○柳田秀一君 私は、
日本社会党を代表して、ただいま上程になりました
昭和三十
年度特別会計予算補正の
編成がえを求めるの
動議に賛成の
討論を行わんとするものであります。(
拍手)
細部にわたりましては、すでに
予算委員会において
討論を行いましたので、ここにおきましては、主として政治の本質に触れ、政治の責任に重点を置いて申し述べることにいたしたいと存じます。従いまして、
自由民主党の諸君には多少お耳に痛い点もあろうかと存じますけれども、何とぞ大政党の襟度をもってお聞き取りのほどを願っておきます。そもそも、
地方財政の
赤字は、昨今に始まったことではございません。ここに数年来の懸案の政治問題の一つでございました。ついにこれが行き着くところまで行き、にっちもさっちもならなくなった最大の原因は、従来の
内閣が歴年不徹底な
財政措置を繰り返したその累積にほかなりません。(
拍手)問題は単に平衡
交付金や
交付税の
税率たけではなく、
地方団体にとっては
行政運営上の羅針盤ともいえる
地方財政計画を、もろもろの
条件の異なる
昭和二十五
年度決算を
基礎にして積み上げてきたことに根本の原因があったと考えるのであります。(
拍手)狂った羅針盤を与えられた
地方丸という船は、いかに名船長がかじをとっても、まともに航行ができないのは当然であります。しかも、この誤った
地方財政計画が、
地方の主要
財源たる
交付税の繰り入れ
基準とせられて、ますます
地方窮迫の度を深からしめていることは、皆さんもよもや御否定はなさいますまい。過
年度はしばらくおくとしても、本
年度のみをとってみても、当初百四十億の
赤字の出た
地方財政計画を、
赤字の
計画では体裁が悪いというので、無理に数字だけバランスを合せるといった、くさいものにふたをするような無謀なことを、この春
政府はあえてなさったのである。(
拍手)なるほど、机の上では簡単に
赤字は消えもしましょうが、現実の政治では依然として
赤字が出るのは、三歳の童子といえども初めからわかり切ったことであったのであります。それを、今ごろになって、
政府はあわてて
対策に狂奔する。
与党の代議士会がてんやわんやのありさまで、ついには本
会議まで流れる。(
拍手)自業自得とはいいながら、何たる醜態でありますか。(
拍手)国税三税の減税のはね返りも考慮して、
地方の独立
財源たる
交付税の
引き上げを
年度初めから
主張し警告をした
社会党の正しき理論に耳を傾けなかった諸君たちの不明を、諸君たちは今こそ陳謝すべきであると思うのであります。(
拍手)しかし、われわれとしても、自治体みずからに
財政運営上の過誤なしとは決して言っているのではございません。ただ、今日の事態にまで追い込んだ責任の大半は、過去の
内閣と、その
予算案に賛成の白票を投じてこられた諸君にあることを、諸君らみずから御自覚なさいと申しておるのであります。(
拍手)
およそ、政党政治の妙は責任政治にあります。
内閣とともに
与党の連帯責任における政治、これが政党政治の真髄であることは、憲政のイロハでありましょう。にもかかわらず、それだけの自覚があなた方にほんとうにおありになるのかどうか疑わしい。中には、敵は
社会党ではない、大蔵官僚なりといったような、属僚にまで責任を転嫁せんとするような暴言を吐く人が
政府の中にもある。(
拍手)あるいは、また、
地方の
赤字が
地方側の放漫
財政にあるかのような言辞をえてして弄せられる一
萬田大蔵大臣、あなたは、御郷里大分県の知事になられて、現在の県政を黒字にする自信があったらやってみなさい。(
拍手)
私は、いたずらに、あなた方に責任を責めているのでは決してありません。われわれの常識では、今回の臨時
国会の目的からしても、当然、
地方制度調査会あるいは
地方財政審議会からの答申ないしは意見書を十分に尊重した
処置がとられるものと確信し、期待しておったのであります。おそらく、府県、市町村も、ひとしく同様の期待を持っておったであろうと思います。ところが、今回の
措置はこの期待を裏切るものはなはだしいといわなければなりません。全く一時のがれのごまかしであります。
大蔵大臣は、
予算委員会において、
地方財政については弥縫的方策で当面を糊塗することを許しませんと述べておられる。その言やまことによし、その事実や全くの逆であります。(
拍手)すなわち、
公共事業においては、それが繰り延べにせよ
削減にせよ、言葉のあやはいかようでもよろしいのです。事は、問題を一時延ばして、将来の紛糾の種を一そう大きくしただけです。これこそ弥縫的糊塗策ではありませんか。
