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1955-06-27 第22回国会 参議院 予算委員会 第35号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年六月二十七日(月曜日)    午前十時三十七分開会   —————————————   委員の異動 本日委員西川弥平治君、小澤久太郎 君、木村守江君及び梶原茂嘉辞任に つき、その補欠として秋山俊一郎君、 泉山三六君、雨森常夫君及び田村文吉 君を議長において指名した。 同日委員中山福藏君、大和与一君、松 浦清一君及び曽祢益辞任につき、そ の補欠として梶原茂嘉君、竹中勝男 君、相馬助治君及び東隆君を議長にお いて指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     館  哲二君    理事           池田宇右衞門君            石原幹市郎君            西郷吉之助君            豊田 雅孝君            佐多 忠隆君            吉田 法晴君            松澤 兼人君            堀木 鎌三君            木村禧八郎君    委員            秋山俊一郎君            伊能 芳雄君            泉山 三六君            左藤 義詮君            佐藤清一郎君            田中 啓一君            西岡 ハル君            堀  末治君            安井  謙君            吉田 萬次君            片柳 眞吉君            梶原 茂嘉君            小林 政夫君            田村 文吉君            高木 正夫君            廣瀬 久忠君            溝口 三郎君            秋山 長造君            小林 孝平君            高田なほ子君            永岡 光治君            湯山  勇君            東   隆君            相馬 助治君            田中  一君            永井純一郎君            石坂 豊一君            深川タマエ君            武藤 常介君   国務大臣    大 蔵 大 臣 一萬田尚登君    文 部 大 臣 松村 謙三君    厚 生 大 臣 川崎 秀二君    農 林 大 臣 河野 一郎君    通商産業大臣  石橋 湛山君    運 輸 大 臣 三木 武夫君    郵 政 大 臣 松田竹千代君    労 働 大 臣 西田 隆男君    建 設 大 臣 竹山祐太郎君   国 務 大 臣 大久保留次郎君    国 務 大 臣 川島正次郎君    国 務 大 臣 杉原 荒太君    国 務 大 臣 高碕達之助君   政府委員    内閣官房長官  根本龍太郎君    内閣官房長官 松本 瀧藏君    法制局長官   林  修三君    人  事  官 入江誠一郎君    人事院事務総    局給与局長   瀧本 忠雄君    経済審議政務次    官       田中 龍夫君    経済審議庁次長 石原 武夫君    経済審議庁計画    部長      佐々木義武君    大蔵省主計局長 森永貞一郎君    大蔵省主計局次    長       正示啓次郎君    大蔵省主計局次    長       原  純夫君    大蔵省主税局長 渡邊喜久造君    文部政務次官  寺本 廣作君    文部省初等中等    教育局長    緒方 信一君    厚生省保険局長 久下 勝次君    農林大臣官房長 安田善一郎君    食糧庁長官   清井  正君    郵政省郵務局長 松井 一郎君    郵政省経理局長 八藤 東禧君   事務局側    常任委員会専門    員       野津高次郎君    常任委員会専門    員       長谷川喜作君    常任委員会専門    員       正木 千冬君   説明員    厚生省国立公園    部長      森本  潔君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十年度一般会計予算内閣提  出、衆議院送付) ○昭和三十年度特別会計予算内閣提  出、衆議院送付) ○昭和三十年度政府関係機関予算(内  閣提出、衆議院送付)   —————————————
  2. 館哲二

    委員長館哲二君) これより本日の委員会を開きます。  昨日の石原君の留保されました、厚生大臣並びに建設大臣に対する質疑をお願いすることにいたします。
  3. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 昨日留保いたしました、厚生大臣建設大臣に対する質問を続行いたしたいと思います。  まず厚生大臣に、主として健康保険関係で承わってみます。健康保険法の一部改正、その他一連社会保険法改正提案されておるようでありまするが、一向審議はあまり進んでないようであります。まず厚生大臣に伺いたいのでありますが、これらの改正案については社会保険審議会社会保障制度審議会、いずれも反対答申が出ておるのでありまするが、そういう答申を一切無視されて今回これらの法案を出したという気持について、まず厚生大臣から。
  4. 川崎秀二

    国務大臣川崎秀二君) 今回の健康保険法改正並びに料率引き上げにつきまして諮問をいたしたのでありますが、社会保険審議会においては、労資の双方から非常な強い反対がありました。審議の過程におきましては、学者の大部分並びに中立委員等は、政府原案そのものでは十分とはいえないけれども、これに若干の修正を加えて国会に提出することを妥当とするという意見相当強く出されたのでありますが、委員会構成関係からして、労使双方委員の数の方が多数でありましたために総会結論としては一応反対結論が出たわけであります。保障制度審議会の方は、料率引き上げはかけませんでしたが、総会結論としては、政府考えておるものに対しては反対であるが、標準報酬ワクを若干修正をするということについては、考慮の余地があるという附帯条件などもついておりまして、これらを見回しまして、結果、標準報酬ワクの頭打ちを七万円といたしておりましたものを、四万八千円と、大幅に引き下げまして、提案をいたしたものでありまして、決してこの両審議会意見を全部無視したということではなく、大体においてその意見の一部分を入れまして提案をいたしたものであることをお断わり申し上げる次第であります。
  5. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 しかし両審議会委員の中には、われわれ諮問を受けて、諮問一切無視されて、こういうことをされるのでは委員をやめたいというような強硬な意見をもっている人すらあるくらいであります。そこでこれらの諮問機関意見を一切無視してまで、こういう法案を出しておられるのでありまするが、これによって生み出すといいまするか、出てくる金は一体どのくらいになっておりますか。
  6. 川崎秀二

    国務大臣川崎秀二君) 料率引き上げが二十五億であり、今回の改正案に関連いたしましては、六億ばかりの費用が出ますから、三十一億とみていただければけっこうであります。
  7. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 ただいまの三十一億という金は、厚生保険特別会計に入る金が三十一億ですか。そんなたくさんの金が今度の健康保険法改正で出てくるのですか。私の承知しているのでは、そんな金ではないと思うのでありますが、間違いございませんか。
  8. 川崎秀二

    国務大臣川崎秀二君) 科率引き上げが二十五億でありますから、科率引き上げは、保険法改正を伴わずして実施をいたしますが、健康保険財政といたしましては、三十一億の金が出るわけであります。
  9. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 そこで政府におかれましては、今回こういう一切の諮問機関答申まで無視されて、こういうことまでやられたのでありまするが、そのほかに、一体健康保険会計においてまだまだ相当の、整理といいますか、会計自体で私は生み出せる金が相当あるのじゃないか、こう思うのであります。なぜこういう大きな赤字健康保険に出てきたかというような根本原因を究明していくことによって、相当のものが出ると思うのでありますが、こういうことについて、厚生当局としてどういう努力をされているか。また努力をされたかということについて伺いたい。
  10. 川崎秀二

    国務大臣川崎秀二君) 御承知のように、今回健康保険赤字対策といたしましては、これほどの大きな赤字が出てきた原因医療給付費にあるのでありまするから、従ってわれわれは、この医療給付費がこれほどふえてきたところの原因というものについて、深く探究をしてみまして、もとよりその大きな原因医療の機会というものが非常に大きくなっていること。すなわち国民早期治療ということに目ざめまして、病気になった場合において、なるべく早く治療をして、自分の健康を保とうという考え方が太くなってきたということが大きな原因であり、その原因は私は決して悲しむべき原因ではなく、日本が次第に福祉国家の理想に向って邁進する途上におきまして、当然のことであろうと考えておるのであります。従ってこういう医療給付費が多くなってきたことにつきましては、もとよりセーブしなければならん面は、たとえばその大部分原因を占めておりまする肺結核治療に対する新高貴薬使用、すなわちストレプトマイシンであるとか、あるいはパスであるとかいう高貴薬健康保険医によって使われまして、そのためにふえた率が二八%一という数字に上っております。二、三年前まではこういう抗生物資をもって健康保険財政が占めておりまする比率はわずかに一%八であったのでありまするが、昨年に至って二八%一という三十倍に近いところの数字が出てきた原因を見ますると、このことについて深い考慮を払わざるを得ず、これをなくすというわけには参りませんから、従って、たとえばこれらの新高貴薬使用については、最近これにかわる新しい薬が、またヒドラジットだとか、あるいはパスだとかいう併用療法が勘案をされておりますので、そういうことを進める一方、あるいは保険医不正受診あるいは不正請求ということに対してメスを入れまして、相当効果をあげておることも御承知通りであります。しかしながら、根本議論になりまするけれども、これほどの医療給付が増大をしてきたということは、根本的には決して悲しむべき現象ではなくして、労働者早期治療ということが行き届いたということに相なりますれば、その赤字に対しては国が責任を持つことが第一義であろう、こう私は考えまして、国費負担、並びに国の直接責任において負担すべきものを、赤字全部含めて七十億の責任を負うことになったのであります。国家が直接負担したのは十億でありますが、昨年の赤字四十億と、本年の赤字二十億は融資によって補う。従って赤字全体百億のうち七十億まで国が責任を負った以上は、あとは一つ被保険者においても負っていただきたいという観点から、健康保険法改正を待たずして実施のできる料率引き上げ二十五億と、しこうして保険法改正によって費用を増加しまするものが六億、入れて百一億の費用を稔出いたしたのが今回の対策であります。従って、厚生省としても何もいたしておらぬのではなしに、国が責任を負うことと、一方不正受診不正請求に対しましては厳重なる監査をいたし、その効果も一月、二月以来相当に出ていることもつけ加えて申し上げておきます。
  11. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 文化が進み、社会保険が向上すれば、だんだん医療も向上してくるというのは、私はこれは当然であり、今厚生大臣が言われたように決して悲しむべき現象でもない、むしろ幸福な現象と思うのでありますが、やはりそれに即応して、保険の機構であるとか、医療組織についても考えていかねばならぬと思うのであります。ことに結核の話が出ましたが、結核あとから私はもう一回触れたいと思いますが、先般のこの委員会において、私は入院給食問題について少し触れてみたのでありまするが、一体入院給食にどのくらいの費用を総額使っておられるか、ここで聞いてみたいと思います。
  12. 川崎秀二

    国務大臣川崎秀二君) 入院患者に対する給食は、健康保険制度実施以来認められておったものでありますが、昭和二十五年九月以降給費の内容を改善するために、特に給食一定限度以上のものに対しては、入院料支払い点数引き上げることといたしまして、いわゆる完全給食実施をいたしております。これらの費用を申し上げます。
  13. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 総額でよろしいです。
  14. 川崎秀二

    国務大臣川崎秀二君) 給食に対する費用は、本人の分の入院費負担三十八億九千四百万円、家族の分が五億五千八百万円で、合計いたしまして四十四億五千二百万円となっております。
  15. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 入院給食のために費されておる金が約四十四億五千万円、私は入院給食が、全部これはいかぬというのではありませんが、この四十四億五千万円というのは、患者入院してそこでする食事代でありまするが、これは相当膨大な金ではないかと思います。そこでただいま厚生大臣も言われたが、最近また完全給食完全看護というようなことが言われておるのでありますが、これはどういうことでありますか。
  16. 川崎秀二

    国務大臣川崎秀二君) これはただいま途中まで申し上げたのでありますが、昭和二十五年九月以降におきまして、給与内容を改善するために、特に給食一定限度以上のものに対しましては、入院料の支払に点数引き上げる、これが完全給食といわれることになりまして実施をされておるのでありますが、これに要する経費は、さらにただいまの給食全体の経費の中にはありまするが、完全給食として実施をいたしておりまするものは、五億六千五百万円というような数字に上っております。
  17. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 患者入院すればどこでも完全給食というのはあるのですか。
  18. 川崎秀二

    国務大臣川崎秀二君) 二千四百カロリー出すところだけが完全給食という形になっておることをつけ加えて申し上げます。
  19. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 そうすると、どこの病院でも完全給食というわけじゃないのですね。
  20. 川崎秀二

    国務大臣川崎秀二君) そういうわけであります。
  21. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 そうしますと、患者によれば、第一、病院給食のないところもあり、普通給食のところもあり、またそういう完全給食あるいは完全看護というような名前がつけられて、そういうところで、今のお話では完全給食には五億六千万円使われておる。完全看護のためにどのくらい使っておりますか。
  22. 川崎秀二

    国務大臣川崎秀二君) 完全看護に要する費用は、本人の分の入院費が三億五千七百万円、それから家族の分の入院費が四億一千三百万円という数字になっております。
  23. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 一体保険財政が今非常に赤字でつぶれるかどうかといって大騒ぎをしておる、国家から毎年十億も投じてやらねばならぬというようなときに、こういうどこへ入ってもある制度でなしに、ある病院に入ればあるというような完全給食であるとか完全看護であるとか、こういうことに、完全給食に五億何千万円、完全看護に四億幾らというような莫大な金が使われているというようなことは、私はこの保険財政検討の上において、こういうことで果して内容をよく検討して、しかも国庫の方の一般負担をお願いしたいということが言えるかどうか、非常に疑問に思うのでありまするが、この点どうでしょうか。
  24. 久下勝次

    政府委員久下勝次君) 私からお答えを申し上げます。もともと完全看護とか完全給食とかいう制度を認めましたのは、まず第一に完全給食という観念は、従来の給食費では患者に対して十分な栄養が与えられないということが、実績からも明らかになりましたので、大体患者に一般的に必要と考えられまする二千四百カロリー以上を出しますためには現在の程度、すなわち普通給食に比較いたしまして三点だけ支払いを増してやる必要がある、こういうことが考えられましたので、その必要経費を支払っておるわけでございます。一方におきまして、完全看護と申しまするのは、ただいま認定をいたしておりますのは、患者四人に一人の看護婦がいるというようなことで、これは言葉をかえて申しますれば、十分な看護が一面に行われると同時に、半面におきまして、いわゆるつき添い看護料支払いがなくて済むものでございます。そういうためには、やはり病院としても人件費その他の費用が必要でございまするので、その分として一日看護料四点を増して支払っておるようでございます。従いまして、これは確かに保険経済の面の負担にはなっておりまするけれども、患者の利益のため、あるいはつき添い看護料の節約のためというような面を考えまして、こういう制度が行われておるのでございます。
  25. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 私は保険財政が非常にゆとりがあって黒字であるとか、あるいは国家財政相当ゆとりのあるときなら、一向こういうことは問題にしたくないのでありまするが、国の財政も非常に窮迫を告げて、あらゆるものを削っておる。この前も申し上げたのでありますが、三千万人のまだ未加入を持っておる国民健康保険等に対しては、今回の修正で幾らか増額されましたけれども、これを一方では後退さして、しかもこういうずさんきわまる、不公平きわまる内容を持っておる健康保険特別会計の中にこういう形で温存されておるということについては、私は満足できないのであります。大蔵省のいろいろの査定される方面におきましても、一般査定はきわめて厳重でありまするが、一たびこういう特別会計の中に入りまするというと、こういう不公平な、どの患者がどの病院に入っても給与されるようなものならば、これはまだいいのでありまするが、一部の病院だけが完全給食であるとか完全看護であるとかいうようなことを行なって、きわめて不公平であります。しかも、そのために相当莫大な金が使われておる、こういう会計を見のがしておくわけにはいかないのであります。これは大蔵大臣はどういうふうにお考えになりますか、大蔵大臣からも一つ聞いておきたいと思います。こういう会計をこのまま見のがしておくわけにはいかないと思います。
  26. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) ごもっともなことで、できるだけ公正を期したいと思っております。
  27. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 ごもっともなことで、できるだけ公正を期すと言われましたが、今提案されておるものは、こういうものが提案されておるのでありまして、しかも一般会計から十億も健康保険会計に入れる。しかも社会保険審議会あるいは社会保険制度審議会があげて反対をしておりまする健康保険なり一連社会保険改正案を、一切の諮問機関答申を無視して、厚生大臣はここに提案されておるのであります。その法律改正によって出てくる金というものは、わずか四億か五億の金である。そういう四、五億の金を出すために、あらゆる公的諮問機関答申を無視する。また三千万の未組織大衆を持っている国民健康保険に対しては、これを前年度より後退さしたような予算原案を出して、しかも一方にはこういうずさんきわまる大きな特別会計を持って、一般会計から十億、今後毎年十億もこれを入れていこうというような組み方の予算が出ておるのであります。これに対してはもう少しまじめに検討してもらわなければならぬ。これは予算委員会ばかりじゃない。国民全体がやはりこういう問題を真剣に検討しなければならない。特別会計の陰に隠れてこういう不公平きわまるずさんな予算があるということに対しては、私は満足できない。ただいまの大蔵大臣の善処するというくらいの答弁では私はいかないと思います。
  28. 川崎秀二

    国務大臣川崎秀二君) 今、完全看護内容並びに完全給食が一部分実施されておって、大部分実施されないではないか、それから国民健康保険との間に非常な落差があるじゃないか、こういう意味の御質問でありました。私は根本論だけお答えいたしたいと思うのであります。  すなわち、わが国の保険財政はもとより、社会保険はもとより、国民健康保険を今後中核として発展していかなければなりませんが、それ以前において、中小企業者並びに中小企業労働者というような、非常に零組な職域で、しかも政府の直接手を借りなければならぬような立場に立っておる者に対して、より堅実な、より完全なる給与体系というものを整えていく必要が十分にあると思うのであります。私の考えは、今後国民健康保険健康保険の二本建によって、国民健康保険もまた将来健康保険水準まで引き上げることについては絶対に異論もありませんし、またそのような努力を試みようと思っておりまするが、完全看護あるいは完全給食ということ自体は、決してこれを非難すべきものではなく、その水準に向って大いに努力をすることが為政者としての私は立場であろうと思うのであります。ことにこれらの問題については、先進国イギリス等におきましても、先年の総選挙の前に保守労働両党の間におきまして、健康保険入院をしておる患者給食問題については非常に激しい論争があったのでありますが、なお保守党でもやはり完全給食完全看護方向努力すべきが必要であるということから、健康保険入院患者に対しては一部削減すべし、すなわちある期間がきたならば完全給食を打ち切るべしという議論があったにもかかわらず、今日保守党大蔵大臣をしておるバトラーはこれに反対をいたしまして、逆にその制度を残したような形があります。私といたしましては、この問題に関する限りは、やはり今日の健康保険財政は非常に窮屈ではありますが、この方向努力すべきが、やはりわれわれの社会保障制度充実の根拠であるというふうに感じておりますので、これがために完全看護、あるいは給食に対する費用を打ち切ろうという考え方には同意することができないのであります。
  29. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 私も社会保障制度を推進し、これを充実することについては人後に落ちないつもりであります。私も社会保障制度を最も熱心に研究検討をしておる者の一人であります。今あなたは英国の例を言われたけれども、英国においても保険財政危機に瀕し、国家財政が非常に危殆に瀕したときは、労働党ですら党の運命をかけ、内閣運命を賭しても、一部負担までやって保険財政危機を救い、国家財政危機を救うという努力をしたではありませんか。私は今の日本財政考え、しかも今の保険財政健康保険財政がつぶれるかどうかというような、ああいう大きな赤字問題が起きているときに、このくらいの努力をすることがどうしてできないのでしょうか。しかもまた、先般ある程度の一部負担をやるかどうかということについても、一部負担は後退であるからそういうことはやらないというような考えをあなたはとっておられるのでありますけれども、一部の不公平なところだけ高い水準までいって、全体がやはり上ってこなければ私はいかないと思う。全体の国民健康保険なんかを非常に虐待しておいて、こういう一部の完全給食とか完全看護とか、このごろ聞けば、完全寝具ということまで厚生省検討されていると聞いておるのでありますが、言語道断だと私は思うのであります。こういう考え厚生大臣は捨ててもらわなければならない。一部非常に曲った高い水準ができておるものだけをそれを温存していくことは、社会保障の推進であるとか、日本社会保障を高い水準まで持っていかなければならないという考えは非常に間違いだと思っておるのですが、どうでしょうか。
  30. 川崎秀二

    国務大臣川崎秀二君) 今回、健康保険財政については非常に検討を加えておりまして、あるいは七人委員会社会保険審議会結論が、今後患者の一部負担をも実施すべしという議論になるかもしれないという予測をしておる面もあるのであるのでありますが、しかしながら社会保障制度全体を推進していく建前からいたしますれば、やはり国が一応の責任を持つという体制を示さなければ、患者の一部負担あるいは保険料率引き上げということは納得してもらえないのじゃないかと思うのであります。  御指摘のようにイギリス労働党も一部負担実施いたしました。しかしその一部負担実施する以前において、彼らは一部負担の三倍に当るだけの経費国庫において負担をいたしておるのであります。日本ではまだ国庫負担ということは健康保険に対して行なっておらないのでありますが、今回とりました措置すらも私は十億の低額負担ということでは非常に不満足なのでありまして、やはり一定率の負担をなし、その上において患者にも負担をさせるということになりますれば納得がしてもらえ、また社会保障は終局的において相互負担、社会連帯の観念でありますから、御指摘のような方向に進むことは当然でありますが、どちらが先かといえば、やはり今日非常な赤字を出しておる上においては、国がまず第一に負担をするという誠意を示すことが、社会保障制度を推進する行き方ではないかと私は感ずるのであります。
  31. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 国が負担する誠意を示すということについては、われわれはもちろん賛成でありますが、その前にこういう大きな不始末が出ておる特別会計においては、みずから自粛自戒をしなければいかんということを私は申し上げたのであって、その点は厚生大臣も異存はないだろうと思う。大いに自粛自戒の研究をしてもらいたい。  それから保険料の滞納は今どのくらいありますか。
  32. 川崎秀二

    国務大臣川崎秀二君) 過年度分の十七億八千四百万円、それに二十八年度以前のものをも含めまして、今日三十五億ほどに上っております。
  33. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 私は昭和十九年あたりからずっと加えていくと約百億と聞いておりますが、違いますか。
  34. 川崎秀二

    国務大臣川崎秀二君) この数字に間違いがありません。もう少し精細に申し上げますと、二十八年度以前の分の過年度分が十七億八千四百九十八万六千円、前年度分、すなわち二十九年度分が十七億九千五百六万円という数字になっておりまして、両方合わせますと三十五億八千四万六千円、こういう数字になっております。
  35. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 要するに滞納も非常に多いし、健廉保険会計の中に相当な私はむだもあるということをここに申し上げて、時間がありませんので、次の問題に触れたいのでこの程度にいたしますが、まだまだ健廉保険会計の問題については今後研究を続けていきたいと思います。  次に、国立公園の問題について触れてみたいと思うのでありますが、十九も国立公園ができて、しかもその国立公園におる者は常勤労務者が七名で、人夫が七十五名だと聞いておるのですが、そんなものですか。
  36. 川崎秀二

    国務大臣川崎秀二君) 公園部長から申し上げます。
  37. 森本潔

    説明員(森本潔君) お答えいたします。国立公園の管理の職員としましては、厚生省所管の集団施設九名、その他公園一般の管理に四十八名の人夫を配しておりますが、本年度の予算におきまして、それをいずれも常勤に切りかえることにいたしました。なおそのほかに集団施設の九名は委託費の職員ということに切かえることにいたしました。
  38. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 十九も国立公園ができて、今言われたようにわずか何名かの常勤者、しかも本年度の予算というものは三千六十万しかとれていない。これはもう国立公園の問題は、予算が何年やってもわずかしかとれないので、私はこれは保健休養施設として厚生省が所管しておりますけれども、一面また国土管理というような面からいえば、むしろ建設省がこれを所管して、そうして有料道路であるとか、道路五カ年計画に即応してやるとか、治山治水等も関連してやれば、かえって予算がとれまして、国立公園行政が伸びるのではないかと思うのでありますが、厚生大臣並びに建設大臣から私が今申し上げたような点について御意見があったら承わっておきたい、こんなことでは国辱公園になってしまう。
  39. 川崎秀二

    国務大臣川崎秀二君) ただいま建設省の方にいっそのこと移したらどうかという御意見のように承わりましたが、今年度の予算は、確かに補助金は削減されるというような方針のために、直接国が手を下すような形になったのでありまして補助金が削減をされたかわりにこういうやり方をいたしましてカバーしようということでありますから、そう直接に大きな打撃を受けることはないと私は考えております。もとより国立公園の整備ということは、国民の保健休養のためのみならず、観光の目的を持って、きわめて重大な問題でありまするから、今後におきましては十分厚生省としても整備に努力いたしたいと思っておる次第であります。
  40. 竹山祐太郎

    国務大臣竹山祐太郎君) 建設省としては、都市計画その他の道路の問題等とも関連いたしておりますので、公園全体に対して御趣旨のように努力をいたしたいと考えております。
  41. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 次に水道法が近年非常に問題になりまして、これに明治二十二年の水道条例そのままで一向改正されていない。しかも一本水道を作るには厚生省、建設省、大蔵省、自治庁と、四つの省に頭を下げて回らなければならぬので、地方でも非常に困っておる。そこで先年から何とか水道法というものをまとめて、もう少し出て回る役所を少くできるようにならぬかということで検討が続けられておるのでありまするが、一向まだ役所のなわ張り争いで水道法案が出てこないのであります。しかるに一方簡易水道というものは非常な勢いで今日普及をいたしまして、簡易水道を初め一般水道等から場合によれば集団赤痢というようなものが各地で出ているようであります。これは幾多の事例があるのであります。そこで水道条例、水道法というようなものを、今日も明治二十二年のままの法律でこれを放置しておくことは私はできないと思うのでありまするが、それが今日に至るも、役所のなわ張り争いでいまだ水道法案が日の目を見ないということはまことに残念に思うのでありますが、これも厚生大臣及び建設大臣から水道法案が今どういうふうになっておるか、出す意思があるのかないのか、ここで承わっておきたいと思います。
  42. 川崎秀二

    国務大臣川崎秀二君) 厚生省としては昨年第十九国会におきまして政府提案として上程審議された経過もありまして、そのまま引き続き提案したい意向でありましたが、その後建設省におきましては諸般の情勢から判断して、今国会には提出する意思のないことを通告されて参ったのであります。その間法案そのものに対するまだ調整ができませんために、提出が不可能な状態にありますけれども、なお今後建設省と連絡をいたしまして、できるだけ早い機会に水道法案を体系づけて提出いたしたい意向でございます。
  43. 竹山祐太郎

    国務大臣竹山祐太郎君) お話のように、卒直に申し上げて役所の所管争いの印象を与えました水道法案は、私も就任以来そういうことのないようにこの機会に国会に出しまして、もはや議論にならぬように、よく役所の中ですっかりこなして提案をいたしたい。同時にある意味においては予算関係案でもありませんので、一応おくらせましたことは、はなはだ申しわけないと思いますが、熱意を持ってこの事態の解決をいたしたいと努力をいたしておる次第であります。
  44. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 水道法案、これはもう国民が非常に熱望しておるものでありまするし、先ほど言いましたように一本の水道を作るために四つも五つも役所を回らねばでき上らないというようなことで、国民は非常に迷惑をしております。しかも衛生管理その他の面から集団赤痢であるとか、そういうものが非常に続発しておるというような次第でありますので、これは一刻も早く水道法を私は出してもらいたいと思うのでありまするが、両大臣に重ねて大体この国会で会期でも延長になれば出す意思を持っておるのかどうか。もしなかなかまだ出せないということであれば、一体どの点が問題になって出せないのかということをあわせて承わっておきたいと思います。
  45. 川崎秀二

    国務大臣川崎秀二君) 昨年の十月でありましたか、厚生省と建設省の間に打ち合せを行いまして、セクショナリズムに流れないようにお互いになわ張り争いにならないように自粛自戒をいたしますとともに、覚書をかわしまして施設の工事については建設省が今後責任を負う。それ以外のことはすべて厚生省において取り扱うということの覚書をかわし、その後今回の予算編成の途上におきましてもこのことを確認し合ったということを先般申し上げたわけでありまして、その方針に基いて整備をいたしておりまするから話し合いは十分について、近く責任ある水道法案を出せると思います。今国会はどのくらいの会期になりまするか、いまだ予測ができませんので、今国会ということに間に合うかどうかはわかりませんけれども、なるべく近い将来の国会に提案することだけは確言申し上げておきます。
  46. 竹山祐太郎

    国務大臣竹山祐太郎君) なるべくすみやかに提案をいたす努力をいたす  つもりであります。
  47. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 最後に、運輸大臣は見えておりますか。
  48. 館哲二

    委員長館哲二君) 運輸大臣ですか。今日は要求がなかったものだから……。(「皆来ているはずだから呼んでごらん」と呼ぶ者あり)
  49. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 運輸大臣が来るまでの間、それじゃ一言だけ主計局長に伺っておきたいのでありますが、先ほどおられたかどうか、健康保険特別会計ですね、これはもうきわめて私は内部において不公平なものがあり、一般会計から十億も毎年取ってこようというのでありまするから、よほど自粛自戒してもらわねばならない。こういう会計を持っている予算があるということについては、私はもう予算全体に対して非常に信憑力を疑うのでありまするが、たとえば一例をあげれば、完全給食完全看護というようなことにこれを合せれば、やはり十億ぐらいかかる。それから入院給食に四十五、六億も金を使っておる。これは全部がいかぬというのじゃありませんけれども……。それからまあ先ほどは言わなかったけれども金冠に五、六億も使っている。こういう自粛すべき金が、これは全部がいかぬというのじゃないですよ、若干一部負担を取るとかいうことでもやれると思います。こういう自粛すべき面が相当あるにもかかわらず、一切たな上げにして、しかも他の社会保険の方の予算を削ってやっているというなことでは、私は大蔵省の査定を信頼するわけにいかない。これは大蔵省の査定というものは生殺与奪の権を持っているので、そこを通らなかったらなかなか事務的予算はだめなんですから、よほど真剣に検討してもらわなければならんので、主計局長、健康保険特別会計に対して、あなたがよく審査をしたのかどうか、どういう感じを持っているのか、今後も厳重に一つ審査をするのか、あなたの感じを聞いておきたいと思います。
  50. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 健康保険赤字問題につきましては先ほど厚生大臣からもお答えがございましたが、私どもといたしましても、この七十三億の赤字、これがどういう理由で出たか、それにつきましてはいろいろ心配をいたしておる問題もないわけじゃないのでございまして、この七十三億につきましては、差しあたり本年度補填の方策を講じたのでございます。今後の健康保険特別会計の運営につきましては、さらにいろいろと考えなくちゃならぬ問題も少くないかと存ずる次第でございまして、私どもといたしましても厚生省当局と十分相談をいたしまして、一そうこの運営が適正化されることにつきまして努力をいたしたい、さように考えておる次第でございます。
  51. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 それじゃ運輸大臣への質問をもう一回保留して……。
  52. 館哲二

    委員長館哲二君) 次に永岡光治君。
  53. 永岡光治

    ○永岡光治君 まず労働大臣にお尋ねいたしますが、この前の総括質問の際に、私は完全失業者の吸収についてどのような具体策を持っておるかということをお尋ねいたしたわけでありますが、ごくあらましを承わったのでありますけれども、まだ若干私は……若干というよりは非常に大きな疑問を持っておりまして、そのときも、一般質問の際につまびらかにしたいということでこの一般質問に譲っておるわけでありますが、お尋ねしたいことは、完全失業者、労働省で把握されておるところの完全失業者の分布状況、これは各都道府県別にどういうように把握されておるか。しかもこれに対して、この吸収対策として具体的にどのような事業を行おうとしておるのか、それも都道府県別に示していただきたい。その事業別にさらに裏づけとしての予算です、これもあわせて御報告を願いたいと思うわけであります。
  54. 西田隆男

    国務大臣(西田隆男君) お答えをいたします。  都道府県別の対象事業失業者吸収状態ということですが、非常にこまかな統計になりますので、とりあえずここでの御答弁は四月以降の求職者数それから就職者数を、これは集計的に申し上げて、一、二の例を引きたいと思います。  四月におきまする失業者の月間登録者数が四十二万八百四十四人、五月が四十二万三千二百九十七人となっております。これの職業安定所に出頭して参りました実績が、四月が三十二万九千六百五十四人、五月が三十三万三千五百三人となっております。そうしてこの出頭者のうちでその日に就職いたしました者が、四月が二十五万七千八百六十七人、五月が二十六万二千二百二十六人となっております。この中で内訳いたしますというと、労働省で計上をしておりまする失業対策事業費の失業対策事業、これに就労いたしました者が四月十八万四千三百七十二人、五月が十八万九千五百八十七人、こうなっております。  このほかに公共事業その他の失業対策事業、これに就労いたしました人間が四月が七万三千四百九十五人、五月が七万七千八十五人、こうなっております。  それから特に例を引いてみますというと、東京都におきましては、四月の出頭数が一日平均でございますが、四万七千七百二十三人、就労した者が平均四万六千九百人、あぶれました者が平均で東京都内全体で八百人から千人程度であります。愛知県の例を引きますというと、これは就労した者が一万人で、出頭いたしました者が一万ちょっと数を超しております。  こういう程度で、大体において職業安定所に登録されておりまする労務者はある程度の吸収がされております。これも四月、五月、六月は御承知のように暫定予算でありまして、労働省としての予算は非常に少くなっておりますが、七月以降本予算が通過いたしました場合においては、この前御説明申し上げましたように、失業対策として労働省に計上をいたしておりますものだけでも二十二万人の就労を目ざしております。その他公共事業、いろいろ加えますと、二十九年度よりも三十年度は十四万人程度の就労増加を考えております。従って、全国的に見ましたあぶれの実数が四月は五万八千八百九十人、五月が六万九百八十五人となっております。現在安定所に出頭いたしまして、その日に職を得られなかった人々を吸収する以上に、現在では多少の増加がありましても、三十年度の失業対策事業としては就労をさせ得るような実態になっております。詳細は資料で差し上げたいと思います。
  55. 永岡光治

    ○永岡光治君 ただいまの御答弁では、こまかい資料がないので私はさらに質問を続けることを差し控えたいと思うのでありますが、ただ非常に残念に思うことは求職者数がこれはすべての完全失業者の数でないということであります。たとえば大都市の職業安定所における求職者数、これはあるいは相当程度の者が就職者として完全失業者の中から出てくると思うのでありますが、そういう制度のない地方の完全失業者というのは、ほとんどそのまま、あぶれたままの状態に置かれている状況であります。従ってこの前も私は質問いたしましたが、三月から四月にかけては八十四万という完全失業者がある、こういう状況でありますので、これを吸収するのは容易なことではないということを申し上げておったのでありますが、もう一度この点で私は明確にしてもらいたいと思うことは、いろいろ吸収対策事業を考えて、その予算考えておられますが、その予算が果してこの完全失業者の分布状況と一致しているかどうかということは、私は非常に疑問に思うわけであります。そう一致してなければ、たとえば東京都あるいは大阪、名古屋というような、その完全失業者の数に従った吸収対策事業及び予算が分配されておらない限り意味がないと思う。その点を私は非常に疑問に思うのでありまするから、そういう完全失業者と、あなたが今吸収対策事業として分配しようとしているところの予算が、ほんとうにマッチしているかどうか。この点を心配するがゆえに、そうなっているかどうかを、もう一度御答弁いただきたいと思うのであります。
  56. 西田隆男

    国務大臣(西田隆男君) お答えをいたします。大体資料として表を差し出しますとわかると思いますが、各都道府県に分けまして、失業者の状態を調べまして、そうしてそれに対して適応するように計上されて、予算の割当、配分をいたしております。全国的に見ました集計と大した差はないと思います。特別に一時的に失業者が発生したような場合においては、あるいは多少のそごがあるかもわかりませんが、それはそのときに応じまして臨機応変な経費の配分方法をやるようにいたしておりますので、全体としては失業者の数と割当の数との比率は、全体的に見ますというとそう狂いはございません。  それからもう一つ申し上げておきたいことは、職業安定所といいますのは、三百幾つか、相当ありますが、何を申しましても広い地域にわたっておりますので、数字を一括いたしまして千と申しますと相当な数量に考えられますけれども、都道府県で千人の人間が各地に散在してばらまかれておりますので、三人か五人のために失業対策事業を起すということは困難な状態で、従ってその地方の良識に基いてある一定の職につかしめるということの方が、失業者の散在の状況から考えまして、適当であろうと思う場所は、そういうふうな失業対策事業をやらしております。相当集団的に発生しております都市周辺におきましは、これはほんとうの失業対策事業としての事業を計画いたしまして、それに失業者を吸収するという具体的な方法をとっておりまして、表を出しますれば、この表を御覧になりますというと、その実態が明らかになると考えます。
  57. 高田なほ子

    高田なほ子君 関連してお尋ねをいたしますが、あぶれに対する吸収対策を今御説明になりました。東京並びに大都市における日雇い労務者の状態を見ますと、特に最近身体検査を行なって就労の基準をきめているようであります。この基準の中で、健康問題が含まれているようですが、大体婦人や老人たちが就労からあぶれることが非常に多くなってきております。こういうことが婦人の就労、年寄りの就労に非常にしわ寄せされて、大へんな問題になってくると思いますが、これらに対する吸収対策は十分に講じられているのでありましょうか、お伺いをしたい。
  58. 西田隆男

    国務大臣(西田隆男君) お答えいたします。健康診断をやっておりますることは、これは事実でございます。これは全部にわたってやっているわけでございませんが働く人たちが、自分の健康が悪いにもかかわらず、健康に適しない就労をしいられるということは、これは国家的に見て決していいことではございません。ただ普通の失業対策、要するに普通の労働力を相当要する方面に健康でない人を就労せしめるということは、国民健康上からもこれは考えなければならないことです。失業対策事業に就労させないという意味合いにおける健康の診断をやっているわけではございません。その健康に適した仕事の方面に働いてもらうという観点がらやっておりますので、そういう御心配は全然ないと思います。
  59. 高田なほ子

    高田なほ子君 それはあまりに実態を御存知にならない御答弁だと思う。実際において身体検査をした場合に、婦人のからだ、老人のからだ、これが適さないという理由で就労の面からはずされていることは、これは現実の問題でございます。こういう問題を直視されて計画を立てられるのなら、何ら異存はないのですが、今日の婦人就労者が非常にこの点に不安を、不満を持っていることを十分にお考えにならなければならないと思いますが、重ねて婦人の就労がこれによって狭められているという点、実態をどういうふうに把握して、これをどういうふうに解決しようとなさるか、もう一度御答弁を願いたいと思う。
  60. 西田隆男

    国務大臣(西田隆男君) 私が承知いたしております範囲では、御婦人の健康診断によって、今まで就労しておられた仕事に就労のできなくなった人は六百名程度と考えております。そういう人たちに対してあとの職を御心配申し上げないというのでは決してございません。おいでになれば健康状態に適応した仕事はお与えするという建前に基いて職安でお世話をいたしておりますので、私自身はそういうふうな、今あなたのおっしゃったようなことは決して起きないと考えております。
  61. 永岡光治

    ○永岡光治君 ただいまの答弁がありました分布状況と、その裏づけとなる予算の配分の状況についてはいずれ資料をいただいた上で、私は検討してみたいと思うのでありますが、問題は日雇い労務者、いわゆる自由労務者としてこういう救済の方法では私はやはり適当ではないのではないか。望ましいことは、恒常的に職場を与えることを何としても考えなければならない。そこで経審長官がおいでになるかどうか存じませんが、労働大臣でももしおわかりになればけっこうですが、こういう日雇い的な自由労務者を恒常的な労務者に切りかえていくところの計画、これは一番最も望ましいのだが、この計画を、六カ年計画というものを発表されておりますが、具体的にどのような対策をお持ちでありますか、そのことを一つお尋ねいたしたい。
  62. 西田隆男

    国務大臣(西田隆男君) お答えいたします。経済六カ年計画で失業対策として特殊な企業会社を作って、そこに長期に私は雇用するような計画を持っているかどうかは詳細には承知しておりません。しかしながら労働行政の面におきまして、失業者をして長期の雇用の継続の状態におく事業を計画いたしまして、その方面に失業者を収容するということは私は考えております。たとえば大きい長い道路の建設、あるいは改良を行うということで、これは五年十年というわけにも参りますまいから、二年でも三年でも継続した安定した姿において、そこに日雇い労務者を収容し得る事業、今度の石炭合理化法案に関連しましては、川崎線という一つの鉄道建設によって、これが三年なり四年なり長期雇用の継続がされる、こういう観点に立っての失業対策事業というものは考えておりますが、今企業会社を作りまして、そこへ収容するという点までは私は考えておりません。
  63. 永岡光治

    ○永岡光治君 ここで計画の一部は発表されて、私たちの望む一部にはこれは合致すると思うのでありますが、今日何と申しましても不幸なことは働きたくて働きたくてしようがないにもかかわらず、職がないためにあぶれている。これは国家的に考えてもきわめて不幸であり、損失であると思っております。やはり生きている以上は仕事をさせて、国家のために大いに建設して努力してもらうというのが、最も望ましいと思うのでありますが、そういう意味でも、今ちょっと例をあげておりましたが、私は質問をいたしたいと思うのでありますが、この電源開発であるとか、あるいはまた道路の開設、あるいは整備、あるいはまた河川、港湾の改修工事、さらに住宅建設であるとか、農地開墾とか、あるいは改良とか、いろいろ考えられることがございますが、そういう一つの事業を計画的に興して、たとえばそういう自由労務者のごとくあぶれておる方々を恒常的に救済するために、建設隊とか何とか、そういう一つのまとまった長い期間にわたるような計画を計画的にそういうことをやろうというお考えをお持ちになっているかどうかということがその第一点。  もう一つは、経審長官おいでにならぬからわからんということでありましたが、産業の拡張についてやはり計画的に広げていくことによって何に吸収できるということもこれは一応目安が立つと思いますが、そういう計画は具体的に立てているのかどうか、全然立てていないのかどうか、もし立てているとするならば、その吸収人員はどういう事業にどういう程度のものを吸収しようと考えているか、この二点をお伺いいたします。
  64. 西田隆男

    国務大臣(西田隆男君) お答えいたします。お尋ねの後半は、これは経審長官から後日お答えするだろうと思います。  第一点の問題につきましては、私も全く同感でございますが、永岡さんも御承知のように、日本の失業情勢と申しますものは、必ずしも失業者が一定した地区にいない、産業状態が農林、水産業というふうに全国にばらまかれている関係もあろうと思いますが、これを一ぺんに集約して一時にということは非常に困難が伴いますので、現在私が考えておりますのは、集団的にあるまとまった失業者かいるような地区に対しまして、この失業者を収容し得るような建設的な事業を興すということはこれは妥当性もありますし、実行性もありますし、そういうことは当然考えていいと考えておりますが、何しろ失業者を一定の事業に、一定の場所に、全部収容して長期の雇用の継続をもたらすような失業対策事業をやるとしますと、これに関連して起きますのはさっそく住宅の問題が起きます。住宅の問題も解決をつけるという段階までに現在至っておりません。私は鉄道の建設、道路の建設、港湾の改修等に対しましては移動式な住宅を計画いたしまして、そういうようなことで一時住居までもお世話して失業者を収容したいという計画は現在持っておりますが、これはまだ現在の段階では具体化しておりませんけれども、将来はそういうふうな考え方で進みたいと考えております。
  65. 永岡光治

    ○永岡光治君 それはいずれ経審長官がお見えになった際に御答弁いただきたいと思っておりますが、次に生産性本部の問題について労働大臣にお尋ねしたいわけでありますが、今生産性本部を設けて生産性向上に努力をされているようでございますが、そこでお伺いしたいのは日本の今日の経済状態と人口の状態、従って失業者の多い状態、労働力の状態から考えて生産性向上というその問題は原則として私は反対するものではないと思うのでありますが、これを進めていくに当りまして、結局失業者をよけいふやすような結果にならないかどうか、この点を私は非常に心配しているのであります。従って生産性の向上を進め、この生産性をどんどん向上さしていくときに失業もなくならないのだ、それからどんどん生産が向上した際におけるところのはけ口はこういうふうに求めるのだと、そういうような具体的な計画を持っているのかどうか、その点を私はお伺いいたしたいと思います。
  66. 西田隆男

    国務大臣(西田隆男君) お答えいたします。現在日本考えられております生産性向上の問題は、主として民間団体である生産性本部でやるようになっておりまして、国としては四千万円の補助金をこれに交付いたしますが、相談役みたいな、顧問みたいな格好で各省の事務次官クラスがこれに参加いたしまして月に一回ずつ意見を述べる機会を持っているような現在組織ができているのであります。おっしゃるように、これは生産性の向上と申しますのは、よく労働組合側に言わせますと、労働強化と、こう言われておりますが、私は必ずしもそうは考えておりません。生産性の向上と申しますのは、一定の、私は能率点という言葉を使っておりますが、能率点に最小の犠牲によってその目的を達成する、これがいわゆる生産性向上である、従って各企業、各産業別におのずから一つの線が出てくるだろう、その線までこれが労働強化にならない程度で生産性を向上させる、これが大体生産性本部の目的であろうと考えております。従って昔のように生産性が向上したための生産原価の切り下げによって生ずる利潤を、経営者と申しますか、資本家と申しますか、資本側だけで独占するというような形態、姿になりますと、あなたのおっしゃるように失業者が相当数出てくるということが考えられますけれども、今回の生産性本部の目的としているところは、能率点に到達するために、最小の犠牲によって生産性を向上し、その向上した生産性による利潤というものは資本だけが独占するのでなくて、もちろん働く労働者にもこれを分けるのであって、国民経済的な観点から国民全体に奉仕するという目的を忘れないでいきさえするならば、私はその過渡期においてはある程度の失業者が生ずることは考えられますけれども、全体としましては失業者の生ずることのないような方向に持っていけるものだという確信を持っております。と申しますのは、御承知のように、現在の日本の生産原価が非常に高いために海外貿易にも応じられないという状態でありまして、生産原価の切り下げられたことによって、労使双方国民と一緒に利潤を得るという形になりますならば、結局国内物価が全般的に低落をして、従って国際貿易にもたえ得るだけの素地が完了され、その利潤はやはり資本、経営、労働、国民全般にまたふり返って割り戻しを受けてくる、従って生産性の向上されたための利潤というものは、国民全体に分配されるという観点に立って生産性の向上をはかりますならば、これは必ずしも失業者は増加をするということにはならないであろうと私は考えております。
  67. 永岡光治

