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1956-02-13 第24回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年十二月二十三日  有田喜一君が委員長に、小笠公韶君椎名悦三  郎君、長谷川四郎君、前田正男君、南好雄君、  岡良一君及び志村茂治君が理事に当選した。     —————————————  昭和三十一年二月十三日(月曜日)     午後一時四十八分開議  出席委員    委員長 有田 喜一君    理事 小笠 公韶君 理事 椎名悦三郎君    理事 南  好雄君 理事 岡  良一君    理事 志村 茂治君       赤澤 正道君    稻葉  修君       加藤 精三君    中曽根康弘君       須磨彌吉郎君    岡本 隆一君       佐々木良作君    田中 武夫君  出席国務大臣         国 務 大 臣 正力松太郎君  出席政府委員         総理府事務官         (原子力局長) 佐々木義武君         経済企画政務次         官       齋藤 憲三君         外務事務官         (国際協力局         長)      河崎 一郎君         特許庁長官   井上 尚一君  委員外出席者         原子力委員会委         員       石川 一郎君         原子力委員会委         員       藤岡 由夫君     ————————————— 本日の会議に付した案件  科学技術振興対策に関する件  派遣委員より報告聴取の件  参考人出頭に関する件     —————————————
  2. 有田喜一

    有田委員長 これより会議を開きます。  本日は、原子力行政に関し政府所信を求めたいと存じますが、その前に、一月の自然休会中に行いました委員派遣報告を聴取いたしたいと存じます。小笠公韶君
  3. 小笠公韶

    小笠委員 去る一月二十二日、一十三日にわたり、議長の承認を得て、秋葉ダム及び佐久間ダム視察いたしましたので、派遣委員を代表し、御報告申し上げます。  佐久間ダム秋葉ダムを建設いたしております天竜川は、御承知通り、その源を諏訪湖に発しておりますが、河百までの落差七百三十メートルを利用して、古くから電源開発が行われ、本流だけでも、上流部に大久保、南向の二水路式発電所があり、中流部に泰阜、平岡ダム式発電所ができしており、その下流に現在佐久間秋葉を建設いたしておるのであります。  秋葉発電所は、佐久間発電所で調整放流する川の流量を正常な河川流量に復帰せしめることを目的とするいわゆる逆調整発電所でありまして、佐久間発電計画の一環をなすものであります。  佐久間発電所は、その膨大なる貯水池利用して、洪水を調節し、渇水補給をなし、年間を通じて河川流水の変動を抑制し、下流沿線民生に稗益するところ大なるものがある反面、時時刻々変化する電力負荷に応じて、一日の中で河川流れをはなはだしく変動せしむることは、農業用水の取り水に、あるいは舟運に、その他沿線民生に直接または間接に種々雑多の障害を及ぼすもので、この障害を除くために、秋葉ダムを建設いたしたものであります。  秋葉ダム工事は、目下河水を半分締め切る工事途上にあり、四月には水路を切りかえ、十二月には深い岩盤を出し、来年一月よりコンクリートを打ち込み、十月に発電する予定となつており、秋葉発電所最大出力は八万二百キロワットであります。本工事堰堤は、基礎上常時満水位まで八十四メートルでありますが、河床堆積砂礫層の深さ五十メートルに及び、わが国においてはかつて経験せざる難工事であるのみならず、外国においても、アメリカ一つその例があるのみという、きわめてまれなものであります。  佐久間発電所計画は、天竜川中流部三十三キロメートルの長野県平岡より静岡県佐久間落差百三十八メートルを利用し、最大三十五万キロワット、年間十二億六千万キロワットの電力を発生せんとするものであって、工事費三百二十億であります。  佐久間ダムは、飯田線佐久間駅より本流沿いに約五キロメートル上流に、基礎岩盤上百五十メートルのわが国第一の高堰堤を築き、上流平岡発電所まで約三十三キロ間を貯水池とし、約三億立方メートルを貯水し、その大きさは、諏訪湖より大きいものとなります。しかして、この水を約キロメートルの隧道二本佐久間直上流発電所に導き、四台の水車を通して三十五万キロワットを発電せんとするものであります。  本地点は、三十年前よりその調査が進められ、発電計画は以前よりあったものでありますが、工事の困難さが常に開発障害となって、有利な地点でありながら、今日まで放置されていたものを、電源開発会社が、会社設立の趣旨にのっとり、この難工事完遂計画し、昭和二十八年四月十六日、工事に着手、二十九年三月二十八日、仮排水路を完成して、天竜流れをかえ、ここに工事の第一期を終り、さらに本工事最大の難工事たる第二次締め切りを切って、大がかりな排水工事をなしたのであります。目下、発電所はほとんど完成し、堰堤コンクリート打ち込みの仕上げを行なっており、二月二十日過ぎの洪水を待って、水を入れる予定となっておるのであります。  本工事の特徴といたしましては、第一に、工事に必要なコンクリート用骨材たる砂利及び砂が、近くで容易に得られること。第二に、飯田線中部天竜駅、佐久間駅の至近距離にあるので、交通至便の地であること等が工事を容易にするおもな点でありますが、堰堤は、岩盤洪水最高水位まで百五十メートルで、わが国最高であるばかりでなく、世界の実例を見ても、これをこゆるものが少く、かくのごとき高堰堤は、設計技術上あるいはコンクリート打設技術等がめんどうであるにかえ、堰堤地点は、その上下流は両岸険峻で、舟によるほか接近し得ざる難場であり、河床堆積砂利層の深さ二十五メートルに及び、わが国においてかつて経験せざるほどの困難なる工事であるという点であります。しかも、大きな岩石を砕くためには大きな機械が必要であり、また夏の洪水期にも仕事をやらねば仕事にならないため、洪水をかぶることは覚悟せねばならず、洪水を受けたときは、直ちにその水をくみ出すポンプが必要であり、事実、工事中十一回水をかぶったということであります。そこで、電源開発会社としては、高碕前総裁意見により、この困難なる工事の克服を、工事の短縮をはかるため、米国最新土木技術の算入を企て、米国一流土木請負業者マトキンソン会社意見を徴し、米国最新工事用機械一連輸入し、その土木工事方法も、アメリカ合理的方法を取り入れ、技師も、主として機械操作班場の人を多くしてやったところに、その能率を高めたゆえんが存するのであります。  佐久間ダム建設のための補償問題はほとんど片づいておりますが、その補償費用は、個人、公共物に対するもの三十三億のほかに、飯田線の水につかる十二キロメートルをつけかえて、十八キロメートルの鉄道を敷設するために要する費用五十三億、計八十三億であります。  佐久間発電された電力は、東京及び名古屋に送電されるのでありますが、その送電線もすでにでき上っているとのことであります。  現地におきまして、東南アジア賞を獲得した天然色映画佐久間ダム」を会社の好意により上映してもらいましたが、ダム建設途上の困難さ、及びその機械力の優秀さ、また建設工事総合性等が如実に収録されておりますので、まだごらんにならない委員の方は、機会があればぜひごらんになられんことをお勧めいたします。なお、本映画を発案、企画された本委員会委員佐々木良作君に対し、この際深甚なる敬意を表す次第であります。  佐久間発電所は、わが国経済発展基礎となる電力需用にこたえるために建設されたわが国最大発電所であります。しこうして、急流をもってなる天竜川をせきとめ、流水をかえてこの工事をなし遂げたことは、科学の自然に対する勝利であります。しかしその科学の力は、科学国際性ゆえんするところ大なるものがあります。すなわち、佐久間に据えた一台九万三千キロワットの発電機も、国際競争入札により、四十数億の予定を、結局日立、東芝が二十数億で作成したものであります。建設工事のための機械たるロッカーシャベル、ブルドーザー、ダンプトラックケーブルクレーンジャンボー等映画に出てくる巨大な機械は、いずれもアメリカ機械であります。この機械輸入については、御承知通りメーカー技術者等の反対があったのでありますが、現にこれらのアメリカ機械の中に国産品を入れて使用した場合に、たとえば日本ロッカーシャベルはすぐに先が折れ、あるいはダンプトラック岩石の重さにつぶされる等、外観においては外国品に劣らなくても、実際の使用に耐え得ないことが証明され、ためにわが国メーカーが発奮し、最近においては相当すぐれたものができ、秋葉ダム建設には、これら国産品も相当多く使用するとのことであります。佐久間ダム外国機械を入れたことは、結果的には、工事早期完成をなし遂げたことに役立ったとともに、国産品の改良にも役立ったのであります。科学技術は、あらゆる分野において、戦時あるいは戦後においてブランクを生じ、外国に立ちおくれた点なしといたしません。わが国工業国として、国民経済発展のために役立つためには、今後ますます科学技術振興が必要であるとともに、国家予算も十分これに用いるべきであるということを強く感じて、視察を終った次第であります。  以上、佐久間ダム視察報告終ります。
  4. 有田喜一

    有田委員長 以上をもって、派遣委員よりの報告を終了いたしました。     —————————————
  5. 有田喜一

    有田委員長 それでは、これより原子力行政に関し、正力国務大臣よりその所信を聴取いたしたいと存じますが、その前に、今般原子力委員会委員に就任されました石川一郎君及び藤岡由夫君が本日御出席になっておられますので、この際御紹介いたしておきます。(拍手)     —————————————
  6. 有田喜一

    有田委員長 それでは、これより原子力行政に関し、正力国務大臣よりその所信を聴取いたします。
  7. 正力松太郎

    正力国務大臣 ただいま委員長から私に、原子力行政に関する所信を述べよということであります。何分、私より、皆様方の方が原子力の知識が深いのでありまして、私はまだ原子力のしろらとであります。しかし私は、しろらとながらも、今までこういう考えを持ってやってきた。今後はこういう方針でいきたいということをここに申し上げまして、皆様方の御指導と御支援を仰ぎたいと存ずる次第であります。  私が原子力ということを知り得たのは、ごく新しいのであります。一昨年の暮、初めて原子力平和利用ということを知りました。実はそのとき私は非常に驚きました。あの恐ろしい原子力の力が平和に利用されるということは、これは何というありがたいことだ。何というこれはいいことだ、これでこそ日本産業革命ができる。これをやらなくゃやならぬ、ということをそのとき思いました。思いますと同時に、原子力というものは恐ろしいものだ、戦争誘発だ、戦争道具だ、殺人の道具だとみんなが考えておるから、まず国民のこの思想を一掃する、平和に利用できるものだいうことを思い込ませることが必要だ、それについては、幸い私は新聞に関係しておりましたので、原子力研究はます専門家方々がおやりになるだろうから、自分国民に知らせるのが天職だというので、私は立ち上がった。まずその第一段としまして、幸いアメリカ原子力を初めて平和に利用しましたホプキンスというへが、日本に来たいという考えがありしたから、それでそれを私は呼びました。それと同時に、このホプキンスという実業家を呼んでは、またこれは人から誤解を受ける。金儲けのためじゃないか、原子力の売り込みに来たんじゃないかという誤解があってはいかぬと思いましたから、そこで特に私は注文をつけましたポプキンスに、あなたが来てくれるのはけっこうだが、ぜひ日本国民に納得のいくようなりっぱな学者を連れてきてくれということを申したのであります。そこで、あのローレンスという原子力理論においてノーベル賞をとった、原子賞世界でたった二人のうちの一人であるローレンスという博士を呼んで、東京に来て、全国民に知らしたのであります。幸い一般学界に、あるいは一般民衆に対して、非常にこの二人の発言が効果がありましたので、私どもも非常に喜んでおります。それと何時に本の、言論界がこぞって応援してくれた。どの新聞もまず原力平和利用ということを書きまして、各言論界おかげによりまして、国民が納得してくれました。その後、私どもは日比谷で原子力博覧会やりました。これも非常に大衆に受けました。こういうことをして、私ども大衆誤解を解き、大衆が、原子力というものを平和に利用しなくちゃならぬということを会得するようになってくれたことについて、私ども微力ながら骨折ったと自分では自負しておるつもりであります。また国会におかれても、合同委員方々外国まで研究に行かれ、率先して、国会においてこの原子力平和利用を唱えてもらったものでありますから、このおかげによりまして、昨年の暮れ、原子力三法案が超党派によっで、通ったということは、私ども非常に喜んでおります。喜ぶと同時に、この立ちおくれた日本原子力を列国に負けぬように持っていくためには、超党派でなくちゃならぬ、超党派の力によってこそ初めてできるという考えを待ちましたが、幸いにして、原子力行政に携わる者は、その超党派の意味において人選を行い、これまた幸い各派からりっぱな人が見えられまして、非常に喜んでおります。私どもはさらに一歩進んで、われわれ政府の組織だけじゃいかぬ。全国民の力を借りなくちゃいかぬ。全国民の理解は取ったが、さらにこれからは積極的な力を借りなくちゃならぬという考えを持ちましたから、御承知のごとく、原子力産業会議というものを提唱いたしました。これまた今まで数例を見ない、在京における実業界の人がみな集まってくれました。そうしていよいよ三月の一日をもって会議を設置いたしました。おそしくこの会議は、イギリスとか、アメリカ、フランスの例よりも、もっとりっぱなものになると私は喜んでおるわけであります。この勢いによって、どうしてもおくれた日本のこの原子力利用を早めたい、こう存ずるのであります。従って私どもといたしましては、原子力基本法のあの精神を忠実に守ることが、私どもの任務と心得ます。従いまして、平和利用ということを第一の目標とし、さらに運用の自主研究の自由、成果の公開、この方針を守り、さらに国際協力——日本だけじゃいかぬ、国際協力をはからなくちゃならぬという大方針のもとに、まず最初の心組みといたしましては、発電のこと、アイソトープ利用、この二大目的が実現するように努力しておるのでのります。発電ものことは、これはなかなかも重大なことであります。またアイソトープ利用、これも多方面にわたっておりますから、これについては、専門家のみならず、皆様方の力をぜひ仰ぎたい、かように考えまして、私どもは皆さんの援助と、さらに国民全体の支援のもとに、日本原子力行政を全からしめたいと存ずる次第であります。何分とも御支援をお願いいたします。
  8. 有田喜一

