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1955-12-07 第23回国会 衆議院 予算委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年十二月七日(水曜日)    午前十時二十一分開議  出席委員    委員長 三浦 一雄君    理事 稻葉  修君 理事 川崎 秀二君    理事 小坂善太郎君 理事 重政 誠之君    理事 西村 直己君 理事 赤松  勇君    理事 今澄  勇君       相川 勝六君    赤城 宗徳君       井出一太郎君    今井  耕君       植木庚子郎君    小川 半次君       北澤 直吉君    河野 金昇君       周東 英雄君    須磨彌吉郎君       竹山祐太郎君    中曽根康弘君       楢橋  渡君    野田 卯一君       福田 赳夫君    藤本 捨助君       古井 喜實君    松浦周太郎君       三田村武夫君   山口喜久一郎君       山本 勝市君    阿部 五郎君       井堀 繁雄君    岡  良一君       久保田鶴松君    小平  忠君       志村 茂治君    田中織之進君       田中 稔男君    西村 榮一君       福田 昌子君    水谷長三郎君       武藤運十郎君    柳田 秀一君       川上 貫一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  鳩山 一郎君         法 務 大 臣 牧野 良三君         外 務 大 臣 重光  葵君         大 蔵 大 臣 一萬田尚登君         文 部 大 臣 清瀬 一郎君         農 林 大 臣 河野 一郎君         通商産業大臣  石橋 湛山君         運 輸 大 臣 吉野 信次君         労 働 大 臣 倉石 忠雄君         国 務 大 臣 太田 正孝君         国 務 大 臣 高碕達之助君         国 務 大 臣 船田  中君  出席政府委員         内閣官房長官 松本 瀧藏君         法制局長官   林  修三君         調達庁長官   福島慎太郎君         大蔵事務官         (主計局長)  森永貞一郎君  委員外出席者         日本国有鉄道総         裁       十河 信二君         専  門  員 岡林 清英君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十年度特別会計予算補正(特第2号)     —————————————
  2. 三浦一雄

    三浦委員長 これより会議開きます。  昭和三十年度特別会計予算補正(特第2号)を議題として質疑を継続いたします。  水谷長三郎君。
  3. 水谷長三郎

    水谷委員 まず総理大臣に御質問を申し上げたいと思う次第であります。総理大臣は去る二日の本会議におきまして、わが党の委員長鈴木茂三郎君が、政権移動は総選挙によるべし、しかもそれは鳩山総理が前の国会におきまして、まさにそれは天の声であり神の声であるというような言葉まで述べられまして、満腔の賛意を表されたのでありますが、そういう質問に対しまして、総理は今度の国会におきましては、鈴木茂三郎君の意見原則論としては同意できる、しかし今度の場合は、政権移動ではなしに政権強化であるから、そのようないわゆる民主的ルールの適用は受けないものと考えるという工合答弁されておるのであります。果してしからば、このたびの第二次鳩山内閣から第三次鳩山内閣に対する移り変りを、政権移動にあらずして政権強化であるという工合に主張されました総理の根拠を、まずお伺いしたいと思います。
  4. 三浦一雄

    三浦委員長 水谷さんにお諮りいたしますが、総理大臣は着席のままで答弁することをお許し得られますか。
  5. 水谷長三郎

    水谷委員 同病相あわれむだから、いいですよ。(笑声
  6. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 お許しを得まして、すわったまま答脅させていただきます。  第二次内閣から第三次鳩山内閣政権移動したのは、政権移動という範疇の中に入るか入らないかは、これは政治的常識だと思います。私は政権移動ではないと思うのであります。
  7. 水谷長三郎

    水谷委員 政治的常識ということになれば、総理政治的常識とあるいは私の、またわれわれの政治的常識とが違っておることはきわめて遺憾であろうと思いますが、たとえばこれを社会党の例にとってみますと、日本社会党は、この二月の総選挙の前に合同をめどといたしまして、総選挙に臨む政策協定をやり、さらにまた一月十八日両党が日を期して大会を開きまして、来たるべき総選挙におきましては、二つの社会党ではなしに、一つ社会党で臨む、そうして総選挙後はきわめてすみやかに統一するということを天下に声明して総選挙をやったのでございます。ところが保守党の場合におきましては、まず政策の面におきまして、特に外交の問題におきましては、あるいは日ソ交渉の問題あるいは日比賠償の問題に対して大きな開きがあり、さらにまた予算編成方針におきましても大きな開きがあったのであります。単に政策の相違だけではなしに、当時の自由党の緒方総裁のごときは、選挙のときに総理政治的節操まで言及されまして、出たり入ったりまた出たりと、まるで有馬筆のようだと言わぬばかりのいわゆる極言までされて、両党が分れて選挙を争うたことは、これは天下公知の事実であろうと思うのであります。このように選挙の場合、両党が分れてしのぎを削った場合におきまして、何ら再び選挙の過程を経ないで合同するということが、果してあなたのいわゆる民主的ルールに合致するものであるかどうか。さらにまた政治的常識であるという工合に、簡単に片づけることがどうかということは、これは私も非常に疑問に思うのです。もちろんあなたの、私の尊敬する長年の議会政治家としての政治的常識というものはもとより尊敬いたしますが、私の二十数年間のやはり議会生活を通しての政治的常識というものは、そうあなたとかけ離れたものではない、またかけ離れたものであってはならないと考えているのです。この点に関しまして総理の率直なる見解を伺いたいと私は思います。(拍手)
  8. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 水谷君あるいは鈴木君の言うように、政権移動選挙によるというのは民主主義ルールとは思います。けれども私が第二次内閣を組織いたしましたのは、民主党議会における第一党たるのゆえをもって第二次内閣を組織したのであります。第三次内閣におきましても、その中心は少くも変っていないのでありますから、これを政権移動にあらずということを言いましても、これは政治的常識上当然と私は考えます。
  9. 水谷長三郎

    水谷委員 そうすると鳩山総理にお聞きいたしますが、第二次鳩山内閣民主党内閣であった、第三次鳩山内閣もやはり民主党中心であるということになりますと、今度の保守合同対等合同にあらずして、吸収合併であるという工合に理解していいですか、どうですか。
  10. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は吸収合併とは考えません。平等に合併しても、やはり民主党がそのまま残っている以上は決して不当ではないと考えます。
  11. 水谷長三郎

    水谷委員 私は議会政治のもとにおける政権基盤というものは政党であることは言うまでもないと思うのであります。ところが第二次鳩山内閣政権基盤と第三次鳩山内閣政権基盤というものは変っているのです。問題は私はそこにあろうと思うのであります。私はもし今の立憲政治のもとにおきまして、政権が依然として基盤が変ったにもかかわらずそのまま続いていくということならば、これは世にいう政権たらい回しです。これは私も率直に認めますが、われわれも過去において一つの大きな失敗を重ねました。私はそういう工合にして、過去において大きな失敗を重ねたがゆえに、こういうような失敗を再び繰り返すということは、せっかく二大政党発足のときに当っては厳重に慎しまねばならないというので、私は聞いているのです。私は決して人を責めるだけではございません。自分に対しても厳粛な自己批判をしたいと思うのです。だから私はむしろ一議員総理大臣としてではなしに、日本の政界のかけがえのない大先輩として、こういうような二大政党発足当時において、相も変らずあなたがそういうようなお考えを持たれるということは、日本議会政治のためにきわめて残念であるというのが私の考えであります。あなたは所信の表明において何と言われましたか。「元来、二大政党対立は、私の古くから抱いていた政治理想的形態である」ということを言われて、二大政党対立を非常に謳歌されておるのです。ところがこれまでのあなたの答弁考えてみますと、結論として引き出されるのは、保守合同は、それは目的ではなしに単なる政策実行のための手段にすぎないとわれわれは解釈せざるを得ないのであります。これならば今度の保守合同鳩山内閣延長工作であり、鳩山内閣補強工作であって、どこを押して単なるりっぱなる保守合同と言うことができますか。この点、私はあなたの率直なる御答弁を伺いたいと思うのです。
  12. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は、保守合同ができたということは、歴史的にほんとうにまれに見る前例だと思います。こういうような前例はずいぶん長いイギリスの政治史においてもありません。それが日本でよく従来の感情を一擲いたしましてこの際に保守合同ができたということは、私は驚異すべき前例だと思っております。
  13. 水谷長三郎

    水谷委員 総理大臣の御答弁は私の質問に対して少しもお答えをなさらずに、相変らず繰り返し繰り返し同じことを答弁されておるということは、私はきわめて遺憾であると思うのです。この問題は非常に重大な問題で、単に野党の代議士として内閣総理大臣を責めるというような気持は、私はごうまつもないのです。お互いに長い間、特にまた戦争当時を通じて苦労した政党政治家仲間同士として、この二大政党発足に当っていかにして民主的ルールを確立するか、そのために先輩鳩山さんとしてはどういうお考えを持っておられるかという点に関して、謙虚な気持で私は尋ねておるのです。だからあなたもそういうような事務的な通り一ぺんの答弁ではなしに、もっと確固たる信念を持った答弁を私は聞きたいのです。言葉をかえて申し上げますならば、これまであなたがお答えになっておったのは、所信演説において、「二大政党対立は、私の古くから抱いていた政治理想形態である」というようなことを言っておられながら、ただいままで私に答えられた答弁というものは、保守合同目的ではなしに、政策実行のための単なる手段である、これは合同がもやもやしておったときに絶えずあなたみずからが口にされておった言葉なんですよ。あなたの本心なのです。合同ができるかできないかというときにあなたが絶えず言うておられたことなのです。だからそういうようなことをあまり言われると困るからというので、あなたはしばらく鎌倉へ行っておられたのですよ。(笑声)これは決して私が発明したり曲解して言うのではないのです。だから今なお、今度の保守合同というものはそういうような考えで、単なる鳩山内閣延命工作だ、補強工作だという工合考えておられるのか。もっとざっくばらんに言うならば、あなたは所信演説において、二大政党対立はきわめてけっこうである、そして保守合同はでき、また一方においては社会党統一もできるということを言われておりますが、あの順序はスカタンなんですよ。社会党統一ができて、その自己防衛のために保守合同ができたとわれわれは言いたいのですよ。本心はそこなんですよ、私の聞きたいのは。だからそういうような急所に触れた質問に対しましては、あなたも率直にお答えになる方がいいのです。このごろあなたはそろそろ吉田さんのまねをしておるように思うのは、日本議会政治のためにもあなた自身のためにもきわめて残念であろうと思うのです。私はもっと率直なる御答弁をいただきたいと思います。
  14. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は、たびたび繰り返しますけれども、政権移動には選挙が伴う方がいいと思っております。ただし、このたびは第二次鳩山内閣の主張した政策実行をやめたということは少しも考えておりません。政策は変らず、人間は変らず、これを政権移動とは言えないと思うのです。これは政権移動にはあらず、ゆえに総選挙はしなかったということになるわけであります。
  15. 水谷長三郎

    水谷委員 総理が私のいろいろの角度からの質問に対して、依然としてそういう御答弁をされるということになれば、これはもうのれんに腕押しであります。結局はわれわれは本会議におきまして、しかるべきときに国会解散要求決議案を出しまして、この問題に対しての最後の結末をつけたいという二合に私は考えておる次第であります。  次に、総理の一枚看板であるところの日ソ交渉の問題に関しまして私はお聞きしたいのであります。私は、総理日ソ交渉に関する大局的な立場から見られたところのいわゆる考え方というものには、かねがね敬意を表しておったのであります。たとえばあなたが追放解除後、日比谷の公会堂において行われた演説会におきましても、あなたは日ソ国交調整を申されております。さらにまた二月の総選挙におきましても、まず日ソ国交調整をやるべきである、そのためには——私もちょっとふに落ちなかったのでございますが、負けた国の日本の方から、時と場合によれば戦争状態終了宣言をしてもいいというようなことまであなたは言われておる。これは私は満天下を沸かしたと思うのです。現に私自身鳩山内閣に対してはいろいろの言い分があるが、もし鳩山さんがほんとうに身命を賭して日ソ国交調整をやるというのならば、この点に関してわれわれは鳩山内閣を支持するにやぶさかでないということを二月の選挙にも約束してきたのであります。このいわゆる日ソ国交調整に対する大局的な見通し、その上に立ったあなたの立場というものは、今なお依然として堅持されておるかどうかということをまずお聞きしたいのであります。
  16. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私はソ連との間に戦争状態が終結せられない状態を継続していくということは、これは平和政策のため非常な間違ったことだと思っております。どうしても自由主義国家群との協力関係外交の基調とするのは当盤であるけれども、ソ連や中兵ともやはり国交を調整していきたい、戦争状態は終結した事態日本を持っていかなくてはならないということを世界平和のために衷心から考えましたので、ああいうような演説をやったわけであります。その精神は今日においても少しも変っておりません。
  17. 水谷長三郎

    水谷委員 その精神は少しも変っておらず、また精神が変っておらなければ立場も変っておらないと思うのでありますが、そういうような変っておらない精神立場というものが、今度の保守合同犠牲にされたかどうかということは、これは大きな問題であろうと思うのであります。あなたは保守合同政策遂行手段のためであって、今度の保守合同において、自分の唱えてきたところの政策というものは犠牲にしないということを繰り返し言われておったことは、あなたもよく御記憶の通りであろうと思うのです。私はその日ソ交渉に対する大局的な今の立場——今の立場というよりも前の立場というものは今なお変っておらず、しかもそれは今度の保守合同においても犠牲にはされておらないかということを重ねてお聞きいたします。
  18. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ソ連との国交を調整する、正常化したいという根本の方針には、今日においても以前と少しも変っておりません。
  19. 水谷長三郎

    水谷委員 私の申すのは、まずソ連との国交調整をやるべきだ、そのためには戦争終了宣言をしてもいいということを言われた。まず何よりも先に国交調整をやるべきだというあなたの持論が変っておらないかどうか。今度の保守合同においての政策協定においても、犠牲にされておらないかどうかということをお聞きしているのです。
  20. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 この前の議会予算委員会において、犬養君からの質問に対して答えましたが、国交調整をするのには、やはり戦争状態がなかったような事態に持っていくのが一番いいと思う。戦争状態がなかった事態に持っていくのには、戦争中占領せられたる日本領土の占領を解くというようなことも当然に含まれます。また戦争によって日本の人々がソ連に抑留せられておるならば、その抑留者の帰還という問題も、当然国交を正常化する中に含まれる問題だ。ゆえにこれらの問題を解決して国交を正常化したいということを理想といたしますと、私は犬養君に答えたはずであります。少しも今日と変っておりません。
  21. 水谷長三郎

    水谷委員 それではもう少しわかりやすく質問いたしますと、私は従来、あなたのお考え方——とりあえず平和条約を結ぶということよりも、まず暫定協定を結んで、そしてそのあとにおいて懸案を解決するというのが、二月の総選挙にあなたが言われておった点であります。ところがそれが、諸般の懸案を解決して平和条約締結してやるという考えに、今あなたがなられたのかどうか、それとも前のように、とりあえず交渉が長引いてむずかしいならば、まず暫定協定を結ぶのが先決問題だという工合に依然としてお考えになっておるかどうかということをお聞きしたいのです。
  22. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 松本全権マリクソ連代表者と話をいたしましたときに、ソ連側からは第一回の会合におきまして、平和条約締結という案を出したのであります。平和条約締結という案を出せば、すべての問題が解決するという方の道を選んでいくことが当然だと思いましたので、松本全権とマリクの最初の会談以来、私はすべての問題を解決して国交を正常化したいという方針にした方がいいという考え方になりました。
  23. 水谷長三郎

    水谷委員 それでは二月の総選挙鳩山総理大臣天下に声明されました日ソ国交調整方式と、ロンドン会議におけるところの日ソ国交調整方式とは、変ったとわれわれは解釈していいのですね。——そうですが。そこで私はあなたに聞くのです。今度のいわゆる保守合同において、従来あなたの政策というものは、犠牲にされたかされないかということを私は聞きたいと思うのです。そこであなたは今度の本会議におきましても、でき得る限り早期妥結の方向に持っていくということを言っておられます。それから外務大臣抑留邦人即時送還とともに、領土問題についても、歴史上常に日本領土であった諸島の返還ということを主張されております。さらにまた自由民主党緊急政策を拝見いたしますと、一は抑留者即時返還、二は歯舞色丹、南千島の無条件返還、その他の地域については国際的な決定に待つということを言っておるのであります。この自由民主党緊急政策というものを拝見いたしますと、あなたが二月に天下に声明されました日ソ国交調整方式というものは、こっぱみじんに粉砕されたと言わなくてはならぬと思うのです。そこであなたにお聞きいたしますが、このロンドンの十五回にわたる交渉におきまして、自由民主党緊急政策にうたわれておる抑留者即時返還であるとか、歯舞色丹、南千島の無条件返還であるとか、その他の地域については国際的な決定に待つということが、たやすく従来の交渉において実現できる問題であるとお考えになっておるかどうかということをお聞きしたいと思います。
  24. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 なるたけ早くしたいという希望を持っておるのでありますが、それがいつごろきまりますかは予見はできません。
  25. 水谷長三郎

    水谷委員 いや、私は早期妥結見通しを聞いておるのでなしに、その自由民主党緊急政策である三つの問題が、ロンドン会議の十五回の交渉においてどのように取り扱われたか、そしてそれはあなたの見通しにおいて−は、たやすくそれが貫徹できるという工合にお考えになっておるかどうかということをお聞きしたいのです。
  26. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 その見通しはつきません。希望は持っておるということを申したのであります。
  27. 水谷長三郎

    水谷委員 そうすると何ですか、望みなきにあらずという御答弁ですね。
  28. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 そうです。
  29. 水谷長三郎

    水谷委員 それは小説の言葉ならばそれでいいですけれども、議会答弁としては私はきわめて不完全であろうと思うのです。だれしも交渉するのに希望を持たない交渉というものはありません。しかし十五回も交渉を重ねて、しかもソ連の第一書記言葉をかりて言えば、それは茶飲み話だというようなことを言っておる。さらにまた最近の訪ソ議員団に対して、ソ連の第一書記が答えた点は、抑留者というものの返還ということは、これは間違っておるかどうか知りませんし、また人道上からいってもけしからぬ問題であると思いますが、これはやはり何らかの協定ができた直後でなければ返還はできないということを言っております。さらにまた領土問題に関しては、すでに訪ソ議員団に正式に声明したところによれば、これはもう両条約——ヤルタ協定、あるいはソ連最後まで参加はしなかったけれども、サンフランシスコの平和条約においてもはっきりきまっておるのだ、ただ歯舞色丹だけは——小千島は日本に非常に接近しておるから恩恵的にお返ししてもよいというようなことをはっきりと言うておるのです。現に松本全権ロンドンから帰りました直後におきましては、日本人は大きな誤解を持っておる、ソ連案を、いとも簡単に歯舞色丹を返すと言うたように誤解を持っておる、しかしそうではない、これはこういうようないきさつで言ったのだと申しておりますから、日ソ交渉の一番中心であるところの抑留者即時返還、そしてまた領土問題ということに関しましては、相当むずかしい見通しをわれわれは持たざるを得ないのです。われわれは野党におるといえども、党の幹部の一人といたしまして、日ソ交渉に対するいきさつというものはある程度知らされております。総理大臣鳩山さんは一から十までよく御存じであろうと思いますが、この三つ緊急政策というものが、あなたの総選挙当時に唱えられましたまず何よりも暫定協定、さらにまたこのたびの本会議において述べられましたように、でき得る限り早期に妥結するというような立場に立ちまして、これはどういう見通しを持っておられるかどうかということを私は率直にお聞きしたいのであります。
  30. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 今までの答弁で御推察を願います。
  31. 水谷長三郎

