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1956-02-16 第24回国会 衆議院 外務委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年二月十六日(木曜日)    午前十時四十一分開議  出席委員    委員長 前尾繁三郎君    理事 石坂  繁君 理事 北澤 直吉君    理事 須磨彌吉郎君 理事 山本 利壽君    理事 穗積 七郎君 理事 松本 七郎君       伊東 隆治君    大橋 忠一君       菊池 義郎君    草野一郎平君       高岡 大輔君    並木 芳雄君       大西 正道君    田中織之進君       戸叶 里子君    細迫 兼光君       森島 守人君    岡田 春夫君  出席国務大臣         外 務 大 臣 重光  葵君  出席政府委員         外務政務次官  森下 國雄君         外務省参事官  法眼 晋作君         外務事務官         (アジア局長) 中川  融君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君         外務事務官         (国際協力局         長)      河崎 一郎君  委員外出席者         専  門  員 佐藤 敏人君     ————————————— 二月十五日  鳥島付近米軍爆撃演習中止に関する請願(原  捨思君紹介)(第五七七号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際情勢等に関する件     —————————————
  2. 前尾繁三郎

    前尾委員長 これより会議を開きます。  国際情勢等に関する件について、質疑を許します。本日は多数の質問者がありますので、正確に十五分で切ろうという申し合せになっております。どうぞそのつもりで御質疑願います。北沢直吉君。
  3. 北澤直吉

    北澤委員 私は一問だけ、大臣にお尋ねしたいと思います。一点は、日ソ交渉も領土問題を中心にいたしまして重大な段階に入ったのであります。日本政府の領土問題に対する態度は、しばしば明確に言明されておるわけでございますが、日本国内にはいろいろの情報が流れておりまして、政府声明にもかかわらず、そういう情報のために、ややもすると動かされるような心配もないではないのであります。その情報と申しますのは、例の南千島に関連する問題でございますが、南千島を二つに分けて国後日本返還するが、択捉返還しない、南千島を二つに分けてやる、こういうふうな情報、あるいは南千島につきましては、沖縄、琉球と同じように、日本潜在主権を認めて、将来・沖縄等に関連して、これの返還を求める、こういうふうな情報が巷間に伝えられておるのであります。私どもはそういうふうな考え方は絶対に排斥すべきものと思うのであります。従来政府がしばしば声明しておりますように、日本はあくまでも国後択捉を合せまして、南千島全体の返還を要求すべきものと思うのでありますが、先ほど申しましたような世上のうわさもありますので、この機会にはっきり一つ政府考えをお示し願いたいと思うのであります。
  4. 重光葵

    重光国務大臣 この点に対する政府方針は、すでにきまった通りでございます。きまった方針によって主張をする、こういうことでございます。
  5. 北澤直吉

    北澤委員 先般も日本水産業者等を通しまして、元ソ連の駐日通商代表部方面から、戦争終結宣言方式によって日ソ関係を調整しようというような情報が流れまして、それによって今日日本国内にも、動揺というほどではありませんが、動きがあったのであります。この重大な日ソ交渉段階におきまして、日本国内に内部から日本立場をくずしていこう、こういうふうな謀略宣伝が、今後ともあらゆる方法をもって激しく行われると思うのであります。一つ政府におかれましても、そういうふうな謀略宣伝には政府も乗らぬ、また国民も絶対にそれに動かされないように、御注意願いたいと思うのであります。  もう一点伺いたいのは、今度のソ連共産党大会におきまするフルシチョフ第一書記経過報告を見ておりますと、特に国際関係に関する部分を見ますと、そう新しい政策は打ち出されておらないように思うのでありまして、特に日本関係におきましては、やはり日本との関係を改善するために積極的な政策を遂行する、こういうふうにフルシチョフ第一書記は述べておられるのであります。そういう点から申しますと、私は今回の日ソ交渉にしても、ソ連の方からこの交渉を打ち切るというふうなことはまずない、こう判断しておるものであります。それに対しまして大臣はどういうふうにお考えになっておりますか、お伺いいたします。
  6. 重光葵

    重光国務大臣 この問題について簡潔に一言、二言で御返事するということは非常に困難に感ずるのでございます。私は今回のソ連党大会におけるフルシチョフ演説分析してみますのに、これは従来とは非常な差があると感じました。特に外交方面において一言その要点について申し上げれば、たとえば従来の共産党根本主張である、資本主義国との共存はできないという立場に立っておる点から、資本主義国とは共存ができるといって、多分政策転換をしてきておる。そうして従来のやり方よりも、平和的の手段によって、世界に対する共産勢力を伸張するということがもうできる時期に来たのである、こういう自信をはっきり現わして、平和手段により、あらゆる方面からその目的を達するために政策を運営する、こういうことにはっきりと転換をしてきたように見えるのでございます。そこでお話日本との関係においても、その関係はそのことによって律せられるのであって、日本との関係平和攻勢の一部分として、国交調整をするという初めの目的方針を変えないということがうかがわれます。それはそれであろうと思いますけれども、それだからといって、日本の領土その他に対する要求をいれてくれるとすぐ即断することは、早計であろうかと思います。私はそれにもかかわらず、日本主張は、これは世界に対して正々堂々たる主張であれば、またそうであると信ずるから・それはあくまで主張していけば、必ずやこれは通る時期が来るのじゃないか、こう考える次第でございます。
  7. 北澤直吉

    北澤委員 ソ連の方で簡単に日本の申し出を受け入れるかどうかということだろうと思いますが、日ソ交渉重大段階に入りましただけに、日本国内にもあるいはソ連の方でこのロンドン交渉を打ち切りはせぬか、こういうふうな心配もあると思うのであります。私がお尋ねしましたのは、そういう先ほど申しましたようなソ連首脳部考えからいたしまして、簡単にソ連の方でこの日ソ交渉を打ち切るというような態度には出ないだろう、こういうふうに見ておるのでありますが、その点をもう一ぺん伺っておきたいと思います。
  8. 重光葵

    重光国務大臣 私もそうとは思いますが、ソ連が打ち切る、打ち切らぬはソ連のことでございます。日本側はあくまで交渉を続けていって、そうして目的を達したい、既定方針を進めていきたい、こう考えております。
  9. 前尾繁三郎

  10. 松本七郎

    松本(七)委員 二月三日に並木さんの、中共から政府に何か国交正常化についての呼びかけがあったかという質問に対して、大臣政府に対して正規の外交機関を通じて来たことはない、こういう御答弁をされたのですが、その後御承知のように、田付総領事を通じて伝達方を依頼された文書が発表された。このことについてきのうの新聞大臣は、自分は全然そういうことについては知らないと話しております。果して御存じなかったかどうか。
  11. 重光葵

    重光国務大臣 私はこの問題を出していただくことを希望しておったわけでございます。実は私少し記憶違いがございました。たびたび中共首脳部から国交正常化を欲するというような声明がございました。その声明は私は常に念頭に置いておったのでございますが、その後中共で発表されたような文書が来ておることが調査の結果わかりました。これは私が悪いのであります。私が失念をしておったのであります。失念をしておったのは、それはそれに重きを置いておらなかったという意味ではございません。中共意向は私ははっきり知っておりましたから、そういうことに対する日本立場もたびたびこの席でございましたか、申した通りでございます。そういう考えを持ってこれを処理しておったのでございます。中共で発表されたような文書が来ておるということは、私はそのときにちょっと念頭になかったものでありますから、とっさの御質問についてそういうふうに感じだけでお答えをいたしたのであります。さようなわけでありまして、向うの公文を向うで発表することは何でございますが、こちらの返事等について必要があるならば、こちらでも発表することに取り計らいましょう。しかしこの問題は、いろいろ中共の方でも取扱い注意してやっておられるようでございますから、こちらもはっきりとそういう点を申し上げたい。私のとっさの何としてそれを記憶しておらなかったということを遺憾に思います。
  12. 松本七郎

    松本(七)委員 そうすると前の答弁は誤まりであって、この田付総領事を通じてきたのを政府に対する正式の申し入れであるとお認めになる、こう了解してよろしゅうございますか。
  13. 重光葵

    重光国務大臣 そうです。
  14. 松本七郎

    松本(七)委員 それから外務大臣この前の外交演説の中でジュネーヴ会談以来一時緊張緩和趨勢が見えたが、その後また外務大臣会議以後緊張増大が見えるというふうに言われているのですが、この緊張増大の原因はどこにありと見ておられましょうか。
  15. 重光葵

    重光国務大臣 それは私は説明を詳細的確にすることは困難だと思いますが、主たる点を申し上げます。ゼネヴァ巨頭会談においていかにもゼネヴァ精神というものが強調されて、緊張が緩和したというふうに見えました。ところがすべての重要な問題は、その後に開かれる外務大臣会議に譲られております。そこで外務大臣会議の結果によって、そのゼネヴァ精神によって示された通り国際関係緊張緩和に役立ったか役立たなかったかということが大体判断せられると見なければならぬのです。ところが十月に開かれた外務大臣会議ではどういうことになったかというと、議題に供せられたものが何一つ解決されなかったのみならず、双方の考え方が非常に根底的に離れているということが明らかになった。そこで私はその当然の結果として緊張は緩和されない、そうして国際的に緊張の度が増してきたと見なければならぬ、こういうふうに申し上げたのでございます。それは私だけではございません。今大体世界評論家はそういう工合に見ております。ただソ連の宣伝的の批判は平和の趨勢が増して、ゼネヴァ精神は生きているということをしきりに言います。言いますけれども、これは一つ平和攻勢方法として言っているのであって、事実はそうではない、こう見なければならぬと思います。たとえばソ連がその後においてインド、中東において今日とっている態度は・米英側をはなはだしく刺激して緊張せしめている、こういうことが事実であるからであります。さように私は説明を申し上げて差しつかえないように感じます。
  16. 松本七郎

    松本(七)委員 そういう判断の仕方が、国内政治のいろいろな面にもこれから現われてくるだろうと私は思います。実はもっとそういう点を私も意見を交えながらお伺いしたいのですが、時間がございませんから、これはまたの機会に譲ります。  だいぶ前の閣議で今の政府は何か特別に治安立法考えるということについて論議がかわされたと伝えられます。その際外務大臣は、特にこの治安立法については賛成の意見を述べられて、むしろ激励されたというように伝えられておるのですが、そういう御意向があるのですか。
  17. 重光葵

