○
田宮参考人 クロレラと申しますのは、
単細胞——一つ一つの
細胞からなっておる
藻類でございまして、その形は
顕微鏡で見なければ見えないのでありますが、よく金魚ばちなんかをほうっておきますと、ほんのりと青くなります。あのほんのりと青くなるのが大てい、
顕微鏡で見ると
クロレラあるいは
セネデスムスと呼ばれております緑の藻でございます。そういうのをひっくるめて
単細胞の
緑藻と申しておるのでございます。戦後
各国でもってその
培養及び
利用の
研究が盛んに行われるようになりました。昨年の秋に
アメリカで開かれました
太陽エネルギー利用の
国際会議におきましても、大きな問題としてそれが取り上げられたのでございます。
なぜ
クロレラが注目されておるかと申しますと、
理由が
二つございます。
一つは、
発育が非常に旺盛であるということ、藻でありますから、やはり
植物の一種でございますが、
植物は、御存じのように、
太陽の
エネルギーを
葉緑素でもって
利用しまして、
炭酸ガスと水とから有機物を作る。それが農業の根本になるプロセスでございまして、これを
光合成といっております。この
光合成の
能率が、普通の
植物に比べましてけた違いにいいのでございます。それを数字でお目にかけますと、これは反
当り、一年間の
収量を比較したものでございますが、
クロレラの
成分と各
植物の
成分を、
蛋白質、
脂肪、
含水炭素、
灰分、またそれの持っている
カロリーと大ざっぱに分けて比較した表でございますが、稲、
小麦の
二毛作、これは水田で
二毛作をやった場合、それから
大豆と
小麦を畑でもって
二毛作をやった場合、これで比較しますと、ここに
ごらんになるような大きな
開きがございます。特にこの
クロレラは
乾燥物の五〇%——少し内輪に見積っていいますれば、四〇%から五〇%ぐらいが
蛋白質でございまして、
蛋白質では、この稲と
小麦の
二毛作の五十倍という非常な違いでございます。それから
脂肪もこの
通り百倍でございます。
含水炭素は
クロレラには比較的少いのでございまして、二〇%くらいしか含まれておりません。稲や
小麦は、
含水炭素、
澱粉、その他のものが多いのでございますが、この
開きになりますと、幾らか少くて、四倍くらいでございます。それからいろいろな
灰分は、
ごらんの
通りの著しい
開きがございますし、
カロリーにいたしましてもこの
通り二十倍くらいの違いがあるわけでございます。これは
成分に分けた値でございますが、この
収量というものは、私
どもの
研究所でもって実際にその
発育の
速度をはかって計算した値でございまして、反
当りにいたしますと、反
当りお米が三石といたしますと、三十石の
収量になります。そうして特にこの
蛋白質におきまして、著しい
懸隔があるわけです。そういうふうに
蛋白質の量が非常に多いものでございますからして、
各国で考えておりますのは、
クロレラを
蛋白源にしたらどうかということでございます。今、
霞ケ浦の
面積に
——霞ケ浦に飼うというわけではございませんが、
霞ケ浦の
面積に等しい
場所で
クロレラを飼ったといたします。
日本の
人口を一億として、一人々々にどれだけの
蛋白質が供給できるかということを計算してみたのです。一方それと比較するために、
国内で
生産されております
大豆——これも
日本人にとっては重要な
蛋白源でございますが、これと比較してみた表でございます。
霞ケ浦の
面積は二万
町歩弱、一万九千
町歩でございますが、これに対しまして、
大豆の
国内生産に使われております
面積は四十二万
町歩、二十倍以上の
面積が
大豆の
国内生産のために使われておるのです。そこからできる年間の
生産量は、
クロレラの場合は百二万トンでございますが、
大豆は四十三万トン、二十倍の
面積を使って半分しか乾物はできておりません。その
蛋白の
生産量にしますと、こういう値になります。
人口一億といたしまして、
日本人一人に供給し得る
蛋白の量は、
大豆の方は四・七グラムに対しまして、十二グラムでございます。
大豆に使われておる
面積の二十分の一でもって、この
程度の
生産ができるのでございます。
それからもう
一つクロレラが注目されます
理由は、その
栄養価でございます。これは昨年の
太陽エネルギー利用の
国際会議に、
ドイツの
フィンクという
