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池田宇右衞門君 私は、ただいま議題となっておりまする
昭和三十年度
暫定予算補正三案に対しまして、
自由党を
代表して、若干の意見を付した上で、不本意ながら賛成の意を表せんとするものであります。
まず、この
暫定予算補正三案に対する意見を申し述べるに先だって、
政府の本
予算提出についての不手ぎわを指摘しておきたいと思うのであります。前回の四、五月分
暫定予算の
審議に際し、われわれは
暫定予算の国民
経済に及ぼす悪影響にかんがみ、本
予算案提出をできるだけ早くすること、少くも四月十五日までには必ず国会に提出するよう強く要求し、本
会議における私の討論においても、希望
条件の第一として申し上げておいたのであります。
政府もまた
委員会等において、四月中旬までには必ず本
予算案を提出する旨をしばしば公言いたしておりました。しかるに事実はどうであるか。本
予算案が国会に提出されましたのは四月の二十五日でありまして、国会はその間十数日を空費せざるを得なかったのであります。この十数日は決して短かい日時ではありません。この十数日の遅延によって、国会の
予算審議の日程には非常な狂いを生じ、ついに六月分
暫定予算案の提出を必至とするに至ったのでありまして、六月分までも
暫定予算を組まなければならなくなったということは、
経済界にも、地方行政にも非常に大きな影響を及ぼしたのでありまして、
政府の責任きわめて重大であります。
政府がこのように本
予算案の提出を遅延せしめた理由は一体どこに拠るか。第一は、
政府の無能と怠慢にあります。昨年末
鳩山内閣が成立しました当時、
政府はその当然の義務である
予算案の編成に、いささかもまじめな努力を払わず、いたずらなる公約の宣伝を事として、もっぱら選挙運動に没頭いたしておりました。周知の
通りその公約の中には、防衛分担金を削減して、住宅
政策に回すという一項がありました。われわれは、この公約がきわめて現実性に乏しいものであって、必ずや失敗に終るであろうことを予想していたのであります。果せるかな、米国
政府との
折衝は難航し、公約はついにから手形に終ったのであります。
交渉には相手があります。相手の意向を十分に確かめることなく、未決定の事項をさも自信ありげに放送して、国民の意を迎えようとした
態度は、まことに軽率と申すよりほかはありません。もしまた
政府にしてまじめにその意図を持っていたのであるならば、
予算案提出の時期ともにらみ合せて、十分な時間の余裕をもって
交渉に当るべきが当然でありますが、
政府の無能と怠慢とは、ついに
予算審議上きわめて重大なる時期における十数日の空費を生ずるに至ったのであります。
本
予算案提出が遅延した第二の理由は、
政府、与党の地方選挙に対する配慮であります。本
予算案を一見すれば直ちに明らかになる
通り、さきに衆議院の総選挙において民主党が天下に誇示したいわゆる公約なるものは、本
予算案においては、ほとんど全く無視せられておるか、あるいはきわめておざなり的に組み込まれておるにすぎません。本
予算案を公表することによって、国民の失望を買い、ひいて地方選挙において民主党の得票数に大きなマイナスを生ずるであろうことは、賢明なる民主党首脳部諸君がつとに熟知していたところでありまして、
政府が本
予算案の提出を遅延せしめたところの裏には、地方選挙に対するこうした配慮がひそんでいたことは、
新聞等の批評にもうかがわれるのであります。
以上のような理由から、
政府は本
予算案の提出を遅延させ、
予算審議に重大なる支障を生ぜしめ、六月
暫定予算を必至とするに至ったのでありまして、その責任はきわめて重大であります。わが党が四、五月
暫定予算の成立に当って付した
条件を
政府が全く無視したことを、私は深く遺憾とするものであります。
今回の
暫定予算案を見ますと、前回の四、五月
暫定予算と比較して、著しく編成の仕方が異なっております。四、五月の
暫定予算が、前年度
予算を基礎としておるに反し、六月分の
暫定予算案は、目下
審議中の三十年度本
予算案を基礎として編成されておるのでありまして、その
意味において、
政策的経費が多分に盛られているのであります。今回の
暫定予算案の基礎となっている三十年度本
予算案につきましては、わが党の主張に沿わない点が多々あるのであります。すなわち三十年後本
予算案は、
経済六カ年
計画現実のための
地固めの
予算という美名の下に、わが国産業の基盤である農林漁業
関係の経費を、前年度に比して大幅に削減するとか、社会保障
関係費を増額したと称しながら、戦没者等援護費、季節保育所並びに上下水道等の
予算を削減するとか、あるいはまた健康保険の赤字保てんはしたが、国民健康保険の赤字対策はきわめておざなりであるとか、歳出面において、われわれのとうてい同意しがたい点が多々あるのであります。また歳入面におきましても、懸案となっている中小法人に対する低位税率の設定であるとか、勤労者、農民等の低額所得者に対するところの
減税であるとか、現下の
経済情勢から見て、当然必要とせらるる措置が何ら講ぜられていないのでありまして、これらはわれわれのはなはだ不満とするところであります。
御
承知のごとく一昨年末
自由党内閣のとりました財政健全化
政策によりまして、
国際収支は著しく改善せられ、年度間を通じて実に三億四千万ドルをこえる黒字を生じ、
経済の正常化は大いに促進せられました。これによって一方的な緊縮
政策は
拡大均衡への一歩を踏み出すための基礎
条件はほぼ整ったのであると申すことができるのであります。打ち続く災害とデフレのしわ寄せを受けた農村と中小企業の
現状を考慮に入れるならば、今やささやかなりとも
拡大均衡への転換を促すための措置を講ずべき時期に到達したものと
考えなければなりません。三十年度本
予算案がこれらの点についての配慮を欠いていることは、われわれとしてはなはだしく不満とするところでありまして、従ってこれらの欠陥を持つ本
予算案を基礎とする今回の
暫定予算案に対しましては、
暫定予算の性質上、本
予算案の構想の一部を具体化しているにすぎないとはいえ、全面的に賛意を表するわけには参らないのであります。特に地方財政につきましては、公共事業
関係費、一般補助金のほか地方交付税交付金として、普通交付金の年額の四分の一を計上しておるのでありますが、
暫定予算に次ぐ
暫定予算によって拍車をかけられている地方財政の窮乏に対処するにはまだまだ不十分と申さなければなりません。
次に、財政投融資についても、今回の
暫定予算には一般会計の出資及び投資は計上されず、資金運用部資金等に全部頼っておるのでありまして、運用部の原資の
状況から見て果して当面の資金需要に対処することができるかどうか大いに疑問であります。
以上を要約いたしますと、今回の
暫定予算案は、四、五月分の
暫定予算の討論に際し、われわれが付しました希望
条件の
趣旨に必ずしも全面的に沿ったものでないこと、及びこの
暫定予算案の基礎が三十年度本
予算案に置かれており、その本
予算案にはわれわれの賛成しがたい点が多々含まれていること、この二点において不満を感ずるのでありますが、六月はすでに明日に迫っております。これを
修正するに時間的余裕もないし、否決することによって国政に空白を生じ、
経済界に不安を高め、国営
関係事業の遅延を来たす等のことは今日許されない
現状でありますから、わが党は、はなはだ不本意ながら、
暫定予算補正三案に賛成をいたす次第であります。
以上をもって私の討論の終りといたします。(拍手)