○曾祢益君 私は
外務大臣、労働大臣、通産大臣、
大蔵大臣並びに
防衛庁長官に対しまして、ただ一件、問題としてはただ一件でございまするが、この問題について
政府のお
考えを伺いたいと思うのであります。その一件と申しまするのは、実はいわゆる特需産業に従事する
労働者の問題でございます。皆さんが御承知のように、特需産業
労働者がアメリカ軍当局の実際上の
仕事をやっておりまするけれども、その
地位というものは非常に不安定なものであって、アメリカの
予算がカットされる、あるいはアメリカからの注文が減るという場合には、何らの保障もなくて、そして解雇される。しかもその場合には、契約がアメリカ当局対
日本業者の契約になっておりまするために、公務員等と違いまして、あるいは駐留軍
関係の労務者等もさらに悪い
条件でございまするが、アメリカ軍あるいは
日本政府にこれを苦情を申していっても、これは法律論としては受け付けられない、かような
関係になるのでございます。かような
関係から、特需産業それ自身がもとより永続的なものでございませんし、特需漸減の方向をとっております
関係もあって、これらの
労働者の大量解雇が最近ひんぱんに行われておることは御承知の
通りであります。特に本年の五月には、神奈川の追浜の富士自動車の大量解雇事件、一挙に三千七百名に上る大量解雇事件がありまして、このときはさすがに
わが国の世論に非常な大きな衝動を与えたのでございます。従いまして、これはもちろん富士自動車の解雇問題に世論が焦点を合わしたからでありまして、問題は前からも存在しておったのでありまするが、従来の鳩山
内閣も、この問題についての
対策は決して十分でなかったのみならず、ほとんど冨士自動車の解雇問題という大きな問題を端緒として、初めてようやく腰を上げるに過ぎないという、まことに遺憾千万な状態であったわけでございます。この富士自動車問題を契機といたしまして、とにもかくにも
政府においては、アメリカに対してもこれはあまりひどいではないか、何とかもっとなだらかに、かりに解雇するにいたしましても、もっとなだらかな方式をとって、
日本側とアメリカ側とが連絡をしながら、
日本側において受入
態勢等を整えながらやるようにしてほしい、こういうようなことについては
外務大臣もやっていただいたと思います。日米合同
委員会の議にものせてもらったのであります。さらに鳩山総理は、特にこの問題を取り上げられて、アメリカ大使にも直接手紙を出すというような
措置をとってくれたのであります。その結果、この特定の問題については約四百名ぐらいの解雇される労働組合の諸君、
労働者の諸君が新たなる契約をアメリカからその会社がもらうことができて、四百名ばかりは救えたけれども、三千名をオーバーする大量解雇に対しては、何ともいたし方がなかった。ただ単なる
条件闘争といいまするか、解雇
条件等についての問題だけがきめられた、そしてこの三千数百名の
労働者諸君は、今日まで失業
対策についての
政府の
措置が十分に効果を奏しておりませんから、ほとんど多くの人は再雇用……他の職を発見できないという、こういう状態になっておるのであります。すなわち特需
労働者というものは、この富士モータースのときにもそうであったけれども、特需
労働者を見逃しにしてくれるな、見殺しにするな、こういう悲痛な叫びをあげておったのであります。従いまして当時からわれわれは
政府に対しまして、特需産業というものをどういうふうにして
日本の民需産業に繰り入れて、あるいは必ずしも民需と言いきれない、あるいは
日本の官需と言いまするか、特に
防衛庁の実際生産をやっておられますから、事のよしあしは別として、その方向に繰り入れていく、そういう産業政策上の
措置をとってほしい。
第二にはこの契約上の不備があるのであるから、アメリカが直接にこのいわゆる特需の役務及び物資を調達するという直接調達方式に欠陥がある。であるから、これは
日本政府が中に介在して、いわゆる間接調達方式にぜひしてもらいたい。これは日米行政協定そのものを必ずしも改訂しなくともこれはできると思われるし、もし要すれば、日米行政協定を改訂しても、ぜひこれは西ヨーロッパ諸国がやっておるように間接雇用方式、調達方式にするのが当然ではないか、こういうことを
政府に要求して参ったのであります。しかるに今日までいろいろ
政府の間接契約方式についてのいろいろな研究はされたようでありますが、今日そのことが実現しておりません。多くのこの特需産業は、おおむね七月から十月までの間に契約が更改いたしまして、その間においてはやはり旧態依然たる直接調達方式によっておるわけであります。この結果、相模工業という、これは重車両、富士の場合は軽車両でありまするが、重車両の再生をやっております。いわゆる特需車両工場におきましては、十月に新契約ができるときにすでに需要の減少から五百名の首を切られておるのであります。しかも十月に新契約ができまして、その結果、人員の天井は五千八百名ということに契約の明文に書いてあるのであります。しかるにこの契約の中にはいま
一つの条項がございまして、
向う一年間の契約でありまするが、一応は五千八百名という天井にしておくけれども、実情に応じてアメリカの契約担当官はこれをかげんすることができる、ふやしてくれるならば、
労働者の
立場から言えばけっこうでありましょうが、減らすことができるという条項がある。そこでこの契約のもとにおいてどういうことが起ったかというならば、十月に新契約ができたこの相模工場におきまして、十一月に八百八十八名の新たなる首切りをやる。一ぺんの通告をもって、五千八百という水準があるにかかわらず、契約第七条のこの加減乗除できるという——一方的に加減乗除できるという条項の発動によって、このたび八百八十八名の大量解雇をやる、こういう通告をしたのであります。かくのごときは、いかに契約上の条項があるにせよ、まことに不当といいまするか、非人道といいまするか、断じてわれわれとして承服できない、かように思うのであります。しかもそのよってきたるゆえんのものは、私が先ほど来るる申し上げましたようなこの
事情によるものであり、そのことは、そういう
事情を十分に御承知にかかわらず、これは
政府が、結果において怠慢の結果なんだ。従いましてこういう
事態が起りまして、しかもこれは言うまでもなく、師走の寒空に八百八十八名の
労働者が突き出される。果してこの諸君が再雇用あるいは生活の安定の道が講じられておるのか。これは資本主義下の問題であるから仕方がない問題であるということでは断じてない、
政府なりアメリカなりの責任の問題だ、こういうことでございますので、私の以下御
質問申し上げる点は、まず第一に
外務大臣におかれては、この状態を御承知のことと思いまするが、これに対していかなる
措置を講じようとお
考えになっておるか。アメリカに対してこの問題についてこれをやめてもらいたい、少くとも正月は安心して年越しができるようにしてもらいたい、あるいはこれをもっとなだらかにしてもらいたい、解雇さるべき人員を、もっと解雇される方を減らしてもらいたいというような交渉をぜひやるべきと存じまするが、いかにお
考えであるか、まず
外務大臣のお
考えを伺いたいと思います。