    重光国務大臣 治安立法のことについて、閣議で議論のあったということを今私は記憶いたしておりません。閣議に上ったということを私は記憶いたしておりません。しかし私は国際情勢一般情勢について説明をいたしたことは最近ございます。それはいたしました。それは大要今申し上げた通りのことを説明申したのでございます。それは国際情勢国内のことに反映をいたしますから、それで国内の問題についても十分取扱いを慎重にしなければならぬ、こういう意見を私はつけ加えたと思っております。
  18. 松本七郎

    松本(七)委員 それからおとといの読売新聞でしたか、外務省中川アジア局長は、外務省が発表したのではないと言われるのですが、例の中共に対するいろいろな情勢分析が出ておったわけです。アジア局長お話では、外務省としては、もちろんそういう情勢分析をふだんからされるのは当然のことです。そういうことをされてはおるが、あの発表については、自分が発表したわけじゃないし、内容についても責任を持てないという御答弁だったのですが、ああいう中央の情勢分析について、大臣はどのように評価されるでしょうか。
  19. 重光葵

    重光国務大臣 あれは読売でしたか、私も朝それを見て、どういう事情でああいうことになったかということを、実は事務当局に聞いたのでございます。なるほどそういうことがあるだろうと思います。それから現物も私のところに持ってきてくれました。外務省の一局部でいろいろ検討をいたしております中国問題を集約をいたしまして、そうして外務省アジア問題の研究をするためにいろいろ専門家を集めて、ときどき意見を聞いております。そういう方々に配って、そうしてそれを検討し、この問題に関する意見を聞いたのだそうでございます。それがどういうものでありますか、ああいうふうな形になって出ておるので、何も外務省がこれを特に声明したとか、公表したということでない事情を御了察願いたいのでございます。しかし私は、ああいう問題について検討をしたことを一般の人に知らして、さらに検討を進めるということは、私はいいことだと考えて、実は少しもそれを制肘する考えはないのでございます。ただその取扱いは誤解をされぬようにしなければならぬので、その取扱いだけは注意をしてもらいたいということを私は言ったくらいでございました。  さてその内容でございます。内容について一々私はまだ検討する余裕がございません。目下病院通いをしておるような状況でございますから、余裕がございませんが、これは外務省員として集めたのでございますから・これは相当参考になる資料だと私も考えて、今後必要なときには、あれを資料として検討してみたい、こう考えておるのであります。
  20. 松本七郎

    松本(七)委員 私は、むしろそれは非常にけっこうなことだと思うのであります。そこで一つお伺いしておきたいのは、中華人民共和国政府に対する日本政府態度は、いつまでも現状で静観されるのか、それともある時期をめどに置いて、たとえば国連の代表権の問題もだいぶん最近問題になっておるようですが、中華人民共和国がかわって代表権を持ったら、もう少し一歩進んだ関係も結ぼうとか、何かそういうめどを置いておられるのか、それとも漫然と情勢待ちということを続けられるおつもりであるか、その点を一つ伺いたい。
  21. 重光葵

    重光国務大臣 日本中共に対する問題は、日本としては最も重大な問題である、こう見ていいのじゃないかとと思います。そうでありますから、外交を担任している者としては、常にいろいろな工夫はしているわけでございます。しかしそれは、今どういうふうな考え方でもって、将来はっきりと処理するのだということには到達をいたしておりません。従いまして、いつも御説明申し上げるところを繰り返すよりほかにしょうがございません。しょうがございませんが、しかし世界情勢は御承知通りに——まあこれは見方にもよりますけれども、いろいろ変って参りました。これに対応する考え方はしょっちゅう考究しておかなければなりません。そういう意味で、御意見のあるところは十分に拝聴いたしたい、こう考えているのでございます。
  22. 前尾繁三郎

    前尾委員長 松本君、もう時間ですからそのつもりで……。
  23. 松本七郎

    松本(七)委員 それじゃ時間ですから、簡単にお伺いをしておきたいと思いますが・谷新駐米大使に・アメリカ新聞あたりで、昔軍国主義指導者であったとか、そういうふうな批判ばかりならまだしも、個人的なことにも相当批判が出ているようで、新聞でも報道しております。これは実は外務大臣も覚えておられるだろうと思いますが、昨年五月ごろ、私も実は日本国内投書をもらいまして、それで当時駐米大使に内応されるのじゃないかというようなうわさ新聞に出たときに、投書が私の方に来まして、これは相当考えなければならぬが、しかしそういう個人的なことも含んだことですから、一応大臣に御注意した方がいいというのでお話したわけです。そのときには十分気をつけるというお話だったのですが、これは国内ばかりじゃなく、アメリカにおいてもそういうふうな批判が出てきているということでは、この人事は私はちょっと問題があるのじゃないかという気がして、先を心配しているのですが、よほど今後気をつけて任を果していただかないと、相当日本としては不利なことになるのじゃないか。個人的なことを投書に述べてあるようなことは、大臣も御承知のはずですからここでは申しませんけれども一つお気持を伺っておきたいと思います。  あとの問題は今後に譲りたいと思いますが、外務大臣も、経済外交ということをしきりに言われている建前から、私どもは最近における東欧諸国の経済的な進展ぶりというものに、相当注目しなければならぬと思っております。この東欧諸国、いわゆる人民民主諸国との国交問題は、どのように考えておられるか、これだけ伺っておきます。
  24. 重光葵

    重光国務大臣 二点のお話でございましたが、東欧問題からお答えいたします。東欧との貿易関係も言われたようでありますが、東欧との貿易関係は、これは他の国に比較してみると、その比例は非常に少うございます。それで国交をどうするかという問題でありますが、これは全部ほったらかしておいていいというわけには参りません。しかし大体においてやはり大きな問題、つまりソ連との問題を一つ解決すれば、こういう問題もおのずから解決ができる問題だというふうに、大体の順序を考えでやってきていることが今日までの考え方でございます。これもそうしなければならぬと、どっちが先だどっちがあとだということをはっきり決定してしまっているわけじゃございませんけれども、大体それが常識として日本の進むべき道だと、こういうふうに思うのでございます。  それから、米国にやります新大使の問題について、今お話がございましたが、御親切な御注意でございまして、私はその御注意を感謝いたします。この前もお話がございました。そこでこれは非常に考えたのでございますが・実質上において、私は・谷大使以上の適任者はないというふうにいろいろ考えて、結論を得たわけであります。それからまた東京におきましてもずっと米国関係を担任して、米国代表者とは絶えず交渉を続けてきた人がこの人であるのでございます。そこで新聞にニューヨーク・タイムスの記事が転載されたのでございます。米国大使と接触する機会がございましたとき、その話が出ました。米国大使はこう申します。あれはまことにいろいろなことをまぜて記述をしておる。個人的なことや、いろいろなこと、あまり親切でない記述が多い。これはまことに遺憾千万である。遺憾千万であるけれども自分が新大使に谷氏を任命したいという内報を得たときに、直ちに国務省に忌憚ない意向を聞き合してみると、国務省はこの人ならば歓迎するという返事を得たので、自分外務大臣にそのことを通報したのであって、その新聞記事自分は特に取り寄せて今見てみたところだ。それによるとそういう記事がある。一方他の記事においては、東京における谷新大使演説、これは日米協会でした演説を非常にたくさん載せて、それを歓迎しておる。論説においても非常に歓迎をしておる。こういうことであるから、そういうことについて全然気にとめられないようにして、一つ従来の通り日米関係に一路邁進して働かれるようにワシントンでしたいものだと考えておる。これが国務省意向であるから、そういうふうに考えてもらいたい。こういう言い方でございます。私はたとい何でもああいうことをアメリカ新聞にどんどん書かれちゃ困るということを言った。それはそういう意味じゃないということをるる言っておりました。私もそれはそうであろうと考えます。従いまして実質をとりまして、さようなわけで今後日米関係に働いてもらう一人の適任者大使として派遣する、こういうことに御承知を願ってよかろうかと考えます。しかしいろいろなそういうようなことはむろん注意をいたさなければなりません。そこで今御注意のあった点は十分に新大使にも伝えまして、そうして遺憾なきを期したい、こういうふうに考えます。
  25. 前尾繁三郎

  26. 高岡大輔

    高岡委員 一月四日でありますか、大臣が御郷里へお帰りになるときに新聞記者に、アジア諸国との友好関係を増進し、経済外交を推進する、それからもう一つは、二つの中国の問題、これがことしの外交の焦点になる、こういうお話があったのでありますが、私はこれはほんとうにごもっともといいましょうか、私から言わせれば、非常に喜ばしい日本外交方針考え方、こう思っております。ところがアジアというものは、大臣よく御承知のように、非常に極端に言いますと、麻のごとくに乱れているということが言えるかと思うのであります。簡単に申しますれば、例の英連邦会議を基礎として、そこから生まれたとでもいいましょうか、コロンボ案というものがございます。これは私は非常に言葉が悪いと思うのでございますけれども経済的英帝国の再編成という意味がこの中に多分に現われていると思います。ところが一方アメリカの方はいろいろな手を使ってアジアに伸びようとしております。これに対して英本国は必ずしもよい考え方をしていないような面もあります。同時にそれぞれの国によってみな違うとでもいいましょうか、パキスタンは、御承知のように、アメリカからMSAの援助を受けております。またセイロンあたりは、中共セイロンのゴムをほとんど買うという意味もございましょうけれどもアメリカ援助は全然受け入れないといったように、各国ばらばらではありますけれども、一応アメリカアジアの方へ出ていこうとしておる。これに対して、先日の新聞等が報じておりますように、ソ連では、ブルガーニン、フルシチョフが来られていろいろな呼びかけをしておる。しかも国が国でありますので、時間的に非常にスピーディであるということがいわれます。先日三木氏が東南アジアへ行かれましたときの話でも、ビルマに対して話し合いをして、技術援助をしようという約束をすると、一カ月たたないうちに技術者がどんどん乗り込んできてしまうというように、非常にスピーディに物事を運んでおる。こういうことを考えていきますと、東南アジア一帯にはいろいろの角度から、いろいろな力が入ってきておって、今のはやり言葉で言いますれば、経済的冷戦は、米ソ冷戦とでもいいましょうか、自由、共産冷戦東南アジアで経済的に今非常に戦わされておるということが、言えるかと思うのであります。その際に、さきに大臣は、アジア経済外交を推進しなくてはならない、こうおっしゃるのでありますし、またその意味でもありましょう、過般東南アジアにおける公館長会議を開かれて、いろいろと意見を聴取なさったのだろうと思うのでありますけれども、一体そのときの結論とでもいいましょうか、どういう形で今後日本は、東南アジアとでもいいましょうか、アジア金城にわたって経済外交を推進されるつもりでございましょうかその点をお伺いしたいと思うのであります。  なお時間がございませんので、つけ加えて申し上げますが、バンドンで行われたAA会議には高碕国務大臣が出席されておりますし、またシンガポールで行われましたコロンボ会議には石橋、松田両大臣が出席しておられ、また最近のバンガロールでありましたエカフェにはインド駐在吉沢大使が出席せられたといったようなことで、それらはばらばらの形のものではございますけれども日本の、筋の通ったといいましょうか、そういう経済外交は、どういう形で今後推進されるのか、この点をちょっとお伺いいたします。
  27. 重光葵

