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1955-12-15 第23回国会 衆議院 決算委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年十二月十五日(木曜日)    午前十一時三十八分開議  出席委員    委員長 上林與市郎君    理事 生田 宏一君 理事 櫻内 義雄君    理事 關谷 勝利君 理事 田中 彰治君    理事 山本 正一君 理事 山田 長司君    理事 吉田 賢一君       赤澤 正道君    臼井 莊一君      小笠原八十美君    本名  武君       松岡 松平君    片島  港君       三鍋 義三君    細田 綱吉君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 小林 英三君  出席政府委員         検     事         (刑事局長)  井本 臺吉君         厚 生 技 官         (公衆衛生局         長)      山口 正義君         厚 生 技 官         (公衆衛生局環         境衛生部長)  楠本 正康君         食糧庁長官   清井  正君  委員外出席者         通商産業事務官         (鉱山局鉱政課         長)      磯野 太郎君         通商産業技官         (公益事業局開         発業務課長)  市浦  繁君          通商産業技官 近藤 信興君         建設事務官         (河川局次長) 浅村  廉君         建設事務官         (河川局水政課         長)      国宗 正義君         会計検査院事務         官         (第四局長)  中川  薫君         会計検査院事務         官         (第五局長)  上村 照昌君         参  考  人         (富山片掛部         落沿岸保全期成         同盟会長)   林  唯義君         参  考  人         (北陸地下資源         開発協会幹事) 斎藤 大六君         専  門  員 黒田 久太君     ————————————— 十二月十四日  委員八田貞義君辞任につき、その補欠として戸  塚九一郎君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭に関する件  昭和二十八年度一般会計歳入歳出決算  昭和二十八年度特別会計歳入歳出決算  昭和二十八年度政府関係機関決算報告書  病変米の輸入、保管及び処分等に関する件     —————————————
  2. 上林與市郎

    上林委員長 これより会議を開きます。  昭和二十八年度決算通商産業省所管及び日本開発銀行の電気事業に関する融資に関連して、先般来松岡委員及び三鍋委員より御要求のありました北陸電力株式会社神通川第一発電所貯水池沿岸の一部の土地崩壊に関する問題について調査を進めます。  この際お諮りいたします。本件に関し富山県婦負郡細入村の片掛部落沿岸保全期成同盟会会長林唯義君及び本問題について実地調査をせられた調査員斎藤大六君の二名を参考人として、本問題についてその実情を聴取するに御異議はありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 上林與市郎

    上林委員長 御異議なしと認めます。よってそのように決定いたしました。それでは参考人の御着席を願います。  それではまず参考人より実情を聴取いたします。参考人にちょっと申し上げますが、時間の都合もありますので、発言は各自十分程度にお願いいたします。発言の際は立って発言なさるように御注意申し上げます。  なお質疑の方の参考までに他の出席者を申し上げておきます。建設省からは浅村河川局次長国宗水政課長会計検査院上村第五局長、この方々が出席しておりますから念のために申し上げておきます。  それでは林唯義君に発言を許します。   〔委員長退席山田委員長代理着席
  4. 林唯義

    林参考人 私は本委員会委員様方、また御先生様方が、第二十二国会の七月二十九日の本会議及び本臨時国会におきましては去る九日と、引き続き片掛部落沿岸ダムによる崩壊事項につきましていろいろ御審議をいただいたことにつきまして、片掛部落三百名を代表いたしまして心から厚くお礼を申し上げる次第であります。  片掛部落は戸数五十四戸、人口が三百名でありまして、農耕地が約八万坪でありまして、一戸当り千四百坪を耕作して生業といたしております一寒村でありまして、この寒村北陸電力株式会社神通川の第一ダムを設定いたしまして、この農耕地約三万坪を水底に没したのであります。もとより一層狭隘なる農地が一層少くなったのであります。うち山林が一万坪ほど加わっておると思います。われわれは土より生まれ土に返る農民でありまして、土を愛し敬うこと農民以外のどなたにも想像の及ばぬところでございまして、片掛部落は千数百年の歴史を持っておりますということを村の古老が言っておりますので、祖先の血と汗と涙をもって保全し続けた土地でありまして、これらの土地を子孫に譲るべきでございます。この大地に脈々として祖先生命が流れておるのでありまして、朝な夕なにこの大地に接しまして無上の愛着を感じておるものであります。この土地は私たち肉体の一部でありまして、生命の一部でもございます。この土地に私たちの一生の生活がゆだねられておるのでございまして、この肉体の一部にダム建設された次第であります。  このダム建設に当りまして部落の中央には高山線片掛駅を設置すると宣伝いたしまして、貧困にあえいでおりました部落民の福利をもたらすがごとく宣伝しましたので、部落民は欣喜雀躍した次第でございます。工事が完成するに伴いまして、駅は経費都合上不可能であると取りやめになりました。かかる欺瞞行為はまだございますので、このダム建設に当りまして、地盤が弱いから護岸をするように工事以前に要求いたしましたのでありますが、会社の方では科学的に技術的に十分調査しておるのである。決して心配はないのである。かえって満水すれば水圧によって沿岸が強化されるのであるというて豪語しておりまして、部落民をだまし切った次第であります。湛水後三日にして崩壊を見る結果となりました。爾来会社当局に対しましては崩壊の防止について今日まで過去三カ年の間交渉をし続けて参りました。今日に至りますまでその調査書の一片も会社側は提出することはできないのであります。またその当時の話では、もし崩壊しますれば必ず護岸はしてやると約束いたしましたにもかかわらず、今日に至りましても護岸経費関係上絶対にできないと、にべもなくつっぱっておる次第であります。  次に崩壊は六カ所でありまして、陥没地帯は一カ所であります。にもかかわらず通産省当局には崩壊は三カ所であると会社側報告しておるのであります。そのABCの三カ所のうち二カ所は岩盤を採石したのであるというておりますが、これらはいずれも事実に反するものでありまして、一切採石はされておらないのであります。また地質調査所調査に当りましては部落の方には何らの通知もございませんでしたので、当局方々に御案内申し上げられませんでしたので、この点まことに残念でございました。また報告書に盛られております崩壊個所は全部会社小作を払っておると申しておりますが、これは百八十五メートルまでは会社小作料を払っておりますが、百八十五メートル以上は部落民土地であります。かかる報告通商産業省に出してありまするが、この地質調査所近藤課長さんの報告書をかくせしめたのは、部落には案内もせず、そうして本省に対しては案内したというように北電は仕向けて、そうして案内させなかったので、本省にも、こういう間違った報告書をついに提出させるに至ったものであると考えるものであります。  なおつけ加えておきたいのは、すでに先生方のお手元に先般来提出しておりますところのこの図面を見ていただければおわかりでありましょうと思いますが、ぜひ見ていただきたいのであります。この沿岸崩壊地帯の湾曲しております地帯は、ここは砂礫層でありまして、もともと川が西に落ち込みまして、大水が出るたびに入り込むところでありますが、それを堰堤が作り上げられる前の大水の水位よりもずっと高い、百八十三メートルが普通の水でありまして、その大水のところまでいつも満水しておりますので、崩壊は時々刻刻なされるのは当然であります。  それともう一つ申し上げておきたいのは、この向うの鉄道沿いの下にへこんでおるたんぼがありますが、これはおよそ二、三代前、百年ほどたつといわれておりますが、ここの高台の二十町歩を田に改田するために水を引きました。その晩、たった一晩の豪雨によりまして、全部砂礫層のために、たった一晩に五分の一ほど流れ去ったと伝えられておる土地であります。この高山線沿いのこの高台は、全部石ころ一つない砂地であります。このために護岸をせねば、どうしてもこれは持たないということは、私らは以前からちゃんとわかっておりましたので、会社にくどく申し込んだ次第であります。それを科学的、技術的に見て絶対安全である、こういうふうに、さいぜんも申しました通り突っぱりまして、そういうことは私らにはわかりませんものですから、ただしろうと目に見ては崩壊する——歴史もそうなっておるけれども、技術者がそう言われる、科学者がそう言われるということになればいたし方がありませんので、そのことを了といたしました次第であります。しかしながらそのときの話には、崩壊すれば必ず護岸をするんだということは、しっかり確約してあったのであります。以上であります。  そこでちょっと申し上げたいのでありますが、諸先生方にはどうか、御多忙中でありましょうけれども、私らのこの切なる願いを御賢察下さいまして、一日も早く現地を御視察になって、私らの言うことがうそであるか、ほんとうであるか、よく実地に見ていただいて、そうして御賢察を賜わりたいと存じます。どうかよろしくお願いいたします。片掛部落の一同を代表して、伏して懇願する次第であります。
  5. 山田長司

  6. 斎藤大六

    斎藤参考人 私は林会長の依嘱によりまして、本年の七月二十日と、それから十月二十四日と十一月六日の三回にわたりまして、この地帯における崩壊の状況を地質学的に調査いたしました。時間が局限されておりますので、ごく簡単に御説明申し上げたいと思います。委員の諸先生方には、私の調査書が二通お手元にあるかと存じますので、ごらん願いたいと思います。  私はこの三回の調査におきまして、結論としては、崩壊陥没は現に行われている、こう結論いたしております。従ってこの結論に達した以上は、その対策として適切な方法を講じなければいかぬ。その適切な方法というのは何であるか。それはダムの水を排水して原地形に戻して、あらためて厳密な地質調査をして、その上で護岸工事の必要があれば築堤をする、そういう結論であります。その結論に達しましたことは、現在崩壊しているとか、陥没しているとかいうふうな論争ではないのです。現に崩壊しており、現に陥没しておるという事実に対して、これはもう何人といえども否定できないと思う。もちろんどなたかが現地に行きまして、現場に来られまして、どこが崩壊しているんだ、どこが陥没しているんだといっても、それはその瞬間において目撃はできない。これは有名な地動説を唱えたガリレオが、ローマ法王に呼ばれたときに、お前は地球が動いているなどと不都合なことを言っているが、地球など動いてはいないじゃないか、こう言ってしかったことがある。ところがガリレオは、いや地球は動いているではないかと言った。これは有名な話であります。しかし現在は小学校の児童といえども、地球が動いているということ、自転しているということは、だれだってわかっている。と同じようなことになりますが、現在片掛ダム沿岸地帯は、刻々侵食され、間断なく陥没が行われており、また崩壊が行われておる。では何によってそういうことが立証できるか。なぜ陥没しておるか、なぜ崩壊しているか、その事実は何によって結論づけられるかということにつきまして、私は二回の報告書に大体の要点を申し述べてあります。  この付近の地質は、基盤と称しますか、岩磐といいますか、基礎になる岩石が、中生代頁岩層——これは学名でシェールといっておりますが、シェール層からできております。このシェール層というのは、粘土質物質が長い年月の間に固まりましてできた水成岩、それが圧力を受けまして褶曲をしている。その下を神通川が流れている。ところが、褶曲している中生代頁岩層の上に砂の層が乗っているのです。これはかなり厚いものだと想像されます。地元の林さんその他の方々の話によりますと、湛水する前においては約三十メートル以上の砂層があった。そこにはたんぼもあった。それが現在は水底に没しております。私は地元の方の言われるのを信頼しまして、まず砂層は三十メートル以上のものがある。そこに水がたまったのだ。そうすれば当然これは侵食されるのであります。御承知のように、砂というものは粘土物質が入っていない限り、ただ砂である場合には凝集力というものはゼロである。にぎったら必ず落ちてしまう。中に粘土物質があれば、にぎった場合に固まるのです。でありますから、凝集力のゼロな砂層に向って水が入っていけば、これが崩壊するのは当然なんです。  それからもう一つ申し上げたいことは、工業技術院調査によりますと、崩壊個所三カ所、そのうちの二カ所は岩磐湛水面より上に出ているのだという。私は大体六カ所の崩壊個所を確認し、一カ所の約五百五十メートルにわたっている大陥没地帯を確認しているのです。これは論より証拠です。現地をごらんになれば一目瞭然である。砂層というものは、これは侵食いたしたらゼロに等しいものである。どんどんくずれていく。ではその岩磐自体はどうか。岩磐というものは、これは非常にばく然とした言い方でありまして、岩磐にも非常に弱い岩磐と非常に堅固な岩磐とあるのであります。この地帯岩磐と申しますと、いわゆるシェールでありまして、このシェールの中にブラック・シェールというのがあるのです。黒い頁岩、これが入っておる。これが炭質物であって、ちょっと突くと、すぐボロボロと落ちるのです。水にも弱い。現在私が申し上げました六カ所の崩壊個所のうち、岩磐の出ているのは二カ所なんです。そこに差し上げてあります四号、五号というのは湛水面から一メートルないし二メートルほど出ておる岩盤なんです。その岩磐の中にブラック・シェールが入っておる、でありますからこのブラック・シェールがちょっとの衝撃を受けますとぼろぼろ落ちるのです。これは最も弱い岩磐なんです。その上に七十度くらいの傾斜でもって砂層が二十メートルくらい乗っかっておる。幅も二十メートルくらいのところが二カ所あります。でありますから雨でもどんどん降ってきますと雨がどんどん浸透していく。そうすると雨水自体の重みがかかる。そこへもっていって六十度、七十度というのはすべるには格好な角度なんです。そこへもっていって、下の岩磐が底の方からころころと崩壊していくのですから当然すべるのです。すべるには最もいい条件なんです。そういうふうな岩磐なんでありますから絶対に安全だとは言えない。そうしますと岩磐自体においてもこれは補強工事をしなければならない、こういうことになると思います。いろいろまだ申し上げたいことはございますが、結局非常に弱い。なぜこういうところにダムを作ったかということを私は疑問に思っているくらいです。  それからもう一つ私が非常に不審に思うことは、こういうふうな地方から見ても、高山線が通っておりますが、高山線の通っているところは全部砂なんです。私はいつも山の調査であそこを歩きますが、下の方に神通のダム堰堤が見える非常に景色のいいところでありますが、それを見ながら、どうしてこんなところにダムを作ったか。何かまた事件が起るのじゃないかと思っていたやさきに、調べて見ろというので、調べに行ったわけです。そういうふうな地帯なんです。それで私が今申し上げたように、非常に疑問とするところは、こういう軟弱な崩壊しやすい地帯ダム建設する、建設するのはいいんですが、なぜ湛水する前にもっと厳密な調査をして、そうして護津築堤工事をして、その上でなぜ湛水しなかったか、こういう点なんです。これは通産省監督官庁だと思いますし、北陸電力会社がこれを経営したものと思いますが、役所にも会社にも、私などよりもはるかに優秀な技術者の方がおられると思います。そういう方々がおるにもかかわらず、十分な調査もしないで、こういう事件を起したということは、どう考えても私にはわからないのです。  それで私の意見としましては、これはまず水を出してしまってもう一度厳密な調査をして、そうして築堤護岸をしていただきたい。私は林会長を初め片掛部落農民方々に会いまして千数百年来血と汗と涙でこれを維持してきた土地が、見えざる力でだんだん崩壊していく、その人たちの気持を察しまして、われわれはもう損得を超越して私は協力申し上げておるのです。私は京都大学地質を専攻しまして現在まで約三十年になります。その間各所の鉱山の所長などもしましたし、北支那政府の顧問として大陸の地下資源開発にも当りましたし、あるいはまた坑夫どもと坑内に入りまして苦楽を共にしたりいろいろいたしましたが、私はもう現在野人でありますから何ものもおそれませんが、ただ一つおそれるのは神なんです。私は神様を非常におそれる。私の言う神というのは火と水なんです。これは神なんです。この火と水に対してわれわれは敬虔でなければならない。それで電力会社がこの神様である水をとめて、その水を利用してそして電力を起す。これは神の恩恵であります。これは大いに神の恩恵を受くべきであって、これによって日本は神国の面目を保つことができる。ところが、電力会社がただその神様を利用するだけ利用しておいて、そうしてそのわきに泣いている農民を見捨てて、知らぬ顔をしている。何ら誠意のある態度をとらない。役所もそうである。そういうことでは、これは私に言わせれば政治ではないと思う。決してりっぱな政治ではないと思います。私は非常に神をおそれるのです。でありますから、この神は必ず一方には恩恵を与えているかしらぬけれども、必ずこの神様は大崩壊をもたらすようなことになる。私はもう少し監督官庁なり北陸電力なりが、神に対して敬虔な態度をもって反省しなければいかぬと思うのです。現在崩壊が続いている、陥没が続いている、これは神の警告だと思う。すなおにこの警告を受け入れまして、よく反省されまして、地元方々の要望をよくお聞きなって、そうして円満なる御解決をしていただきたい。  本日は、この最も権威ある国会決算委員会に出席することができまして、各諸先生方に私のつまらない意見を申し上げることができましたのは、私はこれは一つには神のおぼしめしだと思っています。これは神意だと思っています。どうか御多忙だとは存じますが、現地を一度ごらん願いまして、実情を十分把握されんことをお願いいたします。はなはだ失礼いたしました。
  7. 上林與市郎

