのがわれわれの計画であったのであります。しかしいろいろの理由で結局五館くらいということにしぼられましたので、それではこの十四の中から五館をどうピック・アップするか、これは非常に苦慮をいたしたわけであります。移民という関係から参りますとこういうところがいい、経済関係から参りますとこういうところを入れたいといういろいろの要請があるのであります。そこで現状から考えまして、今回はこの五館にとどめたい。やむを得ず五館にとどまったわけでございまして、自余の公館重要度も決して劣らぬわけであります。従いまして来年度はまたそれを再び検討いたしまして新設に極力努力をいたしたい。漏れましたのが重要性がないというわけでは決してないのでございます。しかし一方初めに御質問ございましたような必要のないものが入ってしまったという事実もまたございません。現状においてはやむを得ないと思っておる次第でございます。
  15. 北澤直吉

    北澤委員 関連して。今回の在外公館名称及び位置を定める法律等の一部を改する法律案でありますが、これによりますと、中南米方面に対しましては、外務省の方におきましては重点を置かれまして、パラグアイの日本公使館新設ということになったわけでありますが、御承知のように中南米諸国日本貿易の振興の見地から申しましても、また日本海外移住を推進するという見地から申し、決してもますます重要度を加えておるわけでございます。それで中南米諸国を見ますと、各国とも大使を送っておりまして、公使を送っておる国は少いのであります。特に中南米諸国のようなああいう国民性のところでは、非常に形式を重んずるのが多いのでありまして、公使よりも大使を希望する国が多いのであります。それからまた公使大使とではいろいろの仕事関係なんかについても問題がありまして、たとえばチリーに行っている日本成田公使の話を聞きますと、公使としては成田君が一番先任であるにもかかわらず、よそから大使が行っておる。そうすると外務大臣に面会を申し込んでも、順序として大使が先になって公使はずっと待たされるということで、ただ公使であるために仕事が非常にやりにくいという面も相当あるのでございます。外務省におきましても、前回の在外公館の問題の場合には、東南アジア諸国に対する日本在外代表者は、全部公使から大使に昇格したのでありますが、私はこの次はぜひとも中南米に対する日本代表者は、できれば全部大使にしてもらいたい。公使大使にしましても大へんな予算を伴うわけではないのでありますから、そういう仕事便宜、いろいろな面を考えて、中南米に対する日本代表者は、一つ全部大使にするようにぜひ政府の御考慮を促したい、こう思うのであります。政務次官のお考えを伺いたいと思います。
  16. 森下國雄

    森下政府委員 仰せのように中南米におきましては、わずかにメキシコとブラジルとアルゼンチンだけが大使でございまして、他の十四カ所は公使でございます。経済外交を打ち出しておる政府としましては、これらに対しましていろいろな情勢からぜひとも大使にしたいという考えを持って、極力そういう方面に進めておるのでございます。ただいま仰せ通り中南米には一つぜひ大使をもって拡充したい、そういう考えでおります。
  17. 前尾繁三郎

  18. 岡田春夫

    岡田委員 大蔵省の人は見えておりますか。実はきのう在外公館の一部改正の問題に関連して、文化交流の問題についていろいろ質問したわけですが、それに関連して最近文化交流の一番重要な問題になっておる映画の問題について二、三伺いたいと思ったのですが、あなたの方でお見えにならなかったので、きょう重ねてお伺いするわけです。  問題点二つあるわけです。外国輸入映画割当の問題と、もう一つはいわゆる興行映画ではない、大使館で扱っている非興行映画フィルム、このフィルム扱い方、特にアメリカ大使館が扱っておる扱い方と、アメリカ以外の大使館の扱っている扱い方と非常に不均衡がある。この二点について伺いたいと思っておるわけであります。ですからそのおつもりで一つお願いします。税関部長見えですね。税関部長さんの方には大使館用フィルムの方をあとで伺いたいと思います。と申しますのは、情文局長がちょっと急いでおりますので、興行映画の方を先にやります。  それでは為替局長にお伺いしたいのですが、第一点は、本年度まだ最終的に決定されておりませんが、概数でもけっこうです。外国輸入映画割当地域別に大体ドル地域ポンド地域オープンアカウント地域三つになっておると思うのですが、その実績と、それから日本におけるアメリカ系商社と純粋の日本商社二つに分けて、大体どういうふうな輸入実績になっておるか、この点をまず伺いたいと思います。
  19. 江上龍彦

    江上説明員 局長がちょっと風邪のため休んでおりますので、私から申し上げます。最初に本年度割当本数でございますが、大体これを三つ地域に分けております。まず基本割当予備割当二つがございますが、基本割当につきましては、ドル地域百二十二本、スターリング地域十六本、オープンアカウント地域二十六本、計百六十四本が昭和三十年度割当でございます。予備割当につきましては優秀映画ボーナス用、これは毎年各社の自信のある作品を出させまして、それを審査して、芸術的、文化的に優秀と認められるものについては追加割当をやる。そういうことでこれは国別地域別はございません。これが六本。それから日本映画輸出ボーナス用、これは日本映画輸出をある金額以上達成した会社に対しては、ほうびとして割当をやる。これが十本、合計十六本、総計で百八十本でございます。  次に第二にお尋ねの点のアメリカ系商社とそれ以外の独立商社、それにつきましては大体ドル地域割当のうち約百本が、いわゆる米国のメージャーと称する十社の支社ないしは現地法人割当でございます。それ以外が独立系商社でございます。それからその他の地域につきましては大部分日本系商社でございますが、中にイタリアに一社と英国に一社と外国系商社があります。
  20. 岡田春夫

    岡田委員 ことしは映画割当が大へんおくれているようですが、割当方法等についていろいろ従来の方法を変えるというような話も聞いているわけであります。たとえば本数制限じゃなくて、為替制限というような方法を聞いているのです。それからもう一つは、御承知のように去年貿易が非常によくなっておりますから、ことしはその貿易関係ドルワクを相当ふやしてもいいのじゃないかという意見もあるようですが、大体ことしの割当についてどういう方針で臨まれているか、そしてそれが決定されるのは大体いつごろの時期をお考えになっているか、こういう点を一つ伺いたい。
  21. 江上龍彦

    江上説明員 昭和三十一年度方針につきましては御指摘のようにまだ決定いたしておりません。これは例年に比して特におくれているわけではなく、昨年も一昨年も同様割当の決定したのは三月の二十日過ぎになっております。これはどういう関係かといいますと、映画割当をきめる前提となる外国為替予算についてきまるのが三月末ぎりぎりになりますから、その予算がきまらないと映画割当方針も従ってきまらないという事情で、現在まだ割当方針については白紙の状態であります。次に割当方針のきめ方でありますが、一昨年度から外国映画輸入委員会というものを大蔵省諮問機関として設けまして、その委員会割当方針に関する諮問をいたしまして、その答申を待って大体その線に沿ってきめておる。その委員会の開催は大体三月に入ってからほとんど二、三日置きにやって、方針が動き出すのは三月に入ってからというふうに御了承願いたいと思います。本年度につきましては外国映画輸入委員会というものは名称を変えまして、外国映画連絡協議会という形でやっていきたい。これは委員会等の整理に関する措置の関係でございますが、それによってやっていきたい。それから本年度方針につきましては、関係方面からいろいろな案が実は出ておりまして、これらについても慎重検討中でございますが、そういう案もすべてその協議会に御披露いたしまして、こういう案の長所をそれぞれ取り入れてきめていきたい、こういうふうに考えております。
  22. 岡田春夫

    岡田委員 この場合一つ伺いたいのは、無為替の場合、こういう場合にはどういう扱いになっておりますか。
  23. 江上龍彦

    江上説明員 無為替外国映画輸入するという問題につきましては、従来これを原則としては認めておらないわけであります。建前から言えば、外貨を伴わないのだからいいではないかという意見も当然成り立ち得るわけでございますが、現実にそれを認めますと、入ってくると予想される本数が、過去において保税に入っているようなものだけでも現在三百本くらいあるように聞いておりまして、それを入れますと映画界全体の混乱を招くわけでありますから、無為替ほんとう外貨を伴わないかどうか、その裏道のいろいろな操作も懸念されますので、原則として成規割当以外のものは認めない、こういう方針をとっております。ただし文化教育映画等につきましては、特に外務省等からこれは必要があるといったようなものにつきましては考慮する場合もございます。
  24. 岡田春夫

    岡田委員 映画割当というものの趣旨は、いわゆる外国為替をあまり使わないということが、基本趣旨として削り当られているものであるとわれわれは解釈しておるのだが、そういう点では無為替にいろいろな、たとえばそういう事情があったところで、建前としては無為替というものはそういう混乱を与えないという趣旨から見れば、これは入れないという原則を立てることはむしろ間違いではないか、こういうようにわれわれは考えるのだが、こういう点ちょっと矛盾していると思うのですが、もう少し伺いたい。
  25. 江上龍彦

    江上説明員 今申し上げましたことに少し誤解を招く点もあるので訂正かたがた申し上げたいと思いますが、無為替に二種類ありまして、一つほんとうに向うから好意的に寄贈されて、これは特に関係の方に見せてもらいたい、こういう趣旨のものと、興行用、要するに全国の興行館にかけて収益をあげるための映画、この二種類がございます。前者につきましてはこれを認めております。ただしその場合にこれを興行用に使わない、こういう条件をつけて無為替を認めておりまして、現にそういう趣旨で入っている映画はたくさんあるわけでございます。私が原則として認めておらないと言ったのは、興行用に使用する目的で入れられる映画というものについては認めない、こういった趣旨でございますので訂正いたします。
  26. 岡田春夫

    岡田委員 もう少し問題を深めて参りますが、私がどうしてもわからない点が一つあるのですけれども、この二年ばかり前から決定された地域別割当方法で、ドル地域それからポンド地域オープンアカウント地域三つになっておるわけです。ところがこのドル地域の中にアメリカが入るのはこれは当然です。あるいはドル関係地域が入るのは当りまえだと思う。これは大蔵省としても通産省の通念としても当りまえだと思うが、本来ドル地域でないと考えられるところをドル地域に入れることによって、むしろ輸入を押えるための便法としてそういう方法を講じているように考えられる。というのはドル地域の中にソビエトを入れている、あるいは中国を入れている、その他人民民主主義国ドル地域の中に入れているという理由がわれわれにはわからない。きのうもこの点を質問したのだが、今までの日本政府の態度というものは、米ソ両陣営の対立というような考え方できておるのだが、映画に関してだけは平和共存でやろうという江上さんの非常な心の配慮があってドル地域に入れたのかどうかは知らぬけれども、仲よくやりましょうと言って入れたのかもしれないが、しかし事実はそういう方法によってソビエト映画を入れないような結果になっていると私は考える。なぜならば先ほどのあなたの御説明のようにドル地域の百二十本のうち、百本まではアメリカ商社が入れている。百本入れているとするならば、これはアメリカ商社アメリカ映画を買わないで、ソビエトの「ロメオジュリエット物語」の方がいいから「ロメオジュリエット物語」の方を買いましょうなどという、そんな道義的ないい商社なんかどこにもありませんよ。とするならばドル地域の中にソビエトその他の国々を入れたことによって、事実上ソビエトフィルムを入れさせないよう方向に持っていこうとしておるのではないかと私には考えられるのだが、一体どういうわけで中ソその他の人民民主主義国ドル地域に入れているか。しかもその決済方法を見るとドル地域に入れるが決済はポンドでもかまわないというようなきめ方をしているようです。このこと自体だって非常におかしいと思う。中国の場合は従来あなたも御承知のように、為替の決済は大体ボンドです。中国を入れるとするならばポンド地域に入れるならまだわかるけれども、これすらもドルに入れているという理由は一体どこにあるのか、そういう点をお伺いしたいと思います。
  27. 江上龍彦

