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1955-12-07 第23回国会 衆議院 農林水産委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年十二月七日(水曜日)     午前十時四十三分開議  出席委員    委員長 村松 久義君    理事 小枝 一雄君 理事 笹山茂太郎君    理事 白浜 仁吉君 理事 助川 良平君    理事 田口長治郎君 理事 足鹿  覺君    理事 稲富 稜人君       赤澤 正道君    足立 篤郎君       安藤  覺君    五十嵐吉藏君       伊東 岩男君    石坂  繁君       大野 市郎君    大森 玉木君       川村善八郎君    木村 文男君       吉川 久衛君    楠美 省吾君       鈴木 善幸君    中馬 辰猪君       綱島 正興君    原  捨思君       本名  武君    松浦 東介君       松野 頼三君    赤路 友藏君       淡谷 悠藏君    伊瀬幸太郎君       井谷 正吉君    石田 宥全君       川俣 清音君    佐竹 新市君       楯 兼次郎君    中村 時雄君       芳賀  貢君    日野 吉夫君       久保田 豊君  出席国務大臣         法 務 大 臣 牧野 良三君         国 務 大 臣 船田  中君  出席政府委員         法務事務官         (入国管理局         長)      内田 藤雄君         外務政務次官  森下 國雄君         外務事務官         (アジア局長) 中川  融君         農林政務次官  大石 武一君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   大村 筆雄君         水産庁長官   塩見友之助君         海上保安庁長官 島居辰次郎君         海上保安監         (警備救難部         長)      砂本 周一君         参  考  人         (山口県日韓漁         業対策本部実行         委員)     江口 次作君         参  考  人         (北九州日韓漁         業対策本部実行         委員)     中野源二郎君         参  考  人         (無職)    大迫フミツ君         参  考  人         (無職)    岡田 サト君         参  考  人         (無職)    栄  久江君         専  門  員 岩隈  博君     ――――――――――――― 十二月七日  委員松田鐵藏君辞任につき、その補欠として加  藤常太郎君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 十二月六日  積雪寒冷単作地帯農業振興対策確立に関する  陳情書(第七  三号)  集約酪農地域に対する補助範囲拡大に関する陳  情書(第七四  号)  米穀検査規格改訂に関する陳情書  (第七五号)  昭和三十一年度農林予算確保に関する陳情書  (第七六号)  漁船保険組合事務費全額国庫負担等に関する  陳情書(第七七  号)  林業改良技術普及員増加に関する陳情書外一件  (第七八号)  国有林野払下げ促進に関する陳情書  (第七九号)  すぎたまばえを森林病虫害に指定の陳情書  (第八〇号)  北海道のてん菜生産振興に関する陳情書  (第八一号)  湖山池干拓事業計画反対に関する陳情書  (第八二号)  昭和三十年産等外米政府買上に関する陳情書  (  第八三号)  台風常襲地帯における農林水産業災害防除に  関する特別措置法制定に関する陳情書  (第八四号)  特殊土壌地帯災害防除及び振興臨時措置法の有  効期間延長に関する陳情書外一件  (第八五号)  狩猟者団体法制定に関する陳情書外一件  (第八六  号)  急傾斜地帯農業振興臨時措置法有効期間延長  に関する陳情書外二十三件  (第八七  号)  病虫害防除薬剤購入費予算確保に関する陳情書  (第八八号)  食糧管理制度の改善に関する陳情書  (第八九号)  米の配給量増加に関する陳情書外八件  (第九十  号)  米の直接統制継続に関する陳情書  (第九一号)  昭和三十年産米の時期別価格差適用期間延長  等に関する陳情書  (第九二号)  等外麦買上に関する陳情書  (第九三号)  米穀予約売渡制継続に関する陳情書外三件  (第九四号)  漁船保険事業対策確立に関する陳情書  (第九五号)  若松市に植物検疫所設置陳情書外一件  (第九六  号) を本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  朝鮮半島周辺公海における漁船安全操業確  保等に関する件     ―――――――――――――
  2. 村松久義

    村松委員長 これより会議を開きます。  朝鮮半島周辺公海における漁船安全操業確保に関する件について調査を進めます。本委員会はすでにこの問題について一回の調査をいたしておりまするが、本日は、外務大臣法務大臣大蔵大臣防衛庁長官出席を要求しておりましたが、ただいま法務大臣の御出席がありますので、この際法務大臣質疑をいたしたいと思います。その後において、予定せられておりまする参考人より本問題についての意見説明をしてもらいたいと思うのでございます。この際法務大臣に対する質疑を許したいと存じます。通告順に従いまして、田口長治郎君。
  3. 田口長治郎

    田口委員 法務大臣は、ほかの委員会の関係からいたしまして、当委員会に制限された時間だけおられる、こういうことでございますから、私は本日の問題につきましていろいろなことを質問したいのでございますが、そのうちで法務大臣に関する問題につきまして、とりあえず質問をいたさんとするものでございます。  この日韓漁業問題につきまして、日本側が耐えることのできないひどい目にあつていることは、法務大臣もすでに御承知のことと思うのであります。そのうちで日本漁船韓国に拿捕、抑留されておる船数を調べてみると、二百八隻ということになつておるのでございまして、そうして今まで抑留されて向うに連れていかれました人間の数が二千七百二十三人、このうちでいまだ帰らない日本漁船が百九隻もおります。また、死亡者を除いてでございますが、日本にどうしても帰還することができないで今釜山に抑留されておる船員が昨日までに六百五十一人も残つておる。われわれはいろいろな方法によりまして、この六百五十一人の人が先方でいかなる生活をしておるかということを調べてみますと、とてもお話になりません。住所を申しますと、バラック建である、八畳の間に二十人から二十一人の人を追い込んでおる。ここには電灯も何もない。そして食事なんかを見ますと、丸麦と大豆、それにごく形ばかりの米を使つておる。副食物に至りましては塩の汁である。それにたつた一個の梅ぼしをつけておる。かような状態におきましてこの六百五十一人が、長い人は十八カ月も向うにとめられておる。このために栄養失調が極度でございます。またいろいろな病気も出ておるのでございますが、病気にかかりましても診察もしてもらえない。こういうような状態で、いつ生命をなくしてしまうかというような哀れな実情にあるのでございまして、われわれは人道上から申しましても、かかることは絶対に許さない。かように考えておるのでございます。しかるにこれに対しまして、韓国人日本大村収容所におる人はどういう待遇を受けておるか。これは法務大臣も御承知と思いますが、あの収容所は鉄筋コンクリートの三階建である。そして十畳の間に十人だけを入れておる。しかもこの収容所には娯楽室もありますし、また共同浴場もございますし、共同洗たく場もある。碁も将棋もあるいは野球の道具もそろえておる。しかもこの食事に至りましては、一人当り一日の原料代だけで七十五円から八十円のまかないをしておる。一カ月に申しますと原料代だけで二千四百円、さような給付をしておる。そしてこの大村収容所には、日本で困る密入国者が大部分である。また刑は終えましたけれども、十一犯、十二犯の犯罪者がおる。かような人が日本ではこういう待遇を受け、われわれの同胞であるところの六百五十一人というものは、国際法上正常に仕事をしておる者を実力によつて向うにいやおうなしに連れていかれた連中である。この矛盾した立場にある人が、しかも待遇に至りましては全く反対のことをやられておる。この六百五十一人を何とかして一日でも早く日本に送還させる方法を講じなければならぬ。これをこのままで放置いたしますと、酷寒に向います今日、この冬がどういうことになるか、非常に心配をいたすものでございます。この帰還させる方法といたしましては、いろいろな理屈はございましようけれども、結局私は大村収容しておるところのあの韓国人釈放されて、そうしてこれとあれとの交換というような意味ではありませんけれども、有無相通じまして帰還させるよりほかに方法がないと思うのであります。その実行方法といたしまして、大多数の密入国者は、これは韓国で引き取る、こういうことを言つておりますが、そのうちの三百七十名のいわゆる犯罪人釈放する、このことにつきまして日本政府は今日までちゆうちよをしておるようでございます。しかしここに収容されておる人は十犯、十一犯の人でございますけれども、すでに刑を終えた人である。日本人犯人にいたしましても刑を終えた人は釈放しておる。のみならずこのために、この六百五十一人の韓国抑留されておる漁民をいつまでも犠牲に供しておくということは、私はこれは断じて許されないと思うのであります。いろいろ理屈から申しますと、この三百七十人の人は日本独立以前から日本におつた人で、住所権と申しますか、さようなものが日本にあるから、それで韓国では引き受けない、かようなことを言つておりますし、また国際慣例から申しまして、かようなものは当然韓国が引き受けなければならぬ、こういうことを日本では主張いたしておるようでありますけれども理屈理屈といたしまして、何とかこの六百五十一人の人を一日も早く帰還をさせる意味におきまして、韓国で主張いたしますところのこの大村収容所の刑が終つておる三百七十名を内地釈放する、この三百七十名をよく内容を調べてみますと、凶悪なる犯罪を犯したという者は全部が全部ではないと思います。私はさような人には要監視いたしましても、これを国内釈放いたしまして、そうして向うとこれとの取引をする、この道よりほかに方法ないと思うのでございますが、この点に対しまして法務大臣は腹をきめて、この六百五十一人の生命がどうなるかという今の現状をお考えになりまして、思い切つて三百七十名を国内釈放して、これとこれとを相通ずるというような、さような御意見はございませんか。まずこの点をお伺いいたしたいと思うのであります。
  4. 牧野良三

    牧野国務大臣 ただいまの御質疑にお答えをいたします。田口委員からお話を承わつて、実に容易ならない事態だと存じます。事態そのものが容易でないばかりでなく、韓国の行なつております日本人漁夫抑留というものは、国際法的に非道なもので、かつ侵犯ということを理由として刑期の満了しておる日本人までも抑留しておる事実があるということを聞くに至つては、実に遺憾この上もないことであります。これを釈放せしめるということに対して最善の道を講じ、理屈に拘泥しないでどこまでも抑留日本人釈放の目的を達するということに対しましては、できるだけの尽力をいたしたいと存じます。  ただしここで一つ考えてほしいことは、私も心配しておりますのは、二犯以下の犯人は五十七人、三犯ないし五犯の者が二百四十人、六犯ないし八犯の者が六十人、九犯ないし十二犯の犯人が十三人、内容を調べてみると、大へんなんです。そこへもつてきて凶悪犯が多い。でありますから、凶悪犯罪人で、悔悟の情について問題のものを、朝鮮が引き取つてくれるならばいいですけれども内地でこれを釈放して、自由な身にさせるということが大へんなおそるべき結果を惹起しないかと私は思いますので、不法な監禁を受けておる日本人を早く助けなければならぬということに対しては、最善を尽しますが、同時にこれと取引をするというようなことがありましては、私は皆さん方にも申しわけないと思う。それでそれとこれとは別に考えまして、今田口委員は、理屈に拘泥するなと言われましたが、理屈に拘泥してつまらないかけ引きをやつておるときじやないと思いますから、その点はよく御意見の御趣旨を体しまして、今日以後田口さんのお気持に沿うように最善を期したいと存じます。
  5. 田口長治郎

    田口委員 ただいま法務大臣お話によりまして、取引ではないが、韓国抑留をされておる漁夫を一日も早く日本に帰すために、大村収容所におる韓国人の問題については、十分考慮してみる、そういうことに努力する、こういうような御答弁つたと思うのでございます。またお話の中には、何だかこの犯人国内釈放ということにつきましては、法務大臣として割り切れないものがある、ようなふうに聞く私といたしましては感ずるのでございます。今この抑留者帰還させるかどうかという問題は、法務大臣の割り切つておられないその一点にかかつておると私は思うのであります。すでに御承知通り、いろいろな悪質犯罪者、その他の犯人ではありますけれども日本法律によつて判決を受けて、刑を終つた人ばかりである。全部刑を終つておる。それを大村収容所収容している。かような人でございますから、もし国内釈放をして、悪いことをしたら、——悪いことをしないように要監視をする人もごくわずかおると思いますけれども、さような手配をされまして、悪いことをしたら、この新しいしたことによつて逮捕をして、適当な処置をすればいいだろう、こういうふうに考えるのでございまして、今この哀れなる六百五十一人が帰れるか帰れないかということはその一点にかかつておるのでございますから、何とか釈放した後における手当ということを十分に処置をされまして、そうして一つ思い切つてこれを釈放していただく。かようなことをお願いをいたしたいのでございますが、このちよつと割り切れない一点につきまして、さらに法務大臣の御意見をお伺いしたいと思うのでございます。
  6. 牧野良三

    牧野国務大臣 田口委員の重ねての御質問で、私の調査の足らない、そして私の知識の足らない、事実を知らないことがあることがわかりました。よろしゆうございます、調べましよう。そんなあなたのおつしやるような事実でありますならば、つまらぬことに拘泥する必要はないと思います。これは政治的に相当思い切つたことをしなくちやいかぬと思いますし、私の知らない事実があるらしゆうございますから、さつそく調べます。そして御趣旨に沿うように努力したいと思います。
  7. 田口長治郎

    田口委員 私どもは、この理不尽な処置に対しまして、日本政府がそこまで決心をされて実行されました場合におきまして、もし万一日本には釈放させて韓国帰還をさせないというようなことが起りましたならば、そのときは日本もほんとうに腹をきめなければならぬ、私は大砲を撃てとは言いませんが、もう隣近所のつき合いはしない、そこまで腹をきめなければならない、かように考えておるほど、この六百五十一人の帰還問題については痛切に感じておるのでございますから、どうかただいま御答弁になりました法務大臣の思い切つた処置を、一つ特にお願いをいたしまして、私は法務大臣に対する質問を終りたいと思います。
  8. 村松久義

  9. 赤路友藏

    赤路委員 法務大臣にお尋ねいたします。ただいま同僚田口委員から質問がありましたが、その中に、大村収容されておる韓国抑留者の中で刑の満了した者を釈放していないという言葉がありましたが、この事実を法務省の方では認められますか。
  10. 牧野良三