    上林委員長 質疑の通告がありますのでこれを許します。松岡松平君。
  8. 松岡松平

    松岡(松)委員 林君の方から先にお尋ねしたいのですが、この湛水以下の地点を北陸電力賃貸借したと聞いておりますが、どういう事情湛水以下を賃貸借したのか。おそらくこのダム湛水すれば戻ることは考えられないと思うのだが、譲渡したというなら話がわかるが、何ゆえにこれを賃貸借したのか。賃貸借も、その内容小作賃貸借というようなことを聞いておるが、その内容についても一つ事情及びその条件一つつまびらかにしていただきたい。
  9. 林唯義

    林参考人 お答えいたします。今松岡先生からお尋ねのありました小作の点でございますが、これは昭和二十六年に工事が始まりますときに、用地係の方から参りまして、電力事業公益事業であるから土地に文句を言う者は土地収用法でとるんだというので威嚇いたしました。本日ただいまになって気がついている次第であります。そうしてそれに不服のものは土地収用法でとるんだということでありましたものですから、一時に土地をとられてしまったんでは将来困ってしまう、食べていけないようになるというので遂に小作になったわけであります。それは今お尋ね通り小作として小作料は田が五合六勺、畑は四合、それから山地は一合ということにいたしまして、ほとんど全部小作になっております。あるいはその百分の一や千分の一くらいは都合によって売買もあるかもしれませんが、ほとんどそういうふうに貸し付ける小作になっている次第であります。
  10. 松岡松平

    松岡(松)委員 そうすると、もう一度その点をお尋ねいたしますが、およそあなたのおっしゃることはちょっと私には了解しかねる。小作というのは、たんぼにしろ畑にしろ、耕して農作物を取得することを目的として他人の土地を使用するというのが小作の約束です。ところが北陸電力電力会社で、水をためて水力発電するのに小作契約というものがあるわけがない。どうしてこういう契約をしたのか、しかも聞いてみると、畑が四合、田は何合といって、要するに従来の現物小作料の査定を行われておる。これは架空のものじゃないか。事実そういうものをやったんじゃなかろう。ただ要するに判こをとられたというだけで、内容は耕作するという契約なんかあるわけはないのじゃないか。この点を一つ明確にお答えを願いたい。ただ契約書判こを押したからといって契約は成り立つものじゃない。小作契約というものは、土地所有者と耕作する者との間に、耕作させる、耕作をするという意思の合致が行われて、そこで契約されるのが、小作契約内容である。ところが今聞いていると、水をためるために小作契約をするという、これはあり得ないことなんです。果して片掛部落人たち北陸電力との間にそういう小作契約をしたのかどうか、ただ判こだけを押したのかどうか、この点をお答え願いたい。
  11. 林唯義

    林参考人 お答えいたします。今先生の申される通りでありまして、実は判こを押して自分たちは口頭では小作ということで話がついたのでありますが、あとの書類はどういうふうになっておりますか、いずれも用地の係の者が判こをとっていくだけでありますので、どうなっておるか、はっきりわからないのであります。
  12. 松岡松平

    松岡(松)委員 この電力工事の上に大きな問題が包蔵されていると思うのです。そうすると湛水するということは知っておったが、小作をするなどということは全然知ってないし、小作契約をしたことはない。ただ判こを押しただけだ、こういう意味ですか。
  13. 林唯義

    林参考人 小作として契約をすることにいたしたのであります。
  14. 松岡松平

    松岡(松)委員 お尋ねいたしますが、ちょっとおかしい。あなたは先ほどの前言では、湛水して水力発電をするということは知っておったけれども、たんぼを耕して農作物を作るようなことは知らなかったということになれば、畑と水田とを耕すのだという話し合いはなかったのではないかということを聞いているのです。はっきりしないとだめですよ。
  15. 林唯義

    林参考人 確かにありません。
  16. 松岡松平

    松岡(松)委員 そうしますと、今までの林君の話によると、小作という名目でこの湛水地域を借り受けておる。これは法律上まっすぐに解釈して、土地使用契約というものができておらぬ。要するにだました。判こを押して、それをいかにも正当な権利が発生したかのごとく電力会社が考えて湛水したものと思わざるを得ない。そこで、この崩壊というものが六カ所起っておる。陥没が起っておる。非常に農民が不安に思っておる。これに対して電力会社にいかような交渉をいたしましたか。その交渉経過てんまつの核心が一つ述べていただきたい。そうしてこれに対する電力会社の回答の要旨、どういう態度をもって臨んでおるか、どういう意見を持っておるか、この点を明らかにせられたい。
  17. 林唯義

    林参考人 お答えいたします。今お尋ねのありました点でありますが、ちょっと横へそれるかもしれませんが、小作にいたしましたのも、実は一ぺんに金を支払えばお前らの土地は取られて、また税務署で取られてなくなってしまうんだ、そうすればかわいそうだから、小作にしておいた方が税金もかからないし、毎年払えばお前らの方も都合がいいだろうということでしたわけでありまして、その後の契約という問題ははっきりどうなっておるか、またいずれ変更したかもしれない。それは口頭の約束は確かにそういうことで、ただ一ぺんに金を取られるのはかわいそうだから小作にしてやる、こういうことでありました。
  18. 松岡松平

    松岡(松)委員 どうも林君は答えがはずれておると思います。私の言っておるのは、陥没が起って会社にどう交渉したか、そうして会社はこれに対してどうしてくれると言っておるのか、その点を答えなさい、そう言っておるのです。まとがはずれておるのです。
  19. 林唯義

    林参考人 交渉経過につきましては、昭和二十六年の十一月三日に崩壊いたしました。湛水が十月三十日に行われまして、三日目の十一月三日に崩壊いたしましたので、さっそくそれを見つけまして会社交渉を始めました。そうしてその後、ここにも書類を持って参っておりますから、先生方にどうか見ていただきたいと思いますが、県知事及び県会議員の方々、県の電力委員関係省へ十二月五日に書類を持って陳情いたしました。それからなおその間におきまして部落代表といたしまして、北陸電力へはもう一週ごとにほとんど行っておりましたが、なお書類を持って次に出しましたのは、昭和二十九年二月十六日にまた会社へ申入書も送っております。それからその後県会議員の方も三十年の六月までに何名も入っていただきましたが、何らの回答もありません。役所に向いましては、経過といたしまして通商産業省公益事業局の富山支局の桑嶋課長さんに会いまして陳情申し上げましたところ、公益事業は絶対国家の要請で必要なので、一部落や二部落はもし食えなければどこへでも行ってかせげばいいんだ、それだけ考えておられないんだ、そういうことをおっしゃいましたので、二度とはこの人には陳情する気になれませんでしたので、実はそれ一回で終りました。それで知事の方へも申し上げましたところ、知事も回答していただけませんし、どうにもなりません。これもよく考えてみますのに、富山県は特殊県でありまして、北陸電力の株の八十有余万株の持ち主が富山県でありまして、その県の財政も考慮なさるのかどうかしれませんけれども、そういうことではないか、そうしてそのためにでも私らの回答をしていただけんのじゃないか、こう思いまして、これでは、県におきましては知事が一番で、県庁より行くところがありませんので、この上は国会先生方におすがりして正当なる判断をしていただいて、そうしてこれ以上は崩壊しないのだからもう安心しておれということでありますれば、安心しておれるわけでありますが、さいぜん申しました通りに、先生方に見ていただきますれば、こういう結果になっておりますので、私ら部落民は安心しておることができませんので、先生方に特に思っていただきたいのは、私ら農民の者が金を出し合いして旅費を作って東京まで陳情に上りますのも容易なことでありませんので、どうか御了察をお願いしたいと思います。
  20. 田中彰治

    ○田中(彰)委員 ちょっと林参考人お尋ねいたしますが、この農地の坪数反別はどのくらいありますか。全部耕作に貸したという総坪数は……。
  21. 林唯義

    林参考人 反別は田が約一万町歩、畑は一万町歩、それから山地が一万町歩であります。
  22. 田中彰治

    ○田中(彰)委員 これは何人くらいの人のものですか。
  23. 林唯義

    林参考人 五十四戸ありますが、全然関係のない人というのは一人か二人でありまして、ほとんど関係がございます。
  24. 田中彰治

    ○田中(彰)委員 それからこの土地は、山林はいいが、畑とたんぼは前からの農地ですか、創設地ですか。たとえばこの中に今度の農地法によってもらったような土地はありますか、ないですか。
  25. 林唯義

    林参考人 全然ありません。旧からずっと地主であり、自作農であります。
  26. 田中彰治

    ○田中(彰)委員 それからちょっとお尋ねしますが、その会社小作でもって貸しておけば税金が安くなる、こう言ったのは事実でしょうね。
  27. 林唯義

    林参考人 それ事実であります。一度に金をもらいますと税金のかさが大きくなる、そうすると税務署からとられることになるからかわいそうだというのです。
  28. 田中彰治

    ○田中(彰)委員 脱税しろということですね。そこでちょっと委員長にお願いしておきますが、この次に一つ農林省の農地部長を呼んでもらいたい。私はこんなにたくさん小作地をやっていて、できるものかできないものかちょっと聞いてみたいと思います。それから税務署の人を一つ呼んでもらいたい。これだけを委員長にお願いしておきます。  それから建設省にお尋ねいたします。河川局の方にお願いしたいのですが、本件に関するような工事の認可申請書によると、堰堤のために水面が非常に高くなって、放置するごとによって両岸が危険であるから、上流に向って五千メートルないし六千メートルにわたり表土の崩壊するおそれある個所には、のりずらのようなところを保護を施さなければならない、こういうような私は規則があると思うのです。それからもう一つ、山腹の崩壊を防止することになっているのだが、現にこういう数カ所において崩壊しておるのであるから、会社はこれに対して当然防止策を講じなければならない。もしこういうようなことを講じないときには、監督官庁において——通産省は局外とは言いませんが、この監督官庁建設省ですから、建設省が何とか処置するように監督しなければならぬ。この監督に対して一体どういうことをされているのか。またこのままこれを放置しておけば田畑のくずれてくるのはもちろん、今の説明を聞くとそこに道路があり鉄道もある。そういうようなものに危険が及ぶような場合には、河川法第二十条によれば「左ノ場合ニ施テ地方行政庁ハ許可ヲ取消シ若ハ其ノ効力ヲ停止シ若ハ其ノ条件ヲ変更シ又ハ既ニ施設シタル工作物ヲ改築若ハ除却セシメ又ハ原形ノ回復ヲ命シ又ハ許可セラレタル事項ニ因リテ生スル危害ヲ予防スル為ニ必要ナル設備ヲナサシムルコトヲ得」こういう法律があるわけですね。その第一号に「工事施行ノ方法若ハ施行後ニ於ケル管理ノ方法公安ヲ害スルノ虞アルトキ」とあるのですが、この「公安ヲ害スルノ虞アルトキ」こういうことが明らかにされた場合は、これに該当するものとこれは認めるのか認めないのか、あるいはまた河川法の主務官庁である建設省は、こういうものに対してどういう考えを持っているのか、これは道路がだめになる、鉄道がだめになる、田畑がこわれるということになると、やはりこの施設において公安を害するおそれがあるということが、私は明らかにここに証明されていると思っております。こういうような場合に監督官庁建設省は河川法によってこれに対して何とか処置しなければならない。これが別にしてない。  もう一つ治水の完璧を期するために、建設省が所管官庁である、しかるに通産省がこの事実調査をしているのはどういうわけか。なるほど発電事業の立場から所管外とは通産省でも言えないと思う。しかしこういう調査というものは通産省の知らない人よりも、やはり監督官庁にあるところの河川局を持っている——河川法に関係することであるから、これは建設省が調査するのはあたりまえじゃないか、こういう工合に私は考えておりますが、こういうようなものに対して建設省としては、特に河川の係の方としては一体現場に調査に行ったのか行かないのか、行かないとすれば今後行って調べる意思があるのかないのか、調べて今私の申し上げたような法に該当しているときはこれに対してどういう処置をとられるか、この御答弁を一つお願いいたします。
  29. 浅村廉

    浅村説明員 ただいまの田中先生の御質問に対してお答え申し上げますが、建設省といたしましてはただいまお話が出ました河川法に基きまして建設大臣が河川の管理をいたす立場に置かれておるものであります。実際の仕事といたしましては、府県知事を河川管理者といたしまして、これは非常にこまかい話でおそれ入りますが、府県知事をそういう場合は国の機関というふうに私どもは考えまして、府県知事に河川管理の責任を負わせているわけでありますから、だからといって建設大臣が全然知らぬ顔をしているわけではございませんが、河川については府県知事を河川管理者として責任を負わせております。この河川にダムを作ります場合は、もちろん私どもが非常に関係ありますのは、治水の関係のある多目的ダム等におきまして、治水の働きもするというようなもの、あるいは災害を防ぐために設ける防災ダムというようなものに対しては非常に深い関心を持っておりますが、このような発電関係ダムといいましても、全然私どもの責任外だとは決して申し上げないのであります。これにつきましてはどういう手続をとっているかと申しますと、この場合は電気会社がこの河川に堰堤という工作物を設けるので、河川法から申しますと水利使用権の許可ということをやっております。これは許可するものは県知事でございますけれども、しかし建設大臣に伺いを立てて参りまして、建設大臣の方で一応差しつかえなかろう、そういうことになりましたものに許可をいたしております。その許可をいたします場合に、許可は都道府県知事がやっておりますが、これに命令書というものをつけております。ただいま先生からお話のありました河川法二十条のいろいろな趣旨を少しくかみ砕き、公益を害するようなおそれがある場合には、極端にいえば取り消すとかあるいは工事の変更を命ずるとか、あるいは他に適当な方法をとるとかいうようなことを、知事が命ずることができるのだということを念のためつけ加えておるわけであります。従いまして、ただいまお話が出ておりますような事態が発生いたしまして、公益上非常に支障かある——私どもから申しますれば、治水上に非常に危険がある、大きな崩壊を来たして、さらに大災害を誘発するというようなおそれがあるということになって参りますれば、知事から会社に対しまして当然いろいろな指示をしなければならないということは、これは手続上すでにさようになっておるわけでございます。実はこの問題は私初めて伺いまして、いろいろ今調査をいたしておるところでありますが、県の方も私の方に今までこの話は持って参りませんものでしたから、調査も至ってただいま不備でございますが、私どもといたしましては、県当局とよく相談いたしまして、適当な方法調査をいたしていきたい、かようにただいま考えております。
  30. 田中彰治

    ○田中(彰)委員 県知事にそういうようなものをまかしておくということは、これは省令でまかしておるのですか、はっきりした法によってまかしてあるのですか、それをちょっとお伺いします。
  31. 浅村廉

    浅村説明員 これは法律の面にそういうふうになっております。河川管理者は地方行政庁ということになっております。この地方行政庁は都道府県知事であるという解釈になっております。
  32. 田中彰治

    ○田中(彰)委員 しかし、そうなっておっても、こういうふうにちゃんと河川法という法律があるのだから、もし知事の方が怠慢であるとか、あるいはもし知事なんかのやることがいけないとか、いろいろなそういう問題が起きた時分に、これはやはり最後は監督官庁建設大臣が処理することになっているのでしょう。それでありますから、こういう問題が起きて知事に陳情して——この人たち農民の方でわからなかったのだが、知事に陳情したけれども、取り上げないというようなことになっているのですから、さっそくあなた方でこれを一つ調査して下さい。そうし七この委員会報告をしていただき、その報告によって私たちももう一回議員団としてここから調査に行って、これを見て、公平に処理した方がいいのじゃないか。ただ聞いておきますが、もし今申されるようなことがあり、こういう危険、公安を害するようなことがあるとしたら、あなたの方ではこれを取り消すだけの意思がございますか。それともうやむやになって、そういうことがあっても取り消せないのか、ほんとうにわれわれが見ても、あなた方がごらんになっても公安を害するというようなそういうことがあるとしたら——上に鉄道もあり、道路もあり、田畑もある、今も言う通り砂礫層の説明を聞くと、これは少し危険だと思うし、また崩壊しているところもあるのだ。そうなった場合、堤防五千メートルないし六千メートルはやらなくてはならないという法律があるのですから、そういうようなことをしていないとしたら、これをやらせるのか、あるいは取り消すのか、会社が無法なことを言ってやらないから許可を取り消すのか、そういう意思があるのですか、それをちょっとお尋ねしておきます。
  33. 浅村廉

