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国務大臣(西田隆男君)
お答えいたします。富士自動車の問題で、一挙に大量解雇の
事態が発生しましたことは、まことに遺憾と
考えております。が、しかし、これは曽祢さんも御
承知のように、現在の契約が会社対米駐留軍の契約になっておりますので、契約当時におきまして
政府としましては、契約に際して注意すべき点、あるいは条件等に対しましては、一応日米合同
委員会を通じて詳細に勧告を行なっております。従って米駐留軍側にも極東軍司令官の方から通告が行きますし、会社の方にも通告が行っておりますが、二十九年度に契約されました契約の内容は、必ずしも勧告がいったような内容に基いて契約がされていない。言いかえますならば、会社側にある程度不利な契約になっておったという事実は、契約書を調べましてわかりました。従って今後そういうことのないように努力することは、これは当り前であります。
河上
委員長から参りました要請書に対しまして、個別的に
お答えをいたします。
第一の大量解雇をしないように、漸減的にやっていくように
政府は努力せよ、こういう第一項に対しましては、これは曽祢さんも御
承知のように、五月の十八日以降、米駐留軍側の通告を会社が十一日に受け取ったのでございますが、それ以後、会社側とも数回会合いたしますし、リンド代表、その他米駐留軍側の当局とも数回会合いたしました。昨日も日米合同
委員会に、特調
長官を通じてこの問題について議題を提供いたしました。協議いたしました結果として、アメリカ側の意向としましては、年間の契約に基いた内容をアメリカ側で実行しただけであって、現地軍としてはいかんともこれはしがたいこういうふうな大体意向のようでございます。従って日本
政府側として今後残されましたことは、ワシントン
政府との間に富士自動車の大量解雇の問題、これに
関連する他の産業にもしこういうことが起った場合の問題、将来の三十年度の契約の内容にこういうことのないような規定を入れるか入れないかというような問題等につきまして、国内でできることは国内でもちろん、日米合同
委員会等を通じてやりますが、できないことは外務省を通じてワシントン
政府と交渉しなければならぬ、かように私は
考えております。
それから第二の問題は、特需工業全般にわたって
云々ということがありますが、この問題に対しましては、二十九年度の契約の内容を見てみましても、契約内容の中に中途において契約の大量減少等がある場合の特別な規定は設けております。が、しかしながら契約年度が更改される場合の問題については何ら規定がされておりません。従って日本側としましては、日米合同
委員会等におきましても、これは中途における相当大量の契約の減少ということと同じ現象形態ではないか、従って日本側としてはこれに対してこの程度の考慮は払うべしという主張をいたしてみましたけれども、結局契約の内容、実態そのものがそのようになっておりませんので、この問題に対して米側の回答は日本側の満足するような状態でなかったことはまことに遺憾でございます。
それから将来の特需の契約形態の問題でございますが、これは
関係閣僚ともよく協議いたしました結果、現在のようなままでもし満足すべき契約が三十年度においてなされますならば、変更する必要はないとも
考えますけれども、それがもし日本側の欲するような労働組合側の権利を擁護できないような形でしか契約ができないということになりますならば、これは直接受注から間接受注に変更しなければならんであろうという一応の
結論を今見ております。
それからこれは国内問題としてでございますが、人員の、整理されました人員に対しましては労働行政の面において対策本部を作って、そうして東京、千葉、埼玉、等々
関連産業の多い地区に対しまして、技術を持つ技能者は直ちに配置転換のできるように準備を完了いたしております。その他の一般の技術を持たない失業者に対しましては、労働省で
考えております失業対策事業に収容するとか、あるいは職業補導所に収容して、そうして配置転換の便宜をはかるように準備を完了いたしております。
それからその次の、
政府において至急に特需受注機関を設罪することという御要望に対しましては、さっき御
答弁しましたように間接受注にするという
方針が
決定いたしました場合においては、直ちに応急の措置をとるつもりでございます。
その次の退職者に対しましては直接雇用並みの退職金、解雇手当を支給することという問題につきましては、曽祢さんも御
承知のように、現在の直接雇用の労務者には実は解雇手当は出しておりません。これはアメリカ側で事前一カ月に通知が参りますので、そのまま解雇をしておるというのが実状でございます。しかしながら今回の富士モータースの問題に対しましては、五月十一日に通告を受けまして、五月中に解雇予告をすることによって解雇手当をやらないという
態度を会社側は一応とっておったのであります。しかしながら
政府側がこれに対しましてはあっせんもしましたし、かつ解雇予告することが時間的に非常におくれました
関係上、解雇手当は一カ月分出すという回答を組合側に対して会社側がいたしております。それから退職金の問題につきましては、これは団体協約に基いて退職金の規定がきまっておりますので、とりあえず会社側として団体交渉によってきまっております額を支給するということも組合側に対して回答いたしております。それから夏季手当の問題も、これは七月初旬に夏季手当を支給する、かような回答を会社側としても労働組合側に対してやっております。
従って残りますのは、段差をつけましに普通退職手当そのままでよろしいのか、要望がありましたように駐留軍労務者並みの、直接雇用になっております労務者並みの退職手当金を出さなければならないかという問題が条件として懸案になっておりますが、
政府側としては、本日も会社の責任者と会いまして、できるだけ組合側の要求に基いた退職金を給与するようにとあっせんをいたしております。