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1955-12-13 第23回国会 参議院 予算委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年十二月十三日(火曜日)    午前十時三十八分開会     —————————————   委員の異動 十二月十二日委員高橋進太郎君、及び 小林武治君辞任につき、その補欠とし て小野義夫君及び館哲二君を議長にお いて指名した。     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     西郷吉之助君    理事           池田宇右衞門君            堀  末治君            三浦 義男君            安井  謙君            佐多 忠隆君            松澤 兼人君            吉田 法晴君            豊田 雅孝君            溝口 三郎君    委員            秋山俊一郎君            石坂 豊一君            井上 清一君            木内 四郎君            木村 守江君            小滝  彬君            佐野  廣君            西岡 ハル君            野村吉三郎君            堀木 鎌三君            武藤 常介君            吉田 萬次君            秋山 長造君            亀田 得治君            曾祢  益君            戸叶  武君            羽生 三七君            森崎  隆君            矢嶋 三義君            小林 政夫君            館  哲二君            田村 文吉君            中山 福藏君            廣瀬 久忠君            木村禧八郎君            千田  正君            八木 幸吉君   国務大臣    法 務 大 臣 牧野 良三君    外 務 大 臣 重光  葵君    大 蔵 大 臣 一萬田尚登君    文 部 大 臣 清瀬 一郎君    厚 生 大 臣 小林 英三君    通商産業大臣  石橋 湛山君    労 働 大 臣 倉石 忠雄君    国 務 大 臣 大麻 唯男君    国 務 大 臣 太田 正孝君    国 務 大 臣 高碕達之助君    国 務 大 臣 船田  中君   政府委員    内閣官房長官  根本龍太郎君    法制局長官   林  修三君    国家公安政務次    官       大谷 瑩潤君    警察庁長官   石井 榮三君    調達庁長官   福島愼太郎君    自治庁財政部長 後藤  博君    自治庁税務部長 奧野 誠亮君    経済企画庁計画    部長      佐々木義武君    外務省アジア局    長       中川  融君    大蔵省主計局長 森永貞一郎君    大蔵省理財局長 河野 通一君    大蔵省銀行局長 東條 猛猪君    厚生省公衆衛生    局長      山口 正義君    厚生省社会局長 安田  巌君    通商産業省鉱山    局長      松尾 金藏君    労働省職業安定    局長      江下  孝君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   説明員    会計検査院事務    総局第二局長  保岡  豊君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十年度特別会計予算補正(特  第2号)(内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) それではただいまより予算委員会を開会いたします。  佐多君に申し上げますが、ただいま御要求大臣のうち、大蔵、通産、経企各大臣がきておられます。労働、防衛については今督促いたしておりますから、その三大臣についての御質問をお願いいたします。
  3. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 数日前に、経済企画庁のもとにある経済審議会から総合経済計画案が一応の案として発表されたのでありますが、大体のそれの構想というか、目標、内容、そういうようなことについて、大臣自身はどういうふうにお考えになるか、まずその点から御説明を願いたいと思います。
  4. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 経済六カ年計画は、本年の一月これを構成いたしまして、すでにかれこれ一カ年間経過したわけであります。その目標は依然として六年後における日本人口とこれに対する、増加する人口に対してできるだけの完全雇用をしていく、自立経済を確立する、この基礎のもとに立てておるわけでありまして、約一年間の経過によりまして、ここに数字変更をすべきものが相当起ってきておるわけであります。それはまず第一に、われわれの予想しておったよりも人口増加は、ここ一年間の経験によりまするというと、目標年次において当初計画より約五十七万人減少するようでございまして、本年の一月の予定よりも減ずる、こういう事実がわかったものでありますから、これをまた基礎において、もう一つは、一月の計画では、労働力率すなわち大体の事業をする人たち生産年令人口の六五%くらいにもつていこうじゃないか、三十五年度はそう考えておったのでありますれども、いろいろ検討いたしまして、やはり六七%台にもっていくことが適当ではないか、そういうことで変更いたしましたことと、もう一つは、輸出の振興が比較的にわれわれの計画しておりましたよりも比較的順調に進んでおったこと、この一カ年間の経験をみますと、それによりますと輸出入を少しふやす、こういうふうな結果におきまして、多少ここに数字変更いたしまして、そういうふうなものを基礎として、この十二月五日に経済審議会におきましては新しい計画数字が答申されたのであります。
  5. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 長官お話のように、数字として特に人口増加の問題、その他の数字変更と同時に貿易見通しあるいはその国民総生産伸び考え方、そういうものに対しては相当大きな変更が加えられたのじゃないかと思うのですが、この点については、すでにさきに六カ年計画をお示しになったときに、ことしの予算編成関連をして私はいろいろ御質問を申し上げて、日本の国力なり経済力伸長度はもう少し大きな余力があるのだ、もっと伸びるはずじゃないか、従ってその伸びに応じて、いろいろな計画を立てられる必要があるということを繰り返し強調をいたしたのでありますが、しかしながらその当時の御答弁では、いやそうでなくて、計画は固く組んでおかなければならないということで、私の意見はいれられなかったのでありますが、しかし今度新しく改訂をされた計画によると、事実の認識はどうしても変えることはできないというような点から、私が申し上げたような点が相当変更されていると思うのであります。その点においては、私は計画としてはさらに前進をしたものだと思うのですが、その場合にこの国民総生産伸びというようなものについては、さらに当初の計画と、現在の計画との間に、どういう変更なり考え方の違いが出て参ったか、その点をもう少し詳しく御説明願いたいと思います。
  6. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 今のお話のごとく、当初の計画よりも国民生産にいたしましても、また輸出も増進いたしましたということは、これは佐多さんの御説の通りでございまして、これは見方が誤っておったと、こういう御質問もあるでしょうけれども、これはこんなに輸出が増進されたということは、やはり国内の事情だけじゃなくて、海外の事情にもよっておる。またこんなに米がたくさんとれるということは当初から予想しておらなかった、こういうこともありますから、その点はごかんべん願いたいと思います。そういう意味から言いまして、大体国民総生産というものにつきましては、三十五年度に最初予想いたしておりましたものは八兆八千九十二億円、こういうことになっておりましたが、今度は九兆六千七百三十億円、こういう工合に数字増加してもっていきたい、こういうふうに存じております。
  7. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そういう変更から考えますと、日本経済力なり、特に経済力の伸張は非常に期待していいものがあるという結論になると思うのですが、それに関連をいたしまして、もっとこの計画について大きなそごを来たしたのは、貿易の収支の問題であると思うのです。しかもこの六カ年計画を作られるときに、一番重要な問題としては経済自立の問題が考えられると思うのですが、この経済自立について今度の計画そのことにおいては、どういうふうな見通しをもっておられるか。さらにそれに関連をして、一体この計画を作る場合に、経済自立という課題目標の中においてどういう重要度をもって考えるようにしておられるか、その辺を一つ説明を願いたい。
  8. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) これは率直に申し上げますと、国民総生産増加とか、あるいは輸出入増加ということは予定以上進んでおったということは事実でありますが、失業問題につきましては、これは当初私どもは六十四万という予定をしておりましたところが、完全失業者がかれこれ七十万になっております。こういうような状態であります。この点につきましては、今後の方針といたしまして、輸出貿易を促進し、経済自立せしめるということに努力をいたしますと同時に、これによって起るところの失業者をどうするか、こういうふうな問題から、今後の方針につきましては、社会保障の点につきましても、また失業対策につきましても、相当重点的に考えていきたい、こういう考え方でございます。現に本年度実行予算におきましても、財政投融資面におきまして、一般資金が、市中資金が潤沢になって参りましたから、投融資面のうちの百六十億円というものを一般市中銀行に回しまして、一方失業対策あるいは中小企業という方面におけるこれの投融資は減じないでそのままいく、こういうような方針をとっております。
  9. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 完全雇用の問題あるいは資本形成あるいは投資の問題は、なおのちにお尋ねをするとして、先ほどお尋ねをしました経済自立の問題でありますが、経済自立の問題は輸出輸入に関する限りは、すでにこの表でもはっきりいたしておりますように、昭和二十九年度輸出十六億、輸入十七億、それが三十年度には輸出入おのおの十九億でほとんどバランスするという考え方であります。三十一年度は二十一億でバランスするし、三十二年度も二十二億でバランスする。しかも三十年度は十九億というふうに組んでおられますが、これも推計実績から見れば、非常にかたく組んでおられるので、もっとあるいは二十億を簡単に越すだろう、そういう意味においては、経済自立なるものはある意味においてはすでに達成をされているということであって、この経済自立状態をくずれないようにするには、どうするかという消極的な意味はまだ残っていると思いますが、当初この六カ年計画考えていたように、経済自立の問題をそれ自体として目標に、非常に重要な問題として第一点としてあげること、あるいは完全雇用の問題を併立的な大きな課題としてあげること、そういうことすら、もはや必要でなくて、もっと問題は積極的に展開をしていい段階に来ているし、われわれはそういう態度をここではっきりする段階であると思うのでありますが、その点について高碕大臣はどういうふうにお考えになっておりますか。
  10. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。本年度輸出予想外に好転しておるということは、いろいろな事情がありましょうが、おもなる理由はやはりこれは国際情勢変化だとこう存じまして、 アメリカの景気、ヨーロッパの景気等が非常にこれに重大なる役割を果しておる、こう存ずるわけでございます。これは将来においては大きな変化はないだろうと私どもは想像いたしておりますが、これをもっていつまでも同じようにこの輸出が増大すると、こういうふうな考えをすることは、あまり甘くなかろうかと考えますことと、特需の方におきましてもやはりことし四億台を持っておるわけなのでありますから、この特需というものは当然減少すべきものということを考えていかなければならぬ、そういう点を考えますというと、私は今これで日本自立経済ははっきり達成しておるというまでの結論を出すことはよほど早計でなかろうかと存ずるわけであります。
  11. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 もちろんこの特需を含んでではありますが、特需を含むと、二十九年度はすでに三億四千万ドルの黒になり、三十年度も三億ドルの黒になるという考え方だと思うのであります。この点ももう少し、黒ももっとさっき申しましたようにふえると思いますので、特需を含む限りにおいては黒字になるし、従ってその特需を除いて考えても大ざっぱに言って輸出入だけでバランスをするということは、ほぼすでにそういうふうに予想しておいていいのじゃないか。さらに数字に見ましても、そのことははっきりその通り数字がうたってあるので、この数字は非常にそういう意味では低目にお考えになっているし、非常に用心深いものではあると思いますが、すでにその用心深い数字でも、なおかつちゃんと輸出入バランスをするという考え方であります。従ってこれを手放しに楽観をして、何でも放漫にしていいということではありませんけれども、そういうバランスをとること自体に非常にノイローゼにかかってしまって、積極的な施策を今まで怠っておられたといううのが、むしろ今までのやり方である。これは過去のインフレなり何なりとの関連において、あるいは今まではやむを得なかったかもしれない。しかしこの段階はもはやその方針を切りかえるべき段階だと思うのですが、その点をどういうふうにお考えになっておりますか。
  12. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。これは常識論になりまして、はなはだ恐縮でありますけれども経済政策というものは、切りかえると言って、イデオロギー的に今までこうだったけれども、すぐにこれを変えるということはすこぶる危険が伴うわけでありますから、ただいまの佐多さんのお説の、逐次自立経済が完成に近寄りつつあるということは事実でありますから、それに従って逐次方針を講じて行きたいと、こう存ずるわけでありまして、今一挙に積極方針に出るということは非常に危険だと存じますが、同時にいたずらに前途を危うんで、そうしていつまでも消極策で行くということは、これは間違いだと、こう存じております。
  13. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 イデオロギー論議が出たのですが、私が今ここで経済政策方針を切りかえなければならない段階だというのは、むしろイデオロギーにとらわれないからで、あなた方こそイデオロギーにとらわれて、デフレでなくちゃいかんとか、均衡自体が問題だというふうに、あなた方こそイデオロギーにとらわれておられるから、今まで現実認識を誤まって来られたのだし、従ってまた正確な積極的な正しい政策が立たなかったということであると思います。そこで私はむしろ逆にあなたたちこそ、そのイデオロギーを捨てて、もっとフランクに現実事態をごらんになって、その上で政策を、しかもそこに積極的に問題を解決するのだ、ただ単に見通しをあとから追いかけて行くのでなくて、われわれが積極的に問題を解決するのだという態度で、政策をおきめになる必要があるのじゃないか、その根本的な反省なり改訂をやられる段階ではないか、こういうことをお尋ねしているのです。どうですか。
  14. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 先ほどのお尋ねに対して、私は佐多さんがイデオロギーにとらわれているということを申し上げたわけでありません。これはわれわれもイデオロギーにとらわれている点もあるでしょう。イデオロギーにとらわれていることはいけないということだけを申し上げたのでありまして、佐多さんはイデオロギーにとらわれて、私どもはとらわれていないということは、こういうことは決して言ったわけではありませんから、そういうことは誤解のないようにお願いいたします。
  15. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そこでそれはだれでもいいと思いますが、今は現実事態として、従ってイデオロギーにとらわれないで、もっと方針なり態度なりをお変えになる必要があるのじゃないか、この計画でも安定経済を基調としてというようなふうになっているので、ここいらから見ても、すでに安定経済自体ということは、むしろ手段の問題として、もっと積極的に展開をしなければならぬということを若干考えながら、しかし今までのあれを完全に払拭することができないで、なおそれを尻に敷きつつ、こういうふうな目標をお立てになったのではないかと思いますが、しかしここはもっと目的意識的にはっきりされる必要があるのじゃないか、そうなれば、さっき申しましたように、安定経済自体をそれ自体として問題にすることだとか、あるいは経済自立自体をそれ自体として問題にするというようなことは、今やもはや問題ではないので、最後に述べられている、これからお尋ねしようとする完全雇用の問題なり、経済規模拡大の問題を、もっと積極的にお考えになる段階だし、そこは明瞭に意識して一つこの計画なり何なりの立案、さらに遂行に当っていただきたいと、こう思うのでありますが、その点はどういうふうにお考えになりますか。
  16. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) ただいまのお説に対しましては私は同感でございます。
  17. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それならば、問題はやはり完全雇用達成ということが、今度はこの計画主眼目にならなければならないし、その基礎としての経済規模拡大であるとか、あるいは財政規模拡大であるとかいう問題が問題になると思うのでありますが、この完全雇用については、今若干の御説明もありましたけれども、しかしこの場合に完全雇用の問題としては何ら問題が解決されていないのじゃないか、たとえば完全失業を四十五万あたりまで切り下げる問題は解決をしておると思いますけれども、しかしいわゆる潜在失業その他の問題はそのままうやむやにされていて、何ら解決をされていない。この点はすでに現在の状態において、今年の状態においてはっきりなっておると思うのですが、ことに昨日でしたか一昨日、総理庁で発表になりました労働力調査によると、失業人口がまたふえて参っている。これまでは労働大臣も御説明通りに、今年の三月でしたかピークにして漸減の形をとっていたにかかわらず、今度は前月に比べて五万増加をしている、これはさらに前年同月に比べても同じように五方の増加をしているという問題になっておると思うのです。この失業増加傾向をどういう意味のものとお考えになり、今後これがどういうふうにどういう傾向を示すであろうとお考えになっているか、まず目先の問題から労働大臣の御説明を求めます。
  18. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) お答えいたします。ただいま御指摘の総理府の労働力調査でございますが、あれによりますというと、最近ふえているのが農林業つまり第一次産業方面だけであって、そのほかは減っているようなふうに受け取れるのでございますが、私どもの方の調査によりますと、これは季節的に毎年こういうことになるのでございまして、御参考までにちょっと最近の傾向を申し上げますならば、二十八年の九月から十月、つまり農繁期でありますが、農林業の方では二百十六万ふえて、非農林が五十一万減っておるのであります。二十九年の九月から十月までは百七十万、非農林が三万減っている。  ところが今年は九月から十月に農林業の方はなるほど百三十三万ふえておりますが、非農林の方が十一万ふえておる、これは季節的に大体このころには農林業の方がずっとふえてきておりますが、本年はかえって十一万非農林の方がふえているという傾向でございまして、これはやはり私ども見方では、経済界の好況がこういう結果をもたらして、若干でも非農林の方の就業率がふえている、こういうふうに観測いたしておるわけでございます。
  19. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 現在の就業者数増加は、今大臣お話のように季節的な増加であると思うのですが、その場合にこれまでは非農林は減少したにかかわらず、今度は増加をしている、今お話のように十一万増加しているのですから、これはたしかに増加しているし、今までの傾向から見れば、方向が逆転したことだと思う。ここにも現われておるように、政府はそういう就業の特に非農林における就業増加に対して積極的に手を打たれない。むしろこれを結果においてはチェックするような方策をとっておられるにかかわらず、なお、その政策を打ち破って芽を出しつつあるのが十一万の雇用増加であると思う。従ってこの傾向を、もっと早くこの芽を引っぱり出して、もっとこれをどういうふうに伸ばすかということを積極的にお考えになることが非常に重要であるにかかわらず、そのことが考えられていない、それをどういうふうにお考えになるか。さらにもう一つ申し上げたいのは、今労働大臣は十一万非農林でふえているから非常にいい傾向だとおっしゃいます。減ったよりかいい傾向ではありますが、その十一万の増加をもっとしさいに検討をいたしますと、その十一万の増加の内訳けは、十八万の増加というのが小売、卸売、金融業いわゆるサーヴィス業であります。そして純粋な意味における鉱工業はなおここでも七万減っておる、製造工業における七万の減少があるにかかわらず、非製造工業において十八万ふえたから差し引き十一万ふえているのだという問題だ、この季節的に農業において百三十万ふえたとか、あるいは非農林において十一万ふえたとかいう問題は、従ってこれをもっと分析的に見れば、潜在失業がふえているのだ、本来における雇用の問題の解決ができていないから、潜在失業として、そういう方向就業なり、雇用がふえておるにすぎないのだ、むしろ潜在失業の非常に深刻な問題を呈示し、露呈をしておるにすぎないものであり、従ってこれは単に数字の上での増加をもって楽観を許さない、もっと本質的な、根本的な対策を必要とする問題であると思うのですが、それらの点をどういうふうに御認識になり、さらに三十一年度には、それに対してどういう手を打とうとしておられるのか、その点の御説明を願いたい。特に三十一年度の問題ですから、一つ
  20. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 私は、この雇用の問題につきましては、ただいまのお説のように非常に心配をいたしておるものでございますが、御承知のように、答申されました経済六カ年計画というふうなものによって、私どもはただいま御指摘のように、最終年度においては、四十五万の完全失業者に減らすと、御承知のように、労働力人口は、その年には四千五百三十何万になるわけでありますが、それによって出しました数字は、四十五万ということになれば、たしか一・三%ぐらいになると思うのでありますか、この計画が完全に遂行されるということによって考えてみますというと、私は雇用の問題は、そう心配しなくてもいい結果になると思うのでありますが、そういうことを実現するために果してどういう経済政策をとるべきかということについては、これは慎重に私ども検討をし、さらに論議を重ねてみなければならないと思っておる次第でございますが、差し当り私どもは、御承知のように、今政府失業対策事業というものをやっておりますが、この失業対策事業で吸収される完全失業者の数というものには、およそ限界がございますことは御承知通りでございます。ことにこれが割合に経済的効果を持たない仕事が今まで多かった。そこで私どもは、来年の予算には、この失業対策事業経済的効果の上がるものに重点を置いて、そうなればだんだんと社会的にもこの労働力を吸収する事業に理解を持っていただくようになりますからして、現に地方でも喜ばれておる事業がたくさんあります。そういうことでそういう方面拡大いたして参りまして、そこに吸収し得る人口というものも、大体想定しているわけであります。そこで来年度からさらに、三十何年になりますか、三十二年でございますか、六カ年計画最終段階までには、一応のプログラムを作りまして、それに基いての失業者の救済をやって参る、こういうことで六カ年計画を立てておるわけであります。
  21. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 どうも今の御説明では、何ら対策になっていないと思うのですが、特に差し迫った三十一年度のそういう雇用増加の、特殊、具体的な対策がどう立てられているかということをお尋ねしているのでありますが、それに対してすら御指示がないのですから、もっと長期計画に対して明瞭な対策が立ってないことは、これは無理もないかと思います。  そこでそれでは高碕大臣の方にお尋ねをします。雇用政策として一つ数字はずっと並べられておりますが、これはただ単にこの増加していく人口が、どこに、どの産業部門にどう吸収されていくだろうかということが出ておるだけで、しかもそれに見るところによると、第二次はほとんどふえないで、第三次の方にはとんど大部分が吸収をされておるという解決しかなされておらないのであります。それは先ほどから申しておりますように、サービス業その他に対する潜在失業を、ただそこにはきためるという推移を見通しておられるだけであって、何ら政策にも対策にもなっていないじゃないか。もっとやはり第二次産業に積極的に、そういうところにどういう吸収の方法を考えるかという問題と、そういう鉱工業に、もしそれほど期待ができないとすれば、差しあたり、特に計画の全般においては、やはり国土の開発計画、その他財政による雇用増加考えなければならない問題であると思うのですが、それらの点はどういうふうにお考えになっているか。
  22. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 人口増加は、大体六カ計画におきましては五・五%、これに対して労働人口が一二%ふえるという数字でございますが、その一二%のふえる労働人口をどういうふうに吸収するかということにつきましては、計画といたしましては一二・七%を吸収するという方針をとっております。それじゃどの方面にこの吸収をするか、こういうことに相なりまするというと、まず第一次産業、農業関係の方におきましては、これはあまり吸収できる力がないと見まして、四・四%の吸収率を見ておるわけであります。それから第二次産業におきましては一七・九%吸収することになっておりますが、特に第二次産業の中では、失業対策等をいたしたいという考え方から、建設業のごときには三六%吸収する、こういうふうに見ておりまして、平均いたしまして、第二次産業にはただいま申しました一七・九%吸収する。それから第三次産業のサービス業、それから小売業、こういう方面におきましては、これは総括いたしまして二〇%吸収する、こういう工合に相なっておりますわけでありますが、特に第二次産業の建設業に重点を置いておるということは、失業対策に持っていきたいという、こういう考えであります。
  23. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 もしそういうふうに第二次産業に、特に鉱工業の規模拡大の問題なり、あるいは建設産業なりに相当な期待をしようということになると、これは当然に資本蓄積、資本形成の問題と、さらに、特に財政規模の問題に関連して参ると思うのでありますが、それならばお尋ねをいたしたいのは、財政の規模を、一体長期的に考えて、国民生産、あるいは経済力との関連において、財政の規模をどういうふうにお考えになっているか。その点をまず御説明を願いたい。特にこの点は、私この間この計画について御質問をいたしましたときに、長期経済計画をお立てになると同時に、非常にラフなものであっても仕方がないかもしれないけれども、長期の財政計画を、財政方向をはっきりされる必要があるということを繰り返し申しましたし、これについては大蔵大臣自身も、そうでなければならないと思うというふうなお考えを披瀝されたにかかわらず、ここに提示されたものからいいますと、財政の問題はほとんどネグレクトされている。ほかの各部門別その他の計画は、非常に精細にできているのにかかわらず、財政金融の問題が、この計画の中において占める地位は非常に重大であるにかかわらず、その重大な割に、ほとんど配慮が払われていない。従って総合経済計画案が一種の物動計画になってしまっている。社会主義的な非常に高度な計画経済の場合には、物動計画が全面的に前に出てきて、それが中心になって財政計画が付随的に、体系的に処理されればいいかもしれないけれども、しかしあなた方においては、私たちでもまだ今の段階ではそれがやむを得ないと思いますが、ましてや社会主義的でない方向でそれを持っていこうとされれば、総合計画の問題の重点は財政計画であり、金融計画であり、資金計画であると思うのでありますが、それにもかかわらず、非常にお粗末な、ネグレクトされた計画しか出ていないので、その点においては高碕大臣の御所見を伺いたいと同時に、どうもこの点については、さきに約束をされた一萬田大蔵大臣の配慮なり、これに対する協力なり、そういうものが非常に欠けているんじゃないか。あるいはもっと極言すれば、ほとんどこれにサボタージュしておられるんじゃないかという感じしか受け取れないのでありますが、その辺の事情をはっきり御説明願いたい。
  24. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。この計画経済につきまして、われわれが自由主義を基礎としてやっております以上、財政投融資面、あるいは財政計画等が、この計画実行に非常に大きな役割をするということは、まさに御説の通りでございまして、これは非常に重大な問題であります。で、今日示しております長期経済計画に関する答申は、これは経済審議会がいろいろ検討いたしまして答申した結果、この十二月五日に提出されたのでございまして、これに対する財政計画等は、これは与党としては非常な重大なる責任があることでありますから、現在与党と今検討中でありまして、与党との意見等が調整されましてから急速にこの問題の政府としての態度をきめたい、こう存じておるわけであります。
  25. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 経済の長期計画策定に当りまして、財政金融面が当然十分に考慮せられて立案されておると私は考えておるのでありまするが、しかし今回のこの案につきましては、今案自体について、ただいま長官の御答弁もありましたように、政府としても、また党としても今検討を加えて、そうしてこの確定案をいたそうといたしておるのでありまして、この間において財政金融面についても、もし不十分な点があれば、できるだけ十分これに適応するように持っていきたいとかように考えておるわけであります。
  26. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 どうも前のときにお約束になった態度からすると、非常に後退をしていると思うんですが、なるほど大蔵大臣の見地からすれば、そういう長期計画その他一応の方向なり、一応の数字を確定をすることは、予算編成権との問題において非常にデリケートな問題があるというような御配慮から、あるいはそういう態度が出てくるかと思うんですけれども、しかし大きな方向なり、大きなあらましの見透し、数字計画を立てることは、こまかい毎年々々の予算の編成権なり、予算の審議なりを、何ら妨げるものではないと思うのでありまして、むしろそういう長期計画をはっきり見通しながら、それとの関連において毎年の予算を編成していかれることこそ、むしろ安定的な予算ができ上ると、こういうふうに考えますがゆえに、その点はもっと積極的な態度を示されてしかるべきじゃないか、こういうふうに思うのであります。  従ってもう一つ具体的にお聞きをしたいことは、長期の六カ年にわたって財政の規模を大体どういうふうに持っていこうとしておられるのか。国民経済力あるいは国民所得との関連において財政の規模を方向としてはどういうふうに長期的に持っていこうとしておられるのか、その点をはっきり御説明を願いたい。
  27. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。もちろん国民経済力の伸展に伴うて、国民総生産額の増加に従って、財政の規模というものはそれに準じて大きくなっていくものと考えております。
  28. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると、一定の比率を大体出しておいて、その比率をずっとそのまま続けていく。従って比率としては規模拡大はないけれども国民生産が、経済力伸びるから、その伸びに応じて大体財政規模もふえていくのだというふうなお考え方なのかどうか。
  29. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。大体国民所得に対しまして、昭和九年から十一年度の平均をみますというと、一五・四三%という数字になっております。それで大体その数字基礎にいたしまして増減いたしたい、こういうふうに考えております。
  30. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そこに非常に大きな問題があると思うのですが、なるほど一五・四三%という比率で、その比率をそのままずっと当てはめていらっしゃれば、絶対額としては財政の規模は若干ふえて参ります。しかしこれは二十六年から三十年に至る財政の規模は、今までわれわれが国民所得との対比において示されておるところは、一八%から最近だんだん下ってきても一六%程度になってきておるのです。従ってここから一五・四三%に下げるということは、財政の規模を比率的には下げられることなんです。今果してそういう方向転換をすることが必要なのかどうかという問題、私はむしろこれは今お話しのように、九−十一年度、戦前の数字をおとりになったのですが、戦前における財政の国民経済における地位と、戦後の財政の地位とは、私は非常に違って参っている。ことに戦後においては社会保障的な経費が相当ふえている。これに国家が相当に金をつぎ込まなければならないのにかかわらず、もう一つ財政投資の問題、そういう公共投資の問題、そういう点において国家自体が配慮しなければならないという面も、戦後国家の財政の非常に特質的な点じゃないか。そうすれば、むしろ比率的にはある意味においては財政が占める地位が大きくなることの方がむしろ傾向としては考えられなければならないというような問題もあると思うのですが、そういう点をどういうふうにお考えになっているか。
  31. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。ただいま佐多さんのおっしゃったような意見が、やはり経済審議会においても相当有力に発言されたのであります。いろいろ各方面の意見を検討いたしました結果、この経済審議会といたしましては、今日の答申が出ておるわけでありますが、そういう意味につきましては、与党のよく意見を聞きまして、政府態度をきめたいと、こう思っております。
  32. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そこでその問題は国民負担との問題に関連をして参りますので、いたずらにその比率を上げて財政規模拡大をするというわけにも参らないと思う。そうなってくると、経費の方の削減の問題も問題になると思うのですが、この六カ年の計画について、経費、支出の傾向をどういうふうにお考えになっているか。その配分の問題をどういうふうにお考えになっているか。たとえば財政投融資なりあるいは公共投資、公共施設というような問題とそれから社会保障関係の経費の伸びの問題と、それからよく問題になります再軍備関係といいますか、防衛関係の膨張の問題、それらの関連をどういうふうにお考えになっているか。
  33. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) ただいまの御質問に対しましては相当数字に入りますから政府委員からお答えいたしたいと思います。
  34. 佐々木義武

