○森崎隆君 私は、今般
政府より提出されました
昭和三十
年度特別
会計予算補正(特第2号)に対しまして、日本社会党を代表いたしまして反対を表明するものでございます。
七月当初、わが社会党が、当時の自由党の諸君とともに、早急に臨時国会を要請いたしましたのは、
地方財政の再建あるいは公務員の
給与の
適正化等、国民生活安定の基本的諸問題に対して、早急に
予算を補正して国民の要望にこたえんとしたためでありました。しかるに、国会は十一月末にようやく開会されました。開会されましたが、われわれの要望は、何一つこの中に出てこなかった。あまつさえ、われわれと共闘の立場に立っておりました旧自由党の各位は、今や与党として、この国民だましの補正
予算に賛同をしておるのは、まことに皮肉な事実でございます。
私はここで一言お訴え申し上げたい。今さら私が申すまでもございませんが、
政府は国民のためのものでございまして、そこには何ら偽わり、表裏があってはならないということは、政治道徳の根本原理であろうと信じております。しかるに、この原則がいつもむざんに踏みにじられていることは、ふんまんにたえないのでございます。すなわち、国政の責任者である現内閣総理大臣及び諸大臣の発言内容というものは、いつも食い違いがある。時には正反対の意見にすらひっくり返ってしまうようなこともあるわけであります。今度の補正も、去る二十二国会におきましては、補正の有無について、とくと
政府の所信をただしておいたはずなんであります。しかるに当時は、
予算修正の必要があるにもかかわりませず、一年間は補正をせずに断じてまかなっていけると、がんこにこれを言い切りましたのは一体だれであるか。その当人が、今はけろりとしてインチキ補正を提出いたまして、涼しい顔をしておる。これは、現内閣の大臣連中の政治的信念が、明治時代のわれわれの先輩政治家あるいは諸外国の進んだ国国の政治家と比較いたしまして、非常に低劣化しておるのではないかと疑わしめるものがあるのでございます。特に今度の国会を皮切りといたしまして、われわれは国民に対する大きな責任を背負いまして、二大政党の制度がようやく始まろうとしておる。例の保守政党の疑獄、汚職等のあの不信用を今後は全部払拭して、二大政党が互いに切瑳琢磨いたしまして、これによって信頼を得る正しい政治をしようとするこの当初におきまして、大臣連中が、政治の責任者が、このように信用を失墜するような左言右言をろうとすることでは、とても今後二大政党制度というものはうまく行かないうらみがある。非常にこの点は、私は遺憾に存ずる次第でございます。特に総理大臣その他の方々には、今後もう少し心を入れかえて、国民の政治を正しくやってもらいたい。これだけは特に申し上げておきます。
さて本論にかえって、今回の補正は、国における一般経費の節約額、賠償費、公共事業費等の不用額合せて百六十億円を借り入れまして、これに伴う地方
負担の軽減額二十八億円を見込み、計百八十八億円を特別
交付金とするものでございます。
予算委員会における大蔵大臣の御説明によりますというと、「
地方財政につきましては、近年赤字の累積により、まことに憂慮すべき状態にありまするが、その再建をはかるためには、弥縫的な方策で当面を糊塗することを許さず、この際、国、地方を通じて抜本的な対策を講ずることが必要であることは各界の一致した意見であります」と言っております。しかるに地方
交付税率の引き上げもなしませず、わずかに百八十八億円という、まことにその場限りの一時的措置を講じようとしておるのであります。地方自治体の赤字は、実質的には、二十八
年度四百六十二億、二十九
年度に至りましては六百五十億程度の巨額に上り、今年もすでに数百億の赤字が出ようとしております。このことは自治庁の調査にも明らかでございます。まさに地方自治体にとりましては大問題であることは、何回もの陳情運動がこれを明らかに証明しておるのでございます。これに対する
政府の補てん額はあまりにも過少でありまして、これでは本
年度地方財政計画における必要経費の不足は満たされないばかりでなく、その上に、本
年度一般会計において可能な歳入増収額を中心にいたしました組みかえを行わないで、一時借り入れという手段をとったことは、これまた実に大蔵大臣の意見がいかに国民をだましておる美辞麗句にすぎぬものであるかということを証明して余りあるものでございます。現在の
地方財政の窮乏は、かくのごとく深刻なものでございまするが、本
年度財政
計画も、そのために実施困難に陥ろうとしておるのは、これは事実でございます。これは多年にわたる保守政党による、多く吸い上げて少く与えるという政策の結果でありまするが、今や
地方財政は破綻の寸前にあると言っても過言ではありません。しかもこの
