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1956-05-22 第24回国会 衆議院 海外同胞引揚及び遺家族援護に関する調査特別委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年五月二十二日(火曜日)    午後三時二十三分開議  出席委員    委員長 原 健三郎君    理事 臼井 莊一君 理事 中馬 辰猪君    理事 中山 マサ君 理事 堀内 一雄君    理事 戸叶 里子君       大橋 忠一君    高岡 大輔君       田中 龍夫君    辻  政信君       眞崎 勝次君    井岡 大治君       受田 新吉君    三鍋 義三君  出席政府委員         厚生政務次官  山下 春江君         厚生事務官         (引揚援護局         長)      田邊 繁雄君  委員外出席者         総理府事務官         (恩給局審議課         長)      青谷 和夫君         大蔵事務官         (主計官)   小熊 孝次君         厚生事務官         (引揚援護局援         護課長)    大崎  康君     ――――――――――――― 五月十日  海外抑留同胞の引揚促進等に関する陳情書  (第六四四号)  ソ連帰還同胞帰還促進等に関する陳情書外  一件  (第七二四号) を本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  留守家族及び遺家族援護に関する件     ―――――――――――――
  2. 原健三郎

    原委員長 これより会議を開きます。  本日は、留守家族及び遺家族援護に関する件について調査を進めますが、その前に、お諮りいたします。  過般の理事会の申し合せによりまして、明二十三日、沖縄における戦没者遺骨収集並びに慰霊に関する件について、先般沖縄に行かれた戦跡巡拝団の方より事情を聴取するため、戦跡巡拝団団長吉富幸助並び沖縄戦没者遺族横瀬精一君に出席を求めることといたしましたが、以上二名の諸君を本委員会参考人として、事情を聴取することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 原健三郎

    原委員長 御異議なきものと認め、明日、参考人として出席を求めることに決しました。     —————————————
  4. 原健三郎

    原委員長 それでは、これより留守家族及び遺家族援護に関する件について、質疑を許します。臼井莊一君
  5. 臼井莊一

    臼井委員 戦後すでに十年余を経過いたしまして、その間、長い間海外に抑留されておられた方々が、だいぶお帰りにはなりましたけれども、いまだに多数あちらに残留されておられる。また受刑者というようなことで、われわれは、特にソ連に対しましては、戦争をしかけた覚えなく、戦犯ということは考えられないのでありますけれども、戦犯とし、国内法に引っかけられて、抑留されておられることは、まことに遺憾千万であります。この方々に早くお帰りを願いたいという運動は、いろいろ必死にいたしておりますけれども、まだこれがいつ、早急にということの見通しがつかない次第であります。そこで、今日まで、いろいろ歴代政府におきましては、未帰還者留守家族に対しまして、援護法適用も次第に強化されては参ったのであります。しかし、まだまだいろいろ留守家族にいたしましても納得のいかない、また不満な点があるのでございます。これらに対しまして、政府にお伺いしたい。  まず第一に、未帰還者留守家族等援護法の第一条の、「(この法律目的)」というところに、「国の責任において、その留守家族に対して手当支給する」、こういうことになっておるのであります。しかし、国の責任といっても、ほんとうの精神をどこに置くかということで非常な差異も出てくるのではなかろうかと思う。留守家族としては、国家で補償するという精神でやってもらいたい、こういう意向が強いのであります。これにつきまして、政府におかれては、どういうお考えでありますか。まずこの一点をお伺いしたい。
  6. 田邊繁雄

    田邊政府委員 未帰還者留守家族等援護法根本趣旨でございますが、同法第一条にこの法律目的が明示されてございます。お示し通り、国の責任において援護するということがうたわれておるわけでございますが、「国家補償精神に基き」という言葉を使わなかったのは、どういうわけかということであろうと思います。御承知通り戦傷病者戦没者遺族等援護法におきましては、「国家補償精神に基き、ということが明示されております。この戦傷病者戦没者遺族等援護法は、御承知通り恩給法という法律精神を受けまして、それまでの間ということでできておるわけでございますので、この国家補償精神というもの実は恩給法国家補償精神という意味にわれわれは了解しておるわけであります。未帰還者留守家族等援護法におきましても、もちろん生活保護法のような無差別平等の一般保護法とは別に、こういった法律ができておるという根本趣旨は、やはりこの国家補償理念根本にあることはいなめないことでございまして、この第一条を読んでみましても、未帰還者が置かれておる特別の状態、こういう状態は、やはり究極するところ、国家責任になるのだという、このことは、未帰還者留守家族等援護法の二十九条からもうかがわれるのであります。従って、広い意味におきましては、やはり国家補償精神に結びついておるのだということが言えると思います。ただ恩給法国家補償精神とは違うのだということは、そこを区別いたしまして、われわれ考えておるわけでございます。お示し通り帰還者留守家族等援護法は、やはり広い意味における国家補償精神に立脚するものであるというふうに考えております。
  7. 臼井莊一

    臼井委員 まだ未帰還であって、これがなくなったかどうかわからぬということからして、多少そこに差異があるということも考えられるのでありますが、戦没された方に対する遺族援護法精神は、恩給法ができるまでということで出発したので、そういう精神がはっきり出ているのかと思うのでありますけれども、やはり末帰還留守家族についても、同様な国家補償精神で当然あるべきものである、こう考えるのであります。  もう一つお伺いしたいことは、末帰還者のなくなったということがはっきりしても、遡及しないという一つの原則というか、そういう規定になっておるように承知しておるのであります。これも昭和二十年九月二日を境として、それ以後になくなったことがはっきりした場合、それ以前にさかのぼって留守家族支給することがないという不満を聞くのであります。これに対しましても、これを何とか是正する、こういろ点について、政府の方のお考え一つお伺いしたい。
  8. 田邊繁雄

    田邊政府委員 恩給法におきましては、末帰還公務員につきまして特別に規定を設けておりまして、末帰還公務員死亡の事実が判明した場合においては、死亡判明した日の翌月から公務扶助料支給する、こう書いてあるわけであります。このこと自身にもいろいろ議論があるところでございますが、さらに末帰還公務員になる前と申しましてはちょっと語弊があるかもしれませんが、つまり昭和二十年の九月一日以前において死亡しているという事実が後になってわかった場合におきましては、公務扶助料は遡及してもらえる、しかし、死亡している事実が昭和二十年の九月二日以降である場合においては、死亡判明したときから、こういう取扱いをされております。これはまことに不均衡なことでございまして、どうしても統一して取り扱う必要があるのではないかと考えるわけで  ございます。これらの点は、御指摘の通り死亡判明した場合におきまする留守家族処遇に、一方は非常な利益を受け、一方は非常な不利益を受けるという、実質上の理由に乏しいものでございまして、すみやかにこの不均衡を是正するような措置を講ずべきであると考えますので、今後十分努力いたしたいと考えております。
  9. 臼井莊一

    臼井委員 それから、末帰還者留守家族等援護法一つの不備な点と申しますか、たとえば末帰還者と親等の関係、これは末帰還者の親の場合もありましょうし、子供の場合もありましょうけれども、その間に収入依存関係がなければ、その留守家族留守家族手当支給されない。そういう点が、遺族年金及び公務扶助料支給に比べると、つり合いがとれないという声が従来あったのであります。この点についても、今のお話のように、二十年九月二日後に死亡が確認されても、当然遡及すべきものであるという考えと同様に、これらの点は当然是正すべきものである、こう考えるのであります。これをもし直すとすれば、恩給法を直すことはなかなか困難な面もあるかと思うのですが、末帰還者留守家族援護法において直してでも、何とかこれらの均衡をとるべきである、こう考えるのであります。これらについて援護局恩給局のお考えをあわせてお伺いしたいと思います。
  10. 田邊繁雄

    田邊政府委員 末帰還者留守家族等援護法は、先ほど申し上げましたように、恩給法根本立場を異にしている法律であります。援護法でありますので、無差別平等に、一定身分関係だけで手当支給するということは、この法律立場としてとっていないわけであります。つまり、末帰還者が帰ったならば、その人の収入生計依存するであろうと認められる家族に対して手当をする。もちろん、その生計依存関係の認定に当りましては、現実生活の実態に即しまして、遺憾のないように努めて参っておるわけでありまするし、今後とも十分留意するつもりでおります。この法律は、御承知通り恩給法の対象である軍人軍属のほか、一般公務員も含めておるわけであります。こういった関係もございまして、同じく国家補償理念には立っておりますけれども、恩給法という法体系精神を受けておる遺族援護法とこの法律とは、若干そのところに違いが出てきているわけであります。ただ、先ほど申し上げましたように、死亡の事実が半明した場合におきましては、もしかりに遡及するということになりますれば、留守家族手当を受けておらない方であっても、遡及していただけるわけでございます。その関係均衡は相当是正はされておるのじゃないかと思われるのでございます。  さらに一歩さかのぼって、未帰還者留守家族等援護法自体の問題として、生計依存あるいは年令制限を撤廃するということになりますと、これはなかなか法律立場として困難でございます。ことに年令制限の問題は、戦傷病者戦没者遺族援護法との関係もありまして、そう簡単には参らないのじゃないか、遺族援護という立場法律であるだけに、困難ではないか、これをどう調整していくかという問題が一つあるわけでございます。その点は、恩給法との関係もございまするので、今後、総合的に十分研究して参りたいと思います。
  11. 青谷和夫