    有田委員長 質疑の通告がありますから、順次これを許します。椎名悦三郎君。
  9. 椎名悦三郎

    椎名(悦)委員 担当大臣正力国務大臣から、ただいま原子力に関する御抱負の詳細を承わったのでございます。従来、とかく政治科学と縁遠いものというような考え方一般国民に植えつけておったのであります。しかるに、原子力問題につきましては、事柄の重要性もあるのでありますが、これをいち早く政治に取り入れまして、最も熱心に、周到なる施策、研究及び調査を講じておりますことは、まことに国家のために同慶にたえないところであります。今回この方面相当抱負を持っておられる正力国務大臣担当大臣に迎えましたことは、これまたまたこと同家のために喜ばしいことと存するのであります。ここに二、三さらに質問を申し上げまして、正力国務大臣の御意見を拝聴しておきたいと思うのであります。  第一は、ただいまのところは、実験炉輸入、取付けというような段階であります。それをさらに中型実験炉を作り、三年後には一万キロ程度国産実験用の炉を据え付けたいというような考え方を持っておることは、申し上げる必要のないところであります。これらの段階を経まして、いち早く動力炉日本に据え付けるということが、何と申しましてもこれは最終の目標であり、われわれはその一日も早からんことを希望するわけでありますが、正力さんは、他の機会においてこれは五年以内に必ず実現しようというようなことを言っておられることを、新聞紙上においても私は承知しておるのであります。今日の段階から申しまして、これは非常にむずかしい問題であります。むずかしい問題であるが、しかしながら、五年はおろか、もっと早く実現してほしいというのが、国民全般希望であろうと思う。早いにこしたことはございませんが、しかしたださような希望だけを申したところで、これの実現は非常にむずかしい。日本技術の向上及び少くとも数百億程度国幣をこれに投入しなければならぬというのであまますが、正力さんは、これらの問題を具現するために、具体的にどういう方法を講ぜられんとするのであるか。その点をまずもつて拝聴しておきたいと思うのであります。  第二点は、ただいまもお話のうちに出てきたように考えますが、原子力研究及び実施の問題に関して、三つ原則を打ち立てておることは、あまねく承知しておるところであります。すなわち、機会均等自主性及び研究公開については、申し上げるまでもたく、研究のためにはとかくの思想傾向立場であるとか、あるいは政治的目解の相違なんというようなことは抜きにして、平等にこの研究のためには機会均等でなければならぬ。これはまことにけっこうなことであると思うのであります。それからまた自主性の問題も、日本は非常に科学的に立ちおくれておる、特殊の進んだ国からこれらの研究輸入する上において、まかり間違うとむしろ隷属する、非常に卑屈な結果に陥るというようなことを極力避けまして、どこまでも自主的にこれを運営していくという、その気晦が必要であるということはもちろんのことであります。また研究適時公開主義は、その研究の恩恵にあまねく浴せしめるために、あるいはまた研究のお互いの切磋琢磨のために、適時、出し惜しみしないで、これを公開する。このことが科学振興の要諦でありますことはもちろんであります。これらの問題につきましては、この三つ原則をもつて、日本原子力技術というものを確立しようというその精神は、まことに敬服に位するものでありまして、私も心からこれに賛意を表するにやぶさかでないのでございます。しかしながら機会均等と申しましても、思想傾向あるいは政治的立場というものによらずに、これを一律平等に機会均等主義でいくということは、大へんけっこうなことでありますけれども、この研究途上においてそういう特殊の思想、特殊の政治的主義というものに逆に歪曲されるというようなことがありますれば、これは本来の機会均等主義の粘神に反するものであると言わざるを得心ないと思うのであります。同時にまた、自主性と申しましても、かつての日本国粋主義に似たような、何でもかんでも自主がよろしいのだ、舶来物はできるだけ毛ぎらいするというような考え方にもし陥るとしますれば、子ういう点は化学技術のためにまことに大きな障害になるということも用心しなければならぬ。また研究公開と申しましても、各国がとっておる研究保護——あるいは工業所有権制度でありますとか、そういうものに現われた研究保護というような従来の行き方というものにまっこうから反するようなことがあっても、これは実際問題としては成り立たぬのでありまして、これらの問題についてのこの三原則の進め方につきましては、よほど、絶えず工大研究を要するものがあるように考えるのであります。何と申しましても、この原子力の問題をわれわれが取り上げておる根本のゆえんは、日本国家及びわれわれ一本民族の共存共栄のためにこれを取り上げておる。緒川そういう観点をはすさないで、正当なるこの三原則の運営が必要である、かように考えるのでありまして、これらの問題につきましては、担当大臣として広く国民所信を明示されまして、そうしてこれらに関してまだ多分に懸念を持っておる方面のその危惧の念を解消するという必要があるようにも、考えるのであります。これらの点につきましても、明確なる御見解を拝聴することができますれば幸いである、かように考えるわけてあります。  以上、二点にきまして、正力国務大臣の御見解を承わりたいと思います。
  10. 正力松太郎

    正力国務大臣 お答えいたします。まず第一の、発電を三年間に実現したいとお前が言うているのが、何を根拠として言うかという御質問でありまして、これはまことにごもっともな御質問と思います。実は、先刻申し上げましたが、私は原子力技術に対するしろうとでありまして、自分としては技術的の、こういう技術によってこれになるということは申し上げません。それは専門家の方にあると思いますが、ただ私が何ゆえにそういうことを申したかといいますると、現に外国の例を見ましても、イギリスのごときは、もうことしの秋には発足いたします。またアメリカのごときは、昨年の五月着手してから、三年間発電するということを発表しております。また二、二カ月前のアメリカの情報によりますると、これは二千キロワットの小さい原子発電炉でありまするが、一九五七年、明年に完成する。イギリスはすでに今秋に発電をやるといい、アメリカが明年やるという。この外国における事実に対して、日本はいかに立ちおくたとはいえ、幸いにして日本科学者には、理論物理あるいは実験物理において英米に負けぬりっぱな学者がたくさんおります。ただ原子力に対する研究を今までしたのが日が浅いから、この基礎学問があり、頭のよい学者がやれば、イギリスがことしの秋やり、アメリカが来年やるというところを、日本は少くとも五年くらいでやれそうドという私のしろうと考えをもちまして、原子力委員会に諮りましたら、原子力委員会では、必ず実現してみせるとは、言いませんでしたが、みんなが折ろうということを言いました。さらに私が喜んでおりますことは、今まで民間において、原子力発電というと十五年先、はなはだしきときには二十先と考えておりました。その民間の空気が変って、大臣は五年と言うが、五年では長いじゃないか、一つ三年か四年でやろうじゃないかという熱心な声が起ってきました。こういうふうに計近変ってきたのでありますから、私は必ず実現されると思うのです。  なお、私は自分のことを申し上げてまことにおこがましい話であります。が、とかく専門家専門にとらわれるという例として、御参考までに申し上げたいと思います。私がテレビを始めましたが、NHKでは二十年も研究しております。それで、私が五、六年前に、二十年研究してきたという者に向って、おれはテレビをやろうと思うんだと言ったらどういうわけですとうので、実はアメリカでこういう工合にやっている、アメリカの国がやったのが日本でできないことはないと思うから、おれはしろうとだけれども専門家でなくてもできると思うんだと言うと、NHKではびっくりして、NHKではまだ五、六年先に考えておるのだ、君がやるならまあ応用しようという話でありました。ところが私が断然やりますと、NHKが負けずにやりました。そしてりっぱにできておるじゃありませんか。これほど技術進歩はいのです。それなのに、専門家専門にとらわれてしまう。ことに原子力テレビよりもっと進歩が早い。アメリカは、昨年は、始めてから三年間という発表をしていましたが、二カ月前には、もう来年完成すると言うておるではありませんか。そうすると何でもない。だから私は世論を率い、学者を率い、専門家を率いるのが、われわれ原子力行政をやる政治家の任務だと思います。それを十五年も二十年もほうっておいても進歩しません。これが私どもの五年と言う根拠でございますから、どうぞ御了承願いたいと思います。  なおまた三原則に対する御注意、これは一々ごもっともであります。これはもうやたらに自主性々々々と、言うて、何でも外国通りにしないというのではありません。外国の長所はとります。ただ私どもは屈辱的になる必要はない。その他の点についても、御趣意の通りにやりますから、どうぞ御安心を願いたいと思います。
  11. 椎名悦三郎

    椎名(悦)委員 ただいまの御答弁で大体わかりますし、第一点の、英米が非常なスピードでやっておる、彼らにできることが何でできないことがあるかというその非常な情熱に対しましては、まことに敬意を表する次第でございます。ただ、この際、われわれが注意しなければならぬことは、外国がやるんだから、その外国製を日本に持ってきて、そうして適当にこれを組み立てることによって五年以内に建設するという目標を実現できるのじゃないか、そういう安易なお考えではなかろうとは存じますが、もしそういうお考えであるとすると、われわれが考えておる的と、少しはずれるような気がいたすのであります。ということは、それではいつまでたっても、それこそよい意味における技術のいわゆる自主性というものの確立が期せられない。そうしてまたその技術自分の身についておらぬということのために、それからそれへと、応用の問題についても、一にもアメリカ、一にもイギリスといったようなことでは、今まではどうか知りませんが、われわれの知っておる支那が外国から機械輸入する、それが故障がない間は運転いたしますけれども、どこか故障があると、もう、ろくに修繕する能力もない、ついさびらしてしまうというような事例が幾多あったのでありますが、まさかかような状況になるとは私は考えませんけれども、少くとも技術の正しい意味における自主性を確立するためには、大いに国内の本来の技術者というものを十分に育て上げ、手腕を振わせる。そうしてまたこれに対する必要なる予算等につきましては、あるいは民間資金でもよろしいのでありますから、十分にこれに供給をして、技術及び財的方面において遺憾のないように、今後ともお力添えあらんことを希望する次第であります。これをもって私の質問を終ります。
  12. 正力松太郎

    正力国務大臣 ただいま椎名委員からのお話は、まことにごもっともであります。私もさきの言葉が少し足りませんでしたが、私は何もかにも英米のまねをしていくというのではありません。これは、実は原子力委員会においてもどうしても原子力基礎学問を十分にやろうということになっており、これを並行して応用の方をやろう、これは応用を専門にやるというのではない、応用は基礎学問と並行してやるのであります。それでこそ初めて日本科学進歩原子力進歩ができる、こう信しておるのであります。
  13. 有田喜一

  14. 岡良一

    ○岡委員 ただいま正力原子力委員長から御所信を承わりました。私どもも、一衆議院議員正力松太郎として、ホプキンス及びローレンスを招いて、わが国民に対する原子力平和利用について大きな啓蒙に御努力をいただいておるというその御努力に対しては、まことに感謝いたしております。従いまして、いよいよこの一月一日からわが国にも画期的な原子力委員会が発足をして、そうして正力さんが委員長になられたについては、われわれは刮目して、正力さんの原子力行政に、その野におられた熱意と御勇気というものを打ち出していただくことを期待しております。しかしながらきょう私ども委員会で、あなたからそのような抽象的な勇気や情熱やあるいは過去の御努力を聞きたかったのではありません。私どもは、やはり原子力委員長として、またこれを担当する国務大臣としての具体的な抱負を、この委員会を通じて広く国民に知らせていただきたい。私ども正力さんに対して原子力行政に対するいわば施政方針を伺いたい。このように要求をいたしたわけなのでありします。そこで、ものは初めが大事だということがあります。ですから私は、原子力委員会委員長芦川として、一月十三日に発表せられましたものの内容を施政方針にかえて、私どもの検討を加えた結果に関して若干の質問をいたしたいと思います。  最初にお尋ねをいたしたいのは、まだ一月三日の日がやっと明けたころ、いわゆる動力協定という御発言がありました。これによって、国民にも、もちろん担当者に対しても、非常に大きな衝撃を与えたのであります。私はこの経過、真相について、ここにあらためて国会立場から、正力委員長の御所見を承わりたいと思います。すなわち一月四日、正力国務大臣は郷土入りをいたされたが、その車中談として次のような要旨の談話を発表された。問題の発端となったのは、濃縮ウラン受け入れのために、さきに日米原子力協定を締結したが、各国原子力界の現状は、すでに研究段階を過ぎ、実用化の域に入っており、従って、動力設備、技術の導入がぜひとも必要である。四百の会合でも、米国とこのため動力協定を結ぶべきだとの考えが強く、ほぼ意見の一致を見た。この御発言に対しまして、その翌日、中央地方を通じての新聞紙は、他の四人の委員のいろいろな御見解を発表しております。結局、その動力協定を結ぶということにほぼ他の四人の委員の間にも意見の一致を見たということは、事実無根であるという発表がいたされております。その結果といたしまして、正力委員長は、その御発言をお取り消しになっておられるのであります。この間の経過について、委員長しての率直なところを承りたいと思います。
  15. 正力松太郎

