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羽仁五郎君 牧野新法相に対して緊急に御所見をお伺いしたいことは四点ばかりございますので、お時間の御都合もおありのようですから、続けて簡単に
要点だけを申さしていただきます。
第一は、新法相はもちろん
法務省の最高の使命である
人権の擁護に邁進せられることと拝察をするのでございますが、残念ながら、この民主主義の確立の
ために立っております日本の現在に、
人権じゅうりんが絶えません。特に特別公務員などによる
人権じゅうりんが絶えない、この点について
結論的に私はやはり日本でも
検察官が
事件を立てます過程において、
人権じゅうりんの非難があった場合には、公訴をみずから放棄するというだけの態度をとられることが根本的に必要ではないかというふうに最近感じております。御承知のように民主主義先進諸国においては、ことにイギリスなどにおいては、またアメリカにおいてもそうでありますが、取り調べの過程に
人権じゅうりんがあったということで強い非難を受けた場合には、
裁判所もそれを棄却なさいますし、
検察官の方でもそれをみずから捨てるという態度をとられて、
人権のじゅうりんがたとえ
一つといえども起らさないというその態度は、私は民主主義の法の精神の確立の第一歩ではないか、それなくして法はないといっても差支えないのじゃないかと思われますが、この点について、新法相はどうお
考えでございましょうか。不幸
にしてずいぶん、
事件の性質を申し上げるのではありませんけれども、たとえば
北海道の白鳥警部殺害
事件については非常に長い勾留が行われて目にあまるものがございます。そういうことが行われるというのは、多少
人権じゅうりんがあっても
事件は立てられるのだという
考えがあったのではないか。
人権じゅうりんがあったら
事件が立たないという
考えを徹底させる
ために御尽力が願えるでありましょうか、どうか。
なお、これに関連しまして、午前中の本
委員会において、先般来の本
委員会の
全国の
裁判、
検察の
運営等に関する
調査の
結論といたしましても、その
一つとして、
弁護士の
接見について現在
被疑者あるいは被告等の
接見をむしろ妨げているいろいろな手段がとられている。その
一つは、
昭和二十三年一月二十七日の
法務次官通牒第五百七十号というものなどによって、被告あるいは
被疑者と
弁護士と
接見するその中間に
金網を作ることなどをなさっておられますが、これは個々の
弁護士に存在する問題とそれから
弁護権そのものとの誤解に基く重大な
弁護権の侵害だと非難されなければならないのじゃないか、これらも含めまして、最初に申し上げましたような点についての法相の御答弁も伺わしていただきたい。これが第一点。
それから第一点は、
監獄法改正の問題でございますが、私は新しい法相をこの
委員会にお迎えいたすごとに、このことを訴えているのでありますが、御承知のように現在の
監獄法は日本国憲法成立以前のものでございます。で、その
ために
刑務行政の第一線に立っておられる方がせっかくなさりたいことも、古い
監獄法がある
ためにできないで困っておられる。で、その結果は民主主義的に行刑の効果を上げようとしてもそれを上げることができない、よいことができない。そして別に悪いことを防ぐというほどのものでもない。で、
監獄法の改正は、やはりこれは
政府の責任だと思う。すでに敗戦後十年の今日まで一体
政府は何をしておられるのか。いやしくも国民の
人権を擁護せられるという責任を感ぜられるならば、こんな旧憲法時代の
監獄法をいうものを今日まで平気で適用しておられるということに、私は良心の
疑いさえも感ぜざるを得ないのです。いつも御
研究中である、あるいは法制審議会の
意見を待つというふうなことを、言っておられますが、私はもはやそういう段階でない。紙帳相はこの点について緊急に
解決の御覚悟をお持ちであろうかというふうに拝察いたしますので、この点を伺いたいのです。
第三は、先日参議院本
会議において伺いました、首相に対して伺いました指紋の問題でございます。入国管理法というものの適用に関してでありますが、首相にも申し上げましたように、法の適用はエラスティックでなければならないということが原則であります。で、日本にはまだ官吏の中に法を適用することが官吏の
権利であるかのごとくに
考えている、そしてできるだけ法をあらゆる場合に適用することをもって職務と感じているような人があるのではないかとさえ感ずるのです。法はできるだけ適用しない方がよろしい。いわんや適用しなければならない何の必要があるのか。もちろん現在の入国管理法は改正を要するかと思いますが、現在のままでありましても、
政府外交官の場合にこのものは適用されないことは申すまでもありませんが、それに準ずべきものまでも本法を適用するというのはどういうわけであるか、しかもこの結果はきわめて有害であります。もしただいま問題となっておりますソビエト同盟なり中華人民共和国なりと日本が外交機関を相互に
設置しておるならば、外交上の抗議のくる問題、場合によっては外交機関を引き揚げるかもしれないというような不快な感情まで与えている。そういう日本に、現在はソビエト大使館あるいは中華人民共和国の大使館はございませんから、そういう外交しの抗議というものはきませんけれども、実際はくるべきへもしそういうものがあるならくるべきなのです。それがないからといって平気で必要のない、そして何らの益のない場合にこの
法律を機械的に適用して、あくまで指紋をとろうとされていることは、実際どういうことを意味するのか、私は外交官などに準ずべきような、いわゆる公けの場合、
