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1955-06-10 第22回国会 参議院 予算委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年六月十日(金曜日)    午後一時五十一分開会   —————————————    委員の異動 本日委員田中啓一君辞任につき、その 補欠として高橋進太郎君を議長におい て指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     館  哲二君    理事           池田宇右衞門君            石原幹市郎君            西郷吉之助君            豊田 雅孝君            佐多 忠隆君            吉田 法晴君            松澤 兼人君            堀木 鎌三君            木村禧八郎君    委員            秋山俊一郎君            伊能 芳雄君            泉山 三六君            植竹 春彦君            小野 義夫君            木村 守江君            左藤 義詮君            佐藤清一郎君            高橋進太郎君            西岡 ハル君            堀  末治君            吉田 萬次君            片柳 眞吉君            小林 政夫君            田村 文吉君            高木 正夫君            中山 福藏君            廣瀬 久忠君            溝口 三郎君            秋山 長造君            小林 孝平君            高田なほ子君            永岡 光治君            湯山  勇君            田中  一君            永井純一郎君            松浦 清一君            石坂 豊一君            深川タマヱ君            武藤 常介君            千田  正君            八木 幸吉君   国務大臣    内閣総理大臣  鳩山 一郎君    大 蔵 大 臣 一萬田尚登君    厚 生 大 臣 川崎 秀二君    通商産業大臣  石橋 湛山君    労 働 大 臣 西田 隆男君    建 設 大 臣 竹山祐太郎君    国 務 大 臣 杉原 荒太君    国 務 大 臣 高碕達之助君   政府委員    内閣官房長官  根本龍太郎君    内閣官房長官 松本 滝蔵君    法制局長官   林  修三君    防衛庁防衛局長 林  一夫君    防衛庁経理局長 石原 周夫君    経済審議庁次長 石原 武夫君    経済審議庁総務    部長      酒井 俊彦君    大蔵省主計局長 森永貞一郎君    大蔵省主計局次    長       正示啓次郎君    大蔵省主計局次    長       原  純夫君    大蔵省主税局長 渡辺喜久造君    大蔵省理財局長 阪田 泰二君   事務局側    常任委員会専門    員       野津高次郎君    常任委員会専門    員       長谷川喜作君    常任委員会専門    員       正木 千冬君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十年度一般会計予算内閣提  出、衆議院送付) ○昭和三十年度特別会計予算内閣提  出、衆議院送付) ○昭和三十年度政府関係機関予算(内  閣提出、衆議院送付)   —————————————
  2. 館哲二

    委員長館哲二君) これより委員会を開きます。  昨日に引き続きまして、予算修正についての質疑を行います。
  3. 永井純一郎

    永井純一郎君 昨日来、私ども議会といたしまして、二百十五億というこの修正規模が、日本財政経済上果して修正に応じ得る限度であるかどうか、こういうことを判断をするに必要といたしまして、修正経緯説明を求めたのでありましたけれども総理大蔵大臣が、それは知りませんという答えであったのであります。で、その後、相当の時間を私といたしましては政府に与えたのでありまするけれども、今日まで、その適当な回答に接することができないのでございます。私は、このことは明らかに、知らないのではなくして、答えられないのであるというふうに認めざるを得ないわけであります。国民の前に議会を通じて答えられないような、そのようなこの不始末、私はそういうことが犯されておるのではないかということにつきまして、非常に残念に思うのでございます。国民は今や鳩山内閣の将来に失望をいたしております。そうして特に日本財政経済に危惧の念を持つに至っておるということを、私はここで申し上げたいのであります。その不見識と、ずさんさを、国民に明らかに私はしなきゃならぬ、こう思います。すなわち政党政治でありまするから、議院内閣制のもとにおける政府のその責任追及を、私はゆるめるわけには参りません。が、しかしながら、この経緯についてだけあまり時間をとっておりますると、円滑な議事の進行の妨げになってはいかぬ、こう私は考えまするので、一応この経緯につきまして、その追及をゆるめるものではありませんが、ここに一応修正部分についての質疑を進めていきたい、このよう考えます。  で、私は一番初めに蔵相にお伺いをいたしまするが、二百十五億が修正に応じ得る限度であったということを、佐多君の質問に対しまして明らかにお答えになったのであります。そこで私は、もしこれ以上になったときには、一体日本財政経済上にいかなる悪影響を及ぼすというふうに考えられたのであるか、その点詳細にその所見をまずお伺いしたい、こう思います。
  4. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 今回の二百十五億の修正でありますが、これは御承知ように、減税に六十七億、歳出増加が八十八億、投融資が四十億、かよう修正であります。地方財源的措置として、地方債増加二十億、こういうようなことになっているのであります。これは減税につきましては、わが内閣減税、それが本年度において三百二十七億、これに今回のが追加される、これが今日の税収入との関係においてどういうふうになってくるか、それがさらに来年度において、来年度の見通しについては、なお的確に今後の経済の情勢と推移によって、大かた見通しとして、来年度の税収入修正による減少がどういうふうなことになるか、こういうようなことの把握をいたしまして、まず減税についてはこれはやれる、こういうふうなこと、それから歳出増加については、これは一番大きく増加しているのが、公共事業費であると思っておりますが、その他、若干の生産的な経費支出増加いたしているわけでございますが、すべてこれが消費的な支出とも考えられないのであります。投融資の四十億というものについては、これは私は、それほど大きな影響はない、こういうよう見地から、全体として、むろん個々について大蔵大臣として、原案に比較して遺憾に思う点も多々あるのであります。しかし全体として、そういう修正に対し、全体として予算を成立させるために同意を与えた。その同意を与えた結果が、今後の財政に非常に大きな影響を与えるものではない。こういう判断のもとに同意をしたわけであります。
  5. 永井純一郎

    永井純一郎君 私がお尋ねしておるのは、二百十五億を限度として引き受けられたのでありまするから、その限度内の今の議論はいいのであります。もし、それ以上になったときには、どういう悪響影があると思われたか、この点をお尋ねしておるのであります。
  6. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) これは私の見地では、単に金額だけではなく、かりに減税と同時に投融資がふえるというような場合におきましては、これはこのこと自体が、果して今日の日本財政経済、あるいは国民生活の上に適切であるかどうかは別個といたしまして、相当私は金額の上においても耐え得る余地があると思っております。が、しかし、今日の財政で問題になりますことは、やはり歳出面であると思うのであります。普通の歳出面、しかも、これが継続的な意味を持っておるというようなものについては、慎重に考慮をする。一概に二百十五億をこえたから、すぐに悪いとも思っていないのであります。これはその配分の仕方にもよるのであります。私といたしましては、まああれ以上の歳出増というようなことについては、非常に懸念を持っておるということを申し上げます。
  7. 永井純一郎

    永井純一郎君 依然として私の質問からはずれたお答えをしておられるわけでございますが、それならば、あなたがお作りになった原案修正案と比較いたしまして、私は当然あなたは原案を選ばれると思う。それは原案修正案に比して、いかなる点がすぐれていると思っておられるのか、この点を具体的にお示し願いたいと思います。
  8. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) むろん私は、全体として原案がよろしいと、こう考えて、この御通過をお願いしたわけであるのであります。特に私が自分自身として、どういうところにおいて一番原案に比べて問題にするかといえば、やはり歳出増というところに、先ほど申し上げましたように、私の考えようがあるのであります。が、しかし、先ほど申し上げましたように、全体としての、しかも予算通過ということまで考えた場合に、私のこの原案が全体としてよろしいというように申すわけではありません。今日においては、全体の通過考えて、全体の大局的な見地に立った場合、修正をいれて、この修正された予算案が成立することを希望するわけであります。
  9. 永井純一郎

    永井純一郎君 私の問いたいところは、歳出増の問題が一番問題であると思うのであります。これが果して、政府が当初われわれに説明をし、予算書に書いておるような、いわゆる地固め経済政策から離れるか離れないかの私は問題点であると思う。あなたもその点は歳出増をやはり中心として心配をされておると思うのです。そこで私は今のよう質問を重ねていきたいと思うわけでございます。そこで、当初自由党修正案として持ち出した四百三十億円のときの歳出増投融資減税内訳数字は、それぞれ幾らずつであったのかをお示し願いたい。
  10. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えします。私はその提示を受けておりません。
  11. 永井純一郎

    永井純一郎君 こういうふうに非常に肝心な、われわれが聞き出さんとする肝心な点にくると、政府がもし知らないと言う場合に、私の質問が進行できないから、前日来、私はその経緯について具体的に知りたい、こう思ったのです。私は四百三十億の内訳を実は大蔵大臣は知っておられると思うのです。しかし、まあ、きのうのいきさつもあるので、私は、理事会の約束もありまするから、ほんとうはここでもっと強力にその経緯の問題を突っ込みたいわけでありまするけれども、しかし、あなたが知らないということで、これは押し通されるわけですけれども、しかし、いつまでも私はそれは許さないつもりでございまするが、かりにあなたが知らなくとも、私は知っておるのでございます。四百三十億のときの内訳は、歳出増が百二十八億であります。投融資が百二十二億であります。減税が百七十三億であった。あなたが限度であると言って引き受けた二百十五億の内訳は、歳出増が、地方に行く二十億を含めて、百八億であります。投融資が四十億で、減税が六十七億でございます。ここに私は非常な問題があると思う。自由党修正案を持ってきたけれども、あなたが呑めない原因が、私はここにある。あなたの、財政金融担当者としての立場が私にもよくわかる。あなたが賛成できないはずなんです。それは、この歳出増投融資減税の三つの区分をそれぞれ比較してみますと、歳出増については、ほとんど減っていないのです、あなたが引き受けられた金額は……。ここに私は大きな問題があると思うのです。私が今申し上げたこの四百三十億の経費歳出修正規模内訳数字と、あなたが引き受けられた二百十五億ということについては、私は比較して今数字を申し上げました。これについての御所見をお伺いいたします。
  12. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) ただいま申しましたように、この四百三十億ですか、それについては、ほんとうに何も知らないし、私どもの問題になりましたのは、二百十五億と、それによる、先ほど申しました配分関係を、内訳において検討をいたしまして、そうして全体としてこれを了承すべきかどうかということをいたしたわけであるのであります。そうしてあの内訳の、むろん、いろいろと考えようはありまするが、しかし、それかといって、全体の予算方針、それと、これが実際に国会を通過して実施される可能性等考慮し、同時にまた、あの修正自分原案にどういう性格的な変化を与えておるかという、すべての点を考慮いたしまして、これは同意した方が通過も可能であり、いたしてよろしい、こういうふうなことであります。
  13. 永井純一郎

    永井純一郎君 私が問うところに一つもあなたは先ほどから答えない。答えられないのだろうと思う。あなたが知らないと言われるから、私は自由党の当初の案の内容を調べまして、そうして今その数字をあなたに教えました。そうして、これとあなたが引き受けた二百十五億との比較を、ここで、して、その所見はどうということを私は伺っておるのでありますから、その所見を述べていただきたいと私は要求をしておるのですが、それに対してお答えを願います。
  14. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 私はこの四百三十億、それについて何ら折衝にあずかっておらないのであります。
  15. 永井純一郎

    永井純一郎君 そういうふうに大蔵大臣が出られると、私はきのうからの経過論経緯論を蒸し返したくなります。しかしそれは慎まなければならぬ。それだから、総理大蔵大臣も、あなた方は責任を持っておると言いながら、責任を事実上とらないよう立場に立とうとしておるのだと思う。はなはだ遺憾だと私は言わなければならぬと思う。で、この問題が、私は、やはり政府原案性格を変更したかどうかということの、数字の上から推していって、重要なポイントになると思う。ただ抽象的に、総理大蔵大臣も、何ら修正案原案と変らないと思うから応じた、こういうような不まじめな答弁を続けておられますけれども、決して私はそうじゃないと、こういうふうに考える。  そこでもう一つ議論を進めまして、少くともしかし二百十五億という修正規模の莫大な金が動いたのです。あなたはよくいわゆる八合目ミルク論というものを本予算委員会でもやられました。で、この修正によって、それでは率直にお伺いいたしまするが、何合目ぐらいになったと思っておられるのか、これは私お答えができるだろうと思う。それをまずお伺いしたい。
  16. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えします。今回のこの修正によりまして、私が言う、まあミルク論と言いますか、これは、このデフレ政策をすでに一年半の間遂行しておる。そうしますと、これはどうしてもでこぼこが経済にできていく。言いかえれば、弱いところの層に、通俗の言葉で言えば、しわが寄り過ぎる。そうすると、地固めによって、いろいろの政策の遂行によって、相当地固めができて力ができている、その余力をそういうところのしわの寄せられた人に手を差しのべるという意味で、これは具体的な政策といたしましては、乏しい財政のうちにおいて、民生の安定の経費を、たとえば減税を初めといたしましてそういうところに持っていく、そういう意味合いのものであります。そういう意味におきまして、今回減税が六十七億ふえておる点は、こちらは三百二十七億でありましたから、約三百九十億程度になった、まあミルクが少し濃くなったと申しますか、そういうことであります。
  17. 永井純一郎