    重光国務大臣 御質問の範囲が非常に大きな範囲でございます。イギリスのコロンボ・プラン、アメリカ援助計画というようなものは、むろん英米は英米としておのおの自国のために有利であることを考えるのは当然のことでございます。当然のことでございますが、それにしてもたとえばコロンボ・プランというものは何も排他的のプランでないということははっきりしておりますし、そういうものに参加をして、そうしてやっぱり東南アジアの開発から日本との経済関係を密接にするという・そういう政策を遂行する助けになるということはこれは言い得るのであります。またそうなるのでありますから、喜んでこれに参加をしてできるだけのことはやろう・こういうことにいたしておるのであります。アメリカもコロンボ・プランを奨励して——イギリスがやったものでありますけれども、これに参加をしていろいろやっておるのであります。こういうことでございますから、これは一般的の経済外交としては一つの有力な行き方であると考えてやったのでございます。さてそれでは経済外交ソ連はさようなスピーディなことをやっておる、これは非常に注目すべきことでございます。そこでこれは東南アジアだけではございません。ソ連の最近の動きは、これは米英側に非常に不安を起しておるということも先ほどちょっと申し上げたかと思いますが、そのソ連経済外交と申しますか、それは経済攻勢である。今あなたは経済冷戦が戦かはれておると申されましたが、同じ意味でありましょう、経済的の攻勢をやっておる、こう言っておるようでございます。さようなことでこんがらがってはきておるのでございますが、日本としてはどうしても東南アジアに対して経済的に関係を密接にしなければならぬという地位にあることは申すまでもございません。それは大体われわれの頭に考えておるのは、一般的の、国際的のやり方と、各国とに対するやり方との二つ考えて、しょっちゅうこれを相助け合うようにしてやろうと考えておるのでございます。  そこで一般的の、国際的の方法としては今お話がございました、たとえばバンドン会議コロンボ会議等はむろんのことでございますが、主として国際連合の機関をいろいろ利用し、またこれを通じて国際的にやっていこう、こういうことに相なります。エカフェの問題などは一番重要でございます。東京にもそういう種類の会合が催されます。これはけっこうでございます。そういうことで手を広げていきたい。それからガットの問題は——これはちょっととっさの間でございますから・一々私は秩序正しく日本の国際的の活動を今羅列することは、ちょっと漏れがございましょう、いろいろございます。  しかしそのほかに各国別の経済外交ということが非常に必要だと思います。それは、たとえば日本とフィリピンとの関係、これにはさっそく賠償問題でございます。それから日本とビルマとの関係、これも賠償が解決して、今賠償実施の形において経済関係が非常に密接になって進んで参っております。それから日本とタイとの関係、これもいろいろ問題がございますから、これも解決をして進んでいく、こういうことになります。日本とカンボジアの関係日本とヴェトナムとの関係、こういう各国との関係がございます。それがインドとの関係に及び、パキスタンとの関係というふうに・各国との関係を進めていきたい。それには通商航海条約もやらなければならぬし、貿易協定も結ばなければならぬ、賠償問題はむろんのこと、こういうことに相なります。中国との貿易関係は国際義務の範囲内においてできるだけ進めていきたい、こういう方針でもって進んで参っておるわけであります。だからこれはそういうことを進め、いくわけでございますが、それでは一々どこまでいっておるかということになりますと、これはまた各論になりますから、一般的なことにとどめておくことにいたしたいと思います。
  28. 高岡大輔

    高岡委員 大臣からそういうこまかい御説明をいただきますと、時間がなくなりますので、恐縮するのでありますが、私の申し上げましたことはコロンボ会議に参加していけという意味じゃございません。これはコロンボ計画に日本が参加して、そうして経済外交を推し進めようというならば、三千万円くらいのけちな金でなさるということはおかしいじゃないかということが一例として言えますし、それから今の問題に関連するのでありますけれども、かりに一つコロンボの例をとりますれば、セイロンの例をとりますれば、十七対一のそういう片貿易のようなことを調整するということももちろん大事なことでありましょうし、あるいは合弁会社をやるとかいろいろなことが考えられるのであります。けれどもそういう各論とでもいいましょうか、そういうことはいずれかの機会に譲ることにしまして、私の大臣にお聞きしたいことは、各国別それぞれ自国の経済五カ年計画なり六カ年計画というものを立てております。しかしそれと見合せて、日本のいわゆる経済計画というものを立てなくちゃいけない。過般経済審議庁で非常な作業をされました、いわゆる日本の経済五カ年計画というものを拝聴したことがございますけれども、これはただ日本国内だけの経済五カ年計画であって、アジアを含めた今後の日本の経済五カ年計画というものは立ててないような気がするのであります。その点をお伺いするのでありまして、一例を申し上げますと、最近この委員会にかかりますアメリカの余剰農産物ということがありますけれども、私は近い将来にはアジアにおける米の余剰農産物ということが出てくるのじゃないだろうかと思う。そういうアジアの米に関する余剰農産物という声が大きく出てきた場合に、一体日本の経済政策というものはどうするんだ、日本の農村はどうするんだというところから、アジア的な規模において日本の経済計画を立て、その線に沿った外交を進めませんと、これが途中でいろいろのことで混乱するといいましょうか、ばらばら経済外交になるのじゃないか。もちろん大臣のおっしゃったように各国それぞれ違っておりますから、各国ごとに違った形ではございましょうけれども一つのものの考え方日本を中心とした日本のいわゆる経済外交というものが当然打ち立てられなくちゃいけないということなのであります。  それで時間がありませんから結論的とでもいいましょうか、一つ大臣アジアの外相会議を提唱されまして、ほんとうにアジア一つになって、アジア一つだという言葉通りアジアがともに栄えていくというためには、一つ大臣アジアの外相会議を提唱せられまして、真剣にアジアの経済開発、経済復興ということをお考えになるかどうか、そういう御構想を今後お持ちをいただけるかどうかということをお伺いしたいのであります。
  29. 重光葵

    重光国務大臣 それは私は御趣旨はよく伺って、一つ将来の参考にいたしたいと思います。私も御趣旨には大体異論はございません。しかしながらアジアの経済がアジアだけで、すべてアジアに閉じこもってやっていくという考え方は、今そういうことを言われたわけではございませんけれども、そうは考えません。世界の経済の一部分として大きく取り扱わなければならぬように考えます。それだけのことを申し上げまして、私もそういう機会がありますならば十分そういうことを考えたいと思います。
  30. 高岡大輔

    高岡委員 最後に一つ申し上げますが、私どもは去年ずっと東南アジアを回ったのでありますが、そのときに、各国にそれぞれの問題があり、またお互い同士の間にもいろいろ問題があるにもかかわらず、なかなかこれは解決するには時間がかかるだろうから、われわれで近道を選ぶという意味で、東南アジアの議員会議をやろうじゃないかということを言いましたら、各国とも非常な賛成なんであります。これは別にこっちがプロポーズしたわけでもなくサウンドしたというところまでも参ってはおりませんけれども、そういう各国の気持からしまして・この際日本外務大臣が一奮発されまして外相会議を提唱していただきたいと思うのでございます。もちろん私はアジアに閉じこもって、アジアだけで日本がどうこうという考えは毛頭ございませんけれども、そうしてアジアが貧困から救われていくということがほんとうに世界平和を祈念するもとなのだ、こういう考え方から大臣の御意見を伺っておくのであります。
  31. 重光葵

    重光国務大臣 御意見は十分拝聴いたします。
  32. 前尾繁三郎

    前尾委員長 岡田春夫君。
  33. 岡田春夫

    ○岡田委員 二、三お伺いしたいのですが、最初の問題は、先ほど松本七郎君から御質問があって明らかに取り消された問題なんですけれども、在留邦人の問題炉未解決になっているのはいまだ中国から返事がないのだ、こういう意味の御答弁があったように私は記憶しているのですが、外務大臣は今度は返事があったのだ、こういうことになるとこれは間違っていたのだということだけで済まされないことになつてくると思う。返事があったのならば一体これをどうするのだ、在留邦人の帰国の問題について向うからの正式の返事があった場合に、その問題についても北京において相談いたしましょう、北京にいらっしゃいということが具体的に出ているわけです。これについて一体日本外務大臣としてはどうするのか、返事のなかったというのは間違っておって考え違いであったということだけでは私は済まされないと思う。これに対してどうするのだということを一つ伺いたいと思います。
  34. 重光葵

    重光国務大臣 これは実際を明らかにしなければならぬのですが、在留邦人の問題は向うはすでに片づいているという立場をとっております。それについて触れておりません。向う国交の正常化をするために話をしようじゃないかと言うのでありますから、それはまだたびたびお答え申した通りその時期ではない、こういう態度日本側はとっておるわけでございます。
  35. 岡田春夫

