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1956-02-20 第24回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年二月二十日(月曜日)    午後一時五十二分開議  出席委員    委員長 有田 喜一君    理事 椎名悦三郎君 理事 長谷川四郎君    理事 志村 茂治君       加藤 精三君    小平 久雄君       中曽根康弘君    橋本 龍伍君       山口 好一君    岡本 隆一君       佐々木良作君    田中 武夫君       堂森 芳夫君  出席国務大臣         国 務 大 臣 正力松太郎君  出席政府委員         総理府事務官         (内閣総理大臣         官房審議室長) 賀屋 正雄君         総理府事務官         (科学技術行政         協議会事務局         長)      鈴江 康平君         経済企画政務次         官       齋藤 憲三君         文部政務次官  竹尾  弌君         文部事務官         (大学学術局         長)      稻田 清助君         通商産業政務次         官       川野 芳滿君         通商産業事務官         (重工業局長) 鈴木 義雄君         工業技術院長  黒川 眞武君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   中尾 博之君     ————————————— 本日の会議に付した案件  科学技術庁設置法案内閣提出第五一号)     —————————————
  2. 有田喜一

    有田委員長 これより会議を開きます。  科学技術庁設置法案を議題とし、質疑を続行いたします。質疑の通告があります。これを許します。志村茂治君。
  3. 志村茂治

    志村委員 科学技術振興については、日本国民だれでも反対する者はありませんし、またその技術の性質上、超党派でなければならないこともすでに基本法で認め、その基本法が成立せる今日であります。科学技術振興ということは、ちょうど第二次大戦のときに日本技術院を作って、それが主として火器の製造に向けられておったという事実があるのであります。起党派で開発をしなければならないということになれば、労働者大衆あるいは一般国民の一致した支持を得なければならないと考えるのでありますが、特に最近は、米国から武器に関する技術協定の問題も出ておるのであります。これらの問題を取り上げて考えてみました場合に、日本科学技術が、武器製造とどういう関係を持っていくか、科学技術庁の取り扱う方針について、御意見を承わりたいと思います。
  4. 齋藤憲三

    齋藤(憲)政府委員 ただいまの御質問に対して、大臣にかわって御答弁申し上げます。その御質問は、この前の岡委員の御質問の中にもございましたので、一応御答弁を申し上げたのでございますが、科学技術庁設置せられる大眼目は、あくまでも科学技術進歩によりまして、全人類の平和に寄与することを目的として、日本のすべての科学技術の水準を上げていくという以外にないと私は思うのであります。ただし、米国との武器に対する技術協定の内容ということは私はよくわかりませんが、およそ科学技術の真の目的は、人間は、あくまでも、心から平和を希求するという線に沿うて進展さすべきはずであって、戦争目的科学技術を専念してやろうことは、私は一つの邪道であると思うのであります。ただ現在のように、世界の二大思想の対立から、いろいろ国際間の問題もあり、また日本経済上の問題もあり、その間に、科学技術を用いて武器製造に当るという仕事も出てくるかもしれませんが、科学技術庁そのもの設置根本方針は、あくまでも真の平和を希求するために、人類の英知の発達をはかる、これ以外にはない、私はさように考えております。
  5. 志村茂治

    志村委員 自民党と社会党との間には、防衛に関する意見対立しておりますから、科学技術武器製造応用するかしないかというような問題をここで取り上げても、結論を得ないことはわかっております。しかし、ただいまお話のように、基本方針としては、あくまで人類の幸福に貢献するのだ——もっとも、それが抽象的な言葉である限り、人類の幸福はやはり防衛ということにあるといえばそれまでのことであるが、ただ、科学技術庁目的は、平和のためということをはっきりどこかで認識させていただきたいと思うのであります。ここには章として何もそのようなことが書いてありません。どの点からそれを類推されるのか伺いたい。
  6. 齋藤憲三

    齋藤(憲)政府委員 どうもそういうむずかしい御質問になりますと、私もうよく御答弁ができないと思いますが、科学技術の今日の状態から考えますと、原子力平和利用という問題が一番大きく取り上げられるのであります。今日各国対立関係にあり、武器というものも、原子力応用に集結されておると考えても、私は異論がないところではないかと思うのであります。ほかにもたくさんの武器があるじゃないか、こういう論も出ますが、とにかく第三次戦争の様相というものは、ほかの武器はもう一切役に立たぬ、その主力となるものは、どうしても原水爆その他原子力中心とした戦闘体制であるというふうにも言われておるのでございます。この科学技術庁におきましても、今日いろいろな構想がございますが、原子力平和利用進歩につれまして、日本科学技術体系も、原子力中心としてやはり組み立てられるのではないか、そう考えられるのであります。果して私の考えのように進歩いたすとすれば、もうすでに科学技術庁の中の中心であります。原子力平和利用は、明白に戦争を度外視して、平和に限定されているのであります。それでございますから、本法案に特に平和に対する限界を定めなくても、超党派的に制定いたしました原子力基本法その他によりまして、科学技術庁が根本的に平和を目的としておるということは、賢明な志村委員は十分に御洞察できると思うとともに、一般の人も、科学技術庁設置するということは、平和裏に国力を増強して、生活の安定を策する、民生の安定を策するということにあるのでございますから、特にまたここに原子力平和利用に対して規定いたすごとき条文を掲げる必要はないのではないか、かように考えております。ただ、ここに、科学技術庁設置法にも「科学技術振興を図り、国民経済発展に寄与するため、」とありますが、それで十分一つ御了察願えるのではないかと考えております。
  7. 志村茂治

    志村委員 実は超党派の線でありますが、われわれの関係しております労働組合、特に全商工労働組合からは、科学技術行政機関が作られるという声が起りました三年以前から、われわれに対して強い反対をいたしておるのであります。ということは、科学技術振興それ自体には反対はないが、これは必ず武器製造に向けられるんだから、われわれ平和を愛好する労働者としては、これに賛成いたしかねるというのが、今まで一貫した主張であったわけであります。ただいま齋藤次官お話にありましたように、原子力関係におきましては、明確にその線がうたわれており、そうして技術的にも、爆弾は現状ではできないんだというふうな説明で、これらの労働者十分理解をいたしておるのであります。少くとも、原子力関係については安心をする。しかしながら、そのほかの科学技術については、まだ依然として疑問が残っておるということで、これらの労働組合との間の矛盾対立というものは、依然として解けていないような状態であります。それで、先ほどからいろいろな質問を申したわけでありますが、たとえばアメリカから技術協定が持ち込まれるというような場合に、これに科学技術庁がタッチするのかどうかというふうな問題です。これは未定の問題ですからわかりませんが、一応の御意見を聞き、それから武器製造に直接科学技術庁付属機関等でこれに参加させるようなことがあるかどうかということをお聞きしたいと思います。
  8. 齋藤憲三

    齋藤(憲)政府委員 将来のことを予想して御答弁を申し上げるということは、非常に誤解を生じますので、この際慎みたいと思うのでございますが、科学技術庁というもののあり方は、将来武器を作るというものとは関係がないと私は思います。こういうことを申し上げるとおしかりを受けるかとも思いますが、科学技術というものの概念の決定であります。と申しますよりは、科学技術というものの定義であります。科学技術というものは、私の考えておるところによりますと、自然界状態を種別に体系づけて、そうしてそれをどこまでも深く掘り下げていくということが科学でありまして、この深く掘り下げていくときに、いろいろな自然界の不明なものが解明される、その解明されたのを人類の幸福のために応用していくというのが技術であって、それ以外は、科学技術というものはないと私は思うのでございます。もしも戦争のために利用されるということでありますならば、そういう科学技術進歩過程のものを、そのときのいろいろな勢力によって、これを悪用していくということであって、科学技術進歩発達をはかるということと、戦争にこれを用いていくということは、別個な考えでいかなければならぬ問題だと私は思うのであります。従って科学技術庁設置あり方というものは、あくまでも、自然科学建前から逸脱することはなくして、自然界実態を究明して、そこから起りますところの発明発見によって、人類社会の幸福を企画していく、経済の安定を策していくということでなければならぬと考えておるのであります。
  9. 志村茂治

    志村委員 ただいまの斎藤次官の御答弁の中で、科学技術戦争の用具に利用するということは、科学技術の悪用であるというふうな御解釈によって私は満足します。  次にお聞きしたいことは、この政府提案科学技術庁設置法の第一条を見ますと、「行政事務を能率的に遂行する」と書いてありますし、第三条には「科学技術」「に関する行政を総合的に推進する」というようなことが書いてあるのであります。そのほか第四条の十一にも「基本的な政策を企画し、立案し、及び推進すること。」というようなことが書いてありまして、まさに日本科学技術中央機関であるという体制を各条文でうたっておるのであります。そういたしますと、日本科学技術振興体制は、常識的に考えた場合に、科学技術に関する付属機関というものを網羅して、この科学技術庁の中に取り入れるべきである、これを取り入れてこそ、初めて、第一条、第三条、第四条十一に掲げてあるこれらの趣旨が遂行されるものと考えるのであります。しかしながら、このたびの案によりますと、それらの研究機関の大部分が、依然として従来の官庁に残っておるということは、ここにうたってある条文と矛盾する点が多いと思うのであります。何ゆえこれらの研究所科学技術庁の中に取り入れることができなかったか、その点をお尋ねしたいと思います。
  10. 正力松太郎

    正力国務大臣 ただいまの志村委員からの御質問は、まことにごもっともでございます。私もそれには同感でありますが、ただ一度にこれを総合することが、いろいろな事情がありましてなかなかむずかしかったので、追ってだんだんその線に向っていくように努力しつつあります。御希望のようにだんだんいくと思いますからどうぞ……。
  11. 加藤精三

    加藤(精)委員 ただいまの問題でございますが、前国会商工常任委員会の小委員会におきまして、本員は官房長官によく念を押して、科学技術庁設置を次の国会において必ず提案するように言質をとったのであります。その際、官房長官は、現在議員提出を予定されている案は非常になまぬるいから、もっとはるかに強力なものを作るのだというようなことで、閣議で十分そういうことを了承しているのだから、議員提案はやらないようにという話があった。今度出てきました政府提案は、どうも当時の議員提案よりもはるかになまぬるい、官房長官がいろいろの言質を与えたのを全うされないようにふっております。たとえば、電気科学なんかでも、電気試験所というようなものを今度統合されてないので、そういう基本的なものまで統合されないということは、はなはだよろしくない。この前の国会で申し上げましたように、当時各省の官吏が政治運動をやって、行政管理庁で打ち合せたときに、各省から役人が出まして、こてんこてんにやっつけた。そしてこれをたたきつぶすような格好をしたというようなことがうわさされておりますが、そういう役人をみんな首にしちゃって、国家のために強力な科学技術庁を作られるようなお考えが、大臣にありますかどうか承わります。
  12. 正力松太郎