博士が発表いたしまして、大きいセンセーションを起こした結果でございます。これは先ほど申しました
クロレラにごく近い
セネデスムスというやはり
単細胞の
緑藻を使って、
ネズミを
実験動物といたしまして、その
蛋白の
栄養価を調べたのであります。比較しようとする
蛋白以外に、
澱粉、それから
ビタミン源としまして少量の
酵母、それから肝油、それから少量の塩類を与えます。
蛋白源としては、
藻類の
蛋白をおもに、あるいはそれと比較するために
肝胆粉乳、あるいは
卵白を用いまして
実験したのであります。これはたくさんの
実験動物を使って
体重の
増加を二百四十日間にわたって調べて、その
平均値をここへ出したのでございますが、
セネデスムスという
緑藻を与えた場合にこういうカーブに対して、
卵白を与えたのはこれだけ、それからこの
実験では、
粉乳を与えたのはここで
実験を中止いたしております。それは
卵白を与えた場合も、それから
粉乳を与えた場合もしばしば起る
病気でございますが、
肝臓壊疽——肝臓ネフローゼといわれておる
病気がございますが、それでもってこの場合には全部倒れてしまったのであります。別の
実験では、ずっと先までいっておりますが、いずれにしましても、この
藻体食餌に比べまして、こちらの方は、
卵白にしても
脱脂粉乳にしても劣っております。
緑藻を与えた場合には、
肝臓壊疽は全然起っておりません。これは非常に著しい事実でございます。先ほどお何しいたしましたパンフレットは、
フィンク博士の報告を翻訳したものでございまして、詳しいことはそれを
ごらんいただきたいと思います。ここではごく代表的なデータを
二つだけ持って参りましたが、これは先ほどと同じような
実験でございます。
藻体のほかに、ホーレンソウだとか、
下水処理液で飼った
藻体、
ムラサキウマゴヤシ、これは
アメリカで家畜の
飼料に盛んに使われておりますアルファルファという
植物ですが、これは非常に悪いのでございます。それに比べて、
藻体は一番
体重の
増加量がよろしゅうございます。このほかにも
幾つか
実験をやりましたが、
肝臓壊疽が起った例は皆無でございます。これに対しまして、
粉乳だとか
卵白を与えた場合、あるいはそのほかにも
イーストだとか、いろいろなものを使っておりますが、
肝臓壊疽が起っております。
もう
一つ注目すべきことは、この
フィンク博士は、これまでいろいろなものを、
植物性のもの、あるいは
動物性のもの、また
植物性でも
イーストだとか
カビだとか、そういう
微生物の
蛋白の
栄養価を、十数年にわたって
研究してきた人でございますが、これまで
粉乳の
蛋白よりも結果が上回った例は
一つもなかった。この
藻体が、初めてそういういい結果を出したということ、それから
食餌を与えまして、
ネズミの
実験は十分量与えておくわけです。
食欲によって、少ししか取らない場合もありますし、非常によく取る場合もありますが、
食餌の摂
収量——要するに
嗜好性のようなものでございますが、これはこれまでの
経験では、
粉乳を与えた場合が一番よかったのに、
粉乳よりも
藻体が入っておる方が、たくさん取られたそうでございます。
毎日平均、
粉乳が九取られたのに対して、十二という大きな量を三〇%も上回るようなたくさんの量を
ネズミはとっております。
ネズミにとっては、水の中にはえている藻なんかを食べた
経験はないし、また先祖も食べたとは思えないのに、どうしてそんなに好んで食べたのか、非常におもしろいことだと言っております。これは、従来
フィンク博士がいろいろな
微生物及び
植物——バレイショなんかの
蛋白質の
栄養価を、
ミルクの
蛋白と比較した結果を
一つにまとめたものでございます。
ミルクの
蛋白を使った場合の体毛の
増加量を一〇〇といたし、ほかのものを比較してみますと、たくさんの
実験で、
藻体を与えた場合は、一〇八でございます。
ミルクを少し上回っておりますが、ほかのものは
ビール酵母にいたしましても、近ごろ問題になっております
木材糖化液で飼った
酵母、というのは、非常にいい
植物性蛋白質といわれておりますが、それなどは三三という低い値でございます。中で比較的いいのは、ケフィールというものでございます。これは中央アジアで馬の乳を
チーズのように発酵さしたものでごございまして、
カビや
イースト、おもに酪酸菌、
