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1955-07-20 第22回国会 参議院 予算委員会 第40号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年七月二十日(水曜日)    午前十時三十五分開会     —————————————    委員の異動 七月四日委員梶原茂嘉君、森八三一君 及び柏木庫治辞任につき、その補欠 として高木正夫君、片柳眞吉君及び小 林政夫君を議長において指名した。 七月八日委員八木幸吉辞任につき、 その補欠として市川房枝君を議長にお いて指名した。 七月十一日委員市川房枝辞任につ き、その補欠として八木幸吉君を議長 において指名した。     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     館  哲二君    理事           池田宇右衞門君            石原幹市郎君            西郷吉之助君            豊田 雅孝君            佐多 忠隆君            吉田 法晴君            松澤 兼人君            堀木 鎌三君            木村禧八郎君    委員            秋山俊一郎君            雨森 常夫君            伊能 芳雄君            泉山 三六君            小野 義夫君            重政 庸徳君            左藤 義詮君            佐藤清一郎君            田中 啓一君            西岡 ハル君            堀  末治君            吉田 萬次君            片柳 眞吉君            小林 政夫君            田村 文吉君            中山 福藏君            溝口 三郎君            秋山 長造君            永岡 光治君            羽生 三七君            湯山  勇君            田中  一君            永井純一郎君            松浦 清一君            石坂 豊一君            深川タマヱ君            武藤 常介君            千田  正君            八木 幸吉君   国務大臣    内閣総理大臣  鳩山 一郎君    外 務 大 臣 重光  葵君    大 蔵 大 臣 一萬田尚登君    文 部 大 臣 松村 謙三君    国 務 大 臣 川島正次郎君    国 務 大 臣 高碕達之助君   政府委員    内閣官房長官 松本 瀧藏君    法制局長官   林  修三君    経済審議庁総務    部長      酒井 俊彦君    経済審議庁計画    部長      佐々木義武君    経済審議庁調査    部長      須賀 賢二君    外務省参事官  安藤 吉光君    外務省アジア局    長       中川  融君    大蔵省主計局長 森永貞一郎君    通商産業政務次    官       島村 一郎君    通商産業大臣官    房長      岩武 照彦君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○調査承認要求の件 ○昭和三十年度特別会計予算補正(特  第一号)(内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 館哲二

    委員長館哲二君) これより委員会を開きます。  まず、調査承認要求についてお諮りいたします。昭和三十年度予算執行状況に関する調査承認要求書を本院規則第七十四条の三によりまして、議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 館哲二

    委員長館哲二君) 御異議はないと認めます。  なお、要求書の作成及び手続などは委員長に御一任を願います。     —————————————
  4. 館哲二

    委員長館哲二君) 次に、昭和三十年度特別会計予算補正(特第一号)について審査を行います。  審査日程につきましては、昨日の委員長及び理事打合会におきまして協議をいたしました結果、本日及び明日質疑を行いまして、明後日の午前中に討論採決に入ることを申し合せました。各委員におきましても御了承を願いたいと思います。  それではこれより大蔵大臣説明を求めます。
  5. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 今回昭和三十年度特別会計予算補正(特第一号)を提出いたし、御審議を願うに当りまして、その内容につき御説明いたしたいと存じます。  六月二十四日国会においで承認されました農産物に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定の締結に伴い、これに基いて借り入れる外貨資金を財源として、電源開発農地開発その他本邦の経済の発展を促進するために行う資金貸付に関する経理を明確にするため、余剰農産物資金融通特別会計を設置することといたしましたので、このため、ここに昭和三十年度特別会計予算補正(特第一号)を提出いたした次第であります。  この特別会計歳入は、右のアメリカ合衆国からの借入資金借入による収入金二百十四億二千万円及び貸付金利子収入一億八千三百万円をもって、これに充て、歳出といたしましては、電源開発事業に百八十二億五千万円、農地開発事業に三十億円、日本生産性本部に一億五千万円を貸し付けることとして、合計二百十四億円の貸付金を計上するほか事務取扱費及び予備費若干を計上いたしております。  以上、昭和三十年度特別会計予算補正(特第一号)の大要を御説明いたしましたが、何とぞすみやかに御審議の上御賛成あらむことをお願いいたす次第であります。
  6. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 本特別会計参考資料は、各省から詳細な資料をお配りいたす予定でございますので、詳細はその資料でごらんいただくことにいたしまして、私からはただいまの大臣説明を補足いたしまして、歳入歳出内容につきまして御説明申し上げたいと思います。  予算書の十ページに歳入歳出の科目が出ております。歳入の根幹をなしますものは借入資金収入二百十四億二千万円でございます。この借入金農産物に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定に基いて行われるわけでございまして、この協定によるいわゆる余剰農産物借入金の限度は八千五百万ドル、この八千五百万ドルの七割に相当する五千九百五十万ドル円貨換算額、それが借入金になるわけでございまして二百十四億二千万円ということに相なります。この八千五百万ドル余剰農産物を買いました代価は、これは円貨日本銀行にございますアメリカの特別勘定に払い込まれるわけでございまして、この円の三割は協定に定められました目的に従いまして米側が使用いたします。残りの七割、これをドルにかえまして、そのドル日本が借り入れる。このドルはもちろん外為特別会計に売却せられまして、そのかわり円貨がこの特別会計収入になるわけでございます。これが二百十四億ということに相なっております。この借入金条件は四十年、利息は三分、ただし元利につきましては日本側の選択によりまして円払いが認められております。この円払いをいたします場合には、三分でなくて四分の利払い、そういう条件に相なっております。  歳入のもう一つ項目運用利殖金収入で一億八千三百万円計上いたしております。これはこの借入金現実に行ないますのは九月以降になるかと存じますが、九月以降逐次貸付が行われまして、年度末までには二百十四億全額を貸し付ける予定でおります。その貸付期間に応じまして年利四分の利子を積算いたしましたのがこの一億八千三百万円でございます。歳入合計は二百十六億三百万円ということに相なっております。  歳出の方の大宗をなしまするものは、もちろん貸付金でございまして二百十四億ほど貸し付ける予定にいたしております。その内訳は、電源開発事業貸付金が百八十二億五千万円、電源開発株式会社の本年度資金計画は約三百五十億円でございますが、その中の主要な部分をこの会計からの貸付金によってまかなう計画に相なっております。それから次は、農業開発事業貸付金三十億円でございます。この三十億円は四地区に分れておりまして、愛知用水事業に対する貸付金が二十四億五千万円、北海道篠津地区に対するものが四億五千万円、同じく北海道根釧地区に対するものが五千万円、青森県の上北地区に対しますものが五千万円、合せて三十億円ということに相なっております。これらの地区につきましては、別に世界銀行から外貨資金を借り入れる話が別途進行をいたしております。本年度におきましては、この世界銀行からの借入金とこの余剰農産物資金特別会計からの貸付金とが両両相待ちまして事業遂行資金になるわけでございます。次は、金額は小さいのでございまするが、日本生産性本部貸付金一億五千万円でございます。日本生産性本部の本年度資金計画は約三億円の資金計画に相なっておりまするが、この資金調達手段といたしまして本会計からの貸付金が一億五千万円。そのほかに一般会計からの補助金が五千万円ございます。合せまして二億円、残りの約一億円は会社その他の自己負担、企業の自己負担によっておるわけでございます。これらの貸付金につきまして詳細な条件がまだ最終的に決定いたしておりませんが、金利は四分ということで運用利殖金収入を積算いたしておりますことは、先ほど申し上げました通りでございます。歳出の他の項目といたしましては事務取扱費予備費等がございまするが、これらにつきましては、特につけ加えて申し上げることはございません。これらの歳入歳出の構成につきましては、目下衆議院で御審議中の余剰農産物資金融通特別会計法案、この法案の規定に準拠いたしまして予算を編成いたしましたことを付言いたします。  簡単でございまするが、歳入歳出の大体の組み方につきましての御説明を終らせていただきます。
  7. 館哲二

    委員長館哲二君) これをもって二時半まで休憩いたしまして、それより質疑に入りたいと思います。    午前十時四十八分休憩      ——————————    午後三時九分開会
  8. 館哲二

    委員長館哲二君) 休憩前に引き続いて委員会を開きます。  これより質疑に入ります。左藤義詮君。
  9. 左藤義詮

    左藤義詮君 ただいま開かれておりますジュネーヴ会談につきましては、本日の午前、同僚岡田議員から本会議質問もございましたが、政府としては、国会質問応答によって十分意思表示はできておる。またわが国のこの会議に寄せる要望は、各使臣に訓令をして、十分手を尽しているというお話でございましたが、大体議題がきまった程度で、これからたけなわになるのでございますが、この会議日ソ交渉を初め、東亜の、あるいはわが国の将来にも非常な影響を持つものであり、特に直接原爆の被害を受けた私どもとしては、これに非常な関心を持っているわけでございますが、この会談に対して十分の情報も取り、十分の意思表示をしておられる総理並びに外務大臣として、どういうような見通し、どういうような感想をお持ちになっておるか、この機会に伺っておきたいと思います。
  10. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 私からお答えをさせていただきます。  このジュネーブにおける四国会談重要性については、あらためて私から申し上げるまでもないと思いますが、長らく世界情勢緊張があったのでありますが、その緊張を緩和する端緒が開けるかどうかということに相なるのでありますから、その重要性はもとより非常に大きなものでございます。そこでこの会議の結果といたしまして、東洋方面のことについても間接、直接影響するところがあるし、あるいはまた日本の直接利害関係を持っている問題について影響を受けることがあるかもしらぬ、こういうことに考えるのは当然なことであります。そうでありますから政府といたしましては、国会質問応答を通じ、かつまた別個に政府態度として、この会議に対して重大な関心を払って、かつまた世界緊張が緩和することに向って、この会議成功期待していることについて意思表示をいたしたわけでございます。そしてお話し情報については、的確にして詳細なる情報在外使臣に集めさしておるわけであります。政府の以上のような考え方は、さらに在外使臣を通じて関係各国意思表示をして、手ぬかりのないように処置をしておる次第でございます。  この会議見通しはどうかというお話でございますが、今お話し通りにようやく議題が具体化したという程度でございますから、見通しをはっきり申し上げることは少し早計であるかもしれません。しかし私は御承知の通り原水爆の問題以来、世界的の戦争をどうしても防ぎたいというこの熱意は、自由民主主義陣営はもちろんのこと、共産陣営においても非常に強いのでありますから、そこで世界緊張を緩和したいという希望は、関係各国の全部にみなぎっておる考え方だと判断をいたします。また会議初頭において各首脳者演説を詳細に検討いたしましても、その点は一致していることでございます。従いまして世界緊張緩和方向に私は大きな期待を持って差しつかえはないのじゃないか、こう考えております。  そして現在世界情勢を支配しておる、主動力になっておるこれらの四大国が、かくのごとく会合をいたしまして、そして平和維持、すなわち世界緊張を緩和する方向に全力を尽し、その成功に熱心な期待を持って待っているのがわれわれの態度でございます。
  11. 左藤義詮