    ○岡田委員 実は大臣のお考えがちょっと違うと私は思うのです。というのは向うの発表した声明書を読んでみても、「中日両国関係の正常化を促進し、かつ国際情勢が引き続き緩和するのに貢献するため中国政府は中日両国政府が両国の貿易問題、双方民間人の問題、両国人民相互の往来の問題、その他」云々、こういうことについて相談をいたしましょう、在留邦人の問題も「双方民間人の問題」といろ形の中で具体的に出ているわけです。貿易の問題も出ている。ここまで具体的な声明向うで出してきたとするならば、単に国交の回復の問題だけでなくて、この問題についてはどうするかということについて、日本政府態度を明らかにしなければならぬ。この問題について北京にいらっしゃいと向うで言っているのだから、これについてはわれわれとしてはこうしたいという申し入れをするのが、やはり日本政府態度でなければならぬと私は思う。それを記憶違いであったからということだけで、国交回復の問題だからおれは知らぬのだということでは話にならないと思うのです。時間があまりありませんから要点だけ申し上げますが、もう少し具体的な御答弁を願いたいと思います。
  36. 重光葵

    重光国務大臣 在留邦人の引き揚げの問題は、御承知通りに赤十字等の民間団体で交渉しておる従来の建前を維持しておるわけでございます。それはそれでいいし、またそれのみではなく、在留邦人の引き揚げの問題については人道問題であるからというので、外国と話をするのはいいと思います。その他の問題について特に政府の代表者を北京にやるという時期はまだ来ておらぬと私は思うのです。その問題については応じかねる、こういう態度を持続している次第であります。しかしそういう時期が来るかもしれません。
  37. 岡田春夫

    ○岡田委員 そのお話を伺うともう一つ伺いたくなります。と申しますのは、在留邦人の問題ならこの声明でけっこうだというお話ならば、この問題だけについても北京に日本政府の代表を派遣するお考えがあるという意味に解釈してもいいのか、こういう点を伺っておかなければならぬと思います。
  38. 重光葵

    重光国務大臣 それはゼネヴアで用事が達する、こういうふうに今のところは考えております。まだその内容を変えるところまでには参っておりません。
  39. 岡田春夫

    ○岡田委員 北京にやる考えはないというのですか。
  40. 重光葵

    重光国務大臣 今、そこまで考えていないと申し上げております。
  41. 岡田春夫

    ○岡田委員 それじゃ問題を少し変えますが、この間発表された防衛分担金削減に関する日米共同声明について伺いたいと思います。これによって昭和三十二年度、すなわち来年度以降の防衛分担金が自動的に削減されてゼロになるというような方式が決定されたわけですが、今後この方式が自動的に適用されていくということになるのでありますかどうでありますか。
  42. 重光葵

    重光国務大臣 この自動的というのは、将来こういう方式でやろうじゃないかということを取りきめました。来年やる場合には来年また協議をして合議を遂げなければなりません。その合議を遂げる場合にはこの方式でいこうじやないか、こういうことになるわけです。
  43. 岡田春夫

    ○岡田委員 そうすると来年以降の方式をここできめたと解釈してもいいわけですね。
  44. 重光葵

    重光国務大臣 ええ、方式はそうです。
  45. 岡田春夫

    ○岡田委員 そこで問題があるのです。共同声明の性格というものは、これは昨年の予算委員会で非常に問題になったことです。これは去年共同声明ができたと遂に、日付はあなた御存じでございましょうが、昨年の五月九日です。鳩山総理大臣重光外務大臣の町方が出て、その当時社会党の委員である今澄君その他からこの点についていろいろ追及があった。そして共同声明の性格というものは、政府の総合的な態度として最終的に鳩山総理大臣答弁しております。どういうように言っているかというと、ちょっと長くなりますけれども要点だけを申し上げますと、「鳩山内閣は本声明に政治責任を負います。他の内閣が政治的責任を尊重するかいなかは当該内閣が自主的に決定をするのであります。ただし鳩山内閣としては、本声明が将来も尊重されることはもとより希望するととろであります。次に、本声明は条約ではないのですから、いずれの内閣も法律的の責任のないことは、たびたび申した通りであります。」云々と言って、そのあとに重ねての質問に対して・総理大臣は今後の内閣は法律的な責任はございません、また政治的な責任もございまません、こういうように言っている、とすると、との共同声明の性格というものはどういうものになるか、さっきあなたは一般的な方式が自動的に適用される原則をきめたというようにお話になったのであるが、鳩山内閣が倒れて三十二年度において別な内閣ができた場合に、これを適用しようとしても、これは適用できない。共同声明の性格からいって、適用しようとしても、次の内閣がこういう方式はいやですといってしまえば、これは一片のほごになります。しかもこれを適用するんだとあなたがもしおっしゃるとすれば、これはもっと論議しなければならないが、憲法違反だと思う。なぜならば、今後の政府政策を制限することになってくるからです。そういう点について法律的な拘束をする・あるいは今後において拘束をするなら・国会の承認を得なければなりません。しかもこの共同声明自身も国会の承認を得なければならない、こういうことになってくるわけです。ですからこの点を明らかにしていただきたいということです。
  46. 重光葵

    重光国務大臣 今読み上げられた鳩山総理の回答は、昨年の共同声明関係することだと思います。しかし昨年の共同声明に関することであっても、共同声明の性質の問題については私は同じだと思います。そうですから・そういう工合に御解釈になって私は差しつかえないと思います。そこでこれは将来国家として拘束を受ける場合においては、これはむろん議会の協賛を得なければなりません。それは当然のことです。これは政府政策として共同声明を出したのでございます。それで政府がそういう意向を持っておるのだ、こういうふうになっておりますので・昨年のこの説明と同様に説明し得られることであります。
  47. 岡田春夫

    ○岡田委員 もう一点はっきりしておきますが、今後の拘束は来年度以降の拘束になる、その方式をここへ出している、この拘束自体は、拘束というものである限りにおいては、これはまず国会の承認を得なければならないじゃないかという点が第一点に出てくるわけです。そして第二の点としては、鳩山内閣が来年もあるのなら・これはまだいいでしょう。しかし違う内閣になった場合に、これをあえて拘束できるのだという、そういう法的な根拠は、さっきの鳩山総理大臣答弁からいえば、ないということになるのじゃないかということです。ですからそこの点を明らかにしていただかなければ、たとえば社会党の内閣が来年できて、これを適用するのはいやだという場合に、これは法的な拘束を受けるというのであるかどうか、この点をはっきりしてもらわなければならない。それならば来年以降のものをここへ書いてみても、それは意味がないということになる。そういうことです。
  48. 重光葵

    重光国務大臣 それは大体昨年の政府説明と同じでございます。そこで今政府外交交渉の結果こういう共同声明を発するということは、これは行政府の権限としてできることだと思います。これは政府政策意向をはっきりと表明しておるのでありますから、これは政府は当然のこととしてできる権限を持っております。そういう権限がなければ外交はできぬ。この内閣の権限として日本政府はこういう考えを持っておるのだということは言えると思います。しかしその声明それ自身が将来法律上の、条約上の拘束力がないということは、さっき申した通りであります。これは議会の協賛を得て、それを批准して初めて拘束力があるのであります。これはそのところまではいかないのです。そこで次の内閣を拘束するかどうかということですが、私は今日の内閣も日本の憲法上正規に成立したりっぱな内閣だと考えております。その日本の内閣が意思表示をしたことは、日本の意思として私は次の内閣も——これはどういう内閣が起ろうが十分考慮し、それを尊重することが私は当然の国家間のことだと思う。しかしこれは政策上の見解を言っておるのであります。政策上の見解を私は述べておるのであるから、それがために次の内閣をこれでもって拘束し得るとは考えておりません。それは次の内閣はさらに大きな見地からこれに反対する方針をとるということを決定されて、そうして米国側と交渉をされるということ、これは自由です。ただ私が今申す通りに、次の内閣がいかなる内閣であろうとも、私は国家的の外交問題は継続性を持たしていただきたいという私の考え方を表示することは、少しも差しつかえないと思います。そのときには社会党も十分深思熟慮されるだろうと思う。それを希望することは少しも差しっかえありません。
  49. 岡田春夫

    ○岡田委員 ですから私が言っているんです。あなたが期待し、希望することはあなたの自由です。しかしこれを取り入れるかどうかということは別問題です。そこでこのような将来の約束をここできめること自体がナンセンスになるわけだ。(「ナンセンスではない」と呼ぶ者あり)それがナンセンスであるかどうかは主観の問題になるから、一応別にしましょう。ともかくも効力がないことが明らかになっているということだけは重要な点なので、この点は確認をしておきたいと思うのです。次の内閣においても効力があるものではないという点が明らかになったらけっこうです。  最後に一点だけで終ります。先ほど高岡さんの質問に対して、経済外交の問題ですが、各論とかいろいろ話もあったけれども、一番大きな問題は、最近の東南アジアにおいて大きな情勢転換がある。具体的に申しますと、エジプトはソ同盟と原子力協定をやるようになった。パキスタンは経済援助を受けるようになった。あるいはセイロンは原子力の援助をしようとアメリカが言ってきたんだけれども、あの国の総理大臣はひもが付くのならやめます、このようにはっきり言っている。このようにアジア・アラブにおいては大きな外交政策における転換が出きている。これは見のがし得ないことである。そこで従来の日本政府がとってきたような、われわれから言うならアメリカ一辺倒の外交政策というものは、こういう情勢を通じて壁にぶつかってきている。この機会において日本外交政策の基本を転換せざるを得ない情勢になってきているんだと私は思う。特にあのバンドン会議においては平和五原則を日本側が修正して平和十原則という原則まで出している。こういうような平和十原則の立場が、具体的にはアジア・アラブの諸国においてどんどん取り入れられようとしている。それが実行されようとしている。そのときに日本の国だけが従来のような外交方針をとって、あなたのこの間の本会議外交政策演説にもあるように、アメリカとは、「国防についてのみならず、全面的に協力関係にあるのであります。」というようなことで、アメリカの従属政策をとっているということは、この際考えなければならないときに来ているのではないか。これは率直に私申し上げますが、アジアを基調とした新たなる転換——その基礎はバンドン会議において日本が提案をした平和十原則の立場に立って新たなる外交政策転換をやらなければならないと遂に来ていると私は考えるが、こういう問題について、基本的な問題だけでけっこうですが、外務大臣としてどのようにお考えになっているか、その点たけ伺って終ります。
  50. 重光葵

