○
木村禧八郎君 私は無所属クラブを代表いたしまして、ただいま上程の三
予算案に
反対するものであります。
反対理由は三つであります。
第一の
理由は、先ほど社会党の
吉田委員が指摘されましたが、この
予算はその
予算編成方針においては
自立経済と
生活安定をうたっておるにかかわらず、その
内容においては逆に、それとは全く逆に
日本の
経済自立と
生活安定を妨げるものになっているという点であります。現在終戦後十年にして
日本の
経済の最大の矛盾は、軍事
経済が
経済自立と
生活安定を妨げておる。軍事
経済と
経済自立と
生活安定、この三つが競合し合って、そうして軍事
経済、特に軍事
財政が、
防衛費がこれが
経済自立と
国民生活を圧迫し、妨げているという点にあります。いかに軍事
経済が
日本の
経済自立を妨げているか、この点を指摘いたしますれば、なるほど
昭和二十九
年度の
日本の輸出
貿易は十六億二百万ドル、輸入は二十二億五百万ドルになっております。金額としてはなるほどふえておりますが、これはその戦前基準の数量指数に直してみますると、戦前に対して
日本の輸出は僅かに三割五分であるのです。また輸入は七割四分であります。これは諸外国の例を見ますと、
アメリカは戦前に対して輸出は二四四%になっております。輸入は一九一%。イギリスは一六八%の輸出であります。輸入は九七%。フランスの輸出は一八一%、輸入は一二七%。西ドイツは輸出は戦前に対して一五五%、五割五分もふえておる。また輸入も一五一%で五割一分もふえています。イタリアにしましても、戦前に対して輸出は一〇二%、輸入が一八五%。にもかかわらず
日本は数量指数では戦前に対して三五%ですよ。輸入が七四%、輸入と輸出のこのギャップは特需によって一応埋めていたのでありますが、金額はなるほど物価が上りましたから輸出は十六億ドル、輸入二十二億ドルになっていますけれども、数量指数からいったら
日本の輸出は戦前の半分にも達しない。ここに
日本経済の非常に大きな私は欠陥があると思うのです。そのために雇用が増大しないのです。そうして
生産指数は戦前に対して一六九になっておる。昨年は平均六割九分も
生産はふえているにもかかわらず、輸出が戦前の三割五分ですから過剰
生産となる。失業が増大し、ここに
日本経済の重大なネックがあると思います。こればかりではありません。それでは輸出を妨げている原因は一体何であるか、それには
アメリカ、カナダ等から高い原材料を買うということや、あるいは
アメリカが
日本の
貿易を制限しているということや、いろいろありますけれども、一番の私は輸出を妨げている点は
日本の物価が高い、国際物価に比して高い、この点にあると思うのです。この物価高の最大の原因は何にあるか、いろいろあるでしょうが、私はこんな貧乏な
日本の
経済が不
生産的な
防衛費をこんなにたくさん使う
経済ではないのです。この
防衛費の支出、あるいは旧
軍人恩給費、不
生産的支出のために
日本経済は絶えず潜在的インフレに襲われているのです。
日本の
経済の基調の潜在的インフレです。そういう不
生産的支出があるから、いかに合理化によってコストを下げようと思っても、その
財政面から、軍事的
財政面からどうしても物価を下げ得ない、ここに問題があると思うのです。しかも今後は特需はだんだん減ってくる。一体これで
日本の
経済はどうやっていったらいいのです。
財政面からこの点に私は着目しなければ、いかにほかの面においてプラスがあっても
経済自立はできません。従って
経済自立をこの
日本の軍事
財政、これは
財政面ばかりじゃありません。
アメリカ軍が
日本の海域を接収している、また
日本の農地や何かを接収する、そういうために
日本の
生産がふえない。あるいはまた地方
財政なんかも
アメリカ軍事
財政の影響を受けております。特別会計においても軍事的負担は相当あるのであります。そういう不
生産的な支出が
日本の物価をどうしても下げさせない非常な大きな圧力になっている。今度の
予算はこの点について
努力が払われておらない。その結果として第二には
日本の
国民生活が惨憺たることになっております。
経済審議庁からお出しになる
国民生活水準を見ますと、消費水準はなるほど戦前を抜いておりますが、あの中身をしさいに検討してみれば、あの統計自体に問題があるのであります。
そういうことよりも現実に今
日本の
財政に現われている現象を見れば、いかにこの軍事
財政が
国民生活を圧迫しているかということがもうはっきりわかる。職がなくて血を売らなければ
生活できない人、職安へ行っても職がないので血を売ってかろうじて
生活している。完全
失業者は三月末現在では八十万を突破し、現在減ったといっても七十万以上です。不完全
失業者八百万、あるいは一千万をこえるであろうと言われている。ボーダー・ライン階級は川崎厚生大臣の説明によりましても千二百万、一千万人ぐらい、その中で救済されているのはたった百九十五万人。結核患者は
昭和二十八年の調査でさえ二百九十二万人、即時入院しなければならない人は百三十七万人もいるのに、三十