    永井純一郎君 ここで私は、政府原案修正案とを比較してみますると、非常に今あなたがおっしゃったことにならないで、その逆のほうに行く傾向があると思う。それは、政府原案自身をよく見てみますると、大蔵大臣が御承知通り、これが地固め予算である、こういう説明をしてこられましたけれども原案自身が相当インフレ要因を含んでいることは、何人もがこれを認めておる。で、一兆円という一応ワクで押えておりまするけれども、その内容をよく見てみますると、増額された軍人恩給並びに文官の恩給をあわせまして、大体一千億に及ぶ。それからこれに社会保障関係費を加えると二千億に達するのでございます。そのほかに一番私が問題としたいのは、最も大きな消費的な経費であり、最も不生産的経費である軍事費がその上におおよそ千四百億円というものが加わってくるのです。一兆億円のワクで一応は原案を押えたけれども、こういうふうに非常に消費的な経費が、莫大な金があって、その比率が非常に大きい。こういう原案自身がすでに非常な経済地固め予算予算だということを強弁しながらも、そこにそういう非常にインフレ要因を含んだ、そういうことを内蔵した危険な要素をかなり持った原案であったのでございます。そこでそういう危険性を、不安定な要素を取り除こうとして、私は一萬田さんが考えられた、あの防衛費を、防衛支出金を削ろうとされたことに私は実は敬意を表しておった。そうなければならぬと思っておった。それは社会保障費を初め、あるいは社会保障制度立場からする、生活に困った軍人遺族は、もちろん私は十分にこれは保護しなければならぬと思う。十分にその経費をやらなければならぬと思う。しかしそれが莫大な軍事費と両立せしめていきますると、明らかに一兆円のワクがあっても、そこにはかなり危険なインフレ要因を内蔵しておる。そこであなたはその均衡をとろうとして防衛支出金の削減を企図されたことに私は実は心の中でひそかに敬意を表しておった。しかし悲しいかな、そのことがだめになった。防衛支出金の少くともあなたは二百億円程度を、あすこで消費的経費が非常に大きくなるので、削除して均衡をとろう、こうされた。ところがその点がだめになった。そこで結局どこでつじつまを合せようとしたかということを見てみますると、明らかに農業費、建設、公共土木費犠牲を強いて、ここに大なたをふるったというのが原案の私、性格内容だったと思うのです。そこで表面上は一応そういったような一兆円のワクはあるけれども、今私が申し上げたような、非常に、かりに地固め経済予算だということを、私が百歩譲ってみても、それはぎりぎりの線までのその防衛支出金を譲ったことによって、すでにその二百億円程度のものは地固め予算だという線を私超過しておったと思うのです。あるいは少くとも百歩譲って、まことに危険な、地固め経済予算だといって説明するには、もうぎりぎりの線まできておったと思う。その線にかてて加えて、修正された額が私は二百十五億だと思う。しかもその中の一番大きなのが、先ほど来あなたも問題にするし、私も問題にする歳出増の問題。しかもその歳出増がされた一つ一つを見ますると、あなたが考えた、均衡をとろうとして考えられた補助費の復活がほとんど全部であります。あるいは消費的経費が大部分でございます。ここで明らかに、原案ようやく食いとめておった地固め経済予算の線を明らかにここで突破されておる。その方向というものはどんなに見ても、反デフレ政策方向に頭が向いておることはもう間違いないのです。これは私をして言わしめるならば、防衛支出金で失敗をした二百億円、今度の修正規模である二百十五円、大よそ四百億というものが、地固め経済予算という線から私は突破しておると思う。ここに明らかに、あなたが幾ら強弁されても、政府原案は明らかに地固め経済予算性格から、自由党拡大経済というが、決して拡大経済ではなくして、均衡のとれない放漫政策方向に私向いていっておると思う。それだからこそあなたは、すでに二百億のぎりぎりの線を突破しておる。防衛支出金で失敗した二百億円を突破しておる。ですからその上にもし修正をしろということであれば、あなたはほんとう財政経済日本立場考えるならば、自分の職を賭しても、その線を守ろうとされたのだと私は思う。その点に敬意を表したいと思うが、しかし保守合同ということとかけかえに、あなたは日本財政経済の将来を犠牲にしたと思う。この点はなぜ、原案でさえそういう危険な要素が多分にある、そうして防衛支出金の二百億程度が失敗し、今度もまた二百十五億を自分が認め、それでいてなお一体予算性格が変らないということがどうして言えますか。私はその点をただしたい、こう思う。
  18. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 非常に傾聴いたしました。が、その見解には私やはり同調ができないのであります。その点を御納得がいくようにお話ししたいと思います。予算におきまして、なるほど私今回二百十五億に及ぶものを同意いたしたのでありますが、先ほどお話ししたように、防衛分担金の巨額の減額をして、それをもって民生安定、社会保障その他に充つるつもりであったようのお説でありますが、私はそういう予定は予算編成当時からいたしておりません。従いまして私の予算編成当初の原案をごらん下さると、できるだけ私は民生安定の方に経費を回したいと思ったのでありますが、しかしそういう財源がないために、そういう方針予算面に現われておると思うのでありますが、金額的にはそれほどでなかったということを皆さんはお認めであろうかと存ずるのでございます。そうしてそれならそれでぎりぎりじゃないかと言うのでありますが、私はその際に、やはり日本経済に対しまして用心をしまして、一般会計から経済に対して二百六十二億の投融資をするゆとりを残していたわけであります。ここに予算編成の基本に触れまして、これは私はやはり私の考えではむろんこういう資金を、これは金利の点も今日考慮しなくてはなりませんが、相当部分一般民間資金から調達するということは、これは必ずしも事情が許せば責むべきことではないのでございます。が、しかしこれは私の一つの今回の野心でもあったのでありますが、ここでほんとう資本蓄積の増大をはかる。そうして資本需要の方はなるべくとめて少くして、そうして金利の低下をする。そうしてこれで日本金利体系というものを確立する上においても、金利を下げる体制を確立して、一応しておいて、その上で資金の使用について考えよう、こういう二段階の考え方をいたしておったのであります。が、しかし今ぎりぎりじゃないか。予算上もはや何ら措置を講ずることができないようにぎりぎりじゃないかという点については、今申しました一般会計から二百六十二億の資金が出ているということは御考慮を願いたい。私は今回そういう意味におきまして、この予算が一兆のワクに近くなりましたが、一兆円以内であり、同時にこれがすべて税金においてまかなわれているという地固めの堅実な予算であることに間違いない。問題はそれならそういうふうにして一般会計に移した金が市中に公募回わして、問題はその公募回わした金が市場資金で十分に完全に消化するか否かという点に問題がある。これさえ十分消化すれば私の地固め予算であるというこの見地は崩れていないと私は確信いたしております。
  19. 永井純一郎

    永井純一郎君 私は政府原案も今申し上げまするように、恩給亡国と言われるほどの大きな恩給費を初め、それに加うるに一番むだで不生産だと思われる莫大な軍事費、これらを抱え込んで、しかもこれが年々、恩給費でも、軍人増加恩給でも、これを平年度化すれば大きくなる。また軍事費もアメリカの要求によって大きくなるでしょう。とうてい方向というものはあなたが今おっしゃるよう方向でない。明らかに地固め経済から反対の方向をすでに今日のこの修正案は少くともはっきり向いた。私はこう思うのですが、もう一つの問題としてはそれの証拠になることは、あなたは今私が言うよう意味でなく、二百六十二億の投融資の中にゆとりを置いたと、こう言われる。ところがゆとりを置いておいて、その投融資日本経済の底が浅いのでありまするから、民間資金に求めるよりも財政資金によって基礎産業なりあるいは基盤的なものを育てることの方うがいいことは、私はわかり切ったことだと思うのです。ところがそのもとになりまするところの、その原資になるところの財政投融資の方を削って、そうして非常に消費的な性質を帯びたところの補助金を初めとするところの歳出増を認めた。それはあなたが今言われることと議論は私は逆だと思う。これは明らかに四百三十億の修正規模のときの経過から辿ってみると明らかなんです。四百三十億のときの修正規模では投融資の百二十二億というものをほとんど削って、消費的経費、補助金というよう歳出増は、四百三十億のときの修正規模とほとんど同じ額をもってきたのが二百十五億でありますが、こういうふうに考えて来ますると、あなたが今言われたことは財政投融資の二百六十二億にゆとりを置いておいて、これを削っていったということは、明らかにこれは私は反デフレ政策方向意味するものだと思う。その点をもう一度蔵相の御意見を伺いたいと思います。
  20. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えいたします。四百三十億のときにおけるいろいろなことについては私何もここで申し上げることはありません。この歳出において八十八億が増加しておる、これについていろいろと御意見のありますことは、これは私も承知いたしております。ただ私は全体について自分の編成をした予算性格が違ったかどうかというふうな点はもう少し議論の点があるのでありまして、歳出が相当、ある程度増加をしておるということそれ自体は、それについて批判もありましょうが、それは私は本質を変える程度にはいっていない、かよう考えておるわけであります。
  21. 永井純一郎

    永井純一郎君 そこで今大蔵大臣が言われましたように、二百六十二億の投融資の方をたまりにして、これを削っていって、民間の方にしわ寄せしてつじつまを合せたという意味の答弁がありましたが、事実そうなっていると思います。そこで私はまたこの民間資金の蓄積に非常に重大な影響がくると思う。というのは折角民間の資本蓄積が順調にここ二、三年来ようやくなりかけてきた。それはなぜ順調になってきたかというと、地固め経済政策ということを打ち出して、そうしてある程度それが成功を収めてきて通貨価値が安定をようやくしようとしている、私もある程度それがわずかであるが下落していることを認めます。今日もまたそれが横ばいの状態にあることを認めます。今日は下落しないで横ばいしている、とまっている。ところがその一番大切なこの今日の段階にあって、その財政投融資の方のたまりにしておったものを民間にはみ出してしまう。そして同時に、一番問題である歳出増を、ほとんど自由党が当初持ってきた放漫政策の標本であるこの歳出増金額を、そのまま二百十五億の中で認めたということを国民が見ました場合に、明らかに今後物価の先高を見越して、私は必ず民間資本の蓄積に悪影響を及ぼすことは明らかであります。すでにその気配は心理的に非常に見え始めている。あなたは折角地固め予算ということを主張してきて、そうして今一番日本にとって大切な民間の資本の蓄積が軌道に乗ろうとしているところにもってきて、それを阻害しようとする政策を勇敢にあなたはここで取り上げたことになる。一方では財政投融資資金を民間にやればいいというが、その民間資金は今日でさえも国鉄債を十分に消化し切れない。そこにもってきて、今のような先高を見越す気配が全国民の間にひろがってきますと、決してこの蓄積というものはふえていかない。大きな矛盾が私は修正予算の中にあると思う。一体この点をあなたは見通して、どういうふうに、民間資本を蓄積することについて将来この修正予算影響を持つか、その見通しを私は伺いたい。それから私は今申し上げるような矛盾があると思うが、その点についてどう考えておられるか、この点を明らかにされたいと思います。
  22. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 今回の修正に応じました結果、民間資本の蓄積の状況に大きな悪い影響があるとは考えられません。御承知ようにすでにデフレ政策が続くこと一年半、大体世間では一般的にデフレが一年以上続くのはどうもというような意向がむしろ強いのであります。しかし私は日本のこういう政策の歴史をひもといた場合に、一年でデフレをやった場合大体失敗している。大体日本の歴史をみると、デフレ政策はやはり二年くらいは続いたところが従来の歴史においてみんな成功している。そのくらい辛抱しないといけない。今日そういう見地から、やはり私は、私の財政自体が一兆以内でしかも税金でまかなわれている。そして国庫からする散布超過は、この修正を受けたために、特に大きくは、一般に市場に大きな影響を与えるような散超にはなりません。そういうことを考えた場合に、決してこれはインフレになるというようなそういう心配は私はないのであります。その点は一つ御了承願います。  なおまた、こういう点につきまして私はやはりお願いをしておかなければならないことは、私は先ほどから全局のために、全般のために、ある不本意なところは、やはり財政当局としてもやむを得ない、全体として日本国民生活日本経済にいい結果をもたらせば、場合によってはそれに従わなければならんだろうというふうな境地に立っております。もしそうしなくて、さらにまた私どもは、御承知ように、総理がここにおられるが、少数党の内閣であります。ですからこれで、そうただ自分だけで暫定予算をまた七月も組み、さらに本予算がこれがどうなるという事態をみずから好んで招くということも、私は日本経済に対しての影響はやはり頭に入れて、それらの全体を考えて……、私はそれかといって、それが自分の、政府ほんとうの信念、あるいは基本線をくつがえす、こうなればこれは当然いかんだろうと思いますが、そういうことのない範囲において、実際執行し得る可能の線においていくということは、これは私はしろうとでありますから教えを受けなければなりませんが、政治としてやむを得ないのではないかと、こういうふうにまあ考えたわけであります。
  23. 永井純一郎

    永井純一郎君 大へん率直に今答弁をされたと思う。しかしそれは重大な内容を含んでいると思う。その一つは、デフレ政策を一年以上続けるとあまり受けないのでという意味の答弁がありました。これは私が先ほど来主張いたしまするように、明らかに、少くとも百歩譲って、反デフレ政策方向を明らかにとろうとしているのだと思うのです。あなたの気持は、また数字の方から見ると、あるいは消費的経費が非常に原案そのものにもあるし、修正案はそれに輪をかけたわけであります。それをつまり認めたということであるのか、確めたいという一点であります。  それから少数党内閣であるので、やりようがないので、とにかく予算を通すということが大局から見て必要だ。そこで私がいろいろ質問をしたように、あるいは指摘したような点で、あなたはなるほどと思われるところがあるのだと、しかしそれはやむを得ないから、とにかく予算を通すためにそういう点はのんでいくんだ。これも私は明らかに今まであなたが主張されてきた地固め予算から一歩踏み出していると思う。で、やむを得ずのむということは、自由党修正案に相当な……、一点聞きたいことは、あなたがのめないような無理な点があるということだろうと思う。そうあなたはあの修正案考えておるのか、この点二点、さらに御回答を得たいと思います。
  24. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えします。一点の、私はこの予算を通せばどういう同意でもする、そういうわけではないのでありまして、先ほどからしばしば申し上げましたように、自分の、予算の骨格といいますか、基本がこわれない範囲内であるから、これは大局的見地から同意をした、こういうことであります。  もう一つは、一年ということを私は言いましたが、これは私は若干今日みた場合に、大体一年半から二年にわたってデフレ政策というものをやった場合に、私は成功しておるように思う。一年では成功が中途半端になる、かえって成功しなかったということを意味しておるのでありまして、私はそう思うから、今度の同意が一年ということと関係があるとは、すでに私は一年半もデフレは経過をいたしている。さらに今後あの予算の執行が日本インフレ的な影響を与えるとは決して考えておりません。今日日本経済の基盤というものはまことにそういうなまやさしい状態ではないのでありまして、これは今後私の原案をもって、原案予算をもって執行する場合におきましても、よほど注意をしていかないといけないという程度の……、今日、しかしそれは仕上げだからそれもがまんをしていただかなくてはならんというふうに考えておったのでありますが、ああいう程度の緩和があったからすぐにインフレになるというのは、日本経済の実情ではないということを申し上げておきます。
  25. 永井純一郎

    永井純一郎君 私もすぐインフレが出るではないかという議論をしているのじゃない。これは一年間の予算でありますから、今の話じゃない。この三十年度の予算を中心として将来そういう傾向に、その方向に向く予算をあなたは作った、あるいはのんだのじゃないかということをただそうとしているので、そこのところを一つ勘違いしないようにしてもらいたい。要するに——時間がないようでございまするので、大蔵大臣の答弁を聞いておっても、私は実に不安定なものだと思う。で、なるほどあなたが経過についてお答えできなかったはずであります。明らかに放漫政策をとろうとした自由党修正案をかなりのみ込んでしまった。そのために一枚看板であった地固め経済予算というものは私は明らかに性格を変更している。つまり少数党内閣であるために、鳩山総理以下民主党を身売りして、あなた方は節を曲げた、その政治的責任は私は重大だと思う。そのことを私はここで指摘したい。  そこで私は総理大臣にお伺いをいたしたいのですが、締め括りとしてお伺いいたしまするが、総理は当時民主党をお作りになったときに、自由党の不平分子の人といわれた方々の一部と、改進党の人と、政治をやり取りだというふうに誤認をされているのじゃないかというような方々の集まりであるといわれた日本自由党との、この三つが野合をして民主党ができた。しかし鳩山さんはそのときに、これは野合であるから、選挙を通じて公党として踏み出したいということを言われたのです。その結果総選挙をされて、幸いに第一党に民主党がなりまして、政権を作られたと思うのです。そこで私は、そのときにかなり進歩的な政策も掲げて、自由党と民主党とは違うのだ、こんなに違うのだということを国民の前に明らかにし、いろいろなそういう意味の公約をされて民主党ができた。そうして国民鳩山内閣を作らしたことになっている。にもかかわりませず、あなたはきのうの答弁では、この予算修正が合同の一歩を進めるのに相当役立つと思うということをあなたは答えておられる。不謹慎きわまると思う。総理の言葉として、その言葉は民主党の総裁として私は許せないと思うのです。再び選挙を通ぜずして、このまま連立や合同をすることは私は許されないと思うのだが、あなたは選挙を通ぜずしてこのまま合同をして、国民にまみえることができると思っておられるのでありますか。私はここのあなたの所信を伺っておきたい、こう思うわけです。
  26. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 永井君の御質問通りに、政策が違っておっては保守勢力の結集は無意味でございます。とにかくこのたびの民自両党の予算に対しての共同の修正案ができたということは、政答が一歩近づいてきたのだというような観察ができると思う。もしもこれに国内政策、外交政策において民自両党の政策が近似してくれば、やはり保守勢力の結集によって政局の安定をさした方が、わが国のためになると考えております。政策が食い違う、一致しないで両党が野合、妥協するということは、これは罪悪だとやはり思っております。
  27. 永井純一郎

    永井純一郎君 今のお答えはあれですか、私は政策が近づいたというよりも、基本的な、特に予算を中心とする経済政策は、あなたの方が私は自由党に身売りをしたと、予算性格を変えていると思うのです。しかしその議論はもう今までしてきましたから御承知だと思うのですが、そこで私があなたに聞きたいのは、選挙を通ぜずして再びあなたは合同をされるのか、あるいは合同を、それではこの前のように一応して、合同をしてできた、何という名前の保守党ができるかしりませんが、それをしたあとで選挙をして、それをこの前のように公党として、国民の選挙の洗礼を受けて認めてもらうという形をとろうと思われるのですか、あるいはそういう選挙は全然通ぜずで、野合の形で、政策が一緒になった、近づいたということで合同をされようとされるのか、これは私はあなたの政治家としての重大な責任の問題だと思う。この点を私はお伺いしたい。
  28. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 保守勢力の結集の形式いかんにかかっておると思います。もしも自由党と民主党とが解党をして新しき党を作るというような場合においては、あなたのおっしゃる通りに、国民の意見を聞くということが正しい行き方だと思ったのです。
  29. 永井純一郎