    政府委員佐々木義武君) それでは私からただいまの御質問の点についてお答えを申し上げます。  財政の歳出の問題は規模の問題とも関連いたしますが、財政の規模に関しましてはただいま長官から申し上げた通りでございまして、その配分の仕方の問題でございますが、特に各項目のバランスと申しますか、歳出費目の中で六カ年計画でございまするから細かく作業をするわけにいきませんので、主たるねらいは他の事業部面の要請にこたえ得るやいなや、どの範囲でこたえ得るかという問題が一つと、そのこたえ得る尺度といたしましては他の費目とのバランスがどういう点が一番財政金融部会の問題の焦点でありまして、なるべく均衡をとった姿で問題を処理していきたいというので、一つ考え方といたしましては、戦後ありました、ただいまも若干まだありますが、財政の面から金融の負担をするというふうな考え方は少くとも今後の行政といたしましてはとらない。相なるべくはそういう方面は金融部面プロパーの問題として財政投融資あるいは市中金融の調整と申しますか、そういう関係で処理することといたしまして、そして財政といたしましては本来の意味の公共的なもの、たとえばただいま御指摘がありました社会保障の問題とか、あるいは国ならでは、あるいは地方公共団体ならでは施行のできない公共事業関係とか、あるいは地方財政の問題とか防衛、賠償の問題、そういうふうな各大きい費目のバランスをいかにとるべきかというところに重点をおいたわけでございます。そこで考え方といたしましては先ほど歳入の点でも申し上げましたように、これは長期にわたっての問題でございますので、大体の基準と申しますか、こういう考え方が妥当じゃなかろうかというふうな考え方で最後にはいろいろ議論はあったんですけれども、おさまった線を申し上げますと、社会厚生関係に関しましては概略国民所得の伸びで伸ばしたということにお考え願ってけっこうだと思います。それから公共事業に関しましてはいろいろ問題はあったのでございますが、道路の問題それから災害復旧の問題、食糧増産の問題、これは少の意味合いが違いますので、一般公共事業とは観点を変えまして、そして食糧に関しましては食糧の需給態勢と申しますか、あるいは農家所得の増加等を考えまして、それに見合えるほどの資金をできるだけみまして、そして災害復旧等に関しましては、これはなるべく過年度災害は三年あるいは四年で解除をするということで、これを計算し、道路に関しましては今の道路ガソリン税に基く法律が三十三年でなくなりますけれども、計算の建前といたしましては、そのまままあ計算としては伸ばしてみるというふうな考え方に立っています。しかし一般公共事業に関しましては、これはそういうふうな尺度がございませんので、多々ますます弁ずという傾向になるわけでございますから、失業対策等ともにらみ合せ、概略国民所得の伸びの一・七%程度の伸びでこれを見ようというふうな計算の仕方に立って各分野の調整をしておるわけでございます。  それから地方財政等の問題に関しましては、将来の問題とかね合せますと、ただいまのところでは、従来の交付税率をあまり変えないということで計算をいたしまして、そしてまずまずこちらの意図いたしました特に経済六カ年計画関連のある住宅の問題あるいは公共事業の問題、あるいは雇用の問題等は、大体その財政臓からカバーし得る点が見得るのじゃなかろうかというふうな考え方で計算をしておるわけです。
  35. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 防衛関係は……。
  36. 佐々木義武

    政府委員佐々木義武君) 防衛関係につきましては、防衛庁の第十二次案でございますか、これを基礎にいたしまして、そうして国民所得のただいま二・一から二%くらいになりますが、それを大体据え置いて計算しております。
  37. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 社会厚生関係あるいは公共事業関係、地方財政関係、さらに防衛関係に至るまで、みんなの問題を、総花的に問題を解決をしようというふうな態度をおとりになるし、さらにその前提としては、財政の規模を戦前の比率程度に落しておこうというような、両方の無理をおやりになるから問題は何ら解決されていない。(「その通り」と呼ぶ者あり)今のお話からも何ら問題は解決されていない。問題だけは一応提示してお示しになりましたが、問題は少しも解決していないと思います。しかし、この問題はもっと内容的に入る問題ですし、もう少し具体的な数字なり資料が現われてからあらためて問題を論議いたしたいとは思いますが、とにかくその比率を戦前比率でいいかどうかという問題の点と、先ほど申し上げたように、すべてのものを総花的に全部何とか満たそうとするこそくな手段をおとりになるのでなくて、ここでは私たちは防衛の経費はストップ、さらに漸減をするというふうなことを勇敢におやりになると、そういう決意をなさるにあらずんば、問題はいつまでも解決しないのであるという点、従ってそういう意味では、社会保障の問題と建設の問題と防衛の問題と、全部が同時にいいかげんになされるように安易にお考えになることは今や許されない段階にきているのだということを一つはっきり申し上げて、この問題は後に譲っておきたいと思います。  ただ一点、防衛関係の問題が出て参りましたので、これは特に防衛庁長官と大蔵大臣お尋ねをしたいと思うのでありますが、防衛分担金の今後の方向、今後の傾向をどういうふうに持っていこうとしておられるのか、そうしていわゆる削減の一般方式なるものが今までいろいろ論議されているようでありますが、これはアメリカとの話し合いにおいてはどうなっているのか、それから、政府は今度の三十一年度の防衛分担金削減の具体的な数字をおきめになる場合に、この削減の一般方式なるものをどういうふうに扱おうとしておられるのか、その辺を一つ詳しく御説明願いたいと思います。
  38. 船田中

    国務大臣(船田中君) 防衛分担金削減についてのアメリカ側との折衝はまだ始めておりません。関係省の間において事務折衝をいたしておるという段階でございまして、これから防衛庁費の大体めどをつけましてから先方と折衝を始めるということになろうかと存じます。  一般方式をどういうふうに立てるかというようなことにつきましても、実はまだ外務、大蔵及び防衛庁の三省の間において十分まとまった意見があるわけではないのでございます。  ただ御参考のために申し上げますと、昭和二十九年度におきましては約五十億の防衛分担金を削減いたしたのでありまして、防衛庁費が七百四十二億円、防衛支出金が五百八十四億円でございますが、そのうちの分掛金が五百三十二億円、施設提供等諸費が五十二億円、合計いたしまして千三百二十七億円ということになります。昭和三十年度予算におきましては、御承知通りこの三月下旬から四月にかけまして折衝をいたしまして、四月十九日の日米共同声明の発表によりましてこれは妥結いたしたわけでございますが、交渉に当りましては、財政経済力の現状にかんがみまして、防衛関係の経費の前年度の千三百二十七億円というワク内におさめるという政府の根本方式に従いまして折衝をいたし、その結果前年に比較いたしまして、防衛分担金が百五十二億円の減額となりまして、防衛庁の経費が八百六十八億円、それから施設提供等諸費が七十九億円、こういうふうに計上することができたわけでございます。従って御承知通り三十年度の防衛関係の予算は、防衛庁費が八百六十八億円、防衛支出金が四百五十九億余万円、それを内訳いたしますと、防衛分担金が三百八十億円、施設提供等諸費が七十九億円、合計いたしまして千三百二十七億円、こういうふうなことになっている次第でございます。
  39. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 今までの経過はそれでよくわかったのですが、三十一年度をどうやっていくかという点に対しては、大臣は、事務当局の間でもまだ話がきまっていないというお話でしたが、事務当局の話もさることながら、事務当局が話をきめる前に、政治的な一般的な方針として、どういう方針をおとりになるのか。それを授かって、それを事務当局の諸君はどう料理するかを考えるわけでありまして、その政治的な方針を私はお尋ねをしたい。  昨年の方式によれば、今御説明通りに総額千三百二十七億は動かさない。そうして中の配分の問題を、防衛庁費を増加するかわりに防衛分担金を削減した。防衛分担金が削減されただけは防衛庁の経費増に振り向けて、従って総額は同じにするという態度で臨まれたと思います。今度の三十一年度予算においては、その千三百二十七億という数字はどういうふうに持っていかれるつもりであるか。従ってそれとの関連において防衛分担金の削減と防衛庁経費の増なり何なりというようなものをどういうふうに——方針としてですよ、一つ一つの数学としてまだ固まってないことは重々承知しておりますから、そういうことは聞きませんが、方針としては一定の方針があって、それに基いてすでに折衝をされなければならないし、折衝ももう妥結されなければならない段階にきていると思う。さらに繰り返しよく言っておられるように、一般方式の問題もすでに早くから研究し、ことに重光外務大臣はこの夏日米会談に行かれてその問題を提起して、そしてこれを解決するようなことを言っておられるのだから、今に至ってまだその問題がはっきりしてないなんということはあり得ないと思う。そこいらをどういうふうにお考えになっているのか。これは防衛庁長官と大蔵大臣両方に一つお聞きをしたいと思います。
  40. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 一応私の考えを申し上げておきます。私はこの日本の防衛については、日本の防衛でありますから、これは将来において一定の限界がくるだろうと思う、こういう考えであります。それまではしかし防衛力を漸増していかなくてはいけない。しかしこの漸増は、常に国の国力にふさわしい程度に漸増しなければならぬ。こういうのがまあ基本的な一応の考えであるのであります。具体的にこの三十一年度の分担金についてどうという——これはまあ私の考えでは、三十一年度において日本はどういう防衛をやる、言いかえれば防衛庁費がどうなる、こういうことがやはりはっきりした上の交渉になってくるだろうと思う。従ってこれはまた全体の予算との関連においても考えていかなくてはなりません。今ここで具体的にこうだという段階に入っておりません。ただしかし私の考えでは分担金の減額ができないというようには考えておりません。
  41. 船田中

    国務大臣(船田中君) 防衛庁といたしましても、ただいま大蔵大臣の御答弁にありましたように、国力、国情に相応する最小限度の防衛体制をなるべくすみやかに整備いたしたい。またこれが日米安保条約なりあるいは行政協定の趣旨に従ってそれを実現するようにしていきたい、かように考えておりますが、ただいまお話がございましたように、三十一年度予算をどの程度にするかということにつきましては、せっかく今事務的に折衝もいたしておるような段階でございまして、まだきまっておりません。大蔵省との折衝がもう少し進みませんというとここではっきりしたことは申し上げかねる次第でございます。
  42. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 委員長関連……。防衛庁長官に伺いますが、米軍の発表によるというと、第七騎兵連隊並びに第七十七野砲大隊等は近く撤退するということが発表されているわけでございますから、当然来年度の防衛分担金というものは、そういう事実に基いても当然減額さるべきものだと考えますが、これに対する御所見と、それから大蔵大臣並びに防衛庁長官にそれぞれ御答弁いただきたいと思いますが、あなた方は、個人的にですね、一般方式なるものは賛成か反対か、それぞれの大臣から答弁願いたいと思うのです。  私は一般方式をのむということは、長期防衛計画の提出と防衛力増強を義務づけられる可能性が非常に強いと思いますが、これらに対して両大臣どういう見解を持っているか、また今後の交渉に臨むときの腹づもりというものをこの際御答弁いただきたいと思います。
  43. 船田中

    国務大臣(船田中君) お答えいたしますが、米軍がだんだん撤退をして参るということは、われわれの方にも通知が参っております。しかしそれだからといって本年度の防衛分担金に比較いたしまして、来年度の防衛分担金は必ずどれだけ減らなければならぬかというような、そういう方式はここに立てられないと存じます。
  44. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 一般方式に対するあなたの御見解は……。
  45. 船田中

    国務大臣(船田中君) 防衛庁費が相当に増額をされるということになりますれば、それに比較いたしまして防衛分担金が漸減するということは、それは一般的に申し上げられると思います。
  46. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 いや、一般方式を伺っておるのです。委員長、答弁不十分です。やらして下さい……。
  47. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 私は今、個人的な意見というようなお話でありましたが、個人的意見を申し述べてもどうかと思いますが、これはこの一般方式の意味なんでありますが、たとえばこの長期防衛計画を何カ年間の防衛計画をして、それに応じて分担金の額が減少していく、こういう方式、こういうような方式といたしますれば、これは問題としては、どういう内容のどういう計画になるのかというのが私は問題……たとえば将来にわたっての財政負担において見通し得るような範囲内のそういう計画であるか、まあここに一番私はもとがあると思う。そのくらいなら財政上十分やれるというような形において、同時に防衛分担金も、一般方式として会計が成り立っていく、これは私はそう悪い考え方といいますか、そう反対すべきものでもないと、ただそういう点において、従って私は非常に慎重に考慮していかなくてはならぬと、これは問題である、かように考えております。
  48. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 ただいまの関連質問ですが、もう一回伺わせていただきます。  それは米軍が逐次撤退して、なおかつ防衛分担金が減額にならないという理由は私はわかりません。それをもう一回お答え願うのと、それからもう一つは、防衛庁長官は、一般方式に対するあなたの御見解を私が伺ったことに対して答弁を逃げておられますが、これは何でしょう、重光さんが今年の夏、国会に明かにしないところのいわゆる防衛庁の長期防衛六カ年計画なるものを向うに持っていって、それと関連づけて一般方式というものを向うから押しつけられて、そうして重光さんはこれを持って帰った。ところが今の大臣の答弁から明らかなように、その長期防衛計画一般方式との関連というものがあれば、一がいに一般方式はのめないというのが大蔵大臣の腹だと、ところが外務大臣とか防衛庁長官は、一般方式でアメリカの抑圧に屈していこうとしておる。そこにやはり閣内の不統一というものができて、いまだにきまらないで、十二月二十日からは来年度予算の編成の基本方針をきめようという段階に、今防衛庁長官が答弁された通りに、防衛分担金の交渉すら正式に始める段階にいっていない、これが私は真相だと思う。私の見解が間違っておるならば、はっきり事実に基いて反駁していただきたい。で、防衛庁長官には、防衛分担金はどうして減らないかということと、重ねて一般方式と長期防衛計画との関連についておなたの御所見を伺いたい。
  49. 船田中

    国務大臣(船田中君) 先ほど私の答弁申し上げましたのは、米軍がだんだん撤退していくと、ただいま矢嶋委員から御指摘のように、ある師団の一部が撤退する、従って兵力が減る、だから三十一年度の防衛分担金が三十年度の防衛分担金に比較して必ず減るかどうか、こういう御質問でありましたから、それは必ずしもそうであるということは申し上げかねると、こういうことを申し上げたのであります。わが国の防衛力が漸次増加して参りますれば、それに従って防衛分担金もだんだん漸減していくということは、これは一般的に申し上げることができると思います。
  50. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 どうもその防衛分担金の削減の一般方式の問題、あるいは個別、本年度どういう態度であるかということについてのはっきりした御説明がないので、どうも了承をしかねますが、ことに大蔵大臣は、出せるようになれば出してもいいじゃないかというような非常にイージーなことをお考えになっておるけれども、先ほど六カ年計画の財政計画の問題をいろいろお尋ねしたときにもはっきりなっておるように、現在の日本財政規模、それの配分の問題等を考えれば、いわゆる再軍備関係の経費を、そういうふうに日本経済力伸びそのままで増加していくというようなことが、安易に許されない現在の実情であるということはあまりにはっきりしているし、従ってそこに勇断をもってそれらの経費をストップし、さらに削減することをお考えにならない以上は問題が解決をしないのだということを先ほど申し上げたのですが、そういう点に対する認識が何らないのじゃないか。  ことにこれはまあ基本的な問題でありますから論議はいたしませんが、今わが国が防衛をするといって再軍備をすることは、何ら国を守ることにはならないし、ことに今旧時代的ないろいろな防衛にいろいろ経費をつぎ込まれることは、がらくたを堆積される以外に何ら意味はない。かりに国防問題をやらなければならないとしても、新らしい戦略、新らしい戦術に対応した編成をしなければならないし、それを考えると、もっと別な方式が考えられなければならないし、それにむしろ十分な研究なり何なりをやる、そのための経費だと言われるならば、またある意味があるのだけれども、そういう定見も何もなしに、旧時代的ながらくたを幾ら堆積されても、それは何ら意味がないというような問題にもなると思うのですが、それらは意見にもなりますから、いずれ他の機会にさらにお尋ねをするとして、ただ一点だけ、先ほどから聞いておりますように、千三百二十七億というワクを一応二十九年度、三十年度はずっと保持してこられた。そのために削減とか、その削減分だけを防衛庁あるいは施設費の増ということで措置をされてきたのであるが、これは本年度方針としてはどうされるおつもりか。千三百二十七億はふえるのだと、そのワクは破って増加させるのだということをお考えになっておるのか、これはこのままことしも千三百二十七億で、従ってそれに照応して防衛分担金その他は大幅な削減をしなければならないのだと、それをやらなければ防衛庁の経費増は見込めないのだというふうなお考えなのかどうか、その辺の一般的な方針をどういうふうにめどをつけておられるか、そこをはっきり一つ明示していただきたい。
  51. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えします。ただいまこの防衛庁費をどうするかにつきましては防衛庁と相談をいたしておる最中でありまして、具体的に金額はわかりませんが、しかし千三百二十七億の昨年度の全体の防衛に関する経費はこれをこえることもあり得ると、私は今考えております。
  52. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 これをこえることもあり得るという御答弁でありますが、そうしますと、あなた方の方では、明年度財政規模を、歳入その他から考えれば一兆百億しかまかなえないということをおっしゃっておる。従ってこれがすでに防衛庁費が増加をすれば、その他いろいろほうっておいても、義務的に増加しなければならない経費もあるでありましょうから、必ずここには赤字が出るという問題にもなると思うのですが、そういうふうに非常に重大なときであるから、問題は、防衛庁費あるいはそれを含んだ防衛費の増加というようなことは絶対に考えられないので、それを考える余力があるくらいならば、もっと近接した社会保障の経費なり、地方財政の解決の問題なりに充てるということを真剣にお考えにならなければならない。その二者択一をやられなければならない非常に重大な段階であると思うのですが、そういうことを少しも重大にお考えになっていない態度であるとしか考えられないのですが、これらの点については次の国会でもっと全面的にいろいろと討議をいたしたいと思いますので、この点はこれでやめます。  ただ一つ、通産大臣にお聞きをしたいのでありますが、通産大臣よく御承知通り、この夏、日本の実業団が中国に参りまして、訪中日本実業団と中国の国際貿易促進委員会との間に一つの議定書を作って、往復一千二百万ポンドに及ぶ取引の議定をやって参った。さらにそれに付随して百万ポンドに及ぶ丙類物資の取引の議定をいたして参っておりますが、これはさらに個別的なバーター方式でなくて、総合的なバーター方式という形で問題を解決していきたいという態度であります。従ってこの考え方自体はすでに通産大臣も持っておられたし、通産大臣は何か三千万ポンドくらいのワクでというようなお話までしておられたのだから、それよりずっと内輪で議定書を作ってきておるのであるから、これを総括的に一括して御承認になって、この限度においてはどんどん輸出入をお許しになるということがしかるべきだと思うのですが、これが何らそういう取り運びになっていない。この点について大臣はどういうふうにお考えになっておりますか。
  53. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) ただいま御承知のように中共に対する貿易は個別バーターになっております。それで今この中共に対しては輸出入組合が近いうちにできるはずでありますから、その機構でもできましたら、一つ総合バーターの方式に持っていきたいと、かように考えております。今直ちにこの間結んできた協定だけで総合バーターをするということは困難だと思っております。
  54. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 その輸出入組合が確立してからというお話でありますが、商売は毎日々々進んでいるのでありますから、もし輸出入組合がこの議定書の方式、数量を妥当であると見るのならば、将来はそれに引き継ぐとしても、今はこのラインで問題を進めさしていくことが非常に必要だと、時期的の問題もありますし、特に丙類の物資についての百万ポンドの物資については十二月までというような議定書になって、いるんで、そういうこともお考えになって、商売のことその他はよくおわかりのはずであるから、もう少しその点を幅を持たして、早く実施できるようにワークさすことが安当だと思うんですが、それらの点はどういうふうにお考えになっておりますか。
  55. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) お話のように、私もできるだけ早くそういう方式に進むようにいたしたいと思いますが、しかし一方においては、御承知のように輸出入の均衡を非常に欠いておる。ですから輸出入の均衡を考えつつ拡大貿易に持っていくということをやらないと措置に困りますので、そこで今至急に輸出入組合ができるように希望をし、促進をしておるわけであります。
  56. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 いや、この議定書によれば、均衡は欠いてないんで、総合的に考えれば欠いていない、ちゃんと均衡がとれているし、特に甲類物資については二、三の問題もあるかもしれませんが、乙類なり丙類の物資に関する限りは、むしろ均衡を欠くどころか、超均衡になっておる。ある意味では日本の方にプラスになっておる。その不均衡の問題をちっとも御心配になる必要はないんで、組合ができなければ云云というようなことは、あまりにもこの組織なり、官僚的な考え方にとらわれた、商売を無視した考え方だと思う。事務当局諸君がそういうことを言っているのならばあるいはまたやむを得ないかもしれないが、大臣が、しかも非常に積極的にこの問題を進めよう、承認に至らない限りは、むしろこういう経済貿易なり何なりというものは進めてしかるべきだということを繰り返し言っておられる大臣が今に至ってそういうことに籍口してこの問題をストップされておるということは、われわれどうしても了承できないのですが、その点はどういうふうにお考えになっておりますか。
  57. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) これは非常に事務的の問題で、実際うまく輸出入バランスするかしないかということは、ただ大ざっぱにだけきめるわけにもいきません。ですから、どうしても事務的になります。従ってその事務的に処置のできるような輸出入組合ができませんと、どうもただあの契約だけでそれが必ず実行ができるという確信も持てないものですから、従って輸出入組合の成立することを待っておるわけです。
  58. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 いや、事務的の問題だとおっしゃるけれども一つ一つの、決済するとか何とかいうようなことは事務的の問題であるかもしれないけれども、総合的に勘案すれば、バーターをするということははっきり数字的に出ているのですから、これはもう事務的な問題でも何でもないので、ただ、だれがそれを取り扱うかの問題はありますが、それは、従って今後輸出入組合を作る人たちが、責任を持って前のものを引き継ぐという了承がありさえすれば、その限度でならばどんどん進めていってしかるべきじゃないか。それができなければやらないのだと言って、それができるまで便々として待っているというような商売の仕方はないじゃないか。それが国営なり何なりの方式であるならば、あるいはそういうことも考えられるかもしれないけれども、そういうぎごちないやり方がいけないということを強調し、主張をされるのが、ほかならぬあなたじゃないですか。それならばそういう考え方で、もっとそれを促進をされればいいのじゃないか。さらに輸出入組合が、完全にできてからとか何とかいうことを言っておられるが、一体それならばいつからワークするようにお考えになっているのか、それをさらに促進して、いやもうあと一カ月、あるいは十日後にはそれが発足するからそれまで待つというならば、あるいは口実になるかもしれないけれども、そういうめどもなしに、ただ輸出入組合がまだできないからじゃ商売はいたずらにストップして、日本にマイナスになる以外の何ものでもない。そこいらもっと勇断をもってお進めになってしかるべきじゃないか。そういう手続的な行政事務的なことにかかわりなく、政治的に問題を運行していくということが、あなたの信条じゃないですか。あなたがそう事務当局の繁雑な手続に遠慮される必要は毛頭ないでしょう。その点をどういうふうにお考えになるか。
  59. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) ただいたずらに繁雑な手続をやかましく言っているのじゃないのです。だから今の当業者が、そういう必ず総合バーター方式でやる、やれるということの確信があり、そういうギャランティーがあれば、これは許してもいいと思います。ただそれが果してできるかできないか、これは私一つ一つ知らないのですが、個々ばらばらの取引では、それはまあ総合バーターが果してできるかできないか、やはり疑問を持つのは一応もっともだと思いますから、その点で一つできるだけ促進するようにはいたしたいと思います。
  60. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) それでは佐多君、だいぶ時間が経過しましたから……。
  61. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 ではもう時間が経過しましたから、これ以上は言いませんが、希望としては、総合的に勘案すればバーターができることは明瞭なんです。そのことには何ら僕は意見はないのであります。事務当局自体も、その点については何ら意見はないのじゃないか。ただ手続上、まだ組合ができていないからとか何とかということで問題がストップしているのですからもっとその点は積極的にお進めになるように事務当局にお命じになって、あなたの年来の主張が一歩でも進むように努力をされることを切に希望をして、私の質問を終ります。
  62. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 資料要求について……。  先般、大蔵大臣の本予算案提案趣旨説明のときに、私は資料要求として、一般経費の節約、賠償費、公共事業費等の不用、百六十億円の内訳の詳細なる資料を委員長を通じて要求しておいたのでありますが、すでに本委員会は本審査に入ったにかかわらずいまだに出ておりません。委員長を通じて至急に提出されるよう要望いたします。
  63. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 再び督促いたします。  それでは午後一時まで休憩いたします。    午後零時八分休憩      —————・—————    午後一時四十八分開会
  64. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) ただいまより予算委員会を再開いします。
  65. 中山福藏

