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国務大臣(
重光葵君) 国際連合に加入するという問題は、これは
日本としての大きな要請でございまして、国会の決議もはっきりしておるわけでございますから、それに向って外交機関は全力をあげて参りました。そこでこの問題を詳細に御報告をいたす材料は十分ございます。ございますが、ただ今文書がございませんから、私は大体のことを申し上げます。
第一の点はカナダ
政府が十八カ国の一括加入の形式を持ち出した、この点でございます。その点の
日本との関係は、
日本もこれを持ち出してもらうようにカナダにおける
日本の大使館が主となりまして、これが第一段でございます。そうして十八カ国の一括加入ということに
日本も入れてもらう。なかなかスペインまでは入れるけれ
ども日本を入れることは困難であったのです。それを入れてもらうことになった。これが第一段の成功と申しますか、階段でございました。
そうしてそれをソ連に認めてもらうということが非常に大きなことでございます。これは
アメリカのピァソン外務
大臣がモスクワに旅行をいたしました、それは何ヵ月揃でございます。その時からもピアソンばそれを頭に持ってソ連にこれを承諾してもらうことに全力を尽くしました。そこで大体下地ができました。ソ連は
日本とまだ
平和条約を結んではならないのでございますから、ソ連としては
日本の国際連合加入について従来は拒否権を発動して異存を唱えておったのであります。しかし十八ヵ国の一括加入という形式のもとにソ連はその態度を
日本のために有利に変えてくれたのでございます。これは私は非常にその点は
日本としてこのソ連の好意ある態度をアプリシエイトして、感謝していいと思うのでございます。
そういう階段になりまして、それから一番大きなことは
アメリカの態度でございます。
アメリカの態度が十八ヵ国一括加入の案に賛成をするかどうかということがこれは大きな問題でございます。一括加入ということに対してはもうこれは
アメリカは終始一貫
反対をして、すごく
反対を表しておったのでございます。国際連合の規約から見ると、これはもうどの国が国際連合に加入し得る資格を持っておるかということは、国別に個々にこれを調査をしなければいけない、個々に検討をしなきゃならんという主義で固くこれを
維持して来ておったのでございます。そうでありますから、従来のソ連の一括加入の方式には絶対に
反対であったのでございます。そこで
アメリカの態度を変えてもらうことが非常に困難であり、また重要になって参ります。これに対しては
日本の外交機関東京でもそうでございますし、またワシントンにおける大使、これは密接に
アメリカ側に連絡をとって、その態度を緩和してもらうために努力をいたしたのでございます。そうして
アメリカは相当早く態度を緩和してくれまして、十八カ国の一括加入ということについて賛成をする態度になりました。これは単に
政府との連絡の結果であるのみならず、
アメリカの
世論に働きかけたことが、これはニューヨークにおける国際連合に駐在しておるわが大使、ワシントンの
日本の大使館等の何で
世論に働きかけまして、そこで
アメリカの大新聞がみんなこれを支持いたしました。これは今国際連合を強化すべき時期であるという大上段の
意見で、そういうことになったわけでございます。
そこで
アメリカの態度を有利に向けていくということは容易になったと私は観察いたしております。イギリスはカナダの
意見に
最初から賛成でございました。それから大きな故障はフランスでございまして、フランスは多数の新しい加入国があるというと、またモロッコ問題等に対してフランスに
反対の立場をとるものが多くなる、そうなれば非常に不利益であるという立場をもって
最初反対をいたしておりました。しかしモロッコ問題、アルジェリア問題も無事に解決をしてフランスは国際連合に復帰いたしました。総会に復帰いたしました。そういう問題が解決をいたしました結果でもありますが、
日本側もフランス側の態度を変えてもらうことに努力をいたしましてこれも変って参りました。その他
日本の加入ということは異存は誰もございません。例外なく全部
日本の加入を歓迎しております。しかしほかの
理由で一括加入の形式に
反対しておる国がなお数ヵ国ございました。従来の主張で行きがかりでこれに異議を申し立てておったトルコとか、ベルギーとかいう国々も次第にその従来の態度を変えて、この加入については賛成をするようになりまして、そうして特に
日本の加入を支持してくれるということに全部約束をしてくれました。
問題はお話の通りに
国民政府の問題でございました。
国民政府が外蒙古の加入に対して異議を唱えるということは、私はその気分はほんとうによくわかります。
日本もこれは了解していいと思います。しかしながらそのことと
日本の加入ということを引きかえにするようなことがあ
つては、これは単に国際連合の強化ということに反するというだけではございません。何といっても東亜の全局に対する平和、安全という方面から見る大局論からしましても、
日本の加入ということは台湾の
国民政府としては歓迎すべきことでなければならんと、私はこう
考えました。そこで台湾
政府に対しましては、一度ならず
日本はその
意見を表示して、そうしてその障害にならんような態度をとることを強く勧めました。それのみでなくして
アメリカは大統領から蒋主席に対して三回の勧誘をいたしております。つまり拒否権を使ったりすることのないように、そうして十八ヵ国の加入が円満に認められるように、
アメリカは蒋主席に三回の勧誘をやっております。その結果はいまだにわかりません。どうなるかこれはわかりません。わかりませんけれ
ども私は
国民政府が大局の上に立って
日本の加入ということも歓迎してくれる結果になることを強く今期待しておるわけでございます。
さようなわけでございまして、この国際連合の、今その方面の
委員会は九日に一括加入のことを
審議する
委員会が終りまして、それを理事会にまたかけなければなりません。理事会にかけて、理事会の推薦によって総会でこれを決議して最終決定になるわけです。その総会は今のところでは十五日に予定されております。それによりまして、これは無事に進めて参れますように非常に希望をいたしておるわけでございますが、情報によりますと、これに
反対する分子は、時間切れにするように持っていこうというような策動もあるということが報ぜられておりますけれ
ども、わが機関、特に二ューヨークにおけるわが機関を全力をあげてこれが間に合うように、実現されるように方々を説得して努力をいたしておるような状況でございます。まあ大体さような段階に相なっております。