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1955-12-15 第23回国会 衆議院 社会労働委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年十二月十五日(木曜日)     午前十一時二十七分開議  出席委員    委員長 佐々木秀世君    理事 大坪 保雄君 理事 大橋 武夫君    理事 中川 俊思君 理事 野澤 清人君    理事 藤本 捨助君 理事 吉川 兼光君       植村 武一君    小川 半次君       加藤鐐五郎君    亀山 孝一君       小島 徹三君    田子 一民君       中村三之丞君    中山 マサ君       八田 貞義君    亘  四郎君       井堀 繁雄君    五島 虎雄君       多賀谷真稔君    滝井 義高君       中村 英男君    長谷川 保君       横錢 重吉君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 小林 英三君  出席政府委員         厚生政務次官  山下 春江君         厚 生 技 官         (公衆衛生局         長)      山口 正義君         厚 生 技 官         (公衆衛生局環         境衛生部長)  楠本 正康君         厚 生 技 官         (医務局長)  曽田 長宗君         厚生事務官         (薬務局長)  森本  潔君         厚生事務官         (保険局長)  高田 正已君         厚生事務官         (社会局長)  安田  巖君         厚生事務官         (児童局長)  高田 浩運君         厚生事務官         (引揚援護局         長)      田邊 繁雄君  委員外出席者         厚生事務官         (大臣官房総務         課長)     小山進次郎君         専  門  員 川井 章知君     ――――――――――――― 十二月十五日  委員五島虎雄君辞任につき、その補欠として淺  沼稻次郎君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 十二月十日  教護院国営化に関する請願亀山孝一君紹  介)(第二八五号)  同(床次徳二紹介)(第二八六号) 同月十四日  健康保険法改正に関する請願山花秀雄君紹  介)(第三三八号)  失業対策確立に関する請願町村金五君紹介)  (第三三九号)  三陸海岸一帯国立公園指定請願愛知揆  一君紹介)(第三五七号)  同(村松久義紹介)(第三九三号)  元満州開拓民及び満州開拓青少年義勇隊員の処  遇改善に関する請願受田新吉紹介)(第三  七〇号)  未帰還者留守家族等援護法の一部改正等に関す  る請願受田新吉紹介)(第三七一号)  同(石橋政嗣君紹介)(第四二一号)  同(白浜仁吉紹介)(第四九九号)  日本住血吸虫病撲滅対策確立に関する請願(  井手以誠君紹介)(第三七二号)  国立療養所附添廃止反対等に関する請願(岡  本隆一紹介)(第三八九号)  同(川崎五郎紹介)(第四二〇号)  国立療養所附添廃止反対に関する請願西村  榮一紹介)(第三九〇号)  同(長谷川保紹介)(第五〇三号)  健康保険による医療費の被保険者負担反対に関  する請願下平正一紹介)(第三九一号)  同(辻原弘市君紹介)(第五〇〇号)  同(小山長規紹介)(第五〇一号)  医療扶助審議会設置反対に関する請願今村等  君紹介)(第三九二号)  霧島国立公園施設整備に関する請願有馬輝  武君紹介)(第四二二号)  療術既得権存続に関する請願林讓治紹介)  (第四二三号)  同(福田昌子紹介)(第四二四号)  同(淺香忠雄紹介)(第四二五号)  同(受田新吉紹介)(第五〇四号)  駐留軍労働者失業対策確立に関する請願(加  賀田進君外一名紹介)(第五〇二号) の審査を本委員会に付託された。 同月十四日  元満州開拓民及び満州開拓青年義勇隊員処遇  改善に関する陳情書  (第二二八号)  軍人軍属遺家族援護措置に関する陳情書  (第二二九号)  上下水道整備に関する陳情書  (第二三〇号)  簡易水道建設事業促進等に関する陳情書  (第二三一号)  失業対策事業費全額国庫負担に関する陳情書  外二件(第  二三二号)  生活保護法に基く保護費全額国庫負担に関す  る陳情書外一件  (第二三三号)  保健所費国庫補助強化に関する陳情書  (第二三四号)  国民健康保険実施強化に関する陳情書  (第二三五号)  国民健康保険直営診療施設設置費国庫補助率  引上げ陳情書(  第二三六号)  石炭鉱業合理化臨時措置法に伴う失業対策確立  に関する陳情書(  第二三七号)  食品衛生検査強化に関する陳情書  (第二三八号)  結核医療費公費負担に関する国庫補助率引上げ  の陳情書(第二三  九号)  道場注射禍事件治療対策に関する陳情書  (第二四〇号)  コールドパーマ液の取締に関する陳情書  (第二四一号)  中小企業労働対策に関する陳情書  (第二四二号) を本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  社会保障制度医療制度及び公衆衛生に関する  件  請願審査小委員長より報告聴取   請願  一 駐留軍撤退に伴う労務対策費予算化に関    する請願内海安吉君外一名紹介)(第一    二号)  二 駐留軍撤退に伴う労務者対策確立に関する    請願愛知揆一君外一名紹介)(第一三    号)  三 美容師法制定に関する請願森島守人君紹    介)(第五七号)  四 健康保険による医療費の被保険者負担反対    に関する請願(楯兼次郎紹介)(第五八     号)  五 同(芳賀貢紹介)(第五九号)  六 特殊漁船乗組員遺族年金支給に関する請    願(世耕弘一紹介)(第六六号)  七 国立療養所星塚敬愛園災害復旧に関する    請願床次徳二紹介)(第七七号)  八 厚生年金保険法による障害年金等級変更    に関する請願三鍋義三紹介)(第七八    号)  九 健康保険等における保険給付費の二割国庫    負担に    関する請願(片島港君紹介)(第七九号) 一〇 健康保険法の一部改正に関する請願田中    正巳君紹介)(第八〇号) 一一 日雇労働者越年対策確立に関する請願(    島上善五郎紹介)(第八一号) 一二 失業対策事業費全額国庫負担に関する請    願(鈴木周次郎紹介)(第一〇一号) 一三 国立療養所附添廃止反対に関する請願外    一件(田中武夫紹介)(第一二八号) 一四 失業対策事業費全額国庫負担に関する請    願(高木松吉紹介)(第一二九号) 一五 日本住血吸虫病撲滅対策確立に関する請    願(眞崎勝次紹介)(第一三〇号) 一六 釧路市に国立釧路労災病院設置請願(伊    藤郷一君紹介)(第一三一号) 一七 健康保険による被保険者負担反対に関する    請願森本靖紹介)(第一三二号) 一八 日雇労働者越年対策確立に関する請願(    島上善五郎紹介)(第一三三号) 一九 長野県の水道施設費国庫補助等に等に関す    る請願原茂紹介)(第一三六号) 二〇 長野県の水道施設費国庫補助等に関する請    願(下平正一紹介)(第一六七号) 二一 健康保険による医療費の被保険者負担反対    に関する請願松平忠久紹介)(第一六    八号) 二二 駐留軍労働者失業対策確立に関する請願    (吉川兼光紹介)(第一七二号) 二三 失業対策事業わく拡大に関する請願(伊    東岩男君外五名紹介)(第一七三号) 二四 衛生検査技師身分確立に関する請願(八    田貞義紹介)(第一七四号) 二五 国立療養所附添廃止反対に関する請願(    松田竹千代紹介)(第二三〇号) 二六 同(熊谷憲一紹介)(第二八八号) 二七 同(河野正紹介)(第二八九号) 二八 同(福田昌子紹介)(第三二〇号) 二九 長野県の水道施設費国庫補助等に関する請    願(松平忠久紹介)(第二三一号) 三〇 生活保護法に基く保護費全額国庫負担に    関する請願野田卯一君外七名紹介)(第    二三二号) 三一 社会保険診療報酬一点単価引上げ等に関す    る請願大石武一紹介)(第二六八号) 三二 健康保険による医療費の被保険者負担反対    に関する請願伊東岩男君外五名紹介)(    第二六九号) 三三 同(纐纈彌三君紹介)(第三一九号) 三四 健康保険法改正に関する請願(楯兼次郎    君紹介)(第二八七号) 三五 医療扶助審議会設置反対に関する請願(熊    谷憲一紹介)(第二九〇号) 三六 同(河野正紹介)(第二九一号) 三七 戦傷病船員処遇改善に関する請願(砂田    重政君紹介)(第二九二号) 三八 国立療養所刀根山病院大阪移譲反対に    関する請願大石武一紹介)(第三一六    号) 三九 国立療養所貝塚千石荘の大阪移譲反対に    関する請願大石武一紹介)(第三一七    号) 四〇 クリーニング業法の一部改正に関する請願    (松田竹千代紹介)(第三一八号) 四一 美容師法制定に関する請願片山哲君紹    介)(第三二一号) 四二 健康保険法改正に関する請願山花秀雄    君紹介)(第三三八号) 四三 失業対策確立に関する請願町村金五君紹    介)(第三三九号) 四四 三陸海岸一帯国立公園指定請願(愛    知揆一君紹介)(第三五七号) 四五 同(村松久義紹介)(第三九三号) 四六 元満州開拓民及び満州開拓青少年義勇隊員    の処遇改善に関する請願受田新吉君紹    介)(第三七〇号) 四七 未帰還者留守家族等援護法の一部改正等に    関する請願受田新吉紹介)(第三七一    号) 四八 同(石橋政嗣君紹介)(第四二一号) 四九 同(白浜仁吉紹介)(第四九九号) 五〇 日本住血吸虫病撲滅対策確立に関する請    願(井手以誠君紹介)(第三七二号) 五一 国立療養所附添廃止反対等に関する請願    (岡本隆一紹介)(第三八九号) 五二 同(川崎五郎紹介)(第四二〇号) 五三 国立療養所附添廃止反対に関する請願(    西村榮一紹介)(第三九〇号) 五四 同(長谷川保紹介)(第五〇三号) 五五 健康保険による医療費の被保険者負担反対    に関する請願下平正一紹介)(第三九    一号) 五六 同(辻原弘市君紹介)(第五〇〇号) 五七 同(小山長規紹介)(第五〇一号) 五八 医療扶助審議会設置反対に関する請願(今    村等紹介)(第三九二号) 五九 霧島国立公園施設整備に関する請願(有    馬輝武紹介)(第四二二号) 六〇 療術既得権存続に関する請願林讓治君紹    介)(第四二三号) 六一 同(福田昌子紹介)(第四二四号) 六二 同(淺香忠雄紹介)(第四二五号) 六三 同(受田新吉紹介)(第五〇四号) 六四 駐留軍労働者失業対策確立に関する請願    (加賀田進君外一名紹介)(第五〇二号) 六五 教護院国営化に関する請願亀山孝一君    紹介)(第二八五号) 六六 同(床次徳二紹介)(第二八六号)     ―――――――――――――
  2. 佐々木秀世

    佐々木委員長 これより会議を開きます。  社会保障制度医療制度及び公衆衛生に関する件について調査を進めます。発言の通告がありますので、順次これを許可いたします。野澤清人君。
  3. 野澤清人

    野澤委員 各局にわたる問題だと思うのですが、過般の国会で決定いたしまして相当予算もとり、しかもまた実施するように準備をいたしまして、各府県通牒した新医薬制度周知月間についてお尋ねをしたいと思うのです。  これは厚生当局が本年の七月十三日の通牒で各都道府県あてに事務次官から発せられた、発総第三二号という通牒であります。この通牒を見ますと、「新医薬制度周知月間について」という表題で、「標記について、来る八月一日から八月三十一日までの一箇月間を、「新医薬制度周知月間」として計画したので、別添「月間要綱」にのっとり、実施されるようお願いする。」こういうことで、詳細な月間要綱が添付されておりまして、いろいろ事務的な関係から多少日にちのずれたような部分もありますが、かなり詳しい要綱が示されております。特に「パンフレットの配付」、「壁新聞の掲示」、それから「都道府県機関紙特集号の発行」、「ラジオ放送」、「地方紙特集ページの創設」、「講師団編成派遣」、「講演会座談会の開催」、「広報宣伝車の利用」、「その他の事業」、「報告」、こういうふうに分けられまして詳細な通牒が各府県に出たようであります。ところが実際にこの月間中における各府県状況を見ますと、きわめて不工合だったように感じられるのでありますが、この点に関して責任ある御説明を願いたいと思うのです。
  4. 小山進次郎

    小山説明員 ただいま野澤先生からお話のございました、過般の新医薬制度に関する広報宣伝実施の結果につきましては、お話の中にもすでに現われておりますように、まことにふるわざる状況でございまして、この点は私ども当面の責任者といたしましてはなはだ遺憾に存じておるところであります。状況を述べようというお話でございますのでその点を簡単に申し上げますと、ただいまのお話にもありましたように、当初八月の十五日から一ヵ月間、九月の十四日までをこの期間に予定しておったのでございますけれども準備しております間に法律が変ったというような事情もございまして、これに応ずる準備資料内容調整する等の必要を生じて参りましたので、これをやや繰り下げまして、おおむね八月の二十日ごろからということに地方庁には指示したのでございます。いよいよとりかかってみますと、これは予想できないことではなかったのでございますが、端的に申しますと、地方庁全般を通じまして、間もなくこの運動をすることに二の足を踏むといったような気配がございまして、最もはなはだしいものになりますと、そもそもこういうふうなことについて広報宣伝をやっても大丈夫だろうかというような問い合せから、ややいい部類になりますと、やろうと思っているのだけれども、いろいろの方面から抗議が出て実際上の問題としてはどうにもできないでいる、そういう事情であるからというようなこと等が参りましたので、私どもといたしましては、これらの点はかねて考えてもおったことでございますので、医薬分業という制度そのものについて個人としてどういうお考えを持たれるかということは別といたしましても、少くとも国の法律できまっておることをきまった時期に円滑に実施に移すためにこの問題について国民に知識を持ってもらうということを知ってもらうための措置はどうしても講じなければならぬという考えを持っておりましたので、各県に対しまして、個別的あるいは一般的に注意を促しまして、予定通り実施をさせるということに努力したのでございます。しかし結果からみますと、一応私どもとの関係におきましては、そういうお話であるならばいたしましょうということになったのでありますけれども、必ずしも期待した通りのことをしてくれなかったという事情になっておるようでございます。それでこういうふうな結果につきましての私ども反省でございますが、やはり端的に申しまして、この問題はどうしても中央でもう少しはっきり話し合いをつけてとりかかることなくしては同じような結果になるということを現在痛切に反省をしております。その意味合いにおきまして、この運動の終りますころから中央関係団体に対しましてこの点の話し合いも進めております。最近になりまして、関係団体の最も有力な人々の間にもやはり方向としてはこういう運動については協力をするという態度で考えるべきではないかということを考えていただいているような空気が出て参っておりますので、この話し合いをさらに続けまして、今後広報宣伝すべき内容等についてもできるだけ調整のつくものは調整をつけるということをいたしました上で、もう一度今度は実施直前になりますけれども、二月中にできるだけ具体的な内容を盛った事項を関係医師歯科医師薬剤師等はもちろんのこと、国民一般に対してもよりよく徹底させるような広報宣伝をいたしたいということで今日から準備にとりかかっているというような次第でございますので、御了承をいただきたいと思  います。
  5. 野澤清人

    野澤委員 きわめてふるわざる状況だという点、はっきりきわめて遺憾であるということも意思表示されておりますけれども、大体厚生省が企画してそれを地方庁に流しておきながらきわめて遺憾だということだけでもって言いわけされるほど厚生行政というものは簡単なものなのですか。大体たれが責任を負ってたれが督促をするのかわからぬが、ちょうど私内地におらなかったためにその詳細のことはわかりませんけれども、各地の状況等を総合してみますと全くのやりっぱなし、しかも相当予算を組んで貴重な国費を使っておきながらポスターを作る計画を立て、そうして各府県に流したままで各府県がいろいろと話し合いができないとか二の足を踏んでいるというようなことは言いわけじゃないか。そんなことはかねてから考えておったということを今さら言いわけを聞く必要はないと思う。今度の各府県状況はあなた方は知っているのですか。また東京都内あたり保健所あたりやり方に対して実際に御存じですか。この点に対して都道府県の中で大体満足にいったと思われる県が何県あるのか、またどうにもいたし方がなかったと感じられるのが何県あるのか、さらにまたそれらの府県の中で、あなたの方から実際に人を派遣するなりあるいはさらに電話、文書などで連絡を強化したところがあるのかこの点を伺います。
  6. 小山進次郎

    小山説明員 手元に材料を持って参っておりませんので、お尋ねの点について数をあげてはっきり申し上げる  ことは現在できませんけれども全般を通じまして満足すべき状態で行なってくれた、言いかえますならばこういうような広報宣伝やり方であるならば、今度来年の二月に予定しております広報宣伝もある程度にやってくれたならばと思われるような状況を示した県は非常に少なかったようであります。大部分の県がすこぶる低調であったようであります。特に地元東京都の場合においては非常に遺憾の状況があったようでありまして、東京都につきましては特に地元でもある関係もありまして私も東京都の衛生局長と二、三回にわたって話し合いをいたしております。その結果とにかく都としてはやるということになったのでありますけれども、どうもやってくれた結果は必ずしも芳ばしくなかったようであります。それから全国からの問い合せは私どもの方で折に触れ、また機会を利用して促進をしたことはございますけれども、それ以外にやはり問題が地方の当事者にとっても非常にデリケートの問題と感じられたためと思いますが、ほとんどすべての県から問い合せが参っております。広報担当の私どものところにはもちろんのこと、それ以外にそれぞれの所管を通じまして、あるいは医務局あるいは薬務局等にも問い合せが参っております。その間部長会議あるいは課長会議等がございましたので、そういう機会にも私どもとしては注意はいたしたのでありますが、先ほども申し上げましたように注意をする私ども自身の間に私どもというと言い過ぎかもしれませんが、私自身もどうも現在の状態のままで、私どもだけがいかに旗を振ってもなかなか全国が動くという態勢じゃないということを痛感せざるを得なかったのであります。その意味合いにおきまして、先ほど申し上げましたように、どうしてもこれは問題を中央から解決をいたしまして、地方に対しましては今度こそ問題なく実施させるというような条件を整えなければならないというふうに固く考えた次第でございます。
  7. 野澤清人

    野澤委員 むずかしい言い訳は必要ありませんから、的確に答えて下さい。大体八月から九月にかけての新医薬制度周知月間に消費した金額はどのくらいですか。
  8. 小山進次郎

    小山説明員 手元資料を持ち合せておりませんので、後刻御報告を申し上げます。
  9. 野澤清人

    野澤委員 なお二月に計画しているそうですが、大体本省でこれだけの計画をしておいて、しかも各府県の方に徹底しないというのは、本省自体が投げやりだからこういう結果が起きるのだと思います。そうでなくとも厚生予算のとりにくいところに持ってきて、せっかくとった予算さえ有効的確に使っておらないとすれば、おそらく国民の批判の対象になるのじゃないか。同時にまた今度の次官通牒というものは、相当内容も広範に真実に近い内容を持って通牒を出しております。その趣旨を見ましても、「新医薬制度実施期日である昭和三十一年四月一日を控え、医師歯科医師薬剤師及び各界の有識層はもちろん、国民一般にも、この新医薬制度を周知徹底し、その理解と協力のもとに、旧制度から新制度への円滑な移行を期することを趣旨とする。」、こういう趣旨を示し、さらに方針におきましては「有識者を初め、国民一般が新医薬制度について明確な認識の把握ができるよう努め、もって新医薬制度の本質を解明すること。」、こういう方針を示し、実施事業計画を表明している。こういう状態であるにもかかわらず、投げやりにしておいて、今東京都内でも多少あったと思いますというだけですが、東京都内保健所を見て歩いたわけでもないだろうし、地方に対してもおそらく注意も喚起していないだろうと思いますが、その二、三の報告を申し上げるというと、京橋では保健所内にポスターがたった三枚貼付されただけ。それから下谷では保健所内にわずか三枚だけ張られておった。それから品川ではポスターが来ていないとのことで、浴場に張る約束までしたけれども実施されなかった。また西多摩では保健所に交渉した結果らちがあかない。こういうふうな都内だけでも報告があります。それから全国の各府県状況から申しますと、壁新聞等もほとんど県庁保留している、あるいはまた医務課保留している、こういうのが詳細に報告になってきております。たとえば宮城県では壁新聞県庁保留衛生部長に申し入れたるも望みなし。それから山形県も壁新聞等県庁医務課保留広報活動全然なし。茨城県においては医師側圧力にて壁新聞等県庁保留広報活動全然なし。東京では九月十四、十五の両日保健所掲出以外医師側圧力により何ら広報活動なし、都薬より都庁に抗議、一ヵ月延長強力実施方申し入れたる望みなし。また新潟県は壁新聞等保健所配布せしめ、県は予算がないからやらないと言明、紛糾が起るからやってはいけないと厚生省総務課長から聞いてきた由。あるいは長野県では壁新聞の「必ず」で配布の一時中止と回収、進言により再配布予定、九月末まで延長するも行事なし。静岡県では壁新聞等配布せるも、衛生部長会の指示により掲出禁止庁内掲出も三日間にてやむ。大阪では壁新聞を市の保健所以外掲出せず。和歌山県では医師側申し出により医務課保留督促により配布手配するというも広報活動なし。その他徳島、愛媛、熊本、宮崎等同じような理由でありまして、壁新聞等せっかく作ったものを全部これが医務課または県庁衛生課保留されたまま配布されない、かような状況でありますが、この点に対してただ遺憾の意を表するとか、あるいはまたきわめて振わざる状況であるというような簡単な事柄で言い訳されるということは厚生当局としてどうかと思います。こういう事柄について総務課長としてはかねてから考えておったとか、また地方では二の足を踏むから、中央で話合いをつけなければならぬとか、こういうことですが、法律ができて来年の四月一日から実施されてこの新体系について、国民に周知徹底させるというのがいわゆる厚生省の役目です。医師会や歯科医師会あるいは薬剤師会というような団体が責任を負うべきものではなく、当然これは政府が責任を負わなければならぬ。ところがすでに三ヵ月とか四ヵ月過ぎにはこれが実施されるという段階にきて、一般のアンケートをとってみても政府のポスターを見たというものは二〇%くらいしかない、ほとんど大半はポスターも知らない、また政府の宣伝も広報活動も全然知らない、こういう状況でこの責任を一体だれが負うのですか。こうした重要な問題について摩擦が起きるとか、あるいはまた二の足を踏んで、厚生省責任をのがれるべきではないと思う。こういう厚生行政であるならば今後莫大な予算を使っても何ら活動ができない。昨今のように職員関係でいろいろな問題が起きておりますが、結局おざなり式の行事をやってお茶を濁せば月給がもらえるという官僚根性だから、こういうことになるのだと私は思う。ところで総務課長は、これから先は必ず万全を期してやりますというお誓いでありますが、やりますというだけでまたそのときになってまことに遺憾でございました、振わざる状況でございましたと言われたのでは、これはどうしようもない。国民の名において実際にまじめにやってもらいたい。しかも企画等については、各団体もあるのですから、当然そうした団体にも連絡してその期間中ポスターども十分掲示されるとか、徹底するとかいうような方策について万全を期していただきたい。幸いに厚生次官がおられますから、新医療費体系の医薬制度の周知月間が二月に行われるということでありますけれども、これに対して次官は十分監督する御意思がありますかどうか、お尋ねいたします。
  10. 山下春江

