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1955-12-10 第23回国会 衆議院 社会労働委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年十二月十日(土曜日)     午前十時五十四分開議  出席委員    委員長 佐々木秀世君    理事 大坪 保雄君 理事 大橋 武夫君    理事 中川 俊思君 理事 野澤 清人君    理事 藤本 捨助君 理事 山花 秀雄君    理事 吉川 兼光君       越智  茂君    亀山 孝一君       小島 徹三君    小林  郁君       田中 正巳君    八田 貞義君       亘  四郎君    石橋 政嗣君       受田 新吉君    神田 大作君       島上善五郎君    多賀谷真稔君       滝井 義高君    中村 英男君       横銭 重吉君  出席国務大臣         労 働 大 臣 倉石 忠雄君  出席政府委員         労働事務官         (労政局長)  中西  実君         労働事務官         (職業安定局         長)      江下  孝君  委員外出席者         労働事務官         (大臣官房労働         統計調査部長) 堀  秀夫君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      富樫 総一君         労働事務官         (婦人少年局         長)      谷野 せつ君         労働事務官         (職業安定局失         業対策部長)  渋谷 直蔵君         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 十二月十日  委員岡本隆一君及び中村英男君辞任につき、そ  の補欠として石橋政嗣君及び島上善五郎君が議  長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  労使関係労働基準及び失業対策に関する件     —————————————
  2. 中川俊思

