○小林政夫君 私は、緑風会を
代表いたして
鳩山総理並びに
関係閣僚に若干の質疑をいたしますが、質疑に入るに先だち、
わが国政治史上画期的な
保守、革新二大
政党対立の政局に処する緑風会の立場を鮮明にしておきたいのであります。本年四月十二日、私を含む緑風会有志は、
政策の基調を同じくする民自両党に協調の実を上げるべきことを申し入れました。われわれは、いわゆる
保守党に加担をして、その強化をはかるというがごとき一方に片寄った配慮からではないのであります。第二次
鳩山内閣の
弱体は目に余るものがあり、ひいては
日本の議会
政治に対する
国民の信頼を失うことを非常に憂慮したので、安定
政権の確立を強く要望することにしたのであります。しかし、もとより緑風会は、
政党政派を超越し、国家
国民の立場に立って是を是とし、非を非とする立場に立つ者の集まりであります。
参議院本来の職責に忠実たらんとするものでありますから、自由
民主党に参加すべきものでもなく、左右
合同成った
社会党に加入する者でもありません。
保守、革新の二大
政党対立による議会
政治の運営は理想として希望されたことでありますが、残念ながら
わが国現実の二大
政党の
政策には、非常な隔たりがございます。われわれは
参議院の審議運営の全きを期するとともに、現実的な
政治勢力の上に立って隔たりのある二大
政党調整の役割をも果したいと念願しておるのであります。(
拍手)
鳩山首相への
質問に入りますが、まずわれわれ多数の要望を入れて民主、自由両党が
合同し、自由
民主党の結成成り、ここに第三次
鳩山内閣の発足をみたことに一応の祝意を表する次第であります。しかしながら、外からながめておるわれわれには、なお多くの危惧があるのであります。民自
合同成れりといえ
ども、形式的に二つを合せただけで、総裁すら決しかねる現況であり、第三次
鳩山内閣は実質的には民自連立
内閣という批判も行われており、総裁決定までの
暫定内閣であるとの世評もあります。
鳩山首相は、新自由
民主党の最高幹部の一人として、新党をどのように育成しようとお
考えになっておるのであるか。
新党育成の中心課題は、党運営費を捻出する方法の確立にあると思いますが、私はしばしばこの議場において、あるいは
予算委員会において
鳩山総理に
政治資金規正法の
改正意見を述べ
政党運営費を調弁する方法を示唆しておいたのであります。今や党費調達方法の適不適は、
日本保守党の興廃にかかわるのみならず、汚職等不祥事の発生は
日本の
政党政治議会
政治の存廃に関する問題となりました。
鳩山総理の
所信はいかがでございますか。
総理は、昨日
所信として表明された、すべてのことをやり遂げ、なかんずく
憲法改正、行政機構の改革、税制
改正の三目標を達成するまで
政権を担当する所存であるとただいま
岡田宗司君の
質問に対して御
答弁なさったようでありますが、間違いはないと思いますが、いかがですか。われわれは長期安定
政権の確立をこそ熱望したのであります。病弱だからどうせ長くはやれないのだ、総裁決定までの間に合わせだというなら、
政権を私するものであり、第三次
鳩山内閣の発足をわれわれは祝うわけに参らないのであります。
外交問題の質疑に入りますが、昨日の
外務大臣の報告では、重要な外交問題の二つが落されておる。その一つは、
日本の
国連加盟の問題であり、その二は対中共問題であります。
国連加盟の問題につては、先ほど
岡田君の質疑に対して
外務大臣より御
答弁がございました。私も国府の良識に、この議場を通じて強く訴えたいのであります。また同時に
政府の善処を強く要望をいたします。
対中共問題につきましては、中共のごとき国柄で、純粋の
意味における民間機関とか民間人とかいうものがあるのかどうか疑問なしとしないのでありますが、最近
経済文化の交流が漸次活発になりつつある折柄、
政府の
所信を明らかにしておく必要があるのではないか。対国府、対
韓国関係問題の処理のためにも必要ではないかと存じますが、
外務大臣の
所信はいかがですか。
日ソ交渉についてでありますが、
日ソ交渉こそは、終戦後の
日本外交問題としてサンフランシスコ平和
条約に匹敵する重大問題でありますが、現在
日本国民は、この問題に対する
態度について、あたかも重要性を意識してないかのごとくでありますが、その原因の最大なるものは
鳩山首相の
態度であります。いとも気軽にどこの国とも仲良くする、
世界に八十カ国もある国々の中で、アフリカ大陸や中米あたりの国々と少しも違わないような、さりげない