    水谷委員 それでは総理大臣はおそらくこれは外交の機密にわたるから、もうこれ以上聞いてくれるなということだと私は拝察いたしまして、それではあなたの意を体して、これは私は私なりに推察したいと思います。ただあなたの立場といたしましては、二月選挙にあれほど天下に声明いたしましたいわゆる日ソ国交調整をまずやらなくてはならない。そのためには平和条約よりも先に戦争状態終了宣言をやるべきだという方式が、今度の合同におきましては根本的にくつがえされたことは、あなたのために非常に遺憾であるということだけをお悔みの言葉として申し上げておきたいと思うのです。  そこで私はあなたにお聞きするのでございますが、今度松本全権ロンドンに帰りますが、帰りましたあとにおきまして交渉を重ねて、特に領土の問題につきましてソ連歯舞色丹以外は返すことができないという従来の立場を変えなかった場合、すなわち領土問題におきまして壁にぶち当った場合におきまして、日本政府はどういうような決意と処置をおとりになる考えかということをお聞きしたいと思います。
  32. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 その問題についてただいま意見を発表する時期ではないと思います。
  33. 水谷長三郎

    水谷委員 これは国民としては非常に心配しておるのです。これは国民政治的意識というものも新聞、ラジオその他を通して最近は非常に高まっておりまして、日ソ交渉というものがいかようにむずかしいものであるかどうかということは非常に心配しておるのです。また遺家族遺家族立場からこれも非常に心配しておることは、あなたもよく御存じであろうと思うのです。そこでこれは私の考えというよりも党の考えでありますが、日ソ交渉見通しといたしましては、大体三つしか私は想像ができないのではないかと思うのであります。その一つは、日本が主張すべき主張を譲らないでついにそれが決裂に終るという、決裂かどうかということが第一の問題であろうと思います。第二の問題は、日本ソ連の言いなりほうだいになって何らかの協定、条約を結ぶのかどうかということです。第三は、とりあえずまず暫定協定を結んで、そして抑留者を帰してもらい、領土問題その他の懸案は大使の交換その他を通してこれをゆっくりやるかどうかという、この三つ方式しか残されておらないと思うのであります。わが日本社会党はその政策といたしまして、ソ連の問題に関しましては、日ソ国交調整戦争状態の終結と平和国交の回復を主眼とする簡素な平和条約締結によるものとする。領土についてはアメリカ関係の小笠原、沖縄の返還と関連して歯舞色丹、千島、南樺太の返還を要求する。このアメリカ関係の小笠原、沖縄の返還と関連してということは、これは大事なことでございまして、今の日本のように単にソ連に向って領土だけを主張するという立場日本社会党とは根本的に違っておると思うのでございます。(拍手)さらに第三におきましては、万一平和条約交渉が遅滞する場合は、とりあえず両国間の暫定協定によって戦争状態の終結を確認し、即時戦犯及び抑留者の帰国を実施するとともに、代表部を交換し引き続き平和条約締結その他の諸懸案の解決をはかるというこの三つ考え方にしぼっておるのであります。今や日ソ交渉松本全権ロンドンへ帰ることを契機といたしまして、この三つ日本政府がそのいずれを選ぶべきかということを私は決意せねばならぬと思う。この日ソ国交調整問題というものは、ひとり鳩山内閣だけの問題ではございません。これはわれわれ野党立場からいたしましても、でき得るならばお助けしたいところの問題であり、また全国民的の念願であることは言うまでもないと思うのです。私は今や松本全権ロンドンへ帰ることを契機といたしまして、日ソ交渉はこの三つのうちいずれをとるべきかということに追い詰められる段階がもうそう遠くないと思うのです。あなたは早期解決ということを言われておりますが、失礼であるかどうかしれませんが、四月には総裁の公選も行われるというようなことになるのです。もし総裁の公選が行われて、万々一あなたがおからだの都合によりまして、政界を引退されるというようなことになれば、あと日ソ交渉がどうなるかということは、われわれは非常に心配せざるを得ないのです。従って好むと好まざるにかかわらず、あなたが早期解決を言われる以上は、常識から言えば三月一ぱいにはこれを何とかせねばならないというところに追い詰められていることは言うまでもないのです。このいわゆる三つの点に関しまして、あなたはどう考えられますか、あなたは二月選挙の場合におきましては、第三の暫定協定ということを盛んに言われておったのでございますが、今はロンドン交渉を重ねましてこの三つのうちにおいてどの方式をもってやらねばならないか、その点を率直にお答えを願いたいと思います。
  34. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 先刻申しましたように、現在わが国の主張すべきことをできるだけ主張したいということを考えておりまして、それがどういう場合にはどうするかということを今日申すべき時期ではないと思います。御遠慮いたしたい。
  35. 三浦一雄

    三浦委員長 暫時休憩いたします。    午前十時五十九分休憩      ————◇—————    午前十一時四十四分開議
  36. 三浦一雄

    三浦委員長 休憩前に引き続き会議開きます。  水谷長三郎君。
  37. 水谷長三郎

    水谷委員 午前中私は質問をやっておったのですが、ちょうどナイターのラッキー・セブンに電気が消えたようなもので非常に何ですが、さきに日ソ交渉問題に関しまして総理と私との質疑応答につきましては、外務大臣も最初からお聞きのことであろうと思うのでございます。そこで外務大臣に二点伺いたい。まず第一点は、日ソ交渉に非常に参考となる西ドイツの問題、いわゆるアデナウアー方式に対しまして、日本政府外務大臣といたしまして、どういうお考えを持っておられるかということをお聞きしたいと思います。
  38. 重光葵

    ○重光国務大臣 御質問の趣旨が私よくわかりかねますが、ドイツはドイツとしての立場をもって独ソ関係に処しておることと思います。日本日本としての立場をもって日ソ交渉を今開始しているわけでございます。ドイツにおきましても、ドイツ現政府のソ連に対する交渉のことについて、非常に国内に議論があるということも私はよく承知をいたしております。
  39. 水谷長三郎

    水谷委員 そんな東は東、西は西というような答弁を私は要求しているのではございません。ドイツのああいうアデナウアー首相がやりました点に対しましては、いろいろ批判もありましょうが、しかし今同じくソ連を相手に交渉しております日本立場から、そして日本外務大臣から、ああいうような交渉いきさつ、結果に対して、どういうようなお考えを持っておられるかということを私は聞いておるのであります。だからその点に関しまして私の質問に対しまして、的をはずさないように御答弁を願いたいと思います。
  40. 重光葵

    ○重光国務大臣 私は少しも的をはずしておりません。日本日本立場をもって進まなければならぬ。ドイツはドイツの立場をもって進んでいたことである、こう私は観察をしております。
  41. 水谷長三郎

    水谷委員 日本外交日本立場でやらなくてはならぬということは、幼稚園の子供でもわかっておるのです。しかしやはり交渉の相手が同じならば、他国のことも参考になることは言うまでもないと思うのです。そこで私は、さきに鳩山総理大臣におきましても日ソ交渉の結論は大体三つ方式しかないということを私は言っておるのでありまして、現にソ連の第一書記訪ソ議員団の北村団長その他の人に、ドイツの例を引いて、そうして日本はこれと反してロンドンにおいて友好的にお茶ばかり飲んでおるというようなことを言うたことも、これは事実なのです。だから私はドイツのああいうような交渉の結末のつけ方、これは私がさきに申しました一、二、三の第三の、いわゆる暫定協定ということに入っておるのですが、ああいうことに対しまして、重光さんといたしましては、ああいう行き方は賛成なのか反対なのかどうかということを端的に聞いてもけっこうです。
  42. 重光葵

    ○重光国務大臣 モスクワにおきまして先方の首脳部の一員が日本の視察団に対して、ロンドン会議はお茶を飲んで過しておると言ったことがあるということも、私は承知をいたしております。しかしながら、ソ連ロンドン会議を少しでも結末をつけていきたい、進渉させたいという希望を持っておると私は判断しております。それは間違いないと思います。従ってさようなロンドン会議がふまじめなものでないということも、ソ連もよく知っておることだと思います。私はさような場合においては、そういうふうなことで日本交渉に臨んでおるのじゃないということを、はっきりソ連側にも言っていただきたかったのであります。しかしそれはそれにしておきまして、今三点を言われました。社会党政策は、暫定協定をして、あとのことは領土のことでも何でもみんなあとでよろしい、国交が回復した後でよろしい、今解決するに及ばない、こういう御議論であるということを十分今御説明によって私も承知をいたしました。私どもの立場、すなわち政府の態度は、たびたび私からも、また特に鳩山総理からも本日の席において申し上げた通りに、日ソ間における重要なる懸案、問題は解決をして、そうして平和条約をこしらえてそれによって国交を正常化する、こういうロンドン交渉において日ソとも合致した方針のもとに、交渉を進めていくということにあることを繰り返して申し上げる次第でございます。
  43. 水谷長三郎

    水谷委員 外務大臣は実に驚き入ったデマを飛ばされるので驚いた。社会党の態度は懸案を一切がっさいあと回しにして暫定協定でいい、そんなことは私は申しませんよ。それはあなた、よくお考えにならなくちゃいかぬでしょう。私はこの社会党政策を読んだときに、できれば第一はいわゆる平和国交の回復を主眼とする簡素な平和条約締結をやる、目印型のああいうような平和締結でもいいがやる、とにかくできれば平和条約をやる、これはあなた方と同じ意見ですよ。そして領土問題に関しては、これはあなたのようにソ連にばかりに主張するのじゃなしに、社会党はアメリカに対しても小笠原、沖縄の返還を要求する、それに関連して歯舞色丹、千島、南樺太の返還を要求する、こういうことをはっきり主張している。しかし相手のあることですから、万々二平和条約締結が遅滞する場合においては、とりあえず両国間の暫定協定によって、戦争状態の終結を確認し、即時戦犯及び抑留者の帰国を実施するとともに、代表部を交換して引き続き平和条約締結その他の諸懸案の解決をはかる、万やむを得ないときにはそうせいということを言っておる。決裂よりもそれの方がいいというのが社会党立場なのです。ところがあなたのおっしゃることは、社会党立場はそういうようないわゆる暫定協定を何でもやるんだというようなことを言われるならば、それじゃ私はあなたに聞きますが、うまくいかなければ決裂しようというのがあなたの本旨ですか。日ソ交渉がうまくいかなければ決裂しても差しつかえない、むしろ暫定協定を結ぶよりも決裂の方がいいんだというのがあなたの考えですか。その点はっきり答えて下さい。
  44. 重光葵

    ○重光国務大臣 その点はこれはまた繰り返しはっきり申し上げておる通りであります。今日においては、わが主張を十分貫徹すべく最善の努力を尽します。今日からその主張が通らないことを予期して暫定協定を結ぶとか、決裂せしめるとかいうことは、私当局者として申し上げるわけには参りません。
  45. 水谷長三郎

    水谷委員 当局者として申すことができなければそれでよろしい。しかし他党の外交の基本方針をあなたが先ほど聞いておったにかかわらず、社会党はこういうような態度だというようなとんでもないことを言うことは、これは外務大臣として慎しんでいただきたい。これはお取り消しを願います。
  46. 重光葵

    ○重光国務大臣 私はそういう工合に了解しますが、しかし私は社会党政策を私の口からかれこれ申し上げる地位にはおりません。それは社会党の方から十分に、私の解釈が間違っておるなら間違っておると言われて少しも差しつかえございません。私は今日領土問題についてソ連交渉しようというのであります。アメリカとはすでに平和を回復しておるのであります。ソ連これから平和を回復するために最善の努力を尽そう、こういうわけでございます。
  47. 水谷長三郎

    水谷委員 私は外務大臣の頭を疑わざるを得ない。私が社会党のいわゆる政策は一、二、三カ条繰り返し読んだにかかわらず、今の社会党はそういうような懸案あと回しにしていいんだ、そうしてとにかくも暫定協定をすればいいんだというようにお考えになることは、これは大きな問題です。これはやむを得ない場合で、一、二、三とあって、一もできなければ二もできない、そうしてやむを得ない三の場合はこうだということなのです。あなた方は一体何を聞いておるのですか。そういうようなことをいつまでも言う必要はないと思うのでありまして、これは大臣としては非常に大きな誤解であって、よろしく考え直していただきたいということを考えております。  それからさらに外務大臣にお聞きしますが、十月二十一日午前に新聞の報ずるところによれば、アリソン大使から外務省の谷顧問に対しまして、ヤルタ協定に関する問い合せの回答が来たということを新聞は報じております。それは事実でございますか。
  48. 重光葵

    ○重光国務大臣 ソ連との領土問題を交渉するためには、いろいろな材料を整備しなければなりません。そうして御承知の通りソ連側はヤルタ協定等も議論に引用するわけでございます。それでありますからヤルタ協定というものはどういう性質のものであるかということは、米国側に十分問い合せをいたしました。その結果、日付はよく記憶をいたしませんけれども、先方の解釈も参っております。ついでながら、その解釈はどういうことであるのかという大要を申し上げます。ヤルタ協定ソ連との間に日本領土について話し合いをしたけれども、それがはっきりと千島はどういう範囲の島々が千島だということじゃない。ただぼんやりと千島ということで話し合いをした。従って、その千島をどういう工合に解釈して交渉をするかということは、日ソ両国の間の問題であるというような大要の話でございました。これは大体話としてはわかる話でございます。その見地に立って、領土問題についてはわが方の信ずるところをもって交渉に臨んでおるわけでございます。
  49. 水谷長三郎

    水谷委員 外務大臣は日付を忘れたと申しておりますが、各新聞の報ずるところによれば、十月の二十一日、これは正確に間違いないと思います。そこで、いわゆるこの回答が参りましたが、この問題の問い合せは、外務省は一体いつ時分にアメリカにされたのか、ちょっとお聞きしたいのでございます。
  50. 重光葵

    ○重光国務大臣 問い合せの日付は、私は記憶いたしておりません。しかしこれは日ソ交渉が始まった以後において、この交渉の準備をいたすために問い合せをいたしました。
  51. 水谷長三郎

    水谷委員 日付はわからないが、日ソ交渉開始以後に問い合せをした。私はそれはよく知っております。これは実に驚き入った外務省の怠慢であると言わなくてはなりません。いやしくも今度の日ソ交渉の眼目である領土問題に関しましては、すでに交渉の始まる前に、外務省としては万般の準備をしてかからなくてはならぬことは言うまでもないのです。しかもその日ソ交渉領土問題が議論されている最中にアメリカに問い合せをして、しかもその返事があの程度の返事をいただくということは、結局はソ連を有利にする以外の何ものでもないと私は思います。一体外務大臣といたしまして、日ソ交渉をやり、領土問題が中心になっておるときに、交渉が始まって後にああいうような問い合せをアメリカにして、それであなたの職責が勤まると思っておるのかどうかをお聞きしたいと思います。
  52. 重光葵

    ○重光国務大臣 その御批評は御批評として、私は少しもこれを反駁することはいたしません。私は、この問題につきましては、むろん交渉方針をきめる前に十分検討いたしました。しかし、問い合せはその後にいたしました。これは私の記憶でございます。しかして、その問い合せの結果が、従来の交渉方針を変えなければならぬ結果に陥ったかというと、そうではなくして、従来の交渉方針で少しも差しつかえない。これはむしろ交渉方針の間違いでなかったことを確めた状態になっておりますから、私は少しも差しつかえないものと考えております。
  53. 水谷長三郎

    水谷委員 いやしくも外務省の考えは、おそらくアメリカは日ソ交渉における日本立場をば支持してくれるような回答を期待して、あの問題が発せられたことは、私もよく知っておる。それに対して、いわゆるパンのかわりに石のような返答が来たことも、これまた事実なのです。そういうようなことは、外務省としてはきわめて怠慢であり、手ぎわが悪いということを私は言いたいのであります。  いつまで繰り返しておっても切りがございませんので、最後に、日ソ交渉の締めくくりとして、鳩山総理大臣の決意を聞きたいと思うのです。二大政党対立いたしました今後の議会の運用のかなめといたしまして、政策を通じて十分争いたいことは事実であり、また言論を通じて争わなくてはならないことも事実でございますが、できるならば事外交に関しましては、与党といわず野党といわず、一致して日本の国難に当らなくてはならないというのが私の考え方でございます。こういうような考え方によりまして、日ソ交渉に関していろいろ聞いたのでございますが、総理大臣答弁といい、外務大臣答弁といい、私を満足せしむることができなかったことは、きわめて遺憾でございます。しかし私の見通しによれば、日ソ交渉というものはいつまでもがんばれ、しかし決裂はいかぬというようなことでは、日ソ交渉は進むわけには参らぬと思うのです。やがていつかはさきに私が申しました三つ方式決裂か、あるいはソ連の言う通りになるか、あるいはまた暫定協定を結んで懸案を解決するか、この三つ一つを選ばなくてはならないと思うのです。私は将来しかるべきときに、政府が断固として日ソ交渉に関して結論をつけて、それを国民とともにやっていくということをやっていただきたいと思うのです。われわれも及ばずながら、もしその結論が妥当であるならば、皆さん方とともに協力してこの国難に当ることはやぶさかでないと思うのです。今日の段階におきまして、日ソ交渉見通しに対し、さらにまたその結論に対して、言うべき段階ではない、言えないということは一応了としますが、しかし将来しかるべき時期に、あなた方は、単に鳩山内閣としてでなしに、ほんとうに全国民とともにこの問題を解決する、一体そういう決意があるかどうかということを最後にお聞きしたいと思います。
  54. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 外交問題の根幹につきまして、超党派的に日本外交政策を推進したいということは、非常に希望しております。そういう目的を抱いておればこそ、民主党時代においては三党主に対して日ソ交渉の大体のお話をしてきたわけであります。ところが最後にどの方針をとるのかということは、先刻申しました通りに、私の意見を発表する時期ではないと思います。今日においては、できるだけわが方の主張を貫徹できるように努力をいたしますという以外には、答弁することができません。
  55. 水谷長三郎

    水谷委員 次に重光外務大臣にお聞きしたいと思いますが、去る二日の本会議の席上におきまして、わが党の委員長鈴木茂三郎君が、中共に対して何も手を打っておらないじゃないかというような質問をいたしましたときに、重光さんは、まことに勇壮活発に僕らを驚かすような態度で、一体手を打つというのは何だ、それはおそらく承認であろう、しかし今の日本立場として承認はできないという工合にひとりぎめで答弁されたことは、御記憶に新たなことであろうと思うのです。しかしながらわれわれが中共に手を打てということは、ある場合単に承認ということを言っているのじゃない。承認の前にいろいろ打つべき手があるということを鈴木茂三郎君が言っておったにかかわらず、あなたはそれを承認として片づけて、ああいうような勇壮活発な答弁をされたことは、きわめて遺憾であろうと思うのです。今日本外務大臣として、この中共問題に関しましてどういうようなことをお考えになっておるかということをまずお聞きしたいと思います。
  56. 重光葵