    中川委員長代理 これより会議を開きます。  都合により委員長が不在のため、私がしばらくの間委員長の職を行います。  労使関係労働基準及び失業対策に関する件について調査を進めます。発言の通告がありますので、順次これを許可いたします。吉川兼光君。
  3. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 先般の本委員会で行われました倉石労働大臣施政方針のごあいさつに基きまして、若干の質問を試みたいと思います。  さすがに倉石大臣は、わが国の保守党の中における労働問題のエキスパートといわれておるだけありまして、このごあいさつを見ますと従来の労働大臣あいさつとは著しく趣を異にいたしております。うっかりこれを読んでしまいますと、あたかも社会党出身の閣僚ででもあるかのような錯覚を起すかもしれないほどのできばえでありますが、しかしながらちょっと念を入れて見ますると、そこには幾多の問題がきわめて巧妙に隠されておるともとられないではないのであります。そこで私は、私のあとには、わが党の労政通が何人も控えておるから、きわめて簡単に質問皮切り役をつとめたいと思います。  まず大臣は、あいさつの冒頭におきまして、広い国民的な視野と感覚をもって労働行政の処理に当る。従って労政関係等におきましても、話し合いをもって事を処することができるような態勢を整えたいことを強調されそれには労働教育の拡充を唱えておるのであるが、私が伺いたいのは、その言うところの労働教育の徹底についてでありますが、従来の、たとえば労務管理の指導であるとか、あるいは労働講座または労働組合体育大会というような一連の労働教育処置といいまするものは、今や明らかに膠着の状態にあると見られる点が少ないと思うのでありますが、倉石労働大臣労働教育についての新機軸なるものを簡単でよろしゅうございますから、その要点だけをお答え願いたいと思うのであります。しこうしてその労働教育は、私ども考えるところによりますると、もとより使用者であるとか、あるいは第三者であるとか、こういう者に対して労働問題をよく理解せしむるための労働教育ででもなければならぬ。これは大臣あいさつの中にもちょっと触れておるようでありまするが、それらのこと等も加味いたしましたところの労働教育論というものを、時間の関係もあるようですから、きわめて簡潔にお伺いしたいと思います。
  4. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 私は就任以来ときどきそういうことを申しておるのでありますが、日本民主主義がしかれましてからまだ時間も浅いものでありますから、国民全般に、私ども自身も、民主主義をまだ身によくつけてない、従ってそこにいろいろな失敗があることはやむを得ないことだと思うのでありますが、労働運動に対する一般国民の見方などについても、私はやはりほんとう労働運動というものを国民十分理解をしておってくれないと、たとえば電車ストライキがあると、自分がラッシュ・アワーにその電車の終点に行ってみると、きょうは動かないということだけを見て、こんちくしょうといって、ストライキをやっておる者に対して非常な反感を持つという簡単な事象が見られるのでありますが、どうしてそういうストライキが起きてきたんだろうかということについての理解を深めてもらうというところが、私は日本国民に足りないと思うのです。従って一般国民にももっと労働運動というものを理解してもらいたい、それからまた労働運動をやっておる人自身も、自分の携わっておる企業公共性ということを考えて、ストライキなどについては慎重な態度で臨むという慎重さをほしい。経営者側に対しても、私はそういうことをいえると思うのであります。従って私は国民全般に対して労働運動というものはどういうものであるかということをもっと徹底して理解していただくように政府は努めるべきである、そう性急に考えないで、長い目でこの労働運動というものについての理解力を深めてもらうように政府は努力をしていきたい、これが私のいわゆる労働教育に対する基本的な考え方であります。
  5. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 ただいまの御答弁は、大体において私もさもありなんと思います。私は先般綿紡ストの視察に大阪に行き、そのとき会見した資本代表の某氏は、われわれ国会議員団を前にして、日本紡績が経営できるのは国際的に比較して賃金が安いからで、その特徴である低賃金を是正したのでは紡績業は成り立たないと放言したのである。今なおこのような経営者がいる日本産業界に対しては、大臣のいう労働教育の必要は大いにあるのであります。そこで、あとは具体的な労働教育実施の面を拝見した上で、また御質問を申し上げるほかないと思うのであります。  次にお伺い申し上げたいと思いますのは、このごあいさつの中にありますように、公労法のほか、労働関係法律、すなわちいわゆる一口に三法といわれておりますものの、改正については、大臣は慎重を期するといわれているようでございます。公労法につきましては、実は後ほど多賀谷委員からも詳細に触れるはずですし、また予算委員会において、同僚の赤松君から大臣に御質問するやに聞いていますから、私ここでは簡単にお尋ねいたしておきたいと思うのであります。  先般長野県かどこかの御旅行先で、大臣新聞記者お話をなさいました談話が新聞に出ておりましたが、それによりますと、例の公労法の第十六条の規定であり、われわれが常に問題にいたしておりますところの予算上あるいは資金上不可能な資金の支出を内容とするいかなる協定にも、政府は拘束されるものではないという意味規定に対しましても、大臣改正の御意向があるやにそのときお話をなさったようであります。われわれも実は公労法といいますのは、大臣も御指摘なさっておりますように、まさに翻訳立法のにおいが強いので、その翻訳性を是正することにはわれわれも特に異議を持つものではないのであります。しかしながらただ翻訳性を是正すると言われても、問題は多岐多様にわたるのであって、問題は公労法改正の指向するところにあるといわなければなりません。申し上げるまでもないことでありますが、公労法によって極端に制限されておりますところの労働者基本権、この基本権制限を解放して、労働者基本権を守るような積極性を持った公労法改正でなければならないと思うのであります。ここにその詳細を申し述べる時間がないのは残念でありますけれども公労法改正について大臣が指向する方面は、労働者基本権を確立する方面に向っての御意図であるのかどうかと言うのが一つ、しかもそれは現内閣におきましては、閣内にも相当の異論が出てくるかもしれないのでありますが、そういう異論反対論を排除して強力に断行するという御決意があるかどうかということをお伺いしたい。
  6. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 公労法については、ただいまお話のように、これはほんとに文字通りの翻訳立法でございまして、当時私は労働委員会でその立法に当ったわけでありますが、英文で持ってきまして、政府から提案された原案と英文とを読み合せてみて、この字句の解釈はほんとの英語の解釈じゃないんじゃないかというようなことを論じておった。今日から見れば隔世の感がございます。しかし外国から持ってきた法律であっても、いい法律はどこまでもいいと私は思うのでありますけれども、これは御指摘のように、従業員立場から見ても、経営担当者から見ても、国会側から見ても迷惑千万な点が非常に多い。それでありますから今まで社会党の多賀谷さんあたりからも改正法案が提出されたこともあるようなわけで、私は長野で申しましたということは、常に東京で言っておることと同じで、あの法律というものはそういう沿革のある欠点の多い法律であるが、それでもとにかく今日公共企業体公社現業というものはあの法律でもって労働関係を律しておって、経営者従業員もこれでいいというならば好んでこういうことに手をつける必要はないと思うが、おそらく皆不便だから改正してもらいたいという希望が多いと思うので、そういうことについて労働省当局は一ぺん両者に相談してみようではないか、両者意向を聞いて考えよう、こういう立場を今とっております。  そこでただいま吉川さんのお話のように、労働基本権をじゅうりんしないような方向考えておるか、こういうお話でありますが、もちろん私は労働基本権を侵害するようなことを考えてはおりません。御承知のようにこの法律の出ましたのは、例の二・一ゼネストをマッカーサーが禁止するという、あのときに代償的に現われてきた法律でありまして、争議権を奪うためにこういうものをこしらえた。従ってこういう法律によって罷業権を剥奪しておる。現在でいえば三公社現業、これの労働基本権をどうやって守るかというために作られたのが沿革でございますから、その精神はやはり尊重しなければならない。従って改正案ということを口にすることは簡単でありますが、そういう趣旨をそこなわないようにして改正するということは、皆さんの御協力を得なければなかなかむずかしいことであると思いますので、幸いに皆さんの方が従業員経営者もそういうことで賛成であるというならば、私は改正方向に進めていくことが皆に喜ばれることではないか、こういうように考えております。
  7. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 ただいまの御答弁を伺いまして、私は真にこの法律のために争議権制限もしくは剥奪を受けているところの三公社現業労働者基本権を真に解放するような方向に向っての改正でありますならば、わが党といえどこれに協力することにやぶさかでないと信ずるのでありますが、そのためにはどうか一つこの委員会を通じて十分にわが党との話し合い大臣に希望するものでございます。  次に労働基準法改正でございますが、これにつきましては大臣は、この改正はやらないということをはっきり言明し、新聞も大きくこれを扱っていましたが、ところがこのごあいさつを見ますと、改正はやらないと言いつつ、すぐそのあとに続いて、例の臨時労働基準法調査会研究はこれを継続することとし、その結果の答申を待って政府は善処したいと考えておるということが述べられておるのであります。そうしますと、基本的には改正の必要を認めないとおっしゃりながら、すぐ続いて改正を意図しますところの調査会答申を待って善処したいということが述べられておりますということは、改正をしないというのがほんとうなのか、みずから進んで改正したくはないけれども答申のいかんによっては改正をするかもしれないとも受取れるが、それが本音なのか容易に捕捉できないものがあるのであります。これは大臣の巧妙な言い回しと思はれるのであるが、あまり遠回しの言い回しではなしに、御答弁の方は改正しないとか、するとかいうことをはっきりここでお伺いしたいものであります。
  8. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 私が申し上げておりますのは、私は労働関係というものは人間人間のつながりを律するものでありますから、なるべく法律や規則で縛ることを考えない方がいいのだというのが基本的な考え方である。そこで基準法のことでございますが、基準法については世間である者は基準法が守られておらないじゃないかという非難をされる人もあるし、ある者は日本の現在のような基準法というものは理想的に過ぎてこれは適当でないという非難をされる全然反対の論者もある。そこで私はいつも思うのでございますが、いろいろな統計などを見ますと労働基準法というものがしかれるようになりましてから、勤労者人々の体位が向上したというようなことだけはやはり私は認められることだと思う。従って基準法根本的精神についてだれも反対するものはないのでありますが、そこでいろいろな議論があります。今申し上げたように全く相反したような議論もありますから、独善ではいけませんけれども、西田前大臣の時代にただいまお話のような調査会を設けて、社会にいろいろな議論があるが、この基準法改正する必要があるかどうか、改正するために調査をするというのではなくて、改正論がいろいろあるが、そういう必要があるかどうかということについて、専門家研究を願いたいということであの調査会が設けられたのだそうでありまして、私もその趣旨は非常にけっこうだ、そこでこれの答申を待って、そういう有識者の御意見を承わった上で政府としてはさらに考えてみたい、こういうことでございます。
  9. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 大体この種の調査会審議会を設ける場合には、政府側は大ていそういうような説明をつけて始めるのでありますが、しかしながら今日この調査会が何を考えて始められたものであるかということは、労働者側では十分に知り切っておるのであります。しかしながら大臣がそうおっしゃるのでありますならば、しばらくときをかして調査会の活動を見守ることにしましょう。しかしこの結果が出た後における大臣の御措置によってはわれわれはまた質問をしなければならぬので、ここでは一応聞きおくということにしておきたいと思います。  それから次は例のいわゆるスト規制法、正規の法律の名前があまり長いのでここではスト規制法でいきますが、これは御存じのように第十六国会で、当時の改進党の修正案で三カ年の時限法になっておりまして、来年の八月にその期限が来るわけであります。その附則を見ますと、二十日とか十日とかこまかく書いてありますので、私が一々読み上げるまでもないと思うのでここでは省きますが、この法律期限がきて、これを存続するかいなかは次に開かれる国会で、国会が開かれて十日以内にきめなければならないという付則がついておるのであります。来年の八月にはおそらく通常国会が続いて開かれておるとは思われませんし、かりに臨時国会とううような段階にあるといたしましてもその会期が短かいに違いないので、いわゆる審議未了になる可能性が濃い。そこでこの二十日から開かれる通常国会にこの存続の問題を持ち込んで、そうして附則の二項、三項を削りスト規制法存続を企図しておるものがあるように一部に伝えられておるのでありますが、この法律は私が申し上げるまでもなく、その立法の当時は、この法律にうたわれております事業関係労働組合争議が非常に深刻なものとなり、遂にこういう法律にもなったもののように私考えられるのでございますが、今日はそういう関係方面、たとえば電気にしても石炭にしても労働事情があの当時のごとくしかく険悪ではないのでありまして、もはやこの法律存続する必要はごうもないと私ども考えておるのでございます。政府は果して通常国会においてこの法律存続を行うという考えがおありなのか、いなかをこの機会にお伺いしておきたいと思います。
  10. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 いわゆるスト規制法につきましては、私は当時衆議院で賛成討論をいたした一人でありますが、私はそのときに最後のところで、こういう恥ずべき法律は一日も早くなくすることをこいねがうのだ、こういうことを申したことを記憶しておりますが、いまだに変っておりません。あんな法律はない方がいいのでありまして、ああいう法律は他の三つの法律で違法であるということがはっきりしておるにもかかわらず、当時の労働組合側ではそれにいろんな理屈をくっつけて合法性を持たせようというような主張をなされておったし、また現実にあの当時の公共性のある電気産業などは非常に危ない状態に置かれておったので、あの当時の政府がいわゆるスト規制法というものを、つまり他の法律であるものを明文化して特にああいうものを作ったのでありまして、われわれからみればそれは屋上屋でない方がいいと思っておったのであります。現在もその心境は変りませんけれども、そこでいまだにああいう法律をさらに期限を延長していくべき必要があるかどうかという客観的情勢は、これから労働組合側人々ともいろいろ懇談をしてみますし、私どももこの客観的情勢について静かに観測をいたしまして、通常国会中に延長することがさらに必要であるという認識に立てばそれをやらなければならないであろうと思いますが、現在のところではしばらく研究をいたしておる最中であります。
  11. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 まことに巧みな御答弁でありますが、大臣自身賛成討論の際においてもこれは悪法であると指摘されたものが、しかも今日は客観情勢も当時とは激変しておるにもかかわらず、今なお研究をなさるというのは、どうしたことでしょうか。はなはだその意味がわかりませんが、まあいいでしょう。これ以上突っ込んで質問をしておりますと他の問題をお尋ねする時間がなくなりますから、次に移ります。  次は最低賃金の問題でありますが、これは大臣あいさつの中にも、合理的な賃金制度の確立あるいは労働環境の改善、勤労者税負担軽減などというようなことを打ち出すことによって生産性の向上をはかる云々ということが述べられておるようであります。そこで私が伺いたいのは最低賃金制度についてでありますが、これは申し上げるまでもなく労働基準法の第二十八、第二十九、第三十の三カ条にわたって明文があるのでありますが、たしか昨年の五月でございましたか、例の中央賃金審議会の会長から賃金の低い四つの業種すなわち、絹、人絹織物家具建具手すき和紙、玉糸座繰生糸を取り上げて答申がなされておるのであります。これについても政府答申書の中にあった実効性ある処置という言葉を悪用して、今日まで実施をしようとしておらないばかりか、近き将来において実施しようという熱意もないのであります。さらにまたこの中央賃金審議会にいたしましても昨年の中ごろにもう委員の任期は切れておると思うのであります。その任命も新たにやっていないでおる。いわゆる有名無実、今日では看板だけになっておるのでございますが、こういうこと等から考えましてもこの最低賃金制に対する政府熱意、あるいは誠意といいますものがごうまつも認められないのでございます。新大臣におかれましてはこれらの問題に対してどういうふうな処置を講じられるおつもりであるかをお聞きしたい。  それからもう一つは、例の勤労者税負担に関する要領というのがこの間新聞に出たのでありますが、実はこれに対しましては全国労働者俸給生活者等は非常な関心を持っておりますので、この労働者税負担軽減に対する労働大臣のお考え、すなわちその要領内容と、それからその御意見をどういうように進めていこうどするのであるか、あるいはまた閣内においてすでにどの程度進んでおるのであるかというようなことにつきまして、これは詳しくお伺いできれば幸いだと思います。
  12. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 お尋ね最低賃金制のことは、お話にございましたように賃金審議会から答申がございました。それで絹人絹織物製造業家具建具製造業、玉糸座繰製造業手すき和紙製造業の四業種について金融、税金その他最低賃金制実施に必要な実効性ある措置実現を待ってこれを実施すべし、こういう答申でございまして、政府の方では目下その実効性ある措置ということについて実現に努めようということでやっておるわけでございます。  それから第二のお尋ねであります税負担軽減の問題でございますが、御承知のように労働省では先般臨時税制調査会に、勤労者税負担は他の所得者負担よりも重いのであるから、財政の許す限りこれを軽減すべきであるという意見書をこちらの方から提出いたしました。この調査会の十二月八日付の答申の中にも、昭和三十一年度において給与所得控除引き上げ等措置による給与所得者負担軽減を行うべきであるというふうに発表されておる次第であります。本答申趣旨を尊重いたしまして、今後私の方と大蔵大臣と十分この点について協議をして実現をしていきたいというふうに存じております。
  13. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 大臣のこのごあいさつを見ますと、ここに一貫して流れておりますものは、労働者とか進歩的な国民とかの人気を念頭に置いて、たとえば今は保守勢力国会において絶対多数を占めることになったので、国会でやることは意のごとくできるというような態勢下において何をやるかわからないというような良識あるものの心配を解くために、問題のあるようなものの改正はどれもやらぬ、これもやらぬというようなことをずいぶんうたいすぎているように私は思うのであります。しかしながら改正せぬ手をつけぬというような消極的なことばかりでなく、私はむしろ問題によっては積極的に労働者あるいは国民的立場に立って大いに改正をしてもらわなければならないと思うのであります。ただいま申しました最低賃金制ないしは勤労者税負担軽減のごときは、一つ大いに積極的にこれを実行する気魄を持たれて現在の制度の不当な個所はどんどん改正するという方面大臣はお力を尽してもらいたいということを、ここに強く要望するものであります。  次は中小企業労組の問題でありますが、労働省の発表によりますと昨年一月から向う一カ年間に結成された労働組合は総計二千二百八十六組合であり、そのうち百人未満の組合員を持つ組合は千七百七十六あるとのことであります。これは総数から申しますと約八〇%に当るのであります。この中小企業労組といいますのは、本年一月には約五万の組合員を擁する全中総連というのができましたし、また七月には総評系全国一般合同労働組合というのが約四万の組合員をもって組織されております。     〔中川委員長代理退席委員長着席〕 御承知のように、これらの情勢から見まして労働省中小企業労働対策実施するためにでしょう、先般中小企業労働相談所というのを、労政事務所内に併置しておるようでありますが、この中小企業労働相談所の設置に伴いますところの措置の状況を、これは労政局長でもよろしいからお話し願いたい。  さらにこの程度の処置で十分とお考えになっておるのか、あるいはそれに対して新たに加える何ものかをお持ちであればその点をあわせて伺いだい。
  14. 中西実

