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1955-12-12 第23回国会 参議院 文教委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年十二月十二日(月曜日) 午後一時五十九分開会     ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     飯島連次郎君    理事            有馬 英二君            川口爲之助君            湯山  勇君    委員            木村 守江君            佐藤清一郎君            堀  末治君            松原 一彦君            吉田 萬次君            秋山 長造君            安部キミ子君            矢嶋 三義君            加賀山之雄君            竹下 豐次君   国務大臣    文 部 大 臣 清瀬 一郎君   政府委員    文部省初等中    等教育局長   緒方 信一君   事務局側    常任委員    会専門員    工楽 英司君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○理事辞任教育、文化及び学術に関する調査の 件(文教政策に関する件)  (地方教育職員期末手当に関する 件)     ―――――――――――――
  2. 飯島連次郎

    委員長飯島連次郎君) それでは、ただいまから文教委員会を開きます。  まず理事辞任の件についてお諮りをいたします。竹下豐次君から理事辞任の申し出がありましたので、これを許可することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 飯島連次郎

    委員長飯島連次郎君) さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  4. 飯島連次郎

    委員長飯島連次郎君) 本日は、大臣が衆議院の御都合で御出席がおくれますので、大臣に対する質疑は後刻にいたしまして、まず教科課程に関する件から……。
  5. 秋山長造

    秋山長造君 ちょっとその前に、この前の委員会理事会に一任されておった例の教員の年末手当の問題についての決議ですね、あの問題その後どうなっているか御報告願いたいと思います。
  6. 飯島連次郎

    委員長飯島連次郎君) ちょっと速記をとめて。    午後二時一分速記中止      ―――――・―――――    午後二時二十九分速記開始
  7. 飯島連次郎

    委員長飯島連次郎君) 速記をつけて。  それでは、まず地方財政計画の件について御発言がありますから、御質疑を願います。
  8. 湯山勇

    湯山勇君 前回お尋ねしておったのでございますが、本年の赤百四十一億の財政計画修正があったときに、一般職員及び教育職員昇給に伴う給与費の中から九億八千万円落しております。その説明は、当初の計算では十二月の統計の上に立って本年増加分を見たのであるけれども文部省推定統計によれば五月の計数が出ておるから、矛の上に立って増加分を見れば九億八千万の減になる、しかしながらこれは明らかにこれだけ分昇給昇格財源赤字になるわけだから、この分についてはいずれ精算されるものと考えられる、この分は従って歳出計上の繰り延べという格好になって処理されるというような説明があったわけですが、今回当然地方財政計画修正が行われる場合においては、この分の措置がなされるものとわれわれは期待しておったわけですけれども、何らこれについては措置がなされていないので、この年末には少くとも九億八千万の昇給に伴う給与費赤字が出ると思います。これについてはどういうふうに措置されるのか。さらにまたこれについて自治庁との話し合いがなされておるのかどうか。これらの点について御答弁をいただきたいと思います。
  9. 緒方信一

    政府委員緒方信一君) 前回の委員会でお尋ねのありました点でありますが、今年度の地方財政計画を当初に組みまして、それから今お話しのような経緯のあったときに一ぺん組みかえておるのでございますが、そのときに今の九億八千万の問題があったことは私も記憶しておりますが、この前ちょっと私正確な内容について御説明できなかったのでございますが、調べてはみたわけでございます。ただ、今お話のように地方財政計画策定そのもの自治庁の所管でございますから、私ここで決定的なことを申し上げかねるわけでございますけれども、ただ九億八千万の問題につきましてさらに御説明をいたしますと、当初組みました財政計画の中には、今お話しの二十九年五月一日の人員の上に二十九年十二月一日までの実際の増員といたしまして七千八十人でございますが、これが出ておりますので、その増員分に伴う給与費算定いたして組んである、これが十九億六千万ということになったわけであります。ただその後今の組みかえの場合にこれを二分の一にいたしまして落したという事実があったわけでございます。それはどういう説明でその当時私ども自治庁とは打ち合せをしたのでありますが、説明といたしましては、これはそれだけの人数がふえましたけれども、これは何も五月一日から一斉に増員されたわけではないのであって、この間の所要財源としては二分の一を見ればいいのじゃないか、五月一日に七千人というものが全部増員されたのではなく、十二月一日までに増員になっている数であるのか、あるいは六月、七月、八月ごとに月を追うて増員されたかははっきり実態はわかりませんけれども、そういうことで財源推定としては二分の一でいいのじゃないかということで一応落したということで、さように私ども自治庁においても説明しておったというふうに了解しておるわけでございます。ちょっと今のお話と違いがあるようにも思いますが、私その当時の自治庁説明ははっきり存じませんが、私どもはさように了解しております。そこで、今度の地方財政計画の上には、そういう説明でございますが、出ておらぬ、ただ自治庁説明に、私はっきりは申しかねるのでありますけれども、来年度の財政計画におきましては、給与費につきましては全面的に検討を加える、かように了解いたしております。
  10. 湯山勇

    湯山勇君 ただいまの局長の御把握は失礼ですけれども非常に間違っております。これは三十年度の昇給財源です。従って二十九年の五月から十二月までの差というものはこれは問題にならないので、その二十九年度に増になった七千八十人というものは三十年度に持ち込されて、それに対する昇給ですから、五月から十二月までの間の二分の一というような考え方はできないと思います。そこで今自治庁がどう説明したかというのですけれども、これは一つ予算委員会議事録にこの修正になった分の説明後藤次長説明しておりますから、あれをもう一ぺんお読みいただいて、そしてもう少し一つ的確な御説明を願いたいと思います。今の御説明では大へん食い違いが大き過ぎると思います。
  11. 緒方信一

    政府委員緒方信一君) なお今御指摘のありました速記録は読んでみたいと存じます。ただ私申し上げましたのは、二十九年度の財政計画というものは申すまでもなく二十九年度の財政規模の上にあるいは三十年度の教員増昇給というものを積み重ねて作るわけでございまして、二十九年度の実績計算算定は今のようなふうに修正された、かように私は考えております。
  12. 湯山勇

    湯山勇君 それでこの二十九年度の実績というのは、結局十二月一日の調査による七千八十人増というのが実績に一番近いわけですね。そういうことから考えましても、この算定基準には無理があるということはよくおわかりの通りだし、この年度末にふえた分の穴があくということもこれは事実ですから、これにどう対処するかということがはっきりしませんと、今各地で昇給延期とか停止とかという問題も起っておるし、かたがたこれが措置されないことが今度の年末手当の支給をおくらすという要素にもなると思いますから、これは一つ早急に対策と事実の御調査を願いたいと思います。
  13. 緒方信一

    政府委員緒方信一君) 今お話にございましたけれども、私が申し上げましたのは、二十九年度の実績の上に三十年度の増を見込んで財政計画を立て、三十年度の増につきましては、国庫負担金予算文部省算定いたしました増員分と同じものが載るわけであります。二十九年度の規模をどう見るかということでありますが、それにつきましては増員分が出ておりますけれども、これは財源措置として増員分の一〇〇%を見ることはなく、五〇%の財源でいいのではないか、それは先ほど申しましたように五月一日から全部一〇〇%すぐ増員されたというのではないのじゃないか、こういう推定のたと思います。こういうことでありますから、私の説明と少し食い違っておるかと思います。
  14. 湯山勇

    湯山勇君 確かに食い違っておりますから、これは一つお調べになって、納得のいくように御説明いただきたいと思います。
  15. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 初中局長に伺います。文教政策を推し進めるに当って、教育機会均等というものは今後推進していくつもりであるかどうか。もしそれを推し進めていくならば、具体的にどういうことをもって推進していくつもりか。一つの例として、たとえば学区制というようなものも、これは教育機会均等を推進する一つの手段としてとられた制度だと思いますが、こういう学区制というものは今後維持強化していくつもりであるか、それとも消極的な態度をとっていくつもりであるか、その点を一つ伺います。
  16. 緒方信一

    政府委員緒方信一君) 高等学校学区制お話だと存じますが、これは教育委員会法規定にございまして、県の教育委員会高等学校教育の普及と機会均等の必要のために数個の通学区域に分ける、こういう規定があります。この規定を現在改正をするというような気持は私としてはございません。
  17. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 その前段に伺ったことですが、念のために私は最初伺っておくのですが、教育機会均等というものを推進する方向に今後推し進めていくつもりであるか、それともそれほど伺っておきます。
  18. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 その一つとしてのこの学区制というものについては、あなたはこれを守っていきたいというお考えだという御答弁があったわけですが、文部省指導助言立場にあるわけでございますが、各都道府県教育委員会をしてそういう線で指導し、また助言を与えておられますかどうか。
  19. 緒方信一

    政府委員緒方信一君) 指導助言でございまするが、学区制全般につきまして、今まで文部省としまして特別な通達等を出したことはないように記憶いたしております。まあ指導助言を、会議等の場合もございますけれども、たとえば学区制をきめるにつきまして、関係の教育委員会等と十分打ち合せしてやってもらうようにというようなことは、最近も教育長会議等にも申しております。
  20. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私はこの学区制ができるかこわれるかということは、戦後スタートした教育に非常に私は大きな影響を持っておると思いますが、あらためてここで学区制に対するところの指導立場にある文部省考え方、そういうものを表明し、そういう意思表示都道府県教育委員会になして指導していく用意がありますか。されるべきだと思いますが。
  21. 緒方信一

    政府委員緒方信一君) 今さしあたってこれを出そうという、何か通達等を出そうという気持はございません。
  22. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それではあなたはいかなる機会を通じて学区制の維持というものをなし遂げようとお考えになっていらっしやるのですか。全国的にこのるということは、あなたの先ほど答弁からいって私は遺憾なことだと思うのですが、従ってそれはこわれないようにするためには、何らかの指導助言を積極的になさるべきだと思うのですが、いかがですか。
  23. 緒方信一

    政府委員緒方信一君) 全国的に学区制がこわれる傾向があると私考えておりません。
  24. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 次に、まあ質問していきますので、ここであまり深入りしたくないと思いますが、愛知県の問題、御承知と思いますが、ああいう大きい県を二学区制にする、しかもたとえば名古屋市と対立しているというような状況で、決して好ましい問題じゃなくて、やはり私は至要な問題だと思いますが、あなたはいかようにお考えになっていらっしゃいますか。
  25. 緒方信一

    政府委員緒方信一君) 学区をどういうふうにきめるかということは、これは権限といたしましても都道府県教育委員会にございます。実質的にもこの法律の精神から申しましても、教育委員会が御承知のような地方住民意思に即して教育を行うのが建前でございますので、その教育委員会学区制をきめる場合に、その地方々々の実情に応じ、地方心々住民意思に従ってこれをきめる、こういうことであろうと存じます。従いましてお話しの点は、いわゆる小学区制あるいは中学区制、いろいろございます。小学区制と申しますのは、御説明申し上げるまでもございませんが、一校を一学区としてきめてある。そうじゃなくて、今愛知お話が出ましたが、愛知のごときもこれは二学区にしようといの、あるいは相当数高等学校をまとめて一つ学区を作るということであります。そのいずれがいいかということにつきましては、これは法律にも規定はございませんし、文部省の従来の立場といたしましても、どちらをとるかということは、今指導はいたしておりますけれども、それは先ほどから繰り返して申し上げますけれども地方実情に即してきめるべきものである、そのきめる権限教育委員会にある、かように考えております。
  26. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 この質問は、一応先に進んで、あとでまた返ります。  次に伺いたい点は、これは日本の人口問題も関連が一部にあるかと思いますが、私は世界各国教育をながめて、日本ほど受験準備教育の激しいところばないと私は考えます。それなるがゆえにわが国の各級の学校教育というものが非常にゆがめられ、不能率を来たしている面がある。高い見地からながめるというと、わが国青少年諸君は偉大なるエネルギー・ロスをしている。ある角度から見るならば、国力の消耗をしているとさえ私は一言えるのじゃないかと思いますが、このわが国受験準備教育が激しく、これによって若干教育が曲げられているということをお認めになられますか。もしお認めになられるとすれば、これらは一挙に解決できないでしょうが、これらの解決についてどういうことをお考えになっていらっしゃるか、伺います。
  27. 緒方信一

    政府委員緒方信一君) 日本が一番入学試験のための勉強が激しいかどうかということは私は存じませんが、ほかの国にも相当こういう問題はあると存じます。ただそのために本来の教育が歪曲されるということになれば、これは非常に遺憾なことであると存じます。現在の日本実情といたしましても、高等学校教育等その実験準備のための勉強教育というものが相当実際上行われているじゃないか、かようなことは考えられるところでございますが、これに対する対策といたしましていろいろございますけれども、私ども今度教育課程改訂ということを来年度から実施しようと思いますが、これも一つの方法であろうと考えております。
  28. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 この質問あとで返りますが、もう一つ先にゆきます。  あなたは男女共学は今後さらに一そう進めてゆく方がよろしいと考えているのか、それとも男女共学についてはあまり積極的な態度をとらないという立場に立っておられるのか、念のために伺っておきます。
  29. 緒方信一