    正力国務大臣 ただいまの御質問におきまして、一月四日の私の雑談を私が取り消しを出したようになっておりますが、あれは新聞記事の間違いであります。従って私は新聞に取り消しを要求しません。新聞が間違ったことを書いたのであります。第一、委員会では動力協定は問題になっておりません。問題になっておらぬことを、委員会で私が言うわけはありません。私は、委員方々が否定された記事を見て驚きました。なぜ私に聞かずに、ああいうことを言われたかと思いました。委員会では動力協定は一つも出ません。私も言うておりません。ただ私が新聞記者に発表したのは、委員会で、五年以内に発電するように努力することになったということだけであります。アメリカ日本の動力協定を結ぶとかいうことは絶対にありません。従って、新聞記者に向って私は取り消しを要求していません。新聞記者が間違ったことを書いたのだから、新聞記者が取り消せばいいじゃないか。正力は取り消しはいたしません。委員の了解も得た。私が言わぬことを新聞が書いたのだ、から私が取り消すわけはないのでのります。
  16. 岡良一

    ○岡委員 とにもかくにも、委員長の談話で、はっきりと動力協定を結ぶことについて、委員の間にすでに意見の一致を見たというのです。しかもその談話は、それだけのものではない。かなり長文なものです。しかも、それは日本の一流紙という一流紙がほとんど掲載しております。あるいは東海、北陸地方の新聞でも書いておる。地元の新聞は、あなたの県の新聞も、私の県の新聞も、大きくトップで書いております。しかし今の御説明では、それは事実無根のことである、新聞に掲載されたことは、虚無の事実であった。こうおっしゃるのでございますか。
  17. 正力松太郎

    正力国務大臣 たびたび申し上げますが、実際新聞にああいうことを書かれて、世間を騒がしたことについては、私は悪いと思います。しかし、全く事実無根のことでございます。従って、私は新聞記者に向って取り消しは要求いたしません。あの取り消しは、新聞記者が私に聞きに来て、君ら違ったことを書いたじゃないかと言ったので、新聞記者自身が取り消しを書いたのです。どうぞこの点は一つ……。
  18. 岡良一

    ○岡委員 別に私はこの問題で意地悪く委員長を追及しようなどとは思っておるのではありません。しかし、先般も本会議で、われわれの代表質問である河上さんの質問に対して、鳩山総理大臣は言下に、テーブルをたたいて否定された。そうして新聞記者団からの抗議にあったところが、根本官房長官が苦しげな釈明をしておられた。私はやはり新聞紙を通じて国民に周知された事実というものについては、たといそのことが事実無根であっても、政治家には大きな責任が伴うものと思うのであります。近代的な政治家としてはその程度のセンスを持つということが、私は当然だと思います。しかも、もし新聞記事に伝えられたものが事実無根であったとしても、国民に対しては、原子力委員会の内部において、大きな対立があったという印象を与えております。この事実は、新聞記事に発表されたことが、事実無根であったかどうかということには、かかわりはありません。この印象を国民が受けたということは、生きた事実であります。このことに対する正力委員長としての政治的な責任についてどうお考になるかの点をさらに、はっきりとお聞きしたい。
  19. 正力松太郎

    正力国務大臣 それはさっき申しあげました通り、事実無根のことでありますから、私は取り消しませんでしたが、新聞社自身で取り消しております。新聞記事をよくごらん下さい。新聞自身が取り消しております。私が取り消したのではなく、新聞自身が取り消しております。世間を一時騒がせたことは済まぬと思いますが、彼らが間違ったことを書いて、彼らが騒がせたのですからどうぞ……。   〔「了解々々と呼ぶ者あり」〕
  20. 岡良一

    ○岡委員 それでは、この程度で私も了解をいたしましょう。  そこで、私が、この動力協定の問題についても、委員長の御所見をこのように深く確めたいと申しますのは、やはり動力協定というこのことが、日本の今後の原子力行政においてきわめて大きな意義を持ち得る可能性があるからであります。そこで、動力協定についての御発言があった、なかったということは別として、委員長の御所見を私はさらに伺いたいと思うのであります。と申しますのは、現に濃縮ウラン受け入れ協定の締結の当初において、動力協定に関する事項はあった。これが折衝の過程において落されております。なぜ動力の協定に関する事項が濃縮ウラン受け入れに関する日米間の協定において落されたのであるか。ここに日本における今後の原子力行政の大きな一つの前提となる意義があるのであります。この点についての委員長の御所見を承わりたいと思います。
  21. 正力松太郎

    正力国務大臣 ただいまの御質問にありましたが、動力協定であろうとどの協定であろうと、アメリカであろうとイギリスであろうとソ連であろうと、どこでも、いやしくも日本自主性を害するような協定はいたしません。
  22. 岡良一

    ○岡委員 日本に害をするということで私はお尋ねをしておるのではありませんが、私の理解するとこるによれば、結局当時における国内の世論にかんがみて、動力協定というものの本質が大きく今問題になっておる。原子力発電炉が、プラントとしてわが国輸入される。いわば完成された自動車が輸入されるようなもので、もちろん濃縮ウランもそれについてくる。いわば自動車とガソリンをもらって、日本は運転手を養成するということだけにとどまる。こういうようなことでは、結局基礎的な研究の余地がないというふうな意見も、学界方面には相当出ておったように私は承知しております。こういうことでは、いわゆるわが国原子力開発に関する自主態勢というものは、できないのではなかろうかという懸念が、まじめに学者の間で心配されておった。こういうことから、動力協定が一応協定の正文の中においてははずされて、交換公文の中で了解事項としてあれがうたわれておる。こういう事実あった。私はこのように理解をいたしておるのであります。アメリカとトルコとの間には、ちゃんとある。日本には落されれた。そうしてこれがいわる了解事項としての交換公文に譲られた。これは、国内品における日本原子力開発研究に関する自主的な態勢を要望するというまじめな学界の意見が、結局動力協定に関する条項を、あの協定の本史から落した原因である、私はこのように理解をしておるのであります。私はおそらく委員長も御同感のこととおもいまするが、重ねて御所信を承わりたい。
  23. 正力松太郎

    正力国務大臣 先ほども椎名委員に申しあげましたが、私は応用を重んずると同時に、基礎学問というものに重点を置く。従って原子力動力の問題が起りましても、運転手だけ雇うようなことはいたしません。このようにちゃんと研究しております。  重ねて申し上げます。今後外国とどんな協定をしようと、自主性を害するような協定はいたしません。
  24. 岡良一

    ○岡委員 その点は、別に私はなさると申し上げておるのではありません。ただしかし、先ほども自分の御体験としておっしゃったが、NHKは二十年間テレビ研究をしてきた、そこでわしはアメリカと交渉をしてということで実現をした、NHKもついてきたと言われた。しかしテレビというものは原子力と同じゃありません。有線電話が無線電信になり、ラジオになる、写真電送が有線から無線になってきた、こういう技術の量的な発展の上にできたものじゃない。原子力というものは、あるいはその国、世界の産業構造を革命的に変革しようという非常に大きなものである。従ってわれわれは原子力基本法を設け、あるいはまたそれに伴う原子力研究所にしても、関連する公社にしても、ある程度までこれを国家なり、出会の監視監督のもとに置いて、国民のものにしようという考え方を強く出して原子力に臨んでおる。テレビと同一にされるというような孝え方でこれを扱われることについては、私は正直のところ遺憾でありますが、これはどうせ水かけ論になろうかと思いまするので、申しあげません。  そこで、私はこの動力協定についてさらにお伺いをいたしたいのでありまするが、実は先月の三十一日に、アメリカ原子力平和利用に関する小委員会という、アメリカ原子力委員会によって作られた相当権威ある機関が、十カ月の間種々研究をいたしまして、アメリカの上下両院に報告書を提出し、また勧告を出しております。この勧告を見ますると、たとえば発電の問題についても、こういうことが書いてあります。正力委員長は、今ほども発電の問題については、三年以内というようなことでありました。郷土入りの談話のときにはゼネラル・エレクトリックが、去年の五月、シカゴで十八万キロワットの発電を四千五百万ドルで三年以内に建設することとしておるというようなことも言ってます。しかしアメリカの権威ある原子力平和利用に関する小委員会の、しかもアメリカ上下両院に提出をした報告書並びに勧告書の前文には、こういうことをいっておる。原子力発電については、一九六〇年ごる、今から五年後です、経済的可能性を測定し得る技術的な知識を確実に手にすることができるであろう。でありますから、一キロワットが、二円五十銭でできるか、五円十銭でできるかということは、そのときでなければわからないと言っておる。それはそれといたしまして、この平和利用に関する小委員会は、次のような勧告を出しております。その中で、特に原子力発電に関する部分、これはいささか長文ではありますが、速記録にとどめておきたいと思いますので、朗読させていただきます。「第一、米国は原子力協定を結んでいる国に、原子発電所を設けるという目標をすみやかに実現するため、協定締結国との一連の地域会議をすみやかに開く。第二、米国はこの会議招請を発するに当り、核燃料を供給し、必要な技術上の援助を与えるとともに、できるだけすみやかに、委員会としては一九六〇年までを希望している、米国外に少とも百万キロワットの発電能力を持つ原子力発電所据付の契約を認める用意がある。第三、この計画に基いて建設された原子力発電所は、条約締結国によって同意される適切な査察を含む暫定的な管理計画の権限下に置かれ、消費燃料の再生とプルトニウム、ウラン二三三の回収は米国内で行う。」こう相なっておるのであります。  そこで、私、委員長のお許しを得まして、私も原子物理学の理論的なことは知りません。ただものの本で読めば、やはり原子力発電については、最近火国等では、増殖炉等の技術的な面が十分進んでおるということも聞いておりますが、プルトニウムというものは、増殖炉というようなものは運転するときに不可分なエレメントであるとも聞いておりますが、幸い、原子力委員藤岡博士が来ておられますので、この点藤岡委員から御説明願って、さらに正力さんに質問したいと思うのです。
  25. 藤岡由夫

    藤岡説明員 ただいまの御質問の私に対して申されました点だけを申し上げますと、増殖炉を建設するためにブリーダーが不可分であるか、そういう点に要約されると思います。  増殖炉は、御承知のように、そのままの状態では核燃料とならない物質、すなわちウラン二三八でありますとか、トリウム二三二でありますとか、そういうふうなものを炉の中で燃料に変えまして、しかもその変る率が、消費されました燃料物質以上のものがそこにできるように、そういうことから考えられましたのが増殖炉でございます。それでただいま英国等においては、その技術が相当進んでおるというお話でございましたが、これは原子力発電を目ざします各国とも、みな同じように研究を進めていると私は考えております。英国においては、相当にこれの実験的な研究を進めているという報告があります。アメリカにおきましても、現在、アメリカは五四年のAECの原子力発電に関します五カ年計画といたしまして、五つの案があります。その中にやはり一つの重要な案として増殖炉を掲げております。現在、多くの学者意見によりますれば、将来はどうしても増殖がにしなければならない。そうしなければ、核燃料を、経済的に有効に使うことができない、そういうような意見でだれも一致しておると存じます。  御質問のの要点に戻りますならば、増殖炉は将来、ぜひ必要なものであるとして、各国がこれを研究しつあるものである、その原料といたしましては、ファスト・ブリーダー、早いい速度の中性子を使います増殖炉に対しましてはプルトニウムまたはウラン二三五であります。これは濃縮ウランの一〇〇%の濃縮されたものであります。それからもう一つ、今考えられておりますトリウムを使います増殖炉、これに対する必要なな燃料は、ウラン二三三、これはトリウムから変換されてできるものです。将来増殖炉の建設のために、こういう物置を抽出するための研究は、やはりやらなければならないと考える次第であります。
  26. 岡良一

    ○岡委員 恐縮ですが、重ねて藤岡説明員にお尋ねいたしますが、各国の原子力に関する公表されたデータを見ますと、プルトニウムに関しては、きわめて緘黙を守っておるように私は見ておるのでありますが、軍事的利用というものに対しては、プルトニウムが不可欠なものでありましょうか。
  27. 藤岡由夫

    藤岡説明員 軍事的利用、つまり原子爆弾の原料ということであると存じますけれども、これはただいまのところプルトニウムまたはウラン二三五が原料として使われる、概念的には私どもはそう考えております。
  28. 岡良一

    ○岡委員 ただいま藤岡博士のお話を承わりました。そこで、今度前に戻りまして、先ほど申しましたアメリカの小委員会が勧告をし、また報告をしておるいわゆる条件があります。アメリカからわれわれが発電原子炉を受け入れる場合の条件が勧告されておる。その勧告によれば、プルトニウムないしウラン二三三はアメリカにおいて回収する、こうなっておる。もちろんアメリカとすれば、自国の安全なり防衛のために不可欠な条件といたしたのではありましょう。しかしその結果といたしまして、日本とすれば、増殖かの研究のためにきわあて不可欠なプルトニウムというものはアメリカ国内において回収をされる、しかもそのプルトニウムは、アメリカの原子兵器のために不可欠な原料として使用されることに相なり得るわけであります。そういたしますと、このような条件のもとに日本アメリカが動力協定というがごときものを結びました場合には、われわれが原子力の基本法にうたった平和利用というものは主つこうから否定をされる。わが国におけるアメリカとの動力協定のもとに運転をされるその発電原子炉というものは、結果においてアメリカにプルトニウムを供給し、アメリカ原子力軍事的利用に役立つという結果になるわけであります。こういうような事態になるということであるならば、日本としては、発電原子炉に関しては、今、小委員会が勧告しておるような形において、国内に百万キロワットの発電原子炉を建設する、そのために会議を開き、一九六〇年までには発電原子炉の契約をする、こういう申し出に対しては、われわれは基本法の精神に照らして、断固拒否すべ声ものと信ずるのであります。この点について、正力委員長の明確な御所信を承りたいと思います。
  29. 正力松太郎