    青谷説明員 ただいまの問題につきましては、二色あると思うのです。一つは、現に普通恩給年限に未帰還者の方が達しておる場合に、その人の留守家族がかわって普通恩給を受けておるという場合があるわけであります。その場合に、普通恩給受給者がたまたま若年停止規定に抵触する場合におきましては、全額もらえないという場合もありますし、あるいは削減してもらっている場合も考えられるのでございます。その点を、恩給の面においてもすべきではないかという御意見かと思いますが、この点につきましては、実は恩給法建前をこの一角からくずすということには、なお慎重に考慮いたさなければならないものがあると考えておりますので、いま少し検討の機会をお与え願いたいと思います。  それから先ほどお話のございました遡及の問題でございますが、これは、事実上、恩給の事務的の面から考えて参りますと、困難な面があるかと思われるのでございます。未帰還者死亡判明した日の属する月の翌月から現在の恩給がいくという建前になっていますので、未帰還公務員死亡判明がおくれるに従って、その間何らの給与も受けない者がある、こういう者を救えということだろうと思います。そういった問題につきまして、実際の面から考えてみますと、現在普通恩給公務扶助料調整の結果、大多数の者は不利益を受けるという結果になるのでございます。すなわち、留守家族として、未帰還公務員普通恩給本人にかわって受給されている場合におきましては、現実死亡の時期にさかのぼって返還しなければならないということになるかと思うのであります。返還すべき普通恩給の額と、新たに給付されます公務扶助料年額を、未帰還公務員方々のうち、最も多い  と思われます旧軍人方々について比べてみますと、尉官級以下の者につきましては不利になることはございませんが、佐官級以上の者につきましては、かりに若年停止を受けないで、そのままの全額を受けておるといたしましても、公務扶助料年額は、かえって普通恩給年額を下回るという結果になっておりますので、不利益を受けることになろうと思います。それからなお、この未帰還公務員留守家族として給付されております普通恩給最低件数は、われわれの方でわかっておるところで申し上げますると、最近の数字では、百八十五件ございます。このうち、佐官以上の者にかかるものが百六十四件ございますので、比率からいたしますと、八八・六%になるかと思います。さらに、これらの者のうち、若年停止適用を受けないで、全額支給を受けている者は百十七件でございまして、その比率は六三・二%ということになっております。このように見て参りますと、現在でも、普通恩給公務扶助料との調整について考えて参りますと、大多数の人が不利益を受けるという結果になるわけでございます。こういった点を考えまして、ただいま援護局長からもお話がございましたが、なおこの方々にどうしたら有利になるかという点について、とくと検討させていただきたいと考えておる次第であります。
  12. 臼井莊一

    臼井委員 なお、未帰還者収入依存関係のある家族手当支給される場合、その収入依存というのは、たとえば家が別であって、親なら親の方に、ある程度生活の足しになるもの、額のいかんにかかわらず、小づかいなら小づかいを送っていたというふうな場合にも、これは当然適用されると思うのですが、そういう点の運用は、どういうふうになっておりますか。
  13. 田邊繁雄

    田邊政府委員 抽象的になかなか御説明しにくいのでございまして、個々の家庭の実情と申しますか、それによくマッチしまして、しかも今日十年以上を経過しておるという時の経過も考慮に入れまして、運用して参るということでございます。長男ならやるが、次男、三男ならやらないということを言う向きもありますが、こういうことは非常に不合理でございますので、そういう不合理はできるだけ是正するように指導いたしております。ことに軍人の場合におきましては、お話のあった恩給法等関係もございますので、それらをも考え合せまして、十分実情に沿うように運用して参りたいと考えております。
  14. 臼井莊一

    臼井委員 運用の問題ですが、私たちは政治的にも考えて、援護法ばかりでなく、恩給法においてもそうですが、  なるべく出すという方針でしていただくことが望ましいことであり、当然事務的にもそういうふうなお扱いを願っていると思うのでありますが、その点さよう承知してよろしゅうございますか。
  15. 田邊繁雄

    田邊政府委員 決してしぼるという気持だけでやっているわけではございません。むしろ長い間待っておられる家族気持を体しましてやっておるわけであります。
  16. 臼井莊一

    臼井委員 援護局においてはもちろんそうやられていても、恩給局においては、どうも少し法にこだわり過ぎているというふうに考え向きも従来たまたまあったのですが、きょうは局長さんがおいでになられませんので、この程度にいたしておきます。  そこで、他の方からもいろいろ御質問があろうかと思いますし、ただいまの田邊局長の御意見にもそういう精神があったと思うのですけれども、この際に何らか本院として、未帰還者留守家族援護法の強化に関する意思表示をしておくべきである、かように考えるのであります。一つ委員長において、皆さんにお諮りいただいて、適当な決議なり何なりをして、今後政府において、そういう方面に格段の御努力を願うべきである、かように考えるのであります。その点を一つお願いいたします。  もう一つは、今、恩給法内地死亡の問題について、内閣委員会議員提出法案が出ております。この法案は、今、内閣委員会でいろいろ審議を続行中であります。ところが、この提出の時期等にからんで、政府意見としては、特に大蔵大臣は、財政の面から、あるいは来年度の予算に関して、今から立法するということについての反対からでしょうが、異議があるように伺っているのです。何かそこに政府の間で、今後この種のものはあまり幅を広げるようなことはしてもらいたくない、まあそうしようというようなことがあったように伺ったのであります。しかし、その問題は別としても、この種の未帰還者留守家族等の問題については、たとえそういうものがあっても、当然ワクがはずれる、かように私たち考えておるのであります。あるなしにかかわらず、もしそういう決議があれば、当然これを尊重して実行していただきたい、かように思うのであります。その決議がないのに、今から申し上げることもいか炉かと思うのでありますけれども、そういう点について、大蔵省の方から御者見が伺えれば幸いだと存じております。
  17. 小熊孝次

    小熊説明員 お答えいたします。私、恩給の方の担当ではありませんので、その間の事情を十分承知しておりません。何かそういうことがあったということは聞いておるのでございますが、そういう事情でございますので、党との間でどうしたということは、よく知っておりません。
  18. 臼井莊一

    臼井委員 これは大蔵大臣に伺わなければわからぬことでありますから、以上の程度で、私の方はよろしゅうございます。
  19. 受田新吉

    受田委員 関連して、私は、今臼井委員からただされた末帰還公務員留守家族支給される普通恩給についてお伺いしたいのですが、昨年、この引揚特別委員会でこの趣旨の申し入れを内閣委員会になされ、内閣委員会恩給法改正案の中にこれを盛り込むように、最後の段階まで非常に協調的な空気があったのであります。政府が何かの措置をとるように、附帯決議をつけた方がよかろうというので、附帯決議をつけて国会を通っておるわけです。従って、末帰還公務員留守家族支給される普通恩給若年停止規定を削除すること、及び死亡確認の日でなくして、死亡の日にさかのぼって公務扶助料支給するというこの二つの規定は、当然政府において、附帯決議の線に沿うて、恩給法改正案提出すべきものであったと思うのであります。今、青谷課長の御答弁を聞きますと、いろいろやってみたが、若年停止規定恩給法の体系をくずすことになるし、また死亡の日にさかのぼるというのは、尉官以下はいいが、佐官以上は損になるからやめたんだというようなお話で、まことに意外に感じたわけなんです。そこで、私、青谷課長に、恩給局を代表する政府委員代理者といたしまして御答弁を願いたいことは、第一に、末帰還公務員留守家族支給される普通恩給について、国会意思を尊重して、若年停止規定を削除する法律案を出すべきであるというこの附帯決議の線に沿うところの措置をなさる努力を、続けられたかどうか、また公務扶助料が、死亡の日にさかのぼって支給されることになると、たとえば山田乙大将などがもしなくなられておられたら——幸いに生きて帰られることになっておるから、われわれは非常に喜んでいるのですが、なくなられたとしたならば、大将普通恩給大将公務扶助料とを比べると、これまた十万円以上も違うというので、これを取り上げられるのは気の毒だ、こういうことになれば、すでに支給したる普通恩給は、よし公務扶助料と差額があるにしても、これを返還しなくてもいいというようなただし書きをつけておけばいいのであって、特別規定を設けて、一応取り上げるような措置をやめられればいいのである。また、尉官以下が全部救われることは、きわめて明瞭です。そうして末帰還公務員というのは、ほとんど尉官以下です。その大多数の公務員が救われるような規定であるならば、敢然としてこの際これを入れて、少数の救われざる左官以上の方々には、すでに支給したる普通恩給は、これを返還するを要せずという規定を設けてやればいいと私は考えるのであります。青谷課長はいかなる御見解を有せられるや、明確なる御答弁を願いたいと思います。
  20. 青谷和夫

