○
田中(角)
委員 ただいま上程せられております
日本国有鉄道法の一部を
改正する
法律案に
関連をして、二、三の
質問をいたしたいと思うのであります。
時間がありませんから端的に申し上げますと、私は終戦後十年間
国会議員としての職責を果しておるわけでありますが、十年間を顧みて非常に多難な道を歩いた
国有鉄道の育成ということに対しては、私自身は池坊
鉄道に
関係しております
関係上、好意ある立場で、しかも
理解ある議員の一人として行動して参ったつもりであります。御
承知の
通り、かつて決算
委員会で問題になり、戦後
国有鉄道が最も大きな事件にぶつかったといわれた
鉄道会館問題の
審議に際しましても、当時の
速記録を見ればおわかりになると思いますが、
田中議員は私鉄の社長であるから、
国有鉄道とぐるだとさえ極論をせられていたにもかかわらず、私は議員の良識に従って、アイデアとしていいものであるならば、
国鉄が自力で立ち上っていくために果敢に施策を行わなければならないものであったならば、
一面において反対があったとしても、
勇敢にこれを行うべきだという立論
をいたしておったのであります。今
日は少し立場を変えて私鉄のために
も、
国鉄のためにも、ある
意味におい
ては是正をすべきものは勇敢に是正をしていただきたいということで政治的な発言もありますが、私は率直に私の
意見を申し述べ、
当局の所信をただしたいと
考えておるわけであります。
私が今、なぜこの
ような立場でものを申さなければならないかというと、ただいま申し上げた
通り、かつて決算
委員会で
鉄道会館問題が非常に大きな問題として提起をせられ、その
鉄道会館問題がうまく終息をしないと、
国鉄自体も大へんだと自他ともに
考えられた。その問題にあまりにおそれをなして、その後
国鉄が当然行うべきものを行わない。もっとはっきり申し上げると、行うべき職責を果さず、勇気に欠けておる場面が非常にたくさんあるのじゃないかということを、率直に
考えざるを得ないのであります。特にこの
ような事態を続けていきますと、先ほど
経理局長が言われたのでありますが、どうもそういう前提に立った自分の発言が正しいのだという錯覚を起してくるおそれが多分にある。それは
国有鉄道の将来のためにも私は惜しむものでありますので、率直に
意見を申し上げてみたい。あつものにこりてなますを吹いておるということでは、
国鉄の将来のためにならないという
考えであります。特に現行
国鉄法の制定は占領軍政策によるものでありまして、これは非常に大きな施策の
一つであります。もちろん独立後は、当然これが法制及び機構の問題に対しては再
検討を要する問題でありますし、
国鉄当局及び運輸
当局がこれが
改正案を
提出いたしておるゆえんもまたそこにあると思うのであります。しかし戦後十年間の歴史を持っておるものでありますから、この膨大なる機構で、
法律の
改正によって一挙に何らかの結論を見出すということは、なかなかむずかしいことだと
考えております。お互いが納得する
国鉄機構の整備を慎重にはからなければならないと
考えておるのは、あに私だけではないと
考えております。
私がこういう事例をもって申し上げますのも、あつものにこりてなますを吹いておるのが現在の
国鉄であろうと思うからでありますが、それも現実にぶつかっての問題でありますし、お互い人間でありますから、理想論だけが推し進められるとは思いません。思いませんが、そのために是正すべきは是正するということもやっておらない
ようであります。強力に推し進めなければならないものに対しては、勇敢にこれを行うという処置にも欠けておる
ようであります。その現実的事例として、
鉄道会館問題はあの
ようになりましたが、
日本の戦後十年間の
鉄道に対する一般会計からの繰入額を見てみますと、これは三分の一が停車場に使われております。戦後最も大きな
事業の
一つである
国鉄が、輸送力増強とか、その他運行上必要な施設の改善に金を使うことは当然であります。ドイツが第二次アウトバーン計画に一切の財力を投じて、これが建設に当っておるという姿を見れば、これは当然の話であります。ところが駅舎の建築というものは、それほど重要なものではありません。
国鉄当局及び運輸
当局にいわせると、代議士どもが持ってきてし
ようがないのだ、全くこういう一言で片づけられる