    ○重光国務大臣 本会議答弁につきましては、外務委員会でも社会党の委員の方からお話がございました。本会議鈴木君の御質問は繰り返し繰り返し聞きました。それは中共とは国交を正常化すべきじゃないかという趣旨において繰り返し御質問がありました。それであるから私は中共に対して打つ手は何かと——手がないじゃないかということは鈴木君が聞いたのでございます。それですからそういう手は何かというと、それは鈴木君の質問の趣旨から見ると、承認——国交を正常化するということは承認ということでございます。(「積み上げていくんだ」と呼ぶ者あり)それが結局そうなる。そういうことはできぬことだ、こういつて私はお答えをしたのであります。私はそれが不穏当であるとは考えておりませんが、それについていろいろ疑問とするところがあったら詳しく申し上げてさしつかえない。しかし中共に対しては、国際義務の範囲内においてできる限りのことはしたい。一国に対して二つの政府を承認するように仕向けることはいかぬ、これは当然のことで、国会の意思できまったことであります。そうでありますから、私は国会の意思に従ってそういう政策をとることが当然だと思う。しかしながらそれは後の事情の変化もございます。従って国際義務に反しない限りにおいて、でき得るだけ近隣諸国との関係は、なだらかにいくように努めなければなりません。だからそういう方向において貿易の問題も処置して今日まで参ったのでございます。さような趣旨でございます。
  57. 水谷長三郎

    水谷委員 ただいま外務大臣が言われたように、今の日本立場として直ちに中共を承認できないということは、これは鈴木君もよく知っております。知っておるから私はそういう質問をしたのです。ただ問題は、私見ておりますと、引き揚げ問題というものは三団体にまかせきりだというような状態、さらにまた貿易の問題、文化の交流あるいは漁業問題というようなものは、今日主としてみな民間がやっておる。外務省は何をやっておるかというと、あとそれに対してぶつぶつぼやき漫才のように小言をいうことだけしか今やっておらないというような状態なのです。私はこの中共問題に対して、日本政府はもう少し自主性を取り戻していただきたいと思うのです。あれほどソ連と中共と区別して中共ぎらいのアメリカにおいても、やはり大使の会談というものが行われておる。私は中共承認の前のいろいろの積み重ねにおいて、政府は従来の民間にまかせきりであったものを、国の責任においてそろそろやるべき時期に来ておるのじゃないか、それを鈴木君が言うたということに私は解釈しておるのです。そこでこれまで民間にまかせきりであったものを、一体政府の責任でおやりになる考えはあるのかないのかということを私は聞きたいと思います。
  58. 重光葵

    ○重光国務大臣 中共がいわゆる積み重ね方式でもって承認に導こうとしておるということは、これは周知の事実であります。これは世界的に今そういうふうに共産国側の政策を判断しております。これを一括して平和攻勢ともいったときもございます。政府は関係ないのだから、承認問題とは関係がないじゃないかという立場をもって、民間との間にいろいろな約束をして、そして積み重ねていって政府をそこに引っぱり込もう、こういう政策をとっておるということもこれは周知のことで、私もよく承知をいたしております。しかし政府といたしましてはこの全局の関係から、今承認していない国との関係ははっきりと承認していない。政府は関係しないという立場をとらなければ全局を害します。これは反共国だけではありません。共産国に対してもなしくずしでものが何でもできるということならば、交渉はかえってこちらに不利になります。そうでありますから政府がさようなことには関係しない立場をとることは国家のために当然利益である、こう考えております。
  59. 水谷長三郎

    水谷委員 政府ではそういうような不都合があるからというならばそれはそれとして、それでは民間でそういうようなことを自由に今後やらすかどうか、積極的に推進するかどうか。このごろ外務省の意見は、旅券の問題その他から申しましても、そういうことを全然制限するというような方向に来ておる。政府もやらなければ民間にもやらさないというような方向になっておる。政府の立場は、あなたの説明を一応了として、民間の方でこれらの交流問題をやることを、あなたは推進される意向があるかどうか。政府もやらなければ民間の方もとめるというような方針でいかれるかどうか、その点を一点はっきりお答えを願いたい。
  60. 重光葵

    ○重光国務大臣 私ははっきり答えております。政府としてはやらない、こういうことでございます。それで政府が民間にやらせるか、こういうことは政府が関係しないという建前でございます。
  61. 水谷長三郎

    水谷委員 私の言う点は政府が民間にやらすということではない、これは政府がやるということと同じである。だから民間がやることを政府はじゃませないかどうかということを聞いておるのです。あなたはじゃましますかどうしますか。
  62. 重光葵

    ○重光国務大臣 これは民間がやり得べきことはおのずからきまっております。見聞でやり得べきことは民間でやるがよろしい、政府はこれについては関係しない、こういうように考えております。
  63. 水谷長三郎

    水谷委員 重光さんの答弁はよほど忍耐が強い者でなければ困るのでありまして、大体それ以上のことを期待することはできません。  時間が来ましたので簡単に私は最後鳩山総理にお聞きして、私の質問を終りたいと思います。実は経済問題に関しまして大蔵大臣、通産大臣、それから経審の長官に対する用意をしてきたのでありますが、私に与えられた時間が一時間で、ちょうどもう一時間になりましたから約束は守りたいと思いますので、ただ一点だけ鳩山総理に聞きたいと思うのです。あなたは憲法改正のために憲法調査会を政府部内に設けて、その草案ができ次第解散をして民意に問うということを言っておられる。そこで私はお聞きするのですが、その際今の選挙法に一体どうされるかという一点だけを聞きたいと思うのであります。最近代行委員の緒方さんが、岡山でございましたか、やはり小選挙区制をぶっておられます。また代行委員の三木さんが、香川県においても同様なことを言い、また大野さんも病気になられる前、岐阜へ行かれたときにもその点をぶっておられるのであります。そこで私の聞きたいのは、今度憲法改正の是非を国民に問うときに、あなたは今の選挙区制を改革して、いわゆる小選挙区でやるつもりであるかどうかということをはっきりお答え願いたいと思います。
  64. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 憲法改正と選挙法改正との関連について考えておりません。両方ともに、憲法改正案がいつごろできるかもわかりませんし、選挙法の改正案がいつごろできるかもわかりません。その両方の関係についてどちらを先にするかというようなことは考えておらないのであります。選挙法も選挙法改正の調査会で決定をすることになっております。いつごろそれができるかということは、ちょっとまだ目当てがつかないのであります。
  65. 水谷長三郎

    水谷委員 私は間違いがなければ代行委員は四人だと思うておるのですが、その代行委員の三人までがその点をはっきり言っておられるのです。あなたお一人だけがそういうようなことを言っておらない。あなたの腹の底もおそらく他の代行委員と同じではないかと思うのです。と申しますのは、鈴木委員長と本会議で申しましたように、今の選挙区のもとにおきましては、あなたがどういうような草案をもって是非を天下に問われましても、既成保守政党において三分の二以上を確保することは木によって魚を求むるようなものであります。従ってもし憲法改正をやろうとするならば、これは正直に三人の代行委員がおっしゃっておるように、小選挙区制を断行いたしまして社会党の勢力をファッショ的にたたくという以外に道がないと私は思うのであります。そこであなたはここをはっきりさしていただきたい。そういうようなあいまいな答弁ではなしに、小選挙区制をほかの三人の代行委員が言っておられるのだから、その通りであるならある、あるいはないならない、研究とかなんとかいうことは一あなたも長い間政党政治家として選挙を何べんもやっておられるのですから、選挙区制というようなものは、今さら選挙法改正の調査会の答申を待つまでもなしに、あなたの頭に、あなたのポケットにちゃんと用意されていることはこれは火を見るよりも明らかなのであります。だからそういうようなあいまいなことでなしに、ほかの三人の代行委員も言っておる——私は代行委員のうちで一番人のいいのはあんたやと思うんです。一番正直なのはあなたであると私は思う。ほかの三人の代行委員がはっきりと言っておるにかかわらず、一番正直なそして一番人のいいあなたがそういうようなずるい答弁をせないで、小選挙区制をやるならやる、やらぬならやらぬということをはっきりとお答えなさい。憲法改正をやるという決意があるならば、小選挙区制をやるのかやらないのかということをはっきりと男らしく答弁しなさい。
  66. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 小選挙区制がいいかどうかについてはっきりした答弁はできるのです。私は小選挙区制はいいと思うのです。けれどもそれがいつごろできるかということはなかなかそう容易には言えません。ただいまここでもわが党においても小選挙区制は反対というふうに、なかなか党内をまとめるのにも——小選挙区制というものもなかなか欠点も持っておりますし、そうしてずいぶん長い間中選挙区制あるいは大選挙区制に似たる中選挙区制で来たもんですから、一つの基礎ができてしまいまして、その基礎をこわす結果になるのであります。党内の意見をまとめるのにも一苦労だと思うのであります。それですからそう簡単にいつごろできるということは言えません。それは実情です。これは正直なところです。(笑声
  67. 水谷長三郎

    水谷委員 それほど正直に御答弁されるならば、もう一ぺん正直に答弁していただきたいと思います。今のあなたの御答弁は小選挙区制は賛成であることは事実だ、しかしいつできるかどうかということはわからぬということですね。そこで私はしぼりまして、今度の憲法改正の是非を問うところの総選挙においては、従来通り選挙区制でやるのか、あるいは小選挙区制でやるのかということだけをはっきりと答弁して下さい。
  68. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 政府はそれについてほんとう考えていないのです。(「うそをつけ」と呼ぶ者あり)うそはつきません、ほんとう考えておりません。
  69. 水谷長三郎

    水谷委員 鳩山総裁も腰かげたままであるから気持がのんびりとされておるのか、あるいは絶対多数の上に立たれておるからあぐらをかいておられるのかどうか知りませんが、非常にずるい答弁をされておるのです。しかし今日あれほど憲法改正の問題と関連して小選挙区制の問題が三人の代行委員に言われ、また岸幹事長も言っておるにかかわらず、肝心の総理がそれに対してはおかぶりであるというようなことは私は承諾をすることはできない。それならそれで小選挙区制をいつやるかわからぬというならば、ついでに憲法改正もやるかやらぬかわからぬという工合に答えられれば私は満足です。しかし憲法改正は調査会を設けてやるのだ、しかし小選挙区制はやるかやらないかわからぬということは、これで鳩山さんの看板の正直というものは台なしになったと思うのであります。これは私は非常に遺憾であると思う。  予算総会の質問でありますから、さらに経済上の問題に関して、たとえば来年度の予算において公債が発行されるかどうかという問題、あるいはまた国際経済の見通し日本の貿易の見通し、さらに経済企画庁が十月三十日に出しました試案に対しての質問等用意をしておりますが、時間が過ぎましたので私はこれでやめます。しかし私はきょうの鳩山首相を中心とした答弁、重光さんの答弁というものを——これは主として外交問題でございますが、口では超党派外交、超党派外交と言いながら、いまだ超党派外交をやるというような誠意も決意も政府側にないということを発見したことはきわめて遺憾であり、日ソ交渉の前途また寒心にたえないということを強く申しまして、私の質疑を終ることにいたします。
  70. 三浦一雄

    三浦委員長 暫時休憩いたします。午後一時より再開いたします。    午後零時二十九分休憩      ————◇—————    午後一時二十七分開議
  71. 三浦一雄

    三浦委員長 休憩前に引き続き会議開きます。  武藤運十郎君。
  72. 武藤運十郎

    ○武藤委員 私はまず日韓関係の問題につきまして総理並びに外務大臣質問をいたしたいと思います。  けさのある新聞によりますと、政府では憲法第九条の解釈を一定をいたしまして、万一韓国の方で実力を行使する場合には、日本もこれに対して実力を行使することができるのだというふうな解釈に一致をしようとしているような話でございますけれども、万一の場合には日本の軍隊——私は軍隊と言っていいと思うのですが、これが出動をして交戦をするということになるのでしょうか。憲法九条の解釈はそれでいいのでしょうか。その点をまず伺いたいと思うのであります。
  73. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ただいまおっしゃるような事実を政府できめたということはむろんありません。私個人の考え方としては、そういうようなことは自衛の範囲外だろうと思います。
  74. 武藤運十郎

    ○武藤委員 日韓関係は非常に緊迫をしておるようであります。しかるに政府では手をこまぬいて何らの方法もとらないように見えます。あるいはアメリカの仲介を希望するというような他力本願のやり方をしておるようです。むしろそんなことを言っておらないで、日本もりっぱな独立国だと言われておるのでありますから、外務大臣みずから乗り込んででも、この問題を早期に解決をするという意思はありませんか。この点を伺いたいと思うのであります。
  75. 重光葵

    ○重光国務大臣 日韓関係の今の緊張を解きほぐしていって平和的解決をするということについては、全力を尽すことはもちろんでございます。それがために、私が乗り込んでいって解決を見るという形勢になるならば、少しもそれは辞するところではございません。今日すべてのやっておることは発表はできませんけれども、私は決してこれが日韓の衝突になるような事態になることは今日見通しておりません。これは必ず平和的外交交渉によって事態を収拾することができる、こういう見込みを持って進んでおります。
  76. 武藤運十郎

    ○武藤委員 あらゆる手段をとることにやぶさかでないと言われますし、あるいはまたやっておるのだけれども、全部はっきり言えないんだというようなお説でございますが、一般国民は、政府が何らの手を打たない、これはむしろ李承晩に一つ戦争をやらせて、そうしてそれを口実にして日本の再軍備を促進しよう、そういう意図ではないかというふうに考えておるくらいでございますが、私は、やっておるけれども言えないとか、やる気があるとかいうのでなくて、具体的にやることを、すぐやらなければならないことはどういうことであるかということを伺いたいと思うのであります。
  77. 重光葵

    ○重光国務大臣 やっておること、またすぐそれを促進しなければならぬことは、すなわち外交交渉でございます。これですべてをやろうと思っております。政府は、この問題を使って軍備の問題にひっかけたり、そういうことは少しも考えておりません。もしそういうことを考えておるとすれば、それは危険なことです。そういう危険なことはやらぬということを申し上げておきます。
  78. 武藤運十郎

    ○武藤委員 その次には、憲法問題について鳩山総理大臣に伺いたいと思います。申すまでもなく現憲法の三大原則は民主主義、平和主義、人権尊重主義、これが新しい憲法の三つの柱だと考えます。このことは、新しくできました自由民主党政策の中にもりっぱに織り込んで高く掲げられておるわけであります。この三つの原則はぜひとも守っていかなければならないものであると考えますが、これに対する総理のお考えはいかがでしょうか、伺いたいのであります。
  79. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ただいま言われた憲法の平和主義、民主主義あるいは人間の基本権利、これらのことを尊重すべきことは言うまでもないことであります。ただ平和主義あるいは平和主義の目的の達成ということが、憲法が規定せられるときに考えられた無防備ということだけで貫徹できるかどうか、これは問題だと思うのです。私の考えでは、今日の平和は、決して無防備ではその目的を達成することはできないと思います。今日の平和は力による平和でもあり、力によって世界の平和は保たれているわけでもありますから、そういう時代に無防衛、無防備だけでもって平和主義の目的が達成せられるということは、これは考え違いであると私は思います。
  80. 武藤運十郎

    ○武藤委員 そうしますと、首相のお考えは、平和主義はいいけれども、憲法九条に現われておる無防備といいますか、戦争放棄といいますか、その点は別な方法によって解決をしなければならぬ。言いかえますならば、九条は改正をして、日本に軍備を持って、力によって日本の防衛をしなければならない、平和を保たなければならない。そういうふうにお考えになっており、その方向に向って憲法の改正をなさろうという御意思でございますか。
  81. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 それも憲法改正の一つの大きなる目的であります。
  82. 武藤運十郎

    ○武藤委員 私どもの考えるところでは、やはり憲法九条というものはほんとうに平和主義を高く掲げたものであり、世界におきましても一番りっぱな条文であろうと考えます。従ってこの条文を変えるということは、とりもなおさず平和主義を捨てることであり、憲法の一つの大きな柱を折ることであるというふうに考えておるのであります。しかしこの点は見解を異にしますので、次の質問に移ります。  第二の民主主義、言いかえますならば主権在民の主義、国会を国権の最高機関とする考え方、この憲法の第二の一番大きな考え方でございますが、先般十二月三日に緒方竹虎氏が大阪方面を旅行をされまして、そのときにこういう談話を発表いたしております。「現行憲法では国会は国権の最高機関であると規定されているが、これは多分に行き過ぎの観がある。第一次大戦後のヨーロッパ諸国の憲法改正の傾向を見ると、政府の権限強化が新しく規定されている。日本の例でいうと臨時国会の召集は国会の要求によって開くことになっているが、ヨーロッパ諸国では政府の権限で召集するようになっており、国会よりも政府の発言力が強くなっている。日本としてもそのように改正する必要があると思う。」こういう談話を発表しております。これは各紙とも同じようなものですから、おそらく口頭ではなくして、文書で発表された談話ではないかと思うのであります。これは首相の談話ではございませんが、緒方氏は四人の代行委員の一人でありますし、それから旧自由党の代表的な人物であろうと思うのであります。この人がこういうふうな談話を発表して意見を述べておるわけでありますが、鳩山首相は憲法の改正に関連をしまして、この意見と同感でありますか反対でございますか、伺いたいと思います。
  83. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は緒方君の談話のようなことを考えたことがありません。
  84. 武藤運十郎

    ○武藤委員 そうしますと、そういう意見には賛成ができないというふうに伺ってよろしいのでしょうか。
  85. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 抽象的には、せっかく達成できました民主主義を破るようなことはしたくないと考えておるのでありまして、国会の召集について政府の発言権を重しとするかどうかというような事柄については、いまだ考えたことがないということだけを申し上げます。
  86. 武藤運十郎

    ○武藤委員 その次に、私は憲法改正に関連をしまして、日本の現状の認識に関する首相のお考えを承わりたい。御承知の通りサンフランシスコ講和条約によりまして、アメリカ陣営とは講和ができましたけれども、ソビエト陣営とはまだできておらない。国際法的に言えば交戦状態にあるということでございます。またこのサンフランシスコ講和条約並びに安保条約などの一連のアメリカとの協定によりまして、六百カ所以上の基地にアメリカ軍か駐町田をいたしております。そのために日本は莫大な防衛分担金をアメリカ軍に支払わなければならない義務を負っておる。そうしてまたその防衛分担金がきまらなければ日本政府の予算が組めない、こういうふうな実情にあるのでありまして、私は、日本の現状というものは名前は独立国になったと言われまするけれども、実際においては完全に独立をしておらないと思います。こういうふうな諸般の事実から見まして、総理大臣日本の現状をどのように認識されますか、伺いたいと思うのであります。
  87. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 日本は三年前から完全に独立をいたしたのでありますが、従来の諸制度の欠陥により、あるいは条約の欠陥によって、いまだ自主独立の完全なる姿を獲得したということは言えないだろうと思います。
  88. 武藤運十郎