    ○中山福藏君 議事進行について。委員長は先に一時から開会ということを宣せられましたが、すでに二時になんなんとするときに政府大臣諸公がお見えにならぬということははなはだ私けしからぬと考えておりますが、どうか一つもう少し精励していただきまするように委員長から一つ注意していただくようにお願いいたします。
  66. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 私も中山君と同感であります。さらに政府に出席をすみやかにするように督促いたします。
  67. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 まず大蔵大臣お尋ねをいたしますが、今回補正予算が出されてきたわけでありますが、これにつきまして前国会で鳩山総理は木村委員に対しまして、当時災害以外に補正予算は提出しない、これを強く言明せられたのであります。おそらく、もしも出すようなときには政治的責任をとるというようなことまで鳩山総理は言われたのであります。これについて大蔵大臣も当時同調せられ、同感の意を表されたのでありますが、しかるに今回この補正予算を出されることになったについていかなる見解をお持ちなのか、これを率直に伺いたいと思うのであります。
  68. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 補正予算を出さないということを申し上げたのは事実であります。まあ大蔵大臣としては予算の補正をしないという態度をとることは、これはまたある意味において当然のことであろうと思うのでありますが、まあ今回地方財政の窮乏が非常に激しい情勢を生じましたので、やむなく特別会計の予算の補正をいたし、さらに一般会計の補正をしてその財源を捻出していくと、こういうふうな措置をとったのであります。まあ今度の措置によりまして健全財政のこの推移は、一般計会を減額補正をしてその財源をもって充てるというこの健全財政の堅持の線は、どうぞ御了承を得たいと思っております。
  69. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 情勢が地方財政関係につきまして緊迫してきておるということは、これはもう申すまでもないのでありますが、しかし過去において絶対に災害以外に補正予算を出さぬ、出すような場合には政治的責任をとるというようなことを言いながら、地方財政がまあかような状態になればなるで補正予算を出す。これは私、鳩山総理政治的な道義からいってどういうものかと思うのであります。こういうことでありますがゆえに、政治家というものはそのときそのときで切り抜けさえすればいいのだ、あとはどうなってもいいというような感を与えるということは、私は国民に対する関係からゆゆしいことだというふうにこれを考えるのであります。これはまあ大蔵大臣にはこれ以上申しませんけれども、どうか事は私は見方によりましてきわめて重大なことだと思いますので、鳩山総理にも特にその点をお伝えおき願いたいと思うのであります。  次には今回の財源捻出百六十億のうち今までに判明しておるところによりますと、一般経費の節約が四十億、それから賠償費の不用が三十億、公共事業費の不用が九十億というふうにまあ言われてきておるのでありますが、これが内容について詳細に承わっておきたいと思うのであります。
  70. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 財源のこの内容につきましては無理がないように実情に即してやるという点もありますので、今関係各省といろいろと折衝を重ねておる。今ここで詳細に申し上げる段階にありませんので御了承を願いたいと思います。
  71. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 しかしながらすでにこれ予算は補正予算として出ておるのでありまして、そのときにまだ確定しておらぬ、関係各省と打ち合せをしておると、これで一体いいかどうか。またかねがね委員会といたしましてはこれが内訳を書類として要求しておるんでありますが、今もって出ない。こういうことでほんとうに審議というものができるのかどうか、この点について多分に疑問を持たされるのであります。この点について重ねて伺っておきたいと思うのであります。
  72. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) ただいま詳細に具体的に申し上げかねると申し上げたのでありますが、大体において公共事業費等におきましてまあ八、九十億程度の財源は考えておるわけで、その他一般経費の節約、さらに賠償の不用と、こういうようなことを財源に考えて、必ず財源措置はできるという確信はあるわけであります。
  73. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 またこの問題について時間があれば詳細質問をしたいのでありますが、先を急がなければならぬ関係もありますので、これについてはいずれ他の同僚議員からも質問があろうかと思いまするから次に移りますが、地方団体におきまして給与の実態調査をすると、おそらく今まで以上に赤字が出てくるだろうということを確信しておるのであります。これに対する補正を必ずやしてもらわなければならぬという要望がきわめて強いのでありますが、これにつきましてどういうお考えをお持ちでありましょうか伺いたいと思うのであります。
  74. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) この地方財政の給与費のこの自治体の調査の結果が近く発表になると思っておりますが、この給与費の高い、これをどうするか。こういうふうな点につきましては三十一年度予算編成に際しまして、地方自治体の財政をほんとうに建て直すという根本的な措置をとろうと考えております。その際にあわせ考えるのでありまするが、しかしこの給与費が高いというに点ついては、特に私は地方自治体の反省あるいは具体的措置を考えていただこうと、かように考えておるわけであります。
  75. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 そうしますと将来補正の必要が出てきたような場合には、これを補正なさるおつもりでありましょうか。
  76. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 補正をする、そのこと自体について補正をする考えは持っておりません。根本的対策がある場合には全体の関係においてこういうものを処置したいと考えております。
  77. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 賠償費、先ほど申しまする通りその関係の賠償等特殊債務処理費を三十億削るということになっておるのでありますが、賠償関係を見ますと、ビルマ等の賠償もいよいよ来年度からは具体化するわけでありまして、そういう点を考えますると、賠償費の節約を今やるということは将来いよいよ賠償の支払いが本格化する段階であるだけに、非常に問題を残すのじゃないかというふうに思うのでありますが、その点について御見解を表明願いたいと思います。
  78. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お説の通り全くそういう点があるのでありまして、がしかし、今日この地方財政が非常に窮迫しておる。このために財源を求めるという点からいたしまして、賠償費の中で差し当り不用になるその金額を財源に充てたい、かように考えておるわけであります。
  79. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 要するに百六十億円からの経費を不用に立て得るということ自体が放慢予算であるというそしりを必ずや買うだろうと思うのでありまして、これは予算の権威にも関係するし、またこれが国民感情に及ぼす影響も非常によくないというふうに思うのであります。減額補正だと言っておられるようでありまするけれども、減額し得るそれが百六十億もそういうものがあるということが、一面において非常に、中小企業者等の対策費については、何億に過ぎないというようなものでも非常に問題にせられる。そういう際であるにもかかわらず一方ちょっとひねれば百六十億出てくる。こういうことでは予算の権威というものに対して国民が非常に疑問を持つのです。この点について大蔵大臣は真剣にどういうふうにお考えになっておるのかお伺いいたしたいと思います。
  80. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 私は中小企業に対する対策はこれは考えて上げなくてはならぬ。これは別個にしかし私は考えていいと思うのです。一方の今回の措置と中小企業対策と必ずしも関係において考えない。特にかように節約予算、言いかえれば健全なる財政を堅持して行く上から、中小企業に私はやはりしわの寄る部分も大きいと思っております。従いまして三十一年度等の予算におきましては、中小企業に対する対策に特に重きをおいて財政を立てようと思っておる次第であります。
  81. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 今の御答弁から見ましてもいよいよ腹をきめてやるということになれば金はどこからでも出てくる。そういう決意をするかしないかが問題でありまして、現に財政を緊縮々々といっておりながら、その組んだ予算の中からなおかつ百六十億のものが出るのでありますから、中小企業関係についていよいよやるという腹ができますれば、私は百数十億の命が同じく出てこなければいかんと思うのです。そういう見解からしばらくいろいろ御質問をいたしまするから、そういうお気持で従来とは変った飛躍的な気持で御答弁を願いたいと思うのであります。  先般九日の衆議院の予算委員会で、大蔵大臣中小企業金融を円滑化いたしまするために、国民金融公庫、中小企業金融公庫に債券を発行させるということを言われておるのでありますが、私はある意味におきましてこれに非常に賛成なんであります。何となれば従来中小企業の専門金融機関のうちで債券を発行しておるのは、組合の専門金融機関たる商工中金のみであります。公庫の方はいずれも政府資金だけでまかなってきておるのであります。従って組合専門金融機関の資金コストは非常に高くなっている。しかるに公庫の資金コストは低くなっている。その結果どういうことになるかと申しますると、国策の線に沿って組合を作ったものが高金利の金を借りなければならん。そうでなくて個人で従来通り行こうというものの方は低金利の金が借りられる。そういう矛盾撞着をきたしておるので、そういうばかなことが政府自体によって行われておる。ここに非常に問題があるのであります。これがために組合を作ってやってみても一向何にもならん、組合はむしろ作らん方がいいというような気風を今醸成しておるのであります。まさに中小企業対策の根幹をなしておるところの中小企業の組織化という基本線を崩壊させつつあるのであります。政府は口には組織化を唱えておるけれども、実際では政府みずからが組織化を阻害しておる。かような結果が出てきておるのであります。そこで国民金融公庫、中小企業金融公庫にもひとしく債券を発行させまして、そうして組合金融というものと個人金融というものについて資金コストのレベルを一応同等にする。そうしてさらに金利を引き下げることは両方合せてやっていくといういき方をすることがこの際絶対必要である。それでこそはじめて中小企業の組織化を阻害せずして、また金融の円滑化をはかり得ることになると思うのであります。さすがに大蔵大臣は金融の専門家であられまするから、そこにおそらく着目せられておるのではないか。そういう見地から金融公庫あるいは国民金融公庫にも債券を発行さしたらということを言われたと思うのでありますが、これに対してあるいは政調会あるいは事務当局の間にも異論があるやに聞くのでありますが、それはほんとうに中小企業金融を思うゆえんではない。この際大蔵大臣は少々反対がありましても、中小企業金融公庫、国民金融公庫に債券を発行さして、そうして組合金融に回す金の方が高金利でいくというような、国策の線に合わぬような結果が出てくることをこの際修正せられる必要があると思うのでありますが、この点について大蔵大臣の御見解を承わりたいと思うのであります。
  82. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 中小企業に対する資金面の問題でありますが、私は若干中小企業について申し述べなくちゃなりませんが、従来金融々々ということで中小企業の育成をはかり得るかのような考え方が多かったのでありますが、私は中小企業の育成はそういうなまやさしいことでいくんじゃないんで、そういうふうにいたずらに金融面でやればかえって中小企業というものの育成を妨げる。中小企業についてはもう少しそういう金融面ということでなくて、中小企業の実態についてこれがどうすればりっぱな企業として成り立って行くかという点に思いをいたすべきだ。それにはいろいろ企業の形態もありましょうし、あるいはまた企業間の問題あるいは大企業と中小企業との系列化をどうするか。あるいは中小企業自体の競争はどうであるか。あまりにも数が多くはないか。いろいろ私はそういった面を今度は考えてみようと思っておるわけでありますが、そういうふうな基本的なことを考えて、そうしてさえその上において資金はどうであるか。こういうふうに考えておるわけでありまして、従来中小企業については政府関係の資金を導入して行くという形になっておるのは御指摘通りであります。こういうものも私は、行く行く金融の正常化に伴いまして、同時にまた財政資金の量の上から財政の金をこれに繰り入れることがむずかしくなる。あるいはまたそうしないことが正常化という見地からよかろうというような、こういうこともあり得るかと思います。そういう見地から一応私は、まず民間資金をこういう政府関係の金融機関に導入するとすれば、こういう中小企業関係の金融機関にまず導入するような考えがいい。こういうふうな考えで先般衆議院の予算委員会で答弁したわけであります。この点については今申しましたような観点を十分検討いたしまして、いいという判断がつきますれば決して実行をちゅうちょするものではありません。
  83. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 ぜひとも中小企業金融公庫、国民金融公庫のために金融債発行の道をこの際開かれまして、先ほど申しまするように合理的な線で行く、組合金融と個人金融との間に金利の差を、政府資金でしかもしいて作るというようなゆき方をせられないように重ねて要望をいたしておきます。  同じような見地からいたしまして組合金融の金利をこの際高いやつをどうしても引き下げていかんならん。こういう点から見まして組合金融機関の現在発行いたしておりまする金融債、それも資金運用部資金ですでに保有をいたしておりまする保有債券の金利引き下げをおやりになる御意思がありますかどうか、これを伺いたいのであります。
  84. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 概して原則的に申し上げれば、今日の金融市場の情勢は蓄積資金がふえ、そうして需給関係がよほどよくなり、むしろある意味において供給が過剰になっておる。金利も低下しつつある情勢で、この情勢は今後一そう私は助長されて行くという考え方をいたしております。そういう見地からいたしまして資金運用部資金において、この資金がふえるということになれば、これはその面から金利も下げ得るだろう。ただここに注意を要しますことは、一般金融機関に対する資金の蓄積が非常に増加いたしております。それだけではありませんが、その関係もありまして郵便局等の金の集まりが思わしくない状況にもあります。従いまして私の考えでは、今すぐに資金部から出る金の金利を下げるということは今のところ考えておりませんが、なるべくそういうことができるような情勢を作って打きたい、かように考えております。
  85. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 今後引き受けるものについて私はお尋ねしておるのではないのでありまして、すでに資金運用部資金で引き受け済みになっておる、今抱いておる保有債券の金利、これを下げるおつもりはないかどうか。これを具体的に言いますとすでに地方債は金利が六分五厘になっておるのであります。ところが中小企業金融の金融債引受けになると八分以上になる。これをせめて地方債並に下げることが中小企業合理化のための金融であるがゆえに必要だということを言っておるのでありまして、地方債並みに商工債券の引受金利をすべきである。中小企業金融の中でも組合の線に沿って中小企業を合理化せんとする組合金融の債券、それも現在すでに資金運用部資金で抱いておるものだけの保有債の金利を地方債並に引き下げる御意思はあってしかるべきじゃないかと思うのでありますが、この点を伺いたいと思います。
  86. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 今のところこの保有しておる既発債の金利を下げる考えは持っておりません。
  87. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 その点は前国会において大蔵大臣は下げるということを、私は、当時研究するというふうに言われたと思うのであります。これは速記録を調べてみなければなりませんが、そういう方向に向いていく。一般金利も下るのだから、そういう方向へ向いていくということを言われたというふうに私は記憶しておるのであります。その点どうでありましょうか。
  88. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 仰せのように下げたいのでありますが、調査の結果下げることが困難な情勢にあります。
  89. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 昔地方銀行は中小企業専門で貸し出しをしておったような状態であります。しかし当時でも郵便局から吸い上げた預金部資金というものは、低利資金として組合金融には流しておったのであります。ところが今日地方銀行は背ほどに中小企業の面倒が見きれなくなってきた。こういう点を考えますと、昔ですら預金部資金というものを低利資金に相当回しておったということになると、今こそ郵便局から吸い上げた資金運用部資金を少くとも組合金融関係には低利資金として供給をしていく、そうして資金コストを下げるということがどうしても必要なんじゃないか。昔ですらそうだったんでありますから、今の状態からいえば、それでいかなければとうていただいまの地方銀行のあり方から見て金利の引き下げは中小企業金融関係について困難であります。そういう点から見まして、資金運用部資金の低利資金的な昔の貸し出し制度というものを復活なさる必要があるんじゃないかと思うのでありますが、この点について御意見を伺いたいのであります。
  90. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 検討を加えてみることにいたします。
  91. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 それでは先ほどの金利引き下げの問題と合せてぜひ御検討を願いたいと思うのであります。  次には年末金融について伺いたいのでありますが、指定預金は年末には引き上げないというようなことはすでに言明せられておるようであります。しかしながら第四四半期にこれを引き上げるということになりますと、金融機関は御承知通り非常に鋭敏なものでありますから、年末金融の方も自然抑えて行くようになると思います。しかも中小企業関係には短期資金より御承知のように中期の資金が非常に多いものでありますから、当然こういう結果が出てくると思うのであります。しかも中小企業の関係では毎年二月三月がいわゆる危機だというふうにいわれておるくらいに、二、三月になりますと年末資金決済のしわが寄って参りまして、かえって困難な状態が出て来ることも御承知通りであります。従って第四四半期についてもこの指定預金を引き上げないということが年末金融自体、ひいては二、三月の金詰りに対しまして必要だというふうに思うのでありますが、この点につきまして御所見を伺いたいのであります。
  92. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) ただいま指定預金が六十二億くらいあると思いますが、これは年末に引き上げることはいたしません。第四四半期にも引き上げるかというお話ですが、ほかの関係もそうでありますが、特に金融では急激な変化は好ましいものではありません、すべて円滑に進めることがよろしい。従いましてこの第四四半期においても決して無理をしようと思っておりません。このままにしておくことが適当であり、引き上げることはよくないということでありますから……。
  93. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 ちょっと今のに関連して。政府の方では国庫収支の関係を年末、さらに年度末にどういうふうに予測しておるわけでしょうか。それからそれがかなり当初の計画なり見通しとは違った数字になっておるのではないかと思いますが、どういうことでそういう違いが出てきたのか。それに対してどういう対策をとろうとしておられるか。それらの点を御説明願いたい。
  94. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えします。当初ここで申し上げたと思います。七百億程度の勘定というふうに申し上げておりますが、ところが御承知通りその後米が豊作、他面輸出が予想以上の増加をいたします。従いまして外為の金と食管の金とを中心といたしまして、当初の七百億に対しましては二千億程度多くなって、言いかえれば年度末におきましては二千七百億くらいの勘定になる、かように考えておるわけです。これに対する主として、今申し上げたのですが、対策といたしましては、対策と申しましょうかどういうふうにこれを見ておるかと申しますれば、このうちには資金の蓄積にならずに、たとえば米の売却代というような運転資金的な金が流れておる。すべてが資本の蓄積によってそれだけ資金量がふえたというわけではありません、ありませんがこの後金融緩慢、同時に輸出の増大、米の増産といふことは結局においては国民所得をふやす。これが相当蓄積に回ることも当然考えて行かなければならぬ。そういうことも見通して今日のこの金融市場をどういうふうに操作して行くかということでありますが、私の考えはこの機会を利用して多年の懸案である、先ほど申しました通り、資本の蓄積が先に当然予想されて行くという状況下にありますから、この際無理がない程度において金利を下げて行く。同時に今日日本の金融市場ではでこぼこが非常にある。たとえば金融がゆるんだといっても短期貸付市場に金がまずどっと回る。ところが背はそういうふうな状況になると、これは長期の貸付市場に行き社債がふえる。こういうふうな自然の流れをなすのでありますが、今日ではそれがなかなかそういう状況になっておりません。ですからこういうふうにまず短期貸付市場がゆるめばまずこの金が長期の方に流れる。言いかえれば社債株式そういうような形における資金の調達を有利に且つ円滑にする。こういうふうにすれば自然に金利もそう急激に下りはしない。短期長期平均して資金量が平均すると同時に金利も穏やかな形になる。そういう形をとりつつさらに中央銀行の方の関係も確定する。こういうふうにして資金の正常化を進めることに努力するわけであります。ただそういう見地に立っても、なおかつ一時的な資金の緩和があり過ぎるという、そういう場合に中央銀行が債券の売り渡しを若干して資金の吸収をはかる、こういうふうな考えでやっておるのであります。
  95. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 前に大蔵大臣は、歩積は全廃する方向で研究したいというふうに言われておったのですが、その後また歩積の廃止について別段措置をとられておらぬように思うのでありますが、歩積を全廃せられることももとよりけっこうであります。全廃せられればそれでいいのでありますが、そうでないとすれば、せめて制限ぐらいはせられた方がいいのじゃないか。しかもこの年末に当りまして一歩積を解除してくれという声は非常に強いのであります。この際年末に当ってそういう手をお打ちになるのが時期としていいのじゃないかというふうに思うのでありますが、その点について伺いたいと思います。
  96. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) その点につきましては、金融機関が特に今日自主的に必要限度にとどめる、できれば廃止にするというふうな方向をとりつつある。特に一般の情勢が従来の貸付の市場から借手の市場に金融は転換をいたしております。従ってこの情勢からして、今申し上げましたような、従来やりにくかったそういう事柄も解決を見て行くであろう。これについてはまた政府としても可能な指導を与えたい、かように考えております。
  97. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 次に通産大臣に伺いたいのでありますが、日中通商協定によりますると、日本と中国の間でお互いに見本市をやるということになっておることは御承知通りであります。すでに中国は日本で見本市を開いたのでありますが、今度は日本から中国へ行って見本市をやらねばならぬことになっておるので、向うへ行ってやる以上は、ぜひとも日本の面子を傷つけないようにしっかりしたことをやらなくちゃいかぬということは言うまでもないのでありまして、この点につきまして、政府はこの見本市を当然援助せられると思いまするけれども、どの程度の援助をせられるか、具体的な構想を伺っておきたいと思います。
  98. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) 中国で見本市をやる限りは相当の成績をあげるものにしなければならぬということは全く同感でありますが、ただいまのところ、まだ政府からこれに対する援助をするということはきまっておりません。また相談も受けておりません。
  99. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 聞くところによりますと、経費は総額かれこれ二億五千万円、そのうち五千万円の政府は補助をしよう。しかし五千万円では問題にならぬ。少くとも一億円の補助がないというと、この計画は遂行できぬだろうというふうに言われておるようでありますが、すでに政府の方では何らかの補助金計上について御検討になっておるのじゃないのでありましょうか。
  100. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) 全体としての国際見本市に対する援助のことはただいま通産省で考えております。三十一年度予算にも要求するつもりでおりますが、中国の見本市について五千万円とか何とかについては全然まだ話になっておりません。
  101. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 それでは、またこれは別の機会に譲ることにいたしまして、次には百貨店法の問題なんでありますが、これはかねがね小売業者から非常に強い要望が出ておったことは御承知通りでありますが、最近消費者代表も百貨店法制定の必要を認め、これに同調してきているのであります。また一面産業合理化審議会の審議の模様を見ましても、百貨店法制定の方向に意見は一致してきているようでありますが、この際通産省ではすでに百貨店法案を練っておられるようにも聞くのでありますが、次の通常国会にはこれをお出しになると思いまするけれども、その点一つ確かめておきたいのであります。
  102. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) 御承知のように、産業合理化審議会に商業部会を作りまして、百貨店の問題というよりは、むしろ商業全般をどうするかということについての研究審議を依頼してあります。その結果を持ちまして通常国会に適当の処理をしたい、かように考えております。
  103. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 それをもう少し端的に伺いたいのでありますが、百貨店法案を政府案としてお出しになるのかどうか。この際これをお出しになるのかどうか。この際これをお出しにならなかったら、私は保守党の大黒星になるということを保守党のために考えているのであります。その点についてここで時期を誤まるということになりますると、むしろ百貨店擁護の結果になるおそれがありまするがゆえに、特にこの際伺うものでありますが、次の国会にお出しになるのでありますか、お出しにならぬのでありますか、その点端的に伺いたいのであります。
  104. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) 研究はいたしておりますが、まだ出すとも出さないとも決定はいたしておりません。
  105. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 次の問題は、百貨店と生活協同組合、あるいは購買会、あるいは官庁の共済組合、これらが非常に今問題になってきているのでありますが、たまたま公共企業体職員等共済組合法案というものが議員立法で出されているのでありますが、これは専売公社、電電公社、国鉄というものの職員共済組合でありますが、これに対して金銭的な給付をやる面においていろいろ規定せられておることは、これはもちろんけつこうなんでありますが、その中に、生活必需物資の購入販売ということが法律をもって規定するような建前になってきているのでありますが、さなきだに購買会問題が非常にうるさい問題になってきておりまする際に、これが法律によって明らかに規定せられるということになることに対して非常にまた問題が出てくるというふうに考えられるのでありまして、これについて政治的な通産大臣としてのお考えを伺っておきたいと思うのであります。
  106. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) かねて提案されました公共企業体職員等共済組合法案というものの中のこの共済組合の事業の中に、御指摘のように、「組合員の需要する生活必需物資の買入又は売却」という一項があるのであります。これは共済組合というものの性質から見まして、さらにこの生活必需物資の買い入れ及び販売を許さないということが果して適当かどうかは多少疑問がありますが、ただ、今までの状況を見ますと大きな公共企業体、鉄道とか、その他が不当競争、まあその公共企業体の機関を利用して、他の商業者のとても競争のできないような特別な便宜を受けて、そうして物の廉売をするというような、まあ一種の不当競争的な事実があるように思われます。少くもさような点はこれを矯正する必要があると、かように考えております。
  107. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 すでに今御答弁になりました点に関連いたしまして、たとえば国鉄は運賃八割引きでやっておる、こういう点を通産大臣指摘せられたものと思うのでありまするが、こういう点を是正するように通産相としては今後お考えになるというふうに承知いたしてよろしいでありましょうか。
  108. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) それをいかなる方法によってやるべきかという具体的な問題については、なお検討を要すると思いますが、通産省としては、お話通りさようなものの是正をいたしたいと考えます。
  109. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 次に労働大臣に伺いたいと思うのでありまするが、倉石労相は、八日、衆議院の社会労働委員会で就任あいさつをせられました際に、労働基準法の改正は行わぬというふうに言明せられたような記事が新聞に見えておるのでありますが、さような言明をなさった事実があるのでありましょうかどうか、伺いたいと思います。
  110. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 全部お読み下されば、そういうふうには受け取れないはずであります。
  111. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 それではどういうふうに言われたのでありましょうか、明確にお答え願いたい。
  112. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 私の労働法に対する考え方は、この労働関係というものは、御承知のように人と人との関係を律するものでありまして、なるべく法律や規則で相互に縛るということはしない方がいいというのが私ども考え方であります。そこで労働三法について改正すべきであるというふうなことをばく然と唱えられる論者もたくさんございます。それからまた手をつけてはいけないという論者もあります。で、御指摘労働基準法につきましては特に賛否両論が非常に多いのでありまして、私どもも、労働三法については、御承知のように私どもがあれを立法いたしました当時は占領中でありまして、草々の間に作られたものでございますから、十年間の経過にかんがみていろいろ欠陥もあるかと存じますが、それについていろんな論者がおりますので、前内閣の時分に臨時労働基準法調査会というものを設けまして、今この労働基準法を改正しろという意見があるが、この点についてそういうことをすべきであるかどうかということをまず研究しようということで調査を依頼してございます。そこで、その答申を待って政府は慎重に考慮して善処したいと、こういうふうに考えておるわけであります。
  113. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 労働大臣のお気持は、少くとも労働基準法の改正調査会において労働基準法を改正すべし、あるいは緩和すべし、こういうような結論が出てくるならば、それを取り上げるというふうに承知いたしてよろしいのでありましようか。
  114. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) これはどこまでも政府の参考のために検討を願っておるわけでありまして、その答申を待って考えてみたいと、こういうふうに存じております。
  115. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 労働基準法によりますと、ただいま農林産業関係には相当大幅な除外例があることは御承知のことだと思うのであります。具体的に言いますると、婦人あるいは未成年者にも時に応じては深夜業を認める、あるいはまた休憩、休日、労働時間にも相当な大幅の除外例を認めておるのであります。これはどういう見地から認められておるものだというふうに労働大臣はお考えになっておるのでありますか。
  116. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 私どもはあの法律を立法いたしますときには、ただいま御指摘のような事業は、その事業の特殊性にかんがみて、普通のものと例外的に取り扱う方がよかろうということであのようにいたしたわけであります。
  117. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 特殊性というと、具体的にはどういうことでありますか。
  118. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 大体豊田さんも御承知でもございましょうが、あの立法の当時にいろいろ議論がございました。たとえば商業及び工業というふうなものを同じ基準法で取り扱うということはまずいではないか、それから規模の大小によっても非常に違う。何千人という雇用関係を持っておる大きな工場と小さな中小企業などと一律に取り扱うことはまずいではないか、そういう議論がたくさんございまして、あの当時に農林水産、それからまた実際の小さな労務に服するようなものについてのわずかな特殊性は、現在の基準法は認めておることは御承知通りでございまして、そういう趣旨でございます。
  119. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 農林産業に対しまして相当大幅な除外例が認められてきておるというその理由は、私の承知いたしておるところでは、主として季節的な関係があって、これを労働基準法通りで押えて行くということについては非常に実情にふさわしくないという点があるように見ておるのでありますが、しかしこういう関係というものは商工業関係にも相当あるのであります。たとえば、みそ、しょうゆや酒の仕込みでありまするとか、かようなものになりますると、季節の関係が非常にあるのであります。また輸出用のクリスマス用の用品というもの、こういうものになりますると、もうそのときに売れなかったならばだめだということになるのでありまして、国内関係でも盆暮れのものなんというものはこういう関係があるのでありますが、要するに、こういうようなものはそのときに間に合うように作り、また間に合うように売らなかったならばもうだめだということになるのでありまして、これは中小企業関係、零細企業関係には非常に多いことはお認めになるのであろうと思うのであります。ことに輸出品の関係になりますと、輸出の船積みがしばしば問題になり、しかもその船積みの時期がちょっちょっと変ってくる、そうすると、それに間に合うようにどうしてもやらなかったならば、これは水産業関係で目に見えておる魚をとらなかったならば、あとでとれないというのと同じ関係になるのでありますが、かような季節関係、あるいは船積みの関係等があるような場合には、これは除外例を相当大幅に認めると、しかもそれも大工業でないというよううな場合に当然そう行かなかったならば、中小企業関係につきまして二代替、三交代をどうしてもさせるということになったならば採算が絶対にとれないのであります。そういう関係から、どうしてもただいま申しますような関係、あるいはそれに準ずるようなものにつきましては、大きな除外例をこの際設けるということが事業の特殊性から言って当然だろうと思うのでありますが、この点についての見解を伺いたいのであります。
  120. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 基準法の諸外国の立法例などを見ましても、お説のように業種別で、それから経営の規模の大小で分けておる国が非常に多いのでありまして、日本のように一本の法律でああいう形をなしておる国はきわめて珍しいのでありまして、私どももこの法律を施行しましてから十年間の経験にかんがみまして、ただいま臨時の調査会で委嘱しておるようなわけでありますが、私ども日本経済の今日の状態を静かに観察いたしまして、これに適応するように法律というものはあるべきではないかと、こういうことでございますが、とにかく影響するところも非常に大きい問題でありますから、十分にこの調査会の答申を待つて善処したい、ついでに申し上げておきますが、ただいま行われております調査会では、日本の特殊性である中小企業基準について、なかんずく力を入れて検討しておられるようでございます。この答申の出ることを待って善処いたしたいと思います。
  121. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 ごもっともな御答弁でありまするので、一応御答弁を承わっておき、また今後もその線に沿っての御努力をお願いいたしたいと思います。ただこの際念のために申し上げておきたいと思うのでありまするが、ただいまの労働基準法でも運用上は不都合な点がないように相当しかるべくやっておる、だからいいじゃないかというようなことを、場合によると政府部内でも言われる向きがあるように聞くのでありますが、これは要するに労働基準監督署に対して生殺与奪の権を与えると同様なことになると思うのでありまして、要するに法律にはちゃんとはっきりしたことが規定してあるが、それをしかるべく運用することによって労働基準監督署にやみ行為をやらせるということになる結果に現在なっておるのであります。かような行き方というものは非常に弊害があるのでありまするがゆえに、早く実情に、その特殊性に合う程度の労働基準法のあり方に改めて行くということについて、特にお考えを願いたいと思うのでありますが、その点について御所見を伺っておきたいと思います。
  122. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) ジュネーヴの国際労働会議などへ行ってみましても、世界各国とも割合にりっぱな法律を持っておって、そうしてその運営の面で、今御説のように手かげんしておるという例が非常に多いのでありますが、ただいま政府としてはそういうようなことを考えてはおりません。従って厳格に基準監督をいたします結果、いろいろなトラブルが起きておるのは御承知通りでございます。そこでそういうトラブルの生じないように、どうしたらいいかということは、ただいま申し上げました答申を待って政府は考慮いたしたいと思います。
  123. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 次に自治庁長官に伺いますが、税制調査会などでも農業事業税の新設を勧告しておるやに聞くのでありますが、農業事業税を新設せられる御意思があるかどうか、その点について伺いたいと思うのであります。
  124. 太田正孝