    正力国務大臣 御趣意は全く賛成ですけれども、徐々にやりたいと思っておりますから、どうぞ一つ
  13. 齋藤憲三

    齋藤(憲)政府委員 大臣の御答弁を補足して申し上げます。この科学技術庁設置に関しましては、ご承知通り、従来から熱心な先輩同僚議員の中にいろいろな構想があったのであります。政府といたしましても、この科学技術振興に対する熟慮をもちまして、十分検討を加えたのでございますが、御承知通り、既存の研究所試験所に各行政機関に密着いたしておりまして、これを直ちに科学技術庁傘下におさめますというと、そこにいろいろな支障も来たしますし、また行政事務の遂行にも累を及ぼすところもありますことを考えまして、究極におきましては、そういう研究所及び試験所というものも、適当な形において、科学技術庁傘下におさめることを考えておるのでございます。  元来、科学技術庁設置目的は、日本におけるところの科学技術実態をまず第一に検討を加えてみませんと、実際問題といたしましては、よくわからぬのであります。ただ官庁研究所試験所を目標として科学技術行政あり方をきめるのが、——この条文にもございます通り中央、地方を通じて、あらゆる研究所実験所実態を突きとめるとともに、民間における試験所実験所実態もこれを調査する必要があるということは、結局科学技術庁というものは、将来、日本科学技術行政総合統一をはかるという大きな眼目のもとに、どういう体系を形作るべきかということの前提として、まず第一に、日本に今まで行われ来たったところの科学技術実態一つ把握する必要があるのではないか、そういう構想を持ちまして、第一前提といたしましては、科学技術庁設置法案の十一条に、「科学技術庁長官」「は、科学技術振興及び資源総合的利用を図るため必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し必要な資料の提出及び説明を求めることができる。」とあり、その次に、「勧告に基いてとった措置について報告を求めることができる。」とあります。その次には、「勧告した重要事項に関し特に必要があると認めるときは、内閣総理大臣に対し当該事項について内閣法」「第六条の規定による措置がとられるよう意見を具申することができる。」とありますように、まず、今までの日本研究実験あり方及び全般科学技術そのものに対し検討を加えて、適当な勧告及び内閣総理大臣指示権をもここに規定いたしまして、日本の今後の科学技術あり方、これに対する行政の処置というものに対して、第一段階としては、一つここで基本的な考えをまとめて、それから次第に必要に応じて研究所なり、実験所なりをこの傘下におさめたいという考えで、この法案提出いたしたのであります。ただいま加藤委員の申されたような御構想に対しましては、究極においては、政府も努力して達成をいたしたい、さように考えております。
  14. 加藤精三

    加藤(精)委員 ただいまの前提行為として、いろいろな権限を内閣が持つということは、これは非常にけっこうなことでございますけれども、私の言っておりますのは、たとえば、科学についてならば、その最も基本である電気科学試験所ですか、そんなものまで入れないというわけはないということなんです。二つに一つお答えを願いたいのですが、もし科学技術庁ができて、一任大臣専任政務次官ができたら、そういう基本的なものだけはすみやかに科学技術庁の中に入れて下さるのかどうか、それがないと、どうも魂が入らないものができるような気がしますので、そこの御答弁が願いたいと思います。
  15. 正力松太郎

    正力国務大臣 御質問のごとく、もしも専任大臣を置くというところまでいきますれば、むろんその御趣意に沿うよういたさなければなりません。
  16. 加藤精三

    加藤(精)委員 了解しました。
  17. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 似たようなことを重ねてお伺いすることになるかと思いますけれども、御承知のように、科学技術の問題は、大体ポイントが二つあると思います。一つは、今ここで論敵の対象になっておるところの、科学技術進歩発達のためにどういうふうにして行政指導をし、それを推進していくかという問題だと思います。それからもう一つの方は、従来ある、あるいは民間進歩発達しつつある科学技術行政または科学技術の実際面に対しまして、行政をどういうふうに振り向けるかという問題だと思います。今、第一の問題で、科学技術進歩発達のための推進機関としてこの科学技術庁を作られるというお話でありまして、志村さん並びに加藤さんから一番適切なところをお尋ねになっておると思いますが、私も従来の関係から見まして、その意味での科学技術行政、つまり研究所等中心とする科学技術行政前進を阻んでおる最大のものは、一つ費用であり、一つ役所セクトである。この費用の問題と官僚セクトの問題が、少くともこの科学技術庁設置法案の中で、何とか従来より前進しておらなければならぬはずだと思うのにもかかわらず、先ほど来お話がありましたように、原子力中心として、そこらの何とか無難なものだけをちょこちょこ集めたというような気がするのでございます。従って、これが過渡期行政機関を作るという任務を持っておるとしても、過渡期の間における、他のこれに包含されない技術研究機関、あるいは技術関係役所等セクトを打破するための行政指導力は、一体どこから出てくるのか、どこが担当するのかという問題が第一点。それから二番目には、実際の民間技術指導、あるいは奨励助長という問題に対してでありますが、御承知のように、大体基礎産業中心としてみた場合には、応用研究に関する限り、つまり役所技術行政あるいは指導行政よりも、民間の方が進んでおるわけであります。これは正力さんは十分御承知のことだろうと思います。私の専門のペースに巻き込むために電気の例をとってみますが、今、電力技術行政の面の中で、事実上、現在の保安行政に名をかるところの技術行政が、むしろどれだけ現在の電気事業技術発展のためにじゃまになっておるかという点をお考えになったことがありますかどうか。  従いまして、第二番目の問題は、この設置法と同時に、従来技術行政の名において行われておるところの保安行政の面に対しまして、もう一つ進めてみますと、保安行政の名によって、一般技術前進がじゃまされておる部門に対しましても、他の立法措置なりあるいは行政指導なりにつきまして、今考えておられるかどうか、この二点お答え願いたい。
  18. 齋藤憲三

    齋藤(憲)政府委員 第一問のお答えでございますが、科学技術庁設置せられまして、専任大臣ができまして、同時に次長以下各局長、それから審議官、調査官、そういうものが全部任命せられますと、第一に、先ほど申し上げました通り日本科学技術行政あり方というものに対して、その対象となるべきいろいろな事態を調査いたしまして、その指導方針を決定していかなければならぬと思うのであります。ただいまどういう方向に向って、どういう手段に訴えて指導するかという具体策は残念ながら持ち合せておりませんが、科学技術行政対象となるべきものは、深くいろいろな問題を研究いたして参りますことも必要でございますが、日本経済に寄与するために、どういうものを科学技術行政の中に織り込んで、強力に推進さしていくべきであるかという対象物をも研究いたしていかなければならぬと思うのであります。従いまして、まず第一に、科学技術庁といたしましては、先ほど来申し上げております通り、いろいろな問題がたくさん官立の研究所実験所においても研究されておりますし、また民間研究所実験所においても、実際問題として、いろいろ取り組んでおる問題もあるし、また日本資源及び外国貿易建前から、今後強力に発展策を講じていかなければならぬものもたくさんあると思うのであります。あくまでも科学技術庁は、これら一切の科学技術の範疇に属する日本実態を把握いたしまして、その結論を、基本産業にも、第二次産業にも真剣に求めまして、これを遂行し得るような建前昭和三十二年度の予算編成には要求をいたしまして、その実行をやっていきたいと思うのであります。ただ、ここにも、第五条で局制を作ることにいたしておるのでございますが、大体局制所掌事務は、この法文にも明記しておるようになっておるのでございますけれども、まだ実際はっきりした指導をどういう体制でもっていくかということまでは、ここで残念ながら申し上げられないような状態になっておるのであります。  それから、第二の、保安に名をかりて、科学技術振興をはばむような場合がたくさんあるということに対しましては、私はよく存じませんので、もし事務当局お答えができるならば、事務当局からお答えいたしたいと思います。
  19. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 第一番目の問題を少し補足しますと、私の聞いたのは、打って一丸とする。つまり科学行政を網羅する機関としては、当時まだいろいろな事情でできなかったが、順次そういう方向に持っていく方針であるというお話でありました。その方針はやむを得ないとして了承するといたしましても、順次持っていく期間の総合調整をやはり科学技術庁でやるのか。総理府設置したところに、そういうことをやる意味も含まれておるのかどうかということです。つまり、従来分れ分れになっておる技術行政といいますか、技術研究所セクトセクトになっておるやつを、運用面統一行政もここに包含されるのか、そういう質問なのであります。
  20. 齋藤憲三

    齋藤(憲)政府委員 今日、各省各庁において行われておりまする試験所研究所に対しましては、科学技術庁においてその行なっておりまする実態をよく調査して、その調整をはかっていきたい。そのために、第四条の第十三号に、「関係行政機関試験研究機関科学技術に関する経費及び関係行政機関科学技術に関する試験研究補助金交付金委託費その他これらに類する経費の見積の方針調整を行うこと。」という観点から、とりあえず全般科学技術に関するところの調整をはかっていきたい、このように考えております。
  21. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 そうすると、この設置法は、大体普通の行政機関設置法のごとくに、所管大臣中心とするところの各省設置法と並行的に存在しておって、その並行的に存在しておる中での取りまとめ役に走り回るというふうに感じていいのでしょうか。大体そういう感じがするわけでございます。ただそうなりますと、従来、経済企画の面についても同じように統一要求をされて、そして、現在の経済企画庁になる前に寄せたり引いたりして、その過程には、総理府の中に包含されておったこともあったように記憶いたしておるのでありますが、そのときにも、似たような形で、今の十三号と同じような格一好で格づけは書いてある。おそらく現在の経済企画庁の中にも、そういう仕事は含んでおるということになっておる。しかしながら、御承知のように、経済政策あるいは経済企画の立案に対しましては、それはもう有名無実で、何かほんとうにつまらない問題が起ったときには、調整役で、まあまあ役を勤めるぐらいのことにしかなっていないというのが現状であります。従って今度の科学行政の場合におきましても、今、加藤さんなり志村さんなりからお話があったような、そういう包括的な技術官庁ができるまでの間は、やはりまあまあ役ぐらいのところでやむを得ないというぐらいの感じなのでしょうか。
  22. 齋藤憲三