    ○永岡光治君 これはあらゆる条件を、全然白紙の状態において今考えるときにいわゆる生産性を向上させるということについては、あるいは労働大臣の答弁のようなことになるかと思う。私はやっぱり今労働大臣がその利益は労働者にまた還元するし、国民にもその利益を結局は還元をしていくのだというけれども、どうも今のような状態では何としてもこれは失業者がふえるというそういう方向が非常に強く出てくるということを懸念しているので、この問題について非常に考慮しなければならぬ問題があると思っているわけです。さらにまたこの販路の問題にいたしましても、これもただどんどんふえれば、安くつけばこれはどんどんはけるのだという、簡単に考えてもこれはいけない、たとえば今綿織物の問題を例にあげればよくわかると思うのです。ほとんど倒産するほど物がたくさん出ている。幾らでもたくさん安くできるにもかかわらず、これが販路がないということで、私はああいう状態になっているのがほんとうの原因じゃないかと思うわけですよ。いろいろな生産性を向上させる事業にもよりましょうけれども、ただその販路をどういう方向に求めるかという一つの計画と、それがなければ単なる生産性向上をどんどん進めていきましても、これは失業者をふやすだけであって、むしろやっぱり私は企業合理化であるとか、労働力の状況から考えて、逆に私は混乱と危機を招くのじゃないかということを非常におそれるわけです。これは、しかし今のところ見解の相違と見なければなりませんので、私は一応この程度にとどめておきますが、どうか一つ生産性向上という問題について考える際に、失業者を出さないように能率を上げるということになれば、結局労働時間を下げるということも考えられるということになりますが、あるいはまたどんどんその販路を広げて、つまり私が先ほど申し上げましたように、近東、あるいは中共、あるいはソ連そういうところにどんどん物も送れる、そういうような状況がはっきり考えられるかどうかということが一番大きな問題だとと思う。見解の相違もありますけれども、この二点について、もう一度大臣の所見を承わりたいと思います。
  68. 西田隆男

    国務大臣(西田隆男君) お答えいたします。通産大臣の役割かとも考えますが、一応今のこの日本の生産性の向上を考えます場合、生産原価の切り下げを考えます場合は、やはり国際物価に水準を近づけるという観点から一応は考えなければならぬと思いますが、貿易という問題を度外視しての日本の生産性向上という問題は、今あなたのおっしゃったように非常にむずかしい問題に逢着すると考えます。これは私個人の考えですが、かりに一つの企業で生産性が向上されたといたしました場合、たとえて申しますならば、現在においては百のものを作るのに百五十の労力を要しておる、それが生産性が向上されて能率点に到達したために、百のものを作るために百で済むようになった、そうするとあとの五十は、またこの五十をどうするかという問題が直ちに考えられる切実な問題なんです。私はこの五十の余ったものが、百以上のものからまた五十生産が上れば生産過剰に陥って海外貿易が伸展しなかった場合においては結局不景気がくるということは考えられます。ということは、はっきりした目安がつかない段階におきましては、かりに一つの企業では今まで百のものを作るために百五十の労働力を必要としてやっておりたが、百のものが百でできるようになったという場合においては、あとの五十のものは極端に申しますならばその企業内で遊ばせて、つまりほうっておいても百のものを百五十で作っておったときと同じような状態で、経理はとまらないでやっていける、これがまあ一つの考え方です。従って国がこれに対して対応した社会保障と申しますか、そういうことをやってくれれば一番いいんですが、やらなかった場合においてもおのおのの企業においてそこまで考えてやっていけば生産性向上は必ずしも失業者を増大するということにはならない。これは実際において働かなければ、仕事をしなければ失業者ということになりましょうけれども、いわゆる働かなくても、働けない労働者の生活に対する不安というものは、これは各企業々々でも当然生産性が向上すれば負担する能力は私はできてくると思う。そういう場合には、国がやらなかった場合は各企業で当然その労働者を遊ばせておいてでも生産性の向上ははかられなければならない。これはなぜかと申しますと、日本のように狭い国で大ぜいの人間が生活をしております場合においては、必ずしもいつもいつもみんな労働力を持っておる者が働けるということは、これは想定がなかなかいたしかねます。従って社会連帯的な観念に基きまして、百のものが働いて五十のものを食わせる場合もあるだろうし、あるいは八十のものが働いて七十のものを食わせる場合もあるだろうと思う。みんなが働いて食うことが一番健全な姿ですが、そうでない場合においては労使双方は話し合によって、生産性は向上しなければならぬけれども、そのために失業者が生じて生活の不安を労働者に与えるということのないように十分話し合っていった場合においては私は必ずしも生産性の向上即失業者の増大ということにはならないと考えております。
  69. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 ちょっと関連して。今のお話を聞いておるといよいよわからなくなってくるんですが、この予算の編成をされるときには生産性の向上、あるいはコストの切り下げ、そういうことを一つの大きなねらいにしておられたと思う。そこでそういうことを前提にしておられるからでありましょうが、予算の失業対策費の場合には、失業者数の、増加を考慮して失業対策費を考えておる、失業者の増加を考慮しておる。そこでこれから見ると、今年度は失業者が増加するという予想に立っておられると思う。ところが経済審議庁の経済大綱、あるいは三カ年計画によれば、年間の失業者数は六十三万、去年と同じだと、従って失業者には増減がないという計画を立てておられる。ところがさらにそれを分析いたしますと、年間について六十三万人の平均にとどめるためには、出発をする四月が七十万人でありますから、これが年度末には五十六万人に減ると、そういう下降カーブを画いていくということでなければ年間平均六十三万人に、前年度と同じにとどめるということはできない。そういう意味では平均でなくて、年間の傾向を見ればむしろ失業者数は減少をするということでなければならない。で、政府は増加をすると考えておられたり、あるいは同じだと考えておられたり、さらには減少することを考えなければ同じだという結論は出ないんだが、そういう考えをとっておられたり、失業者の見込みに関する限りは全くでたらめでまちまちで、一定した見地を持っておらないと結論せざるを得ないんですが、それらの点は数字的にはっきりどういうふうな方向考えておられるか、もう一ぺん伺いたい。
  70. 西田隆男

    国務大臣(西田隆男君) お答えいたします。佐多さんのおっしゃることは、失業者が六十三万というと、毎年毎年六十三万人以上になってはいかんというふうに私には受け取れますが、失業者の毎月々々の増減は、これはそのときの経済情勢、あるいは臨時的な労働力の急に学校の卒業生何にかでふえていったような場合には、それは非常に増大する場合もあります。三月なんかその例と思いますが、四月は七十万人に一応なっております。五月の実績はわかっておりませんが、七十万人台になりますか、六十万人台になりますか、実績がわかればわかると思いますが、政府といたしましては、とりあえず三十年度の平均失業者数は毎月六十三万人程度で押えたいという考えで、この失業対策を立てております。
  71. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 平均六十三万人にするためには、ダウン・カーブをとらなければならない。
  72. 西田隆男

    国務大臣(西田隆男君) ある月においては非常にふえた月もございます。ある月においては非常に完全失業者というものが減った月もございます。非常な差のついておりますときは約十万人以上の差が一カ月について出ておりますので……。
  73. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それはやはり去年は四月五十一万人から出発して、五十一万人四月にあったのが、年度末までにだんだんふえて、上り下りはありますが、八十四万人になったから平均六十三万という数字が出たのでしょう。去年の出発は五十一万から出発したのです。従って八十四万人にふえても年度平均は六十三万でとまった。今度は六十三万にとめようとされるならば、出発が七十万なんですから、年度末は六十三万より下でなければ平均が六十三万でとまるということはあり得ない。従って方向としては、カーブとしてダウンしなければならぬということになるわけだが、そういうことを計画をして、数字的にはそう言っておられるのだから、計画をしておられるのかどうか、計画されなければならない。しかるにこの予算の方では逆に増加するだろうという予測で対策を立てておられる。非常に矛盾であると思いますが、いかがですか。
  74. 西田隆男

    国務大臣(西田隆男君) 去年の実績を申します。二十九年の一月−三月は完全失業者四十七万人、次の四月の月になりますと五十五万に、ふえておりまして、七月−九月は六十七万にふえておりますが、平均いたしますと六十三万、こういうふうな実績になっておる。従って本年度におきましては、六十三万人に二十万人ふえるだろうという予定でありまして、それを六十三万に押えますために、二十万人に対しましては特別な失業対策事業を行なっていって、完全失業者の数は六十三万人で押えたい、こういうようなことでございますので、四月の七十万人となっておりますのは、必ずしもそういうような状態でずうっと推移していくとは考えておりませんので、まあここ二、三カ月統計の数字が出ますまで、一つお許しを願いたいと思います。
  75. 永岡光治

    ○永岡光治君 いずれともかくこの労働吸収の問題については、経審長官に出席を求めて答弁をいただきたいと私は思いますが、次に私は雇用問題について、公務員の雇用関係について質問をいたしたいのでありますが、ただいまこの前の予算委員会に配布されました資料によりますと、常勤的非常勤と申しますか、常在非常勤と申しますか、全く長い間定員のワク内で採用された、いわゆる本採用の職員と全く同じ仕事をしておる非常勤の職員が非常にたくさんございます。中には三年も四年も非常勤のままで置かれているという状況でございますが、この前の資料によりますと大体十三万数千と記憶しておりますが、これは明らかに政府の賃金の搾取と見なければならぬ。本採用になれば約二十万くらいの金が支給されるにかかわらず、非常勤職員であるために約九万円くらいになっておる。これは当然私は定員、本採用にすべきじゃないかと思うのですが、この前昭和二十七年と私は記憶しておりますが、定員法の改正の際にもあまりに非常勤職員がたくさんあるから、将来はこういうことのないように非常勤職員というものは本採用という形でやれという付帯決議があったやに記憶いたしておるのでありますが、この非常勤職員を定員化するという意味での定員法の修正ということを考えておらないかどうか、いないとすれば一体どういう方法でこれを解決しようとしているのか、この点を官房長官あるいは行政管理庁長官、関連の大臣にお尋ねいたします。
  76. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) お答えいたします。非常勤職員の発生したおもな原因は、これは実は定員が足らないためにそれをごまかすわけではございません。御承知のようにこれはピース・ワークに関することなので、たとえば農林省関係などは国有林の開懇等、あるいはいろいろのそうした現場におきまして事業をやる場合に、事業費から、昔で言えば物件費から出たところの人々の臨時採用でございます。それが予算関係で大変長びいた場合二年、三年といった、いわば一日々々雇うべきものを御承知のように月採用にした、それがやはり仕事がなれたので次の月もやってゆくようなのが相当あるようでございます。また現在内閣所管の恩給局なども、ただ単にカードを整理する、あるいはまた書類を写す、こういうピース・ワークが非常に多いのでございます。恩給局の職員としては定員ではっきりきまっておりますと、そうしたところのいわばピース・ワークを雇う場合に、それが引き続いて採用してほしいとこういうふうになりまして、これが非常勤職員として出ているのが多いようでございます。そういう関係でありますから、現在非常勤職員を全部定員化するということは考えておりません。しかしながら場所におきましては、相当程度これが定員を増してやった方がむしろ仕事の熟練、あるいは運用上よろしいという点もございますので、その点は各省の事情、それから仕事の都合によってこれは検討を加えたい、こういうふうに考えている次第でございます。
  77. 永岡光治

    ○永岡光治君 それは、今答弁がありましたが、確かに全く臨時的な、限られた臨時的な仕事という意味においての採用の場合はそういう方法でいいでしょう。あるいはまた年末に特に繁忙であって、そのときだけに人が必要であるという場合は非常勤でそれはいい。今私が問題にしているのは、常在非常勤で、たとえば実例を申し上げますと、郵政事業などは非常にいい例ではないかと思う。定員法があるために本採用はできないといって郵便物はどんどんふえている、貯金もふえている、毎年々々ふえてゆく、これは一現象でございます。しかし定員法が改正されないために、定員が増員されないためにやむなくその非常勤という形で三年あるいは長いのは四年と非常に気の毒な状態に置かれている。この常在非常勤のものを私は問題にしている。臨時ではない。定員法に縛られているこういうものについては、当然私は定員法という法律の改正によって本採用にすべきではないか。とりわけこういう問題について私は所管大臣である郵政大臣の所見を承わりたいと思いますが、同じ事業についても、これは国鉄あるいは電電事業などとこれはよく似通った仕事でありますが、それには定員法というのがありません。ただ給与予算でこれを押えている。だからそういうのが最も望ましいのではないかと私は思うのですが、郵政大臣の御所見を一つ承わりたいと思います。
  78. 松田竹千代

    国務大臣松田竹千代君) お答え申し上げます。お説のように定員法というのは、郵政省においては、少くとも乱れているということは申し上げられるかと思います。永岡委員よく御承知通り、郵政省といたしましては現業庁でありまするがゆえに、この定員法の問題についてはかねてから検討をいたしておりまして、先にむしろこれをはずした方がよいのではないかというような意見もあって、一度政府に申し出たこともあるらしいように伺っておりまするが、しかし現業庁でありまするがゆえに、その業務の能率を増進するということに対して常に力を入れているということは御承知通り、従って業務増のある場合にこれに従って最低限度何人定員をふやしていかなければならぬかということは、きわめて合理的にはじき出されて参るのであります。そういうわけでありまして、本年度の予算におきましても、他官庁におきましてはほとんど定員の増員が認められないような現状におきましても、本年度郵政事業に関するだけにおきましても、二千八百九十人という定員が認められたような次第でありまして、その点から考えまするというと、定員法の存在することによって、なお事業を運営してゆく上において割方他官庁よりも大蔵省考慮を払ってくれておるということも考えられるのであります。しかしまた、一面定員法をはずすことによって従業員がそれぞれ能率を上げて、そうして得たところの経費の節減の金をもって従業員の待遇改善に資するというようなことも考えられないではないのでありまするけれども、現在のところでは定員法がありまするものの、やはりまず予算ワクで縛られておるということがむしろ先行して参るというふうな点もあるわけでございまして、これらの点を勘案いたしまするというと、正直申し上げまするというと、痛しかゆしの感がございます。そこでこの問題につきましては、他の現業庁でありまする印刷、専売、アルコール、あるいは林野庁その他を初め、また地方の公務員を持っておられる官庁などとも考えまして、全面的にこれはよく検討いたしまして、対処しなければならない問題であると考えておるような次第であります。
  79. 永岡光治

    ○永岡光治君 ただいまのこの郵政大臣の答弁ですが、定員が若干ふえたからということですが、これは常在非常勤の救済のためにふえたのじゃない。勤務時間が今二十時間勤務になっておる。それはけしからぬから、勤務時間を少し下げなさいという仲裁裁定が出て、大部分のものがそれで救われた人員でありまして、私の今問題にしておることは、これは官房長官関係大臣にもう一回私ははっきりした答弁をいただきたいと思う。政府は労働搾取をしちゃ私はいかぬと思う。政府みずからが労働者の搾取をしちゃいかぬと思う。全く本採用と同じ仕事を三年も四年もやらしておいて、あなたのいうところの臨時的な仕事じゃないですよ、これは。いいですか。全く本採用の仕事と同じ恒久的仕事をやらしておいて、そうしてそういう非常勤という者が十数万ある。これは解消しなければいかぬのじゃないか。こういう点についてもう一度、根本官房長官は十分検討した上でそういうものは、非常勤のものを常勤に直す必要のあるものは定員法を改正したいという答弁のようですが、この点を明確にしていただきたい。明かに労働の搾取ですよ。二十万円かかるものを九万円ですまそうという、これほど労働搾取はない。労働基準法を政府みずから犯している。
  80. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) この非常勤職員をいわゆる定員化するということの問題につきましては、各省の仕事の状況その他を十分に勘率してやらなければならぬことでありまして、ただいまそれだけのものがあるから直ちにそれだけを定員化するということは申し上げられません。そこで、この問題は十分検討した上に措置することが必要であると考えるのでございます。現在、御承知のように公務員制度調査会におきましても、これが一つの議題になっておるわけでございます。従いまして、こういう方面の権威ある答申をも求めまして公務員全体の制度と相関連しまして、政府としては善処いたしたいと思います。ただ、今大へん政府が労働搾取をしておるというような建前をとられましたが、われわれはさようには考えていないのであります。
  81. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 ただいま官房長官からお話がありましたピース・ワークをやっておるとか、あるいは季節的なもの、こういうことはもうわれわれは百も承知なんです。問題は、永岡君は常雇的非常勤と言っておりますが、常動的非常勤、全く仕事は本採用の人、定員のワクの中の人と同じ仕事を、しかも長期にわたってやっているんです。こういう人々に対してはどこからその給料というものが出ているかといえば、これはもう御承知通り事業費からであります。この出し方も私はけしからぬと思うのです。そうしてまたこういう人々は本採用の人と同じことをやっていて、しかも長期にわたって相変らずその地位、身分は非常勤職員である。こういう規定がいけない。こういうわけなんです。それだけ事業の量において必要であるならば、これは根本的に定員法を考えなければならないので、この問題については検討するという方向を明らかにされたらいいと思うのであります。しかし、最近人事院におきましては、この問題につきまして、政府それぞれの機関に勧告をしているはずであります。この人事院の勧告を尊重されるならば、必然的に定員の問題はどうしようかということにならなければならないのでありまして、永岡君が言っている点は私はそういうところにあると思うのです。そこで官房長官として一つ御所見を承わりたい。
  82. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) お答え申し上げます。ただいまもお答え申し上げましたごとくに、現在公務員制度が、これは地方公務員制度とそれから今の非常勤職員の問題が地域給その他に比べてより重大な問題になっているのでございます。その意味におきまして、公務員制度調査会におきましてこの点が慎重に検討されているわけでございまして、その方面の答申を待ちまして、政府としては善処いたしたいと考えている次第でございます。
  83. 吉田法晴

    吉田法晴君 給与の問題についても、公務員制度調査会に給与担当大臣は逃げられましたけれども、聞いているのは政府の方針を聞いている。公務員制度調査会に逃げないで、聞いていましての答弁を願いたい、方針をお示し願いたい。
  84. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) お答え申し上げます。答申に基いて善処する考えでございます。
  85. 永岡光治

    ○永岡光治君 答申を尊重して善処するということですが、これは公務員制度調査会の答申があるまでもなく、当然私は、そういう私の話したことが事実なんですから、事実とすれば善処しなければならぬと思う。これはもう一回重ねて御答弁いただきたいのと、郵政大臣に重ねてお尋ねいたしますが、これは今もあなたの答弁の中にありましたが、定員法で定員を縛っておいて、しかも給与予算で縛っている。そういうことのために事業がまわらないのです。仕事がふえればそれをさばかないわけにいかない。これが企業官庁の本質なんですから、定員法で縛るということは不適当だと思う。痛しかゆしということがありましたが、これは運用の面で、財政の面で給与予算をきめる際の問題であって、当然定員法で縛るべき筋合のものではない。こう思うのでありますが、いま一度この二つの面について根本官房長官と郵政大臣の答弁をいただきたい。
  86. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) 非常勤職員をたくさん持っている官庁においては、それ自身としても非常に不便な点もあるようであります。従いまして、関係閣僚の十分な研究と御意見を待って、政府としてもそれに対する方策を考えたい、かように考えております。
  87. 松田竹千代

    国務大臣松田竹千代君) お答え申し上げます。お説の現業庁における業務増に対しては、自然的に定員をふやしてもらわなければならぬということは全くお説の通り考えております。
  88. 永岡光治

    ○永岡光治君 定員のワクをはずした方が運用しやすいのじゃないですか。
  89. 松田竹千代

    国務大臣松田竹千代君) その点については、なお一面から考えますと、それはしごく便利のようにも考えます。しかしなお検討を要する……。
  90. 永岡光治

    ○永岡光治君 公社なみにする考えはないのですか。
  91. 松田竹千代

    国務大臣松田竹千代君) その点につきましても、郵政省としては現在も常にその問題について検討して、まだ結論を出し得ない状況にあるのでございます。
  92. 湯山勇

    ○湯山勇君 この問題につきましては、私は政府の認識が非常に浅いと思うのです。と申しますのは、事業費でまかなわれている臨時職員というのは、官房長官が言われたような範囲だけではなくて、官庁の種類によりましては、つまり準職員という職務、それから事業費でまかなわれているものは補助員、さらにもう一つ下に段階を作って準補助員、その下に人夫とか土工とか、こういう実に複雑な段階を作ってでなければ現在の仕事ができないような状態になっております。政府は搾取していないとおっしゃいますけれども、それは考え方によれば、準職員と認められておる分までは共済の適用を受けますけれども、それ以外の補助員とか準補助員とかいう実際は職員と同じ仕事をしておる者が共済組合の適用を受けない、健康保険の適用を受けております。そうすると、明らかにこれは傷病給付その他で共済適用よりも不利な状態にある。さらにもっと悪いのは、日雇いの適用を受けているのもあります。だから、こういうことを考えますると、当然政府の職員にしなければならないものをこういう形で使っておる、これは明らかに政府の搾取だと言えると思うのです。そこで公務員制度の云々じゃなくて、現実にこういう事態が起っているのを今日ただいま解消する責任政府にはあると思うのですが、制度の調査あるいは答申を待つまでもなく、この問題の解決に直ちに乗り出す意思はないか、これを伺いたいと思います。
  93. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) お答え申し上げます。ただいま御指摘になりましたように、いろいろの名目の下に人員が政府関係の仕事をしていることは事実でございます。しかし、そのゆえにこれらの人々がすべて国家公務員として待遇しなければならない、いわゆる定員法において規定しなければならないものとは政府としては考えていないのでございます。
  94. 永岡光治

    ○永岡光治君 どうするのですか。
  95. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) それらの人々はいわば事業のために臨時に雇われておるというような場合が多くございまするので、それらの人々を公務員としてではなくピース・ワークとして一般の事業がやっていくのを考えることは、これまた私は一面理由があると存じます。公務員というものの性質と、それから政府が事業をやる場合においてその都度その都度その方面に人を使うということとは、違うものであるとは考えます。しかしながら、そういうような事情もありまするので全面的にその点を検討するために現在公務員制度調査委員会に徴しておりまするが、これは各省の三管大臣のその事業に対するいろいろの考えもありまするので、その方面の御意見も待って政府としては善処いたしたい、かようにお答えした次第でございます。
  96. 永岡光治

    ○永岡光治君 行政管理庁長官の御意見を一つ求めます。ピース・ワークの問題ではないのですよ。非常勤の問題ですよ。
  97. 川島正次郎

    国務大臣川島正次郎君) 常勤労務者と常勤的非常勤職員の問題は年来の問題でありまして、仰せの通り、数十万いる非常勤者のうち十数万は常勤的非常勤者であります。(「その通り」と呼ぶ者あり)しかもこれらの人々は、長いのは三年、五年と同一役所へ勤めて、一つ仕事に携わっているのが現況でございます。従いまして、これらの人々に対してどういう処遇をするかということは大きな問題だと私は考えますので、行政管理庁でも研究をいたしておるのであります。ただ問題は、一つ人が長い間一つ仕事に携わったといって、仕事そのものは直ちに恒久的とは言えないのでありまして、仕事の中には労務的の一時的の仕事もあります。それをただ一つ人が長くやっているというだけの問題もありまして、(永岡光治君「それを問題にしているんじゃない」と述ぶ)しかもそういう仕事は定員法による定員を定めて公務員にやらせるのがいいのか、あるいは請負仕事にするのがいいのか、また出来高仕事にするのがいいのか、そういうようなことも各省によってそれぞれ違うのであります。ただ、今申し上げたように、常勤的非常勤労務者の処遇につきましては、これは全般の人事制度としまして定員法とは別といたしましても考える必要があると、こう私どもは思っておりまして、これは早急に何とか解決しなければならぬということは、先般内閣委員会においても私は申し上げた通りでございます。
  98. 館哲二

    委員長館哲二君) 永岡君に申し上げます。経済審議長官出席されておりますが……。
  99. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 関連して……。問題はやはり、いろいろの性格の非常勤職員があるのでありますが、ここで、永岡君も、われわれ問題としておりますのは、全く、たとえば庁内におきましてデスク・ワークしておる、同じ仕事をしている、しかもその身分は、一方は定員法のワクの中にあるところの職員であり、一方はワク外の職員である。全然同じ人が非常勤職員という身分になっている。この問題をどうして解決するかということが、これはまあ重大な問題でありまするし、われわれも非常に大きな関心を払っている問題であります。ですから、この問題をどういうふうにして解決していこうというその構想なり、あるいはその信念なりというものを、われわれとしてはお聞きしたい、こう考えているわけであります。  なお、ちょうど川島国務大臣が答弁にお立ちになりますから、もう一つ聞いておきますけれども、自治庁としては、地方公務員の常勤的非常勤職員の切りかえをするために、十一億ほどの金を用意した。けれども、大蔵省反対に会いまして、これを地方財政計画の中に織り込むことができなかったという経緯を私は聞いているのであります。そこで地方職員の中の常勤的非常勤職員の人々に対してどういうお考えを持っておりますか、この二つの点について承わりたい。
  100. 川島正次郎

    国務大臣川島正次郎君) 常勤的非常勤職員の問題は、各役所におるのでありまして、個々のケースについて調べなければ内容はよくわからぬのでありますが、しかしこれは長い間一つ仕事をしておるのでありまするからして、やはり何とか一つ優遇の道を講ずることは必要と考えております。先般の休みが三日も続いたときには、それらの人々は全く日給が取れないで困っておるという事実も、私どもよく認識いたしておるのでありまして、これらは十分に取り上げて考究する必要があるということをはっきり申し上げておきます。  それから各公共団体におる非常勤職員をどうするかという問題については、自治庁としてはこれは何ら指示いたしておりません。各公共団体任意にまかしておるわけでございます。
  101. 永岡光治

    ○永岡光治君 郵政大臣おられますから、ついでですから一問だけ質問いたしますが、この六月十八日の読売新聞で「お年玉年賀はがき五億円の魅力」という表題で、毎年年賀郵便に一円つけ加えて寄付されておりますところのいわゆる募金は、今まで日赤とそれから中央共同募金会にやっておったのですが、そういう団体にまかせることについて疑問があるから、これは郵政省で新団体組織をはかる、こういうような見出しで出ておるわけであります。私この間も実は、新聞で見ましてから、地方の状況をいろいろ承わりますと、これは今に始まったことではありませんけれども、集めておる集配人の方々がどうもどういうふうに使われておるのかあまりわからぬ、実に不明朗きわまりないといううわさをしばしば耳にいたしました。事実、私もその使途について不明朗な若干の事実を承知いたしておりまするが、しかしこのことが国民にあまり広く広がって、むしろこれに協力するということを差しひかえるようなことになっちゃ大へんだと思いますので、この内容については申上げませんが、不明朗な内容については申し上げませんが、二団体にまかせることは不適当じゃないかと考えておりますが、これはどういうふうに考えておりますか。
  102. 松田竹千代

    国務大臣松田竹千代君) お答え申し上げます。このお年玉年賀郵便につきましては、当初考えられたより以上に国民の非常な御支援を得まして、すでに過去六年間に二十一億三千万円という巨額に上る御支持を与えられて参ったわけであります。従って、この金はいかに使われておるかということに対して、われわれといたしましては当然非常な関心を持たざる得ない。ところが、郵政省といたしましては、これまでも、何とかこの金はどういうふうなことに使われたかということが目に見えるようなことであってほしい。少くともどこに使われたのかわからぬというようなことはまことに困ることでありますので、できる限り施設費というものに使って、経常費その他にはなるべく使ってもらいたくないという趣旨を伝えて参ったのであります。しかるに、そういう方面に郵政省としては、何と申しますか、この大きい金がそのまま地方へそれぞれ共同募金委員会の方へ渡すのでありますが、それが地方に配分され、さらに再配分され、再々配分されるときには、末端へ行くときには。きわめて少額の金になってしまって、いろいろの無形のものに使われる金が相当多額に上ってきておるという事情を見まして、これは何とか分配のことについてよく考え直さなければ相済まぬのではないかというようなことをただいま郵政審議会諮問いたしておりまして、現在小委員会においてどういうことにしたらばよかろうかということで鋭意検討いたしておる段階でございます。われわれといたしましては、決して新しい団体をこしらえて、郵政省の所管においてこれをやろうというような考えは必ずしも持たぬ。要するに、この金が適切に本当に目的とする人々の救いのためになればよい。あたかも早ばつ時における天から降る慈雨のごとく、悩める人々を潤す結果になってほしいものである、かような考えをもって今検討してもらっておる次第であります。
  103. 永岡光治

    ○永岡光治君 どうか、適切にそれが有効に使われるように、十分監視されるようにお願いをいたしまして、次に、給与問題について私は質問を続けたいと思いますが、昨年の七月の十九日に、給与ベースの改訂についての勧告でなくて、国家及び政府に対して人事院から報告がございました。それによると、物価が横ばいの状況であるから、——内容は省略いたしますが、かいつまんで申し上げますれば、物価は横ばいであるし、下る傾向にあるから、当時は一般民間の労働賃金に比べて一〇%の開きがあるにもかかわらず、この際は引き上げの勧告をしないで様子を見るという意味の報告であったわけであります。ところが、今年のエコノミストの雑誌の記事を見ましても、名目賃金の状況を私は調べたのでありますが、名目賃金指数は昨年の一月が一三七、三十年三月が一四〇・九と増加いたしております。さらにまた消費者物価指数を見ますと、二十九年一月が一一七・九、今年の三月が一一八・四、これもまた上っております。また実質賃金はどういうことになっているかといいますと、今年の一月は一二〇・一、三月は一一九、これも一・一下っております。実質賃金は実際上下っております。さらにまた日経連の調べによりましても、業種別総平均を見ましても、二十九年の民間の労働組合の賃上げの状況でございますが、春季における賃上げの率というものは七・三%になっております。七・三%賃金が引き上りまして、今年の春も昨年の春七・三%上ったものに対してさらに五・一%賃金が上っております。従って、算術的にこれを合せましても、一二・四%はすでに昨二十九年一月に比べてずっと上っているわけであります。こういう状況にあるにもかかわらず、公務員の問題については依然として政府は善処することに怠慢のように、私はどうも見受けざるを得ない。地域給の問題にしてもそうでございますが、こういう状況でありますが、私は人事院にお尋ねしたいのでありますが、もう七月十九日といいますと、時期も迫っておりますが、およそ私はもう結論が出てしかるべき段階じゃないかと思っておりますが、ベース引き上げの改訂の勧告をするのかどうか、この点をまずお伺いいたしたいと思います。
  104. 入江誠一郎

    政府委員入江誠一郎君) 総裁は病気でございまして、私かわりましてお答えいたします。  国家公務員の給与の問題につきましては、大体ただいまのお話の通り、昨年以来の状況は物価並びに生計費は大体横ばいの状況でございますが、人事院といたしましては、民間給与調査と生計費とによりまして報告をいたしますと同時に、勧告をいたすかどうかを決定いたすわけでございまして、ただいま今年三月現在で全国的に行いました民間給与調査を集計中でございまして、来月上旬にはほぼその集計が完成すると思いますので、その結果によりまして、来月中旬に人事院として結論を得たいと思っております。
  105. 永岡光治

    ○永岡光治君 来月中旬にということは、明らかに昨年の七月十九日に報告いたしました。そうして人事院は公務員法によって一年以内に報告しなければならぬという建前に立っておりますから、どうも私は政治的に七月中旬まで延ばしているのではないか。(「その通り」と呼ぶ者あり)明らかにそういう空気が感ぜられます。明らかに私はこれが感ぜられて、不愉快であります。政府関係大臣から何かサゼッションでも行っているのではないかというように、悪く考えれば考えられないでもないのでありますが、もう大よその見当はついてしかるべきだ。先ほど申上げたような状況から考えても、昨年に比べて物価が横ばいの状況であることは、今人事院も認めている。しかも民間給与との間には一二%の開きがありますから、当然勧告すべきではないかと思うのですが、どうでしょうか。もう一度その点を……。まだわかっていないというのは、全然わかっていないのか、ほぼ大体この様子でいけば勧告をしなければならねだろうという段階に来ているのかどうか、その点お尋ねいたします。
  106. 入江誠一郎

    政府委員入江誠一郎君) お答え申し上げます。毎月勤労統計によりますと、大体ただいま仰せの通り、一昨年の三月と今年の三月とは賃金といたしまして約一三%程度差がございます。ところが、公務員におきましてもまた一カ年間におきまして定期昇給その他の自然増がございますので、結局毎月勤労統計を基礎にして考えますと、昨年三月と今年の三月との状況は、民間給与との関係におきまして一〇%の差にその後持って参ったという状況であります。しかしながらこの問題につきましては、先ほど申上げました通り、人事院といたしましては、さらに別途人事院の施行いたしまする民間給与調査によってその状況を確認いたしたいと思いまするし、また給与につきましては、民間給与と生計費及びその他の給与関係ある条件というものを考慮して結論を得たいという関係上、その民間給与調査ができますまで結論を待っている次第でございます。  なお、時期の問題につきまして、何らか特別な政治的意図があるのではないかという御質問でございましたが、実はこの民間給与調査は、御承知通り、全国約四千事業場、十数万の職員につきまして、地方の各府県にある人事委員会の協力を得て相当詳細かつ規模も大きく調査いたしますので、どうしてもこれは毎年度とも相当の期間を要しますので、この点は御了解を願いたいと思います。
  107. 湯山勇

    ○湯山勇君 関連して……。人事官の御答弁は昨年の条件を全く無視しておられるわけで、昨年の勧告というのはただいま保留されているわけです。だから、これは必ず七月を待たなくても、ただいまにおいてもこの保留を解くか解かないか、解除するかしないかという判断はできると思います。今年度新しい勧告はいつするかということはまた別ですけれども——そこで、私は今の人事官の御答弁によって、完全にこの保留を解除する条件はできておると思うのです。と申しますのは、昨年あれを保留した理由として、民間給与、生計費の面からは、当然一〇%以上の上昇を認める。だから勧告の条件は備わっておるけれども、ただこのデフレ政策の実施によりまして、物価が下っていく。それから民間賃金もまたデフレ政策によって低下するのではないか、こういうことを前提条件として期待して、あるいはもっと強い言葉でいえば、そういうことのために消費者物価の、CPIが下ることと、民間給与が下ることを条件として保留されておったわけです。ところが今日その実績を見ますと、昨年、二十九年度、経済審議庁の出した経済指標の見通しでは、二十九年度においてはCPIは九六・四、二十八年に比べてつまり三・六%下ることを期待しておった。そういう見通しを立てておったところが、本年出されましたこの経済計画大綱によれば、二十九年度はそういうふうに三・六%低下するという見通しを立てておったにもかかわらず、生鮮食料品その他の関係で、実際は三・五%上っております。それは審議庁から出されておるのでありますから間違いありません。そこで、民間給与も、今人事官御答弁のように、約四%程度、毎月勤労統計によって——労働省から出ておるものによって上っておる。これはもちろん公務員も上っておるから相殺できます。それからこの民間給与が上ったことは、公務員も定期昇給で上ったことと相殺しましても、当然物価、CPIにからんで来た問題は、ほとんどもう人事院が期待した、この条件としたこととは全部はずれておるのですから、これがはずれた以上は、昨年保留しておったこの勧告を解除して、二十九年度の勧告として出すべきである。三十年度の勧告は、あなたが今おっしゃったように、それ以上の資料がまとまったのでやってけっこうだと思いますが、当然保留しておったものをやらなければならない状態に立っていることをお認めになるかならないか。そうして、そうなさるかなさらないか。これについて一つ明確な御答弁を願いたいと思います。
  108. 入江誠一郎

    政府委員入江誠一郎君) お答え申し上げます。ただいまのお話のございました通り、昨年七月報告いたしまして、勧告を留保して今日に至っておるわけでございまして、その間留保を停止いたしまして勧告をいたすべきかどうか、ということは始終検討いたしながら、民間一般経済状況を検討して参ったわけでございます。ところが、これは大体御存じの通り、一般の失業状況でございますとか、賃金の支払い状況でございますとか、その他給与関係ある経済諸条件というものは、昨年七月留保した当時の状況と変化ございませんので、現在の段階におきましても、留保を続けて参っておるわけでございます。しかしながらこの問題は、さらに今年三月現在で実施いたします民間給与調査、あるいは今年の生計費もさらに検討の上続けて参った、留保をさらにいかに考えるべきかということの現在検討の段階になっておるわけでございまして、留保を続けて参っております。経済条件というものは変らないという観点に立っておるわけであります。
  109. 湯山勇

    ○湯山勇君 経済条件が変っていないとおっしゃいますけれども、先ほど説明をいたしましたように、低下する、三・六%下るという期待を持っておった。そういうことを条件として物価引き下げが成功することを条件として留保されたわけです。ところがこれが成功してないのです。成功してないというのは政府から出た資料によって明らかです。そういたしますと、むしろ成功しなかっただけではなくて、三・五%上っておる。この事実はもはや留保した条件が解除された、その条件がはずれたと見なければなりません。これは客観的にそうなっておるので、少しもこれには主観的な要素はないわけですから、今おっしゃったように、そのままの条件は続いているということはないわけです。そうおっしゃるのが不思議であって、そうないのですから、これは当然二十九年度の勧告をもうとっくにしておらなければならない状況であると思います。この資料は四月十九日出ておりますので、四月十九日にこれが経済審議庁から発表になったとたんに、もうこれは解除すべきであるということになっておらなければならないのが、今日まで延びておる。こういうことを申し上げておるので、それならば条件が続いておるのでなくて変ったのだから、当然勧告しなければならないのではないかということをお尋ねしておるわけです。
  110. 入江誠一郎

    政府委員入江誠一郎君) お答え申し上げますが、国家公務員の給与もやはり一般国民の納税によって御負担を願っておるわけでございますから、一般経済条件というものを無視するわけにいきませんので、ただいまお話の通り、昨年三月以来、一般経済情勢がまあ横ばいと申しますか、より悪くはなっておらないということは、御指摘の通りかもしれません。しかしながら同時によくなってないことも事実でございまして、やはり現在のように、これは今後の見通しによりまするけれども、現在のように失業状況も改善されず、あるいはまた一般民間会社の賃金支払い状況も改善されず、一般デフレ政策による一つの国民経済状況が続いておりますということは依然として変りませんので、人事院といたしましては、その見地に立ちまして、昨年七月以来経済条件が変っておらないという考えにおるわけでございます。
  111. 永岡光治

    ○永岡光治君 どうもただいまの発言聞いておりますと、やはり依然として勧告をする用意はないのだというように受け取れるような答弁です。もし横ばいならば勧告しないのですか。物価だけでないのですよ。
  112. 入江誠一郎

    政府委員入江誠一郎君) 民間給与と生計費は、かりに昨年通りといたしまして、その他の条件の一般経済条件が昨年七月同様でございますといたしますと、この問題は相当慎重に考えなければならぬと思っております。
  113. 吉田法晴

    吉田法晴君 簡単に一つ人事官に。これは人事院を代表してきておられますから伺いますけれども、国家公務員法上与えられておる責任、これは国家公務員の争議権、あるいは団結権を奪ったり、あるいは制限をしたりした上に立って責任を課せられておるわけです。しかも報告なり勧告は、国会及び政府に対してなすという、従って二十九年度においてもそうでありますが、三十年度においても、予算編成前に三十年度としてどうするか、こういう人事院の責任が課せられておるわけでありますが、それを果さない。こういうことになりますと、これは重大な問題だと思うのでありますが、永岡君あるいは湯山君の御質問に関連して、人事院の責任を果す立場から、どのように考えておられまするか、一点伺いたいと思います。
  114. 入江誠一郎

    政府委員入江誠一郎君) お答え申し上げますが、人事院といたしましては、人事院の国家公務員法に定められております御指摘の責任を果しますために、昨年七月以来検討を進めておると同時に、今年も昨年三月と対応いたしまする本年三月現在におきまする諸条件を調査いたしておるわけでございまして、調査の結果、なるべくすみやかに結論を出したいと思っております。
  115. 永岡光治

    ○永岡光治君 きわめて不誠意なる態度で今答弁されておりますが、もうきょうは六月二十七日ですから、当然もう結論は出てしかるべきだと思いますが、何を考えておいでになるのか。依然として七月の十九日のぎりぎりまで延ばそうという意向が濃厚のようであります。これでは公務員に罷業権を与えることを奪って、公務員の生活の、あるいは身分を保障するために設けた公務員法の精神に基くところの人事院としての、それをおあずかりするところの人事官の態度として、私はきわめて遺憾の意を表明いたしておきます。この問題は後ほどの問題にいたしたいと思いますが、この際、私は給与関係の担当であります大久保大臣にお伺いしたいのでありますが、公務員制度調査会にいろいろなものをかけておる。たとえば地域給の問題であるとか、あるいは退職年金の問題であるとか、あるいは公務員の身分の問題であるとか、この前の地域給の問題はどうなっているかという質問に対しても、小出しにはこれは解決できない、これは公務員制度調査会に諮っているからしばらく待ってくれと、こういうふうに事あるたびに、公務員制度調査会をたてに、今日まで遷延をして参りましたが、公務員制度調査会で、今日までどういう問題がどこまで論議されてきておるかということをまずお尋ねいたします。とりわけ私の注文いたしたいことは、退職年金の問題、公務員の身分の問題、地域給の問題この問題について特にどうなっておるかということを、今日までの経過をお尋ねいたします。そうしてこれに対して担当大臣としてどのように考えておるかということ。
  116. 大久保留次郎

    国務大臣大久保留次郎君) 公務員制度調査会の問題がたびたび出ますので、一応その経過をお話し申し上げます。公務員制度調査会ができましたのは昨年の六月であります。六月に第一回の総会を開きまして、自乗毎月数回ずつ開きまして、総会を今日まで十九回開いております。なおまた二十九年の十二月には五人の小委員会に移しまして、これまた毎週一回ずつほとんど開きまして、本年の五月末日に、小委員会としての大体の成案を得ましたので、これを今整理中であります。この整理ができ次第総会を招集して、この小委員会で作りました諸問題についての大かたの内定を定めたいと思っております。その総会が開かれますのは、おそらく七月、おそくも八月には開催いたしたいと存じております。  なおこの機会にその論議されました内容を申し上げますれば、第一番に議論の種になりましたのが公務員の職階制の問題であります。その次は公務員の任用制度の問題であります。その次に問題になりましたのが公務員の給与制度、その次に問題になりましたのが公務員の分限、懲戒、保障制度、服務及び能率の増進についての問題であります。その次の問題になりましたのは退職年金制度、これは今お話にありました通り、年金制度については、人事院の勧告が参っております。公務員とそのほかの雇用人との共済組合制度を一本化するかどうかという議論であります。その次は地方公務員の制度をいかに扱うかという問題であります。それからさらに人事の行政機構の問題におきましては、この人事院が中心になってやっているのでありますが、これをいかにすべきかという人事行政の機構の問題であります。その次には外国の公務員制度についての調査であります。その次に問題になりましたのは公務員等の罰をいかにするかという問題であります。これらの主要問題についての大体の見通しをつけて参りましたので、先に申しました通りに、五月の末日に方向がまとまりましたので、今整理を急いでいる途中であります。でき次第、まあ七月中には総会を開いてきめたい、こう考えておるのであります。  それからお話の地域給の問題ももちろん触れておりました。これは一応御参考までに申しておきますが、地域給のその性質から考えまして、物価を中心とした地域給というのは今日は存立の意味がない、なぜなれば、各地におきましての物価差というものは平均して百分の五内外であります。これを基礎として地域給を置くということは意味がないじゃないか。ところが、生活給から考えてみますと、生計費を中心に考えてみますると、やはり地域給は認むべきではないかという議論が起っております。これは御参考までに御報告しておきたいと思いますが、要するに、一言にしていえば、今申し上げました途上にあります。これを公表いたしますと各方面からいろいろの故障が起って参りますので、こまかいことを申し上げることはむずかしいと思います。まことに残念に思いますけれども、この点は御了承を願いたいと思います。
  117. 館哲二

    委員長館哲二君) 永岡君に申し上げますが、持ち時間がだいぶ過ぎております。超過しました時間だけはあとの方で削りますから、どうぞ……。
  118. 永岡光治

    ○永岡光治君 それは困るですよ。これは重要な問題ですから、特に関連質問等を許したつもりでお許し願いたいと思います。
  119. 館哲二

    委員長館哲二君) 了承いたしませんから……。
  120. 永岡光治

    ○永岡光治君 それじゃ関連でお願いしましょう。
  121. 吉田法晴

    吉田法晴君 給与担当大臣なり、あるいは人事院なりの答弁を聞いておりますというと、国家公務員の制度、民主的公務員制度の今の建前が政府によってじゅうりんをせられておる。公務員制度調査会で検討をして、その結果による云々と、こういう点でございますが、それならば、国家公務員制度の現況がじゅうりんせられるということになりますならば、これは公務員の罷業権を制限をして人事院をしてやらしめると、こういう点がじゅうりんせられるのであります。破られるのであります。政府として、あるいは人事院としても、公務員が争議なり、あるいは罷業なり、そういう方法なり、あるいはこれに準ずる方法をもってやっても仕方がない、かように考えておられるかどうか、その点を承わりたい。それからもう一つ、今永岡君の質問の中で、地域給の点についても触れて質問をいたしましたが、これは人事院の勧告があり、さらにそれを基礎にいたしまして衆参両院の当時の人事委員会が協議をいたしまして、長時間をかけて協議をいたしまして結論を得たものであります。それをどのように実施されようとするのか。これは、法上認められておらぬ国家公務員制度調査会とか何とかいうものの結論を待って云々という問題ではございません。あるいは人事院の勧告なり、あるいは国会の意思というものをどのように尊重せられようとするか。この二点について、給与担当大臣とそれから人事院総裁から明確な答弁を願いたいと思います。
  122. 大久保留次郎

    国務大臣大久保留次郎君) ただいま御質問がありましたのでありますが、私どもは決して無理な政府考えをもって圧迫する考えは全然ないのであります。公務員制度のできた歴史からかんがみまして、これは戦争直後の制度であったために、あるいは無理はないじゃないだろうかという点を考えております。なおまた戦後の民主的に制度を改めました点においては決して曲げないつもりであります。この点は御安心を願いたいと思います。  なお地域給の問題がありましたが、地域給につきましては、人事院から勧告がありました通りです。この人事院の勧告に従いますると、七十五億円の増加を必要とするのであります。なおまたこれを受けまして人事委員会においてきめました案がございます。これに従えば、これを実行するにつきましては、二百十二億かの増額を必要とするのでございます。これを今直ちに採用するかどうかは問題でございますばかりでなく、ただいまの衆議院の内閣委員会におきまして、またこれを小委員会を設けて、この地域給の問題を検討中であります。この小委員会結論も決して無視することはできません。で、これらの小委員会あるいは人事院勧告の内容を参考とするはもちちん、尊重するはもちろんです。一面におきまして、さきに申しました国家公務員制度の調査会の意向をも尊重して、政府としての最後の腹をきめたいと思っておる次第であります。
  123. 入江誠一郎