    政府委員緒方信一君) 私といたしましては、現在の制度を改める気持はございません。
  30. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 そうだとすれば、ここに一つの結論が出てくるわけです。現在問題になっています高等学校教科課程改訂というものは、高等学校教育の改革のみならず、わが国の戦後発足した民主教育進展の根底に私は触れる重大な問題だと考えます。若干申し述べて伺いますが、私は現在の高等学校教科課程が改悪だとは思っておりません。しかし今文部省が企図されているああいう改訂をすれば教育機会均等というものが私は破れると思います。それはあなた方から出されている資料を見てもわかりますように、これははっきりと複線型のものになるし、職業課程高等学校生徒、特に夜間の定時制に行っている学生諸君というものは、完全に上級学校進学意思を持っていても事実上行けなくなる、これは明確でございます。戦前の複線型以上に私は改悪されていくということは、教育課程編成の案を見ればきわめて明確です。教育機会均等はこわれます。  それからまた第二点として、あなたが認められているあなたの認め方はきわめて不十分である、現状の把握はきわめて不十分であると思う。現在のわが国中学教育高等学校教育は、日に日に受験準備教育は熾烈をきわめておる。終戦後ちょっとよくなりかかっていたのが、さらにものすごい傾向にあるわけです。これは決してわが国教育のために私はいい傾向でないと思います。ところでこのたびの高等学校教育課程改訂によりますと、これは大学教授方々大学においての講義を展開していくに当って、今度の改訂をされると都合がいいからそういう教授の方はあるいは一部は支持されておるかもしれません。しかし聞くところによると、教育の本質的な立場に立った教育学者の大部分の方々が反対しているということを私は直接聞いているわけでございますが、あの伝えられる教科課程改訂をやりますと、いわゆる職業的予備校というものができます。予備校化してしまう。各県に一りか二つ高等学校は、特定高等学校大学入学受験準備高等学校になるということが明確だと思います。そうすると、その結果というものはますます受験準備教育というものを盛んにする、その結果は高等学校教育はもちろんのこと、ひいては下級であるところの中学校教育も曲げることになる、これも私は反論の余地はないと思います。  それから第三点の男女共学、これはあなたと私、考え方同じです。男女共学というものがここまで育つ七きたものを、世界の情勢からいってもますます私は施設、設備の充実をして推進さしていくべきだと思います。あの保守的な英国にしてもようやく最近男女共学をとるべきだというそういう方向にあるということを私は聞いたのでありますが、そうだとすれば、今度のような伝えられる教科課程改訂をやれば、これは教育編成からいって男女共学というものは事実上できなくなる。それは同じ校地内にあるところの校舎に男女はおりましょう。しかしAなる教室とBなる教室男女は別々な教室に入って勉強するようになります。これは男女共学ではありません。男女共学というものは特定の学課を除いて以外は同じ教室内に男女学生が入って、お互いに男女理解のもとに学習をするところに男女共学の意義があり、それによって日本の女学生などは非常に学力的に伸びてきた、また男性にもいい面が出てきたわけです。こういうことを考えるときに、今度の教科課程改訂からいえば、男女共学というものはこわれてくるわけです。従って私がここであなたに伺いたい点は、あなたが教育機会均等、あるいはわが国の各級教育機関受験準備教育というものも教育を曲げないようにしたい、あるいは男女共学を育てていきたいという立場に立てば、私は今伝えられるところの教科課程改訂というものはまだまだ検討余地があると思うのですが、伝えられるように来年の新学期から実施されるおりもりでございますか。一部教育界からも要求されていますように、この教科課程改訂というものをさらに一年延期して、その間に私は十分検討さるべき余地があると考えるのですが、いかがでございますか。非常に私は大事な問題だと思うのですが。
  31. 緒方信一

    政府委員緒方信一君) 今三つの点をおあげになったわけですが、第一点は教育機会均等といいます観点からいたしまして、職業課程生徒大学進学がますますむづかしくなるのではないか、このようなお話でございますが、私はさようには考えておりません。これは従来の制度とほとんど改訂制度と比べてもそういうふうにはならぬと思います。たとえば従来にいたしましても、職業課程工業高等学校生徒文科課程の方に進む、これは非常に困難だろうと思います。それと同じような意味で今度も困難な点はございますが、しかしこれはある程度やむを得ないことだろうと思います。今度の改訂一つ趣旨は、各課程特色を生かしていく、職業過程普通過程と両方ございます。その間にいわゆるこの高等学校のどの課程も同一に取り扱っていく、普通一般教養につきましては、その単位数をそろえていく、国語も社会も理科数学も、みな五単位なら五単位という単位をそろえていくというののが従来の考え方でございます。それを今度各課程特色を生かしますために、単位数に若干の幅を持たせました。そうして各課程特色を生かせるような教育課程を進めるように改訂いたしたのがこの改訂一つ趣旨でございます。しかしながらその一般教養科目最低単位、両方ともどの課程でも必修されなければならぬ単位数というものは、従来は三十八単位を三十九単位にします。従いまして職業高等学校といいましても、一般教養科目につきまして、従来よりも教養が下るということはない、私はむしろそのために計画的な教科課程を立てることによって、一般教養は向上するのじゃないか、かように考えております。さような意味からいたしまして、教育機会均等をこのことによってそらすということはないと思います。  それから次は受験準備の話でございますが、現実に先ほどから私触れましたように、現在の自由選択制のもとにおきましても、これは生徒選択がややもいたしますと、受験準備都合のいいような科目を選ぶ、こういう傾向があるのじゃないかと思います。また学校側におきましても受験準備教育を事実上進めております。こういう弊害があるのではないかと思います。しかしながらこれは申し上げるまでもなく、高等学校を卒業します半分の生徒は卒業後就職をいたします。そういう者のためのやはり計画のある教育課程編成していくということが、今度の改訂一つのねらいでございまして、私は今度の改訂のために受験準備をさらに激化させることはないと思います。  それから最後の男女共学の問題でございますが、これは男女共学をこわさないために家庭科というものだけを取りはずして、必修ということに今度定めなかったのであります。家庭科職業科芸能科、この三つを組み合せまして各単位を必修する、かような制度にいたしましたことは、男女共学を保持していきたいという観点から工夫をいたした点であります。さらに私はそれらの原則に背反する点はないと思います。ただこの教育課程改訂の積極的な趣旨一つ御参酌いただきまして、御了解をいただきたいと存じます。私どもはやはり全国の学校の、あるいは教育委員会準備状況は着々と進んでおると考えております。若干の反対もございますけれども、しかし高等学校長は全部支持しております。これを実施してくれという積極的な要請がございます。最近におきましても、これがもし今日において変更するということがあるならば、かえって現場に混乱が起るという意思も表明されております。私どもはこの趣旨を昨年の十月に教育課程審議会答申を得まして、それを検討いたしました結果、昨年の十二月二十七日に答申を確定いたしまして、都いたしております。自来着々と準備を進めて来ておるのでございまして、最近この学習指導要領一般編改訂も形式的にもこれが完成いたしましたし、これを十二月の十五日に都道府県教官委員会に通達いたしまして、来年の四月から改訂を行う、こういう方針を明らかにいたしたような次第でございます。
  32. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私は今度の教育課程改訂が全面的に悪いということを言っているのじゃないのですよ。私は従来大単位数学なら数学を例にとりますと、五単位を一年にとってしまわなければならん、こういう大単位制に若干合せ方では私はいい点がある、こういう考えも持っているわけなんですが、しかしあなたはやはり文部省の机の上で考えられている面が多いと思うのですね。私はあらためて伺いますがね、今私の何に反論しましたが、何じゃないですか、理科系統文科系統、それから文理系統、それから職業系統家庭科系統とはっきり五つのコースに分れますわね、分れるでしょう。そうしてたとえば数学を例にとれば、五単位とるのと三単位とるのとではその教科の程度というものは変ってくるわけなんです。大学の場合入学試験をする場合、たとえば数学だったら、私は十七単位も要求する大学が出てくると思います。数学を十七単位、十七磁位を受けたものとしての試験を課していくということになると、その三単位かあるいは三、三の六単位数学を受けた学生という者ほとてもそれは門戸は開かれるものじゃございません。だからちょうど昔の中学校と実業学校ですね、あれの学力差、同じ中学校の中でも一時一種、二種というのがございましたね。一種課程、二種課程。一種の方が上級学校に行かない人で、二種の方が上級学校に行くんですね。あの昔の複線型というものが従来以上に私はカムバックしてくると思います。あなたの今御説明によると、あらゆる高等学校にこの五つのコースを設けられる前提に立っている答弁でございますが、そのことは現実上できっこないですよ。それは実際やらしてごらんなさい。いなかの高等学校なんかA、B、C、Dのうちのコース一つしか設けないような高等学校がたくさんできて来ます。もとの学校ができます。それからまた一方はもとの東京都立一中といったような、こういうコースだけを持った学校というものができてくることは私はこれは火を見るよりも明らかだと思いますね。従ってこの五単位の大単位に幅を持たしたというような点は、これは基礎教養を固めるという立場から人間形成、人格形成という立場から確かに私はとるべき点があると思うのですが、その現行の欠点と、それからそれ以上に今度の新課程案に大きな欠陥があるわけだから、その両方の長所をピックアップして、そうして私は案を作れば非常にいいものができると思うのですがね。従ってその検討余地があるから私はさらに検討さるべきだと思う。その証拠には何でしょう、伝え聞くところによるというと、都通府県でもこれは実施できないというので、教育委員会で反対の決定をしたところもあるし、また先般開かれた全国教育委員協議会においても来年の四月一日に実施すれば波乱が生ずるから、これはできるだけ、もう一年延期して、そうして現場に混乱なきようにすべきだ、またそうしてもらいたいということの意思表示をしたということを私新聞紙上で承知しているわけですが、実際にこれを実施するところの権限を持っておる教育委員会がやれないというものを、文部省の方で無理やりにやらせるというのは、これは考えなおさるべきだと私は思うが、いかがですか。
  33. 緒方信一

    政府委員緒方信一君) お尋ねになりました点について申し上げますと、第一は教育機会均等という点でありますが、職業高等学校と普通課程高等学校との関係がどうなるかということであります。で、これは先ほどもちょっと私申し上げましたけれども、もう少し御了解いただきたいのは、普通課程高等学校職業高等学校も、どの生徒にもすべて履習させなければならぬという最低限を今度の改訂においても押えております。現行の教育課程で申しますと、共通必修ということになっております。これは三十八単位でございます。今度は三十九単位ということになったわけです。それを読み上げてみますと、お手元にこの一般編が行っておりますから、ちょっと御参照願いますが、二十三ぺ-ジにございます。二十三ページの「3」に「教科科目の履修」、「すべての生徒に履修させる教科科目」これは国語(甲)、数学一、体育および保健が一つ、それから社会科のうち社会を含めて三科目、それから理科のうち二科目、これだけはすべての生徒に履習させるということで最低を抑えております。それからさらに全日制の普通課程生徒につきましては、芸術、家庭、それから職業であります。これは四つあるわけでありますが、職業、この三つを組み合せたものの中から六単位以上をすべての生従に履習させる、こうなっております。この最低をとってみまして三十九単位、でございますから、一般の職業高等学校の、職業課程高等学校生徒一般教養において普通課程高等学校に劣るという関係は、これは一つも出て参りません。ただ変って参りますのは、単位数に幅を持たしたという点であります。これは先ほど申しましたように、各課程特色を生かしたいために幅を持たした。たとえて申しますと学校、これはあるいは理科科目は三単位であるかもわかりません。五単位は要らぬということが言われるかもしれません。普通高等学校におきましては、五単位をとるかもわかりません。それからあるいは職業高等学校のうちでも工業高等学校におきましては、五単位を修めさせるかもしれません。その差は出て参ります。しかしながら今度は一方商業の高等学校におきまして、どうしても社会科の方は五単位をとろうということになるかもわかりません。また工業高等学校の方はその逆の結果が出るかもわかりません。しかしそれを総計いたしましたバランスが三十九単位を最低に押えておるわけです。そこで今矢嶋先生のおっしゃいましたように、大単位で押えることは弊害があった、小単位に分けたことはわかるというお話、その点は全くここでございまして、その科目の幅を単位数、つまり学習の深さほそれに幅を持たせて、あるところでは現在の課程よりも浅くなりますけれども、しかし課目の数はふやしておる。社会科について申しますと、今までは二科目だけでよかったのを三科目とれと言っておりますし、数学におきましては、従来は代数、幾何どっちかでよかったのを両方とるようにした。それからまた理科につきましては、四科目のうち一科目であったのを二科目は必ずどの課程においても履習させる、こういう基底を押えておるわけであります。でありますので、全体のバランスをとってみますと、一般教養が現在の教育課程と比べまして、一般教養において普通課程職業課程職業課程は各課程がありますが、この間に私は差ができるとは考えません。  それからまた、機会均等意味大学入試の、進学の問題でございますけれども、今矢嶋先生は数学については十七単位大学は要求するであろうと、こうおっしゃいましたけれども大学入試の問題については研究中でございまして、さようなことが起らぬように配慮いたしたいと存じております。さような点でございますから、よろしくお願いいたします。
  34. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 書いてあることはなかなかいいことが書いてあるのですよ、一年のときは広く勉強きせる、これはいいことだ。それから第二学年から専門化するというけれども複線になることは明瞭ですよ。たとえば数学を例にとれば、日比谷高校だったら九時間とるのですよ、そうでないいなかの高等学校だったら六時間、六単位、六と九と幅があるでしょう、日比谷だったら六なんかじゃない、九とるのです。だから同じ高等学校でも六と九という差がつく、ましてや職業学校数学一を一年のときにやるといっても違ってくるのだ、そこに昔のように職業学校と女学校、中学校というのは同じ数学をとっても学力差というのはこんなについてくるのですよ。だから複線型になるということは明確です。教育機会均等云々というが、定時制の場合を考えてごらんなさい。夜間の高等学校、これが発足したときには単位で、定時制生徒は東京でよく働く、東京の夜学に行って八十五単位のうち二十五単位なら二十五単位、それから大阪の職場に転勤になる、大阪に行って残った単位をとれば、合せて八十五単位になれば卒業免状をとれる、そういう組み立てになっておるわけですね。ところがそんなこと絶対にできませんよ、転校なんかできやしない。それから定時制の方では学力なんというのは昼間とは格段の差です。いかに優秀な者でもこれは上級学校に入れるものではない。だからはっきりこれは終戦後発足した教育機会均等という立場から、わが国のかっての複線型の制度を単線型にしたという点からは大きな変化ですよ、これは。私どもは確かに一部には、部分的にはこういう方向というのは認めているのです。たとえば、従来は化学が五単位、物理が五単位、化学は五単位やっているが、物理はきっぱり知らんとか、こういうのはたとえば大学数学勉強するときに困る、そういう点に考慮を払われてきたことは私は認めるわけです。しかしさればといって今度は現行の欠点以上なのがここに出てきているのですね。それは教育機会均等と、男女共学と、転校ができなくなる、学区制がくずれるとかはこれは明白ですよ。だからそれで今の教員構成でできぬから、実施機関である都道府県教育委員会が頭をひねっているところですね。だからもう少し検討したらどうですか。それ以上にちょっとあなたの立場としてとるべき態度、私はこれは何を言うかというと、終戦後発足したときにアメリカから来た指導官と文部省方々が福岡に来て講習をやった。私はそのときに熊本県から代表として講習を受けて、それからまた私は熊本県に帰って各地をずっと講習して歩いた。だからその当時のことを思い出すのだが、そのときはとりあえず乙号基準でいく、甲号基準が必要なんだ一がそのうちに甲号基準にするが、今終戦雨後国家財政が困難だからというので、乙号基準だった。あなたの立場としては甲号基準になるのに努力すべきだと思う。ところが文部省は努力していない。定員の面において、施設設備の面において、そういう点で努力しないで、それで腰を折ってしまって、そして予算的なもので追い込められたのか、こういう改悪の方向にいくというのは私はこれは文部省としてとるべき態度じゃないと思う。そして実際やれないとなれば、これはやれなければ教育委員会は違法になる、法律違反になるというようなことをおどしている。これは脅迫ですよ。私はその当時学習指導要領というのを持って講習に歩いた。そのときはあくまでこの学習指導要領というものはこれは指清算計画一つのサンプルを示すのだ、これは一つの見本だ、これに皆さんとらわれてはなりませんよ、これをあなた方のお考えでよりりつばなものにするのだ、これは学習指導のサンプルにすぎないのだ、こういうふうに指導した。ところが最近は新聞紙上で見るというと、学習指導要領に従ってやらない場合はこれは違反だからというようなことで脅迫をしているが、これは最近の文部省態度というものは非常に解せないと思うのですが、そういう点引っ込められたらどうですか。
  35. 緒方信一