    正力国務大臣 今の点については、よく考えますが、いずれにしても、日本自主を害するような協定はいたしません。  それから、なおついでに岡委員にお答えいたしますが、先ほど私が、アメリカでは一九六〇年に発電が完成するということをつたというお話で、ありますが、それはなるほど昨年はそういうことを言いましたろう。しかし私が昨年申し上げたのは、着手してから三年間というのです。ところがこの二カほど前にアメリカで公表しておりますが、来年発電が完成すると言うております。六〇年というのは、昨年の報告であります。この二カ月前の報告には、もう来年、五七年に発電が完成するという発表をしておりますから、どうぞごらん下さい。
  30. 岡良一

    ○岡委員 時間があれば取りに行ってもけっこうですが、私が申し上げたのは、この一月三十日に、原子力平和利用に関する小委員会が正式にアメリカの上下画院に報告しておる、その公表された公式の文書に、アメリカにおける原子力発電というものが、経済効果の測定に関する見通しがつくのが一九六〇年ごるであろう、こう書いてあるのであります。従いまして、小型な原子発電炉を作る、それもおそらくは経済的効果の見通しを測定するための実験炉として、小型の原子発電炉を建設されるのであって、それが去年言われたのかおととし言われたのか、その点は関係がないことでありますから、その点も一つ御了承願いたいと思います。動力協定については、この程度にいたましょう。  そこで委員長声明には、そしてまた今も繰り返し強く強調しておられますが、原子力発電の実験はなるべく五年以内に成功したい、はっきりそう書いてあります。その心づもりはまことに私も壮といたします。そこで、そのためには具体的に何をするのか、それは原子力基本法自主、自由、民主の立場において、具体的に何をやろうとするのか、これが書いてない。だから委員長声明というものは、美しいうたい文句にはなっておるけれども、真に今後の日本原子力要請のあり方について具体的なものを知ろうとする者にとっては、実は満足できないのです。五年以内に、わが国において原子発電をするというならば具体的に本年は何をやり、来年は何をやるというプログラムがあってしかるべきものだと思います。この点に対する委員長の御所信を承わりたい。
  31. 正力松太郎

    正力国務大臣 たしか声明には、なるべく五年以内にというふうに書いてあります。具体的に書いてないのは、その通りです。これはまだ具体的に書き得るまでに行っておりません。しかしながら、三年以内にやるために、まず原子力基本法によりまして、さしあたり留学生を英米にやります。それからまた実験用原子炉を早く買いにやります。なお一つ問題になっている敷地も、なるべく早く決定いたします。着々進めておりますから、どうぞ御了承願います。
  32. 岡良一

    ○岡委員 とにかく原子力テレビと同断とされすぐやれるというふうに早のみ込みで取り扱うようでは、私は非常に危険があると思います。しかも委員長声明というものは、原子力委員五名の声明であり、公式な政府の声明である。五年以内にやるという腹づもりであるならば、目安をつけるのは当りまえの次第であります。一応その目安としての、ことしは、来年は、再来年はというはっきりしたプログラムがなくては、あまりにも美文にとどまるではありませんか。こういう無責任な——あえて無責任なと申しますが、やはり国の機関である原子力委員会の声明としては、私は少し無責任ではないか、と思うのです。いかがでしょう。
  33. 正力松太郎

    正力国務大臣 私が具体的に申さなかったのは、委員会にも相談して、そう努力しようということで、委員会声明はそのままやりました。しかし先ほど申し上げましたように、あの声明はいかに効果があったか、つまり世論のが、一五年とか二十年というのを変えてしまって、みんなこれに努力するようになったではありませんか。これが政治の要諦で、私はそれが行政の上に必要だと思います。いつも私は、学者は十五年と思っておるが、十五年じゃないじゃないかと言うのです。テレビと同一視すると言いますが、テレビのような簡単なものではありません。テレビは個人会社で、今度は個人会社ではなく、国家でやるのであります。
  34. 岡良一

    ○岡委員 世論が五年になったということをおっしゃいますので、それでは、そうでない証拠を私がお示しいたしましょう。実は私も、この原子力委員長声明、五カ年以内に、わが国で原子発電をする腹づもりであるという、まことに放胆な声明に対しまして、世論がどういう反響をしたかということを、しばらく静かに新聞紙を通じて見ました。そこで、だれがこう言った、あれがこうしたということは煩を避けて私は申し上げませんが、世論の反響を見ると、二つに分けることができると思います。その一つは、あなたの言われたように、拍手を送っている。ある大きな製作所の社長さんは、アメリカのウエスティングハウスがアメリカの一万キロの原子力設備を輸出する話をしているから、日本も一台買ってきて、研究したらいいと新聞に出した。また大きな会社の社長さんは、僕は初めから十五年、二十年はまだるっこいと思っていた。それみろ、五年じゃないかとイって、同感の意を表している。これは三菱とか日立とかの大経営者の意見です。ところが正力さんは、これが世論であると言われるかもしれませんが、私が公正にこの反響を検討してみますと、必ずしもこれだけが世論ではございません。たとえばこういう別な意見があります。主として、言論界あるいは学界に見えているのですが、新聞の論説やあるいはまた新聞に発表された学界の諸君の意見の中に、こういうことを言っておれる人もある。たとえば、電力需用とか発電技術の実用化、日本原子力研究者の能力というようなこういう問題を全然考慮に入れないで、いたずらに日本原子力開発外国に依存する結果になるような発言は遺憾である。わが国原子力研究の当面の課題は、実験原子炉をとにもかくにも導入する基礎的な研究を十分積み固めていかなければいかぬ。全技術者をもっともっと計画的に養成する必要がある。そしてわが国が独自で、天然ウラン、重水の原子炉でもいいから原子炉を作る。これに全力をあげるということが原子力基本法の線にかなった原子力計画目標でなければならぬ。こういうこと言っている世論がやはり相当あるのです。私は日本の将来のエネルギーというものを考えた場合に、決して原子力によって発電することを急ぐ必要などとは言いまん。産業において一番重要なエネルギーの問題でありますから、ある程度は潔癖さを差しおいてでも、急がなければならぬかもしれません。しかしそれにいたしましても、こういうふうに、委員長の声明の五年以内ということに世論は拍手をしたという原子力委員長の見られて世論もあるが、一方にはこういうまじめな世論もあるのです。従いまして、日本原子力行政というもの、あるいは原子力委員会の任務というものは、この二つの世論をどう調整するかということにあろうと私は思うのです。ただ一方だけに走るということでは、日本の健全な安定した原力子行政の基本的な構想とは言えないのではないか。一日も早く急げ、そのためには外国から輸入することもかまわぬじゃないかという意見と、まず国産原子炉でまじめに基礎的な研究を固めて、技術者の養成をはかれという世論、これを結びつけて調整されたものが、原子力委員会の当然国民に発表する具体的な原子力行政のプログラムでなければならない。これがないと私は思うのであります。その点についての委員長の所見を伺いたい。
  35. 正力松太郎

    正力国務大臣 今あなたのお話の通り、両方調整するのが行政の目的であります。先ほどの私の世論というのは、そういう反対意見もあるが、こういう世論もあるということであります。世論に対しても、全産業界の意見を徴するために、産業会議を主張したわけであります。  なお岡さんのことでありますから研究は進んでいると思いますが、この際一言申し上げたいのは、いかに日本電力の危機に襲われているか、国民は知りません。日本の火力石炭の資源においては、もう供給が需用に追いつかない。そうしてかろうじてアメリカから入ってきた重油で補っている。これについて、今年中には電力は上げますよと電力会社は言うが、電力会社もその危機を国民に訴えていない。私どもはそれを調査した結果、知っているだけ日本はゆゆしきことだ。できるだけ一日も早くやりたい。しかしながら、さっきから何回も申し上げたように、自動車を入れて、運転手をこちらでというナンセンスはしませんから両方調整するために、委員会は苦心しているのでありますから、どうぞその点を御了承願いたい。
  36. 岡良一

    ○岡委員 電力の問題ということになりますと、やはり自由民主党と社会党の政策の問題になります。私どもはもっと電力事業を社会化すれば、日本電力の供給能力というものは高めることができる。現在のように分割された私企業の形態において、利潤追求にまかす限りにおいては、未開発の電源というものに対しても、手が出ないのだという考えを持っております。しかし、こういうことで論議を展開したのでは、きょう一ぱいかかりますからやめますが、なるほど将来に備えるという意味において、豊富なエネルギーを今から用意するというそのお心づもりは、私どもは少しも否定はいたしません。しかしながら、この際繰り返し要望いたしまするが、それみろ、五年以内じゃないかといって手を打つ財界の声だけに百耳を傾けないで、一方では、やはり基本法の民主、自主公開原則の上に立っての技術者の養成と、基礎的な研究開発というものを積み重ねていこうというまじめな学界の要望がある。これに十分耳を傾けられて、その間の調整をとる。こういう点を今後原子力委員会としては十分に留意していただきたいということを、強く希望をいたすのであります。  次に、技術者の問題でありますが、これはアメリカイギリスの最近の情報というようなものを見ますると、とにもかくにも技術者が足らなくて困っている。そこで、わが国もせっかく原子力開発に荒手した以上、原子力については、事実その研究においても開発においても、わが国に比してはるかに進んでおりながら、今日技術者の不足に困っているという事実をやはり深く学ぶべきだと思います。そういう意味で、原子力開発原子力研究について、あるいは実験原子炉の導入など、いろいろ御計画を進められるならば、それと不離一体の関係で、将来のわが国原子力の実用化に備えての技術者養成の計画があってしかるべきだと思う。この点、原子力局長の御意見でもけっこうですが、委員会としておまとまりの意見があったら、御報告願いたい。どういう施設を使われるのか、どの程度の人間を使用するのか、将来はどの程度技術者を養成しようとするのかというような点をお伺いいたしたいと思います。
  37. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 原子力開発に関する技術者養成の問題は、最も、基本的、基礎的な問題でございまして、これなくしては、単に施設のみを主にいたしましても、将来の発展は望めません。そこで、一月の始めにできました原子力委員会といたしましては、まだ十分の成案は得ておりませんが、御承知のように、この前、内閣に原子力平和利用準備調査会というものができまして、副総理が首班で、一年半ばかり研究を進めておりましたが、その際、準備調査会で原子炉開発計画を作りましたので、それに即応いたしまして、人的養成計画はいかにあるべきかという工夫をしたのであります。その際においては、大体三年間でたしか三百名だと記憶いたし、ますが、各般にわたる技術者の養成が必要であるというふうな一応の結論をもちまして、この研究に対しましては、あるいは海外に留学生の形で成するとか、あるいは留学生という形でなしに、研究生ということで実際に原子炉を持っている個所に送り出しまして、そこで技術員として、向うの人たちと一緒に研究をするというような方法考える。あるいは、国内的には、今度小さいながらも実験炉ができますので、そういうものと相応して、一種の国内留学というような格好で、国内で研究をさせるというような考えであります。  それから、もう一点は、大学に原子核の講座を設けまして、そこで若い学生から育てていくというふうな幾つかの段階を設けまして、学界あるいは国内でできました原子炉を中心に技術者を成する、あるいは国外に派遣いたしまして、早急に技術を学ばすというふうな手順で、一応案を持ちました。三十一年度の予算に関しましても、この人員の養成という点を第一眼目にいたしまして、何とかしてこの海外の派遣員に対する予算の裏づけを得たいと思いまして、いろいろ折衝の結果、ほぼ三十一年度で意図いたしました程度の予算は、今の提出予算の中に盛り込まれておるというふうに感じておるのでございます。
  38. 岡良一

    ○岡委員 私ども新聞で拝見をいたしておりますと、本年度における原子力関係の総予算は、一応三十六億ということに査定をされておる。もちろん原子力委員会とすれば、発足、早々のことでもありまするから、いたし方はなかろうかと思いまするけれども、何となく予算が先行した原子力行政という感じがいたします。こうであってはなるまいと思うのです。特に財界なり学界から十分エキスパートが選ばれて構成された原子力委員会であれば、産本法の自主性をまず委員会がはっきり打ち立てていただきたい。委員会が、委員会自主性において、原子力開発の構想を立てていただく。その裏づけとしての予算、こういう形でなければならぬのに、何となく予算が先行して予算編成というふうな印象がありまするので、これはできるだけ早く、発足早々で何かと御多忙ではあったかと思いまするが、今後は精力的に、原子力に関するもっと具体的なプログラムを、願わくば国産原子炉のところまでのプログラムというのを、なお具体的に私ども承知いたしたいと思います。同時にまたそれに伴い、今の局長の御発言でまことに多といたすのでありますが、技術者の養成計画というものについても、研究開発計画に裏づけられた技術者の養成計画と申しましょうか、あるいは不離一体のような形における技術者養成計画についても、十分な御考慮を願いたいと思います。  次に、今、外国へ選んで派遣するというお話がありました。私、先般、これもある外国の情報を読んでおりましたところが、たとえばアメリカのシカゴのアルコンヌの国立研究所に入る場合、外国人はいわゆるあのマッカーシーの言い出した忠誠調査というものを受けるということが書いてあります。日本の派遣される研究員は、このようなアメリカの忠誠調査を受けるのでありますか、受けないのでありますか。
  39. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 今後のことはまだわかりませんけれども、今までの、去年の経験から、申し上げますと、そのような事実はありません。
  40. 岡良一