    青谷説明員 ただいま受田先生からお話がございましたが、確かに、附帯決議の御趣旨はよく承知いたしております。われわれといたしましても、この二点につきまして、いろいろの角度から検討してみたのでございますが、若年停止の問題につきましては、とにかく末帰還者についてだけそのワクをはずすということの結論を得るまでには、なお自信を得ていないということを、先ほど申し上げた次第でございます。  それから、その次の死亡の問題でございますが、先ほど申し上げた言葉が足りねかったために、先生から今おしかりを受けたかと思いますけれども、決して私は、そろばんをはじいてみた結果こうだからということを言うつもりはなかったの、でございまして、この問題をかりに右よう趣旨に沿ってやるといたしますと、どういうことになるかということを、慎重に検討した次第でございます。末帰還公務員にかかる公務扶助料支給は、その死亡の時期にさかのぼらせるといたしますと、死亡判明のときまで生存して抑留されている者とその留守家族関係という意味合いで律せられて参っておりますところの恩給法における取扱いを、現実死亡の時期にさかのぼって、すべてくつがえしていかなければならない、こういう結果になるかと思うのであります。そこで、そのような措置をかりにやるとすれば、先ほど申し上げましたように、普通恩給公務扶助料調整の結果、大多数の者は不利益を受けることになるのではないかということを申し上げた次第であります。  それから、その次に、この問題について見ますと、御承知のように、従来未帰還者給与につきましては、その者があくまで生存して抑留されているという前提のもとに、未帰還者のうち、元陸海軍に属していた者で未復員の方方に対しましては、未復員者給与法適用されており、ソ連及び中共地域内の邦人で、ソ連地域内の未復員者と同様の事情にある者、すなわち特別未帰還者に対しましては、特別未帰還者給与法適用されておりました。これによって、本人に対する俸給、それから月額千円の扶養家族手当一定親族支給するということによりまして、留守家族援護の実を上げて参ったのでございます。またこの未帰還公務員に対しましては、留守家族援護見地からいたしまして、一般職の職員の給与に関する法律規定による人事院規則のたしか九の九であったと思いますが、それによって扶養親族に対して月額二千四百三十八円から一万八百八円までの俸給に加えて、扶養手当がその親族支給されておったように記憶いたします。しかし、終戦後すでに相当の年月を経ております現在におきましては、このような俸給支給建前はきわめて不自然な姿であるのみでなく、いろいろの不都合も生じておりましたので、むしろ端的に留守家族留守家族として援護するという見地から措置することが望ましいという御趣旨であると思いますが、昭和二十八年八月になりましてから、未帰還者留守家族に対する統一的な社会立法としての未帰還者留守家族等援護法というものが制定されたように記憶しております。そして、これらの場合におきましては、所定の条件を備える留守家族留守家族手当を、それから未帰還者留守家族には、未帰還者帰還または死亡判明まで支給するという建前をとってきたのであります。それで、恩給におきましても、この未帰還者留守家族等援護法立法趣旨に沿いまして、未帰還公務員につきましては、生死不明の間は、あくまで生存し、かつ在職しておるという考え方に立ちまして、恩給法の分野において、留守家族生活を援護するために、未帰還公務員恩給関係をいつまでも不安定な状態に置くことは、かえってその留守家族方々生活を援護するゆえんではないというところから、その者が普通恩給についての最短恩給年限に達しておる場合、そのときまで在職したものとみなして、その留守家族の方に普通恩給本人にかわって給付するということにしておるのでございます。また未帰還公務員死亡判明した場合におきましては、恩給法は、未帰還公務員死亡判明のときから、遺族に公務扶助料支給することにしてあるのでありますが、これはただいま申し上げましたように、死亡不明の間は、生存し在職しておるという建前ですべて未帰還者に対する援護法関係が組み立てられており、しかも未帰還公務員普通恩給留守家族死亡判明の日まで受け取って、また、未帰還者留守家族援護法による留守家族手当支給も、死亡判明の日まで行われておるということを前提として、このような規定がなされておるのであります。従いまして、今まで申し上げましたこの援護法による援護から漏れたものがあると申しましても、これを救済するために、恩給の面においてこれを救済しなければならないという理論上の根拠を見出すには、実はあまりにも自信がなかったわけでございます。  それで、恩給法におきまして、他を犠牲にして、公務扶助料支給現実死亡の時期にさかのぼらせるということはどうかということで、実はいろいろな角度からなお検討いたしておりますが、先ほども申し上げましたように、いま少し時日をおかし願いたいということをお願いしたわけでございます。ただ私個人の考えでございますが、援護から漏れた方々に対しては、むしろ他の社会立法の分野において処遇を考えるべきではなかろうかというふうにも考えておるわけでございます。
  21. 受田新吉

    受田委員 私のお尋ねしている点に触れられない御答弁のところが相当あったのですが、私のお尋ね申し上げている点は、現行恩給法、すなわち昨年の恩給法の一部改正法律附則の三十条の特別規定のところの、いわゆる未帰還公務員普通恩給に限った点についてでありまして、援護法のことをお尋ねしておるのじゃないのです。この恩給法に基く未帰還公務員の擁護という意味附帯決議をいかように取り扱ったかをお尋ねしておるのです。すでに一年になんなんとしておる今日、なお研究中であるということになれば、果していつの日にかこの実を結ぶのであろうか、前途はなはだ不安を感ずるのであります。今、課長は、第一に、若年停止規定を削除することは、恩給の体系をくずすとおっしゃったけれども、傷病、疾病等で年金や増加恩給を受けておる人々というものは、年令のいかんを問わず、全額をもらっておると私は思います。まだ帰らざるこれらの人々は、この恩給上の特権でございますけがをしたり、病んだりして全額をもらっておる人々と同じように、祖国に帰るまでは労働能力がない、日本で働こうにも働く立場に置かれていない、他国の地で苦労しておられる人々であるから、当然傷病やけがをしている人と同等に、全額支給して、若年停止規定を削除する該当者であると思うのです。決してこの恩給法の体系をくずすものではないのです。いわば、傷病、疾病をして、一人前の仕事ができない人と同じ条件にあるものと思うのであります。だから、この際、若年停止規定を削除したらどうかと私は申し上げておる、これが一つ。  もう一つの方でお答えいただきたいのは、死亡の日にさかのぼって公務扶助料支給すると、大多数の人は不利を招くと仰せられますが、公務扶助料というものは、一番下の兵であっても三万五千ほどもらえているのです。ところが恩給であったならば、兵であれば二万円をちょっと上回るしかないのです。そうしてみると、下級者においては普通の恩給の方がはるかに低い。公務扶助料の方が五、六割から七、八割高いところにある。そうすると、大体大尉から少佐くらいまでは、むしろ公務扶助料の方が大きいと思うのです。そういうところにある人の方が苦労をしいるのですからそういろ人たちに、死亡の日にさかのぼって公務扶助料支給する規定が設けられるならば救われるのです。これは大多数の人が損をすると今仰せられたが、事実は逆であって、さような御答弁では趣きが違うと思うのでありますが、いかがでしょうか。今私がお尋ねした、援護法などを今お話し合いになされなくて、恩給法関係だけについて御答弁を願いたい。
  22. 青谷和夫

    青谷説明員 若年停止の問題につきまして、先生の今おっしゃいましたことはよくわかります。確かに、実質的にいえば、傷病者と変らないというお気持もわかるのでございますが、これはあくまでも本人恩給を国内にいる人が本人にかわってもらう、こういう建前をとっておりますので、その点についてはまだよう踏み切らないわけでございますが、なお再考を加えて、至急に結論を出すようにいたしたいと思っております。  それからもう一つ先生がおっしゃいました公務扶助料普通恩給関係でございますが、今申し上げましたのは、留守家族として、未帰還公務員普通恩給本人にかわって受け取っておる場合に、かりに死亡の日にさかのぼって返還する、つまり今まで普通恩給をもらっていたわけでございますので、死亡のときにさかのぼって返還すると  いうことになりますと、返還しなければならない普通恩給の額と、新たに給付される公務扶助料の額を比べてみますと、たとえば兵のところで申しますと、公務扶助料が三万五千二百四十五円、普通恩給若年停止にかかっていないと見まして、全額もらえることにいたしますと、二万六千六百円になっております。それから少尉のところで公務扶助料が四万六千二百円・それから普通恩給が四万六千二百円、尉官のところは全音公務封別科亀普通恩給も同じでございます。ただ佐官になりますと、少佐のあたりでは、公務扶助料が八万五千百二十円でありますが、普通恩給の方になりますと八万九千六百円となりまして、逆に普通恩給の方が多くなっておる。対象人員は先ほど申し上げましたように、未帰還公務員留守家族として受けておる普通恩給の裁定件数は、最近の統計によりますれば百八十五件でありますが、そのうち佐官以上の者が大多数を占め、百六十四件、こうなっております。ですから八割八分ということになっております。ほとんど大部分が佐官以上、こういった面から申し上げただけであります。
  23. 受田新吉

    受田委員 二十八年の七月末に普通恩給に達したるものと認められた場合で、そのと遂には長期に軍務に服した人でないとそれが該当しない、そうすると、昭和十五年ころからの分しかそれに入らない、そういうような計算で仰せられておるわけですね。ところがそうなれば、より一そうここで問題が起るわけなんです。公務扶助料というのは、死亡の日にさかのぼって支給するというならば、兵であっても三万五千円までみなもらえるのです。そうして、留守家族手当の場合は家族加給があるが、公務扶助料にも家族加給が四千八百円あるのです。その点においては、留守家族手当をもらっておる家族も、公務扶助料支給を受ける家族も同じことになる。それからもう一つ、八割幾ら佐官級がある中に、将校は長期に軍務に服しておるからそういうことになったということだが、そういう人人には、今申し上げましたように、一度国庫から支出した金は、もう返還しなくてもいいという規定を設ければいいのであって、それを一々さかのぼって差引返還を命ずるなんという、そんな非常識なことを政府の方がおっしやるそのこと自身、私はどうかしておると思う。それはもう当然戻さなくてもいいようにしなければならぬ。そういう規定を設けておけば、新たに法律改正をすれば、兵で昭和十八年ごろに入営した人は、ことしでもう十三年になるわけでありますから、二十八年現在で普通恩給に達せざる人も、またその後三年たった今日あたりでは、大多数が普通恩給の対象になる。当然支給対象になるから、まだ帰らざる尉官以下が大多数救われることにもなるのであるから、これは当然そういう措置がなされなければならぬときにきておるわけであります。そういうことを考えたならば、一度支給した分は返さぬでもいい、支給せられざる分については、条件のいい公務扶助料の方を支給するというようにして、親切を尽すという方が私はいいと思うのです。そういうような意味で去年の国会において附帯決議をつけたのであって、一度支払ったものを取り戻すような措置をすべしという附帯決議はつけておりません。国会意思を尊重されたならば、那辺にわれわれの志すところがあるかをおくみ取りなされたならば、当然今回の恩給法改正案くらいは政府提案として、昨年の国会の強力なる要望の附帯決議の点を法文化していただかなければならぬと思います。  もう一つ、初めの若年停止規定について、傷病者と同じ条件だということを言っておるが、これは家族がもらうんだからなんということは、はなはだ変な解釈である。しからば、傷病者の分はなぜ若年停止がないかということを考えたならば、十分働く能力がないからやったのだが、まだ帰らざる人は、働く能力が何もないどころか、働きようがないのであって、このくらい悲惨なことはないのです。世紀の悲劇の対象者です。この際恩給法建前をあまりかたくなに考えられて、世紀の大悲劇を受けられた人々をおろそかにするというような考え方があったならば、その衝に当られたあなた方は、歴史的に、冷厳なる冷血動物、冷血人間としてのそしりを受けると思うのです。この点、国会附帯決議は十分生かされて措置さるべきであると思う。政府は近ごろ国会無視である。この点、臼井委員の質問に関連して、今、内閣委員会でもこの問題が審議されておりますが、ここにおられる山下厚生政務次官は、昨年以来これの強力な支持者であった。政府部内に今籍を置いておられるが、おそらく恩給局にも猛烈な折衝をされておると思います。もしやられておらなければ、それはやっていただきたいと思う。一つ早急に、その措置をあわせお考えあらんことをお願いして、私の質問を終ります。
  24. 原健三郎

