○中田吉雄君 私は
日本社会党を代表しまして、ただいま
議題となっています二つの案件に対しまして
質問をいたさんとするものであります。
自治庁の発表によりますると、
昭和二十九年度末の地方団体の赤字は、実に六百四十八億円の巨額に達していますが、このような膨大なる赤字が地方団体に累積いたしましたことは、戦前戦後を通じて初めてのことでございます。しかもそれだけでなく、
地方財政審議会の発表によりますると、本三十年度単年度だけで財源不足額は五百四億と推計され、これらを合計いたしますならば、本年度末には
地方財政の赤字は優に一千億を突破することが予想されるわけであります。自治体はこの膨大なる赤字のために、地方団体自身の自治
行政の
運営ができないだけではなく、地方団体の手を通じて行われますところの国の
行政施策の遂行すら重大な困難に直面いたしております。従って本臨時
国会が、
地方財政再建のための有力なきっかけとなるよう、その期待はきわめて大であったわけであります。既往の赤字につきましては再建法案に待つといたしまして、せめて
昭和三十年度再び赤字が発生しないような財源
措置がなされることは、地方団体あげての最低限の要望であり、悲願ですらあったわけであります。しかるに今回の財源
措置は、わずかに百八十八億円にすぎず、
地方財政審議会の本年度財源
措置をすべきだと称された五百四億には、なお三百億も足らず、去る十一月一日の地方制度調査会の答申二百億円にも及ばない状態であります。これではいつまでたっても
地方財政の赤字解消は望むべくもなく、地方団体の要望と期待が完全に裏切られたことは、まことに遺憾と言わなくてはなりません。申すまでもなく第三次鳩山
内閣は、二百九十九名という犬養
内閣に次ぐところの
わが国憲政史における第二番目の絶対多数の
内閣で、なそうと思いますならば、何事もなし得る強力な
内閣であるはずであります。真にこの
内閣が有能な
内閣であるならば、あえて
通常国会を待ちませんで、本
国会において一挙に根本対策が立てられたはずであります。しかるにこの程度の弥縫策しかできないということでは、鳩山
内閣に
地方財政の再建を期待することは困難と言わなくてはなりません。実は保守合同とは、国家、
国民の緊要なる課題を解くための保守合同ではなしに、鳩山
内閣の延命のための保守合同であったことは、まことに遺憾と言わなくてはなりません。(
拍手)
私は以下数点にわたりまして、わが党の立場と対比しつつ、
政府の御所見をお尋ねいたしたいと存じます。
先ず第一に、
地方財政再建の根本方策についてお伺いいたしたい。
地方財政は
昭和二十五年に初めて五十億円の赤字ができてから、
昭和二十九年度末には六百四十八億に達し、さらに
昭和三十年度本年だけで五百四億の赤字が
予定され、なおそれだけでなく、地方制度調査会が今日の二日にきめたところの答申原案によりますると、明
昭和三十一年度には、約三百億の歳入欠陥が予告されているわけであります。このような状態に対しまして、継続審査中の再建法案と今回の
措置だけをもってしては、全くどうすることもできないわけでありますが、
政府とされては数次の言明にもありますように、
通常国会に根本的な対策を用意されているということですから、それについてお伺いしたいと思います。川島前長官も非常に御努力をされましたが、この大臣ほど旅先で多くの声明をし、何一つ期待すべき成果のあがらなかった大臣もございません。各省の閣僚もまた自分の所属する省の補助金の獲得に努力はされますが、その裏づけ財源が
地方財政にしわ寄せされることについて、
内閣共同の責任として自治庁を擁護されたその形跡が見られないことを遺憾と言わなくてはなりません。また一萬田大蔵大臣に至っては言語道断でありまして、国家財政の均衡のためには、
地方財政の赤字は捨てて顧みないという
態度であります。たとえば
昭和二十九年度の国の一般会計は、その決算において実に六百五十四億を本年度に黒字として繰り越しておりますが、
地方財政は
昭和二十九年度ちょうどこれに見合いますところの六百四十八億の赤字をかかえているわけであります。財政の健全化とは、中央地方を通じて初めて言うべきことであるのに、大蔵省の見解によると、結果としては
地方財政の犠牲による国家財政の均衡が財政の健全化となっていることは遺憾と言わなくてはなりません。(
拍手)
地方制度調査会は、すでに三年前早くより今日あるを予測いたしまして、
昭和二十八年十一月、第一回の答申において三百億、本年十二月一日に二百億の