    ○岡委員 これは、国際協力局長がおられますから、なおはっきり御存じかと思いますが、私はアメリカの国立の諸研究所においては、外国人が留学する場合には、忠誠調査という一種の身上調査を受けると聞いております。おそらく身上調査を受けるといいましても、日本政府としての何らかの保証がその人間についていくという条件が必要になってくるのじゃないかと思います。そういう事実はないのでございましょうか。あるいはまたそういうことが、他の特定の国とアメリカとの間にはやはり約束されておるとか、あるいはまたそういう事実が他の国の場合においてあったとか、こういう今についての情報を御存じならば、お聞かせ願いたいと思います。
  41. 河崎一郎

    ○河崎政府委員 アメリカに入りますときには、一応向うの手続といたしまして身元調べは移民局としてやっております。しかしアルコンヌの研究所その他に入学するときに当りまして、特に身元を調べたという事例は今までございません。
  42. 岡良一

    ○岡委員 それから、ついでに、アイソトープの問題をちょっと御質問いたしたいと思うのです。先般も、新聞を拝見いたしておりますと、この二月の十日から、アメリカの方では、外国に輸出するアイソトープを、これまでの三種類から八十三種類に拡大した、その手続等についても、非常に簡素化したということが発表になっております。なお、従来、われわれは特に医学担当者から聞かされることでありますが、アイソトープの医学上の利用について、なかなか入手が困難であるというようなことも、その訴えを聞いておりました。ところが、アメリカの方で、このような形で、二月の十日から、簡単なる手続で、しかもその種類も従来の三から八十三に拡大をして、これを海外に輸出をしようということになれば、今日本で小型の原子炉を作ってみたところで、なかなかそう多目的アイソトープができるものでもなかろうと思います。しいて作れば、サイクロトロンでも作り得ましょうが、そういうものでは、アイソトープ平和利用の実験さえ私はできないと思う。ところが、現にアメリカがそういう措置をとってくれたということは、きわめて朗報だと私は思うのですが、こういう場合には原子力委員会として当然予算を相当取って、そうして計画的に、アイソトープ平和利用について、医学なりあるいは農業なり工学の方面にこれを活用される必要があると思うのです。委員長の御見解を承わりたい。
  43. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 かわって私から申し上げます。ただいまお話のありましたアイソトープの輸出問題に関しましては、御承知通りでございます。今まではスタックを通じまして、向うのAECの許可を得て輸入しておったのでありますが、その範囲並びに手続等に対しましては、だいぶ節素化されました。その意味から申しますと、日本にとっては、はなはだ有利な喜ばしい現象でなかろうかというふうに考えます。ただ、第二点のお話のございました、そのためには、小型の原子炉等はあまり意味がないのではなかろうかというような意味に私聞き取ったのでごさいますが、もしそういう意味でございますれば、若干誤解があるのではなかろうかと思いますので、釈明させていただきたいと思います。今度入りますウォーターボイラーは、これは小さいのではございますが、それから出ますアイソトープは、いわゆる半減期の長い、命の長いアイソトープではなくて、ごく命が短かい。従いまして、アメリカ等からなかなか持ってこれないような命の短かいアイソトープが出ますので、これは従来とも、日本ではあまり利用ができませんでした。しかし今度ウォーターボイラー等ができますと、そういうものは手近に利用できるという利点がございます。なお今後CP5あるいは国産原子炉の大きいのができてきますと、おのずから多目的のようになりますので、ただいま申しましたような半減期の短かいアイソトープのみでなしに、必要なアイソトープはそれぞれ日本国内で供与になりますから、日本もだいぶ国内の研究上の便宜が、今よりずっと増すというふうに考えていいのじゃなかろうかと思います。従いまして、従来輸入しておったから、今後も輸入すればそれでよいかといいますと、必ずしも、ものによってはそうは考えられませんので、相なるべくは国内で原子炉の多目的なものを作りまして、必要なアイソトープは国内で作るというふうな行き方が、今後の産業の発展のためには望ましいのではなかろうかというふうに考えております。
  44. 岡良一

    ○岡委員 私は、アメリカから小型の実験原子炉を輸入し、それをもってアイソトープを生産することを、決して軽視してはおりません。従ってそのようなことは申しません。ただ原子力平和利用といえば、一つには発電であり、一つにはアイソトープである。ところが小型の実験原子炉を輸入し、これが運転され、そしてそこにいわば規格のきまったアイソトープができてくる。それが実験として応用され、実地に用いられるというには、やはり時間的には相当かかるのじゃないかと思う。ところが二月の十百から八十三に種類を拡大して、手続をゆるめてアイソトープを国外に出そうとアメリカが決定をしてくれたならば、その間のつなぎは、ぜひ一つこれを輸入すべきじゃないか、私はそういうことを申し上げのです。ところで、ことしの予算でアイソトープに関してはどの程度の予算であり、その実施計画はどういうことになっておりますか。
  45. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 アイソトープは、御承知のように年々ほぼ倍になる程度輸入しておりまして、輸入国といたしましては、世界で一番か二番くらいの国柄に今、日本はなっております。ただ、種類は非常に多うございますが、金額から申しますと、大体三千万円程度輸入でございまして、しかもその輸入する最終的な使用個所は、必ずしも政府ではございません。大体八割から九割近くは医学方面でございますし、それ以外は、鉱工業、農業等に御承知通り使用しておるのでございます。そのアイソトープ利用して、今後研究いたしたいという分に関しましては、農林省あるいは厚生省等の必要な予算は、もらったといっては語弊がございますが、全部予算に盛ってあるというふうに御承知願って差しつかえないのではなかろうかというふうに考えております。
  46. 岡良一

    ○岡委員 国内において、スタック等を通じてのアイソトープを使用しておられるところの意見などを総合すると、おおむね、アイソトープの価値というものは高く評価せられておるようでございますので、せっかくアメリカ側の方で門戸を開いてくれたならば、今後は一つ格段にこの方面にも御努力を願いたい。三千万円の予算では、何ほどのこともできないのじゃないかということを心配いたしますが、予算の方については、特に委員長政治力を私は期待いたしたいと思います。
  47. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 あるいは誤解があったかもしれませんが、昨年度輸入いたしました額が三千万円というのでございまして、来年度の予算の説明をいたしたのではございません。予算はもっともっと多いのでございまして、三十一年からは、もっと画期的な活動ができるのではなかろうかというふうに考えております。
  48. 岡良一

    ○岡委員 予算額はどのくらいですか。
  49. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 これはアイソトープばかりではございませんが、各省の予算を全部合せますと、大体一億近くでございます。
  50. 岡良一

    ○岡委員 なお、実は新聞の伝えるところによりますと、こういう記事が出ておりました。これは条約局長においでをいただいて、お答え願った方が妥当ではないかと思ってお願いをいたしたのでありますが、実は、十二月二十九日の毎日新聞の記事であります。これには、「日米技術情報交換協定妥結す」ということになって、軍需生産飛躍的発展かという見出しがあるのであります。その内容は、簡単に申し上げますと、日本側では下田外務省条約局長を初め、外務省、防衛庁、特許庁、米国側バッシン法務官初め在日米国大使館、米極東も関係者らの間で、この日米技術情報交換協定に関する交渉が二十九年から進められておったのであるが、十二月中旬からさらにその話が進んで、二十七日、外務省で行われた合同会議で、最終的に妥結をしたということが新聞に出ております。なお、これに付加して、日本側でも近く閣議決定の上、早ければ一月中旬に協定の正式調印を行なって、国会の承認を得て、発効させたい意向である、こういう記事が出ておるのであります。この事実について、お取扱いの外務省としての経過をお話願いたいと思います。
  51. 河崎一郎

    ○河崎政府委員 ただいまお話の日米間の技術協定、これは原子力関係ではございません。むしろ軍需生産その他の方面の工業についてのアメリカ技術の援助を受けようということでございまして、御指摘のように、昨年の秋ごろから外務省の条約局との間に話は進んでおるのでございます。その後、話はどの程度進んでおりますか、私は実は主管ではございませんので存じておりませんが、ただそういう話は先方から申し出があり、公式の話し合いが進んでおることは、私も承知いたしております。
  52. 岡良一

    ○岡委員 その内容として新聞紙に伝えられている点は、たとえば秘密の特許となっているものについては、両国とも秘密を保持することを条件として情報を交換する、両国の防衛目的のためには、情報の交換を促進する。元来このような協定が結ばれるゆえんのものは、MSA協定第四条に基くMSAの秘密保護法では及ばない兵器の高性能ということから、必然的にこのようにMSA秘密保護法をうんと拡大されるのか、あるいはまた別途な新しい法を起されるのかわかりませんが、そういうことでもって秘密の厳守ということについて、両国の政府が保障を与えながら、科学の情報の交換をはかろう、こういうわけなんです。そこで、今お話を聞けば、原子力は含まれておらないということですが、しかし今日の常識から見て、原子兵器が含まれない高性能の兵器などということは、私は考えられないと思うのです。それからまた原子力に関する兵器が含まれておらないというならば、この協定文において、含まれておらないということがはっきりらたわれておるのであるかどうか、これは局長がおわかりでなければ、担当の条約局長に、またあらためて御出席願って、質問を続けたいと思のでありすが、局長がおわかりならば、御答弁願いたい。
  53. 河崎一郎

    ○河崎政府委員 話し合いは、まだその後そんなに進んでいないと承知いたしております。いずれ具体化いたしましたならば、国会の皆さん方の方に御報告が出る、こと思います。
  54. 岡良一

    ○岡委員 一応外務省で妥結したならば、国会の審議に、正式に付されるでございましょうが、しかしこの問題は、日本科学技術発展ということを念願する当委員会としては、重大な関心を持つもの特にこれが秘密に付されるということになりますと、当然日本の特許法は改正して、やはり秘密特許に関する条章を起してこなければならぬと思うのです。特許庁の長官がおられますが、万一秘密特許についての情報交換協定が成立した場合には、日本の特許法というものは改正をして、秘密特許に関する新しい条章を起さなければならぬと思いますが、その点、いかがでありましょうか。
  55. 井上尚一

    ○井上政府委員 協定の内容につきましては、まだ最終的な決定という段階にまでは到達していないということは、今、外務省の方から御報告願った通りであります。かりにそういう秘密特許という内容を包含した場合にはという前提での御質問ではございますけれども、われわれ特許庁といたしましては、現在の段階においては、いわゆる秘密特許制度というものを、特許法の改正によってやろうという考えはないのでございます。
  56. 岡良一

    ○岡委員 現に新聞に伝うるところによれば、最終的な合同会議に、あなたが出席しておられる。新聞はそう書いてある。いずれにいたしましても、外国のものであろうと、秘密を保持すべき特許というものがあるわけです。秘密を保持すべき発明発見というものが日本一つある。その秘密の保障に日本国の政府が当らなければならないとすれば、どういう形でその秘密の保障というものが与えられるか。
  57. 井上尚一

    ○井上政府委員 協定につきましては、早晩国会の方に正式に提案になると思いますが、一応今日の段階としましては、米国におきまして、特許の出願の内容が秘密になっておるという場合におきまして、もし日本に対してこれと同様の発明につきましての出願があった場合には、これと同様の扱いをしようという点が協定の一応の内容でありますが、そういう日本におきまして出頭の内容を秘密に取り扱うということと、秘密特許制度を設けるということとは、必ずしも同一ではないのであります。そういった点につきまして、アメリカの要求に応じつつ、同時に、日本としましての独自の見解と申しますか、秘密特許というものは、制度としては、今日の段階では設けないというわれわれの見解との間の妥協と申しますか、調和をはかる。そういった点で、従来交渉を続けて参りましたが、これの詳細な内容については、この国会に正式提案の場合において、詳しく申し上げたいということで、今日は御了承願いたいと思います。
  58. 岡良一

    ○岡委員 わかりました。それでは、原子力と関係のあることでお聞きをいたしたいことは、アメリカの秘密特許というものは、アメリカの特許法によると、どういう性質のものを言うのでありますか。たとえばアメリカ原子力法によると、原子力の軍事的にのみ利用され得るような発明、発見は、特許権を与えない。そしてその発明、発見というものは、いわば原子力委員会がこれを掌握しておる。ところが、同様な発見がまた後日あった場合、そして発明発見等について特許を与えるという事態が起ったときには、原子力委員会が掌握しておるところの前段の発明発見というものに対して特許権を与えるんだという優先権を認めておる。こういう場合、新しき発明発見であり、当然特許権を付与するに値するものではあるが、しかし軍事的利用のために秘密を保持する必要があるというときには、特許権を与えないで、原子力委員会がこれを所持しておる。こういう発明、発見というものは、アメリカの特許法の秘密特許のいわばカテゴリーの中に入るのでしょうかどうでしょうか、その点御存じないでしょうか。
  59. 井上尚一

