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1956-05-29 第24回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年五月二十九日(火曜日)    午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 有田 喜一君    理事 小笠 公韶君 理事 前田 正男君    理事 志村 茂治君       赤澤 正道君    稻葉  修君       加藤 精三君    木崎 茂男君       小平 久雄君    須磨彌吉郎君       楢橋  渡君    山口 好一君       岡本 隆一君  委員外出席者         参  考  人         (日本化学工業         協会会長三菱         油化株式会社社         長)      池田亀三郎君         参  考  人         (社団法人経済         同友会幹事信越         化学工業株式会         社副社長)   小坂徳三郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  科学技術振興対策に関する件(研究所に関する  問題)     —————————————
  2. 有田喜一

    有田委員長 これより会議を開きます。  本日は、科学技術振興対策一つとして、研究所に関する諸問題を中心に、参考人より御意見を聴取いたしたいと存じます。  本日御出席参考人は、日本化学工業協会会長三菱油化株式会社社長池田上二郎君及び社団法人経済同友会幹事信越化学工業株式会社社長小坂徳三郎君でございます。  この際、参考人各位にごあいさつ申し上げます。本日は、御多用中にもかかわりませず、わざわざ本委員会のために御出席下さいましたことを、委員会を代表いたし、厚くお礼を申し上げます。本特別委員会は、院議をもって科学技術振興対策のため設置せられたものでありまして、設置以来、科学技術振興対策樹立のため鋭意努力いたして参りましたが、本日は研究所の問題を中心にして、それぞれのお立場より忌憚ない御意見をお述べいただければ、まことに幸甚に存ずる次第でございます。  それでは、これより参考人の御意見の御開陳を願いたいと存じますが、お二人の御意見の御開陳後、委員よりの質疑を許したいと存じますから、さよう御了承願います。  それでは、まず、池田参考人より御意見の御開陳をお願いいたします。池田参考人
  3. 池田亀三郎