    政府委員入江誠一郎君) 国家公務員の労働権と勧告の関係につきましては、お話しの通り団体交渉権を禁止いたしますかわりに、第三者の中立機関による勧告制度を現在認めておるわけでございまして、国家公務員法の御改正があるにいたしましても、この建前はおそらくおくずしにならぬのではないかと期待いたしておるわけであります。  なお、地域給あるいは退職年金等の人事院の勧告と公務員制度調査会との関係でございますが、これはおそらく人事院が内閣及び国会へ勧告を申し上げまして、これを政府が取り上げ、いかに国会へ法律案として御提案になるかという一つの過程において、政府の御意見をきめられるために、公務員制度調査会の意見を徴せられるのだと思います。
  124. 吉田法晴

    吉田法晴君 人事官はおおむね公務員制度、公務員法に従って発言されましたが、大久保国務大臣に至っては、この前からもそうでありますが、国家公務員法なり、あるいは今の公務員制度の建前を御存じなくて御発言になっておりますので、まことに奇怪しごくだと思うのであります。繰り返して申し上げるまでもござ一いませんけれども、公務員の罷業権を奪い、そうして団結権、あるいは団体交渉権を制限をして、そのかわりに人事院が勧告をする。その勧告を政府及び国会がこれを取り上げて実現をしていくというところに、辛うじて公務員の権利を守る、あるいは公務員の本来持っておる団結権なり、あるいは罷業権というものをカバーしておる。こういう建前であることは申し上げるまでもございません。そこで先ほどの身分の問題についてもそうでございますが、あるいは地域給の問題について、あるいは給与の問題について勧告がなされ、それを国会がどう取り上げるか、これも国会の一つの問題でございますけれども、従来政府は勧告に基いて給与引き上げる、あるいは地域給を実施する、あるいは身分の問題について、政府責任としてこれをおやりになって参る。公務員制度のごときは、法律にもございません。今の制度の中からいいますならば、政府責任を果していく一つの、これは政府諮問機関だと思います。本来負われておる政府責任をどうするか、こういうことをお尋ねをしておるわけでありますが、戦後の何か制度であって云々というお話があって、今の公務員法なり、あるいは公務員制度を無視するごとき発言がございましたのですが、その通りでございますか。  それから地域給について勧告がなされた、あるいは非常勤職員の問題等について勧告がなされた。これについて政府責任を負っておる点をどうするのか、あるいは地域給の問題について国会の意思が集まって、それは両院の決議にはなりませんでしたけれども、意の存するところは明らかになっておる。この人事院の勧告なり国会の意思の存するところを、どういう工合に政府として取り上げてやるか、この政府責任を追及をいたしておるわけでありますが、それに対する答弁にはなっておらん。そこで、もし公務員制度の精神なり、あるいは法を無視されて政府が推進されるとするならば、公務員はこれは自救行為、数年前でございましたけれども、勧告ができたけれども、勧告が出されないというので、人事院に坐り込んだことがございますが、これは法が無視され、あるいは実行されないということになるならば、当然起ってくる自救行為だと思います。その自救行為として、政府の法の無視に対して、公務員があるいは団結権、あるいは団体行動権等に従って、法を多少越すような行動が起ってもやむを得ないじゃないか、政府としてどのように考えておるかということを問うておるのですから、明確に一つ答弁を願います。
  125. 大久保留次郎

    国務大臣大久保留次郎君) 公務員の行動権の問題であります。これは先に申し上げました公務員制度調査会におきましても、数回にわたって論議をされておる次第であります。決して行動権を無視するというような考えは全然ないのであります。これも十分に尊重していきたいという考えのもとに改正を進めております。  それから委員会その他の意見を尊重すべきは、これはさきに申し上げました通りであります。その各種の意見を総合いたしまして、最後の決定を政府はいたしたいと思うのであります。今ここで公表するところにいっておりません。しかしながら先に申し上げました通りに、人事院からの勧告を受けましてから相当の日数を経ております。なるべく急いで勉励して成案を得るように急いでおる次第であります。この点も御了承願いたいと思います。私どもは決して法規を無視し、民主政治の行くべき方向を誤らんでいきたいと思っておるのであります。
  126. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 給与担当大臣に伺いますが、地域給の点はわかったようなわからないようなことで、この前も聞いたときに、よく研究しておいていただきたいと言ったが、研究しない。そこで、わからない人にこれ以上追及をしても無理だが、当時の川島、今の大臣は、衆議院の人事委員長として、両院の委員会で決定して、よく事情をお知りになっておる。申すまでもなく国家の公務員でも、地方の公務員でも同じことでございます。地域給をつける趣旨は、もちろんお知りの通りだから言いませんが、たとえて言えば、今日地域給のつかない福島でも、長野でも、山形でも、そういうところに来る官吏は、東京あるいは神奈川、愛知という方面から来るときに、実際において俸給の一割あるいは一割五分、俸給が全給与の間において減額されるのであります。従って人材はその地方に転任を好まないのであります。地方においては有為の人材は、そういう地域給のない地方には行きたがらないという大きな欠陥が残されております。同時に、五級制度が四級制度になったおかげで、一年だけ地域給がついたがすぐ廃止されてしまった。従ってそれだけ給与において欠陥を生じた。物価は高くなる、地域給は支給されない、こういう結果が各地に続出しておるのでございます。すでに内閣を組閣して、この問題に手を触れるのが当然であるが、今日まで手を触れておらない。いずれ、いずれと言っておる間に一年を経過してしまって、そこに公務員の生活の脅威を感じさせ、不安を生ずるというのが現段階であるのでございます。もし地方制度におけるところの、赤字を出しておる府県において、さらにこの欠陥がありといたしましたならば、倍加するところの給与不足をきたすというのが現状でございます。従ってこの問題に対しましては、じっくり取り組まなければなりませんと思いまして、まず自治庁の長官、それから入江人事官等に明確なる見通しよりも、この給与体制を直ちに改正する、従ってその予算の裏づけはいつごろ提出するつもりだという点をお聞きしたいと思います。
  127. 川島正次郎

    国務大臣川島正次郎君) 地域給は池田さんの御承知通り、現在といたしましては公務員の異動、配置転換などに非常に支障がありまして、給与制度のうち最も悪制度の一つと考えられておるのでありますが、しかしながらすでに与えている地域給を取り上げるわけにはいかぬのでありまして、これをどう調整するかということなんでありまして、昨年来から人事委員会があります当時の衆参両人事委員会におきましても、地域差というものはこれを廃止すべきものだという意見でありましたが、それにつきましても現在の地域給というものが非常に不公平でありますからして、一応これを是正して、廃止する際にすべり込ませようじゃないかということがその当時の意見でこれが決定したわけでございます。この内閣になりましてから、給与担当の大久保大臣を中心といたしまして、地方公共団体にも影響のあります問題で、私も参画いたしまして大蔵省の主計局の給与課長、人事院の担当局長並びに国会の専門員の諸君に集まっていただきまして、数回協議を重ねまして、いかにして地域差というものをなくなすかということについて相談をいたしたのでありまするが、成案を得ないまま国会に臨むことになりました。公務員制度調査会に移して、今研究をいたしておる最中でございます。地域給の改訂ということと、地域差をなくなすということは、これは関連性があるのでありまして、まずいかにして地域差をなくなすかということをきめまして、同時にその際には現在の地域給というものを改訂してそれに調子を合せる、こういう方針でやっておるわけでありまして、結論が出ないことはいかにも地域差をなくなすということが困難である、どの点から見てもいろいろ支障があり、犠牲者をできるだけ少くしてこれを実現しようというところに困難性があるのでありまして、一生懸命に研究しておるのでありますが、決してこれを等閑に付しておるわけでないことを御了承願いたいと思います。
  128. 館哲二

    委員長館哲二君) なるべく一つ簡単にお願いしたいと思います。
  129. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 いや簡単だが、あまりにそれこそ影響するところが大きいから、公務員がもし能率増進のために倍加する仕事をすれば、国家にしろ、地方にしろ、非常な能率増進になる。だからそういうことを考えずにただ答弁するから、私はやむを得ず質問したくなるのであります。今長官はよく知っておる、知っておるということは、地域差、地域給にはでこぼこがあり過ぎる、そのでこぼこを忍んで、知っておる通りに北海道から富山まで、東北及び寒冷の方の多少はあっても、その地方におきますところの公務員、地方公務員は忍んで今日公務のために働いてきた。しかるにでこぼこがあって、そうして非常な不公平の中に働いておる人たちを公平妥当な、明朗な正しい給与に直すということをしないで、目下小田原評定中、目下研究調査中、そこに政治の貧困さ、政治の悪弊が残るのであります。地方自治庁長官は、今日の地方自治をして明朗に、公平に、かつ健全化するということから、健全化を実現するといたしましたら、まず給与体系、あるいは賞罰が正しくなかったならば、その国は騒乱のもととなる、人心穏やかで過されません。そういうことをお考えにならないで、ただ通り一ぺんのことを考えて、自分は衆議院の人事委員長としてよく体験されたのだから、まずこれになせ手をおつけにならないか。人事官が幾ら勧告しても、人事官の案は政府がのまなければさらにこれを達成することができません。給与担当大臣の大久保さんはおそらく研究はしたかしれないが、聞きましたら何らの予算も持たない、そうして関係役所も持たない、浮いておる人に話を持ち出したって、研究はするけれども予算の裏づけができません。自治庁というあらゆる関係に最も関連の深いその方がみずから公務員に対して安定と、そして給与体系の公平なる措置をして、日本の政治を下部から建て直すという熱意がなければいけない。これを受ける人は下級俸給者でございます。下級俸給者を潤おすところに政治の潤いがある。政治に潤いがなければだめだということをよく知っても、実行しなければ価値ありません。これを実行するか、これをいつごろ提案するか、是正するか、はっきりこの際答弁を願います。
  130. 川島正次郎

    国務大臣川島正次郎君) 地域給のアンバランスを直すことは必要でございます。それでこそ人事院の勧告があり、衆参両委員会においてもこれを取り扱ったのでありますが、アンバランスを直しただけでは、決して地域給の根本的解決にはならぬのでありまして、地域差というものをなくさなければ公平にはならぬのでありまするから、地域差をなくなすということとあわせてアンバランス是正をしようという二つの考えで、従来人事委員会で扱っておったのであります。従いましてこの内閣になりましてから、この二つを取り入れて研究をしておるのでありますから、何としても地域差をなくすということが非常に困難な問題でありまして、犠牲者を出さずして地域差をなくなそうとする、それには二百億近くの金が要るのでありまするからして、これをどうするかということは、やはり成案を得なければ予算化することができないのでありまして、まず適当なる成案を得ましてこれを予算化することに努力いたしたいとこう考えておるわけであります。
  131. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 先ほど来地域給の問題につきましていろいろ議論があるのであります。どうも川島国務大臣は、現在は直接の担当ではないわけでありまして、いろいろはっきりずばりとおっしゃって、われわれは法律がある以上、そう簡単に国務大臣として言うべきではないと思うのです。悪いところは検討するとか、是正するとかいうことが国務大臣として言うことの適当な方法ではないかと思うのです。法律を将来改正するということならば別でありますけれども、ちゃんと地域給というものがある以上は、やはりアンバランスを是正するという程度の発言はけっこうでありますけれども、地域給というものは悪制度である、こう一がいに断定されるということは、われわれとして受け取れないのであります。  それからもう一つ、先ほどから地域差、地域差ということをおっしゃる、地域差ということがどうも私によく呑み込めない。地域差ということがもし生計費、あるいは生計水準の地域差というものをなくすということであれば、これはまことにけっこうであります。その上に地域給をつける必要はごうもありません。しかし現実にある物価水準と申しますか、あるいは生計費水準と申しますか、これが現実にある以上は、やはりそれについて地域給というものを与えなければならないというのが法律的な建前でしょう。あなたが地域差とおっしゃることは、給与の上における地域差ということであれば、もちろんよくわかるんです。しかし全体的に地域差という場合には、生活水準における地域差ということをわれわれは考えるわけであります。その地域差をなくしてしまうということは、これは給与担当大臣でもできなければ、あるいは地方自治庁の長官でもできることではありません。これこそ国全体の財政の立て方において各地域の生計費、物価の地域差というものをなくすということならよくわかる。どういう意味で地域差ということを使っておられるか、これは将来問題を残しますから、はっきりと説明をしていただきたいと思います。
  132. 川島正次郎

    国務大臣川島正次郎君) 私が先きほど地域給を悪制度と言ったのは、あるいは言い過ぎだったかもしれませんが、地域差があることが一つの悪制度だと考えるのであります。地域差ということは松澤さんのお説の通りです。給与面においての地域差であります。現在大体物価指数も落ちついてきましたし、生計費の面を見ましても、都会と地方ではそう変っておらんのであります。もともと地域給というのは、終戦直後経済界が混乱をしまして、交通機関というものが全く途絶されまして地域によって物価が非常に違った際に特につけた制度でありまして、今日から考えますると、地域差というものは必要なんじゃないか。ものによっては都会よりも地方のが安いものがあるのでございます。また高いものもあります。現に雑誌のごときは、地方は五円ずつ地方定価が高いのですから、また医療費なども東京よりも地方の方が高いのがあります。そういった点を勘案いたしますと、都会地と農村と生計費においてそう差がないのでありまするからして、地域給を与える場合に、特に地域差をつける必要はないんじゃないか。かえって地域差があるために、公務員の配置転換に不便がある。ことに最近行われる町村合併の結果、同じ市町村内でもって地域給が違いまして、教員その他の配置転換に非常に困難をしておる実情を見ましても、地域差というもの、地域給における地域差というものをなくす必要があるということを申し上げたのでありますから、そこは御了解を願います。
  133. 館哲二

    委員長館哲二君) 永岡君、よろしゅうございますね……。それでは二時十五分まで休憩いたします。    午後一時十二分休憩    ————・————    午後二時五十五分開会
  134. 館哲二

    委員長館哲二君) 休憩前に引き続き委員会を開きます。
  135. 相馬助治

    相馬助治君 私はいろいろの質問を本日用意しておりますが、まず劈頭に厚生大臣が御出席のようでございますので、このたびの東北地方の水害に関して政府自体がこの被害状況についてどのように実態を調査されておるか、またこれに対してどのような対策を講じられておるか承わりたいと思います。
  136. 川崎秀二

    国務大臣川崎秀二君) 六月二十五日午前三時頃より東北地方を襲いました豪雨は、秋田、山形両県下に三百四十ミリ内外の雨量をもたらしまして、ために旭川、大平川、子吉川、最上川等が増水、はんらんをいたし、死者七名行方不明五名、負傷六名、住家の全壊流失いたしましたもの四十二戸、床上浸水いたしましたもの五千百十七戸、床下浸水一万二千三百八十一戸の被害を出しております。被害状況は目下精密に調査をいたしておりまするけれども、とりあえず山形県では被害の最も集中した最上郡戸沢村に災害救助法を発動いたしまして直ちに被災者に対したき出しを実施いたしますとともに被服等を支給いたしまして援助に当っております。また、秋田県では秋田市に対しまして災害救助法を発動したき出しを実施いたしておるのが現状でございます。
  137. 相馬助治

    相馬助治君 現在のところの被害状況並びにその対策については承わりましたが、今の大臣の言葉にもありましたように十分調査を続けられて、これに対して適切なる処置を時期的にもはずすことなくとられるようにこの際私は要望しておきます。
  138. 高田なほ子

    高田なほ子君 それに関連して、風水害による学童の教科書の流失は大体一年間に二千万円といわれております。これに対しまして文部当局の配慮で教科書の大体三%ぐらいの余分のものが印刷してストックされているやに伺っておりますが、この際学童たちに対する教科書、ぬれて使用にたえないもの、そういうものに対しても措置を講じられる御用意がありますかどうですか、お承わりをしておきます。
  139. 松村謙三

    国務大臣(松村謙三君) ただいまのところ被害の状況が十分わかりませんので、その結果教科書等の補給を要することになりますれば、その措置をとりたいと考えます。
  140. 相馬助治

    相馬助治君 速記をちょっとはずして下さい。
  141. 館哲二

    委員長館哲二君) 速記をやめて。   〔速記中止〕
  142. 館哲二

    委員長館哲二君) 速記を始めて。
  143. 相馬助治

    相馬助治君 私はこの際文部大臣に三、四点お尋ねしたいと存じますが、まず最初にお尋ねしたいのは、教科書の問題についてでございます。御承知のように、現在衆議院の行政監察委員会で教科書に関連した問題を取り上げて証人を喚問するという状態になっているようでございます。また、先般松村文部大臣は記者会見の際に教科書制度改正の意思あることを表明されたように新聞が伝えております。この教科書の問題はすべての国民に直接連関があるということと、同時にわれわれ年代の者は国定教科書によって育てられて今日に至っておる。現在の教科書制度というものは民主的に非常によいということは知っていながらも、われわれ年代の者には国定教科書に対するかすかなる郷愁のあることも否定できない。そういうことを利用して、教科書というものが不当に高いのであるという宣伝、あるいはまたこれに連関していろいろな問題があるということが伝えられて、世上ともするというと、これが国定教科書に移行するところの前提をなす動きが今日なされているのであるというふうにも伝えられておるのでございまます。そこで先般の記者会見におけるところの松村文部大臣のお話は、新聞によって私は承知したのですが、その報道に関連をいたしましてはっきりいたしませんこと、並びに基本的なことの数点をお尋ねしたいと存じますが、教科書制度改正の意図を文部大臣はお持ちであると伝えられておりまするが、それは法規的に見て、現行法規のワク内でその内容を改善し、文部省が指導をしてこの教科書の問題を解決するというふうな腹なのでございますか。それとも各方面に関係のある教科書に連関した法規をこの際整理結合して、あるいは単独立法をして、その立法の面からも教科書制度をこの際改正せんとするの意思をお持ちであるかどうか、立法の面からこの制度にどのような基本的な見解をお持ちであるかをまずお尋ねしたいと存じます。
  144. 松村謙三

    国務大臣(松村謙三君) 教科書の問題は、何とか変えなくちゃならんということは、ほとんど世論と申してもいいようでございまして、これは一っ改めたいと考えるものでございます。それならばどのように変えるかということは、これはただいまは全く白紙の上に立って検討をいたしたいと思うのでございますが、ただその白紙に立つ検討ワクは大体持っておるわけでございます。すなわちできるだけいい本を安く、そして安いということは、その本がしょっちゅう変って、兄弟も兄が使った本は次の年にはもう弟には使えんというようなこと、この間も母の会でしたか、主婦の会あたりでもよく聞かれるところでありますが、こういうような意味からして一つ改めたいというようなこと、それからいかにもそれこま品種が多くて、自然にそこに売り込み等の問題も起る等々のわけでありますから、これを適当に整理してよい本を作り上げたいと、しかしながらそれを国定教科書にいたすことは、これは固定してしまいますので、そういう考えは持っておりません。すなわち検定制度の中において今申すような目的を達することができないかと、こういうことで検討をいたしたいと考えるものでございます。そして、この教科書に対する法規はばらばらになっておりますが、それは一つはこういう検討に伴うて内容を変えることと、それからばらばらのものを一つにまとめるということと、これをあわせてやりたいと考えております。
  145. 相馬助治

    相馬助治君 いまだ白紙の状態ではあるけれどもという前提ではございますが、答弁はかなり具体的なことにまで触れておいでになります。従ってこの教科書の問題については、大臣も御承知でありまするように、ただいま問題となりました価格の問題それから検定の問題、それからそれを供給する供給の問題、それからこれを採用する採択の問題、こういうふうに幾つかに分れておるのでございまするが、価格が高いので父兄の負担が重いからこれを直すと、このことはよくわかります。わかりますけれども、教科書というものが高い高いという宣伝はなされておるけれども、御承知のように、小学校の教科書の一冊の平均の価格というのは四十九円です。中学校においては六十六円です。ただこれが一度に学期初めに父兄の負担となりますので、非常に高い印象が与えられておると私は思います。現行の教科書が安いのであると私は言っておるのではなくて、世上伝えられるほど価格の問題からこの教科書を改正しなければならないという問題を考えることは、むしろ誤まりであると私は考えるのでございます。ただ、今おっしゃいましたように、兄弟が使えないとか、あるいは転校した場合に非常に困るというようなこの不便の点は、私も認め、大臣の答弁に同感でございます。そこで価格に連関してでございますが、教科書の輸送費等は考慮されていない。むしろ月刊雑誌等よりも高くなっておりますることは、御承知通りでございます。そういう輸送費の問題、あるいは国の財政の援助によってこの価格を引き下げるという何らかの措置がこの際とられなければならないと思うのでございまするが、この価格の点に関して何か構想がございましたならば、一つお聞かせを願いたいと思うのでございます。
  146. 松村謙三

    国務大臣(松村謙三君) 今お話しの点でございますが、価格の高いというのは、絶対高いのだと申すのではございません。できるだけ安ければ安いほどいいというわけですから、これを安くすることを検討いたしたいと考えているのでございます。  それから今お話しの税のことでありますとか、輸送費のことでありますとか、それらももちろんその検討の中へ加わることと思いますけれども、それらの内容につきましてはただいまのところはまだ白紙である、検討ワクだけは大体考えておりますけれども、それらのことはこれから検討いたしたいと考えております。
  147. 相馬助治

    相馬助治君 教科書の種類が多過ぎるということに連関してこれを適当に整理したいと、こういうふうな御発言がございましたが、この問題が実は教科書問題では最も重要なポイントをなすのでございまして、現行法の教科書制度が完全なものであると私は考えておりません。改善しなければならない諸点を持っていると存じまするけれども、採択に関していろいろな不祥事件が伝えられ、あるいは予則せられるからということを一つの前提として、教科書の展示会あるいは採択というものを郵道府県単位に行なって教科書の種類というものを大巾に制限されると伝えられておりまするが、文部省はそのようなことを具体的に今日お考えでございますか。
  148. 松村謙三

    国務大臣(松村謙三君) そういう内容につきましては先刻から申しております通りに、白紙で検討するつもりでありますから、これを各府県に限るとかどうするかということについての確定の構想を持っておるのではございません。この間ちょっと新聞に、府県ごとに一単位という話が出ておりましたのは、あれは新聞の誤りではございません。私が言うたことには相違ございませんけれども、その言い方は、どうして教科書の数を減すかという話が出ましたときに、たとえば一府県一単位としてもだいぶん減るじゃなかろうかと、こういうことをただ例示しただけでございまして、そういうようにするとは申したのではございません。
  149. 相馬助治

    相馬助治君 伝えられるところの、中曽根君の案というふうに表現されたり、あるいは一部民主党の政調会がすでに了解した線だと伝えられておる民編国管というものの内容の主軸をなすものは、今申したその採択というものを都道府県単位に行なって、種類を大巾に減らすということが内容でございますが、それを裏書きしたような新聞の報道であったのでございまするが、その点に関しましては伝えられる中曽根案なるもの、すなわち民編国管案というようなものは、いまだ文部大臣自身の賛同を得たものでない、しかもまた民主党の政調会がこれを決定したものではないと、かように了解して差しつかえございませんか。
  150. 松村謙三

    国務大臣(松村謙三君) 中曽根君の案はまだ党議となっておるのではございません。やはり個人の案と申してよろしいと思います。私は今中曽根君の案をとって申しておるのではございません。いずれ研究のときに当っては、民間のいろいろの案、あるいは教育界等の意見等々のものをことごとくしんしゃくして、最善の帰結を得たいと思います。
  151. 相馬助治

    相馬助治君 もう一点は検定の問題でございまするが、教科書の内容を審査して合格不合格を決定するのは、検定委員の仕事でございまするが、最終的には文部大臣であるあなたの責任でございます。従ってこの問題についてどうお考えになるかということはきわめて重要でございまするので、この際明確にお答えをいただければ仕合せと存じますが、御承知のように現在の検定の制度からいたしますると、調査員というのが覆面になっております。そうしてまた具体的に申しまして理科であるとか、数学であるとか、音楽という教科別によって大分検定の手間が違うのでございまするが、原稿用紙一枚について五十円というぶっ切り手当になっております。そこで検定委員というのはわからないはずであるにもかかわりませず、ある教科書会社とはつうつうであるということも……、つうつうという俗語を使いましたがおわかりでしようか。何と申しますか、よく了解済みだ、覆面どころではないということが伝えられておりますのですが、これらの問題についてどのようにお考えになり、今後どのようにされる御予定であるか。この点は一つぜひ承わりたいと思うのでございます。
  152. 松村謙三

    国務大臣(松村謙三君) 検定は文部大臣の権限に属しておりますことは御承知通りでございます。それをあの検定の委員にまかせる、こういうことでやっておるのでございます。お話しのようないろいろな弊害も承わっておりまするし、大体秘密でありますよりも、むしろ公けにいたして責任を持たせる方がよろしくないかと考えておりますが、しかしそれは教科書の問題の全体の解決と同時に改むべきものと心得まして、そのときに改めたいと考えております。
  153. 相馬助治

    相馬助治君 教科書会社のある特定なものと文部省とが、きわめて特定な関係にあるということが一部の新聞その他に報道された事実を文部大臣も御承知であろうと思いますが、現在教科書会社の販売編集その他に従事していた方が、直ちにもって文部省に今度採用になって、教科目その他について全国の教員を監督指導する重要な役割についておる人事例が、さきの文部大臣当時に行われたのですが、松村文相はその事実を御承知でございましょうか。
  154. 松村謙三

    国務大臣(松村謙三君) そういうこともあったことは承わっておりますが、そのためにそういう幣が生じたということはないと心得ます。そうしてその方は今はなくなられましていますから、何ですが、文部省へ来られましてからは絶対にそういうことがなかったことを、なくなった方の名誉のために私は申し上げておきます。
  155. 相馬助治

    相馬助治君 一つ誤解されておりますが、私はなくなられた調査局長を問題にしておりません。おなくなりになった方に対して私はここで死屍にむちうつほど私自身も非常識ではございません。なくなられた調査局長に対しては十分なる敬意を私自身持っております。別な問題です。それとは全然別な例でございます。
  156. 松村謙三

    国務大臣(松村謙三君) 実は現にそういう方はおられるかどうか知りませんけれども、人事の交流がかつてありましたことは、これは私も存じているのでございますが、そういう弊害につきましては厳重に監督をいたしているわけでございます。文部省にかつていた人がそういう会社に入ることはこれはどうもとめることはできませんけれども、(「その通り」と呼ぶ者あり)十分文部省との古い因縁をたどるようなことはいたさせないだけの監督をいたしておるわけであります。
  157. 相馬助治

    相馬助治君 もうちょっと具体的に申しますと、戦争中督学官として、当時の言葉でいう思想善導のために活躍されて、教職員の追放基準によって追放されたその方が、教科書の会社にお勤めになっていた。この問題については私は問題にしていないのです。ところがその方が今度文部省に復活されて、それが単なる事務系統をやるのではなくて、指導監督的な位置につくということに相なりますれば、きわめて問題は深刻であると私は存じて、教科書問題に連関して、一言文部大臣に注意を促し、誤りのないように願いたいので触れたのでございます。次に、私は……。
  158. 高田なほ子

    高田なほ子君 ちょっとそれに関連して……。現在の検定制度を育成するということは、これは当然文部省としてもお考えになっていることは承知しております。しかし相馬委員の御質問に関連いたしまして、当然検定制度を守っていかなければならない文部官僚が、検定事務を取り扱っていらっしゃる文部官僚の方が執筆者に干渉をして、自発的修正という形をもってこの内容を変えさせているという、こういう事実を私どもは承知している。これはまことに容赦のならないことであって、検定制度の中に官僚が介入するということは、これは徹底的に反省をしていただかなければならないと存じますが、こういうことに対して大臣の御所見を伺いたいと思います。
  159. 松村謙三

    国務大臣(松村謙三君) 私、今お尋ねになっておるような事実を存じません。しかしそういうことがありますならば、厳重に取り締るつもりでおります。そういうことはあるべきことではないと存じております。
  160. 相馬助治

    相馬助治君 私はおせじでなくて、松村文部大臣に対しては、就任以来おやりになっていたことに対して、一応の敬意を表しているのです。今高田委員が問題にしたのは、具体的に申しますと、前安藤文部大臣時代に、いわゆる安藤社会科なるものを新聞その他でも話しされておりますが、安藤社会科という安藤さん自身のイデオロギーを強く出したものの線に沿って教科書が編まれる、編さんされるような形に強力に指導をした事実があるのでございます。従いましてそういうことがないように、できないように、制度の問題についてもこれは慎重に考慮していただかなければならぬということを私は今日考えておりますので、この点については文部大臣の格段の努力をお願いしたいと思うのです。   〔委員長退席、理事池田宇右衞門君着席〕  次に、採択の問題でございまするが、新聞に伝えられるところによりますと、不当な売込み競争に関連して、駐在員の問題、あるいは学校職員の問題、これらに非常なるスキャンダルがあると新聞が報道しておる、ところがこれが児童にあるいは教育上支障があるから手をつけないのである、こういうふうに新聞はしばしば報じていました。時あたかも衆議院が行政監察権を発動して、これを調べるというのであって、少くともこの件に関して私は厳粛に取り調べられることについては大賛成でございます。問題は、しかしそういうふうな出先の駐在員、教員等の区々の問題にのみこの行政監察権が行使されるのではなくて、もっと基本的な方面にメスが入らなければならないと期待するのですけれども、この問題については、どうもわれわれの期待を裏切る傾向が看取されます。しかしこれは他院におけるところの委員会のことでございますので、ここでとやかく言う考えは私は持っておりませんが、文部大臣としては、この採択その他に関して具体的にどのようなことを聞き及んでおるか。そしてまた現行法規において、今後この教科書問題に関して将来制度改正するとしても、さしあたりどのような強力なる指導をなさんとするのであるか。この点を伺うと同時に、教科書制度改正する場合には、一片の法律を国会にかけて、それを通して直ちに改正されるのではなくて、業者にとっても、これを教える教師にとっても、これによって教えられる生徒にとっても、事はきわめて重大でございまするから、もしその制度改正の意図等があるならば、なるべく早くこれを世間に公表していただくと同時に、中央教育審議会その他文部大臣の諮問機関等に諮問されて、この問題を慎重にお取り扱いを願いたいと存ずるのでございますが、これらの問題を一括してこの際文部大臣の見解を承わり、教科書に関する質問は私はこれをもって終りにいたしたいと思います。
  161. 松村謙三

    国務大臣(松村謙三君) この教科書について行政監察の事実については全然存じません。また聞きましても、ただうわさにすぎませんので、そういうことよりも、むしろそういうようなことが発生することのないように、機構を改めることが根本的な解決であると存じまして、文部大臣としていたすべきことはその点であろうと考えて、この教科書の根本的の検討をいたしたい、こういう考え方でございます。そうしてそのやり方につきましては、お話しの通りできるだけすみやかに、そして慎重にこの大きな問題を解決いたしたい。かように心得ております。
  162. 相馬助治

    相馬助治君 次に、教科書に連関してですが、小学校に入学する児童のために教科書を無償で配給するという法律案が吉田内閣当時にでき、その後これが財政上の理由をもって法の執行が停止されようとしたときに、当時民主党の諸君も、これに対してわれわれと手をとって反対をした経験を持つものでございます。今般これが財政上の理由で無償配給の法律案が停止されておりまするが、本年だけのことですか、それともまたこの方針で来年も続くものでございますか、大蔵大臣とどのような話し合いになっておりますか、文部大臣の口からお聞きし、同時にこの問題について大蔵大臣の御見解もぜひ承っておきたいと思うのです。
  163. 松村謙三

    国務大臣(松村謙三君) そのことはできるだけすみやかに復活いたしたいと思っておりましたが、やはり緊縮政策が今年も続きますので、もう一年復活することができませんでした。しかしながらこれはぜひとも次の機会において、すなわち次の年度の予算において組み入れまして、それを実現するように努力いたしたいと思うのでございます。ただ、そのやり方につきましては、いろいろ研究をいたさねばならぬと思っておりますが、それはあの通りに、一年生全部に無料で配ることがいいか、またほんとうに貧困な人たちだけに配りましで、そのかわり一年だけでなくて、ずっと上級まで貧困な人にやった方がいいか。これらのことはまだ今のところどちらもきめておりません。あるいは従来通りにやるかもしれませんが、十分に慎重に研究いたしまして、最も効果の上る方法をとりたいと思うてはおりますけれども、しかし、今のところではまだきまっておりませんが、とにかくあの法律の命ずるところに従いまして、次年度からはこれは復活いたしたいと心得ております。
  164. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 教科書の無償配付について、本年度も、三十年度も一年また打ち切る法案を御審議願っておりまして、これは財政上のことからきておるのでありますが、私もやはり残念に思っております。私はやはりこの小学校の生徒に、教科書が国から交付されるというこの心理的な点は十分私評価していいだろうと思っております。ただ同時にまた、今文部大臣が言われたように、今日この義務教育等について国の援助をしなくちゃならん、一々手を差し伸べなければならん点が非常に多いものですから、また一面今文部大臣の言われるように、特に必要な方々に配付するのがいいか、その辺一つ文部省が十分御研究下さると、私も文部大臣と御相談して、来年はできるだけ善処いたしたい、かように考えております。
  165. 秋山長造

    秋山長造君 今の教科書の問題は、私はもちろんこれは安いに越したことはないけれども、安い高いといっても、これは限度の問題で、やはり一番大切なことは、その支払う金よりも教育の内容、あるいは教科書の実質だと思うのです。安いに越したことはないと思うがと言われますけれども、しかしこれも考えようで、では教科書ばかりが高くてほかのものは安いかと申しますと、あるいはPTAの会費であるとか、あるいはその他いろいろな学校の施設拡充等についての寄付金、こういうような問題について一般父兄が悩んでおられることから比べまするならば、この教科書の問題についてこれが悩んでおるといっても、これは悩みようがだいぶ軽いと思う。むしろ安くするというきわめて俗事に入りいい口実のもとにあるいは教科書会社を整理をしていく。整理をしていくと、それだけやはり文部当局の教科書会社に対する有形無形の統制力というものは必ずこれは強化されるにきまっておるのです。また文部省の方から積極的に働きかけをおやりにならんとしても、逆に業者の方から進んで文部省の気に入りそうなことを進んでやるようになる。文部省の意向を向うから、業者の方から積極的に迎えるような形が出てくると思う。だから直接、間接やはりこれはどう説明をつけたところで、国定教科書的な方向に進むものであるということは、これはもう間違いないと私は思うのです。で、そこでそういう方向によって教科書問題を解決するということでなしに、憲法にもやはり義務教育は無償とするという大原則がうたわれておるし、またあの小学校一年生に教科書を無料配付するという法律までわざわざ通過しておるのですから、むしろその法律を忠実に実行し、さらにその上にこれだけ四十九円ぐらいな教科書は困る家庭に対しては政府の方で特にそういう貧困家庭には無償で教科書を配付する。話によればこの貧困家庭に無償で教科書を配付することにしても、せいぜい十億円ぐらいでできるんだそうですから、この十億円とそれから今打ち切りになっておる五億円足らず、両方合せても十五億円です。十五億円あれば少くとも現在の法律、また現在の憲法の指し示す方向に一歩か二歩か少くとも近づけると思う。だから教科書の問題の解決は、むしろ文部大臣のおっしゃるような方向でなしに、今の憲法や法律で現実にきめられておる方向に、一歩でも二歩でも進めていかれることの方が、私は弊害がなくてしかも教育の実質を豊かにし、高めていくゆえんじゃないかと思うのです。そういう方向にこの教科書問題を御推進になる御意思はないかどうか、お尋ねしたい。
  166. 松村謙三

    国務大臣(松村謙三君) 決して文部省の権力のもとに置こうというような考えではございません。また憲法の義務教育に関することは、もちろん考えて突き進むことは、これは当り前でありますが、ただ今日の国力の状態から申しまして、直ちにそこへは参りかねるというわけでございますが、今度の改正につきましても、そういう面を侵してやるというような考えはもちろん持っていないことは御了承を願いたいと思います。
  167. 秋山長造

    秋山長造君 松村文部大臣の善意は私はかけ値なしに信頼をいたすものであります。しかしながら文部大臣が、そのような純粋なお考えでこういう発言をなさったにいたしましても、われわれはただそれだけで直ちに安心するわけにはいかない、遺憾ながら。過去長年にわたるわれわれはにがい経験からいたしまして、そういう文部大臣の善意であるにしろ、それが文部官僚なりあるいは一部の思想傾向を持った人たちによってゆがめられるおそれが多分にある、そこに私どもは非常な疑問と不安とを持たざるを得ない。そこでどうしてもそういう不安や疑問を帳消しにしていただく保障を与えていただかなければならん。そのためには、ただいきなり教科書問題を、安くさえすればいいのだという看板に便乗して、あるいは看板に押されて、教科書を整理するとか、あるいはこの検定制度をどうするとかいう方向でなしに、やはり憲法が保障しておる義務教育は無償とするのだ、できるだけ早い機会に、まあ今の法律では小学校一年生の教科書だけ無償にするという制度ができておる。ところがそれをさらに二年に広げ、三年に広げ、四年に広げ、漸次これを広げていく、あるいはまた貧困家庭に対する無償配給という制度を作っていく、こういう方向にむしろ全力をあげられた方が、文部大臣の持っておられる善意を裏切られることなしに、十二分に現実の教育行政面に盛り込んでいかれる早道であり、ゆえんではないか、こういうように私は思うのです。その点についての文部大臣の御見解と、そうして御決意を、もう一度念のためにお伺いしたい。
  168. 松村謙三

    国務大臣(松村謙三君) お答えを申しますが、お話しの点は教科書の問題にもからみますけれども、一つは義務教育費の負担をどうするかという問題に主点が移るわけでございまして、教科書の制度を変えようという考え方はもちろんそれもありますけれども、できるだけ今日のようなこの状態においては、父兄の負担を軽くすると同時に、もう一つは教育の上から申して、このような教科書の制度に世間が疑いを持つというようなことがあっては、児童の教育の上においてもよろしくありませんから、そういうことのない制度に教科書の制度を改めたい。これが私が今度どうあっても、教科書の制度を再検討しなくちゃならんと心得たゆえんであります。
  169. 湯山勇

    ○湯山勇君 ちょっと今の点で関連して。今文部大臣も大蔵大臣も、一年生に渡す教科書で、一年生と限らないで上級までの貧困な者にも渡すようなことを検討したいというお話があったのですが、私はこれは非常に重大な問題だと思います。と申しますのは、困っておる者に渡すというのは、生活保護の教育扶助なんです。それから一年生に渡すというのは、これはこの子供たちの前途を祝福するためのお祝いなんです。だから一方は純粋な教育的な観点に立ってやろうという法律であるし、貧困家庭にやろうというのはこれは生活保護の立場ですから、この点は法律に忠実にやっていこうとすれば、今のような問題は起らないはずであって、やらなければならない貧困家庭があるということをお認めになっておるのであれば、大蔵大臣、文部大臣もそれは別途に生活保護の方でもっと十分に措置をされる、そうして一年生、二年生をもっと拡充して全学年に無償でやろうということは、その立場でやっていただくようにすべきではないか、こう考えますがいかがでございますか。
  170. 松村謙三

    国務大臣(松村謙三君) 先刻申し上げましたことは、まだ決して確定いたしておるわけではございませんで、考え方がこういう考え方もできるのであり、検討を要するのではないか、こういうことを申したわけでございます。従いましてもしもそれをやりますならば、あの法律を変えてやりますかせねばならんことでございまして、お話しの通りにあの法律を変えずにやりますならば、全く従来通りにやるということでございます。これはまだそういう未確定のことを言わんでもいいことであったかもしれませんが、一応考えておることを申し上げたらどうかと思って申したものでございます。こういうことでございます。さよう御了承を願いたいと思います。
  171. 相馬助治

    相馬助治君 ただいま文部大臣から弁明的な御所見がありましたが、それがないなら、私は厚生大臣に生活保護法についてこの際前進させて考えるかという質問をしたいと思うのですが、未確定であると言われてかぶとを脱がれたので、その問題はそれとして、私はこの際関連して厚生大臣にお聞きしたいのですが、生活保護法の解釈と運用が、地方では非常に消極的なのです。かつまた、問題になりますことは、教科書代というのが生活保護法で見られておりますが、これは役場で父兄が受け取るようになっておるのです。そこでたちの悪い父兄は一ぱい飲んでしまうのです。そこで学校長にも申請代行権を与えるということができないか。これは給食の問題も最初非常に問題になっていたのに、給食の問題は各地区において大体解決して、学校長が代行申請権を持っておるようでございます。これは積極的にこの生活保護法における教育扶助の精神を生かすために、厚生大臣はこれを改訂する意思があるかどうか、この際承わっておきたいと思うのです。
  172. 川崎秀二

    国務大臣川崎秀二君) それは趣旨が十分徹底しておらん地域でそういう問題が起っておるかとも思いまするが、生活保護法の第三十二条によりますと、教育扶助の金品は親権者にも交付できるし、また通学しておる学校の校長にも交付できるように定めてあります。被保護世帯の児童が給食費など池の一般の学童が学校に持参をいたします際、自分だけは学校から出してもらっておるという劣等感を抱くようでは困りますから、自分の親から給食費を受け取って自分で学校に持参する方が、大体基本的な建前にはなっておりまするけれども、お話のように親が教育扶助を生活費に回すというような傾向もなきにしもあらずでありまして、その点につきましては学校長に渡して差しつかえないという規定があるわけでありまするから、各ケースケースについて、その地域におけるところのいわゆる担当の福祉主事が個々の実情によって適当に指導すべきじゃないかと考えております。
  173. 相馬助治

    相馬助治君 次に、地教委の問題について文部大臣、大蔵大臣にお尋ねしたいのでございますが、今日地方教育委員会特に市町村教育委員会が地方財政の逼迫に伴って問題になっております。これは全く財政上からも問題であり、また人事権の行使等から見ても、将来大問題になるぞということをわれわれは数次指摘したわけです。しかし不幸にしてこの制度が出発して今日に至ったわけでございますが、地方財政救済の立場から、また国家財政の規模からながめて、現在の地方教育委員会制度をどのように大蔵大臣はお考えであるかということを、財政の面から私はお尋ねをしておきたいと思うのでございます。  それから文部大臣に対しましては、この教育委員会を一体どういうふうに考えておるか。廃止と考えておるかそれとも改善してどうにか育てていくと考えておるのか。後段の場合には、現在のような人事権の行使では、教育人事の停滞というものはもう火を見るよりも明らかでございます。市町村の教育委員会の規模というものは、人事交流をする適正な規模でない。小さな町や小さな村で人事交流をやってみたところで、教育の機会均等などという観点から理想的な人事は行い得ない。そこで教職員の任免その他に関して、現行法によって十分であると思うか思わないか。十分であるとするならばどういうふうにしようとしておるか。  それから次に問題になりますることは、この教育委員の選任について議会が選任した方がいいとか、あるいはまた別な形の間接選挙がいいとか、今のままでいいとか、いろいろ言われておりますが、それらについて総合的にこの際教育委員会制度をどのようにお考えであるかという点につきまして、かなり具体的に文部大臣より御所見を承わりたいと思うのです。
  174. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えします。財政的見地から申すのですが、地方教育委員会につきましては地方自治庁とただいま文部省といろいろ検討なさっておるようであります。財政的見地では、私どもはやはりこれについて再検討をしてほしいと、かように考えております。
  175. 松村謙三

    国務大臣(松村謙三君) ただいまお話しのように人事が一局部に沈滞するなどという弊害も、相当にもう顕著に出て参りまするし、この制度につきましては、これも速急に検討いたして、そしてあれは来年の春改選の予定でありますから、その前に一つの方針を決定いたしたいと存ずるのであります。それにつきましては適当な機会におきまして審議会等に諮って最善の案を得たいと思っております。
  176. 池田宇右衞門

    ○理事(池田宇右衞門君) 相馬さんに申し上げますが、時間が切れておりますがお知りでしょうな。
  177. 相馬助治

    相馬助治君 厚生大臣に一点承わりたいと思うのですが、最近ヒロポンの取締りについてかなり一生懸命になって効果を上げているようですが、それはある地区々々を見るとそういうことも言えるが、ある地区によっては、いまだその効果が十分でないという問題がわれわれに見られます。それから最近はチクロパンというものがヒロポンにかわって大へんに打たれている。現在の覚せい剤取締法では、このチクロパンというものは取り締れないようになっていると聞いておりますが、この覚せい剤の対策というものは、一厚生省の問題でなくて現在の政府自体責任において一つ根本的に考えていただかなければならぬと存じますが、それに対して政府はどのような構想と意思を持っておるか。並びに覚せい剤取締法の改正、その他においてこのチクロバンというようなものも十分に取り締れるような法律の改正という用意があるか。これらの問題についてこの際御所見を承わっておきたいと思います。
  178. 川崎秀二

    国務大臣川崎秀二君) 覚せい剤の問題につきましては、各政党におきまして非常にこの撲滅のために御協力を願っておる次第でありまして、政府といたしましても単に厚生省というような一省では、とうていなしとげられない仕事でありまするので、昨年の末でありましたか、覚せい剤対策推進協議会というようなものができまして、本部長は私になっておりますが副部長には官房長官がなりまして、各省から委員を出していただき、また各界から学識経験者その他の有力な方々を委員に選任をいたしまして、すでに両三回にわたりまして対策協議会を設け、逐次これが推進をはかっておるような次第であります。ことに今回の予算におきましても相当な額を計上いたしましたばかりでなく、自由党と民主党の共同修正案におきましてもさらに一千万円、宣伝費が足りないということのために新たに啓蒙宣伝費が計上されまして、これでかなり大きな運動ができると思うのであります。従来も地区によりましては非常な大きな効果を上げておったものと、また最近では、覚せい剤の常用者は都会から離れまして農村方面に浸透していくという悪い傾向も現われておりますので、これらにつきましては十分今後宣伝啓蒙いたすとともに、東京、大阪、横浜、名古屋、神戸というような最も覚せい剤を使う青少年の多い地区に対しましては、これを強制収容する施設なども拡充をしておるような次第であります。従いましてこの方は相当効果がありまして、本年一年様子をみていただきますれば、かなり大きな反響もあると思うのでありますが、ただいまのお尋ねのチクロパンの方は、近時覚せい剤を用いる癖のある者がやはり併用してこれを用いておるような事実がありますので、取り締りを非常に強化をいたしておるような状態であります。たとえば薬局の開設者、それから医薬品販売業者がチクロパンの販売に関しまして、薬事法に規定する規則を順守しているかいなかということを厳量に監視しながら、不正販売の事実を発見したときに行政処一分の厳重な処置をいたしております。第二に、これが取引に無登録業者が介在している事実を発見したときには、すみやかに司法当局に対して通報いたしまして捜査を依頼しまして告発の手続をとることなど、その他各般の手続をとっておるのでありますが、御承知のように婦人科等に使われる麻酔剤でありますから、これを禁止するということは今日の段階では、覚せい剤とは違いまして、法的な規制ということが、最後的な規制ができない状態であります。しかしながら、ただいま御指摘のような非常に悪い傾向が行われておりますので、これにつきましては十分今後取締りを強化し、もしさらにこれが撲滅できないということになりますれば、適当な立法措置もその段階においては講ずることになるかもしれないと思っております。これがチクロパンの最近の実情並びに対策の現況であることをあわせて御報告申し上げておきます。
  179. 池田宇右衞門