    重光国務大臣 さような根本的な御意見は、私はさらに詳細に伺いたいのでありますが……(岡田委員「時間がありません」と呼ぶ)時間がありませんから、私は今伺ったところだけではすぐ御返事を申し上げるわけにいきません。私の演説には今言われたようなところが確かにあります。しかし同時にあなたが新しい政策と言われるけれども、バンドン会議はもう昨年のことでございます。その十原則に持っていったことは、つまり日本政府考えによって持っていったわけでありますから、それに御賛成下さるのは非常にけっこうでございます。その通りにやっていくその精神が私の演説の中にも至るところに充満しておると思うのでございます。そこでそういう去年の政策でございますが、平和五原則といい十原則と申しますが、五原則というのは私から申し上げればあたかも共産諸国の宣伝的の言葉のように使われておるように見えて、これは誤解を起してはなはだ工合が悪いと実は考えております。それは十原則の方かいいと思います。(岡田委員「十原則でけっこうです」と呼ぶ)これはあくまでそれでいいと思います。そういう点については御議論と少しも変りはございません。しかしながらわれわれはアメリカに従属しておる外交、そんな安っぽい外交はやっておりません。(岡田委員「その安っぽい外交をやっているんだよ、やっているから言っているんだ」と呼ぶ)そんなことであったらば、そういうことはおそらく言葉の上のことでございます。私はその点においてもそこはあまり変りはないと思います。私は日本の独立自主の外交であくまで日本の将来をりっぱに築き上げていくようにしたい。外交の力で国際間に進出していかなければならないから、そういう意味で申しておるのであります。
  51. 前尾繁三郎

    前尾委員長 山本利嘉君。
  52. 山本利壽

    ○山本(利)委員 今外務大臣は、日ソ交渉及び日比賠償等について非常に御努力中でございまして、国民全部もその成り行きを注目しておるところでございますが、さらに重大な問題で国民が一日も早く解決を希望しておる問題は日韓交渉の問題であります。南朝鮮及び北朝鮮を込めての朝鮮人の帰還の問題及び南朝鮮に抑留されております日本の漁夫の引き取りの問題あるいは北朝鮮における在留邦人の帰還の問題等ずいぶんだくさんあるのでございますが、その基本としてはどうしても李承晩政権との円満な交渉がかければいけない。それが最も根幹に触れた問題であるということも国民は承知しておる。日韓交渉がなかなかうまく行われませんので、国民各方面においてそれぞれいろいろな努力が払われつつあるようであります。国民全体が国家の外交に関心を持ち努力するということは非常にけっこうなことでございまして、さらに二月十三日の毎日新聞には、毎日新聞社の渡瀬主筆によって李承晩に出されたところの書簡に対する返書が掲載されております。これによって李承晩の方では日韓交渉に対するところの基本的線をすっかり明確にいたしたので、彼らは正々堂々と外交をやろうとしておるように見える。李承晩が正々堂々の態度をとったからといって、あの返信に掲げられておることをわれわれは納得するものではありません。けれどもこの新聞によって全国民に向って知らされたことをもし政府当局が黙っておれば、国民の中にはこれを見て、なるほど李承晩の言うところももっともだと思いはしないかと私は懸念するのである。だからあらゆる際に、ことにこういう公けの席をかりて外務大臣からいろいろの点について御答弁をいただき、御意思の発表をいただくということは、私はまたけっこうなことであると思って今日質問に立った次第でございます。  私はあの返事を読んで納得しがたいことは、その要点では久保田発言を取り消せ、あるいは財産の請求権は放棄せよ、李承晩ラインは絶対に譲れないものである、こういうようなことを言っておる。しかも日韓交渉がうまくはかどらないということは、一に日本政府の不誠意にあるということを言っております。これも私どもとしては日本政府が不誠意であったとは考えないけれども、相手方に不誠意であったと感じさせたということは残念であると思う。向うのいうこの三つの問題を認めることがすなわち日本側の誠意の披瀝であるというふうにも書いておる。これはまことに勝手なことであると思います。これでは全市韓国の言うことに降伏してこいということである。向うの言うことは百パーセント言っておいて、それを全部認めなければ日本側には誠意がないということは、私は外交上まことにおかしいことであると思いますから、その点について私がおかしいと思う点について御質問いたすのでございますが、この久保田声明というものは、昭和二十八年十月十五日の日韓会談請求権部会で、韓国側が日本の朝鮮統治三十六年間の賠償要求をするということを申し出たので、わが久保田全権は、三十六年間の悪い面のみを言うならば、日本の朝鮮経済力培養の事実を指摘せざるを得ないと言ったことが骨子のように思うのでありますが、そうでありますかどうか、その点をまずお伺いいたします。
  53. 中川融

    中川(融)政府委員 御説明いたします。その点はその通りでございます。
  54. 山本利壽

    ○山本(利)委員 そうすれば・現段階において李承晩が久保田発言を取り消せよと言うからには、かの方においても日本の朝鮮統治三十六年間の賠償要求はしないということを言って、自分の方でも賠償要求はしないから久保田発言は取り消せというのであるかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  55. 中川融

    中川(融)政府委員 その問題は経緯が非常に長いのでありますが、かいつまんで申しますれば、財産権の問題に関連して日本側が、韓国にある日本の財産というものは、平和条約の規定だけで当然になくなったということは言えないという主張をしていたのでありますが、それに対応しまして日本がそういうことを言うなら韓国側でも言い分がある、つまり四十年間の日本の圧制に対して補償を要求しなければいけないということを言い出したわけであります。そこから今のお話が始まるわけでありますが、そう悪いことばかりじゃなかったじゃないかということを久保田全権がそれに対する反駁として言ったのが実情でございます。従って韓国側は日本から賠償を要求するということをまだ正式に言い出しているわけではないのであります。従って決して韓国側はそういうことまで言い出すことはないであろうと考えております。それは平和条約には書いてありませんから、そこまでの権利はないわけであります。
  56. 山本利壽

    ○山本(利)委員 それではこの会談において、単にその雰囲気の問題として久保田声明は取り消せというのであるか、あるいは同時にその次に来るところの財産請求権というものも放棄させようということを、久保田発言の取り消しによって得ようとするのであるか、これに対する当局の見解はどうでありましょうか。
  57. 中川融

    中川(融)政府委員 向うが、わが方の代表の発言を撤回せよと言っておりますことは、実質についてまで特に入って、これによって決定しようという趣旨ではないとわれわれは理解いたしております。あの会議の席上での久保田代表の発言は、これは相当長い向うとの応酬でありますから・いろいろな議論があったわけでありますが、先方はそのうち久保田代表の発言の数点を取り上げまして、それを個条書きにして、これが久保田発言なりと主張しまして・その発言を取り消せということを言っておるのでありまして、内容までさかのぼってどうこうということでは、必ずしもないと私は思っております。
  58. 山本利壽

    ○山本(利)委員 それではただいまの御説明を基本として、外務大臣は、久保田発言は、まだこの段階では取り消す必要はないと考えられるか、あるいは日韓交渉がいよいよ始まる場合には、この発言は内容に触れないものであるから、取り消してもよろしいと考えられるか、お差しつかえがなければ御答弁を願いたい。
  59. 重光葵

    重光国務大臣 私は、日韓交渉は全面的に再開するように持っていきたいと思います。従いまして全面的に・すべての問題がその交渉によって解決するように持っていきたい、こう考えておるのでございます。しかしながら今質問応答でわかります通りに、久保田発言というものはいかにも空気を悪くしておる。だからこれが全面的の交渉再開に支障を来たすということなら、これは取り消して差しつかえないと私は思います。さようなことで空気を少しでもよくして、そうして全面的の交渉再開に進んでいきたい、こう思うのでございます。
  60. 山本利壽

    ○山本(利)委員 第二点の財産の請求権に関する問題でありますが、私有財産の尊重ということは、国際法上の原則でございます。韓国における日本人の財産に対する請求権を考える場合におきまして、これはサンフランシスコの平和条約における第四条の(a)項を基本として考えるならば、日本と韓国とが、この問題について話し合ってきめるということにあるようであります。また(b)項によるならば、日本または韓国にあるところの、合衆国軍政府により、またはその指令に従って行われた日本国及びその国民の財産の処理の効力を日本国は承認する、ということになっております。だからこの第四条の効力は(a)項と(b)項とを比較するときに、どちらが優先すべきものであるかということを、まずお伺いいたしたいと考えます。
  61. 下田武三

    ○下田政府委員 第四条の、御指摘の(a)項と(b)項の関係につきましては、(a)項も財産の処理の取りきめの際に、やはり入ってくる問題である。つまり(b)項は、もうすべてあれで解決しておるのだ、従って(b)項以外のものだけについて取りきめをしていいという趣旨ではないというように解しております。
  62. 山本利壽

    ○山本(利)委員 それでは、もしもサンフランシスコ条約を基本にして、日本及び韓国がこの財産請求権に関する問題を考える場合においても、韓国の方では、韓国に駐留しておった米軍の指令によって日本人の財産を全部処理したのであるから、これは没収したものと同様であるから、もう日本が請求する権利はないといっても、国際法的に申しまして、これは一たびは議題に上げて、お互いが話し合うべき筋合いのもののように、今の解釈では考えます。それでこの請求権の問題について考えるときに、韓国はあのサンフランシスコ条約には加盟していないのである。日本とこのサンフランシスコ条約に加盟したところの諸国の間においては、この第四条というものは正式に適用されるけれども、韓国はあの平和条約に向っては参加していなかったのであるから、全然この問題とは離れて、日本は韓国と交渉する場合に請求権の話し合いはすべきものであると考えるが、その点についてどう思われますか。
  63. 下田武三

    ○下田政府委員 御承知のように、平和条約のあとの方の第二十一条に、韓国は桑港条約の当耳国ではないけれども、ある規定の利益に均霑するという規定がございます。御指摘の第四条は、まさにこの列挙されている条項の一部になっておりまして、朝鮮は第四条の利益を受ける権利を有する、そういう規定がございます。
  64. 前尾繁三郎