    ○山下政府委員 私まだ就任日が浅くて詳しい事情を存じておりませんが、非常に重大な、必要なことでございますから十分監督をいたしまして周知徹底をはかりたいと思います。
  11. 野澤清人

    野澤委員 山下次官上手に逃げたような格好ですが、就任日が浅くて知らないということはないと思う。あなた方が法律を作られておるのだから、当然次官の立場でも議員の立場でも責任を負わなければならぬ、そういうあいまいな答弁をしておるから部下がまじめに動かないのだと思う。各局長も自分の身に振りかからなければにやにや笑っておるが、総務課長一人の責任ではない。医務も薬務も各局長は当然責任を負わなければならぬ。しかも次官通牒が出ておるのですから、こういう問題については少くとも山下政務次官は日が浅うございますからというのは、この国会では通りません。少くとも七十年からの問題が解決されて、ここに法律化されて実施されるのですから、どうかもう一ぺん、前言を取り消して、真剣に監督実施をさせます、こういうことに御訂正を願いたいと思います。
  12. 山下春江

    ○山下政府委員 お説の通り、真剣に実施についての監督を強化いたすつもりでございます。
  13. 滝井義高

    ○滝井委員 今の野澤委員の質問に関連してお尋ねしますが、実は私もあのポスター全国を回っておるときに見たんですが、医者に診察をしてもらったら必ず処方せんをもらいなさいと書いてあるのに、「必ず」を消しておるところと、そのままになっておるところがある。あとで東京に来て聞いてみると、大橋委員から厚生省抗議を申し込まれて、それで消したんだという話も聞いたのですが、これは消したところと消さないところとがある。こういうことが一つと、それからあのポスターが出てから、患者からいろいろ尋ねられた。処方せん料は大体幾らお払いしたら今度はいいようになるんでしょうか。いわゆる新医薬制度内容がさっぱりわからないんですね。地方庁に行ったときに、大体新医薬制度内容をきめるには、どういう工合にきめてそれを宣伝するのか、それが全然わからないのに、処方せんは有料なのか無料なのか、さっぱりきまっておりませんから、やろうとしてもやれませんよ。いわゆる新医療体系の内容がきまっていない。だからあの文句だけで宣伝しようと思っても、われわれはわかりません。こういうことを保健所あたりは言っている。私は一枚ポスターをもらってきておりますが、実は私がもらってきているのには「必ず」が消してないような状態で、とにかく厚生行政というのは、四分五裂しているというのが現在の姿だと思う。そういうことでは今野澤さんの言うように、地方庁で周知徹底をせしめるということは不可能だ。まだ内容はわからない。「必ず」を消したり消さないだりしておる。ポスターそのものに信憑性がない。こういう点は、大体どういうことになるのか。医療体系の内容は九月にお知らせをしますと言っておきながら、やらない。十一月になっても、やりますと言ったがやらない。もう十二月も終ろうとしているのにまだやらない。これは今言った新医薬制度を周知徹底せしめるためには、それが運営をせられる内容というものが当然わからなければ、地方庁に行ったって何もできません。だから今の質問に関連をして、内容を同時に一つ発表すれば、来年の二月からすぐできる。もし内容が出なければ、二月からは絶対にできません。野澤君にお約束をして、来年になって、まだ周知徹底できませんで、まことに相済みませんと言うよりは、内容をここで一つ言う方が、野澤君に対する答弁にもなると思います。
  14. 小山進次郎

    小山説明員 お尋ねの前段の点につきましては、「必ず」を消したのが正しいのでございます。これは二、三各方面から注意がございました。これは考え方の問題だと思いますけれども、気分としてお医者さんに見てもらったら今度はきっと処方せんを出してもらえるのですよという、その新制度の気分を表わすという趣旨で「必ず」という言葉が使われたのでございますけれども、一面これを法律的によく考えてみますというと、誤解の起きない余地もないことはない。例外措置があるということを国民に知らさせない結果になってはいかぬというので、「必ず」というのは落すということにして、これは落すように手配したのでございます。従って落ちていないものがお手元に入ったとすれば、それは抹消の手続がまだ済まなかったうちにお手元に入ったものと思いますが、これは消したのが正しいのでございます。  それから中身がきまらなければ広報宣伝はできないではないかという後段の御質問でございますけれども、この点については、医薬制度についての広報宣伝を今年の八月と来年の二月に分けていたしました趣旨も、実はそういうことと関係があるのでございます。非常にむずかしい制度の移り変りがあり、しかも国民には従来の長い間の習慣があって、容易に理解できない面がある。従って一度に何もかもというふうなことを言ってもこれは容易にわかるものではない。そういう意味合いにおきまして、まず法律の成立いたしましたなるべく近い機会において、来年の四月一日から実施されます医薬制度のおよその筋道だけを国民に知っておいていただく。それからいよいよ実施を控えました直前に、正しい具体的な制度内容を盛ったものを周知徹底させることによって四月一日からの実施を円滑にする、こういうふうな仕組みで考えておるのでございます。従って私どもは今度の二月にいたしまする広報宣伝が具体的な内容を盛ったものを徹底的に国民に知っていただくような措置を講じていく、こういうような考えでおるのでございます。
  15. 滝井義高

    ○滝井委員 二月には具体的な内容のものをやられると言いますが、現実の事態の進行状態のもとにおいてそういうことが可能ですか。少くとも医療費体系が出て、そうしてわれわれが審議するのに優にニヵ月はかかりますよ。まだわれわれはその医療費体系の片鱗だにもらっていない。あの膨大な資料というものを一々われわれは出してもらわなければなりませんよ。今あなたは二月にやると言われましたが、それは断言できますか。はっきり、できるならできる、できないならできないと言って下さい。そうしないとまた今野澤さんと同じことを繰り返さなければならぬ。二月に必ず医療費体系の内容がまとまる、こういう御確信なら私はまともに二月と受けていい。しかしながらまだわれわれは医療費体系の内容も何ももらっていない。出してくれ出してくれと言っても何にも出してこない。国会が再開されるのは来年の一月二十日ですよ。われわれはどんなに最小限に見積ったって医療費体系はニカ月かかると思っておるのですが、どうですか、その点一つはっきりして下さい。
  16. 小山進次郎

    小山説明員 来年の二月には必ず広報宣伝実施いたします。
  17. 滝井義高

    ○滝井委員 いや広報宣伝実施しますが、具体的な内容をはめたものができるかどうかということなんだ。それがおできになるという言明になれば、今申しましたようにまずその内容を出してくれというわけです。内容のないものをやれば、さいぜん私が申しましたように地方保健所では婦人会等で人を集めて座談会を開きます。そうしますとその内容が出てくる。お医者さんに行ったら処方、せんは大体幾らになりましょうか。その答えができない。私なんかも保健所に行ってどういう内容になるのだと言ったら、実はそれがわかりませんので、やろうと思っても全然やれません、とこう言っておる。ただお医者さんに行ったら処方せんをもらうのだ、あるいは自分で薬剤師さんにもらおうとお医者さんにもらおうと同じことだ。これだけでは啓蒙にならない。今度は患者ざんにとって損になるか得になるかという問題、これは処方せんが無料か有料か、あるいは一部負担があるかないかという問題が具体的に関連してきて、その広報宣伝活動というものは大衆の生活の中に浸透してくる。抽象的に、今度は法律が変ったというので、お医者に行ったら、処方せんが無料ならばもらおう、有料ならばもらわぬ、こういう問題が出てくる。そういう具体的な内容を盛ったものを、今あなたは二月にやるとおっしゃったが、二月に果して今の医療費体系の状態から考えてやれるかやれないかということなんです。私は医療費体系は二月には無理ではないかと思っておる。今小山さんの方で二月にやると御言明になったようですが、そのように解して差しつかえありませんか。これはあとあとあなたの責任問題になると思いますから、その点もっと正確にお尋ねしておきます。
  18. 小山進次郎

    小山説明員 野澤先生のお考えになっておりまする具体的な内容というものと私ども考えております具体的な内容というものについて完全に一致するかどうかという問題は別でございますけれども、当局の見解として、これだけを知っておいてもらえればさしあたり四月からの医薬分業実施には支障がないという程度の内容は盛って広報宣伝をいたすということには間違いございません。
  19. 野澤清人

    野澤委員 大臣が見えたようでありますから、大臣の方に二、三質問したいと思います。  過般、小林厚生大臣の就任のごあいさつを拝聴したのでありますが、その内容を拝見いたしましても、ほとんど具体的な問題は指摘されずに、一貫した厚生行政上の問題点とも思われるものが二、三、文字だけ拾い上げられております。  そこで新大臣は厚生行政に対して当面の重点事項としてどのように感じておられるのか、またどのような施策をとりあえず考慮されているのか、これは国民ひとしく関心を持っている問題だと思いますので、端的にお答えを願いたいと存じます。
  20. 小林英三

    ○小林国務大臣 私は、国民の最低生活を確保いたしまして、さらに進んでその生活内容を向上させるために、公衆衛生、社会福祉、それから社会保険、この分野におきまする与えられた課題はきわめて多いと存ずるのでありますが、私どもの当面いたしておりまする緊急の課題といたしましては、何と申しましても国民の医療保障制度を確立することであると考えるのであります。しかしその第一着手といたしましては、御承知のように赤字のために危機に瀕しておりまする健康保険あるいは船員保険等、疾病保険財政の再建を完了することであると存ずるのであります。従いまして厚生省といたしましては、さきに提出されました七人委員会報告書並びに社会保険審議会の意見書の内容を十分にしんしゃく、検討をいたしましてそうしてこれの所要の処置を打たして参りたいと思っておるのであります。なお国民健康保険につきましては、前国会におきまして給付費に対する二割を国庫負担するということに裏づけられましたので、これの普及を強力に推進いたしまして、健康保険の整備拡充と相待ちまして、医療保障の完成、国民皆保険べの実をあげるべく努力いたしたいと考えております。  第二の問題といたしましては結核対策の推進でございます。結核の医療費がしばしば指摘を受けておりまするように、他の社会保険、生活保護等の諸制度に対しまして著しい財政的重圧を加えておりまする点からいたしまして、結核対策をさらに合理的に強化推進いたしますことが一そう必要であると考えられますので、明年度におきましては、従来通り結核病床の整備をはかりますとともに、特に公費負担制度の拡充、在宅患者対策の推進にも力をいたしたいと考えておるのであります。  第三には、生活保護、児童保護等法的の扶助に対する強化の問題でございます。今後経済六カ年計画実施に伴いまして、国民所得の増大、消費水準の上昇が見込まれておるのでありますが、一方、なお相当数の不完全就業者の存在、さらに所得較差の増大も相当予想されまし(、生活困窮の深刻という問題は今後なお持続するものと思われますので、生活保護、児童保護等、法的の扶助の施策の充実強化が一段と必要なものと存ぜられます。特に明年度におきましては、生活保護、児童福祉それぞれの分野におきまして、対象人員の若干の増加を見込まれますので、これらの見通し、実情に即しまして、予算の編成に当りましても万全の処置を講じて参りたい、こういうふうに考えております。  以上、まことに簡単でありますが、大体の重要な事項について申し上げた次第でございます。
  21. 野澤清人

    野澤委員 大方針は大体それで了承したつもりでありますが、ただおざなり式の御解説ですと、国民がかえって事後において失望する点が生ずるのではないかと思いますので、二、王気のついた点について端的にお答えを願いたいと思います。  ただいまお話中に、七人委員会の答申、社会保険審議会等の意見を十分に考慮しつつこれこれのことをするというので、結核対策あるいは国保の二割負担に対する普及徹底を期する、生活保護、児童保護等についての強化に尽力をする、こういうことでありまして、当面する問題はほとんどこれに尽されておるようであります。そこで大臣に第一にお尋ねいたしたいことは、この七人委員会というのは川崎前厚相の落し子とまでいわれておりますが、この七人委員会の答申を単に考慮するのか、継承されるのか、要するに引き続いて七人委員会の答申というものを尊重するという考えなのか、あくまでも参考として軽く扱っていくのか、この点を第一にお伺いしたい。第二点は、もしもこれを継承して極力尊重するというならば、大臣はこれに対して真剣に実行する勇気があるかどうか。第三には、どのような順序でこの答申を具現するか、この三点についての御決意のほどを承わりたいと思います。
  22. 小林英三

    ○小林国務大臣 ただいまのお尋ねの点でありますが、七人委員会というのは前厚生大臣が、法的ではございませんが、お設けになった一つの諮問機関と思っております。従いまして私も、前厚相がお設けになりました、七人委員会の人たちはいずれもりっぱな方たちでありますから厚生大臣の公的の諮問機関は社会保険審議会というものがございますが、これはこれといたしまして、別の角度からこれらの七人委員会の諸君の御答申といいますか御意見といいますか、こういう問題につきましても耳を傾けたいのでありますが、しからばこれらの問題に対して私がどういう態度をとるかという問題につきましては、厚生行政の上に立ちまして、これは取り上げるべき問題だというような問題につきましては取り上げまするし、またわれわれが考えましてこの点はどうかというように思う面につきましては、場合によりましては採用しないということもあり得ると考えます。
  23. 野澤清人

    野澤委員 川崎厚相が七人委員会を設置した当時にもかなり批判の対象になっておりまして、しかもまたこの間答申をされた七人の方が参考人として本委員会においでになりまして、いろいろお話を聞きましたが、川崎厚相この話し合いは、単に大臣の個人的な諮問機関ではなく、あくまでも政府や国会並びに国民に対する答申として慎重審議した、こういうことをはっきり申されたのでありますが、ただいまの大臣のお話によりますと、せっかくの名答申が、ややもすると大臣の立場からこれを拒否したり、あるいは取捨選択が自由にできるような感じがいたします。これな行政上やむを得ないといたしましても、七人委員会の答申というものは、あらゆる角度から分析もされておりますし、対策の方法等も一応検討されておりまして、ほとんどわれわれとしては完璧に近いような感じがいたします。ことに重要な事項に関してはかなり突っ込んだ対策等も羅列してありますが、過般参考人として御出席を願いましたときに、これらの問題を実施するしないということは当然国会の方に責任を転嫁されるというようなお話もあったわけであります。従って立法府や行政府においては、相当責任を持ってこれが具現をもまじめに検討しなければならぬ、また示されてない事項等については十分今後議論も行われ、立法措置等も加えらるべきものと考えておりますが、この点大臣としてどのようにお考えになりますか。これが一点。  それから第二点は、社会保険を中心にして、社会保障制度というものが強く推進されておりますが、日本の厚生立法というものは、大体総合企画の上に行われたものがきわめて少いのであります。その場その場の突発事故等によってやむなく現実的な立法措置がとられておりますから、保険行政等につきましても、あるいは保険医療等につきましてもその表題によってまちまちな立法が行われ、他面これらの保険というものを赤字問題とともに整理統合すべきだというような声が出ておりますけれども、これらに関して、大臣としてはどういうお考えなのか、たとえば先ほどの結核対策のような問題でありましても、公費負担部分について十分考えたいということを意思表示されております。しかし単に公費負担を十分考えるということと、いろいろの法律を整理統合して一本化して公費負担の面をはっきりさせるということはおのすとこれは導き方が違うと思うのであります。こういう点に対して大臣はどうお考えになっておりますか。簡単でけっこうですからお答え願いたい。
  24. 小林英三

    ○小林国務大臣 今の御質問でございますが、もう少しはっきりとおっしゃっていただきたいと思います。
  25. 野澤清人

    野澤委員 それではこういうふうに要約いたしましょう。七人委員会の任務は過般の答申で一応終了したと了承すべきだと思いますが、大臣としては、さらに委嘱してこれの補足のような第二案等まで依頼するお考えがあるかどうか、こういうふうに要約いたします。
  26. 小林英三

    ○小林国務大臣 七人委員会の答申につきましては、現在の御答申のままでさらに諮問を申し上げるということは、現在は考えておりません。
  27. 野澤清人

    野澤委員 時間がありませんから、これに関する他の質問はまたの機会に譲ります。  今回の森永事件は未曽有の悲惨事であるというように大きく取り上げられておりますが、これについて、この委員会でもしばしば取り上げられておりますけれども、食品衛生法の改正を直ちに行う意思があるか、お尋ねいたします。
  28. 小林英三

    ○小林国務大臣 森永のミルク事件が社会の耳目を聳動するような悲惨事を起しましたことは、まことに遺憾に思っております。これらの問題につきましては、食品衛生法の中にある程度の不備があったのではないかと考えまして、ただいま食品衛生法自体の中におきましてあらゆる観点からこれを検討いたしております。将来改正する点がありましたら十分改正をいたしたいと考えております。場合によりましては、通常国会等におきましてこれを提案いたしたいとも思っております。
  29. 佐々木秀世

    佐々木委員長 野澤君に申し上げます。一時間近くになりますし、十人も通告者がありますので簡潔にお願いいたしたい。
  30. 野澤清人

    野澤委員 やはりこの森永事件に関連した問題ですが、食品衛生法の不備な点があるから改正したいという準備もされているようでありますが、それに付随いたしまして食中毒の防止対策に具体的に乗り出す意思があるかどうか。これは相当予算を伴う問題だと思いますが、これを決行するだけの御準備が大臣にあるかどうか。
  31. 小林英三

    ○小林国務大臣 ただいまの食中毒の問題でありますが、これもきわめて重要な問題と思いますから、今後十分に取り上げたいと思います。
  32. 中川俊思

    ○中川委員 関連して。今森永の問題が出たのでありますが、大臣は、この森永問題について設けられた五人委員会についてどうお考えになっておりますか。実は昨日この委員会におきまして、同僚大橋君からも、この問題について、いかなる法的根拠に基いてそういうものを作らしたかという点について相当突っ込んだ質問があったのでありますが、森永問題に対する五人委員会の結論が近日中出てくると思うのでありますが、大臣としては、あくまでもこの五人委員会の結論を強行しようと考えておられるのか、あるいは強行するだけの権限が大臣にないとするならば、この五人委員会の結論をどういうふうに採択されようとされるか、御所見を承わりたいと思います。
  33. 小林英三

    ○小林国務大臣 森永事件のああいう悲惨な状態につきまして、当時の川崎厚生大臣のときに、被害者と会社との問題について、とりあえず会社は暫定的の見舞金とか、死亡者に対する弔慰金とかいうものは払いましたけれども、その後の補償という問題につきまして、善意の第三者が間に立って、そうして両者の間にこれをあっせんして、適当な観点からこれをやるというような意味からして、私は当時の厚生大臣が五人委員会というものに御依頼になったと思っております。従いまして私といたしましても、その当時に作られました五人委員会というものが今後両者の間に立ってきわめて中正な、納得のできるような解決をお出しになることを期待しております。
  34. 中川俊思