    ○井上政府委員 米国においての現在の扱いについて申しますと、これは権利としての特許権はあくまで設定しない、与えない。この発明の特許の願書につきまして、出願の内容を秘密の扱いにしておる。ですから、あとでこれと同一または類似の申願があった場合には、いわゆる先願、後願の関係で、前者が優先するということになります。段階に応じまして、情勢の推移に応じまして、一旦秘密にしました扱いを随時解除しております。解除になりました場合には、その出現の内容が、正式に特許権、権利としてこれが創設される。こういう方法で米国では従来やっておるようであります。
  60. 岡良一

    ○岡委員 私がお尋ねしておるのは、日米間における科学技術の情報を交換する協定が、すでに関係当局者によって、合同会議において一応結論が出たというが、その協定なるものには、新聞に伝えられるものを見ると、秘密特許という言葉がある。ところが秘密特許というのは、日本にはないわけです。われわれは日本の特許法こそほんとうに科学技術発展させるための特許法であって、秘密特許というようなごときものはもう特許法の精神か、ついってもあるべきものではない、そこまで言い切りたい気持を持っておるわけです。ところが、アメリカには秘密特許というものがある。そうすると、この秘密特許の中に、アメリカ原子力法の百五十三条でしたか、原子力の軍事利用に関する新しき発明発見があった場合に、原子力委員会は、これをみずからが掌握して、特許権を与えないで、秘密のヴェールの中に置くことができる、こういうことが言われておるのです。こういうものは、アメリカ特許法における秘密特許というものの中に入る部類なのか、それは全然別扱いなものなのかということを、この際私は参考までにお聞きしたいのです。
  61. 井上尚一

    ○井上政府委員 一般的にアメリカで言いまするいわゆる秘密特許といいますのは、厳密には、いわゆる特許権として設けまして、そうしてその特許権の内容は秘密であるという、本来の秘密特許ではないというふうにわれわれは了解しております。なお、原子力委員会アメリカ特許権の扱いにつきましては、私、今日正確には今の段階では承知をいたしておりませんので、至急調査をしまして、追って詳しく申し上げたいと思います。
  62. 岡良一

    ○岡委員 この問題も、私ども原子力基本法平和利用という目的にかんがみて、重大な関心を注いでおるのであります。従って、すでに合同会議において一応政府としての結論が出たものであるならば、この際、科学技術の情報交換の協定なるものの中において、いわゆる高性能の兵器とは、原子兵器を含むものであるかどうか、明文において原子兵器が除外されているかどうか伺いたい。この点、せっかく濃縮ウラン協定において機密資料を含まないということをはっきりとらたっておるわけでありますから、わが社会党も、そういう点でこそ百歩を譲って賛成しているのであって、こういう抜け道ができるということは、われわれ賛成ができない。すでに会議を持って関係官庁の責任者が集まって決定されておるのだから、あらためて国会の承認を求め審議をいたしますならば、この事実についての御発表は向差しつかえないものである、当然していただきたい、このように考えます。なお、アメリカの秘密特許というものはいかなるものであるか、それが特許法の第十章の中に何条もありますが、それの特許との関係を特許庁の方でお調べの上、後刻委員会に御報告を願い、さらに私は質問をいたしたいと思うのであります。引き続いて、正力国務大臣にお尋ねをいたしますが、新聞で拝見をいたしますと、いわゆる原子力産業会議、アトミック・インダストリアル・フォーラムというようなものが、最近委員長のおとりなしによって発足したようであります。これはどういう趣旨のものであるか、いかなる性格のものであるかという点を、この際お示し願いたいと思います。
  63. 正力松太郎

    正力国務大臣 原子力産業会議について、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、われわれは、政府として原子力開発研究は行政機関がやっておりますが、さらに民間においても一つ研究をしてもらいたい、こう思いまして——ところが今日、民間のおもなる会社研究室を持ってやっておりますが、これでは力弱いものである、一つ皆が自発的に寄り合って作ってくれぬか、そうしてほんとうの民間の戸を聞きたいと私は提案をいたした。すなわち、先ほど申しました国民が一体となって原子力開発研究をやりたいという趣意からやったのであります。そこで産業界のほか、言論界も入れました。皆に一つなってくれということで、おもなる学界の代表者六十八名に総理官邸へ集まってもらいました。各界の代表者がこんなに集まったのは、今回が初めてであります。これはいずれも快く、それではわれわれの力によって作ろう、そうしてわれわれの意見政府に提言しよう、こういうことになったのであります。
  64. 岡良一

    ○岡委員 実は、原子力委員会発足以来、特に委員長の御構想というものをわれわれ新聞で拝見いたしておりますと、この産業会議は言語界あるいけまた学者等も村名か加えられるかもしれない。しかし、大体そのイニシアチブをとるものは、先ほど委員長が世論として言われた、何でもかんでも早く原子力発電をやれという型を踏みやしないかという心配を私は持つわけであります。一の点、絶対そういうことはないのだ。——もちろん関連産業等が、全部日本原子力行政に協力するということは必要だと思うのです。たとえば、関西電力が別な実験原子炉を買う、またどこかの会社が別な実験原子炉を買うということでは、原子力行政というものが、乏しい予算の中で支離滅裂の状態になるから、そういう意味の調整をはかって、日本原子力発展に貢献をしよう、こういうような行き方にとどまるものであるならば、われわれはこれを了とするのある。しかし、この規約、鋼領を見ると、問に対し意見を具申すると、言っている。さていよいよ会議が開かれた、その五年以内に原子力発電をやれという声が上る。こうしてまじめな学者意見を無視して、委員長はこれは世論の要求であるからというので、原子力発電に独走をせられるということになると、日本原子力行政というものはゆがめられてくるわけです。この点を私どもは懸念しておるのだが、断じてそういうことはないという保証をこの機会に与えてもらいたい。
  65. 正力松太郎

    正力国務大臣 さっきから独走と言っておられるが、私は独走ということはできません。大衆と一緒に進まなければならぬ、それを私はモットーとしておるのでございますから、決して独走の心配はありません。これからまた、いたずらに民衆の声だ、声だと言いません。そしてあの産業会議学者も加わるのでありまして、さっき申したように、原子力基礎学を研究すると同時に、応用も進める。これは並行していくのでありますから、断じて一方的に偏もすることはあり参ません。
  66. 岡良一

    ○岡委員 そこであの規約として伝えられるものによれば、委員会との間に、いわば諮問に答えて意見を具申するという働きができることになっておる。そこで、私、寡聞にしてよく任じませんが、日本の学術会議は、日本原子力導入の問題が出て以来、常にいろいろと心配をして意見を出してくれております。学術会議原子力委員会との関係は、やはり諮問に答えて、意見を具申するというような規約というか、そういうものは学術会議の中にちゃんとあるのかどうか、この点を参考のために伺いたい。
  67. 正力松太郎

    正力国務大臣 学術会議政府が設けたもので、政府の諮問機関であります。それから、産業会議民間のものであります。ただ政府が、民間にやったらどうかと、言っただけでありまして、何もあれには干渉いたしません。ただし、両方の声は努めて聞きます。
  68. 岡良一

    ○岡委員 学術会議政府の機関ですか。私どもは、学術会議議員に対して、一票の権利を持って公選しておるのです。これは日本の学術関係における国会的なものであって、別に政府の機関じゃないのじゃないですか。これは結局国会が国の予算を出していると同じことで、きわめて民主的な組織のもので、いわゆる官庁機関じゃないと思う。しかしそれはさまつなことですからございます。どうか先ほど申しましたように、御苦労ではありましょうが、学術会議意見、また産業会議意見、 の間の調整をとって——重ねて今御確言をいただいて安堵いたしましたが、独走をなされないようにお願いいたしたいと存じます。  次にお尋ねいたしたいのですが、せっかく、委員長が熱願しておられましたアメリカのアジア原子力センターも、委員長の期待と違って、マニラに置かれることになりました。ところが、先般新聞で伝えられるとこらによると、インドのネール首相かと思いますが、ネール首札の意向を代表した人かもしれません、エカフェの政策審議委員会において、アジアにおける原子力の共同開発のために、この七月ごろにアジアにおける原子力会議を開きたい、こういう意向が表明されておりました。これはきわめて有意義なことだと思います。きん然これに参加されることと私はじておりますが、そういう呼びかけがあったときには、御参加なさいますか。
  69. 正力松太郎

    正力国務大臣 そういうことがありますればアジア共同開発のために、むろん喜んで参加いたします。  それから、これは言葉を返すようですが、アジアセンターを日本に持ってこようと委員長考えておったけれども、ほかへ取られてしまったではないかと、言われるが、あれは、何しろこちらには何も準備ができなかったので、その選に漏れたのですから、仕方がないことと思います。
  70. 岡良一

    ○岡委員 それから、あの声明の末尾に、日本はアジアにおける原子力問題についての中心となり得るという誇らかな表現が実はありました。私はあれを読んでしみじみ思ったことですが、日本が中心になるという意味は、日本に、アメリカからお金で買つた原子炉がたくさんあるということではないと思うのです。それはやはり、日本学者が、原子力研究段階においても、あるいはまた開発段階においても、日本自主的な努力が集積されて、そこにアジアの原子力問題に関する指導的地位というものがまた確立されるのではないかと思うのです。そういう点、私どもは全くそういう御趣旨のものであろうと思ったのでありますが、委員長声明に関連する問題でありますから、重ねて所信を聞きたい。
  71. 正力松太郎

    正力国務大臣 全くお話の通りであります。日本は、原子力にする基礎学というものは東洋で一番進んでおります。先ほども申し上げました通り、欧米に比較しても、日本学者は、基礎学、理論物理においては負けておりません。それでありますから、この力があればこそ、東洋のセンターになれる。今でも、形はマニラにとられても、事実上日本はセンターになるつもりでおりますし、またなれると思っております。
  72. 岡良一

    ○岡委員 先ほど資料として要求をいたしましたものを、ぜひとも次の委員会に御提出を願いたいと思います。その上で、なお個々の原子力行政に関する基本的な点について、私は委員長その他にも二、三お尋ねをいたしたいと思いますが、一応きょうの質問は、この程度で打ち切らせていただきます。
  73. 有田喜一

    有田委員長 赤澤正道君。
  74. 赤澤正道

    赤澤委員 きょうは、大臣の独走々々といって、だいぶ戒められておられるようですけれども、私はむしろ考えようによっては、こういう問題にブレーキばかりかけておっては、とうてい世界の水準に追いつけないと思う。ただ、いかにあなたが独走なさるうとしても、国会があります以上は、そう勝手なことはさせないはずでありますから、独走するくらいの意気込みでやっていただきたいと思います。  今原子力技術の導入の問題だとかあるいは施設、原料の輸入あるいは借り入れ等についてのいろいろな議論が進行中でありますけれども、一方、国内に非常に優秀な原料が埋蔵されてある事実があるようでございます。この間、中曽根君からもらいましたパンフレットを見ましても、これはフランスの例がとってありますが、約二十五億円の金をつぎ込んだために、非常なる産出を見まして、貧鉱であったフランスは、今日すでにスカンジナヴィアその他の国に輸出しておるのであります、というふうなことが紹介をされておるのです。日本は非常におくれておりますから、今原鉱が見つかったらといって、それがすぐに製錬されるべき性質のものではないかもわからない。しかしながら、かといってこれを放置しておくべき性質のものでもない。また近く原子燃料公社法案が出るようでありますから、議論が少し先知るかもしれませんけれども、今、電力についての五カ年計画について大臣もちょっと触れられたのでございますが、こういう原子力開発の今後の見通しについて事業もくろみと申しますか、プランのうちで、日本の国内の原鉱なるものはどういう地位を占めるものであるか、これは大臣でなくても、どなたでも、技術方面を担当なさっていらっしやる方でけっこうですから、ちょっと教えていただきたいのです。
  75. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 少しわき道にそれるかもしれませんが、炉をただ輸入して、入れればよろしいという考えを持っているのではなかろうかというお話が先ほど来あったのでありますが、実は決してそうではないのであります。一番主点を置いておりますのは、国内のウラン資源なりあるいはトリウム資源なり、そういう基礎になる資源関係が、一体日本はどうであるかという点であります。それが明確にわかりませんと、今後の原子発電のタイプにいたしましてもいろいろ問題を生じますので、先ほど来お話がございました人員の養成の問題と資源の調査の問題が、今年度の最大の眼目になっており、ます。そこで、ウラニウムがありやなしや、あるいはトリウムの状況はどうで、わずかの金ではございましたが、抜き打ち的な調査を若干進めたのでございますが、ただいまのところでは、新聞等で御承知通り、鳥取県の一部、山口県の一部で相当有望な鉱脈等が見つかっております。今後のことについてただいま考えておりますのは、地質調査所の方は、主として概況調査、それから燃料公社の方は精密調査、こういうふうに分けまして、両方とも相当量の予算を三十一年度は盛ってございます。これを中心といたしまして、あるいは空中からの調査等、二年かそこらで日本全部の調査を終えまして、そうしてだんだん濃度を縮めまして、一番有望なところにこの焦点を深めながら、実際の採掘あるいは選鉱、製錬等を進めていくというふうな段階になっております。従いまして、先ほどフランスの例にもございましたように、初め、フランス等では、国内にウラン資源はないものだと考えておりましたのが、何年か国の予算で、実に丹念な調査をいたしました結果、自国で必要なウラン資源は、ほとんど自国でまかなえるという段階にただいま達しておるようなわけでございます。から、日本におきましても、いろいろまだ未分野の点はございますが、先ほど申しましたような力の入れようによって精密な調査を進めていきますならば、将来をトするだけの成果が果して上るかどうかは別といたしましても、相当程度の成果は期待できるのではなかろうかと考えておるのでございます。従いまして、ただいまの段階では、すぐそれでは有望か有望じゃないかという御質問に対する答えはまだちょっと早いのでございまして、もう少し精密な調査をした上で、御回答いたしたいと考えております。
  76. 赤澤正道