    前尾委員長 山本君、もう時間ですからそのつむりで…。
  65. 山本利壽

    ○山本(利)委員 それでは簡潔にいたしまして先を急ぎますが、この請求権の問題については、法的にいって、かりに日本が請求しても、私は違法ではないというふうに考えるのでありますが、韓国がさらにおそれていることは、これも毎日新聞に現われたところでございますが、韓国側は、日本が韓国財産の八五%を求めているから、このことは韓国にとっては非常に因ることであるというふうに言っているようでありますが、日本が要求するのは、韓国の財産の八五%と彼らは思うているのであるか、日本が当然請求権を持っている、在韓日本人財産と私企業の財産の八五%を要求しているのであるか、その点についての見解を条約局長あるいはアジア局長からお答え願って、外務大臣からお答えを願たいことは、韓国側は、日本が誠意を示したならば日韓交渉をやろうというけれども、今のように、国際法的に権利のあることを、会談の席上においていろいろ折衝の結果、どの程度の請求をするか、あるいは他のものとからませてこれを請求するか、それは会談の席上に譲るべきであって、この日韓会談を早く開いてもらいたいために、この請求権というものを最初から放棄してかかるべきではないと考えるが、外務大臣はどういうふうにお考えになるか。そうして李承晩ラインというものは、最小限度のものであると言っているけれども、これはわが国の、ことに日本海沿岸の漁民の生命線でありますから、これも全部日韓会談をするその条項には入りましょうけれども、決して全部向うからの言う通り——李承晩ラインは彼らは平和ラインと言っておりますが、これを認めて交渉に入るべきではない。この財産請求権の問題及びこの李承晩ラインの問題等は、今後における日韓会談の重要なる内容をなすものであるように考えるが、外務大臣はどう思われるか、その点についての御答弁をいただきたい。
  66. 重光葵

    重光国務大臣 私も全く同じように考えております。
  67. 中川融

    中川(融)政府委員 第一点の、八割五分の財産を日本が請求をしているという点でございますが、こういうことを日本が言ったことは一ぺんもないのであります。日本が会談で申しましたことは、平和条約第四条(b)、によっても、このまま日本が財産を失ったという解釈にはならないじゃないか、少くとも全然保障なしに財産が奪われたという解釈にはならないじゃないかということを指摘したわけでありますが、それを韓国側は反対したのであります。それだけでありまして、日本側は幾らの財産を返せというようなことを言ったことはないのであります。八割五分という数字はおそらく先方が何らかの資料で言ったのだと思いますが、全然われわれは心当りがないのであります。かつて会談の過程におきまして、日本代表から、八割五分というようなことを言われるが、どういう根拠に基くのかということを指摘したことがたしかあったのであります。それに対して的確な返事はなかったのであります。
  68. 前尾繁三郎

  69. 穗積七郎

    穗積委員 時間がありませんので、先ほど松本、岡田両君からお尋ねしましたことについて、少し具体的に立ち入って外務大臣にお尋ねしたいのですが、先ほど外務大臣みずからも言っておられるように、中共日本との外交関係というのは、日本外交問題の中で最も重要血問題であります。その中国が間接または直接に、昨年来日本政府に対して申し入れをした。これをあなたは、重要だと言っておられながら、忘れたということで、はなはだぶざまな発言をしておられるわけです。それに対する外務大臣としての責任はあくまでお尋ねしなければなりませんが、本日は責任問題は後に譲って、内容についてお尋ねいたします。こういう申し入れがあったのに対して外務大臣は、日本政府として文書または口頭をもって正式な機関を通じて御返事になるつもりであるのか、あるいはこの申し入れをそのまま受け入れるわけにはいかぬというので、黙殺されるつもりであるが、そのいずれであるかを最初にお尋ねいたしておきます。
  70. 重光葵

    重光国務大臣 そういう向うの申し入れに対してその都度返事はいたしておりますが、最後の申し入れに対しては、まだ返事をいたしておらないそうでございます。今後いたすつもりでございます。
  71. 穗積七郎

    穗積委員 いつごろどういう形式でなさるおつもりですか。
  72. 重光葵

    重光国務大臣 なるべく早く、従来の経路を追うて返事をするつもりでございます。
  73. 穗積七郎

    穗積委員 時間がありませんから、もう少し的確に、親切に答えていただきたい。従来の経路というのは田付総領事を通じ、沈総領事を通じて返事存するということですか。それは口頭または文書いずれでございますか、それをはっきりしていただきたい。
  74. 重光葵

    重光国務大臣 文書で来たものは文書でやります。
  75. 穗積七郎

    穗積委員 その御返事をなさる内容の御方針は何でありますか。
  76. 重光葵

    重光国務大臣 内容考え方は先ほど来たびたび繰り返して申した通りでございます。国交の調整のために人を派遣するということはまだ機が熟していないと考えます。そういう意味のことを言っておるのであります。
  77. 穗積七郎

    穗積委員 そうすると、さっき岡田君が指摘したように、向うの提案は国交正常化を目標とする、さらにそのトーンキグの内容については具体的に例示をしている。そこで、さっきのお答えでは、引き揚げ問題については、従合通りジュネーヴにおいて田付総領事を通じて話し合いをされるつもりである、こういう御方針でありますが、それが一点。次に貿易問題があります。貿易問題については、先ほど外務大臣が言われたように、今までアメリカに気がねをしてアジア外交または貿易問題について不熱心であった外務大臣も、日本の経済の行き詰まりや、また財界の要求、さらに西欧工業諸国のアジアに対する経済進出等を見て、これではいかぬというので、今年の正月になって初めて二つの中国を認める態度をとられた。すなわち、中華民国以外に中華人民共和国を認める、台湾政権のほかに北京政権の存在を認める、そういう談話を発表された。続いて一月十六日からアジアの在外公館長会議をやって、経済問題を促進するのだ、先ほどの御答弁の中にも、中国に対しては従来より貿易を積極的に促進するつもりだというお言葉がありましたが、この貿易については一体どういう御返事をなさるつもりなのか。向うの提案は具体的になっておりますよ。だから今までの答弁で、国交回復について話し合いもまだしない、次に引き揚げ問題についてはジュネーヴでやる。第三の貿易の問題については、向うの提案に対してどういう御返事をなさるつもりでありますか。
  78. 重光葵

    重光国務大臣 貿易の問題については、まだ政府間の話し合いをする域に達しないと思っております。民間の貿易の話し合いで目的を達する、こう思っております。
  79. 穗積七郎

    穗積委員 それではそういう方針でもってお返事をなさることで、返事のことはその程度にいたしまして、はなはだ不満な内容でございますが、続いてお尋ねいたします。実は貿易の問題につきましては、すでに御承知通り、昨年五月四日東京において第三次の貿易協定が結ばれました。そして昨年の交易額は、一昨年に比べますならば飛躍的な伸長をいたしております。これはかつて吉田総理が判断をし、また外務省当局が判断したような情勢と変って、中国側の需要というものは年を追うて増大し、幅も広くなってきております。そこで、今民間を通じて云々ということでございましたが、そうしますと、昨年行われました貿易協定…。  〔発言する者あり〕
  80. 前尾繁三郎

    前尾委員長 静粛に願います。
  81. 穗積七郎

    穗積委員 これは民間団体と向う政府との間で行なっておったのですが、期間が参ります。そうなると第四次の協定を結ばざるを得ない。第四次協定を切りかえて政府間の話し合いによって協定を和んでもらいたいという希望を持っているわけでありますが、政府がどうしても動かないということでありますならば、それならば、やむを得ず次善の策として民間がこの協定に臨まなければならないのだが、それに対して・何か言われたらやるではなくて、政府自身が積極的にやるというならば、この日中間の貿易については民間でやってもらうというならば具体的な構想を示していただきたい。政府はどういうことを希望しておられますか。どういうことに対して支持と理解を与えるつむりでありますか、具体的に示していただきたい。
  82. 重光葵

    重光国務大臣 私は貿易の問題を、今申す通り政府間で交渉をするにはまだ時期が熟していないということを申し上げました。これは繰り返す必要はございません。民間の話し合いにまかせるがよかろうと思います。これは従来でも例があるのであります。それからまた、民間の話し合いによって政府立場を傷つけると言ってはおかしゅうございますけれども、コンプロマイズせずしてやることができる方法があると思っております。さような方法によってやりたいと思っております。
  83. 穗積七郎

    穗積委員 具体的に言って下さい。方法はいかなる方法ですか。
  84. 重光葵

    重光国務大臣 具体的とはどういうことですか。だれとだれとどうやるということですか。そんなことは私は考えていません。
  85. 穗積七郎

    穗積委員 この際伺っておく第一に形式並びに内容について伺いますが、形式は、御承知通り、昨年は貿易促進議員連盟、これは各党派を超越して入って、調印も各党の常任理事の諸君が全部しております、それからもう一つは民間財界の機関として貿易促進協会、この二つの団体が当事者となって実は調印しております。昨年一年の間に情勢の変りましたのは、昨年の国会で通りました輸出入組合法によって輸出入組合ができておる。これはもとより政府機関ではありませんが、法律によってできました公的な性格を持ったものでございます。もし政府が直接向うと話し合いをしないということになれば、そうなると、われわれの常識からいけば、昨年調印いたしました二つの団体に昨年からできました輸出入組合が参加して、三団体による調印以外にはない、こういうふうに考えるわけですが、これに対して外務大臣の御所見はいかがでございますか。
  86. 重光葵

    重光国務大臣 私は今その一々についてお答えするだけ検討をいたしておりません。検討いたして後に御返事をいたすことにいたします。
  87. 穗積七郎

    穗積委員 続いて内容についてお尋ねいたします。よく聞いておいて下さい。昨年実は協定を結ぶときに、向う側の政府は民間との協定では、第一、第二次の協定の実績の経験から見て、どうもこれは協定にならない。すなわち日本側が多くその協定を実行しないのでこれが進まない。そこで何らかの形で政府がこれに理解と協力をする形式がほしいというので鳩山総理の手紙が出て、内容を見た上でこれに支持と協力を与えますということでやった。そしてわれわれはすぐこの委員会、他の委員会等において、これに対していかなることをやるのだということで、あの協定内容について具体的に一つ一つ実は意見を聞いたのですが、さっぱり進んでいない。ただかすかに進みましたのは、両国間で開く見本市が昨年の暮れまでにやっと中国側の見本市が済んだだけであって、そのほかの貿易代表部の設置の問題、または決済協定の問題、ココムに関する問題等々重要な問題はほとんど未解決、というよりは政府のサボタージュ、さらにわれわれに言わせるならば、ある意味において政府の消極的なる妨害によってこれが進まなかった、こういう実情にあるわけです。あなたは、形式としては政府間で協定を結ぶわけにはいかぬ、しかし民間団体が結んでこれを促進することについてはわれわれは賛成だ、しかも政府は日中貿易については積極的に進めることを考えておる、積極的な態度を示しておるということを言明された。そうしておいて、この内容において、昨年からの実績を見れば、ああいう約束を行われたにかかわらず、なおかつそれが実行されておらぬのですから、そこでわれわれは心配するわけです。あなた方は、そういうことを言われながらさっぱり実行されないわけですから、ことしはその民間の協定に対して、事前にわれわれは一つ政府意見を聞いてやっていきたいと思うが、政府はこれに対して昨年の実績を顧みながら、そして第四次協定については具体的にお考えがあろうと思うが、一体政府はどういう協力の形式をおとりになるつもりであるか、そのことを伺っておきたい。
  88. 重光葵