    ○中川委員 大臣はよく御存じないと思うのでありますが、両者の間に立って中正な妥当な結論が出るかどうかということに対しては多大な疑問があるのです。そもそもこの五人委員会なるものは、森永の要請に基いて作ったのです。これは実際問題としまして、今大臣のおっしゃったように、被災者側の意向をあまり受け入れていないのです。従って被災者側はこの五人委員会に何ら期待していないのです。今あなたは公正妥当な意見が出るだろうということを期待しておられるが、これはもう全く的はずれなお考えでございまして、きのうもここへこの森永問題につきまして、森永の当事者と被災者に来てもらったのでありますけれども、全く対立しておる。五人委員会を認めないというのです。そういうような事態になっておりますので、私どもはこの五人委員会にあまり期待をしていない。また厚生省はこの五人委員会を作らしたということは、厚生省が少し出しゃばったと思うのです。そういうような実情でありまするから、今大臣が御答弁になりましたような結論が出るかどうかということについては、もう私どもは出ないということをはっきり考えております。そこで私は、大臣も御就任早々でございますし、あまり事情をよく御存じないのでありますから、これ以上詳しく追及しようと思うものではございませんが、この五人委員会に期待しておられるととんだことになるということを、一言私の考えを申し述べておくわけであります。  なおこの際私はあなたが厚生大臣になられたのでお祝いを申し上げると同時に、今日の厚生行政が非常に重要な問題でありまするし、ことに大臣は参議院の社会労働委員長をしておられて、承わるところによると、非常に気骨のある方だということを伺っておりますので、私どもは大臣の厚生行政に多大の期待を持っておるわけでございますので、この際あらためて一つお聞きをしておきたいと思うのでございますが、一体厚生省の綱紀の粛正という問題についてどういうふうにお考えになっておるか。関係各部局の問題については、まだ御就任早々でありまするから、詳しくは御存じないかしれませんが、しかし今日まで参議院において社会労働委員会に席を連ね、ことに委員長としてやっておられたのでありますから、ある程度は御存じだろうと思うのであります。最近健康保険の赤字の問題が非常に論議されておるのでありまするが、地方の社会保険の出張所なんかの乱脈というものはまことにその極に達しておるといってもいいくらいひどいものがございます。実例を出せとおっしゃれば、私は幾らでもお出しいたします。そういうことのために、これが社会保険、健康保険等一般保険の赤字の最大の原因とは考えません。最大の原因とは考えませんが、少くとも赤字の原因の一部をなしておることだけは事実でございます。こういうような点につきまして、大臣は今日までどういうふうなお考えを持っておられるかどうか。  さらに医務局関係でありまするが、地方の国立病院なんかを回ってみますと、国立病院なんかにおきましての出入り商人との醜関係であるとか、あるいは院長の勤続年数が十五年にも二十年にもなっておるために非常な問題を包蔵しておるようでございます。この点については、私は前国会でございましたか、医務局長にも私の考えを申し述べたことがあるのでありますけれども、医者が足りないとかなんとかいうようなお答えでございまして放擲されておるようでございますが、こういうようなことのために地方の国立病院等においても問題をたくさん起しておる。ひどいのになりますと、私の県、広島県の国立療養所なんかでは、手術の前夜には必ず患者が三千円なり五千円なり持っていかなければ手術してもらえないという実情すらある。大臣よく聞いておって下さい。こういう実情があるのですよ。あす腹を切られる、胸を切られるのだが、その前夜に何ぼか金を持っていかなければどんなことをされるかもしれないというので医者に持っていっているのです。私はこのことは医務局長にも話したのですが、医務局長は、そうですがといって、大して取り上げようとしなかったのですが、そういう実情がある。まことに乱脈きわまっておるのであります。今回の森永の問題のごときでも、厚生省責任のがれをやろうやろうといっておるが、何といっても厚生省に大きな責任があります。公衆衛生の監督の立場にあるところの厚生省に非常な責任があると思う。こういうように、いろいろ数え来たれば際限がない。際限はございませんが、こういうような点について大臣は、やはり従来の大臣と同じように、もう役所へ入ったら、局長、課長のごきげんをとって、そうしてもう自分の任期中円満に大臣が勤まればいい、こういうようなお考えであるかどうか。大臣は気骨があられる方だから、おれが乗り込んだ以上は、この乱脈きわまる、腐敗しきった厚生省の中を刷新しよう、綱紀を粛正しようというようなお考えがあるかどうか。まずこの点をお伺い申し上げたいのであります。
  35. 小林英三

    ○小林国務大臣 厚生省の内部、末端等におきましていろいろいまわしい事実があるように御指摘になったのでありますが、私は厚生大臣に就任いたしましたときにまず喜びましたことは、厚生省のいわゆる事務当局、所員、こういうものは非常に優秀な人たちがたくさんおるところだということを聞いたことであります。しかし私が前厚相と事務引き継ぎをいたしまして恒例ではありますけれども、省員を集めましてあいさついたしました。まず最初に私が厚生省の省員一同に希望いたしましたことは、優秀であるだけではいけないのだ、仕事の面において後手を踏まないで、先手々々と仕事をすることが、これは厚生省ばかりではございませんが、各官庁において必要なんだ。それで先手を打つということには、計画性が必要であります。十分な計画性がなければ先手は打てない。これはその日その日の仕事においても先手を打つことが必要である。こういうことをすることによりまして、最も必要な社会福祉の問題由るいは社会保険の問題その他いろいろの問題につきましてりっぱな厚生行政ができるというふうに私は期待したのでありますが、今の御指摘のような問題につきましては、私まだ就任後日が浅いので聞いておりませんけれども、おそらく私は地方の第一線において幾分弛緩をしておるという問題も、ただその日その日の自分の仕事をやればいいというような気持が全部の官吏にありますと、ややもすればそういうことがあり得ると思うのであります。私は今後厚生省本省はもちろんでありますが、全国の第一線の諸君にも積極的に、ゆるみなく仕事をいたすよう、こういうことをいたしたいと思います。なおお説のようなことがかりにもあったといたしますならば、十分その点を締めて参りたいと考えております。
  36. 中川俊思

    ○中川委員 どの大臣も就任のときには同じようなことをおっしゃる。しかし私は小林厚生大臣こそは今度こそやっていただけるものだと期待しておりますので、どうか一つ期待を裏切らないようにお願いを申し上げたいのであります。それから省内の秩序の問題について私は一点だけお伺いしたいと思います。
  37. 佐々木秀世

    佐々木委員長 ちょっと中川君に申し上げますが、森永の問題についての関連質問であれしておるのでありますから、簡単に願います。
  38. 中川俊思

    ○中川委員 簡単にいたします。およそ厚生省だけでなく、省内の秩序の問題について重視しなければならないことは、私が申し上げるまでもなく厚生大臣は十分御存じだと思います。私も厚生省へちょいちょい行ってみて年末闘争であるとか、あるいはいろいろな闘争等で厚生省の役人が厚生省を占拠しておる、そして厚生行政事務の遂行を阻害しておる場合がしばしばございますが、こういう点について大臣はどういうふうにお考えになっておるか。それから私がいつも考えますことは、どこの省へ行ってみましても政務次官の部屋が事務次官の部屋より冷遇されている。こんなばかな話はないと思います。厚生省におきましても同様でございます。御承知の通り事務次官の部屋は東側の日当りのいい大臣のすぐ隣にある。政務次官の部屋は内庭に面した、昼間でも電気をつけなければならないような薄暗いところに置かれておる。そして歴代の政務次官はみな喜んでそこに入っておる。こういうことはやはり秩序を保持するという意味から私は大事なことだと思うのでありますが、大臣はこの点についてどういうふうにお考えになるか。またここに山下政務次官がおられますが、山下政務次官もあの政務次官室へ入っておられるのだろうと思う。事務次官の部屋とかえてもらいたいという気持はありませんか。通産省は有田二郎君が政務次官になりました際にこの問題を解消したのでありますが、どこの省でも今なおこれが存続されておるのであります。こういうことが放任されておったのでは役所の中の秩序が立ちません。官制上から申しましたならば政務次官が事務次官の上にあるのでありますから、何もいばる必要もないけれども、とにかく役所内の秩序を維持するという見地からこれだけはぜひ一つ考えてもらわなければならぬと思う。大臣は政務次官の部屋と事務次官の部屋をかえる意思ありゃいなや、この点をお伺いしたい。  それからいま一点だけお伺いしたい。御承知の通りこの内閣は発足以来新生活運動を始めまして、そしてできるだけ綱紀の粛正並びに経費の節減をやっておるのであります。先ほど野澤君からもいろいろ広報活動について総務課長に御質問があったようでございますが、厚生省予算全般は、いずれ昭和三十一年度の予算が出されましたときに私どもは詳しく検討いたしてみたいと思うのでありますけれども、私の考えをもってすれば、大ざっぱでありますが、一割は節約できると思う。毎日の新聞に出ておるような、切り抜きを集めたようなくだらぬ雑誌に直接厚生省が発行しておるかどうかは存じませんが、とにかくある程度の補助が出ておるのだろうと思う。そういうようなむだな費用、それから具体的になりますけれども、先ほども私は児童局長に言ったのでありますが、児童局でもって全国府県に保育所をお前の県に何ぼ、お前の県に何ぼというふうに分けるのですが、その分けた余り余りというか何というか、とにかく児童局長が自分で自由にできるものを二十ないし三十持っている。そして児童局長のところへ巧妙に運動したものが保育所を取ることができる。各府県にもう分けてしまっておるのでありますから、児童局長が二十も自分のポケット・マネーで出すようなつもりで出すのを節約すれば、一カ所に五十万円出すのでありますから、それだけでも一千万円の節約ができるのであります。そういうことを平気で今日までやっている。これは私は児童局だけじゃないと思う。ほかの局におきましてもこういう点が非常に多いと思います。  経費の節約についてでありますが、どの大臣も就任されたときには委員の諸君をごちそうされる。また局長、課長連中をしょっちゅうごちそうされるが、そういう費用は一体役所のどこから出ておりますか。大臣の機密費はわずかでございますから、大臣の機密費ではとうてい足りないと思います。どの方面からその費用を出しておられるか。大臣の自分のポケット・マネーでごちそうされるのならば、何ぼでもごちそうして下さい。しかしながら私は国民の血税でそういうことをやられるのは反対でございます。従って私はあなたから御招待がありましたが、行かなかった。労働大臣の招待にも行かなかった。そういうことはするべきではない。国民は泣きの涙で税金を出している。これを委員の招待であるとか、あるいは局長、課長の招待であるとかいうのに乱費するということがこの内閣の新生活運動の目的に合致するゆえんであるかどうか。この経費の節減並びに秩序の維持について大臣はどういうふうにお考えになっておりますか、御所見を承わりたいと思うのであります。
  39. 小林英三

    ○小林国務大臣 ただいまいろいろの問題について御質問になりましたが、経費の節減という問題につきましては、もちろん貴重な国費でありますから極力節約いたしたいと思っております。  それから前段に御質問のありました厚生省の事務の取扱いを阻害するような問題につきましては、私まだ存じておりませんが、もしそういうことが将来ありといたしますならば、適当な処置を講じたいと思います。  それから今の児童局の問題でありますが、これは保育所の問題にいたしましても、やはり厚生省におきまして、児童の今後の問題について最も有効適切である、こういう意味から各府県に割当いたしているのでありまして、決して今おっしゃったようにポケット・マネーをやるような意味でやっているのではないと私は思います。(「割当外を持っている」と呼ぶ者あり)割当外と申しますのは、そういうような意味ではないのでありまして、かりに全国に必要な場所がございまして、希望々々で四つ、あるいは場合によりましては五つほしいというような場合におきまして、予算関係から一応配付を内定いたします。そうして今お説のように児童局長が一つ二つの余裕は持っているかもしれませんが、(一つや二つではない」と呼ぶ者あり)一つ二つでないといたしましても、その余裕は最後に最も重点的に、この県に配給することがよろしいという決断のもとにやるのでありまして、決して今のポケット・マネーを配給するような意味でやっているのではないと考えます。  それから政務次官の部屋云々という御質がございましたが、これは私はまだ政務次官の部屋と事務次官の部屋を比較対照してみたことはございません。官制上におきましては、政務次官が事務次官の上にあることはおっしゃる通りであります。しかしこの部屋の問題につきましては、私大臣でありましても、これは大きいからこうしろああしろという問題ではなしに、もしそういう問題がありましたならば、私は山下政務次官と私と事務次官との間で十分相談して、きわめて合理的にしかも仲よく解決することが一番正しい道だと思います。
  40. 中川俊思

    ○中川委員 大臣は経費の問題につきましてはきわめて簡単にお答えでございますが、各府県に相応して分けなければならぬものでありますならば、最初に分ければいい。児童局長は一つや二つではないのです。二十も三十も自分が持っていてそれを自分の気の向いたところに出す、こういうことがすべていろいろな問題を惹起する最大の原因なんですから、大臣がそういうようなお気持でありますならば、私ども厚生省予算については厳重な監督をしなければならない。それから宴会費の出所については御答弁がございませんでしたが、なお政務次官、事務次官と三人で仲よくしてやるということ、もちろんけっこうでございます。同じ省内におきまして政務次官と事務次官のいざこざ、大臣との間にいざこざがあるということは私どもの望むところではございません。しかしおよそ政党内閣におきまして政党から入っておるところの政務次官が冷遇されておるということは政党の権威にも関する問題でございますから、私はこのことを申し上げたのでございます。厚生省内だけで自由にやられるということには賛成しかねる。あなたも政党に所属しておられるのでございますから、どうか政党の権威のためにも、この問題は一つ真剣に考えていただきたい。
  41. 小林英三

    ○小林国務大臣 ただいまの経費の問題のうちで、招待費だとかなんとかいうような問題について御質疑がございましたが、これはたとえば大臣である私が委員の諸君を御招待申し上げるというような問題につきましては、きわめてわずかでありますけれども、大臣の機密費というものが多少あるのであります。これはわずかでありますが、しかしこういうことをここで申し上げることは差し控えたいと思いますけれども、疑心を生じてはなりませんから、率直に申し上げます。もし皆さんのような委員の諸君、あるいはその他のそういうような宴会費等が私の交際費—わずかな三万から四万と思いますが、それで足らないような場合におきましては、もちろん私がポケット・マネーで出すのでありますから、そういう場合には御遠慮なく御出席を願いたいと思います。
  42. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 ただいまの森永のミルクの問題に関する五人委員会の話でございますが、これは昨日のこの委員会におきましても自民党の大橋武夫君から法律論的な根拠に立って、むしろ政府の処置を否定するような議論がございましたが、ただいまの中川君の実際論もお聞きの通りで、私が新大臣に望みたいことは、この五人委員会なるものは実は川崎前大臣の落し子でありますが、川崎君の若さにまかせての先ばしった行き過ぎなんです。このことは私が申し上げるまでもなく、大臣御自身参議院の社会労働委員長をやられてこの間の休会中も森永ミルク問題で委員会を数回お持ちになっておられますからよく御存じのはずですが、この問題はいわゆる企業などの機関で損害に対する国家の支払問題などとはおよそ違うのでありまして、あくまでも補償問題にしても民事事件にとどまっておるのです。それに厚生省がノコノコと入り込んでくるなんてことは、全くの行き過ぎであって、きのうの委員会でもその点が指摘されたのであります。大臣は、きのうの委員会の模様は多分関係の局長から報告をお聞きになっておると思うのでありますが、どうか新大臣がおかわりになったとろで、この五人委員会というものを十分に再検討されるように希望もいたします。前の大臣が犯しましたあやまちをあなたが受け継ぐ必要は私はみじんもないと思います。これは私の質問というよりは親切な忠告に近いものでありますが、あなたにこの五人委員会の問題を再検討する用意があるかどうかということだけを御答弁願っておきたい。
  43. 小林英三

    ○小林国務大臣 森永の問題につきまして私就任早々事務当局からも経過を聞いておるのでありますが、私が今まで聞きました範囲内におきましては、今の五人委員会というものが中正公正なあっせんの労をとってくれるものだ、こう私は今日まで考えてきております。しかしただいま御意見もありますから、今後さらに再検討して、もし五人委員会の処置に対しまして—処置ということよりも、むしろ五人委員会を置いたという問題、五人委員会の存在というものが、今後の解決に対してむしろ反対の悪い結果を及ぼすというようなことでありまするならば、場合によりましては私は考慮してみたいと思いますが、今日といたしましては、私は五人委員会というものはやはり各方面から中正な人が出ておられます。森永のミルクの会社の委嘱されたものではない中正な人と考えておりますので、適当なあっせん処置をしてくれるものだと確信をいたしておるのであります。
  44. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 五人委員会の問題ばかりをあまり長くやるのもどうかと思いますから、もう一言だけ申し上げます。と言いますのは大臣の御認識が大へん間違っておるように思いますから、念のために申し上げておきますが、五人委員会のメンバーはいずれもこれは社会通念から考えまして、おそらく中正公正な人であろうと私も思います。従ってそのメンバー個人々々に対しては別に異議を言うものではありませんが、その委員会のでき方といいますか、つまりできてくる経路、それと、今日におきましても民事事件の一方でありますところの被災者側は、五人委員会を全然認めていないのですが、一方が全然認めていういものを他の一方だけが認めて、それを一方的に何か解決案を出そうとしているのでは問題の解決ができるわけがないではありませんか。私は解決どころか逆にますます紛糾して、その糸口すら開かれないのではないかと思うのであります。ですからこの際、大臣はまずあなたの党の大橋君の意見を至急によくお聞きになること。これは法律的に、役所のやる法律の限界を越えておるという非常に明快な割り切った考えを同君は持っておると思いますから。その次にはできれば被災者同盟の代表にも至急に面談されることを勧めます。これは別に社会党でもなければ労働組合とも違いますし、どっちかといえば、保守系的な人がその中心におられるくらいで、被災者一万幾千人の中から大会を開いて選ばれた代表の人たちでありますから、そういう人たちに進んであなたがお会いになってそのほんとうの声をお聞きになる必要があるのじゃないでしょうか。あなたの部下の方だけの報告だけでは別に私はその報告が間違っておるとは言いませんが、その報告では、あなたの御認識が私どもが言うところの満足な御認識にならぬおそれがあるように思いまするので、一つそれくらいの労をとられても決して無意味ではありますまい。どうか五人委員会に対する政府の扱いが間違はないように、そして、また日本の行政史上に妙な悪例を作らないように御処置のほどをここに繰り返して切望しておきます。  それからこれはただいまの中川君からの御指摘にもあった問題ですが、大臣の先刻のお答弁を伺っておりますると、一般論としてはけっこうなお心がまえのように思いますが、しかし、これが末端の実施の面になりますと大臣のお考えとは似ても似つかぬことがままあるのであります。これはひとり中川君の引例した広島県だけでなく全国的にあるのです。私は千葉県の例を一つ大臣に申し上げておきたい。それは千葉県の市川市というところにある医療法人中山病院という脳病院についてであります。この病院には実は十月の十五日から従業員と病院の経営者の間に争議が起っておるのでございますが、このことについては私は個人的に厚生省医務局には数回御注意申し上げております。また医務局もおそらく千葉県衛生部あたりを通じて若干の調査を試みておられるのではないかと想像するのでありますが、実は私は本日大臣に御質問するために、昨夜その病院に参りまして、患者の寝ているところをこっそりと見て回ったのでありますが、昨晩のように寒い晩に、その精神病院の窓には、全然ガラスがはまっておらない。寒風の吹きさらしにまかせたままです。私を案内した病院の人に病院の申し分なるものを聞いてみますと、ガラスをはめておくと、患者がそれを割ったりしてけがをするおそれがあるからはめないとのことですが、これはもっともなところもあると私は思いますが、それなら窓には金属の格子がはめてあるのですから、格子の外側にガラスの設備をしておけば、患者が部屋の中から割ろうとしても割れないような設備はできるはずと私は思うのですが、全然やっておらない。そうしてある患者のごときは唐米袋一枚だけ着てブルブルふるえながら板張りの上に寝ておりました。全く人権じゅうりんもはなはだしいと思います。これはぜひ医務局あたりの医療施設をお扱いになる関係者が一度ごらんになる必要があると思います。それもいつ幾日に行くからというような前ぶれをしないで、いきなり行って、そういう事実を御認識していただく必要があろうかと思うのでありますが、当局にそういうようにいきなり断わりなしに行って、そういう病院の施設のありのままの姿を見てくるだけの御熱意と誠実さがおありになるかどうかということを、まず大臣からお伺いしたいと思います。
  45. 小林英三

    ○小林国務大臣 ただいまの千葉県の中山病院の問題でありますが、私は着任早々、自分のからだのできる限りあらゆる社会施設あるいは病院等の視察をいたしたいと思っております。まず最初厚生省所管の国立病院につきまして代表的なもの、今お話のような私立の病院につきましてもピック・アップして見る必要もあると存じます。そういう私立病院にいたしましても、厚生省の監督すべきところは十分監督いたします。不正の点があれば十分に調査いたしたいと思っております。
  46. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 大へん明快な大臣御答弁と思いまして私は意を強ういたしますが、最後のお言葉の中に、不正なことでもあればそれに対する処置をとるというお話でございましたが、この中山病院に関する限りは、施設のほかにもいろいろ不正なことがたくさんあるように聞いております。きょうは関連質問で、あまり長い時間御質問するわけに参りませんから、いろいろなことを申し述べることは差し控えますが、それはもう言語に絶することがたくさんあるようであります。それには、証拠物件もありまして、今朝も厚生省にお寄りして局長が御不在でしたから、医務局次長にその証拠書類の一部をお見せいたしておいたのでありますから、どうか政府の機関を通じてよくお調べの上、不正ありとすればきわめて厳重なる御処置を速急におとり願いたいと思います。  なおその病院に関することでもう一つ、これは保険局関係でありまするが、ここに保険給付をごまかしたと見られるような事実を列挙した書類があるのです。この書類によればごまかしたものは金額にいたしまして一ヵ月十五万円くらいに上るのじゃないかと思いますが、これは全くその一部にすぎないもののようで、おそらくは毎月この三、四倍の額が、ごまかされている見込みで、もし事実とすればそれだけの公金が詐取されているともいえるわけであります。この書類はこの場で保険局長にお渡しいたしますから、地方には保険局の出先の機関があるはずですし、それら機関を通ずるなり、あるいは局直接なり、こういう事実があるかないかということの御調査を至急に行われまして、調査の結果をこの委員会に御答弁いただきたい。大臣の御答弁はもうよろしゅうございますから、医務局、保険局等におきまして、中山病院に対する徹底的な御調査のほどを繰り返してここに強く要求いたしまして、私の質問を終ります。
  47. 野澤清人

