○
平山参考人 私は
国際観光協会副
会長また
全日本観光連盟の副
会長もいたしております。本日は
観光事業に関しましてお
招きをいただきまして、むしろ私らの方から
皆様方に
お話を申し上げたいことはたくさんあるのでございまして、お
招きをいただきましたことはまことにありがたいことでございまして、厚くお礼を申し上げます。
御書面によりますと、
民間側から見ました
観光行政の
あり方、それから
外人観光客用ホテル施設の
現状、それから
国鉄推薦旅館及び
公給領収証の問題ということになっておりますが、これらの問題につきまして私の
意見を率直に申し上げたいと存じます。
まず一番初めの
民間側から見ました
観光行政の
あり方でございますが、私は
終戦後
運輸次官をやめましてから、もっぱら
観光関係の
仕事に専念をいたして参ったわけでございますが、その間におきまして
考えましたこと等を、
運輸省というような立場を離れまして、全くフランクに
考えまして、今後
観光行政をどういうふうにしたらいいかという問題について申し上げたいと存ずるのでございます。一言にして結論的に申し上げますると、
議会におきまして、
議員の
皆様方その他におきまして、もう少し
観光事業の
重要性を認識していただいて、大きくこの問題を取り上げていただきたいということが、私の率直なる
意見なのでございます。私なぜそういうことを申し上げますかと申しますと、最近におきまして私が
外国の雑誌で見ましたものに特に印象づけられましたものが
二つございますが、その
一つは、昨年の十月ごろに
ニュース・
ウィークに出ました
日本の
観光事業という
一文であります。それからもう
一つは、
皆様ごらんになったかと思いますが、ことしの一月に
読売新聞に大きく取り上げられました
不評判な
日本の
観光事業という
一文、これは
ドイツの新聞に出ましたものの翻訳でございます。この
二つを私特に強く印象づけられたのでございますが、ことに
ニュース・
ウィークに書いてありますのには、いろいろと
日本の
観光事業の
不評判な点が書いてあるのでありますが、
日本の
観光客が十万人にふえた、しかしこの十万人というのは、イーヴン・リットル・
レバノン、一
小国レバノンの
観光客よりもっと小さい数である、
レバノンでも十五万人からの
観光客があるが、
日本は八万人とか十万人とかいっておるが、これは
レバノンよりも少い
人間なんだということが書いてございます。なおそのあとに、スペンド・マネー・メイク・マネー、金を使わないで金を集めようということは無理な話だというような
意味のことも書いてあります。
レバノンという国は私知らなかったのでありますが、地図で調べてみますと、小
アジアの人口わずかに四百万、そして大きさは四国の半分ぐらいの小さな国だそうでありますが、そういうところと比べても
日本の
観光客は少いのだというようなことが書いてあるのであります。それからことしの正月の
読売新聞に出ました
ドイツの、
不評判な
日本の
観光という
一文におきましては、
日本のいろいろな点を批判をしてございます。
ホテルが高い。
日本の
ホテルの
宿泊料を百とすると、
ドイツは四十である。また
道路が悪い。そして
加瀬大使の
意見によりますると、こんなことでは、海外に
日本を
宣伝することは、かえって逆効果になるのではないかというような文句があるのであります。こういうことを
考えてみますと、その後私はそういう面につきましていろいろとフランクに
考えてみたのでありますが、
日本の
観光国策というものが間違っておったのではないか、従来のような
やり方をしておったのでは、
日本の
観光事業というものは飛躍的な
発展はとてもできないのではないかというように
考えてきたのであります。
そこで、それならばどうしたらよいかということにつきまして、先日来私いろいろ
考えておりますが、要するに問題は、
国会議員の
方々によりまして
観光事業の
重要性というものを十分認識していただきまして、
観光国策を大きく取り上げていただくことが、ぜひとも必要ではないかというように私は
考えるに至ったのであります。その結果といたしまして、
政府の機関というものが必ずしも
運輸省にある必要もない、あるいは
鉄道にある必要もない、もっと大きく内閣その他におきまして
観光を取り扱いますものを置くということもまた
一つの方便であろうし、要はただ
観光国策というものをもっと大きく取り上げていただくことがぜひとも必要なのではないか、かように私は
考えるのでございます。御
承知のように
観光収入というものは昨年は約四千五百万ドルと申しておりますが、邦貨に
換算いたしますと大体百七十四、五億円になります。しかも
観光収入というものはいわゆる
ネット収入でございます。ほとんど九〇何%というものが
日本の
収入になるのであります。御
承知のように
紡績その他
鉄鋼にしても、そのほかの
輸出にいたしましても、
輸出総額は
相当になりますが、
日本の
ネット収入というものは、原料を
外国から輸入いたしましたりいたしますので、