    齋藤(憲)政府委員 決して、ただいま佐々木委員お尋ねになったようなものではない。それは十一号に、「科学技術」「に関する基本的な政策を企画し、立案し、及び推進する」ということを規定いたしまして、第十二号には、「関係行政機関科学技術に関する事務の総合調整を行うこと」として、さらにこの事務の総合調整を規定し、それから十三号には、ただいま申し上げました通り、予算の見積り調整をやる、これを実行するために先ほど申し上げました報告を求め、勧告をし、さらにそれを聞かなければ、総理大臣指示権をもってその言うことを聞かせる、こういうのでございますから、決してまあまあぐらいでおさめるという決意をもって科学技術庁設置を要望いたしておるのではございません。第一段階といたしましては、先ほど来申し上げました通り日本科学技術実態を急速に把握する、その実態を急速に把握した上に立って、強力な科学技術行政をやって、日本科学技術総合統一をはかって、そうして国民経済に寄与したい、かような構想でございますから、御了承を願いたいと思います。
  23. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 出発点に当りましては、その決意まことにけっこうでありまするが、実情は、おそらく役所の力に押されまして、困難なことが出てくるだろうと思います。勧告権並びに総合調整権というのが、現在の官僚行政下にあっては、ほとんど名だけあって、実の伴わないものであることは、これはもう大体御承知通りであります。ただ、私は、十三号の最後の、予算面においてほんとうの科学行政に関する予算面の掌握までいけば、ある程度効果をおさめることができるのではなかろうか、しかしながら、それも先ほどのお話のように、各省設置法というのが厳然としておって、各省設置法各省機関として、各省大臣がそれの当面の責任者である限り、まことに困難な行政事務であろうかと存じます。しかし、予算問題がここに乗っかっただけでも、従来のよりはある程度の進歩であろうと思います。従いまして、この辺の問題につきましては、今言いましてもまた水かけ論になることだろうと思いますから、せっかく大臣並びに次官の御検討をお願いしておきまして、先ほどの第二の問題の保安行政部門の問題につきまして、現在この設置法考えられるときに、そういう問題は全然出来なかったかどうかということだけ、ちょっとお伺いいたしたいと思います。
  24. 齋藤憲三

    齋藤(憲)政府委員 不明にいたしまして、そういう個別の問題には考えが及ばなかったのでございますが、保安問題と科学技術進歩ということに重大な関連性があるといたしまするならば、佐々木委員の実際的な御説明を承わって、考慮いたしたいと思います。
  25. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 科学行政の推進を、政府科学行政のための研究機関等で一生懸命やらなければならぬという方の話は、大がいだれでもわかるし、われわれも大賛成なんです。ところが、現在推進する方の力よりも、研究行政の推進する方の力は、御承知のように予算もないし、せいぜい人件費が半分ぐらい出る程度でお茶を濁しているのが現状であります。ところが、各行政部門の中における技術出身の技術官の仕事は、その行政指導に名をかりて、大部分が保安行政ですけれども、その保安行政面の中で、民間技術前進をはばんでおることが非常に多いのです。たとえば、電気の問題でありますならば、電気に関する保安行政の規定は、一番最初明治何年かに東京電力の火力ができた時分に、これは危ないものだといって作られた。その危険物を民間の安寧秩序のために特別扱いするときの、その取扱い、取締りの規定が、ほとんどそのまま残っておるわけです。ところが事実上は、役所の中の技術官よりも、現実に、電気会社の技術屋の方が、もっともっと技術的に前進しておって、たとえば新しい機械が作りたい、あるいはまた民間技術常識の方が進んでおって、これくらいな取締りはもうとってもらった方がよっぽどいい、その方がむしろ一般技術前進させるということが多いのです。齋藤さんも御承知のように、今たとえばあなたの家の電気のヒューズが飛んだときに、そのヒューズを取りかえるということは、おそらく普通の建前からすると、あれはできぬことになっているが今どこの世界に、普通の電気を使っておる者が、ヒューズ一本取りかえることができないような状態でほったらかしておくものがあるか。また、たとえば電源開発ならば、佐久間のダムを作りますときに、建設省並びに通産省の電力技術行政監督並びに土木技術行政監督面はどうか。新しい機械を導入することにも、それからタイムリーに岩盤等を処理するときにも、つまらないと言ったらおかしいですけれども、監督する者よりもされる者の方が事実上よっぽど技術的に上である。しかもそのことは百も承知の助で心配しておって、それを心配しながらやっておるにもかかわらず、それがチェックされ、チェックされて、そのためにずいぶん大きな迷惑をこうむっておるわけです。おそらく私は通産省の関係仕事には、そういうことが非常に多かろうと思うわけです。従いまして、私が聞きましたのは、科学行政前進させるために、この設置法が作られ、一方の科学技術前進させる仕事、あるいは前進させるための研究所設置のための重大なるスタートが切られる際でありますから、従って一般行政面における従来の科学技術の取締り行政が、保安行政に名をかりて、どれだけ現実面のマイナスを来たしておるか、そしてこの辺に、科学技術庁設置法とは別の、科学行政推進のための立法なり、従来のそういう取締り規定を再考慮するという措置考えられなければならなかったのではないかと思っておるわけであります。直接関連がないようで恐縮でありますので、一応この辺にとどめておきます。しかし、現在の段階で、今、次官からもお話がありましたように、科学行政の推進の問題がこの設置法に盛られても、まだ役所におけるセクトをそのまま残し、おそらくこの調子では十分なる費用もとれないという段階において、この中で努力されることもまことにけっこうでありますが、これと並行的に、今マイナス面として働いているところの技術行政に対しても、これまた根本的なメスを入れられることが一日も早からんことを希望いたしておきます。
  26. 齋藤憲三

    齋藤(憲)政府委員 ただいまの御説明で、よく御質問の趣旨がわかりました。そういうことは、実際の科学技術行政の末端においては、ずいぶんたくさんあることだと思うのであります。私もそういう点には、一、二の体験もございますので、なるべく早急に、そういう科学技術行政のいろいろな面において、科学技術の直接経済面及び生活面に支障を来たしておるようなことは、どんどん取り除いていくように努力いたしたいと思います。幸い今度の設置法の中には、科学技術審議会もございとまして、科学技術に関する重要事項を審議するということになっておりますので、推進する方と阻害しつつある両面を審議の議題といたしまして、慎重に研究を重ねて御期待に沿うようにいたしたいと思います。
  27. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 御健闘をお願いいたします。
  28. 志村茂治

    志村委員 ただいまの論議を通じましても、科学技術庁仕事の一番大きいのは、第四条の十一、十二、十三、こういうことが皆さんによって認められておるのであります。そうしますと、この三つの条項を実行するためには、やはり結論としては、関係研究所等科学技術庁に一本にまとめなければならぬという結論以外には出てこないと思います。先ほどからの話によりますと、究極においては、そういう姿にするのだということであります。それらの事実も認められておるのでありますが、そこへ行くためには、漸進的な方法をとりたいということも、政府として当然考えらるべき点であります。しかしただそれだけのことで、各官庁間にいろいろな事情もあって、一気にそれへ持っていくことができないのだという抽象的な説明だけでは、われわれなかなか納得できないのであります。なぜ来べきものが来なかったかということについて、最も大きな被害者といえば被害者かもしれませんが、一番大きな研究所をとられる立場におられる通産省の御意見を、具体的に次官にお聞きしたいと思います。
  29. 川野芳滿

    ○川野政府委員 通商産業省は、御承知のように、産業と密接な関係を持っておる官庁であります。産業技術というものが密接な関係にありますことは、私が申し上げるまでもない点であります。かような面から、通商産業省といたしましては、各種の試験所があることが、円滑なる通産行政をやるゆえんである、こういう考えのもとに、通産省といたしましては、試験所研究所の必要を認めておる次第でございます。従いまして、現在ございます試験所は、現在通り通産省に置いていただきたい、こういう考え方を持つ次第であります。
  30. 志村茂治

    志村委員 ただいまお話を聞きますと、何か研究所を通産省が持っておるのは、円滑なる通産行政を行うために必要であるということを言われておるのでありますが、これは私は逆じゃないかと思う。産業発達させるために通産行政があるのであって、通産行政のためにその研究所があるのではないと考えておるが、その点いかがでしょう。
  31. 川野芳滿

    ○川野政府委員 私の言葉があるいは足りなかったかとも考えますが、もちろん産業振興のために、研究所試験所があることは当然のことであります。そういう意味を含めての私の答弁であったと御了承願いたいと思います。
  32. 志村茂治

    志村委員 あまり理屈は言いたくないのでありますが、産業発達のために研究所を持っておられるのである、それはこの場合には、科学技術振興のために、通産省がそういうふうな各種の研究所を持っておられるのであるということになるのであれば、今回、あらためて科学技術庁なるものができて、これが科学技術振興の任務を担当するということになったらば、通産省は、科学技術庁にお譲りになっても差しつかえないと思いますが、いかがでしょう。
  33. 川野芳滿

    ○川野政府委員 こういうことを申しますと大へん恐縮でございますが、実は、今、第一線の行政と各種の研究所試験所というようなものが、非常に密接な関係にあるわけであります。そこで、その研究所あるいは試験所科学技術庁に参った、こういうことになりますと、今後その試験所をかりに利用する、こういう場合におきましても、各省間でございますから、相当手続等も繁雑になろうかと考えます。従いまして、通商産業省といたしましては、ただいま申し上げましたように、ぜひ一つ通商産業省に置いていただきたい、こういう熱望を持っておるような次第であります。
  34. 志村茂治

    志村委員 これは一つのものの考え方の相違によると思うのでありますが、本来、科学技術行政を担当するのは科学技術庁である。そして通産省は、それらの研究所民間あるいはその他の行政上入り用であるということになる。この日本行政機関としての科学技術に対する軽重の度合いから言うならば、本来は科学技術庁が主であって、通産省が従であるべきであろうと思う。しかし今のこの科学技術庁の案によりますと、一応企画立案するということは書いてあるのでありますが、われわれが考えておりますように、科学技術庁が主であるべきものが、今は従の立場にある。間接的な立場でもって、これらの科学技術に対していろいろの行政的な指示を与えるというふうな立場におって、ほんとうにこれを統轄しているのは通産省であるということは、何か科学技術庁と通産省との間の軽重の点において、逆な状態になっておるのじゃないか、こう思うのであります。つきましては、ただいま次官は、ただ置いていただきたいと言われる。これだけのお言葉を聞くと、われわれはいつまでも置いていただきたいんだ、永久に科学技術庁にはこれらの研究所は渡さないのだというようなお考えのように聞えるのでありますが、状況の変化というようなことがあったらばということでなくて、今の状態においても、通産省は極力科学技術庁にこれらの研究所を渡すような過渡的措置をとられて、それができたあげくには、科学技術庁に渡す。究極には、科学技術庁にこれらの研究所は渡すという意図を持っておられるかどうか、この点をお聞きしたい。
  35. 川野芳滿