    ○武藤委員 総理大臣は、去る二日の国会における所信の表明におきまして、その第一は憲法の改正である、わが国を真の独立国家に立ち返らせるためには、まず憲法を国民の総意によって自主独立の態勢に合致するよう作りかえることが大切である、こういうように述べておられるのであります。憲法を改正する大きな理由といたしまして、この憲法は占領中に、すなわち全然独立というものがなかったときにできた憲法でよくないのだから、これを改正しなければならないという意味ではなかろうかと思うのであります。そうなりますると、今総理の御答弁がありました、日本の国が必ずしも完全に独立をした形ではないという状態にありますとすれば、やはりかりに今憲法の改正をいたしましても、程度の差においてよい憲法は、日本の自主独立の憲法というものはできないのではないかというふうに私は考えます。たとえば憲法九条の問題でございまするけれども、占領当時、この憲法ができました当時におきましては、あるいは日本の軍備というものがアメリカ軍に不利益であったというそういう動機から、軍備の廃棄ということがアメリカの要請によって憲法に盛られたのではないかと考えます。いわゆるマッカーサー憲法といわれるのはこのためであると思うのであります。しかしながら今日本が完全な独立の状態にないときにおきまして憲法の改正をいたしましても、あるいは軍備については、今度はアメリカの要請によりまして憲法九条を改正して軍備をやる、正式な軍隊を固くというようなことになってしまうのでありまして、日本の基本法である憲法がつねにアメリカの意向によって左右されるという結果にならざるを得ないのであります。従いまして今ここで、このような状態のもとで憲法を改正することは、やはりほんとうの自主独立の憲法というものはできないと考えますけれども、これに関する総理のお考えはいかがでしょう。
  89. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 今の憲法はとにかく占領時代にでき上った憲法である。占領時代に憲法を作ることはできないとする外国の例すらあるのでありまして、占領時代においては完全なる自由を国民が持っておるとは思いません。それですから、今日におきましては、その占領が解けて独立の体面を獲得した後でありますから、占領時代とは全く違うと思います。われわれは憲法を作るのに十分な自由を持っておることと思います。
  90. 武藤運十郎

    ○武藤委員 国が完全な独立をしておるかどうかということは、対外関係において言うものであろうと思います。独立の体面を保っておるというようなことだけではないと考える。ただ単に憲法だけを形の上で作ってみましても、実質的にそれによって独立国家となるというものではないのであります。自主独立の獲得というものは、むしろ形の上で今憲法を改正するというよりも、今まで作られておる安全保障条約、行政協定というようなものをこの際まず解消をしていく、そうしてそれが完全な独立を獲得するゆえんでもあり、その後においてこそ、かりに憲法を改正するとしても、首相の言われるような自主独立の憲法ができるのではないかと思うのであります。むしろ憲法の改正よりも安保条約、行政協定など一連の、日本をただ単なる形の上における独立国にしておく諸条約を改正すべきものであると考えますが、いかがでありましょうか。
  91. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 日本の防備は全く今防衛力がないのであります。それが安全保障条約あるいは行政協定によって日本の防衛が達成できておると思いますが、この防衛についてアメリカが協力をしておるということは、われわれの自由を束縛しておるということには直ちにならないと思っております。
  92. 武藤運十郎

    ○武藤委員 その次には重光外務大臣に伺いたいと思います。主として防衛分担金についてであります。御承知の通り安全保障条約前文の趣旨は、概略を申しますと、日本に当時防衛力がないから日本は暫定措置としてアメリカ軍の日本駐留を希望する、第二に、しかしながら日本は自国防衛のために漸増的に自衛を増強する責任を負う、こういうことであろうと思うのであります。これに応じまして、行政協定二十五条は、暫定的なこの米軍の駐留費用に対する日本の負担金であろうと思うのであります。こういうふうに解釈してよろしゅうございましょうか。
  93. 重光葵

    ○重光国務大臣 私も大体そう解釈をいたしております。
  94. 武藤運十郎

    ○武藤委員 そこで伺いたいのは、アメリカ軍の暫定的な駐留が日本の暫定的な自衛力の増強に見合うものであると思うのでありますけれども、そうでありとしますならば、自衛隊が増加される分だけは、第一にアメリカ軍は当然撤退すべきだと思います。それから第二には、防衛庁費とか施設提供費とかいうような日本の増加分というものは、当然二十五条に定めてある分担金から全額減額するのが当りまえではないかと思いますが、いかがでしょう。
  95. 重光葵

    ○重光国務大臣 ちょっと必ずしもそうはいかぬのじゃないかと思います。防衛力の漸増ということはやらなければなりません。どこまで防衛力が必要であるかということは、これは心の問題でございまして、そこが問題であろうと思います。だから防衛力が漸増するだけアメリカの軍隊を引け、こういうことはちょっと言えないだろうと思います。そこでどれだけの軍隊が必要であるか、どれだけの防衛力を増強すべきかということについては、十分検討をいたした上で、それを標準にして話が進むべきだと考えます。
  96. 武藤運十郎

    ○武藤委員 私が申し上げておりますのは、漸増と漸減は相対的なものではなかろうかと言っておるわけです。日本の防衛力というものが最高度に達して、そのときまでは全部駐留をし、そのときまでは全部の費用を負担し、そのときに全部アメリカ軍が撤退するというのではなくして、漸増と漸減とが相対的な関係においてなされるのが当然ではないかということを申し上げておるわけであります。もう一度御意見をお伺いしたいと思います。
  97. 重光葵

    ○重光国務大臣 大体観念としてはそういうふうに申しても差しつかえないかと思いますが、その次の御質問をよく伺ってそれにお答えしたいと思います。
  98. 武藤運十郎

    ○武藤委員 観念としてはけっこうだけれども、外務大臣としての能力は別であるというような御趣旨ではないかと思うのでありますけれども、やはり観念として外務大臣がそういう信念をお持ちでありますならば、その通り外務大臣として行動をいただければけっこうではないかと思うのであります。行政協定二十五条2の(b)に、防衛分担金につきまして定期的再検討の結果締結される新たなる取りきめの日まで一億五千五百万ドル、すなわち五百五十八億円を支払うということになっておりますけれども、伺いたいのは、新たなる取りきめというのは何でありますか、またこの取りきめのための検討をやったことがあるのでしょうか、これを伺いたいのであります。
  99. 重光葵

    ○重光国務大臣 これはよほど文面がこんがらかっておるので、昨年度もずいぶん議論をしてきた問題であります。そこで同じことをお答え申すほかはございません。毎年この検討をやっておるわけでございます。そして今年ももちろんこの検討をやろう、こういうことになっております。
  100. 武藤運十郎

    ○武藤委員 少しまじめに答弁してもらいたいのでありますけれども、今までもやっておるし、これからもやろうと思うというようなことでなくて、この防衛分担金の問題は去年——今年の初めでありますけれども、防衛分担金の折衝がきまらないために閣議決定が十日以上も延びたというような事情もあるわけです。というのは、この金額の折衝がきまらなかったからだと思うのであります。行政協定はとっくにで一きておりますし、二十五条の2項の(b)にはこういうことがりっぱにうたわれておりますのに、このことを一向に問題にしないで、ただ漫然ともう少し負けてくれないかというようなことであるから、私は折衝がうまく行かないのだと思うのであります。再検討をし、新たな取りきめを行うという条文がりっぱにあるのでありますから、どうしてもっと早く具体的にこの取りきめというものはしないのであるか、できなかったのであるかということを伺いたいのであります。
  101. 重光葵

    ○重光国務大臣 そういう規定になっておりますから、その規定によってきわめてまじめにやっておるのであります。そして、これは予算編成期まではどうしてもやらなければならぬことであります。しかし、それは何カ月前にちゃんとやっておかなければならぬということではございません。その時期にちゃんと間に合うようにやればいいのであります。またそういう時期になって初めて双方とも交渉ができるのであります。それを今やっておるわけでございます。
  102. 武藤運十郎

    ○武藤委員 日本の防衛計画というものがいろいろ検討をされているそうでありますけれども、長期の防衛計画五年ないし六年の防衛計画というものができているのでしょうか、いないのでしょうか。またあなたが先般アメリカへ行かれたときには、この長期の日本の防衛計画というものを持って行かれたと聞いておりますが、外務大臣答弁と船田新防衛庁長官答弁といささか食い違っているような感じを持っております。これはいかがなものでしょう。
  103. 重光葵

    ○重光国務大臣 防衛計画を今検討していることも全くその通りでございます。政府としてこれをどうしても具体化しなければならぬと思って検討をしているのでございます。しかしまだその計画は、六年計画とかなんとかいうようなことが言われておりますが、はっきりとそれが、できておりません。それから過般私が渡米いたしましたときには、政府の考え方をできるだけ向うに説明して、向うに納得せしめるようにしたい、こういう考えをもちまして、防衛庁の試案でもいいから、どういう考えであるかということを聞いたのでございます。ところが防衛庁の方では、こういうふうな考えを一応はしているという話で、それは伺ったのでございます。しかし私は、それを持っていって、防衛庁の試案がこれであると言ってみてどれだけ向うに印象を与えるかということも考えまして、その試案そのものは私は何も向うでは使いませんでした。しかしその試案を持っているくらいでありますから、政府としては、防衛力についてはあくまでこれを増強する決意である、意向であるということを強く説明をして、先方はそれを非常に可としたわけでございます。交渉については、私は自分でやったことを申し上げたのであります。防衛庁の考えにつきましては、防衛庁長官にお聞きを願えばよろしいのではないかと思います。
  104. 武藤運十郎

    ○武藤委員 長期の正式な防衛計画はできておらないが、試案はあるということです。そして近いうちにこれを作るというお話でございますが、長期の防衛計画ができますならば、必ずこれに見合う防衛分担金の漸減方式といいますか、減額方式といいますか、これができなければならないと思います。一体政府では、こういう場合におきまして、一般方式として年次的に減額をきめるという方式でいくお考えでございますか、それとも毎年々々個別に折衝をして解決をしていく方針でありますか、仄聞するところによりますと、閣内で意見が二つに対立しているということでございます。これは総理外務大臣並びに大蔵大臣にも御意見を承わりたいと思うのでありますが、どういうような方針でありますか。
  105. 重光葵

    ○重光国務大臣 防衛分担金の交渉に関係する問題でございますから、私からお答えをいたします。防衛分担金は——先ほどの御意見も御趣旨はその点にあったと思います。私は、これはもうなるたけ早く防衛分担金のないように進めていくことが望ましい、こう考えます。そこで毎年これについて検討を加えなければならぬのは当然のことでございます。それは先ほどの御説明の通りでございますが、しかし、たとえば年々防衛分担金が少くなっていって、すみやかになくなるような方式でも考え得ますならば、その方式によって差しつかえないし、またそれが一番けっこうだ、こう考えておるのでございます。さようなことをいろいろ検討いたしまして、アメリカ側と話し合わなければなりません。そういう考え方で進んでおるわけでございます。これについては閣内において意見の不一致は少しもございません。それが当然の努力目標でなければならぬ、こう考えております。
  106. 武藤運十郎

    ○武藤委員 先ほどのお説によりますと、防衛分担金の折衝は、必ず間に合うようにするというお話でございました。大へんりっぱなお言葉でございますが、先ほども申しましたように、私ども予算委員としますれば、三十年度の予算編成に当りましてもなかなか間に合わなかったわけでございまして、非常に迷惑をした次第でございます。ことしの折衝は、いつごろまでに妥結をする見込みであるか、またどのくらいで妥結をする見込みであるか、これを伺いたいのであります。
  107. 重光葵

    ○重光国務大臣 その見込みは今立てるわけに参りません。しかし私の申し上げましたことは、予算編成期に間に合うようにあらゆる努力をして進んでいきたい、また進んでいっておる、こういうことを申し上げたのでございます。
  108. 武藤運十郎

    ○武藤委員 大蔵大臣に伺いますが、防衛関係費を一千四百億以内に押えてきまるという見込みがございますか。
  109. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 防衛庁費につきましては、今事務当局で具体的に査定をやっておるのでありまして、これは全体の予算額との割合といいますか、全体の予算がこのくらいだから防衛庁費はこのくらい、そういうふうなワクの関係もございます。さらに分担金がどういうふうになるか、これは相当の減額を期待しております。そういうことがすべてまだ確定いたしませんから、どういうふうになりますか、私としては防衛庁費はできるだけ少くということを希望することは申すまでもありません。
  110. 武藤運十郎

    ○武藤委員 防衛庁費関係はそのくらいにしまして、基地の問題について外務大臣に伺いたい。  第一に、第三国人の日本の米軍基地における訓練の問題でありますが、一時非常に問題になったのでありますけれども、第三国軍人の訓練の問題はその後どうなりましたか、経過並びにその後の交渉があるとすれば伺いたいと思います。
  111. 重光葵

    ○重光国務大臣 今質問されました問題は、米軍基地において米軍が第三国人を訓練しておることがあるだろう、そのことはどうなっておるかという御質問のようでございます。少数の第三国人が米軍のやり方を見学に来たことがあるので、これは日本との友好関係にも顧みて、これには故障を申し入れませんでした。つまり差しつかえないということでそれを認めました。しかしそれがあまり長期にわたるとか、もしくはあまり多数になるという場合では、こっちは困りますから、その旨を申し入れたところが、それは中止になっております。その後相当数の第三国人に見学を許したい、こういう話し合いがございましたから、これはどういう性質のものであるか、またその規模及びその方法等について問い合せをいたしまして、それが共同防衛等の精神によって協力して差しつかえないことであるかいなかということを今検討いたしております。そうしてそれはいろいろ手続の問題があり、また施設を使用する等の問題もございます。法律関係もございます。そのことを十分検討いたしまして、差しつかえの有無を今調べておるところでございます。
  112. 武藤運十郎

    ○武藤委員 今外相の言われた見学と訓練とをどういうふうに解釈するか、だいぶ問題だと思います。限界がむずかしいと思うのでありますが、見学の名によって訓練が行われるというようなことはわれわれはもちろん反対であります。聞くところによりますと、今年の夏、七月ごろのアメリカ軍の申し込みというのは、期間が二週間ないし六カ月、それから人員は、国府が四百人、タイが三百五十人、インドネシアが四十人、フィリピンが十人、合計八百名という多数の軍人の訓練であって、三十年の七月から向う一カ年実施をしたいというふうな申し込みだということを私は聞いておるのであります。今断わられたというのは、この申し込みを断わられたわけでございますか。
  113. 重光葵

    ○重光国務大臣 断わったというのはその問題ではないと思います。その前の問題です。そこで新たに向うからこういう規模の第三国の見学と申しますか、訓練と申しますか、それを申し込んできたのであります。それを今検討中なのでございます。その規模及びその方法等を十分に検討してみなければ結論が出ませんが、それを今やっているわけであります。
  114. 武藤運十郎

    ○武藤委員 検討中だと言われますが、米軍に提供した施設、区域を特別な取りきめをしないで第三国人に使用させるのは、安保条約、行政協定に違反するものではないか、手続の問題でありますが、私どもはもちろんそういうものの駐留には全部反対であります。かりに今の安保条約、行政協定で行うといたしましても、何らの取りきめなしにこれを置いておくということ、承認をするということは、これは協定違反になると考えます。そうでないとするならば、法的な根拠はどこにあるのかということを外相に伺いたいのであります。
  115. 重光葵

    ○重光国務大臣 この問題は、さような第三国人が日本に来る場合において、そのいろいろな取扱い等において法規関係が起ってくるのでありますから、当然それを検討しなければなりません。しかしながらそういうことを米国との関係において日本が承認するかどうか、こういう問題は、私は安保条約の条文では解釈ができぬと考えております。これは条文の問題ではなくて、国と国との関係である、こう考えております。
  116. 武藤運十郎

    ○武藤委員 そうしますと今のお話は、新たなる協定を結ばない限りは、先ほど私が申し上げたような人数、期間による訓練はできないのだという外相の御見解であると承わってよろしゅうございますか。
  117. 重光葵

    ○重光国務大臣 これは双方の外交問題で、その折衝の結果を待つべき問題だと考えております。
  118. 武藤運十郎

    ○武藤委員 基地問題に関連をいたしまして、第二にお伺いしたいことは、いわゆるロケット砲のオネスト・ジョンの問題でございます。私どもが聞いておりますところでは、オネスト・ジョンというロケット砲は、最初はただ持ってきておくだけだという話であったと思うのであります。そういう意味で十月の半ばにこれをみんなに見せる、日本人に展示をするということでやっておった。そのときまで私どもはやはり持ってきておくだけであるというふうに考えておった。これでも私どもは反対でございますけれども、そんなふうに理解しておった。ところが十月の末になりまして、試射の申し込みがあったということでございます。それで第一回の試射は富士で行われた。いろいろな反対がありましたけれども、押し切って富士で行われたようであります。しかしそのときには射程は二十キロ以下である。しかもこの日本における試射は一回限りだというふうなお話であったということを聞いておるのであります。ところがその七日にカヴァデールとかいう准将がきまして、これからはもっと射程を延ばすんだ、あるいは試射の続行を、これからはあちこちでするんだということを言明されまして、引き続いて十一月二十九日には北海道島松ですか、ここで第二回の試射が行われたというような実情でございますけれども、大体この米軍の兵器の持ち込みの限度、これはどういうことになっておるか。そしてまたその根拠はどこに求めるわけでありまするか、伺いたいと思うのであります。
  119. 重光葵

    ○重光国務大臣 米軍の駐留を条約上認めておることは御承知の通りであります。米軍の駐留を認めておる以上は、普通兵器は当然付随したものでございますから、普通兵器は軍隊とともに日本に持ち込むことは認めなければなりません。そこでオネスト・ジョンの問題でございますが、私もこれは新兵器だと思って干そういうことを前に聞いたことはございませんでした。いろいろ理論は前からあったそうでございます。そこでこのオネスト・ジョンが新兵器であるかないかというよりも、普通兵器であるかないかということを検討しなければなりません。そこで専門家の検討を経て、これは普通兵器である、攻撃的の兵器でなくして防御兵器である、こういう見解になっております。従いまして、これが射撃試験というようなことも、その範囲において許さるべきことに相なっております。
  120. 武藤運十郎

    ○武藤委員 普通兵器か特別兵器かという区別を今伺ったのです。また普通兵器というのは防衛兵器だというお話でありますけれども、なかなか私にはわかりません。防衛兵器と防衛兵器でないものとの区別を一応参考に伺っておきたいと思います。
  121. 重光葵

    ○重光国務大臣 防衛兵器と攻撃兵器との専門的の定義は私にはちょっとできません。しかし国防上、防御のために主として使われれば防御的の兵器だと私は考えております。
  122. 武藤運十郎

    ○武藤委員 どうもはなはだ満足できません。このロケット砲の弾頭には、今のところ試射にはコンクリートを使っておるそうでありますけれども、これは必ず原子弾頭が入るものと私は考えます。しかも正確に二十キロか三十キロ行くということでありますから、これは今の外務大臣の話から伺いましても、防御兵器とは言えないと思います。こういう兵器をどしどし持ち込むということになりますと、水爆も原爆も幾ら持ってきてもかまわないということになりまして、境がつかないと思うのでありまするが、いかなる御見解でありまするか。
  123. 重光葵

    ○重光国務大臣 私どもは水爆、原爆は普通兵器とは考えておりません。普通兵器のカテゴリーに属するものは、これは当然軍に付随したもの、こう考えておる次第であります。
  124. 武藤運十郎