紡績のごときは三〇%から、よくて五〇%、
鉄鋼にいたしましても大体八〇%くらいの
数字になると思うのでありますが、
観光収入と申しますのは、中には
日本に参りまして
英国製のウイスキーを飲むというようなこともありましょうが、九〇何%というものは
日本のほんとうの
収入になるのであります。
観光収入というものは、
輸出事業に比べますと、
日本の
経済にとって非常に有利なものでありますので、これはもっと大きく取り上げていただかなければならぬのではないか、かように
考えるのでございます。百七十五億円というものが昨年
日本の
観光収入にございましたが、しかしこれは
先ほども申し上げましたように、小
アジアの
レバノン一
小国と比べてもそれに劣るような状態なのでありますので、
日本のような特異な国というものが、こんな小さな
観光収入あるいは
観光客で満足しておることは、これは非常におかしい。これは結局
日本に
観光国策というものが全然なかったからだと言っても過言ではない、こう思うのであります。これは私は
やり方によりましてはおそらく十倍、百倍になることは簡単なのではないか、こうも
考えておるのであります。
これにはどうしても、
先ほども申しましたように、金を使わなければ金は集まらないのであります。
日本におきまして
観光客を受け入れるような
施設を思い切ってやらなければ、
観光客は思い切ってふえないのであります。資本を投じないでただ手をこまぬいて、
外国人来い来いといっているだけでは、
観光事業というものは飛躍的に
発展をしないと私は
考えるのであります。そこで私の
考えておりますることは、昨年の
観光収入が百七十億でございますならば、それの五%でも、あるいは一考でもけっこうでありますから、これを
国家が
投資する。これは集中的に
投資をいたしますと、
相当わずかの金で
観光客を喜ばせるだけの
施設ができるのであります。ごく手近に申し上げますと、
日光と
富士箱根、それから
京都、奈良、
東京周辺、
京阪周辺というようなごく集中したところだけをやりますれば、わずかな金で
外国人を喜ばせることができる、それを毎年
各地方に推し進めて参りますならば、
日本全国が
観光地として
外国人に喜ばれるようになる、かように私は
考えるのであります。現に毎年
カロニア号というような
豪華船が
日本にやって参りますが、これには聞いてみますと毎年同じ人が乗っているそうでございますが、そういう人は毎年来て毎年
日光だけ見るというのでは、これは
日本に対して魅力がないと思うのであります。従いましてある限られたところだけでも困るのでありますが、しかしそうかといって、それを一ぺんにやるわけにはいきませんので、これは順次それを広げていったならばいいのではないか、こう思うのであります。従いまして昨年の
観光収入が百七十五億ありますならば、それの五%でけっこうでありますから、それを
観光施設に向けまして
日本の
観光施設を
整備して、こういうように
整備したので、そこでぜひとも遊びに来て下さいというように
外国に対して
宣伝をかける。今までのように単に絵はがきや。
パンフレットをただ十年一日のごとく配っておっても
意味ないのでありまして、やはり新しい
施設をして、その新しい
施設ができたので、この
施設をぜひ利用して
日本を楽しんでもらいたいというような新しい
宣伝をやらなければ、
日本の
観光事業は飛躍的な
発展をしないのではないか、私はかように
考えるのであります。
なおまたこの際に申し上げておきたいと思いますのは、
国際観光協会は、大蔵省から
政府の
補助を受けております。しかしこの際に
考えねばいけないと思いますことは、
国際観光に対しては
補助をするが、
国内観光に対しては絶対に触れてはならぬというような
意見があるのであります。しかしこれはなかなかむずかしい問題でありまして、
国際観光と
国内観光とを区別するということは、これは非常にむずかしいことであります。たとえば今度四月の一日から緑の
週間が始まります。この緑の
週間を
終戦以後
——これはなくなられました
全日本観光連盟の
会長でありました前
参議院議長の
松平恒雄さんが非常に熱心に唱道されまして、
終戦以後いち早く
日本全国に木を植える運動をやられたのでありますが、
外国人の来るところだけ木を植えるのには金を使ってもいいが、そのほかはいかぬのだというような区別は、これはなかなかむずかしいのであります。ことに
議会の
先生方は
全国各地から来ておられます。私の
考えといたしましては、
全国各地の
観光施設がよくならなければ、やはり重点的な
観光施設もよくならないということを
考えております。
終戦以後、ずいぶん
各地方の
旅館その他が
水洗便所等もできるようになりましたが、これは
全国各地の
観光観念が非常に盛んになりましたために、
日本の
観光自体がよくなってきたのであります、
日本は御
承知のように小さな国でありますので
全国が
観光施設の充実ということに力を入れなければ、
日本の
外国人に対する
観光施設も