    浅村説明員 建設大臣が河川法に基いて最終の責任者であるということは間違いございません。私どもはさような意味合いから常に県の建設行政の運用を監督いたしております。この問題につきましてはただいま申し上げましたように、県の方から話を聞いておりませんものでしたから、至急県に今までのいきさつを直接聴取いたしまして、その上で調査し、その結果によりまして善処いたすということで御了承願いたいと思います。
  34. 松岡松平

    松岡(松)委員 建設省の次長にお尋ねいたしたいのですが、本件の神通川というのは第一、第二、第三、第四までダム建設が許可になっており、これは第一の地点に起っている問題です。もしこの第一の地点が一大崩壊を生ずるようなことがあれば、第二、第三、第四の決壊を生ずるおそれもあると思う。そこで富山県知事に対して私ども二、三度勧告しているのですが、なかなか要領のいい人物で、話はしますと言っているが一向やらない。だから富山県知事に希望されることはむだだと思うのです。建設省みずから発動せられて適切な対策をとられる必要があると思うのですが、ついてはこの許可をされるときに、申請書類に山地の崩壊の防止に関する詳しい説明をつけて出していると思うのです。たとえばこういうところは盛り土するとか盛り上げするとか、のり面の補強をするとか、切り取りする場合にどういう工事をするとかいって、詳しい書類を出しているはずです。これは結局政府の金を使っている、開発銀行の金を使っているのですから、詳しい仕様書を書いてあなたのところにも出ていると思う。その仕様書によると、仄聞するところによると、十億近い費用を護岸に見積っているといわれているのです。そこでこれは委員長にお願いしておきますが、これは開発銀行にも出ているし、通産省並びに建設省にも関連書類が出ていると思うので、この三カ所からこれに関する許可申請の際に提出した詳しい施工内容を示し、資金を明確にしたものをお取り寄せ願いたいのであります。そして次会には開発銀行、建設省、通産省から来ていただいて、その書類に基いてそれぞれの立場から御説明をいただくようお願いいたします。そういう書類を取らなければ許可するはずがないのです。要するに金を借りるときはうまそうなことを言うて、護岸いたしますとか安全確実でございますとか言うが、銭を借りてしまうとこれをやらぬのです。これは従来の事業者の悪癖なんです。この機会にこれを明らかにしておく必要がある。富山県はこれからまだたくさん電源の開発を計画している。ことに北電は有峰に大きなダムを計画しております。その他に関西電力は黒部の奥において大きなダムを計画している。これらにおいてもしずさんな工事をやられたならば富山県じゅう泥土に化する。私は、自分の選挙区でありますので、重大なる利害関係がある。この際徹底的に洗っておかぬと、富山県が一大泥土に化するおそれがあるので、どうぞ一つよろしくお願いいたします。
  35. 田中彰治

    ○田中(彰)委員 開発銀行を呼ばれるときに、北陸電力会社にどれだけ融資しているか、融資した金額を調べて調査書を出して下さい。
  36. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 通産省の開発業務課長ですかが見えておられますので、あなたに伺うのだが、通産大臣が、公益事業法に基いて水力発電の事業については大臣として府県知事に意見をすることになっておるようですね。そこで根本の建前を伺っておるのですが、 これは同趣旨を建設省の浅村河川局次長にも聞きますが、公益事業令によって発電所のダムを作る。それは非常に重要な国家的な事業に間違いありません。そこでその工事の結果、付近の土地を所有し、使用しておる個人もしくは団体が非常に損害を受けるということになりましたならば、やはり根本の建前といたしましては、土地の利害関係を持った者の権利、利益はどこまで保護せられるかということは、どうしても明らかにしなければならぬ点だと思うのです。この点は先般の委員会におきまして、松岡委員からも公益、私益の観点から御質問になっておった点でございますが、私はやはり鉱業権との関係等から見ましても、同じ疑問がまだ解消しないのであります。そこではっきりしておきたいので、今御答弁願えなければ御準備を願って明確にしたいと思います。つまり公益事業令によって発電のための水利権の許可を受けたけれども、それによって付近の土地に関する利害関係者は損害を受けるということがありましたならば、この損害は一切事業主体が負うべきものか。それとも許可をした場合には、許可の条件に従って工事が進められておるとするならば、被害を受けても損害賠償の請求ができないという建前になるのかどうか。後者の意見になりますと、これは大へんだと思います。一切の法律の執行は、やはり憲法の個人の権利の尊厳を侵すことはできないというのが根本の建前であるのでありますから、そういう点について法律の建前はどうなっておるのであるか、これを一つはっきりしておきたいのでありますが、御両所から御答弁願いたい。
  37. 市浦繁

    ○市浦説明員 ただいまの御質問にお答え申し上げます。公益事業令によりまして、水力発電工事をいたし、ダムを作り、あるいはトンネルを掘り、発電所を作るという場合に、他人の財産権との抵触の問題が起るという場合がたくさんございます。この場合の補償の問題は、昭和二十八年の四月に、電源開発に伴う水没補償要綱というのが閣議了解で出ておりまして、これの正式な名前は電源開発に伴う水没その他による損失補償要綱という名前でありますが、昭和二十八年の四月、閣議了解ということで、これは関係省すなわち通産省建設省、農林省並びに当時の経済審議庁が主体となりまして文案を作りましたが、この損失補償要綱に従いまして、そういう場合の補償なり損害賠償なりをやっておりますので、一般論としましてはこれに従っているわけでございます。
  38. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 私の質問の要点に少しはずれておるのであります。私の聞くのは、損害ある場合には必ず補償したければならぬという根本の建前であるのであります。工事は申請の趣旨、条件に従って行われておる場合におきましても、そのようになるのかどうか、ここをはっきりしておいてもらいたいと思います。
  39. 市浦繁

    ○市浦説明員 電源開発に伴う権利あるいは財産権の問題はいろいろの場合がございまして、一がいには申せない場合もございますが、一般論といたしましては、電源開発に伴って他人の財産権に損害を与えるという場合には、当然補償すべきものであると考えております。
  40. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 ただいまの所見に対して建設省の御意見を承わりたいと思います。
  41. 浅村廉

    浅村説明員 建設省も同様の意見であります。
  42. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 市浦課長の御答弁になりました、いわゆる補償に関する閣議了解事項の要綱なるもの、それといずれ根拠法等が明記されておると思いますが、これを資料として当委員会に提出方をお取り計らい願いたいと思います。  それから第二には、公益事業令の五十九条によりますと、都道府県知事が水利使用権の許可を与えるに際しましては、通産大臣に意見を述べることになっております。そこでどういう意見を述べたかということが一番大事なことになるのであります。このような許可をする場合に、やはり都道府県知事が河川の管理をしておりましても、地質の状態、今後の工事途中もしくは工事後の崩壊の危険性というようなことについては特段の注意を払わなければならぬものと思いますが、これらについて都道府県知事は、後日に崩壊の事態を招来しないというような意見でも付しておったのでありますか。そういうことについては全然触れておらないのでありますか。何かそこに危険性でも付しておったのであろうか、そういうようなことについて答弁ができれば一つ述べてもらいたい。できなければいずれ後日当委員会に提出されるであろう申請に関する一切の書類を検討して聞きますけれども、その点について御答弁ができればしていただきたい。
  43. 市浦繁

    ○市浦説明員 ただいまの公益事業令五十九条による都道府県知事の報告でありますが、これは水利権の許可あるいは工事実施の認可を都道府県知事がいたします場合に、建設大臣の方に対しては認可を要請いたしますし、同時に、同じ時期に同じ内容のものを通産大臣に意見を付して報告いたしまして、それを受けた通産大臣は直ちに建設省と協議いたしまして、これに対する意見を述べて県知事に出すわけでございますが、特に河川管理自体に属する問題は、通産省の直接の所管でありませんので、普通の場合におきましては、都道府県知事の意見を尊重いたしまして、特にこれをさらに再調するということはいたしません。今度の場合にそういうことがなかったかどうかという問題でございますが、これにつきましては、だいぶ前のことでございままして、私もはっきり記憶がないため、あらためて若干時間をいただきまして、当時の書類等の内容を調べさせていただいて、その結果御報告したいと思っております。
  44. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 いずれ資料が来たらまた聞きたいと思うんだが、そこで今度は河川局次長に伺います。   〔山田委員長代理退席、委員長着席〕  やはり終局におきまして、河川法の適用問題が非常に重要になって参りますが、この河川法二十条の一号いわゆる公安であります。私ども参考人意見を聞いておりまして、陥没の状況、周囲が将来を思って非常におののいておりますような状態、それから六カ所も崩壊しております状況、そういう状況から見ますと、根本的に工事そのものが調査、施工の実情、設計等のいずれかに重大な過失、欠陥があったものと考えられるのであります。そこで聞いておきたいのは、公安問題というのは非常に重大に考えていただきたいんだが、公安問題の点からこれを検討なさる必要はないのであろうか。ことに佐久間ダムあたりのああいう超人的な、綿密なダム建設を見た者の目から言いますと、実にこっけいに類するほど事業主体の疎漏な状況を推測し得るのでございますが、こういうような場合には、今後こういうことの絶滅を期する意味におきましても、一つ公安の見地からこれを再検討する必要があるのではないかと思うのであります。必要によりましては知事も当委員会に来ていただいて、十分に所見を聞くこともいいと思いますが、まずあなたの方においてそういう角度から再検討する必要がないかどうか、こういう点を伺っておきたい。
  45. 浅村廉

    浅村説明員 ただいまお尋ねがございました点にお答えいたしますが、河川法によりますと、公安を害するおそれがある場合には必要な措置をとれるようになっております。当然のことでありまして、なお先般もちょっと申しましたが、水利使用権の許可を河川管理者である富山県知事側からいたしましたものに命令書がつけてありまして、その内容にやはり同じようなことを述べております。公安という言葉は書いてありませんが、治水上支障を来たすような場合またはそのおそれがある場合には、こまかくなりますが、いろいろな措置を知事が命ずることができる道が開いてありますので、私どもといたしましては、この問題はついこの間伺いましたばかりでありますので、現地とも打ち合せた上で、一応調査をしてみたい。その上で考えたいというふうにただいま考えております。
  46. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 資料が来ましてから質疑を続行したいと思います。資料の要求の中には水利権の許可申請の一切の書類、これは取りよせることになっておりますか。
  47. 上林與市郎

    上林委員長 私ちょっと座をはずしておりましたから、念のために確認しておきたいと思いますが、出席要求が田中委員の場合は農地部長と国税庁の査察部長ですね。資料要求は松岡委員からは、開発、通産省建設省からの神通川ダムに関する書類の資料提出ですね。同じく田中委員からは、開発銀行のこれに対する融資に関する資料、資金の使途の明細書ですね。今お聞きの通りですが、資料の要求は差しつかえございませんでしょうか——それではさように確認しておきます。
  48. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 電源開発のこのような事業許可を与えた場合に、関係土地その他第三者に損害を与えた場合にはどういう補償をするかということについて、閣議了解事項とかいって補償要綱があるのだそうであります。それを全部取りよせてもらいたい。
  49. 市浦繁

    ○市浦説明員 よろしゅうございます。
  50. 上林與市郎

    上林委員長 それでは三鍋委員質疑を許します。
  51. 三鍋義三

    ○三鍋委員 斎藤参考人から先ほど技術者としての立場からいろいろ御意見の開陳があったのでございますが、この工業技術院調査とあなたの御見解と非常に食い違っておるのでございますが、これに対しまして、あなたの所見といいますか見解、御意見をお聞きしたい。
  52. 斎藤大六

    斎藤参考人 私報告書の写しを拝見いたしました。結局私は三回にわたって調査いたしました。なぜそうしたかと申しますと、崩壊ということはすぐその場所に行って見ましても、崩壊した個所はございますけれども、崩壊している事実というものはそう短時間では認められない。それで一回七月二十日に行きまして、それからまた二カ月以上経て行きました。そうしますと、前に見たときよりもさらに位置が後退しておる。これは確認されたわけです。それから陥没地帯においては、これよりさらに顕著な事実がわかりました。あの工業技術院調査を拝見しますと、何といいますか、私の考えでは、地元の人の見てもらいたいところを見ていないんですね。つまり北陸電力会社が見せたいところをごらんになっているように思うのです。それですから、崩壊個所がABCと書いてありまして、しかも岩磐が一メートル以上湛水面より出ているとしてありますが、これは私ども三回とも確認しているのでございますから、確認したところによりますと、崩壊個所は六カ所で、陥没地帯は約五百五十メートルにわたっておる。それから工業技術院調査書のA、B、C、のうちのA、Bというところは、私どもの方の四号、五号としてあるところなんです。それでそこは確かに湛水面より一メーターないし二メーターぐらい岩磐が出ております。しかしその岩磐の上にある斜層というものは、技術院の方の調査では四十五度ということになっておりますけれども、傾斜をはかってみますと、六十度から七十度、それから岩磐自体が技術院の調査では岩磐というものはもう絶対安定のものだというがごとき印象を与えるように書いてあります。私どもは岩磐自体それの安定したところもありますけれども、不安定なところもある。それで私の方の認めました六カ所の崩壊のうち二カ所は確かにA、Bに相当するところで岩磐は出ていますが、その岩磐自体がもろいところがあるのであります。それですからそれが約二カ月ぐらい——第一回の調査から第二回の調査にいきましたときに、もうすでに二尺ぐらい岩磐自体がこわれていた、こういうのでございます。その他私の調査工業技術院調査との見方の違いと申しますのは、私は過去における湛水前の地形、地質というものを、まず地元の人の言うことをある程度信用しまして、そしてそれを加味して調査しております。
  53. 三鍋義三

    ○三鍋委員 これはこういう食い違いの点から申しましても、地元農民方々の生活安定という日々の問題から考えましても、いずれ再調査をずる必要があると私は思うのでございますが、あなたの御見解によりますと、現在湛水されているのを放水して、そして根本から調べた方が最も適切である、こういう御見解のようでございます。これはだれが考えてみても当然だと思うのでございますが、実際問題としてこれがなかなか大へんなことと私考えるのです。しかしいざとなれば、先ほど松岡委員からも言われましたように、これは富山県全体が水浸しになるという心配も包蔵されているのですから、あえてやらなければならないけれども、現在の状況においてある程度まであなたの見解を確認できるかどうか、この点技術者の立場としての御見解を御開陳願いたいと思います。
  54. 上林與市郎

    上林委員長 三鍋委員に御了解願いたいのですが、厚生大臣が御出席されまして、時間に非常に制約があるので、質問を簡単に、また答弁も簡潔にお願いします。
  55. 斎藤大六

    斎藤参考人 もちろん今先生の申されたごとく、これは実際問題としてはなかなか容易な問題ではないと思います。これは一つの理想論かもわかりません。それをあえて申し上げますのは、今のは一つのモデル・ケースなんで、全国的にこういう問題があるのではないか。湛水前に完全な地質調査をして防止したい、それだけなんでございます。それですからあとは農民の代表の方の納得されるような措置を講じていただければけっこうだと思います。
  56. 三鍋義三

    ○三鍋委員 現在の状態において危険性をあなたの見解ではっきり確認できるのかできないのか。
  57. 斎藤大六

    斎藤参考人 現在の状態においては、陥没地帯などは確認できます。
  58. 上林與市郎

    上林委員長 他に御質疑はありませんか。——なければ参考人に対する質疑はこの程度にいたします。参考人各位には長時間御苦労でした。     —————————————
  59. 上林與市郎

    上林委員長 次に病変米の輸入、保管及び処分等に関する件について調査を進めます。厚生大臣には決算委員会の運営上委員長としてもいろいろ申し上げたい点もございまするが、きょうは非常に時間の制約があるようでございますから、他日の機会に譲って、直ちに質疑に入りたいと思いますが、その前に大臣の発言があるそうであります。大臣の方の時間の関係ですから発言を簡単にお願いいたします。
  60. 小林英三