公共事業の繰り延べが例年巨額に達するというならば、なぜ、あなた方は、前
国会においてあれほど大騒ぎをして、最後には二一天作の五というような工夫をして、
増額修正をあえてなさったのでありますか。まさに朝令暮改の典型であるばかりでなく、あなた方自分自身が多数をもって権威ある
国会の
審議権をもてあそんだと非難されても、一音半句も弁解がないでしょう。(
拍手)あったら言ってごらんなさい。人間は、痛いところをつかれると、つい音を上げる本能があります。(発言する者多し)しばらくの間御清聴をお願いいたします。
また、
公共事業に伴う
地方負担の
軽減額二十八億を
財源として見込んだと述べておられる。このような、
地方それぞれの事情によって生ずることのある
年度末の
不用額は、
地方団体固有の
財政事情に属する事柄で、国の
経費でも
予算でもない。これをしも、なお国において
財源措置をしたという根拠がどこにありますか。現に、
政府が、
地方行政
委員会において、わが党
委員のこの点の追及にあうや、てんでんばらばら、筋の通った
答弁ができないではないか。太田自治庁長官に至っては、正確なる
財源措置ではないが、
財源措置と同じ効果のある
財源措置と考える、(笑声)まことに前代未聞の苦しい詭弁であります。むしろ、こっちで聞いていて気の毒になるくらいだ。ごまかしはやめなさい。国の
財源措置は三彩に見合う百八十八億だというようなごまかしを捨てて、男らしく、国の
財源措置は百六十億だけだと訂正されたらどうですか。
あるいは、また、
公務員の年末
手当にしても、
義務教育費国庫負担分についても、
明年度の清算負担としたり、さらにはなはだしきは、
地方公務員に対しては、ただいま床次君は
財源措置ができておると言っておられますが、わずかに資金運用部からの
短期融資で糊塗せんとしておるありさまであります。この融資は、単なる資金繰りにすぎません。国は
地方団体に何らの
財源措置は見ていないのであります。たとえば、同じ警察で机を並べて働きながら、金ぴか組へは国から年末
手当が出る、おまわりさんは
赤字に悩む
地方団体からは出ない、こういうような不公平は随所に見受けられるでありましょう。このことは、とりわけ私は重大だと思います。何となれば、従来のこのような
政府の
地方に対する独善的な態度こそが今日
地方財政を苦しめてきた根本の原因であったにもかかわらず、しかも、
地方財政は、今日、火の車で、焦眉の急を告げておるやさきにもかかわらず、またまた、何の反省もなく、同様の押しつけが繰り返されんとしておるからであります。これでは、
政府は、
地方に対して、左手でほおをなでながら、右手で頭をどかんとなぐりつけておるものといわざるを得ません。少しは自治体の理事者の苦労もくんでやるくらいの親切がなければ、日本の行政は、国と
地方との間に断層ができて、
地方は喜んで
政府に協力する態勢にはならぬということを憂えるのであります。(
拍手)
これを要するに、今回の
政府の
措置たるや、まさに、カンフル注射をするといいながら水を注射しておるようなものであります。(
拍手)これでは、
社会党はとうていこのような
政府案は承服できません。独善やごまかしを捨てて、日雇い
労働者、生活保護家庭への年末
手当をも含めて、
地方に
財源不足額を正しく
補てんし、筋の通った
補正予算として組みかえを要求するわけであります。ただ、
年度半ぱの
補正でありますから、決して無理な要求をいたそうとは毛頭思っておりません。これに見合うゆとりのある
財源を示して
政府に善処を要請するゆえんは、少くとも今回これくらいの
措置をしておかなければ、
明年度の
地方財政計画が成り立たないからであります。
最後に一言申し添えておきます。すなわち、先般、あなた方の代議士会で、われわれの
主張のように、
交付税率の
引き上げや
防衛費の
繰り越しを
財源にすべしとの声が、たとい鶏群の一鶴にもせよ、聞かれるに至ったことであります。(
拍手)さすがに、自民党の中にも、いわゆる野に遺賢はおられるということ、わが党の正論が漸次
保守党の中にも浸透しておるということ知り得ました。(
拍手)二大政党対立の今日、われらの名誉ある
反対党の尋に御同慶にたえぬのであります。(
拍手)
重ねて申します。
地方財政今日の事態は、あなた方積年の悪政の結果であることを率直にお認めになって、何ぞわれわれの正しき
主張にすなおに耳を傾けられ、不承々々
政府案に賛成さるより、少くとも良心を持ってわれわれの正しき
主張に御賛同あらんとを望みまして、私の
討論を終ります。(
拍手)