運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1955-12-13 第23回国会 衆議院 文教委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年十二月十三日(火曜日)    午前十時四十四分開議  出席委員    委員長 佐藤觀次郎君    理事 赤城 宗徳君 理事 加藤 精三君    理事 町村 金五君 理事 米田 吉盛君    理事 小牧 次生君       稻葉  修君    北村徳太郎君       高村 坂彦君    杉浦 武雄君       田中 久雄君    並木 芳雄君       山口 好一君    河野  正君       島上善五郎君    野原  覺君       平田 ヒデ君    山崎 始男君  出席国務大臣         文 部 大 臣 清瀬 一郎君  出席政府委員         文部政務次官  竹尾  弌君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     緒方 信一君         文部事務官         (文化財保護委         員会事務局長) 岡田 孝平君  委員外出席者         文部事務官         (大臣官房総務         課長)     斎藤  正君         文部事務官         (大学学術局         長)      稲田 清助君         文部事務官         (管理局長)  小林 行雄君         文化財保護委         員会委員長   高橋誠一郎君         専  門  員 石井  勗君     ————————————— 十二月十日  委員大西正道辞任につき、その補欠として中  村英男君が議長指名委員に選任された。 同月十二日  委員小牧次生君及び中村英男辞任につき、そ  の補欠として志村茂治君及び島上善五郎君が議  長の指名委員に選任された。 同日  委員志村茂治辞任一つき、その補欠として  小牧次生君が議長指名委員に選任された。 同月十三日  理事小牧次生委員辞任につき、その補欠とし  て同君が理事に当選した。     ————————————— 十二月十日  町村合併に基く学校施設費補助に関する請願(  野田卯一君外七名紹介)(第二二七号)  要生活保護家庭義務教育児童教科書無償配  付に関する請願野田卯一君外七名紹介)(第  二二八号)  学校建築並びに危険校舎改築費国庫補助増額  等に関する請願野田卯一君外七名紹介)(第  二二九号)  生徒児童傷害補償に関する請願野田卯一君  外七名紹介)(第二三三号)  産業教育振興費国庫補助金補助率改訂に関す  る請願松平忠久紹介)(第二四二号)  学校保健法制定に関する請願植木庚子郎君紹  介)(第二六七号)  高山祭及び屋台の調査に関する請願坂田道太  君紹介)(第二八三号)  短期大学制度恒久化に関する請願五島虎雄  君紹介)(第二八四号)  児童生徒の増加に伴う不足教室補充に関する請  願(横井太郎紹介)(第三一二号)  地方教育委員会存続に関する請願岡本隆一君  紹介)(第三一三号)  地方教育委員会制度存続等に関する請願外二件  (平田ヒデ紹介)(第三一四号)  同(松井政吉紹介)(第三一五号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事の互選  学校教育に関する件  教育制度に関する件  文化財保護に関する件     —————————————
  2. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 これより会議を開きます。  去る十二日委員小牧次生君が委員辞任され、再び委員に選任されましたが、理事一名が欠員になっております。この際理事補欠選挙を行います。理事選挙はその手続を省略し、先例により委員長において指名いたしたいと存じますが御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 御異議なしと認めます。私より小牧次生君を理事指名いたします。     —————————————
  4. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 次に学校教育に関する件、教育制度に関する件及び文化財保護に関する件について文部大臣並びに政府委員に質疑を行います。  この際委員長から国立劇場の問題について、高橋文化財保護委員長にお尋ねいたしますが、どういう構想であるのか、一つその構想を御説明願いたいと思います。
  5. 高橋誠一郎

    高橋説明員 国立劇場という言葉を最近使っておりますが、初めは芸能センターという言葉でございまして、相当広い大きな計画でございます。ここでやりますものは新しい芸能創造発展をはかりまするために、芸能に関しまする諸資料の収集、保存、展観を行うということがまず第一でございます。これは古典芸能を正しく保有しまするのみならず、これを新しい芸能創造に寄与させるというところからくるものであります。それからその次には芸能に関しまする調査研究を行いますこと、それから第三には芸能伝承者養成であります。これがまことに憂うべき状態にありまして、このままに進みますならば、日本古典的芸能の中で絶えてしまわなければならぬというようなふうに考えられるものも多いのでございますので、伝承者養成するということ、それから次には芸能公開でございますが、これにはただいま申しました国立劇場というものを建設いたしまして、ここで芸能公開をはかりたい、かように考えております。ただいま審議会などで慎重に議せられているのでございまするが、大体最初まず劇場大小二つ作らなければならぬ。それからもう一つ第三の劇場が必要ではないか。たとえば能楽とか雅楽とかいうものをやりますための劇場一つ必要ではないかという意見もありまして、これもまことにもっともなことと思うのでありますが、あまり膨大な計画になりまするので、これらのものは第二期の計画に移したいと考えております。  それからおよそどれくらいの予算で何年間に実現する計画であるかということもいろいろ研究いたしているのでございまするが、ただいまのところでは三年、十億というところに落ちついているのでございまするが、なおこれに対しましてあまりに規模が小さ過ぎる、国家がやるならばどうしても百億くらいな予算でやれ、こういうような意見が経団連の石川一郎さんあたりから出ているのであります。どうもあまりに膨大な予算で始めますることは今日の日本の国情から申しまして許されないのではないかと存じまして、まず十億くらいのところから始めまして、そのうち三鷹は民間から集めまして、八億は国庫で支出してもらいたい、かように考えているのであります。ごくざっとのことでございまするが、大体そのような構想のもとに出路しているのであります。
  6. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 もう一つお尋ねいたしますが、歌舞伎などのほかに新劇オペラというようなものもやれるように構想ができているのかどうか、その点もう一点委員長岡田さんどちらでもけっこうですから……。
  7. 高橋誠一郎

    高橋説明員 この点も審議会でしばしば問題になっているのでございまするが、ただいま申し上げましたように、まず伝統的な古典芸能保存するということが第一の目的でありまするが、余力ある限り新しいもの、オペラバレエにもその力を伸べたいというふうに考えております。こういうような古典的芸能がだんだん新しい芸能にも取り入れられるというところに、日本芸能発達の上においての非常におもしろみがあるのではないか。まあ最近におきましてきわめて新しい試みなどが行われまして——新しいものの中に能であるとか狂言であるとかいうようなものが取り入れられた試みども最近に行われておるのでありまして、これがどこまで成功をかち得たかは疑問でございますが、だんだんこういう方面に向って進んでいくんではないかと考えまするので、そういうオペラバレエそのほかのものもここで上演せられるようにいたしたいと考えておるのであります。
  8. 並木芳雄

    並木委員 関連。古典芸能というものの中に何と何を含ませておりますか。
  9. 高橋誠一郎

    高橋説明員 第一は雅楽でございます。これはいろいろ議論がありまして、やはり日本舞踊の中に入れてしまってよいのではないかとも考えられるのでありますが、これまで雅楽として長い間存在して参ったものでありますからして、やはり雅楽として入れております。それから第二には能楽でございます。それから第三は文楽の人形浄瑠璃であります。それから第四は歌舞伎、それから第五は邦楽——日本音楽であります。それから第六が舞踊、こういうようなことになっております。そのほかに郷土芸能が加わるわけであります。それから新しいものといたしましては日本舞踊の中にやはり現代を含める、今まで洋舞と言われておりましたものがこれに加わることになるのでありますが、どうもだいぶ西洋の舞踊が入って参りまして、長い月日を経ておりますし、そしてまた日本古典的舞踊と融合しておりますので、洋舞というような言葉は避けて、現代舞踊というような言葉で表わそうという意見がございます。それからそのほかには新しい演劇、いわゆる新劇であります。それから洋楽、オペラ、こういったようなものを上演いたすということになっております。要するに両方寄せまして十項目に相なります。
  10. 並木芳雄

    並木委員 こういう古典芸能伝承者がなくなることがおそれられておる。その養成ということでございますが、養成ということになると何か付属の学校のようなものを作るのですか。どういう構想をもって養成されるのか。
  11. 高橋誠一郎

    高橋説明員 これも結局学校を作らなければならぬと考えておるのでありますが、もうすでに能の三役の養成などは、はなはだわずかでございますが補助をいたしまして、これに努めておるのでありますが、国立劇場ができますならば、学校組織にいたしましてその養成をはかるべきである、こんなふうに考えております。
  12. 並木芳雄

    並木委員 相当年配のわれわれが見てもそうおもしろいものは少い、正直に言って……。そうすると今の若い人がこういうものを果して熱意をもって受け継ぐかどうかということはかなり疑問があると思う。ですから身分を保証してやらないと、せっかく当局がそういう熱意を持って出発してもこれに応ずる者が少いんじゃないか、ですからこれを国家公務員とかいうものに準ずる一つ身分を与えてやるべきことも考えられるのではないかと思いますが、委員長はどういうふうに思われますか。
  13. 高橋誠一郎

    高橋説明員 公務員資格を与えるというところまではまだわれわれの考えが参っておりませんのでありまするが、だんだん国立劇場ができ、古典芸能などが公開せられるにつれまして、若い層の人たちでもこういうようなものに対しまする関心がだんだん高まるのではないか。これは数字をあげて申し上げることはできないのでありまするが、私ども歌舞伎演劇であるとか、あるいは日本舞踊などに参っておりまして、非常に若い人たちの観客がふえておることに気づきますのでありまして、文楽のごときも、一日参りましたところが、学生たちの団体が三百五十人も来ておるというようなことがございまするので、今まで、あまりに日本的なもの、古典的なものを忘れがちの若い人たちがだんだんこういう方面に興味を回復しつつあるんではないかというふうに考えておりますのでありまするが、しかし伝承者保護につきましては、なお十分考えなきゃならぬところがありまするので、資格を与えることもでございまするが、何と申しましても経済的な安心の得られるようにしてやりますることが第一ではないかと考えております。
  14. 並木芳雄

    並木委員 そうすると、やはり財政的補助財政的援助というところへ重点を置いて養成をしていくということになりますか。もしそうだとすれば補助に要する予算というものはどの程度見込んでおりますか。
  15. 岡田孝平

    岡田政府委員 まだ詳細な点までは研究いたしておりませんですが、要しまするに、国立劇場を作りまして、民間でなかなか上演できない純粋なものをなるべく低い料金公開するということによりまして、その保存をはかるということが一番大きな目的でありまして、あわせまして、ただいまお話しの伝承者養成に力を入れることになりますが、まだそれに対しまする助成費をいただくというところまでは研究いたしておりません。ただいま芸能施設研究会におきましていろいろその点につきましても研究いたしております。
  16. 並木芳雄

    並木委員 国立とか官製というものが上につくと、それだけで無味乾燥なもの、言ってみればつまらないもの、こういう感じを与えるのです。これは要するにリフレッシメントというか、レクリエーションですから、一回は行くかしらないが、二回、三回とは行かなくなる、そういうものになってしまうと、ほんとうの意味の国立劇場文化財的存在になってしまうということをおそれるのです。いい場所が何かありますか。なかなかこのくらいの予算——いい場所が手に入らなければ大失敗ですけれども、まずそういう身近なところから計画を進めていく必要があると思いますが、どこか予定されておるのでしょうか。
  17. 高橋誠一郎

    高橋説明員 予定地はわれわれのいつも考えておるところでございまして、あそこここと候補地を選んでおるのでございますが、今日のところでは、まずここを第一に候補地としてあげるということをまだ申し上げかねまするところに実はありまして、ちょっと申し上げまするならば、初めはこの計画は文部省の社会教育局で出たのでありまして、その際われわれ何人か、幾分演劇方面関心を持っております者が招集されまして、ここでいろいろ協議をしたのであります。その際は帝劇を買収してこれを国立劇場にするということであったのでありますが、だんだん聞いてみますと、どうも帝劇というところは劇場としていろんな欠陥があるということを専門家から聞きましたので、そのままになってしまっておるのであります。今も一部分にはそういう声もなくはないのでありますが、なるべく都心に近いところに設けたいと考えまして、候補地をいろいろ考えておるのでございます。
  18. 並木芳雄

    並木委員 武士の商法の感がいたします。まず場所をきめてかかるのが一番大事なことであって、あとからこんなはずじゃなかったということで、きっとデッド・ロックにぶちあたるということを心配いたします。ですから、こういう計画を進めるんだったら、まず土地だけは確保した、場所だけは確保したということでないと、なかなか委員長、始まりません。今の答弁ですと、おさむらいさんが商売を始めたような感じがして、おそらくなかなか緒につかないんじゃないかと思います。そこのところはしっかりやっていただきたいと思います。  それから東京のみならず全国で一カ所か二カ所、ほかの地点にも設ける計画はありませんか。
  19. 高橋誠一郎