ようでありますが、
鉄道は駅がなくとも運行できるのであります。西ドイツの戦後十年間の駅がいかに復活しているかということを
考えれば、全く一目瞭然であります。こんなことを見ないために
国鉄や運輸
当局からたくさん人を出したわけではないのでありましょう。西ドイツの
鉄道は、レールの単一化をはかり、最高速度の制限を行い、一切のものが完了しておりまして、
最後に残っているものは駅舎だけであります。ところが
日本の
国有鉄道の
現状は、できたものは何かというと、駅舎の復旧がよけいできているのであります。東京駅構内の施設にかけられた費用と、東京駅の駅舎にかけられた費用の率を見ていただければすぐわかるのでありますが、一体こんなやり方でいいのか。これはわれわれ政治家にも大きな責任があることは言うまでありませんが、そういう状況であります。それを是正し、そうしていわゆる
国鉄の運輸能力を増すための施設に力を入れるのは、限られた
予算の
内部でやるのでありますから、何らか別の方法をとらなければならぬことは言うまでもない。そこで
鉄道会館の
ような、すなわち駅舎の
ようなものに対しては民間資金の導入をはかろうということは、アイデアとしては非常にりっぱだと思うし、
国鉄会館問題が、衆議院、参議院において追及せられたことによって、
国鉄の経理が非常に明朗化したということも
一つの利点でありましょうが、それによって民間資金の導入が一頓挫を来たしたということも
一つの事例だと思う。そういうことを勇敢におやりになればいい。一、二貿易株式会社の
認可は去年度から出して
いる。出しているが、ほとぼりがさめるまでやらないでおこうということではだめで、
認可を出したならば堂々とおやりになればいいではありませんか。きのうかおととい参議院を通過した
法律に官庁営繕法の一部を
改正する
法律というものがありますが、これは
一つの地区を一団地として指定いたしまして、中央官衙及び
地方公共団体の官衙も一まとめにし
ようという
考えのものでありますけれども、少くとも現在の駅の上にこれら諸官衙が作られるとしたならば、国費支弁に基く
建物というものは非常に安くなるのであります。土地の取得だけでも三分の一の費用を要していることは御
承知の
通りでありますが、なぜそういうことをおやりにならないのでありますか。こういう勇敢にやらなければならぬことをやらないで、
国鉄会館問題が終ってからまだ一、二年しかたたないから、もう
一年ばかりほとぼりをさまさせ
ようなどという
考えでは、遺憾ながら現在の
国鉄の幹部の方々が勇気を持っていると是認することはできないと思うのであります。
それからもう
一つは、これは前から言っているのでありますが、私は現在の道路法を三十七、八年ぶりで
改正をいたしました。道路法に引き続いて有料道路法の
提出を行い、それからガソリン税等相当額を盛らなければならない道路整備五カ年計画も、私が代表として
提案したのであります。今度は積雪寒冷地における道路法の
提案もいたしました。この
ようなことでさえできるのであります。道路の整備はできるのであります。これよりも大きなものは何かというと、
国鉄を何とかしてペイ・ラインに乗せ
ようということであります。戦後いろいろの
国有財産がばらまかれましたが、
国有鉄道ほど大きなものをある一定のものに与えたというものはないのであります。ほかのコーポレーションは全部一般会計に繰り入れを行なっております。
国鉄だけがなぜ行われないか、こう言いますと、それはあなた方の議論があるところであるが、
鉄道というものは全くの公益
企業であり、
運賃値上げを無制限に認めないのは、これが
日本経済の根幹をなすものだからという
考え方ではありませんか。その
通りであります。だから一般会計から繰り入れをやっているのであります。
損失は補てんをやっている。だから先ほど
大臣の言われた
通り、もうからない施設の
国鉄の新線計画も、年々進めていかなければならないということであります。その現実を、何とか大きな
努力を払うことによってある時期にペイ・ラインに乗せ、その後は幾らかずつでも国に返すということを
考えるのが——
国鉄を今よりもさらに一歩進めて民営
企業に移そうということで乗り出すならばうんと金を出してもいいが、老朽化している
国鉄をいつまでもいつまでも今のままで進めていけないという