発展しないのではないか、こういうふうに
考えておるのでございます。これは
輸出でも同じことであろうと思うのでありますが、
日本の
輸出産業が
輸出されまするいろいろな品物の大体におきまして六割ないし七割が内地で消費ができるものでないと、
外国へ
輸出はできないそうであります。それと同じことでありまして、
日本の
観光地でも、大体六割ないし七割というものは、
日本人が喜んで集まるというところでなければ、これはまた
外国に対して
観光地として
外国人を喜ばせるということにはならぬ、こう
考えるのであります。そういう点を
考えてみますと、私は、
日本全国の
観光地の
整備、そうしてその間におのずから
外国人の来まする地点の
発展がそこに出てくる、こう思うのであります。それにはどうしても
議会の諸
先生方が
観光事業というものをもっと大きく取り上げ、これを
日本の
国策として、多くの
外国人が
日本へ来まして
外貨を落すということは、
日本の
経済にとりまして非常なプラスになるのであります。
日本はずいぶん長いこと
観光観光といっておりますが、それがわずかに
年間十万人ということでは、いかにも情ないと思うのであります。
国内観光と
国際観光のことをちょっと申し上げましたが、その
一つの例として申し上げていいと思うのでありますが、たとえば
伊豆半島というようなものは、これは
国際観光地として最近大きく取りあげられておるのであります。
伊豆半島に一体
日本の
観光客と申しますか、そういう
お客さんがどのくらい行くかと思いまして、一昨日ちょっと聞いてみましたが、大体一千万人、こういっております。そうしますると、そのうち
外国から来る
観光客というのはわずか十万人ということになりますからして、そのウエートというものは非常に低いのでありますが、しかし
日本経済にとりますと、これらの
方々が落す金が大体百七十億からおそらく
——まあ百七十億と申しましても陰に隠れた金が
相当にございますから、おそらく私は三百億近くになっておるのじゃないかと思うのでありますが、そういう
ネット収入が入りますので、これはぜひとも大きく取り上げていただいて、一挙にこれを十倍ないし五十倍ぐらいに上げることを
考えていただきたい、こうお願いをいたしたいのでございます。
それから第二番目の問題は、
外人観光客用ホテル施設の
現状でございます。
日本の
ホテルは
全国で百幾つでございまして、その
ベッド数がかれこれ九千ほどになっておるようでございます。詳しい
数字は私持って参りませんでしたが、これは
外国と比べますと問題にならない
ベッド数でございます。イギリスが大体ロンドン市だけで五万
ベッド、アメリカがニューヨーク市だけで十万
ベッドといっております。ところが
日本は
日本全体で九千というようなことでありますから、この
ホテルの数はほとんど問題にならないと思うのであります。でありますから、結局
外国人を大ぜい連れて参りますには、
日本の
旅館を使用するというより仕方がないと思うのであります。しかしたとえば
東京におきましては帝国
ホテルなどがございます。それから
京都、大阪にはそれぞれとにかく
外国人を泊めるに足る
ホテルがございます。そういう
ホテルは
各地に必ず
一つや
二つはなくてはならぬと思うのであります。たとえば
名古屋の
観光ホテルはただいま接収をされておるようでありますが、あれが接収されておりますために、
名古屋で何かやろうといってもできないというような問題がございますので、
各地にある程度代表的な
ホテルというものは必ずなくては困る、こう私は思うのであります。しかし御
承知のように、
ホテルというのはなかなかペイしない
事業でございます。私も昨年
八重洲口に
国際観光会館というものを建てまして、その一部を
ホテルにしてみたのでありますが、あれは
ロケーションが非常にいいのと、それから
日本におきましては一番新しい
施設をいたしましたために、案外に収支はいいのでありますが、しかしこれは
ロケーションが非常にいいという条件に恵まれておるためでありまして、そのほかの
ホテルにおきましては、
日本人というのは
ホテルに泊まる習慣がないと申しますか、あまり泊まりませんから、どうしても
外国人目当てになる。ところが
外国人というのは
先ほども申しましたように、
年間にして十万人、しかもその十万人が春と秋の
季節に固まってくるのでありまして、そのほかの
季節にあまり来ない。従いまして
ホテルというものはどうしてもペイしないのであります。これは国におきまして何らか
ホテルに対する
助長策を講じませんければ、うまくいかない
事業なのであります。これは
運輸省その他で出しました
パンフレットにいろいろございますが、
世界各国とも
ホテルに対しましては、
政府の
補助と申しますか、非常な
援助をやっておるのであります。
日本におきましても何らかそういうことをやりませんと、
ホテルは発達をいたしません。また
先ほど私が申しましたように、
日本に来る
観光客が一挙に増加するというような場合には、これはどうしても
日本の