    左藤義詮君 大きな見通しについて外務大臣の卓見を伺いましたが、極東の問題は直接テーマにはあげられていないようでございますが、あるいは会談の途中においてこういうことが相当派生的に論議されることはないかどうか。またはそうでないにいたしましても、この巨頭会談の進み方というものが極東のさまざまな問題、特に台湾海峡をはさんだ問題とか、あるいはわが国の、あるいは中共国連加入の問題とか、それがまたいろいろの関係から現在の日ソ交渉等にも相当の影響を持ってくる。現在日ソ交渉は、ジェネーヴの空気を見て中休みをしておる状態でございますが、まあそういうとともいろいろ考えあわせまして、もう少しわれわれ身近にこの会談がどういう影響を持ってくるとお考えになっておりますか、その点もう少し詳細に伺いたい。
  12. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 一般的の問題として、今日ジュネーヴ会議で取り上げられんとしておる問題は、何といってもこれは欧洲中心の問題でございます。そこでドイツの統一問題といい、軍縮問題といい、さらに欧洲安全保障の問題といい、さらにまた東西交通の増進ということについても、大体ヨーロッパ中心考えられた議題であることは争われません。しかし東亜東洋の問題は、漸次国際政局の上において重要さを持ち、浮び上ってきつつあるというこの態勢も見のがすことはできません。その題目といたしましては、現に行われておる日ソ交渉ももちろんのことでございます。それからまた、台湾海峡緊張問題からする中共との関係の問題、これもお話し通り重大な問題になっておるのであります。さらにまた東南アジア、インドシナ問題等が引き続いて解決を要する問題になっております。従いまして、これらの東亜方面の問題、すなわち日本にとりましては、むしろ直接に利害関係日本が持っておる問題が漸次国際間に浮び上ってきて、処理を要することになるという情勢は、これは見のがすことができません。従いましてジュネーヴ会議におきましても、民主自由陣営と申しますか、米英仏方面においては、極東問題は一応取り上げない、取り上げたくないということになっておるととは、われわれも的確に情報を得ております。しかしながら、議題関係国が提起することは、追加することはでき得るのでありますから、もしソ連がこれらの問題をも議題にしたいということになれば、これは議題になり得る状態であると判断されます。しかしながら、その場合においてどうなるかといえば、自由民主陣営の方は、利害関係国の参加なくして、その国の利害関係関係することを討議決定するということはしないという意思表示をいたしております。従いまして、東亜の問題につきましては、たとえば台湾海峡の問題にしても、おそらくこれに直接利害を持っておる国々の意向を十分確かめる方法をとらずして討議はしないという立場になっておると思います。それを総合して、結論的にこれを判断しまするのに、もしそういう極東の問題が会議討議に上せられるということになれば、それは一応取り上げられる。しかしその会議は、また別に利害関係国意向もよく聞いて別に一つやろうじゃないかという方向に進むものと判断せざるを得ません。さようなわけでありますから、との方面についても、日本としては十分に手当をいたさなければならぬので、そういうことに努力をいたしておるわけでございます。  大体御答弁はこれで済むかと思いますが、何か漏れがありましたら……。
  13. 左藤義詮

    左藤義詮君 その点は確認してありますか。もし、極東問題が出たときに必ず日本に連絡するということの米英その他の……。
  14. 重光葵

    国務大臣重光葵君) その問題については、条約のように、何と申しますか、こういう場合にはこうだという判こまでつくということじゃございません。しかし、外交手段としては十分確かな方法をとっておることを御報告申し上げます。
  15. 左藤義詮

    左藤義詮君 鳩山内閣の一枚看板と申しますか、選挙等にも非常に国民に大きな希望を与えられました日ソ交渉、これが六月から始まりまして、すでに五十日になんなんとするのでありますが、私どもの見るところでは、両方主張平行線のままで、との平行線主張両方から提示されただけで、自後全く行き詰りの状態にあるように感ずるのであります。わが国は各種の懸案解決して、その上で国交を回復しようという方針であります。特に私どもは未帰還者引揚の問題は、国際法上から見ても、人道上から見ても、これは交渉の範囲じゃない、当然以上の当然のことであって、交渉前提条件だというように解釈しておるのでありますが、ところが先方からは、かつてサンフランシスコ会議に、当時のグロムイコ代表が提出したその修正案と、サンフランシスコ条約修正案大同小異、この言葉重光外務大臣のお使いになった言葉でありますが、大同小異のいわゆる平和条約案を提出して、日本中立化をはかる、懸案解決は一応棚上げして、直ちに国交を回復しよう、こういうような主張をいたしておるようであります。これは全く平行線で、両方がそれぞれカードを出して、これからがしんぼう強い交渉だというように衆議院でもおっしゃっておりますが、私はこれをどう打開していくのであるか。すでに六月から、実質的な交渉は六月の中ごろからのようでありますが、そうして七月二日には全権モスコーに帰っちゃって、十五日に一応開きましたが、一向この平行線から進展したような様子も見えません。そうしてまたジュネーヴに行ってしまった。この次は二十六日でございますが、向うも、極端な言い方をしますれば、片手間の仕事、こちらからわざわざロンドンへ大勢出かけていって、じんぜん日をむなしくして、向う様の出方を待たなければならぬ。しんぼう強いという言葉がありますけれども、もう少し私は自主的に、しんぼうにも程度があるのでありまして、何もこちらからあわれみを請うてこの交渉を始めたわけではないはずでありまして、こういう点につきまして、昨日も日比谷で国民外交と申しますか、との問題に対する演説会があったようでありますが、民主党の有力者であり、外交の大先達であります芦田元総理あたりも、非常な強い意見を吐いていらっしゃるように伺っておるのでありますが、しんぼうしておれば、そのうち開けてくるのだ、決してデッドロックじゃないのだというふうに、相変らずお人好しと申しますか、向う様にどういうふうに出られても、石の上にも三年でいかれるおつもりであるのかどうか。そういう点、もう少しきぜんたる態度をもって交渉に臨まなければ、国民が納得しないのじゃないか。  前回私はこの引揚者の問題、特に数のどうしても合わない問題、全く人道上の重大な問題、ことにかつて私ども中立条約を侵犯せられた、そういう点からも、国民感情としては、との間重光外務大臣は、過去のことは言わない、とにかく平和を回復するのだ。現実にはそうでございますけれども、そういうような私どもの実に泣いても泣き切れぬ、国民の胸に残っておる感情から申しましても、ただ、とうして片手間のような手先のあしらいを受けて、それでもなおどこまでも隠忍自重直していく一手のほかないのであるか。この辺で私ども国民のこの愛国心を反映をして、もう少し私は外交に筋金を入れるべきときだと思うのでありますが、この点につきまして総理の御所見を伺いたい。
  16. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 総理に対する御質問のようでありましたが、外交問題でもありますから、私の考え方一つ聞いていただきたい、こう思います。  日ソ交渉が六月一日から、初めは形式的のことだけでございました。そうして数回の実質的の交渉を経て、七月二日にはソ連全権マリク氏が本国政府の召還によってモスコーに帰った。そうして約二週間の後に帰ってきて、十五日にまた交渉が再開されたわけであります。そうして間もなくマリク氏は、ゼネバ四国会談に参加するために、ゼネバ全権の随員として出立をした。こういうととは、今お話し通りであります。そうしてまた双方の主張は、十分全面的にまだ合致をしていないということもその通りであります。しかしソ連は、引揚者の問題についてこれを全面的に拒絶をしておる、こう見られるのは、これは私は少し行き過ぎであると思います。そうじゃありません。できるだけのことはしよう、調査もしてみようということは言っておるのでありまして、これは全面的にソ連引揚者の問題について誠意がないと断言する時期にはまだ達しておらぬと、こう思います。  それからまた一般政策の問題についてソ連は、懸案はそのままにして、そして日本中立化しようという考えを持っておる、こういうお話がございましたが、私はこれもそのままには首肯いたしかねるのであります。ソ連は多くの懸案を提出して参りました。平和条約案に盛り込んでおります。つまり平和条約を締結してそして国交を回復したい、こういう態度をとっておりますことは、懸案の多くのものを、もしくは重要なる全部のものを平和条約に織り込んで解決をして、平和条約を締結していこう、こういう態度でありますから、との点においては私は日本側態度とそう変りないと思っております。しかしこれらの問題もだんだん話し合いをして進んでいけば、また意見の差異も出てきましょうし、また多くの場合において意見合致も出てくると、こう思うのであります。まあさようなことで、引揚者の問題、それから領土の問題に入って、今日会議が停頓じゃございませんが、マリク氏の不在のために休んでおる。これは事実でございます。私も決してこれを満足をもって見るわけじゃございません。満足をもって見るわけじゃございませんですが、マリク氏が、これはもう国際関係において、軍縮問題等について専門的にずっと今までやっておったわけです。その人が四大国の重要な会議先方の都合で列するということは、私はこれは有意義だと考えますので、必ずしもそれが日本に対する不誠意としてこれを責める気にはあまりならぬのでございます。十分一つ働いてもらって、その方面に効果を上げてもらいたいという気持さえあるのでございます。しかしそれらの問題については十分わが全権と連絡をとって、了解をもって行っておるわけでありますから、それが今今日日本に対する何と申しますか、今お話しのような一つの、まあお話し言葉はちょっと忘れましたが、日本に対する侮辱的なことでは私はないと思います。さようなことは国際交渉については往々あり得ることでございますから、日本といたしましても、日ソ関係をなるべく日本側気持主張も通して、これをすみやかに正常化したいという熱意は持っておるのでありますから、その熱意を示して、そうしてさようなことにあまり面目争いをしなくても、あくまで成立せしめたいという熱意をこの上とも私は示すととが交渉成功に導くゆえんだと、こう思っておるのであります。すぐさような今日のような事態で、それならば日本はもう交渉を打ち切って全権を引き揚げるがいいと、こういうようなお話ではなかろうと私は思うのであります。あくまで私はこういう問題については熱意を示して、堅実、まあ堅忍不抜というような文字ででも表わせますか、さようにして進めていくことがいいのではないか。また過去の幾多の日本の経験に徴しましても、さような方針で進むととが私はワイズではなかろうか、こう思うのでございます。さようなわけで、日ソ交渉は今後マリク全権がロンドンに帰着後、私は正常な状態においてまた再開されると、またしたいと、こう考えておる次第でございます。
  17. 左藤義詮