    政府委員緒方信一君) はなはだ反論を申し上げて恐縮でございますけれども、今おっしゃいました点につきましても、これは御説明申し上げているかもしれませんけれども、第一点の複線になるという点、これは今お話しのようにある高等学校数学について言えば九単位を履習させる、あるいはまたほかの高等学校では三単位を履習させる、これはほかの科目につきましても同じであります。社会科について三単位、五単位理科について三単位、五単位、こういう差が各課程、それから学校の中に今度設けられた類型、いわゆるコースにおきまして差ができて参ります。そういうことを二つの改訂趣旨にしておりますから。そうなって参ります。しかしながら数学におきましては六単位と三単位になりましても、その高等学校特色に従い、まして、ほかの教科につきましては今度は逆の単位数をそこでとるわけです。それを合計しました最低の単位数は三十九単位、これはすべての高等学校に抑えておるわけです。従いまして、高等学校一般教養といたしましては、甲高等学校も乙高等学校も、あるいは普通課程職業課程もこれが懸隔を生じない、かように申しております。その意味におきまして複線型になることはあるまい、かように申しておるわけであります。その点一つ御了承願いたいと思います。  それからあの高等学校教員の定数あるいは設備等につきまして、私ども決してこれをなおざりにいたしておるわけじゃございません。これは財政の都合でなかなか一挙に増員はできませんけれども、しかし地方財政計画、これは全部地方費でございます。地方財政計画に盛り込みます算定の基準につきましては従来も努力しておりましたし、今度は特に高等学校単位費用の問題がございましたので、これも私どもも存じておりますが、なおまた設備につきましてもこれは国会でいろいろ法律もございました結果でございますので、相当文部省としても予算をつけまして産業教育なり、あるいは理科教育等につきましては進みっつあると存じております。
  36. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 定時制の場合は……。
  37. 緒方信一

    政府委員緒方信一君) 定時制につきましてもこれは全然同じでありまして、原則が変るということはございません。先ほど申しますような原則を定時制につきましても適用していくわけでございます。それから法律の問題を最後にお話しになりましたけれども、これは法律的な解釈はそのようなことを私どもは言っておるわけであります。学校教育法におきまして高等学校教科については監督庁が定める、その監督庁は文部大臣であります。そして学校教育法施行規則二十五条によりまして一般の小学校について規定がございまして、これは高等学校にも準用されておりますけれども、「教育課程については、学習指導要領の基準による。」と、こういう規定がございます。そこで文部省では、文部大臣権限といたしましてこの教育課程を改正いたします。改正の実施は、改正するからには実施の日がなければなりません。これは来年の四月から改正をいたします。そうしてそれはどういう形で示すかというと、この学習指導要領の形で示します。これにはごらんの通りに基準が書いてあるわけでございまして、この基準に従って、地方教育委員会におきましては、その県の実情に即してその具体的な教育課程をきめられるわけでございます。決して文部省指導助言の範囲を逸脱してこうしろということを命令しているようなことは一つもございません。ただ文部省は、文部大臣学校教育法に従って教育課程改訂をする、教育に関する事項を文部大臣がきめることができますから、その法律規定によってこれを改訂するわけであります。従いまして、その法律の結果改訂いたしました教育課程につきましては、新しい改訂された教育課程を、地方都道府県教育委員会がそれに準拠して新しいその県の教育課程を具体的にきめるということは、これは当然なことだろうと考えます。この関係を私どもは解明したわけでございます。  それからなお、矢嶋先生にお言葉を返してはなはだ恐縮でございますが、これには非常にいいことが書いてあるというお話しでございましたが、この通りに私ども考えておりますから、もしそのほかのことをお聞きであれば、それは間違いでございまして、この通りのことを実施しようということでございますから、その点は御了承願いたいと思います。
  38. 湯山勇

    湯山勇君 関連して……。今の局長の御説明では、一応まあ学習指導要領によって基準を示したと、これに対する内容取扱い等については――つまり教科課程ですね、それについては、各教育委員会がそれに準拠してやるんだと、こういう御説明ですから、そうすると文部省の方でこのような構成のようなものをお示しになりましても、その通りそれと一分一厘も違わないように教育委員会ではやらなくてもいいわけですね、今の御説明からいけば。これは確認をしておきたいと思います。
  39. 緒方信一

    政府委員緒方信一君) この学習指導要領は、学校教育法施行規則二十五条によりまして、教育課程の基準でございます。国としてきめた基準でございます。従いまして、この基準によって都道府県教育委員会がやることは、これは適法な措置でございます。そこで、まあ基準でございまして、この基準の中には、このまま実施すべき基準と、それから多少弾力性のある基準と、両方ございます。たとえば社会や理科を三単位または五単位、あるいは三単位ないし五単位と、こうきめてあります。これを六単位や七単位ということでやるということは、これは高等学校全体の統一を害しますから、これはこの通りやってもらいたいということになると思います。  それから今お話しのいわゆる構成、類型でありますけれども、これは先ほど矢嶋先生もお話しでありましたが、五つの類型の例を文部省が示しました。しかしこれは参考事例でございまして、地方あるいは学校におきまして教育課程編成する場合にこれを参考とされたらよかろうと、こういうことで示したものであります。従いまして、あの示しました五つの構想をそのままとらなければならぬ、そういうふうに国が固定したいというような考え一つもございません。ただしかし、従来の自由選択制を改めて、そして学校におきまして、ある範囲は計画された教育課程学校で組む、これは基準でございます。これほその通りしてもらわなければいかぬと思います。ただしかし、それをどういうふうに組むかということは、この示されました基準の範囲において地方できめられてよろしいと、かように考えます。
  40. 湯山勇

    湯山勇君 そこでもう一つ大臣も見えましたからまたあとでお聞きすることにして、今のことに関して、もう一点だけお聞きしたいと思います。この学習指導要領は、今局長が言われたように法によってきめられたものかどうなのか。今お配りになったのを見ますと、これは単なる市販の書物で、ただ題に「学習指導要領」としてあるだけで、著作が文部省であって定価十円、そうでしょう。こういう町に売られておるものが、果して第四十三条に基く……法によって監督庁がこれを定めると、監督庁がこれを定めるということになれば、これは法規によって定めなければ、こんな店に売っておるようなものが、これが教育を拘束するのだと、法的根拠を持つのだということは、おかしいと思います。そこで法規の形式による学習指導要領というものがあるのかないのか、そうしてこれが法規の性質を持ったものかどうか、これを一つ明確にしていただいて、問題が残りましたらあとにします。
  41. 緒方信一

    政府委員緒方信一君) 今お話しのように、これはまさに市販をいたしております。しかし、その学習指導要領として定めましたものはこの内容でございます。ただこういう書物を作ってなるべく安くできますように、文部省でこういう措置をいたしまして、そうして地方の先生が手に入れやすいようにしたわけでございます。しかし、学習指導要領というものはこの内容でございます。これは私ども文部省から通達として都道府県教育委員会に示してございます。これは先ほども申しますように、学校教育法四十三条だったと存じますが、四十三条によりまして、高等学校教科に関する事項は監督庁がこれを定める、その監督庁は文部大臣でございますので、文部大臣がこれを定めて地方に示したのでございます。そういう法律的な性質を持っております。
  42. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 関連して……。学習指導要領については今までそういう解釈を一ぺんもしたことはないです。それから教育委員会法の立法精神からいって、公選された教育委員がこんな一冊十円の品物で制約されにやならぬという法的根拠はどこにもない。教育委員会法を見ますと、第四条に権限がある。教育委員会法の第四十九条に基いて教育委員会はやるのであって、実施権限というものはこれはあくまでも教育委員会にある。今まで学習指導要領が出た当時からずっと今あなたの言うようなそういう説明は一度もしてきたことはない。それには最近文部大臣が言われるように、何か法的根拠を持たせなければできぬ。違法だというようなことはできない。その実施権限を持っている教育委員会が実際やれないと言っているのだから、それをなぜ検討余地もあるのに強引にすぐやらさなくちゃならぬのか。私はずいぶん日本文部省というものは偉大な中央集権力を持ってきたと思うのです。私はこの間ちょっと二カ月でしたが歌米を視察し、各国の教育関係の法律をちょっとのぞいてきましたが、ほとんどの国が教育地方分権であって、全国の教育を一手に統制していくような、そういう教育行政機関というものではないですね。日本のもその建前でできているわけですよ。ただ教育基本法とか、あるいは学校教育法とか、そういうものは守られなければならぬ。それを根底に置いて教育委員会法でやるのであって、この場合この学閥指導要領に従わなければ違法だという法的根拠は出てこない。また従来そういう取扱い方は文部省学習指導要領について一度もとってこないのに、こういう段階になってどうしてそういう態度をとられるのか納得いたしかねる。
  43. 緒方信一

    政府委員緒方信一君) その学習指導要領は十円の出版物だから法的根拠の性質はないというお話しでもりますが、これは繰り返して申し上げますけれども学習指導要領として定めましたものはこれに掲げました内容でございます。従いまして、これは先ほど学校教育法四十三条に基きまして、先般都道府県教育委員会に対しまして通達をいたしました。それは便宜これを使いますけれども、きめたものはその内容でございますから、こういうふうにきめて改訂をする。  それからもう一つ、ちょっと先ほども御説明いたしましたけれども教育課程改訂法律的な性質でありますけれども、これはやはり国の高等学校教育課程の基準というものは、やはり国がきむべきものであろうと私は考えます。それは法律上も明らかになっております。これは各国とも私はそうであろうと思います。むしろ日本の方が異例じゃないかと存じます。  それから教科に関する事項につきましては、小学校におきましても、中学校におきましても、これは学校教育法がございまして、特に教科につきましては、学校教育法施工規則で固定をいたしております。固定をいたしてない部分につきましては、文部大臣がその基準を示し、それは学習指導要領の基準による、こういう規定でございます。でございますので、この学習指導要領として定められましたものがその基準になることは、従来の説明はいかようでありましても、法律上の性格はさように相なります。それから教育委員会との関係は、その範囲内におきまして、その示された基準の範囲内におきまして、教育委員会がその県におきまする具体的な事情に即応したものをきめる、これは当然であろうと思います。教育委員会法第四十九条にもその規定はございます。そのことは、たとえば小学校におきまして、全部教育委員会がやるべきだということであれば、教科を国語、算数、社会と、こう八教科にきめておりますが、それも教育委員会がやらなければならぬ、こういうことになるかと存じます。そうでなくて、これは文部大臣が定めまして、学校教育法施行規則によってちゃんと規定して示してある。それに従って教育委員会は、その範囲内におきまして、教育課程を、教科課程を立てて、それに従ってやっていくと、これはやはり制度の建前であろうと私は存じます。
  44. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 その法的なことはさらにあとでやります。  それでそれは一応とめて、それではそれを実施するかしないかというのは、都道府県教育委員会権限ですね。ちょっと待って下さい。権限でしょう。それを実施するに当っては施設、設備というものも伴います。それからまたこの新教科課程で職員構成をやるとなると、これは現在の職員のあれではできませんよ。それは専門外の教科をやってもらわなければなりませんから、中学校、小学校なら、あるいはごまかしができるかもしれませんが、高等学校になったら専門以外の教科を持つということはできません。そうなりますと、これは予算にも関連してくることで、それを実施するところの責任と権限があろ教育委員会が、やれないから、もう少し検討余地があるから、もう一年余裕を与えてほしいと言うものを、それはこれ以上は相ならぬ、それは文部省の言う通りやらなかったら、それは違法だ、何らがの懲罰的な措置をとる、こういうような出方というものは、おだやかではないと思うが、どうでしょうか。
  45. 緒方信一