    中西政府委員 中小企業労使関係につきましては、昨年以来各方面でとみに問題になって参りました。そこで実はこれに対処いたしまして、私の方としてはおっしゃいましたように労政事務所あるいは労政事務所のないところはそれにかわるものに、とりあえず労働相談所を設けさせるように府県に勧奨いたしておるのであります。この趣旨は、結局労働問題といいましても、単に労使関係ということではなくて、あるいは企業関係、あるいは職場の関係、いろいろございます。ところがわれわれの方の出先は非常に分れておりますので、従って相談にきた者が相談にきた目的を達しないということがございますので、相談所で出先機関がよく連絡を保ちまして、一応そこへ行きますれば労働問題についてはいろいろ相談に応じ得る態勢を整備したわけでございます。もとよりこの相談所ができたからこれで中小企業の労働問題がうまくいくというふうには考えておりませんが、そのほかにさらに中小企業の問題は、特に労使は現代的な労使慣行にふなれであり、また労働法規にも非常にうといということがございますので、新しい労使関係につきましての労働教育の面につきまして、あらゆる機会を通じまして今後力を注いでいきたいと考えております。労働相談所はまだ発足したばかりでございますので、どの程度効果をあげておりますか、数字的なものは出ておりません。しかしながら中小企業の密集地帯におきましては、これが相当活用されるのではないかと考えております。
  15. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 先般の二十二国会で例の失業保険法の一部が改正されまして、短期季節労務は九十日、普通が百八十日、五年以上の被保険者は二百十日、十年以上は二百七十日という四段階に分れたのでありますが、この保険給付の状況と保険経済の状態というようなものをこれも関係局長でよろしいので、承わりたいと思います。
  16. 江下孝

    ○江下政府委員 私から御答弁申し上げます。失業保険の受給状況でございますが、御承知の通り本年の初め相当大きく受給者が出ましたために、昨年度におきましては赤字を生じたのであります。ところで本年に入りましてからでございますが、これは七月ごろまでは全く横ばいないし減少でございましたが、八月、九月とうんと減少いたしました。数字で申し上げますと、初回受給者につきまして、従来毎月七、八百万人の初回受給者がございましたのが、この九月、十月には五万人程度に減少しております。これは明らかに最近の離職者の減少を物語っておるのであります。そういうような情勢からいたしまして、失業保険の経済は、現在までのところ大体とんとんというところで進んでおります。本年度も大体これで赤字にならないで進むという見通しを立てております。
  17. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 次に、これも関係部局長からの御答弁でけっこうですが、生産性向上運動と労働政策に関することでありますが、労働統計調査部で労働生産性統計調査というものを実施しておる趣きでありまして、一部はすでに新聞にも出ておったように思うのでありますが、私はこれはじみな仕事ではありますけれども、きわめて重要なことと考えるものでありまして、労働省におきまして真に労働者立場考え、労働生産性に関する基礎資料に力を入れて調査することによって、関係者を啓発するということは、これは一日もゆるがせにできないことだと思うのであります。新労働大臣の新施策の中における生産性向上運動と労働政策という面にも、大いに関係があるのでありまするから、その労働生産性統計調査実施状況というようなものを、お聞きしておきたい。
  18. 堀秀夫