    江上説明員 ただいま御指摘の点に関しましては、御指摘のように中国及びソ連については現実の決済は大体ポンドで行われております。しかし現在の為替管理法では、これは映画だけではないので、あらゆる物資の輸出入について、現在の為替管理法制定以来ソ連及び中国はドル地域として扱われておる。映画は別に何ら特別の意図なく、その一般の為替管理法の通念に従ってきめております。しからばこのきめ方がいいかどうかについてはいろいろ御議論もあると思います。私自身もポンドが通常の決済通貨である以上は非常におかしい点があると思いますが しかしこれは特に映画について特別の意図をもってきめたことではない。従ってこれをきめることについては、通産省、大蔵省両省共同して研究しなければならない問題だと思っておりますが、何ら特別のそういう政治的意図はないということだけは、はっきり申し上げたいと思います。
  28. 岡田春夫

    岡田委員 大体要旨はわかりましたけれども、そのこと自体非常に不自然だと思うのです。その他のものの扱いなどは共産圏貿易ということで別な扱いをしておきながら、アメリカ商社が独占している映画の面においても、こういう格好で事実上ソビエトフィルムを入れさせないようにしているという点は、あなた自身も十分御認識を願って、機会のあるごとにこういう点については改められるように御努力をお願いしておきます。  それから本年度実績を通じてわかることは、やはり従来の実績を基礎にしてこういう割当を行なってきたのじゃないか。ことにメージャー系が百本あるということは、あなたも御承知のように、いわゆる占領軍という名称アメリカの占領軍が来ている間に、アメリカは積極的にアメリカ映画を入れるための援助をした。いろいろな検閲までした。ほかのフィルムを入れさせないようにした。こういうようなことでアメリカ映画だけが独占した。その結果実績主義に立っている限りにおいては、これはもういつまでたってもアメリカの独占が続くというような結果になることは目に見えているわけです。そうするとこの実績主義については、何らかの変更をここで加えない限りにおいては、先ほどあなたの御説明通りに、アメリカ商社日本を独占していることによって、日本商社日本の産業あるいは賛助の面においては、どんどん窮迫していく。日本政府として日本の産業、貿易考えるならば、こういう実績主義を変更しなければならぬと私は思うのだが、こういう点については、いかにお考えになっているか。  第二点としては実績主義という建前をおとりになっているそうですが、この実績というのはいつからの実績を基礎にして割り当てられているのか。占領後以降のものであるか、戦争前からずっと日本貿易業者でも輸入している業者がいるのだが、そういう人たちの戦争前の貿易実績を認めているのか、こういう点についても伺っておきたいと思います。
  29. 江上龍彦

    江上説明員 ただいま御指摘のように、現在の業者別の割当基準は実績を基準として行なっております。その実績主義についてはいろいろ御批判もあると思います。大きい商社はますます細っていく。この点は御指摘のような傾向にあることはいなみがたい事実だろうと思います。これにかわるべき方法について、もちろんいろいろな考え方はあり得ると思いますが、なかなかきめ手がないということと、前年度まで——これは占領時代から大体こういう方式を踏襲しているわけでございますが、そういう実績によって毎年きめられるということで、各商社実績を上げるために非常に努力しているわけです。それに急激なる変更を与えるということは、非常な混乱を招くというおそれもありますので、やむを得ず現在の方式をやっているわけでございますが、これにかわるべきいい方法、しかも過渡期における混乱を避けるための適切な処置等が発見されれば、修正することは当然考慮さるべき問題だというふうに考えております。  それから現在の実績のやり方でありますが、これは過去の割当実績という意味ではございませんので、割当本数実績ももちろん入りますが、それと前年中に上げた配給収入の実績、これとの比率、この両者の比率を足して二で割ったというのでややこしいのですが、割当本数実績によると割当が固定化して、毎年十本の割当をもらった業者は毎年十本もらうということになりますので、その年の成績によって変っていくという方法をとっておるわけでございます。ただその配給収入というのを入れますと、結局お客のたくさん入った映画をとった者は、次の年に多くもらえるという結果になるのはいなみがたいことで、この方法の是非についても当然御議論があると思いますが、御存じのように、映画割当は大へん微妙な各業者の利害対立がある問題でありまして、数字的に明確な基準で割り当てないで行政官庁の裁量によって割り当てることは、いろいろな問題を招く原因となりますので、われわれとしては、はっきり数字の土に現われる資料を基準として割り当てているわけでございます。もちろんこの割当方法が一番よいと信じているわけではございませんので、よいお考えがありましたら、いつでも承わってよいと思っております。外国映画輸入委員会でも十分検討する用意があるということを申し上げます。
  30. 岡田春夫

    岡田委員 それでは私共体的に言いましょう。アメリカのメージャー系を全部やめるのが一番簡単な方法です。あなたは実績主義、実績主義と言って過渡期であるからと言うが、戦争が済んでもう十年たっているのです。まだ過渡期だという大蔵省の御認識かどうか知らぬが、今この段階になって、過渡期であるから割当を変えられないと言っていることは、あなた自身もお認めのように、客観的にはアメリカの大資本のメージャー系を百八十本のうち百本も認めるということを認めることなんだ。日本大蔵省であるならば、日本映画産業あるいは日本貿易重点を置いて考えるのは当りまえではないか。それにもかかわらずよい案があればお開かせ願いたいとおっしゃるならば、従来のメージャー系を中心にする実績主義をおやめになることだと申し上げたい。そういう従来の実績主義をやめて、日本の産業を中心にした割当方式をお考えになったら、簡単にできると私は思う。こういう点を一つ具体的にお考えいただきたいと思う。従来の方法にとらわれてそういうことをお話しになることは私は了承できません。  第二の問題としては、そういう実績主義の結果として、日本の産業貿易については非常に少くなっているのは御承知通りですが、こうなってくるとこれに対して具体的に優秀映画割当制あるいはボーナス制、こういう面もそういう面から考えられたものではないかと思いますが、この優秀映画というのは、一体国内の優秀映画を意味するのか、国際映画を意味するのか、こういう点がわからないので、伺っておきたいと思います。
  31. 江上龍彦

    江上説明員 第一のアメリカ系商社割当が多過ぎるからこれをやめろという御意見に対しましては、数字を見ると大体そうお考えになるのも無理ないと思いますが、各国、ヨーロッパのどこの国におきましても、アメリカ映画日本よりよけい入っております。しかもメージャー系の商社で一番輸入本数の少いのは日本であるというのが実情でありまして、アメリカ側から日本だけなぜアメリカ映画を虐待するのだという苦情を再々受けているという実情であります。現在たとえばフランスなどは、アメリカ映画のために自国映画は危機に瀕しているというので非常に問題になっている状態でありまして、私は各国に比べて日本が特に米国側にじゅうりんされているというふうには現在考えておりません。現在日本映画外国映画とでは、本数からいうと日本映画は倍以上出ております。配給数量から申しますとほぼ六五%で。アメリカ以外の各国映画界では、アメリカ映画に対抗してがんばっているのは日本だけではないかというふうな印象さえむしろ持っておるのでありまして、米国に対する割当方式を再考慮する問題についてはもちろん十分研究いたしますけれども、ただいまおっしゃったように、特に日本アメリカを不当に優遇しておるというようなことは現在ないというふうに私としては考えております。  次に第二の優秀映画の点でございますが、これは先ほど言いましたように、基本割当というのが配給収入を基本としているので、いわば日本の業者がもうかる映画ばかり入れる、そうすれば次の年度割当がふえる、そういうことになる傾向をおそれまして、それに対する調整策として考え出したものでありまして、その優秀という基準は非常に広い、いわゆる単に教育的価値があるということばかりでなくて、それも含め、芸術的にすぐれた映画という観点から審査いたしております。審査員の顔ぶれをごらんになっても大体どういうあれかおわかりになると思いますが、文学者、音楽家——映画批評家は二人入れておりますが、大部分文学者、それから文化評論家、音楽家、画家、こういう人たちに見ていただいております。そういういろいろな観点からいって、すぐれた映画に対してボーナスを与える、こういうシステムをとっておりまして、これによって映画の質を少しでもよくする、いい映画を入れるように業者が努力する、こういう傾向を少しでも助長しようという考えから出ております。
  32. 岡田春夫

    岡田委員 前段の方の第一の問題、これは外国と比べれば必ずしも多くない、それによって日本映画産業というものは圧迫をされておらないというけれども、これは事実において圧迫されておる。アメリカ映画がどんどん入ってきて、特にワイド・スクリーンになり、シネマスコープが入ってくると、日本映画がどんどん圧迫されておるのは事実ですよ。そういう事実を、外国ほど圧迫されてないからいいじゃないかという話では、話が通らないと思う。やはり日本大蔵省であり日本大蔵省の役人である限りにおいて、日本の産業のことを考えないで、外国ほどに圧迫されておらないからまあいいんだというようなことで、この映画割当をやられるということなら、われわれ迷惑千万だと思う。しかもいい映画でも入ってきているならいいんだ。ところがきのうも話したように、西部劇をやって、そうして人種の差別待遇を盛んにやるような黒人を殺して喜んでいるような映画をどんどん入れさせて、あるいは「暴力教室」のように学校で子供が先生を傷つけるようなことを奨励するような映画を入れさせて、これでいいんだというようなことでは、私は話がわからないと思う。こういうことでは、もっと割当方法の根本にさかのぼって、アメリカ実績主義ということについて根本的に再検討願わなければならない。話に聞くところによると、この実績主義を変更しようとすると、アメリカ大使館がいつも騒ぎ回るそうです。おそらくあなたの大蔵省あたりに対しても、アリソン大使が圧力をかけているのじゃないかと思う。ということは、映画資本がアメリカの議会において非常に大きな力を持っておる、そういうことでアリソン大使がしゃっちょこばって盛んに日本大蔵省に対してアメリカ映画をどんどん入れさせる、そうして西部劇や「暴力教室」を日本人に見せるというような格好で、日本の子供たちや国民をアメリカのそういうような誤まった文化によって、だましていこうというような政策に従属する結果になると私は思う。こういう点では、何といっても実績主義ということを根本的に再検討しなければならないと私は思うのです。  それから第二の点は、最優秀映画のボーナス制というのについては、先ほどのお話を聞いておるとちょっと不明確なんだが、それで私伺ったのですけれども、日本優秀映画を選定して、その優秀映画によってこの会社は優秀映画を作った、それだからお前のところにボーナス制で一本上げましょう、こういうことになると、この会社ぼ必ずしもたとえばグランプリのいい映画を入れるということじゃなくて、これはもうかるだろうというような西部劇を入れてくる可能性があると思う。世界的な優秀な映画を入れなさいということではなくて、日本の国内の優秀映画を指定して、それを作った会社にはボーナスを上げましょうということでは、あなた自身は文化的にすぐれた映画を入れるつもりでも、そういうことにならないで、西部劇が相変らず入ってくることになるのではないか、こういうことをお伺いしている。  第三は、その優秀映画の選考委員会というものは、文学者その他もいろいろ入っているようですが、御承知のように外務省に国際文化活動をやっている所管の局があります。こういう所管の局とも十分御連絡の上で、そういう一優秀映画の選定の委員会をお作りになっているのであろうと思うが、そういう文化政策の面について十分な連絡の上でおやりになっているのか、この点も伺っておきたいと思う。
  33. 江上龍彦