    国務大臣(太田正孝君) お示しの通り臨時税制調査会及び地方制度調査会におきまして農業事業税を取り上げております。問題は、かねてもごくわすかな期間実行されたと記憶しておりますが、そのときには主食は抜いておりましたが、今回地方制度調査会においても、財源として八十億ばかりを見込んでおるのはその大きな眼目のようでございます。問題は負担の公平という問題と、税収と両方から見なきゃならぬと思いますが、いかにも及ぼすところが非常に大きいのでございまして、私たちとしては特に農業に対する国の経済政策というものを中心に考えなきゃならぬ。また主食に対する取扱い方針をよく考えなきゃならぬ、その上で決定したいと、こう存じておるのでございます。いかにも問題が重大でありまするから、答申の趣意をよく考えまして処置して行きたい、こう考えております。
  125. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 ただいま地方財政の赤字が非常に問題になっておることは言うまでもないのでありますが、この地方財政の赤字に関連いたしまして、地方税の滞納の累積総額が最近幾らになっておるのでありますか、その点を伺いたいのであります。同時に、その滞納の原因、それからこれに対する対策をどういうふうにお考えになっておるか、それを伺いたい。
  126. 太田正孝

    国務大臣(太田正孝君) 最近の滞納はなかなか多いのでございますが、昭和三十年度における前年度から繰り越されました地方税の滞納は、府県説で二百三十二億三千七百万円、市町村税の方で四百二十六億千二百万円、これは見込みが入っております。合計六百五十八億四千九百万円となっておるのであります。この滞納の状況について申し上げますと、地方税に当りましては、申し上げるまでもなく国税と同じように徴収猶余、執行猶余などのいわゆる猶余措置が認められておりますから、これらの猶余額を差し引いた、いわゆる純粋の滞納額を見ますると、府県税では百六十二億六千六百万円、市町村税では三百四十億九千万円、合せまして五百三億五千六百万円と見込まれておるのであります。今猶余額を含めました本年度の滞納繰越額につきまして、この三十年度と前年の昭和二十九年度における繰越額と比較してみますると、府県税では四億八千七百万円、市町村税では三十一億六千六百万円、合計三十六億五千三百万円の増加になっておりますが、その増加の割合は五%になっておるのでございます。この増加した割合は昭和二十八年度の調停額、これは四千二十四億七千五百万円でございますが、その二十八年度の調停額と昭和二十九年度の調停額四千三百九十二億七千七百万円との増加割合は九%になっておりますので、滞納の関係からみると下回っているのであります。このことは年々徴収歩合が向上しておる、よくなっておる結果でございます。この滞納額の処理に当りましては、それぞれの地方団体におきまして、だんだん重なってきました赤字解消の一つとし、またすでに納税いたしました納税者の間の公平を、片一方は納めて片一方は納めないという、公平を期する意味におきましても鋭意努力しているのであります。悪質のものに対しましては断固として差し押えもする、競売などの方法をとりまして、また事情まことにやむを得ないというものにつきましては、自主的な分割納税計画を立てるなどの方法によっているのであります。そして滞納の整理に努めますとともに、他面滞納を生じないように納期内の納税を一そう勧奨するようにし、貯蓄組合の活用などの措置を講じているのであります。申すまでもなく税金を納める人の気持から申しましたならば、地方の行政なり財政がうまく行かないということに対する不満もございまするので、私たちもよく地方の事情が納税者にわかるように努めたいと考えておる次第でございます。
  127. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 ただいまの数字によりますると大へんな数字になっておるのでありますが、これは税の種類から言いますると何が一番大きいのでありましょうか、その点お伺いいたします。
  128. 太田正孝

    国務大臣(太田正孝君) 税種でございますから、政府委員から申し上げましてよろしゅうございますか。
  129. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 けっこうです。
  130. 奧野誠亮

    政府委員(奧野誠亮君) 税額が大きい税種が絶対額としては滞納額が多いという問題になろうかと思います。府県税では個人事業税、市町村におきましては市町村民税の個人分と固定資産税、こういう種類の税でございます。
  131. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 ただいまの御答弁からみましても、事業税というものが非常に問題の種になっておるということが数字的にわかってくるのでありますが、これは要するに、ただいまのところ商工業君は所得税、法人税のはかに事業税をかけられることによって二重課税になっている、これがまず第一の問題でありまして、第二には所得税を取られておらぬものにまで事業税がかけられてきている、こういう点が非常に問題だと思うであります。従って今日税制についていろいろアンバランスの、不公平の問題がありますけれども事業税の問題が最も大きなアンバランスの問題だと思うのであります。これについて、もしも農業事業税を新設せられないということになるならば、当然商工事業税も廃止をして、そうしてその跡始末においてはどうなるかということを、別個の立場から、税の公平の見地から新規にお考えにならなければいかぬというふうに考えられるのでありますが、その点についての御所見を伺いたいのであります。
  132. 太田正孝

    国務大臣(太田正孝君) お答え申し上げます。ただいまのところ商工業着に対する事業税をやめる考えは持っておりません。ただし不公平なアンバランスな点につきましては、基礎控除などをよく考えまして、新しい制度を作る場合にお考えの趣意をよく織り込みたいと考えております。
  133. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 基礎控除の引き上げ等については、もうすでにやられておるのでありますが、今回税制調査会の御答申を見ますると、やはり商工農業の公平化の見地から農業税の新設の問題が出ていると思うのであります。これをいかに処理せられるかということが、商工業事業税について当然問題をさらに投げかけてくると思うのでありまして、双方を考え合せて、新規に、従来のような弥縫的な考え方でなく、根本的な税制改革の問題としてお考えになる必要があると思うのであります。その点についての御決意を伺いたいのであります。
  134. 太田正孝

    国務大臣(太田正孝君) 地方財政を全面的に、予算で言えば歳出の部も歳入の部も直さなければなりませんので、その歳入に関しまして最も国民に重大な関係を持っております税制につきましては、公平の見地を特に強調いたしまして処理いたしたいと考えております。
  135. 吉田萬次

    吉田萬次君 調達庁長官はおられますか。
  136. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 調達庁長官警察庁長官も大麻国務大臣も参っております。
  137. 吉田萬次

    吉田萬次君 私は最初基地問題について承わりたいと思うのであります。特に小牧の基地問題についてお尋ねをしたいと思います。  基地の問題は、その候補地になった住民に対して非常な影響がありまして、それに対するいろいろな問題が次次と惹起しておるのであります。ところが小牧の基地におきましては、その候補地になったということを知りました農民が、非常に落ちついた態度でこの対策を講じておるのであります。それがためにすべての協議が順調に行っているというものの、そのうちの北里村という村が一番たくさん土地を取られるのでありまして、この村が非常に今日困窮の結果、いろいろの方途を講じるように日夜協議をしておるのであります。しかしながら、その村民の態度というものは実にりっぱなものであって、他人に依頼せず、また暴挙というものは慎んで、また政党に対して何らその間依頼もせず、政党の介入を許さずして、そして今日まで行動を静かにとってきたのであります。共産党員が村にいるにもかかわらず、しかもそれを押えて、今日対策を協議しております。かような点から考えまして、私はどういう方策をもって、どういう態度をもってこの村民に臨まれるか、すべて官庁の態度というものはただ形式的に流れるのであって、その間慈悲心というものが非常に私は欠けていると、かような点から考えまして、どういう処置をとろうとせられるか、まず承わりたいと思うのであります。
  138. 福島愼太郎

    政府委員福島愼太郎君) 御指摘のございました小牧の飛行場の拡張に関連いたしまして、関係五カ町村と申しますか、西三村の地元の皆さんは、仰せの通り落ちついて政府と交渉を続けられているということは、まことにその通りでございまして、私どもそういう地元の皆さんの態度には敬意を表している次第であります。特に西三村のうちで、該当面積の最も大きい北里村に、反対の理由というものが予想以上に余計にあるということも、これは当然のことであります。土地に対する愛着心、また土地を提供いたしましたあとの生活の立て方、そういう問題に関連いたしまして、いろいろ解決のために議論も行われ、また従ってでき得れば小牧以外の土地によって、小牧以外の飛行場によってそういうことはできないのかというようなことで、話し合いも何回となく行われている次第であります。不幸にいたしまして小牧の飛行場の拡張を取りやめて、よその飛行場の拡張によって目的を達するという方途がございません。日本国内に数カ所の飛行場を散在せしめるという計画に基きまして、小牧が選ばれておりまして、小牧を取りやめてほかで計画を立て直すということになりますと、一カ所でできるかどうかということについても疑問もございましたし、また小牧の飛行場というものが相当に整備された性能のいい飛行場であります。これを九千フィートの滑走路の飛行場に直すという場合には、二千尺程度の拡張で済むのでありますけれども、それ以外の飛行場で計画いたします際には、もっとはるかに大きい拡張面積を必要とする、中部日本一体の防衛目的にかなうための飛行場というものがあの付近では考えることができない。この小牧の問題に関連して研究されました各務原というような場合には、その土地の高さ、飛行条件その他が悪うございますので、小牧を飛行場といたしました場合ほど能率的に使用ができない。そのためにもう一つの飛行場を必要とするとか、いろいろな条件が重なりまして、小牧の飛行場の拡張を取りやめて、ほかの飛行場で間に合せるという案が出て参りません。従いまして、小牧の飛行場を拡張するということを中止いたしますということは、残念ながら考えることができないのであります。しかしながら、小牧飛行場の拡張計画自体につきましては、でき得る限り切り詰めた拡張計画に引き直すという努力をいたしまして、地元の市民と、そういう点について話もしているわけであります。当初の計画から三分の一以上削りまして、それにいたしましても、かれこれ二十万坪にわたる大計画でありますけれども、この計画を最終的にこれ以上に切り詰めることはできないというところに最近技術的な話が落ちつきました。提供を受けるに足るだけの政府の条件その他整備いたしまして、お話し合いを続けているわけであります。拡張がやむを得ないものであるとは申しながら、地元の関係者には非常な迷惑がかかるということはこれを明確に意識いたしまして、できるだけの補償とか、あるいはその他の救済措置とか、あるいはその他の公共事業の関係の措置とか、そういう問題についてでき得る限りの案を立てまして、地元の了解を得ようということが政府の基本的な態度であります。今後とも地元の要望も重ねて明らかになって参るわけであります。十分に地元関係者の意向を取り入れて、政府の補償案なり、救済案なりを考え上げたいと考えております。
  139. 吉田萬次

    吉田萬次君 小牧の基地は動かすべからざるものであるというように御答弁を拝聴いたしましたが、あそこには大山川という川が、小さいけれども非常に悪質の川があって、ときどき、ことに梅雨期にははんらんをしまして、道路でも二日間、三日間というものは水びたしになって、自動車が通ることができないというような所がありますが、この解決というものに対して、確実にこれを征服し、そうしてでき上るという見通しを持っておられますかどうですか。
  140. 福島愼太郎

    政府委員福島愼太郎君) お答えを申し上げます。大山川の問題は確かに御指摘通りの難問題でございまして、これがどういうふうな解決方法がとれるか、小牧の飛行場の、これから拡張いたそうとする所と現在の飛行場との境目を流れているわけで、常にはんらんする川である。滑走路でございますので、この間に川があるということは考えられません。従いまして滑走路を延長いたします場合には、一つ考え方としては、その大山川というものを北の方へ迂回をさせる案が成り立つかと思います。迂回をさせるということになりますと、河川敷になります敷地という問題で、飛行場の滑走路以外にさらに相当の地面を必要とするということ、それからまたそれでなくてもはんらんをする川でありますので、迂回をさせましてさらにはんらんの度を増すのではないかという点もあります。いろいろ研究いたしました結果、滑走路の下を、四百尺くらいになりますか、その部分だけ暗渠で流れる、それ以外は飛行場の中でありましても暗渠にする必要がないので、上のあいた川にするという技術的な考え方が一応まとまりまして、アメリカ側の設計によりましてその設計ができ上ったわけであります。これを地元の愛知県の県庁の技術者によって鑑定をしてもらいまして、アメリカ側の案では、従来通りの水は流れるかもしれないが、しかしながらそういう工事をするに際して、従来から毎年々々はんらんする川である、今後従来以上にはんらんの度合を少くするために、従来の河川よりよく流れるような改良の方法を講じてもらいたい。飛行場の内部を流れる川ということで、工事を加えるのに際して従来程度の川の流れ方は保障するというだけではなくて、従来の川に対する改良工事も合せ備えた工事にしてほしいという県側の要望もございまして、県側の設計によりまして、この設計をし直したわけでございます。さらに中央におきましても、専門官庁の鑑定を経まして、これならば飛行場滑走路の四百尺ばかり下をくぐって流れることにはなりますけれども、これならば従来通りの水の流れることはもちろん、従来のはんらんを相当に防ぐ程度の設計になっておるという見通しを得ましたので、大山川の改修工事並びにこれを飛行場滑走路の真下に当る部分を一部暗渠にするという設計によりまして実施することとなり、地元にもその旨をお諮りいたしまして協議をいたした次第でございます。
  141. 吉田萬次