    重光国務大臣 いろいろな具体的のこまかい問題については、十分検討した上でお話しないと、またこれについて行き違いが起ってはいけませんから、そういうことにさしていただきたいと思います。しかし私は一般的の問題として、昨年あたり協定がございまして、政府のできる限りにおいてその協定も生かしていきたいということは、申し上げもいたしましたし、その協力はいたしたつもりでございますが、今言われてるように、政府がそういうことを言いながらサボタージュをしているというのは、これは私からはっきり申し上げますが、事実に反することです。(穗積委員「事実です」と呼ぶ)あなたはそう思われますが、事実に反するということを申し上げます。今言われた通りに…(穗積委員「それではそれははっきり来年から実行して下さい」と呼ぶ)私に言わして下さい。こういう民間の協定をすることは、政府が実行し得る範囲内の協定をしてもらわなければ、政府は実行できません。だからたとえば通商代表部を両方とも設けて、これに外交官の特権を与えるということを民間で協定したって、政府がこれを実行することはできません。そういう政府の実行できない……(穗積委員「鳩山さんはその内容を見てから手紙を出した」と呼ぶ)その問題については、そのときいろいろいきさつがありまして……(穗積委員「いきさつのあるなしは問題でない」と呼ぶ)政府のできないことをやれといったってできません。(「それは政府がやったらいい」と呼ぶ者あり)それは政府がやればいいと言っても、政府がやるべきじゃないと私は思います。
  89. 前尾繁三郎

    前尾委員長 私語を禁じます。
  90. 重光葵

    重光国務大臣 だからたとえばココムの制限の範囲内においてやるのだ、こう言っておるわけです。それから実はココムの制限の範囲内でもいろいろやり方があって・これは相当に伸びる現に伸びておるのだから、あなたのお話通り……(穗積委員「あなたの力じゃありませんよ」と呼ぶ)私の力もあります。
  91. 前尾繁三郎

    前尾委員長 穂積君、時間が超過しております。
  92. 穗積七郎

    穗積委員 はなはだ大事な問題でありますので、私は昨年からの実情を具体的に申し上げて、さらに具体的にお尋ねしたいと思ったが、時間がないから、はなはだ遺憾ですが、次の機会に譲って、最後に一問だけお尋ねいたします。  向う側からの正式な文書による申し入れの中で、両国人民の往来の問題があります。ところでこれに関連して、実はあなたにきょう具体的にお尋ねしておきたいのは、外交関係立場から御感想を伺いたいのは、実は出入国管理の中にある指紋の問題です。これは私が申すまでもなく、アメリカが東洋の実情も考えないで、日本の国民の自主的な感情も尊重しないで、押しつけて作らした悪法でございます。そこであの問題があるために、両国人民の往来の上に非常に障害になってきておることは御承知通り。そこでわれわれがこの問題について具体的な事実が起きましたときに、外務省または法務省さらに与党の議員諸君に陳情をいたしますと、すべての人が言うことは、これは実はアメリカ日本の実情を知らざる結果生まれた落し子であって、こういうものがあるからしようがないのだ、こんなものは無用の長物、有害無益であるというような感想を述べられた。そこでわれわれは、両国人民の文化、経済促進のために必要である往来のためでございますから、こういう悪法はぜひ条文を削除するような改正をすべきだというふうに感ずるのだが、これは所管は法務省でありますが、あなたは両国外交の交流の立場から見て、これに対しての御所感はどうでございますか。御賛成になりますか、反対であるのか、アメリカに伺い立てなければわからないというのか、その三つのいずれかをはっきりお答えをいただきたいと思います。
  93. 重光葵

    重光国務大臣 私はそういう法律がある以上——あなた方が議会でこしらえたのだから、ある以上は守ったらいい、こう考えます。しかし変えたらいいではないか、廃したらいいじゃないかという大局的見地からのお話がございました。その御趣旨には私も共鳴申し上げます。指紋の問題は、何でも最近はイーデンがアメリカに行ったときも問題になったらしいが、アメリカは各国といいますか、一般的にやっておるようであります。それでありますから、やはりそういうことから引いておるのかと思いますけれども、そういうことでアメリカ追随だとか、アメリカに伺うというようなことは、そういうことは関係ないのではありませんか。
  94. 穗積七郎

    穗積委員 外務大臣は改正に御賛成でございますか。
  95. 重光葵

    重光国務大臣 今申し上げた通りでございます。
  96. 前尾繁三郎

    前尾委員長 大臣は一時から本会議で憲法調査会法案の答弁をされなければなりませんので、あとの方もできるだけ短かい時間でやっていただきたいと思います。大橋忠一君。
  97. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 さきにソ連が、日本がサケ、マスを乱獲するから、その取締りをするということを、いろいろ漁業の方に言ってきました。これがどういう意味でなされたかについては論議がありますけれども日本の水産界においては、いよいよ日ソ交渉が妥結せぬ場合には、北洋漁業をとめてしまうというようなおそれがあり、水産株が暴落をいたしましたことは、御承知通りであります。もしソ連が万が一、そういうようなことをやるということになりますと、これは一種の威嚇であります。平和友好の関係を結ぼうと努力しているときに、威嚇の切先をちょっぴりでも出すということは、まじめに何とかしてまとめようとするわれわれにとっては、まことに不愉快なことであります。万が一彼らがいよいよほこ先を全面的に出してくるような場合においては、わが国の公海漁業の最も重大な点に打撃を与えるものでありまして、わが方としてはとうてい忍ぶことのできない問題であることは言うまでもないのであります。しかし深謀遠慮のソビエトはもしそういうようなことをやれば、ますます日本アメリカの方に追いやって、彼らが庶幾すると逆の効果を来たす、つまり交渉を妥結して、少しでも日本自分の方に引っぱろうとするとは、逆の方向に行くことは彼らはよく知っておるのです。まさかそういうようなことはしないだろう。ただ切先を出しただけでとどまるだろうとは思いますが、しかし変幻きわまりないソ連のことだから、いかなる態度に出てくるかわかりません。これがもしいよいよ威嚇の正体を出すというような場合に、一体政府はいかなる措置をとろうとするのでありますか。もしもこの威嚇に屈するというならば、私は日本が赤くなってソ連圏に入るまでこの威嚇の道具を使うだろうと思う。従ってわれわれは断じてこの威嚇というものに屈することができないということを、何らかの方法で断固として声明される必要があると思うのでありますが、この一点を伺います。
  98. 重光葵

    重光国務大臣 北洋漁業の問題についてソ連がいろいろ言っておることは承知をいたしております。しかしながら実際それがどういう意向を持って、もしくはどういう意図を持ってやっておるかということは、私には今想像することができません。いろいろなことを想像しなければなりますまいが、今想像することはできません。私はソ連意向がもし日本への威嚇であるとするならばそれは的はずれだと思います。日本の正当なる主張、公海における漁業、また魚族の保護というようなことについても日本は考慮しょう、こういう公正な態度は必ず十分にこれを、聞かなければならぬことになるだろう、と私は確信しております。威嚇であるとしてもそれは的はずれだと思います。日本はあくまでも公正なる、世界のどこへ行っても通るこの主張を持って進んでいきたい。またそういう方針でやっておるわけでございます。
  99. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 魚族の保護のために日ソの間に話し合いということはむろん私は必要になると思います。むろんわずかに七千万尾くらいとったところで、魚族が減ったなどというソ連の言い分は承知できないのであります。しかしながら魚族の保護ということについては現にカナダやアメリカとの間においてもやっておるのであります。ソ連とも当然やらなくちやならぬ問題ではあると思いますが、松本全権がロンドンにおいて最も重大な領土問題の提案をなして、会議がまさに最高潮に達せんとするあの時期を見計らって、ああいう放送をモスクワからするということは、これは私は威嚇でないととるわけにはいかないのでありますが、最もそういうことに敏感な日本の水産界が驚きまして、水産株が下落した、これは私は当然のことだろうと思うのであります。時期が悪いのです。威嚇ととられるようなときにあれをやったところに、われわれは非常に遺憾に感ずるのであります。この点について、ロンドンの代表部を通して先方の意向を突きとめた上で私は適当な措置をとられたいと思うのでありますが、いかがでございますか。
  100. 重光葵

    重光国務大臣 御意見のあるところは十分交渉上に資したい、こう考えます。漁業問題は御承知通りロンドン交渉一つの重要な項目でございます。そのことについても漸次話し合いが進むだろうと思いますが、そのときには北洋漁業の問題についても当然話出ることと思います。そういう場合において適当な措置をいたしたい、こういうふうにお答えをいたして御了承を得たいと思います。
  101. 前尾繁三郎

    前尾委員長 森島守人君。
  102. 森島守人

    ○森島委員 時間もありませんので、南千島の問題だけに限って御質問いたしたいと思います。南千島の問題が日ソ交渉の山になっておるということはある意味で言えると思います。政府の御意向は大体池田代議士に対する政務次官の答弁、それから大臣の国会の各所における御答弁で明らかになったと思いますが、私はその答弁は大体沿革的な理由と歴史的な理由をあげられたにとどまっておる、こういうふうに見ておるのであります。しかし南千島の帰属をはっきりさせるためには、私はサンフンシスコ講和条約当時の状況からいたしまして、地理的な関係並びに行政的な関係が大きな要素をなす、こう信じておりますが、その点に対する御見解をまず承わりたい。
  103. 重光葵