措置をされるべきことを答申いたしておりますが、いささかも尊重されず今日に及んでおります。
これを要しまするに、過去数カ年間の経験に徴しまするに、自治庁と大蔵省がともにその責任のなすり合いをいたしまして、じんぜん日を過ごしましたことが、今日の膨大な赤字を累積した根本の原因と言わなくてはなりません。これではいつまでたっても赤字の解消はできませんので、この上は鳩山
内閣の最重要なる施策とされまして、
内閣の責任において私はこの問題を解決される以外に方途はないと思うわけでありますが、
通常国会においてそういう御
準備はありましょうか。ありますれば、その
構想を承わりたい。なお大蔵省が依然として従来のような頑迷固陋な
態度を続けますならば、
地方財政再建のためにも、私は予算の編成権を大蔵省から
内閣または企画官庁に取り上げることもやむを得ない
措置と思われますが、
総理はどういうふうにお考えでありましょうか。また地方制度調査会では数度にわたり内政省の設置、農業事業税の創設等を、
地方財政再建の大きな要素として答申いたしていますが、影響するところもきわめて大でありますが、これらについてどう思われるか御所見をお伺いしたいと思います。
第二に、
地方財政審議会は去る十一月四日に
意見書を発表し、それによると、本年度四百五十四億ないし五百四億の財源
措置をすべきことを主張いたしています。しかるに今回わずかに百八十八億のみ
措置されたところを見ますると、給与問題の解決を将来に譲っておられることは同僚石村君の
質問でも明らかであります。
昭和二十六年十月の給与改訂以来、地方公務員の給与単価は国家公務員のそれに比しまして高いといたしまして、道府県一般職員は三百四十八円、教育職員は三百四十九円、市町村職員五百七十六円とされて、その分だけを切り下げまして給与費が財政計画に組まれているわけであります。この推計が果して正しいかどうかは多年の懸案であり、そのためこの二月から膨大な調査費をかけ、全地方公務員の給与の実態調査が行われたわけであります。
政府は今春来、おそくとも今年十月までには集計いたしまして、この問題の解決に最終的なケリをつけることを
国会に約束いたしています。しかるにこの重大なる
地方財政を中心課題とする
国会に対して、すでに集計ができているのに示さないということは、この結果が本
国会を切り抜けるのに重大な支障を来たすために、
国会切り抜けの手段としてこの問題を犠牲にしているそしりが多分にあるわけであります。またわれわれが伝え聞くところによると、大蔵省が言うように、地方公務員の給与単価は国家公務員に比して高くないという重大な結果が出るやもしれないということであります。少くとも太田長官の
説明によりますと、すでに手元まで来ているということですから、その中間発表をお願いしたい。特にわれわれとしましては、調査や将来の根本的な解決に名をかりまして、問題の解決を将来に遷延することは断じてとるべきではありません。給与の実態調査の結果が判明しない場合は、少くとも実際に給与の支給された額を基礎としまして
地方財政計画を組むことが大切であります。このことをしないことが
地方財政の困難を今日のような事態に陥れている大きな原因だと思うが、なせそのような
措置をされなかったか、一鶴田大蔵大臣、太田自治庁長官に所見をお伺いしたいと思います。
第三に、今回国は地方に対して百八十八億の財源
措置をきめましたが、なぜ一般会計の追加補正によらず、大部分を公共事業費の削減に求めたか、その
理由をお伺いしたい。まず第一に指摘したいことは、石村君も言われましたが、
昭和三十年度
地方財政計画を策定する際に、自治庁の事務当局は、要求額中に赤字として百四十五億を計上いたしましたが、
国会対策上、大蔵当局の入れるところとならずに、節約その他で圧縮いたしました。しかるに今回百八十八億を
措置いたしましたことは、事実上大蔵省のとった予算の節約にもおのずから限度があり、何よりも大蔵省が
地方財政の計数について自治庁よりうとかったことを示す重要な証左と言わなくてはなりません。自治庁が必要以上に譲歩した点、その責任も免れませんが、今後は
地方財政計画の策定に当っては、自治庁は自信をもって大蔵省に当るべきですし、大蔵省はまた不当な容喙によって問題を先に残すような
措置をとらないことが大切だと思うが、両大臣に対してこれについてのお考えを承わりたい。また修正財政計画は用意されたと思うが、太田長官からその主要な点について承わりたい。また百八十八億の財源