    原委員長 中山マサ君。
  25. 中山マサ

    ○中山(マ)委員 私、ただいまいただきましたこの資料を見ておりますと、ここにも冷血動物のもう一つの例があるように思うのでございます。いつか私が一時間余りを費しまして、るるお願いをしました満州開拓団の問題でございますが、これを見ておりますと、九千五百五十というのが開拓団、報国農場というのが四百五十、この人たちがやはりまだ何もしていただいてない。まことに政府はお正直でいらっしゃいまして、ありのままをここへ出して下さっておるのでございます。また、その下を見ますと、備考の方には、「ソ連参戦時までに関東軍に召集され、又は軍属として雇傭されていた下記の者・及び、満州開拓青年義勇隊員は、本表に含まれていない。」と、はっきりと書いていただいておるのでありますが、四万六千百人というのが開拓団、報国農場の方が百となっておるのであります。今までの委員の方々お話を聞いておりますと、いわゆる公務員ということで論議が進められております。なるほどこの人たちは、むろん公務員などという名称はつけられないかもしれませんけれども、あのときに、この人たちが向うに行った状況を見ておりますと、準公務員のように私は考えられるのでございます。自分の意思で行ったのではなくて、いわゆる国家一つの国策に沿うてこういう人たちをかり出した、というとちょっと語弊がありますけれども、ほとんどそういうような感じがいたすのでございます。それで、こういうような人たちに対しての処遇を厚生省はどうお考えになっていらっしゃるかということを、まずお尋ねしてみたいと思うのでございます。
  26. 田邊繁雄

    田邊政府委員 開拓団等の所属者であって、現在末帰還となっている方々で、ソ連中共地域におきましては、末帰還者留守家族等援護法における末帰還者として処遇しているわけであります。すでに死亡処理の終った人についての処遇でありますが、現在の法律では、戦傷病者戦歿者遺族等援護法の中には、明確には開拓団員を対象とした規定はございません。しかし、開拓団の方々は、その置かれておりました当時の状況及び死亡されました当時の状況を考えますと、まことにお気の毒でもありますし、その点は十分考慮しなければならぬと思います。この戦傷病者戦展者遺族等援護法の第三十四条の第五項の規定によりまして、できるだけ救済の措置を講ずるように進めております。と申しますのは、第三十四条の第五項には、陸、海軍の要請に基いて戦闘に参加して死亡した方には、三万円の弔慰金を支給するという規定がございます。この規定を広く読みまして、開拓団等の方々が、それぞれの任務地において、あるいはその任務地から引き揚げのセンターに移動される間において、気の毒な目にあって、死亡された場合におきましては、これを戦闘参加者と特に解釈をいたしまして、三万円の弔慰金を支給するようにいたしておるわけであります。現在この規定趣旨にのっとりまして、及び先ほど申し上げましたその解釈にのっとりまして、できるだけ調査を進めて、調査のできたものから順次手を伸ばして踊ります。御承知のように、世話課はいろいろと手持ちの件数があるようでございまして、次から次と援護法の改正されるのに追われまして、開拓団の死歿者の方に対する調査の手も十分伸びてないような点もあるやに伺っております。この点は手の許しまする限り係の方に調査を急がせまして、死亡した方があれば、三万円の弔慰金だけでも早く支給するようにいたしたいと思います。
  27. 中山マサ

    ○中山(マ)委員 私が考えますのに、こういう開拓団は、私が先ほど申しましたように、準公務員的存在でございまして、自発的にかの地へ渡って、非常に悲惨な目にあった方も多々おありでございまするけれども、そういう人とはいささか事情が違うように私は考えるのでございます。準公務員という言葉の方が適切だと私は思うのでございますが、今いろいろと範囲が広げられておる。国家も少しずつ経済情勢がよくなってきている。このごろ経済報道を聞いておりますると、外貨もずいぶん獲得してきたというような、非常に明るい見通しが放送されておりまするのに、こういう人たちは、一向その恩典にあずかれないとなりますると、私は国内にいろいろな不満が起るのではなかろうかということを心配する者の一人でございます。それで、私がお願いいたしますのは、今わかっておる人たち炉処理されましたならば、一つ早急にこれをお広げになりましたと同じお気持で、この人たちにも広げていただきたいということを私は切にお願いをする次第でございます。何しろ全部を向うへ持っていって、全部失ってきているのですから、帰るべき家はないのであります。ほかの軍人さんたちも、生命の危険で非常にお気の毒でございますけれども、その人たちは、大体帰るべき家があるのです。この人たちは何もないということを考えますると、一つあたたかい気持で、この人たちに立ち上らせていただきたいと思うのでございます。この点について、御意見でもございましたら御答弁願います。
  28. 田邊繁雄

    田邊政府委員 中山先生のお話になった点で、ちょっと聞き漏らしたのでございますが、立ち上りという言葉でございますが、これは生存して無事にお帰りになった方の問題でございますか。
  29. 中山マサ

    ○中山(マ)委員 ここに生存者と書いてございますね。こういう人たちが帰ってくるときにですね。
  30. 田邊繁雄

    田邊政府委員 それは、引揚者の援護の問題になると思いますが、引揚者の援護の問題といたしましては、開拓団の方がお帰りになった場合におきましては、できるだけその御希望に応じまして、開拓地の入植等につきまして、農林省の関係の部局と連絡をとりまして、極力ごあっせんをするように今日まで努力しておったのでございます。場合によりましては、引揚者の住宅の建設の場合におきましても、私どもの方から、開拓地にマッチして建てて差し上げる、それに必要な資金は農林省の方から出る、こういうような、その場その場に即したやり方をやって今日まで来たし、また更生資金の貸付等も実施いたしておるわけでございます。私が先ほど申し上げましたのは、現地において、きわめてお気の毒な状態のもとにおなくなりになった方々に対しましては、第三十四条第一項の規定運用によりまして、今日まで、また今後もこの規定によってやって参りたい、こういうことを申し上げたわけであります。今後も開拓団の方々がお帰りになりまして、その方々で、開拓地に入って入植をなされるという御希望の方に対しましては、関係の機関と十分連絡をとりまして、できるだけ御希望に沿うように努力をする考えでございます。
  31. 原健三郎

    原委員長 戸叶里子君。
  32. 戸叶里子

    戸叶委員 外地に抑留されている方方が、一日も早く帰ってきてほしいということは、国民がひとしく願っているところでございます。ところが、留守家族の方の身になってみますれば、精神的にもどんなにか苦しいことでございましょうし、さらにまた、物質的にもなかなか容易でない生活をしていらっしゃる方が多いと思うのです。そういう立場から考えてみましても、この留守家族援護法というものを修正して、もっと適当に援護してあげなければならないという面がたくさんあると思うのです。そう考えて参りましたときに、私はまず第一に、この法律の中に国家が補償するということをはっきり打ち出した方がいいと思うのです。先ほどの臼井委員の質問に対して、援護局長は、広い意味でいえば、国家補償と同じだからというふうにおっしゃっておられましたが、そうであるとするならば、やはり法律の中にそういうことをはっきり打ち出した方がいいと思います。これを打ち出せない点は、打ち出した場合に、こういうことが弊害として起きてくるというようなことがありましたら、それを伺わせていただきたい。
  33. 田邊繁雄

    田邊政府委員 率直に申しまして、戦傷病者戦歿者遺族等援護法には、国家補償精神が書いてある、こちらには書いてない、それはどこに違ってくるかと申しますると、留守家族の範囲を片方は限定している、遺族援護法の方では、遺族の範囲を生計依存ということでしぼっていない、だから留守家族援護法の方では、未帰還者が帰ったならば、その者によって生計を維持するであろうと認められるという制限がついておる、この違いであります。これはどちらがいいかということでありまするが、私は、一般邦人まで含めて援護の手を広げておる一方の体系である留守家族援護法におきましては、現在の法律の方が適当ではないかと考えております。先ほど申し上げました通り、援護ということは、やはり援護を要する方を援護するのでありまして、同じ留守家族の中にも援護を要しない方もおられるわけでございますから、それを恩給と同じように一率平等に手当を差し上げるということは、いかがなものであろうかと考えるわけであります。ただ先ほども申し上げました通り今日すでに十年以上の日月を経過しておりまするし、家族生活実情お話通りだんだんと苦しくなっておるという点も十分考えられますので、実情に即してこの規定運用して、御趣旨のように、家族生活に困って、お気の毒な目に合うことがないようにして参りたい、こう考えておるわけでございます。
  34. 戸叶里子