    江上説明員 第一の、アメリカ実績主義ということをしきりに言われますけれども、アメリカ実績主義ではなくて、これは全地域についてやっている。地域別までその実績を全部入れますと、アメリカの比率が非常に多くなって、ほかのヨーロッパは減っていくわけですが、これはアメリカ映画も一律に減らしている。たとえば昭和二十七年度の全体の輸入本数は二百八十本、それを全体として百八十本に切ったときには、アメリカもその比率で減らしておって、アメリカだけふやしているということはありません。現実に百五十本入っているのを二十九年から百二十本にしている。これには今御指摘のような大使館の圧力等は全然ありません。アメリカ映画業者は自分の利害問題ですから、いろいろ言ってくることは当然でございますが、これは圧力といったものではなしに、日本の業者が陳情するのと同じように陳情とお考え願いたい。むしろアメリカのそういうふやしてくれという希望と逆の方向に向っている。従ってわれわれとしては、特にアメリカを優遇しているとは思っておらない。特に差別的にアメリカだけを虐待するということは、国際的にいってもできないということで、現在の制度をやっているのであって、われわれはアメリカに従属している政策をとっているとは全然考えておらない。  次に優秀映画のやり方について少し誤解があるようでございます。外国映画優秀映画審査会で、これは日本映画は全然審査しない。大蔵省の所管では為替の点から外国映画だけをやっているので、国産に対してはタッチしないということで、外国映画でその年に封切った映画で各社が自信のある映画を年間四本なら四本出す。それを優秀映画の審査員に見てもらって、その審査員が判断して優秀だと認めたものを、年間六本のワクで認めるわけです。その六本の映画映画の実力によりますから、アメリカ映画が全然入らぬ場合もある。アメリカ映画がたくさん入る場合もある。これは国籍の差別は全然ありません。その映画を入れた業者に対して、政府はその作品と同じ数だけ追加して入れることを認める。それに当選したものに対しては追加別当をする。その追加割当については、法制的拘束力はありませんが、大蔵省の希望としては文吉で各社に優秀映画によって入れる追加の割当については、同様優秀な映画を入れろ、西部劇その他のくだらぬものを入れちゃいかぬという指令を出しておりまして、現実にその割当によって入れた作品は、すべて水準以上の作品であるということは言えると思います。
  34. 岡田春夫

    岡田委員 私一人でやっているといけませんから進めますけれども、文化交流見地からいって、ずいぶん人種的な差別を盛んに宣伝するような西部劇とか、そういうものが盛んに入っているわけです。こういうことになってくると、日本の文化政策という見地から見ても、私はきわめて遺憾な点が多いと思う。こういう点について国際文化活動を担当しておられる田中情報文化局長のお考えとして、こういうような実績主義を基礎にして、そういうようなきわめて害の多い映画がたくさん入っていることについて、今後どういうようなことをしていったらいいというように、お考えになっておるか。大蔵省は盛んに実績主義をとるとるといって、これは全世界の実績主義だ、アメリカだけではないのだ、こう言っておられる。それもわかっておりますが、しかし文化活動の面からいってこういう点についてはどういうようにお考えになっておるか。  それからもう一つは、日本の文化水準の高い映画をどんどん出さなくてはならない、今までの状態からいうと、もっともっと出していかなければならぬのだが、日本映画輸出振興によって文化交流をはかるという面については、外務省としてはどのようにお考えになっておるか、この点を伺っておきたい。
  35. 田中三男

    田中(三)政府委員 今御指摘になりました、外国映画日本の文化の面に悪い影響を及ぼすようなものがあるのではないかという点でございますが、この点につきましては、われわれも外国映画輸入委員会並びに映倫というのがあるわけですが、この方面と連絡をとりまして、私どもの方の意見は随時申し述べて善処方を要望いたしておるわけであります。ただ外務省としてこういう映画を規制する権限はありませんので、意見をひんぱんにかつ率直に強く開陳をして、考慮していただくように処置をしておるわけでございます。  第二の日本映画外国輸出の問題でございますが、これはここ数年来ようやく日本映画が国際的水準に達しまして、まだきわめて少いのでございますが、各方面で順次成績を上げてきておるのであります。映画につきましては、単に日本のみならず、各国外務省の出先も自国の映画外国に出すということには非常に熱心でございます。その点につきましては、われわれ外務省の方といたしましても、日本の優秀な映画外国に出すということについて、できるだけの便宜をはかってきておるわけであります。しかしながら今のところ十分とは言えないのでありまして、さらに何らかの方法考えて、日本の優秀な映画を海外にもっと多く出すということを具体的に考える必要がある、こういうように思って、今も関係各省とも相談を進めておる最中でございます。今後ともこの点は一そう努力する必要があると考えております。
  36. 岡田春夫

    岡田委員 先ほど大蔵省から答弁なさったのですが、優秀映画割当とか優秀映画の選定その他については、国際文化活動として、これは当然外務省が主管省になってこういうことをやっていくべきものではないかと私は思うのだが、こういう優秀映画選定の委員会を作るのについて、外務省大蔵省の間に緊密な連絡があってこういうことが行われておるのかどうか、これについて伺いたい。  第二の点は江上さんの方に伺いたいのですが、ざっくばらんの話として、新年度映画関係為替が大体ふえるようになるのか、従って本数なんかも去年よりふえていくようなことになるのか、そういう点のざっくばらんなお見通しとして、個人的な見解でもけっこうです。その点を伺わせていただきたい。
  37. 田中三男

    田中(三)政府委員 この優秀映画を選定する委員会のメンバーは、先ほども大蔵省の方からお話がありましたように、各界から、また一般に権威者として認められておる人たちが選ばれておりますので、外務省としては非常にけっこうな人選であると考えております。またこれは国内の文化の点では、私どもの方も関心があるわけでございますが、文部省方面でも相当の関心があると思うのであります。これはわれわれ随時大蔵省その他とも連絡をとりまして、われわれの意見を述べて参ったような次第であります。
  38. 江上龍彦

    江上説明員 第一の点について補足いたしますけれども、優秀外国映画の審査委員会委員には役人は入っておらないのであります。全部民間人でございます。ただそういう優秀映画と認めた外国映画輸入方針をきめます外国映画輸入委員会、これの委員は民間人ばかりでございますが、関係官庁として大蔵省為替局長、通産省の通商局長外務省情報文化局長が入っておりまして、映画輸入方針に関する討議をするときは関係三省が必ず出席してやっておる。従って十分緊密な連絡をとっているわけであります。  それから第二の本年度の見通しでございますが、御存じのように国際収支はいいのですけれども、本年度映画に対する外貨割当がどうなるか、本数がどうなるかということは、先ほど申し上げたように全然未定の状態でございます。これから以後は全然個人的な考えでございますから、そのおつもりでお聞き願いたいと思いますが、外国映画本数は現在程度で、それ以上増すことは適当でないのじゃないかというふうに私としては考えております。ただ外貨割当の点につきましては、これは現在制度として一部送金を認めて、一部はこちらへブロックしておきます。これが蓄積円という形で残っていくのでありますが、この蓄積円の処理について毎年苦慮するような次第でありまして、蓄積円そのものをたくさん残すということは、あまり好ましいものではないという点からいって、外貨割当の点については各省として相当考慮していただきたい、こういうように考えております。
  39. 北澤直吉

    北澤委員 ただいまの岡田委員質問に関連しまして、田中情報文化局長にお尋ねしたいと思います。  それは先ほどもお話が出たのでありますが、日本の文化を海外に紹介する見地から申しましても、また日本外貨を獲得する見地から申しましても、できるだけ日本映画外国輸出をする必要があるのは今さら申し上げるまでもないのであります。そこで内閣の映画審議会におきまして、そういうふうな目的から映画輸出振興協議会と申すのですか、そういうふうな機関を設立することにつきまして寄り寄り協議中という話であります。この考えによりますと、半官半民の機関を作って、そうして輸入映画に対してある種の税金をとって、それを資金にして日本映画輸出増進をはかろうという考えのようであります。こういう例は日本ばかりではありませんで、現にイタリアフランスにもそういうものがあるのであります。私はやはり日本映画の海外輸出増進という見地から申しましても、そういうふうな制度を日本でもとったらどうか、こういうふうに思うのでありますが、一体政府はこれに対してどういうような考えを持っておられますか。情報文化局長にお尋ねしたいと思います。
  40. 田中三男