    牧野国務大臣 政府委員から事実を御答弁申し上げます。
  11. 内田藤雄

    内田政府委員 その点、先ほどの田口委員の御質問にも、やや私ども実情に対する誤解と申しては失礼かもしれませんが、そういう点がございましたので、ちよつと釈明さしていただきたいのでございますが、われわれは出入国管理令という法律に基いて行動いたすわけでございます。その出入国管理令の二十四条に、外国人退去せしめ得る事由が列挙してございます。その中で、密入国者はもちろんのことでございますが、一番問題になりますのは、「この法令施行後に無期又は一年をこえる懲役若しくは禁固に処せられた者。但し、執行猶予言渡を受けた者を除く。」つまり簡単に申し上げますと、日本において犯罪を犯しまして、一年をこえる懲役または禁固の刑に処せられた者は、日本政府退去せしめ得るわけでございます。これは決して日本だけの特殊な法律ではないのでございまして、いかなる独立国におきましても、外国人在留というものにはおのずから一つの条件がついておるのでございまして、正当に生活する外国人のみに在留を認める。日本において犯罪を犯すような者は、これは退去せしめてもいいというのは、日本国内法であるばかりでなく、国際的な慣行であると信じております。そこでこの法律は、朝鮮人のような特殊の事情の人以外には、文字通り適用いたしております。ですから、かりにアメリカ人日本において犯罪を犯した、一年以上の刑を受けたという場合には、われわれは問題なしに退去処分にいたします。  ただ朝鮮人の場合に非常に問題点がございますのは、戦前から長く日本に住んでおるということのために、実質的に考えましても、生活の本拠が日本にある、あるいは御承知のように、戦争の結果国が二つになつてしまいまして、かつて日本人であつたという人々である。こういった特殊の事情のもとにおきまして、われわれは、この法律をこれらの人々にも文字通り適用することは妥当だと思つておりません。その意味におきましては、韓国側言い分にも十分耳を傾けておるつもりでございます。ただ現在、しからば何ゆえに刑の執行を終えた者をさらに大村に送つておるかということになりますと、ただいま申し上げましたように、実は一年以上ならばだれでも退去せしめ得るのでございますが、朝鮮人の場合その数が非常に多いのでございます。現在刑務所に入つております約六万人のうちの約一割の六千名は朝鮮人でございます。毎月々々その刑を終えた人が出て参ります。われわれは、それを全部この入管令の規定だけでやりますと、これは大へんな数になるのでございまして、その中からよくよく悪質な者だけを選びまして退会強制処分に付しております。退去強制処分に付しますれば、退去まで本人の逃亡を防ぐために当然収容ができるということがまた法律上明らかでございますので、われわれは、その条文に基きまして、退去が実行できるまで収容しておるというのが実情でございます。
  12. 赤路友藏

    赤路委員 大体今の御説明でわかるわけなんですが、しかし刑の満了者釈放していないということは事実であろうと思う。釈放しない理由としては、今の御説明によると、出入国管理令二十四条に基いて、日本の治安上の観点から、当然政府がこれの日本からの退去を命ずる、こういうようなことだと思うのであります。そうなつてきますと、これは政府責任における行政措置だと私は思いますが、それでよろしゆうございますか。
  13. 内田藤雄

    内田政府委員 退去強制処分に付することができるというのでございますから、それは付さないでもいいわけでございます。しかしこれは、先ほど来申し上げましたように、そういう悪質な不良外人——もう犯罪の上に生活しておると認められるような者を退去せしめるということは、いかなる国においても行なつておることでございますし、日本も当然行うべきであると私は考えております。
  14. 赤路友藏

    赤路委員 その通り、たと思うのです。私のお尋ねするのは、政府責任においてそうした行政措置をとつておられるかどうか、その点だけをお聞きしておきたいのであります。
  15. 内田藤雄

    内田政府委員 まさに政府責任においてやつております。
  16. 村松久義

  17. 淡谷悠藏

    淡谷委員 大臣にお尋ねいたしますが、李承晩日本漁夫の諸君を釈放しない理由一つに、さつき田口委員並びに赤路委員から質問がございました通り大村収容所刑期を満了した朝鮮人をなお押えておる、これが一つ言い分になつておることは御存じでございますか、確かめておきたい。
  18. 牧野良三

    牧野国務大臣 存じております。
  19. 淡谷悠藏

    淡谷委員 そこでこの出入国管理令に基きまして、これらの犯人の幾人かをそのままとどめておいたことが、李承晩の今のような処置一つ原因となつておる。そういたしますると、ただいま赤路委員質問いたしました通り政府行政処分ということが非常に大きな原因をなしておることもやはり考えなければならないと思います。同時にまたこれらの朝鮮人が、さつきの御答弁にございました通り、他の外国人に比べますと、特殊な事情を持つておる。戦前から日本におつて、ほとんど日本人のような生活をしておつたと思われるのでございますが、国籍の面におきまして一体どうなつておりますか、お調べになつたことがございますか、どうですか。
  20. 内田藤雄

    内田政府委員 国籍の問題につきましては、すでに前の日韓会談などにつきましても論議が行われております。しかし過去におきまして韓国側は、日本におります朝鮮生れ人々国籍日本国籍であると申したことは一回もございません。韓国自身がこれらの人々韓国籍を認めております。ただ問題は、むしろ国籍の問題よりも処遇の問題としては必ずしも現在まで意見が一致しておらぬと思います。それが戦前からおる朝鮮人については、向う言い分によりますと、日本政府が一方的に退去処分に付するのは妥当でない、こういう向うの主張になつて現われておるわけでございます。われわれはいやしくも韓国独立をいたし、そこの国民であるということがはつきりしておるならばいかなる凶悪な、いかなる悪質の外国人をも退去させられないというような考え方には絶対に同意できないという考え方でおります。
  21. 淡谷悠藏

    淡谷委員 その点で李承晩政府とこれまでどの程度話し合いをされたか、現在どの程度まで話し合いができておるのか、その点をもう少し詳細にお伺いしたい。
  22. 内田藤雄

    内田政府委員 前の日韓会談におきまして、国籍に関する問題は相当進捗いたしたのでございます。それで国籍問題に関しましては、正式の最後の案ではございませんでしたが、ほぼ案文もできたと私は了解いたしております。ただ御承知のような事情によりまして、会談全般が決裂いたしましたために、その問題についても正式の協定にはもちろん達しておりません。その後のことにつきましては、特にこの問題だけについてあるいは全般につきましても、御承知のように日韓間の話し合いは進捗いたしておらない状況でございます。
  23. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これは大臣にお伺いしたいのでございますが、さつき田口委員質問に対しまして、大臣はこれまで知らなかつた事実がたくさんあつたということを率直に述べられております。この問題を解決しますとただちに李承晩ラインの問題をこつちの主張通り承諾するとは私たち考えておりませんが、少くともこの問題を紛糾させる重要なる一因子にはなつておりますので、この問題に対して速急に李承晩話し合いをして、何とか打開し得るような御信念がありますかどうか、非常に事重大でございますので、大臣の御決意のほどを伺いたいと思います。
  24. 牧野良三

    牧野国務大臣 淡谷承知いたしました。いたしましよう。
  25. 淡谷悠藏

    淡谷委員 実は四年ほど前からこの李承晩ラインの出題が出まして、そのためにあるいはせつかく考慮してもらつたり、慎重に処置してもらつたりいたしておるのでございますが、四年後の今日にあつてなお解決がついていない。承知いたしましたはよろしいけれども、一体大臣のお見込みではいつごろできる見込みなのか、いつごろ会談をされるのか、もつと具体的に御答弁願わなければ、やはり依然としてこの四年間の空白というものを延長するだけにすぎないと思いますので、重ねてこの点の具体的な見通しを聞きたいと思います。
  26. 牧野良三

    牧野国務大臣 淡谷委員にお答えしますが、事実を知らぬのです。だから見通しやいつという御答弁はできないが、そんなことをほつておいてはいかぬ、早くやらなければいかぬ。だから私の知識を充実して判断の資料が確実になれば具体的のお答えができますが、しかし具体的だの抽象的だのと言つておる場合ではないと思います。これはすみやかに処置しなければならぬと思いますから、私はきょうからさっそくその内容を調べまして、外務当局とも交渉いたしまして解決に努力いたします。さようで私の誠意を認めていただきたいと思います。
  27. 村松久義

    村松委員長 なお船田防衛庁長官が参つておりますので質疑を許します。田口長治郎君。
  28. 田口長治郎

    田口委員 防衛庁長官がおいでになりまして、長くおられないようでありますから、私簡単に一点だけ防衛庁長官に伺つておきたい問題があるのであります。漁業者は、われわれは非常に高い税金を払つて防衛隊を維持しておる、増進をしておる、にもかかわらずわれわれの生命財産がほんとうに侵されておるこの李承晩ラインの問題について、なぜ海上自衛隊はわれわれを保護してくれないだろうか、こういうことを盛んに疑問に思い、また声を大きくして言つております。私は先ほどから申しましたように、大砲を撃ちなさいということは申しませんが、海上自衛隊が日本漁船を保護いたしますと、これは相当被害を最小限度に食いとめることができるだろう、こういうことを考えておるものでございますが、防衛庁長官がいろいろさような処置をとられないことにつきましては、日本漁船を会場自衛隊が保護して出た場合、これは保護するのでございますから、あるいはいかなることが起るかもしれませんが、その際日本といたしましては日本のいわゆる自衛権の範囲内に属しておる、こういうふうに御承認になつておるのか、あるいはそこに疑問があつてさような処置を講ぜられないのであるか、その点を一点だけお伺いをいたしたいと思うのであります。
  29. 船田中

    ○船田国務大臣 ただいま田口委員の仰せられましたように、韓国側のわが漁船に対する不法侵害ということにつきましては、私どもまことに心痛をいたしております。漁民諸君には非常な同情を持つて事態を見ておるわけでございますが、しかしただいま御質問のありましたように、今ただちに海上自衛隊をそのために出動させるということは考えておりません。それは今のところは何といつても外交折衝によりまして、できるだけ円満にこの問題を解決したい、せつかく努力をいたしておる次第でございますので、正しい事態の推移をよく見きわめまして、私どもといたしましても適切な処置は講ずるようにいたしたいと考えております。
  30. 田口長治郎

    田口委員 ただいま防衛庁長官の御答弁でございますが、この海上自衛隊が警備をしていつた場合、いざこざが起つたその場合に、わが方といたしましては、わが方の自衛権で当然なすことのできることであるかどうかということをお伺いいたしておるのでございますが、自衛権の範囲であるかあるいは範囲外であるか、その点をお伺いしておる次第でございます。
  31. 船田中

    ○船田国務大臣 これは先方の出方を十分見きわめませんと、今ただちにそれが自衛権の範囲になるかどうかということの的確なる答弁を申し上げかねる次第であります。われわれといたしましては慎重にこの事態を注視いたしておるという次第でございます。何といつても今日は外交折衝によつてこの問題を円満に解決していくように最善の努力をしていきたい、かように考えます。
  32. 田口長治郎

    田口委員 具体的に話を申し上げなければ徹底しないようでありますが、海上自衛隊が出て日本漁船を守つておる、そこのところに向うの監視船が出てきて警備艇に対しまして先方から発砲をした。その際警備艇が応戦をすることは私どもの国民常識から申しまして、当然に日本の自衛権の発動だ、こういうふうに考えるのでございます。その際にこちらから発砲したらそれは憲法問題になると思いますけれども向うが撃つてきた、やむを得ず自分を守るためにということで応戦をした場合におきましては、当然自衛権の発動ということになると解釈する次第でございますが、この点どうお考えになりますか。
  33. 船田中

    ○船田国務大臣 もし先方が襲撃をしてくるというようなことがきわめて急迫あるいは不正の侵害である攻撃をしてくる、こういう場合におきましては、これに対してわが方といたしましてもできるだけの処置は講じていかなければならぬ。もちろん国民の生命財産を守るということに対してできるだけの処置は講じていきたい、かように考えます。しかしその事態が果して急迫不正の侵害行為であるかどうかということにつきましては、十分事態を見きわめませんと軽々にこれについてのはつきりした決断を申し上げるわけには今日の事態においてはいかないと思います。
  34. 川俣清音

    ○川俣委員 今田口委員質問に対する防衛長官の答弁を聞いておりますと、はなはだ説明が不徹底であるように思うのです。防衛庁はいろいろ問題の紛糾に実力行使をして問題の解決をはかることができないということだろうと思うのです。これはどうなのですか。実力に対して実力で戦つて、この李ラインの問題を解決できるというふうにお考えになつておりますかどうか。
  35. 船田中

    ○船田国務大臣 たびたび申し上げておりますように、現在の事態におきましては、私どもはどこまでもこれは外交折衝によつて円満裡に解決していきたい、かように考えて最善の努力をいたしておる次第でございます。
  36. 川俣清音

    ○川俣委員 そういたしますと、防衛庁の内容を整備強化するよりも、外交を整備強化する必要がある、こういうふうに理解してよろしいのですか。防衛庁は実力行使ができない、こういうことですから、そういうことでありますならば、要は防衛庁の充実よりも、外務省の外交上の充実の方が、この問題の解決のために優先されなければならないというふうにお考えのように承わりましたが、さように了解してよろしゆうございますか。
  37. 船田中

    ○船田国務大臣 私の言葉が足りないのかもしれませんが、現在の段階におきましては、日韓問題は外交折衝によつて円満に解決をしていくように最善の努力をしておる。しかしそれは防衛力の充実整備を否定するものでは全然ございません。防衛力は何といつても充実しなければならないのであります。またもし不法侵略が起るといたしますれば、それに対しましてわれわれといたしまして実力を行使するということは、もちろん日本の憲法の範囲内においてもできることでございます。それを否定しておるものではございません。
  38. 川俣清音

    ○川俣委員 結局国際紛争は外交手段、外交上の折衝によらなければうまくいかない、こういうふうにお認めのようでありまするから、そうなると要は外交が貧弱であるということになつて、そのために自衛隊を強化していかなければならない、こういうことになるのじやないかと思うのです。外交手段さえうまくいつて国際紛争が起らないようにいたしますならば、あえて防衛庁の充実は必要でない、こういうことになつてくる。どうもそつちの方が信頼できぬから実力行使をやるための充実が必要だ、こういうふうになるのですが、その点もはつきりしませんので、もう一度お尋ねいたします。
  39. 船田中

    ○船田国務大臣 川俣委員のおつしやられる御趣旨がどこにあるのか、了解しがたいところもございます。しかしそれはもちろん外交も防衛も両々相待つて整備されていかなければならないのでありますが、ただ日韓関係の現在の問題につきましては、何といつても外交折衝によつて円満な解決をしていくことが最善である、その段階においてわれわれは努力をしておる。そういうことでございまして、もし不正の侵略があつた場合にこちらは黙つて終始傍観しておるということではございません。
  40. 村松久義