政府機関あるいはそれに準ずる公けの機関またはそれと同様にみなされるような機関によって入国される場合、あるいは日本の信頼すべき機関の招待によって入国されているような方、それに対して、あるいは商業者として入っていただいた
方々を、い何とかいって指紋を無理やりとろうということは、私は全く法の精神というものを逸脱していると
考えるのですが、この点について法相の御所見を伺いたい。かつまた最近日本の入国管理法の、おそらくは模範となったでありましょうアメリカの入国管理法についても、アメリカ自身において改正の世論が強く高まってきている。これは御承知のように当時の大統領トルーマンの拒
否権をこえて成立した
法律でございます。大統領トルーマンはこういうふうなことをやるべきでないと拒否をしたのですが、アメリカの上下両院が大統領の拒
否権をオーバールールして成立した
法律であって、多々問題があると思う。従って現在その改正が問題になっておる。またイギリスのマンチェスター・ガーディアンなんかも、このアメリカの入国管理法の改革が緊急の必要がある。なかんずく旅行者の指紋をとるというようなことについては多大の問題があるということを、マンチェスター・ガーディアンの九月の十五日号も
指摘しておりますが、私は日本の入国管理法も改正の必要があると
判断いたしますが、法相はこの点についてどういうお
考えですか。
最後に、第四に、この入国、出国管理の点について、いわゆる南朝鮮及びいわゆる北朝鮮、朝鮮は
一つしかないのですが、普通にそう言われております。この両方の問題について、先ず第一に南鮮の問題については法務相のお
考え方というものは、日本にはあたかも法務行政しかないようなお
考え方を常にとっておられるのであります。日本には法務行政以外にも外交もあればその他そういう
法律を越える人情というものもあろうと思われる。しかし常にとっておられる立場というのは、要するに入国あるいは
出入国管理の法令を機械的に適用するというような措置をとっておられる。今日の読売新聞でしたかにも出ております問題で、中国から今度帰ってこられる方の中に、中国の方は夫であられる、そして帰ってくるというよりも日本に旅行せられる方の場合がある、それが問題になって、それに対する入国管理
局長の新聞に載っている御
意見では、幾らか従来の機械的なお
考え方というものを脱却せられているのでありますが、この南朝鮮との
関係においては、私は
要点は二つあると思うのです。要は過去において日本が朝鮮の人に対して、非常につらい立場に朝鮮の
方々を買いたということの歴史的ないろいろな
事情があることは申すまでもないのでありますが、現在やはり大村収容所などに過大に、あるいは過度の長期に朝鮮の
方々を拘禁しているということは、やはりできるだけ
解決されなければならない、これが第一点。第二点は、この強制送還の場合に、いわゆる南朝鮮に帰ることが、その御本人にとって救うことのできないような不幸を招くことが明らかであるという場合にも、つまりほとんど死を意味するような場合においても、南朝鮮に強制送還をされるというような不安を与えておるので、私はこれは一掃される必要があるというふうに
考える。
北鮮の場合には北鮮もすでに何回か申し入れがされております。で、あるいは北鮮と外交上でない
にしても、赤十字社なりの交換によって、この双方の出入国というものを、もう少し円満に
解決することができないだろうか、あるいは日本におられるいわゆる北鮮系の
方々に対する援助というものも申し入れられている点もございます。これらについては、在日本朝鮮人総連合会中央
委員会から
国会に向ってもそれからまた
政府に向っても要請書を出しておられると思う。最近のものは十二月十二日の要請書でございますが、これらの要請書というものに対して、私は日本の
政府はフェアな態度をおとりになるべきではないかと思う。たびたび申して恐縮でございますが、何かあらぬ方に気を使われて、そしてこういう問題について顧みて他を言うというような態度を続けておられるべきではないと思う。もちろん正式の外交上の問題は別でありましょうけれども、そういう正式の問題、正式の形でなく
解決できる問題があると思う。その点について法相が御尽力をいただくことができるかどうかということが問題であります。いわんやこの中国との
関係におきましても、台湾に帰るということを希望されない人を台湾に帰そうというような不安を与えておることも一掃せられると思う。
最後に、なお旅券の点についてもやはり先ほど指紋の場合に申し上げましたように、国際的に、外国に旅行するということは私は個人の基本的
権利に属する問題だと
考えます。また国際的にもそう
判断せざるを得ないのであります。最近のアメリカの
裁判所の判例を見ましても、外国旅行というものは基本的
人権に属する。従って行政権がこれを簡単に制限するということは違法である。妥当ではないというふうに
判断されておりますが、
法務省が外務省との関連において、この旅券の発行について、やはり海外旅行ということが基本的
人権である、これを行政権で制限するということはできないという立場にお立ちになっておるのか。それともできるというお立場に立っておられるのか。現在の
法律によって法務大臣がその旅券の発行についてそれに賛成をせられない場合といえども、その場合についてはやはり十分な法的な
手続というものをお
考えになるべきじゃないかと思うのであります。ただ法務大臣がこれは不適当であるから出さない。別にそれについていわゆる
裁判の
手続に似たような何かの
審査の
方法をおとりになっていませんが、これは全く行政権が直接に、そして何らの顧慮なく基本的
人権を侵していると非難されなければならないと思いますが、この点についても法相の御所見を伺わせていただきたいと思います。
以上お伺いいたします。