バクテリア、そういうものがはえて、
チーズ状になったものでございますが、それは割合いいのであります。これは
ミルクと
バクテリアの
蛋白が入っております。これは九〇くらい、それに比べまして、この
藻体はこんなにいい結果を出しております。そういうふうな点が、この
セネデスムスあるいは
クロレラが非常に注目されるおもな
理由でございます。
そこで、こういうふうに
栄養価がいいということはわかりましたが、果して食ってうまいものであるかどうか。
酵母というのはあの
程度の
栄養しかございませんが、
ドイツでは、昔から
酵母を食糧化しようというので、相当工業化されております。
工業的生産が実現されております。
フィンク氏の論文によりますと、第二次大戦のときに、工業的に作られた
酵母をわれわれは食わされたけれ
ども、どうしてもうまく料理ができなかった、のどを通らなかったということを書いております。
栄養価とそれのおいしさ、
嗜好性というものは、決して並行するものではないのでございます。ここに少し
サンプルを持って参りました。召し上ってもけっこうでございます。これはわれわれの
研究所で
培養いたしました
クロレラを
乾燥したものでございますが、
乾燥の操作によりまして、少しにおいや味が違います。
二つの
サンプルを持って参りましたが、この
乾燥方法は、
片方は
赤外ランプを照らして
乾燥したものでございます。
片方は
脱脂粉乳なんかをかわかす場合の、いわゆる
スプレー乾燥でかわかしたものでございます。
赤外線でかわかした方は、
緑茶と
青ノリの間のような味でございます。こちらの方は、それほど特徴的な味はございませんが、とにかく私
どもも、
ビタミンをとるために、「エピオス」とか「
わかもと」なんか食べておりますが、
イーストなんかよりは感じのいい味でございます。いろいろなものにまぜて試食してみました。たとえば、お
そばに入れるとか、せんべいに入れるとか、よう
かんに入れるとか、そのままスープの中にまぜてみるとか、いろいろなことをやってみました。その色はすべて
葉緑素の色でございます。非常に
葉緑素の含量が高うございまして、
乾燥量の
平均四・五%は
葉緑素でございます。その色は、食事にまぜるときにいい面もございますし、悪い面もございます。ほんのり青色がつくことは、おもしろいことなのでございますけれ
ども、たくさん入れますと暗緑色になりまして、お
そばなんかに入れると、
まつ黒なお
そばができてしまって、
栄養価は十分でしょうけれ
ども、見たところあまり
食欲を催さないような外観になります。どんな色でもいい食い物というと、キャンデーのようなもの、あるいはよう
かんのようなもの
——ようかんなんかはまっ黒なものでもいいので、よう
かんには非常にたくさん入ります。
嗜好性の問題は、われわれの
研究は、単にしろうとがいろいろなものに入れてみた
程度でありまして、今後その方面の
専門家にいろいろ工夫をしてもらえば、特に
日本人のように
藻類だとか、
緑茶のようなもの、ああいうふうな味に新しみのある国民には、食物の中に導入することは、そうむずかしいことではないと私は考えております。
そこで、これをどう
培養するかという問題でございます。
培養に必要な
条件といたしまして、
培養に必要な
条件は
光合成でございますから、どうしても
日光が要ります。これを人工的な電球なんかで照らしてやりますと、相当磁力がかかります。計算してみると、とても不
経済なものであります。どうしても
日光を
利用することが望ましい。それから
炭酸ガスを吹き込んでやることによって、
発育速度が非常に増すのでございます。
炭酸ガスを与えなくてもはえますけれ
ども、それでは普通の
栽培植物の
発育速度と
あまり懸隔がなくなりまして、
クロレラのいいところがなくなる。それから
栽培植物に必要な無機の要素、これは
窒素源、それからマグネシウムだとかカリウムだとか燐酸、そういった
肥料は一わたり要ります。しかし畑で麦や稲をいたします場合は、そういう
肥料を与えましても、ずいぶんたくさんなパーセンテージが雨で流されたり、むだに失われたりいたしますけれ
ども、この
クロレラの場合には、そういう損失はほとんど無視できる
程度です。ですから、与えたものはほとんどすべてむだなく
利用されるのであります。
それからもう
一つ重要な