    重光国務大臣 私もその点は非常に共鳴申し上げるわけでございますが、地理的と行政的と言われるその意味をもう少し御解明いただければ一そうありがたいと存じます。
  104. 森島守人

    ○森島委員 それでは申し上げますが、講和会議のときにアメリカの全権はこう申しております。これは一九五一年九月五日の第二回総会におけるアメリカ代表の演説でございますが、この中で「第二条(C)に記載された千島列島という地理的名称が歯舞諸島を含むかどうかについて若干の質問がありましだ。歯舞を含まないというのが合衆国の見解であります。」こういうふうに地理的名称というものについてはっきり見解を明らかにしておる。なお私の調べましたところが誤まりでなければ、歯舞、色丹のうちの色丹諸島も明治十八年に千島国に包含されておる。これは行政的の関係であります。私はこれらの二点がサンフランシスコの講和会議において今の南千島を千島に包含するかいなかということを決定する重要な要素をなしておると確信しておるのでございますが、その点に対する大臣の御答弁を伺いたい。
  105. 重光葵

    重光国務大臣 私はさようなことも資料になると思います。ただそれは米国側の意見だと思いますが、米国側は千島列島の範囲については、サンフランシスコ条約ではっきりした決定をしたことはないとその後も申しております。それも参考になると思います。
  106. 森島守人

    ○森島委員 そこで今の御答弁ですが、これは条約局長がこの前お話しになったが、私はその点を明確にする必要があると思う。政府日ソ交渉を始めたときには、その点についてしっかりした確信を持っていたかどうか。これが重光さんが在米中に、事務当局から出された南千島を要求するという条項が、あなたのお留守中にロンドンヘ訓令が行ったゆえんだろうと思うのでございます。その点を明らかにするためには、米国側にお問い合せになった電報、それからその回答を文書でもって御提出を願いたいのでございます。この点に対する御見解を伺いたい。  〔「条約局長はこの前の吉田総理のときの資料もまだ出ていないよ」「南千島だけ返せと言ったところは一つもないよ」と呼び、その他発言する者あり〕
  107. 前尾繁三郎

    前尾委員長 私語を禁じます。静粛に願います。
  108. 森島守人

    ○森島委員 大臣の御答弁がないようでございますから、局長の御答弁を伺いたいと思います。資料の御提出を要求しておりますが、今まで御提出がありませんから出していただきたい。この交渉は口頭で行われたのですか・あるいは文書でもって行われたのか、この点もあわせてお願い申し上げます。
  109. 重光葵

    重光国務大臣 そういう点に対してはできるだけ資料を……。
  110. 下田武三

    ○下田政府委員 先日の岡田委員の御要求の資料は、本日用意しておりますからあとで……。なお森島委員のおっしゃいます往復電報は、これはやはり両方とも発表しない暗号を使った極秘電報でございますので、それを御提出することはできません。
  111. 森島守人

    ○森島委員 暗号電報でも、パラフレーズすれば発表してちっとも差しつかえないのです。私はそれくらいのことは知っております。しかしそれをしいて出せぬということなら、政府のお立場が非常に弱いということを内外に示すことです。その資料の前後を欠いてもよろしい。内容自身を欠いちゃ困りますけれども、パラフレーズしてお出し願いたい。この次に一つ頼みます。
  112. 重光葵

    重光国務大臣 御要求は私もごもっともだと思います。十分に御趣旨に沿いたいと思います。しかしそういう手続のためには、おそらくアメリカ側とも協議をしなければならぬと思います。そういうような手続を経た上でやらなければならぬことを御承知を願いたい。
  113. 森島守人

    ○森島委員 私は別にそういう手続をとる必要はないと思う。あなたは日ソ交渉が始まったときに・第一回の会議の経過を、松本全権とマリク全権の間でコミニュケ以外は公表しないという確約があったにもかかわらず、この委員会で即刻発表された。私はそれに比べれば非常に内容は軽微だと思う。ただその状況・いきさつを明らかにするにすぎないと思うから、これはアメリカ側に要求するまでもなく、外務大臣として当然国会に提出されるべきものだと私は考えます。
  114. 重光葵

    重光国務大臣 私はそんなことをしたことはございません。内容をすっかり発表したということはございません。私の言ったのはソ連の今日の主張は、サンフランシスコ条約の時代とあまり変りがないということを御説明をし上げました。
  115. 森島守人

    ○森島委員 それでは言葉に返すのに言葉になるようなので、私はその点は繰り返しませんが、松本全権が一番交渉中に困ったのは、外務大臣ソ連側の態度を一方的に発表したことだということを確言しておる。これは新聞にも出ております。私はこれ以上追及はいたしません。  次に御要求したいのは、条約局長はこの間吉田全権がサンフランシスコ会議のときに、いかにも保留をしたような御答弁をなさいましたが、吉田全権は絶対に保留はしておりません。演説の中で南千島が日本の領土であるという沿革的の理由は述べております。私の記憶が間違わないならば、ダレスは歯舞、色丹についてはこれを肯定しておりましたが、南千島については全然触れていないのです。そのほかに、いかに吉田さんが演説で言っても、これは言いっぱなしなんです。条約において効力を保持したいということがありますならば、正式に保留をされるのが至当だったと思うのです。要するに吉田さんはみずから進んでこれを放棄したと断定するほかないのでございます。私はその放棄したものを今ごろになって自民党の諸君がまた要求するなどということは筋が立たぬと思う。
  116. 下田武三

    ○下田政府委員 私は先日の委員会で吉田全権がその点について桑港条約の領土条項に関連して、択捉国後並びに歯舞、色丹の譲渡を拒んだというふうには申し上げません。ただ、公式の議事録にも書いてありますように、日本政府の見解を明確に述べておられるのであります。すなわち択捉国後につきましては、日本開国の当時、千島南部の二島、択捉国後両島が日本領であることについては帝政ロシアも何ら異議を差しはさまなかったのであります、ということをはっきり言っております。また色丹島と歯舞諸島につきましては、日本の本土たる北海道の一部を構成する色丹島及び歯舞諸島も終戦当時たまたま日本兵営が存在したためにソ連軍に占領されたままであります、ということを言っております。しこうして先般も申しましたように、クーリールというものの範囲については、米国も言っておりますように、連合国側の決定が行われていないわけであります。連合国側の決定が行われていないとすれば、桑港条約の席上吉田全権がこれだけのことをはっきり言われておれば、それは十分な資料としてわが方の主張の援用になると思います。
  117. 森島守人

    ○森島委員 これは非常に重要な資料なんですが、そのためにはクーリールの範囲が決定するのは、私は当時における日本の行政区域の関係、地理的の関係も大きなファクターになると思う。その意味において米国側との間に往復せられた電報の写し、それから平和会議における議事録を至急に御提出を願いたいと存ずるのであります。
  118. 前尾繁三郎

    前尾委員長 戸叶里子君。
  119. 戸叶里子

    戸叶委員 時間がないそうでございますから、私はこの次に質問したいと思うのですが、きょうはただ一点だけ確かめておきたいと思います。それはこの前の委員会でも問題になりましたけれども、先ごろ原水爆実験禁止の決議案が国会を通りました。それに対して重光外務大臣は一体どういうふうな手続をとられたかどうかということです。それを私が伺いますのは、共産党フルシチョフ第一書記演説の中にも・水爆実験禁止に対して同意する用意があるというようなことを述べております。それは何ら具体的なものは示しておりませんけれども、そういうふうな傾向になってきたときでございますから、この際日本としても原水爆実験禁止ということを強く打ち出していく一番適した国ではないかと思いますので、これをどういうふうに扱われたか、伺いたいのであります。
  120. 重光葵

    重光国務大臣 国会両院の決議は直ちにこれらの国——これらの国と申しますとソ連、米英政府に通達をして取り次いで、そして政府もこの趣旨を実現するようにしてもらいたいということで、向うに申し込みました。この決議は重要な決議でございますから、私は国際連合にすぐ突っ込んでおいた方がいいと思いまして、国際連合にもこれを持ち出しておきました。
  121. 戸叶里子

    戸叶委員 それはいいですけれども、国会で決議が通りましたあと、二月の十一日の新聞で、アメリカの方から原水爆実験に対しての問題をいろいろ通告するというようなことが新聞記事に出ておりましたので、これとどういうふうな関係があるかということを私懸念したのですが、この点はどうなっているか。そしてまたその決議に対して通告をした返事があったかどうか、伺いたい。
  122. 重光葵

    重光国務大臣 まだいずれからも返事はございません。ございませんが、今の十一日云々ということはこの決議には関係はないと思います。
  123. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、この二月十一日の発表というのは、おそらく先ごろ日本側から時日、場所、補償などの問題に対して申し入れたのに対する返答だと思うのですけれども、今後もしそういうことで具体的に返事をしてきた場合に、なお重光外務大臣としては実験禁止を決議したんだから、その線に沿うてほしいといろことを強く要望していただきたいと思いますが、この点はいかがでございましょうか。
  124. 重光葵

    重光国務大臣 その日本側の要望は絶えず押していきたいと考えております。
  125. 戸叶里子

    戸叶委員 先ほど中共の問題が出てきました。それについても私あとの時間に伺いたいと思いますが、ただ一点、近いうちにダレス氏が日本に来るようでございますが、中共を承認するに当って二つの大きな障害があると思います。その一つは、やはり日華条約と、そして道義的なものとはいえ、吉田、ダレス書簡というものがある程度重光さんなんかの頭の中にもおありになるのではないかと思います。そこで、中共はもう時間の問題として承認されていくと思いますが、この際ちょうどいいときですから、ダレス氏に対して、この書簡についてある程度取り消すといいますか、効のないようなものにするような、何らかそういった意思表示をする御意思があるかどうかを伺いたいのであります。
  126. 重光葵

    重光国務大臣 そういう意思表示を今ダレス氏に対してする時期ではないと私は考えます。従って意思表示をする意思はございません。しかし全部の問題につきましては——東亜の平和安定に関する全体の問題については十分に一つ意見を交換をしてみたい、こう考えております。
  127. 前尾繁三郎

    前尾委員長 次会は公報をもってお知らせいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時五十三分散会