    戸叶委員 生活に困っておられない方も多数あるというようなお話でもございましたけれども、私どもが当ってみた範囲内におきましては、大体において苦しい方が非常に多いわけなのです。ことに長い年月を経ておりますので、私はそういうお考えでなく、むしろお気の毒な方たちが多いのだからという考え方の上に立って、この援護法考えていただきたいと申し上げたいわけなのです。先ほどのお話では、国家補償ということをはっきり出すと、留守家族援護法の第七条の生計依存ということと違ってくるとおっしゃったわけでございますが、それでは第七条の生計依存という規定を排除するというお考えはございませんか。つまりもっと広くするようなお考えはないでしょうか。
  35. 田邊繁雄

    田邊政府委員 これは考え方の相違でございますが、国家補償か社会保障かという言葉も一時よく言われたのでございますが、われわれは、国家補償でありながら、同時に社会保障的な考えを取り入れていくという考えでおるわけでございます。それで、遺族援護法の場合に「国家補償精神に基き」ということを書いてあるわけでございますから、もし「国家補償精神に基き」ということと並べて同じようにするならば、内容も同じようにしなければならぬと思うのであります。そういう考えから、国家補償という言葉を避けたのでございます。そこで、ただいま第七条の生計依存関係をとった方がよくはないかというお話でございますが、私どもの考えでは、法律建前としては、未帰還者が帰った場合においてその者によって生計を維持するであろうと認められるという家族に限定することは、必ずしも悪いとは思わないのでございまして、むしろこういう法律の方が、援護という名前にふさわしい法律ではないかと考えるわけでございます。お話通り、この問題は、これだけなら問題はないのでございますが、未帰還者の大部分というものが、今日どんどん死亡の処理をされていくという実情もございます。そうしますと、その方は恩給の方で公務扶助料支給されていく。早ければ早いほど、公務扶助料は早くもらえる。公務扶助料生計依存関係がない、また年令制限がない、そこに問題があるわけでございます。つまり留守家族援護法といものと恩給法というものとの立て方が違っておる関係上、死亡処理がおくれればおくれるだけ、そういうふうな困った事態が生じておるのであります。そこをどういうふうに調整していくかということが、問題になるわけでございます。この点は確かに問題でごさいますので、先ほど申し上げました通り恩給にわたる問題でありますので、恩給局とも十分連絡を密接にいたしまして、十分研究して参りたいと考えております。
  36. 戸叶里子

    戸叶委員 この問題は、前からずいぶん委員会で討議された問題だと思うのです。これ以上のことを主張いたしませんが、違った角度からお伺いいたしたいのです。それは、この法律によって援護を受けている件数は、どのくらいでございますか。
  37. 田邊繁雄

    田邊政府委員 未復員者が圧倒的に多うございます。未復員の場合をとってみますと、全体の未帰還者の六六パーセントが留守家族手当または特別手当を受けておられます。件数は二万三千百七十二件でございます。未復員者の数は三万五千人であります。
  38. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、ここで今私ども資料をいただいたわけですが、その資料によりますと、収入依存の条件を排除した場合の件数が七千七百九十三件というふうに出ているわけです。それだけなら、今受けておられる全体の数からみれば、三分の一くらいですし、これを加えられても、予算として二億程度で、ここに二億八千万というのですけれども、実際のところはそんなにないだろうというような話も聞いておりますので、もしそうであるとするならば、私どもはぜひともこの第七条だけでも何とか改正し、この生計依存の項目の排除だけでも何とか考えていただきたいというふうに考えるわけでございます。それに対しての御意見を伺います。
  39. 田邊繁雄

    田邊政府委員 所要金額の問題は別といたしまして、第七条を改正するという点につきまして、率直に申しますと、一面もっともな点もあり、一面ちょっとどうかと思う点もあるのでございます。留守家族援護法という建前で、先ほども恩給局の方から御説明がありました通り一般邦人も国家公務員である軍人も一本にして、その留守家族の援護ということでやっておるわけであります。この点は恩給と非常に違うわけであります。恩給国家公務員でありますから、給与体系で出発しております。これは給与体系でなくて、一般邦人も入れた援護ということで出発しております。そこに一つの問題があるわけでございます。それは厚生省で立法しておりますので、援護法というものである以上、あるいは社会立法である以上、やむを得ないことでございます。その出てくるギャップをどういうふうにして埋めるかということが問題になるわけでございます。この点は、今どうすれば一番いいかということはちょっと申しかねますが、死亡を遡及させるという議論も一つの行き方であると存じます。しかし、今後の問題としてどうするかという点は、もう少し十分研究さしていただきたいと思います。
  40. 戸叶里子

    戸叶委員 私どもは、この援護法を見ましたときに、最初に申し上げましたように、いろいろ改正していただかなければならない点があるのでございますけれども、なかなかそれも急には困難のようでございます。しかし、今この委員会で問題になっておる点くらいは、ぜひとも早急に改正していただきたいということは、全委員の希望だろうと思います。法律的に改正することがむずかしいとするならば、何らかの形で効果あらしめるような方法を、この委員会としてもぜひとっていただきたいということを要望いたします。
  41. 原健三郎

    原委員長 次に大橋忠一君。
  42. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 私は、満州、蒙古関係について、少しお尋ねいたします。満州及び蒙古の政府の役人というものは、外国であるという形式的の意味におきまして、恩給年限に加算されない。従って、公務扶助料ももらえない。何らの国家的の恩典に浴することができないのは、私は非常に不公平なやり方だと思うのでございます。満州国は、表面的には独立国という形をとっておりましたが、実はあれは独立国ではなくして、日本の領土——日本の領土というよりも日本陸軍の領土でありまして、従って、満州国の官吏というものは、全部関東軍の推薦によって任命されるといいますが、事実上は関東軍が任命し、また関東軍が罷免するというものです。従って、日本陸軍を助ける目的をもって実は雇われておったものであります。本来そういうものにすべきものじゃない。これは当時の御詔勅にも明らかなように、完全な独立国であるべきものを、日本の無統制のために、ついに、そういうものになってしまった。それがために、ついに支那事件が起きて、今日のようなことになった根本原因は満州国にある。しかしそこに働く人に罪はない。これは日本陸軍の政策によってそういうようなものになってしまったが、内実的には、これは日本の関東庁の役人と何ら違いのない仕事をやっておる。関東庁は、関東州という安全地帯におったのだけれども、満州国の副県長というものは、北満の僻地の非常に危険な第一線におって、軍の指揮下に最も危険な仕事を分担しておったにもかかわらず——これは蒙古においても同様です。ただ単に外国であるというしゃくし定木の形式論によって、何らの国家的の恩典に浴さないという、これほど不公平なことはないと思う。今や満州国関係の官吏が団結いたしまして、満州国、蒙古政府の在勤年限を恩給年限に加算するという運動を実は始めておることは、御承知通りであります。この満州国や蒙古の居留民また未帰還者の中にも、これが私は一番多いのじゃないかと思っておる。副県長のごときものは、ほとんど全部逮捕されて、ソ連に連れていかれ、協和会のメンバーのごときも、ほとんど全部戦犯者として、ロシヤの方では、日本人中の日本人として、みな厳罰に処せられておるのであります。しかるに、日本においては、これは外国の官吏だというので、何らの恩典も加えておらない。こういうばかげた不公平なことは、私はおよそないと思うのであります。こういう満州国官吏あるいは蒙古政府の官吏というものに対して、引揚援護局立場においては、一体どういうような待遇を考えておるか、普通の在留民と全然同一であるか、あるいは何らかそこに色をつけた待遇の差別があるかないか、その点を一つお尋ねしたいと思う。
  43. 田邊繁雄

    田邊政府委員 私どもの扱っておりまする法律及び援護の面につきましては、今日抑留または未帰還となっている人であるならば、それが過去の軍人であろうとあるいは満州国の官吏であろうと、蒙古の居留民であろうと、これは区別がないわけでありますから、帰って参りますれば、一様に援護もいたしまするし、手当も差し上げます。また、その方が抑留中でございますれば、その家族に対しましては、未帰還者留守家族等援護法によって、ひとしく留守家族としての処置をいたしておるわけであります。ただお話の官吏としてどうこうという問題は、これは私の方の関係のことではございませんので、これは別の方から一つ答弁をお願いいたします。
  44. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 官吏じゃなくても、たとえば、満州開拓青年義勇隊のごときは、死んだ場合には戦死者同様に扱われておる。ところが満州国の副県長のごときものでも、多数殺されたのでありまするが、こういう者は、何らそういう恩典を与えられておらぬのであります。この点はいかがでありますか。
  45. 田邊繁雄