    永井純一郎君 そうすると場合によっては選挙を……、あなたは国民に合同のことを公約しないで、このまま選挙をせずに合同をすると、保守合同をする、こういうお考えでございますか。
  30. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 保守勢力の結集をしようとただいまはしておるのでありまして、その保守勢力の結集の形式には、閣外の協力もあり、閣内の協力、すなわち連立内閣の方法もある。この閣外の協力あるいは閣内の協力、すなわち連立内閣の範囲内においての結集の形式ならば、私は選挙に問う必要はないと思っております。しかしながら新しい党をこしらえるというような場合においては国民の意思を問うということが理論的だ、民主的だと考えております。
  31. 永井純一郎

    永井純一郎君 それをおやりになるのですね、そういうふうに選挙を通じられますね、新しい党を作るときは。
  32. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) ただいまはそういうふうに考えております。
  33. 永井純一郎

    永井純一郎君 考えておられる。——時間が切れましたので私の質問をこれで終ります。
  34. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私はまず総理大臣にお伺いいたしたいのですが、総理大臣はしばしば、今度の共同修正というものは、政府予算原案の目的精神をくつがえすものではないと、従ってこれをのんだのである、こういう御説明であります。で、ここが一番私は重要な点であると思います。またこれが議論の焦点になると思うのです。果して政府原案の目的精神をこの共同修正案がくつがえしているか、くつがえしていないか、こういう点でありますが、そこでこまかいことは必要ございませんが、総理大臣は、この予算原案の目的精神というものをどういうふうにお考えになっておりますか、その大筋、基本でよろしいのでありますが、この点まずお伺いいたしたいと思います。
  35. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) ただいま黙ってすわって答弁いたしましたが、すわってよろしゅうございますか。
  36. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 けっこうです。
  37. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 許可を得まして、すわって答弁いたします。  私は大蔵大臣が先刻説明いたしました通りに、一兆円のワクは大体において堅持ができたと思います。それでインフレーションを招くというおそれはないというような点が主なるものだと思っております。すなわち、これによって地固め予算の精神というものは貫き得たというふうに思っておるのであります。
  38. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 まあそのこまかいことはとにかく、要するにこの修正案地固め予算で、いわゆる健全財政の基本はくずれてない。これによってインフレは起らない、こういう御説明でございますね。  それはまあ一応伺いましたが、そこでこの前六月暫定予算のときに、この修正の問題について総理に伺ったときに、総理大臣は、この修正を認めるかもしれない、ただしその場合には補正予算というもの、補正予算には応じない、それから公債発行はしない、それから第三に、政府の基本方針、今のお話しの、これはインフレを起さない、すなわち健全財政、これはまあくずさない、こういうことが条件である、こういうふうにお答えになったと思うんですが、そこで補正予算は、これはお組みにならないのですか。
  39. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 補正予算を組まないか……。
  40. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうなんです。お組みにならないかどうか。
  41. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) これからですか。
  42. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これからです。
  43. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 組むことは考えておりません。補正予算を組むということは考えておりません。
  44. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この共同修正案が国会を通りましたときに、新聞によりますと、自由党の石井幹事長の談として出ておる——新聞ですから、正確かどうかわかりませんが、こういうふうに言われておるんです。今後法案の進行状況に関連し、将来補正を組むかもわからない、こういうふうに言われておるんです、石井幹事長は。そこでこれも新聞によったのでありますから、正確かどうかわかりませんが、一時修正案の折衝の過程において補正の問題が起ったんです。それでこの際大幅に予算を変えることはいかがかと思うので、一応この程度で、二百十五億ぐらいでここはしのいでおいて、そこであといろいろ問題になりました四百三十億円、自由党要求したとか、いろいろ言われておりますが、そういう点についてはまだ補正のときに考える、こういうことが折衝の過程において出てきておったと思うんです。そこで一応二百十五億で修正になりましたが、この補正というものは含みになっているんではないか。少くとも石井自由党の幹事長の談話では、今後法案の進行状況に関連し、将来補正を組むかもわからない。従って補正のことですから、今後のことでありまするから、ここで一応答弁としては組む意思はないと言っても、またあとになって、そのときの状況の変化でまた補正を組むかもしれない、こういうことになると、また二百十五億の修正を前提として、ここで今この予算性格をわれわれは検討して審議しておるのでありますけれども、補正というものが含みになっておりますと、またこれは重大な問題なわけです。そこでその点を特に総理大臣に、ほんとうに補正を組まないのか、もし補正の問題が出てきたときには、約束に反するから、あるいは内閣をやめるなり、あるいは解散をするなり、とにかくはっきりした政治的責任をそこでとって善処すると、こういうお気持でおられるのかどうか、そういう意味で補正の問題を伺っておるわけです。
  45. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 補正については全然考えておりません。もしそういうような場合が出てきましたときには、木村君のお考え通りに善処したいと思います。
  46. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 非常にはっきりした御答弁でございました。私の質問通りに善処されるということでございますね。それは速記に残っておりますから、あるいはやめる、解散すると、私はこう解釈しております。(「その通り」の呼ぶ者あり)  次にもう一つ公債の問題です。これは総理大臣修正に関連して公債は発行しないのだと、この前はっきりお答えになりました。従ってこの公債の問題についても、もちろん補正はお認めにならないのですからこれもお考えがないと思うのですが、ついでに三十一年度、来年度の予算については、公債の問題については総理大臣はどうお考えになっていますか。これは大蔵大臣には前に伺ったことがあるのです。総理大臣は公債の問題、前に発行しないとおっしゃいましたから、この点もこの予算原案の目的、精神をくつがえさないと、こういう意味で公債は発行しないと言われたのでございますか。この公債の問題についても、これはこまかいことでなくてよろしいです。大局的な御答弁でけっこうなんですが、公債の問題について伺います。
  47. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私が答弁するよりその点については大蔵大臣の方がいいでしょう。
  48. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それではあとでまたこまかく大蔵大臣にお伺いします。  それから第三に、健全財政性格をくつがえしたものではないと言うのですが、その意味は、総理大臣のさっきの御答弁では、これはインフレ的なことにならないのだ、この修正をやってもですね。そういうふうに解釈しておられると思います。そこで私今度大蔵大臣にお伺いしたいのです。  この大蔵大臣の三十年度予算原案の編成の基本方針、その基本方針はどこに重点を置かれたか、まず一応これは財政演説にもありますけれども、念のためにもう一度お伺いしておきたいのです。
  49. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 私が三十年度予算編成の場合に、基本に置いた第一点は、通俗の言葉で言えばいわゆる地固めと言う予算、それを具体的に形の上で現わしたのが一兆円ということです。それからそういう地固めをしつつ将来の経済の拡大の基盤を作って行かなくてはならぬという意味におきまして、これが具体的には投融資、これを重点的に配分して行く、そして全体の資金量は昨年度に比べて約四百二十億ぐらいと思いますがふやして行く、こういうふうに現わしていく。同時にこういうふうなことをすでに二年にわたってやる結果、いろいろと摩擦面が起ってくる、先ほど言いました地ならしによって。この摩擦面を、インフレによい効果、いわゆる余力というものが相当出てきまして、その余力をもってこの摩擦面を是正して行く。これがいわゆる民生安定のために、たとえば減税を一番先に、さらに住宅というものも取り上げて行く。それから社会保障についても乏しくはあるが、私はこの精神は表わしておるつもりでおります。そういうのが私の今度の財政方針の基本であったわけであります。
  50. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 もう少し具体的に伺いたいのですが、たとえば三十年度予算の中で、防衛費は千三百二十七億よりふやさない。それから補助金は整理して、そして限られた財源を重点的施策に使う、そして経費の節約、効率化をはかる、こういうことが具体的には基本方針であったと思うのですが、そう思いませんか。
  51. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 部分々々的にとって見れば、防衛関係の費用については、私は前年度以上にはふやし得ないというのが私の構想であったわけであります。それからできるだけ、できるだけといっても、この補助金については、これはいろいろの見方もあるようです。私自身は、まあ補助金について相当これを節約をいたしたいという考え方があったのでありますが、しかしこういうものについてはいろいろ見方がありまして、国会の中におきましても、そういうものは、はなはだもってという御意向もあるようです。がしかし、その点については、私の考えが十分今回の予算に……補助金の点について私の考えが十分実現できなかったことだけは私は率直に認める。しかしそうであるからといって、これが私の予算の全貌あるいは骨格を変えるだけの影響があるとは考えておりません。
  52. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ただいま大蔵大臣は、部分々々と言われましたが、予算は総合的なものであって、その中の各費目のバランス、均衡というものが、やはり予算性格一つ形作るものであると思います。これは大蔵大臣そう思いませんですか。
  53. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) むろんそうでございます。ただしかし、平均をしているという意味では私はむろん重点的ないわゆる濃淡はあっていいと思います。
  54. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その濃淡そのものが予算性格であります。予算性格、骨格、これは防衛費にどの程度のウエートを置くか、社会保障費にどの程度の重点を置くか、そういう補助金にどのくらいのウエートを置くか、この予算のバランスですね、こういうものは予算性格である。その意味においては、この予算はそういう性格をくずした、くずしているんです。予算がふえたとか減ったとか、あるいはインフレになるとかならぬとかいう前に。それは問題でありますが、それ以前に一つ予算性格として重要なものはバランスです。そこで、実際には防衛費はふえているではありませんか。防衛費はふえ、最初の原案よりも防衛費はふえ、それから補助金もふえている。バランスがここでくずれています。従ってこのバランスがくずれていて、そうして政府のこの予算原案の目的、精神というものがくつがえされていないというのはどういうわけですか。その点をだれにでもわかるよう一つ説明願いたいのです。
  55. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 今度の修正におきまして、防衛費がふえているということは私はないと思います。それからむろんこの補助費については、私は先ほどから率直に申し上げるように、私の思うように行かなかったことは私は認めます。がしかし、予算の中に占め得る補助費の比重というものは、これは私はむろん財政当局といたしまして、こういうものは削減をすべしというものは、それがたとえ一銭だろうが一円だろうが、別にそれについて軽重をつけるものではありません。そういうものはやはりおろそかにしてはならぬと思いまするが、しかしやはり量的なものの全予算に対する比重というものはあるのでありまして、私はあれほど声を大きくしまして、この補助費等についてなるべく節約をしたいと思っておりましたが、しかしあの原予算におきましても補助費に手がかかったのは、もうこれはごく些少のものであったのであります。
  56. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大蔵大臣、さっき予算性格としては、一つ予算のバランスというものは、一つ性格であることはお認めになりながら、理解しておりません。その点は防衛費がふえていないのだということを……。バランスという点から言えば防衛費はふえておるのではありませんか。千三百二十七億という防衛費は、予算の総額が九千九百九十六億のときに、一千三百二十七億という防衛費であったわけです。この比率は一三・二七%なんです、バランスから言えば……。それが今度九千九百十四億になり、そこでやはり依然として防衛費は千三百二十七億で一三・三八%にふえておる。そんなわずかだからこれは大したことはないじゃないかと言いますが、さらに旧軍人恩給を準再軍備費と見ますれば、質的な再軍備鼓吹費、再軍備宣伝費と見ますれば、原案では一千九百八十一億で、そうしてその中に占める千三百二十七億の比率は一九%ですが、今度の修正によれば、旧軍人恩給費がふえました。そこで旧軍人恩給費と防衛費を入れますと、ふえた分を会計いたしますと二千六億になる。それで千三百二十七億は二〇%になるのですよ。この比率はここで変ってくるのです。総体的にふえるのです。そういう意味で私は防衛費はふえる、そのバランスから私は言っておるのです。単に金額の多い、少い、これも重要でありますが、しかし予算一つ性格としてバランスというものは重要で、今国民で困っておる人はどれほどおりますか。生活要保護者が千二百万人いる、すぐに入院しなければならない結核患者が百九十二万人もいる、ベッドがなくて弱っている。それで失業者は最近またふえておりまして、八十何万と言われております。不完全潜在失業者も合せますれば大へんなものです。国民の今の生活実態は惨たんたるものなんですよ、実際の実態に入って見ますれば……。従ってバランスというものは大切なことであって、少しでもこういう防衛費の比重をふやすならば、どうしてバランスをとるためにそういう方面に向けないのですか。また補助費をふやす、補助金をふやす、この非生産的補助金をそんな方面にふやすなら、そのバランスとして今重点的な施策と言いましたが、鳩山内閣社会保障に重点を置くと言っておるのですから、なぜそちらのほうに廻さないか、もう各省大臣ともこの予算には不満なようです。建設大臣も、労働大臣も、通産大臣もおられますが、十分に予算がとれなかったというのです、一兆円予算で。従ってこういう補助金をふやす、またバランスから言ったら、防衛費は減らしていいのです、同じバランスにするならば、それをどうしてそういう重点的施策、今困っている方面にそれを廻して、政府原案通り予算のバランスにしなかったのですが。従ってバランスがこわれているということは、性格が変ってきておるのです。非生産的な方面に変る、しかも非社会的な方面に予算性格が変ってくずれてきておる。そういう意味でこの予算原案の目的及び精神がくつがえされておるのです。そういうふうに私は解釈しなければいけないのだ、今の日本経済状態の実態から見て。大蔵大臣は今の日本の実態から見て、さっき申しましたようミルク論ではありませんが、摩擦が出てきておる。その摩擦を緩和する、そういうことも一つ地固めの際における一つ政策の重点になっておるわけです。ところが摩擦をもっと大きくする、そういう性格を持っておるのです、この修正は。そういう点でこれは私は性格がやはりそこで変ってきておる、と、こう思うのですが、大蔵大臣はいかがですか。
  57. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 私ちょっと感違いをいたしまして大へん済みませんでした。そういうよう予算総額が小さくなった意味においては、防衛庁費に変更がなくても、比率において大きくなったことはその通りであります。木村さんの御意見は私非常に傾聴いたしております。いたしておりますが、ただしかし、それだからといって、私はこの程度のことで全体の予算性格が変更された、かよう考えていない。しかしお考えのあり方の筋としては私十分傾聴いたしております。
  58. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 まだ大蔵大臣はこの程度ならば性格が変らぬと言いますから、もう一つ、この性格を変えている重要な点としまして金融債の問題についてお伺いしたいのです。前に自由党石原君が補正予算質問をしたときに、この予算性格について石原君は、政府原案は超デフレ的な予算である、こういう意見に対して大蔵大臣はそうじゃないのだ、七百億も散布超過があるという予算は、これはもう決して健全ないわゆるデフレ予算ではないのであります。これはむしろインフレ予算である、こういうよう大蔵大臣は答弁されておるのです。あのときに自由党から超デフレと言われたものですから、いやむしろそうじゃない、インフレ予算である——これは速記録でありますから——そういうふうにはっきり出ております。  なるほど私は確かに大蔵大臣の言われるように、日本にはインフレ要因は、基本的には潜在的にインフレ要因というものは非常に強くあると思う。防衛費の非生産支出、あるいは今後の賠償費、あるいはアメリカに対する債務の返還等々、そういう非生産支出は今後出てきますし、基本に対してはやはりインフレの線が流れておると思うのですよ。そういうところへ今度の修正によって私はインフレ要因を加えたと思うのです。すでにもう大蔵大臣インフレ的であると……。そこで伺いたいのは、大蔵大臣は金融債、今度百四十二億ですか、あるいは国鉄公債四十五億、約百九十億ぐらい発行しますが、これは順調に消化されると思うかどうか。