    田中(三)政府委員 先ほども申し上げましたように、映画輸出といいますのは単にドルの面のみでなく、われわれ日本の文化を海外に宣伝普及するという点からも非常に重要視しなければならぬ、かように考えておるのであります。なお先ほど申しましたように、これは日本だけでなく、諸外国も自由映画を海外に出すことにつきましては非常に熱心でございます。幸いようやく日本映画が国際的水準に達して、徐々ではありますが、日本映画外国の一般の観客にもなれるような道が開けてきたところでございますので、この際もっと政府の方でも力を入れてこの映画輸出振興に努力をする必要があるということを考えております。この三月にもイタリア日本映画祭が開かれることになっていますし、また正月ごろにはフランスのパリで日本映画祭を開くという計画も起っておるのであります。ところが、日本映画関係者の方も日本ではお金持ちでございますが、海外においては外貨関係等で非常に窮屈なようでございまして、従来外務省の出先ではなけなしの金でもってパーティをやったりいろいろな援助を今日までしてきたのであります。しかしいろいろの映画祭に出ていきますと各国は非常に盛大なパーティをやるとか、ある国は軍艦まで出して映画祭を応援するというふうな力の入れ方でありまして、日本などは全然問題にならないのであります。外務省のわずかな費用ではとうていそういうことができませんので、できますならばイタリアフランスにあるような何か半官半民のような機関でもできて、どこからかそういう資金をとってきて、これでもって日本映画輸出に積極的な援助をするということができれば最も適当ではないか、またこういう機関はなるべく早くやる必要があるのではないか、ある専門家の意見ではこのままで放任しておいては、おそらく一、二年のうちに再び日本映画は欧米の市場から姿を消すのではないかというふうに心配をされておる向きもあるのであります。私もこれとほぼ同様の感じを持っておるわけであります。そういう意味で、今御質問になりましたような何らかの機関が早急にできることを非常に強く希望しておる次第でございます。
  41. 大西正道

    ○大西委員 今無為替輸入映画のことに触れられましたが、私、ちょっと聞き間違いかと思いますが、今のお話で数百本倉庫に残っておるということでしたね。これはどういう種類のもので、どの辺から持ち帰られたものが残っておるのか、これをちょっと聞きたいのです。外国へ行きまして為替なしで贈与されたり、いろいろな形で持ち帰ったものがあるでしょう。それが今あなたは数百本と言われたが……。
  42. 江上龍彦

    江上説明員 それは興行用の目的で、戦争前からドイツから輸入しようと思ったり、あるいは司令部時代からアメリカから持ち込んだというもので輸入を認めなかったものであります。全部興行用の目的のもので、先ほど申し上げましたように贈与の目的の意味で来たものでは輸入を認めておるわけであります。
  43. 大西正道

    ○大西委員 これは私も具体的な関係があるのですが、外国へ参りましていろいろな種類の映画をたくさんもらって帰る人があるのです。しかし関税が高くて普通の興行用輸入映画と同じような税金を払わされるから、なかなかこれが受け取れないのです。今のお話のように興行用のものでしたらこれは国内市場を撹乱しましょうが、再プリントできない一本だけを持って帰って、これが文化的にもあるいは学術的にも、その他価値の高いものであるにもかかわらず、関税が払われないからいまだに引き取ることができないというのがたくさんあると私は思うのですが、これがどのくらい今税関の方でそのままとまっておりますか、ちょっと知らしていただきたい。
  44. 山下武利

    ○山下説明員 ただいまの御質問に該当すると思われるフィルムで、現在保税のまま残っておりますのは約百三十巻でございます。
  45. 大西正道

    ○大西委員 それはどういう方面からどういう人によって持って帰られたか、大体のことがわかりますか。
  46. 山下武利

    ○山下説明員 本数につきまして詳細な資料を今手元に持っておりませんが、比較的多いと思われるのは日中友好協会または総評関係並びに共産圏に渡航されました方が持ち帰られたものが比較的多いようであります。
  47. 大西正道

    ○大西委員 これの処理の方法ですが、向うへ行って純然たる贈与としてもらってきたものを普通の関税を払って引き取るということはちょっとできない。そういうときに営業用のものではないのだから、普通の営業用と同じに関税をかけることをしないで、一つ免除してやるということはやはり文化交流の面からも——十本や二十本なら大したことはないと思いますが、百三十本もあるということになればこれはかなりの問題です。これをいつまでも寝かしておくということはいろいろな面からいって損失が大きいと思いますから、この点について税関部長、特別の措置を講ずる意思はございませんか。
  48. 山下武利

    ○山下説明員 お話は為替の方の許可はすでに受けておりまして、関税の関係だけで引き取りが困難であるということだと思います。関税は御承知のように物税でありまして物それ自体にかかるわけでありますから、原則といたしまして用途別に関税を免税するということは行なっておらないわけであります。用途別にもし免税をすることにいたしましても、入ってくるものが果して興行用のものであるか、あるいは文化的なものであるかということの判断は、実は税関としてはつきにくいというような困難もありまして、この問題は非常に厄介な問題ではありますけれども、今のところやはり一律に関税をかけなければならぬというような状態になっております。
  49. 大西正道

    ○大西委員 これは希望ですけれども、こういうものをしゃくし定木にいろいろ言うよりはその趣旨を了として、せっかくここまで持ってきたものだから関税を免除して入れるように一つ努力をされたいということを希望いたします。  それからもう一つ輸入映画のことにつきましては為替の面から非常に制約があることが論議されました。今岡田君からもそういう面からは非常に検討されるが、内容の面では非常にずさんなもので、どうも日本の国策としても思わしくないようなものがたくさんあります。今の委員会などでもだれそれ、芸術家のだれだとかいろいろな名前をあげられましたが、結論といたしましてはやはりくだらぬところの反民主的な反平和的なものがたくさんありますから、大蔵省の外郭団体であるところの輸入委員会、これは機構そのものを検討しないと結果としてはくだらぬ映画ばかりが入ってきておると思うのですが、そういう点について考慮されるお考えがありますか。
  50. 江上龍彦

    江上説明員 ただいまの映画の質の問題でございますが、現在文化統制を行わない、また現に行えないわけですので、質的な統制というものは全然やっておらない、従って悪い映画だったら禁止するという措置は、これは関税定率法に基く特に風俗を壊乱するとか、そういうのに該当しない限りは、輸入をとめるということはないので、あと映画倫理規程管理委員会で審査して、あまり工合の悪いところは自発的に訂正を求めるという程度のことしかできない事情であります。  それから悪い映画が入ることと私の方でやっておりまする優秀映画審査会との関係についても、若干誤解があるようにも思いますので申し上げておきますが、優秀映画審査会というものは入ってくる映画全部を審査して、この映画がいいから入れるとか、この映画は悪いから入れないというためにできておるのじゃなくて、現実に入ってしまった映画のうちでいいものを審査して選ぶ、そのいいものについては、いいものを奨励する意味で、それを入れた業者には、さらに追加割当をやる、こういう趣旨でありまして、優秀映画審査会の機構を幾ら改革してみても、悪い映画をとめるという目的はない、ただ優秀映画を奨励することによって、少しでも業者にいい映画を入れる意欲を起させよう、こういう趣旨に出たものであります。
  51. 大西正道

    ○大西委員 統制がいかぬということははっきりわかっております。文化統制があってはいかぬことはわかりますが、しかし指導はできると思うのです。ですからそういう言葉の問題じゃなしに、実際よくない映画を入れさせないようにすることは、何も統制はしなくても指導の面で私は十分やれるだけの実績があると思う。実際そういうことをやっているのです。ですから統制は、できないけれども云々というようなことは、これはもちろんだけれども、やはり指導の面でそういうものが入らないようにすることはできると思うのです。あなた自体としても今のつまらぬ外国映画がいいと思っていないでしょう。そうなれば、統制でなくても指導の面で十分この点は私は今よりもう少しいいものに変えることができると思うのですが、そういう余地はありませんか。
  52. 江上龍彦

    江上説明員 御指摘の点は当然研究すべき問題だと思いますが、現在行政指導ということでこういう文化統制的なことをやることはきわめて困難じゃないか、しかもどういう指導をいたしましたにいたしましても、どれがいい映画でどれが悪い映画かということは、非常に主観的な判断の問題で、これがいいと判断してごほうびをやるいうことはできるかもしれませんが、これは悪いから入れるなということを言うについては、非常に客観的な基準が乏しいために、かりに指導でやるしてもきわめて困難じゃなかろうか。それから行政力の限界ということも当然考えなければいけないと思います。ただ優秀映画審査制度の影響も一つあると思いますが、そのほかに現実に国民があまりつまらぬ映画を見なくなっておるというのが最近の傾向であって、昔は西部劇さえ入れたら当ったということで、業者は入れたと思うのですが、最近はいわゆる優秀映画に当選するような作品が、割に興行成績もいいというような状態にあると考えておりますので、過去に比べれば、映画も質的にはだんだん悪いものの輸入が少くなって、いいものがふえつつある、こういうことは言えるのじゃないか。悪いものはなくなったとはもちろん言うません。悪いものも相当あることは確かでありますが、若干ずつよくなり、究極において国民の観賞眼が肥えて、そんなものはだれも見に行かないというならば入れないのです。やはりそれが根本的な問題じゃなかろうかというふうに考えます。
  53. 大西正道

    ○大西委員 どうもあなたのおっしゃり方はずいぶん無責任なことなんで、だれが見ても悪い映画はたくさんあります。主観的な価値判断が違うというようなことは、それは理屈の上では言えますけれども、今われわれがだれが見てもこんな映画はつまらぬという映画は、これは主観的な価値判断以上に、常識的にわかることなんです。だからそういうことに対して統制でなくても何らかの政治力で、限界があるといっても私はやり得ると思うのです。それについててんぜんとそういうことを離れて、価値判断の主観的基準が違うということでほうっておかれるということになれば、輸入映画の問題についてゆゆしき問題が出てくると思います。これは言葉のあげ足取りじゃないのですが、十分考えていただかなければならぬ問題じゃないかと思います。それだけ申し上げます。
  54. 岡田春夫

    岡田委員 今度は税関部長の方にお伺いしたいのですが、これは実はきのうだいぶ問題になっておって、外務省の方であまり明確でなかったので来ていただいたのですが、大使館の館員が見るのに大使館の中へその国の映画を持ってくる。そういう場合には関税定率法の十六条によって関税をかけない、その他の税金もかけないということになっているわけです。その点はわかりますが、その大使館の館員だけに見せているときはそれでいいかもしれませんが、館員以外すなわち日本の国民に対して最近大使館フィルムがずいぶん見せられているわけです。そういう場合には、これはどういう法律に基いて日本の国内では扱っているのか。それからまたその場合にはどういう手続が必要なのであるか、そしてまたそのフィルムを使ったあとで、これはもちろん大使館に返すのだろうと思うのですが、どういう手続で返すのか、そういうようなことはどういうふうになっているのか、この点を伺いたいと思います。
  55. 山下武利

    ○山下説明員 御指摘のように関税定率法第十六条によりまして、本邦にあります外国の大公使館並びにそれに準ずる機関の公用品は無税で入れることができることになっております。従いましてその入れましたフィルムをたとえば館外で非営利的な目的に上映するといったような場合には、税関といたしましては公用品のままでそれが使われるという解釈のもとに、許可の申請をさせてそれを認可するという方式によりまして、館外の上映を認めておるわけであります。もちろん目的が済みました場合には、またそのフィルムを大公使館に戻すという手続をとっております。さらにそれを使いましたことについての平後の報告を徴しております。
  56. 岡田春夫

