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清瀬国務大臣 前会も申し上げました
通り、われわれは
道義の
確立と
教育の
改革、これが
わが国においてほかの何事よりも大切なことと
考えて、全力をあげてこのことに従事せんとしておるのであります。それは
一つには、
教育関係の法規などをずつと調べてみましても、
国家、その
最高機関は
国会でありますが、この国が一体
国民の
教育にいかなる
責任を負うか。
責任を負う以上は
監督の力がなければならぬわけで、
監督ができないものについて
責任を負えとは、これは無理な話です。こういう
根本のことが明らかでありませんので、これを
一つ、いかにあるべきかのあり方を検討しなければならぬ。
世界各国がどうや
つておるかというので、
占領初期にできましたこの
組織を再検討しよう、それがわかりますれば、
学校の
制度すなわち学制、
教育の
制度、
教育行政、それらのこともおのずからわかると思います。そのためにはこれは軽々にや
つてはいけませんので、
日本人の持
つておる最善の知識を集中して、広き視野において
研究をしようというのが
審議会でございます。前会に、
内閣でも他の閣僚の同意を得まして、
文部省ではなく、
内閣内に
審議会を置こうということを決したことは、申し上げた
通りであります。その
組織の
方法、構成のメンバー、運営ということについては本日までにまだきま
つておりませんから、そのことをあらかじめ申し上げておきたいと思います。これを作ることは間違いございません。
教育について、昨年以来
教科書の問題が
国民の
注意を引いたのでございます。
前任者はこれを
中央教育審議会に諮問せられまして、
ちようど昨日の午後その
答申が参りました。そこへ配付したのがそれであります。ごらんの
通りの成文でありますから一々は申し上げません。これは
教科書の
検定の
方法と、
採択の
方法と、
発行供給の
方法、
価格、これらに分けて適切なる
答申をしておられるのであります。
第一の
検定については、やはり
検定制度を採用する。
検定の
責任は
審議会にございます。しかしながら、その下調べをするために非常勤及び常勤の
調査員を置くことに
考案しておるのでございます。それから
検定の結果には
一定の期間をつけて、一ぺん
検定してから八年、十年の長きにわた
つて使うということは、日進月歩の今日適当ならずという
考えを述べております。
採択のことにつきましては、これは
一定の
地域、たとえば郡市を単位とした
地域で
採択区のようなものをこしらえて、区内は比較的数の少い
教科書を
採択していこう。
父兄が隣村あるいは隣町に移動した場合でも同様の
教科書が使えるようにするという
考えでございます。そこに
採択協議会を設けてこの
仕事をする、そのことはこれに書いてあります。それから
採択に関する
不正行為を厳重に処罰するということであります。これもあるいは他の本院の
委員会で、前
国会において熱心にお調べになりましたが、それらの弊害を繰り返さぬようにしたい。それから
採択の
基準案などを私にこしらえて、この
基準を使えということを第三者の方から示すことはよくないということを書いております。
行政監察委員会で
調査されたものを参考としたものでございます。
それから
発行については、
発行者の
欠格条項を設けて適当な
発行者を登録しようという
考えをしております。それから
特約供給所は毎年
関係発行者及び大
取次店が協議してこれを選定するという
考えをいたしておるのであります。
価格のことについては、現行の
教科書の
価格算定基準を引き下げよう。それから
鉄道運賃、
郵便料金——これは
他省の
所管でありますが、軽減をばかるように
他省に交渉しよう、こういうことであります。
おおむね適切な
考案でありますから、われわればさらに検討を加えてこれに沿う
方針で決定いたしたいとは存じております。
教科書のことについてもう
一つわれわれの
考えておることは、
生活保護法を受けるまでには至
つておりませんが、やはり
父兄のうちで
教科書を買うことに困難をしておる人があるのは
現実の事実です。それでこれは
大蔵省とも折衝を要しますけれ
ども、これらボーダー・ラインにある人々、われわれはこれをかりに準要
保護児童とい
つております。
全国でこれを四%と見ますと、七十三万人くらいあるのです。これには
一つ一年から中学三年に至るまで、
教科書だけは無料でやろう、こういう
考案をしております。もし
日本の
財政が許せば、この金が五億ほどかかりますが、今の
わが国の
財政ではちよつと大きな金でありますけれ
ども、このくらいのことはぜひ認めてもらいたいと思
つております。
これに似たようなことでありまするから、ついでにここで申し上げまするが、
給食費もこの七十三万人には
補助をしたい、こういう提案をして目下その成立に努力をしておりますが、皆様の御援助をお願いしたいと思
つております。
次に以前からある
育英事業であります。これは優秀な学徒であるけれ
ども、
経済上の理由で
就学が困難な者、この
育英事業も拡張するつもりであります。採用の人員もふやし、貸し与える金も少し
基準を上げて、
育英事業は拡大いたしたい
考えであります。
前会も御
質問を受けましたが、
盲ろう者の
就学、これはいわゆる
特殊教育でありますが、
特殊教育の
振興はできるだけ完備したいというので、このことについても
大蔵省に向
つて要求をいたしておるのであります。
それから
僻地教育についても前年以来その拡大をはか