  59. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えします。これは私順調に消化できると思います。ただそう言っても、いかにも何だか独断的な、できるとか言うのははなはだ相済まぬので、少し数字的なことを付け加えます。私の考えではこの三十年度における預貯金の増加は、これは今の目標は八千億になっております、これはしかし木村さんは専門家で、よく事情も知っているから、これはやはりよほど骨が折れるということだけは認めなくちゃならぬが、しかし一応実際やる人が八千億を目標にしてやろう、大体従来目標を達している経過から見て、それに近いものは少くとも出るだろう、今後の経済の推移にもよりますが、そうしてこれに対して資金の需要なんですが、これはデフレが一年半ばかり経過した結果、日本経済の基盤が、先ほどいろいろな方から、永井さんからもお話があったように、よほど正常化に向ってきております。昨年二十九年度におきましては日本経済が例のインフレ的なところから急激な一兆円予算、同時に金融の引締め、こういうふうな形から非常に変化を生じてきた。そこで非常に無用な資金の需要もあったのでありますが、そういうようなのがぐっと片づいてきて、今日本経済はよほど地固めができて、正常化している。従いまして二十九年度のたとえば銀行に対する資金の需給関係も、四千億の預金増加に対して貸出しの増加は二千億であります。約半分、そのくらいのゆとりがある。そのゆとりが大体において日本銀行の千九百億ばかりの返金に当っておる。その千九百億がちょうど二十九年度の財政の散超に払う超過がそれにまだ該当しているということで、ずっとバランスがとれてきたわけであるのであります。従いまして今回はもう預金はとにかくふえるが、貸し出しはそれほど私は増加はしない。そこへ持ってきて今度は返金に充てるべき日本銀行からする借り入れはどうかといえば、従来から問題になっておりまする二次高率という禁止的の金利のかかっておるこの貸し出しは、私は正確な数字は思い出しませんが、おそらく今五、六百億しかございません。大体日本銀行には五百億程度返せば、あるいは六百億程度返せば、あとはむしろ集まった資金に対してどこに貸すかというふうな形の徴候が現われてくる。言いかえれば、私はやはり三十年度の下期にかけて、どちらかというと金融市場というものは借り手のマーケット、いわゆる今までは金を貸せ、金を貸せというマーケットから、徐々ではあるが、そういうふうなマーケットに変更して行くだろう。そういうふうに考えて、十分二百億程度の金融債の消化ができないということはありません。いわんや今回資金委員会というものもできました。これはまあ大蔵大臣の諮問機関でありますから、これに関連する法律によりまして必要があれば、これはまあ伝家の宝刀でもいいと思いますが、私はそういうものを出さんでも、確実に消化すると思いますが、万一それが何かの理由で、資金はあるが、どうもそういうものがうまく消化できぬというような事態においては、そういう法制的な措置も準備さしておるのでありまするから、これは私は消化は確信を持ってやれると考えております。
  60. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大蔵大臣のただいまのようなお話は、この本予算の予備審査のときに、銀行局長から日本の金融情勢について伺って、すでに原案の予備審査のときに伺っておったのです。原案のときにそういう前提、今お話しになったような前提条件で、なおかつ大蔵大臣は六月暫定補正予算のときに私が質問したときに、少くともこの会計年産あたりではとうてい国債を消化することは困難である、こう言っておられたのです。そこで国債を消化することが困難であるのに、どうして金融債を消化することができるのですか。この点伺いたいのです。
  61. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えします。これは少し私木村さんにこういうことを言うのは大へん失礼でありますが、金融上のやはり技術に属するもので、金融市場といたしましては、まず第一に日本銀行に対する借入金をやる。その次にまず一般金融債というものを市場に消化さして行く。その次に、こういうことはやる、やらぬは別ですが、やるとすれば政府機関の銀行債が市場で消化され、さらにそののちに初めて——私は公債を発行する可否は別として——公債を発行するとすれば、その次の段階になる。そういう資金等があって初めて公債というものは発行さるべきだ、こういうふうに考えております。
  62. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私はそういうことを言っているのじゃない。それは利廻り、採算から行けばそうなるのは当りまえです。そうじゃなくて、一定資金量の需給関係のもとで擬制資本をここで作るわけです。公債も擬制資本ですし、金融債も擬制資本です。そういうものを新たに投入するときに、それがある一定の資金需給関係のもとで、ある擬制資本は消化困難で、あるものは消化可能である、そういうことは私は言えないと思う。そこで今大蔵大臣が言われたように、もしできないときにはということが前提になっているのです。そのときにはやはり資金委員会というものを作る。そこでこれは強制的に銀行に割り当てる。こういうことが裏にあるわけです。そういうものがあるから、これは銀行はやはりどうせ強制的にやられるのじゃないかと思って引き受ける。そこに強権力を背後に伝家の宝刀として隠して、おどかしておいて、そうして消化させるということになる。そこでこれまで財政資金でまかなったものを、なぜ民間資金でまかなうようにするかということ、この原則の変更です。これはさっき永井氏の御質問に対して大蔵大臣は、この点は予算編成の基本に触れる重要な問題である、いわゆる資本の蓄積の仕方、税によって強制的に蓄積するか、あるいは民間で任意に蓄積させるか。これは財政金融政策のやはり基本的な性格に関するものです。で、これを変えたということは重要な点でありまして、これは民主党と自由党の協定項目の中で、原則として財政投融資資金は租税で負担しない、こういう原則を協定でし合っておるわけです。さっきの大蔵大臣のお考えも、将来はそうしたいと言っていますけれども、これは重大な政策の変更です。この修正資金金額、量から見ましても、二百六十二億のうち百五十五億、これを削っちゃって、特に住宅金融を除けば百五十五億全額削っておるのです。そうしてこれを民間資金に振りかえちゃって、この結果どういうことが起りますか。今までと非常に違ったことが起るのは、資金が不安定になる。前に減税国債を三百億発行しようとして、消化できないでこれも二百億に減らしました。その減税国債も消化できませんでした。また国鉄の公債も、昨年ですか、発行しましたが、未消化に終ったために、国鉄の建設計画がこれは変更が来たされた。このよう資金が不安定になれば、計画自体は非常に不安定になる。それから資金コストが高くなります。前の、もう時間がございませんから、簡単に申し上げますが、緑風会の豊田氏が質問されたときに、なるべく中小金融に対しては低金利政策をとりたいということを大蔵大臣はあれほど言われた。ところが、この基本的な方針、今後財政投融資は租税によってまかなわない、市中金融によってまかなうというのは、金融債によるとコストは高くなります。二銭何厘になりますか、高くなる。そうしたら、中小金融に対して安くこれは金融をやれないんです。大蔵大臣は中小金融についても低金利政策考えておられたのです。はっきりと豊田氏に答弁なさった。それができなくなった。あるいは国民金融公庫でも金利を下げることができなくなった。中小金庫でも下げることができなくなってきた。資金コストが高くなって、それで資金の確保が不安定になる。そうした中小金融というものが非常に不安定になり、しかも金利は下げられない、こういうことになる。さらにまたこういう道を開けば、これは結局公債への道であって、今後防衛費がふえてくるので、一般会計の方のふところをあけておかなければならないので、財政投融資を金融の方へ回しちゃって、そうして来年度防衛費一般会計で負担するものをそこで負担する。そういう道をあけるためにこういう措置考える。前のドッジさんのやったときのインベントリー・ファイナンス、ああいうときとこれと違います。ドッジさんは財政と金融を分離をしなければならぬと言いましたが、あれは短期の金融であり、あれは現物があってインベントリー・ファイナンスであったのです。こういう長期の金融について、どうしてもこれは特は農林漁業、中小企業、担保力が小い、資本蓄積が困難なところは、国の財政資金を確保して低利に供給しなければならない。それを変えたことは、根本的に財政金融政策を変更したことになる。この点はやはりこの予算性格を私は変えておると思う。これは重大な、特に重大なこれは変更と思います。これでも変えてないとおっしゃいますか。
  63. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えします。非常に傾聴いたします。いたしますが、この財政投融資と金融の問題につきまして、税金から投融資をするという形は、これはまあイデオロギーの立場の違いでは、いろいろとこれはまた違いますが、私ども考えといたしましては、これはインフレようなときに資本の蓄積がどうしてもできない、これは物価が騰貴するから……。これはやむを得ず税金に行く以外に手はない。まあ税金でとっても歳出でまかなうのがやっとかも知れませんが、とにかく税金でもって産業をある程度まかなう、いわゆる強制貯蓄の形がここに出る、これはインフレ時代には私はやむを得ない、そういうことが一つの大きな政策であってよろしい。しかし、であるからといって、この政策は永久というのも言い過ぎですが、常にこれはそういうふうな方策をとらなければならぬということになると、これは私経済等の基本に触れるイデオロギー的なディスカッションの問題になってくると思う、そこのところは私はあまり同調しないのです。私としてはこれが漸次経済の正常化になって行くことを希望するのでありまして、産業活動に対して、民間資本の蓄積があれば、蓄積にまって私はやって行く、従来私がこの予算原案において、財政投融資について一般会計から入れておった点は、私はこの点についてもうしばらく辛棒する方がよかろうという考え方のあったことは事実で、それは私卒直に認めるのでありますが、これはしかし、いわゆる時期に関する問題でありまして、それが絶対にそんなら一般会計から入れなくてはならぬという規制力は私は持っていないと考える。まあこの辺ではいわゆる大事業であるというふうに考える、従いまして、そういう意味から、これが一般金融市場におけるいわゆる金融債の形に、一般の市中の方から調達するということに回したことによって性格は変ると思います。ただ問題は、私があくまで責任を負わなくてはならぬと考えていることは、それならお前は市中金融に、市中金融と言いますか、金融債を公募の形に回して消化するか、しないかという点にあると私は思いますが、消化しなければ私は責任をとらなければならぬ、これはとります。私は明確にとります、これは私の見通しの失敗ですから……。しかし私はこれは必ず消化するという確信のもとにやっております。それは先ほど答弁した通りであります。
  64. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 最後に……、これで私は質問を終ります。大蔵大臣の今の御答弁に対しては、また他の機会に質問する時間がございますから、そのときに十分お伺いしたい。ただ一つ最後に、大蔵大臣資本蓄積資本蓄積ということを非常に言われますが、一体何を蓄積されるのですか、その点がどうしてもわからない。それから消化できなかったら大変だと言いますけれども、これはこの金融債は日銀で担保にとるのでありましょう、ですから、困れば日銀でどうしても引き受けることになれば、これは当然消化されるのが当りまえですよ。そこにインフレへの道を開くということと疑制資本を新たに作るのですから……。もう一つ資本蓄積といって……、これはあと他の機会に……。石橋通産大臣に伺いたいのですが、今過剰生産、そうして、ことに私きのう聞いてびっくりしたのですが、これは大同鋼板という所でストリップ・ミルを三十億で作ろうとしている、富士、八幡、日本製鋼、淀川、日亜製鋼、みんなストリップ・ミルを作っている、これが六割ぐらいしか操業していないのです。合理化施設をうんとふやして、それがみんな生産しないで操業を短縮している、これでは過剰蓄積ですよ、今、佐多さん言われた通りに……。一体何を蓄積するんですか。従って私はどうしてもこれをほうっておいては非常な過剰蓄積、二重投資、そういうものが非常に無駄に行われる。従ってこの点についてはただ言葉で蓄積というだけでなく何か……、大蔵大臣はよく御存じなんですから……、こんな無駄な資本の使い方をしておるのはありません。鉄鋼だけじゃありません、砂糖だってそうです、肥料だって紡績だってみんなそうです。貧乏な日本が非常な過剰な投資、二重投資をやっている。こんな不経済なことをして、さらに資本蓄積資本蓄積といって一体何を蓄積するんですか、この点最後に御答弁願いまして私の質問を終ります。
  65. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) この資本蓄積の基本が今後起る経済活動にあることはむろんであります。むろんでありますが、私どもの、これは経審長官から出ておる六カ年計画にも出ておりますが、これによりましても、防衛関係を見ても、むろん三十年度をオーバーすることになる、国民所得もふえるという状況にあるのでありますから、これは資本蓄積に回らないということは私はごうもないと思う。今御指摘のように投資等において二重的なところもある、これも私率直に認めます。これは今後私はやはり押し進めて行けない合理化の大きな点じゃないかと思います。そういう基本的なことについては政府としては十分手を打って行く考えをいたしておるわけでございます。
  66. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) お話のストリップ・ミルのことはよく存じませんが、これはいわば実体資本と申しますか、実質資本の蓄積が相当日本にあるということは事実であります。まあ大蔵大臣の言われるのは、貨幣側の問題を先ほどから申されておると思います。つまりそれと実体資本と申しますか、それの蓄積がバランスしていないんですから、日本経済はそれをどうバランスさせるかということに問題がある。そこで今度の資金委員会というような点は、今度の修正で何か法律になるようですが、初めからわれわれ考えておったんです。金融業者の間でよく話し合って懇談会みたいなものを作って、それで今の貨幣の方とそれから実体資本とのバランスを十分調和するような話し合いの会を作ろうということはかねがね経審とも話しておったんです。それが今度一歩進みまして、これは立法的にできるかと思います。そういう処置で私もこれからやって行きたいと思っております。
  67. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 昭和三十年度一般会計予算の衆議院修正に関連しましてお伺いしたいと思います。  最初に、大蔵大臣にお伺いをいたしたいと思うのでありますが、今回の修正案では、旧軍人恩給費が十八億八千万円増加いたしております。そこでこれを平年度に直しますと、どれくらいの金額増加になるか、これが第一に伺いたい点であります。それから増加後の軍人恩給費の総額がどれくらいになるか、これが第二点であります。
  68. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えいたします。今度の修正で、今お話のように十八億何がしの増加になっておりますが、平年度についてはどういうふうにこれを今後持って行くか、なるべくできれば急激な増加にならないように、いろいろと徐々に平年度化して行くというようなこと等について、今検討しておるんでありますが、数字のことでありますから、政府委員から申し上げたいと思います。
  69. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 今回の修正の基本になりました金額は、恩給のベースを文官などは一万二千円に改訂いたしまして、同時に四号俸調整を是正いたす、さような観点で出て参ります金額の五割を本年度の改訂額ということにいたしておるわけでございます。その金額の所要額が二十四億一千万円でございますが、政府原案におきまして若干改善措置が見込んでございますので、それを引きました残りの増加額十八億一千万円ということでございまして、これに事務費の増加を見積りまして十八億八千万円の増加ということに相なっております。五割を本年度から実施するわけでございますが、一万二千円ベースに直して、四号俸調整を是正いたしました場合の所要額が平年度といたしまして百七十一億ということでございます。これをいつまでにフル・ベースに達せしむるか、その点につきましては、ただいま大蔵大臣からお答えがございましたように、できるだけ急激なる財政負担の場加を来たさないように段階的に参りたい、さよう考え方を持っておられるようでありまして、目下その点につきましては検討中ということに相なっております。この増加によりまして本年度のいわゆる恩給費は、修正後におきまして文官恩給が百六十三億、旧軍人遺族恩給費が六百六十九億、文官等恩給支給事務費が一億六千万、旧軍人遺族恩給支給事務費が十億、引揚者等の援護費、その他関連しておる経費全部合せまして大体八百九十三億くらいが恩給及び援護費関係予算、こういうことに相なります。
  70. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 軍人恩給増加額の平年度が百七十一億と今仰せられたようでありますが、来年度は大体幾らくらいになる御予定でありますか。
  71. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 五割のベースを本年度実施いたしますのでございますが、来年度以降いかなる段階でフル・ベースに達せしめるか、その点につきましては目下検討中でございまして、できるだけ急激な財政負担の増加を及ぼさないようにということにつきましては意見の一致を見ておりますが、それをいかに刻むかという点につきましてはまだ結論が出ていないわけでございます。とりあえず本年度はフル・ベースの五割で、しかも実施を十月から、そうしますと、支給額は四分の一ということで、先ほどから申し上げておる金額になります。来年度の金額恩給法の実体がきまって参りませんと、まだここで申し上げる段階でないことを御了承いただきたいと思います。
  72. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 この増加額を全部、今仰せになりました百七十一億までふやして文官恩給等全部入れた額が八百九十三億、こうなるわけでございますか。
  73. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 八百九十三億というのは、今回の修正によりまして増加いたしました額、これも旧軍人恩給だけでなくて、それに関連のある遺族等の援護費、それらも含めました本年度の数字でございます。三十年度の予算修正後の数字ということでございます。
  74. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 百七十一億全部増加を支給した場合の文官、軍人ひっくるめての総恩給金額は幾らになりますか。
  75. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 百七十一億の平年度の所要額ということになりますと、本年度はそのうち二十四億見ておるわけでございますから、百五十億近くのものが増加するというふうにお考えいただいたらよろしいかと存じます。その場合、遺族援護等につきましても若干の経費増加がございますが、それより若干増加するかと思いますが、大体百五十億見当、また文官恩給費につきましても自然増が毎年あるわけでございますが、そういったものを全然考慮に入れておりませんし、また軍人恩給につきましても年金支給額が年々若干ずつ減っていくという自然減の要素も別にございますので、そういう点の要素は一応捨象して申し上げたのであります。
  76. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 観点をかえまして、今の百七十一億の増加恩給を認めた場合に文官との均衡はとれておるかどうか、大蔵大臣承知であれば承わりたいし、御承知でなければどなたか詳しい方からお答え願いたい。
  77. 川崎秀二