    池田参考人 私は、本年の三月一日に科学技術庁設置法ができまして、その当時、両院で附帯決議をなされたことを承知いたしております。それには、中央、地方を通じまして、試験研究機関のあり方及び所属について再検討を加えて、三十二年度からこれを整備拡大するということをうたっております。昨年、行政審議会でこの問題を審議いたしましたので、私どもは大きな関心を持っておるのでございます。そこで三十分ということでありますから、ごく問題点だけを一応申し上げてみたいと思います。  その審議会に、最初官房長官から示されたように、科学技術ということがもともと問題になるのでありますけれども、私ども産業技術、こういうふうに解釈しております。またそういうふうに今度の科学技術庁もできたと思います。そこで試験研究所でありますが、大体大分けにいたしますと、まず官公立の分と、それから今後できることを私どもが希望しております民間と官との共同のもの、こういうふうになるのじゃないかと思います。そのほか最近検討されております原子力関係公社問題等があると思いますが、これはせっかく政府そのほかで検討されておりますから、私からきょう申し上げることは、御遠慮申し上げます。  第一の国家に属する試験研究所でございますが、大体大学国立、これは省と庁に属したものがありますけれども、そのほか公立のものが大体考えられます。大学研究所といたしましては、独立した研究所講座についた研究室とでもいいますか、あるいは研究所もございますが、両方あるようであります。これはもちろん最高の学理と独創的な考え方をいたしまして、技術最高峰にあるべきだということは問題ないと思います。しかもそれは基礎的であり、また創造的であり、同時にある程度までの応用化ということは問題ないと思います。ただ、この点について私の意見を簡単につけ加えますと、両方の場合におきまして、大体やり方講座制になっております。これはいろんな面で非常に好ましくない、私はこう思っております。たとえば、定員予算を増加するために講座をふやすというふうなこと、それから重要性によって講座を大きくする、あるいは小さくするというような弾力性がなかなかとりにくい、これはおそらく原子力問題あるいは航空関係の問題、石油化学問題等研究いたします場合に大きな支障になるのではないか、この点は検討を要する点だと思っております。それから私ども民間におる者からいたしますと、この点は十分留意しておりますが八なるべくセクショナリズムにならぬように、重要な問題があれば、研究所こぞってこれに集中してやるというような建前を考えてやっております。この点は国立あるいは大学研究所等において欠けるところが大きいのじゃないか、こう思っております。  それから、もう一つは、これからの状態になりますと、おそらくかれこれの委託研究、あるいは受託もする委託もするということがあってほしいと思います。それからなお進んで、集団研究とでもいいますか、共同研究も必要だと思います。これは国立研究所間だけではありませんで、民間との間にもこういう道がもっと容易に開かれることが望ましいことだと思います。  それから、とかく大学等研究は、基礎的なものに重きを置かれ過ぎておりますが、応用化の方まである程度はいきませんと、ほんとうの基礎的の研究もなかなか——国立公立民間等連絡が悪うございまして、効果が上ってないように私は拝見いたしました。この例を申しますと、たとえば、千葉の生産技術研究所におきましては、最近酸素製鉄研究をいたしておりますが、これはふだんから大学の方がおっしゃいますような基礎的の研究という意味から見ますと、少しはずれておるのであります。私どものあれでは、もっと徹底して力のあるところ、設備のできますところであれば、大学でやってもちっとも差しつかえない、こうも考えております。  それからなお、国立省庁試験研究所でございますが、これは大体において、行政目的に沿うようにやることはもちろんでございますけれども、これが、総合的に見て、政策を立てていくところに大きな欠点があるように考えております。今度、科学技術庁発足後に、さっき申しました閣議決定に基きまして、これらが今後最も問題点になるだろうと考えております。私どもは、昨秋の審議会中の検討を顧みましても、問題点がたくさんございます。合同委員会案、私ども審議会の答申、決定案、こう比較してみますと、おのずからこの間に何が今度再検討なさる場合の検討の目標になるかということが、はっきりいたすわけであります。私どもは、私ども審議会以上にもっと強い線が出るかと思いましたところ、今度の科学技術庁の法案を見ましても、ずっと弱められた線になっておるのでありまして、大体の方向からいきますと、もっともっとこれは強い線でなくちゃならぬだろうと思っております。おもに変ったことは、機械、電気、地質調査所、特許庁の吸収を見合せたというようなことがはっきり出ております。そのほか材料研究所金属研究所になりましたり、あるいは予算が、航空研究所にしましても、わずかに一億であったり、金属研究所予算が一億であったり、定員がわずかに六人しかふえないで一千万円の予算だけしかつけられなかったことは、画期的な科学技術振興にはとうてい及びもつかないものだと考えております。それから、原子力関係の方は申し上げませんけれども、ただこれは当初財団法人でわれわれ民間に十万円の寄付をしろ、あとの四十万円は会社組織にするための払い込みにする、こういうことでございました。これは私ども原子力研究等に対する認識がまことに貧弱であったということで、こういうことでは、画期的の原子力研究等はとうてい不可能なことと思っておったのでございます。幸い最近いろいろ検討されておりますから、いずれりっぱな、はっきりした企画ができることと思い、またそう祈っております。  その次は、公立研究所でございますが、これはもちろん地方的でもあり、あるいは中小企業への技術普及目的とすることは当然でございます。しかし実際ほんとうにこれは今まで洗ってみたことはないと思います。私ども、二十六年から七年にかけまして、行政監察委員会でやったのでございます。これもおそらく今度実態をお調べになりますと、はっきりいたすと思いますが、あるものは廃止してもよろしい、あるものは統合調整してもよろしい、あるものはもっと拡大しなくちゃいかぬということがはっきりして参るだろうと思います。どっちかと申しますと、現在は乱立の傾向が多分にあると私は拝見いたしました。大体通じていいますと、私どもの見た感じからいいまして、その後もときどき見る機会がございますが、大学国立公立とも、その施設からいっても、設備からいっても、人間関係からいっても、いかにも貧弱だということは、おそらく外国の例でもごらんなされば一番はっきりすることだと思います。これでは、わが国経済自立、あるいは産業の拡大、貿易の振興あるいは文化の高揚ということは、おそらく望み得ないのじゃないか、こう思います。  そこで、ちょっとここで御参考までに申し上げますが、皆さん承知と思いますけれども、各省や大学に付属する試験研究所等の数字を私どもかつて調べてみたことがございます。少しこれは古いのでございますが、昭和二十六年で、そう変ってはおりません。設置法に規定されたもので、百三十五ありました。なおその下部機構、支所とか分所、これを合計いたしますと、千七百六十三あったのでございます。こういうような状態でございますので、これは時間もございませんから申し上げませんが、私どもの見ました範囲からいいまして、さっき申しましたような調整統合あるいは強化する必要が相当あるだろうと思いました。これはいずれ今後具体的にいろいろ問題になる点だと思います。  それから、昨年の官庁の直轄の研究機関予算、これは大学付置研究所講座研究所補助金並び委託費を含めまして百三十一億になっております。一般の国家予算が九千九百十四億五千七百万円でありますから、総予算に対しまして一・三%になっております。これから見ましても、わが国科学技術振興のための国家支出がいかに貧弱であるかということが、うかがわれるわけであります。これらの点も考えまして、これを何とか十分にいたしたい、こう思います。この前に、審議会でも問題になりましたが、何としても予算権は、大蔵省の主計官予算を握られておるのでは、どうにもならない。やはりもっと最高政策からしましたこの辺の考え方がなくてはいかぬのではないか、こう思います。ことに、原子力問題でございますとか、あるいは航空機の問題あるいはそのほかいろいろな、さっき申しました石油化学、そのほかの新技術に対しまして考えるとき、世界の大体の技術の進歩を解明していく面からいきまして、相当考える余地があるのではないかと思います。そこで、どういうふうにここで一般的に考えていくかと申しますと、実際の今あります試験研究所実態がどういうものかということを、一応も一応もお調べになる必要があるのではないかと思います。そして、これらの産業研究の成果、あるいは文化の向上にどういうふうに役立っておるかということでございます。それからなお研究分野等がはっきりして、総合的に考えられているかどうかということでございます。その点は、ごらんになるとおそらくだれも気づくことでございますが、研究所が乱立されておりましたり、あるいは重複いたしておりました、こういうことはぜひ避けまして、整理統合することが必要だと思います。私は先ほど予算が少いと申しましたけれども、百三十一億になりましたのを相当多いとお考えになる方もあるかもしれませんが、どちらにしても国家財政もそう楽ではないのでありますから、できるだけ国家財政支出は、一番今申しました目的に沿うた効果を上げるように調整することが当然だと思います。そういう意味合いで、一方では十分効果を上げるように調整もいたしますが、一方ではその重点に応じました積極的な国家支出も必要かと、こういうふうに思うわけであります。  なお先ほど私は、大学技術最高峰と申しました。それから国立とか公営とか民間とかいうふうなことになりますが、その間に縦にも横にももっと密接な研究連絡があってほしい。そしてこれを調整する機関があってほしい、こう思います。結局科学技術庁は大体今申しましたような面での役目を果すためにできたと思いますので、これまた今後の問題点一つと考えられます。三十二年度には拡大するということになっておりますけれども、これは三十二年度で終ることではありませんので、将来も見通して、ここでちゃんとした最高政策を確立いたしまして、十分効果を上げるように希望いたします。  以上が大体研究所の概略の状態でありますが、そこにつけ加えまして申し上げたいことは、ただいま通産省当局の考えておることでもございますけれどもドイツあるいはイギリス等で非常に盛んになっております研究組合、これも先ほど民間共同、協力という意味のことを申し上げましたが、ドイツは大体基礎研究終戦後すぐから政府研究費を出しております。応用研究は、法人、個人の寄付あるいは会員組織によってやっておるようであります。大体あの国は、基礎研究はいつでも世界の先頭を行くという建前になっております。アメリカは大体応用化は非常にうまいところがありますが、基礎研究においては、終戦BPリポート等によりまして、いろんな資料をとったものを合せて、工業化したり応用化して参りましたけれども、最近ではだんだんその種が尽きるというようなことを心配しておる向きもあるかのように聞いております。日本よりもひどい敗戦のうき目を見たドイツ研究機関は、なかなかすばらしいものがあるのであります。そういう意味合いからしまして、ドイツあるいはイギリス研究組合等も、たしか三十七か九くらいあると思いますが、費用は大体政府——これはこの組合性格によりまして、あるいは三分の二十してもいいと思うのでありますが、最初は少し政府がよけいに出しまして、漸次民間の負担を増していくというふうになりますれば、最初はものによって三分の二あるいは二分の一、三分の一等の支出によって、民間と協力してやっていくということは、私どもやはりただ国立研究所ということでやっても、私どもの今まで考えてきておった考え方でいいますと、どうも民間があまり接近いたしません。たとえば大学研究室でもそうです。どちらかといいますと、先生と教え子の関係、個人的なつながりが多うございまして、一般的に、大学のせっかくの研究なり、あるいは国立研究所を利用する熱が、足りないのではないか。これを私、行政監察員をしておりましたときに、民間人も来てもらいまして、いろいろ話し合った結果、私の結論はそういうふうに出ました。なお、むろんこれらの研究組合会費等につきましては、法人税を免税することになりますと、結局税を出さなければ、一億出すものが二億出してもよろしいということになりまして、その結果は、りっぱなものが生まれるのではないかと思うのであります。  それでは、こういう組合はどういうものをやったらよろしいかといいますと、私は、前の科学技術庁ができますと遂に、東京大阪名古屋試験研究所はとりませんで、科学研究所を作りたいという案を出したのでございますけれども、そのときもよく質問されました。どうしてお前は今の工業技術院の傘下の、試験研究所をとらないのかという質問を受けたのでございますが、私はあの程度のものは相当地方色がございまして、場合によれば、今申しました研究組合でもいいのじゃないか。それよりも、私ども化学工業関係しておる者から申しますと、一番欠けておるところは、非常に金のかかりますところの、共通化学装置です。化学装置研究というものは、どこででもやるほどの力はございません。最近でもほとんど全部外国技術を買っておるというふうな状態であります。そういう面から、ああいう意見を出したのでございます。従って、共通性の強いもの——むろんこれは基礎的にもあり、あるいはレッペなんかもそういう例であります。材料等もそうでございます。今度は国立研究所に置きますけれども、問題によりましては、あるいは先になりましたら、これは組合研究に移してもいい時期があるかもしれません。こう思うのであります。  そのほか、共通でありますと、自動車会社というものは、部分品まで全部作るわけじゃございません。ミシンにしても、自転車にしても、そうだと思います。部分品共通のものです。むしろ組み立てをやります大会社よりは、部分品会社の方がもっといい技術を持って、設備を持つということが好ましいことじゃないかと思います。こう思いますと、こういうものはやはり組合研究でやってもよろしいのではないか。ただし、これは組合研究といいましても、大会社のための、あるいは大工業のための共同組合研究の場合と、それから中小企業の場合の組合研究、こう二つに分れてもいいのではないか。あるいは中小企業の方は、今申しました公立試験研究所等指導するという立場に回るのも一つでございます。これはあとでちょっと申し上げます。  なお、大規模といいますと、先に申しました化学装置機械、あるいは鉄鋼でございますと、これまた鉄鋼会社幾つもございませんから、これは個々に、別個に、秘密に研究するといいましても、なかなか容易じゃございません。最近の鉄鋼は大てい外国会社技術を入れておりますから、その面ではいいと考えられますけれども、これまた五年、十年たちますと、やはり立ちおくれということになるだろうと思います。そういう面で、むしろ大きなものほど、組合研究が必要かもしれません。非鉄関係でもそうです。あるいは造船とか電機界の一部も、この部面に入ってよろしかろうかと思います。なお管理面でも同じように、品質管理でありますとか、熱管理等も、今、政府がめんどうを見ておりますけれども、こういう問題、あるいはオートメーション等は非常に大きな問題でありますが、こういうものも組合研究でよろしかろうと思います。そのほか私どもが各会社でみな同じことをやって、非常な労力のむだをしておるのでございますけれども、内外の文献の情報提供のごときは当然どこかでまとめてやるべきじゃないかと思います。それから中小企業等には特に必要なことと思いますけれども中小企業庁の指導ということは、もっと拡大いたしまして、中小企業組合人たち会員工場を巡回して、これを指導する、あるいは工場診断をするというふうなことが必要じゃないだろうかと、こんなことを考えております。  なお、私先ほど大学と、国立と、それから民間と、共同のものということを申し上げました。これをちょっと実例を申し上げまして、私の感じたことを申し上げますと、たとえば大阪に行ってみますと、あそこには、神戸にも、総合技術研究所といったものがあります。大阪には、市にも、府にも、国のもあり、大学にもあります。これをずっと見てごらんになりますと、ごく最近は、私は承知いたしませんけれども、すぐ気がつくと思います。重複してこんなに幾つかの研究所が必要かどうか。ある程度はこれが共同するか、よほど横の連絡もしたらどういう結果になるかということは、一応も一応も考えてよろしい問題じゃないかと思います。そこで私は、大阪技術院研究所も吸収するということには賛成いたしませんでしたけれども、これは問題です。名古屋に行きましてもそうです。やはりあそこにも名古屋市のがあり、県のがあり、国のがあり、大学のもある。どれだけの特徴があるかといいますと、やはりこの中小企業指導といいながらも、研究者からいいますと、必要もございますけれども、自然に研究興味本位になったりいたしますと、だんだんと近いものになったりする、そういう面は東京でも同じことです。そうでございますから、こういうものは一緒にして、これは財団法人といったようなことも考えられまするが、あるいは組合研究といったことでもよろしかろうと思います。これは、場合によれば、市でも府でもあるいは国でも出す。あるいは民間もそれに一緒になって金を出すことになりますれば、自然に今よりももっと関係が密になりまして、利用価値もふえるし、また実際の効果も上るんじゃないだろうか、こう思っておる次第でございます。大体以上で、一応終ります。
  4. 有田喜一