    村松委員長 川俣委員に申しますが、多少関連の範囲を越えておるように思いますので、どうかその程度で……。
  41. 川俣清音

    ○川俣委員 もう一点だけ……。これは突然起つた問題ではありませんで、もう四年がかりの問題です。国民が非常に憂慮いたしておりますことで、今に始まつたことではありません。ここに多くの参考人が見えておられますのも、一日もすみやかに解決されることを望んでおる。こういう要請のある現実の中に内閣ができたのでありますから、すみやかにこれを解決しなければならぬ。解決するためには外交的手段によらなければならない、あるいは外交というものは必ずしも外務省の外交ばかりを私は言つておるのじやありませんが、もつと広く国民の協力を求めて、すみやかに解決しなければならない。それをたじろいでおるために田口委員のような問題も出て来ると思う。従つて防衛庁はまず第一に外交手段によらなければならないとするならば、そちらに全力をあげさせるように予算上のことにつきましても、外交的に要するような費用はそちらに削減して、もつてすみやかに解決をはかるようにされることが望ましいのじやないかと思いますが、これだけで質問を終りますから、御答弁を願いたい。
  42. 船田中

    ○船田国務大臣 最後の御質問につきましては多分に御意見のように伺つておりますので、十分これは拝聴いたしておきます。
  43. 村松久義

  44. 赤路友藏

    赤路委員 防衛庁長官には少し方角が違うと思いますが、関連がありますので、一点だけお聞きいたします。  日米行政協定二十四条について、防衛庁長官はどういうふうにお考えになつておるか、その点を御答弁願いたいと思います。
  45. 船田中

    ○船田国務大臣 行政協定第二十四条というのは「日本区域において敵対行為又は敵対行為の急迫した脅威が生じた場合には、日本政府及び合衆国政府は、日本区域の防衛のため必要な共同措置を執り、且つ、安全保障条約第一条の目的を遂行するため、直ちに協議しなければならない。」こういうふうにあるのでありまして、この日本区域というのは日本国の領域及びこれに近接する公海を言うものであろうと存じます。領海につきましては御承知通り国によつてだいぶ解釈が違つておるようでありますが、従来大体三海里というふうに考えておるわけでございます。
  46. 赤路友藏

    赤路委員 今の御答弁の中に少し変な点がありましたが、領域はわかります。領域は御承知通り日本は一九三二年のヘーグ会議以来ずつと三海里を主張しております。これはわかる。公海という言葉があつたが、それはどういうことですか。その点をちよつとお聞きしておきたい。
  47. 船田中

    ○船田国務大臣 これはただいま申し上げましたように、日本国の領域及びこれに近接する公海、こういうことを申したのでございます。
  48. 赤路友藏

    赤路委員 近接する公海とはどこまでの距離をさしますか。近接する公海の距離の限度はどこに置かれているのですか。近接する公海だけではわからぬ。近接とは何ですか。
  49. 船田中

    ○船田国務大臣 それはこの二十四条に規定しております不正な急迫した脅威がもし生じた場合において、近接した公海でありますから、その具体的の事態に応じて判断していく以外にない。結局常識的な判断になることと思います。
  50. 赤路友藏

    赤路委員 これは重大な問題なんです。今おつしやるのは、近接した公海で起つたことを具体的な問題として常識的に判断する、こうおつしやつておる。そうすると、李ラインはどこに線が引かれておるか。李ラインはあの地図で見たらおわかりの通り、一番日本に近接しておるところは対馬の沖三海里なんです。あれはちようど三海里の線を走つておるのです。そうすると、近接した公海において事件が起つておると常識的に考えなければいけない。そうでしよう。近接した公海内において事件が起つておると当然解釈される。そう解釈してくると、あなたの御答弁からいくならば、当然日米行政協定の二十四条でアメリカ政府と協議しなければならないということになりやしませんか。どうもあなたの御答弁ではちよつと私は納得いたしかねます。
  51. 船田中

    ○船田国務大臣 ただいまの御質問でございますが、これは抽象的にこうときめてかかることはできないと思います。具体的の侵略がどの地点において起つたか、こういう個々の問題について判断していかなければならないかと思います。
  52. 赤路友藏

    赤路委員 これ以上あなたとやつてみてもどうかと思います。これは国際法的な一つの観点の上に立たなければならぬと思う。ここに外務次官もアジア局長もお見えになつておりますが、これらの点については別に申し上げませんが、あなたのおつしやつた近接する公海ということは重要なことであります。それから具体的に攻撃され云々という問題になつてくると、国際法上の言葉の定義の問題にもなりますが、一体公海を航行しておる日本の船あるいは公海において操業をしておる日本の船の国際法的な見解からする地位というものは何なのか。これは私が説明するまでもなく御承知だと思いますが、公海上において日本漁船の中で起つた事件、犯罪にしてもその他の事件にしても、それらは当然日本国のいろいろな国内法によつて処理されておる。だから一部では——現在では国際法学者の中においても、公海における船舶というものは、これが日本の船であるならば、当然日本本土の一部であるという見解も出てくるわけです。もつと抽象的な言葉になるかもしれぬが、これは本土の付有する島嶼であるという見解も出てくる。特に重大なことは、あなたが近接する公海を二十四条の中にお認めになるということになれば、政府は当然日米行政協定の発動を責任をもつてやらなければならぬということになるのです。近接する公海というものをこの中に入れないで、日本区域として三海里という線を押えていくならば私は申し上げません。あなたのおつしやる言葉でいきますと、これは当然日米行政協定に対する態度を明確にしてもらわなければならぬということになるので御答弁を願いたい。
  53. 船田中

    ○船田国務大臣 先ほど来申し上げております通りに、これは個々の具体的の問題につきまして判断すべき問題だと存じます。
  54. 赤路友藏

    赤路委員 具体的問題ということをあなたはおつしやるのですが、そうすると先般あけぼの丸が沈められておる。これは具体的の問題の一つです。それから近接する公海において漁船が拿捕されておりますね。これも具体的な事実です。これを具体的な事実でないとおつしやるのですか。
  55. 船田中

    ○船田国務大臣 ただいま御指摘になりましたことは、もちろん具体的の事実であります。しかしこれが二十四条の発動の前提をなす事件とは見ておりません。
  56. 赤路友藏

    赤路委員 あなたのおつしやるのは二十四条に「日本区域」とこういつておる。だから日本区域——少くともあなたがおつしやる三海里以内において起つた場合は、これは当然発動することになりましよう。ところがあなたは、近接する公海においてもという言落を言つておられる。近接する公海においてそういう事実があるとすれば、これには何と書いてあるか。明らかに敵対行為の急迫したる事態、敵対行為の急迫した脅威が生じた場合ということをうたつておる。あなたのおつしやる日本区域をも含めた近接する公海において、今私が申し上げたような事態が出ておることを敵対行為の急迫した事態でないとあなたは解釈されるのですか。
  57. 船田中

    ○船田国務大臣 ただいまおあげになりましたことでございますが、現在の事態がこの行政協定二十四条にいうところの敵対行為または敵対行為の急迫した脅威が生じたというふうには政府として考えていないということを申し上げたのであります。
  58. 赤路友藏

    赤路委員 それは、あなたのおつしやるのは、私は言葉じりをとるわけじやないのだが、この二十四条には近接した公海という言葉は一行も載つておりません。載つておりますか。載つていないでしよう。あなたがあえて近接した公海ということを言うから、私は近接した公海であるなれば当然二十四条が発動すべきじやないかと言うのです。あなたは今敵対行為として急迫した脅威を受けているのじやないと言つておる。ほんとうに脅威を受けていないのであるなれば、きのう、おととい、あの西日本から大挙こられたデモの人たちは、一体何しにきたのですか。この行動隊の諸君は何をしにきたのか。もうすでに倒産が起つておる。抑留されておる方々は向うで死亡されておる。しかもなお砲撃声明が出ておる。これをあなたは急迫した脅威でないとおつしやるのですか。これでは私はほんとうに言葉はありません。驚くほかはないのです。そういうふうな見解を持つなれば、二十四条に示されておる日本領域に限るというのなれば私は申し上げません。言葉じりをとるわけじやありませんが、あなたがあえて近接する公海ということを言うからこう言わざるを得ない。もし間違つておるのなら、これをお取り消しになり、間違つていないとするのならば、二十四条を当然適用しなければならぬ。どうです。
  59. 船田中

    ○船田国務大臣 これはたびたび申し上げておりますように、日韓の今の紛争につきましては、私はまことに漁民の諸君にお気の毒であると考えております。従つて最善の努力をいたしまして外交折衝によつて事を処理していきたい、かように考えております。それからただいま二十四条云々の問題につきましては、先ほど私が申し上げました通りに、もしこれに対しまして敵対行為が現実に起つた、こういう場合におきましては、その具体的の事実に対しまして善処して参りたい、かように考えておるのであります。
  60. 赤路友藏

    赤路委員 私は平和のうちにこの問題を解決つけようとする政府考え方に賛同しているのですよ。反対しているのじやない。われわれはこの問題を武力をもつて解決つけるなどということは毛頭考えていない。賛同はしておるのです。しかしあなたが今おつしやつた近接する公海という言葉が出るから私は言うのです。だから私が言うように二十四条にはそういう文字はない、ないがあえてあなたの方でそういうふうに解釈するのならば、なぜおやりにならないかということを言つているわけです。だからもしもその言葉を入れたことが誤りであるというのならば、ここではつきりそれは間違いだということを言つてもらえばいい。もし近接する公海ということになれば、これはあなたが何とここで御答弁なさろうとも、現実の姿は急迫した事態にあるということは事実なんです。これはあなた一人だけが、じやないと言つたつて国民全体はそうは考えません。その点だけを私は言つておる。どうか誤解のないようにお願いしたい。どうですかこの点……。
  61. 船田中

    ○船田国務大臣 この第二十四条の規定を見ますると、これは安全保障条約第一条の目的を遂行するためとこういうことになつておるのでありまして、現在の事態はこの適用を受ける事態とは考えておらないのであります、そこでしばしば申し上げます通りに、今日の段階においては外交折衝によつて何とか円満な解決をはかりたい、かように考えておる次第であります。
  62. 赤路友藏

    赤路委員 これは何ぼ問答をしてもだめだと思いますが、あなたのおつしやる通りなんです。安全保障条約の条項に基いてこれがなされ、第一条の目的を達成するために各条にわたつてこれが具体的に説明してある。第一条の目的をどう達成するかということを各条別に具体的にやつているのですよ。その具体的な方法として二十四条が現われてくる。この二十四条の中に近接した公海という文字はありません。それをあなたがあえて近接した公海と言うのだつたら、これは問題になる、私はこう言うのです。どうにもおかしいじやないですか。二十四条の中にありますか、ないでしよう。ないことをあなたは言つた、近接した公海をも当然この二十四条の中に含めてやるのだとおつしやるのならば、これは二十四条に基く行動をすでに開始していなければならないはずなんです。こう私は申し上げておる。同じような答弁つたらもう承わらなくてもけつこうです。これ以上やつてみたところで見解が違うのだから、あなたは急迫した事態だとお考えにならないのだから……。ただしわれわれはこれに反対ですよ。御承知通り安全保障条約に対しても、当然日米行政協定に対してもわれわれは反対してきた。反対してきたができておる。できておるとするならばこの条約に基いてやらなければならぬ、これはやむを得ますまい。そこで二十四条の解釈の問題ですが、日本区域だけに限るなら別です。しかもそれが領海三海里に限るなら別です。近接する公海ということになるのならばこれは範囲がうんと拡大されて参りますから……。
  63. 船田中

    ○船田国務大臣 先ほど私が日本の区域というのは、日本国の領域及びこれに近接する公海ということを申したのでありまして、これは安保条約第一条及び第二十四条の精神から見まして、常識的に見て日本の領域というのは日本の領海、領海は大体三海里、それからそれに常識的に見て近接しておる海域をも含む、こういうふうに言つたのでありまして、この解釈は私は間違つておらぬと思います。
  64. 赤路友藏

    赤路委員 もうこれ以上防衛庁長官にお尋ねしません。それで私は先ほど言いましたように、李ラインは対馬の三海里のところを走つておる。このことを御承知おき願いたい。しかもその周辺において起つておれば、これはだれが何と言つたつて近接した公海ですよ。もうこれ以上あなたにはお尋ねいたしません。外務大臣がお見えになつていないので、基本的な問題については私はお尋ねいたしませんが、今の問題に関連ありますので、今の問題について外務政務次官でもけつこう、中川アジア局長でもけつこう、御見解があつたら承わつておきたいと思います。
  65. 中川融

    ○中川(融)政府委員 ただいまの安保条約及び行政協定の解釈につきましての外務省の見解は、船田防衛庁長官の御説明された通りわれわれも考えております。
  66. 村松久義

  67. 淡谷悠藏

    淡谷委員 船田長官に御質問いたしますが、今あなたの御答弁を聞いておりますると、海上自衛隊を出動させるがごとき、あるいはまた出動させざるがごとき答弁だと私は伺います。あなたはしばしば具体的な、具体的なという言葉を使われておりまするけれども、あなたの御答弁くらい具体的なあれに欠けておる御答弁はございません。一体この事態に対しまして自衛隊は出動の準備をしておるのか、それともこの李ラインの問題に対しては全然出動の意思がないのか、あなたのいわゆる具体的にはつきり御答弁を願いたいと思います。
  68. 船田中

    ○船田国務大臣 現在の事態はたびたび申し上げておる通りに、外交折衝でどこまでも円満に解決するように努力をいたしておるのでございます。もし急迫不正な侵害があつた、こういう場合がもし将来起るというようなことがありますれば、その事態の推移をよく見きわめまして、そのときに応じて適当なる措置を講ずるように用意をいたしております。
  69. 淡谷悠藏

    淡谷委員 たくさんの漁船が拿捕され、多くの漁民が抑留され、人が死んでおる、倒産者が出ておる。しかも韓国政府が李ラインに入つた漁船に対しては砲撃を加えるという事態は、一体急迫した事態ではございませんか。あなたのいわゆる具体的な侵略の事実が現われんとしておる状態ではないとお考えになるか。このような事態ではもしあなたのいわゆる急迫な事態でないというならば、どういう具体的な状態が急迫した事態なのか、どういう具体的なことが侵略の形なのでございましようか、はつきりあなたの御見解をお聞きしたい。
  70. 船田中

    ○船田国務大臣 たびたび申し上げており賛する通りに、現在の事態はまだそこまでいつておらぬと私は見ておるのでありまして、どこまでも外交折衝によつて円満な解決をはかるように努力をいたしたいと思います。
  71. 淡谷悠藏

