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穗積委員 今船田長官のお話を伺っておりますと、私が
質問いたしました、
日本の防衛
計画は一体どこを仮想敵国として立てておるのだ——これは常識的な
質問なのです。およそ一国の軍備を立てます場合には、世界のすべての国が同時にわが国を侵略してくるとか、あるいは極端なことを言えば地が裂け天が降ってくるかもしれぬというようなことを心配して、それに対してすべて安全だというようなことで
計画を立てるのではないわけでございます。仮想敵国というものが必ずあって、そうしてその仮想敵国の動きに対する
情勢の判断をしながら、そのときの
計画を逐次立てていくべきなんです。だから仮想敵国がなくて再軍備なんというものはあるはずがない。だからそれを伺うと、あなたは逃げて仮想敵国は持っておらないのだと言われる。持っていないと言いながら、
説明をだんだん聞いておると、結局あなたの言葉の中に出てきたのは、
ソビエトは世界共産主義革命を暴力、武力をもってやるのだという
方針は捨てていないのだと思うということで、語るに落ちるといいますか、
ソビエトまたは共産主義
諸国の直接侵略というものを仮想敵国として
日本の再軍備
計画が立てられておる、客観的にいってこういうふうに私は印象を受けざるを得ないのです。あなたは最近の
ソビエト共産党の大会における平和
方針というものは、一時的戦略にすぎないのだというふうにお
考えになっておられると思うが、それでは具体的に
お尋ねいたします。中国、
ソビエトをまず第一対象としてみたいと思うが、時間がありませんから一括してあなたの判断を聞きたい。というのは、その国が暴力、武力をもって他国を侵略するかしないかということは、その国の国民が主観的に平和を愛しているかどうか、またその国の指導者がその時期に平和政策をとっておるかおらぬかということだけによって、必ずしもその国の
方針というものを確定的に判断するわけにはいかない。それの裏づけになるものは、その国の経済建設
計画だと思うのです。経済並びに国民生活の
実情に対する判断がなくてはならない。たとえば
日本とか
ドイツのように領土が狭く資源が少く人口が過剰であって、従ってその失業問題なり生活問題を確保するためには、一方の道は平和な
貿易政策を進めていく、他の方はもっと手っとり早く武力をもって他国の経済圏を自分の手中におさめていく、こういう状態に立たされている国は、少くとも客観的に見て、五〇%は戦争を好む
客観性を持っていると思うのです。ところが過去の
日本の歴史は、その場合において平和な
貿易政策をとらずして、武力による大陸進出なり南方進出というものを
考えたわけですね。ところが今のあなたが仮想敵国としているところの
ソビエト並びに中国は、その指導者が平和外交政策を打ち出しておるというだけでなく、またその田の国民大衆の諸君が平和を愛しておる。むしろ軍事費を少くし、建設費または社会保障費を多くすることが、われわれの今日、明日の生活を豊かならしめるのだというふうな理解、つかみ方において平和を希望しておる。そういう点だけではなくて、さらにその国の経済が、今言いましたように、他国を侵略する必要があるかないかというような
客観性をもって見なければならぬと思うのです。そのときに
ソビエト、中国の諸君は、何も武力をもって、そうして人を使い、多額な軍事費を使い、そしてやってみて成功するかしないかわからない たとえば成功したとしても、
日本のような経済圏を押えたところが、むしろ持ち出しの方が多いくらいな状態なんだ。そういう状態であって、国内の労働資源並びにその産業開発の
計画を見ますと、そういう労力と国費を国内建設に注ぎ込めば、それが何の危険もなく百パーセント国民生活を引き上げ、経済の独立をもっと増していく、そういう
可能性のある国でございます。従いまして、中国、
ソビエトに対する認識というものが、
日本の防衛
計画なり、あなたのこれから結ばれようとしておる日米協定につながってくるわけです。実は昨年、向うの最高
会議の招待によってわれわれ国
会議員が、両院、自由党から共産党まですべて含んで一緒にかの国を視察し、一緒に話し合いをいたしました。その結果、これらの諸君は、すべて中国、
ソビエトの
計画の
実情と世論の動向を見て、これが
日本に向って直接侵略してくるとは
考えられない、そういう
考えを持つことはかえって時代におくれるものである、そういう政策をとらないで、むしろこれらの国と早く
貿易を伸ばすことが急務であるという認識を持って皆帰られたわけです。これはわれわれ革新
政党の議員だけの認識ではございませんでした。この認識に対して長官はどういうお
考えを持っておられるか。それでもなおかつ信用するわけにはいかぬ、侵略性を持っておるということで、これに対応するものとして、これを仮想敵国とする再軍備強行をされようとするのかどうか、その中国、
ソビエトに対するあなたの認識を
一つ伺いたい。