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1956-02-15 第24回国会 衆議院 外務委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年二月十五日(水曜日)    午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 前尾繁三郎君    理事 石坂  繁君 理事 北澤 直吉君    理事 須磨彌吉郎君 理事 山本 利壽君    理事 穗積 七郎君 理事 松本 七郎君       伊東 隆治君    大橋 忠一君       菊池 義郎君    高岡 大輔君       並木 芳雄君    福田 篤泰君       松田竹千代君    戸叶 里子君       細迫 兼光君    和田 博雄君       岡田 春夫君  出席国務大臣         法 務 大 臣 牧野 良三君  出席政府委員         法務事務官         (入国管理局         長)      内田 藤雄君         外務政務次官  森下 國雄君         外務事務官         (大臣官房長) 島津 久大君         外務省参事官  法眼 晋作君         外務事務官         (アジア局長) 中川  融君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君         外務事務官         (国際協力局         長)      河崎 一郎君  委員外出席者         大蔵事務官         (理財局外債課         長)      森鼻 武芳君         郵 政 技 官         (大臣官房電気         通信監理官)  平山  温君         専  門  員 佐藤 敏人君     ————————————— 二月十五日  委員帆足計君辞任につき、その補欠として福田  昌子君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  外務公務員法の一部を改正する法律案内閣提  出第三五号)  日本国カンボディアとの間の友好条約批准  について承認を求めるの件(条約第二号)  航空業務に関する日本国フランスとの間の協  定の批准について承認を求めるの件(条約第三  号)  航空業務に関する日本国インドとの間の協定  の締結について承認を求めるの件(条約第四  号)  航空業務に関する日本国オーストラリア連邦  との間の協定締結について承認を求めるの件  (条約第五号)  国際民間航空条約改正に関する議定書(第四  十五条に関するもの)の批准について承認を求  めるの件(条約第六号)  国際民間航空条約改正に関する議定書(第四  十八条等に関するもの)の批准について承認を  求めるの件(条約第七号)  国際情勢等に関する件     —————————————
  2. 前尾繁三郎

    前尾委員長 これより会議を開きます。  外務公務員法の一部を改正する法律案日本国カンボディアとの間の友好条約批准について承認を求めるの件、航空業務に関する日本国フランスとの間の協定批准について承認を求めるの件、航空業務に関する日本国インドとの間の協定締結について承認を求めるの件、航空業務に関する、日本国オーストラリア連邦との間の協定締結について承認を求めるの件、国際民間航空条約改正に関する議定書(第四十五条に関するもの)の批准について承認を求めるの件、国際民間航空条約改正に関する議定書(第四十八条等に関するもの)の批准について承認を求めるの件、以上七件を一括議題といたします。政府側より提案理由説明を求めます。森下外務政務次官
  3. 森下國雄

    森下政府委員 外務公務員法の一部を改正する法律案提案理由及び内容説明いたします。  まず提案理由説明いたします。  現在国際慣行といたしまして、特派大使制度世界各国においてとられておるのであります。この特派大使は、外国における重要な儀式への参列その他臨時の重要な任務処理に当り、たとい当該国に常駐の大公使がある場合においても、別に本国から派遣されるのでありまして、当該国との親交関係増進等のため非常に有効な方法であります。しかして、この派遣の場合、特派大使称号を与え、信任状を携行させることは、この使節の使命と地位を重かつ大ならしめ、また、相手国に対する儀礼上も必須の場合が多く、これまた国際慣行上普通に行われている状況であります。  わが国におきましても、右のごとき外交上の目的に資するため、国際慣行に準拠して特派大使制度法律上明白に規定した方がよいと考えられますので、今般この外務公務員法改正法律案を提出する次第であります。  ここに規定される特派大使は、政府代表及び全権委員と類似の臨時特別職であり、従いまして、国会法第三十九条ただし書きの規定に基き、両院一致の議決により国会議員も任命されることができるのであります。また、この特派大使は、外国における重要な儀式参列する場合、天皇の認証ある信任状を携行し、もってその地位尊重相手国に対する儀礼の点につき間然するところがないよう考慮を加えた次第であります。  以上が提案理由説明であります。  次に本法律案内容につき説明いたします。  まず、外務公務員法第二条におきまして、特派大使称号及び定義を規定し、あわせて、特派大使顧問及び随員を随伴できる旨を規定しました。  次に第四条におきまして、特派大使並びにその顧問及び随員は、在任中国家公務員として、職務に専念する義務、上司に忠実なる義務名誉信用保持義務及び秘密を守る義務等を負う旨を規定しました。  次に、第八条におきまして特派大使並びにその顧問及び随員の任免は、外務大臣申し出により内閣が行う旨を規定し、あわせて、任務を終了したときは、解任される旨を明文で規定することとしました。  次に第九条におきまして、特派大使外国における重要な儀式への参列に際して携行する信任状天皇が認証する旨を規定しました。  最後に、附則におきまして、国家公務員法第二条に、特派大使並びにその顧問及び随員称号を追加する措置をとったほか、あわせて、特別職の給与に関する法律第一条第十六号を改正して、同法律中の大使及び公使は、特派大使を含まず、特命全権大使及び特命全権公使をさす旨を明定しました。  以上をもちまして、本法律案提案理由及び内容説明を終ります。  何とぞ但東御審議の上、すみやかに御採択あらんれことをお願いいたします。  次に日本国カンボジアとの間の友好条約批准について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  カンボジアは、一九四九年十一月八日のフランスカンボジア条約によって独立国地位を獲得して以来、終始一貫してわが国に対する友好的態度を示してきましたが、なかんずく、昭和二十九年十一月には対日賠償請求権を放棄することを声明し、また、昭和三十年十上月には桑港条約第十六条に基く連合国捕虜に対する戦争損害補償金同国取得分日本赤十字社に寄付する旨を申し入れ、その外交の基調が不変の親日政策にあることを内外に表明しました。わが国といたしましても、かかるカンボジアの好意に対し、できるだけ同国との協力関係を密接にし、ひいては東南アジア諸国との善隣外交に資すべく努力しておりましたが、たまたま、昨年十二月上旬シアヌーク総理大臣外務大臣を長とする同国親善使節団の来日の機会に、両国間の友好条約締結について両国政府間で話し合いが行われました結果、十二月九日東京において両国外務大臣の間で本条約署名が取り運ばれた次第であります。  本条約は、すでにわが国がアフガニスタンやイランとの間で締結しております修好条約と同様、両国間の友好関係を強化することを目的とし、平和の維持、主権、独立及び領土の尊重外交官及び領事官待遇等両国間の基本的関係に関する数カ条を設けておりますが、そのほか、特にカンボジアとの協力関係を密接にするため経済技術及び文化協力関係の強化、移住者に対する便宜供与等についての規定が挿入されております。  本条約は、両国間にすでに存在している協力関係を今後とも維持強化すべき根本原則を明らかにしたものであり、本条約に定められている趣旨に従って、今後経済技術文化移住等の諸問題について両国の間で交渉が行われ、その結果合意に達したところに基いて両国協力関係が具体化されていくならば、わが国にとって大なる利益をもたらされることが期待されます。  よって、ここに本条約批准について、御承認を求める次第であります。何とぞ慎重御審議の上、本件につきすみやかに御承認あらんことをお願いいたします。  さらに航空業務に関する日本国インドとの間の協定締結について承認を求めるの件、航空業務に関する日本国フランスとの間の協定批准について承認を求めるの件及び航空業務に関する日本国オーストラリア連邦との間の協定締結について承認を求めるの件について御説明申し上げます。  ただいま議題となりました航空業務に関する日本国インドとの間の協定締結について承認を求めるの件、航空業務に関する日本国フランスとの間の協定批准について承認を求めるの件及び航空業務に関する日本国オーストラリア連邦との間の協定締結について承認を求めるの件につきまして提案理由一括説明いたします。  政府は、サンフランシスコ平和条約第十三条及びインドとの平和条約第二条の規定に基き、フランスオーストラリア及びインドとの間に航空業務に関する協定締結のための交渉を行なって参りましたが、幸い意見の一致を見ましたので、昨年十一月二十六日にインドとの航空協定、本年一月十七日にフランスとの航空協定、同じく一月十九日にオーストラリアとの航空協定にそれぞれ署名をいたしました。  これらの協定は、さきに国会の御承認を得て締結いたしました日米日英日加等航空協定と同一の目的及び意義を有しておりまして、その内容にも大差はございません。インドフランスオーストラリアは、いずれも、サンフランシスコ平和条約及びインドとの平和条約の定めるところによりまして、これらの条約の発効後四年間、すなわち本年四月二十七日までわが国への乗り入れの権利を認められているのでありますが、これらの協定締結されますとその後はこれらの協定に基く権利に切りかえられ、また、わが国航空企業も双務的にかつ平等の条件でこれらの諸国へ乗り入れる権利を有することとなるわけであります。  よって、これらの協定の御承認を求める次第であります。何とぞ慎重御審議の上すみやかに御承認あらんことをお願いいたす次第であります。  さらにただいま議題となまりました国際民間航空条約改正に関する議定書二件について提案理由を御説明いたします。  この二つの議定書は、一九五四年に国際民間航空機関、すなわち、いわゆるICAOの第八回総会で採択されたものでありまして、その目的とするところは、ICAOの所在地を総会の決定によって一時的でなく他の場所に移すことができるようにすることと、ICAO総会開催回数を現在の毎年一回から少くとも三年に一回に改めようとすることであります。  これらの改正は、いずれも趣旨として望ましいものでありますから、わが国がこれに加入することは時宜に適したものと認められます。  以上の点を了察せられ、御審議の上すみやかに御承認あらんことを希望する次第であります。
  4. 前尾繁三郎

