○辻原
委員 大臣は今までしばしば
委員会に出られましたが、まことに慎重な
態度でありまして、重要な部分はすべて
審議会にと逃げ込んでしまう。しかし私はこの間申し上げましたように、やはり大臣にはそれ相応のお
考えがあってしかるべきだ。ここは文教
委員会でありますから、大臣がこうお
考えになっておられると赤裸々にやはり
国民に話され、さらに大臣のお
考えも赤裸々に
審議会に話されて、その
意見をまとめられるのが、やはり至当ではなかろうか。そういう点はなはだ私は大臣の教育に対するお
考えが、あいまいもことしてわかりません。少くともこういう点を私も感じておるというような反省があってしかるべきだと思いますが、それがないことははなはだ遺憾であります。大臣は今非常に不明確である、こうおっしゃられました。私は不明確ではなしに、現在の分権制度の建前がそうなっておるのだ、こう解釈しますけれ
ども、しかし時折いわゆる明確に分れておる権限を、不明確に行使しようという例証があります。これを一例あげてみると、今同僚小牧君が問題を提起いたしました今回の
高等学校の教科課程に対する文部省の法的見解、これも私はきわめて独断的な
行政解釈を下しておるものと
判断せざるを得ない。そうして助言と監督という域にしか出ない。しかも教育
委員会に本来与えられた、教育に対する権限を行使する
事務内容が、法律上区分されておるわけであります。それを都合のいいときにはその
事務内容は、これは文部省の定めに従ってただ取り上げただけの規定であるという一方的な解釈を下しておる。しかし私はここで
事務当局と法律論争をしようとは
考えておりません。しかししばしばそういった違った解釈が文部省の
行政解釈として出ておるということを、少くとも御記憶なさってよろしかろうと思います。たとえば例をあげてみると、かって山口県に問題が起りました当時、これは大運文相の当時であったと思いますが、その当時の
委員会の権限として、いわゆる教育
委員会法に定められている四十九条の
事務というものは、これは教育に対する全責任を持つ教育
委員会の権限に属する
事務である、従ってその行使はいかようになさろうとも御自由であるという解釈をされて通達を発せられたはずであります。しかるに今回は教育
委員会の教科に対する取扱い、執行というものは、これは
学校教育法四十三条に定めるその基準に順応しなければならぬと書いてある。さっきの緒方
局長の説明によれば、その定めた基準の範囲内においてこれを実施する責任を持つものだ。私は常識的に言うならば、あなたの解釈はわかります。しかしここで小牧君の尋ねたのは法律の解釈であります。法律解釈をあいまいとして、基準があるから当然それに順応すべきだという解釈は通らない。一体それを否定できるのかどうかという厳密な解釈を要求しておる。そうすれば四十三条で基準が定められておるが、しかしながらその教科の内容を設定し、執行させるものは教育
委員会であるとするならば、教育
委員会が少くとも本来の教育の趣旨からはずれない限り、その教科内容を設定してしかるべきであるという法律解釈論は、当然行われて私は間違いではないと思う。しかしそういうことは今あなたにはお尋ねをいたしません。大臣にお伺いをいたしたいのは、そういう解釈論がいろいろ行われておる。これは私が申し上げるまでもなく、法律学者の中にも、あるいは教育学界の中においても、文部省の解釈と対立すべき解釈が行われている。これを称して大臣が不明確といえば
一つ不明確になる。しかしそういう事態の中で起っている問題は
現実の問題であります。そこで十一月二十九日だったかと思いますが、全国教育
委員会の会合において、実施が非常に困難であって、再検討をわずらわしたい、そういう決定をもって文部省に参られたことは、大臣も御
承知だろうと思います。その内容を一瞥してみますと、なかなか今回のこの改訂をそのままに実施することは非常な困難が伴う、従来の高等
学校教育の根本にも触れてくるような問題が伴うので、若干その施行を延期してもらいたい、そうしてなお地方教育
委員会の要望もいれて、いま少し検討してもらいたいという、まことにこれは私は妥当な御
意見だろうと思う。しかもいろいろ教科内容を検討した結果、すでに実施不可能であるという結論に至った教育
委員会も存在している。名前はあげませんけれ
ども、私は聞き及んでおります。また東京の教育
委員会においてもいろいろ論議されておる、これまたきわめて慎重な
態度であって、そのまま来年の四月にスムーズな切りかえが行われるとは今の論議の状況から見て
考えられない。しかし私
どもが今までこの問題について尋ねてきた文部省の
態度は、そういうような混乱が起らない、またこの教科内容が金科玉条のものである、こういう
態度できた。その後に起ってきた世論というものに耳をかさないという頑迷固陋な
態度であります。私は国、地方を通ずる教育が、かかる現状においてスムーズにいくことは万々あり得ないと
考える。そこで政治家であらせられる、しかもまたリベラリストであらせられる清瀬文相が、こういう事態についてそれでけっこうという頑迷固陋の
態度をおとりなさろうとは私は
考えない。何か政治的に達見を持ってこの事態に対処されることを私は予想しておるのでありますが、一体どういうふうにお
考えなさろうとするのか。教育
委員会の中に実施できないようなものがあるにかかわらず押し切ろうとするか、それともあらためて、私が大臣になったのだからもう一度
一つ教科課程
審議会でも構成して、もう少しその他の
意見も取り入れてスムースな切りかえをやろう、こういう大英断を振われるか、私は非常に興味のある問題だと思って、清瀬大臣の高邁な御識見に期待している一人であります。いかがでございますか。