年度で病院のベットは二十一万しかない。
住宅不足も四十二万戸かりに建ったとしても、まだ二百五、六十万戸は足りないのであります。学校の校舎の不足は六百八十一万坪にも達しております。災害復旧も十分にできておりません。国土は荒廃している。こういう状態の下で一体今
日本は不
生産的な両
軍備に金を一銭一厘たりとも使い得るような
経済状態でありましょうか。(「そうだ」と呼ぶ者あり)にもかかわらず、この不
生産的な
防衛費に対してこれを減らす
努力を一つもしていない。逆にこれをふやす
努力をしているわけです。なるほど金額としては本
年度の
防衛費は千三百二十七億で前
年度と違わない、同じであると言っておりますが、昨
年度とその条件が全く違っております。今度の
防衛費は
日本の
防衛の画期的な質的な変化をこれは物語るものである。
アメリカのウイルソン国防
長官が、最近下院の歳出
委員会で行なった証言
内容が発表されたが、それによると、
アメリカの軍部が
日本の海空部隊、特に空軍の
強化を
計画中であることが明らかになったと伝えられております。しかも
日本は戦闘機、追撃機という自衛的見地のものから、さらに爆撃機という攻撃的なものへの転換を示し、
アメリカ軍の対日
政策の重大な変化であるということを読売新聞の坪川特派員が五月の三日の特電で打って来ております。そういう点からみても、との三十
年度に盛られた
防衛費というものは、これまでと質的に違っておりまして、
ジェット機中心の空軍中心の、そうして
防衛型から攻撃型への転換を示している。しかも
財政的には
ジェット機空軍は非常に金のかかるものでありまして、これまでよりも今後において非常に金のかかる
軍備になる。その礎石を三十
年度予算で築くという点が昨
年度と違うわけです。同じ千三百二十七億でも、質的に違います。それから昨
年度は特需が五億八千九百万ドルあった。
アメリカ援助と
防衛軍備計画とは密接な
関係があるわけです。MSA協定によっても、
MSA援助というものを当てにしておった昨年は五億八千九百万ドルの特需があって千三百二十七億円、今年は特需が一億六千九百万ドル減って四億二千万ドルになった。円に直すと六百八億円特需が減って、それで千三百二十七億円なんです。これからいっても、相対的に
防衛負担というものは相当大きくなっているはずです。しかも
アメリカからロス国防次官代理が参りまして、そうして
アメリカが
日本に兵器発注するかわりに、
日本の
政府の
防衛予算をふやして
日本の
防衛産業に発注せよということになって、それでこの
予算がふえた。そうしますと、今後は非常に事態が違います。今までは
アメリカの特需兵器注文というものは輸出と同じである、外貨獲得になるといって奨励しておった。ところがそれが逆に、今度
日本の
予算において軍需産業に発注しますと、これは外貨獲得にならない。それだけわれわれの身を食うことになる。そういうふうに、同じ
防衛費でも質的に変ってきております。また
日本に滞在している
アメリカ軍は減っております。その証拠には、
在日米軍の預金のドル払い込みをみましても、
昭和二十七
年度は四億三百万ドル、二十八年も四億三百万ドル、二十九年には二億三千五百万ドルになりまして、これから見ても、
アメリカ駐留軍の数が減っていることは明白であります。それにもかかわらず、
防衛分担金の
削減の交渉においてこれを主張し得なかった、まったく
自主性のないことであると思います。しかも先ほど社会党の
委員が言われましたように、後
年度においてたくさんの
防衛費をふやさなければならない。そういう約束をしてしまっている。この結果として
民主党の
公約は全く裏切られまして、
減税と
住宅建築、
社会保障の
充実、これを
公約にいたしましたが、これは全く裏切られて、
減税においては
資本蓄積と税負担の軽減を目的として
減税をやるということになっておりましたが、今の
日本の
資本蓄積の乏しいととは、
資本の
蓄積そのものが小さいこともありますが、それよりも
防衛費とか、あるいは会計検査院で指摘されておるような乱費とか、あるいは自由
経済のもとにおかれる二重投資、過剰投資、砂糖の設備なんか非常に過剰であって、しかも砂糖の
生産設備がストップしておるにもかかわらず、
自由党の
委員が指摘されましたように、四国製糖、富国製糖というようなものを、非常に過剰になっている上にまた新しく許す。こういうようなことで、いかに
資本蓄積の名目で
減税してみても、ほんとうに私は
蓄積にならない。しかもその名目によりまして、預金の利子に対する配当課税を
減税しまして、同じ二万円についても、動労所得者の
減税が二百五十円に対して、預金者の
減税は一年以下千円、一年以上二千円です。二万円の配当をもらう配当所得者は千円も
減税になる。きわめて不均衡な
減税であると言わざるを得ません。また
住宅建設につきましても、もし
政府の
住宅政策というならば、これは
政府資金をふやして公営
住宅をふやさなければならないと思う。ところが公営