    高橋説明員 ただいまの御注意まことにごもっともなことと存じます。ただいま設けております審議会ども、この道の学識経験者というような人たちばかりでなく、興行方面におきましても経験の深い人たちを中に入れまして、そういう人たち意見を十分に聞くということにいたしております。  地方でございますが、第一期の計画といたしましては、地方劇場を設けるということはございません。まだこれも審議会答申が参っておりませんので、先日中間報告を受けただけでございまして、最後的な答申を得ておりませんので、どういうことになりますかはっきりいたしませんが、まず第一期の計画といたしましては、先ほど申し上げましたように劇場大小二つ、第二期の計画には第三劇場並びに地方にも若干こしらえることに相なりはしないかと存じております。
  20. 並木芳雄

    並木委員 それじゃもう一つ承わっておきますが、公演公開は年中無休ですか。それとも一年のうちのある期間を限っての限定公開でありますか。もし限定公開ならば、その間あいているときにはどういうふうに劇場を利用していく計画なのか。それから相当いいものを見せなければならないと思います。その中に歌舞伎も含まれておりますが、歌舞伎などの入場料は八百円も千円もいたします。今の局長答弁ですと、なるべく安い料金で見せたいということですから、当然大衆が負担できるような安い料金しか徴収しないと思いますが、そうするとその間に大きな差が出て参ります。その差額を負担するのかどうか。もし負担をしなければ優秀な出演者が喜んで国立劇場に出演するかどうかということが疑問になってきます。優秀なのが出なければ、だんだんすたれてくる、そういう問題が残るのでありますけれども、もしそれを強制的に出演させるというようなことになれば、今度はそれこそ官製の芸術になってしまって、とんでもない方向へこれがそれ道をする心配も出て参る。それらの点について御答弁を承わりたい。
  21. 高橋誠一郎

    高橋説明員 これはむろんあまり長く休むというようなことはなく、連続的に公開公演をいたしたいと考えておるのでございますが、資本劇場と申しますか商的劇場と申しまするか、そういうものとの関係につきましても考えておるのでございますが、なるべくおもしろくないものにしたくない、十分興味あるものにしたいと考えます。しかし純粋古典保存いたしますがために、必ずしも大衆に迎合するようなものをやれないような事情もありますので、ただいまお話のように、あるいはおもしろくないものになるかもしれません。しかしながらこれは何しろ国家が建てておるものでありまして、劇場費用というものは今日の商業劇場のやっておりますように見積らなくてもいいのではないか、この点はよほど楽ではないかと思うのであります。今歌舞伎座を借りて興行などいたしますならば、一日数十万円も払わなければならぬということになるのでありまするが、そういう費用は免れることと存じまするし、それからまた税金などの点におきましてどういうふうになりますか、はっきり申し上げかねまするが、軽減あるいは免税の措置等も講ぜられるのではないかと考えまするので、割合に安い料金でもって多数の人に見せるようになり、そうして出演者に対しましても相当な報酬が払えるのではないかというふうに考えております。
  22. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 文化財保護問題に関連して、野原覺君。
  23. 野原覺

    野原委員 文化財保護委員長がお見えでございますから、私は文化財に関する問題で二つ案件についてお尋ねしたいと思います。  一つは、すでに委員長も御承知通り、最近大阪府の教育委員会が仮指定をいたしましたイタスケ古墳についてであります。このイタスケ古墳は堺市にございますが、世界一といわれる仁徳天皇のみささぎ、あるいは履中陵、反正陵、そういうものを中心にしてあの近傍には古墳が実に十カ所に近くございまして、これは世界的にも有名な一大古墳群として名高いことは御承知通りでありますが、この古墳群の中でイタスケ古墳が最近ある土建業者によって破壊されようとした。このことが大阪における考古学者の間で非常な問題になりまして、新聞等も非常にこれを取り上げました結果、大阪府の教育委員会が一応第七十条の規定によって仮指定をいたしておるのであります。すでにこの古墳群の中で大塚山古墳、これは前方後円の塚でございまするが、これが完全に破壊されて、住宅が建てられておる。その次にはイタスケ古墳にやってきて破壊されようとした寸前に問題になって、やっと仮指定で確保されたのでありまするが、こういうようなだれが見ても前方後円の塚だ。私も現地に参りましたが、はっきりしている。そういうものが破壊されるまで、郷土の者が騒がなければならぬまで文化財保護委員会というものがありながら放擲されているのは一体どういう理由でございましょうか。一体文化財保護委員会というのは、「文化財保存し、且つ、その活用を図り、もって国民の文化的向上に資するとともに、世界文化の進歩に貢献することを目的とする。」そういう目的で、文化財保護委員会というものを国は作っておるのでございますけれども、この保護委員会が無能といいますか、無力といいますか、全く文化財保存について、放任の態度をとっていらっしゃるのではないかという感じを私どもは持つのでございますが、一体どういうことにその辺はなっておるのか、お尋ねしたいのであります。
  24. 高橋誠一郎

    高橋説明員 これはまことに遺憾なことであったのでございまするが、御承知のごとくモズ古墳群と称しまするか、ただいまお話の仁徳、履中、反正この三天皇の御陵を中心といたしまする古墳群、この中におきまして特に重要なものとして、まず第一に注意せられましたもの五カ所を指定いたしておったのであります。それからなおたしか三件は仮指定をいたしまして、その保護に努めておったのであります。今度のイタスケを、今日に至りまするまで指定を怠っておりましたこと、これはいろいろな事情はあったかもしれないのでありまするが、私ども聞いておりまするところでは、その所有者人格者でありまするので、これを破壊するようなおそれはまずなかろう。さらにもっと調査を進めました後においてこれを指定することをいたしましても、時期を失するようなことはないのではないかという考えが相当強かったようであります。これもはなはだわれわれの至らなかったところでありましょうが、土建業者がこれを購入いたしまして、まず堀に橋をかけるというようなことをいたし、やがてこれが破壊されるというような危機に瀕しましたので、非常に驚きまして、ただいまお話のように大阪府から仮指定を行う、こういうことに相なったのでありまするが、やがて堺市が四百万円を投じましてこれを購入することに相なりましたので、文化財保護委員会といたしましては、その中の何割かを負担し、大阪府と一緒にこれを負担して参りたい、こんなふうに考えておるのであります。どうも古墳群保存ということが、まことにいろいろな点において困難がありまするので、怠られがちのものがはなはだ多かったのでありまするが、これがまことにいい教訓となりましたので、さらにこういう方面に十分力をいたしまして、かような危機に瀕することのないように努めたいと存じております。
  25. 野原覺

    野原委員 委員長としては、まことに遺憾なことであって、従来委員会としても十分でなかったということを、率直に御反省になられておりまするから、私はこれ以上申し上げたくないのでございますけれども、しかし委員長がお認めになられておられまするように、あそこには、あげてみますと七観山古墳カトンボヤマ古墳、御廟山古墳城山古墳、それからコージヤマ古墳ハゲヤマ古墳ニサンザイ古墳、そしてただいま問題のイタスケ古墳ヒラツカ古墳大塚山古墳等が全くかたまっておる。これはしろうとが見てもわかるように前方後円で、ぐるりに堀がちゃんとできておる太古のものであります。実にこれは珍しい、まあ日本では大阪府の南河内郡にございます古市古墳郡とともに、これは何としても早く目をつけて、文化財保護委員会としては積極的な調査、その保存に乗り出すべきであるにもかかわらず、全く放任せられておって、私はほんとうに遺憾千万にたえぬのであります。幸いイタスケは確保ができましたが、大塚山古墳は、先ほども申しましたように完全に破壊されておる。一体責任はだれが負うのか。国の文化財保存するためには莫大な予算を計上して私ども文化財保護委員会を作って、その委員長には大物を据えて、そしてりっぱな学識経験者というものを置いて、日本の歴史的な文化財を守ることが非常に重要だというところでやっておるのですけれども、どうも十分になされていない、この点私どもは非常に遺憾にたえぬのでございますが、今後どうかそういう点については一つ十分な御配慮をお願いいたしたいのであります。  そこでイタスケ古墳についてもう一点お尋ねしたいことは、四百万円を堺市が出した、私は堺市の市長の河盛氏に会ったのでございますが、堺市としてはこういうようなケースがどういうことであったかわからぬけれども、こういうりっぱな文化財が自分の町にあって、そして放任されておることは大へんなことである、土建業者は直ちに地ならしをして家を建てると言っておるから、さしあたり四百万円というものを渡してしまった。けれどもこういう金は、国の責任保存することでございますから、当然私は国が全額を持つべきではなかろうかと思うのです。一体これは先例としてはどういうことでございますか、古墳としてのケースは最初であろうかと思いますが、たとえば金閣寺の造営、修理その他、あるいは法隆寺の問題等もございますから、こういう金はその所在地の地方自治団体が持たなければならぬものかどうか、私はこういう歴史的な古墳は当然国の費用で持つべきではないかと思うのでございますが、その辺についての御答弁をお願いしたいのであります。
  26. 高橋誠一郎

    高橋説明員 他のものとの振り合いなどから見まして、大体今までの例に従いまして、七割ないし八割は国庫負担、他は地元もしくは管理者負担、こういうようなことにいたすべきではないかと考えておるのでありますが、むろん本来から申しますならば国家の宝物でありますから、国家が全部を負担すべきでありましょうが、しかしながら今日の事情をいろいろ考え合せますと、全額国庫負担ということになりますことは非常に苦しいのでありまして、重要なものにつきましても、大体八割程度ということにいたしておりますので、イタスケの場合も大体そのようなことになるのではないかと考えております。われわれといたしましては、初めは五百万円を考えておったのでありまして、その土建業者が購入しましたのが三百万円、それに橋をかけるとか、いろいろ費用をかけたのが二百万円、合せて五百万円と申しておったそうでありますが、これが四百万円に落ちつきましたということは大分喜ばしいことであるのであります。初めにこの五百万円につきまして、果して大蔵省が承知してくれるものかどうか、そこいらの点にもいろいろ心配があったのでありますが、今度は四百万円に落ちつきました。なおいろいろ研究はいたしますが、やはり他との関係上、八割程度というところに落ちつくのではないかと考えております。
  27. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 野原君、簡単に願います。
  28. 野原覺

    野原委員 簡単にいたします。これはまだ正式な指定をいたしておりません。その指定委員会として何月になるのか、そしてただいま申されましたように、四百万円の八割というものを、委員会としては国が出すような方針で臨むのかどうか、その指定とのからみがございますから、もう一度御答弁をお願いしたいと思います。答弁のいかんによっては質問します。答弁のいかんによってはこれで打ち切りたいと思います。
  29. 岡田孝平

    岡田政府委員 とりあえず仮指定をいたしましたが、できるだけ早く本指定をいたしたいと考えております。これは文化財保護委員会にあります専門審議会に諮問いたしまして、その答申を待ちまして指定いたします関係上、あるいは一カ月か二カ月おくれるかと思いますが、大体そのくらいのところで、できるだけ早くこの問題をきめたい、かように考えております。ただいまのところ大体本指定になるのではなかろうかと考えております。  なお、補助金の問題は、先ほど委員長から答弁申し上げました通り、これは大蔵省の態度いかんによりますが、すみやかに実施いたしたいと考えております。
  30. 野原覺

    野原委員 私は文化財問題で、実は正倉院の裏に作られたという有料観光道路についての質問があるわけであります。これは徹底的にお尋ねしなければならぬ。相当資料も集まっておりますので、本日ぜひともこれはお取り上げいただきたいと思って委員長には通告してあるのでありますが、ただいま大臣がお見えでありまして、非常にお忙しいおからだだそうでありますし、同僚議員山崎君が大臣に対してまだ質問いたしておりませんので、委員長の指示に従ってそれにお譲りしまして、本日、あとで正倉院の問題で文化財保護委員会に質問するということを申し上げて、一応終ります。
  31. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 関連して、加藤さんから発言の申し出がありますので、許しますが、簡単にお願いいたします。
  32. 加藤精三