    左藤義詮君 五十日間交渉をしてみたが、意見合致するものもあるが、しないものも出てくる、私ども一つ合致したものは今まであったように思わぬのでございまして、全く両方が出したカードが全然並行線で話になっていない。総理は自分の在任中にぜひ一つ日ソ交渉を仕上げるというようなお話でございますが、一体どれくらい出し今堅忍不抜とおっしゃいましたが、こういうようなことをしておって、どれくらい一体かかるものであるか、どれくらいの一体お見通しをつけていらっしゃるのか、総理の御健康、その他いろいろな内外の事情から、どれくらいまでがんばってこれをお仕上げなさるつもりであるか、これは先のことですから、言えぬとおっしゃるかもしれませんが、私ども非常に心もとない。かつて第一次戦争後の国交回復にも何回か場所を変え、非常な長い間かかって、途中で何か断絶もしておるのでありますが、このままロンドンでずるずるこうして、侮辱ではないとおっしゃいますが、侮辱ではないかもしれませんが、しかし最初からこちらから交渉を申し出たものではなくして、トムニッキー氏その他の、むしろ向うからの話し合いでわざわざロンドンまで行っているわけでございます。こういうようなことをじんぜん日をむなしゅうして二年でも三年でもやることが果して堅忍不抜であるのかどうか、これに対してほんとうに国民感情が挙国一致でこの外交を支持するものであるかどうか、そういう点について総理の所見を伺いたいと思うのでありますが、ただいま外務大臣お話の中に、引揚者の問題については、人員等については調査もしてみようという点は、向うと話し合いがだいぶ合ってきている、こういうお話でございましたが、この前私は私見ではございますけれども、わが方で確認して政府が発表しておられる人員が一万一千百七十四、ソ連の方では一千三十一と、非常な食い違いがある。一人の命でも地球より重い、その大事な生命が十年たってもなお生死さえわからないというような状態に置かれておる。この問題だけは何かそういう政治的な交渉を離れてでも、専門委員とか何らかの方法で御調査が願えないか。これが確認できることが、まずこの交渉の先決条件である、引き揚げの問題の一番基礎になると思う。初めから一万以上の数字が合わなければ、どうやったって話が合わないわけでございます。その点については私は専門委員等によってこの問題を調査するということを私見を申し述べましたら、三十日の予算委員会外務大臣もちろん御賛成いただいて、さっそく訓令もするということでありましたが、しかも今の御答弁の中には、ソ連の方からその点を調査もしてみようというふうに、これだけは意見が一致してきていると言われましたが、どの程度まで進んでおるか。どういうふうに人員が確認されておるか、その点を一つ、これはマリク全権がいなくても、専門家でやることならば、調査ができるわけであります。その調査方法、あるいは調査の進行状態について確実なことを伺いたい。
  18. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 未帰還者の帰還問題、これはもう非常に重きを置いている点で、まずこれを交渉からもむしろ引き離して、別個の問題としてこれはまっ先に解決しなければなら問題であるという考え方をもって交渉に臨んでおるのでございます。またそう進めておるということは、詳細御報告を申した通りであります。それから前回でございましたか、その専門委員会でもこしらえて一つ調査を進めていったらどうかという御意見がございました。私はその当時すぐその御意見をそのままロンドンに、こういう御意見がある、これはこの通りに取扱いができれば非常に工合がいいから、そういう工合に考えろということをすぐ申してやりました。それで向うには、松本全権は十分これを活用しておるわけでございます。そうして向う調査の結果は知らせるということになっております。しかしその調査の結果として交渉の、向うの回答はまだ来ておらない状況でございます。いずれこれは不日来ることを私は期待しております。
  19. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 関連して。ただいま佐藤委員から御質疑になっておりますが、総理はお答えになりませんが、さきに私の質問に対しても、総理は非常な平和のために、また国民に安心感を抱かせるために、国民の中に非常な不安のない生活を送らせるために御熱心な方とわれわれは尊敬しておりますが、この問題が遅々として進まないということについては、苦慮をしておることとは御推察を申し上げるのでございますけれども、何と申しても今日の状態であり、しかも党内から失敗ではないが、失敗の段階に入るようなことを相当有力者の方が申されるというようなことは、国民に対する影響、また国外に対する影響に対してどういうふうにお考えになっておりますか。この一点。  それから次に外務大臣に対しましては、抑留者の数について調査に入っておる。来月の十五日になれば敗戦後まる十年に相なりまして、すでに十二、三年間抑留と同じ運命にある留守家族の身の上を考えてみまするときに、ソ連は留守家族に対しまして、平和に対する条約が成立した暁においては、これらに対しましても相当何かの補償制度を設けるとか、あるいは十年もただ日本人を抑留した、それに対しての相当の報いの程度まで交渉しておるかどうか。さらに交渉の段階に入っておるならば、漁業問題から生じ、また沿海におけるところの日本の漁民に対しても抑留しておる。一つも五十日間においての実績は感心するようなことが出ておりません。われわれは実に期待はずれというように、国民は何だか不安の中に次第に陥るのでございまして、この際、これらの問題に対してはっきり御答弁をいただきたいと思います。
  20. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 日ソ交渉がすみやかなる解決を得ないということは、まことに残念に思っております。けれども私は悲観をしておらないのであります。決して楽観もしておりませんけれども、また断じて悲観もしておらないのであります。それは最初第一回の会合の際に、ソ連の大使は、とにかく戦争終結の宣言をして、そうして国際関係を正常にしたい、それから未帰還の抑留者、あるいは戦犯者を帰還させるということについては決して異存はないけれども、それは平和条約を結んだときに実行しようじゃないかというような申し出なんでありまして、戦争終結宣言をして、そうして国際関係を正常化しよう、そうして正常化するときには未帰還の抑留者、戦犯者すべて返そうということを言っておるのでありますから、それはいかぬ、返すのを先にしてくれとこちらは言いましたけれども、とにかく返すということに対して否定は一度もしておらないのであります、その後数回の会合において。それですから、決してそれに対して未帰還の抑留者も未帰還に終るということは考えられません。ただ何となく人質のように取られているような感じはいやなものですから、先に返すべきものなら先にきめてもらいたいというのがこちらの主張なのであります。それから考えてみますると、領土問題なぞについてもずいぶん向うはわが方の主張を同意しないようには見えますけれども、ほんとうに侵略戦争をしない世の中になったら、自衛の目的のためだけの戦争はあり得るが、侵略のための戦争というものは将来ない、冷戦は今度の会談において終止符がつけられたのだというような空気になりますれば、歯舞色丹島を返還しないという理由は、どう考えてもソビエトにあるわけはないと思うのです、私は。もしも戦争というものがなくなるのならば、侵略戦争というものがなくなるのならば、あの二つの島の必要はソ連にはないだろうと思う。それですからジュネーヴ会議というものの影響もずいぶん多いとは思いますけれども、とにかく世界情勢の変化によって、ソ連日本との交渉関係が全部不調に終る、平行線の上を行って、必ずどこまで行っても平行していて妥結には至らぬというようにはどうしても考えられない。それでありまするから、私としては決して楽観をしておるわけではありませんけれども、悲観の材料ということは、松本全権のたびたびの、その時々の報告によりましても、少しも私は発見はできないのであります。
  21. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 日ソ交渉の全局の問題については、ただいま総理大臣のお答えによって十分御了解を得たことと思います。私も全くその通り考えております。ずいぶんこれはまあ全体から言ってももう五十日もたっておるのだから、もう何も効果がないのじゃないか、こう申されることも私はむりじゃないと思います。ずいぶんこの問題も私どもから考えれば、国交の正常化ということは当然のことでありますから、その日にちはかからぬと、こう一般に思われるとともこれは私は決してむりとは申されません。しかしながら日ソ交渉の全局を見ますというと、これまた世界情勢の一部分であって、世界情勢の全局にも密接な関係を持っております。それがためにマリク全権もやはり四国会談にもすぐ参加をするということにも相なっておると想像もできます。さようなわけでありますから、世界全局の政局面に関係をしておるのでありますから、そういう方面から見るというと、やはり日ソ交渉だけですぐ交渉が進んでいくというふうに、簡単にもまた見られない節もあろうかと思います。そこで私は常にかような大きな問題を処理する場合においては、日本日本のまあ伝統も十分に維持して、十分私はりっぱな堂々たる態度で、そしてこの正当なこれは私交渉であり、主張であると思いますので、との交渉成功せしめるように十分の努力をしていかなければならぬ。今日もう今総理の申される通りに、この交渉を悲観的にも、また楽観的にも見過ぎる必要も私はないと考えます。同様に考えます。私はこの問題をきわめて客観的に頭で判断をして、手抜かりなくこの正当な主張を進めていって、世界の平和に貢献するように持っていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。  それから未帰還者の帰還の問題、これはお話通りに、私どもはほんとうにこの関係者に対する御同情はほんとうに禁じ得ないのであります。何とも申しようがありません。これは戦争のほんとうの犠牲者でございます。そうでありますから、私どももできるだけの努力をして、これはそれらの人々の帰還を実現したいとこう思っておるのでございまして、この点においてわれわれのとっておる処置が不当であるとか、もしくはまたはほかにこういういい方法もあるじゃないかというようなことがあったら、それは喜んで伺います。これはもうぜひ実現しなければならぬ問題だと思います。しかしながらこれは今その交渉の順序は、ほとんど交渉内容にわたる部分まで実は一般には発表して、そうして国民的の御了解を得たいと努めてはおるわけでございますが、今後もその方針であくまで進んでいくつもりでありますから、どうか御了承を願いたいと思います。
  22. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 さしあたりの抑留漁民の問題は……。
  23. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 漁民の問題は話に上っておりません。これは漁民の問題は未帰還者と同じ種類に入れればもちろんこれも入っておるわけでありますから、当然こちらの意向向うにわかっておるわけであります。そういう者を早く帰してくれという意向は、当然向うにわかっておるわけでございます。しかし漁民の問題として、特に交渉上に取り上げる段取りに参っておりません。これはやはり漁業問題と関係を持つことになるのじゃないかと思います。漁業問題はむろん交渉の題目にいたす所存でございます。さような場合には、十分一つそれを考慮いたすつもりであります。
  24. 左藤義詮

    左藤義詮君 先月三十日に私が当委員会引揚者の問題について提唱いたしましたことを、さっそく全権に御訓令になり、これだけが初めて両方の話し合いの調査をしてみようということになって進んでおる。しかしソ連といたしましては、十年間もどこかに抑留をしておられるわけでありますから、もしこちらの主張が一万一千余名という者が事実おりまするならば、調査はそんなに長く要する必要はないと思うのであります。もしどうしてもこの一万余名が食い違いならば、こちらから調査員を出すとか、こちらから連絡のあったその人々の情報等も十分調査するとかというようなことになるのでありますが、その点が私はせっかくそういう調査をお始めになったら、果してソ連は一千三十一名以外は認めないのか、認めるならば、私はそんなに調査をするのに幾ら広いソ連だからというても、探して回る必要はないと思うのでありまして、何らかの私はすみやかなる結論が出なければならぬと信ずるのであります。これに対して、これは非常に先ほど池田同僚委員の申しましたように、遺家族の傷心のことでございますので、くどいようでございますけれども、ことにもうしばらくして八月九日、私ども日本人が痛恨骨身に徹する経験をいたしました記念日もくるのでありますから、その日までに私はこういう問題だけは何とか目鼻をつけていただきたい、この見通しを伺っておきたい。
  25. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 今申し上げました通りのような考え方で全力を尽しておる次第でございます。いずれ交渉の今後の発展がそういうところにくるだろうと思います。ぬかりなくやりたいと思います。ただ今いつまでにどういう工合にしたい、こういうことはほんとうにお話し通りでございます。できるだけの努力をいたしますが、それはまあ先方との交渉の今段階でございますから、結果についてお約束するというわけには参りませんが、重大なことでありますから、全力を尽すことにいたします。
  26. 左藤義詮

    左藤義詮君 箱根で一昨々日でありましたか、総理は記者団会見で話された中に、松本全権が私のととろに書面をよこして、交渉の途中に私が総理をやめたり、あるいは交渉への熱意を失ったりしないかという非常に心配してきておる、こういうことをおっしゃっているのでございますが、一体どういう事情なのか。先ほど堅忍不抜というお話もございましたが、どういうわけでかような心配をせられたのであろうか、それに対して河野農相を渡英させて、松本全権に私の真意を伝えてもらうことになっておる。だから十分納得するだろうということでありますが、私ども交渉の前途を非常に暗くみているのですが、総理は悲観も楽観もしないとおっしゃりながら、かようなことが伝えられ、またかようなことが総理お話に出ておりますのはどういう事情でございますか、その点伺いたい。
  27. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は松本君がソ連交渉に対して熱意を私が失ったのじゃなかろうかというような気分をもって問い合せたということを聞きましたから、私はただいま御引用になったような話をしたわけであります。
  28. 左藤義詮

    左藤義詮君 総理熱意を失われた……私は総理が、悲観も楽観もしないがどこまでもやるのだ、私の在職中に必ずやるのだというようにおっしゃっておるように思うのでありますが、それが現地の、総理の信任を受けて全権として衝に当っている松本さんが、そういうような印象を受けられたことは、どういうことなんでありますか。全然それはおわかりにならないのか、何かそこに思い当ることがあるのであるか、どうして総理の信任を受けて、総理も在職中必ずやり通すとおっしゃっている。その総理に激励されて行ったはずの松本全権が、かような心配をした書面を総理のところによこすということは、どういう行き違いなのでございましょうか、もう少しその点をはっきりお示し願いたい。
  29. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 松本全権がどういうような心境において手紙を書かれたかは、私には想像ができません。私はただ日本を離れているとやはり心ざみしいのではないだろうか…。
  30. 千田正

    ○千田正君 ちょっと関連して……、今同僚左藤議員からお尋ねがたくさんありましたが、それに対して私は、もう一点はっきりしていただきたいと思いますととは、今松本全権の問題が出ておりますが、総理大臣はこの前の予算委員会におきましても、戦犯その他の引揚問題を、今度の日ソ交渉に最優先的に取り扱って、この問題を解決しないうちは、ほかの問題には触れない。それだけの信念をもってやっているのだということを、当委員会で申されておりますが、さらに五十日もたった今日においても、その信念に変りはないかどうか、それをやはりはっきりしていただきたいと思うのであります。この問題が解決しない限りにおいては、次の段階には移らない。あくまでも世界のヒューマニティに訴えて、この問題はどうしても解決しなくちゃならない、こういう観点に今日においても立っておられるかどうか、この点をもう一度、信念のほどをはっきりしていただきたい。鳩山首相にお願いいたします。
  31. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私が答弁いたしますよりは、外務大臣の方が適当だと思いますから、外務大臣から……。
  32. 千田正