住宅について計算してみますと、なるほど戸数については千三百二十四戸ふえております。一般
住宅の坪数は十万六百五十二坪減っているんです。そうしてまた第二種の方はこれはふえておりますから、差引七万二千坪減っているんです。これを一月十坪に計算すると、七千二百戸減っているんです。千三百二十四戸ふえていながら、坪数に直してみますと七千二百戸も減っている。私はこれこそ
民主党の
政策、
性格を最もよく現わしている、最も欺瞞的なものだと思います。また
社会保障費にいたしましても、結核対策費を減らすなんという
社会保障の拡充
強化なんかあり得ないと思う。また
生活保護費についても
予算は減っております。全体的にふえたのは五十二億にしか過ぎません。これでどうして
社会保障の確立と言えましょうか。
さらにまた中央では、一般会計はかりに健全といいましても、地方
財政に非常にしわ寄せしている。今度の地方
財政再建促進特別措置法案によれば、地方
財政はこれから
首切りをやり、増税をやり、新税をやり、徴税の
強化をやり、滞納処理をやる、こういうことになっておるのであって、中央、地方を通じてみますれば、決して健全な
財政とはいえないわけであります。これが私の
反対理由の第一であります。
第二は、
自由党と
民主党の
修正でありますが、これについては他の
委員も言われましたから、ただ私は重大な問題点だけを一つ指摘しておきたいと思います。それは
財政投融資を削って
金融債及び公債
発行にしましたが、
金融債に切りかえましたことによって、農林漁業
金融公庫、
国民金融公庫、中小
企業金融公庫、
住宅金融公庫、これは
金融債を
発行する結果利息がつくことになって、従来は
政府の無利息の資金を融通された結果、貸し倒れなんかあった場合にはそれをもって補填できた。ところが
衆議院の
予算委員会で問題になりましたが、なるほど本
年度はカバーできるかもしれませんが、来
年度これを続けていったら、こういう公庫は、貸し倒れなんかあったらこれは行き詰まってしまいます。この点は重大な問題です。こういう点はちっとも考慮されないで、そうして民自両党がこういう
修正をやった。これは来
年度に非常に禍根を残すと思います。で、さらにまた今度の
修正においては、いわゆるつかみ
予算であって、聞くところによると、水田政調会長のもとに、八十八億の増額に対して六百五十億も要求が殺倒して処理に困って、結局積算するひまがない、こちら立てればあちらの代議士の顔が立たないというので、結局つかみ
予算としてふやしているんです。こんな不健全な
修正というものはございません。この点は大政党ともあるものがこのような
予算修正をするということは、私は政党と言えない。前に尾崎さんが徒党と言いましたが、徒党の
予算修正だと言われても私は仕方がないんではないか、この点が今度の
予算を非常に不明朗にし、その背後に何だか何となく利権的においを感ぜしめる、疑獄的においを感ぜしめる、そういう点においてきわめて不健全だと思います。
第三の
反対理由は、今度のこの
予算は、また
予算修正は、三十一
年度に非常な禍根を残しておるということであります。
米価を一つ例にとってみましても、
米価の問題について梶原
委員が非常に重大な質問をされたと思います。それは河野農林大臣は消費者
米価を引き上げないと言うけれども、それは三十
年度産米において消費者価格を引き上げないのか、三十年会計
年度において消費者
米価を引き上げないのかという質問に対して、河野農林大臣はあいまいにしている、はっきりさせませんでした。これは来年四月一日から消費者
米価を引き上げるんではないかという予想が立つのであります。米穀
年度じゃありません。また各
委員からもすでに指摘されましたから省略いたしますが、三十一
年度の
予算編成については、これがもうインフレ
財政になることは必至である。長期
財政計画に対しての見通しはちっともない。そうして総合
経済六カ年
計画においても
防衛計画というものとの関連がちっとも示されておりません。これでは今後の
日本の
経済は一体どういう
方向に行くのか、さっぱりわかりません。しかも今度の三十
年度予算及び
修正を含めて、三十一
年度以後の
日本財政を非常に危殆に瀕せしめ、もう三十一
年度からインフレは必至です。これまでデフレで
国民を苦しめ、また来
年度はインフレで勤労大衆を苦しめ、そうしてその収奪の上に立って再
軍備を推し進める。その再
軍備は安全保障条約、MSA協定によって
アメリカの指導、隷属のもとに行われる。そうしてこの再
軍備をやった結果、
日本を守れるどころでなく、
日本を
戦争の渦中に巻き込んで、そうして破滅の道へのみ行く危険もあるような
日本の
防衛は、全く自主的
防衛に役立たない。そういうようなもののためにこれまで申し上げたような大きな
国民生活の圧縮と
自立経済の
犠牲というものを払っている。こういう
性格を持つ三十
年度予算案に対しては、われわれは絶対に
賛成することはできないのであります。これをもって
討論といたします。(
拍手)