    野澤委員 関連質問がだいぶ時間が多いので私の質問する時間がなくなりましたが、最後の締めくくりにごく簡単にお伺いしたいと存じます。  先ほど中川君の質問に対して大臣が、さすがは事業家の出身であると思われるような、今後の厚生行政についてのすべての行事に対しては十分な先手を打つべきであるという御名言を吐いております。これはいかなることでも必要な事柄でありますので、ぜひそうしていただきたいのでありますが、ただ過般の九月十日の社会労働委員協議会におきまして、厚生政務次官になっております山下春江君が当時こういう質問をしております。「全乳幼児の命をつなぐ主食中の主食、これしかないというものでございますから、厳重な食品検査をすみやかに行うためには、食品衛生法の改正が当然必要でございます。この前の協議会でも、吉川委員から、これはビキニの灰以上の惨事だと言われましたが、全くその通りでありまして、これはもうほんとうに重大な事件でございますので、すみやかに臨時国会を召集してこの食品衛生法の改正を行うという御意思かどうか、大臣から承わりまして私は他の委員に質問を譲りたいと思います。」こういう質問をしております。そこで川崎厚生大臣は次のように答えています。「食品衛生法の改正につきましては、改正すべきことを十分に認めておるだけではなしに、積極的に条項を洗っておるような次第であります。従いまして、臨時国会が開かれますれば、もとよりこれを提出をいたす所存でございます。」こういうふうにお答えになっております。おそらく新大臣に事務引き継ぎの際には、この問題も当然引き継がれたと存じますが、今度の臨時国会にはこの食品衛生法の改正案というものは全然提案されておりません。おそらくこれは先手でなしに、後手になったのだと思いますが、まだ就任されて日が浅いのでありますから、これもやむを得ないといたしまして、通常国会の劈頭にこれを出す御決心かどうか、この点を承わりまして私の質問を終りたいと存じます。
  48. 小林英三

    ○小林国務大臣 ただいまお問いの問題につきましては着々と準備を進めておりますから、通常国会には確信をもって提出できると考えております。
  49. 佐々木秀世

    佐々木委員長 午前中はこの程度にし、午後一時三十分まで休憩いたします。     午後零時五十八分休憩     —————————————     午後二時二十八分開議
  50. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員長代理 休憩前に引き続き会議を再開いたします。  都合により委員長が不在でありますので私が委員長の職を勤めます。  まず請願審査小委員長より報告を聴取することといたします。野澤委員長
  51. 野澤清人

    野澤委員 請願審査委員会における審査の結果を御報告いたします。  本委員会に付託になりました総件数は六十六件でありますが、慎重に検討いたしました結果、そのうち本院公報第二十号百七十二ページ以降に所載の日程第二、第三、第九、第十一、第十五、第十六、第十八ないし第二十、第二十二ないし第二十四、第二十九、第四十、第四十一、第四十二ないし第四十六、第五十、第五十九ないし第六十四、以上二十六件はその趣旨を妥当なるものと認め、採択の上内閣に送付すべきものと決しました。  以上御報告いたします。
  52. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員長代理 ただいまの小委員長報告通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  53. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員長代理 御異議なしと認め、そのように決します。     〔大橋委員長代理退席、野澤委員長代理着席〕     —————————————
  54. 野澤清人

    野澤委員長代理 次に、社会補償制度医療制度及び公衆衛生に関する件について調査を進めます。発言を順次許可いたします。長谷川保君。
  55. 長谷川保

    長谷川(保)委員 戦後十年たちまして、あの大きな血の犠牲でかちとりました民主主義の上に立ちました政治全般にわたりまして、ようやくリアクションの時代に来ていると思うのでありますが、そういう立場の中に厚生行政全体もまたはなはだしい影響を受けていると思うのであります。私は、民主主義政治の一番基本になるものは、国民の一人一人の生命を何よりも大事にするというところにあると思うのであります。この点について大臣の御所見を承わりたいと思います。
  56. 小林英三

    ○小林国務大臣 ただいまのお説の通りに、この厚生行政と申しますか、社会保障全般にわたりまして今おっしゃいましたように、人間一人々々が幸福な、愉快な、豊かな生活を営めるようにするということが厚生全般にわたっての目的であろうと思っております。
  57. 長谷川保

    長谷川(保)委員 今大臣のおっしゃいましたようにするためには、ことに私は行政の面では厚生省は一番第一線に立っている大事な省であると思います。そういうことであるならば、私はまず第一にこの厚生省全体の機構あるいは運営の仕方というものをあくまでも民主的にしなければならない、最も民主的にするという態度を失ってはならないと思う。ところがどうも最近のやり方というものはそういうものでない。先日のこの委員会でも私申し述べたのでありますが、どうもすべての厚生行政というものが、そういう国民の一人々々の生命を大事にし、一人々々の生活を幸福に豊かにしていくという立場をまず考えなくて、予算の問題を先にしてしまう。もちろん予算なしの政治というものはあり得ないのでありますけれども考え方自体が予算が先立ってしまって、国民の生活を守る、あるいは生命をことに大事にするという考え方があとになってくる、こういうように思うのです。こういうことであってはならないのであって私は新大臣の就任に当って、今ちょうど予算の編成期でもありますから、すべての考え方を本来の厚生行政のあり方に持っていく、つまり予算が先立つのではなくて、先に国民の一人々々の生活を大事にする。幸福な生活、豊かな生活、まずその基本でありまする、生命を何よりも大事にするという考え方の方が予算に先立っていくという立場を堅持していただきたい。そういうふうなことについての大臣の御所見をもう一度承わりたいと思います。
  58. 小林英三

    ○小林国務大臣 今のお説の通り厚生行政の比重というものはむしろ困った方、困窮な方に接する部面がきわめて多いのであります。従いまして、厚生行政を担当いたしております者は、大臣を初めといたしまして、すべてのこれに携わっておる者どもがきわめて民主的に国民に接していくということが非常に重大な問題であろうと思います。お説の通りと思います。それからば国全体として考えますならば、たとえただいまの鳩山第三次内閣は自由民主党というものの基盤の上に立ってできた内閣でありますし、自由民主党が高く政策として高唱いたしておりますいわゆる民生の安定だとか、あるいは社会福祉の問題であるとか、あるいは社会保険の問題であるとか、その他すべての社会福祉の問題につきまして、政策として高く掲げております以上は、これは政府全体として大いに取り上げていかなければならぬ問題であります。ただ国には財政というものがございますから、やはり予算というものも国の財政の許す限りそれを大きく考えていくということが必要でありまして、この仕事をしていく上におきましては、ちょうど事業に金が携わっていると同じように、やはり国の政治というものにつきましても予算が当然伴っていくべき問題であろうと思います。
  59. 長谷川保

    長谷川(保)委員 今の大臣のお考えは私は全く同感でありますけれども、そうなりますと、まず第一に私は民の声を聞くことについて厚生省の首脳部は率直であり、勇敢でなければならぬと思います。まず厚生省やり方と申しますか、その非民主的な現われが至るところに現われておることを次々に申し上げてみたいと思うのでありますが、第一に申し上げてみたいことは、最近厚生省に多くの国民の方が陳情に参ります。団体で参りますと、代表者が大臣なりあるいは次官なりあるいはまた局長に会いたいというのでありますけれども、最近のやり方を見ていますと、そういう場合には固く門を閉ざして衛視が入口を守って一切受けつけない。われわれがやむを得ずあっせんを頼まれて、行ってあっせんをしてあげようと、思うと今度は局長から課長まで全部逃げてしまう。きょうは局長、課長はまが来ておりませんが、この間私が行ったときは一人もいない。みんな逃げてしまう。こういうような態度はいけないと思うのです。私は率直に民の声を、ことに困っている人が厚生省に行くのでありますから、率直にお聞きにならなければいけないと思う。もちろん局長・課長さんたちがそれらの方たちに長い時間とられるということで事務渋滞をするというようなこともございましょう。さればといってその声を聞かないということは不届きだと思う。だから事務を渋滞しないように、この際私はそういう人たちの陳情を勇敢に聞くという態勢をおとりになる必要があると思う。ことに大臣の女房役として取っ組み合いをしても負けない山下厚生政務次官ができたわけです。この人などはこの方面のほんとうのヴェテランでありまして、私はあらゆる問題について陳情を聞くには持ってこいだと思う。こういうようなときでありますから、私さしずがましいことはもちろん申し上げませんけれども、もっと勇敢にまず民の声を聞く、陳情を受けるという態勢をおとりになっていただきたい。私はたとえできないことであっても、国民の不満、あるいは訴えを聞くこと、それ自体が一つの政治であると思う。ですからぜひそういう態勢をとっていただきたいと思う。これはもちろん以前レプラの方々が陳情したというようなことがありましてから、ただいまのような態勢をおとりになることがひどくなったと思うのでありますけれども、その事情はわからぬではありませんけれども、この点はもっとフランクに陳情をお受けになる態勢をまずとっていただき、それに対してはことに官僚的に上からおっかぶせるのではなしに、すなおに聞く、こういうふうにすることがいいことであると思うのでありますが、これに対して大臣の御所見を伺いたい。
  60. 小林英三

    ○小林国務大臣 政府が民の声をできるだけ聞くということは私は必要だろうと思います。ことにただいまお話のように、私ども厚生省はその必要があると思います。ただ問題は、役所の事務当局にいたしましても、われわれといたしましても、いろいろ多忙な仕事に追われておりますから、ただのんべんだらりと押し込んできたときに、場合によりましては今お話のようなこともあるのではなかろうかと思います。私はできるだけ国会議員の諸君が御帯同になりましたような場合におきましては、許す限りひまをさきまして新任以来いつでもお目にかかっているのであります。ただ意に沿わないような場合もあるかもしれませんけれども、仕事の許す限りにおいて民の声を聞くということは、私はきわめて必要なことではないかと思う。ただ陳情というものにはやはり形式的に流れるものがたくさんある。民の声を聞く以上は民の声をほんとうに聞きたいものだと思います。従いまして、陳情をなさる方々がおいでになるときには、陳情の中にあります要点だけは簡単にすぐわかるように陳情書の上にもピック・アップしてもらうとか、面会時間等もきわめて簡単にやっていただく要領を植え込んでもらうというようなことが私は必要ではなかろうかと思います。
  61. 長谷川保

    長谷川(保)委員 ぜひそういう態勢をおとりになって、今日行われておりますような厚生省の民の声を聞かない、衛視のバリケードでも築くような態勢は一つ改めていただきたい、明朗な厚生行政をやっていただきたいということをまず初めにお願いしておきます。  それから先日なさいました大臣就任のごあいさつを拝見いたしましても、またただいま午前中に伺いました大臣の抱負にいたしましても、私ども大いに傾聴をしたので為りますが、その中で大臣は桂会保険、医療保障の問題、結核の問題、社会福祉の問題等々を取り上げられておられました。多分次の通常国会ではこの社会保険の問題と医薬分業等々に関する問題、ことにその中の薬価の問題等が相当大きな問題として私どもが取っ組む対象となると思うのであります。この社会保険、ことに医療保障の問題につきましては、直接国民の生命に関する問題でありますから、この対策につきましては、先ほど申しましたように私はほんとうに国民の生命をまず大事にするという考え方の方が、財政、予算を無視せよというのではありませんけれども、それを先にするという考え方よりも先立たねばいかぬ、そういう改正をなさらなければいかぬと思うのでありますが、新聞紙上いろいろ大臣が御就任なさってから後も、新しい社会保障、ことに医療保障の健康保険国民健康保険等に対しまするお考えが発表されておりますけれども、まだ正式には私ども伺ってありませんので、大体どういうふうな荒筋の社会保険の改正をなさるか、この際荒筋だけでけっこうでありますから、承わらしていただきたい。
  62. 小林英三

    ○小林国務大臣 私が就任いたしましてから、私みずからその内容等につきまして新聞紙に発表したことはないのであります。とにかく国民健康保険の問題にいたしましても、できるだけ早く、むしろ強制という方にまでも持っていく、健康保険にいたしましても今その余恵を受けていないような部面にまでも、いわゆる国民皆保険といいますか、こういう方面にまでもできるだけ早く持っていくような方向に進みたい、こう考えておるのであります。
  63. 長谷川保

    長谷川(保)委員 大きな問題は社会保険、ことに政府管掌の健康保険の赤字対策の問題でありますけれども、それについては大体どういうような構想をお持ちでありましょうか、その大綱だけを教えていただきたい。
  64. 小林英三

    ○小林国務大臣 ただいまの御質問、ちょっと私聞き漏らしましたが——。
  65. 長谷川保

    長谷川(保)委員 もう一度申し上げましょうか。健康保険の財政の赤字の対策ですね。それがおそらく最も重要な問題の一つになると思うのです。その赤字の対策について現在持っておる赤字だけではなくて、将来どうやっていくという根本対策があると思うのです。すでに厚生当局では大体の腹がきまっていると思うのです。どういうようなことになっていましょうか、ごく荒筋だけでけっこうでありますが、どういう方針で臨まれるか、伺いたい。
  66. 小林英三

    ○小林国務大臣 健康保険の赤字という問題は、御承知のように二十九年度におきましては、約四十億円の赤字でございます。三十年度におきましては七十億円の赤字が出まして、これらのものは行政措置によりまして六十億円に圧縮いたしました。そしてこの六十億円につきましても、そのうち三十億円というものは財政措置によりまして一般財源から繰り入れたのは御承知の通りであります。なおこの六十億円のうちの半分は保険料の料率の引き上げ、あるいは標準報酬の引き上げ等によりまして措置をいたし、残りの三十億円と二十九年度の赤字の四十億円の七十億円というものが七年の間毎年一般会計から十億ずつ繰り入れられて処置するということにいたしたことは御承知の通りであります。そこで明三十一年度におきましても、少くとも七、八十億円の赤字が生まれてくるだろう。こういうことは常識的に考えられるのでありましてこの赤字をこのままで進んでいくということになりますと、再び先ほど申し上げましたようないろいろな困難な問題が生じて参るのでありまして、もうこの辺で健康保険の赤字対策というものを抜本的に何とか解決していかなくちゃならぬことに直面しておると私は考えるのであります。そこでこの問題につきまして厚生省の法的の社会保険審査会等につきましても自発的な一つの意見を、大臣のところに出しておられます。それからまた一方法律的ではございませんけれども七人委員会というものがそれぞれ一つの意見をお作りになりまして、われわれのところにいろいろの赤字対策につきまして申し出、御意見があるのであります。私はこういうような貴重な御意見をしんしゃくしながら、明年度からの健康保険に対する赤字対策を講じたいものだと、目下懸命に努力をいたしておるのであります。
  67. 長谷川保

    長谷川(保)委員 そうすると、それじゃもっと率直にお尋ねいたしますが、今大臣のお考えとしましてはやはり健康保険の医療給付等につきましては一部負担を行う、また他の面では国庫補助を行う、こういうように解釈いたしましてよろしゅうございましょうか。大臣の御方針を承わりたい。
  68. 小林英三

    ○小林国務大臣 来年度想定されておりまする八十億円からの赤字をどう処置していくかということは大きな問題であります。もちろん私の考えといたしましては、国庫の補助を相当量出してもらう、その他の問題につきましては一部被保険者といいますかあるいは事業主といいますか、とにかく関係者に負担をしてもらうというようなことの構想を考えております。いずれにいたしましてもこれは一時のがれの対策ではならないのでありますから、十分にこの問題につきまして、財政当局の態度もございましょうし、また私どもの大きな希望もございまするし、また一方国民保険そのものの実態というものも考えまして十分に検討いたしまして、通常国会あたりまでには私どもの決定をいたしまして、皆さんの御審議を仰がなくちゃならぬと考えておる次第であります。
  69. 長谷川保

    長谷川(保)委員 私は最近の全国国立療養所、公立結核療養所、つまり長期の療養を要する病院の入院患者の実態を見て参りまして、御承知のように昨年厚生省でお出しになりました御調査の結果、入院治療を要する結核患者が百三十七万人あるという数字が出ておる。全国の結核療養所のベッドは公私立全部合せまして二十万足らず。こういうことであれば当然全国の結核療養所のベッドはいつでも全部満床であって、しかもたくさんの入院を希望する者が待っていなければならない。しかるに御承知のように、全国の結核療養所の、ごく優秀な一部の病院を除きましてはベッドがあいてきている。この空床がどういうようになっておるかということについては後に事務局の方から正確な数字をいただきたいのでそのことをお願いしておきますが、こういうことが行われているということは何かそこに大きな間違いが政治的にあると思う。こういうことはあり得ないと思う。もちろん患者が入院を以前のように望まないというのはいろいろ理由があると思います。たとえば化学療法の進歩とか、またそれをいいかげんに扱っているとか、いろいろあると思いますけれども、大筋といたしましては約二十万足らずのベッドが今百三十七万という入院治療を要する患者を前にしてあいておるということは、これは大きな間違いがあるのではないか。ことに、私はこのことについても事務局にあとで資料を要求したいのでありますが、入院しております人がつまりどういうように医療費を払っているかという種類、これは私が一病院の実態を調査してきましたのを申し上げるのでありますが、これはある非常に有力な病院のでありますが、ここでは自費患者がわずかに全体の六%、それから国民健康保険のの患者はわずかに四%、健康保険の患者が四九%、生活保護の患者が三九%、予防法の患者が二%、こういう数字であります。しかもなお内側を掘って見ていきますと、健康保険の患者では家族入院はほとんどない。また生活保護で入っております患者のうち、入院料の一部負担の未払いが三〇%ある。しかも徴収については相当に勤勉にいたしましても三割の未払い。それで一部負担を強く要求しますと患者は退院してしまう、こういう状況が現われているのであります。そうして自費患者も国保の患者もずっとこの一年くらいのケースを見ていますと入院している率が順次下ってきている。言いかえますと、つまり長期の療養を要する結核患者が自己負担があるために入院治療ができないということです。そういう傾向なんです。そういう傾向がただいま申しました結核療養所のベッドがあいてきたという状況であるとしますればこれは大へんな問題だと思うのです。つまり本来すべての国民が当然健康な生活を営む権利を有する、従って病気の場合には治療を受ける権利を有するわけでありますけれども、現実の問題としてそれが受けられなくなってきておる、こういう基本的人権が侵害される政治が今日厚生省において行われているということになってくる。でありますからこれはきわめて重大だと思うのです。今日地方の社会福祉事務所べ参りますと、もうケース・ワーカーは要らないというのです。残念なことに社会局長がお見えにならないのでありますが、もちろんこれはお伝え願いたい。ケース・ワーカーは要りません、なぜかというと、もうぴしぴしと厚生省できめた基準、たとえば生活扶助であれば一人千七百円か幾らでありますか、それをきちっとはめて、もうちっとも融通がきかない。実情を見て相談に乗ってやるということがない。医療扶助でもそうです。その低い生活費を除いた全部を取り上げてしまう。だから実際の問題としては生活ができない。だから入院をさせられない、治療を受けさせられない、こういうことであります。ですから何も小むずかしいことはない、きちんと初めから型を作っておいてそれをはめればいいのでありますから。ケース・ワーカーが社会福祉事務所に要らないということは驚くべきことでありますが、これは大臣もよくお考えをいただきたいのであります。最近社会福祉事務所の社会福祉主事と申しますか、ケース・ワーカーと申しますか、そういうたぐいの者に警官の古手、税務署の吏員の古手というものが目立ってふ、えておる傾向がある。きょうの朝日新聞にも横山泰三の漫画で、税務吏員に警官を使う、もしそれが自衛隊になったらタンクに乗って税金を取りに来るだろうという漫画です。自衛隊が税務吏員になるかどうか知りませんけれども、社会福祉の第一線でありますケース・ワーカーが、もうその必要がなくて税務署の古手、警官の古手で、一部負担を厳格に取り上げる、生活保護の適用についてはもう血も涙もないという適用しかできない、こういうことになって参りますれば、私は重大だと思うのです。その半面厚生省自身が経営になっております社会事業大学の卒業生が、今年就職口がほとんどないじゃありませんか。どういうことでしょうか。一番ケース・ワーカーの専門家が出て参ります社会事業大学の卒業生の就職口がない、こういう事情なのです。これはどこかに大きな間違いがあり、今日の厚生行政を根本的に考え直さなければならぬときが来ていると思うのです。  先ほどお話の社会保険の医療給付について一部負担をさせるということは、私がただいま申し上げたような結核療養所の内部の傾向ということを考えて参りますと、これは非常に考えなければならぬ。今日国民として当然の基本的な権利であります医療も受けられない傾向が現に出てきている、結核療養所のベットがあいてきている、しかも一方には百三十七万の入院治療を要する人間がいるという厳然たる事実がある、こういうことであります。私がただいま申し上げます一部負担の問題は、ほんとうに考えなければならぬ問題だと思います。これは今の健康保険のみならず、生活保護法におきまする医療扶助の適用についても同様であると思います。この点につきまして軽々に一部負担をさせる制度を作るということはとんでもない話だと思いますが、こ、ういう点について大臣のお考えはどうでしょうか、もう一度お伺いいたします。
  70. 小林英三

    ○小林国務大臣 今の赤字対策に対しまする方法でございまするが、私は一部負担といたしましてもいろいろと方法があると思うのであります。今のお話のような全国の医療を受けるという人が多少の負担によって、たとえば結核にいたしましても、それが出せないから医療を受けることができないというような状況は、まことに遺憾千万なことであります。いずれにいたしましても、事業主にいたしましても、あるいは被保険者にいたしましても、医療関係者にいたしましても、保険者にいたしましても、とにかく今日の赤字財政というものがここまで参っておりまして、これをどうして解決するか、あるいは全額国庫負担にすべきであるかというような問題につきまして、私はそこに研究すべき大きな問題がまだ残されておると思いますから、こういう問題につきましては慎重に検討いたしまして、いずれ御審議を仰がなくちゃならぬと思います。
  71. 長谷川保