    ○千田正君 それでは外務大臣に、ついでにもう一点、関係しますからお尋ねいたしますが、それは先ほど漁民の問題がありましたが、今度の日ソ交渉並びに中共あるいは北鮮とのいろいろな問題がたびたび出てきているに従いまして、韓国におけるところの抑留者、李承晩ライン越境という名前のもとに抑留されているものが二百七十六名あります。そのうちの百名は未成年者であるというのと、それから一つは、一方的裁判において刑期が満ち釈放されている、釈放されておりながら日本に帰れない。しかも最近韓国におけるところの巷の評判は、鳩山内閣日ソ交渉等に当って、ソ連との交渉がどんどん進むについて、韓国がある面において置き去りにされるのじゃないか、あるいは中共日本とが相当進んできておる。こういういわゆる何といいますか、韓国側としましては日本に対して懐疑的な考えから、この百名の釈放された漁民が今日帰されない。さらに転々刑務所を抑留されつつ歩いているというような状態が続いている。こういう問題は非常に私は今の外交の上から見るというと、残念なことであると思いますので、先ほど申し上げました日ソ交渉一つの信念と、さらにそれに派生して及んでくるところの韓国、あるいは台湾政府との間の問題等に対するところの所信を一応承わっておきたいと思います。
  33. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 御質問の最初の部分からお答えいたしましょう。引揚問題はむしろ交渉と離れてでも、これは解決しなければならない問題であるというふうに考えておるととは、たびたび申し上げておる通りであります。ごのロンドンにおける交渉の機会においてこの問題はまっ先に取り上げられておる、これも御承知の通りであります。これはもうぜひごの目鼻をつけたい、こう思って進めておるわけでございます。しかしまあどの程度の目鼻をつけたらばいいかというようなことは、これはやはり交渉全体のかけ引きの問題にも関係いたしますから、大体において私はこれは全権にまかしておるわけでございます。しかしあくまで考え方はそれで進めていかなければならぬ、こういう態度をもって進んでおるわけでございます。  それから第二の漁民の問題、特にソ連との間の漁民の問題と別個に韓国との問題、これが日韓関係の全局の問題と関連しておるのじゃないか、こういう大体の御感想での御質問だったと思います。日韓関係はどうしてもこれは正常化したい、またしなければいかぬ、こういうことはもうほとんど日本として、国民的にもこれは私は当然の希望であると思います。最も近い隣国でありますから、この隣国との関係を正常化したいということは当然のことであります。そうしなければならぬと思います。しかしこの問題は非常に私は順調にいっておったと思って喜んでおったのでございますが、昨今は必ずしもそうでないので、非常にこの点を私は心配をいたしております。そこでいろいろな考え方がここにある。朝鮮としては単に漁夫の釈放を人道の問題として扱っておるのでなくて、日韓両国の政治的の問題をもってこれを考えておるのだという説も出て参るのであります。しかし日ソ交渉をやるから韓国が漁夫を返さない、こういうふうな直接の関係を持たせるような話は、当局者の間には一つもまだございません。ただ北鮮との関係日本はいろいろやっておる。北鮮は南鮮、すなわち韓国の敵である、だからそういうふうじゃ困るということはございました。この問題については議会を通じて十分日本政府の立場を説明をした経緯がございます。そういうことで韓国としてはこの問題について日本政府の立場を誤解しておるということはないと思います。ただ、それはそれでありますけれども、何だかそこにどうもまだ疑いを持っておるということは、これはあり得るわけであります。それでその疑いはこれを解くに努めております。そうして漸次向うの誤解は氷解してきつつあるように私は観察しております。中共の問題にしてもそうでございます。われわれといたしましては一番近い韓国との関係をできるだけすみやかに正常化したい。またこれは何と申しますか、そうむずかしいことではないと、実は初めから考えておったのでございます。ところが不幸にして両民族の長い間の感情の問題もございましょう。これも非常に忍耐をもって進まなければ、急に今すぐ解決ができるというような機運には私はないことを非常に遺憾とします。どうかして誤解は解き、またいい伝統は生かしてきて、双方の民族の非常に関係のよくなるようにし向けていきたい。そしてこの正常化についてはいろいろなことがございます。感情の問題以外に利害関係の問題もございますから、それらの問題については、個々の問題としてはできるだけの妥協的態度もってこれに臨もう、こう考えている次第でございます。漁夫の問題については、ぜひともこれは人道上の見地からいっても解決をしてもらうように、この問題については国会の決議もあったわけでございます。その御趣旨を十分体して、昨今も韓国の代表者に徹底的に日本側意向を伝えて、そうして問題の解決に資するように努力をしておる次第でございます。
  34. 左藤義詮

    左藤義詮君 この日ソ交渉が、最初ドムニッキーという脇道と申しますか、正式の代表でないところから話が始まり、これは私どもの邪推かもしれませんが、当時総理外務大臣といろいろ食い違いがあった。まあここまできたのでありますが、私はこの出発と、最近ソ連が西ドイツに対しましてやはり国交の正常化、それから、アデナウアー首相がソ連へ訪問するように、かような招請をいたしたのでございますが、これを見ますると、パリにありますソ連の大使館から西ドイツの大使館に正式の覚書をもって国交の正常化と首相の招請を申し出ている。いわゆる正式のルートをとっている。日本のような卑屈なと言うことはいかんかもしれませんが、裏口外交ではございません。これに対しまして西ドイツ政府はまずもってアメリカその他の自由諸国と十分協議をした上でないと回答できないというので、さっそく首相みずからアメリカに渡りましてアメリカ大統領、英、米、仏の外務大臣と十分協議をした上で、自由諸国との連繋を密接にとった上でソ連に対して回答を出しております。しかもその回答の中には、捕虜の釈放、東ドイツの非承認、ドイツの東部国境を認めない、こういうふうなはっきりした条件を出し、しかもどこまでもわれわれは中立政策には反対である。こういうことを打ち出してソ連の申し出に応じているのであります。どうも私ははなはだ情ないことでございますけれども、今度の日本日ソ交渉の出発とはだいぶん違う。ソ連の、まあ私どもは現在の平和攻勢がどういう意味かわかりませんが、相当内部にいろいろな事情もあり、特に西ヨーロッパの防衛体制が整ってきて、西の万に力を入れるために、東の方を一つ平和の方に持っていこう、向うが私は買い気に出ているときに、あわてて飛びつく必要はなかったと思うのであります。そういう、これは選挙もございましたが、私は総理の最初の出発点が、私どもは侮辱とは申しませんけれども、何かロンドンまで行って引きずり回されて、ついにはしばらく日本を離れていると、全権みずからがホームシックになられて、心細くなられて、総理のところに手紙をよこされるというような、はなはだ日本政府のこの大事な交渉に対する腰はすわっていない。出発点からどうも私は甘過ぎる、あるいは弱過ぎるということが、かような結果になっていると思う。かような出発点からいきますれば、いつまでたっても、私はなかなかほんとうの筋金が入った結果が得られないのではないか、かように存ずるのでございますが、この日ソ交渉の出発以来の行き方が、今度の西ドイツと比べましても決して間違いでなかった、国家のために決してマイナスでなかったというふうにお信じになるかどうか、総理から伺いたい。
  35. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私はそういうふうには考えません。ソ連との交渉は時宜を得たものと考えております。
  36. 左藤義詮

    左藤義詮君 意見の相違でございますので、今後の推移に徴したいと思いますが、中共地区のやはり抑留者の問題につきまして、今度初めて政府はジュネーブの田付総領事が、中共の総領事代理でありますかへいわゆる政府政府とでこの引き揚げ問題について交渉をせられる、これに対してまだ何にも反応がないのでございますか。あるいはこの交渉が期限がつけてあるのかどうか。またこの中共の抑留者の数字につきましても、この数字については、私が前回の予算委員会でお尋ねしたときに、外務大臣から、今ここに正確な数を持っていないから、最近の数字を適当な機会に議会に報告をいたしますという御答弁ございましたが、私ども考えております数字と、中共で千六十九名の戦犯者を含めて約八千名と言っております数と、これは相当私は大きな食い違いがあると思うのであります。この点につきまして、一つ交渉内容、期限がついておるかどうか、それに対して反応があったかどうか、特にこちらの政府の持っておられます数字等について、詳細なる御報告を伺いたい。
  37. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 中共引き揚げの問題につきまして、従来の交渉方法以外に、直接の交渉方法もとったらどうか、積極的に一つ方法考えたらよかろうというような御意見が多分にございました。そういう御意見はごもっともと考えまして考究をいたしました結果、ゼネヴァにおける中共代表者のあることが的確にわかりましたので、ゼネヴァにおいて直接これを交渉することがいいと、こう判断をいたしまして、未帰還者の帰還の問題を申し入れたのでございます。そうしてその数等についても情報を得たいということを申し入れておるのでございます。これははっきりした日にちは覚えませんが、もう一週間くらいになると思います。そこでその回答がまだ参りませんことを遺憾とします。しかしかような問題について期限付でやるというようなことは、外交上のこれは適切な方法、功妙な方法ではないのでありまして、むろん期限はついておりませんけれども、かような重要な問題でございますから、適当な時期にはまた十分督促もして回答を促さなければならぬ、こう思っております。  それから数の問題でございますが、中共の未引揚者として今までわれわれの持っておる数字は、いわゆる戦犯者として千六十九名持っております——の数字があげられております。その他在留の確認をされておるものが約六千名という数字を持っております。その他、そういうはっきりした情報のないものが約四万名もあるのでございます。これは調査のなにができないのでございます。そういう状況になっておりますので、これらの問題について、中共側の持っておるはっきりした材料を知るということが非常に必要になってきますから、その手段をとっておる次第でございます。
  38. 左藤義詮

    左藤義詮君 四万名は、当方としては帰還者のもたらした情報とか、あるいは家族への通信とか、その他によって、中共の方では確認していないけれども、当方としては生存しておるものだ、かような見込みをお持ちになっておるものであるかどうか、四万名の内容一つ伺いたい。
  39. 重光葵

    国務大臣重光葵君) そうではございません。こちらにもわからないのでございます。しかし大よそそのくらいこちらが調べたいと思うものがあることを最初、つまり戦争前の数などに照らし合せて、そう判断をしておるわけでございます。
  40. 左藤義詮

    左藤義詮君 加瀬国連大使がニューヨークで外人記者団に、これはオフ・レコードで、わが国中共承認を予想するような談話を発表せられた、こういうことがありますかどうか。また吉沢インド大使が信任状捧呈後の記者団会見で、やはり同様の印象を与えるような発言をしたことがあるかどうか。こういうことに対しまして台湾政府から釈明の要求をしてきたということを伺いますが、さような事実があるかどうか。もしこれがありますれば、これに対する政府の処置並びに責任についてどうお考えになりますか。
  41. 重光葵

    国務大臣重光葵君) さような新聞報道がございました。それはつまりオフ・レコードで、何も責任を持たないときの話を報じたものでございますが、そこでさっそくこれは問い合せてみました。さようなことで不必要に国交を害するようなことがあってはいかぬわけでございますから、すぐ問い合せをいたしました。その結果得た正確な情報によりまして、これは事実を非常に曲解をした報道が流れた模様でございます。そこでこれらの両大使の発言は、日本政府の方針に離れた発言を一つもいたしておらないのでございます。ただいろいろな話の飛ばっちりが、オフ・レコードでやった質問応答の結果、さようなことに、ある意味においては悪意で流されたことがあるようでございます。しかしいずれにしても、さような実態でありましても、相手国には十分にその旨を了解してもらわなければなりません。いやしくもかようなことで国交を傷つけることがあってはなりませんから、十分にそれを釈明をいたしまして、そうして相手方の、すなわち台湾政府には十分事情を理解してもらって、了解してもらっておるような状況でございます。
  42. 左藤義詮

    左藤義詮君 そうすると、ただうわさがあったからこちらが釈明したのでなしに、国民政府から台北において、あるいは東京においてこれに対する抗議があり、それに対して釈明をして了解を求めつつあるのであるか、もう一ぺんそこをはっきり御説明下さい。
  43. 重光葵

    国務大臣重光葵君) これはこういう問題が起るときには、双方の外交当事者の間、つまり台湾においては台湾政府の人々と日本の大使館の者、東京においては日本外務省の者と向うの大使館の者と、これに話が出るのでございます。そのときに十分に釈明をしてそのことは明らかにしたわけでございます。正式に抗議を申し込んできたわけではございません。
  44. 左藤義詮

    左藤義詮君 国民政府中共と貿易する商社に対してはとれと取引を好まないというようなことに基因いたしまして、何か宣誓状を出したり、そういうことから、今商社間の競争が非常に激しいものですから、ある商社が他の数社が子会社とか別の名前で仮装して入札に応じたということを密告した。そのためにせっかくの入札が取り消された。いや、そんな密告をした覚えはないというようなことが今問題になっておるようでございますが、何といっても貿易の大事なときに、こういうととが——通産大臣いらっしゃらぬようでございますが、あとでけっこうでありますが、あるいは外務大臣からでも、非常に私は日本の貿易に困った問題になるのではないか、これはひとり台湾に限りませんが、どうも過度の競争を商社がいたしまして、買付には値段をつり上げてしまう、輸出にはますます出血して、しかも相手からはダンピングであるという非難を受けるというようなことが少くないようでありますが、かような有害無益な競争に対しまして、通産大臣としてはどういうふうに考えておられますか。特に台湾の右の問題に対して、その事実があるかどうか、御説明を願いたい。もし通産大臣見えなければ、後刻でもけっこうでございます。
  45. 館哲二