    ○川野政府委員 通商産業省と各種研究所が密接な関係にありますということを、例をもって申し上げてみたいと思います。ここに一つの輸入機械があった、機械を輸入する。こういうような場合がございましたときに、通商産業省の通商局あるいは重工業局といたしましては、国内産業振興、こういうような建前から、その輸入機械というものは、国内産等でまかなえやしないか、こういうふうな点を検討した上、国内産でまかなえる、こういうような場合におきましては、その輸入というものを差しとめる、こういうことにいたすわけであります。そういうような研究をいたしまする機械研究所と通産省とは、非常に密接な関係がございますので、そういう点からも通産省の下に試験所を置くのを痛感いたしておるのであります。  それから、現在、実は補助政策をとっておりますが、どういうものに補助金を出すかというような点等から考えましても、この試験所研究所の決定によって補助金を渡しておる。こういうようなわけでございまして、従いまして、非常に密接な関係にあるわけであります。  なお、私は先般新丸子の産業工芸試験所に参りましたが、あそこに参りますと、なるほどさらに産業試験所とが非常に密接な関係にある、こういうことを痛感いたしたような次第であります。こういう点から考えますると、やはり第一線の行政官庁試験所研究所を持つことの必要が痛感されるわけでございます。なお、大へんこういうことを申し上げて恐縮でございますが、科学技術庁は、先ほど来御説明がございましたように、企画推進官庁でございますから、科学技術庁におきまして、ある問題等の総合研究所等をお持ちになって、大きな問題をここで検討されて、その問題について各省所管のものに真剣に検討を命ずる、こういうことにされてはいかがかというふうにも私考えているような次第でございます。そういうわけで、密接な関係にございますので、従いまして、第一線官庁の通商産業省に現在ございまする試験所研究所はやはり必要じゃないか、こういうふうに考えておるような次第でございます。
  36. 志村茂治

    志村委員 どうも話が全然食い違っておるようです。先ほどから私が申し上げますように、たとえば、今の輸入のためのということは、通産行政の便宜上置くのだというふうに私は考えております。日本科学技術は、通産行政の便宜のためにあるものではないのです。日本科学技術水準を上げるため、それ自身を上げるためであって、通産行政の便宜のためにあるということは、私はこれは科学技術を今まで取り扱った上での一番大きな欠点ではないか、こういうふうに考えております。科学技術自体の水準を上げなければならぬということが、現在の日本に与えられた一番大きな使命であると思います。通産行政どころではありません。もっと大きな問題がここにあるのであります。従って、ただいま科学技術庁は企画立案の庁であるからして、ただ企画立案だけすればよろしいのだ、それを各省にいえばいいのだ、こう育っておられますが、先ほどもありましたように、現在の機構の中で、企画立案をし、それを指令して、それが各省によって必ず実行されるという保証はなかなか得られない。むしろ科学技術庁自身がそれを持って、みずから手足に対して企画立案するという態度をとるべきであって、通産省が考えておられますように、通産行政の事務上、入り用のことがあったならば、これらの研究所へ委託されて、そうして調査をさせ、実験をさせ、研究をさせられたら私はいいのではないか、こう思うのであります。従って、先ほど申し上げましたように、いろいろ事務の都合があるといわれますならば、これは本質的な問題ですが、ただそれが科学技術庁に全部の研究所を渡すということについていろいろの考えられそうな問題があるならば、それを解消するように努力をして、やがてはこれを科学技術庁へ持ってくるのだというふうな御決意を願えないものかどうかということをお聞きするわけです。
  37. 川野芳滿

    ○川野政府委員 先ほど私が申し述べました点は、実はすべてわが国の産業振興の基調、こういう点からお話し申し上げたような次第であります。たとえば、輸入機械の問題にいたしましても、国内産の機械でまとまるならば、国内産の機械を使っていただく、こういうことは、とりもなおさず、わが国の産業振興になる。こういうことにもなりますので、これらの意味も含めて、実は申し上げたような次第でございます。  なお、科学技術庁研究所を渡したらどうか、こういう点でございますが、これはたびたび申し上げましたように、通産省といたしましては、やはり今ぐらい程度の研究所というものは、産業振興上におきましても必要である、こういうふうに考えておるような次第でございます。
  38. 志村茂治

    志村委員 ただいまのその程度の研究所日本の国にあるということは必要だ、私はこう思っております。ですから、これに対して、最も直接的な関係に立っておる官庁にこれをお譲り願いたいということであって、通産省で御入り用があれば、それをお使いになったらいい、こういうふうに言っておるのでございます。いかがでしょう。
  39. 川野芳滿

    ○川野政府委員 その点につきましても、先ほど御答弁申し上げたと思うのですが、実は省から離れますと、円滑な運用はどうであろうか。こういうふうな点を考えますので、そういう点から、現在程度の研究所試験所は通産省にいただきたい、こういうふうに希望いたしておる次第であります。
  40. 志村茂治

    志村委員 語るに落ちたようであって、今、通産省は、ほかにまかせるとなかなか自分の思うようにならないということを言っておられるのであります。科学技術庁には、本来科学技術を専門に担当すべき省がほかにあって、それで企画立案だけさせて、それに従わせようということは、いよいよもって困難だと思います。ですから、これはいつまで言っても切りがないと思いますから、私はこの辺でやめますが、これは通産省でも、通産省の立場だけでなく、日本科学技術の立場で一つ十分御協力願いたいということをここでお願いしまして、私のこの点の質問は終りといたします。  それでは、文部省の方がお見えになったようですから、お聞きしたいんですが、今度の科学技術庁の中で、第三条に、「科学技術(人文科学のみに係るもの及び大学における研究に係るものを除く。)」ということが書いてあるのであります。これは以前から問題になっており、われわれはこの予算の点については、原子力の場合においても、大学をその中に入れる予定であったのであります。ところが学者の方面からの異議があって、大学は除外するというような態度をとってきたのであります。この基礎的な理論の研究技術応用ということは、私たちは一体不可分と考えておるのであります。しかしながら、学者の方面からこのような反対があるということを聞いて、驚いたのであります。その理由を聞いてみると、統制されるのではないか、学問の自由が奪われるのではないか、こういうことを学者は非常におそれておるのであります。各国では、大学と科学技術関係行政官庁とは、一体となっているところが多いのでありますが、日本の場合において、なぜこういうことを言うのであるか。言いかえれば、これは学者側からの現在の政府に対する不信任に基くものじゃないかと私は考えておるのであります。文部省では、学者の、科学技術から除外していただきたいという希望がどこにあるか、どういうふうにお考えになっておるか、その点をお尋ねしたいと思います。
  41. 竹尾弌

    ○竹尾政府委員 お答え申し上げます。大学は御承知のように基礎的の研究をやるところでございます。そこでその学部ばかりでなく、付置研究所におきましても、研究者の創意によりまして、未開拓の分野における基礎的な研究をつちかっていく、こういう使命を持っているのでございまして、大学における研究の場でございます学部または付置研究所というものが相寄って、最高の教育研究機関たる大学を基礎づけているのでありまして、この点はとくと御了承願えると思います。それで大学の管理上、統制が外から加えられて参ると困る。自主的な運営によって、初めてその機能を発揮し得るのである。こういう工合に私は考えております。そこで、研究の自由を基本的な要件とする大学における研究というものは、対象から除いて、必要に応じて大学の自主的な協力を求めることによりまして、大学というものをして科学研究振興に十分な寄与をさせるということが、妥当であるとともに、効果的である。こういうような考え方から、一応除く方がよろしいという結論に到達したわけでございます。
  42. 志村茂治

    志村委員 何か、文部省にあれば学問の自由が保障され、そして科学技術庁へくれば、その自由は保障されないかのような感じを受けるのですが、同じ官庁内で、また日本の田の学者で、官庁によって学者の研究態度に対する自由を、保障をしたりしなかったりすることはないと思うのでありますが、いかがでしょうか。私は、これは日本の国全体の問題じゃないかと思うのですが、いかがですか。
  43. 稻田清助

    ○稻田政府委員 ただいまの政務次官の話を補足いたしますれば、文部省といえども、大学に対しまして、研究について計画を立てて、その計画通り研究しろというような指示は、現在いたしておりません。新しい法案によりますと、相当総合企画という点がありますから、法律の条文それ自身において、そういう点を企画、統合、指導するというようなことはおもしろくなかろう。それで今、政務次官のお話のように、大学の自主的な研究を一方では守りながら、協力する点については十分文部省を通じて協力したい、これが文部省の考えであります。
  44. 志村茂治

    志村委員 企画立案をすれば、直ちに統制になるというふうな考え方はどうかと思うのであります。この科学技術庁考え方におきましては、武器を作るとか、あるいはアメリカと協定して、日本はこれこれのものだけと制限された立場において研究するとか、そういうようなことは考えておらないのであります。私たち初め、原案を作りました者のそもそもの考え方としましては、日本科学水準のおくれを何とか取り戻そうという日本全体の問題でありまして、その間において何ら統制なんか考えておらないのであります。その間に、どうしてこういうようなことが言われなければならなくなったのか。そこでまず一つお聞きしたいことは、大学を除外するということは、文部省が御主張になったのでありますか、それともこれはほかでそういうような主張をなされたのですか、それを聞きたいと思います。
  45. 稻田清助

    ○稻田政府委員 この点につきましては、前回原子力の問題について国会で論議せられておりますときにも、学界においてそういう論議もございましたし、それらのことを勘案いたしまして、だれが発議するということなく、政府部内において話をまとめ、立案いたします場合に、これが適当だという結論に到達したことだと考えております。
  46. 志村茂治

    志村委員 そうしますと、何か結局は日本学術会議の茅委員長が言ってきた、そういうところに端を発しているということになると、責任は茅委員長にあるということになってしまう。それを、何となしに、政府ははっきりした基礎はないけれども、原子力でそういう話になっておったから、科学技術庁も似たようなものだから、同じような態度でいこう、こういうことになったのですか。
  47. 稻田清助

    ○稻田政府委員 だれが発議したということは、今申しましたけれども、文部省の所見は、先ほど竹尾政務次官から申し述べられましたように、原案の趣旨が最も適当だと考えておるわけであります。
  48. 志村茂治

    志村委員 そういたしますと、話が初めにもどりまして、何か文部省ならば学問の自由が保障されて、科学技術庁では保障されないということになるのじゃないでしょうか。
  49. 稻田清助

    ○稻田政府委員 文部省設置法では、どこを見ましても、ここに対応いたしますような条文がございませんし、長い歴史のうちにおきまして、文部省が大学に対しまする態度というものは、基礎研究における大学の創意工夫というものを尊重して参ってきておりますから、ここであらためて法律の条文を置いて、法律の条規を適用いたしまして企画するというようなことなしにも、今まで通り参りますことが適当だと考えたわけでございます。
  50. 志村茂治