    ○加藤(精)委員 非常に簡単にやります。私、文化財保存の原則論みたいなことについて、文化財委員長さんと、文部大臣の御意見を承わりたいのであります。わが国の古墳群の問題は、現在種々弊害があるというふうに私考えておるのであります。こういう問題は、新しい教育制度が始まりまして、何か社会教育部門の一環の仕事として、しかも日本の教育をできるだけ地方分権的に組織しましたときに、ある程度地方が任意に計画し、管理すべきものにしたような気がするのです。国の成り立ち、日本民族の成り立ちというものに関係する古墳群のごときものは、もっと国家的に、言ってみれば中央集権的に、国自身が直接管掌する国立博物館の内容充実のような形で取り上げた方が、どうも民族の気持にぴったりするのではないかというような気がするのでございます。たとえば、ただいまの仮指定のごとき問題も、今から二十数年前、私文部省の保存課長をしておりました当時、銀閣寺の敷地にいろいろな建物が建ちそうで非常に危険なときに、文部省自身の手で、申請があった翌日、仮指定をしたような気がしております。現在はどうしても県の教育委員会の手で仮指定をしなければならぬのではないかと思います。現在の重要文化財保存法と史跡名勝天然記念物の保存とに差があるようでありますが、こういうような全般的にすべての史跡名勝天然記念物等を直ちに国直接にする必要はないと思います。けれども、どうも古墳のごとき問題は、一般の人の理解にはなかなか困難な内容を含んでいる。この発掘等につきましては、非常に歴史の方の学識がなければ十分研究、保存目的に供し得ないと思うのであります。そういう面から見て、現在の古墳に関する国の行政に改革を加えることが必要じゃないかと思うのでありますが、その点について、こちらは現在専門的に研究してもおりませんで常識的な質問でございますが、何らかの指針を与えていただけばありがたいと思います。
  33. 高橋誠一郎

    高橋説明員 終戦後多くの政務が分権的になったと言われておるのでございますが、終戦後にできました法律の中で、ひとりこの文化財保護法は最も中央集権的なものであると称せられておるのでありまして、ただいまお話のございました指定のごときものは、むろんこれは文化財保護委員会がいたすことに相なっておるのでありますが、ただ仮指定は急いでやらなければならぬという関係から地方がやる、こういうようなことに相なっております。
  34. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 ただいま委員長よりおっしゃった通りでありますが、これを国の所有にまで移すかどうかということについては、ただいま研究をいたしております。
  35. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 山崎始男君。
  36. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 文部大臣にお尋ねいたします前に、高橋先生が見えていらっしゃいますので、その関係のことをごく簡単に一点だけお聞きいたしたいのであります。  実は文化財保護委員会の方へ申請が出ておるかもしれませんが、私は岡山県ですが、私たちの県の高梁市というところに松山城というお城があります。そのお城のへりで最近約二百匹くらいの野生のサルを長い苦心をいたしましてならした。ごく最近になりましてようやくなれてきた。それについて林野庁の方へもお願いをして、その付近の山林が林野庁所属であったものですから、それを市の方へ払い下げてもらうとかあるいは借りるように交渉して一応その問題は解決した。その野生のサルが実にみごとなものでありますので、それがために地方の観光客がずいぶんやって来出した。市としては、もとより岡山県の教育委員会社会課を通じてたしか申請が出ていると私は聞いておるのでありますが、そのサルを天然記念物といいますか、何かそういうものの指定をしてもらいたい。と申しますことは、つい最近の例でありますが、小ザルが一匹観光客のいたずらか何かで殺されたのであります。御承知のように、サルというものは、小ザルが死にましても十日ないし二週間くらい、その死体が腐ってしまうまで、どこへ行くのか散ってしまう。もしサルの中のボス、親分株にそういうことがありますと、一カ月も、ことによったら二度と再び帰って来ないというような習性を持っている。そこで、せっかく苦心してようやくそこまでならしたものでありますから、ここで、文化財保護委員会の方でそういうふうな記念物の指定をしていただくと非常に権威がつくといいますか、非常にいいんじゃないかというので熱望しているわけでありますが、聞くところによると文化財保護委員会の方の方針として、何か日本に五カ所ばかり野生のサルを天然記念物か何かに指定をされて、もはやこれ以上は指定をしない方針だとかいうことを聞くのでありますが、こういう場合に保護委員会の基本的な御方針というものがおありになるかどうか、この一点一つお教えを願いたい。
  37. 岡田孝平

    岡田政府委員 サルの天然記念物指定問題でございますが、これは別に保護委員会といたしまして何カ所にするというような限定的な方針を持っているわけではございません。サルにつきましてただいま指定された箇所は、大分県の高崎山のサルとか、あるいは大阪の箕面その他の例がございますが、そういう今までに指定いたしました箇所と比較考究いたしまして、そうして大体同じような条件であるならば、これは指定も可能であると思います。別に何箇所に限定するという方針はございません。また申請のあったものを全部指定するというわけでもありません。これは一々のものにつきまして専門審議会の記念物部会に諮問いたしまして、その答申によりまして処理をしておるのでございます。ただいまの高梁の問題はたしか地元からお話がございまして、その話がありましたことは承知いたしております。十分に考究いたしたいと思います。
  38. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 その点につきましてはまたいずれあとからお話しするかもしれませんが、一応これで打ち切ります。  次に文部大臣に文教に関する問題で少しばかり重大な大切な点をお尋ねしてみたいと思うのであります。昨日の夕刊にもございましたが、十一日に文相官邸でもって昭和三十一年度における文教予算の編成の基本的な方針、あるいはその他内閣に設けられまするところの文教制度審議会の具体案ができたように承わっておるのであります。従来文教制度審議会のことにつきましてはちらちらと仄聞をいたしておりましたが、もはや時間的に見ましてもかなり具体的なものが文部大臣としては胸中深くおありだろう、かように考えるのでありますが、いま少し従来お話がありました点より一歩進めて具体的に少しばかり御説明願いたい。
  39. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 今お問いのことでございますが、これは文部省で方針をきめたというのではなくして、自由民主党が成立する時分に一般政策としてきめられたところであります。それを私ども執行する責任を持っておるわけであります。去る十一日に相談しましたことは、これをやるためにやはり予算を請求しなければなりませんから、予算の一般方針の中に組み入れたということでございます。これよりさき、内閣においてもかようなるものを持つことは承認されております。かつてこの委員会でも申し上げましたが、われわれは現在の教育制度はいいところも認めておるのであります。個人の能力を発展せしめ、人格を完成することを目ざして、真理を愛し正義を愛するという世界的にいいことはあるのでありますけれども、何を申しましても占領、しかも占領の前期に方針がきまったことであって、日本のよさと申しますか、日本人の持っておった特質はほとんど顧みられておりませんので、教育の内容についても、また教育の根幹をなす法規等についても改革の必要がある。また学校制度についても改革の余地が非常にありますし、教育行政についても改革の必要があるのであります。しかしながらこれを一党一派できめまして、議院内閣の制度のもとにおいて他の政府ができた時分に動揺するということでもよくありませんから、法律をもって中立的の審議会を作って、そこで審議してもらおう、こういうことであります。大きさのことについてはまだ実は協議しておりません。しかしながら前国会に提案しました憲法調査会というものがございます。本院の承諾を得ましたけれども、参議院において審議未了になっております。大体あのくらいの規模のようなものになるのではなかろうか、かように考えております。
  40. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 それでお尋ねしたいことは、その審議会でお取り上げになる問題は、今大臣がおっしゃったような目的に基いて、長期にわたってもかまわない項目をそこで審議するんだということでありますが、もっと具体的に申しますと、聞くところによりますと、教育委員会制度の改廃の問題であるとか、あるいは教科書の問題であるとか、あるいは教育の中立性の問題であるとか、こういうような問題は緊急な問題であるからこの審議会では取り上げない、この審議会で取り上げる問題は少し時間をかけてもゆっくりと日本の文教制度を研究する一つの場にするんだというふうに承わったのでありますが、そういたしますと、前のたしか文教委員会でありましたか、文部大臣とすれば、この審議会で取り上げる問題は、中央教育審議会とは違ってはっきりと取り上げる項目をうたい出してある。たとえていえば、教育委員会制度の改廃の問題その他中立性の問題、こういうようなものがはっきりと今度できる審議会の取り上げるお題目として明示してある。そこが中央教育審議会との違いだというような御説明をなさったと私は記憶するのでありますが、一体どちらなのでありますか。最初お尋ねしたように、緊急の問題はこの審議会の対象にはならないのだというふうに、最近聞きますことと今私が申しましたような点との関連でございますが、この点は一体どんなふうになるのでありますか。
  41. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 今のお問いの前提としてのお話が、少し私の言ったことと違うのです。長期にわたってもかまわぬというのじゃなく、やはり臨時教育制度審議会で適当な時期に調査してもらって、これは調査すればもう解散するのです。それは長期に、永久制度として置くものじゃございません。占領中の教育制度、教育内容について、国民が自分でこうだという発言で文章に響いたものは持っておりませんが、どこが悪いということは、世間の人が胸に持っておるのです。それをはっきり認識いたしまして、それを改めることをやつてもらうのでございます。少くとも成案は、ことしの通常国会には出せませんが、昭和三十二年の通常国会には出さなければなるまいと思うのです。ただきのう参議院の委員会で申しましたのは、それが出ましても、なかなかほんとうの改革には手間が要るだろう。というのは、やはり学年進行でもっていかなければ、中途でばさりいきませんから、教育の全体の改革には、七、八年の歳月が要るのじゃないか。そういうことを言うたので、審議の方が長くかかってもいいというのじゃないのです。審議はやはり早くやってもらいたいというのです。  それからもう一つお問いの後段のことですが、それは非常にごもっともなことなんです。一方において審議会を作って、教育の行政なり、学校の制度をきめるというのに、自由民主党では緊急政策というものを作りまして、そのうちに緊急を要するものを三つあげておるのです。その一つは教科書の問題です。これも昨年以来一つの大きな問題になっておりまするので、中央教育審議会も非常に急いでくれまして、この月の五日に答えが出ておりますが、私の属する政党の党内でも早く意見をきめてもらいたいと、かように思っております。本来なれば教科書も、これは教育のもとですから、参考書じゃありませんから、それも議すべきでありまするが、昨年以来あの通り世論を喚起し、またほかの言葉でいえば物議もかもしておりまするから、それを緊急政策としてやっておりまするから、審議会も開きますけれども、党議が熟し、またこの委員会の御議論も熟しまするならば、これは一つ早くやりたいと思っておるのであります。  それから教育委員会の制度も、これも改廃すべしということが緊急になっておるのです。党で緊急として取り上げられたのは、教科書のように今緊急の問題になっておりまするのと、それから改廃の結果によってどうなるかわかりませんが、結果いかんによっては、次の選挙、それまでにやっておく方がいいという問題も起りましょうから、こういうことで、かたがた緊急政策としてわが党ではこれを取り上げております。もう一つは中立の問題でありまするが、これが果して法律を変えてやるべきものか、行政的にやるべきものか、法律、行政以外に手心というか、話し合いで、全国の非常に多数の教職員諸君との懇談の結果でやるべきものか、これも急速にやれという、この三つはわが党の党議で緊急問題とされておりまするから、今内閣に審議会ができる計画がありましても、急速にやりたい、かような考えを持っております。
  42. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 だいぶ了解いたしました。聞くところによると、昨日の参議院において文部大臣から、ただいま私が申し上げましたようなことを言われたということを聞いたものでありますから、少し明瞭にしたいと思ってお尋ねしたのでありますが、そうすると、やはり教育委員会の改正の問題、教育の中立性の問題、教科書の問題、こういうような民主党の文教制度調査特別委員会でおきめになりました緊急三点というものも、結論的には、今度できる内閣の審議会へおかけになると、こう理解していいのでありますね。今度内閣に生まれるであろうところの、文教制度審議会というものにお諮りになると解釈していいのでありますか。
  43. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 今申しました通り、今度できる審議会に、そのこととして直接にはかけるつもりはございません。それは緊急政策としてそれより前に解決したいと思っているのです。ただしかしながら、教育の根底をなす教育に対する国家責任、監督、それから学校制度、わけても大学制度といったようなことをかけますから、その範囲に属するとしておのずから御調査を願わなければならぬ場合が生ずると思いますけれども、党として当時非常に考え——私もあれを作るのには参画しておりますが、目下の急務だといっているものは、臨時文教審議会答申するまでの間においても解決の道を講じたい、こう考えております。
  44. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 そうしますと、結局党がきめた緊急三点というものは、今度できる文教審議会へかけるかもしれないが、非常に緊急を要するのでかけないかもしれない。むしろそれより以前、内閣の文教制度審議会が誕生する以前にこれを解決したいという大臣のお気持がわかったのでありますが、そういたしますと、ただいま申し上げました党でお取り上げになりました右三点に対しては、私は相当具体的なものが生まれていると解釈いたすのであります。それは細部にわたっては、もとより具体的なものはおありでないだろうと思うのでありますが、いわゆる大綱といいますか、骨組みは、もはや大臣の胸中にも相当できているだろう、かように想像できるのでありますが、してみると、私が一つお聞きいたしたいことは、その二点の中の教育委員会制度の改廃という問題に対して、今まではただ改廃するということだけはわかっている。これだけのことは当委員会におきましても、大臣からたびたび御発言があったようにわれわれも了解いたしておりますが、この骨組みというものを少しばかりお漏らし願いたい。
  45. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 過日野原君かと思いますが、同様な御質問がありましたけれども、これは緊急でありますと同時に重要なことで、一点ゆるがせにできぬのでありまして、今党内において研究中であります。研究の成果ができましたらいち早く、この委員会は大切な委員会でありますからお諮り申し上げ、御批判を受けようと思っておりますが、ただいまのところでは申し上げる時期に到達しておりません。
  46. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 どうも私それが了解できないのです。御承知のように、本日は全国地教委が日比谷でたしか一大会合を持っておるやに聞いておりますが、こういう問題も一体文部大臣はどういうふうなお考えを持っておるか。ただ改廃をするという言葉だけではあまりにも不安が大き過ぎる。早くこの内容をある程度明瞭にされた方が私はいいんじゃないかと思いますし、また大臣としてもそれを早く明確になさる責任と義務があるんじゃないか。私は前々の文教委員会は休みましたが、ちょっと速記録を見ますると、臨時国会の会期中に当文教委員会においてできるだけ明瞭にしたい、当時佐藤文教委員長からの注文によって文部大臣はそのようにお答えになっておるのでありますが、そういたしますると、もうきょうは十三日、臨時国会中の文教委員会というものは、十六日までが臨時国会だといたしますとあるいはないかもしれない。私はこういうような前のお言葉をちらと読みましたから申し上げるというわけじゃございませんが、早くはっきりされる責任と義務があるんじゃないか、このような観点から実はお尋ねいたしておるのでありますが、ただいまの大臣の答弁では改廃をするんだということは申されておりますが、それ以上は一歩もまだ言う時期でないから言わないのだ、こう言われる。ところが緊急を要するんだと言われておる。緊急を要しておってまだ言う時期でないという、ここにいささか私は大臣の御答弁の矛盾というものを感ずるのでありますが、もう一度重ねてお尋ねいたしまするが、一つお願いをいたします。
  47. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 緊急を要するのでございます。それゆえに一日も早く確定いたしたいとは存じております。
  48. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 どうもいささかのれんに突っかかるような感じがいたしますが、(「簡単に願います」と呼ぶ者あり)重大な問題ですから黙っていて下さい。この教育委員会法の制度の改廃の問題でも、伝うるところによりますると、公選制を廃止してしまう、そうして都道府県の教育委員会は残すが、教育委員は任命制だ、同時に教育長は文部大臣指名をするとかしないとかいうような話、地方教育委員会は根こそぎとってしまう、こういうように新聞その他では漏れ聞くのでありますが、これは単なる新聞記事として、ただ新聞記者が想像をして書いたものでありましょうか、それともいささかでも大臣の胸中にはそういう荒組みというものが組まれておるのでありましょうか、この点、このくらいな程度は私はもはや緊急を要するのならばできていなければならぬと思うのでありますが、お気持はいかがでありましょう。
  49. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 同様のことを繰り返してはなはだ恐縮でありますけれども、まだその程度に達しておりません。新聞でお書きになったというのは、どういう資料を集められましたか知りませんけれども、私の口からは大臣就任以来一言も発表したことはないのです。
  50. 河野正