    赤澤委員 話に聞きますと、地質調査所で大体の調査をやりますのに、ヘリコプターだとかジープなどを使ってやっても二、三年かかるということを聞いておりますが、一体全国的にこの分布状態を見て、一番優秀な鉱山を見つけてから、この問題に着手されるのか、それとも団際級の品位のものがあったということなら、まずこの開発に着手されるのか、どういうお気持であるのか、どなたでもけっこうですか……。
  77. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 ただいまのところでは、分けて考えませんで、並行して進めたいと考えております。従いましてまだ未分野でございますから、調査をまだしてないから、ここはやらないというのではなくて、概況調査はあくま、でも全国にわたりましてこれを進め、その間有望なところが見つかりますれば、燃料公社の方でどしどし開発を進めていくというふうな、並行的な意味で進めたい。しかしながら、精密な検査あるいは採鉱、製錬となりますと、どうしてもよほど有望なところで、しかも幾カ所もというわけにはなかなか参りませんので、有望なところが見つかり次第、そこに一種の定着をいたしまして、そこの開発をまず第段階に進めていくというふうな進め方をただいま考えております。
  78. 赤澤正道

    赤澤委員 こういう点については、大いに大臣も独走していただきたいと思うのです。大臣は、単に役人出身ということでなく、事業家出身であってこういった点の勘は、あなたは非常にいいと思って、私、大へん期待もしておるわけであります。ただ先ほどお話を聞けば、原子力そのものが、何かしらん国民誤解をされて不安を与ているから、世論を指導するのがおれの役だというふうなことを言っておられるようでありますけれども、単にそういう消極的なことでなくして、もっとぐんぐん推し進めていただきたい。私もその優秀だと折紙を一応つけられたウラン鉱のあります近所に、実はおるわけでございます。ところがその有望なウラン鉱は、なお雑草の下に太古の姿のまま寝ておるわけなんです。私、外国の事情をつまびらかにいたしませんけれども、ただいま中曽根君の資料から申し上げた一点を取り上げてみましても、フランスでは、こういう鉱物は、すでに国外に輸出しておるということは、私は見のがせないと思う。もちろん、将来を期してこういうものはセーヴしておくべきものかもわかりませんけれども、しかしこれが非常に大きな埋蔵量があるということならば、場合によっては、濃縮ウラン等を外国から入れます場合においては、引きかえの私はしろうとですからわかりませんけれども、何らかに役立つこともあり得るのではないか。私は地質調査所の方でありましたか、聞いてみましたら、実は金がないから調査を進めたくとも進められないのだという悲痛な話でありました。しかし各位の努力によって、明年度は相当予算がついておるようですが、たとえば、京都大学あたりから、まずこの鉱物を実験に使いたいから、一トンばかり送ってくれと言われても、その二トンばかりの鉱石すら送り得ない状態であるということは、はなはだ残念なことです。しかもこういった議論が、単に国会で、何と申しますか、高邁なる議論に終始しております一方、現にこういう不幸が国内に出ておって、そうしてどうにも手のつけようがない。国のこれに対する確固たる方針がきまらぬ際ですから事態やむを得ないという点もありますけれども、実態といたしましては、鉱山師がいわゆる山勘でもって右往左往して手がつけられないという実態になっておるのでございます。ですから、こういう点について、大臣としてはぜひ思い切った施策を行われるように熱望いたします。いずれ近く原子燃料公社法案も出るようでございますから、私どもといたしましても、いろいろ具体的に検討を進めてみたいと思いますので、そのときに譲りたいと思います。
  79. 正力松太郎

    正力国務大臣 ただいまの御注意、まことにありがたくお礼を申し上げます。ただ、今までは予算がなかったのでありますが、今年三十一年度は、おかげをもってだいぶとれましたから必ず御趣旨に沿うようにいたします。どうぞよろしくお願いいたします。
  80. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)政府委員 ただいまの赤澤委員のウラン鉱に関する御質疑でございますが、これは、御承知通り昭和十九年から地質調査所にウラン鉱の探査費をつけまして、早急に原子力平和利用に処したいという念願でやつておったのでございますが、何分新しい鉱床の調査なものでございますから、機械その他の設備等も今日までは不十分で、なかなか思うように進展しておらなかったのであります。ところが、昨年、御承知通り、岡山地区に初めて飛行機を飛ばしまして、あの地方に相当シンチレーション・カウンターに感応するものがあるというので、これは日本でも大がかりな調査をしなければいけないのではないかという鉱床が生まれましたと同時に、赤澤委員の近くに優秀なるウラン鉱が発見された。これに対しましては、私も当時一代議士といたしまして、地質調査所を督励して、早急にその実態を把握するように懇願をいたしたのでございますが、お話のように、当時の予算面はきわめて貧弱でございまして、鉱床を把握いたしましても、ボーリングによってその実態を把握することができないという、まことに残念な状態にあったのでございます。今回は、地質調査所に一億円の予算がついて、そういうものにさらに精密な調査を加えられる段階になったと思うのであります。同時に、先ほど佐々木局長からもお話になりました構想といたしましては、早急に日本全国の概査をやっていきたい。またウラン鉱床の調査方法はいろいろあるようでございます。飛行機によってやるのもいいし、またジープを走らせてやるのもいいし、また温泉水からこれを見つけていくのもいいし、いろいろ方法はあるようでございますが、とにかく最も迅速に行える方法によって、花岡岩地帯の調査をやるとか、あるいはフランスのように、従来からここは重点的にウラン鉱があると目せられたところに焦点を向けるとか、いろいろな考え方があるようでございます。地質調査所で聞いてみますと、鳥取県のウラン鉱床が、とにかく世界の水準に達する優秀なウラン鉱であるということは、一応の断定がついておるようでありますから、地質調査所並びに今度設立いたされます燃料公社ともに力をあわせて、その実態を見きわめてみたい、そういうように考えておる次第であります。
  81. 有田喜一

  82. 志村茂治

    志村委員 この委員会に、原子力開発関係の法案がこの後とも五、六種類出る予定になっておりますが、いつそれらは提出されるか、その法案提出のスケジュールをここで御発表願いたいと思います。
  83. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 ただいままでのところ、原子力研究所等に関しましては、御承知のように合同委員方面ともお話し合いをいたしましたし、原子力委員会といたしましても、先週の金曜日に、要綱に関しましては正式に御決定をいただきましたので、それを法案形式に変え、まして、きょうから各行との折衝に移っております。従いまして、特に税の減免の問題、あるいは財団法人原子力研究所との関連の問題等、いろいろ法律的には厄介な問題が残っておりますが、できるだけ早く各省との折衝を終えまして、そうして法制局の審議を経て、国会に提出いたしたいと思います。その時期は、今のところでは、大体今月の下旬というふうに見ておりますが、少くとも今月一ぱいには、万難を排して提出をしたいというような心組みで作業をしております。  それから、原子力燃料資源促進法と燃料公社の二法案に関しましては、促進法の力は、これも原子力委員会の方で御審議をいただきまして、二、三の点に関する委員会の御決定をいただきまして、あすの午前九時からということに予定しておりますが、合同委員会の皆様とその点お打ち合せの上、これもお話がつきますれば、至急国会に提出したいというふうに考えておるのでございます。ただ、この法案に関しましては、先週初めの閣議で、提案の形式は、内閣と通産省と共同提案するということになつておりますが、事務の扱いといたしましては、通産省が主になって進めていくというふうにきまってございまするので、そういうふうな手順で、こちらの方でも相協力しながらこれも今月中には出せるものと考えております。  もう一つの燃料公社の方でございますが、これに関しましては、原子力委員会の皆様に慎重に御審議をいただきまして、これもやはり二、三の重要な点で、いろいろ問題がございます。そこで、これに関しましても、あすの午前に、合同委員会の皆様と御協議をいただきまして、そうして両者意見が疎通いたしましたならば、早急に各省との検討に移りまして、これも今月の末までには、ぜひ一つ国会の方へ提出したいというふうな心組みでございます。  なお、それ以外に、放射線障害予防法、この法律に関しましては、実はただいま審議を進めておるのでありますが、何しろ非常に省令等が広範にまたがっておる法案でございまして、技術的にも非常に多岐であります。従って、その省令等の準備ができておるかと申しますと、ただいまそこまで準備が進んでおりません。従って、法制局等で審議をいたします際にも、法案に附帯したいろいろな資料あるいは省令等の準備が整わないままに出すということは、出す側といたしましても、行政手続上非常に不備でございまするので、この方はもう少し検討を進めてみたいと思いまして、この方の法案はいつ出せるかという点に関しまして、ただいまのところ、まだはっきりした見通しを持っており、ません。  なお、管理法と申しますか、基本法に、たとえば原子炉の管理等に関しては別法にこれをゆだねるというのがございまするが、その管理法規に関しましても、ただいまのところまだ検討中でございまして、見通しはついておりません。  従いまして、はっきり申し上げられますのは、研究所法と資源の新規調査の促進法とそれから燃料公社、この三つはおそらく今月中には政府提出法案として出せるのじゃないか、こういうふうに考えております。
  84. 志村茂治

    志村委員 大体、日本原子力開発は、五年間にやるということは、正力大臣の構想でもありますし、また世界の情勢からみて、少くとも一九六〇年までには、日本は動力を作りたいというのがわれわれの考えでもあるのでありまして、それが法案等の整備のために時日がおくれるということは、まことに残念だと思っております。そしなぜ法律提出がおくれれるのか、このことにつきましては、私たちは、当局の方から、いかにも係官が少な過ぎるのだと聞き、これはわれわれとしても責任を感ずるのでありますが、これを何とかして人間を増員する方法はないものか、ほかのれから借りてくる方法はないものかということも考えるわけです。せっかく正力大臣の五カ年計画という有効な方法もありますから、これを実現するためには、法案を至急に整備するために、それらの措置を講じて、おそらく放射線障害防止法などは今回出ないだろう、あるいは原子力管理法も今国会には出ないだろうというようなことではなくしてできるだけの手段を尽して、これだけの関係法案全部を今国会に提出するように御努力願いたいと私は考えております。これは私の希望として申し上げておきます。  それから、続けまして、実はこの原子力開発につきまして、一応総合部会等におきまして、原子炉築造五カ年計画というものができたわけであります。この計画通り進みますならば、日本原子力の自力開発というものは、一応の目標は立ったということで、喜んでおった次第でございます。その後、各方面、特に科学技術者の人々の話を聞くと、このような計画はとうてい実行できない、最も悪く考える人は、十五年かかるだろう、こういうことを言っておる人もあるような次第であります。つきましては、もう一そうあの築造計画というものをお考えになると同時に、また政府にきましても、あれを実行できるように、このたびの予算折衝では苦労いたしましたが、ああいうことがないように、実行でしるように御努力願いたいと思うのであえいます。と同時に、またもう一つ考えられますことは、これは有力な人の発言でございますが、日本動力炉を作るうといっても、いまだ日本では路電機が生産できないのだ、このような状態で、動力炉を作ろうとして果して作れるのか、やるとするならば、動力炉を作ると同時に、発電機の製作ということについても、国家がある程度の補助を与えるなり、この生産を促進する方途を講じなければならないのだということをわれておるのであります。この点はいかがでしょうか。
  85. 正力松太郎

    正力国務大臣 ただいまの御注意はまことにありがたい御注意でありまして今のお話の通りに私どももやりたいと思っておりますから、何分の御支援をお願いいたし、ます。
  86. 志村茂治

    志村委員 五カ年以内にこれを実現するためには、たとえば、発電機の製造工場に対しましての補助金その他の方法よって、これを促進していただきたい、こういうことであります。それにつきまして、最近一つのわれわれの心配の種がふえて参ったということは、原子力産業会議というものができました。それが正力大臣の構想のように進んでいかれるならばまことにけっこうだと私は考えておるのでありますが、実は、日本の産業界というのは、非常な後進件を持っておる。明治維新当時から外国の生産用具を輸入してきて、これで生産をするというようことが長年積み重なって、一つの習慣になっておると思います。それで、産業界の人々は、五年、十年でできるかでき得ないか、先のことを目標としている研究などに金をつぎ込むよりも、できておるものを買ってきて、あすからもうけようという考えが強いのでございましてここが、アメリカイギリスの財界人と日本の財界人との根本的に考えが違うところであると私は考えるのでございます。そこで、日本動力炉が思うようにできない、なかなか進展しないというような場合には、財界で、それらの製作を待たずに、アメリカから動力炉輸入しようということが計画されるのじゃないかというふうに考えております。もちろん計画を幾ら進めても、できいのなれば、輸入するのはやむを得ぬだろうと思いますが、しかしまだ研究中である、可能性を持っておるというときに、その鼻っ柱をたたくように、財界の人がアメリカから原子炉を買ってくるということについては、大きな警戒をしなければならぬと思います。もちろん私たちは、アメリカから入れることを絶対反対してはおりません。一つのサンプルを入れて、これでもって日本で作るということも一つ方法だと思いますが、不幸にして、今アメリカで作っております動力炉の構想は、濃縮ウランでやっておるのであります。濃縮ウランによって日本動力炉開発をするということで、果して将来日本の産業が独立できるかということについては、大きな危惧を持っております。この濃縮ウランの動力を中心としておるアメリカ動力炉日本へ入れるということについては、一つ禁止していただきたい。こう思っておるのでありますが、大臣はそのように取り計らっていただけるかどうか。そうして、財界の人たちが、政府の許可もなくて、みずから進んでアメリカから動力炉を入れようという場合、どういう措置をとられようとしておるか、その点をお聞かせ願いたい。
  87. 正力松太郎