    志村委員 それでは、これも水かけ論になりそうで、何かどこにも根拠がないような話になっておりまして、話がわかりません。ここの科学技術発展について、特にこういうふうな弱い立場に置かれております科学技術庁が、各省研究機関に対して相当の指示権を持つというようなことをするためには、十三号の特に予算に関してその総合調整の権限を持つことが絶対必要である。これが欠けておるならば、結局浮いた存在になるのではないかということが心配されるものであります。ここでは、「経費の見積の方針調整を行うこと」ということを書いておるのでありますが、最初の案にありましたものは、予算の要求及び施行について、関係機関意見を徴し、総合調整を行うこととなっておりまして、その施行までが入っておるのであります。その点を抜かれた理由はいかがな理由でありますか。
  51. 中尾博之

    ○中尾説明員 今の施行の点が抜けておるというお話でございますが、それが実は入っております案の段階では、大蔵省といたしましては、実は御相談に応じておりません。すでにその後でございましょうと思いますが、私それがどういう段階であるか今わかりませんので、ちょっとはっきりしたことは申し上げられませんが、これができます前にには要綱につきまして、政府の内部で決定がございます。その前に相談がございましたのと、もう一つは直接これとは関係がないかも存じませんが、行政管理庁におきまする行政審議会の場におきまして、その結論としておきめになったという御意向も承わっております。そのいずれにおきましても、実はその施行の面が対象にならなかったのでございます。従って、特に何か原案にあったものを除いたということにつきまして、大蔵省といたしまして、何らかの意見を申し上げましたことはございません。
  52. 志村茂治

    志村委員 それでは、大蔵省が原案として見せられたものは、どういうふうな条文になっておりますか。この点は……。
  53. 賀屋正雄

    賀屋政府委員 今回の科学技術庁設置に伴いまして、そういう方針がきまりまして、これを条文化いたすとりまとめの作業をいたしました審議室といたしまして、ちょっとその間について御説明いたしておきます。  実は、要綱そのものは、行政官理庁の方でおまとめを願ったわけでございますが、この科学技術庁設置法を作ります場合に、予算関係としてどの程度の権限を付与するかという点につきましては、いろいろの議論があったわけでございます。結局、政府といたしまして、最終的に決定いたしましたのは、さきに科学技術関係行政機構につきまして、行政審議会の答申もございまして、その線に沿うのがよかろうということで、これを採用するということにいたしたわけでございます。それによりますと、今回政府がこの法律案の要綱として開議決定をいたしましたものと、大体同様になっております。政府は、その行政審議会の答申を尊重して、適当だと考えまして、これを閣議決定して、それを条文化いたしたわけであります。
  54. 志村茂治

    志村委員 先ほどのことに少し戻りまして、ここの大学の問題ですが、ここに、大学の中における研究にかかるものを除くということを書いてあり、一方では、第十一条に関係各方面へいろいろな要求を出すことができるといっております。一応ここで大学関係は除いておいて、そうして十一条でこのようなことを書いてありますが、これは矛盾はないものでしょうか。一応除くということにしておって、そうしてさらに大学関係を入れるというのか、あるいはこの場合においても、大学関係を除いてしまうという意味なのですか、その点をお聞きしたい。
  55. 賀屋正雄

    賀屋政府委員 御指摘のように、第三条で科学技術というものの中からは、大学における研究にかかる部分を除いております。従いまして、第十一条で、関係行政機関の長に対して、資料の提出なり説明を求めます場合におきましても、その目的といたして規定いたしております科学技術振興のため特に必要であると認めるという、そのとります目的につきましては、科学技術振興ということでございまして、その科学技術の中には、大学における研究は除かれておるわけでございます。しかしながら、それを除きました科学技術振興のため必要があります場合には、関係行政機関の長でありますから、もちろん文部大臣に対して必要な資料を要求することは、この条文でできるものと考えます。
  56. 志村茂治

    志村委員 終ります。
  57. 有田喜一

    有田委員長 党森芳夫君。
  58. 堂森芳夫

    堂森委員 一昨日の委員会で、同僚前田委員から、今度の科学技術庁設置法を見ると、大学の研究室にかかるものは除くとあるが、こういうふうなことに対して質問をしておられます。これに対しまして、斎藤政務次官でございますが、審議会の委員に学者が三分の一入るようになっている。従って、円滑にいろいろな問題を処理していくことができる、こういうふうに答弁しておられるのであります。ところが、今日の進んだ科学研究は、もう一人一人の個人の研究だけではとうていやり得ないことは、御承知通りであります。従って、膨大な共同研究というものをやっていくのでなかったならば、今日の驚異的に進歩した科学、こういうものの研究は、とうてい成果があげられぬと思うのであります。日本科学界を見ますると、大学の研究室というものは、日本科学進歩研究にとっては、非常に大きな要素であるということはもちろんであります。従って、一昨日の答弁のような、ただ審議会の委員に学者が加わるからうまくいく、こういうようなことじゃなしに、どのように具体的にして、大学の研究室を、動員といいますか、研究に加わらせていくかというこの構想一つ伺いたいと思います。
  59. 齋藤憲三

    齋藤(憲)政府委員 科学技術庁が実現いたしました場合に、大学付置の研究所とどういう連繋を緊密にとっていくかという的確な方針は、これは単独でもきめられません。ただこの前の委員会では、たとえて申しますると、いろいろな審議会を設ける際に、学者にもその審議会委員になっていただいて、大学における研究が、実際の科学技術行政に反映するように努力いたしたい、そうお答えを申し上げたのでございます。今、堂森委員の仰せの通り科学技術振興ということは、その根本は、やはり基礎科学進歩発展というところに大きな要素があると思うのであります。ただ、私たちは、現実に大学の研究所というものがどういう状態に置かれてあるのか、またどういうような予算でこれが行われておるのかということを、いまだつまびらかにいたしておらぬのであります。ただ日本の大学における基礎科学が非常に重要性を持っておるということだけは、いろいろな面から話を承わるので、よく知っておるのであります。十分に文部省と連絡をいたしまして、将来は、大学にありまする研究所実態一つ了解のできるようにお話を願いまして、その上、十分、あらゆる角度から連繋を保ちつつ、基礎学問が実際の科学技術行政に取り入れられて、国民経済の安定のために、科学技術の実際面の水準が向上できるようにはからっていきたいと思うのであります。特に、こういうことは、実際問題としてやれると思うのでございますが、大学の研究所から出て参りまする特許、あるいは個人的に学者から提出されまする特許、そういうものの実態検討して、これが実施化に協力をするという点は、一つの大きな問題として取り上げられるんじゃないか、さように考えます。
  60. 堂森芳夫

    堂森委員 政務次官の答弁を聞いておりますと、科学技術庁が発足をしよう、——われわれはもっと大きな科学省を作れ、こういう主張をしておるわけでありますが、科学技術庁が発足しよう、こういうときに、しかもその政務次官をしておられます齋藤さんから、大学の研究室の姿が何もわからぬと言われる、これは非常に大きな問題でないかと思うのであります。しからば、私少し教えてあげようかと思うわけであります。ということは、私は別に各方面の研究室を知っておるわけではありません。ただやぶ医者でありますために、医学の研究室は少しく知っております。日本の医学の研究機関にいろいろありますが、たとえば、外的な原因による疾病についての研究の最高機関である伝研を一つとってみましょう。これは、戦前、世界における第一流の研究室でありました。しかしその予算を見ますと、伝研には十四部の研究室があると思います。この十四部ある研究室を見ますと、一つの部に、教授、あるいは助教授、講師、助手、こういうふうにおるわけであります。各部の研究費は、大体七十万円から八十万円一年に使っております。これが日本における最高の、最も研究費の潤沢な研究室でございます。ところが、七十万円、八十万円といいますと、月に幾らになるか、こう見ますと、きわめて微々たるものであります。私せんだっても、私立医科大学で最も優秀と言われておる慶応大学の医学部の研究室を調べてみました。そうすると、ある基礎医学の研究室では、何でも一年に三十五万円くらいしか研究費がないそうであります。三十五万円というと、月に三万円にも満たない研究費しかない。こういうような状態でありまして、今日ウサギ一匹買うと四百五十円するそうであります。そうして、伝染病研究所でも、あるいは慶応大学の医学部の研究室でも、月のうち半分は実験ができぬそうであります。いろいろな材料も高い。そこでやむを得ず、半分くらいは実験して、半分は本を読んでおる。書物を読むことも研究には必要であります。ところが、書物を読んでおっても、りっぱな実験はできません。実際においてこのようなわずかな研究費である。日本の医学も、あるいは他の部門も同じだろうと思いますが、このような状態である。大臣は、あるいは直接の管轄ではありませんが、文部当局もおられますので、一つこのような実情に対して、どう考えておられるかということも御答弁願いたいと思います。
  61. 正力松太郎

    正力国務大臣 ただいまの御説、まことに私も同感であります。実は予算をもっととりたいと思いましたけれども、なかなか思う通りにいかなかった。お説のごとく、ことに日本の医学などのおくれているのは、研究費がないからであります。アメリカの医学の技術が盛んであるのは、研究費が多い。日本の医者でも技術者でも、頭は悪くない。頭はできておるけれども、研究費がないためにそうなっておる。それだから、私どもは、どうしても予算をたくさんとりたいと思いましたが、残念ながら微力のために、思うようにとれませんでした。今後なお御協力によりまして、研究費の予算をもっとたくさんとりたいと思っております。
  62. 齋藤憲三

    齋藤(憲)政府委員 政務次官として何も知らぬじゃはなはだ権威がないやないかということですから、政務次官の権威のために、一つ答弁を申し上げておいた方がいいかと思います。私は、大学付置の研究所全般的な考察は、まだやったことがないのであります。ただ一、二参りましたし、特にただいまお話になりました伝研には、一カ月に二回ないし三回は参りまして、これは特定の医学者でございますが、その方の実験状態をよく見ておるのであります。全くただいま説明がございましたように、非常に貧弱な状態で、しかもその方が完成されておりまするところの発明は、非常に大きな発明です。しかしこれがどうしても日本で世の中に出てこない。私はどうしてそういうことになるのかということをふしぎに思っておるのでありますが、これは相当なセクショナリズム的な暗闘もある。でありまするから、私たちは、もし科学技術庁ができましたならば、そういうような実態をなるべく早く把握いたしまして、大きな発明発見があったならば、これを強力に世の中に出していきたい。さようにも考えておるのでございまして、今後、私も十分大学付置の研究所実態がわかるように努力いたしますが、何とぞ御了承をお願いいたします。
  63. 稻田清助

    ○稻田政府委員 私からも簡単に現状を申し上げます。御指摘になりました伝染病研究所ばかりでなく、付置研究所全体につきまして、今、御審議いただいております予算におきましては、研究費を二割増額いたしております。それから御指摘になりました私立大学の、特に大学院を置くような大学の設備につきましては、先年来、科学研究費中にそうした私立大学だけの設備の充実費を計上いたしておりまするとともに、一般に、昨年も科学研究費を相当増額していただきましたので、漸次こうした付置研究所の施設、設備、研究費等は充実しつつあると思うのでございますけれども、決して現状に満足するわけではなく、今後とも努力いたして参りたいと思います。
  64. 堂森芳夫