    ○河野(正)委員 関連して。教育の基本方針につきましては、先般も大臣に御質問いたしましたが、しかしながらその中で私ども非常に疑問を持ちますことが多々ございましたし、またただいま同僚議員でございます山崎委員からいろいろ基本方針について御質疑があったわけでございますが、しかしながらなお私ども納得のいかない点が多々ございますので、関連いたしまして一、二の点についてお尋ねをいたしたいと思います。  今度設けられました教育審議会というものは、文部大臣といたしましても当面いたしまする教育委員会の問題に対しましても、あるいはまた教科書の問題に対しましても、あるいはまた教育二法の問題に対しましても、きわめて重大な問題であるから慎重を期するために審議会を設けて、その中で慎重に検討して最終的な結論を出したいというような御意図にほかならぬのであろうと私ども確信いたすわけでございます。ところが今日の教育制上あるいは教育上の問題を見てみますと、その中で最も重要な問題は、ただいま申し上げましたような教育二法の問題であるとか、あるいはまた教育委員会の問題であるとか、あるいはまた教科書の問題、こういう問題が何と申しましても今日の教育制度の中の最も根本をなすものと私ども確信をいたします。そういった意味で私どもこの問題を非常に重要視しておるわけでございます。ところがそういったきわめて重要な問題を、今日設けられようといたします審議会にかけずに事後承認を求めて処理するのだというような御発表があったわけですが、これは大臣といたしましてもきわめて重要であるから、そういう問題については審議会を設けて慎重審議いたしたいという精神に反する大臣の御見解ではなかろうかというふうに考えておりますが、この点重ねて御答弁を願いたいと思います。
  51. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 これらのことは重要なる問題であります。またその上にかの三つのことは緊急を要するという性質が非常に多いのです。それゆえに臨時教育審議会は作りましても、これは法律で作るつもりでありますが、委員を任命し、答申を得るということは、幾ら急いでもこれは一年くらいかかるものと思います。しかるにあなたも御承知通り教科書の問題は、前国会開会中から行監委員会でもあれだけの問題を起し、急でありますから、これは一つ早くケリをつけて世間を静める方がいいだろう、こういうことで緊急対策となったと思います。委員会のこともまたこれ急でありまして、どっちになるかわかりませんが、改廃の限度いかんによっては次の選挙までやらぬと四年間はできないことになる。だからこれも急を要する。教職員の中立のことも今問題を起しておりますから、文部大臣としては世間の納得し得るようなことをすみやかにしなければならない、こう私は考えておるので、重要なることはむろん非常に重要です。けれども非常に重要なる上に緊急にせなければならないものが三つあるというので、これは党とか委員会で作ったというのではなくて、大会で結党する際に全国何百万の党員の意思としてこれをおきめになっておるのですから、私はこれを実行するつもりでおります。
  52. 河野正

    ○河野(正)委員 ただいまの大臣のお言葉の中に全く聞き捨てならぬ一点がございました。御答弁をなさいました二点の中で、教育委員会法の問題は選挙があるので、あるいは教科書の問題はすでに行政監察その他で問題になっておるのでということで、一応私どもわからぬわけではないのでございますが、最後の一点、つまり教育二法の問題であります。この問題について非常に問題が起っておるので早急にやりたいというふうな御答弁でありましたが、しからば具体的にどういう問題が起っておるのか、一つお示しを願いたい。
  53. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 これはここで人名をあげ、あるいは団体名をあげて言うととは適当でないと思いまするけれども、国内にやはり中立を欲する声は満ちておると思います。あの行監ではひとり教科書だけではなく、やはり中立の問題にも牽連しまして、あれだけの議論が起っておるのであります。このままにして放置することはできません。しかし今教育二法とおっしゃったが、私は二法を改正するに限ったというのではありません。これは改正するかもわからぬし、改正せぬかもわからぬ。世の中のことは法律々々、処罰々々でのみ目的を達するものではありませんのです。あるいはよりよき法律を作るという努力はしなければなりません。しかしながら必ずしも今まできたった教育二法を、峻厳にして何でもかでも厳罰にするというようなものの考え方はしておりません。しかし私の今言うことば、改正せずということではありませんけれども、よりよい方に改正する案があればするかもしれませんが、教育二法にフォーカスをきめて、そうして中立をはかろうという考えではないということを申すのであります。
  54. 加藤精三

    ○加藤(精)委員 関連して。ただいま今度内閣にできます仮称臨時教育制度審議会というのにつきましていろいろ御熱心な御議論があったのでありますが、それを政府がどういうふうな意図でやるかということのほかに、われわれ文教委員の連中もどういうふうな姿で持っていってもらいたいという建設的な意見も若干申し上げたいと思っているのでございます。  戦後の教育が試練の時期を経まして、ある程度安定期に入っておる面もございます。なお政令諮問委員会の活動が中途で中絶いたしましたが、しかしながらそうした観点から進めるべき部面も相当あると思うのでございます。文部大臣の言われるがごとく、教育制度は一度方針を決定いたしますれば学年の進行が数年にわたる関係から、そう軽々しく改廃すべきものではないのでございまして、わが国におきましてもかつて義務教育の延長とかあるいは中学校、高等女学校、高等学校、専門学校との連繋とか、制度の創設の際に非常に瑕疵がありまして苦しんだ歴史を持っております。誤まった制度ができますと、非常に長い期間それによって国民教育並びに教育行政に支障を生ずるのであります。そうした抜本的な改正を前に控えまして内閣に臨時教育制度審議会ができますことはわれわれはむしろ歓迎すべきものでありまして、党派を越えてこれをよき姿に持っていきまして、そうしてわが国の教育行政の将来数十年間にわたる制度がいい形で生まれることを期待することが進歩的な政治家の考え方だ、そういうふうに考えております。その点につきましてただ非常に心配をいたしますのは、明治、大正、昭和の初めにおきましては、教育制度それ自身が必ずしも国会の意図によっては動かなかったのでございまして、教育の基本を規定するものはすべて勅令であり、法律によって規定せられなかった。そうした関係上、国の教育に関して学識経験のある人、または世論の代表者を配置しまして、文政審議会なりあるいは教育評議会なり、臨時教育会議というものがあったように記憶しておりますが、いずれも最後になりますと、そういう審議会が政府を制肘いたしまして、大体文部大臣の命取りのような形にもなり、これを廃止しなければ新しい時代に即応する教育制度の改革ができなかったというような、相当大きな重荷になったような過去の経験があると思います。また同時に教育制度を改善しようとしましても、その決定に数カ年間を要しまして、ために国政の進展が非常にはばまれたというような過去の歴史があると存じております。その点、今度の審議会を作るに当りましては、十分御考慮になられたい。この文部大臣の文教政策が与党の教育に関する政策の理想を実現することは、私は大へん民主的でけっこうだと思うのでございます。と同時に、少数党の考え方を尊重するというアメリカのジェファーソンの民主主義の原則を十分その審議会において聴取する機会を持つことは非常に大切だと思いますので、政策遂行と同調査会とが適切なる調整を保つことをお願いするものでございます。  つきましては当面の非常に重要な問題で、しかも緊急政策と同じように時間を争う問題か他に一つあると思います。それは現在政府におきましては長期経済計画というものを立案いたしておりまして、それを政府の施策の基礎的な出発点にしようとしておるようでありますが、これに関連しまして、将来六カ年間に日本の経済を拡大して参りますにつきまして、果してこれに日本の科学技術者教育、産業従事者教育がマッチするかどうかという問題であります。現在政府で立案しております経済六カ年計画におきましては、いかなる調和をもってこの長期経済計画の立案に参加しているか、また必要な産業技術者の獲得につきまして、具体的にどういうふうに長期経済計画に取り入れられることになっているのか。私、長期経済計画の原案を読みましてもこれが見当らないのです。その点をお尋ねいたしますと同時に、大臣にお尋ねいたしたいのは、(「簡単、々々」と呼ぶ者あり)日本におきましては職業教育、ことに高等学校ないし大学においての職業教育と申しますと大へん語弊がございますが、高等教育を受けました者が社会に出まして、そして日本の国の産業経済の中に飛び込んで参ります際にそれに必要な知識、技能を獲得するために、その前提としての教育を受けるわけでありますが、(「委員長、注意」と呼ぶ者あり)文科系統と理工科系統との比率が、日本におきましては大体文科系統七に対して理工科系統が三になっておるということを聞いておるのでありまして一こうしたような比率になっている国は、世界には大国を除いて全然ない。いずれの国も理工科系統が圧倒的に割合が高いのであるのにかかわらず、日本におきましては、文科系統が非常に比重が大きくなっているということを聞いておるのでございます。こうした状況におきましては、長期経済計画を樹立いたしましても、経済拡大になりました際におきまして、十分にその産業に必要な技能者を獲得することができないんじゃないかということを考えられます一面、この大学卒業生、高等学校卒業生の就職難の非常に深刻なものが現在展開されておるのでありますが、そういう面から見まして、ことに文科系統の学生過剰という問題に対しましては、何か手を打つ必要がないか、ことに私立大学の営利的経営というようなことが問題になっておりますので、これがなおさら文科系統の学生量を全体の比率において重くしているうらみがないか、これらのことは国民が常識として、何とか国家的に考えてもらいたい、改正を要するのじゃないかということを、国民が常識として世論として考えておることだろうと思いますので、私一言その点を(「一言じゃない万言だ」と呼ぶ者あり)文部大臣に御質問申し上げておきたいと思うのであります。
  55. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 今加藤さん御発言の前段、すなわちこれから置こうといたしまする臨時教育制度審議会には、加藤さんおっしゃった通りの運営をいたしたいと思います。後段の科学教育、技術教育のことでありまするが、これも同様な考えをもちまして、本年は私立学校の振興費のほかに、別に既設学校がえてして文科系が多いのですから、理科系の方を充実するための予算を今要求いたしております。そのほかに科学の研究については、国立大学においてもこの費用を充実し、わけても原子力の研究なり、航空技術の研究なり、あるいはガン、ヴィールスの研究といったような科学方面に力を用いるようにいたしております。いずれ予算内容については、もう少し進みましてからよく御説明申し上げる機会もあろうと思います。
  56. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 関連して野原覺君。
  57. 野原覺