    政府委員緒方信一君) はなはだ繰り返して恐縮でございますけれども、これを県の段階で、県の計画としてきめることは、まさに教育委員会の仕事でございます。しかし国として高等学校教育課程改訂をするというこの権限は、あるいは責任は文部省にございます。その権限に基きてまして現在ある教育課程を改める、来年の四月から改めるということを今文部省はやるわけです。それに従って教育委員会はその各県におきまして実施をいたす。そういう意味におきましては、この実施をするのは教育委員会という言葉は妥当であろうと存じます。しかしながらその場合には、これはやはり法律に基く決定でございますから、法律に従って教育委員会が各般の事務を取扱うことは、これは地方公共団体の行政機関でございますから、当然のことでございますから、(湯山勇君「ちょっと拡大解釈だ」と述ぶ)そういうことはありません、当然だと存じます。この法律に基いて、この教育課程改訂いたしますと、これは法律に従って教育委員会が仕事をするという、同じ意味におきまして、この新しい教育課程に基きまして、新しい各県の教育課程を具体的にきめてもらう、こういうことに相なるものと存じます。  それからなお先ほどちょっと答弁を落しましたけれども、各県におきまして非常に実施が困難だという声が、まああるというお話でございます。この点に関してでございますが、先ほど先般のいわゆる全教委の会議におきまして、いろいろ論議のあったことは私も存じておりますが、結論は一年実施を延長してくれ、そういうふうなことじゃございません。先ほど矢鳩先生はおっしゃいましたが、その点間違っておりますので申し上げておきます。ただ実施の時期等について十分検討してもらいたいということは出ております。  それからなお、これに従わなければ、何か懲戒にするということを言ったというお話しでございますけれども、これは地方から照会がございまして、それに対して答えたのが、今のように伝わっておるわけでございますけれども、これは正確にお話ししませんと、誤解を生ずると思います。これはどこの県でございましたか、こういう質問がございました。今度の新しい教育課程に基いて、県の教育委員会が県の基準を定める、これを各学校に対しましてやれという命令をする、これはできるかと思います。県の教育委員会が管理権に捲いて各学校に対して命令をする。その命令に従わないで、何度言っても命令に従わない場合には、これはどうしていいかという質問が出ました。それは懲戒処分の場合も起ってくるだろう、こういうことを答えたわけであります。でありますので、その点はちょっと今御質問の点と違いますので、ちょっと申し上げておきます。
  46. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 大臣、途中からお出でになりましたが、お聞きになったと思いますがね。高等学校教育課程の問題を局長から伺っているのですが、今も、これを実施する責任と権限がある全国の教育委員会の全国協議会ですね、そこでいろいろ問題があるから、この実施の時期を考慮してもらいたい、四月一日からの実施はむりだから、考慮して、もう少し余裕と検討の時期を与えてほしいという要請が正式になされているのですが、大臣いかがでございますか。第一線で責任の立場にある教育委員会がそういう状況であれば、私はそうされた方が混乱を起さないでいいと思いますが、大臣の御所見を一つ伺いたいと思います。
  47. 清瀬一郎

    ○国務大臣(清瀬一郎君) その問題は直接、間接に聞きまして、私は就任以来十分に検討いたしましたところ、やはりこれはいい改正だから、これは善は急げでやる方がよかろうということで、私決裁いたしております。事情は緒方局長の申したこととちっとも違いはありません。
  48. 湯山勇

    湯山勇君 今のですね、大臣、それはいい面もあるかもしれませんけれども、今度やろうとする社会科なんかの内容がまだきまっておりません、御承知通り。にもかかわらず、そういうことの検討もしなければならないし、これが、府県ではそれに対応する準備もしなければならない。教科書もできておりません。そういう段階で、むりにやるということに大へん不安を感じておるわけで、大臣承知通り、警察制度の問題にしても、準備期間をちゃんと置いて、その間十分検討した上でやられたわけで、今回のこの教科課程にしても、高等学校教育からいえば、相当大きい問題だし、それから昨日の何か省議か何かでございますが、臨時教育制度審議会でも大学制度検討しようという段階でございますから、それらとの一環において、ここで高等学校教育課程だけが先走りをするというのじゃなくて、それらとの一環で抜本的な、筋の通った方法を立てるのが私はいいのじゃないかと思うのです。そういう点で、もう少し検討余地をお置きになったらいかがだろうか、こういうふうに申し上げておるわけですが、いかがでしょうか。
  49. 清瀬一郎

    ○国務大臣(清瀬一郎君) 先刻以来のあなたのおっしゃることも、矢嶋さんのお説も、よく拝聴しましたが、それと同様な御意見を、直接、間接、また私過日地方にも参りましたが、地方よりも開きましたけれども、よく考えてみるというと、これはいい改正であって、混乱とおっしゃるが、それほどの混乱はない。まだこれで四、五カ月の期間もあることでありまするし、改革することには一日も早く用意をしてもらおうと思って、私は就任以来ほかのことをなげうってということではありませんけれども、よく自宅においても、省においても勉強しまして、これはやはりやる方がいいという決断をしたのであります。
  50. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 そうなると、今度は他面から聞きますというと、それではこれを実施した場合に、教育機会均等を堅持されるためにこの学区制を堅持する。従って教職員の質量の面においても、また施設設備の充実についても格別の予算を組むというようなお考えはございますか。もしそれがなかったならば、想像してみて下さい。各県で昔の実科女学校のような、実業学校のような、それから商業学校、それから受験準備を専門にするところの高等学校、そういうものがはっきり出てくるのですよ。従って結論として学区制というのはつぶれてしまいます。それは時間が証明します。つぶれてしまいます。ある分にこの五コースの理科、文科など、職業課程で五コース全部学校が持てると思いますか。無理でしょう、それは。だから特定の立科コース、理科コースというのは、ある県内の特定学校に限ってしまう。そうすると学校に行くという連中はみなそれに行ってしまう。だからこわれてしまう。だから高等学校の差はこんなについてしまう。学生はこちらの学校へ行ったら優越感を持つ、こちらは劣等感を持つ、こうなってくるので、戦後の新教育の体系というものは完全にこわれてしまうのですよ。ところが今私の言ったように、各欠点はほかにありますが、その一部を救う道、一部を救うだけでも徹底的にこの学区制を堅持する、教員の質と量も、それに施設、設備も充実するということが行われても、この民主教育というものは完全に行われませんが、一部は特定学校に集中してゆくのは当然で、そんなことは言うべくして絶対にできないことです。だから湯山さんも私もこの改訂案というものを全面的に否定しておるのじゃない、いい面もあるが、しかし現行以上に悪い面が出てくる。それは何といっても複線型になる、この複線型をこわすのが終戦後の教育の一番の眼目だったのですよ。だから現行と、それから新教科課程の両方のいいところをとって戦後の民主主義教育が守られるように、また実情に沿うように、事教育のことですから慎重に決定したい。実施機関の都道府県教育委員会もそういう意向であるから、その声に耳を傾けてやるべきではないか、これはきわめて穏やかな筋の逝った意見だと思うのですが、それをなぜここで強引に押し切って、四月一日から無理やりにやろうとするのですか。やった後に、これは少し今度は工合が悪かったなあといっても事教育のことであれば、制度ですから、教科課程一つ制度ですから、改められないから、特に私は慎重にやるべきではないかと思うのです。
  51. 緒方信一

    政府委員緒方信一君) ただいまお話教員の人員定数、あるいは施設設備等につきまして、格段の努力をしなければならぬことは当然でございまして、これは十分よくわかっております。しかしながら、これは今度の教科課程改訂とは別の問題だと思います。これは従来の制度におきましても、今度の制度におきましても同じことでございまして、今の学区制の問題につきましても同様のことがいえると私は考えております。現在の教員の数、あるいは施設設備のこの条件のもとにいたすわけでございまして、従来といえども、ある学区につきましてはその教員はそれだけの数しかないし、施設設備もそういうことでございます。今度その条件のもとにそのコースを作るということでございまして、別にその点につきましては新しい改訂が特に大きな関係を持ってくるとは思いません。  それからもう一つは、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、五つの類型の、見本と申しますか、参考事例を文部省は示しましたけれども、これを全部どこの学校でもおかれるものとは思いませんし、またそれで文部省が固定しようという考え一つもないわけでございます。それは今おっしゃるような小さい高等学校であれば、その小さい高等学校の条件のもとに一つ計画的な教育課程が立つ、ただ従来のように、建前として生徒が自由に選択するという建前を改めて、学校が十分配慰して計画的なそこの地域の生徒に対しまして十分計画のある教養を与えるというような意味において、計画的な教育課程学校で定める、そういうことになってくることが違うだけでありまして、そのほかの点につきましては全然違いはないと存じております。  それからなお湯山先生からお話のあった点につきまして申し上げますと、新しい科目の社会の内容はきまりました。これは先般、ちょっと前でございますか、地方に通達を出しております。ただ学習指導要領という形につきましては、形式につきましてはただいま急いでおりまして、これは不日出すことができると存じます。  教科書につきましては、これもちょっと御説明申し上げますと、従来社会科の教科の中に一般社会、それから日本の五つの教科がございました。これに対しまして、これはまた話がさかのぼりますけれども、社会科の改訂のために教育課程審議会を開きまして、昭和二十七年暮から開いたわけでございますけれども、その答申の結果を尊重した点もございますけれども、一般社会と時事問題というものをあわせて一本にして社会というものを作ったわけであります。そうしてそれに倫理の要素を少し加えるということで新しい社会ができました。これは内容につきましては学習指導要領で示すわけでございますけれども、この骨子は、これの実質的な内容はすでに教材等調査研究会で研究いたしまして決定いたしました。これは都道府県教育委員会に示してございます。そこでこの教科書につきましては来年度は事実間に合いません。しかしながら、今申し上げましたように、新しい科目の社会というものは、主として主要な部分は、従来の一般社会と時事問題をあわせてでき上ったものでございまして、でございますので、来年度の措置としては、これは断定措置としまして、従来の一般社会あるいは要すれば時事問題、この教科書を使って指導するようにということを、これはすでに夏以前であったと存じますが、通達をいたしまして、それに従いまして県の教育委員会教科書の採択をいたしておるわけでございまして、その点はさように進めてゆきてたいと存じております。その点はやはり新しい教科書ができるに越したことはございませんけれども教科書の性格は申し上げるまでもなくこれは一ページから最後まで教えるものではないのでございまして、従来の一般社会、時事問題を使って来年度は指導してもらいたい、そのように考えております。
  52. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 今湯山委員とも話したのですが、若干意見が平行線になっておるところもありますので、この件についてはあらためて質疑することにいたします。しかし繰り返して申しておきますが、実施を延期して再検討されるように、そのわれわれの態度というものは変りない。さらに質疑をすることにして、大臣がおみえですから、今度は大臣の方に若干基本的なことを伺います。というのは、この間私は予算委員会でちょっと伺ったところが、何さま大臣がものすごいことを言われたので、時間の関係上文部委員会の方でお伺いすると言ったのですが、あのときに大臣は、終戦後の教育はアメリカから押しつけられたもので、全く日本の国を弱体化するためにアメリカが押しつけたところの教育制度の内容であり、新教育を全面的に誹謗、否定するがごときものすごい発言をあのときされたと思います。従って私はこれを追及してゆくと非常に時間がかかるから文部委員会に譲るということを申し上げたわけですが、私はこの際大臣に加わりたい点は、終戦後の教育というものはあるいは大臣は御存じないだろうと思います。しかし部下からお聞きになっておるでしょうから私は伺うのですが、終戦後の新教育でいいなと思う点はどういう点か。そうしてどういう点は伸ばしたいと思っておられ、これは非常に欠点だというのは、改めなくちゃならぬというのはどういう点かということ、それとそれから基本的に教育基本法を再検討されるお考えがあられるのかないのか、それをまず伺います。
  53. 清瀬一郎