    ○堀説明員 ただいまお話のありました労働生産性統計調査は、主要な産業につきまして、代表生産物の単位当りの所要労働時間を調査することによって、労働生産性の推移を明らかにしようとするものであります。昨年までは鉄、製煉、パルプ、セメント、綿紡等の九産業について実施しておりました。本年からはこれにさらにソーダ、カーバイド等の五産業を追加して実施しております。昭和二十六年ごろに比べまして、ことしの九月あたりの鉱工業の労働生産性の指数は、一五一という相当高い水準を示しております。戦前に比べましても二割五分程度上昇しておりますが、今後におきましても、この労働生産性向上問題の国民経済の中に占めまする重要性にかんがみまして、来年度からはできますればこの内容もさらに拡充し、また生産性向上が賃金、雇用、労働条件等に及ぼす変動要因と申しますか、そういうものについても、少し突っ込んだ調査をやるように、内容を改善、拡充して参りたい、かように考えておる次第でございます。
  19. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 あたかも労働大臣みたいな御答弁であり意を強くいたしますが、一つ倉石大臣におかれてはいまのご答弁を間違いなく実現していただきたいと思います。  次に婦人少年局長に一言お尋ね申し上げます。先般あなたの管下にありまするたしか東京の婦人少年室長であったか、南米をお回りになりまして、かの地における邦人の労働事情、特に婦人少年に関する問題をお調べになったやに聞いておるのであります。南米にはわが国からも戦災孤児などが幾組か試みに移民をいたしておるように聞いておりますが、これはまさしく一つのテスト・ケースのように思うのでありますが、向うにおける視察調査の状況がおわかりでございますならば、簡単でよろしゅうございますから、お伺いしておきたい。
  20. 谷野せつ

    ○谷野説明員 南米におきます移民の状況につきまして、とりわけ年少労働者が南米ではかなり日本から受け入れられるのではないかというような情報を、視察の結果婦人少年室長がもたらしておりますけれども、その南米の移民につきましては、職業安定局が所管をいたしておりますので、婦人少年室といたしましては、婦人少年局と協力いたしまして、職業安定局長にその状況を詳細に報告申し上げて、そちらを通しまして、私どもといたしましてはできるだけ促進にお手伝いをいたしたいと考えておるわけでございます。
  21. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 これは倉石大臣にもぜひ特に御留意願いたいものと思いますが、今見えておりますカンボジアの総理大臣も、日本からの五万名の移民を承諾したとか、用意があるとかいう新聞記事が出ておるくらいでありまして、ますます悪化の一途をたどるわが国の人口問題と対決する一つの方法として、移民はきわめて重要であると思いますから、特に私は婦人少年局長にお尋ねしたのでありますが、日本の年少労働者の中には、戦災孤児といわれるものが相当数おるのであります。戦後十年これらのものもすでに二十才前後になっておりまして、十分な労働力の供給源になっておるのでありますから、職安局などにおいてはぜひ労働省の政策の中に、この年少労働力の海外移民ということを取り上げて関係省などとも十分に御連絡の上、一つの新しい政策をこの際打ち出すだけの心の御用意があるかどうかということを一つ伺いたい。  それからもう一つ大切なことは、先刻大臣労働教育に関する報告を伺い、われわれは意を強うするのでありますが、ただ大臣答弁の中に一つ落しておるのは、肝心のあなたの所属する自由民主党、もっと狭めれば、あなたの内閣の中に、その労働教育をあなたが強力にやらなければならぬ対象すなわち相手がおるのじゃないかということであります。それは行政機構改革問題一つを取り上げてみましても、担当の河野大臣の構想として伝えられるところによれば労働省と厚生省を廃して社会福祉省などという、およそ時代に逆行するようなものを作るのだということが新聞に漏らされておるのでありますが、福祉などといいますのは、どこまでやりましてもこれは消極政治の域を出ないのであり、いわんや労働省と厚生省とを一緒にして社会福祉省などを作るという妙な行政機構改革を考えておる者が、あなたの閣僚の中におるとしますならば、あなたの労働教育はその閣僚に向ってまず爆発的に行なっていただかなければならぬと思うのであります。行政機構改革問題については、遠からず閣議において論議することになるわけでありますが、そういう際における大臣の心がまえのようなものを、この機会にこの委員会を通じて明らかにしておいてもらったらよろしいと思います。
  22. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 第一のお話の南米移民に関することでございますが、全くこれは御同感でございまして、私どもも御協力を得て、全力をあげてそういう成果の上るように努力したいと思います。  それから行政機構改革の点につきましても、ただいまのお話のようなことを私も新聞で拝見いたしましたが、行政管理庁長官である河野大臣は、少しもそういうことをまだ具体的に考えたこともありませんし、発表したことももちろんないのであります。どういう感じで新聞に出ましたか、本人も不思議がっておるわけでありますが、政府におきましても労働政策の重要性ということについては非常にウェートを重く見ておるわけでありまして、社会福祉省といったようなそういうものの考え方は、今のところは私どもの前に提示されておりませんが、日程に上るときには私は私としての意見を申し述べるつもりでありますが、労働省というものの存在を今日否定するようなものの考え方をしておる者は、おそらく自由民主党の中には一人もあるまいと存じます。行政機構の改革については、私はその趣旨は非常に賛成しておることでありますから、機構改革によって国民の便宜をはかるという方向へは持っていきたいと思いますが、労働省をなくするようなことは絶対に私ども考えておらないところであります。
  23. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 今の御答弁に対してちょっとだめを押しておきたいと思います。行政機構改革の全般の面についてはそれぞれの委員会でわれわれも論ずるわけでありますが、この委員会において大臣の声明としてお答えをわずらわしておきたいことは、労働行政が少しでも後退するような、つまり労働政策が少しでも後退するような行政機構改革には大臣反対であるということをはっきりこの委員会で御答弁しておいてもらいたいと思います。
  24. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 労働省をなくするようなことを政府考えておらないのでありますから、特にそれについて反対をするということを先ばしって申すのもどうかと思います。しかし私は、労働政策に第三次鳩山内閣がきわめて重点を置いているということは申し上げて差しつかえないと思います。
  25. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 大臣の言われるように果して政府考えておらなければ幸いでありますが、そういうふうなことが政府考えの中に将来出てきた場合に反対であるか賛成であるかということを伺いたいのです。
  26. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 私はそういう愚かしい意見か出てくるとは思いませんけれども、間違って出てくるようなことがあれば絶対に反対をいたします。
  27. 中川俊思

    中川委員 今吉川君の質問がありましたのでちょっと関連してでありますが、由来日本の保守政党というのは労働問題に対して無関心であります。労働委員会を開催いたしましても、出てくるのは大がい社会党の諸君が多くて保守政党の者は少い、そういう傾向が今日まで国会にございました。これはもう争うべからざる事実なんです。これはまことに遺憾なことでございまして、日本の保守政党の今後のあり方としては、この労働問題並びに厚生問題に対しましては相当力を入れなければならぬと実は私どもしょっちゅう考えておるのであります。そういうときにたまたま前の国会でございましたか前前国会でございましたか、ごらんの通り社会労働委員会というふうに銘打って厚生委員会労働委員会を一緒にしてしまった。ところが私はこの委員会に所属しておって痛感いたしますことは、労働問題を扱うときにはほとんど従来の厚生関係の者は出てこない、また厚生関係のものを扱う場合には労働関係の者は出てこないという実は傾向があるのです。こんな運営上からいっても実にばかげた話はないという考えを私は持っておるのであります。これは国会に関する機構の改革でありますか委員会制度の改革でありますから、労働大臣にお聞きすることはどうかと思うのでありますが、しかし労働大臣も長年国会に席を持っておられる方でありまするので、個人的な意見としてでもけっこうでございますから、こういうふうに委員会を一緒にすることが妥当であるかどうか、あるいはこの委員会はやはり従前のごとく別個の問題としてやっていくことがいいかどうかということについての一つ御所見を承わりたいと思うのであります。
  28. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 この常任委員会制の問題について労働大臣がお答えするのもおかしいと思うのですが、せっかくのことでございますから…。  委員会の数を少くしょうというようなことは私がたしか国会の運営をやっておる時分に出した案でございまして、数年前にアメリカの国会に招かれて行きましたときに、上院でやはりソーシャル・ウェルフェア・アンド・レーバーという一つ委員会にまとめて、その委員長が私どもに、国会の常任委員会がいつの間にかだんだんふえてしまう、そういうことで何とかこれを整理しようというときに社会福祉と労働とを一緒にして自分委員長になったが、これは遠からず分離するだろう、こう言っておりましたが、現在はついに分離してしまいました。やはり社会福祉と労働問題というものは非常に関係があることは確かでありまして、非常につながった点が多い。ことに失業対策事業なんというのは初めはいわゆる社会福祉的な考え方から出てきたので、ああいうものは厚生関係と非常に関係がございますから、国会の機構で御一緒になさることも一つの方法ではあろうと存じます。これが国会の運営上必要なことであるということで国会側がおやり下さることについては、私どもは別に異議を申し上げる立場にございませんけれども、運営の方法いかんによっては、私ども政府側として一向支障を感じておりません。どうかその辺で運営のことは一つ国会側で御決定を願いたいと思います。
  29. 佐々木秀世