    ○理事(池田宇右衞門君) 木村守江君が今不在につき、繰り上げて高田なほ子君に発言を許すことにいたします。
  180. 高田なほ子

    高田なほ子君 文部大臣にお尋ねをいたします。学童給食の問題についてお尋ねをいたします。学童給食国民の意識が教育に対して熱心であればあるほど次第に高まって参りまして、政府もまたこれに対応する施策を十分にお立てになることは当然であろうと思います。しかし給食費はやはり逐次に実質的に削られておりますがゆえに、この学童給食の基本方針も、当初教育の機会均等に主眼を置いたわけでありますが、その後食糧の改善という方向に次第に向いてきております。しかも今回アメリカからの過剰農産物の贈与に当っては、一そう食生活の改善という方向に重点が置かれてきているように思うのでございますが、この給食についての基本的な方針について大臣のはっきりした御所見を承わりたいと存じます。
  181. 松村謙三

    国務大臣(松村謙三君) お答えをいたしますが、給食の問題は単に昼に食事を出すというような簡単なことでは今ではありませんで、それによって、この衛生上のことはもちろんでありますけれども、たくさんの人と交わっての礼儀作法というようなものの教え方、それから今お話しの食生活の改善、またもう一つこれは少し脇道のようですけれども、農林行政のうちの有畜農業との結びつき等々のことがありますので、給食の問題というものは、今ではきわめて教育の上から申しても重大な部面を占むるようになったのでございまして、そういう意味合いにおいて給食の完全を期したいと、こういうふうに考えております。
  182. 高田なほ子

    高田なほ子君 過剰農産物の贈与にかんがみまして、過般の外務委員会の高碕国務大臣の御答弁の中には、次のように学童に対する無償贈与についての見解が述べられております。現在学童にただで給食して、ただでくれるものがあれば、七千トンの粉乳をもって彼らに十分供給して、牛乳を飲むということをならわすことは必要だと思うのである。現在乳製業者を圧迫するというような感じがあるが、やがてこれは大きく消費が増加する、こういうふうに感じている——つまり学童給食の面を、食生活の改善あるいはアメリカの過剰農産物の市場としての開拓地のような解釈をとっておられるのでありますが、これはただいまの文部大臣の御答弁とその趣旨とそれから高碕国務大臣考えというものは非常に根本的に違っているように私は考えるのです。この点について高碕国務大臣の御所見を承わりたい。
  183. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。学童に給食をしてその給食によって学童の食生活に対する習慣を作らしめるということは、やがて日本民族の食生活の改善になるということは文部大臣がお答えした通りだと存じますが、その学童に対してある一定の費用しかないという場合に、無償で供給してくれる口があればそれを持ってきて有償で、国家が払えるところのその予算以上に牛乳を学童に給食するということになれば、学童が牛乳をよく飲むという習慣がますますつけられると、そういうことは今年一年はあるいは国内の乳製品工業に幾らかの打撃があるかも存じませんけれども、その学童に牛乳を飲むという習慣をつけるということは、やがては日本国内の乳製品の消費を増加することになりまして、これはアメリカの農産物の販路拡張ということよりも、日本の畜産工業、先ほど文部大臣がお答えいたしました酪農工業、そうして日本民族の牛乳を使用するその量を増すということとのつながりになると、こう存ずるわけでございまして、文部大臣のお答えいたしましたことと私の考えとは全く一致しておるわけであります。
  184. 高田なほ子

    高田なほ子君 高碕国務大臣は、脱脂ミルクをお飲みになっておりますかどうですか存じませんが、これは決しておいしいものではありません。やむを得ずこれは飲ませているといった方がいいと思う。このことは文部大臣も御承知のはずです。こういうまずいものを多量に入れて、そして子供に牛乳を飲ませる奨励にするなどということは、全くこれは雲の上の私は議論のように考えられますが、しかしこれは議論でありますから、次に御質問いたしますが、そういたしますと、高碕国務大臣は食生活になれさせるということを言っておられます。そうすると、この過剰農産物の脱脂ミルクは継続的に入れられるというふうに考えられますか。文相はこの過剰農産物の贈与については、継続的にこれを入れるということについてはおっしゃらず、むしろ本年一年度の問題であるというように、文部委員会においては答弁をせられております。閣内において過剰農産物のこの無償の贈与の問題は若干の食い違いがあるように思いますが、統一した意見はどちらでございますか、承わりたいと存じます。
  185. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 明年度脱脂粉乳を受け入れるかいなかということはいまだ決定いたしておりませんが、脱脂粉乳というものが、これで習慣づけてそして明年度も引き続いてアメリカの脱脂粉乳を飲ますのじゃないかという、こういう御質問でございますが、脱脂粉乳は国内産もすでに学童に給食しているわけなんであります。それの足らないところを補ったのでありますが、来年度もし脱脂粉乳をアメリカの贈与を受けないとするなれば、それだけ国内の脱脂粉乳の消費は増加するわけであります。子供にそれだけの食生活をならすということに相なることと存じます。
  186. 松村謙三

    国務大臣(松村謙三君) この問題につきましては、高碕経審長官とはよく打ち合せをいたしておりまして、考え方に不統一はないと心得ております。すなわち、私が今年一年限りと申しましたことは、今度の約束が一年でございますので、それで今年限りと申して、来年の計画を持っておりませんのでありますから、さよう申し上げ、経審長官といたして、来年もまた入れるようになるというならば、それまたその約束によって来年はあらためて考える、こういうことでございますから、高碕君の話とは別にそごするところはないのでございますから、さよう御了承願います。
  187. 高田なほ子

    高田なほ子君 重ねて文部大臣にお尋ねいたしますが、脱脂ミルクは非常に評判が悪いのです。アメリカでも人間の子供にはこれは飲ましておらないということを聞く。そういうものを継続的に大量に日本に入れて、ただであるということではなくて、むしろこれは非常に高い代償を日本としては払っておると思います。電源の開発にしても巨大なアメリカの資本導入があるし、六十一億のアメリカの軍人や軍属に対する宿舎の供与ということは、これは非常に大きな問題、そういう大きな代償を払っておって、脱脂ミルクを、子供のあまり好まない脱脂ミルクを大量にまたもらうということについては、非常にこれは研究を要すると思うのですが、近い将来、これが国内において非常に評判が悪い、こういうようなことになりましたなら、文部大臣の御一存でこの約束を拒否するだけの権能をお持ちになっていらっしゃるかどうか、この点をお尋ねしたいと思います。
  188. 松村謙三

    国務大臣(松村謙三君) この脱脂粉乳につきましては、なるほどにおいがありますとかというようなことで、一部の生徒がきらいますことは事実でございますけれども、しかしその栄養価値がないというわけではございません。それで私どもの考え方といたして、方針といたしておりますことは、内地の酪農と結びつきまして、そうして内地の酪農が漸次拡充してそうしてそれを児童に供給できるのと置きかえていきたい、こういうふうに考えておるわけでございまして、そういう方針をとっていく方が子供の栄養の上からいってもいいのだろう。今これを全然、これまで毎日飲ましていた粉乳でもなくしてしまっては、これは栄養の上から申しても、子供たちの嗜好の上からいってもそういうわけには参りませんから、今はそういうふうにして漸次日本の酪農の発達とともに、生乳と置きかえていきたい、こういうふうに考えております。
  189. 高田なほ子

    高田なほ子君 ちょっと質問の趣旨と違うのですけれども、現在の国内の牛乳生産は非常に過剰なんです。これを学童に回すような仕組みをすれば、当然あまり栄養のない、子供の好かないこの脱脂ミルクを継続して入れるということは、私はまずいのではないかと思う。当然アメリカからのこの贈与に対して、現在の国内の意思も十分に反映されて、これに対する日本側としての要求を十分に言ってこれを受け入れさせるだけのお力を大臣は国際的に持っていらっしゃるかということを質問しているのです。
  190. 松村謙三

    国務大臣(松村謙三君) それは政府におきまして相談をいたして、そうしてお話のような必要のあるときにはさようさせることは、これは政府の力ではでき得ると考えております。
  191. 高田なほ子

    高田なほ子君 また無償で贈与される小麦粉は、これはストックであります。従って無償で贈与される場合に、ずいぶん古いものも贈与されることがあると私は思います。また内容においても、パンではどうしても製造してもよくできない軟質の小麦粉が大量に入ってくる場合もあり得る、こういう衛生の見地から立って子供の生命を守らなければならない大事な学童給食が、もし子供たちに対して非常に不適当である、こういう点を発見した場合に、これを拒否し得る一つの権能を大臣はお持ちになっていらっしゃいますか、いかがでございますか。
  192. 松村謙三

    国務大臣(松村謙三君) その点につきましては、十分の注意をいたしまして、向うから受け入れる麦の性質等についても、外務省、経審等の専門家から十分の話し合いをいたしているわけでございます。そしてその受け入れにつきましては、経験のある農林省の食管の方で取り扱ってくれるはずでございますから、その点は安心ができ得る、このように考えております。
  193. 高田なほ子

    高田なほ子君 安心ができない場合はどうなさいますか。
  194. 松村謙三

    国務大臣(松村謙三君) それは拒否をいたしますなり、または飼料その他に回すなり、それは直ちに適当な措置をとり得ると考えております。
  195. 高田なほ子

    高田なほ子君 今回の無償給与の目的は、児童の福祉拡大という点にあります。しかしこれは今申し上げたように、ただで贈与されるのではなくて、陰に非常に大きな負担を含んでおるわけでありますから、当然児童の福祉拡大については、相当なものがここに具体的に出てこなければならないと思う。たとえば、文相は有料でこれを受け入れると言っております——子供に対しては有料でこれを配給するとし言っておりますが、これは貧困児童、要保護児童にとっては一顧の値打もないことであると思うし、また中学生に学童給食の範囲を拡大するのか、あるいは定時制高校に通う勤労青年のために、この給食が回されていくものか、こういうような、実際的には給食費が安くなるのか等々の内容が含まれておりますが、児童の福祉拡大の内容、つまりその経過、これらについて御答弁を願いたいと存じます。
  196. 松村謙三

    国務大臣(松村謙三君) それにつきましては、まだ最後の決定には至っておりませんけれども、大体の考え方は、この保護を要する方面には、これは無料で渡すということ、それからそうでない方面には有料で渡します。その有料につきましても、一般にパンの値段より二円なり三円なり安くなるという程度のものであり、さらにできるだけ、貧困な人でありますならば、運賃だけの諸掛りだけでパンとして渡すというようなことにいたすわけでございます。それで大体、もしもそれによって利益がありますならば、それはほかへ使わないて、給食のまだ設備を持たないために給食ができないところの設備費、そういうような方面へ使いたい、このように考えて計画を現に立てつつあります。
  197. 高田なほ子

    高田なほ子君 この問題については、まだ掘り下げて伺いたいのですが、後刻にいたします。
  198. 湯山勇

    ○湯山勇君 ちょっと今のに関連して。学校給食の小麦粉でございますが、アメリカの方から入った小麦粉を使った場合には国の補助がありますけれども、地元でできた小麦粉を使った場合には国の補助がないということになっておると聞いておりますが、これはどうも私は納得ができかねるのでございますが、どういうわけでそうなっておるのか、そうしてもしそうであれば、これを改める御意思はございませんか。
  199. 松村謙三

    国務大臣(松村謙三君) 私経理の詳しいことは存じませんので、もし間違ったことを申すかもしれませんが、私の了解いたしておりますところでは、それらのものはみんなまぜてパンに作るのでございますから、すべてが一つになって計算をされるわけでございますから、同じことであろうと思っておるのでございます。
  200. 湯山勇

    ○湯山勇君 今のは違っておるのではないかと存じます。私は先般この問題で文部省へお聞き合せをしたわけです。そのときに地元で小麦粉がたくさんできるから、これを使ってパン給食をしたい、これに対して補助をしてもらえるかどうかというこをお尋ねしたところが、それはだめだ、アメリカの方から来た小麦だけでなければ補助対象にはならないというお答えをいただいておりますので、今の御答弁は違うようでございすから、もう一度お確めの上で御答弁を願います。
  201. 松村謙三

    国務大臣(松村謙三君) 今ここにおります事務の者にも聞いてみましたが、私のただいまお答え申したので正しいように申しております。もしも間違っておりますならば、後刻取り調べましてあらためて御報告申し上げます。
  202. 高田なほ子

    高田なほ子君 文部大臣にお尋ねいたします。地方財源の圧縮に伴って教員の定数が非常に窮屈になって参りました。この窮屈な定数の中で婦人の教師が出産をいたましたときに、なかなかその補助教員をとることができません。このために婦人教師は産前も産後も非常な無理をしておりまして、現在の異常産は三四%という驚くべき高率に達しております。なおまた休養中の児童の学習は、きわめて不正常な状態に置かれておりまして、合併授業をするものは全体の一七%、自習をしなければならない子供は五一%、これはまことにゆゆしい問題だと存じます。こうした不正常な授業を解消し、あわせて基準法に規定された婦人の保護を十分に行うために、正しく補助教員を配置するという考え方を私どもは持っておるわけでございますが、文部大臣といたしまして、この考え方に対してどのような御所信をお持ちになっていらっしゃいますか、お答え願いたいと存じます。
  203. 松村謙三

    国務大臣(松村謙三君) ただいまお尋ねの問題は、各政党の間にもいろいろお話があるようでございまして、もしもそれらの点において帰結点ができますならば、政府といたしましても考慮をいたしたいと存ずるのでございます。ただし今日予算等の措置もありますので、直ちに同意できるかどうかは、これは十分協議をしてみなければわかりませんけれども、文部省といたしましては、その必要は感じておるわけでございます。   〔理事池田宇右衞門君退席、委員長着席〕
  204. 吉田萬次

    吉田萬次君 先回私が砂糖の問題について農林大臣に質問いたしましたが、時間がなかったがために十分に御質問を申し上げることもできなかったのと、また農林大臣はよく調べてお答えをすると言われたそのお答えがまだありません関係上、重ねて補足的に質問をしたいと思うのであります。砂糖の外貨割当基準につきまして、さきに農相に質問いたしました。私はあなたに質問趣旨を提出しておきましたが、いかなる理由であなたは当然なさなければならぬところのこの質問につきまして、通産大臣にさせて、そうして御答弁がなかったか、その理由はどういう理由であるかということ、それからまた外貨基準の決定という重大問題をあなたが農林大臣として知らなかったというはずはないと思いまするが、御存じないかどうか、まず承わりたいと思うのであります。
  205. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) お答えいたします。砂糖の外貨割当は、農林省の食糧庁と通産省と合意の上でやっていることでございます。ところが私お尋ねのありました当時非常に何と申しますか、この決定をいたしました当時にいろいろ事務が多うございまして、怠慢であまり関係をしていなかったものでございますから、それほどよく存じませんで、これは為替のことでございますから、他の一般の為替が全部通産省でやっていることになっております。ことに私がそういう記憶をいたしましたのは、今回の砂糖の政府の措置でもおわかりの通りに、砂糖の輸入につきましては、これは通産省でやることになっておりますので、それが私の頭に記憶があったものでございますから、それは通産省の仕事であるということに私は考えました。ところが帰って事務の方を調べましたところが、それは私どもの方と通産省との間で相談をしてやるのだということでございましたので、取り調べてお答えをいたそうといたしておったのでございますが、そういう事情で当時はなはだ御無礼を申し上げましたことをお答いたしまして、御了解願いたいと思います。
  206. 吉田萬次

    吉田萬次君 それは輸入砂糖の九十五万トンに対する二割の問題でありまして、それは通産省にも関係があると思いまするけれども、しかしながら、今日砂糖の外貨割当基準並びに精糖工場の設備に対する取扱いというものはこれは当然食糧庁の所管であると私は解釈しておりますし、また、食糧庁長官は通産省の局長あてに通牒を出しておるということにおいても明らかだと思っております。それは、「食糧庁長官、通産省通商局長殿。さきに当庁において実施せる砂糖工場能力査定の結果につき十−三月期の粗糖輸入に必要な外貨資金を左記の基準により別紙の通り算定したの、でこれにより割当て願いたく依頼する。」というような通牒がはっきり出ている以上は、これはあなたが御存じないというはずはないと思うのであります。また、この食糧庁の長官は、「精糖工場の能力のストップ令に関して」という質問を出しておりますが、それに対して長官は出席しておらなかったのであります。これは委員長からも何の御通知もないのでありますから、これは無届け欠席のように私は解釈いたします。この出席せなかったということは、これは予算委員会を軽視するように私は解釈いたしますが、どうですか。なぜ出席できなかったか。
  207. 清井正

    政府委員(清井正君) 私食糧庁の長官でございます。前回御質問がございまして、私欠席いたしまして、御答弁申し上げなかったのでございますが、まことに申しわけないのでございまして、事務疎漏のため出席いたさなかったことを深くお詫びいたす次第であります。
  208. 吉田萬次

    吉田萬次君 外貨の割当に、新設工場の三社、すなわち四国製糖であるとか富国製糖というものを加えたことは、どういう理由によって加えたか、その加えるべき時期でないようなときに、加えるべき時期であれば私は議論は成り立つと思いますけれども、ストップ令によって加えるべきでないというようになっているこのときに何がためにかような三社を認めたか。政府が生産能力を抑制しているときに、ことさらにこの新設工場三社を割り込ませたということは、どういうそこに意味があるか、この割り込ましたということに対する点について、さらにお承わりしたいと思うのであります。これは要するにみずから出した法案をみずから破るということと同じことでありまするが、これは私はすこぶる不可解に思う点でありますによって、この点を御説明願いたいと思います。
  209. 清井正

    政府委員(清井正君) ただいまお尋ねの砂糖の割当の工場の問題でありますが、これは御承知のように昨年六月にあまりにも設備が過剰なのをとめまして、一応これの行政措置といたしまして、これ以上能力をふやさないようにということの行政指導をいたしたのでありますが、その後御承知通り、昨年の八十万トンの輸入砂糖の割当に対しまして、本年は九十五万トンにも砂糖の輸入量がふえたということもございますし、かたがた砂糖め割当の方法も、昨年はいわゆる砂糖の精製業者に対する割当と、輸入業者に対する割当とが半々くらいのところでありましたことは御承知通りであります。ところが本年度はいわゆるリンク制度がなくなりましたので、相当の割合に工場に割り当てられるという結果に一応なるわけであります。そういったようなことで工場全体に出回るところの砂糖の量がふえたというようなこどもございましたので、前記二社を新たに追加した、こういうことでございます。当時、昨年の六月に設備能力に関しまして抑制措置をとりましたときに、当該二工場はすでに拡張計画中でございましたので、特殊の事情があると思いまして、本年それを認めたわけであります。こうした事情にありますから、御了承を願いたいと思います。
  210. 吉田萬次

    吉田萬次君 この問題につきましては、参考に述べますと、二九食糧第二一九五七号(食品)、昭和二十九年六月八日、食糧庁長官から精糖工場設備に対する取扱いにつき標記のことについては別紙のように取り扱うこととしたので御了承願いたい。  (別紙) 精糖工場設備に対する取扱について、我国の当面する現状より見て、外貨事情の急速なる一好転は、当分の間困難なものと見透され国内に於ける砂糖の需給状態は精々窮屈の度を加えるに至った現況である。さて、精糖工場設備の新増設に対する取扱方については、先般来決定の線にそって実施し来った処であるが、その後去る三月末に実施した能力査定の結果に基く精糖能力は、年間約二六〇万屯に達し、これを戦前の実績等に徴するに、国内需要の限界を遥かに上廻っており、加うるに前段の事情等諸般の情勢を併せ考えるとき、今後更に設備能力の増加が行われるときは、愈々操業率の低下を来たし、ひいては、精糖事業の健全な発達を図る点からみても適当でないと考えられるので、今後外資資金割当については、次の取扱によるものとする。     記  一、昭和二十九年四月一日以降の新設工場については、割当の対象としないものとする。  というような通達も出ておるのであります。そこで、先回私が質問しましたのに対して河野農相は、「ただいまお尋ねになりました点は後刻調査をいたしまして御報告いたしますが、今の四国製糖、それらのことは私は聞いておりません。いずれよく取調べまして御報告いたします。」という御答弁がありました。しかしこの問題は非常に重要な問題であり、相当な広い範囲に波紋を描いたのでありまするので、すでにこの問題が爼上に上ったのは五月七日以前と思いまするが、従ってここに実業通信という日刊にもはっきりと、三社へ新規割当は不当であるとか、あるいはその他の通信にもこの問題が重要視せられて、そうしていろいろと物議をかもし、また世間からいろいろな目をもって見られておるのでありまするが、農相はこの別この問題を知らないと言われましたが、かような古いことであり、知らなければならぬ問題であると思いまするが、全く知られなかったかどうか、承わりたい。
  211. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) お答えいたします。実は私吉田さんからここでお尋ねがありますまで全然知らないでおりまして、まことに相済みませんが、よく当時の事情を取調べまして一つ考えますから……。
  212. 吉田萬次

    吉田萬次君 あなたがこの問題をかような長い間も知らずにおられて、そうして部下の人がこれを知っておったというふうのことでありますると、あなたはこういう重大な問題に対して部下を信頼しておられるかしらぬけれども、部下にまかしておる。かような重大問題であり、また世間の疑惑を招く問題であり、その裏に何かひそんでおりはしないかというような、こんな問題がもし部下の人だけが知っておったということであったならば、部下の人がこういうふうの問題に関与しておるということがあった場合、あなたの責任というものがどうなりますかということについて、私はすこぶるこの問題、三社をもぐり込ませたというこの問題について、私はきわめて疑惑の念を深め、また持っておる次第であります。かような問題につきましては、私はすこぶる遺憾に思いまするが、もう一つ均等割の五%について、この均等割の五%というものが中小企業の精糖に関する諸君には非常に重大な問題であり、この問題がもしなくなった場合はということで、当時心配しておりましたその五%の均等割がなくなったのでありまするが、仄聞するところによりますると、この問題はきわめて重要な問題であり、次官の手元まで参りました際は五%があるいは二、三%に減りましたかは知りませんけれども、とにかくこれが存続されたというように聞いておるのが、一朝あなたの机上へこれが出た場合において、あなたがむげにこれを切り捨ててしまったというように聞いておりますが、実際はどうでありましたか、承りたいと思います。
  213. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) はなはだ怠慢かもしれませんが、そういうことは私は全然知らぬのでありまして、今の次官がどうとかいうことで私のところに来て、私がやめたということは私は全然そういうことは知らぬので、御了承を願いたいと思います。
  214. 吉田萬次

    吉田萬次君 大体今までの割当というものが実績本位から能力本位に変ったと、実績というものが六五%であって、能力が三〇%である、均等割五%であったというものが均等割がなくなってしまい、また実績割が六五%が六〇%になって、そして五%ここに削られて、それが能力の方へ全部割り当てられたと、しかもあの時代ある会社では非常に工場を拡張し、他の土地において大きな工場を設立しており、もう砂糖の問題が先が見えてきたのに、かような工場を建てておるのはどうもおかしいということがありましたのと、もうその会社はもし従来のように操業をしていくということであったならば、本社をつぶして、そして新しい工場だけでやっと運営ができていくだろうといったのにかかわらず、能力割にせられたがために非常に隆盛におもむき、その本社の方までもやはり持続して経営しておるというように聞いておりますが、なぜ能力本位というものに主恨を置いて実績とか均等割をなくせられたのか。また従来差しつかえなく運用せられておったところの実績割、あるいは能力割、あるいは均等割というものを旧に復するというような、それに対する御意思があるかどうか、承わりたい。
  215. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) はなはだ相済みませんが、この砂糖の割当についてはあまり私は勉強しておらなかったわけであります。そこで今お示しでございますから、その点につきまして、最初の問題につきましては、当時の事情を厳重に取調べをいたしまして、そしてもし機会がなければ書面においてお答えいたします。また今の点につきましては、これもよく研究いたしまして、書面ではっきり御答弁申し上げるようにいたしたいと思います。よく勉強いたします。
  216. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 関連して。四国製糖ですか、富国製糖ですか、それをお調べになるついでにぜひお願いしたいのは、名古屋精糖の設備拡張についてもお調べを願いたいのです。それは今度の特需物資の売り払いによって政府は収入を得てこれを使うことになっております。この法案と関連してこれは大蔵委員会で資料をいただきましたが、もうこの名古屋精糖を作る前に非常に設備過剰になっており、投資過剰になっておって問題が起っていたわけですね、それを資料で見ますと、大体砂糖会社は設備過剰で、稼働は五割、六割ぐらいか稼働しておりません。名古屋精糖のできる前にすでにそうなんです。それだのに名古屋精糖、これは一番大きい会社になってしまった。それがただいまの御質問にありましたように、その設備能力に応じ外貨を制し当てるというような文句に切りかえたものですから、みんな業界で拡張しまして、特に名古屋精糖はこれはこんなに大きい設備をなぜ許したか、もうすでに過剰になっておるのです。これについては河野農林大臣よく御承知と思います、いろんな自由党時代の献金の問題なんかで。それから神戸の工場の敷地提供についても、いろいろうわさがあるわけです。この横井さんという人ですか、この人をめぐって、神戸港の第八突堤の土地、これを非常に安く貸している。そういういろんな問題があるのでありまして、従って、ただいまの四国製糖及び富国製糖のもぐり込みといいますか、それと同時にこの名古屋精糖の問題は、これは一種の利権的な問題として、非常に重大視されていますから、この点についてもぜひ、河野農林大臣が、すでにそういう問題については非常に衆議院あたりでもしょっちゅう鋭くこれはついておられた方でありますから、われわれが納得いくように、これもあわせて御調査、御報告願いたいと思います。
  217. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) お答えいたします。御趣旨に沿うように、さっそく諸般の問題を取り調べまして御報告いたすようにいたします。
  218. 吉田萬次

    吉田萬次君 私も一この問題は非常に重大な問題であり、世間からも疑惑の念をもって見られ、またかような問題はこの前の汚職事件の直後にもすでに問題になっておったことでありますによって、農林大臣は知らぬとおっしゃるから、これ以上追及してもまたお答えが望めぬとも存じますので、今日はこ。程度でやめて、また後日お尋ねすることにいたします。
  219. 館哲二

    委員長館哲二君) 石原君の質疑中、運輸大臣に対する分が保留されております。この際発言を求めます。
  220. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 運輸大臣に一、二点お尋ねしておきたいのでありますが、国鉄になりましてから営利第一主義といいますか、採算第一主義をとられまして、路線の改良問題にしても、新線の建設問題にしても、採算のとれるところでないと建設も改良もなかなかやってくれないのであります。たとえば、電化の問題にいたしましても、複線工事にしても、採算の最もとれる東海道あるいは山陽、この方面はどんどんやられますが、北海道なり東北の重要性は唱えながらも、東北本線の現状を見れば、複線もわずか宇都宮までしか行っていない。電化問題はここ五、六年叫んでおりまするけれども、東海道が終らなければ手をつけないというような状況で一切やらない。新線建設の問題につきましても、採算のとれるところでないと新線建設をやらないというような状態でございまして、今まで幸い鉄道のできておるところは、その地方はそれで非常に文化に恵まれるのでありますけれども、取り残されておったところは、これではもういつまでたっても新しい文化に浴することができないという状況ではないか。後進地域の開発というようなことが非常におくれてくるわけでありまするが、こういうやり方に対しまして、運輸大臣といたしまして、どういう考えを持っておられるか。また今後いかが対処されるか、伺っておきたいと思います。
  221. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) ただいま新線建設として予定をされております線が二十三線であります。これは一昨年の鉄道建設審議会を経て新線建設に組み入れられたのでございますが、どうしてもこの二十三線を早急に新線を建設いたしますためには一むろんその中には戦時中撤去された路線も二線入っております。そのためには相当の建設の資金を要するのであります。そのために、でき得べくんば六十五億円程度の新線建設の費用がありますれば、これは非常に経済スピードで二十三線を短期間の間に片づけ得るのでありますが、なかなか今日の財政ワクの中で、思うようにいかないのであります。今年も三十億円という程度でございますために、将来新線建設はどうしていくべきかということについて、私も苦慮いたしておるわけであります。がしかし、何と申しましても鉄道自身が自己資本がないわけでありますから、これはどうしても政府の資金によらなければならないわけでございますために、どうして今後新線の建設を促進していくかということについて、格別妙案というものはないのであります。政府の資金を、できるだけワクをふやして、そしてこの予定されておる新線をできるだけ早く竣工さすと、そのためには鉄道新線建設に対する資金のワクをふやすということに努力するよりほかにはない、こういう状態でございます。
  222. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 財政というか、財源の関係で苦慮されておることはよくわかるのでありまするが、最近国鉄が営利第一主義といいますか、採算第一主義ですぐそろばんをはじいて、これだけの改良をやればどのくらいかかる、それにはこのくらいしか収益が上らぬというような、そろばん第一主義でいろいろの計画が進められる。これは運輸大臣がいかが言われようとも、現実がそうでありまするから否定できない。ところが、これはもう国家本位でやるという状態でありまして、そろばんがとれないからということのために、いつまでも永久に故郷されるというのでは、これは国家的見地から公益的にやる事業として私は困るとこれは思うのでありまして、たとえば、先ほど例に引きました東北線の複線あるいは電化というような問題でも、まあ東北をやるよりは東海道の方が採算がとれる。ところが北海道であるとか、東北の重要性というものは、もう口を開けば北海道の重要性、東北の重要性を唱えつつも、一向これに手を染めようともしない。これは手を染めてからでも数年かかるのでありまするから、若干ダブっても開始していかなければとうてい実現できないと思うのでありまして、この点についてもう一度お答え願いたい。  もう一言ついででありまするから……。先ほど大臣から撤去線のことが話されましたが、私はこの微衷線の問題だけは断じてこれは許せない、延ばせない問題だと思うのであります。申すまでもなく、戦争中に、戦争が終ればこれはつけるのだというわけで、無理にこれは引き離した。しかもその撤去線には、発生は、地方鉄道などで無理に無理に資金を重ねてようやく鉄道を引いた。それが国鉄に買収されて国鉄線になっておった。それがさらに撤去されたというわけであります。ところが、鉄道を中心といたしまして、御承知のように、その地方の産業なり経済の一つの組織がずっとできておるのでありまするから、鉱山の採掘が始まっているところもありましょうし、いろいろ問題があるのであります。それが撤去されて、今日何年たってもなかなか復活されないというのでは、これは全く地方民、国民を欺いたということになるので、私はこの問題のために十年近く戦っている問題がある。これはあまり採算はとれない線かもしれませんけれども、地方民をだましたままにしておいて国家は黙っておるということは、これは許せないことです。しかもその鉄道によって非常に大きな経済産業組織ができておる地方の問題でありまするから、この撤去線は、いかに採算の問題があろうとも、財源が苦しかろうとも、これは何にも先んじてまずこれをやらなければならぬものであると私は思うのでありますが、運輸大臣はいかにお考えになりますか。
  223. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 今御指摘の、国鉄が採算のよいところばかり先へして、そうでないところをあとにすることについて御批判があったわけでございますが、実に国鉄自身が企業性、公共性、この二つの間の事に立ちまして、なかなか国鉄自身の苦しさもあるわけであります。なぜかと申せば、やはり運賃の決定もこれは国鉄の自由にはなりませんし、予算によって経営をしておるわけでございまして、そういう点で必ずしも国鉄にいろいろ予算の上においても自主性があるというわけではございません。しかも、運賃はできるだけこれは安く置きたいということが歴代の政府の方針でございますために、資金的に非常に国鉄自身が余裕がないわけであります。そうなって参りますと、どうしてもこの採算と申しますか、そういう公共性を要求すればするほど、一面においては国鉄の採算ということも考えざるを得ない。これがもう全く昔の国鉄のようなもので、国のいわゆる公共企業体というような形でなければ、これはまあ赤字が出れば政府赤字を補って行ける方法があるのでありますが、今のように公共企業体として、独立採算ということが相当公共企業体の中に要求される要素になってきておる。そうなってくると、また一方において公共性ということも、非常に国鉄の性質上、独占事業として要求されるという点で、この公共企業体というものに対して検討を加えてみたいということで、現在各方面のこういう方面に対して相当知識をお持ちになっておる人二十数名に委嘱いたしまして、これは毎週一回熱心な検討を加えておるわけであります。そうでないと、どうしてもこの矛盾というものが、公共性と企業性との間にはさまれて、国鉄というものの矛盾が非常にいろいろな点で露呈してくる。それで国鉄の企業形態というものに対して、この機会に根本的な検討を加えたいということで調査会が発足をいたしておるわけでございます。  なお戦時中に撤去いたしました路線は、これは早急にこれを復旧することが、今御指摘の通りだとは思うのでございますが、何分にも鉄道の新線の建設は、鉄道建設審議会の議を経なければならないことになっておるのであります。撤去された路線に白棚線、札沼線の二線だけが残っておるのであります。ところが、その二十三線の中で順位というものがついていないのであります。撤去された路線が先の順位だということになっていないので、これは鉄道建設審議会で順位をつけることになっております。現在、今年三十億の予算をこの二十三線にどうつけるかということにつきまして、小委員会検討を加えております。しかし原則のお話としては、戦時中に撤去されたような鉄道は、できるだけ早く復旧をすべきであるというこの原則のお話には私も同感であります。ただ、これは建設審議会相当順位をつける権限を持っておりますから、そういう面で必ずしもそのように実現できるかできないかは別といたしまして、原則のお話としては私も同感でございます。
  224. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 東北線の電化について。
  225. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) もう一つ、東北線の電化につきましては、現在の電化は、来年の夏ころまでには大阪までできる予定でございます。それから東海道は姫路まで予定をしておるのでございますが、その東海道ができました後には、これは東北線というものを考えておるのでございますが、何分にもこの電化の資金のワクが一ぺんにどこもかしこもというわけに行きませんから、順序としては、東海道線、次には東北線というものを検討を加えておるわけでございます。
  226. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 ただいま運輸大臣から詳細によく独立会計並びに路線について申されましたが、運輸大臣もお知りの通り、中央東京に近く、また中京たる名古屋、大阪に近い私ども長野県が、御承知のごとく観光県と言われて、外来が五百万、あるいはそれ以上来るあの中央線でありますが、諏訪−塩尻間、また松本−長野間、夏になれば毎年老人や子供の中において、暑さのために暑さあたりを起すような方々がたくさんある。また鉄道職員においても、非常にこれがために悩まされておりまして、郵便関係においては、私は郵便車を直しましたのでありますが、あのトンネルが長くて十分、あるいは場所によっては二十分くらいトンネルの中に煙に包まれるというような実情から申しまして、戦前戦後を通じて今日まで電化を要求しておりますが、この点がなかなか触れてこない。それからいま一つ、大糸線なども富山、新潟方面と長野県をつなぐ二十キロくらいで全通するのでありますけれども、これも中途半端に打ち捨ててある。かような鉄道行政から見ますれば、わずかな金をもってあるいは全通でき、また電化によってどれだけ地方民及びそこに勤めておるところの職員が助かるというようなことについては、まあ長野県でいえば、二百万県民ばかりでない、これらの旅行しておる方々がひとしく悩まされておるところでありますが、これらについて、十分に研究は行なっておられることであろうと思いますが、かような夏季に及べば災害、災難を生ずるのが毎年でございます。これらについて、運輸大臣はどういうふうに御研究し、今後何年間くらいの間にこれを電化するお見込みがあるかということについて御答弁を願いたいと思います。
  227. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 池田さん御指摘のように、長野県地方の電化ということは、これは緊急を要するところだと思います。私ども参りましてその感を強くするのでございますが、今申したように、この機会に国鉄財政の再建を私はしたいと思う。そうでなければ、今はもう改良費というものがわずかな予算ワクで、資産再評価のごときも、第一次の資産再評価であります。第三次資産再評価をしてその減価償却を改良費の方に回したいと思いますが、なかなか実現しない。こういうことでは、なかなかなか電化の拡張はおろか、今までの路線というものを補修していくこともこれは容易でないと思います。そういうので、今私が申し上げました国鉄の公共企業体としての経営形態を検討を加えると同時に、国鉄財政の再建ということ、この二つを議題にして、ただいま相当膨大な調査会を発足いたしました。そういうことで何とか国鉄財政に余裕を持ちまして、今御指摘のような東北であるとか、長野県のような所を電化のできる資金を国鉄財政のうちに持ちたい。できるだけそういう必要なところは早急に電化をいたすような方法をとりたい、こう考えておる次第でございます。
  228. 佐藤清一郎

    佐藤清一郎君 石原委員質問に関連しまして、私は東北本線の電化問題についてお尋ねしたいと思います。先ほど答弁がありましたが、東北本線とは名ばかりでありまして、上野から青森までの急行列車線は少しもない。列車数は急行線が三本ありますが、青森までではなくて、仙台あるいは秋田までであります。これが東北本線の急行線の三本、ほかに常磐線回り東北本線急行というのがあるのでありますが、お株を常磐線にとられておるような実情であります。しかも政府は東北あるいは北海道の開発を常に唱えておりますことは今さら申すまでもございませんが、日本の年々ふえる人口をどうしても未開発の東北、北海道にこの人口あるいは経済開発を行うことは当然のことでなければならぬと考えるのでありまするのに、その動脈ともいうべき東北本線というものが全くのローカル線に置かれておることは、まだ東北本線をほんとべに利用する運輸大臣が出ておらないというところに、われわれは非常な難関があるように思う。これは三木運輸大臣はどちらの御出身かは私はわかりませんが、(笑声)これをもってほんとうに体験する、東北方面になるほどこれでは困るというみずからの体験をする大臣でなければ、この実情はほんとうに勘案できないと思う。今聞くところによりますと、大阪まで来年は完成するから、それ以後またさらに岡山までも延ばしてゆきたい、さらに今度は向うの九州までも延ばしてゆきたいというようなことになるのじゃないかと想像するわけであります。で議員の数から申しますと、なるほど北海道から、(笑声)東北方面から出てくるところの議員というものはきわめて少いわけです。(「そんなことないよ」と呼ぶ者あり)また経済価値方面からみても、現在からみると、きわめて大阪、神戸あるいは九州方面と比較いたしますれば、これは見劣りするであろうと考えまするけれども、またいわゆる旅客あるいは貨物の数等から計算すれば、おそらくこれまた非常に見劣りする。これを数学的に示す私はデータを持っておりませんが、はなはだ貧弱なものであろうと考えられるのです。しかしながら日本の将来の発展を考える場合において、中国や朝鮮等の大陸との交通等を考えました、日本の運輸方面の考慮をいたした当時と比べて、これから先はどうしても北海道、東北というものの開発をせねばならぬ現状において、今までのようなローカル線にしておくということははなはだふらちであると私は考える。こういう意味において、ほんとうに東北本線を本来の本線として建て直していくだけの運輸大臣は責任があるであろうと私は考えるのでありますが、どうかこれは答弁してもしなくても、あえて……(笑声)そのときのいいかげんな口先の答弁だけではわれわれは承服いたしませんから、必ず実現するまではわれわれは運動を展開するつもりでありますけれども、いかなる御所見でありますか、以上お伺いいたします。
  229. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 佐藤さんの御熱心な御意見をよく拝聴いたしました。日本においては北海道が将来開発するこれは唯一の地点でございます。そういう意味からいたしまして東北線の増強ということは、これは大きなやはり運輸政策上の課題になって参るわけでございまして、そういう点から現在東北線の全線複線を計画をいたしておるわけであります。今盛岡附近の工事をいたしておりますが、運輸政策上これは重要な路線として、東北本線の価値を決して忘れるものではございませんから、今後とも増強いたしまして、御期待に沿いたいと考えておる次第であります。(「四国線はどうします」と呼ぶ者あり)
  230. 館哲二

    委員長館哲二君) 以上をもちまして、一般質問に関する通告者の質疑は全部終了いたしました。  五時二十分まで休憩いたしまして、その後米価問題に限りまして質疑を行いたいと思います。    午後五時六分休憩    ————・————    午後五時四十五分開会
  231. 館哲二

    委員長館哲二君) 休憩前に引き続いて委員会を開きます。  米価に関する一般質疑を行います。
  232. 田中啓一

    田中啓一君 私は米価の問題を中心といたしまして、供出制度あるいは予算等の関係について農林大臣と大蔵大臣に御質疑をしたいと存じます。  本朝新聞紙の報じますところによれば、政府は三十年産米の生産者手取価格を一万六十円におきめになりましたそうでございますが、一万六十円という米価の基礎あるいは算定基礎と申しますか、よく世間でパリティとか生産費とかいろいろなことを申しますが、これらに関じまして、どういう計算で一万六十円というものをお出しになりましたか、まずこれをお伺いしたいと存じます。
  233. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 一万六十円を政府として一応きめましたことは、御承知通り食管法の規定にありまする通り、物価の趨勢と生産費とを勘案いたしまして、それに経済情勢を考慮いたしましてきめるという法律の規定がございます。この規定に準拠いたしまして、第一はいわゆるパリティ計算によりますれば、昭和二十八年九年、この両年の減収加算を除きました農家の手取金額に、物価の趨勢値を考慮いたしまして、そしてこれを重要な資料といたし、さらに一方御承知通り昨年来生産費につきましては御調査を願っておりまするその中間報告もございましたので、それを勘案いたしまして、さらに経済事情等も考慮いたしましてきめた次第であります。
  234. 田中啓一

    田中啓一君 まあパリティの方はそれでわかりましたが、いま一つのこの生産費の方は、農林省は長年の調査をしておるのでございまして、その方から申しますると、かりに三十年産米を平年作とむろん見ての話になりましょうが、そういった推定生産費というものはどれくらいのお見込になるのでございますか。
  235. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) これはただいまお答え申し上げました通りに、昨年の米価審議会で、生産費を十分考慮するようにということがありましたので、それに基きまして特別委員会を作りまして、その特別委員会の中間報告がございましたのでそれは一本ではございませんので、しかもそれは今結論的には米価審議会の小委員会で折角御検討を願っておる次第であります。しかしそのほかに今に御検討を願っておりまするその要素となるべきものに、いろいろな計算の仕方もあるわけでございまして、これに基いていろいろ計数をとって、これを重要な資料にいたしておる、こういう次第であります。
  236. 田中啓一

    田中啓一君 生産費というものは、そういうむずかしいものであることはよく御説明で了承いたしました。何分いろいろ数字も幾つもある、これも私よくわかるのでございますが、それでまあそれはこんなものこんなものという数字はおよそどれくらいというものになっておりますか、御説明を願えましょうか。
  237. 清井正

    政府委員(清井正君) 生産費の問題につきましては、御承知通り統計調査部において毎日三千戸の農家について平均生産費を調査いたしまして、その生産費の調査の結果が出ておるのでありますが、これは御承知通りいわゆる日雇いであるとか、あるいは類地小作料を計算いたしております。それを平均いたしますと、相当低い実は数字が出ておるのであります。現在数字は持っておりませんのでそはっきり申し上げかねるのでありますが、相当低い数字ですが、かねがね法律には生産費を基準としてという言葉がありますけれども、私は、統計調査部の生産費のほかに、かねがね民間からも御要望がありまして、従いまして、また御承知通り昨年の米価を決定いたしましたときに、米価審議会において生産費方式を中心とした方式で検討しようというお話し合いがございましたので、現に私どもにおいて学者に委嘱いたしまして、生産費方式を中心といたしますところの問題をいろいろ御検討を願ったのがあるのでございます。それはちょっと時間を急いでおりますので、学者に御研究願いましたので、中間報告程度になっております。学者方としてもその方式そのものにもいろいろ問題があるということで、その発表も御慎重を期しておられます。同時にまたその意図に基いた数字につきましても非常に慎重にやっておるのであります。そういうことでございまして、私ども部内におきましてもいろいろ数字を勘案検討いたしたものもございますけれども、そういったような意味合いもありますし、私どもとしましては部内の数字といたしましていろいろ検討いたしましたけれども、ここで申し上げるような数字にまとまっておらないのであります。なおただいま米価審議会におきましても、本日も算定方式等につきまして小委員会をお開きになりまして、十分御検討している次第でありますので、よろしくお願いいたします。
  238. 田中啓一

    田中啓一君 折角米価審議会に、米あるいは価格等に関する専門家がお集りになりまして、いろいろ生産費計算の方式等を御研究になりましても、まだ十分の結論的な数字を出すには至っていないようなお話しでございまして、その点はよく了承いたしました。そこで、とてもはっきりと生産費はこれでございますという数字が出ないが、とにかくいろいろの数字が出ておるのだ、そこでパリティとか生産費とかあるいは経済の事情というようなものも勘案をして、一万六十円という数字に定めたというお話しはそれでわかったのでございます。  次に、結局これはたびたび農林大臣これまで御説明のように、二千三百五十万石でございますか、これだけの米を一石当り一万六十円で買う、いろんな名目がついた金も出るかもしれぬが、そういうもの全部含めて、百姓の手取り平均価格は一万六十円である、こういうように私了解をしておるのでございますが、そこでいろいろのもののうちに非常に顕著なものの一つは、早場米の奨励金であろうと思うのです。その数字も今朝の新聞に出ておりまして、何でも最高一万二千円石当り払うというような数字であったように思うのです。そこでこの最高の、早場米奨励金を受ける百姓が出すその米の一石当りが、これが一万幾らになる、おそらく一万一千円とか何とかいうような数字になるであろうと私想像するのでございますが、それから早場米奨励金を受けない農民が出します米の一石当りは幾らになるか、これも実際に計算ができると思います。それとそういう計算をするには、必ず一万二千円の奨励金に当る米は何石くらいの見込みか千円のものは何石くらいの見込みだというおよその見当もお立てになっていると思いますので、そういった早場米の合計でもよろしゅうございますが、数字もあわせて御説明願いたい。
  239. 清井正