つております。
それから
学生寮でありますが、
学生はやはり
都会地に集まりますが、
都会地、すなわち
東京、大阪といつたところが戦災でこの
通り焼けておりますので、
学生生活で宿舎を得るということが非常にむずかしいことであり、また非常に高い、はなはだしきは四畳半の間を五千円で借りているといつたような始末で、見るに忍びませんから、
学生寮については今度は三千人くらい収容するものを来年度においては
作つてみたいと思うております。これは
県ごとに、どこの県の
学生寮というように法人を
作つて、それに
政府から
補助をするし、それから今の公営の
建設省所管の公団から金を貸すというようなことでや
つていきたいと思うております。
以上の問題は、これを総括するに、
教育の
機会均等という面から、
経済上貧困な人や、
僻地の人、それらの人に同じく
機会を与えよう。それから
特殊教育、
盲ろう者、そういう点が
教育行政において私の
考えている一カ条でございます。
その次は
科学の
振興であります。これはたびたび論ぜらるる
通り、今日の世の中では、やはり
科学が勝つのであります。しかしこれは直ちに
科学発明が起るものではなく、その
基礎たる
学校教育において
科学教育を充実するということが
根本でありますから、そこでやりたいと思うていることは、今まで
私立大学がどうも
文科系統の方が多かつたので、
私立大学で
理科系統の
基礎研究をする場合に、やはりこれは従前の
官公立大学と同様な
施設をすることが必要であろうと思いまして、そういうことを
一つ考えております。
それから御
承知の
通り、昨年以来田無に原子核の
研究所、それから
京都大学及び
東京の
工業大学にやはり
原子炉の
研究をやらそうと思
つておるのであります。
もう
一つ、今日の交通はやはり
航空でありまするから、
航空物理、
航空の
基礎研究を
国立の
大学でやらした方がいいじやないか、こういう
考えを持
つております。それからして
地球電磁気の
研究も始めていることは御
承知の
通りであります。
なお御
承知の
通り南極地域の
観測、これはもう外国と一緒にやることで、
日本も今日まで進みました以上は、これに参加して、
南極の
地域観測——観測年といいますが、それに参加してやりたいと着々本日も準備をしておるのであります。
医学の方では、ガンの
研究に、
京都でビールス、
バイラスとも英語でいいます。それから放射線の医学的の
基礎研究もやらせたい。
これらは数例でありますけれ
ども、大体
わが国の
科学が
振興するように、技術と
発明が発達するように、
学校教育においてもその
基礎的の
研究をやりたいということが、私の
考えておりまする
教育方針の第二でございます。
それから
社会教育、
社会教育として
施設すべきことは非常に多いのです。あるいは日々朝から晩まで身をも
つて社会教育をしておると見ていいのでありまするが、
予算関係では
青年の
指導、
成年学級の
振興、
社会教育施設の設備の補充、
国民体育大会、
教育施設の
振興、それから御
婦人の
婦人学級大会というのをやらすつもりでおります。既設の公民館の
活用助成はむろんのことであります。昨年は新
生活運動の
経費を
文部省で預かりましたが、ことしはこれを
内閣に移管いたしました。移管はいたしましたが、事新
生活運動に関しては、私
どもできるだけの力を添えたい、かように思
つております。本日午後にも、その
地域婦人大会で新
生活として何を取り上げるべきかという会がございますから、私も出席いたしたいと思います。
もう
一つ青年運動に類似して重要なのは
開発青年隊であります。これも
文部省の
所轄にはせずに、
建設省の
所轄になりましたけれ
ども、これは非常にいいことで、大
へん国民の精神にも健康にもいいことでありまするから、これはもう昨年より非常に大きい規模でも
つてや
つてみたいと、かように
考えております。以上が
社会教育方面に力を尽したいということであります。
それから文芸、美術、音楽、それからして文化財の保存、この
方面についても
文部省は十分なる力を尽したいと、かように
考えております。
それから
青年が覚醒剤を使う、ヒロポンを使うなどということが行われて参つたことは、非常に残念なことでありまするが、厚生省、法務省とも連絡いたしまして、この弊風をどうか除いてやりたいと
考えております。また不良の出版、興行は、何とか抑制の
方法をとりたい、これらは私の属しておりまする党でもおきめに
なつたことでもありまするし、私就任以来どうかそれを促進いたしたいと、かように
考えております。前会にも申し上げましたが、
緊急事項として取り上げておるもので、緊急であ
つて重大なものが今の
教育委員会の
制度であります。これは前にも御
質問を受けましたが、改廃するということはきめておりまするが、改廃の
方法は急速に
研究してここで御報告申し上げまするが、まだ本日いかに改廃するかの程度を申し上げることはできませんのは遺憾なことであります。
それから
教育者の
政治的中立の厳守であります。これはもう
教育者自身の自発的な自制によらるることが第一であります。むやみに
行政なり法律をも
つて臨むべきものではありませんけれ
ども、これらについてもなお
文部省においても、あるいはまた私の属しておりまする政党においても、内部的に
十分調査研究中でございます。これも本日はまだ具体的にこうしますということを申し上げる域に達しておりません。
以上をも
つて当面われわれの
考えておりまする
文教政策の一端をお耳に入れた次第でございます。