    ○小林国務大臣 先般の八日か九日ごろかと思いますが、当委員会におきまして黄変米の処理の問題につきまして私から発言をいたしました。その発言の中で、現在ございます約十四万トンのタイ国黄変米、イスランジア黄変米を合せましたその処理につきまして、みそ、しょうゆあるいはその他のものに転用するということを申し上げたのであります。私は実は率直に申し上げますが、みそあるいはその他の食糧に転用するという問題につきまして、事務当局の方からケース・バイ・ケースによってやっているのだ、こういうことを聞いておりましたものでありますから、そういうふうにここで発言をいたしたのであります。しかし私はみそに使うとか、あるいはしょうゆに使うとかいう問題につきまして、果して確実な裏づけがあるかどうかということにつきまして疑問を直後に持ちましたので、直ちに担当部長を呼びましてそのことを申しましたところ、その確固たる裏づけがない、これは今後の日本の国民の食糧問題に重大な問題がある、もう一度私が直接にこれを確かめた上で、あらためて当委員会においてこの処理の問題について発言をいたしたい、こう考えまして直ちにいろいろ手配をいたしたのであります。御承知のように食品衛生調査会の中の黄変米特別委員会には学者、経験者あるいは技術者等がございますが、実はいろいろの都合がございまして、昨日これらの諸君がほとんど大部分委員会に出席をしてくれましたので、これらの諸君に対しまして私が直接に諮問をいたしまして、それによりまして今後の黄変米の処置の問題について厚生省の当局として態度を決したい、こう思いまして、昨日も約三時間以上もほとんど個々別々に意見を徴し、また全体の意見を徴してみたのであります。詳しい話は必要がございますれば、担当の事務当局からそれらの内容につきましても御答弁申し上げたいと思いますけれども、とりあえずそれに基きまして厚生省といたしまして、この処理についてどういう態度をとるべきかという問題につきまして、ただいま申し上げたいと思います。従いまして先般の委員会におきまして私が申し上げました後半の問題は訂正いたすことになると思いますから、あらかじめ御了承願いたいと思います。  そこであらためて在庫病変米処分等について申し上げます。  (一) 現在各地の倉庫に在庫しているいわゆる自然黄変米については、その毒性等について各研究機関の学者を網羅する多数の専門家によって研究が続けられているが、今日までのところ、てれら各方面の研究成績を総合した結果では、この黄変米が有害であるということを直接証明した確実な事例はない。    ただし、菌量のきわめて多い人工黄変米については、これが有害であるということを証明した実験結果が一部に現われており、かつ、前記自然黄変米が無害であるということを証明することが、学術研究上きわめて困難であるという事情があるため、自然黄変米が無害であるということに対しては一部学者になお疑義を抱くものがあって、いまだ学者の一致した意見を得ていない。    従ってかかる状況のもとにおいては、この自然黄変米を飲用アルコール原料に転用することは差しつかえないが、これを直接食品に用いることについては、なお研究の結果を待つことが必要であると認める。  (二) 農林省は米穀の買付、輸送等においては、黄変菌の混入しないよう十分な措置をとるものであるが、厚生省においてはこれら米穀の輸入に当っては、海港において監督的な抜き取り検査を行うことにより万全を期している。    なお、今後も輸入検査に当っては買付地、無菌証明書の有無等を勘案して、重点的に検査を行う所存である。 これが今日厚生省といたしましての結論でございます。さように御報告申し上げます。
  61. 上林與市郎

    上林委員長 それでは質疑に入ります。  大臣と委員長との間において時間の申し合せがございますから、大臣のみの質疑を先にしていただきたいと思います。なお質疑も答弁も要領よく簡潔に願います。吉田委員
  62. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 在庫黄変米が約十四万トンあり、これを配給するかいなやという問題、食用に供するかどうかという問題等は、これは全国民が非常に重大な関心を持っておりまする際、大臣が学者を集めていろいろと直接御意見をお聞きになりましたことには、まことに敬意を表するのであります。  そこであなたにまず伺いたいのでございますが、この黄変米——病変米という言葉も使っておりますけれども、以下黄変米にさしておいていただきたいと思います。黄変米につきましては有害の直接証明がないということが前提になって処理方針をおきめになっておるらしいのでありますが、この点はやはり食品衛生の主管庁の大臣といたしまして、ただに現在の在庫米のみならず今後の黄変米処理にも非常に重大な関係を持ちまするので、あなたが直接学者にお聞きになりましてそれから得られた結論として、あなたの根本の考え方、腹がまえ、御所信というものをはっきりしておきたいのでございます。  そこで第一には、これの報告書にも書いてありますが、いまだ学者の一致した意見は得られないということは、それは同時に学問上有害なりという強力な意見が出た、これはお認めになるのでありましょうか。ともすれば一、二の学者がそう言っているというような言葉で逃げる事務当局もあるのでありまするけれども、ともかく有力な学者の間に有害である、有毒な物質を持っておるところの、もしくは生産したところの菌、それは有害である、こういうことについては、あなたの御確信はそういうふうに到達したのでありましょうか。それともやはり根本に黄変米は有害という証明がないので、有害でないというような前提にお立ちになるんだろうか、そして学者の意見が一致しないんだから一応アルコールに回しておけ、こういうふうなことになるのだろうか、そこが非常に大事な分れ道でありまして、今後千里の差が生じて参るのでありますから、はっきりしておいていただきたいのであります。
  63. 小林英三

    ○小林国務大臣 今お尋ねになりますような問題につきまして、私も担当の事務当局が、それらの専門家と申しますか、委員と申しますか、そういう人々から聞きましたことをことずてに私が聞くということは、今まで国民から相当重大な問題と扱われておりました黄変米につきましてあまりにも軽率ではないか、そこで私がみずからそれらの黄変米特別委員の学者の人々に会っていろいろと検討を聞いてもみ、また意見も聞き、私もいろいろ意見を言ったのであります。しかしこの問題を私がはっきりと——これをみそにいたしましても、あるいはしょうゆにいたしましても、今後の国民の食生活の上に絶対に保証ができるというような観点に立つことが不可能であったわけであります。従いましてほかの動物でありますれば、食わしてみて死んだら大へんだということになりますけれども、いわゆる国民のとうとい人命に関する問題でありまするから、はっきりしたこの観点、たとえばタイ国黄変米というものは表皮を一皮むいてつきかえれば主食としてもよろしい、こういうふうなはっきりした観点に立てませんうちは、私は自分の立場といたしまして、これをしょうゆその他に使うということについての断定を下し得なかった、こういうことであります。
  64. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 この自然米と人工培養いたしました毒米との区別がよくいわれるのでありまして、この点はあなたも昨晩十分にお聞きになったと思います。私も何十回あなたの事務当局からも、学者からも伺いましたことであります。なるほど自然米によって人間に直接肝硬変もしくは肝のガンを診断してというような事例は、あるいははっきりしないかもわかりません。しかし御承知の通りに今実験化学がそこまで進歩いたしまして、一々人間をモルモットにして肝硬変を起して、あと寿命は二年やとそういう診断をされる、そんな試験が今日できないことは申すまでもありません。でありますので、みなモルモットだとかその他のラットなどを利用いたします実験方法によって、研究を続けていっておるというのが今の学問の方式でございます。そこで人工的に培養試験によりまして毒が出ておるということは、これはもう顕著な事実であります。私も実は良心的に国会において論議する以上は、やはりただ受け売りだけではございませず、何回となく顕微鏡を事実見て参りました上での立論でありますが、たとえば一〇〇%ないし五〇%、つまり人工培養いたしました菌のついたもの、それを粉にしまして、そうしてそうでない正常なものを半分ずつもしくはその毒のないもののみ一〇〇%、そういうようなものをハツカネズミなんかに注射したり食わせたりしました場合には短時間で死んでしまいます。あるいは三%になり一%になり、だんだん少量になって参りますと、時間が長くなってちょっと出てきません。出てきませんが、肝硬変の症状を呈するということは何回も私見ております。そういう人工的な方法によって検査いたします方法につきまして、こういうようなものはあなたのお立場からしますならば、人間が自然米を食って、直接その証明がないから、人工培養によって動物実験したのだから間接だ、こういうようなお考え方は危険でございます。培養試験によれば菌体が二千万倍であると楠本さんも申されておりますが、それは濃度が大きいのです。大きいのですが、毒素が存在する、毒物が存在するということは否定できないのであります。培養によろうと何によろうと、毒物が菌から生産されておる、もしくは菌体内にございまするが、そのあるという事実は、人工であろうとあるいは自然であろうと、どっちにもあるわけであります。その毒物があるという事実は、科学をお認めになる以上あなたもお認めにならなければなるまいと思うのです。でありまするので、問題は毒があるという前提に立ってものを考えるかどうかということになるのですが、毒があるという前提に立つならば、毒が多量であろうと微量であろうにかかわらず、もしその毒を一〇〇%ネズミに食わしたら短時間に直ちに死んでしまう、そういうような強烈な毒物であるという以上は毒があるかないかということが、非常に重大な分れ道になってくると思います。そこで人工培養にしろあるいは自然米にしろ、毒があるということは厚生省としても、厚生大臣としてもお認めになっておられると思いますが、その点に関する考えをはっきり聞いておきたいと思います。
  65. 小林英三

    ○小林国務大臣 私は黄変米に毒があるということと、その自然黄変米を食って無害であるということとは別問題でございますけれども、今おっしゃるように毒があるということは認めたいと思います。
  66. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 そういたしますると、毒があるという以上は、たとえば毒がだんだん微量になって人体に機能障害を生じないという一つの限界線がある、理論的に申しましてそういうことになるかもわかりません。ところが毒があるという以上は、よしんば少々微量になりましても、毒の米として根本的に処理していかなければならぬ。この原則はやはり厚生省としてもお認めになるわけですか。
  67. 小林英三

    ○小林国務大臣 毒がつまり人体に無害であるという研究ができるまでは、私はこれを国民に食糧として食わすということについては差し控えたいと思っております。
  68. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 ちょっとあとはっきりしなかったのですが、毒があるということが明らかである以上は、これは人体に有害であるかないかということがはっきりしない以上は、人間が食うという方法で処理しないという今の御説明でありましたね。そこで伺っておきますが、そういうように非常に重要な関係を持って参りますので、この際飲用アルコール原料に転用して差しつかえないと言っておられるわけです。そうしますとこの点は確認するのですが、今後そういう問題が結論として出されますまでは、人間が食うとかあるいはみそ、しょうゆ、加工原料にはしないというふうに理解してよいかどうか。それはイスランジァ黄変米は全部そうなんであるかどうか。それからタイ国黄変米につきましては、やはり一〇%皮をむく、再搗精するという方針であるかどうか、この三つをお聞きしておきたいと思います。
  69. 小林英三

    ○小林国務大臣 タイ国黄変米は一割の皮をむきますればもちろんみそにもしょうゆにも使用して差しつかえな。いと思います。イスランジァ黄変米につきましては今後の研究に待ちまして適当な処置をするまでは、みそにも使用することは厚生省としては禁じたいと思います。
  70. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 私の伺いましたのは、結論のはっきり出るまではイスランジァ黄変米につきましてはもちろんみそ、しょうゆ、お菓子の原料には使用しないというふうに、ただいまの御答弁は理解してよろしいというのですか。
  71. 小林英三

    ○小林国務大臣 現在におきましてはその通りであります。
  72. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 そこであなたの方はこういうことはないでしょうか。外米の配給があるものを保健所などへ持っていって検査を頼んだ場合に、厚生省が外米の検査などに応じたらいかぬということをあちらこちら言いふらされておるということがあるのですが——こういうことはないと思いますけれども、この点については一つ御注意を喚起しておきます。  根本の問題につきましては一応はっきりいたしましたから、第二の問題でありますが、これは今後の問題として非常に重要な問題でございます。ただいまいただきました「在庫病変米処分等について」という資料の第二項には、今後の黄変米輸入防止対策について「米穀の輸入に当っては、海港において監督的な抜き取り検査を行うことにより万全を期している。」とあります。ところが単に今のような方法で抜き取り検査をどんなにおやりになりましても、五十分の一しかやっておらない、五十分の五十をやろうとするならば人間が少くとも五十倍要る、そういうことについて予算措置をとって人間の増員、あらゆる設備をこれからしようとする御決意を持っておりますかどうか、それをはっきりしておきたいと思います。
  73. 小林英三

    ○小林国務大臣 ただいま御質問の点につきましては、海港におきまする検査の人員等につきまして本年度はさらに増員の考えでございます。
  74. 上林與市郎

    上林委員長 次に田中委員質疑を許します。申し合せの時間が参っておりますので、田中さん一つ簡単にお願いいたします。
  75. 田中彰治

    ○田中(彰)委員 厚生大臣にちょっとお尋ねをいたします。大臣は就任されてからこの黄変米の問題でこの決算委員会へは今度初めて出られたように、あるいはまた従来からやっておっても結論が出ておらない、こういう工合に私は想像するのです。この黄変米の問題が出ましたときちょうど私が委員長をやっておりましたので、長崎県、関西方面、名古屋、その他を視察いたしました。そしてわれわれの結論としては、六十年間も外米を輸入した歴史を持っておるのだが、今までそう大したこともなかったのだし、あるいはまた海外あたりでも買っているところでは、こういう病菌に対してはあまりおそろしい議論をされておらないから、大したことはないじゃないか。われわれの目から見て、カビのはえたようなものとかあるいは赤くなって食べられないようなものは仕方がないが、白いものまで何も倉庫に置いて倉庫代を払って、米がないというのに配給を停止する必要はないじゃないかということで、われわれは科学者でもないし、医者でもないが、一応常識として委員会委員諸君も質疑し、私も委員長として申し上げたことがあるのです。農林省も私たちとやや同じような考えを持っておられたので、そういう話をされたことがあるのだが、そのときに、あなたの方の厚生省から来られた説明員の方は——これは記録にもありますから、ごらんになればいいが、ネズミにためしたところが、非常に肝臓が萎縮したとか、こういう工合に注射を打ったら死んだとか、あるいはガンになるおそれがあるとか、あるいはネズミ何十匹にためしたら、何十匹が死んで、何十匹がどういう結果になったというように、ネズミの数まで言われて説明されたから、私の方も専門家でないから、それでは一応まかしたらいいじゃないかということで、そのときあなたの方は人間に配給できぬと言った。それだからこれは処置しなければいけないということになっておったのに、それを昭和二十九年の八月から今日まで何もしないで、そのまま放って置いて、米もいたんでいる。その間に倉庫代も六億二千万円ばかりたまってしまった。これは全部国民の税金です。それでわれわれはこのまま放って置いてはいけないから、何とか処分しなければいけないというので、今度またこの委員会で黄変米の問題を取り上げた。そこで、ここにおられる厚生省の楠木部長がどういうことを言っておられるか。こういうことを言っております。有毒だといって決算委員会で停止するように発言されたのだが、厚生省の立場は国民の衛生を確保するのが至上命令であります。従いまして、輸入米に関しましても、厳格に検査し、しかも発見せられたものにつきましては、それぞれ適切な処置をとるという態度で進んで参っております。このたびもかような考え方によりまして、厳格な基準を定めた次第であります。これは第十九国会二十九年八月十日会議録三十九号であります。次には、私どもが白米のうちにも黄変菌があるものがあることがわかりましたのは去年の暮れで、従いまして、その以後におきましては、かようなものを配給することは一応見合せてくれと農林省に対して申し入れた。これも二十九年八月十日。次には、農林省への通報は、白米中に怪しいものを見たというので、むしろ注意を喚起する意味で提出をいたしたものであります。その後、研究の結果、昨年の暮れになって初めて私どもがこれを確認いたしました。従ってそれから以後のものにつきましては、一応滞貨していただくようお願いしたわけであります。これは二十九年八月十二日。その次は、農林省は当初厚生省の通報によって必ず処理するという固い約束をしておるにもかかわらず、単におくれたという理由で配給に移したということはやはり一半の責任が農林省にもあります。その次は、従来は全然黄変菌の入っていない米とまぜて操作することは私ども承諾いたしておりません。それから以後にそういうものをまぜる——たとい黄変米の入っておらぬものに少しまぜてやることも承諾いたしておらない、それだから待ってくれ、食べられないということを言われている。もう昭和二十九年八月十日ごろにこういう答弁をされているのです。それを今になって六億二千万円も倉庫代をためて、また今度はいろいろな学者諸君を集めてやられたが、きょう来たその回答を見ますと、それよりもっと確かというか、ぼやけたというか、これまたわからぬというような状態である。今また大臣の説明で、これは食糧に使わない、加工品とかそういうものに使わない、こういうことになると、またこれから滞貨することになるが、一体この税金はだれが払うのですか。こういうような国民に欠損をかけた責任はだれが負うのですか。もうすでに昭和二十九年八月に、この黄変は食糧にできないから飼料にするとか加工するとかどういうことをすると処分方法をきめてなければならぬはずである。そうすれば六億二千万円は助かっている。また食べられるものであるならば食べさすということをしておらなければならぬ。それをなされなかったということは何としても厚生省の責任ではないかと思う。しかもその後あなた方の答弁を見ておりますと、速急に研究を進めまして委員会に通告をいたしますと約束しておるのに、その約束を果さないで今日まで二年近く延びてきている。そうして今日六億二千万円の倉庫代をためて、一カ月三千万円も払うことは耐えられない、どうするのだとあなたの方に申し上げると、今申し上げたようにやはりあいまいな状態なんです。これは一体どうなるのですか。この点は大臣からはっきり、だめならだめ、よいならよいとしてもらわぬと、国会の仕事というものは、政府の仕事というものは、いつでも理屈に理屈をつけてあいまいにしてわれわれ国民に迷惑をかける、われわれが泣いて納めた税金を六億使おうが、毎月三千万円かかろうが、そんなことはかまわぬとほうっておく、あとで農林省が責任を負うのか厚生省が責任を負うのかうやむやにしておるというふうに国民が思ったら、私は重大な問題になってくると思う。これは、ここで大臣に申し上げるのはこの間就任されたばかりだから無理です。けれども、あなたがお知りにならないならお知りにならないだけに、こういう記録が前からある。ネズミに試験をしたら肝臓が萎縮した、あるいは病院に持って行ったらガンになったという。そこで私はそのとき申し上げた。私は鶏を一万羽ばかり持っている。金は要らぬからこれでやろうじゃないか。ところが、それは危険だからだめだと、鶏にさえも試験をすることを許さなかった。そういうように前からきまっておるのを今にこうやっておくということはおかしい。しかもその後ガン研究所で研究してみると、数を百にしてみますと、白米を三月くらい食わしてガンになったのは率でいくと三匹か四匹くらいなんです。黄変米を食わしたのは五十九匹乳ガンになって倒れている。そこでこれにこぬかを入れてみたりキャベツを入れてみたりしてやったところ、白米をくれた方は肝臓障害もガンもなくなった。黄変米をくれた方は、幾らか忘れましたが、肝臓の萎縮、乳ガンが出るというようなことも一応書いてある。しかし、これだってただ一病院の一学者の研究ですから、全部を是とすのではありませんが、こうやっておいてはどうしても解決できない。ですから、これは食えないからこうしろ、このくらいなら危くないからこうしろと、三年もかかってはっきりめどがつかないということになれば非常に重大だと思うから、簡単でけっこうです。これは損をするのは当り前です。国民をモルモットの代用にして殺すか、安全に処分をしてその金でほかのものを買うか、その結果はすぐそこに出るので、遠慮なく大臣のはっきりした御説明を承わりたいと思います。
  76. 小林英三