    有田委員長 それでは、次に、小坂参考人より御意見を伺いたいと思います。
  5. 小坂徳三郎

    小坂参考人 本日は、お手元に参っておることと存じますが、二十九年の十月十五日に、経済同友会において、科学技術促進対策というものを決定いたしました。それについて、概要を申し上げさしていただきたいと思うのであります。  経済同友会がその科学技術促進対策を決定いたしました意味は、すでにもうどなたも認識されておる。日本が現在外国技術導入だけで万事事足れりとしておるというようなやり方では、とうてい将来の国民経済を維持発展さしていくことがむずかしいのじゃないかというようなことから考えられた問題であります。特に、諸外国におきまする科学技術振興対策というものは、私は十分その実態を知りませんけれども、いろいろの話を開きますと、非常に進んでおるし、どうも日本のようにばらばらであり、かつまた国家ほんとうに力を入れていないようなところは少いのじゃないかというような見解をとっておるようであります。また、現在やっておりまするいろいろな外資導入とか、外国技術導入ということが、一企業の利益と申しますか、そういったものに非常に左右されておるし、またその限りにおきまして、一国の産業政策外国技術導入というものが何らの関係なしに、要するに外貨があるかないかというようなことだけで片づけられているような傾向ではないかということも、逆に申しますれば、皆さん方もうすでに御承知だと思いますが、非常に問題になっておりますパイン・ミシンと称する、いわゆるミシン業界を非常に混乱させておる外資導入の問題がある。またその他もろもろの大規模企業外国技術導入する。さらにそれに基いて強力な会社を設立することによって引き起される同業種の混乱、あるいは中小企業への思わざる圧迫というようなこと等も考え合せますると、この際、日本としては、今後もっと技術という問題を産業政策と直結させて考えるというような方向をとるべきではないかというのが、この提案趣旨であります。  もちろんお手元に差し上げてありますからお読みいただいたかと存じますが、これらの内容としましては、どなたも言われておる、いわゆる総合行政機関設置とか、あるいは科学技術教育の刷新というようなこともうたっておりますが、経済同友会といたしまして多少思い切った提案をいたしておりますのは、これらの問題を乗り越えて、この際、日本技術的後進性を取り戻すのには、どうしてもやはり国家的な性格を持ったところの技術開発というものを考えていかなくてはならぬ。現在東南アジア諸方面が盛んに民族主義を高揚して、いろいろな面においてわれわれが想像する以上に、強い諸種の反発を行なっておりますけれども、何も東南アジア後進国と称するところだけの問題ではないのでありまして、わが国における科学技術、これらのものをさらに今日一段と飛躍させるのは、東南アジアの諸国ばかりに限ったことではない。日本の方がもっと重大だし、大事だというふうに考えるわけであります。  それで、同友会提案といたしましては、科学技術開発公社というものを設立する。それと同時に、中小企業対策としては、研究組合というものを作るというものが提案趣旨になっております。開発公社に関しましては、いわゆる開発法というものを制定いたしまして、全額政府に出資してもらう。これは、出資総額は五十億円といたしまして、毎年十億ずつ五カ年間に払い込んでいくものであります。もちろん公社でありますので、役員その他は全部政府で選んでもらって、任期四年とする。また一方から申しますと、こういった公社の非能率性を打破するために、独立採算制をとっていく。もちろん、こういった公社性格でありますので、公益性を十分に尊重して参らなくてはなりませんが、さらにそれに企業性をも加味していくというようなことを骨子にいたしまして、開発公社を作ってもらいたいというのが一つ提案であります。もちろん先ほど池田さんからお話がございました政府機関の各省の研究機関とか、あるいは地方公共団体の研究機関、それらは何千あるか私も存じませんが、ともかくも非常な数に上っておるわけであります。これを直ちに開発公社というものに一括してしまうということは、おそらく不可能であろうということから、さしあたり現在の科学技術庁の直轄の研究所としてまず発足せしめるということにいたしたわけであります。以上が開発公社に関しまする簡単なるアウトラインの御紹介であります。  これとともに、昨今非常に問題になりまする中小企業がだんだん技術的に置き忘れられていくということに対する対策もあわせて考慮いたしますると、どうもここに中小企業を対象にしたところの研究組合というものを結成いたしたらどうか、このためには、たとえば中小企業協同組合法の一部を改正して、組合結成の便宜をはかってやるとか、あるいはさしあたっては輸出商品の企業に対しまして助成金を交付いたしまして、研究組合の結成を大いに促進したい等々、まだまだやることはたくさんあるのではないかというわけであります。この研究組合に対しましては、同友会では提案をいたしておりますが、これについてのさらに詳細ないろいろの構想と申しまするか、まだ十分なる論議は尽しておりませんけれども、御質問があれば、同友会におきましてこしらえましたプリントを差し上げてございますが、これをごらんいただきますれば、組織、業務というふうに書いてございまして、アイデアとしてはわれわれは非常におもしろい考えではないかというふうに考えております。確かに技術の向上が、すなわち大企業技術の向上であり、収益性の向上であり、その反面において中小企業が、その犠牲を受けるということは、政策的にも悪循環であります。また一国の産業政策全体を向上せしめるためにも、あまり賢い方法ではいと思うのであります。やはり中央に大きな研究機関設置するならば、あわせて中小企業対策としての研究組合というようなものを作ることについて十分に御考慮をいただき、これができるような形に努めていただくことを願いたいと考えております。  以上が同友会におきまする科学技術促進対策の骨子でございまするが、このほかに、私見として多少申し述べさせていただきたいことは、研究は各企業がやらなくてはならぬことは当然でありますし、また諸外国の例を見ましても、大規模企業におきましては、売り上げの五%程度を研究費にさいているということも聞いておりますが、どうもわれわれといたしますると、研究費というものは、毎年々々継続的にずっと出ていくものであります。景気のいいときだけやって、景気の悪いときにやめてしまうというものではないと思う。景気のいいときに、多少その余裕があるときに、研究費に対するいわゆるファンドを蓄積しておくということは、企業として当然のことだと思います。このファンドの蓄積に対しても、何らかの助成措置というものを考えていただければ、各個別の企業においてはさらに活発に、長期的、継続的に研究が行われていくであろうと考えております。また財界の連中が何かものを申しますと、助成金をもらいたがるということで恐縮でありますが、現在の助成金交付のやり方というものは、確かにもらったものは非常にありがたいと思いますけれども、しかしあまり経済的ではないし、また金額も非常に少いので、大規模企業研究としてはさしたるプラスにはなっておりません。従って、もし多少でも許されるならば、もっとこういったものを大幅に考えてもらうことが、必要ではないかというふうにも考えます。  それから実際の事業をやっております場合に、新しい仕事をやろう、あるいは外国で今非常に伸びている仕事を日本でやろうといたしますと遂に、特許問題が非常に問題になります。従来特許というのは、何か非常に特殊なものだという工合になっておりまして、特許ということについての関心が、失礼な言い方でありまするが、国会も、また実際担当しておりまする通産省あたりの人々も、非常に希薄ではないかというふうに私は考えるわけであります。この特許ということは、一国の産業政策に非常に重大な影響を持つものでありまして、たとえば非常に広範な基本的な特許を一国が日本に出願する。それを簡単に日本が許す。そうなりますると、特許の出願には、いろいろな法律的な制約もございますけれども、それが一たび特許として成立してしまった場合には、いかにそれにかわるような、またそれを凌駕するようないい考案、発明がありましても、やはりその基礎的な特許というものは、外国から買わなくちゃならぬというようなこと、それがつまり技術導入という形になっていくわけであります。この特許問題について、将来の産業政策を考え、また日本経済の発展ということを考えていくならば、毎日々々おそらく何十件、何百件という特許が外国から日本に出されておると思いますが、その中で最も基本的な、かつ重要なるものについては、先ほど申しました開発公社というようなものがそれを購入して、今度はそれを一般企業にサブ・ライセンスといいますか、分けてやるというような形をとるべきではないか考えております。これは非常に一国の産業保護政策になると思います。しかし、日本技術水準は、必ずしも欧米に比してすぐれておるものではないのでありますから、多少国際的ないろいろな関係はあるとは考えますけれども国家として、基本的な一元的な特許の購入を行い、それを民間企業に払い下げていく。払い下げるといっては語弊がありますが、分権するというような方式をとることによって、産業政策あるいは技術政策というようなものと国民経済の発展というものは、よほど円滑に結び合わされていくのではないかと考えます。これの一つの例といたしまして、アメリカとかドイツとかイギリスとかは——フランスは違いますが、外国特許に対して非常にシビアな制限を持っているのです。何でも、出せば必ず一回は却下する。われわれのところも数十その例がございますし、またわれわれの知っておるいろいろな人に聞いてみましても、アメリカとドイツイギリスには、出して一回で通ったときは一回もない。ことごとく、必ず一回は却下する。しかも絶対的にだめだという条件で却下してくる。それを押して二回、三回と繰り返して、やっと向うが話に乗ってくるというようなことをしておるわけなんです。特許については、日本の場合は、特に敗戦後いわゆるスキャップ・オーダーで、そういうチェックをすることも、またそういう気概もすべてなくなってしまったの、ではないかと思います。一例をあげますれば、日本におけるある種の化学工業品の特許というものは、非常に広範囲な、とても抜け道がないほど広範囲なものが出ております。それを先般ドイツへ行き——アメリカももちろんその特許国でありますが、ドイツへ行き、フランスへ行き、イギリスへ行って調べてみたところが、日本の四分の一程度の特許になっております。日本の特許庁は、何を考えてやっておるのか知りませんけれども、特許の一〇〇%を認めている。ドイツやフランスやイギリスは、その四分の一程度の特許しか認めていない。一国の産業政策といいますか、国民経済の発展のための特許に対する考え方というものが、日本は全くでたらめだ、ずさんきわまるものだというふうに痛感した次第であります。今後は、通産省も——ああいう特許庁というりっぱな建物を持ってやっておりますけれども、あそこに一つ国会から活を入れてもらってもう少し、外国技術を無条件に日本の特許にしないようなことをやってもらいたいと思います。出せば盲目的に全部通る。しかも、諸外国におけるよりも、二倍、三倍の広範な特許を許しておるということは、日本産業の発展には致命傷であります。特に昨今の原子力開発においては、今の特許庁のような考えをもっていたしましては、いかに政府民間がわいわい言いましても、おそらく特許の問題でにっちもさっちもいかなくなるであろうというふうに考えます。また石油化学においてもしかり、特に科学工業の近来の発展、また繊維関係の発展、いろいろなことを考えますと、これはいいものだから、日本にそういう文献がないからという簡単なことで、特許を許して参りますと、日本産業は、今後いつまでも外資導入と称するいわゆる隷属的な技術導入形式を継続していかざるを得ないというふうに考えます。それが日本経済を非常にちんばにし、また国民経済の間に妙なゆがみを作る、また中小企業というもののあつれきをもたらすということに発展して参ると思います。  多少私見を申し述べまして恐縮でありますが、特許に関して、もう一段と国会においても十分の御検討を賜わりまして、日本のそれらに対する特許の範囲が、少くともドイツ並み、イギリス並み、あるいはアメリカにおけるドイツ、フランスの特許している程度のものであれば、われわれもまた企業家として十分これらと戦って、国民経済の発展、輸出振興等に貢献し得るのではないかとひそかに考えております。この点もあわせてお含みいただきたいと思います。  以上で、私の陳述を終ります。
  6. 有田喜一