    委員長館哲二君) 政務次官が来ていられますが、いかがですか、一応。
  46. 左藤義詮

    左藤義詮君 ええ。
  47. 島村一郎

    政府委員(島村一郎君) ただいまのお尋ねの問題に対しましては、先般、御承知のように台湾政府からそうした問題につきましてその取引を制限するようなことを申して参りましたことは事実でございます。それに対しましては、その真相を確かめていただきますために、外務省を通じて目下御調査をお願いしておるような次第でございます。ただいまの問題はさようなわけでありまして、ただいま外務省でその真相を御調査いただいておりますから、どうぞしばらく……。
  48. 左藤義詮

    左藤義詮君 フィリピンの賠償問題につきまして、前に私予算委員会で、六月の二十日でございますか、八億ドルということを総理あるいは当局が何らかの了解を与えられたのではないか、先方ではさようなことを新聞が伝えてきているということを非常に心配いたしましてお尋ねをいたしましたところが、さような事実はないということで、先方からしかし申し出てくれば、相談に応ずるつもりである。——非常にこれが国会で問題になりまして、そのためかどうか存じませんが、一応八億ドル云々ということは、たとい労務を含めましても非常にこれは過重な負担である。ビルマ、インドネシアにも響くことである。大へん心配いたしまして御質問いたしましたところが、幸いにして、さたやみになりましたことは、私ども非常にけっこうだったと思うのでありますが、その後フィリピンとの賠償問題については何ら、先方から今にも申し入れがあるような最初の情報だったのですが、かような国会その他の動き、これは政府態度に徴しまして、もうそういうことが全然ないのであるか、あるいは現地でネリ・卜部間に何らかの話が進んでおるのであるか。これは明年度予算等にも非常に響く問題でございますので、先月二十日にいろいろお尋ねをいたしましたとのフィリピン賠償の問題のその後の状況について伺いたいと思います。
  49. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 前回御報告を申し上げて以来、フィリピンとの賠償問題は進んでおりません。前回御報告申した通りに、先方の申し出がある場合においては、これについて十分の考慮を払う、こういう態度をもって進んできておるわけでございますが、その問題についてはそのままに今日まで相なっております。先方も十分いろいろ考慮をし、研究をしておることと存じます。
  50. 左藤義詮

    左藤義詮君 連日非常な酷暑の中を総理初め国会にくぎづけにせられて、私どもも実はうだっておるわけでございますが、こういう思いがけない炎暑の国会が延長されたのでありますが、政府といたしましては、もうこれ以上は絶対に会期を延長なさらぬおつもりであるか。実はもうきょう二十日でございまして、法案は山積をし、しかも衆議院から一向参議院に回付されていない。政府といたしましては、今御提出の法案を全部——私どもいつも申します。私ども早く保守合同に踏み切りたいために、いやなことを申すのでありますが、この少数の与党を持った政府で、全部この三十日までに衆参両院お通しになれる見込みであるのかどうか。もし全部がとてもいけないというのならば、最小限度どの法案だけは政府としてはぜひお通しになるのであるか。またそういう、たとえば国防会議の問題、憲法調査会の設置法案、石炭鉱業合理化の問題、地方財政あるいは地方自治法、非常な大きな問題が残っておるのでありますが、これに対して政府はどうお考えになっておりますか。またもう少し立ち入ったことを申しますれば、保守合同を早く踏み切って、政策協定を早く踏み切って、そうして自由党と十分な協調をして、どれだけは通すというような話し合いをおつけになるのであるかどうか。ただじんぜん日を送って、そうして会期末になって参議院へ送り込まれると、非常なる迷惑をいたすのでありますが、そうして会期を延長すれば、この暑さの中であり、国民からも非常に国会の会期の長いことをいろいろ批判も受けておるのでございますが、さようなことは、政府が最初から弱体な内閣で、はっきりそのお見通しをつけられないで、手探りでやっておられるということであっては、われわれ国会としては非常な迷惑をいたすわけでありますが、この国会審議に対して、政府はどういうようなお見通しをお持ちになっておりますか。総理から伺いたい。
  51. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 法案審議予定よりもおくれておりますのはまことに遺憾に存じておりますが、とにかく自由党との話し合いによって、できるだけすみやかに法案を参議院に送って、参議院に期間内に審査をしてもらうというような事柄については、自由党と民主党との間においては話が進んでおるということを聞いております。私は直接その交渉の当事者でありませんから存じませんけれども、四巨頭の会談におきまして、(笑声)四者会談におきましてそういうような話があったそうであります。
  52. 左藤義詮

    左藤義詮君 相当予算を伴う法案もございます。もしこれが通過しなければ、おそらく臨時国会等は必至のような法案もございますが、そういう法案も含めまして、総理は四巨頭か何かにおまかせになっておるようで御承知ないようでありますが、予算の責任を持っておられる大藏大臣として、どういうようなお見通しをお持ちになっておられますか。
  53. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 予算関係あります法案につきましては、ただいまできるだけすみやかに通過をしていただきますように、全力をあげてお願いをしておる次第でありまして、まあ会期中に通過できるだろうと信頼をいたしておるわけでございます。
  54. 左藤義詮

    左藤義詮君 もうあと十日でございまして、参議院といたしましては、もうきのうきょうに回付されないものは、はなはだ私どもは拙速の審議をいたすか、あるいは審議ができないか、非常に私どもは困っておるわけでございますが、それに対して大蔵大臣は甘いと申しますか、ただ期待している、期待しているということで、少数の与党をもって、たよりない御答弁でございますが、一体かようなことが——これだけ会期も延長せられ、あるいは予算等も非常な難航をして、かようなことになってきましたことは、私は結局保守合同というものに対して、政府がもっと本腰を入れて総理が真剣に取り組まれ拾いで、何か四巨頭とかいうものにまかせてしまって、どうなっておるかわからないというようなたよりないお話でございまして、六月三十日のこの委員会におきまして——私がいろいろ今まで内閣の攻撃をいたしましたのも、こういう弱体なことでは政局も安定しないし、思い切った政策ができない。何とかして早く国民多数の要望に従って保守合同をいたしたいというような私は衷心の願いをもって申し上げた。決して他意がないのでございますが、ところが、六月二十九日に総理が、与党内の種々な困難を克服して、保守合同を目途とする政策協定に踏み切られた。私は大へん感激をいたしまして、三十日のこの委員会において総理に衷心の敬意を表したのでございますが、これに対しまして、総理は、保守合同は現在の日本において最も必要だと信ずるということをお答えになりました。との総理の六月二十九日のいわゆるツルの一声によって、与党内のいろいろな異論が鳴りを静めたのでございました。私が三木運輸大臣にこの問題を質問いたしましたら、政党のあり方には自分は相当の意見はあるがと、奥歯に物がはさまっておりましたが、意見はあるけれども、昨日わが党総裁が党の方針について裁断を下した以上は、申し述べることは適当でない、あえてこれに服するというようなお答えもあったくらいでございまして、全く総裁の明断と申しますか、ツルの一声によって保守合同の前途に光明を得たのでございますが、ところが、総理が一向どうも、四巨頭か何かにおまかせになったままで、どうもはっきりしておいでにならない。それどころか、国会ではさようなお話があったのでありますが、一夕閑を得て箱根の涼風に吹かれますと、せっかくのどうもツルの一声が蚊の鳴き声のようなたよりないものになってしまって、記者会見ですから、新聞によっていろいろ、若干の表現は違いますが、保守合同が理論として絶対に必要だということはだれにもわかっておるのだが、具体的問題となると感情も入ってくるし、なかなかむずかしい。たとえば党首公選といっても、各人それぞれ意見の相違がある。そこで、そう簡単にはいかないというような、このツルの一声が実は一番たよりないものになってしまった。それでは幾ら偉い巨頭が会談せられても、また私は党内にいろいろな問題が起って、いわゆる食い逃げというようなうわさも出てくる。先ほど申しました、会期が迫って、十分な審議等も進まないことになってしまう。そうして結局総理は、行雲流水だと、悟りそこねた禅坊主のような言葉の中に隠れておしまいになる。私はもう少しこの際、多数の国民が心配をしております、要望をしております保守合同に対して、この機会に私は総理のはっきりした御信念を伺いたいと思います。
  55. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) その際の私の談話にも明瞭になっておりまする通りに、保守合同の必要なことについてはむろん考えております。けれども、実際においていざやろうとするとむずかしいのも、これ事実であります。そこでどういう態度をとればいいかといえば、多数の意見に従うという態度以外に私のとりようはないじゃありませんか。仕方がないと思いますから、多数の意思に従って、自分には、自分は多数の意思に従うということを明瞭にして、自分にはどういうような希望も持っていはしない、諸君の随意にきめて下さいということを申したのでありまして、それは私としては当然適当な処置だと考えております。
  56. 左藤義詮

    左藤義詮君 さよういたしますれば、私どもの提唱いたしております、両党が解党をして、総裁の公選をして、大同団結をして、そうして新政府を組織して、安定勢力をもって昭和三十一年度予算の編成に臨む、かようなことに対しては、両党の態勢がさように進んでゆくならば御異議はない、こういうふうに解釈してようございますか。
  57. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) そういう態勢のできることを希望をしております。
  58. 左藤義詮

    左藤義詮君 その御希望は、やはり大政党の総裁でございますので、行雲流水とおっしゃらずに、六月の二十九日もツルの一声であったのですから、あくまで鶏群中の一鶴として、総裁の高い識見、高い愛国心によって、あくまで私は、(「あまりほめるな」と呼ぶ者あり)いや、ほんとうに私は衷心からそういうふうに、総理が積極的に、占領以来の日本をほんとうに建て直すために、総理の多年の御経歴から、私は積極的に、(「また鳩山さん」と呼ぶ者あり)だれを総裁にするかというようなことは、これは私は両党の総意で公選すればいいことでありまして、一票でも多い方がなられれば、私どもはそれに従うのでございまして、そういう線に向ってさらに私は総裁として、現総理として、愛国の熱情をもって御精進を願いたいということを申し上げまして、なお河野農林大臣にもありますが、見えぬようでありますから、保留いたしまして、私の質疑を終ります。
  59. 小林政夫

    ○小林政夫君 ただいま左藤義詮委員から総理に対してお話があって、まあ三十日も大幅に会期を延長したけれども衆議院においては非常に議事が停滞をしておる、その事態については、非常に遺憾であるという総理の言明といいますか、お言葉があったわけでありますが、このような事態になった原因について、総理はどのようにお考えになっておるか。左藤義詮君は主として今後の政局のあり方について、いろいろ注文、希望を述べられたわけであります。私はまあ長い日本の政治のルールを確立するという意味からお尋ねをするわけでありましてすでに国民国会の現在のあり方、現況について、非常に失望を感じ、政治に対する不信の気持を抱いておる向きが多くなっております。このような事態についての原因、あるいは将来どうやったらこういうことはなくなるかというようなことについてのお考えを承わりたいと思います。
  60. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 今日は民主党が比較多数であって、絶対多数でありませんので、政策の実現が困難を喫しておる。政策の実現が困難を喫しておるということが、国民の不信を招いた理由であろうと考えております。それですから、この国民の不信の念を除くためにも、保守合同の必要は私は考えております。保守勢力の協力関係が樹立されて、そうしてこの不信の域を切り抜けていきたいと考えております。
  61. 小林政夫

    ○小林政夫君 要するに、総理は、少数党である、いわゆる比較多数党でもって内閣を組織したために、十分に、単独の内閣自体で考えた政策がそのまま国会において受け入れられない。従ってどうもうまくないのだ、こういうことで、絶対多数党を作りたい、こういう御意思のようでありますが、第五次吉田内閣の状況も全く今の状態と同じであります。予算はどうにか通ったけれども予算とうらはらになる法律案等については今日のような状態でありまして、これもやはり比較多数党で吉田第五次内閣ができておったから、今の民主党と自由党と所を変えての問題であったと思うのであります。比較多数党であれば、他党との意見の調整にも時間がかかりましょうし、また党内の調整についても、わずかな異論者をも党の統制に服することがむずかしくなる。こういうことが今日のような混迷を招いておると思うのであります。従って、いやしくも内閣を組織するに当って、衆議院の絶対過半数の信頼を得ない総理というものの出現のしないような考え方、内閣を組織するまでに今日のような、——今日というか、今の保守合同、今の問題であれば保守合同でありますが、安定政権樹立の苦労をすべきではないか。一たび内閣が生まれたときには、その内閣は衆議院絶対過半数の二百三十四名以上の信頼のもとに成立しておるという態勢が望ましいのではないかと思うのでありますが、いかがですか。
  62. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) それはどういう方法によるのですか。
  63. 小林政夫