    長谷川(保)委員 こういう点は、私は前にも申したのでありますけれども、どうもこの社会保険の赤字については、その対策について厚生当局はノイローゼだと思う。この赤字ができて来たということ、これについては十分改革をしなければなりませんけれども、しかしこの裏に、医療の非常な進歩によりまして国民の死亡が非常に減って、平均余命が非常に延びてきているという、こういう実にとうといことがあるわけです。こういう非常に積極的なとうとい方面を見ることを忘れて、赤字の解決にだけ取っ組んでいる。ある方面では、前の保険局長やり方が、保険財政全体について十分な責任を持たないでやった、無責任だといって非難をしている人がありますけれども、私はまだまだ足らない、もっと積極的にやっていいと思う。一方にこれだけ国民の平均余命が延びてきたということは、これはもう実にとうといことである。この点では私は厚生省は大功績をあげていると思う。こんな赤字なんということに変にノイローゼになって追い回されている必要はないと思うのです。もっともっと積極的に出るべきであってこういう問題は勇敢に国庫負担を打ち出すべきだと私は思う。国民の生活の水準、もっと別の言葉でいえば、収入と日本の医学の水準、これが非常に離れてきたというところに大きな原因があるのであります。日本の社会保険の悲劇がある。それでありますから、それを埋めていく。それならば国庫負担でいくということに当然考えられる。先日も当委員会で申し上げたのでありますけれども、私は中国と朝鮮を先般見に参りまして、びっくりした。革命後わずかに六年、しかも日本よりずっとおくれておる国であります中国、戦争が終ってわずかに三年、全く灰じんの中から立ち上っております朝鮮民主主義人民共和国、いわゆる北鮮、これらの国が、医療の制度としては、なおるまで労働保険で見る、あるいはなおるまで国で見る。日本のような二年で切るとか三年で切るということでないのです。私は感心しました。同時に私どもの今日までの考え方については、相当これは根本的に改めなければならぬということを考えたのであります。今の日本の制度でございますと、御承知のように療養期間二年あるいは三年にしてその人がどんなに病気がひどかろうと、困っていようとかまわないで、断ち切るというのが日本の医療保険のやり方であります。これは道理として私は違っていると思うのです。病気の最中に保険による医療給付を打ち切る、こういうふうなことは、どうも道理に合わない。病気をしている者はなおるまでいよいよめんどうを見ていくという制度でなければいかぬと私は思う。今の健康保険国民健康保険はもっともっとりっぱなものに改善すべきである。一番先に申し上げましたように、まず予算とか会計とかいうことが先に立って、直接国民の生命を相手としますこの医療保険において、その生命を大事にするということが先に立たないで、財政が先に立ってしまうというような、けちな考えを持ってはいけない。今ここに医療保険制度改正するならば、民主主義社会の道理に立ったものに改正する必要がある。だからむしろ私どもはなおるまでという制度に変えるべきだということを考えているのであります。従ってそうやって参ります場合には、今日よりもはるかに国庫負担を重くすべきであると思う。医療費の一部負担というようなけちな考えを持つべきじゃない。この国庫負担をある程度にするというお話でありますが、どの程度になさるおつもりであるか、一割とか二割とか、いろいろお考えがあると思うのでありますが、それらのことが御発表できる段階にきておりましょうかどうか。発表できる段階でありますならば、お漏らしをいただきたい。
  72. 小林英三

    ○小林国務大臣 今の、予算よりも先に、すべての病人を金にとんちゃくなしに包容してこれを治療すべきであるというお考え方は、これは理想でありますし、そういう理想に国の力というものが到達すべきことを希望するものでありますが、やはり今日再建途上にありますわが国の限られた財政面の中から打ち出していくのでありますから、残念ながら今の御意見の通りには参るまいと私は思います。なお赤字財政に対する措置といたしまして、国にどのくらいな負担をさすかという御質問でございますが、この問題も、あらゆる観点から考えまして、目下財政当局並びに省内とのかね合いにおきまして、きわめて慎重に検討中でございますから、いずれ御審議を願う時期もあるかと存じます。
  73. 長谷川保

    長谷川(保)委員 私は厚生行政全般に対する考え方として予算の問題あるいは生命の問題等を取り上げたのであります。先ほど申し上げましたように、あの灰じんの中からようやく立ち上ろうとしている朝鮮、あるいはあの大革命後の中国がそういう医療の制度をやっているということ、これはアジアの国々の一つといたしまして、考え方によってはそういうことができるのだという実例がそこにある。だから厚生行政というものは、私は資本主義的な考え方できのうもどなたかおっしゃったと思うのでありますが、国民の生命よりも先に金のことを考える、経済のことを考えるということが間違いだということを私は主張しているのでありまして、隣の国でやっている、しかも日本よりもはるかにおくれております国でやっている。だから結局生命を大事にするかどうか、もっと言いかえれば、民主主義の考え方にわれわれが徹するかどうかによってこの制度がりっぱ行われる。今日われわれの国で直接の費用だけでも防衛費には年額千五百億円の金を使う。けれども、現在直接生命を守っております健康保険や医療扶助にその金が出ない。この考え方に、根本的に考え直さなければならぬ問題があるのじゃないか。それが先ほど申しましたような結核療養所のあきベットの問題に端的に現われている。こういうことを申し上げておるのでありまして、きょうは時間がありませんから、大臣の大ざっぱな御方針だけ伺うことにして、この問題は他日またいろいろ御質問申し上げることにいたします。  ただ大臣の深い御考慮をわずらわしたいと思う次第であります。  次の問題としまして、私は、大臣がかわるたびに恒例のように伺うのでありますが、今日、日本の社会福祉事業は公的なものと私的なものと二本建てになっでおりますが、私設の社会福祉事業について、大臣はどうお考えになっておられるか。どういうお考えで今後対処されていかれるおつもりか、御方針を承わりたいのであります。
  74. 小林英三

    ○小林国務大臣 今の御質問、もう少しかみ砕いた趣旨でお願いいたしたいと思います。
  75. 長谷川保

    長谷川(保)委員 現実を見ておりますと、私設の社会福祉事業、これは児童福祉施設も同様でございますが、こういうものに対して、厚生当局やり方が非常に冷たいと思う。そして、監督の面だけが非常に強く出まして、これを育て上げていくという方面が非常に少いのであります。最近、ことにそういう傾向が強くなりまして、私設社会福祉事業関係者から、全国社会福祉事業大会においても、あるいは児童福祉大会においても、毎年、ことに最近においてはなはだしき不満が出ておるのであります。また現実私ども見ておりますと、そういうことが非常に強いのであります。これに対して、公設の社会福祉事業あるいは児童福祉施設と全く同様に、私設の社会福祉事業や、児童福祉施設を扱いまして、いやそれ以上にめんどうを見てやるということでなければならないと思う。公的な社会福祉事業や児童福祉施設は、それとしてよいところがあります。たとえば、設備等が非常によくなっておる。私設のものは、そういうものに金を投ずることができません。従って、設備が公的なものに劣る。しかしながら、私設の経営者は、こういう方面の非常な熱情家であります。生涯を捧げた人であります。従って、私設の社会福祉事業、児童福祉施設等では、その設備の不足を補って、この方たちは英雄的に、献身的にその事業の対象である要保護者、要保護児童等を非常に親身になって世話しております。従って、私はこういう献身的な方々の事業に対して、厚生省は手厚くこれを遇すべきだと思います。ところが、事実は監督の面だけが非常に強くありまして、不平不満が絶えないのであります。こういう点に大臣は今後どういう方針をおとりになるおつもりか。まだ就任の日が浅くて、十分なお考えがなければないでけっこうでありますが、大臣の大体の御方針を承わり、全国のその関係者に大臣の御意向を伝えたいと思うのであります。
  76. 小林英三

    ○小林国務大臣 私は、公的であろうと、私的であろうと、日本全体の社会福祉の問題について健闘しておられる機関であります以上は、これは厚生省全体としまして、監督とか、そういうことは別問題でありますが、そういう事業に対しては、これは一視同仁に見るべきものであろうと考えます。まして厚生省の事務当局等が、かりに補助を出してやるからというような気持でそれを軽く見るようでありますれば、これは間違いであると思います。やってもらっているというようなつもりで臨むのが、私は、当然かと考えます。
  77. 長谷川保

    長谷川(保)委員 大臣のお考えに私も同感でありますが、大臣は事業の経営者として十分御判断をいただきたい。これらの社会事業あるいは児童福祉事業、こういうものの事務費の内訳は、大臣にもそれを聞いていただくといいのですが、時間がないから後に事務当局からお聞きいたしたいと思います。この事務費には、その職員の健康保険1これは今度は強制適用でありますが、失業保険、労災保険、こういう社会保険の保険料が入っておりません。火災保険の保険料も入っておらない。あるいは最近問題を起した公務員の期末手当、超勤手当等が行われて、当然なことだと思いますけれども、この期末手当も超勤手当も退職積立金もない。施設の減価償却もない。こういうないないづくしのものをもって事務費としている。こう、いう状態になっていると思いますけれども事業経営者であられる大臣として、こういうことが合理的と考えられるかどうか、御所存を承りたい。
  78. 小林英三

    ○小林国務大臣 人件費の補助等につきましては、公私の区別はないはずでありますが、なおこの問題につきましては事務当局から一応説明をさしていただきます。
  79. 高田浩運

    高田(浩)政府委員 今お話のように人件費の補助等につきまして、俸給等は算定の基礎になっておりますけれども、たとえば超過勤務手当でありますとか、あるいは期末手当でありますとか、あるいは保険料でありますとか、そういうものは補助の算定基礎になってないのが現状でございますが、これはまさしく大へん遺憾なことであり、不十分なことでありますので、今後ともこれが計上については当局として十分努力をいたして参りたいと考えます。
  80. 長谷川保

    長谷川(保)委員 私が先ほど申しました厚生省の政治のやり方が非常に民主的でないという現われがここに出ている。これは長年児童福祉大会あるいは社会事業大会で要求されている問題である。それがいまだにできない、今度の予算にぜひこれを入れてもらいたい。こういうものは、せっかく事業経営者であられる大臣ができたときに入れてもらわなければ、こういう事務費を押しつけているのは無理です。だから非常な無理をしている。減価償却でもそうです。減価償却がない。これではいけないと思うのです。社会保険もない。火災保険もない。これは私が直接関係した仕事でありますけれども、病院をやっている。その病院には、山の中の結核の療養所でありましてよそから看護婦を入れることはできない、自分の家で看護婦を養成しなければならない、看護婦の養成学校を作っておる。自分の家で使う看護婦だけを作っておる。看護婦になってしまえばもちろん自由でありますから、どこべ行くか知れませんが、それをしなければ病院の経営ができない。ところが看護婦の養成をしているその施設費は事務施設費として見ない、こういうことであります。それでは事業経営はできない、こういうところに厚生省はもっとそういう社会事業を—私たちのやっているのも社会事業でありますけれども、もっと社会事業を大事に育成していく。先ほど大臣のおっしゃったように、やってもらっているのだという考え方になってもらいたい。根本的にお考え直しを願いたい。  同様にいわゆる児童福祉施設の措置費の問題があります。この措置費の中のまかない費の内訳を見ていきますと実にかわいそうだ。これは先刻参議院の方でも御質問があったことでございまして、大臣も御承知のことだと思いますから、ここでは詳しくは申し上げませんが、この内訳はどういう内訳でまかない費をやっているのか、この陳情者たちの意見によりますと、子供にくれます蛋白として鯨の肉を買う金の計算がしてある、それだから豚や牛肉のこま切れもくれられないのだという。ここでまた私は先ほどの事務費の内訳とこの児童措置費のまかない費の内訳を後に資料としていただきたいと思いますが、これはかわいそうです。一日のまかない費全部が五十七円六銭である。子供でも五十七円大銭でおやつ一つくれる金が入ってない。これでは養護施設はやっていけません。この陳情書を見ますと、子供が学校に弁当を持っていく。ところが内容が悪いために恥かしがって、仲間の中で一緒に弁当を食えないで隠して食べる。こういうかわいそうなことにしておけば、養護施設におりまする親のない子供たちは一体一人前の人間として育つでしょうか。私はこの点をやはりもっと考えていただかなければならないと思う。これはそれぞれ個人の人間としての基本人権であるばかりでなく、国家全体としての将来のためにももっともっと考えてやっていただきたい。あるいは児童福祉施設に入ってくる者は、親の看護よろしきを得ない者が入ってくる。当然栄養失調、栄養不良だ、それならば栄養不良を回復するために何とか見てやらなければならぬが、全然見てない。これではいけませんから、私は五十七円六銭という児童一人の一日のまかない費を一つ考え直してやっていただきたい、このことをお願いする次第です。  時間がありませんので、次の問題に移ります。同様に今度厚生省の要求しております予算書なるものを拝見いたしますと、あの未亡人家庭のために非常によい働きをしておる母子相談員の旅費がきわめてわずかであって仕事ができない、こういう事情になっておりますが、この母子相談員の旅費を増額するようにしてもらいたい。あるいはまた固めて申し上げますが、季節保育所の予算というものが、昨年から全然なくなっちゃっている。これは農繁期におきまする季節保育所なんというものは非常に大事だと思う。なぜなくしちまったのか、私は理解ができない。こういうものをふやしてもっと子供の安全を考えてやってもらいたい、これを復活するようにはならぬか。  また今日地方によってはせっかくの母子福祉資金が地方の財政の窮迫のために使い切れないという事情のところもあります。そのために戦争犠牲者であります母子がせっかく母子福祉資金の恩恵に浴し得ないところがあります。だからこれを全額国庫負担にするというようなことはできないか。あるいは就学資金あるいは就業資金、それを借りました本人が死んでしまったというようなときに、これを何とか無料にしてやるというような方法はできないものか。こういうように母子行政等につきまして一応固めてお伺いしたいと思います。簡単にお答えを願います。
  81. 小林英三

    ○小林国務大臣 ただいまお尋ねの農繁期等におきまして季節的に設けます保育所の問題でありますが、御指摘のように三十年度は廃止したのであります。今年度は二千四百万円ばかり要求してありまして、大体全国に約八千カ所以上設置いたしたいという考えでおるのであります。なお母子の問題につきましては事務当局から御説明いたさせます。
  82. 高田浩運

    高田(浩)政府委員 先ほどお話になりました骨子相談員の問題でございますが、これについてはお話のように旅費が不足でございまして、これをふやすという問題がありますが、それと同時にこの母子相談員は平衡交付金に入っておりまして、その関係上なかなか意のままに行われていない点もございますので、これを平衡交付金からはずしてそのための補助金として計上するという問題もございます。いずれにいたしましても、この母子相談員は母子福祉のいわば根幹的な要員としてお働きをいただいておるのでございますので、これらの問題については今後鋭意努力をして解決に邁進をしたいと考えております。  それから最後にお話のありました母子福祉資金の貸付の問題でございますが、これもお話のように国が五一割、地方府県が五割、合せまして貸し付けるという仕組みになっておりますけれども地方財政の困窮等もからみまして昨二十九年度におきましても相当額の国の予算の余りを生じましたし、三十年度におきましてはかかる事情にかんがみまして、鋭意府県等に話し合いをして督励をいたしておりますけれども、これも今日の率直な見通しとしては、残念ながら全部を消化するというところまでは至らないのではないだろうかという見通しをつけておりますが、一方しからば借り受けたいという要望に対してどのくらいこたえられておるかということでございますが、これは正確な数字はもちろんわかりませんけれども、大体の抽出的な調査をいたしましたところによりますと、二十八年度において五〇%、二十九年度において六〇%程度しか要望に応じ切れていないという実情でございます。一方においては国の予算が余り、一方においては地方のあるいは借りたいという要望に対して半分ないしこれにちょっと開いた程度しか応じ切れていないということに、やはりこれは負担率の問題その他その辺のところに根本の問題があるのじゃないかというふうに考えられます。この辺は予算なり国の金の使い方全般とも関連いたしますけれども事柄の性質上十分考えなければならない点と考えております。
  83. 長谷川保

    長谷川(保)委員 今の五〇%、六十%というのは、実は机の上の五〇%、六〇%です。つまり要望はうんとあるわけです。ただ、それをほんのわずかずつ持ち出して県の方に申達している、そういう状態なんですね。だから実情は、あの借りたいという要望にすれば五〇%、六〇%、あるいはそれ以下であるかもしれません。そういう事情でありますから、今日非常に母子に喜ばれております。また母子の生活をささえておりますこのいい制度をぜひとも生かすように、大臣におかれてこの制度をもう一歩ほんとうに考えてもらいたい。もし当局の方でお考えにならなければ、私どもの方で議員立法で出しますけれども、ぜひ当局でお考えになって下さい。  時間がありませんから進みますが、次は生活保護の問題にからみ、また引揚援護局の問題にからみまして朝鮮人の諸君の問題であります。御承知のように今日日本におります朝鮮人の方々の多くの者は、実は戦争中に日本の戦争の遂行のために無理やり朝鮮から連れてきて、日本の鉱山あるいは工場等々で働かせた方が多いのであります。それが今戦争が済んで、さあ日本が戦争に負けた、日本の経済も非常に困るというところから、この方たちが非常に失業が多い。何とかして生きていかなければなりませんから、結局生活保護法にたよる、あるいは万やむを得なければ、生活保護も適用してくれなければ、おのずから正しからざる職業に落ちざるを得ない、こういう実に気の毒な事情になっていることは大臣も御承知の通りでありまして、たとえば大村収容所におきまして十二月五日千六百八十五人の朝鮮人が収容されておりますけれども、そのうちの三百七十人は終戦前に日本におった人です。またその他の諸君にしても、不法入国、密入国してきている諸君にいたしましても、その多くの者がかつて日本におった人々であります。戦争前におった人々であります。こういうような事情でありまして、今日これらの気の毒な人々が生活に因りまして、生活保護を受ける。これに対しまして、最近生活扶助の適用について非常に厳格な態度をとり、最近は警官を動員してその実情の調査等々をしているようであります。これは非常に残念なことであります。ことに平壌におきまして、向うに残りました日本人で帰国したいという方々を、数は少数ではありますけれども、朝鮮人民共和国の政府が非常に好遇しておられる、至らざるなき保護を与えておる、こういう実情を私は拝見して参りました。驚くべきことには、婦人たちが間もなく日本に帰るのだからといって、私どもが着ておりますような毛織物の製品、これは朝鮮の人々はほとんど着ておりません、そういう製品をもってツーピースの婦人服を作って、日本に帰って恥かしくないようにしてやるということまで心を入れて保護して下さっている。私はこの保護の仕方について頭が下ったのであります。しかるに在日の朝鮮人の皆さんに対しましては、残念ながらしごく冷酷な態度がとられていることは、日本人として私は恥かしいと思う。ことに金日成朝鮮人民共和国首相は、できるならば在日の六十万人の朝鮮人を全部引き取りたいと言っている。ことに生活の困難をしている方々、失業者、病人、それから学資がなくて困っている学生向うの大学は全部無料で小づかいまでくれますから、向うにくれば勉強がしやすかろうというわけで、こういう人たちを全部引き取りたい、そういうような生活困難者や失業者を引き取らしてもらいたい、こういうように申しております。これは向うにおります日本人の引き揚げと関連いたしまして引き取りたい、また朝鮮人の方々は帰りたいとしきりに言っていらっしゃる、こういう方々をお帰しすべきである、お帰りになるための便宜をはかるべきである、こう思うのでありますが、大臣といたしましては、どうお考えになりますか。これはもちろん外務省の問題でもあり、入国管理局の問題でもございます。けれども同時に引き揚げの問題といたしまして、また生活保護に関連する問題といたしまして当然厚生省の問題でもあるわけであります。こういうように帰りたい、向うでは引き取りたい、こうおっしゃっておられまするけれども、これはお帰しになるのが当然であると思われるし、また当然であるとしますならば、そういう手を打っていただかなければなりませんが、そういうことについて大臣はどうお考えになりますか、御所見を承わりたい。
  84. 小林英三

    ○小林国務大臣 お話のように現在日本の中におられまする朝鮮人の方たちの数は、大体五十五、六万だと考えております。これはもちろんただいまおっしゃったような関係が出て参りますが、戦争前までは多くの方はわれわれの同胞として日本の内地に住んでおった方もたくさんあったのであります。終戦後日本は敗戦し、また朝鮮も独立いたしたというようなわけで、日本人ではなくなったわけであります。現在大体日本人に適用しております生活保護に準じまして、これらの五十数万人のうちで日本人と同じような待遇をして、生活保護をいたしております者が約十三万数千人おるのであります。これはわれわれが貴重な国家の費用を使って、われわれ同胞の日本人に生活保護をいたしておる。パーセンテージよりもはるかに高いのであります。しかしこれもいろいろな議論があると思いますけれども、私が申し上げましたような関係で今日外交上の問題あるいは人道上の問題いろいろの問題がございまして、今日やはり日本人と同じように生活保護の対象にもいたしておるわけであります。しかし今お話のようなこの五十数万人の朝鮮人の諸君が全部帰りたいというように希望しておるかどうか、これは別問題といたしましても、こういう日本から朝鮮に帰すというような問題につきましては、これは私が厚生大臣として答弁する限りじゃございませんけれども、私の常識から考えますと、これはいわゆる日韓の外交交渉の進捗に従いまして、決定すべきじゃなかろうかと考えるのであります。
  85. 長谷川保