    有田委員長 以上をもって、参考人よりの御意見の御開陳は終了いたしました。  これより質疑に入ります。質疑の通告がありますから、これを許します。志村茂治君。
  7. 志村茂治

    ○志村委員 いろいろ参考人から有益なお話を承わりまして、ありがとう存じました。  最初に池田さんに伺っておきたいのでありますが、池田さんは、講座制日本科学技術研究、特に基礎部門の研究に障害になっておるということを言われております。私も事実それはあると思うのであります。だんだん研究なり企業なりが複雑化し、高度化するに従って、一つの経済建設の分業化、協業化という形をとらざるを得ないと思います。その意味におきまして、やはり講座がだんだんふえてくるということは、やむを得ないのですが、問題は、その講座間の相互の連絡調整をどうするかということが、現実の問題になるのではないかと考えます。その点について、御意見を伺いたいと思います。
  8. 池田亀三郎

    池田参考人 私は少しマイナスの面だけを申し上げましたけれども、大体そういう面が非常に強いの、ではないかと思います。実例を申し上げるとはっきりするのでありますが、そういう意味講座がふえて、予算をとるということになります。これも悪口になりますけれども、一体学者というものは、どちらかといいますと、包容力というものがないのでありまして、場合によりますと、自分の方で持っている機械なんかも、あまり貸してくれないというような点があるのではないかと思います。私は、一講座が教授一人、助教授が一人あるいは講師が二人というような取りきめはどうかと思っております。必要があれば、教授が二人あっても三人あってもいいし、助教授でももう少しふやすということでありませんと、少し大きな研究等はできないのじゃないかと思います。  もう一つ、お尋ねの理工学研究所ですか、試験場ですか、航空研究所、それから千葉の生産技術研究所等を拝見いたしましても、やはりあそこも講座制です。教授という名がおかしいくらいです。ただ大学院の学生をあそこで教えるということになると教授でもいいし、大体世間は大学教授というと非常に尊敬しますから、それはいいとしましても、何かかわった教授、ほんとうの教授、教えるということと、もっぱら研究するということ、その点は、違っていいのじゃないか、何か制度上も違っていいのじゃないか、こう思っております。従って、その辺の連絡は、あるいは教授会でございますとか、いろいろの連絡はあると伺います。伺いますけれども、どうも相当マイナスの面も多いのじゃないか、従って、講座が小さく、数がふえていくということは、必ずしも好ましくないのじゃないか、こう考えております。
  9. 志村茂治

    ○志村委員 それから、次に、われわれがこの委員会参考人として学者の人たち意見を聞きました場合に、大学研究いたしますものは、ほんとうの基礎理論の研究だということをそろって言われる。学問は応用を目的とするものではない、真理であるとか、あるいはものの実体を把握することが自分たちのただ一つ目的である、こういうことを言っておられるのでして、産業界に役立つか役立たぬかわからぬ、ただ自分たちが真理を追求しておる過程においてそういうものが出てきて、出てきたものを産業界が拾い上げて、それを応用されればいいのだというような態度が学者の態度です。もちろん基礎理論の本質というものはそうだろうと思いますが、その間に科学技術という立場から見た場合には、学者の方からも、産業界の方へ協力するという態度をとっていただきたいと私どもは考えております。ところが、学者の人たちは、品をそろえて、われわれはそれとは無関係だと言われておりますが、何か制度上そういう形に持っていくことが、科学技術振興のために非常に必要ではないか、こう考えておるものであります。その間に基礎理論のものを持ってきて、すぐそれを産業化するための中間の機構が何か欠けておるのじゃないか、こういうような気がいたします。その点について何か御意見がございましたら、伺いたいと思います。
  10. 池田亀三郎