    堂森委員 さっき政務次官に失礼なことを申しましたが、御答弁でよく了承いたしました。  文部当局の答弁でございますが、いろいろな形で研究費が拡大されて参っておることも了承をいたします。しかしこれは、もうだんだんよくなるとかいうふうな簡単な問題ではないと思うんです。たとえば、いろいろな研究所へ行きますと、今日すでに基礎研究——たとえば、医学においての基礎医学、あるいは他の方面も同じでしょうが、もう基礎的な学問の研究をやる人がない。こういうふうな悲鳴をあげている研究所あるいは教授がたくさんあるのであります。従って、たとえば伝染病研究所のようなところでも、すでに今後若い人で、しかも一生懸命に将来をになうような研究をやる学者が、果して伝研に集まってくるだろうか、こういう心配を実際しておるのであります。これは非常に大きな問題でありまして、日本科学技術振興——一昨日の大臣答弁を聞いておりますと、敗戦日本は、資源のない、しかも戦争によって大きな消耗をした日本の再建は、科学振興以外にはない、こう言っておられるのです。これは当然でありまして、だれでもそう考えておるのであります。ところが、そのように重要な科学研究の実際の姿を見ていると、今後果して基礎の学問をやっていくような若い人が来てくれるだろうか、将来後継者ができないのじゃないか、こういう心配を各研究所の学者たちは言っておるのであります。従って、文部当局が一生懸命にがんばっておられると申しましても、これはとうていそういう簡単な問題じゃないわけです。たとえば、伝研では、七、八十万円もらっており、慶応では三十万円か四十万円しかない、こういうようなことでは、とうていできない。少くとも諸外国のようには参りません。アメリカとかあるいは西欧の裕福な国の水準には参らぬにしても、少くとも年間二百万円から三百万円くらいの研究費は、大ていの研究室では必要としておる。それだけあれば、どうにかやっていけるということも言っておるのであります。また私非常に心配なのは、伝染病研究所というような例をとりますと、戦前は世界一流である、戦後はとうていついていけない。もうすでに世界の最高水準から落ちてきた。こういうことを研究所の最高主脳部の人たちすら漏らすのであります。これはなぜかといいますと、やはり研究費が足りなくてできない、貧乏国ならば貧乏国らしい研究に限局してやっていくより仕方がないというような述懐すら漏らしているのであります。これは一文部省、一科学技術庁の問題ではない。日本の今後の発展というものに大きな関係があるのでありまして、科学技術庁あるいは文部省その他内閣全体としての大きな問題として取り上げねばならぬと思うわけであります。  そこで、私は文部当局に一つお尋ねしたいのでありますが、日本科学発展ということは、やはり日本の国に、科学発展するような国民的基盤がないと発展しないと思うのです。たとえば、南方の野蛮国に、優秀な発明や発見は生まれません。またりっぱな文学者も出ないと思います。そういう意味で、日本の国の科学発展するための基盤という問題が、一番大きな問題であろうと思います。そこで、日本の大学というものを見ておりますと、文科系統は非常に学生の数が多い。これも今日の諸外国の大学というものと比較すると、非常に違った姿を呈しておると思うのであります。今こういうことを問題にしても、少し問題がはずれるかと思うのでございますが、文部当局といたしましては、日本科学発展の基盤をつくるために、小、中学校というような方面における科学教育というものも、大きな問題になってくると私は思うのであります。今日の小、中学校あるいは高等学校における科学教育というようなものについて、一つ概略の御説明を願いたいと思います。
  65. 竹尾弌

    ○竹尾政府委員 お答え申し上げます。ただいま堂森委員のおっしゃられたことは、まことにごもっともでございます。私どもも、特にその方面へ意を用いまして、及ばずながら、初等中等教育におきまする科学教育の振興のために、努力をして参ったつもりでございます。御承知のように、一国の科学というものは、一般国民の確固たる科学的基礎に打ち立てられなければならぬのでございまして、そういう意味合いから、どうしても初等、中等教育に科学の思想を普及いたしまして、国の興隆の基礎を作りたい、こういう意味合いから、昭和二十八年に理科教育振興法という法律を制定いたしました。これは小学校から高等学校に至るまで、御承知と思いますが、国が二分の一の補助をいたしまして、あとの二分の一は地方で補助をする、こういう法律で、これはその後非常に各方面から賛辞をいただきまして、ただいまこの教育振興法の運営に全力を注いでおるような状態であります。これは十カ年計画をもちまして、その振作に努めて、青少年の育成に当っておるわけでございます。昭和二十八年からの過去二カ年間におきます経費は、国の補助といたしまして七億八千三百万円、これに地方費を含めて十五億四千四百万円になっております。昭和三十一年度の経費といたしましては、三億六千五百万円を計上しておりますから、地方費を含めますと、七億三千万円ということになっております。こういうわけで、いろいろと青少年の科学教育に力を尽しておりますが、なお、科学及び技術の方面の認識も、やはり徹底的にさせなければなりませんから、この理科教育振興法と別に、昭和二十六年に、産業教育振興法という法律を制定いたしました。これは実業関係の課程におきます工業課程、商業課程それから農業課程、家庭課程、こういう方面に国が負担をいたしまして、青少年の科学技術の育成と一般国民への啓蒙に努めております。これは常に喜ばれております。実施後四カ年になりますが、その間の経費は総額三十三億三千四百余万円となっておりまして、これに地方経費を合せますと、約百億円の支出をしております。それで、工業課程のある高等工業学校のごときものに対しても、驚かれるような多額の負担あるいは地方負担というようなものがかかっております。しかし、この方面におきます以上の成果は、きわめて短日月ではありますが、見るべきものがございまして、非常にその方面から喜ばれております。なお堂森委員さんの御趣旨に従いまして、この方面の教育を徹底させたい、こういう考えでおるわけであります。
  66. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 関連して。文部省もこぞって日本科学技術振興にだいぶお力を入れておるというお話でございまして、まことにけっこうなことでございます。そのお力を入れた結果、現在、日本の電子顕微鏡というものは、世界の第一位を占めている技術を持っております。その世界第一の技術者であるところの日本が、このたびアジア及び欧米各国からその技術者をまた招待して、その発表会をしようといたしております。これに対しての補助金と申しましょうか、そういうようなものは、局長さんの方へ何か申請がありましたか。またそれに対してお考えがありましたらば、お聞かせ願いたい。
  67. 稻田清助

    ○稻田政府委員 文部省の関係におきましては、ただいまのお話についての申し出を受けておりません。文部省関係におきましては、ここに至るまでの基礎研究——先般紫授褒賞を得られた瀬藤教授その他の方の努力を積み上げる点については、いろいろ従来から科学研究費などを向けて参りましたけれども、今お話しの点については、何も聞いておりません。
  68. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 すると、文部省は基礎研究だけは大いにやったけれども、いよいよこれが海外にといおうか、各国に向って発表会をする段階になると、あなたの方から離れるのだ、こういう御意見でございますか。
  69. 稻田清助

    ○稻田政府委員 お話の点は、もうおそらく製造会社の工業的な面になっておると思います。私も幾つかの会社を存じておりますが、そういう点になると、他の役所のお仕事かと存じます。
  70. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 工業会社がやるのでなくて、日本の顕微鏡学会が招待をするということになって、日本の製品の優秀さを示して、もってこれを海外に売り出す。最終、究極目的というものは、あなた方の御研究というものもそこにあるのでなくてはならないはずであります。でありますから、私はこれを出すとか出さないとかいう問題を聞くのではないのでありまして、そういう場合になったときに、そこまで発表する段階になったときまでも、あなた方の方では、これを幾分でも見るというお考えがあるかないか、もし見ないとするならば、どの面が見るか、こういうことをお聞きしたい。
  71. 稻田清助

    ○稻田政府委員 文部省の関係におきまして、電子顕微鏡に関与いたしましたのは、その研究の成就いたします過程、それから昨年でございましたか、ロンドンに電子顕微鏡関係の学会がありましたときに関係の学者がおいでになる、そういうことまで関係いたしました。お話の点につきましては、文部省の今の行政におきましては、他の例から見ますと、ちょっと関与いたさない性質のものかと存じます。
  72. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 この問題は、あなたの方には出ていないというお話でありますが、具体的にはいっておるのであります。従って、あなたの方の何かそういう面を奨励する機関があるはずでございます。そういう奨励をする機関が、こういうものとは関係があるかどうかということをお聞きしたい。
  73. 稻田清助

    ○稻田政府委員 私、とくと研究したいと思いますけれども、伺いましたところで考えられますと、むしろこれは通産省あたりのお仕事ではなかろうかと考えるのでございます。
  74. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 これは、学会の方の発表会をやるという場合、これが果して通産省の方の関係になるかどうかというところに、私も大きな疑いを持っておったのです。要するに、学会の方で研究ができまして、その研究を発表するために各国から招待をして、その発表会をやろう、こういう意味なんです。現に私があなたの方にお使い役をしてあるのであります。そこで、文部省の局長さん初め、政務次官も非常に御熱心に科学技術の育成をやっておるというお話しをただいま伺ったから、得たりかしこしと、これについてもお願いしたいといってお願い申し上げてておるのですから、どうか一つ…。
  75. 稻田清助

    ○稻田政府委員 国際的の学会の開催ということになりますと、これは、この国会に改正案が出ていると思いますが、学術会議法の改正で、これは総理府所管の学術会議の所管になります。
  76. 堂森芳夫

    堂森委員 外国技術日本への導入の問題で、自動車工業の技術について伺いたいと思います。私はしろうとでありますから、よくわかりませんが、何でも日本の自動車工業の技術は、世界的な水準から五十年くらいおくれておるというふうに聞いておるのです。それはほんとうでございましょうか。
  77. 鈴木義雄

    ○鈴木(義)政府委員 ただいまの御質問でございますが、確かに、日本の自動車工業の発達の歴史はアメリカあたりの先進国から見まして、おくれております。大体アメリカの方は、五十年ほど前からできておりますが、日本の自動車工業は、始まりましてからちょうど二十年でございます。トラックあたりが初めて行われましたのは、昭和十年ごろであります。乗用車につきましては、ごく最近、昭和二十六、七年ころからできております。大体そういう状況でございます。
  78. 堂森芳夫

    堂森委員 そうしますと、少くとも二、三十年おくれておる、こう考えていいわけですか。そのようにあなたは考えておられるのですか。
  79. 鈴木義雄

    ○鈴木(義)政府委員 発達の時期を申し上げたので、今これに追いつくように相当努力しておりますので、三十年というほどおくれておるとは思いません。
  80. 堂森芳夫