    ○国務大臣(清瀬一郎君) 教育の進め方はあなた方の御専門の方はもちろんでありまするが、いずれの家庭でも今日幼稚園か小学校、中学校、または大学に通わしておる児童生徒を持たぬ家庭はほとんどないのです。で、私は教育の専門家じゃございませんけれども、私の孫も子供も今でも五人学校に行っております。占領最中もその通りでございます。そこで一般父兄と同じく教育がどうなるかは実質的の関心を持っております。あの当時のことを今から回顧しまするというと、あなたも御承知通り、マッカーサーがわが国へ到着したのは九月でありまして、九月二十日に日本占領の最初の政策というものを発表しました。あのときは私はまだ旧制の帝国議会の議員でありましてあれを受け取りましたです。それからしてそのときは東久邇宮さんの内閣でありましたが、同年の十月の九日に宮さんがおやめになってたしか十日と思いますが、幣原さんが総理大臣になられてすぐにマッカーサーのところへ就任のごあいさつに行かれた、そのときに始まって最高司令官は教育を国民一般に開放すべしということで、ほかにも四つありまするが、五つの司令部の要求のうちで一つ教育の開放であった。私ども当時代議士として教育を開放し、多数の人に機会均等を符させることだから大へんこれはけっこうなことじゃと思うておったのです。それから引き続きまして私もここにテキストを持っておりまするが、十月の二十二日に占領軍の日本教育改革の目的並びに性格という長いディレクティヴがきております。それによって私は院内におりましたので、今日のように、あの当時は代議士と行政とはだいぶん離れてはおりましたけれども、今のように密接にやっておりませんが、私もちょっと疑問があると思ったのです。疑問があるというのは日本人の愛国心を全部否定し、生活と世界とを直結するので、中の国家というものを抜いておるのですね。私も矢島さん御承知通り国家主義者じゃないのですよ。いわゆる自由主義者群に属するものでありますので、(笑声)どうなるかと思っておりましたら、それが十月二十二日だったが、たしか年末に迫って、十二月の三十日にまたディレクティヴが出たのです。それは修身教科書を一切やめろ、それからして修身の本は全国から回収せい、こういうことなのです。もう一つ日本歴史を教えるな、これが十二月三十日と私は記憶しております。それで昭和二十一年正月を迎えました。正月を迎えて一月の四日に私どもは皆追放を受けたのです。そのときに初めて発言権を失った。一方神社を崇拝することを教えるな、武道をやめろ、男と女子とは一緒に勉強せいといったようなことがばんばんと津発され、アメリカから教育使節というものがやってきては日本学校を二月ほどの問方々見て回った。そういうわけで占領中日本人の発言を封じてできたのが占領前期の教育なんです。その後、朝鮮戦争が起きてから占領後期に至っては、同じ占領でもだいぶん進駐軍は言うことを聞いてくれましたけれども、前というものはこれは国会が開けておってもらっとも発言権はないのです。この文明的な教育基本法も学校教育法もいいとこは非常にあるのです。簡単な言葉でいえば、われわれが受けた詰め込み主義というものはやめて、自発的の教育ということになります。それがために子供でも生徒でものびのびして朗らかになったことは事実です。昔の子供みたいに、お客が来たら奥の方に逃げていくといったこっちゃなく、どんな人にも、それからまた私どもの家には外人も来まするが、外人でもすぐ握手して可愛らしくよく育っておりまするけれども一つ足らぬものがあるのです。これは私だけじゃない、皆そう骨うのです。何か今の教育では足らぬ。それを言葉で、ここが足らぬのだ、といって文章に書き、言葉に変えて言うことのできぬ人も、お母さんも、お父さんもありますが、だんだんそれを私は探ってみるというと、日本的なよさを失いつつあるということじゃないですか。こういうとおかしいが、まあ孝行という言葉はちとこれは朱子学、支那の言葉ですから古めかしいけれども。自然的に日本の子供は家庭的で、お父さん、お母さんを尊敬する。しいて宗教という意味じゃありませんけれども、やはり祖先は礼拝するというふうにやってきているのです。この日本国民のよさをすっかり失うてしまうて、砂を水で溶いたようなものですね。家庭というものが失われつつあるのじゃないかというふうなことが皆さんの不平じゃないか。私はそれでも家庭を復興して戸主権を再興し、封建家庭にするというのじゃありませんよ。だけれども日本の憲法を見ても、個人の尊厳と両性の平等、個人の尊厳と両性の平等だったら、親も子供も平等だ、夫も妻も平等だ。それじゃ家建じゃないのですね。無理に服従をしいる必要はないけれども、経験あるお父さん、お母さんのおっしゃることを受け入れの態度で聞いてくれなければならぬのです。人の言葉というものを反撥の態度でいる時分に、なんぼ言ってもだめです。反対ばかりするのです。けれども、子供の時分から可愛がって、お乳を飲まして、おむつを洗うていろいろやってきているお母さんについては親愛、尊敬の念でもっていかなければならぬ。私どもの属している党派は世間で保守党といいますが、保守党は実は進歩党なんです。ただしかし伝統のよさを保持しつつ進歩をしよう、(笑声)こういう党派なのであり、そこでぴったりはまらぬことがあるのです。よくものを考えてみますと、あなたのおっしゃる基本法はよく書いてある。大へんよく誓いてあるが、これはどこを見ても、日本人たれということはないのですね。直ちに世界人たらなければならぬ。昔の修身にいいことがありましたが、一番の結論ば、いい日本人というのがもとの修身のおちです。ただ昔の修身の欠点は服従からきているのですね。親に服従せい、君に服従せいという外部からの服従圧迫から来ているが、今の道徳はそれじゃいかぬ。個人の尊厳、自分の自覚、セルフ・レスペクト、それから出発しなければ、たとえいいことをしても自分の良心でやったのでなければ善の値打ちはありませんから、そこらのところが、私は基本法はよくできておると思いまするけれども、やはりどこの国でもその国の全体、個性、伝統というものをすっかり捨ててしまうということは、これは残念なことでありまするから、それを一つまあ私は改めよう。これは私一人の発明じゃない、日本のお父さん、お母さん皆そう思っているので、それを文章に書いて言わぬだけのことなんです。それをやるにはしかし一党一派がやっちゃいけませんので、二大政党組織ですからして、政府がかわっても続けていくように、内閣に審議会を設けまして、社会党のあなた方にも入ってもらい、教育界のベテランにも入ってもらい、われわれもむろん入ります。そうして一ぺん占領前期の教育組織をかえてみたいというのが私の衷心の願いであります。本会議のようなああいういかめしい壇上で言うと、自然やかましいことになりまするが、まあこういうことです。決して反動教育をしようというのではございませんから、どうか一つ御共鳴の上、教育改革には御協力下さらんことを切にお願い申し上げます。
  54. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 大臣のお言葉を承わっておりますと、非常に私は一方的な見方をされているのじゃないかと思うのですね。もちろん占領前期のことについて修身、地理の教育をやめなさい、修身とか、あるいは超国家主義的な本は中央に集めなさいというようなことをやった。これは戦争に勝った国は敗けた国にそういうことをやるでしょう。それは超国家主義と軍国主義というものを日本から追放したいというアメリカ側の考え方だったんです。また終戦後当時から現在でもそうでしょう。日本人で超国家主義、軍国主義にカムバックさせようという考えはだれも持っておらぬわけです。あの当時も、子供が読んでいる本なんか、アメリカ人は日本の兵隊さんをローラーで轢き殺したというようなことを書いてあるのだ、だからそういうものを読んじゃいかぬというのは、そんなに私は大臣が言われるほどじゃないと思う。しかしそういう過程を通ったことはわれわれが戦争に敗けたものとして、くやしいのを甘んじて受けなければならなかったわけですが、問題はその後立てられて来た今の教育制度、並びに内容がいいか悪いかという問題だと思うのですね。その例として、今あなたは日本人の愛国心がないとか、あるいは孝行心がなくなった云々と言うけれども、これは少しぼくは極端におっしゃられているのじゃないかと思うのです。わが郷土、地域社会を愛せよとか、あるいは日本の国をりっぱなものにしたい、そういう気持は私は日本の壮年層にしても青少年輿にしても、ぼくはそんなものはないとは思いません。一部に、はそれは希薄な人がありましょう、しかし全般として私はそう否定するほどのことはなく、むしろ人間としての自分ですね、この個人の尊厳というものをはっきり自覚したもとにおけるところの私は地域社会人並びに日本国人としての愛国心、こういう正しい意味の愛国心というものは、私はかえって芽生えて来ていると、かように私は見ておる。それから孝行とか祖先なんかといいますが、それは親を殺したりする人もありましょう。しかしうまくいっている家庭もあるんですね。昔は地震、雷、火事、おやじというので、とかくおやじはこわい、おやじの言うことには一言も反抗できなかった。しかし最近は子供はお父さん、お母さんの言うことでも納得できぬことについては意見を言うわけですね。これはだからといって親奉行でないという見方は、これは私はちょっと過ぎているんじゃないかと思うのです。お互い、私も四十代ですが、私らにしても受けた教育と、今子供が受けておる教育というものは相当違うわけですから、だからものの見方、考え方について若干差異はできます。だから家庭内にも議論はときにはありましょう。お宅でもございましょう。しかしそれはおやじとして聞くべき点は聞くし、また子供はどうしてもお父さん、お母さんの意見が納得できぬ場合は、昔の子供と違うて、盲従しないで意見を言うということはかえって私はいいことだと思います。ときどき子供が親を殺したりするのがでてくることは、これは単に教育のことだけでなくて、戦争に負けたその虚脱状態があった。領土が狭くなった、人はだくきん住んでいる、生活は苦しい、まあこういうようないろいろな諸情勢から出てくることであって、私はそれなるがゆえに、まああと大臣から伺いたいと思うが、法的にどういうふうに変えておいでになろうとしておるのか。たとえば教育基本法は日本人ということを忘れておるというけれども、ちゃんと基本法には日本国憲法、日本国憲法と書いてあるのです。だから私は日本人ということを一切忘れて世界人に云々というような大臣の御発言は私はおかしいと思うのですがね。この教育基本法の前文あたりに盛んに日本国憲法ということを書いておる。その日本国憲法というものは、まあ経過はいろいろありましょうが、とにかく日本の国家が保障されておる。不満な点があったら憲法というものは民意に問うてみればいいので、日本国憲法を基盤にして教育基本法が立っていくという何はすっきりしておるわけですから、だからどうも大臣は保守の立場日本のよきを云々というようなことを言われるが、どうも少し私には解しかねるのですが、具体的になんですか、法的にどういうような改正をし、内容的にどうしようということを今のところかすかながらも頭に画かれておるわけですか、もうちょっとその辺伺わせて下さい。
  55. 清瀬一郎

    ○国務大臣(清瀬一郎君) 法的にどうするかは、それをこの委員会で御研究願うのです。私の方でこうしろという成案を今公けの席で披瀝して、この方針で行っちゃ委員になる人はありゃしません。しかし改革を要するということには私は御共鳴下さる方がありましょうから、あるいは教育基本法の一部に追加も必要な場合も起ってきましょうし、学校教育法等にもいろいろ手を入れることも考えて下さるであろうと思いまするし、細部のところは今きっぱりクリヤー・カットに今ここで申し上げることは適切でないと思います。しかしどういう心境でこういう提案をするかということを申し上げればさつき言った通りであります。それからあなたは日本国憲法と言いますが、これから先を言うと論争になりますけれども、憲法自身が日本的なものじゃないという私どもの論なんです。これはあなたと論が違うかもしれない。それで今度は憲法改正調査会と、それから臨時教育調査会と並行していく、それなんですけれども、その憲法のことをここで言い出したらまた討論になりますからそれは申し上げません。この教育基本法全体の主義は私いいと思っております、全体の主義は。あるいは人格を完成する、責任を重んじる、正義を愛するということを、すでに私どもが以前からも主張した通りで、これは非常にいいんです。それから人殺しなどの新聞に多いのは、まああなたがおっしゃる通り教育だけじゃありますまい。戦後の社会情勢が険悪ですから……。また今こそだいぶよくなりましたけれども、当時は食べ物も足らぬし、家も足らぬし、そういう状況においては日本人なればこそここまで持ってきたんです。ほかの国、名前を言っちゃいけませんけれども、ああいう国が敗戦に陥ったらもっと混乱を来たしておると思います。そこに日本人のよさがあるのであります。外国から引き揚げて来ましても、村へ帰ればすぐやっぱりもとの兄貴、おじさんがおってやってくれる。これがあなた、ほかの国だったら、引き揚げたらすぐ失業問題で困ります。こういう日本人のよさがやっぱり教育の上においても保持されるということを私望んでおるのです。あなたの御意見と正反対ではまあないので、少しニュアンスが違うくらいのところでありますから、お互いに意見を交換してよき日本人を作りたい。いや、このことについては私はあなたも子供を学校にやっておられるのだから、きっと幾分の不満はありはせぬかと思います。もっとも自分の若いときのことを言うと笑われますけれども、われわれのときとは少し違うのです。しかし一方、さつき申した通り、進境ということは確かにあります。伸び伸びして、現に女の子なんか背たけが伸びておりますし、体格はよくなっております。強くていいことは非常にあるので、それを私誹謗するのじゃありません。また教員諸君も非常にリガリズムといいますか、とらわれぬ立場教育されておるのですけれども、もう少し私は日本人――日本だけではありませんよ、もう中国のような、ソ連のような、ああいう国でも、共産主義は世界主義ですわね、ああいう主義でも愛国ということを非常に奨励しておるのです。今の教科の内容、局長との間で御議論になりましたものの、今の郷土を愛すなんていうようなことはこのごろ入ってきたことで、このカリキュラムも社会科の中にそういうことはごくかすかに入るようになったのですが、もう少し大びらに――私は日本人の愛国ということを悪いようなことに思って、文部省も、そうっと国を愛する心なんてのけて書いてあるのです。それは愛国心といってもちっとも差しつかえないと思うのです。中共でも愛国心と書いておるのです、向うの教科書を見ると。いわんやイギリスやフランス、ドイツは言うに及ばず、どこの教科書でも愛国心を遠慮するところがあるものですか。これはりっぱないい国ですよ。負けてもこれだけの、十年すれば反駁するだけの素質を持っている国だから、これを育てようと、こういうことなんです。
  56. 秋山長造