態度でどこの国ともと言いはなすところに問題があるのであります。
日ソ交渉の中心問題である領土問題にしても、口を開くつど、言うことが変っておるといっても過言ではない。
政府は
交渉の根本問題について確信がないばかりか、
国民に対してそれを説明する努力さえ怠りているというだらしなさであります。最も悪いことは、
国民をめくらにしておきながら、問題が困難に逢着し決定を迫られる
段階になるというと、向きなおって国論の動向を見きわめると言う。材料を与えられない
国民、不完全な知識しか与えられておらない
国民に、正しい結論を出せる上げがないのであります。
政府は共産主義国の唱える平和共存をどう受け取っておられるのか。平和共存は平和攻勢の一環として、
ソ連が不利となった権力
政策のつり合いを取り戻そうとして打ち出した非武力的な補強策にほかならないのではないでしょうか。果せるかな
外務大臣も報告の目頭に解明されたごとき国際情勢に最近なって参りました。
外務大臣は、かかる国際情勢の認識の上に立って、なおかつ、本年七月ゼネバに開かれた米英仏ソの首脳者
会議前に始められた
日ソ交渉を、同じ心がまえ、同じペースで推進しようとしているようでございますが、それでいいのかどうか。この
交渉における
日本側主張の根本的出発点であるべき
ソ連の中立
条約違反による対日開戦という事実を
日本側は指摘しておるのであるかどうか。去る九月二十一日の
日本議員団に対するフルシチョフ第一書記の言明をどう思われますか。西ドイツと
日本とを全く同一視した高圧的な言明に、われわれはやる方なき反発を感ずるのであります。
ソ連の言う
戦犯を
政府は是認しておるのであるか。中立
条約を忠実に守った
日本に、対
ソ連戦犯というがごときものがあるのであるかどうか。
戦犯にあらざるものを
戦犯として抑留し、しかもこれを人質として
国交再開の具に供せんとする卑劣きわまる
ソ連の手口を、何と
考えるか。われわれは
日本国民として罪なくして異境に抑留十年の苦難をなめている同胞やその留守家族を思うとき、断腸の思いをするのでございますが、同時に、その苦境の同胞が、最近に至っても、われわれの釈放のために、
日ソ交渉上の国家全体の大目的を犠牲にしないでもらいたいという伝言をしてきておる心事に想到するとき、われわれ本国におる
日本人として、その努力の不足にざんきし、
日ソ交渉の展開に新しい勇気を感じるのであります。
外務大臣は、内政に干渉しないとの基礎の上に平和
条約を
締結するというが、
わが国内には筋金入りの共産党員を多数かかえておるし、前回の
衆議院総
選挙において共産党の獲得した得票は七十余万票であります。
ソ連大使館が設置され、腕ききの工作員を配属し、
日本赤化工作というものが推進されれば、実質的な内政干渉を受けることとなりましょう。西ドイツの
国民と現在の庁本
国民は非常に違うのです。
政府はこれらの赤化工作に対していかに対処するつもりであるか。
相互に内政干渉をしない、建前は
相互主義でありましても、
日本への同調者の皆無な
ソ連内における
日本大使館活動と、在日
ソ連大使館活動には、雲泥の差が出てくるのであります。これを
政府はどう判断しておるのであるか。
領土問題について、歴史上常に
日本の領土であった諸島の
返還を主張するというが、具体的にはどういう諸島でありますか。国際正義心を喚起し、
世界の世論をわれわれの味方とするには、歴史上常に
日本の領土であったということだけでは論拠は薄弱ではないか。帝政ロシアのあくなき侵略、帝国主義、植民地主義に基く領土
関係の是正ということをうたうべきではないか。満州、北鮮、樺太にあった
日本の公私の財産にして現在
ソ連の手に帰したものは、いかように扱われるのであるか。
以上
日ソ交渉について
外務大臣に伺いたいと思います。
日韓
関係については、先ほ
ども質問もあり、るる御
答弁もあったわけでありますが遺憾であって善処するといいながら、するずると今日の
事態に立ち至り、ついに
韓国軍事当局が、
李ラインを越える
日本漁船を撃沈するというような最悪な
事態に突入することになりました。何とかするというようなゆうちょうな
段階ではない。少くとも
外務大臣が李大統領と会って、
国交調整の努力をなすべきではないか。事務当局の
交渉に放任しておくべき
段階ではないと思いますが、いかがですか。
賠償問題についても、いろいろ
大蔵大臣から御
答弁がありましたが、一点、
フィリピン賠償問題については、民間投資二億五千万ドルということが言われておりますが、これについて