    堂森委員 今の大蔵大臣の一萬田さんがかつて日銀総裁のとき、日本の自動車工業なんかもうやめちまった方がいい、そうして外国から輸入すればいいんだ、こういうことを言っておったように新聞で見たことがありますが、あなたも聞いておられますか。
  81. 鈴木義雄

    ○鈴木(義)政府委員 直接には私、存じませんが、そういうふうな話を聞いております。
  82. 堂森芳夫

    堂森委員 日本の自動車工業は非常におくれておる、こうわれわれしろうとにもわかるのでございます。一体日本の国は、われわれが東京を歩いておりましても、種々雑多な車が走っております。一体何種類くらい日本に入っておりますか。
  83. 鈴木義雄

    ○鈴木(義)政府委員 いろいろ外国から入っている車——正確に計算したわけじゃございませんが、おそらく百種類くらいのものが動いておると思います。
  84. 堂森芳夫

    堂森委員 私が専門家に聞きましたところでは、七十種類くらいだ——まあ百種も七十種もそう違いませんが、とにかく日本の都会を歩いておりますと、世界のどんな町へ行っても、日本の都会ほどいろいろな自動車が走っておる都会はないと思うのです。いわば万国自動車博覧会場というのが東京じゃないかと私は思います。こういう姿にあるのが日本の自動車工業です。年年非常に大きな金を外国へ払っておるわけでありますが、日本の自動車工業で、四つ会社がございますね。日野ヂーゼルあるいは日産、いすず、トヨタ、これらの四社のうち、独立してやっておるのはトヨペットをやっておるトヨタだけなんです。あと日野ヂーゼルは、たしかルノーじゃないかと思います。何でもルノーの公団の総裁が日本に来ましたときに、日野の自動車の社長の大久保さんですかが勲章をもらったそうです。フランスの車をよく売ってくれるというので、感謝感激にたえずということで、勲章をもらったということが新聞に出ておりました。あるいはまた、日産はオースチンですか、いすずはヒルマン、ミンクスというようなことで、全部外国の会社資本と結んで、しかも技術指導料ですか、そういうようなものの巨額のものを年年払っておるわけであります。こういうような姿であるわけですが、一体日本の自動車工業というものが、あなた方の御見解では世界的水準になるためには、どれくらいかかるでございましょう。あるいはその見込みはございますか。
  85. 鈴木義雄

    ○鈴木(義)政府委員 ただいまお話がございましたが、実は自動車工業を分けまして、トラック、バス、それから乗用車との二つ問題がある思います。トラックバスにつきましては、先ほど申し上げました通り、二十年も前から日本ではやっておりまして、これは世界の水準に大して負けてないという状況であります。最近は、ことにディーゼルを中心といたしまして、日本の自動車が輸出をされております。一昨年は、正確な数字ではございませんが、おそらく九百万ドルくらいの輸出をしております。ごく最近の一年間では、千二、三百万ドルくらいの輸出になるんじゃないかと考えております。この方面においては、技術はもはや世界的レベル、あるいはディーゼル等については、もう世界の一番上にまでいっておるものもあるのじゃないかと考えます。  次に、乗用車の問題ですが、先ほど申し上げました通り、戦後一時製造を禁止されておりまして、その後始まったものですから、経験が五年くらいしかございません。それにもかかわらず、従来取得した技術を伸ばし、同時に、外国の技術の導入を行いまして、現在では相当のところまできております。特に最近出ましたトヨペットの性能につきましては、相当いいように評価されております。また御指摘のオースチン、ルノーあるいはヒルマン、これらの会社と提携した会社も、それぞれ最善の努力をいたしまして、これの国産化をやっております。現在四、五〇%の国産化に進んでおりまして、この一、二年の間に約九〇%前後のものが国産化できる、こういうふうな状況になっており、この方面におきましても、日本技術のレベルは、諸外国の水準に近づきつつあると考えます。
  86. 堂森芳夫

    堂森委員 局長は非常に楽観的ですが、私が調べた範囲では、たとえばルノーの車一つを見ましても、千種か千五百種くらいなパーツが要るそうですが、ほとんどこちらではできないそうですけれども、どうですか。
  87. 鈴木義雄

    ○鈴木(義)政府委員 先ほど申し上げましたように、すでに五〇%は日産化されております。
  88. 堂森芳夫

    堂森委員 ドイツのフォルクスワーゲンという国民車がございますが、先般来の新聞で、通産省が音頭をとって、日本でも、安い国民車のようなものを計画して、業者といろいろ相談をしておるとかいうふうな記事を読んだことがあります。また小松製作所の河合良成さんですかが、国民車を作るのだというようなことを新聞に書いておりました。こういう純国産の、しかも庶民階級の乗れるような、数十万円くらいまでで買えるような車ができる見込みがございますか。
  89. 鈴木義雄

    ○鈴木(義)政府委員 ただいま御説明申し上げておりましたのは、従来のトヨペットとかオースチン、ルノー、ヒルマン、そういったような問題でございますが、御指摘の国民車は、また考え方が違っておりまして、非常に安いのです。価格で申しますと、二十五万円とかで四人乗りの安い自動車を相当たくさん作ったならば、新しく需要もふえるだろう、そういうようなことで、一つの着想として、昨年来通産省の一部において、研究題目として研究しておる問題でございます。この点につきましては、業界にもいろいろ意見を聞いておりますし、また各社でも、それぞれのアイディアの研究も二部に進んでおるように聞いておりますが、これは今後の問題でありまして、今すぐにどうこうという結論は、まだ出しておらない次第であります。
  90. 堂森芳夫

    堂森委員 そうしますと、国民車の出現は、まだいつのことかわからぬということでございますか。
  91. 鈴木義雄

    ○鈴木(義)政府委員 研究題目として研究しておるのでありまして、実現といいますか、製造それ自体につきましては、その研究の結果によらなければ、現在では何とも申し上げかねる、こういう状況でございます。
  92. 堂森芳夫

    堂森委員 くどいようでありますが、そうすると、通産当局では、非常に安い国民車ができるかどうかわからぬ、こういうふうに解釈していいのでございますか。
  93. 鈴木義雄

    ○鈴木(義)政府委員 その点につきましては、先ほど来申し上げました通りに、民間に諮問しましたり、そういうふうなことで、いろいろ検討を重ねておるわけでございます。
  94. 堂森芳夫

    堂森委員 この自動車工業というものは、非常に重要だと思うのです。たとえば、西欧諸国の自動車工業は、非常に発展しておる。日本は二、三十年おくれておるということであります。バスあるいはトラックはかなり発展してきておる、こういう御説明でありましたが、私もそうでないかと思うのです。ところが今後輸出をどんどんやらなければいかぬ段階にあるときに、たとえば、中国には従来——現在もまだ自動車工業がない。しかし長春ですかに、非常に膨大な自動車工場を作った。ことしはこれが操業して、何でも年産三万台くらいのトラックを作る、こういうことをいっておるわけです。私、書物で読んだことがございます。日本では、大体年産、トラック及びバスを合せて、六万五千台くらいじゃないでしょうか。私はそうだと記憶いたしておるのです。そうしますと、もうすでに何十年とおくれておった中国が、日本の年産の半分くらいのものをことしから始める。こう仮定しますと、またああいう国柄ですから、総力をあげて、第二、第三の自動車工場を作る。そうしますると、今後数年後には、六万五千台あると日本の生産量を仮定しますると、日本の自動車工業よりもぐんぐん伸びていくんじゃないか。そして、これは技術はもちろんソ連から入ってくると思います。ソ連の自動車工業は、少くとも日本の自動車工業よりは進んでおると私は思うのです。そうすると、今後東南アジアその他のアジア地域、近東もいいでしょう、とにかく日本のトラックあるいはバスを輸出していく競争相手として強く現れてくるんじゃないか、こう思うわけでございます。その辺の見通しはいかがでございますか。
  95. 鈴木義雄

    ○鈴木(義)政府委員 ただいまの初めの御質問の生産台数は、大体四輪のトラック、バスで、五、六万台であります。三輪を入れますと、日本は十二、三万台であります。それから、日本のトラック、バスは、先ほど申しました通り、相当伸びておりまして、今後いろいろ設備の更新等を行いまして——従来も開銀の資金を使っておりましたが、最近ある会社では、世界銀行から外資を入れるというようなことも考えております。そういうことで、できるだけ設備を更新し、これに負けないように、さらに伸びていくように努力しております。  それから中国との競争でございますが、これはどうもわれわれまだ中国がどういうふうに出てくるか、今のところ予想がつきかねるわけであります。
  96. 堂森芳夫

    堂森委員 ただいま自動車工業の技術についていろいろお尋ねしましたが、さらに広く外国の技術の導入状況について、スタックの方にお尋ねしたいと思います。戦後、大戦争によるインフレーション等によって、西独あるいは日本には、外国資本が非常に大きく流入してきたことは、もう御承知通りであります。西独では、大体三百億、三億マルクくらいの外資が入っておるという話であります。日本は大体百五十五億くらいの外資が戦後入ってきた。これは、昭和二十四年に外資法が国会を通過しまして、怒涛のごとく外国の資本が日本に入って参りましたが、日本の外資の導入の仕方は、西独とは非常に違う姿があると思うのです。それは、日本の国の技術は少くとも二、三十年くらいはおくれておる。戦前もそうですが、特に戦時中、戦後の十数年の間に、西欧諸国から引き離されてしまった。こういうことをわれわれは残念ながら認めなければならぬ。こういうことで、アメリカを主として、西欧諸国から技術導入という姿でたくさんの技術指導料を払って、青写真をもらったり、あるいはその他の技術を教えてもらって、たくさんの外貨を支払っておると思うのであります。別に私は狭い意味のアウタルキーといいますか、日本日本でという、そういう意味で申しておるのではありません。日本技術が大いに発展し、その結果、貿易が盛んになる。あるいはまたボイラーの技術の輸入によって、熱量がぐんぐん上っていき、そのために生産力に非常に大きな影響を及ぼす、こういう場合もございましたと思います。そういう場合もございますが、しかしながら、戦後の日本技術導入の姿を見ておりますと、とにかくアメリカから技術を輸入しないと、商売がやっていけぬ、競争に負ける。かなり不健全な原因で、競って日本の業者が技術を導入した。こういう話であります。何でも、私が調べたところでは、日本の株が上場されている会社が六百五十種くらいありますが、その数と比較して、それよりずっと上回わる事業が、アメリカから技術の提供を受けている。こういう話でありますが、これは間違いございませんですか。
  97. 鈴江康平

