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参考人(友末洋治君)
地方六
団体といたしましては、現下の
地方財政の窮乏を打開いたしまするがために、
地方財政確立対策協議会というものを結成いたしまして、
地方で締るところはお互い協力して締り、なお中央にお願い申し上げる事項は十分意見の
調整をはかりましてお願いするということで、今日まで参っておりまするが、この際全国知事会、全国市長会、全国町村会を代表いたしまして、目下継続審議に相なっておりまする
地方財政再建促進特別措置法案及び
昭和三十年度の
地方財政に関する
特別措置法案等に関しまして意見を申し上げたいと存じます。
まず最初に
地方財政再建促進特別措置法案につきまして意見を申し述べます。年々累増いたしまする
地方財政の赤字をひとまず解消いたしまする特別措置につきましては、かねてから
地方団体が一致いたしまして中央に要請して参ったところでございまするので、本法案は一日もすみやかに成立されまするよう強く期待いたしておるところでございます。
ただ
政府の原案は、
地方の実情にかんがみまして適当でないと認められまする点がございましたので、衆議院におきまする御審議の際に、種々これらの点につきまして意見を申し述べ、衆議院におきましては幸いにこれらをも参考とせられまして修正をなされておるのでございます。
従って私どもは衆議院の修正案にほ賛意を表する次第でございます。しかしながら本法案の第十二条第三項に、衆議院の修正にも取り入れられておりませんので、原案のままと相なっておりまして、政令の定めるところによって公募債を
政府資金に肩がわかりする趣旨に
条文を明確化さるべきである、かように考えるのでございます。
すなわち原案によりますれば、三十年度以降において、
政府資金の状況に応じ、なるべくすみやかに、これを融通するようにする等肩がわりの条件はきわめてあいまいになっておるのでございます。従って考え方によりますれば、国の一方的な意思いかんによっては永久に府がわりを回避し得るということにも州なり、このことは
地方公共
団体を不当に不安と不利益とに陥れまする危険性を持つものと認められるからでございます。
なお、原案のまま推移いたしますると、若干の
地方にとりましては困難な事態の生ずるおそれもございまするが、この際その点には触れないことにいたしたいと存じます。
なお、本法案の裏づけと相なりまする財政再建債の
総額は、
昭和二十八年度の
決算におきまする赤字額四百六十二億円を
基礎として二百億円が予定されておるのでございまするが、本法案が対象といたしておりまする
昭和二十九年度の赤字領は、約六百五十億円に達することが今日明らかになっております以上、
政府はすみやかにこの予定額を三百億円以上に引き上げる
方針を決定されまして、これを表明さるべきであると考えておるのでございます。
次に、
昭和三十年度の
地方財政に関する
特別措置法案につき意見を申し述べます。われわれ
地方公共
団体は、つとに
地方財政の窮乏打開につきまして、渾身の努力を払い、
地方財政の窮は民生の安定を危うくするが
ごときことなきを期しまするとともに、私どもの限界をこえまする数多くの問題につきましては、しばしば
政府に対しましてその解決を強く要請して参っておりますのでございます。
しこうして
政府は、今回
昭和三十年度
地方財政に関してとるべき指貫をようやくにして決定され、本臨時国会に
関係法律案等を提出されたのでございますが、その内容と
方法とは
提案理由の
説明にいわれておりまするが
ごとき、「
地方制度調査会の答申を極力尊重したもの」とは認められがたく、また、
地方の実情にも適応するものとも考えられません。
つきましては、
地方財政の窮状打開の上におきまして、特に、当を得ないと考えられまする二、三の重要事項について申し述べたいと存じます。
まず第一は、
地方財源を増強する
方法といたしまして
地方交付税の率の引き上げによらず、異例に属する変則な臨時
特別交付金によったことでありまして、これは筋の通らない不適当なものと考えるのでございます。すなわち今回の
地方財源を増強すべき原因は、
地方制度調査会が明確に指摘いたしておりまするように、
政府が行いました
地方交付税率決定の
基礎となった
地方財政計画に継続的な性格を有する算定洩れがあったことによるものでありまして、もし当初この誤まりがなかったといたしますれば、
地方交付税率の引き上げが当然に行われていたはずであります。
従って、かかる原因が判明いたしました以上、これに即応する措置といたんがみまして、その率の変更によることが至当であることは申すまでもございません。
第二は、
地方不足財源の内容を、不明確ならしめていることでございます。
本法案におきましては「
地方財源を増強する」とのみございまして、
給与費財源を包含するが
ごとき表現を用いておるのでございますが、
地方制度調査会の答申におきましては、要財源措置額を「
給与費を除き二百億円程度」と確認していることにかんがみまして、本法案によりまする百六十億円の
地方財源増強に
給与費関係を包含せしめることは、明らかに当を得ないものと考えるのでございます。さらに、
給与費約三百億円が今日まで未解決のまま放置され、今後の
地方財政健全化の重要事項に属することを、
政府もかねてから認められておりまする以上、今回の措置案は「
給与費を除く
地方財源に対するものである」ということを明確ならしめておくべきであると考えるのでございます。
なお、
地方財政再建の
中心をなし、多年の懸案にかかっております
給与費につきましては、