考え方だと思うのです。だから貨車、客車等に対しては総裁は民間資金の導入を
考えております。これは大蔵省が官庁営繕物に対し、特に例をあげて言うと外務省庁舎に対して民間の資金を入れ
ようという
考えに相通ずるものでありますから、こういうものをやっておりますが、こんなことだけで片づけられると
は私は思わない。極論すれば、今進めておる三千キロ電化計画は、五カ年に縮めて六千キロ計画に推し進められる
としたならば、これで
国鉄はペイ・ラインに乗るでありましょう。こういう
ことさえもおやりになっておらないのであります。私は運輸に
関係する
委員ではありませんでしたが、今度は
一つ運輸
委員の諸君とも十分連絡をして、
国鉄というものを何とかしなければならぬ、そういう
意味で、全線電化を
考えていかねばならぬ。そのためには賠償さえ払うと言ったでないか。第二次
財産税を徴収せられるとしたならば、
国鉄の電化に向けるべきだ。
国鉄を低賃金に据え置き、そうして
国鉄を抜本的に
改正しなければ、
日本の経済というものは破滅するのであります。こういう
考えを私たちは持っておるわけであります。そういういろいろな角度から私は
考えておるのでありますが、
国鉄だけでは一本に立っていかないのであります。
国鉄はたくさんの毛細管の中の幹線であります。動脈であります。毛細管の問題に対しては、先ほどあなた方が言われた
通り、衆参両院でいじめられるだけいじめられたし、またいろいろな協定の是正もやった
ようであります。外郭団体の整理も行なった
ようであります。しかし
国鉄が一人立ちができないという原則に立って、これをなくすることはできないのであります。なくすることができないというよりも、これは育成、助長しなければならないのであります。
国鉄が育成、助長をしなければならないというのは、ただ単に
国鉄の自由
意思によって助長、育成をはかるのじゃありません。これははかる義務があるのであります。ここに問題がある。先ほどの
質問との間にどうもあやがある
ようでありますが、
国鉄は培養線の助長をはかならなければならない
法律的な義務があるのであります。特に私鉄の問題に対しては明治三十九年三月三十一日の
法律第十七号、
鉄道国有法の第一条に「
鉄道ハ総テ国ノ所有トス」と明記してある。これは明治憲法当時からの国是であります。これは依然として変っておらない。
鉄道は国有とするから、いろいろな資源の制約があってむずかしいといった戦時中には、
鉄道はこの
条文を
適用して強制収用ができたのであります。
鉄道はサーベルの力を持って国に収用したのであります。収用の反面を持つと同時に、
政府は右の
鉄道に対しては相当な助成というよりも、これを育成しなければならない責務があることは当然であります。第二条には明らかに、
政府は左記の
鉄道を買収すべしとある。左記の
鉄道は、この
法律施行の当時
政府が買い入れられる
限度においては、左記の
鉄道であったにすぎない。
鉄道はすべて国有とする。まあその
最後に、「但シ一地方ノ交通ヲ
目的トスル
鉄道ハ此ノ限二在ラス」、「但シ一地方」と書いてあります。これは除外例であります。明らかに
鉄道はすべて国有であるという
鉄道国有法の原則は、今になお貫かれておるはずであります。こういう
法律的な精神を
考えると、日通と私鉄が同じであるという
ような議論は、これは
法律の精神を誤まるもはなはだしいものであります。しかも一般の債権者と債務者が法廷で争う場合は、そういう議論が成り立つ。違法でなければ払わないでいいのであります。しかし少くとも
国有鉄道の職員が、違法でないが妥当でないという議論を吐いてはならないのであります。そういう基本論をたてにして進めたならば、決算
委員会で何と言われ
ようと育成すべきものは育成し、助長すべきものは助長する義務があるのであります。決算
委員会がうるさいから、やむを得ず地方
鉄道とバス会社とトラック会社を一緒にしたいのだけれども、勇気がないからやれないのだ、こういうことになるではありませんか。
私は
運輸大臣に、、ダブるかもわかりませんが、結論を申し上げるまでに
一つ伺いたいのでありますが、私のただいま申し上げたことを前提として、
運輸大臣は、地方
鉄道は公益
企業と
考えるか、または私
企業と
考えておられるのかということに対して所信を
伺いたい。