    ○小林政夫君 私は、首班指名が決選投票ということを許しておる。これは衆議院規則第十八条、参議院規則第二十条によって、一回の選挙で絶対多数を得た者がなければ、決戦投票、これは御承知の通りであります。こういうことによって、比較多数であっても首班になり得るのであります。従って、まず私は規則の点から、これは規則だけでありますから、衆議院の絶対過半数の二百三十四名以上の信任を得た者でないと首班にはなれないと、こういうふうに、まあその数に達するまでは何回選挙をやり直してもいいからやってみる、こういう行き方ではどうだろうか。
  64. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) それじゃ、絶対多数を得るまで首班指名の選挙を続けていくわけですか、何べんでも。
  65. 小林政夫

    ○小林政夫君 そうです。
  66. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 衆議院だけですか。
  67. 小林政夫

    ○小林政夫君 それはどうせ、参議院と衆議院とで首班についての指名の人間が違えば、衆議院が優先するわけでありますから、両方とも同様の行き方が望ましいと思いますけれども、私は特に首班指名については衆議院の議決が優先するといいますか、重きを置かれておる今の建前からいきますと、衆議院だけでいいと思う。
  68. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私ただいま伺っておりますと、そういうことが、憲法を改正しないで、議事規則だけの改正でもってできるかどうか、疑問だろうと思うのですが、ただいまこれに対して是非の意見をちょっと言いかねます。
  69. 小林政夫

    ○小林政夫君 今ちょうど法制局長官がおられるから……。
  70. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 法制局長官はどういう意見ですか、ちょっと聞きませんでした。
  71. 林修三

    政府委員(林修三君) 実はこの点は、衆議院における議事のことでいろいろ御研究なされてのことだと思います。私ここで確定的な意見を申し上げるのは実はどうかと思うわけでありまして、多少これは研究の時間を与えていただきたいと思うわけであります。果してそういう方法で、これはあるいは議決の手続のいかんのことでありますから、できないとも言い切れないと思いますけれども、相当研究を要することだと思います。
  72. 小林政夫

    ○小林政夫君 私はまあ、今の私の研究では、それでいけると思っておりますが、しかしそういう議決方法を改めただけでも、必ずしも私の言っているような意味の成果は全面的には期せられない。そこで、たとえばこの前の第二次鳩山内閣のときの決選投票においては、自由党は鳩山さんに第二回目は投票をされたわけで、従って絶対過半数になっておると思いますが、しかしあの投票は、自由党の言われたごとく、健全野党であるけれども、まあ一応ルールとして総理を生むために投票したのだ。言葉は義理——まあ何といいますか、まあ、ああいう決選投票になったのでそういうふうにやったんだ、そういうことですが、それには信任の意味は含まれておらないわけです。そこで形式的な過半数でも困るわけであります。だから、議事規則を、そういう絶対過半数でありさえすればそれで安定政権ができると、こういうふうにもならないのでありますが、その点は政治慣行として、今後はそういう首班指名の際の指名投票というものは、信任を表示するのだと、こういうことを、投票する側においてもそう考えた投票であり、また受ける、指名された方も、実質的に衆議院絶対過半数の信頼を得ておらない場合は、よしんば指名されても辞退をすると、こういうような政治慣行の確立が望ましいと思いますし、との制度自体の改正と同時に、そういう政治慣行の確立とあわせて、少くとも内閣が内閣として存在している以上は、その政策が行えないというようなことのないような態勢であってほしい。一たび信任投票を一応はしたけれども、だんだん内閣が施策を進めていくに従って、どうもこの人にはついていけない、こういう脱落者ができる事態になって、あるいは内閣の重要法案がどうも、今のような事態で、なかなか思うように通らない、こういうような場合には、場合によっては信任投票を内閣の方から積極的に訴えて、信任をためしてみる。こういうことで、もし不信任されれば、いさぎよく桂冠する。これが政局というか、政治の責任体制をはっきりするのじゃないか。今の事態では、幾ら鳩山内閣を責めてみても、必ずしも鳩山内閣で御言明になった通りにならない。自由党と一緒になって、いろいろそこに政策の調整をおやりになる。むしろ内閣だけの言明では、信頼できないというか、どうもはっきりしない。こういう事態でありますから、いわば扇のかなめがないような形であって、国民としても相当政治というものに対して当惑をしておると思います。私は将来そういうような指名選挙の方法の改正と同時に、そういった政治慣行をもって、一たび内閣ができる際におきましては、衆議院で絶対過半数の支持を得ている、こういう体制の確立が望ましいと思っておるのであります。どうぞ御研究をわずらわしたいと思います。
  73. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 制度の改正によって政局の安定ということが期し得るならば、非常にいいことだと思いますので、考案さしてみます。
  74. 小林政夫

    ○小林政夫君 いや、私は制度の改正だけでやれるとは言っておりません。今、るる敷衍いたしましたように、政治慣行の確立も必要でありますから、どうか、いろいろ今後問題が起ってくると思いますが、そういう点について特段の御配慮をわずらわしたいと思います。  次は、一萬田大蔵大臣と川島自治庁長官にお伺いをいたしますが、最近、全国の知事さん方が上京され、いろいろと交付税率の引き上げについてきびしくわれわれに攻め寄せてこられるのであります。中には、署名を強要される方もありますし、いろいろ地方自治団体の赤字解消ということについて、交付税率二二%というものを二七%にしろとか、すでに社会党方面からそういう案も出ておりますが、こういう事態について、大蔵大臣、自治庁長官はどういうふうにお考えになっておるでありましょうか。
  75. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 今日、地方財政が非常に困難な状態であることは、御承知の通りでありますが、しかし、この地方交付税の交付、これは地方財政の赤字と申しますか、財政上の欠陥を中央で始末をする、こういう制度でないことはもう御承知の通りであります。むしろ地方交付税を地方に交付しまして、その範囲内において地方財政を整えていく、それでまかなっていくというのが、これが趣旨であるのであります。従いまして、今回の地方交付税は、初めは二二%を適用いたしまして地方に交付をしたのであります。今言ったような趣旨からいたしまして、これらの税率を軽々に、あるいはひんぱんに、あるいは容易に変更いたすべきものでないと考えております。そうして特に今日におきましていろいろと言い分もあると思いますが、しかし何にしてもやはり財政が整っていない、その主体である地方公共団体がやはり責任をもって、どういうところの理由によってこういう状態になったかということを私はつまびらかにして、今日の欠陥をその上で是正していく、こういうことがまず先に行わるべきだ、こういうふうな考え方であります。
  76. 川島正次郎

    国務大臣川島正次郎君) 地方交付税の性質は平衡交付金と違いまして、ただいま大蔵大臣の申し上げた通りでありますが、しかしながら地方財政の現状はこのままでは決してよくないのでありまして、何とか立て直さなければ地方財政が破壊されるのであります。そこで今年度の施策といたしましては、予算措置として昨年に比べまして交付税において百三十億、たばこ益金から約四十億、入場譲与税二十五億をふやしたのでありますが、それでもなお足りないことはこれは事実であります。そこでただいま御審議を願っております地方財政再建促進特別措置法などによりまして、赤字の最もひどい地方団体は、一応従来と違った財政運営をやってもらいまして、世間では地方財政が水ぶくれをしておるとさえ言われておるのでございますが、贅肉を落してすっきりした姿になって、そして三十一年度で必要なる経費をとろうじゃないか、それは交付税でいきますと、たばこ益金を繰り入れていくか、あるいは最近大蔵大臣が発表しておりますように、国と地方の税制の根本的改革をやりまして、いずれを扱うかということについてはまだ決定いたしておりませんけれども、とにかく三十年度の地方財政の運営におきまして少し姿を変えてもらいまして、その上に三十一年度において足りないととろを見よう、これが今日考えている政府の施策でございます。
  77. 小林政夫

    ○小林政夫君 私は今非常に重大な発言だったと思うのですが、大蔵大臣の見解と、自治庁長官の見解が同じである、そして平衡交付金制度と交付税交付金の制度とは違うのだ、交付税交付金の制度はこれでもって地方自治体への渡し切り経費ではない、本来地方団体が徴収する交付税でありますから、地方団体の財源である、それをかわって国が徴収し、返すという、こういう建前であって、本来は地方自治体の税収入である、従って地方自治体はこの交付税交付金の収入と、その他の収入と合せてそれのどれだけが自治体の収入であるか考えて、その範囲において行政をやるべきものである、こういうととは自治庁長官もはっきり了解され、理解されておると承知をいたしてよろしゅうございますか、今の御言明で。
  78. 川島正次郎

    国務大臣川島正次郎君) 交付税法の中にはっきりうたっておりますが、地方財政に多くの欠陥が出た場合には税率を直す、ただいま二二%でありますが、これを引き上げるのだ、こういうふうに税法にも書いてあるのでありますが、しかし交付税そのものの税率は、先ほど大蔵大臣なり私からお答え申し上げた通りであります。
  79. 小林政夫

    ○小林政夫君 その考えが地方自治団体にはどうも徹底しておらないのではないか、著しい歳入欠陥といいますか、赤字が出るような事態になったならば考えるという、その方にむしろ理解の重点がいっておって、この本来の交付税交付金制度の趣旨というものが地方団体には、大蔵大臣や自治庁長官あるいは私が理解しておる程度には徹底しておらぬのではないかと思われるのでありますけれども、その点は十分徹底しておると自治庁長官はお考えですか。
  80. 川島正次郎

    国務大臣川島正次郎君) 地方団体におきましては、交付税の性格はよく知っていると思いますが、何といたしましても、現在の歳入の不足は膨大でありまして、これに対して適当な措置をすることは絶対に必要だとは考えておりますが、大蔵大臣も、私が申し上げたごとく、三十年度におきまして地方財政運営というものをすっかり直していただきまして、その上に必要な金額を見ようじゃないか、なお地方財政立て直しには機構の改革も必要であります。これは今考究中でありまして、案ができますれば次の国会に出そう、地方の機構の改革と財源的措置と両方やろう、こういたしておるのであります。何といたしましても、数カ年にわたる地方財政の膨大なる赤字の蓄積でありまして、ただ三十年度限りでこの解消はできにくいのであります。従いまして三十年度、三十一年度年度にまたがりまして、地方財政を根本的に立て直そう、これがただいまの政府考えておる考えであります。
  81. 小林政夫

    ○小林政夫君 現実に赤字が生じ、どうしても運営ができないという状態においては何とかやれる、国の方でも考えなければならぬということはわれわれも異存はないのでございます。しかし今までのような考え方で、とにかく幾ら赤字が出ても、最後は国がどうにか、声を大にすればめんどうを見てくれる、赤字を出さぬ方が損だというような風潮のもとに、あたかも日本の終戦後の初期の労働団体のごとき気運で、賃上げ賃上げと言ったあの非常に初期の労働運動のような様相を思わせるこの自治団体の国に対する財政要求、こういうものについては、この際何か善後策を講ずるといたしましても、今後そういうようなことはやらない、もちろん現状においても、たとえば栃木県のごとく、実にがっちりと赤字を出さずにやっておる県もあるわけです。だからこれは理事者の運営いかんによっては相当しっかりした財政運営ができるわけです。自治体の経営ができるわけですから、そのまず気風を根本的に立て直す必要があるのではないか、そういう点について今の交付税交付金の制度のごとき趣旨徹底というようなものにつきましても、私はその趣旨がはっきり徹底しておるならば、何でもかんでも国へすがって赤字解消をする、赤字を出さない方がばかだというような風潮は、何としてもこの際直してからでないと、安易に赤字解消の措置はとれないのではないか、こういう気持でお尋ねしているのですが、はなはだくどいのですが、もう一回そういう方針について。
  82. 川島正次郎