宿屋に泊まってもらわなければならぬと思うのでありますが、
日本の
宿屋の畳の上に寝るということは、
外国人は必ずしもきらわないのであります。
国際旅館連盟というのがございまして、たとえば
水洗便所ができ、そして厨房が清潔なものというふうなものは、いろいろ検査をした結果、
国際旅館連盟というのに入っておりまして、これができましたために、
日本の
旅館というものはずいぶん
発展をいたしたのであります。ところが肝心の
外国人が来ましたときに、こういう
旅館が
外国人を歓迎するかというと、歓迎しないのであります。
外国人は
日本の
お客さんと違いまして、
部屋に入りまして食いものもやかましい、それから芸者をあげて一ぱい飲むというようなむだな金は使わない。従って
宿屋では
外国人はあまり歓迎しないというようなのが
実情なのでありまして、これはどうしてもいわゆる
国際向きの
旅館につきましては、
部屋代は
部屋代として取り、そしてまた食堂へ行って
自分が
自分の好きなものを食べるというようなシステムにすること、及び各
部屋にかぎがかかるというふうな
施設をいたしますならば、
日本の
旅館必ずしも
外国人に向かないということはないと私は思うのであります。わずかな
施設によりまして、
日本の
旅館で
十分外国人は泊め得ると私は
考えておるのであります。しかしながらそういう
施設をいたしまするには、やはり何らかこれの
補助政策と申しまするか、あるいは
国家からの
援助と申しまするか、そういうことをやりませんと、いかにそんなものは
自分でやったらいいじゃないかと、こう言いましても、実際問題としてはできないのであります。従いましてこれはどうしてもそういう点を大きく
援助をしていかなければだめではないか、かように
考えるのであります。従いまして、
ホテル建設に対する
援助、また
日本旅館を
外国人が泊められるような
施設にするための
援助、そういうものを思い切ってやらなければいかぬのじゃないか。またそういうことをやりますれば、この
日本へ来る
観光客が一挙に五倍、十倍にふえたって、何とか処置がいくのではないか、こう思うのであります。ここには
道路のことが書いてございませんが、そのほか
道路の問題でありまするとか、
外人客に対する査証の問題でありまするとか、あるいはドルの問題でありまするとか、いろいろございまするが、しかしこれは要するに
国会におきまする諸
先生方が
観光事業というものを大きく取り上げていただいて、これを
一つの
日本の
投資事業と
考えて、思い切って
外国から現在の十倍、二十倍の
外貨を一挙に獲得するぐらいの意気込みでやっていただきまするならば、そのほかの小さな問題は自然に解決をいたしていく、こう
考えるのであります。
それから三番目に、
国鉄推薦旅館及び
公給領収書の問題がございます。
国鉄推薦旅館につきましては、これは廃止になりましたが、私は正直に申しましてどっちでもいいと
考えておるのでありまして、実はそう大きな問題ではないと
考えておるのであります。それから
公給領収書の問題でございますが、これは実は私
公給領収書というものが実際問題としてどうなのかということにつきまして、あまり大して興味を持っておらなかったのであります。私のところも
国際観光会館が
ホテルもやっておりまするので、いろいろと聞いてみました。大体におきまして
公給領収書というようなものは、
趣旨そのものは必ずしも悪くないということのようでございますが、ただここで諸
先生に申し上げたいと思いますのは、とにかく税務署の若い学校を出たような方がいろいろ
事務をやられますので、実際の
末端の
事務になりますると、非常に繁雑である。また非常に小さな問題、まあ私らが
考えますると、そんなことはいいかげんなところでやっておいたらいいじゃないかというような問題につきましても、非常に繁雑な手数が要るということは事実のようであります。一例を申し上げますると、
ホテルでもって宴会をやる、そのときに
公給領収書を出すのだそうでありますが、そのときの机の上に飾りました花については、それも金に
換算をして、それの百分の十を取るのであるとか、あるいはまた
お客さんが持ってきましたお酒、これはどうするのだ、そのお酒を
換算をして、それはやはり納めなければならぬのだというようなことで、常にごたごたしておるようであります。そういう
末端の
事務になりますると、非常にややこしいことがあるそうでありますけれども、そういうことさえなければ、
趣旨としてはけっこうなんじゃないか、こういうように
考えられるのであります。そのほかの、
東京などは割合
税務関係の方もわかりがよくて、
割合話がいいのだそうでありますが、それでもなおそういういろいろな問題がある。ところがこれがいなかへ行きまするとさらに繁雑で、さらにやかましくて非常に困るということがあるそうであります。その問題につきまして、私特に研究をいたしたわけでもございませんので、その程度のことしか申し上げられないのであります。
大へんつまらないことを申し上げまして、まことに相すみませんでございました。