地方財政支出と関連のある、たとえば社会保障、義務教育、公共事業、公衆衛生等の一般
予算会計支出の効果も、またこれによって阻害される心配が非常に濃厚になってきておる事実でございます。
そもそも
地方財政の赤字がかくのごとく累積されて足腰の立たない今日を招来いたしましたのは、昨年、今年の問題ではないのでございまして、さっきも申しましたように、歴代保守政党による財政措置の不徹底さの蓄積にほかなりませんが、問題は平衡
交付金や
交付税の税率の問題ではなく、
地方団体の行政運営上の指針とも言うべき
地方財政計画は、これが実は大蔵省の非常識きわまる大なたがこれに加えられて参っておるわけでございます。この大なたのもとに作成されました
計画が、当初の根拠をほとんど逸してしまって、非常に脆弱なものになっておる。このすでに方向を失った
地方財政計画というものが、
交付税の繰り入れ基準となって、地方自治体の苦悩は、ますます深まってきたのでございます。この数年来、かかる誤まった財政
計画に盲目的に賛意を表してきた保守政党議員諸公にも、このことには大きな責任があると私は考える次第であります。たとえば本
年度におきましても、わが日本社会党は国税三税の減税のはね返りも考慮いたしまして、地方の独立財源たる
交付税の引き上げということを
年度当初より強く主張して、今日の不幸に対する警鐘を乱打してきたのでございまするが、
政府並びに与党諸君は、これに耳をかさなかった。その不明を今こそ国民に謝すべきであると私は考えるのでございます。もちろん今日の危機を招来した責任の一端は、さっき
委員長からの
報告の中にもございましたように、その責任の一端は、地方自治体みずからの財政運営上の誤まりにあること、これはもちろん認めるにやぶさかではございませんが、責任の大半は、過去の内閣と、これに協力した与党議員にあることは、はっきりと明言しておきたいのでございます。
今回の臨時国会の主目的は、明らかにこの
地方財政の再建の基礎を打ち立てることにあり、そのため当然地方制度調査会あるいは
地方財政審議会等の答申、または意見を十分に尊重して、最も適切なる措置がとられるものと、実は私たちは確信をして期待を持って国会召集に応じたのでございました。この意味ではおそらく都道府県、市町村も、皆同様の期待をかけて本国会を注視していたことだろうと思います。しかるに今回の措置こそは、明らかに全国民の期待を裏切ったものであると言わなければなりません。特に注意を促しておきたいのは、地方
負担の軽減を財源として見込んだということでございます。果して地方自治体は、同じ事情にあるのでございましょうか、
年度末の不用額も全く同じ財政事情によって平等に生ずるものでございましょうか。たとえしかりであると仮定いたしましても、これは地方自治体固有の事情によって生じた余裕金でございまして、断じて国の経費でも
予算でもなく、従って
政府並びに国会で、おこがましく
地方財政対策
予算等と呼号することのできないものであることは言うまでもないのであります。国の財政措置は明らかに百六十億だけでございまして、二十八億については、人の財布で相撲をとろうという主義に出たものであると、私は申し上げたいのでございます。特に
政府与党は、当初この現状を打開するために、一たん公共事業費の削減によって補正
予算の提出を考えました。これにつきましては、保守合同早々の与党内に大混乱が生じまして、議員総会の収拾さえつかなかった。衆議院は、本会議の流会という醜態を演じ、ついに仕方がなく、意見一致を見ざる結果、一時
借入金によることになったことは、国民とともに強く不満の意を表しておきたいのでございます。
わが党は、衆議院において補正
予算組みかえ動議を提出いたしましたが、頑迷なる多数党の反対にあいまして、ついにこれは葬り去られましたことは御承知の通りでございます。われわれのこの主張は、地方
交付税率の五%引き上げと、たばこ消費税の税率を百分の三十に引き上げることによりまして、本
年度地方財政における経費の不足を補てんするとともに、交付団体、不交付団体の双方に対して、公務員年末手当の増額、登録日雇い労働者の年末手当支給並びに被生活保護世帯に対する年末補給金支給の財源措置を講じようとするものでございます。公務員が、厳として存在する平和憲法下において、アメリカの強い要請にこたえ、軍備拡張方式を推進せんとする現
政府の政策の犠牲の一環をになわされまして、低劣なる
給与にあえいでおる。その上、昇給、
昇格もほとんど実行されていない現状におきましては、せめて年末手当を既定額よりも少くとも〇・二五カ月分を増額いたしまして、越年資金に充てる必要があると信ずるのでございます。特に地方公務員の場合は、国家公務員に準ずるとあるが、その準ずるという言葉によって、毎年大混乱が地方自治体内に惹起されていることは、知らぬ顔をしており、まず大臣諸公も知らぬはすはないのであります。