    ○武藤委員 どうも満足すべき答弁ではございませんが、まじめを欠いておりますので次に移ります。  先ほどわが党の水谷委員からも、日ソ交渉についていろいろ総理質問がございましたが、私も一点質問をいたしてみたいと思います。日ソ交渉もだいぶ長いことでございますが、顧みますというと、これに関する旧民主党政策というもの、基本的態度はいわゆる早期妥結ということであったと思うのです。つまり領土問題は歯舞色丹だけでも、とにかく早いこと締結しようじゃないかというお考えであったように考えております。ところが反対に旧自由党の基本的な態度というものは、いわゆる慎重論でございまして、早期妥結には賛成をしない、つまり領土問題は千島あるいは南樺太というものも解決をすべきであるというようにいっておったと思います。言いかえますならば、その焦点は早期妥結といいましても、あるいは慎重論といいましても、問題は領土問題でありまして、その範囲をどこまで広げるか、どこできめるかということではなかろうかと思う。新しくできました自民党のこの問題に関する政策を見ますると、講和条約では、まず歯舞色丹はもちろんだけれども、南千島もこの際きめたい。北千島や南樺太は後の国際会議にまかせてもよいけれども、この南千島だけは、この際歯舞色丹とともに入れるべきものだ、これができなければ、これを限界として妥結をしなければならないという政策だと思いますけれども、これは今まで早期妥結国交早期回復ということだけを考えてきました第二次鳩山内閣民主党政策が、変質をしたのではないかと思いますが、首相はいかなる御見解でおられますか。
  125. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は水谷君の質問に答えました通りに、今日においても、第二次内閣の当時においても同じように、ソ連との国交を正常化したいと思って、ソ連交渉をしております。
  126. 武藤運十郎

    ○武藤委員 そういうような抽象的な、国交を回復したいという気持だけを私は伺っているのではないのです。鳩山第三次内閣が組閣をされたときの鳩山総理の談話を聞きますと、私は、従来しばしば合同政策実行のための手段であると申してきましたが、その手段なった今日からは、ただ一意公約した政策の実現に全力を注ぐ決意であります。こういうふうに述べておられます。また同日の記者会見におきましても、日ソ交渉は早く国交調整をしたい、鳩山内閣の手で調印したい、こういうふうに言われております。二日の国会における所信の表明におきましても、日ソ交渉はわが国の主張の実現をはかりつつ、できる限り早期に妥結の方向に導くという従来の方針通り折衝を継続するつもりでありますと、こういうふうに言っておられますが、一体鳩山首相が、合同政策実現の、公約実現の手段であるというお考えのその政策実現、公約実現の公約というものは、第二次鳩山内閣が唱えた旧民主党考えておった歯舞色丹たけで早期に妥結をしたいという政策実行を意味するものであろうと思いますが、そういうふうに解釈してよろしゅうございますか。
  127. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 たびたび申しました通りに、国交を正常化するということは、つまりソ連との戦争状態のなかったような事態を持っていきたいということなのであります。そこで戦争中に生じた日本固有の領土の占領等は、当然に解決しなければならない問題になりますし、なお戦争によって生じた未帰還の人々の抑留をも、できるだけ早く帰さなくちゃならぬ、これらの問題が国交調整の材料になることは言うまでもないことであります。それらの問題を解決して、平和条約を結んで国際関係を正常化したい。これは最初も今日も同じなのであります。歯舞色丹でもって満足しますということを私言った覚えはありません。とにかく、領土問題についても解決しなくてはならない問題の中に入るということだけは言ったことはあるのですが、その要求する島は歯舞色丹だけだということはかって言ったことはないのであります。今日もどれだけの島をとらなければいけないということは、私は知らないのですが、とにかく外務省において適当にやっておるわけであります。
  128. 武藤運十郎

    ○武藤委員 次には行政機構改革の問題について、総理大臣並びに行政管理庁長官にお伺いしたいと思います。行政機構改革の問題は、従来わが国におきましても、歴代の内閣のお題目でありました。必ずやるということを言っておりましたけれども、いつも龍頭蛇尾でありまして、ものになったことはない。やれば内閣の命取りになるというような実情であったと思うのであります。今度第三次鳩山内閣ができまして、必ず憲法改正と税制改革と行政機構の改革をやるということを声明されました。私どもは、またこれは看板だけになるんじゃないかというふうに思っている。国民もそうだと思う。ところが行政管理庁長官河野農林大臣を当てられまして、断固としてやるんだというようなことを放送し始めたのであります。国民も、河野さんがおやりになるならば、あの男ならやるだろう、やれるだろうというふうな期待を持っていると思うのであります。多分私は、初めは脱兎のごとく終りは処女のごとしということがございますが、河野さんならば、初めは脱兎のごとく終りはイノシシのごとしというようなことにやれるんじゃないかと思いますが、その決意を総理大臣並びに河野さんから伺いたいと思うのであります。
  129. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 今度の行政機構の改革の目的とするところは、一言にして言えば、占領政策の是正ということになるかもしれませんが、目的は、国民の便宜を主として機構を改正していきたいと思うのであります。今までは行政費の削減とか行政整理ということが目的でありましたけれども、このたびの行政機構の改革は、国民に便宜を与えるのを主眼としてやっていきたいと考えておりますので、詳細の点は河野行政管理庁長官から答弁をしてもらいます。
  130. 河野一郎

    河野国務大臣 お答えいたします。ただいま総理から御答弁のありました通りに、今回の機構改革は、戦後非常に複雑になっておりますし、しかもその後の国内の政治情勢が相当に新しい方向に重点が動きつつありますので、その国民の要望する点、もしくは行政能率を向上する等を勘案いたしまして、これらに合うように変えていきたしということを主眼に置いてやるつもりでございますが、何分研究調査を十分にいたしまして、そうしてやりたいと思っておりますから、今ここで具体的にはまだ案は持っておりませんけれども、方向としてはそういうことを考えているわけであります。従来とかく、今総理のお話にありました通りに、行政整理を目的としてやりましたので、非常に摩擦も多かったのでございますが、もちろん世間には、行政整理を伴わない機構改革は意味のないことであるというような御批評もございます。それも一面の理と思いますけれども、一切の目的一つにまとめてこれをやるということはなかなか困難でございます。従ってさしあたり、今申し上げましたような点でやっていく方がいいのじゃないか。行政整理といいましたところが、その結果出る失業者を受け入れる態勢もなかなかむずかしいことでございますし、今の時世に必ずしも適当でないと考えられる点もございますので、政府といたしましてはさしあたり機構を改革して、そうして必要な国民の便宜を来たし、行政能率を上げるというところに重点を置いてやっていきたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  131. 武藤運十郎

    ○武藤委員 人員整理を伴わない行政機構の改革というものは、われわれといえども反対ではありません。しかし人員整理を伴わない行政機構の改革というものは、手品のようなものでありまして、私は非常にむずかしいと思います。いずれ御検討の結果、名案が出るのではないかと期待をいたしますが、このたび行政管理庁長官になられました大臣は、国鉄の問題については大体案があるのではないかと思うのです。と申しますのは、先般行政管理庁におきまして、国鉄の機構、運営等についてやや詳細にわたった検討の結果の勧告がなされておると思うのであります。同じ政府の部内におきまして、行政管理庁があれだけの調査をし、勧告をしたということはわれわれは一応ほめておいていいと思うのでありますが、しかしまだまだくつを隔ててかゆいところをかくような点もございますし、わかっておって黙っておる点もないことはないと思うのでありますが、少くともこの行政管理庁の勧告に表われた点だけでも国鉄については検討をする、場合によりましては、あるいは公社を変えて直接国営に移すというようなお考えがありますかどうか、伺いたいのであります。
  132. 河野一郎

    河野国務大臣 御指摘の通り、国鉄に対する監査をいたしました結果は、必ずしも十分でない点もあるのでございまして、これは現行法によっては十分に意を尽さぬ点もありますので、今回臨時国会を通じて行政管理庁関係の法律の改正を願いまして、これらのものを徹底的に監査ができるようにしていきたい。また管理庁の職員にいたしましても、地方に分散いたしまして、従来とかく会計検査院と同じ方向でやっておるというような点もありましたので、それらの職員をなるべく一カ所に集中して、重点的に監査をしていく。そしてより以上目的を達成していきたいと今考えておるわけでございます。そこで国鉄の問題でございますが、その結果として機構改革の際にどうするか。今お話のように、今の制度を変えて従前の鉄道省もしくは運輸省に直したらどうだというような御意見も方々にありますので、むろんそれについて研究を加えまして、その結論は、いずれをとるかということをまだ出しておりませんが、研究の課題にはいたしておるわけであります。
  133. 武藤運十郎

    ○武藤委員 承わりましたが、次に運輸大臣に伺います。  昨日の新聞によりますと、何か運輸大臣は国鉄法の改正を企図されておるやに伺いますけれども、そういうお考えがあるのでしょうか。
  134. 吉野信次

    ○吉野国務大臣 ただいま行政管理庁長官からもお話がありました通り、国鉄の公共企業体としてのあり方につきまして世間にはいろいろの論がございますが、今それについてせっかく検討中でございます。その結果によりましては、あるいは国鉄の基本法の国有鉄道法の改正というようなことにも及ぶかもしれませんが、まだそれをやるともやらぬとも、今その内部におきましてせっかく検討中の段階でございます。
  135. 武藤運十郎

    ○武藤委員 私はやるべきだという考えを持っております。先ほどの行政管理庁の指摘されました国鉄の業態だけを見ましても、放漫にして無責任な経営、外郭団体との腐れ縁、特定請負人との不当な契約、請負、人事その他いわゆる国鉄一家の実情と国費の乱費、これはいずれも行政管理庁の勧告の中に含まれておる事実であります。こういう不都合な国鉄の運営を改革するためには、国有鉄道法四十六条と四十九条を改正する以外になかろうと私は思うのであります。四十六条というのは御承知の通り日本国有鉄道は、法律に定める場合の外、営業線及びこれに準ずる重要な財産を譲渡し、交換し、又は担保に供することができない。」、こういうふうに規定をされておりますけれども、「譲渡し、交換し、又は担保に供することができない。」というこの三つを禁じておるだけでありまして、貸付ということは除外をされておるのであります。聞くところによりますると、国鉄の総資産は一兆八千億ないし二兆といわれております。しかしながらこの国鉄の膨大な財産というものは、国有財産法上の国有財産ではございません。従いましてその管理、処分、一切の権限は一国鉄総裁にあるのでありまして、大蔵大臣の権限外にあるわけであります。国有財産法によりますれば、十八条、十九条によって貸付も禁じられておりますけれども、国鉄法によりますると貸付だけは除外をされております。ここに非常に大きな問題があるのでありまして、この国有鉄道法が昭和二十四年に改正をされるときにも、参議院におきまして非常にやかましく、どうしてこの貸付を四十六条の中に含ませないのか、こういう意見が出ておったわけであります。しかし結局原案の通り通過をしまして、貸付も近い将来において国有鉄道法の四十六条の中へ入れるということで通過をしたわけであります。私がなぜこの貸付ということを非常にやかましく言うかと申しますと、場合によっては譲渡あるいは担保に供するという問題よりも、貸付の方がはるかに大きい場合があると思うのであります。これは、先般鉄道会館問題についても非常に大きな問題に発展をしたわけでございます。今非常に問題になっております民衆駅の問題、民間の資本の鉄道の駅舎に導入をしていこうというような問題について、たとえば新宿駅の例をとりましても、これは非常に膨大なものです。私は二十年新宿駅のそばに住まっておりまして、よく知っておるのでございますけれども、新宿の民衆駅を高島屋が中心で作ろうという運動が行われております。それに対する非常な強い反対運動もあります。国鉄がなぜこの民衆駅を民間の資本をつぎ込んでやるかという理由を伺ってみますと、国鉄に金がないから——たとえば新宿駅にしますならば、東口だけならば二十億円、西口、南口などを合せても三十億円くらいだというのです。この金がないから高島屋、すなわち新宿建物株式会社という名目ですけれども、そこから資本を導入して、駅を作らせるというのです。その駅を作る場合に、今の貸付の問題が起ってくるわけです。建物を建てるのに土地が必要です。高島屋から出されておりますところの目論見書を見ますと、そのために約四千坪を使います。このうちには東京都の土地も少しは入っておりますけれども、大体において国鉄総裁の自由になるところの土地が四千坪です。あの近所の最近における取引の相場を見ますと、所有権ではありません、借地権だけで一坪三百万から五百万円です。四千坪と申しますと、百二十億ないし二百億です。この百二十億ないし二百億という莫大な借地権が高島屋に、新宿建物株式会社に無償で貸し付けられるということになるわけです。わずか二十億ないし三十億の金を出してもらうために、百二十億ないし二百億の価値のものをただ提供することができることになるわけでありますが、これは私は非常な問題だと思うのです。  そこで、国鉄法の改正に戻りますけれども、四十六条のうちに貸付というものを入れるならば、前の鉄道会館のような問題も起りませんし、今度の新宿民衆駅の問題についても、問題を疑われることなしに処理することができると思うのであります。従ってこの四十六条は、そういう重要な財産の場合には貸付を禁ずるとか、あるいは貸付をする場合には、政府または国会の承認を得るとかいうような方法にしなければなるまいと考えるのであります。この点について、運輸大臣のお考えを承わりたいと思います。
  136. 吉野信次

    ○吉野国務大臣 今御指摘になりました法律の条項、民衆駅なんかの問題も、もちろん検討いたします重要な項目として考えております。ただ今それをどうするか、こうするかということは、先ほど申しました通り、今は申し上げる段階になっておりません。申し上げるまでもなく、国有鉄道の経営の形は国営なんです。ただ国営の形を官僚組織でやるか、あるいは公共企業体でやるかというときに、四年前の法律は公共企業体という方で、その経営の主体に比較的広範な自主性を認めた。こういうのが現在の法律の形態でございますから、それが過去の実績においてうまくいかない。それをどういうふうに変えるかというのが問題でございまして、それだからといって、すぐにそれを元の官僚組織に返す方がいいという結論も出てこない。その中間においていろいろな問題がありますから、今御指摘になった点も、もちろん私どもが慎重に考慮いたしまして、その結果結論を得れば、自然法律の改正ということにもなるだろう、こう考えております。
  137. 武藤運十郎

    ○武藤委員 国鉄法の改正に関連をしまして、その次に第四十九条の問題——先ほど申しましたように四十六条と四十九条が国鉄運営の中心になる条文だと思うのです。四十九条について伺いますが、四十九条は請負その他についての一般公開競争入札に関する規定であります。読んでみますと、四十九条「日本国有鉄道が売買、貸借、請負その他の契約を締結する場合においては、公告して一般競争入札の方法に準じ申込をさせ、その最低又は最高の価格による申込者又は申込者との価格その他の条件について公正な協議を経て定めた者とこれをしなければならない。但し、」これからが問題です。「但し、緊急な必要のある場合、一般競争入札の方法に準じてすることが不利である場合又は政令の定める場合においては、この限りでない。」というこのただし書きが非常に問題なんです。私は大体こういうものは原則に従いまして、一般公開した競争入札によらなければならないと思うのです。これをやらないで、好きかってな随意契約をするから、鉄道会館のような問題も起りますし、今度の新宿民衆駅の問題も起ってくると考えます。この例外の緊急の必要がある場合、それから不利である場合、政令の定める場合というのは、御承知の通り国鉄法施行令二十五条の六でございますけれども、「契約の性質又は目的が競争を許さない場合」こうなっておりまして、要するに緊急の必要がある場合、あるいは不利益である場合、契約の性質または目的が競争を許さない場合というときには随意契約をしてもよろしいということになっておりますが、一体その判断はだれがするかということになりますと、国鉄総裁がすることになるわけであります。従ってどういう随意契約でも、その認定、緊急の必要があるかどうか、不利益であるかどうか、あるいは契約の性質、目的がこれを許すか許さないかというような問題は、すべて国鉄総裁にまかされている。自分のやることを自分で判断をしてきめるということにあるのであって、全く情実がここに入り込む余地があるわけであります。そのために、行政管理庁の調査を見ましても、国鉄の積算によるところの予定価格と競落申し込みの価格とがほとんど一致をするという、まことに不思議な話でありますけれども、そういう例がたくさん出てきている。従って今度の民衆駅の問題にしましても、初めから特定の高島屋なりあるいは新宿建物株式会社というものを予定をしまして——ちょうど鉄道会館を予定したように予定をしまして、それとの話し合い契約によってこれだけの莫大な国鉄の財産を貸し付ける、処分をするということになるわけでありますが、この点が非常にガンだと思うんです。これを改正しなかったならば、国鉄の運営というものはいつまでたちましてもいわゆる国鉄一家によって龍断をされまして、次から次へと弊害が絶えないのではないかと考えられます。この四十九条についての、言いかえをするならば一般公開入札に関して御意見を承わりたい。あるいはこういうふうな例外規定、ただし書きを置いてもいいけれども、いいとすれば、その判断は国鉄総裁が自分自分のことを判断するんではなくて、国会なり政府なりにその緊急の必要があるかどうか、あるいは不利であるかどうか、あるいは契約の性質または目的が競争を許さないということであるかどうかということの判断権を国鉄から奪いまして、国会なりあるいは政府なりに持ってくるということになりますれば、このただし書きというものは乱用されないで済むと思うのでありまするけれども、そういう点に関する運輸大臣の御見解を承わりたいと思います。
  138. 吉野信次

    ○吉野国務大臣 お尋ねの点はまことにごもっともでございます。ああいう金額の多いものにつきましては、公入札またはこれに準ずる方法でやるのがよろしいのであります。随意契約のごときはきわめて例外の措置でなければならぬと存じます。従いまして今御指摘になりました条項について乱用の事実があるというなら、これをどういうふうにして防ぐか、その研究の結果、自然また法律の改正ということにも及ぶことがあり得ると思いますが、ただただいまの段階において、それをどういうふうにいじるいじらぬということにはまだ達しておらぬということを、先ほどの四十六条の点に触れましたと同じことで御了承を願いたいと思います。
  139. 三浦一雄

    三浦委員長 武藤さんに申し上げますが、お約束の時間も迫っておりますから、どうぞその範囲で一つお願いいたします。
  140. 武藤運十郎

    ○武藤委員 国鉄の機構の改革、運営の批判追及などについては、私は非常に多くの材料を用意しておりますけれども、今委員長から御注意がありましたように時間もございませんので、別の機会に十分やらしていただくことにしまして、私の質問はこれで終ります。
  141. 三浦一雄

    三浦委員長 今澄勇君。
  142. 今澄勇

    今澄委員 私はまず日韓問題について、一、二点疑義のあるところを総理に伺いたいと思います。  政府は、閣僚懇談会を設けて日韓問題の打開策をきめたと先ほど申されましたが、すでに四年の長い日時を経過した今日、抜本的な対策が今欠けておるのであります。各省ごとのいろいろな担当者はおのおの努力しておるでありましょう。けれども政府全体として、総理大臣はこの問題を一体いかなる根本方策のもとに押し進めていこうとするのかという、内閣総理大臣としての日韓問題解決に対する基本的態度というのは、いまだ一言も総理からは私どもは聞いておらぬのであります。この点について総理所信をまず伺っておきたいと思います。
  143. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 日韓の間には解決しなくてはならない二、三の問題がございます。そういうような問題も解決できていないということが李ライン等にも影響があるものと思うのであります。それでありますから、日韓の間に存するいろいろの問題をできるだけすみやかに解決いたしまして、李ラインの問題を有利に展開さしていきたいと思います。もちろん話合いによって解決をしたいということを考えております。
  144. 今澄勇