    ○佐々木委員長 石橋君。
  30. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 私は現在日本に駐留いたしております米駐留軍が直接使用しておる労働者の問題について、労働大臣お尋ねいたしたいと思うのであります。  すでに御承知のこととは思いますが、この駐留軍に直接雇われておる労働者には現在二つの形態があるわけであります。一つは間接雇用労働者といわれておるもので、日本政府が日米労務基本契約に基いて労務者を便宜提供している形をとっている。従って雇用主は日本政府でありまして使用主は米軍というふうな、非常に変態的な形がとられているわけでありますが、しかしとにかく雇用主が日本政府であるということは明確でありますので、法律上の責任というものはすべて日本政府がとるということから、いろいろな問題はございますけれども、比較的もう一つのいわゆる直接雇用労働者に比べれば明確な雇用関係がここに出てきております。いい面もあるわけでございます。ところが片一方の直接雇用労働者ということになりますと、非常に条件その他劣悪であります。私は間接雇用労働者の問題についてもいろいろお尋ねしたいことを持っておるのでありますが、時間の関係もありますので、きょうは直接雇用労働者の面についてのみ一つ大臣お尋ねをいたしておきたいと思うわけであります。  今も申し上げましたようにこの直接雇用というのは、実際には日本政府との契約によっておるものではなくして、米軍が直接雇い入れておる関係上、日本政府はもちろん、間接雇用の場合のように県の渉外課あたりも何らこれにタッチできないというふうな状態にあるわけであります。  まず第一に聞いておきたいことは、この直接雇用労働者の形式上にも、実質的にも、法律上にも雇用主といわれるのは一体だれかということ、全くおかしな話でありますけれども、この点が非常にぼやけておる。実際直接雇用労働者の雇い主は米軍そのものなのか、それとも米軍に属しておるある特定の機関あるいは個人なのか、これが責任転嫁の形で往々にしてぼやかされてきておりますので、私は最初に大臣にこういう点から念を押してお尋ねしておきたい、このように思うわけなのです。直接雇用労働者の従事する施設というものは行政協定の十五条の第一項に明示されている。従って軍そのものではなくて合衆国の軍当局が公認し、かつ規制する諸機関というふうに考えられないこともないのでありますが、しかしそれにしても雇用上の問題について起きてくるすべての責任は、最終的には米軍自体がとるべきなのか、あとでこれに関連して問題が出てくるわけでありますが、大臣としてこの直用労働者の問題について雇用関係——労使の間において起きてくる問題は軍自体に責任をとらせるという考えを持っておられるのかどうかということを最初にお尋ねしたいわけであります。この点非常にぼやけておるのは確かであります。なぜかといいますと、これは賃金その他がすべて歳出外資金によってまかなわれておる。具体的な例をあげますと、たとえばNCOクラブとかBOQとかいうところがありますと、そこを利用しておる将校とか下士官とか兵隊とかが金を醵金してそれで労働者賃金を払う。あるいはもっとひどい例になりますと、食堂に入ってきたときに箱の中に何セントかお金を入れて、そのたまったもので給料を払うとかいう形がとられておるわけでありますから、実際交渉しようにも一体だれに交渉したらいいのかわからないというふうな全く情ない状態にある。こういう点から明確にしておかなければ、これから先いろいろお尋ねしようとする点も明確にならないと思いますので特にお願いいたしたいわけであります。この直用労働者というものが、おそらく私は日本の日の当らない労働者の中でも最たるものではないか、どちらかといえば国内法も無視され、全く劣悪な条件に働かされておるというようなことから考えまして、どうしてもこの点から明らかにしておいていただいて、そのあと国内法の適用の問題についていろいろお尋ねし、あるいはお願いしなければならないものがあるので最初に聞いておきたいと思うわけであります。
  31. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 政府委員の方から御答弁申し上げます。
  32. 中西実

    中西政府委員 直接雇用の労務者は非常に種類が雑多でございまして、おっしゃるように勤めている先も雑多であるし、それから今の管理の形態も実はわれわれが見ましても相当種類があるようでございます。それで実はおっしゃるように、この直用労務者については一応われわれの方として直接関係を持っておりませんので、従って事が起ったときに処理していくという現状であることをわれわれよく存じております。ただわれわれが事が起りましたときに、それに当りまして問題を解決する場合に、明らかにその施設の管理者と思われる人々にいろいろ使用者としての責任を認めて交渉しましても、いつもそのうしろにリエイゾン・オフィサーと申しますか、やはり軍の連絡官が一名入ると申しますか、見方によればかえってそれがいろいろな決定力を持っているというようなかっこうになっているようであります。従ってこの問題につきましては結局軍が実際上相当な発言権を持っておりますので、労使関係の問題を処理するためにはその施設の管理者と同時に連絡将校と申しますか、これと同時に話し合いをするということでないと解決しないのではないか、今まで起りました問題につきましても一応そういうもののあることを前提としまして事に当っている次第でございます。
  33. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 あまりはっきりしてもいないのでありますが、それでは非常に困るわけです。この間中央労働委員会の中山会長からアメリカの極東軍司令官に対しまして、労働委員会で扱う事件について審査上の協力をしてくれという要請がなされた。そのときに米軍側の回答としてアメリカの軍人、軍属は、公務執行の間になした行為についてはアメリカ軍当局に対してだけ責任があるというふうな回答をして、どちらかというと、この協力を拒否する形をとってきていることははっきりしているわけです。そうすると、労働委員会で扱われている問題を見ましても、個々の機関によって起きた不当労働行為とかいったようなものなのでありますが、これも結局公務上なしたものだというふうな見解を軍がとっているとするならば、そういうふうな扱いはすべて軍自体が責任を負うものだということを軍自体が認めているのではなかろうか、そうだとするならば、あいまいな態度で労働省が臨むのではなくして、基準法の問題も常に出てくるわけでありますけれども、あくまで軍の施設の中で起きた労使の問題については軍自体に責任があるのだという基本的な態度を持して、今後処していただきたいと思うのでありますが、この点大臣から確答を得たいわけであります。
  34. 中西実