    秋山長造君 今の問題に関連して、もう少し目先の具体的な問題をお尋ねしたいと思います。  今度、ただいまおっしゃるようなことのために、臨時教育制度審議会を殺げられると、何か昨日の文部省議で決定されて、閣議なりあるいは与党の方に持ち込まれ、大体これは遠からずして設置されることになると思うのです。そこで臨時教育制度審議会、まあ仮称ですけれども、こういう審議会をお作りになって、大体その審議会は諮問機関だろうと思います。で、どういう諮問をどういう形で諮問をおやりになるのかということ、それからその審議会の構成はどういうことにされるのか、それからさらに大体設置の時期はいつごろになるという見通しであるのか、さらにまたその審議会がいずれこの諮問をなされば答申が出てくると思うのです。その答申の見通しというのは大体いつごろに目途をおいていられるのか、ただ漫然と出ればよし、出なければ出るまで待つという形じゃないと思うのです。当然これは新年度の予算編成等とも関連してくるだろうと思います。  それからさらにまた先ほど緒方局長との間に問答が行われましたこの教育課程の問題なんかもこれは重要な根本問題ですから、あるいはこの審議会あたりでこういう問題まで審議されることにならないと思うのです。こういうもろもろの点について大臣のお考え一つお聞きしたいのです。
  57. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 関連……そのときに、つい先々国会でできた大臣の最高諮問機関という中央教育審議会というのが歴然とあるのに、なぜ新たに内閣にそういうものを置かれるのか。中央教育審議会のメンバーに不満があるのか。その点もあわせお答えをいただきたいと思います。
  58. 清瀬一郎

    ○国務大臣(清瀬一郎君) 今秋山さんからお尋ねですが、省議できめたというのはこれはこういうことなんです。このことば自由民主党を結成する際に一番大きなこととして党がきめたんです。自由民主党を結成する際に党の綱領として六つきめたことがあるのです。一つが道徳の確立、教育の改革、これが第一。第二が政界の粛正。第三が自主経済を推進して完全雇用の域に達するまでやろう。第四が社会保障。第五が平和外交。第六が独立体制。この六つのことをやるためにこのことを作ったんですよ。これはもう両党の間で研究して研究して研究し尽した誰も異存のない六綱領でございます。その第一綱領を実行するために私はまあ小使い役をしておるというわけなんで、私の発案じゃ決してございません。しかしながら、事の実際としては、党の綱領はこうであるが、このままでよろしいかということで、閣議でだめを押しております。きのう相談しましたのは、今度の予算委員会の費用をたとえば三百万円でも五百万円でも追加しなきやなりませんので、今までの既設の要求はまだ党のできぬ先に松村前文部大臣が大体御要求になっておりまするが、新党ができましてこれを実行しまするのには追加を要しまするから、省内の次官、局長等と話をしてほぼ限度をきめた、こういうふうなことが新聞に載っておるのでありまして、省内でちょこちょこときめたものじゃなく、これも非常に根底の深い自信を持った事項でございます。どういうことをやるかと申しますると、お手元に渡っておると思いまするが、自由民主党の一般政策というものにあるのです。で、教育に対する国の責任です。及び監督の限度をどうするかということ。学校制度、そのうちには大学も含めてこれをどうしたらいいか、第三には教育行政はどうしたらいいか。これらの点についてどうか。本会では十分に徹底したる御研究を下さって政府に答申してもらいたい、こういうことを言うだろうと思います。それも想像ではなく一般政策のうちにあることであります。この構成についてはまだ十分に申し上げることはできないのでありまするが、これと並行した憲法調査会というものがありまするが、あれも憲法の根本について改正をすることがあるならば、どうしたらいいかということを含んで、同じような国家の二つの重大事項でありまするから、大体あれと同じような構成になりはせぬかと思いますよ。これはしかし内閣においてまた法制局等において御審議を願いたいと思います。ただ申し上げることは委員には反対党のかたがたもお入り願いたいと思っておるのです。学界の耆宿長老は言うに及ばず、教育教育専門の委員のみじゃありませんから、専門家外の人も実業界なりその他性の中の達識の人をお願いしたい、こういうふうに考えております。中央教育審議会はやはり規則がありまする通り文部大臣の諮問機関です。文部大臣はそんな大きなことをする力はありませんから、諮問をする。団体は違うておりますが、しかしながら中教審にはりっぱな方がたくさん入っておられまするから、こちらへお入り願うことがあるべきことは当然予想されます。しかし一部仕事が交差したるところもありますから、いま一方行政を簡素にするという要素もあるのですから、このまま二つ並立しておくか、あるいは審議会の仕草の一部として吸収されるようなことになるか、それはまだ閣議も省議もきめておりませんのが事実であります。それから設置はこの国会には間に合いませんが、次の通常国会になるべく早いときに提出いたしたいと存じております。答申の時期は、これは重大な問題ですから、審議会自身がお作りになるのですけれども、私の希望としては、一年内には一つやってもらいたい。そうして改革案を昭和三十二年の国会には出したいと、かように思うております。教育課程のことも、自然私は全般として教育課程を作る人も、教育課程の効力等もおのずからこのうちに入るだろうと思うのです、重要なことですから。今まあ国立学校はむろん国の経費でやっておりますし、地方教育も国家が半分持っておる。憲法によるという~、国民は教育を受ける権利があるという国家は義務があるのです。教育の義務のある以上はいい教育を与えなければならぬ。ところが教育をよくするか、悪くするかという今度はその監督といいますか、施行の権限がないのですね。そいつなくして責任を負えとおっしゃっても、これは非常に工合の悪いことじゃないか。でありまするから、それらのところももっと掘り下げて掘り下げて、外国の事例等もお調べになって、多年教育界に身を置かれる方々は、自分の体験でよくどの辺がいいだろうかということを研究して下さることを私は希望しておるのです。私自身は教育のしろうとでありますから、どういうことになるか、今予言をいたすことはむろんできませんのでございます。
  59. 緒方信一

    政府委員緒方信一君) ただいま秋山先生の御査問の中に、教育課程の問題をこの審議会にかけるかというお話がございました。この御質問趣旨がもし高等学校教育課程ということに、先ほどおあげになりました点に限定されますならば、これはすでに文部省としまして方針をきめて現に都道府県教育委員会に通達をいたしております。これは含まれません。今の大臣の御答弁は、おそらく教育内容全般についてのお話しだったと思います。
  60. 清瀬一郎

    ○国務大臣(清瀬一郎君) ああいう教育課程、今出たこの文書は、そんなものを審議することは最高の内閣のじゃないのです。学校制度を根本的にやりますから、いろんなことに従って影響が生ずるということを言ったのであって、今出ておる十円の本を、それを対象としてやるという意味じゃございませんから……。
  61. 秋山長造

    秋山長造君 いや、それはもちろんこんなこまかい内容をこの審議会で一々おやりになるということを聞くのじゃないのです。ただ、今おっしゃるように、これは日本教育制度を根本的にやりかえるとおっしゃるのでしょう。だったら、当然これは先ほどちょいちょい言葉の端々に出ておりましたが、教育基本法あるいは学校教育法、さらに地方教育委員会法、こういういわゆる教育三法ですね、これは現在の教育制度のまあ三本足になっておるのだから、こういう教育三法は、これは必ず手をお入れになるにきまっておる。お入れになるとおっしゃっておるのだからお入れになる。そうすると教育制度の根本が変ってくることが予想されるのですよ。そうすれば当然これはもう高等学校に限らず、中学校でも大学でも、これは教育課程なり何なりすべてがそれにつれて変ってこなきやならぬ。また変ってくるのが当り前だと思うのです。それは、局長お話ではすでに何とか審議会から答申があったからとおっしゃるけれども、今言うように、中央教育審議会は文部大臣の諮問機関として長高の諮問機関、最高の良識を集めた諮問機関ですよ。こういうわれわれから見れば権威を持った審議会すらも、今度の審議会に比べればはるかに影が薄い。それほど最高の権限を持った大きな審議会をお作りになる以上は、そこできまったことによってこれはもうすべてがずっと末端まできまってこなきゃ、これは意味がないと思う。だから、そういう意味先ほどから議論になっておった学習指導要領なんかでも、わずか一年のことだから一年待って、そうしてこの教育制度審議会の答申が出た後に、一つまた出しておいてまたじきにやりかえなければならぬというような事態の起らないように慎重にやられるのが、これは文部省自身の態度としても筋が通るのじゃないかと思う。  それから第二に、ただいま文部大臣は、大体大臣が期待されておる答申の時期というのは、大体一年以内にやってもらいたいということです。そうしてできれば三十二年度から間に合わしたい。こういうことです。かりに一年以内に答申があって、三十年度からということになれば、これはもう三十一年度には予算編成その他に、これは全然間に合わないということは大臣自身が初めからそういう予想のもとに出しておられる。今一番重大な問題は教育委員会制度、今目先に火がついておるのは教育委員会制度で、来年度からどうなるかという問題、これは非常に大きな問題であります。それからまたたちまち地方財政にも関連してくるし、また国の予算編成にも大きな関連を持ってくるわけですし、今地教委の問題も、ただいま大臣のおっしゃるところによれば、まあ早くても来来年度、三十二年度において、変えるとすればそのときに変えることになるだろう、こういうことになるのですから、三十一年度は現状のままということになるわけですね。それらの点について、もう一度一つこれは非常に重大な影響を持った問題ですから、はっきりした御見解をただしておきたいと思います。
  62. 清瀬一郎

    ○国務大臣(清瀬一郎君) 前に申したことに幾らか補足しますが、高等学校教育課程、今度変えようとするものですね。それから安藤文部大臣が中学校、小学校について幾分変えられました。これらは現行制度でも極限だと思うのですね。今の制度では最善だと思うのです。これが私は悪いという考え一つも持っておりません。今の日本の憲法と今の教育法がある以上は、このワク内じゃ最善だと思っております。これ以上やれば、現行法に反するのではないか。それで私の今申し上げたのは、現在の法律それ自身に一つの改革することはないかという諮問をするわけですね。それで期待しておるのが、一年の申しましても、あなたのよく御経験の通り、その答申ができたからといって、すぐ全国にその組織が行われるものじゃない。今の教育組織も大体五年ほどかかって、昭和二十二年から二十八年ぐらいまでにできておりますね。あれは進駐軍の力でもってやれやれといって急いでやったのですけれども、民主的に皆さんと相談し合ってやれば、答申ができましても、実行はそれから一年から二年先になりまするし、学校のことですから、進学の准行上にやらなければならんものがありまするから、実際いい答申ができましても、いい学校制度日本に完備するというのは非常におそくなると思うのです。それゆえに、それを待って初めて教育委員会なり教育課程のことをするまでほっておくということは、これはできてないのです。  ついでですが、教育委員会のことは実はまだきめておりませんです。ただ、今の一般政策のほかに緊急政策というものをやっておりますね。あの中に、この教育委員会のこととそれから教育者の中立のことと二、三書いておりまするから、緊急に党でおきめ願いまして、その上でお答えいたしたいと考えます。何かの変革をしなければならんということは党内の世諭でありまするが、非常に重大なりとして目下熱心に検討中なんです。本日午前も御検討願っておりまするが、今私がここで申し上げてまた後日違いますると、世間の人を誤まらしますので、もう少し熟してから教育委員会のことは責任を持って申し上げます。
  63. 秋山長造

    秋山長造君 まあ党の方でおやりになるのは、これは責任を持った政党ですから、あらゆる問題について不断に研究され、またその結論をまとめられるということは、これは当りまえのことですが、ここでお尋ねしておるのは、その党のことではなしに、今度法律を作って公けの機関として内閣に臨る。で、その問題に限定してお尋ねしたいと思うのです。先ほどもお尋ねし、また御答弁もありましたように、この新しく設けられる審議会での諮問事項の中の最も重大な事項として、教育行政いかにあるべきかという問題をお出しになるということをおっしゃっておるのですが、だからあくまで政府なりあるいは文部大臣なりとしては、その審議会でこの諮問事項について出た答申を待って具体的な行政措置を講ぜられるということがこれは私は当然の順序だろうと思うのです。その答申の時期については、まああまり長くもほっておけないが、一年以内ぐらいには答申を出してもらいたいという文部大臣としての希望を持っておられる。だから当然これは三十一年度には間に合わないということはもうはっきりしている。だからそうなれば、今非常に火がついて世間を騒がしておる教育委員会制度の運命いかんという問題も、当然この答申が出てしかる後にこれは政府の具体的な政策として現われてくるものと解釈するのが一番まっとうな解釈だと思う。で、そのように考えてよろしいかと、こういう御質問をしているのです。
  64. 清瀬一郎