    淡谷委員 私は現在の事態についてお伺いしておるのじやございません。将来どのような事態が起つた場合に、あなたは具体的な侵略が始まつたとお認めになるか。どのような事態が起つて、何人の漁師が死んだら、何千そうの日本漁船がなくなつたら、あなたは急追した事態だとお考えになるのか、あるいは韓国の艦隊がやつて参りまして、李承晩ラインの中で砲撃を開始した、こういう事態をさすのか、この点をはつきり、あちこちお逃げにならないで、もう海上保安隊の警備船は砲撃をする場合には逃げると言つておりますが、そのまねをされないで、あなたの態度はあくまでもきぜんとして、どういう事態になつた場合に、出動させるつもりなのか、李ラインについてはどのような事態になつても、外交的な方針で解決をつけるのか、その点をお逃げにならないで、私は御答弁を願いたいと思う。もう今や空疎な論議はいたしません。決意の問題であります。あなたの方でわれわれの主張する通り、どのような事態になつても自衛隊を出さないのだ、それならそれでよろしい。あるいは出すならば、どういう事態に対して出すのか。いたずらに関係漁民を迷わせるようなあいまい模糊とした態度は、おとりにならない方がいいと思いますが、はつきりとした御答弁を願います。
  72. 船田中

    ○船田国務大臣 ただいま御質問がございましたが、たびたびこれは申し上げておる通りに、今日の事態は、何といつても外交折衝によつて円満に解決していきたい。しかしいかなる事態が起つても何もしないというようなことは考えておりません。事態の推移を十分見きわめまして、そのときには適当なる措置を講ずるようにいたすつもりでおります。
  73. 淡谷悠藏

    淡谷委員 外交折衝は四年かかつております。何年かかつてあなたは外交折衝が成功すると思つておるのですか。何年待つつもりなんです。それともこういうふうな形でじりじりと経過させて、もつと防衛力が強くなければやれないのだとかいつて、防衛庁の予算だけ増大しておいて、李承晩ラインについてはいつまでも手をこまねいて黙つて見ておられるつもりなのか。あなたは具体的な問題が起れば、急迫した事態になれば、手をこまねいて見ていないと言つておる。それならどういうふうな事態になつた場合にあなたの急迫した事態が起きるのか、その点をはつきり私は伺いたい。
  74. 船田中

    ○船田国務大臣 これは具体的にどういう事態が起つたかということは、この場合私としてははつきり申し上げられません。しかし事態の推移を十分見きわめまして、適当なる措置を講ずるつもりでおります。
  75. 淡谷悠藏

    淡谷委員 あなたはどうも御答弁をどこまでも逃げておられるようですが、あなたの動きをおそらくは現地の漁民も注視しておると思います。事態がこれ以上急迫すれば、あなたは韓国の艦隊を迎えて一戦試みられるような御決意のようにもうかがわれる。または李ラインについてはどこまでもふところ手で外交折衝にまかしておこうというふうにも見られるし、一体どつちなんです。李承晩ラインの中で韓国の艦隊が砲撃した場合に、あなたはこれを急迫した事態と考えて自衛隊を繰り出されるのですか、繰り出されないのですか。その点だけはつきり聞いておきたい。
  76. 船田中

    ○船田国務大臣 たびたび申し上げておる通りに、事態の推移を見きわめまして、適当なる措置を講ずるつもりでおります。
  77. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これ以上は押し問答になりますから、あえて申し上げませんが、あなたの気持はわかりました。あなたにはこの李ラインに対して誠実な態度はございません。これは漫然と事態を見て、ふところ手で何らの措置をしないで黙つて見ている。むしろこれははつきり、自衛隊は今の事態では出ないから解消して、その自衛隊の費用を全部現地の漁民の賠償に振り向けられるつもりはございませんか。
  78. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 今の御質問に関連して、ちよつと長官にはつきりお伺いしておきたいことがある。午後外務大臣がおいでになりました場合に御質問をする一つの前提として、事実の認定を政府はどう認定をされておるか、聞きたい。これは第一に私がお伺いしたい点は、今度朝鮮政府並びに朝鮮の海軍が、要するに日本漁船が李ラインに入つた場合には、撃沈もしくは砲撃するということを言つている。これは韓国の軍艦です。いいですか、海軍を使つてやる。しかもこれは李承晩政府のはつきりした意図だということを、防衛庁長官ははつきりお認めになりますかどうですか。これはつまならいことのようですが、この点はあとで外務大臣に対して政府の基本的な態度をお聞きする場合に非常に重要になりますから、まずこの点をお聞きしたい。どうお認めになるのか、これをはつきりしておきたい。
  79. 船田中

    ○船田国務大臣 韓国政府が今ただちに韓国の海軍を出動させるというようれ意図があるようには私は聞いておりません。またわれわれといたしましては、外務省とも常に連絡を保ちまして、十分先方の情勢はこれをはつきり見きわめるように努力はいたしておりますが、現在のところ、さような韓国の艦隊を出動させるという事態になつておるとは私ども見ておりません。
  80. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 今出動させておるということではもちろんない。新聞等では、韓国の海軍の一部あるいは全部か知りませんが、釜山に集結しておるということも伝えております。少くとも韓国政府は、今度李承晩ライン日本漁船が入つた場合、これは韓国の軍隊を出動せしむるという、はつきりした意図を持つておる、これだけはお認めになつておるのか。それともそういう意図がなくて、ああいう声明をしておるだけだ、あれは単なるおどかしだ、こういうふうにお認めになつておるのか。この点をどういうふうに見ておられるかということをお聞きしておる。今長官のお話では、韓国政府はまだ軍艦を動かすという意図は持つておらない。そうするとあの声明は何ですか。これをはつきり私はお伺いしたい。この点をはつきり認識することが、私はこの問題を解決する一つのめどだと思う。午後私は外務大臣によくお伺いをいたしたいと思いますが、その点をどう見ておられるのか。今のあなたの御見解のように、声明はしたけれども、やる腹はないのだ、どうもそういうことでないと私は見ておりますが、どうですかということをお伺いしておきます。
  81. 船田中

    ○船田国務大臣 ただいま御質問のような点につきましては、わが方といたしましては、あらゆる手段を尽しまして、その真相を突きとめようといたしております。外務省からはいずれも外務大臣から御答弁があると思いますが、韓国政府の真意も聞いておるような次第であります。これに対してまだ何らの返答を聞いておりません。
  82. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 それではそういう御答弁では、これ以上お伺いしてもしようがありませんから、外務大臣にお伺いすることにして、この程度にしておきますが、今まで拿捕され、あるいは攻撃された日本漁船がたくさんあるわけですが、これを攻撃した韓国の船は何という船か。これは向うの軍艦がやつたものもありましよう。あるいは海上警備隊やつたものもありましよう。こういうことについて明確な御調査をした資料をお持ちになつておるのかどうか、またこれをどう御解釈になつておるのか、この点を一つお伺いをいたします。  もう一つ、この韓国の海洋警備隊というものは、韓国の海軍の構成要素であるかどうか、今までの事実に対する調査、それと同時に、これが韓国の海軍の一部を形成しておるものであるかどうかという点について、はつきりお伺いしたい。
  83. 船田中

    ○船田国務大臣 ただいまの御質問の点は、直接の責任者である海上保安庁の方から御説明申し上げた方がいいと思います。
  84. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 今防衛庁長官から海上保安庁から聞いてくれということですから、海上保安庁の責任者から、今申しました今まで日本漁船を拿捕しもしくは攻撃をしました韓国側の船は、どういう船がどういうふうにやつたかということを、調査をされておると思いますから、この点をはつきり説明をいただきたい。  もう一つは、韓国の海洋警備隊というものは、大体において韓国海軍の構成要素であるかないか、この点をはつきり御答弁いただきたいと思います。
  85. 島居辰次郎

    ○島居説明員 御答弁いたします。韓国は平和条約発効によりまして、マ・ラインの撤廃が予測されますと、朝鮮半島の周辺の海域の自国の水産業を保護するためにと称しまして、昭和二十七年の一月十八日に海洋主権宣言というものを発しまして、いわゆる李ラインを持つたのであります。そして海軍関係によりまして日本漁船の締め出しを行なつたのでありますが、私の方で持つたのは海上保安庁でありまして、海軍ではございませんが、その後それにならいまして、向う側も李ラインの主張を正当づけるために、また魚族の資源保護のためにのみならず、共産分子の侵入を防止すると称しまして、李ラインを平和ラインと呼びまして、昭和二十八年の十二月二十三日に海洋警察隊というものを作つたのであります。それから拿捕の任務は海洋警察隊にまかせまして、海軍は本来の任務に回つたのであります。それは警備艇をもつて十分任務が果せるということから向うが妥当と思つてつたようであります。なおことしの八月十二日以来海務庁の下部組織である海洋警備隊に関する大統領令が出まして、従来の海洋警察隊編成令は廃止され、以後は海洋警備隊というものによつて李ラインの警備を強化しているようであります。
  86. 村松久義

    村松委員長 防衛庁長官に対する関連の御質問のお申し出がたくさんありますので、長官の時間もありまするし、またわれわれの委員会の日程もございますので、順次お許しをいたしますが、どうか一つ簡単に願いたいと思います。
  87. 木村文男

    ○木村(文)委員 防衛庁長官は時間がないようでありますから、きわめて簡単に、私のこのあとの質問の資料にしたいと思いますので、念を押しておきたい二、三点について御質問をいたします。第一点は、政府は李ラインを認めているのか、認めていないのか。第二点は、もし認めていないのであれば、国民がこの李ライン内に漁獲のために入つてよいと認めるのか認めないのか。第三点、もし漁獲することまた入ることを認めるとすれば、韓国がこれに対して一方的に不法襲撃し、またそのおそれありとすれば、政府としては当然国民の権利及びその生命を保護する責任があると思うが、その見解をただしたい。第四点は、責任ありとすれば、防衛庁長官としていかなる手段方法によつてその責を果すつもりか。それだけであります。
  88. 船田中

    ○船田国務大臣 政府としては李ラインというものは認めておりません。それから最後に御質問になりました点について防衛庁の関係がございますから、お答弁申し上げますが、先ほど来たびたび申しております通りのことをここに繰り返す以外に答弁方法はございませんが、事態の推移をよく見きわめまして適当な措置ができるようにいたしたいと考えております。
  89. 大森玉木

    ○大森委員 議事進行。李ラインの問題に対していろいろ御質疑がありまして、長官初め各係の方々の答弁を聞いていると、まことに苦しい答弁をしておられます。私はここに結論は何であるかということをお尋ねをいたして結論をつけたいと思う。まずわれわれの同胞が……。   〔「議事進行じやない」と呼ぶ者あり〕
  90. 村松久義

    村松委員長 議事進行とは認められませんが、関連質問として許可いたします。どうか簡単に一つお願いします。
  91. 大森玉木

    ○大森委員 われわれの同胞同志は非常に拿捕されあるいは捕虜となつておられますので、これは私ども機会あるごとにどうするかということを叫んで参つたのであります。しかしながらこれは結論はどうであるかということを私は長官に伺いたい。今社会党の諸君から非常に猛烈にいろいろな攻撃、こ  の取締りはどうだというふうなことを聞くことは、私は非常に遺憾に思う。今朝鮮韓国側からもしも李ライン内に入つたものは撃つぞということは、なぐるということ、なぐるぞといわれることは日本がなぐり得ないということだと私は思う。だからなぐり得ないということは、日本がいわゆる弱体であるということ、それに対しましては、社会党の諸氏は今まで、日本は武力を持つてもいかぬあるいは兵隊を持つてもいかぬという、そういうようなことが今の現実の姿に現われてきて、日本というものは、何をしてもし得ない、今の答弁を聞いていてもその通り、これに対して確固たることをやつともぐつとも言えない、これは言えないことだろう、もつともそう言わせることをもつて質問の要点としておられると考えるのでこれをお尋ねする。日本の現在は朝鮮側から見て弱体である、であるからこれはどうにもできないのであるというふうに私は考えるが、長官はどう思つておられるか。今の事態はどうであるかというと、全くこの問題に対しての解決は、精神上、道義上、外交上の交渉のほかにはない。それをもつて弱いということをつかまれておるからたたくぞといわれる、これをどうするかといつて詰め寄られることは、どうにも答えられないことを言わせようというのであるから、私はこれはどうかというと、長官の答えの結論は、あまりにも日本は弱体であるから、なぐるといわれるだろう、こういうふうに考えておられるのだろうと思う。これを一つその真意を承わつておきたいと思う。
  92. 船田中

    ○船田国務大臣 日韓漁業問題はまことに遺憾なことでございます。ことに多数の日本の漁民が抑留されあるいは漁船が拿捕されておるというようなことが一昨年来続いておるのでありまして、これに対しましてはまことに同情にたえません。従つて政府としてもできるだけの措置をし、さような事態の起らないように努力はして参つておるわけであります。現在におきましても事態がまだ解消されておらないということははなはだ遺憾でございます。しかしこれもたびたび申し上げまする通りに、現在の事態におきましては、外交折衝によつてできるだけ先方の妥協的な態度を要望いたして、その努力をしておるわけであります。またその他におきましてもできるだけの手段を講じて、不詳の事態の起らないように、政府としては万全の努力をいたしております。しかしそれにもかかわらずなお事態が非常な急迫をしてきた、不法の侵略が現実に行われたというような事態になりますならば、その事態を十分見きわめまして、これに対しまして善処をして参るようにいたしたいと思います。
  93. 村松久義

    村松委員長 日野吉夫君。
  94. 日野吉夫

    ○日野委員 防衛庁長官アジア局長ちよつと伺つておきたいと思います。領海並びに近接した公海ということを防衛庁長官説明されて、それにアジア局長もその通りである、こう答弁されておられますが、これは日本政府の一致した見解であると解釈してよろしいかどうか、この点を一つ両方から確認していただきたいと思いますことが第一点。これは重要なことでありまして、もしそうだとすれば李ラインに起つた事態、この事実は不法不正であるということはもちろん、急迫した事態であるかどうかということについて、今後の解決に非常に大きな関係を持つ。そこでこのことをアメリカ政府との間に、解釈の統一なり具体的な対策なりについて何か話し合つた事実があるかどうか。なおさらに、こうした問題について早急にアメリカ政府との解釈の統一あるいは具体的な問題についての解決策なりについて話し合いをする用意があるかどうか、この二点をお二人に伺つておきたい。
  95. 船田中

    ○船田国務大臣 ただいまの御質問に対しましては、先ほど申し上げました通り、行政協定第二十四条に掲げてありまする日本の区域、この日本の区域というのは、日本国の領域及びこれに近接する公海という、私がさつき申し上げた通りでございます。ただ近接する公海というのは常識的に見ましてそう広い範囲ではございません。もちろんきわめて狭い範囲であることは言うまでもないと御承知願いたいと思います。
  96. 中川融