    吉田萬次君 それからもう一つ、私はすべて政府の施策というものは慈悲心というものが欠けておるように思います。ほんとうに掘り下げてその土地の農民の心になって、そうしてこの問題を解決してやるという意思が薄いように考えます。従ってこれが解決の方策というものも、真に私はよく考えていただきたい。農民が最もおそれておるのは何かといいますると、ただ金銭をもらって解決をするというようなふうのことについて、その将来を考えておそれるのでありまして、金銭によってその問題が解決せられました場合において、大体今までの経過から見ますると、もらった者の四割というものは三年間のうちになくしてしまう、さらに後の三年間において残りの六制のうちの四割というものがなくするというようなことから、自分の職業というものが将来生かすことができないということにおいて非常にその点をおそれておるのであります。ことに北里村は本年のような豊作でありますると、反当十三俵という収穫があります。で農民が祖先伝来の地というようなことを口癖のように申しまするけれども、これは表面的の問題であって、掘り下げて私は考えたならば、私はその土地そのものに対する執着というよりは、自分の生活の安定というものを考えておるのじゃないかと思うのであります。従ってかような問題を解決しようとするについては、相当な慈悲心をもってこれは解決してやらなければいけないと思うのでありまして、たとえて申しますると、現状から見ましてその農民がどこへ行くか、あるいは親戚知己を頼って行くということになりました場合において、親戚へ頼って行った場合においても、その土地において自己の本職とする農業というものをもって生活ができないかということをまず考えます。あるいは知己に頼るにいたしましても、さような観念をもって臨みまするし、未知の方面へ参りましたならば、いかにしてその土地に対して落ちつくことができるかということを考えるのでありまして、これは農民というものが普通の商人と違いまして、その職業を捨て、その他の職業に変るということについては非常な不安を持っております。かような点から考えましたならば、今日じんぜんとして日にちがこうやって延びておりまする間に、なぜその親戚なりあるいは知己なりあるいは未知の方面へ向って安住の地を求めるということに対する換地の問題なんかについて、考慮してやらないかということを考えまして、私は一片の表面的な同情とかあるいは金銭によっての解決というものは真の解決の方法ではないと思うのであります。従ってそれまでに掘り下げてやるところの慈悲心というものがあるかどうかということを承わります。
  142. 福島愼太郎

    政府委員福島愼太郎君) 小牧の飛行場の拡張問題は、たとえば立川とかあるいは横田とかあるいは新潟とか、今日問題となっております飛行場とは確かに違う性格のものがあることは明らかであります。立川の場合に非常に問題になっております拡張用地にいたしましても、その坪数は三万五千坪という坪数、農地ではございまするけれども、水田は一カ所もないのであります。すべてカンショ畑であります。新潟の場合にはこれはすべて海岸の砂丘地帯であります。それに反しまして小牧の場合には、おそらく日本一といっていいくらいの美田であります。従いまして私どもといたしましても小牧の場合に、その土地を去らなければならない農民諸君の問題という問題には特に心が痛まざるを得ない次第であります。今日まで小牧の問題につきましては、測量とかそういう問題のいざこざなくずっと早くに測量も終え、あらゆる面の協力もしておった次第であります。しかしながら補償の条件とかそういういろいろな問題につきましては、ほかの立川における反対の運動とかいろいろな関係がありました。そういう問題がきまりがついてきて小牧が早くから協力したがゆえに、場合によっては不利であったというようなことがないようにしたい。また小牧の地面というものは、今度関係の飛行場の中では最もりっぱな地面であるということが補償額その他の関係におきましても、りっぱに扱われるようにしたいとも考える。早くから協力をされておりましただけに、よけい日にちがかかったという関係になっております。その間愛知県庁におきましても、かえ地その他の問題について御協力を得るということになりまして、個々別々のかえ地問題等につきましても、御研究を願っておる次第でありまして、あらゆる面で、いたずらに金銭をもって解決し、これが結局農民諸君の将来の不幸になったというようなことが起らないようにいたしたいと考えております。飛行場がそこで拡張せざるを得ないという問題は、やむを得ないにしても、農民であるから、幾ら金をもらっても、その金で商売を始めて、一朝にして失ったら終りであって、土地があるということであるならば、かりに細々であっても、子々孫々まで生活が維持できるという自信があるのであります。土地がなければいやだという理屈は、私どもよくわかるのであります。これを尊重いたしまして、解決の条件を発見したいと考えております。
  143. 吉田萬次

    吉田萬次君 次に、私は売春等の取締りについて御質問申し上げたいと思うのであります。神聖な肉体というものを商品と同様に売買するということは、これは私は人道上許すべからざるものだと思うのであります。またこれが社会悪として取り扱われるのも当然なことだと思うのであります。そこで私はこの問題が議会において問題になりました際、ちょうど自由党の政策審議会の社会部を担当しておりました関係上、これについて調査いたしまして、同時に売春等取締りに関する資料及びその考察という一小冊子を作ったのでございます。それから私はこの問題の推移というものに対して今日まで見て参りましたところ、今回牧野法務大臣大臣に就任なされ、その劈頭において、新聞紙上にきわめてこれは興味のある問題だ、この問題を取り上げて何とか解決の方途を講じたいというようなふうのことが出ました関係上、これにそれほど関心を持っておられるならば、私はどういう方針によって、どういう方法によって、この問題を解決せられるという御意思があるかということに対して質問がしてみたいと思うのであります。この売春問題というものは、これは非常に歴史的に考察いたしましても、太古の時代からすでにその端を発しまして、徳川時代になりましては、非常にそこに年代的にいろいろな問題が起きており、そうしてまた極端な例においては、その女が斬罪に処せられるというようなこともあったのでありまして、時代の反映というものをこれによってうかがうことができるのではないかというような、重大な私は考察がそこに行われることができると思うのであります。  そこでこれをまず国際的に見ましても、本人の売春行為を認めておる国は十一カ国ありまして、オーストラリア、エジプト、フランス、ギリシャ、ハンガリー、イタリア、ポルトガル、英国、コスタリカ、トルコ等がさようでありまして、さらに公娼というものを公然と認めておるのはコスタリカとトルコであります。またこの問題をわが国において、また最近の統計においてこの問題を見ますると、昭和二十七年の十月の現在数でありまするが、大体正確だと私は思うのでありますが、特殊飲食店の女給というものが四万七千四百五十九名、それから私娼及び売淫類似の行為をする婦人が二十一万四千四百二十五名、それから主として外人相手の洋娼がこれが五万三千百十五名、芸妓にして常習売淫婦と考えられるものが二万七千五百名、合計三十四万二千四百九十九名ということになっております。これに加うるに、外人には多くの場合、内妻とかあるいはめかけとか、愛人の関係にある俗称オンリーだとかあるいはバタフライだとかいうようなものまであります。これをさらに需要者との関係を見ますと、昭和十三年度全国貸座敷一カ年延べ遊客数は三千三百四十八万六千百九十二人となっております。また私娼相手の遊客数は二千八百五十万人、芸妓の相手の待合遊客数というものは千四百四十万人でありまして、合計一カ年全国の売淫婦を相手とした遊客数というものは延べ七千六百三十八万人を示しておるのであります。これに対し昭和二十八年度は、十九才以上五十九才までの独身者及び未婚者であって売笑婦を需要する人々は総数の約六〇%の六百三十四万人でありまして、その実態は、一カ年遊客平均回数は八回、最少遊客の一カ年一回から、最多数の遊客回数は百五十八日となっておるのであります。さらに妻帯者の一カ年の延べ遊客数というものは四千五十万人であって、十九才未満の少年の遊客の回数は四百二十万、合計いたしますると、全国一カ年間に売笑婦を相手とする遊客総数は実に九千五百四十七万人という驚異的な数を示しておるのであります。さらにこれを売春婦の方から見ますると、昭和二十七年の十月一日から昭和二十八年一カ年間におけるところの売淫相手の接客回数を調べますると、特飲の女が四万七千五百人、これに対して遊んだ人間が二千百三十七万五千人、私娼いわゆる町の女というもの十五万一千人に対して、その遊客数は六千七百五十万人となっております。また芸者二万七千五百人に対して、遊客数は六百六十万人という数が数えられておるという、こういう膨大な数字が現われておるのでありまして、これを合計いたしますると、実に九千五百四十八万一千人というような数字になっておるのであります。これを基本にしてまず考えませんと、検討しそうして御質問申し上げませんといけませんから、かような数字をここに現わしてそうして御質問申し上げる次第でございます。牧野法務大臣はこれに対してどんなお考えをもってこの問題を解決しようとせられるのか。私は質問しようとするについて、まずこれを病人と解釈いたしまして、 これに対する対症療法、さらに原因療法、さらに予防法のこの点から考えまして御質問申し上げたいと思いますが、まず法相はどんな考えをもってこの問題に臨まれるかということを最初お伺いしたいと思います。
  144. 牧野良三

    国務大臣(牧野良三君) お答え申し上げます。大へん意外な数字を承わって、私初めて承わりましたが、しかしおびただしい数字に上っているということは吉田さんのパンフレットからもうかがい知っております。それで私は今まで政治的、社会的に売春婦という言葉が用いられておりますが、今吉田さんのあげられた数字から見ましても、この問題を売春問題なんといって取り扱う狭い問題じゃない。時代の大きな社会問題として取り扱わなければならぬ。だから単に売春問題と言わないで、私はどうか婦人の正しい生活と地位とを守り、しこうして社会の善良なる風俗と正しい秩庁とを保護するという立場からこの問題と取っ組んでみたい。そうしてその内容を見ますると、これで時代の風潮というものがよくわかる。もう歴史的にこれを研究しましても非常に興味のある問題であります。従ってもっと社会的に掘り下げてこれが対策を立てる必要があるので、表に現われた売春なんということをもってこれに刑罰をもって向うということはいたしたくない、こういう考えを持っております。ただしお言葉でありまするから、私の私見を申し述べますが、根本はどこまでも婦人の地位と生活とを守り、善良な風俗と社会の秩序を維持するということでありまするから、刑罰をもって向う対象がある。それは人身売買、それからポン引き、これらの者に対しては相当な処罰規定をもって向う必要がある、かように考えております。
  145. 吉田萬次

    吉田萬次君 次に私は先ほど申しましたように、病人に対して対症、原因、予防という点から考えまして、対症療法というものをもとにして御質問が申し上げたいと思います。これは大麻国務大臣と警察庁の長官お尋ねをしたいと思います。まず私の体験によりますると、大正五年、六年のころに、東京で浜町の大正芸者の撲滅と、それから浅草の十二階下の六区のちょいとちょいとの私娼の撲滅というものがあったのであります。ところでこれにつきまして、当時どうして警視庁がそういうようなことを企てたかと言いますると、これは今日考える取締りの方法と違いまして、最もおそれたのは病気であります。いわゆる花柳病というものの憂延に対して、これではほっておけないという点からこの問題が起きたのであります。当時吉原の娼妓病院の統計によりますると、花柳病にかかった者が一カ月の統計において一二五%という数字を出しておったのであります。私は若かりし時代でその一二五%がわからなかった。聞いてみますると、これは要するに一カ月に二回かかる者がそういう数字によって表われておるということを聞いたのであります。従ってこの花柳病の蔓延をいかに防ぐか。当時はサルバルサンもようやく出たばかりのものでありまして、今日のような十分な治療法が講じられません関係もありましたが、この問題について警視庁が非常に心痛いたしまして、あわててこれに対処するためにこういう淫売狩りが行われたのであります。ところでさてやってみた結果はどうかといいますると、飯の上のハエを追うと同じであって、先日阿部真之助氏が新聞紙上で論評せられたように、葬式のハトのようなものである。一ぺん追ってもまたもとへ戻ってきてしまう。この当時これが各方面へ散じまして、あるいは群馬県、千葉県、栃木県という方面へ行ったということはわかりますが、さてあとで調べまして行方のはっきりしたものは、ようやく二%に過ぎなかったということを記憶しております。かような点から考えますると、この問題についての処置というものは非常に私はむずかしいと思う。全体主義国の中共のような国であれば一網打尽に解決ができるでありましょうけれども、今日基本的な人権の拡張であるとか、あるいは生活の最低の保障であるとかいうようなことを考えて、そうしてこれを解決しようとすると、私は非常にむずかしい問題だと思いますが、大麻国務相はこれに対してどういうお考えをもってお臨みになり、この問題を解決しようとせられるか、それが承わりたいと思います。
  146. 大麻唯男

    国務大臣(大麻唯男君) お答えを申し上げます。先年の警視庁の取締りの場合を御引例になりまして、私拝聴いたしました。全くあれはただこういうことを警察の取締りでもって撲滅しようと考えていたところに間違いがあったのではないかと私は思います。この問題は警察の取締りだけで片づく問題ではないのでございまして、根本的に考えまするというと、ただ法務大臣が申しました通りに、根本の考えはあそこらあたりに置かなければならぬと思いますが、ちょいと平たく申し上げてみますというと、国民の性道徳の向上、それから社会風潮の刷新、あるいは更生福祉施設の充実というようなことを考えてこの問題に取り組まないというと、とうてい警察などの取締りだけで片づけようとしても撲滅できる問題ではないと、かように考えておる次第でございます。
  147. 吉田萬次

    吉田萬次君 私は当時大正五、六年のころに警視庁の警察医をやっておりましてこれに直面した問題でありますが、警察庁長官といたしまして、どんなお考えをお持ちでしょうか。
  148. 石井榮三

    政府委員(石井榮三君) お答えをいたします。ただいま大麻大臣からお答えのありました通りでございます。私ども警察の立場といたしまして、この売春取締りの問題につきましての考え方を御参考までに申し上げますと、本来この問題は警察の取締りだけをもって解決すべき問題ではないということは、先ほど大臣のお答えになった通りであります。私どもといたしましては、いわゆる売春婦になるという婦女子が発生することのない、転落の防止の措置、またすでに不幸にして転落した婦女子を救済する措置、更生保護する措置、こういった助成策がまず先行すべきものである。またさらに国民の性道徳の向上といったような文教面の施策も講ぜられなければならぬと思うのであります。そうした諸般の諸施策が講ぜられて、なおかつこうした社会悪と申しますか、売春事犯が発生いたしますならば、これをわれわれの警察の取締りの対象としていく、こうあるべきものと思うのでありまして、警察取締りを先行さして、これでこの問題の解決をはかるというのは、私はむしろ邪道ではないかとさえ思うのであります。それに先行して幾多の諸施策というものがとられるべきである。さらにその最後のしりぬぐいといいますか、そういう意味合いにおいて、最も悪質なものを最後に掃除をするという意味において、いわゆる警察の取締りの対象にしていくと、こういうふうにあるべきだと考えております。
  149. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 関連をいたしましょう。法務大臣並びに警察庁長官、警察担当大臣の答弁はいずれも当を得た答弁であるように一応は拝聴しております。しかしながら日本の現状から見まして、正規な法が活用されておるかどうか。また婦人問題に対してほんとうに真剣に取り組んであるかどうかというようなことを考えるときに、答弁の趣旨と相反するような実情の社会である。これに対する、もっと、法は法として生かして、社会に対して、性問題に対しても、性の向上をはかられて、独立国家の国民としてのりっぱな態度に指導方針を向けてゆかなければならぬと思う。これに対して両大臣はどう考えておるか。ことに法務大臣は文教その他にも十分に研究してあるが、今こそ日本の法の乱立よりも、法を整備して、正しい法を生かして、国民の信義と国民に合うところの社会を樹立させる、こうなくちゃならぬと思うのです。これに対する明快なる答弁を要求します。
  150. 牧野良三

    国務大臣(牧野良三君) おっしゃる通りだと思います。今日まで時期が来なかった、世論が上らなかったが、ようやく時期が来て、ここで手をつける場合だと思います。それにはやはり深い理解が世論になければいかぬ。最近までは売春婦を処罰するというようなことに集中されておりましたが、きわめて最近の事実としては、そんなことじゃ目的を達するものじゃない。そんな残酷なことをすべきじゃない。国民全体の責任においてこれを解決しなければならぬというところに向って参りました。だから法規を制定するというようなことよりも、もっと抜本的に、国民の生活そのものに即した社会問題としてこれが解決に乗り出さなきゃならぬ。幸いにこの内閣は関係大臣心を同じゅうして、そうしてそこに当ろうといたしております。従って私の申し上げますことと、大麻国務大臣の申されたこととが軌を一にしておることも、まことに私は喜ばしいことであり、御理解を賜わることができると思います。ぜひこの点の解決に向っては参議院各位の御協力をこいねがいたいと存じます。
  151. 大麻唯男

    国務大臣(大麻唯男君) 池田さんに申し上げます。尊敬すべき御意見と思いまして、つつしんで承わりましたが、警察といたしましては、先ほども申し上げました通りに、悪いことが起りましたら、それはどしどし取締りをいたすつもりでございますけれども、取り締るだけで片づく問題ではないのは先ほど申し上げた通り、また池田さんも御指摘になった通りだと思います。これは牧野法務大臣が関係閣僚が軌を一にするように意見を同じゅうしているのは愉快であると言われましたが、私は関係各大臣のみならず、参議院の皆様方はもちろんの話、それから社会の識者たちの御協力を願いまして、これは国民全体が、官も民もおもなるものは皆一緒になって、そうしてこの問題を解決しなきゃならぬ。とても取締りなどだけで解決のつく問題ではないと、かように考えております。どうぞよろしく一つ御協力を願います。
  152. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 まことによき趣旨の御答弁で敬服しますけれども、一番占領以来日本の風紀が頽廃したのは、アメリカの進駐から、今日は国防に参加するところのアメリカ兵だろうと思いますが、独立した日本といたしましては、これが今日風紀を乱す原因に対しても、法相の答弁によれば、今相当現政府が一致しているということですが、この強力なる力をもって、たとえアメリカ兵といえども日本に駐在している以上は、日本の法を尊重し、日本の徳義に協力するということでなければならないとかように信ずるのでございます。これらに対しましても、十分な決意をもって当って、日本の地位、日本の道徳、日本の婦人の立場を向上させるように協力する考えであるかどうか。
  153. 牧野良三

    国務大臣(牧野良三君) ただいま池田さんの言われる通りでございまして、占領政策、そこに大きな不幸があったと同時に、敗戦、そこに大きな不幸がありまして、占領政策、敗戦によって虚脱の状態になり、生活に悩む人々、ことに婦人がそこに落ちていったのでありまして、自来十年、ようやく回復に至ったのは、国民の反省がここへきたのだと思います。実にわが史上かつてない悲しい状態でありました。相ともにこのことに潔く反省いたしまして、この問題の解決に全力を上げたいと存じます。
  154. 吉田萬次

    吉田萬次君 続いて原因療法について、私は法務大臣お尋ねがしたいと思います。それは売春婦をどうなさるつもりか、それからまた、これに対して業者の方面をどういうふうにお考えになっているか。今日十五億の前借があると言われております。この十五億の前借につきまして、最高裁の判例は、かようなものは払わなくてもいいということをはっきり表わしてくれました。ところがこの事柄を、果して売春婦たちが知っているかというと、もうよく知っております。あるいは警察からの話により、あるいは客からの話によって、よく了承しております。かような点から考えまして、ある一都市におきましては、この前借を棒引きにしてやって、眺めているところがあります。しかし、さらに一人もそこを去らない。何がためにかようなところを去らないかということについて、どうお考えになっているか。時間がありませんから、これから続いて質問いたしますが……。  そかれら、彼らのためにたくさんな税金が納められている。いわゆる所得税として、所得の範囲において、そこにいかなる不行跡の行為があろうとも、不正な行動が行われておっても、税の対象としてとるということは、これはやむを得ぬことだと思いますが、名古屋のある一つのかような町において、年間九千何百万円、いわゆる一億円になんなんとする税が取られております。これを総合いたしましたならば、全国で莫大な税金であると思う。一時売春婦によって一億ドルの金が得られて、日本のためになったというような悲しい話も聞いておりまするが、これは実に私どもは情ない税金だと思う。かような税金に対して、法務大臣はどうお考えになるか。  それからまた赤線とか、青線とかというものがありましたが、これについての売笑婦の、また売笑婦というものも、いわゆる先ほど私が述べた範囲においては、和パン、白パン、黒パンというような、まあ手の届くところのようなものでありましたが、そのほかにドヤパンであるとか、あるいはジキパンであるとか、あるいはヤサパンであるとか、もぐりであるとか、男娼であるとかといって、たくさんの種類がここにありましたが、どれだけの数になるかということについて、私はその数について驚異の目をみはらなければならぬと思いまするが、この問題についてどういうふうに法務大臣はこれに対する処置をしようとお考えになっておるのか、どうお考えになってこの問題に対処しようとせられるのか、承わりたいと思います。
  155. 牧野良三

    国務大臣(牧野良三君) その点でございますが、春をひさぐ女からいうと、あすこにいるのが苦しくなく楽しいということがいけない。またそれを商売にしておる連中があまりに愉快に大きい顔が社会にできることがいけないと思います。それから各種の今仰せられたパンの種類のできますのは、やはり社会事情の反映でございます。でありますから、この根本にそこへ力を入れなければならぬ。あまりに日本の国というものは、そういうことをしてもうけ、その金は外貨だといって得意だったんだ、今まで。それから様子の違った外国人と手を組んで歩くことが若い娘には得意であったのでございます。でありますから、それに非常なはずかしめを感ずるという時代を作り上げなければいかぬと思います。これが社会問題であるゆえんであり現代か反映しているゆえんでございますから、私はそこへ手を入れたい。しからばどうするかというと、それは単なる処罰規定ではいけない。積極的な社会改良をやらなければならぬ。それには今まで法務行政というものは犯罪者を検挙したり、そうしてそれを治安を維持すると称して、警察行政と相待って、検事の活動をするというようなことは私は法務行政じゃない、そんなものは法務行政じゃない。犯罪の出ないように、いい社会を作るように積極的に協力すると同時に、各方面において憲法二十五条が定めるところの厚生行政というものをやらなければだめだ。もう国会の質問応答を聞いておりますと、社会福祉の行政は厚生省の専売のように思う人がどうもとかく多い、そうじゃない、日本の文化か行政というものは法務行政がセンターにならなければなりません。そうしてここに厚生省の厚生行政と相待ちまして、片方は肉体的病人を中心としていく。片方は精神的病人を中心としていく、相待って日本の国民の厚生福祉というものを増進する。そういう弾力性のある積極的な大きい仕事、それを法務省が受け持って熱意をもって気魄で行政をしていく、こういうことをやれば——今までのような消極的なおもしろくない行政をやっていたら、こらこらと言って人を牢屋へ入れることを手柄とするほかに仕事がなくなります。そうでない。もっともっと広い範囲においてなすべき大きな仕事がある。これを進めていきますれば、この点にすばらしい効果を挙げることができると楽しんでおります。
  156. 吉田萬次

    吉田萬次君 厚生大臣にお承わりいたしますが、あなたはこの売春婦というものに対して、どういう厚生省の範囲において、あなたがつかさどっておいでになる範囲においてどういうふうの処置をしようとせられるのか。あるいは業者というものをつぶしてしまったとかりにしますときに、そういう問題についてはどういうふうにしたらいいとお考えになるのか。  さらに私がまだ重要な問題としてお伺いしたいのは、私は花柳病予防法というりっぱな法律があるにかかわらず、この法律が、死文ではありませんけれども、十分な活用をしておりません。せっかくかような法律があり、そうしてその範囲というものが、これが適用せられる範囲というものが非常に私は広いと思います。それに対してこの花柳病予防法というそれをどうして上手に適用せられるか、その点が承わりたいと思います。
  157. 小林英三