    長谷川(保)委員 御承知のように日本の政府の従来の方針というものは、これは人道上当然でありますけれども、本人の意思に従って、たとえば中国の問題でありますと、台湾へ帰るか、中国へ帰るかということは、本人自身の意思に従って決定しております。御承知のように朝鮮も不幸にいたしまして、いわゆる韓国と朝鮮と二つに分れておる現在、この在日の朝鮮人の方々の中に北朝鮮に帰りたい、朝鮮人民共和国に帰りたいという希望がぼつ然として起っております。非常に盛んであります。そういう事情でありまして、朝鮮に帰りたいという人は朝鮮に、韓国に帰りたいという人は韓国というように、私どもといたしましてはいわゆる内政不干渉の立場に立ちまして、当然それぞれの意思に従って帰すべきであると私は思います。これは当然であり、また従来政府がやってきた方針であります。でありますから、今日北朝鮮に帰りたいという方々について、向うでは引き取りたいと言っておるのでありますから、それに従って帰してやる。これは日本人に比べて非常に生活保護率の高いところに朝鮮の方々を日本の政治や経済の状態が追い込んでおるのです。でありますから私は、これについて今生活保護を与えないで、むごくもぎ取るというような態度でなしに、積極的にこれらの人々の意思を尊重して、朝鮮ではいつでも日本人を帰したいと言ってあらゆる準備をしておるのでありますから、日本もまた人道上から申しましても、朝鮮に帰りたいという方々はいつでも帰せるという態勢をとり、こちらは船を持っておるのでありますから、積極的に帰してあげるという態度をとるべきである。それを政府の一部の人たちは、いや自由に帰れるのだ、勝手に帰ったらいいでしょうという態度です。とんでもない話で、今生活保護を受けておる人が十三万人もいるという状態において、彼らに勝手に帰れといっても帰れるはずがないのであります。戦争のためにこちらへ連れてきた人が相当数あるのでありますから、それがあってもなくても、人道上の立場に立って、日赤等とも十分に話をいたしまして、これらの方々は赤十字の純粋な精神から申しましても、帰りたい人はこれをお送りすべきだ。でありますから、私は厚生大臣としまして当然これについての御方針があってしかるべきだと思います。聞くところによりますと、牧野法務大臣はこの間法務委員会において帰すという態度を明白にせられたということであります。厚生大臣としてこれらについての御方針が当然あってしかるべきだと思います。一つお教えを願いたいと思います。これは全国の六十万の朝鮮人の方々が鶴首して聞きたいとしているところであると思います。
  86. 小林英三

    ○小林国務大臣 今いろいろ御意見がございましたけれども、私の信ずるところによりますと、今日本におりまする朝鮮人の諸君のうちで、生活困窮者の人をどうしてあげるかということは、私どもの所管でありますけれども、これを帰すとか帰さぬとかいう問題は、やはり先方と日本との国の外交上の問題にもかかってきておる問題と思いますから、政府全般として考えるべき問題だろうと思っております。
  87. 長谷川保

    長谷川(保)委員 それだから私は閣僚の一人といたしましての大臣の御意向を伺っておきたいと思うわけです。
  88. 小林英三

    ○小林国務大臣 そういう御質問でありますと、私は日本におられます多くの人たちがぜひ朝鮮に帰還したいということであれば、それは帰してあげることが一番適当なことだと考えております。
  89. 長谷川保

    長谷川(保)委員 そういう問題については積極的に大臣にやっていただきたいと思います。生活保護を受け過ぎるからといって文句を言っていじめておらないで——。今警官を動員して生活保護の朝鮮人の実情を調べているそうでありますが、そういうことをなさらないように、もし帰さないならば、当然日本は国家として責任を持ってこれを養う責務があります。しかし帰すということを積極的にするならば、私はその手を打って、そういうことについて朝鮮の方々を苦しめ、トラブルを起すというような道をとらないで、帰すという道をどんどんお作りになったらいい。そういうふうに積極的にすべきである。厚生大臣においてすべきだと思う。向うは引き取りたいといっておる、本人たちも帰りたいといっておる、それを帰さないという手はないと思う。だからこれは当然興安丸の用意をして純粋の赤十字の立場に立って帰すということでよろしい、そういう手を打たないで、生活保護を受けておるものは不正受給だといっていじめておるというようなことはとんでもない話である。向うでは日本人をほんとうに大事にしておる。それならば日本人も当然これをやるべきである。だから厚生大臣として積極的に手を打ってもらいたい。
  90. 小林英三

    ○小林国務大臣 私は今お説のように本人たちが帰りたいというのでありますから、それは帰すことが一番いいことでありますけれども、帰すという問題につきましては、またいろいろ手続上の問題等がからんで参りますから、まずそういう問題はやはり外交上の問題に移るべきだと考えております。
  91. 長谷川保

    長谷川(保)委員 もう時間がなくなって大へん恐縮でありますが、その問題で私も先般外務省その他に伺いましたけれども、どうも政府のやり方は李承晩に対する非常な気がねということだけで動いておる。これは私はいけないと思うのです。やはり今中国べ帰りたい者を帰しておりますように、向うが引き取りたい、本人が帰りたいというならば、積極的に朝鮮の方は朝鮮にお帰りいただく、そういう御方針をつけてあげる。そういう点について積極的に手を打っていただきたいと思うのであります。こまかい点は他の機会に譲ります。  もう一つ伺っておきたいことがあります。例の共同募金の問題でありますが、御承知のようにあの共同募金を日本で始めますときには、当時憲法を作りましたときに、憲法の八十九条でしたか、あの条章に公金を私設の社会事業その他に出してはならないということがあります。あれを作りますときにはそういう意味ではなかったのでありましょうけれども、私設というのは、要するに、もぐりの社会事業をさしたものであって、法律によって作られております社会事業はこれを入れないということであったのでありますが、憲法ができたのちにアメリカさんが、それは違うというので、私設の社会事業には金が出せなくなって、設備費、経営費等に困りまして、そこで万やむなくそれでは共同募金の制度を入れないか。当時司令部のネフ大佐がそれを申されまして、私ども賛成してアメリカのあの制度の指導者にも来てもらいまして、あの制度を取り入れたのでありますが、この共同募金がだんだん成績を上げて参りまして、御承知のように今日の壮観を呈するに至りました。ところがこれが非常に盛んになって参りますと、郵政省が今度はおれの方で扱ったのはおれの方で使わせろというのであります。私はこのこと自体が変だと思う。私は非常な不満を感ずるのでありますが、ことに最近この使用が本来の施設、社会事業の経営費あるいは施設費に使われるということよりも、非常にやり方が拡大解釈がなされたと申しますか配分します範囲を非常に広げていく傾向がございます。これは私は重大な問題だと思う。ことに先般これは厚生省ではありません、郵務局の関係でございますが、郵務局が学術会議に十一月十八日に金を持っていって、社会福祉事業か何かの研究の金に使ってくれ、こう言って持ち出した。良心的な学術会議はついに十一月二十五日の運営審議会にかけて、同二十八日謝絶しました。これは当然だと思いますが、こういうたぐいの拡大解釈からいきまして共同募金の使用の仕方の乱費が最近行われているというように思う。本来の社会福祉事業あるいは児童福祉事業の施設の経営費、施設費にこれを厳密に使うべきだと私は思うのでありますが、大臣のお考えはどうですか。
  92. 小林英三

    ○小林国務大臣 その問題につきましては私まだ十分関知しておりませんから、一応事務当局から答弁させます。
  93. 安田巖

    ○安田(巖)政府委員 お年玉はがきの寄付金の配分方法についての御質問でございまして、最近郵政省の方で学術会議に社会福祉の研究のために使用してくれという申し出をして拒絶されたというお話があったのでありますが、私どもそういう新聞記事の出ているのをちらっと見たという程度でありまして、実は真相をよく存じないのでございまして、私どもの方の係の者が当ったところでは、そういう事実はないようなことでもあったのであります。使用方法につきましてはいろいろ長谷川先生の御意見、私どももっともと思いますけれども、あの法律は一応寄付金の配分というものを郵政大臣が郵政審議会の諮問を経てきめるということになっておりますので、現在の程度でありましたならばよく一つ話し合って、お互いにうまくやっていきたい、こういうふうに思っております。
  94. 長谷川保

    長谷川(保)委員 この配分に対しても各県至るところに非常な不満があります。また全社協あるいは県社協等の官僚化ということにつきましても非常な不満があります。どうかせっかく育って参りましたこの制度が十分にその当初の趣旨に従って行われるように当局の御配慮をわずらわす次第であります。  なお御質問申し上げたいことはございますが、いずれ他日の委員会に譲りまして、私が一番先に申し上げました厚生省は直接国民の生命を大事にする、何よりも大事にするという態度をその行政の至るところに率直に現わしていただきたいということについて大臣のせっかくの御尽力をお願いいたしまして私の質問を一応終ります。
  95. 野澤清人

    野澤委員長代理 滝井義高君。
  96. 滝井義高

    ○滝井委員 長谷川委員から非常に広範な御質問がありましたので、重複する分を避けて二、三お尋ねいたしたいのですが、今度の国会は地方財政の赤字を補填する臨時国会だったわけなのです。政府の方では今回百六十億の財政措置をとっているのでございますが、その財源というのは公共事業費の繰り延べと申しますかそういうものが八十八億、それから一般経費の節約が三十億、賠償節約が三十億その他十二億で百六十億になっているわけですが、今度のこの百六十億の財政措置によって厚生省でどの程度のものを出すことになるのかこれを一つ御説明願いたい。
  97. 小林英三

    ○小林国務大臣 ただいまお尋ねのありましたように百六十億の地方財政の赤字補填につきます措置といたしましては各省で節約あるいは繰り延べをしていたしたい、こういうことでありますが、厚生省といたしましては上水道その他約九千八百万円と考えております。
  98. 滝井義高

    ○滝井委員 そういう額はこれは節約をして、その分については来年度また新しく上水道聞くところによると国民健康保険の直営診療所なんかも凍結されているということを聞いておりますが、そういうものは来年新しく計上してその事業の遂行をやることになるのですか。
  99. 小林英三

    ○小林国務大臣 なお閣議の申し合せ等もありまして、大蔵当局の方で厚生省はこの費目とこの費目で九千九百万円出してくれ、あるいは何々省はこうしてくれという基礎案はございましたけれども、大体閣議の申し合せによりまして、その省によりましていろいろ事業の進行状態等もございますので、厚生省といたしましても事務当局と大蔵省と、確実にいえば大臣と大蔵大臣ということになりますが、事務当局の折衝によりまして九千九百万円の範囲内におきまして一番厚生行政に支障のないようなやり方でやっていきたい、こういうふうに考えております。
  100. 滝井義高

    ○滝井委員 あとでけっこうでございますから、厚生省で節約をして出すおもなものを一つ資料として御提出願いたい。  次にお尋ねいたしたいのですが、ここ二年ばかりの間に五人厚生大臣がかわりました。ことしになってから大臣三回目でございます。鶴見厚生大臣、川崎厚生大臣、小林大臣とこういうふうに一年のうちに三回も大臣がかわるということは、そのかわったたびごとに朝令暮改が行われる可能性が非常に強い。そこで朝令暮改が、保守党の絶対多数の政権ができたのだから、おそらくないだろうと思いますが、お尋ねいたしたいのは、現在厚生省に企画室がございます。この企画室はやがて社会保障企画庁的なものになる、こういう構想を川崎厚生大臣は御発表になったのですが、小林大臣もやなりそのように現在の企画室というものを将来の日本の社会保障の確立をはかる社会保障企画庁的なものに拡大をするのかどうか。これを一つお聞きしたい。
  101. 小林英三

    ○小林国務大臣 先ほど資料の提出のことがございましたが、今の九千数百万円の節約、繰り延べにつきましては目下大蔵省の事務当局と折衝中でございますから、資料ができました場合には差し上げますが、まだすぐというわけには参りませんから御了承願います。  それからただいまの企画室の問題でございますが、私はまだ御承知のように就任間もないのでございまして今厚生省内のことを一通り聞いております。一通り聞きまして、そうして今度私が自分の意見を厚生行政の上に反映していきたい、こう思っているのでありますが、まだ全般の問題を腹に入れます前に国会も開会されました等の事情もございますので、将来私が庁内の事情を十分知悉いたしました場合におきまして、厚生行政の面に私の今後の考え方をはっきり決定していきたいと思いますから、その上でまた今の問題につきましても御回答いたしたいと思っております。
  102. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、先般問題になりましたスポーツ局、あるいは厚生省の食生活の改善から受胎調節までをやる生活局と申しますか、こういうような構想についても、白紙に返して、一ぺん事務当局の意見を聞いてやるということに相なるのですか。
  103. 小林英三

    ○小林国務大臣 私の申し上げておりますのは、むろん前大臣あるいは前々大臣等のやっておられますことで、非常にいいことはもちろんそのまま踏襲して参りたいと思います。しかし私が現在の厚生行政につきましてやっていることを大体腹に入れまして、さらに私は私としての考え方によりまして、こうする方がより国家のためにいいというような問題につきましては、それはそういうふうに採用いたしていきたいと思っております。これもむしろ朝令暮改ということでなくして、やはり私は私としての信念に基きましてやることが、大臣として一番いいと考えておりますから、そう申し上げただけでありまして、従いまして今お聞きのような問題につきましても、先ほど申し上げましたことと同様でございます。
  104. 滝井義高

    ○滝井委員 それならば社会保障の長期計画については、大臣はおやりになる意思があるのか。たとえば社会保障六カ年計画というものを川崎厚生大臣は経済六カ年計画と見合って作っていくんだということで、企画室をお作りになってやったのですが、その社会保障の長期計画については、大臣のお考えはどうですか。
  105. 小林英三

    ○小林国務大臣 経済六カ年計画というものは、今日のわれわれの新党が打ち立てておるのでありまして、厚生行政の今後の計画というものも、やはりこの経済六カ年計画にマッチするようにしていくべきものだと考えております。
  106. 滝井義高

    ○滝井委員 社会保障の長期計画をお立てになるということでございますが、川崎大臣の当時から、この計画というものは相当進行しておるはずなんです。大臣は大体どういう方向に長期計画を進められておるか、もう就任してからだいぶになりますので、御存じだと思うのですが、お聞きになっていないでしょうか。
  107. 小林英三

    ○小林国務大臣 今日の新しい内閣ができまして、経済六カ年計画を打ち立てるという問題自身につきましても、年次計画というものを党の政調会等において十分に打ち立てまして、それによって閣議で最後に決定をしてやっていくという方針でありますから、私どももいわゆる厚生省関係の社会保障に対する、これにマッチする五カ年計画というものも、目下検討中でございます。
  108. 滝井義高

    ○滝井委員 さいぜん大臣は、厚生行政の重点的な施策として、医療保障制度の確立、結核対策の推進、公的扶助の確立という三本の柱をお立てになった。この三本の柱は、当然社会保障の長期計画に見合った重点政策でなくてはならぬと思うのですが、さいぜん大臣のお述べになった重点政策というのは、何ら関係なく、今から党の政調や何かに諮ってお作りになるのであって、それとは別個のものなんですか。
  109. 小林英三

    ○小林国務大臣 厚生行政の、いわゆる社会保障制度の経済六カ年計画にマッチいたします五カ年計画というものは、大体の方針を近い将来に十分に立てまして年次計画に沿いますように、われわれの方も計画をして参りたいと思っております。従いまして先ほど申し上げました結核予防対策であるとか、あるいは国民健康保険の問題であるとかいうようなものは、もちろん私どもの方の五カ年計画のうちに含まれておる問題であります。
  110. 滝井義高

    ○滝井委員 どちらが先でしょうか。まず五カ年計画と申しますか、昨年からすれば六カ年計画になるのですが、それをお作りになるのが先なんですか、それとも今から大蔵省と予算の折衝をやられて、予算が固まったならば、今度はそれを五カ年計画に乗せていかれるのですか。まず一応五カ年計画の見通しを作っておいて、それから政務調査会なり、大蔵省と御折衝なさるのですか。基本的な政策が先なのか、それとも当面の政策を先にして、基本的な政策をそれに合せていくのか、どちらが先なんですか。
  111. 小林英三

    ○小林国務大臣 厚生省といたしましては、先ほど私が大体の方針を申し上げましたことは、緊急な重要な問題でありますから、当然打ち立てていくべき問題であります。社会保障の五カ年計画というものは、いろいろそのほかに問題がたくさんあるのでありまして、結局最後の五カ年目にはここの線までもやっていかなければならぬということが、私は長期の計画だろうと思いますので、それを今申し上げた次第でございます。
  112. 滝井義高

    ○滝井委員 さいぜん言った基本政策というのは、これは緊急な政策だと大臣はおっしゃいますけれども、医療保障を全国民に確立する、国民皆保険制度を作るということは緊急の政策ではあるけれども、長期計画に乗らなければ、そういうことはあとで質問に入りますが、とても私はできないと思うのです。私はそういうところをいわゆる朝令暮改と言うのです。大臣がかわるたびごとに、おれの政策はこういうものだと打ち出していくんです。ところが一方今度は長期計画というものはどんどん作られていく。ところがその長期計画と大臣の考えとが必ずしもマッチしないので、長期計画というものは机上のプランになってしまって、過去の内閣が長期計画あるいは何カ年計画というものを作ったけれども、すべてそれがほごになってしまったんです。というのは今言われるような大臣の考え方が、政治に多く入ってきたからなんです。やはり政治の連続性というものを作ろうとするならば、私は保守党の内閣であろうと、それが革新政党の内閣であろうと、やはり政治の連続性を作ろうとするならば、そこに長期計画の軌道というものがしかれておらなければならぬと思う。そこで社会党と保守党がよほどの政治のイデオロギーの変化があっても、一つの長期計画が軌道に乗っておれば、たとえば保守党の内閣の後に社会党がやっても、それは急激に変更するということは不可能なんです。これは現実にイギリスにおいて、イギリスの労働党の実施した社会保障制度というものは、保守党になってもそれをくつがえすことができないというので、長期計画という一つのレールがしかれておると思う。そこに民主的な政権の不動のルールも確立されてくるのではないかと思うのです。そういう点で今の大臣の考え方というものは、少し長期計画というものと厚生省の重点政策という問題との関連性というものがどうもぴんとこないのですが、もう少しそこをはっきり御説明願わぬと工合が悪い。
  113. 小林英三

    ○小林国務大臣 私の申し上げ方が悪いと申しますか、あるいはあなたのおっしゃったことを私が聞き間違いしたかと思いますが、先ほど私が申し上げましたことと、ただいま申し上げたこととは、私自身としては矛盾がないつもりで申し上げておったのであります。たとえて申し上げますならば、国民保険の匡正をいずれしなければならぬという希望を持っておるとすれば、やはり最後のする時期というものは、長期計画のどこかに置かなければならぬ問題だと思います。それから健康保険にいたしましても、国民皆保険にいたしましても、国民全部が恩典に浴するようにいたしますには、私どもといたしましては、それをできるだけ近い将来にやりたいという希望を持っております。これは先ほど申し上げたのでありますが、しからばそれをどこで打ち立てるかという問題は、長期計画のどこかべ持っていかなければならぬ問題であります。終局におきましては、それ以外のもろもろの問題も、やはり長期計画の最後の段階までには決定いたしたい。どこべ持っていくかということは、これからの私どもの研究であります。たとえばそれを今計画をいたしましても、やはり国家の財政その他によりまして狂いも生ずるのであります。修正もしていかなくちゃならぬと思います。そういうことを一つ御了承願いたいと思っております。
  114. 滝井義高

    ○滝井委員 長期計画のことはいずれ計画が出るでしょうから、そのときにもう少し質問させていただきます。  今大臣あたりが具体的に取り組んでおられる健康保険の赤字の問題について、長谷川先生が触れられた観点と少し方角を変えてお聞きいたしたいのですが、さいぜん大臣の御答弁で、来年慶においてな大体七十億ないし八十億の赤字が出る、こう結果がはっきりしたわけです。結果がはっきりしたからには今度はしぼっていけば対策というものはおのずから出てくる。そこで大臣は、対策としては国庫負担はやります、一部負担はやります、こう打ち出したわけです。結果がはっきり出ているのですから、そこで大して問題でないものをずっとどけてみますと、まず保険料率の引き上げによって昨年二十五億ぐらい得たらしいのではが、それはもう実行したから一応ないわけです。そうしますとあと残る問題は標準報酬の改定です。これは改定の仕方がいろいろありますが、現在の客観的な政治情勢から考えてみて、標準報酬の改定からは何十億という金は出てこない。そういう大幅な改定というものは現在の客観情勢では私はむずかしいとて見おります。継続給付の期間を前のように六ヵ月から一年延ばす、これももうその多くの財源は出てきません。そうしますと八十億の赤字を埋める対策というものは、一にかかって国庫負担と患者の一部負担、こういうことに集約されてくる。  そこで大臣にまず国庫負担からお尋ねしたいのですが、大臣は本質的に現在の社会保険というものを社会保障とごらんになっておるのか、あるはい大正十一年に健康保険ができたときの依然たる労務管理の一つの対策としてできた社会保険とごらんになっておるか、この点について大臣の考えを承わりたい。
  115. 小林英三

    ○小林国務大臣 これはやはり労務管理ということも加味しておりますし、一部社会保障という色彩も持っておると思いますが、国民健康保険等と比べましては、やはり労務管理という考え方に考えております。
  116. 滝井義高

    ○滝井委員 重点は、社会保障的な重点が多いのですか、労務管理的な重点が多いのですか。
  117. 小林英三

    ○小林国務大臣 考え方によりましては、両方を持っておるものと考えます。
  118. 滝井義高

    ○滝井委員 そうすると社会保障が五分、労務管理が五分で重点はどっちもない、大体どっちも並行的に五分々々だ、こういう考えですか。
  119. 小林英三

    ○小林国務大臣 その。パーセンテージをどういうように考えるかといわれますと、ちょっと因りますけれども、大体大正十一年に、先ほどおっしゃったような工合に生まれたものでありますから、やはり労務ということを重点にして出てきております。しかしそれだけではなくて、ある程度の社会保障的な考え方も加味しておるものだと考えます。
  120. 滝井義高