措置のうち、八十八億を公共事業費の削減に求めていますが、これでは何らの財源
措置ではなく、負担の転嫁以外の何ものでもありません。特に公共事業費の繰り延べについて言を左右にして申されなかったが、私の伝え聞くところの情報によると、治山治水三十六億円、港湾漁港九億円、食糧増産二十二億円、文教五億円、水道等厚生
関係一億円、住宅十億円、その他合計八十八億円と伝えられています。もしこれが真実といたしますならば、食糧増産といい、治山治水、文教といい、住宅対策といい、
政府が
国民に公約された絶対遷延を許さないところの重大な費目であります。この詳細が判明すれば、党内はもとより、法案
審議に重大な支障を来たすので、一律には削減しないというような言辞でもって
国会を愚弄しようとすることは、断じてわが党が許さないところであります。(
拍手)その点はっきり示されたいと思うわけであります。また八十八億のうち直轄事業分が三十五億を含むと伝えられているが、その内容について言を左右せず、はっきりいたしてもらいたいと思うわけであります。
第四に、今回の
措置を
昭和三十年度の
地方財政に関する
措置として一カ年に限った
理由を太田長官に承わりたい。また単位費用について、失業対策事業費、恩給費等について実情に合うように引き上げられましたことは了といたしましても、一方において本年度の財源
措置としまして八十八億の公共事業費を削減しながら、他方におきましては、本特別
措置の配分では、農業土大賞等の単位費用のみ引き上げて、その方の財源
措置をするというようなことでは、全く自己矛盾もはなはだしいと言わなければなぬと思うが、これについてお伺いしたい。さらに百六十億を配分する便宜的な手段のために、単位費用の数項目だけを引き上げましたことは、精緻をきわめた全体と深い関連のある単位費用のいじり方としては適切ではないと思うが、これについてお伺いしたい。また単位費用の配分は、標準率から偏差の高い貧弱団体、後進県、弱小県に不利だといたされていますが、これらにつきまして、補正係数と関連して十分それらの問題の点を解決する考慮をなされているかお伺いしたい。
第五に、地方公務員の期末手当〇・二五カ月分の増額に関する財源
措置は重要でありますので、重ねてお伺いすることを御了承いただきたい。地方公務員の〇・二五は、五十七億の財源
措置を必要とします。そのうち不交付団体分十二億円と、義務教育の国の負担分十二億円を差し引きましても、なお三十三億の財源が必要です。
政府はこの財源の捻出といたしまして、国家公務員と同様に人件費の節約によることとし、必要な場合にはさらに旅費、庁費などの節約によることといたしております。しかし
地方財政は極度に窮迫いたしまして、予算定員と実定員との差額はほとんどございません。これでは地方公務員に、国家公務員に準じての期末手当の増額支給は事実上困難と言わなければなりません。さしあたり資金繰りによってやむを得ない地方団体に対しては、短期融資を行うことがあるといたしておられますが、これでは赤字の上塗りであり、連年にわたるかような弥縫対策こそ、今日の数百億の赤字を累積した原因であって、この際断固とるべきではないと思うわけであります。もし短期融資をいたしたならば、将来
政府は元利を補給する用意があるか、あるいは
昭和三十一年度の財政計画にこれを組み入れる用意があるか、お伺いしておきたい。
次に教職員の期末手当について清瀬文部大臣に一言お尋ねいたしたいと思います。所要額二十四億の半分は義務教育の国庫負担として将来財源
措置をされるとのことであるが、本年度末か来年度か、いつ、それはなさるのであるか、また、もし地方が立てかえるといたしますならば、その金利の負担はどうなるのでございましょうか、都道府県の四月の定期昇給をみますると、完全にやったものは二十二で、いまだ実施しないものが二十ございます。七月に至っては、実施いたしましたものはわずかに十一で、いまだこれを実施しないものが大半の三十四の多きに上っているわけであります。このような状態で期末手当の問題を支障なく解決されるためには、大蔵省、自治庁と打ち合せられまして遺憾のない
措置をとっていただくことが大切だと思いますが、どういうふうな
措置をされたでしょうか。特に最近におきましては、県知事と教育
委員会との間に抜きがたい確執がありますので、中央で、はっきりした施策をきめておかぬと重大な支障をきたすと思いますので、清瀬文部大臣の善処を強く要望いたしまして、私の
質問を終りたいと思うわけであります。(
拍手)
〔
国務大臣鳩山一郎君
登壇〕