地方団体の責任者は、国家公務員に準じまして地方公務員にも、平等の原則を確立いたしたいと思わない者はだれ一人ないと思います。どんな市長だって、町村長だって、これは当然何とかしてやりたいという気持を持っておるわけであります。しかも準ずることの裏づけとしての財源につきましては、
政府はその責任を何らとろうとしないのであります。
地方団体の責任にこれを放置しておる現状でございます。このことは、言いかえるならば赤字を増額して国家公務員の
給与水準に準ずるか、しからずんばこの増額を中止するか、二者択一の谷間にこれらの市町村はけ落されていることを意味するのでございます。
次に登録日雇い労働者につきましては、働く権利を持つにかかわらず、もろもろの悪条件に左右されまして、実働日数は過小に制限されました。真に食うや食わずの最低生活にあえいでいるのでございます。何とか最低
限度の年末手当の支給は、これまた必要やむを得ざるものであると信ずるのでございます。また、これに関連いたしまして、失業対策につきましては、困窮している
地方財政の現状にかんがみ、感急失業対策事業に対する国庫補助率を引き上げ、特に失業者の数の発生が非常に大きいところに、大きい市町村に対しましては、全額国庫補助を敢行いたしまして、失業問題に対する一助といたしたいとわれわれは考えておるのでございます。また、被生活保護世帯の生活保護の現状は、最低生活をも確保できない現状でございまして、これは御承知の通りでございます。何とか全国六十六万世帯に対しまして、一世帯当り少くとも年末に千五百円程度の支給をいたしたいことを強く主張して参っておるのでございます。
これらの歳出増額補正の財源といたしましては、第一に、本
年度一般会計歳入の自然増収、第二に、
昭和二十九
年度一般会計余剰金の一部を本
年度一般会計歳入へ繰り入れること、第三に、防衛庁の経費を減額すること、第四に、賠償等特殊債務処理費の不急なるものの減額、第五には、一般行政費節約による減額でございます。これによりまして歳出の補正合計は四百六十億でございまして、歳入の補正合計は五百三十一億になり、この差額七十一億は、五千円免税に充てることとするのでございます。たとえこのわが党の組みかえ案を平
年度化した場合を考えるといたしましても、われわれが主張するように中央地方を通ずる行政機構の改革、並びに行政事務の再配分等の基礎の上に立ちまして、
明年度予算編成をわれわれの手で、もしいたすといたしまするならば、断じて赤字は出ない自信があるのでございます。特にこの際強調しておきたいのは、防衛庁経費の減額でございます。防衛庁経費につきましては、前
年度繰越金あるいは
予算外契約とか、
予算編成上その健全さをはなはだしく阻害する措置が強行されて参っておるのが現状でございます。このことは、きのうわれわれの同僚加瀬議員からも、強く討論の中で説明された通りでございまして、まことにこれは寒心にたえない事実でございます。その結果、
地方財政の困窮をしり目に、
予算が湯水のごとく浪費せられ、その上に毎年当りまえのように多額の繰り越しがひもつきで残され、
予算過剰の結果、不急不用品の大量購入、あるいは入札制度の弛緩等、忌まわしい事態を生じておることは、保安庁の経理においてはっきり言われておるわけであります。わずか二百億程度の今回の財源措置を防衛庁からとりましても、決してこれによって防衛庁にとって痛痒を与えるものではないことは申すまでもないのでございます。
政府与党におかれましても、今後防衛費における毎年の莫大な繰り越しについては、もっと根本的に再検討を要する時期に来ておると私は信ずる、善処を特に要望いたします。
これを要するに今回の補正
予算は、一時を糊塗して国民を欺き、赤字に悩む地方自治団体を絶望のふちに追い込み、混乱に陥れるにすぎないものでございます。かかる補正
予算を提出した現
政府は、吉田内閣の悪政並びに第一次第二次鳩山内閣の優柔不断と無能の結果生じた
地方団体今日の惨状を、救助もせず、ますます困窮に陥れんとしているものであり、その政治的責任は、この補正
予算に賛意を表する与党議員の責任とともに、強く追及されなければならないと固く信ずるものでございます。(拍手)
わが日本社会党は、前述いたしましたわが党の補正
予算組みかえ案の趣旨にのっとりまして、この
政府提出の
本案に対しましては、断固として反対を表明するものでございます。以上でございます。(拍手)
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