    池田参考人 私も志村先生と同感です。たとえば、科学技術審議会もずいぶん長くやりました。これはおそらく私ども委員のほかに、部会とか分科会といったものが数百人だったと思います。その当初の問題でございましたが、やはり文部省あたりの学者も入れておりました。今おっしゃるような基礎研究というようなことがよく言われました。学術会議がございますが、思想研究の自由ですか、ああいうものは私は尊重いたします。尊重はいたしますけれども、そのとき問題になったのですが、大学基礎研究をやる、それはおやりになってけっこうですが、たとえば、航空研究所で風洞を作りますと、割合に使用頻度の少い大きなちょっとした風洞で、一つがおそらく二十億かかると思います。これを大学が持ち、通産省が持ち、あるいは運輸省が持ち、防衛庁が持つということは、国家財政からいっても許されぬことだと思います。そういうものは、やはり大学基礎研究だけに限ってやることは、間違いだと思います。基礎研究とか応用科学研究とかはっきりしない点がたくさんあると思いますから、大学基礎研究をやるのだということは自由だ、研究は自由であっていいと私は思いますが、しかし大蔵省が予算をぐっと握っておれば、どんなに自由だといっても、何でもやれるわけではありませんから、そういう面での大きな制約を受けておるわけであります。同じように、ほんとうに、時と金を忘れて研究なさいということが、今言った自由ということでございましょう。しかし研究によりまして、ことに原子力関係等は、今言った時と金を忘れた研究もございましょうと思いますけれども、やはり学者といたしましても、一部はちゃんとした目的のある研究というものがあっていいと思います。私はそういうことも学者としてはわかっていると思いますが、とかく議論になりますと、ああいうふうな議論をなさいますけれども、折れ合う点は必ずあると私は思っております。
  11. 志村茂治

    ○志村委員 確かに学問の自由は尊重しなければならない。ただその牙城に立てこもっておって、自分たちは自由である、人の言うことは聞かないというようなことは、実際上私はないのではないかと考えております。ただ、理論として、何か強要されるような感じを受けておるときは、自由を振り回すという感じを受けておるのであります。しかし、人の自由を守るといっても、われわれがこういうことをやってくれといって頼むこと自体が悪いということは、私は言えないと思うのです。いろいろの、たとえば委託とかなんとかいう形によりまして、産業界の方から学界の方へ、こういうことをやってくれということを依頼される一つのルートを作っておいても私はいいと思うのですが、その点いかがでしょう。
  12. 池田亀三郎

    池田参考人 それは、先ほど私は大学大学、あるいは国立研究所大学、そういう面でも、委託、受託の研究があっていいのではないかと申し上げました。それからもう少し民間からも、大学なり国立委託研究でもするような委託契約をやってけっこうでございます。金も出してよろしいと思います。そういう場合に、もっと自由にできるような道を開いていただきたい、こういうことを申し上げました。それは、東京工業大学にも、東大にも、千葉の生産技術研究所にも、機関がございます。しかしこれはいかにも予算も人も少いのです。もう驚くほど少いのです。あの程度のものならば、大学に頼まぬでもいいくらいです。どういう傾向にあるかと申しますと、自然にやはり中小企業指導所のような格好になる気味があるのではないかと思います。それで、同じ研究所があっても、中小企業と大企業とは、別にちょっと申し上げましたのですけれども、どちらかといいますと、イギリスあたりでありますと、組合研究というものは大企業に一番役に立つものだと思うのです。そのほか、もし今の公立試験研究所等の存在をそのままにしておくならば、これが指導所であってもいいのではないか、必要があれば、業者の方のいろいろな希望によって、その希望の熱が上って、研究組合を作るという方が、もっと効果的だと思います。ただ公立なり国の研究所と同じようなものをやるのだということだけではどうかと思います。その理由は、通産省の工芸試験所ですか、この辺の例をごらんになると、一番よくおわかりではないかと思います。そう考えております。
  13. 志村茂治

    ○志村委員 実は、これは学者側の方だけを申し上げましたが、私の戦争中の経験から見ますと、たとえば、一つの資料を出すにしましても、農林省からきた場合には、農林省の都合のいいような結論を出せ、商工省からきた場合は、商工省に都合のいいような結論を先に出して、これを裏づけるような理論を出せというような注文を、私たち受けたことがあるのです。そういうような立場に常に追い込まれるということになりますと、学者も、おれは自由だと言って、これを主張しなければならぬ。これはお互いの研究に対する理解が足りないというところからくるのではないかと私たちは考えております。その場合に、各会社一つ研究委託をされる場合、勝手な話もずいぶん多いと思います。これは何かもう一つ上の段階へ持ってきて、学者も気持よくやれるような、私利私欲のための研究というようなことでなくて、もう少し高い立場国家立場からの注文が出せるような機関が、私はほしいと思っております。
  14. 池田亀三郎

    池田参考人 これは、私どもしごく同感でございまして、一体なぜ日本でコンサルタントがあまりうまくいかないかという問題ですね。これは国家研究所等があまり気楽にいろいろな研究結果を出し過ぎるし、指導し過ぎるのではないかと思います。やっぱりこれは、お医者さんなら診断すれば診断料を取りますし、処方箋を書けば処方箋料を取るのですが、私どもがいろいろ相談を受けて相当いいアドヴァイスをしたって、言葉のお礼か何がしかのお礼をもらうか、その程度のことでございます。もしアメリカだったら、契約をしなければおそらく話もしないし、させないだろうと思います。たとえば、日本外国人が来ますと、引っぱり合って、自分の研究所または工場に行って、ごちそうして、またよその研究所へ紹介して見せておるくらいです。イギリスへ行ったって、ドイツへ行ったって、絶対ないことだと思います。ですから、自分たちの持っておる技術を、もっと自分たちが尊重していいと思う。そういうことになりますと、勝手なことにはならないで済むのじゃないかと思います。やはり大学なり研究所なりが相当権威を持ちまして、ちゃんと契約なりしまして、効果のあるものならば、あっただけの何かそこに報酬を取る。それが好ましくないのは、これが大蔵省の収入になるのです。研究者がせっかく非常にいい研究をしましても、その生まれた結果というものは、研究所に余分に金がくるわけではない。こういう点は、相当私は考える余地があるのじゃないかと思う。そうかといって、研究者に全部渡すということも問題です。研究所が取った特許というものは、どこに所在するか、あるいはその成果に対して幾らどういうふうに報いるかということは、非常に問題だと思います。かつて自分の会社においても、研究者のそういう発明に対して、どういうふうに報いるかということについて相当考えました。私、ドイツに行ったときも、いろいろ聞いてみましたが、向うでも非常に困っております。ほんとうの学者の研究者というものは、重役にしたって喜びません。向うでは、すぐ重役にしたり課長にしたりしますが、ほんとうの発明者はそうではないのです。これは今後科学技術庁でやることかどうかわかりませんけれども、お考えになっていい問題じゃないかと思います。ですから、もし業界が勝手だということであれば、勝手でないようにしても、やはり方法はあるのじゃないかと思います。私は、さきに、ある会社をお世話することになりました。石油化学でございますが、ずっとこれに関係しまして、世界石油化学というものを考えてみました。そう古い産業ではございませんけれども、新しい産業でありましても、これはアメリカ、ドイツイギリスと自由に技術が交換されております。大体、石油精製会社というものは、おそろしく国際的に大きな根を張ったものですが、これは自分で研究所を持っております。人の研究も買います。そうしてお互いにスムーズに、ほんとうに国境がないほどやっております。そこで、日本は今石油化学が大はやりになって、やっておりますけれども、これは先ほど小坂さんからもお話しがあったように、非常におくれたということで、今、研究員を大学でも作るということで、現在石油化学講座があるのは東北大学だけですが、講座を作るとか研究をしたりしております。その研究の成果によって、あるものを工業化するということは、よほど困難ではないかと思っております。特に科学技術庁ができましたので、こういう面へ重点を置いたならば、そういうところに人も金も集中して、追いかけていくのも差しつかえないのじゃないか。さらにそのことを追いかけまして、研究をしていくということのためには、小さないろいろな化学工業会社が、今からそういう研究を始めて、これを工業化していくことは、非常に困難ではないかという危惧をいたしております。そこで、科学技術庁というものができて、なるべく不如意な財政の中から、あるいは民間から出します寄付金でも、一番効果的に使うことを考えながら、一つ積極的に科学技術振興をはかっていかなくちゃならぬ、こう痛感しておるような次第でございます。
  15. 志村茂治