    ○滝井委員 わかりました。大臣は労務管理的なものが重点で、それに社会保障を加味する、こういうことで大体わかりました。そうしますと、大臣、これは国庫負担はとれません。川崎厚生大臣は、大臣の当時に一割五分の国庫負担をことしの予算要求ではやるということを言っておりました。しかしそれはむずかしいだろう、そこで一割は絶対に要求するのだ、こういう方針をこの委員会でも打ち出したし、予算委員会等においても私はそういう言質を大蔵大臣と川崎大臣と両方からとっておるのですが、大臣もその川崎前厚生大臣の一割国庫負担の実現は踏襲するお考えでございますか。
  121. 小林英三

    ○小林国務大臣 私もそう考えております。
  122. 滝井義高

    ○滝井委員 大臣も一割実現を考えておるということですが、具体的に少し客観情勢の不利を私が調べた限りで申してみますと、まず第一に七人委員会が—大臣は報告書をまだお読みになるひまがないかと思いますが、現在の健康保険にすぐ国庫負担を出すことについては消極的な態度をとっておることは御存じの通りです。それから大蔵省の中に財政懇談会というものができております。この財政懇談会は十一月の九日に重要経費の処理方針というものを出しております。その中で特に健康保険の赤字の対策については標準報酬の引き上げと、それから保険料の徴収の強化措置、こういうことで保険料を増加せよということを言っております。と同時に不正不当の給付については、強力な防止措置をとれということを言っております。と同時に財政負担による安易な赤字救済はとらないということを言っておる。こうしてまず七人委員会が消極的であり、大蔵省のバツクである財政懇談会がきわめて消極的である。これだけならまだ問題にしませんが、昨日自民党は政務調査会の総会を開いております。そこで来年度の予算規模は、大体一兆百七十四億円程度だといわれておる。これはすでにわれわれも調べておりますが、大蔵省その他の財源見積りというものは、これは減税の平年度化によって、昨年度よりか二百六十億ぐらいしか財源がふえないだろうということは一般的な見方です。そうしますと、九千九百十五億がことしの予算ですから、二百六十億を足しても大体来年度の予算規模というものは、一兆百七、八十億ということは見方としてはいいところなんです。  そうしますと、それに対して出ていくものを考えてみると、まず防衛費ですが、これは分担金もそう多くは減らないので、防衛費は千三十三億ぐらいにはなるということは常識になりつつある。恩給費が昨年の法律改正相当大幅に増加してくる。賠償費がふえる。人口は百万ずつ自然増加してくるということでありますから、すでに昨日の政調会の総会でも、歳出の方が一兆五、六百くらいにはなるだろうといわれておる。従ってこの歳入と歳出の調整をどうするかということは、党内における重要な問題になったということを漏れ承わっておるわけなんです。そうしますと、一割国庫負担、これは当然政府管掌と組合と、こういうことになりましても、これは相当のものをやらなければならぬ。政府管掌だけでも四十五億ぐらいのものが出てくる。ところがどうも社会保障関係にはせいぜい回っても三十億か四十億、これも生活保護の医療扶助が飛躍的にふえつつあります。社会局長おられますが、来年どういう工合に生活保護費を組むかということについては、おそらく予算の基礎もなかなかきめにくいような客観情勢ではないか。ボーダー・ライン層もどんどん生活保護層に落ちてきつつある現状です。そういう現状から考えてみて、この社会保険の中に、百億の半分の五十億でも持ってくるということはなかなか困難な情勢にあるということが一つ、さらに先日の予算委員会で一萬田大蔵大臣が福田昌子さんの質問に対して、昨年厚生保険特別会計法を改正して、大体社会保険には十億ずつつぎ込むことがきるということになっておる、十億だけはやりますという言明をしておる。  こういう客観情勢から考えると、よほど大臣がふんどしを締めてもらわなければ、国庫負担というものはむずかしい情勢にあると思うのですが、具体的にどういう方向で一割負担の実現をやるか。今私が悪い条件を率直にいろいろ私の知る範囲であげてみましたが、御説明を願いたいと思います。
  123. 小林英三

    ○小林国務大臣 ただいまお言葉がありました国庫負担の問題につきましては、今いろいろの情勢の御説明があったのであります。もちろん困難かもしれません。今滝井さんもおっしゃったように困難であるという考え方も当っておるかもしれません。しかし私はこの問題につきましては十分な努力をいたしまして、少くとも一割あるいはそれ以上の国庫負担を要求いたしたい、こういうように考えておるのであります。
  124. 滝井義高

    ○滝井委員 私は日本の社会保障制度の確立をはかろうとするならば、現在の健康保険の赤字解消政策が出てこない限りは、日本の社会保障の確立はないと考えるくらいなんです。そこで大臣あなたはやはり自分の大臣としての首をかけるくらいの決意を持っておらなければなかなかこれはむずかしいと思うのですが、大臣はこの日本の社会保障のために人柱になる覚悟を持って一割の国庫負担実現に邁進できましょうか。
  125. 小林英三

    ○小林国務大臣 大へんに御親切なお言葉をちょうだいしましてありがとうございます。私といたしましては極力努力をいたしたいと思っております。
  126. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますとまず一割の国庫負担実現のために御努力をされることになりました。そうしますとまずこれで八十億の赤字の中で四十五億ばかりは財源が入って参ります。そうするとあと残りの三十五、六億というものが残るのですが、これらの赤字を埋めるのに標準報酬の引き上げあるいは区画の整理、継続給付だけではちょっと金が足らない。そこで一部負担となる、一部負担は最低二十億から三十億をやらなければならぬ、逆に話を進めていけばこういう結論になってくる、八十億の数学ですから簡単なんです。その程度の一部負担をお考えにならなければならぬと考えるのですが、そうなりましょうか。
  127. 小林英三

    ○小林国務大臣 滝井さんのお説は、来年度の健保の八十億程度の赤字対策ということにつきましては、数学的にだだんとお話になるとそういうふうになりそうであります。しかしこの問題の解決ということにつきましては、たとえば一部負担にいたしましてもどういうふうにして一部負担にするかという問題につきましては、私はいろいろの案があると思うのであります。そのいろいろの案と国家の負担というものとをにらみ合せいたしまして、私はそこでいろいろの検討が必要であると思うのであります。従いまして今ここでそれを掘り下げまして、試みに研究をするということは私は好ましくないと思いますので、とにかく私といたしましては少くとも一割以上の国庫負担をしてもらって、そしてあとは現在の日本として最もいい態勢においていわゆる健保の赤字を克服いたしたいというので、目下一毛懸命こ努力をいたし、作業をいたしている最中でございますから、いずれ通常国会等におきましてこの問題に対してはいろいろな御意見を拝聴しなくてはならぬと思いますが、さように御了承を願いたいと思います。
  128. 滝井義高

    ○滝井委員 大体それでわかりました。一割の国庫負担の残りが大体そういう形で、方法はいろいろあるけれども、とにかく一部負担が実現されるということはよくわかりました。私は一部負担反対でございますから、いずれそういうことになりましたときにまた態度をはっきりいたします。  次にお尋ねいたしたいのは、川崎厚生大臣の当時からも問題になっておりましたが、結核の公費負担の問題でございます。大臣もさいぜん結核対策の確立というものは重点政策の一つの柱として掲げられておるわけでありますが、今まで国が四分の一、地方四分の一という二分の一の公費負担があったのですが、これでは健康保険の赤字あるいは生活保護の赤字というものがどんどんふえてくる、健康保険というものは結核予防法に軒を貸しておもやをとられた、こういう格好になったのだというのが現状なんです。そこでこれは昨年も草葉厚生大臣のときにここで問題になったのですが、当時厚生省の事務当局が三分の二の公費負担実現を説明した。草葉さんがおいでになったら、どうもそういうことは自分は聞いておらぬのだと言って開き直られたのですが、その後うやむやになっておるのです。今年川崎厚生大臣の時代においても国が九分の四で県が九分の二、これで三分の二になるのですが、それと一般の個人的なものが九分の三、すなわち三分の一負担とすればいいことになるのですが、今度のこの結核対策確立のためには公費負担三分の二実現に大臣は御努力いただけましょうか。
  129. 小林英三

    ○小林国務大臣 私といたしましては、この公費の負担率を現在の二分の一から三分の二に引き上げるということにつきましては、十分に努力をいたしたいと存じておるのであります。
  130. 滝井義高

    ○滝井委員 ぜひ一つ御努力をしていただきたいと思います。  そこで今度は少し方向を変えまして大臣にお尋ねしたいのは、実は先般来新医療費体系というものが非常に問題になっておりまして、われわれ国会では昨年出していただきました新医療費体系というものは不完全なものである。これをやり変えてすみやかに国会に再提出をしてくれということで、あれは厚生省にまたお返しをしておるわけなんですが、そこでこれがまだ出て参りません。実はさいぜんも野澤さんが、新医薬制度周知月間の問題でそのことを言っておったのですが、川崎厚生大臣のときには九月に出しますと言っておった、だんだん延びちゃって十一月に出しますということだったが、もう十二月も半ばを過ぎてやがて昭和三十年も暮れようとしておりますが、これは国会の権威のためにも出してもらわなければならぬと思いますが、大臣いつごろお出しいただけましようか。
  131. 小林英三

    ○小林国務大臣 四月の日に実施いたすことになっております医薬分業の問題に対応いたしまして、新医療費の体系を完了いたして新しい点数によってこれをやっていくということは今お述べの通りでありまして、これは医薬分業を円滑と申しますかりっぱにやっていきますために非常に重要な項目でございます。そこで厚生省といたしましては先般来きわめて慎重に今日その作業をいたしておる最中でありまして、今のお説のようにこれを早く諮問機関であります審議会にもかけまして、少くとも来年の一月末までには審議会の諮問を得てこれを決定いたしまして、この周知徹底方につきましてもすでに本年の八月十五日から九月十五日までにも全国にいたしておりますけれども、これをさらに二月ごろには都道府県の応援も得まして周知徹底を十分にさせまして、四月一日から円滑にやっていけるようにいたしたいものだと考えておるのであります。
  132. 滝井義高

    ○滝井委員 大臣は少し感違いされておると思うのですが、私は社会保険の点数を出してくれと言っておるのではないのです。医療費体系というものは点数ではないのです。現在の日本の医療費のあり方がどうなければならぬかというその計数をこの前のように資料で出してもらわなければならぬ。この前の調査はきわめて不十分なんです。だからその調査をやり変えて出してくれという要求をして、出します、こういうことなんです。大臣が今言われておるのは初診料は十二点とか注射料は一点とかいうような、そういうものを言われておるようでありますが、それは医療費体系の元ができてからそういうものができて中央社会保険医療協議会にかかるのであって、その前のいわゆる全国の官公立の病院の実態調査をやられて、そうして日本の医療費というものはこういう工合に不合理だ、だからこれはこういう方向に持っていかなければならないというその医療費体系を出せと言ったのです。何も点数になったものを出せと言っているのではない。その前の段階のものをわれわれは見なければいかぬのです。それを一つ出してもらわなければならぬ。おそらくそういう形でいっていると、中央社会保険医療協議会にかけられても、医療保険協議会は、国会の審議がやられていないので私は審議できませんと言われます。だからそれをわれわれは出してくれ、こういうことなのです。健康保険もありますから、一月の末ではこれは間に合わぬようになってしまう。
  133. 小林英三

    ○小林国務大臣 ただいまの件につきましては一応事務当局から説明をさせまして、その上で私の見解を明らかにしたいと思います。
  134. 小山進次郎

    小山説明員 ただいまお話のありました問題につきまして、今回のやり方といたしましては、前回御提示申し上げました新医療費体系の改訂ということと、それから新しい健康保険の点数の決定ということと同時作業として進めておりますので、先ほど大臣が申されたのは、同時にそれは新医療費体系にも通ずることであるわけであります。それでいっごろになったら提出できるかということでありますが、今いろいろ計数整理をしたり、あるいは最後の調整をするというような作業をしておりますけれども、大体現在の見込みとしては二十五日くらいまでにはまとまるというふうに考えられておりますので、これは前回からのお約束通りまとまります場合には直ちにその点御報告する、こういうふうに考えております。
  135. 滝井義高

    ○滝井委員 医務局長さんがおられませんが、ちょっと呼んでくれませんか——先般医務局長は、健康保険改正医療費体系とは私は関連があると主張したところ、それは別個のものであります、一緒にしてはまがりなりませんという御答弁であった。しかし今のあなたの御答弁では医療費体系と健保の点数の改正とは同時作業であるという。こういう問題になると厚生省内部にいつも意見の対立があり、違ってきておる。医務局長はこの前そうおっしゃった。あなた方もお聞きになっておる。これは別個のものであります、離してやります、こういうお話があった。今あなたは同時作業だというが、どうもその後その後の朝令暮改的な御答弁では私たちは納得ができないのであります。
  136. 小山進次郎

    小山説明員 この点私は少し医務局長の言葉が足らなかったのだと思いますけれども医務局長が申されましたのは、おそらく考え方としては、新医療費体系は新医療費体系だ、これがまず前提であります。これがまとまってからそれを健康保険に適用すればどうなるのだ、これは当然ものの考え方なり、あるいはまとめ方の順序でございます。しかし同時に滝井先生のよく御存じのように、新医療費体系の策定というのは抽象的な原理原則を立てるという作業ではなくして、具体的な現実の医療費の配分をどうするかということについての体系でございますから、これをきめる場合には絶えず現実の制度に反映した場合にどうなるかということを見つつ今度は逆にもう一回帰納的に考え直していく、こういう交互作業を繰り返す必要がある。特に今回のような精密な作業になりますと、そういうことを絶えず繰り返さないというと、現実にものが動かないようになるおそれがありますので、作業として一緒に進めておるということでありまして、決してこれを同じものとしてやっておるという趣旨ではないのでございます。
  137. 滝井義高

    ○滝井委員 先日私はあなたと同じ意見を述べた。われわれが現在七人委員会のことを検討しておるけれども、実質的に日本の社会保険の死命を制するものは医療費体系から出てくる点数なのだ、だから健康保険改正ということの前に、医療費体系の点数の方が大事なのだから早くやってくれということを申したら、それは別個でございますと医務局長は御答弁になった。当時保険局長も確かそこにおられた。第十委員室でやったときの速記をごらんになってもいい。だからそれならば同時作業でもかまわぬ。基礎になる資料を一つ概括でいいですからあすお出し願いたいと思います。もう二十五日にできるならばあすできるでしょう。いわゆる基礎になる六・二〇三点という初診料はこの前出ておったのですから、そういうものがどういう工合に変化したかということはすぐ出てくるはずです。頻度別の調査をやっているのですから、それだけでもいい、一つ大ざっぱなところを今夜作業をやっていただいて、あすで国会も終りますから、ごめんどうでしょうが一つあす出していただきたい。これを一つ要求いたしておきます。
  138. 小山進次郎

    小山説明員 ただいまの御要求はせっかくのお話でございますけれども、御承知のように全体が関連しておる問題でございますので、お求めの点だけを切り離すということは事実上技術的にも不可能になりまするので、これはやはり全部がまとまりますときまで一つお待ち願いたいと思います。まとまった際には必ず提出をいたします。
  139. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますとまたおかしい。十二月の二十五日には全部まとまるのですか。十二月二十五日にはまとまらないはずなのです。健庫保険の改正は、大臣は今言ったように来年やられるというのです。そうするとあなたの二十五日には固まりますというのは矛盾するじゃありませんか。
  140. 小山進次郎

    小山説明員 先ほどから申し上げているところは、おそらく政府の案としていつまとまるか、こういうようなお話であろうと思うのであります。従って政府の案としてまとめます時期は二十五日ごろまでにまとめたい。政府の案として一応まとめてみましても、これは先ほどお話がありましたように、それから各方面でいろいろ御審議を願うのでありますから、それがいわば国の確定案として固まるまでにはかなりの段階がありますけれども、おそらくお求めになっておるものは政府の案としてまとめるものはいつごろか、こういうことであろうと思いますので、私どもはそう申し上げたわけなんでございます。またその案以外に現在の段階で御提出を申し上げるということは、ちょっとほかに考えられないと思います。
  141. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますともう一ぺん念を押しますが、十二月二十五日になったならば医療費体系と健康保険改正に関する政府の案が固まる、従ってその政府の案は資料としてわれわれは二十五日にはいただける、こう理解して差しつかえないのですか。
  142. 小山進次郎

    小山説明員 先ほども申し上げましたように、二十五日を目途としておりますから、一日、二日の違いは出るかもしれませんけれども、そのころにお話のようなものがまとまります。まとまったらこれは資料として文書で提出いたします。
  143. 滝井義高

    ○滝井委員 一応それまで待ちましょう。二十五日に一つぜひそういうものをいただきたいと思います。  次に大臣にお尋ねしたいのですが、大臣は医療費国民所得の関係をどういう工合にお考えになりますか。これは大体厚生行政上に一番重大な問題でありますが、医療費国民所得の関係は大臣はどうお考えでありますか。
  144. 小林英三

    ○小林国務大臣 これはもう常識的に考えましてもバランスのとれたものでなければならぬと思います。
  145. 滝井義高

    ○滝井委員 日本の現在の国民所得を基礎にしてバランスのとれた医療費を大体大臣はどの程度にお考えでありますか。
  146. 小山進次郎

    小山説明員 これは若干技術的の問題を含みますので、申し上げたいと思いますが、現在わが国における医療費は、国民所得との関係において計算いたしますと大体三・五%をやや上回っております。この問題については、おそらく滝井先生は、かつて厚生当局が、この前論議された当時の医療費国民所得との関係において大体三%もしくはそれを若干越えておるというふうなことを申し上げて大体そういうことを目途としていろいろのものを考えているというようなことを申し上げたことを念頭に置いて言っておられるのだろうと思いますが、実は私どももそういう意味においてこの三・五%を越える医療費というものがどういう意味を持っているかということを慎重に検討しているのであります。御承知のように欧米諸国におきましては、大体三%強程度のところが一応国民所得との関係においては適当な医療費だということになっております。従ってこれを単純に直訳いたしますれば、わが国の現在の医療費国民所得との関係においてはやや多いというような論をなす人が多いのでありますけれども、この点は実は厚生当局においても必ずしもまだ結論は得ておらぬのでありまして現在の医療費がどういう意味を持っているかということは目下検討しているという段階であります。
  147. 滝井義高

    ○滝井委員 念を押しておかぬとあとで間違いが起るといかぬからしっかり念を押しますが、そうしますと日本の国民所得を基礎にすれば、日本の総医療費国民所得の三・五%程度が適正だ、こう理解して差しつかえありませんか。
  148. 小山進次郎

    小山説明員 私は実はそういうふうなことを単純には考えていないということを一生懸命申し上げたつもりであります。現状は三・五%をやや上回っている、これについては単純に欧米諸国との類推から多過ぎるというような論をする人があるけれども、この点は一般論としては厚生当局は否定的に考えている。ただ、一体これがどういう意味を持つか、また将来どの程度まで下げていくことが適当かというようなことを含めた問題てっいてな、今勉強している最中です、こういうことを申し上げたつもりであります。
  149. 滝井義高

    ○滝井委員 これは一番大事なところなんですが、あなた方が医療費体系とか何とかいろいろお作りになりますけれども、この根本的な問題の論議がぴしっといっておかぬと、あとでまたわれわれと交差しません。だからこれはもうちょっと突っ込んでやりたいのですが、大臣どうですか。これは前の草葉厚生大臣とも論議した一番大事なところなんです。草葉さんは、日本の国民所得を勘案して、国民医療費負担能力というものは国民所得の三%だというのを金科玉条の原則として掲げておった。ところがそうでないということになったら、その後ぴたっと言わぬようになった。今それから〇・五%上って三・五%という話になってきているのですが、ここが一番根本のところなんです。それでは大臣にお尋ねしますが、国民所得と医者の技術料との関係はどうですか。国民所得が上れば技術料は当然上っていくべきものだと思うが、大臣もそうお考えになりますか。
  150. 小林英三

    ○小林国務大臣 私も、常識的に考えましてもそう考えます。
  151. 野澤清人

    野澤委員長代理 滝井君、保険局長から先の問題でちょっと申し上げたいということですから……。
  152. 高田正已

    高田(正)政府委員 先ほどの総務課長の答弁でよろしいのでございますが、言葉が足りませんために滝井先生に誤解をしていただきますと困りますので、ちょっと付言をしておきます。  大体新医療費体系の点数、それに基いた点数表は本月の下旬くらいにはでき上る予定で目下作業をいたしております。従ってそれができましたならばごらんに入れるということを総務課長は申したのでございますが、そのときに、しからば健保の財政対策に関連をする案を同時に出すかというお念押しがあったように思います。これは滝井先生もよく御存じのように、来年度の予算が決定いたしませんと確定的な政府の原案というものはできません。従いまして、健保の財政対策全般にわたります私どもの案を国会にお出しするのは来年一月以降あるいは二月ごろになるか、時期はそれぞれ法律上の期間がございますので確定いたしませんけれども、ともかく通常国会に入ってからということに相なると思います。  なお、関連をいたしまして、ここに医務局長が見えておいでになりますが、新医療費体系と健保の財政対策とは切り離して云々と言ったじゃないかというお話がございました。そうして保険局長もそのときにおったじゃないかというお話でございます。私その席におりましたかどうか実は記憶いたしませんけれども、私どもが申し上げておるのはこういう意味でございます。財政対策というものは、御存じのように支出を少しでも切りたいということでございます。あるいは収入をふやしたい、そうして収支のバランスを合せたいということが財政対策でございます。ところが新医療費体系の方は、さようなことではございませんので、昨年来先生よく御存じのように、大体支払い方式の変更によって総医療費に変更を及ぼさないということが私どもの基本的な一つの建前になっております。従いまして、そういう意味におきまして新医療費体系に基く保険の点数表を作成するに当って、支出を少しでも落すというふうな要素をこの新医療費体系の点数表に加えてものを考えるというふうなことはいたさない。健保の財政対策はまた別個の観点で考えるべきである。新医療費体系は結局旧点数と新点数とで相互に増減を来たさないようにすることがその基本原則である、こういうことを医務局長も申し上げられたのだと思いますし、また私どもはさような立場で研究をいたしておる次第でございますから、どうぞその点は御了承いただきたいと存じます。
  153. 滝井義高