    野原委員 私は大臣に率直にお尋ねいたしたいのですが、あなたの方が緊急対策として打ち出しておきながら、いまだにその具体的な内容を示さぬということは、これは明らかに衆議院の文教委員会をあなたは軽視していらっしゃる、私は残念ながらそうとらざるを得ないんです。そこで教育委員会の改廃を打ち出しておきながら、改廃するのかせぬのか、まだきまらぬのだという、こういうことは一体国民として承知できませんよ。改廃を明確に出しておきながら、具体的内容はきまらぬのだ、こういうことを言われる。ところが朝日、毎日、読売の天下の大新聞は、改廃の具体的内容はこうだ、公選制は任命制に変えることが一つ、それから地方教育委員会については旧民主党は廃止、ところが旧自由党は大連文相時代以来の地教委育成強化という手前もあったから、その方向転換が今日非常に困難なので打ち出せないのだといっておる。そういう内部の事情が、私は設置単位についてはあるのじゃないかと考えるのです。だからして公選制を廃して任命制にするということはさまっておるけれども、設置単位については、実は党内事情もあって、旧民主党と旧自由党の政策の調整がいまだにつかぬものだと思う。私はあなたが議会政治家である限り、文教委員会を尊重するという建前ならば、その辺のことは率直に御答弁あってしかるべきだと思うのです。この点について一つ御所見を承わりたいのであります。
  58. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 清瀬文部大臣。なお先ほどの加藤精主君の長期計画についての答弁がありませんから、政府委員から一つ答弁をお願いします。まず文部大臣からお願いします。
  59. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 今総括してお答えしたつもりでありましたが、言葉が足りませなんだら御容赦をお願いいたします。  長期計画経済は結局日本を工業的、産業的に導こうということであります。これには多数の技術者が要ることであります。学校は基礎研究が第一でありまするから、そこで今申す通り非常にたくさん大学卒業生が出まするが、それを多く技術の方を修得するようにしてもらったらよかろう、官立大学においてもいろいろ科学の研究をさせまするが、わけても問題はわが国の私立学校であります。東京にも有名な大学があって、近時は工科、医科も相当できておりまするけれども、やはり圧倒的に法科、文科が多いんですが、やはりこれは技術の方を充実していただくように、本年はその経費も計上いたしておるのでございます。  それからしてこの過剰の卒業生の対策については、労働省なり厚生省と対策本部を作って、卒業生自身の自覚も求め、それからまた採用する諸施設、すなわち諸会社の方にも勧誘いたしまして、これを処理しておるのでありまするが、こういうこそくなことじゃいけませんので、経済計画とにらみ合せて、やはり学校の応募とか教科とかいうことも根本的にお考えを願わなければなりません。こういうふうにまあ考えております。(「委員長、関連…」と呼ぶ者あり)
  60. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 なお続いて野原君の答弁一つお願いします。
  61. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 実際にあの問題は重要な問題であります。しかしながら結局法律を変えなければならぬ。それゆえに提案は何ぼ早くても次の国会であります。ただいま党内においては、十分にまた取り急いで研究進行中であります。党内に内においては従前の行きがかり等を顧みないで、百に国家のために統一したる意見を確定中でございまするから、過日の委員会でお答え申した以上、本日まだこれを追加する時期に達しておりません。
  62. 加藤精三

    ○加藤(精)委員 委員長に御注意申し上げますが、一今の委員の質問に対する答弁が完結してから次の関連質問を許していただきたい。それを委員長によくお願いしておきます。  次に私の申しておりますのは、ある委員から漫談とか言われましたが、私東北人でございまして、言葉が非常に下手なんで、その点を冷笑されることは非常に困りますので、(「漫談とは言わぬ、漫言だ」と呼ぶ者あり)その点は十分御了承になっていただいて、私、教育並びに教育行政に対する熱意につきましては、真剣でございまして、漫言という言葉もまた非常に私は不愉快です。委員会の体面保持上ある程度自省をお願いしたいのです。  次に、長期経済計画と技能者養成との脚注におきましては、単に抽象的な御答弁では満足いたしませんので、産業五カ年計画の各年次別に、大学、高等学校卒業生等の技能者の卒業者をもって新しく充足する、その年次別の充足計画を書面で御提出願いたいと思っております。これは委員長からお取り計らいを願います。
  63. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 加藤君の要求、事務当局に至急いたすようにお願いいたします。関連して野原覺君。
  64. 野原覺