    岡田委員 そうすると、そういう許可の手続というものはどういう法律に基いてやるわけなのでございますか、法律がなければ何か政令か……。
  57. 山下武利

    ○山下説明員 それは別に法律の規定というものはございません。法律はあくまで関税定率法十六条であります。公用品というものをどう認定するかという解釈の問題でやっております。
  58. 岡田春夫

    岡田委員 解釈の扱いとして行政措置としてやられているわけですか。
  59. 山下武利

    ○山下説明員 そうです。
  60. 岡田春夫

    岡田委員 そこで伺いますが、行政措置としてやられておる場合に、これはきのう問題になったのですが、アメリカ大使館が入れているフィルムについては、事前の許可申請なしにどんどん入っているようです。ほかの大使館の場合には全部事前の許可を必要として、アメリカ大使館の場合だけは事前の許可なしにどんどん入れて、しかもこれがその後どこへ行っているのか私はわからないけれども、どうも単に大使館から貸し出して、使ったらそのまますぐ返るのではなくて、たとえば北海道なら北海道の方に貸し出されたまま巡回してしまうということで、そのあとでどうなっているかわれわれにははっきりわからないわけです。私のここで伺いたいのは、アメリカ大使館の場合だけが事前の許可を必要としないでどんどんそういうふうに入れられて、そしてあちらこちらと出されているということはどういう意味であるか、どうもそれがわからないということと、それからある国においては貸し出しの場合にも回数の制限を与えているようです。たとえば十七カ所の制限を与えているようです。そういうような制限を与えている国と、アメリカのように無制限になっている国と、一体どういうわけでこういうことになっているのか、この点を伺いたいと思います。
  61. 山下武利

    ○山下説明員 あくまで関税定率法十六条に該当する公用品の範囲内であるかどうかの認定の問題でありますが、これを認定いたします場合には、過去におきましてその国のやっておりました文化活動というものを、実際問題として考慮に入れて考えなければならないと思います。アメリカは、御承知のように占領期間中相当広範囲な文化活動をやっておったわけであります。全国に相当たくさんの文化センターを設けてやっております。ここで実際上アメリカの文化映画を相当多量に輸入してやっておったわけであります。今日この公用の扱いをどこまで広げて解釈するかという問題を考えます場合に、アメリカが実際上そういうふうな文化センターで扱いますものも公用品として認めるということは、過去の事実をある程度尊重していかなければならぬという考えに立ちますと、当然のことと考えております。アメリカについてだけは事前の承認を必要としないという扱いでやっておりますのはいかにも片手落ちのように考えておりますけれども、過去にそういうふうな文化活動が相当広範囲に行われておったという事実から考えますと、当然のことと私は考えておるのであります。
  62. 岡田春夫

    岡田委員 それでは今後文化活動をほかの国でそういうふうに積極的にやろうという場合も、アメリカの先例にならってやらなければならないということになると思うのです。そういうようにわれわれ解釈していかなければならないと思いますが、アメリカの国だけを特別にそういう実績があるから認めるということでは、あとの例としてもそういう例になってくると思いますが、その点はいかがでございますか。
  63. 山下武利

    ○山下説明員 あくまで過去にやっておりました既成事実に基きまして国別に判断をしていかなければならぬ問題と考えておりますので、今まで全然文化活動を行なっておらなかった国が今後新しくやるという場合には、アメリカを先例としないと私は考えております。
  64. 岡田春夫

    岡田委員 それではアメリカだけを認めてほかの国はどうなってもいいということになるので、これは日本の国としてアメリカを特別にそれだけの待遇をしなければならないという事情が私にはわからないということです。それからあまり時間をかけるといけませんから一括して伺って参りますが、アメリカの文化センターというものの国際法的な、あるいは国内法でもいいですが、法的の地位というものはどういうものになるのですか。これはむしろ外務省の方に伺いたいと思うのです。
  65. 田中三男

    田中(三)政府委員 これはやはり大使館の一部でございます。たとえば日本で…。これはちょっと事情がはっきりいたしませんので国際協力局長から御答弁願います。
  66. 河崎一郎

    ○河崎政府委員 お答えいたします。その前に、昨日岡田委員から御指摘のありました吉田・シーボルト書簡からまず御説明する必要があると思います。昨日の吉田・シーボルド書簡と申しますのは、一九五二年、昭和二十七年でございますが、二月十八日付でシーボルトから平和発効後における日米間の外交機関の復活についての書簡でございまして、その内容は、主として占領期間中の総司令部外交部の大使館への切りかえ、それからアメリカにあります日本の在外軍務所の大使館並びに領事館、総領事館への切りかえについての措置を向うから提示してきたものでありまして、その中に、アメリカ側としましては、占領中に総司令部の民間司令部で運営いたしておりましたインフォーメーション・センターを今後引き続き運営したいということを提示してきております。その中で、文化センターでは引き続き占領中と同様に記録映画の映写も認めてもらいたいということを先方から提示してきておるのであります。これに対しまして外務省から四月二日付をもちまして返簡が出ておりますが、その中におきまして、文化センターにつきましては先方の提示を受け入れまして、引き続き文化センターを認めることは認める、ただしその文化センターのライブラリーの館員並びにその建物に対しては、外交特権は認めないということをはっきりこちらから申しております。それからさらにその文化センターで配布上映すべき映画につきましては、こちらは全然触れておりません。従いまして、吉田・シーボルド書簡によりまして先方から申してきましたことは、あくまでも一方的な先方の希望の表明でありまして、目来平和回復後は大成省の税関部とも緊密に連絡いたしまして、大体私の方としましては相互主一義によって映画の上映を許しておるのでございます。
  67. 岡田春夫

    岡田委員 いわゆる文化センターというものの性格はだいぶ明らかになってきたのですが、文化センターというものは外交特権を認めないということになると、管轄権も認めないということになる。例をあげていえば、文化センターの中に乱闘事件が起った、そういう場合には、特権、いわゆる管轄権がないものとするならば、日本の警察官が行ってそれを抑えること、逮捕することもできるはずだと私は解釈しておるのだが、こういうような場合の文化センターの法的性格といいますか、これは一体日本の国内法に従うべきものであるか、アメリカ法律に基くものであるか、その点がどうなっているのだか、その点をもう少し伺いたいと思います。
  68. 河崎一郎

    ○河崎政府委員 外交特権を全然認めておりませんから、すべて日本の国内法に従います。
  69. 岡田春夫

    岡田委員 よくわかりました。そうすると、税関部長にもう一度お伺いいたしますが、いわゆる日本の国内法に基く、もっと別の言葉でいえば、在外公館でない、外交特権を持っておらない文化センターから——アメリカフィルムが文化センターに保管をされて、文化センターから日本の国内に流されて、文化センターに戻ってくるわけです。そうすると、関税定率法から見ると、関税定率法違反になると私は考えるのだが、この点いかがですか。
  70. 山下武利

    ○山下説明員 関税定率法十六条の公用品として扱われる範囲をどの程度に認めるかという問題でありまして、必ずしも文化センターが外交機関であるかどうかということはこの際問題とするに足らないと思います。文化センターで扱われるものも事実上外交機関の外交文化活動の一部として認めるのかどうかという問題は、過去の実績から判断して適当に処理すべきものと考えます。
  71. 岡田春夫

    岡田委員 そうすると、たとえば別の例で、ほかの国のフィルムでも、日本の国内法に規律すべき場所にこれを置いてある、そうしてそのフィルム自身が外交特権に基く公用品として扱われているものであるならば、そこに長い間保管されてあちらこちらに持って回されてもこれはかまわないということになりませんか。たとえばカナダの例をあげましょう。カナダじゃ適当じゃないかと思いますが、どこか別の国、(「ソ連はどうだ」と呼ぶ者あり)どこでもいい。ソビエトでもいい。ソビエトの国が何かここにセンター——センターというのは単なる名称なんだから、先ほどの解釈によると、日本の国内法の規定に従って動かされておるものだから、たとえばアメリカ・センターという名称にすぎないのだ。日本の機関です。日本の建物だ。そういうものにソビエトのものを持ってきて、そうしてその公用品のものをそこをセンターにしてこちらに出す、あちらに出す、そういうことで、これによって何カ月間かここに保存しておく、そうすると、先ほどのあなたの御説明では、関税定率法に基く大使館に戻さなければならないということをやらなくてもいいことになるわけじゃありませんか。
  72. 山下武利

    ○山下説明員 ソ連の場合はちょっと例になりがたいかと思いますが、要するに、公用品として扱われておる範囲内のものであるかどうかの判断の問題であります。これは過去においてアメリカが実際に占領中文化活動としてそれだけのことをやっておったという実績を認めますと、現在アメリカに関する限りは(一応公用品の扱いとして扱っていくのが適当であろうという判断によるわけであります。
  73. 岡田春夫

    岡田委員 今までは、実は法律問題に関連してなのですが、あなたの御答弁を終始一貫伺っていると、実績に基いてというお話なのであります。ところがアメリカだけが最もすぐれた文化を持っている国じゃない。これはあなたにもおわかりの通りです。そうするとイギリスやフランスイタリアなんかは、現実に御承知のように日本と文化協定まで結んでいる。こういう文化協定を結んでいる国に対してはそういう扱いをしないで、アメリカだけはこれを認めるということになると、これは日本の国内政策として明らかに片手落ちだと思う。もしそういうような政策が実際に行われるのであるとするならば、イギリスに対しても、あるいは文化協定を結んでいるイタリアフランスあるいはその他の国に対しても、アメリカと同様の待遇を与えることが必要なことだし、ほかの国から見ると私はおかしいと思う。だからアメリカの従属国だといわれるのです。アメリカだけには従来の実績を認めて文化センターをどんどん利用させる、ところがほかの国の場合はそれを認めない、今までの実績があるのだからそういうものは認めないという先ほどのお話だとするならば、日本のやり方はおかしい、アメリカ一辺倒だ、こういうことになってくると思うのです。こういう点は一体どういうようにお考えになるのですか。そういうやり方について改められるお考えがあるのかどうか、こういう点も一つお聞かせ願いたいと思うのです。アメリカの方式をやめさせるのか、アメリカ並みに全部やらせるのか、こういう点不公平な態度をとらない方が、日本政府として、税関部長としてもそれがいいのではないかと思うのだが、今後の方針をも兼ねてはっきり伺っておきたいと思います。
  74. 山下武利

    ○山下説明員 なるべく文化のすぐれた国との間に現在文化交流をはかっていきたいというのが政府方針でございますが、たとえばフランスとの間には日仏文化協定というものがありまして、フランス映画は、ある特定の施設において上映されます非営利的なフィルムにつきましては、事前の承認を要しないというような扱いをいたしております。すべて国によりまして、そういうふうに協定に基いて今後の文化の交流をはかっていきたいというのが政府方針であります。
  75. 岡田春夫