    ○小林国務大臣 ただいまの御意見は非常にごもっともだと思います。私は就任早々でありましたが、とにかく現在の約十四万トンの黄変米が、タイ国の黄変米にいたしましてもあるいはイスランジア黄変米にいたしましても貯蔵してある。しかも一カ月に三千万円からの倉敷料をとられてそのままになっているという状態はまことに遺憾と思います。しかし私は新任早々ではありまするが、——一方におきましては百億近い国の財産と申しまするか、これをどうするかという問題、一カ月に三千万円の倉敷料をとられているという問題がありますが、私は黄変米を日本の国民に食わすことにつきまして、たとえば二十万トンが百万トンありましても、あるいはわずかに十トンでありましても、やはり厚生省といたしましては、安心をして国民に食わし得るような断案を下すのでなければ私は危険と思います。しかし私は田中さんのお話のように、今まで長い間厚生省としてこの問題を放置しておったわけではございませんが、この問題の処理が遅々として振わなかったという問題につきましては、これはまことに遺憾に思います。私は今田中さんのおっしゃったように、とりあえずイスランジア黄変米につきましてはアルコールに向ける。しかしアルコールに向けると申しましても、数量がそうたくさん消化できるものでもございませんから、至急にイスランジア黄変米の今後の処理につきまして十分に研究をしてもらって、そうして近い将来にさらにこの問題の処理について私の断案を下すようにいたしたいと考えております。
  77. 山田長司

    山田委員 黄変米の処理の問題については、国民の納得のいくような資料を得るといって、昭和二十九年度の予備費の中から七百五十五万四千円、さらに二十九年度の既定予算の中から節約解除分を三百三十六万五千円、合計して黄変米の調査だけでもうすでに一千九十一万九千円、ずいぶんたくさんの予算を使ってこれが研究をしているのに、今だに全然措置ができずにいる。山下政務次官はこの間必ず白黒をつけてあさっては大臣から答弁をさせる、これを六、七回にわたって実は確約して帰られておるのです。それがきょう大臣からお話を伺っていると、いまだに結論が出ていないようです。一体いつになったら結論が出るというのか、これがまず一点。  それから厚生省の当局に伺いたいことは、去年厚生省は印刷物を出されて、その印刷物の中に白い黄変米は一〇%以上ぬかをとれば食べても大丈夫だという証明をしたことがある。一体どっちがほんとうなのですか。どうしてこれは結論を出さずにおるのか、大臣に一つ御答弁を願います。
  78. 小林英三

    ○小林国務大臣 ただいまの後段の御質問でありますが、これはもうはっきりと食品衛生調査会のうちの黄変米特別委員会におきまして、その当時の川崎厚生大臣の諮問に答えまして、タイ国黄変米に限り表皮の一割をつき直しすればこれは主食としてもよろしいという結論がもうすでに出ておるのであります。それから今日私がただいまここで申し上げましたことは、今日の段階におきまする十四万トンの在庫品に対する一つ結論でございまして、その他の処理につきましてはただいま田中委員の御質問にお答え申し上げた通りであります。
  79. 田中彰治

    ○田中(彰)委員 それは大臣ちょっとおかしい。今山田委員の話だと一千万円の調査費がいっているのですよ。私は一千万円の調査費というものは、これは黄変米の菌に対するりっぱな、あらゆる面からたとえば鶏に食わしたらこうだ、牛に食わしたらこうだ、馬に食わしたらこうだ、人間に食わしたらこうだというあらゆる面の相当の記録が出なければならぬと思う。それからあなたが月三千万、三千万と言われますが、あなたの方でこうやってほおっておいたために、六億二千万という金がもうとられておるのです。  それからいま一つ、あなたがいろいろな食品に関係するところの学者の大家の意見を聞かれたというけれども、その一皮むけば絶対に毒がないということは一体だれが言ったものか。これは私が長崎で言ったことなんです。私が委員長として調査したときに、あまり米がきれいだから、これをついて一皮むいてみなさい、そうしてこぬかを一皮よけいとったらいいんじゃないかということを私が申し上げた、そうしたらあなた方が一千万円の調査費をかけられて六億二千万円の倉庫代を払われて出ない結論が、何の医学にも経験のない、化学にも経験のない一決算委員長が言った、これをついてみたらどうかという、それが現在の一番いい方法であるということは、これはちょっと大臣おかしいですよ。もう少し私はあなたの方の責任としてもはっきりしたことをやってもらいたいと思う。  それからもう一つ、アルコール、アルコールと言われますが、私はこれなんかも大臣が出されるのは、よほど考えてお出しにならないと、大臣は御存じないのですが、これは山田委員が検察庁を呼んで非常に決算委員会でいじめたことなんです。これは某トンネル会社がアルコールを製造するというので、黄変米を持っていきまして、そうしてこれをアルコールにやらないで和歌山県その他へ流してしまって、これが大へんなことになってしまった。それだけならまだいい、うんと金もうけをしただけならいい。それから今度そのアルコールを作るために米の方を流したから、今度は三つの県の農協からイモをとりまして、イモでアルコールを作って、イモ代をまだ払わないために農協は非常に困っている。そうして今度はまた黄変米が流れた先を調べるために、検察庁が非常な経費を使ってやっているというのがアルコールに対する状態なんです。ところが今言う通り六億二千万円使った。二年間たっても結論が出ない。一千万円の調査費を使っても何にも出ない。最後に大臣が心配ないと言われるのは、私らが長崎に行ったときに、決算委員長の田中彰治が言った、これは一回ついてみたらどうかというそれが結論の一番いいものである。そうしたらまた払い下げをするのに何の考慮もなしにアルコールによかろうというのはおかしいじゃないか。アルコールは人間が食ったり使ったりするのだから、そういうような心配のない家畜に食べさしてみて、徐々にこういう処分をするとかああいう処分をするとか、こういうことを考えておるという、もう少しあなたの方も責任のある回答を出されないとおかしいんじゃないですか、これに対する最後の大臣の責任ある御答弁をお願いします。
  80. 小林英三

    ○小林国務大臣 従来長い間かかりまして結論が出なかったということにつきましては、これは私も新しく就任いたしました大臣といたしましても、甘んじてそういう御非難を受けなければならぬと思います。しかし私は今日の段階におきまして、あれほど問題になった黄変米の問題でありまするから、自分といたしまして直接にそれらの調査をいたしておりまする専門家の諸君から聞いて、そうして私が安心をして国民の食糧として、みそにいたしますにつきましても、あるいはしょうゆにいたしますにつきましても、安心をして断案を下し得るために、いろいろ直接に研究をいたしたのであります。今日の私の立場といたしまして、事いやしくも国民の生命関係する問題でありまするし、ただいまはとりあえずこういうような結論を得まして、今後今おっしゃるようにきわめてスピーディにこの後の問題について検討いたしたいと思っております。どうかしばらくの間御猶予願いたい。
  81. 山田長司

    山田委員 調査のために去年の十月の十六日に第一回の調査会が持たれていることは厚生省の報告で知っていますが、その後七回にもわたって会合が持たれて、日本における大家だと思われる各大学の医学部長だとか、あるいは伝染病研究所の所長だとか、あるいは農学部の部長だとか、ずいぶん各方面の権威者が集まって会合を重ねているが、大臣の答弁ではちっとも具体性がないんだけれども、一体動物実験をしたのか、そういうことがあったのかないのか、あったとすればその結果はどうだったのか、大へんな経費がかかっているんですから、どうぞもう少し具体的に一つお答え願いたいと思うのです。
  82. 上林與市郎

    上林委員長 一つ具体的に答弁して下さい。
  83. 小林英三

    ○小林国務大臣 ただいままでの経過につきましては、むしろ担当事務当局からさせた方がいいのじゃないかと思いますので、事務当局から一応具体的な問題について説明をいたします。
  84. 上林與市郎

    上林委員長 大臣に対する質問はこの程度にとどめます。  速記をとめて。   〔速記中止〕
  85. 上林與市郎

    上林委員長 速記を始めて。それでは三十分休憩いたしまして質疑を継続いたします。  それでは休憩いたします。    午後一時五十三分休憩      ————◇—————    午後二時三十九分開議
  86. 上林與市郎

    上林委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  病変米の輸入、保管及び処分等に関する件につき質疑を続行いたします。なお本会議開会の時間とのかね合いもございますから、大体質疑の時間約一時間くらいで終了いたしたいと思いますから、御配慮の上に質疑を願います。吉田賢一君。
  87. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 食糧庁長官に在庫黄変米につきまして、特に処理方針の資料として伺ってみたいのでありますが、現在の在庫米について、たとえば十袋ごとに厳重な再検査を実施する、こういう方法が可能であるかどうか、まずそれを聞きます。
  88. 清井正

    ○清井政府委員 ただいまの御質問の点で、私ちょっと御質問の趣旨を間違えて御答弁申し上げることになるかもわかりませんが、私どもは黄変米の検査等を別途の観点から、着検制度による受け入れの検査をやっておるわけであります。従ってそのためには、私どもには成要の検査員がおりまして、それが検査をし、受け入れをいたしておるわけでありますが、そのほかに別途の厚生省の黄変米関係の職員による検査が行われる、こういうことに実はなるわけでございます。そこでただいまお話の御趣旨にありますように、大体船が七、八千トンだといたしますと、一トンが十袋でありますから、かりに八千トンの船が入って参ることになりますと八万袋ぐらいの毛のが一ぺんに入ってくる、こういうことになりますので、その点厚生省の方の検査は実際問題としてどういうふうに考えておりますか、いろいろ問題があろうと思いますけれども、私どもの検査におきましては、ただいま申し上げましたように着検制度による受け入れの検査として必要な検査だけをやっておる、こういうことでございます。
  89. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 そうしますと、この在庫黄変米の再検査問題において、完璧を期する方法につきましては、農林省に関する限りほお考えの限りではない、その仕事は厚生省の所管に属するものだ、こう解釈してよろしいのでしょうか。
  90. 清井正

    ○清井政府委員 官庁の権限の建前から申しますと、衛生的な観点からの調査研究は厚生省で御担当になっておりますので、当然これは厚生省でおやりになるようになるわけでありますが、御承知の通り私どもには食糧研究所がございますので、あるいは私どもの方の立場からの実際上の研究ということも若干できるかと思いますけれども、官庁の権限の建前としては、これはやはり厚生省でおやりになる、こういうことになっておるわけであります。
  91. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 それからイスランジァ菌の寄生いたしましたものをすべてアルコール原料としておるようですが、タイ国黄変米、イスランジァ菌米の混在しておるものを含めまして、以上のものについて別途用途をお考えになるということは、あなたの立場から可能かいなか伺いたいと思います。
  92. 清井正

    ○清井政府委員 これは、たとえばイスランジァ菌の人体に対する影響あるいは毒性の検査等を保健衛生という立場から検討いたしますことは、厚生省の所管でありますので、やはりこれは建前として厚生省の方でやっていただくことに相なると思います。
  93. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 現在飲用アルコールあるいは工業用アルコールの原料としてつぶしております米あるいは砕米は年間どれほどになりましょうか。あるいは飲用アルコールとしてつぶす場合に、今日の市価から見て普通どれくらいが相当という計算でしょうか。
  94. 清井正

    ○清井政府委員 ただいまのところの私どもの推定でありますと、年間の飲用アルコール需要のための原料米のトン数は、約二万二千トンくらい要するのではないかと考えております。  それから価格につきましては、従来砕米を売却いたしておりますが、一番高いところで五万八千九百五十円くらい、安いところで五万三千円、つまり五万三千円ないし五万九千円でそれぞれそのときの外米の質によって売却いたしておった次第でございます。
  95. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 工業用アルコールに使用する澱粉の原料は大体どのくらいになっておりますか。
  96. 清井正

    ○清井政府委員 ただいま申し上げましたのは飲用アルコールのための砕米の値段でございますが、これが工業用アルコールのための澱粉等の原料でありますと、これは相当低目になるのではないか、おそらく半分以下になるのではないかと思いますが、ただいまのところはっきりしたお答えを申し上げられない次第でございます。
  97. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 そうすると、トン五万八千円で処理されたことがあるというのですが、かりに十四万トンとして、最低もしくは中値、最高、こういうふうにしますと、代金総額として概算どのくらいの金額が計算されるのでありましょうか。これはまことにおそれ入りますけれども、ちょっと算術していただきまして、その次の問題に触れていきます。  今年七月に門司及び横浜で二万二千百八十トンばかりの新しい黄変米が現われまして、その後厚生省当局に検査方を要求しておられるようでありますが、今後の問題が大事でありますので、商社との関係についてぜひともはっきりしておきたいと思うのですが、あなたの方で二十九年十月より用いておられる外国食糧売買契約書、これは政府と商社との間のもので、詳しい綿密なフォームがございますが、今の場合に一体どこが損害を負担するかということについては、明らかにしておいてほしいと思うのでありますが、今のところ二千数百トンの黄変米、代金にすればおそらく一億円に達すると思われまするが、この損害はいずれが負担するとお考えになっておるのでありましょうか。
  98. 清井正

    ○清井政府委員 お答えを申す前に、ちょっと先ほどの御質問に対して恐縮でございますが、砕米価格に掛ける数量はどの数量でございましたでしょうか。
  99. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 それではもとへ戻りまして、恐縮ですが、トン当りの従来の売却実績があろうと思います。また時価もあると思いますので、飲用アルコールとして、現在砕米を処分した場合に、中値、底値、高値など、それぞれをお考えになってどれほどの総額、代金が政府入手になるかということであります。従ってそれは、原価との開きはどのくらいになるのか、国損がその点で何ほど生ずるのか、こういう点をお聞きしたいのであります。
  100. 清井正

    ○清井政府委員 ただいまの点了承いたしました。ただいますぐ計算いたしまして、お答え申し上げます。  それからただいまの御質問の点でございますが、これは先般資料として詳細なものを差し上げておいたのでございますが、これによってごらん願います通り、買付方式を御注意によりまして、その後改変をいたしました結果、病変米の防止のために買い入れするときに条件をつけておるわけでございます。その条件は先般来お話があり、また御説明申し上げました無菌証明書をつけるということが第一点、これはタイとの間におきましては、まだこの条件をつけるに至っておりませんが、その他のアメリカ、中共等につきましては、無菌証明書をつけることになっております。それが第一点。それから船積みするときに病変菌がつかないようにいろいろ措置をする。非常に早く搗精をしたり、いろいろする条件をつけております。そのほかに燻蒸を必らずするという条件、それからさらに、積みまして日本へ送って参ります間の船の中で、本船の航行中に積荷をよく管理する、この四つの条件をつけて買い入れをいたすことにいたしておるのであります。商社はこの条件を了知した上で現地より米を買って参りまして、日本において政府に売るということになっております。従いまして、かりに、これが到着いたしまして、厚生省検査の結果、病変菌に該当する米が出たというふうな場合におきましては、その損害の責任といたしましては、以上申し上げました条件が、輸入商社側で立証できるかどうかということが問題なのでございます。そこでかりにつけました条件を全部善良なる管理者としての注意をもって完全に履行しているということが証明できるという場合においても、なおかつ出た場合には、それは当然商社に負担を負わすことができないのでございますが、かりに立証できないという場合におきましては、よってもって生じた損害はその米を納入いたしました輸入商社が全部負担するということにいたしておるのであります。今回出ましたものにつきましては、実はこの条件を実施いたしましてから初めての事例でございますので、どういうふうになりますか、結果によりましてはこの条件を履行しなければならない、こういうふうに考えている次第でございます。
  101. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 今の問題の場合、すでに四カ月も経過しておりまして、厚生省の最後の検査回答がまだ来ておらぬらしいのでありますが、こういう状態でじんぜん経過いたしますると、やはりこれまた大きな国損になりはしないかと思います。もっとも商社が損害全額負担ということになれば別でありますけれども、やはり国としましては、輸入米の計画変更ということも生じてくるでございましょうから、すみやかにこういう問題は解決しなければならぬと思いまするが、それらの点につきましては、解決の措置は何か厚生省の検査の結論を待って商社と折衝するということになるのか、それとも一応はそういうものが出た以上は、相当額を担保で納入させて、別のいい米を入れるという方法をとるのか、その辺の今日における経過的な措置はどういうふうになさるのでありましょうか。
  102. 清井正

