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椎名(悦)
委員 担当大臣の
正力国務大臣から、ただいま
原子力に関する御
抱負の詳細を承わったのでございます。従来、とかく
政治は
科学と縁遠いものというような
考え方を
一般国民に植えつけておったのであります。しかるに、
原子力問題につきましては、事柄の
重要性もあるのでありますが、これをいち早く
政治に取り入れまして、最も熱心に、周到なる施策、
研究及び
調査を講じておりますことは、まことに
国家のために同慶にたえないところであります。今回この
方面に
相当抱負を持っておられる
正力国務大臣を
担当大臣に迎えましたことは、これまたまたこと同家のために喜ばしいことと存するのであります。ここに二、三さらに
質問を申し上げまして、
正力国務大臣の御
意見を拝聴しておきたいと思うのであります。
第一は、ただいまのところは、
実験炉の
輸入、取付けというような
段階であります。それをさらに
中型実験炉を作り、三年後には一万キロ
程度の
国産の
実験用の炉を据え付けたいというような
考え方を持っておることは、申し上げる必要のないところであります。これらの
段階を経まして、いち早く
動力炉を
日本に据え付けるということが、何と申しましてもこれは最終の
目標であり、われわれはその一日も早からんことを
希望するわけでありますが、
正力さんは、他の
機会においてこれは五年以内に必ず実現しようというようなことを言っておられることを、
新聞紙上においても私は
承知しておるのであります。今日の
段階から申しまして、これは非常にむずかしい問題であります。むずかしい問題であるが、しかしながら、五年はおろか、もっと早く実現してほしいというのが、
国民全般の
希望であろうと思う。早いにこしたことはございませんが、しかしたださような
希望だけを申したところで、これの実現は非常にむずかしい。
日本の
技術の向上及び少くとも数百億
程度の
国幣をこれに投入しなければならぬというのであまますが、
正力さんは、これらの問題を具現するために、具体的にどういう
方法を講ぜられんとするのであるか。その点をまずもつて拝聴しておきたいと思うのであります。
第二点は、ただいまもお話のうちに出てきたように
考えますが、
原子力の
研究及び実施の問題に関して、
三つの
原則を打ち立てておることは、あまねく
承知しておるところであります。すなわち、
機会均等、
自主性及び
研究の
公開については、申し上げるまでもたく、
研究のためにはとかくの
思想傾向の
立場であるとか、あるいは
政治的目解の相違なんというようなことは抜きにして、平等にこの
研究のためには
機会均等でなければならぬ。これはまことにけっこうなことであると思うのであります。それからまた
自主性の問題も、
日本は非常に
科学的に立ちおくれておる、特殊の進んだ国からこれらの
研究を
輸入する上において、まかり間違うとむしろ隷属する、非常に卑屈な結果に陥るというようなことを極力避けまして、どこまでも
自主的にこれを運営していくという、その
気晦が必要であるということはもちろんのことであります。また
研究の
適時公開主義は、その
研究の恩恵にあまねく浴せしめるために、あるいはまた
研究のお互いの切磋琢磨のために、
適時、出し惜しみしないで、これを
公開する。このことが
科学振興の要諦でありますことはもちろんであります。これらの問題につきましては、この
三つの
原則をもつて、
日本に
原子力の
技術というものを確立しようというその
精神は、まことに敬服に位するものでありまして、私も心からこれに賛意を表するにやぶさかでないのでございます。しかしながら
機会均等と申しましても、
思想傾向あるいは
政治的立場というものによらずに、これを一律平等に
機会均等主義でいくということは、大へんけっこうなことでありますけれ
ども、この
研究途上においてそういう特殊の
思想、特殊の
政治的主義というものに逆に歪曲されるというようなことがありますれば、これは本来の
機会均等主義の粘神に反するものであると言わざるを得心ないと思うのであります。同時にまた、
自主性と申しましても、かつての
日本の
国粋主義に似たような、何でもかんでも
自主がよろしいのだ、
舶来物はできるだけ
毛ぎらいするというような考え方にもし陥るとしますれば、子ういう点は
化学技術のためにまことに大きな
障害になるということも用心しなければならぬ。また
研究の
公開と申しましても、各国がとっておる
研究の
保護——あるいは
工業所有権制度でありますとか、そういうものに現われた
研究の
保護というような従来の行き方というものにまっこうから反するようなことがあっても、これは実際問題としては成り立たぬのでありまして、これらの問題についてのこの三
原則の進め方につきましては、よほど、絶えず
工大研究を要するものがあるように
考えるのであります。何と申しましても、この
原子力の問題をわれわれが取り上げておる根本の
ゆえんは、
日本の
国家及びわれわれ一本民族の
共存共栄のためにこれを取り上げておる。緒川そういう観点をはすさないで、正当なるこの三
原則の運営が必要である、かように
考えるのでありまして、これらの問題につきましては、
担当大臣として広く
国民に
所信を明示されまして、そうしてこれらに関してまだ多分に懸念を持っておる
方面のその危惧の念を解消するという必要があるようにも、
考えるのであります。これらの点につきましても、明確なる御
見解を拝聴することができますれば幸いである、かように
考えるわけてあります。
以上、二点にきまして、
正力国務大臣の御
見解を承わりたいと思います。