    中西政府委員 今の問題も実は法律的な技術問題ともからみますので私から申し上げますが、大体の交渉に当りましてはおっしゃいますように、やはり軍と話し合いをつけませんければ問題が進まないというふうに考えております。
  35. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 それは事務的、技術的な問題としていいとするならば、なお大臣として私最初に申し上げたように、あくまで責任は軍自体がとるべきだというふうにお考えにならないかどうか、大臣にちょっとお尋ねしておきたいわけです。
  36. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 石橋さんもよく御存じのように、間接雇用の方は調達庁が雇用主の立場に立っておりますから、これはその雇用条件などについて日米合同委員会でわれわれの方の主張を常にするように努めさせておりますし、また特にこの両者関係については委員会などを設けて、そうして話し合いの機会をたくさん作っております。それで原則として御承知のように労務基本契約によっても日本の労働法を守るということになっているのでありますから、その方は比較的問題ばない。ただやかましいのは、PXであるとか、直接家庭サービスなどに行っているただいま御指摘の労務者、この問題は実は政府としても非常に困難を感じております。私は調達庁も担当いたしておりますが、調達庁内部においてもこの問題について御指摘のようにいろいろ問題があるものですから、それを何とか御要望に応じるようにしなくてはならないということで、特にそれらの人人だけの問題について両者委員会を開いて、そこで一つ何とか決定しようではないかということで相談をさせることにただいまなっております。
  37. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 大臣答弁を聞いてもわかるわけでありますが、そこに盲点があるといいますか直用労働者が非常に顧みられない悪い条件で使われる要素がそこにあるのではないかとすら思うわけであります。もうその点だけをここで取り上げておりましても時間の関係がありますので、少し具体的に入っていきたいと思うのでありますが、一応軍直労働者の雇用上に起きた問題については、軍そのものを相手にして交渉しなくちゃ話はつかないということは、お答えになっておられるようでありますので、それではそのいわゆる雇用主は日本の労働法規に拘束されるのかどうか、この点も非常に明確を欠いてきていると思う。言いかえれば駐留軍関係の直用労働者の国内法の保護を受けるのかどうか、こういうことなのです。幾たびか言葉の上では適用を受けるのだということを政府間でも発表されているようでありますけれども、実際には残念ながら適用されておらない場合の方か多いといっても私は言い過ぎじゃないと思う。その例をよく知っておられると思いますが、若干ここにあげてみますと、これは東京の明治ビルであった事件ですけれども、ただ単に米人の支配人が感情的に気に食わないというだけで明日からもう来るなということが行われている。なぜですか理由を教えて下さいというと、今度は命令不服従という理由で解雇される。こんなことが行われている。また一番多いケースとしては保安上の理由に基き、これだけの言葉で明日から来る必要はないというふうな扱いを受けている。それにもっと悪質と私たちが思うのは、労働組合を組織しようとした、これを公然と理由として解雇してきている。あるいは組合関係のパンフレットを基地内で持っておったという理由、あるいはまたメーデーに参加したという理由に基いて首を切ったという例もたくさん出てきているわけであります。一体こういうことでは幾ら日本政府が、日本労働者である以上あるいは行政協定で明文がある以上、当然に日本法律の適用保護を受けるのだといわれても、実際には受けておらないと言わざるを得ない。そうだとすると果してこの点において米軍が治外法権的な特権を持っているのかという疑問が出てくるわけでありますが、今も申し上げましたように間接雇用労働者は日米行政協定の十二条五項によって、直接雇用労働者は十五条の四項によって明らかに日本の法令の定めるところによって保護されるというふうに私は考えているのでありますけれども大臣はこの点について言明され得るものかどうか。先月開かれました第十回全国労働委員会連絡協議会の決定に基いても、大臣に対する見解表明方の要望があったと私は思う。一体駐留軍の直用労働者日本法律によって保護されるのかどうかということを文書で表明してくれということがこの連絡協議会からも要望があったと思いますので、明確な御答弁を得るために大臣お尋ねをするわけであります。
  38. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 ただいまのようなお話につきましては、もちろん日本人であって、どこに働いておっても日本の労働法規によって保護されることは当然なことでございますが、しばしば御指摘のように直用労務者のいろいろな問題が起きたことは事実であります。そういうときにこちらの方から注意を申しますと、軍の直接雇用いたしている方でも反省をいたしている面もございます。ただしかしそれはそういう場合もありますけれども、ときどきそういう非難を受けるような事案がありますが、日本政府は御承知のように米軍に対していろいろそれを監督する権限はございませんので、その間に非常にむずかしい問題が起きてくるので、実は非常に困難を感じているというので実際の今日の実情であります。従って先ほど申しましたように直用労務者のことについては両者で話し合って、なるべく、そういう事案の起らないようにしようということで話し合いを調達庁の方でさせよう、そういうことでございます。
  39. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 法律的には、軍直労働者といえども日本の労働法規の適用保護を受けるのだということは、再三言っている通りだと言われるわけなんです。しかし実際問題として困難だと言うのでありますが、私は困難だということだけでは済まされないと思う。適用は受ける、しかし現実の問題としては困難である、適用を受けられないような場合が非常にたくさん出てきているということになると、これは守らない米軍側に責任があるのは当然でありますけれども、やはり毅然とした態度で守らせない日本政府側にも私は責任はあると思う。私は日米行政協定に反するようなことを言っているわけじゃない。この協定に明らかなことすら米軍に守らせ得ないということは、私は日本政府の責任をまぬがれることはできないとこのように思っております。現に最近では法を無視してかかっている。その度合いも非常に露骨になってきている。なぜかといいますと、問題がいわゆる準司法機関的な性格を持っている労働委員会あたりに持ち込まれて来ましても、米軍がこの審問等に全然協力をしない。協力をしないだけではない。実際に出てきた命令をすら拒否する格好で臨んできている。これは非常に問題だと思う。見方によってはこれは挑戦であるといえないことも私はないと思う。大臣もそうだろうと思いますけれども、往々にして政府のお歴々も口を開けば労使の問題は平和的にやれ、ストライキなんかやるから雇用主が、あるいは米軍が硬化して問題の処理を遅らせるのだ、平和的に問題を処理すべきだということを常々言われている。だから関係組合においてもなるべくそういった実力行使なんというものを避けて、話し合いで、あるいは平和的な機関で処理しようと思って労働委員会に問題を持ち込んでくる。あっせんを申請する。ところが肝心の相手側の雇い主はこの労働委員会の査問に協力もしない、出てきた命令に従いもしないというのでは一体労働者はどうしたらいいか。私は非常に大切な問題だと思いますのでお尋ねするわけです。この点いろいろ例がございます。あげていけばきりがない。昨年全国統一ストに参加したという理由で組合員が首を切られた。これに対して神奈川の地労委が取り上げて査問を開始したけれども、軍は出頭しない。これは神奈川だけでない。埼玉にも起きております。あるいは東京の都労委でも起きている。これは非協力というような例でございますが、先ほど申し上げたように実際に命令が出たものを拒否するという例が今度青森県にはっきり出てきている。この場合などはちゃんと最初は査問にも審問にも応じておった。それで軍のとった態度が不当であると明らかな判定が下りまして、本年の五月二十六日解雇を取り消せ、原職に復帰させろ、そうして解雇された日から原職復帰の日までの賃金相当額を支払えという命令が出てきた。ところが職場に復帰させない。もちろん賃金も払おうとしない。一体こういう問題を政府は黙って放置しておっていいのかどうか。私は当然何らかの措置がとられなくてはならないと思う。もし解決されておらないとするならば、今後においても全力をあげてこの処理に当らなくちゃならない。そうしなければあなた方がいつも言っておられる平和的な問題の処理というようなことは、軍関係労働者の場合には絶対にあり得ないということになると思うのであります。この問題について大臣は一体どういうふうに考えておられるのか、なお今後どうしようと思っておられるか。この青森県の例の場合でありますが、申立人は湯川富三というのでありますけれども、解雇されましてから、絶対に自分は首を切られるような理由はない——この当時解雇の理由とされましたのは、この人はコックでありますけれども、エビ料理が半煮えだったという理由だった。これは表面の口実で、実際には本人には何の責任もなかったということがあとではっきりしておる。実際はただ組合を作って勤労条件の維持向上をはかろうとしたということにあったわけです。だから労働委員会がこういう裁定を下すのは当然なんです。だから絶対に自分は首を切られる理由はない。しかし首を切られて、基地には入ってくるなというから、しょうがない、奥さんと二人で二坪ばかりの店を開いて細々と何とか生きるかてを求めてきたけれども、もうどうにもならないような状態にきて、奥さんは来月が臨月だそうですが、すでに狂乱寸前にあるというような報告まで受けておるわけです。こういう例があちらこちらで現に起きておるわけでありますが、何としても私は早急に政府が明確な態度を打ち出して、軍にも相当強硬な決意をもって臨んでもらわなければ、基本的な、人権の問題にもなると思いますので、その決意を私はお尋ねするわけであります。
  40. 中西実