    ○滝井委員 わかりました。新医療費体系の改訂と健保の点数を出す財政の具体的な金額等は、これは健康保険法改正からだと理解しております。ただ私が言っておきたいことは、点数そのものがきわめて科学的に出てくればいいけれども、現実に百億になんなんとする赤字を抱えておる健保会計の心理的な影響を受けて、ある程度曲げられるおそれがあるので、これだけはつぜひやらぬように努力をしてもらいたいと思うのです。そのおそれがあるのです。  先に進みますが、先ほど大臣は、国民所得が上昇するにつれて技術料も当然上昇するかとの私の質問に対して、それはその通りだと思いますと言われた。それを大臣一つお忘れにならないようにしていただきたいと思います。  そこでお尋ねしたいのは、私たちは日本の二十八年までの総医療費というものを、医務局長から二十七年度千五百四十九億、二十八年度二千五十二億と聞かしていただきましたが、二十九年の総医療と、それから三十年も今月きりですからおわかりだろうと思いますので、二十九年、三十年の総医療費私は総医療費の取り方については、あなた方のあの間接、直接の医療費の取り方についてはなお問題がありますが、一応あなた方のあの取り方における二十九年、三十年の総医療費をちょっとお示し願いたいと思います。
  154. 曽田長宗

    ○曽田政府委員 ここにちようど計算いたしました資料を持ってきておりませんので、正確には申し上げかねます。多少の違いはあるかもしれませんが、概算だけを申し上げさせていただきます。二十九年はたしか二千四百億程度であったと記憶しております。それから三十年は二千九百億程度であったというふうに思っております。多少食い違いがあるかと思いますが、概算を申し上げました。
  155. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、三十一年度の総医療費の見通しが立たなければ、健康保険の赤字の対策も立たぬことは、論理的に当然だと思いますが、三十一年度は何%くらい増加するお見込みなんですか。
  156. 曽田長宗

    ○曽田政府委員 今のところこの要因を分析いたしまして、そのおのおのの伸びを見て推計するというような作業が進んでおりませんので、今申し上げかねるのであります。
  157. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、健康保険の赤字八十億というようなものは、全くそれは分析のない腰だめ的な数字なんですか。いわゆる直接費、間接費というようなものは、これは受診率その他がどういう動きを示すかによって、来年の七十億なり八十億の赤字というものが逆算されて出てくる。そういう科学的な、数学的な基礎の上に立って出てくるので、もしそういう基礎に立たずに出てきておるとするならば、かつて私が指摘したように、百万人も被保険者の数が違ったという去年のあのあやまちをまた繰り返しますよ。当然そういう科学的な基礎に立った八十億の赤字でなくてはならぬのですが、そうでないのですか。
  158. 曽田長宗

    ○曽田政府委員 先ほど御質問を受けましたのは、総医療費というものだと了解をいたしたのでありますが、保険につきましては、保険の資料がかなりこまかいものがございますので、保険の方では、ただいまございます資料で推定できる限りは詳細に推定いたしておるというふうに了承しております。
  159. 滝井義高

    ○滝井委員 保険と局長おっしゃるけれども、あなた方の去年出されたあの資料の中で、保険以外のものが幾らありましたか。保険以外のものは間接費でわずかだったのです。ほとんど全部公約な社会保険の医療費が大半を占めておった。それに生活保護が加わったり、どうももう予算編成が近まって、ある程度計数的なものを出さなければならぬ。しかも川崎大臣の当時には、千四百七十四億か何かの厚生省予算要求というものが出されておったはずなんです。それにはその数字的な基礎というものが出て、何割国庫負担をすればいいということが出てきておったはずなんですが、全然わからないのですか。わからなければけっこうです。  それから今度はお尋ねしますが、二十九年の総医療費が二千四百億、三十年度は私は二千八百億くらいだと見ておったが、百億多うございまして二千九百億、そうしますと二十九年の国民所得は六兆一千九百八十億、三十年度の国民所得は六兆三千四百八十億、三十一年度は、私たちの党は六兆六千億くらいしか国民所得を見積っておりませんでしたが、自民党では昨日どうも六兆八千四百七十億くらい国民所得を見積っておられるらしい。この国民所得の工合からいきますと、来年はもっとふえますよ。そうすると、来年はいいとして、二十九年と三十年の医療費国民所得との関係を見ると、これは三・五彩どころではないのです。四%ずっとこえてきておるということですね。こういうことはたくさんな金を使って、企画室まで作られておるのですから、もう少し正確なところを一つ小山さん御説明願いたいと思います。三・五%という低いところを言わずに、五%医療費のとり方によって私は六%をこえておると思います。総医療費のとり方が私とあなた方とは違いますが、ほとんど同じ基礎に立って、大蔵省でも国民所得を基礎にしてやっているのでしょう。それでも四%をこえているのですね。これは小さな百億かそこらの金を扱うときの〇・五%は大した問題ではありません。しかし何兆という金の〇・五%の誤差というものは大へんな数なんですよ。だからこれはやはり慎重にしていかないといけないと思います。その点どうですか、今の三・五%をちょっと上回ると、いうことでなく、総医療費というものは、大体国民所得の現実においては、昭和三十年、三十一年ごろになると五%ぐらいになるのだという御修正はできないものですか。
  160. 小山進次郎

    小山説明員 私先ほど申し上げた言葉がまずかったのだと思いますけれども、私が申し上げた趣旨は、現実にそうなっておるということを申し上げたのでありまして、それで医療費というものをとめるということが適当なりということは、実は一言も申し上げたつもりはないのであります。ただとかく世間にはいろいろ社会保障費の中でも特に医療費について浪費が多い。その意味で日本の医療費というものは、少し国民所得に対して多過ぎるのじゃないかという意見がかなり強いのであります。そういう意見に対しては今までいろいろ検討した結果では、多いということを単純に言うわけにはいかぬという程度の消極的な見当はついた。しかしそれでは現状のままでぐんぐん伸ばしていっていいか、これはいろいろの計算の仕方がありますけれども、一つの計算方法によっては、これは五・七%ぐらいまで三年か四年たつと伸びるというような計算もあるのであります。そういったような趨勢に一応過去の趨勢だけを伸ばしていくとなるという問題もあるけれども、一体それがいいか悪いかということについては、遺憾ながら外国の文献その他から得た知識で研究しただけでは、何とも結論がつきかねる。一部の人は、日本のような国民生活水準は低いけれども、医療水準の高い国では、これは当りまえなんだ、これでいいのだ、こういうふうに考え考え方もありますけれども、また一部の人々の間には、それでは医療費の割合が多過ぎる、同じ国民の福祉のために金を使うとしても、医療費部分はもう少し切り詰めて、それをもう少しほかの形で使うことの方が、もっと国民福祉のためにいいのじゃないかという意見の立て方もある。そういうふうな問題について判断する基準になるような原則的なものが、まだつかみがねております。そういうことを目下せっかく勉強中でございますということを申し上げたつもりなのでございまして、これはただいま申し上げた通り、非常にむずかしい問題でございまして、まだこの問題についてはこうあるべきだということに何らかの参考になるような考え方はまとまっておりません。
  161. 滝井義高

    ○滝井委員 草葉厚生大臣のときに、三%が原則だ—当時の速記録をごらんになればわかりますが、金科玉条のように言われておった。だいぶ慎重になりました。そう慎重にあるべきだと思います。そこでさいぜん小山さんは現在三・五%程度だとおっしゃったけれども、それは昭和何年のことかということが一つと、それからそのときの総医療費国民所得との関係と、その三・五彩の出た資料、これはあしたいただけると思いますが、これを一ついただきたいと思います。まず三・五%はいつなのか、これを一つ伺いたい。
  162. 小山進次郎

    小山説明員 前段の点については、これは昭和二十八年でございます。資料は明日提出いたします。
  163. 滝井義高

    ○滝井委員 昭和二十八年は私の計算によっても三・五になっております。その通りです。それで一つぜひその資料を出していただきたいと思います。  次に、少し専門的になるので大臣に気の毒ですが、時間がないそうですから、次の問題に移りたいと思います。実は大臣も御存じのように、今度の七人委員会が非常に膨大な報告書を出してくれた。川崎厚生大臣が残したものは何かというと、私はこの報告書だけだ、ほかには何もなかったと思うのです。これだけで川崎厚生大臣大したものだと思います。そこで大臣に今度ぜひ一つ残してもらわなければならぬものは、その国庫負担を今度私が今触れる点なんですが、実はあの川崎厚生大臣が残していただいた報告の中で、とりあえず厚生省がすぐにやれるというものを五つばかりあげてくれたのです。そしてその五つばかりあげてくれた第一に、薬品、衛生材料、医療器具を廉価に提供する案を作るべきだ、こういうことを出してくれたのです。これは二、三日前今井さんと近藤さんを呼んでいろいろ御意見を聞いたときにも私から言ったのですが、各委員の方はこれはぜひやるべきだ、こういう御意見なんです。これも私たちの今までの見方では、薬務局長が二人、三人くらいかわらなければいかぬだろうといったら、ある人はいや厚生大臣の首が二つ三つ飛ぶかもしれぬぞという御意見があったわけです。この問題は非常に重大ですが、大臣のこの問題に対する考え方を、やる意思があるかどうかお聞きしておきたいと思います。
  164. 小林英三

    ○小林国務大臣 今のお尋ねの点は、七人委員会の答申といいますか、意見といいますか、そのうちで薬価を低廉にするという問題でありますか。
  165. 滝井義高

    ○滝井委員 そういうことなのです。薬品、衛生材料、医療器具を廉価に提供する、こういう七人委員会報告書の中で、一番重要な一番最後の結論のところに出ておるのですが。
  166. 小林英三

    ○小林国務大臣 薬価の問題につきましては、ここに七つばかり出ているのでございますが、十分検討いたしましてやらなくちゃならぬものはぜひ取り上げたいと思っております。
  167. 滝井義高

    ○滝井委員 どうもやらなくちゃならぬものはぜひということですが、これは大臣やらなければならぬものはぜひやるということを今御答弁いただいたのですが、薬務局長おられますが、どういう工合にどういうところからおやりになるのか、あなたはもうあれを全部お読みになっておられると思いますから、一つ御答弁願いたいと思います。あなたはあのときおいでになっておったかと思いますが、今井さんたちがおいでのときに非常に辛らつな御意見が出たのですね。まずストレプトマイシンなんかも、一つ値段を下げようとすると、四社が独占価格でやってみせる、厚生省と対決するぞ、こういうことを言っておられる、それから昨年以来金券封入のものを病院の薬局長や事務長に配付したところが、これは厚生省注意でやめた。それからレントゲンの集団検診のフィルムは、奢侈的な写真のフィルムは値が下っていくけれども、この国民の健康を守るための間接撮影のフィルム等は一向に値下げがない、こういういろいろな点について御指摘があった。そして現在の薬務局はだらしがないという極論をされた。しかも私は別のところでも聞いたのですが、薬務局でやっている薬務行政、薬価の基準その他を保険局が全く知っていないということですね。いよいよ七人委員会報告書を作るときに、資料の提出を願いまして、薬務局から持ってきた資料をいよいよ七人委員会で調べようとしたところが、そこに保険局の人が来ておったが、こんな資料があったのか、おれは知らなかったという資料がどっさり出てきたということです。こういういわゆる各局割拠主義、こういう問題も御指摘になったのです。私はこれは重大だと思うのです。日本のことしの医療費が二千九百億だと申しましたが、薬品の小売は一千億をこえておるのです。しかも注射薬あるいは薬の医者の収入というものは七割くらいになっているのです。その後のいわば現在の製薬業というものは末広がりの企業なんです。医療費というものは年々歳々増加していって、その需要というものは製薬業が提供する薬によってまかなわれていく。そうすると、医療費体系で物と技術と分けて、物は原価主義でいくとびたっと押えてしまった。今後はわれわれが十円で買ったものはそのまま十円で患者に手数料なしに上げることになる。そうすると十円で買ったものを十円で患者さんに提供する、そのもとは現在は自由放任されているわけです。根本的にそれでいいのかどうかということなんです。草葉厚生大臣は、私がそれを質問しましたところが、薬剤師と医者とにおいて物と技術とを分離して、物を原価主義でいくならば当然製薬業も原価主義でいきますということを言明された。大臣も草葉厚生大臣と同じ保守党の大臣で、しかも参議院出身でいらっしゃいますからおそらくそうだと思いますが、その点大臣もそうされましょうね。製薬業についても、いわゆる製薬技術料と製薬の原料というものを原価主義でいく、もしそれができないならば医療費体系は根本がこわれてしまって、医者と薬剤師だけに、お前たちの使うものは原価主義で一文も手数料をとることができないという理論は成り立ってこない。その点大臣のお考えを率直に述べていただきたいと思います。
  168. 小林英三

    ○小林国務大臣 今の滝井さんのおっしゃった薬品の原価主義ということの意味をまず伺いたいと思います。
  169. 滝井義高

    ○滝井委員 薬局が問屋からお薬を買いますね。たとえばビタミンAならAというものを十円で買います。そうしますと、その薬局はそれを十円で今度患者に売らなければならぬことになるのです。私が薬局から十円でお薬を買いますと、私は十円で今度患者に注射してやらなければなりません。そうして私のいただくものは何かというと技術料だけなんです。だから十円プラスの技術料が私の所得になる。それから薬局の方は、これは注射薬であれば、十円で買った薬は十円で患者にやって、それに調剤技術料が七円つくだけ、こういうことなんです。すべて原価主義でいくわけです。ところがそのもとの製薬業というものは、これは自由放任の経済の中で自由に流通している。それがいわゆる新医療費体系の骨子なんです。それをいよいよ来年から今私が要求している資料というのはそれなんです。それをやることになる。そうしますと、薬剤師さんとお医者さんとは原価主義でいくが、前の方は今はそのままになっておるのです。草葉さんはそこも原価主義で私はやりますと御言明になったのです。それから薬剤師協会の会長さんもそうしなければならぬと言ったし、それから歯科医師会もそう言ったし、医師会もみなそう言ってしまった。ただ日経連の入江という日通の交通部長さんは反対をいたしましたが、厚生大臣は賛成しちゃった。大臣の考えはどうかということなんです。
  170. 小林英三

    ○小林国務大臣 この問題は、今あなたのおっしゃるように常識的に考えれば、これは原価主義でいくべきものだと考えます。なお十分に検討いたしまして、私のこれに対する態度を近いうちにはっきりきめたいと思います。
  171. 滝井義高

    ○滝井委員 製薬業の原料については常識的には原価主義だ、常識というものが政治を指導しなければいけないから、常識を越える超常識なんというものは、これはやはり民主主義の社会には通らぬものだと思います。そこで大臣が常識的にそうお考えになることはけっこうでございます。そうすると当然大臣にその常識を一つぜひ実現をしていただきたい、こう思うわけです。もしそれが実現をできなければ、薬剤師さんに、物と技術を分けて、買った薬は原価でいけ、医者も原価でいけということは、大臣、常識としてはできぬとお考えになって差しつかえないと思いますが、大臣もそうお考えになりますか、逆な質問です。
  172. 小林英三

    ○小林国務大臣 どうも試験問題の答案を書いているような気持がいたしますが、そういう問題につきましても、先ほどの申し上げましたことと合せまして、一つ十分に慎重に対処いたしたいと思います。
  173. 滝井義高

    ○滝井委員 それから、この七人委員会報告しておりますが、そういう物と技術を分ける問題が製薬上一つあるのとともに、もう一つ広告の問題がある。現在大臣も、ラジオのスイッチをひねりテレビのスイッチをひねると、必ずどこか製薬会社が宣伝広告をされておるのを毎晩お聞きになると思います。私の調査では、現在製薬業が広告のために出している額は約九十一億となっております。そういう莫大なものを出しております。七人委員会は、一般の人の使う薬の広告は差しつかえないと思うが、医者の使う薬に対する広告というものはでかでかと新聞に出す必要はない。謹告ということはすみっこに小さく書いて薬をばらっと大きく出しておる。こういうことなのです。しかも、私の調査では薬品の売上高の七%というものが広告に使われている。これは逆な意見もありまして、われわれは、広告費をそんなにうんと使うからわれわれの薬は高くなるといっているのですが、製薬業者、広告をされる方なんかは反対に広告をうんとするから薬は安くなるのだという御意見もあるようでございます。これは七人委員会の方々はそれは間違いだといっておられます。私も間違いだと思いますが、そういう問題も現在出てきつつあります。大臣はあのでかでかした薬品の広告をごらんになってどうお考えになりますか。これはある程度規制しなければならぬとお考えになりますか、もっと奨励してやるべきだとお考えになりますか。
  174. 小林英三

    ○小林国務大臣 製薬会社がある程度の広告をするということは、これはやむを得ないと思いますが、過大な広告費をかけるということにつきましては、これはある程度までマキシマムといいますか行き過ぎという問題につきましては将来考えるべき問題じゃないかと考えます。
  175. 滝井義高

    ○滝井委員 実はこの広告の問題というものは、さいぜんいったように、やはり大臣が首をかけるつもりで当らぬとなかなかできない。というのは日本にはマス・コミュニケーションというものは三本の柱があると私は思う。一つはテレビ、一つはラジオ、一つは新聞なんです。ところが現在ラジオや新聞やテレビのスポンサーというものは大体どこが一番占めておるかということなのです。言論と新聞を握るものは世界を動かすものなのです。ところがなかなかこの広告の問題は、私ら一昨年以来この問題を取り上げてきたのですが、なかなか新聞にも載りません、七人委員会の人たちが取り上げて初めてどうにかちょっぴり出たが、日刊新聞にはちっとも載らないのです。かつてある新聞が薬の値段のからくりというようなことを書いたらしいのです。そうしたらその新聞社に来てああいう薬の値段のからくりというのを書いたのならお前のところには広告を出さない、こういわれたという話さえ聞いております。そういう工合に、ラジオ、新聞、テレビのいわゆる台所をまかなっておるものなのです。よほどこれは大衆のために日本の医療向上のために、大臣が腹を締めてかからなければこの問題はむずかしい問題なんです。単純に常識論ではいかないことがあるのです。いわゆる道理が通らないところがあるのです。たとえば第一線の新聞記者諸君が広告のことを書いてもデスクでやられてしまうのです。これは一つ大臣も、大臣になったのですから、川崎君がせっかくこの報告書を残してくれたのだから、健康保険国庫負担の問題と広告の問題を一つ大臣の置きみやげにしてもらいたいと思うのですがどうですか。大臣は積極的にこれを研究してやる御意思がありますか。
  176. 小林英三

    ○小林国務大臣 大へんに有益な御高見を拝聴いたしておりますが、こういう問題につきましても十分に一つ研究してみたいと思っております。
  177. 滝井義高

    ○滝井委員 いま一つ製薬業について大臣に知っていただかなければならぬことは、現在の日本の製薬業者の内部には非常に内紛があるということです。現在私の知っている限りではサイタリン明治事件というものがあります。これはオーレオマイシンの各国の特許権を持っておるACC—アメリカン・サイアナミット社というのがあるのですが、この会社のサイタリンというのはオーレオマイシンと同じなのです。それで明治製薬が作ったのです。ところがこれが特許権の侵害だといって裁判になっている。いま一つはクロロマイセチン事件というのが同じようにあるのです。特許権を持って日本でやっておったものが、日本の会社がそういうものを作ったために特許権の侵害だという。なるほどこれは特許権の侵害の形で出ておりますけれども、実は製薬業における大手筋の争いなんですね。日本において戦後どういう薬が一番売れたかというと、抗生物質とビタミンと結核の薬です。この三つの薬をめぐって全国の製薬会社がしのぎを削っている。だからさいぜん言ったように、ときに独占的に四社が結集して厚生省にたたきかかってくることもあり得るわけなんです。こういうように、日本の製薬業は、一方においてはマス・コミニュケーションを握り、一方においては厚生省の薬務局をへいげいしておる、こういうことなんです。だから、これは一つ薬務行政を日本の厚生行政における一つの支柱として打ち立てなければならぬ時代がきておるのです。この薬務行政の打ち立てなくして日本の厚生行政はあり得ないと極論してもいいくらい大事なものになっているのです。こういうことがありますので、薬務局長をとくと鞭撻をされまして、日本の薬事行政を飛躍的に発展させて日本の厚生行政に筋金を入れてもらわなければならぬ、と同時に社会保障の基礎を確立してもらわなければならぬと思う。現在の日本においては何といったって薬が基礎ですよ。その点大臣のお考えを最後に一点伺って私の質問を終らせていただきます。
  178. 小林英三

    ○小林国務大臣 大へんに有益な御意見を先ほどから拝聴いたしておりまして、私新米の大臣としまして非常に裨益するところがあったと思いますから、お説の中のいろいろの点につきまして今後一つ参考にいたしたいと存じております。
  179. 野澤清人

    野澤委員長代理 明日は午前十時より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時十九分散会