    国務大臣小林英三君) この売春の問題につきましては、先ほど法務大臣その他の大臣からしていろいろと御説明がございましたが、私もこの問題の処理につきましては、法務大臣のおっしゃっている通りだろうと思います。なおこれらの問題につきまして、むしろこの保護更生をさしていくということが最も重要な今日に課せられたる問題であると思います。厚生省といたしましては、ただいまの状況におきましては、現在これらの転落した婦人の保護施設といたしまして、全国に十七カ所の保護施設を持っているのであります。こまかくは申し上げませんが、持っているのでありまして、常時約七百名のこの種の婦人を収容いたしまして、更生、補導に努めているのであります。これらの施設というものは府県直営のものもございますれば、また救世軍あるいは婦人矯風会、あるいは西本願寺等の宗教関係団体や、また社会事業団体に委嘱しているものもあるのでありますが、これらの施設の経営者というものは、責任者というものは、非常に献身的に努力をいたしている状態でございます。最近二十九年度の入寮者の総数というものは約一千名でございます。この寮から退いたいわゆる退寮者というものは、約それよりもちょっと多いぐらいでありまして、おおむね回転状況というものは非常に目下順調であるのであります。退寮者の七割程度というものは就職、帰郷あるいは結婚等、正常な道に今日かえっている状態であります。しかしながらこの種の事業というものは一種の教化事業でありまして、相当に苦心を要するのであります。退寮者の全部が必らずしも更生しているわけではないのでありまして、また在寮者がどういう事業について、退寮させてもいいと思われる婦人につきましても、適当な居住場所がないために、退寮して独立してやることができないというようなこともたくさんあるのであります。売春禁止の世論が高まりました現在におきまして、従来の施設というものがあまりに小規模であるし、また不十分であると存じますから、ことしはこういう問題につきましても相当の予算を計上してやっていきたいと存じているのであります。  なお、先ほどお尋ねになりましたこの現在ある花柳病予防法、この現在あるこの法律で売春を規制することができるのじゃないかというようなお尋ねのように拝聴いたしているのでありますが、この現行の性病、花柳病予防法の第二十六条及び二十七条には「伝染の虞がある性病にかかっている者が、売いんをしたとき」、及びこの伝染の虞がある性病にかかっている者に対して、「売いんのあっ旋、勧誘又はその場所を提供した者」は処罰されることになっているのでありますが、これらの条文というものは、売淫常習者によって伝染される性病の予防のみを目的としているものでありまして、一般の売春というものに対しては全面的にこれを規制しているというわけではないのでございます。
  158. 吉田萬次

    吉田萬次君 そこで私は予防法について牧野法務大臣お尋ねがしたいと思います。現在温泉マークであるとか、あるいは料亭であるとか、あるいはいろいろの種類の派出婦の組合であるとかというようなふうなものがありまするが、かようなものにつきましての売淫行為というものをどういうふうにお考えになっているか。
  159. 牧野良三

    国務大臣(牧野良三君) 吉田さん、実にそれには困った。あなたはさっき十二階下という言葉をお使いになってなつかしく昔を振り返っておられる。あのころはずいぶん露骨でございました。今のあなたの御指摘になったパンパンの方は露骨だが、温泉マーク以下のはきわめて隠微のうちに合法的に装うてやっておる。これをどうしたらいいか、これはやはり全部基礎、根底の風紀上の問題を中心とした積極的な社会問題として解決したい。それには何と言ってもそういうことをするのは非常に恥しいことだといって、社会からひんしゅくさせるような方法を講じていかなければならないと思いますが、直ちにこれの内容に入ると人権じゅうりんになります。このごろは人権じゅうりんの方が少し程度が高いので、下手に手を出すことはできませんが、手は出せないから社会問題として恥しがる、こういうものを恥にする国民精神を作り上げるというふうに私は考えまして、きょうも検事長の会同でその話をしてきたところで、何とか一つ今晩までに知恵を貸してくれと言っておきました。
  160. 吉田萬次

    吉田萬次君 私は最後にもう一つ法務大臣に芸者問答をしてみたいと思うのであります。あなたはかつて何か新聞紙上に、十二月七日の新聞でありまするが、それに、芸者は売淫の対象とせずというふうのお説が出ておりました。そうしてさらに礼賛して、芸者ガールと富士山は日本のシンボルであるとまで絶賛しておいでになりました。ところが私の調査によりますと、芸者の中の八五%は売春婦だとまで思うのであります。そうすると売春婦に対しては、これは私の考えとあなたの考えとの間に相当の開きがある。あなたは雲の上の人を見ておられる、私は雲の下の人間を見ておるということを感ぜられます。そこで私は私の考えておりまする、いわゆる芸者というものに対して売淫行為を禁止する、あなたがおっしゃったような芸者というものをどうして作るか、日本のシンボルとして恥しくない芸者というものはどういうものであるかということを考えると、私はこれは芸者学校、芸者大学を作って、そうしてそういうところで教養してやらなければいけない。あるいは試験制度によって一級二級という制度をきめてやるようなことをせぬと、この芸者に対する売淫行為というものを対象とせずと、あなたのおっしゃったようなことはできぬと思いますが、どうお考えになっておりますか。
  161. 牧野良三

    国務大臣(牧野良三君) 吉田さん大へんいい質問をして下さった。あれは世間の方で——世間では私の話を茶化した、新聞の悪い傾向であります。あんなことを言ったんじゃございません。外国人は日本をフジヤマ・アンド・ゲイシャガールスと言っている、これが外国人からは冨士山と芸者というものが日本の代表的なもののように見られている。富士山はりっぱだが、芸者はりっぱでない、だから富士山に恥じないりっぱな芸者にするということを心がけなければいかぬとこう言ったのであります。そして、そのためにお前はしからばどうしておるかと言えば、私は日本のシンボルのように外国人が言っているその芸者が、かつては検ばいを強制しなければならないというような事態をこしらえたから、まず東京から、大阪から、京都から、こういうことの心配のないようにしなければならないと、芸者を対象にして私は向上運動を起こしたのです。それにはどうするかというと、芸者というものは芸能をもっぱらにする、そしていやしくも春秋二回の温習会、その他エキジビシコソに出る者は、いやしくも素行において非難のある者は出さない、そして芸を磨かせなければいかぬ、すると戦後というものはあらゆる方面に残念なことばかりありましたが、芸能の方面だけは大へんな盛んなことになってきたのであります。そこでこの機会に、彼らをして芸能本位の人たらしめんとして苦心しましたら、よほど目的を達したのでございます。私は苦界に沈む者をそうして表に出して、芸に自信を持たせ、それで非常な誇りを感ぜしめるということは、私は大きな、私自身功績を社会に残したと自信を持っておる、それを進めていきたい、非難攻撃するばかりではない、そして積極的に速めていきたい、こう思っております。同時に吉田さん、あなたの言う通り学校をこしらえることもします。そしてここであらゆる方面の訓練をさして教養を高める、これを刑罰でなくすることはできません。彼らの品性を高め、社会から尊敬される人物にするということが大事だと思いますから、世のはなはだしいやゆ的な批判をこの場において弁解いたしまして、正しい御理解を請います。
  162. 吉田萬次

    吉田萬次君 そこで私は最後に南米の紳士国と言われるアルゼンチンのこの問題に対するとった態度というものを、一つ研究しておいていただきたいということと、予算のあまり伴わない名案を考えていただきたい。世間が納得する名案を考えていただいて、至急この問題に対する方針を定めていただきたいということを希望いたしまして、私の質問を終ります。
  163. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 まず大蔵大臣質問いたしたいと思います。大蔵大臣は前の国会で私に借金があるはずだったのです。私は債権を持っていると思うのです。まずその借金を、もう年末ですから返していただきたい。そのことをまず要望いたします。これは大蔵大臣だけではないのです。鳩山総理も大きな借金を私にしょっておるはずです。この点一つまず返していただいてから質問しなければならないと思います。
  164. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 借金というのは、要するに補正予算を組まないということだろうと思うのですが、私としましては、大蔵大臣として予算の補正はしないという態度をかたくとることは、これはまあ私どの大蔵大臣も当然なあり方だろうと思うのです。その方針で参ったのでありますが、しかしその後の地方財政の状況が、いかにもそのままに放置ができない状況になって参りまして、今回補正予算を組むことにいたしたのでありますが、しかし補正予算を組むにいたしましても、財政の立て方の、財政の健全性をできるだけ害しないという方針で組んでおるわけであります。そういう点でございまして、御了承を得たいと思います。
  165. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 今さら大蔵大臣がそういう御答弁をなさることは私はできないと思うのです。第一補正が行われたとき、当然あのときも地方財政の補正あるいは公務員の手当の補正等がもう予想されていたわけであって、従って補正を組まぬと言うから、ほんとうに組まないのか、われわれは念を押したんです。大蔵大臣承知のように六月十日のこの委員会であれほど何回も繰り返して、総理大臣もあれほど繰り返して、あとで訂正しました。ただし天災以外は組まない。今度の場合は天災ではありません。前からわかっていたことです。また補正予算を組む結果として予算の健全性を害さないように、これについても私は問題はありますけれども、いかにこの少数政党の着が質問をした、だからそういう公約に違反してもいいということは許されないと思うのです。絶対多数を取るということは、そういう公約違反をやって、多数の力によって合理化する、そういうことを意味するのではないと思うのです。本来ならば前の鳩山内閣では補正なんか出せっこないのです。あれほば何回も繰り返して補正を組まぬと言っておった。そうして鳩山首相は、今度の第三次鳩山内閣は、これは政権の移動ではないと言っている。第二次鳩山内閣の延長でありその強化である。そんならなおさら責任をとらなければならない。しかもその責任に対しては、やめるか解散をするかということまではっきり言われている。私はそういう補正の組み方あるいは内容等についてはまた別に意見はありますけれども、今度の保守合同において国民道義確立と教育の改革とか、あるいは政界、官界の刷新とかそういうことをうたっている。また、さっき大麻国務大臣も国民が政治にめざめなければならない、あるいは牧野法務大臣が熱意を入れて精神的なあれを厚生省の物質的な政策と相待ってやる、そんなことを言ってもこれはスクラップ・ペーパーです。ほごに過ぎない。今までみんなそうやって国民をごまかしてきた。公約を忠実に守る、これこそが政治の一番大切なことなんです。私は総理なり大蔵大臣なりがおかわりになるならこれまた別です。あれほど六月十日の委員会で念を入れ念を入れて何回も押して、この補正を出してきた。私は大蔵大臣は良心をお持ちの方だと思いますので、これは単にその場逃れでは許されないのです。何らかの形で、私はあれだけ繰り返して質問をした私に対して、あるいは国民に対して、これは誠意のあるもっと御答弁をなされなければならぬと思う。今から解散せよ、やめろと言ってもそれは無理を強いるようなものだと思うのです。しかし少くとも御答弁には、もっと相済まなかった、何かそこに政府側の責任を感ずる何か御答弁がなければならぬはずだと思うのです。そんなことをして一体これから絶対多数になった、そうしてこれから保守が脱皮するなんと言っているが一体できるか。うそをついている。うその政治ですよ。これに対してもう一度大蔵大臣、これは総理にも最後の総括質問のときにこの借金はどうしても返してもらわなければならない。とにかく年末ですから、何らかの形において色をつけて借金を返してもらわなければ国民に相済まぬ。どういう形で返してくれるか、これを一つ御要望いたします。
  166. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 予算の補正をしないということを申し上げたことは、これは鳩山二次内閣でありますが、それは事実であります。その通りであります。従いまして予算の補正がなくていくことを自分としては努めたのでありますが、しかしながら今申しましたような事態に対応して、これに適切な処理をしなくてはならぬということに当面しまして組んだのであります。そういう意味におきまして私自身としての見通しが十分でなかった点については、これも私も非常に遺憾に思って、さらに今後においては十分な注意を加えていかなければならぬと考えております。
  167. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 やっぱり政治的節操というものは守るべきだ、政府がさきにそういう公約に違反したうそを言って、それで国民に、さっき国民の政治道義を高めなければならぬとかなんとか言っているがまるっきりうそなんです。これまで保守党の政治というものはうそなんです。選挙のとき公約して、それを実際に実行すると思ったら、大間違いだと言った人があったそうですけれども、これは私は絶対多数を取ったものだから、それで押し切れると考えたのじゃないかと思うのです。この間鳩山総理は予算委員会を途中で打ち切ってそれで自民党の何かレセプションに出席して絶対多数というものはありがたいものだ、せめて予算委員会も途中で打ち切って出席できるということを言われたそうです。そういう心がまえ自体が私は根本的に間違っておると思う。同じ保守は保守なりでも、もう少し健全なる常識の上に立って、そうして公約したことは、やっぱりこれは誠実に守らなければならぬと思うのです。しかもこの間の六月十日ですよ。あんなにはっきりと言った。でこの点大蔵大臣ばかり責めてもいたし方がありませんが、非常な私は不信を表明しまして、次に時間がありませんから質問したいと思うのですが、大蔵大臣は財政の健全性をくずさないからいわゆる三十年度予算の性格、地固め予算というのですか、そういうものの性格をこわさないから、まあまあ公約に津反したけれども、これは譲歩したと、こう言うのですが、しかしこの前も第一次補正のときも大蔵大臣に伺ったのですが、やっぱり予算の性格をくずしている。防衛費はふえておるのです。今度も防衛費はふえておるわけです。ですから予算の性格をくずさぬと言いますけれども予算の性格はインフレを起さない、あるいはまたデフレになるとか、そういうインフレ、デフレ的な性格も一つのこれは性格ですよ。それから財政規模に関するものもこれは一つの性格だと思う。この前にやはり問題にしました財政のバランス、各費目間のバランスですね、防衛費と民生費のバランスをどうするか、その財政のバランスというものも一つの重要な性格だと思うのです、政策としてですね。ところが今度の補正によってそれはくずれておるのです。この点を大蔵大臣はどうお考えですか。予算の性格がくずれておる。ですからなおさら大蔵大臣は弁明の余地がないのです。公約にも違反し、そうして予算の性格もくずしておる。この点大蔵大臣どうお考えですか。
  168. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 御質疑は相対的に防衛関係の費用がふえる結果になったのじゃないかということだろうと思うのでありますが、これは私としてはやむを得ないところがあろうと思う。この程度のことで予算の全体の性格が変更を受けたというようには考えておりません。
  169. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 第一次補正のときにも、大蔵大臣は六月十日に私の質問に対して、私はこの程度のことで全体の予算の性格が変更された、かように考えていない、こう言われておる。そうしてまた今度はこの第二次補正をやる。またこの程度で予算の性格を変えてないと言われる。しかし数字ではっきり比率を計算してみますれば、最初の三十年度政府原案ですね、防衛費千三百二十七億、旧軍人恩給費六百五十一億、合計千九百七十八億は一般会計と九千九百九十六億に対して一九・七%なんです。ところが第一次補正によりましてそれは二〇・一%になった。今度の補正で、第二次補正で二〇・四%になった。このことは半面において民生費その他の関係が最初の三十年度原案の八〇・三%から第一次補正で七九・九形、第二次、今度の補正で七九・六%に減ってきておる。こういうところが予算の性格としては、この際民生の方面にウェイトを置くのか、防衛関係にウエイトを置くのが非常に重要な問題で、大蔵大臣も前に同感を表されたはずです。この前も大したことはない、今度も大したことはない、これでは私はただインフレを起さないからいいというだけでは済まされない、どっちへウエイトを置くかというこれが今一番の焦点なんです。この点性格が私はくずれていると思う。数字的にはっきりしているのですからこの点をお認めにならないか。
  170. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) ちょっと計数にわたる問題でございますので、私からまずお答えを申しますが、木村委員がただいま御指摘になりました第一補正とおっしゃるのは、おそらく衆議院による予算の修正のことだろうと思います。その際には予算総額九千九百九十六億が九千九百十五億に減りまして、なおかつ防衛費の金額は同じでございましたから、防衛費の割合がふえたということで御指摘がございました。今回考えておりますることは、地方財源として百六十億を国から節約して供出するわけでございまするが、それは予算総額九千九百十五億の中での問題でございまして、公共事業費その他を削って、それを地方に対する臨時財政交付金として渡すわけでございますので、一般会計の総額は九千九百十五億、従ってその中での防衛費の割合という問題だけから考えますれば、割合は変ってないわけでございます。あるいはさらに進んで地方に渡す金を除いた純計みたいなものでお考えになっていらっしゃるのかも存じませんが、そうなりますと若干また問題が違って参りますけれども一般会計の予算総額の中での防衛費の割合ということで考えますれば、割合は変らないというふうに考えておるわけでございます。
  171. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それでは次に質問いたしますが、この百六十億の借り入れの措置はどういうふうにされるのですか。
  172. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 百六十億につきましては、時間的余裕がございますれば、今直ちに一般会計のあるものにつきまして補正減額をいたしまして、その分を臨時地方財政交付金として特別会計に繰り入れて特別会計から地方に分ける、そういう筋道をとるべきでございまするが、時間的な余裕がございませんので、それらの財源供出の点の補正は、これは近い将来おそらくは通常国会明けに譲ることとしまして、その間とりあえずこの特別会計では借入金をいたしまして、借入金を地方に対しまして臨時地方財政交付金として配っておく、そうして先に参りましてその分を一般会計から財源を捻出いたしまして、この会計に繰り入れてその繰り入れた金で借入金を返す、さような借入金でしばらくの間は泳いでいこうということを考えて、御提案申し上げておるわけであります。
  173. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 当然一般会計の補正減が出てくるのでしょう。
  174. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 公共事業費であるとか、あるいは賠償関係、あるいはその他一般経費につきまして百六十億円の補正減が出るわけでございまするが、同時に補正増としてこの特別会計に対する繰り入れの増加が出るわけでございまして、予算総額といたしましてはとんとんということになるわけでございます。
  175. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それから年末手当につきまして財源措置はどうされますか。それからもう一つ今の百六十億の内容を承わっておきたいです。
  176. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 百六十億の財源の捻出内訳でございますが、一般経費の節約、賠償並びに公共事業費等における不用額等をもって百六十億を捻出しておるわけでございます。これにつきましてはただいまも申し上げました通り通常国会の休会明けに補正案を出しまして御承認をいただくわけでございまして、目下鋭意関係各省との間に、財源の精細な内訳につきまして協議打ち合せをいたしておるわけでございます。実はこの点につきまして至急提出の御要求もございましたのですが、目下何分にも各省との間に各事業費目につきまして実地につきまして検討いたしておる最中でございますので、猶予をお願い申し上げておるような次第でございます。  なお、年末手当〇・二五分でございますが、これは今回の措置は法律を出しまして〇・二五カ月分を限度として既定予算の範囲内で増額支給することができるということに相なっておるのでございますが、その予算措置は既定予算の範囲内で極力まず人件費を差し繰りまして足りないところはさらに旅費、庁費等につをまして節約をしまして、それらをいわゆる移用、流用の規定によりまして財源措置をいたしまして差し繰っていこう、さようなことに相なっております。特にそのために補正予算を提出していないような次第でございます。
  177. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 当然補正減が出てくれば、その支出内容から見て百六十億というものが民生関係から落ちるわけです。その意味で計算してさっきの数字が出たのです。それから今のお話は、この際どうして一般会計の補正を出さなかったか、問題だと思うのですが、特に私が意外に感じたのは、年末手当について補正を組まない。これはどうしても財政法二十九条の違反だと思うのです。この前もこういうことをやっていまして、これは一種の実行予算ですよ。今度は実行予算的措置はできないのです。前の旧憲法下における会計法等については許されておったのですけれども、新憲法下においては二十九条によって、「予算の成立後に生じた事由に基いて、既に成立した予算変更を加える必要があるときは、その修正を国会に提出することができる。」となっておる。この前に小笠原大蔵大臣にこの問題を質問したときに、できるのだからしなくてもいいのだ、こういうむちゃな答弁をしました。その当時主計局長よく御存じの通り、できるというのはそういうことをしなければ支出ができないから、修正案を出すことによってその措置をすることができるというのであって、これをやらなければならぬ。やるように国会に修正を提出することができるように措置がしてあるのであって、従ってしなければならないのです。今度の百六十億の措置についても、それから公務員の年末手当についても一種のこれは実行予算的な性格を持っておるのです。つまり前の財政法、会計法の観念でやっておることは間違いです。従いましてたとえば国会で成立した予算について、その内容に勝手にこれは実行予算であるとして変更を加えたら、国会の予算の審議権というものは一体どうなりますか。いつでもこの点は非常にあいまいにしてだんだん財政法の……、これは民主財政の最も重要な点で、特に従来なかった規定をここに入れたので、この点は十分大蔵当局御存じの通りです。憲法八十三条で特に財政を処理する権限を国会に与えられておる。これを侵害しておるわけですよ。こういう点は国会の予算審議権かだんだんこうやって狭められてきておる。この点私は断固として反対しなければいかぬ。なぜ年末手当について……年末手当はわれわれも要求したところです、終始要求しておる。しかしはっきりした予算措置を講ぜらるべきです。こんなあいまいで、これは二十九条のはっきりした違反です。今度の百六十億についてもそうです。なぜ補正予算をはっきり出さなかったか。
  178. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 問題は二点に分れるわけでございますが、今回の特別会計の百六十億円の問題、これはいずれ補正案を提出いたしまして国会の御承認をいただくわけでございます。その間地方財政の困窮はこれは放置できませんので、とりあえずこの特別会計で借入金をいたしまして、その借入金でこの地方財政の急場を助けよう、そうして時間的余裕を待ちまして補正案を国会で御審議いただきまして、その御承認を得てその借入金を今度は返す、そういう措置ということに考えておるわけでございまして、補正を待ってそのしかるべき時期に提出するわけでございます。  それからこの年末手当の関係でございまするが、御承認いただいております予算総則第二十四条に、人件費につきましては各組織間での移用が認められております。また各項の内部における物件費の人件費への流用もこれは財政法上認められておるわけでございまして、今回年末手当につきまして、〇・二五を限り既定の予算の範囲内で増額支給することができるということになりましたにつきましては、こういう人件費につきましての所要額を捻出し、また物件費その他についての節約に努めまして、この法律の規定による支出に充てますることは、これは財政法上においても認められておることと存ずるわけでございまして、決して財政法に違反いたしておる措置であるとは考えないわけでございます。ただ、まあ木村委員のおっしゃいますることは、こういう場合でも、できれば時間的余裕があれば、それは補正で減らして補正でふやせという御議論かとも存じます。その点は時間的余裕がある限りは、そういうことももちろんいたす、努力しなくちゃならんかとも存じますけれども、これまた年末手当は年末に差し迫った問題でもございまするし、予算総則並びに財政法上許されておる範囲内におきまして、今回の措置を実行いたすことといたしたわけでございまして、そういう点を何とぞ御了承いただきたいと存ずる次第でございます。
  179. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この年末手当については、人事院勧告がずっと前に出ているのでして、そんなことを今になって私は御答弁にならんと思うのです。予算措置をやるとすれば、ずっと前に人事院勧告は御承知のように一・五を勧告しているのですから、今ごろになって私はそういうことは答弁にならぬ。それから百六十億の内容については、公共事業費不用額八十八億、右に伴う地方負担の減が二十八億、賠償費の節約額三十億、一般経費の節約四十二億、そういうようにいわれていますが、大体こんなことになるのですか。それから公共事業費については治山治水三十六億、港湾、漁港費九億、食糧増産対策費二十三億、災害関係費五億、その他文教関係五億、それから水道等の厚生関係一億、住宅関係十億、こういう数字が伝えられておりますが、大体こうなるのですか。
  180. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 百六十億の財源の捻出につきましては、先ほども申し上げましたように、目下各省と協議打ち合せ中でございまして、まだ確定はいたしておりません。ただいまお上げになりました数字は、大体そういうめどでおりましたのは事実でございまするが、果してその通りに落ちつきますかどうですか、その辺はただいま行なっております各省との協議打ち合せの結果によるわけでございまして、実情に即して、機械的に一律でなくというような観点からも、実態に即した財源の捻出を心がけておるわけでございまして、結果におきましては若干の異同が起ってこようかと存じます。
  181. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 時間がありませんから、この内容についてはずいぶん問題があると思うのですが、次に自治庁長官に伺いたいのですが、地方財政の赤字の問題ですね。これは過去の赤字、本年度の赤字、将来の赤字いろいろあるでしょうが、地方財政の赤字というものを太田長官は非常に経済の専門家ですが、大体どういうふうにごらんになっておるか。この際、何度もこういう質問あったと思うのですけれども、一応伺っておきたいと思うのです。
  182. 太田正孝

    国務大臣(太田正孝君) 木村さんにお答え申し上げます。赤字の出ました原因は、私は端的にいえば財源以上の行政が行われている。まあ一言で言ったらそういうことではないか。それをもう少し分けて申しますというと、実際は義務費がうんとふえて参りました。これは戦後におけるいろいろな改革に伴うこともございますが、人件費でございますとか、公債費というものがふえました。それから地方財政計画というものが、運用面と非常に食い違っておる。つまり計画計画通りに行えない状況にあったのが、赤字を出したと思います。もう一つ見方は、実際の地方財政の運営におきましていろいろな問題が起きたと思います。たとえば国の方でも金をやるのがおくれましたとか、あるいは補助金が少かったとか、あるいは国に非常に頼るような傾向もあったように思います。そんなことがからまってきたのではないかと私は思います。さらに歳入の方面では、どうも歳入に弾力性がないためにうまくいかなかったんじゃないか。大体におきまして私はかように赤字が生じた原因であると存じ上げます。
  183. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は昭和二十五年から初め地方財政の赤字が出てきているのであって、この配付税から平衡交付金制度に改正された、そういう過程において政府の方の地方財政に対する配付金を少くしてきたことも原因であると思うのですが、最も私実際問題として大きな原因となったのは、公共事業費が著しくふえたということですね。これは私は今太田長官がそういうことを言う資格がないと思うのです。自由党のときに私数字を拾ってみましたら、昭和二十七年、八年に著しくふえているのです。特に昭和二十五年一般会計に対する比率は二十四年の六・八二%から二十五年には一二・八九%、それから特に二十七年には一五・九二%、二十八年には一七・〇五%、そうして地方の手当をしないで公共事業費ばかりむやみにふやしたのです。そのときに問題になったのです。これは地方財政負担がつくからきっと赤字になる問題となる。自由党内閣のときなんです。これも私は非常に大きな問題になってわると思うのですが、こういう点やはりどういうふうにお考えになっておるか。それで今になってから、公共事業費がこれは不当に多かったからこれを節約する、削る、それで地方負担分を減らすと言っておるが、これは自由党内閣がやったのです。非常な責任があるのですよ。今さらそういうふうに朝令暮改でやったのでは、実際政策に一貫性がないのですね。こんなことがどんなに政治を混乱させておるか、資金効率を悪くしておるか、この点長官に……。
  184. 太田正孝