条件は、
攪拌することでございます。先ほど申しましたように、水の中にサスペンドしてはえるものでありますから、
培養が濃くなりまして、つまり
液体の中にたくさん
細胞がふえて参りますと、底の方まで光が行きわたりませんで、そのまま置いておきますと、全然日の目を見ない、つまり
光合成をやらないでいるのが出て参り、
発育の
能率が悪くなります。ときどきそれを上の方に起してやる必要があります。
攪拌をやることによって、その
発育の
能率を高める。こういう
条件が必要なのでありまして、これを実現するためにいろいろな
方法が提案されております。
最初に
アメリカ人がやりましたのは、
閉鎖式循環法という
方法でございまして、これはレーンコートなどに使われております透明な薄いプラスチックのシートなんかで管を作ります。ああいうやわらかいものですから、置きますとぺたっとなりますが、その中を
クロレラの
培養を流す。いろいろな
方法がありますが、こっちからこっちへ流して、また次はこちらからこっちへ戻すというような
方法でとにかく流しまして、そして、透明ですから、
太陽の光が上からきますし、それから
炭酸ガスを含んだ
空気をその上を通すようにします。これはわれわれも
アメリカにならってやってみました。とにかく閉鎖したものでございますから、夏、非常に熱くなるのであります。
ごらんの
通りに、
まつ黒い
液体になって流れますから、
太陽の
エネルギーの
赤外線を吸収いたしまして、どんどん温度が上りましてそれを冷やさなければ
クロレラは死んでしまいます。その冷やすということがなかなかめんどうでございまして、小さいスケールでやります場合はできますけれ
ども、大きく工業的にやる場合は、この
方法はだめだという結論を私
どもは下したのでございます。それから、第二の
方法は、
開放式通気法という
方法でございましてこれは要するに浅い池で、カバーをかけないで開放してあるわけです。その池の底に何本かの管、
パイプが通っておりましてその
パイプに小さな穴がたくさんあいておる。その穴から
炭酸ガスを含んだエアをぶくぶく吹き出す。吹き出すことによって
攪拌をし、かつ
炭酸ガスを供給するという
方法でございます。これは、第一の
方法のように、過熱をする心配はございません。一年間を通じてわれわれも
ドイツの
方法を少し改良いたしましてやってみました。ところが、実際にやってみますと、
攪拌が十分ではありませんし、それから
空気を通す
エネルギーが相当の量になります。それから
炭酸ガスのロスがべらぼうに多いのでございます。これもいけない。
そこで、私
どものところで始めてみましたのは、
開放式循環法という
方法でございます。これは、小さい
写真でございますがお回しいたしましたが、
最初にやりましたものは、浅いまるい池でございまして、
まん中に小さい島がある。その島に軸がありまして、そこから管が二本出ております。それが回るようになっている。それで、池の隅から
ポンプでもって水を吸い上げまして、その池の底を通って
まん中の島へ持っていく。その
二つの管から吹き出すのです。その管には、小さい穴が
斜め下向きにあいておりまして、水を吹き出す
勢いでもってそれがぐるぐる回る。その
ポンプから出てくる途中のところで、
炭酸ガスを含んだ
空気を吹き込みます。ですから、
ドイツ式のように
炭酸ガスのむだがそうございません。それから
エネルギーも非常に
経済でございまして、
アメリカ式のように全体の液をざあざあ流すのでなくて、その一部分をただ管が回るだけの
勢いで回しているわけです。管は間歇的に回ってくるわけですけれ
ども、回ってきたときには、非常な
勢いでもって吹き上げまして、下に沈んでいるやつを引き上げる。ですから、沈澱を起すことはございません。こういう
方法で現在やっておりまして、非常にいい結果を得ております。
そういう
方法で飼った場合に、一体どのくらいのコストでもって
生産できるかということでございます。
アメリカの
閉鎖式循環法を
最初にやりましたのは、アーサー・
ディー・リトル会社というケミカル・コンサルタントの
会社でございますが、そこでの
見積りでは、もしも百エーカーのプラントを作れば、一ポンドが二十五セント、つまり
乾燥量にして一キロが二百円という値になります。彼らの
見積りは、非常に楽観的な