    政府委員(清井正君) ただいまのお話しの通り一万六十円の中には、いわゆる従前早場米奨励金と申しまして、今度は価格の差ということになりますが、そういうようなものも含まれておるわけでございます。そこでただいまの考えといたしましては、昨年早期供出について奨励金といたしまして支出いたしました単価は、特に九月二十日までは二千円と、非常に高い単価を出したのでございます。これは前年産は凶作でございまして、早く新米を食べなければ、早場米の需給の操作が困る、需給に特殊事情がございまして、非常に高い単価を出したのであります。その後九月末日までの分として千二百円、十月十五日までの分として六百円、十月三十一日までの分として三百円支出をいたしたのであります。その後十二月十日までさらに続いて出しておるのでございます。今回はそういったような非常な凶作の年という事情ではございませんし、かねがね本年の早期供出という意味合いもございますし、また平年作等も推定して、いろいろ事情もございますので、ただいま考えておりますのは、大体十月末日までで打切るという考え方をとっておるのでございます。同時に二千円を出しましたのは特殊事情がございますので、これはやめる、昨年の単価を維持する、そういうことを考えておるのでごいまざす。そうしますと、九月末日までの分が千二百円、十月十五日までの分が六百円、十月三十一日までの分が三百円ということになるわけでございます、単価が。そこでそれに基いて政府に売り渡されます数量の予想でございますけれども、ただいままでのところこれがふえるとも減るともいろいろむずかしい問題がございますので、大体現在の計算は昨年出ました数量が大体今年も同じ程度売り渡せるであろうと、こういう前提をおいておるのであります。そういうふうに、前提をおきますと、ちょうど十月三十一日までに政府に売り渡されます米の数量が八百八十九万二千石になっておるのであります。今年もその程度の数字が出るだろう、こういうふうに考えまして、ただいまのような単価を掛けて参りますと、総額にして約五十億の供出奨励金に相当する今年の早場米の全体の、政府の支出金になるわけです。そういうようなことで計算いたしまして、大体平均いたしまして一石二百十円ということになるわけでございます。そういうようなただいまの九月末までに千二百円あるいは三百円ということにずっと計算いたして参りますと、むろんこれは等級上ずっとこまかい問題はございますけれども、非常に平準的に考えますというと、九月末日までに売り渡されたものの価格は一万一千五十円ということになります。それから十月十五日までに売り渡されたものは一万四百五十円、それから十月三十一日までに売り渡されたものが一万百五十円、それから十一月以降になりますと九千八百五十円、こういうふうな計算に相なるのでございます。
  240. 田中啓一

    田中啓一君 私はたぶんそんな見当かと実は心ひそかに想像いたしていたのでございますが、その通りで、最高は一万一千円の米があると同時に、また大部分の米はつまり二千三百五十万石から八百万石引きました約一千五百万石というものが九千八百円、まあほとんど予算米価と同じ値段で政府が買われる、こういうことになるわけでございます。そうして考えますると、早場米地帯というものは、とにかくまあ一万円以上になる。ことに九月中に売ったものは一万一千円を越すというわけで、まあそう悪い米価でない、こう言えるでございましょうが、一千五百万石の分ですね、これはまあ九千八百円ということで、おそらく百姓の失望はなかなか大きいであろう、こう私も思わざるを得ないのであります。そこでどうもこれを下手をしますると、いわゆる早場米地帯の米は予約に乗ってくるが、そうでないところはなかなか乗ってこないのでないかという傾向を持つのでないか、ということを一つおそれるのでございますが、さらに私これに関連することでございますが、御質疑を申したいのは、今度の予約制には内払いをされると思うのであります。予約金と申しますか。で、これもまあ一緒に御内定になったと思いますが、これはまあどれぐらいお払いになるつもりでございますか、これをお伺いしたいと思います。
  241. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 二千円ぐらい払おうかと思っております。
  242. 田中啓一

    田中啓一君 で、農民もなかなか金が逼迫しておりますから、この二千円予約と同時に出来秋前に払われるということは、これは相当の魅力であろうと思います。これと関連のありますのは、実はそのいろいろ金のほしい者が、米の金が手に入るまでに金を借りております。例の農業予約手形、農手というものでございます。この農手というものを、今日相当額利用されておると思いますが、まあその総額はどれくらいであり、これはどの方面各県別に申しますと、正確なことは要りませんのでございますが、これは金融専門家の大蔵大臣にお伺いしたいと思います。
  243. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えしますが、農手がどういう程度、ちょっと私今記憶ありませんので、調べてお答えしたいと思います。
  244. 田中啓一

    田中啓一君 じゃ農林大臣御承知でございましたら……。
  245. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) ちょっとそれは……。
  246. 田中啓一

    田中啓一君 それでは私の想像を申し上げますが、私も総額ははっきり覚えておるわけではございません。が、利用をされておりまするのはあたかも早場米地帯でございます。早場米奨励金というのは、御承知のように非常に向うの農業状態が悪いものでございますから、そういうことに対する何といいますか、農業の助成というような意味もなくはないと私は思うのであります。かたがた北海道、東北、北陸というようなところに非常に多いのでございまして、関東から東海、中央部以東はあまり農業手形は利用しておらんと思います。そこで最も早く金の欲しいのは東北、北陸であり、そうして加うるに先ほど申しましたように早場米地帯でございますから、よそよりは高い。こういう二つからどうもこの方面はやや予約の見込みが立ち、その他のところはなかなか困難でなかろうかと、こういうことを一応思うのでございますが、さらにそれに関連しまして、予約したものと予約しないものとで政府の買入価格を差をつけられますのでございましたろうか。また期限、つまり予約は、従って差をつけるとすれば、期限の問題が出てくると思います。いつまでに申し込んだものは格差をつける、こういうような問題が出てくると思います。それも一つ農林大臣から……。
  247. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) その点につきましては、団体方面にもいろいろ御意見があるのでございますけれども、政府といたしましては等差はつけずに、区別をつけずにやっていきたいと、こう考えております。
  248. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 関連。これは大臣でなくて食糧庁長官から一つ御答弁を願いたいと思います。ただいま田中委員質問に対して、十一月以降は九千八百円だという御答弁がございましたが、農家は一万六十円という政府内定を、もしこれが米価審議会その他を通過して正しい米価決定と相なりますならば、十一月以降もやはり一万六十円を手取りもらうものだというふうに認識しやすいのでございます。それが実際において九千八百円であったというようなことに相なりますと、その食い違いの上から申しましまして、御承知のごとく駅弁その他に払うのは、売り渡す金は、政府といたしましては一石一万三千円程度で売っておる。同時に現在の闇米が一千万石以上流れておる事情から申しますれば、予約はしたが、価格が違うから、そちらの方へ流れやすいというような経路になりやすい実情に追い込まれます。そこで政府といたしましては、予約出荷に対しましては、倉庫納めに対しましては何か奨励金があるのかどうか、また検査場においても特別検査、たとえば生産者に対しまして庭検査をしてやるとか、何かそこに特別の方法をもって、予約した以上、その予約が倉庫納めに全部完了するような特別な方法を考えてやらなかったならば、予約いたしましても完納するというようなことにならない段階に入るのをおそれるのでございます。これらの点について長官どういうふうな手を打っておるのでありますか、ここが一番委員会あるいは下部の実際予約農民として安心して予約の実績を完了するというきめ手であろうと思うが、これは長官から一つ答えた方がいいと思います。
  249. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 私でよろしゅうございますか。
  250. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 いやいや、長官。(笑声)
  251. 清井正

    政府委員(清井正君) これはかねがね池田委員の非常に御関心のあるところでございます。非常に有益なる御意見を承わっておるところでございまして、実は今回の集荷制度につきましては、やはり生産者の方々が本制度に協力していただきまして、そうして自主的に政府に売り渡しを申し込みしていただく、申し込んだのを実行していただくということに本旨があるわけでございまして、従いまして、実際に米が出ましたときに、やはり末端の検査の制度がやはり生産者に非常に親切になっていなければならんのでございます。ただいまは一定の指定倉庫まで持って行きました場合には、特に指定した場合には、マル特の加算をいたしておるわけであります。検査につきましてはできるだけ生産者に便宜なようになるべく地元でいたしておりますけれども、やはり実際の便宜上、農業倉庫等のような所に生産者が持って来ておりまして、そこで検査しておるのが通常の場合でございます。今後ともわれわれといたしましては生産者の売り渡しの便宜になるようにできるだけ検査に工夫して努力いたして参らなければならんと思うわけであります。  十一月以降の価格は九千八百五十円になるのではないか。これは今までの手取り価格と申しまして九千八百五十九円であるとかいうふうに昨年産米について見ましたものは、早期供出奨励金、超過供出奨励金、全部含めた価格で九千八百五十九円ということが言われておったわけでありますが、その基準価格は一万六十円になった、こういうことでございますので、そういたしますというと、その中に当然早期供出奨励金が含まれる、従来の。そうしますと十一月以降になる価格が結局九千八百五十円くらいになるということは、これはやむを得ないことでございます。ただいまのようなこともございますし、またあるいは政府以外に売るというような事態も起らないように、また私どもといたしましては本制度によって生産者ができるだけ売り渡していただけるように、末端の検査機構につきましても、できるだけ生産者の意向を照らしながら努力いたして参らなければならない、こう考えておるのでございます。
  252. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 今までは供出制度を施行して、供出であるから、倉庫納めに持って行った。予約であるから、予約に対しましては、初めて施行することであるから、よほど検査員においても、また農業委員会においても、協同組合においても、予約農民に対して特別親切であり、それから価格についても納得するというようなことでなければ、それが完遂を見ないのであります。その完遂をいたさせるには、何と申しましても一万六十円の価格が九千八百五十円ということになると、どうも違うじゃないか、農家というものは正直だから、そう言いたくなるのであります。そうすると、予約を実行しないということになりますから、この予約を実行させるには、何か特別の手段をもって実行させるように導いてやらなければならん。これは事務的にも、また農家に納得させるところの方法を説くにも、今までのような官僚式事務的命令ではとうてい完璧なことができません。しかもやみ相場の方が高いのでありますから、だからそうう食い違いをどう処理しなさるか。そういう計画、準備、農民の納得するような方法を食糧庁といたしましては、今すでに予約の申し込みをとるときにおいて計画して、末端にその方法をよく浸透するような方法をとっておかなければならん。この方法について特別の勘案、あるいは特別の計画、それから下によく浸透する方法を研究されてあるかどうかということを聞くのであります。
  253. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 今の池田さんの御意見はごもっともでございまして、今考えておりますのは、前渡金を二千円上げるということと、今せっかく大蔵省と協議中でございますが、ある程度の減税をするということと、その他今御指摘のように、検査の方法でありますとか、買付のことでありますとかいうようなことについて、とかく従来は供出々々ということでやって参りましたのを、今度は制度を変えるのでありますから、ただしこれは従来とてもそういうことになっていなかったのをそういうようにさしておったということに欠点があるのでございますから、これらの点につきましては十分注意をいたしまして、そうしてまた協同組合の諸君におかれましても、この制度に全力をあげて御協力を下さるということに私は考えておりますから、これらは十分われわれといたしましても、組合の諸君とよく談合いたしまして、その趣旨の徹底いたしまするよう、また検査員諸君に対しましても、十分督励いたしまして、その趣旨に沿うようにいたして参りたいと思うのであります。なおまたそういうお気づきの点がありますれば、われわれは何としてもこの制度によって一つ目的を完遂いたしたいと考えておるのでございますから、御注意いただきますれば、最善を尽して行きたいと考えておる次第でございます。
  254. 伊能芳雄

    ○伊能芳雄君 関連。ただいま田中委員質問の中で、予約の期限をいつころにするかという質問に対して、どうもお答えがはっきりしないのですが、この点を一つ伺いたい。
  255. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) お答えいたします。大体の目標は八月十五日くらいを目標にいたしております、最終をでございます。
  256. 伊能芳雄

    ○伊能芳雄君 もう一つ。予約の優遇の問題は、前渡金の二千円ぐらい、そのほかには予約奨励というような別にそういう考え方はないのでございますか。つまり予約して売っても予約しないで売っても全部条件は同じ、そういうことでございますか、その点伺たい。
  257. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 私は一応全部予約していただけるものと期待いたしておりまするし、そういうことで行きたいと思っておりますので、この点に区別はつけないということで行きたいと考えておるわけでございます。
  258. 田中啓一

    田中啓一君 どうも予約した者としない者とに価格の差はないが、まあ期限は八月一ぱいぐらいでしたいというお話でございましたが、もう事ここに至ったのでありますから、なるべく実体的の論をしなければいかんと思うのでございますが、先ほど申しましたように、早場米奨励金あるいは従来の農業手形との関係からいう内渡し二千円というような魅力のよくきく地方、こういうところは、まあ約八百万石でございましょう。これはまあ農相の予期のような相当の動きになろうかと思うのでございますが、他の所はなかなか腰を上げない、農民が。結局は出来秋になり、例年の供出のぎりぎりの、問題のあの十二月ごろにもなりはせんか、結局やってくれやってくれということで拝み倒しに政府が行脚をするほかにないことになると思うのであります。そこでその際に、その頼む何と申しますか筋は、これは結局集荷団体である農業協同組合を主としたものであろうと思うのであります。ことに農業協同組合はこの制度も初めからこれで行ったらどうかというような意向も相当有力に行われておった団体でございまして、たびたび農林大臣もおっしゃるように、これを非常に頼みにし、その誠意を信頼してのっかかって行かれるというような実はことになったのでありますから、私はやっぱり心持はそういう心持で農相はやるであろうと思うのであります。ところが、肝心の米価の方はなかなか農協側の期待したようなわけには行かないという事情でございまして、かりに農協が、今日日本の経済の置かれておる実態を見てやむを得ないとしましても、百姓というものは農協について来る、こういう事態になりますので、非常に農協の努力というものをわれわれは今後期待するほかはないのであります。そうなりますると、いずれこの集荷の手数料というものを農協等にお払いになるお心組みであろうと思うのでございますが、これは相当多ければ、場合によっては自分らの手数料を農民には、どうせ農業協同組合のことでありますから、分けて一向差しつかえない団体でございますので、そういう制度が農協なのでありますから、そういうような奮発もまあ農協はし得る余地が出てくるというわけでございまして、結局は今となってはこの集荷団体に相当のまあ手数料を奮発していただくということが唯一の道じゃないかと、こう私は思うのであります。それのみならず、もう一つ私は申し上げておきたいのは、農協というものは今日非常に経営困難な状態で、あえぎあえぎ実はやっておるような状態である。従って例の再建整備法とかあるは促進法とかいうようなもので国から何億というような金を出して再建整備をやっておられるわけでございますが、私どもの農協の貧乏する根本原因というものを、自由経済時代と比べて考えてみますると、統制経済になりまして政府が農協に支払う米のその供出取り扱いの手数料というものは、自由経済時代に比べてだいぶどうも額が少いじゃないか。私は、まあ自由経済でありますれば、米の共同販売機関というものがやはり一%とか二%とかいう手数料を取り得るものだと、こう思うのであります、三段階ございますから。ところがなかなか今の手数料はそうは参っておりません。で、一方再建整備として力を入れてやっておられるわけでありますが、もともと根本が立って行かないような今の状態に置かれておるのです。決してこの供出制度ないし予約集荷制度にしても、農協が好んでこれでやりたいというのではない。今度は供出に往生しておりましたから、割当よりは予約の方がよかろうということでもあり、また、もともと共同販売機関でありますから、みずからの共同販売というものの、今から一つ、何と申しますか、慣習をつけて行こう、こういうような考えももちろん農協にあると思います。そうなると、要は自由経済時代に近いような手数料をこれに払ってやられないと、いかに政府に協力しようとしましても、なかなか困難だと思います。でございますから、一つ集荷手数料がおきまりになっておりますればお示しを願い、もしそうなっておらなければ一つ御奮発のほどを、御決心をお願いしたいとこう思うのであります。
  259. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 御承知のように昨年までは四十円であったのを、今度は四十八円にするつもり、でございます。昨年までは四十円でありましたが、それは四十八円にいたそうと考えております。
  260. 田中啓一

    田中啓一君 どうもなんですね、米は一石一万円、一%で百円でございますが、それにまあ四十八円お払いになるというのですから〇・五%お払いになるということでございますが、なかなかこれは私はえらいというように思うのでございます。これはまあ秋になってだんだん拝み倒しのときに奮発をされるよりは、そうやって今から一つ政府も大いに奮発をしてそうしておやりになる方がいいのではないかと思うのでございますが、これは私の意見でありますから、御答弁は要りません。  次にもう一つこの際お伺いしておきたいことは、やはり農協に関連することでありますが、農家の作ったものは農業倉庫に入れるというのが建前でございますが、今日まで供出なりあるいは政府買い上げの米麦というものは、一時は農協に入ったものを農業倉庫に入れるのでございますが、間もなく多くは営業倉庫へ移されておる。これは非常に農協にとっては不利益なんです。何のために一体倉庫を移すのか。食糧庁の言い分はどうも貯蔵設備等が十分でないということを言われたり、そのほかの消費地にも置かなければならぬということを言われたりしますが、今日私は配給も輸送もまず円滑でございまして、何も一ぺん消費地の営業倉庫へ移してからでなければ米の配給に支障を生ずるような事情はないと思うのであります。で今日大分外米、外麦の輸入量を控えまして、この前は四百万、それから政府の買い上げの米麦というのはおよそまたこれに少々輪をかけたくらいのことじゃなかろうかというような気がいたしますので、どうもそれだけは今後も私は農業倉庫に百姓の作ったものは配給に回すまで置いておかれるということになさるべきだと存ずるのでありますが、御所見はいかがでございましょうか。
  261. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 先ほどの集荷手数料は一俵についてでございますか、一石でございませんからそう御了承願いたいと思います。  それからただいまの御指摘になりました協同組合の倉庫をなるべく利用するようにという御趣旨は御尤もでございます。よく調査いたしまして、今年は御期待に沿うようにいたしたいと思います。
  262. 田中啓一

    田中啓一君 そこで、集荷の方はそのくらいにしまして、価格に関連したことになりますが、とにかく一万六十円という値段をおきめになりまして、そこで予算関係は現行消費価格据え置きで予算米価九千七百三十九円でこれは収支とんとんであったように私は了解しておるのでございますが、今回の御方針によりまして差額はどれくらいになるのでございますか。そうしてそれの填補の方策といたしましては、どういう御方針でございますか。これをお伺いしたいと思います。
  263. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 七十三億になります。減収加算のこの前の三十三億の分があります。全部で百六億になります。
  264. 田中啓一

    田中啓一君 その填補の方法。
  265. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 財源の……。
  266. 田中啓一

    田中啓一君 はあ。
  267. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) これは農林大臣の方から……。
  268. 田中啓一

    田中啓一君 どちらからでも結構です。
  269. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 大体輸入食糧の買入れの費用の減少、食管会計の諸経費の節減、準内地米の業務用への売却、酒米の売却価格の引き上げ及び売り渡し数量の増加、大体こういうところを財源に今考えております。(「数字心々」「一つ一つについて」と呼ぶ者あり)
  270. 田中啓一

    田中啓一君 それなら、それぞれの填補方法たとえば業務用の米の販売によって幾らぐらいの金が出るか。
  271. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 農林大臣から……。
  272. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) ただいま大臣からお答えがございましたような方法で考えることにいたしておりまして、大体のめどはつけておるのでございますが、目下農林省と大蔵省との間にせっかく計数整理中でございますので、的確なことを申し上げるという意味で、もうしばらく御猶予をいただきたいと思います。
  273. 田中啓一

    田中啓一君 まあこの填補方法は、なかなかこれは再大億というものを填補するのは、いろいろと苦しい算段でございまして、私もお苦しい事情はお察しを申し上げます。そこで新聞の報道でございますが、大蔵大臣にお尋ねいたしたいのですが、大蔵大臣と清瀬政調会長との間に、何かこう了解事項というような、つまり条件みたいなもののように新聞には出ておりましたようでございますが、これはどういうような意味のことでございますか。
  274. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) あれはまあ政調会長と私とが今後の食管と言いますか、それについて、こういうのはどうだろうか、こういうふうに考えてはどうだろうか、こういうふうに考えるべきじゃなかろうかということで話しました。大体私ども考えが一致いたしましたから、こういうことが新聞なんかにああいうふうに出たのだと思っております。(笑声)
  275. 田中啓一

    田中啓一君 せっかくのことでございますから、その内容を一つお話し願えると非常に私ども……。
  276. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) まあこれは特にこの米価決定と別に関連しておるというわけでもないのであります。まあ食管も御承知のように行き詰っておると言えばあるいは農林大臣にしかられるかもしれませんけれども、まあやはり行き詰っておると認められておるようです。(笑声)ですから、まあ今度の新しい試みになったんだろうと思います。また私もこれを採用したわけです。これはまあ一つやってみよう、そしてこれはどういう結果を生ずるか結果によっては一つやはり考えてみた方がいいんじゃなかろうかという、こういう考え方であるのであります。これは何も私どもの考え方で別に公けのものとは考えておりません。しかしこれは、私は農林大臣あたりのお考えともそう食い違ってはいないと思っております。
  277. 館哲二

    委員長館哲二君) 田中委員に申し上げます。持ち時間が切れておりますから。
  278. 田中啓一

    田中啓一君 最後に一点。そこで当然そういうことになるべきものだと私は思います。いろいろ大蔵大臣、農林大臣あるいは政調会長等が御苦心なさることは当然のことだと思います。(「どういうふうになるかわからん」と呼ぶ者あり)そこで私がお聞きしたいのは、まあ今年はここまできておるのでございますが、これは、まあ明らかに今日の政府がおとりになりました予約集荷制度という一つの政策でございまして、これが根本であります。それに従って米価等の問題も出てきて、それもおきめになりましたわけでございます。が、なかなかかような実は困難を含んでおるやり方でございまして、そこでまあ将来は何とかこれはまた十分検討の上で考えようじゃないかということを、まあ大蔵大臣が政調会長とともに新聞などにお話しになった。そこで政府としては将来これはどうして行かれるつもりでございますか、これを一つ両大臣からこの際お聞きをしておきたいと思います。
  279. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 誤解があるといけませんから、私から一つ明瞭にお答えを申し上げておきたいと思います。かねがねこの制度によって米が集まらなかったらば自由販売に移行するのじゃないかということを、御疑念を受けたことがありますが、そういうことは絶対に考えておりません。これが第一点であります。  第二点といたしましては、政府としてこの制度をとることにきめましたのは、相当検討を加えまして、この制度をやることにいたしたのでございます。従いまして、今年はこの制度を実行いたしまして、この成果についてもちろん検討をしなければならぬと思いますが、しかしそこに疑惑を生みまする自由販売の問題でございますが、これにつきましては、十分なる準備と用意が要るのでございますから、これを軽々にこの制度を自由販売に移行するということは、これは私は言い切れないと思うのでございまして、ただし将来の研究課題としては十分研究さるべき問題であるということに御了承を願いたいと思っております。
  280. 伊能芳雄

    ○伊能芳雄君 関連して。明日米価審議会が開かれるそうでありますが、米価審議会はこれはもちろん諮問機関でありますから、拘束をされないことは承知しておりますが、あしたのその結論を待たずに、政府はもうその腹を、一万六十円という腹をはっきりきめたんですか、どうですか、その点お伺したい。
  281. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 御承知通り米価審議会に対しましては、従来政府の内意もしくは政府の方針をきめまして、これを数字を示して諮問をすることが従来の慣例でございます。で、今年は申し上げておりました通りに、米価審議会と並行して私はやりましたために、今まで数字を示していないのでございますが、審議会の方から早く数字を内示せよということの御希望を伺っておりますので、明日はこの数字を米価審議会に内示をして、これに対して十分なる御検討を願って御答申を得たい、こう考えております。御答申を得ましたときに、それに対して政府としてはその御答申の結果を重要なる資料として、あらためて政府検討する、こういうことであります。
  282. 伊能芳雄

    ○伊能芳雄君 そうすると、ただいまこの一万六十円というのは、米価審議会提案する政府の案で、米価審議会結論いかんによってはまだ変更するかもしれない数字ですか、どうですか、その点お伺したい。
  283. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) さようでございまして、米価審議会のお考えを、御答申を十分尊重いたしまして、あらためて政府は協議をいたすのでございます。
  284. 伊能芳雄

    ○伊能芳雄君 もう一つ伺っておきたいのは、先ほど長官から三千戸の農家について生産費の計算をしたが、今資料がないというお話ですが、その資料をあとからお出し願えるのか、どうか、その点お伺いしたいと思います。
  285. 清井正

    政府委員(清井正君) 私が先ほど申しましたのは、私どもの方の統計調査部において、従前から生産費調査を実施いたしているのでございます。それが三千戸の農家について実施をいたしているということを申し上げたのでありまして、毎年その結果について、こういう数字であるということをある程度発表をいたしているのでございます。従ってただいま手元に持っておりませんので、はなはだ恐縮でございますが、その数字はお示しできるかと思っております。
  286. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 ごく簡単に米価に関連してお伺いしたいのでございます。明日米価審議会諮問されまする数字は、一万六十円という数字ですか、あるいは食管法三条の米価、言いかえるならば早場の格差を別にした基準的の価格をお出しになるのか。どちらですか、この点お伺いしたい。
  287. 清井正

    政府委員(清井正君) 先ほどちょっと御説明申し上げて特に触れましたのでありますが、いわゆる基準と同時に実際の買い方、すなわち期別の買い方をあわせて決定したいと考えております。
  288. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 そうしますと、その基準の価格は先ほどお話のありました通りに九千八百円とこう承知していいわけでしょうか。
  289. 清井正

    政府委員(清井正君) お答えいたしますが、基準と申しますと言葉が果して適切かどうかわかりませんけれども、時期別に、政府に対する時期別の数字がわかって参りますから、その時期別の数字をお示しいたすことになるわけであります。
  290. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 今回の一万六十円べースの基準米価の算定の基礎といいますか、これは従来のパリテイ方式、これまでやってきた大体の方式とこう考えていいわけですか、どうですか。
  291. 清井正

    政府委員(清井正君) ただいま私ども計算をいたしておりますのは、二十八年産の生産者の手取価格、それから二十九年の生産者の手取価格、ともに減収加算金額はこれは除いてはございますけれども、いわゆる奨励金を含め異例の時期にきめるのでございますから、それらにつきましては新たなるケースとして考えていかなければなりませぬと同時に、また、米価審議会の御意見も十分拝聴いたしたいと、こう考えております。
  292. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 ただいまの農林大臣の御趣旨、私よく了解いたしました。昨日も、この委員会でも御質問申し上げたのでありますが、予約によるものと、しからざるものとの間に、米価としての格差は設けないということに、先ほど田中委員との応答に承知したのでありますが、さよう承知していいわけですね。
  293. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) そり通りでございますが、なおよく各方面の御意見も承わりして、審議会等の御意見も十分承わった上で、最終的には決定いたしたいと思っておりますが、ただいま私は、今御指摘のように考えております。
  294. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 米価として、一本でいくいわゆる予約米価と、しからざるものとの間に差をつけないという方針を今のところ政府当局がとられておりますことは、私、非常に喜ばしいことだと思います。ただ一面において、予約集荷の制度を実行する以上、これに対してできる限り効果を結果において期せなければいかぬ、これは当然のことでありまして、最小限度において現行の配給率というものは、これは何としても維持しなければならない。作況その他によって、また予約集荷は農協その他の努力によってこれをできる限り増していくということは当然でありますが、そのために十分の措置をとる必要が私はあると思うのであります。今のところの政府考え方では、義務供出の場合及び予約集荷の場合、米価に対する考え方には、私は大きな変化はないと思うのであります。それだけに予約集荷に対する効果を期する措置は、行政的その他に必要であろうと思うのです。従前言われておりました、先ほど大臣が言われた、石当り二千円見当の前渡金というか、これを出す、これもけっこうだろうと思います。  もう一つ、予約集荷の成績を確保する措置として、税の問題がどうなるかという点が、私残された大きな問題かと思います。それが農林、大蔵両省の間に、大体どういうふうな程度に話が落ちつきつつあるのか、これをもしこの機会に伺い得れば非常に好都合かと思います。
  295. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 先ほどお答え申し上げました通り、まだ調整中でございますから、しばらくお待ちを願いたいと思います。
  296. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 農林、大蔵の間で調整中であるそうでありますが、この点は相当私は、今年における特別の措置として十分の配慮を私は大蔵大臣にもお願いしたい。元来、税によってこういう特別の措置を講ずるという行き方は、これは私原則的には避けるべきである。いろいろ税の負担の均衡の問題なりその他から考えましても、税で特別の措置をとるということは、これはでき得れば避けるべきだと思うのであります。ただ今年の予約集荷に食管の制度が大きく転換したこと、そうしてとにもかくにもこの制度の成果を上げる上には、おそらく私それ以外にさしたる方法はないのじゃないか、この点に私は、大蔵大臣に特別のこれはお考えを願わなければなるまいかと思うのであります。大蔵大臣考え方だけを一つ承わりたいと思います。
  297. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) その点につきまして、今私調べと申しますか、そういううことができるかどうか、今考えさして、調査さして研究をさしております。
  298. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 御承知のように、これは今年の予算の収入面にも関連して来る問題と思うのであります。できるだけ早く一つ見当をおつけ願いまして、早くやりくりと言いますか、の道を講じないというと、あとでは非常に動きがつかない場合が起ってきはしないかと思うのです。その点を一つお含みの上で早くお考えを願いたいと思います。  それからしばしば問題になっておりまする生産費の問題についての農林大臣のお考え方をお聞きしたいと思うのですが、昨年の米価審議会では生産費方式を採用することについての意見の進言があったが、私個人といたしましてはいわゆる生産費方式に重点を置くことについては元来疑問を持っておる一人であります。しかし食管法には新たに生産費を参酌しなければいかん建前になっておりまして、当然生産費は考慮し、参酌されるべきもと思います。ただ今回のように六月か七月に米価をきめる、こういう異例な立て方になっていった場合、一体生産費というものをどうこれに取り入れるか、技術的にも非常にむずかしいのじゃないか、それをどういうふうに考えられるかということと、それから米穀政策には生産費を重要な要素として考えるということは、これはもう大臣御承知のように、ずっと前からの考え方なんです。ただそのときは生産費といってもぴんからきりまであるので、中庸の生産費という考え方をずっととってきた、現在は全面的のあれでありますからもちろん中庸の生産費という考え方はこれはとり得ない、従って局限的と言いますか、限界的な相当上の生産費をとらざるを得ない、これが専売のような制度であれば、これは生産を保証する意味で、どれほど生産費が高くてもこれは補てんしなければいかんことは当然であります。食管制度はややそれに類しておるのでありますけれども、現状は御承知のように農家は全部出すわけではないのであります。相当多量の米というものが政府以外に流れている実情であります。また諸般の情勢から見てそういう意味合いの、生産費を全部償うという意味合いの生産費というものはなかなかとり得ない、何かこのいろいろ数字が出ておりますが、極度に高いところの生産費の分はこれは一応別にして、これは数量からいっても、農家の数からいっても、政府に売る数量も私は大きな数量じゃないと思うのであります。そういうものについては、そういう面については、これは別に特別の買上価格といいますか、これを考えるとかというふうなことにいたしますと、消費者の立場からいっても、食管特別会計立場からいっても、運営上適正なあれになりはしないかという感じがするのでありますが、大臣としてこの生産費というものをどういうふうに考えられておるか、これをまあ明日生産費についての具体的ないろいろの結論というものがその道の専門の方面から出ると思いますけれども、それはそれとして政府の食糧政策の責任をあずかっておられる大臣としてのお考えをこれを私一つこの機会に聞きたいと思うのであります。
  299. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 私も大体梶原さんと同じ意見でございまして、限界を設けてその範囲内においてむろんとらなければなりませぬことは当然でございますと同時に、私が最初米価の決定をなるべく九月の末ないし十月に豊凶を見定めるとともに生産費についてもある程度の見定めをつけたときにきめるということの考えを持ちましたのはここにも一つ理由があったのでございます。ところが米価審通会の懇談会で早くきめろ、予約の前にきめろということがあったものでございますからこの時期に米価の決定をするということにいたしたのでございまして、こういう段階に生産費を取り入れるということになりますると、いきおい前年度の生産費を基準にするというようなふうにせなければならぬことになると思うのであります。そういうこと等々からいたしましてなかなかこれを一本にして入れることは非常にむずかしい。でございますから前年度の生産費にしろ両三年来の調査の趨勢を見まして、それに物価の動き等を勘案いたしましてきめるということがいいんじゃなかろうか、こういうふうに考えておるのでございます。ただしそのとるべき生産費につきましてもむろん各方面の御意見がございますからそれは小委員会の御答申等を十分しんしゃくいたしましてそこに結論を得ていくべきものだ、こういうふうに考えております。
  300. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 消費者価格は今回は据え置くという方針になっておって、米価審議会に対しても消費者価格についての諮問は今回はないようであります。消費者価格を据え置くという方針は三十年度についてのことでありますか、あるいは三十年産米についてこう考えていいのでありますか、その点を一つ……。
  301. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) ちょっと失礼ですが……、消費者に渡すのは三十年産米について引き上げをしないか、こういうことでございますか……。おそれ入ります。
  302. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 据え置きは、三十年度ですね、三十年会計年度においては引き上げをしないというのか、三十年産米については引き上げをしない、こういうことかということであります。
  303. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 失礼いたしました。お答えいたします。政府といたしましては現在の経済政策遂行の必要上生産者米価は一般の物価政策に並行いたしまして引き上げをしないという方途をとっておるのでございますから別に三十年会計年度とか三十年産米とかいうことでございませんので、政府の経済政策に基いてこの処置をとっていくということに御了解願いたいと思います。消費者米価は引き上げはいたさないということに御了解願いたいと思っております。
  304. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 本年度の集荷の目標は二千三百五十万石、これはこれまでの例から申しまするとこの数量は比較的低い数量であります。御承知のように昨年は実収が六千万石そこそこでありまして相当凶作と言われた、その凶作の年柄ですでに二千三百万石集まっておるのであります。従ってこれが平年作なりあるいは相当豊作であれば現在の食管の制度から言いまして当然政府は買い上げをされることと思います。そうなりまするというと、計算上また実際上当然に赤字というものがふえて参るわけです。当然ふえると思うのです。従来超過供出、従来の制度におきましてもこれは私、立て方が悪いと思うのでありますけれども、必要な米を政府が買えば買うほど赤字がふえるということになっておるのであります。従って、ともいたしますると、当然買い入れるべき性質にありながら赤字がふえるために政府が買い控えをすると言いますか、進んで買わない態度をとりておるというここが間々あったかこ思うのであります。この点は一つ大蔵大臣に伺いたいのでありますが、現在の制度においては、やはり赤字が出ましてもこれは買って行かなくちゃならぬ性質のものだと私は思うのであります、食管法を直さない限り……。従って二千三百五十万石以上の買い入れについて、大蔵大臣の御見解と、農林大臣と両方一つこれは伺いたいと思うのであります。
  305. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 私はやはり政府に米を売りにくれば、これは買ってあげなくてはなるまいと思っております。買ってあげなくてはなるまい、買うべきでありましょう。今のこの予算には大体適正数量と思ってやっておるので、この食管自体はやはり見込み予算ですべてこれがなっておりますから、やはりこれは法律に従ってやると、こういうことであります。
  306. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 当然そう私はなければならぬと思うのであります。間々それが牽制されるということのないように一つこれはお考え願いたい。ということは、二千三百五十万石という数字は決して妥当な数字ではないのであります、食管の制度から言えばですよ……。現実の動きはこれは別であります。それから消費者価格据え置きはけっこうでありますけれども、消費者の価格というものはやはり量と関連するのでありまして、現在の配給量は御承知のように消費地においては七日のところ、八日のところと非常に少いのであります。産地においても十五日であります。従って消費者の立場から言いますれば、この配給される量がふえれば必ずしも現行価格を据え置く必要がないのでありまして、現行消費者価格を据え置く必要はない。これはやはりコストを高く買えばそれは当然消費者が負担すべきものと思う。消費者の立場は配給量がふえれば高くなってもやむを得ない、差しつかえないというのが私偽わらざる気持であろうと思う。これは現にやみ米と比較すれば確かに安いのであります。家庭経済から言えば多少配給価格が上りましてもその方がはるかに好ましい。従って配給量と消費者価格とのにらみ合せというものは、これは十分農林省でもお考えを願いたい。配給量を減らしていって価格を据え置いても、消費者の立場から言えば大して意味はないのであります。その点は今回の制度実施する上においては十分お考えになって私はしかるべきじゃないかと思うのであります。  それからいま一点、これは酒米の関係であります。先ほど金額を聞いたのでありますが、数字もある程度増強されるようであります。過去におきましても酒米を増したことがあります。しかしそのときは相当政府の集荷がよくできたときだと記憶します。現在のように消費者に対する厳重な消費規制を行なって、わずか七日、八日の配給をしながら、大事なものを酒米に回すということは、これは私食管制度の建前から言っても、現実の現在の配給の状況から言いましても適当な施策とは思えない。かりに二十万石の酒米を増すのであれば、これはまず消費者に振り向けられるべき私は性質のものだろうと、こう思うのであります。財源等の関係で非常に無理をされること、これはよくわかりますけれども、そういうためにはさらに特別の集荷というものをお考えになれば十分それは目的を達し得ると思うのであります。簡単に消費者の配給を非常に圧縮して酒米を増すということは、現在の制度においてははなはだ遺憾なことであります。それだけの努力を集荷の面に一つ振り向けていただきたい、こう思うのであります。  それから、これは一つ農林大臣にお考えを、研究を願いたいと、こう思うのであります。現在生産地におきましても、消費地におきましてもそうでありますが、消費者価格であります。生産地においては、御承知のように現在の生産者価格におきましても、配給価格から見ましても相当率は下回っておるところがある。そういうところの消費者は配給米は取らないのであります。それよりも安いいわゆるやみであります。これはやみと言えるかどうか問題でありますが、この配給価格よりも安い米が相当動くのであります。従って配給は辞退する。一方同じ県内におきましても、現行の配給率ではやり切れずに高いやみで買うという状況になっております。そういう場合においては一定のワク内で県内ぐらいの操作を私はお考えになっていいんじゃないか、こう思うのであります。こういう操作ができ得れば消費者のためには非常にいいことだと思うのであります。現在の配給が非常に一律主義であって、そういう面の弾力性というものは全然ないのであります。こういう弾力性というものはこれは農林省自体がおやりになっていいんじゃないか。ことに外米等につきましては、御承知のように地区によって相当現在の外米については品質は悪くても価格が安いために要望がある。ある地区においてはそれに対する需要が非常に少い。そういう場合においてはやはり弾力的なる一つの配給上の操作というもの、これは当然もう考えられていいんじゃないか。終戦直後のような非常に窮迫したときは別でありますけれども、これだけ余裕が出てくれば同じ配給統制と言いながら、そこに弾力的な操作をやるということは、配給日数の少いのを調整していくことにもなり、また配給価格とやみ価格との間の調整が相当できるのでありまして、これは一つ大臣に御検討を私は希望するわけであります。  それから最後に食管制度の今後の問題について伺いたい。大臣は先ほど田中委員質問に対してもお答えになったのであります。大臣の御意向はわかるわけであります。ただ大蔵大臣も言われましたように、とにもかくにも現在の制度は十数年運営して参って相当行き詰りの段階にきたということは、これを否認する者は私はないと思う。特に今回のこの予約集荷制度というものは、これの成否にかかわらず、成果が上る上らないにかかわらず、私は食管制度の転換を示唆するものだと思うのであります。この結果を見て来年一つとくと考えるとかということではおそらく済まない問題だろうと思う。一つのこれはやはりくるところまできたチャンスと思うのであります。しばしば農林大臣はいわゆる自由販売、それには準備がいるということを言われた。準備なしに簡単に切りかえることができないと言われている、それは私その通りだと思う。ただ食管制度が行き詰ったことは事実でありますけれども、また現在の配給がきわめて不十分であることも事実でありますけれども、しかもなお全体の消費者の立場になりますると非常な安定感を与えておるのであります。この安定感は私決して過小評価してはいかぬと思うのであります。大きな一つの安定感を与え得る。これを簡単に統制を撤廃してしまえば、おそらく数年ならずして思わざる財政負担をせざるを得ない事態に私はぶつかると思う。従って簡単に統制撤廃はできませんけれども、現状で推移するわけにはいかないのであります。従ってこれは政府としてもやはり一つの目標というものをおきめになって、私自由販売がいいとは言いません、しかし現状ではいけないのでありますから、とにもかくにも大体の目標というものをおきめになって、そうしてその方向に準備を進めて行かなくちゃいけない。準備というものは机上でプランを書いても準備にならないのでありますが、また簡単に備蓄をしただけで準備ができたというわけではない。現在の食管制度の運営の中でこれは着々準備をやって行かなくちゃいかぬと思う。ところが従来とも準備々々ということで日を暮して何もやっておらないのであります。これじゃとうてい今後の切りかえはできないと思う。早く一つ目標を、大体のところをきめて、そしてその準備というものにすぐにでもかかって行くということが私は大事じゃないかと思うのです。実はそういう準備というものはこれまでにすべきであった。ところが残念ながらその準備が行われなかった。早急に準備的の措置というものを現在の食管制度のもとでやって行くということを私必要と思うのであります。ぜひこれはそういう方向に一つ進めてもらいたい。そうでないと、また目標なしに、また現実の準備なしに一年経過すればますます抜きさしならぬことになると思う。今度の予約集荷制度は、昨日も申し上げましたように、とにもかくにも一歩政府の統制力が後退したのだ。後退したところに線を引いたのであります。しかもそれが半面においてやみが非常にふえるということを意味するのであります。ところが御承知のように厳重なる罰則があって、五千万以上の国民はそれにひっかかっておるわけです。非常に不愉快であります。法務大臣はそれに対して検察行政上のほんとうの責任をおとりになっておるのか、なっておらないのか、さっぱりわからない。こういう状況をこれ以上放任していって、私正しい農業政策なんというものは行えないと思う。一日も早くこれを一つ転換する私は機会が来ていると思うのです。真剣に一つこれは農林大臣として勇気をもっておとりになったらいいと思う。従来、ことに最近であります。食管に関する重要な問題は全部ほかに回しちゃって、ほかの御意見を尊重されて動かしておられるやの疑い、疑いというか、そういう傾向があるのであります。保利さんのときもそうであります。   〔委員長退席、理事池田宇右衞門君着席〕  一方責任を持たれるのは政府自体であり、農林大臣であります。農林大臣がまずその意見責任を持って出していただくということを私は期待したい。河野農林大臣はそういう私勇気のある人だと実は今まで思っていたのであります。あまり重要なことを全部ほかにまかして、その御意見々々々というのではなくて、河野さん自体の一つ責任と見識で進めるように私は期待するわけであります。別段御答弁を求める意味合いはありません。
  307. 小林孝平

    小林孝平君 最初にお尋ねいたしますけれども、明日米価審議会諮問される案はどういう案でございますか、どういうことを具体的に諮問されるのですか。
  308. 清井正

    政府委員(清井正君) 具体的な案と申しますというと、先ほど大臣が申し上げました通り、資料としての案を出せということでございまして、それに基いて明日の米価審議会政府案を提出いたすのでございますが、その場合は、ただいま申し上げました一万六十円というのは手取り平準でございますので、実際に提出する案は具体的な価格になっておるわけでございます。そこで先ほど申し上げたことを繰り返して申し上げることになるのでございますが、御承知通り、時期別格差等がございますので、それぞれの時期別による灘価を具体的に表示いたしまして案としてお出しすることになると考えるのでございます。
  309. 小林孝平

    小林孝平君 さらに後ほど具体的にお尋ねいたしますが、その前に今の一万六十円のこの案は、これは政府案の最終的なものであると考えてよろしうございますか。
  310. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 先ほどお答え申し上げました通りに、米価審議会に提示いたしまする諮問のものでございます。従いまして、これに対して米価審議会から御答申を受けまして、それを十分重要な資料として勘案いたしまして、政府は最終決定をするということにいたしたいと思います。
  311. 小林孝平

    小林孝平君 大蔵大臣にお尋ねいたしますけれども、あなたは一万六十円のこの案についても相当強硬に反対されたか、あるいは職を賭されたかしりませんけれども、まあ心ならずも賛成されたようでありますが、この米価審議会でもっと高くせいと言われた場合に、あなたはそれは相当考慮される余地があるのですか、あるいはないのですか。そういう高い価格ができてきたらもうおやめになるのですか。
  312. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 米価審議会にてどういう案が出ますか、出た上でよく考えることにいたします。
  313. 小林孝平

    小林孝平君 これはわれわれ予算を今月中に上げたいと思って一生懸命にやっておるわけです。もう時間の余裕もないのです。そこでこれが相当上るということになれば予算修正もまた考えなければならぬ。またやらなくともいいかもしれない。そこで出たらなんてそんなことを言っても、あすはもう二十八日ですか、そんなのんきなことを言ってもらっちゃ困るのです。一体その相当高い価格が出たらあなたはのまれるのか、のまれないのか、どうなんですか。
  314. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 私自身としてはこれ以上高いものが出ないだろうと考えております。
  315. 小林孝平

    小林孝平君 なぜ出ないということをあなたはお考えになるのですか。米価審議会はこれ以上出さないという確信はどこから出てきたのですか、お伺いいたします。どういう根拠に基いて米価審議会はこれ以上高い価格を出さないかということをお尋ねいたしたいと思います。
  316. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えします。私はこの米価審議会がどういう御案を出されますか、それをどうという意味じゃないのでございまして、私のあるいはまあ希望になるかもしれません。米価審議会のこの答申をむろん尊重いたしますが、最後にやはり政府でこれはきめることになるのであります。まあ結局米価審議会答申を見た上でないとやはりどうも申し上げかねます。
  317. 小林孝平

    小林孝平君 だから米価審議会がもう高い価格を出してきたらどうされるかとお聞きしたら、そういう価格は出てこないだろうと言われたから、私は一国の大蔵大臣がそういうことを言われるのだから、よほど根拠があって米価審議会は出せないということをお考えになって言われたのだろうと思ったのです。ただ私たち責任のない者、責任がないと言っちゃ悪いけれども、直接の当事者でない者、あるいは無責任な人なら米価審議会は出さないであろうというようなことを言えるけれども、大蔵大臣が言われたのだから、あなたはよほど根拠があって、あらかじめ米価審議会委員に手を打って(笑声)もうこれ以上出さない、出すなということをやられたのですか。そういう政治的な工作をもうすでにおやりになっているのですか。それでなければちょっと言われないと思うのです。
  318. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えします。私の先ほど申し上げたことは今おっしゃるような意味ではなかったのでありまして、さようにおとりになれば、私前の言葉を取り消します。私は米価審議会に何か手を打って、そして一万六十円より上にならぬと、そういうことを少しも考えておるわけではないのであります。
  319. 小林孝平

