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池田参考人 私は、本年の三月一日に
科学技術庁設置法ができまして、その当時、両院で
附帯決議をなされたことを
承知いたしております。それには、中央、
地方を通じまして、
試験研究機関のあり方及び所属について再
検討を加えて、三十二年度からこれを整備拡大するということをうたっております。昨年、
行政審議会でこの問題を審議いたしましたので、私
どもは大きな関心を持っておるのでございます。そこで三十分ということでありますから、ごく
問題点だけを一応申し上げてみたいと思います。
その
審議会に、
最初、
官房長官から示されたように、
科学技術ということがもともと問題になるのでありますけれ
ども、私
どもは
産業技術、こういうふうに解釈しております。またそういうふうに今度の
科学技術庁もできたと思います。そこで
試験研究所でありますが、
大体大分けにいたしますと、まず
官公立の分と、それから今後できることを私
どもが希望しております
民間と官との
共同のもの、こういうふうになるのじゃないかと思います。そのほか最近
検討されております
原子力関係の
公社の
問題等があると思いますが、これはせっかく
政府そのほかで
検討されておりますから、私からきょう申し上げることは、御遠慮申し上げます。
第一の
国家に属する
試験研究所でございますが、大体
大学と
国立、これは省と庁に属したものがありますけれ
ども、そのほか
公立のものが大体考えられます。
大学の
研究所といたしましては、独立した
研究所と
講座についた
研究室とでもいいますか、あるいは
研究所もございますが、両方あるようであります。これはもちろん
最高の学理と独創的な
考え方をいたしまして、
技術の
最高峰にあるべきだということは問題ないと思います。しかもそれは基礎的であり、また創造的であり、同時にある程度までの
応用化ということは問題ないと思います。ただ、この点について私の
意見を簡単につけ加えますと、両方の場合におきまして、大体
やり方が
講座制になっております。これはいろんな面で非常に好ましくない、私はこう思っております。たとえば、
定員予算を増加するために
講座をふやすというふうなこと、それから
重要性によって
講座を大きくする、あるいは小さくするというような
弾力性がなかなかとりにくい、これはおそらく原子力問題あるいは
航空関係の問題、
石油化学の
問題等を
研究いたします場合に大きな支障になるのではないか、この点は
検討を要する点だと思っております。それから私
ども民間におる者からいたしますと、この点は十分留意しておりますが八なるべくセクショナリズムにならぬように、重要な問題があれば、
研究所こぞってこれに集中してやるというような
建前を考えてやっております。この点は
国立あるいは
大学の
研究所等において欠けるところが大きいのじゃないか、こう思っております。
それから、もう
一つは、これからの
状態になりますと、おそらくかれこれの
委託研究、あるいは受託もする
委託もするということがあってほしいと思います。それからなお進んで、
集団研究とでもいいますか、
共同研究も必要だと思います。これは
国立の
研究所間だけではありませんで、
民間との間にもこういう道がもっと容易に開かれることが望ましいことだと思います。
それから、とかく
大学等の
研究は、基礎的なものに重きを置かれ過ぎておりますが、
応用化の方まである程度はいきませんと、
ほんとうの基礎的の
研究もなかなか
——国立、
公立、
民間等の
連絡が悪うございまして、
効果が上ってないように私は拝見いたしました。この例を申しますと、たとえば、千葉の
生産技術研究所におきましては、最近
酸素製鉄の
研究をいたしておりますが、これはふだんから
大学の方がおっしゃいますような基礎的の
研究という
意味から見ますと、少しはずれておるのであります。私
どものあれでは、もっと徹底して力のあるところ、
設備のできますところであれば、
大学でやってもちっとも差しつかえない、こうも考えております。
それからなお、
国立省庁の
試験研究所でございますが、これは大体において、
行政目的に沿うようにやることはもちろんでございますけれ
ども、これが、総合的に見て、
政策を立てていくところに大きな欠点があるように考えております。今度、
科学技術庁発足後に、さっき申しました
閣議決定に基きまして、これらが今後最も
問題点になるだろうと考えております。私
どもは、昨秋の
審議会中の
検討を顧みましても、
問題点がたくさんございます。
合同委員会案、私
どもの
審議会の答申、
決定案、こう比較してみますと、おのずからこの間に何が今度再