    中西政府委員 ちょっと法律関係につきまして先に御説明したいと思いますが、行政協定の十二条の五項、それから十五条の四項に同じ規定がございまして、賃金及び諸手当に関する条件のような雇用及び労働の条件、労働者の保護のための条件並びに労働関係に関する労働者の権利は、日本国の法令で定めるところによらなければならない、こうございますので、私どもは間接直用を問わずすべて労働関係日本国の法令によるのだ、その法令によるということは内容だけではなくて、いろいろの救済手続、そういうものもすべて日本国の法令によるのだ、こういう解釈で実はきておったわけでございます。ところが最近になりまして、この法令の定めるところによるというのは、実質によるのだ、そこでいわゆる管轄権といいますか、裁判管轄あるいは労働委員会のような行政的な管轄、これについてはあながち日本国の法令によるということではないのだというように態度が変ってきているように見えるのであります。実は駐留軍のおりますのは日本だけではなくてほかの国にも例がございます。たとえば北大西洋条約の取りきめにおきましてもやはりこういった条項がございまして、労働者の労働条件は駐留するその国の法令による、こういう条項が確かにあります。しかしその書き方は、実質によるのであって、管轄権までよるのではないというのが国際慣行のようであります。従ってわれわれ国内で法律論議します場合にも、そういう解釈がかえって正しいのだというような意見もあるのであります。この行政協定をすなおに読みますと、単に内容だけでなくて手続もその国の法律による、日本国の法令の定めるところによるというふうに読めるのでありますが、そうするとこの行政協定が国際慣行と違った、つまり多少出過ぎておるということもいえるわけなんであります。しかし今まで確かに軍側としましても労働委員会にも協力してきましたので、われわれとしましては、今のところ軍に対しましては手続上日本の法令によってもらいたいのだということでやっております。しかしこの問題は条約解釈の問題にもなりますので、外務省の条約局その他とも連絡してやっておるのでありますが、なかなか片がつかないのであります。この不当労働行為等で労働委員会の管轄権ばかりではなしに、司法上の民事裁判の管轄権につきましても、今のPXその他につきましては問題がございまして、いまだに実は解決してないというような状況でございます。そこで何度かわれわれ合同委員会に持ち出してやるのでありますけれども、なかなか結論が出ない。しかし現実おっしゃるように方々に問題が起る。そこでその解釈の問題は解釈の問題としまして、現実起る問題の処理のために、現地に労働組合と軍との協定で処理機関を設けたらどうか。適当な人を選びまして両方の代弁者をその中に加えて、そして現実の問題を迅速に処理していくというものを実際の処理機関として置いたらどうか。このことを軍に提案しまして、そしてとりあえずの起る問題を解決していきたいという手続を今いたしております。もちろん相手のあることでございまして、この提案に賛成するかどうかまだ今後の問題でありますけれども、そうでもしませんと、どうも今後今の管轄権の問題をやっておりますと、なかなか解決がつかない。それからもう一つは、ただ実際上の問題になりますのは、解雇の場合に多いわけでありますが、解雇の理由は日本人と向うとの風習の違いとかあるいはまた軍施設という特殊な施設である関係上、日本の一般民間での解雇の理由と若干違う場合もあり得るので、そこいらはなかなか話し合いがつきにくい問題が多いのであります。できるだけわが国の国情も察してもらって、トラブルの起らないように今後とも交渉していきたいというように考えます。
  41. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 局長以下の事務当局の方々が答弁されれば大体そんなところだと思うので、私は大臣答弁をお願いしておるわけです。米軍がどう考えておるかということは、先ほどから私の言っておるのでもわかっておる。しかし今の基地管理権等の問題についても調達庁はもちろん労働者に肩を持った正しい見解を表明しておると思う。というのは、今の基地管理権も十二条五項に違反しない範囲において持っておる、こういうような解釈を調達庁としてはとって、軍との折衝に臨んでおるのでございますが、これに比べてもなお今の局長の答弁では少し後退し過ぎておる。私はそのように思います。そういうふうなことでは困る。問題は、また労働委員会にも協力しておるとおっしゃいますけれども、協力してない例は山ほどあるわけです。先ほど申し上げたように、一回も審問に応じないというようなケースが全国各地の労働委員会で起きておる。だからこそ労働委員会連絡協議会でも真剣にこの問題が取り上げられ、労働委員会に正式な見解を望んできておると私は思う。これは解釈の問題でございますが、そういうふうな技術的なあるいは解釈上の問題が処理できないからといって、このまま放置することは絶対にできないと思う。もう一日々々この不当労働行為、その他の一方的な行為が次々と起きてきておるわけです。やはりもう少し真剣に政府としてはこの問題を処理していただきたい。日米行政協定が不明確ならばこれを明確にしてでも労働者の権利は守ってやろうというだけの意気が労働大臣にあるのかどうか。私は国務大臣である労働大臣のこの日米行政協定についての考えも聞きたいわけです。労働者が全く国内法を無視された形で存在する、こういう矛盾をなくするためにも、日米行政協定を、もしいろいろ解釈の相違その他があるならばもっと明確なものにしたいという、それくらいの熱意を持っておられるのかどうか。そういう熱意はともかくとして、それでは、どうしても直接雇用でそういう問題が出てくるならば、間接雇用ならば少し問題が少いが、じゃ米軍に関する限り直接雇用は認めぬ、間接雇用一本で行こうというくらいの態度で臨むということもこれは私は必要になってくるのじゃないかと思う。講和条約が発効したときに、駐留軍関係労働組合である全駐労は、直用じゃ絶対——アメリカさんはどんなにりっぱなことを口で言ったって、日本法律は無視してかかってくるということを過去の経験で知っておったから、絶対に間接雇用一本でなければならぬといって主張しておった。そのときに、労働省皆さん方は何と言われたか。国内法は絶対に守らせるから、軍関係労働者は直用にすべきだと大言壮語をされておった。しかし現実問題として、行政協定がどうだ、裁判管轄権の問題がどうだ、管理権の問題がどうだというようなことを言われて、結局不遇な、暗い谷間にこの有用労働者が取り残されておる以上、当時の見解をいまだに持っておられるとは思いませんが、少くとも百八十度切りかえて、直用で問題が残るならば、さしあたり行政協定の明確な改訂が行われないならば、直用を認めないで全部間接雇用にするという程度の決意を持って、米軍との交渉に臨む閣内意見を統一するくらいの気はくを、私は大臣に持ってもらいたいと思うのでありますけれども、この行政協定改訂の問題あるいは直用をなくして間接一本にするという問題についてどういうふうにお考えになっておられるか。これは歳出外資金であっても、私は一応政府がプールして、そして給与支払いその他雇用上の責任を持つということでやっていくならば、今の間接雇用の場合と同じような方法がとれると思うのでありますが、大臣に要望いたしますと同時に、一つ見解を述べていただきたいと思うわけであります。
  42. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 お話の問題が基本的なことになりますので、十分研究して、後日お答えいたすことにいたします。
  43. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 それでは時間がないようでありますので、後日お聞きし、そしてまた要望したいと思うのでありますが、もう一つ申し上げておきたいと思うことがあります。それは何かと申しますと、国内法が無視されて、アメリカの一方的な見解によってこの直用労働者の労働条件その他が取り扱われておるということの原因の一つに、就業規則がないということがあげられるのじゃないか。間接雇用労働者の場合には、日米労務基本契約という、いわゆる就業規則的なものか存在します、しかし直用労働者の場合には、ほとんどの場合にこの就業規則すらない。労働協約なんぞはもってのほか、労働協約などというものは、米軍と他国の民間人が協約を締結することは米軍の法律上疑義があるというようなことを言って、全然受け付けない。ところがこの協約だけじゃなしに就業規則すらもないというところに、問題をいよいよ悪い方に追い込んでいく要素があると思うのでありますが、さしあたってこの就業規則を米軍側に作らせるということくらいは、労働省各機関で御協力願えるのじゃないか。間接雇用の日米労務基本契約、この内容程度のものを、直用関係労働者の場合にも就業規則として米軍に作らせるということができれば、ある程度の摩擦は避けられるのじゃないか。この点については、就業規則という全般的な問題が時間的に間に合わないとするならば、さしあたって退職手当を明文化するということ、それから夏季、年末手当の制度化をはかるということ、健康保険、失業保険に入れてもらうということ、昇給制度の確立、最低八千円の確保というふうなことをやる、傷病者の有給休暇取扱いをやるという、以上五項目くらいは当面やってもらいたいという要求を労働省にいたしまして、これが三月十日に日米合同委員会に持ち出されておるのでありますけれども、これもいまだに解決しない。この程度のものはできるだけ早急にやっていただきたいと思いますので、この点も一つ見解を述べていただいて、かつ早急解決のために努力をしていただきたい、このように申し上げまして、それではあとは後日に譲りたいと思います。
  44. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員 ただいまの石橋委員の御質問は、非常に重要な問題だと存じまして、これに関連してちょっと申し上げておきたいと思うのでありますが、この問題について、一番問題の根本になっておるのは、日米行政協定において、日本の労働法規がいかに適用されるかということの解釈に疑問があるということじゃないかというふうに伺ったわけでございます。そこで元来この協定の解釈といたしまして、日本法律が米軍に対しまして法律上当然に適用されるというような解釈は、国際慣行から見まして成り立たないことは当然であると思います。そこでこうした協定のもとに米軍の雇用されておりまする労働者の地位を保護いたしますためには、日本当局といたしましては、日本法律によるのだということになっておるが、具体的にいかなる法律にいかなる程度よるべきか、すなわち米軍が日本労働者を雇用するに当って必ず順守すべき具体的な労働条件というものを、まず日本政府と米軍との間で具体的に相談をすることがどうしても必要じゃないか。それでなければ、この条項を具体的に適用するについての両国の了解した基準というものが成り立たないわけです。今までの質疑応答を承わっておりますると、日本当局側と米軍との間に具体的な労働条件についての詳細な取りきめが行われていないのじゃないか。ただ行政協定において、日本法律に準拠をするのだという趣旨がある。それでもって、当然にアメリカ軍が必ず守ってくれるのだということを考えて、そうして具体的な打ち合せをなすってはおられないのじゃないかというふうに考えたわけであります。そうしますと、その点からいろいろな問題が発生するのでございますから、まずこうした問題を避ける意味からいって、私は、日本の当局がすみやかに米軍と、こまかい日本の法規のすべての条項の一々について、どの条項についてはどの程度までアメリカ軍が必ず守るということをはっきりと約束しておくという手続をおとりになることが必要じゃないか、こういうふうに考えたわけでございます。私の申し上げ方が悪かったので、私の申し上げようとした意味が十分おとり願えたかどうかわかりませんが、その点について一応お考えを承わりたいと思います。
  45. 中西実