    岡田委員 これで終りますが、先ほどの在外公館法律的な地位の問題に関連して、これは島津さんに伺った方がいいいと思うのだが、大使館公使館、総領事館、領事館、これらはもちろん在外公館なのですが、国連関係の各機関、たとえばユネスコとかそういうものの事務所がこちらにあります。こういうものは法律的にはどういう地位になるのですか、この点を最後に伺っておきたい。
  76. 河崎一郎

    ○河崎政府委員 官房長にかわりまして御説明申し上げます。現在日本にあります国連機関の事務所は、国連朝鮮救済機関の東京事務所と、それから国際労働機関の大京支局というのがございます。これは国連との協定によりまして、大体大公使館に準ずる特権を与えております。
  77. 岡田春夫

    岡田委員 外交特権はあるのですか、ないのですか。
  78. 河崎一郎

    ○河崎政府委員 在外公館に準ずる特権を与えております。
  79. 前尾繁三郎

    前尾委員長 在外公館名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案について、他に御質疑はありませんか。  御質疑がなければ、これにて本案に関する質疑は終了いたしました。  別に討論もないようであり、ますから、直ちに採決いたします。  在外公館名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案を原案の通り可決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  80. 前尾繁三郎

    前尾委員長 御異議なしと認めます。よって本案は原案の通り可決いたしました。  なお本案に関する報告書の作成につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  81. 前尾繁三郎

    前尾委員長 御異議がなければさよう決定いたします。     —————————————
  82. 前尾繁三郎

    前尾委員長 これより国際情勢等に関する件について前会の続きの質疑を許します。穗積七郎君。
  83. 穗積七郎

    穗積委員 主として船田防衛庁長官にお尋ねいたしますが、問題は主としてただいま日本アメリカの間で結ぼうとしている日米技術協定についてでございます。長官はきょう当委員会に初めて御出席ですからちょっと今までの経過を申し上げておきますが、これはすでに草案ができてアメリカ側の承諾を求める段階にまで行っておるわけですから、アメリカ側の承諾がありますならば、ほとんど協定締結はもう既定の事実となって参っておるわけです。そこで前の本委員会におきましてこれに関する外務省のお考えを伺い、同時に防衛庁長官の考えを伺いたいと思ったのだが、重光外務大臣は病気中と欠席されましたし、あなたも他の委員会の先約があって出られないということで今日になったわけであります。そこでまず第一にお尋ねいたしますが、今度の協定は、言うまでもなく先般日米間で結びましたMSA協定第四条によって、日本政府アメリカ側に要請をしてこの協定を結ぶに至ったと思う。この協定が結ばるることによって日本の再軍備計画は一そう前進をいたしまして、そうして高度な攻撃性を持った武器を受け入れ、または自作をすることになると思うのです。さらにもう一つ重要なことは、これによって日本のあなたの率いるところの軍隊は、アメリカ軍の一そうの従属性を強化することになるわけであります。同時にこの協定が国内法に及ぼす影響も考えておかなければなりませんから、そういうことで実はお尋ねをして防衛庁当局のお考え方を明確にしていただきたいと思う。これが私の質問趣旨ですから、あらかじめお含みの上で逐次お答えをいただきたいのです。  そこでこういう内容を持った協定を、しかも日本政府の要請によってお結びになりました責任当局である防衛庁側から、その理由と、それから内容についてまず第一に説明をしていただきたい。
  84. 船田中

    ○船田国務大臣 ただいまの穗積委員質問のことでございますが、日米技術協定につきましては目下御承知通り交渉中になっておりまして、この詳しい内容についてはまだ申し上げる段階に達しておりません。しかしこの協定が締結されますれば、特許権及び技術士の知識の保護及びその秘密の保持が保障されることになると思われますので、相当広範囲にわたって技術士の援助を受けることが期待されると存じます。しかし具体的にどういうものが導入されるかということにつきましては、今後両国政府の間において交渉されて、その上できまることでありますので、今まだそれについて申し上げる段階には達しておりません。
  85. 穗積七郎

    穗積委員 船田長官の答弁に対する態度についてちょっと申し上げておきますが、実はこの協定は、日本側はその万事を承諾いたしました草案がすでに向う側に回されて、向う側が了承するならば、それがほぼ確定的になるということが、この協定交渉に当った窓口の外務省の報告でございます。従って未確定であるからまだ答えられないとか、あるいはまた協定が結ばれた後に云々というようなことをおっしゃらないで、われわれが仄聞しておるところによると全文十カ条で、非常に簡素なもののようでございますから、従ってもう少し率直明快にお答えいただきたいと思うのです。これはちょっと御注意を申し上げておきます。外務省がもうすでにほぼ確定的なものとしているような態度で明らかに答弁に応ぜられようとしておるときに、あなたが未確定だからわからぬということでお答えにならぬのは、政府のためにもなりませんし、国会の審議にも大事なことですから、そういう態度を改めていただきたい。  それではちょっとお尋ねいたしますが、この協定によって、言うまでもなく、今長官のおっしゃったように、従来日本の軍隊が持っておりました武器以上の技術または高度な武器を受け入れたり、あるいはまた自作されて装備されるわけですが、そういうことになると、あなたが持っておられるところの日本の防衛計画といいますか、六カ年計画と関連するわけです。そこで私は、この際防衛六カ年計画の具体的な内容を一々この委員会説明しろとは申しませんが、この外務委員会として関連のある問題についてあなたの考え方を伺いたい。  というのは、およそ日本だけではなくて、いずれの国にいたしましても、一国の防衛計画を立てます場合には、その国の立っておる国際情勢、もっと具体的に申しますならば、そのときの仮想敵国といいますか、そういうものがなければ防衛計画というものは立てられないし、こういう協定を結ぶ要請をすることにはならぬと思う。この要請というのは、防衛計画六カ年計画か何カ年計画か知らないが、とにかく防衛力を質的にまたは量的に増強していこうとする計画の一環にすぎないわけです。だからそういうことになりますと、船出長官が長官に就任されまして以来、われわれまだあなたのお考えをこの委員会では伺っておらぬものだから、伺っておきたいと思うのだけれども、一体どういう仮想敵国といいますか情勢判断のもとにこういう計画をお立てになるのか、計画の基礎になる情勢判断についてまずお尋ねしたいと思うのです。
  86. 船田中

    ○船田国務大臣 まずお断わりを申し上げておきますが、先ほど私が申し上げたことは、特に両国間において技術協定が進んでおり、その内容について交渉がある程度にきまっておる、その内容についてことさらに私が秘密にしておるというようにおとりになったようでございますが、先ほども申し上げましたように、これはまだ交渉中でございまして、その内容が確定しておるわけではございませんし、ことにどういう方針を……。(穗積委員日本側の方針は確定したでしょう」と呼ぶ)目標として協定を結ぶようになったのかという、その具体的な内容等については、今のところまだ全く何にもきまってはおらないのであります。その点はあらためてまた念のために申し上げておきます。  ただいま穗積委員から御質問になりました、今の国際情勢に対して、防衛の責任者としてどう考えるか、こういうことでございますが、これは専門家の穗積委員の方が十分それらについては御了承になっておられることと思いますが、私といたしましては、外務大臣が当国会におきまして、あるいは各種の委員会におきまして皆さんに申し上げておりますような国際情勢を前提といたして、防衛の計画をいたしておるわけであります。すなわち今日の国際情勢をどう見るか、あるいは仮想敵国をどこに置いておるか、こういうのでありますが、防衛の責任者としての私は、仮想敵国とかいうようなものは今持っておりません。しかし今日の国際情勢をどう見るかと言われますと、結論的に申し上げますれば、今日の国際情勢は、なるほど一方においては原水爆をもってする第三次世界大戦というようなものがにわかに起るとは考えておりません。またそういうような予想の上に立って防衛計画はいたしておるのではございません。しかし、さればと申しまして、今日の国際情勢が、いわゆる冷戦、コールド、ウオーやあるいは部分戦争が絶対になくなったかといえば、私はそうは言えないと思います。これは一月の五日でございましたか、アイゼンハワー大統領が、国会における教書においても申しております国際情勢についての判断がございますが、私はやはりあの判断を言われておることは、今日の情勢を相当よく見ておるのではないかと存じます。すなわち御承知通り昨年の七月十八日以来サミット・コンファレンスが行われたということは御存じでございましょうが、その当時におきましては、国際情勢は相当緩和されるような印象を与えております。しかし昨年の後半に入りまして、それは必ずしもその通りに進行はいたしておりませんので、いわゆるジュネーヴ精神というものがそのまま実現する、すなわち世界の緊張が非常に緩和されたという判断には立つわけに参らぬと存じます。  ことに最近の共産党の大会等における首脳者の言説をつぶさに読んでみますと、なるほど一方においては非常に緩和されたように見えます。ことに今まで敵視しておったところの社今民主でに十分御承知のことと思いますが、過去三十八年のソ連の歴史等から見ましても、常にソ連は一歩退却二歩前進、あるいはジグザグ・コースをとる、こういうことでありまして、時によって戦略を変えております。しかしその一貫した流れを見ますと、どうしてもやはり世界が共産主義にならなければ平和が来ないんだというような考え方は一貫して流れておるようであります。でありますから、そういう情勢もよく見きわめまして、そして今日の国際情勢は、なるほど一方においては緩和されつつあるようであるけれども、しかし部分戦争なり、あるいは冷戦が全く終息して東西の対立がなくなったというふうに判断はできません。そうして今までの朝鮮戦争なりあるいはマレー半島なりその他の諸国における事実を見ましたときにおきましては、わが国において真空状態を作らぬようにするということがきわめて大切であると存じます。従って去る十一月十五日自由民主党が結成されましたときに、この国際情勢に対処して、わが国の国力及び国情に沿う最小限度の自衛体制を整備する、そうしてでき得べくんばこれによりまして、外国駐留軍の撤退に備えていく、こういう方針を打ち出し、また第三次鳩山内閣におきましてもその方針に従いまして防衛計画考え、三十一年度予算にもその考え方を具現するために予算要求を申し上げておる、こういうような状況でございます。
  87. 穗積七郎