    ○清井政府委員 ただいまの御質問の点は、かりに事故を起したという場合におきまして、現物でもってこれを補てんするということは、実は考えていないのであります。よって、病変菌のついた米であったということのために、これを保管するとか、その程度以上になれば経費が普通よりよけいかかるというようなことで、起った損害は全部金銭によって賠償せしめるというふうに考えております。ただ結果いかんを待ちまして実施しなければならぬと思います。
  103. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 この点前会も聞いたのでありますが、何ほど代金を支払っておられますか。栄福丸二千百六十二トンの門司入港の分、それから横浜入港の宮島丸、これは商社は何というのですか。
  104. 清井正

    ○清井政府委員 前会ちょっとお答え申し上げましたときに、この代金は一部払っておると確か申し上げたかと思いますが、実はそれは間違いでございまして、私ども、輸入商社に対しましては船が到着いたしまして、私どもの立場から納入を認めました場合には、直ちに支払っておるのであります。従いましてこの場合におきましても、金額は全額支払っておるのであります。その結果もしも事態が起りますれば、さらに賠償を取るということで一応金は支払うという建前でやっておるわけであります。それから起りましたトン数についての支払い、商社並びに金額は、調べましてすぐお答え申し上げます。
  105. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 それでは二千百八十五トンが黄変米を混入しておると一応認められ、目下検査中、そういう場合には、全額の代金をすでに支払い済みということであれば、これは相当担保でも取っておきませんと国の損害が大きくなると思いまするが、この場合には何らかの担保をお取りになっておるのでありましょうか。
  106. 清井正

    ○清井政府委員 ただいま別段担保を取るというような措置はとっておりません。と申しますのは、御心配の点は私どもよくわかるのでございますけれども、実は輸入商社はこれだけの米じゃございませんので、ずっと継続的に米を入れておる次第でございます。従いまして商社と食糧庁との関係はこれだけの問題ではございませんので、いついかなる場合でも今後の分からも徴収できるということになるわけでありまして、ただいまのやり方といたしましては、このために特に担保を取るという措置はとっていないわけであります。
  107. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 この問題につきましては、私どもはやはり商社を通じて買い受ける制度、それから着港検査ですか、一応肉眼検査をして、そうして代金の全部を支払ってしまう、こういうような点になお相当再検討の余地があると考えておりますが、これはまた別の機会にお尋ねすることとしたいと存じます。  転じまして処理問題に関連して聞きたいのでありますけれども、在庫黄変米の処理の場合に、先刻だんだんと同僚委員から御質問がありましたごとくに、以前にはずいぶんと横流しが出ております。この横流し問題については、これは相当厳重な態度で臨んでもらわなければ大へんな結果になりはしないかと心配するのであります。ことにそれが旧来の黄色化した黄変米と違って白米でありますから、従って肉眼で見て普通の配給外米と変りがないのであります。そういうようなものがやみルートに流れていくということになりましたら、被害者は場末の細民階級でありまして、一ぜん飯、親子どんぶりというようなところへ行きますと、大へんな結果になりますので、こういうことに対しまして、農林省といたしましては相当な御決意がなければならぬと思うのでありますが、過去の幾多の不祥な事例にかんがみて、何らかの対策でもお持ちになっておるのであろうか。それは人の良識と善意におまかせになっていくにすぎないのであるか、その点伺っておきます。
  108. 清井正

    ○清井政府委員 この点はまことに病変米処理の問題といたしましては、私どもの重要な問題だと考えておるのであります。先般からたびたびお話なり御決意を承わっておるのでございますが、やはり何と申しましても、これが目的の実需に当然費消されるということを確保しなければならぬ問題であります。そのために考えられることといたしましては、何と申しましても価格を適正な価格で売却いたさなければならないという点がまず問題であろうかと思うのであります。ほかの場合でもそうでございますが、こういったものの売却に当りましても、適正な価格で売却するということによりまして、売却を受けた者が当然その目的の消費に充てるようにするということが第一の点でございますので、やはり売却をいたす場合にも、その用途に従って適正なる価格を各方面から判断いたしまして売却する。いたずらに売却を急いで安くするということもいたしかねる点もありますので、その点が実際業務に携わっておる私どもといたしましては、早く処分したいし、安く処分をするわけにはいかないという矛盾した点がございますので、はなはだ因っておる点でございますがただいまのお話ごもっともでございますので、私どもといたしましても、今後売却に当りましては、やはり適正な価格で売るということについて十分注意をしなければならぬと思うのであります。それから売却先につきましても、中央地方を通ずる実需者の団体を通じて実需者に売る。あるいはカーボンを入れて他に転用できないようにするということも考えられると思うのでありますが、そういう実需者に対して、必ずそのものが行くようにというふうに売却の方法を講ずるというようなこと等について十分検討いたしまして、先般来御批判を受けましたことのないようにしていかなければならない、こう考えておる次第でございます。
  109. 上林與市郎

    上林委員長 井本刑事局長が見えておりますから御報告いたします。
  110. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 実は本日厚生大臣から、在庫黄変米十三万九千余トンありますが、この在庫黄変米は飲用アルコール原料に転用することは差しつかえない、直接食品に用いることについてはなお研究の結果を待つことにする。言いかえますると、飲用アルコールの原料としてのみ転用し得る、こういう趣旨で、ここで前回に農林省から出された当委員会の要請に対する事故黄変米処理方針によれば、厚生省において事故黄変米、病変米を食品加工の原料として利用して差しつかえないとの見解であれば、みそ、しょうゆ、飲用アルコール、菓子などの用途に対して、従来政府はこれらの用途に供給しておった砕米にかわってこれを売却する。こういう趣旨で、結局農林省の意向は厚生省の意向に従うという趣旨とわれわれは理解するのであります。さすれば、この通り実行に移るといたしますれば、飲用アルコールに出るものと考えなければなりません、全量出るかどうか別といたしまして。そこで飲用アルコールにいたします場合に、御存じと思いますけれども、この在庫米は白米であります。黄色い米じゃないのであります。白米で、肉眼ではさらにわからない。だから配給している外米と何ら変らない。肉眼では見分けがつかぬのであります。そういうものでありますので、過去におきまして、黄色い米でさえ食用に横流しされまして刑事事件が起りましたこと等は御承知の通りであります。ましてや白米の売却ということになりましたら、今日の世相から考えまして、横流しの危険は多分にあるのであります。これは単に財産上の損益の問題じゃなくて、健康に影響する重要な問題を含んでおります。御参考までに申し上げておきますが、毒素を抽出いたしまして、その毒素をもしハツカネズミに注射しますと、大体数時間で死ぬのです。こういう強烈な毒性がイスランジャ黄変米の毒性なのであります。そのイスランジャ黄変米がこの十三万九千トンのほとんど全部であります。もちろん黄変米が百粒のうち幾粒というように混在しておるのであります。そういうような毒素を持っておるのでありますから、もしこれが横流しされまして、安い米を買ったからというので、本所、深川の一ぱい飲み屋や一ぜん飯屋などの親子どんぶりや一ぜん飯に盛られる危険が多分にあるわけであります。こういうことになりますので、これが横流しされましたら被害を受けるのは、おそらくは細民の階級であり、労働者の人々じゃないかと思います。そういうようなことを思いますと、普通の犯罪なんかと違いまして、自覚しないうちに肝臓がやられてしまう。ことに肝臓障害は肝臓硬変でかたく萎縮しますが、さらにガンが生ずるということさえ、公表されておりませんけれども、実験上出ております。こういうようなことになりましたら、まことに衛生保健の上で重大な結果になりますので、われわれは今後の処理実施の上におきまして、法務省のこれに対するいろいろな監督等を厳重に要望しなければならぬということにも実はなるのであります。過去に幾多の事例もありますので、一つあなたが法務省を代表せられる意味におきまして、これは相当な決意をもって国会一つ言明していただきたい。いかに厳重に取り締っていくかということについて、一つはっきりとしておいていただきたい。そしてそのような非違の全く起ることのないようにしまして、せめてこの黄変米の処理を、そういう不幸なことが起らないようにして進みたい、こういうふうに思うんですが、所見を聞いておきたいと思います。
  111. 井本臺吉

    ○井本政府委員 まことにごもっともなお考えと思うのでございます。私どもといたしましては過去の実績もありますので、この黄変米の買却先につきまして情報の提供をしてもらいまして、その処理について厳重に監視したい、さように考えております。もしこれが横流れしたというようなことになりますれば、これは食糧管理法並びにこれの施行規則などによりまして食糧管理法違反であることは明瞭でございますから、他の実際に処分を受けました事例に徴しましても、相当厳重に処分を受けておりますので、さような方針で厳重にこれを処分するということでいきたいと思いますが、それよりもまずさようなものが横流れしないようにわれわれといたしましては十分注意していきたいと考えます。
  112. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 もう一点。その場合これが処分実施という段階に至りまするときに、できますれば処分をする官庁当局と——これは全国数十カ所の倉庫に散在いたしておりまするので、その地元の検察当局あるいは警察当局、それから処分をする食糧庁当局、これを受ける仲介の機関、業者あるいは輸送機関あるいは実需者等々につきまして、これは何らかの方法一つ御協議になって、そしてあやまちが起らないような万全の措置をとるように一つ農林省当局とも十分に御連絡を願って、事前にこれらの対策をあらかじめとっていただく、こういうふうにしておくべきだと思うのですが——これは私のほんの思いつきのような意見ですけれども、申し上げまして一つ御考慮を願いたいと思いますが、どういうふうにお考えになりましょうか。
  113. 井本臺吉

    ○井本政府委員 関係機関と密接に連絡いたしまして御趣旨に沿いたいと考えます。
  114. 上林與市郎

  115. 山田長司

    山田委員 食糧庁長官に伺いたいと思うんですが、前に食糧庁へ勤務されておった片柳真吉さんが神田の美土代町に日本糧穀株式会社というのを作っております。この会社の目的は米を払い下げることが目的で立てられたような会社のようですが、やはり払い下げの場合にはこの会社を通して払い下げるような事態をやろうとしておられるのかどうか、参考に伺っておきたいと思います。
  116. 清井正

    ○清井政府委員 今後の処置につきましては、私どもかりにある用途で売却いたす場合には、その売却の用途の実需者に対しまして、直接にこれを売却するという方針を持っておるわけであります。
  117. 山田長司

    山田委員 一度この糧穀会社から東洋醸造へ黄変米を流して、奈良の方へこの黄変米が横流れして、食膳に上って刑事事件が起ったわけですが、この糧穀会社を通してやはり東洋醸造とかその他みそを作っている会社とかあるいはみそを作る団体とか、こういうところへ流すのじゃないですか。
  118. 清井正

    ○清井政府委員 私ただいまお答え申し上げた通り、さような会社を通ぜず、そのものを需要するものに直接売却いたすということにいたしたいと思います。
  119. 山田長司

    山田委員 従来日本糧穀会社はどのくらい黄変米あるいはこれに類似するお米を払い下げておりますか。
  120. 清井正

    ○清井政府委員 ちょっときょう数字を覚えておりませんが、当時問題が起りました事件以来売却いたしたことはないと存じております。
  121. 山田長司

    山田委員 刑事局長に伺いますが、この糧穀会社から前に東洋醸造へ米を流して、それから刑事事件になっておる事件がまだ結論つかずにあると思うのです。和歌山の場合はこの間御報告を受けましたが、東京における事件はどんなふうに結論が出たか、実はこのことを伺わなければならぬのは、東洋醸造で黄変米を横流ししてその補給にやったサツマイモの代金についてはいまだに埼玉、栃木、茨城、千葉ですが、これらのところへ払わずにありまして、農協が今つぶれかかっておるところが二、三あるのです。ずいぶん長い歳月にわたりますので、この農協の人たちに会うたびに質問を受けるのですが、全然結論が出ていないわけです。一体どんなふうになっておるのかおわかりでありましたらお知らせ願います。
  122. 井本臺吉

    ○井本政府委員 東洋醸造に払い下げがありました三千トンのうち相当の数量が横流しされて、そのあとにアルコール原料として東洋醸造がイモを買い入れたのではないかという嫌疑でございますが、われわれの方に対しまして現在まで東京地検並びに警視庁両方が協力して調べました結果では、東洋醸造の三千トンの黄変米のうち和歌山県の五百トン余が刑事事件になりましただけで、そのほかの横流れの事実は現在の状況ではまだ判明しておりません。アルコールの原料になったのではないかと思慮されるカンショ代金の未払いということにつきましては、ただいま刑事事件としてこれも公判にまで回った事件はないという報告を受けておるのであります。その点につきましては、なお帰りまして詳細に取調べをしてみたいと考えております。
  123. 山田長司

    山田委員 事件が明確でないというお話でございますが、有動一夫が検察庁で取調ぺを受けた内容は、それでは和歌山の黄変米の事件だけで取調べを受けておるのかどうか、おわかりでしたら……。
  124. 井本臺吉

    ○井本政府委員 有動一夫の事件は和歌山の関係者としての取調べ以外に、二百四十万円ほどの金の横領事件の被告訴人として調べを受けたのでございます。この事件の捜査の結果では二百四十万円有動が使っておるということは大体判明したのでございますが、その金の性質につきまして、東洋醸造と日阪連との間に相当錯雑した債権債務に対する関係がございまして、結局犯罪の成立を認めるに足りる証拠がない、また一面にこの東洋醸造と日版連との間で示談が成立して、有動に対しましては告訴の取下げをやったということで、これは昨年の十二月二十日に不起訴処分になっております。
  125. 山田長司

    山田委員 日販連と東洋酸造の間に示談になったと言われておるが、日販連自体がこのことで非常に長い歳月を要したので、日販連は経済的に行き詰まってつぶれてしまったのです。つぶれてしまったあとで、幹部間においてかなりいろいろなあつれきがあって、一部の幹部はこのことに妥協をしたようでありますけれども、何かの機会がありましたときにお尋ねいたしますから、もう一度サツマイモの事件をお取り調べ願いたいと思うのです。
  126. 上林與市郎

    上林委員長 次に細田委員
  127. 細田綱吉

    ○細田委員 食糧庁長官に伺います。病変米が出た場合には、損害は商社に負担させるという契約になっておる、さっきこうおっしゃった。これは大体昨年の三月ビルマから入った米、あるいは七月タイから入った米ですが、この損害はもちろん商社に負担させるでしょうが、それは契約解除されるのか、あるいは一応農林省として品物を引き取って処分して、その価格の差を商社に負担させるのか、どっちですか。
  128. 清井正

    ○清井政府委員 契約は解除いたさないつもりであります。ただよってもって生じたところの損害を賠償させるということにいたしたいと考えております。
  129. 細田綱吉

    ○細田委員 公衆衛生局長に伺います。農林省食糧庁からあなたの方にこの病変米の検査を依頼といいますか、委託されたのは最初いつでありますか。
  130. 山口正義

    ○山口(正)政府委員 病変米と申しますか、輸入米については、先ほど食糧庁長官も申されましたように、従来から農林省食糧庁独自の立場として検査機関を持って輸入しておられるわけでございます。厚生省におきましては、食品衛生の立場から、すべての輸入食品同様でございますが、その中から適宜抽出いたしまして抜き取り検査をいたしまして、病変菌があるか、あるいはそのほかのものがあるかというようなことを検査いたしておるのでございます。農林省から依頼されて検査いたしておるわけではございません。食品衛生の立場から、厚生省独自の立場でやっているわけでございます。
  131. 細田綱吉