    国務大臣川島正次郎君) 地方の赤字の原因は種々雑多でありまして、国の責任に属する分もありますし、また地方の財政運営が拙劣のために赤字が出た点もあるのであります。お説のように地方団体によりましては、放漫な財政運営をして、それが赤字になりまして苦しんだところもあるのです。従いまして私どもとしては、三十年度におきましては、そうした深刻な赤字の出る団体は、ただいま御審議を願っております地方財政再建促進法の適用を受けまして、財政の運営内容をすっかり変えまして、健全な姿に直った上、なお足りなければ相当めんどうを見よう、こういう考えに立っておるのでありまして、小林さんの御意見と同じような考え方でもって施策をしておるわけでございます。
  83. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 委員長、ちょっと関連して……、ただいまの自治庁長官の小林君の質問に対する御答弁は小林君と全く同意見のお説であったのです。これは私は小林君の御質問と別の立場で非常に重大な御発言だと思うのです。それは、要するに地方財政計画というものを一応無視したような御意見に私は受け取ったわけです。先ほど交付税法六条でありますかには、一応地方団体が赤字が出た場合には、それは過大なとの浪費して出た場合は、……地方財政計画を立てた場合、赤字が出たときにはこれは政府が交付税制度でもって見るのが当然ではないかと思うのです。今の御答弁では平衡交付金の場合と違って交付税制度になった場合は百分の二十二あてがい扶持でやればいいんだというふうにとれるようなどうも御発言に聞えたんです。そうしますと財政計画を何のために立てるのか全く意味がなくなる。やはり交付税制度になっても、この場合は放漫な浪費をする場合は別でありますけれども、地方の必要にどうしても応じてきた場合には、必要の場合には交付税制度の場合と平衡交付金の場合と同じようにやはり政府がめんどうを見る責任がある、そう思うのですが、その点いかがでしょうか。
  84. 川島正次郎

    国務大臣川島正次郎君) 交付税の割当二二%は今年度初めて適用されることでございまして、これ以上に幾ら不足するということは見当がつかんのであります。私どもは現在の地方財政の状況を見て不足ということはわかりますけれども、果して金額がどのくらいになるというようなことは判定がなかなか不可能なのであります。そこでまず三十年度におきましては、地方財政を健全に運営して参りたい、その上に計算をしまして、給与において、あるいは事業費においてこれだけ不足という場合には、交付税法に掲げた著しき歳入の欠陥という条項を適用して、これは税率の引き上げも起りましょう、起りましょうけれども、地方財政の欠陥を補うのはただ交付税の引き上げだけでなしに、たばこ益金から持ってくる場合もあることだし、あるいは根本的に国税と地方税とをにらみ合せた改革をする場合もあるのでありまして、これらは研究して次の機会に解決したいと、こういうことを申し上げたわけでありまして、交付税法に書いてある第六条を無視して御返事申し上げたわけじゃありません。
  85. 小林政夫

    ○小林政夫君 まあ木村委員から地方財政計画お話が出ましたが、私はこの点についても言及して質問をしたいのであります。  まず、先ほども自治庁長官からお話があったように、一体赤字の数がわからない。はっきり確定していない。四百六十二億と自治庁は言われ、大藏当局ではもっと少いのではないか、こういう事態は非常におかしいことであって、自治団体の経理の状況というものが、まあ数千もある自治団体でありますから、なかなか一つ一つについて的確に把握できない、こういうことはあるでしょうが、何かそこを把握する方法をとらなければ今の財政計画というものは、地方財政計画というものは積み上げ計算ではない、従っていわば推測にすぎない。しかもその財政計画を作りましても、だれがその財政計画の実行について責任を持つかということ、責任を持つ者はだれもいない。ここに各地方自治団体がめいめいにやるわけでありまして、中には隠れてベース・アップをやるものもありましょうし、いろいろこの地方財政計画というものを打ち立ててみても、一応の参考資料という程度にはなるかもしらぬけれども、先だって来いろいろ言った経済六カ年計画のようなもので、全く推計にすぎないのであります。そういう点について、この自治団体の財政の的確な把握ということについては、今後どういうふうにおやりになるおつもりであるか。もっと敷衍して言えば、自治団体はその会計報告というか、経理内容を持っていく使い道、用途先によって赤字がふえたり減ったりする、こういうような資料まで出される、こういう状態についてどういうふうにお考えになり、今後どうするつもりであるか。
  86. 川島正次郎

    国務大臣川島正次郎君) 地方財政の立て直しには二つ考えなければならぬのでありまして、一つは従来の蓄積した赤字をどう処理するかということと、もう一つは今後どうしたら赤字が出ないかということでありまして、従来の赤字はこれははっきりわかっているのでありまして、二十八年度の決算におきまして四百六十二億、これは決算書にはっきり出ております。それから二十九年度はまだわかりませんけれども、推定百二十億、合計五百八十億程度の赤字が出るのであります。これはただいま御審議を願っています地方財政再建促進法によりまして、一応長期しかも低利にたな上げをするのであります。で、今後赤字が出ないようにするにはどういうふうにしたらいいかということが問題になるのであります。それにつきましては、ややもすれば放漫政策だと世間で言われているような地方財政というものを引き締めて、健全な一つ運営をしてもらいたい、その上に足りない点は見ようというのが政府の方針であるということは、先ほど申し上げた通りでございます。ただむずかしいととは町村合併はしたといいながら、なお六千以上の地方団体があるのでありまして、これが皆個々の運営をいたしておるのでありますからして、しかも自治庁長官の監督権というものは全くないのでありまして、助言、勧告の程度でございます。一に地方団体の自粛に待つ以外にはないのであります。私どもはいろいろな方面におきまして自粛を熱望しておる、絶大な監督権があれば相当な施策もできるのでありますけれども、これは憲法の条章その他によって許されません。地方団体の自粛に待つ以外にはその点は仕方がないのがこれは現況でございます。
  87. 小林政夫

    ○小林政夫君 その四百六十二億の赤字は確定しておると言われますが、赤字繰越事業費だとか、いろいろまあこの繰り越し関係、また歳入の方の次年度徴収というような点、いろいろこの四百六十二億の数字の固め方については、まだ自治庁では四百六十二億かもしれませんが、大蔵当局は必ずしも四百六十二億と確認しておらぬと思う。でこれは別に一例をあげればそういうところだという意味で申し上げるわけでありますが、今はっきりおっしゃったように、自治庁長官といえども実際その押えようがないわけでありますから、そういうような数千の自治団体を相手にしてのこの財政計画というようなものについて、この財政計画を責任をもって遂行する、この通りやらなかった場合にはどうするという責任体制がないのでありますから、安易にこの赤字がいったら国が補てんするのだ、こういうことに重点を置くと、国の財政は幾らあっても足りない、こういう結果に極論すればなるのではないか、やはりそれだけの自治権を向うに与えておるのでありますから、財政運営についても自主的にやってもらう、いわゆる入るをはかって出るを制する、こういう態勢で自治団体にいってもらわなければならぬのじゃないか、これが私の申し上げたい点なのであります。  それから次に地方債の問題でありますが、とれも今では国の方も非常に安易に地方債をつけておる傾向がある、国家が公債を発行するという場合には、非常に大蔵大臣を初めとしてインフレになりはせぬかということでシビアに考えて絶対やらない、こういうことでありますが、地方団体の起債ということについては、資金運用部資金から引き受けるのだから、まあインフレ要因ではない。こういうようなことから、全く安易に地方起債が認められておるようであり、しかもこれを一つ収入と見る、こういう態勢であります。そういうことについて、従って国の方も安易な気持でおるものでありますから、当然その気持は地方団体にも反映して、起債を許されるということと、補助金をもらうということと、全く同じ気持で借金じゃないという観念があるのじゃないか。当然将来返すべき金である、こういう気持がない。しかも公債費として返すべき金が基準財政需要額として見積られて交付税交付金の対象になる、こういう事態、この点について大蔵大臣、自治庁長官はどういうふうにお考えになりますか。
  88. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 地方債につきまして、ただいまお話のような傾向が今日までありまして、また今日あることは、私否定できないと思います。これは結局従来の地方財政のあり方がしからしめたその累積であるとも思うのでありますが、しかしこれはどうしてもこういう状態を持続すべきじゃないのでありまして、私は地方債におきましても、従来のようにともすると銀行の借入金、それがまた地方債にも変る、結局これがやはり歳入みたような形に扱われるという考え方は、これは是正しなければならぬ、地方債を発行するのもいいですが、これにはやはり地方債を当然発行して財源に充つべき性質のものに充てる、こういうような格好にいたすべきであろうと考えて、三十年度におきましても、できるだけ地方債の発行はやむを得ないものを除いては私は押えたつもりでおります。なお、この地方債が非常に従来細分をされ、小さくなっておって、この効果が少いという点もあったように思いますので、これは国の経済経済効果をねらう必要もありますので、三十年度からは、たとえば都道府県におきましては起債額の最低限度を従来の五百万円から一千万円に引き上げる、それから市については五十万円を百万円にいたす、あるいはまた町村については三十万円を七十万円にする、こういうふうにしまして、重点的に金をまとめて使ってその効果を発揮する、こういうふうな方針をとっておりますし、また同じ起債についても、たとえば継続事業であれば、もう事業の完成が近い、すぐに経済効果を発揮し得るというものを特に優遇する、あるいは地方公共団体の公営事業というようなものを比較的優遇する、こういうふうにしまして、できるだけ経済的に効果を発揮するようにして徐々に、なかなかこれも一挙に行きませんが、徐々に起債いわゆる地方債というものの悪用を避ける、しかも効果を上げる、こういうふうな方針をとっておることを申し上げておきます。
  89. 川島正次郎

    国務大臣川島正次郎君) 地方債につきましては、まことにお説の通りでありまして、従来はややともいたしますると、財源の不足を起債でまかなおうという傾向があります。それが赤字の一つの原因になっておるのであります。そこで三十年度の地方債の総額は一千百四十億でありまして、二十九年度と同額に押えまして、その一千百四十億のうちには、再建債の百十億というものがありますから、実際の地方債は百十億を引いた金額になるのであります。本年の地方債のつけ方は、主として投資的事業につけることにいたしまして、消費的関係の起債は万やむを得ない以外には認めない、こういう方針でただいま地方債の配付を研究中でおります。
  90. 小林政夫

    ○小林政夫君 御答弁としては満足すべき答弁なんでありますが、実際の実行という点になって非常に問題があるわけであります。特に大蔵大臣経済効果が上るようにということでお話しがございましたが、たとえば公営事業関係の経理は比較的一般会計方面とは違って良好のようでありますが、しかし、たとえば水道起債等を一つ例にとりましても、これは政府のみを責めるわけには行かない、国会議員もあれこれと選挙対策で無理の要求をする、こういう事態もあるわけでありますが、非常に総花的である、非常に口数が多い、こういうようなことから、まだ水が出ないのに元金を払う時期に到達しておる、こういう事態が所々にあるのであります。こういう点については、少くとも今まで手をつけたものが完成するまでは新規のものを認めない、こういうようなことで、これは一例でありますけれども、水道起債にしても、もっと窓口を狭めて一つ一つ経済効果を発揮するような執行をやってもらわなければならぬと思うのでありますが、その点についてどのようにお考えになるか。
  91. 川島正次郎

    国務大臣川島正次郎君) 水道起債につきましては、先般関係各省相談をいたしまして、今年は新規四十五カ所に限る、かように決定をいたしました。重点的につけまして、完成年度をなるべく早くしよう、こういう方針であります。それ以外の新規は認めないという方針で起債の配付を今研究いたしておるのであります。
  92. 小林政夫

    ○小林政夫君 新規の四十五カ所を本年度認めるということも私は承知いたしておりますが、それも無理だというのです、私の考えでは。昨年一年間は全然新規のものを認めない。今度も、デフレ政策やっておるのだし、もう一年、前の方針通り、新規四十五カ所にしてもそれをつけるということは無理じゃないか。今まで手のついておるもので、継続しておるもので、金さえあればもっと早く完成するもの。本来三年計画のものが金の都合で五年計画、五カ年たたなきゃ出ないというような事態のものもあるわけでありまして、本年度一つ新規を認めずに、旧来の継続事業の方へ集中して行く、こういうことを言っておるわけであります。
  93. 川島正次郎