    国務大臣(太田正孝君) 言いわけをするわけではございませんが、私はその当時巣鴨におりまして何のあれもありませんが、しかし籍を自由党におきましたから、自由党がもし悪かったら申しわけないことでございます。それが結局公債費にずっとふえてきた原因になってきておるものと思います。御趣旨の点につきましては、悪い点は直していくよりほかないと思います。私は端的にそう申し上げます。
  185. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 次に御母衣ダムの問題について伺いたいのですが、この前の国会であの岐阜県の御母衣ダムの建設の問題ですが、高碕長官にあすこの御母衣ダムの建設については非常な問題がある。それで三つ問題がある。第一は、あすこの断層の問題、第二が資金効率の問題ですね、経済効果の問題。第三が地元の反対の問題。そこで一番問題になるのは何といっても断層の問題が非常に問題じゃないかと思いまして、私も質問した責任上、専門家と一緒に現地を視察してみました。二同行ってみたんです。ところが非常に重大な問題が断層について発見されているわけです。朝日新聞の十一月二十日に、資源調査会の専門委員の理学博士の小出博氏がこの報告を書いていますが、それによると御母衣ダムの地質調査昭和二十二年以来行われ、そうして「ここに一三〇メートルの高いロックヒルダムを造ろうという計画である。九年にわたって、ずいぶん詳しい地質の調査が行われたが、この地点は破砕帯のなかにあるから基盤が非常にまずく、すぐ上流には天正十三年の地すべりと思われるところが三カ所あって、岩盤の破砕作用がひどいことを示している。そのためもあって川の幅が広く、ダムの能率を小さなものにしている」、大体有効水量は五十幾つといわれておるんです。アメリカが約千、日本は百から二百程度と言われているんですよ。これが五十幾つですよ、有効水量が。ですから非常に能率を小さいものにしている。「どう見ても、この計画にはどこかに大きな無理があり、このごろの電源開発をめぐる多くの矛盾が、ここに縮図されているように思われてならない」、こう指摘されているわけです。従ってあすこは前は断層々々といっておりましたけれども、単なる断層じゃないんだそうです。地殻形成時代に破砕されていって非常に長い間あれでして、幾らボーリングしてもしっかりしたあれが出てこないんです、コアーが出てこないんです。で、片方の岩盤はしっかりしているが、片方は幾らボーリングしてもしっかりしたところが出てこない、ところがどんどんこれを進めようとしているでしょう。あとでこれがまた計画変更したならば、非常に大きなまた予算を食う、ロックヒル・ダムにしても、これは金がかからないためにロックヒルにしますが、アメリカから来たあの調査団も、あの一番の権威者ですね、あの方も必ずしもロックヒル・ダムには賛成してないです。ロックヒル・ダムは金を安くするためにしたのであって、危険を防ぐならばどうしてもグラビティ・ダムでがっちりしなければならない。そうすると、うんと金がかかる、経済効果が少くなってくる。前にもほかに例があるんです。これは通産大臣も十分真剣に一つ、私はもっと調査してもらいたいと思うんですが、前に調査々々と言いましたが、田子倉ダムのあれが最初グラビティでやる、それを今度ロックヒルにかえた、まただめでグラビティでやる、またロックヒルにかえてみて、またグラビティになった、そうしてその変更によって電源開発資金が非常にたくさん食うということは行政管理庁長官もこれを指摘しています。計画変更がずいぶん大きな金を食うことは、これは御承知通りと思うんです。ですからこの御母衣ダム、これについては破砕帯ですか、断層については問題があるんです。前に通産大臣は、私質問したとき初めてそういうことがあることがわかった、非常に慎重に調査もし、計画も進めたいと言われたんです。それについてその後調査の結果は一体どうなっているのか、私は将来非常に大きい問題になると思うんです。それでこれを着工されてごらんなさい、またきっと計画変更ですよ、非常に金を食うと思うんですよ。この点最後に、前の関係もございますので——総合開発の関係もございますので、企画庁長官とそれから石橋通産大臣も関係ありますので、この点について御答弁をわずらわしたいと思います。
  186. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お説のごとく御母衣ダムは初め予想しておったよりも非常に悪い地盤であることは事実でございます。あれが二十七年に第一の着工地帯として指定されたのでございまして、当時補助設備と一緒に地盤の探求をいたしますというと、今までお話のごとく、断層が一方だけでありますけれども、非常な特異な断層であるというので、私はその当時御母衣でなくておんぼろだと、こう言ったこともあるのでございまして、実は非常に困ったのです。一時これは私は中止した方がいいだろうとまで考えたのでございますが、その後いろいろ検討いたしまして、あの第一の権威者であるサベージを呼んで参りまして、サベージの言うのには、これはロックヒル・ダムでなくてもグラビティ・ダムでいいじゃないか、こういう意見もあったのですが、その次にはニッケルという学者と電源開発会社におります地質学者とが慎重に検討いたしました結果、やはり結論としてロックヒルでやった方が安全である。値段が安いというよりも安全であるという結果になりまして、初めの計画は十七万キロであったのですが、逐次これを変更いたしまして二十一万キロにするということでやっておりますが、現在の予算は多分二百七十億だと存じておりますが、この出力は単にあの御母衣の出力を増すだけでなくて、下流の方の電力を増す、これが約二億八千万キロだと記憶しております。二億八千万キロの増加をするというところから計算いたしますというと、そう非常に投資効率が悪いものだと、こう考えられないので、これはいよいよ着手するということに決定したことと存じます。
  187. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) 高碕長官の方の詳しい今の答弁で大体尽きております。私の受けておる報告の限りでは、ただいまの断層と言われるものは、セメントを詰めることによって処理ができるという、技術者の数次にわたる調査の結果、そういう処理の方法でロックヒル・ダムを作るということで確かにいける、こういう結論にただいま達していると私は承知いたしております。
  188. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 次回の資料要求だけ……。私はダム建設自体に反対とか賛成とかの前に、非常に技術的には問題がありますので、私行って見ますと、ずいぶん水がどんどん出ているのです。専門家と一緒に行きましていろいろ聞きましたが、非常にやっぱり問題がある。とにかくそこで資料ですが、われわれもっと専門的に検討してみたいと思いますので資料をぜひ事務当局の方がおられますから、一つノートしておいていただいて出していただきたい。  第一は、ニッケル博士とサベージ博士の調査報告書、それから東大の坪井教授、現在の名誉教授ですが、坪井教授の調査報告書を出してもらいたい。  第二は、昭和二十二年以来の地質調査のいきさつと総括の提出、ことに上流地点をも含めるダムサイトの地形図、それから地質図及びボーリングの位置の記入、各ボーリングの柱状図、それの提出。  それから第三は、ダムサイト付近の地下水の湧出地点。地下水が相当出ていますからその湧出量、特にボーリングによる湧出地点と湧出量の提出。これはあとでこんなにどんどん地下水が出ていますと、水がたまったとき、また非常な変化を生ずることと思います。そういう意味でこれだけの資料を出していただきまして、そうしてまた再検討して御質問したいと思うのです。  それで通産大臣も、これはほんとうにいろいろな今までの電源開発の矛盾が集約していると思うので、その意味で御母衣ダムの問題について関心をもたれて一つ研究してみていただきたいと思うのです。少しぐらい、十億とか十五億、金を投じても、ほんとうに技術的に言ってそれから経済効果から言ってだめなら、これは私は思い切ってあとでむだ金を使うよりは、その前にほんとうに納得のいくまでの調査を私は希望いたしたいと思うのです。これで終ります。
  189. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 最初に自治庁長官にお伺いをいたします。  この四月の改選の知事その他の各種地方議員の退職金が約二十億円に上っているだろうと、こう私は想像いたしております。また各県庁や市役所等で相当新築が多うございまして、地方の財政の状況を忘れたような感があるのでございますが、これを厳重に規制されるというようなお考えはないか、これか第一。  それから第二は、地方行政機構の合理的簡素化及び能率化に対する大体の御方針を承わりたい。  それからさらに各種行政委員会はどうされるか。内部部局や地方の出先機関はどうされるか。それから地方議会の常任委員会の制度をどうなさるか。  また自治庁の立場として内政省の設置の問題についていかにお考えになるか。これだけお伺いいたしたいと思います。
  190. 太田正孝

    国務大臣(太田正孝君) 御質問の第一は、退職金が非常に出たということ、それからもう一つは、新改築に非日常な経費がかかっていること、この問題でございますが、退職の際に支給するということを絶対に禁ずるということは、これはできないと存じます。特に長たるものに対しましては、行き過ぎはいけませんけれども考えなければならぬと思います。しかし世間の批判を受けるような退職金の支給は適当ではございません。自主的に差し控えてしかるべきものと存じます。なお、議員の立場から申しますと、非常勤の職員でありまするので、退職金の支給につきましては、特に問題があります。強く自治団体の良識に期待しなければならぬ問題であると存じます。地方自治法の改正の場合におきまして、地方公共団体の給与の種類を決定する場合に検討いたしたいと存じます。それから新改築に当りまして大へんな経費が出ている、財政上赤字原因になるようなことは、厳に戒むべきものと考えております。これは言うまでもありません。なお、庁舎の新改築につきましての地方債の詮議に当りましては、御説の趣意に沿いまして、焼けましたとかあるいは非常に手狭であるとか、真にやむを得ない場合に限って、その必要最小限度のものを許可したいとしう考え方でございます。  第二点は、地方行政機構の合理化及び能率をはかるようにどう考えておるか、この問題につきましては、世間の要請もだんだん強くなってきたことは私が申し上げるまでもありません。政府といたしましては、すでに地方制度調査会の答申のあった事項につきましては、その内容を尊重いたしまして、行政機構の合理化、能率化に努力いたしておるのでございます。なお、この問題は根本的には中央、地方を通ずる考慮すべき問題があり、またわが国の国情に適した恒久的な地方制度のあり方とも関連いたしておるので、目下地方制度調査会において審議中でありますが、地方制度の根本的改革の結論を得まするとともに、よくこれを尊重しつつ検討して具体案を作りたい、こういう考え方でございます。  さらに地方公共団体の各種行政委員会及び地方議会の常任委員会制度をどう考えておるかというお言葉でございます。戦後新たに設けられました行政委員会制度につきましては、仰せの通り方面に批判があるのでございます。地方制度調査会の第一次の答申の中でも、政治的中立性または準司法的機能を有するものを除いて排すべしとされておるのであります。政府といたしましては、これらの行政委員会についても前に申しました地方制度調査会の第一次答申の線に沿いまして、中央、地方を通ずる行政機構の改革をもあわせて積極的に検討実現をはかりたいと思っておるのでございます。  地方議会の常任委員会につきましては、これが運営の実際に徴しまして不合理な面も多いようでありまするので、地方自治法の改正問題として目下検討中でございます。  最後に第四点として、内政省の設置等についてどう考えておるか、こういう問題でございます。国と地方公共団体及び地方公共団体相互の間の事務の連絡調整をはかることが、私どもの大きな任務であると思います。国と地方公共団体の間、また地方公共団体相互の間においてなめらかに事務が運び、連絡がうまくゆくということが必要でございます。そうして地方自治の健全な発展をはかるためには、地方行政の総括調整機関、世間で内政省とかいろいろな言葉がありますが、制度調査会の方もそういう言葉を使っていると思いますが、総括調整機関としての強力な中央機関を設置するようにしろ、こういうお言葉でございますが、地方制度調査会の第一次、第二次の答申にかく示されておるのでござまいす。私はこういう意味におきまして内政省という文字が昔の内務省のような気がいたしますけれども、だいぶ権力を振った、ああいうものを考えているのじゃございません。地方自治という新憲法下における重大なる使命を考えまして、ただいま申しました総括調整機関としての力が十分出て、そうして国と地方の間をつないで、地方各自治体の間をつないでなめらかにゆくようにして、自治本来の目的を達するようにいたしたい、こう考えておる次第でございます。
  191. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 法務、文部両大臣にお伺いいたします。  現在米の配給は月十五日分でありまして、これを補うためにやみ米の売買が行われていることは周知の事実であります。しかしこのやみ米の値段は十二月七日の食糧庁の発表によれば、百一十八円で希望配給の値を下廻っております。ところによっては公定価格より安いところがあります。しかもこの値で売買されても法律に触れるという常識としては納得のゆきかねる状態になっておるわけであります。そこで私の特に御考慮をわずらわしたい点は、米の統制制度が法の尊厳をそこない、国民道徳の上にはかり知れざる悪影響を及ぼしておる、こういうことであります。順法精神が乱されることは、国の根底を脅かす大問題であります。そこで統制撤廃については、農林当局を初めいろいろ技術的な議論もありますけれども、生活困窮者に対しましては、社会政策的に別途に救済の道を考え得ることでありますから、もはや米の統制撤廃問題は損得を超越しているのじゃないか、私はかように考えるのであります。山口判事の崇高厳粛なる事例を引くまでもなく、法を犯さなければ生きられないという法の実体を失っているこの忍びがたい現状を一日もすみやかに打破するために、米の統制撤廃がぜひ必要である、こう私は考えますので、法務行政の最高責任者である法務大臣、また国民道義の観点に立って文部大臣、御両者が強くこの問題を推進されることを私は希望いたすのでありますが、これに対する御両所の御意見を伺いたいと思います。
  192. 牧野良三

    国務大臣(牧野良三君) 非常にむずかしい問題を御質疑いただいて実際困ります。おっしゃる通りで、こんなばかばかしい状態をほうっておいちゃいかぬ、今の私の真意をお話しすると、むしろ人心にはよくないと思いますから、今ここでお答えすることを差し控えたい苦衷をお許し下さいまして、何とかして閣内で意見を統一して善後処置を講じたいと思っております。
  193. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 国民が法律を守るということは第一の道徳的義務でございます。それゆえに守ることのできない法律があることは実に残念でございます。ただこれは戦争と敗戦という結果、経済上やむを得ずして今に残存する現象でございますから、経済の適当なる方法によりまして、一日も早くやみの、すなわち法律を犯さずして国民が生活できるように私は希望いたしております。お説の通り微力でありまするが、努力いたしたいと存じます。
  194. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 未曽有という豊作の現在でありますから、どうか両国務大臣が法の尊厳のために閣議で勇敢にこの問題を処置されることをここでお願いをいたしまして、次の質問に移ります。  厚生大臣お見えになっておりますか。
  195. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) ただいま見えます。
  196. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 それでは大蔵大臣にお伺いいたします。  最初に税制改革について次の三点を伺いたいのですが、第一点は三十一年度になお減税するお考えがあるかどうか。  第二点は、過重な勤労所得者の負担を軽減するお考えがあるかどうか。  第三点は、給与所得者と農業所得者とのバランスをいかようにお考えになるか。また間接税と直接税との比率を変えるお考えがあるかどうか。
  197. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 三十一年度に減税する意思があるかということは、ただいま税制調査会に諮問をして税制の改革について答申を求めておりますので、これらの答申を待ちまして検討を加えるつもりでおりますが、三十一年度に減税をするということは、今日の情勢で非常にむずかしいんじゃなかろうかというような考えをいたしております。  なお、今お示しのいろいろの租税の間の不均衡といいますか、こういうふうなものの是正については、ぜひとも私は取り上げてみたいと思っております。  なお、今後の税の減税をするというような場合におきまして、私はやはり所得税、直接税、時に所得税でも給与所得、こういう所得の軽減について特に考慮を払うべきだ、こういうふうな考え方をいたしております。
  198. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 さらに大蔵大臣に伺いますが、御承知通り、国際電信電話株式会社法には、同会社の未処分株をすみやかに売れ、こういう規則があるわけでありまするが、十四億円の株がまだ残っておるのですけれども、この秋の株高に一つも売ってない。大蔵当局は前の国会で一日もすみやかに売る、こう言っておられるのに、売っておられぬということは非常な私は怠慢だと思います。いかがでしょうか。
  199. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 法律の御趣旨に基きまして、また、ただいま継続御審議を願っております電々公社の方の一部改正法律案、この御趣旨を体しまして、総株数の五分の一、約百三十二万、これを除きまして残りの株数約四十八万くらい、これをすみやかに売るように金融機関や証券業者と緊密な連絡をとっておったのでありますが、ちょうどその際、金融が非常に緩漫な情勢をもって、一般金利も下る見通しがついた、株式市場も相当活況を呈している、さらにまた公社の配当金が確定をいたしておること等から、できるだけ公正な値段ということを考えまして今まで臨んでおります。大体こういうふうな諸条件も見通しがつきましたので、なるべくすみやかにいたしたいという考えでいたしております。
  200. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 八木君、厚生大臣並びに外務大臣が見えましたが……。
  201. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 この株を売るということは二十八年度から法律できまったのですが、この年内にも証券業者を呼んで、十四億残っているのですから、すみやかに売られるように重ねて強く希望いたします。  それから最後に大蔵大臣にお伺いしたいのは、昨日国会議員の期末手当増額の法律案が、衆議院を通過したとのことでございます。私は一般公務員と、選挙によって選ばれた議員とは、その本質を異にしておりますから、一般公務員が人事院勧告に従って期末手当が増額されたからといって、国家から相当優遇を受けている国会議員が、お手盛りでこれに便乗するがごときは、一般国民感情からいって非常に嘆かわしい次第だと私は思っております。そこで財政窮乏の折から、金額はともかくとして、大蔵大臣はこの法律案に積極的に反対をされたかどうか、またこの財源は一体何の経費の犠牲によってまかなわれるのであるか。さらにこのことが府県市町村各種議員の期末手当増額となって現われるのは必至でありまして、地方財政再建の前途にも、精神的に悪い影響を与えるものと私は信ずるのでありますが、府県市町村各種議員年間給与の総額を承わるとともに、大蔵大臣及び自治庁長官のこれに対する御見解を承わりたいと思います。
  202. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 今回この年末手当の増額をいたしましたに関連いたしまして、議員の給与についても一般公務員と同様にそれぞれ増額される、こういうふうに制度の上でなっておりますので、今日特にこれを抑制いたすこともいかがかと思いまして、これは認めたわけであります。
  203. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 財源と総額。
  204. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) ただいま御指摘のございました法律に伴いまする所要額は千七百万円くらいであると存じますが、それにつきましては国会の既定予算の中で、たとえば議員の欠員分の人件費が余っておるものでありますとか、その他いろいろ既定予算をやりくりいたしまして、節約をいたしまして捻出することができるように承知いたしております。
  205. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 市町村の総額はどうですか。
  206. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 県市町村の給与費の総額はたしか四十数億円であったかと存じます。そのうち期末手当が約三億八千万円ということに相なっております。〇・二五がどのくらいになりますか、その約四分の一くらいになろうかと存ずるわけでございますが、これにつきましてはやはり一般地方公務員の場合と同じように、それぞれの地方団体の既定経費の節約によりまして処理せられることと考えておるわけでございます。
  207. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 大蔵大臣は期末手当の増額に反対ですか、賛成ですか。あるいはまた地方に影響があるとお思いになりますか、ないとお思いになりますか。
  208. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 今回の期末手当の増額は公務員の給与が一般民間に比して低いからという人事院の勧告がありまして、この際この勧告は私は聞くほうがよかろうという考えで増額をやったわけです。
  209. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 議員の期末手当はどうですか。
  210. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) これは国会の提案にかかるものでありますが、これも今申しました国家公務員に対する年末手当増額支給と同じ趣旨でありますので、特に私も異議を唱えることはありません。
  211. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 不満足でありますが、次に移ります。  重光外務大臣に伺いますが、朝鮮問題でいろいろ御苦心のほどはお察しするのですが、去る八日の毎日新聞に賀川豊彦氏の李承晩大統領に対する公開状がのっておりました。そこで私は考えるのは、むろん正規な外交交渉を強行に推し進めになるのばけつこうでありますが、韓国にも相当深い関係のある宗教家賀川氏のごときを派遣して、李承晩大統領と交渉させるということもまた一つの方法じゃないかと、しろうと考え考えるのですが、どういうふうにお考えになりますか。
  212. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 日韓関係をぜひ一つ話し合いによって交渉を進めたい、こういう方針によりまして、今せっかく努力をいたしております。そうして直接にも間接にもいろいろな方法をもって感情の緩和、交渉を軌道に上せることをつとめております。軌道に上ったとは申しません。申しませんけれども、相当私は将来の道をつけつつあるわけでございます。さような場合に、賀川氏の閲歴から見て、賀川氏のごとき人が日韓関係に非常に穏当な意見を下されるということは非常にけっこうだと思います。しかしそれだからといって、今すぐ別の交渉の口を開くようなことがありましては、かえってせっかくやっておるところの順調な進展に支障を来たすようなことが、万一にもあってはいけませんから、さような時期が来るかもしれませんけれども、今日そういうことは考えておらないということを申し上げてお答えといたします。
  213. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 次に厚生大臣にお伺いをいたします。厚生省は去る七日にイスランジァ病変米在庫十二万五千トンに対して、加工用なら、みそ、しょうゆにして差しつかえないと、こう決定されたということでございますが、事実でございますか。
  214. 小林英三

    国務大臣小林英三君) 先般の衆議院の決算委員会におきまして、タイ国黄変米につきましては、すでに厚生大臣の諮問機関でありまする食品衛生調査会のうちの黄変米特別委員会におきまして、搗きかえをして一割表面を取ればこれは主食としてよろしいと、こういう答申を得ておりましたのでタイ国黄変米に対しては、そういう処理のもとに主食として使用してもよろしい。なお、このイスランジァ黄変米の転用につきましては、私まだ就任間もないのでありましたが、事務当局からケース・バイ・ケースによって、みそ、あるいはしょうゆ、澱粉、アルコール等の方に転用してもよろしいということの、今日の経過を聞いておりましたので、決算委員会におきましてそういうことを問答したことは事実であります。しかし私といたしまして、それらのみそ等に転用する場合におきましての裏づけがあるかどうかということについて、ちょっと疑念を持ちましたものでありますから、事務当局にも直ちに決算委員会の散会後、そのことをたしかめたのでありますが、今日までの間におきましてはケース・バイ・ケースでやっていくということであって、ケース・バイ・ケースということもきわめてあいまいでありますので、私といたしましては、この決算委員会等において私の考え方を申し述べる上におきまして、いいかげんではいかん、こういう考えた持ちましたものであります。それから、従来黄変米の処理の問題につきましては、いろいろ国民感情もありまするし、いろいろの経過を経て来ておる重大問題でございまするから、私といたしましては、自分が確固たる信念を持つまでの間の何をいたしたいというので、実はきわめて近いうちに、明日の午後のつもりでおりますが、それらのことを特別委員会の権威者と私みずから会見いたしまして、そうしてそれに対する私の所信を語り、そうしてみそ、しょうゆ、あるいはその他の問題につきましての処理については、私の意見をはっきりと表明したい、こういう考えを持っております。
  215. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 イスランジァ黄変米にはなお学者のうちに異論があるというのは事実でありますから、まだこれは解消してないと思います。そこで異論のあるものを食糧として払い下げれば責任がとれないと、こう私は思うのでありますから、異論のあるうちは払い下げない、こう解釈してよろしゅうございますか。
  216. 小林英三

    国務大臣小林英三君) 私は現在、このイスランジァ黄変米、あるいはタイ国黄変米等を含めまして、相当数量の黄変米がある、しかもそれには相当の倉敷料も払っておるということもよく承知いたしておるのであります。しかしそれらの数量のいかんにかかわらず、とにかく私どもといたしましては、事いやしくも食糧問題、従来まで非常な大きな問題を起しておる問題でございまするから、それらを使ってよろしいとか、使って悪いとかいう問題につきましては、ただいま私が申し上げましたように、十分な私の見解を明らかにして意見を申し述べたいと存じております。
  217. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 現在見本の取り方は全体の何十億分の一というぐらい少い、つまり五千トンで三百粒というぐらい少い。サンプルの取り方がこれでは、私はどうも毒が多いとか少いとかいっても、心配でならんというのが実情でありますが、このサンプルの取り方ももっとお変えになるというお考えがあるかどうか。
  218. 小林英三