    前尾委員長 これにて提案理由説明は終りました。  ただいまの各件に関する質疑次会  に譲ることといたします。     —————————————
  5. 前尾繁三郎

    前尾委員長 次に国際情勢に関する件について質疑を許します。松田竹千代君。
  6. 松田竹千代

    松田(竹)委員 私は国際電気通信の点についてお伺いいたしたいと思います。特に日本と濠州との間における電気通信を直接行い得るようにしなければならぬと思いまするので、この点について外務当局にお伺いいたしたいのであります。  前世紀末から、いわゆる大英帝国は、その連邦諸国との間に、電気通信、特に世界海底電線の過半数をその支配下におさめて、これによって英連邦間の連絡を緊密にし、従ってこれによってますます連邦間の紐帯を強固にしようとする政策をとってきたかに思われるのであります。それはそれでまことにけっこうであるといたしまして、その結果第三国との通信の場合に、往々これがじゃまになるのみならず、非常な時間を要し、またそのために多くの不必要な費用第三国にかかってきているというのが現在の状態であります。いつまでもこの状態をこのままにしておくということは、世界経済関係を推し進め、ひいては世界の平和を促進するという点から考えてみましても、まことに遺憾なことであると考えるのでありまして、通信事業発達とともに、各独立国との間において、迅速に最も安く通信できるようにしていかなければならない。またそうすることが当然であると思われるのでありますが、この点について外務省では従来濠州と日本との間においての折衝についてどういうふうないきさつになっておりますか。郵政省におきましても従来何回か濠州政府交渉いたしまして、一回は向う通信会社と契約まで結んだのでありますが、これとても濠州の政府の反対するところとなって、実行ができないで済んで参っておるのであります。この点につきましては、本年秋にはメルボルンにおいてオリンピックが開催される。そうしますと直ちに非常に通信竜がふえる。これが現在のように香港中継通信しなければならぬというようなことでありましては、まことに不便なことであります。また非常に費用も多くかかる。現在でも年間約八千万円くらいの金を日本がこのためによけいドル払いをしていかなければならぬという状態でありますが、これは何とかして改めたいものである。将来これは必ず改めていかなければならぬものでありますし、さしあたって今秋のメルボルンオリンピックに対してその用意がなければならぬのでありまして、そのためにかりに一時的にでもこの直通通信ができるように取り運びを進めていかなければならぬと思うのでありますが、これまで外務省と濠州との交渉はどういうふうになっておりますか。日本国際電信電話会社ができましてから今日まで数回に及んでこの交渉を開いておるのでありますが、先方では依然としてこれを了承しない、こういう状態になっておるのであります。最近も交渉されていることと思いますが、どういう情勢になっておりますか、お伺いいたしたいのであります。
  7. 法眼晋作

    法眼政府委員 御質問に対してお答えいたします。この問題は過去の経緯はたくさんございますけれども省略いたしまして、最近では昨年夏以来鋭意キャンベラで交渉いたしております。ごく最近ではこの一月十一日に鈴木大使先方外務大臣とも会っておりますし、さらに一月二十四日にメンジース総理大臣とも会って交渉いたしておるわけであります。先方は、総理大臣はこれは一つ双方専門家話し合いをしたらいいじゃないかというところまで話をしてくれているわけであります。御承知のように従来シンガポールを通ってやっておりましたけれども、この問題は関係会社先方利害関係もはなはだ錯綜いたしておりますので、話し合いはしかく簡単ではございませんけれども、今申し上げましたように、わが方としましては鋭意目的の貫徹を期して交渉を続けておる次第でございます。
  8. 松田竹千代

    松田(竹)委員 その交渉てんまつについてもう少し具体的に、どういうところまで進んでおるか、あるいはその可能性、たとえば臨時メルボルンのオリンピアに間に合うようなことになる情勢であるかどうか。またそうしなければこの状況即時直通によって日本へ報道する、あるいは世界へ報道するというようなことも非常な支障を来たすことになるのでありまして、その点についてはわれわれは非常な関心を持っておる次第でありますが、これをいつまでも英国がその連邦間の利益のため、あるいは従来の長い間の既得権を擁護していくというようなことは、将来は望んでも実際行い得ない問題だと思う。要するにこれらの事柄は一言にして言えば植民政策の残滓である。こういうことは今日のような世界情勢になってきわめて発達した無線の通信、電波の発達というようなことと相待って、こういうケーブルのみによる、あるいは従来通り中継をわざわざして、時間をよけいかけて費用をよけいかけていくというようなことは、長い目で見てとうていこのままで済むものとは思われない。しかし私の最も関心を持っておりますのは、現在この秋のメルボルン大会に間に合うように、臨時のそうした措置を講じてもらうというようなことは、濠州政府といえども、英政府といえども、これに対して特別の便宜をはからぬというようなことは考えられぬのでありまして、この点は特に一つ強く交渉していただく必要があると思うのでありまして、これの可能かいなかの点について見通しと今までの交渉経緯について、もう少し具体的にどういうことをいつ話をしてどういうところまで来ておるということをお伺いいたしたい。
  9. 法眼晋作

    法眼政府委員 この問題は御承知通り二つあるわけでありましてただいまのお話は全くごもっともだと思っております。二つあると申しますのは先ほど申し上げました通り原則として日濠間の直接通信を始めるという問題と、オリンピックがあるのであるから、さしあたりそのときにはすぐやらせるということと、こういう問題があるのであります。従いまして後者の問題につきましては、原則的な日濠間の直接通信の問題とは別個にぜひやらせてくれということを、今申し上げました通り、最近では一月に入って二回にわたって交渉いたしておるわけであります。しかしながら先方がまだ具体的にでは一つやらせるというところまで至っておらぬということは御承知通りであります。しかしながらお説の通りわれわれも全く同感でありますので、今後とも鋭意話を続けるということで御了承願いたいと思います。
  10. 松田竹千代

    松田(竹)委員 これはヘルシンキの場合にもすでに前例があるのでありますから、何としても必ず実行してもらい、やるのだという心組みでせっかく御努力してその実現ができますように一つお願いをいたします。
  11. 前尾繁三郎

    前尾委員長 並太芳雄君。
  12. 並木芳雄

    並木委員 私はこの前条約局長に、ソ連閣僚会議でサケ、マスの乱獲理由として漁業条約が結ばれるまで出漁を停止するという申し合せを行なったということに対してそういう不法な申し合せがあり得るかということを国際法上の立場から質問いたしたとこる、三つの理由をあげてこれは明らかに国際法違反である。日本政府としては承服できないという答弁を得て満足したものでありますが、その後の調査の結果はいかがですか。そのときもし日本政府に対してこういう正式の報告があった場合には、これに対して適当な方法抗議をする、こういう答弁も得ておりますが、実際において日本の漁船が多数出漁して乱獲した事実があるかどうか。またこれに対してソ連の方から正式に直接または間接日本政府抗議がなされたのかどうか。もしなされたとすれば日本政府はこれにどういうふうに対処せんとしておるものであるかどうかそれらの点についてはっきりした答弁をいただきたいと思います。
  13. 法眼晋作

    法眼政府委員 この前委員会で簡単に申しあげました通り日本側といたしましては乱獲をしておる事実はないのであります。それからまた本件は公海上の問題でありますし、日本漁業をやっておりますのは、昨年度におきましてはソ連の沿海を去る二十マイルの外でやっておるわけでありまして、ソ連の言うことはとうてい問題になら、ないわけでございます。お話通りこれは向うラジオ放送したというにとどまりまして、その後ロンドンにおいても先方から何らの申し入れがないわけでありまして現在の状況では単にラジオがそういうことを放送しておるということにとどまる次第であります。しかしながらラジオ放送といえどもこれは大いに研究を要するわけでありますから、われわれの方では目下これを慎重に検討中でございます。
  14. 並木芳雄

    並木委員 その点わかりました。  そこで外務次官に私要望的に質問したいのですが、こういうような放送がいやしくもラジオで行われ、閣僚会議でなされたというのであるならば、かりに日本政府に面接または間接にそういう抗議がなされていないにしても、進んで日本政府意思先方に伝達する方がいいと思うのです。幸いに日ソ交渉も開かれておる際でございますから、松木大使を通じて先方にこういう放送があったけれども、こういうことは事実なのか、もし事実だとすれば日本としては乱獲の事実は全然ないし、とうてい承服できないところであるという意思表示をされることが適当であると私は思います。ましてや閣僚会議の決議というものは、日ソ交渉漁業協定を前にして、ソ連側を有利に導かんとする魂胆があるやにも伝えられておる際でございますから政府としてはぜひそれをやっていただきたいと思います。いかがですか。
  15. 森下國雄

    森下政府委員 ただいまその問題について研究中でございます。
  16. 並木芳雄

    並木委員 それではぜひその点研究して至急やっていただきたい。  それからこれも百ソ交渉に関連しておる問題でありますけれども、先般マリクソ連代表が突如として、松本大使予告なしに帰国してしまった。こういうことはわれわれ国民の一人として非常に意外でございました。重大な日ソ交渉をやっておる最中に、いやしくも先方代表予告なしに帰国してしまうというようなことは、ずいぶんこれは礼を失することじゃないかと思うのです。こういうことが外交上あり得るかどうか。まことに常識はずれのことであると思います。実際何にも予告なしに帰国したのかどうか、その点が一つ。また突如として予告しないで帰国する理由としてはどういうものがあったのか、政府としてはもう情報を得ておられると存じます。紙上これについて日本に対しては不利であるという見方あるいは有利であるという見方、二色ありますけれども、日ソ交渉の成り行きとあわせて、何分にもこの点は非常に重要でございますから、はっきりしていただきたいと思います。
  17. 森下國雄