政府は実態調査結果の発表の時期と、これに伴う本年度
地方財政計画上の
給与費総領の
是正に関しまする所信とを一刻もすみやかに表明さるべきであると考えるのでございます。
第三に、
政府は「
地方交付税の率三%に相当する約百八十八億円の財源措置を行う」ことを決定したのでございますが、その財源捻出の
方法におきましては不合理、不当なものがあると考えられます。すなわち、既定
経費の節約は、公共
事業よりも
消費的経費に優先的に最重点を置くべきでございます。また、公共
事業費の節約に伴う
地方負担の減少額二十八億円は、性格上財源措置とは言い得ないばかりでなく、そのうち約半額程度は
団体等の受益者負担となっている等の実情にかんがみまするとき、
府県市町村の負担減少額は十四億円程度に過ぎないのでございます。この十四億円程度のものにつきましては、
政府の誤算に基づく節約不可能額であるにもかかわらず、これが未措置のままになっておるのでございます。
なお、閣議が決定されました後、公共
事業費については節約をとりやめ不用額を充当されることに変更された模様でございまするが、国がすでに
地方に内示しておられる公共
事業費については、
地方にとりましては不用額と認められるものはございませんので、右二十八億円はすべて捻出不可能となり、このまま放置すればそれだけ赤字が生ずることに相なるのでございます。
従いまして、本法案によりまする
特別交付金の
総額百六十億円は、これを百八十八億円に修正されるのが至当と考えるのでございます。
最後に、右二法案に
関係をも有すると認められる
昭和三十年度末に支給される手当〇、二五カ月分の引き上げ問題について意見を申し上げたいと存じます。
政府は、今回人事院の勧告にかんがみ、国家公務員に対しまする年末手当を増額することとし、これが
関係法案を臨時国会に提案されておるのでございます。
しこうしてこれが所要財源約十九億ることとされておるのでございまするが、国においては既定
経費にかなりの余裕があるものの
ごとく、各省ともこれが増額支給は可能の情勢にあると聞いておるのでございます。
なお、年末手当増額支給に見合いますところの国の所得税の増収額は約五十億円内外に達するものと推定されておるのでございます。
しかるに
地方予算におきましては、赤字解消の要請に迫られまして、年度当初より徹底的な切り詰め計上をいたしておりまするばかりでなく、その後におきましても、機構、人員の整理縮小、昇給期間の延伸、これも四月以降やっておりまする県は二十県に達しておりまするし、七月以降におきましては三十四県に達しておるのでございます。さらに夏期手当の分割支給、王寺旅費の支給、宿直手当のおおむね三分の二程度引き下げ、超勤手当の大幅な引き下げ、または全廃、これは国は超勤手当がちゃんと六%組んでおられまして、これが従来
通り何ら手がつけられないで六%になっておると思いますが、ほとんど大多数の
府県におきましては、この超勤手当は切り捨てて、現在支給していないというのが多くの県の実情でございます。その他一般
行政費の限度をこえました緊縮を強行しつつあるのでございます。さらに機構、人員の整理縮小をやりますれば、当該年度といたしましては、退職手当その他臨時
経費の増大等によりまして、一般
経費におきましてはむしろ増加する趨勢にあるのでございます。さような実情にあるのでございまするが、年度の終り近くになりました今日におきましては、国と異なり、ほとんど節約財源は枯渇しておりまするのが実情でございます。
しかして
地方公務員の中には、御承知の
通り国家公務員が一体となって勤務しておるのでございます。たとえば
警察関係におきましては、警視正以上の
警察幹部、職業安定、失業保険、陸運事務所
関係職員、これらにつきましては〇・二五カ月分が明確に支給されるのでございます。なお国の委託職員につきましては当然増額されることと思っておりまするが、しかし従来の例によりまするというと、これらもなかなか手当がされないで、それは
地方でとにかくかぶらなければならぬということが従来の実情で、これらの点につきましては非常な不安を持っておるものでございます。これら国の職員と
地方の職員が同じ屋根の下に机を並べて勤務いたしておりまする以上、両者の間に不公平な取扱いをいたしますることは、実際問題としてでき得ることではございませんので、
地方の当弱者といたしましては、非常な苦境に目下立たされておるのでございます。
政府は、資金繰り上止むを得ない
地方団体につきましては、「短期資金の融通を行うことがある」と、この
方法によってこの問題を解決されんとしているのでございまするが、この年末におきまする短期融資は、従来の例によりまするというと、非常な困難が伴うのでございます。昨年も短期融資を見てやるからというので、各
府県それぞれ大蔵省に申請をいたしたのでございまするが、なかなかお認めを願えませんで、わずか数県だけしか認められなかったという事情でございます。かりに本年は融通を受けたといたしましても、二カ月、三カ月もいたしますれば、直ちにこれを償還しなければなりません。償還いたしまするというと、それだけは赤字が出る結果と相なるのでございます。このことは単年度赤字を出さないということが
地方財政再建の基本
原則であることに照らしまして、絶対に回避すべきものと考えるのでございます。よって
政府は
地方の実情を再検討されまして、通常国会においては、年末手当〇・二五カ月増額に要しますところの
地方財源措置を講ずる旨の言明をすみやかにこの臨時国会においてなさるべきが至当であると考えているものでございます。
以上をもちまして、両法案についての意見の開陳を終ります。