    田邊政府委員 満州国の軍人または満州国の警察官等が、満州における戦闘において、陸海軍に協力して戦死をしている例は、たくさん承知いたしております。また終戦後、未帰還状態の場合において、向うに拉致連行され、不幸な犠牲になられた方もあると承知しております。こういった方々は、それぞれ先ほど申し上げました遺族援護法におきまして、弔慰金を差し上げる規定ができております。戦闘参加者あるいは特別未帰還者というのがございまして、そういった方々死亡されました場合においては、三万円の弔慰金を差し上げることになっておりますので、そういう事実が判明いたした場合におきましては、調査をいたしまして、支給いたしたいと思います。
  46. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 そうすると、今度は、いただいたこの資料の中の、つまり新たに留守家族手当支給を始めるもの七千七百九十三件とありますが、この中にはやはり満州国官吏というようなものが入っておるのか。あるいは新たに留守家族手当の加給の対象となるもの四千五百七十三件、このどちらに入  るのですか、この満州国の役人は。
  47. 田邊繁雄

    田邊政府委員 現在未帰還となっている人につきましては、その留守家族留守家族手当が出ておるわけでありまするが、同じ満州国の官吏の方であっても、内地に家族のある方とない方とあると思うのであります。ある方で、先ほど申し上げましたような条件に該当する人に対しましては、留守家族手当が出ているわけでございます。そういう方々は、現在支給を受けている家族の中に入っているわけであります。それから、先ほど申し上げましたようなわけで、所定の留守家族のいない場合には、留守家族手当が出ないわけでございます。今度新たに対象になった場合と申しますのは、そういった方々を含めて全体をいうわけでございまして、現在受けておられない方の数がここに出ているわけであります。その中には、もちろん満州国の官吏のような方も入るわけでございます。ただ留守家族手当を受ける場合というのは、たとえば、妻、子供とあった場合、留守家族手当を受ける方は妻でありまして、加給の対象となるというのは子供さんをいうわけでございます。そういうわけで、書き分けております。
  48. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 満州国の役人は、一般居留民としてこれは計算されておるのですな。満州国の役人は、警察官でも、今言った副県長のようなものでも、すべてあなたのこの待遇上、一般の居留民と同様なんでしょう。何かそこに差異がありますか。ありとすれば、どういうような差異があるのですか。
  49. 田邊繁雄

    田邊政府委員 現在の状態で援護しておりますので、その点は変りございません。
  50. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 それでは、恩給局の方に一つお尋ねしますが、これは実は満州国官吏炉長い間運動しておるが、いわゆる外国であるという理由でもって満州国や蒙古政府に勤務した年限を恩給に加算してないのです。しかも今まで恩給局の方からそういうことを言っておられたのですが、これは満州国や蒙古政府というものの本質についての理解がないからだと思うのです。どういう理由で、満州国や蒙古政府の官吏だけそういうふうに差別待遇をされるのか。われわれから見ると、関東庁の役人と本質的に何ら相違がないのです。またそういうようなふうにしたから、実はこういうような結果になったのです。あれがほんとうに満州国を独立国として、御詔勅に示されたように扱えば、こんなふうになりはせぬのです。私はそれをよく知っておる。一番大きな原因は、実は満人の土地を、むやみに国策と称して、何百万町歩取り上げて、そうして日本からむやみに、支那人と同じ数にならぬと遂には民族協和ができぬなんというへ理屈をこねて、無理やりにどんどん送ったために満州の農民が怒って、ついに満州国では、関東軍の武力に圧迫されて、仕方がないから、万里の長城を越えて、支那本部においてこれが爆発した。それがつまり日本が支那事変という泥沼に入った根本原因だ。そのことを一番よく知っているのは実は僕なんです。なぜ知っているかというと、僕は当時多分そうなるだろうと思った。満州事変のあとに、あの北満の荒れ地にどしどし日本人が入り込んだ。これが必ず禍根になるというので、僕は当時、石原、板垣なんという青年将校が奉天におったが、あれを私はもらい受けたことがある。それからずっと私は関係しておった。これがそういうことの重大なる原因になっておるのです。そうして、これを日本以上の日本にしてしまった。その手先に使われたのが、実に哀れなる満州国の官吏だ。僕は当時あれはほんとうの独立国になると思って、一つ自分の理想にかなうような政治をやろうと思って、僕は外務省との関係を断ち切って、要すれば僕は帰化するまで決心をもって入った。そうすると、そういうものになってしまったのだから、僕は馬占山とともに実は脱退をしようと思ったが、ついに僕はしんぼうをしてあそこにおった。(笑声)今になると、非常に残念なんです。従って、満州国や蒙古というものの本質をもう少し考えていただいて、あそこに入ったところの、満州国の役人及び蒙古政府の役人というものを、私は当然日本の公務員として扱っていただきたいのです。この点についての恩給局の御所見をお伺いしたいと思う。私はいいのです。私はそういうふうに、日本の役人として行っているのじゃないのだから……。
  51. 青谷和夫

    青谷説明員 ただいま大橋先生のお話の点は、多分こういうことじゃないかと思うのでございます。当時の恩給法——今は削除になっておりますけれども、当時の恩給法によりますと、公務員であった者が、その所属官庁の長官の命を受けて満州国に転任になっていくという者につきましては、その満州国の政府の官吏として勤めていた在職年は、日本の官吏の在職年と合算することになっていました。ただし、その場合に、条件が二つありまして、たとえば当時の内務省から満州国に派遣を命ぜられる際に、普通恩給年限に達しておる者は、これは向うの期間を見ない。もう一つは、こちらへ帰りまして、再び国家公務員にならなければならない、この条件がついておるわけなのでございます。大橋先生のお尋ねの場合はどういう場合かと申しますと、本人が自由意思で満州に渡りまして、そうして満州国政府の官吏になった。その人が今度終戦後日本へ帰りまして、日本の官吏になった、あるいはまた都道府県の公務員になった。その場合に、満州国時代の期間をこちらの国家公務員なり地方公務員なりの期間に合算してくれという御要望だろうと思いますが……。
  52. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 そればかりではない。僕はいいが、日本の政府の役人で、向うへ行って勤務しておった、そしてやめてしまった場合も入っておる。
  53. 青谷和夫

    青谷説明員 それも抜けます。今申し上げましたように、こちらへお帰りになりましてもう一度お勤めにならないと恩給がつかない。理屈を言いますと、たった一日でもいいわけなのです。その場合も確かに恩給からはずされております。そのはずされておる方方に対して、何とかこれを救済しろという御要望のあることも承知いたしておりますが、大橋先生の場合ですとはっきりしておりますけれども、こちらへ帰ってきた人は、どうも向うの在職年限と履歴事項がはっきりしていないのです。恩給は、御承知のように、一定の在職年限と最後の俸給を基礎に、して計算しますので、向うで満洲国政府の官吏におなりになりましたとしても、それが果してこちらの官吏の当時の雇員であるか、用人であるか、事務官であるかということすらもわからない。要するに履歴事項がはっきりしていないという点に、非常に大きな難点があると考えております。予算の面の制約は、対象人員がおよそ何名になっておるか私どもはっきりわかりませんので、まだ予算のことまでは考えておりませんけれども、そういった点について、今、考慮しておるようなわけでございます。
  54. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 これはあなたが言われたような者もおるのです。ところが、当時の満洲国の官報が残っておるので、大部分ははっきりしておると思うのです。ただ、今までわれわれの聞いておるところでは、ただ単に外国の官吏である、こういう理由をもって、恩給法で除外されておる。ことに私が最も憤慨することは、満洲国の警察官や県の副県長で殺された者がたくさんある。戦死しているのです。ところが、この副県長や警察官で戦死した者が、取扱い上は、開拓義勇団の戦死した者に劣っているのです。一緒ですか。これは違うのです。外国の官吏であるがゆえに、同じ待遇を受けていない。こういうことは非常におかしいと思うのですが、いかがですか。
  55. 田邊繁雄

    田邊政府委員 満洲国の軍人あるいは警察官等が戦傷病死しているような場合、あるいは殺された場合におきましては、先ほど申しましたように、遺族援護浪の第三十四条の第五項の特別未帰還者または戦闘参加者という条文で、そういう者を救済するように援用しております。殺された場合と申しましても、けんかをして殺されたとか、  私闘の場合は別でございます。特別未帰還者という、相手国によって抑留されておるという状態、あるいは抑留と同じような状態のもとにおいて、向うの監禁等によって、拘禁中に死亡したような場合には、特別未帰者として扱って、弔慰金三万円を出すようにいたしております。
  56. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 開拓団の団員で戦死した者、死んだ者、これは日本の軍人の戦死した場合と同じ待遇ですか、違うのですか。開拓義勇団員の戦死した者は、満洲の警察隊や満軍の中に入っておる者や、副県長などの戦死した者と待遇は同じですか。そこは違っておるのですか。
  57. 田邊繁雄

    田邊政府委員 開拓団員で、応召して軍人になって戦死をされた方は、軍人でございます。応召しないで開拓団員として戦死になった方は、三万円の弔慰金でございます。その点で同じでございます。
  58. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 とにかく私はここで全面的にお願いしておきますが、満洲国及び蒙古の政府の警察官や役人、これは一つ援護法上においても、また恩給法上においても、当時の日本の国策の第一線に、最も危険な場所において働いたものとして、同じ待遇をしていただきたい。これは今、国民的な常識だろうと思いますが、その点を要望して、私の質問を終ります。
  59. 原健三郎

    原委員長 受田新吉君。
  60. 受田新吉

    受田委員 一、二分だけ正規の質問をさしていただきます。田邊局長にお尋ね申し上げますが、いわゆる戦傷病者戦没者遺族等援護法規定と、未帰還者留守家族等援護法規定とは、精神において違うところがありますか、同じでございますか。
  61. 田邊繁雄