    ○志村委員 次に、小坂さんにお尋ねしたいのですが、あなたの同友会でお考えになりました科学技術開発公社ですか、これのアイデアの中で、独立採算制ということを言われたのです。先日私たちが科研に参りました際も、今度法律改正になりまして、科研も独立採算制でやれということを言われたことで、非常に苦しくなってきた、こういうことを言っておりました。御承知のように、研究は将来果してどういうものができるかわからない状態のもとに発足するものでありますから、独立採算ということを言われると、いろいろな支障が出てくるのではないかと思います。何かこの間に独立採算制にしてもよい、あるいは独立採算制自体に幅を持たせているというようなお考えのようであるが、その点をお伺いしたい。
  16. 小坂徳三郎

    小坂参考人 ただいまのお話でございますが、先ほどはちょっと言葉が足りなかったのでございまして、われわれの方は、独立採算制を原則とするというふうにいたしております。もちろん研究が直ちにベースに載るものとも思いません。原則とすることにいたしまして、野放図にはしないのだという、かんぬきだけはかけようということにいたしております。
  17. 志村茂治

    ○志村委員 もう一つお尋ねしたいのですが、実は、特許の問題、あるいはもっと広く技術提携の問題になると思うのですが、今度原子炉のゼネレーターの問題で、そのメーカーの人を、日立と東芝と三菱ですか、三社を呼びまして聞きましたところが、その三社ともお互いにアメリカに連結のある会社を持っておる。それで、われわれの方は予算関係もありますのですが、一つのゼネレーターを持ってきて、それに基いて研究することが、できるかと言ったら、それはできないことはないが、きわめて不徹底なものであるというふうな御返事で、アメリカの会社日本会社との間のつながりは非常に強いものであり、他社にこれを漏らすことができないのだというふうな形態になっておるということを、われわれ身にしみて感じたわけです。これでは、日本で、たとえば原子力研究所が一基入れるということをいっても、特別に、一つ会社会社連絡を通ずるのでなければ、徹底した研究はできないぞということになったので、これはだめだという感じで、勢い三社との連係があるならば、三つのゼネレータを持ってこなければならぬのではないかという結論になっておったのです。こういうものを日本が希望するように、一基でもって徹底した技術研究ができるように、打破する方法がどこかにあるものか、これをお尋ねしたい。
  18. 小坂徳三郎

    小坂参考人 私もよく存じませんし、由来技術提携の結果資本提携までやっておるいろいろな会社がございます。その提携というものは非常にがっちりしたもので、なかなかそれを打破するということはむずかしいのではないかという、非常に悲観的な考え方を持っております。それかまた逆に申しますれば、産業政策的に見て、あるいは国民経済的に見て、非常に妙なことで、御指摘の通り、日本一つあればいいものを、三社三様の、三つ買わなければならぬ、これは非常にロスであります。やはりそういう点は、一つで済むならば一つの方がいいだろうと思います。それがよしんば国会あるいは国の政策として決定されても、その当事者の企業はなかなか早急にはそれに従わない、こういうふうに考えます。ですから、また何かいろいろな方法をお考え願って、経済的にかつ合理的にいくようにお考えいただけば幸いと考えます。お答えにはならぬと思いますが……。
  19. 志村茂治

    ○志村委員 結局質問をして押しつけられたようなことになってしまいましたが、イギリスその他欧米諸国では、一つの特許を入れる場合にも、関係各社が集まって、そのものを一つ入れて、そしてお互いにその間の技術を交換するという方法をとっておるまことにうらやましいことでございますが、日本では、全然違った反対な形ができ上ってしまっておる。これをどうして打破するかということになってくるのです。それにつきまして、日本はなぜそういうふうに外国一つ一つ会社と特別な関係が結ばれておるかという問題、これを打破するためには、その根拠を突きとめなければならぬ、こういうふうに考えておるのであります。そこで考えられることは、日本がそれほど外国会社に依存しておるということは、日本ではまだまだ非常に技術の程度が低くて、そこまでアメリカなりどこなり連絡のある会社に徹底的に依存しなければ、何もやれないのであるかどうか。あるいは資本関係でそういうふうにしなければならないのであるか、この点をお尋ねしたい。
  20. 小坂徳三郎

    小坂参考人 これもお答えにはならぬと思いますが、私の感じだけを申し上げますれば、必ずしもそうではないと思います。しかし、そうやった方が、企業としてはより採算がいいし、安全で、技術を独占できる。つまり技術独占料に対して、いわゆる企業は、自分の支配権というものを相手に譲っておるというのが実情です。ですから、企業が、独占することによって大いに栄えていくという代償として、技術導入と同時に資本の提携をして、資本の半半の持ち合いということを許すのではないかと思います。私の場合にも、そういうケースがありました。しかし、私としては、それは多少不見識ではないかと思いまして、お断わりしました。従って、その特許はもらいませんでした。今われわれの特許契約をしておりますのは、全部特許だけに限っております。しかしそれは工業化するまでに、非常に時間がかかりました。できれば、株を持たせ、資本に参加させて、技術まで入れてやれば、非常に早いのであります。しかし、それを拒否したために、その会社からではなくて、別の会社から特許だけを買いまして、八年間苦労して、やっと工業化したということになっております。ですから、やはりその企業考え方、経営者の考え方ではないかと思います。だからといって、一がいに資本提携をやって、企業の採算を一挙に向上する、あるいは独占体を形成するということがいけないということも言えないのじゃないかと思います。その辺は企業家の、経営者の心構えといいますか、国民経済に対する一つ考え方ではないか、そんなようなものではないかと思います。
  21. 志村茂治

    ○志村委員 そこで問題が出てくるのですが、研究を総合するとか、あるいは研究組合を作るというような場合におきまして、これは例が不適当かもしれませんが、川崎あたりで労働者の養成をやっております。それが川崎の工場全体の労働者の養成をするということになりますと、技術工業全波に対する技術を覚える。従って、労働者も他に移転することも容易でありますが、大ていの会社が、自分だけの技術を教える労働講座を作っているということですから、労働者はそこから動くことができない。ほかに行っても通用しない。そこの会社だけの技術に役立つような教育を受けるということによりまして、労働者は縛られておるという格好になっております。一般の科学技術におきましても、かなり封鎖的な考え方を持って、自分の技術はほかに見せないんだ、秘密にしておるんだということになる。これは、欧米においても確かにそういう点があると思うのですが、特に日本におきましては、自分の会社の利益ということだけを非常に強調いたしますと、結局この組合などを作っても、そんなところに技術を公開されたんでは、自分の利益にならないんだという考え方から、この組合を作るということは、非常に妨げられておるのではないか、これを何らかの方法で打破しなければならぬ、こうは思っておりましても、財界の実情がそうであるというと、なかなか困難である。特別に何かほかにいいお考えがあったら、お教え願いたい。
  22. 池田亀三郎