    中西政府委員 非常にけっこうな御注意をいただいたのでありますが、従来も無条件に日本国の法令の定めるところによるというので、特にたとえば第三条の施設の管理権とかそういう面での調整はございますけれども、それ以外には無条件に日本法律が適用になるのだ、こういうふうに考えておりましたので、特にそういうことが念頭になかったのであります。特に日本の中央、地方労働委員会の権限行使に向うが協力しなくなりましたので、この点が今非常に問題になって参りました。そこでおっしゃるようにさらにずっと法律を洗いまして、どれとどれをほんとうにやるのか、やるにしてももし全面的にやらないのなら、どういう理由でどこをやらないのかというようなことをもう一ぺんすっきりするのも一つの方法かと思いますので、至急に研究したいと思います。
  46. 大橋武夫

    ○大橋(武)委員 せっかく労働問題に深い御理解のありまする新大臣の御就任がありましたのですから、こういう機会にぜひ一つこの問題の根本的解決について十分対策を希望いたす次第でございます。
  47. 佐々木秀世

    ○佐々木委員長 滝井君。
  48. 滝井義高

    ○滝井委員 大臣が十二時半までだそうでありますから、一般的なものは次会に譲りまして、年末関係の急な二点をちょっとお伺いしたい。  それの一つは労働金庫の年末金融の問題。御承知のように中小企業等から相当労働金庫に年末金融の申し入れが殺倒してくるわけです。現在金融情勢が一般的に緩和したために、労働金庫等においても相当預金が集まっております。百十億くらいの預金があるが、貸し出しが八十億ぐらいで、ある程度の資金的な余裕はありますが、殺到する年末金融をまかなうには不足のようでございます。従って昨年におきましても四億くらいはやはり政府の方で手当をしてくれておる。また二十八年度においても二億七千万円くらいしてくれておる。今年労働金庫の方では十億くらいは政府の方で余裕金があればぜひ預託をしてくれという強い要請があるわけです。現在この中小企業労働対策とともに、こういう金融面というものも中小企業の労組等から非常に要請があるわけなのですから、労働省としても当然今後の中小企業労働対策の上からもこういう面は取り上げていかなければならない面だと思います。この点をまず大臣からお骨折りをいただきたいということが一つ。  いま一つは、先般当委員会理事会に大臣がおいでになって、自発的にわれわれの要請しない前に、日雇い労働者の就労を一日だけ年末にふやして、六日分という御意見があった。非常にわれわれ喜ばしいことだと思いますが、その六日分を与える就労の条件についてなのでございます。実は地方の職業安定所が人員不足のために、たとえば私なら私が十月ごろに職業安定所に行って失業者の登録をしておっても、ほんとうに登録に載って就労するに至るまでには二ヵ月かかる。そうしますと、六日分を与える条件がたとえば二ヵ月前に十二日なり十四日働いたということになりますと、もう登録を二ヵ月前に申し込んで手続をしてしかも二ヵ月後になって就労したという諸君はなかなかそれを納得しない。納得しない結果どういうことが出てくるかというと職業安定所なりあるいは市なりに行ってその分を一つわれわれにくれという。こういう登録をしておったのであるからわれわれに責任はないのだということで、非常に地方庁自体が迷惑しておるという事態が最近われわれの地方の炭田には起る情勢が出てきた。この点今までのような十二日、十四日というそういう制限を何とか緩和してもらう措置はできないものかどうかという、この二点についてでありますが、一つお伺いしたいと思います。
  49. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 労働金庫の年末金融のことにつきましてはお話を承わっておりますが、どうも私の見たところでは労働金庫は今滝井さんのお説のように、資金はゆとりがあるのでありまして、去年四億をやりましたが、今年の労働金庫の報告によれば、金融的には逼迫していない、私はそう見ております。従って私どもは去年の四億程度のものは現在支障がなければ金融のめんどうを見てあげることもよいかと思いますが今日の労働金庫の内容をよく知っておる大蔵省がそういうことに応ずるかどうかということは、これはあまり無理押しをするわけにいきませんが、よく相談してみたいと思います。  それから日雇いのことについては安定局長からお答えいたさせます。
  50. 江下孝

    ○江下政府委員 お尋ねの要点は、日雇い失対適格者がずっと前から働いておる場合はよいが、十月ごろになって登録した場合に適格を欠くのではないか、年末の就労調整ができないのじゃないか、こういう御質問だと思いましたが、全国的に見まして失対適格者が現在かりに十一月に登録になりまして、私の方の条件として提示いたしております十一月、十二月の間に十四日以上失対事業で働いた——特別失対ももちろん入りますが、そういう条件に合わないということはまず私は考えられないと思います。もしこの登録をあまり最近の登録までやりますと、たとえば十二月十五日就労日数の増加をやるその直前に登録した人までということになりますと、それだけのために登録を要請するというおそれもあります。そこで一応の条件としては十一月、十二月の両月に十四日以上という条件がつけてございますが、今回は以上のような点もございまして若干条件を緩和いたしまして、過去四ヵ月、すなわち九月から十二月までの四ヵ月間に十四日以上失対事業等に就労したという場合にはこの年末調整を受け得るということにいたしましたので、まず私の考えといたしましてはほとんど全部の失対適格者が年末調整を受けることができることになると思います。
  51. 佐々木秀世

    ○佐々木委員長 次会は明後十二日午前十時より開会することといたしまして、本日はこれにて散会いたします。     午後零時三十九分散会