    小林孝平君 伝えられるところによりますと、本日民主党の米価対策委員会は、その会合で政府案の一万六十円の米価はのめない、それで委員会案の一万二百六十円の米価を再確認したということを聞きましたけれども、そういう事実はございますかどうか、お伺いいたします。
  320. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 承っております。
  321. 小林孝平

    小林孝平君 そうすると、もう一つお伺いいたしますが、政府あるいは民主党は自由党と米価について話し合いをやる予定になっておったようであります。これは一体どうなっておるのですか。自由党との話し合いはもう見込みがないというのでおやめになったのか、今後おやりになるのか、どうなんですか。
  322. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) その点はまだ幹事長から報告を受けておりません。
  323. 小林孝平

    小林孝平君 そうすると、とにかく今後、自由党なりあるいは民主党の今特別委員会がこの一万二百六十円を再確認したということが伝えられておる。そこで自由党なり民主党の特別委員会なりあるいは米価審議会の意向によって今後この政府案を修正されることがあるのかないのか、全然もう余地がないのか、それをお伺いいたします。これはもう仮定のことだから答えられないというようなことでは困るのでありまして、もう現実にここわずか数日しか審議の期間はないのです。実質は二日しかないのです。そこで仮定のことには答えられないという、吉田総理大臣のようなお答えは私はもう聞きたくありませんから、率直にお答えを願いたいと思います。
  324. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 御承知通り決定をいたしますのは、米価審議会答申を待ちまして決定をするのでございますから、その米価審議会答申が明日一日で御答申いただければ、明後日は決定ができると思います。しかし御答申のある時日によりまして多少遅延することがあるかもしれませんが、政府といたしましては、この御答申を重要なる資料といたしまして、もう一ぺん協議をするのでございます。その際にただいまの点等につきましても、さらに政府は勘案いたしまして、最終決定をすることになるだろうと思います。
  325. 吉田法晴

    吉田法晴君 ちょっと今の点に関連してお尋ねいたしますが、米価審議会に米価算定方式を諮問しておられますが、その結論が今年度の米価問題に関連するのだと思うのでありますが、そういう点はどういう工合にお考えになっておるか。  それからもう一つ、今の米価審議会の算定方式、それからそれを含めて米価に関する意見、これは河野農林大臣の今のお話からしますならば、月末までにきめる云々ということでございますので、明朝閣議で米価問題を最後的にきめる、こう聞いておりますが、米価審議会意見を加えていつ御決定になりますのか、あるいは今の御答弁では、あす出なければ云々というお話がございますが、その米価審議会の動向を勘案していつきめられるのか、承わりたい。
  326. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 明朝の閣議できめますのは、米価審議会に対するこれは内示ということになっております。これはちょっと誤解をいただくといけませんので申し上げておきますが、米価審議会が開かれました際に、米価審議会の方からすみやかに政府考える三十年産米の米価の想定を内示してくれという要望がありますので、本来ならば諮問案という形式をとるのでございますが、そういう経過がございますので、内示の形式をとるつもりでございます。従ってその内示の案を明朝の閣議にかけて決定をいたしまして、そして明日の米価審議会に出します。そこで米価審議会の方はかねて御検討になっておりまする生産費方式等を小委員会で御検討になっておりますから、それらを十分勘案の上、われわれが出しましたこの価格について御検討の上、御答申がある、こういうふうに考えております。その答申が明日中いただけますれば、政府はさらに明後日以降においてすみやかにこの答申を重要なる資料として協議をいたし、決定をいたします。こういうことでございます。
  327. 永岡光治

    ○永岡光治君 関連質問。一万六十円という問題が一応きまっておりますが、民主党の中に設置されております米価関係委員会、これは廣川さんが委員長になられておるようでありますが、その値段は一万二百六十円と新聞で承わっておりますが、閣議でこの方針をきめられる際に、その一万二百六十円ということが話題に上ったと私は想像するのであります。私はもし話題に上っておったとすれば、その一万二百六十円というものがあって、しかも一万六十円ときめたその理由はどこに根拠があるのか、予算がこれ以上出せないというところにあるのか、それとも何かほかに理由があるのか、一万六十円と一万二百六十円の開きがそこにできた原因をお尋ねしたいと思います。
  328. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 御承知通り一万二百六十円の民主党の対策委員会の案は、話題に上せて検討をいたしたのであります。しかし昨晩決定いたしまする際におきまして、決して財政上の理由によって一万六十円ときめたのではないのであります。これは先ほど来申し上げましたように諸般の理由を勘案いたしまして、一応政府としてこの案を諮問しようということにきめたのでございます。
  329. 小林孝平

    小林孝平君 この一万六十円の算出の基礎につきまして、先ほど農林大臣はパリティ計算、それから生産費その他の経済事情をしんしゃくしてきめた、こうおっしゃいましたけれども、その直後、食糧庁長官の説明では、二十八年、九年のパリティ基準によってこれを計算した。それだけで算出したように聞きましたけれども、具体的にどういうふうに、そこは相当食い違いがあると思いますが、どういうことなのですか。
  330. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) その計算につきましても、今回やりましたのは二十八年、九年をとりまして、その中から二十八年、九年の手取り、すなわち減収加算を減額いたしました手取りについて、これを基礎にいたしまして、それに物価の五月の指数を考慮において計算を一方においていたしたのであります。その数字等を基礎に置き、さらにまたわれわれがかねて生産費調べにおきまして中間報告を受けました条件等も勘案いたし、それに経済事情も考慮に置きましてきめた、こういうことでございます。
  331. 小林孝平

    小林孝平君 食糧庁長官の先ほどの説明では、このパリティ指数からやって、単に算術的計算から一万六十円になったように聞いておるんです。ただいま農林大臣のお話では相当複雑な要素を入れたように御答弁になっておりますが、具体的にどういうふうな要素をお入れになったのか、お伺いいたします。
  332. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 今申し上げますように生産費の調べにつきましては、かねて中間報告をいただいておりまするが、この生産費方式にはいろいろまだそれぞれの学界の人に、責任をもって発表しては困るというようなことがあって、未決定になっております。未決定になっておりますが、最終的な生産費方式が出て参りません。しかし私はそれに入れた計数等も頭の中に入っております。でございますから、それらの点ないしは現在の経済情勢等も勘案いたしまして、最終的な決定を昨晩いたしたのでございます。
  333. 小林孝平

    小林孝平君 私はこの米価の問題が非常に政治的な混迷の原因になっておるのは、米価の決定方式がはっきりしておらない、そこでそういう結果こういうことになるんです。今の農林大臣のおっしゃったように、一方においては発表できないような生産費を頭の中に入れてやった、具体的にそれは米価の決定にどういうふうに反映したのか、その他の経済事情をしんしゃくした、どういうふうにしんしゃくしたのか、そういうことが具体的でなくてあいまい模糊として取引されるというところにこの政治的混迷があるのです。パリテイ計算でやったということならパリテイ計算でやったと言えば、それではっきり意味があるのです。そこにいろいろの要素を加えたのか加えないのかわからぬけれども、そういう御発言をなさるから非常に混迷を来たしますから、具体的にどういうふうに入れた、あるいは前の言葉を御訂正下さってもいいです。そういう生産費方式はこれに採用しなかった、あるいは経済事情もしんしゃくしなかった、単にこれだけでやったパリテイだけでやったということなら、それでまたわかります。もし前のことをあくまでも固執されるなら、具体的にどういうふうにしんしゃくされたか、そういう点を明確にしていただきたい。
  334. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 御指摘でございますが、生産費の調査を十分考慮において今後きめていくようにということが昨年の米価審議会の決定にあるわけでございまして御答申にあるわけでございます。自来米価審議会のこの答申を尊重して、政府におきましては特別委員会を設けまして、その委員会委員の諸君に十分御努力をいただきましたが、今日まで最終決定が、公式の最終決定が出ないのでございます。出ませんが、中間報告をわれわれはちょうだいいたしておるわけでございます。この中間報告を基礎にして数字を入れて、その数字は私は拝見したのでございます。しかしこれはそれぞれの委員の諸君から、そういう学界の諸君から中間報告であって、これにはなお学界としても異論もあることであるということが条件についております。で現在米価審議会におきましては、これらの原案について目下検討中でございます。その検討の結果、この小委員会としてどれをとったらよろしいかということは、明日私はおそらく御報告いただけるかと思っておるのでございます。しかし私といたしましては、決して混迷のうちに隠れてやろうということはないのであります。そういう数字も勘案のうちに入れまして、この食管法の規定がそういうふうになっておりますので入れまして、これらを考慮においてきめたということでございます。ただしこれは審議会諮問案でございます、さらに経済事情もしんしゃくしということになっておりますが、どういう経済事情ということになりますと、これは今私がここで申し上げることがかえって御無礼かと思いますが、われわれとしては現内閣のとっておりまする経済方針、ないしはまた現在の経済事情等も勘案のうちに入れて決定した、こういうことでございます。
  335. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 私もこの際に、技術的な計算の方式を発表なさったらいいのじゃないかと思っております。かえってその方式を公表なさらないために、政治的な考慮、あるいは混迷という問題が出て参ります。これは食糧庁長官からでも、こういう式によって計算したということを発表なすった方が、かえって審議がうまく進むのではないか、こう思います。これからも質問者はたくさんあるのです。この問題にひっかかってくると、いつまでたっても先へ進まないわけですから、これは委員長から一つ御取り計らいをされたいと思います。
  336. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 あした米価審議会諮問するについては、資料が用意されているのではないかと思います。それでその資料をここに出していただけば、そこで大体こういう内容について議論しなくても、非常に明瞭になるのじゃないか、その資料を御提出願いたいと思います。(「異議なし」と呼ぶ者あり)
  337. 清井正

    政府委員(清井正君) 御質問の趣旨に合うかどうかわかりませんが、ちょっと私から説明させていただきたいと思いますが、(「資料だ、資料だ」と呼ぶ者あり)先ほど農林大臣が申し上げました中間報告と申しますのは、この三月以来専門家の数氏に御依頼いたしまして、生産費方式に関する御調査を願いまして、中間報告があるのでございます。その中間報告の様式は、生産費及び所得の補償方式という考え方が二つと、それから生産費の純然たる補償方式というのがございまして、その三つの御意見があったのでございますが、結局意見が御統一にならずにその三つの生産費方式が御提出になっておりまして、私どもそれに基きまして、いろいろのデータに基きまして、いろいろ学界では御疑問があるのでございますが、一応取りそろえた計算をいたしたのでございますが、先ほど大臣が御説明申し上げたようなこともございまして、事務内部の計算方式としての一応の参考といたしまして、今回計算いたしましたものの一つの参考資料として算出したものがあるのでございますが、そういったことでございまして、どこをどういうふうに計算いたしましたということは、ただいまははっきり数字でもって生産費方式についてはお示しすることはできない、こういうふうに考えておる次第でございます。
  338. 小林孝平

    小林孝平君 だから今言ったようなそういういろいろな生産費方式に関する資料は出たけれども、それはこの一万六十円を決定する基礎には何らなっていないはずです。そこで今皆さんが言っているように、一万六十円の基礎をお出し下さい。それは先ほど長官が言われたように、単にパリテイ計算をやったらこうなったと言われたのだから、それをお示しになったらいいのです。(「資料要求だ」「資料の答弁がない」「時間がかかるんだったら暫時休憩」と呼ぶ者あり)
  339. 池田宇右衞門

    ○理事(池田宇右衞門君) 今休憩はいたしません。今資料を調査中です。(「議事進行」と呼ぶ者あり)
  340. 相馬助治

    相馬助治君 今資料調査中だそうで、時間がかかるでしょうか、しかし休憩はしない、こういうことでしたら、その分はどのくらい時間がかかるか確めて、休憩しないと委員長は力んでおるが、一時間も一時間半もかかるのでは私は非常に迷惑です。その間の時間をお示し願いたい。一時間も一時間半もかかるのだら別途議題を、内容を別にしてこれを取り扱うか、あるいは休憩するか、(「理事会を開け」と呼ぶ者あり)かように委員長において一つ最も民主的に、賢明に一つ御判断願ってお進め願いたいと思います。あなたの良識を期待します。
  341. 池田宇右衞門

    ○理事(池田宇右衞門君) 了承いたしました。直ちに進行方法をとることにいたしたいと思います。  お諮りいたしますが、いま資料が配るだけあるだろうと思いましたが、資料は配るだけないというようなことでございますので、一応長官から資料について答弁をさせます。その後はまた諸君の御意見を聞きます。ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  342. 池田宇右衞門

    ○理事(池田宇右衞門君) 速記を始めて。
  343. 清井正

    政府委員(清井正君) 実は先ほど申し上げました通り、提出資料ではございませんが、手元にあります資料でございますので、その手元にあります資料に基きましてお答え申し上げたいと思います。計算の基準となりましたものは、パリティ方式が二つございますが、まず第一に、基準価格を二十八年と二十九年との平均にいたしたものが……(「委員長、これは暫時休憩しないと……」と呼ぶ者あり)
  344. 池田宇右衞門

    ○理事(池田宇右衞門君) やたらに発言してはいけません。
  345. 清井正

    政府委員(清井正君) 生産費方式についてお答え申し上げますが……。
  346. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 そうではないよ、二十八年、二十九年の平均は幾らですか。
  347. 清井正

    政府委員(清井正君) それではそれを先に申し上げます。最初の方式は、二十八年産米と、二十七年産米との…(「二十七年産米」と呼ぶ者あり)二十九年産米であります失礼いたしました。二十八年産米と二十九年産米との価格と平均したのでありますが、減収加算を除いてございますが一二十八年産米の数字が九千九百三十四円になります、減収加算を除いた最終の金額に。それから二十八年産米の最終金額が九千六百八十六円になるそうであります。そこで九千九百三十四円と九千六百八十六円との、平均が九千八百十円、それにかけますことの一一九・六七分の一二〇・四四、(「それは何だよ」と呼ぶ者あり)と申しますのは、パリティの上昇率を言うのでありますが、九千八百十円にかけます。分数としてかけまして、その分母が一一九・六七で分子が一二〇・四四、その一一九・六七と言いますのは基準年次のパリティでありまして、それは二十八年七月から三十年五月までのパリティの平均でございます。それが一一九・六七であります。(「二十七年から」と呼ぶ者あり)二十八年七月から三十年五月、最近までのパリティであります。それが一一九・六七であります。それから三十年五月のパリティが一二〇・四四でございます。従いまして最近二カ年の農家の手取りの平均単価にその後のパリティの上昇率をかけるということでありますが、それが今申し上げました計算で出た結果が九千八百七十三円となります。それに包装といたしまして百八十七円足しますと一万六十円と、こういう計算が出るのであります。これが先ほどの計算の基礎の数字でございます。
  348. 小林孝平

    小林孝平君 この数字で明らかのように、このパリティ計算でやったのがちゃんと一万六十円になって、ほかの生産費だのその他の経済事情をしんしゃくしないうちに、ちゃんと一万六十円になっている。これは農林大臣どうなんですか、これは一体。
  349. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) ちょっと待って下さい。(「もう一つの計算方法があるのだよ」と呼ぶ者あり)みなうそを言っているんじゃないですよ、これで申し上げますから……。
  350. 池田宇右衞門

    ○理事(池田宇右衞門君) しばらく静粛にお願いします。小林さんに相談いたしますが、今農林大臣からすぐ資料を持ってきて詳細に報告したい、次の御質問があったら次の質問に移っていただきいという相談的のお話がありましたが、そのままお待ち下さいますか、継続いたしますか。(「これは出発点だから出発点からやらなければいけない」と呼ぶ者あり)
  351. 吉田法晴

    吉田法晴君 先ほど委員長は松澤、木村両委員の御質問に対して、資料を出させるように、予承いたしました。と、それは資料を出さないでその次の質問ができますか。
  352. 池田宇右衞門

    ○理事(池田宇右衞門君) これは、だから今相談しているのだよ、進行方法をそれで今相談しているのじゃないか。
  353. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 結局、これが出発点でありますから、ここがはっきりわからぬと困るのです、ここ十分やそこら待ったって。
  354. 清井正

    政府委員(清井正君) 大へん失礼いたしました。先ほど大臣が生産費等も参酌をして勘案いたしたと申し上げました数字について申し上げます。先ほどちょっと申し上げましたいわゆる学者にお願いいたしまして、中間的な計算、中間的な御報告に基きまして、私どもにおいてすでに試算をいたしました事務的な試算の数字があるのでございますが、この考え方は、大体先ほど申し上げました統計調査部の生産費方式に基きまして、現在は米の供給不足であるから、平均よりも若干上回ったところを見るべきである、こういう考え方であるのであります。そこで生産費の平均のところよりもある程度上回ったところに基準を置いておるのであります。そしてその中の農家の手取りのうち、いわゆる労賃に相当する分は、統計調査部の計算では、これは日雇い労賃を計算いたしておるのでございますが、今回はこの計算におきましては、都市の製造工業の平均賃金をとっておるのであります。それから地代につきましては、これは、(「幾らですか」と呼ぶ者あり)初め基本を申し上げておりますから、数字あとから申し上げます。普通の生産費方式のうち、特に変えておりますのは、生産費の平均だけでなしに、平均のある程度上回ったところをとっておるというのが一つと、労賃につきましては、統計調査部の労賃は、日雇い労賃であるけれども、これは都市の製造工業の平均労賃をとっておるということが一つと、地代につきましては、正常ないわゆる差益地代と申しますか、統計調査部では類地の小作料をとっておりますが、類地の小作料はコストにすぎないものですから、差益地代的なものを入れよう、こういう考え方をとっております。こういう考え方は、先ほど申し上げました、学者の方々の中間報告のお考え方に基きまして、私どもで現に事務的に計算をいたした数字でございますから、この点御了承願いたいと思います。  そこで数字を申し上げますが、これは基準を二十七年にとっております。二十七年はこれは御承知通り、平年作のときでございまして、大体諸般の条件が平準的なときでありますので、二十七年を基準にとっておるのであります。二十七年の統計調査部の生産費を基準にいたして計算いたしておるのでありますが、まずその中のうち、物材費、いわゆるいろいろ物材を投資いたしますが、物材費が七千三百八十五円ということになっておるのでございます。それから労力費でありますが、それが九千百十七円になっているのであります。それから資本利子が五百十八円になっているのであります。それの計が一万七千二十円、それから副産物の収入を引きまして、副産物が二千十円でありまするから、差引一万五千十円、そのときの反当収量が二石四斗二升でございまするから、それで割りますというと、六千二百二円ということになるのであります。この六千二百二円が平均のところになりまするけれども、先ほど申し上げた通り、ある程度上回ったところに見るべきであると、こういう考え方で、それは標準偏差をとりまして、標準偏差の数字を算出いたしたのであります。その係数が二二〇・七八になりますので、この六千二百二円に二二〇・七八をかけたのであります。それが八千百十一円であります。それからこの計数の中には先ほど申し上げました地代分を除いてありまするから、地代分といたしまして千九十四円足しまして、そしてそれが合計で九千二百五円になるのであります。それからこの年は申すまでもなく二十七年でございまするから、二十七年から今日までの農業パリテイ指数の上昇率がございますから、その上昇率をかけますというと、九千八百四十八円であります。九千八百四十八円に包装代を足しますと、一万三十五円という数字が出たのでありますが、これが先ほど大臣が申し上げました生産費等の方式を参酌いたしましたという数字がこの数字でございます。
  355. 池田宇右衞門

    ○理事(池田宇右衞門君) 私から清井長官に一言申しておきます。ごらんの通り委員各位がおそくまで熱心に審議を進めているのだから、答弁に当りましては、資料を用意し、係官を増しまして、大臣と長官との答弁に食い違いのないように今後十分の注意を促しておきます。   〔理事池田宇右衞門君退席、委員長着席〕
  356. 佐藤清一郎

    佐藤清一郎君 関連して。ただいまの長官の答弁のうちに、自家労賃を都市の労働賃金の平均を考えてやったと言うんですが、それは金額は幾らぐらいになっておるんですか。
  357. 清井正

    政府委員(清井正君) お答えいたします。先ほど労働費と申しました九千百十七円の中に雇用労働の分が七百六十七円で、家族労働の分が八千三百五十円になるわけでありますが、この家族労働の八千三百五十円は、先ほど申し上げました都市の製造工業労働者の賃金のバランスをとったと今申し上げたのでありますが、この八千三百五十円の算出の基礎でございますが、これは都市の常用の平均の賃金が一時間当り五十八円六十九銭と出ております。それに都市と農村との物価差が八四・四一でございますので、五十八円六十九銭に物価差の八四・四一をかけまして、都市の労賃に相当する均衡労賃が四十九円八十八銭ということになるわけでありますが、これは一時間当りの賃金でございます。それから直接労働時間が百六十七・四時間、いずれも反当りでございまして、それにかけますと反当家族労働費が八千三百五十円という数字になるわけでございます。
  358. 小林孝平

    小林孝平君 私は先ほどこの一万六十円の算出の基礎につきまして、今資料をいただきましたけれども、先ほどの私の質問はまだ十分納得がいきませんけれども、一応次の問題に入りまして、後ほどまたこの問題をお尋ねいたしたいと思います。
  359. 相馬助治

    相馬助治君 関連して。
  360. 館哲二

    委員長館哲二君) 今発言されたとたんだが、小林君いいですか。
  361. 小林孝平

    小林孝平君 ええ。
  362. 相馬助治

    相馬助治君 先ほど一万六十円というものは、科学的根拠ある資料によってこの値段が出たのであると農林大臣はおっしゃったわけですが、かりにその言葉その通りに私は一度ここで信用すると、当然次の一点を私は尋ねなくてはならない。根本官房長官がここにお見えになっておるから私ははっきり聞きたいのですが、御承知のように今の内閣は民主党だけで組織してある。しかも責任内閣制度であるにもかかわらず、先ほど小林委員質問に対して、農林大臣のお答えの中に、民主党の米価対策委員会が一万二百六十円に再確認しているという事態を承知していると、こういうふうにおしゃっております。責任内閣であり、民主党の単独内閣であって、その党内の対策委員会の出した値段が一万二百六十円であるというっことをさておいて、しかも、一方では一万六十円で押えていこうとしている。これはきわめて問題はむずかしいと思うのですが、それは閣内における相談及び閣内と党との相談において、この問題はどういうふうに政治的に解決していくのかということを、私は官房長官にお聞きしたい。  同時に、これに関連して、米価審議会答申案も一万六十円よりは高くならないと思うということを一萬田蔵相は言っているが、これはしろうと考えから言うても、どんなに安く出ても一万二百六十円を割るここはないということが想定されるのでありますが、かりに、一万二百六十円という数字が出てきたときには、今の予算内においてやりくりが可能であると一萬田さんは認めておるか。また一万二百六十円という数字は何によると考えるか。一つの仮定に立つことであるけれども、単なる根拠のない仮定ではなくて、十分根拠のある仮定ですから、この点について蔵相の考えも聞いておきたいと思います。
  363. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) お答え申し上げます。民主党の米価対策審議会におきまして確認されたということは、先ほど農林大臣から言われた通りでございます。しかし、実は昨日は民主党の米価審議会の会長である廣川さんも一緒になりまして、これは政府が米価審議会に提出する米価としては、こういうことに相談でまとまったのでございます。御承知のように議院内閣制でございましても、必ずしも政党のある特別委員会の一応の結論がそのまま政府結論になるとは限らないのでございまして、その間、しかも、最後的に政府が米価審議会答申をも得て決定するわけでございまして、今最後的な決定ではございませんことは、先ほど農林大臣から言った通りでございます。議院内閣制でありましても、党内の一特別委員会の意思がそのまま政府の最終的な決定になるということは必ずしもなくても、これは民主政治のあり方として、必ずしも矛盾ではない、かように考えております。
  364. 相馬助治

    相馬助治君 質問の趣旨を取り違えている。責任内閣制度だから党がきめたものを取り入れろと言ったんじゃなくて、逆なんだ、私の言うのは。内閣が一万六十円ときめたこのことを、逆に与党である民主党の米価対策審議会というものを納得させなければならないのじゃないかと、こういうことを私は言っているのです。その意味からの与党を納得させないような、そういう内閣ではこの一万六十円というこの米価を出したこと自体に問題があるのじゃないかと、こういうことを私は言っているのです。ところが、今の話を聞くというと、廣川さんも列席して、それを承認して帰ったと、こう言いますけれども、それは廣川はただ委員長であって、音に聞こえたタヌキですから、そこで一応承諾をしたような顔をして帰るかもしれないけれども、対策審議会はまた別個の意思をもっていると思う。私は今後、与党の対策委員会に対しては、政府が出した値段を守らせるだけの政治的考慮をしなさいということを言っておるので、官房長官、私の言ったことを逆にとっておる。しかも、私がそう聞いたことは、農林大臣は一万二百六十円というふうな値段を民主党の米価対策審議会は今日まで堅持しているということを認めた答弁があったから私は聞いたんです。どちの言っていることがほんとうなんです、官房長官と農林大臣の。
  365. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 私が先ほどお答えいたしましたのは、民主党の委員会におきまして本日も会合されまして、そういうことを御要望になりまして、私はその御要望を拝聴いたしました。これは私は最終的に政府が決定いたしまする際の重要なる資料として私は拝聴いたしておるのでございます。もちろんその間におきまして米価審議会の御答申も拝聴するのでございまするから、これらとあわせまして十分政府といたしましてはこれらの事情を取り入れて最終的な決定をするつもりでございますと、こうお答え申し上げたのでございます。
  366. 相馬助治

    相馬助治君 私は河野農林大臣の答弁を了としておるのです。まじめに答えられておるので、それを了としているのです。そうすると、官房長官話が違うでしょう。なるほど廣川さんがそういうことを承諾して帰ったというが、これもまた民主党自体がぜひ一万二百六十円にしてほしいということを農林大臣に要望しておるという。与党内でそういうふうなありさまということは責任内閣制度においておかしくないかと、こういうことを私はあなたに聞いておる。それでおかしくないというならばそれでよい。おかしくないですかと、こう聞いておる。それでまたどういうふうにするつもりですかと、こう聞いておる。
  367. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) お答え申し上げます。党の要望としてあるわけでございまして、従いまして、農林大臣が言われたように、最終的の決定の場合には重要なる意見としてこれは考慮に値することでありまするが、また政府が諸般の状況のもとに決定しておる場合に、最終的に決定する場合においては、おそらく党においてもこの点は十分に連絡をとって決定することでありますから、その点において最終的一致を見るものと信じておる次第でございます。(「大蔵大臣に対する答弁が残っている」と呼ぶ者あり)
  368. 館哲二

    委員長館哲二君) 大蔵大臣御答弁になりますか。
  369. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) ただいまのところこの一万六十円の財源について求めておるのでありますが、これは私やっていけるということで同意をいたしております。このあとのそういう一万二百六十円でございますか、それについては今私何も考えておりません。
  370. 永井純一郎

    永井純一郎君 私のは相馬君とちょっと違って、先ほどの数字を確かめておきたいのです。
  371. 吉田法晴

    吉田法晴君 関連質問。農林大臣と官房長官の答弁きわめて重大な御発言があったと思いますので、私から、もう一度確めておきたいと思います。一万六十円は米価審議会に内示する案だと、民主党からは一万二百六十円という要望があった、米価審議会にかけて、米価審議会意見もあり、最終的な結論は別に出すのだと、こういうお話であります。なお従来各党の意見も聞いて米価をきめておる、こういう態度あるいは答弁から勘案いたしますと、私どもが主張いたしております一万二千四百円というものについても十分な考慮があり、それらのものも含めて米価を最終的にきめられると、従って今の答弁からいたしますならば、一万六十円は最終的なものではなくて、もっと上げたところで、民主党の意見も聞かれようが、米価審議会意見も聞き、社会党の意見も聞いて、もっと高いところでこれはきめる可能性がある、かように聞いたのでありますが、そういうことでございますか、重ねて一つ御答弁を願いたい。
  372. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 先ほどお答えいたしました通りに、政府といたしましては、米価審議会諮問すべき数字をきめることになっておりますので、それを昨晩内定いたしまして、明朝の閣議で決定をいたしましたらば、それを米価審議会に内示いたします。これは内示ということは、先ほど御説明申し上げましたように、諮問と同様でございます。そこでそれに対して米価審議会の御答申がありまするから、その御答申に対してわれわれはさらに最終的にどうきめるかということを閣議で正式に相談するわけでございます。その際にただいま申し上げました通り、民主党の特別委員会からさらに御要望をちょうだいいたしておりまするから、それも最終的に決定する際に十分考慮において決定することにいたしたい、こういうふうにお答えをいたしたのでありまして、それで御了承をいただきたいと思います。
  373. 秋山長造

    秋山長造君 ただいまの農林大臣の御答弁でありますと、やはり農林大臣は最終的には一万六十円以上の数字で落ちつく場合をも十分に考慮されておると思う、予想されておると思う。ところが同じ政府部内の大蔵大臣は、ただいまの御答弁では、そういうことは全然考えておらない、予想もしておらないというような御答弁なんです。これは私は相当食い違いがひどいと思う。  そこで先ほど御質問がありましたように、農林大臣が予想されておるような事態がこれはおそらく起ると思うんです。そういう場合に、大蔵大臣はどういう処置をおとりになるかということは、当然これは財政責任者として今からお考えになっておられるはずだと思う。そこでかりに一万二百六十円というようなことに落ちついた場合に、さらにどれだけの財源が要るのかということは、これは当然大蔵大臣として、その場合にはどれだけの財源が要るというお答えはできるはずだし、また当然御答弁をしていただきたいと思うのです。その点大蔵大臣にもう一度お尋ねいたしたい。(「その通り」と呼ぶ者あり)
  374. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 先にちょっと御答弁させていただきます。昨晩各関係者が集まりまして、十分検討をいたして決定いたしました一万六十円という米価は、決して私は将来これをさらに上るべきものだという予想で決定いたしたのではございません。しかし今申し上げました通り、最終的には米価審議会答申をちょうだいいたしまして、これを重要なる資料にして検討をすることになっております。そういうことであるから、私が申し上げたことが、もし上げるということを含みにして答弁をしておるのかというようなことでございますが、決してそういうことではないのでございまして、諸般の情勢を十分考慮に置きまして、最終的にわれわれはこれでいけるであろうという含みできめたのでございますが、しかし米価審議会その他から御答申をちょうだいし、御意見をちょうだいいたしますれば、最終的に決定するには、十分にそれらを勘案いたしまして最終の決定をいたします。こういうことで御了承をいただきたいと思います。
  375. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えいたします。私はただいまのところ財源的措置については一万六十円について考えておる、こういうふうに申し上げたのであります。この価格の点等についていろいろ御意見が出るであろうし、それを尊重することにつきましては、ただいま農林大臣が御答弁なさった通りでいいと思います。
  376. 永井純一郎

    永井純一郎君 私はちょっと数字について。先ほど御説明された点について確かめておきたいのですが、聞き取れないところがある。最後は九千二百五円にパリティの上昇率をかけたものが九千八百五円と、こういうのですね。その九千八百五円に標準偏差を乗じたものが一万三十五円と、こういうのですか。そこのところもう一ぺん確めてみたいと思います。
  377. 清井正

    政府委員(清井正君) ただいまのことをもう一度申し上げます。先ほど申し上げました最後の数字をちょっと申し上げますというと、物財費が七千三百八十五円……。
  378. 永井純一郎

    永井純一郎君 九千二百五円からでいいです。
  379. 清井正

    政府委員(清井正君) 九千二百五円が最後の基準価格として出た計算でありまして、それを物価修正して、農業パリティ指数をかけましたものが九千八百四十八円でございます。
  380. 永井純一郎

    永井純一郎君 指数は幾らですか。
  381. 清井正

    政府委員(清井正君) 指数は一〇六・九九でございます。それをかけましたものが九千八百四十八円でございまして、その九千八百四十八円に包装代を百八十七円を足しましたものが一万三十五円になると、こういう数字を申し上げたのでございます。
  382. 永井純一郎

    永井純一郎君 この九千八百四十八円までわかるのですが、それに包装代を加えて一万三十五円と、こういうのですね。ところがそれは先ほどあなたの説明ですと、標準偏差を考えたということを言っておりましたが、それは考えていないのですか。
  383. 清井正

    政府委員(清井正君) いや、先ほどちょっと私御説明をはっきりいたさなかったかもしれませんが、標準偏差をかけているのでございます。それは石当り生産費として、地代を除く石当り生産費として六千二百二円というのを申し上げましたが、それに標準偏差一三〇・七八をかけまして八千百十一円ということになるのであります。それに地代相当分を千九十四円足して九千二百五円という数字になるのであります。
  384. 永井純一郎

    永井純一郎君 それでもう一つ確めておきたいのは、二十八年と二十九年との手取り平均額を合わせて平均したわけですが、その二十九年が九千六百八十六円とこう言いますると、これは前年の手取り平均額は一万一円だということなのですが、そこから減収加算の百四十円をとれば九千八百六十一円になると思うのですが、それをなぜ九千六百八十六円と、この小さい方の数字が出たか、これがちょっとわかりかねます。
  385. 清井正

    政府委員(清井正君) それは包装代の関係でございます。九千六百八十六円というものは裸の計算をいたしておるのであります。御承知通り包装代は毎年違って参りますので、計算はいつも裸で計算いたしまして、最後に包装代を足すというのが計算の習慣でございますが、九千六百八十六円に包装代百七十五円を足しますと九千八百六十一円と、ただいま永井さんがおっしゃつた数字になるわけであります。
  386. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 生産費の方の米価の算定ですね。その場合の対象農家ですね、調査対象農家の数及びその規模ですね。どういう規模の農家を調査対象にしたのですか、それとその数です。どのくらいの数に基いてやったか、それだけ……。
  387. 清井正

    政府委員(清井正君) これは的確に御説明申し上げられないので恐縮でございますが、これは統計調査部の毎年やっております生産費調査の戸数を平均にとったのでありますが、約三千戸にいたしまして、各階層別の数字につきましてはただいま持っておりませんが、大体それぞれの耕作面積とあるいは経営者数等によって大体平均的に戸数を配分しておるかと思いますが、ちょっと正確なところはわかりません。
  388. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それでは資料を出して下さい。
  389. 小林孝平

    小林孝平君 先ほど農林大臣は、全部の農家の米を予約でしてもらいたい、そういうことをまた期待しておる、そのためにこの予約格差を設けないと、こうおっしゃいましたけれども、それは間違いございませんか。
  390. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) そういうことでやりたいと思っておりますが、米価審議会の御意見もこれについては拝聴いたしたいと思っております。
  391. 小林孝平

    小林孝平君 この米価審議会もさることながら、この国会で今審議をやっていますから、われわれの意見も聞いていただくべきです。全部予約で買ってもらうことは、これは不可能じゃありせんか。農業ですからね。非常に豊凶の差があるのです。初めからこれは占い師でなければ、秋どれだけとれてどれだけ売るかといのことはわからんわけです。当然これは予約と予約でないものが出てくるのも明らかなんです。それをあらかじめ河野農林大臣はそういうことを期待されておりますけれども、ちょっとおかしいじゃないですか。
  392. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) お答えいたします。われわれといたしましては、むろん予定でやって参るのでございから、今お示しのように豊作になりまして売り渡しを非常に希望する農家の方がおありになりますれば、そのときに考えたいと思います。これは先般も申し上げまし通り、非常に減収の場合には、むろんわれわれといたしましては、その減収の実情に応じまして、たとえ予約いたしてありましも、この予約については減収を考慮して考えることが当り前だということを同じように、その情勢に応じて善処して参りたい、こう考えております。
  393. 小林孝平

    小林孝平君 この善処というのは、これは予約でないから引くというようなこととお考えになっておりますか。
  394. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 予約でないから引くということを、予約したとかしないとかということによって変えたくありませんと私は申したのでございます。従いましてこの際は、われわれが想定いたしておりますものは、みな予約していただくように努力をいたします。それは将来秋になりまして非常に豊作になった場合に、それは豊作でございますから、それによって売り渡しがふえて参るという場合には、それを勘案して、私たちはやっていくことは当り前だ、こう思うのであります。これは逆に減収の場合も同様でございます。
  395. 小林孝平

    小林孝平君 河野農林大臣は同じようなふうにお考えになっているけれども、非常に違うのです。予約したものと予約しないものを同じように考えるということと、全部予約に出してもらうということを期待するということは違うのです。だたら具体的に今もう明らかなんです。よけい出るということは、これは豊凶があるのは当然なんですから、だから明らかに予約以上の数字は出るのです。それをどうするかということをお聞きしておるのです。それを予約していないから、それから罰として低くするか、あるいは同じにこの値段で買うか、そういうことをお聞きしておるのです。
  396. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 罰として引くということは考えていないのであります。従いまして現在におまして、ここで今予約いたしますのは、大体平年作を目途として予約をいして参ります。それが豊作になりますれば、当然豊作によってわれわれはそれだけのものを買うのでありますから、それはみな私たちの考えは善意の扱いをしていきたい、こういうに申し上げておるわけであります。
  397. 小林孝平

    小林孝平君 そうすると、予約したものも、豊作でよけいになったものも、結局同じ値段で買う、こういうことでございますね。今おっしゃったのはそういうことでございますか。
  398. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) さようでございます。
  399. 小林孝平

    小林孝平君 今回のこの価格の算定は、ただいま食糧庁長官が説明され、大臣が説明されたように、今までの価格の計算と大体同じなんです。ただちょっとやり方は変った。従って今度予約制度というものをやる以上は、当然予約したものは一般の予約しないものより特別の加算があってしかるべきだと思うのです。同じに買うという理窟はおかしいと思う。当然予約して、この食管法の第三条でしばられるのですからね。それが普通のものと同じということはおかしいと思うのです。理論的におかしい。当然私は二百円なり四百円なり、あるいは農業団体が言うように、五百円なり、そういう特別加算をこれに加えるのは当然じゃありませんか。それを同じに買うというのはこれはおかしいと思うのです。どういう根拠に基いてそういうことをおっしゃるのか。
  400. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 御意見ごもっともとも考えますが、先ほどもお聞きの通り梶原委員からはそれを変えてはいけないという御意見もあるのでございます。これはいろいろ御意見がございますから、私といたしましては、各方面の御意見を十分拝聴いたしまして、私自身におきましても十分考えまして、今申し上げました通りに、全部予約していただくという建前でいきたい。従って予約と約約しないものとの間に区別をつけるということは、していかないということでいきたいと私は考えておる。しかしこれにつきましては、今申し上げました通り、米価審議会等からもいろいろ御意見がございましょし、また今の各地の早場米のいくらつけるかということにつきましても、これはいずれもこれらについて御意見があるのでございますから、今ここで私が申し上げますことが、最終的な意見になるというわけにいかぬかもしれませんから、これらの意見を拝聴いたしまして、最終的にはきめるつもりでございます。
  401. 小林孝平

    小林孝平君 それは梶原委員はどういうことをお考えになっておるか、それはわかりませんけれども、それはおそらくこの予約制度というものを考えておるものの多くの人は、これは予約価格差というものをつけるべきである。またつくものだと思って、みんなやっているわけでなんです。それで農林大臣が今そういうふうに本日つかないということを言われますと、これは大へんなまた混乱を来たして、これに協力しないということになる。これはあとは水掛け論ですけれども、また繰り返して農林大臣は全部を予約を期待するなどということを今おっしゃいましたけれども、それは不可能なんです。これは農業を知らない者が言うならいざ知らず、河野さんのような農政通がそういうことをおっしゃるのは実に私はおかしいと思うのです。これはいよいよせっぱ詰まって、そういうことをおっしゃる、その苦衷はわかりますけれども、そういうことは不可能なことをおっしゃったってだめです。それは私はこれ以上言いませんけれども、これは米価審議会なり本日の意見も、それは梶原さんはつけない方がいいとおっしゃった。そういうたまたま一人おっしゃったのを非常にクローズ・アップしておっしゃるけれども、農林大臣は都合のいいときは何か非常に例を挙げられますけれども、そうでなくて、もっと全体の意見を聞いてやられないと、これは予約制度が私は河野農林大臣の命取りになるというこを心配して私は申し上げておる。それで私はこの問題は十分お考えになって、相当の額をつけないと、これは困ると思うのです。そこでもう一度、それを米価審議会等で、そういう意見があったら、これに加えられる気持がおありですかどうか、もう一回お尋ねします。
  402. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) お答えいたします。政府が決定いたしました一万六十円は、これは平均いたしました農家の手取り価格でございますから、これを予約した者としない者との区別をするということにいたしますと、この中においてこれを分けることになりますると、却って私はおかしな数字が出るきらいがあると思うのでございます。でございますから、懲罰的に、予約しない者には安くするというような考え方はいたしたくないのでございまして、これはいずれも農民諸君の共同販売の精神で御協力を願いまして、この政府の計算いたしましたものを合理的に価格として差し上げることが、一番妥当であるという考えから申し上げておるのでございまして、今の予約奨励の方途につきましては、前渡金ないしは減税というような措置、さらに先ほど池田さんのおっしゃいましたような点について、いろいろ政府として可能な点について十分考えて、この制度を完遂いたして行きたい、こう考えておる次第であります。
  403. 小林孝平

    小林孝平君 今の農林大臣も、みずから認められて、そういうことはおかしいと言ってあくまでもがんばられればいいんです。もし出すのならば、これから引くことになるだろうから、それは悪いだろうと言えば、矛盾しているんです。あなたも心の中ではこれを認めているんです。これはあなたの答弁は、大蔵大臣の言うことを代弁されているんです。あなたが出さなければいけないと思いますと言ったら、大蔵大臣が、それは出すことになれば、これから引くのだから困ると、大蔵大臣の言うことを、あなたがかわりになって言われる必要はないんです。あなたはすでに認められているんです。だから出すべきが当然じゃないですか。予約制度である以上、この基本価格というものは、そういう普通の価格なんですから、この算出の基礎から見ても、これは予約格差というものをつけるならば、この上に加えるのは当然なんです。そこで農林大臣としての御答弁をお願いいたします。大蔵大臣には後ほどお尋ねいたします。
  404. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 私はお答え申し上げましたように、予約奨励金というようなものは、米価をそういうふうにして二つに分けてやるということはいたしたくないのでありまして、これはほかの方法で奨励の方法を考えていきたい、こういうふうに申し上げておるのであります。
  405. 小林孝平

    小林孝平君 米価を二つに分けてはおかしいと言ったって、早期格差というものもあるんです。そんなことはちっとも理屈にならぬと思う。あの完遂奨励金のごときですね。この奨励金はそこにおいでになる根本官房長官が農林大臣のときにおやりになって、このためについにこの食管制度というものが崩壊に瀕するような原因を作られたわけです。そういうものは考慮されてもいいので、この早場米奨励金、格差とか、予約奨励金というものは何ら害がないんです。ちっともおかしくないんです。もう一度御答弁願います。
  406. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) これは議論になるかもしれませんが、同じときに同じ米を、予約してある分が幾ら、あるいは予約してない分が幾らということになると、私少しおかしくないかと……。今お話のように、何月の米は幾ら、何月の米は幾らという早場奨励はけっこうでございます、と私は思うのであます。そういうことで区別することはおかしいということを申し上げたのでございます。
  407. 小林孝平

    小林孝平君 その議論はこれは実におかしいです。しかしこれはこんなことをやっていると、まだ大事な問題がありますので、また後ほどこれはやることにいたしまして、私はちょっと大蔵大臣にお尋ねいたしますが、あなたは先ほど非常に重大なことを言われました。私も初耳でございますからお伺いいたしますが、食管特別会計が行き詰っておる、こういうことをおっしゃったのです。農林大臣も認めている。食管特別会計が行き詰っておるという話は、私は寡聞にして本日初めて承わりましたが、どういうふうに行き詰っているのですか。もう一度御答弁の前に申し上げます。食管特別会計が行き詰った、そしてさらにあなたは食管特別会計が行き詰ったから予約制度をやった、こうおっしゃいました。そうじゃないのですよ。これは管理制度が行き詰ったから予約制度をやったので、食管特別会計が行き詰ったのじゃないのです。しかし大蔵大臣はまだ非常に財政方面の権威だから、何か珍説でもございましたら承わりたい。(笑声)
  408. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) いや、私この食管特別会計はそうでないのでございまして、私の言葉づかいが悪いのでありまして、これは管理制度がという意味であるのです。訂正いたします。
  409. 秋山長造

    秋山長造君 ちょっと今のに関連して。ちょっと話が前に廃るのですけれども、予約格差の問題は、どの新聞を見ましても、予約格差をはっきりつけるということが書いてあるのですけれども、これは間違いであるのかどうかということをもう一度お尋ねしたい。  それから大蔵大臣にお尋ねしたいのですが、これは朝日新聞なんですけれども、大蔵大臣の談話として、「いまの食管制度は全く分りにくくなっているので、これをガラス張りの制度とする必要もあると思う」というように書いてある。この「分りにくくなっている」という意味と、それから「これをガラス張りの制度」にしたいというのはどういう意味なのか、これをついでにちょつとお尋ねしたい。
  410. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) お答えいたします。予約格差をつけるということは、新聞にありましたらば、それは私の方の責任ではございません。私はそういうことを考えたことはございません。間違いでございます。
  411. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) どうも不用意な言葉が多くてはなはだ恐縮でありますが、実は今度食管のことをいろいろと研究しても、なかなかむずかしかったものですから、実はもう少しすぐにわかるようにというような気持から申したのであります。大へん誤解を……。
  412. 小林孝平

    小林孝平君 私はそれに関連して、のちほどお尋ねいたしたいと思っていたのですけれども、この米価問題が非常に混迷したのは、大蔵大臣の米価に対する勉強の仕方が足りないから、こういうことになったのだと私は考えるのです。少くとも河野農林大臣ぐらいに勉強願わなければ、これは困ると思うのです。今のように食管特別会計が勉強してみたらわからなかった。そんなことでどうしてこの予算を編成したのですか。そういう調子だからよくわからないから、いや食管会計を操作すれば三十三億できる、今度百六億も出る、こういうことになるだろうと思うのです。私はこれは不勉強の結果、よくわからないから、食管特別会計は幾らも出るという結論になったのじゃないかと思うのですが、どうですか、大蔵大臣の御意見を。
  413. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) いや、私もできるだけ勉強をいたしたのでございますが、わからんというよりも大へんむずかしかったような感じがいたしたわけでありまして、(笑声)大いに勉強して河野さんのように農政通になっていきたいと思います。
  414. 小林孝平