    野原委員 私は繰り返し繰り返し実はもう何回となく大臣には同じ質問をいたしておるのでございますけれども、どうしても実は納得できない、というのは緊急政策として自由民主党が改廃とか改善とか中立厳守の措置をとるとか、こういう結論をはっきり打ち出しておる。大臣の御答弁を聞くと、いや実は今出せないのだ、通常国会で出すのだ、再検討しているのだ、こういうならば、なぜ教育委員会、教科書あるいは教育者の政治的中立確保については緊急に再検討するというような打ち出し方をしないのか、私はどう考えてもこの文教委員会をあなた自身がどうも軽視していらっしゃるように思う。いやしくも天下の公党がこういう打ち出し方をした以上は、内容がないとは私は申せないと思うのです。本日は日比谷の公会堂に全国四十六都道府県の地方教育委員会の諸君が集まって、地教委の廃止は承知できない、公選制はあくまでも堅持してもらいたいという大会が持たれておる。莫大な経費と莫大な時間が浪費された大会となるかもわからないのであります。こういう火つけをなされたということは一体どなたにあるのでございましょうか。これは自由民主党の緊急対策として出されたからこういう事柄に発展したのじゃないか。そうなれば本日あたりはその点については、再検討なら再検討だ、改廃はするつもりはないならないと明確に御答弁があってしかるべきではなかろうかと思うのであります。この点に対する御所見を伺いたい。  それからもう一点は、教育者の政治的中立性厳守の措置をとるということについては、教育二法を改正するかもわからぬ、改正しないかもわからぬという御答弁でございましたが、なおその御答弁があったときにこういうことも言われておる。世間の納得のいく改正をしたいということも大臣は申しておるのであります。一体大臣は世論というものをどのようにして認識していこうと考えておられるか。私の言う教育二法に関する世論は、明らかにこの教育二法というものは教育者の基本的な人権を侵害しておるところのものであるから、このようなものは緩和こそすれ、撤廃こそすれ、これを厳正にきびしい態度で臨むべきではないというのを私は世論として受け取っておるのでございますが、あなたは教育二法に関する世論というものは今日どのようなものであるとお考えでございますか、お尋ねします。以上二点であります。
  65. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 わが党で緊急対策を決議したのが十一月十五日でございます。まだ二十日しか日がたっておりませんです。こういう国家の重大なものを軽々にやるということは、政治家としては慎しまなければならぬ。わが党内においては非常に熱心に意見を交換しております。そこで、議会制度のもとにおいて党で研究をして結論が出ないうちに先ばしって文部大臣がつべこべ言うということは好ましくないことと思います。あなた方が内閣を組織されてもおそらくは同様になるのじゃありませんか。党の文教関係の代議士は非常に熱心に今検討中であります。その答えが出るまでは何とおっしゃっても私はこれ以上の答えはいたしません。  それから世間で教育委員会の中立性を求める声は非常に大であります。その証拠は前の国会で行政監察委員会で参考人を呼んで聞いております。私は何という団体などと団体名を指名し、個人の名前を指名してここで言うことは穏やかならぬと思います。私の過去の認識では、またわが党の認識では、日本の教育家に一そう自粛自戒を求め、中立を求めるということはみんな考えておることであります。
  66. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 私は委員長に一言お願いを申し上げたい。ただいま加藤委員からお願いが出ましたが、私からも一言出したい。といいますことは、先ほどから聞いておりますと、私が発言中に十四、五分たった時間に簡単にと言われた。簡単に簡単にと言われた加藤委員が関連質問をとって一問の質問時間が十三分、しかも文部大臣はめったにこの席へお見えにならない。私もなるべく皆さんの発言の機会にと思ってずいぶん遠慮しておる。せっかく質問の順番をとった本人がほとんど質問せずに、しかもその人が簡単にというようなことでヤジられ、関連質問が莫大で、しかも一人の委員の一問の関連質問が十三分、そういうようなことは私は非常に遺憾だと思うのであります。この点は一つお互いに自粛したい、私はかように思います。  私は前の続きへ入りますが、ちょうど私が質問をしておりますそっくりそのままを野原委員が御質問された。私はちょうど区切りがそこへきておるので申し上げますが、ただいま文部大臣は、私が質問しておりますのも緊急であるという、これくらい重大なものを打ち出しておりながらいまだにそれの骨組みさえもお話にならないというまことに非立憲的な審議ぶりというものは私はないと思う。先ほども文部大臣は当の文教制度調査特別委員会が十一月の十五日に打ち出した、そうしてそれを党議で御決定になったのだろうと思いますが、わずか二十日しかたたないのにこれくらい重大なという言葉を言われましたが、私はそっくりそのままを申し上げたい。なぜならばこの重大な三点をお取り上げになった民主党の文教制度調査特別委員会というものが誕生したのが、おそらくこれは十月の末ごろじゃないかと思うのであります。その人が、委員会を設けられたわずかの後になって、これだけの重大なものを国民の前で政策としてお取り上げになられたのであります。そういうふうな重大なものをお取り上げになる以上は、これは十分御研究があってこそお取り上げになっておるのだと私は思うのであります。御研究があったものならば、しかも大臣のお話のごとく緊急だと言われるのならば、今日に至って教育委員会法の改廃、これでもってあとをあなたが御説明にならないというこの態度というものは、私はまことに遺憾だと思うのであります。特に私は今速記録を見ましたが、先月の二十九日の速記録にあなたの御答弁として、佐藤文教委員長から、「それでは一週間ぐらい後の機会に文部大臣から一つ御説明願いたいと思います。」わが党の辻原委員から「委員長のお取り計らいで、大臣も心よく御承諾をいただきまして、これは国民になりかわって感謝いたします。臨時国会中にぜひともその機会を持っていただきたい。」清瀬文部大臣から「承知いたしました。」こうある。こういうふうなお言葉に対してあなたは責任をお考えにならないのですか。この点しつこいようでありますが、野原委員の最後の締めくくりとして私からお願いいたします。
  67. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 政治家が責任を尽すゆえんは、何もかもべらべらしゃべることが責任を尽すゆえんではありません。自信を得て党が立てた政策を実行するのが私の責任であります。私の属しておった前の政党ではよほど進んだところまできましたけれども、あれはまだ党議になっておりません。新たなこの政党は立党以来代議士中の専門家を集めて熱心に研究しておる最中です。それがきまらぬ先にここで言えとおっしゃってもこれは言えるものでありません。(「緊急政策じゃないか」と呼ぶ者あり)緊急だから通常国会に出す。臨時国会でほかの仕事があるにかかわらず緊急に熱心にやっておるのです。一ぺん来てごらんなさい。実に熱心です。それがきまらぬ先に大臣がべらべらしゃべるということは、立憲政治のもとにおける、民主政治のもとにおける内閣のやることではありません。党議でおきめになってからそれを一ぺん閣議に付議して、これを実行するということで初めてやる。そのかわり私は言うたら実行しますよ。そんな放言はしません。清瀬放言はありません。(笑声)
  68. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 どうもただいまの御答弁は、もはや何と申しまするか、あきれてものが言えないという感じがいたします。ですから私は真正面からお聞きするのを一応やめます。  それで、新たに一つお聞きいたしたいことは、教育委員会制度というものはよい制度か、悪い制度か、この点の御答弁は私はできると思うのです。どうですか。
  69. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 日本の実情に照らしては改廃の必要があると思います。この言葉で御了解願いたいと思います。
  70. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 そういうことを聞いているのじゃないのです。民主的な教育制度とすればよい制度か、悪い制度か、イエスかノーかの御返答でけっこうなんです。
  71. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 理想的のものであるならば改廃の必要はないです。われわれが改廃の必要を認めたということで御了解を願います。
  72. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 制度そのものにはすべて批判の角度によれば欠点も長所もございます。そういう個々の欠点、長所を私は申し上げているのじゃないのです。教育制度としての制度の大綱としてよい制度か悪い制度かということの答弁です。私の質問の核心に触れていただきたい。
  73. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 理想的の欠点のないものならば、改廃の必要はないです。わが党で改廃の必要ありと認めた理由はこれで御了解を願いたいのであります。
  74. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 それではこの十一月の二十九日の愛知県と名古屋市との両方の教育委員会のトラブルの問題で、文部大臣はこのトラブルをごらんになって、これは教育委員会制度に欠陥があるからだというこの速記録があるのでありますが、あのトラブルは教育委員会制度の欠陥から来ておるとあなたはお考えですか、どうですか。
  75. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 欠陥の一つと思います。
  76. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 そういたしますと、もはやこれ以上質問しても答弁が得られないかもしれませんから、私はもうこれはやめます。私も根が切れちゃった。  それではちょっと一言別の観点から、一般論でありますが大切な問題を私はお尋ねしてみたい。と申しますことは、清瀬文部大臣は大臣就任早々に、自分は民主党の中から出ておる党籍のある大臣だから、今後の自分の文教政策はすべて党が決定したことを忠実に守る、いわば自分は党の番犬にすぎないんだ、こういう言葉を言われたのであります。この点私は一応論理的にはそういうことが言えると思います。歴代の文部大臣を見ましても、ちょうど清瀬文部大臣と同じようなことを言われたのが岡部文部大臣でありました。あの人は終始一貫あなたと同じ論法です。困られると、これは党がきめたんだからわしがべらべら前もって言うわけにはいかぬのだという。やっぱりそういう逃げ言葉をもって言われるのでありますが、その点に関連して、今日の政治形態ではそういうことは言えると思います。思いますが、反面私は非常に疑問を持っておる。疑問を持っておるということは、あなたは教職員の中立性というよりはむしろ教育の中立性を確保しなければいけないと申されておりますが、この教育の中立性という問題と、自分は党籍のある文部大臣だから、党の言うことをわが国の文教政策の基本にするんだ、こうおっしゃるこの言葉とは、私はどうしてもこの中立性という問題と関連した場合に非常に考えなければならぬ問題じゃないかと思うのであります。率直に申しますと、昨年の十九国会でありましたか、例の疑獄、汚職のあげくの果てが指揮権の発動で司法権の独立性を侵害した、司法権の中立性を侵害した。この事実はあなたもお認めになると思うのでありますが、あの場合に私の考えますことは、少くとも法務大臣というものがせめて党籍を離脱しておった人であったならば、あの形はどういうふうに変っておるだろうかということに疑問を持つのであります。歴代内閣が特にこの教育の中立性ということを非常にやかましく言われながら、ややもいたしますと自分は党人だという観念で、党がきめたことならば何でもかんでもそれを忠実に実行するという党人としての務めを果される余りかどうか知りませんが、ここ数カ年の日本の特に保守政党の文教政策——われわれは天下をとらぬのでありますから、保守政党の文教政策は、都合のよいときには右に曲り、あるいは左の方にふん曲る。ちょうどあめ玉を権力でもって、政治力でもって右にでも左にでもひん曲げるというような文教政策がとられたと私は思うのであります。今論議いたしております教育委員会制度は、過去の経過を見ても、これは私が申し上げるまでもございません、いわゆる教員をふん縛るために地方教育委員会を置いたという過去の事実もございます。どうしてもこれは置かなければいけないといって、今から三年前に置いたものが、今大臣の御答弁ではそれに対する非常な懐疑を持っていらっしゃる。こういうふうにいわゆるときどきの政治権力といいますか、政党というものにあまりに忠実である反面には、教育の中正という立場から見ました場合、それはややもすると中正の中心点は右にゆれたり左にゆれたりして今日まで参った。この点に対して私はいまだに疑問が解決できないのであります。あなたは就任早々に、わしは党人なんだから自分の文教政策というものは、極端に言えばないのだ。まことに御謙遜な言葉であるかもしれませんが、今後は党のきめたことを忠実に守るだけだというあなたの御気持と、今私がお尋ねいたしましたその中正という問題との矛盾といいますか、この点を一つお教え願いたいと思うのであります。
  77. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 私どもの党の党議が教育の中立性、教育者の中立性を守ろうという党議なので、それを守る以上は中立性を侵すはずはありませんよ。中立性を守ることそれ自身がわが党の党議です。
  78. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 だからそれはわかっておりますが、それは民主党なり、過去の政治権力をもっていらっしゃった自由党にいたしましても、その人がきめたことは中立性なんですか。国民はそう見ておりませんがね。だから私が申しますのは、数学的な線の中心点はどこであるとか、あるいは円の中心点はどこであるとか、これをはっきり言えといっておるのではないのです。そういうことを言うておるのではありませんよ。都合によったらこの教育の中立性の中心点が、右に曲ったり左に曲ったりして今日まできたのではないか。この点に対してあなたは党人だといわれている。党人であるあなたは、忠実に民主党の文教政策を実行されると思うのでありますが、それをきめた事柄というものは中正なんですか。教育の中立性を保つためには、教育行政の中立性がなかったら教育の中立性というものは私はできないと思う。その点の関連を——非常にむずかしい問題でありますが、私自身疑問がありますので、一つ御回答願いたいと思うのであります。
  79. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 私の属しておらなんだ過去の政党内閣のしたことについては、私ここで答弁ができません。すなわち指揮権の発動等の理由は知りません。それからして、日本の某政党は、憲法を改正して、将来は教育も司法も社会主義に適応せしめると書いた政党もあるのです。これは教育の中立性を認めておりません。しかしながらわが党では教育の中立性を守るということが党議ですから、この党議を実行したって中立性を侵すことはないでしょう。中立性を侵さないことが党議なんです。
  80. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 どうもあなたの答弁と私の質問とだいぶずれがありますので、もうこれ以上続けません。ただ私はあなたのお話を聞いて遺憾に思うことは、あなた御自身の頭の中の教育に対する理念というものが、非常に既成観念がこびりついていらっしゃるのではないか。そこからすべてが出ておるのではないかと答弁全体から受けます気持がいたすのであります。私はこんなことは申し上げたくありませんが、歴代の文部大臣をずっと私冷やかに見て参りましても、こんな個人の名前を言うのはどうか知りませんけれども、前の松村文部大臣はりっぱな人だと私は尊敬しております。少くとも教育行政というものは一般行政とはいささか違う点がある。やはり党人でありながらも、比較的中正なしかも公正な良心的な御答弁をされておったように私は思うのです。その点に引きかえまして、私はこんなことは申し上げたくありませんが、きょうの御答弁を聞いておりますと、ほんとうにあなたは党人としてはりっぱな人であるかもしれませんが、日本のいわゆる文教政策の新しい一つの理念をこれから打ち出そうとされるのには、私は非常に遺憾な御答弁であると遺憾の意を表して、あなたに対するこの御質問は一応これで打ち切ります。  最後に一言だけほかの点で緒方局長にお尋ねいたしますが、十一月二十九日に当文教委員会に愛知県、名古屋市の教育委員の参考人を呼んで、目下問題となっております愛知県の高等学校学区制の問題をここで参考人より聴取されておられましたが、私も速記録を見まして、参考人を呼んだということは非常にけっこうなことだと思っておりますが、この問題は十月四日の国会休会中の文教委員協議会でもって私が最初お尋ねした。それで二の学区制という問題がくずれたならば日本の六・三教育というものが高等学校教育からくずれていくじゃないか。これはただ愛知県名古屋市だけの問題じゃありませんよと、私も当時詳しいことは聞いておりませんでしたから簡単に申し上げておきましたが、その後に問題が大きくクローズ・アップされまして、当委員会でも参考人を呼ばれたという。それについて文部省はその後参考人をお呼びになった後にこの問題の真相並びにその他の点を調査されましたかどうか。
  81. 緒方信一

    ○緒方政府委員 参考人を呼ばれましたその以前におきましても愛知県の教育委員会、名古屋市の教育委員会両方から陳情並びに事実の報告を受けております。なおまた私もその参考人の陳述もここに同席いたしましてよく拝聴いたしました。事情は存じておりますが、その後格別に事情調査はまだいたしておりません。
  82. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 私は今のような御答弁を聞いて非常に遺憾に思う点がある。当日の委員会の速記録を見ましても非常に遺憾に思ったのですが、時間もありませんから焦点をしぼって申し上げます。調べてみますと四十二も三もある高等学校の学区制が二つの学区になる、そうして教育委員会法の五十四条には、高等学校の学区制は数個とある、だから二つきめても教育委員会の権限であるから文部省としては何ら関知するところじゃないのだ、気持の上では円満に解決することを祈るが、まだそれ以上一歩もあなたの御答弁の中からは積極的にこの問題を指導しよう、あるいは助言しよう、あるいは勧告しようというようなお気持が見えないのでありますが、私はその後御調査の上においてそういうふうな方向に向っておられるのかどうかという点が実は聞きたかったのでありますが、今の御答弁を聞きますると、依然としてノー・タッチという形に解釈していいのでありますか。
  83. 緒方信一

    ○緒方政府委員 私この問題につきましてはその日の委員会でも質問を受けまして申し上げたのでありますが、私は学区をいかにきめるかということはやはり地方の問題だと思います。その問題をめぐって県の教育委員会と市の教育委員会とが対立をしているが、その場合高等学校教育の運営がうまくいかないということになればこれはまことに遺憾だと存じます。しかしながらそれをいかにきめるかということは地方地方の問題であって、地方の住民の意思に従って、県の教育委員会に権限がありますから、県の教育委員会がきめるべき問題だ、かように今日も考えております。従って今申しましたように対立があって、それが非常にトラブルを起しておるということでありますれば、これはまことに遺憾でありますので、その問題がすみやかに解消されて円滑な教育が行われるように、これのすみやかなることを念願をいたすわけでございますけれども、しかしながらこういう地方の問題に文部省が立ち入って干渉がましいことをやるということは、地方自治の観点から申しまして本則じゃなかろうと考えます。かような問題が地方におきまして何とか解決の曙光が見えまして、そっちの方向に関係者が全部で努力するということでなければ、これは中央官庁から出ていきまして、いろいろ申しまして、それで解決する問題じゃないと考えております。さような状態のすみやかに来たらんことを私どもは念願しておりますが、それらのことにつきまして何らかのお役に立つことができるならば、これは労をとることに決してやぶさかではないと考えます。
  84. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 私はどうもまことに慨嘆にたえない。四十二の学区を二つに割っておるという極端な例は日本全国にない。四十二、三もある学区を二つに割っていいなら、もう大学も中学もへったくれもありませんよ。学区制という制度がないと同じことですよ。これに対して私は今のような形式的な、いわゆる役人とすれば能吏の答弁かもしれませんが、そういう答弁というものは実際は答弁にならない。大体あの学区制というものを設けられたときには、文部省はどういう態度でもって——地方教育委員会の権限でありながら、暮夜ひそかに文部大臣地方の教育長を官邸に呼んでまでもくどいておるのであります。そこまで指導勧告助言をやっておられる。さあ、それができた、今はそれがくずれてしまいました。私は六・三教育を守る上においては、いわゆる教科課程の問題にしても学区制の問題にしても、やはりあなた方が昔きめられた当時の教育的な熱情というものを持って、日常の事務をただ上から言われたことを正確に守るというのでなくて、いま少し日本の教育を守るという熱情を持って仕事をやられたならば、こんな非常識なものに指導勧告助言ができないというばかなことはないのです。過日の委員会におきましても、野原委員から、文部省設置法の例を引いてこの点をお尋ねしておるような記事も私は見ました。全くその通りです。学区が四十二もあって、それが二つに割れる、これは、学区制制度というものは、今の文部省の考え方では、なくてもいいのだという考え方に通ずるのであります。それをあなたは通り一ぺんの御答弁、私は非常に遺憾にたえない、あなた方はどうお考えになっておられるのですか。四十二、三あった学区が二つになるという非常識な例が他にあるのですか。しかもそういう非常識な例は地方のことだから、文部省とすれば干渉がましいことは言わぬのだとおっしゃいますが、あなた方はこの文部省設置法の指導勧告助言のこの規則をたてにとって、従来たびたびあなた方はやっていらっしゃるのです。今回の愛知県名古屋市の例は、あなたは地方のことだと言われますが、これは日本全体のことですよ。そうお考えにならないのですか。もう一度私は御答弁をお願いします。
  85. 緒方信一