    国務大臣(川崎秀二君) 今、私参ったばかりでありますが、軍人恩給と文官恩給均衡は遺族からも非常に要望されておるところでありまして、政府原案では十分なところまでいっておりませんで、今回の修正案によりまして一万円から一万二千円に軍人恩給のベース・アップがされます。これによりましてもなお均衡にはならないのであります。しかしながらこの案は昭和三十一年の七月一日から財源関係で行うことといたしまして、それまでは既定恩給額の五割を引き上げて行うということになりまして、漸次文官恩給との不均衡を是正して参りたい、これが政府方針であります。
  78. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 厚生大臣にもう一点伺いたいのですが、今伺いますと、百七十一億全部の増加を認めてもなお文官と軍人との恩給には均衡を得ないところがあるというお話でありますが、全然これを同等にすればあと幾らの金が要るか、計算ができておればお示しを願いたい。
  79. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 文官の恩給でございますが、今までに裁定を受けまして、恩給を受給せられておる方のベースは一万二千円であることは御存じの通りであります。今回の軍人恩給はその一万二千円ベースにさや寄せをいたしまして、四号俸調整をこの際是正いたしますから、ベースといたしましては文官の恩給受給者並み。ただ財政負担への影響考えまして、本年度はその五割、そのフル・ベースに達せしめるのには今後もできるだけなだらかになるよう考えていきたい、しかしともかく何年か後の平年度ベースになると百七十一億要るかわりに文官とは均衡がとれる。おっしゃる通り今やめて恩給をもらう人、これは一万二千円ベースよりもう少し高いベースということになっておりますが、その点をもしおっしゃっておられるならば、これは相当財源が要るわけでございまして、現に文官につきましてもそこまでは支給いたしていないわけでございます。現在の文官の恩給受給権者との間には百七十一億出してバランスがとれる、さように御了承願いたいと思います。
  80. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 大体今の大蔵政府委員の御答弁と厚生大臣の御答弁は多少食い違いがあるように思います。厚生大臣お答えでは百七十数億をふやしてもなおかつ均衡がとれていない、大蔵政府委員ではとれている、その点を一つはっきりしていただきたい、こう思います。厚生大臣に願います。
  81. 川崎秀二

    国務大臣(川崎秀二君) ただいま大蔵省の政府委員が申しましたのが正しいのでありまして、私が申しておりますのは、今やめる人のベースの関係を申し上げましたので、そこまで引き上げろという議論も遺族会等にございますけれども、それでは文官全般との均衡からいたしまして妥当でないというので、今度の改正は一万二千円ベースでありますから、そこまでいきますれば大体均衡はとれるということに相なります。
  82. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 そういたしますと、文官、軍人恩給均衡は、この改正が行われれば完全にとれる、こう了解してよろしゅうございますか、念のためもう一ぺんお伺いいたします。
  83. 川崎秀二

    国務大臣(川崎秀二君) そう御了解願ってよろしゅうございます。
  84. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 そこで、今の恩給、文官、軍人を通じて約一千四十億円になるわけでありますが、この一千四十億弱の恩給費というものは、今の国民所得なり、あるいは財政規模に対しまして適当な金額であるとお思いになるか、あるいは多過ぎるとお考えになるか、まだもっとふやしてもいいとお考えになるか、この点に対する総理の御意見を伺いたいと思います。
  85. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) その点については大蔵大臣から答弁をしてもらいます。
  86. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) これは今後の財政規模にもよることでありますが、決してこれは日本財政における負担として小さいものではないということだけは申し上げられると思います。
  87. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 それでは過去の例にさかのぼりまして伺いますが、戦争の前に恩給亡国ということが叫ばれておりました、その当時の一番恩給額が多かった時分の財政、あるいは国民所得に対する割合はどれくらいになっておるか、どなたか御記憶の方があれば一つ承わっておきたいと思います。
  88. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 昭和九年、十年ごろあたりの比率が一番多かったのでございますが、昭和九年におきましては、恩給額の総予算に対する割合が七・六%、十年が七・七%、その後軍事費の増大によりまして比率は漸次低下して参りまして、十五年あたりは四・八%くらいになっております。九年、十年あたりが一番率が多かったと思います。本年度のこの修正後の予算、フル・ベースに達するものの計算はいたしておりません。本年度修正増額いたしました金額だけで計算いたしますと、予算総額に対しまして大体八%であります。
  89. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 国民所得に対する割合を、そこに何か資料をお持ちになれば承わっておきます。
  90. 森永貞一郎

    政府委員森永貞一郎君) 本年度の恩給費でありますが、国民所得に対しまして、大体一・三%。戦前の比率はちょっと今資料を持ち合せておりません。
  91. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 そこで、今、戦前の恩給財政規模に対する割合を七%と伺ったわけでありますが、現在は一割になっております。もうすでに限界に達しておると思うのでありますが、文官より軍人が低いということは私はこれは納得ができませんので、どこまでも、むしろ軍人の方が高くていいんじゃないか、こう私は思っております。そこで、いろいろ公務員のべース・アップに準じまして恩給も上げるというのが今までのしきたりでありますが、今後もやはり同じようなことをおやりになるのか、この辺でとめておくべきであるとお考えになるのか、今の、戦前の七%、現在の一〇%という数字をお聞きになりまして、常識的にどのようにお考えになるか、総理に伺ってみたいと思います。
  92. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 財政のことですから大蔵大臣から……。
  93. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 これは、財政と言ってもこまかい計数の問題じゃなくて、戦前恩給亡国が叫ばれておったときに、財政規模の七%を恩給に使っておる、現在では、日本財政は御承知通り非常に苦しくなっておるが、一割にすでに達しておる。そこでなおべース・アップに従って文官恩給もどんどんお上げになるお気持であるか、この辺でとめておく気持であるか。これはもう常識の話でありまして、総理の今のお考えを率直に私は承わってみたい、かよう考えるのであります。
  94. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私はそういう点について非常に常識がないのでありますから、他の大臣に答弁していただきたいと思います。
  95. 川崎秀二

    国務大臣(川崎秀二君) 八木さんにお断り申し上げておきます。私、先ほど来たばかりでありまして、非常に失礼いたしておりましたが、戦前で一番高かったときの比率は昭和六年で、一〇%四というのがありますから、大蔵政府委員の先ほどの発言をさらに付加いたしまして訂正をいたしておきます。  この恩給の問題は、主として主管大臣は今日大久保大臣になっておりますけれども、私も、遺族年金等におきまして重要な関連がありますので、しばしば答弁を申し上げておるのでございます。軍人恩給が今日のよう数字を示して参りまして、ことに今度の改正によりまして、来年度あたりは相当大幅な負担を国家に与えるということになりますれば、もとより遺族の方々の御心情に対しましてはわれわれとしてもなるべく厚くいたしたいという考え方の原則には相違はございませんけれども、旧軍人で相当高額なる所得を他に持っておられる方もあって、これらにつきましては、相当世上におきまして減額措置を行うべきものだという議論もありますし、徹底せる意見を吐く人の中には、この際並行的にそういうものを支給すべきでないという議論をする人も学者の中にはあるのであります。私は、これらの点を勘案いたしまして、将来恩給制度というものに対して一大改革を行わなければならぬのではないかという考え方を持っておりまして、民主党の方でも、相当大がかりな恩給制度改革の委員会というものを党内に起しまして、将来はやはり総合年金制度と関連をして検討すべきではないか、日本の将来の年金制度の問題はぜひとも取り上げなければならぬ問題であり、このよう国民各層の間に非常なバランスを失しておる——無醵出制度の恩給もあれば、一方において医療保険等にも加入しておらぬ、老齢年金の恩恵にも浴さない大衆が一千万、二千万おるということは、日本の国家にとって非常に重大な問題ではなかろうかと思いますので、将来は、年金制度と関連して恩給制度を改革していかなくてはならぬ、中には恩給制度は廃止しろという意見もありますけれども、そのところまではいかなくても、財政負担がこのように高くなってきておるところの現状においては考慮してみなければならぬと私は考えるので、その意味で年金制度の方向に向って恩給制度も関連して考えていきたい、かように思っておる次第でございます。
  96. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 私は高級軍人のことを申しておるのではありませんので、多数を占める応召軍人恩給のことを主として申し上げておるわけであります。しかも、命を的に働いた多数の下級軍人恩給が文官よりも少ないというようなことは、社会正義の観点からいって、私は納得ができない。しかも、日本財政事情がこれを許さぬのであれば、文官、軍人とも減らすということであれば納得がいきますけれども、文官の方はべース・アップに従ってどんどん上っていく、軍人の方は死んだ者貧乏で、そのままになっておるということはどうしても納得がいきませんから、その観点で、文官、軍人均衡を保つという一大方針のもとに研究を進めていただきたいということをこの機会にお願いをいたしておきます。  それから財政規模の一割に達しておるというこの恩給をどうするかということは、これは政治常識で、いやしくも総理大臣の職にある方がどうも私にはわからぬというようなことでは、これはどうも答弁としては私は実は不謹慎であると思うのであります。従いまして、この席で何%が妥当であるということをすぐに私は答弁を求めるわけではありませんが、どうか一つまじめにこの問題を御検討になられんことを、この機会に総理にお願いをいたしておきます。  次に、経審長官に伺いたいんでありますが、お見えになっておりませんならば、さらに大蔵大臣にもう一つそれでは伺います。今度の修正で農林省関係で約三十二億五千万円の歳出増加があるわけでありますが、その中に十七カ項目の補助金の増加があります。金額にいたしまして二十億八百万円、この中には農業委員会の補助金が従来十億七千万円であったものが、さらに九億六千九百万円ふえております。私は今の大蔵大臣が零細補助金を整理するということを強硬に主張されておるかのごとく新聞で拝見いたしておりまして、ひそかに敬意を表しておったものでありますが、今回このような補助金のふえたことに関連して伺いたいのですが、零細補助金の整理の基準は一体どういうふうにお立てになっておるか、これが一つ。その基準と今回のこの十七カ項目の少くとも農林省関係における補助金の増加が基準の範囲内にとどまっておるかどうか、あるいは大蔵大臣としては自分の意思に沿わなかった点が相当にあるのではないかということをこの機会に伺ってみたい。かよう考えます。
  97. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答え申し上げます。この零細な補助金の整理につきましては、一府県当りまたは一市町村当りの補助金が非常に零細なものは整理する方針をとったのであります。むろんこの事柄の重要性等も十分考え、あるいはまたすでに一斉にこういう零細なものでもう目的を達したようなもの、こういうようなものは皆整理してきたのであります。これが今度の修正でお話のようにある程度復活をみておるのでございます。私としてはいろいろと考えもありますが、まあこういうものに、補助金についてはいろいろと重要な点についてお考えもまた異なる点もありますが、まあこのよう考えております。
  98. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 もう一点……。
  99. 館哲二

    委員長館哲二君) もう時間が過ぎておりますから。
  100. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 もう一、二分……。
  101. 館哲二

    委員長館哲二君) みんな時間で打ち切ってもらっておりますので、あとのときの御質問でお願いしたいと思います。
  102. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 ありがとうございました。
  103. 館哲二

    委員長館哲二君) 以上をもちまして、予算修正に関する質疑の全部を終了いたしました。  これより総括質問に入りたいと思います。  まず小野義夫君の御発言を求めます。
  104. 小野義夫

    ○小野義夫君 私は冒頭におきまして、鳩山総理が御病気にも屈せず、御自分の体をはって、日夜国事に尽瘁せられることに対しまして、敬意を表することを申し述べて、以下若干の御質問を申し上げる次第であります。  第一点、鳩山総理はかつて、もしそれが平和のために役立つならば、原水爆の内地貯蔵についても考えて見てもいいとの御発言があったように記憶しますが、その後最近では、かかる申し込みがあっても絶対に承諾できない、反対であるとの御意見のようでありますが、今の現状では、その要請も、またその必要もないでありましょうから、従って非常に心配性であるところの御婦人であるとか、その他国民の一部の人々の感情をやわらげ、かつまた共産国に対する対立観念の緩和にもいささがでも役立つとの考慮からなされた一応ごもっともの御意見のようでありまするが、これは国際情勢の変化とか、あるいは万一の事態の突発に対しましては、はなはだ不徹底、不用意の表現でありまして、見方によりましては、国の防衛権をもみずから放棄したようなことになりはしないか。たとえばピストルを持っておれば危険である、ピストルを撃たれるかもしれないから、木刀をもってピストルに対抗せよというにひとしいものでありまして、日本の包蔵する根本的の危険というものが一体どこにあるのか。水爆、原爆を貯蔵するか貯蔵しないかというような、そんな簡単なところに危険があるのではなくて、根本的に申しまするならば、第一点は、日本のこの地球上の位置というのがはなはだ危険なところに存在しているのであります。また第二には、日本が工業国であるというその事態が非常に危険であるのである。第三には、人的資源がたくさんあるということも一つの危険の現われであります。もしアジアにおいて大規模な戦争が起った場合には、日本を制することが勝利を得るには必然で、   〔委員長退席、理事池田宇右衞門君着席〕  日本を得ることが勝利の一つの要諦となされるでありましょう。従いまして、もし中ソが日本を占拠すれば、米英は日本を攻撃するかもしれません。また米英が占拠すれば中ソが攻撃するかもしれません。その攻撃の手段方法等は彼らの自由であって、日本の指図を受けるべき筋合いのものではないのであります。しからば、中立という名のみの自己満足でもって、中立をするというようなことは自己満足であって、冷厳なる戦争の必要は決してこれを許さぬでありましょう。私はむしろ毒を制するに毒をもってする意味におきまして、鳩山総理が当初御発言になったように、もしそれが平和を維持するに役立つならば、貯蔵はもちろんのこと、場合によっても製造もするかもしれぬというような御意見の方が、含みがあってよろしいのではないかと存ずるのでありますが、いかがでありますか、御意見を伺います。
  105. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は(「気をつけて答弁して下さいよ。いいかげんなことは言わないで……」と呼ぶ者あり)原子爆弾の貯蔵というようなことは、これは国連の何と言いますか、話し合いできめて行くのが一番いいと思っているのであります。今日日本に原子爆弾を貯蔵しなくては平和を侵害せられるおそれがあるとは私は思っていません。アメリカが日本以外の地域においてこれを持っているので、日本の平和は維持ができると思っているのであります。それですから、日本に貯蔵するというようなことをアメリカで要求をするというような必要、世界の平和維持のためにアメリカは必要を感じていないと思っているのであります。それですから、安保条約の約束によって兵器は日本に持ってくることができるではないかというようなことを言う人もありますけれども、私は原子爆弾あるいは水素爆弾というものを普通の兵器と同一視するということは誤まりだと思うのであります。特別の威力を持っている兵器でありまするから、アメリカは日本に相談をしないで、日本の許可もなくして日本に持ってくるとは思いません。現在アメリカとそういうようなことを話し合いましても、アメリカは日本の許諾なくしては原爆や水爆は日本に持ってくることがないと明言をしておりますから、私は日本には持ってくる必要を感じていないものと解釈をしておるのであります。
  106. 小野義夫