    小林孝平君 だから今ごろになってようやく、勉強してわかりにくいのが、どうして三十三億の食管会計の余裕金があるとか、百六億余裕金があるとかというようなことがおわかりになるのですか。よく予算の編成のとき、大蔵大臣はこういうことはもう全然考慮されなかったのですかどうか、お伺いいたしたいと思うのです。
  415. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えします。これはやはり商売をしている、物を売ったり買ったりするような会計でもありますので、編成後において輸入食糧の価格の値下りがあったとかというようなことが発生した、こういうことであります。
  416. 小林孝平

    小林孝平君 農林大臣にお尋ねいたしますが、先ほどからあなたは、もう米価の方針は大体平年作を前提としているように御答弁になったような気がいたしますけれども、当然平年作であれば、こういう算出の基礎からいけば、凶作の場合概算払いをやらなければならぬのですが、本年も当然おやりになると思いますが、念のために伺っておきます。
  417. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) もう一ぺんちょっと今のことを……。
  418. 小林孝平

    小林孝平君 米価の決定の方針は、大体平年作を前提としておきめになっている。そうすればこの算定の方式から考えれば、当然本年凶作になれば、作柄が悪ければ、減収加算を出さなければならぬのですが、お出しになるかどうか。
  419. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 私も同様に考えております。ただし減収加算につきましては、この制度が大いに検討の余地のありますことは各方面の御意見でありまするし、私も検討しなければならぬと思うのであります。従いましてなるべく早期にこの減収加算の方法を決定いたしまして、減収になった場合にはどうすべきかということを決定いたさなければならないと思います。決定いたしまして減収の場合に対処するということは当然だと思うのでございます。もしそれがきまらなければ、前年通り減収の場合には加算していくという方針を変えることはいかんと考えております。
  420. 小林孝平

    小林孝平君 先ほど御説明をいただ一きました基準価格の算出の基礎を見ますと、二十八年、二十九年の農家の手取価格を基準にとっておりますが、先般大蔵省の係官がある会派で説明したところによりますと、二十八年、二十九年は凶作の年だから基準とすることに反対されまして、従来の二十五、二十六年の平均が妥当だと説明されたようなんであります。そこで大蔵大臣にお尋ねいたしますが、今回のこの二十一八年、二十九年でもういいというふうに考えられたのはどういう理由で同意されたのですか。
  421. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 私はまあ米価については、法律に基いて考えるにしても、いろいろと考え方があると思うのでありますが、農林大臣のおっしゃった考え方、どうも私ああいう考え方も一つの考え方で、私どもは又二十五年、二十六年を基礎といたしまして、そしてパリティ計算をする、その際に二十八年、二十九年のパリティ計算をしたものも考える、さらにまた生産費も考える、かように食管法の考えておる諸条件を取り入れまして、そして今回一万六十円という算出をしたわけであります。
  422. 小林孝平

    小林孝平君 結局何でもいいんですな、この二十五、六年でもいいし、二十八年、二十九年でもいいし、生産費——でもいいし、大蔵大臣の御答弁を聞いておるというと、融通無碍であって、ちっともわからんじゃないですか。こういうことだから米価の決定が政治問題になるんです。一体もう少し確固たる方針を立って、大蔵省はこの米価問題を処理されないんですか。
  423. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) ちょっと事務当局が作りました資料を御引用になりましての御質問でありましたから、事務当局から若干補足さしていただきたいと思います。結論を得るに至りますまでの考え方には、これはいろいろな考え方があるわけでございまして、先ほど農林大臣がお述べになりました考え方、これで一万六十円という金額が出ているのでありますが、私どもは、まあ考え方の過程を申し上げますと、従来通りのパリティ式でやって、その上に予約ということにもなったわけだから、特別の加算をするというような考え方もできるわけでございまして、これはまあ結論を得ますまでの間におきましては、いろいろな考え方がある、そういう意味で申し上げたわけでございまして、その点を御了承をいただきたい思います。
  424. 小林孝平

    小林孝平君 ちょっと非常に事務的のことをお尋ねいたしますが、概算払いの支払いは一体いつされるのか、それからその概算払いはひもがつくのかどうか、それをお尋ねいたします。
  425. 清井正

    政府委員(清井正君) 先ほど大臣からも申し上げましたが、大体八月の中旬頃までを終期といたしまして申し込みをとるわけでございますが、まず米価がきまりまして、それから集荷予定数量を全国の集荷団体にお示しいたします。そこでこれが団体まで行きまして、一方生産者からそれらを勘案いたしまして自主的な売り渡し数量が政府に対して申し込みがあるわけであります。政府に申し込みがありまして、契約を締結いたしまして、契約を締結いたしましたときに概算払いをするということになりますと、おそらく全国的に数量をお示ししてから、概算払いの本当の金は大体県−国全体というわけではございませんから、それぞれまとまり次第、お払いしていくことになりますから、ある程度は、二十日頃から始まれば一番早いところは始まるのではないかと思います。
  426. 小林孝平

    小林孝平君 八月の二十日ですか。
  427. 清井正

    政府委員(清井正君) 数字をお示ししてから二十日くらい経ってから一番早いところは始まりはしないか、こういう考え方でございます。金額等につきましては、別段ひもといいますか、特定の規定はいたしておりません。
  428. 小林孝平

    小林孝平君 あとの方から先にお尋ねいたしますが、ひもがつかないならば、強制貯蓄や農業保険の掛金の引き当て等はやらないわけですか。
  429. 清井正

    政府委員(清井正君) 事前にお金をお支払いする関係でございますので、われわれ指導といたしましては、一般的な消費的な使用に充てられないように御指導申し上げたいと思いますが、別段強制的にひもをつけるとか、あるいはこの用途に充てるということを指導いたすつもりはないのでございます。
  430. 小林孝平

    小林孝平君 そうしますと、前の方の概算払いは九月を過ぎるのですね。農家はこの八月十五日までに金がいかなければ概算払いなんということにはなりませんです。そんな遅くいったのでは……。
  431. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) それは一番遅いものがそういうことになる。早いものは七月になればすぐに、七月になればというのはおかしいのですが、米価が決定いたしますればすぐに予約の準備に入りますから、その準備に入って二十日間くらいで農家の方と契約をすることになるだろう、そうすればそのときに概算払いはいたします。でございますから、最後の、予約の最終の期限を大体八月の十五日くらいに押えておりまするから、十五日ころまでに予約は全部完了いたしたいと考えておりますから、八月十五日に完了いたしますれば、それはすぐ払うわけでございます。
  432. 小林孝平

    小林孝平君 大蔵大臣にらょっとお尋ねいたしますが、先ほど減税の点につきまして、予約制度に関連して減税の点についてただいま検討中だとか何かおっしゃいましたけれども、これは米価の決定と同時にやるべきことは当然なんです。この予約制度の要綱にもちやんと「自主的売り渡し申し込みを促進するため申し込みに基く売り渡しに対して代金の一定割合に相当する金額を課税所得に算入しないこととし、所得税の軽減を図る」云々、こういうふうになっております。これは予約の前提なんですよ。それを研究するとかどうかと言われておっては困るので、先ほど農林大臣も言われたように、こういう減税やなんかいろいろやるから、この予約格差は設けないんだというような説明にもあったように、これは価格とともに重大なる前提条件なんです。一体いつおやりになるのですか。具体的にどれだけの金額が減税になるか。それがわからなければ、これは予約も進んでやれないのです。
  433. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) この減税につきましては、実は予約の分だけにやるか、あるいは全部にやるか、あるいはまた予約の分を特に大きくするか、それらの点について、いろいろとそういうことが税の上で支障がないかどうかというような党について検討を加えたいということを申し上げたのであります。
  434. 小林孝平

    小林孝平君 農林大臣にお尋ねいたしますが、先ほどあなたのおっしゃったように、この価格をきめる際に、予約格差の問題を取り上げたら、そうしたら予約格差というようなことはやらないで、この前渡金をやる、前渡金の方は大体きまった、前渡金をやったり、減税の措置をやったり、こういうのです。ところが減税の方はさっぱりきまっていないのです。こういうことで予約制度実施できるのですか。これはこの要綱に書いてあるように減税をはっきりあらかじめやるということは示すということになっているのです。農林大臣はこれでいいのですか。
  435. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 今、大蔵省と具体的に計数について話し合い中でございます。もちろんお示しのように、価格の決定と前後して決定しなければならぬことでございまして、今一万六十円ときめましたのは、これは米価審議会に出すものでございますから、減税の方につきましては米価審議会には必要ございませんから、ただこの方を先にいたしまして、最終的に決一定するときには、前後して減税の方もきめなければならぬと考えております。
  436. 小林孝平

    小林孝平君 米価の最終的決定はもう数日中だと思うのです。そうしますと、大蔵大臣、これは数日中にきまりますか。
  437. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) ただいま農林省とも折衝いたしておりますが、できるだけ早く、おそらく数日のうちにできるだろうと考えております。
  438. 小林孝平

    小林孝平君 できるだけ早くというのは、米価の決定とほとんど同時にできるわけでございますか。
  439. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 主税局長が参っておりませんですが、最終決定がいつになりますか、できるだけそれに間に合うように努力いたしておりますが、あるいは相前後することになるかもしれません。しかしこれは法律案を国会へお出ししなくちゃならぬわけでありまして、できるだけ方針だけでも早くまとめたいということで目下主税局におきまして作業を急いでおるというどころでございます。
  440. 小林孝平

    小林孝平君 これもほんとうに数日中でございますから、もう大体の案はできておると思います。こまかいことは要りません。予約と予約でないものとの区別とか、そういうことは要りませんが、大よそ去年の価格ではこのくらい減税になる、今年の一万六十円ならどれくらいになったかぐらい、もうわかるでしょう。それがわからなければ、とてもこの二、三日中にそれがきまるはずはないのです。大体どのくらいなんですか。
  441. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 昨年度までは各種の奨励金が非課税になっておりました。その金額が総額百五十四億ぐらいになります。少くともその程度のものが非課税になるようにあんばいしていただかなくてはならぬということで考えておるわけでございますが、先ほど大臣が申し上げましたように、いろいろ問題がございまして、それらの点をここ数日の間につめて、できるだけ早い機会に国会に提案をするように努力をいたしております。さような現状でございます。
  442. 小林孝平

    小林孝平君 昨年までは超過供出奨励金やその他が非課税になって、それが百五十四億、少くともこれだけというのは、ちっともこれは特典ではないじゃないですか。相当これから二割とか三割減税にならなければ特典にならないので、農林大臣、こんなことでいいのですか。大体この程度で、こんなことで予約制度できるのですか。あるいはこの要綱は羊頭を掲げて狗肉を売るものだ、こういう評判がありますが大体そんなものなんですか。
  443. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) そういうところで意見がまだ一致いたしませんので、申し上げかねておるわけであります。
  444. 小林孝平

    小林孝平君 農林大臣としては、大体この特典として昨年は百五十四億だったが今年はどのくらい減税すればいいとお考えになっておりますか。
  445. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) これは決定いたしましてから申し上げることにいたしたいと思います。
  446. 小林孝平

    小林孝平君 いや、決定といったって、これはこういうことを掲げて、現にもう価格は内示して、しかもここで明日もこの問題が出ると思うのですね、この予約格差の問題が。それが予約格差が二百円でいいのか、三百円でいいのかということをきめるにも、この減税の額がきまっていなければわからないのです。私はあす米価審議会がどうせ開かれて、こういう意見が出るだろうから、参考のために、それは今わかっていなければあすの米価審議会にもお困りだろうと思って、私は要らぬことのようだけれどもお尋ねしておるのです。これがわからなければ、あすさっぱり審議ができないじゃありませんか。
  447. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 御質問でございますが、あしたの審議会に減税を幾らするかということが決定しておらなければ審議会の議事が進まないというふうには私はならないのであります。先ほどから申し上げますように、私としての考えを今大蔵省によくお話して、御了解を願って、適当のところにきめるように持って行きたいと考えておるわけでございます。
  448. 小林孝平

    小林孝平君 それは先ほどの農林大臣のお答えと矛盾しているのです。明日はこの予約格差の問題が出ることは当りまえなんです。それで先ほどその問題を話をしたら、いや、減税をするのだから、これは必要ないと、その他の前渡金を渡したり、減税をするからいいと、こういうふうにあなたは一応おっしゃったのです。それはあなたの本心じゃないかもしれぬが一応そういうふうにおっしゃったのです。そうすれば、明日もやはり同様にこの予約格差の問題が出て、あなたは減税もいたします、こういうふうにおっしゃれば、じゃ具体的に減税は幾らするのだと、それが去年は百五十四億だったけれども、これが今年は二百億、二百五十億を減税するということになれば、それなら予約格差は要らないのだという意見が出るかもしれない。これは重大なる問題なんです、米価の決定に関連して。大蔵省、こんなことくらい調べてないというのは怠慢じゃありませんか。大蔵大臣どうですか、怠慢とお考えになりませんか。
  449. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 主税局長がおりませんものですから、多少大事をとりまして控え目に申し上げましたのでありますが、政府に売り渡しました米の石当りの減税額につきましては、もちろん昨年よりは増加するような気持ではいるわけでございます。ただ本日担当局長が参っておりませんものですから、少くとも云々というような表現をいたしましたのですが、そういう気持は持って、目下金額の点についても、農林当局と折衝を重ねている最中でございますので、その気持はおくみ取りをいただきたいと存じます。
  450. 小林孝平

    小林孝平君 ちっとも御答弁になっておらぬじゃないですか。先ほどから言っているように、百五十四億を下らないようにしたいということで、回りくどく言われただけなんです。同じことを言われている。それでは困る。具体的に二割とか三割とか、それくらいあるのじゃないのですか、農林省は三割と言っているけれども、私らは一割ぐらいとか、そのくらいのことは研究されていると思う。それはされていなければ、この予約制度ができないじゃないですか。あなたたちが予約制度に協力しないから、この予約制度は崩壊しようとしている。そうして大蔵省はこの約予制度を崩壊さして、統制撤廃に持って行こうというのが大蔵省の、大蔵大臣考え方なんですよ。協力しないで、そうして混乱を来たさせようというのが大蔵大臣考え方じゃないのですか。
  451. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 予約制度が円滑に参りますように協力するつもりでもちろんいるのでございまして、どうも少し大事をとり過ぎまして、言い回しが少し内輪になり過ぎておりまして、少くとも云々と申し上げましたので、それじゃ去年と同じじゃないかというようなお叱りを受けたのでありますが、昨年よりは石当りの減税額につきましては、相当上回るようなことを実は考えているのであります。その点につきましては主税局長がいずれ参りまして申し上げると思います。
  452. 小林孝平

    小林孝平君 これは先ほどから繰り返しているように、米価の決定と同じ意義を持つのです。これを総合的に考えなければ、米価の決定が適正であるかどうかということが審議できないのです、米価審議会においても。この委員会においてもそうですけれども。だから明日また米価審議会が、この案がないからといって延びると、米価の決定がおくれるから私は早く示しなさいと、こう言っているのです。それを、じゃ大体三割ぐらいと考えていいですか。
  453. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 実は今大蔵省と私の方と話し合っておりますのは、昨年の考え方と全然別なケースで今折衝しておるわけでございます。そういうことでございまして、まだ結論に達しておりません。そういうことで達しないことを、今大蔵省がどう考えておる、私の方がこう考えておると言うことは形式のことでございますから、しばらく御猶予をいただきたい。今話し合っておりまするのは、昨年の減税の形式とは全然別の形式で今話し合っておるわけでございまして、その率の開きは、今ちょっとここで申し上げることをお許しいただきたいと思うのであります。
  454. 小林孝平

    小林孝平君 昨年と全然別の考え方でやるということはこれは当然なんです。考え方も何もないのです。昨年は超過供出のものにね、免税したのです。今年は、ないのだからこれは当然なんです。そんなことを教えていただかなくとも、失礼でございますけれども、わかるのです。具体的にこれは米価のあれと同じだから幾らになると。これは大蔵大臣怠慢だとお考えになりませんか。
  455. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 私が今申し上げましたのは、二割とか三割とかいう数字を今お示しになりましたから、今われわれが考えておりまする数字は三割というようなことになりまするような数字ではないのでございます。全然別のケースでございますから。もう少し実は低いのでございます。
  456. 小林孝平

    小林孝平君 その結論は二割に満たないのですか、一割くらいですか。
  457. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 二割というような数字にはならないと考えております。
  458. 小林孝平

    小林孝平君 一割くらいですか。
  459. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) ちょっとそれは結論が出るまで御猶予をお願いいたします。
  460. 小林孝平

    小林孝平君 私は大蔵大臣にお尋ねいたします。これは怠慢じゃございませんか。そういうことでは怠慢とお考えになりませんか。こういうことで、そういうこともやはりまだ御勉強になっておらぬのですか。こういうことが米価と同じ重要性を持っておる。(「議事進行」と呼ぶ者あり)
  461. 館哲二

    委員長館哲二君) ちょっとお待ち下さい。
  462. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) できるだけ早く、今ほんとうに折衝をいたしておりますが、できるだけ早くこれはもう必ずきめることにいたしたいと思います。
  463. 小林孝平

    小林孝平君 非常に私は先ほどから申し上げておるように、大蔵大臣の米価に対する御勉強が不十分です。先ほどから申し上げておるように、少くとも河野農林大臣くらいに御勉強していただかなければ困る。これは今のこの米価問題の混迷を来たしておる原因だということを申し上げておるのです。今のこれも一つの例なんです。ことごとく勉強不足なんです。そしてその結果はどうなるかというと、もう食管、まあこれはお取り消しになりましたけれども、要するにあなたの不協力のためにこの予約制度がうまく行かない、そしてうまく行かないからこれは統制撤廃をやるんだ、清瀬調査会長と御相談になって意見が一致したそうですけれども、大体統制撤廃にやろうかというような方向に行くらしいのです、これは私は非常な重大なる問題だと思うのです。まあこれは御答弁は要りませんが、最後に大蔵大臣にお尋ねいたしますが、この米価の決定に当りまして、農民がいかにも不合理な、あるいは農業関係者が不合理な高米価を主張し、要求しておるように財界の一部では批判もありますが、これらの意見日本農業の本質を十分理解してないから、こういうような意見が出るのだろうと私は思う、そこで大蔵大臣は、こういうような意見に対してあなたはどういうふうにお考えになりますか、大蔵大臣も大体これと同意見でございますか、あるいはこれに対してあなたはまた別のお考えをお持ちですか、お伺いいたします。
  464. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 実は私も農家に育ったのでありまして、農家がどういうふうにあるかということはよく知っておるのでございます。従いまして、この財界がどうというような、そういう考えは持っておりません。ただ私は米価について考えさせられることは、ちょっと私また違うのでありまして、こういうことをここで言うとまた叱られるかも知れませんが、私はむしろ生産コストを下げるように何らかの方法がないか、たとえば肥料とか、農機具とか、あるいはまた税制の方でも、農民所得というものは年に一回転しかしないという所得の関係から、これもやはり研究の対象にならぬものか、いろいろ考えて、むしろ農民の負担を軽くするようにして、そうして米価はそれほど上げないが、農民の手取りはふえる、こういうような形でやったらいいのじゃないかというのが私の一つの、あるいは今後勉強しなければならぬ一つの夢でありますが、私はそういうふうな考えで、決してこういう高米価をどうとか……、ただ私は今日大蔵大臣をいたしておりまして、全体の日本財政経済を総合的に考え、特に今日日本が置かれておる経済的な立場考えなくちゃなりませんので、そういう関係からまあしておるのであります。
  465. 館哲二

    委員長館哲二君) 小林君に申し上げます。持時間が来ておりますことを御注意願います。
  466. 小林孝平

    小林孝平君 私、大蔵大臣にお尋ねしたいのは、今のようなことも非常に大蔵大臣の御意見として拝聴いたしましたけれども、繰り返して申し上げますように、財界の一部に、農民がいかにも不当な米価を要求しているというような意見があるのです。そういうのをまた背景にされまして一万六十円という米価が内定したわけなんです。そこでこういう意見は、私はむしろ日本農業の本質を知らないのでそういう意見が出てくるのです。それで私は大蔵大臣に、財界の一部のこういう意見に対してあなたはどういうふうにお考えになるか、それが第一点。また第二点は、大蔵大臣は、この農民は組織されておらない、労働組合のような組織もないから罷業権もない、こういうものであるから、こういうような状態だから幾ら何と言ったって泣く子と地頭には勝てぬというようなことでもって、適当な価格にきめておけば何とか泣き寝入りするだろうというふうにお考えになっているのじゃないかということを私はお尋ねしたいのです。この二点を最後にお尋ねいたします。
  467. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 今日のように日本で、やはり財界の人はまた財界の人としていろいろの意見がありましようし、また農業方面は農業方面としての意見もある、これは私はやむを街ないと思います。それで財界の人がどうだとこういう批判は差し控えた方がいいと思います。なお私は何でもこうほうって置けばいいと、そういうようなことは絶対に考えておりません。
  468. 吉田法晴

    吉田法晴君 ちょっと私一点だけ関連して最後にお伺いしたいのですが、それは二千三百五十万石予約をとりたい、まあ二回にわかって予約をとりたい、こういう御希望でございますが、早場米を除きまして九千八百五十円、これは早場米の出ない地方においてはそれが一本の価格でありまして、従来のような超過供出その他もございません。そうすると、希望せられるような予約があるかないか、予約をいたしましたものはこの食糧管理法の線に乗るわけでございますが、どれだけ予約をしなければならないかという、これは従来のような精神と申しますか、あれはございません。今まで供出は、各部落に行ってそうしてひざ詰め談判で、食管法をたてにして、実は半ば押しつけのようにして供出を願っておる。あるいは知事、市町村長までが末端まで行って、いわば供出をお願いするというか、督励をするという実態、そうすると、九千八百五十円がやみ価格と申しますか、自然価格よりも低いことははっきりしている。それを従来は超過供出奨励金という形で近づけようとして、その供出をはかられて参ったわけであります。この制度と、それから価格からいたしまして、私は希望せられるような予約をするかどうかという点に非常な疑問を持つ。それはそれでよろしいのである。むしろ自由販売に持って行くという大蔵大臣のような気持であれば別問題であります。これはそういう気持ではないというお話でありますが、その点については自信を持ってやられるのか、あるいは予約を少なめにしようという、この価格なり、あるいは制度に対してどのように考えておられるのか、一点一つ伺っておきたいと思います。
  469. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 御指摘でございますが、私はこの価格で農家の諸君の御協力を得ることに全力をあげて努力をいたしたいと考えております。と申しますのは、昨年は超過供出なり、いろいろ奨励金がありましたが、本年はこれを一本にいたしまして、昨年の価格よりも上になっておることは御了承願えると思うのであります。特異の場合におきましては別でございますけれども、大体においてそういう数字になるのでございますから、平年作である限り、今こういうことを申し上げてはどうかと思いますが、やみ価格が昨年のやみ価格よりも高くなるということはないでしょうと思うのであります。諸般の情勢を勘案いたしまして、今お話でございますが、大体各農家の方々は、自分の家庭で去年と同じ家族で同じ耕作をしておれば、大体どのくらいが割当時代の供出数字であったということも、長年の経験で十分おわかりでございますから、その程度の御協力は願えるということで、実は昨年の作柄で御承知通り二千三百万石供出を受けております。これが実数でございますので、そこで二千三百五十万石、昨年は九二%の作柄でございますから、平年であれば二千三百五十万石程度の予約をしていただくことはむろんできるものと確信をいたして、ぜひこれをお願いいたしたいと思っている次第であります。
  470. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 一万六十円をおきめになった場合に、このために七十三億ふえる。それの補てんの問題として、先ほど大蔵大臣は四つの項目をあげられたのですが、それらはすでに金額がおわかりになっているはずだし、その金額がわかって七十三億、あるいは減収加算の三十三億を合せての百六億の補てんのめどがついたから一万六十円がきまったのでしょう。それとの関連なしには一万六十円はきまらないはずであります。その補てんの各項目にわたる金額をお示し願いたい。そうして同時に、もしそういうようなお考えであれば、たとえば業務用の輸入の準内地米を上げる、値段も上げるし、あるいは従って配給の量もふやすというようなことになると思いますが、たとえば業務用の米をそういう値上げした値段で一体売れる見込みがあるのかどうか、やみその他ではむしろ実際にはそれより安い価格で売られていると思いますが、それと競争して、そういう高い値で売れる見込みがあるとお考えになっているのかどうか、あるいはさらに輸入の準内地米を増加しなければならないと思いますが、それによって外米の輸入、特に準内地米に類するものの輸入はどういうふうにふえるのか、従ってそのふえた場合の外貨の措置はどういうふうな見当をつけておられるのか。それから酒造米の割当をふやし、値段をふやすというようなことを言っておられますが、そういうことによって酒の値上りを来たさないのかどうか、あるいは今年すでに去年に比較して相当な割当の増加をお考えになっているのじゃないかと思いますが、そういうことから、むしろ過剰生産になるというような危険性はないのかどうか、その辺の見当を詳しく御説明を願いたい。
  471. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) お答えいたします。先ほど大蔵大臣からもお答えがありましたが、今計数を整理中でございますが、それで概略私から申し上げておきたいと思いますことは、第一は、財源をはじき出して米価をきめたのではありませんということでございます。と申しますのは、財源につきましては、今御指摘になりました先ほど大蔵大臣から御説明申し上げましたものにつきまして、いろいろ検討をいたして参りますれば、私たちとしましては、財源措置については考慮の余地はあるというふうに考えております。と申しますのは、ただいま酒米についてはどう考えておるかということでございますが、これについてもいろいろまだ検討の余地があります。と申しますのは、酒米を去年よりも多く作ればということでございますけれども、現在全国の酒造業者の組合が要望しております数字は、概略百十万石をすでに要望いたしておるのでございます。でございますから、これは実際その方面の関係者の要求がそういう数字になっておりますので、私はこれによって決して大きくなり過ぎるということは今差し当り考えておりません。しからばその販売価格をどうするかということにつきましては、販売価格のきめ方によりましては、またここにいろいろ方法があるということも実は考えられると思うのでございます。差し当り千円にするか、千五百円にするか、二千円にするかということによって、いろいろの考え方が出て参ります。第二には業務用の米でございますが、これをどの方面から持ってくるか、これについてもいろいろ案を持っております。為替の手当につきましても、予備の為替が、ドルがあるわけでございます。ないしはまた、この販売価格につきましても百三十円は売れないだろうということでございますが、これについてもいろいろ検討を加えているのでございまして、消費県における業務用のということにいたしますれば、消費県のやみ米の価格等を月別に計算をいたしまして、適当のところにきめるということに結論を持って行くということにいたしたいと思うのでございます。これらも今計数の整理中でございますので、いずれ計数の整理を終りまして御説明を申し上げたいと思います。
  472. 永岡光治

    ○永岡光治君 ただいまの答弁の中で……。実は業務用米の百二十万石、一升百三十円で売りたい、こういう新聞記事が出ておりまして、今農林大臣の答弁によりますと、大体そのくらいに行けるのじゃないかととれるわけですが、これはしかし政府ならやみの値段で売ってよくて、普通の人ならばやみの百三十円で売っちゃいけないと禁止することになるのですか、これは私は非常に疑問に思うのです。それから酒米をどんどんふやす、百五十万石ぜひ増石してほしいという業者間の要望がある、私はやっぱり酒を飲ましてよくないわけです。飲め飲め政策をとろうとしているのですか、これはどっちなんですか。
  473. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 酒米については、御承知通りせっかくの米を無理に酒にかえることは必ずしも賛成ではありませんが、御承知通り、どぶろくというようなもので相当につぶされておりますることも御承知通りでございます。(「そんなことはない」と呼ぶ者あり)それからやみ米のことでございますが、やみ米はどこまでもやみ米でございます。やみ値はどこまでもやみ値でございまして、これは価格は禁止している、やみ米は禁止しておるのでありまして、ただ、(「やみ値」と呼ぶ者あり)やみ値はそのときによって違っておるわけであります。違っておりまする実態でございます。それは計数を全部調べて、まだ百三十円ということをきめたわけではございません。これは今後の事情によって違って参るということで、それはいずれ計数を整理するということで御了承いただきたいと思います。価格は配給価格でございまするから、販売価格でございまするから、一般消費者に対しては現在の配給価格を上げるということはいたしません。ところが業務用につきましては、現に相当の値段で買って、それが一般の消費者に大衆食堂その他われわれが肯定できる場所で売られておる事実を事実として考えまして、それをむしろわれわれはそれよりも安い価格でその方面にこれを差し上げる方がむしろ合理的に行くのではなかろうかという考えのもとに、案として考えておるのであります。しかしこれはどこまでも実情に即して行きたい、こういうことでございます。
  474. 永岡光治

    ○永岡光治君 一般の場合はやみで売ってもいいかということです、この値段の範囲内なら政府がやっているから……。
  475. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) それは政府以外に米は売ってはいけないのでございますから、そういうことはもちろんだめでございます。(「大蔵大臣答弁」「追加措置に対する大蔵大臣の答弁が残っておる」と呼ぶ者あり)
  476. 湯山勇

    ○湯山勇君 今の問題ですね。これはかりに消費者が純内地米を買って、配給を受けて、それを業者に百三十円、政府のきめ値段で渡すというようなことはどうなりますか。
  477. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 米は政府以外には売ってはいけないということになっておりますから、そういう場合はあり得ないと思うのであります。
  478. 館哲二

    委員長館哲二君) 大蔵大臣はお答えになりますか。
  479. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 先ほど農林大臣が詳しく申し上げましたので、あの通りであります。
  480. 館哲二

    委員長館哲二君) 委員長から御希望申し上げておきますが、関連はできるだけ委員長は許可するつもりでおりますけれども、いろいろなことを御考慮願いまして御自粛を願いたいと思います。(「賛成々々」「公平々々」と呼ぶ者あり)
  481. 永井純一郎

    永井純一郎君 だんだんとこの米価、政府原案と言われるものが発表されて今議論されてきましたが、伺っておりますると、どうも予約制度というものがはっきりした政府の政策になっておらないという感じを非常に受ける。先般先輩松永さんが本会議で、亡くなられます前に、河野農林大臣に予約制度は思いつきじゃないかということをただされたときに、あなたは逆襲して、長い間お互い議会政治生活をしておるのだからというとこで反駁をされておりましたけれども、今までの質疑応答を聞いておりますると、一つも政策というものになっておらないという感じを、非常に不安な感じを受けます。そうして大蔵省と農林省の間が、少しも予約制度を完全に成功せしめるように持って行こうというふうな緊密な度合いというものが非常に薄いという感じを受けて、私は非常に遺憾に思うのであります。そこで私は米価に対する政府の基本的な方針というものをもう少し聞きただして行きたい、こういうふうに考えるのです。まず一番先に私は大蔵大臣にお伺いをいたしまするが、食糧庁長官から、先ほどやはり一万六十円というものがパリティ計算方式を基礎にやっておるのだという一つの方針のごときものを説明されたのです。これは大蔵大臣も御承知通り、物価がどんどん上って行っておる間のインフレの時代には、われわれもやむを得ずパリティ方式というものをとって行かざるを得ないということで、ある程産これを認めることができると思う。ところが政府は御承知通り、経済の地固め政策ということを今日基本にして、それを達成するんだということに方針をきめておられる。そうしてデフレ政策が順次浸透してきて、物価が安定をしてきた、これはいいことだと思う。そうして本年度末には五%くらいまでの物価の引き下げを目途にして物価政策をとるんだ、こういうあなたの基本方針でありまするから、私はこういう段階にくるとパリティ方式というものは地固め経済政策に合わない。この点について大蔵大臣は一体どのような所見を基本的に考えとしてお持ちなのか、これをまずお伺いをしたいと思います。
  482. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えしますが、地固め政策を遂行するにつれて、パリティは物価が下る関係もありまして下って行く、こういうふうな考えから、私はこのパリティの計算の仕方は地固めの政策には反しないように考えております。
  483. 永井純一郎

    永井純一郎君 大蔵大臣が八合目ミルク論をやられておったのでございますが、デフレ政策をそういうふうに遂行して行きます面におきまして、必ずそのしわ寄せがされて非常に困窮をきわめる部分が出てくる。それを困窮せしめてはならないんだ、デフレ政策というものは金融政策で、そういうもので被害を受けるものは適当な時期に救って行くんだ、ならして行くんだということがあなたの基本的方針である。これは当然地固め政策の裏づけとしてしなければならぬ。その立場からいって、私はパリティ方式を依然としてとって行かれるならば、これは必ず農村がその影響を受ける。それを救うために、特に農業というものは御承知通り普通の企業になり得ないのでありまして、あなたも農業を御承知だとおっしゃいました。私も百姓でございまするが、これは御承知通り。従ってどうしてもデフレ政策のもとにおいては、これはパリティ方式をとって行くならば、それは明らかに低物価政策にならざるを得ない。そこでそれはもう救う必要はない、低物価政策で行くんだ、こういうことを肯定される御答弁であるのか、これを明らかにしたいと思う。
  484. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えします。このデフレの地固めを進めて行く段階におきまして、弱い層に特別にしわが寄る、これは私の考えでは、特に力の関係において、やはり弱い層、ここにしわが寄る、こういうふうな考えをいたしておりまして、そうして特にそれをまあ勤労者とか、中小企業、農家でも小さい農家、こういうふうなものが一番弱い。従って私はこういうところにやはり手を差しのべるんだという意味合をもちまして、特に私は減税を取り上げまして、この低額の所得者の税負担を軽くする、こういうふうにして行く、米価については、これは私は広範な影響力を持っている。そうしてこれは非常に歴史的なものである。むろんかりに米価を高くすることがいいにしても、これを一挙に、あるいはまた非常に国家に大きな影響を与えるときに多くするということは、やはり私は政策としては非常に考えなければならぬと思う。今日の農家のあり方はこれは私は非常に歴史的なものであると思っている。むろんこれは明治以来の日本の政策からきているんじゃないか、こういうのは一挙になかなかいかない、私はこういうふうに考えているわけであります。そういう意味合いをもちまして、私は経済全体に調和をするという形において、農家の所得の多くなることは確かに私は異存がないのでありまして、そういう意味合いにおきましても、今回やはり他の諸物価が下りつつある、特に産業方面も相当苦しんでいる、こういう状況下におきまして、あるいはまたパリティだけで見ますと、私は米価を下げ得る数字が出ないと私は思っております、パリティだけにしては……。しかしそれにもかかわらず、ここに多年の声でありまする一万円以上のこの米価に同意をいたしているのも、そういうふうにいわゆる弱いと言いますか、農家に少しでもという気持からであります。
  485. 永井純一郎

    永井純一郎君 そういう今のような、何と言いますか、座談的なお話でなく、私がお伺いしているのは政府の基本的な方針をお伺いしているのであります。先ほど来申し上げまするように、パリティ方式を今後依然として、食糧庁長官が説明したことしの一万六十円を出した方針を依然としてとって行くならば、それは明らかに農業者にデフレーションのしわ寄せになる、私はそれはいけないと思うのであります。どうしてもデフレ政策というものをあなたが財政経済の基本方針になさるならば、一番弱いところの農業部面を助けるために生産費を十分に償うところの方式を一面においてとる、それが私は政府の基本方針でなければならぬと思う。その方針は一体どっちをお取りになるのか。先ほど来緑風会の梶原君から質問があったときに、梶原君自身は、個人の意見として生産費方式に賛成できないような話をしておる。それに対して河野農林大臣も何か同様のような意見を吐かれた。私はこれははなはだ不見識ではないかと思う。農林大臣がほんとうにそう考えるならば、これはあとでもう少しお伺いして行きますけれども、まず大蔵大臣は、一体その基本的な方針というものは、やはりパリティ方式を貫いて行くという方針をとられるのかどうか、この点を私ははっきり基本方針をここでお示し願っておかないと、さっぱり先ほど来たくさんの質疑応答をしておっても、基本方針が一体どこにあるのか非常にわからなくなっておる。お答えを願いたいと思う。
  486. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えします。これは非常に私むずかしい問題だと思うのでありますが、私自身がこのパリティ計算によったら直ちに農家にしわがよるとも考えませんが、しかし生産方式を加味して行くということにも私はやぶさかではないのでありまして、これは今ちょうど米価審議会にそういうふうな、どういうのが一番いいのかという方式について専門家に諮問をしておるのであります。これらの結果も待ちましてやって行きたいと、かように考えております。
  487. 永井純一郎

    永井純一郎君 それでは大蔵大臣に一歩進めまして、一万六十円は農家の生産費を補償する値段であるというふうにお考えになっているのかどうか。また私は予約制度をとる以上は、少くとも供出農家の生産費を補償し得る価格でなければ、これは私は予約制度は絶対に成り立たない。その点についてどういう御所見を、一万六十円で生産費を償うというようにお考えになっているのか、あるいは無理な価格であるというふうにお考えになっておるのか、御所見を伺いたいのでございます。
  488. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) その点につきましては、先ほど農林当局からも御説明申し上げました通りでありまして、生産費を十分勘案をいたしまして妥当なる値段であると、かように考えております。
  489. 永井純一郎

    永井純一郎君 先ほど食糧庁長官が説明した一万三十五円というものが、農林大臣も言われておるように、これを加味して、生産費というものもこの中に入っておるのだ、これを加味して一万六十円が出たのだ、こういう話であります。ところが御承知通り、生産費計算の中にもいろいろな方法があるのであって、特に労働賃金のとり方いかんが非常に問題になってくるわけであります。それから限界生産農家のとり方によっても、どの辺をとるか、これは二千三百五十万石を確保するための限界農家をつかまえて行くわけでございますけれども、このしんしゃくの仕方によっても私非常に違ってくると思うのでありますが、農家が希望しているところでは、生産費の中で農家が希望するものは、全国の工場労働者並みの自分たちの自家労賃をきめなければ、所得にそういう均衡を保たしてくれなければ、生産費を償うものとは農家は考えておらない。また常識的に考えても私はそうでなければならぬ。ところが先ほど食糧庁長官が言った一万三十五円の内容はそうなっておらない。この点はそれでは大蔵大臣はどのようにお考えになっておるか。農家は工場労働者よりもはるかに所得が低くてもいいんだというお考えならば、私は明らかにこれは低米価政策であると言わなければならぬ。その点をお伺いしておきたい。
  490. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えします。この自家労働をどういうふうに見るか、これはやはりなかなか問題であると思うのでありますが、先ほどのお話、これはやはり私は適切に考えておられると、かように考えておる。そう言いましても、これは私の一つの考えになりますが、この農家の労働が非常に、なるべく高いものになることも、これは私は異論があるものではありませんが、しかしやはりこれは国の力とか、あるいはその国の状況によりまして除々にやはりこれは回復して行くという以外にないのじゃなかろうかというふうに考えておる。今日の農業についても、これはそのよって来るところが私は非常に遠く長い歴史の集まっておるように思っておりますので、除々にこれは回復をはからなければならぬ、かように考えております。
  491. 永井純一郎

    永井純一郎君 どうも依然として政府の、従って方針がわからないでございます、今のお答えでは……。私が申し上げるのは、全国の農民が要求しておるのは生産費方式でなければならぬ。しかもその中の重要な要素をなすところの労賃は、少くとも全国の工場労働者の平均賃金くらいにはしてほしい、こういうことなんですから、その点は今一万六十円で出した中に、もし生産費を加味しておるという食糧庁長官の説明を伺っても、あるいは農村の日雇い労務者の労賃をとったのだと、こう言う。これは全国平均よりもはるかに低いのです。そうすると、農民が要求する所得の均衡、所得の補償ということから遠いわけなんです。それをそこまで引き上げることが当然だと私は思う。これを大蔵大臣と農林大臣の私は所見を同時に伺いたい。それはどうかと、こういう意味なんです。
  492. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 生産費方式には、方式のとり方で、いろいろ幅があるわけでございまして、それだけになかなかこれはむずかしい問題でございます。米価審議会でもいろいろその点について御研究になっておるわけでございますが、もちろんこれは参考にしなくちゃならぬわけでありまして、米価審議会でどういう結論が出されるか、それには私ども大いに傾聴いたしたいと存じております。なお先ほど清井長官からお話しがございましたときに、日雇いにつきましては、これは日雇いの賃金であるが、自家労賃については都市の、都市と申しますか、工業労働者の賃金水準をとって計算をした、そういうふうに私ども承わりましたのでございまして、自家労賃の点につきましては、一応そういう調整が行われた上で一万三十五円、そういう結論をお出しになった、さように承わったのでありますが、そういたしますれば、御懸念の点は一応調整ができておるものということになろうかと存ずるのでございます。
  493. 永井純一郎

    永井純一郎君 それじゃ食糧庁長官に伺います。そうでなくて、これは明らかに農林省の生産費調査に基く二十七年のこれを今日のパリティ指数に引き直した額が九千二百三円、食糧庁長官は九千二百五円と申しましたが、これは九千二百三円がほんとうだと私は思いますが、これは農林省の生産費調査の分は、農村の日雇い労務者のあの低い賃金を取っておるのです。これに間違いないと思う。ただそれを今日の三月のパリティ指数に引き直した額が九千二百五円になっておる。これは明らかにそうですね。
  494. 清井正

    政府委員(清井正君) ただいまの御質問の点でありまするが、労賃のところは、これは基礎は統計調査部の統計調査による基礎でありますから、雇用労働は統計調査部の統計に載っております雇用労賃をそのままとったのであります。自家労働の評価の問題ですが、自家労働の評価を所得均衡という立場で都市の製造工業者の全規模の平均賃金ということで、それを控えて計算したのがこの金額である。こういうふうに申し上げたのでございます。そして平均から標準偏差の分だけ引き上げ考えましたのは、これは米の供給不足という特殊条件にあるから、平均をとって、それに一定限度の上限を平均生産費の上限という考え方で取った、こういうようなことであります。それが現に二十七年が基準になっておりますから、二十七年から今月までの農業パリティ指数の上昇率をかけまして計算いたしましたのが、先ほど申し上げました数字になるわけでございます。
  495. 永井純一郎

    永井純一郎君 その自家労働の工場平均というのはどういう工場の平均をとっておりますか、あなたの方の資料ま……。
  496. 清井正

    政府委員(清井正君) これは毎月勤労統計というものが出ておりますが、それに基いて製造工業の全規模でございまして、これは全規模の製造工業の労働者の賃金の、統計表による賃金をそのまま取りまして、それから物価差から換算いたしまして、先ほど申し上げましたような均衡労賃を出しました。それで直接労働時間は統計調査部調査による労働時間を取りまして出しましたのが、先ほど申し上げましたのが八千三百五十円の家族労働、こういうことに出したのでございます。
  497. 永井純一郎

    永井純一郎君 日雇い者の労賃はそのまま日雇いのものを取って全規模の工場労働者の平均をとる、それが九千二百三円になっておるようでございますが、これはもう一つの試算として米価算定専門委員会がやったいわゆるA案、これによりますると全規模の三十人以下も全部入れたもの、そして物価差でこれを引き直してやったもの、これを入れたものは上下一万二千三百六十九円と一万二千三百四十六円になっておるわけです。これを一万二千四百円と普通言っておるわけでございますが、私は全規模のは一万一千二百八十六円と一万四百二十五円上下でこれよりもはるかにその方は低い、労賃の要素の関係から……。私は完全な農家の要求する所得補償ということを考えるならば一これはやはり工場労働者の全規模のうち、非常に小さな規模、三十人以下くらいのものはやはり当然省いた以上のものをとれば、先ほど申し上げたように一万二千三百六十九円が上限で、下が一万二千三百四十六円です。これは米価算定専門委員会が農林省から諮問を受けて算定の試算をやった数字でございますから、私は権威あるものだと思う。やはり予約制度をとるならば、私は少くとも一万二千四百円程度のものでなければこれは生産費を補償して、そして再生産を十分にやって行くということに私はならぬと思う。この点は一体農林大臣はどういうお考えで、一万六十円という非常に開きがあるものに一体御賛成をなさったのか。私どもが農林大臣であれば、これは賛成しがたい。なぜこれだけの開きがあるのに、私はこのA案が一番いいと思うのだが、御賛成を、妥協をされたのか、その点を私はお伺いしたい。
  498. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 先ほどもお答え申し上げました通り、生産費をどういうふうに計算するかということにつきましては、今なお専門委員の方の御答申も明確に出ていない状態でございます。中間の報告としてはいろいろ御意見をちょうだいいたしました。それを計数を入れる場合にいろいろの計数が出ることも私は承知いたしております。しかしそれらにつきましては、いろいろの角度で、どの数字をとるかということは非常にむずかしいことだということに私は考えるのでございまして、先ほども生産費を考える場合に、私が妥協的な意見を述べたということでございましたが、私は決して、これは今でもそう思っております。生産費を十分勘案して米価をきめることは、そういうふうな方式をとることがよろしい、よろしいのでございますけれども、それはその年の生産条件がこれから入るのだという、いわゆる予約集荷制度に対応する現在の段階において米価をきめる場合には生産費方式によることが、必ずしもこれによって妥当であるかどうかということについては非常に議論がある。現にこれから十月までの経過の過程におきまして、これを想定しなければなりませんこともございまするし、ということでありまするから、そこに私は議論があるということを申し上げたのでございます。今のお尋ねの生産費はどれか妥当かという点につきましては、いろいろ案があるのでございますから、必ずしも私はこの専門委員会結論をとるわけじゃございませんから、そういうものを勘案して私は先ほど申し上げたように、自分としては政府として決定いたした一万六十円でやって行きたい、こういうふうに考えておるのでございます。
  499. 永井純一郎