    ○細田委員 そうすると、ただいま問題になっております病変米について、特に食糧庁から検査の依頼はなかった、こういうわけでございますね。
  132. 山口正義

    ○山口(正)政府委員 特に農林省の方からの依頼によって検査をいたしておるわけではございません。
  133. 細田綱吉

    ○細田委員 あなたの方でこの病変米の存在を知って検査にかかられたのはいつごろですか。
  134. 山口正義

    ○山口(正)政府委員 有毒病変米の存在が確認されましたのは昭和二十七年でございますが、当時厚生省といたしましては、外見上黄変粒の混入した黄変米を検査して、有毒黄変粒の混入しているものにつきましては、昭和二十八年に農林省と協議いたしまして、さらに学識経験者の意見も聞いた上で、暫定的な基準を作って処置をいたしておったのでございますが、その後昭和二十八年九月に、外見上全く正常な白米、先ほど吉田委員からも御指摘がございました、見た目では全然白米と同じだというような外米からも、培養によって菌が検出されるということがわかりました。それで、そういうものは外見上変色したものとどういう関係があるかというようなことがわかるまで、しばらくそれの処置を待ってほしいというふうに、食糧庁の方に連絡をいたしておいたわけであります。その後いろいろ検討いたしました結果、外見上白色であって培養によって検出されたものは、外見上黄色を呈しているものに比べますと毒性が非常に少いということから、昨年の七月二十四日に一応の基準を考えたわけでございます。しかしながら、そのとき一部の学者の方から、外見上黄変しているものと、それから白色であっても培養によって検出されるものにそう差はない、もう少し検討しなければならないというような御意見が起りましたので、現在のような状態になったわけでございます。
  135. 細田綱吉

    ○細田委員 そうすると、厚生省としてその結論はいつごろ出るのですか。
  136. 山口正義

    ○山口(正)政府委員 その問題が起りましたので、最初の間はいろいろ議論がかわされておったのでございますが、厚生省といたしまして、厚生大臣の諮問機関でございます食品衛生調査会に昨年の秋諮問をいたしました。そうしてその意見によって食品衛生上からの態度をきめたいということでやっておったのでございますが、問題が学問的に非常に深く入っていく問題でございますので、午前中山田先生からも御指摘がございましたが、研究費を予備費あるいは節約分から出してもらいまして、十三機関に委託して研究をしてもらっておるわけでございます。動物実験をいたしますから非常に長く期間がかかりますので、最終的な結論がなかなか出て来ないのでございますが、タイ国黄変米につきましては比較的表在性であるということから、一〇%程度ぬかが取れるように再搗精すれば食糧に供しても心配がないという答申を本年の二月にいただいたわけでございます。なおイスランジァ黄変米につきましては、その寄生の様子がタイ国黄変米とやや異なるというような所見が立つとの御意見があります。またその毒性についてタイ国黄変米より少し強いというような御意見がございまして、そのときイスランジァ黄変米についてはなおもう少し検討する必要があるというような御意見が出ておったのでございます。その後ずっと検討を続けていただいたわけでございますが、午前中の委員会で大臣から御報告申し上げましたように、大臣が直接食品衛生調査会の委員方々意見を伺いました結果、各委員のお手元に差し上げてございます書類にございますように、イスランジァ黄変米については、アルコールに転用することは差しつかえない、そのほかのことについてはなお研究を要するというような御意見でございましたので、大臣からそういうふうに御報告申し上げたわけでございます。
  137. 細田綱吉

    ○細田委員 先ほどあなたの方で予備費をちょうだいして研究費に充てたというのですが、その額はどのくらいですか。それから十三団体に研究を委託されておるというのですが、その十三団体に別々にやらしておるのか、あるいは一つの総合機関を持ってやっておるのか。それからいま一つは、イスランジァ病源米についてはアルコールの程度ならいいが、現在のところはなお研究を要する。そうすると、アルコール以外は危険だという結論が出ているのか、全然結論が出ていないのか、その点についてお伺いしたい。
  138. 山口正義

    ○山口(正)政府委員 研究費に計上いたしました予備費は節約解除の分も加えまして一千九十一万九千円でございます。  それから十三団体というお言葉でございます。私も先刻そういう言葉を申し上げましたが、これは大学、研究機関でございまして、東京大学、京都大学、新潟大学、それから伝染病研究所、国立衛生研究所等の研究機関でございます。どうしてそういうふうな十三の研究機関にお願い申し上げたかといいますと、非常に重要な問題でございますので、一カ所の大学あるいは一カ所の研究機関——厚生省にも国立の予防衛生研究試験所がございますが、そこだけの意見できめないでそれぞれの部門における専門家の方の御意見を総合した方がいいというわけでお願いしたわけでございますが、研究をお始めになる前に一応集まっていただいて、総合的に御検討いただいて、それからそれぞれのところで研究をしていただき、またその結果を持ち寄るというようなことをやっていただいております。はっきりとどことどことはどういう分担というふうにするというふうなお考えも初めはあったのでありますが、そこまでははっきり割り切れておりません。重複している面もございますが、大体そういうふうなことで研究を続けていただいているわけでございます。  それから最後の、大臣も御報告申し上げましたように、現在飲用アルコールとして転用することはさしつかえない。そのほかのものはしてもいいというような結論が現在出てきていないわけでございますので、そういうふうに申し上げたわけでございます。
  139. 細田綱吉

    ○細田委員 黄変米の点について最初農林省と協議して結論を出したのは二十七年から二十八年と、約一カ年で出ているのです。今度どうしてそんなにこれがかかるかわれわれにはわからない。それから先ほどあなたの方で一千数百万円のものを予備費から研究費にもらった。これは今さら申し上げるまでもなく約百億の金を寝かして、おまけに月六千万円ずつあなた方は倉敷料を納めているのですよ。それでいつまでも漫然としておったのでは、幾ら主食の主管でないといってもあなたの方は少し怠慢過ぎはしないですか。これはもう現在までに倉敷料だけで六億の金を使っておる。そうして百億の金を寝かしておるというような場合に、今のところの印象では、十三団体に頼みっ放しで自然に報告のくるのを待っているような態度だと思う。もっとあなたのところで熱心になったら、もうしょっちゅう定期的に会合して結論を早く進める、あるいはまたあなたの方で督励をすべきだと思う。そういうことをしなかったら、実際食糧庁の方もあなたの方の関係があるからその結論を待っておるのです。決算委員会でもあなたの方の結論が出なかったらどうにも仕方がないでしょう。それをあなたの方でまだ二十八年から結論が出ていない。十三団体というようなことで、ちっともあなたの方は、どういう話になっておるかしらぬが、私があなたの御説明を聞いた印象はきわめて熱心さが足りない。国は刻々と損をしている。だからこんな米はだめならだめで隅田川に捨てるなりすれば、六億の倉敷料はかからなくて済む。もっとあなたの方で費用がかかるなら、あなたの方で熱意を示せば、大蔵省でも困っているから出すと思う。あなたの方の熱心がきわめて足りないと思う。十三団体に試験を依頼していることはけっこうだが、どういうふうな方法でその結論をとっているのか、定期的に会合を持っているのか、あるいはその十三団体を集めて総合的な結論の検討をしたのか、その経過について承わりたい。
  140. 山口正義

    ○山口(正)政府委員 研究の過程が非常に長くなっておりまして、従って倉敷料も相当多額に上るということにつきましては、私どもこの研究の結果を早くいただきたいということについて、研究者の方々に始終お願いをしてやっているわけでございます。一つのお答えといたしましては、研究の成果につきましては随時集まっていただき、あるいは私の方に書類で報告をいただきまして、これは事が非常に専門的になるわけでございますが、報告書を作って各研究所に回して、それをその方々が会合を持つと同時に、そういうこまかいデータによって検討し合っていただくことをやっていただいているわけでございます。ただ先ほど吉田先生からも御指摘でございましたが、肝臓の変化を見ます場合に、人工培養の黄変米を動物に注射いたします。あるいは食べさせるということをいたしまして、長い年月観察をされてその間に体重がどういうふうに変化していくか、その間に肝臓の機能がどういうふうに変っていくか、観察しておられますので、私どもといたしましては、できるだけ早く結果をいただきたいということをお願いしているわけでございます。そういうような経過をごらんになっておりますし、一方においてハツカネズミに三百日あるいは一年食べさせてみた結果肝臓にどういう変化が起るか、片方はサルに同じように別のえさを作って食べさせて肝臓機能の変化を調べておられるわけでございます。昨日も伺ったのでありますが、近いうちに、今までのところは肝臓の機能検査の上に変化は出てこないが、片方で言っておられるように組織学的の変化があるのかどうか、もうあと一カ月やったら、動物でございますから、殺してこの組織の変化を見たいというように言っておられます。従いましてその研究の内容について研究者の方々にいろいろ注文をいたすことは私ども行政官として差し控えなければならないとは思いますが、できるだけ早く判断させていただけるような結果を出していただきたいということは、私ども常々お願いしているわけでございます。
  141. 細田綱吉

    ○細田委員 あなたの方で、厚生省所管の研究機関その他十三団体の試験を依頼している団体、その一つ一つの研究の内容を私は聞こうとはしない。行政機関である、統轄機関であるあなたのところで、大体そういう人たちを集めて結果を聴取し、総合的な結論を、あるいは総合的な観察をあなたの方でどういうふうにとっているか。言いかえてみると、具体的にいうと、あなたのところで十三団体を集めたのは何回くらいあるのか、あるいはないのか。それからいま一つ、千何百万円の予備費をもらったというが、三十年度で幾らもらったのですか。それが一つ、それから結論は大体いつごろ出るか、あなたのさっきの言葉ではさっぱりわからないのですが、結論はいつごろ出るか、この三つの点をお尋ねします。
  142. 山口正義

    ○山口(正)政府委員 第一のお尋ねの研究者に集まってもらうということ、それからもう一つ申し落しましたのでございますが、食品衛生調査会の黄変米特別部会の委員方々と、その研究者の方々と大体ダブっておられますのですが、それで研究者だけの、実務に携わっておられる方々の集まり、それを数回、それからその委員方々だけの特別部会というものを今まで何回か開いて、そうして御意見をまとめていただいているわけでございます。  それから三十年度の予備費につきましては一千二百六十六万九千円要求いたしております。現在大蔵省に資料をもって要求いたしておるのでございますが、まだ明確な回答がないのでございます。これは至急に出してもらうようにしなければならないと存じております。  それから結論はいつかというお話でございますが、これは大臣もけさほどお答え申し上げましたように、できるだけ早くというふうにお願いしなければならないというふうに考えております。ただ実験的なものでございますので、私の立場でここでいつという日をはっきり申し上げかねますことをお許し願いたいと思います。
  143. 細田綱吉

    ○細田委員 食糧庁の長官に伺いますが、先ほどからこれは自然に集まって協議したのかどうかしらないが、あなたのところで厚生省に試験を正式に依頼したことはない、こう言われるのだが、それにしても、厚生省で、どっちかは知らないが両方で集まって協議されたということは非常にけっこうですが、あなたの方で持っておる研究機関の結論はどうなったか。それからあなたの方として厚生省にどういうふうに早く正確な結論が出るように督励されているか。督励といったら語弊があるかもしれませんが、官庁同士の言葉はよく知りませんが、請求されておるか。この点経過を一つお話願いたいと思います。
  144. 清井正

    ○清井政府委員 私どもの官庁権限の上から申しますと、食品衛生の担当は厚生省でおやり願っておるわけでありまして、ただ私の方におきましても実際上食糧研究所がございます。もっともこの食糧研究所は食糧の利用確保ということを研究いたす機関でありまして、目下毒性の問題についての研究をする立場でないのでございます。しかしながら実際問題といたしましては、厚生省の研究の一部の分担をいたしまして、一部の学者がやっておることは事実であります。そういう程度で、実際上厚生省の御研究の一系列の一部として担当申し上げておることは事実でございますが、元来私の方の研究の方は利用確保の方の研究をいたしております。本来の毒性の研究機関でございませんので、残念ながらその点につきまして何らの結論を得ていないのであります。なお私どもといたしましても、この問題の結論につきましてはなるべく早く出していただきたいということを念願をいたしておるわけでございます。ただいまおっしゃいましたように、保管料もかかりますので、一日も早く結論をいただくようにということで、常に緊密なる連絡をとって今までやってきておるような次第であります。
  145. 山本正一

    ○山本(正)委員 ここで将来の問題についてちょっとこの際伺っておきたいのですが、私どもの常識からいたしますと、食糧の需給調整は食糧庁でおやりになる、需給調整される食糧そのものが有害であるかないかということは厚生省の所管であるわけです。これはきわめて明瞭だと思うのです。従って食糧庁から正規の依頼を受けて、請求を受けて有害かどうかを研究をするということでは適当でないじゃないかと私は思うのです。今申し上げる通り、責任の分界がきわめて明確なものでありますから、そこで、従来経験のあるものは別としまして、従来経験のない、海外から食糧を入れるというような計画は前もってわかっておるはずであります。いわんや現物がすでに国内に入っており、これが需給調整の線に乗って、政府も需要の道に配られておる。私はむしろ需要者の手に渡る前に、そういう経験のない、新たなる食料品については、厚生省が進んで有害であるかどうかの検査をして、食糧当局の方へこれを通達しなければならない、こういうふうに思うのですが、あなたの御見解はいかがですか。
  146. 山口正義

    ○山口(正)政府委員 御指摘の通りでございまして、先ほどもお答え申し上げましたように、輸入品につきましては、これは輸入食糧の食品衛生検査という立場からこちらが抜き取り検査をいたしておるわけでございます。食糧庁からの依頼をされてやるというのではなしに、独自の立場からこちらからやるべきだと思います。
  147. 山本正一

    ○山本(正)委員 私はその責任の分界を明確にすると同時に、これを励行するということに重点がなければならないと思う。そういう意味からいうと、この病変米の問題も、研究ということに非常に多くの歳月をかけておるが、その多くの歳月をかけたことが、国民の外米に対する衛生上の疑惑というものを非常に深め、現実には国家が莫大なる損害を受けておる。この損害は将来においてもどれだけの数字がたまるかということも見通しがつかない。それから外国米に対する有害問題というものについて、国民はまだ釈然としない、不安のままで将来を迎えなければならない。だから、あなたの方の今のような方針はそれに間違いないでしょうが、その方針を具体的に行う点について、これは将来の問題ではありますが、新たな立場に立って方針の実施ということは厳格にやっていただかなくてはならないと思うのです。  それからもう一つ伺いたいのですが、本年のごとく豊作の場合も別といたしまして、今後も外国米というものは相当量持ち込まなければならない事情にあると思います。そこで輸入すべき外国米の中で、御承知の通り害悪がないということが明確に証明される部分と、地域によりましてそういう証明を得ることが困難な部分とがございます。そこで、無害の証明をすることが非常に困難であるというものはこれを入れることをやめて、無害が確認されるものだけを入れるというふうな方針がとられないのですか。これは厚生当局の問題であり、同時に食糧庁の問題であると思う。食糧庁長官か、どちらかお伺いしたい。
  148. 清井正

    ○清井政府委員 お話の点ごもっともでございますが、実は私どもの食糧事情から申しますと、やはり百十万トンから百二十万トンの外米を輸入しなければならないのであります。ところが外米の中にもいい質の外米と悪い質の外米とございます。外米の需要供給の関係からいたしますと、相当程度の米は、どうしてもタイ、ビルマに依存しなければならないことになっておるのであります。と申しますのは、大体タイ、ビルマから年々輸入いたしております数量が五十万トンぐらいでございます。もしもこれを避けるといたしますと、五十万トンのものをほかの国に求めなければならないのでございますが、現在外米の供給状態から申しますと、とうてい不可能なんでありますので、どうしてもタイ、ビルマから相当量の外米を入れなければならないのはやむを得ない現状であると私どもは承知いたしております。
  149. 山本正一

    ○山本(正)委員 食糧の需給調整という事務的の見地からすれば、今お話しのような結論になると思いますが、国民衛生管理という上からいきますと、無害証明のあるところだけから買っていたのでは需給調整が数字的に間に合わない、やむを得ないから少々危険を冒してでも間に合うところのものを買わなければならぬという趣旨になるわけでありますが、私はそれは非常に危険な考え方じゃないかと思うのです。無害の確認ができなくても需給調整で数量をそろえるためにはそういうところからも入れなければならぬ、こういう御趣旨になるのであります。あなたの御意見は、非常に危険な考え方であると思うのであります。それは厚生当局とも連絡をして、これはもう少し考え方の根本を改正していただかぬと、人間の食べるものであり、国民の健康管理の上からいけば、これは何ものにも優先する重大な問題であります。ただ数量をそろえるためには、間に合わぬから、少々危険ではあっても、無害の確認ができなくても、そういう地域から買うことはやむを得ない、これは私は非常に重大な問題だと思います。重ねて私は伺いたいのです。それは重大な問題になります。
  150. 清井正