    ○小野義夫君 第二点でありますが、米英両国におきましては、世界の平和を維持するためには原水爆の力による平和、あるいはまた力による戦争防止以外にないという考え方であるようであります。殊に英国におきましては、永久の平和の維持ということはすこぶる困難な問題であるので、いましばらく時をかせいで、早急に米ソと対等の水爆を製造し保有する方針の下に、すでに本年度予算にその一部が計上され、さすがの労働党といえどもあえて反対しなかったようであります。もちろん他方におきまして、軍縮会議あるいは四巨頭会談等、国をあげまして熱心に平和的努力も専心継続いたしていることは御承知通りであります。今日米ソの深刻なる基本的な対立と原水爆の製造を将来——近き将来においてこの地上から払拭することができるであろうかどうか。また総理は第三次世界戦争は遠のいたと言われる、中ソ両国はもちろん、その他の国でも日本に侵略の意思はないと発言され、いかにも四海泰平というような感を国民に与えておられますが、事実の問題は違いまして、海国日本、この海の公海の自由という原則も心配されておりますし、領土の一部である竹島のごときまでも占拠されておる事実であります。米国の国務長官ダレス氏も、最近この世界の緊張は緩和されたような感があるというよう所見を発表されておりまするが、日本総理大臣がそれをみずからおっしゃることは、少々アメリカとは立場が違うのではないか、彼は和戦両様の備えがあって、警戒しながらもっての意見でありますし、もし総理が現状においてさようにお考えになりまするならば、その結果としては、日本の国防も急ぐ必要はないではないかという印象を国民に与えます。(「その通り」と呼ぶ者あり)また国を守る精神までも弛緩をきたすおそれがあるのであります。(「ノーノー」と呼ぶ者あり)総理はこの際万一の場合に備えなければならぬという国民に対する要請を警告すべきではありませんか。いかがでございますか。
  107. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 日本が万一の場合を予定してこれに対する防衛の道を講ずるということは、これは怠ってはいけないことだと思います。それですから、自衛軍の漸増ということは必要だとは思うのでありますが、しかしながら世界から第三次世界大戦の危機が幾分か薄らいだということは、これはただいまは大ていの人がそのように思っているのではないかと思うのであります。昨日朝日新聞にいろいろの人の説が出ておりましたが、多くはそのよう考え方のようであります。アメリカにおいにも、イギリスにおいても、チャーチルを初めとしてそのよう考え方をしている人が多いようです。チャーチルもとにかくアメリカに防衛力ができたから、それで世界大戦はないんだというようなことをチャーチルは数年前に言っております。アメリカでも防衛力ができたから戦争は遠のいたということを言っておりますし、昨日の新聞を見ましても、アメリカに防衛力ができたから戦争は遠のいたと、ソビエトも原爆や水爆の競争をしている、この原爆や水爆を作る競争をしているそのばかげさを悟ったので、それでソビエトの政策も違ってきた、こういうように有田君も言っております。そのようなわけですから、現在第三次世界大戦の危機というものは私は遠のいたと思うのであります。ソ連の平和外交の推進というものは、必ずしも欺瞞ではないのだということをみんなが言っていますのですから、私はやはりこの際はソ連と友好関係を打ち立てるべき時期だと思うのであります。やはり戦争状態終結確定の事態にこの際持ってゆくということは、世界大戦を防ぐ上に非常に有力なる事柄であると思っているのであります。決してしかしながら万一の場合、一国をなす以上は万一の場合を考えなくてはなりませんから、それだからして防衛力については相当の準備をする必要があるとは思ってはおりますが、しかしながら日本が防衛力を漸増するといってみましたところで、今日の世界において、日本の防衛力でどの国に対しても防衛の実力を持つということはできないのでありますから、やはり国連との関係にのっとって、集団的の安全保障を持つということも考えなくてはならないと思っております。
  108. 小野義夫

    ○小野義夫君 第三点でございますが、日本憲法第九条によりますと、国際関係の紛議解決のためには、戦争あるいは武力に訴えないといういわゆる戦争放棄の平和憲法を持っているのでありますが、反対にいずれの国でも、いずれの国の憲法でも、国際紛議を武力によって解決するなどと憲法に書いたいわゆる戦争憲法というようなものは存在しないのであります。すべての国は忍耐と努力の平和手段によって国際紛議を解決しよう考えていることは申すまでもありません。しかしながら最近過去の歴史に徴しますれば、五年、十年を出でずして世界の随所に戦争が起り、また革命が勃発しているのでありまして、真に世人の言うごとく噴火山上の世界、あるいは爆薬の上の世界というような感じがいたすのでありまして、いつどこにいかなる危険が発生するかということは、まことに不安にたえない次第であります。日本に限らず、欧州諸国も一国の自衛力をもってしては到底その目的を達することができないとして、国際連合の力、あるいはまたパリ協定によるNATOの強化、その他の協定によりまして、二重三重の集団方式による安全保障条約が締結されておることは御承知通りでありまするが、またこのことは共産国におきましても、中ソ同盟、あるいは今回の東欧八カ国条約等においても同様であります。そこで総理に伺いたいのは、日本がもし国際連合に加入したならば、それと同時に、あるいはまた中ソとの親善正常化ができたならば、日米の安全保障条約は無用として直ちに廃棄され、国際連合一本に信頼しようとするのであるか、あるいはまた他の構想に基いて、集団保障によって二重三重の安全を計画せられるのでありますか、その点を伺いたい。
  109. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 日本は現在におきましては自衛力を持っておりません。それでアメリカと安全保障条約を結びまして、日本の安全を保障してもらっているわけであります。この安全保障条約は私は改訂する意思は持っておりません。しかしながら日米の安全保障条約をやっておると同時に、国連の加盟、国連の精神によって集団安全保障をはかるということはもとより大切な事柄だと思っておるのであります。
  110. 小野義夫

    ○小野義夫君 第四点であります。最近平和五原則というものをもって集団条約を結び、これによって国家の安全をはかろうと主張する人もありますが、この平和原則なるものは多年外国の侵略を受け、あるいは内政干渉が絶えなかったようなアジア、アフリカ地方の諸国におきましては、ごもっともな議論でありますが、わが国は二千年来ただ七年間の内政干渉、占領下におったのみでありまして、その間は常に独立国としておるのであります。独立国家におきましては、平和原則なるものは国際法上の当然の慣例でありまして、私法で申しまするならば、他人の物をとらないとか、他人の家庭に容喙しないというような種類のものであります。これがために条約を結んでもよいけれども、国家の防衛に役立つような——すなわち武力保障にかわるべき現実の力も金もない一種の宗教的信念にすぎないものであると思うが、総理の見解はいかがですか。
  111. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 平和五原則というものは、とにかく読んでみますれば、自分の主権を尊重すると同時に他人の主権をも尊重する美しい正しい主張でありまするから、別にそういう主張によって各国が同盟するということは、世界の平和を維持する上において益はあっても害はないだろうと私は思っております。
  112. 小野義夫

    ○小野義夫君 第五点でありますが、最近日本におきましては一から十まで米国に従属的であって、米国の植民地化しておる、かかる観点からいたしまして、すべての面において日本は自主性を取り戻さなければならぬと言っておるものがありますが、国民の中には自主性ということは一体何であるかということをしさいに検討を加えないで、附和雷同する向きもあります。自主とは私の考えによりますれば、国民の精神的のものでありまして、自主独立の精神にほかならないと思うのでありまして、いわゆる形而上の問題であります。従いまして、形而下の問題であるところのあるいは防衛力、あるいは経済力、あるいは科学の上において自主独立が成り立つものであるか、成り立たないものであるかということは、あくまでも私は成り立たないものであって、相互の援助協力が必要であり、相互依存の必要があり、その程度は国情と国力によりましておのずから定まるのでありまして、一がいにこれを論じられないと思うのであります。また外交問題のごときにおきましても、今回西独のアデナウァー首相がなすがごとく、用意周到なる各般の打ち合せがあってのち、しかるべくやられるのが私今後の日本の外交方針ではないかと存ずるのですが、首相はいかにお考えになりますか。
  113. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 自主独立の意味はあなたと同じよう考えます。自分の利益のために、自分の独立のために、自分の利益を土台とし権利を主張するのが自主独立なんでありますから、他国の命によって、他国の利益のために働くということが自主独立でないというわけなんだろうと思います。
  114. 小野義夫

    ○小野義夫君 第六点についてお尋ねいたします。日本経済、なかんずく貿易面におきましては英米両勢力圏、すなわちドルの地域及びポンド地域に依存しなければならないことはまことにやむを得ないのでありまして、もしこの二つの地域から経済上の封鎖、あるいは断交を受けるような場合があったならば、日本経済はいかがになりましょうか。また防衛力におきましても、今後首相の仰せられるごとく、幾年たっても日本の単独の力をもって今日の国際情勢に対処するということは不可能でありましょう。この点イギリスでさえもイーデン現首相、前首相のチャーチル氏も議会において、イギリスの伝統的の強靭なる外交は、米国の原子兵器のバック・ボーンなくしては遂行せられない、英国の安全は米国との同盟によってのみ保障せられると、率直なる意見を表明しておるのでありますが、日本におきましてはこの点に関しまして、ことさらに口をつぐんで意見の表明を避けておるようでありまするが、一体共産圏に対する気がねからさような次第でありますか。独立の力をもってあるいは国防、あるいは経済、あるいは科学を完全にやり得るとの考えでありましょうか。総理の見解を伺いたい。
  115. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) アメリカと日本とは同じ民主主義国家であり、同じ自由主義を尊重する国民でありまするから、このアメリカと協力をして世界平和のために貢献をしたいということは当然な行き方だと思います
  116. 小野義夫

    ○小野義夫君 その次。この原子力の平和利用研究に関しまして、すなわち原子炉及び濃縮ウラン等の受入れに関しまして、日本の科学者たちは研究の自主性というようなことを主張されておりまするが、一体学問は経済文化と同じような、また信仰の自由のように、国境を越えて自由平等であるべきはもちろんでありまするのみならず、自主性というがごとき個性を科学の上に持ち出すということはおかしなものであり、普通の科学の世界でも、たとえば発明特許に属するようなものにつきましては、自然に秘密と特権が存することは一般の通念でありまして、ことにそれが軍事兵器に直結するような場合におきましては、さらに秘密と特権の存することは自然の理念であろうかと存ずるのであります。日本では一般に伝えられるところによれば、原子力の研究におきましては、世界の先進国に比べまして五年も遅れておるということを承わるのであります。しかして私どもが目下審議中のこの予算において、これを見ますると、二十九年度予算において繰り越し一億六千万円、三十年度において二億円、合計三億六千万円の予算をもって今後三カ年間に約二十億の経費と日子を費やして、わずかに四百キロないし一千キロの原子炉を完成せんとしておるのであります。のみならずその資材というべきものは、大部分は外国に依存しなければならぬ次第であります。今日世界の原子力の研究及び進歩は、日もこれ足らぬというようなスピード時代であるのであります。果してかかる日本のごとき後進国が、原子力の研究に自主性を貫徹してよいか悪いか、このことは一人原子力ばかりで申すのではありません。現在電波の問題にしましても、その他の一般電気の問題にいたしましても、化学の製品にいたしましても、蒸気、水力等各般の科学技術におきまして、日本は全然自主性がないといってもいい。すなわち欧米の特許権のもとに年々数十億を支払っておるというのが現状ではありませんか。われわれはこの事実に即して、今日原子力に対してのみいろいろな論議があるのは私は納得のいかないものがあるのですが、総理はどうお考えですか。
  117. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 関係閣僚から答弁をしてもらいます。
  118. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) 原子力の問題についてお答えいたします。日本の学問技術が英米その他の外国に非常に依存しておるということはお説の通りであります。しかしこれはまあそれでいいというわけじゃなくて、日本日本独自の研究をすべきもの、またそれでなければいかぬと思っております。原子力について特に議論があるのは、あれが御承知ように政治的の色彩を帯びるのではないか、何らか政治的の意味でひもつきになるのではないかということをおそれるのであります。その懸念がなければわれわれは喜んで濃縮ウランを借りまして、そうして研究を進めたいと思って、現在その交渉を進めておる次第であります。   〔理事池田宇右衞門君退席、委員長着席〕
  119. 小野義夫

    ○小野義夫君 第八点ですが、本年一月、米国大統領が議会に送りました一般教書、これは総理大臣はごらんになられましたか、どうでしょうか。この教書はまた英国の当時の首相チャーチル氏の本年三月、議会においてなされた演説と相呼応するものでありまして、英米の世界情勢の判断及びこれに対する世界政策の声明といたしまして、それぞれの国民に対する要請であるばかりでなく、自由国家群全体に対しても、また共産国に対する示唆及び影響力に対しても大いなるものがあると考えるのでございまするが、これに対する総理の御意見を承わりたいのであります。
  120. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私はちょっとその教書を読みませんでした。どういうことが書いてありましたか。
  121. 小野義夫

    ○小野義夫君 ごらんになったかもしらないのだが、ごらんになったとおっしゃると、御自身に若干の御責任も起るかというお考えでの御答弁と思いますから、私がその一節をここに申し上げて御意見を伺うのでありますが、米国大統領の教書の中で、共産国及び共産主義のいかにおそるべきであるかということをるる説明されたのちにおきまして、米国が共産諸国との闘争をなすその真の目的がどこにあるかを説明しておるのであります。  すなわち自由、正義、平和を維持し、国民の一人々々が健康で生産的な働きがいのある生活を営む機会を持つようにするための闘争であると述べておるのであります。で共産国、共産主義が自由国家と非常に異なる点は、単に経済理論とかあるいは政治の形態とか、あるいは軍事力の闘争というような点ではなくて、まあそれももちろんであるけれども、そればかりではなくて、いわゆる共産国では国民を魂を持たぬ機械化し、国家の奴隷化し、あるいは国家のために利用し消耗する、たとえば人海作戦とか。この共産主義に対する人間精神の根本に横たわるところの闘争であると述べておるのであります。総理は共産主義及び共産国に対して、すこぶる調和しがたい永久の対立とお考えにはなりませんか。あるいはまたこの思想、主義を日本で丸のみと申しますか、かみ砕いて消化し得ると考えておられになりまするか、御意見を承わりたいのであります。
  122. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は、共産主義というものは民主政治とは全く対照的なものであり、自由主義とは全然反対の立場に立っておる主義であるということは、もとより承知をしております。共産主義が日本にびまんすることもおそれてはおります。けれども共産主義をおそれるがゆえに、共産主義を採用した国を敵に回すことは、これは誤まりであろうと思うのであります。ソ連や中共が共産主義をとっておることに対して、日本はその不当をののしる権利は持っておらないと思うのであります。ただ日本に共産主義が入ってくることについては非常に警戒をしなくてはならないし、この共産主義が日本にびまんするということは、日本の民主政治を滅するものでありますし、自由を愛好する日本国民に対しては全く危険なものだとは思っておりますが、その危険な思想をソ連や中共が好んで自分の国で採用しているということについて、日本はこれを不当としてこの国を敵とすることは誤まりだと思っております。ですからソ連や中共とも友好関係をできるだけ持つということは、世界平和を維持する上において私は非常に必要なことだろうと思っておるものであります。
  123. 小野義夫

    ○小野義夫君 最近政府の発表するところによりますれば、日本共産党の実勢は六万人で、あるいはシンパと称するものが十万人ないし二十万人くらいであろうというような発表があり、同時にその目的は依然として暴力革命方式を採用されておるという公表があるのでありまするが、この調査はどういう方法でなされましたか存じませんが、先般の衆議院の総選挙に現われました数字によりますれば、候補者の数は最初九十九名でありましたが、最終六十名となっております。得票総数は実に六十九万四千余票に達しておるのであります。これらは党員またはシンパと見るのほかはないのであります。このほかになお棄権者に属する者、あるいはまだ定年に達しないところの資格のない者、その他容共主義者を推定いたしますれば、実にその数、数百万の大ぜいと言わなければならないのであります。この意味では、日本はおそらく自由国家群において最大の、いわゆる容共国、準共産主義であると(笑声)申さなければならぬと考えるものであります。しかるに米国におきましては共産党は、あれだけ大騒ぎをする米国では、わずかに一万人内外といわれております。また英国最近の総選挙に見ましても、その得票数はわずかに三万数千票でありまして、一人の議席の獲得をも許さないという状態であります。鳩山総理は、日本共産党及びそのシンパに対しましてこのままに、なすがまま、あるがままにいわゆる成長する、グロー・アップすることを御認容になるのでありますか、どうでありますか。鳩山総理の御意見は私が申し上げるまでもなく、私の支持した御先代以来、日本における政界はもちろんのこと、教育界においても、社会上におきましても、あなたが野にあっても、朝にあっても、その御言動というものの影響力は、まことに甚大なものがあると思うのであります。ましてや今日、一国の首相としての言行は、内外に甚大の影響のあることは申すに及びません。しかるに、総理は容共思想であるかのよう国民中に誤解しておるものもありますが、この際、共産党及びその主義に対して、首相の態度、意見を明確に声明せらるる、今直ちにとは私は申すのではありませんが、適当の機会におきまして、あなたのお考え方を内外に表明せらるるの御意思はありませんかどうか、伺いたいと思います。
  124. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は十年前ですかな、自由党を作りますときに反共声明というものを出しまして、日本の政治家で反共声明というものを特に出した政治家はいないでしょう。私は共産主義は自由主義、民主主義の敵だと思ってますから、民主政治、自由主義というものをこれから国民に納得してもらうのには、共産主義を攻撃するということが一番必要だと思ったのであります。ところが共産主義に反対の、反共声明というものをやりまして、それでパージ、追放になってしまったものですから、共産主義が勢力を得たのだろうと思う。(笑声)これから自由の身になりましたから、反共主義のためにできるだけ努力をいたします。
  125. 小野義夫