検討なさる場合の
検討の目標になるかということが、はっきりいたすわけであります。私
どもは、私
どもの
審議会以上にもっと強い線が出るかと思いましたところ、今度の
科学技術庁の法案を見ましても、ずっと弱められた線になっておるのでありまして、大体の
方向からいきますと、もっともっとこれは強い線でなくちゃならぬだろうと思っております。おもに変ったことは、
機械、電気、地質調査所、特許庁の吸収を見合せたというようなことがはっきり出ております。そのほか
材料研究所が
金属研究所になりましたり、あるいは
予算が、
航空研究所にしましても、わずかに一億であったり、
金属研究所の
予算が一億であったり、
定員がわずかに六人しかふえないで一千万円の
予算だけしかつけられなかったことは、画期的な
科学技術の
振興にはとうてい及びもつかないものだと考えております。それから、
原子力関係の方は申し上げませんけれ
ども、ただこれは当初
財団法人でわれわれ
民間に十万円の
寄付をしろ、
あとの四十万円は
会社組織にするための払い込みにする、こういうことでございました。これは私
ども、
原子力研究等に対する認識がまことに貧弱であったということで、こういうことでは、画期的の
原子力研究等はとうてい不可能なことと思っておったのでございます。幸い最近いろいろ
検討されておりますから、いずれりっぱな、はっきりした企画ができることと思い、またそう祈っております。
その次は、
公立研究所でございますが、これはもちろん
地方的でもあり、あるいは
中小企業への
技術普及を
目的とすることは当然でございます。しかし実際
ほんとうにこれは今まで洗ってみたことはないと思います。私
ども、二十六年から七年にかけまして、
行政監察委員会でやったのでございます。これもおそらく今度
実態をお
調べになりますと、はっきりいたすと思いますが、あるものは廃止してもよろしい、あるものは統合
調整してもよろしい、あるものはもっと拡大しなくちゃいかぬということがはっきりして参るだろうと思います。どっちかと申しますと、現在は乱立の
傾向が多分にあると私は拝見いたしました。大体通じていいますと、私
どもの見た感じからいいまして、その後もときどき見る機会がございますが、
大学、
国立、
公立とも、その施設からいっても、
設備からいっても、
人間関係からいっても、いかにも貧弱だということは、おそらく
外国の例でもごらんなされば一番はっきりすることだと思います。これでは、
わが国の
経済自立、あるいは
産業の拡大、貿易の
振興あるいは
文化の高揚ということは、おそらく望み得ないのじゃないか、こう思います。
そこで、ちょっとここで御
参考までに申し上げますが、
皆さん御
承知と思いますけれ
ども、各省や
大学に付属する
試験研究所等の数字を私
どもかつて
調べてみたことがございます。少しこれは古いのでございますが、
昭和二十六年で、そう変ってはおりません。
設置法に規定されたもので、百三十五ありました。なおその
下部機構、支所とか
分所、これを合計いたしますと、千七百六十三あったのでございます。こういうような
状態でございますので、これは時間もございませんから申し上げませんが、私
どもの見ました範囲からいいまして、さっき申しましたような
調整統合あるいは強化する必要が相当あるだろうと思いました。これはいずれ今後具体的にいろいろ問題になる点だと思います。
それから、昨年の官庁の直轄の
研究機関の
予算、これは
大学付置研究所、
講座研究所、
補助金並びに
委託費を含めまして百三十一億になっております。一般の
国家予算が九千九百十四億五千七百万円でありますから、総
予算に対しまして一・三%になっております。これから見ましても、
わが国の
科学技術振興のための
国家の
支出がいかに貧弱であるかということが、うかがわれるわけであります。これらの点も考えまして、これを何とか十分にいたしたい、こう思います。この前に、
審議会でも問題になりましたが、何としても
予算権は、大蔵省の
主計官に
予算を握られておるのでは、どうにもならない。やはりもっと
最高政策からしましたこの辺の
考え方がなくてはいかぬのではないか、こう思います。ことに、原子力問題でございますとか、あるいは航空機の問題あるいはそのほかいろいろな、さっき申しました
石油化学、そのほかの新
技術に対しまして考えるとき、
世界の大体の
技術の進歩を解明していく面からいきまして、相当考える余地があるのではないかと思います。そこで、どういうふうにここで一般的に考えていくかと申しますと、実際の今あります
試験研究所の
実態がどういうものかということを、一応も一応もお
調べになる必要があるのではないかと思います。そして、これらの
産業の