    森下政府委員 これは予告なしに帰ったのではありますけれども、この点に対しましてマリクソ連代表の方からきわめて丁寧な申し出がその後ありましたと私聞いております。この点詳細にわたっては法眼参事官からお答えいたします。
  18. 法眼晋作

    法眼政府委員 お答えいたします。これは先方からこの十三日に先方の書記官がわが方の全権代理を訪問いたしまして、実は十日の会談で十四日に会談をすると約束をしました、ところが急遽十一日夕刻に至って帰ってこいという命令に接した、そこで全権はやむなく帰ったのであります。非常に遺憾であります。しかしながらそういう事情でありますから、あと一週間ないし十日ぐらいは延期をしていただいて、その後に会談を開いていただきたい、こういう丁寧な申し出があったのであります。それでいろいろお話通り私は伺いましたけれども、やほり党大会が開催されている最中でもあり、マリク英大使のみならず、駐仏、駐独、駐米等大使が帰っております。そこでこれはやはり先方事情もあることでありますから、われわれとしましては先方申し出を了承いたしておる次第でございます。
  19. 並木芳雄

    並木委員 日ソ交渉にからんでの問題としてこれはアメリカとの関係でありますが、私ある放送で耳にしたのです。びっくりしたのですけれども、ただいま日ソ交渉で進行中の領土問題について、南千島の点についてはこれは議題に載せてもらっては困る、そういう申し出アメリカ政府から日本大使を通じて日本政府に行なった、こういう報道なんです。一回のみならず二回も聞きましたけれども、もしこういうことがありまするならば、これは今まで日本政府がはっきり南千島をも含めて先方交渉をしておる、その交渉に非常なそごを来たすわけです。むしろ内政干渉にもなることでございまして日本政府としては当然これをはねのけなければならないと思いますけれども、実際においてそういう申し入れが行われたのかどうか、疑問にしておりますのでこの際明らかにしていただきたいと存じます。
  20. 森下國雄

    森下政府委員 いかなる放送が行われたか存じませんが、さような事実は全然ございません。はっきりとここに言明いたしておきます。
  21. 並木芳雄

    並木委員 それではその点何らかの誤報であったということがはっきりしたわけです。そこで私この際条約局長にお伺いしておきたいのですけれども、この前の外務委員会で非常に問題になりまして領土の帰属の問題であります。サンフランシスコ条約で南千島と南樺太を放棄しておるにかかわらず、今日その権利を主張する日本政府はおかしいじやないか、これは一部の政党の方から出た御意見でございますけれども、これは私、条約の建前からはそうなるだろうと思う。それで今後の新しい段階をやはり考えていかなければならないと思う。この前時間がなかったので私突っ込んで聞くことができませんでしたけれども、この際明らかにしていただきたいのは、ソ連日本との間ではどういう条約を結んでもこれは自由だと思うのです。二国間の条約でありますから。もしソ連日本が他のアメリカや英国その他に与えた利益よりも大きな利益を与える場合には、他の、国に対してそれと同じ利益を均霑させなければいけないというのが、平和条約の第二十六条だったかにあります。ただ日本が他の諸国よりもより大きな利益を得た場合の条文はないと思います。ですからそういう場合にはあらためて他の諸国にそれを承認してもらうような手続が必要なのではないか。平和条約は修正ということはできないと思うのです。平和条約を修正する条項がございませんし、また今までの平和条約において修正したことがないと思うのです。もしあったらお聞きしたいと思うのですけれども、ないと思います。そうすると、もしソ連との間で新たなる領土の取りきめをしても、ちっとも日本として差しつかえない、そのかわり今までの平和条約と違ったところがあるならば、平和条約署名批准をした諸国に対して了解を求めて、実質上これを改ためてもらう、そういう手続が必要なのではないかと思うのですが、その点はっきりしていただきたいのですが、いかがですか。
  22. 下田武三

    ○下田政府委員 桑港条約の領土条項中、非常に明確に範囲が規定してある条項と、そうでない条項とがございます。御承知のように沖縄の方では北緯二十九度以南というように詳細にきちっときめております。これは桑港会議当時に範囲について連合国間に意見の不一致がないから、そういう明確な規定ができたわけであります。ところが北方の領土につきましては、この前も申し上げましたようにクーリールという言葉であります。クーリールが果して日本語でいう千島に該当するかどうかという点もはっきりしておりません。またそのクーリールが北海道の一部たる歯舞、色丹を含むものであるかどうか、、はたまた、かつて一度も外国の領土に帰したことのない日本固有の領土である国後、択捉を含むものであるかどうか、そういう点は何ら明確にきめてなくていわゆるクーリールという、言葉で表現されておるわけであります。でありますから、先ほど政務次官の申しましたように、南千島を日本が要求することはアメリカがけしからぬというようなことが起りようがないわけであります。逆にクーリールというものの範囲は、日本側の見解によればこれこれであるということをソ側に主張されることは、完全に日本政府の自由であるということをアメリカは表明しておるわけです。これはアメリカのみならず、いかなる桑港条約の当事国も、日本日本の持っておる歴史的に、またあらゆる資料に基いて正しいという主張をすることに、異存のあろうはずはないと思います。そこでこの前申し上げましたように、直接日ソ両当事国間で最も公けのものである条約上の根拠に基いて歴史的に国後、択捉は日本のものであるという主張をなしておる、これにつきましてアメリカ初めどこの国からも横やりは出ようはずがございません。  そこでそれならば日ソ間でクーリールの範囲についてある取りきめが成立した、あるいは極端な場合には南樺太、全千島を日本に帰属せしめるという取りきめができた場合に、桑港条約の当事国との関係はどうかということが御質問の第二の点だと思うのです。平和条約は敗戦国側に対して義務を課する条場項が多いわけであります。そういう場合に、今仰せになりましたように連合国側に大きな利益を与えた場合には、ほかの連合国は黙っていない、おれの国にも均霑させろということを申すでありましょう。しかし義務を課された方の敗戦国側の義務を軽減する措置をとった場合に、これは仰せのように平和条約で何ら規定がないのであります。そこでどういうことになるかということは、一つ先例がございます。桑港条約の領土条項である沖縄に関する規定でありますが、アメリカ日本だけで奄美大島を日本に返してしまう、これは敗戦国側たる日本利益のために平和条約を変更してしまったことになります。しかしいかなる桑港条約の当事国からも横やりは出ておりません。これはけっこうだとして黙認しております。理論的には平和条約の変更でありますから、全当事国に了承を求めるべきかもわかりませんが、日本政府もそういう手続をとることなく、いかなる桑港条約の当事国からも横やりが出ることなく、そのまま黙認されて通ってしまったわけであります。でありますから、日ソ間で国後、択捉はもとより、たとい全千島、南樺太全部を日本に返すという条約を結びましても、東港条約のいかなる当下国からも文句は出ない、そして問題なく片づいてしまうと思います。でございますから、問題はもっぱら相手国たるソ連側の出方いかんにかかるわけでありまして、ソ連以外の桑港条約の当事国から横やりが出るという心配は私どもはないと思っております。
  23. 並木芳雄

    並木委員 次に、中共からの日本人引き揚げの問題について先般来しばしば中共側から日本政府に、この引き揚げに関連して田付総領事の申し入れに対してその他の国交回復に関する提案をしておる、それにもかかわらず日本が何らこれに対して回答を与えていないのは困ったものだという趣旨の発表が行われておるのでございます。この前私それを外務大臣に質問いたしましたときに、外務大臣はやはりそういうものには接しておらないという答弁だった。ところがそれを引用して先方では十一日の夜の北京放送で、そうではないのだ、ジュネーヴの田付総領事との間でこれこれの公文が交換されておるという日付、内容まで発表して、日本政府に国交の正常化を提案したのだということなんです。そこで日本政府としてはこれを引き揚げだけの問題に限って解釈しておったのではないかと思うのです。先方の国交正常化の提案というものを除外して、引き揚げに関しての交換の、手紙とばかり思って、外務大臣はああいう申し出を受けておらぬという答弁をしたのじゃないかと思うのです。それともちゃんとこういう提案があった、国交回復、正常化に関する提案があったというふうに政府は院分解釈したる上、しかもなおそういう提案はなかったというふうに答弁されるのであるかどうか。そういう点、はっきりしておいた方がいい。このごろはとにかく外交合戦の最中ですから向うは何と言うかわからない。こちらは誠意を尽してこんなにまで日本政府に言っているのにナシのつぶてで何にも返事がこないということでは、外交上のわざを一つとられるのですから、そういうことは確かにあったけれども、これに対してはこうなんだ、引き揚げだけは人道上の立場から早くやってくれたらいいじゃないか、やってくれたら初めて国交回復のことを考えよう、そういう意見なら意見のようにけじめをつけた方がいいと思うのですけれども、そのけじめをつけずに、何だか手紙が来ているのか来てないのかわからないような状態だと、また外交作戦に乗ってしまいますから、次官からこの際この点も明らかにしていただきたいと思います。
  24. 中川融

    ○中川(融)政府委員 中共から単に日本人の引き揚げの問題のみならずそのほかの問題、たとえば通商であるとかあるいはもっと進んで国交正常化の問題を討議したいという申し入れといいますか、あるいは日本に対するゼスチュアというものは、今までしばしばあるのでありまして、通常の方法はまず向うが声明をいたしましてそれをラジオによって放送する、そうしてその放送した内容を——現在ジュネーヴにおいてわが総領事と向うの総領事と日本居留民の引き揚げの問題に限って交渉しておりますが、その先方の総領事からわが総領事に対してその写しをよこす、という方法を従来中共はとっておるのであります。その意味で先般先方がいろいろ内容と称するものを出しておりますが、ああいうものはそのような方法日本側に来ておるのであります。日本側は、ただいま並木委員の御質問のように、今中共と話をするのは日本人の引き揚げ問題に限るという方針できておりますので、そういう先方の呼びかけに対しましては直接返事をしない。もっぱら日本人引き揚げ問題にのみ限って、ジュネーヴで田付総領事から先方交渉しておるというのが現状でございます。
  25. 並木芳雄