    正力国務大臣 財界が、政府の許可なくして入れるということはさせません。そんなことは断じてやらせません。しかし財界の方面でも、今ただ買ってこようというのじゃなく、研究しようというので、アメリカなりフランス、イギリスに留学生をやるということに考えておるようであります。先ほど岡委員からお話の通り、やはり研究と応用と、財界でも並行してやるように聞いております。なおこっちから注意いたします。
  88. 志村茂治

    志村委員 これは意見でございますが、日本では、原子力関係のいろいろの点について、確かに立ちおくれております。海外が非常に荷い水準にあるときに、日本がゼロから出発する場合には、技術導入もいいでしょう。また資材を持ってくるのもいいでしょう。しかし、研究所ができ、研究所みずから作ろうとするものを、外国から入れるということだけは、ぜひ禁止してもらいたいというように考えておりす。  それから次に、最近聞きます言葉に、原子力研究所の資金につきましては、われわれは、国家資金一本というふうに考えておったのでありますが、しかし、その後のいろいろな情勢から見て、いろいろな条件もありまして、民間資金もこれに入れるということになったのであります。その考え方の裏に、やはり財界の人たちが、これに協力するような態度をとらなかった場合には、財界は、あるいは従来の習慣のままの方法で、外国から動力炉輸入してくるというようなことがあるかもしれない。それを防ぐ方法として、民問資金を入れたのだというふうなことを聞いておりますが、その点はどうでしょうか、間違いありませんか。
  89. 正力松太郎

    正力国務大臣 今度、民間資金を入れるといいますが、株式ではなく、財源的な意味、国家仕事に協力するという意味でありますが、決してそれによって権利をとるというのではありません。人事その他むろん政府がやります。いわば日本銀行のような式になると思います。決して彼らに与えません。しかし、なお注意はいたします。
  90. 志村茂治

    志村委員 それでは、財界の人たちが、自分考え方で、日本研究の過程といいますか、進み方、そういうことを無視して外国から動力炉を入れるというようなことがないように、ということは、原子力研究所の性格を、民間資金をも入れることによってある程度抑制するということではなくして、先ほど正方大臣の言われたように、断じて入れさせないという、こういうふうな権力一方でやられるお考えであるかどうか、それをお聞かせ願いたいと思います。
  91. 正力松太郎

    正力国務大臣 わかりましたから……。
  92. 志村茂治

    志村委員 それでは、引き続いてお尋ねいたします。あの原子炉の築造計画というものにつきましても、いろいろな疑惑があるということであって、なおこれはいろいろな法律関係、あるいはその後の情勢の変化、あるいけ技術的な理由等によりまして、この築造計画を変更される意思があるのかどうか、この点をお聞きしたい。
  93. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 かわってお答えいたします。  築造計画と申しますのは、この前に作りました五カ年計画の意味というふうに承知いたしますが、これに関しすしては、実は先ほども御説明申し上げましたように正規のと申しますか、法律に基きましたいろいろ権限を持つた、権威を持った委員会というものができたのは一月四日以降でございましてそれ以前に実は作ったものでございます。従いまして、当然その後の情勢等も加味いたしまして、あの五カ年計画というものを根本的に再検討する必要はあろうかと思います。委員の皆様からも、そういう要望が非常に強うございまして、あのまま今後とも金科玉条として持っていくのではなしに、新しい委員の皆様から、十分御検計いただきまして、修正するものがあれば修正したいというふうに考えております。
  94. 志村茂治

    志村委員 修正するものがあれば修正したいというふうな、抽象的な考え方が出るに至っては、何か具体的な問題があったのだろうと思います。それら、の点がもし発表できたら、発表していただきたいと思います。
  95. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 ただいまのところは、あの計画自体のどこが悪いというところまでは、実は検討は進んでおりません。ただお話のように、原料関係、燃料関係あるいは人員の養成等、あの計画を達成する上におきまして、いろいろな諸条件がございますので、そういう点等は、十分というところまで実は参っておらなかったのでございます。今後研究所等も充実いたしまして、具体的に、問題が客観的に進んでいきました際には、あるいは主観的に計画いたしましたものと若干時間的なラックが出てくるのではないかという感じがいたしますので、そういう点をえ合せて、進めていきたいというふうな意味に御了解いただきたいと思います。
  96. 志村茂治

    志村委員 五カ年計画を遂行するためには、技術的、計画的には検討すべき点があるが、しかし気構えとしては、五カ年間に必ず遂行する。しかもそれが外国技術情報、あるいは資材、燃料、あるいは直接留学生等によって技術を獲得するという方法であって、でき上った原子炉は、国産一号炉以後は日本のものにせられるという決意をお聞かせいただきまして、これで原子力基本法に盛られた原子力開発は、日本が自発的に行う、この目標は達せられる、また少くともその意気込みだけはそうであるということは確認できたことを私は喜ぶものであります。  次に、原子力開発につきまして、基本法にうたっております民主という問題であります。この問題につきましては、私どもは、二本の柱を立てまして、国会の中には合同委員会、政府内部におきましては原子力委員会ということに決定いたしておるのであります。この原子力委員会に対するわれわれの構想も、政府の事情によりまして、決定機関ではなくして、内閣総理大臣がその決定を尊重しなければならないという、諮問機関と決定機関との中間に置かれるという結果になったのであります。しかしわれわれの趣旨とするところ、また原子力開発するためにはどうしても民主的にやらなければならない。そのための第一の態勢として、われわれは、与党野党とも超党派でやっていくという大きな決意をして、またそのような姿で今まで進んでおるのであります。それにつきましても今、行政府内において最も重要な地位を占めております、民主的に運営をしなければならないという目標を具体的に実現してもらう機関としてのこの原子力委員会に、私たちは非常に大きな期待をかけているものであります。従ってこの原子力委員会の運営それ自体が、民主的にならなければならないと私たちは考えておるのであります。その場合に——最初の歴史からいって申しわけないのでありますが、私たちは初め原子力委員会委員長の選定に当りましては、これはやはり与党野党という対立があってはならないのであるから、大臣委員長になるということにしては困ると言ったのでありますが、しかし行政事務上、大臣委員長になる方が適当であろうということで、われわれはそれを納得して、そのように決定いたしたわけであります。そういたしますと、この委員会の運営においては、各委員とも権利は平等であって、委員長の採決というようなことはあり得ない。またほかの合同委員の人たちの説明にもあったのですが、委員長はそのときの会議の座長の立場であって、いわゆる諮問委員会等の委員長立場では決してないということをわれわれは聞かされ、またそれで納得したことになったのであります。正力委員長はそのような考えであられるのかどうか、この点をお聞かせ願いたいと思います。
  97. 正力松太郎

    正力国務大臣 国務大臣として委員長になっておりますので、なるたけ御趣旨のようにしたいと思います。
  98. 志村茂治

    志村委員 ご趣旨の通りにしたいと思うとおっしゃれば、何も異議を申し上げるようなことはないのでありますが、われわれが考えているのは、そういう趣旨でございますから、同じことを繰り返しますが、ぜひともそのように願いたいと考えております。  次に、原子力局の問題であります。私たちは、原子力開発に関する一切の政策立案というものは、すべて原子力委員会がやるべきであるというふうに決定いたしたのでありますが、しかし実際問題として、一切のことを原子力委員会でやることは困難であろう。従ってこれが原子力局にまかされる場合も多いであろうが、それらは常に原子力委員会の委託によってこれを行うものなのだというふうにわれわれは解釈しておる。もちろん政策の立案と事務との間には違いがありましょうが、その間をはっきり区別しておいていただきたいと思うのです。局長から御答弁願います。
  99. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 私どもは、法律に規定されます法文上の解釈並びに立案に当りましての立法精神と申しますか、この二つを尊重して進むのが至当かと考えております。いわゆる委員会が最高の立案機関であるといたしますれば、事務局の方はと申しますか、原子力局の方は、その命を体しまして、忠実に実施するという実施機関というふうに解釈して、ただいまのところは運営しております。従いまして、法的な性格そのもののみにとらわれないで、法に規定されました精神をあくまでも生かしまして、少しでも摩擦のないように、円満にいくようにという心組みで今後とも進めてまいりたいと考えております。
  100. 志村茂治

    志村委員 よくわかりました。  次に、予算の問題でありますが、今度の予算折衝に当りまして、十六億円ですか、あれだけの政府の債務負担行為ということになっておるのであります。債務負担行為になりますと、一つ一つの資金を獲得する場合に、一々実行予算で大蔵省の承認を得なければならぬということになりますと、いわゆる研究というものの性格から見て、従来の国家事業とは、本質的に性格が違っております。予定され得ないものを研究するのでありますから、実行予算の獲得上いろいろめんどうな問題が起ると思うのでありますが、一つ一つ折衝するということになると時日もかかり、やがてこれが研究のおくれる大きな原因ともなると思うのてあります。私は大蔵大臣出席を願ってこの点を確かめたかったのでありますが、今までの債務負担行為のように、一件一件その実行予算について大蔵官僚と折衝しなければならぬことになるのかどうか。なるとすれば、これをどういうふうに打開されていくのか、この点を聞きたいのであります。
  101. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 お説のように、一件一件の査定ではなしに、四半期あるいけ半年等に限りましてある程度内容を吟味していただくのはもちろんでありますが、包括的な許可をいただければ、これに越したことはございません。しかし、問題は、国家予算の問題でございますので、どうしても、審議の過程におきまして、一件々々詳細に大蔵省としては検査をいたしまして、その結果、大丈夫だというところで承認を与えるという従来のやり方を、早急にこの際曲げるわけにはなかなか参らぬのではなかろうかと考えております。従いまして、あくまでもそういうかたい建前をとっていくことはけっこうでございますが、しかしおのずからその間、運営の妙味というものもございましょうから、今後折衝いたしまして、問題は、なるべく早く許可してもらいたいということになるのであります。詳細に検存することを拒否することは、財政に対する冒涜でもございまするし、詳細な検査をすることは当然でありますが、これを一日も早く許可していただくというような時間的な進め方の問題に対しましては、今後とも十分話を進めまして、こちらでも早急に準備いたしますし、向うでも万難を排してほかのものよりは優先的にと申しては語弊がありますが、早く審議を進めていただくような方法をとっていきたいという考えございます。
  102. 志村茂治

    志村委員 次に、今、問題になっております原子炉研究所の設置個所の問題であります。これは、私、自分のことにもかかりますので避けたいと思っております。しかし、今、土地選定委員の方からその報告書が来ているそうですが、それをわれわれ委員に示していただけるかどうか、もしできたらその資料を渡していただきたい、資料を要求いたしておきます。  それからもう一つ、それについてお聞きしたいことは、土地選定を決定するのは事務であるのか政策であるのか、もちろん政策とは考えられませんが非常に大きな問題であり、研究所は、まずスタートするときには、最も適当な土地にこれを設置することはどうしても避けられない重要な問題であると思いますが、これを事務として片づけられるのか、あるいは原子力委員会にかけて、その決定によっておやりになるのか、その点を一つお聞きしたい。
  103. 正力松太郎

    正力国務大臣 お答えいたします。  その前に、先ほどの予算の問題についてお答えいたします。それは大蔵大臣と私の間に約束もあります。額において変らなければ、そのあとのこまかい、とはある程度の自由を認める、こうなっておりますから、それは御安心を願います。  それから今、土地の選定の問題についお話がありましたが、これは重大なことでありますから、慎重にしております。そして、これはやはり事務の問題、許可の問題であります。そうでありますが、一応原子力委員会意見も聞きますが、決定するのは事務で、行政事項でありますから、原子力局の方で決定いたします。これは慎重にやります。
  104. 志村茂治

    志村委員 ぜひ慎重にしていただきたいと思うのであります。その許可というのは事務だろうと思うのですが、そこで私は、それを許可するかしないかということについては、やはり原子力委員会の意向を尊重していただきたいと思うのです。この点いかがでしょうか。
  105. 正力松太郎

    正力国務大臣 むろん原子力委員会に諮問します。その意見もできるだけ尊重もいたします。
  106. 志村茂治

    志村委員 これで終ります。
  107. 有田喜一

    有田委員長 それでは、本日の質疑はこの程度にいたし、次会は、明後十五日、水曜日に引き続き行いたいと思います。     —————————————
  108. 有田喜一

    有田委員長 なお、この際お諮りいたします。科学技術振興立場より、蛋白資源クロレラに関し、東京大学教授田宮博君を参考人とし、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  109. 有田喜一

    有田委員長 御異議がなければ、さよう決定いたします。  なお、参考人よりの意見聴取は、やはり明後日の、十五日、水曜日、午後一昨より行いたいと存じますから、さよう、御了承願います。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十分散会