    ○清井政府委員 御指摘の御趣旨は十分私もわかるのでございますが、事務的な御答弁を申し上げることになりますが、どうも輸入食糧の半分ぐらいはタイ、ビルマに依存しなければならぬ実情でありますので、これは無菌証明のあるところから入れようといたしましても、事務的には困難な実情であります。そこで先般からお願いしておる通り、いたし方ないから、無菌証明はつけられない、そこで管理をよくして持ってきてもらって、到着地で厚生省の検査によってやってもらって、受け取っておるということにいたしておるのが現状であるわけであります。私どもからいえばできるだけ数量を少くすればいいわけでございますけれども、かりに少くいたしましても、そう大きな数量を減らすわけにいかないという具体的な需給事情にあることを御承知を願いたいと思うのであります。従いましてそれだけに厚生省の抜き取り検査につきましても万全を期していただきたいということでやっておりますことを御了承願いたいと思います。
  151. 山本正一

    ○山本(正)委員 厚生省にちょっと伺いますが、今食糧庁長官の言われるような扱い方によって、すなわち無菌証明書はない、ただ輸入されたものの抜き取り検査をする、これは数字的に五十分の一でございますか、その抜き取りの量というものは。われわれの常識からすれば申しわけ的な抜き取り検査だけで、これを国民の食糧に供するということについて、厚生省は責任持てますか。
  152. 山口正義

    ○山口(正)政府委員 御指摘の点ごもっともでございますので、先ほど食糧庁長官からもお話しがございましたように、無菌証明書のついてないところから、具体的に申しますとタイ、ビルマからの買付につきましては、買付地における時期とかあるいはそこでの管理、それによって相当品質が変るということを私伺っておるわけでございますが、そういう点は食糧庁の方で、この問題が起りましてから特に御注意をいただいてやっておるのでございます。そうして持ってこられましたものにつきましての抜き取り検査の方法につきまして、サンプリングにつきまして、いろいろ御意見があるのでございますが、私どもといたしましては、先ほど大臣からも申し上げましたように、来年の輸入増を要求しておりますが、無菌証明書のついておるところは安全だと思いますので、それ以外のところを集中的に重点的にやって、できるだけ効率をあげるというふうにやって参って遺憾のないようにやって参りたい、そういうふうに考えておるわけであります。
  153. 山本正一

    ○山本(正)委員 非常にお言葉は丁寧なだけで、私が伺わんとする趣旨にはお答えになっておらない。今申し上げるような要領の扱い方で厚生当局として責任が持てますかということを私は伺っておる。持てるということであれば、それは私どもは安心いたします。持てないということであれば、国民の健康管理の上に非常なる危険が来るし、また再び国損の問題を繰り返さなければならない。そういうことであるならば、それを避けるための何か別途の方途を発見しなければならぬ。私は結論として、今お話しのような方法を最善に実施するということで責任が持てますかということを伺いたい。
  154. 山口正義

    ○山口(正)政府委員 国民の保健衛生を担当いたしております私どもといたしましては、現在の方法を最善と考えてやっておるわけでございます。それで責任を持ってやっているわけでございます。
  155. 山本正一

    ○山本(正)委員 食糧庁の長官にちょっと伺いたい。今問題になっておる病変米の問題につきましては、厚生当局結論は御承知の通り出ておるわけであります。今の段階では飲用アルコールならば差しつかえなかろうということでありますが、その他の食料加工品の原料として適不適はまだ結論は出せないという段階であります。そこで食糧庁長官のお考えとしては、飲用アルコールに差しつかえないというわくの中で直ちにこれが処分の案も立てられるというお考えであるのか、あるいはもっと終局的な厚生当局結論の出るのを待ってからこの病変米の処分の案を立てようとなさるのか、その点を一つ伺いたい。
  156. 清井正

    ○清井政府委員 ただいまの御質問の点でございますが、まずタイ国病変菌の問題については、申すまでもないことでございますが、今回の御結論に対しましては、飲用アルコールの分につきましては、今までに約二万二千トン年間砕米でもってやっておるのであります。従いまして、私どもといたしましても、取りあえず飲用アルコールについて処分の案を至急立てたいと考えております。その他工業アルコール、これは新しい問題でございますが、さらにこれの開拓の道を開きたいと思っております。さらに先般から問題がございましたえさ等の問題、これについては具体的にただいま部内で案を検討しております。厚生省の全般的な御結論も待っていく必要もありますけれども、取りあえず手のつけられるものから手をつけて参りたいと考えておる次第でございます。
  157. 山本正一

    ○山本(正)委員 そうすると、厚生省が今研究を手残しにしておる研究の結論というものは待たずに、今出ておる結論のわくの中で直ちに処分をするということに伺ってよろしいですね。
  158. 清井正

    ○清井政府委員 さようでございます。
  159. 山本正一

    ○山本(正)委員 そこで今後処分の問題についてちょっと要望し、同時にあなたの御意見を伺っておきたいのですが、さっき同僚委員からも二三お尋ねがあったのですが、従来の処分につきましては、食糧庁長官の経歴のある中間会社をトンネル式に通すというような、はなはだ常識的に望ましからざる事例もあり、現にそういうことが一つの原因になりまして刑事事件すら起きておるのでございまするから、今後この懸案の病変米の処分につきましては、先ほど来伺っておるようなお心がけをさらに厳格に、あなたの御方針だけでなしに、現実に衝に当る人々の処理が事実上厳格に行われるように特にやっていただかなければならぬと思うのであります。そこで非常に国民が疑惑の目をもって見やすい事柄は、仲介を通すということは絶対に避けていただかなければならぬ。長官が先ほどお話のように、政府から実際需要する者に直接にこれを売る、さらに進んでは、直接に売る場合も、数量なり値段なりの処分条件というものを、どこから見ても少しもおかしくない、少しも誤解を招く余地がない、つまり売却の条件、つまり金を払う時期について非常に野放図な猶予期間を置いてみたり、常識的に見て事業能力が実際的に非常に小さいものに対して大量のものを払い下げをしてみたり、あるいは払い下げの価格に多少でこぼこがあってみたりというようなことでありますると、専門的にはいろいろ事情がありましょうけれども、外から見て常識的に非常にそこに疑惑の余地が残る。どうかそういうことのないように、これは国損に関する問題でありまするから、なるべく処分を急ぐということ、それから処分を公明にするということ、それからくれぐれも申すことは、これが本来の用途以外に横流れしないということ、これだけは特に厳重の上にも厳重に一つやっていただきたいと思うのです。今のその処分条件の公平公明にやるという点についていかがでしょうか、長官の御意見一つ伺いたい。
  160. 清井正

    ○清井政府委員 御意見の点十分拝承いたしました。先ほど来いろいろ各委員からもお話があったのでありますが、売却につきましては、先ほど申し上げました通り、いわゆる仲介会社のようなものを通さずに、実需者そのものに直接売るということにいたすつもりであります。また延納というような問題は、延納はいたしません。即時払いということで売却を実施いたします。その他、数量、金額等、あるいは飲用アルコールのごときは、前に砕米を売った経験もございますから、大体この業者はこのくらいのものを扱えるということがわかっておるのでございます。それから価格等につきましても、適正な価格というものだけで参ります。そういった数量、価格等につきましても万全の注意を払いますし、また売却を実施しようとする場合におきましても、末端の食糧事務所等が実際の仕事をやるのでありますが、その辺につきましても、その趣旨を十分徹底させまして、いやしくもこの問題の処分に当りまして問題を起すことのないようにいたしていきたいと考えておる次第であります。
  161. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 今の段階で二、三伺っておきたいと思うのであります。公衆衛生局長に伺いますが、七月六日と十一日でしたか、門司、横浜に入港しましたタイ、ビルマの黄変米問題、これがすでに約五カ月になりまするが、まだ結論を得ないのでありましょうか。その量に相当する代金はすでに全部商社に食糧庁は支払い済みなんです。そうしてまた二千百数十トンも倉庫に寝ておるという状態であります。これに対して検査の結果がすみやかに回答されなければならぬと思いますが、それはいつでございますか。
  162. 山口正義

    ○山口(正)政府委員 御指摘の調査につきまして、近日中に調査報告が出るだろうという報告を受けているわけでございます。至急に検査結果を出すようにいたしたいと存じております。
  163. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 着港した個所で見つかった黄変米の検査に五カ月も要するということ自体が、やはり私は検査機能の問題になろうと思うのであります。こういう点についても根本的な改善策がなければならぬと思います。  それからもう一つ、きょう大臣が朗読されたのでは、黄変米輸入を防止する対策について万全の措置を講ずるという趣旨のことが述べられております。そこでこの間来だんだんと伺っておりますと明らかであり、またすでに明らかになっておる事実ですが、入港しました個所でごく少数の監視員が五十袋に一袋抜き取り検査をやるというのが実情であります。これはあなたの方の環境衛生部長の御説明なんであります。ここでそのス員の問題、それから設備の問題——五十袋に一袋ということが継続するなら、五十分の四十九は無検査で国民に流されておるのであります。でありますから東京で発見したように、三百の中で十七も、イアランジア及びタイ国黄変米の配給から出てくるのであります。この点についての具体的な抜本的防止対策はどういうふうになるのですか。この着港した個所でそれなどういうふうにお立てになっているのだろう。もし今お述べになれなければ、当委員会に対してこういう方針でこうするということを一つ文書にして出していただきたいと思いますが、どういうふうにお考えでありますか。
  164. 山口正義

    ○山口(正)政府委員 サンプリングの問題につきましてあるいは検査の培養の方法等につきましては、文書をもって御報告申し上げたいと思います。
  165. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 文書で責任をのがれぬようにしてもらいたい、私の方は正確を期するつもりで申し上げるのですから……。  そこで一体、それならばあなたの方は本年も予備費千二百万円大蔵省に要求なさっているが、こういうものは数年間の懸案でありますから、数年間の懸案の行政事務を予備費をもって請求するということは私はいかがかと思う。予備費の精神から見たらそんなものでないのであります。そこで三十年度に本予算をお取りになったかどうか。三十一年度の本予算を要求になっているかどうか。
  166. 山口正義

    ○山口(正)政府委員 研究費について予備費を二十九年度にいただいたわけであります。二十九年度の年度途中から予備費でお願いしたのでございますので、そのとき大蔵省との話で、三十年度も必要があれば予備費で行くというような話し合いになっておりますので、そういう措置をとったわけであります。
  167. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 まだ御答弁が足りないのでありますが、輸入防止対策はすでに二十九年八月の当委員会における決議にも明確に打ち出されているのであります。そして大臣もその決議の趣旨に沿ってやりますということをお答えになったのであります。ところがその後その方面における改善の跡はあまり見えぬのであります。そこで輸入港における輸入防止措置について、予算措置を三十年度におとりになったかどうか。これは三十年度の当初予算における要求であります。同時に三十一年度において要求されているかどうか。これは政府のこの問題に対する真剣さを表明するに足るものでありますが、どういうふうになっておりますか。
  168. 山口正義

    ○山口(正)政府委員 三十年度当初予算につきましては、先ほど食糧庁長官からもお話ございましたように、輸入の方法につきまして少し重点的にやればいいじゃないかということで、最初増員を考えたのでございますが、いろいろ検討した結果現状のままに落ちついているわけでございます。しかし三十一年度は少し増員を要求したいということで、現在大蔵省と折衝中でございます。
  169. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 それならば文書をもちましてその人員とか万端の措置の内容について、輸入港における防止対策を明らかにしていただきたいと思います。  それから輸出国におきまして商社はそれだれ商社らしい手を打っているようでありますけれども、何しろタイ、ビルマにおいては無菌証明すら出せないような実情であります。培養実験の施設、準備も全然なさそうであります。こういうようなことではいたずらに門司、横浜の二の舞いをまた繰り返すのじゃないかと案ぜられるのです。でありますから輸入した港で代金を何億も商社に払ってしまって、そしてあなたの方で見つかって農林省に配給ストップ、こういうことではまたこの委員会が問題の繰り返しであります。輸出国においての措置について具体的な対策がなければならぬと思うのですが、その点どうですか。それから所管庁は、そうすると輸出国よりの買付ということになるので、黄変米輸入防止対策の一環として食糧衛生上の見地から厚生省が関与し得ない領域に入るのでしょうか、これはどうなのですか。
  170. 山口正義

    ○山口(正)政府委員 輸出港における買付の所管は農林省食糧庁になっておりますので、具体的にどういうふうにするか、どういうふうにしてほしいかということにつきましては私ども連絡、要望して食糧庁の方でやっていただいているわけでございまして、現実の事務といたしましては食糧庁の所管になっておるわけでございます。
  171. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 この点は御要請をかねて食糧庁長官に伺っておきますが、やはりこれは輸出国、輸入港、輸送一環して全体の統一ある黄変米の輸入防止措置が講ぜられてしかるべきであろうと思いますので、両省間における連絡、提携、協議等はさることだけれども、やはり強力に防止対策を講ずるという建前におきましては、輸出国のタイ、ビルマにおきましても積極的、具体的施策というものが当然講ぜられなければならぬものと思っておりますが、この点について今新たなる構想がないでしょうか。私は今日のこの事態にかんがみて、政府として新たなる御用意を持って御方針をお立てになってはいかがかと思うのです。これは両省一体となってやられてはどうかと思うのですが、これについて一つ食糧庁長官に伺っておきます。これは事務問題でありません、これらの問題に関する両者の方針に関することであるので、大臣に御答弁願うのが至当かと思いますけれども、一つ御答弁願って、このような意見のあったことを御参考にして、今後の御協議の資料なりにしてもらいたいと思いますが、いかがでしょう。
  172. 清井正

    ○清井政府委員 その点ちょうどただいまビルマ、タイの責任の大臣がこちらに参っておりまして、米の買付について交渉いたしておる最中であります。この問題につきましては先般来御説明申し上げております通り調査団の派遣の結果によって、タイ、ビルマにおいては今直ちにそういう措置をすることはいろいろの観点から不可能だということで、とりあえずの措置としてこいうことをやっておるのでありますが、あくまでもこれは現地において無菌証明するだけの施設も当然整えていかなければならないという方向に私どもは変りはないのでございます。従いましてちょうど時期も時期でございますので、私どもとしましては、この問題につきましても米の買付の問題と相関連する問題といたしまして当然触れて話をしていきたい、こういうふうに実は考えている次第でございます。先般荷見氏にタイ、ビルマに出張していただきまして、この問題につきましても実地を視察していただいて、同時に向うの政府の意向も打診していただいてきておるようであります。これが直ちに実現するかどうか、私どもちょっとわかりかねますが、その方向で努力してみたい、こういうふうに考えている次第でございます。
  173. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 最後にもう一点、公衆衛生局長に伺いますが、あなたの方ではきのう多数の学者が参集の上、厚生省の幹部がお寄りになっていろいろお聞きになり、きょう結論を当委員会にお持ちになったわけでありますけれども、イスランジア黄変米の毒物の正体についてはなお画然たる結論は得られておらぬ、こういうような事態でありますので、これはやはり国としてはほんとうに大きな力を集中して根本的な研究がなされねばならない、こう思うのであります。でありますので、あなたの方としましてもよしんぱそれが毒物を追及していく学者であろうと、それらの人の良心的な努力等に対してはできるだけ敬意を払っていかれるような寛容な態度が必要じゃないか、もちろんそれなら従来寛容でないというのは少し言葉がどうかと思いますけれども、この間の当委員会におきましても、あるいは参議院の委員会質疑応答を見ましても、相当大胆に、有力証明がないとか、あるいは毒でないというようなことを前提にした議論が行われますが、やはり国民保健衛生の見地から多数の人が相当心配しておりますので、行政の当局ですから、そう絶対権力者でないのでありますらか、そういうような真剣な学者のあり方につきましても、できるだけ成果をおさめてもらう、そしてその研究も進めていかれるように協力されるというような態勢をぜひとってもらいたいと思います。これは一つ御要望申し上げておきます。厚生省全体の態度としまして、毒があるというのは一、二の人である——これは速記録を読めばわかるのです。一、二の人が有毒説をされておるというような御説明、これはとんでもないことです。ことにここ二年間この問題を論議して、いまだほんとうの結論を得ないということについて、厚生当局は重大な責任をお感じにならなければいけない、こういうふうに思いますので、あなたの御意見があったら聞いておいて、私はこれで終ります。
  174. 山口正義

    ○山口(正)政府委員 御趣旨の点十分意を体して、今後進めて参りたいと思います。
  175. 上林與市郎

    上林委員長 他に御質疑がないようでございますから、本日の質疑はこの程度にとどめたいと思います。  なお次回の委員会は明十六日午前十時三十分より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時十七分散会