    田邊政府委員 精神において若干異なるものがございます。これは、留守家族等援護法の第一条に書いてありますように、未帰還者が、今日特別の状態に置かれておる。この状態の解消のために、国は引き揚げ促進と調査究明に努めなければならないということが、第二十九条にうたわれております。従って、それは国家責任というところに結局来るのではないか。従って、その間、留守家族手当支給し、援護してあげる、こういう考えでございます。これは広い意味においては国家補償理念に発するもの、こう申し上げていいだろうと思います。従って、一般邦人も対象になって参ります。遺族援護法は、これは公務員が公務のために災害を受けた場合においては、その災害に対して国が補償するという公務災害補償の精神でございます。従って、同じく国家補償と申しましても、片方は国家公務員に対する国家の災害補償であります。片方は国家公務員であるといねとにかかわらず、今日未帰還という特別の状態に置かれておるものに対する国の国家補償内面から発する援護である、こういうことでございまして、関連するところはありますが全く同じとは言えない。若干そこにニュアンスの違いがあります。
  62. 受田新吉

    受田委員 戦傷病者戦没者遺族等援護法は、恩給法への前進基地であったという歴史もあるわけなんです。しかし、援護という点においては、これは厚生省所管の法律であって、ひとしく国家補償の性格を盛り込んでおるものだと私は思う。その点において考えるならば、戦傷病者戦没者遺族等援護法においては、遺族年金規定があってこれは生活依存の人が死んだのみでなく、その死んだ人の遺族には、ひとしく遺族年金支給されておる。ところが未帰還者留守家族等援護法の方には、今申し上げた生活の主体であった人が、帰らない場合にのみ適用しておる。ここに同じ援護法であって、一方は自分の子供が死んだら、全部親は六十才に達したら遺族年金をもらっておる。この帰らざる方の親は、かわいい自分の子供であって、非常に大事な人であるにかかわらず、それが長男でないとか、あるいは生活の中心になる人物でないと、その恩典がはずされておる、こういう差等は、実は非常に不合理だと思う。少くとも第一段階として、戦傷病者戦没者遺族等援護法において、子供が戦死したら、全部遺族年金をもらっておると同じように、帰らざる子供の場合にも、全部その親は留守家族手当をもらうべきだという原理が成り立つと思うが、田邊先生、いかがお考えでしょうか。
  63. 田邊繁雄

    田邊政府委員 当初、留守家族援護法を御提案申し上げて、御審議いただきましたときは、この法律は大へん皆さん方からいい法律だというおほめをいただいたのですが、この法律のような体系の方が、留守家族援護にふさわしい内容である、それはどこかと申しますと、一律平等に皆さんにお金を差し上げるということでなしに、やはり生計の実態を見て、ある程度の制限がついている方が、援護という名前がついている社会立法らしい法律であるという御支援をいただいたわけでございます。遺族援護法の方がこうなっておりますのは、これはやはり恩給という関係があるのでこうなっておるのでありまして、そこは同一には論じ得ないと思います。ただ問題は、法律としては、確かに理念において、取扱いにおいて違っている点があってもやむを得ないと思いますが、現実の問題としてこういうふうに十年以上もたっておる。死亡処理が早くなされればなされるほど公務扶助料ももらえる。ところが死亡処理がおくれればおくれるほど、留守家族手当ということで差別がつけられる。そこに問題がある。十年もたっているから、早く死亡処理された人とあとでされた人とでは、処遇に不公平な差異を生じている。死亡処理ができるかできないかという問題は、国家の調査究明上の問題でございまして、国の責任に関することでございますので、そこに一つ問題があるのではないだろうか。その点はおっしゃる点はよくわかりますが、そのおっしゃる不合理の点を、直ちに留守家族援護法と遺族援護法の問題に結びつけて議論するのがいいか、あるいは均衡の問題について議論するのがいいか、あるいはもっと別な観点から研究して、対策を講ずる方法があるかどうか、この点はもう少し研究させていただきたいと考えます。
  64. 受田新吉

    受田委員 未帰還公務員の中には、 留守家族渡しとして俸給を親に送っておった軍人さんがたくさんあるわけです。それは戦地から送ってくる場合もあるし、軍そのものが取扱って、一部を送ってきた場合もある。とにかくその人は、戦争が続いておるならば、当然俸給をもらうのです。その俸給家族に渡すわけなんです。その俸給までむしり取って、今渡さないということになるのですから、その方の関連からいっても、重大な問題なんです。その子供が軍人であった以上は、もしそれがこちらに勤務しておったならば、相当俸給をもらう公務に従事するはずだ。公務に従事して、俸給を親に渡すかわりに、この援護法で渡すという観点も成り立つと思うのです。そういう意味からいっても、堂々たる男を外国からよう帰さないでいる政府のだらしなさに対しても、責任を持って、そのむすこのかわりに、むすこが親に上げる金を、自分が生計の主体でなくても、渡していいじゃないですかと言っているのです。一年に三万円か三万五千円の金を国家が惜しむというその精神がけしからぬと思う。
  65. 田邊繁雄

    田邊政府委員 ただいま受田委員お話の点は非常に大事な点だと思いますが、留守家族援護法を作るとき、その問題はきわめて割り切っておられた。何となれば、未帰還者給与法とか  そういう法律を廃止したのであります。その点は割り切って、留守家族援護法ができているわけです。先ほど仰せられたことはごもっともでありますが、そういう問題を留守家族援護法という法律で解決するがいいか、別の方法で考えるがいいかということになってくる。今お聞きになったことは確かに問題でありますが、今さら、あのときに踏み切った給与法を復活することもできませんし、何かそこに運用上その他の点で研究を要する点があると思います。御指摘の点は、十分研究いたしたいと思います。     —————————————
  66. 原健三郎

    原委員長 先ほど臼井莊一君その他の諸君より発言のありました要望については、本委員会として、早急にこれらの措置を要望するところでありますので、本委員会決議として、政府に場要請したいと思います。ただいま、これについて委員長の手元において作りました案文を朗読いたします。委員各位の賛同を願いたいと思います。    未帰還者留守家族の援護強化に関する決議案   海外同胞引揚問題の完全解決は、戦後十一年余の現在、未だ国際情勢等より推して、その見透しが予測せられず、又未帰還者の調査究明も早急にその調査を完了することが困難であると考えられる情況である。   しかるに、未帰還者留守家族の援護については、逐次改善されて来たが、なお現行の未帰還者留守家族等援護法において、未帰還者とその両親との間に収入依存関係がなければ留守家族留守家族手当支給されない等、遺族年金及び公務扶助料支給に比して均衡を失する点がある。   政府は、これらの点に関し、すみやかに財政措置を講ずるとともに関係法律を改正する等、留守家族援護措置につきなお一層の強化を図るべきである。  以上であります。これを本委員会決議とすることに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  67. 原健三郎

    原委員長 御異議なきものと認め、さよう決定いたしました。  なお関係政府当局に対する送付等の手続については、委員長に御一任を願います。  この際、政府当局より発言を求められております。これを許します。山下厚生政務次官
  68. 山下春江

    ○山下(春)政府委員 ただいま御決定になりました件につきましては、政府としても、ごもっともと存じますので、御決議趣旨に沿いまして、努力をいたすようにいたします。     —————————————
  69. 原健三郎

    原委員長 なお質疑の通告がありますので、これを許します。高岡君。
  70. 高岡大輔

    ○高岡委員 これは事務的なことで恐縮でありますが、このごろ見ておりますと、遺族年金あるいは公務扶助料あるいは恩給等の処理がなかなか進んでいないような気がするのでありますが、援護局あるいは恩給局の作業員はどんな工合になっておりますか。十分でありますか。この点を伺います。
  71. 田邊繁雄

    田邊政府委員 御承知のように、引揚援護局の定員は法律で毎年減少し得ることに相なっております。この減少の度合いは、一応業務量を算定してみて、それに対応するようにして計算したものに基いてやっておりますが、今までのところは、大部分の書類は処理いたしましたので、現在程度の処理は、現在程度の人でもってやっていけると思います。ただ、案件が非常にむずかしくなっている関係上、調査に手間取るということがある。ただ公務なりやいなやという問題についても、取扱いについて何らかの方法が講ぜられるということになりますと、また処理が非常に促進されることになるだろうと思います。また戦死した人の身分関係について、軍人であったか、軍属であったかということがはっきりしない方々の問題があります。これは相当調査に手間取ります。しかし遺族関係の問題でありますれば、そう手間取らないと思います。現在の人員で、今たまっているような書類は、処理できるのではないかと見ております。
  72. 高岡大輔