    並木委員 それでは法務大臣に対して岡田委員から質問があるようですから、私はもう一つお聞きしてあとは延ばしておきます。  それはユネスコの会議が近く、二十八日ですか、日本で開かれる。それに対してソ連のミハイロフ文化相が来日するのではないかということについての質問であります。これはユネスコ参加を機会として文化相が来てやはり一種の平和攻勢宣伝をやるのではないかというふうにとられて、政府は果してこれを入国許可するかどうかという問題がまた出てくると思うのです。ユネスコの会議ですから、先般日教組が招聘した例の中共の方々の問題とはおのずから違うのであって、おそらくミハイロフ文化相が来日するという申し出があったら、政府としてはこれは許可する方針だろうと思う。ミハイロフ文化相が日本へ来るということについて何か申し入れがございますかどうか。もし将来あるとすればこれに対して政府はどういう態度で臨まれますか、それだけを聞いておきたいと思います。
  26. 牧野良三

    ○牧野国務大臣 ただいまの御質問に私より御答弁をいたします。ただいままで何らの交渉はございません。従って政府といたしましても別段考慮をいたしておりません。
  27. 松本七郎

    松本(七)委員 ちょっと法務大臣の前に、今の並木さんの質問のことについて伺いますが、この前並木さんが二月三日に外務大臣に質問されたのは、中共から政府に対して国交正常化の呼びかけがあったかということであります。それに対して外務大臣は、政府に対しては正規の外交機関を、通じてきたことはない、こう答弁されておるわけです。おそらく並木さんはそれを聞かれておるのだろうと思うのですが、今度は田付総領事を通じてきておる。内容もやはりはっきりと、中国政府は、両国関係の正常化を促すために、両国政府関係ある重要な諸問題についての話し合いを進めるよう提案する、こういうふうに言っているのです。だからこれをやはり日本政府に対する呼びかけではないと言われるのか、そこをはっきりしていただきたい。
  28. 中川融

    ○中川(融)政府委員 従来の経緯はただいま私が御説明申した通りであります。これが正規の外交ルートを通じてきた申し出であるかどうかということについては、これに対して正規の外交ルートというものの定義によっていろいろ解釈が違うと思いますが、今までありました実際のところは、ただいま申しましたように、中共政府が声明いたしましたことの写しを、さらにジェネーヴにおいて先方の総領事からわが方の総領事に渡したのが事実でございます。
  29. 松本七郎

    松本(七)委員 それは正規の外交ルートでないと言われるのですか。
  30. 中川融

    ○中川(融)政府委員 日本と中共との間には正規の外交機関というものがまだないのでありましてこれは正規の外交機関というのかどうかということは見ようによりますが、日本の総領事は日本の正式な政府が任命した総領事であります。しかしながらこれは中共政府に派遣された使節ではないのでありましてジュネーヴにおる総領事であります。先方の総領事もジュネーヴにおってジュネーヴで仕事をする総領下でありまして、日本の特に仕事をする機関ではないのであります。その意味では正規の外交ルートということはあるいはできないのじゃないかと思います。これはしかし正規の外交ルートという言葉をどういう意味に使うか、その人の使い方によって違ってくるのでありますが、そういう意味にもとれると考えております。つまり正規の外交ルートでないという解釈もできると思います。
  31. 松本七郎

    松本(七)委員 そうすると、日本政府が必ず正規の外交ルートと解釈しなければならぬようなルートを、もし中華人民共和国政府が求めるとするならば、たとえば第三国を通じて意思表示をしてくれば、これは正規の外交ルートと認められますか。
  32. 中川融

    ○中川(融)政府委員 今の日本と中共というように、要するに正式国交が開かれてない国の間で、政府間にいわば正式の交渉をしようと思うときには、お互いの政府が正式の交渉をしたいという意思を相互に通報しあって——それは第三国を通ずる方法もありましょう、あるいはその他直接にやる方法もありましょうが、ある問題を特定いたしまして、その問題については一つ政府間で話し合いたいという合意ができまして、それで行われる話は、これは両政府間のいおば正式の話し合いということが言えるかと思います。しかしながらジュネーヴでやっております話は、日本側日本居留民の引き揚げ問題に限って話をするという意思を、最初からはっきりいたしておるのでありまして、それ以外の問題については、ジュネーヴのわが総領事には話をする権限はないのでございます。その意味では純粋な正規の外交ルートと言うことはできないと思います。これが居留民の問題であれば、日本政府からすでに訓令を受けてやっておるわけでございますから、この国交が回復していない両国間の話であっても、政府間の正式の話ということができようかと存じますが、ただいまの国交正常化の問題については日本側は正式の話をする意思がないのであります。従ってその意味での正規の外交ルートというものは、中共と日本の間ではできていない、かように考えます。これはしかしもちろん純粋な法律的な意味あるいは国際間に定義があるという意味では必ずしもないのでありまして、われわれはさように考えておるということを申し上げておるわけでございます。
  33. 松本七郎

    松本(七)委員 それは合意だと言われるけれども、たとえば戦争中に国交が断絶した、それでも何らか戦争状態にある相手団と話したいという場合に、第三国を通じてこちらの意思を表示することはできますが、これは当然正規の外交ルートによるところの意思表示と見なければならぬ。それと同じように今のジュネーヴの田付総領事の場合は、問題はこれに限っておるから、おれの方は何を言ってきても受け付けないということになれば、——これは日本政府意思として考えられますけれども、それでは今の中華人民共和国政府は何を日本政府に言っても一切だめだということですか。それともたとえば田付総領事を通じてはだめだというならば、何かそのほかにあるのか、たとえばイギリスという国を通じて諸問題を日本政府一つ話し合いをしたい、こういうことを言ってきた場合には、それを正規のルートを通じたものとして、まとも、に受けられるのか、さきに外務大臣の言われた政府には何も言ってきていないという態度を今後改めて、正々堂々と表玄関から言って参りましたというふうに解釈されるのか、そこのところを聞いておるのです。
  34. 中川融

    ○中川(融)政府委員 中共政府から日本政府意思を伝達する方法はいろいろあろうかと思います。それは第三国を通ずるのももちろん一つ方法かと思います。ジュネーヴのようなところで、双方のそこにおる代表を通じて行うという方法もあると思います。いずれの方法をとりましても、日本と中国との間には、正規の国交というものがない以上、正規の外交機関というものはないのでありまして、いずれにせよそれは相手国政府意思を正確に伝えるという意味合いの上からそういう方法をとるのでありまして、いわゆる純粋な意味においての正規の外交ルートを通じた伝達というものはむずかしいのじゃないかと思います。つまりすでに話し合いができておる問題について、権限のある問題について話すという方法であれば、当然それは政府間の話し合いが行われるわけでありますが、全然新しい問題について、向うから申し入れがいかなるルートを通じてありましても、それが当然正規の外交ルートを通じた申し入れということにはならないと思うのであります。いずれにせよ外務大臣が二月三日に答弁されました意味合いということにつきましては、実は私から申し上げる準備もないのでありまして、私はどういうのが実情であるかということについて御説明したわけであります。
  35. 前尾繁三郎

    前尾委員長 岡田春夫君。
  36. 岡田春夫

    ○岡田委員 ちょっと今の問題一点だけ、これは重大な問題があると思うので伺っておきたいのです。  一つはあなたは先ほどの御答弁の中で、正規な外交機関の問題と、もう一つは写しをよこしたのであるから正規の文書でないというがごとき印象のことを言われた。ところが私今ちょっと調べてみましたが、なるほど八月十七日には声明書を同封してある。声明書の全文はこれは正式に田付総領事に対してあてた文書であります。その後十月二十日に出している文書は、これは声明書の写しではなく明らかにこれは文書であります。従ってこれは正式の文書であると解釈すべきであると私は考えるのだが、これは単なる写しであるとお考えになっておるのかどうか。そういう意味で正式のものでないというふうに御解釈になっているのかどうか。  それからもう一点は、私はこれだからだめだと言ったのですが、あなたは先ほどこういう書類は写しにしても何にしても来たことは来たのだということはお認めになった。ところが今日の新聞によると、重光外務大臣は昨日の記者団会見において、いわゆる中共書簡なるものはまだ見ておらないと答弁しておる。とすると局長は来ておることを確認して見ているのだが、大臣には見せておらない、こういうことになる。あなたはその点は一体どういうようにお考えになるのか。上の大臣には見せないで、局長限りでごらんになってそのまま内緒になっておるものであるかどうか、こういう点は一体どういうようになるのであるか、この点も承わっておきたい。
  37. 中川融

    ○中川(融)政府委員 写しをよこしたのでありましても、写しだけを送ってよこすのではないのでありまして、それにはこういうのが声明したところであり、わが政府の方針であるというような意味合いのことがつきまして来ているのであります。従って写しだけを単純に渡したという意味合いのものではないのであります。(岡田委員「その文書の性格です」と呼ぶ)文書の性格というのは、やはり向う意思を伝達する意味合いのものであろうと思います。(岡田委員「公文書であるかどうか」と呼ぶ)公文書というのは存在しないのであります。中共と日本との間には外交文書というものは存在しないものであります。実際上の問題であるのであります。  なお昨日大臣が記者会見にどのようなことを言われたか、実は私直接大臣から聞いておりませんので、その点に対するお答は大臣からお聞き願いたいと思います。(岡田委員「見せてないのですか」と呼ぶ)見せる見せないといっても、私が直接受け取るのではないのであります。これは外務省に来るものであります。
  38. 岡田春夫