    国務大臣川島正次郎君) 大体二十九年度ででき上る場所などもいろいろ勘案しまして四十五カ所ときめたのでありまして、それは多いからして、もう少し重点的にやれということは、一つのお説と思うのでありますが、何といたしましても水道については全国きわめて希望が多いのでありまして、四十五カ所にしぼるにも関係各省間非常な苦心をいたしたわけでありまして、ただいまの小林さんのお説は、お説としては承わっておきまして、将来参考にいたします。
  94. 小林政夫

    ○小林政夫君 それでは、今後の地方団体の赤字解消というか、国と地方との財政のあり方として、先ほど来私が申すような気持を地方に植えつけるというような観点からも考えまして、補助事業いわゆる国と地方自治団体とが金を出し合って仕事をするという体制、これについて反省をしてみる必要があるのではなかろうか。二十九年度に国が補助金、負担金、交付金、補給金という名前で出しておるものは、一般会計で二千九百九億円余、特別会計で千五百二十八億円、政府機関で百三十七億円、合計して四千五百七十五億円。それから委託費だけを拾ってみると二百五十二億円。この委託費も込めての補助金、負担金、交付金、補給金、まあ国際分担金を除きまして、そういうもののトータルは四千八百二十七億円になる。こういうことで、この中に比較的補助率の高いあるいは五分の四というような補助率でもってやっているようなものは、国が全額持ってやる、こういうようなことでその地方自治団体と分担して仕事をするという体制を変えて、その四千八百二十七億というものが全部というわけにも行きませんが、ある程度のものは交付税交付金のような体制で地方へくれてやって、どうせ地方の財政については責任は国が持てないんだ、あなたの方にはこれだけ上げる、こういうことでまかすという意味において、簡単に言えば補助事業を全部やめる、国がやる仕事は直接国家的規模においての仕事をやって行く、こういう体制に切りかえる必要もあるのではないか。こういう点についてはどうお考えになりますか。
  95. 川島正次郎

    国務大臣川島正次郎君) 先ほどもお答え申し上げたのですが、公共団体に対して中央官庁としては絶対にこれを監督する権限は持っていないのであります。わずかに持っているのは金を配付する権利であります。それで幾らかしぼるということを従来やってきたのであります。補助金どもまあその点においては多少地方を監督し得る一つの作用をなしておるわけであります。元来補助事業というものは、国が全体を見まして、施策として必要なものを推進するために補助金をやって地方に行わせるのでありまして、それを金だけあてがい扶持にやって、勝手に地方に事業をやらして、それで果して国家全体としてうまく行くかどうかということについては、相当考究の余地があるのじゃないかと私は考えるのであります。ただ補助金の中には整備統合しましたり、廃止したりとかいうものが幾多あります。ありまするけれども、大部分の建設省関係の事業でありますとか、あるいは厚生省関係の福祉施設でありまするとか、文部省関係の事業のごときは、やはり国家全体を勘案いたしまして適当に地方団体に補助金を出すのがいいのじゃないか、こういう気持がいたしておるのでございます。
  96. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) その点につきましては、やはりいろいろな事情もありますから、どちらか一本というだけでは、この複雑な関係解決する道ではなかろうかと私は思っておるのであります。要するに私はこの地方財政については、今自治庁長官から話がありましたように、中央でかれこれ言う何らの機会はない。ですからやはりこれは地方団体において常に責任を確立をし、自分で赤字が出ないようなことを考える。赤字が出れば自分でこれを補填する責任をとる。場合によっては中央からそういうようないろいろなものを持って行ってやらせておって、そこに赤字が出る原因があるとも言えます。そういう点は中央もまた考えなければならぬが、そういう場合にこそ、地方は、そういうことをするのは、何も財源を与えずしてそういうものを押しつけるのはもってのほかじゃないかというように、責任というものを地方は持つべきじゃないか。それをただ引き受けて、赤字が出ると、そう言うのは地方が悪い。これは地方は地方で、両方その点は考える。あとになって責任のなすり合いをやっても、これは同じ国家であるので、地方も中央もないのですから、そういう意味においては私はみんなが一緒になってそういうことのないようにして、要するに地方も中央もお互いが責任を確立する、こういうようなことが必要じゃないかと思っております。
  97. 小林政夫

    ○小林政夫君 私も全部の今までの補助金等を打ち切って、それに相当するものを交付税交付金のような形でやるということは、いろいろ検討してみなければなりませんが、一応そういう方向で、今大蔵大臣も言われたように、まあ羽織のひもという言葉を使われて、羽織のひもはやるけれども羽織は自分で作れというような比喩まで地方団体は使っておる向きもあるのであります。国はほんのちょっぴり金を出しておいて、本体をなすものは地方でやらせるというこういう言いがかりをつけられるおそれもある。だから思い切って、三十年度予算編成大綱には、補助金等の効率化ということがありましたが、この地方自治団体に本当に渡し切り経費として、入るをはかって出るを制するというように、との地方自治団体の経営者に、先ほど申しましたような気持をうんと徹底するという意味においても、この際そういう相当抜本的に財政の建て直しを考えて行く必要があるのではないか。いろいろ各省もしくは大蔵省当局、自治庁長官等においてはあまり異存がないようですが、建設省あるいは農林省等において、他の事業主管官庁において、そういう場合において異存が出やすいと思いますけれども、大いにこれは研究を願いたいと思います。  あまり時間がないので次に松村文相にお伺いしますが、新生活運動を進めると言われておるわけでありますが、終戦後非常に国民に射幸的気風がある。そうして競馬とか競輪とかオートレース、モーター・ボート・レース、パチンコ、宝くじ、こういうものが横行いたしておるわけでありますが、そういう点について新生活運動を進めるこういう立場から考えて、これら射幸行為が青少年等に与える影響、その対策等について、いかようなお考えをお持ちでございますか。
  98. 松村謙三

    国務大臣(松村謙三君) お話のような点はやはり新生活運動の対象と必ずなることと思うのでございますが、最近民間にその団体ができますように政府といたしましてお願いをするはずでございまして、その団体においてそれらのものはもちろん取り上げられることと考えております。
  99. 小林政夫

    ○小林政夫君 取り上げるということはやめるような意味で考えるということでありますか。
  100. 松村謙三

    国務大臣(松村謙三君) それは是正するものもございましょうし、やめるものもありましょうし、いろいろ検討さるることと考えております。
  101. 小林政夫

    ○小林政夫君 通産大臣に伺いたいのでありますが、御出席ないから政務次官にかわって答えてもらいたいと思います。われわれは自転車競技法等の臨時特例に関する法律、これを昨年度一年限りということで本来反対でありますけれども、一年のうちにはこの競輪等をやめるからまあ目をつぶってくれ、こういうことでわれわれはもちろん反対しましたが、とにかく通った。その場代金のかすりのような金を自転車振興会が取って、それを商工中金に預金して、それから中小企業振興に貸し付ける、本年度予算見積りは六億程度の金でありますが、今度のまだ改正法において初めは政府は当分の間ということを出して衆議院で修正されて三年間、こういうことになったわけでありますが、われわれはぜひやめてもらいたい、その三年間にやめるように段取りをしてもらうのだ、そういう要望をいたしました。ところが競輪運営審議会ですかというもので、そういうやめる方法について考える、こういうことでまあまあということになったわけでありますが、その後法案が通ってから大分日にちもたちますが、われわれの要望通りやめるべくせっかく骨を折っておられるのかどうか。
  102. 島村一郎

    政府委員(島村一郎君) お答えいたします。  ただいまのお尋ねに対しましては御承知のようにやはり産業振興に寄与するところも大きいものがありますし、あるいは地方財政を助ける面につきましても見逃すことのできないところの問題がございます。もちろん政府といたしましても、存廃につきましては十分考えてはおりますのでありますが、ただいまお述べになりましたように競輪運営審議会の議を経まして、その御答申に基きまして政府態度をはっきりさせたいというのがただいまの考え方でございますので御了承願いたいと思います。
  103. 小林政夫

    ○小林政夫君 自治庁長官にかねてから資料のお願いをしておったわけでありますが、との競馬、競輪、オート・レース、モーター・ボート・レース、パチンコ、宝くじ、こういう一連の射幸行為による地方自治団体の財政収入はどうなっておりますか。
  104. 川島正次郎

    国務大臣川島正次郎君) 三十年度の財政計画におきまして八十三億見積っております。大体平日開催を禁止しましたために、大体十七億程度の減収になるかと、かように考えております。
  105. 小林政夫

    ○小林政夫君 まあ昨年度百億程度、これはしかし基準財政収入額には入っておらない自由財源だと思いますが、その、これだけ、八十三億という地方団体の、今赤字で苦しんでおる地方団体への収入になっておるわけであります。これを通産大臣として、われわれの強い要望によってやめる方向考える、こういうことでありますが、それだけの地方自治団体に対する財政的貢献をしておるものをですよ、やめさせる具体的な方法については、これはただ、法案を通してもらうためにのみ、そのときまあまあということで、考えるが考えるがということだから、昨年一年間何にもやっていない。鳩山内閣のときではなかったわけでありますけれども、その昨年一年間に廃止の方法を具体的な、たとえば競輪等の施設をした、それを地方自治団体が償却する方法考えてやる、こういうやめるものはやめるに相当する段取りをつけなければならぬ、こういう点については通産省はどういうふうにお考えになっておるか。
  106. 川島正次郎

    国務大臣川島正次郎君) 地方財政に対する影響はきわめて大きいのでありまして、私どもとしては決して好ましい財源とは考えておりませんけれども、なるべく弊害を少くいたしまして、地方財源を確立するまではある程度やって行きたい、こう考えるのでございます。かりにやめるといたしましても、大体競馬にしても、競輪にしましても、施設は民間会社がやっておるわけであります。これをどう処置するか、ただやめっぱなしもできないのでありまして、いずれも地方団体と民間の施設会社との間には契約があるのでございますから、これらの処置をしなければ簡単にはやめることができないのじゃないか、こう考えるのであります。通産省ではまだその点については措置をしていない、こういうふうな意向のようでございます。
  107. 小林政夫

    ○小林政夫君 大ていそうだろうと思って、本来ならば商工委員会でやるべき問題なんでございますが、わざわざ文部大臣をもわずらわしてこういう射幸行為は好ましくない、こういう言明を当然されるだろうと思って、言明を要求したわけなんであります。そうして地方自治長官は今おっしゃるように、百億近い財源である。さなきだに赤字で困っておる地方自治団体として、なかなかこれをやめるということは言い切れぬのじゃないか、こういう困難な問題があるにもかかわらず、われわれが強硬に言うものだから、とにかく法案を通そうということだけのつもりで、やめますやめますということを通産当局は安易に答弁しておる、不誠意きわまる、もちろんわれわれはやめてもらいたい、やめるについては具体的な段取りをもって臨まなければいけない、総理大臣をお引きとめしておってもらったのは、以上のような経緯であります。従ってこういうよう穴、もう終戦後十年もたち、日本経済も地固めを経て相当これから落ちつきを取り戻すというときに、こういうような射幸行為による財源に地方自治団体が依存している、しかもそれが青少年、世道人心に与える非常な好ましからざる影響というものは、だれしも痛感しているわけでございます。どうか関係閣僚を督励されまして、一日も早くこれが廃止の方向に行くように推進を願いたいと思いますが、御所見のほどをお伺いいたします。
  108. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私も地方財政の影響が大きいので困ったものだと思って聞いておりました。射幸心を抑制するということは必要なことなんですからして、そういうような方向にできるだけ努力をいたしたいと思います。
  109. 館哲二

    委員長館哲二君) ちょっと先ほどの小林委員の御質問に対して林法制局長官から補足説明を行います。
  110. 林修三

    政府委員(林修三君) 先ほど小林先生の御質問に対してお答えをいたしました際に、実はちょっと御質問を取り違えてお答えをしたように思いますので、補足させていただきたいと思います。  先ほどの御質問の御趣旨が実は首班指名の場合の決選投票をやれるかというお話に主眼があったように伺ったものでございますから、その点についてお答えしたのでございます。あとから伺ってみますと、むしろ絶対過半数と申しますか、総議員の過半数を得なければ指名されない、こういうような制度にされるかというお話のように伺いました。そのあとの方でございますと、御承知と思いますが、憲法五十六条二項がございますのでこれは非常にむずかしい。さように考えます。なお研究を要しますけれども、一応お答えさせていただきたいと思います。
  111. 館哲二

    委員長館哲二君) 本日はこれにて散会いたします。  明日は正十時から開会することにいたします。    午後五時三十六分散会      ——————————