研究の成果、あるいは
文化の向上にどういうふうに役立っておるかということでございます。それからなお
研究分野等がはっきりして、総合的に考えられているかどうかということでございます。その点は、ごらんになるとおそらくだれも気づくことでございますが、
研究所が乱立されておりましたり、あるいは重複いたしておりました、こういうことはぜひ避けまして、整理統合することが必要だと思います。私は先ほど
予算が少いと申しましたけれ
ども、百三十一億になりましたのを相当多いとお考えになる方もあるかもしれませんが、どちらにしても
国家財政もそう楽ではないのでありますから、できるだけ
国家財政の
支出は、一番今申しました
目的に沿うた
効果を上げるように
調整することが当然だと思います。そういう
意味合いで、一方では
十分効果を上げるように
調整もいたしますが、一方ではその重点に応じました積極的な
国家支出も必要かと、こういうふうに思うわけであります。
なお先ほど私は、
大学が
技術の
最高峰と申しました。それから
国立とか公営とか
民間とかいうふうなことになりますが、その間に縦にも横にももっと密接な
研究の
連絡があってほしい。そしてこれを
調整する
機関があってほしい、こう思います。結局
科学技術庁は大体今申しましたような面での役目を果すためにできたと思いますので、これまた今後の
問題点の
一つと考えられます。三十二年度には拡大するということになっておりますけれ
ども、これは三十二年度で終ることではありませんので、将来も見通して、ここでちゃんとした
最高政策を確立いたしまして、
十分効果を上げるように希望いたします。
以上が大体
研究所の概略の
状態でありますが、そこにつけ加えまして申し上げたいことは、ただいま
通産省当局の考えておることでもございますけれ
ども、
ドイツあるいは
イギリス等で非常に盛んになっております
研究組合、これも先ほど
民間の
共同、協力という
意味のことを申し上げましたが、
ドイツは大体
基礎研究は
終戦後すぐから
政府が
研究費を出しております。
応用研究は、
法人、個人の
寄付あるいは
会員組織によってやっておるようであります。大体あの国は、
基礎研究はいつでも
世界の先頭を行くという
建前になっております。アメリカは大体
応用化は非常にうまいところがありますが、
基礎研究においては、
終戦後
BPリポート等によりまして、いろんな資料をとったものを合せて、
工業化したり
応用化して参りましたけれ
ども、最近ではだんだんその種が尽きるというようなことを心配しておる向きもあるかのように聞いております。
日本よりもひどい敗戦のうき目を見た
ドイツの
研究機関は、なかなかすばらしいものがあるのであります。そういう
意味合いからしまして、
ドイツあるいは
イギリスの
研究組合等も、たしか三十七か九くらいあると思いますが、費用は大体
政府——これはこの
組合の
性格によりまして、あるいは三分の二十してもいいと思うのでありますが、
最初は少し
政府がよけいに出しまして、漸次
民間の負担を増していくというふうになりますれば、
最初はものによって三分の二あるいは二分の一、三分の一等の
支出によって、
民間と協力してやっていくということは、私
どもやはりただ
国立の
研究所ということでやっても、私
どもの今まで考えてきておった
考え方でいいますと、どうも
民間があまり接近いたしません。たとえば
大学の
研究室でもそうです。どちらかといいますと、先生と教え子の
関係、個人的なつながりが多うございまして、一般的に、
大学のせっかくの
研究なり、あるいは
国立の
研究所を利用する熱が、足りないのではないか。これを私、
行政監察員をしておりましたときに、
民間人も来てもらいまして、いろいろ話し合った結果、私の結論はそういうふうに出ました。なお、むろんこれらの
研究組合の
会費等につきましては、
法人税を免税することになりますと、結局税を出さなければ、一億出すものが二億出してもよろしいということになりまして、その結果は、りっぱなものが生まれるのではないかと思うのであります。
それでは、こういう
組合はどういうものをやったらよろしいかといいますと、私は、前の
科学技術庁ができますと遂に、
東京、
大阪、
名古屋の
試験研究所はとりませんで、
科学研究所を作りたいという案を出したのでございますけれ
ども、そのときもよく質問されました。どうしてお前は今の
工業技術院の傘下の、
試験研究所をとらないのかという質問を受けたのでございますが、私はあの程度のものは相当
地方色がございまして、場合によれば、今申しました
研究組合でもいいのじゃないか。それよりも、私
ども化学工業に
関係しておる者から申しますと、一番欠けておるところは、非常に金のかかりますところの、