    ○国務大臣(清瀬一郎君) この審議会に教育行政のことも諮問するのでありまするから、事の性質としては、教育委員会も事の性質上入るのですね。そこはあなたのおっしゃる通り。ただ、ある下構、条件がありまして、党ではこれを緊急政策として別に打ち出しておるのです。しかしながら緊急政策といいましても、いかに改革するやは党で今審議中でありまするから、その審議の結果によっては非常に緊急になるかもわかりません。その理由はあなた御承知ですね。審議の結果によっては、つまりは委員会の来年の選挙……。しかしながら審議の結果によっては急ぐことはないということになりまするから、これはもう少し研究してから責任ある答弁をいたしたいと思います。
  65. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 大臣、どの方が大臣になっても、いつも抜本的検討をする、検討をすると言われるのですが、これはよほど心がげてもらわなければならんと思う。戦後十年たって日本教育制度そのものがま一だ安定しておらない。現場で教育を展開しておる人々は制度が変ればもちろんのこと、教科の内容とか指導方針が変るたびに、その書類を変えたり、いろいろとなれるまでにずいぶんと苦労されるわけですよ。ようやく板についたと思われると変る。だから私は現場で働いている人に常に日本教育制度教育内容というものはしょっちゅう変るんだという不安、動揺の念を与えるようなことは、よっぽど気をつけなければならん。もし今秋山委員に答えられておるようなことならば、高等学校の現実の教科課程はなんでしょう、現場の先生方も全教委の方方もいろいろ問題はあるから、一年延ばしてくれと言っておるわけですね。これを改正すればすぐ学校の書類はみんな変えなければならん。それから職員構成も変えなければならん。ひいては四年後の大学の入試制度まで変ってくる。その過渡期の混乱というものは相当たものですよ。そのあとでまた変ってくればまた変るわけですね。これでは学生生徒もかわいそうだし、教育の場に働いている人には非常に気の毒で、能率も上らないと思うのですね。それほどの何があるならば、どなたも異議がないと言うならばいいが、異議のある高等学校教育というものを、一部の意見を押し切って来年の四月一日実施するということは、抜本的研究うんぬんという言葉とは非常に矛盾すると思うのです。これは現場の教師の気持になったならば、何とかぞのうちになるだろう、それまで一つひよりを見ておれという私は気持が起ってこないとも限らない、こういうことになれば、私は文部行政の当局者の責任だと思うのですが、従ってあなたが言うように党議でこの調査審議機関を設けて枝木的にやるということになれば、話は今日の質問の冒頭に返りますが、高等学校教科課程もしばらく様子を見たらどうですか、大臣。筋が通らないと思うのです。
  66. 清瀬一郎

    ○国務大臣(清瀬一郎君) ひとり教育のみならず各種の制度が動揺することは、あなたのおっしゃる通り事実であります。遺憾ながらわが国があの大敗をこうむって一時旧敵国に占領されて、ようやく三年前に独立を回復したと、この現状は、はなはだ残念ながら現実であります、これは忍ばなければなりません。しかしながらいい方へ進むのには、少しでも国のためになることであったら、いいと見たら早くやるのがいいのでありまするか、それで私は教育課程を改正することに賛成いたしておるのです。これはどうも今日の日本としてはやむを得ません。そこでまあいわゆる抜本的の改正をして、せめて五十年、百年の運命を持つような、日本人の皆さんの満足して下さるような教育制度を打ち立てたい。こういう考えでいるのです。
  67. 緒方信一

    政府委員緒方信一君) 先ほど矢嶋委員お話しの中に、現場で反対をしているというお話しがございましたけれども、私はそうは考えておりません。教育委員会の一部におきましてはまだ研究中の点もございます。しかしこれは全教委の結論といたし、ましても、一年延長してくれということは言っておりません。時期についてなお慎重に検討してくれということは言っておりますけれども……。それから現場での意向とすれば、学校の運営管理に責任を持つ校長は、これをすみやかにやってくれということです。積極的に……。(「そう言っていない」と呼ぶ者あり)それで文部省といたしましては、二十七年の十二月からこれは教育課程審議会というものにかけて検討研究を続けてきた問題であります。そうして昨年の十月に結論を得まして、そして昨年の十二月にその方針を決定して、現在の教育委員会にこの新しい課程をする方針を示しております。で、今日までその方針に基いて準備を進めてきたわけであります。これは教育課程審議会と申しますのは、申すまでもございませんけれども、現場の高等学校、中学校の校長、あるいは教員、学者、多数の教育の専用家によって、今申しましたように、二十七年の暮から長い間をかけて研究した結論でございます。それを文部省は採用いたしましたが、何も文部省だけできめたわけじゃございませんので、採用いたしまして、昨年の十二月にこれを決定したのでございます。で、これを今になりましてまた変えるということになりますというと、私は、それこそ現場を混乱きせる。高等学校校長協会で言っているのと同じ、これがほんとうだろうと思うのです。昨年の暮に文部省がこれをやると言って、そうしてまた今度変えるということになりますと、これは非常な朝令暮改でありまして、これは現場を混乱させる以外にはない。
  68. 湯山勇

    湯山勇君 今大臣が御答弁になりました点につきまして、私は重ねてお伺いしたいのは、なるほど部分的にはあるいはよくなるかもしれない、今度の高校教育課程の実施が。かりにまあそういうことを是認したとして申し上げたいと思うのです。大臣が今までおっしゃいましたように、今回臨時教育制度審議会を持って、しかもそれに各界の人を集め、与野党をも参加させてやろうという、この制度に賛否は別として、そういうお考え方は私は非常にいいと思います。それは従来、たとえば大津文政だとか、あるいはだれだれ文政だとか、こういう教育の仕事に大臣の個性が出過ぎたり、あるいはその当時の内閣の性格が非常に露骨に出たために、現場を混乱さすというような事実もありましたから、大臣のそういう考え方はまことにげっこうだと思います。そうだとすれば、やはり私は大臣が今おっしゃったように、国の責任の問題なり、あるいは学制の問題なり、教育行政の問題なり、これらを全部を含めて、この審議会に諮らないと、たとえば今かりに木造の建築をしておいて、耐火建築をするというときに、この部分だけはもう今までやっておるんだからこのままおいてもらいたいということでは、せっかくこういう審議をしたこともむだになると思いますし、さらにまたかりに今の教育課程で実施されておっても、審議会で大学から小学までの問題を検討するときに、やはり検討の対象にしなければ審議会の結論は出ないわけです。そうだとすると、今の教育委員会の問題にしても、この問題にしても、やはり大臣の大きい構想のもとに、国家百年の教育の基本を立てるという観点からすれば、やはり検討するということが正しいのだと思いますが、そうだとすれば、今急いで、若干よくなるとか、どうとかいうことじゃなくて、大局的な前進ということから考えれば、やはりもう少し慎重にやってしかるべきだと思いますが、これは大臣もこの点については御同感だろうと思うのですが、いかがですか。
  69. 清瀬一郎

    ○国務大臣(清瀬一郎君) 全体の大きな根本の改革ですね、答申すれば一年春かかり、これを実行するためには二年もかかり、三年目に入ったものが高等学校に行くのには、また六年も九年もかかるんでありますから、それまでの人には、現行法で最善の教育を与えなければならぬ機会は、本人については一ぺんですから、来年から入る人には、現行法の問題で一番いいことをやる。その次も、やはり今前任者以来引き継ぎました教育課程は、私調べましたが、現在の課程よりまさっているのです。どうしてもまさっておれば、一生に一ペんの機会だから、まさったやつをこしらえてあげる方がよろしい。この利益に均害した人は何百万人あるかもしれません、毎年多く繰り上っていくのですから。それで私は良心的に、やはりせっかくこういうものができておりながら、どういう答申が出るかわからぬ。一年のちに答申が出て、三年ののちに実行して、それからずっと出て行ったものが高等学校に入るまでの間、やはり旧態依然たるものでやるというよりも、やはりよくなったものを早く実施するということがいいんじやないかと、こう私は考えているのです。
  70. 安部キミ子

    安部キミ子君 私初め大臣緒方さんの二つの答弁を聞いておりますときには、意見の根本的な食い違いであると思っておったのですが、ところが今大臣答弁聞いていると、大臣答弁自身の矛盾が今度できていくと思うのです。問題になっている高等学校課程の問題も、この問題は先ほどからるる述べておられますように、国家百年の大計を見通して、慎重に審議しなくちゃいけない。しかし、だが急いでいるので、臨時教育制度審議会を設けて、緊急に、まあ一年くらいで答申を得たいと、そうしてその基礎に沿ってやりたいと、こうおつしゃるんですね。そういうふうなことになりますと、大臣自身の答弁に非常に矛盾があるんですよ。たった一年で答申が出て、そうして荒々と進行していけるものであれば、一年くらい待って、そしてその基本的に百年の大計の目標に准んでいかれる方が、それが大臣のほんとうの、心の底からの偽わらない気持じゃないだろうか。ひょっとしたらこれは文部省から大臣が言いつけられて、そのように動いておられるのじゃあるまいか。それからまた文部省の方は、文部省緒方さんの言われますことと、われわれが陳情を受けている掛場の人たちの声と、だいぶん食い違うんですね。そこで、これを白黒をつけると言ってけんかをしてもしようがないし、またこんな大事な問題を、今日明日のうちに……。もう二月、三月までにあらましの態勢を整えなければできないんでしょう。しかし全国の教育委員会は必ずしももう文部省お話をオーケーと言っていないわけですね、私どもの聞くところによりますると。それで近いうちに参考人を呼びまして、そうしてほんとうの偽わらない、文部省からも、教育委員会からも、どこからも圧力のかからない、ほんとうの大衆の声、行政に携わっている人たちの声、それから現場に働いている人たちの声、あるいは校長さんの声を聞いて、そうしてその答えをもって、どうしても今年度しなければならんかどうかということをきめたらどうだろうか、こういうふうに考えている次第ですが、大臣はどうでしょうか、これについて。
  71. 清瀬一郎

    ○国務大臣(清瀬一郎君) ちょうど今お問いを発せられる前に私が答えたことをもってまた答えるようになりまするが、根本的の改革を、たとえ一年のちにできましても、それを教育に実施するのには、また相当の時節がかかります。ほかの改革のように一ペんに法律の効果は上るのじゃないんです。そこで、改革しましても、学年進行によらなければならぬ。改革しても子供が高等学校に行くのには、また六年ですか、八年ですか、日がかかりますから、それゆえに今の課程は、実は私は絶対としちゃ足らぬと思うのですけれども、現在の教育法規のワク内ではこれ以上はできないのです。現在のワク内では最善と思うておりまするから、最善のものをすみやかにやれば、来年四月から入る高等学校の人も、今中学におって再来年入る人も、今中学の一年生でその次に入る人も、現在のワク内で最善の教育が受けられるのですから、それを将来学校が変るからといって古いままでたっていくというようなことは不親切です。現在の法規のもとで最善のものができるのだからこれをすみやかに実行しよう、こう考えておるので、私の言葉自身にも矛盾がなく、私と緒方君の間の意見も全く一致しておるのでございます。御了承願います。
  72. 安部キミ子

    安部キミ子君 そうしますと、私ども文教委員としてここに列席しておる方の過半数以上の人たちが反対なんです。反対の意見なり、また疑惑を持っておるわけなんですよ。私どももそれがほんとうかどうか納得がいった立場に立ってこの問題を了承したいと思うから、私どもの納得がいくように参考人を呼んで、この委員会で私どもの納得のいく線が出たら、まあ皆さん文部省のおっしゃるような方向に協力するということになるかと思いますので、一応参考人を呼んで聞くということについて大臣にも賛成していただき、また大臣も聞いていただきたい。(矢嶋三義君「大臣は必要なし」と述ぶ)委員長さんにお願いいたします。
  73. 清瀬一郎

    ○国務大臣(清瀬一郎君) 矢嶋さんのおっしゃる通り、政府の方からそんなことを干渉がましく申すとしかられますから、間接干渉になりますから、どうぞ皆さんの方でしかるべくお取り計らい願いたいと思います。
  74. 湯山勇

    湯山勇君 今大臣の言われることは正しいと思います、ただ一点を除いて……。それは大臣はこの改革が現行法では最善だという前提に立っておられる。もしもその前提を肯定すれば大臣のおっしゃる通りです。しかしその前提に問題があるわけです。そこでその問題については今日は時間がありませんから、私は次の機会に細部にわたって、一つ局長とでも話し合ってみますから、どうか一つ大臣はその点必ずしも……。私ども大臣のすみやかな御理解を願うために大臣立場を肯定した立場で、万一いいとしても、今無理にやらなくてもいいじゃないかという論法で参りましたけれども、それではどうも大臣の御了承を得られませんから、次に局長と徹底的にやってみますから、一つ大臣も白紙で臨んでいただいて御判断願いたいと思います。
  75. 清瀬一郎

    ○国務大臣(清瀬一郎君) むろんそうします。
  76. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 また教科課程の問題に帰ってきたわけですが、私はかつてこういうものを扱ったことがあるだけに、私も非常に不安だし、局長は粛々と進んでいると言うけれども、実施不可能だということもあるようだから、早急に今安部さんが申されたように、両方の意見をここで一応聞いて、われわれの参考にするため、参考人の意見聴取をする機会を持たれたらどうかと思うのですが、理事会等において早急に諮られて善処されるよう提案を申し上げます。委員長、参考人の意見聴取ですね。それを理事会で早急に協議されて、本国会の末日の十六日か、あるいは十五日ごろ、東京には相当権威者がいるでしょうし、一応聞く機会を持った方が私はいいだろうと思うのですがね。
  77. 竹下豐次

    竹下豐次君 今の安部さんの御提案ですが、意見を聞くこと、参考人を呼ぶということ、自由民主党としてもここにいらっしゃいませんし、委員長の方でよくその方ともお話し合いの上で理事会を開いて皆さんと一緒に相談するようお取り計らい願ったらいいだろうと思います。
  78. 飯島連次郎

    委員長飯島連次郎君) ただいまの問題は、各会派の理事にも相談した上でさよう取り計らいたいと思います。
  79. 安部キミ子

    安部キミ子君 自由党さんがおいでにならないために、ここで話が一ぺんにきまることがこのように大へん複雑になりますので、これからはなるべく自由党さんも一人でも二人でもいいから出て来られるように希望いたします。
  80. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 さっきから大臣の御答弁を承わっていますと、どうもはっきりしないところがあるのですが、それでもう一つ私は具体的に伺いますが、この政策の中に、「教育者の政治的中立を徹底せしむる」云々というのがありますね。これは今度設ける調査審議機関、これにかけてやられるのか、かけないでやられるのか。かけないでやられるなら、中央審議会にかけてやられるのかどうか。これは扱い方次第では非常に重大な問題でございますので、これは抜本的な問題だと思うのですが、調査審議会にかけておやりになるお考えでございますか、その点お答え願いたいと思います。
  81. 清瀬一郎