    国務大臣小林英三君) 現在の輸入米に対しまする検査の方法といたしましては、横浜その他、合計七カ所の港におきまして、食品衛生検査員を設けまして、そうして大体五十に対する一の割合で抜き取り検査をいたしております。その抜き取り検査の方法といたしましては、大体その俵から抜き取りまして、それをいろいろな、これだけならこれだけ抜き取っておりまして、いろいろなところから三百粒を集めまして、そうしてその三百粒に反応を求めまして、そうして少しでも毒素の反応のあるものにつきましては、培養の結果毒素の反応のあるものにつきましてはそれを廃棄する、ほかの方に持っていく、こういうことでやっておるのであります。なお、今お尋ねのありましたような問題につきましては、今後十分研究いたしたいと思っております。現在の状況でこれは足りると考えております。
  219. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 ただいまの五十に一とおっしゃいましたけれども、五千トンの米から三百粒取ったというのは、現在の在庫の病変米の見本の取り方から計算すると何十億分の一になると思います。今のお話だいぶ違うと思います。
  220. 小林英三

    国務大臣小林英三君) 私は就任間もないのでありますけれども、今の問題につきまして、私が責任の事務当局から聞いております範囲内におきましては、五十袋に対して一袋の割合で抜き取りをいたしまして、それから抜き取りました米について、ただそこだけの三百粒でなしに、いろいろな三百粒を寄せ集めまして、それに対して培養をいたしました結果、その反応によって判断をするということをやっておるのでありまして、今、八木委員お尋ねのこととは相当違っておると思います。
  221. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 速記録等もありますけれども、時間もありませんから、なお両方とも研究することにいたします。  それから工業用アルコール原料に通産省では一トン二万七千円で二万トンくらい引き受ける、こうしばしば言明いたしておるのでありますが、この方を先にやられたらどうかと思いますが、いかがですか。
  222. 小林英三

    国務大臣小林英三君) 黄変米の処理につきましては、アルコール原料にも、また澱粉その他いろいろあるのでありますが、たとえばみそにつきましては五万何千円であるとか、あるいはアルコールの原料にいたします場合にはイモ等の関係もありますから、一万二、三千円でなくては採算がとれないとか、いろいろな問題がございます。しかし私は厚生省の当局といたしまして、国家財政の上に裨益するとか裨益しないとかいう問題は全然別問題と考えております。従いまして、私が先ほど申し上げましたように、この問題の処理について私は十分なる確信を得たところにおいて自分の所信を明らかにしたいと思っておるのでございます。
  223. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 あと行政改革の質問をしたいのですが、河野行管長官見えませんから次に譲りたいと思います。次の機会に保留いたします。
  224. 吉田法晴

    吉田法晴君 松澤さんが病気で次の機会にいたしましたので、三、四お尋ねをするのでございますが、答弁する方も十分御用意がないと思いますが、私の方も事前の準備が足りませんので、あるいは迷惑をかけるかと思いますが、その点はお許しをいただきたいと思います。  これは外務大臣というよりも法務大臣から御答弁をいただくべきかと思いますが、沖縄の諸君の国籍はどういうことであるか、御答弁願います。
  225. 牧野良三

    国務大臣(牧野良三君) むろん日本人だと思いますが、何か重要なことありますか。不用意に御答弁して誤まるといけませんから、その点は御指摘を請いたいと思います。
  226. 吉田法晴

    吉田法晴君 私も日本人だ、日本国民だと思うのであります。沖縄で起っております問題について日本政府がどれだけの責任をとってきたかということになりますと、これはほとんど国民に対する責任を果しておらぬと考えるのでありますが、たとえば、先般沖縄の立法院の諸君が日本の国会に来られまして、私どもお話がございました。あるいは政府筋にも折衝があったと思うのであります。文書を私どもと申しますか、国会に対します陳情書が出ておるはずだからということで探しましたところが、議長室のと申しますか、議長室の倉庫の中に眠っておったと申しますか、文書は届いておりますけれども、それについて処置がなされておらぬ。ところが拝見をしますというと、その文書は国会にも出ておりますけれども日本政府にも出ておる。これはたくさんの陳情書と申しますか、あるいは要請書と申しますか、そういうものが出ておったと思うのでありますが、従来こうした沖縄の国民の政府に対する要望がどういう工合に処理されておったか、承わりたいと思います。
  227. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) それは私からお答えをいたします。  沖縄の沖縄人は日本人としてむろんこれは取り扱っておるのでございます。そこでこの日本人に対しては十分の保護を与えなければなりません。しかるに沖縄は御承知通りに行政も司法もすべて統治権は今、日本の手にございません。そこで日本政府としてあとうるだけの保護をこれはやらなければなりません。その方法はどうであるかというと、つまり統治行政をやっておる米国政府に対して、沖縄人のためにこうしてもらいたいということを勧告することになります。  そこで陳情書の問題でありますが、陳情書はいろいろ参っておることは承知いたしております。特に土地の収用の問題等に対するものでございます。これは米国側に十分その事情を通報して、できるだけの処置を、要望を満たしてやるようにしてもらいたい、住民の福祉のためにやってもらいたいということを意見を付けて要請をしてきたのでございます。その結果、米国政府としてはいろいろ調査団を派遣するとか、また関係の責任者に対してそのできるだけの処置をするようにとかいうことは通報しておるようでございます。  それからまた沖縄人の方で直接陳情のために米国に行った者が相当数あることも、あるのは御承知通りであります。これに対しては日本政府としてはあらゆる便宜を与えて、米国側にも紹介の労をとっておるわけであります。さようにして沖縄人の福祉の少しでも向上するように努力をしておるわけであります。これが今日までの政府のやっておることでございます。以上。
  228. 吉田法晴

    吉田法晴君 法務大臣はいとも明快に日本の国民、こういう御答弁でした。今、外務大臣は統治権の一切は眠っておるかのごとく言われましたが、日本人であるというならば、——まあ統治権の作用を幾つかに分けるということが妥当であるかどうかはとにかくといたしまして、領土主権あるいは対人主権等に分けるという方法が普通とられて参りました。国民であるというならば、対人主権はフルといわなくとも、相当これは今の外務大臣の答弁からいたしましても、日本として働かなければならない、あるいは責任をつくさなければならない、こういうことになろうかと思うのであります。しかるに通報をするにとどまる、あるいは便宜を供与するにとどまるというのは、私は間違っておるのではなかろうかと思うのであります。日本政府に直接折衝をされるあるいは国会に来て陳情をするというのは、日本の国民だと思っておるからこそ日本の機関に対して期待もし、そうして陳情、折衝もせられるのだと思うのでありますが、そういたしますと、私はただ便宜を与える、第三者に便宜を与えるということでなくて、人に対しては責任を負うということが国民に対しては責任を負うという態度が、私は日本政府なりあるいは日本の機関、国家にしてもそうだと思うのでありますが、具体的な例をあげて参りますから、御答弁を願いたいのでありますが、従来の態度あるいは解釈では、少くとも沖縄の国民の期待に沿わないことはこれは間遠いございません。従ってそれらの点について関係各省の間で再検討をする、あるいはアメリカとの間に折衝をして、日本政府が、沖縄に住んでおります日本の国民に対して十分な責任が尽されるように折衝をする御意思がおありになるかどうか承わりたい。
  229. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 大体お説の通りだと思います。すなわち今折衝しておるということを先ほど申し上げたわけでございます。
  230. 吉田法晴

    吉田法晴君 先ほどは個々の問題についてしておるというお話でしたから、全体の建前、あるいは日本政府にして、日本政府なら日本政府がアメリカに折衝をする。あるいはあとで例を引きますけれども、中国——これは台湾政府、国民政府と沖縄の国民との間に起った問題については、日本政府が国民として折衝する、こういうようにはっきりすべきではないかということを申し上げたわけでありますが、重ねて御答弁を願います。
  231. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) そういうようにはっきりしておるつもりでございます。たとえば沖縄人が台湾政府との間に問題を起せば、日本の代表者がこれを世話をいたしております。それからたとえばペルーにおいてたくさんの沖縄人がおる。これは日本人として出先はこれを掌握しておるわけでございますが、ただ私が先ほど申し上げましたのは、沖縄において行政をやっておるアメリカ、その行政に干渉することのできないことを申し上げたのであります。しかし行政のやりくりについていろいろ折衝をしたり、要請をしたりすることはできるのでありますから、それをやっておることを申し上げたのでございます。
  232. 吉田法晴

    吉田法晴君 干渉はできないとおっしゃるから、干渉というよりも、もっと日本の国民に対してアメリカの沖縄の諸君に対する関係を是正をするために、もっと強く交渉をすべきではないかと、こういうことを申し上げたのであります。  で、具体的に責任を持っておるとおっしゃいますからお尋ねをいたしますが、今年の三月二日午後二時ごろだというのでありますが、魚釣島付近で、これは漁業をやっておったかのようでございますが、沖縄の当間政庸という人の漁船第三清徳丸が航行中、青天白日旗を掲げたジャンク船二隻がやってきて、そうして遭難をしているから曳航をしてくれ、こう言う、これはまあ手まねでございますが、話があったので、魚釣鳥に入って水を補給したところが、態度が変って拿捕された。魚釣島であります。これは島は沖縄、あるいは領土主権は眠っておりましょうけれども日本の国の一部であります。そうして人は日本の国民でありますが、二人を射殺して四名を連行したか、あるいは二人を含めて六名を連行したか、明らかでありませんけれども、そういう事件が起ったというので、何べんも日本政府にも陳情がなされておる。あるいは国会にも陳情書が出ておりますが、今日に至るまでも一向はっきりしない。日本政府がどれだけのことをしたかということも明らかでございませんが、不信を含めて陳情されました。  この結果に基いて質問を申し上げますが、どういうように処置をされたか、あるいは交渉をされたか、そうしてそれが向うからの回答がどうであったか、こういうことを一つ御答弁願いたいと思います。
  233. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 沖縄の漁船が台湾の国府の船らしいものに拿捕された事実がございます。これは沖縄の行政権を今預かっておる米国当局の直接の管轄になるかと思います。そこで米国は国府とこの問題について交渉をいたしました。しかし日本もこれを黙っておるわけには参りませんから、日本政府といたしましても米国側及び国府に十分注意を喚起して、そうしてこの問題を十分解決してもらうように、こういう措置をとりました。しかしこの問題が今日わが方の希望するように解決したという報告をまだ受けておらぬことを遺憾といたします。
  234. 吉田法晴

    吉田法晴君 先ほどは、国民だし、それから日本政府からアメリカに折衝すべき建前にある、こういう御答弁でしたから、今の具体的な問題については、日本政府としてどういうように台湾政府——国民政府に折衝されたか、こういうことを尋ねたのでありますが、御答弁は、アメリカから折衝をしたかもしらぬけれども日本からは折衝した云々という御答弁はなかったと思うのであります。従ってこれは先ほどの御答弁と今の御答弁とは食い違いがございます。  そこでそれらを含めて外務省として、日本と沖縄、それからアメリカとの関係について根本的に話をし直すという御決意はおありになるかどうか、それをもう一度お尋ねします。
  235. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) その根本の建前については、先ほども申します通りにこれは明らかだと思っております。先ほどの船の問題でありますが、私の答弁申し上げたいのは、その事実を知っておる国府、すなわち台湾政府にも注意を喚起し、それからその処理を促し、それからまた米国側にもすみやかに措置をとるように申し入れた、こう申し上げたわけでございます。
  236. 吉田法晴

    吉田法晴君 時間がございませんから一つずつ伺って参りたいと思うのですが、沖縄の人々、国民で日本にありました者が沖縄に帰ります場合に預貯金を取り上げられたと申しますか、あるいは預けていったと申しますか、そういう事実があるが、形式的な外国為替管理法のために全然保証をされておらぬ、あるいは返されておらぬ、こういうことがあるようでございますが、これに対して先ほどの法務大臣あるいは外務大臣の答弁からいたしますならば、当然日本の国民同様の、内地人同様の処置が講じられるべきであると考えるのでありますが、どのように考え、あるいはどのように処置されるか、大蔵大臣から御答弁願いたいと思います。
  237. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) この沖縄人の預貯金、債券等につきましては、内地人と同様な方向で処理したいと私は考えておるのであります。今具体的に仰せになりましたが、これは為替管理法上の扱いであると思いますが、よく調べてみたいと思います。
  238. 吉田法晴

    吉田法晴君 調べて……、今の御答弁は、内地の国民同様に取り扱いたい、かような御答弁でございますか。
  239. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) まあできるだけ内地人と同様な方向で処理をいたしたい、かように考えております。
  240. 吉田法晴

    吉田法晴君 この援護の問題について、たとえば一般の戦死者について、内地の場合と、それから沖縄に帰ります場合に、日にちのズレ等によって実際に取扱いが変っておるという実例があるようでございます。それから学生で、これは島をあげて被害をこうむりましたから、学生といわず、一般といわず、ほかにない被害を受けておりますが、学生等についても援護が片手落ちになっておるという陳情でございますが、これらの点について厚生大臣あるいはその他で同様に取り扱うという御趣旨でございますかどうか、承わりたいと思います。
  241. 小林英三

    国務大臣小林英三君) ただいまお尋ねの沖縄におきまする戦没者遺族の援護の問題でございますが、御承知のように遺族援護法というものは二十七年の四月に実施されたわけでありますが、内地におきましていよいよこれが動き出しましたのが二十七年の八月ごろであります、少しズレまして。ところが御承知のようにこの沖縄はアメリカの占領治下にありました関係からいたしまして、同じように遺族援護法を動かしていく上におきましても、アメリカの民政部等ともいろいろと折衝をしたりした関係がありまして、内地に対しまするよりも多少ズレでおくれたことは事実でありますが、しかしこの戦没者の遺族の援護につきましては、漸次復員処理の終了を待ちまして、遺族援護法を適用しているのであります。  ただ、ただいますでに復員処理ができまして、あなたの家族は死亡、こういうことで戦死なさったというようにすっかり処理ができましたものは約二万名ぐらいでありますが、ただいま琉球政府も非常に協力をしてくれまして、こちらからも専任の者が行っておりまして、これに非常な協力をいたしまして、いわゆる復員処理というものの問題を促進しておるのでありますが、学従につきましても、その身分について決定次第至急に援護の措置を取り進めたいと存じているのであります。学従の身分の決定につきましては、各人ごとの資料を詳細に審査いたしました上で、事実上軍人同様に軍務に応じて戦没した者につきましては、軍人といたしまして取扱いをいたし、また一般邦人とともに戦闘に参加いたしました者につきましては、いわゆる軍の要請によりまして戦闘に参加いたしましたものといたしましてこれを取り扱うことにいたしておるのであります。
  242. 吉田法晴

    吉田法晴君 外務大臣お尋ねをいたしますが、原水爆の実験が繰り返えされまして放射能がふえる、日本の空の放射能がふえる。しかも来年は大きなイギリスの実験が太平洋上で行われる。こういうニュースが相次いで、日本の国民の中に原水爆の実験禁止を要望する声が大きくなって参っております。国会の中にもそうした動きがございますが、これについて外務大臣とし、て各国に日本の周辺において原子爆弾の実験の禁止を申し出る御意向がおありになるかどうか、承わりたい。
  243. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 原水爆の実験の結果が非常に危険なものであるということは、もう周知のことでございます。従いまして、その危険を少しでも防がなければなりません。この問題については各国と交渉して、その目的を達するという方法がむろん必要でございます。米国との間におきましては原水爆はなるたけ実験を、日本の近海と申しますか、日本の最も利害関係を持っておるようなところの区域ではやってもらいたくない、どうしても米国の領域であるからやると、こういうことであれば、そのやる被害をなるたけ最小限度にとどめなければならぬ。特に日本人のこうむる被害は十分に考慮して、これの予防措置を講じてもらいたいということで、そういうことについては米国側も十分承諾をして、あらゆる予防措置を講ずる、こういうことに相なっておるのであります。  しかし米国が自国の領域の中で原水爆の実験をすることをやめるというところまではまだはっきり言質を得ておりません。その他の国はまた、最近も新たに実験をする、あるいはまたしたという情報がございますけれども、これらの国に対しては同じように十分予防措置を少くともとらなければならぬ、原水爆の実験の危険だということを十分に一つ申し入れて、日本の要請を明らかにしておこう、こう考えております。  ただしかし、そういうことでなくして、この原水爆の実験の禁止ということは、一般的に考えなければならぬ問題だと思います。どこの区域であろうが、これは一般的に私は原水爆の実験はやらぬ方がいいという方針のもとに進むべきだと思っております。従って政府もそういう考えをもって国際的にこれを取り扱って、国際会議、特に国際連合に取り上げられておる問題でもありますので、国際的に原水爆の実験を禁止、もしくはその制限というようなことに向って考え方を進め、また要請をしていって、国際的にさような目的を達するようにしむけていきたい、こういう方針で進んでおる次第であります。
  244. 吉田法晴

    吉田法晴君 原水爆の被害者はほとんど国の救済を受けないで、放置されてきた。全くしていないとは申しませんけれども、きわめて小さな救済しか受けておりません。従ってその点が国内的、国際的に問題になりまして、今では今年の原水爆の禁止世界大会等を機会にいたしまして民間で、あるいは外国の国際的な民間的な提携によってその救済が進められておるというのが実情でございます。この点について政府として再検討、強力な、あるいは治療に、あるいはもし生活のできない、生活能力、労働能力を喪失いたしました被害者の援護のために大きな転換と、救済の方法を講じょうという私は責任があると思うのでありますが、どのように考えておられますか、厚生大臣等から一つ御答弁を願いたいと思います。
  245. 小林英三

    国務大臣小林英三君) 原水爆被害者に対しまする対策といたしまして、広島、長崎の従来の原水爆被害者に対しましては、国立予防衛生研究所の当地におきまする支所において調査を行いまして、治療の必要な者につきましては予算を計上して、その治療方法の研究を行わせておるわけであります。それからビキニ海域におきまする水爆の被害者の治療は、東大の付属病院及び国立東京第一病院におきまして治療を行いまして、おおむね軽快してそれぞれ帰宅いたしておりまするのでありますが、退院後の健康の管理ということにつきましても、両病院におきまして責任を持って措置をいたしておる状態でございます。なお、これに要しまする経費といたしましては、一応この船員保険が立てかえをいたし、それに対しましてかねての米国からの見舞金、二百万ドルの見舞金の中から充当いたすことにしております。一般的な原水爆被害者に対しまする医療につきましては、厚生省に設置してございますところの原爆被害に関する調査連絡協議会の医学部会におきまして、治療その他の研究をいたしておるのでありますが、ただいま御質問のありましたような問題につきましても、なお国として十分検討してみる必要があると考えております。
  246. 吉田法晴

    吉田法晴君 検討じゃなくてもっと考えなければ、国際的な救援ということで日本政府の責任が尽されておらぬというこれは非難がございます。それをもとにして御質問申し上げたわけでありますが、根本的に考え直してもらうということを要望いたしまして、次に移ります。  次の問題も同様な問題でありますが、全国の盲学生が、点字の教科書が十分でない、あるいは安く手に入れることができないということで義務教育も実際十分受けていない。それから高等学校に至りましては施設が十分ないということで、皆さんのところにはどうか知りませんが、私のところには、切々たる訴えが参っております。で、私どもも個人として、そうした教科書を作りますための費用に、私どももほんとうに貧者の一燈を献じますが、私はかくのごときは当然国がやるべきだと思うのであります。文部大臣はこの点字の教科書あるいは教育施設の拡充についてどのようにお考えになりますか、承わりたい。
  247. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 古用さん御承知通り、現在では昭和二十九年にできました盲学校、ろう学校及び養護学校への就学奨励に関する法律で、盲ろう学校の小、中学部については国が補助をいたしております。来年度からはこれを高等学部までにふやそうと思っております。  それから教科書の購入についても国庫の補助をいたします。点字教科書の発行については目下その促進に努めております。大体大蔵大臣に御奮発願って、去年の倍くらいな金を一つ使いたい、こう思っておるのです。——去年というのはことしのことですね。本年度が一億八千万円かけておりまするが、三億六千万円要求しておるのであります。
  248. 吉田法晴

    吉田法晴君 お聞きの通りですが、大蔵大臣の所見を承わりたいのですが、これは国民の相互援助とかいうようなことでなくて、当然国がやるべき問題だと思うのであります。そうして少くとも高等学校程度の教育を受けなければ実際に必要な、社会に出て仕事をするというわけには参らぬと思います。御答弁は、文部大臣の御答弁がございましたが、大蔵大臣一つ御答弁を……。
  249. 清瀬一郎

    国務大臣(清瀬一郎君) 全く古田君と同感であります。これは文部省で思いつきにやるのではなく、わが党が一般政策としてきめたところにあるのでありまするから、ここにおられる大蔵大臣もこれだけはぜひ一つ御承諾願いたいと思います。(笑声)
  250. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 全く私も同じような考えであります。財政の上からできるだけこういう方面には手を差し伸べていくべきだと考えております。
  251. 吉田法晴

    吉田法晴君 次に基地の問題についてお尋ねするのですが、基地の問題それ自身については別な機会にいたしいいと思うのであります。きょう調達庁長官は新聞記者に、五万円から五十万円の範囲内で、何と申しますか、契約奨励金というのか、協力奨励金というのか、そういういわば包み金のようなものを出す、こういう発表がなされたようであります。国の金でございますから税金でございます。その国の金を会計法に基いて支出をするわけでございますが、直接補償に関係のない、そういう何と申しますか、包み金のようなものが出せるのかどうか、会計検査院に一つお尋ねをいたしたいと思います。やり方は、宅地と耕地、あるいは家があるかどうか、それから耕地だけか、こういったような関係、差別は多少あるようでございますが、広狭とかそういう関係は関係がない、会計検査院の御所見を承わります。
  252. 保岡豊

    説明員(保岡豊君) ただいまおっしゃいましたように、本日私もそのことについて伺いました。会計法と申しまして、支出がきまったものにつきましてその手続を規定しておりますものでございますが、支出をしていいかどうかということにつきましては、私まだ研究をいたしておりませんので、そのことについては、今ここですることができるかどうかという御質問に対してはちょっとお答えいたすことはできませんのでございます。
  253. 吉田法晴

    吉田法晴君 具体的な点についてお答えができなければ、一般原則をお示しをいただきたいと思うのであります。補償でなくて土地を買いたい、その買う方法はとにかくといたしまして、そういう場合に勝手な評価と申しますか、好悪その他でもって政府機関が金額を勝手に左右して支出するということができるかどうか、一般的な問題として一つ御答弁を願いたい。
  254. 保岡豊

    説明員(保岡豊君) お答えいたします。一般的には支出の根拠法律だの予算だのが必要だと思いますが、民間ではそういう場合謝金とかお礼とかいうことで出しておりますが、今申されました奨励金とかいうものにつきましては、前例がまだございませんので、申しかねるわけでございます。
  255. 吉田法晴

    吉田法晴君 前例がございませんならば申し上げかねるというて、一般的な原則をお尋ねしておるわけでありますが、そういう点は、従来の点については会計検査院として好ましくないという工合にお考えになりますのか、一般的な態度一つお答え願いたい。
  256. 保岡豊

    説明員(保岡豊君) 今の御質問でございますが、好ましいとか好ましくないとかいうことには私は申し上げかねますが、今までは補償ということ、雑作補償とかその他の補償ということで出しておりまして、それと離れた奨励金、見舞金に関するものは出した例がございませんので、私今にわかにお答えいたすわけには参りまんのでございます。
  257. 吉田法晴

    吉田法晴君 時間がございませんので、それでは最後に石油資源開発株式会社法が十二月一日から施行と申しますか、設立手続が完了しておるはずであります。したのであります。同法第二条第二項によって政府がその株式を二分の一以上保有しなければならぬという規定がございますので、国家投資のいかんが民間投資にも影響を与え、あるいは開発事業にも影響を与えるわけでありまするが、昭和三十一年度予算編成に当って国家投資をどのように取り扱う方針であるか、通産省及び大蔵省のそれぞれ大臣の御答弁を承わりたい。
  258. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) 三十一年度はまだ予算が決定しておりませんから、確実な数字を申し上げる、何といいますか、現実にどうなったということをここで確実に申し上げることはできませんが、方針としては予定通り七億円の出資をいたしたい、かように考えております。
  259. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 三十一年度におきましては出資をいたす考えをしておりますが、金額は幾らになるか、ただいま検討を加えておるところであります。
  260. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) それでは本日はこれにて散会いたします。明日は午前十時から開会いたします。    午後五時五十七分散会      —————・—————