    ○岡田委員 この問題は今中川さんが言われたように、大臣が来たときにもつとゆっくり伺いましょう。牧野さんがお待ちのようですから……。  法務大臣に外務委員会にわざわざ来ていただいたというゆえんは、昨日この外務委員会において、いわゆる北朝鮮の帰国問題について参考人が五人見えました。この中でいわゆる朝鮮民主主義人民共和国に帰りたいと考えている人の代表者として、三人の人が参考意見をいろいろと述べられたわけであります。その中で人道上きわめて重大なる問題の発言ががありました。その問題に関してきょうはお伺いいたしたいわけです。と申し上げることは、昨年の十一月十八日に大村収容所において、いわゆる北鮮に帰国したいと考えていた張東根という人が、ささいなことで李万徳との間に口論が起って、そのためにあらかじめ共謀していた李万徳を初め十数人の人々が集団で張東根をなぐる、けるの暴行を加えて、最後にこの張東根という人は十一月二十日にこの乱闘事件の結果として死亡している。いわゆる殺人事件が起っているという事実が実は発表されたわけであります。こういうようなことになって参りますと、法務大臣の管轄下にある収容所の中において、特にこの収容所の性格についてはいろいろあとでお伺いをいたしたいと思いますけれども、この収容所の中で殺人事件が起ったということは、これはきわめて重大な問題であると私は考えます。こういう事実を一体大臣は御存じであるのかどうか。そしてもし御存じであるとするならば、いつごろおわかりになったか、どのような方法でおわかりになったか、その真相についてまずお伺いいたしたいと考えております。
  39. 牧野良三

    ○牧野国務大臣 お答えをいたします。そういう事案があるということは実に遺憾に思います。そしてその事実は昨日知りました。従来全然知らなかった。
  40. 岡田春夫

    ○岡田委員 昨日御存じになったということは、私が質問の通告をしたためにあなたはあわてて下僚の諸君にお調べになって初めておわかりになったのじゃありませんか。
  41. 牧野良三

    ○牧野国務大臣 少しもこういうことであわてる必要はございません。客観的な事実であります。取り調べることだけは命じましたが、従来こういうものに対しては大臣にあまり報告がないようでございます。従ってその措置等についてもまだ私は考えておりません。
  42. 岡田春夫

    ○岡田委員 私はあわてないということ自体がおかしいと思います。管轄下でたとえばだれかが物を盗まれたという程度ならまだ知らなかったということはできるでしょう。しかし事人権に関することで、人の命を奪ったということについて、しかもあなたの所管とする収容所の中で殺人事件があったということは、私は知らなかったし、あわてなかった、このようなことでは、果してそれで大臣の職務を果しておられるかどうかということまで私はむしろ疑念に思う。これは人間が殺されるかどうかという問題です。これがあなた自身の関係のある身内の者だったら重大問題でしょう。他の国の人々の問題であるからおれは知らなかったんだということでは、私は済まされないと思う。そこでその意見の開陳ばかり言っておってもしょうがないからもっと進めますが、それではその事件の内容について詳細法務省でお調べになっている経過をお知らせ願いたいと思います。
  43. 牧野良三

    ○牧野国務大臣 詳細を存じませんので、詳細を知っております政府委員より御答弁をいたさせます。
  44. 内田藤雄

    ○内田政府委員 ただいま御質問の中にすでにある結論を出しておられるようでございますが、私の方の立場から申しますと、多少誤解ではないかと考えている点もございますので、いきさつを御説明申し上げます。この事件は、先生ほど岡田委員もおっしゃいましたように、昨年の十一月十七日から起つた事件でございまして、牧野大臣の前の時代のことでございます。それでその事件と申しますのは、十七日に、張東根なるものが金乗大という十八才の子供なんでございますが、これをいじめたというようなことから、この金乗大の庇護者と申しますか、兄貴分と申しますか、それをもって自認しております李万徳というのがこの張東根をひどく叱責いたしまして、その際口論から進んでなぐるというくらいのこともあったようでございます。それでその翌日になりまして、張東根が今度は拳万徳に対する復讐から、そこにございましたスコップで頭になぐりつけたのでございます。ところがはずれまして、足の方にかすり傷を負わせたということだけでその場はおさまったのでございます。それでわれわれの方の警備官は直ちにその張東根を一種の懲戒的な意味で隔離処分にいたしまして、独房に入るように言いつけました。張東根はそれに従って、その前に自分の身の回り品だけを持っていきたいからということで、自分の部屋に戻りました。ところがスコップでなぐりつけられました李万徳らが待ち受けておりまして、それでもうほんの一瞬の二、三分のできごとであったようでありますが、張東根を李万徳外——これは現在刑事処分になっておりますので、暴行した人間の数はまだはっきり申し上げかねますが、数名で暴行を加えた。そうしてその節は直ちに警備官がそれを救出いたしまして、そのときには大したこともないということで独房に入ったのでございます。ところがその晩から腹痛を訴え始めまして、翌日大村収容所の医療施設では不十分であるということで、大村市立病院に入院いたさせまして、輸血などいろいろ手当をいたしたのでございましたが、その後腹膜炎を起しまして翌二十の目に死亡したという事件でございます。それでわれわれの方で現在まで了解しております限りでは、この事件は、俗な言葉で恐縮でございますが、ある少年のことにからんで起った突発事故でございまして、その死にました張東根が北鮮帰国希望者であったという事実もございませんし、またこの事件がいわゆる北鮮と南鮮の争いから起った政治的あるいは思想的背景のある事件であるとは考えておりません。現在この事件は長崎の裁判所において公判が係属中でございまして現在までのところ起訴されましたのは、李万徳が傷害致死、他のもう一名の下という男が暴行容疑で、二名が起訴されております。  なおついでに申し上げますならば、大村収容所内におきまして、昨年の夏ごろから、いわゆる北鮮系の者と韓国系の者との間にいろいろいざこざが起っておることは事実でございます。そのためにわれわれの方も警備上非常に苦労をいたしておるのでございまして、昨年の末についにある種の暴行的な事件が起りましたために、この一月七日に帰国希望者は全部別に隔離いたしまして、現在韓国側の者との交通を途絶し保護しておるという状況でございます。その両者を結びつけましてあたかもそういう思想的な背景によって起った事件のように宣伝されておるのではないかと考えておる次第でございます。
  45. 岡田春夫

    ○岡田委員 今の御報告は、あなたの入管の関係としての御調査であろうと思うのですが、私はこの問題について、必ずしもあなた方の御報告だけがすべて正確なものとは考えておりません。しかし最後に言われた答弁の中で、これ以外の事件が相当再三起っていることをお話しになっておるようですし、その前後から相当そういう事件が起っているようですが、こういうことに対して、大村収容所の監督権をお持ちである入管の局長としてはどのような措置をおとりになってきたか、現在どのような措置をおとりになっているか、この点についてお伺いいたしたいと思います。
  46. 内田藤雄

    ○内田政府委員 北鮮帰国希望者があるという事実は、これは相当古いのでございます。昨年あるいはもうすでに一昨年ごろから、数名の人がはっきり北鮮の旗幟を表明しておりました。しかしその当時は人数も非常に少うございますし、大してそのためにどうこうという問題も起らずに参ったのでございますが、昨年の秋、これは、それが原因になったという断定は下しかねますが、九月の中旬ごろにこの総連合の議長の一人である金性律氏が大村に慰問に参りました。その際にいろいろ話をしたらしいのでございますが、結果的に見ますと大体そのころを契機といたしまして北鮮帰国希望の者が非常にふえて参ったのでございます。大体この年末までに六十名になっておりますが、そういうわけで、北鮮系の者の数がふえて参るにつれまして、韓国側の者がまたこれに対抗して団結するという風潮を生じて参ったのでございます。その結果去年の秋ごろから、そうした思想的なと申しますか、政治的な背景での口論とかいざこざというようなことが漸次出てきたようでございます。それでわれわれとしましては、当初まず北鮮系の者だけをそのかたまりごとに一部屋に集結するという措置をとりましたのが、昨年の十一月ごろであったと思います。  それで進んで参りましたところが、昨年の十二月の二十七日だと思いますが、総連合つまり北鮮系の方から慰問金が一万一千円ほど大村収容所に送られたのでございます。その処置を一任せられました許吉松なる人物が、その二万一千円の配分のことにつきまして、南鮮系の者と争いを起したのでございます。その争いの内容は、はなはだこまかい話になりますが、許は単に北鮮系の者だけにそれを配分しようとしたのでなくて、韓国側の者でもこれがほしい者はやるぞというようなことで宣伝に努めたようでございます。ところが南鮮系の側では、ただいま申しましたように非常に結束を固めまして、北鮮の方の金などは一文も取っちゃならぬということでやっておったのでございますが、許は、お前たちがそう言っても、自分のところには内々五十名くらいほしいといって通じてきておる者があるということで、だいぶ宣伝をいたし、それで南鮮側の方では、ほんとにそうかというので調べてみると、そういう事実はないということで、これは許が韓国側の者の足並みを乱そうとする謀略であるということで非常に憤激いたしまして、約三十名の者が許のおります部屋に押しかけて難詰したという事件が、昨年の十二月三十一日の夜起りました。その難詰に参りました際に、口げんかからさらに進んだような、それ以上の行き過ぎたようなことはあったようでございます。しかしそれはそれで、元日の日に両方の者を呼びまして、収容所の者が説得いたしました結果、それで韓国側の方も十分納得いたしまして、一応おさまったのでございます。それで地検あるいは警察とも連絡いたしまして、今度はその程度のことならそれでよかろうということで済ましておったのでございますが、その後に至りまして北鮮側の方では非常に不満で、これは集団的な計画的な暴力行為であるというようなことを方々に言いふらして参りましたので、事態がそうなりました以上われわれも真実を明らかにした方がいいと思いまして、事件を地検の手に移しまして、一月下旬から検察庁がそれを調べております。現在一応調べは済んだように聞いておりますが、まだ結論は出ておりません。そういう状態でございます。
  47. 岡田春夫