    永井純一郎君 農林大臣にお伺いをいたしますが、私が伺っておるのは、物価がどんどん上っておったインフレ時代は、これはやむを得なかったと思うのです。ところが政府は明らかにデフレ政策をやって、地固め政策をやって物価を引き下げるという、そのときにあなたがパリティ方式をそのままのみ込んだ。生産費方式に反対であって、生産費方式のいろいろな内容、どの案がいいということは一応別にいたしまして、私はこのA案というのが一番農家の立場からいいと思いまするけれども、それはまあ一応別にしておきます。どんどん物価が下るということを政府の基本方針としておる、そのうちであなたがパリティ方式を、生産費に反対をしてパリティ方式に賛成をされるということは、それは明らかに低米価政策を認めざるを得ない結論に私はなると思う。そういう時代には、とにかくどうしても生産費を償って行っておるのだということが政府の基本方針でなければならぬ。こう私は思うのですが、それをどうお考えになるか、こういうことなのです。
  500. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 私は今お示しの点と私の意見とは、そう違わぬと思うのであります。ただおとりになりまする生産費の数字か違うのでありますので、そういうふうに御指摘でございますが、現に低物価政策をとって、物価がどんどん下りつつある折だとおっしゃいますが、私といたしましても、昨年よりも米価といたしましては、二百円ほど高いところにきめておるということにつきましても、決して昨年より米価を下げるということに考えておりませんので、そこで先ほども申し上げましたように、未定稿のものでありまするけれども、生産費調べについても、相当私は目を配りまして、そうしてこれも私の頭の中では参酌して、そうして出たものを一万六十円で妥当だろうと、こう考えたのでございまして、決して私はパリティ計算だけですぐきめたというのではないことを御了承いただきたいと思います。
  501. 永井純一郎

    永井純一郎君 パリティ方式だけでなくて、生産費を加味したと言われますが、先ほどの食糧庁長官が説明したいろいろの数字は、これはたまたま一万三十五円と出て、一万六十円と近いから、これはそういうことを言っておられると、こういう感じを非常に受ける。ですからほんとうに生産費を基礎にして、そうして所得補償を考えるというこのA案のような方式でやるならば、これは特に農業労働者というものは非常に激しいのですから、明らかに一万二千三百六十九円というものが、これはもうだれがやってもこの数字が出てくる、そういう数字があるにもかかわらず、一万六十円というものと比較すれば非常な幅があるわけです。ですから少くとも比較的には私は、やはり生産費を十分に償って増産をし、喜んで予約制度に協力をしようという態勢には、少くとも米価はなっておらない。なっておらないから、そのことを御承知だから、強権を持つところの政令を廃止するわけにはいかぬ、率直に申し上げて、こういうことだろうと思うので、この点一体農林大臣は、やはり一万六十円で十分農家は予約制度に協力し得る、生産費を償う価格である、大丈夫予約制度はこれでやれると、こういうようにお考えになっておるか。従って強権発動は絶対にしない、この点の関係をお伺いしておきたいと思います。
  502. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 御承知通り生産費と申しましても、こういうことを申し上げるのはどうかと思いますが、全部の農家の全部の生産費を償うということはなかなかむずかしい思います。これはとり方によっていろいろ出るということは御承知通りであります。従って私は、再生産の可能なものであるということは、私も言い切ることは困難でございます。しかし、まずまずこの辺のところならよかろうというところで考えておるのでございます。そこで、この米価によってこの制度を進めて参りましたらば、強権発動を用意して、あらかじめそういうことを考えておるのじゃないかということでございますが、これは私はたびたびお答え申し上げますように、十分各方面の理解ある御協力によりまして、所期の目的が達成できると考えておりますので、強権発動というようなことは考えておりませんでございます。
  503. 永井純一郎

    永井純一郎君 今度はあらためて大蔵大臣にお伺いをしたいのですが、先ほど大体財源として百六十億というお答えがありたわけであります。これは大蔵大臣考えでは、この百六億はもうぎりぎりの財源の総額であるのかどうか。あなたのお考えを伺いたいと思います。
  504. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 米価を一万六十円に一応きめるいたします。予算米価、ここに赤が七十三億出る、それに減収予算が三十三億出て百六億、これの財源を求めたわけであります。それがこの食管のうちで今先ほど申しましたような四つの項目で一応の財源を求めよう、かように考えております。
  505. 永井純一郎

    永井純一郎君 まだ百六億よりも以上に措置し得る余裕があるのかどうか、これは率直に一つ伺いたい。
  506. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) これは私といたしましては、非常な努力をいたしてやった結果であります。
  507. 永井純一郎

    永井純一郎君 そこで、この生産方式をとる場合は、前年度の生産費をとらなきゃならぬという不便があるのだというようなことで、河野さんが生産方式にあまり賛成できないというようなことを言われました。これを同じくパリテイ方式をとっても、五月末のパリテイで今やったのだから、従来大体九月末のパリテイで米価は実質的にはやはりきめなければならぬ。そうすると、その間これはまあ上るか下るかわかりませんけれども、指数が。これは先ほど梶原委員質問に対して、そういう場合には措置するということをお答えになったわけです。かりにそういう場合、措置しなきやならなくなった場合には、ここで百六億出してしまったら、一体どこで措置をするのかですね、その場合。お伺いしたいと思う。
  508. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えします。どういうふうに今後のパリテイがなるか、むしろ私は年間を通じて物価を下げる方向をとっております。パリテイは下るように考えております。
  509. 館哲二

    委員長館哲二君) もう時間の点を御注意願います。
  510. 永井純一郎

    永井純一郎君 それではさらにお伺いしたいのは、予備費が三百億あるわけですね、予備費を三百億。この予備費はどういうときに使うおつもりでおられるわけなんですか、これを伺いたい。
  511. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 豊作の場合に買入数量がふえました場合にも使うことになると思います。ほかの場合にもあるかもしれません。大体その場合をおもに考えております。
  512. 永井純一郎

    永井純一郎君 買入数量の変動があった場合に使う場合と、そのほかにも使える、こういうことであれば、かりにパリテイ関係でバック・ペイしなければならぬという場合もこれを使えばいいわけですが、あるいは私はもう一つ大蔵大臣と農林大臣に、そういうわけでこの三百億というものが使えるならば、今農相が答弁されたように使えるものならば、米価審議会が一万六十円より上回った価格できめた場合、当然これで応ずべきだと、また尊重しなければならぬ、また慎重するとあなた方言われておるんですが、私はこれで措置できると思う。従って百六億というもののほかに私はまだまだ米価について措置する余裕がある、今の農林大臣の答弁は私とりたい。御答弁をお伺いいたします。
  513. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 赤字の出るような、そういう私は予備費の使い方はないと思います。
  514. 永井純一郎

    永井純一郎君 よくわからない。赤字の出るような——赤字が出ないようにある、この中で措置する、ですから今農林大臣が答えた点を私はいいと思うのですが、これは大きな方針だから、あなたあとで答弁されてもいいんです。大蔵大臣と農林大臣は一つ相談して答えて欲しい、米価審議会にもう明日かかるんです。方針だから相談してどっちか言わないと、また変わったというと困る。
  515. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) これはちょと会計法上の原則に関連した問題ですから、まず事務当局からお答えいたします。先ほど農林大臣がおっしゃいましたのは、この予備費を使用する場合、まあ数量の増加その他の場合のことで予備費が使えるとおっしゃいましたのですが、数量が増加いたします場合には、これは見合いの品物が入ってくるわけでございまして、それを売ることによって見合いの歳入があるわけでございます。この場合には損にならないわけでございまして、そういう場合に主としてこの予備費を使うという建前でできておるわけでございます。今度のような、価格をつまり予算米価より上げます場合には、何らかの措置を講じませんと赤字が出るわけでございまして、そういう赤字の出るような予備費の使い方は、これは財政の原則から考えて認めるべきでない。そこで今度のような一万六十円にいたします場合には百六億の財源を調達する必要が起ったわけでございまして、これによって赤字が出ないように措置すると、そういうふうな措置を講じて、見合いの財源ができて初めて予備費を使える状態になる、さように考えるのでございまして、従いまして予備費があるからといって幾らでも価格を上げてもいいと、そういう建前のものではないということを御承知いただきたいと存ずるのでございます。
  516. 永井純一郎

    永井純一郎君 予算の説明書によれば、食糧証券に見合う予備費として三百億、こう書いてあるわけなんですから、その範囲で価格の上昇する場合、数量が多くなる場合も私当然使えると思う。会計法上は、会計法は私読んだことはないけれども、当然これは使える。今の説明ではおかしいと思う。
  517. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 食糧証券というのは、これはまあ一時的な、期限三カ月くらいの短期の金でございまして、金繰りの問題としてはそれは食糧証券ということも考えられるのでございまするが、消費者価格を据え置きまして、予算米価よりもさらに米価を上げるということになって参りますと、単なる金繰りの問題ではなくして、それだけこの会計赤字が出るわけでございます。その赤字が出るような意味での予備費の使い方、これは財政の原則、なかんずく独立採算の企業会計の原則から申しまして、そういう使い方はいたすべきでないと、現に私どもが編成いたしました当初の予算でも、実は百億円の赤字が出ておりますが、この百億円の赤字一般会計の食管会計に対するインベントリーを将来取り崩すことによってこれを埋めると、そういう埋め合せの方途がついておるからこそ百億円の赤字も差しつかえなかったのでございまするが、そういうような原則から考えまして、今回の場合にも特に最大限の努力をいたしまして、所要の財源を稔出するに苦心をいたしたわけでございまして、これが幾らでも予備費が使えるということでございますれば、そういう苦労も要らないわけでございます。その苦労が要るところに企業会計の独立採算の原則があると私どもは考えておる次第でございます。
  518. 永井純一郎

    永井純一郎君 非常に説明が私はおかしいと思う。かりに食糧証券ですから、米という見合いのものがあるのです。その見合いのものが百俵か二百俵かある場合も、その二百俵になると同時に一つ一つの単価が少しずつ上ることによって金が大きくなるのも、とにかく見合うものという物はあるのですから、それによってその見合うところの三百億の予備費でありますから、これは価格が上る場合も物がやはりあるのですから、私当然使えると思います。当然私はそうなってくると思う。そのための予備費なんですから。
  519. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 買入価格と売渡価格がバランスがとれているという状態において考えますれば、おっしゃる通りになると思います。食糧証券で買い入れましても、それだけ物があるわけですから、その物を売ることによって歳入が入るわけですから、おっしゃる通りになると思います。しかしただいまの生産者価格と消費者価格とのように、その間に差がございまして、それによって損が出ておる。その損を当初予算ではインベントリーで埋めておりましたが、さらに予算米価より以上にその生産価格を上げるということになりますと、物が入って参りましても、それを売る場合には生産者価格を償わない。そこで当然損が出てくるわけでございまして、その損を出さないように、赤字を出さないようにということで非常に努力を必要とした、さような筋道になると存じますが……。
  520. 永井純一郎

    永井純一郎君 それはおかしいと私はどうしても思うのだが、数量を増したときだけは使えると、こうおっしゃるが、あなたは数量を増したときだけは使えるが、価格が上ったのには使えない、こういう結論ですか。
  521. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 形式的に会計法の形式だけから考えますと、買い入れ数量の増加その他の理由によるということでございますから、数量だけでなくて、その他の理由のためにもこの予備費は使うことができるわけでございます。しかし先ほど来申し上げておりますように、価格の引き上げの場合にこれを使います場合には、見合いの財源がないと赤字になるから、それは使用すべきでないと、そういうことを申し上げておるわけでございます。あるいはおっしゃるところは、数量が二千五百五十万石がかりに大幅にふえれば、生産者価格と消費者価格の間に差があるのだから、かりに生産者価格を上げない場合でも、数量がふえれば赤字がふえるはずではないか、その赤字をどうするのかとおっしゃるのかとも存ずるのでございますが、若干はそういった要素もございますけれども、私どもといたしましてはただいま二千三百五十万石、これは目下の見積りでは適正な買い入れ数量を予定いたしておるわけでございまして、その予定数量の上に今回の生産者価格が内定された次第でございまして、価格の点のみを考慮の対象として所要の財源の捻出に努力をしたと、さような次第でございます。
  522. 永井純一郎

    永井純一郎君 それは今の説明は、明らかに米価が一万六十円より上るということを想定することは困るので、三百億の予備費から出せるのだけれども困るので、そういう今の理屈を私は言うておられるのだと思う。上ってもですよ、上った場合も数量が多くなった場合も、上った値段で高く買うものの石数というものは見合いの財産としてあるのですから、それは当然いいと思う。しかしそれが非常に莫大に上って、それからまた数を予定より非常にたくさん買わなければならぬために、食管特別会計の四千七百何十億とかという歳出ワクが足りないというような場合も考えられるけれども、そのときでも歳出ワクを大きくしたらいいのであって、変更したらいいのであって、当然三百億がいずれにもこれは使えるということはこれは当然だと思う。ですから米価審議会が高い値をきめ、そうしてその値で買う場合には、四千七百数十億円の食管特別会計の歳出ワクを越してしまうというときには、これは問題が私はあると思う。しかしそこまで行かない場合は、数量の場合も値段の場合も私は当然だと思う。ですから先ほど農林大臣がお答えになったようなことで、私は相当の程度まで三百億が使えて処置できる、これで私いいはずだと思う。
  523. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 同じ数量を前提として価格が上る場合、これはそれだけ赤字がふえることはるる申し上げるまでもないと存じます。その赤字を出さないように処理することが企業会計会計処理の原則であると思う。二の点も御理解いただげることと存ずるのであります。  しからば数量がふえた場合にでも同じじゃないかとおっしゃるのでございますが、数量がふえました場合には、これは価格がそのままといたしますれば、そのふえた数量についての現在の予算米価と生産者価格との差額でございまして、その差額は数量がふえた部分だけのことでもございまするし、これは全般的に生産者価格を引き上げた場合と比べますと、これははるかに少いことは計算上出てくるわけでございますが、しかしそれにしても、出るものは出るということをおっしゃるかもしれませんけれども、数量の問題として考えますと、目下のところは二千三百五十万石程度の集荷がほぼ適正な集荷と考えられるわけでございまして、その面からくる赤字の要素はない。いずれにいたしましても、赤字を出さないように処理するということが、この食管会計の処理の原則であるという意味で、財源捻出に非常に苦労をいたしておる、このことを御理解いただきたいと存ずるわけでございます。
  524. 永井純一郎

    永井純一郎君 そこでですよ。今のように二千三百五十万石を一定の価格で予定しておると、ところがそれを非常に高くしたために、その赤をうめるために三百億があるのだけれども、しかし二千三百五十万石の単価が上ったために四千七百数十億円の食管特別会計の歳出のワクは間に合わない、こういう場合にだけしか問題にならぬはずですよ。それはあなたの言っていることはおかしいですよ。そのときはなるほど食管特別会計は動かなくなるわけです。そのときは議会の開会中だから、歳出ワクだけふやしたら問題ないのだと思うのです。だから私は三百億の予備費を一体何に使うのかも、はっきり先ほど、数量のときだけ使うのか、それ以外には使えないのかということをはっきり言われないようだけれども、私はそんな厳重にこれを考える必要はないのであって、もし一万六十円以上に、農林大臣が言った一万百十円というようなものにかりにきまったとしたら、この中から措置して、あと百億か、百五十億措置すればいいのですから、それで私はやったらいいと思う。また農林大臣もそれはできると言っておられる。だからこの方針は、私は会計の技術上のことはちょっとよくわからないんですが、あなたの言われる技術上の説明は私納得できない、そのままの説明では。これはむしろ三百億をどう使うかという大きな方針の問題だと思う。今技術上の問題で言っておってもしょうがないので、技術上の問題としては歳出ワクをこえるというときだけ私は問題になってくると思うのだが、一つ農林大臣と大蔵大臣は御相談をして、予備費が、かりに米価審議会答申が上った場合にどうするか、使えるか使えないか、これを一つ御相談の上で、大きな方針ですから、これは方針の問題ですから、御答弁をいただきたいと思います。それで今のような答弁を幾らやっていてもしようがないと思うのですよ。休憩して下さい、できなかったら。(「休憩する必要なし」と呼ぶ者あり)
  525. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) ただいま主計局長から詳しく説明申し上げましたが、赤字の出るような、という使い方は予備金では、予備費ではできないと考えております、これは農林大臣と今相談した結果。
  526. 永井純一郎

    永井純一郎君 赤字は私は出ないと思います。ですから農林大臣はできると言われて、二人が変った答弁を私にされていることは私許せません。相談をして下さい。
  527. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 私違った答弁をしたのじゃないのでございます。私はこの三百億の予備費は、これを使う場合には、買い上げ数量がふえたとき、ないしは買い上げ数量が、まあ外米、外麦も同様であります。そういうものの買い上げ数量がふえたときには、今の米の買い入れ費が足りなくなった場合にこれを使います。ただしこれは一方において買って参りまするから、物がありますから、その物を見合いにこれを使うことができます。ただしその物の価格が予定価格と変りまして、それが高くなる。で、売り値がさまっておりますから、その差額が出た場合には、この差額は別途赤字としてこれは考慮しなけりゃいかぬのであって、これに予備費を引き当てるということは、私は今主計局長の答えたように、そういうふうには食管会計は運用すべきものでないということに私は考えております。
  528. 永井純一郎

    永井純一郎君 そうすると農林大臣も結局価格の上った分に対しての措置として、予備費はやはり使えないのだ、まあ結論はこうでございますか。一つ御答弁を……。
  529. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) その通りでございます。
  530. 永井純一郎

    永井純一郎君 そういたしますとですね。結局いろいろな答弁をされましたが、結局ですよ、百六億円以外の財源は一銭もないということなんだということですむ。そうすれば一万六十円というものはあした米価審議会にかけられるのですけれども、これはもう動かさないのだということよりほかに何ら答えが出てこない。農林大臣は先ほど来、場合によってはあしたの閣議の模様としては、米価審議会意見を尊重することによって考慮をする余地があるような含みの答弁もしばしば伺った。しかし今までの質疑応答を要約すると、もう百六億以外には一切財源はないのだ、従って一万六十円以外の米価のきめようはないのだ。もう結論はそうじゃありませんか。それはどうですか。
  531. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 米価を一万六十円より高くきめなければならぬ、きめる方がよろしいということに閣議で決定いたしますれば、財源処置としては別にこれを考えることは絶対不可能とは私は考えておりません。
  532. 永井純一郎

    永井純一郎君 大へん希望の持てる御答弁。先ほど来説明をされた輸入食糧あるいは食管特別会計の中の節約、酒造米、業務用米、これ以外にあるのか、あるいはこの率はその場合上げるのか、財源を上げるのか、あるいはそのほかに考えられる財源があるのか、これを伺いたいと思うのです。
  533. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) お答えいたします。先ほども申し上げました通りに計数の整理中でございますが、この計数の中で、たとえば酒米の販売価格のごときは、きめ方によりましては財源が出てくるということは考えられます。
  534. 永井純一郎

    永井純一郎君 私は問がないので、これを伺って締めくくりますか、それであればただいま予定をされているところの財源百六億の内訳をすぐ出していただきたい。たとえば輸入食糧の値下りで幾ら、今予定をされているはずです。節約で幾ら、酒造米で幾ら、これを項目別に数字をここに御報告おき願いたいと思う。今のような答弁があったから、これをはっきり知っておかなければならない。それを御報告願いたいと思います。その資料をいただいて私の質問を終ります。
  535. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) これは先ほども申し上げました通り、今大蔵当局との間に計数を整理中でございますから、整理ができましたら……。
  536. 永井純一郎

    永井純一郎君 今ある予定のものです。計数の整理によってもっと上るというのですから、今の予定のものがあるはずです。それがなければ、こっちの予算審議というものはできません、一応この百六億で審議するのですから。
  537. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) その計数は御審議中にむろん明確にお示しいたします。
  538. 永井純一郎

    永井純一郎君 ですから、今のやつをいただいて、そのあとで、もしまた米価審議会が上って、あなたのほうがどの項目を上げていくのか、対照したい。
  539. 河野一郎

    政府委員(河野一郎君) 現在、今申し上げました通り、計数を打ち合せ、事務当局に整理さしておりますから、整理でき次第差し上げることにいたします。
  540. 館哲二

    委員長館哲二君) 永井君持ち時間十分超適いたしております。
  541. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は食管会計赤字の処理の問題について主として伺いたいのですが、この赤字が出てきて、今各委員質問されて、そうして赤字の処理の財源について非常に答弁に苦しんでおるようでありますが、結局これは片方で、一般会計の方で非常に膨大な防衛費、あるいは旧軍人恩給費とか賠償とか、また将来は対米債務の返済とか、そういう非常にたくさんの支出が出てくるので、そこでそういうものの補填に追われて、結局食管会計における赤字補填はほかの形で、いろいろな形で一般物価を引き上げ、あるいはその他の形で国民生活を低下させるという処理の仕方になっていると思う。   〔委員長退席、理事池田宇右衞門君着席〕  具体的に、問題別に質問して参りたいのですが、その前に、これまでの各委員質問に対しての政府の、大蔵大臣の御答弁と農林大臣の御答弁の間に食い違いがありますから、その食い違いの三点についてまずただしておきたいと思うのです。  その第一は、この一万六十円の米価算定の基準についてでありますが、先ほど政府の説明によると、二十九年のパリティ指数、これを基準としてきめている、こういう話です。ところが先ほど大蔵大臣の御答弁は、昭和二十五、六年の基準も勘案し、そうしてまた昭和二十八年、二十九年のパリティ基準も勘案し、生産費も勘案し云々と言っておりました。そうしてこれは森永主計局長があとで答弁されてごまかしてしまいましたが、実はこれをきめる過程においてそういう議論も出たが、そういう過程を説明したのだというお話です。これは全くごまかしです。それが農林省の基準は、はっきりと先ほどの御説明のように凶作であったところの二十八年、九年を基準にしておるのです。そうしてこれは凶作であった当時を基準にしているというので大蔵省反対して、平年作としては昭和二十六年を基準にすべきであるというのが大蔵省意見である、そこではっきりさしたいことは、大蔵省はこの今度の一万六十円の米価算定の基準の、昭和二十八年、九年を基準とする米価算定方式を今後これをおとりになるかどうか、そうすれば今後はこれが基準になるのでありますから、先ほどこれは森永主計局長が少しごまかして答弁されましたから、この点は、はっきりと米価算定の基準を今後もこれをとる、そういうことがはっきりすればいいのでありますから、大蔵大臣からこれを特に御答弁願いたい。
  542. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 先ほど御答弁申し上げましたように、一万六十円が出たのでありますが、この出方については、いろいろの見方があっていいという考え方であります。大蔵省としましてはそれがゆえに平年作と見込まれる二十五年、二十六年の年を取りまして、これを基準としてパリティ計算をし、その出た価格にさらに二十八、二十九年を基礎とするパリティ計算、これも考えまして、さらに生産費等を考慮して、そうして一万六十円というのができたわけであります。かようにまあ考えたわけであります。
  543. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ごまかさないでいただきたいのです。先ほどはっきりと農林当局は昭和二十八、九年をこの算定の基準にするということを説明されたんですよ。昭和二十五、二十六年を基準にすることなんかは一つも説明されておりません。それはごまかしであって、この過程においてそういう議論が出たんではなく、最後において意見が対立しているんです、大蔵省と。この点ごまかさないで、そうして今後はっきりと先ほど農林当局が説明された基準をとるならとる、大蔵省は農林省の米価算定基準に妥協したなら妥協したとはっきりしなければ、そんなごまかしでは私はこれはいけないんじゃないかと思います。
  544. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 私は何もごまかしておるのではないんでして、農林省のほうの算出の仕方は二十八、二十九年を基準としまして出しておる。それに対しまして違った角度から大蔵省は先ほど申し上げましたような方法で、やはり結果においては同じ結果が出ましたということを申し上げたわけであります。
  545. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは非常に違うんですよ、今後において大変な違いが出てくるんです。そんなごまかしは言わないで下さい。今後において非常に違います。仮に結果において今度の米価の決定はそうであっても、パリティ基準の基準年度の取り方によってこれは大変に違ってくるんです。凶作の二十八、二十九年、こういうものを取るのと、平年作の二十五、六年を取るのと、これは非常に違うんですよ。いい悪いは別ですよ。とにかく今後において非常に違ってくることは明らかです。
  546. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 今後のことにつきましては今米価審議会で算出基準についてきめております。それによることにしたらよかろう、こういうように考えておるわけであります。
  547. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この米価審議会の決定に今後はずっとよるわけですか。大蔵省の方針はそうでございますね。それならばそれで確認いたしますが、それでよろしゅうございますか。
  548. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) あるいは言葉が足りなかったかも知れませんが、米価審議会答申を尊重しまして、そうして統一したものの基準をきめたい、かように考えおてります。
  549. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 時間がありませんから次に参りますが、もう一つの食い違いは、先ほどの減税の問題です。これは今主税局長お見えになりましたから、ここではっきりさしていただきたい。幾ら減税するのか、そうしてこれはさっき河野農林大臣は今度の減税は前の減税と違うのだ、これは当然制度が違うのですけれども、そうなると、今度の減税は大蔵大臣もさっき答弁されましたが、予約をしないものには減税をしない、予約するものについて減税する、そういうことを答弁されました。そうすると、先ほど河野農林大臣が言われました米価は一本である、一万六十円一本であると言ったのと違います。この税金はやはり米価の一部として実質的には考えるべきである。ところが税金によって差別を設けることになって、やはり二つの米価が実質的には出てくる。そこで予約しない人にはペナルティがつく。減税しないというペナルティがつく。これは予約格差と結果においては同じことになる。この点は非常に食い違いだと思うのです、先ほどの農林大臣と大蔵大臣の御答弁は。この点はいかがですか。
  550. 渡邊喜久造

    政府委員渡邊喜久造君) 減税の問題につきましては、いろいろ具体的な内容につきましてまだ打ち合せをしております。今度この制度が変りましたので、この制度にできるだけ有効な減税の方式をとるべきじゃないかということは、われわれも考えております。減税の程度の問題につきましても、まあわれわれのほうでは一つの案は持っております。考え方としまして、昨年超過供出奨励金、早場米奨励金、そういったもので減税した額がございます。従いましてこの程度を一応の目安として現在考えております。それをさらにどの程度伸縮する、伸縮と言いますか、上げ下げするか、まあ下げるつもりもございませんが、そのような点につきましては今後農林当局と早急に打ち合せて具体的にきめたい、かように考えております。
  551. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 予約しないものには減税しないわけですね。
  552. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) これは先ほど申し上げましたように、予約をしてもらう人にやるということに考えております。
  553. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうしますと、これは明らかに予約をしない人にはペナルティです。それは予約格差と同じ結果になる。それではっきりしました。  それからもう一つ食い違いがありますが、それは自由販売制度大蔵大臣は移行するやに非常に主張されたそうです。ところが河野農林大臣は、これは軽々に自由販売にはいけないのだ、そこはやはりさっきの御答弁でも食い違っております。ニュアンスも非常に違う、あまり違わないと言っていますけれども。大蔵大臣は非常に新聞によれば強硬にこの食糧管理制度が行き詰まってしまった、そこでこれは早く自由制度にしなければだめだ、そこに今度の考え方について非常に違いがある。これは将来重大な問題でありますから、これもたしかに食い違っておりますから御答弁願いたい。
  554. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 将来の方途につきましては、私先ほどお答え申し上げましたように、私はかねて条件付自由販売と申しますか、間接統制と申しますか、ということにいくべきだということはかねて私は考えております。しかし、これはかって私はそういうことを主張しておったのでございます。しかし党の方針、もしくは政府の閣議決定によりまして、この予約集荷制度をとって参ることにきめておるのでございまして、現在はこの制度を完全に履行して参りたいというふうにきめております。しからば将来どうだということになりますれば、これは先ほども申し上げましたる通り、私が考えておりまする自由販売にするにいたしましても、非常に各般の準備が入り用であります。でございますから、軽々に自由販売にするということはなかなか困難でございますから、その準備その他が済まなければできないということにつきましては、どなたもこれは御了解願えることだと思うのでありまして、その政治的見識、その政治的の政策によって、いろいろなことをいろいろな方がお考えになっていることは、それはあるだろうと思います。しかし私が農林大臣として、この食糧に対しておあずかりをいたしておりまする私の考えといたしましては、今申し上げまするように、この制度によってやっていきたい。ただし将来におきましては、これはそういうふうに準備その他が完了するようになり、完了できれば、それはそのときに変ることがあると思います。永久に変らないとは申し上げかねますけれども、ただいまはこの制度でやっていくべきものと、こういうふうに申し上げたのであります。
  555. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大蔵大臣にお伺いしたい。
  556. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 私も何も準備がなくしてどうというのじゃありません。準備をして、そうしてうまくいくようなというふう見通しで、そのまあ将来のことであります。そう私農林大臣のお考えと大きく食い違っておるとも思っておらぬのであります。
  557. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 非常におかしいですが、それではその問題については具体的に今度は伺って参ります。食管会計の本年度の赤字総額と、すでにわかっているものと、それから明年度、三十一年度にどのくらいの赤字が予想されるか、わかっている程度でいいですから、それを伺っておきたいのです。
  558. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 当初の予算におきまして予想いたしました赤は約七十億でございます。前年度の赤、これは決算がまだ確定いたしておりませんが、三十億ございましたので、合せて百億につきまして、これは昭和二十六年でございましたか、一般会計からインベントリーとして食管会計に貸し付けました金額がちょうど百億ございますが、その百億を取りくずすことによってこれを補てんしよう、そういう計画でおりましたことは、予算の当委員会における説明の際にも申し上げました通りでございます。今回のその次に起りました問題は、減収加算の問題でございますが、これはその当時金額を申し上げましたように三十三億でございます。今回の米価引き上げ予算米価との差額によりまして生じまする不足額は、先ほど申し上げましたように、七十三億でございまして、インベントリーの取りくずしによって補てんせられましたもの以外に百六億の手当を必要とするわけでございまして、その百六億につきまして、最大限のやりくりをいたしまして財源の捻出に努めたということに相なっております。  来年度のことは、これはまあいろいろな前提を置いて考えないと申し上げられないわけでございますが、かりに、本年度と同じような数量、価格という前提で考えますと、減収加算の問題は、これは臨時的な性質のものでありますから除外すべきものであると思いますが、当初予算におきまする七十億、それに今回の七十三億、それを合計いたしました百四十三億、これは予算米価との差額でございまして、そのうち、この財源の問題に触れて参りますが、経常的な財源の増加、捻出いたしました財源が経常的な財源である場合、たとえば輸入価格の値下り、これは恒常的なものでございますれば、これは来年度もそれだけ埋められるわけでございますが、また経費の節減にいたしましても、経常的にそれだけ減らし得るということでありますれば、それだけ減少するわけでございまして、それらの点につきましては、いずれ計数整理を終りまして、七十三億の財源につきまして御審議を願いますために御報告申し上げます際に、御検討願うということになろうかと存ずるのでございますが、それらの恒常的な要素もこの中には相当入っておると存じます。大部分が恒常的な要素によってまかない得るかと考えられるのであります。そうしますと、当初の予算の際にインベントリーで埋めることを考えておりました七十億程度のものが直接残るんじゃないか。これはもう本年度とあらゆる条件を同じと仮定いたしましたときの場合でございまして、現実はそれとまたいろいろ変ってくると思いますが、そういう仮定のもとにおきましては、一応そういうことは申されるんじゃないかと思います。
  559. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは明年度も赤字が予想される。そうすると明年度は、もう本年度において財源の限りを尽してもうぎりぎりでようやく一万六十円——について今問題がありますけれども、一応それを来年度においては方法が非常に困難になってくると思うのです。そこで食管会計は行き詰まった、それだから統制撤廃、こういう私は議論が出る。そればかりでなくて、来年度は防衛費もふえます。旧軍人恩給費もふえます。これは今度また改正で非常にふえる。来年七月以後は一万二千円のあのベース・アップをやって一そうすれば非常にふえる。三十二年度になればもっとふえる。旧軍人恩給費は、賠償もふえてくる。あるいは対米債務、これも返還しなければならぬ。そこでそういうしわを食管会計の方に寄せることができない。そういうことがあるから食管会計に繰り入れられぬ。それで自由販売にして消費者にやみ米——やみ米は今度は公然米になりまして、みな値段の高いやみ米を食わせる。そういうことによって消費者にその負担を転嫁させる、そういうことになる。それから……それはもう時間がありませんから、では次に伺います。先ほど永井君は質問されましたが、三百億の予備費を——これは食糧証券に見合うものである、短期債務はこれで見合うのだから使うことができない、そう言いながら七十億の損失に見合う食糧証券を発行を予定されておるのは、これはどういうわけですか。七十億の損失に対してこの食糧証券を発行することが一体できますか。
  560. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 当初予定いたしました七十億につきましては、先ほども申し上げましたように、一般会計からのインベントリーを取りくずしましてこれを補てんする予定でおるわけでございます。それだけ補てんをせられますと、この損失はなくなるわけでございまして、さような意味で全然損失に終るわけではないわけでございます。その点でちょっとこれから生産者価格を上げました場合の問題と建前が違ってくると、さように存ずるわけでございます。
  561. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それにしても予算説明書には、はっきりと「損失に見合うもの七十億円」食糧証券の発行、これはインベントリーの取りくずしもこれもまだはっきりしていないのでしょう。それでこれは明らかにこういうような書き方をすれば、これは食管法の第二条によっても明らかなように、明らかにこれは損失の場合は、この食糧管理特別会計に生ずる損失を補てんするための一般会計からする繰入金に関する法律というのがあるのですから、これはこれによって借入金でやらなければならぬのです。そうでしょう。食糧証券でやるという建前は、これは今そういう説明をされましたけれども、こうはっきりと説明書に出ておりますよ。不足に見合うために、損失に見合うために食糧証券を発行するとなっておる。これは実際もしするなら、これを書き直さなければなりません。こんな、食管法第二条に私は反する、借入金でなければならぬと思うのです、損失の場合は。
  562. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 七十億の処理につきましては、予算でこれだけの損失が出るからというので、あらかじめ借入金の免除をいたす、いわゆるインベントリーをくずすということも一つの方法でございますが、もう少し事態の推移を見きわめましてから、ただいま申し上げましたような処置を講ずる方が適当ではないか、さような考え方から、予算提出当時御説明申し上げましたように、後日の処理にこれをゆだねておるわけでございます。   〔理事池田宇右衞門君退席、委員長着席〕 損失に入れるということにはなりました場合に、法律を出しまして、一般会計からの債務を免除すると、そういう処置をとることを予定いたしておるわけでございます。かように後日の処理にゆだねました結果、損益計算書といたしましては、一応の座を作らなければならぬ、そういう意味で、見合い収入といたしまして、食糧証券を掲げてあるわけでございますが、インベントリーを免除するということがその引き当てになっておるわけでございまして、その意味で健全性は失われていなかった、さように考えておるわけでございます。
  563. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは非常に苦しい御説明です。インベントリーを取りくすずということがあるからそういう説明がつくので、ないときにはどうするのですか。制度的にこういうことをはっきり認めるようになったら、赤字が出た場合、それは食糧証券に泳いでいく、こういうことになるのですよ。今インベントリーを取りくずすというからそうだけれども、それまで一時これで泳ぐ、こういうことに制度的になる可能性も出てきます。こういうことはだんだん、やはり一般会計から埋めないために、こうやって赤字補てんのためにだんだんインフレ的な全体の特別会計を含めた予算になりつつある一つの私は証拠だと思うのです。そこで次にまた伺いたいのですが、その食糧管理特別会計赤字をふえないようにする、赤字がふえると防衛費や旧軍人恩給費、賠償その他に回せないから、なるべく政府は、先ほどこれは梶原委員質問されましたが、凶作のときの二千三百万石の基準にしてやる、そのために国民にやみ米を多く食べさせるということなんです。これは一種の非常なごまかしです。平年作であったら、もっとたくさん量を買って配給を多くすれば、それだけ食生活は楽になる。ところが多く買うと赤字が出るから、そうすると防衛費その他の方に回すことができなくなる。そのしわは、結局やみ米を多く食べさせる、そういう形において寄せることなんですよ。そういうごまかしじゃないですか。なぜ平年作において、凶作のときと同じだけの二千三百五十万石、それしかこれを買わないと、そういう建前をとっておるのですか。それは一種の、間接的にいえば増税にみたいなるのですよ、実際には。またこれは低物価政策とも反すると思う。この点についての御意見を伺いたい。
  564. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) お答えいたしますが、御承知通り、昨年の供出の経過にかんがみまして、二千三百万石以上、昨年の作柄によって、昨年のような経過をとりまして実は二千三百万石でございます。そういうことでございますから、われわれといたしましてはこれを想定いたしまして、五十万石ふやして二千三百五十万石といたして、そこに目標を置いてやろうとしておるわけでございまして、もちろんお示しのように、現在の配給量でこれで十分だと、これ以上配給するという考えはないのだというのではないのでございまして、なかなかいろいろ勘案はいたしますけれども、集荷が十分にいくということがなかなかむずかしいというようなことから考えまして、一応ここに目標を置いておるのでございまして、これは作柄がよくて集荷が十分できればできるほどけっこうなのでございまして、もちろんそういう場合にたくさん集まれば損がたくさん出るからやらないのだろうというようなことではないのであります。作柄がよくてたくさん買えるようになれば、その際は大へんけっこうなことでありますから、それに応じてやっていかなければならないと思います。
  565. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 農林大臣からもお話がありましたように、買い入れ石数は、これは今回のこの制度においても十分できるであろうというやはりお見通しで、まあそういうふうな石数に制約を受けることは、これは実際問題としてやむを得ないだろうと考えております。むろん配給の量が多くなった場合に、それだけ家計に響くことは間違いのないことであります。
  566. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それはみんな財源の関係から来ているのであって、生産費を償うような米価で買わないから集まらない。やみが非常に高いのじゃないですか。ですからやみの方に流れる、一千万石以上も流れる。ですから生産費を償うような米価で買えば赤字がふえる。防衛費まで回せない。そこから来ている。基本は不生産的支出の方にたくさん使うからそこに問題があるのであって、そこからしわ寄せが来ている。根本は私はそこにあると思います。  もう時間もありませんから、次に簡単に伺いますが、さらにそれと、大体今度食管会計赤字補てんの問題は、間接的に物価を引き上げ、あるいは国民負担をかけるような形になっております。消費者米価は上げないと言いますけれども、間接的に上げる形になっております。その例として伺いたいのは、さっきの業務用の配給米、駅弁その他食堂に対してこれは高く売るという、それから酒造米、これは十万石から二十万石——どのくらいになるかわかりませんが、これも本来ならば配給に回すべきです。配給に回さないということはそれだけやみ米を多く国民に食べさせる、配給価格より高い食糧に対する生活費を向けるということになる。さういう犠牲においてこの赤字補てんをする、こういうことになっておるんじゃないですか。全体を見ると消費者米価は上げないから国民の家庭の台所にこれが響かないように思われますけれども、しかしこの赤字補てんの方法を見ると、明らかに凶作でないのに凶作の年と同じくらいしか買わない、そして国民にやみ米を多く食べさせるというような形。それから食糧証券についても、赤字補てんについてとにかく一時的でも七十億、これは食糧証券で泳ぐということは、これはやはりインフレ的方法です。で、根本においてそういう建前になっておるのじゃないですか。ですから大蔵大臣は食管会計の行き詰まりを嘆いておられましたが、これを根本的に考え直すについては、単に食管会計だけで、あるいは食糧管理制度だけで考えたんでは足りない。どうか大蔵大臣に真剣にお考えになっていただきたいことは、そのほかの不生産的な財政支出と重大関係があるのです。防衛費です。旧軍人恩給費です。賠償ですよ。あるいは今度アメリカにガリオアの問題、そういう片一方に膨大な不生産的支出があるのです。それとの関連においてこれを考えなければならないのです。そういう重大な段階に私は来ていると思うのです。そういう観点から、これこそ総合的でしょう、そういう点からやはりこの赤字の問題は考えなければならない。それで統制を撤廃すれば食管の負担は少くなると、そう簡単な考え方をされては困ると思うのです。もっとこれを掘り下げてですね。そうして総合的に基本的な財政経済政策の観点からその点考えていただきたいと思う。この点について最後に私は、もう時間が参りましたので質問はこれでやめますが、こういうまあ私は私なりに考えているのですけれども、農林大臣なり大蔵大臣に最後に御答弁をわずらわしたいと思います。
  567. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 御意見として、研究をいたします。(「冗談じゃないですよ」と呼ぶ者あり)
  568. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) われわれは二重米価のあり方をとっておりませんので、その点は少し考えが、根本が違うのじやなかろうかと思うのでありますが、今の御説については十分拝聴いたしまして、将来の研究の資料にいたしたいと思います。
  569. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 最後に議事進行でちょっと……。農林大臣は前にお約束が一つあります。それは全体の赤字補てんに関する各種の計数については示すことができないという御答弁でしたが、しかしすでにもう約束されているものがあるのです。減収加算の補てんについては計数を明らかにして説明することになっております。これは今日の米価の問題、米価等に関する質疑においてこの点も含めて明らかにするということになっておるのですけれども、この点については前の約束がありますので、少くとも予算、輸入米の予算の積算ですね、と実際に輸入する値段との計数的な差額、幾らくらいな利益が出るかということについてはその発表の仕方等についてどう取り扱うかは、これは別として、一応明らかにされるというお約束があったのですから、この際明らかにしていただきたい。
  570. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 先般減収加算の際に申し上げました外米、外麦の買入価格の値下りは、これを計数的に調査をいたしまして今日までの傾向、今日までの実態を、これをこのままの情勢で将来に本年、一年間継続するということにいたしますれば、約三十一、二億その点から出てくるという計数が出ております。この内訳につきましては、いずれ数字を整理いたしまして、ただいま木村委員からもお話しのありました通り、実はこれはもう少し申し上げますと、政府として予算を編成いたしましたる際に各地別の外米、外麦の買入予定価格は持っているのでありますが、その買い入れの予定価格が、現実に今日までい買入れました数字との差額が今申し上げましたような傾向として計算すれば、出てくるのでございますが、これを実数をそのままここに発表いたしますことは、将来政府が買い入れます際に、これを入札によってやっておりまする関係から、そのまま発表することは困難でございますので、この発表の方法等につきましては委員長とよく御相談をいたしまして御了解を得たいと考えております。
  571. 東隆

    東隆君 時間がございませんから、単刀直入にすぐ質問いたします。先ほど木村君がやみ米が一千万石以上、こういうことになっておりますが、政府の方で、平年作においてやみ米がどれくらいの数量になるか、これは保有米あるいは供出予約によって出る数量、これを算定しますと出ると思いますがどの程度になるか、それをお伺いします。
  572. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) やみ米でございますから、計数の見方が非常に困難でございますけれども、大体七、八百万石から千二、三百万石までの間と推定いたしております。
  573. 東隆

    東隆君 保有量は幾らくらいになっていますか。
  574. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) お答えいたします。大体三千五百万石くらいになっております。
  575. 東隆

    東隆君 約七、八百万石から一千万石というお話しでありますが、相当な数量がやみに流れておりますが、政府はこのやみに流れておる数量をなくするために、当然おやりにならなければならんと思いますが、どういうようなことをおやりになってなくしょうとされますか。
  576. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 従来地方の知事その他関係者にいろいろお願いをいたしまして、供出を十分していただくようにあらゆる努力をいたしたのでございますが、事情は御承知通り、なかなか所期の目的を達することはできなかったのは従来のごとくであります。そういうことがございますので、今回はこれを予約制度によって、合意によって御協力を願っていくように努力して参りたい、こういうふうに考えております。
  577. 東隆

    東隆君 今のお話ですと、やはり予約数量の目標が二千三百五十万石、こういうふうにいたしますと、依然として前と同様の数字が出て参りますが、この二千三百五十万石を達成するためにはいろいろの条件が大切ですが、その条件は先ほどからいろいろお話しになりましたけれども、大へん不満足だと思うのであります。そこでやみ価格をなくすることは私はあまり成功しないと思う。そこで、これはやはり河野農林大臣がこれがうまくいかないことを条件にして、統制撤廃の方向へもっていくやり方ではないかとこのように考えるのですが、この点はどういうふうにお考えになりますか。
  578. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 私はそういうことは考えておりませんで、ぜひ、消費者の方には非常に御不満もございましょうけれども、従来の配給数量は絶対にこれを確保して、そうして八日間ないし十五日間の配給を続けていくようにして参らなければいけないと考えております。
  579. 東隆

    東隆君 先ほど農林大臣は本年度のやみ価格は高くはならないと思う、こういうことを言われました。私はやみ米の価格が高いのがいいのか、安いのいがいいのか、これはわからないのですが、どちらが一体いいのですか。やみ米は高い方がいいのですか、安い方がいいのですか。これは私は大蔵大臣にもお伺いいたしたい。
  580. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) やみの値段は安い方がいいと思います。(笑声)
  581. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 私も安い方がよくて、かつ、それが消費者にも生産者にもいいというのが一番いいと思います。(笑声)
  582. 東隆

    東隆君 私は今のお二人のお答えはこれは非常に間違いだろうと思う。やみ米の価格というものは高くなければいけない。それは私は簡単にお話を申し上げますが、二、三年前に廣川弘禪農林大臣のところに行きまして、それは供出の数量が実は割当が多かった、そこで減らしてもらおうと思って、実は某月某日私は伺った。そのときに、やみ米価格はどうだ、札幌のやみ価格はどうだ、そこでやみ米の話をしますと、それは福岡よりもまだ安い、こういうことを答えられた。それは供出量の割当が強ければ結局やみ米の価格は上るということです。高くなるのです。そこで問題は、先ほど農林大臣お答えになったところから、あるいは一萬田大蔵大臣がお答えになったところから言うと、これはやみの数量が非常に多いことを前提においているわけです。やみ米の数量が多ければ多いほどやみの価格は安くなる。従って今お考えになっていることはどういうことかというと、それは明らかにやみ米の価格を安くするということは、これは何かというと、この制度を通して何とかして統制を撤廃して、自由に持っていこうという考え方があるから、そういうお答が出るわけで、私はそういうふうにしか考えられません。この申し開きを一つお願いいたします。
  583. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) そういう考え方も私はあると思いますが、私はそう考えません。配給が円滑にいき、食生活が安全になって参りますれば、私はやみ米は下ると思います。この点はいろいろ御意見はございましょうが、私はやみの価格は必ずしも配給の米とだけでないのでございまして、麦の価格、うどん、パンとの価格の関係相当にあると考えるのであります。この点は、今日、総合食糧の相当に撤廃いたしましたる今日でございますから、パン、うどんの値段とやみ米の値段との間に相当関係がある。こういうふうに考えておりますので、もちろん、私が申し上げるばかりではございません。いろいろあると思いますけれども、私はその点は決して無視することはできないと思うのでございます。
  584. 東隆

    東隆君 私は、時間がなくなりましたので……、もう質問をする時間がなくなりましたが、大きな疑問を残して私は質問を終ります。
  585. 館哲二

    委員長館哲二君) 米価に関する一般質疑は以上をもって全部終了いたしました。本日はこれにて散会いたします。  明日は午前十時より開会いたします。    午後十一時五分散会