    ○国務大臣(清瀬一郎君) それは今の教育委員会のことと同じように緊急対策といううちに入っておるのです。それゆえに党議が緊急にきまり得れば、あれとは別にやりたいと思っておる。
  82. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 中央教育審議会にもかけないでですか。
  83. 清瀬一郎

    ○国務大臣(清瀬一郎君) きまり得ればかけないでいくつもりです。これも今党で審議中ですが、それは緊急の問題として委員会のことと同じく抜き出したところがあるのです。しかしながら緊急とはいうものの重大なことでありまして、大きな党派ですから、すぐ直ちにというわけに参りません。もし党議が決すれば、そのことと教育委員会のことは一年も待っておるわけにいかんという論が起れば、先にやるつもりでおります。
  84. 湯山勇

    湯山勇君 大臣が今おっしゃったのと私ども先日聞いたのと違いますのでお伺いしますが、大臣は先日本委員会での御説明では、中立の問題については二法案の改正、改廃は考えない。勧説勧奨によってやるのだ、ひざ詰めの話し合いでやるということをはっきりこの委員会で御説明になったんです。今聞いておるとまた違っておるようですが、どちらがほんとうでございますか。
  85. 清瀬一郎

    ○国務大臣(清瀬一郎君) 過日申し上げたのは、教育者の中立は必ずしも法律々々といって、法律ばかりでやるべきものではなく、また行政措置といっても、これもぎこちない話しで、多くのものは君僕の話し合いできまることもあり得るのでございまして、こう申し上げたのであります。そこで法律は絶対に改正せんとは言っておりません。しかしながら法律ばかりでやるべきでもなく、行政措置ばかりでもやるべきことでない。世の中の多くのことは勧説の話し合いでできることがあるだろうとこう申し上げたのであります。私は法律の改正は絶対にやらんと約束しておるのではないのです。そこでこれは非常にむずかしいことですから、大きなことをやっておりまするから。…。(矢嶋三義君「おかしいな、ときによって違うのですね」と述ぶ)絶対にやらんということは断じて言っておりません。どうか速記録をごらん下さい。(秋山長造君「速記録を見たのです」と述ぶ)適当な案があれば出すことあるべしです。今研究中です。
  86. 湯山勇

    湯山勇君 これは非常に大臣にも似合わない。大臣法律の大家ですから、いろいろ言い回しがお上手で困るのですけれども大臣は大体いつも御答弁なさるのに、そういうお気持でやっておられるのですか。私どもはそんなに大臣の言葉の裏の裏まで考えて一々聞いてはおりません。大臣があのように行政措置とか、あるいは法の改廃とかでなくて勧説勧奨でやりたい。しかもその勧説勧奨の内容にわたってまで詳しく御説明になった。きょうになってみるとぞうじゃなくて、法律を改正せんとは言わんとこう開き直られる。これでは私ども大臣に対して満幅の信頼を持って答弁を聞くわけにいかないのですが、われわれは法律の専門家ではありませんし、大臣のように法律論でずっと鍛練を受けたものではありませんから、もう少しすなおに、これでやらないのだ、こういうふうにやる、こういうことをおっしゃったら、それをあとであまりこの前のときや今度のようにお変えにならないように、自分はこうだということを肘をすえておっしゃっていただきたいと思いますが、どうでしょうか。
  87. 清瀬一郎

    ○国務大臣(清瀬一郎君) 先刻述べました通りで、衆議院においてもその通り答えておるのです。法律々々といって法律ばかりに頼るべきものではないので、そんなことをすれば、やはり関係が険悪になる。また行政ばかりでやるべきでない。世間でいう多くの場合は話し合いでいけるだろうと、こういうことで法律の改正は悪くは改正しませんよ。われわれの考えでいい方に改正する案があったら、これを出さぬ、立法権を放棄するようなことは言うはずはないのです。ことにまた、党の方もあなた御承知通りに、旧自由党と旧改進党系の両方の代議士がおりますが、改正せいという人もあります、改正に及ばぬという人もあります。しかし教育者の中立を確保するということだけは一致してその通りになっておるのです。それをどうするかという内容は審議中なんですよ。それで内容について私から答弁を避けておるのです。しかしながら法律行政といわないで、手心といいますか、話し合いでできる部分も非常に多いということを申し上げておるのです。
  88. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 教育者の中立々々と言われますが、中立は私は守られていると思うのですがね。ポイント・オブ・ビューをよほど気をつけないと、中立のものが右に見えたり左に見えたりするのだろうと思う。私は今の日本教育者というものは、また教育というものも、特例の特例はあるかもしれないが、教育内容にしても、教育者にしても、私は中立というものは守られていると思うが、大臣は今どういうふうにお考えになっていらっしゃるのですか。もし中立が守られていないとするならば、たとえばどういう点が中立が守られていないのですか、伺ってみましょう。
  89. 清瀬一郎

    ○国務大臣(清瀬一郎君) 七十万人もある教育者ですから、大体においては私は悪いと思っていないのです。ただ、しかしながら特例はありましても、教育は大切なことですからね。それからまた世間でいろいろ言うことも、あるいは誇張のことがあるかもわかりませんが、この間も例をあげておっしゃったからあげましたが、これはやはり言葉に語弊を生じまするから、この時間にどこそこでこうだなんということは申し上げぬ方がいいかと思います。しかしながら世間一般では、またわが党では中立を守らせるような手段はやった方がいいということは一致しておるのです。
  90. 秋山長造

    秋山長造君 これは文部大臣、二口目には党ということをおっしゃるのですが、これは政党内閣の大臣ですから、党に忠実な態度でけっこうなんでしょうが、しかし私はやはり教育あるいは学術というような問題は、特にまあ党の立場ということもあるけれども、しかし同時にまた、そういうことと離れた文部大臣としての立場というものも厳然と私はあると思う、またあるべきだと思う。今の中立の問題についてもそうですが、先ほど質問をいたしました教育委員会の問題ですね。この問題についても結局こうなんですよ。大臣は一方では教育制度の根本的な改革を早急にやらねばいかぬ、そこで従来中教審もあるけれども、なお一そう権威を持った大きな審議会を作るのだ、そうしてそれで教育における国の責任、あるいはこの教育制度、さらに教育行政はいかにあるべきか、この三つの重要問題、根本問題を中心に衆知を集めて検討してもらうのだと、こういうことをおっしゃる。だから教育委員会なんかの制度というのは、これはもう教育行政すなわち教育委員会をどうするかという問題でもあるし、また国の責任をどうするかという問題でもあるのですから、これはもうあなたが今度の新設の審議会に期待されておる一番中心問題の一つだと思う。だから当然この教育委員会の問題等は、その審議会において慎重に衆知を集めて審議されるのだろうと思っておった。ところがまた他方では、いや、しかし教育委員会の問題は、これは緊急政策として掲げておるから、それとはまた別にやるかもしれないというような、これはどうもそういうことで非常に世間を迷わすと思うのですが、特に教育関係者を非常に私は迷わす、要らぬ混乱を起すと思うのです。いわんや新設の審議会には、大臣の言葉をもってすれば、与党だけでなしに野党の代表をも入れて、そうして慎重にやるのだということならば、私はもう当然教育委員会制度をどうするかという問題は、その大臣考えておられる新しい審議会において、衆知を集めて徹底的に審議されてしかるべきものだろうと思う。これは選挙がどうこうと言いますけれども、選挙は場合によっては、答申が出るまで何カ月か半年、法律をもって延ばしてもいいわけです。そんなことはほんの小手先の事務的な問題ですから、そこらもやはり清瀬文部大臣の確固としたやはり方針というものを打ち出していただかないと、その場合々々によって言葉を二つ二つと変えられますと、これは非常にわれわれ自身も迷うし、委員外の世論というものも要らぬ混乱を起すと思う。この答申が出て実施するまでには、五年も六年もかかるとおっしゃるけれども、それは私は教育の内容はそうかもしれない、しかし今論議しておるのは制度の問題ですから、制度は一年内に答申すれば、すぐその翌年度から実施することも可能なんです。ただ教育の内容が制度に伴ってくることには、五年、六年の不断の努力を要するでしょうけれども、しかし、われわれは制度の問題を問題にしておるのですから、だから、この問題は、これは党議々々とおっしゃるのもわかりますけれども、文部大臣として、符に筋の通ったことをもって従来やってこられた清瀬文部大臣ですから、教育の問題はもう少し筋の通った、すっきりした態度を表明していただきたいと思うのです。
  91. 清瀬一郎

    ○国務大臣(清瀬一郎君) 私は言葉を二、三にしたことはないと思っております。それからまた世間に混乱をきたすことも従ってないと思っております。党のきめたことと私の言うこととが二通りになれば、世間は惑うのです。ところがわが党は、立党の初めからして一般政策として八つ掲げております。その中の第一が審議会でございます。その中の八つの中から抜いて三つを緊急政策としておる。全体ができるまでに緊急にしなければならぬ、それが教科書の問題と中立の問題と委員会の問題、これはもう天下に公表し、私が衆議院の委員会でもそれと同じように、本日もそれと同じように言うので、予算委員会においてもこのワクを一ぺんも出たことはありません。それで少しも混乱をきたしておりませんです。私の党内においても皆それで是認しておりますし、新聞等を見ても、私が二、三に言うからといって非難しておるものはありません。初めからすっきりしております。八つのことが一般政策で、その中に今言った教科書、委員会、中立の問題を特にこうきめて言っておるのですから矛盾も撞着もなし、天下によく徹底しておるのであります。何も世の中は広いのですから、何べんも同じことを言うのがいいと思いますが、これで混乱を起す心配は一つもありません。
  92. 秋山長造

    秋山長造君 それは大臣自身は混乱はしておられないおつもりでしょうけれども、特に地教委をどうするかという問題は非常に混乱しております。これは文部省自身がよく御存じでしょう。地方においても、中央においても非常に混乱しておる。非常に不安動揺しておるのです。その不安動揺しておるこのもとをただす、一方においては教育行政等の根本問題は、新しく設ける審議会において衆知を集めて審議するのだということを打ち出される。また別に今度は一つの緊急政策として、教育行政の問題、もっと具体的に言えば、教育委員会の問題は別に党でおやりになるのだというようになると、これは非常に混乱すると思うのです。だからどっちかにはっきりされるべきだと思う。でわれわれの私見をもってすれば、この教育委員会という問題はただ目先の問題だというようなことで、早々の間におやりになるということよりも、これはやはりこの審議会を作られるのですから、せっかく……、そういうものにおいて慎重に衆知を集めて冷静に審議されることが一番妥当なやり方であり、また日本教育行政百年の大計のためにいいのではないか、こういうように私は考える。
  93. 清瀬一郎

    ○国務大臣(清瀬一郎君) 妥当であるかないかは、これはお互いの見解の相違です。しかし、ある原則に対して一つぐらいのただし書きをつけるということが、世間を混乱するということには私はならぬと、こう思ったのです。
  94. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 大臣、この緊急政策を幾つか掲げられておってですね、お尋ねすると大臣の私見も申されない。党議決定、党議決定、それにただ従うのみだと、これでは国会開会中は私はいつまでもこのままでは済まされないと思うのです。われわれは聞く権利があるし、われわれの質問に対しては答弁するところの義務を持っていらっしゃるのですから、一、二度は今検討中でありますでよろしいでございましょうが、いつまでも検討中、検討中、私は意見はない、党議決定のままで、これでは世間の批判も受けるでしょうし、われわれとしても審議、調査するに当って、納得できてないのですが、一体何ですか、いわゆる緊急政策の案件なるものの結論はいつを目途に出される予定でありますか、また、われわれに答弁できる段階になるのですか。それを私は伺っておきます。
  95. 清瀬一郎

    ○国務大臣(清瀬一郎君) これは通常国会に出すべき案件でありまするから、通常国会のなるべく早い時期までに間に合わせます。この国会で出すつもりじゃないのです。
  96. 湯山勇

    湯山勇君 大臣、今秋山委員が言ったのも、大臣の言葉がそごして、混乱さしているということの意味じゃなくして、現実に大臣のところにもたくさん地教委なり何なりから手紙も来ていると思いますし、それから新聞でもいろいろ問題になっているのも御存じだろうと思うのです。事実が混乱しているのだから、大臣がいつまでもそういうふうに党議々々と言われて逃げないで、私はこうだ、私はこういう方針でつ御把握になって御答弁いただきたい、こういうことなんですから、誤解のないように一つ……。
  97. 清瀬一郎

    ○国務大臣(清瀬一郎君) わかりました。
  98. 飯島連次郎

    委員長飯島連次郎君) ちょっと速記をやめて。   〔速記中止
  99. 飯島連次郎

    委員長飯島連次郎君) それじゃ速記を……。かねて議案になっておりました地方教育職員期末手当増額に関しては、委員会の総意として、政府が緊急適切な措置をするよう、当委員会委員会長並びに理事が強く申し入れを行うという御意見であったと了承いたしますが、そのように取り計らうことに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  100. 飯島連次郎

    委員長飯島連次郎君) それではさよう決定をいたします。  本日はこれで散会いたします。    午後五時十七分散会