    ○岡田委員 法務委員会で大臣をあれしておられるそうで、あまり時間を長くやれないのですが…。
  48. 牧野良三

    ○牧野国務大臣 まだよろしいです。せっかくのことですから…。
  49. 岡田春夫

    ○岡田委員 大臣今までお聞きのように、単に撲殺事件だけではなくて、その後においてもいろいろな事件が起っておる。こういう事件が起っておるときに、今のような方法をもってするならば、私はこの大村収容所の内部のこのような状態を解決することはできないと思う。まだ私は質問していかないから局長は御答弁になっておらないが、今月の八日にも事件が起っておるはずです。こういうようにひんぴんとして事件が起っておる大村収容所では、局長がどのように指図をされておるのか知らないけれども、しかしながらこのような保安上の措置について十分な措置がとられているとは私は考え得られない。しかもそればかりじゃない。先ほどからあなたの御答弁を伺っていると、何か南鮮側をかばって、北鮮だけが悪いのであるかのごとき御答弁を再三いたしておるような印象を受けます。こういうことでは私は問題の正しい究明にはならないと思う。特に先ほどの御答弁を聞いていると、初めのうちは事件を収容所の中で何とか解決しようとしておったのだけれども、事態がこのようになってきたので、地検の方に回したというようなことが御答弁に出ております。  ここで大臣にお伺いをいたしたいのは、そのように初めは内々で解決をしようとした、なぜ内々で解決をしようとしたかというと、これは大村収容所の内部の問題でありますから、このような事件というものは、当然収容所の所長なりそれぞれの監督官に責任があるからです。こういう責任をごまかそうとしておるからです。そういう意味で、こういう点をごまかしていくためのそのような措置をとろうとしておる。ひた隠しに隠そうとしておるわけです。だから私はここではっきり大臣に伺っておきたいことは、これの真相を明らかにすることのためは、入管局でこの事実を調べたのでは私は適当ではないと思う。むしろこのような事件は人権擁護局の関係で徹底的に調べる必要がある、人権じゅうりんであるかどうか、こういう点からお調べになる必要があると思うのだが、そういう今までの事件についての真相を究明することについて、大臣は何かお考えになっておらないかどうか、この点を伺っておきたいと思います。
  50. 牧野良三

    ○牧野国務大臣 まことにごもっともな御意見であります。ただいま政府委員から詳細に御答弁しますると、それがへんぱなことを申し述べたように御解釈でありますが、今後ともそういうふうに政府委員答弁を解釈しないようにして下さい。もしそのような事実がありますれば、私が断じて許しません。だから政府委員を信用して下さらぬと、政府委員が率直にものを言わなくなる。それでは委員会の権威にかかわります。さような誤解のないようにお願いいたします。  なお人権じゅうりんに関しては、御説のように事は相当重大であります。私から、直接この事件を見まして、適当な解決の方法をとりました上でお答えをすることにいたします。
  51. 内田藤雄

    ○内田政府委員 ちょっと一言釈明させていただきたいと思います。ただいま岡田委員は私がへんぱな立場で答弁したように申しましたが、私は毛頭そういうことは考えておりません。私は報告を受けましたことにつきまして、率直にお答えいたしておるつもりでございまして、現実に一月七日に北鮮系と称せられる者六十数名を一つの棟に隔離いたしましたのも、全くそういうことを避けたいという趣旨でございます。しかもその結果はどうかと申しますと、実は現在大村収容所は相当人員が多い状況にございますために、六十数名のために一棟を提供しました結果、結果におき検しては、その北鮮側の人たちが南鮮側の者から見ますと、約倍に近いくらいの広い場所を自分たちが占めておるという結果になっておりまして、ほかの条件が同じであるならばむしろ北鮮側の人の方が有利な扱いを受けておるというような状況であります。決してわれわれは北鮮だからこれをへんぽに扱うというような考えは毛頭持っておりません。その点を一言釈明いたします。
  52. 岡田春夫

    ○岡田委員 それからもう一つ、これは大臣に念のために伺っておかなければならないと思うのですが、こういう撲殺事件といいますか、殺人事件が起ったということになると、少くともこの大村収容所を管理している者にも責任があると私は考えるのだが、この点はあなたはどういうふうにお考えになるか。監獄法に基いた収容所ではありません。出入国管理令に基いて収容所内部の規律その他の一切がっさいは、収容所のそれぞれの監督の者に与えられるようになっております。これは必要があればすべて読みますが、おわかりのことだと思います。とすれば当然収容所の事件というものは収容所自身にも責任がある。この点は明らかにしていただかなければならないし、その限りにおいてこそあなたはお調べにならなければならない立場にあるので、そういう意味でもこの点の責任の所在を明らかにしていただきたいという点が一点です。  それから第二の点は、文書の授受、発送、受け取り、これについてもきわめて制限をされておる事実があります。たとえば入管局長のところへ血書が届いておるはずだ。届いてないとするならば、それがいまだに制限されておる。その血書の写しをごらんに入れましょう。そのときの血がここにもやはりついております。ごらんなさい。あなたのところに血書が届いておるはずだ。届いてないとするならばその文書は抑えられておる。届いているのか届いていないのか、その実事を伺いたい。  それからもう一つ大臣に伺っておきます。こちらから出した手紙も届いてないものがたくさんある。たとえば社会党の法務委員の古屋国会議員、この人が収容所の中にいるある人に対して手紙を出した。この手紙はいまだに届いておりません。こういう形で収容所内において綱紀の紊乱がある。こういう事実を大臣はおそらく御存じないかもしれないけれども、こういう点についても徹底的にお調べを願わなければならない。出入国管理令によると収容所に置いておくということは、いわば船待ちのためにこの収容所を作ったのであって、船が来るまで置いておくのだと言っておきながら、いまだにいつ帰れるかわからない状態に——いわゆる監禁状態です。犯人ならば刑期があって、三年なら三年たったら出られるという楽しみがあるのに、いつ帰れるかわからない状態にしておいて、このような出入国管理令の方針に従わないようなことが事実行われておる。こういう点で果していいのかどうか、そういう事件については知らなかったでは済まされませんよとさっきから申し上げておる。こういう事件についても徹底的にお調べにならなければならない。局長に関することではその血書の問題もありますが、あまり時間を使いますと、法務委員会関係もごありますから、一括して伺っておきます。それぞれの関係で御答弁を願いたいと思います。
  53. 牧野良三

    ○牧野国務大臣 お話を承わると、なかなか重大らしいですから、よく調べまして、それからそれぞれの措置をいたします。
  54. 内田藤雄

    ○内田政府委員 私のところへ届いておるものは血書ではないと存じます。それ以外に血書があったかどうかということは調査いたしましてお答えいたしますが、北鮮系の人から私のところへ文書が届いておるということは事実でございます。  それからただいま書類、文書の授受の問題につきまして、それが綱紀の紊乱であるというようにおっしゃいましたが、これは収容所の規則がございまして、中の警備の必要によりまして検閲などができるような規則になっております。現にそれを実行しておるということも私は承知いたしておりますが、そのためにあるいは発信したもの、あるいは向うが出したものがこっちへ届いていないという事実があるかもしれませんが、それはどういうものをそういうふうにいたしておりますか、これは調査いたしませんと何ともお答えいたしかねます。いずれにいたしましても、そのことと綱紀の紊乱ということとは全然別の問題ではないかと考えますので、一言お答え申し上げます。
  55. 岡田春夫

    ○岡田委員 いろいろお話しになるでしょうが、私の言った綱紀紊乱ということは、確かにあなたのお話のように収容所の規則の中には文書に対する制限はあります。しかし、制限はあっても、これを必要以上に乱用するということになれば綱紀の紊乱である、ということを私は申し上げておるのです。この制限以上のことが行われておる。現に先ほど例をあげて申し上げた血書の問題にしても、初めて出されたときは十二月三日です。しかし、これの発送を許されたのは十二月二十八日なんです。この間において出させる、出させないといって、中で一もんちゃくがあって、しかもその二十八日に出された書類があなたのところへ届いておるか届いていないかわからないという状態であるならば、これは文書の授受についてもいろいろな点で問題があるということを私は考えざるを得ないわけです。そういう点もあるから牧野さんには十分これをお聞き願って徹底的にお調べを願いたいと思うのであります。  最後にもう一点だけお伺いをいたしますと、牧野さんはこの前のこの委員会で北鮮に帰りたい人も帰しますと断定されたはずです。これは穂積君の質問に対して断定された。これはさすがに牧野さんは法曹界の権威者だけあって、法律の精神に従ってやっておられると思う。ということは、出入国管理令の五十三条には、日本におる外国人で帰りたい者は、自分の希望する所に帰すということがはっきりうたわれておるからです。これに従って帰さなければならない、政府はこの法律に関する限りの義務を負わなければならない。とするならば、このような事件が起っておるというのは、結局帰していないからですよ。帰しますと言いながら帰しておらない。あなたは帰すと断定されたのだが、一体いつお帰しになるのか、いかなる方法でお帰しになるのか。新聞でも御存じのように、あるいは役所のそれぞれの機関を通じて御存じのように、平壌においてもいろいろ会議をやっておるけれども、なかなか思うようにならない。しかもその原因というのが、日本におる朝鮮人の問題は、あの会議では取り上げないというそれが問題になっておる。ところがこの問題に関連して日本外務省では、この問題は取り上げてもらっては因るというような訓令はしなかったと言っておられるけれども、サゼスチョンは与えたというか何というかそういうことになっておる。ところがあなたの場合は帰すのだと断定しておられる。大体閣内において不一致があるからである。方針をはっきりお出しになって、帰す者は早くお帰しになったらいいじゃないですか。その方法は幾らでもあるでしょう。大臣が帰しますと御答弁になっておられるならば、どのような方法でいつお帰しになるか、この点をはっきりもう一度お尋ねしておきたいと思います。
  56. 牧野良三

