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山口説明員 減価償却費の本質の問題から、いろいろと御
質問がございましたが、御
質問の中に、私
どもの考えておりますことと違うことがございますので、この際釈明しておきたいと存じます。
まず
減価償却費の問題といたしましては、
減価償却費というものがどういうものかということは、あまり議論はございませんが、
国鉄の取扱いにおいては、現在
減価償却費を立てることによって予想されます収入金額を、工事
経費の方の財源といたしまして、それでいろいろの工事をやっておるわけでございます。その
国鉄の取り扱っております実情を頭に入れて議論をしておりませんと、一般の会社で取り扱われております問題と非常に混同しがちでございます。私
どもは
減価償却というものの本質については、別に変った考えを持っておりません。ただ
国鉄でやっております今の取扱いといたしまして、それをどういうふうな使途に使うかということに関しましては、これは財務政策の問題でございますが、重要なことであろうかと考えております。
そこで現在
国鉄で取り扱っておりますものは、総合
償却でございます。そういう趣旨からいいまして、先ほどの御
質問の趣旨とは違うのでございますけれ
ども、ここで同種同型のものの再現等ということにのみ、
減価償却費で得ました資金を使うべきであろうということは申し上げておりません。これはそういうふうな
意見が新聞などでは伝えられたことがございますけれ
ども、
国鉄側、
運輸省側いずれからも私
どもは、お前の方はこういう考えかという
質問もまだ受けておりませんし、今後おそらく打ち合せの際に出ると思いますが、その際には明瞭にするつもりでおりますけれ
ども、今のところ果してそういうふうに解釈されたのかどうかということもはっきりいたしませんが、私
どもといたしましてはやはり資金の使途というものは十分注意しなければならないと考えております。
そこで問題がいろいろございますが、ちょっとさかのぼるようですが、
一つは
減価償却費を算出する場合の耐用年数をどういう標準で定めるかということが、本質にかかる問題として論議されておるわけでございます。これは私
どもの方のとりました
見解では、
減価償却費は
国鉄の場合においては耐用命数が尽きた場合に、これを更新する
経費を見積るのが建前である。その耐用命数と申しましても、
国鉄の運輸事業を
経営していく場合に、運輸事業に必要な機能という観点から見ますと、物理的にそのものの滅失ということではなしに、今の
国鉄ではこんな古いものは使えないというような時期もあるわけでございまして、そういう点も加味して、更新しなければならない時期というものを考えて、それを基礎に耐用年数というものは見るべきである、こういう
考え方をとっております。これに対立します
考え方としましては、投下した資金を回収するという
考え方でございますが、
減価償却費につきましてはただいま申し上げましたような更新のためと、もう
一つは私企業で考えられておりますように、事業が客観情勢によって中止しなければならないというようなときに、投下した資本を損しないように回収する必要があるという
考え方があるわけでございます。従って私企業におきましては、たとえば隧道でありますとか、あるいは路盤のごときものも、あるいは運輸事業を廃止すれば非常に価値の低いものになってしまう。そこで企業と申しますか、資本としましては非常にそういう危険がある。ですからできるだけすみやかにそういうものは回収しなければならない。耐用年数もかえって実体資産の維持ということではなしに、企業を廃止する危険がどの程度の時代に起るかということを予測しまして、それでも損しないようにできるだけ早く回収してしまおう、
あとは回収済みの資産として運転する、そういうふうな
考え方で耐用年数を短かくするという必要も私企業においては、個人投資においては起り得るわけであります。国有鉄道につきましては、私
どもはこの
考え方は一応考えなくてもいいのではなかろうか、ずっと継続するのであるという建前で、施設が生きて動いていくように更新されていけばいいのではなかろうか、こういうことを基準にして耐用年数を定めることが必要でなかろうか、これが
一つでございます。
減価償却費を立てることによって、その半面得られます資金をどう使うかという財務政策の問題につきましては、これはやはり第一義的に実体資産の維持に使うべきである、かように考えております。そこで私
どもはこれを自由にしておくと実態資産の維持を不確実のままに改良、拡充をされるおそれがある。ですから実体資産の維持に必ず使うという建前にしておいて、そうしてもちろんこれは同種同型そのものだけでなくて、総合
償却ですから、全体的に考えていいと思いますが、ある
年度におきましてそういう必要が全然ないということがあれば、その場合の資金運用はどうするか。積み立てておくのか、あるいは改良、拡充費、ほかの
経費に使うか、いずれかでありますが、それは特別のものとして国の
監督のもとに使わなければならないという建前から、一応分離して考える。実体資産の維持のためにはどしどし使う。これを特殊な
事情でもし改良、拡充に使うという場合には、実体資産の維持が確実であるかどうかということもよく
運輸省なりその他で判断をして、そうしてそれは大丈夫である、しかもその資金はまだあるということであれば改良、拡充には使えますから、その場合にはどういう程度のものをやるかということについて十分な国の政策のもとに行うべきである。その意味でここ分離する必要がある。原則としては、それを混同して
流用が自由な建前にしておいては適当でなかろう、かような
意見を申し上げておるわけでございます。