    ○中川(融)政府委員 ただいま防衛庁長官が言われました通り日本領域とは書いてないのでありまして日本区域とありますので、必ずしも領土及びはつきりした領海、三海里の領海という海域のみに限るのは狭過ぎると思います。従つて常識上ある程度隣接した公海もこの日本の区域という中に入るというのが目下政府で打ち合せましたところの解釈でございます。
  97. 日野吉夫

    ○日野委員 アジア局長に伺いますが、今の答弁は、これは日本政府の一致した見解かどうかということを聞いているのだが、その通りと解してよろしいか、もう一度念を押しておきます。
  98. 中川融

    ○中川(融)政府委員 日本政府当局の見解でございます。
  99. 日野吉夫

    ○日野委員 このことについてアメリカ政府も同様に解していると思われるかどうか。この解釈についての話し合いが持たれたことがあるかどうか、その点をもう一回伺いたい。
  100. 中川融

    ○中川(融)政府委員 これは日本政府側の解釈でありますが、この点につきましてアメリカ側と特に打ち合せたということは、私の知つている限りは聞いていないのであります。ただ条約の解釈でございますので、もちろん最終的の打ち合せの必要がありますが、一応日本側の解釈というと、ただいまのようなことできめておるわけであります。
  101. 日野吉夫

    ○日野委員 そういたしますと、争点はここの一点になると思うのです。李ラインは勝手に引かれたもので、日本政府は認めておらぬ。従つてここに起つた侵害が不法不正の侵害であることは、これは争いの余地がない。ただ問題は急迫した問題かどうかということについては、赤路君と防衛庁長官の論争で意見の一致を見ておらぬ。もしその解釈が領海でないということであるならば、防衛庁長官の解釈のようになるが、しかし日本政府の一致した見解が領海並びに近接した公海、こういうことになると、問題が非常にめんどうになる。それによつて解決の方策が違つてくるのであるから、当然これはアメリカ政府との折衝が残される。アメリカ政府との解釈の統一並びにこの具体的な事実に対する相談が残る。今までこういうことについてお互い一致した解釈を持つていないということが、今日まで遷延さしたことになると思う。近くこれについてアメリカ政府と何らかの話し合いをする用意があるのかどうか。いずれ外務大臣も来るそうだからここで論議になるが、一応アジア局長からそのことを承わつておきたいと思います。
  102. 中川融

    ○中川(融)政府委員 ただいまの日本区域の解釈でありますが、これは別に政府といたしまして、今回の李ライン問題が起きたので特にそういう解釈を明定したというのではないのでありまして、すでにずつと以前から、この日本区域というものの解釈について、もしこれを領域及び——狭い意味における法律的な領海のみに限つておる場合、たとえば安保条約第一条にありますような日本国に対する攻撃の脅威ということが起る場合に、もしも現実に日本領域または日本領海に攻撃が行われたときでなければこれが発動されないというのでは、事態を救うのに間に合わないのでありまして、従つてある意味では、まだ日本の領海に達しないでも、すでに大艦隊が集結されて日本に向つて進んでくる、あるいは大軍隊が集結して日本攻撃の準備を進めておるというような際には、当然これは脅威があるものとしてこの条項を発動し、そうしてお互いに協議するということが当然適当である、こういうことからこういう解釈をとつているわけでありまして、従つてもしただいまの御質問趣旨が、李ライン問題に関連してこの条項を発動するかどうかという意味においてアメリカと至急打ち合わす用意があるかということでありますならば、これはただいま防衛庁長官の言われました通り、李ライン問題は目下のところ外交交渉によつて片づけようという政府の考えでありますので、そのような措置はただいまとることは考えていないのであります。しかし一般問題として、この解釈についてアメリカ側と打ち合わす必要のあることは当然だと考えております。
  103. 日野吉夫

    ○日野委員 あとは外務大臣に伺います。
  104. 村松久義

    村松委員長 ちよつと速記をとめて。   〔速記中止〕
  105. 村松久義

    村松委員長 速記を始めて。  それでは午後二時に開会することとし、休憩いたします。    午後零時十九分休憩      ————◇—————    午後二時二十五分開議
  106. 村松久義

    村松委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  午後はまず御出席をいただきました参考人各位より御説明を承わることにいたします。  参考人各位には長らくお待たせをいたして申しわけありませんが、御承知のように午前中にこの問題の質疑をいたしておりましたので、御了承をいただきたいと思います。本委員会におきましては、このいわゆる李ラインの問題に関して真剣に討議を続けて参つております。この際本件に関して、被害者の立場にあらるる参考人諸君より実情をお述べをいただく、また留守家族の問題その他に関しても実際のところを知らしていただき、それを参考にいたしまして、われわれは解決の道に資したい、こう考えておりますので、この際一つ意見なり御希望なりを忌憚なく吐露していただきたいということでございます。  なお参考人は順を追うて、一括してお話をしていた、だくことにいたしますので、この際参考人を御紹介申し上げます。第一番目の方は江口次作君でございます。第二番目の方は中野源二郎君、第三番目は大迫フミツ君、四番目は岡田サト君、五番目は栄久江君でございます。順次御発言を願いまして、その後において委員諸君より御質疑がございますから、お答えをいただきたいと思います。——江口次作君。
  107. 江口次作

    ○江口参考人 ここにありますチャートを使わしていただいて、漁場の実相をとりあえず申し上げさしていただきたいと思います。  李承晩ラインを引きましてから韓国の艦艇の一番出没するコースといいますのは、大体釜山と済州島を結んだ、いわゆる済州島の東側のラインでございます。この海域は、御承知のようにサバのきんちやく網、これは長崎県、福岡県、山口県のいわゆる西日本のサバきんちやくの宝庫でございましたと同時に、千葉県、神奈川県の方から出漁しておりましたサバのはね釣船も、同じようにこの済州島の東側水域に依存度が非常に高かつたのでございますが、先ほど申し上げましたように、この水域には、釜山及び済州島を結ぶところの艦艇の動きが一番多いものでございますから、時に消長はありますけれども、危険度が一番高い。ことに昨年の秋以後、このコースにおいては、この周辺に出漁すれば必ず拿捕されると言つていいほど危険な水域になりました。従いまして、はね釣船の、遠く神奈川県あるいは静岡、千葉から出漁しておる船は、もう全然西の方には出漁して参らなくなつております。しかし宿命的に地域の縛られておりますところのいわゆる西日本、九州のサバのきんちやく網は、ここの漁場に一番近接しておりますし、根拠地もまた近いものでございますから、この漁場がなければ、これが致命傷になりますので、間々出漁すればまた拿捕というようなことで、まき網漁業につきましては、李承晩ラインの存在はまさしく致命傷であつて、業態が非常に苦況を呈しておるという状況にあるのでございます。  一方済州島の西側の水域でございまするが、この水域につきましては南側の水域と含めて御説明申し上げます。これは同じ李承晩ラインがしかれたと申しましても、昨年までの経験からいいますと、大体済州島の西側水域であの百二十四度線に李承晩ラインがしかれておりますが、あれより約三十マイルないし六十マイルの水域にはあまり韓国の艦艇は出没しておりませんでした。ことに昨年までは中共との関係が悪くございまして、中共の船が百二十四度線まで来ておりましたから、大部分のトロール、底びきの船というものは百二十四度と百二十五度との間の六十マイルの間で操業する。それから南の方でいきますと、今の李承晩ラインのうち約三十マイルは大体安全圏と見て操業しておつたのでございます。ところが今年になりますると全く情勢が一変いたしまして、ことに去る十一月の十八日のいわゆる砲撃、爆撃声明をいたしました日になりますると、この李承晩ラインの一番南の端のところ、先ほど申し上げましたように、従前比較的安全な水域と思われているところに対して韓国の艦艇が出撃をしてくる、こういう事態になつたのでございます。そうして韓国の西側の水域につきましても、同じようにちようどあのラインを一つぱい一つぱいに韓国の艦艇が出てきております。そうしてそこに使つておりますものの中には、かつて日本から取りましたトロール船二はいも、向うの船としてそこで操業をしておる。われわれは操業をしておるのを確認しておりますが、それが武器を持つておるかどうかはいまだに確認しておりませんけれども、それが通報すると見えますると艦艇の出撃がある、こういうような状況になりまして、いわゆる砲撃、爆撃声明以後というものは、全李承晩ラインは完全に締め出されたという状況に相なつておると見て差しつかえはないのでございます。それでこういう広大な水域でございまするが、もちろん海の上に線が引かれておるわけではございませんから、つい一カ月くらい前の事件におきましては、李承晩ラインを越えて韓国の艦艇が日本の船をとつつかまえた、こういうケースもあるのであります。これに対してこちらの方から全ミッションの方に抗議を申し込みましたが、結局つかまえていつてからの話でございますから、これも永かけ論で泣き寝入り、こういうような状況でございまして、御承知のように百九隻の未帰還船と六百五十一名の未帰還者という状態になつております。すなわち四年間李承晩ラインに苦しめられましたけれども、今日の状況が最悪であつて、どん底の状態であるということ、あのラインの中に、あるいはラインに接近すれば、ラインの中に入らずとも拿捕される状況になつておるということは、はつきり申し上げられることだと思います。  そこで私どもといたしましては、一体これに対する対策ありやなしやということなんでございまするが、これに対して政府日本の巡視船、監視船というものをどう配置をお願いしたかということを申し上げますと、大体水産庁の巡視船は漁業取締りの面で日中漁業協定の方の線、ずつと中国寄りの線の方に一応回つていただいております。そうして一番速力の早いところの海上保安庁の巡視船にこの李承晩ラインの中に入つていただいて、向うの艦艇を見つけたら通報していただく、あるいは向うの電波を捕えてこれを知らせていただく。こういう情勢になつて、海上保安庁の船に先月十八日の砲撃、爆撃の声明にもめげずにこの中に入つて通報していただいておることに対しては、私ども非常に感謝をいたしておるわけであります。しかし私は今度の十二月三日の日本の武装船、いわゆる巡視船といえども、これを砲撃あるいは拿捕をするというあの声明以後、一体海上保安庁はどういう方針をおとりになるのか、こういう点については、現地の業者は政府の方針というものについて一応の危惧の念を持つておるということもまた争えない事実であると思います。こういうような漁業の実相からいたしまして、漁業者は底びき漁業をきんちやく漁業と同じように非常な苦しみに立至つておるわけでございます。ことに最近拿捕されました船は李ライン外というようなことでございまして、業者は今このラインの内外の拿捕に対しまして、一応政府として保険制度でもつてカバーされておる事実はございますけれども、中には保険金というものは一カ年に大体一組に対して百万円くらいの程度の金がかかりますから、非常に貧困にあえいでおりますところの西日本の漁業の実態からすれば、一カ年百万円の支出というのは相当大きな支出になります。従つて無保険の状態において船も人も取られておるというケースも非常に多いのであります。そこで私どもは今度大挙上京いたしまして御存じのような行動を起したわけでございますが、私どもはこの問題を、いわゆる国内的な問題と対外的に処置できる問題の二つに分析をいたしましてそれぞれお願い申し上げておるわけでございます。何と申しましてもこの公海で安全操業ができるということが私どもの根本のねらいでございます。しかし少くとも四年間苦しみ抜いてきた私どもから見ますと、李承晩の現在とつておる政策については、果して私ども日韓会談というものが言うべくしてできるだろうか、李承晩政権のとつておる政策というものは、結局反日政策が彼の政策の基盤になつておるのじやないか、李承晩ラインを認めるなら日韓会談を再開してもよろしいということは、無条件降伏してこい、財産請求権を全部放棄してこい、それなら会談を開くという態度、ことに最近相次いで見ます態度、ことにけさの新聞を見ますと、きのうもまた重ねて全韓国の警備艇を集結させて、日本漁船は追つ払うし、拿捕抑留するのだと言つておるようであります。そういう状態から見ますと、私は言うべくしていわゆる日韓会談の平和的促進ということは非常に困難である、彼らの政策が日韓会談を決して日本に対して友好的に促進するものとは考えられません。しかし私どもが言いたいのは、あすこで使つておる武器あるいは油にしましても、ことごとくアメリカから供給されておるのでありますから、私はアメリカが油を止めただけでも韓国は艦艇の出撃はしないと考えます。私は十月にアメリカの大使館に参りましたときも、そのことを実は率直に申し上げたのでございまして、油がなければ韓国の艦艇は明らかに動かないのでございまするが、私ども漁民の狭い見聞からいたしますならば、なぜアメリカがこの問題に対して積極的に援助をしてくれないのか、こういうふうに考えておるわけでございます。もしいかなる形においても百二十四度線という李承晩ラインが認められますると、これは大へんなことだと思います。と申しまするのは、ことしの春成立しましたいわゆる民間による日中漁業協定におきまして、中国側が最初に打ち出しました線は、この海洋を三つに分けまして、百二十四度から西は全部中国が漁をする場所だ、それからその隣合つているところが日中双方の入会漁区だ、それから日本に近いところが日本の漁区だ、こういうふうにして漁場を三分割する案を中国が持つてきたわけでございます。幸いにこれは日本側の代表団の努力で、そういうことでなく話は片づきましたけれども、百二十四度線というものがいかなる形において残つて、その間に入会的な日韓間の会談がもしできるとするならば、中国もまた来年日中漁業協定が更新されるときに同じ漁場の分割論が出て参ると思います。そういたしますると、私どもはやはりどういう形にしろ李承晩ラインというものは徹底的に排撃していかなければ、西日本の漁業者の生きる道はないのだ、こう考えて、しかもなおこの外交問題というものが果して平和的に話ができるかどうかということについては、非常な危惧の念を持つておるわけであります。  何と申しましても、私ども当面の問題は、六百五十一人の人間の即時送還の問題でございますが、これは次の参考人から申し上げることとして、もう一つのとつておきの手は、これもわれわれの狭い見聞でございますが、やはり朝鮮に対する経済の断交をするということが民間側として考え得る最大の武器でないかということも一応考えております。たとえば朝鮮のノリの輸入が御承知のようにとまりますると、朝鮮の約十万——これはもちろん兼業者を含みまするが、その人たちは朝鮮ではノリがはけませんから非常に苦しむのでしようが、それは結局今の日韓間の政策が悪いのだといいまするか、李承晩の政策が悪いのだというようなことになりまして、日韓間の経済が切れた場合において一体苦しむのはだれかということを考えますると、当然のことながら韓国側が苦しむ点が多いと思います。そう考えますると、私どもは最後のとつておきの手として、国家としてこの手をお考え願うことはまたやむを得ないのだと思いまして、新橋駅頭でこの決議をしたわけでございます。  さて国内問題でございまするが、特にただいま申し上げたような対外的な問題は相手のあることでございますから、いろいろあと先困難な問題を包蔵いたしましようが、国内問題はそれはそれなりに当座手を打つていただきたいのはあとからやはり参考人として並んでおりまする遺家族及び抑留家族の援護の手については、早急にこの十二月のうちにあたたかい手を差し伸べていただきたい、こういうことでございます。それと同時に、漁業経営者が極度戸行き詰まりをいたしますると、これがまた一つの大さな社会問題を引き起すと私どもは思います。それにつきましては現在の特殊保険いわゆる船が拿捕された場合における特殊保険制度並びに給与保険制度というものについて、もう一ぺん先生方にお考え直していただく段階に来ておるのではないかと思います。と申しまするのは、もし砲撃、撃沈された場合においては、普通保険でも現在の特殊保険でもカバーしてくれません。まして先ほど申し上げましたように、保険料そのものが保険という建前からして、もし赤字になつた場合には国の給付をいただいておりまするけれども、原則的にはやはり出入りがペイする勘定で保険料率というものがきめられております。そうしますると苦しい業者のうちには、ことに季節的にはかけないでいくということがあつて、拿捕されておるという実例もまた多いのであります。そう考えますると、私どもとしては国のこの難儀をしわ寄せされた場合において、この保険制度でカバーするという考え方を抜本的に一つ考え直していただいて、韓国の不法行為によつて撃沈もしくは拿捕された場合における船体の損害並びに抑留者抑留期間中における生活保護というものは、保険ということでなしに国がごめんどうを見ていただけるようにぜひお願いしたいものだ、こう考えておるわけでございます。  それからそのほかに漁業者がこれだけ行き詰まつた問題に対して、サバきんちやく、あるいはサバはね釣、以西底びき漁業というように、直接的に李承晩ラインの不法行為によつて極度の疲弊をいたし、しかもなおかつ国家としてこの産業を助長していかなければならないのだ、こう宿命づけられた産業に対しましては、国の融資なり、部分的の補償なりという問題についてもとくと御配慮を願いたいと私は考えます。総論的なことを申し上げて、次の参考人とかわりたいと思います。
  108. 村松久義