    ○牧野国務大臣 どうもあなたはえらく私を詰問するようにおっしゃるけれども、これはもっと懇談しましょう。これは帰すのがほんとうだ。あんな連中を日本に置くことは皆さんほんとうに困りますね。そして食わせなければならぬでしょう。そしてこんな事件が起きるから、一日も早く帰したい。帰そうと言っておるし、閣内では意見の不一致も何もないのですが、実際どうしたらいいか困っているのです。(「帰せばいい」と呼ぶ者あり)帰せばいいのですが、帰すのにどうしたらいいかということで、第一船をどうしよう、金をどうしたらいい、それから手続、この三つをあなたは熱心だからあなたと二人で懇談して、そして材料をこしらえましょうよ。そうしないと、そうあなた詰問するようにかっとおっしゃっては、どうも委員会の意見の合致を得るには困難だから、もっと仲よくやりましょうよ。どうか頼む。
  57. 岡田春夫

    ○岡田委員 大臣はそういうことを言ってごまかすから詰問するんだ。
  58. 牧野良三

    ○牧野国務大臣 ごまかすなんて、大臣なんてごまかせるものではない。私はほんとうに帰したいのだ。それで帰すために昨年の十二月以来苦労しぬいているのですよ。それでこれはきっとあなたといい相談をしたいと思いますから力を貸して下さい。そして一日も早く帰したいと思います。
  59. 戸叶里子

    戸叶委員 直接岡田委員との関連はございませんけれども、法務大臣はなかなかこういうところにおいでになりませんので、ちょっと一点伺っておきたいと思います。今大村収容所の方々の帰国希望者に対しては、何かいいお考えを考えてお帰しになるということで、まことにけっこうなことだと思います。しかし大村収容所の中にいろいろな方がございまして、私がほんとうにお気の毒だと思いますのは、日本でまじめに働いております朝鮮の人で、もうほとんど日本人になりきっておる方なんですが、その方が戦争のために奥さんを向うへ帰してしまっていて、そしてその人が御主人をたよってきましても、直接に正式なルートで来られないものですから、密入国という形で来るわけなんです。そうしますととらえられる。幸いにしてとらえられなかった人はうまく逃げて、適当に日本で生活しているというような場合もあるらしいのでございますけれども、大体つかまってしまって、御主人の方から、逃げてきているのだけれども、どうも自分のところで生活ができないので困るのだというような実情を訴えられる。またはなはだしいのは、子供がおばあさんと一緒に朝鮮で住んでいたけれども、そのおばあさんがなくなってしまった。生活に困ってお父さんがいるというので、それを聞いてたずねてきたのだけれども、どうも法律にひっかかってどうにも仕方がないというので、親がわざわざ大村収容所に行きましたけれども、行っただけで何度も帰されてしまっているというような例もあるわけなんです。私もたびたび法務省の出入国の方べはお願いに参りましたけれども、どうもこれは法律的に仕方がないといってけ飛ばされてしまうわけなんですが、何かそういうようなことも、法務大臣としてお考えおき願いたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  60. 牧野良三

    ○牧野国務大臣 お答えいたします。全くその通りでございまして、実はただいまのお話と同じケースを私が三人持っております。こういうものを適当に処理することができないというのは、人道上よくないことだと思います。そのために私は李承晩にもう少し打ち明けた態度で話をしないかということに、非公式な方法もとっております。それで私は今こんな打ち明けた話をしたのですが、私個人の資格で非公式な交渉もいたしておりまして第一私はあの大村収容所というものは気にいらぬ。ああいったものは早くなくしたいですね。そこで李承晩は、あの六月ごろの選挙まではうまくいかぬようなんです。その選挙にむしろ李承晩がうまく利用してくれればいい。それでそれらのことは、ただいまおっしゃった通りなことを私は体験してかわいそうに思って、私の手で解決したいと思っているようなことでありますから、何とか方針をきめ、一日も早く皆さんの御希望に沿うようにしたい。それにはどうか特に私は皆さんの方面の方々と懇談をして、そうして政府が手段をとりやすいようにして——それにはこういうわけなんですね、北鮮は今のどから手の出るほど人がほしいというその際に、よほど注意をして釈放しませんと国際法上に問題が起る。それと今おっしゃったような哀れな事案というものとごまかしの事案との区別がつかない。それはわれわれの方の事務当局が親切に事を処理すれば私は必ず解決するものだと思いますから、きっとお志に沿うような御処置をとりたいと思います。どうぞ御了承を願います。
  61. 戸叶里子

    戸叶委員 今だいぶ法務大臣はお骨折り下さっているようで安心いたしますが、言葉の中にありますように、大体李承晩大統領の選挙が済んでからでないとちょっと無理であるかどうかということが一点と、それからもう一つは実際問題としては向うへ帰りましても保護者がない、親がこっちにいるというような、そういう子供たちが収容されております場合に、それを期限が来たとか、船が出るからといって帰しておしまいになりますか、それとももうしばらく解決するまで、何か仮釈放みたいな形で親元にお置きになる意思はないかどうか、この点を承りたいと思います。
  62. 内田藤雄

    ○内田政府委員 ただいま委員お話を伺っておりますと、非常に御同情すべきケースのようでございますが、ちょっと具体的にどういうケースかということでないと結論をここで申し上げかれるのでございますが、一般論といたしまして逃亡等のおそれがなく将来帰すことになるかどうかは別問題といたしまして、目下の状況でちゃんとした身元保証人と申しますか、その生活を保障していくような人がある場合には、そういう仮放免ということも十分考えたいと思って現に実行いたしております。
  63. 前尾繁三郎

    前尾委員長 松木七郎君。
  64. 松本七郎

    松本(七)委員 きのう自民党の外交調査会において外務当局から出席された中川アジア局長ですか、何かソビエト側で国後だけ分離して譲るというような情報があるということを確認されたというふうにきょうの新聞に伝わっておりますが、そういう事実があるのでしょうか。
  65. 中川融

    ○中川(融)政府委員 ただいまの御質問の点でありますが、私もきのう外交調査会に出席いたしましたが、私の前に法眼参事官が出ておりまして日ソ交渉問題について説明しておりました。私は法眼君が済んだところに行きましたので、どういう話がありましたか私自身は存じませんので、法眼参事官が退席いたしましてここにおりませんので、別の機会に御質問いただけないでしようか。
  66. 松本七郎

    松本(七)委員 きょうの新聞には中川アジア局長がそう言われたふうに書いてあったのですが。
  67. 中川融

    ○中川(融)政府委員 それは新聞の誤報でありまして、私は賠償問題について説明いたしましたが、日ソ問題のときはおりません。
  68. 松本七郎

    松本(七)委員 そうすると、調査会のときの話と別にして、そういう情報はアジア局長としては何も聞いておられないというのですか。
  69. 中川融

    ○中川(融)政府委員 全然聞いておりません。
  70. 松本七郎

    松本(七)委員 それからきのうの新聞でしたか、外務省が中共のいろいろ情勢分析したものを発表されておるのですが、これは外務省としていろいろな情勢分析をされておるのでしょうから、そういうものを発表されるのは当然なことだと思いますが、今まで中国に関するああいったまとまったものというのは発表されたことはなかったのですか。今日あれを発表されたには特別何か意味があるのでしょうか。今までの外務省の観察と非常に違ってきたために、特に今日あれを発表されたのかその点を伺いたい。
  71. 中川融

    ○中川(融)政府委員 外務省は中共の情勢がどうであるかということについては、いつも研究いたしておるのでありますが、その研究の結果を発表したという事実はないのであります。昨日でしたか、新聞紙に出ておりましたが、これは全く外務省とは関係なしに新聞がああいう記事を出したのでありまして、われわれが発表したという事実は何もないのであります。またあの記事自体についても、外務省として何ら責任を負う筋合いではないのであります。
  72. 松本七郎

    松本(七)委員 そうするとあの内容については、外務省は全然そういう内容の分析はしておらないと言われるのですか。
  73. 中川融

    ○中川(融)政府委員 中共情勢の分析はしておるのでありますが、その内容を発表するという考えはないのであります。
  74. 松本七郎

    松本(七)委員 今度は条約局長の方になるかと思いますが、実はこの前の日本の国連加盟の問題のときに拒否されて、私どもは今後おそらく中華人民共和国が国連代表として国民政府にかわるという問題が国連においても起ってくるだろう。こういうことを本会議でも、外務大臣にも申し上げたのですが、現に新聞の報道によっても、国連の事務総長の話によりましても、相当各国には国連の代表権というものを中共にかえろということに賛成する意見が強くなってきておるということが報道されておるわけです。そこで特に伺っておきたいのは、国連憲章においては代表権を審議する場合のはっきりした規定というものが私はないように承知しておる。国連においても、今まで代表権をどう扱うかという問題をいろいろ協議された場合に、アメリカあるいはフランスあたりは、この代表権の問題は実員事項ではなくてこれは手続分項だというふうな主張をしたことがあるらしいのです。だいぶ前の朝日新聞の報道なんですが、一九四九年の四月の総会理事代表信任状承認の問題で決議をしたように朝日新聞は報道していたのです。そのときの報道によると、これは手続事項だ、こういうふうな決議をしたように報道してある。しかし私どもいろいろ調べてみると、そのときの決議の内容は果して手続事項であるという決議をしたかどうかは不明の点があると思うのですが、少くとも国連においては代表権の問題が、手続事項であるか、実質事項であるかは、今後まだなお問題になるであろうと予想されるわけです。ましてや国民政府代表に、中華人民共和国が代表権として交代するという問題が具体的になってくると、必ず手続問題なりや実質問題なりやで論議の対象になると思うのですが、国民政府代表権をもつか、中華人民共和国政府代表権を持つかは、日本の国連加盟の問題にも相当大きな問題になってきますから、日本政府としても一体どっちをとったら日本のために有利かということは、当然今から研究されてしかるべきことだと私は思う。日本政府の国連悪意その他についての見解、代表権をめぐる見解——おそらく憲章の十八条二項、それから二十七条の二項あたりがこれに関係してくるのだろうと思いますが、その見解をこの機会に伺っておきたい。
  75. 下田武三

