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国務大臣(
重光葵君) 御
質問の最初の部分からお答えいたしましょう。引揚問題はむしろ
交渉と離れてでも、これは
解決しなければならない問題であるというふうに
考えておるととは、たびたび申し上げておる
通りであります。ごのロンドンにおける
交渉の機会においてこの問題はまっ先に取り上げられておる、これも御承知の
通りであります。これはもうぜひごの目鼻をつけたい、こう思って進めておるわけでございます。しかしまあどの
程度の目鼻をつけたらばいいかというようなことは、これはやはり
交渉全体のかけ引きの問題にも
関係いたしますから、大体において私はこれは
全権にまかしておるわけでございます。しかしあくまで
考え方はそれで進めていかなければならぬ、こういう
態度をもって進んでおるわけでございます。
それから第二の漁民の問題、特に
ソ連との間の漁民の問題と別個に韓国との問題、これが日韓
関係の全局の問題と関連しておるのじゃないか、こういう大体の御感想での御
質問だったと思います。日韓
関係はどうしてもこれは正常化したい、またしなければいかぬ、こういうことはもうほとんど
日本として、
国民的にもこれは私は当然の
希望であると思います。最も近い隣国でありますから、この隣国との
関係を正常化したいということは当然のことであります。そうしなければならぬと思います。しかしこの問題は非常に私は順調にいっておったと思って喜んでおったのでございますが、昨今は必ずしもそうでないので、非常にこの点を私は心配をいたしております。そこでいろいろな
考え方がここにある。朝鮮としては単に漁夫の釈放を
人道の問題として扱っておるのでなくて、日韓両国の政治的の問題をもってこれを
考えておるのだという説も出て参るのであります。しかし
日ソ交渉をやるから韓国が漁夫を返さない、こういうふうな直接の
関係を持たせるような話は、当局者の間には
一つもまだございません。ただ北鮮との
関係を
日本はいろいろやっておる。北鮮は南鮮、すなわち韓国の敵である、だからそういうふうじゃ困るということはございました。この問題については議会を通じて十分
日本政府の立場を
説明をした経緯がございます。そういうことで韓国としてはこの問題について
日本政府の立場を誤解しておるということはないと思います。ただ、それはそれでありますけれ
ども、何だかそこにどうもまだ疑いを持っておるということは、これはあり得るわけであります。それでその疑いはこれを解くに努めております。そうして
漸次に
向うの誤解は氷解してきつつあるように私は観察しております。
中共の問題にしてもそうでございます。われわれといたしましては一番近い韓国との
関係をできるだけすみやかに正常化したい。またこれは何と申しますか、そうむずかしいことではないと、実は初めから
考えておったのでございます。ところが不幸にして両民族の長い間の
感情の問題もございましょう。これも非常に忍耐をもって進まなければ、急に今すぐ
解決ができるというような機運には私はないことを非常に遺憾とします。どうかして誤解は解き、またいい伝統は生かしてきて、双方の民族の非常に
関係のよくなるようにし向けていきたい。そしてこの正常化についてはいろいろなことがございます。
感情の問題以外に
利害関係の問題もございますから、それらの問題については、個々の問題としてはできるだけの妥協的
態度もってこれに臨もう、こう
考えている次第でございます。漁夫の問題については、ぜひともこれは
人道上の見地からいっても
解決をしてもらうように、この問題については
国会の決議もあったわけでございます。その御趣旨を十分体して、昨今も韓国の代表者に徹底的に
日本側の
意向を伝えて、そうして問題の
解決に資するように努力をしておる次第でございます。