    穗積委員 今船田長官のお話を伺っておりますと、私が質問いたしました、日本の防衛計画は一体どこを仮想敵国として立てておるのだ——これは常識的な質問なのです。およそ一国の軍備を立てます場合には、世界のすべての国が同時にわが国を侵略してくるとか、あるいは極端なことを言えば地が裂け天が降ってくるかもしれぬというようなことを心配して、それに対してすべて安全だというようなことで計画を立てるのではないわけでございます。仮想敵国というものが必ずあって、そうしてその仮想敵国の動きに対する情勢の判断をしながら、そのときの計画を逐次立てていくべきなんです。だから仮想敵国がなくて再軍備なんというものはあるはずがない。だからそれを伺うと、あなたは逃げて仮想敵国は持っておらないのだと言われる。持っていないと言いながら、説明をだんだん聞いておると、結局あなたの言葉の中に出てきたのは、ソビエトは世界共産主義革命を暴力、武力をもってやるのだという方針は捨てていないのだと思うということで、語るに落ちるといいますか、ソビエトまたは共産主義諸国の直接侵略というものを仮想敵国として日本の再軍備計画が立てられておる、客観的にいってこういうふうに私は印象を受けざるを得ないのです。あなたは最近のソビエト共産党の大会における平和方針というものは、一時的戦略にすぎないのだというふうにお考えになっておられると思うが、それでは具体的にお尋ねいたします。中国、ソビエトをまず第一対象としてみたいと思うが、時間がありませんから一括してあなたの判断を聞きたい。というのは、その国が暴力、武力をもって他国を侵略するかしないかということは、その国の国民が主観的に平和を愛しているかどうか、またその国の指導者がその時期に平和政策をとっておるかおらぬかということだけによって、必ずしもその国の方針というものを確定的に判断するわけにはいかない。それの裏づけになるものは、その国の経済建設計画だと思うのです。経済並びに国民生活の実情に対する判断がなくてはならない。たとえば日本とかドイツのように領土が狭く資源が少く人口が過剰であって、従ってその失業問題なり生活問題を確保するためには、一方の道は平和な貿易政策を進めていく、他の方はもっと手っとり早く武力をもって他国の経済圏を自分の手中におさめていく、こういう状態に立たされている国は、少くとも客観的に見て、五〇%は戦争を好む客観性を持っていると思うのです。ところが過去の日本の歴史は、その場合において平和な貿易政策をとらずして、武力による大陸進出なり南方進出というものを考えたわけですね。ところが今のあなたが仮想敵国としているところのソビエト並びに中国は、その指導者が平和外交政策を打ち出しておるというだけでなく、またその田の国民大衆の諸君が平和を愛しておる。むしろ軍事費を少くし、建設費または社会保障費を多くすることが、われわれの今日、明日の生活を豊かならしめるのだというふうな理解、つかみ方において平和を希望しておる。そういう点だけではなくて、さらにその国の経済が、今言いましたように、他国を侵略する必要があるかないかというような客観性をもって見なければならぬと思うのです。そのときにソビエト、中国の諸君は、何も武力をもって、そうして人を使い、多額な軍事費を使い、そしてやってみて成功するかしないかわからない  たとえば成功したとしても、日本のような経済圏を押えたところが、むしろ持ち出しの方が多いくらいな状態なんだ。そういう状態であって、国内の労働資源並びにその産業開発の計画を見ますと、そういう労力と国費を国内建設に注ぎ込めば、それが何の危険もなく百パーセント国民生活を引き上げ、経済の独立をもっと増していく、そういう可能性のある国でございます。従いまして、中国、ソビエトに対する認識というものが、日本の防衛計画なり、あなたのこれから結ばれようとしておる日米協定につながってくるわけです。実は昨年、向うの最高会議の招待によってわれわれ国会議員が、両院、自由党から共産党まですべて含んで一緒にかの国を視察し、一緒に話し合いをいたしました。その結果、これらの諸君は、すべて中国、ソビエト計画実情と世論の動向を見て、これが日本に向って直接侵略してくるとは考えられない、そういう考えを持つことはかえって時代におくれるものである、そういう政策をとらないで、むしろこれらの国と早く貿易を伸ばすことが急務であるという認識を持って皆帰られたわけです。これはわれわれ革新政党の議員だけの認識ではございませんでした。この認識に対して長官はどういうお考えを持っておられるか。それでもなおかつ信用するわけにはいかぬ、侵略性を持っておるということで、これに対応するものとして、これを仮想敵国とする再軍備強行をされようとするのかどうか、その中国、ソビエトに対するあなたの認識を一つ伺いたい。
  88. 船田中

    ○船田国務大臣 私は今ここで穗積委員とこの問題について論争しようなどということを考えてはおりません。しかし、過去の朝鮮における戦争なりその他の区域における部分戦争の実情を無視するわけには参りません。従いまして、わが方といたしましては、日本の平和と独立を守り国土の防衛をするために、最小限度の自衛体制は整備いたしたい、いたさなければならぬ、かような考え方をもって計画を立てて、それを着々実施いたしつつあるわけであります。
  89. 穗積七郎

    穗積委員 朝鮮戦争もヴェトナム戦争も済んだのです。あなたは昨年のジュネーヴ会談では何らなかったというが、しかし今の朝鮮戦争なりヴェトナム戦争はもう現実に終結しているのです。重光さんがいわれる方針だと言われるが、昨年の夏からこれらの戦争がまた勃発するような情勢をお考えになっておられるのですか。そういうことで日本の防衛計画をお立てになっておられるのですか。朝鮮戦争の話が出たから伺いたいのだが、朝鮮戦争は終っておりますよ。(「台湾戦争」と呼ぶ者あり)台湾戦争のごときも、言うことがなくて、自由党なり保守党の諸君は国民に向って欺瞞的に説明しておられるのですが、これらのものはすでに和平解決の方向へ着々として進んでおるじゃないか。朝鮮戦争がまた勃発するという方針に立って日本の防衛計画一切をお立てになっておるのですか、どういうことでしょうか。
  90. 船田中

    ○船田国務大臣 私は、平和は口先だけでは実現はできないと思います。私の考えでは、日本においていわゆる無防備中立論はなかなかあり得ないと考えております。わが国といたしましては、どうしても平和と独立を守り国土の防衛をするということは、これはどうしてもある程度の実力を持たなければできない、またそれを立てていくことが、この今日の国際情勢を見ていく場合におきまして必要なことである、かように考えておるのでありまして、先ほども申し上げておりますように、今特殊の国を仮想敵国などとは考えておりません。しかし国際情勢というものは十分見て、それに対処し得る防衛体制を整備していきたい、かように考えておるわけであります。
  91. 穗積七郎

    穗積委員 もう少し私の質問に対して具体的に、良心的にお答えがいただきたいのです。そういう抽象的な言葉じゃなくて、具体的に伺っておるのです。きょうは、この日米技術協定は、より高度な、より攻撃性を持った武器を作ったり、入れたりしようとする計画を持っておられるから、そういうことと具体的に結びつけて私は伺っておるのです。あなたのおっしゃることになれば、朝鮮戦争が中国、ソビエトの示唆によって再び起ってくる、または台湾戦争が起きるかもわからぬ、そういうような情勢判断で立てておられるのかと言って聞いておるのですから、それに対して具体的にお答えをいただきたいのですよ。朝鮮、台湾問題に対するあなたの認識ですね。それに対する中共、ソビエトの態度がそういうことであるとするならば、どこにそういう事実がありましょうか。これを教唆して戦争を勃発せしめんとする動きがある……。具体的にもう少し説明していただきたいのです。
  92. 船田中

    ○船田国務大臣 国際情勢を見、ことに極東の情勢を見た場合におきまして、私は部分戦争なり冷戦が全く将来も起らないという判断には立ち得ないと思います。従いましてわが四の国力及び国情に相応する防衛体制を整備することは必要なりと確信をいたしまして、そのために計画を立て、着々これを実施いたさんとしておるのであります。
  93. 穗積七郎

    穗積委員 さっぱりお答えにならない。それではちょっとまた前に戻して伺いますが、中国、ソビエトの侵略性というものをお認めになるわけですか、お考えになっておられるわけですか、それを伺いたい。
  94. 船田中

    ○船田国務大臣 この場合、ソ連や中共について私が自己の私見を申し述べることは差し控えたいと存じます。
  95. 穗積七郎

    穗積委員 それに対する基本的な考え方がきまらずして、防衛計画というものは立たないと私は思うのです。こんな協定を結ぶ必要は生じてこないと思うのです。理由がまことに薄弱だと思うのです。そういう意味でお尋ねしておるのです。だから中国、ソビエトの侵略性の問題についてもう少し具体的にお尋ねしたい。あなたは外交問題については外務大臣の判断に従うということですから、それでは外務省意見に従うというなら外務省お尋ねいたします。先ほど私は具体的に三点申し上げた。第一はソビエト、中国の指導者の諸君の平和外交方針、第二は世論、第三はその国の経済の実情、こういう点を大まかに申し上げた。その侵略性を考えて、今非常な無理をした憲法改悪をしようとしたり、再軍備を強行しようとしたりする、そして同時に国民生活を圧迫しようとするような計画をお立てになる。先ほどからも本委員会において論議されたのだが、憲法で認められておる——あなたは、防衛庁の軍部の本部なんというどえらいものができて、平和外交をやろうという外務省の建物が全然できておらぬ、焼け野原でほったらかされておるというような政策をとっておられるわけですが、そういうことに矛盾をお感じにたらぬかどうか。外務省の認識を伺いたいのです。きょうは大臣がおられぬから、政務次官一つ外務省を代表してお答えいただきたいのです。質問の要点は、中国、ソビエトの侵略性についてです。
  96. 森下國雄

    森下政府委員 今日の情勢はきわめて複雑でありまして、今ここで私が申し上げるわけには参りません。
  97. 穗積七郎

    穗積委員 それじゃめくらめっぽうに再軍備をしておるということですか、そういうことになりますね。めくらめっぽうで再軍備をしておる、すなわちアメリカ要求によって再軍備をしておる、日本の自主的な判断ではない、そう理解してよろしゅうございますか。
  98. 船田中

    ○船田国務大臣 先ほど来たびたび申し上げておりますように、私どもは国際情勢の判断において部分戦争なりあるいは冷戦なりというものは、今後絶対に起らないとは判断がまだできません。そうして過去の歴史を見ますと、真空状態になったところに侵略が起ってきておるのであります。その侵略の名前が解放であろうと何であろうと、これは侵略の事実が起ってきておるのであります。従いまして私どもはその真空状態にならぬように、国力、国情に相応する最小限度の防衛体制を整備するということが必要なりという考え方に立っておるわけであります。
  99. 穗積七郎

    穗積委員 侵略戦争の事実を言われたから、ちょっと念のために、あとの討論のために前もって伺っておきたいが、満州戦争以来の十五年間の戦争は侵略戦争と認めておられますか、自衛戦争と認めておられますか、どちらですか。事実に従ってお尋ねします。
  100. 船田中

    ○船田国務大臣 過去の歴史につきまして日本のやったことが全部悪いというような考え方は私はいたしておりません。
  101. 穗積七郎

    穗積委員 いい悪いの問題ではなくて、あなたの言う侵略戦争であるかどちらかということを聞いているのです。あなたは今まで侵略的な戦争が随所に起きたという歴史的事実をおあげになった。南北朝鮮問題もその一つの例におあけになる。やがて台湾の問題も与党の諸君は考えておられるようです。だから聞いておくのです。過去の事実にについて言うのです。あなたが侵略戦争が過去の歴史において行われたというときに、満州戦争から大東亜戦争までの戦争は、あなたの言う侵略戦争とお考えになっておられるかどうか、それをちょっと伺っておきたい。
  102. 船田中