    ○下田政府委員 お説のように国連におきましては代表権の問題を審議することは、それぞれの各機関の単独に自由になし得るところであります。従いまして国連総会、安保理事会、あるいは国連傘下のFAOでありますとか、国際労働機関でありますとか、それぞれが勝手に自分のやり方で代表権についてきめることはできます。ただ国連総会で決定した場合には、その総会の決定に各機関とも従うことが望ましいという意見はございます。これは総会はすべての全加盟国の参加した機関でございますから、総会での議決が尊重されることが望ましいという意見はございます。しかし現実問題といたしましては各機関がそれぞれ単独に決定することになっておるわけであります。  そこで手続問題であるか、実質問題であるかということの決定が、御承知のようにヴィトーの対象になるわけであります。ですから具体的に申しますと安保理事会で中共に代表権を認めることは手続問題なり、つまり単純多数決できめる問題であると主張する国がございましても、ただ一国がいやそうじゃないのだ、これはやはり三分の二の多数決でなければいけないのだというふうなことを言い、あるいは他の国が全部賛成しても、一国は反対であるというようなことを、常任理事国の一つが申しますと、もうそれは成り立たないわけであります。こう考えて参りますと、総会あるいはその他の全機関はすべて中共側に代表権を認めると仮定いたしましても、安保理事会で、ある一国ががんばりますと、中共の代表権が認められないという結果になることが理論的には可能かと思うのであります。
  76. 松本七郎

    松本(七)委員 それは今の国連憲章、それから今の実情からしての事情ですが、総会で何らかの決定をしたことはいまだかつてないのですか。実質事項なりや手続事項なりやということについての決定はどうですか。
  77. 下田武三

    ○下田政府委員 中共の代表権についても、また一般的にもありません。
  78. 松本七郎

    松本(七)委員 それではアメリカその他が代表権問題は手続事項なりという主張をしたということはあるだろうと思うのですが、その点はどうでしょうか。
  79. 下田武三

    ○下田政府委員 代表権の問題としてはあまり持ち出されたことはありません。これは会議の始まる前に各国の代表が持っております委任状の審査、クリデンシャル・コミッティの問題としてはひんぱんに出ております。しかしつい最近のエカフェのバンガロールの会議にも中共加盟の問題が持ち出されましたが、今までの例ではその問題の採決は一つ延ばそうということで、全部延期されておるというのが実情でございます。つまりこの問題はあるいは本委員会の所管しない政治問題であるから、本委員会では採決することを延ばそうじゃないか。権限外のことであるからというようなことを、つい最近のエカフェの会議でもある国が言いましてそうだそうだということでそれが多数意見になって決定を延期されておるというのが、今までの国連関係のほとんどすべての機関の成り行きであります。
  80. 松本七郎

    松本(七)委員 日本政府としてはどういう態度で臨むのがよいと考えられますか。今後のこの代表権の問題についてどうですか。
  81. 下田武三

    ○下田政府委員 これは抽象的に日本政府としてどういう態度でいくべきかということは申し上げられないと思うのです。問題がどういう問題であり、その問題が日本にとってどういう意味を持ってくるかという見地から、個々の問題が出ましたときに個別的にやはり考えたければならないと思います。
  82. 松本七郎

    松本(七)委員 そうするとたとえば今度新しく代表権を持とうとする政府なり国がその問題によって、あるときはこの問題は実質事項なりと主張し、あるときは手続事項なりと主張するというようなことが可能ですか。
  83. 下田武三

    ○下田政府委員 それは理論的に可能でございます。
  84. 松本七郎

    松本(七)委員 法眼参事官にお伺いしたいのですが、きのう自民党の外交調査会の席で、国後だけ分離するという点においてソビエト側が譲歩するという情報があるがどうかという質問があったのに対して外務省がそういう情報があるということを確認されたというふうにきょうの新聞に報道されておるのですが、そういう事実はございますか。
  85. 法眼晋作

    法眼政府委員 私は確認したのではございません。ただ御質問に対しまして、当節はいろいろの情報が種々のソースからやかましく言われておるということを聞いていると申したのでありまして、外務省としてはそういう情報は実ははなはだ信頼すべきものではないと思っておるのであります。われわれの情報というのは、御承知通りロンドンで松本全権マリク全権と話し合っておりますが、その話し合い交渉中に出てくることによって話を進めておるわけでありまして、それ以外のことは外務省としては確認すべき状態でないということであります。ただ町でいろいろなことを人が言っておるということは知っておる、それだけを申し上げたにすぎないのであります。
  86. 松本七郎

    松本(七)委員 それから、先ほど並木さんも言われたのですが、例のサケ、マス事件問題で、この前もあなたは乱獲の事実はないと言われたわけなんですが、その根拠を伺いたい。  なぜかと申しますと、水産界でもこの間御承知のように声明を出しましたが、あれでははっきり乱獲の事実はないと言っております。しかしこれはやはりはっきりした科学的な根拠を持って言うのでなければ——ソビエト側でもやはりいろいろな事実をあげているわけです。それによると、たとえば年代順にずっと漁獲高を調べてみると非常な勢いで減っている。日本の水産界の中にも乱獲事実はないと言いたいけれども必ずしもそう言い切れないものがある、たとえば成魚ばかりとらないで若い魚をどんどんとっておるというような事実もあるらしいし、戦前は二億二千万尾ですかとっておったが今は一億、半分だから乱獲でないというふうに簡単に片づけられないものがあるという意見が水産界でもある。ただ戦前これだけとっていて今は半分だからむしろ少いのだというようなことにはならないのであって、戦前は日本がほとんどひとり占めしておったが戦後は両方でとっている、戦前でもソビエト側がどのくらいとっておったかはっきりした数字はなかなかわかりにくいようですけれども、そういうことを十分数字の上で検討してからでないと、乱猛の事実は絶対にないというようなことを言って、あとでソビエト側といろいろな交渉をしなければならない場合に、やっぱりいろいろな根拠を出してもらわないことには私は承服できないと思う。乱獲の事実はないという根拠を少し明らかにしておいてもらいたい。
  87. 法眼晋作

    法眼政府委員 お答え申し上げます。私がこの前乱獲の事実がないと申し上げたのは、昨年の日本側の漁獲は七千万尾に達しておらない、六千四百万尾くらいだと思います。ただいまお話通り戦前は二億尾余りとっておったわけでありましてその事実からソ連乱獲しておると言われても、数字の上から見て乱獲はしておらぬということを申し上げたにすぎないのであります。  しかしお話通り海洋生物資源というものは非常に敏感なものでありまして、私が加州に在勤しておった時代にもイワシをとる場所などは年によって非常に違うのでありまして、これは潮流の関係とかまだ十二分に研究されていない事実がたくさんあるのでありまして、従いましてさような意味において将来海洋生物資源の研究をする、調査をすることはむろん必要なことでございますけれども、現在のところはソ連が二月十日のラジオでもって日本乱獲しておるということを十二分の根拠なくして言った——根拠はあるかもしれませんけれども、ラジオ放送では言われておりません。それに対してわれわれの方としては一応現在、過去における漁獲の額から見まして日本乱獲しているのではないということは当然申し上げ得ることでありまして、私の言いましたのはそういう意味であります。
  88. 松本七郎

    松本(七)委員 ソ連はだいぶ前から問題にしておったのであって今根拠なしと言われるけれども、ラジオでは根拠を言わなかったかもしれないが、今までずいぶんいろいろな数字をあげている。以前から毎年々々滅ってきているのを非常に心配しながら今日まで来た。その数字的な向うでいう根拠を外務省の方では何らつかんでおらない、こう解釈していいでしょうか。
  89. 法眼晋作

    法眼政府委員 ただいまのお話のものは、ソ連側の新聞その他によって承知をいたしております。それはたとえば昨年の七月、ソビエトの中央党委員会におきましてブルガーニン首相がどうもソ連漁業状況はふるわないということを大声叱咤しているのであります。また現在漁夫に払っている賃金の総額の方が漁獲商よりは高いということを新聞で承知しております。昨年十月千四百のプラウダでそういった問題を報道しているのを知っておりますし、向うがそういうことを言っていることもわれわれは承知しておりますが、日本の現在漁獲しているのは陸上と無関係に、先ほど申し上げたようにソビエトの領海よりははるかに二十マイル沖でとっているのでありまして、そういうことを全部ひっくるめて考えてみますと、われわれとしては現在の状況では乱獲しておらぬと言わざるを得ない、そういう趣旨でございます。
  90. 前尾繁三郎

    前尾委員長 それでは午後二時より再開することとし、この際暫時休憩いたします。    午後零時二十七分休憩      ————◇—————   〔休憩後は開会に至らなかった〕