共通な
化学装置です。
化学装置の
研究というものは、どこででもやるほどの力はございません。最近でもほとんど全部
外国技術を買っておるというふうな
状態であります。そういう面から、ああいう
意見を出したのでございます。従って、
共通性の強いもの
——むろんこれは基礎的にもあり、あるいはレッペなんかもそういう例であります。
材料等もそうでございます。今度は
国立研究所に置きますけれ
ども、問題によりましては、あるいは先になりましたら、これは
組合研究に移してもいい時期があるかもしれません。こう思うのであります。
そのほか、
共通でありますと、
自動車会社というものは、
部分品まで全部作るわけじゃございません。
ミシンにしても、自転車にしても、そうだと思います。
部分品は
共通のものです。むしろ組み立てをやります
大会社よりは、
部分品会社の方がもっといい
技術を持って、
設備を持つということが好ましいことじゃないかと思います。こう思いますと、こういうものはやはり
組合研究でやってもよろしいのではないか。ただし、これは
組合研究といいましても、
大会社のための、あるいは大
工業のための
共同の
組合研究の場合と、それから
中小企業の場合の
組合研究、こう二つに分れてもいいのではないか。あるいは
中小企業の方は、今申しました
公立の
試験研究所等が
指導するという
立場に回るのも
一つでございます。これは
あとでちょっと申し上げます。
なお、大
規模といいますと、先に申しました
化学装置機械、あるいは
鉄鋼でございますと、これまた
鉄鋼会社は
幾つもございませんから、これは個々に、別個に、秘密に
研究するといいましても、なかなか容易じゃございません。最近の
鉄鋼は大
てい外国会社の
技術を入れておりますから、その面ではいいと考えられますけれ
ども、これまた五年、十年たちますと、やはり立ちおくれということになるだろうと思います。そういう面で、むしろ大きなものほど、
組合研究が必要かもしれません。
非鉄関係でもそうです。あるいは造船とか
電機界の一部も、この部面に入ってよろしかろうかと思います。なお
管理面でも同じように、
品質管理でありますとか、
熱管理等も、今、
政府がめんどうを見ておりますけれ
ども、こういう問題、あるいは
オートメーション等は非常に大きな問題でありますが、こういうものも
組合研究でよろしかろうと思います。そのほか私
どもが各
会社でみな同じことをやって、非常な労力のむだをしておるのでございますけれ
ども、内外の文献の
情報提供のごときは当然どこかでまとめてやるべきじゃないかと思います。それから
中小企業等には特に必要なことと思いますけれ
ども、
中小企業庁の
指導ということは、もっと拡大いたしまして、
中小企業の
組合の
人たちの
会員工場を巡回して、これを
指導する、あるいは
工場診断をするというふうなことが必要じゃないだろうかと、こんなことを考えております。
なお、私先ほど
大学と、
国立と、それから
民間と、
共同のものということを申し上げました。これをちょっと実例を申し上げまして、私の感じたことを申し上げますと、たとえば
大阪に行ってみますと、あそこには、神戸にも、
総合技術研究所といったものがあります。
大阪には、市にも、府にも、国のもあり、
大学にもあります。これをずっと見てごらんになりますと、ごく最近は、私は
承知いたしませんけれ
ども、すぐ気がつくと思います。重複してこんなに
幾つかの
研究所が必要かどうか。ある程度はこれが
共同するか、よほど横の
連絡もしたらどういう結果になるかということは、一応も一応も考えてよろしい問題じゃないかと思います。そこで私は、
大阪の
技術院の
研究所も吸収するということには賛成いたしませんでしたけれ
ども、これは問題です。
名古屋に行きましてもそうです。やはりあそこにも
名古屋市のがあり、県のがあり、国のがあり、
大学のもある。どれだけの特徴があるかといいますと、やはりこの
中小企業の
指導といいながらも、
研究者からいいますと、必要もございますけれ
ども、自然に
研究が
興味本位になったりいたしますと、だんだんと近いものになったりする、そういう面は
東京でも同じことです。そうでございますから、こういうものは
一緒にして、これは
財団法人といったようなことも考えられまするが、あるいは
組合研究といったことでもよろしかろうと思います。これは、場合によれば、市でも府でもあるいは国でも出す。あるいは
民間もそれに
一緒になって金を出すことになりますれば、自然に今よりももっと
関係が密になりまして、
利用価値もふえるし、また実際の
効果も上るんじゃないだろうか、こう思っておる次第でございます。大体以上で、一応終ります。