    村松委員長 ありがとうございました。  次は中野源二郎君。
  109. 中野源二郎

    ○中野参考人 中野源二郎であります。本日の委員会に陳情する機会をいただきましたことにつきまして、衷心から厚くお礼を申し上げます。  私は現地の漁船船員を代表してこの機会に御意見を申し上げ、同時に委員会の諸先生にお願いを申し上げたいと考えます。先ほど江口参考人から韓国周辺の水域における以西底びき網、サバはね釣、アジ、サバきんちやく網、こうした漁業が李承晩ラインの大きな制約によつてその経営がほとんど窮状のどん底にある、こういう状態にありまして、私たち漁船の船員がどのような形で今なおこの漁場で働いておるかこの点につきましてまず申し上げたいと思います。  私たちは諸先生が御存じのように、終戦後いち早く日本の水産蛋白資源の確保のために立ち上りまして、あの終戦後の困難な事態において、漁業に、食糧の増産に努めて参つたわけでございます。占領当時におきましてはマッカーサー・ラインの制約があり、さらに西には昭和二十五年の十二月二十三日から中共の拿捕があり、引き続き韓国の拿捕がありまして、非常に大きな被害を受けて参つたわけでございます。さらにまた先月の十七日には、韓国の統合参謀本部におきましては、御存じのように李承晩ラインの中に入つてくる日本漁船を砲撃撃沈する、こうした全く無謀な声明をあえてし、しかも現在におきましては、李承晩ラインのその外側に韓国の艦艇は、われわれ漁船のレーダーに毎日キャッチできるその艦艇の数は、十ないし十二隻が常時われわれを虎視たんたんとしてつかまえるべく待機しているという現状でございます。私たちはこの危険な海面に身命を賭してなおかつ働かなければならない、それは経営者の人たちも非常に困難な現状にあります。しかしながら私たち漁船船員は臨きんがため、食わんがため、生活のためにはなおかつこの漁場に出て働かなければならない現状にあるわけでございます、日本の労働者の職場におきましても、今この戦争の状態、実弾の飛んでくる職場はもとよりございません。私たちは厳重な見張りをここに必要とし、日夜漁掛の作業と見張りの作業と、この二重の超重労働をあえてやつてきているわけでございます。もとより波荒い海上に、狭い窮屈な漁船の上においてこうした状態が日夜繰り返されておるのでございます。私たちの同じ職場にあります船員諸君が、私たちとともに働いている人たちが、現在六百五十一名が韓国の獄舎に、また一応の刑を終えて釜山の収容所に今もなおつながれておるわけでございます。本年の夏この韓国の刑務所から帰つて参りました三名の船員の方々のお話は、先ほど田口先生からもお話がございましたように、内地におる私たちが想像以上の、これがほんとうにわれわれに対する処遇であるか、こんなことが韓国ではそれでも日本の船員にはよりよい待遇をしているのだというその待遇なのであるか。のどにも通らないようなまる麦と大豆と、米はほんのおしるし程度、梅ぼしと塩をもつて、狭い八畳そこそこの部屋に二十名から二十一、二名の人が、夏でも実に臭気ふんぷんとした中において生活をあえてしておる。私たちはこの寒い冬室を迎えて、私たちと同じ立場にある方々が冬を迎えようとしている、いつ帰る日が来るかわからないままに獄舎に呻吟している人もあれば、内地におる家族や子供のことを思つておられる方々の、そういう同じ立場にあるみんなの気持を思うときに、ほんとうにいても立つてもいられない、家族にしてみれば夜も寝られない、こういう状態にあるわけでございます。現在以西の下関、戸畑、博多、長崎その他の主要な漁場の基地におきましては、船が出るときには岸壁に集まつて見送られる家族の方の数が非常に多くなつている。この実情におきましては、船が沖に出るときにはいつ拿捕されるかもわからない、あるいは今度の砲撃撃沈の声明によつて命を失うかもわからない、送る者も送られる者もほんとうに悲壮な気持で漁場に向つてつているわけでございます。こういう状態にあつて、一方業者は非常に経営の困難はその窮極に達しておりまして、拿捕された場合等を考えますと、最低の補償の金すらも業者は払えない状態にありますことは、江口参考人からるる述べられた通りでございます。私たちは八時間労働でなくて、日夜十七時間も十八時間もにわたる長時間の労働をやっている。そしてこの大きな李承晩ラインの制約によつて漁獲は極度に少くなり、しかもその状態においてこの間隙を縫つてもその漁場に行かなければ、私たちの生活はもとより、業者の経営もあり得ない。一方拿捕された場合には、業者はこの最低補償の金すらも払えない状態でございます。夏に冬に陸上の労働者の皆さんが、越夏手当や越年手当あるいはもち代等を請求してはなやかな労働攻勢を示しておりますときに、私たち漁船の船員は、そのもち代すらも要求できない貧困の状態にあるのでございます。私たちは正当の要求であつても、現在この以西底びきあるいははね釣、サバきんちやく網等の実際の実情からしまするときに、業者に対してそのような要求もできない、そういうことができないというくらいにこの状態は追い詰まつているわけでございます。そうした状態を繰り返して、これからいよいよ以西の底びき網の漁業は盛漁期に入るわけでございますけれども、この最も書き入れどきにおいて、李承晩の無謀な砲撃撃沈の声明はさらに一段と圧迫を加え、私たち漁船船員がほんとうに銃口の前にさらされて、困難な操業を続けなければならないという状態にあるわけでございます。海上保安庁の警備船や水産庁の監視船は、私たちの操業する海域に保護の任務についておりますけれども、もとより私たちの海上における人命財産の保護に十分に力を尽すことができない状態にあります。私たちとしましては、何のために自衛隊はあるのか、何のために船を回してわれわれを守つてくれないのか、そういうことができないならば、そんな自衛隊はやめちまえ、その金があるならばわれわれの漁業を救つてもらいたい、こういうことももとより考えておるわけでございます。  さらにまた、昭和二十七年の一月十七日に李承晩の宣言があつて初めて拿捕が起きたわけでございませんが、昭和二十二年から韓国の拿捕は続いておるわけでございますが、この間において政府は具体的にどのような手を打たれたのか、いろいろ外交の問題等につきましては秘密を要することもたくさんあるかと考えますので、そうした点について詳しく発表はできがたいと考えますが、私たちが新聞やラジオで知る範囲は、きわめてその片りんしかうかがえない状態でございます。いろいろやつた点については、うまくいつた点あるいはいかなかつた点、こういう点をやつているのだ、力を尽しているのだという点を追い詰められている私たちとしては、ほんとうにもう少し詳しくそうした点を聞きたい。そうして、さらにこの漁場に平和的な操業ができるように一段と力を尽していただきたい、こういうふうにお願いするものであります。  それから現在、この拿捕が起りましてから特殊保険ができまして、昭和二十七年の六月二十五日には、漁船乗組員給与保険法が制定されまして、数多くの船がこの保険に入つて、拿捕の場合の救済策としてなされております。業者はそういう法の上に保険がありましても、極度に経営が困難な状態にありますので、年間百万以上の保険をかけるということについては、そうした面をできる限り節約して、安全な操業海域で漁掛に従事する場合においては、この保険に入つてない、こういうことが実情でございます。その場合におきまして、たまたま李承晩ラインの外で拿捕された船、こうした船は非常にたくさんあるわけでございますが、現在抑留されている六百五十一名のうち、大半の乗組員がこの給与保険に入つていない、私はそうしたほんとうに緊急突発的な、李承晩ラインの外で拿捕された船の場合において、特殊保険に入つていない乗組員の場合においても、十分に特殊保険に入つているものと同じように、国でそうした補償をしていただきたいとお願い申し上げるものでございます。天変地変、不可抗力の災害等におきましては、たとえば農業災害補償法等いろいろ災害に対する補償がございます。もとより拿捕銃撃ということは天変地異ではございませんけれども、問題が問題であるだけになかなか解決が困難なこの問題の渦の中に漁船の船員は追い込まれている、そうしてほんとうに必死で命を賭して働いている、こういうふうな実情にあります私たち漁船船員の救済については、国家で補償をしていただきたい、かようにお願いを申し上げるものでございます。  それからいま一つは、韓国抑留されております六百五十一名の私たちと同じ職場にある人たちを、一日も早く国に帰してもらいたい、こうした点についてさらに積極的に御尽力をいただいて、抑留されている船員の家族が置かれている立場につきましても、十分に御認識と御尽力をいただきまして、一日も早く帰してもらえますように、そうした面につきましても一段の御尽力をいただきたいと思います。  いま一つ、こうした問題と関連しましてさらに先生方にお願い申し上げたい事項としましては、本年の九月二十四日に、伊万里を根拠にしておる第十二玉栄丸の問題でございますが、この船は僚船第十一玉栄丸と一緒に伊万里を出まして、僚船が本年の九月二十四日の午前四時三十分ごろ、農林の第二百六十五区、済州島の南約三十マイル近くの海域でございますが、その海域を——当時の海況は風速八メートルぐらいの状態であつたわけでございますが、走つている途中見に失いまして、その後第十一玉栄丸が捜査に行きましたけれども、全然浮流物も何も見当らなかつた、この点においてはどういうふうになつたのかという点がはつきりしてございませんけれども李承晩ラインの中で起きました問題でありますし、韓国の現在の出方等から考えますときに、実際に韓国に拿捕され抑留されておるのではないか、そうした点につきましても、船長川崎誠一氏初め十一名の家族の方々は非常に心配をしておるわけでございます。そうした意味合いにおきましても、この船が韓国抑留されておるかどうか、委員会の諸先生方のお力をいただいて、韓国に対してそうした点の調査も御依頼申し上げたいと思います。  以上意見お願いを申し上げて、私の陳情を終りたいと思います。ありがとうございました。
  110. 村松久義

    村松委員長 次は大迫フミツさん、お願いします。
  111. 大迫フミツ

    ○大迫参考人 私は抑留船員の家族と違いまして、もうすでに韓国のフリゲート軍艦に、去る二月の十四日にうしろから追撃されてなくなりました船長の妻でございます。その当時の模様を生存者から——二十五名のうち四名だけが助かりまして帰りましたので聞きましたら、向うのフリゲート軍艦が悪いということがはつきりとわかりました。それを聞きまして、私も船長の妻として、責任は幾分かのがれましたけれども、そのやられたという残念な気持を思いますと、いまだにほんとうに胸が張り裂けるような思いがします。家族としては今子供が六人もおります。聞きわけのない小学校の子供は、父がなくなりましたら毎月の給料がなくなりましたので、父ちやんの給料がなくなつたから学用品もとつてもしんぼうしましようねといつて、今は細々と子供を激励して生活しております。そのことをば韓国の方に、外務省にお願いしましてたびたび交渉していただきましたけれども、もうものの一年にもなりますけれども向うからは何も回答もございませんし、もうこんなに長くなつて泣き寝入りにされておりますけれども、こんなほんとうにいい機会を得ましたから、わざわざはるばる遠いところから東京まで参りまして、政府の方にどうぞこの心情をよくお察しをお願いしまして、お正月もきますので、せめて弔慰金なりとも少しなりともぜひお願いしたいと思つております。
  112. 村松久義

    村松委員長 ありがうとございました。次は岡田サトさん。
  113. 岡田サト

    ○岡田参考人 私は留守家族の一人です。私たちは、主人をとられて家族一同はみな難儀しています。わずかな保険をいただいても、家族が多かつたらその金では生活していかれないのです。また、保険のお金もいまだに受けていない家族もあります。私たち家内一同は、みな一日も早く主人を返してもらいたい、何分にもお願いいたします。
  114. 村松久義

    村松委員長 次は栄久江君。
  115. 栄久江

    ○栄参考人 私は長崎県を代表した者でございますが、私の兄は去る二月八日韓国に拿捕され。いまだに刑務所生活を続けております。こういう状態に置かれている者は数知れないほどございます。その抑留された船員の留守家族はみじめなものでございます。私のうちは家族六人いて、その大黒柱と頼む兄がとらわれ、父は七年という長い歳月病の床に倒れ、働くこともできず、今は私と弟が家庭をみておりますが、私たちより以上に困つた生活をしていられる方もおります。どうぞ私たちの切なる願いをお聞き下さいまして、寛大な処置お願いいたしとうございます。私たち船員のうちには、保険金もおりずに、その日その日の生活に困り、ただいまでは売るものも売り尽し、ただ一枚のふとんを身にまとう、そのふとんをこの寒空に売つて食べるという状態に置かれている家庭も少くないと思います。そういう家族の方々が私に、どうぞ自分たちのこの気持を政府の方々に訴えて、真近に迫るお正月におもちの顔でも子供に見せて上げたい、そういうふうなことをお願いしてきてくれるように頼まれました。また、主人や子供をとられ、その嫁が病気に倒れ、病院にもかけることができず、母として大へんつている家庭もあります。また一度ならず三度までも上海にまた韓国に拿捕され、子供をかかえてお正月迫るこの寒い月日に主人のことを思い、大へん泣いていられる方がございますので、どうぞ保険金の下らない方々に私たち以上に皆様方の厚い、情深い気持をお見せ下さいますとともに、目に見えないところの李ラインという線を早く取り除いて、長崎県民またその漁業に携わる人人の職場を、一日も早くしやすい仕事場として下さることを切にお願いするとともに、韓国に拿捕されている私たちの肉親であるところの兄や父や自分の子供をと叫ぶ母や、その肉親の愛の気持をおくみ取り下さいまして、一日も早く私たちの住む日本の国へ帰して下さいますことを切に切にお願いする次第でございます。
  116. 村松久義