日本政府が
フィリピン側へその投資額の保証をしなくてもいいということについて、
フィリピン側は了承をしたのかどうか。また
日本の
国内の投資者が
フィリピンに投資する際に、その投資の安全を保証してもらわなくとも、投資をする人があるかどうか。こういう点について
政府はどのような見解を持っておられるか。
また最近イタリアの
外務大臣が来られて特別円の支払い
交渉がなされたのでありますが、
国民は全く意外に感じておるのであります。あのような支払い
義務がイタリアに対してあったのかどうかということについては、今まで知らされておらなかった。これはまあ一例でありますが、今まで
賠償請求国あるいは特別円支払いというようなことで、対外的に
日本が支払い
義務を負わなきゃならぬ、支払い
義務の発生する国々というようなものは今まで出尽しておるのか、もう今後出ないのか、この点について
外務大臣に伺います。
行政機構の改革について行政管理庁長官に伺いますが、
総理は、
国民の便宜をはかることを最重要点に置いて組織と機構を国情に適合するよう、全面的に改革するつもりと言っておられますが、行政機構の改革の主眼は、行政の能率化と行政費の節減になくてはならない。それには行政事務の再検討も当然なされねばならぬと思います。食糧管理行政、補助金行政等についても抜本的な検討がなされるべきであると思いますが、これについて
政府はどう
考えておられるのか。また行政費の節約という面からは当然に人員整理が伴ってくるのでありますが、これには強い抵抗が予見されるのであります。行政管理庁長官を兼ねる農林大臣の足元から火の手の上るおそれがありますが、
政府は断固としてやりぬく決意であるかどうか。
税制
改正についてでありますが、
総理が言っておられることはまことにごもっともで、大賛成であります。税制の仕組みを複雑にし、
国民負担の不均衡を来たしておる最たるものは租税特別措置法であります。これを全廃する心組みがあるのかどうか。また来年度以降の歳出の増加要因並びにその予想額等から見て減税は当分できるはずはないのであります。減税をせずして
国民負担の不均衡を是正しようとすれば、減税される方は異論はありませんが、負担を増加される方は猛烈に反対をするでありましょう。たとえば、よく言われる戦後の税制はシャウプ勧告以降、直接税に重みがかかり過ぎているから、間接税に比重を移すということも、具体的にやろうとするならば、流通税の新設または増税となるわけであります。吉田
内閣当時の繊維消費税の新設提案に際してとられたあの反対を思い起すまでもなく、強烈な反対運動が展開されるであろうことは明らかであります。
総理並びに
大蔵大臣は断固としてやりぬく確信と腹を持っておられるのかどうか。やるとすれば、いつからやるのであるか。
大蔵大臣の諮問機関としての臨時税制調査会の審議ぶりを見ておりましても、三十一年度
予算編成に間に合いそうには思われない。いつからやる予定でございますか。
地方
財政行き詰まりの打開策の審議こそは、この臨時
国会の中心議題であるべきにもかかわらず、抜本的打開策は
通常国会に持ち越し、とりあえずの措置を提案するという、そのとりあえずの措置を提案するという
政府の
態度自体について、私ははなはだ不満でございます。地方
財政の行き詰まり打開の問題は、第二十二
国会からの問題である。このためにこそ、かつての野党、
自由党、
社会党は、臨時
国会の召集要求をしたはずであります。
政党異変があったとはいえ、この問題はじんぜん放置しておくべき問題ではない。超党派的に真剣に取り組まねばならない問題であります。
国民の負担する中央、地方を通ずる租税公課のうち、戦前すなわち
昭和九
——十一年には、国は五一%を使い、地方は四九考を使っていたのが、昨二十九年には、国は四一%を使い、地方は五九%を使っておる。すなわち
国民の負担するすべての租税公課、国がとるものであろうと、地方がとるものであろうと、すべての租税公課のうちで、地方の使用割合は、戦前に比し、昨今は実質的に格段と増加しておるのであります。にもかかわらず、地方団体は年々赤字を累積し、二十九年度末までに六百五十億の赤字をかかえるに至った原因はどこにあるのであるか。三十年度の臨時措置として、
政府は百六十億の交付金を捻出して三十年度の赤字発生を防ぐと言いますが、この三十年度百六十億補てんをしなければ赤字が出る原因はどこにあるのか、百六十億交付金を追加すれば、三十年度は赤字を出さないという責任が持てるかどうか、百六十億を地方自治団体は何に使うのか、赤字の原因を助長するようなことに使わないという保証を