    ○小野義夫君 総理に対する御質問はこれで終りましたから、どうぞ御自由に……。(笑声)  経済問題に対しまして二、三の御質問を申し上げます。政府はこのたび、過度経済力集中排除法を廃止いたしまして、弱体企業をむしろ復元、合併せしめんとするような傾向があるのでありまするが、これは日本経済の実情から見まして、必ずしも悪いことでなく、私どもは賛意を表するものでありまするが、それならば何ゆえに、これと姉妹編をなすところの私的独占禁止法を廃止しないのでありますか。この法律は御承知ように、日本経済の実情に沿わない、占領軍に押しつけられた、日本弱化分断政策の一環をなすものでありまして、これが対象となるべき基幹産業においてさえも、いまだ一度もこれを適用した実例はないと言う。先ほど同僚木村君も、大企業、製鉄のごときは支離滅裂である。反対の現象を示しております。またこのたび、石炭合理化法案であるとか、あるいは輸出入取引法のような、各般の公私企業にわたって、例外立法の必要がひんぴんとして起ってくるのであります。すなわち、この法律あるがために、かえって日本経済を今日のように混乱に陥れておると言うても、あえて過言ではないと思います。何ゆえにこれを廃止するところの意思がないのであるか、通産大臣及び経審長官の御意見を伺います。
  126. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) 独占禁止法につきましては、いろいろお説のような主張があることはよく承知いたしておりますので、ただいま政府におきましても研究はしておりますが、しかし現状におきましては、やはり独占禁止法というものは、ある場合には相当有効な働きをしておるのであります。そこで、ただいまは御指摘のように、石炭の問題にいたしましても、あるいは貿易にいたしましても、必要な場合には、これの特殊立法を行なって、独占禁止法の適用を除外するということで参るのが、ただいまのところでは最も妥当である、かよう考えてやっておるわけであります。
  127. 小野義夫

    ○小野義夫君 私は通産大臣の御意見は、いわゆる目前を糊塗しておるところの、いわゆるやぶれがさを糊で張っておるようなことで、(笑声)これが日本経済の建て直しだとかその他に役立つとは少しも考えておりませんが、今ここで私は議論をあなたとしても仕方がないから、私は私の信ずる方向に向ってやろうと思いますから、どうぞ一つその点よろしくお願い申し上げます。(笑声)経審長官はおいでになりませんか。……おいでにならなければよろしいです。
  128. 館哲二

    委員長館哲二君) 間もなくこちらに来られるそうであります。
  129. 小野義夫

    ○小野義夫君 それじゃおいでになったときに……。第二点は、財閥解体以後の日本におきまして、よく今日でもあります欧米諸国のように、労働階級なり、あるいは社会の第三階級と申しますか、第二階級と申しますか、そういう人と対抗して、いわゆる金利なり配当で寝て暮して、いわゆる安楽をむさぼると言うては、はなはだ失礼だが、アイドル・リッチというような言葉に該当するような階級が、日本に現存するでありましょうか。もしあるとするならば、その事例を御指摘を願いたいのでありますが、私の見るところでは、いわゆる現在の大会社、たとえば日本銀行でも、また旧財閥の会社にいたしましても、あるいはまた、各種重要産業の部門におきましても、ほとんど全部がサラリーマンの経営であります。その背後にいわゆる資本家というようなものが存在しないようでありまして、どろぼうを捕えて見ればわが子なりという言葉がありますが、今日資本家とは国民大衆であって、いわゆる郵便貯金であるとか、あるいは銀行預金であるとか、各種の保険準備金等によりまして構成せられておるのであります。従いまして労働組合やらあるいは左派社会党の諸君が言われるごとき階級闘争の目標はなくなっておるのであります。(笑声)すなわち幽霊の正体見たり枯尾花で、実在しないところの資本家を仮想いたしまして、想定いたしまして、そして団体の力によって、団体自身もしくは個人の利権を伸張しようというような状態にあると言っても過言ではあるまいと思うのであります。従いまして今日の労働三法のあり方、及び組合運動のあり方には多くの疑問があり、修正すべき諸問題を包含しておると思うのでありますが、政府はこれが修正、あるいは改正の意思がないでありましょうか。労働大臣がお見えでありますからどうぞ御意見を承わりたい。
  130. 西田隆男

    国務大臣(西田隆男君) お答えいたします。現在の段階におきまして、私は労使双方の関係と申しますのは、労使双方が相協力して、国民経済的な正常な認識の上に立って、合理的な労使関係の確立に努力するということが先決問題だと考えております。従って労働組合法並びに労働関係調整法の改正につきましては、小野さんのおっしゃるように、必ずしもあなたのおっしゃるよう意味合いだけではございませんが、改正すべしという意見が各所にあるのを承知しております。なお慎重に検討したいと考えております。労働基準法につきましては、これは労働組合法、労働関係調整法、より以上に強く、特に中小企業方面から実情に即さないことだから改正をせよというような意見が強く叫ばれておることも承知いたしております。従って私どもといたしましては労働省内に審議会を設けまして、学識経験者によって労働基準法というものを改正すべきであるかどうか。もし改正するとしたならば、どういう点を改正すべきかというような点を検討をしてもらう、ただいま準備中でございます。
  131. 館哲二

    委員長館哲二君) 小野君に申し上げます。高碕国務大臣が出席されております。
  132. 小野義夫

    ○小野義夫君 それでは同一の問題につきまして経審長官に伺いますが、先般この席で御質問申し上げたと思うのでございますが、第一の点は私的独占禁止法の廃止の問題でございます。それから第二は労働三法のあり方及び組合運動のあり方等に対して、日本経済の構成の上から考慮し、修正すべきような諸点はないかどうか、この二点について経審長官の御答弁を願います。
  133. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。この独禁法の問題につきましては、この前にお答え申し上げましたと思っておりますが、これは相当私は改正すべき点があると思いますが、これを今すぐに取りやめることはできないとこう存じております。でこれの行き過ぎたところは独禁法を緩和する、つまりカルテルをある程度認めるとかというふうなことによってやっていきたいと思います。ところが今直ちにこれをやめるという考え方はいたしておりません。労働三法の問題につきましては、ただいま西田労働大臣からお答え申し上げました通りでありますが、私はやっぱりこれは根本においてはこの多数ある労働者の福祉をどうするかということは、やはり一方考えていかなければならない、これを考えつつやはり日本経済をどうして復興するかということを考えなければならぬ、これはよほど慎重に考えなければならぬとこう存じておりますが、この程度でごしんほう願いたいと思います。
  134. 小野義夫

    ○小野義夫君 私は多年業界に従事して、はなはだ過言を申すようですが、私の従事しておりますところの事業では、いまだかって大きなストライキとか、その他のようなものは起した例の記憶はないのであります。従いまして私どもは、この労働者諸君に対する非常な感謝と熱意を持っておるものであり、国としてもさようなお考えであろうと思うのですが、しかしながら熱愛し同情するというだけで、たとえば一家の子弟におきましても、その家が完全によく整い、そして国のためになるかどうかというのは疑問であるごとく、やはりこれは労働者諸君の自粛をもお願いしなければなりませんし、それから国のおきての上におきましても、非常に寛大であるが、かつ締まるところは締まったような何ものかがなくては、まるでだらだらで、そうしてわがままむすこが増長するというようなことでは、これは私は日本経済の前途に憂慮すべきものがあるのですが、通産大臣はどうお考えですか。
  135. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) むろん労働者も非常に働いてもらわなければなりませんし、これはあまりお互いにわがままを言って、混乱をいたして生産が減り、経済が混乱するようになりますと、これは何か一つ独裁的な力が出てきて、これを押えなければならぬというような事態にならないとも限らないですが、これは第一次世界大戦でヒットラーが現われ、ムソリーニが現われた歴史を見ても非常に警戒すべきであると考えております。従ってお互いに十分考えなければならぬと思います。
  136. 小野義夫

    ○小野義夫君 いま一つ、これはここで論議しても仕方ありませんが、ただ質問の一端を申し上げるのですが、私は商工委員会において論議しようと思っておりますが、最近通産省で計画しておるところの地下資源開発、予算では三億二千万円を計上しておる。ところがこれは名のみの地下資源開発であって、その実体は石油試掘、採掘に九〇%以上重点を置いて、日本の地下資源は石油以外にないかのごとき観を呈しておるということは、はなはだしく偏重せる予算であるのみならず、また一説によれば、石油合理化国策会社というようなものを樹立するかのごときうわさも聞くのでありますが、この国策会社なるものは、地下資源に関する限り前例が、失敗の前例の第一は、産金会社と称するもの、金は血液であると言って、金の尊重時代に金の国策会社を作った。またいろんな銅やその他が入り用だと言って帝国興発という会社を作った。この二つの会社の始末はどういう結果になったか、まことに無責任なる、放漫なることに終始してしまっておるのでありまして、私はかかる会社を乱立することは、日本経済を茶毒するものであって、私は容易に納得はゆかないのであります。もし政府は補助金をもってやると言うならば、私は補助金政策ということは、これはまことにやむを得ないのです。非常な幼稚産業に対しましては、日本の産業をここまでもってくる歴史の上から見まして、明治初年から今日まで幼稚産業を発達せしめるために、国費を傾倒するということは当然のことです。なぜそういう微量な三億五千万、日本の一兆予算の中で地下資源開発に三億二千万円、かような微弱な予算をもって石油偏重主義の政策をとるのか、一説によれば石油はなくてはならんもので、三%しか出ていないからこれを四%、五%に上げよう日本になくてはならないもので絶無のものが多々ある。あにひとり石油のみならんやだ。そこでこれはもう少し再検討して、国家の予算の上に真に地下資源を開発するという問題に頭を注ぎ込まなければ、こういうおざなりの経済政策では私はここに納得がいかんということを申し上げまして、いずれ他の機会に譲りたいと思っております。これで私の質問を終ります。(「答弁々々」と呼ぶ者あり)……それじゃ……。
  137. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) 日本の地下資源、これは今までは、ないないと言うて、あきらめておったのでありますが、しかしこれはあるかないかの調査さえ実は十分にされておらんという状況でございますから、これから大いにまた調査をし、あるいは試掘をするということの必要を痛感しております。しかしただいまの状況でお説のようにあらゆる地下資源にやろうとすれば、これは総花主義になりまして、どれもこれもまただめになることになりますから、本年度においてはとにかく三億円を思い切って投じて、そうしてこれは使い方が補助金でありますと、また十分のことができませんから、ほかのものは延ばしまして、そして最近は石油が学術的にもあの日本海沿岸に相当希望があるという学術的の調査ができております。それから実際に最近帝石が掘りました井戸の成績を見ましても、これはできるんじゃないかという見込みが相当ありますから、現在の、その以前の技術でなく、ずっと深い千メートルでありますか、二千メートルですか、技術は存じませんが、とにかく非常に深掘りをすることをいたしまして、さらにその石油の資源を試掘してみよう、こう考えておる。そこへまず集中をしよう、かよう考えるのでございます。
  138. 小野義夫

    ○小野義夫君 私はもう御答弁を求めないつもりであったので、御答弁があるからそれならば私は問題をもう少し掘り下げていかなければならない。同じく地下資源として調査をしておりますところの天然ガス事業、これはすでに諸国の、南米はもちろんイタリアにおきましても大きな地下資源として、これは国が非常な力を入れておりますし、民間の開発会社もたくさんあるのであります。しかるにこの日本も天然ガス、可燃性ガスというものは至るところにあるのに、この方面に対する政府の施策というものは今度は予算上少しなんです。従来は石油及び可燃性ガスとして一億円ある場合には、その中の一千万円とか二千万円とか、一億二千万円の場合には一億円と二千万円というふうに平衡的にきめておりますし、また法令の取り締りの上から見ても同一に扱っておるのであります。しかるに今度その開発に切り離してさようの今通産大臣の御答弁によると、地下資源の石油以外の天然ガスというものは、あなたはどれだけの知識を持っていらっしゃるか知りませんが、お忘れになっているのじゃないかということを申し上げたいのであります。御答弁をお願いいたします。
  139. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) 天然ガスむろん忘れておるのじゃございません。しかし幸いに天然ガスの方は(「至るところに出ますよ」と呼ぶ者あり)民営会社で相当やれる、帝石はこれを基本にして化学工業を起そう、こういう計画をやっておりますし、また東京付近のガスも最近は大分よく出る井戸を掘りまして、そうして現在これは、ただこれは資金が足りませんので、資金の世話を現在いたしておるわけであります。
  140. 小野義夫

    ○小野義夫君 それは御答弁が間違っておるのでありまして(笑声)天然ガスはこれは九州でたとえて申しますれば筑後川沿線であるとか、有明海の沿線であるとか、あるいは北海道各地であるとか、あるいは静岡県、岐阜県、愛知県地方であるとか、日本のほとんど全土にわたって存在し、そうして相当量があるということを認めておるのでありまするが、やはり石油と同じように、一本の今日試掘をいたしますのには少くとも一千万円、二千万円の金が要るのであります。二千尺、三千尺の下に入らなければならん、石油に伴うところの、石油を掘ってて、その途中にガスが出る、これは一挙両得である、帝石がやっているようなことは一挙両得なんです。石油が出なければガスが出る、どっちにしても逃げない。ところが石油地帯でないところのガスというものは、それが出なかったら大きなリスクである。従って民間でやるとおっしゃるけれども、民間会社にそれだけの勇敢なものがない。私どもは府県を非常に奨励しておるのであるけれども、その府県ですら金がないということでやらないのであります。こういう点につきまして一つ再検討を願いたいのでありまして、私は今の御答弁は満足はできないようなわけであります、まあしかしそれはただ私の一個の説として申し上げたのでありまするから、御答弁はいずれの機会に承わりたい。(「小野さん、まだ五分あるぞ」と呼ぶ者あり)
  141. 廣瀬久忠