    村松委員長 参考人の方々ありがとうございました。なお、委員の方からもう少し詳しくお聞きしたいということでございますから、一つお答えを願います。
  117. 田口長治郎

    田口委員 大迫フミツさんにお伺いしたいと思うのでございますが、あけぼの丸の乗組員は二十四名でございまして、四人だけが助かられて今あなたの町に、あるいは付近の村にお帰りになつているわけでございますが、これらの人の家庭から、あるいは本人の家から、死なれた人の問題につきまして、あなたの方に何かいろいろな話がありますかどうか。また、あなたの御主人と一緒になくなれた人、その家庭の方咬はどういう生活をしておられるか、その点を一つお知りの範囲内でお知ちせを願いたいと思います。
  118. 大迫フミツ

    ○大迫参考人 事件当時の模様は、四人の方が助けられて一週間以内に下関に帰つて参りました。下関につきまして日魯の会社に帰りまして、その当時の模様をはつきりと聞かされました。生存者と一緒に二十一名のなくなつた人々は、二月の十四日のあの寒い雪空に、あなただれだと言つて名前を呼び合い、がんばろう言うて一時間ぐらいは泳いでいたありさまが目に映つたということをはつきりと聞きました。そのとき向うのフリゲート軍艦から、救いの手がせめてもう少し早く来ていただいたら、二十一名の者のうち、せめて半分でも助かつたろうにと言つてほんとうのことを聞かされました。主人も助かつた人の中の一人と一緒に、一枚の板に三人一緒に並んで泳いでいました。どうぞ船長もがんばつて下さいと言うて励まし合つていた。そこまでははつきりとしていましたが、時間のくるに従つてもう足も腰も自由がきかなくなつたんでしよう、救いも来ないのでそのまま姿を消したというありさまでございました。  それから、私同様なくなつたほかの船員の家族の方、若い子供を三人持つた方、五人持つた方、また新婚当時の方もいますけれども、それぞれにわずかばかりの退職金、一時金なりをいただいてその当時はしのぎましたけど、一年ぐらいになりますが、いまだに韓国側からは弔慰金すらも出ない。遺体も上らないありさまですから、ほんとうに死んだということがはつきり目に映らないので、主人なんかはどこか韓国の軍艦に連れられて行つたんじやなかろうか。みんながその気持で、帰つて来るんじやなかろうかという気分でおりましたけど、もうこんなに日にちがたちましたし、もうそんな希望の考えられる場合じやないからと皆が励まし合つて、元気な者は日雇いに出向いていこうという決心をしているようなありさまでございます。
  119. 田口長治郎

    田口委員 幸いに生存者がおられるのでございますから、この事件はどこで起つたものか、その位置について生存者からお聞きになつたことがありますか。  また韓国のフリゲートが突つ切つたということでございますが、難破した後にこのフリゲートがどういう処置をしたか、知らぬ振りをして行つてしまつたか、そこらの点をはつきりさせていただきたいと思います。
  120. 大迫フミツ

    ○大迫参考人 生存者の方でボースンをしていらつしやつた方が、詳しいことをはつきり私どもお話をして下さいました。  長崎県の五島沖の生月島の付近でございましたそうでございます。その当時船長として船の見張りをしていましたそうでございますけれども、交代の時間も来ましたから、そのボースンの方とかわられたのでございます。そのときは十四日の午後の十時半ごろでございました。雨も降り、風も吹き、海はずいぶんしけた模様でございました。そのときの模様をボースンの方が話されましたが、向うは大きな軍艦でもあり、サーチライトもありますし、日本漁船の第六あけぼの丸がここにいるということをはつきり見定めている。第六あけほの丸はその設備もないので、悲しいかな、向うのことは何もわかりませんけれども、軍艦の方ははつきりわかつていながら、またずいぶん速力も早く、第六あけほの丸とは速力もずいぶん違いますので、その当時のことははつきりわかりませんけれども、うしろの方から追突させられた模様でございます。それで当番の方が、一ぺん追突させられましたから、向うの軍艦に懐中電燈か何かでこういうふうに知らせた模様でございましたけれども向うはそんなのには目もくれないで、二へん追突させられましたそうでございます。船はそのときに一分か二分かの間に沈んで、船の中にいる方でも、波のために渦に巻かれて外に出て来られなかつたそうでございます。二十一名のうち十名くらいは船と運命をともにしましたのでございます。十名だけはその当時飛び込んで泳ぎ、救いを求めたそうでございますけれども向うの艦艇はそれを一人助けて、また一人助けに来るということで、一時間くらいひまを置いてしか救いに来なかつたそうでございます。日本漁船民はせめて自分の遺体でも助けてもらいたいと思うて、バンドで板やボート切れなんかに自分の身をばくくつてつていて、ここだ、助けてくれと叫んだそうでございますけれども、見向きもしなかつたそうでございます。
  121. 田口長治郎

    田口委員 あけぼの丸は日魯の船でございますか——そういたしますと、日魯として遺家族あるいは遭難者にどういうような手当を今日までされてきたか、その点をお聞かせ願いたい。
  122. 江口次作

    ○江口参考人 これは非常にお気の毒な事件でございますので、私どもの方といたしましても、でさるだけの措置をする。もちろんこの人たちに対しては、船員保険がかかつておりますから、こういう場合において普通の者はいわゆる三十七カ月の給与が出るわけでざごいます。これにプラスいたしまして、そのほかに弔慰金として船長から一番最後の、身分によつてそれぞれ違いますけれども、それに見合つてどもとしてできるだけの処置をいたしました。そのほかに香典、一時金的なものを差し上げておるわけでございます。  ただ遺族の一番不満に思つておりますことは、韓国がぶつけまして、いわゆる韓国の船が追い越し船である。日本の第六あけぼの丸が権利船であつて向うが義務船である。従つてぶつけた責任韓国側にあるのだ。これは助かつた者が当時当直をしておりました二等航海士でありますから、その辺の事情は一番よくわかるのです。そうして日本の門司の海難審判理事所で生存者が取調べを受けたわけでございます。責任者でありました二等航海士と甲板長が助かつております。しかもこれが当直員でございます。そうしてみますと、あらゆる角度から検討された結果、明らかに韓国軍艦がうしろから追突したのだというような結論が出まして、そうしてこれを海上保安庁あるいは審判理事所の調書をつけて韓国側に提示をされたのでございます。これに対して韓国側としては、当時その韓国の軍艦は、釜山あるいは鎮南浦を出まして、横須賀へアメリカから引き渡しの軍艦を取りに行くために航行しておつた軍艦だつたそうでございます。フリゲートのP六一という船だつたのですが、それが当時助かつた人間が本船で聞いたのでは、航法がふなれだから、瀬戸内海を通らずに、大回りをして九州の沖合を通つて日本の近海に来て衝突した、こういう事件なのですが、横須賀に入りましたときに、審判理事所の方から船の損傷なりを調べ、あるいは向う責任者から一応事情をお聞きしたい、こう言つてつたのでございますが、おれの方は軍艦だとばかりに、一言のもとに日本の官庁の調査を拒まれて、横須賀では向うから全然調書を出しておらないわけです。従つてつてから、今申し上げた門司の海難審判理事所の調書が向うに行きましたが、これに対して向うは沈黙の態度をとつておりました。ただ向うの新聞としては、当時これは外務省には正式に言つてないのですが、例によつて向う一方的のAPでしたかUPでしたかの記事によりますと、日本政府が六あけぼのの方が悪かつて、フリゲートに責任がないということを言うのならば、一人当り二百ドルとたしかありましたが、二百ドルだけ遺族に対して弔慰金をやろうということが韓国の閣議で決定した、こういう記事が出ました。続いてしばらくたつと、日本側は自分の方がよくてフリゲートが悪いのだということで抗議を申し込んできたから、さきの遺族に弔慰金を出してやるということは取り消すのだ、こういうことを向うは一方的に発表しておりました。外務省の方には、そういう遺族の弔慰金を、過失を請求しないならば、出すのだというようなことは一回も来てない、こう承わつておりますが、向うの新聞記事は一方的にそういうようなことをいつておりました。ところで実はその後向うから回答が来たんです。それによりますと、日本の審判理事所の方にもこれはお伺いしたんですが、こちらの調書をちようど裏返しにして、作り変えたような調書を持つてきておるんです。ところが肝心なところになりますると、ずいぶん苦しいと見えまして、おかしなことが書いてある。たとえば向うはレーダーを持つておりました。従つて六あけぼのが航海しておることは知つてつた。そして二分間前に完全な処置をとつた、こううたつてある。どういう処置をとつたかということは知りませんが、二分間前に完全な処置をとつたという。あの船は日本の方にも貸与されているのと同じ船ですから、当時のスピードは十五くらいと想定されるわけでございます。そうしますると、二分間前に完全な処置をとれば、衝突は絶対にあり得ないんですが、おかしなことには、二分前に最善処置をとつたという。  それから衝突後、日本側はこういうことを言つております。たとえば沿岸共通の緊急通信を五百KCでなぜ打たなかつたか。緊急通信を実はやつておらないのであります。六あけぼのは瞬時に轟沈いたしましたので、六あけからは無線が打てるわけがございませんが、翌朝の六時ごろアメリカの佐世保の海軍基地から緊急通信が出て、初めて日本側の船、また私どもの船の全船あるいは海上保安庁の船が行つた。結局十時の事件が翌朝の六時になつてわかつたということなんです。そしてなぜその瞬時に五百KCのSOSを出さなかつたか、こういうことに対しては一切黙殺しておるわけでございます。  それからもう一つは、今大迫参考人が申しましたように、当時部屋の中におりました人たち及び、機関部の方に激突しておりますから、そこの人たちは出るひまもなく、十名ばかりが即死の状態で船とともに運命をともにしたのでございますが、助かつた四人の証言を聞きますと、大迫船長と約十人くらいの者が、暗夜の海上にそれぞれ板切れにつかまつて浮いておつたのでございます。これに対して向うのボートが下されたのが五分くらいかかつている。これは聞きますと、日本海軍ですと、一分かそれ以内くらいにボートは下りるそうですが、それくらい時間がかかつている。しかも大迫船長のごときは、若い船員と二人で一つの板切れにつかまつていたんですが、そこへボートが来て一人の甲板員が助けられたときに、あすこに船長が浮いているから助けてくれと言うと、わかつたと言つて、一人を救い上げる。上げられると、大体寒い海ですから、失心状態になつて、あとはよくわからないんですが、一人々々救つてつているわけです。結局四人しか助からながつたというのは、なぜああいうときにすぐできるだけの海面を捜索して助けなかつたか、こういうことになるんですが、これは未熟なせいかどうか知りませんが、そういう助け方をしている。これに対して私どの方で、政府を通じて抗議を申し込んだのに対して、韓国海軍を侮辱するものであるという一言できております。これに対して私どもはさらに政府お願いして、韓国側答弁はおかしいじやないか、それじや韓国艦艇が通つてきたコースはどうなんだというふうに、技術的にチャートの上にいろいろ図面を書いて重ねて韓国に抗議を申し込んでおりますが、これに対しては全然返事が来ていない、こういうのが現況でございます。
  123. 田口長治郎

    田口委員 今江口さんの話によりまして、大体会社としての処置、それから韓国艦船の人命救助は不誠意だ、こういうことがはつきりいたしました。全く言語道断な国だ、こういうことを考えざるを得ないのでございますが、これらの折衝は外務省を通じてやつておられるわけでございますか。  次に岡田さんと栄さんにお伺いいたしたいと思うのでございますが、この源幸丸は十七人乗つていて十七人とも向うにとられておられる、こういうようなことであり、また浜吉丸は十人乗つていかれて十人向うにとられている、こういうことでございますが、船頭以外の乗組員の留守家族の現在の生活状態、それをごく簡単に。それともう一つは、先方から手紙か何か来ておりますれば……。
  124. 岡田サト

    ○岡田参考人 まだ何にも手紙は来ておりません。何の便りもないのです。
  125. 田口長治郎

    田口委員 そういう点についてごく簡単でよろしうございますから、お答え願いたいと思います。
  126. 岡田サト

    ○岡田参考人 船頭さんの奥さんは、家族は五人とか六人というています。それで奥さんは毎日てんぷらを売つて歩いております。食わんがために……。保険に入つてつても、ごくわすかな保険で、それからいろいろなものを引かれたら、手元に入るのはわずかより手元に入らないそうです。それで船長の奥さんもそうです。家族が多いために世帯をやつていけずに、また子供もできて、まだお父さんの顔も知らないのです。今度私がここに来るのにも、一日も早くお父さんが帰つてくるように、また家族が安楽にいくように、向うお願いして帰つてこいとの頼みでした。皆さんどうかよろしくお願いいたします。
  127. 村松久義

    村松委員長 栄さんお答えになりますか。
  128. 栄久江

    ○栄参考人 私の兄がつかまりましたのは、去る二月八日の日のことでございました。あすは自分の肉親のいる長崎港へ魚を満載して帰つてくるというその前日の日、帰る途中でとらわれたものでございます。そうして手紙は今までは月に一回というふうなあれで来ておりましたけれども、最近脱走者のために手紙もろくに来るようなことはございません。また慰問品を送るようなことがありましても、その品物が全部督いていないような手紙の来方でございます。それから兄がいうには、手紙を一通出すのにも長いことかかるので、手紙を自分たちの方からは出せないから、まとめて書いてやるから、みんな船員の方に伝えてくれというようなことを書いてきております。そうして自分のうちのことよりも船員の方々のことを書いて、自分のうちのことはあまり何も書いて参りませんので、私のうちでは母が大へん心配し、私に手紙を出すようにと言うので、私はできるだけ手紙を出しております。少いときでも月に二通、三通出しておりますけど、その手紙の返事が参りませんので、どんなふうになつているのかわかりませんでしたけど、つい最近のことでした。手紙を出してその返事が参りましたが、今度その刑が終り、八日、あす収容所の方に回るそうです。その収容所に回るのもずいぶんと苦しい思いをするそうですが、自分たちのことよりもまず家庭のことが心配だといつてきております。私たちはどうにか保険金をもらつておりますし、また私や弟が働いておりますので、家庭はさびしい、暗い、悲しい中にも、どうにかやつておりますが、ほかの船員の方々は保険金をもらつても、税金その他に引かれると手元に残るのはあまりなく、また保険金をもらつていないところもあるそうで、毎日の生活に追われて、売る物は売り尽し、また病気にかかつていても……。
  129. 田口長治郎