    ○緒方政府委員 学区制をきめるにつきまして、いわゆる小学区制をとるか中学区制をとるか、これはその設置の当初からどっちがいいということは文部省も指導してないはずでございます。山崎さんは岡山県で関西のお方でございますから、そのときの軍政部の指導の実情からいたしまして、関西の方は小学区制が割合に多いのであります。逆に北の方はむしろ大きい学区制の方が多いように見受けられます。さような実情でございまして、文部省としましても初めから中学区制でなければならぬということを言っていないと私は考えております。私はその当時おりませんでしたから的確に申しかねますけれども。  それから私決して名古屋のあの状況がいいと考えておるわけじゃございません。しかしながら先ほども申し上げたように、現に地方で紛争の問題として渦を巻いておるその中に役所がただ出て行きましても、そういうものが解決するものじゃございませんので、これはやはり地方でそういう解決の方向に皆様が努力をなさらなければいかぬ、それに何かお手伝いできることならばその労をとることは決してやぶさかじゃございません。そういうことを申し上げておるわけでございまして、御了解を願いたいと思います。
  86. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 それはわかっておるのです。私は文部省がああしろこうしろと言えということじゃないのです。いわゆる指導勧告助言の範囲内において、二つとはあまりひどいじゃないかくらいのことが言えませんか。なるほど法文の上からいけば数個の学区としてある。ですから二つも数個でしょう。あなた方はそういう通り一ぺんの答弁をされる。なるほど関西と関東、東北の方は学区制の規模が多少違う。それは人口の希薄の程度、あるいは濃密の程度によって違います。また当時の軍政部の所管の関係で違っておる点もあります。それはございまするが、少くともあの当時文部省が指導されたときに、これは一つのものの例でありますが、最近小選挙区制の問題が出ております。小選挙区制にするという物の考え方があれば、それは人口十七万前後に一人とか、あるいは二十万前後の行政区域に一人の衆議院議員とかいうふうな、一応法律にはうたわなくても、行政の上で一応の理想的な高等学校育成という一つ目的があるならば、そこに何らかのあなた方は常識的な判断をお持ちだろうと私は申し上げたいのです。そういう判断があるならば、四十二、三もある学区が一県でもってまっ二つになって、二つの学区になって、そうして六・三制の基礎を危うくするというこの重大な事態を見ながら、今のような答弁をされるところに、私は果してあなた方はほんとう日本の教育を愛するという熱情でもってやっていらっしゃるかどうかということなのです。そういう熱情があるならば、二つはあまりひどいじゃないかというくらいのことが言えませんかと私は言いたい、具体的に言えば。ただ法律では学区というものは何区にしなければならぬとか、何ぼにしなければいかぬということはきめてない。この問題は教育委員会の権限だから私は知らぬことである。一言で言えばそういうことなのです。私は事務官僚としてももう少し熱情を持ってやっていただきたいと思うのであります。あなたはその所管の責任者である。もう私はこれより以上質問をいたしません。何ぼ聞いてもむだです。しかし、ただ私は教育を愛するゆえに、あなた方の日常の仕事をそういう気持でやっていただきたい。
  87. 田中久雄

    ○田中(久)委員 関連して。私は緒方局長にお尋ねをしたいと思いますが、先ほど来も委員諸君から、教育二法の改正をするんじゃないかということで大へん御心配のようでありますが、教育二法を作りますときに、私どもはやむを得ず、残念ながらあの法律を作るときに賛成した。しかも学校教員の政治的中立を信用して、まずこの程度であればおそらく中立が維持されるであろうということを信用してやった。同時に政治活動、特に選挙の場合において特に公正を維持するであろうということを非常に期待しておったのでありますが、その後衆議院の選挙が行われ、その他の選挙が行われておりますが、実はまことに残念なことでありますけれども、各地においてこの法律があるにかかわらずこれを犯しておる。その犯しておるのも、常人以上の選挙違反をやっておる事例がたくさんあります。一例をあげますと、この間知事の選挙があった高知県で、夜十時ごろに一人の男が反対党の一人の候補者のポスターを破った。それをある人がつかまえて突き出してみたら、それは中学校の教員であった。いろいろ調べてみると、ポケットにガリ版刷りの刷り物があって、そのガリ版刷りにはかくのごとくやれという、いわゆる裏の道がずっと指示せられておって、そうしてこれを見たらすぐ破れという某団体からの指令であったと、こういうのであります。その団体が何であるかは新聞にも書いてありませんし、私も知りませんが、要するにそういう選挙妨害をやって、特定の候補者を支持し、またはこれに反対をしたというために警察につかまっておる。まことに残念なことでありますが、これは一面にはこういう法律ができておるのだから、学校教職員は特定の候補者の運動をしてはいけないということの指導が十分でないのじゃないかと私はおそれるのであります。いたずらに何も知らない末端の教員が組合その他から指示をせられて、そういう誤まったことをして、選挙法に触れたり、また公務員特例法に触れたりしていくことは、まことにかわいそうでもあると私は思います。文部省としてはこの教育二法について、十分な周知徹底の措置がとられたものであるかどうか、これを一つお尋ねをいたします。
  88. 緒方信一

    ○緒方政府委員 高知県の知事選挙における問題につきましては、私まだよく存じておりませんが、お尋ねの教育二法ができましたあとの周知徹底の方法といたしましては、これは官庁としていつもやるような方法で、まず通達を出しまして、これを地方教育委員会に徹底さしたつもりであります。さらにまた私ども地方に出かけて参りまして、講習会等も開きまして、全国的に相当徹底したと私は考えておった次第でございます。それからさらにまた総選挙の行われましたときには、ただいまお話のような、こういう法律ができて、それを知らずに違反をするような学校の先生がおってはまことに遺憾でございまするし、気の毒でもございまするので、特に総選挙に際しては法律をよく守り——先生に対しましては、御承知のように選挙法においても特別な規定がございまして、百三十七条でございますか、地位利用の選挙運動をやってはいかぬという規定もございますので、これらのこともあわせてよく徹底するような通牒を特に出して参ったわけでございます。しかし今度の高知の選挙については、そういう手段はとっておりません。これは局部的な選挙でありますからしなかったわけであります。今後も違反のないように十分やっていきたいと思います。
  89. 田中久雄

    ○田中(久)委員 これは県を申し上げることははばかりますが、ある県では本年の衆議院議員の選挙に、一つの郡の教員組合の委員長と書記長が、候補者から相当多額の金をとった。それには県の書記長も、それから教組の推薦した教育委員も入っております。この四名の者が候補者から相当多額の金をとった。そのために逮捕状が出まして、それらは本年の二月以降逃亡しております。今なお逃亡している。こういうことはまことに本人にとりましても不幸なことです。また国としましても子供の教育上、先生であり組合の書記長や委員長、ことに県の書記長が選挙違反を起して金をもらって、それで逮捕状が出て半年以上も逃げ回っているということは、これは断じて許せぬことでもありますが、単に教員だけを責めるということもできかねると私は思います。しかもこれはたまたま現われた一つの事例であって、地下にもぐって何票ずつ集めるというような秘密指令がしばしば出されているということは、これは選挙をしている者一般に常識化している。せっかく教育二法を作って、そして当時悪法とか何とかいわれたけれども、なお教員がそういうことをしないようにという親心がじゅうりんせられているということは、教員自体にもむろん罪がありますが、私はこの際十分に周知徹底させまして、かりに教員組合その他においてそういう法を犯すような秘密指令とかいうようなものを出しましても、教員が動かない程度に法律を遵守させる手段を講ぜられるのが、役所として望ましいことじゃないかと存じます。つきましては、一応この二月選挙などにおいて、教員であって、選挙違反で取調べを受けて起訴せられた教職員が全国でどれくらいあるか、これをお調べになっていただき、なるべく近い機会の委員会に御報告いただきたい。これによって私どもは、この程度なら大いに周知徹底せしめれば、そういう弊害はなくなるだろうという判断ができるか、あるいは幾ら周知徹底さしてもこれはだめだという判断ができるか、重要な資料になると思いますので、起訴された数を一つお調べ願いたいと思います。
  90. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 それでは、先ほどの山崎君の問題に関連して島上善五郎君。
  91. 島上善五郎

    ○島上委員 関連ですから簡単に申しますが、教育の中立性とか教育の中性ということは、もちろん私どもも賛成でありますが、その教育の中立性なり中性を保つためには、別な言葉で申しますれば、先ほどあげられた、たとえば教育委員会の問題にしましても、あるいは教科書制度の問題にしましても、教育二法その他の問題にしましても、一党一派によって朝令暮改的な改正をなすべきものではないと思う。わが党は教育の中立性を保つためにやっているのだ、こう繰り返しておっしゃいましたけれども、私は、一党一派が朝令暮改的な改正を次から次へとするということになりますれば、世間はそれを公正と見ませんし、事実においても、決して公正なあるいは教育の中性が保たれるということにはならないのではないか。一党一派による朝令暮改的な改正をしないで、改正をする必要があるとしたならば、広く世論にかけて慎重になすという態度がとらるべきものである、こう私は考えるのですが、そういう基本的な考え方について大臣はどうお考えか、伺いたいと思います。
  92. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 教育のみならず、国の法律は安定すべきで、朝令暮改はよくございません。今の御質問と全く同意見であります。ただそうかといって固定して、一たんきまったものはもうこれを墨守するということもよくない。こともよくない。ことにわが国の教育の場合は、悲しいかなわが国が戦争に負けまして、敵が占領して、今の問答でもわかっておる通り、軍政部が来て奨励して、学区制を小さくさすところと大きくさすところとできたというふうなことになりましたが、独立いたした以上はよく考えて、悪いところは改正していく、この必要はあろうと思うのであります。みだりに朝令暮改するつもりじゃございません。
  93. 島上善五郎

    ○島上委員 私の記憶するところによれば、現行の教育委員会制度にしても、あるいは教科書制度にしても、さらに先ほど言われておった教育二法の問題にしましても、今の自由民主党の前身である自由党、民主党の諸君がともに必要であるとして賛成をされて実施されたものである。しかもこれは実施後まだそう長い年月がたっていない。もちろん私自身も全くどこにも非の打ちどころはない、完璧なものであるとは存じませんけれども、それを根本的に変えるという必要が一体あるのかどうか、根本的に変えるということになれば朝令暮改の非難を免れ得ないのではないか、こういう感じがするのです。それを慎重に広く世間の意見を聞いてやるというならばまだしもですが、非常に緊急であるから党できめるのだ、党できめたら自分はそれを忠実に守るのだということになれば、どうも一党一派によって教育の中正を侵す、こういう結果になるのではないかという心配を私は多分に持っておるのです。今の自由民主党ではありませんけれども、あなたの属しておられた民主党がつい先般「うれうべき教科書の問題」なるパンフレットを出しまして、非常に大きな問題を起した。民主党の見解ではああいうことになるかもしれませんけれども、私ども考えからすると非常に大きな違いがある。あのパンフレットに対しては、どこの党にも属さない公平な学者、権威ある教育者の諸君が集まって、偏見と独断に満ちたものである、これは一党による教育の支配を目ざしているものであるという痛烈な批判、非難をされたことを、大臣もあるいはお耳に入っているのではないかと思う。どうも今の党は合同したので民主党の考えをそのまま受け継がれているかどうかはにわかに判断はできませんけれども、そういうような独断と偏見に満ちた一党による教育の支配、干渉というような考えで教育委員の制度なり教科書問題なりを取り扱われたのでは大へんな問題になる、こういうことを心配するために関連して伺うのですが、民主党当時に「うれうべき教科書の問題」なるパンフレットを出されたあの考え方を大臣は今日そのまま正しいものとして受け継がれて、踏襲されておるかどうか、この点を伺いたいと思います。
  94. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 あのパンフレットに書いてあることを今の党の党議とは考えておりません。あれは主として教科書の誤まりを指摘したことがおもだと思いますが、今申す通り新たなる政党の文教政策は一般政策として摘記したもの、緊急政策としてあげたもの、これを私は実行しようと思うのであります。それから党に諮るといいましても原案を党に諮るので、結局は民主主義に従って国会の同意を得てやるのでございまして、原案を一つの党派から出したからといって一党支配ということではないのであります。ことに私の方は民主主義で、独裁主義を排しよう、こういうことがかたい信念でありますから、党議の決定を待って提案するということは、党が全部支配することではなく、この委員会なり本会議で十分に批判、検討を願うのでございます。
  95. 島上善五郎

