○中川(融)
政府委員
韓国に
抑留されております
日本人漁夫の早期釈放につきましては、人道上の問題といたしまして、われわれは最も熱心にやらなければならぬと考えまして、これは日韓問題の中でもまず第一に取り上げるべき問題として努力してきておるのであります。しかるに、すでに
皆さんも御
承知のように、大体昨年の終りころから、すでに
刑期を終えて、当然
向うの
国内法によっても内地に
帰還すべきはずの漁夫の
方々が、釜山の外国人
収容所に収容されたまま帰国を許されないという事態が発生して参ったのであります。今日まで約一年強の間に、ごく少数の人しか帰ってきておりません。あるいは
未成年者でありますとか、あるいは老人であるとか、あるいはどういう考慮からでございましょうか、若干の人が帰っておるだけでありまして、大部分の人は、依然として釜山の
収容所に収容されたまま帰らないのであります。これにつきましては、昨年暮れよりわれわれは口をすっぱくして
韓国側に交渉しております。いかなる理由によりましても、帰国を阻止される理由が発見できない。たとい
韓国側の
国内法の
立場に立っても、帰国を阻止される理由が発見できないという形でありますので、これをすぐに帰すようにということを再三申しまして、繰り返し折衝したのでありますが、ナシのつぶてで一向音さたがなかったのであります。ところがことしの夏ころになりまして、
韓国側はこの問題に関して、あなたの方はそう言うけれども、
日本でも大村
収容所に、戦前から
日本におり、ある
意味で永住権を持っておる
韓国人を入れたまま釈放しないではないか、それも
刑期を終えた者を入れたまま釈放しないではないですかということを言い出してきたのであります。それで、その問題に対しては、一体それは根本が違うじゃないか、
日本の方は、
国内法規に基いて
韓国に強制退去しようとして入れておるのである、従ってあなた方が引き取れば、いつでも即刻これを
韓国に送り届けようと思っているのに、あなた方が引き受けないからこうなっておるのだということを
説明いたしましたけれども、先方はこれについては、強制退去について何ら日韓間に合意がまだできていない、この点は、終戦前からおる
韓国人の処遇の問題として、日韓会談の
一つの大きな項目だったのである、それが日韓会談が決裂して片づかない、従ってその処遇の問題が片づかない以上、
日本側の一方的な強制退去を受け付けることはできないのだという主張を繰り返すのであります。われわれはこの
抑留漁夫の
方々の早期釈放を何とか実現したいと考えておりますので、その間に何らか話し合いの道がないかと思いまして、大村
収容所の今の、終戦前からの
抑留韓国人、終戦前から
日本に在留しておる
韓国人、これの釈放ということが一体
日本人の漁夫を帰すことの絶対必要な
条件であるのかということを
質問いたしました。それに対しては、
条件とはいわない、しかしながら、これが実現されれば、非常に
日本人漁夫の帰国は容易になるであろうというふうな言いぶりであります。しかしその後再三
向うと話し合いました結果、結局
向うの真意は、大村におります——現在大体三百五十名ぐらいになるでありましようか、終戦前から
日本に居住しておる
韓国人で、犯罪を犯し、
刑期を終え、
韓国に強制退去命令の出ておる人
たち、これを内地において釈放してもらいたい。そうすれば
韓国の方でも、
刑期を終えてすでに釜山の
収容所に収容しておる
日本人の漁夫の人
たち、大体二百七、八十名であると思いますが、これを即刻帰すという線を相当はっきり出してきておるのであります。これについては、
日本側といたしましては、入国管理令——これは法律の効力を持つ政令でありますが、その入国管理令に基いてとっておる措置であるので、
国内法の
立場からいいまして、これを
韓国側の言う通りにすることは、いろいろ困難があるのであります。従ってその問題につきましては、法務当局あるいは治安
関係の国警その他の当局と緊密に協議してきておるのでありますが、今までのところ、まだ、
韓国側の言い分をそのまま認めて、これでこの漁夫の方の早期釈放をはかるという方針を決定するまでに至っていないのであります。この間に何らか
日本としても、法規を曲げずに、しかも
韓国側のそういう
条件的な申し入れに対して、ある
程度向うのあれに応ずるというような
方法はないだろうかということをいろいろ苦慮して研究いたしております。特に最近、
李ライン問題が国内でも非常にやかましい問題となってきております。この情勢を何とか打開する
一つの方策として、
政府としてもこの問題は積極的に検討してみたい、こういうことになっておる状況でございます。
なお、
韓国に
抑留されております漁夫の
方々の
待遇問題、これは前から
待遇が非常に悪いということで心配し、これを改めるようにということを交渉してきておるのでありますが、ことにことしの夏、漁夫の方で
未成年者が七名帰ってこられたのでありまして、その際の話、なお脱走して帰ってこられた人もおるので、これらの
方々の話を聞いてみますと、非常に
待遇が悪いということがいよいよはっきりして参りましたので、さらに詳細な報告、それらの人から聞きました報告も添えまして、
韓国側に対して強い要求をしておるのであります。その後、
韓国側からは、
待遇改善につきまして、
韓国側の
待遇は調べてみたところ悪くないということであるというごくおざなりな返答がきておりますが、しかし
日本側から詳細な資料をあげての抗議をいたしましたことと、なおこれにつきましては、
日本赤十字でも非常に関心を持ちまして、
韓国赤十字あるいは国際赤十字等に働きかけまして、これの是正方について努力をしております。また赤十字からは、
一つお互いに双方の
抑留所を視察しようじゃないかということを申し入れておるのであります。これについて先方の赤十字からよろしいという返事は参りませんが、しかしこういう申し入れをして、ある
意味で世界の世論にも訴えておるということからして、
韓国側の態度も、これが相当響いておるのではなかろうかと期待いたしております。その後
収容所の
待遇がよくなったという知らせはございませんが、しかし
収容所の管理当局等にもいろいろ動揺の色があるというような報告もあるのでありまして、ある
程度向う側も反省しておるのではないか、かように考えております。
抑留漁夫の
方々の釈放、早期帰国の問題がいまだに実現を見ていないのは、はなはだ遺憾でありますが、しかし
政府といたしましても、必ずしも法律論のみに拘泥せず、何とか実質的な
解決方法をはかりたいと考えております。なお二、三日前でありましたが、
韓国側から不意に漁夫の
方々を四名返して参りました。これは何らの前ぶれもなく、四名の
方々を先方の定期船に乗せまして返してきております。この
方々からの報告等も聞きまして、さらに現在の
向うの
待遇状況ということを調べてみたいと考えております。