    池田参考人 原子力関係はよくわかりませんけれども、ちょうどあなたが指摘されたようなあやまちを私も犯したのです。それはどういうことかというと、日本ほど各国の同種類の技術を持っている国は、世界にどこにもないと思います。そこで私どもが例にぶつかったのですが同じ技術を買った会社が五社あった。これは同じ会社から五社が買ったのですが、その間でなかなか連絡ができませんし、こういうことは非常に不利なわけです。もう一つは最近、新回転カーバイド炉を電気化学社と日本カーバイド社と両会社が、それぞれ外国会社から技術を買っている。これは今の原子炉関係と非常に似ているのではないかと思います。たとえばA会社が向うのB会社と話し合う。C会社がD会社と話し合う。向うさんのBとDは、AとCとの間にはよくわからないのです。この点は、外資の導入をするのですから、ある程度まで何もかも向うの技術をさらけ出すということは、契約しなければ向うも教えてくれませんけれども、ある程度差しつかえない見積りとか予算とかは、必ずくれます。ですから、そこでその程度のことで、A会社あるいはC会社が話し合って、B会社あるいはD会社がいいということになりましたら、両方ともその会社から、買ったらいいんじゃないかと思います。原子力の場合にも、それがいけるんじゃないかとも思います。ちょっと的はずれたことを申しましたが、なお提携できないという問題であります。これは、組合研究をやるということをいたしましても、最初は割合にそういうことになると思いますがほんとにそれによって効果が上りましたら——そういう中に入ってどういうものをやるかというと、共通の問題とか、あるいは私がレッペの例を先ほど申し上げましたが、レッペが一時流行で、補助金をもらって、あちこちの会社研究をやりました。私見て歩きましたが、ある程度までは共通なんです。結局枝葉だけが、いろいろな製品ができますから違うんです。それで、私は、共通のことは、共通にやってよくないかと思います。それは利害は一致するのです。それを今おっしゃったお話のように、秘密にし合って、話し合いができないということは、非常に困ることでございます。これを何とかした方法で打破していくことに、今後努めなければいかぬのじゃないか。そういう面で、さっきも組合に出す場合の政府補助金が三分の二、あるいは三分の一、漸次これを減らしてもよかろうということを申し上げました。Aの会社もBの会社も、あの当時補助金をもらっているんですが、補助金をもらって別個にやることは、非常にマイナスが多いと思います。そういう意味合いでいいますと、おっしゃる通りでありますけれども、これは漸次打破していくように、何か指導していくことができるんじゃないかと私は思います。
  23. 有田喜一

    有田委員長 前田正男君。
  24. 前田正男

    ○前田(正)委員 それでは、簡単に質問をさしていただきとうございます。非常にけっこうな御意見を伺いまして、参考になると思いますけれども、まず、同友会科学技術開発公社の案を見ますと、大体官公立研究機関を整理統合するということを主にしておられるようでございます。研究組合は、どうしても中小企業に必要でありますが、同種の大規模な、総合的な研究をしなければならぬというような問題について、われわれ最近感じておりますのは、先ほど志村君も触れましたけれども、学者と官吏と民間と、こういう人たちが別々に研究しようとしても、実際問題としてなかなかできないのじゃないか。原子力研究所はその一つの例でありまして、民間の資金も入れ、政府も出資し、学者も別に研究所の中に入ってもらおうと思っているわけですが、今後の会社として、国立研究機関をこういうふうに整理していく公社というものも、一つの行き方だと思いますけれども国立研究機関を整理統合するだけでは不十分であるところの、総合品的な大きな研究をしなければならぬ。どうしたら学者の諸君も入ってこられ——大体学者の諸君は、大学の教授という名前を非常に喜ぶようですけれども、しかしその研究所にも入ってこられ、また官吏の方もそこへ入って、一緒研究する、民間の人もそこに入って研究できる、こういう問題について、私らも盛んに案を練っているわけであります。この三十二年度の研究体制の整備の問題では、これが非常に大きな問題になってくるんじゃないかと思っているのです。それは、先ほど来、池田さんからもお話がありました通りで、従来、研究所というのは相当たくさんありまして、それを整備して参りますと、たとえば航空機にしても、あるいは金属にいたしましても、みな何十億、何百億という金が要るんじゃないかと思います。こういうことになって参りますと、単に原子力だけじゃなしに、これらの研究には、そういう三者が共同研究できるということを考えなければならぬと思います。経済同友会の方におきましても、これだけ熱心な案を作っておられるようでございますので、さらに引き続いて御研究願いたいと思いますが、もし現在そういうことについて御意見同友会の方からおありでしたら、お聞かせ願いたいと思うのです。
  25. 小坂徳三郎

    小坂参考人 ただいまの御質問でございますが、実は一応グループ別に、ただいま御指摘のありましたような高純度金属の製造に関する研究というものを始めまして、十八品目くらいのものを、総合的に、基礎的な研究をやったらどうかというところまでは考えております。実は公社案を出しましたと遂に、政変があったり、ごたごたしてしまって、結局同友会としては、その後大事だ大事だとはいいながら、十分なる分科会もやっておりませんので、十分なお答えはできないと思いますが、もし本日の委員会におきまして、そういう御希望がございますれば、帰りまして、委員長によく話しまして、その研究をするならするというように申します。
  26. 前田正男

    ○前田(正)委員 その問題はぜひ御研究を願って、経済界の御意見を承わりたいと思います。われわれ自身も案を作りたいと思っております。一つの例は、原子力研究所であるとは思っております。  それから、池田さんの方から研究組合の方のお話があった。その説明の中に、中小企業が主であるというお話がありましたが、場合によれば、大企業中心にしたものも、入ってもいいという点に触れておられたようであります。研究組合は、大企業中心にしたものをやるといたしましても、自然政府の補助は多くなって参りますから、大企業をめぐる系列の下記の研究組合という形になって、そういうような点はむずかしいのではないか。たとえば、大企業自身もう少し自分で金を注いで、大企業自身が独自の研究をやるだけの力を持っているのではないか。しかしそれについては、単に従来のような研究費を経費から控除するとかという程度では工合が悪いと思います。私の考えておりますのは、アメリカ等にあるように、一つ研究法人というふうに法人格を与えて、大企業一つ会社研究所を別格の法人にして、そのかわりに、そこへ出資するのは、三井なら三井の系列の各方面の方からそこへ共同研究的に補助するということがあっても、そういう出資はなるべく現在の税法の上で認められている控除でなしに、利益があるときはできるだけここへ入れて、その研究機関法人に入れても、それは全額、この際、税法上の経費として、これを落してもらう。同時に研究法人として分離された三菱なら三菱の研究所は、税法上においても有利にする。しかし三井とか三菱という科学上の共同研究組合を作ることは、なかなか事実上むずかしい。同時にまた、私らから見ますと、それだけ経済的に余裕があるならば、三菱なり三井なりでおのおの争って研究をしてもらい、いい研究を出してもらうことも必要ではないかと思う。従って、研究組合の中にまで大企業自身が入っていくということについては、多少疑問があるのではないかと思っております。これについて、池田さんの御意見をお聞かせ願いたいと思います。
  27. 池田亀三郎

    池田参考人 私の言い方が悪かったと思いますが、逆なんです。今、三井、三菱とおっしゃいましたが、昔の三井、三菱ではございません。最近これはばらばらですから、これが一緒になってやれといっても、これはなかなかむずかしい。ちょうど別れた夫婦みたいで、まだ他人の方がまとめやすくて、うまくいく。そういう傾向が、恥かしいのですが、あるのです。今、大企業はむずかしいとおっしゃいました。先ほど石油化学の問題で申し上げましたが、それは比較にも何もなりません。今年シェルがスーパー・タンカー、三万トン、三十そうの注文を出しておる。四万バーレルのレファイナリーを三つ作っております。両方で七、八百億くらいかかると思います。そういうものをぽんと注文を出すような相手方です。これとわれわれは張り合っていかなければならないので、非常に不利な立場にあるのです。なぜ私どもがこれをやるかというと、中間物を作りますと、それから先いろいろな器具や何かがあるので、雇用関係からいいましても、その方の利益からいうと、国家にも相当大きな貢献ができる。そういう意味合いで、私どもはやろうと思っております。三井、三菱といっても、昔とは違いますし、昔であっても裸で競争することはなかなかむずかしいので、どちらかというと、そういう力の及ばないところを、何とかして一緒になって、基礎的だったり共通的なものは、そういうものでいく方が、研究組合の価値があるのではないかと思います。中小企業とおっしゃられますけれども、この分ならば、公立研究所等を整理統合して指導する方が、主ではないかと思います。研究費が売り上げの三%というのは大へんなものです。それにしても、大きいといわれているところでも、一年に一億か三億くらいの研究費ではないかと思います。これではほんとう研究はとてもできないと思う。国立研究所を見ても、一番大きいのは電電公社研究所ではないかと思いますが、これにしても八億か十億くらいと思います。これではとても世界技術水準を追っかけていくのには不十分であると思いますので、なるべく共通に、一緒になって研究をやったらどうかということを考えております。
  28. 前田正男