    田口委員 簡単に……。あと一つでございますから。私はこの際農林当局に……。
  130. 村松久義

    村松委員長 農林当局ならば、あと回します。参考人に対する質問だけにいたします。その後続けますから……。
  131. 田口長治郎

    田口委員 それでは保留いたします。
  132. 村松久義

  133. 赤路友藏

    赤路委員 参考人に対してちよつと一点だけお尋ねしますが、今田口委員質問に対して、江口さんから、沈没した船の遺家族の人たちに対する給与の問題ですが、保険で出したものにプラスできるだけの措置をした、こういうことなんですが、金額でどの程度出ておるか、その点を一点……。
  134. 江口次作

    ○江口参考人 第六あけぼの丸というのは不幸にして中共に拿捕されまして、そうしてその沈没したのはことしの二月十四日ですが、去年の十一月に帰つてきた船なんです。それで乗組員のあらかたが、一応中共から船が帰つてきたのですが、船より先に人間は実は帰つてきておつたわけです。従いまして、私ども、船がありませんので、第六あけぼの丸のうち約半数の方に、船が帰る見込みがないというので、退職していただいて、従つてそのとき退職手当を出した人と、それから船長のようなのは予備要員として、そのまま会社の方に籍を置いておられる方と、二通りのケースがあつたわけです。従つて今度の場合に、ずつと予備船員のままで、中共に拿捕されておるときはもちろん普通の船員給与をやつて、現職扱いをしておりますが、中共から帰つてきた後で退職されておる人は、一旦そこで退職手当をもらつておる。それから予備船員で行つた人たちは、今度の沈んだあとで今までの年功加算をしてやるということになつて、一旦もらつた人たちは今度の場合における退職手当というものはほとんど微々たるものがかなり多かつたと思います。そこでそういう人たちに対しましては、私の方で、今その最低金額は、実は数字を持つて参りませんのでよくわかりませんが、一人平均で、そのほかに弔慰金なんか出しておるものが、十四、五万円になるかと考えております。
  135. 赤路友藏

    赤路委員 それでははつきりしたことはおわかりにならぬようですが、今の船長の未亡人の大迫さんはどれだけおもらいになりましたか。
  136. 大迫フミツ

    ○大迫参考人 私、主人の退職金は、主人が拿捕された当時、会社の税金のための九円万くらいの借金を引きまして、全部で二十万円くらいいただきました。別に弔慰金としまして、五万円いただきました。
  137. 赤路友藏

    赤路委員 今のでいきますと、九万円と二十万円と五万円ですか。
  138. 大迫フミツ

    ○大迫参考人 それは税金の方で借りがあつたつもりですから、それを合計しましたら、全部で三十四万円でございます。
  139. 赤路友藏

    赤路委員 それではこれは保険金も入つてですか。入つて全部でお取りになつた金額がそれだけですか。
  140. 大迫フミツ

    ○大迫参考人 保険金はまだいただきません。
  141. 赤路友藏

    赤路委員 おかしいね。ちよつと違つているね。
  142. 江口次作

    ○江口参考人 例の保険金の方は、家族のある人は終身の年金制度になつておりますから、これは大迫さんの場合には年金は幾らだつたかね。
  143. 大迫フミツ

    ○大迫参考人 年に十六万。
  144. 江口次作

    ○江口参考人 そうです。大体十五、六万、年金にして終身年金になるわけですから、年金は今の話と別になりますが……。
  145. 赤路友藏

    赤路委員 大迫さんにお尋ねしますが、何年勤めておられましたか。
  146. 大迫フミツ

    ○大迫参考人 主人は八年と四カ月でございます。
  147. 赤路友藏

    赤路委員 これ以上は参考人にお聞きしても仕方がないと思いますからお聞きいたしませんが、この問題はやはり相当問題になつている。私どもうわさに聞く面では、日魯漁業ともあろう大きな会社が、死亡した船員をまるきりめんどうを見ていないじやないかというようなうわさも聞いているので、それで今ちよつと金額が不明確だつたのでお聞きしたわけですが、なお今後よくこれらの点は私どもの方で調査したいと思います。
  148. 村松久義

    村松委員長 木村文男君。
  149. 木村文男

    ○木村(文)委員 一つ江口さんと中野両参考人お願いしたいのですが、たぶん江口さんにしても中野さんにしても、この漁業対策本部の関係のお仕事をやつておられる方でありますから、この対策につきましては手ぬかりなくおやりになつていると思いますが、そこで私当委員会委員といたしまして、今後のこの施策に当るためにぜひお願い申し上げたいことは、今日まで約四年間にわたつてありました拿捕あるいは射撃、こういったような目にあつて被害を受けた船やあるいはまた家族の生活状態、これらの実態について詳細にわたつての御調査はたぶんなさつておられると思います。もしございましたならば、その資料を当委員会に御提出願いたいと思うのです。これが一つ。そういうことによりましてただいままでわれわれの同僚であります各委員から参考人の方々にお尋ねいたしましたことの大半がおわかりになると思う。今後また参考人の方々を遠いところからおいでを願うよりは、そういうお取りはからいを特に委員長からもお願いしていただきたいと思うのです。  第二点は保険金の問題でございますが、御家族お一人お一人の方にお尋ねするよりは当事者であります江口さん、中野両参考人にお尋ねした方が私はよろしいだろうと思いますので、どういうわけで保険金が下らない人があるのか。事務的な面における実態を一つここで御説明願いたい。もう一つはついでにそれを裏づけするために、一番保険金の問題を取り上げてそこに書いてありますが、参考人の御説明によりますと、一番保険金を取り上げておられます方は、栄さんが一番多いと思いますが、どういうような事務的な面からか、あるいはまた資格の面からか、どうして下らないのか。その点を具体的にあなたからそれを裏づけるなりあるいはそうでないという点を、江口さんか中野さんが御説明したあとに、一つお願い申し上げたい。
  150. 中野源二郎

    ○中野参考人 ただいまの質問にお答えいたします。漁船乗組員給与保険法によつてこうした拿捕の場合に特種保険が給付になるわけでございますが、韓国抑留されている六百五十一名の船員のうち、その大半が給与保険法をかけてない。こういうことは実際の手続ということよりも、現在非常に拿捕がはげしい、船を取られさらに長い期間抑留されるという状態から、大体できる限り安全な水域で働くというのが建前になるわけでございますけれども、やはり安全なところば魚がいない。やはり危険なところに行かなければならないということになるわけでございます。大体従来は李承晩ラインの外で拿捕されるというようなことはなかつたのでございますが、最近は外においても拿捕されるというような状態が起きて来まして、船主の方々においては先ほども申し上げましたように、そうした面で保険をかけるということ自体も非常に経営の面から困難だ。こういう状態から給与保険をかけていない。これは大体任意の規定でありまして、一回かける、それが四カ月というふうになつております。西に寄れば中共との間の漁業協定がありますので、この海域で働けば拿捕はない。しかしこの海域が即魚がたくさんとれる海域という時期ばかりではございません。さらにそういうわけで東に寄つて操業した場合に拿捕される。こういうような面で実際は非常に困難だということから、給与保険をかけてないという実情でございます。手続の面で別にそれが非常に煩瑣になるということからこれをかけないという実情でなくして、経営が苦しいからやむを得ずそういう形をとつているというのが実情でございます。
  151. 栄久江

    ○栄参考人 保険金をかけていないということは、個人会社のことであつてその会社の経営が困難なために、船主が自分のありつたけの力をもつて船を持つ、そうして船員の方々を送り出す、その船が帰つて来れば金が自分のもとに入るからということで出したものであつて、その船が拿捕されれば一銭の余裕もないために保険に入つていないためにもらえないので、生活に困つているという状態でございます。
  152. 村松久義

    村松委員長 日野君。
  153. 日野吉夫

    ○日野委員 中野参考人にお伺いしますが、あなたの報告の中の第十二玉栄丸は全然沈没したのかも行方もわからなければ生死も不明なわけですね。どういう手続で今調査を進められているか。この船の所有者はだれですか。
  154. 中野源二郎

    ○中野参考人 この船の所有者は伊万里の玉野漁業の所有船で、以西底びき船、トン数は六十トンで乗組員は川崎誠一船長ほか十名、合計十一名でございます。そうしてこの船の消息につきましては、農林漁区の二百六十五区でありますので、李承晩ラインの中であり、あの辺の警戒が非常に厳重になつているので、当時の実情からすれば、台風が来て沈没するというふうなことは全然考えられない。これは従船——底びき船は御存じのようにめおと船になつておりますので、主船と従船がありますが、その従船の方でありますから、無線の装置を持たない。そういうことからどこに行つたのか、消息が全然わからない。こういう点で船主の方としても、実はどういうふうにこれを調査すればよいのか、いろいろ保安庁等にも頼んで、その後におきましても捜索を続けて参つたわけでございますけれども、手がかりがございませんし、どういうふうにすればこれの安否がはつきりするだろうか、こういうことで今回私たち九州から来るときに、頼まれて参つたようなわけでございます。
  155. 日野吉夫

    ○日野委員 九月の二十何日かに行方不明になつているようですが、この玉野漁業というのは会社ですか。
  156. 中野源二郎

    ○中野参考人 これは個人の経営になるものでございます。
  157. 日野吉夫

    ○日野委員 保険には入つているのですか。
  158. 中野源二郎

    ○中野参考人 保険には入つてございません。
  159. 日野吉夫

    ○日野委員 そうしますと暮れを控えて、だいぶ日もたつております。遺家族等には相当の困難もありましようが、何か暫定措置をとつておられるのですか。
  160. 中野源二郎

    ○中野参考人 その点については、何分にも個人の経営になるこうした零細企業でありますので、給与をどうにか払つておるという程度で、その金額は非常に低額なものでございます。
  161. 芳賀貢

    ○芳賀委員 委員長ちよつとお尋ねしますが、ただいままでの参考人諸君の御意見等を聞いてみて、特に江口参考人の場合、この表によりますと、山口県日韓漁業対策本部実行委員ということになつておるわけです。参考人の選定については、昨日の当委員会において委員長におかませしたわけですが、江口参考人の御意見等を聞いてみると、何か日魯漁業の経営者側的な意見等も開陳なすつておるわけです。委員長参考人を選定なさる場合に、対策本部実行委員というものはどういうものであるかということを十分御検討になつてお呼びになつたかどうか。参考人の立場というものをもう少し御説明願わぬと、どうも了解に苦しむような点があるわけですが、その点を委員長からお答え願いたい。
  162. 村松久義

    村松委員長 ごもつともなお話でございますので、この際参考人御本人より、その職場なり、地位なり、一つ自己紹介をしてもらいまして、御了承を得たいと思います。  江口さん、あなたの御職業その他を明らかにしていただきたいと思います。
  163. 江口次作

    ○江口参考人 私は日魯漁業株式会社の下関の支社長でございます。同時に、山口県日韓漁業対策委員の実行委員長をしております。それから西日本連合会の実行委員をしております。
  164. 芳賀貢

    ○芳賀委員 実行委員長ですか。
  165. 江口次作

    ○江口参考人 山口県の方は実行委員長であります。
  166. 稲富稜人

    ○稲富委員 支社長は会社の役員ですね。
  167. 江口次作

    ○江口参考人 はい。
  168. 村松久義

    村松委員長 中野さんにもお願いいたします。
  169. 中野源二郎

    ○中野参考人 私は戸畑の日本水産の船員でございます。現在おかに上つて会社の船員籍のままで組合の方の仕事をやつております。全日本海員組合の戸畑の分室の主事をやつております。
  170. 村松久義

    村松委員長 お二人でけつこうです。大体そういうようなことで選定をいたしたのであります。御了承をいただきます。
  171. 淡谷悠藏

    淡谷委員 中野さんにお伺いしたい。さつきの話では、だいぶ自衛隊の態度がなまぬるいというお話でございましたが、韓国の軍艦が拿捕をしたり、あるいはこちらの漁業船を圧迫する場合は、海上保安庁関係の監視船が出ておる場合が多いか、あるいは出ないすき間をねらつておる場合が多いか、もう一つは、こつちの方で監視を厳重にすると向うが逆に出てくるのか、あるいはこつちの監視の手薄に乗じて出てくるか、その点はどうお考えになりますか、一つお答え願いたい。
  172. 中野源二郎

    ○中野参考人 こちらの海上自衛隊、保安庁の巡視船はたくさん出ておるかという御質問でございますが、その点については、大体拿捕がはげしくなる、そうした漁船の操業の外側を巡視船ができる限り哨戒に当つて韓国の、そうした艦艇が出てくる、レーダーで大体十四、五マイルでキャッチできますから、先にそうした相手の船の所在を認めて、各船に一括放送して情報を提供しておる状態でございます。こちらが警戒を厳重にすれば向うは出てこないか、この点につきましては、やはりこちらも大会社の船あるいは中小会社の船の場合においても、レーダーをもつてできる限りそうした情報を早くつかむ、こういうことをやつておりますが、こちら側が厳重な警戒をすれば向うが出てこないとか、あるいはこちらの手薄のときに乗じてよけいに出てくる、こういうようなことは、最近の傾向としてはこちらも非常に目を光らして監視をやり、レーダーでそういうものをキャッチしようとしておる、その緊張した状態においても、常時十ないし十二隻くらいの艦艇がわが方のレーダーに映つてくる、こういう状態でございます。
  173. 村松久義

    村松委員長 よろしいですか。
  174. 淡谷悠藏

    淡谷委員 よろしいです。
  175. 村松久義

    村松委員長 では参考人の方々御苦労様でした。ありがとうございました。  この際お諮りをいたしますが、外務大臣はいまだに出席がございません。大石政務次官と塩見水産庁長官は見えられておりますが、このまま質疑を継続いたしますか、それとも大臣出席を待つて明日にでも……。   〔「大臣々々」「明日々々」と呼ぶ者あり〕
  176. 村松久義

    村松委員長 では明日午前十一時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十八分散会