    ○鈴江政府委員 御説明申し上げます。スタックで関係いたしておりますのは、外資提携の中でも技術導入に関するものだけでございますので、純然たる資本だけの提携というのもほかにございますが、その点はちょっとお答えいたしかねるのでございます。その点は、大蔵省の方に別途お聞きくださるようにお願いしたいと思います。  技術導入の件に関しましては、堂森委員お話のように、確かに数が多いのでございまして、われわれの持っております統計によりましても、二十九年度におきまして、いわゆる一年以内の契約によって入ります技術契約は八十三件、一年以上の長期契約によります技術提携が百四十一件、合せて二百二十四件でございますが、大体毎年この程度のものは入っているようでございます。まだ本年度は集計を取っておりませんが、昭和三十年度も、大体同じような数字になるのではなかろうかと思います。これに払います対価といたしましては、大体為替管理令によりますもの、すなわち一年未満のものが十億ございます。それから長期の契約によりますいわゆる外資法によりますものが大体四十六億、合せまして五十六億の数字になっております。それで、為替関係の方は一年未満でございますので、毎年大体同じくらいの金額を払っておりますが、外資法の方は長期でございますので、一旦認可いたしますと、それが尾を引いて、毎年払っていきます関係上、認可件数が次第にふえていくというような状況でございます。本年度はまだ集計しておりませんが、おそらく三月末までには、七十億くらいの金が全部で出るんじゃなかろうかと考えておりまして、まことにお説の通り、多くの技術が入っているわけであります。  それで、これらの審議に関しまして、スタックといたしましては、こういった為替関係の、あるいは外資法の認可の官庁ではございませんで、認可の官庁は、大蔵大臣、あるいはそれぞれの業種によりまして、機械とか鉄鋼でございますと通産大臣、あるいは農林関係でございますと農林大臣、それぞれの大臣が所管いたしておりまして、大蔵大臣とそれらの主務大臣の共管になっております。スタックといたしましては、単に、その認可に当りまして、外資審議会というのがございますが、その審議会のメンバーにスタックの委員を出しているわけでございます。すなわちスタックには、外国技術を評価いたします一つの部会がございまして、その委員長が外資委員会委員になっているわけでございます。スタックにおきましては、それぞれの案件につきまして、果して日本にその技術が必要であるかどうかというようなことを、一件々々調査をいたしているわけでありますが、件数が非常に多いために、私どもの方としても、非常にこれに対する努力をしているわけでございます。それで、この技術が必要であるかどうかということは、われわれの方といたしましては、今申し上げた委員会におきまして、それぞれ各方面の権威ある学識経験者を交えて議論をしておるわけでございます。そのほかに、それぞれの主務省におかれましても、やはり主務省の技術的な行政官もおりますし、また試験所研究所もありますので、そういう意見もあわせて各省意見としてまとめておるわけでございます。外資委員会におきましては、われわれは技術の点からのみ発言をいたしまして、必要であるかどうかということを話しておるわけでございます。それで、こういうように非常に件数が多いのでございますが、われわれスタックといたしましては、できる限り国産の技術を伸ばすという点におきまして、日本技術がすでにあるとか、あるいは近い将来そういうものが日本技術でできるのだという見通しがあります場合には、われわれとしましては、それに対して阻止したいという気持はあるのでございまして、われわれとしますと、今までも多くの件数を扱いましたけれども、スタックの意に反しまして許可された件数は一つもないのでございます。またある場合には、ほかの行政官庁の方で必要ではないかという意見に対しまして、スタックだけで不要であるという意見を述べまして、それを阻止したようなケースもあるのでございます。これはいろいろ見方によるわけでございますが、われわれとしましては、そういう学識経験者の深い知識によりまして、それを検討しておるという状態でございます。それでなお、こういった件数が非常に多いのでございますが、中には、確かにこの程度のものは日本でできるのではないだろうかというようなものも入っていることを、われわれは知っておるのでございます。これにはまたいろいろありまして、たとえば、アメリカの方から、日本の製品を買いたい、そのときに、これこれのアメリカの技術をその中へ入れてもらわなければ困るんだ、そういうような注文をつける場合もございますが、そういう場合には、われわれは、いわば、直ちに外貨を輸出において獲得できるという場合もございますので、その場合には、やむを得ずこれを認めるというときもございます。それから、技術導入にはいろいろ条件がございます。非常に軽い条件のものや、あるいは作っても作らぬでも幾らか金をよこせという条件がついておりましたり、あるいは最初に何万ドルよこせというような大きな条件を言ってくる場合もございます。そういういろいろなケースと、それから技術の内容と、日本におきまする技術の程度、そういうようなものを勘案いたしまして、いろいろ結論を出しておるわけでございます。私どもとしましても、できるだけこういう外貨をしぼっていきたいと考えておるわけでございます。
  98. 堂森芳夫

    堂森委員 ただいまの説明ですが、私が調べたのでは、昭和三十年五月までに、外資法によって入った技術導入は、四百五十数件あるそうです。また為替管理令による一年未満のもの、これも二百数十件すでにあって、毎年多額の金を払っておる。こういうことであります。外国の技術を導入するなというような決して私は鎖国主義を言うものではありません。ナイロンとかビニールのように、技術の導入によって外貨をかなり獲得していく、こういうものもあります。しかしながら、外国資本の日本への進出という形で技術が入ってくるということは、アメリカならアメリカの資本にとっては最もいい方法なんです。外貨なりあるいはドルなり、あるいは機械を日本へ持ってこないのです。向うから青写真の古ぼけたものを持ってきて、これを日本に売りつけて利潤を生んで、金を向うに持っていくということでありますから、最も安易な、しかも非常に歩合のいい金もうけ、こういうことになると思います。たとえば、われわれが日常使っておる——私は持っていませんけれども、電気洗濯機にしても、あるいは、ミキサーにしても、あるいは冷蔵庫にしても、あるいはまたきたない話ですが便所の紙を切る機械ですね。適当なところでうまく切れる機械がアメリカにあるそうです。それを導入しようとしたのはとりやめになったという話も聞きました。こうなると、もう私は気違いざただと思います。アメリカのものなら何でもよい、こういうような姿が日本の業界といいますか、事業家といいますか、そういう方面に横溢しているのではないか、そういうことでわれわれが電気洗濯機を使えるほど余裕があればよいですが、とてもそういう余裕はない。あるいは電気冷蔵庫もそうだというようなことで、あらゆる方面で、われわれの日常生活において一部の富裕な人が使うようなものにまで外国の技術がどんどん入ってきておる。しかもさっき申しましたような便所の紙を適当に切るための機械の技術を輸入するために外貨を払うとか、これはあったかなかったか知りませんが、うわさでありますけれども、とにかく日本の戦後の技術の導入というものは、まったく気違いざたであった。こういうふうな批評をしておる人も相当あるのであります。スタックは厳重に——これは日本技術の向上のために、あるいはひいては日本の貿易の促進のため、あるいはその他ほんとうにりっぱな理由があってこれを許可しておったとは思えないようなものがあるように私は思うのですが、この点いかがですか。
  99. 鈴江康平

    ○鈴江政府委員 お答え申し上げます。外資法で認可いたします目標といたしましては、三つございます。その一つは、国際収支の改善に寄与するもの、もう一つは、重要産業に寄与するもの、もう一つは、公益事業の発達に寄与するもの、この三点が外資法によりまする認可の基準でございます。ただいまお話のございました電気洗濯機、冷蔵雄あるいは便所の紙を切る機械、こういったものについての技術提携は全然ございません。提出もされておりませんし、また審議になったこともございません。ただ考えられますことは、たとえば、電気冷蔵庫の中にモーターがある、モーターの中の巻き線に珪素樹脂を使うというような間接の間接という点になって参りますと、あるいはそういう点で技術提携があったとも言える点があるかもしれませんが、しかし、そういう点は、何も電気冷蔵庫のモーターにだけ使われたわけではございません。大きなモーター、発電機、そういったようなものに主として使われたわけであります。お答えになるかどうかしりませんけれども、そういうことで、面接そういうケースはございませんでしたので、その点はっきり申し上げておきます。
  100. 堂森芳夫

    堂森委員 いろいろと私まだお尋ねしたい点があるのですが、四時の約束でございますので、きょうは一応これで打ち切ります。
  101. 志村茂治

    志村委員 大臣がお帰りになるのを待っておりましたが、まだお帰りになりませんので、齊藤次官にお伺いしたいと思います。  先ほどの通産次官のお話をお聞きになったろうと思うのでありますが、何か、通産省では、通産行政の便宜上、これらの機関を依然としてかかえておきたいということであります。何かお話の様子によれば、通産行政さえうまくいけば、日本科学技術振興はできるんだというお考えであって、これはまさにセクト主義だと思います。このセクト、正義を、今度の法律案を提出される場合に閣議で認められたかどうか、これを御存じかどうか、齊藤次官は、通産省のああいう態度——究極においては研究所科学技術庁へ持ってくると言ったのですが、通産省は永久に離しそうもない、こう言うのですが、どういうふうにお考えになりますか。
  102. 齋藤憲三

    齋藤(憲)政府委員 科学技術庁設置に対しまする政府考え方といたしましては、既存の研究所実験所には一応手を触れないで、もっと近代的な高度の科学技術体制の確立に邁進した方がよいのではないかということから、一応既存の各省にあります実験所研究所には手を触れないで、現実の科学技術状態検討いたしまして、そのうち、世界の大勢にかんがみて、いかなる角度から日本科学技術はあるべきものであるか、これに即応する高度の科学行政の一環として、既存の研究所実験所にも改正を加えるべきものは改正を加え、捨つべきものは捨てるというふうな考えを遂行していく方がよいのではないか、こういうふうな建前から今度の法案提出いたしたのであります。従いまして、科学技術が一省に支配されて、そして一省の行政のために科学技術がその下積みになるというようなことは、お説の通り本末転倒でありまして、あくまでも、科学技術というものは、日本の生産体制の基盤をなす一切のものの基本線であって、これは、国力の重点を、科学技術振興発展のために策しなければならぬ。ただ、残念ながら、今日までの日本におきましては、そういう角度から、日本国民の英知を総合いたすべき科学技術の総合統制行政機関というものがなかった。これを一つ盛り上げて、日本の政治を、あくまでも科学技術を根底とした実質的な発展の希望の持てる政治にいたしていきたい、こういう希望が盛られております。これはあくまでも努力を払って到達しなければならない理想でございまして、それをやりまする前提として、まず第一着手の構想が、この科学技術庁設置法に盛られたのでございまして、決して通産省のためにのみ研究所実験所はあるべきものではなく、これは国家全般発展のために、科学技術の高度の存在を必要とする、さように考えておる次第であります。
  103. 志村茂治

    志村委員 日本行政セクト主義のために、どれだけ損を受けておるかはわからない。これは、この際、日本の各官庁セクト主義を打破するという意味もあり、科学技術庁だけの問題ではないので、せっかく齋藤君の御努力をお願いいたします。
  104. 有田喜一

    有田委員長 本日はこの程度にいたし、次会は公報をもってお知らせいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時十三分散会