    ○前田(正)委員 科学なら科学を研究される場合に、研究組合式のものでおやりになるよりか、冬会社の人も出席してもらい、政府出席し、学者も入って、総合的な大きな研究所を作る方がいいのではないか。たとえば、三井とか三菱とかその他の民間の方ばかりお集めになって、総合的な研究組合を作ってやるというだけでは、基礎的なものを十分に掘り下げてやることはやりにくいのではないか。そういうものを作ろうとするならば、それに東京工業試験所も吸収して、政府も入り、民間も入り、学者も入って、政府の金だけでは足りないから、民間にも出資してもらって、大きな総会品研究機関を作る方が実際的ではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  29. 池田亀三郎

    池田参考人 これも、三井、三菱とかいう系列下の共同組合を作ることは考えておりません。それではとうてい力が及ばないと思うわけであります。なお、公社とか研究法人の話もありましたが、この問題は、民間研究所会議にある人が提案して、これを学術会議に持ち込んで、そういう問題がだんだん広がったと思います。公社を作ってやることについても、原則としても、三公社のようならば独立採算はできますが、研究機関では、どういう結果が生まれるかわからないから、当分は国立研究所ということにならないと、うまくいかないのじゃないか。その後に、今申したような大企業、であっても組合を作る、こういったようなことの方がいいのじゃないだろうかと思います。どうせこれは当分は、株式会社にしましても、法人にしましても、何にしましても、みんな使い込むにきまっております。とてもそんな、なまやさしく研究成果は上らないと思います。当分だけでもそういうふうにしていただく方が、いいのじゃないかと思います。それで、私も先ほど、材料研究所も一部のものは政府から離して、重要なものだけやって、そしてこれを組合研究にまかしたらどうかということを申し上げたつもりでございます。
  30. 有田喜一

    有田委員長 山口好一君。
  31. 山口好一

    ○山口(好)委員 本日は、池田さん、小坂さんから、科学技術振興に関しましての日本の現在の立場なりまた今後の行き方につきましての有意義な御参考意見を伺いまして、私ども一同非常に稗益するところがあったわけでございます。質問の点も、大体私がお尋ねしようと思いましたことは、志村さん前田さんからもお尋ねがありましたので、大体了解をいたしたわけであります。ただわれわれとしまして、日本の現在の財政的な立場から、十分予算的な措置を講ずることができないでおりますことを遺憾に存じます。先ほども、池田さんは、大蔵省でこういう予算の編成に関する権限を一切握っておる、どうも、どこを見ても乏しい予算で、何とも手の出しようもないというような御意見でありました。われわれといたしましても、科学技術庁が生まれましたる以上、たとい大蔵省が予算の権限は握っておりましても、この科学技術庁の要望します点を強くわれわれの手で推進をいたしまして、できるだけたくさんの予算を獲得したいというふうに思っております。特に科学技術面の振興のために・大蔵省だけでこれを握っておるということが工合が悪いというような点で、予算面でお考えになっておりますることがございましたら、お聞かせ願いたいと思います。
  32. 池田亀三郎

    池田参考人 これは、私ども審議会のときも一番問題になった点でございまして、大体申し上げますと、予算権をある程度握らなければ、とても科学技術庁が活発に動かないだろうということが結論でございました。そして、私どもやっておりますときに、大蔵省の方から電話がかかってきたり、お会いしたりしまして、尊重するのも困る、いろいろ承諾を得なくちゃいかぬということも因るということで、国会の方でももみにもんだ上で、今の科学技術庁のような結果になったのではないかと思います。あそこの主計局に科学技術のわかる人はどなたか、一人くらいおりましょうかしら、あまりおわかりになっていないのじゃないかと私は思います。そこで、大きな点で、日本科学技術政策というものをはっきり、国会でもあるいは政府でも立てていただきまして、その上で、何か動けるような機構なり方法を考えていただきたい。その面で、おそらく今度また試験研究所等のあり方そのほかについて御検討なさる上に、必ず国会の方でもあるいは政府の方でも、お考えになるのではないかと思いますが、私どもはそういうふうに希望しております。  それから、どうも研究費をよけい出すからどうといったふうにして、ただ捨てるか何かのように考えるのは間違いでございまして、私ども業界におきまして仕事をします場合に、試験研究費は一番利回りのいい投資だ、私は自分の会社創立のときからそう考えております。ただし、その試験研究機関なりあるいは研究者を、うまく使わなくちゃいかぬことはもちろんであります。時と金を忘れた研究もときには必要でありますけれども、大体そういう考え方を大蔵省でも国でも持っていただければ、非常にけっこうじゃないかと思っております。
  33. 山口好一

    ○山口(好)委員 小坂さんにちょっと。意見になると思いますが、放射能問題は、今なお研究中のようでありまして、われわれも、今後もこの問題につきましては、研究をいたしたいと思っております。小坂さんからお話がありました特許権の問題は、これは日本の科学振興産業一般にわたりましての重要な問題であると思います。科学技術庁が生まれますについて、この特許庁をいずれの管下に置くか、従来のような形で通産省の下に置くべきであるか、また科学技術庁の管下に置くべきであるかということで、これも相当われわれ委員の間におきまして問題があり、通産省ともずいぶん激論があったのであります。その当時の通産省関係の方々、あるいは特許庁の長官なども呼びまして、その点をずいぶんと追及いたしたのであります。が今後はこういう点を十分注意して進んでいかなければ、日本産業振興はできないと考えるのであります。民間におきましても、この特許問題では、今までその方面の著書も日本に見出すことが出来ないからというような考え方に、民間の方々も服従される傾向にあったのじゃないかと思います。これは役所にはもとより反省を促す必要が大いにあると思います。民間の方におきましても、こういう点に十分注意を払い、われわれも注意を払いまして、正しいあり方に持っていくことが必要であると考えますが、小坂さんの御意見はいかがでしょう。
  34. 小坂徳三郎

    小坂参考人 われわれの側におきましても、確かに、戦争中十カ年のブランクがありますので、いろいろな面で、資料不足というようなことで、勇気に欠けた点もあったかと思います。しかし、その後いわゆる平和条約ができましたあと、特許関係につきまして、民間企業の間に割に大きな会合ができております。重陽会とかそのあたりからは、相当いろいろな意見が通産省に提出されていると思います。しかし、今、御指摘の通り、特許庁を通産省に置いておくか、新しい科学技術庁に置くかということは、確かに議論としては、ポイントの問題じゃないかと思います。通産省に置いても、また技術庁に置いても、いずれにいたしましても、特許ということが普通の産業政策として十分に認識されてない場合には、どこに置いても同じじゃないかと考えるわけであります。それで、よしんば、われわれの方の勇気を今後大いにふるい起しまして、いろいろな点について、特許庁に問題を持ち込むようにだんだんなると思いますが、そのときに、一係官の処理にまかせるということであっては、問題は少しも改善されない。やはりこれが一国の政策として、または省の方針としてはっきりと打ち出されて、それに基いて、われわれの抗議なり意見なりを持ち出せば、効果は確かに上って参ると思います。その辺につきまして、重ねて一つ国の御配慮を願いたいと思います。
  35. 有田喜一

    有田委員長 他に御質疑はありませんか。——他に御質疑がなければ、この際、参考人にごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙中にもかかわりませず、長時間にわたりまして、それぞれのお立場より、きわめて御熱心に、有意義な御意見をお聞かせいただきまして、まことにありがとうございました。本委員会を代表いたしまして、厚く御礼を申し上げます。  本日はこの程度にいたし、次会は、明三十日、水曜日、午前十時より理事会、十時半より委員会を開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時十二分散会