    ○廣瀬久忠君 私は鳩山総理質問を申し上げます。問題は憲法関係の問題に限局をいたします。  政府は今回憲法改正調査のために、予算を正式に国会に要求をされました。実は私はこの予算要求は初めは当初予算に組んであると思いました。と申しますのは、鳩山総理はすでに憲法改正に関する決意を一月の総理大臣の施政方針の中に言っておられる。そうして第二次鳩山内閣になりましたが、この方針は変えない。従って憲法改正調査のための予算は当初予算にあるべきであると思いましたが、今度修正の中に入って出て参りました。しかしそれはともかくとして、私は政府が憲法改正の問題を正式に国会に対して予算をもって要求された以上は、ある程度の改正についての用意を持っておられると思う。少くとも改正の方向くらいはある程度お示し願う、それが私は大切なことであると思います。と申しますのは、憲法改正の問題というと、直ちに軍備の問題のみが大きく取り上げられる、しかし実際は私はそればかりではない、私の見るところとすれば、至るところに改正を要する点があると思います。でありますから、私はきょうは予算関係にしてしかも憲法関係の問題について、総理のお考えを少しく伺ってみたいと思うのであります。憲法施行後八年になります。相当この問題、改正問題も論議されておるのであります。非常に広範囲でありますから、本日お尋ねするのは、予算関係の問題の重大な点と思う点を、ここに二、三あげまして御質問をいたします。それから最後に憲法調査会をお設けになる、それについての内閣考え方を伺いたいと思います。  まず第一に、私が予算関係の問題について、しかも憲法関係の問題として取り上げたいのは、暫定予算の問題であります。新憲法の施行以来暫定予算が提出されたことは実に多いのであります。新憲法の暫定予算制度は、国会の審議権を尊重しておるのであって、まことによろしいのであります。しかし、実際上私の見るところではやはり欠点があると思います。総理は長い間政界におられて、わが国の政治について非常に深い経験を持っておられます。予算についても、法律についても深い経験を持っておられます。暫定予算という制度は新憲法の制度で、これについて総理は一体どんな工合に考えておられるのか。私は長所もあると思う。国会の審議権を尊重するという長所もある。しかしながら同時に短所があると思います。その短所の最も大きいものは、私の見るところをもってすれば、暫定予算のために本予算の成立がおくれるということであります。これがために自治団体及び経済界等を長く不安定の状況におくということになるように思います。これはやはり何と申しましても、暫定予算を編成するために、私は政府も非常に事務的に多忙だろうと思います。それからまた国会の方も暫定予算の審議のために相当繁雑を加える。事務も国務もともに繁忙である。そういうわけでありますから、その間本予算を急いで作ろうと思っても、なかなか編成が困難である。また提出もおくれる。国会の方でも暫定予算を審議しながら、本予算の審議を別に並行するというようなわけで、どうも私はなかなかうまくいかないのじゃないか、こういう点について暫定予算という制度についてこれはどうしても現在の憲法においてはこれを行わなければならぬ。それであるから財政法に特にこの規定を設けておるのでありますが、この暫定予算という制度について、政府が憲法改正の決意を持っておられる今日において、この暫定予算というようなものについてどういう工合に考えられるのであるか。この点を一つ考えのあるところを伺いたいと思うのであります。
  142. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 暫定予算制度が、御指摘のような結果を伴うような面があることは、否定せられません。それにかわる制度として何か考えられるかということになると、いろいろの問題がありますので、これは憲法調査会で十分に検討しなければならない問題であると考えております。
  143. 廣瀬久忠

    ○廣瀬久忠君 ただいまの御答弁によって、現在の暫定予算制度に総理は満足しておられない。憲法改正という場合にはこれについてかわる適当なる制度があるならばこれを採用してもよろしい、それは審査してもらうというお考えにうかがうのでありますが、私も全くそう思います。暫定予算の制度については、外国の実例においても、前年度予算の一部を月割計算において施行するとか、あるいは支出費目の限定を与えてそうして施行するとか、要するに制限的な態度において政府責任をもって支出する。そうしてあとで国会の審議権を尊重してその責任を解除してもらうというような制度もあるようでありますが、いずれにいたしましても私が今日心配いたしますのは、どうも暫定予算の制度のために、やはり非常に民間に迷惑を与えることがあるとともに、私は今日政府の官庁の行政能率というものが非常にこういうもののために落ちるのではないかと思います。実際最近のわが国の政治及び行政の関係を見ておると解散がある。大臣は選挙をやる、そうして全国を回って歩く、帰ってくると予算を作る、暫定予算を作り、何回も出す、そうしてその間に本予算を出す。そうしてまた今度の国会でもそうであろうと思うが、またすぐに次の本予算を編成する、ほとんど一年中本当に落ちついた国の政治というものが果してとられておるであろうかということを私は心配するのであります。ことにわが国の現状が外交問題等において非常な難関に立っておるときに、常に大臣の本当の落ちついた考え方が果してできておるんだろうか。それからまた、いろいろな調査その他についての各役所の準備というものが果してよくできておるであろうか、私は非常にこういう点に心配をする。暫定予算の声を聞くたびに、やむを得ざることではあるが、実にむだの労力を使わなければならんということを私は痛感をいたします。こういう点が憲法改正に当ってのやはり一つの重要な点であるということを、やはり政府としては国民に常に知らせるべきではないかと思います。  次に私はお伺いしたいのは、予算の増額修正、この問題について政府のお考えを伺いたいのであります。これは今度の国会においてもそうでありますが、最近政府予算というものは国会で大修正を加えられる例が少くない。しかもそれは増額修正のみと言ってよろしかろうと思います。今回の修正は形が少し変っておりますが、しかし何と申しましても、実質的には増額修正であることは言うまでもありません。で、わが国のように増額修正を野放図に自由に放任してやっておる例は、外国には聞いたことがない。しかもわが国の経済財政の困難なる国においてこんなままにしておいたならば、将来の財政はまことに暗たんたるものであろうと私は思います。財政計画は立たんというのがほんとうだと思います。今回の大修正政府が今並びに前から主張しておる経済六カ年計画のその基礎が、今度の予算修正でゆるがないというようなことは決して言えません。非常な六カ年計画に響きがある。いわんや来年度の予算を今度の予算修正から推定してみますと、まことに財政上困難なる立場に追い込まれるんではないかと思います。私はこれを考えますと、やはり予算の増額修正については、政府はこれを何とか抑制するの制度をやはり考えなければならんのだとこう思います。抑制するの制度をどうしても考えなければならんのだと思う。これは憲法上国会の審議権に関する重大な問題であります。この点について改正を意図せられておるところの鳩山総理、ことに長い間のわが議会生活に深い関係を持っておられる鳩山総理は、増額修正というものがこうひんぱんに行われるわが国の将来の財政考えて、このままにしてよろしいとお考えになるか。あるいはこれも先ほどおっしゃったように、やはり何らかの方針を持っておられるか。非常にこれは重大な問題であると思いますから、御所見のほどを伺っておきたいと思います。
  144. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 国会の予算増額修正、これは、あるいはまた予算を伴う議員立法についての抑制の必要はないかという御意見には、私は全く御同感であります。各国の憲法でも、御指摘のようにいろいろな規定が設けられておりますし、最初に議会が設けられたときの目的は、予算の増額ということを反対するために設けられたというような歴史を持っておるわけでありますから、これについても、あなたの御意見はごもっともと思いますので、調査会において十分検討を加える必要があろうと考えております。
  145. 廣瀬久忠

    ○廣瀬久忠君 どこにおいても、私は、国会と政府との関係がどこの国でも同じようであろうと思います。で、総理のお話のように、外国の例においても、みな予算を伴う議員立法並びに増額修正について、それぞれ厳重な抑制の制度をとっておる。国会の始まりは、国王に対する税金をよけい取られないようにするということ、従って削減ということが中心でありましたが、最近の実情は外国においてもそうであったろうと思う。議員はやはり選挙区のことを考えないというわけにはいかない。政府は当面の政治問題の処理ということを考えざるを得ないのです。今度の予算修正といえども、やはり当面の政局というものに対する非常な比重がかかっておる。これは総理大蔵大臣も明瞭に認めておる。またやむを得ないことでありましょう。それからまた議員立法の問題、あるいは予算増額修正の問題、これはやっぱりどうしたって議員としては国民の陳情を聞き、その実情を見れば、これに対して増額修正もしたいと思うし、議員立法をするのも無理はないと思う。しかしながらほんとうに落ちついて、総合的に国政を考えるときに、やはり政府もわれわれ国会議員も、その政治的良心というものは、やはりこれを許さない気持はないではないのです。その政治的に許さない尊い、国家全部を見渡し、そうしてまた総合的にものを見る、その政治的良心を制度上に保障するという意味において、私はぜひこの憲法にこの種の抑制制度を設けてもらいたいと思うものであります。ここで私は、総理がそれについて私と同じ意見を持って、十分に調査をしようということを言われたので、それはけっこうでありますが、すでに予算修正の問題は済んでおる。しかしながらこれから議員立法として予算を伴う増額修正は、増額の要求というものは私は非常にたくさん出てくると思う。で、これに対して私は、大蔵大臣はどういう工合に考えておられるか。あなた方の政治力をもってして果してこれから起きてくるところの議員立法、しかもいろいろな種類の経済的の要求予算を伴う要求、これらに対してどういう態度をもっていかれるのであるか。総理並びに大蔵大臣一つこの問題については、現実の問題としての御返事を願いたいと思います。
  146. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 予算を伴う議員立法、これはまあ具体的に検討を加えてみなくてはならぬと思いますが、原則的には、財政当局としては、非常に慎重な態度で臨まなければならぬと思っております。要するに、こういうことも結局において、やはり議会の良識に従うということになろうと思います。
  147. 廣瀬久忠

    ○廣瀬久忠君 大蔵大臣は、一つこの問題については十分に腹を据えて、一つ国の財政の将来を説まらぬようにしていただきたいと思います。私は以上暫定予算の問題と増額修正の問題と議員立法等の問題について申し上げたのでありますが、この財政及び予算に関する問題だけでも、しかもこの国会において取り扱った問題だけでも、これみな憲法上の大問題であります。しかもこれは私もそうであるし、総理もこれはやはり改正しなければならぬものだとお考えであります。かくのごとく、財政についてのみでもまだあると思いますが、たくさんある。いわんや憲法全体を通じてみますれば、わが国の実情に合わないものは相当たくさんある。こういう点については、私は現内閣が調査会を設けて調査するということはまことにけっこうなことであると思います。  そこで私は今度は、今度設けんとするところの憲法調査会についてお伺いをいたしたいのであります。内閣に調査会を設けられるそうでありますが、それは内閣に設ける法的根拠はどういうふうにお考えであるか。また内閣に法律をもって設けられるのであるか。その点について総理大臣のお考えを伺っておきたいと思います。
  148. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 内閣には法律をもうて設けることにいたしたいと思っております。かつて私は国会に設けてはどうかしらんということも考えましたが、現在の状態では内閣に置く方が便宜だ、適切だというふうに考えようになりました。その構成についても御質問ありますかしら。……(笑声)
  149. 廣瀬久忠

    ○廣瀬久忠君 構成に行く前に一つお伺いしたいことがあるのでありますが、それは私は法的の根拠を伺いたい。どういう根拠で内閣に置かれるかということを伺いたいのであります。
  150. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は内閣に置くのを適切だと思ったのであります。
  151. 廣瀬久忠

    ○廣瀬久忠君 総理大臣はその憲法の条章、あるいは内閣法をごらんにならないのであろかと思いますから、その点を官房長官、どういう工合にお考えになりますか。あるいは法制局長官でもよろしいのですが……。
  152. 林修三

    政府委員(林修三君) お答えいたします。今の内閣に法律をもって設けるという点でございますが、これは御承知ように、内閣法の立前から申せば、内閣に置く機関は、内閣法に書いてありますもの、すなわち内閣官房あるいは内閣官房長官、副官房長官等を除きまして、別の機関を設けます場合には、法律をもって設けることに相なっております。従いまして、内閣の機関としてこの憲法調査会をもし設けるといたしますれば、現行法のもとにおいては、やはり法律を要するというふうに考えている次第でございます。  それから内閣に設ける法的根拠というお尋ねでございます。で、この点は結局、今総理大臣からお答えいたしました通りに、結局まあこれは政治的な問題として考えておられることだと実は私ども考えるわけでございますが、当初総理大臣は、国会に設けたらどうかと言っておられたわけでございますが、現状においては内閣に設ける方がまあ適切だというお話で、まあそういうことに相なったんであろうと思うわけであります。で、ただそこで、あるいは廣瀬先生のおっしゃいます意味が、いわゆるその憲法改正の提案権の問題について触れておっしゃっておられるのではないかということを考えますが、この点につきましては、憲法九十六条の憲法改正の手続の解釈の問題にそれはなると思うわけでございます。これは学説上いろいろの実は説がありますことは御承知通りだと思います。ただ従来、これは私どもといたしましては、もちろん国会議員が提案権を持っておられることは、これはもとより申すまでもございませんけれども内閣にも提案権なしとは、法制的には言えないのじゃないかということを私どもは従来考えておるわけでございます。ただ、この点をいかが取り扱うかについては、これはもう十分慎重な考慮を要することだと思います。
  153. 廣瀬久忠

    ○廣瀬久忠君 私も、この問題はやはり学説が二つに分れておるし、内閣にも国会議員とともに同じように改正の議案を出し得るという権限があるという議論と、そうでない、国会議員のみであるという議論とがあります。ありますが、政府が、いやしくもこの憲法の改正ということを総理が施政方針において言明して、そうしてそれについて予算を国会に要求して、法律をもって調査会を設けようとするときに当って、ばく然と内閣に置いたほうがこの際便宜であるというよう総理のお言葉を聞いて、はなはだ不満に思うものであります。なお、法制局長官は、これは事務的に自分たちの研究したところでは、やはり憲法七十二条の、総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提出し得るという、その中の議案の中に憲法の改正案は入るのだということに、自分たちは解釈しておるがというふうにも聞えるのであります。いわんや、吉田内閣時代においては、憲法改正はしないと言っておったときでも、政府としては、憲法改正について、政府は国会に政正案を提案し得るということを私は言明したのを聞いておるのであります。今非常にこの重大なる憲法改正の第一歩を踏み出すに当って、この重大な問題を解決せずして、憲法改正に臨むということは、私ははなはだ遺憾に思う。総理は政界に長い経験を持ち、この種の問題についてただ便宜という言葉をもって過ごされんとするのはいかがなるものですか。もう一度お考えを願えぬものでありましょうか。その点を重ねてお伺いします。
  154. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は内閣にも提案権があると考えておる次第であります。
  155. 廣瀬久忠

    ○廣瀬久忠君 それならば総理は、内閣に提案権ありというお考えを持って進まれるおつもりでありますか。それならばまことに私はこれに同感であります。どうかそういったはっきりした態度で進んでいただかないと、憲法改正の問題のごときは、その調査に当る者あるいはこの調査会において改正の審議をする者は、あいまいの調査会、すなわち、ただ内閣には権限はないのだ、しかし便宜内閣に置いておくのだ、そうしてその調査会で改正案を作ったならばそれを参考的に供給する、あるいは議員に供給する、あるいは与党に供給する、あるいは国民に訴えるというような、なまぬるい考えではこの問題は私はできないと思う。どうか一つ総理は、今おっしゃられた言葉を、ほんとうに腹の中からそれでいっていただかなければならぬ。やはりむろん国会議員にもあります。しかしながら政府にも提案権がある。将来立派な案ができました場合において、これを内閣が出そうが、あるいは内閣の与党が出すかは、これは別問題です。しかしながら、いやしくも今回この案を国会に予算要求して、法律をもって設けようとするに当っては、はっきりとした政府の確信を持って、責任を持って、やはり自分もやり得る、必要があるならやるのだという決心を持って進んでいただきたいと思います。そこでこの法律の論拠は、つまり憲法調査会を内閣に置くという法律上の論拠は、内閣にも国会に対して憲法改正の提案をなし得るという権限を持っておるがゆえに、内閣法十二条によって、法律によって作るのだということがはっきりといたしたので、私は非常に満足するものであります。  同時に、私がこれからあとでお伺いをしたいことは、これは政治問題であります。先ほど私は、一番最初に申し上げたのでありますが、一体この種の予算は、当初予算になければならぬものである。しかるに今回これが修正予算として入ってきておる。はなはだ残念なようでもありますが、同時に私は非常に意義があると思うのであります。この意義は私は非常に深い意義があると思う。すなわち憲法を改正するやいなやのごときは、政党の政策としてこれほど重大なる問題はありますまいと思います。しかも私はこの修正案は、民主党並びに自由党ともにその党議をもって決定したものであると思います。従いましてともに、憲法改正については、自由党も民主党も一致の意見であると信ずるのであります。そうしてそれに政府同意を与えて、憲法改正の調査会を設けようとするのであります。従って三者一体のこれは意見であります。私はこの前の予算委員会において、鳩山総理吉田前首相と会ってもらいたいと言いました。保守の連繋を進めてもらいたい。今日この修正予算が両党の完全なる一致のもとにおいて、そうして鳩山総理の率いる内閣がこれに同意してでき上った。そうして提案せられたことだけは、私は非常に喜ぶ。どうか総理は、この重大なる国策が政党の政策として、両党によってともに認められたということは、総理が保守結集に一歩を進めたと言われるが、私の見るところでは、一歩どころではない、道は半分も過ぎたという感じがいたします。非常にこれは大きな問題であります。どうか総理は一段の努力をもって、保守結集の実をあげてもらいたい。総理所見はいかがでありますか。
  156. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 全く廣瀬君の御意見に心より同感であります。
  157. 廣瀬久忠

    ○廣瀬久忠君 私の質問はこれで終ります。
  158. 館哲二

    委員長館哲二君) 明日十時から質問を続行することにいたしまして、本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十九分散会