    今澄委員 今の総理答弁からすると、いろいろなほかの問題と関連をして話合いによる外交交渉で解決をいたしたい、こういう答弁であると了承いたします。さすれば私は外交手段によるとするならば、政府は国連提訴の道をとるか、あるいはアラフラ海の際のごとく国際司法裁判所に提訴をするか、これは当事国の了解が要するとはいいながら、たとい韓国の同意がなくとも日本が国際的な世論を喚起する意味においては、国際司法裁判所に提訴するということも考えられることであります。もう一つはこういう国際的世論喚起の道のほかに、日本は独立国であるから、みずから外交の責任を内閣が負いたいということならば、ほんとう総理がみずから行かれるのがよいけれども、行かれなければ外務大臣を向うに派遣するとか、あるいはもう一つは、内閣の性格上アメリカと緊密な関係を持っておられる鳩山内閣は、アメリカに調停を求めて、アメリカの調停によってこの問題を解決するとか、少くとも具体的な方策は三つあるわけであります。この三つの方策について、内閣はそのいずれをとるのかということもはっきりしておりません。その外交方策の中の一体どういうことをおもにしてこの問題を解決しようとしておるのか、この点についてもう一度鳩山さんのお答えを願いたいと思います。
  145. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 その点につきましては、外務大臣から答弁をしてもらいます。
  146. 重光葵

    ○重光国務大臣 お話の通りに、日韓関係を正常化するための交渉につきましては、いろいろなことを考えなければなりません。いろいろなことを考えます前に、まずもって双方において交渉するという気持を作っていかなければならぬと思います。そうでなければどんな案を作っても、むだとは申しませんが、決着をすることはできません。そこで双方が交渉をするように仕向けていく、これに十分骨を折っておるわけでございます。それにつきましては、公けに机に向い会って交渉するというようなことでなくして、非公式な方法で交渉にいくというようなことで十分接触をいたして参りました、そうしてその会談におきまして、相当折衝の項目等についても議論をすることができたのでありますが、しかしそれは不幸にして双方の関係が、漁業問題等につきまして起りました関係上、中断をされておるのでございます。それは非常に遺憾なことでございます。  さてどういう交渉の段取り計画をするか。たとえば国際司法裁判所に訴える、国際連合に訴える、あるいは第三国の仲介を求めるというようなことも考えなければなりません。これは、たとえば今お話がありました公海の問題と関連する問題のごときは、国際司法裁判所の提訴事項として相当適格性を持っておるかもしれません。それは非常に検討いたしておるのでありますが、何分それも結局相手方の承諾を得なければなりませんので、非公式の会合において先方の意向を十分確めるように進めては来ましたけれども、そこまでについて成案を得るに至っておりません。第三国の仲介ということも、これは非常に差し迫ったことについては適切な処置であろうかと思います。その問題につきましても、いろいろと今、これはどこかで説明を申し上げましたが、地ならし的の工作はいたしております。しかしそれらの内容について、十分にまだ御説明をいたすことを差し控えたいと思いますが、これも考えております。いずれにしましても、何とかして外交手段でもってこれを軌道に乗らして目的を達したいと、せいぜい努力をいたしておるのでございます。時期が来ましたならば遅滞なく御報告を申し上げることにいたします。
  147. 今澄勇

    今澄委員 大へん御親切な答弁でしたが、今の非公式な会談で努力したと言われるのは、外務省谷顧問、金公使との会談のことでございますか。
  148. 重光葵

    ○重光国務大臣 それもございますし、主として東京でございます。そこでこういうことが成案を得る見込みがつきましたときには、お話の通りに、人を派遣するなり、また政府で私ども極力向うへ参りますとか、そういうことをいたすことは、これはたびたび申し上げます通り、少しも労を惜しむものではございません。まだそこまで話が参っておりません。
  149. 今澄勇

    今澄委員 私は外務大臣あなたが丸の内ホテルで一週間に一度目をきめてアリソン大使と会談されておる状態や、谷顧問並びに金公使との韓国問題の折衝の状態等、われわれも関心を持っておるから知っておるのです。こういう重大な段階になってくれば、当然外務大臣は、それらの折衝の結果どういうふうな状態であってどういう方針をとるかということくらいは当国会に御発表になって、そう外交上のあれはないと私は思いますけれども、お立場もありましょうから、この点はこのくらいにしておきましょう。  もう一つ、ワシントン五日発APの電報によると、アメリカ官辺筋ではアメリカが第七艦隊を使って漁業水域の平和を確保することを意味する見解を発表しておるが、日本政府としてアメリカの保護を要求したのかどうか。私はこの第七艦隊が漁業水域の平和を確保することを意味する見解を発表したということは重大であると思いますが、外務省はアメリカに対して、今日の事態かくのごとき情勢であるから、これが漁場の平和に関するアメリカの援助を要請したのかどうか、この情報は外務省としてはどういうふうにお考えになるか、ちょっと御答弁を願いたいと思います。
  150. 重光葵

    ○重光国務大臣 その情報の内容につきましては、まだ正確な報告を得ておりません。それからまた政府として、また外務省として米国に漁業区域の防禦、保護という点について申し入れを、何らしたことはございませんことを申し上げます。
  151. 今澄勇

    今澄委員 外務大臣がいつもこの国会答弁することと、実際にアメリカとの折衝の間に食い違いのあることは、従来指摘した通りでありますが、今回のこの問題については、総理の見解では日本の自衛隊による保護は憲法九条に関して違反であると思うからやらないという答弁がさっきありました。アメリカに対する政府の要請もないということになります。そうすると政府はここに李承晩ラインを全然認めておらぬという立場からすると、漁船の出漁を放任して何らなすべきもない、外交的にも非公式会議で検討したが、結論が出ない、こういう状態で本問題解決に関する基本的な政府の態度というものは何にもない。ただしじんぜん時を過しておるということに私はなると思います。大体李承晩ラインというのは、朝鮮事変のときにアメリカがあそこにしいた防衛水域、その防衛水域がそのまま今日李承晩ラインとなって、韓国が指定をして残っておるのです。これが先例を開いたものは実に当時の国連であり、アメリカであります。私はこれらの国連加盟国並びにこの防衛水域をしいたアメリカが、今日かような紛争を前にして、それはこういうものであるという見解を表明し、韓国に何らかの意思を伝えるということは当然でなければなりません。外務大臣はそのような問題について、アメリカにいろいろと抗議をされ、アメリカのそういう問題に対する処理についての態度を求められたことがあるかどうか。これらの問題について一つ答弁を願いたいと思います。
  152. 重光葵

    ○重光国務大臣 むろんそれらの問題についてはいろいろな意見を向うに申し入れております。しかしその内容その他についてはいずれ時期が来たらまた御報告をすることにいたします。
  153. 今澄勇

    今澄委員 もう一つ続けて聞きますが、ワシントン六日発の共同であります。これによると、アメリカ政府筋の見解として、まずアメリカがこの日韓問題に対する調停に立つ意思のあること、その条件の一つは、韓国は李ライン宣言を取り消すべし。もう一つの条件は、日韓合同委員会を作り、漁場の割当を行う、この場合日本側に対して水揚げ高の制限、一部沿岸漁区の立ち入り制限を設けて、李承晩ラインと実行をある程度認めさせる。こういう調停案でアメリカが調停してもよいという態度を持っておるということを、ワシントン発六日の共同電は伝えておりますが、外務省はこのアメリカの調停案に対してはどういう見解であり、こういった調停があれば外務省としてはお受けになるのかどうか。その点について重光外務大臣一つ具体的にお伺いします。
  154. 重光葵

    ○重光国務大臣 その共同通信の内容は私も承知をいたしております。そうしてそれはアメリカの意向がこうであるという通信でございますから、まずアメリカの意向を十分確かめた上で処置したいと、こう考えております。その手続は今とっておる次第でございます。
  155. 今澄勇

    今澄委員 私は外務大臣にお尋ねをしますが、とにかくここに四年にわたって取り調べ、折衝して、考えてきたのです。そこで今日この問題についてまた折衝、取り調べ、検討中というようなことをこの国会外務大臣が申されておったのではわが国の日本外交の責任者として実に心もとないと私は思います。国民もおそらくそう感ずるでありましょう。  なお私は突っ込んで申し上げたいこともあるが、いろいろ対外的な影響がありますから遠慮申し上げますが、政府は、そういうふうにいろいろと問題が微妙で手も足も出ぬならば、日韓の漁業者の協商会議——韓国の漁業者と日本の漁業者を直接合わせて、そうしてこれらの朝鮮海域における協商会議をやらせて、具体的な打開策をきめさせ、それを取り上げて具体的な解決をはかろうという意思がありますかどうですか。
  156. 重光葵

    ○重光国務大臣 その問題は今日まで問題になっておりません。私は承知しておりません。
  157. 今澄勇

    今澄委員 外務省はそういうことをやらせる意思はありませんか。
  158. 重光葵

    ○重光国務大臣 今その考えは持っておりません。
  159. 今澄勇

    今澄委員 そこで担当大臣の河野農林大臣に聞きますが、これはやはり農林省の担当のことでありまして、私は少くともこれらの水産行政に携わる農林省が一いろいろ危険なこれらの漁船の保護は今の総理の一言で困難、それから外交の方は外務大臣がああいうような状態、さすれば一応両国の漁業者を協商させて、そこからもし妥協がとれればそれを取り上げて、一つ働きかけるというような方向を取るより道はないと思いますが、これに対して河野農林大臣はどういう御見解でありますか。
  160. 河野一郎

    河野国務大臣 お答えいたします。まだそういう話は聞いておりません。
  161. 今澄勇

    今澄委員 とにかく私は、少くともこういう重大な問題に対しては政府としてはもっと叡知と創意をこらして国民の期待にこたえるくらいなことをおやりになったらよいと思います。本会議で聞いた重光外務大臣の報告は、もう二週間も三週間にもなっておるのに、その砲撃沈声明が、ただ照会中であるというような事務的な報告、さらにきょうの答弁を聞いてみると、これまた全然具体的に速急にものを解決するようなあれはありません。現に李承晩水域には、日本漁船は、国がこれを認めておらぬのですから、漁に出ているのです。李承晩水域の中で魚をとっておるのです。連日追っかけ回されておるわけであります。それに対して農林大臣は何も聞いておらぬというような状態では話にならぬので、きのう農林大臣から家族の救済、それから漁船の保護等に関する対策が述べられましたけれども、その財源、並びにこれは法律を要するものとすれば、法律の提出時期等々、私は詳しくは尋ねませんが、少くとも政府は、いま少しく真剣に、本腰を入れてこの問題に取り組む必要があると思います。総理大臣、あなたの先ほどの答弁と違って、各省大臣の今の答弁をお聞きになると、この日韓問題の重大な割に、いかに各省がこれまで身を入れていなかったかということがおわかりになったでありましょう。これが今回漁業者があなたにお会い申し上げ、いろいろと運動をして、政府にふんまんをぶちまけたほんとうの姿であります。総理大臣として、一つこの問題に対してどういうふうにおやりになるか、もう一ぺん態度を聞いて本問題に対する質問を終ります。
  162. 河野一郎

    河野国務大臣 ちょっとつけ加えて申し上げておきますが、ただいま今澄さんから、きのう私が答弁しましたことについて重ねて御意見でございましたが、財源につきましては、予備費のうちからこれに振り当てるということで考えております。大蔵省とも目下折衝中であります。私はなすだけのことは農林省の所管においてやっておるつもりであります。決してなおざりにしておると考えておりません。ただいまのお尋ねは、朝鮮の漁師と日本の漁師と話し合いをさしてやるようなことを考えたらどうかというようなことでございますけれども、朝鮮の漁師さんと日本の漁師さんと話し合いはちょっとできぬだろうと思います。そういうことをやろうとしても困難でありまして、そういうことは出ておりませんから、私はそういうことを考えておらないと申したわけであります。決して無責任ななおざりにするようなことは考えておりません。一生懸命やっておりますから御了承願います。
  163. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 この日韓の李ラインの問題は、非常に心を悩める問題であります。非常に逼迫した問題と考えております。政府としてこれをなおざりにしておるというようなことは全然ありません。
  164. 今澄勇

    今澄委員 それではせっかく農林大臣から親切な答弁がありましたから、折衝の結果、大蔵省は予備費を大体どの程度これに計上するか、ちょっと大蔵大臣から御答弁願います。
  165. 河野一郎

    河野国務大臣 今数字を整備しておりますが、大体五千万円以内でおさまるというようなことでございます。大体その程度できのう私がお答えしたところはいけるだろうというふうに考えております。決してこれを大蔵省が値切るとか、値切られるとかいうことはなしに、これは山口県その他の人に安心して十分やれると思います。
  166. 今澄勇

    今澄委員 河野さんは大蔵大臣も兼務の模様でありますが、今の河野さんの予備費の件については、大蔵大臣は御了承でありますか。
  167. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 その点につきましては、農林大臣ともよく相談しまして適当な額を考えておるわけであります。
  168. 今澄勇

    今澄委員 それでは私は、明年度予算編成に関する政府の基本方針並びに明年度の日本経済の見通し等についてお聞きしたいのでありますが、まずその前提として、明年度の防衛関係費がどうなるかということが、わが国予算編成の特徴でありますから、この点からお聞きをしたいと思います。先ほど武藤議員質問に対して、大蔵大臣は抽象的なお答えでよく要領がとれませんでしたが、はっきり聞きたいのは、日米交渉において、削減の基準を行政協定に基く五百五十八億にして来年度分を折衝しておるのか、それとも三十年度予算総額を基礎にしてやっておるのかということです。鳩山内閣が声明したこの共同声明による拘束力について、私はこの前の予算委員会鳩山総理にただしましたところが、この共同声明の拘束力は、この共同声明文中に、ただし鳩山内閣に限りというようなただし書がない限りは、この共同声明が持つ拘束力は歴代の内閣に及ぶということを、鳩山さんが答弁された三日後のこの予算委員会の公聴会において、日本の国際法学者がひとしくこれを証明をいたしました。このことだけは私は鳩山さんに申しておきます。大蔵省はこの方針のもとにおいて五百五十八億を中心にするか、それとも三十年度の予算総額を基準にするか、この点について折衝経過のスタートからお聞きしたいと思います。
  169. 重光葵

    ○重光国務大臣 これは外交交渉のことでありますから、私から申し上げましょう。去年の折衝は共同声明で発表になりました通り、去年限りということになっております。しかしそれでは交渉の基礎をどこに置くか、またもとに戻って行政協定の基礎に戻るのであるかどうかというお話のようでございました。その点については、ことしはことしで新たに交渉をやる頭でもって新たに考えております。
  170. 今澄勇

    今澄委員 そこで外務大臣にお伺いをいたしますが、私はことしの交渉方式は、できればいわゆるスライディング・スロー・ダウン、下に落ちる自然的な一般方式でやりたいという交渉だけでも、あなたの方から出した防衛計画の承認がないから、そこで本年度分については暫定的に本年だけは切り離してこれをきめるというような交渉方式に今進んでいるのではないかと思いますが、どうですか。
  171. 重光葵

    ○重光国務大臣 その交渉の内容は申し上げられませんけれども、そういうことにきめてやっているわけでも何でもございません。それらの点については、最も有利なように、双方に都合のいいように、またわが方にとっては希望の達成するように、いろいろ案を具して進んでいるわけでございます。
  172. 今澄勇

    今澄委員 そこで防衛庁長官にお伺いをいたします。防衛六カ年計画による三十一年度の防衛庁費は、千三十三億と伝えられておりますが、その三十一年度の防衛庁の総括予算は、あなたの方ではどの程度要求をいたしておりますか。
  173. 船田中

    ○船田国務大臣 政府といたしましては、国力及び国情に合う自衛体制を整備するという考えのもとに、ただいまお示しのような来年度の予算につきましては現在検討中でございますが、大体大蔵省に要求しておりますものは、ただいまお示しのようなものを要求いたしております。
  174. 今澄勇

    今澄委員 この千三十三億の数字が出た基礎となる計画がなくてはなりません。そこで私は最終的にきまったものではなくても、本会議であなたが答弁いたしました、一応アメリカに示したというその防衛の六カ年計画の試案は、概略にして十八万名案なのか、二十万名案なのか、その他概括のところでけっこうですが、ちょっと報告していただきたいと思います。
  175. 船田中

    ○船田国務大臣 先般本会議におきまして、河野密君から御質問がありましたときに、私がお答え申し上げたことについて、多少の誤解があるようでございますから、はっきり申し上げておきますが、それは防衛六カ年計画というものを先方に示したということについては、私は関知しておるものではないのであります。外務大臣がこの夏渡米されるときに、参考資料として防衛六カ年計画について、その参考資料を外務大臣に示したので、政府として防衛六カ年計画ができておるという趣旨ではございません。防衛庁の試案として作りましたものを、外務大臣に提示をしておった、こういう意味でございます。この点は多少私の答弁について誤解があったようでございますから、この機会にはっきり申し上げておきます。この試案によりますと、大体陸上自衛官が十八万名、それから海上自衛隊におきましては艦艇約十二万四千トン、航空機約百八十機、それから航空自衛隊におきましては、飛行機が千三百機ということでございまして、このほかに若干の予備自衛官と、もしでき得れば郷土防衛隊というものを考えておる次第であります。
  176. 今澄勇

    今澄委員 防衛庁長官の報告で一応重光外務大臣が携行した防衛庁の試案というものがわかりました。先ほど重光外務大臣は、この試案はアメリカ側に見せても効果がないので、私はこれを問題にしなかったというような話でありましたが、この試案をアメリカ側に示して、アメリカ側としてはこれに対して不満の意を表したというか、あるいはこれに対してどういう見解があったというか、私はもう一度外務大臣にお聞きをしておきたいと思います。
  177. 重光葵

    ○重光国務大臣 そういう数字を示さなかったのでありますから、別にその問題についてかれこれと議論はございませんでした。しかしながらアメリカ側はかねがね相当日本に対する期待が大きかったのでございまして、そこでその期待は、私どもの非公式に聞いておるところでは十八万名というような地上軍では満足ができない、少くとも二十数万なければならぬというようなことを、アメリカの軍部の方でしきりに言っておる、あるいは三十万以上というようなことを言っておるということを聞いております。そういうわけでございますから、私はそういう数字について触れることは適当でないと思って避けました。私としてはただ日本側において防衛力の増強をする決意のあるということを示したのでございます。
  178. 今澄勇

    今澄委員 そこで九月三日ワシントン電によると、重光外務大臣は議事録はない、ないと、しきりと否定をしておりますが、その議事録外の海外派兵問題の討論内容というのをあけてみると、この会談の中において、アメリカは日本の防衛軍三十五万、日本側は十八万の増強計画をそれぞれ提案し、その結論は明らかとなっていない、近く閣議で年内に決定されると伝えられる防衛計画にアメリカ側の意向を反映することで、会談は別れたとなっておりますが、あなたはとても答弁はなさいますまいが、アメリカが三十五万を要求し、日本側がこの会談で十八万の数字を出したということを、今の防衛庁長官の数字から私ははっきりと確認をすることができます。私はこの際これらの日本の防衛についてのアメリカ側と日本側とのそういった折衝の問題等は、もう少し外務大臣国会に明らかに報告をする必要があると思います。私はこの予算編成にからんでも、非常に多くの防衛に関する問題について聞きたいことがありますが、いろいろ時間の関係もありますから、私は以上の議事録のそのまた一部を読み上げましたが、重光外務大臣は、この議事録は全然無根の事実であり、そういうことはないとここで言い切れますか。
  179. 重光葵

