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正力国務大臣 大体先ほどのお話によりまして、イギリス、アメリカにはかなわぬとか、あるいは欧米にどうだという説があると言われておりますが、私はそうは思っておりません。私は外国のいいところをとってくる、そうしてさらにこっちの特徴を持って、彼らに勝てると現に思っております。そのかわりに、向うは非常な費用と労力を払っておりますから、労力は仕方がないと思いますが、彼らの
研究した成果をとってくればいい。これについて、私は多少一部の
学者と
意見が迷うところがありますが、自習々々といいまして、自分で何か
研究していくと、なかなかおくれてしまいます。いいところをとって、こなければならない。だから、私は
戦争中よくこういうことを言うたのです。外国と競争するについては、今、外国に十年おくれていると行われたが、それならまず十年彼らのいいところをとって追っついて、それから競争すれば勝てる。それを初めから自分の力でやろうとするから、追いつくのに労力と費用がかかってしまう。それではいつまでいっても勝てません。この点は
一つ日本の自主性について、非常に考えなければならぬと思っております。向うのいいものを持ってくる。これは私はただ空論を言うのではないのです。私の過去の経験からそうなのです。自分のことを申して済みませんが、
日本では、テレビはまだ五、六年はいかぬと言うわれた。私はそんなことはない、アメリカ人にできることができないことがあるもんか、少くともアメリカ並みにはいくのだ、いかぬというのは自分の
努力が足りないのだ、私は、
日本人は頭は決して英米に負けていないとうぬぼれておりますが、頭は負けていないのだ、それで彼らに負けるのは、
努力が足りないのだ、彼らのところまで必ずいけるということを、
ほんとうに確信しております。それで私のところで、テレビをやるのはいかぬと言われるその理由は、
日本の文化は低いのだ、こんなところへ持ってきたってだめだ、アメリカすらもテレビ会社をやっていても、四年半なり五年かからなければそろばんがとれぬ、
日本だったら十年も十五年も黒字にならぬと言われたのですが、私は一年七カ月で黒字にしてみせたのです。アメリカのいいところをとって、こちっがさらに工夫すればいいのです。工夫しなくちゃいけません。
日本人は頭は悪くないのです。自習自習といっていたのでは、追いつかないのだ、いいところをとってしまう、その上、頭を働かせれば、彼らに勝てる。偶然であったかもしれぬけれ
ども、とにかく
日本のテレビはアメリカよりもうまくできております。ここに生きた例があるではありませんか。私のところのテレビも、
日本の
研究ではいかぬと私は言ったのです。アメリカの研研を持ってこいと言ったのです。そのときに、
日本に公営論も起りましたが、私はアメリカの一番よくできた
一つの会社のものを多く取り入れ、またそのほかの各会社のいいところをとってくる。そうして
日本は
技術が進んでいるから、組み立てをやろうとしたのですが、
日本の
技術者は組み立てられぬ。それは失敗したじゃないですか。結局アメリカの技師が来てやり直しているのです。そうしてアメリカよりさらにその上をいくような、そろばんのとれるようなものにどうしてしたかというと、大衆に結びつけたのです。これは私が考えたのです。ちゃんとうまくいったじゃありませんか。しかし最初はだれも
ほんとうにしなかった。
正力のほらと放言されたのです。しかし今日何人も否定することができなくなったじゃありませんか。それですから、私は外国のいいところは持ってくるのだ、自分で考えておったらだめです。いいところをとる、そろばんに追われても仕方がない、払います、払ったってわずかなものです。
原子力においても、この点を考えなくちゃならぬと思っているのです。いかにして
日本の国民生活の
水準を上げるか、いかに
日本の国家をより以上よくするかということが問題です。区々たる個々の体面にとらわれる、とかく
学者は小さな区々たる体面を考えますが、自分の
立場、体面を振り捨てて、いかに国民の利益になるか、いかに国家の利益になるかを考えなくちゃなりません。従って、私は断じて英米依存でもありません。いいところは何でもとってくる主義でありますから、今度は
原子力の問題にそれが起ると思いますが、どうぞこの点をお考え願いたいと思います。どこでもいいから、世界中のいいところをみなとってしまう。そうして、
日本の
学者の頭を働かして、彼らの上に出る。もう十年おくれていることはありません。先ほどの自動車の点は、工夫が足りませんよ。私は
学者をせいぜい働かしまして、その上に出すつもりでおります。これは気炎かもしれませんが、少くともそういうことを考えているのであります。どうぞ
一つその点は御信用願いたいと思うのです。