    ○島上委員 現在の日本国憲法と教育の中正ということについて簡単に——私は満足しなければあとであらためて質問しますが、御承知のように教育基本法にも明示されておりますように、日本国憲法の精神にのっとって教育基本法ができておる。教育はこの教育基本法に従ってするのが当然であるし、教育者はこれを忠実に守る義務があると思うのです。大臣はかつて現在の憲法はマッカーサー憲法である、こういう表現をされて問題になったことがありますが、それのよしあしはともかくとしまして、現在の日本国憲法は現実に現存しておる。これをわれわれは守らなければならない。政党が将来どう改正するかという政治論は別として、現存しておる憲法は守らなければならない。特に教育者は教育基本法に明示されておるように、それに忠実に従う義務がある、これが教育の公正を守るゆえんでもあると思うのです。この点に対して現在の憲法の精神に忠実に従う、これが教育の公正を守るゆえんであり、教育者の義務である、こういう私の考えに対して、大臣は同意されるか、どのようなお考えを持っておりますか。
  96. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 それは同意します。
  97. 佐藤觀次郎

  98. 小牧次生

    小牧委員 大臣も時間がないようでございますので、簡単にお伺いをいたします。先ほど来あなたの党の方でおきめになりました三つの緊急政策の内容につきまして、いろいろな方からたびたび御質問がございましたが、要するにその内容を明らかにしてもらえない。私といたしましてもきわめて遺憾に存じておる一人であります。少くとも政党に所属されておりましても一国の文部大臣として、政党の小使いであるかどうかわかりませんが、とにかく清瀬大臣としては具体的な見解の発表があってしかるべきである、かように考えるのでありますが、先ほど以上の御答弁をいただけないようでございますので、私もこれ以上御質問はいたしません。ただ終戦以来ちょうど今年は十年目に当っております。敗戦当時わが日本の民主化あるいはまた民主主義ということが非常に強く叫ばれて参りまして、それに基いて政治、経済あるいはまた文化の面におきましてもいろいろ民主化の措置がとられて参ったと考えておるのであります。そうしていろいろな変遷を経ましてちょうど十年たっております。また政治の面におきましても、今日いわゆる形の上で二大政党の対立による議会政治の運営という一応の態勢ができたという、きわめて画期的な時期にあると私は考えるのであります。こういうときに当ってわが国の文部大臣としてあなたが就任されたということも、きわめて意義深いのではないか、さように考えるのであります。従ってこの敗戦後十年を契機といたしまして、果して今後わが日本ほんとうに民主化の方向をたどるかあるいはまた逆の方向をたどるか、私は一つの岐点に立っておるとも言えるのではないかと考える一人であります。  このような観点から今日の情勢を簡単に考えてみますと、過去の占領政治の行き過ぎの是正という名のもとにいろいろなことが考えられ、また実施されあるいは実施されようとしております。なるほど戦いに敗れまして今日いろいろな制度が行われましたが、すべてが必ずしも理想的であり万全であるとは私も決して申しません。しかしながら少くとも民主化の方向をたどっていかなければならないということは、だれしも肯定するところであろうかと考えますが、いろいろ私が考えてみまするに、ややもすれば戦前の状態へ引き戻そうとする。先ほど大臣は日本人のよさという言葉をお使いになりました。どういう点を日本人のよさというふうに把握しておられるのか、その内容については詳しく存じませんが、とにかく昔の状態に戻したい、こういう気持が非常に強く動いておるのではないかということを私は考えるのであります。それが政治の面におきましても、経済の面におきましても、あるいはまた文化教育の面においても現われて参っておるようである。政治の面におきましても、たとえば先ほど来いろいろ御質問になっておりますように、教育委員会制度の改廃の問題、公選制を廃止して任命制にするかどうか、あるいはまた地方公共団体の問題に関連いたしましても、知事の公選制を廃止して官選にするかどうか、進んで市町村長も同様にするかどうか、市町村議会の権限に関しましても、御承知通り今日地方におきましては中央集権化の方向にまっこうから反対をいたしまして、あくまでも現在の議会制度を守っていかなければならないという声がほうはいとして起っておるようであります。従いまして前の国会において、自治法の一部改正という案が出ました際に、全国的な反撃が起って参りました。そうして結果は御承知通りでございますが、こういった観点から私どもは幾多の事例をあげて戦前の状態へ引き戻そうとする力が強く動いておることを考えざるを得ないのでありますが、このときに当って清瀬新文部大臣が新しい文部大臣とされて、教育委員会制度の問題あるいは教科書制度の問題あるいはまた教育二法律の問題、あるいはそのほか大学制度諸般の問題など、広範なるわが国文教政策全般にわたって、一つの改革を行いたいという所信を表明されたのでありまするが、果して文部大臣は先ほど私が申し上げるような今後さらに進んで新しい民主化の方向へ進まれんとするのか、あるいはまた歴史の歯車をうしろへ逆に引き戻そうとされるのか、まずその基本的なお考えをお伺い申し上げたいのでありますが、こう申し上げると、いや絶対に私は戦前へ引き戻そうなどということは考えておらない、あくまでも民主化していかなければならない、こういうふうに御答弁になろうかと私は考えるのであります。しかしながら先ほども御質問がありました通り、前の国会において、憲法問題等についてもマッカーサー憲法であるとか、あるいはいろいろな波紋を投ぜられたので、一応私は念のためにもう一度これをお伺いいたしまして、大臣の所信をただしてみたい、かように考えるのであります。
  99. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 御懇切なる御言葉を受けて感謝しまするが、私は決して戦前復帰は考えておりません。口だけで申すばかりじゃなく、わが自由民主党はいわゆる自由主義者の集まりなんです。一部の極端左派の人は、あるいは統制を考えられる場合があるかもしれない。また昔の超国家主義者は右翼の方に統制をせんと考えておる。私半生の政治的の行動は、実に国民の自由のために私は戦ったつもりであります。鳩山総理も同様でございます。われわれは個人の自由と人格の尊厳と民主政治、かように考えております。私が今の憲法について不満を持っておるのは、その自由を侵しておるからである。あれがほんとう日本人の自由の意思でできた憲法であったならばまた何をか言わんやです。占領で発言権を封じられ、政治家を追放しておいて、さあやれといって作らした占領法規です。そこを私はマッカーサー憲法というので、私があの憲法に不満だということは、私が自由主義者だという証明なんです。反動政治家でないという証明なんです。また社会主義者でないという証明なんです。自由主義の大精神に基いて民主的に改革をいたしたいと考えております。
  100. 小牧次生

    小牧委員 時間がないようでございますので、もう一点簡単にお伺いいたします。ただいま大臣の方からいろいろ御見解の発表がありましたが、そこでお伺いいたしたいのは、現在わが国の高等学校の教育課程につきまして、来年度から改変を実施するということが文部省の方針としてすでに打ち出されまして、わが国各地に非常な混乱を巻き起しておるようであります。この事実を大臣は御承知であるかどうか、まずこれから先にお伺いしてみたいと思います。
  101. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 混乱を巻き起しておるとは思っておりません。大事なことでありまするから各方面から意見の吐露があるのは当然で、ちっとも混乱と思ってはおらないのであります。
  102. 小牧次生

    小牧委員 それではもう一つ、来年度から高等学校の教育課程を改変実施するという内容について御存じでございますか、お伺いいたします。
  103. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 私は所管事務としてよく存じております。
  104. 小牧次生

    小牧委員 それではさらに続けて簡単にお尋ねいたしますが、先ほど来秋がいろいろ基本的なお考えについてお伺いいたしましたのも、多少この問題と関連があると考えたからであります。今日まで行われて参っております高等学校の教育課程、なるほどこの問題についてもいろいろ御意見があるようであります。私も批判の余地なしとは申し上げません。しかしながら今回文部当局がおとりになって来年から実施されようとしておるそのことについて、まず第一にその内容について、次にその実施の権限について、さらにもう一つは来年から実施するというその時期について、各都道府県の教育委員会あるいはその他の関係者の間におきまして非常な疑問がございます。戦前の状態に引き戻そうとしておる。さらにまた権限の所在についていろいろと疑問があり、明確を欠いておるにもかかわらず、文部当局としては教育委員会に権限があるとしてこれを一方的に押しつけられようといたしておる。あるいはまたそういった重大な内容の改変を持つ課程の問題について十分な準備もまだなされておらないにもかかわらず、三十一年度からこれを実施しようといたし、すでにそのような会議やあるいは指導要領といったものを出しておられるようでございますが、こういったことが、先ほど私が申し上げましたような少しづつなしくずしにいろいろ批判があるということによって、われわれから考えますると戦前の状態へこれを戻していこう、こういうふうにしか考えられないのでありまするが、これについて大臣の御見解をお伺いいたします。
  105. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 ほんとうのことを言えば、私は高等学校教育、中学、小学校もですが、まだまだ改正すべきところは多いと思うのです。現在の教育法規のワク内ではこれが最大限度だと思います。すなわち教育を能率的、効果的にするのはこれが一番いいと思いまして、これを改正すべく決裁いたしておるのであります。
  106. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 小牧君、時間がありませんから簡単に願います。
  107. 小牧次生

    小牧委員 それではもう一つお伺いいたしますが、今申し上げたように大多数の都道府県の教育委員会もこれに反対をし、また来年から実施することを一年延期してもらいたいというような非常に強い要望があるにもかかわらず、大臣とされては三十一年度からこれを実施するという方針をおきめになったのでありますか、お伺いいたします。
  108. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 そうでございます。
  109. 小牧次生

    小牧委員 しからば高等学校の教育課程の実施ということの権限は文部省にありとお考えになっておるのでありますか。もし文部省にありとお考えになっておりますならば、その法的根拠をお示し願いたいのであります。
  110. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 学校教育法四十二条による権限に基いて決裁をいたします。
  111. 小牧次生

    小牧委員 私の解釈するところによれば、高等学校の課程の実施に対する行政権は明らかに教育委員会にありと考えておるのであります。文部省は指導助言、こういうことはできますか、教育課程の編成実施、これは教育委員会が独立の行政機関であり、従ってその本来の所管事務の権限の行使については、他の行政官庁の監督を受けない、こういう立場から教育委員会にありと考えますが、もう一度大臣の御見解をお伺いいたします。
  112. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 日本の教育法全体を通じまして、教育課程のことを数万の学校が勝手にやれるというふうには見ておらぬわけであります。一定の基準はやはり監督庁がこれをやって、それに基いて各教育委員会なり学校教師たちに教育をさす、こういうことがアメリカ主義できておるわけであります。四十三条には「高等学校の学科及び教科に関する事項は、前二条の規定に従い、監督庁が、これを定める。」、監督庁とは何ぞやといえば百六条に「当分の間、これを文部大臣とする。」とありますから、非常に明白なことであると思います。しこうしてこの基準に従って谷教育委員会等で行うのであります。大体明文化してあるないにかかわらず、そういう組織の教育法が日本に今しかれておる、これはだれがきめた、きめないということではないのです。やはり監督庁はあることはあるのです。はなはだその力が微弱なることをわれわれ憂えておりますけれども、それはあるのであります。
  113. 小牧次生

    小牧委員 ただいま大臣の御見解を承わりましたが、私はこれに納得できないのであります。と申しますのは四十三条の問題についてでありますが、これは先ほど私が申し上げます通り、教育課程の基準の設定権、基準の設定に関する権限である、従って課程の編成権あるいはまた実施権、そういうものではない。ゆえに学校教育法上の監督庁としての文部省の権限というものは、その限界にとどまるものと私は考えております。時間がございませんので本日はこれ以上の質問はいたしませんが、他日また次回の文教委員会において引き続き本問題に関する文部大臣並びに文部当局の根本的な御見解を追究いたしたいと思います。  結論を申し上げますると、断固として反対であるということを申し上げまして質問を打ち切ります。
  114. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 本日はこれにて散会し、次会は来る十五日午前十時より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時三十九分散会