政府は取りつけておるのかどうか、取りつけるのかどうか。百六十億の財源でありますが、公共事業費の削減、一般経費の節減、
賠償費の削減によって捻出し、
財政規模の膨張を防いだということは賢明の措置でありますけれ
ども、それなら何ゆえにただちに補正
予算を提出しないのか。とりあえず起債でまかなうという、とりあえずの措置をとるということは全く不可解である。起債でもってしばらく様子を見て、租税の自然増收でもあれば、既定歳出の削減、節減をやめるという底意でもあるのかどうか。公共事業費の削減も、専門的な言葉で言うならば、繰り越しなのか、繰り延べなのか、すなわち支払いを繰り延べるだけであるのか、あるいは一応三十年度の事業としては打ち切るのか、支払いを繰り延ばすだけならば、国も赤字となるのみならず、地方団体にも赤字の原因を残すことになるので、この点はいかがであるか。
大蔵大臣は今回の臨時措置をとるに当って、自治庁や与党側に
条件をつけたと報ぜられておる。すなわち来年度においては地方団体の行政費を節減する方途を講ずべき旨の
条件をつけたと報ぜられておるのでありますが、その
条件の内容はどういうものであるか、この点は
大蔵大臣、自治庁長官御両人から、しかと御
答弁を願いたいのであります。交付税率二二%は据え置いても三十一年度に地方団体に赤字を出さない程度に地方団体が行政費の節減をはかるという約束なのか、あるいは交付税率には触れずに具体的に行政費の節減項目を列挙して約束をしたのか。たとえば二十二
国会に提案された自治法の
改正案は、
政府原案通り通過せしめるとか、給与ベースの基準を定め、団体別に標準定員を厳守させるとか、公共事業補助金を圧縮するというような、これはまあ例示でありますけれ
ども、具体的な節減すべき項目をあげて約束をしたのかどうか。以上は今回の臨時措置に関する質疑でありますが、できるだけ詳細に
答弁をざれたい。
しかし、自分はさらに将来の抜本的対策について
政府の
所信をただしたいのであります。現行の
制度のもとにおいては、全体の地方
財政計画の遂行に責任を持つ者、責任をとり得る者はだれもいないのであります。
国会に提出される地方
財政計画は必ず收支バランスのとれたものが提出されておる。にもかかわらず年々赤字を累積する。一見まことに奇異な感があるのでありますけれ
ども、それはそのはずであって、自治庁といえ
ども、個々の地方団体の
財政については、極論すれば片言隻句も容喙することはできない、
国会に提出される地方
財政計画なるものは全く机上の推計に過ぎない、その全体の執行について
政府は責任を持てない
制度であるからであります。
政府は
通常国会に抜本的打開策を提案すると言いますが、その方向は地方
財政計画に責任の持てる体制にしようと
考えておるのかどうか。もっと端的に申しますならば、戦前のごとき中央集権体制に戻そうと
考えておるのかどうか。もしそうでなくて、従来通りの地方自治を百パーセント尊重する行き方で行くとするならば、交付税交付金ははっきり渡し切り資金であるという
意味づけをする必要があるのであります。すなわち地方自治団体がどんな勝手気ままなことをやっても、
最後のしりぬぐいは国がやるのだということでは、正直者がばかをみるのみならず、国の負担に限りがない。国が負担しようと地方が負担しようと、
最後の負担者は
国民である、
国民のふところには限りがあるのでありますから地方が破綻しなければ国が破綻するというゆゆしい
事態を招来する危険なしとしないのであります。もう一つ、従来の地方自治団体の国家
財政への依存を助長しておるものは、各種補助金
制度であります。わずかな補助金で地方団体をつって行政を強要するというところに赤字発生の原因もあるし、ひいてはそのしりを国に持ち込まれるのであります。中央地方を通ずる行政費の節減のためにも、この際各種補助金の大幅打ち切りを断行せねばならない。一般会計のみで各種補助金は二千九百億円に達しておる。すなわち一般会計の三割にも達する額であります。三分の二とか五分の四とかいう補助割合の高いものは国が全額負担でやり、その他のものは全部削除して、それで浮いた金を交付金に繰り入れるという思い切った措置をとらなければならないと思いますが、
政府の
所信はいかがでありますか。補助金行政の抜本的再検討があらゆる
意味において急務中の急務であるということを強調して、私の質疑を終る次第であります。(
拍手)
〔
国務大臣鳩山一郎君
登壇、
拍手〕