見積りでございまして、一エーカーから一年に三十トンもとれるというような
見積りなんでございますが、われわれはもうちょっと現実的に、実際飼ってみてとれた量——計算しますと、一エーカーから十八トンとれるのでございます。十八トンということは、お米の反
当り三十石に
当りますが、それで、われわれの
方法で飼ったといたしまして、相当ぜいたくな
見積りで、これは偶然でありましたが、一キロが二百十円くらいになります。ただしそれは相当ぜいたくな
見積りでございまして、今お回ししました
写真の池は、全部厚い
コンクリートで作ったものでございます。そんなものを作る必要はないので、一番金を食うところがこの
コンクリートの池でございますけれ
ども、これはずっと簡単な
方法で建設できると思います。この間の
太陽エネルギーの会でも、これは少しぜいたく過ぎるじゃないかとだいぶ皆に突っ込まれたのでございますが、われわれは、残念ながら、そちらの方の
専門家でないものでございますから、どの
程度までそれを簡単なものにし得るか、これはその方の
専門家の方に考えていただかなければならぬ問題であります。とにかくわれわれの
見積りよりも安くできるということは、申し上げて間違いないと思います。
クロレラに含まれておる
蛋白質の
値段を、今言ったような
見積りに基きまして、その
蛋白質の
値段として計算してみますと、大体今のところ鯨の肉の
蛋白質よりもちょっと高いくらいです。
大豆の
蛋白質の二倍半くらいです。それから納豆の
蛋白よりもちょっと安いくらい、
ミルクの
蛋白の六分の一くらいの
値段になります。これは今後の
研究でもっと
値段を下げなければなりませんし、また下げることができるだろうと私は思っております。少くとも一キロが百円くらいになれば、現在
日本の
蛋白源として一番安いといわれておる
大豆の
蛋白と競争できるということになるのであります。現在、私
どもはこの
徳川研究所の中の
場所をできるだけ
利用してやっておりますが、これでは限られた量しかできませんので、何とかして一エーカーないし二エーカー、一
町歩かあるいはその半分くらいの
面積の
培養地を作りまして
生産して、
動物実験も盛んにやれるように、また
食品化の
研究も盛んにやれるように、何とかしたいと思います。
現在、私
どもは
文部省から大部分の
研究費をいただいております。これは、基礎的な
研究にしか
文部省は出してくれないわけでございます。それから、
農林省からは、
飼料になるかどうかを見ろというようなわけですが、この私
どもの
研究は非常に多方面に
関係いたしておりまして、食糧、
飼料の点になりますと、これは
農林省の管轄になりますし、それから
栄養の問題になりますと
厚生省関係でございますし、それから
炭酸ガスの
利用とかなんとかいうことになりますと、今度は
通産省の方です。私
ども非常に痛感いたしますのは、そういう各省にわたっておる
研究が、セクショナリズムと申しますか、少しでもはみ出しますと、これはいかぬじゃないか、たとえば、
農林省なんかでは、基礎的な
研究になるとおれたちの金は使っちゃいけないといわれる。ところが
研究というものはそういうものではございませんし、実際
研究しておるのは
一つのグループでございまして、いろんな面がある。それで基礎的なものがまた思いがけないところで
片方の応用のところにきいてくるのでありまして、こういうのを何とか今度の
科学技術庁あたりでいい
方法を考えていただきたいと思うのでございます。それから、
ロックフェラーからも少し金をもらっております。たとえば、きょうも
ロックフェラーの人が来て見ていったのでございますけれ
ども、
通産省や
文部省からもらう金は、
地面についたものは作っちゃいかぬというのですね。建物や何かは作っちゃいかぬというのでしょう。これはもっともなんです。そういうところ、お役人はしゃくし定木にそういうことを言うのです。ところが
地面についたものを作れなかったら、これは
培養できないのです。そういうところに
ロックフェラーの金を使って、やっとわれわれはそこの
写真でお目にかけましたような
幾つかの
培養池を作って、動かしておるわけでございます。
地面についてはいけないとかなんとか、あんまりこせこせ言われたのでは、
研究機関は因るので、そういうこともつけ加えて、私のお話を終りたいと思います。