    ○船田国務大臣 私は先ほども申し上げましたように、日本の過去においてやったことが全部悪いなどとは考えておりません。
  103. 穗積七郎

    穗積委員 それははなはだ私は遺憾なことであって、人の戦争を侵略戦争と認めて、自分の戦争の場合にはこの戦争は侵略戦争である、この戦争は侵略戦争でないというふうに規定できなくて、侵略戦争とかそうでない戦争というふうなあなたはお言葉をお使いになっても、それでは私どもは理解するわけには参りません。ですから朝鮮戦争は北鮮の侵略があり、それで満州戦争から終戦までの戦争は一体侵略戦争であったかないか、そのくらいのことは私は答えていただけると思う。どういうことでしょうか。
  104. 船田中

    ○船田国務大臣 先ほど来たびたび答弁申し上げておる通りでありまして、それは歴史家が公正な判断をすることと思います。
  105. 穗積七郎

    穗積委員 それはあなたの態度はまことに国会を無視される態度であって、軍部独善的な態度ですよ。そういうことでは、今までのアメリカ一辺倒といわれた外務省外務大臣ですらそういう答弁はしたことはございません。そういう態度を政府がおとりになるなら、今後この委員会におけるいろいろな審議ができなくなります。御所感はいかがでございましょうか、長官にお尋ねいたします。
  106. 船田中

    ○船田国務大臣 われわれは国力及び国情に相応する最小限度の自衛体制を整えて、そうして過去において侵略というようなことの起った歴史にかんがみまして、そういうことのないようにしていきたい。これは何もアメリカから要請されたものでもなく、日本のために日本の国土を守るということは、われわれの手によってやっていきたい、そういう考え方で計画を立てておるわけであります。
  107. 穗積七郎

    穗積委員 自衛戦争であるか侵略戦争であるかということは非常に大事なことです。またその国の軍隊が単なる自衛のための軍隊であるのか、侵略性を持った軍隊であるのか、これも大事なことなんです。両方とも関連した問題です。その問題を私は今の長官のお答えでは納得するわけには参りません。ですからあと日本の軍隊の性格を論ずるときに重ねてお尋ねいたしたいと思います。  次に仮想敵国の問題についてちょっとお尋ねするが、その戦争の可能性について、あなたは共産主義または社会主義国の侵略性について盛んにお触れになりましたが、帝国主義の侵略性についてはどういうふうにお考えになっておられるか。アメリカが今実は国際情勢の判断等についても、ことさらに戦争直前の情勢判断をされたり、またその国の経済を見ましても、領土は広く、資源は豊かで、技術も資本も高度なものでございますが、その国の経済はかつてモンロー主義を妥当ならしめたような国内の自給自足経済ではもうすでにできなくなっておる。前の戦争以来、世界経済の上に立たなければ、アメリカ経済は非常に危険な状態になっておる。これは言うまでもないことでございます。これは社会主義の計画経済を持つ国とは全然その性質が異なって、単に資本が多いとか、技術が高いとか、物がたくさんできるとか、そういうようなことによって、その国の経済の将来を判断するわけにはいかないのであって、私はむしろその国の生産体制そのものが非常に不安定の状態の上に置かれていると思うのです。いわば帝国主義的な経済政策をとろうとすること自身が、それを修正しなければ世界の戦争の危険というものはなくならないと思うのです。そういう意味で一体アメリカ経済を、あなたは今軍隊を指揮しておられますが、それよりはむしろこの経済情勢についてより勉強しておられるはずですから、アメリカの経済のそういう国際経済への進出計画なり進出性について、一体どういうふうにお考えになっておられるか。私は、戦争の可能性、危険性があるかないかということは、むしろその国の指導者が使っておる言葉にあるのじゃなくて、その国の経済の実態の中にあると思う。日本並びにアメリカのことを聞きたいのだが、日本のことは後に伺います。アメリカについてのあなたの認識を聞かしていただきたい。
  108. 船田中

    ○船田国務大臣 アメリカが自己の国の経済諸情勢からして、他国を侵略するような危険があるかというような御意見でございましたが、それは私はさようには考えておりません。
  109. 穗積七郎

    穗積委員 これはせっかくお尋ねしたいと思っても黙してお答えにならぬのだから、さっぱりどうも要を得ない。はなはだ遺憾の意を表せざるを得ない、ですから重光外務大臣がやがて病気がなおられたら、一ぺん今の国際情勢の判断等について、二人並べてお尋ねしたいと思っておりますから、留保いたしておきます。  次にお尋ねいたしたいのは、今度の協定に従って入れようとしておる技術並びに武器はどういうものでございますか。今までのところ予算討議をなさり、または目前の計画をお持ちになっておられると思うが、それを明らかにしていただきたいと思います。
  110. 船田中

    ○船田国務大臣 これにつきましては、先ほど申し上げましたように、まだ両国間において交渉をいたしておる段階でございまして、具体的にどういうものを入れるかということについては、まだ具体的に何もきまったものはございません。
  111. 穗積七郎

    穗積委員 話し合いがきまっておるかというのではなくて、日本計画方針を聞いておるのですよ。これは勘違いしないようにしていただきたい。話がきまったかどうかということを聞いておるのではない。これは当事者である長官に申し上げるまでもなく、MSA協定によって受動的に結ばなければならない。義務づけられた協定とは違います。第四条を読めば、読んで字のごとく明瞭でございますが、いずれか一方の国が要請したときとなっておる。従って日本の要請に従ってこれが行われたと思う。そうなるなら、要請をする以上は、具体的にこういうものを入れる必要がある、現有の段階からもう一歩高度な武器、高度な技術を入れる必要がある、そのためにはどうしてもこの協定を結ばなければならないという現実の要求に従って話が出てきたと思うのです。これは当然なことだと思う。話がどうきまったかということを聞いておるのではなくて、どういうふうな方針でこういうことを要請され、話を進められておるかということを聞いておるのです。これはあなたの腹の中にあることですから、何もアメリカに聞いたりする必要はない。お答えをいただきたいと思います。
  112. 船田中

    ○船田国務大臣 わが国の防衛体制を整備する上においては、この協定ができまして、アメリカから技術士の知識の供与を受けるということは、非常にわが国の防衛体制整備の上に必要であり、適当である、かように考えるのでありますが、具体的にどういうものを入れるかということは、先ほど来申し上げておりますように、協定そのものの交渉中でありまして、具体的にはまだ何もきまっておらない実情であります。
  113. 穗積七郎

    穗積委員 それはちょっと話がおかしいと思うのですよ。さっきから私は説明を加えながら質問をしておるのですが、協定を結ぶ以上は、具体的な、たとえばこういう武器、こういう技術を必要とするというところまでいかぬにしても、どういう方面の技術が必要だというような大体の構想がなくて、この協定を要請する理由はないと思う。そんなばく然とした理由によって、こういう協定を結ぶことを要請されたわけでしょうか。
  114. 船田中

    ○船田国務大臣 この協定そのものが交渉中でございまして、どういう兵器、あるいはそれについての技術の知識を入れるかということにつきましては、全くまだきまっておりません。
  115. 穗積七郎

    穗積委員 そんな答弁はないと思うのですよ。それじゃ逆にお尋ねいたしましょう。現在日本が持っておる武器または技術が、これでは足りないと思うから協定を結んで、新しいものを入れようとしておるわけでしょう。一体どういう点に対して不足を感じておるのですか。日本の現在の武器または技術のどういう点において不足を感じておるのですか、逆説的にお尋ねいたしましょう。
  116. 船田中

    ○船田国務大臣 とにかく日本には十年間の空白があるのでありますから、艦船にいたしましても、飛行機にいたしましても、あるいはその他の地上兵器、火器一切につきましても、わが国の技術は相当に低下いたしております。また全く技術のないものもございます。従いましてどの方面にと言われれば、あらゆる方面にとお答えするよりほかないわけでありまして、あらゆる方面において進んだ技術の知識を導入するということは、わが国の防衛体制を整備する上においてきわめて大切なことと考えます。
  117. 穗積七郎

    穗積委員 それじゃちょっと答弁にならないと思うのですよ。(「軍事の機密は漏らせぬよ」と呼ぶ者あり)今、軍の機密という発言があって、まさに語るに落ちた感がするのですが、こういうことは国会において発表できないのですか、どういう理由で発表できないのでしょうか。
  118. 船田中

    ○船田国務大臣 ことさらに秘密にしなければならないから発表しないというのではございません。これは政府としての具体的な政策としてまだきまっておりませんから、そういう無責任なことは申し上げかねるという意味におきまして、申し上げないのであります。
  119. 穗積七郎

    穗積委員 そういう御答弁では、すべて私は納得するわけにはいかないのです。この協定を秘密主義、黙して語らずということで結ばれてお通しになろうとしてもそれは無理ございますから、前もって申し上げておきます。この協定がこの委員会に上程された場合に、そういうふうに黙して語らず、多数をもって何でもかでも通せというような納得のいかぬ態度で政府が臨まれるなら、われわれはそういうものに対しては、国会の権威にかけてそういう審議、採決を通すわけには参りませんから、前もって申し上げておきたいと思う。しかもきょうは委員長からもお話があって、時間がないからということですから質問は保留しておきますが、あと二点だけ一括してお尋ねしたい。  第一点は、原子力に関する技術はこの協定に含まれないということですが、そういうことは原子力または原子兵器に関する問題に触れないということを明文の中にお書きになるおつもりでございますかどうか、それが一点。
  120. 船田中

    ○船田国務大臣 ただいま穗積委員のお話の通りにいたすつもりでおります。
  121. 穗積七郎

    穗積委員 もう一つ重要な点は、これを受け入れた場合に、今までMSA協定によって受け入れた武器については、アメリカの指定する秘密は保持しなければならぬという秘密保護法がございます。当然今度さらに高度な武器を入れようということになれば、その秘密の問題がさらに拡大されていくと思うが、そういう場合には、国内でMSA協定に伴う秘密保護法しかないわけですから、それ以外の秘密保護法を制定されるつもりがあるのかどうか、そのことをはっきり伺っておきたいと思います。
  122. 船田中

    ○船田国務大臣 ただいま御質問の点は、今までのMSA秘密保護法でやって参るつもりでございまして、特にこれを拡張するというような考え方は持っておりません。  なお一言お断わり申し上げておきますが、私はことさらに言うべきことを言わないというようなことはございません。あらゆることを申し上げておるつもりでございますが、ただ意見の違うところはございますから、その点は御了承願います。
  123. 穗積七郎

    穗積委員 時間がありませんから、私は質問を留保しておきます。
  124. 前尾繁三郎

    前尾委員長 次会は公報をもってお知らせします。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時三分散会      ————◇—————