    ○重光国務大臣 その議事録というのは、私が渡米の際に米国側と交渉したときの議事録の意味のことだと思いますが、そうですが。それは初めから議事録は作らないということで話し合いをしたのでございますから、議事録はございません。
  180. 今澄勇

    今澄委員 事実は……。
  181. 重光葵

    ○重光国務大臣 事実は議事録はございません。何もございませんが、しかし私は私自身のメモはとっております。これは私限りのものでございます。それからまた今のアメリカ側から三十五万を要求したとか、そういうことはございません。それはいろいろ新聞で推測した報道はあるかもしれません、しかしそれは私は一々確認して申すわけには参りません。実際ございません。そこで日本側は十八万の地上軍を作る意思がある。このくらいの誠意を持っておるのだというようなことは会議外でも言ったことはございます。しかしそれは今の防衛庁の試案をもとにして、実はこれだけの決意を持っておるのだからというので申したことはございますけれども、その他の数字を、私ははっきり今そういうことを議論をするのは適当でないと思って実は手控えたのでございます。さような状況であることを御承知願います。
  182. 今澄勇

    今澄委員 外務大臣答弁は、了承できない幾多の疑問がありますが、時間の関係上先を急いで、防衛六カ年計画による三十一年度防衛庁費千三十三億、これに対して防衛分担金のうち今度は軍事顧問団経費及び施設提供費、これは基地拡張のための土地買収等で、私はこれは相当増額にならなくてはならぬと思いますが、この防衛分担金のうちの顧問団経費、施設提供費等は、大体来年度は増額ですか、減額ですか。私は減額する要素は全然ないと思いますが、これについて外務大臣からでも大蔵大臣からでも見通し一つ聞きたいと思います。
  183. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 その金額等についてはただいま検討を加えております。同時にこれはまたアメリカ側との折衝もしようといたして、当方としてはなるべくふやさないようにしたいと思っておりますが、今後の経過に待たなくてはなりません。
  184. 今澄勇

    今澄委員 私はこれはとても減額の見通しはないと思うのです。まあ減額するとすれば、米軍交付金の方の見通しですが、政府は八十億から百十億の間、こういう非公式な見解を定めておるそうでありますが、大体米軍交付金は昭和三十一年度予算においては幾らの減額をめどとして交渉しているか、あるいは減額せしめる見通しであるか、大蔵大臣でも外務大臣でもよろしゅうございます。答弁を願いたいと思います。
  185. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 それらの点についてはなお今後に待たなくてはなりませんので、今ここで申し上げかねます。
  186. 今澄勇

    今澄委員 それは大蔵大臣、大体政府の態度がきまっており、何か目安がなければ交渉のあれはできないのであるから、政府は目安をどこにおいて、少くとも削減はどの程度可能であるかということについて、もう一度私は大蔵大臣に答弁を要求します。
  187. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私が質問の要点をあなたから聞きたいのです。
  188. 今澄勇

    今澄委員 どの程度の減額を見通し交渉しているのか。交渉しているのに見通しもないことはないと思う。
  189. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 分担金に関してですか。
  190. 今澄勇

    今澄委員 そうです。
  191. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは全体の防衛庁費、これ自体がはっきりしない。分担金をどういうふうに持っていくかということは、私はここで申し上げかねるのであります。しかし大蔵当局としては、少くとも昨年度の分担金をさらに削減ができるように期待をいたしておる、こういうことは申し上げてよろしいかと思います。
  192. 今澄勇

    今澄委員 そこでいよいよ最後の明年度の防衛関係費の総額です。それは本年度の千三百二七七億より一体増額するのか、減額するのか。これは国内の防衛関係費その他全部を含めて、大蔵省の査定に対する方針ですね。これは大蔵大臣は一体どうとっておられるか、これをお聞きしたいと思います。
  193. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 防衛庁費につきましては、今検討を加えておるというところにありまして、これがどういうふうになりますか。今ここでやはり申し上げかねます。
  194. 今澄勇

    今澄委員 ことしより来年はふえるか減るか。
  195. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは今申し上げましたように、ここで具体的に申し上げかねるのでありますが、今年度よりも減るということは困難であろう、こういうふうに私は考えておりますが、大蔵当局としてはなるべく増加しないように努力をいたす、こういうことであります。
  196. 今澄勇

    今澄委員 大体今年度より減ることは困難であると、大蔵大臣は明らかに防衛関係費用が増大することを答弁いたしました。これは私はやむを得ぬことだと思います。そうなる以外に道がないのです。本年度の実質的な防衛関係費は、一般会計計上が千三百二十七億、繰り越し明許費が二百二十九億、予算外契約が百五十四億、計約千七百億円に達します。本年度は予算の執行が七月以降となっておるから、昨年度よりも繰り越し明許費と未使用残金が多額になると考えられております。私はこの未使用残金というものを、過日の本会議であなたの方の前尾議員も指摘しておる通り、ほかの使途に組みかえるということが、やはり健全財政の建前からすると当然に考えられるのであるが、私は大蔵大臣にこの未使用分の繰り越しと補正予算の関係と、来年度予算の関係について、大蔵省に方針があるならお聞かせを願いたいと思います。
  197. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 聴音器を直しておりましたのでちょっと質問の要旨がわからないのですが……。
  198. 今澄勇

    今澄委員 とにかく大蔵大臣、あなたは予算の審議をする責任者ですよ。その責任者が質問者にもうこれで二度何を聞かれたかわからぬという態度で、いかに与党が多数になったからというても、一萬田さんそう態度を豹変するものじゃありません。不謹慎きわまるといわなければなりません。  少くとも繰り越しが概略申せば、防衛関係費用については多くなった。この繰り越しの来年に回る金額の概略は幾らか。それは一体今度の補正予算にあるいは来年度の本予算にどういうふうな考え方で使われるか。さらに突っ込んで申せば、財政法等の関係があって、こういうことは非常にまずいことだし違反だが、これに対するあなたの御見解を聞きたい、こういうことです。
  199. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私の考えは、本年度に繰り越されたのが約二百三十億ばかりある。こういうふうな繰り越しの多いことはいいことじゃない、希望されないのです。特に財政がこういうふうに苦しいときは、なるべく繰り越しを少くするという方針をとっておりまして、来年度においてはこの繰り越しをこういうふうに大きく残さないというふうに計画を考えていこう、かように考えております。
  200. 今澄勇

    今澄委員 結局こうなってくると、来年度の予算では防衛関係の費用は増大の一途、これに対して防衛関係費用の繰り越しもほかに使わないからみなそれに注ぎ込むということで、予算は非常に一方的に非生産的な防衛関係費の方が増大をするという点をここに確認をして、その他の費目について大蔵大臣にお伺いいたします。  しからばその他の一般経費の歳出の見通しですが、一体政府に人口の自然増に伴う諸経費の増額というものをいかほどに推定しているか。三十一年度予算の編成については、当然人口がふえますが、この人口の増加に関する諸経費の増額分ですが、これを大蔵大臣から聞きたいと思います。
  201. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 まだその点について正確なことはここで申し上げかねますが、当然これは人口がふえれば社会保障関係、それから学校関係の費用というものがふえてくると思っております。従いまして今後の財政のあんばいについては、よほど重点的な効率的な財政の使用を考えていかなければならぬと考えております。
  202. 今澄勇

    今澄委員 旧軍人遺族恩給費、遺家族援護費等の支給率の変更に伴う経費も当然来年度は増加いたします。先ほどのはかんべんしましたが、これは一体どの程度見積っているか、これならばわかるでしょうから、答弁願いたいと思います。
  203. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 その点目下検討中でございますが、軍人恩給につきましては恩給の受給人員の増加という別の要素も入って参ってくるようでありまして、その分を含めまして概略百億くらいのものが増加するのではないかといら見通しをつけておりますが、なお精細なことはこれからの検討によって異同を来すことを御了承いただきたいと思います。
  204. 今澄勇

    今澄委員 森永局長にもう一度伺いますが、先ほど私の聞いた自然増加に対する概略の推算と、もう一つは地方交付税率の引き上げを、本年度予算に見られるように三%引き上げて、来年度は二五%でやるのかどうか、この二点についてお伺いします。
  205. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 人口増加的な自然増の経費の代表的のものは生活保護費、児童保護費、義務教育国庫負担金、大きな経費はこの三つでございますが、当然増加の趨勢にあるわけでございます。単価その他の面にいろいろ査定の問題の要素が残っております。また義務教育費国庫負担の問題にいたしましても、生徒数に応じていかなる割合で先生をふやすかということは、そこには若干査定の要素が入ってくるわけであります。そういった査定の要素を入れないと、金額の検討はつきかねるわけであります。まあ五十億、大まかの見当でございますが、そういった人口増加的な経費として五十億見当には相なろうかと、概観で恐縮でありますが、そういったところであります。  なお地方財政の問題でございますが、来年度は根本的な対策を立てるというようなことで私ども考えております。従いまして一般会計の予算をきめるにつきましても、地方財政の対策がどうなるかということが先決である、かように考えているわけでありまして、その点につきましては目下鋭意検討中であります。ただいまお示しのように、かりにことしと同じように三%であったらばどうなるかということでございますが、これは来年度の所得税、法人税、酒税の見積りがどうなるかという要素にかかってくるわけでありまして、その辺につきましては、まだ最終的な見積りができておりません。かりに本年度と同額だということにいたしますと、百八十八億見当の数字になるわけでございます。
  206. 今澄勇

    今澄委員 そこで森永さんもう一つ……。賠償支払いが明年度からは現実的な問題となってくるが、これの支払いは一般会計支出として取り扱うか、それとも別途考えるかどうか、この点について御答弁を願います。
  207. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 来年度からは、これは特別会計にいたしたいと考えております。
  208. 今澄勇

    今澄委員 そこで私は結論を、今度は大蔵大臣に聞くのですが、そういう今の個々の問題を検討してくると、一般会計の防衛関係以外の費用でも、減額するものは一つもないわけですね。百億ふえ、五十億ふえ、ずっとふえるのですから……。そうすると、一体来年度の予算規模というものは、大蔵大臣の今見ておられる腰だめからするとどの程度になるのか。大蔵大臣が、防衛関係費は概略千四百億、その他の関係費用も、今森永さんとあなたが説明した通りで、そうすると、来年度の予算規模が一体どうなるのかということが必然の結論になりますが、大蔵大臣の見通し一つ聞きたいと思います。
  209. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 来年度の予算規模について、今ここで幾らということは断言しかねるのでありますが、従来のいわゆる一兆円ということには、私は必ずしもこだわりません。しかしながら健全財政、これはあくまで堅持する考えでありますから、自然歳入というものに、限界を求める、こういうことになるだろうと思います。
  210. 今澄勇

    今澄委員 ところが大蔵大臣、あなたの方の主税局長は過ぐる三日、大蔵省対与党の予算の打合会において、明年度の歳入規模はおおむね一兆七十五億円を下回ることはない、こう言明をしておるわけであります。そこで明年度の予算規模というのは、今の主税局長が説明をした一兆七十五億プラス・アルファ、かようにわれわれは考えて差しつかえないかどうか、大蔵大臣にお伺いします。
  211. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 先ほど申しましたように一兆七十五億プラス・アルファ、こういうふうにお考えになることは一向差しつかえありませんが、今ここで幾らということは申し上げかねる。これはまだ今後の検討に待たなくてはなりません。
  212. 今澄勇

    今澄委員 私は、大蔵大臣としてはどうもこれは予算委員会に対する答弁とは思われないと思います。少くとも来年度の予算は、われわれしろうとが見ても大体一兆四百億くらいではないか、かように私どもも考えておるし、今日までの与党とあなた方との予算折衝、大蔵省省議等を詳細に情報をそろえると、そういうふうになってくるのです。そうすると私は今の一兆七十五億、これに何がしか、たとえば一兆四百億とすれば、出さなくちゃならぬが、そのプラス・アルファを大蔵大臣は公債でまかなうのか。開銀債等のごとき新規金融債の発行を考えるのか。少くとも主税局長の言っておるように、一兆七十五億が歳入規模の限度とすれば、防衛関係費用の増大千四百億程度、さらに今言ったいろいろの一般会計の増大、これは切ろうとしても切ることのできない——人口の増加は切ることはできません。いわゆる軍人恩給も切ることはできません。これは増加が必然的になるのです。そういうものをそのまま計上しても、一兆四百億になるのですから、この歳入の不足分とこの一兆何がしの間のアルファは一体何で埋めるか、大蔵大臣はこの点について大蔵省の方針を、一つ予算委員会に報告をいたしてもらいたい。
  213. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 一兆七十五億という数字が出ますが、それは私としては、どういう数字か関知しておらないのであります。しかもこれにプラス・アルファ、こういうお話もありましたが、そういうふうなことは知りません。私が今予算規模として考えていることは、先ほど申し上げましたように、歳入の範囲内において考える。従って具体的にどうなるかは、今後の予算編成方針等を確立してみた上で、初めて具体的に現われてくる、かように考えているわけであります。
  214. 今澄勇

    今澄委員 重ねて聞きますが、それでは大蔵大臣は、来年度予算には新しい公債政策あるいは開銀債等のごとき新規金融債の発行は、全然やらないのであるということをこの予算委員会に対して言われるわけですか。
  215. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 予算の編成方針につきましては、先ほどからしばしば申し上げましたように、ただいま政府等で慎重に検討をいたしているのであります。ただ私といたしましては、内外の経済情勢から見て、あくまで財政経済の健全政策は堅持していかなくちゃならぬという建前をとっております。従いまして、日本の今日の経済状態において公債を発行していくことは、まだその時期でない、こういうふうな考え方を私自身は持っているということを申し上げておきます。
  216. 三浦一雄

    三浦委員長 ちょっと今澄君にお諮りいたしますが、総理大臣外務大臣は渉外事項がございますが、退席してよろしゅうございますか。
  217. 今澄勇

    今澄委員 総理大臣には、私は保全経済の問題でお伺いしなくちゃなりません。それで、私の保全経済に関する質問その他終るまでおっていただくか、そのときに来ていただきたいと思います。外務大臣質問はありませんから、退席していただいてけっこうであります。  そこで私は、ついでにもう一つ一萬田さんに伺っておきたいのは、先般の鳩山総理所信表明において、税制改革をうたっておられます。一萬田蔵相も、勤労所得税の軽減をうたっておりますが、政府の考えている税制改正の税目のおもなものは一体何と何で、大体どういう方向であるかというアウト・ラインを一つここで御報告願いたいと思います。
  218. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 税制改革をしたいということは前からのことでありまして、これにつきましては臨時税制調査会を内閣に持ちまして、ここでただいま鋭意研究を願っております。いずれ近いうちに結論が出ると思いますので、これを参酌しまして今後の税制の改革をしたい。総じて申しますれば、税負担は数度にわたって軽減をいたしたのでありますが、なおやはり税負担が軽いとは申せない。そこで、個人、法人を通じて直接税に重きを置き、またその直接税についても、勤労所得というものについて考慮を払うべきじゃないか、こういうふうな考えを持ちつつ、税制調査会等の答申を待って具体的に考えていきたい、かように思っております。
  219. 今澄勇

    今澄委員 ついでに大蔵大臣に……。法人税に対する特別減免措置の改廃を一体どういうふうにやるか、この法人税関係もちょっと説明願いたいと思います。
  220. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 ただいまの質問の点につきましては、そういう点についても十分この調査会の意見を聞きまして、その後の情勢の変化に適応するように改廃をしたい、かように考えております。
  221. 今澄勇

    今澄委員 そういうおざなりな答弁ではどうにもなりません。私は今お見えになっている高碕経企長官に、今度の六カ年計画、この六カ年計画を一体政府はほんとうにやるのかどうか。それから今回答申されました六カ年計画を見ると、貿易の数字等も、何しろ三十年度十七億六千万ドルから三十二年度は二十二億三千万ドル、三十五年度では二十六億ドルなんというような非常に安易な計画が出ておりますが、これに対する経企長官の見解、これを一つ高碕さんから伺いたいと思います。
  222. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 経済六カ年計画につきましては、計画を立てました以上は当然これを基礎にいたしまして実行に移したい、こう存じておるのでございます。ただこの際に一応申し上げたいと存じますことは、持てる国が自給自足経済を立てるためにいろいろの経済計画を立てるというのと、わが国の経済の立て方はおのずから違っておりまして、三として輸出貿易に依存しておることが多いのであります。各国の経済情勢によってこの数字は変化をいたしますから、変化した場合には時々刻刻この計画等につきましても調整を加える、こういう覚悟でやっていきたい、こう存じております。  第二の御質問の輸出貿易のことにつきましては、五カ年後には二十六億六千万ドル、これは必ずやっていかなければならない、これをやらなければ経済は立たない、これは実行に移すように努力をいたすつもりでおりまして、必ず実行できると私は信じております。
  223. 今澄勇

    今澄委員 政府はいつも予算とは無関係に人気取りの六カ年計画を改訂また改訂改訂ばかりなのです。私はこの点については非常に政府に反省を求め、資金の裏づけと計画的なほんとうの立案をやられるように要望いたします。  ついでに石橋通産大臣に、あなたのこれまで考えて参られましたいわゆる拡大均衡、生産力増大等についての来年度の通産行政に関する概括の方針を、簡単に一つお聞かせを願いたいと思います。
  224. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 三十一年度においては、もう今大蔵省とも折衝しておりますが、できるだけ拡大ができるような方針でいきたいと思います。
  225. 今澄勇

    今澄委員 どうも驚いた答弁でありますが、あなたは閣内における拡大均衡論の急先鋒で、あなたの新聞に見られる談話、あなたの予算に関する見解、これみな拡大均衡による生産力増大論で埋まっております。ところが一萬田さんはさっきから、あなたはお見えにならなかったけれども、ここで来年度も緊縮予算で、一兆を多少こえることがあっても、決してあなたの言われるような方向ではない。防衛費は増大する、予算費目も自然的な人口増加その他でいろいろ増加する、そうするとあなたの言われる拡大均衡のお金はどこからも出てこないのです。私は鳩山内閣で大蔵大臣の緊縮予算論とそれからあなたの拡大均衡論とは、全く国民が見て奇異の感じに打たれておると思いますが、鳩山さんは総理大臣として、この相矛盾する、閣内の二つの対立する考え方に対して、一体どういうお考えを持っておられますか。
  226. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 調整してやっていきたいと考えております。
  227. 今澄勇