    ○高岡委員 局長がおっしゃったように、今残っております案件は、むずかしいものだけが残っておりまして、件数が幾らだからといって作業員を減らしたのでは、仕事が渋滞するのは当然だと思うのであります。一目見てすっとわかる書類と、どうだろうかと思って、いろいろあっちもこっちも見なくちゃいけないという案件でございますれば、件数は同じ一件でありましても、片方は一分間に幾つ、片方は一日かかってもなかなか判定がつかぬというので、これは件数だけにはよらないのじゃないか。それをただ数字的に、何々法によってという一つの基準によって作業員を減らされるところに、ちょっと今のところはオーバー・ワークといいましょうか、現作業員の方には非常に御迷惑というか、労働が過重になっているのじゃないかという気がするのであります。  それから、もう一つ私がお伺いしたいことは、昨年十月一日から改正になりましたことは申し上げるまでもございませんが、この改正によって、今度扶助料とかあるいは恩給がもらえるようになった方が相当の数であることも、これは私が申し上げるまでもございません。ところが、こういう方々は、どうも非常に手間取っているような感じを私受けるのであります。私も二、三郷里の者から書類を預かって実はお伺いしたのでありますが、そのつど、局長、課長さんをわずらわすことは恐縮だと思って、係の方に行っているせいなのかどうかわかりませんけれども、去年からのものが、いまだに何らの返答も受けていない。私は、ある件においては、五へんも六ぺんも恩給局まで行ったり、援護局に行きましたり、いろいろしているけれども、一向返事をいただかないというか、行くたびごとに、つっけんどんといえばはなはだあれですけれども、味もそっけもない返事を聞かされて私は帰ってきている。しかし、これは、その係の方をとやかく言うにはあまりにも仕事が多過ぎて、てんてこ舞いをしていらっしゃいますから、その方の作業ぶりを見て、私は何ら不平も言わずに帰ってくるのであります。ちょっとそれを見ましても、私はその作業員を責めるのじゃなくて、逆にお気の毒なような気がするのであります。人間というのは不思議でありまして、非常に自分の仕事が加重されてくると、返事をするのもいやだというのが人情であります。そういう面から見て、そういう応対をされましても、私はそれはそうだという、その人の気持になって私は不平も言わずに、ああそうですか、じゃ、またそのうちに参りますと言うてはくるのですけれども、なかなかどうも仕事がちっともはかどっておりません。そういう面から見まして、今後の案件というものは、一つ一つが非常にむずかしいものにぶつかっているということを一つ御了承願って、作業員に対して、何分の御配慮を願いたいということが一つでございます。  それからもう一つ、昨年十日一日から改正法が実施になることにおいて、今度は該当される方々は、法律的にか、あるいは書類取扱いの上とでもいいましょうか、本人が届出を必要とするものであるかどうか。もしも必要とするものでありますと、その必要であることを、各都道府県の世話係から一つ市町村役場の方に、何かの御指示をしていただきたいと思うのであります。それは、地方に帰りまして、私が事のついでに言いますと、それならおれは今度もらえるのですかというようなことを言っておる人があるのであります。そういうことは、どうなっておりますか。この二点についてお伺いしたいと思います。
  73. 山下春江

    ○山下(春)政府委員 今、高岡先生から御質問になった点は、実は私が厚生省に行って以来、苦慮しておる問題であります。御承知のように、本国会で設置法を通過させていただきましたが、それによって三百何人でございますか、これは前からきまっておりまして、当然切り落さなければならないのであります。この人たちは、少くとも四年半ないしは十年勤めておる連中でありまして、みなくろうとであります。今お説の通り、これから先のケースというものは、非常にめんどうな、むずかしいケースばかりでありまして、しろうとではなかなかすぐには処理できないような問題が多いのであります。私はそのときに、首を切るよりも、何らかの方法でこれを助けておいて、この事務処理をしてもらいたい、おそらく国会に出ていらっしゃる先生方は、必ず何通かは地方の地元から、どういうふうになっておりましょうかというお問い合せで、返事に非常に困っておられるだろう、せっかく厚生省に聞きに行っても、そういう状態であるというようなことが実情であることも私よくわかっておりましたので、そこで、せめてこういう半分人情にからんだような援護の仕事をしておりますところでは、それがわかりましたならば、経費のことも出てきますけれども、たとえば、はがき一枚でも書きまして、あなたのものは裁定になる、しかしながら非常に困難なケースであるとか、いろいろな事情を付して、まだ決定までには数カ月かかるけれども、裁定になりますとか、あるいは書類が不備であるから、こういう点を訂正して出せとかいうことを、その本人に通知いたすようなことまで行き届けば非常にけっこうだと実は思ったのであります。そこで、ちょうど援護局長が引き揚げ問題でロンドン会議に行っておられる最中のことでございましたので、その法律は、いろいろ与党とも何とか方法はないかということの御相談は実はしたことがあったのでありますが、非常にいいことだから、何とかしようといっていただいても、なかなか押せ押せになって、コンクリートにならないうちに法律が通ってしまったというような形になりました。できれば、そういうことは、従来仕事になれた者がやることが非常に好ましいことだと思いまして、努力したのでございますが、今申し上げたような事情で、私の希望をかなえることができませんでした。世話課に行って、やるかどうかという後段の分は、局長に答えていただくといたしまして、前段に関しましては、今なお私はそういうふうな扱いをすべきものであると信じて、これは何とかいたしたいと考えておる次第でございます。
  74. 田邊繁雄

    田邊政府委員 後段の問題でございますが、昨年十月から実施になった改正法と申しますのは、戦地における公務の範囲を拡大した点だと思います。これは、援護局から各県に、この場合は適格である、この場合は適格であると、一件々々通知を出しております。県はそれに基いて、市町村にすぐ通知を出して順次知らせる、こういうふうになっております。若干おくれて、通知が出ないものがあるかと思いますが、地方で全部遺族に知らせて上げるようにいたしております。もし何かそういう点で行き届かないような点がありましたならば、すぐ御連絡して下さいましたならば……。
  75. 中山マサ

    ○中山(マ)委員 これは話は別なんでありますけれども、新聞の声の欄に、在外同胞が非常に栄養が悪い。それで国会もまた一般の人も、これを何とかすべきだというのを聞いた。それで二、三慰問品を作って郵便局に行ったところが、非常に手続がめんどうくさくて——よっぽど気短かい人であったと見えまして、もういやになって、そのまま帰ってしまった、こういうことが出ておりました。せっかく第三者でいらっしゃる国民大衆が、ここまで親切な気持を持っていって下さるのが、向うに通らないということは、実に残念だと私は思ったのであります。この際、こういう人たちに対しましては、どういうふうな指示を与えたらいいものでございましょうか、お答えを願います。
  76. 田邊繁雄

    田邊政府委員 ただいまお示しのような場合におきましては、各都道府県の赤十字の支部あるいは都道府県の世話課等にそれを持ってきていただくなり、あるいは慰問品をお届け下さいますれば、世話課なりあるいは日赤の支部で万事手続をして上げるように指示してございます。
  77. 臼井莊一

    臼井委員 ちょうど私もお伺いしようと思ったことを、今、高岡委員から御質問があったのでありますが、ただいまお答えいただいたので、大体了承したのですけれども、未帰還者の方がこちらへ引き揚げてこられて、そのうちだいぶやめられる方があって、方々へ就職の依頼状などが来ておる。そこで、遺族にしても、特にまた世話課にしても、非常に不安に思っているのは、今お話のように、これからのケースがなかなかむずかしいし、またたくさんあるし、また早く未帰還者死亡や何かを決定した方が有利だ、そういうようなことから、エキスパートの人がいなくなるということを、非常に不安がっておる。ですから、先ほど次官もお話のように、そういう点を十分御考慮いただいて、一つ今後おいて善処をお願いしたいと思うのです。  もう一つお伺いしたいのは、引き揚げてこられる方を舞鶴に家族の方が出迎えに参りますが、この旅費を国鉄で何とか割引にならぬかというような希望をよく聞くのであります。この点は、やはり国鉄の現在の公社としての立場上から、ただ割り引けといってもなかなか割り引かぬので、結局それだけのものを政府から補償しろというふうに出てくると思うのです。しかし、かの点は、国鉄としても、割引すれば行く人もふえるし、必ずしも引いたからそれだけ全部が減少になるとはわれわれ考えられないのですが、どうもそう言うのです。そこで、地方によっては、県等で旅費を支給し、補助しておる向きがあるのですが、御承知のように、地方は非常に財政不如意で、これがだんだん補充されなくなる傾向があるように思うのです。生死不明の方はたくさんあるとしても、現在生存判明の分はそう大してもないのですが、何か厚生省あたりで、国鉄に割引させる方法について国鉄とかけ合うとか、あるいは旅費等について一部負担することが望ましいことではないかと思うのです。というのは、一ぺんに引き揚げてこられればそうじゃないのですが、ぼつぼつ帰られると、出迎えに行きましても、数もさびしい。それで、できるだけ家族の方にでもお出迎えいただくことがよかろうと思うし、また家族の希望でもあるわけですが、遠くから来られる方は、旅費もなかなか容易ではないのです。  もう一つは、中共から引き揚げてこられる方が、帰還手当一万円の増額をだいぶ前にいろいろ要望されていたのですが、最近ソ連からお帰りになる方は、ほとんどこういう問題には触れないで、非常に祖国を思うということにおいて、われわれ心を打たれるのです。しかし、それだからといって、そのままにもほっておけませんし、長らくあちらにおられたので、その間の留守宅の御苦労も容易でないと思うのですが、これらについて、何か当局のお考  えなり案なりがあれば、伺いたいと思うのです。
  78. 田邊繁雄

    田邊政府委員 留守家族の出迎えの旅費の問題でございますが、これは前から留守家族団体からいろいろ要望がありまして、国鉄の方と折衝したことがあるのでございますが、なかなかうまく進まなかった。これは、いわば先ほどお話になったようなことが一つと、もう一つは、技術的な点でございます。現地から配船の通告があって、帰還者の名前が発表になるのがおそいので、留守家族に割引の切符を渡すことが、時間的な関係、技術的な点からむずかしいということであります。しかし、最終段階になって——本日でございますけれども、数もそう多いことではございませんので、技術的な問題はもう少し工夫をこらしたら、何とかなるのじゃないかというので、国鉄の係の方とその方で相談を始めるようにいたしております。  帰還手当の問題は、御承知通り、中共からの引揚者の場合、たびたび強い要望を受けておったのであります。将来十分研究したいと思っております。
  79. 原健三郎

    原委員長 他に御質疑がなければ、次会は、明二十三日午後一時より開会し、沖縄における戦歿者の遺骨収集並びに慰霊に関する件について、参考人より事情を聴取することといたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十六分散会