    今澄委員 およそそれはお粗末であります。私は、総理大臣としてそういう閣内の予算に対するいろいろの態度を、ただ調整していこうと思いますというそのことは、いかに現在の鳩山内閣がその場限りな、おざなりな、暫定的なものであるかということを国民に対して証明すると思います。私はこういう鳩山内閣が持っておる財政経済上の矛盾の集中的な表現は、今言った石橋積極均衡財政、一萬田さんのこれまたいわゆる消極超デフレ財政、この二つの相矛盾せる性格を鳩山内閣が持つておって、しかもそれを解決することができないで、閣議を何度も開いても、今日に至るまで、来年度予算の基本的な見通しについても総理大臣国会において報告することができなかったこと、大蔵大臣がこれに対する見通しも述べられなかったことについて、私は鳩山総理は、このような弱体な状態では、日本の予算を組み、わが国の財政経済をやっていかれるにはまことに気の毒だという結論をいたします。  要するに日本経済の死命を制する貿易の規模、さらに世界経済の見通しについて、政府ははっきりした何らの考え方がない。第二番目に、政府の今までのデフレ政策が、ただ一方的に中小企業の倒産、失業者の増大、地方財政の圧迫など、勤労者大衆の犠牲にしわ寄せをして、地方では大銀行など金融資本では資金がだぶついておる。これに対して政府与党内ですら不満が起って、一萬田蔵相の説得力は一つもない。先般の代議士会がそのいい例であります。第三に予算の一割以上に及ぶ膨大な防衛関係費をそのままにして、貧弱なワクの中で緊縮予算を組むことからくるしわ寄せというもの、これらの矛盾は鳩山内閣がどうしても当面する一大課題であって、昭和三十一年度予算編成の際にこれらの課題を鳩山さんは一体どういうふうに調節をせられるか、総理大臣としての見解があれば承わっておきたいと思います。
  228. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 物価の騰貴しないような財政計画をとるということは必要だと思っております。物価の騰貴しないような財政計画をとりながら——それをとらなければ貿易の増進もできないわけでありますから、決して石橋君の意見と大蔵大臣の意見とが根本的に相違するものと私は考えないからして、調整ができていくものと思っております。
  229. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 ただいまお話がありましたから、私からも一言釈明をいたしたいと思います。私の考えでは、何も財政が膨張することがいわゆる経済が拡大し、かつ国民生活が向上するゆえんではないと思います。日本の経済が拡大し、そして国民所得がふえ、国民生活が向上する、これが私は望むところであると思うのです。今日日本の経済を見ましても、二年にわたりまして緊縮財政を組みましたが、しかしながら日本の経済は拡大しておらないかといえば、相当な拡大をしておる。これは現に輸出面に具体的に現われておるわけであります。そして物価を見ましても、世界の国際物価に均衡を得るようにと進んでおる。私らの望むところは、この情勢をすなおに推移さしていくというところにあるのでありまして、日本の場合においてはどうしても貿易に依存する。むろん国内資源の開発ということもやりますが、どうしても貿易に依存する。貿易に依存するとすれば、物価が国際物価に比べて十分競争力を持たねばならない。品質においてもそこに基準があるのでありますから、私の考えは、やはり健全なる財政経済の施策の上においてそういう経済の拡大があり、国民生活の向上がある。むろんそういう過程におきまして、たとえば雇用の問題、特にそういうような雇用がまた中小企業等にしわ寄っていく、こういうことであります。それはそれについて私は対策を講じていく、こういうふうな考えです。従いましてそういう意味におきまして私と通産大臣と何ら意見の相違もない。通産大臣の望まれるところも、要するに財政規模の拡大というよりも、むしろ日本経済の規模の拡大にあると私は考えます。私たちも同じ考えを持っておるのでありまして、そういう点については十分御理解をいただきたいと思います。
  230. 今澄勇

    今澄委員 私は見解の相違であり、時間もありませんから深く追いませんが、少くとも予算的裏づけのなき日本の拡大均衡、産業増大政策というものはあり得ないのです。国家の施策はすべて国家の予算的規模において行われる。しかもその集中的な現われは、昨年の九月銀行局が日本の銀行を調査したときに、三井銀行を初めとして、実に十八行にわたって資産内容が非常に悪い。将来にわたって大蔵省が警告を発せなければならぬような、こういう日本の金融情勢に追い込まれておること自体は、少くともあなたの言われておるようなそういう方向へ日本経済が向っておらないという有力な証拠であり、私はこれらの点からあなたの説に賛同することができません。  そこで私は最後に綱紀粛正について二、三点質問をいたしたいと思っております。昨年二月本委員会において私が追及いたしました保全経済会は検察当局の手にかかり、すでに取調べを終了して公判に付されておりますが、その政治献金の全貌は一体どうなったか、法務大臣からおわかりになっていらっしゃるならば報告を願いたいと思います。
  231. 牧野良三

    ○牧野国務大臣 お答えをいたします。まだ詳細は存じません。取調べの上お答えをすることにいたします。
  232. 今澄勇

    今澄委員 そこで本年八月三日東京地方裁判所において本田検事から次のごとき冒頭陳述が行われ、私が当予算委員会において述べたことがいかに正しかったかということを証明しております。この陳述によると、伊藤被告の政治献金総額は二億一千四百十五万円となっております。これは検事が述べた検察側の取調べ結果の報告であります。その中の一千万円以上の大口を拾い上げてみると、昭和二十六年十一月一千万円、昭和二十七年二月二千五百八十万円、昭和二十七年九月五千五百万円、同じく同九月二千万円、昭和二十七年十二月二千万円、同じく同月一千万円、昭和二十八年の三月一千万円と、政治献金が検事の取調べの結果上っておる数字だけでも莫大なものであります。この検事の調書に出ておる受け取った人の名前は、小宮三郎、頼母木真六、大谷瑩潤、川上才助、三浦義一、児玉譽士夫氏などの名前がこの検事の調査に出ております。これは最も控え目に見た検察側の取調べの結果であります。ところが検事の報告を不満として今回元保全経済会理事長伊藤斗福君は、朝鮮同胞の皆様にと前置きをして、実に驚くべき声明書をわれわれ衆参両院議員に送って参りました。その声明書を見るとなかなか重大なことが書いてあります。私は声明書の中のおもな点をここで読み上げますが、まず第一に今私の読み上げたこの検事の調書、訴状以外に、伊藤斗福の声明書によって政治献金をいたしました相手はこれこれであると書いてある人々の名前をあげると、廣川弘輝、三浦義一三千万円、三木武吉、鳩山一郎三千五百万円、児玉誉土夫二千五百万円、大麻唯男、山本粂吉二千万円、駒井重次、頼母木真六千五百万円等々一千万円級の人について発表し、その総額は陳述と異なり五億と書いております。私はその伊藤理事長が出した声明書をここに持っております。この伊藤理事長が出した声明書、さらにその前に検事が報告をした政治献金の実情、これらの問題を法務大臣が全然知らないということも私はまことに怠慢だと思いますが、特にこの中に名前の出ておられます総理大臣である鳩山一郎氏は、過ぐる本会議において御答弁がありましたけれども、今かような状態において一体あなたの心境はどうであるか、なぜかような状態を放置されておるのであるか、鳩山さんについて私はお伺いしておきたいと思います。
  233. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は保全経済会の金円にさわったこともございません。見たこともございません。知りません。
  234. 今澄勇

    今澄委員 だけれども、こういう声明書の中に、伊藤斗福君があなたの名前もあげておるということに対するあなたとしての何かあれはありませんか。
  235. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 伊藤君の考え方で、私には想像はつきません。
  236. 今澄勇

    今澄委員 法務大臣、この衆参両院議員に発送せられた伊藤斗福氏の声明書、私はだまされた、あくまでも闘うというこの声明書は、あなたのところに行っておりますかどうですか。
  237. 牧野良三

    ○牧野国務大臣 参っておりません。
  238. 今澄勇

    今澄委員 それでは私は、検察庁はこの声明書を取り上げて、ぜひ伊藤斗福君を喚問し、これらの事実があったかどうかということを明らかにすべき義務があると思います。この声明書には実に重大なことが書いてある。私はこれは、断じて国会議員の立場から許すべからざるものであると思います。総理大臣はそういうことに自分の名前が出ておるならば、総理大臣みずからも断固として名誉毀損として起訴すべきものであります。伊藤元理事長の声明書を読んでみます。検察庁は私を詐欺罪として起訴しましたが、もちろん私はいなであります。在日朝鮮同胞、三千万の祖国朝鮮の名誉のためにも許されるものではありません。ことに日本との善隣友好、共存の新しき道に進まんとする日本に、私の詐欺事件でそれが阻害されようとするならば、自己のいかなることにもかえがたく、大義親を滅するの方途をとるべきことがただ一つの残された道であると思います。従って私は詐欺行為は断じてなしと叫ばざるを得ないのであります。いかなる圧迫、脅迫があろうとも真相を明らかにいたします。すなわち私の一貫した主張である保全経済会の信託銀行への法制化こそこれであります。それがための立法化の実現こそが保全経済会会員の共同利益による安定せる利殖の基本でありました、と書いてあります。検察が詐欺罪で訴えたことが誤まりで、自分は信託銀行への法制化のために金を献金したのであるから、これは贈収賄であって詐欺事件ではないということを声明書において明らかにしているのでありますから、私はこれに対して牧野さんは直ちに検察の威信からも断固たる態度をとられるべきだと思うが、答弁を願いたいと思います。
  239. 牧野良三

    ○牧野国務大臣 貴意に沿うように努め、威信を表明いたしたいと思います。
  240. 今澄勇

    今澄委員 そこで牧野さんにもう一つこの声明書の中の重要な点を報告いたします。私が詐欺行為でないとして進みますならば、立法化運動にすべてが総動員され、それがために資金が政党及び有力幹部に渡されたものと言わざるを得ません。しかるに一部関係方面から、もし立法化のための運動資金であるとするならば、その相手方に対して多大な損害を与えるから単なる政治献金にせよという要求というより命令が出ております。しかしこの命に従うならば私は世上に伝えられる詐欺師ということになりますし、朝鮮同胞に対する裏切り行為になります。私は寝食を忘れて立法化のために活動いたしたのでありますが、遂に水泡に帰しのたであります。それはなぜかといえば、私の一言に要約すれば、日本政治家と言われる人々に私がだまされたということであります。私はだまされたがゆえに二十万の日本人の方々に大損害を与えたのであります。これらの人々の中から伊藤一人が黙って詐欺したということですべてを解決すればまるくおさまるし、そうでなければ先ほど申したように、一服盛って眠らせるなどの説をなす者があることは、いかにその人たちの心事の陋劣なるかを思わざるを得ません。今後朝鮮同胞の皆様の御助力によって、私の行いの事実が明らかにされることと思われますが、というて書いてあります。私はこの声明を見ると、伊藤斗福君が朝鮮同胞に、日本政治家がだましたのである、自分はこれだけの信託銀行を作るための政治献金をしたのである、こういった赤裸裸な声明であって、これを検察当局が取り調べないという法はありません。私はこの声明を見て、保全経済会が右翼団体と、政治家と関連を持っておったということを察知せざるを得ないのであります。特に日本政治家にだまされたという一節は、私は国会議員として断じて放任することは不可能であると思います。こういうふうな伊藤斗福君の声明書の内容は、私がこの予算委員会で過ぐる昨年の二月、追及するときにいろいろ聞いたことと合っておる部面も多々ございます。よって私はこの検察の責任者が、伊藤斗福——今は東京都世田谷区奥沢に住んでおるのでありまして、すぐそばにおるのでありますから、これらの事実について検察当局は御趣旨に沿うようにとかなんとかいうような問題ではなしに、私はかような国会を侮辱し、かような日本の検察を侮辱し、かような日本国民を侮辱するがごとき人間を、もしこれが事実でないとするならば、ほっておくことは断じて許されません。法務大臣の御所見を求めます。
  241. 牧野良三

    ○牧野国務大臣 全くあなたのおっしゃる通りでけしからぬことであります。真相を明らかにします。
  242. 今澄勇

    今澄委員 なおこの問題については、牧野法務大臣が調査され、そうしてその真相が明らかになるのを待って、当予算委員会の問題としては適当でないでしょうから、私は行政監察委員会その他において、これらの問題を引き続き政府に対して質問をいたしたいと思いますが、保全経済の問題はこの程度でやめます。  次に保全経済は任意の団体であって、大蔵省の監督下にはないのです。ところが大蔵省は保全経済については全然関知せざるところであるといって、前の小笠原大蔵大臣は今日の事態を引き起したが、しからば大蔵省傘下の大蔵省許可になる金融機関は一体どうか。私は過ぐる昨年の九月、常盤相互銀行が非常に乱脈であり、これは重大な相互銀行法の違反である、大蔵大臣はこの常盤相互について一体いかなる見解を持っておるかと聞いたときに、大蔵省の代表者として、それは大蔵省が調査の結果、そういう不正はございません、今後大丈夫でありますと、この予算委員会において答弁をしておるのであります。しかるにそれからわずかの後に、検察当局が検査の結果、常盤相互がいかなるものであるかということは、私が申し上げるまでもなく、もう皆さん御承知の通りであります。  そこで私は相互銀行について、大蔵大臣にお伺いをいたします。昭和三十年三月末の決算について見ると、相互銀行の平均の経常収支率が七五・八%であります。個々の銀行についてみれば、大蔵省の基準としておる経常収支率八三%に達していないものが、七十一行のうち六行あります。また過般の銀行検査の結果について見ても、検査三十七行のうち法定の支払い準備を下回るものが五行あります。前回検査のときよりも、支払い準備の状況がよくなったものは十二行、悪くなったものが十七行というありさまであります。こういう状態を大蔵大臣は一体どう考えておられますか。私は常盤相互のみならず、これらの相互銀行の現状について、金融政策上の大蔵大臣の見解を伺っておきたいと思います。
  243. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 御承知のように、相互銀行は無尽がこういう相互銀行になっておるのでありまして、これは非常に数が多いのであります。その結果非常に競争も激しい。そういうふうな点から、どうしても相互銀行については今後改善を加えていかなければならぬと考えておるのでありますが、今御指摘のような数字が果して正しいかどうか、これは今資料を持っておりませんから何とも申し上げかねますが、今日相互銀行の経営について改善を要すべきものが多々あることは、私も了承いたします。それで今後は数を減らしますか、相互銀行を統合して無用な競争をしないようにして、そして同時になるべく社内保留を多くして準備率を高めていく、経営の合理化をはかるということはむろんでありますが、同時に相互銀行は中小企業専門でありますから、中小企業金融という見地からやはり指導を加えていく、一口の貸出金額をあまり大きなものにしないとかいうように、いろいろ中小企業金融の見地から行政措置を加えていきたい、かように考えておるのでありまして、今後適正な措置をとるつもりをいたしております。
  244. 今澄勇

    今澄委員 これは大蔵大臣は詳細御存じなかろうと思うから、私はあえてここで申し上げるのであって、今私が申し上げたのは銀行局の年報でありますから間違いはありません。さらにこれを見ると、相互銀行の法律違反、いわゆる相互銀行法違反、大蔵省の通牒違反、これははなはだしいものがあります。すなわち相互銀行法第十条、今あなたの言われた大口貸し出しのものは、検査銀行三十七行中二十三行、七十七件、これは相互銀行法違反であります。大口信用集中に関する通牒違反は三十七行中二十三行、百五十件の多きに上っております。これは銀行局の報告でありますから、まさにおそるべきことになると言わなくてはなりません。相互銀行の中の最も代表的なものは、預金五百億といわれておる日本相互銀行であります。これは代表的な存在であります。しかるにこの日本相互銀行自体も、問題になっております常磐相互銀行の株式を所有しております。これは独占禁止法の違反であります。東洋繊維への貸付は、相互銀行法の第十条の違反であります。株式取得の単価等についても幾多の問題があると考えられます。弱小相互銀行においてはなおさらであります。私がここで申し上げたいのは、保全経済は政治献金むなしく信託銀行になりそこなって、そして今日のうき目を見ているのである。無尽会社はここに相互銀行法が成功して、今日大蔵省の監督のもとに営業をしておるのである。特に右翼団体その他政界人とのつながりは、その貸し出しを一覧して検討すれば一目瞭然であります。私はこれらの問題について、大蔵大臣は相互銀行に関する営業のあり方、相互銀行についてのこれらの問題について、今後いかなる是正の方策を持っておられるか、大蔵大臣の御所見を承わります。私はこの問題については、これまた担当の行政監察委員会においてお伺いをしたいと思います。
  245. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 相互銀行につきましては、先ほどから申しますように無尽から銀行業務をやるということになった、こういう経緯もありまして、その経営陣は十分強力でないのであります。必ずしも銀行経営を十分やるのに適当していないというのもあります。こういう経営陣の強化もやる。それから先ほど申しましたように数が非常に多いのでありまして、この点も今後の銀行行政として考えていかなくてはならないと思います。そういうふうなことをやって今後の経営を、先ほど申しましたように中小企業金融という見地から堅実な経営をさせて、そうして銀行自体の内容もだんだんと強化していく、こういうふうな方向をとるのが適当と考えておるわけであります。
  246. 三浦一雄

    三浦委員長 今澄さんに申し上げますが、予定の時間も近づいて参りました。簡単にお願いいたします。  先ほどの問題に関連しまして、法務大臣から発言を求められておりますからこれを許します。
  247. 牧野良三

    ○牧野国務大臣 先ほどの御発言は相当重大でありましたから、とりあえず調べましたところ、衆参両院議員のところへは行っておりません。またその文書は伊藤斗福みずから出したものではない。そして伊藤斗福は、自分は関知いたしておりませんということを言いますから、世に言う怪文書ではないか、これからさらにその点を取り調べた上で申し上げます。
  248. 今澄勇

    今澄委員 今の法務大臣のお答えは実に適宜なことで、私はこれらの問題は徹底的に捜査をして、これを国民の前に明らかにしていただきたいと思います。こういうことは少くとも衆参両院議員あてに送ってきたのでありますから、私はここで法務大臣にこれらの結果を全部一つ明らかにしていただくようお願いをいたします。  なお最後にお伺いをいたしたいことは、内閣調査室であります。内閣調査室は歴代内閣の問題点となっておりますが、これに対しては具体的な内閣調査室の予算というものの費目が計上せられておりません。根本長官はこの内閣調査室の経費を九千万円と言われましたが、それはわれわれの方がかってにそのくらいではないかと言ったものにすぎないのであって、この内閣調査室の経費が大体年間幾らであるかということを、官房長官なり総理大臣の方でわかればお聞きをしておきたいと思います。
  249. 松本瀧藏

    松本政府委員 長官はただいま記者会見をやっておりますので、かわって御答弁いたしますが、調査の上それについてはお答えをいたします。
  250. 今澄勇

    今澄委員 私はこの内閣調査室の予算、それから実際に使われておる金額その他のものについて、非常に世間の疑惑を生んでおることを遺憾に思います。よってきょう官房長官お見えにならなければこの問題は機会をあらためてまたお聞きをいたしましょう。  約束の時間になりましたが、私の申し上げたいことは、少くとも鳩山内閣の身辺には、右翼の色彩の非常に強い人々の名前が、あらゆる事件に関連して出てくる。なおアズキ事件においても、児玉譽士夫氏が取引所においていろいろと発言せられた中にも、鳩山内閣に関連するがごときものがあると伝えられています。私は、いわゆる右翼団体、日本政治、保守政党政治献金というようなこれらのものについては、特に国民の疑惑を一掃するために、鳩山内閣総理大臣は断固たる処置をとって、これらの疑惑のある点を全部取調べをいたし、一切の問題を明るみに出し、そうして明朗なる政治を行われんことを要望いたしまして、私の質問を終ります。(拍手)
  251. 三浦一雄

    三浦委員長 本日はこの程度にいたしまして、次会は明八日午前十時より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十四分散会